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2011年2月3日 第1回今後のパートタイム労働対策に関する研究会議事録

雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課

○日時

平成23年2月3日(木)15:00~17:00


○場所

厚生労働省共用第7会議室(5階)


○出席者

委員

浅倉委員、今野委員、権丈委員、佐藤委員、水町委員、山川委員

事務局

高井雇用均等・児童家庭局長、石井雇用均等・児童家庭局審議官、田河総務課長、吉本雇用均等政策課長、吉永短時間・在宅労働課長、大隈短時間・在宅労働課調査官、藤原短時間・在宅労働課長補佐

○議題

(1)パートタイム労働法の施行状況等について
(2)今後の研究会の進め方について
(3)その他

○議事

○吉永課長 定刻となりましたので、ただいまから「第1回今後のパートタイム労働対策に関する研究会」を開催します。委員の皆様方におかれましては、ご多忙中のところ、ご参集いただきまして誠にありがとうございます。この会の座長が定まるまでの間、事務局にて進行させていただきます。私は短時間・在宅労働課の吉永と申します。よろしくお願い申し上げます。開催に当たりまして雇用均等・児童家庭局長の高井よりご挨拶申し上げます。
○高井局長 雇用均等・児童家庭局長の高井でございます。本日はお忙しい中、ご参加いただきましてありがとうございます。また今後のパートタイム労働対策に関する研究会にご参加いただきまして、お礼を申し上げる次第であります。
 パートタイム労働法につきましては、ご案内のとおり平成5年に制定されまして、その後、平成19年に大幅な改正がなされています。19年のときには、1つは通常の労働者との均衡の取れた待遇の確保、もう1つは通常の労働者への転換推進措置、3つ目にパートタイム労働者の納得性の向上のための措置、こういったものを柱に改正が行われたわけです。その際、施行後3年を経過した場合に、施行状況を勘案して見直しを検討するというものが入っています。今年がちょうど3年目を迎えているということです。
 また政府におきましては、新成長戦略が昨年6月に策定され、成長戦略を進めることになっているわけですが、その中に、「同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の推進に取り組む」と書かれ、政府の中でも重要な課題になっている状況です。こういう状況を踏まえ、この研究会を立ち上げせさせていただきました。そういう背景をお汲み取りいただき、ご忌憚のない闊達なご議論をいただきまして、研究会を実りあるものにしていただきますようお願い申し上げまして、挨拶とさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
○吉永課長 ご参集いただきました先生方をご紹介申し上げます。浅倉むつ子委員です。今野浩一郎委員です。権丈英子委員です。佐藤博樹委員です。山川隆一委員です。また黒澤昌子委員、水町勇一郎委員にもご就任いただいていますが、本日、水町委員は若干遅れてご出席されます。黒澤委員につきましてはご欠席と聞いています。よろしくお願い申し上げます。
 事務局出席者をご紹介申し上げます。雇用均等・児童家庭局担当審議官の石井です。雇用均等政策課長の吉本です。短時間・在宅労働課調査官の大隈です。短時間・在宅労働課長補佐の藤原です。このほか当局の総務課長の田河が出席を予定していましたが、所用により若干遅れて参る予定です。
 お手元の資料のご確認をお願い申し上げます。資料1~9、参考1となっています。よろしいでしょうか。
 次に資料1をご覧ください。本研究会の開催要綱についてご説明いたします。本研究会につきましては、先ほど局長の高井からご説明したとおり、平成19年に改正された短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律、いわゆるパートタイム労働法ですが、これにつきまして施行後3年後の見直しの規定が付いているところです。この法律が平成20年4月に施行されていますので、この4月で3年を迎える状況です。この間の施行状況についていろいろ調査を行ってきたところ、一定程度資料も集まってきたことから施行後3年目の検討という形で、この研究会を開催させていただきたいと考えているところです。
 また資料1の3の(4)に、「本研究会の座長は、参集者の互選により選出する」となっています。この要綱に従って座長の選任をお願いできればと考えています。これにつきましては事前に事務局で各委員の皆様方にご相談させていただきましたところ、今野委員に座長にご就任いただきたいと考えていますが、いかがでしょうか。
(異議なし)
○吉永課長 ご異議がないようですので、本研究会の座長を今野委員にお願いしたいと思います。今後の議事の進行について、よろしくお願い申し上げます。
○今野座長 それでは座長として進行役を務めさせていただきますので、よろしくお願いします。まず議事の公開の取扱いについて、事務局から説明をお願いします。
○藤原課長補佐 資料3について、ご説明させていただきます。厚生労働省としての審議会等の公開に対する取扱いにつきましては、資料3に書いてありますように、例外的な場合を除きまして会議を公開とするとしています。この研究会におきましても原則として会議を公開として、特段の事情により非公開とすることが適当な場合については、座長の判断により、非公開とすることにしたいと考えています。また議事録につきましても、原則として発言者名を記載した議事録を作成の上、公開し、特段の事情により発言者名を伏して公開することが適当な場合には、座長の判断により、発言者名を伏して公開することにしたいと考えています。
○今野座長 何かご質問はございますか。よろしいですか。ではそういうことにさせていただきます。本日の議題に入ります。議題(1)は、パートタイム労働法の施行状況等についてです。まず事務局から説明をお願いします。
○藤原課長補佐 資料4の「パートタイム労働の現状」について、ご説明します。1頁のパート労働者の数ですが、平成21年には約1,431万人となっていて、雇用者総数の4分の1を占める状況です。またパートタイム労働者の約7割が女性となっていますが、下の棒グラフの緑の部分です。また質的な変化ということで、従来は補助的な役割が多いと言われていましたが、役職に就くなど基幹的な役割を担うパートタイム労働者も増加している状況です。
 2頁は労働時間の関係ですが、円グラフの右肩あたりが週35時間未満で、先ほどの資料でパートタイム労働者と定義していたところです。15~29時間がいちばん多くなっていて13.5%です。
 3頁は雇用者総数中のパートタイム労働者の割合の推移ですが、雇用者総数に占めるパートタイム労働者の割合は、男性、女性ともに増えていて、男女の間ではだいぶ違います。上の赤い線が女性で43.1%を占めています。男性はいちばん下の青い線で15.3%となっています。
 4頁は業種別の分布に関してです。パートタイム労働者の分布ですが、卸売・小売業21.1%、製造業14.8%、医療、福祉13.1%と、このあたりで分布が高くなっています。
 5頁は業種別雇用者に占めるパートタイム労働者の割合で、宿泊業,飲食サービス業が51.7%と高くなっています。その他は先ほどもあった卸売・小売業、医療,福祉、生活関連サービス業の分布が高くなっています。
 6頁は企業規模別のパートタイム労働者の分布です。1~29人の小さい企業において34.5%、次に大きいのが1,000人以上の企業で19.0%となっています。年齢別の分布が次の表にありますが、これについては男女で若干違いがあり、男性は15~24歳と45~54歳の間の各年齢階層別に大体15%前後ですが、高年齢者のあたりで若干増えていて、55~64歳で22%、65歳以上で19.2%となっています。これに対して女性のほうですが、35~44歳、45~54歳、55~64歳にたくさん分布していて、それぞれ大体4分の1ぐらいずつの分布となっています。
 9頁のパート労働者の平均勤続年数ですが、これについては男女で差があり、女性は平均5.1年、男性は4.1年となっています。男性、女性それぞれの中で、どれぐらいの勤続年数が多いかを見ると、男性では1~2年のところに34.2%分布しているのに対し、女性の場合は5年以上のところが35.8%で多くなっています。
 10頁は所定内給与額について、一般労働者とパートタイム労働者の比較です。一般労働者とパートタイム労働者を比べると、一般労働者は、ご覧いただくとおり年齢が上がるとカーブが大きく上がっている状況ですが、パートタイム労働者については男性、女性ともに年齢階層別の変化があまりなく、常に寝ているような状況になっています。
 11頁も所定内給与額ですが、少し古い資料で平成17年の資料です。当課において特別集計したものですが、勤続年数の変化とともに、どのように所定内給与額が上がっていくかを示しています。上の2つの線が一般労働者の男性、女性で、下の2つの線がパートタイム労働者です。一般労働者の場合には勤続年数に応じて給与がアップしていきますが、パートタイム労働者の場合にはあまり上がっていかない状況があります。
