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2010年12月24日 医師国家試験改善検討部会 議事録

医政局医事課試験免許室

○日時

平成22年12月24日(金) 13:00~15:00


○場所

中央合同庁舎5号館 厚生労働省省議室(9階)


○出席者

委員

井廻委員・兼松委員(部会長)・金万委員・末松委員・高杉委員・
土田委員・奈良委員・野上委員・伴委員・福田委員・別所委員・
山口委員・新木医学教育課長(文部科学省高等教育局)

事務局

大谷医政局長・村田医事課長・石井医事課長補佐・赤熊試験免許室長・
曽我試験免許室長補佐・佐藤試験免許室試験専門官 他

○議題

医師国家試験の評価と改善について

○議事

○曽我補佐 定刻を少々過ぎておりますが、医政局長が所用で遅れております。到着次第ご挨拶を差し上げることといたしまして、開会したいと思います。ただいまより、医師国家試験改善検討部会を開会いたします。始めに、医事課長より委員の先生方をご紹介いたします。 
○医事課長 医事課長の村田です。委員の皆様には大変ご多忙のところ、医師国家試験改善検討部会にご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。僭越ではございますが、第1回目の会議ということで私から先生方のご紹介をさせていただきたいと思います。昭和大学医学部教授井廻道夫委員です。長崎大学大学院教授兼松隆之委員です。市立堺病院副院長金万和志委員です。慶應義塾大学医学部長末松誠委員です。日本医師会常任理事高杉敬久委員です。早稲田大学人間科学学術院教授土田友章委員です。東京医科歯科大学医歯学教育システム研究センター長奈良信雄委員です。教育測定研究所研究開発部研究員野上康子委員です。名古屋大学医学部附属病院総合診療科教授伴信太郎委員です。社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構副理事長福田康一郎委員です。埼玉医科大学医学部長別所正美委員です。虎の門病院院長山口徹委員です。
 また、オブザーバーといたしまして、文部科学省高等教育局から新木一弘医学教育課長にご出席いただいております。
 引き続いて、事務局を担当しております職員の紹介をさせていただきます。試験免許室長赤熊です。医事課長補佐石井です。試験免許室長補佐曽我です。試験免許室試験専門官の佐藤です。どうぞ、よろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして、本部会の部会長をご選任いただきたいと存じます。どなたかご推薦をいただけますでしょうか。
○別所委員 兼松先生に是非お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○医事課長 兼松先生にというお声がございましたけれども、いかがでございましょうか。
                 (異議なし)      
○医事課長 それでは、兼松先生に部会長席にお移りいただきまして、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。
○部会長(兼松委員) ただいま、部会長にご指名いただきました長崎大学の兼松隆之でございます。委員の先生方、並びに事務局の皆様には大変お世話になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず議事に入ります前に、私のほうから部会長代理の指名をさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○部会長 それでは、部会長代理といたしまして井廻委員を指名させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
                 (異義なし)
○部会長 初めに、事務局のほうから本部会の開催方法についてのご説明をお願いいたします。           
○医事課長 それに先立ちまして、医政局長よりご挨拶をさせていただきます。
○医政局長 医政局長の大谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。先生方には、暮れの大変お忙しい中、連休の谷間でなかなか難しい中、ご出席いただきましてありがとうございます。医師の国家試験は、医師としての第一歩を踏み出す上で必要な知識及び技能を問うものであり、国民の方々に安心・安全な医療を提供していくために、医師国家試験が果たす役割は大きいと認識しております。医師国家試験のあり方につきましては、おおむね4年ごとに本部会においてご議論をいただき、医学・医療の進歩を踏まえた見直しに取り組んでおります。
 現在の医師国家試験は、平成19年3月におまとめいただいた、医師国家試験改善検討部会報告書に基づき実施しているところであります。この改善報告書では、医師養成における各段階の到達目標が一連の整合性を持つように検討すべきであり、卒前教育におけるモデル・コア・カリキュラム、共用試験や卒後臨床研修の到達目標等との連携をさらに意識して、医師国家試験の果たすべき役割を十分に発揮できるものとなるようにするべきであるとされております。現在も、この観点が依然として非常に重要であるというふうに考えております。
 先生方におかれましては、現行の医師国家試験の妥当性をご評価いただきますとともに、卒前教育、卒後臨床研修を含めた一連の医師養成過程における医師国家試験のあり方について、幅広い見地からご議論をいただきたいと考えております。
 本日から年度末にかけて、極めてタイトなスケジュールでありますが、何卒ご協力を賜りますようお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いします。  
○医事課長 引き続きまして、本部会の開催方法等につきましてご説明をさせていただきます。審議会等に関しましては、平成11年4月に閣議決定をされました「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」におきまして、会議、議事録につきましては原則、公開とされています。しかし、医師国家試験の試験方法等に関する検討を行っていく中で、非公開としております医師国家試験の詳細に触れる場合には、会議、会議資料、議事録につきましては従来同様、非公開の取り扱いとしてはいかがかと思っております。このような取り扱いにつきまして委員の皆様のご了承をいただければと考えております。よろしくお願いいたします。 
○部会長 ただいまの事務局からのご説明につきまして、何かご意見ございませんでしょうか。
                 (異議なし)
○部会長 ないようでしたら、事務局の説明のとおりとさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。次に事務局から資料の確認をお願いいたします。
○曽我補佐 それではお手元の資料につきましてご説明をいたします。まず、1枚紙の資料として3種類ございます。議事次第、部会の委員名簿、座席表です。そのほかに、改善部会資料1で「医道審議会医師分科会医師国家試験改善検討部会について」、これが5頁の資料となっております。資料2として「医師国家試験改善検討委員会報告書」が10頁でございます。資料3として「医師国家試験の現況」が3頁、資料4として参考で「医師国家試験の現況」が5頁の資料となっております。
 そのほかに、机上にのみ配付をさせていただいております資料として、委員の先生方のお手元にファイルを置かせていただいております。内容は、議事次第の下に机上配付資料として書いていますが、「平成21年版医師国家試験出題基準」「臨床研修の到達目標」「医学教育モデル・コア・カリキュラム」「臨床研修制度の見直し等を踏まえた医学教育の改善について」です。これらにつきましては、すでにインターネット等を通じて公表をしている資料です。資料につきまして乱丁、落丁等はございませんでしょうか。ございましたら、事務局までお申し付けください。資料の確認は以上です。
○試験免許室長 すみません、資料の1、改善検討部会につきましては4頁です。訂正させていただきます。
○部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。それでは、「医師国家試験の評価と改善について」という議事に入らせていただきます。事務局からのご説明をお願いいたします。
○佐藤専門官 では事務局のほうから、先生方のお手元にお配りしております資料1~4について順番にご説明をさせていただきます。
 最初に医師国家試験改善検討部会の位置づけについてご説明をさせていただいた後、現在の医師国家試験の現況をご説明申し上げます。
 まず資料1をご覧ください。医道審議会医師分科会医師国家試験改善検討部会についてです。1の趣旨です。厚生労働省では、医師国家試験として妥当な範囲と適切なレベルを保ち、医師の資質の向上を図るため、定期的に国家試験の改善に努めております。今回、医道審議会医師分科会の下に、医師国家試験改善検討部会を開催し、現行の医師国家試験を評価するとともに、医師国家試験の改善事項について検討を行っていただくというものです。
 2の主な検討事項です。主な検討事項は大きく2つのものからなっております。1つ目は医師国家試験の見直しについてです。これにつきましては、主に3つの論点があるかと思います。1試験の内容及び方法について、2医師国家試験出題基準について、3OSCEの取扱いについてです。OSCEと言いますのは、客観的臨床能力試験のことです。
 もう1つの柱として(2)受験資格認定についてもご議論をいただきたいと思います。
 3の委員です。本日ご参集いただきましたが、この先生方にご議論をいただくこととなっています。
 4のスケジュールです。平成22年12月、本日が議論開始の日となります。平成23年春を目処に報告書の取りまとめ、そして同報告書の提言を踏まえた医師国家試験出題基準の改定を、平成23年度中に予定をしています。
