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2010年10月21日 第9回 院内感染対策中央会議

医政局指導課

○日時

平成22年10月21日(木)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎5号館 専用第23会議室(19階) (東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)


○出席者

構成員

小林座長
荒川構成員
大久保構成員
賀来構成員
木村構成員
切替構成員 
倉田構成員
洪構成員 
高野構成員
八幡参考人
阿部参考人

○議題

1.帝京大学医学部附属病院における院内感染について
2.今後の院内感染対策のあり方について

○配布資料

資料1院内感染対策の概況について
資料2帝京大学医学部附属病院における多剤耐性アシネトバクター集団発生事例について
資料3院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)について
資料4中小病院における主な病院感染症アウトブレークの迅速特定について

○議事

○医療放射線管理専門官 ただいまから、第9回院内感染対策中央会議を開催いたします。厚生労働
省医政局指導課の医療放射線管理専門官の馬場でございます。よろしくお願いいたします。構成
員の皆様方には本日はお忙しい中、ご出席いただきまして誠にありがとうございます。開催に当た
り、はじめにご挨拶を申し上げるところですけれども、いま医政局長が国会対応中ですので、後ほ
どご挨拶をさせていただきます。
 まず、各構成員のご紹介をいたします。国立感染症研究所細菌第二部長の荒川宜親構成員で
す。東京医療保健大学医療情報学科学科長の大久保憲構成員です。東北大学大学院医学系研
究科教授の賀来満夫構成員です。東京逓信病院長の木村哲構成員です。国立国際医療研究セ
ンター研究所感染症制御研究部長の切替照雄構成員です。富山県衛生研究所所長の倉田毅構
成員です。社団法人日本看護協会常任理事の洪愛子構成員です。東京医療保健大学学長の小
林寛伊構成員です。慶應義塾大学病院感染制御センター調査役の高野八百子構成員です。
 なお、本日は京都大学感染制御部教授の一山智構成員と、国立感染症研究所感染症情報セ
ンター長の岡部信彦構成員からは、欠席のご連絡をいただいております。また、本日は参考人と
して、国立感染症研究所感染症情報センターより八幡裕一郎主任研究官、阿部信次郎協力研究
員(FETP)にもご臨席いただいております。よろしくお願いいたします。それでは小林座長、よろしく
お願いいたします。

○小林座長 どうも皆さん、お忙しいところをありがとうございます。この中央会議も第9回になりま
す。構成員の皆様方のご協力をいただき、この会議が円滑に運営されてまいりますことをお願い
すると同時に、有効な議論をしていただきたいと思います。今回の会議においては、帝京大学医
学部附属病院における多剤耐性アシネトバクターによる院内感染事例を受けて、今後の院内感
染対策のあり方について皆様方のご意見をいただき、一つの提言としてまとめたいと思っておりま
す。活発なご検討をよろしくお願いいたします。
 議事に入る前に、通例のように当検討会の議事や資料の公開の取扱いについて、ルールを確
認しておきたいと思います。事務局からよろしくお願いいたします。

○医療放射線管理専門官 写真撮影等はこれまでとさせていただきますので、ご協力、よろしくお願い
いたします。運営に関して、あらかじめお断り申し上げます。本会は公開で行い、議事録も事務局
でまとめたものを各構成員にお目通しいただいた後、厚生労働省のホームページで公表すること
としたいと思います。この点についてご了解をお願いいたします。

○小林座長 続いて、事務局より資料の確認をお願いできますか。

○医療放射線管理専門官 資料1は「院内感染対策の概況について」です。資料2は「帝京大学医学
部附属病院における多剤耐性アシネトバクター集団発生事例について」です。資料3は「院内感
染対策サーベイランス事業について」です。資料4は「中小病院における主な病院感染症アウトブ
レイクの迅速特定について」です。その後ろに参考資料として、参考資料1は「多剤耐性アシネト
バクター・バウマニ等に関する院内感染対策の徹底について」の事務連絡です。参考資料2は
「平成22年7月30日に開催された調査委員会の外部委員会報告書について」です。これは帝京
大学から出てきたものです。参考資料3は「院内感染対策に対する診療報酬について」をまとめ
たものです。参考資料4は「感染制御対策医療従事者数について」、こちらも小林先生にまとめて
いただいたものです。

○小林座長 よろしいですか。資料は揃っておりますか。それでは議事に入ります。本日の進行
ですが、本日の議題は大きく分けて2つあります。議題1は、帝京大学医学部附属病院で発生し
た「多剤耐性アシネトバクター・バウマニによる院内感染事例に関する検討」です。議題2は、「今
後の院内感染対策のあり方について」をご議論いただきたいと思います。まず事務局より、これま
での院内感染対策ということで、資料1についてご説明いただけますか。

○医療放射線管理専門官 資料1を1枚おめくりいただきますと、2つの大学病院における報告が上
下にございます。上が、帝京大学医学部附属病院におけるアシネトバクターの経緯について、帝
京大学からの報告等に基づき整理しております。平成22年2月に1例が出て、その後、5月にま
た10名程度の患者が検出されております。それ以降、帝京大学の中でも講習会や外部調査委
員会を行ったということです。9月2日にまず報告があって、その後に追加の報告があったもので
す。詳しくは後ほどFETPからも報告があると思います。また、平成22年2月に藤田保健衛生大学
病院でも、同じように多剤耐性アシネトバクターの感染がありました。そちらについても保健所に
報告があって、その後、このような動きがあったということをまとめました。これが上下の資料で
す。
 次に厚生労働省の対応として、耐性菌に関するサーベイランスの強化です。先日、10月1日に
感染症部会があり、5類感染症に位置づけ、定点医療機関で発生動向を把握する対象疾患とす
る予定ということでまとまっております。2つ目の全国の病院における院内感染の防止策としては、
参考資料にありますように院内感染の徹底について、アシネトバクターの事務連絡を出しておりま
す。次が院内感染に対するあり方の検討です。これは全体的な話ですが、本日、中央会議を開催
しております。
 (2)の帝京大学医学部附属病院における事案への対応は、9月6日に実施いたしました立入検
査の結果を踏まえ、院内感染防止体制や報告までの経緯等について問題がなかったか、事実確
認を実施しております。また、FETP(国立感染症研究所所属の専門家チーム)の派遣を実施して、
今はまだ調査中です。
 次の頁が、現在の医療法等々における院内感染対策がどのように敷かれているかです。まず
根本的な話ですが、医療法第6条の10で病院、診療所又は助産所の管理者は、医療の安全を
確保するための措置を講じなければならないということになっております。その第6条の10の中
の「省令で定めるところにより」というのが、その下の医療法施行規則第1条の11第2項にある、
「イ.院内感染対策のための指針の策定」「ロ.委員会の開催」「ハ.研修の実施」「ニ.改善策の方策
の実施」の4つにまとめました。内容の詳細は、次々頁に書かれております。
 次の頁ですが、特定機能病院に関する規定について、医療法の第16条の3で書かれておりま
す。今回、ここでは「高度の医療を提供すること」ということで、院内感染とは直接かかわりのない
ことも書いてありますが、医療法の特定機能病院の第16条の3第1項の下の医療法施行規則の
第9条の23第1項で、「専任の院内感染対策を行う者を配置すること」ということが書かれており
ます。
 次の頁です。先ほど医療法施行規則の第1条の11の第2項に、イ、ロ、ハ、ニというのがありま
したが、その指針と委員会の開催と研修と方策の実施について、細かい内容が書かれています。
「院内感染対策の指針」についてがそれ以下の事項です。指針を設定する上では、院内感染対
策委員会の議を経て策定、文書化し、従業員に周知徹底することということで、基本的考え方、従
業員の研修、院内感染発生時の対応といったことが書かれております。
 マル2では、委員会の設置のことがありましたが、委員会は管理及び運営に関する規程がしっかり
定められていること、重要な検討内容について、院内感染発生時、発症が疑われる際の患者の
対応を含め、管理者にしっかり報告をしてください、また院内感染が発生した場合は、速やかに発
生の原因を分析し、改善策の立案や実施並びに従業員の周知を図ること、あとは月1回の開催、
職種横断的に構成されること等々書かれています。
 研修については次の頁のマル3にあります。従業員の周知徹底ということでは、院内感染に関する
意識を高めましょうといったこと、職種横断的に年2回は開催するということもありますが、何か起
こったときに必要に応じて開催するようにということが書かれております。
 マル4には発生状況の報告その他の推進を目的とした改善のための方策が書かれています。上か
ら2番目に、「重大な院内感染等が発生し、対応が困難な事態が発生した場合、又は発生したこ
とが疑われる場合には、地域の専門家等に相談が行える体制を確保することが望ましい」と書か
れております。あとは「院内感染対策マニュアル」を整備するということが書かれております。
 院内感染対策のマニュアルはどういうように作ったらいいかということで、次の頁に「医療機関に
おける院内感染対策マニュアル作成のための手引き(案)」というのがあります。独自の医療体制
もいろいろあるとは思いますが、この(案)を基に各医療機関でマニュアルを作ってくださいというこ
とです。これは主任研究者である荒川先生の所で作らせていただいたものを、皆様にお届けして、
現在「院内感染対策マニュアル」を医療機関で作っていただいています。
 現在、厚生労働省が院内感染対策事業としてやっていることは、院内感染対策中央会議や院
内感染対策サーベイランス事業、また、今日もJANISから発表させていただきますが、そういった
こととか院内感染対策地域支援ネットワーク事業、院内感染対策相談窓口事業、院内感染対策
講習会等といったことをやっているところです。これらが資料1のご説明です。

