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2010年12月7日 社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会第7回議事録
雇用均等・児童家庭局
○日時
平成22年12月7日(火) 13:00~15:00
○場所
厚生労働省 専用第23会議室
○出席者
委員
才村委員長 | 磯谷委員 | 大村委員 | 長委員 | 庄司委員 |
松風委員 | 豊岡委員 | 中島委員 | 松原委員 | 水野委員 |
吉田委員 | (欠席:佐藤委員) |
オブザーバー
古谷参事官 (最高裁判所) | |
飛澤参事官 (法務省) | 羽柴局付 (法務省) |
厚生労働省
高井雇用均等・児童家庭局長 | 石井大臣官房審議官 | 高橋家庭福祉課長 |
杉上虐待防止対策室長 | 千正室長補佐 |
○議題
(1) 報告書骨子案について
(2) その他
○配布資料
資料1 | 児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会報告書骨子案 |
資料2 | 面談強要禁止の仮処分について(法務省作成資料) |
○議事
○才村委員長
定刻になりましたので、ただ今から「第7回社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会」を開催させていただきます。
委員の皆さま方には、御多用ところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日は、佐藤委員が所用のため欠席ですが、それ以外の11名の委員に御出席いただいております。
それでは、はじめに事務局から資料の確認をお願いします。
○千正室長補佐
資料の確認をさせていただきます。最初に議事次第、座席図があります。次に、資料1として「児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会報告書骨子案」がございます。資料2として、1枚紙の「面談強要禁止の仮処分について」がございます。それから、本日は佐藤委員が御欠席ですけれども、書面で御意見をいただいておりますので机上に配布させていただいております。資料は、以上でございます。
○才村委員長
それでは、本日の議事に入らせていただきます。この専門委員会もいよいよ大詰めで、残すところ、本日と21日の2回となりました。本日は報告書骨子案について、事務局から論点ごとに御説明いただきたいと思います。その上で、報告書の記載を見据えながら、どのような結論とするか御議論を頂戴したいと思います。
本日の進め方ですが、可能であれば全ての論点について一通り御議論をいただければと思います。当専門委員会の検討事項として七つの論点がありますけれども、大きく二つに分けて進行していきたいと思います。
まず、比較的議論が集約しつつあると思われる論点が三つありますので、これについて方向性を確認していきたいと思います。この三つの論点の一つは「一時保護の見直しについて」です。二つ目は「保護者指導に対する家庭裁判所の関与の在り方について」、三つ目は「施設入所等の措置及び一時保護が行われていない親権者等がいない児童等の取扱いについて」でございます。その後、まだ議論が十分に尽くされていない四つの論点について、前回・前々回に引き続き、御議論を頂戴できればと思います。
この議論が尽くされていない四つの論点ですが、一つは「施設入所等の措置がとられている場合の施設長等の権限と親権の関係について」です。二つ目の論点が「一時保護中の児童相談所長の権限と親権の関係について」でございます。三つ目が「里親等委託中及び一時保護中の親権者等がいない児童等の取扱いについて」です。最後の四つ目が「接近禁止命令の在り方について」でございます。
時間の配分ですが、大まかな目安といたしましては前半の三つの論点を30分程度で、後半の四つの論点を1時間30分程度で御議論いただければと思いますので、半分程度で御議論いただければと思いますので、御協力をよろしくお願いします。
それでは事務局から、資料の説明をお願いしたいと思います。
○杉上虐待防止対策室長
説明に入る前に、報告書のつくりでございます。七つの検討事項がありますけれども、それぞれ(1)で「問題の所在等」、(2)で「検討すべき論点」、(3)で「専門委員会における議論」、(4)で「検討の方向性」、(5)で「考えられる対応策」という五つの柱を立てて整理しているところでございます。また、(1)(2)につきましては、この議論が始まる前の「児童虐待防止のための親権制度研究会」報告書を基に今回、事務局で付け加えさせていただいております。(3)~(5)につきましては、前回・前々回に御議論いただいた論点ペーパーを基に、事務局で修正したものでございます。資料につきましては、事前に各委員に送付しておりますので、修正を加えた部分の主なところについて説明したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
まず、1番目の論点「一時保護の見直しについて」ということで、資料1の14ページでございます。(3)の「専門委員会における議論」ということで、一番下の段落で「司法の関与以外の行政権と親権者の調整・チェックの場」が必要かという御意見の中で、迅速に処理されることも必要ではないかということで、2か月以上の一時保護を対象とした上で、児童福祉法第28条に基づいて家庭裁判所に強制入所の申立を行っているような事案については対象から外してもよいのではないか。そういう形で必要なケースに限る運用の在り方等を考えるべきではないかという意見があったことを付け加えさせていただいております。
また、(4)の「検討の方向性」の中で、三つ目の段落の最後の部分に「チェックの仕組みが迅速かつ円滑に機能するよう、運用面に考慮が必要である」と、今申し上げた部分について事務局で追加記載しているところでございます。
(5)の「考えられる対応策」でございます。今回、全体的なつくりとしまして修正したところは、二つ目の段落の「意見を聴くこととする」という形で、それぞれの議論の対応策の部分については、「~としてはどうか」という表現にしておりましたが、今回は報告書の素案という形でございますので「意見を聴くこととする」と変えております。また、※6でございますが、前回、意見を聴く場合に保護者からの意見をどのような形で、どのように聴くかということには要検討ということで御議論いただきました。※6にありますとおり、親権者等が審議会の意見を聴くことを望んでいるものを対象としてはどうかという形で書かせていただいているところです。すなわち、児童福祉審議会の機能は、親の意見を聴くとともに、一時保護の期間を延長するという行政の行為をチェックする機能が期待されるということを前提に対応策をまとめさせていただいています。
「一時保護の見直しについて」は以上でございます。
○才村委員長
どうもありがとうございました。2か月を超える親権者等の同意のない一時保護について、特に親権者等が審議会の意見を聴くことを望んでいるものを対象とする。前回までの御議論を踏まえて、そのような方向性が出されているのではないかと思います。
この点に関しまして、御意見等を頂戴したいと思います。
○磯谷委員
読み方ですけれども、先ほどの※6のところで「親権者等が審議会の意見を聴くことを望んでいるものを対象とする」というのは、結局のところ、前に出てきた児童福祉法第28条の申立てをしているケースなどは除くのかどうかというところが、よくわかりませんでした。つまり、端的に言えば児童福祉法第28条の申立てをしているのだけれども、親権者が児童福祉審議会の意見も聴きたいという場合は入ってくるような話になるのかどうかということになります。
二つ目は、「例えば第三者機関である児童福祉審議会の意見を聴くこととする」と。「例えば」となっていますが、これは報告書として最終的にも「例えば」という形で差し支えないのかという形式論と、「例えば」とあるのは何か他のものも想定されていらっしゃるのか。その点を確認したいと思います。
○才村委員長
では事務局から、お願いします。
○千正室長補佐
例えば児童福祉法第28条の申立てを既に2か月以内にしているケースは必要ないのではないかという御意見を前回もいただきましたが、事務局としてもその方向でよいのではないかと思ってはおります。そういうことで皆さまの共通の認識が持てるようであれば、次回の報告書の中でそういうことも触れていきたいと思っています。
もう1点の「例えば」でございますが、ここもこの方向でよいという共通の認識をいただければ、あえて「例えば」と報告書に書かなくてもよいと考えております。
○才村委員長
磯谷委員、よろしいでしょうか。
○磯谷委員
はい。
○松風委員
他のところにもかかわってくると思いますけれども、児童福祉審議会の機能をどう考えるかというところでございます。今回のこの文面でいきますと、保護者が児童福祉審議会の意見を聴くことを望んでいるものということになりますと、保護者は直接、審議会の先生方と意見を交わすということを想定するのではないかと思っております。今まで審議会はそういう役割は担ってきておりませんので、新たな機能ということになると思います。