 12頁は、一般労働者とパートタイム労働者の1時間当たり所定内給与額、格差の推移です。上のオレンジ色の線が女性で、一般の女性労働者とパートの女性労働者を比べた場合は69.5%、男性のパートタイム労働者の給与は男性の一般労働者の54.8%となっています。
 13頁は参考で、一般の男性労働者を100とした場合のパートタイム労働者(男女)の賃金割合を示しています。男性は先ほどと同じで54.8%ですが、この場合、女性は49.1%という給与になっています。
 14頁は労働組合の加入状況です。パートタイム労働者の組合員数と推定組織率はいずれも上がっていて、現在、5.6%という状況です。
 次は「非正規労働の現状」で、パートタイム労働者に限らず載せています。16頁をご覧ください。いわゆる非正規労働者のパート、派遣、契約社員等の割合は上昇傾向にあり、資料ではオレンジ色の部分ですが、年々増えている状況です。2010年では28%となっています。
 17頁は非正規労働者の内訳の推移です。パートタイム労働者は緑色の部分ですが、これも増加していて2009年で47%の大勢を占めている状況です。
 18頁は年齢階級別パート、派遣、契約社員等の雇用比率です。1997年、2002年、2007年で、非正規労働者を年齢別に取っていますが、特に若年のところで数が増えていることが見て取れます。資料の中でマルを付けていますが、20~24歳のところと、25~29歳のところでかなりの伸びが見られます。残りについては割愛させていただきます。
○大隈調査官 資料5の「パートタイム労働法の施行状況」について、ご説明させていただきます。1頁をご覧ください。これはパートタイム労働関係相談件数の推移です。ご承知のとおり平成19年度に法律が成立、公布され、平成20年度に施行されましたが、事業主の方からの相談を中心に、平成19年度は1万2,000件、平成20年度は1万3,000件を超える相談が寄せられています。内訳は、ここにありますように事業主がいちばん多くなっています。平成21年度は5,200件で、相談件数は少し落ち着いているところですが、今年度の上半期は3,000件近くになっていて、昨年度を超えるような状況になっています。
 2頁が相談の内容です。平成20年度の相談内容の内訳ですが、パート労働者の方からの相談としては、第6条の労働条件等の文書交付、第8条の待遇についての差別的取扱いの禁止、第9条の均衡待遇、第13条の説明義務といったものが多くなっています。事業主の方々からの相談としては、第6条の文書交付、第12条の正社員への転換推進措置が多くなっていて、第8条、第9条の待遇についての相談も多くなっています。ちなみにパートタイム労働法以外のところで「その他」が多くなっていますけれども、内容としては年休、解雇、社会保険といったものも相談として出てきている状況です。
 3頁は平成21年度の相談内容の内訳ですが、ここは先ほど申し上げた平成20年度の傾向とほぼ同じです。パート労働者の方からは第6条、第13条、第8条、第9条、事業主の方からは第6条の文書交付、第12条の正社員転換についての質問が多くなっています。
 4頁は、パートタイム労働法に基づく事業主の方々に対する指導の状況です。棒グラフが各年ごとにいくつか並んでいますが、いちばん左側の青いところは報告徴収実施事業所数を書いています。これはパートタイム労働法に基づいて、パートタイム労働者の雇用管理の報告を事業主に求めるため、訪問した事業所の数になっています。改正法が施行された平成20年度には6,273の事業所、平成21年度には1万3,992の事業所を訪問しています。この訪問の結果、グラフで言うと黄色い部分になりますが、パートタイム労働法違反があるとまず助言をする。それで是正されない場合に指導する。さらに是正されない場合は勧告をすることになっています。この数の計上の仕方は法違反1つにつき1件と数えていますが、平成20年度には8,900件の法違反があって、それを是正、助言したということ。平成21年度には2万5,928件について助言、是正指導を行ったということです。そのうち指導、勧告に移っていった件数も、それぞれここに書いてあるとおりとなっています。
 5頁からが実際の法違反を是正指導した内容です。平成20年度の数字を見ていただくと、指導した内容として、第12条の正社員への転換推進措置がいちばん多くなっています。次が第6条で、パートタイム労働法では基準法を上回る昇給、賞与、退職手当金について、これも文書で明示する義務がありますが、この点で不十分なものについて指導しているケースが24%となっています。次が第9条で、これはいわゆる均衡待遇ですが、職務が同じか異なるかにかかわらず均衡のとれた待遇についての指導も、約1割ぐらいあります。第8条に関しては指導件数は7件となっています。
 6頁は平成21年度の指導内容ですが、これも平成20年度と同じ状況です。第6条、第12条が多く、第9条も約1割、第8条の関係は7件となっています。
 7頁はパートタイム労働法に基づく紛争解決援助の状況です。これはパートタイム労働法に規定されていますが、個別のパートタイム労働者と、その事業主の間に義務規定についての紛争が生じた場合に、簡易に解決しようという制度です。労働局長の助言、指導は、申立受理件数が平成20年度は5件、平成21年度は3件、平成22年度上半期は4件となっています。内容は右側にありますように、第6条の労働条件の文書交付の関係が2件、第8条の関係が5件、第12条の関係が2件、第13条の待遇についての説明義務についてが3件となっています。紛争解決援助のシステムとして外部の委員の先生方による調停がありますが、申請があって受理した件数が平成20年度で3件ありました。その内容は右側にあるとおり、すべて第8条の差別的取扱いの禁止です。いずれも、すべて労働者側からの申立てになっています。以上が資料5のパートタイム労働法に基づく、この間の施行状況です。
 資料6をご覧ください。大部の資料で恐縮ですが、かいつまんで説明させていただきます。資料6は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した「短時間労働者実態調査」結果<概要>です。この調査については昨年12月に公表されているところです。各調査の概要ということで60頁をご覧ください。平成22年4月1日を基準にして、実際には6月に調査票を配布しました。アンケート調査で、事業所調査についての有効回答数は3,040、個人調査については6,208ありました。個人調査について男女の割合は男性2割、女性8割という状況になっています。調査の概要は以上です。
 調査の内容について、戻って1頁から簡単に説明させていただきます。「改正パートタイム労働法の施行に伴う見直しの状況」ですが、2頁で、平成20年のパートタイム労働法の施行に伴い、どのような雇用管理の見直しが行われたか。事業所調査の結果については、何らかの措置を実施した事業所が、いちばん左側で6割を超えています。その実施した内容が左から2番目の棒グラフです。労働条件通知書等で特定事項、これはパートタイム労働法第6条の関係ですが、賞与、昇給、退職手当をきちんと明示するようにした事業所が約5割ありました。左から3番目の棒グラフで、正社員とパートタイム労働者の職務の内容を明確にした事業所が14.1%ありました。以下、パートタイム労働者にも福利厚生施設を利用できるようにした事業所が約1割、正社員への転換推進措置を設けた事業所が約1割、パートタイム労働者の賃金等の処遇を正社員との均等・均衡、意欲・能力等を考慮して改善した事業所も約1割となっています。教育訓練を実施した事業所も約1割となっています。ちなみに右から2番目のところで、「特に実施したものはない」と回答した企業も28%ありますが、この中には施行前から既に実施していたという事業所もありますので、ご留意いただければと思います。
 一方、3頁で、パートタイム労働者個人の方々に、パートタイム労働法の施行に伴ってどのような変化があったか質問していますが、「特に変化はない」がいちばん多くて約4割、「わからない」も24.5%となっています。逆に「変化があった」が17.2%となっていて、変化があった場合の内容でいちばん多いのが、「労働条件が文書等で交付されるようになった」で、約1割のパートタイム労働者の方が答えています。以上が、改正パート法の施行に伴う職場の変化を、事業所とパートタイム労働者個人に聞いた調査結果です。
 次に5頁で、「パートタイム労働法の各規定の実施状況」について、ご説明したいと思います。第6条の関係で、何度も繰り返し恐縮ですが条文をここに掲げています。労働基準法上、契約を締結する際に労働条件を明示する義務がありますが、パートタイム労働者については更に、疑義の生じやすい昇給、退職手当、賞与のそれぞれの有無についても、文書で明示する義務を課しているところです。
 その関係で6頁が事業所調査ですが、採用時に労働条件を明示しているか調査しました。下の「H22」と書いてあるものが、今回、労働政策研究・研修機構(JILPT)で実施した調査結果で、97.3%の事業所が「明示している」と回答しています。その右側は、ではどういう形で明示しているかですが、文書等を交付している所が約9割でいちばん多くなっています。主に口頭の所は10%以下です。ちなみにこの資料6については、今回の改正パートタイム労働法施行後のJILPTの調査結果に合わせて、例えば6頁ですと上のほうの半分に「H18」と書いていますが、これについては厚生労働省で、パートタイム労働者総合実態調査を行っていますので、それとの比較でパート法の施行前後が少し比較できればと考えて付けています。