○小林座長 ただいまご説明がありましたように、1990年代以来、厚生労働省が非常に積極的
に院内感染の問題に取り組んでくださっております。特にいまの資料にもありましたように、平成7
年でしょうか、法的にしっかりとした地位を得て、感染対策を全国的にしっかりやっていこうというこ
とになりました。これは国際的にも大いに評価されているところです。こういったものに基づいて、
日本の感染制御策というのは非常に急速に前進して、世界のトップレベルになってきていると思
います。しかしトップレベルの国々でも、まだまだいろいろな問題を含んで、その対策には悩んで
おり、これをゼロにすることは、現在の医療の中では難しいわけです。そういった問題を少しでも解
決していこうというのが、本日の大きな課題でもあるわけです。
 続いて、帝京大学医学部附属病院に入って実地疫学調査を行った方のお一人である、国立感
染研究所感染症情報センターの八幡主任研究官に、これまでの調査の概要について、資料2な
どによりご説明いただきたいと思います。

○八幡参考人 今回のプレゼンに関しては調査の途中ということで、中間暫定報告となっておりま
す。今後の調査の進展により、数値や症例定義等が変わってくる可能性がありますので、現状の
数値、現状の状況ということでご勘案の上、お聞きいただけたら幸いと思っております。

                 (映像開始)

○八幡参考人 今回、帝京大学のほうでアウトブレイクが確認されました。調査目的として、まず
我々は帝京大学におけるMRABの積極的症例探索、どのような全体像をしているのかを把握す
ることを目的に入っていきました。続いて感染源・感染経路について推定し、今後、帝京大学病院
ほかに対して、予防策を提言していくということで調査を始めました。
 帝京大学の概要ですけれども、許可病床数が1,154名です。主にERや救急救命センターを主
力でやられている、救急に強い病院という印象です。こちらの図は、病棟を示した図です。「内科
(○○)」と書かれているのは、大きな内科で構成されており、括弧内はそのグループと位置づけ
られています。例えば、上のほうから見ますと「内科(腎臓)」「内科(総合)」とあり、内科の腎臓グ
ループ、内科の総合グループという形で構成されております。黄色で塗られている箇所が、今回
MRABの患者さんが見られた病棟です。上のほうから下のほうまで、パラパラという感じで出てい
るという状況です。
 こちらの図はMRABの検出数と、1,000件当たりの陽性率を見たものです。陽性検体数、陽性率
を見ますと、大体パラレルに上がっておりますので、MRABを見つけることで特別何らかの偏りが
あったという状況ではないということが、ここでわかるかと思われます。
 こちらは耐性度を見た図です。3剤、2剤、1剤、0剤で構成された棒グラフです。8月がいちばん
多く出ておりますが、点線で書かれている3剤の耐性率を見ますと、その前の月よりも減っており
ますので、こちらは積極的に検査をしたことの現れです。むしろその前の4月、5月、6月ぐらいに
多く見られたことがわかります。
 現在、調査の途中ですけれども、我々が症例定義として考えているのは、期間として2009年5
月1日から2010年9月30日の間です。場所は帝京大学病院においてです。人としては入院歴
があり、第3入院日以降の入院中の培養検体から、フルオロキノロン、カルバペネム、アミカシン
の3剤耐性のアシネトバクター・バウマニが、初めて分離されたものと定義いたしました。こちらの
3剤耐性というのは、JANISの定義に沿っておりますので、日本のゴールデンスタンダードを使っ
ていると考えております。
 続いて症例の記述です。先ほど59例というご紹介がありましたが、症例定義から1例ほど外れ
ています。外れた理由としては、第3入院日まで至らなかった症例が1例ありましたので、その1
例を除外しております。
 性別ですけれども、男性が6割で少々多く、年齢の中央値が68.5歳、死亡者が34例ということ
で、59%という状況となっております。こちらが年齢の分布です。中央値も高齢者のほうにあるか
と思われます。やはりこの分布図を見ても、60代、70代辺りが多く、80代ということで高齢者のほ
うに多くいるという状況でした。
 基礎疾患に関しては、免疫不全状態が58例中30例と最も多く、続いて糖尿病、悪性腫瘍という
状況となっておりました。
 処置別としては、末梢ラインの入っている方が全員で、それ以外に多かったのが中心ラインと人
工呼吸器という状況です。
 陽性検体に関しては、呼吸器系の喀痰、吸引痰、気管分泌液、咽頭から35例出て、6割がこち
らのほうから出ているという状況です。
 診療科別の症例ですけれども、いちばん多かったのが左から3番目の内科の血液グループです。
続いて内科の総合グループ、内科の呼吸器という状況でした。
 病棟別に見ますと、いちばん多かったのが16階の西病棟です。「16W」ということで、右から3番
目にある所がいちばん多く、続いて15階西病棟、15階東病棟という状況です。
 こちらが流行曲線です。昨年の8月に16階西病棟から出ております。この16階西病棟は紫色
ですけれども、常に出ているような状況です。また、16階西病棟以外にも15階西病棟からもパラ
パラと出ているということで、16階、15階という辺りが広がりを見せているという状況です。
 こちらが2009年に発端となった事例の患者さんと、その近辺の患者さんの病棟を表したもので
す。黄色くなっている所が16階西病棟です。それ以外の病棟がいくつかありますけれども、やはり
16階西病棟で多く見られたということで、16階西病棟について、どのような患者さんのリンクがあ
るのか、もう少し詳しく見てみました。昨年の8月から見ますと、ずっと満遍なく今年の8月まで、
16階西病棟で継続的に出ているという状況が見られました。
 こちらの図が、16階西病棟でどのように患者さんがいらっしゃったかということです。こちらは1
人の患者さんが移動した病室も含めてありますので、17人となっておりますが、それ以上のマー
クが付いているのは、その患者さん自身が動かれた病室も含まれているということです。この中で
注目したいのが、リカバリー室とその周辺です。リカバリー室、1608号室、1609号室の辺りがホッ
トスポットとなっております。その理由として、リカバリー室に症状が悪くなった人が行かれて、そ
の代わりにこの近辺の1608号室や1609号室に移動されるというところが見られました。

○小林座長 いまの図の中で、インデックスケースは、はっきりしているのですか。

○八幡参考人 いま資料を持っていないので、どの病室にいたか正確なことは言えないのですけ
れども、リカバリー室にいた可能性はあると思います。後で調べます。
 病院側の行った対策としては、コホーティングと新規入院患者さんの制限を行いました。それか
ら環境清掃ということで、清掃業者以外に看護師さんが日常的にプラスアルファーでやるようなこ
と、あとは教育訓練等として、いろいろな媒体を使って工夫をしながら行っています。それから情報
の共有化をするということで、対策を立てています。対策の1つの現れとしては、対策する以前と
現在の手指消毒剤の使用量を見たところ、大体月当たり100Lぐらいだったのが、現在だと700L
ぐらい使っているという状況で、効果が出ている状況だと考えられます。

○小林座長 コンプライアンスは見ていますか。

○八幡参考人 病棟によって随分違いますので、良い所と悪い所があります。

○小林座長 血液病棟でのコンプライアンスはご覧になっていますか。

○八幡参考人 インタビューの一部だけで、まだ最終的な結果は出ていないので、これが最終結
果と捉えていただくとまずいのですが、悪い可能性が高いのではないかという印象を受けている
だけです。
 今後の方針としては症例に関する情報を収集し、細菌検査のデータ収集・解析、あとわずかです
が、各関係者へのインタビューを行い、症例対象研究を行って、リスクの解析をしていきたいと考
えております。

                 (映像終了)

○小林座長 どうもありがとうございました。大変なお仕事だったと思います。今後ともまた整理を
よろしくお願いしたいと思います。
 続いて、感染拡大の原因に関して参考資料2に、帝京大学外部委員会の資料があります。外部
委員会でいろいろとご活躍くださった木村先生からお話いただけますか。

