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2010年11月16日 社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会第6回議事録

雇用均等・児童家庭局

○日時

平成22年11月16日(火) 10:00~12:00


○場所

厚生労働省 共用第8会議室


○出席者

委員

才村委員長 磯谷委員 大村委員 長委員 佐藤委員
庄司委員 松風委員 豊岡委員 松原委員 水野委員
吉田委員 (欠席:中島委員)

オブザーバー

古谷参事官 (最高裁判所) 進藤局付 (最高裁判所)
飛澤参事官 (法務省) 羽柴局付 (法務省)

厚生労働省

高井雇用均等・児童家庭局長 田河総務課長 高橋家庭福祉課長
杉上虐待防止対策室長 千正室長補佐

○議題

(1) 里親等委託中及び一時保護中の親権者等がいない児童等の取扱いについて
(2) 施設入所等の措置及び一時保護が行われていない親権者等がいない児童等の取扱いについて
(3) 接近禁止命令の在り方について
(4) その他

○配布資料

資料1児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する個別論点の検討(1)(法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会資料)
資料2児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する個別論点の検討(2)(法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会資料)
資料3第6回児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会論点ペーパー

○議事

○才村委員長
 定刻になりましたので、ただ今から「第6回社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会」を始めさせていただきたいと思います。委員の皆さま方には、御多用のところを御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、松風委員がまだおみえではないのですが、間もなくおいでいただけると思います。また、中島委員は御欠席との連絡を頂戴しております。その他の委員の方々には御出席いただいております。
 まず、事務局から資料の確認をお願いします。

○千正室長補佐
 資料の確認をさせていただきます。
 最初に議事次第、座席表がございます。それから、資料といたしまして、資料1「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する個別論点の検討(1)」、これは法制審議会の資料でございます。資料2は「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する個別論点の検討(2)」でございます。資料3は「第6回児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会論点ペーパー」となっております。資料は以上です。不足等がございましたら、お申し出ください。

○才村委員長
 よろしいでしょうか。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。本日は、法務省から資料1、資料2として法制審議会での議論の状況を御説明いただき、その後、事務局から資料3の論点ペーパーを説明していただきたいと思います。この論点につきましては、前回と同様、さらに具体的な制度設計に向けた議論を頂戴できればと思っております。
 それでは、法務省の飛澤参事官、よろしくお願いいたします。

○飛澤参事官(法務省)
 法務省から、法制審議会の児童虐待防止関連親権制度部会における議論状況を簡単に御紹介いたします。
 同部会におきましては、本年3~7月に6回の会議を開き、7月下旬に「児童虐待防止のための親権制度の見直しに関する中間試案」を取りまとめました。そして、8月上旬から9月上旬に掛けてパブリックコメントの手続きにより意見募集が行われました。中間試案およびこれに対して寄せられた意見の概要については、前回の会議で千正室長補佐から説明していただいたとおりでございます。
 その後、10月に部会の審議が再開されまして、中間試案で複数の考え方が挙げられていた論点や、なお検討するものとされていた個別論点を中心に、さらに審議が進められているところでございます。
 審議の対象は大きく三つございまして、1番目が「親権制限に係る制度の見直し」、2番目が「未成年後見制度の見直し」、そして3番目が「その他の事項」となっております。順次、その議論状況等の概要について御説明いたします。
 1番目の論点は、現在の親権喪失制度が児童虐待に対する対策として使いづらいなどという指摘を踏まえ検討対象となっているものであります。2番目の論点は、親権を制限された場合の受け皿となる未成年後見人について、適切ななり手が見つかりにくいなどの指摘を踏まえ検討対象となっているものでございます。3番目の論点は、親権の行使に当たり、子の利益の観点を明確化する方策等について検討するものです。
 お手元に、10月の2回の会議で使用した資料をそれぞれ資料1、資料2として配付させていただいておりますので、そちらを御覧ください。
 まず、第1に「親権制限に係る制度の見直し」でございます。これに関して検討されている論点については、資料1の1~10ページに「第1」として、資料2の2~3ページに「第4」としてそれぞれ記載されています。この見直しは児童虐待に対する対策の一環として児童福祉法上の措置等では対応しきれないような場合に、子どもの安定的な監護を図るために家庭裁判所の審判によって、民法上適切に親権を制限できるようにするという観点から行われております。親権制限の全体的な制度の枠組みとして既存の親権の喪失制度および管理権の喪失制度以外に、期限を設けて一時的に親権を制限する制度を新たに設けることを前提に、さらにどのような要件を設定するか、制限の期間をどうするかなどといった具体的な制度設計について議論が行われております。
 なお、親権の一部を制限する制度を設けることについては部会におきましても、またパブリックコメントにおきましても賛否両論があるところですので、引き続き検討を進めているという状況です。
 この他に、親権の喪失の原因についても見直しを行っており、親権者に非難可能性または帰責性があることは必要的な要件ではないという点について、部会内で共通の認識を有するに至っております。
 第2に「未成年後見制度の見直し」に関する議論状況について御説明いたします。まず、現行民法では成年後見については法人による後見、複数の後見人の選任のいずれも認められておりますが、未成年後見については、後見人は自然人に限られ、後見人の人数も一人とされております。この点に関する論点は、資料1の10~13ページに記載されております。部会では、適切な未成年後見人のなり手が見つかりにくく、ひいては子の安定的な監護を図るために親権を制限する必要がある場合でも、申立てが躊躇される一因となるという指摘がされていることから、法人による未成年後見および複数の未成年後見人を選任することを認めることとしております。そして、それらを前提に法人の未成年後見人を選任する場合の考慮事項については、既に法人による後見が認められている成年後見の規定を参考に議論を進め、また、複数の未成年後見人の権限行使の規律についても議論を進めているところでございます。
 第3に「その他」の検討事項につきましては、資料2の1ページに「第3」として記載しております。子の利益の観点の明確化として民法の身上監護の規定に「子の利益のために」という文言を加える方向で議論が進められております。
 また、懲戒に関する規定については、懲戒場に関する部分を削除することを前提に、規定の見直しについて議論が進められております。
 以上のとおり、現在、法制審議会の部会で検討されている親権制度の見直しは、民法すなわち家族法における制度の在り方という枠組みの中で児童虐待に対する対策の一つとして、より使いやすい制度を検討するという観点にも十分に意を用いつつ行われているものと理解しております。
 簡単ではございますが、以上で法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会での議論状況についての報告を終了させていただきます。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。今の御説明に対しまして、御質問等はございませんでしょうか。
 庄司委員、お願いします。

○庄司委員
 資料2の1ページに「子の利益の観点の明確化等に関する個別論点」ということで、「親権を行う者は、子の利益のために」というのは非常に適当だと思いますけれども、その2の「懲戒」については、民法第822条1項の後半部分と2項ということで、懲戒をするということ自体を、この規定をなくすということは全然議論にはなっていないのですか。

○才村委員長
 飛澤参事官、お願いします。

○飛澤参事官(法務省)
 今、御指摘の点も当然議論になっております。ただ、懲戒に関してはいろいろな御意見があるところですので、その点も踏まえ今後どうするかということをさらに検討していく必要があると思っております。以上です。

○才村委員長
 よろしいでしょうか。それでは、他にないようですので、議事の(1)へ入っていきたいと思います。
 まず、「里親等委託中及び一時保護中の親権者等がいない児童等の取扱いについて」、事務局から説明をいただきたいと思います。

