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2010年11月19日 第2回チーム医療推進方策検討ワーキンググループ 議事録

医政局医事課

○日時

平成22年11月19日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○議題

チーム医療を推進するための方策について

○議事

○石井補佐 ただ今より、「第2回チーム医療推進方策検討ワーキンググループ」を開催します。
 委員の皆様方におかれましては、御多忙中のところ当ワーキンググループに御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 最初に配布資料の確認をします。お手元の資料ですが、1枚目に議事次第、座席表、資料1として第1回チーム医療推進方策検討ワーキンググループ主な御議論について、資料2として近森委員の発表資料、資料3として栗原委員の発表資料、資料4-1、4-2として徳田委員の発表資料、資料5として川越委員の発表資料です。不足、落丁等がありましたら、事務局までお申し出ください。よろしいですか。カメラの頭撮りは、ここまでとさせていただきます。以後の進行については、座長の山口先生、どうぞよろしくお願いします。
○山口座長 第1回ワーキンググループの主な論点については、事務局でおまとめいただきましたので、あとで御確認いただきます。本日はいろいろな医療現場におけるチーム医療の現状について、4名の委員の方から御発表をいただくことになっています。近森委員、栗原委員、徳田委員、川越委員から御報告をいただくことになっていますが、まず最初に事務局でおまとめいただいた資料1について事務局からお願いします。
○石井補佐 資料1を御覧ください。先月開催しました第1回本会議における議論について、さまざまな御議論をいただきましたので、事務局で議論の内容について整理をしました。すべて紹介すると時間を食ってしまいますので、かい摘まんで紹介しますが、これは整理の仕方として、1つはワーキンググループにおける検討の方向性ということで、かなり総論的な御意見、2つ目としては、チーム医療の推進方策を検討する際に、このような視点が必要ではないかという観点からの御意見、3つ目としては、ワーキンググループの今年度中の1つの目標であるチーム医療を推進するためのガイドラインの策定に当たって、そのガイドラインに具体的に盛り込むべき事項という観点からも御意見をいただいていますので、それぞれの観点からも簡単に整理したものについて紹介します。
 1頁、1つ目のワーキンググループにおける検討の方向性についてですが、1つ目の○にありますように、これまで行われてきた、または現在行われているチーム医療の取組だけではなく、将来のあるべきチーム医療というものを考えて、推進方策を考えなければいけないという御意見もいただいています。○の3つ目ですが、ガイドラインの中でチームで役割分担・連携するのが客観的に見て明らかに優れているという実例・実績を示しながらチーム医療の推進を訴えることは非常に貴重という御意見をいただいているところです。その下の○ですが、考え方や実際のやり方がしっかりしているチームに対して、国がバックアップしていくことを考えるべきではないか、といった御意見もいただいています。
 2頁、上から2つ目の○ですが、医療におけるガイドラインは、さまざまなデータの証拠に基づいて標準的なやり方を示すものであり、そういった意味では、今回ワーキンググループにおいて議論いただくものについて、ガイドラインという言葉には多少違和感があるという御意見も頂戴しています。
 2.チーム医療の推進を検討する際の視点というところですが、この内容についてもさまざまな御意見をいただいていますが、1つ目として、チーム医療のキーワードとして、専門職の活用や積極的な病棟配置・配属、医療の標準化、電子カルテを活用した情報の共有、権限の移譲といったことが挙げられるという御意見をいただいています。2つ目の○では、在宅のチーム医療には3つのキーワードがあるということで、本日、川越先生から御発表もいただきますので詳細は省略しますが、3つのキーワードとして統一性、即効性、効率性ということを挙げていただいています。その下の○ですが、チーム医療の中でいちばん大事なことは、患者をチームの中に入れること、といった御意見もいただいています。
 3頁、上から4つ目の○ですが、急性期・救急病院におけるチーム医療の在り方と、回復期・在宅におけるチーム医療の在り方は全く違う。それぞれのチーム医療の概要・運営は随分違うという認識を共有した上で、それぞれのステージにおけるチーム医療の在り方というものを整理すべきではないか、といった御意見もいただいています。
 4頁、上から3つ目の○ですが、都市部では看護師の需給はほぼ良好で、レベルの高い方もたくさんいらっしゃるが、地方では看護師そのものの供給が少ない。そういう所でもチーム医療は必要という観点の御意見をいただいていまして、この観点も含めまして、本日、徳田先生から御発表いただくということになっています。
 3.ですが、ガイドラインに盛り込むべき内容ということで、いくつかかなり具体的な内容についても御意見を頂戴しているところでして、上から2つ目の○ですが、地域連携、地域横断的な取組として、病院・診療所の連携の在り方ですとか、在宅・介護の連携の在り方についても、このワーキンググループで検討してはどうか、といった御意見も頂戴をしています。
 5頁、上から3つ目の○ですが、医科歯科の連携の在り方について検討していただきたいと。急性期病院、回復期、維持期在宅の支援、いずれにおいても口腔機能をしっかり押さえていくということは、栄養管理や感染対策の大本をしっかり押さえることになるということが重要である、という御意見をいただいています。下から2番目の辺りからが、それぞれの職種の方々からそれぞれの職種の御活用について御意見をいただいたというものでして、薬剤師をどのように使うかということについてとか、いちばん下では、医師だけではなくて、栄養に関しては管理栄養士も協働しながらということですとか、6頁のいちばん上の○ですが、そこは助産師の立場からという御意見とか、その下の臨床工学技士についての御意見とか、事務部門に関する御意見とか、診療情報管理に関する御意見とか、心の問題も重要である、といった御意見を頂戴しています。
