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2010年11月15日 第4回腎臓移植の基準等に関する作業班議事録

健康局臓器移植対策室

○日時

平成22年11月15日(水)
10:00~


○場所

厚生労働省共用第6会議室


○議題

1.開 会

2.議 事
(1) レシピエント選択基準について
(2) その他

3.閉 会

○議事

○秋本補佐 定刻になりましたので、ただいまから第4回「腎臓移植の基準等に関する作業班」を開催させていただきます。班員の先生方におかれましては、お忙しいところをお集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日は両角先生から欠席のご連絡をいただいております。本日のご議論にオブザーバーとして、東京大学の樋口範雄先生、新潟大学の高橋公太先生、東京都立小児総合医療センターの本田雅敬先生、社団法人日本臓器移植ネットワークの朝居朋子コーディネーターにご出席いただいております。よろしくお願いいたします。
 以降の議事進行は大島班長にお願いいたします。報道のカメラの方はご退席ください。
○大島班長 第4回「腎臓移植の基準等に関する作業班」を始めさせていただきます。最初に資料の確認をお願いいたします。
○秋本補佐 議事次第の中段以降に配付資料と説明書きがありますが、それに沿ってご説明させていただきます。資料1「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準について」、資料2「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準改訂に係る再シミュレーションの状況」、資料3「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準(案)」です。
 参考資料1「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準改訂に係るシミュレーションの結果」、参考資料2「腎臓移植希望者(レシピエント)待機者の状況」、参考資料3「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の運用状況について(社団法人日本臓器移植ネットワーク提出資料)」、参考資料4「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準(現行)」、参考資料5「HLAに関わる選択基準に関する提言(日本移植学会・日本組織適合性学会共同作業部会提出)」、参考資料6「UNOS 腎臓レシピエント選択基準」、参考資料7「Eurotransplant kidney allocation system」です。
 机上配付させていただいております、腎臓移植に関する基準についての樋口先生のご意見をお配りしております。以上です。
○大島班長 議事に入ります。まず、腎臓のレシピエント選定に係るシミュレーションの結果についてです。最初に論点ですが、それまでは小児についてはうまい具合に来ていても、16歳で切られてしまうと成長の問題、社会的な問題等で、16歳以降のことが違った意味で大きな問題になってきているのが1つです。
 もう1つは、待機期間にウエイトがかかりすぎているために、待機期間の長い人しか選択されないという実態が起こっているので、新しく登録した人にはほとんどというのか、全くと言っていいぐらいチャンスがないのが今のルールになっているので、これがいかがなものか。
 この2つの大きな論点があって、それに対してシミュレーションを行いましたので、シミュレーションの結果について報告をお願いいたします。
○辺見室長 資料1及び資料2について説明をさせていただきます。資料1の1頁は前回お示しいたしました資料と同じです。ここに至る経緯、平成14年の改正、平成22年の親族優先に絡む改正の経緯を示しております。2番では、第2回作業班での主な論点ということで、ただいま大島先生からお話があった2つの論点をご紹介いたしました。ちなみに第2回作業班の資料のベースとなったのはネットワークからの報告で、参考資料3に以前のものと同じものを付けております。
 2頁は、前回10月25日に参考資料1でシミュレーションを行い、その結果について説明させていただきました。そのときの論点を私共のほうでまとめさせていただいたものです。言葉足らずのところがありましたら、後で補足していただければと思います。概ねこの6つのポイントかと思っております。
 1つ目は「16歳になると急に加点がゼロになるのは問題ではないか。登録時16歳未満でも移植を受けずに16歳以上になる患者もいる」。この点については、参考資料2の下のほうに、16歳未満で登録した患者の現在の年齢分布を調べてみました。現在の年齢を横軸に取っております。総計のところを見ますと0~15歳が50人、16~19歳が15人、20歳以上が67人となっています。この方たちは、登録時は15歳未満であった方々です。上の表で16~19歳の待機患者数は32人となっております。32人中15人は、登録したときには15歳未満であったということです。
 20歳以上は67人ですが、この中には20代の方も、30代の方も入っています。さらに言うと平成14年の新ルール導入前の方も相当程度入っていますので、20代の67人をどう評価するのかというのは正直言って難しいかと思っております。16~19歳のところは半分程度入っているという状況が見て取れます。
 資料1の2頁で2つ目のポイントです。「小児については最優先に移植するようにすべき」、3つ目のポイントは「待機患者の年齢構成も考慮すべき。あまり大きな変更は待機患者の期待に反することになる」、4つ目のポイントは「提供数が限られている現状では、とりあえずマイナーチェンジにとどめ、例えば3年後などに見直してはどうか」です。
 先ほど触れましたけれども、参考資料2に、待機患者の年齢構成を示しております。0~15歳は0.43%、16~19歳は0.27%と、これは年齢の幅が15年と5年と違いますので単純比較はできませんけれども、あとは10歳刻みでこのようになっております。40代、50代のところに大きな山が来ている状況が見て取れます。
 資料1の2頁に戻ります。4つ目までが年齢構成にかかわることで、あとの2つは検査に関わることです。検査のうち、前提条件となっているリンパ球直接交叉試験について、高感度のものが望ましいという記載がありましたが、「Flow cytometry等」と書いてあり、「等」について意味を明示すべきではないか。
 6つ目のポイントも検査法ですが、PRA検査に関してです。「英国などではPRA検査陽性患者についてはHLA適合度が高い場合には優先させるという取り扱いもあり、陽性の場合にはネグレクトするという基準は良くない」このようなご意見がありました。
 次は、資料2でシミュレーションのほうです。前回のご意見を踏まえ、再シミュレーションを行っております。上に囲みで書いてありますが、16~20歳未満、19歳までの加点によって、この年齢層の候補者がどのように変化するか、各年齢層への加点を加減することによって、長期待機者等への影響がどのように認められるかという観点で行っております。
 今回は時間的な制約もありましたので、対象を少し絞って、関東甲信越ブロックでのドナー発生、待機者も関東甲信越地方ということでやっております。シミュレーションの方法は大きく3つのパターンです。1つ目のパターンはAということで、現行の基準そのままですが、これは対比のためのものです。
 Bは、待機期間の配点を、HLAに1.15倍を掛けました。これはなぜかというと、※1にあるように、これまでの提供件数のうち、脳死事例に限って抜き出して、その結果としての配点の状況、平均点数を比べてみたところ、HLAに対して、そのほかの要素である所在地、待機日数が1.15倍であったということです。もともと1:1:1となるようにという考え方であったことに照らすと、HLAを1.15倍すると、全体として1:1:1になるのではないかという考え方がBです。16歳未満のところに14点、16~20歳未満のところに12点を加点したのが、この表のBのところの結果です。
 Cのパターンは、待機日数の配点を概ね半減する。log関数の計算を工夫し、2枚目に別紙ということでグラフに書いてあります。このようにほぼ2分の1になる計算式で計算をし、シミュレーションを行ったものです。この場合、小児への加点については16歳未満について10点、16~20歳未満については6点加点しております。
 結果を見ますと、Aの場合は全体の平均待機日数は5,300日程度です。Bの場合も同じぐらいになります。Cの場合は、待機日数を半分にしていることもあり、待機日数の平均がだいぶ短くなります。
 年齢ごとの配分ですが、Aの場合16歳未満が24%程度、Bの場合は20%ぐらいに落ちます。Cの場合は32%ぐらいに上がってきます。Bの場合は、16歳未満のところが、Aの場合でゼロだったのが3%上がってくる。Cについても同様に3%ぐらい上がってくる。さらに10年未満の待機者です。今回のシミュレーションでは、現行基準でやって1.5%出てきます。Bの場合は3%、Cの場合は6.1%出てきます。もう1つご注目いただきたいのは「その他」のところです。Bの場合は74%ぐらいそのほかの方に回るということです。Cの場合は60%ぐらいになります。
 ちなみにBのシミュレーションに際して、現在16歳未満は14点、16~20歳未満は12点ということで付けた点数でやっておりますけれども、同じように14点、14点で付けてみるとどうなるのかということですけれども、これはルールの作り方次第です。この年齢層にも待機日数が同じように配点されますので、14点を20歳まで同じように上げてしまうと、その年齢層の中で待機日数が多い患者が割り当てられるようになってしまうということで、結果的に年齢が低いほうよりも、ちょっと高めのほうに偏ることになりますので、その選択肢はあり得ないということで2点低くしています。2点ですと、この時期にはまだlogが立ち上がりつつあるところで、1点1年みたいな状況ですので、大体2年のハンディがあるというイメージです。こういう形で計算したのが、こちらのものです。以上です。