○木村構成員 福岡大学で昨年、MRABが出たという関係があり、私と福岡大学の田村先生と2
人が外部委員ということで呼ばれ、7月30日に行ってきました。先ほどFETPでは58例というご報
告でしたが、30日の段階では39例でした。そのうち25例がいろいろな原因で亡くなっているとい
うことで、その死亡原因がMRABの感染と関係があるのかないのか、感染対策上、どういうところ
に問題があったのか、今後に向けての提言をしてもらえないかという3点について検討したわけ
です。
 経緯については、感染制御部が初めてMRABに気付いたのが、GICUの外科の患者さんの膿瘍
にMRABがあるので気が付いているのですが、いまお話がありましたように、遡るとその前の年、
去年の8月に発端症例があって、それからずっと続いて出てきていたわけです。2月に感染制御
部が気付いた段階においても、アウトブレイクという認識がまだなされていなくて、単発例という感
じで考えられていたようです。その症例について少し調査をしてみると、隣りのベッドにいた患者さ
んでも、以前に検出されたことがあったということで、アウトブレイクと認識されたのが5月の連休
の後です。
 この間、30例近くまで検出されてきていたわけですけれども、いちばん残念だったのは、細菌検
査室から感染制御部のほうに、こういう菌が分離されているという情報が全然上がっていなかっ
たことです。4月に入って一部は上がるようになったのですけれども、それもカテ先や血培から陽
性だったものだけしか報告がなかったので、アウトブレイクと認識した時点では、もうすでに院内に
はかなり広まっていて、いろいろな対応が後手後手に回ったわけです。そこで強く思うのは、やは
り細菌検査室と感染制御部の情報の共有というか、連携が非常に大事だということです。その時
点で感染制御部に専従の人がいなかった、ICNも置いてなかったので、特定機能病院としては感
染対策に対する体制が不十分だったのではないかと。その2点を強く感じました。
 死亡との因果関係については、内部調査のほうで「関連が否定できない」が4例、「因果関係不
明」が10例、「関係なし」が11例でしたが、外部委員を交えた委員会では「関連が否定できない」
が7例ということで3例増えています。「因果関係不明」が6例、「因果関係なし」が12例という結
論に至りました。
 その際に提言したことは、監視培養的なことがまだあまり行われていなかったので、保菌者の数
などが過小評価されている可能性があるから、もう少し調査をきちんとやったほうがいいのではな
いか。多剤耐性の情報をリアルタイムで、検査室から制御部のほうに上げていく体制にする。病
院としてのシステムエラーがあったと思われるので、その辺を改善するとか、できればICDやICN
といった専従の人を付けたらいいのではないか。ICTのラウンドにおいても、細菌分離状況のデー
タを持ちながら回ってほしい。職員あるいは業者を含めて、出入りする人を含めての標準予防策、
接触感染予防策の教育研修をしっかりして、コンプライアンスの向上を図る。特に気道系の検体か
らの分離が多かったので、気道の吸引技術や呼吸器の管理等には特にマニュアルを整備して、
院内伝播防止に努めてほしい。状況によっては個室管理なりコホーティングをする。最後に、退院
してよその医療機関に紹介されている患者が、7月30日の時点で3名おられましたが、MRABの
状況を伝えているのは1施設だけで、あとの2人はその情報が紹介状に盛り込まれていないので、
地域医療機関ともきちんと情報を共有するように、あるいは公的機関へ届け出るようにということ
をお話しました。

○小林座長 どうもありがとうございました。感染制御策のストラテジーとしては、いずれも非常に
重要な、是非必要なことだと思います。これまでのご説明を受けて、構成員の皆様方からご質問、
ご意見等がありましたら、少し時間を取らせていただきます。いかがでしょうか。

○倉田構成員 いま木村先生は最後に、専任の人がいないと言いました。基礎系の研究室でも
病原体をいじっている所で、いわゆる専任のバイオセーフティの管理者がいるのは感染症研究所
だけです。ほかにそういう委員会はあっても、専任の人は日本中どこにもないのです。ましてや病
院においては、存在していないというのはよくわかっています。結局、これは毎年いろいろな問題
が繰り返されてくる最後の結論になるかもしれないのですが、すべて上に権限があるようなものを
つくって専任の人を置かないと、こういう問題は解決しないのではないかと思うのです。
 また、いま発表のあった16階の病室は、見てきれいですか。先生は非常にきれいな病院と、汚
い病院の両方を知っているかどうかは知りませんが、そういう感覚で見たときに、病院はきれいで
すか。それが最大の問題だと思うのです。

○八幡参考人 新しい病院なので、見た目はすごくきれいですけれども、観察をしていると、やは
り病棟によってスタンダードプレコーションができている所と、できていない所の差は見られるとい
うのが印象としてあります。まだまとめている最中ですので、どこがというのを言及するのは難しい
ところですけれども、16階はほかと比べると、比較的汚いほうになるかもしれないという印象は持
っております。

○倉田構成員 もう1つ、現場を見た方にお聞きしたいのですが、あそこにグラフを出されたときに、
内科の血液と総合でドサッとあって、あとは1例とか小さな数ですよね。ということは、ほかはとば
っちりということはありますか。そういう患者であったかどうかというところはどうですか。

○八幡参考人 実際にとばっちりを受けた可能性はあります。

○小林座長 それは「クロスコンタミネーション」と言うのですか。

○八幡参考人 実際に総合内科の病棟があちらこちらに散らばっており、階を移動したり、病棟を
移動したりということがあります。

○倉田構成員 患者さんが動いているということですね。

○八幡参考人 はい。それによるクロスコンタミネーションが、可能性としてあるのではないかとい
う印象は持っております。

○倉田構成員 ある大学病院ですが、結核の検体とその場所で培養した結核菌をいじっている所
に、ある大学の研修生や学生や看護関係の学生など、いろいろな人がノートを持ったまま出入り
しているとか、ドアがないということがあります。そんな古い大学ではないのですが、それを現実に
目にして大丈夫かなと。これは帝京大学の問題だけではないと思うのです。何かのきっかけで何
でも起きるのではないかという危惧があるのです。やはり専任の人を置いて、それがすべての権
限の上にあるというようなことをしないと、このまま解決にはいかないのではないかと思います。

○賀来構成員 木村先生がなさった外部委員会を引き継ぐ形で、日医の外部委員の委員になっ
ているので、何点かお話いたします。検査部から感染制御部への情報伝達も含めて、外部委員
会の報告書に対していま現在、帝京大学がどのように取り組んでいるか、どういうように遵守して
いるか、改善点は何かということを、まず外部委員会では帝京大学に求めています。また、検査部
からは上がっていたのかもしれないのですけれども、果たして同じ意思疎通がどれだけあったの
か、具体的なガバナンスの問題についても、木村先生方からご指摘いただいた点も含めて、これ
からもうちょっと詳しく、もう一度帝京大学に求めたいと思っています。
 いま倉田先生が、病棟がきれいであったかどうかと言われました。介護度が高いということで、
たぶん汚物処理室も比較的近くにあったり、おむつの取替えといった具体的に接触感染を起こす
リスクが非常に高い部署かもしれませんので、具体的にその場所を見させていただいて、できれ
ばラウンドをさせていただければと思っております。小林先生が言われたコンプライアンスについ
ても、具体的に少し。FETPではかなり観察されているとは思うのですけれども、もう一度コンプライ
アンスの徹底、いかに図られているかということを、具体的に見させていただきたいと思っておりま
す。

○小林座長 菌は長時間あるわけですけれども、いままでの現場にお入りになった先生方、レザ
バーはどこだと思いますか。菌が貯留されている、継続しているというのは、どういうスペキュレー
ションでも、可能性としてはどこをお考えなのでしょうか。これが対策上、非常に重要なことになっ
てくると思うのです。

○賀来構成員 アシネトバクターの場合は先生方もご存じのように、環境中にかなり長期生存しま
す。ただ監視培養をしても、そのときには見つかっていないこともあるのです。ですから検出限界
以下の菌が、環境中に長くリザーブされている可能性が1つあります。
 もう1つは生体の中にアシネトが入って、一過性に検体を取っても、抗生物質の投与をやめてみ
ると、いわゆる常在菌の中に隠されているような形があります。またキモセラピー、例えば抗がん
化学療法みたいなものが始まった段階で、アシネトがまた検出された例というのがあります。です
からいま先生がおっしゃった、環境と生体の両方のリザーブがあり得ると考えなければならないと
思います。非常に難しい問題だと思います。

○八幡参考人 賀来先生がおっしゃっているとおり、来院リストを見ておりますと、非常に弱ってい
る方々が多いので、その辺が1つのポイントです。あと、環境培養をしておりますので、その結果
を待って、その辺も参考にしながら結果をまとめていきたいと考えております。

○大久保構成員 それに関連して質問します。木村先生のご報告の中で、5月21日に病棟閉鎖
が行われたときに、環境消毒がされているということでした。これはどのような形で消毒されたの
か、どういう場所か、その辺はおわかりでしょうか。

○木村構成員 具体的にどういう消毒薬でやったかというところは記憶しておりません。GICUにつ
いては、清掃をきれいに行っているということです。帝京大学でも7月30日までの間に環境調査
をやっておられて、清掃後のGICUの環境からは検出されなかった。一方、問題になっている16
階西病棟、13階東病棟でも検査を行っております。いまは資料を持っていないのですが、何箇所
からか、MRABが検出されていたという報告を聞きました。シンクやキーボードといった記載もあっ
たように思うのです。

○小林座長 いまのことに関係しますが、後半でこの対策を検討するに当たっては、アシネトバク
ター・バウマニの場合、レザバーがどうであるかということが対策上、非常に重要になってくると思
うのです。賀来先生、木村先生、八幡先生もおっしゃったように、生体と病院を含めて、環境から
ゼロにするのはまず不可能だと思います。そういうことを前提にして対策を考えていかないと、ゼロ
環境の無菌環境をつくるというのは、まず難しいと思います。この前提でどうやって早く特定して、
次のステップの対策を考えるかということが、感染症に関しては大きな課題になると思いますので、
次のステップでの議論にしていただきたいと思います。