 2頁以降にこの医師国家試験改善検討部会の法的な位置づけという意味で、医道審議会令を抜粋しお示ししています。最終改正は平成20年4月になっていますが、このうち直接関係するものとして、3頁の表の中でアンダーラインを引いておりますが、医道審議会の中に医師分科会が置かれており、この中で医師法第10条第2項等の規定により審議会の権限に属させられた事項を処理するのが、医師分科会となっております。この医師法第10条第2項が医師国家試験に関わることになっています。同じ頁の下をご覧いただきますと、第6条として「審議会及び分科会は、その定めるところにより、部会を置くことができる」となっておりまして、この改善検討部会はこのような位置づけになっているということをご説明申し上げました。資料1については以上です。
 次に資料2をお手元にご用意ください。「医師国家試験改善検討部会報告書 平成19年3月16日」という資料です。先ほど医政局長からのご挨拶にもありましたが、4年に一度、改善検討部会が開催されており、4年前の報告書です。こちらにつきましては、この報告書の取りまとめにご参画いただいた先生も中にはいらっしゃいますので、釈迦に説法な部分もありますが、ポイントになるところだけ確認してまいりたいと思います。 
 おめくりいただきますと、「はじめに」と「基本的な考え方」があります。「基本的な考え方」をご覧いただきたいのですが、4年前の議論の中で基本的な考え方とされていたポイントについて、第2パラグラフのところをご覧いただきますと、平成16年に臨床研修が必修化されたこと、そして平成17年から大学医学部・医科大学において共用試験の本格導入があったことといった、医師養成過程における大きな変革を踏まえた医師国家試験の改善が必要であろうということが、基本的な考え方で謳われております。
 第3パラグラフのところですが、それに関連しまして、医師国家試験が医師の質の向上により一層資するものとなるように、大学入学から始まる卒前医学教育、医師国家試験、卒後臨床研修、生涯教育へと続く我が国における一連の医師養成過程を見通した長期的視野を持つことが重要であるとされております。
 また、今後の医師国家試験では基本的な知識・技能の確認をすることに加え、臨床研修開始前までに修得しておくことが必要と考えられる技能や、社会的ニーズの高まっている傷病に関する事項について、より一層の充実が図られるようにすることが望ましいとされています。
 具体的な論点についても振り返ってみたいと思います。「1.医師国家試験の試験問題の出題内容について」です。多数書いていますが、特に重きが置かれていたのは、治療に関する基本的な事項について、より具体的な出題をしていくべきである。あるいは医療面接、診療録の記載といったようなことについても、卒前の臨床実習を踏まえて、より一層の充実を図ることが必要であるとされています。
 また、疾患の頻度に配慮することが必要であるということ。また、悪性腫瘍や終末期医療といった社会的要請事項についても配慮する必要があるということが述べられています。加えて医の倫理・患者の人権、医療安全対策、医薬品等による健康被害及び健康危機管理等については、これまでどおり配慮することが望ましいとされております。
 医師として必要な基礎的計算力、患者や他の医療関係者とのコミュニケーション能力、国際性等も重要な事項であり、医師国家試験として対応する必要性及び方策について、共用試験等の内容の充実も求めながら、引き続き検討していくことが望ましいとされています。
 3頁目です。出題数・出題形式については、基本的には引き続き500題を維持ということで、基本的には現状維持ということが言われております。
 なお、今後も医師養成に関わる様々な制度等の状況の変化を踏まえ、適切な試験形式や出題数について、継続的に検討していくことが望ましいということも述べられております。
 (3)の合格基準についてです。こちらについては、同じく基本的には現状維持ということで、引き続き現行の合格基準を採用することが望ましいということが、4年前の結論となっています。
 試験問題のプールについても、基本的には現状維持ということで言われていますが、この点について今後も引き続き検討事項とされていることをピックアップいたしますと、4頁の3つ目の段落になりますが、今後も試験問題のプール制が良質な試験問題の作成に資するよう、既出問題や公募によって収集した問題を適切に扱い、可能な限り多くの問題がプールされるよう検討していくことが望ましいということも明記されています。
 続きまして「客観的臨床能力試験(OSCE)について」です。これについては臨床研修を開始する前に必ず身に付けておくべきスキルを確認する方法として有用だということで、研究・議論が長年なされてきたところですが、4年前の議論の中では、医師国家試験において実施することの課題が整理されたとともに、それを踏まえて、全ての大学医学部・医科大学卒業生が臨床研修開始前に必ず身に付けておくべき技能・態度についての認識が共有された上で、医師養成に関わる状況の変化等を踏まえ、医師国家試験を含めた一連の医師養成過程の中で、OSCEによる評価の導入が検討されることが望ましいという結論です。
 続きまして「受験回数制限について」です。こちらも受験回数による制限をしないという意味で、現状維持というのが4年前の結論でした。こちらについても引き続き検討することが望ましいということも明記されています。
 「その他の事項について」ですが、こちらについても今後の医師国家試験問題の作成については、質の高い良問からなる医師国家試験を実施するため、問題の作成方法やブラッシュアップの方法、より良い事後評価の方法等についても改善していくことが望ましいとされています。
 「結語」のところです。6頁になりますが、先ほどの医政局長のご挨拶にもありましたとおり、一連の医師養成過程の中で、医師国家試験のあり方を検討することが重要である。そこが改めて認識されたということです。医師養成における各段階の到達目標が一連の整合性を持つように検討すべきであり、卒前教育におけるモデル・コア・カリキュラム、共用試験や卒後臨床研修の到達目標等との連携をさらに意識して、検討を進めていくべきであるということが結語としてまとめられています。
 なお、先生方のお手元には、机上配付の資料としまして、この連携を意識するべきであるとされているモデル・コア・カリキュラム、そして卒後臨床研修の到達目標についても、ファイルに綴じておりますので、適宜ご参照いただければと存じます。資料2の説明は以上です。
 次に資料3、資料4の説明をさせていただきます。これは、若干関連してまいりますので、両方をお手元にご用意いただいた上でご覧ください。ここから申し上げますのは、医師国家試験の現状です。4年前の改善検討部会での議論を踏まえ、現在はこのような形で実施されているということをご説明申し上げます。
 資料4です。2枚で1頁となっておりますので、下の欄からご覧ください。まず国家試験の前提として、医師法の規定の確認をしておきたいと思います。第9条として「医師国家試験は、臨床上必要な医学及び公衆衛生に関して、医師として具有すべき知識及び技能について、これを行う」とされています。第10条としまして「医師国家試験及び医師国家試験予備試験は、毎年少なくとも1回、厚生労働大臣が、これを行う」とされています。2として「医師国家試験等の方法を定めようとするときは、あらかじめ、医道審議会の意見を聞かなければならない」とされておりまして、先ほど資料1でご説明した、医道審議会医師分科会の所掌になっているところでございます。
 資料3の1.をご覧ください。「試験実施の概要」についてです。日程ですが、現在、年1回、2月中旬の3日間にわたって実施をしています。第105回につきましては、第105回というのは、この冬に行われるものになりますが、参考のところにお示ししていますように、平成23年2月12日からの3日間と予定しております。1日当たり4時間から6時間程度で実施しております。参考までに前回の医師国家試験の時間割をお示ししています。このような形で実施しています。
 試験地につきましては、ご覧いただいているように、全国12カ所で受験が可能となっています。
 (3)の受験資格についてですが、こちらは医師法の規定により、以下の者に受験資格が与えられています。1学校教育法に基づく大学において、医学の正規の課程を修めて卒業した者。2医師国家試験予備試験に合格した者で、合格した後1年以上の診療及び公衆衛生に関する実地修練を経た者。3外国の医学校を卒業し、又は外国で医師免許を得た者で、厚生労働大臣が上記12の者と同等以上の学力及び技能を有し、且つ適当と認定した者。この3種類となっています。医師法の実際の条文につきましては、資料4の2にあります医師法第11条でこの受験資格が定められております。
 続きまして「試験問題の概要」についてです。資料3の2にお戻りいただければと思います。出題内容です。試験問題は臨床上必要な医学又は公衆衛生に関し、医師として具有すべき知識、技能について、広く一般的実力を試し得るものとされております。これは医師法第9条で規定されています。
 具体的な出題範囲につきましては、ガイドラインと呼んでおりますが医師国家試験出題基準に準拠をしておりまして、直近のものは平成21年から使われているものです。これはお手元の机上配付資料に出題基準があります。昭和53年から作られています。
 資料3の2頁です。出題内容のもう1つのポイントは、生命や臓器機能の廃絶に関わるような解答や、倫理的に誤った解答をする受験生の合格を避ける目的で、禁忌肢というものが設定されています。こちらは合否判定のところにもかかわっています。
 (2)出題形式です。現在、医師国家試験は、多肢選択式・マークシート方式で行われておりまして、出題総数は500題となっています。試験問題の内訳は、下にある表のとおりです。この表をご覧いただきますと、縦軸に必修問題、医学総論、医学各論となっており、これらがそれぞれ100題、200題、200題となっています。一方、右側を見ていただきますと、一般問題と臨床実地問題と分かれており、臨床実地問題は症例問題と考えていただければと思います。1問何点かというところで合格基準の上でも違いが出ております。大きく分けてこのような区別となっておりますが、ブループリントといわれる医師国家試験設計表において、さらに細かい項目、評価領域毎の出題割合が示されています。机上配付資料の出題基準の初めのほうに、ローマ数字で頁を打っておりますが、このiv頁からvii頁まで続いているものです。こちらがより細かい出題割合の設定の現状となっておりますので、これも適宜ご覧ください。なお、こちらのブループリントにつきましては、平成13年から導入されているものです。