 ただ、平成18年の調査は復元等もしている調査で、下の平成22年度はアンケート調査ということもあります。それから平成22年の調査のほうが大企業の割合が高いこともありますので、直接的な比較は難しい部分もありますが、一応の参考として比較しながらご説明をさせていただこうと思っています。ちなみに、いまの第6条の文書交付のところですが、右側を見ていただくと平成18年の調査では主に口頭の所が4割でいちばん多くなっていましたので、これがだいぶ減って、書面をきちんと交付する所が増えていることが見て取れるところです。
 7頁は、同じように労働条件の明示がどのようにされているか、パートタイム労働者個人に聞いていますが、これについても「明示された」と答えているパートタイム労働者が95.7%で、右側を見ていただくと、「書面明示、かつ、口頭での説明を受けた」が8割近い状況になっています。
 8頁はパートタイム労働法第7条です。パートタイム労働者に係る就業規則の作成変更の際には、パートタイム労働者の過半数代表の意見を聞くようにという努力義務が定められています。下の平成22年のほうを見ていただくと、何らかの方法でパートタイム労働者の意見を聞いている事業所が8割を超えています。平成18年に比べると割合が高まっていることが見て取れます。
 9頁はパートタイム労働法第8条です。これについては職務の内容が同じ、人材活用の仕組みが同じ、無期契約または有期を更新して実質無期契約の場合、こういったパートタイム労働者については正社員との差別的取扱いをしてはならないという規定です。
 10頁はパートタイム労働法第9条です。第9条第1項は、職務が同じか異なるかにかかわらず通常の労働者との均衡を考慮し、職務の内容、成果、意欲、能力、経験といったものを勘案して、職務に関連する賃金を決定するという努力義務です。第9条第2項は、職務が同じで、かつ、人材活用が一定期間同じ場合については、賃金の決定方法を同じにするという努力義務を定めています。この第8条と第9条の待遇についての調査結果を次に説明したいと思います。
 11頁は事業所調査の結果ですが、各事業所に対して、その事業所でパートタイム労働者の数が最も多い職種を尋ねた上で、さらにその中で正社員と職務がほとんど同じパートタイム労働者がいるかどうか質問しています。その結果、「いる」と答えた事業所が左下の円グラフになりますが、24.4%です。パートタイム労働者が最も多い職種において、かつ、職務が正社員と同じ働き方をしているパート労働者がいると答えた事業所が、24.4%ということです。
 12頁は、その職務が同じパートタイム労働者と正社員の賃金の比較です。下の段を見ていただくと「賃金差がある」と答えた事業所が73.4%、「低い」と答えた事業所が69.5%、「同じ」と答えた事業所が17.5%になっています。ただし、「低い」と答えた企業でも「8割以上」としている企業が3割超、「6割以上、8割未満」と答えている事業所が5割弱となっています。
 13頁は、同じ職務に就いているパートタイム労働者と正社員に賃金の差がある場合に、その理由を聞いていますが、13頁の下のところを見ていただくと、「勤務時間の自由度が違う」という理由がいちばん多くなっています。「そういった契約内容で労働者が納得している」が次に多くて約5割です。「人事異動の幅や頻度が違う」「残業の時間数、回数が違う」と答えた事業所が、それぞれ13頁に示すとおりになっています。
 14頁は、パートタイム労働者の方々に、自分と同じような仕事をしている正社員がいるかどうか尋ねた回答です。左下の円グラフを見ていただくと、「業務と責任のどちらも同じ」と答えたパートタイム労働者が15.9%、「責任は違うけれども業務は同じ」と答えたパートタイム労働者が38.9%となっています。業務または責任のいずれかが同じと答えたパートタイム労働者について、正社員との賃金水準について納得しているかどうか聞いた結果が右側です。「正社員よりも賃金水準が低いが、納得している」が53.1%、「賃金水準が低く、納得していない」が28.1%です。「わからない」が14.9%ありますが、平成18年と比べると、「わからない」が減少しているのが特徴的なところです。
 15頁は、賃金水準について納得できる理由・納得できない理由ですが、先ほど5割以上の方が納得していると答えていましたが、その納得できる理由としては、「責任の重さが違うから」「もともとそういった内容で自分も納得しているから」「勤務時間の自由度が違うから」といった回答が多くなっています。納得できない理由としては、「正社員と同じ内容の仕事をしているのに差があるから」がいちばん多くなっています。
 16頁はまた事業所調査に戻りますが、先ほど各事業所でパート労働者の数が最も多い職種で、かつ、業務と責任が同じパートタイム労働者がいると答えた事業所が24.4%ありましたが、そのうち更に人材活用が同じパートタイム労働者がいるかどうかを調べています。「全期間、正社員と同じパートタイム労働者がいる」と回答した企業が13.3%、「一定期間同じパートタイム労働者がいる」と答えた事業所が4.7%となっています。
 これらをまとめると17頁ですが、左側を見ていただくと、今回の調査で回答が返ってきた事業所にパートタイム労働者が9万1,384人います。その中で最も人数が多い職種に就いているパートタイム労働者が84.4%、その中で職務が同じなのは2.9%、かつ、人材活用が同じとなると0.3%、それから先ほどご説明した第8条のもう1つの要件の無期または実質無期とすると、すべてのパートタイム労働者に比べて8条の対象が0.1%になっています。事業所ベースで見ると1.1%です。
 18頁はパートタイム労働者の賃金を決定する際の要素について、これは職務が同じ、異なるに関係なく聞いていますが、下を見ていただくと、「能力、経験」「職務の内容」といったものを勘案するという割合が、「地域での賃金相場」「最低賃金」に比べて上回っているのが特徴的かと思います。平成18年と比べても、かなり「能力、経験」「職務の内容」は勘案されてきているのではないかと考えられます。
 19頁は手当及び各種制度の実施状況について調べています。基本給に関係する「定期的な昇給」「人事評価・考課」については、正社員及びパートタイム労働者の両方に対して実施されて、3割、4割という数字が出ています。「賞与」についても、約5割の企業がパートタイム労働者にも支給している結果が出ています。一方で「退職金」などについては、正社員に対してのみ実施している割合が高くなっているのが特徴的です。
 それとの対比で20頁ですが、賃金以外の処遇で仕事が同じ正社員と取扱いが異っていて納得できないと考えているものは何か、パートタイム労働者の方に聞いています。最も納得できないのが「賞与」で、いちばん多くなっています。また「定期的な昇給」「退職金・企業年金」について納得できていない回答が多くなっています。
 21頁はパートタイム労働法第10条です。教育訓練についての規定を設けていますが、その施行状況については22頁の下です。左から1番目、2番目の「入職時のガイダンス(OFF-JT)を行っている」や、「日常業務を通じた、計画的な教育訓練(OJT)を行っている」については、パートタイム労働者にも6割近く実施されてきています。一方、右から4番目の「キャリアアップのための教育訓練(OFF-JT)を行っている」については、正社員に比べてパートタイム労働者への実施割合が低くなっているのが特徴的です。
 23頁はパートタイム労働法第12条で、正社員への転換推進措置を設けることを義務づけているものです。24頁の平成22年のところを見ていただくと、実際に転換推進措置を設けている事業所は48.6%になっています。その内容ですが、「正社員を募集する場合、その募集内容を短時間労働者に周知している」が5割を超えています。「試験制度など正社員転換制度を導入している」も45.6%となっています。
 実際に転換させたかどうかの実績については、25頁をご覧ください。平成22年のところで、これは過去3年間に実際に転換させたかどうかの実績ですが、4割の事業所において実施しています。ちなみに平成18年のほうでは、過去5年間に転換させた実績が3割になっています。パートタイム労働者に占める実際に転換した割合は、右下のグラフにありますように「0超~5%未満」が3割で、いちばん多くなっています。
 26頁は正社員転換推進措置を実施する上での支障を聞いています。実施している事業所の支障の理由として、「正社員としてのポストが少ない」が多くなっています。
 27頁は一気に正社員転換ではなく、中間形態を設けているかどうかを聞いています。「中間の雇用形態を設けている」事業所が約4割、間に「フルタイム有期契約社員」を挟んでから正社員に転換させる事業所が約8割になっています。短時間正社員制度を「導入・運用している」事業所が34%となっていますが、これは正社員が一時的に短時間正社員になるケースが多くなっているということです。