○杉上虐待防止対策室長
 今日は残った三つの事項について御議論いただきたいと思います。
 1点目は、今、委員長からもありましたとおり、「里親等委託中及び一時保護中の親権者等がいない児童等の取扱いについて」です。資料3の1ページです。「これまでの議論」に書かせていただいているとおり、里親等、この場合は里親またはファミリーホームですが、これは前回の児童福祉法の改正によりまして「5~6名の子どもを養育者の住居において家庭的な保育を行う事業」となっているわけですけれども、このような場合の委託中あるいは一時保護中においても、施設入所中と同様に、親権を行う者又は未成年後見人のいない児童について、見つかるまでの間、親権を行う仕組みが必要ではないかというような論点があったわけですけれども、これについて、仕組みを設けること自体には特段の反対意見はなかったと承知しております。ただ、具体的に誰が親権代行者になるかということで、いろいろな意見が提起されております。
 1点目は、1の「里親等委託中」で、里親についてでございますけれども、組織的に対応する施設と異なって、個人であり、様々な人がいることから、児童相談所長が行うという仕組みが良いのではないかという意見があったわけです。また、平成16年の児童福祉法の改正の際にも、ここに書いているとおり、親権を行うこととはされなかった経緯もあるということでございます。
 さらに、一番下のところで、里親関係者の方からヒアリングをしていただいたわけですが、親権については児童相談所長が担って、里親はその範囲内で日常の監護について責任を持つという役割分担が望ましいのではないかといった意見が出されたと承知しております。
 2ページの2「一時保護中について」です。これについては特段の御異論はなかったと思います。ただ、どの児童相談所長が親権を行うのかということで、形としては一時保護を行った児童相談所長が行うことが適当ではないかという意見があったと承知しています。
 次に、3「施設入所中について」です。先ほど申し上げたとおり、現行の児童福祉法第47条1項において、児童福祉施設の施設長が親権を行うことになっているわけですけれども、今回、里親委託中あるいは一時保護中において児童相談所長が親権を行うとすることとした場合については、施設入所中を含めて児童相談所長が親権を行うと変えた方がいいのではないかといった意見が出されたわけであります。理由についてはそこに書いておりますとおり、親との対立の矢面に立つというようなこと、措置権との関係等というような意見が出されました。一方で、施設入所中は現行制度においても施設長が親権を行うことになっておりますので、その実態を考えればあえて権限を移す必要はないのではないか。さらに、児童相談所の体制を考慮すれば困難ではないかという議論もされたわけでございます。
 (2)の「検討の方向性」に書かせていただきましたが、里親委託中及び一時保護中については何らかの親権を行う仕組みが必要ではないかということが結論ではないかということ。二つ目の段落では、受け皿としては児童相談所長が担うことが適当ではないかという考え方で、進めるのが適当ではないかとしているところでございます。さらに、施設入所中のことですけれども、二つの意見が出ているわけですが、施設長が親権を行うという現行制度を維持することでどうか。そもそもそれに優先して措置権を児童相談所長が行使するという現行の仕組みになっているので、そのような方向で検討してはどうかと事務局ではまとめさせていただいております。
 3ページに移りまして「考えられる制度設計」としましては、先ほど申し上げた繰り返しになりますが、里親等委託中及び一時保護中についても、親権を行う者又は未成年後見人のいない児童については、見つかるまでの間、児童相談所長が親権を行う仕組みを制度として設けるという方向性で考えてはどうかとまとめさせていただいております。御議論等をいただけたらと思います。

○才村委員長
 ありがとうございました。(1)について、御説明いただきました。この件に関しまして、議論に入っていきたいと思います。御意見・御質問を頂戴したいと思います。
 磯谷委員、お願いします。

○磯谷委員
 今、御説明いただきましたうち、最初の里親等委託中及び一時保護中の親権者がいない児童についての部分につきましては、賛成でございます。それに対して、施設入所中の児童に対して、従前通り施設長が親権を行うことについては、私は反対で、措置をしている児童相談所長が親権を行うという構成にすべきだと考えております。理由につきましては、前回、親権者がいるところでの議論をかなりいたしましたので、ずいぶん重なると思いますけれども、一つは2ページの一番下のところにも児童相談所長の措置権の方が施設長の親権に優先するということは書かれておりますけれども、実際に施設長の親権行使に問題があったとしても、児童相談所長が措置変更できるかというと、それはさまざまな事情、つまり子どもが学校になじんでいることや地域とのかかわりなどさまざまなことを考慮せざるを得ず、従って措置権が優先すると抽象的に言ったところで、それほどコントロールが及ぶわけではないと考えております。本当にしっかりやられる施設長もいらっしゃいますけれども、全国的に見ると力量もさまざまで、また施設内虐待ということも実際に報道されているところでございますので、やはりこういった点については行政機関である児童相談所が責任を持つことが望ましいと思います。
 それから、今回のこの制度も私から見ると少しちぐはぐなような気もいたしまして、例えば一時保護中については一時保護所、つまり子どもが暮らしているところの一時保護所を管理する児童相談所長ではなく、一時保護処分を行った児童相談所長が親権を行うと整理しておりまして、必ずしも子どもが暮らしているところを直接監督するところが親権を持つわけではないということ。一方で、今の施設入所中の方はもともとの措置を行っている児童相談所長が親権を行うのではないという、そこのずれも理解しにくいところであります。また、里親や先ほども御紹介がありましたファミリーホームといったところ、一方で施設の小規模化ということを考えますと、確かに現状は質的に違うかもしれませんけれども、それは施設も里親ないしファミリーホームも接近してきているのではないかと思いますので、本質的にこのような別の取扱いをすることはいかがなものかと思います。長くなりましたけれども、以上のように「施設入所中についても児童相談所長が親権を行う」と改めるべきだと思います。以上です。

○才村委員長
 ありがとうございます。今の磯谷委員の御発言に関連して。
 松原委員、お願いします。

○松原委員
 私も、もしこの検討の方向性で進むとしたら、里親と施設長は違うということがきちんと担保されなければいけないと思います。磯谷委員もおっしゃったように、本当に児童養護施設長もさまざまですし、ある意味どなたでもなれてしまうような形になっています。従って、施設が里親とは違ってこのようなことをやり得る力を持っているということをきちんと担保していただく。それが施設長資格なのか必須の研修なのかは、いろいろな制度設計ができると思いますけれども、併せて施設長が職員全部を監督できるわけではないので、施設職員そのものの力量と、もちろん人的な配置も含めて、施設長と施設職員全体の環境整備をきちんと改善していただくということがあって、この検討の方向性がある程度、現実的に全部を児童相談所長ということが難しいとすれば、あり得るのではないかと思っております。
 もう1点は、それにしてもこれは代行なので総じて児童相談所長ないしは施設長がそれをやっていて良いかどうかというのはまた別の議論で、きちんと未成年後見人を子どもが得られるような制度設計もしていただきたいと思います。これはやはり未成年後見人ということで対象は子どもですから、子どもから費用のお金を取るわけにはいかないと思います。親族が申し立てたものまでカバーするかは別として、児童相談所が申し立てて親権喪失なり一時停止等をした場合には、未成年後見人の費用を何らかの形で国が補償するような制度設計もして、速やかに子どもが未成年後見人を得られるような形が担保できれば、ここの問題も一定程度解決がつくのではないかと思いますので、その2点を。施設そのものの環境整備と未成年後見人を得やすくする制度設計をすることで、提案された方向性も進められるのではないかと考えています。以上です。

○才村委員長
 磯谷委員の御発言は、あくまで施設長ではなくて児童相談所長が親権を行使すべきではないかと。松原委員は、そうではなくてあくまで施設の施設長なり職員の専門性が担保できていれば、施設長が親権を行使すべきだという御意見だと思います。それでよろしいでしょうか。

○松原委員
 そのとおりです。

○才村委員長
 今のお二方の御発言に関連して、吉田委員お願いします。

○吉田委員
 前回、この論点が出たときにも申し上げたのですけれども、理屈からいえばやはり児童相談所長がそうした権限を行使する方が筋は通ると思います。ただ、現実的に見てどうかというと、前回の繰り返しになりますけれども、児童福祉司のケース労働からいって、果たして施設の子どものトラブルを巡るところまですべてカバーできるかどうかという点が気がかりであります。確かに児童福祉施設によってばらつきが大きいということはありますが、それは一方では今、松原委員がおっしゃったような形での質の担保をすることと同時に、施設長の権限に関して、先ほどの事務局からの御提案のように、その権限を施設長に認めるとしても、これがすべての範囲にまで及ぶのかどうかというところだと思います。基本的には、やはり措置をした目的の範囲内で施設長が権限を行使するということで、その範囲を超えるものについて争いがあるというときには、今検討されているような、例えば第三者機関にその判断を委ねるということもあるでしょうし、また親のトラブルがどう見ても親権の制限が必要だということであれば、それも今検討されている親権制限の土俵に乗せるという形での解決は可能なのではないかと思います。
 場合によっては、もともとは児童相談所長が児童福祉施設に子どもの養育に関して委託しているわけですから、その委託を措置という形で児童相談所長が持っている権限を独自に行使するということで対応できるのではないかと思います。もちろん、施設長の権限濫用に関しては、従前またはそれ以上に監督のシステムを設ける。または、それを活用するという形で、ある程度現場に委ねた上で、それを超える部分についての制度的な担保を、また質的な担保をするという形ではどうかというのが私の案です。

○才村委員長
 ありがとうございます。今、吉田委員は、施設長が行使するのか児童相談所長が行使するのかというレベルの議論ではなくて、それぞれの権限の範囲をどうするのか、そこを検討する必要があるのではないかという御意見だと思います。

○吉田委員
 そうですね。施設長の権限の範囲の問題もありますし、もう一つは施設長が行使すべき権限と児童相談所長の持つ権限というものがあるわけですから、それぞれの役割に応じてその権限行使をするということでよろしいのではないかと思います。

○大村委員
 私は今の3委員のお話を伺って、それぞれごもっともな御指摘を含んでいると思いました。最終的には実際に一番使いやすい制度がどれなのかということで決めざるを得ないのではないかと思います。
 それとは別の話ですけれども、施設長が親権を行うということを支える制度的な理屈として、この資料の2ページの一番下に、措置権が親権に優先するということは、児童福祉法第27条の第4項の規定により明確にされているという説明があると思います。また、次のページの参考条文にその規定を付けていただいております。これを拝見しますと、第1項3号または第2項の措置は児童に親権を行う者、また未成年後見人があるときには、かくかくしかじかで、その意に反してこれを取ることができないとなっておりますけれども、括弧の中があるので、その結果としてこうなるということだろうと思います。ただ、ここで書かれているのは、第1項第3号あるいは第2項の場合、第2項は省略されていますが、第1項第3号だけで申しますと「入所させること」というのが措置の内容になっているかと思いますけれども、これで包括的に児童相談所長に権限があって、施設で個別に行われる親権代行の内容についてコントロールできると読めるという御理解だろうと思いますけれども、そこのところだけ確認させていただければと思います。