 資料3に戻りますが、試験問題の作成方法についてです。これも医師法の規定に基づきまして、医師国家試験に関する事務(試験問題の作成)をつかさどらせるため、厚生労働省に医師試験委員を置き、試験委員会が問題の作成・修正を行っております。これは医師法第27条で規定されているものです。また、公募問題もありまして、全国の大学や臨床研修病院から公募された問題につきましては、公募問題ブラッシュアップ委員が問題の選定・修正を行っています。最終的には試験委員会が取りまとめています。
 続きまして「4.合否判定の方法等」です。(1)基本的な考え方です。1つ目ですが、必修問題、一般問題、臨床実地問題の各々の得点と、禁忌肢の選択状況を元に合否を決定するということが基本的な考え方となっております。こちらで言うところの必修問題、一般問題、臨床実地問題といいますのは、同じ頁の上の表をご覧いただきたいのですが、この3種類というのは必修問題の100題、必修問題以外の一般問題200題、必修問題以外の臨床実地問題200題のグループ分けでそれぞれに得点の合否判定基準が設けられています。必修問題の合格基準は、絶対基準を用いて最低の合格レベルを80%とし、一般問題・臨床実地問題の合格基準は各々平均点と標準偏差とを用いた相対基準を用いるということになっています。これらは、これまでの改善検討部会での議論を踏まえて、平成13年からこのように設定されています。
 (2)合否判定の方法です。試験の実施結果を踏まえ、医道審議会医師分科会K・V部会において、問題の妥当性の検討をしていただいております。このK・Vというのは、下にありますように、Key Validation、有効性の検証というべきところかと思います。同分科会の意見を踏まえて、厚生労働大臣が合格者を決定するという流れになっています。毎年このようなプロセスを経ておりまして、3頁の上に参考としてお示ししていますのは、第104回医師国家試験の合格基準です。先ほどご説明申し上げましたとおり、一般問題を1問1点、臨床実地問題を1問3点という得点の配分になっており、1として必修問題については云々、2として必修問題を除いた一般問題及び臨床実地問題については云々となっております。3としては禁忌肢問題選択数は何問以下と、このような形になっているのが現状です。
 続きまして「試験結果等の通知・公表」についてです。試験の結果の通知・公表の日程については、平成17年(第99回国家試験)以降、合格発表を3月末に行っていたのですが、早期化の要望があることも踏まえ、これから行われる第105回は3月中旬に合格発表を予定しております。具体的には3月18日となっています。
 (2)として、合否結果等の通知・公表の方法です。個人の試験結果(領域別の得点)については、受験者に郵送で通知をしております。合格発表と同時に、受験者数、合格者数及び合否基準を公表し、厚生労働省ホームページにも掲載をしております。
 (3)問題及び正答の公表についてですが、まず受験生による試験問題の持ち帰りを現在は認めています。また、厚生労働省ホームページに、試験問題及び正答についても掲載をしております。資料3のご説明は以上です。
 資料4の続きをご説明します。スライド番号の3番になります。これまでのご説明で出てきた用語が出てまいりますが、近年の医師国家試験の変遷について、参考までにお示しをしています。国家試験改善検討部会が4年に一度開かれている関係で、4年をひとまとめとした変遷を表にしたものです。最近の流れとしては、平成9年の第91回のときから、必修問題が導入されており、平成13年、第95回の試験から問題数が増加しておりまして、計320問だったものが500問と増加し、試験日数も2日から3日に変わって現在に至っています。それ以降の大きな変化としては、平成18年から問題の持ち帰りが可能となっています。また正答肢も公表しています。この点については、資料2でお示しております報告にも若干詳しい説明がありますので、そちらもご参照ください。
 続きましてスライド4、5ですが、医師国家試験の合格率等の推移です。5に細かい数値でお示ししているものをグラフ化してあるものが、スライドの4です。平成13年以降、おおむね9割前後の合格率で安定した推移をしております。
 続きましてスライド6です。こちらは男女別の合格者数等の推移で、こちらも第99回から第104回にかけてお示しをしています。若干細かい数字になりますが、全体的な傾向としては、女性の受験者数が3割に達しているということ。男女別の合格率についてはご覧のとおりです。
 下のほうに第104回の医師国家試験においての卒業年次別受験者数、合格者数、合格率についてです。これは先ほど4年前の改善検討部会の報告書でも議論になったことをご報告しましたが、受験回数制限のところの議論にも若干関連することかと思います。卒業年次を左側にお示しをしていまして、主に太字にしてあるところは、卒業された年月ですが、右側の受験可能回数というのは、実際この回数を受けていらっしゃるかどうかは分からないのですが、最大この回数受けられるというものです。このデータをご覧いただきますと、受験者の1割弱が複数回受験者になっておりまして、その半分以上が2回目の受験ということになります。合格率がいちばん右側にありますが、卒業から年月が経過するほど、合格が難しくなっていくというのが、数字で出ているということです。既卒の方の合格率が平均で5割という状況です。
 続きましてスライド8です。卒前・卒後医学教育を巡る近年の動きです。縦軸でいちばん左をご覧いただきますと、医学部教育6年間、そして医師国家試験があり、初期臨床研修の2年間があり、そして生涯教育に移っていくという、医師養成の過程を大まかにお示しをしています。それぞれのステージについて、これまで様々な議論が行われてきたということで、横軸として、議論が行われた年を示しています。大きな動きとしては、平成12年に医師法が改正されて、臨床研修が必修化になりました。そして、医学教育ではモデル・コア・カリキュラムが平成12年に時同じくして作成されておりまして、それが数年に一度程度の改訂を経て、現在定着の段階に入っていると言えるのではないかと思います。本年はモデル・コア・カリキュラムの改訂がまさに行われているところです。また、医学部教育の段階においては、共用試験の導入もより大きな近年の変化であったと思われます。平成14年に試行が開始されまして、平成17年から正式な実施に至り、これも定着の段階に入っています。初期臨床研修制度になりますと、平成16年から必修化になりまして、昨年度は初期臨床研修制度の見直しがされ、こちらについても定着の段階に入ってきました。こういった一連の医師養成過程の中で、医師国家試験改善検討部会が4年に一度行われているという、その文脈を念頭においてご議論いただければと思います。
 最後にスライド9です。医師国家試験への要望ということで、医学教育カリキュラム検討会の意見の取りまとめが平成21年5月1日に出されたものを抜粋しています。医学教育カリキュラム検討会につきましては、本日ご参画いただいている福田委員が座長をされ、また奈良委員、伴委員も参画をされていたということで、申し上げるまでもないことかもしれませんが、重要なところかと思いますので、抜粋してご紹介をさせていただきました。この中で、臨床研修制度の見直し等を踏まえた医学教育の改善についてという、意見の取りまとめの中で、学習成果を生かす多面的な評価システムの確立というものの中に、方向性として、共用試験、医師国家試験それぞれが整合性をもって各段階で求められる能力を適正に評価し、臨床実習をはじめとする学習成果を生かす多面的な評価システムを確立するという方向性を打ち出し、またその方策として、共用試験の見直しによる適正な評価を前提に、医師国家試験が臨床能力を適切に評価できるものとなるよう強く求める。また、各大学における臨床技能評価の実施などにより、臨床実習を質量ともに向上させるといったことが提言されておりますので、こちらについても念頭に置く必要があるかと思います。なお、この意見の取りまとめの全文につきましては、机上配付資料の中にも入れさせていただいておりますので、適宜ご参照いただければと思います。大変長くなって恐縮ですが、こちらからの説明は以上です。
○部会長 ありがとうございました。ただいま、本部会の主な検討事項、今後のスケジュール、本部会の法的な位置づけの説明をしていただきましたあと、前回の検討部会の報告書の概要の説明がありました。また、医師国家試験の現況についての概説もしていただいたところです。ただいまのご説明に対して、どなたかご質問がありましたらお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。
 それでは、本部会は今回は第1回ですので、今の説明等々を基としまして、委員の先生方にフリートーキングの形で医師国家試験のあり方、あるいは今後の方向性というようなところを、お話をいただけたらと思います。本部会の目的としましては、今後の医師国家試験が良い方向にいくための方向性を示すということが第1の目的でございまして、細かい点が発生しましたら、ワーキンググループで検討していただくというようなやり方で今後やっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。資料の1で説明がありましたとおり、部会としましては、主な検討事項が2つあります。医師国家試験の見直し、そこに3つの柱がありまして、試験の内容及び方法について、医師国家試験出題基準について、3つ目がOSCEの取扱いについてということですが、後ほどまた受験資格認定についての検討も必要かということです。このようなところを踏まえ、特に検討事項の(1)医師国家試験の見直しについて、医師国家試験全体につきまして、委員の先生方、何かご意見がございましたら出していただければと思います。