 少し飛ばして29頁はパートタイム労働法第13条です。待遇決定の際の考慮事項について、パートタイム労働者から求めがあった場合には説明をしなければならないというのが第13条ですが、13条の関連で19条で、ここは苦情があった場合に事業所内で自主的な解決を図るという努力義務があります。
 この関連について施行状況、実態がどうなっているか30頁をご覧ください。実際にパートタイム労働者から待遇について「説明を求められたことがある」事業所は22%、そのうち「説明をしている」事業所は98.5%になっています。下の円グラフは苦情を受けた場合の自主的解決努力の有無で、「解決に努めている」事業所が92.4%と、平成18年に比べても少し進んでいるところです。
 31頁以下で、パートタイム労働者の方々の現在の会社や仕事への不満について分析しています。「不満・不安がある」と答えたパートタイム労働者は59%となっています。その内容ですが、「賃金が安い」がいちばん多くなっています。平成18年に比べるとこの点は少し減っていて、逆に「雇用が不安定」が増え、「勤続が長いのに有期契約である」といった不満・不安も見て取れます。
 32頁は男女別に見ていますが、いずれにしても「賃金が安い」ことを、いちばん不満・不安に思っているところです。
 33頁は雇い入れの際の労働条件が明示されたか、されていないかで、上の棒グラフの真ん中ですが、労働条件を明示された場合のほうが、明示されない場合よりも不満・不安が少なくなっていることがわかります。業務や責任が同じ正社員がいる場合のほうが不満・不安が高まる結果が、33頁の下の棒グラフです。
 少し飛ばして、36頁の「その他(事業所調査)」から少し細かいものを見ていきたいと思います。37頁は、どういう理由でパートタイム労働者を雇用するのか事業所に聞いた調査です。「人件費が割安なため」が平成22年でいちばん多くなっていますが、その割合がだいぶ減ってきています。一方で、「定年社員の再雇用のため」が増えてきていることが見て取れます。
 39頁はパートタイム労働者の今後の活用方針ですが、「現状を維持する」が55.0%、「一層積極的に活用していきたい」が12.5%、「今後は活用を縮小する方向で検討する」が4.3%となっています。
 40頁は、正社員と職務がほとんど同じパートタイム労働者に対する差別禁止義務の適用に対する考え方を事業所に聞いています、「賛成」「どちらかというと賛成」が合わせて77.8%、「反対」「どちらかというと反対」が合わせて17.0%となっています。賛成の理由ですが、いちばん左と2番目の「業務の内容等が同じ以上、処遇を合わせるのが当然である」「優秀な人材を確保するために必要」が多くなっています。反対の理由としては「会社に対する貢献度や会社からの期待度に違いがある」が多くなっています。
 42頁以降はその他(個人調査)です。43頁の働いている理由は男女で分けて聞いています。なお男性の70%が60歳以上になっていますので、そこのところをご留意いただきながら見ていただければと思います。男性については「家計の主たる稼ぎ手として、生活を維持するため」がいちばん多くなっています。女性については「主たる稼ぎ手ではないが、家計の足しにするため」が多くなっています。
 44頁はパートタイム労働者を選択した理由です。「都合の良い時間(日)に働きたいから」「勤務時間・日数が短いから」「就業調整ができるから」が多くなっています。また女性については「家庭の事情で正社員として働けないから」が多くなっています。
 45頁は今後の働き方に関する考え方ですが、これはパートタイム労働者を続けたいという回答が7割で、平成18年の調査とほぼ同じ結果になっています。正社員になりたい割合が18.8%ですが、ただ、現在の会社で正社員になりたいという方が58.1%であり、ここが平成18年との違いになります。
 46頁は男女別で、47頁は今後の働き方についてクロスを取っています。同じ内容の業務・責任の重さも同じ正社員がいる場合のほうが、正社員になりたい希望が強く、賃金水準について納得していないと回答するパートタイム労働者のほうが、正社員になりたいと考えています。生活を維持するには不可欠という理由で働いている方のほうが正社員になりたい傾向が出ているかと思います。
 48頁は、正社員転換推進措置と今後の働き方についてのクロスを取ってみました。転換推進措置を実施している事業所のほうが、正社員になりたい希望を持つ方が少し多いことが見て取れると思います。
 少し飛ばして51頁はパート労働者の属性です。収入の関係ですが、男性は「主に自分の収入で暮らしている」方が8割となっていて、女性のほうは「主に配偶者の収入で暮らしている」方が7割となっています。51頁の下の段で年収ですが、女性は90~110万円未満、110~130万円未満が多くなっています。男性は150~200万円未満、200~250万円未満が多くなっています。賃金については55頁、56頁に出ていますので、ご参照いただければと思います。
 就業調整の関係で59頁ですが、男女別に就業調整を見ています。全体としても就業調整をしているパートタイム労働者が25%、男性で21.2%、女性で26.0%となっています。就業調整の理由は下の棒グラフですが、女性では「所得税の非課税限度額を超えると税金を支払わなければいけない」とか、「配遇者控除が無くなる」とか、左から4番目の「一定額(130万円)を超えると健康保険、厚生年金等の被扶養者からはずれる」といった理由です。男性では右から3番目の「年金の減額を避けるため」という理由です。駆け足でしたが、短時間労働者実態調査の結果は以上です。
 最後に資料7ですが、これについては1頁の目次を見ていただければと思います。改正法附則、3年後の見直し検討の規定がある附則や国会の附帯決議を2頁、3頁に載せています。4頁を開けていただくと、仕事と生活の調和の憲章や行動指針においても、「ディーセント・ワーク」の実現といったことが書いてあります。非正規雇用から正規雇用への移行ということも書かれています。6頁の「子ども・子育てビジョン」は平成22年1月の閣議決定です。7頁の「新成長戦略」も昨年6月の閣議決定ですが、「同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の推進が」入っています。9頁の「第3次男女共同参画基本計画」も、昨年12月に閣議決定されていますが、ここでも同じように同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の取組の必要性が閣議決定されているところです。
 11頁からになりますが、有期労働契約研究会が取りまとめた報告書が、昨年9月10日に出ています。この中で、パートタイム労働法を参考に、有期労働契約者に対しても均衡待遇や正社員転換の措置を考えてはどうかという報告書が取りまとめられています。ちなみに現在、有期労働契約については労働条件分科会でご議論いただいているところです。
 14頁はパートタイム労働に関する判決です。事案としては平成16年から平成19年までの間の賃金の話ですので、パート法施行以前の事案ですけれども、判決は施行後に出されたものです。京都市女性協会事件(平成21年7月6日大阪高裁判決)は、週35時間のいわゆるパート法上のパートタイム労働者である控訴人X(第一審原告)が、正社員と同じ仕事をしているのに賃金が低いのは、同一労働同一賃金の原則並びに民法第90条に違反して、違法無効ではないかということで、差額賃金を求めたものです。
 判決の内容は、同一(価値)労働同一賃金の原則を一般的な法規範として認めるべき根拠はないということで、15頁に線を引いていますが、「非正規雇用労働者が提供する労働が、正規雇用労働者との比較において同一(価値)労働であることが認められるにもかかわらず、当該事業所における慣行や就業の実態を考慮しても許容できないほど著しい賃金格差が生じている場合には、均衡の理念に基づく公序違反として不法行為が成立する余地がある」という一般論を述べています。ただ、実際の当てはめのところで、この控訴人X(第一審原告)の労働は、正社員と同一(価値)労働ではないという認定がされ、原告側の敗訴となっています。こういった判決が出ていますので、ご参考に紹介させていただきました。以上で資料の説明は終わります。
○今野座長 ありがとうございました。それでは、説明をいただきましたので、以上の点についてご質問、ご意見がありましたらご自由にお願いします。
○佐藤委員 確認です。今日ではなく、少し調べていただければと思います。データの60頁で、これはたぶん間違いではないかと思うのですが、JILPTの調査と厚生労働省の回答の事業所規模なのですが、厚生労働省のときは5~29人の85.1%、これは正しいのですか。
○大隈調査官 これは復元後です。
○佐藤委員 わかりました。これは復元した結果ですね。
○大隈調査官 そうです。
○佐藤委員 そうすると、厚生労働省の調査に相当規模の小さい所のものが出ているということですね。
○大隈調査官 そうです。
○佐藤委員 わかりました。間違いではなくて、それが実際の日本の事業所規模の分布ですね。61頁のところは、ご紹介いただいたように、男性は、定年後と思われる人がすごく多いので、比較するときに男女別も見なければいけないということで、個人調査を見ることが大事ですね。