また、親の意見を聴くというところでは調整機能、要するに親が一時保護されたことについて納得していない内容について議論をすることになりますと、事実関係の認定からしなければならないとすれば、審議会としての機能を越えるのではないだろうかということを危惧するところです。その辺りは、もう少し明確にする必要があるのではないかと思います。
○才村委員長
これについて、他の委員の先生方の御意見を頂戴したいと思います。
ただ、直接聴くなど調整の機能は、既に被措置児童等虐待については本人からの届出や関係者からの通告を受けて調整をするという役割は確かにあったのではないかと思いますが、その辺りはどうでしょうか。
○松風委員
実際は事務局が直接話を聴いておりまして、それを審議会で報告する。または審議会の御意見を伺った上で次の展開を図るといった手続をとっておりますので、内容的には異なってくるのではないかと思います。
○才村委員長
今の松風委員の御指摘について、御意見がありましたら頂戴したいと思います。
○水野委員
確かに今まで児童福祉審議会が予定していた従来の働き方とは違うものになると思います。従来の働き方と違うようなものがあちらこちらで必要になってきていて、恐らく親の申立権については三つのものが必要となってくるだろうと思います。一つは、そのような親のサポートと教育です。そういうカウンセリング能力は、従来は児童相談所のケースワーカーが一身に担ってこられたわけですが、子どもを親と奪い合いながら親のサポートをやるということで非常に児童相談所の現場が疲弊していて、それは少し役割を分けた方がよいだろうということです。
もう一つは、親の側に立って、いわば児童相談所と違う側でサポートしてくれる人を準備する必要があるだろうと思います。そのようなサポートを得ないと、親は司法に救済を申し立てることも難しいでしょう。しかし日本では、その司法があまりにも遠い存在ですし、司法を経由させないと親権制限ができないと言うことになりますと、子どもを救済することができません。ですから、もう一つは、行政の中で司法に代わって、新しく中立的な判断をするという役割をこの審議会に担っていただこうというのが、このアイデアだろうと思います。
そうすると、その後者の二つの役割りを、今まではそのどちらもしていなかったというのが実態だと思いますが、この児童福祉審議会が今後どう担っていくのか、それは恐らく大変なことだろうとは思います。ただ、このような制度設計を新しく組み立てざるを得ないのが現実であり、それは司法に投げるよりは行政の中で工夫していただいて児童福祉審議会の方でお考えいただくのが、まだ現実的な実現可能性があるだろうと私は考えております。
今までとは比較にならない重い役割を担われることになるわけですから、児童福祉審議会は大変な御苦労をされることになると思いますが、それに対応するような方法を、ともかくパイロット的にこれから事務局と手分けして考えていただいて、ということになるのではないかと想像しているのです。
今までも成年後見などで県の審議会に携わったことがありますが、本当に新しくいろいろな問題が起こってきて、それについて一つ一つ具体的に考えながら、むしろ行政内部の制度設計を考えていくというような仕事の仕方をしておりました。児童福祉審議会においても、そのような形で新しいものをつくっていただくことにならざるを得ないのではないかと考えております。大変な御迷惑と御無理をおかけすることは承知しておりますけれども、致し方ないのではないかと思います。
○才村委員長
庄司委員、お願いします。
○庄司委員
この項目だけではなくて、全体に児童福祉審議会を活用しようという方向があって、それについては賛成です。利用できる機関としては児童福祉審議会ぐらいしかないのではないかと思いますので。
ただ、虐待死の検証委員会で構成メンバーの調査をしましたけれども、やはりこの児童福祉審議会にどのようなメンバーを確保できるか。児童福祉審議会の運用をどうすればバックアップできるかということを、マニュアルを作るとか、あるいは何か考えなければいけないのではないかと思います。方向は賛成です。
○才村委員長
ありがとうございます。他に、ありますか。
○豊岡委員
児童福祉審議会の体制の問題というのは、各都道府県は非常に余裕がある状況ではないということは御承知かと思います。そういう意見も述べさせていただきましたので、ぜひ、その辺の手当てがあって初めて動くということを御理解いただいて、どのような手当てが可能なのか、どういうことをやれば新しく道ができるのかということを含めて対応していただきたいと思います。
○松原委員
後ほど施設のところでお話ししようかと思ったのですが、親権者にも多様な意見を述べる機会があってもよいと思います。一時保護そのものに反対であれば行政不服審査、もちろん書面ですけれども、それがあります。それから、保護中のケアの中身について不満な場合は、施設との意見対立等を含めて、後ほど発言しようと思ったのですが、先に発言いたします。
現在は苦情解決の委員会のシステムがありながら、なかなか児童福祉分野は活用されていないのですが、それを活用するような手だてがあると思います。そういったものを除いていって一時保護そのものが続いていて次のステップが決まっていないことに関しての意見を述べたいというものが児童福祉審議会の対象になるのではないかと思うので、そんなに何から何までくるとは思いませんし、そうすると、あとは技術的にどのような工夫ができるかだと思います。私は、児童福祉審議会の委員と親とが直接論議をすることは審議会の性格上、難しいと思いますが、例えばヒアリングという形で意見陳述をしていただいて、質疑応答して退室していただくというような技術的な工夫ができるのではないかと考えました。
○磯谷委員
細かいところになりますけれども、事務局は、どのタイミングで意見を聴くということを想定しているのかということを確認したいのです。ここでは2か月を超えるという話になるわけで、かつ、親権者が審議会の意見を聴くことを望んでいるということになるわけですけれども、例えば2か月を超えて、しばらくして3か月、4か月、5か月と経っていったところで親権者から求めてきた場合にも当然聴くという話になるのかどうか。
それから、2か月を超えたところでいったん聴いたら、それが4か月、5か月、6か月となったとしても聴かないという形になるのかというところが一つ。
それから、先ほど松原委員がおっしゃったところとの関連ですが、何を聴くのかというところですけれど、要するにこれは2か月を超える必要性の有無について聴くということになるのか。あるいは、関連はしますけれども一時保護全体の適否のようなところになってくるのか。仮にそうだとすると、不服申立て等が一方で起こっているときなどは、どうなるのか。調整はしないでよいという結論もあるかもしれませんが、そのときもあえて児童福祉審議会の意見を聴くことが必要だということなのか。この辺りの細かい整理は、何かお考えがありますか。
○千正室長補佐
2か月を超えるということについて意見を聴くことを想定しております。
それから、今は法制的にどのようにかけるかという問題が一方でございますけれども、そのスケジュールが、例えば一番実務的に回りやすいのは2か月を超えたものをかけるのがリーズナブルではないかと考えています。例えば、その前にかけるとなると、実質的には1か月を超えた辺りから準備が始まるということもあるかもしれませんので、2か月を超えた時点でかけるのがリーズナブルではないかという想定をしております。
○才村委員長
よろしいでしょうか。
それでは、今日はいろいろと案件が多いので、本件については以上にさせていただきたいと思います。法律の中で児童福祉審議会の意見を聴くというだけでは済まないで問題で、やはりそれが本来の機能を発揮できるための、運用も含めていろいろとバックアップしていくようなものが必要ではないかと思います。
いずれにしても、今の議論の中では特に児童福祉法第28条で申立てをしているケースは除くとか、今日の議論を踏まえて、もう少し事務局で整理していただければと思います。
ということで、次は5の「保護者指導に対する家庭裁判所の関与の在り方について」です。まず事務局から、説明をお願いします。
○杉上虐待防止対策室長
保護者指導の関係で、資料は17ページ以降でございます。18ページを御覧ください。(3)の「専門委員会における議論」の最後のところでございますけれども、「保護者指導の実効性を高めるため」ということで、司法関与の在り方のみならず、親指導・支援の強化そのものが重要ではないかという御意見がありました。また、児童相談所だけではなくて、そのような活動を行っている民間団体を育成して、そのような役割を担わせることも必要ではないかという御意見がありましたので、付け加えさせていただきました。
それから、(5)の「考えられる対応策」でございますけれども、19ページの最後のところに、そのような意見を踏まえまして「保護者指導の担い手となる民間団体の育成を進めるべきである」という対応策に取りまとめさせていただいているところが、前回の論点ペーパーから変わったところでございます。
○才村委員長
運用面での対応を図るということでございますが、この件につきまして、御意見がありましたら頂戴したいと思います。
よろしいでしょうか。特に御意見がないようですので、こういう形でのまとめとさせていただきたいと思います。
続きまして、次の6「施設入所等の措置及び一時保護が行われていない親権者等がいない児童等の取扱いについて」でございます。事務局から、説明をお願いします。