○才村委員長
 事務局、お願いします。

○千正室長補佐
 この第27条の第4項の趣旨は、施設長の第47条第1項の親権を行うという権限が、あくまでも児童相談所長の児童の入所措置がとられたことを基礎として、そしてまた本当の未成年後見人が見つかるまでの間行うという、言ってみれば暫定的なものでありますので、そういった趣旨を明確にしているということと、ここで本来の親権者と同じように、丸々の権限を仮に施設長に与えてしまうと、本来児童相談所が措置してその範囲内で子どもの養育をする施設の方は、児童相談所の措置に反対したりという逆転現象が起こる。そういった調整をする必要があって第27条の第4項が設けられていると考えております。

○吉田委員
 一時保護中の親権で、先ほどの御説明ですと一時保護を行った児童相談所長に一元化するのであって、現に一時保護をしている児童相談所ではないということですけれども、これは説明をお願いできますでしょうか。

○杉上虐待防止対策室長
 正直言って、ここの部分はそれほど御議論がなくて、このような意見があったということになっています。整理の上で一時保護を行った児童相談所長がよいのか。あるいは、現に一時保護をされている一時保護所の所管の児童相談所長がよいのか。その辺も議論があると思っております。

○千正室長補佐
 補足です。考え方としましては、一時保護所で子どもは生活しているので、そちらの児童相談所が担うという考え方もあり得るかとは思います。ただ、その一時保護所自体は、児童相談所が205ある一方で、一時保護所は125ということでありますので、例えば県の中に一つの児童相談所にしか一時保護所がないという場合もあると思います。終局的に入所措置の処分がとられていて、その児童の養育について施設に委ねるというケースと一時保護中は少し性質が違うのではないかということがありまして、そこの間の親との関係ですとか、あるいは子どもの状況を調査するとか、さらに最後その施設に入所するのか、家庭に返すのかの判断を担当しているのは、一時保護を行った方の児童相談所長であるというのが一つの根拠になると思います。

○才村委員長
 吉田委員、どうでしょうか。

○吉田委員
 私はごく単純に、子どもが保護されている一時保護所で子どもの様子を把握しているし、また事情によって違うかと思いますけれども、子どもがどの一時保護所に保護されているかを親が知るということであれば、一時保護所と親とのトラブルになってくるだろうということから考えれば、現実に保護されている一時保護所の児童相談所長が親権を行使する方がわかりやすいと思っていて、逆になぜこれを分けるのかというところが、少しわかりませんでした。

○豊岡委員
 今の一時保護所の問題ですけれども、一時保護の決定なりそこの判断をする児童相談所長が、子どもの状況あるいは家庭の状況等も含めてすべて状況を把握しているわけですので、生活をしている一時保護所となりますとお預かりしているということ。例えば緊急で保護されたときには保護所の場所が空いている都合などいろいろあってお預かりする。その所の所長は子どもの状況を理解していないわけです。児童福祉司も担当の児童福祉司では全くないわけですので、そこで親権の行使ですといっても非常に難しい部分があるのではないかという気がするものですから、実務的には状況をよく理解している一時保護を行った所、ケースワーカーがいる児童相談所の方が適当ではないかと思います。これは意見です。以上です。

○松風委員
 私も同じ意見ですけれども補完的に言いますと、一時保護委託を行っている場合に受諾した施設長が親権代行ができるかというと、そういうことではないと思いますので、一時保護期間中は一時保護をした児童相談所長が権限を行使する、または責任を負うといったようなことが適切ではないのかと思います。

○才村委員長
 磯谷委員、先ほど「ずれ」のことをおっしゃったのですが、今の御発言に対して、何か御意見はありませんか。

○磯谷委員
 この一時保護についてはこの原案どおりで結構だと思っています。私の指摘は言葉足らずでもありましたが、要するに一時保護中に一時保護所の児童相談所長ではなく、一時保護という措置をした児童相談所長が親権を行うという背景にあるのは、源泉となる措置、一時保護という処分をしたというところが非常に大きいだろう。そうだとすれば、施設入所の措置の場合も施設入所の措置をして、また解除などの権限を持つ児童相談所長が持つのが、その理念をそのまま具現すればおそらく整合的なのではないかというのが、先ほどの私の意見であります。

○才村委員長
 そうですか。今の議論の方向性としては、一時保護を受けた児童相談所長ではなくて、あくまで一時保護を行った児童相談所長が親権を行使すべきではないか。そのようなことだと思いますが、その辺りで反対という方があればおっしゃっていただきたいと思います。よろしいでしょうか。それについては、皆さま御異議はないということですね。
 他に。御意見を頂戴したいと思います。

○磯谷委員
 少し論点は違うのですが、特に施設入所それから里親委託の場合に時々混乱するのは、18歳になって措置延長をした児童について、果たして権限がどの程度どう及ぶのかというところがあって、形式的に見ればすべて「児童」と書かれていることからすると、18歳に達すれば児童ではないということになりますので、対象にならないのではないかとも読めて、少し混乱があるのだろうと思います。趣旨からすれば措置延長になった子どもについては、引き続き18歳になるまでと同じ法律関係でいくのが望ましいと思いますが、この辺りは現場の混乱があるところで、何か整理をしていただく。手当てをしていただくということができないかと思っております。以上です。

○才村委員長
 ありがとうございます。現時点で今の磯谷委員の御指摘に対して事務局で何かお考えであれば、可能であればお答えいただきたいと思います。

○杉上虐待防止対策室長
 整理いたしまして、次回に御報告したいと思います。また現場が混乱しているようであれば、この制度改正に乗せるかどうかは別にして、何らかの機会にそういったものは対応できるということを周知していくのではないかと現時点では思っています。

○才村委員長
 よろしくお願いします。他に、御意見はいかがでしょうか。特に、施設長の親権について、施設長がやるとか児童相談所長がやるべきだとか、それぞれの範囲を明確にすべきではないかと、いろいろな御意見を頂戴しましたが、それに関連して、何か御意見がございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 今日の議論の内容、最終的にどのような形で報告書に盛り込むのか。また、報告書の段階でもう少し具体的な、絞り込んだ議論をしていただくことになろうかと思いますが。

○松原委員
 補足です。私が先ほど述べさせていただいた意見ですが、そうなると施設そのものを孤立させるような形、つまりそれはサポートの手を差し伸べないということと裏返しでいうと、お任せしっ放しにしてしまうという両方の意味を含めて、孤立させないような仕組みづくりが必要だと思います。前回に第三者評価の話をしたと思いますけれども、常に子どもの養育についてきちんと外部の目が入っており、必要なサポートが提供されるということがあって初めて私の意見が成り立ち得るので、それがないとすると施設長に子の親権を行わせること自体は難しいと思っております。

○才村委員長
 これは前回も確か議論があったと思いますけれども、まず施設長が親権を行使する。その過程でどうしても自分たちで判断するには荷が重いという場合は、児童相談所の判断を仰ぐ。それを受けた児童相談所が判断するに当たって、第三者機関の意見を聞く。そのような仕組みについて提言があったと思いますが、そういったことでしょうか。
 磯谷委員、お願いします。

○磯谷委員
 前回は親権者がいる場合について今のような、特に事務局からも児童福祉審議会を使うという御提案があったのですけれども、今回は親権者がいない場合であって、親権者との間のトラブルは起きないと思いますけれども、この場合について先ほど例えば松原委員あるいは吉田委員からもありました第三者機関といいますか監督といいますか、そういった趣旨で児童福祉審議会などを使うということが想定されているのか。それとも、ここでは特にそういう想定はされていないのか。その点を確認したいと思います。

○才村委員長
 事務局、お願いします。

○千正室長補佐
 第47条第1項のような、親権者等がいない場合の施設長の親権代行について、都道府県児童福祉審議会の意見を聴くというのは、まだ今のところは特段そういった御意見がこれまでなかったように記憶していまして、資料の中にもそういうものを盛り込んでいないところですが、そういったことが必要だという御意見があれば、またそういったことも引き続き検討していきたいと思います。

○才村委員長
 磯谷委員、よろしいですか。

○磯谷委員
 私自身は児童相談所長がやるべきだという意見ですので。

○才村委員長
 松原委員、お願いします。

○松原委員
 私はそのような立場ですので、施設内虐待の場合は法ができていますので、そちらで対応ができると思います。虐待そのものは起きてはいけないので、特に施設の中では親権者がいる子どもといない子どもを分けて生活しているわけではないので、日常的な養育のレベルアップというのが必要なわけですから、そのことについて日ごろからのサポート、定期的な第三者によるチェック、あるいは専門的な助言という体制ができている必要があると思います。