○大隈調査官 はい。
○佐藤委員 資料4の6頁ですが、パートの方が雇用されている事業所は、29人以下が非常に多い。これは結構大事で、正社員との比較では、正社員のほうがやや規模の大きい所で働いていて、有期とかパートの人は規模が小さい事業所が多くなります。これは企業規模ですが、パートタイム労働の雇用実態を考えるときに、正社員以上にパートでは企業規模の小さい所での雇用管理がどうなっているかがすごく大事だと思います。
 調査は事業所単位の集計ですが、企業規模別に見たときに、事業所単位の調査なのですが、先ほど事業所単位で復元してありますが、小規模事業所でも大企業の小規模事業所もありますね。普通、人事制度は企業単位なので、どういう賃金制度にするとか、もちろんパートの場合は具体的な時間給などは事業所ごとに決めたりしますが、制度は企業単位で決めることが多いので、正社員転換制度を入れるとか入れないとか、そういう意味では企業単位で、特に29人以下と上、あるいはもう少し上で見てもいいのですが、企業単位にJILPTの事業所調査を集計できるかどうか、つまり企業規模を聞いていると思うのですが。事業所全体だと小さい事業所が全体の結果を引っ張ってしまっているので、大事なのは、それぞれ正社員転換制度とか労働条件明示が、企業規模で見たときにどうなるかだと思うのです。ですから、企業規模別の集計はあるのだろうかと。
○大隈調査官 調査表では事業所単位で聞いており、その上を統括します企業についての規模は特に聞いておりません。
○佐藤委員 規模も聞いていないのですね。
○大隈調査官 はい、当該事業所の雇用状況です。
○佐藤委員 それでいいのですが、その事業所が属する企業全体の人数は聞いていないのですか。
○大隈調査官 聞いていません。
○佐藤委員 事業所がどういう企業規模の会社に所属しているかはわからないのですね。
○大隈調査官 そういう調査項目は設けていませんでした。
○佐藤委員 先ほど申し上げたように、29人以下がすごく多くて、たぶん普通の社員の雇用管理でも、小規模企業は整備されていない場合も多いので、企業規模別にどうなっているかわかるといいなと思っています。駄目ならしょうがないと思いますが、その辺をお願いします。
 もう1つ、厚生労働省の制度調査も、30人以上のことは結構多いのです。そういう意味で、パートがたくさん働いている企業の人事制度はわからないので、こういう調査は大事だということです。
○大隈調査官 ありがとうございます。
○今野座長 いまの結論は、そういうデータを諦めるということですか。
○佐藤委員 なければわからないですよね。
○吉永課長 一応、JILPTで対応可能かは考えたいと思います。ただ、パートについては5年に1回総合実態調査をやっておりますが、それがちょうど来年にあたっておりまして、来年度、今年の末ぐらいには集計できるのではないかと思っております。その数字を使うと、ご指摘のデータは少なくとも取れると思います。
○佐藤委員 厚生労働省のパートタイム就業実態調査は、企業規模を聞いていたと思うのですが。
○吉永課長 聞いていると思います。
○佐藤委員 就業形態多様化調査も、たしか企業規模を聞いていたと思います。
○吉永課長 ですから、基本的には前回と同じで、調査項目は若干変わっておりますが、同じような形での復元等々ということになると思います。少なくとも、それを見ればご指摘の点はクリアになると思っております。ただ、JILPTの調査でどこまでできるかというのは、確認しますが、少し難しいかもしれないと思います。
○浅倉委員 資料5の5頁と6頁両方で、9条はそれなりにあるのですが、8条の是正指導が著しく少ないというご報告がありました。しかし、7頁の申立受理件数の内訳を見ますと、例えば(2)受理件数の内訳で、12件中5件が8条関係とあります。このように、助言の件数が著しく少ないのと、受理件数がそれほど少ないわけではないという関係について、ご説明いただければと思います。
○大隈調査官 8条の関係については、相談件数も相当程度あります。ただ、実際に事業所を訪問してみると、その3要件に該当していないのではないかということで、実際の指導件数が少なくなっているということかなと思います。JILPTの調査で、8条の対象者が0.1%といったこともありましたので、もしかすると、その辺りと符合する部分があるのかなと思います。一方で、いま先生がおっしゃったように、紛争解決援助のところで機能しているというお話でしたが、自分自身は8条であるのにという不満を持たれて、それが紛争になるケースはあるのかなと思います。簡易・迅速に援助する制度であり、8条も対象として法律が想定しているところでもありますので、法律の想定どおりに8条が出てきているのかなと考えております。
○水町委員 いまの話に関連して、8条はほとんどなくて、9条は少なからず是正指導があるのですが、8条についても9条についても、具体的にはどういう場合にどういう是正指導をされているのかを教えていただければと思います。
○大隈調査官 8条の関係ですが、平成20年度、平成21年度それぞれ7件になっておりますが、運輸業やサービス関係、医療・福祉といった所で8条の助言指導をしております。それについては、8条と認められると。ただし、基本給がそもそも違う体系にある場合には、同じ賃金表を当てはめてくださいというお話をします。退職金などがパートタイム労働者だけには出ていない場合には、そういうものを支払ってくださいということで、就業規則などを変更していただくこともあります。
 9条ですが、ここの指導については、まさに条文にありますように、パートタイム労働者一律いくらといった賃金体系があったような場合には、職務の内容や成果、経験、勤続年数といったもので少しずつ昇給するとか、何か資格を取った場合に昇給するとか、そういった制度を入れてくださいと。パートであるから一律という制度ではなくて、何か勘案要素、それも正社員の方の賃金制度の中の勘案要素と何か共通するものを取り出して、そういったもので昇給制度なり人事評価制度なりを作ってくださいという指導をするのが、9条の指導の状況です。
○水町委員 8条、9条、どちらも何についていくら払いなさいという指導をしているのではなくて、こういうルールを作るようにしなさいというルール作りを促しているということですか。
○大隈調査官 おっしゃるとおりです。
○山川委員 若干ありますが、第1点は、資料4の14頁の組合への加入状況です。近年かなり組合加入人数が増えている印象がありますが、今回のJILPTの調査では対象としていないと思いますが、労働組合がパート労働者の改善のためにどういう取組みをしているかという点です。労使合同での取組みでも結構ですが、そういう点についての既存の調査、もしヒアリングをなされるとすれば今後出てくるかもしれませんが、事例調査も含めて既存の調査で何か出てきているかというのが第1点です。
 第2点は、資料6の30頁の待遇に関する説明の部分ですが、一体どのような事項が説明されているのかということです。また、説明されたことと納得度の対応関係、こういう説明では納得していないとか、そういう関係を示すものがデータとしてあるかどうか。あるいは、不満や相談等で行政に出てくるもののうち、こういう説明では不満や相談が多く見られるとか、そういった点で趨勢みたいなことがわかるのかどうかというのが第2点です。
 3つ目はごく簡単なのですが、同じ資料6の52頁で、契約期間の話です。平成18年で雇用期間の定めのあるパートタイムが44.1%、平成22年で定めがあるパートタイムは83.2%です。これは、パートタイム労働法の施行に伴って雇用期間を定めて雇用するようになったというデータはあまり見えませんので、先ほど佐藤先生がおっしゃった母集団が中小企業が多いと、雇用期間を定めないとか、その辺りの認識がそれほど明確ではないと、そういうことの反映なのでしょうか。以上3つです。
○大隈調査官 第1点目は、労働組合でどういった救済等をされているかということだと思いますが、資料6の34頁をご覧ください。先ほど説明を割愛した部分ですが、「不満・不安を相談した経験の有無と相談先」ということで、「相談したことがある」と答えたパート労働者が3割、その中で不満・不安の相談先ということで労働組合が3.4%となっております。今後不満・不安が生じた際の相談先ということで、これも先ほど説明を割愛した部分ですが、35頁で「今後労働組合に相談したい」と答えたのが1.3%、「内容によっては相談する」が9.1%、合わせて10%ぐらいになっております。これ以外に何か調査があるかどうかは、少し調べてみたいと思っております。
○山川先生 これも組合の加入の有無に関わらずというデータなので、加入別でみたら違ってくる可能性は、もちろんあるわけですね。
○大隈調査官 そこもクロスなりで取れるかどうか検討したいと思います。
2点目の、説明をした内容がどういうものは納得されて、どういうものが不満かということですが、今回のJILPTの調査ではそこまでは取れません。施行の現場ですと本当にさまざまな事例がありまして、施行の現場から聞かれる場合には、賃金などの待遇であったり、正社員転換について制度がそもそもないのはどうしてかとか、自分がなれないのはどうしてかといったこともありますし、労働条件の明示などもきちんとなされていなくて、改めて説明を求めて紛争になるということもあります。内容については、ケースバイケースでいろいろあるのかなと考えられます。