○大島班長 最初に質問をお受けしたいと思いますが、どういうシミュレーションをしたかについては大体ご理解していただいたということでよろしいでしょうか。BとCという案が出されましたが、あとは自由にご発言ください。
 シミュレーションの目的は先ほどお話したとおりで、前回までの議論の中で、いままで待っている方たちを大幅に変えることをもしした場合に、登録していること自体がほとんど無意味になってしまって、登録している人たちの意欲が急に喪失するようなことが起こって、登録自体をやめることになると、今度は仕組みそのものが危なくなるのではないかというご意見もありました。全体としては、そうラジカルな変更はちょっと難しいのかという雰囲気があったということです。ソフトランディングでいくのがいいのではないかというのが、前回までの議論だったと思います。
○飯野班員 この前の議論でもありましたように、いまの段階では16歳、あるいは20歳未満の方が入るようなCのシステムがいいと思うのです。樋口先生のご意見がここに書いてあるのですが、その前に基本的にどういうことなのか、私もじっくり読ませていただいて興味があるので、そのご意見を伺いたいと思います。
○大島班長 先生は、Cがいいということですね。
○飯野班員 はい。
○大島班長 Bがいいという方はいらっしゃいますか。あるいは、Cがいいとさらに応援演説をされる方はいらっしゃいますか。
○服部班員 小児についていろいろ配慮していただきありがとうございます。Cのシミュレーションですけれども、16歳未満への配分が少し多すぎるのかなと思いました。16歳未満への加点が10点というのを少し調整すると、16歳未満への配分がもう少し減るのかなと思ったのですが、その辺はどうでしょうか。
○辺見室長 加点を減らすと配分が減るのはおっしゃるとおりです。10点に対して8点というシミュレーションを行っていて、15%、人数にして10人となります。この8点に対して16歳以上をどう付けるかにもよるのですが、8点に対して4点と付けてみたら、16~20歳未満は1人も出なかったということです。16歳以上のところは、さらにいじりようがあるかと思います。8点にすると半減するという状況ですので、この辺りは1点いじるだけでだいぶ大きな差が出る状況ではあります。
○服部班員 今までの議論を聞かせていただいて、腎臓を小児へ、小児へと言いすぎるのはどうかと感じております。樋口先生が書かれているように、限られた資源の適切な配分は難しい問題です。今までの議論の中で、樋口先生より、小児の定義を16歳未満から20歳未満に拡大して、20歳未満までは未成年という枠でとらえて優先してはどうかというご意見をいただいております。小児科医にとっては大変ありがたいご提案です。このような観点からCのシミュレーションをみてみますと、成人を含めた全体のバランスから、また未成年という新しい小児の枠のとらえ方からみて、16歳未満への配分が多すぎるのが問題ではないかと個人的には思います。
○大島班長 Cのシミュレーションで見ますと、いまお話がありましたように比率的に少し高くなってきて、16歳以上、20歳以上のところに広がったというのは非常にいいことです。同時に、16歳未満も非常に多くなって、その結果としてその他というのか、いままで74%ぐらいあった小児以外のところで、待っている方が60%ぐらいまで減るので、このことをどう考えるかということだと思います。これはちょっと減りすぎではないかと見るのか、そのぐらいはしようがないだろうと見るのかというところだと思います。
○樋口参考人 後で少し時間をいただきたいと思っているので、それはそれとしていまの点についてです。私は前々回の作業班にも1回参加させていただいて、本当に無知な参考人が来てもいいのかと思っていました。私にとってはいろいろなことを教えていただいてよかったと思っています。それで、図々しく今回もお招きにあずかったのでやってきました。
 16歳というのが一体なぜなのかというのを、私は前回も質問させていただきました。あの場ではなかったのですが、その後に教えてもらったのは、子どもの成長の具合というのがずっとあって第二次性徴というのか、そのような時期までに透析を始めてしまうと、その成長過程に大きく影響を及ぼすというデータが医学的には出ているそうです。そうだとすると、16歳未満の人たちに対しては何らかの考慮をしていいのではないかという話だと伺っています。私の理解が間違っていればいくらでも訂正してもらいたいと思います。
 今回の限られた資源というのが、本当にいいことなのかわからないのだけれども、とにかく限られたリソースの配分というのは常に難しい問題なのだけれども、やはり患者からしても誰からしても医学的な、医療的な基準で決まればいちばん納得しやすいと思うのです。透析が、特に若い、小さい人たちには大きな影響を及ぼすというのだったら、そこから始めるのはまさにメディカルニーズに沿った話なのです。
 この上のほうは、個々別々の状況になりますので、それは一律なルールとしては評価できない、メディカルニーズとしても評価できない、つかみ取れないというのだったら、ここのところは類型的にというのであれば、16歳が本当にいいのかどうかは私にはよくわかりませんが、これが3割になろうが4割になろうが5割になろうが、それはメディカルニーズで正当化できるのではないかという印象を持ちました。
○高橋参考人 私はB案のほうがいいと思います。それはなぜかというと、16歳未満の日数を見ますと、Cのほうが増えています。二次性徴は13歳ぐらいまでだと思うのです。16歳というのは遺言の年齢をただやっただけであって、そう考えると私は16歳以下にいちばん厚くして、それ以降のことに関しては成長・発育ではなくて、例えば心疾患が多くなるとか、何か大義名分を書かないとと思います。そう考えると、私はB案がいちばん順当なのではないかという気がいたします。
 樋口先生もおっしゃいましたように、医学的ということがすごく大きいと思います。そういう意味ではB案のほうがよろしいのではないかという気がいたします。
○大島班長 いま、ちょっとデリケートなところに触れてきたのですが、高橋先生は13歳を前後にして、二次性徴は終わったと考えてもいいのではないかというご意見でした。16歳というのが二次性徴かどうかは別にして、成長に非常に関わってくるのではないかという医学的な問題もあるというのが、今度の1つの問題です。この辺について、私はある程度わかるのですが、樋口先生によくわかるように説明していただけますか。樋口先生にしてみると、高橋先生の言っていることと、服部先生の言っていることはちょっと違うのではないかという感じがあるのかもわかりません。
○服部班員 少し補足しますと、思春期は通常小学校の高学年頃から始まって、3年から4年間ぐらい続きます。ですから、16歳は、思春期成長がほぼ終わっている年齢と言えます。高橋先生がおっしゃったのは、思春期の始まりが13歳ぐらいで、それまでに腎移植がなされていると、その後の思春期成長の波に乗って身長が伸びるということだと思います。
○大島班長 医学的な判断ということは、樋口先生の指摘でも、これを決めていく上でウエイトが大きいだろうというお話がありました。それでは、いまの問題を医学的な立場から非常に強くやるべきだと言うのか、高橋先生は、それはある程度済んでいるのではないかという発言でした。その辺の意見の統一はなかなかデリケートな問題だと思うのですが、いかがでしょうか。
○本田参考人 1つは、身体の成長・発達という思春期の問題でいまは捉えられているのかもしれないのです。確かに15歳ぐらいまでにはほぼ思春期は終わります。ところが、透析の患者さんとか、腎不全の患者さんは普通の患者さんより遅れがちなのです。それでも15歳までには身体の発達、脳の発達はほぼ終わっています。
 問題になるのは、それよりも心理社会的な発達になります。その部分になると個人差があるとしても、いまの日本ではたぶん22歳ぐらいまで発達が必要な形になるのだろうと思うのです。大人の人が透析に入ったとして、職を失うことはあるかもしれないですけれども、子どもの場合はそこの部分で十分に社会と溶け込むような人間性を獲得していないと、大人になってから普通の社会に溶け込むことが困難になってまいります。ですから、20歳未満というこの考え方はあっていいと思います。なにをもって発達かということになるのですが、私自身はこの20歳未満に加点するというのは賛成します。
○大島班長 いま非常にわかりやすくお話をしていただきました。もちろん、そういう発達のプロセスの延長上にあることは間違いなくて、この間も少し議論があったと思うのですが、社会的な不利益に直接これがつながっているということだったのですが、これは医学的な問題と判断していいのかどうかというのはなかなか難しいのではないかという感じがするのです。
○飯野班員 いまのポイントは非常に重要な点だと思います。16歳を過ぎて20歳になるまで透析をしている方で、やはり高齢者で透析あるいは若い人で透析をする場合には違うと思います。骨の問題とか、思春期と成長の問題以外に、メディカル的な問題で移植をしたほうがメリットはあると思います。ですから、20歳まで入れたほうがいいのではないかと思います。
○高橋参考人 私は、なにも20歳まで入れないなどということは一言も言っていないです。BとCで、本来だったら思春期前にやらなければいけないのは、それが16歳以降に引っ張られてしまうということが問題になって、本来13歳以下の人にたくさん植えてもらいたいわけです。それがこのC案だと引っ張られてしまうということなのです。だから、20歳までのポイントでいいのだけれども。
 もう1つは先ほど先生がおっしゃったように、この12点というのは点数が高いのではないか。私は、16歳からは10点ぐらいでもいいのではないかという気はします。いまは8点と12点で計算してありますけれども、その辺を私は強調したいということです。
○相川班員 このシミュレーションを見まして、前回も言いましたように16歳から20歳未満がゼロというのはどう考えてもおかしいです。シミュレーションをやってゼロというのは、制度として現実的ではないような気がします。