○杉上虐待防止対策室長
6の「施設入所等の措置及び一時保護が行われていない親権者等がいない児童等の取扱いについて」でございます。ここの部分は正直に申し上げて、あまり論点がなかったのではないかということで、ほぼ前回の資料どおりでございます。22ページの(5)「考えられる対応策」の最後のところに「極力その保護に欠けることのないような環境整備を進めることが必要である」という御意見が多数出ておりますので、対応策の中にはっきりと明記させていただいたところでございます。以上です。
○才村委員長
ありがとうございました。この件につきまして、御意見がありますでしょうか。
○磯谷委員
ここで発言してよいのかどうかわかりませんが、法制審議会の方でも未成年後見人制度が変わることによって、一層後見人になりやすくなることが期待されるわけですが、そのためには例えば報酬の話であるとか責任を問われたときの保険の話などが必要だということが言われていたわけですが、そういった点については報告書の方で何か工夫をされるのでしょうか。
○才村委員長
事務局、お願いします。
○千正室長補佐
22ページの(5)の最後のところで「極力その保護に欠けることのないような環境整備」の一環として、そのような支援措置も検討していくべきであるという趣旨を盛り込んでおります。
○才村委員長
磯谷委員、お願いします。
○磯谷委員
それであれば、この表現では不足ではないかと思います。私としては、例えばこの報告書の最後に何か少し補充的な項を設けていただいて、そこで今申し上げたような未成年後見人のサポートなどについてしっかりやっていく必要があるといった形で書いていただいた方が趣旨が明確になるのではないか。特に、いずれにしても未成年後見人が設けられることはあり得るわけで、そういうことも絡んでくるわけです。要するに私が申し上げたいのは、他のところとも絡んでくるのでここだけに書くのではなくて、最後に別個でお書きいただいた方が私としてはありがたいと思います。
○才村委員長
事務局は、よろしいでしょうか。
○千正室長補佐
御指摘のとおりだと思います。第3項の里親等委託中あるいは一時保護中に児童相談所長が親権代行するというのは、親権を行う者または未成年後見人がいない場合に見つかるまでの間ということですので、この規定があるにせよ、未成年後見人の確保策は進めるべきであるという御意見もいただいておりますので、そこにも書かなければいけないと思います。関係する論点のところに、それぞれ書き込む形が良いのか、別立てにするのが良いのかは、まとめ方があると思いますので、また御相談させていただければと思います。
○才村委員長
よろしいでしょうか。他に御意見はございませんでしょうか。では、この件についてはよろしいでしょうか。
それでは、次に移らせていただきます。引き続き、後半のまだ議論が十分尽くされていない論点が四つございます。まず、事務局から説明をお願いしたいと思います。
○杉上虐待防止対策室長
それでは、資料の1ページに戻りまして、1の「施設入所等の措置がとられている場合の施設長等の権限と親権の関係について」でございます。(1)(2)がありまして、2ページの(3)「専門委員会における議論」で?@「施設長等について」というところで、「等」に里親等委託が入るわけですが、そこの三つ目の段落「さらに」以下を御意見を踏まえて追加で書かせていただいています。組織的な対応を行う施設に比べて、里親は負担感が大きいのではないかという意見、それから子どものためには施設長や里親に権限を付与した上で、その際に、資質の向上や問題があったときの是正方法を併せて検討すべきではないかということを前提として、同じ法律上の扱いとした上で、運用上必要な配慮をするのが必要ではないかという意見を頂きましたので付け加えさせていただいております。
それから、4ページです。ここも、この委員会での議論の「その他」のところですけれども、上から二つ目の段落です。「民法に基づく親権制限の仕組みとの役割分担」も、しっかり示してもらった方が良いのではないかという御意見があったと思います。それを付け加えさせていただいております。
それから(5)「考えられる対応策」ですけれども、基本的には※2、ここのところはまだ「P」にしておりますが、特に重要な事項について親権者の意に反した場合、ここも「児童福祉審議会の意見を聴くこととする」としているわけですけれども、「また、特に重要な事項に該当しなくても、施設長等が親権者の意に反した措置をとろうとする場合において」施設長等が相談できるようなことで、施設長等が都道府県の意見を聴くことができることとしてはどうかと今の時点では記載させていただいています。この点は御意見がいろいろあったかと思います。また、説明書きとしましては「これは、親の意向への配慮・調整を行う観点から、親の意に反して特に重要な措置をとろうとする場合を対象とするとともに」、今申し上げたとおりサポートの観点から施設長等が意見を聴くことができることとしてはどうかということを書かせていただいたところです。
また、「なお」書き以降でもいろいろ御意見をいただきました。ここの御意見は他の事項にもかなり関連する部分です。都道府県等・児童相談所はそもそも措置権や施設等に対する指導権限があるということ、さらに今回は、仮に親権者の意に反して児童の福祉のための措置をとる場合については都道府県等の意見を聴かなければならない枠組みをとることになったことについては、周知徹底を図りなさいというのが一つ目の丸です。
二つ目の丸ですけれども、この枠組みでは対応できない問題が生じている場合、あるいは身上監護に関する問題であっても親権者が繰り返し不当な主張をするなどの場合について、児童相談所が親権制限の申立ができる、あるいは積極的に活用するということについても再度、周知徹底する必要があるのではないかと書かせていただいております。
さらに、施設長や里親等が適切に監護できるように理解を深めるための研修や第三者評価、あるいは里親支援機関の充実等のサポート体制が不可欠ではないかということ。
それから、先ほど児童福祉審議会の機能の充実の話がありました。ここでは「運用方法のモデルを示す等」と書かせていただいていますけれども、児童福祉審議会の機能強化や充実を図ることが不可欠という形で、これらについて併せて実施すべきであるというまとめ方をさせていただいております。
それから、事項は違いますけれども8ページ以降に「一時保護中の児童相談所長の権限と親権の関係について」ということで、施設入所中と異なって一時保護中の児童相談所長の権限に規定がないという形で御議論いただいております。9ページですけれども、枠組みは同じような形を採ればよいのではないかという形で、一括で御議論いただけたらと思います。※3に書いてありますとおり、枠組みの詳細や運用面で配慮すべき事項については1と同様と考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○才村委員長
それでは、まず「施設長の親権について」御意見等を頂戴したいと思います。
○吉田委員
先ほどは失礼しました。幾つかあるのですけれども、最初に、このように施設長の親権が優先するという制度をつくる場合に、前にも申し上げましたけれども当然、措置のときには保護者に対する事前の説明が必要になってくると思います。そこが保証されないと、親としては置いてけぼりになる恐れがあるというので、その点の配慮が一つ必要だろうということです。
それから2点目は、親の意向と異なると施設長が判断すればその意見を聴くということですが、そうでない場合であるとか、施設長が聴くという点について、裁量を持っているということになると、親の意向が果たしてきちんと通るだろうか。その辺りの保証がどのように行われるのかが大変大事になってくるのではないかと思います。
それから、前回もお話ししましたけども、子ども自身が意向を持っている場合に、これをどのように聴取するか。現在でも措置のときに子どもの意向聴取というものがありますけれども、この場面で子どもの意向聴取をどうやって制度の中に組み込むかということも大事になってくるのではないかと思います。その3点をお聞きしたいと思います。
○才村委員長
事務局でよろしいでしょうか。
○千正室長補佐
ありがとうございます。吉田委員が御指摘のように、措置の際には、今も例えば不服申立ですとか、そういうものを教示することになっているわけですけれども、措置入所の際に、こういうことは施設長の権限になるのですよと。ただ、重要なことについては、こういう場合は審議会の意見を聴くことができますよということを併せて、どういう仕組みになっているかはもちろんきちんと説明した上で同意を取るということだと思います。そういうことを、例えば児童相談所運営指針などの中で明確化することも可能ではないかと思っています。
それから、施設長が聴くという場合に、裁量があるのかどうかということですけれども、これは少し悩ましいところでもございまして、基本的には重要な事項などを決めるわけですから、親と話し合いをしながら決めていくのが当然だと思っております。ですから、原則論は聴くのだと思っております。ただ、中には、なかなかコミュニケーションがとれない、連絡がつかないというケースもあると聞いています。そういうときに、必ず連絡をとって同意かどうかを必ず確認をしてからでないと何も措置がとれないということにしてしまうと、それはそれで今と同じような問題といいますか、措置がとれない、子どもが困るということもあると思います。ですから、これは原則として聴くのですということを、これも児童相談所運営指針などで明確化することは可能ではないかと思っています。