 有期、無期については、資料6の52頁で、確かに平成18年と平成22年の調査がだいぶ違います。ただ、個人調査で、52頁で有期が8割ということで、事業所調査では、38頁ですが、有期と答えている所が86%です。このJILPTの調査は、事業所から雇用しているパートタイム労働者の方に渡していただいていますので、この調査の中では整合が取れていると思っております。ですから、まさに先生がおっしゃったように、今回大企業が多かったということで、こういったきちんとした契約がされていたのかなというのは、推測ですが、1つ考えられるかなと思います。
 2つの調査で有期、無期についてはかなりデータの違いがありますので、その辺りは難しい部分はあるかと思いますが、このJILPTの調査では一貫しているというのは、事業所調査と個人調査を見てわかるかなと思います。
○権丈委員 資料4の9頁から、大規模調査である、賃金センサスの結果が出されておりますが、それに関連して2点ございます。1つは、9頁にパート労働者の平均勤続年数の推移がありますが、そこでの勤続年数の定義はどのようになっているのかということです。同じ企業に勤務していても雇用形態が変わった場合、例えば、定年後、再雇用制度で働いている場合は、勤続年数をゼロとしてカウントしているのかどうか、おわかりであれば教えてください。平成16年以降、男性の平均勤続年数が急速に伸びていますが、その解釈に関連して、確認させていただければと思います。
 もう1つは、資料4の12頁で、一般労働者とパート労働者の1時間当たり所定内給与額の推移についてです。図表をみますと、男性よりも女性について、一般労働者とパート労働者の格差が大きくなっています。これは、女性に比べて男性では、パート労働者が経験の少ない若年者に片寄るなど、パート労働者の属性が男女で異なることの影響が大きいという、欧米諸国でみられる一般的な傾向と一致しています。
 図表から、最近の日本の推移を見ますと、賃金格差が縮小してきていることがわかりますが、この変化は、パート労働者の待遇改善によるものなのか、それとも、パート労働者の属性の変化によるものなのか、それについての分析、要因分解があればありがたいと思います。可能であれば、今後お願いしたいという要望です。9頁の資料で、男性では勤続年数が伸びていましたので、賃金格差縮小にはパート労働の属性が変わったことの影響もあるかと思います。また、資料6の31頁に、「現在の会社や仕事に対する不満・不安」が掲載されていますが、平成18年の厚生労働省の調査に比べて、平成22年度のJILPTの調査では、「賃金が安い」をあげる者の割合が減少しております。これは、実際に賃金が高くなったためなのか、その辺りを判断するのにも役立つかと思いますのでお願いいたします。
○大隈調査官 権丈先生からのご質問の1点目ですが、資料4の11頁については、確認してご回答させていただければと思います。
 2点目の資料4の12頁ですが、ご指摘のとおり、男性、女性それぞれについて一般とパートと比較をしているわけで、これはおそらく男性と女性と、一般労働者も勤続年数といった属性と景気動向とそれぞれが反映されていると思います。パート労働者についても、それぞれ構造的な勤続年数等の変化や景気動向の変化が関わっていると思います。それはそれぞれに利いていると思いますので、先生がおっしゃったように分析を少しする必要はあるかと思います。いま、こういうデータでお示ししましたので、さらにこれがどのような要因なのかについては、もう少しお時間をいただいて検討させていただければと思います。景気動向等を反映したような、全体としての動きが見えるかなという感じもしておりますが、もう少しブレークダウンする必要はあるかなと思います。少しお時間をいただいて検討したいと思います。
○水町委員 資料7のいちばん最後の8の「京都市女性協会事件」の裁判例なのですが、同一労働・同一賃金とか同一価値労働・同一賃金というのは、必ずしもフルタイムとパートタイムだけの問題ではなくて、政策の中でも男女間という言葉が使われたり、外国でも雇用形態というよりも、むしろ男女の問題として使われています。今後議論する上では、単にフルタイム、パートタイムだけの問題ではなくて、雇用形態だけでもなくて、男女にも当たるような原則として、同一価値労働・同一賃金がどのように取り扱われてきたのか。最近、男女間の差別でもいくつか裁判例があって、賃金格差があるのに、それが合理的理由によって説明できなければ労基法4条違反とするとか、不法行為とするという裁判例もあります。そういう男女間での問題とここでの問題と、少しすり合わせながら、裁判例の動向を少し広く見て考えたほうがいいかなという気もします。この後まとめるときに、もしこれが資料として使われるということであれば、もう少し幅広に見ながら位置づけていったほうがいいかなという気がします。
○大隈調査官 先生がご指摘のように少し広い視点で今後検討していきたいと思っています。
○今野座長 いまの判例では、何を基準に同一と判断しているのでしょうか。結論としては、同一価値労働ではないからということでしょう。同一価値労働ではないということは、ないということを判断するための基準があったわけですよね。どういう基準を取っているのですか。誰がいちばん詳しいのでしょうか。
○浅倉委員 この判決は、比較すべき正規労働者がいなかったという判断をしたのだと思うのです。私が考える同一価値労働・同一賃金原則の同一価値というのは、同一の労働をしている人がいなくても労働の価値を比較して、100対60という価値があれば、それに見合った賃金を払うのが均衡処遇であると理解しているのですが、この判決は同一労働に従事している比較すべき人がいなかったので、同一労働ではないという判断をされたのだと思います。私は、パート法の中で、もし参考にしなければいけない成果があるとすれば、それは、平等、差別撤廃だけでなく、均衡に処遇しなければいけないというところをいかに活かしていけるかだと思うのです。そして、そこは労働の価値比較を抜きには考えられないのではないかと思いますので、この研究会でも今後価値比較をどうしたらいいのかを、皆さんで議論していただきたいと思います。
○水町委員 これまで男女間の裁判例で、京ガスとか、いくつか同一価値労働・同一賃金という言葉を使いながら、それの原則に従って見ると差別であるとして救済したものもあるのです。そこでどういう形で認定されているかはなかなか難しくて、リンゴとミカンは値段がもともと違うものなのだけれど、価値としては同じだからという比較をした例はあまりなくて、結局仕事がほとんど同じだと、ちょっと違いがあると。でも、ちょっとした違いというのは価値の違いにならないので、「同一労働」と言うか「同一価値労働」と言うかはありますが、その観点からすると、価値が同じなのにもかかわらず、男と女で違うように出しているから、同一価値労働・同一賃金原則とか男女の賃金差別を禁止した労基法4条違反になるという形で出している判決が多いように、私は理解しています。
 そういう意味で、理念として同一価値労働・同一賃金がリンゴとミカンで同じような値段だからというような理念と、実際判決の中でどう使われているかということも少し踏まえながら考えていくほうがいいのかなという気がします。ヨーロッパの中でもいろいろな動きがありますので、議論をする中で少し勉強していきたいと思っています。
○今野座長 その判例で、同一価値と言わないまでも同一労働だと。同一労働といったときに、それも何かの基準で同一と決めなければいけないわけですね。判例ではどうやっているのですか。
○水町委員 これは判例ではないのですが、先ほどありましたように、タクシーの運転手で12時間回っている人と6時間回っている人で、運転している内容は同じなのに、片方には基本給別の制度でとなると、これは近いだろうということは何となく言えそうな気がします。ただ、知的労働になって、いろいろな業務が複雑に絡み合ってくると、AさんとBさんがやっているのはそう簡単に同一労働と言えないということです。
○今野座長 極端なことを言うと、その例だって、歌舞伎町で運転している場合と青梅で運転している場合ではお客さんが違うから、求められる内容が違うかもしれないというへ理屈もあり得ますね。
○水町委員 そのへ理屈を言えれば、合理的理由があるとして、原則の例外として違法ではないという話になるのだと思います。そんなにリジッドに、かくかくしかじかと適用されているものではないわけです。
○今野座長 雑談ですが、同一労働でもいろいろあるということは、価値を測ると言ってもいろいろあるということですね。ほかにご質問はございますか。あるいは、次回までにこんなデータがほしいとかいうことがあればお願いします。よろしいですか。よろしければ、帰ってこの資料を見ていただいて、こういうデータがほしいということがあれば、次にでもご発言いただければと思います。
 それでは、今日はもう1つありまして、議題2「今後の研究会等の進め方について」です。事務局から説明をお願いします。
○大隈調査官 議題2「今後の研究会の進め方等について」ということで、先生方にお諮りできればと思うものがあります。