○別所委員 私は全国医学部長病院長会議で医師国家試験専門委員会を担当しておりまして、毎年アンケート調査を全国の80大学、受験生にも行っております。そこで指摘されている5点を紹介させていただきたいと思います。1点目は、医師法の第9条では、医師として具有すべき知識と技能を問うとなっているけれども、現在はその「技能」が行われていないという点です。
 2点目は、毎年500題新作問題が出されるのですが、500題新たな良問を作るのは、非常に難しいということです。問題を作る先生方の多大な努力で行われていますが、毎年事後評価で複数正解、その他、特別な取扱いの問題が出ます。現在の試験実施システムには難しい面があるのではないかと思います。
 3点目が、医師国家試験は本来は資格試験であるはずですが、一般問題と臨床問題の合格基準には相対基準が用いられており、実質的には競争試験のような色彩があります。必修問題は絶対基準が用いられますが、合格ラインは80%で、比較的高く設定されています。禁忌肢問題については、情報が乏しいという指摘があります。また、問題そのものが知識を問う問題であり、医学知識の量も年々膨大になっているという背景があり、受験生は知識の獲得に専念せざるを得ないというのが現状です。受験生は、いわゆる国家試験対策のための座学にかなり時間を増やさざるを得ない状況になっています。本来ですと5年生、6年生では臨床実習に力を入れるべきなのですが、それが形骸化していると指摘されています。
 4点目は、出題委員の先生方の多くは文部教官で、もともと医学生の教育を担当している先生自信が問題も作っているという点です。出題委員の先生方は厳重な管理を受けていますが、100%というわけにはいかないケースもありえるという指摘があります。また、医学部での卒業判定は大学の先生方がしているわけですが、一方で、自らが出題した国家試験の問題によって医師の資格を認めないということもあるわけで、そこには矛盾があるという指摘もあります。
 最後ですが、医師国家試験は、卒業時点では、まだ医師としての業務が未経験な受験者に、一生涯有効な国家資格を与える判定を行う試験でもあるわけで、判定そのものに無理があるのではないか、という指摘です。一旦通ってしまいますと、生涯医師ということになりますので、国家試験の合格イコール、ゴールに達したというように勘違いする受験生も出てきかねません。アンケート調査で寄せられた意見の主なものをご紹介すると以上のようになります。
○部会長 別所先生、ありがとうございました。ただいま5つの項目が出されましたが、いずれも国家試験の今後のあり方で、非常に問題のところかと思います。1つは知識と技能を問うべきなのに、知識だけを問いがちである。技能というものが問われていないのではないかということです。それから、やはり問題を作るのは大変であるということと、プール問題の取扱い等、合格基準と申しますか、相対評価というのが入っているのが良いのかどうかというようなこともありましたし、禁忌肢の取扱いのこと、問題作成にかかわる方々の問題も今おっしゃっていただきました。最後には医師国家試験に合格することがひとつのゴールとなっているのではないか。もう、医師になってすぐのところでゴールまでたどり着くような形になっているのではないかというような問題点も挙げられました。いかがでしょうか。いくつか大事なところですが、まず知識と技能、このところがひとつは大変従前から問題になっていて、そこにOSCE等が入ってきたと思うのですが、伴先生、いかがでしょうか。
○伴委員 名古屋大学の伴です。私は医学教育学会の理事長をしているのですが、そちらのほうの20いくつの委員会の中に、医師国家試験検討委員会というのがあります。今、別所先生がおっしゃったのは、医学部長病院長会議で、わりとアドミニストレーションにかかわる先生方のご意見ですが、評議員という実際の医学教育の現場でマネジメントをしている人たちの意見を集約中で、まだ結論は出ていないのですが、一部そこの意見を、今の兼松先生が問い掛けなさった実技試験の関連のところでご紹介しておきたいと思います。
 実技試験に関しましては、確かに別所先生のご紹介と同じ指摘がありました。それをどうするかということなのですが、OSCEを国家試験に入れるべきだというのと、各大学で認定をすべきだというのが拮抗をしています。ここからは私の意見なのですが、あまり、十分なレパートリーがないときに、国家試験にOSCEを入れると、その準備のためにまた臨床実習を離れて準備をしにいくという学生が増えるのは、もう火を見るより明らかということですので、できるだけ臨床実習に参加している学生ほど、その評価が高くなるような方法を考えなければいけないということになりますと、やはり各大学での認定ということが、まず最初に考えられるのではないかというのが1点。
 一方で、国家試験に将来入る予定もないのだということになりますと、現実にそういうことが起こりかけているのですが、各大学での努力にやや水を差すという懸念もあります。そこで出てくる2番目の受験資格認定というところにかかってくるのですが、ここに国家試験のOSCEのようなパイロットの実施を考えたらどうかというようなことが考えられる。これは私の個人的な意見です。
 というのは、いちばん最初に国家試験レベルで実技試験を導入したのはカナダですが、それでも外国人の受験生に対してパイロット的なことをやって、妥当性や信頼性、透明性のようなものを確保した上で、全カナダの医科大学生にやっています。アメリカのナショナルボードのUSMLEのステップ2のクリニカルスキルズも全く同じで、ECFMGがまず外国の受験生に対して数年間パイロット的なことをやった上で、USMLEのステップ2のクリニカルスキルズというところに導入していると。それと同じようなプロセスをこの受験資格認定というところにも導入すれば、受験資格認定の方の妥当性も高くなるでしょうし、ハイステークスな試験としての信頼性の確保というようなことにも、オールジャパンでの準備もできる、そのようになるのではないかなと思います。
○部会長 ありがとうございました。いかがでしょうか。
○奈良委員 東京医科歯科大学の奈良です。本来、資格試験と教育というのは別ものであるべきだと思います。しかしながら国家試験が、かなり教育に影響を与えているのは事実です。特に医学教育の場合には、国家試験が、すでに別所委員からもご指摘がありましたが、医学教育に非常に影響を与えております。となりますと、国家試験も改善しなければいけない点があろうかと思います。とりわけ医学教育では臨床実習が重要ですが、臨床実習を医学生がきちんと学習しなければ合格できないような試験にしないと臨床実習が形骸化しかねません。つまり、折角、各医学部で臨床実習に力を入れようと思っても、国家試験があるということで一旦座学に戻らざるをえず、折角臨床実で得た成果を忘れてしまって、また研修医になってやり直さなければならないといった現象がみられるのです。このようなことでは、臨床実習の効果が上げられないと思います。
 したがって、これを機会に臨床実習を充実化すると同時に、それを適正に評価できるような国家試験に是非改めていただければと思います。医師法では、医師国家試験では知識及び技能について問うということになっています。医師法が制定された当時は、医学生の態度はあまり問題にならなかったかもしれませんが、現在では、医師として必要な知識、技能、態度を医学部教育で十分に涵養しておくことが要求されています。そこで、医師として必要な態度も評価できるような試験が必要だと思います。そうなると机上のペーパー試験だけではなかなか難しく、臨床の技能、あるいは態度を問うような実技試験が必要になると思われます。その参考になるのは、例えばアメリカとか韓国などで行われている臨床能力試験が参考になるかと思います。
 伴委員からもご指摘がありましたが、アメリカのUSMLEにおいても、現在ではclinical skillsを問う試験が定着していますが、そこに至るまでに15年かかったと言います。すなわち、アメリカでは2004年からCSAが導入されて、現在では安定しているのですが、その導入を始めたのは1987年ぐらいで、その当時アメリカでも臨床実習がきちんと行われていた大学が5つぐらいしかなかったと聞きます。それではまずかろうということで議論が高まり、少しずつ臨床実習が改善されてきたようなのです。国家試験に臨床能力試験が導入された結果、2004年にはすべての大学、(2校は受け入れていないらしい)、すなわち98%の大学が臨床能力試験を積極的に受け入れて、そのために臨床実習をきちんと行っているし、またそれに伴う施設も立派なものを作って、教員も力を入れて教えています。アメリカのこういった現状も参考になるかと思います。
○部会長 ありがとうございます。奈良先生がおっしゃる臨床実習を重視して、それを正当に評価するということですが、このところでいちばん最初に思い付くのはOSCEなのですが、先生はアメリカや韓国の例を出されましたが、何か臨床実習を評価する方法として、OSCE以外のことでも何か考えておられますか。
○奈良委員 先ほど伴先生からもご指摘があったのですが、実施には2つの方法があって、1つはアメリカのようにセンター化し、そちらが実技試験を担当するシステムです。もう1つは、各大学に任せて、いわば自動車免許を取るように各大学がきちんと評価して、そこで合格すれば国家試験が受けられるというような方式もあると思います。公平性から考えると、センター化というのが望ましいと思いますが、ただ、それには相当な経済的なバックが必要ですし、スタッフの確保も大変だと思います。しかしながら、それも念頭に置かないと、日本の国家試験システムが、あとで批判されることになってしまってもいけないと思います。
 もし、2番目を採択するとすれば、各大学で公平な評価システムを導入して、標準化された方法で学生を評価する仕組みです。各大学で評価が不公平になってはいけませんので、それをきちんと評価する認証機関をしっかり作り、大学が認定した学生ならば大丈夫だということを認証しなければならないと思います。
そのどちらを取るにしても、まだ課題が残ります。しかし、課題があるからといって、いつまでも進めないわけにもいかないと思いますので、ワーキンググループなどで検討する必要はあると思います。
○部会長 そうですね。その点でも議論が必要だと思います。