○荒川構成員 いまの小林先生のご指摘に少し関連します。アシネトバクターというのは、環境中
に非常に普遍的にいる菌ですので、病院の中から完全に駆逐するというのは、技術的にもなかな
か難しいと思います。いま国際的にも問題になっているのは、普通のアシネトバクターではなくて、
特定の遺伝子のタイプに属するもので、医療環境で非常に広がりやすいタイプが欧米で広がって
います。それが一部、日本にも侵入してきているので、普通にいる常在性のアシネトバクターと、
広がりやすい特定の遺伝子型のものとを区別して、きちんと押さえていかないといけないと思いま
す。
 先ほどのスライドの中で、ゼロ剤耐性という水色のものがありましたね。たぶん、あれは日本の
医療環境、あるいは自然環境中に従来から生息していた、あまり病原性の強くないものです。体
のかなり弱った人は、ときどき病院感染を起こしますけれども、そんなに病院の中で多くの患者さ
んに広がって、重症の患者さんを引き起こすような性質を持っている菌ではないと思います。多剤
耐性になって病院環境で非常に広がって、患者さんに取りついて、場合によっては重症化するよ
うな菌が問題になってくるわけですので、普通のアシネトバクターと今回の多剤耐性アシネトバク
ターとは、きちんと切り分けて調査をしたり対策をしていかないと、何でもかんでもアシネトバクター
をゼロにしろ、すればいい、しなければいけないということではないと思います。
 もう1つは、アシネトバクターが広がりやすい病院というのは、おそらくアシネトバクター以外にも
MRSAとかほかの多剤耐性緑膿菌とか、そういうものが広がりやすい共通の土台があると思うの
です。今回調査しておられる中で、確かにアシネトバクターを調べるだけでも大変だと思うのです
けれども、ほかの耐性菌もどのような形で増えているのか、減っているのか、どこの病棟に集積が
あるのかという情報も、もし可能であれば、一緒に調査されるとよろしいのではないかと思います。

○八幡参考人 検査部のほうから、アシネトバクター以外にもデータをいただいているところです
ので、その辺も勘案しながら調査したいと思っております。ありがとうございます。

○高野構成員 実際に人工呼吸器の管理や気管の吸引の手技などで、問題と感じられることが
あったのかどうかはお分かりでしょうか。

○八幡参考人 特に見たところ、なかったということです。

○高野構成員 病院としてもアウトブレイクとわかった5月の時点で、そういう問題のある管理状
況が特定して見られたということは、把握していないということですか。

○八幡参考人 していたようです。

○高野構成員 その点に関しては5月以降、改善してきたということですね。

○八幡参考人 そうですね。全体としては改善しています。ただ病棟ごとに見ると、それぞれのキ
ャラクターが出ている可能性は非常にあると感じているところです。

○高野構成員 あともう1つ。耐性菌なので、検査をしていなければ見つからないと思うのです。5
月のアウトブレイクが判明したというか、キャッチしてからは検査されるようになったと思うのです。
しかし、それ以前の帝京大学の培養の数というのは、かなり取られているほうだったのでしょう
か。

○八幡参考人 ほかの病院とは比較していないし、規模もありますので、その辺を勘案して比較し
ないといけません。比較していないのでわからないのですけれども、わかってからはかなり強めの
ものをしているという状況です。

○高野構成員 最初に血液内科系から多く見られたので、おそらく血液の病気の患者さんの所は、
かなり培養検査をされているから、より発見されやすかったのかなと思ったのです。

○倉田構成員 私は……バイオセーフティ関係を随分やってきたのですが、この部屋の空調はど
うなっていましたか。というのは、はしかにせよ水痘にせよ、そういう患者のいた部屋は排気口の
フィルターにはPCRで、簡単に遺伝子が見つかるのです。この部屋でそういう調査はされたので
すか。それと、このフロアの全体の空調の空気の流れがどうなっているのか。これがあちらこちら
で起こったときに、空調が1本だったか別だったかで、結果が変わるのです。そういうことは調査
の対象になっているのか、あるいは調べたことがあるのかをお聞きしておきたいのです。

○八幡参考人 空調に関しては調べておりませんでしたので、今後調べるようにいたします。

○小林座長 手術室などでも特殊な所しかしていませんから、おそらく病棟は個別空調にはなっ
ていないだろうと思いますね。

○切替構成員 先ほど小林先生がおっしゃったとおり、やはりレザバーがどこかというのが結構重
要です。ほかの例ですけれども、日本で流行っている多剤耐性緑膿菌の場合、先生方もご存じの
とおり、かなりのケースで汚物室がレザバーになっている。汚物室をきちんと管理するだけで、少
なくともアウトブレイクが相当抑えられることが、多くの医療施設から報告がありますし、レザバー
を特定するだけで、医療従事者も非常に安心して感染対策ができるということが、1つ考えられた
のです。
 それから、アシネトバクター・バウマニの場合によく報告されているのが、例えば呼吸器関係の
医療機器で使回しというか、リユースするような機具の消毒が不十分で、アシネトバクターが残っ
てしまうという報告が、ほかの所であるかと思うのです。そういう調査もされているのですか。

○八幡参考人 呼吸器回路などの調査をするのと、汚物等の保管処理についても調査をしており
ます。まだまとめておりませんので、今のところ調査結果については何とも言えないところですけ
れども、調査をしているという段階です。

○小林座長 お忙しいところ、局長がお見えになりましたので、ちょっと中断させていただきます。

○大谷医政局長 すみません。遅れて参りました。今日は国会で厚生労働委員会がありまして、
政務三役の皆さんが出席ということで、大変失礼申し上げました。私が医政局長の大谷でござい
ます。代わりましてご挨拶申し上げたいと思います。
 本日、ご出席の委員の先生方にはご多用にもかかわらず、本会議にご出席を賜りまして、誠に
ありがとうございます。院内感染対策につきましては先般、特定機能病院である帝京大学病院で、
多剤耐性アシネトバクターの院内感染が発生するなど、その充実強化が大きな課題となっており
ます。厚生労働省におきましては、これまで院内感染対策への取組みとして、医療従事者に対す
る講習会事業、院内感染対策サーベイランス事業等、院内感染対策の関連事業を実施するととも
に、平成19年の4月から、各医療機関に院内感染対策のための指針や委員会の開催などを義
務づけ、各医療機関による取組みの徹底をお願いしてきたところでございます。
 本日は帝京大学病院の院内感染事例に関する国立感染症研究所専門家チームからのご報告、
また院内感染対策サーベイランス事業の今後の運営等につきまして、国立感染症研究所の荒川
部長からもご報告があると伺っております。厚生労働省としましても院内感染対策の充実に、さら
に努めてまいりたいと考えます。本日、お集まりいただきました先生方のご議論をいただきまして、
そのご提案を今後の施策に活かしてまいりたいと考えております。今後の院内感染対策が充実し
ていくことを期待いたしまして、簡単ではございますけれども、ご挨拶とさせていただきます。どうぞ
よろしくお願いします。

○小林座長 どうもお忙しい中、ありがとうございます。それでは続けます。そろそろ議題2に移ら
なければならないと思うのですけれども、最後に1つだけ申し上げます。先ほどの荒川先生のご指
摘の点は、非常に重要なことだと思います。現場で感染性というか、毒性の強い株をどう特定して
いくかです。しかも検査室が充実していない所で、いちいち全部先生のほうへ送るようなことにな
るとパンクしてしまうわけです。その辺で株を区別する方法はいかがでしょうか。

○荒川構成員 確かに遺伝的に広がりやすいタイプのものか、そうでないものかを一般の病院で
識別するのは、かなり難しいと思います。ただ大学病院であれば、それなりの設備や解析ができ
る技術を持った方がおられるはずです。やはり大学病院であれば、自分の施設できちんとやって
いただくことは可能だと思います。
 あと、一般の病院の場合は、先ほど地域支援ネットワークという話が、指導課の馬場専門官の
ほうからありましたけれども、その地域の基幹病院、基幹大学病院のような所で対応していただく
ようにする。また、各自治体が持っている地方衛生研究所の機能を強化して、そういう所で対応し
ていただけるようにするというのが、いちばん現実的な方法かと思います。感染研のほうでも当然
対応しますけれども、日本全国すべてからということになりますと、物理的にもとても不可能ですの
で、各地域ごとの拠点のレファレンスラボを強化していくことが必要ではないかと考えています。

○小林座長 将来的な問題としては、これからの問題になると思いますけれども、現実にこれだけ
バウマニがいろいろな所で分離されて、レザバーがいろいろな所にあるとなると、先生のおっしゃ
った点をどうやっていくか、特に中小の施設でどう評価していくかです。基幹病院でも、必ずしもそ
れだけの能力を持っているわけではないと思いますので、その辺も含めて今後、また先生のほう
からいいアイデアを出していただければ一般的な、特に中小の病院は大変助かるかと思います。
 時間になりましたので、対策のところに行ってよろしいですか。それでは議題2、「今後の院内感
染対策のあり方について」に移ります。医療機関への院内感染対策サーベイランス事業について、
まず荒川先生からご説明をいただきます。