それから、子どもの意見聴取です。もちろん、これも子どもの年齢にもよると思いますが、例えば高校の進学でしたら当然子どもの意思ははっきりしていると思います。それは今も聴きながら決めていると思いますけれども、そこをどれくらい明確化していくのか。明確化する必要はあると思いますけれども、どのような形がよいのかは少し御議論いただければありがたいと思います。
○才村委員長
吉田委員、お願いします。
○吉田委員
2点目の親の意向、親の反対があるかどうかの裁量の点ですけれども、今回の制度の中で、親が児童福祉審議会に直接申し立てるのが難しいかどうかです。聴かれないとした場合に、どこかで聴いてもらうようなルートは考えておかなくてよいのでしょうか。一つ、例えば運営適正化委員会などが考えられますけれども、そのルートを使うことになるのでしょうか。それとも、それは必要ないということでしょうか。
○千正室長補佐
聴くべきであるということをしっかり示していきたいと考えています。
○才村委員長
児童相談所の運営指針等で、ということですよね。松原委員、お願いします。
○松原委員
先ほど言いかけたところで、いろいろなルートがあって、もし運営指針にそういうことを書かれて、それを教示するときに運営適正化委員会のこともきちんと親権者に教示しておいて、いろいろな形でやれるようにしておけば、逆に言えば児童相談所や施設はいろいろなサポートを得られるわけですから、良いのではないかと思います。
その上で、今、吉田委員がおっしゃったように、言えない親もいるのではないかということで、どのように表現できるかよくわからないのですが、今は3号措置という施設入所措置をとると、それ単体になってしまいがちです。そのときにセットで在宅指導、2号措置をつけるという考え方ができれば、そこで児童相談所がかかわることもできますし、それから地域によって、そこそこ社会資源が豊かな地域であればそこを民間の団体、これから育成していく団体に委ねることもできますので、そういう形で施設だけに対応を任せない仕組みも採れるのではないかと思います。
関連してもう1点ここについて発言したいのは、5ページの「なお」のところの三つ目の丸で、第三者評価を入れていただいたのは非常にありがたいのですけれども、考えてみると、例えば児童養護施設で児童指導員には資格要件があります。保育士ももちろん資格要件があって、施設長には何もないというのがいつでも気になるのです。ですから、そういう意味ではかなり力量の要る仕事をこれから施設長に期待するので、乳児院・児童養護施設だけでなく、場合によっては障害児施設などにも及ぶ可能性ももちろんあるのですけれども、ぜひ施設長資格というものを。あるいは国家資格化しなくても、少なくとも必須の研修要件のようなものを、ぜひ提案に盛り込んでいただきたいと思います。
○才村委員長
ありがとうございます。今、二つ御提言いただいたと思います。一つは施設だけにそういう調整を任せない。もう少し多重的な取組み・仕組みが要るのではないかということだったと思います。まず、その件について御意見がありましたら頂戴したいと思いますが、どうでしょうか。水野委員、お願いします。
○水野委員
私もこの案につきまして、前回だったと思いますが、施設長の場合も児童相談所長にと申し上げたのは、基本的にはともかく現場に権限を与えるという前提での話です。いちいち児童相談所長に聴かないと動けないということでは子どもは救えませんので、全体の制度設計としては現場に権限を与える、例えば施設長に大きな権限を与えるべきだと思いますが、一方で、親とのトラブルについては、やはりまとめたほうが動きがとりやすいのではないでしょうか。親の権利を守りながら、例えば先ほどの自助団体につなぐという形で親の気づきや援助をする、あるいは親が文句を言うのを助けるという形でトラブルの調整をする必要もあるでしょう。親とのトラブル対応については、できれば児童相談所のところにまとめた方が動きがとりやすいのではないかと思い、前回までは児童相談所長に権限を与え、そしてそれを施設長にいわば授与するという形の提案をしていたわけです。今回このような御提案をいただいて、これにあえて反対はしませんが、いきなり施設長が児童福祉審議会につなぐという設計が良いのかどうか。個人的には、施設長に権限を与えた上で児童相談所長に相談するという道を残しておく方が良い気がいたします。
児童相談所長のところは今でもパンク状態で、そのすべての背景には国家予算を現在よりはるかに多額の資金を児童虐待対応に回さなくてはならないのに、それが可能になっていないという一番悩ましい問題があるわけですが、これからの制度設計で幾らかでも可能な資源はすべて注ぎ込んでやっていくとなると、児童相談所長のところに何らかの法的サポートの担当者がこれからは必要になるのではないでしょうか。あるいは弁護士会から非常勤の弁護士がでかけてお手伝いするという制度設計があるかもしれませんし、法的サポートの担当者が親の権利を守りながら児童福祉審議会等あるいは家庭裁判所への申立てについて専門にやるという形で整うとすれば、児童相談所長へ施設長がつなぎ、そしてそこの担当者が審議会へつなぐという形の制度設計も考えられる気がします。
○才村委員長
それは4ページの「考えられる対応策」の二つ目の段落で、施設長等が一定の場合には都道府県等の意見を聴く、それについて都道府県等は児童福祉審議会の意見を聴くという形で整理してもらっているのですが、今、水野委員がおっしゃったのはそれでしょうか。
○水野委員
ここのペンディングの括弧のところがそういう趣旨ではないかということですが、「都道府県等の」というのが、よくわかりません。私が申し上げたかったのは、何らかのところでセンターが要るだろうと。それは児童相談所長のところをセンターにせざるを得ないのではないかということです。
○才村委員長
では事務局から、少し補足していただけますか。
○千正室長補佐
想定しているのは、施設長が都道府県等の意見を聴いて、それを都道府県等のサポートで良いのか、児童福祉審議会は都道府県とつながっておりますので、都道府県は必要があれば児童福祉審議会に意見を聴くというような2段階の流れを記載しているつもりです。おっしゃるように「都道府県等」というよりは児童相談所かもしれません。そこは少し検討させてください。
○才村委員長
水野委員、よろしいでしょうか。他に、これに関連した御意見は。松風委員。
○松風委員
私も※2の仕組みが良いのではないかと思っているのですけれども、「聴くことができる」とは書いてありますが、児童相談所の責務として適切にそこが運用されているかどうかを常に把握しておく必要があるということを、これは当然のことですけれども、あえてここに加えておくのが良いのではなかろうかと、今の御意見を踏まえて思いました。
○才村委員長
ありがとうございます。大村委員、お願いします。
○大村委員
私は※1について、一言だけ確認の趣旨で発言させていただきたいと存じます。先ほど、吉田委員がおっしゃった3点のうちの最後の点ともかかわりますけれども、この※1で「リスクの高い手術を伴う治療等の医療の問題」というものがございます。ここで書かれているのは、リスクの高い手術を伴う治療等の医療について、親権者に一定の権限があるということを前提にして、その場合に施設の権限と親権者の権限をどのように調整するか、そういう前提の下での議論だと了解しております。と申しますのは、リスクの高い手術を伴う治療等の医療について、そもそも親権者が決めることができるのかという問題があるわけです。これは本人の意思をどれくらい尊重すべきなのかという問題が、医事法上の悩ましい問題としてあるわけですけれども、その問題はひとまず外において、親権者の権限と施設権限の調整のみを言っているという趣旨だと思いますけれども、そういう理解でよろしいですね。
○千正室長補佐
この想定は、監護・教育及び懲戒に関し、その児童の福祉上必要な措置を親権者の意に反してとることができるので、その範囲内にあるものについて、という趣旨です。ただ、重要だからここは慎重な手続をとりましょうという趣旨です。
○大村委員
監護権の範囲に入らない問題があり得るわけですけれども、入ってきたものについては施設が単独でできるわけではないという整理でよろしいわけですね。
○千正室長補佐
はい。
○才村委員長
他に、よろしいでしょうか。もう1点、先ほどの松原委員の御発言の中で、施設長の資格要件、専門性の担保についてですが、これについて反対意見は多分ないと思いますが、事務局の方で何かお考えがあれば、お聞かせいただきたいと思います。
○高橋家庭福祉課長
家庭福祉課長です。5ページの下の二つ目の丸にも書いてありますように、研修の実施です。施設長研修会のようなものもいろいろやっておりますが、最低基準などで資格要件として書こうとすると、よく大学で心理学を修めてとか教育学を修めてとか、そういう形式的なものになってしまうのですが、施設長としてはやはり人格識見が非常に大事で、なかなかこれは客観要件に書きにくい。むしろ、こういう親権の問題など、施設長に対する研究協議会等の大会がございますので、そういうところでの研修をしっかりやって、まず正しく理解していただくという取組が大事ではないかと理解しております。
○才村委員長