 資料8をご覧ください。研究会の今後のスケジュール(案)としてお出ししております。本日第1回は、パートタイム労働法の施行状況等についてご議論いただきました。また、今後の研究会の進め方について、これからご議論いただきます。第2回目以降については、諸外国のパートタイム労働法制について、事務局から簡単なご紹介をする、あるいは関係する方々からのヒアリング等も実施して、パートタイム労働に係る各論点を順次検討していきたいと考えております。夏ごろを目途に、一定の報告書の取りまとめをということで、スケジュールとしては考えております。
 続きまして、資料9ですが、これは今後先生方に研究会で議論していただきたいと考えている論点の案です。5点挙げております。1として通常の労働者との間の待遇の異同の問題、2として通常の労働者への転換の推進、3として待遇に関する納得性の向上、4としてパートタイム労働法の実効性の確保、5はその他として、研究会で順次出てきた論点についてここに追加する形でご議論いただければと思います。以上の2点について、ご意見等をいただければと思います。
○今野座長  いかがでしょうか。何かご質問、ご意見があればお願いします。
○水町委員  資料9の「研究会で議論していただく論点」で2点ぐらいあります。1つは、3の「納得性の向上」と4の「実効性の確保」は、1の「待遇の異同」とかなり密接に関わってくるもので、ここで均等待遇、均衡待遇というときにどうやって納得性を高めながらやるのかとか、どういう法的な方法でそれを推進していくのかが関わってきますので、1と3はあまりブチブチと回数を切らずに、少し連携しながら議論を進めていくことが大切かなというのが1つです。
 もう1つ、これは「その他」の中に入れてもいいかもしれませんが、教育訓練や能力の開発が非常に難しい問題です。待遇でもカバーできるところもありますし、正社員転換で正社員と同じになって、教育訓練がうまくいけばいいところもありますが、待遇の均等・均衡でもカバーできなかったり、正社員転換は全員なれるわけではないので、落ちてくる多くのパートや非正規の人たちにどうやって教育訓練を進めていくかは、システムを工夫しないとできない問題なので、1~4とは違う形で議論したほうがいいのかなという気もします。これは「その他」の中でもいいですし、1と2の間か、1と2の次ぐらいに入ってくる重要な項目になるのかなという気がします。
○山川委員 先ほど申し上げたこととの関係で、労働組合の取組状況、特に労使協議等で取り上げている場合は、具体的にどのように進められているのかなどにつき既存調査がありましたら、それも紹介していただければと思います。また、先ほど水町先生からお話がありましたように、諸外国のパート労働法制をご紹介いただくときに、「パート労働法制等」とありますので、例えば、アメリカでは、男女平等の問題の中で議論されていて、同一価値労働は民間では一般的ではないのですが、実質的同一性ということでいろいろな要素は取り出されていますので、スポット的にでも、関連する部分は、男女平等法制等も含めてご紹介いただければと思います。
○浅倉委員 たぶん、1の「通常労働者との間の待遇の異同」の中に入ると思うのですが、先ほどから議論に出ていますように、価値の比較という論点が重要だと思いますので、すでに厚生労働省で「職務評価実施マニュアル」をお出しいただいているのですが、こういうものの再検討も入れていただければと思います。
○今野座長 今日、論点については思っていらっしゃることをバッと出していただいて、もう一度整理をするということでいいと思うので、どんどん出してください。
○水町委員 いま価値という話が出てきたので、同一価値労働・同一賃金の話をするときに、2つの道があります。1対1で比べるやり方、ある人とある人は仕事の内容は若干違うかもしれないけれど、同じ価値なので、原則として同じ賃金を払おうというやり方で、裁判によって認定して救済したということは、日本ではないことはないのです。そういうやり方と、組織として職務評価制度を事業主に促していこうと、その中でシステムとして同一価値労働・同一賃金を各事業所や企業の中で、なるべく価値評価で、それに近いような処遇をしていこうという、集団的なシステム構築につなげていくような同一価値労働・同一賃金原則。その話になると、どちらかというと均等法のポジティブアクションに近いもので、企業に自分たちで計画を立てて促していこうという方向につながっていくので、同一価値労働・同一賃金は非常に重要なポイントだと考える場合には、両方を視野に入れながら、1番目だけだとあるところで壁にぶち当たる可能性もあるけれど、2番目でもしかしたら道が開けてくるかもしれないので、これは均等法で違うところだというのではなくて、それも視野に入れながら議論していくことが生産的というか、意味があるかなという気がします。
○今野座長 制度を考えてしまおうというのに近いのですか。企業で賃金制度を考えてしまおうと。
○水町委員 労使の中で、いろいろな賃金制度がある中で、労使が議論をしながら作っていくことが必要なのですが、何が大変かとか何が高度かという認識が当事者にある中で、それに対して処遇があまりにも違いすぎる場合には、賃金制度なりその中のシステムを変えるように、労使の話合いの中で、企業の中で努力をさせていく。それを、法的にどうインセンティブを与えて誘導していくかというのが後者の問題です。同一価値労働・同一賃金というのは、カナダ等では職務評価制度を介在させながら、事業主に自主的に努力するように促していくということが、比較法の中でも例があります。
○浅倉委員 たぶん、水町さんがおっしゃっていることについては、、男女間の賃金格差の解消について、そういう試みがいろいろな国で非常によくやられていると思います。パートとフルの間の問題に特化しないで、男女間の賃金格差解消のためのポジティブアクションとか、さまざまな自主的な努力の促しとか、それらを参照してはどうでしょうか。そこでは同一価値労働同一賃金原則がいちばん利用されています。これはパートだから、フルだからとか、男女だからと区分けしないで、1つのシステムとして日本に定着させることは、すべての問題を一体化して解決することにつながるので、一緒に考えましょうというご提案だと思います。
○今野座長 私は専門は人事なので、極端なことを言うと、これはベストの制度だと、みんなこれでいこうということのように聞こえてしまうのです。そうすると、どうやるだろうと。
○水町委員 例えば、極端な例ですが、全国転勤がある人と地域限定社員で、その価値をどれぐらいだと考えるかということで、全国転勤の人には100与えていて、地域限定の人には40しか与えていないと。これは違いが多すぎる、価値の違いに見合っていない処遇だという意識が当事者にある場合には、それを60なり70なり、これは国が決められるものではないですが、そういう形でシステムを是正していこうと。その中で何がどれぐらいのポイントになるのかを、ある程度当事者の中でポイント化していって、当事者がこれぐらいの開きであれば納得できるという努力を促していくと。
○今野座長 納得できるように促していくというのはわかるのですが、それを仕掛けにしたときに、いまの例で言うと、マーケットが40と言っているのだからいいではないかと言われたらどうするのですか。
○水町委員 マーケットがうまく機能しているのであれば、法政策や法原則で差別するという議論にはそもそもならないですね。そこで問題があるときの介入の仕方として、裁判所が強制的にこれは100対75なのだと言って強制するシステムがいいのか、当事者で話し合って促していって、100対60とか100対70ぐらいの間に落とし所を考えるような制度を促していくのかという問題です。
○佐藤委員 水町さんがおっしゃっているのは、具体的な賃金制度などを入れろというのではなくて、制度のあり方が議論しやすいような、あるいは議論するとか情報提供というシステムを作ろうという話ですね。だから、出来上がるもの自体は各社ごとに違う可能性がある。そこの人たちが手続的に納得できていればいいという話ですね。
○水町委員 そうです。もともと職能給を取っている所とか、職務給を取っている所があって、強制的に職能給を職務給にしろとか、職務給を職能給にしろという話ではなくて、それぞれの給与制度に合った中で、実感からほど遠いようなものは是正する努力を進めていこうということです。それを「同一価値」というネーミングで。
○今野座長 現在ある賃金制度でも何でもいいのですが、組合があるときには労使で相談をしてやっているとすると、すでに納得しているではないかという話になったらどうなるのですか。個々には不満だという人がいたとしても、一応集団的にはそれで納得しているではないかという話になると、どうなるのかなと。
○山川委員 先ほど労使協議とか組合の取組みを聞きたかったのは、その辺りの実態を知りたかったということもあるのです。1つは、本当に納得しているのかという問題や組合に入る資格があるかという問題、もう1つは、水町さんがおっしゃったような仕組みを考えるとしても、意見の聞き方というか、集約の方法みたいなことにまで踏み込まないといけないのかもしれない。その辺りも議論の対象になるのかなと思います。相手は組合に限らないとは思いますが、納得のできるようなフィードバックを求めれば、逆に納得できないようなことは決め辛くなるだろうとか、そういう効果もあるかなと思います。