 このワーキンググループは第1回でしたので、フリートーキングという形でしましたので、多様な御意見を頂戴したということでして、その中でいくつか出たものについて、本日4人の先生にプレゼンテーションをお願いしたということでして、御発表の内容に基づいてまた御議論いただきましたものを、また次回以降も事務局で整理をして提出したいと考えています。事務局からは以上です。
○山口座長 第1回は非常に広い範囲からいろいろ御意見をいただきましたので、それを取りまとめていただきましたが、事務局の説明について何か御意見がありますか。よろしいですか。今日は最初に、4人の方に御発表いただきまして、全部終わりましてから質疑等に移りたいと思いますので、よろしくお願いします。近森委員からよろしくお願いします。
○近森委員 「急性期医療におけるチーム医療の方向性」ということで、いま最も必要な病棟におけるチーム医療を中心にお話したいと思います。私がこれから述べるチーム医療は、良質で効率的な医療を展開できますので、急性期病棟だけではなく、回復期リハとか、療養病棟とか、そういう病棟でのチーム医療に利用できるのではないかと思っています。
 最初に各職種の重なりから見たチーム医療を述べてみます。1つは、重なりの大きい<もたれあい型>のチーム医療です。これはある程度知識のあるDr、Nsと専門性の高いコメディカルはが、重なり合ったこの部分ですり合わせをしながら情報を共有するというチーム医療です。重なりの大きいタイプから重なりの小さいタイプ、これは<レゴブロック型>といっていますが、業務の標準化と情報の共有をすることによって普通のDr、Nsでもできる、そして業務の専門性の高いコメディカルとが、業務の標準化と情報交換のみで情報共有をしながら効率的なチーム医療が展開できるというタイプになっています。
 最初に重なりの大きい、もたれあい型について説明します。重複する他領域の技能と知識を持った多職種が集まって行うチーム医療が、もたれあい型のチーム医療です。高い能力を持った多職種がカンファレンスですり合わせをして情報を共有するため、チーム医療の質は高いが処理能力には限りがあります。というのは、結構高い能力を持っていますので、こういうスタッフを集めるのに時間がかかる。カンファレンスですり合わせをしないといけませんので、どうしても時間的にも空間的にもコストがかかってしまうことがあります。ということで、処理能力には限りがあります。
 病棟のチーム医療が必要なすべての患者にこのタイプのもたれあい型のチーム医療をすれば、かなり多くのコストがかかってしまうということで、コスト倒れになってしまうということがあります。ということで、手術室、カテ室、CCU、ERといったリスクの高い、少数の患者に対する質の高いチーム医療を展開するのに適しているのが、もたれあい型のチーム医療です。
 例えば、手術室では、皆さんは普通に術者、機械出しの看護師、麻酔医、多くのサポートのスタッフとともに1つの手術をチーム医療でやっていますが、濃厚なチーム医療はこういうもたれあい型のチーム医療です。だけど、1人の患者に対して、5人、6人のスタッフが長時間係らざるを得ないというリスクがあります。
 業務の標準化と情報の共有化を行うことによって、レゴブロック型のチーム医療に変わってきます。これは業務の標準化と、定型化した書式による情報の共有化により、誰でもできるチーム医療になってきます。業務と情報の標準化で質を保ちながら、多くの患者を処理できるというメリットがあります。例えば、病棟での日常業務に適しており、リスクのある患者をスクリーニングで選び出して、Dr、Nsの負担を減らすことができるというメリットがあります。名前がポピュラーではないのですが、もたれあい型とレゴブロック型の、各職種の重なりから見たチーム医療の違いがあるように思います。
 次に、情報の受け渡しと業務の分担から見たチーム医療について見ます。情報の受け渡し。もたれあい型のチーム医療は重なりが非常に大きいですので、一同が1カ所に集まって、カンファレンスをしながらお互いに情報のすり合わせをするということが必要になってきます。ある意味、「専門部隊型チーム医療」と名づけることができるのではないかと思います。
 業務の分担では、もたれあい型のチーム医療は患者をあまり処理できませんので、権限の委譲をなかなか取ることができないということで権限の委譲が少なくて、Dr、Nsの中核業務と周辺業務が残ってしまうというデメリットがあります。一方、レゴブロック型のチーム医療は、例えば病棟のチーム医療、実線で囲れたスタッフによるチーム医療です。中にある情報は電子カルテです。電子カルテによって情報の交換をしながらチーム医療をしていくということで、重なりが小さい分、カンファレンスの必要性は少なくなってきます。こういうチーム医療を「病棟配属型チーム医療」と名づけられることができると思います。
 NSTを例にとりますと、受持ちの看護師がすべての入院患者に週1回簡単なスクリーニングをします。それによって栄養のリスクのある患者は、リストアップされて電子カルテ上に載せられます。それを管理栄養士が見て、医師の包括指示でそういうリスクのある患者は全員栄養評価と栄養プランを作っていきます。栄養評価と栄養プランを行うことによって、電子カルテ上に記載して、Dr、Nsと相談しながら医師の承認を得て看護師が栄養サポートしていく、そういう形になってきます。
 そうしますと、権限の移譲が非常に大きいですので、Dr、Nsの仕事のうち、栄養に関することは管理栄養士、医療のことはリハスタッフ、機械に関することはME、薬に関することは薬剤師、社会資源を利用することはソーシャルワーカー、そして医療事務や助手がサポートすることによって、医師、看護師の周辺業務をすべてコメディカルや助手がしてくださるようになります。