 もう1つは、この参考資料を見ていただいてもあれですけれども、UNOSの参考資料の11頁に、Pediatric Kidney Transplant Candidates.3.5.11.5というところに書いてあります。ここでも11~18歳はadditional pointがあって、18歳までは登録した時点で、そのextra pointは持ち越しになります。イギリスでも16歳までに移植ができなかった人は、そのポイントを日本のように失ってしまうのではなくて保有することになっています。
 これは前回も本田先生から、移植ができないのは彼らのせいではなくて、ある意味ではドナーが少ないこともあるかもしれませんが、こちらの問題だと思うのです。患者さんの問題ではないです。待っているのに、16歳を超えた途端にいきなりポイントがなくなってしまうというのは、あまりにも制度としてはおかしいのではないかと言えると思います。私は、その2つの懸案が問題だと思います。本来は16歳までに移植を受けるべきだったのが、受けられなくて20歳までになっている人に関しては本人が悪いわけではないですから、なんとかしてこの患者さんたちは救ってやるべきだと思います。少なくともシミュレーションでゼロという結果が出たものに対して、それをそのまま施行するわけにはいかないと思います。
○大島班長 いまの相川先生の指摘については、皆さんも合意していますよね。どういう形にするかは別にして、ゼロはないだろうと、やはりこれはおかしいというのはよろしいですね。
○高橋参考人 それは、この間終わっているのではないですか。
○大島班長 それは合意されているということで、あとはそういうことのないようにするためにどうするのかというのが本日の議論だとご理解いただきたいと思います。
○相川班員 でも、これはBにするとゼロになってしまうのではないですか。
○湯沢班員 それについてですが、B案で16~20歳を12点とした根拠は、12点付けないとこの人数はゼロなのです。ですから、これを8点とか10点にしてしまうともはやゼロになってしまうのです。そのために、ちょっと多いように見えましたけれども、あえて12点にしたということだけです。
○高橋参考人 もう1つは登録患者があまりにも少ないのです。それをきちんとしないと、少ない人数で、これでやっているということは非常に危険だと思うのです。もっとたくさん登録してくれれば説得性があるのです。
○本田参考人 登録患者さんが少ないということに関してですが、小児は少なくとも5年以内に60%移植しています。10年でも100%まではいきませんけれどもかなりになります。米国やヨーロッパでは2年以内に80%が移植しています。日本は遅いですけれども、ほとんどが生体腎です。献腎が貰えないということで、皆さん生体腎を移植しています。この状況で、もし献腎が早く貰えるということであれば、もちろん生体腎も考えるけれども、献腎の登録は増えると思います。だから、小児の登録は圧倒的に少ないです。現状で私の所でも、どのぐらい待つかと言われ、3年ぐらい待つかなと言うと、それだったら早くお父さんかお母さんからしましょうという話になります。
○大島班長 日本の、期待しても出てこないだろうという社会的な背景の中で、どうしても生体腎のほうに行ってしまっているという実情があるということを反映しているということですね。
○本田参考人 小児を優先しなければいけない理由のもう1つに、生体腎移植が小児で多くされていて、それはほかの年齢に比べてはるかに多いです。もともと透析患者そのもののパーセントが少ないですから、そこの数で言われるとあれなのですけれども、パーセントで見ていただくとこれは透析学会にもデータがあります。小児で圧倒的に移植がされているということは、全透析患者分の移植患者の年齢でやればわかると思います。
○大島班長 この問題に触れると、また話がだいぶ違った方向に行ってしまいます。しかし、そういう背景があるということの共通理解だけはした上で、この問題をどう考えていくか。
○高橋参考人 生体腎を選んでいる理由は、生体腎のほうが献腎移植よりも成績がいいということ、それで早くやりたいということもあるのです。献腎移植のほうは、小児の場合は成績が悪いです。だから、親とすれば少しでも成功率の高い、そして二次性徴以前にと。もう1つは二次性徴以前というよりも、透析の期間をいかに短くするか。二次性徴だけではなくて、待機期間を短くしたほうが、成長・発育が望めるということがあります。
○大島班長 どこをドナーソースにするかという議論は置いておきます。その議論をし始めるとまた違った方向へ行ってしまいます。少なくとも本日のこの会議では、ある前提条件は前提条件として、共通理解として踏まえた上でどうするのかを考えていきたいと思いますので、その点はよろしくお願いいたします。いかがでしょうか、BかCか、あるいはその他かというところに少しずつ議論を絞っていきたいと思います。
○飯野班員 先ほど服部先生が、小児のパーセンテージが高くなるとおっしゃったのですけれども、私は小児の待ち時間はゼロでもいいと思うのです。登録したら1年以内にすぐに移植できるとか、そのぐらいやってもよろしいと思うのです。ですから、C案で30%、その他で60%というぐらいで構わないのではないかと思います。
○大島班長 飯野先生は非常に厳しいというのか、強い意見で、むしろ服部先生のほうが少し引きぎみという。
○服部班員 引きぎみではありませんが、いろいろな先生のご意見を聞いていたら、なにがなんでも小児というわけにはいかないと思うようになりました。大島先生がおっしゃるように、患者さんの待機日数の長期化が問題になっている。その点では、C案のほうが全体の待機日数が4,274と随分と減っていますので、C案が良いかと思いました。しかし、C案だと16歳未満が多すぎるため、長い間腎臓を待っている大人の患者さんの心情を考えると、C案はちょっと16歳未満の小児に偏りすぎているのではないかと思ったのです。
○湯沢班員 小児を優先すると、成人に行くパーセンテージが減るのは当然のことで、そこで待機日数の点数をいままでどおりにしておいたのでは、当然成人の待機日数が引っ張られますので、全体の待機日数はほとんど変わらないことになってしまいます。実際には小児は少ないので、小児分少なくなった分だけ、例えばBを見ますと全体の待機日数はほとんど同じなのですが、実際には成人の待機日数が結構引っ張られることになります。
 Cでは、待機日数の点数を半分にした分だけその影響が少なくなっています。全体の待機日数が減るだけではなくて、20歳以上の待機期間の中で、10年未満の人も多少なりとも多く当たってきて、希望が持てる待機になるのがC案だと思います。そういう意味で、私はC案がいいのではないかと思います。
○大島班長 湯沢先生はC案がいいと。
○高橋参考人 シミュレーションの結果というのがよくわからないのですが、16歳未満がB案だと平均937日ということですよね。C案になると、それが1,041日に延びるということですよね。16~20歳の間は、B案もC案も同じということですよね。そういうことを言っているのですよね。
○湯沢班員 このポイントですと、16~20歳については全く同じ人が当たってきます。そのようにB案の加点12点というのを作りました。
○高橋参考人 20歳以上の人たちが、B案だと長くなる。その分が全体に引っ張られているということではないのですか。
○湯沢班員 そうです。
○高橋参考人 だからB案のほうが、16歳未満の人たちは平均日数が少なくて済むわけですよね。
○湯沢班員 はい。997が937です。
○高橋参考人 そうですよね。その辺の確認をきちんとしておかないと、C案では16歳未満のほうが長くなるわけですよね、それでいいのですか。
○飯野班員 短い人も増えます。短くて、長い人も増えてくるわけです。トータルが増えますから。
○佐藤補佐 短い母数の人もいれば、長い母数の人もどうしても全体的に増えてしまうので、待っている人の長さが見かけ上長くなったように見えるということです。
○辺見室長 シミュレーションした立場であれなのですけれども、前回も前々回もご紹介しておりますように、実際の小児、16歳未満への配分が6.6%です。どう計算してもいまの点数で2割ぐらいリストアップされます。つまり、意思確認過程で、多くの方がタイミングが合わないということが子どもの場合にはあり得るという面もあるのでしょうか、わからないのですけれども、時間を取って次の方に行っているという状況です。
 これを3割に上げたら、2年後でも3年後でも1年後でもあれですけれども、検証する際に本当に3割になったのかというのをもう一回検証されることになると思うのです。そこが本当に上がるのか、一方で意思確認過程において、当然そのプロセスが必要になってまいりますので、そこをわざわざ上げてやる必要があるのかというのは、非常に実務的な問題ですけれども、検討していただいたほうがよろしいかと思います。
○大島班長 現実はこうなっているということですね。
○辺見室長 はい。
○高橋参考人 地域点というのが12点と6点ですけれどもその辺はどうでしょうか、小児の場合は全国区という形にしないと、その6点というのはすごく大きいのではないですか。その辺はどうなのでしょうか。
○大島班長 その点について、湯沢先生からコメントはありますか。
○湯沢班員 どうバランスを取るかだけの考え方で、待機年数なりHLAなりのポイントを、結局Cですと待機年数が半分になった分だけ、逆に地域の点数が上がって、相対的には上がることになるので、より重視されることになってしまいます。
○高橋参考人 地域点を、子どもの場合は12点やるということであればこのシミュレーションはいいと思うのです。この間も富山県と新潟県が来たのだけれども、14点加算されて、向こうは6点ですよね。だけど、新潟県の子どもだったら12点来るわけです。だから、その辺も子どもの場合だけは全国区にしてしまうというふうにしていかないと、かなり選ばれない可能性があると思うのですがどうなのですか。
○佐藤補佐 14点あれば、かなりそれに引っ張られてくるので、そこではあまり地域とのポイント差は出てこないです。正直言いますと、現行のポイントでいくと待機日数のポイントが11.4ぐらいで、地域のポイントも大体11.4ぐらいということで、そういう意味で見れば現行の基準の1:1:1のポイントというのは、地域と待機日数のポイントとしては1:1が守られているという状態なので、そこに関してはそんなに不公平ということはないと思います。