○吉田委員
 児童福祉審議会を使うという点での話ですけれども、前回に少し出たのは施設長が児童福祉審議会に意見を求めるというルートの話が出ましたが、それに加えて親権者がいる場合は親権者もそうしたある種申立てというのでしょうか児童福祉審議会に意見を述べるような仕組みがあってもよいと思うし、親権者がいない場合は子ども自身がそうした申立てるというルートをつくってもよろしいのではないか。例えば、施設の中で実際に今あるかどうかはわかりませんが、子どもの進学を巡って施設長がうんと言わない。場合によっては子どもからすると正当な理由があるとは思えないにもかかわらず、進学を認めてくれないというケースも無きにしも非ずだと思います。虐待に関しては制度ができましたけれども、そうではない児童福祉法でいう施設内虐待に当たらないような場合の子どもの権利侵害というケースに対応する、そうした仕組みは設けておくべきではないかと思います。

○才村委員長
 今までの児童福祉審議会の考え方からすると、行政からの諮問に答えるとか、行政に対して意見具申をする。ですから、あくまでも相手方は行政だと思います。そこが親や子どもからの相談に対応していくということは、今までの図式ではなかったと思いますけれど、その辺りはどうでしょうか。

○吉田委員
 諮問に答えるという構造はよいと思いますけれども、児童福祉審議会が議論をする端緒としてそうしたルートをつくっておくということです。そのような方法は可能ではないかということです。

○才村委員長
 今の吉田委員の御提案に対して、何か御意見はございませんでしょうか。松風委員、何かありそうな感じですね。

○松風委員
 質問ですけれど。その場合に行政がかかわる立場といいますか、かかわり方はどのようなことになるのかが、私は見えないのです。

○吉田委員
 例えば、都道府県や政令指定都市レベルで仮に子どものオンブズマンというのでしょうか、そのような子どもからの申立てを受ける仕組みがある。神奈川県がそれに近いでしょうか。そこに子どもからの申立てがあったというときに、その仕組みと児童福祉審議会がつながっているという方法であれば、行政がそれを受け止めるのは可能ではないかと思います。

○才村委員長
 確かに、被措置児童等虐待の場合は通告や本人からの届出に基づいてという仕組みになっています。それと同じような考え方ということでしょうか。松風委員、どうでしょうか。

○松風委員
 私も十分に整理できないのですけれど。そうであるならば被措置児童虐待と同じように行政が絡む何か仕組みをつくらないと、審議会に諮問はできないということになります。例えば要するにそれが権利侵害になるかどうかは不明だけれども、進学等での意見が不一致だとか、親がいる場合に親との間で意見が不一致だというところまで、どのような形でその仕組みをつくるのかといったところが非常に見えないのです。

○吉田委員
 私の記憶では、神奈川県の人権審査会はそれに近い仕組みを持っているのではないかと理解しています。

○佐藤委員
 議論の前提として、今議論している親権の一時停止とか、制限とかそういうこととの関係で、親権者がいるいないということを議論しているのだろうと思い込んでいたのですが、必ずしもそうではなくて、児童福祉施設に入所したり、あるいは里親に委託されている状態の子どもの親権全般の議論なのか。そこがよく整理ができていない。
 もう一つは、この親権の問題の最も中心的な議論は、児童虐待防止をしようとしたときに、現行の親権の在り方が時として虐待を防止することに桎梏、妨げになっていることもあるので、ここを整理しようということで、もちろんそれはよろしいのですね。
 そうなると、先ほどからの親権者がいるいないという議論については、児童虐待を防止するために親権を制限する、停止する、一時停止するという中でのいるいないという議論で私は考えていて、従って当然保護の措置を行った児童相談所の所長が親権をその間適切な、例えば未成年後見人等が見つかるまで親権を行うということが適当ではないかと思いますが、理解が違っていたら教えていただきたいと思います。

○才村委員長
 事務局、お願いします。

○千正室長補佐
 二つ御指摘いただいたかと思います。この議論の対象が、親権者がいる子ども、いない子どもいろいろありますが、その親権制限との関係だと思います。
 3ページに児童福祉法第47条第1項の条文がございますけれども、今日議論している論点について申しますと、入所中の児童で親権を行う者又は未成年後見人がいない者が対象でございます。それが入所中だけではなくて、里親委託中や一時保護中もという話でありまして、現行においてほとんどは親がいないケースだと思います。親権喪失ですとか、あるいは新しい一時的制限などができれば、そういったもので親権を行う者の親権が制限されたときに、本筋でいえば未成年後見人が選任されるので、その場合はここに入ってこないので、未成年後見人が親権と同じ権限を行使することになりますが、なお未成年後見人が見つからない場合には、受け皿として施設長や里親委託中等の場合は児童相談所長がその親権を未成年後見人が見つかるまでの間、代行する。この二つのパターンがあると思います。要するに親がいない場合と、親権が制限されていて未成年後見人がいない場合です。

○佐藤委員
 それは理解しているつもりですが、それは児童虐待の問題を離れて、もっと一般的な親権問題として親権の取扱い問題として議論をせよということなのか。児童虐待の防止という観点で、いわば限定されている親権。親がいないのではなくて、いてもその親が親権を行使するのにふさわしいかどうかを含めて、権利を停止するとか制限するとか、そこに限定しているのかどうかという話です。

○千正室長補佐
 そのような意味では、虐待をする親の親権を制限したり防波堤をつくるということについては今、議論をしている話の前に、例えば民法でいうところの法制審議会で検討している親権の新しい制限の仕組みですとか、あるいは児童福祉法第47条第2項の親権者がいる場合の施設の権限をどうするかという問題が、どちらかというと虐待する親からの防波堤という話になります。そのハードルを越えたものが今、議論をしています児童福祉法第47条第1項の範囲に入ってくる。要するに親権者がいないとか、親権制限が既にされていると御理解いただければと思います。

○佐藤委員
 わかりました。私の思い込み違いがあったようです。

○才村委員長
 よろしいでしょうか。いろいろと御意見があろうかと思いますが、時間の関係でとりあえず(1)の議題については、以上にさせていただきたいと思います。
 引き続きまして、(2)「施設入所等の措置及び一時保護が行われていない親権者等がいない児童等の取扱いについて」、まず事務局から説明をお願いします。

○杉上虐待防止対策室長
 3ページの下の方にあります2になります。今、委員長が言われたとおり「施設入所等の措置及び一時保護が行われていない」ということで、いわゆる在宅ケースの場合の「親権者等がいない児童等の取扱い」でございます。「これまでの議論」でございますけれども、未成年後見人、今までは私人ということもあったわけでございますけれども、担い手を探しても見つからないということで、見つからない場合は福祉の措置で子どものために必要であれば児童相談所長が申立てをするわけでございますけれども、そういったことではなく、公的機関である児童相談所長が本来的に未成年者の監護等について責任を持つという理念が望ましいのではないかという議論があったわけでございます。
 次のページに移りまして、そうは言っても未成年者の利益を守ることができるような制度設計について、さらに具体的な検討が必要ということでございました。「また書き」以降で現行の制度について若干書いておりますが、施設入所等の措置及び一時保護が行われていない未成年者であって親権を行う者及び未成年後見人のいない者について、現行では自動的にならないわけでありますけれども、広く児童相談所長が親権を行うこととすれば、現行の児童相談所長の機能を超えてしまうということで、慎重な検討も必要ではないかという議論がありました。さらには、現実的に児童相談所長がかかわってこなかった未成年者を適切に監護することができるかというと難しい面があるという御意見もいただいたところでございます。
 「検討の方向性」でございますが、まず現行制度を書かせていただいていますが、施設入所あるいは一時保護が行われていない未成年者に親権者等がいない場合において、その福祉のために必要があるときは、児童相談所長は家庭裁判所に対して未成年後見人の請求をしなければならないと現行法でも規定されております。そして、その場合において見つからないということであれば、未成年後見人が確保されるまでの間、児童相談所長が現在も親権を行うという仕組みがあるわけでございますけれども、こういった仕組みがこの委員会でもきちんと運用されているのかという議論もあったわけでございます。こうした仕組みについて適切に活用する方向で検討してはどうかと、検討の方向性の中では書かせていただいています。
 「考えられる対応策」ということでございまして、現行の仕組みの徹底を図る。それから先ほど法制審議会の審議状況でも御紹介があったところでございますけれども、現実に未成年後見人の引受手の確保のための取組、※4ということで法人あるいは複数人が未成年後見人となる仕組みについて現在、前向きに検討しているとしています。
 そういったものと併せて、施設入所等の措置及び一時保護が行われていない未成年者であって親権を行う者及び未成年後見人のいない者について、その保護に欠けることのないように環境整備を検討することとしてはどうかとさせていただいております。なお、環境整備につきましては、先ほど松原委員から補助の仕組み等という御発言もございました。そういうことも念頭に置く必要はあるかと思います。以上です。