 周辺業務というと何かわかりづらいですが、雑用と考えていただいたらいいと思います。、医師、看護師がどうしてもしないといけない中核業務だけ、このチーム医療では残ることになります。そうすることによって医師、看護師が雑用に惑わされず、本来の医師、看護師の仕事ができますので、医療の質の向上と各職種の労働生産性が向上してきます。これは医師、看護師の労働生産性が向上するだけでなしに、管理栄養士も単に厨房にいるだけでなしに、病棟に出て栄養に関するいろいろのサポートをしますので、管理栄養士の労働生産性も高まるし、薬剤師の労働生産性も高まってくると、そういうことが言えると思います。
 「病棟配属型チーム医療の原則」としては、まず専門職中心です。そして、病棟配属で(bed side中心)となります。このためには充分なマンパワーと質の確保が必要になってきます。そして、業務の分担、代替のために、業務の標準化が必要になってきます。たとえば、栄養サポートでは、栄養評価にしても通常業務、ルーチン業務として栄養評価をしていって、教科書的な栄養プランを作ればいいだけの話なのです。標準的な栄養サポートをしていく。どうしてもそれでは足りない場合は、専門部隊型のチーム医療が介入すればいいわけですから。情報の共有、そのためには電子カルテによる書式の標準化がどうしても必要です。これは、今日お集まりの各職種の方々の言葉や概念は微妙に違うので、ある程度標準化してやらないと、意思疎通ができないということがあります。
 こういうことを行うことによって、必要な患者すべてに必要なときに充分な医療サービスを提供することができます。これが大事なのです。必要な患者に必要なときに充分な医療サービスを提供することによって、アウトカムが出ます。アウトカムが出るためには、どうしても充分なマンパワーと質の確保が必要になってきます。
 当院の管理栄養士は全員病棟配属ですので、患者に直接診療しますから、おなかを触ったり、おなかの音を聞いたりということで聴診器も必要ですし、病棟を飛び回っていますので、PHSによる連絡も大事になってきます。そして電子カルテを中心にやっていますので、略語集が離せません。充分なマンパワーと質の確保のためにどうしたらいいのだろうというのが、いちばん問題ではないかと思います。
 リハスタッフ(PT、OT、ST)は、実践部隊です。実際に1単位20分というリハビリテーションを提供していますので、充分な技術評価があります。そういう意味で、リハビリは放っておいても充実してくるのではないかと思うのですが、問題は薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカー、ME、歯科衛生士といったサポート部隊です。管理栄養士はかなり技術量が出てきましたが、目一杯頑張っても人件費になかなか充当しません。薬剤師は特にそうです。病棟の薬剤師はサポート部隊ですので、なかなか技術評価がありません。ソーシャルワーカーはもっとそうです。MEは人工呼吸でわずかに認められています。歯科衛生士も、普通の一般病院には歯科がありませんので、どうしても補助看の枠で雇用せざるを得ないというところがあります。
 こういうサポート部隊が、どうしたら日本の病院の病棟に充分なマンパワーと質を確保できるようになるかは、私はこれしかないと思うのです。病棟に配属された各職種の専従スタッフ数により点数または係数算定できれば、人件費として出すことができるのではないか。こういう点数ができれば、日本の医療、特に病院の病棟は様変わりしてくると思います。補助看でも点数が付くことによって、大学や公立病院に入ってきました。だから、大事なコメディカルをもっと病棟に入れて、チーム医療をして、医療の質を上げていかないと、これからの日本の医療は持たないわけですから、こういう点数を付けていかないとなかなか進展しないということが言えると思います。
 アウトカム評価はサポート全体として評価するもので、各職種が提供する医療サービスを受けた100床当たりの件数などで評価することができると思います。
 NSTを中心に実績を見ていただきたいのですが、近森病院は全体で338床です。338床でNSTが介入しないといけなかった症例は、今年、年換算しますと3,568件という膨大な数に上がります。だから、入院患者のほとんど半数ぐらいを栄養介入せざるを得なかった。これは高知県が全国でも3番目の高齢県であるということと、高齢化が非常に進行していて、65歳以上の入院患者がいま76%です。ほとんど高齢者の急性期病院になっています。
 ということで、高齢者が増えてくると、NSTが介入せざるを得ない患者が増えてきます。こういう患者を処理するためにも、病棟に管理栄養士を配属してNSTをしていかないと、病院が持たない状況になっています。
 この4月にできましたNST加算の算定ですが、今年4月から算定できるようになりまして、大体700~800件の実績があります。これは338床の病床に13名の管理栄養士を配属しています。11病棟ですので、各病棟1名の管理栄養士を配属して、あと2名が管理職をしていますが、NSTのチームを6チーム作り、一生懸命やったのが、これだけの件数です。おそらく日本でもトップクラスの実績だと思うのですが、一生懸命やっても月に150万円ぐらいにしかならない、これはやはり低いのです。
 食事提供金額の変化ですが、NSTを稼働することによって、経口や経腸栄養が増えますので、食事の提供金額は増えてきます。NSTを導入することによってこれだけ増えたということは、これだけのアウトカムが出たということです。
 輸液の使用金額ですが、NSTを稼働することによって1年目は栄養に対する関心が高まりますので、輸液の量は増えるのですが、それ以降は経口や経腸栄養が増えてきますので、その分輸液は減ってきます。この差額がアウトカムになります。