松原委員、お願いします。
○松原委員
現実的に資格要件が難しいのであれば、研修もいわゆる任意研修ではなくて、ぜひ必須の研修を準備できないかと思います。
○才村委員長
確かに児童相談所長については受講義務がありますが、施設長についてはないので、その辺の整合性をどうするかということでしょうか。
○松原委員
受講義務までは決められたら良いのではないかと思います。
○才村委員長
「何らかの専門性を担保」とまでいえるかどうか。確保するための方策は非常に大事だと思います。他に、いかがでしょうか。
あとは一時保護ですね。一時保護についても、基本的には施設長の親権と同じ扱いということですが、特に一時保護の部分について、御意見がありましたら頂戴したいと思います。よろしいでしょうか。庄司委員お願いします。
○庄司委員
些細なことですけれども、1ページ目の「事案B」の枠の下に「親権者が異を唱えた場合に、親権者の意向を無視する」と書いてありますが、この表現には別に支障はないのでしょうか。「考慮しない」ぐらいの方がよろしいのではないでしょうか。
○千正室長補佐
確かにおっしゃるとおりだと思います。検討させてください。
○才村委員長
他は、よろしいでしょうか。
それでは次に移らせていただきたいと思います。次は3ですね。「里親等委託中及び一時保護中の親権者等がいない児童の取扱いについて」、事務局から説明をお願いします。
○杉上虐待防止対策室長
資料としては10ページ以降でございます。この部分で変わったところは、今、御議論いただきました1とかなり似通った部分の御議論があったかと思います。11ページの?B「施設入所中について」のところですけれども、最後の「この他、現行法どおり、施設長が親権代行を行うこととする場合には」、今も御議論がありましたけれども「施設長・職員の資質の向上や支援体制の確保、第三者評価の推進等が必要」と加えさせていただいております。
さらに、12ページ以降で「未成年後見人の確保のための取組を進めることも重要」ということも、先ほど磯谷委員から御指摘がありましたけれども、ここの部分でも御議論があったかと思います。
また、これは前回事務局で整理すると申し上げたのですが、児童福祉法によって、施設入所等を20歳まで年齢延長できるわけですけれども、18歳、19歳について整理はどうなっているのかという御発言がございました。それについて書かせていただいております。「この他、施設入所等の措置を延長した結果、児童福祉法の児童の年齢(18歳未満)を超える未成年が引き続き施設入所や里親等委託が継続される場合があるが、この場合にも規定上親権代行を継続できるよう明確に手当すべきであるとの意見があった」と整理させていただいております。児童福祉法第47条第2項も同様と考えられますので、※4で記載しているところです。
また、この辺もずっと御議論があるわけですけれども、親権者等がいる場合のみならず、いない場合についても児童相談所、都道府県等及び児童福祉審議会の意見を聴くことができる仕組みを設けることによりサポートすることが必要ではないかという意見があったところです。それで(5)「考えられる対応策」の「なお」書きで細かくは書いておりませんけれども、1の(5)の先ほど御議論いただいたところで述べたように「施設長や里親の資質の向上や親権に関する制度の理解を進めるための研修の実施、施設の第三者評価の推進等のサポート体制の強化」が必要であるという形で締めくくったところです。以上です。
○才村委員長
ありがとうございました。では、この件について御質問がございますでしょうか。磯谷委員、お願いします。
○磯谷委員
まず1点は、親権者がいない場合に施設長等が親権を行うわけですけども、これについて何か証明書のようなものがあった方が良いのではないか。つまり、例えば医師などが医療行為について同意をという話をしたときに、施設の方はこの規定から「私たちに親権がある。今、親権を行う状態にあるのですよ」という話をしても、医師からすると、例えば親権者の行方が今わからない、刑務所に入っているなどといっても、それはにわかにはわからないものなので、例えばそのようなことを措置権者の方で何か証明書のようなものを発行して、それがあれば「今、親権は児童相談所長が行っているのだな」というような形で第三者がすぐわかるようにしないと混乱が生じるのではないかと思います。この1点はお願いです。
それから2点目は、特に医療ネグレクトのケースを想定してみますと、親権の一時制限が導入されても、恐らく保全処分でやるのだろうということになりますと、職務代行者の選任になると思います。多くが18歳未満の場合ですと、医療ネグレクトの場合はほとんど児童相談所が一時保護ないし一時保護委託をするのではないかと思います。そうすると、本来であれば職務代行者の選任は不要になると思っておりますけれども、一つはそこのところがそのような理解でよろしいのかどうかということ。それから、そうではない場合、あるいは18歳になってしまう場合には一時保護はできませんので、そうするとやはり職務代行者を選任しなければいけない。この場合に、児童相談所長が職務代行者になることが他のところとの兼ね合いからしても多分一番望ましいかと思いますが、これは運用なのかもしれませんけれども、その場合にプライバシーをある意味さらけ出して本籍地などをオープンにして職務代行者となって、そればかりではないのかもしれませんが、よくわかりませんけれども、少なくとも児童相談所長がいわゆる職務としてといいますか、児童相談所の住所でやることは今まではあまりなかったのではないかと思っていますが、その辺りを児童相談所としては児童相談所の所在地、児童相談所の所長として職務代行者になれないと、やはりここは躊躇するところになるのではないかと思います。運用についても私も全体的によくわかっていない部分があると思いますけれども、何か工夫ができるのか。とにかく児童相談所長が職務代行者になる必要があるときに躊躇なくなれるようにすることができるのか。特に、これは法務省の方のことかもしれませんけれども、この辺りについて御発言いただければと思います。
○才村委員長
では、法務省にお願いいたします。
○飛澤参事官(法務省)
ただ今、磯谷委員から職務代行者についてのお話がありました。職務代行者はそもそも民法上の概念ではないのですけれども、保全処分の一環として選定されるもので、特に規定上どうとは書いていないのですけれども、やはり一時性のものということもあり、基本的には個人を想定しているのではないかと思っております。そうしますと、最初のお答えですけれども、児童相談所長が機関として、あるいは職務として選ばれるのはやや難しいのではないか、個人としてとなってしまうのではないかと思っております。ただ、他方で、これが今まさに磯谷委員からの御指摘でもありましたとおり、18歳以上の場合ということになってくるかと思いますけれども、このような場合に例えば既に出されている輸血のガイドライン等を見ましても、18歳以上で、かつ判断能力がある場合については親権者というよりも本人の意向を重視しているようです。また、実際に18歳以上では児童相談所の手を離れており、場合によっては児童相談所長よりも弁護士を含んだ支援者が周りにいらっしゃるケースも少なくないということですので、そういった方が万が一の場合に職務代行者になっていくという道もあり得るのではないかと思っている次第です。
○才村委員長
ありがとうございます。磯谷委員、お願いいたします。
○磯谷委員
おっしゃるとおり、18歳以上になりますと、子ども自身の意思で医療行為などができるのはわかります。一方で、必ずしも能力が十分でないことも想定されるので、そこのところは必要性がないわけではないだろうと思います。この辺りは一つにはこの職務代行者の制度あるいは運用をどう改善するかという切り口もあるのですけれども、一方で18歳以上の子どもについて、児童相談所で一時的に親権を行えるような方法が取れるとするとそちらの方で、つまり保全と併せて児童相談所が親権を行う形で対応すれば、それは結果的には児童相談所長が職でやるということになるのだろうと思います。両サイドの工夫が可能だと思いますけれども、この辺り何か工夫の余地はないものでしょうか。
○千正室長補佐
ストレートなお答えは難しいところですけれども、現行の児童福祉法第33条の8の例がありまして、親権が制限されることが決まれば、もし未成年後見人が選任されていない状態があれば見つかるまでの間にこの規定によって児童相談所長が親権を行うというところに入ってくるので、その規定により手当てができるだろうと思っております。けれども、保全の段階ですと、その規定が効力を発する状態の前の段階だと思いますので、今のところ親権代行は難しいのではないかと思っております。
○才村委員長
磯谷委員、お願いいたします。
○磯谷委員
恐らく、保全の場面だと例の施設などに入所していない親権者がいない子どもたちに対する対応が先ほどありましたよね。あそこはなかなか使えないだろうと思いますが。確かに数としては多いとは申しませんが、やはり児童相談所の方のある意味個人的な形で対応せざるを得ない制度はやはりいかがなものかと正直言って思います。特に18歳以上で必要になるケースはそれなりに深刻といいますか、差し迫ったことがあるのだろうと思いますので、個人としてではなく対応できるように、ぜひしてもらいたいと思います。
○才村委員長