○土田委員 私はノンメディカルなので的外れかもしれないのですが、研究倫理ということをやっております。その中でいちばん大切なことで、日本でとりわけ問題になりそうなことは、メンターとトレーニーの関係なのです。いま、奈良委員からもお話がありましたが、知、技、態度ということもあって、医業ではそれは大いに問題だということもわかります。そうなりますと、OSCEは重要である。OSCEを何らかの形で必修化していくにしましても、そのときにメンターがどのように訓練されているかということが問われないと、これはやはり問題がずっと残っていくだろうと思います。現実、医学部でそうした技能について、技能を行いながら同時に医師があるべき姿というのを教えていくメンターの教育はどうするのかということが気になっております。
○福田委員 今、OSCEの話が出ましたが、共用試験のOSCEについて、概要をご説明いたします。先ほど厚生労働省の方から説明がありましたように、共用試験は平成17年から始まりました。その前に試行を平成14年からやっております。その当時OSCEを実際導入していた大学が、全体の3分の1以下だったと思います。ところが、平成17年になったとき、ようやく全国の大学で曲がりなりにもできるようになり、必要最小限の項目について技能試験をやってきています。現在では、それは全大学に実施できるようになりました。成績もかなり上がってきました。
 そこで問題は、何のためにやったかというと、臨床実習にベッドサイドに出していく際に、患者にきちんとした対応ができる学生を出していきたいということでスタートしました。ところが、これはその時点で4年生ぐらいから技能訓練をやるのではなくて、入学後早期からそういうことをきちんとやっておかないといけないということで、各大学で準備状況の差がかなり大きくなります。ですから、OSCEの試験のためだけの訓練をやっている大学もあるし、そうではなくて、入学後かなり早い時期から模擬患者と接するとか、いろいろな学外の施設に出ていって教育訓練を受けている大学との差が大きくなってきているということがあります。今ご指摘のあったような所は、入学後かなり早期からやらなければならないし、そういうものを蓄積していく必要があるのです。学生の知識ばかりではなくて、態度、技能についての経歴もきちんとチェックしていく必要があるのではないかと思っております。
 卒業時のOSCEを導入している大学は、もう半数、6割を超えています。基本的には臨床推論をやって、卒後研修でいちばん初めに患者に遭遇してからどういう論理展開をしていくかという、筋道を考えることをやっている大学がかなりあります。これはこの前の検討会でもお話が出て、そういうことをきちんとやっている卒業生は非常に評価が高いということがはっきりしてきましたので、是非そのような形で、全国で卒業時OSCEをやることは、大学としての質保証の責任の一端でもあるし、必要と思います。ただ、その基準をどうするかはこれからの問題で、その点が今度のモデル・コア・カリキュラム改訂作業の中で少し芽が出てくるのではないかと考えております。
○部会長 OSCEのことで、非常にご苦労された福田先生からのご意見ですので、大変重いご意見かと思います。この国家試験は次の臨床研修にもつながっていきます。たくさんの研修医を受け入れておられる山口先生、今のような知識だけではなくて、技能や態度、そういうところの評価ということですが、どのようにお感じになりますか。
○山口委員 OSCEがそれほど各大学で取り上げられて、一定のレベルに達していることが検証されているのであれば、非常に望ましい方向であることは間違いないと思います。しかし、実際にそうかというと、大きなばらつきがあるように思います。そういうことが本来は次に控えた卒後臨床研修のときに必須となっているものにすぐ役立たねばならないわけですが、例えば、救急が研修1年生からあるのですから、すぐ立ち向かえるようになっているかというと、卒業時までトレーニングを続けて卒後研修につながってはいないわけです。ある時期にそういうトレーニングを受けたことは確かかもしれませんが、それが次の臨床の初期研修につながっていない。卒業直前は知識の方の受験勉強に追われて、最近患者の顔を見たことがないという人がほとんどなわけで、それが卒業してくるわけです。
 それを考えると、1年間、2年間の幅広い臨床トレーニングは必須なわけですから、臨床トレーニングにつながるような形で診療技能に関する教育が行われていなければいけない。ただ単に卒業のときにある一定の資格に達している、これができるということだけではないように思います。知識の受験勉強を一生懸命しなければいけないかということが、もう1つ大きな問題としてあるのでしょうから、知識と診療技能との兼合いを実際の卒業ぎりぎりまでの教育の中で、どのような割合にするか、どの時期まで行うかを考えていただいて、卒後臨床研修につなげていただくことが必要なのではないかと思います。
○部会長 大変貴重なご意見をありがとうございました。確かにそのとおりで、国家試験を通ったらすぐ現場でいろいろな治療に当たってくれるといいのですが、なかなかそこにギャップがあると。ただ、逆に言うと、臨床研修のときに役立つようなもの、すぐ使うようなものを、卒業時あるいは医師になる直前のところで問うべきか、どこまで問えるかというところも、非常に難しい問題があるのではないかと思います。いかにそれをつないでいって、臨床研修、あるいはその後、生涯教育までつなぐかということですが、金万先生のお立場からではいかがでしょうか。
○金万委員 私たちの施設は市中病院で、虎の門病院のようにたくさんの研修医を受け入れてシステミックにやっている病院ではありませんので、基本的には1学年8名です。1人ずつオリエンテーションのときにどういうことを習得できているかを把握しながら、臨床実習から得たものを把握しながら研修に入っていくと。最初の2週間のところで、そういう評価と個人個人に合わせて、先ほど言われたような救急の現場、あるいは患者のベッドサイドにいくときに、少なくとも安全性が担保されるかどうか、あるいは特に患者に不安感を与えないような状況が作れるかどうかを比較的重視しております。今まで年間8名しか採っていませんので、今まで存在した研修医が60数名なのですが、全国の大体20大学から来ておられるので、各大学の教育がいろいろな形で反映されているのと、もう1つ個人の資質の問題も大きくて、臨床研修を開始するまでどういう状態であればいいのかを、逆に受け入れる側からきちんと評価していこうかと思っています。どうやってうまく大学の医学教育にフィードバックしていけるかを、私たちは模索しているような段階です。
 先ほど言われたような知識、技能、態度というのは本当に大事なことなのですが、態度については医学教育の場で比較的早期から教育されているので、臨床研修を始めるときの状態はきちんとした形でやってくれているかなと思います。現段階で、知識と技能に関しては、知識については国家試験をきちんと勉強しているということで、非常に豊富ではないかと思っています。しかし、技能については現在の段階ではまだ習得できていないのです。基本的には患者にとってはどちらも大事なことなので、このバランスをどう取っていくか。技能の育成については、医学教育と今の臨床研修との間でどのように上手に分けて、あるいは継続するようなシステムを作っていくかということが、現場でやっている人間から問題点として挙がってきています。
○奈良委員 1つお伺いしたいのですが、実際医学教育ではOSCE(共用試験)が導入されてきたわけですが、それが導入される前の研修医と現在とで変化というか、いい方向に向かっているかどうか、ご意見があれば伺いたいと思います。なかなか検証ができないものですから、ご感想でもお願いいたします。山口先生にもお聞きしたいと思います。
○金万委員 私もオリエンテーションのときと、半年ごとに個人面接を全員やっているのですが、今までのことから言うと、技能の点も確実に上がってきているのではないかと思っています。しかし、医療面接そのものの中で、本当に大事なものや緊急性がある判断、聞き出すテクニックのようなものが、まだ少し上滑りなのかなという認識を持っています。私たちが感じる点は、患者は知識や技能が未熟であっても、誠実な態度やきちんとした目線で話をしていこうということであれば評価してくれますし、私が見ている中でそういう態度を取っている研修医では、知識や技能が少なくてもトラブルがないのが現状だと思うのです。
 そういう意味では、まだ医学教育の中で足らないのかもしれませんが、それ以前よりは確実に良くなっているのではないかと、あるいはそれを大事にしようという者が教育を受けてきているという実感を持っております。
○山口委員 私は何とも申し上げられません。私も大学にいたときはOSCEの委員長をしておりまして、大学から虎の門病院に行って、ここのやり方はどうかということで聞いたので、その前と後という話になるとよくわからないのです。しかし、現場では、それほど大学でやったOSCEが、もちろん考え方ということはあると思いますが、患者の前に出たときに心配なく出せるのですよという話はあまり聞きません。研修の初めには手を取り足を取り、マンツーマンで付いていないと危ないという認識しかないのです。まだ十分OSCEが、あるいはAdvanced OSCEというもっと進んだものが、臨床研修の場で十分生きているというレベルにはまだ行っていないのではないかと思います。
○福田委員 今の山口先生のお話はまさにそのとおりで、臨床実習開始前のOSCE、共用試験、CBTも含めてですが、何のためにやったかというと、患者のところに出す前に必要最小限の必要なものは身につけておいてほしいという目的で試行して、正式実施してきました。現実に2年経ったあと、卒業時にどうなっているのかの調査をやっております。大学評価で臨床実習の現場を全部見ておりますが、大学病院の特殊性もあるかもしれませんが、共用試験を受けたときのレベルから後退しているのではないかという印象を持っている臨床の先生方もいらっしゃいます。
 それは診療参加型という実習の形態がなかなかできないというのが1つです。また、大学病院の特殊性がある可能性もかなり強いのです。古い大学では救急などはやらない所もありますので、地方の病院等に教員を出し、比較的積極的にやっている所はそういうことがきちんとできているということで、かなり差があるということです。ですから、大学病院における臨床実習のあり方そのものをきちんと考え直すことが最も大事ではないかと思います。