○荒川構成員 資料3をお願いいたします。先ほど「院内感染対策サーベイランス事業」と言われ
ました。これが正式の名前ですけれども、非常に長い名前ですので、我々は「JANIS」と短くして呼
んでおります。2頁をご覧いただきますと、JANISは現在5つの部門でそれぞれのサーベイランス
を行っております。検査部門については検体から分離されるいろいろな臨床分離菌の薬剤感受性
等を調べて、実際の薬剤耐性菌の分離率や発生状況などを把握しております。全入院患者部門
や手術部位感染症部門、集中治療室部門、新生児ICU部門などでは、感染症の患者さんが発生
した場合に、その感染症の発症率、罹患率を把握していくことでサーベイランスを実施しておりま
す。
 3頁を見ていただきますと、今年の8月時点で全国850弱の参加施設から、実際にデータを出し
ていただいております。データを出していただいていない施設に対しては、出していただくようにお
願いをして、出していただけない所に対しては削除するという形の作業をしており、実際は全体的
に850弱からデータを出していただいております。それぞれの部門ごとの内訳の参加施設数は、
検査部門が600ぐらいですか。ほかは400、300、100、90ぐらいの参加施設があります。参加施
設についてはホームページで名前を公表しております。公表したくない施設は、数だけということ
でリストが作られております。
 このサーベイランスは847ということで、これは全体の参加することが可能な施設の約2割から
2割5分ぐらいに参加していただいております。参加していただいている施設は、こういう問題に対
して非常に積極的、あるいは自信のある施設がたくさんおられるようで、そういう所のデータをまと
めて平均的なところを出していく。ベンチマークを提示していくことによって、これに参加していただ
いていない施設もそれを目指して対策に努力していただくことがこのサーベイランスの目標です。
 実際、参加していただいている施設には、年の終わりぐらいに参加状況についてのレポートをお
渡ししております。もし医療監視等のときに参加状況を聞かれた場合は、これを出していただくこと
によって、その施設がそういうサーベイランスに参加している証明書にもなるようにしております。
このサーベイランスに参加していただくためには、医療機関側のマンパワーといいますか、負担を
かなりお願いしなければいけません。この間、負担の軽減ということ、もう1つは参加していただく
ことに対するメリットをいろいろ考えてまいりました。
 4頁、メリットとしてはこのデータをそれぞれの病院で活用して、実際に日常的な院内感染対策
に役に立っていただきやすいように工夫してきました。このサーベイランスがスタートしたのが
2000年からですが、2007年にそれまでの経験、蓄積等を活かして、あと皆さんからご要望をいた
だきまして、目で見て自分の病院の立ち位置がわかるような形でデータを回数ごとに統一しました。
4頁をご覧になっていただくとわかるように、全体の分布と赤い丸がその病院のポジションで、そう
いうものがわかるようになっている。6頁、例えば検査部門で言いますと、11ぐらいの主要な耐性
菌、監視とか対策が特に必要なものをリストアップして、全国的な分離状況、それぞれにおける各
病院の立ち位置がわかるような形のグラフとしてお返ししております。こういうものを印刷して、院
内感染対策委員会等に提示していただくことによって、皆さんがすぐ状況を把握して、調査、対策
等をしていただけるように工夫してあります。
 7頁もこのような形で、経次的に感染症の患者さんが、どのような推移をしているか視覚的にわ
かるような形でのグラフ等もお返ししております。
 8頁、これは全入院患者部門のデータです。この部門では、特に感染症法で注意喚起されてい
る5つの耐性菌についても、各病院における感染症患者さんの発生状況です。これは前の月から
の引き継ぎの患者さんと、その次に新たに感染症を発症した患者さんを分けて集計できる形にし
てあります。
 ICUについては、人工呼吸器関連肺炎とか、尿路感染症、カテーテル関連血流感染症というも
のについて発生状況が、全国及びその施設の数値で比較できるようにお返ししております。

○小林座長 Nはどこかでわかるようになっているのですか。

○荒川構成員 Nもそれぞれの施設にお返しするデータには入っております。これはその一部で
すので、ちょっと抜けております。次はサージカル・サイト・インフェクションです。これもアメリカの旧
NICEの基準に従って、手術手技別に感染症の患者さんの発生状況と発生率等がわかるような形
になっております。例えば、赤い矢印を示したところをクリックしていただきますと、そこのより詳し
いデータは、リスクインデックス別に発生率がわかる形でお返ししております。
 NICU部門については、年に1回まとめて同じように、出生時体重別に感染症別にお返ししてお
ります。例として、敗血症と肺炎がありますが、このような形でお返ししております。
 次の頁は、最近少し話題になりましたNDM-1の情報については、厚生労働省のホームページ
からも提供されておりますが、このホームページからも必要な情報が取れるように工夫してありま
す。
 このJANISの事業から見た耐性菌の状況は、今日は時間がありませんので簡単にお話します。
アシネトバクターについては、先ほどFETPのご発表にもありましたように、国内では各種の薬に
対して感性のものは一般的に分離されております。こういうものはあまり患者さんから患者さんに
広がったり、病院の中で蔓延したりするような性質というよりも、散発的に患者さんから、当時ハイ
リスクといいますか、コンプロマイズの患者さんから出てきたりすることはありますが、かなりの部
分が青い色に書いてあるタイプです。実際、イミペネム耐性のものは2%ぐらいです。青い四角で
囲ったような感じで2%ぐらいですので、3系統耐性はもっと少ないと。これはあとで厚生労働省か
らご紹介があると思いますが、非常に国内ではまだ希な状況です。先ほど申し上げたように、海外
で問題となっている特定の遺伝子型の医療環境で広がりやすい、あるいは定着しやすい、あるい
は多くの患者さんに感染症を起こしやすいといったものは、国内ではまだ非常に希だということが、
JANISのデータからも推測されるわけです。
 NDM-1等もイミペネム耐性の大腸菌、あるいは肺炎桿菌について調べてみますと、日本ではイ
ミペネム耐性の大腸菌は1%以下ということで、あるいは肺炎桿菌も非常に少なく1%、あるいは
1%以下ということで、国内ではまだ非常に希な耐性菌であることが推定されます。一部にNDM-1
ではなくて、従来から日本で緑膿菌とかアシネトバクター、シュードモナス・プチダ等から検出され
るINP型のメタロ-β-ラクタマーゼを持つような大腸菌等が肺炎桿菌はありますが、そういうもの
はあまり医療環境では広がらない性質があるようで、国内ではまだイミペネム耐性については大
腸菌、あるいは肺炎桿菌については非常に希な状況であることがわかります。
 一方、大腸菌につきましては2000年以後急激にセフォタキシム、セフトリアキソン耐性、あるい
はニューキノロン耐性の大腸菌が増えてきております。大体セフォタキシムについては現在約1割
ぐらいがセフォタキシム、セフトリアキソン耐性。ニューキノロン、レボフロキサシン耐性については、
2割から3割ぐらいの状況になってきています。この背景については、18頁にあるように、3、4、大
腸菌では特定の血清型O-25:H4、遺伝子タイプで、シークエンスタイプで131といったものが広が
ってきているのはその背景にあるとわかってきております。フルオロキノロン耐性については、特
にO-25:H4,ST131というのはフルオロキノロン耐性を非常に獲得しておりまして、こういうものが
我が国の医療関係に広がってきております。O-25:H4のグループは、いろいろな耐性遺伝子を
取り込む、あるいは集積しやすい性質がありまして、海外でも非常に問題になってきている株で
す。
 このサーベイランスの大事な点は精度管理です。これはJANISの事務局がうちの部にあります
ので、担当職員が問題となるようなデータ、あるいは疑義を感じるようなデータを認識した場合は、
個別にメールや電話でそれぞれの医療機関の担当者、あるいは責任者の方に問い合わせをして
確認しております。それによって、精度もある一定レベルに保てるように努力しております。
 20頁、これは実際対応した件数と、判明した件数です。修正ができたもの、できないもの、いろ
いろありますので、修正できなかったものについては全体集計から除外するとか、そのような形の
精度管理を進めております。JANISの現状の説明については以上です。今後の方向性について
は、後ほどディスカッションしたいと思います。

○小林座長 どうもありがとうございました。このプロパーのディスカッションに入る前に、時間で先
ほど洪先生をあとにしていただきましたが、どうぞご発言してください。

○洪構成員 先ほどの施設等を見られて、たしかに検査部との情報共有が十分でなかった点の
指摘があったと思います。カルバペネムはじめ、抗生剤の適正使用というところも薬剤部との情報
の共有や、そういった点も場合によっては課題があったのかなということで申し上げたかった点で
す。

○小林座長 これは記録に残してください。荒川先生が中心になって行われているJANISに関し
て、何かご意見はありますか。最後に先生は、精度管理のことが重要だとおっしゃいましたが、こ
れは外部委員会は組織しておられるのでしょうか。

○荒川構成員 精度管理のための外部委員会はございませんが、JANISの運営委員会があり、
そこで例えば大久保先生等にご参加いただきまして、データの集計のチェックとか、今後の課題と
か、精度管理についてもご相談させていただいております。