○浅倉委員 2つの問題を分けて考えなければいけないと思います。労働組合が関与している賃金交渉の中で男女差別があるといった場合、それは法的なレベルの問題で、それが違法な格差であれば、たとえ労働組合が関与していたとしても是正されなければいけないということになると思うのです。
 もう1つは、私のイメージではイギリスでやっている平等賃金レビューの仕組みというものがあります。それは、違法とか合法ということではなく、企業の中の男女間の平均賃金にかなりの落差があると、それを縮小しようという試みです。イギリスでは、2010年法によって、何年か後のことになりますが、企業の中の男女賃金格差を公表する義務が課せられました。それは単なる公表義務なのですが、それがあるために、企業の中ではできる限り男女間の賃金格差を縮小したいと願うわけです。その縮小の方法はさまざまにプログラム化されています。同一価値労働をしている男女間に5%以上の格差がある企業があれば、それを何年かのうちにできる限り解消していくシステムを、それぞれの企業が工夫していくということを推奨しています。
 そのときに、山川先生がおっしゃったように、労働組合もそれに関与することが求められています。組合も一生懸命格差を縮めるために労使交渉をやり、格差縮小の手立ての構築に参加するということです。以上のような2つは、両立できるのではないかと思います。
○水町委員 いまの点で、労使を関与させること、特に正規・非正規の問題に労使を関与させることの積極的な意義と乖離ということが、ヨーロッパで議論されています。労使を関与させないと、現場のニーズに合ったものにならない、現場の実態に合うものにならないので、労使の話合いで、上から行政とか裁判所が言うのはやめましょうという話と、逆に正規・非正規の問題は労使が差別を生み出しているという意識もあって、特にドイツの派遣などは、労使で話合いをさせたら、派遣が誰も加入していない組合が賃金を決めてしまうという問題があって、両方あることを意識しながら制度設計をしなければいけないということが1つです。
 でも、そこを一生懸命やり始めると前に進まないのです。ポジティブアクションを作るときも、労使で話し合ったほうがいいけれど、この場合は多数組合で話し合いなさいとか、そういう細かいことを決めずに、とにかく労使の中で話し合って、企業でアクションを定めなさいということで、そこの労使ということを厳密に詰めないと、企業の自主的な努力を促せないと、あまりリジッドに考えるのは問題なので、その両方をにらみながら政策的な工夫を考えていくことが生産的かなと思います。
○今野座長 だいぶ中身にも入ってきてしまったので、ほかに論点で気になっていることはありますか。
○権丈委員 少し違う論点になりますが、パート労働法の改正ということに限定せず、今後のパートタイム労働対策を考える場合、今後、パート労働を有効に活用するにはどうすべきかという視点で、考えておくことも重要だと思います。パート労働は、多様な働き方を求める人たちの能力を活用し、ワーク・ライフ・バランスがとりやすい働き方を提供するという意味で重要かと思います。これは有期労働契約研究会の報告書でもすでに示されているわけですが、新しい非正規労働のあり方でもあると思います。この点について、この研究会でも意識して検討できればと思っております。
 関連しまして、現在、パート労働は、職域も広がり、責任も高まっておりますが、かねてから社会保険の適用を意識した、就業調整の問題があります。現状はそれなりのサブオプティマムではあっても、パート労働の本格的活用を阻害している面は否めません。この点は、今回議論できるかはわかりませんが、パート労働の問題として、触れさせておいていただきます。少子高齢社会を迎え、日本において、人々の幸せを高めながら、競争力を持ち続け成長していくことを考えると、正社員の働き方の柔軟性を高めていくことと同時に、パート労働や非正規労働の待遇改善も進めていくことで、働き方の選択肢を広げ、広く人材を活用できるように仕組みを整えることが重要であると考えております。
○佐藤委員 論点ではないのですが、今回はパートタイムの待遇の改善なども通常労働者との関係で議論するわけですが、先ほどの同一価値労働・同一賃金でもいいと思いますが、そういう原則をパートと通常労働者だけではなくて、通常労働者の中でも適用できないと、私も人事管理なので、そういうルールはおかしいと思うのです。パートと通常労働者の間の議論を考えるわけですが、納得性の向上もそうですが、その考え方がいわゆる正社員にも適用できないと、男女間とか雇用区分間とか、そこにも適用できる理念でないと実際上ワークしないと思うのです。そういうことを念頭に置きながら、パートと通常労働者の間の処遇の改善や異同、納得性向上を議論できればいいなと思っています。
○山川委員 その議論の対象という意味では、いわゆるフルタイムパートというか、擬似パートというか、所定労働時間が必ずしも短くない場合は一体どこで取り上げるのか。有期契約の場合は有期契約ですが、フルタイムパートで有期契約でない場合のほか、丸子警報器事件のような実質的に期間の定めがない契約と同視される場合も、有期契約ではないという形で整理されますが、他方でフルタイムパートは、現行法だと短時間労働者ではなくなってしまうということで、この問題はどこで取り上げるのかも検討していく必要があるのかなと思います。
○水町委員 いま佐藤先生と山川先生がおっしゃったことに全く同感ですが、仮にパートタイム労働法の適用範囲で、フルタイム労働者とパートタイム労働者の間の均等・均衡を考えるとしても、そこで成り立ち得る原則なりルールは、正社員・非正社員間でも無期・有期間でも、場合によっては派遣や請負労働者も視野に入れながら妥当し得るようなルールでないとワークしないので、最終的に法改正でどのように形作るかは別としても、ここでの議論においては少し射程を広げて、これはパート法だから短時間労働者の話だけしますよではなくて、視野を少し広く持って均等・均衡を考えていくことが必要だと思います。有期研の報告書の中で、この点についてはパート法の動向も併せて議論するということなので、こちらにもボールが投げられながら、ここで議論しなければいけないことがたくさんあるのかなという気がします。
○今野座長 会社の中ではいろいろな種類の人が働いているわけです。その人たちに対して、普遍的な尺度みたいなものを入れてしまったほうがずっと良いというお話ですね。佐藤さんがおっしゃったのもそういうことで、それは1つの考え方だけれど、別々に作ってインターフェイスを考えるという考え方もあります。どちらがいいか。いまのお話は前者が良いという話ですね。そうすると、全体をがらっと変えるという話ですね。
○水町委員 仮に別々に作るとすると、インターフェイスがうまくいけば良いのですが、こちらのルールはハードルが高くて、こちらのルールはハードルが低いと、結局問題がすり替わるだけなのです。ヨーロッパの動きからすると、パートも有期も派遣も同じようなルールで、正規・非正規問題としてアプローチしていきましょうというのがヨーロッパの共通の認識なのです。どういうものを作り上げるかも一方では大切なのですが、全体として代替性があるというか、背景が共通している問題については、共通の認識の中でルールを考えるという基本姿勢が重要ではないかと。そういう意味で、佐藤先生がおっしゃったことはそのとおりだなと思います。
○今野座長 気持ちはよくわかるのですが、例えば製造の人がいます。技術の人がいます。営業の人がいます。それぞれ働き方が違うので、それぞれに合った仕掛けを作りたいと考えたときに、それは別々にやってしまうと問題だから、有期でも無期でもいいですが、一本でいきましょうと。そういう制度を入れたときに、それをベースにして営業向け変更、技術向け変更を加えるわけです。そうすると、そこでも変更を加えたというのは事実だから、結局インターフェイスを考えなければいけない。そんなことはないのかな、共通の枠があるから、インターフェイスはいいのでしょうか。
○水町委員 ここで共通のルールは、全体の賃金制度を一緒にするのではなくて、同じ会社の中でも職能給的な人と職務給的な人がいてもいいし、技術職と現場で働いている人とホワイトカラーで別の賃金制度にしてもいいのだけれど、例えばホワイトカラーの中で有期と無期とか、フルタイムとパートとか、いろいろな雇用形態の人がいても、ちゃんと説明がいくような制度にしておきなさいという意味でのルールなのです。
○今野座長 その程度ですね。ほかにいかがでしょうか。それでは、今日はいろいろ論点も出していただきましたので、それをもう一度整理していただいて、資料9の論点表ももう一度作り直してもらうことにしたいと思います。
 それでは、次回の日程について事務局から説明をお願いします。
○藤原課長補佐 次回の日程ですが、3月7日(月)の10時から12時を予定しております。場所については現在調整しておりますので、決まり次第ご連絡いたします。よろしくお願いします。
○今野座長 それでは、今日は終わりにさせていただきます。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課

電話: 03-5253-1111(内7875)

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