○才村委員長
 ありがとうございました。今の御説明に対して、御質問・御意見等を頂戴したいと思います。
 松原委員、お願いします。

○松原委員
 先ほどの発言の補足ですが、私も神奈川県で子どものシェルターにかかわっていて、今は全くの無償で弁護士が子ども担当ということで18、19歳の青年のさまざまなサポートをしております。せめて国選弁護人並みの報酬を得られるような形で、児童相談所長が申し立てて未成年後見人が選任された場合については、そういった補助が必要ではないかと考えております。

○大村委員
 初歩的な質問ですけれど、4ページの(2)「検討の方向性」のところで、現行の制度について説明されています。この最後のところに「最終的には児童相談所長が責任を持つ仕組みとなっている」と書かれています。それと対応するのだと思いますが(3)の最後のところが「その保護に欠けることのないような環境整備を検討する」と書かれています。
 「最終的に責任を持つ」ということの意味は、どういうことでしょうか。

○才村委員長
 事務局、お願いします。

○千正室長補佐
 申し訳ありません。資料上わかりにくい表現であったと思いますが、原則は民法の制度に則りまして未成年後見人が選任されるのが本筋だと思っております。そこで、適切な監護が受けられればよいのですが、そういう未成年後見人が見つからない場合は放っておいてよいのかというと、児童福祉法第33条の8の2項のような規定がありまして、いわば最後のセーフティネットのような形で、見つかるまでの間は児童相談所長が受け皿になるというのが、この制度の考え方だと思っております。
 そういう意味で、最後に出てくる「最終的には児童相談所長がきちんと受け皿になる仕組みである」という趣旨でございます。

○大村委員
 そのことは、その前の「そして、その場合において親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、児童相談所長が親権を行うこととされており」と同じことですね。未成年後見人を選任するという手続きはされるけれども、未成年後見人が選任されるまでの間、児童相談所長が親権を行うこと以上のことは特にないと了解しているのですが。

○千正室長補佐
 それで結構です。

○才村委員長
 同じことですよね。

○大村委員
 同じことです。ですから、「最終的には児童相談所長が責任を持つ仕組み」というのは意味がよくわからなくて、結果としてこのまま当該児童が18歳なり20歳になってしまうことが事実としてはあって、そのときには児童相談所長が最後まで面倒をみたことになるわけですが、制度としてはそうではなくて、未成年後見人が選任されるはずであると。そして、それまでは児童相談所長が親権を行うという趣旨である。
 それで、よろしいわけですよね。

○千正室長補佐
 はい。制度上は、そういうことであります。最後は誰もいないわけではないということを書きたかったのです。

○才村委員長
 よろしいでしょうか。他に。
 水野委員、お願いします。

○水野委員
 今までの議論の前提として、本当に保護が必要で誰もなり手がないという子どもを対象に議論があったと思いますが、そうではない場合について、どこまで配慮していらっしゃるのかということをお伺いしたいと思います。
 というのは、同じことばかり申し上げて恐縮ですが、司法インフラが全然足りないので、未成年後見法の構成自体に問題を抱えています。つまり、諸外国であれば財産のある子どもであったときに、その親権者や未成年後見人が財産管理を超えて処分することになりますと、いちいち司法のチェックが入る仕組みになっていますが、日本はそうなっていません。たまたま子どもに財産がありますと、親権者と未成年後見人がそれを食いものにし放題というような規定ぶりになっています。たまたま子どもの両親が交通事故でそろって亡くなってしまって多額の賠償金が入るという地位にあった場合に、私人が未成年後見人になって、その私人が賠償金・子どものお金で食べているという状態は、少なくともかつては少なくありませんでした。成年後見の監督が行われるようになって、未成年後見についても少しずつ実務は変わってきているとうかがってはいますけれども、根本的には解決されていません。こういうことは民法の親権法全体の問題であるのですが、未成年後見人を選ぶときに、ここでだけでも何か少しチェックが掛からないものかという気がしております。
 何となくイメージとしては非常に広く国家後見に代わるものとして児童相談所長の権限を考えているのです。児童相談所長のもとに、財産の管理処分権を置いておけば安心ですので、そのような児童相談所長の権限のもとで、未成年の子どもを預かってくれる、未成年後見人の代わりに里親に準ずるような人に託すというようなルートもあり得るのではないでしょうか。未成年後見人を探せばそれでOKという全体の枠組み自体を考え直す可能性もあるように思うのです。
 それから先ほどは、ここと併せて質問しようと思って申し上げなかったのですが、同じようなことが(1)の施設長と児童相談所長のどちらが親権を持つかということについても、あるような気がいたします。なまじ財産がある子どもについて施設長が親権を持つことで、その子どもの財産の処分権が施設長の方にいってしまうことについて、検討がなされなかったのでしょうか。そのようなことは非常に例外的なことなので考えなくてよいだろうと判断されたのでしょうか。併せて御教示いただければと思います。

○才村委員長
 事務局、よろしいでしょうか。

○千正室長補佐
 2点の御指摘をいただいたと思います。順序は逆になるかもしれませんが1点目は施設長が児童福祉法第47条1項の親権を行う立場に立った場合に、親権を行うわけですから財産の管理処分ということも権限の範囲に入るという法律になっていると思いますが、これは実態に詳しい方が御存じでしたら後ほどお聞きしたい点でもあるのですが、我々がある程度聞いているところによると、今は児童福祉法第47条1項で親のいない子どもも施設にたくさんいますので、これが適用されているケースもたくさんあるのですが、ほとんどは子どもにあまり財産がない場合が多いわけでございまして、今言われたような賠償金等の財産がある場合には、未成年後見人をなるべくつけるというような運用もされていると聞いております。
 もう1点は水野委員の前半の御指摘であったかと思いますけれども、私の理解が不正確であれば言っていただきたいのですが、児童相談所長が関与して未成年後見人を選任する請求をするケースにおいて、通常の未成年後見人よりも何か未成年後見人の権限を制限して、児童相談所長が未成年後見人をコントロールできるような枠組みがあった方が良いのではないかというような受け止めをしたのですが、その点について、未成年後見人制度そのものの在り方にもかかわってくるので、児童福祉法の中で議論するのは難しい面もあるのではないかという気がしております。

○大村委員
 水野委員がおっしゃったことを私なりに理解しますと、現在の親権者あるいは未成年後見人いずれについても監督の制度が不十分であるというのが基本認識であろうと思います。
 戦前の民法の下では、母親が親権を行う場合については重要な行為については親族会の同意を要するという形で制限がかかっておりました。これは男女平等に反するということで、戦後やめてしまったのです。父親についても母親についても両方に制限を掛けるという選択肢もあったのですが、やめてしまったというのが現状であるわけです。後見人については後見監督人というのが辛うじてありますけれども、それ以上のコントロールがないというのが現在の状況でございます。これは民法の問題ですけれども、児童福祉法の方で行政が関与している場合について親権の行使あるいは後見人の権限の行使について何らかのコントロールを掛けられないだろうかというのが水野委員の出発点であろうと思います。
 それで、先ほど論点1で議論になったことは、誰が親権を持つかということもありますけれども、それについて何らかのチェックのシステムを組み込むという議論であったと思います。ですから、そういうものを今のような認識で組み込んでいただきたいということが一つあるのだろうと思います。
 後見人を選任する場合にも、同様のことができないだろうかというのが直接の御質問であったと思いますが、そこは千正室長補佐がお答えになったように、施設が親権を行うときには親権は親権としてあるけれども、その親権を行う者に対する行政上のコントロールとして何らかの仕組を考えることはできるだろうと思いますけれども、民法上の後見人を選任したときに、それに行政上のコントロールを掛けるというのは、それよりはかなり敷居が高いように思います。
 ただ、ここは裁判所の運用にもかかわるかもしれませんけれども、ともかく後見監督人を付けるのだというところまでは何かできるのではないかと思います。問題があるということは認識して、何か可能な手当てをすることをお考えいただければと思います。

○才村委員長
 ありがとうございました。水野委員、よろしいでしょうか。

○水野委員
 未成年後見人に適切な方が選ばれればよいといえばよいのかもしれませんが、未成年後見人を探すことがゴールになるということについて危惧を持っております。下手な未成年後見人よりは里親に託して、行政の側で親権を行使し続けるという選択肢の方が望ましい場合もあり得るはずではないかと思うのです。

○千正室長補佐
 たぶん、大きく分けてケースが二つあると思っておりまして、要するにその子どもがどこで生活するのかということが大きな問題であろうと思います。一人で生活したり家庭での生活ができないので児童相談所の措置によって施設や里親のもとで暮らす。この範囲内に入っていれば行政のいろいろなかかわりの中で生活していくことになりますので、施設や里親が何か親権に類するような権限を行使したときに、それを行政がチェックする、コントロールするという枠組みが出てくるのではないか。
 一方で、入所させるようなケースではない、一人で生活していてかなり年長の未成年のケースとなると、その人の生活はそこで続く中で未成年後見人を選任していくことになると思いますので、現実問題として、そこをどこまで児童相談所が未成年後見人にそもそも指導するような立場なのかということもありましょうし、実態上そのようなことが可能なのかという懸念があります。