○大久保構成員 追加させていただきますが、いま言われましたように、運営委員会という所は
集められたデータの集計の精度を含めて、このシステムについて検討している委員会です。私が
その中で感じることは、いま5つのサーベイランスが行われていますが、微生物関係は荒川先生
がご専門で、かなり精度の高いものができていると思います。SSIにつきましては、アメリカの
NHSNに基づいてやっておられますからいいわけですが、それ以外のものについては、ある意味
では独自性が強くて、対外的に比較できない手法で行われているものもあります。あとで検討課
題に出てくると思いますが、もう少しNを多くして、例えば、ICUとかNICUなどはまだデータが少な
いものですから、全般的な解析ができない状況ですから、対外的に比較できるような方向に持っ
ていっていただけるようにお願いしたいと思います。

○小林座長 ありがとうございました。このJANISは、厚生労働省が非常に力を入れて推進してく
ださっているサーベイランスシステムですが、事務局から何かありますか。

○医療放射線管理専門官 まずご議論をいただいてからですね。

○木村構成員 感染症部会の少し前に開かれた感染症対策の専門家の打ち合わせ会で、切替
先生がMRABについてデータをくださって、あれはいまの荒川先生の報告よりも陽性率が高いよう
な数字だったように思うのですが、矛盾はしない数字ですか。

○切替構成員 私は荒川先生の研究班で、厚生科学研究費で、荒川班の研究の一環として、た
またま福岡大学で多剤耐性アシネトバクターが問題になったということで、班会議でいろいろ議論
していただきました。そのときに荒川先生のご指示で、日本の病院でどうなっているのかということ
を、アンケートで直接聞いてみたらいいのではないかということで、多剤耐性アシネトバクター、多
剤耐性緑膿菌の現状について調査いたしました。
 調査対象が、いま荒川先生がご説明になったJANISと少し違いまして、200床以上の病院全体
をカバーしたものですので少し意味合いが違ってくるかもしれないと思います。ただ、特に多剤耐
性アシネトバクター・バウマニの検出率が非常に低いものですから、正直言いますと、統計的にも
誤差範囲で、それほどデータとしては差は見られないというところです。

○医療放射線管理専門官 JANISの事業のあり方について、まとめたことをご報告しておりませんでし
たが、JANIS自体は平成12年から薬剤に耐性のある細菌の発生状況等を把握するとともに、各
医療機関において実施される院内感染対策の改善の支援等を行うことを目的としてやっておりま
す。今後は医療機関の更なる取組みを促進するために、JANISの運営委員会とか中央会議の充
実について検討することが重要であると考えておりまして、やはりこの場でもJANISのことは、もう
少しどうしていくかということを検討しなければいけないと考えております。その検討項目としても、
参加医療機関数の増加とか、参加医療機関に対する支援の強化として院内感染発生の可能性を
より認識しやすくするツールの活用とか、また地方自治体やJANISに参加しない医療機関との連
携ということで、地域の医療機関に対する地方自治体を通じた情報提供とか注意喚起の支援、デ
ータもいまは一般公開しているのですが、そういったものを迅速化することが考えられると考えて
おります。以上です。

○荒川構成員 いまの木村先生のご質問のお答えになるかどうかわかりませんが、JANISについ
ては、多剤耐性アシネトバクターの調査は後ほど紹介があると思います。いま私が紹介した検査
部門のサーベイランスは、アシネトバクター全体についてどうかということですので、多剤耐性のバ
ウマニかどうかということは、一般の病院ではなかなか同定ができないところもあります。
 ですから、一応JANISのほうでは属までで、それ以上の細かい種のほうは吟味せずに終結しま
すので、相対的には少し母数が大きくなりますから低くなるわけです。患者ベースで実際どのくら
い出ているか把握するということで、切替先生に調査をしていただいたものです。その患者ベース
で見た場合は、切替先生のデータのほうがより正確に近いかなという印象は受けております。た
だ、誤差の範囲ではあると思いますけれども。

○小林座長 前にもこの会議で申し上げたかと思うのですが、荒川先生のJANISの検査室側の
データというのは、感染症イコールではないわけで、臨床分離株に関してダブってはいないけれど
も、感染症ではない株も全部入っているということで、切替先生がお調べになったのが、感染症例
からの分離株であれば、当然そこに差は出てくると思うのですが、そこは誤解のないようにしなけ
ればいけないと思うのです。
 先生はJANISの結果を蓄積されて、貴重なデータになってきたと思うのですが、どの部分まで公
開といいますか、医療関係者でもいいのですが、協力病院にデータをお返ししているということは
何回かおっしゃいましたが、そうでない所の啓蒙、ベンチマーキングのためにも非常に貴重なデー
タだと思いますので、その辺は現状がいかがで、今後はどういうふうになりますか。

○荒川構成員 12頁の左の上から5つ目の「公開情報」に入っていただきますと、一般の施設の
方も概要がわかるようになっております。
 例えば、14頁のようなデータは、「公開情報」となっているように、これはすべての方が、JANIS
に参加していない施設の方でも、こういう状況が把握できるようにはしてあります。ただ、集計に
少し手間取っておりまして、まだ公開されていない部分もありますので、その公開の作業をいま急
いで進めている最中です。

○小林座長 感染率等はいかがですか。

○荒川構成員 ほかの検査部門以外のところについては、感染症の患者さんの率を出しておりま
すので、それも個々の施設ではなくて、全体をまとめたような形でお返しはしております。

○小林座長 医療機関に公開はされているのですか。

○荒川構成員 一般の方にも公開はされております。全体のざっくりとしたデータについてはお返
ししておりますので、公開情報のところに入っていただくと、どんな方でも、MRSAはいまどのくらい
になっているか、感染症の率はどのくらいになっているかということはわかっていただけるように
はなっております。

○切替構成員 JANIS一般についての問題点というか、質問ですが、やはり、こういうシステムは
非常によく動くようになりつつある。特に、バクテリアの部門とかSSIの部門で非常によくなって、
ICU,NICUについても、先ほど木村先生がおっしゃったように、もう2、3年経っていくと参加者が増
えて、非常に良いものができてくると思うのです。このシステムの問題点として、参加しない施設と
いうのが常に出てくると思うのです。特に、参加しない施設がアトランダムであれば、ある程度全
体を把握できると思うのです。おそらく予想されるのは中規模、小規模の病院で、入院患者さんを
持っておられるような医療施設が参加していないことのほうが多いのではないかという危惧があ
ります。
 私たちは厚生労働科学の研究の一環として、中小の病院に相談業務として行って、一緒に病棟
をラウンドして、例えばMRSAの状況はどうなっているのかというような、医療現場の相談業務も
やっております。その中で、例えばMRSAにしても大きな病院とは状況が全然違うことがあります
ので、そういう中小病院の実態をどう拾っていけるようなシステムを作っていけるのか、というのが
JANISの1つの課題かもしれないなと思います。

○小林座長 ありがとうございました。非常に重要な問題点だと思います。いかにそういう所が意
欲的に取り組んでくれるかというような情報をフィードバックしていただければ、自然に参加者が
増えてくるのではないかと思うのです。
 ただ、これを強制的に、行政的に全部データを出せというようなことにはまだまだ無理があると思
いますので、長い間荒川先生が中心でやっておられるような情報を提供することによって、積極
的にその問題に取り組んでくれる。いま切替先生がおっしゃったような、特に中小の病院は私も全
くそう思います。そういう所が取り組んでくれる。またそのときに質の問題が非常に大きな問題に
なってくると思いますので、それをどういうふうに管理していくかということを含めて、これからの課
題であり、日本のいまの傾向としては、全体がそういう方向を向いておりますので、その辺の理解
をしてもらえるように、この委員会としても努めていく、実質的に参加してくれる所を増やしていくと
いうPRは必要かと思います。
 今回のバウマニの問題とも絡むのですが、いまも切替先生がおっしゃったように、日本の300床
未満、299床以下の病院は82%を占めているわけです。こういう所での感染制御策の質の向上
は非常に重要な課題になるわけで、切替先生のご指摘のとおりだと思います。厚生労働省もここ
数年間、その点を重視してくださっておりまして、私も中小の病院を対象にした感染制御策の確立
ということに力を入れてきたつもりでおります。今日はアウトブレイクの早期特定ということで、去年
の第8回の説明をいただけますか。