 抗生剤の使用金額ですが、NSTを稼働するとどうしても善玉の腸内細菌を守りたいということで、広範囲の強力な絨毯爆撃のような抗生剤ではなしに、できるだけ範囲を狭めた狭い範囲に効く、感受性のある抗生剤に変わってくるということで、セフェム系の第4世代などはほとんど無くなってきています。ということで抗生剤の種類が変わる、量が変わってきます。DPCを導入することでジェネリックを導入しましたので、その分、額は下がっていますが、それ以上に下がってきています。ということは、この分がNSTを導入したアウトカムだと思います。
 NST導入の費用対効果を見てみました。青の棒グラフは、管理栄養士の人件費です。黄色が輸液の減少分、抗生剤の使用の減少分、食事療養費の増加分、これは食材費を除いていますここからが管理栄養士の技術料になるのですが、栄養指導料と栄養管理実施加算とNST加算になります。
 平成18年にDPCを導入しましたので、それ以前の出来高の時代は、チーム医療で人手をかけた医療をすることによって、輸液や抗生剤が減ってきますが、輸液、抗生剤が減ると、出来高の時代は売上げのダウンになります。ということは収入のダウンです。だけど、DPCになりますと1日何ぼになりますので、輸液や抗生剤が減ることによって、それは利益になってきます。ということで、こちらは収入に入れています。
 結局、多くのスタッフを入れて病棟配属させて、必要な患者に必要なときに充分なチーム医療を提供することによって、収入は増えていますが、技術料を見ると、とても人件費には充当しません。ということは、少ないときでも真っ赤々の管理栄養士が、スタッフを増やすというのは、病院としてなかなか意思決定できないのです。薬剤師なら特にそうです。少ない人数から人数を増やして充分なスタッフを病棟配属することによってアウトカムが出ますので、収支はよくなりますが、病院の考え方としては、少ない人員でも赤字なのに、多い人員だったらもっと人件費がかかるのではないかということで、この間には大きな溝があります。だから、大きな溝をなかなか飛び越えられないのです。100年河清を待っても、なかなか日本の病院に病棟配属のチーム医療が展開できないというのは、そういうところにあるのです。大きな溝を埋めるためにも、病棟配属したサポート部隊に点数を付けないと、日本の医療はいつまでたっても進展しないのではないかと思います。
 ということで、各職種の皆さんにとっては技術評価をいただきたいという思いが強いと思うのですが、仕事の種類が違いますので、実践部隊とサポート部隊という違いがありますから、サポート部隊はある程度アウトカム評価で、人員配置に対する看護料と同じ感じでやっていただければ、日本の医療非常にはよくなるのではないかと思います。
 薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカー、ME、歯科衛生士は、リハのスタッフと違ってサポート部隊ですので、1病棟に1人で充分です。それほど人数も増えないと思いますので、そういうところに点数化することによって、各病院が本当に必要な患者に充分なチーム医療ができるきっかけになると思います。
○山口座長 ありがとうございました。それでは、引き続いて栗原委員からご説明をいただきます。
○栗原委員 よろしくお願いします。私の立場では、急性期・回復期・維持期・慢性期というレベルでのそれぞれの視点を踏まえながら、いまの近森委員の説明と少し考え方はオーバーラップするとは思いますが、表現型が少し違うと思います。整理をしましたので、よろしくお願いします。
 トータルで整理する場合、何故かということがありますので、一応何故にチーム医療のか、ということで整理を考えてみますと、私たちもそうですけれども、20世紀には臓器別の治療学を必死で学んでまいりました。その結果としてかなり高度な進歩があったというのは間違いない。それと、それぞれの技術を細分化しておりますので、専門職もまた多く増えてきました。結果的に、超高齢化社会を迎えたときに、寝たきり高齢者がものすごく増えたというのが、医療行政でも大きな転換期になったと思います。その意味で、2000年に介護保険制度、あるいは回復リハビリテーション病棟ができたわけですけれども、そのものを考えてきますと、基本的に臓器別の治療学が進歩した結果としては、医師や看護師の許容量を遥かに超えているということが1つ。それから、より大きな観点では、高度に進歩した臓器別の治療学そのものが、生活に繋がっていかなくなったということです。これは非常に大きな問題です。これに関して、基本的に診療報酬などの誘導によって、1つには今はチーム医療のことを議論しておりますけれども、その前に既に機能分化と連携というところで地域完結型の医療提供体制がなされてきていると考えます。しかしながら、本来は、それぞれのステージで、しっかりとしたチーム医療が行われているという前提の基で、機能分化と連携が実施されていなければならないのにも拘らず、いまのところ残念ながら地域の状況というのは、要するに患者さんをあっちこっちに回していく構造が否定できないと思っています。
 そういった意味で、生活に向かうための、あるいは安心した地域生活ができるための医療そのものの根本は、やはりチーム医療だという概念を整理しています。先ほど、高知のほうで「高齢化率が高いので、急性期病院への入院が、65歳以上が77%」ということですけれども、もともとあまりにも我が国の高齢化率の上昇が急速でして、その意味かとも思いますが、一方では臓器別の医療が中心でしたから、要するに高齢者に合わせた医療の提供、急性期医療そのものが、まだ整理不十分だろうと思っています。