 大学の先生はお忙しいから、なかなかやっていられないかもしれませんが、総合診療的な、どうやって総合的な知識を確実に習得していくかというプロセスを考えると、大学だけではなくて、協力病院を通した協力体制を作ることが大事ではないかということを、私どもの実感として思っております。
 もう1点は、先ほど別所先生からありましたように、国家試験の負担がかなり多くなって、それの勉強の方が重圧感となって学生に負担を与えていることが、臨床実習を充実できないもう1つの理由でもあるかもしれない。ですから、そういうところが総合されていくことが必要ではないかと考えております。
○部会長 ただいま卒業生を受け入れて研修する側からご意見をいただきましたが、教育の真ん中におられる末松先生はいかがですか。今までの議論をお聞きになって、ご意見がありましたらお願いします。
○末松委員 本件は私どもの医学教育統括センターのメンバーとも随分いろいろな議論をしております。先ほどのOSCEのことについては、私の理解している限りでは各大学が本当に手弁当、ほとんど何の補助もなくやっている状態ですが、他学の評価者を入れてきちんとした形で自助努力で現在の仕組みを作ってきたということがあって、先ほど伴先生がおっしゃったご意見に私は賛成です。各大学が自助努力で今までやってきたものの実技評価を認証する機関があれば、最初の取組みとしては私は非常にいいのではないかと、そういうものを資格認定の中に制度として入れていくという方向性はよいのではないかと考えます。
 一方で、先ほど全国医学部長病院長会議のお話がありましたが、私が大変危惧するのは、医学部6年のカリキュラムのひずみについてです。先ほどから、それぞれの先生方のお立場で皆さんがどういうお考えなのか注意深く伺っていたのですが、CBTというものが4年生のときにあります。6年生の臨床実習のところにしっかり力を入れて、仮にCBTが国家試験のようになっていった場合、医学生は一体どうなるのだろうかということを心配します。医療にすぐに実戦配備できるようにするための患者との接し方の形式、テクニック、演技、こういう言い方をすると語弊があるかもしれませんが、そういったものを中心に早期から相当の時間をかけてやったときに、一体、医学部の6年で習得すべき論理的思考はどういうことになるのか、というところに危惧を持っております。
 全国医学部長病院長会議のときには、CBTとOSCEを軸にということが強調されて、6年生の臨床実習をしっかりやるべきだと。ここは私は賛成なのですが、一方で全国医学部長病院長会議の昼休みの時間帯にどういう議論があったかというと、多くの現場の先生方は基礎医学やいちばんもののロジックをしっかりと医学生に植え付けるべきカリキュラムが非常に圧迫されていると危惧しているように思います。
 倫理教育が大事で、初期教育にそういうものをしっかりたたき込もうと、一方では臨床技能をしっかり磨くために、後期教育のところはこうしなければいけないということで両方から圧迫されて、基礎医学のところは相当まずいことになっているのではないかと思います。私はもともと臨床におりましたので、この意見は今自分が基礎医学を担当しているからということではありません。
 そういうことを考えると、私もどうするのがベストなのかわかりませんが、OSCEがしっかり認証化されるのは賛成ですが、もしCBTが国家試験になったとき本当に何が起こるのかに関しては、非常に危惧するところがあります。おそらく、そちらに賛成されている先生方はたくさんいるのではないかと思って、あえてこのような発言をさせていただきました。
○部会長 ありがとうございました。末松先生から教育をされる側のご意見として伺いました。
○福田委員 CBT国家試験という話は、外でおっしゃっているだけの話で、私どもの実施機構の組織としては何も考えておりません。これは最小限の知識の集約をしてCBTとして実施いただくことにあるので、これを国家試験化することの是非は全く別の論理で、基礎の先生方に頑張ってもらわなければいけないのは、いい問題を作っていただいて、論理的な展開を図るような問題を作っていただきたいと思っているところで、それはかなり良くなってきました。
 もう1点は、何もそれが教育のすべてを評価するものではないということで、現在モデル・コア・カリキュラム改訂作業が行われていて、この中に研究マインドの育成をきちんと図ることということが明確に盛り込まれました。今年の夏の文科省主催のワークショップでも、臨床に行くとしても研究の基礎的な背景を付けなければいけないと。医学部は6年間ありますが、通常の大学では卒論の形は全くないのです。いろいろな研究のパターンをやっていますが、卒論をやってはどうかという議論が出てきました。これはかなり大きな進歩だなと思って、私どもも前からそれは各大学でやってほしいと考えており、症例報告でもいいし、基礎研究でもいいから、レポートをきちんと出すような基礎的な訓練をやらないと、先々の大学院へ行ったときに困るのではないかと危惧していたところです。
 一方でそういう考えがある中で、CBTができたからそれで全てOKだという話では決してないのです。これが誤解されないように、私どもとしては注意しながら実施している状況です。
○末松委員 今のお話を伺って、大変安心しました。6年がフルに使われて、卒業のところにどのような共通の仕組みを作っていったらいいかというところに落とし込めれば、いい方向にいくのではないかということで、私もそれは同感です。
○部会長 同じく教育される立場で、井廻先生はいかがですか。
○井廻委員 国家試験にも関与し、大学では教える立場でもありますが、今、学生にとっていちばん負担なのは国家試験対策です。CBT(共用試験)があって、国家試験はその次のステップ、5年、6年の臨床実習で習得した知識・技能を問う試験であればいいのですが、それだけではなくて、CBT(共用試験)ですでに終わったことも問われます。それを全部カバーして500問もの問題に答える必要があります。そのために、多くの大学が秋以降は全く受験対策に入り、6年目があまり有効に使えないということがあります。
 本来は国家試験あるいは卒業試験、特に国家試験は5年、6年のところで習ったことを問えばいいのではないかと考えます。もう1つは4年でOSCEをやりますが、これはあくまで5年、6年の実習に耐えられるかどうか、そこへ入っていくための1つの関門ですから、そのプロダクトを図るようなAdvanced OSCEが必要だと思います。Advanced OSCEを、先ほど奈良先生や伴先生がおっしゃったようにセンター化してやるか、あるいは大学ごとにやるか、いろいろ方法はあると思いますが、是非それは国家試験の受験資格の認定としてほしいと思います。また、国家試験で知識を問うところは、CBT(共用試験)以降のことに関して問うことにするのが、教育が非常にスムーズにつながるのではないかと思っています。
○部会長 確かに、スキルを評価し、いろいろな態度を客観的に評価すると大変難しいと思いますが、野上先生はいかがでしょうか。先生のお立場からこういう技術、あるいは態度を客観的に評価するものとして、何かいい方法、ご助言はありませんか。
○野上委員 態度を測るのはなかなか難しい問題で、客観的にと言っても、例えば患者との相性のようなものもあって、それが一生の資格を左右するようなところで影響するということになると、少し考えただけでもそういう難しい問題があるのです。
 技能を測るという点に関しては、私は英語のテストを持っている会社に勤めているのですが、スピーキングやライティングといったものの評価というところで、どうしても採点をする人間側のトレーニングが必要というところがあって、客観的な評価を導入するのはどうしても難しいのですが、研究は進んできています。OSCEも4年生の段階で徐々に浸透してきているところもあるので、そういうところから少しずつ取り入れられるところを取り入れていく形で、少しずつを目指していくのがいいのではないかと思うのです。ですから、いきなり国家試験として何年導入という話ではないのですが、各大学でやっているところを全国で基準を統一していける形でやっていくしかないのではないかと思います。
○部会長 ご専門の立場からいろいろなご意見をいただきましたが、皆様方のご意見からすると、知識を問う国家試験を、知識を問うだけではなくて、技能の評価、できれば卒前の教育につながるような態度等々の改善につながるような国家試験になっていけばということ、また、将来的に臨床研修を含めた生涯教育にもつながるようなものであればということです。特にいま議論になったのは、技能の評価、そのほか態度の評価を今後どうするかということですので、それが今後のいちばん大きな方向性として従来からご議論されたとおり、継続的にやっていかなければならないことだろうと思います。これの細かい点については、必要に応じてワーキンググループを作りながらやっていくということで進めたいと思います。
 今の議論は置いておいて、その他にも国家試験がいくつかあると思いますが。
○伴委員 次の話題にいく前に、先ほど申し上げたように大学でAdvanced OSCEとしてやるか、国家試験としてやるかではなくて、一方でオールジャパンで国家試験レベルでできるような準備をすでに始めるということを申し上げたつもりだったのです。それを先ほどの受験資格認定という、そんなに大勢の8,000人の学生を相手にしないフィールドでのパイロットというか、そういうものも考えていく必要があるということも同時に申し上げたつもりです。
○部会長 よろしいでしょうか。それでは、このテーマはここまでとして、その他のところで医師国家試験についての課題、あるいは今後どのような点を方向づけるかということでご議論いただきたいと思います。
○野上委員 別所先生から毎年500問も作るのはなかなか大変だというご意見があると伺って、私どもも作問がいかに大変かということは重々理解しておりますので、本当にそうだと思うのです。第100回からか、すべての問題が公開される形になっているかと思いますが、公開してしまうともう過去のものは使うことができなくなりますから、なかなか辛いところなのではないかと思うのです。ですから、なるべく非公開の形で、良い問題はそのままというのは難しいかもしれませんが、リバイズするなり何なりして使っていくことはできないのでしょうか。