○大島班長 影響が私には想像がつかないのですが、実際にはそう大きな影響はないだろうというお話です。いままでの議論で、先ほど相川先生が指摘された、少なくともゼロということはあってはいけないだろうという点で一致していて、それではどれだけやればいいのかという、そのどれだけの幅がいいのかという問題がこのシミュレーションという形になって出てきているわけです。少なくともB案もC案も、最低のコンセンサスはクリアしているというのはよろしいですね。
 先ほどから問題になっている、医学的な価値の問題というのをどう判断していくのか。医学的な価値というのは、生物学的な指標で判断するときには相当明快に出てきます。しかし、この問題は必ずしも生物学的な指標だけで判断できるような話ではなくて、社会的な要素や、最近はQOLの価値がどんどん広がっています。そのような指標を持ってくると、どこまでを医学的な判断と言っていいのかというのは、なかなかクリアにスパッと言い切れないところが出てきます。
 これは私の個人的な考えですが、こういう問題を医療の現場で、医療関係者だけに判断させるのは酷ではないかと思っています。こういう問題では、どういう意思決定のプロセスがいいのかということについて、しっかりとした意見を持っているわけではありませんが。少なくとも、社会とか国民、あるいは患者さん側の当事者の意見は重視されるべきだろうと思うのです。それは、どれぐらいのウエイトで重視されるのかという点についても、私は何か基準を持っているわけではありません。
 少なくとも、これからはそういう考え方が一定以上に重視されながら、こういう問題については決定されていくプロセスが必要ではないかと思っています。そういうことで、患者代表の方から意見をいただいているということなので少し紹介していただけますか。
○佐藤補佐 大島班長のご指示もあり、前々回全腎協の宮本会長にご参加いただきましたので、今回のシミュレーションの結果を全腎協の宮本会長にご説明させていただきました。宮本会長のご意見としては、「小児にある程度加点が加えられたこと、16~20歳未満もしっかりと守られていて、さらに10年未満の患者さんも守られていつつ、長期の患者さんに対して、そんな夢をなくすような数値でないことから、一応宮本会長はB案がよろしいのではないでしょうか。長期に待っている人たちの夢をなくすのはやめてほしい」ということでした。
○大島班長 もちろんこれが結論ではありません。私が前置きをしてしまったのでプレッシャーになるかもわかりませんが、非常に貴重なご意見として伺っておきたいと思います。
○樋口参考人 いま、そういう話も出たので少しだけ時間をいただいてもよろしいですか。
○大島班長 はい。先生には、最後にまとめていただくような形でお話をいただきたいと思っています。
○樋口参考人 いやいや、まとめにはならないです。B案かC案かというところで、大島先生がはっきり焦点を定めて議論をしておられるのに、ここで拡散させるのは申し訳ないとは思うのです。
○大島班長 私も読ませていただきましたけれども、基本的な部分なので構いませんのでよろしくお願いいたします。
○樋口参考人 私は常に前置きが長い人間で、学生にも本当に評判が悪いのですが、2つ前置きで話をさせていただきます。
 先回ここに参加させていただいたときにまず言うべきだったのですが、私は30年来腎臓病でずっと通っていたのですけれども、今年の3月から透析患者になりました。私は法学部で医事法などを教えていますが、それはたまたまのことで臓器移植とか、いわんや腎臓移植についての発言というのは控えてきたというのは変な話なのですが、どうかなと思っていました。今回、こういう所へ出てきてみたらどうかと言われたときも、一旦は断りました。とにかくインフォームド・コンセントみたいなものですから、そういう人間だということは明らかにした上で、これからのお話は聞いていただきたいと思います。ただ、私としては自分の利害だけでということはやめてというのか、法律家のはしくれとしてやっているつもりですが、それが本当に貫徹できるかどうかはなかなか難しいです。
 2つ目は、例えば東大の法科大学院で「生命倫理と法」というのを医者と一緒になってやっています。一昨年の問題は、ちょっと早かったのでしょうけれども、それも問題になりつつあったのですが、いわゆる新型インフルエンザの優先接種というのを、どういう基準で、誰が決めるべきかと。いま厚生労働省ではこういうことが立ち上がって、こういうことをやっているけれども、それはどうかというのを試験問題で出しました。今年の2月には同じような話でもっと直接的に、1人しか医者はいない、30秒差で2人の急患が運ばれてきた、どっちかしか診ることができない。このときにどうやって順番を決めるかというのはいろいろな考え方があり得ます。
 そのときの1つの考え方として、どこでもそうですけれども合意ルールというのがあって、みんながそれでいいと言えばいいではないかという話があります。合意は何よりも優先します。だからこの場合も、本人たちは無理でも、その代理人ということもあるから、AとBという患者が来たときに、AとBに合意させて、どっちを先にしますかと、それに従って医者は動く、というルールはとられていないのです。なぜとられていないのだろうか。そういう質問をしています。
 これは、生命倫理の四原則でいうといわゆるジャスティスというか、限られた資源の配分問題というのは、なかなか解決法が難しいために、私も正解を持って試験問題にしているわけではないのですが、しかし学生はいろいろなことを書いてくれて、いろいろ勉強になっています。
 もう1つは私のレジュメに書きましたが、先回参加して非常によかったと思うのは、私の横にいた宮本さんとか、この前も朝居さんだったと思いますが、ネットワークの方にいろいろ教えてもらって学んだことが多かったです。その最たるものは、平成14年に基準が変わって、結果もものすごく大きく変わったのだということがわかりました。法律家ですので、ルールを作ったり解釈しているのですけれども、ルールを変更するとこんなに違うようになるのだと。しかも、人の生命に関係する恐ろしいことを皆さんやっておられるのだということがわかりました。
 今回の基準の定め方では、これも間違いがあれば直していただきたいのですけれども、前の基準では待機期間等を考えていなかった。今度は待機期間を入れて1:1:1というので、3分の1で大きなパーセンテージにしたために、この7年ぐらいの間に、それまでは待機期間が6.7年だったものが、はっきり14年以上になりました。ただ子どもについては特別優先枠を作りましたので、それを除いてしまうと15年以上ですかね。だから、一挙に6年が15年以上という結果になりました。
 これは説明がなかったのだけれども、このまま現行ルールを続けると、いまの15年がどんどん増えてくるだろうと思うのです。20年、25年という話になると、これはルールとしてというか、それこそ制度をぶち壊すような話で、誰にとってもアンハッピーだと。どうして起きたのだろうかというと、これは別にそのときのルール変更をいま批判しようとかそういう意味ではなくて、これは難しい問題なのです。初めに登録した人から、長く待っている人からというのはわかりやすくて、それは本当にわかります。しかし、我が国の現状を考えると、これも数字が違っているかもしれませんが12,000人ぐらいが待っている中で150人というような、1%みたいなところでこんなルールを作ると、こうなるのは結果論としては見えていたのではないでしょうか。今後もこれが続いていくのは、20年、25年になっていくのは誰にとってもアンハッピーなのです。
 例えば、誰かが順番を待っていて、20年経って70歳で腎臓をいただけることになったらものすごく有り難いと思うと思います。神様からの贈り物だと思うと思うだろうけれども、人間には欲があるから、もしこれが10年前だったらと思ったりすると思うのです。しかし制度がこうなっているのでなかなか難しいのですけれども、人間はどのみち死ぬわけです。年を取ってきて私などもわかりますけれども、30代、40代に活動していた範囲と、日野原さんみたいな化け物みたいな人もいますが、年を取って活動範囲もすごく狭まってというときにありがたいという話よりは、ここのときのほうがもっと有り難かっただろうというのはわかることなので、こうやってどんどん待機期間を長引かせるようなルールはやめたらいいと思います。それの反映だと思いますけれども、16~20歳であれ、とにかく若い人に不利なルールを作っているというのが、本当にジャスティスと言えるのだろうかということです。
 それを直すようなことを今回は考えたらいいのではないか。それにはどうしたらいいかというのは専門家に委ねるしかないのですけれども、私も少し考えてみました。
 2で、現状の分析はいま言ったようなことなのですが、このままではどんどん待機期間が長引いてしまいます。これは、みんなにとってよくない、みんなに希望を失わせることになります。現行ルールの問題点は、待機期間に与える重要度を高くしすぎた。UNOSの基準はわかりにくくて、私も少し勉強したのですが、いくら読んでもわからないのです。それに与える得点の重要度というのか、割合が日本よりはずっと少ないらしいです。
 そうすると、日本はちょっとやりすぎたのではないか。16歳であれ何であれ、若い人には登録の意欲を減少させることになりますので非常に問題です。
 アメリカでは提供者数が少なくて、非常に大きな問題だと言っているのですが、もちろんヨーロッパであれ何であれ日本よりは出ているわけです。そういうところで待機期間を少し考えると、日本でいま考えてしまったのが、やむを得ずだったのかもしれませんが時期尚早だったのではないか。したがって、待機期間を考慮することを一層思い切って全部やめるか。少なくともそれに与えた重要度を大きく削減する必要があるのではないか。そうすると、7年なら7年、こういう形でやってきた人たちの期待感というのはどうするのだという話があってなかなかあれですが、私の答え方は3つです。従来でも、これは逃げと言えば逃げですが、基準を1年ごとに見直しますよとはっきり明記はしてあるので、やはり既得権化する話ではありませんよということを初めから言っている。ですから、このルールを作ってきた人はフェアに考えていた。