○豊岡委員
 未成年後見人の問題ですけれども、いわゆる要保護児童といいますか児童相談所がかかわる必要があってかかわっている子どもであれば、児童相談所長の未成年後見人が決まるまでの間は行政がかかわることになってくると思いますけれども、一般のといいますか千正室長補佐が言われたようなかなり年長で、なおかつ財産があって、だから児童相談所がチェックすべきであるということにはイコールでつながらないと思います。
 ですから、そこが難しいところで、それはまさに未成年後見人を選任して、財産の管理を適正にやっていただくという途であろうと思います。そこに行政がかかわる意味が少し難しいのではないかという印象で話を伺いました。

○才村委員長
 例えば近所の人から子どもの財産を食いものにしているというので、見るに見かねて児童相談所や役場に相談があったというような場合は、どうでしょうか。その場合は要保護性はありませんよね。ですから、施設措置の対象にはならないし、ただ財産管理の部分だけを適正に行えるようなバックアップやはたらきかけは必要であろうと思います。
 未成年後見人選任するまでは児童相談所長が親権を行使することになると思いますけれども、ただ、未成年後見人が選任された後で、本当にその未成年後見人がきちんと財産管理を行っているのかどうか、そこの監督の仕組みは要るだろうということは今、いろいろな御意見が出ていたとおりだと思います。
 今、申し上げたようなケースの場合を、豊岡委員はどのようにお考えですか。

○豊岡委員
 そこへ行政がかかわっていくというのが、少しぴんと来ないものですから。

○杉上虐待防止対策室長
 未成年後見人というのは家庭裁判所の選任を受けてなっているわけですが、そのときには、利害関係者が解任の請求をするのが通常だと思っていますが。

○才村委員長
 これは法務省になりますか。できれば、お答えいただきたいと思います。

○飛澤参事官(法務省)
 未成年後見人に問題があるときには請求によって解任されるという枠組みは今、杉上虐待防止対策室長から御説明のあったとおりだと思います。

○才村委員長
 裁判所が監督する仕組みにはなっていないのですね。事案として上がってきた場合は、もちろん解任という審判を下すことになるのでしょうが。
 財産管理の過程において、未成年後見人が本当に適切にその業務を遂行しているかどうかというチェックのようなことは今のところはないのでしょうか。

○古谷参事官(最高裁)
 後見監督人を置く場合もありますし、それを置かない場合も後見監督という形で事案に応じてチェックするようにはなっております。
 ただ、どのような後見人を得るかというところは非常に難しいところでございまして、事案によっては専門家を後見人に選任するという形で対応するということはやっております。

○才村委員長
 その監督人というのは未成年後見人についても。

○古谷参事官(最高裁)
 成年後見、未成年後見を問わず、どちらでもあると思います。

○長委員
 法制審議会の中では、未成年後見人を複数選任できるという検討がされていますけれども、その中で考えられているのは、財産管理をするために例えば専門職などの後見人をもう一人入れることも検討されているところです。

○大村委員
 今の直前の御発言と同趣旨ですけれども、仮に民法の方で複数の後見人を認めるということになったとして、先ほどから出ている問題ですけれども、親族の一人が後見人になっていた。ところが、何らかの理由で子どものところに大きな金銭が入ってきたというときに、その財産を管理するためにもう一人、専門家あるいは法人かもしれませんが、そういう人を後見人として追加的に選任したいというときに、追加的な選任ができるかどうかは民法の方の仕組みになると思いますけれども、仮にそういう制度をつくったとすると、児童福祉法第33条8の方もそれに見合う形で対応していただいて、児童相談所長は親権を行う者及び未成年後見人のいない児童ということではなくて、未成年後見人はいるけれどももう1人追加した方が良いということも含めて対応する。「福祉のために必要があるとき」ということになると思いますけれども、その場合にも選任の請求ができるというような制度をつくることは考えられるかもしれないと思います。

○才村委員長
 ありがとうございます。時間の関係で、次に移らせていただきたいと思います。3番の「接近禁止命令の在り方について」です。
 まず、事務局方から説明をお願いします。

○杉上虐待防止対策室長
 最後でございますけれども「接近禁止命令の在り方について」です。資料としては5ページです。これまでの議論でありますが、自立している年長の一人暮らしでアルバイトで稼いだ収入を親が無心しに来る場合や、民間シェルターで未成年者が生活している場合など、一時保護や施設入所等の措置がとられていないケースについても接近禁止命令が必要ではないかという議論があったわけでございます。
 一方で、接近禁止命令自体を考えると、親の権利等に対する相当程度の強い制限であることから、慎重に検討する必要があるという意見があったところでございます。また、親との面会交流についてどのように考えるのかというようなことも論点としてあるわけでございます。いずれにしましても、どのような事案について認めることとするのか、そういった場合に、対象となる事案を適切に線引きするのは難しいのではないかという意見がございました。
 これに対して、児童福祉法第27条第1項第2号の児童福祉司指導の措置がとられているケースとすれば、線引きができるのではないかという意見があったのですけれども、これに対しても、これは通常、親が同居しているケースでございますので、接近禁止命令を掛ける前提を欠いており、親の不当な介入から保護するために必要な場合は、まずは親権制限の請求や施設入所等の措置を行うことで対応すべきではないかとの指摘がありました。
 6ページの「検討の方向性」でございますが、今、申し上げたとおり、なかなか難しい問題があるのではないかということになっております。
 児童福祉法第33条の7の規定による親権喪失宣告の請求等あるいは同第33条の8、これは児童相談所長が未成年後見人が見つかるまでは親権を行うという規定でございますので、こういったものを含めて適切な運用を図ってはどうかとしています。
 また、現行法の接近禁止命令につきましては、平成20年4月より新たに設けられた制度でございますが、現実問題としては、今のところ実施例はないということになっております。
 このように、引き続き現行制度を適正に運用することとして、同意入所などのケースについては、今回は接近禁止命令の対象としないこととしてはどうかということを方向性としてまとめさせていただいております。
 「考えられる対応策」でございますけれども、いずれにしましても措置がとられていないケースにおいて、親権者の不当な介入により、未成年者の福祉が害されているような場合には、児童相談所が必要な対応をもっとやるべしというような御意見もこの委員会の中でもありました。適切に親権制限の請求や一時保護、施設入所等の措置を行うべきことを周知徹底してはどうかとしております。
 具体的に言いますと、同意入所のケースについては、面会・通信制限を適切に行うことや、保護者に児童を引き渡した場合には再び児童虐待が行われるおそれが認められるにもかかわらず、児童の引き渡しを求めたり、面会・通信制限に従わない場合には、児童虐待防止法第12条の2の規定により一時保護を加えて、さらに場合によっては児童虐待防止法第28条のいわゆる強制入所等の措置に切り換えた上で、接近禁止命令を発出することが可能であることについて、周知・徹底することとしてはどうかとしております。
 なお、※6でございますけれども、この強制入所等の措置の承認審判の申立てをした場合に、保全処分ができるわけでございますけれども、これについても現在のところは実施例がないと聞いております。以上でございます。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。現行制度の運用の徹底を図ってもよいのではないかということであったと思いますが、御意見を頂戴したいと思います。
 磯谷委員、お願いします。

○磯谷委員
 今、御説明がありました案に対しては、私は非常に不満がございます。現行の接近禁止命令が児童福祉法第28条の場合に限られているというところが非常に問題であると思っています。先ほどの冒頭のところでも御説明がありましたが、例えば民間シェルターのケースや18、19歳の子どもたちということになりますと、先ほどおっしゃった一時保護・児童福祉法第28条というルートがとれないわけですので、やはりそのニーズは確実にあるだろうと思っております。
 いわゆる全養協(全国児童養護施設協議会)が集めた事例が以前報告されていたと思いますけれども、その中でも性的虐待が疑われる事例において、退所後に父親が児童のアパートを突き止めて接近したケース、それから退所児童の居場所をしつこく探索したり、施設職員に無理に情報を求めてくるケース、自立した子どもにお金を無心するケースなどが複数報告されておりました。また、子どものシェルターの運営にかかわっている弁護士の間でも、やはり子どもの職場や学校などに電話をかけたり、訪問したり、あるいは子どもを探したりというケースも報告されております。
 一方で、現行の接近禁止命令が発出された例がないということですけれども、現在の接近禁止命令は児童養護施設等に措置されていることが前提になっておりますけれども、そういう場合には一応組織的に子どもを守ることができる。一方でシェルターであるとか子どもの一人暮らし、あるいは親族・知人宅に身を寄せているということになりますと、そのような組織的な防衛ということもできないわけですから、むしろ接近禁止命令の必要性は高いと考えています。このようなことを前提に、一方では親権との関係など懸念される点もございますので、次のような提案をさせていただきたいと思っております。
 裁判所は、親権制限の申立権を有する者、仮に今は子どもが入るかどうかが議論になっていますけれども、子どもが入らない場合にはさらに子ども自身の申立てによって児童虐待を行った保護者に対して児童虐待を受けた児童または児童以外の20歳に満たない者(これを児童等とする)の住所・居所・就学する学校につきまとったり、あるいは徘徊したりしてはならないということを命ずることができる。ここの後半は従前と同じ規定を想定しています。ただし、当該保護者が親権者である場合には、その者の当該児童等に対する親権が制限されているときに限る。ただし、当該保護者が親権者であるときはその者の当該児童等に対する親権が制限されているときに限る。この場合に審判前の保全処分によって親権が制限されている場合も含むという制度を設けることを提案したいと思います。これによって基本的に接近禁止命令が発出できる場合は、今、私が申し上げた制度においては、とにかく親権が制限されているということが前提になります。そういう意味で先ほどの親権との関係などについてクリアできると考えています。
 また、一方で実務的には緊急を要する場合などには親権の一時的制限の申立て、および保全処分の申立てをしまして、その保全処分が発効したと同時に接近禁止命令の申立てをするということで比較的迅速な対応もできるだろうと考えております。一部親権を止めることで対応できないかという話もありますけれども、接近禁止命令は事実行為を止めたいというところにありますので、必ずしも親権が止まっているから必要がないということにもならないと考えております。
 それから、現行の接近禁止命令は都道府県知事が発令することになっていますけれども、やはり児童相談所の措置がとられていない子どもも対象にすることになりますと裁判所には御迷惑をお掛けするかもしれませんが、裁判所のお力を借りることにならざるを得ないだろうと考えております。このような形で何とか多少いろいろとハードルがあるとしても、児童福祉法第28条ケース以外でも必要なケースは接近禁止命令が取れるように、ぜひ制度を改めていただきたいと考えております。以上です。