○部会長 すでに国家試験はそのような忠告を受けまして、公開していたものを一時プール問題のために非公開にしておりましたが、いろいろな問題が出てきて、平成18年度からまた公開になったということで、非公開にしても多々問題もあったように思います。
○福田委員 共用試験のCBTをスタートさせたときに、一発試験方式にしないということが課題でした。それは臨床実習を始める時期等が大学によってかなり異なるために、随時受けられるような試験にしてほしいという要望が強かったのです。これは非常に大変な難題でした。
 そのためにどういう方法を取ったかというと、ある程度プール問題を確保した上でランダムに出題して、特定の領域ごとにあまり細かく細分化しないで、即ちブループリントのように細かいところまではあまり作らないで、どの範囲が出ても大丈夫な程度の易しい試験にしようということで問題を集めてきました。実際作っていただくのは大学の先生方ですので、学内である程度ブラッシュアップしていただきます。また、中央でブラッシュアップ作業をします。この際は出題者等々は分からないようにしておきます。同じ分野でもいいのですが、よその分野の人から見てこの問題はどうかなという検討をしていただいています。それで、ブラッシュアップした問題を出題します。そのあとで、実際に学生に新作問題として試験的に出題した時の正答率、識別指数、解答が正答以外のどの選択肢に流れているか、選択肢は5択でやりますが、どこに学生が回答してくるかといった分析をします。その次に、項目反応理論というのですが、成長曲線を使って回帰曲線を作って定量化をし、それで適したものを出題するという形にしております。それで320問出しているのですが、そのうちの280問がそうやってプールされた問題です。新たな問題はテスト問題として、新作問題として出しています。これはUSMLEの方式とほとんど同じです。
 それでやってきて、現在、プール問題の総数は大体1万6,000設問ぐらいになりました。こうなると、1つの試験会場は100人ぐらいですが、同じものが同時に出ることは全くないのです。同じ問題が出る確率は、確率計算をしてもものすごく小さい。ですから、例えば学生が覚えているようなものを2、3題インターネットの掲示板などに出たり、2ちゃんねる等に出しているのを見ますが、それが出たからと言って、全体の問題にはほとんど影響を与えないと考えられます。正答率はほとんど一定レベルになってしまっています。ですから、これは非常に良い方式だと思って、さらに今その見直しを始めているところなので、国家試験でも出題のプール化は難しいとしても、合議制でブラッシュアップを中央でやっていただくことと、出題者がそこにタッチしないことがかなり大事なポイントなのです。どうしても自分の出した専門領域の問題にこだわってしまって、それを外から見てもらうことはかなり重要なポイントになるのではないかと思っています。できたらプール問題制にしたほうが、より使い勝手があるのではないかと思います。
○野上委員 今、共用試験のCBTについて、もちろん問題の分析もなさっていると伺ったのですが、そういった情報は出題者の皆さんには返っているのでしょうか。
○福田委員 毎年、ブラッシュアップに来られた先生方に、その項目反応理論等の値は伝えています。
○野上委員 国家試験でも公募で問題を作っていらっしゃるということで、作題者の方々が考える良い問題と、実際に試験で実施したときに出てくる統計的に良い問題がずれている場合があります。作題の方にも、ここがすごく良かったとか、問題としては悪かったということが伝わると、公募の問題ももっと効率よく使えるようになるのではないかと思います。
○部会長 プール問題の取扱いの辺りについてご意見はありますか。
○別所委員 事務局に質問したいと思いますが、国家試験も一時プール化を目指しましたが、そのあと行政文書の公開請求に基づき、公開になってしまったと記憶しています。例えば第三者機関のような所を作って、そこで試験問題を作ってプールしていく形にしておいて、学生はそれを受けて、結果だけを厚労省が合否の判定に使うというシステムにした場合、問題の公開をしなければならないのか、あるいはしないで済むのかというところを調べていただけないでしょうか。プール化してCBT化すれば年2回の実施も可能ですし、同じ日の同じ時刻に複数の箇所で実施ということも必要なくなるように思います。国家試験の知識の部分については、CBT化は非常に理想的な方法なのではないかと思います。
○部会長 事務局はお答えいただけますか。それとも、また追って検討することにしましょうか。それでは、少し調べていただいて、次回の部会で議論したいと思います。そのほかにいかがでしょうか。
○山口委員 こういうことはすでにいろいろ議論されたのだろうと思いますが、素人的にご質問したいと思います。これは資格試験なわけですから、極端に言えばそのプールされた問題を全部できればいいわけなので、全部公開されてもいいような話なのではないかと思うのです。必ずしも出題者だけがプールしていく必要はないようにも思うのですが、その辺りはどういう議論で全部公開という話にはならないでいるのでしょうか。どなたか説明していただければありがたいと思います。
○部会長 これは全部公開と。
○別所委員 共用試験は非公開ですね。
○山口委員 共用ですが、同じようなことは国家試験でも。国家試験も同じような、要するに資格試験なわけですから、出題問題を一生懸命隠してやらなければいけないというところは基本的にないのではないかと。一定の知識に達していることが必要なのであって、どういうことが問題に出るかという話を、それを隠して、漏れてしまうことを心配する必要はないのではないかと、素人的には思うのです。
○部会長 現実的には、平成18年度から試験問題は受験生が持って帰りますし、公開と同じ意味だと。
○山口委員 出題された問題についてはですね。
○部会長 そうですね。先生のご質問は。
○山口委員 むしろCBTと同じようにプールされた問題があるのであれば、あるいは作って、これだけの知識が必要ということでオープンにしてもいいのではないか。きっと何回も議論されたのではないかと思いますが。
○部会長 プールしているものを公開すると。その議論は聞いたことがないように思いますが、いかがですか。
○福田委員 私共の組織は、防衛医科大学も含めた全80医科大学と歯科大学29校が、それぞれの標準化するための試験問題を共通で作って実施しましょうということで組織されました。各大学の先生方に協力いただいて作られたものを、中央で各大学の先生方がブラッシュアップされて、共通で使おうという認識です。問題の所有権と言ってはおかしいですが、これは各大学の共通のものであるという認識で使っています。今のところ、そういう公開請求等は1つも来ておりません。私どもとしては、CBTの問題のプールをかなり厳重にやっておりますので、10年近くやってきましたが、1回もトラブルはありませんでした。
 OSCEについても、同じような扱いをしており、大学全体の共有財産としてやっているのが事実なのです。その辺りに関して法的に公開を求めるということは、いままで聞いたことは全くありません。
○部会長 よろしいでしょうか。
○山口委員 はい。それはわかりますが。
○井廻委員 たしか、前に公開の請求があったときに、公開されたっていいではないかと、良い問題は繰り返し使おうということで、山口先生と同じような話があって、問題数がたくさんあれば、問題がみんなわかったって、それを全部覚えてくれればいいだろうという意見もありましたね。そういうことだと思うのですが。
○奈良委員 共用試験でも、1万5,000ぐらいプールされれば公開していいのではないかという意見は、発足当初からありました。しかし、医学の領域ですから、結構進歩もしますし、5年以上前に作った問題と現在作っている問題はかなりクオリティが違っています。公開してもいいのかもしれませんが、問題の質をきちんと担保していかないと、全部ディスクローズしたことによって試験の妥当性が問われかねません。医師国家試験はほかの職種の試験にも影響力が強いので、公開するか否かは慎重に議論しないといけないような気がします。
○福田委員 今、まさにCBTは過渡期にあって、ちょうど2期目に入っていると考えております。これはUSMLEでも同じなのですが、前に出した問題の最近の状況をチェックし直してみますと、制度上の名前が変わっていたり、考え方が少しずつ変わってきているものがありますので、それをチェックしてデリートする、あるいはリニューアルするという作業が継続的に行われています。昔の問題がそのまま生きているかというと、決してそんなことはなくて、常に時代にマッチしたものに順次変えていかなければいけない。その作業が継続的に残っていきますので、そのスタイルはこうしたからいいのだという単純なものではないと考えております。
○部会長 話は、500題という問題を作ることに非常に大変な問題があるということ、それでプール問題ということが出てきますし、プール問題をどう扱うかという新たな問題も、時代が変わってきておりますのでそういうこともあろうかと思いますが、これらについても今後の部会、あるいはワーキンググループでご検討いただいて方向を出せればと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、その他の項目でいかがでしょうか。
○伴委員 今の作題の難しさと関連して、私の記憶が確かなら、前々期の改善検討委員会に出ていたのですが、今の公開ということに関して禁忌肢のディスカッションがかなりあって、禁忌肢が受験生にとってものすごくプレッシャーであると。具体的には、私たちの大学の学生でもすごくまじめな、だけど上がり性の学生が不合格になって、禁忌肢が駄目でしたという子がいるのです。でも、一方で国民から見ると、禁忌肢で失敗するような人が出てきてもらっては困るということがありますので、そのときに禁忌肢についてはこういうものが禁忌肢になるということを全部公開して、禁忌肢は全部で500題、あるいは2,000題あるのかわかりませんが、このようなものが禁忌肢として出るというのを公開して、そこから出したらいいのではないかと。もちろん新作が出てもいいのですが、そんなディスカッションもありました。