○荒川構成員 21頁の最後の頁をご覧いただきますと、JANISの今後の発展の方向性をいくつ
か項目別に考えてみました。いちばん上は、公開するデータの解析、公開をする時間的な迅速化
を図らないといけないと。現在、いろいろ解析をしておりますが、この項目を追加したり、ある程度
詳細化して、より医療機関側で使いやすいものとして提供していくことを検討する必要があるので
はないかと。内容的には、手作業で集計していると大変な作業になりますので、少しお金をかけま
して、自動集計機能を充実していくとか、データも精度管理的なことも含めてデータをチェックしてい
く。そういう機能をシステムの中に取り込んでいく必要があるのではないか。その場合、経費的な
問題や事務局のマンパワー等がありまして、その辺りを解決しないとなかなか実現は難しい状況
にあります。
 個々の参加医療機関に対する支援強化ということについては、JANIS事業はあくまでも
厚生労働省の事業でやっておりますが、厚生労働省が各病院からデータをお預かりして、一定の
形式で整理をしてお返ししているということですので、あくまでもデータを活用していただく当事者
は各参加施設です。ですから、参加施設がより使いやすくなるように、自らのデータをより活用し
やすくなるように、いろいろ工夫していく必要があるのではないか。いま研究班で、特に、各病院
のデータを個々に自ら担当の方が活用していただきやすいように、各病院、病棟別に経次的に特
定の薬剤パターンを持った菌が、どういう形で広がっているかを二次元的に見やすくするソフトウ
エアを開発しております。これを近々JANIS事業の中に実装していくことで、いま作業を進めており
ます。
 これを使いますと、各病院の担当の方はより作業を簡略化して、対策により貢献していただける
ようになるのではないかと考えております。これについても経費と事務局のマンパワーが必要に
なってきますので、その辺りは厚生労働省のほうでご検討をいただいている最中です。
 いま小林先生からご指摘がありましたが、JANISは200床以上の病院が参加の基準ということ
になっておりますので、200床以下の病院に対しても、支援強化をしていく必要があるのではない
か。200床以下の病院の場合は、検査のデータというのはほとんど検査センターに外注しておられ
る所が多いと思いますので、今後はそういうデータを基準化して、データベース化をしていくことも1
つの選択肢と考えております。
 もう1つ、左のほうにありますが、JANIS事業に対しては、いま厚労省が中心になっておりますが、
参加申込みは自治体を通じてしていただいております。ただデータをお返しするのは、直接JANIS
のほうから各病院に返しておりまして、自治体を通してデータを返しているわけではありません。で
すから、今後は各自治体において所管の医療機関の感染対策、あるいは耐性菌対策を推進する
ために、JANISデータを自治体と共有化していくことも1つの方向性ではないかということで、現在
研究班の中で自治体の方々のご意見を聞きながら、どういう形でお返しするのがいいのか。どの
ような日程でこれを実現していくのがいいか。そのようなことを検討しております。
 自治体によってはいろいろな自治体がありまして、非常に自治体のマンパワーがたくさんあるよ
うな東京都のような所もありますし、一方、とてもそんなことまで手が回らない大変な自治体もあり
ますので、各自治体の方々のご要望やご理解をいただきながら進めていきたいと考えております。
以上です。

○小林座長 ありがとうございました。何か特にJANISのシステムに対してお願いしたいことがご
ざいましたら。大変前向きにいろいろな問題を考えてくださって、システムが充実してきた感が強く
感じられます。先生、どうぞよろしくお願いいたします。

○指導課長補佐(池上) JANIS事業の充実につきまして、いま荒川先生のほうから方向性をお
示しいただきました。その中で課題として上げていただいた経費や事務局のマンパワーといったと
ころが、行政的にも今後はしっかり考えていかなければいけない部分であろうかと考えておりま
す。
 今月の8日に政府全体で経済対策が取りまとまって、今後実施に移していくことになっておりま
す。その中でも院内感染対策の強化という意味で、特に感染研でやっていただいているさまざま
な分析の機能の強化を図っていくべきといった文言も入っておりますので、予算的な面も含めて、
すぐに対応できる部分と、長期的な課題になる部分とありますが、しっかり対応してまいりたいと考
えております。
 もう1点、皆様のご意見を伺えればありがたいと思っているのですが、JANIS事業は基本的には
各医療機関が任意で参加して、任意でデータを提供するという仕組みで成り立っております。一方、
外部の方から院内感染の発生について、行政としてもっと別な形で収集をしたらどうかという投げ
かけもあります。具体的には、いま院内感染が発生した場合には、先ほど馬場のほうからもご紹
介したように、地域の専門機関に相談することが望ましいというくらいの書きぶりで、具体的に法
律上の根拠をもって、院内感染が発生したことの報告を求めているわけではございません。感染
症法に基づくものは別になりますが、基本的には通知事務連絡等で、任意でご協力を求めていく
ようなやり方でやらせていただいております。そこについては院内感染が発生したら報告を法律
上義務づけるべきではないかという、新たな論点もあるわけですが、さまざまな課題も一方であろ
うかと思っております。この機会ですので、是非皆様のご意見をこの際お伺いできれば非常にあり
がたいと思っております。

○小林座長 どうもありがとうございました。いまのご発言に関して何かございますか。

○賀来構成員 いまの報告を求めるということは、私はそういう方向性はあってしかるべきだと思
いますが、ただ、その前提として、小林座長が言われたように、院内感染が決してゼロにはならな
いという現状を、多くの国民の方に知っていただくことをまず前提としてやらなければいけない。限
りなくゼロに近づけるのだけれども、医療現場の中でも限界があることを理解していただくことを、
国も含めて全国民の方に理解していただきたいということが1点です。
 2点目は、報告をして発信を受けるという形だと、どうしても医療機関はたぶん隠す方向にいくと
思うのです。しかし、そうではなくて、例えば報告する。その代わり、それに対して確実な支援をい
ただく。例えば、私たちの所でもそうですが、行政も地域の拠点病院も含めて確実に報告をいた
だくとともに、それに対しては確実に支援をしていく。そういったきちんとした対応が取れていれば、
私は隠す方向にいかないのではないかと思います。今日はメディアの方も多く来られていますが、
どうしても報告してしまう。それはどうしても避けられなかったことかもしれませんが、報告してしま
ったときにどうなるのかということを現場の医療機関は本当に切実に思っています。報告はいただ
くのだけれども、報告に対して、確実に行政の立場としても支援をする。それは地域、ブロック別で
もいいと思うのですが、そういう体制も是非両方から図らないと、報告が上がってこないのではな
いかと懸念しています。ですから、ゼロベースをもちろん目指すのですがという限界も含めて、医
療が抱えるリスクそのものをきちんと国としても理解していただいての対応だと私は思います。私
は東北地区ですが、いろいろなことのご相談を受けて保健所と一緒に入らせていただく事例は多
いので、確実な支援があれば多くの施設は報告していただけるのではないかと思います。

○小林座長 ほかに何かございますか。

○大久保構成員 それに関連して、すでに平成16年より院内感染対策地域支援ネットワーク構
想が動いています。これは切替先生も関わっておられます。これまで保健所に対して報告すると、
指導という形で戻ってきますので、どうしても報告しづらいところがありました。それでは困るから
相談できるような支援ネットワークを作って、指導ではなくて支援という流れができたわけですが、
それが結局予算的なものもあって、立ち切れに近い状態になってしまっている。中には続いてい
る所もあります。
 結局、報告すべき保健所の機能というところが問われるわけです。現在話題となっているいろい
ろな院内感染においても、報告したからといって、前向きな指導が得られるわけではなくて、言葉
は悪いですが、責任回避的に病棟を閉鎖しなさいとか、そういう類いの指導が来てしまうと、これ
は誰も積極的に報告はしないわけですから、その解決策についても考えていかなければいけな
いのです。保健所の立ち入りなどに際して、地元の感染制御の専門家が一緒に同行して、適切な
指導が受けられるようなバックグラウンドを作っておかないと、報告するほうも報告できないような
状況になってしまうと思いますから、その点の考慮が必要ではないかと思います。

○高野構成員 院内感染という言葉がとても曖昧で、人によって解釈が異なりますので、どういう
事例を報告してほしいかということの定義がもう少し明確だといいかと思っています。

○木村構成員 いくつかの院内感染の事例を、調査委員的なことで関係したことはありますが、や
はり、そういう病院は非常に重症の人をたくさん抱えておられて、非常にコンプロマイズドでちょっ
としたことで感染を受けやすい。その施設の人が一生懸命やればやるほど菌は検出されてくるし、
いまの風潮として何か院内感染があると、これは罪悪でバッシングの対象になってしまうという社
会的な状況を改善していかないと、ここは賀来先生も言われたことですが、非常に間違った方向
にいくと思うので、院内感染を報告するときの仕方を慎重に考えていかないと、非常にネガティブ
な方向になってしまうのではないかと懸念します。