 論理的には歳を取っていくと、いろいろな生理機能が低下しますが、その例として低栄養状態に対するNSTの活動がありますが、残念ながらまだ精神的な変化、あるいは行動範囲の狭小化によって寝たきりになるということそのものの対策が、急性期医療からはスタートしていないというのが現状ではないかと思っています。入院そのものが、寝たきりに繋がり得るという考え方が、どうしても急性期医療に浸透してない。これは、ある意味で、医学教育そのものの問題だと思っています。つまり、廃用症候群に対して、医師は学んでこなかったというのが正直なところでして、看護師やセラピストは熟知していますが、いまの若いドクターたちはそうではないかもしれませんが、全国の医学部等々を含めましても、リハビリ医学講座そのものが大学にないところが多いわけですから、長崎でも私自身も廃用症候群という考え方は習ってきてない。そういった意味で、栄養と廃用症候群というのは、高齢者の非常に大きな課題でして、栄養が悪いと当然ながらリハビリをやったっても効果がありませんし、病気そのものも治らないし、感染症を起こしてくるという、高齢者の特徴は、否めないと考えています。
 それを整理しますと、まずは急性期医療であろうと、基本的に高齢者医療のありかたを体系づけする必要がある。そのベースとして必要なのは、廃用症候群と低栄養に対する対策と、合併症に対する対策。どんな病気でも、この基本が必要だろうと思っています。
 そういった意味で、高齢者医療の基本構造について少し書いてみたのですが、臓器別の疾病がある患者さんが入院したら、まず栄養に対する栄養管理、廃用症候群に対するリハビリテーションサービスが、入院当日から提供できるような体制がまず基盤としてないといけない。そして、臓器別の専門的な治療があるだろう。そういった意味では、いま機能分化の中で、急性期、あるいは回復期・維持期のように分かれていく流れの中で、それぞれに対策が打たれる必要がある。
 ということで、チーム医療を議論する前に、いまの我々の医療政策の中での流れで、機能分化と連携が先に出てきましたので、それぞれで、もう1つ整理をし直しました。機能分化を前提で考えると、やはりチーム医療が前提でないと、機能分化の質の向上というのはあり得ない。患者が他の病院に転院するだけだと考えています。へたをすると、その結果で寝たきりになるということです。現状は急性期医療が、単に平均在院日数を短かくして、医師や看護師は疲れ切ってしまい、患者さんがどうなったかもさっぱりわからないという状況です。ただし、脳卒中、あるいは他の整形疾患に関しては、情報交換等をやっていますけれども、現実は地域連携パス等々ありますが、顔の見える関係作りというのを、必死になって問いかけていかないと、ややもするとペーパーの上に患者さんが乗っていく。あるいは、コンピュータでオークションが始まるという現状もあり得るのです。やはり、あくまでもチーム医療が原点であると考えました。機能分化も各地方においては、特に急性期においても機能分化が始まらざるを得ない。大きな病院がドカンと真ん中にありまして、全ての診療科において特化したチームが、ある意味、全て関われる体制であればいいのですけれども、地方によっては診療科の少ない病院等もありますので、急性期の機能分化もあるでしょう。
 それから、もう1つは、急性期から次のステージ、回復期、場合によっては、亜急性期となるかもしれません。その後の維持期、或いは慢性期という医療の考え方かもしれませんが、この流れも機能分化があるでしょう。そういった中で、少し整理をしますと、急性期というのは、いま少なくとも日本においては、臓器別疾患の治療が主体になってきます。しかしながら、先ほど申しましたように、高齢者というのは、治療の最中からどんどん寝たきりの方向のベクトルを持っていますので、それに対するサポートというのは、どうしても必要になってくる。そして、急性期の後で、どうしても障害が残ってまいりますと、回復期、回復期リハビリテーション病棟というのが非常に典型例ですけれども、ここで障害に対する集中的な改善を図るわけです。そこでも当然ながらリスク管理、予防というのは、非常に重要な視点ですし、亜急性期の視点が重要です。それからこの回復期というのは、あくまでも生活に向かうという視点がありますから、どうしても急性期とは視点が随分違ってきています。この理解が、なかなか進まないというのが現状です。
 慢性期においては、生活の質の向上という視点があるはずです。あくまでも連携というのは、それぞれのステージのチームが手を結ぶということであって、視点の違うチームが手を結ぶわけですから、それぞれに質が高いものを目指すということが前提でないといけないということで、私が申した急性期・回復期・維持期の流れで見てみますと、それぞれのチームのあり様というのが、視点が異なるがゆえに、表現型も少しずつ変わってくるだろうと思う次第です。
 ということで見てみますと、ここにそれぞれのチームがあって、それが情報交換しながら連携をし、最終的には安心した地域生活をみんなで目指すということだろうと思うのです。もう1つは、それぞれのステージにおいてのプロセス管理が違ってきています。1つには、急性期においてはクリニカルパスというチーム医療の1つのツールを使いながら治療の標準化を図る。そして適切に臓器別疾患を治療する。回復期においては、どちらかというと、障害も生活も考えていきますから、リハビリテーションプログラムを作成し、それぞれの専門職が1つの目標に向かっていくというプロセス管理があります。維持期においては、ケアプランを中心としたマネジメントがあります。そういった意味では、それぞれの視点で、チームのあり方を整理して、どの方向にいくかを考える必要があるだろうと思っています。
 さて、チーム医療というのは、あえて医療におけるチームですから、このような定義でいけると思います。それは、目標と情報を共有し、協働する、共に協力しながら働く。多職種の医療専門家集団です。このため、この定義は多職種集団が成立しない限りは、チーム医療というのは、なかなか難しいという意味を含めています。これは、従来から言われていることですけれども、患者さんを中心とした専門職が取り囲むという考え方が基本です。皆さんのお手元の参考資料の中に入れていますが、教科書的に書いてありますが、チームのあり様としてこのような1つのパターンがあると言われています。1つ表現させていただくと、現状の急性期病院、例えば、特に公的病院をイメージしていただければおわかりだと思いますが、いろいろな専門職はおりますが、先ほど近森委員が言われましたように、病棟専従にはあまりにも程遠い。そういった意味で、いろいろな職種が1つの臓器別の治療をやるということの関わり方はあるのでしょうが、やはり専門職が少ない状況では、もしかしたらスライドに示しますように、いまの現状は特殊部隊を作って補完し合っている構造だろうと思うのです。NSTあるいは呼吸ケアチーム、あるいは感染対策チームを含め、この場合にやはり特殊舞台と病棟のチームの関係作りというのが1つ課題になってきます。