法制審議会の方の部会ではそこは議論にならなかったのですか。直接の民法ではなく家事審判規則か何かですよね。特にそこは何もありませんでしたか。飛澤参事官、いかがでしょうか。
○飛澤参事官(法務省)
これは恐らく機関が、その職務として未成年後見人になれるかという話につながってくるのではないかと思いますけれども、これを民法で一般的に規定するのはなかなか難しくて、結局自然人以外に法人も未成年後見人になれるという形にしておけば、法人が受ければ実質的にその中で職務として対応する余地があろうと思われます。そういったわけで、正面から機関が未成年後見人になれるといった制度設計がしにくいとなると、職務代行者でどこまで書けるかというのは同様の問題を抱え込んでしまうのではないかという印象を持っております。
○磯谷委員
おっしゃるとおりだと思います。この職務代行者に法人がなれると今後なるのかどうかというところを、確定的なお話ではないのかもしれませんけれども、1点お尋ねしたいと思います。
もう1点は質問ではないのですけれども、今、飛澤参事官がおっしゃったことはそうだと思いますので、だからこそ児童福祉法の方で本当は手当てをしていただきたい。やはり児童福祉の問題ですので、そのように私としては思っているのですけれど。
○才村委員長
では、飛澤参事官。職務代行者に法人がなれるのかどうかということですけれど。
○飛澤参事官(法務省)
先ほど申し上げたとおり、職務代行者という概念が民法上のものではないので、私が答えるのが果たしてどこまで適当かという問題はありますが、これは、家事審判規則に出てくる概念で、これについては規則上、特に法人や自然人という区別は書かれておりません。したがって、そこの解釈問題という印象を持っているのですが。
○才村委員長
では、最高裁の方でお願いいたします。
○古谷参事官(最高裁)
すみません。その点は本当に解釈問題だという以上のところは、こちらとしても今のところ持ち合わせておりません。
○才村委員長
解釈によってはまた法人がなり得るということでしょうか。長委員、お願いいたします。
○長委員
解釈問題ですけれども、現行では親権者はもちろん自然人ですし、後見人も自然人ですけれども、法人も後見人になれるとなってきたときには、可能性としてはそのようなものも入ってくることは考えられなくはないと思います。ただ、今のような問題を考える機会は今までありませんでしたから、今後、研究者の協力も得て検討していく必要があるだろうと思います。
○才村委員長
ありがとうございます。非常に微妙なところだと思いますが、よろしいでしょうか。
他に、何か御意見は。松原委員、お願いいたします。
○松原委員
これは先ほどの親権者がいる場合にも及んでくるのだろうと思いますけれども、先ほど吉田委員もおっしゃっていましたが、特に親権者がいない場合に子どもの異議申立てといいますか、施設長が出している監護の方針と子どもの意向が違う。例えば高校生のアルバイトの問題や携帯電話を持つ持たないなど、かなり年長児でそのような問題が現実的にあるのだろうと思いますけれども、これはどのようなルートを子どもの意見表明というか、あるいは異議申立てについて設定できるかということで、そこの工夫があれば教えていただきたい。ホットラインのようなものを設けて、無料電話というシステムをつくっておいて、子ども権利手帳に書いておくということも頭の中で自分で考えるのですが、実現可能かどうかもありますので。
○松風委員
先ほどの監護権のところでも議論になったと同様に、判断に困った場合に、都道府県や児童相談所に相談することができるだけでなく、積極的に適正に実施されているかどうかをチェックする機能として児童相談所にそれを明確に付与しておくべきではないかと思います。やはりそこで常に子どもの意見を定期的に聴くといったようなことが定期的になされる必要があるだろうということ。
それから、被措置児童等虐待でのはがきでの児童福祉審議会に対する申立てといいますか、相談といったようなことも、もう一つ付け加えておくことになるかと思います。
○松原委員
はがきももう少し枠組みを広げるということであればいけると思います。
○才村委員長
それは立法マターというよりも今の制度的枠の運用の問題ということでしょうか。ですから、運用も含めて子どもの意向が反映されるような仕組みというか取組については非常に大事な視点だと思いますので、報告書の中にもぜひ盛り込んでいく必要があると思います。ありがとうございました。他に、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは最後の論点、7の「接近禁止命令の在り方について」に移らせていただきます。事務局から、説明をお願いいたします。
○杉上虐待防止対策室長
それでは23ページ以降の「接近禁止命令の在り方について」です。まず、24ページの最後のところです。専門委員会の議論の中で、事実上自立した年長の未成年者等について不当な介入は必ずしも親権者によるものだけとは限らないことや、成人した後も介入は続くということで、児童虐待防止法だけでは対応できないのではないかと。むしろ現行の人格権に基づく差止請求等によって解決すべき事案ではないかというような御意見。あるいは、その下ですけれども、この他、現行の虐待防止法に基づく、いろいろな制度をより積極的に活用すべきではないかという意見を付け加えさせていただいております。
また、その下の(4)「検討の方向性」ですけれども、民間シェルター等で生活している場合に、真ん中辺りですけれども、親権者の事実上の不当な介入を防止する必要性が高い場合があるということはこの委員会でも何度も御意見が出ていたところで、「あると考えられる」としております。ただ、このような場合であれば常に接近禁止命令を発出することが正当化されることはなかなか難しいという一方の意見があるわけです。そのように書かせていただいた上で、なかなか具体的な制度設計は困難ではないかというようにさせていただいております。また、「一方で」はに続く部分は、大体前回と同じようなことを書かせていただいた上で、その下に人格権に基づく差止請求によって対応することが可能と考えられる、そういったことも書かせていただいたところです。
最後に26ページの「考えられる対応策」の一段落目、それから「すなわち」以降の第2段落目は基本的には前回と同じですが、それに加えて三つ目、四つ目のまた書きの「事実上自立した未成年者や民間のシェルターで生活している未成年者への親権者等の不当な介入」について、人格権に基づく妨害排除請求権、妨害予防請求権としての面談強要禁止を求める訴え、さらにはその仮処分等が可能であるというような御報告もあったところで、それらの適切な利用が可能となるような周知徹底ということを書かせていただいております。また、先ほど申したとおり、これらの必要性はあるという認識の下で、それらについて創設を含む制度改正の要否については現時点ではなかなか難しい問題が多々あるわけで、検討されるべき将来の課題というようにとりあえず事務局で整理したところです。
この点につきまして、いろいろと御議論があると思いますのでよろしくお願いいたします。
○才村委員長
どうもありがとうございました。事務局の説明の中でも、人格権に基づく差止請求のお話がありました。また、前回の御議論の中で民間シェルターや事実上自立した未成年に対する親権者の不当な介入につきましては、現行でも人格権に基づく差止請求の活用が可能であると最高裁、法務省からお伺いしたところです。
まずは人格権に基づく差止請求の概略につきまして、法務省の飛澤参事官から御説明いただきまして、その後、議論に移らせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○飛澤参事官(法務省)
それでは、私から少し説明させていただきます。この人格権に基づく面談強要禁止というのは直接的に民法等に明文の規定があるわけではないので、断定的なことを申し上げることはできませんけれども、他方で実務ではある程度認知されているものと理解しております。具体的には人の生命・身体に危害を及ぼすなど人格権侵害行為が継続、反復して行われるような場合は人格権に基づき、その侵害者に対してそのような行為をしないよう差止請求ができるということが実務上よくいわれているところであると理解しております。そういったところから、実際にこの差止請求は本案あるいは保全処分のいずれでもできるのですけれども、実務上は緊急性の問題から、本案の訴え提起前に、民事保全法に基づく仮の地位を定める仮処分命令として利用されるのが通常かと思います。
ということで、資料2として、お配りしたペーパーでは「面談強要禁止の仮処分について」ということで簡単に説明をまとめさせていただいております。ここに書いてありますとおり、面談強要禁止の仮処分というのは、まさに仮の地位を定める仮処分の一種として発することができるものと考えております。その場合に根拠規定となるのは民事保全法第23条第2項ということで下の「参考条文」の所に書いてあります。
そして二つ目の丸ですけれども、子どもの利益を保護するために親権者による事実上の不当な介入を防止する必要性が高いような事案において、まさにこういった仮処分の一種として面談強要禁止の仮処分命令が発令されるのではないかということです。この仮の地位を定める仮処分命令ですけれども、この命令を発するには口頭弁論または債務者、つまり命令を出される側ですが、これが立ち会うことができる審尋期日を経なければなりません。原則はそうですけれども、審尋期日を経ることができないような事情がある場合、つまりそのような審尋を経ることによって目的を達成することができないような極めて例外的な事情ですけれども、そういった事情があるときは、その期日を経ることなく仮処分命令を出すという道もあります。