 2つ目は、提供者は何しろボランティアですから、ただで提供しているものを、こちらでもらったところで急に既得権というのはどうなのだろうと。やはり、ボランティア精神でやってきたところに、既得権とか、それを期待権と言ってもいいのですが、それは大きなものとしては発生しないのではないか。現実論として、期待権を既得権化すると、いまの12,000人が終わるまではルールを変更できなくなるというのは絶対にあってはならない話なので、それは現実的にも不可能なので、やはりルールは変えざるを得ない、変えていいのではないかということです。ルール変更の目標は、待機期間がどんどん延びていくことはやめさせて、できるだけメディカルニーズにということですが、もしメディカルニーズで駄目なら、それに変わる正当化を考えて、早いもの勝ちルール以外にもジャスティスを満たすルールはいくらでもあります。いちばん簡単なのは、全員に番号を貼り付けてメディカルニーズが同等の人については、抽選やくじ引きは本人にさせる必要はないので、コンピュータで無作為抽出するシステムだと思います。そういうのもフェアと言えばフェアです。あるいは世代間公平を考えるなら、必ず30代でも何人か、あるいはパーセンテージに応じてでもいいのですが、早いもの勝ちルール以外にも、ほかのルールは十分あり得るということです。ですから、そういうことを今後は考えていく。
 先ほど大島先生が、これはいちばんの責任者でおられるから、本当に実感としてそう思われたのだと思いますが、メディカルニーズだけでは決まらないような話だと、誰がどういう形で参画して、こういう基準を決めていくかという課題が重いものとして、今後はあるだろう。ここも私みたいに医者でない人間も入れてもらったり、先ほどの宮本さんの意見も取り入れたり非常に工夫はしておりますが、私はメンバーの方の職業を全部知っているわけでも何でもないのですが、お医者さんだけで決めていいような、お医者さんと役人で決めていいような話なのかどうかというのは、インフルエンザの優先接種者の場合でも同じように問題になったので、あるようなことではないかと考えます。もちろんいちばん大きな問題は、本当に数少ないものをどうやって分け与えようかというので、みんなが苦労するのは苦労だけが大きいので、どうやって移植を増やすか、パイを大きくすることのほうが、もちろんいちばん重要です。そんなことは釈迦に説法の話だと思います。以上、感想みたいなことで申し訳なかったです。
○大島班長 ありがとうございました。先生のご指摘は、私には本当に痛いぐらいよくわかります。とは言え、この会に課せられている役割と仕事はこのまま行かなければいけないので、問題は問題としてきちんと把握しながら、最大限この会として一体何ができるのかということを、同時に考えていきます。
 樋口先生のご指摘を背負い過ぎると、前へ行きにくくなってしまうので、それはそれできちんと押さえた上で動いていただきたいと思います。
○高橋参考人 いま透析の導入期の平均年齢が68歳です。この方が登録して15年目というと、まず不可能なのです。新規に透析に入る方はほとんど登録しなくなることは、逆にインフォームドでしなければいけないわけです。
 私は臓器ネットワークというのが、アメリカでもそうですが、登録料で運営していくのが本来のあり方ですが、結局、そのパイが少ないから、下手すればそれは崩壊すると思います。私はそのことをこの間も言ったのです。そういうことも鑑みて、このB案がいいのではないか。それはC案のほうが、私も小児の移植をずっとやってきましたのでいいのだけれども、それを強調するあまり全体のバランスが崩壊するようなことはまずいのではないかと申し上げたいと思います。
○相川班員 シミュレーションの結果で見ると、B案とC案では平均待機日数が1,000日ぐらい違いますよね。ということは、C案にすると待機期間は短くなるということですよね。
○佐藤補佐 結局、選ばれる人は短くなってきますが、待たされる人の待機日数はまた長くなってしまう可能性はもちろんあります。
○相川班員 つまり、どちらかというとHLAが合っている人にいくということですよね。
○大島班長 当然、利益を被る人があれば、不利益を被る人が出てくるというのは当然なことなので、みんなが利益を被ることはあり得ないことですから。
○相川班員 ただ、私が登録患者さんからよく聞く話は平均16年と言われて、先生、それでも宝くじみたいに短い期間でも、自分とHLAがうんと合っている方がいたら、それを無視してでも来ることはあるのですかという話をする方もいるのです。そういう人にも絶対的になしというのではなくて、チャンスを与えるべきだと思うのです。しかも、HLAが全部合っている人は、1,000人のデータブックで成績がいいということはわかっているわけです。少なくともそういう人たちにも当たるように、機会を与えてあげることは大事だと思います。そうでないと、はなから平均14年、16年と話したら、まず登録する人はいなくなってしまうと思います。
○大島班長 結局、何か制度を変えれば不利益を被る人が出てくるということが辛いところで、それを承知で制度を変えていくということです。樋口先生がご指摘された若い人に不利益が、継続的に出口がないような形で続くということは、ジャスティスとは言えないのだろうと。これは私もそう思うのですが、だからといってそんなことをみんなの合意で決めてしまっていいのかどうかということについては異論があるかもわかりません。結局、どんどんウェイティングタイムが延びていってしまうことを考えると、それも制度として一体どうなのかというのは理に合った話しかなと思うのですが、いかがでしょうか。それは相川先生が言ったことにつながる話ですが。
○相川班員 これはエビデンスはないのですが、移植外科医でしたら全員わかっていると思うのですが、お年を召した方で待機期間が長い人の手術は相当大変で、合併症も多いです。ただ私たちは頑張って、それなりの成績を出していますが、もしこれで臓器提供が増えて、そういう方たちばかりにたくさんいくようになると、医学的な成績が悪くなると思うのです。
 それをどうやって証明するかは難しいですが、現実として移植外科医からのそういうクレームが非常に多いと思います。
○高橋参考人 私はそれに対しては、たしか最初の1年目はそれに対しては非常に成績が悪かったですが、そうやって選ばれる人というのは動脈硬化がむしろ少ないのです。たしかに心疾患は多くなるかもしれませんが、それはきちんとしたデータを出してやらないと危険だと思います。
 もう1つ申し上げたいのは、いま透析患者さんは30万人いて、毎年7,000人増えているそうです。この7,000人が68歳以上で、13,000人しか登録していないこと自体がおかしいのです。本来から言えば5万人、6万人登録してもいいわけです。やはり、15年、16年と言われれば、登録しないです。私もそういう年齢になれば、あと15年経ったら、生体腎を考えるか、登録料だけ3万円取られて、毎年5,000円ずつ取られていくのだったら、私はそれはしないと思います。ですから、制度や医学的な問題とかすべてを考慮して、制度を全くガラッと変えるのは危険を伴っていると思うので、マイナーチェンジをむしろ全体のことを考えれば、そして小児にも厚くしましたよと示すような判断でやっていただきたいと思います。
○大島班長 相当現場の生々しい話になってきているのですが、どんどんウェイティングタイムが延びていけば、当然そのリスクは高くなってきます。そのリスクを技術の進歩などでカバーしていくのですが、しかし、現実には何が起こっているかというと、年を取れば取るほどリスクは高くなって、実際に移植を行うかどうかというのは、最終的には現場の医者、移植医の判断によることになって、このリスクではやらないということが、発生する頻度が高くなることは当然予測されるわけです。そのようなことも含めて、議論は出尽くしたかどうかわかりませんが、相当の部分までいったのではないか。問題も一体どこにあるのかというのもよく把握できて、どうするかなのです。
○飯野班員 個人的には、高橋先生が言っていることはすごく理解できるのですが、私自身の考え方で移植患者さんや透析患者さんを診ていると、やはり、高齢者は移植よりも透析は非常にいいですから、透析をして余命というのがあると思うのですが、そういうものを全うすることになります。若い人には移植をなるべく進めてあげて、もちろん高齢者で移植して良くなる方もたくさんいらっしゃいますが、どちらかというと、そういう考え方を私自身は持っているのです。ですから、なるべくなら若い人に。これは結局コミュニタリアン的な考え方で、社会を中心に価値観を選んでいくことなので、私はそういう意味では若い人にあげたいなと。同じようなことを言って申し訳ないですが、そういう気がします。
○大島班長 そろそろまとめたいと思います。合意できることについて、前回までに合意できたことは、最初に確認をいたしました。今日改めて、若い人とあえて言いますが、希望を取ってしまうようなシステムはよろしくないと。これには何らかの格好で希望がつながるような制度にすべきだろうと思います。この1点はよろしいですね。
 2つ目は樋口先生のご指摘ですが、どんどんウェイティングタイムが延びていくようなシステムというのは、システムとして非常に問題が大き過ぎると。これもよろしいですよね。
 前回の議論であまりドラスティックに変えてしまうというのも、制度そのものが非常に大きな問題につながる可能性があるというのも、怯えているわけではないですが、よくわかる話です。実際にはこういう場で何か決めなければいけないぞというときに改めて問題になるのです。本当は、こういう問題はどうあるべきかという議論を時間をかけてやった上で、そういった議論の積み重ねの中で次の制度をどう考えようかということが望ましいのです。これは厚労省でも、ネットワークでも本当はきちんと議論をして、いろいろな方の出席を求めて積み重ねておくことが本当は必要だろうと思います。そういったバックグラウンドがないので、社会に納得してもらうためには、大きな制度改革があるときに、法律が変わったのだから、この点もきちんとやらなければいけないということで、急激に浮上してくるのですが、そのことを愚痴っぽくゴチャゴチャ言っていてもしようがないので、そういう背景があるということだけ申し上げておきます。