 例えば、NSTが積極的に介入しようとしても、そこに主治医がノーと言えば、動きが取れません。そういった意味での関係作りがもう一段階あるということ。現実は、専門職種が少ない上においては、この特殊舞台の構造がどうしても1つのチームのあり様として表現されるだろうし、いまの現状がそうである。歯科衛生士、あるいは歯科医師も関わることは、少しずつ行われています。理想的には、やはりいろいろな専門職が1つの病棟専従であって、情報交換を密にしながら、1つの臓器別の治療を乗り越えることを目標にかかわっていくわけですが、こうなりますと、特殊部隊がほとんどいらなくなってくるだろう。つまり、先ほど近森委員が言われましたように、それぞれの専門職が、サポートチームとして、臓器別治療チームを病棟で取り囲んでいきますと、特殊部隊という質よりも、より密な情報交換がなされると考える次第です。
 一方、回復期リハビリテーション病棟は、既往の慢性疾患を治療しながら、また再発の予防を含めて亜急性期の立場を取りながら、障害と共に生活を考えるステージですから、これらは医師、看護師だけではどうにもなりません。そういった意味では、誕生当初から、多職種集団でチームを作っていくというのを大前提として、みんな苦労しております。そういった意味で、回復期リハビリ病棟は、こういう集団が前提として多くの病院が試行していることの現状をご理解いただければと思います。
 その中で、課題はやはり褥瘡対策や栄養管理や感染対策等ありますが、これは患者さんを取り巻くチームメンバー全ての課題として共有していくようになっていますから、それぞれの専門職が病棟専従でいる病院は、それぞれ特殊部隊がほとんど必要なくなってきているということです。そういった意味で、在宅部門においては、やはり同時に一同に会することがほとんどありませんから、それぞれの専門職が自分の持ち場を越えて、必要に応じたサービスを提供できるように切磋琢磨している行動が、この在宅のサポートチームのあり様だと思います。
 ちなみに、回復リハビリ病棟を皆様に理解いただくためにデーターを少し出してみたのですが、診療報酬上は、現在は回復リハビリテーション病棟には専任の医師1名、看護師は15対1、看護助手30対1、PT2、OT1という人員配備になっています。ここにはご覧になってわかるように、管理栄養士、歯科衛生士等、あるいはソーシャルワーカーでさえ、必要要件には入っておりません。しかしながら現実を見ていただくとおわかりだと思いますが、全国回復リハビリテーション病棟連絡協議会でまとめたデータで、これは昨年のデータですからまだ進化してイルと思いますが、1病棟単位で、PT、OT、STを含めて人員配置が密になってきている病院が多く存在しています。逆に言いますと、PT2、OT1で規定どおりにやっている病院というのが、44.8%です。つまり、診療報酬上にかかわらず、踏ん張って、何とか多職種集団を構築しないと頑張っているというのもありますし、また、昨今の報酬改訂で、PT、OT、STに関しては、報酬上に反映されてきましたので、特にこれが増加していっているということです。
 ただし、もう1つは、規定外として、先ほど申しましたST(言語聴覚士)あるいはソーシャルワーカー、管理栄養士、この3つの職種までも専従になっているのは、10%近く増えてきています。それで何とか凌いでいかないと、結局障害を持った高齢者が地域に安心して帰れる構造が、なかなか難しいということからきているです。ですから、専門職の専従性というのは、非常に重要だということを述べている次第です。
 恐縮ですけれども、私どもの病院を少し紹介させていただきます。完全に特化した回復期リハビリテーション病棟での現状とご理解ください。 私どもの病院で初めにいちばん問題になったのは、前回の委員会でも少しあったと思いますが、組織構造です。例えば、多くの病院は、看護部、リハ部等々の専門別縦割りの組織構造が前提としてあります。あえて1つのチャレンジとして、縦割り組織構造を、一旦置いてしまいました。ですから、私どもの病院には、看護部長という職種はありません。ただし、全ての専門職を現場サイドに捉えて、臨床部というので統括しています。ですから、病棟が中心的な、それぞれの職種の働く場です。リハビリ室がリハスタッフの場ではないという感覚です。全ての職種は、病棟専従ですから、そこを意識したチーム作りというのを前提とした組織作りをやりました。現在48床で、全てのスタッフ数を入れますと、76人おります。歯科衛生士、管理栄養士、それぞれ1人ずつですが、48床でソーシャルワーカーが2人おります。このような病院が、少しずつ本当に赤字ぎりぎりの状況の中で、やはりどうしても専門職集団ではないとということで頑張っている現状をご理解いただければと思います。
 我々のところでは、当然ながら専門職の集団として、看護を基盤としたチームの表現に日夜努力している次第です。それともう1つは、私の病院には専門的に歯科のドクターはいませんが、歯科医師会と協約を結びまして、オープンシステムを作っています。そのことにより、歯科医師がチームの一員になっていただくような構造で、非常にありがたい状況が生れています。急性期病院では、入れ歯が外されてきますので、全く入れ歯があいません。入れ歯が合わない状況の中で、摂食嚥下は、成り立たない。もっと、口腔機能をしっかりとみんなで意識しないと、肺炎がどんどん増えていくというのが、如実にあります。病棟では、ナースステーション、ナースコールという考え方を辞めました。それぞれみんながコールを取るというスタンスでスタッフステーション、スタッフコールです。