○才村委員長
 ありがとうございます。今、磯谷委員から具体的に御提言をいただきました。
 1点だけ教えていただきたいのですけれども、18歳、19歳ということであれば、新たに児童相談所が取扱いの対象にするのは少し難しいと思います。この申立権を有する者の申し立てによりということですが、具体的に申立人としてどういったところを想定されているのかをお聞きしたいと思います。

○磯谷委員
 基本的に親権制限の申立てができる者ということで、現実的には児童相談所長も可能ですけれども、親族それから何と言っても最もこのニーズを感じている子ども自身が接近禁止命令申立てをできるようにするのが望ましいと考えております。

○才村委員長
 ありがとうございます。御意見を頂戴したいと思います。では、佐藤委員からお願いいたします。

○佐藤委員
 私も基本的に今の御意見に賛成です。資料的に接近禁止命令がゼロであったというのはどのようないきさつでゼロであったのか理解できないのです。接近禁止命令に慎重な論拠として、親の親権の強度の制限になるということがさかんに言われていますけれども、先ほどの法制審議会の議論の中でも指摘があったように、親権は子どもの利益を守るためにこそ親に保障されている権利だと思いますので、それぞれ個人の権利というものは国家権力を含めて、そのようなものから不当に侵害されることがないようにということで、それぞれの個人の権利あるいはそれぞれの立場に対しての権利があると理解すれば、親権も子どもの権利が侵害されないように、あるいは侵害されそうなときに親が最終的に子どもの権利を擁護する砦として機能するために非常に慎重に扱われてきたのだろうと思います。おそらくそれ以外の理由はないだろう。まさか今どき家制度に基づいて子は親に従わなければならないという意味で親の親権が保障されているわけでもないだろうと素人っぽく考えているわけですけれども、その点で先ほど幾つか挙げられましたことを含めて、接近禁止命令は当然子どもを守る重要な手法として明確に位置付けた方が良いのではないかと思います。
 非常に違和感があるのは、ストーカーであれば、すぐにというわけでもないかもしれませんけれども出るわけです。それは他人同士の関係だから出しやすい、親子の場合は出しにくいということですけれども、少なくとも児童虐待に関して言えば、多くの事例が刑事告発つまり犯罪として認定されています。私は本当に許し難い犯罪だと思っているわけですけれども、つまり他の接近禁止命令が運用されていることと比較しても、このことをきちんと運用することについての問題性は低いのではないかと思いますので、ぜひ強化する方向で御検討いただくことが必要ではないかと思います。以上です。

○才村委員長
 親権はあくまで子どもの利益のために行使されるべきであるという改正の方向にあるということは先ほど飛澤参事官から御説明いただいたとおりです。ただ、現行制度でも接近禁止命令が全くないわけではなく、御承知のとおり児童福祉法第28条で、かつ面会・通信制限が行われているケースについては可能とされていますが、佐藤委員、その辺りはいかがでしょうか。

○佐藤委員
 ですから、もっと積極的に運用することでネガティブに。例えば昨年度の実績がゼロ件であったことが私は慎重になりすぎていると思っていて、その理由が親の権利に対する強度の制限だということで躊躇があるとしたら、それは必ずしも妥当ではないと思っております。先ほど、このような場合に、こうしたらよいという具体的な提案がありましたけれども、そのことを含めてもっと積極的に運用できるようにした方が良いという非常に大雑把な意見です。

○才村委員長
 ありがとうございます。積極的な運用、かつ、先ほど磯谷委員がおっしゃったように、やはり立法措置としてももう少し積極的であってもよいのではないかという御趣旨でしょうか。ありがとうございます。では古谷参事官、お願いいたします。

○古谷参事官(最高裁)
 先ほどの磯谷委員の意見についてですけれども、例えば18、19歳の子どもが自立しようとしているのに親がお金の無心に来るなど、そのような事態の御指摘があったのですけれども、そのような親であれば20歳になっても21、22歳でもそのように来るかもしれないということがあります。先ほどの御提案を必ずしも十分に理解できていないのかもしれませんが、少なくともただし書きのところで親権制限がされている場合に限るというお話だったかと思います。そうだとすると、20歳以上の子どもとの関係で言うと親権はなくなるわけですので、そのような場合との関係はどのようになるのかという点を疑問に思いました。また現在でも、人格権に基づいて仮処分を求めるという形のやり方もあるわけです。親権を失っている状況の人との関係、仮処分等のやり方で対応できるのではないかという点を疑問に思いました。

○磯谷委員
 ありがとうございます。最初の20歳を超えた場合にもやはり必要になってくるのではないかという点についてどう考えるのかということについては、まさにおっしゃるとおりだと思います。ただ、今はとにかく我々としては児童虐待のということで議論しておりますので、基本的にはやはりこの枠組みは児童ないしせいぜい未成年というところでしか議論できないのではないかと思っておりまして先ほどのような御提案になりました。おそらく理屈からすると、まさにおっしゃるように私自身が経験したケースでも20歳を超えて知的障害がある子どもに対して性的虐待をした親が付きまとうということもありましたし、やはり必要性はある。それはまた別途考えていかければならないと思います。
 それから、仮処分につきましては私も仮処分をしたケースも成人のケースですけれどもありますけれども、裁判官に非常に丁寧に対応いただいてうまくいったことも確かにあります。ただ、やはり罰則があるわけではありませんし、その辺りの限界は否定できないのではないかと思っております。DV防止法の保護命令が活用されるのも、まさにその点があるのではないかと今は考えておりますので、やはり接近禁止命令の必要性はあるのではないかと思っております。

○松原委員
 質問ですが、この10ページの児童福祉法第33条の7のところに、20歳未満と書いてあるので、18歳、19歳でできないことはないのですが、実態として児童相談所長が申し立てた親権喪失宣告申立ての中で18歳、19歳ということがあったのかどうかということ。
 それからもしこの年齢で児童相談所がやるとしたらどのように。先ほど才村委員長がなかなか18歳、19歳からかかりにくいですよねという御発言をされて私もそうだと思いますが、もしこのようなことがあり得るとしたら児童相談所はどのような経緯で18歳、19歳の子どもについて申立てをするパターンになるのかということ。厚生労働省に実態についての質問と、児童相談所長の御意見を伺いたいのですけれども。18歳、19歳の子どもにどうやってかかわるのでしょうか。

○才村委員長
 では、まず事務局の方から。データをお持ちでしょうか。調べていただいている間に、2番目の御質問について豊岡委員はいかがでしょうか。松風委員も児童相談所ですね。

○豊岡委員
 18、19歳で児童相談所がかかわる事例はあまりありませんので。

○才村委員長
 ないですよね。年間で1件か2件ぐらいですよね。ですからその中で。

○豊岡委員
 私自身も経験はないですし、またそのようなデータも取っていないのではないですか。御経験はありますか。

○松風委員
 経験はないのですけれども、あり得る場合は施設入所中で入所延長をしている子どもたちに対して児童相談所長は措置中ですので申立てをすることは可能だと思いますし、障害をお持ちの方の場合等は、その必要は非常に大きいと思います。