○部会長 禁忌肢の取扱いについても、医学部長病院長会議でも問題になったところです。いま伴先生から1つご提案がありましたし、これもおそらく今後議論していかなければいけないところではないかと思います。禁忌肢は受験生にとって非常にプレッシャーになっているということはいつも話を聞きますので、その取扱いをどうするかというのが1つ大きなところだと思います。これに関してでも結構ですが、どなたかご意見ございませんか。よろしいでしょうか。禁忌肢のところも、国家試験とすれば非常に議論が必要なところだと思います。
 その他にいかがですか。何か今後の方向性として、こういうところもやっていこうということがありましたらお願いします。その他の大変大きな話題として、先ほど未経験の医師が医師国家試験を受けて、それがゴールとなっていいのかという議論も別所先生からご紹介がありました。これは非常に大きな問題で、国家試験の根幹に関わるところですので、本部会のマターかどうかはわかりませんが、そういうご意見も医学部長病院長会議で出ているということです。
 評価の問題についても先ほどおっしゃいましたが、絶対評価と相対評価がありますが、その辺りの抱える問題点も問題として挙げられました。このようなところも含めて、何かご意見はございませんか。
○伴委員 これは教えていただきたいことなのですが、先ほどの絶対基準、必修問題80%で、あとの問題は相対基準とすることによって、合格基準が大体安定してきていると理解していますが、一方で競争的な性格を持ってしまっているという別所先生の前回からの意見もあります。これは野上先生のテスト理論から、どうなのでしょうか。非常にいびつな組合せなのでしょうか、よくあることなのでしょうか。
○野上委員 そうですね。あまり両方を導入という形で、よくあるということではないかと思うのですが、資格試験ですと何パーセント正答した人が合格するという形、あるいは受験者の中で大体の合格者のパーセントを、公表しているかどうかはともかく、ある程度決めているという所が多いかと思いますので、両方という所は具体的な例がすぐに思い浮ばないのですが、おかしなことをしているという印象はありません。基本的にこれだけは相対的に、ものすごく良い順位であっても押さえていかなくてはならないというところがあるかと思いますので、どう扱ったらいいのか、すぐ何かコメントできるわけではありません。
 ただ、今後相対評価を導入して、絶対基準を80%クリアしている人の中で、さらに相対的な順位で決まっているということなのですが、これで例年合格する人の質が全く違うということは、おそらくないのではないかと思いますので、この基準を全体的に見直さなくてはいけないということはないのではないかと思うのです。何かカリキュラムなどが変わって、ある年から受験者の質が全然違ってしまっているということですと、今までどおりの相対評価でいいかどうかというところは変わってくると思うのですが、毎年毎年で受験者の層がものすごく変わることはないと思いますので、これについて根本的に何か議論しなくてはいけないという印象はありません。
○別所委員 相対基準ですと、必ず何パーセントか落ちることになるわけです。例えば、医師の資格試験としては、60点取れていればいいだろうということになっても、その年の全体の成績が良ければ、65点でも不合格ということが起こり得るわけです。相対基準が導入された経緯は詳しく知りませんが、合格率が大きく変動するのを避けるということで、一定の役割は果たしていると思うのです。安全弁的に入れている仕組みだと思いますので、絶対基準プラス安全弁としての相対基準という2つの基準を併用して判定するという方式はできないでしょうか。つまり、60点あるいは平均点マイナス何点以上というような、両方どちらかをクリアしていればいいという仕組みにすれば、合格率が大きく変動するということはなくなると思います。個人的な意見ですが、非常に難しい問題ばかり出て成績が悪いときのためには、相対基準を安全弁として使うことができるとよいと思います。
○部会長 評価のところも、現在行われている方法をどのように取り扱っていくのか、ここも問題点として挙げられましたので、今後の方向性決定の1つの項目としたいと思います。ありがとうございました。
 その他にはいかがですか。
○土田委員 生命倫理を教えておりまして、その関連で患者の立場から医療を見ることを常日ごろからやっております。そういう視点から見ると、先ほど別所先生がご指摘になった問題点の1つですが、一度国家試験に受かったら一生医師かという問題は、あまりにも深いような気がしております。だからと言って3年に1遍とか、アメリカでやっているような形で、州ごとに違うでしょうけれど、そのような形でもう一度試験をすればいいということでもないような気もするのです。確かに、医療の現状を考えると医学的な知識、技術の日進月歩だけではなくて、医療が市場資本主義に巻き込まれて商品化されてしまっている事態が多々あって、そういうところに応えていくためには医師の生涯を通じての教育というか、単に専門医になるための手続きをするということではなくて、何らかの形でのバックアップ、サポートの機構がないと、私どもは国家試験だけに全力集中して、結局良い医師を育てることに失敗するということもあるのではないかと、素人としては思うのです。
○部会長 ありがとうございました。非常に重要な視点かと思います。是非、土田先生のご意見も取り入れながら今後の検討をしていきたいと思います。
○福田委員 国家試験についてお願いなのですが、私どもは共用試験をやってそんなに難しくない範囲に抑えようとしております。全身的な見方をできるような第一歩をやってもらいたいと思っていますので、卒後研修を始めた趣旨も総合的に一般的な疾患を見られるという、救急も含めて、そういう視点でスタートしたと思いますので、専門医の細かい内容に立ち入ることなく総合的に判断できるような試験問題、あるいは一般的な疾患を経験しないと回答できないような問題の工夫等、是非その辺りをやっていただくと、臨床実習ではなかなかそこまでいきませんので、臨床実習をやったことによって初めて体験するような問題を是非作っていただきたい。それは大学の先生にお願いしなければいけないので、ここで申し上げてもあまり効果がないかもしれませんので、大学の先生方がそう思っていただくことが大事な要件ではないかと思っています。私どもの共用試験でも、どうしても自分の専門に偏るということがありますから、それを避けるためによその分野の人たちも集まって問題作成、ブラッシュアップをしています。国家試験でも、卒前の臨床実習等で体験・経験しておかないと解答できないという問題だということがわかると、臨床実習をちゃんとやるようになるのではないかと思います。逆に、先から手前のほうにフィードバックをかけていただくと、非常に良い試験問題になるのではないかと思いますので、よろしくお願いします。
○部会長 福田先生からもご意見をいただきました。そのほかにいかがですか。
○末松委員 今、医学部の学生の数や医学部の新設のこと等いろいろな議論があって、教育のクオリティをどう担保するかということと直接関わる、この部会はそういうミッションを持っているのだということがだんだんわかってきました。応募数は非常に少ないと思うのですが、医師国家試験の資料2の事務局から読み上げていただいた所から国際性ということに関連して一点。通常の医学部を卒業して受験をする人たちのいろいろな基準の見直しをやっていくと、自動的に外国人の方が我が国の国家試験を受ける場合の基準も当然変わってくるのではないかと思います。また、医師不足の問題等もありますので、時間は限られていると思いますが、そういった部分にも目配りをしていく必要があるのではないかと思いました。
○部会長 ご指摘のとおりです。この部会でも、今日は国家試験そのもののいろいろなあり方にテーマを置きましたが、その次のテーマとしては、いま先生がおっしゃったところに踏み込まなければならないと思っております。次回以降にそういうところも話題になるかと思います。是非、そのときにはそのような視点でご意見をいただければと思います。その他にご意見はございませんか。
 それでは、一応先生方からご意見を伺うことができたように思いますが、最後に事務局から何かございますか。よろしいですか。
 それでは、今日は文科省から新木課長に来ていただいておりますので、最後に何かコメントがありましたらお願いします。
○新木医学教育課長 ありがとうございます。卒前卒後の一貫した教育・医師養成は、大変重要な課題であると考えております。平成19年から始まった卒後研修の見直しも、文科省と厚労省の共同でして、それを受けての医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂の方針に基づいて、今やっているところです。医学教育モデル・コア・カリキュラムについては、タイミングが少し告知とずれて、これから1月にパブリックコメントをかけて、年度内には完成させて、大学等へお知らせしたいと考えております。
 この中でも、国家試験との関係は常に議論に出てきており、また学生の評価の仕方についてもこれから検討していくこととしております。是非我々の検討状況も、その中に入っていただいている先生方も委員にもいらっしゃいますので、こちらに積極的に情報を提出し、できるだけ整合性のある一貫した医師養成の仕組みを共同で作っていただければ、大変我々にとってもありがたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
○部会長 貴重なコメントをいただきまして、どうもありがとうございました。突然で申し訳ありませんでした。
 今後の会議について申し上げます。さらに議論を深めるためには、非公開のものも含 めて国家試験の詳細なデータを分析する必要がありますので、別にワーキンググループを設けながら検討したいと考えておりますが、委員の皆様方にはどうぞよろしくご協力くださいますようにお願い申し上げます。ワーキンググループでの分析の結果等々を取りまとめた上で、次回の部会でもご報告することにしますので、その点も併せてよろしくお願いいたします。
 それでは、本日はこれで閉会といたします。今日は大変お忙しい中ありがとうございました。引き続きよろしくお願い申し上げます。


(了)
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