 それから電子カルテは、オリジナルに作りまして情報の共有化に努めています。ここでキーとなるのは、カルテの一元化というのが、非常に重要だと思っています。カルテを一元化することによって、チームを構築する1つのツールと捉られている。それが、つまるところ電子カルテだと思う次第です。カンファレンスは、家族も含めてということで議論しています。このようにベッドサイドでの情報交換、あるいは技術の供与をやっています。
 先ほど申しました、医科歯科連携の中での歯科の診療オープンシステムはこれです。私どもの病院は、開設して3年ですから、設備投資をして、歯科の特殊な椅子も入れました。ここで入れ歯をうまく使えるようなトレーニングも一緒にやってくれています。ですから、そこによって、このように外の歯科のドクターが歯科衛生士と一緒になって食事の場面までちゃんと見ていただく。これが、まさに協働の現場のあり様だと私は喜んでいます。
 歯科衛生士は、うちの職員です。口腔ケアは、非常に誤嚥性肺炎を予防する、大きな課題だと思っています。歯科衛生士を歯科医療のみならず、医療・介護全体の専門職に、我々は迎える必要があるだろうと思っています。
 実は現状は、歯科医師の指示の下でないと診療報酬は取れませんので、歯科衛生士の職域の拡大は、そこでストップしています。ですから、先ほど近森委員が言われましたように、看護助手的な役割でしか入れられない現状があるということです。
 しかしながら、非常に技術としてはもうかなりの専門的技術を持ってますから、高齢社会においては、歯科衛生士を救急病院から在宅まで含めて、広い範囲でチームの一員として受け入れるという体制を、ぜひ早く作っていただきたいと思っています。退院前には、このように在宅のチームとのかかわりもあります。急性期病院に対して、カンファレンスで積極的に出席しています。これが地域連携だと私は思っています。紹介状が紙で来るだけでは、連携はあり得ない。
 まとめますと、どうも私の視点ではチームの形というのは、2通りあるみたいだというのを見てまいりました。つまり、現状の特殊部隊として保管し合うNST等のあり様。しかしながら、これが充実してきますと、つまり専門職が病棟専従になっていくと、専門職労働集約型とか言葉を並べましたけれども、専門職はちゃんと関わるという体制作り。こう考えてきますと、要するに人員配備が充分なっていけば、進化した形というのは、このような方向にいくのではないか。あとは、この表現型のパターンが少しずつ変わっていく、ER、あるいは手術場、あるいはストロークユニット、一般病棟という形で、いろいろなアレンジの仕方が出てくるのではないかと思っています。
 コミュニケーション、情報共有、非常に重要ですが、まだまだ我々はこのコミュニケーションのやり方、あるいは情報共有の仕方等を、もっと掘り下げて、教育の中に入れ込んでいく必要があると痛感しています。それと、もう1つは、マネージメントという考え方を、医学部、あるいはそれぞれの専門職の教育のプロセスで早く入れる必要があるだろうと思っています。このマネジメント機能をほとんど医学部では習っておらず、治療技術的な問題しか習っていません。
 そのようなことをトータルとして考えていきますと、チーム医療成立の課題としてここに書きました。如何にして多職種専門化集団を構築するか。人権費、雇用の問題等々あると思いますが、組織のあり様もあります。1つだけ私が気になっているのは、総定員法の弊害です。公的病院でこのような枠組がガッチリ固められてしまっているというのをよく聞きます。ある職種を入れれば、ある職種は外さないといけない。これそのものが、全てのチーム医療のあり様を、私はブレーキをかけているのではないかと思っています。
 急性期病院では公的病院が多いですから、どうしてもリハビリのスタッフたちは、なかなか診療報酬は救急病院、つまり急性期病院で高いのだけれども誘導されない。リハビリのスタッフが、何百床の病院に10人しかいないとかそんな現状がいっぱいです。当然ながらそこには寝たきりを作っていく、廃用症候群を山積みにしながら、よその病院に負債を分けているという構造は、否定できない。それから、先ほど申し上げた電子カルテによるカルテの一元化等が必要である。最終的には、教育の問題を早いうちに何とかしなくてはいけない。それも、教育の場というのは、学生時代から臨床の現場を積極的に活用することによって、みんなの意識を高めていくというのが必要ではないかと思っています。積極的にチーム医療を表現しようという病院には、臨床の実習の中で、例えば、医学部が理学療法士の学校と一緒になって、あるいは看護学校(大学)と一緒になって同じ臨床の場に学生を出して、一緒になって「チームとは何ぞや」というのを現場から見せていくという構造が必要ではないかと思う次第です。あとは参考資料です。以上です。ありがとうございました。
○山口座長 ありがとうございました。それでは続いて、徳田委員のほうからご説明をいただきます。
○徳田委員 前回もお話申し上げましたが、北海道の札幌市と稚内で脳外を中心とした中小規模の病院を運営している立場、民間の中小病院が所属をしている全日本病院協会で仕事を行っている立場、北海道の中で病院協会のまとめ役をさせていただいていますが、地域の医療崩壊、まさしく北海道は非常に典型的な場所でありますので、そういうことも含めて色々経験をしていることから、中小病院という立場で、このチーム医療をどうするのか考えるために、その現状を中心にお話を申し上げたいと思います。資料は、かなりの部分が文章化されています。非常に微妙なお話をさせていただきますので、その趣旨を間違えられると困るということで、あえて文章として出した次第です。
 まず、全般的な事項についての話を申し上げます。このワーキンググループの大きな目的の1つが、ガイドライン作りというのが基本的なテーマです。したがいまして、いまお二人の先生からも実践的な、すばらしい取組のお話がありました後で時計の針を戻すようなお話に一部なりますが、それはお許しください。