そして、この仮処分命令が発せられた場合にこの命令がどうやって担保されるかということですが、これが四つ目の丸に書いてあります。命令に従わない場合には、間接強制といって、これに従わなかったら幾ら支払いなさいと金銭の制裁を科すという形で担保される構造になっているところです。簡単ですが、以上を「面談強要禁止の仮処分について」の説明とさせていただきます。
○才村委員長
ありがとうございました。「債権」や「債務者」というと、お金の貸し借りの関係にある当事者かと思いますが、そうではないのですね。素人にはよくわからないのですが。
それから上から二つ目の丸ですが、こういった面談強要禁止の仮処分命令というのは、今までに出された案件はあるのでしょうか。最高裁の方にお願いいたします。
○古谷参事官(最高裁)
これは地裁で保全処分ということになりますけれども、かなり件数はあります。
○才村委員長
それでは、御質問・御意見を頂戴したいと思います。磯谷委員、お願いいたします。
○磯谷委員
古谷参事官に質問です。このような児童虐待の絡みで面談強要禁止の仮処分などが結構出されているというお話でしょうか。
○古谷参事官(最高裁)
私が把握しているのは、親族間でいろいろとトラブルがあって出たケースがあるという限りのもので、児童虐待そのものについて出たかどうかは把握しておりません。
○才村委員長
磯谷委員、お願いいたします。
○磯谷委員
今、「面談強要禁止の仮処分について」の御紹介をいただきました。このような制度があって、使うという選択肢も一つあるというのはそのとおりだと思いますけれども、やはり前から申し上げているように、これにはかなり限界があるのではないかと思っております。やはり最大の問題は民事の問題で、最後に強制執行のお話もありましたが、所詮、私人の力で命令に従わなかったということを明らかにするということ自体もなかなか困難である。ましてや常に強制執行にスムーズに行くかというと、私もすべての事案はよくわかりませんけれども、そう簡単な話ではないと実務上理解しております。
一方で、接近禁止命令ということになれば、これは刑事処分を伴うということになりますと警察の御協力がいただけることになって、場合によってあまりひどいケースについては逮捕という形でのかかわりも可能だということになるので、やはり効果としては随分と違うのだろうと感じています。まさに今はDVの保護命令が非常に活用されている点を考えますと、もし面談強要禁止の仮処分で事足りるということであれば、恐らくDVの保護命令も本来は必要がないということにもなりかねないのだろうと思います。そのようなことからすると、決してこの有効性が全くないと言うつもりはありませんけれども、やはり接近禁止命令が必要であるということを否定するものではないのだろうと私は理解しております。以上です。
○才村委員長
ありがとうございます。今の磯谷委員の御発言に関連して、御意見はありませんか。
○飛澤参事官(法務省)
前回も私は少し発言させていただいたのですけれども、接近禁止命令を刑罰で担保することになると、恐らく接近禁止命令を発令する要件自体が民事的なもの以上にかなりハードルが上がってくるだろうと思います。恐らく参考になるのが、今のお話にも出た配偶者暴力防止法の保護命令の要件が一つ想定されるわけですが、これはまさに生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときという要件を掲げてているわけです。接近禁止命令も、もしこれに相応するような要件を課すことになると、それはそれで従前から磯谷委員が例に挙げられていたような親がお金の無心で付きまとうなど、そういったようなものはほとんどこの刑罰担保の接近禁止命令から落ちてしまうのではないかと思います。そうだとすると、ほとんどの場合は基本的には先ほど申し上げた民事の面談強要禁止の仮処分等で対応せざるを得ないのではないかといった現状認識があるのですけれども、そういった点はどのようにお考えでしょうか。
○磯谷委員
現行の接近禁止命令がほとんど使われていないという状況では申し上げにくいのですけれども、しかし、刑罰で担保されるものは既に児童虐待防止法の中には一つ設けられているわけですので、今、飛澤参事官がおっしゃったほど、本当にハードルが高くなるのかどうかというのは、まさに立法をどのような要件にするかという問題になるかと思います。そこはいろいろな場合があり得ると思っております。
○才村委員長
今のやり取りに関連して、何か御意見・御質問はありませんか。大村委員、お願いします。
○大村委員
先ほど法務省から御説明いただいた面談強要禁止の仮処分についてということで、磯谷委員から裁判所にどれぐらいの実例がありますかというお尋ねがあったわけですけれども、この問題について弁護士の方々がそれを使おうと考えたことはありますか。
○磯谷委員
率直に言って、私も、あるいは私の周りもほとんど聞かないです。詳細を今、思い出せませんのであまり申し上げられませんけれども、しばらく前に確か都内でそういったことを検討するということを弁護士から聞いたことはありますけれども、現実に今は民事の仮処分をやるとすると特別代理人の選任のような形が必要になってくると思います。親権が止められていて未成年後見人が選任されていれば、それはそれで結構でしょうけれども。そういったハードルもあるものですから、ざっくばらんに言ってしまえば「身を隠す」というところの方が先行しているということかと思います。これについて、あまり十分な答えになりませんけれど。すみません。
○大村委員
この面談強要禁止の仮処分について、先ほどから御説明いただいているのですけれども、これがどれぐらい実効的に機能しているのかは使ってみないとわからないところがあるわけです。しかし、実際には裁判所でもこのような案件について使われているかどうかはわからないということですし、弁護士の先生方もまだ使ったことがないということが、今のやり取りである程度明らかになったと思います。
他方、飛澤参事官からお話がありましたけれども、面談強要禁止の仮処分の要件と新しく想定されている接近禁止命令の、手続的なことについて磯谷委員がおっしゃいましたけれども、実体要件を比べて見ますと、面談強要禁止の仮処分の方が少し軽いのではないかと思います。軽いものをうまく使えないということだと、重いものを設けてみても、メッセージ効果はあるかもしれませんが、実際にどれぐらい使えるのだろうかという感じがいたします。せっかく面談強要禁止の仮処分というものを出していただきましたので、これをしばらく運用してみて、運用の実績を重ねてみるのも一案ではないかと思って伺っておりました。
○才村委員長
ありがとうございます。今の御発言に関連して、御意見がございますでしょうか。古谷参事官、お願いします。
○古谷参事官(最高裁)
裁判例の補足で、詳細はわからないので、磯谷委員が念頭に置かれているケースかどうかはわからないのですけれども、親が暴力を振るう事案で、それに対して反撃の手段として子が親に対して申立てをしたケースは紹介されております。
○才村委員長
他には、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。今のやり取り以外でもこのテーマについて御発言がありましたらお伺いしたいと思います。よろしいでしょうか。
今のところ、まずはこの面談強要禁止の仮処分についてはとにかく活用し、しかも一方でこの児童福祉法第28条でさえ接近禁止命令が出された例がないということですので、当面は仮処分の活用を図ることとして将来的課題として報告書の中では整理させていただくという対応でいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、当初の予定よりも早く終わったのですが、接近禁止命令は以上に。
○吉田委員
最後のところで、仮処分命令の話が出ましたけれども、申し立てる側の負担というものもあると思います。例えばシェルターに入っている年長の子どもが自分の意思でやろうとした場合のサポートが当然必要になってくるわけで、そこの手当てをしておかなければ、これが使えるとしてもハードルが高くなってくるかもしれませんので、そうした意味での使えるような手立てをどこかで講じておかなければ。弁護士の先生のかなり献身的な御努力に負うことが多くなると思いますが、それだけに期待するのはどうかということで、そうした面でのサポートもどこかで触れておく必要があるのではないかと思います。
○才村委員長
ありがとうございます。他は、よろしいでしょうか。今日は佐藤委員が欠席ですが、佐藤委員から御意見を頂戴しています。またお目通しいただいて。もう1回機会がありますので、佐藤委員の御意見に対しまして何か御意見があれば次回にお伺いしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
今日の予定している案件は、それですべて終了ということになりますか。
松原委員、お願いします。
○松原委員