○小林座長 ありがとうございました。これはまだ議論すべきことはいろいろあるかと思いますが、
いま高野構成員もおっしゃったように、院内感染の定義がどうかという問題が1つ根底にあります。
賀来構成員からもお話がありましたように、国際的に見ても、数パーセントから10%近くは院内感
染が起こるのは、現在の医療の中ではやむを得ない数字と考えざるを得ないところが、ほかのリ
スク管理とは少し違う点であるわけです。その辺を医療関係者、そうでない方にもご理解をいただ
かなければいけないのだろうと思います。
 特定の疾患は別として、何が起こったら報告すべきかということを許容範囲、日常範囲という感
染がたくさんあると思います。例えば、救急手術で汚ない手術をすれば感染症が起こるのは当た
り前ですし、呼吸器を付けて治療をすれば、それが先行しますが、ある程度感染が起こってくるの
もやむを得ないわけで、その辺をご理解いただいた上で、ただアウトブレイクが起こったときは問
題ですから、全体的に場合によっては感染研のお力も借りて制御していかなければなりませんが、
すべてを報告するということはなかなか難しいことになるでしょうし、もう少しこの委員会でも詰め
ていかなければいけないことだと思います。
 今日もマスメディアの方たちがたくさんお出でになられると思いますが、1990年前後から日本の
感染制御策がこれだけ進んできた。それを支えてくださったのは、やっぱり報道だと思うのです。
報道によって、正しく理解していただいたことによって、これは医療施設も、医療施設外の方たち
も、院内感染をご理解いただいたことによって、日本の対策が伸びてきたと私は思っております。
そういう意味では、メディアの方たちにも感謝しております。ですから、報道する場合にもその辺は
正しくご理解いただいて、病院感染というのはどういう形のものであって、問題があればそれは究
明し、改善していかなければならないのですが、その境目が非常に難しいところがあります。ある
程度はやむを得ないところですので、これは医療が高度化すれば高度化するほど感染のリスクは
高くなってくるということは言えます。賀来先生も先ほどおっしゃいましたが、そういう中で我々はい
かにゼロに近づけていくかという努力をはらっていく。その方策を全国的な問題としてこの会議で
今後も取り上げていくことだと思います。
 先ほど言いかけましたが、特に日本に多い、80%を超す300床未満の施設での対策を経済性を
考えて、やりやすい形でどういうふうに支援していくかということは、切替先生もずっとやっておら
れますが、重要な課題だと私は思っております。
 アウトブレイクに対しても早く気が付くという、今回の調査委員会の報告でも、やはり、気が付くま
でに時間がかかっていることが対策の遅れにつながったことになりますので、いかに早い時期に
全部を疑って、手間がかかってしまってもいけませんが、適切に特定できることが必要です。それ
は去年の第8回のこの会議の中でもご指摘があって、すべてがすべて感染研が規制してもパン
クしてしまうということから、現場でなるべくアウトブレイクを早く疑えるような何かを作れないかとい
うことで、すでに皆様には配信しておりますが、今日改めまして、主な疾患のアウトブレイクの特定
方法を、これは構成員の皆様方のご意見を頂戴して、取りあえず案としてまとめさせていただいた
ものです。今後もご意見を頂戴しながら、中央施設でのアウトブレイクの早期特定のお役に立てる
形でまとめていければ、そういう形で活用していただければと思います。そういうアウトブレイクが
あったときには、地域でのネットワークの中で十分検討していかなければいけない問題になって
いくだろうと思います。
 時間はあまりありませんが、今後の対策の進め方についてご意見があれば、どうぞご遠慮なくお
っしゃっていただきたいと思います。

○倉田構成員 やはり、ある一定の権限を持った部署を持たないと、日本にはルール上あまりそ
ういうのがないのです。しかし、米国の場合は、こういう例がありますが、病原体が管理されてい
た。その病原体は冷凍庫の中に昔からあったもので、そこに当時責任者としては何も関係ない人
が外から来て、あったことをチェックしていなかったことだけで逮捕の理由になったのです。それで
膨大な罰金を払わされて波紋を呼んだのです。そういうこともありますが、それは人の命には何も
関わっていないのです。お互いにきつくなった日本の医療の中にありますから非常にやりにくいで
しょうが、ある一定の権限を持って、それをきちんと指導できる権限を持たせないと難しいし、費用
やいろいろな問題があるのでしょうが、そういうことをしないと、この問題を解決していくのは難しい
のではないか。大きければ大きいほど、人がいればいるだけよくなるかというと、そうでもない数
字もありますから、やはりその病院の努力はそれなりにあると思います。何かそういうのを義務と
してやるところが併任の義務ではなくて、それが義務だというようなことをやらないと、リスクを減ら
すということはなかなか難しいのではないかと思います。
 もう1つ、私が非常に気になったのは建物の問題です。病原体を扱う部屋の建物について非常
に神経質に、例えば、感染研は従来からやっておりますが、ほかの所でいろいろ話を聞いている
と、ほとんど業者に任せてしまうのです。何が起きたかと、ある所でとんでもないことが起きている
のです。いまは安ければいいというので入札制でやったところ、バイオセーフティが全然わからな
い所が非常に安く取ってしまった。ところが、空調がおかしいとなったときに直せない。そういうよう
なことが、例えば、病院の先生方が管理する部屋に感染症の患者が入っている空調からはじまっ
て、いろいろなものがきちんと適切に対応されたような構造になっているかどうか。私はほとんど
なっていないのではないかと思っています。
 そういう意味で、今後きちんと意見を言うような状況にしていかないと、業者任せの建物というの
はほとんど信用ならないと私は思っているのです。安かろうというのは全部悪い率があるというこ
とも知っていないといけないし、現在の安かろう悪かろう方針の徹底というのは、人の命に関わる
ことに関しては非常にまずいと思っています。そういうこともありますので、いくつかの問題点をき
ちんと今後はいろいろな所に活かすようにしていかないと、院内感染の問題は減らないだろうと思
います。

 もちろんソフト面で、医療従事者のトレーニングで何か起きたときはあなたに責任がありますよと
いうことが必要なので、いまはそういうことが曖昧のままになっているのではないかと見ています。
そういうことでいくつかの点の改善なり、新たに対策を取るようにしていく必要があるのではない
かと思います。

○小林座長 ありがとうございました。そろそろ時間が来てしまったのですが、いまの倉田構成員
のご指摘の点は、まず建物やファシリティマネジメントに関しましては、例えば、洪先生がご指導を
中心になっておられる看護協会の感染に関する認定看護師の教育の中でも、かなりそういう教育
はされて、そういう人たちが相当な知識を最近は持ってきていると思います。
 権限の問題は、各診療科の部長と同じように、感染制御の責任者に病院長直属という形で権限
を持たせる。または委員会直属という所も小さい所ではあると思います。これは相当な所で、そう
いう形を取ってきておりますので、現実はかなりの権限を持って、病院を横断的に動いているとい
うのは現状になってきていると思います。その点はかなり進んできていると思います。
 ただ、「専従」か「専任」かの言葉の定義も曖昧なところがあるのですが、いわゆる専従という形
がすべての病院に必要かどうかというと、これは経済効果も考えて、コストベネフィットも考えてや
っていかなければならない。要は、倉田先生もご指摘のように、質の問題をいかに熱意を持って
そのことに当たってくれる人材がいるかどうか、ということがいちばん重要なことで、そういった人
材をいかに育てていくかということも重要な課題だと思います。そろそろ時間になりましたので、ど
うしてもという方があればお伺いいたしますが、いかがでしょうか。

○賀来構成員 今回の大学の問題もそうですが、持ち込み例も含めて、これは地域全体で考え
ていかなければならないと思いますので、先ほど小林先生と大久保先生が言われました地域支
援のネットワークというのは、もう一度きちんとブロック別に相互支援体制を確実に作っていくとい
うことも、非常に大きなテーマですので、今後ともブロック別のボトムアップを図っていくかというこ
とを、是非厚生労働省を中心に、またそういったことの予算についても獲得をお願いできればと思
っております。

○大久保構成員 私は2月まで日本環境感染学会の理事長をしていましたので、学会の動きに
ついてお話をしたいと思います。地域支援に関しては、教育認定施設38病院を指定していまして、
そのうちの37病院がいろいろなQ&A及び地域の支援活動に参加していただけると表明しておら
れますから、まだこれが全国満遍なくというところまでいきませんが、そういう所を活用していける
ような仕組みを全国的にさらに広げていきたいと考えています

○洪構成員 人材を育成するというところが大事だということであるとか、専従、専任のいずれで
あったとしても、そうした方がしっかりと配置されて、活用される仕組。またその方たちが地域へ貢
献していくことは大事だと思っております。現在、1,100数名いる認定看護師、あるいはほかの職
種についても、いろいろな専門の資格というのが薬剤師をはじめ、検査技師等もできてきておりま
す。しかしながら、そういった方たちが実際にいるにもかかわらず、活用されていないというのが非
常に大きな問題だと思っております。いま認定看護師たちも、約57%が実際には活用されていな
いという現状は、折角そういう知識を持っているのに利用されていないということは、是非何とかし
ていかなければならないと思っております。

○小林座長 ありがとうございました。非常に重要な問題で、現実解決していかなければならない。
折角いろいろ努力して、ご尽力をいただいて教育しても、その方たちは現場で活動できない状態
であるということは、日本の損失で、経済的な損失にもなることですので、これも大きな課題として
今後を考えていかなければならないことです。どうもありがとうございました。まだおありかと思いま
すが、時間になりましたので、またの機会に譲らせていただきまして、事務局から何かございまし
たらお願いします。

○医療放射線管理専門官 それではこれをもちまして、第9回院内感染対策の中央会議を終了させて
いただきます。次回の日程につきましては、改めて調整の上お知らせいたします。また次回におき
ましても、何かございましたらメール等々でいただけたらと思いますので、よろしくお願いいたしま
す。

○小林座長 どうも皆様ご協力ありがとうございました。貴重なご議論をいただきまして、本当にあ
りがとうございました。本日いただきましたご意見をもとに院内感染対策について、次回の会議に
おきまして、ご提言を取りまとめさせていただいて、さらに具体的に前向きにまとめていければと思
っておりますので、構成員の先生方におかれましては、どうぞよろしくご指導を賜りますようお願い
したいと思います。また、ご臨席のメディアの皆様方にも、是非、日本の感染制御策の前進のため
にお力を借していただきたいと思いますので、国民の正しい理解と支援をもらえるようにどうぞよろ
しくお願いしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
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(了)
<照会先>

医政局指導課

医療放射線管理専門官: 03(5253)1111(内4134)

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