○才村委員長
 では最高裁、お願いいたします。

○進藤局付(最高裁)
 手元で把握しているケースだけということになりますけれども、『家庭裁判月報』という雑誌の8月号に親権喪失についての論説が掲載されておりまして、そこで紹介されている18歳以上のケースについて親権喪失宣告が認容されたものが2件あります。
 1件は19歳の女子が民間シェルターに入っている状態です。事案としてはどうも性的虐待があったようで、児童相談所長の申立てによって親権喪失宣告が認容されている事案です。
 もう1件は性的虐待を理由に施設入所していた18歳の女子について、施設を出て自立するに当たって親権喪失が児童相談所長の申立てによってなされたもので、これも認容されています。

○才村委員長
 ありがとうございます。実際に2件あったということですが、松原委員よろしいでしょうか。

○松原委員
 はい。

○才村委員長
 では吉田委員、お願いいたします。

○吉田委員
 接近禁止命令について磯谷委員に質問ですけれども、一つはこのように裁判所の関与した場合の要件です。今、DV防止法の方が接近禁止命令なり、退去命令なりでかなり詳しい要件を掲げていますけれども、今の御提案のような接近禁止命令に関してはその要件はどのように考えるか。私は今の児童虐待防止法上の接近禁止命令の要件はかなり抽象的だと思います。ですから、この際、要件をさらに厳格にした上で裁判所関与にするというのであれば適切かと思います。
 もう一つは、児童福祉施設の目的で児童福祉法上やはり児童の自立を各施設の目的に掲げているのであれば、施設を出た後の子どもが適切に自立できるようにするための枠組みも同時に整備しておいてもよろしいのではないかという点では、やはり親権者による自立の妨げを取り除く仕組みはやはりあってよいだろうと思います。その2点です。

○才村委員長
 では、何かお考えがあればお願いいたします。

○磯谷委員
 2点目の方につきましては特に異論はありません。
 1点目の要件ですけれども、ここのところは確かにもう少し検討する必要がありますし、また、いろいろな御意見があり得ると思います。ただ、基本的には親権が制限されていることがあることと、後は重なるかもしれませんけれども児童虐待を行っているといったところは盛り込まれるということからしますと、それにプラスアルファしてどれぐらい高いハードルを設けるべきなのかというところはあるかと思います。例えば付きまといの恐れなどといったことになるかと思っておりますけれども、いずれにしてもこの要件についてはもう少し検討する必要があると思っております。ありがとうございます。

○才村委員長
 よろしいでしょうか。ほとんど時間がないのですが、飛澤参事官お願いいたします。

○飛澤参事官(法務省)
 磯谷委員が現在想定されている「児童虐待を行った」および「親権制限がされている」以外の要件については、なお検討されるということで、それを受けてということになるかと思いますけれども、少なくとも児童虐待を行った、また、親権制限がされているというだけで、いつでも接近禁止命令が出され得る状態になるというのは制度としてややどうかと思われます。そこで、実体要件をどう仕組むのかということを考えると、では一体何を保護したいのか、すなわち保護法益が何なのかという問題が出てくるかと思います。そういった観点から、接近禁止命令の制度をイメージしていくと、おそらく、最終的には子どもの人格権を侵害するようなものを止めるものになるのではないかという感じがしています。しかし、そうだとすると、現在でも、人格権侵害に基づき面談強要禁止の請求ができる中で、新たに接近禁止の制度を設ける意義がどこにあるのかという点を、なお慎重に検討しなければならないという印象を持っております。

○才村委員長
 保護法益は何なのかということです。

○磯谷委員
 人格権というお話もありましたが、あるいは子どもの平穏な生活ということになるかもしれませんし、自立ということになるかもしれませんし、さらに子どもという特質性を考えると子どもの福祉ということになるかもしれないと思います。
 それから、繰り返しになりますけれども、仮処分の制度はやはり罰則があるわけではないというところは、私の立場からすると非常に大きいのではないかと思います。DVの保護命令でも例えば命令に対する違反があるとすぐに警察の方で警告したりというような形に実際になっていますけれども、仮処分の場合にそのような形での対応は難しいのではないか。ですから、やはり少し質が違うのではないかと私は思っております。

○才村委員長
 松風委員、お願いいたします。

○松風委員
 子どもにとってどのような利益があるかというところですけれども、例えば被虐待で親族から引き取るという申し出があったときに接近禁止命令が出せると、祖父母なり親族に引き取ってもらうことができるのですけれども、そこが不明ですとやはり引き取っていただくことができない。要するに施設から家庭復帰できないということがずっと続くわけです。そういう意味で、子どもの福祉の観点から、接近禁止命令があると地域それから親族に変えるということができるのではないかということ。
 それから親権者の1人が性的虐待をしていて、1人が子どもを守ろうとしているときに、離婚やさまざまな手続きをもう一方の親権者が取ろうとしないときにどうするかというときも、接近禁止命令が一方の親に付きますと親権が残ったままでも禁止することができるということで、児童福祉法第28条以外のケースで子どもの福祉に寄与することができると私は考えております。

○才村委員長
 ありがとうございます。よろしいでしょうか。まだまだ御意見はあると思いますが、時間の関係で、この件についてはとりあえず以上にさせていただきたいと思います。
 最後に(4)の「その他」ですが、事務局からお願いいたします。

○千正室長補佐
 前回と今回とで児童福祉法あるいは児童虐待防止法に関係する論点について2回の御議論をいただいたところです。
 それに加えまして御説明申し上げたい事項がありまして、10ページを御覧いただきたいと思います。これは参考条文が付いているわけですけれども、先ほど法務省から法制審議会の議論を御紹介していただきましたけれども、民法の方で幾つか親権制限の仕組みの改正が検討されている状況です。それに即して児童福祉法の規定も一部適用させるというか整理をする必要がある事項があるのではないかと考えております。これはまだ民法も議論している最中ですし、それに伴って児童福祉法をどう整備するのかということもまだ固まっているわけでありません。現時点で少なくともこのようなことは想定されるのではないかということで、少し御紹介をさせていただきます。
 内容ですけれども、民法で例えば一時的な親権制限の審判の仕組みができる、あるいは親権喪失の宣告の原因の書き方が変わる、子どもの利益の側から書かれる、それから管理権の喪失についても子どもの財産を危うくしたときだけではなく、法律行為の同意なども含めて管理権の行使が子どもの利益を害するようなときというように利益が変わる。そういったような改正が議論されているところです。
 そして、そのような新しい親権制限の仕組みなどができたときに、児童福祉法第33条の7におきましては現行の親権喪失宣告の請求を児童相談所長が行うことができる。児童相談所長の権限は基本的に児童福祉法に書いてありますので、この親権喪失宣告だけでなく、一時的な制限ができたときにおそらく目的は同じだと考えられますので、一時的制限や子どもの利益の観点から修正される管理権の喪失についても児童相談所長が申立てできるように児童福祉法の方も手当が必要なのではないかと。そういった三つの親権制限の仕組みが民法にできて、児童相談所長がそのケースに応じて申立てができるようにしておくのが児童福祉法の一つの受けなのではないかと今のところは考えております。
 それから、児童虐待防止法の第11条第5項ですけれども、ここは規定そのものを改正するかどうかということは、もしかしたらまだ改正の必要がないのかもしれませんけれども、児童虐待防止法第11条は、児童相談所が保護者に指導するときに、児童虐待防止法第11条第3項で都道府県知事が保護者に対して指導に従いなさいと勧告をすることができるわけです。勧告に従わない場合は第5項で最終的には親権喪失の請求を行う。こういった流れが書いてあります。この第5項のところも親権喪失だけではなく、一時的制限やそういった新しい制度の方も読めるようにしておく必要があろうかと思います。児童福祉法第33条の7そのもので読み込めれば、ここは規定をいじらなくてもよいのかもしれません。第5項の2行目ですけれども、「著しく当該児童の福祉を害する場合」と。ここもこのままでよいのかということも、よいような気もしますけれども一応検討が必要ではないかと思っております。
 それから児童虐待防止法第15条ですけれども、民法に規定する親権喪失の制度は児童虐待防止などの観点からも適切に運用されなければならないという精神が書いてあるわけですけれども、現行は喪失制度しかありませんから喪失の制度が書いてあるわけです。一時的制限などについてもここに盛り込むのかどうかどうかは一つ検討の必要があるのではないかと考えているところです。また、動きがありましたら御紹介させていただきたいと思います。

○才村委員長
 ありがとうございました。民法改正の関係で児童福祉法、児童虐待防止法にはねてくる部分について具体的に提案していただきました。今の説明で御意見・御質問等がありますか。よろしいでしょうか。
 ないようですので、(4)の「その他」は以上にさせていただきたいと思います。それでは、今日の議論は以上とさせていただきます。
 事務局から、今後の予定についてお願いしたいと思います。

○杉上虐待防止対策室長
 次回は、既に御連絡していると思いますけれども、12月7日火曜日の13時から、場所は厚生労働省19階専用第23会議室でということとしております。次回は報告書の素案のようなものをお示しして御議論いただく予定にしております。また、時間が限られておりますので、素案についてはなるべく早く事前に送付したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。また、今日の議論で追加の御意見等がありましたら、事務局にメールでいただけたらと思います。以上です。

○才村委員長
 それでは、本日はこれで閉会させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

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