この制度設計そのものが早めに終わったので発言しておきたいのですが、この議論の中で児童相談所への期待もかなりされていますし、社会的養護を担う施設、特に施設長にもいろいろ権限付与されて、それぞれ社会的期待が高いと思いますけれども、水野委員もおっしゃるように今は現場がものすごく大変で、これだけのことを期待するのであれば、そういう現場の強化をぜひしていただきたいと思います。同時に、物理的なハードの面でいうと本当に多様な子どもが入ってくる中で、一時保護所も厳しい状況にあって、厚生労働省は昨年緊急整備されて問題は認識されていると思いますけれども、虐待という大きな傷を負ってきた子どもが生活する場としては厳しいものがあって、もう少しきちんと整備していく必要があると思います。ぜひ、この機会にそういう子どもを引き受ける施設、そこの全体のプランニング。あるいは措置権を持っている児童相談所の強化・充実ということも図っていただきたいと思います。
○才村委員長
ありがとうございました。非常に大事な視点を御指摘いただいきました。制度改正のたびに制度は緻密になって、それなりにいろいろな武器が与えられるというのは、子どもを保護する上で非常に結構なことだと思いますが、一方でそれを担う人材は、おっしゃるように児童相談所も施設もあっぷあっぷの状態ですので、そこのマンパワーが追いつけなければ、体制が追いつけなければこういった制度も結局は絵に描いた餅になってしまうのではないかと思います。ですから、ぜひそういう体制強化も不可欠な課題であるということを報告書の中に盛り込んでいく必要があると思います。ありがとうございました。
磯谷委員、お願いします。
○磯谷委員
今の話とは関連がないのですけれども、発言したいのは児童相談所の調査権限の話で、前にも少しお話ししたかもしれません。当初、親権の問題とは異なると思っていましたので、あまり発言していなかったと思いますが、今回は親権の一時制限など非常に児童相談所が対応することが増えてくるだろうし、そういった場合に裁判所にきちんとした主張や証拠を提出するためには児童相談所がきちんと調査ができなければおかしいだろうと思っているのです。一方、児童福祉法は今のところ児童相談所の一般的な調査権限、どこかに照会ができるとか、調査なり嘱託をするといった手立ては特に講じられていないわけですけれども、これを機にぜひそういった児童相談所の調査権限も規定していただきたいと思います。今のような親権制度をよく考えると関連があるのではないか。児童相談所の役割が増えてきて裁判を申し立てたりすることが増えてくるとすれば、関連があると考えると、報告書のどこかにそういったものも盛り込んでいただけないかというのが、この時期になって大変恐縮ですけれども、私の考えです。
○才村委員長
聞き逃したのかもしれないのですが、児童相談所の調査権限の明確化をということですが、具体的にはどういったことでしょうか。
○磯谷委員
幾つかやり方はあると思いますけれども、まず一つはいろいろな公私の団体や官庁といったところに対して調査を嘱託して回答をいただくとか照会ができるとか、そういったものというのは民事訴訟法や刑事訴訟法の捜査のところでもオリジナルの規定があると思いますけれども、そういったものでもあればよいと思っております。
○才村委員長
ありがとうございます。あれは平成19年の改正ですか、児童福祉法の中で公的機関については当事者に甚大な影響がない限り、情報を提供することができるという条文が盛り込まれましたよね。それとの関連は、どうでしょうか
○磯谷委員
おっしゃるのは児童虐待防止法第13条の第3項のことかと思いますけれども、あれは地方公共団体の機関が対象になっていて、それだけなのです。それから、児童虐待だけに限っているところで本当に使いやすいのかどうかという問題もありますので、児童相談所の役割は児童福祉法がベースですから、きちんと児童福祉法に書いていただいて、また児童相談所の職務全体に活用できる調査権限があってもおかしくないのではないかと思っております。
○才村委員長
ありがとうございます。今の磯谷委員の御発言に関しまして、水野委員。
○水野委員
磯谷委員がおっしゃることもわかりますし、ともかく現在のさまざまな施設にありったけの余力を、施設外の人材・組織をありったけ使って動かすしかないのだろうと思っています。現在は先ほど松原委員がおっしゃいましたように、非常に悲惨な状態で子どもたちを預かっている施設自体6畳に11人が寝ているとか、小学生のうちは1人1枚の布団ももらえなくて、複数で1枚の布団に寝ている。その中に例えば性的な虐待を受けた子どもたちが混じっていて、そういう施設の中でさらに虐待の再生産があるという状態で、引き離しすら現場では思い切ってやれない、引き離しが非常に必要なことがわかっていてもそれができないという実態があって、どこから手をつけていってよいのかわからないくらいの状態です。ともかく、ありったけのさまざまな組織の御協力を得るしかないのだろうと思います。
先ほどの最後の接近禁止命令の話ですが、佐藤委員の御意見にも、「児童虐待は「犯罪」である。課題はかかる犯罪から子どもを速やかに救出することにある」とありますが、刑事的な関与も、確かに先ほど磯谷委員がおっしゃいましたように、私は必要だと思っています。今まで家庭内の暴力については、配偶者間であれ親の子どもに対する暴力であれ社会が介入することがあまりにも少なすぎて、この介入においては刑事的な介入というのも今よりもっと積極的にしていかなければならないと思っております。それにもかかわらず、先ほど発言しなかったのは、こういう命令を条文でつくることによって、刑事は劇薬ですので、それが現実に使われなかったように、事態がどれほど違ってくるのかと思ったからです。それよりは今あるものをできるだけ駆使して、そして警察で例えば先ほどの面談強要禁止の仮処分が出ているようなときは、積極的に被害者を守らなければならないという警察の現場での、むしろ啓蒙といいますか、一線に当たっている警察官たちに助けに入っていただくという組織的な教育というものの方が、もしかすると有効ではないでしょうか。条文をつくって事足れりというのは疑問で、刑事は劇薬ですから、できるだけそういう形でのさまざまな組織の協力を仰いで、子どもたちを救出できる、ありとあらゆる手段を使っていただきたいと思います。以上でございます。
○才村委員長
制度的なマターと運用の中でいろいろな工夫する余地がまだまだあるという御発言だったと思います。ありがとうございました。他に、各委員の先生方はよろしいでしょうか。では水野委員、お願いします。
○水野委員
1点だけでございます。これはまだ法制審議会で議論が固まっていない点でございますので、そちらを受けて対応していただくことになると思いますが、「懲戒」という言葉がそこここに出てまいります。現在法制審議会では懲戒権を削除するか、あるいは何らかの形で残すかということについての議論の結論が最終的にはまだ出ておりません。私自身は「懲戒」という言葉を民法典から削除したいという立場でございますけれども、日本社会にはさまざまなお考えがあって、それに対する反応からあるいは残すという形になるかもしれませんが、もし削除することになった場合には、こちらの方の「懲戒」という言葉は全部なくしていただくことになるだろうと思います。それは確認だけでございますが、それとともに「懲戒」という言葉について非常に危惧しているということを一言申し上げさせていただきます。
○才村委員長
法制審議会の検討のタイミングがあると思います。間に合うようであれば、ぜひそうやっていただきたい。今の御発言に関連して、事務局から何かありませんか。
○千正室長補佐
懲戒権については法制審議会で検討していると承知していますが、児童福祉法第47条の第2項に「監護、教育及び懲戒に関する」という規定がございまして、ここは関連してくるだろうと思っています。そこの児童福祉法第47条第2項の趣旨は、施設が現実に子どもを養育する立場にあるので、親権類似の規定を置いているということでございますので、恐らくこれは法制的な議論があるとは思いますけれども、民法の親権の規定が変わればこちらの方も同じように考えるのではないかと考えています。報告書に載せる話とは違うかもしれませんけれども、考え方としてはそうではないかと思います。
○才村委員長
ありがとうございます。よろしいでしょうか。
それでは、本当に活発な議論をありがとうございました。議論も尽くされたようでございますので事務局から、次回の日程等について連絡をお願いしたいと思います。
○杉上虐待防止対策室長
まず日程でございますけれども、12月21日火曜日10~12時ということで、場所は厚生労働省の12階、専用第12会議室でございます。次回は報告書を御議論いただくということで、報告書のつくりでございますけれども、今日は骨子案という形で出させていただいておりますけれども、通常でありますと前文があって最後に「おわりに」という取りまとめがあると思います。先ほどから委員長に御指摘いただいています児童相談所等の体制整備のような話や全体にかかるようなものは、ぜひそこに書き加えるようにという御指示であったと思っております。そのような今日いただいた議論を踏まえて報告書をつくらせていただいて御議論いただこうと思っているところでございます。よろしくお願いします。
○才村委員長
それでは、これで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
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