 今日のご意見を聞いていて、私の結論を押し付けるわけではないですが、B案かなと思ったのですが、いかがでしょうか。小児を非常に強くされた服部先生のB案といい、宮本さんのご意見もB案といい、樋口先生は直接B案とかC案とかおっしゃらなかったのですが、ある意味ではもっとラジカルなご意見を樋口先生は指摘されたのですが。
○服部班員 大島先生、今回の案の見直しはあるのですか。
○大島班長 もちろん、それは次に言おうかと思ったのですが。
○相川班員 実は、これにエイジマッチングの話も本来は付け加えないといけないのです。若い人に対しては、エイジマッチングの腎臓をお願いして、臓器提供すると。そういう意味で、それを議論してそれが入れば、パーセンテージが減ったとしても、おそらくもう少しはいくようなことになるので、いまの段階ではなかなか難しいでしょうが、将来的にエイジマッチングを付け加えて、19.7%がもう少し上にいくと考えていただいてB案でどうなのでしょうか。このように私は思います。
○大島班長 ありがとうございます。
○高橋参考人 先生のおっしゃるとおりですが、実際問題として7月17日以降、子どもの提供者はゼロです。この現実をどう見るかです。やはり我々は、これはこれでやらざるを得ないというのはありますから、あまりにもドナーアクションできちんと力を入れないと、ただ配分するような、いまの臓器移植ネットワークのあり方に私は問題があると思います。コーディネーターを増やすのもいいのですが、臓器移植コーディネーターをむしろ増やすべきであって、中央のコーディネーターを増やすべきではないのです。最近はほとんど出ていないではないですか。一時期、9月はたくさん出ましたが、10月と11月はこんなに少ないのです。ここに大きい問題があるのです。
○大島班長 その問題はちょっと。B案という方向で、もちろん提案があります。1つは、ルール上は1年ごとに見直すことは決まっているわけです。UNOSの話もよく出ましたが、UNOSは少なくともどういうルールにするのかということで、1年かけてずっとUNOSの中で議論をし続けてきて、ある一定の論議のもとにルールの改正を、ある意味では非常に頻繁にやっていますので、そういうバックグラウンドがあるということです。
 これは厚労省にお願いしたいことですが、それはネットワークがやるのか、どこがやるのかということは別にして、特に樋口先生がご指摘されたように、一体どこの誰がどういう責任を持って、何を根拠にどうしていくのかというのは、実は本当にわかっていないのです。こういった問題をどういう形で議論して積み上げていくのか。単に1年後に変えればいいという話ではなくて、そういう積み上げの中で変えていく仕組みを作っていく必要があるのではないかと改めて提案したいと思います。今回はB案ということでよろしいでしょうか。
                (異議なし)
○大島班長 特に反対もないということで、B案ということで進めさせていただきたいと思います。次の議題の「その他」に移ります。
○辺見室長 資料3につきまして、私から説明させていただきます。資料3の1の(2)「リンパ球直接交叉試験」につきまして、「なお、リンパ球交叉試験はFlow cytometry又はこれに準ずる高感度な方法を用いて行うことが望ましい」と書いております。これは前回、「リンパ球交叉試験はFlow cytometry等、高感度な方法を用いて行うことが望ましい」と書いてあったのですが、この「等」の内容を「またはこれに準ずる」ということで書いたものです。
 実は前回の会議のときに、この記載ぶりについて佐多先生のご指導もいただきながらということで、大島先生のほうから言われていたのですが、これは作成する段階で間に合っておりませんで、その後、佐多先生のご意見はいただいております。ここに検査事例としてFlow cytometryを入れる必要性、ないし科学的根拠の観点からすると、あまりこれがいまの時点では出ていないという前提で、この場においてそういったデータが示されれば、おそらく別だと思います。出ていないということであれば、これをいまの時点で書き込むのはどうかということです。
 全体として佐多先生の問題意識は、いろいろな試験がある中で、その試験の感度の評価みたいなものがどのようにあるのかということについて、おそらく基礎的なデータがないまま議論するのは難しいのではないかと思いますので、いただいている意見としては、ダイレクトクロスマッチ、またはこれに準ずる高感度の方法にするというご意見です。こうすると、要はいまある試験を全部一通り認めるということだと思います。そうすると、わざわざ「望ましい」と書く必要はなくなってしまいますので、むしろ、そうであれば、この文言は事務方としてはダイレクトクロスマッチ、またはこれに準ずるということであれば、書かないことのほうがいいのかなという気がしております。ただ、これまでいろいろ文献を私たちなりに確認しております。文献の中の記載として、Flow cytometryが成績としてよいといった記載がある文献は見当たりますが、その成績の比較を目的とした必ずしも文献ではなくて、ある文献の中の一部に出てくるという感じです。ここでご紹介するほどのものではなかったので、私共としてはご用意できておりません。そういった文献があることに鑑みれば、さらに湯沢先生の学会からのご提言等もいただいておりますので、今後、データ提供や資料提供等があれば、議論をする必要があるのかと考えておりますが、現時点ではいま申し上げたとおりです。
 優先順位については、シミュレーションの結果のBを前提として書いてあります。2の(2)HLAの適合度のところで、1.15倍とする。(4)小児待機者のところですが、「16歳~20歳未満について12点を加点する」と書き加えますので、タイトルを「未成年者」と書き換えて、「16歳~20歳未満で12点加点にする」を書くということです。
 3の(3)PRA検査については、現行では「また、PRA検査が可能な場合、PRA検査陰性を満たすこととする」と書いてありますが、「これを満たすことが望ましい」ということで、PRA検査陽性の場合、医師の判断により移植可能とする道を書くということです。この点については、参考資料6や7で、Eurotransplant の資料など、追加資料をご提出しておりますので、あとで御覧いただければと思います。
 注4で、平成14年の「新ルールの下での状況について、実施後1年のデータが蓄積された時点で新ルールを検討するが、必要があれば追加すべき事項について検討する」ということが書いてありましたが、これに1年後検討するということに加えて、「PRA検査の取り扱い等」ということですので、これにさらに加えてもいいと思うのですが、もともと上の1行目の「新ルールの状況」ということですので、年齢分布とこれについてまず検討することが1つです。もう1つは、そのほかの論点についても「適宜検討を行い、必要があれば、基準の見直しを行う」ということで書き加えております。以上です。
○大島班長 ありがとうございました。いまのPRAの話については、基本的には私も話を聞いていてそうかなと思ったのですが、佐多先生の考え方を文言の中に落とし込むところまできていますが、決して結論ではありません。ご意見をいただきたいと思います。佐多先生のほうから追加、あるいはコメントがあればお願いします。
○佐多班員 こういう基準というのは、なるべく医学的、あるいは科学的な根拠ができるだけはっきりしているものをもって基準に加えていくほうがベターです。それは説明するときにも、やりやすいだろうという意味合いで申し上げているのです。今回はFlow cytometryでいいだろうということは何となくわかりますが、そのエビデンスがないとか、普及度の問題にアンバランスがあるとか、コストの問題とか、まだ早いのではないかということであれば無理に入れる根拠はないのではないかという判断です。
○相川班員 前回も申しましたように、イギリスでは20年以上前にFlow cytometryに全部変えております。それは必然性があって、エビデンスがあるから変えたわけで、全部の施設が一気に変えることはあり得ないわけです。しかも、3、4年前に行ったわけではなくて、20年前に行っているのです。
 前回のカナダでの国際腎臓学会には湯沢先生も出席していましたが、そこでのコンセンサスミーティングでも、基本はクロスマッチでFlow cytometryです。ただし発展途上国などはこれができないということで、Flow cytometryにしなくてはいけないという文言にはなりませんでしたが、そこに出席している国でFlow cytometryでやっていないと言っているのは日本だけでした。発展途上国の方は、実は出席されていなかったのです。そういう状況でしたので、私はエビデンスがないという言い方はないのではないかと思います。
 そうは言っても、スタンダード・サイト・ドキシーで全く駄目かと言われてもそんなことはないわけで、日本はそれなりにアメリカに匹敵するような成績をちゃんと出しているわけですから、ただもう少し細かくきちんと患者さんを助けてやりたいと。世界のトレンドでやるということであれば、Flow cytometryは誰が何と言ってもそういうものだと私は思います。
○辺見室長 まだ勉強不十分で申し訳ないのですが、諸外国の基準を見させていただいている限りで、検査方法に関しても、「何々検査による」という記載が見当たらないところです。選択基準という基準の中で、検査の仕方を特定しなければいけないのか。ひっくり返して申し上げますと、検査の仕方を選択基準の中で特定しますと、検査の仕方は技術革新によって変わっていく可能性があるのですが、これを変えていかなければいけない側面も出てくるのです。この検査方法をこの場でまた評価して、こういった検査でやっていくのがよいのかどうかということも、実は1つご議論としてあると思っております。
○大島班長 結局、同じ検査方法のような言葉で言っているのですが、いまの検査の中身というのはステージが変わってしまっているものだから、解釈の仕方そのものが根本から変わってしまったのか、変わりつつあるのかという議論だろうと思うのです。同じような言葉で言っているのですが、中身としては相当違うと。
 片一方で医学的な進歩の問題と、社会的な整備の問題というのは必ずしもパラレルにいくわけではないから、その乖離をどう解決していくのかということは、社会的な制度の問題に落とし込むときに、医学的な進歩の度合と並行してやっていけるかといったらほとんど不可能です。医学的評価が本当に固まったものについて社会的な整備を行っていくというのは、ある意味で当たり前なことですから、そこの解釈の問題と、乖離の問題をどうやって詰めていくのかというのが、社会的な整備の中では必要になってきますから、そこのところがどうかなという感じです。
○高橋参考人 いまはどこのシステムも確かに9割以上はFlow cytometryをやっていると思うのです。その学会の中でそういうようなことをすればいいわけですが、例えば7%ぐらいでFlow cytometryができなかった患者が出た場合、どうするかという問題になってしまうと思うのです。折角選ばれているのに、それができないということになってしまうとまずいと思います。現況では東北地方には福島医大しかないということで、東北の患者さんは不利になります。
 いま大島先生が言ったように、医学的な進歩とともに、次に新しいイライザの方法とか、精度管理の問題とかいろいろあると思います。たしかにFlow cytometry陽性でクロスマッチ陰性の成績が悪いということはわかっています。しかし、それは次のステップとすべきであって、腎移植臨床学会とか、そういう所できちんとこれを出して合意を得て、学会の中で地域性の問題はどのようにすればいいかとか、そういうことをやった上で、私はこれを書くべきであって、今回は現行のままでよろしいのではないかという気がいたします。
○大島班長 その辺のところを踏まえた事務局側の提案だろうと思いますが。次のレベルアップというのか、それはいろいろな形でどう努力していくのかということは、日本全国がこれになってしまえば全く問題はないわけで、それを踏まえての提案と考えていいのかと思いますが、いかがですか。
○相川班員 これは結局自主的な問題なのです。
○大島班長 そうとも言えないのですが。
○相川班員 ただ、これは組織適合学会でも実際コメントは出ていますし、推し進めていかなければいけないことだと思います。事務局が理解されていないのは、おそらく腎臓だけの問題かもしれません。心臓、肝臓のクロスマッチに関しては、こういう感度は求めていないですから、その辺で詳しい情報が出ないのかもしれません。
 これは高橋先生がおっしゃったように、学会で自主的に推し進めて、なるべく精度の高いものに持っていくということで私はいいのではないかと思います。
 というのは、生体腎移植をやっているそれなりのメジャーの施設は、ほとんど生体腎移植にもFlow cytometryをやっているのです。そういうことを考えれば、別に文言に入れなくても、学会で検討してみんながやるようになれば、それで発展するということでもいいのかもしれません。
○大島班長 いかがでしょうか。
○湯沢班員 この1年を目処に検討するというのは、非常にもっともなことだと思います。1つ忘れてはいけないのが、今回小児に点数を付けて、だいぶ優遇することになりましたが、先ほど室長もおっしゃいましたが、1位、2位に選ばれている人が、実際には20%いるにもかかわらず、移植になっているのは8%なのです。これは新ルールで、そもそも12%としようとして配分ルールを変えたわけですが、実際には20%選ばれていて、8%しかいっていないことについての検証も非常に必要なことだと思うのです。今回、小児のシミュレーション上はそれなりのパーセンテージでいくようになりましたが、結果的に蓋を開けてみたら拒否するというか、配分されてもいかない。それで実際のパーセンテージは下がるということがあったときに、例えばいまのルールで何度拒否しても、また次には上がってくることがあるわけですが、それをルールの上では何で拒否したかというのを考慮しないでまたいっているわけですから、無駄と言ってはいけないのかもしれませんが、無駄に選択されていることになっているわけで、それがパーセンテージを下げている1つの大きな原因でもあるわけです。これも大いに検討されなければいけないことだと思います。
○大島班長 おっしゃるとおりです。本当に作られたルールを公平、公正にうまく運営していこうと思えば思うほど、決してそれをモラルハザードと言っていいのかどうかわかりませんが、そこから逸脱するものの頻度があまりにも大きいと、いろいろな意味でイライラが募るという状況です。それはそれで本当によくわかることで、こういった問題も本当はきちんと分析して表に出して、それが何らかの格好で改善できるものかどうかというのはありますが、決して放置していいようなことではないと確かに思います。
○高橋参考人 やはりシミュレーションをするときに、第1候補、第2候補が最初に選ばれますので、1つシミュレーションをやっておかないと。それでやってくれたのですね。しかし、実際に選ばれるのは、例えば先週の金曜日も新潟市民病院で1つドナーを出したのですが、結局、1番目と5番目まで新潟は並べましたが、新潟は1番目と6番目は女子医大に行っているわけです。その辺も先生がおっしゃったように、実際に選ばれる人と、1番、2番のシミュレーションとはだいぶずれてくる可能性はあると思うのです。
○湯沢班員 いままで過去9年間のもので、それだけずれがありますから、これで小児にどれだけいくかというのは蓋を開けてみないとわからないのです。同時に制度上何らかの理由で拒否されたというか、移植しないことになった小児についての検証が必要だと思うのです。ネットワークに聞くところによると、常習的に拒否する人はしていると。ですから、そういう人は何度も上がってしまっているわけで、それがパーセンテージとしては非常に歪なことになっていると思います。
○相川班員 ただこれはドナーに関しての条件があるので、心停止下でエクスパンディード・クライテリア・ドナーに属するようなものを子どもにやるというのは結構大変なもので、場合によってはドナー自身が、待機患者さん自身ではなくて、施設で受け入れていないということも、ファクターとしては大いにあると思います。特に子どもに関してはそういうことが多いと思います。そういうことも場合によっては調べなければいけない。
 もっと細かいことを言うと、日本人に合ったHLAの多い患者さんというのはいるのです。ですから、当たる人は何回も当たるし、当たらない人は全く当たらない。HLAの頻度によっても、実はUNOSでもイギリスのUKTSSAでも、この頻度は鑑みてやっているのです。実際は多くなればそこまで本当はやらなければいけないのですが、いま日本はそこまでいっていないのが現状です。ただ、そういう不公平さはあると思います。
○本田参考人 私は臓器移植ネットワークのやり方を知らないので教えてほしいのですが、生体腎移植をやろうか、死体腎移植、献腎移植をしようかとして待っている人が、いつまでも出ないのだったら、生体腎をされた場合に、その人はすぐにされたら、こちらのほうに報告することになっているのでしょうか。本当は私が知らなければいけないのですが、ネットワークのほうに報告することになっているのでしょうか。というのは、小児の場合は特にそういうのが多いのであれば、すでに移植されていた可能性はあるということです。
○朝居参考人 基本的には1年に1回の更新のときに自主申告ということで、生体腎済みの連絡をいただくこと以外は、やはり選定に上がったときに連絡して、実は生体腎は済んでいますということも中にはあります。
○大島班長 それを報告する義務のようなものはないですね。
○朝居参考人 基本的に、義務は1年に1回の聴取のときです。
○大島班長 そのときだけ。やったときに報告するとか。
○朝居参考人 いただければドクターでも、ご家族でも。
○大島班長 それはしなければいけないという話にはなっていないのですね。
○朝居参考人 リアルタイムの報告という意味では、ルール付けまではしていないのです。
○飯野班員 基本的には移植施設がそれはきちんと把握すべきだと私は思いますけれども。難しいのだろうと思います。
○本田参考人 生体腎はいいですが、死んだ場合の連絡はほとんどないですね。次の年のあれしかないですね。
○朝居参考人 それも、亡くなった方も更新のときというのが基本なので、それは他臓器の心臓や肺とはだいぶ制度的に違っています。
○大島班長 わかりました。実態はそういうことだということで、それがいいかどうか、ここでの議論は。ほかはいかがでしょうか。
○湯沢班員 私は今回班員として選ばれて、検討させていただいてきましたが、新ルールを1年を目処に改定するといったときの班員のメンバーは、毎年替わるのですか。
○辺見室長 2年ということでお願いをしていると思います。2年終わったら総取り替えというわけではなくて、2年ごとに見直すということです。ちょうど1年ぐらいですので、その時期になったら。
○大島班長 たぶん湯沢先生のご意見は、1年後にここでこういう結論なり、何かを出したら、当然自分たちが責任を持って次のときにやらなければいけないのか、委員を解任されれば関係ないで済むのかという確認だろうと思います。どういう形で委員を選任するかというのは、これはなかなか言いにくいことがあるだろうと。それではもとへ戻ります。事務局案でよろしいでしょうか。
○相川班員 ということは、赤字のFlow cytometryの文言を消すということですね。
○辺見室長 1の(2)の「Flow cytometry又はこれに準ずる」を削除するということで、そのほかは赤字のとおりということでご議論の流れでお聞きしたところだと思います。たぶん相川先生もそうおっしゃったと思いますが、それでよろしいのでしょうか。それとも。
○相川班員 先ほどご説明されたのですよね。
○大島班長 正式にきちんと言ってください。1の(2)ですね。
○辺見室長 1の(2)について「なお書き」のところを削除ですので。
○大島班長 赤字を全部削除ですか。
○辺見室長 はい。
○大島班長 そのほかは。
○辺見室長 赤字のとおりです。
○高橋参考人 注4で、先ほど先生は1年と言いましたが、たった180例ぐらいの結果で、1年で見直しをまたしてよろしいのでしょうか。少なくとも、前回は2002年1月10日ですから8年間やったわけですね。
○大島班長 言い訳みたいですが、「必要があれば」ということで、決して見直しをするということではなくて。
○高橋参考人 わかりました。
○大島班長 いかがでしょうか。
○相川班員 全般的なPRAのこともお話してよろしいのですか。また別に。
○大島班長 とりあえず、これで承認をいただけるかどうかということで、確認ですが、よろしいですね。
○辺見室長 相川先生がおっしゃられたのは、次の頁の3の(3)の「PRA検査が可能な場合」の点ですね。
○大島班長 (3)「満たすことが望ましい」ということについて、これをこのまま採用することについて意見があると。そういうことではなくて。
○相川班員 これは議論しなければいけないと思うのです。この間も話しましたように、PRA検査が陽性の方は、なかなか移植ができない状況になってしまっていますので、それだと可能性がないというのはまずいので、最低でもこの文言にしていただきたいのです。
 参考資料で付けてあるUNOSでも、Eurotransplantでも、UKTSSAのイギリスでも、ウルグアイでも、PRAの検査をやっているわけです。PRA検査で陽性だった人、特に高いパーセンテージを持っている人は、そのグループにHLAがかなり合っているものを当てるというのがファースト・プライオリティーになっているのです。UNOSはまず最初にそのように書いてあります。あと子どもというのがそうです。Eurotransplantもそうですし、イギリスでもそうです。
○大島班長 途中で話を割って申し訳ありませんが、要するにこの文言がいけないと言っているのか、この文言がいいと言っているのか、よくわからないのです。
○相川班員 本来であれば、もう少し踏み込んだ形でPRAを取り入れてほしい。PRAでバーチャルクロスマッチをやっているぐらいですから。本来であればPRAを全部やっていただきたいのですが、最低でもこの文言にしていただかないと困ると。
○大島班長 先ほどからこの文言でオーケーかということを聞いているのです。
○相川班員 これでは非常に苦しいです。
○大島班長 もう少し緩めろというのが本音であると。
○相川班員 そうです。いままではこれが陽性だったら受けられないですよ。
○高橋参考人 Flow cytometryの検査よりも、実際にやれる施設は少ないと思います。これをやらなければいけないことは2、30年前からわかっているのです。これも学会でもう少しきちんとした上でやるべきことであって、この文言を本当に入れる必要はあるのですか。逆に、そこなのです。こういう細かい医学的な問題というのは、少なくとも選択基準の中のことなのです。学会の中で、本当にこれが必要なのだと全員が言わなくても、コンセンサスが得られた時点でやったほうが皆さんは納得すると思うのですが、その辺は相川先生、どうなのですか。
○相川班員 そうであれば削除してほしいです。
○湯沢班員 それでいいです。
○大島班長 何か急に話の展開が大きくなりましたが、私もいまの話はよく理解できます。その代わり、これを削除したことの意味が、次にどういうことになるのかというのは、学会のほうできちんと答えを出してほしいと。それで改めて必要であれば提案していただきたいということは、ここではっきりと確認しておくということでよろしいですか。
○高橋参考人 先ほどのFlow cytometryとPRAですね。わかりました。
○大島班長 そういうことで、よろしいでしょうか。「また」以下は削除します。ほかはいかがでしょうか。
○辺見室長 いまの「PRAの取扱いについて」ということで書いてありますが、ここは残していいのですか。
○大島班長 これは残す。これはむしろ残さないと。
○高橋参考人 表現ですが、未成年者のところで、16歳未満は「加算する」のですが、こちらは「加点する」になっているのですが、これはどちらかがいいと思うのですが。
○大島班長 加算です。ほかはいかがですか。よろしいですか。
○相川班員 できるとしたら、エイジマッチングのことも本当は考慮していただきたかったのですが。これも前からの討論だったと思います。アメリカでも35歳以上の腎臓は子どもにいかないようになっていますし、本来であれば、それも考えなければいけない。65歳以上の腎臓は65歳にいくようになっていますから。
○大島班長 そういう議論がここで行われたということは、繰り返しになるかもわかりませんが、少なくとも医学的な立場から、ある一定の論拠を持って具体的なデータ、エビデンスを提供する。それを基にして、こういったところで議論をするという過程を経ていくのがいちばんいいのかなと私自身は思います。これも議事録に残りますから、次回にはエイジマッチングの話も提案すると。本当は先ほどのUNOSの話ではないですが、UNOSのアロケーションの問題は一体どうするのかというところで、相当そういう問題が議論されているはずなのです。日本の場合は、いきなりこういう委員会でどうだこうだという話になってしまうものだから、いくつかの問題が一挙にここで出てきてしまうことがあります。本来は十分にほかの場所で熟して、最終的にどうするのかということを決める場に出てくるのがいちばん良いスタイルではないかと個人的には思います。
○相川班員 臓器移植関連学会協議会で、小児の腎臓は小児に使用していただきたいという提言が出ているのです。Japan Organ Transplant Networkのデータの11頁に、小児から小児への場合の成績と、小児の腎臓を小児に使った場合の成績と、小児から16歳以上に使った成績が出ていますが、これはやはり小児から小児にやったほうが、有意差はないのですが成績がいいということはわかっていますので、できればそういう議論もしていただきたかったと思います。
○大島班長 いかがでしょうか。よろしいですか。
○相川班員 参考資料3です。
○服部班員 今回の議論のなかで、小児では候補にあがっても腎移植が実施されていない場合が多いという話があったと思います。その理由については、先ほど相川先生がおっしゃった事項の他に、生体腎移植を受けても献腎登録をそのままにしている場合もあるかと思われます。いずれにしても、詳しい理由が不明であるため、われわれ小児科医もその点について調べ、見直すべき点は見直す必要があると思います。
○大島班長 そうですね。必ずしも文面に落としたルールだけで事が全部動くわけではないですから、それはいろいろな関係者がルール以前のルールというか、必要なことはお互いにきちんと必要な情報をシェアしながら、かつ情報をきちんと出していくということで、文面に落としたルールが守られていくということがありますから。
○本田参考人 同じことですが、抜けたら抜けたということを言わなければいけないというのは1つあります。先ほどから出ている医学的理由ではなくて、本人の個人的理由で希望されなかった場合には、順位がまた1番になっているのはちょっとおかしいと思いますので、その辺もどういうふうにやるかというと具体的にはわかりませんが、やはり考える必要があるのかなと。
○大島班長 考える必要がきっとあるのだろうと思いますが、それはすごく難しい話だと思います。
○本田参考人 待機年数の問題というのは大きな問題になるので、15年待たないともらえないとか言うとやはり大きいので、待機年数の考え方のC案ですが、C案は小児が多いから言うのではなくて、C案についてはもう一度どこかで次回見直すときにでも考えて、小児が多くなり過ぎるのだったら小児の点数を減らしてもいいのですが、待機年数ばかりが大事にされるというのが、本当に正しいのかというのは、特に患者さんがどう考えられるかも含めて、検討し直したほうがいいように私は思います。
○大島班長 全くおっしゃられるとおりだと思います。今度の変更が、次回までに実際のデータとしてどういうふうに出てくるのか。それが具体的に若い人たちとか、あるいは比較的待機年数の短い人たちにどういうふうに動くのか、そのようなことを少し見た上で、まだ不十分なのか、あるいはなかなかいい具合にいっているではないかと考えられるのか、今度のルール改正できちんと見ていく必要があるだろう。それが次のステップにつながるのではないかと思います。
 時間も近づきましたので、今日は予定したことについては、これで作業が終わったということで、本当にありがとうございました。事務局から何かありますか。
○秋本補佐 本日は活発なご議論をいただき、誠にありがとうございます。レシピエント選択基準の修正案に関しましては、ご指摘、ご議論をいただきました内容に改正し、先生方にいま一度ご確認をいただいた上で、今後臓器移植委員会に上げ、了承を得たいと思います。次回は1年後になると思いますが、先生方の日程を調整させていただき、決まり次第ご連絡を差し上げます。
○大島班長 最終的には親委員会のほうにこれを出して、そこで了解を取ることになります。本当にありがとうございました。それではこれで終わりたいと思います。
○高橋参考人 大体いつごろから実施か、見通しはどうなりますか。
○辺見室長 先ほど申し上げましたように、ルールとしての手続きとしては、臓器移植委員会にかけた上で決定といたします。おそらくそれが年末か年明けか、その辺りになってくると思いますが、それが1つです。
 もう1つは、臓器移植ネットワークのシステムで検索をしております。このシステムにどれくらいインパクトがあるのかというのは、これからシステム業者と相談してみないとわからないところがあります。意外と簡単だと思われたほかの臓器の改正も、時間がかかるということもありますので、そこはその辺を確認した上で、いずれにしても、いつから変わるのかということについては、移植施設の先生方にとっては非常に重要な話ですので、早めにいつから変えるのかご通知する形にしたいと思います。
○大島班長 ありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室

代表 : 03(5253)1111

内線 : 2362 ・ 2365

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