 まず医師・看護師の不足の問題、これを労働問題、労働の過剰ということからそれぞれ肩代わりをさせようというようなお考えもありますが、それはまずいだろうと考えます。それぞれの職種が充足をするとそれは不用になり兼ねないと考えます。
 チーム医療の推進。これは職種間の業務分担を見直して、いろいろやるわけですけれども、数的に人員の充足を図るというものでは決してないわけで、有機的な連携を図り、その上で医療の質の改善を図るというものであろうと思います。現在それを妨げる要因として、例えば職種間をおいて行われている、相互に行われている行為の整合性が必ずしも取られていないこと、各職種の教育をするプログラムの違いによる問題、職種間の伝達のシステム、責任体制のあり方などがあげられ、今後いろいろと考えていかねばならないと思います。
チーム医療に関しては、多様の治療スタッフが関わっているわけで、急性期から慢性期、在宅医療まで、いろいろ実例に基づいて現時点でのモデルケースを設定して、全国の医療機関において可能となるような施策を国が主導してやっていただくことが大事だろうと思います。
 一方で現状を踏まえ、各医療機関で現在何をするかということで言いますと、利用可能な人的な資源から、可能な取組を行うことが必要です。国にお願いをしたいこととしては、いろいろ示されるであろうモデルケースからチーム医療を担うべき各職種の必要数というのがでてくると思いますが、医師や看護師の二次医療圏別の配置についてのデータなどと同じように、二次医療圏別に算出をして適正な配備がどうなのかということを、まず考えていただきたいということが第1点です。
 充足が図られるまでの間に、厚労省実態調査などでも示されたように、医師が任されると判断をして、看護師に指示をしているような行為については、これを禁止するというような厳格な対応はしないでいただきたいと思います。現状で包括的な指示の内容の厳格化というのは、看護師が採用ままならないような地方の状況では、医師の明らかな負担増をまねく可能性があると考えるからです。
 スライドにお見せしていますのは、北海道の看護師の配置の状況です。青とブルーのところは7対1と10対1で、都市部にはそういうことが多いのですが、黄色とピンクで示しますように、まだまだ13対1、15対1のところがたくさんあるという現状なのです。これは各施設がどうしても経営上雇いきれないということではなくて、人がいないためにそれ以上の看護基準をとれないという現状であることを示しております。前回も触れまして、あまりこのところを問題にするのはいかがかと思いますが、特定看護師という特殊な形の制度を作ることに関しては、やはりこの点で懸念を持つということです。
 実際にチーム医療の推進は看護師のみによって達成されることではなくて、前回のワーキンググループでの各職種の代表の方々のお話を聞いても、いろいろな方々が関係しているということは、言われたとおりです。したがって、この特定看護師の養成を進めるのであれば、同時に、各職種の業務の見直しを同時に行うための、各職種のレベルアップの必要性を検討するのが筋でしょうし、さらに各職種の実態調査は不可欠であろうと思います。特定看護師の業務とされる内容との対比で言いますと、教育の年限、専門性から考えますと、例えば薬剤師の薬剤選択だとか、変更に関する業務の拡大というのは、大変重要な課題だと思いますし、特別何々というような名で、各職種の創設ということも同時に検討をしなくてはいけないのだろうと思う次第です。
 現時点ではそういうことを踏まえて、看護教育全体の見直しの中で、全体の底上げを図って、現場の医師が多くの看護師に対して、包括的な指示が出せるようにしていただくことこそ大事であろうというふうに思っています。残念ながら先ほど示しましたような北海道の現状も含めて、全日病に所属する中小病院などの実態も聞きますと、特定看護師の養成が進められることになると、トレーニングに出せるというような物理的な余裕はなかなかないということです。ですからその辺の実態を踏まえて、この問題については検討を進めていただきたいと思うわけです。
 病態別・病気別に最適なチームの構成が必要だということは、先ほど来のご発表にもあるとおりで、在宅などにおきましては、必ずしもドクターが中心でないということも想定されるだろうと思っています。
 運用上の問題点についての大きな課題が「包括的指示」に関することです。基本的に私どもとしては、医行為というものを医師以外の医療職に許すということは、極めて慎重であるべきだと考えます。なぜなら、その指示の結果というのは、指示をした医師に責任があるからです。いろいろな総合的な判断が現場では求められるということでありますので、そこは大変重要だと考えます。
 例えば看護師にある行為が指示されたとしましても、看護師であれば、一律にその当該行為を行うことが可能であるということを意味するものではないと思います。実態調査の中でも現状でも医師の業務とされる行為が行われているということが判明していますが、それぞれの施設でその医師が、指示をした看護師の技量を判断して認めているはずなのです。こういう実態を踏まえると、繰り返しますが、今後も各医療職の業務というのは医師の指示のある、あるいは監督の下に限定的にする必要があると思います。
 「包括的指示」に関して、確立された要件がないことや、「一定の医行為の範囲」について、それが示されていないことを問題視する意見がありますが、私どもとしては、医療の内容は時間と共に変わるし、医療とは何かとか、医行為とは何かを具体的に明記することは、必ずしも適当ではないと思います。むしろ現在、医療のみならず介護というところまで勉強をしなければいけない現状では、チームとして何が行えるかを検証して、より効果的効率的なチーム医療の推進に業務分担をどう見直すべきかという議論こそが必要であると思います。
 もう1つ、患者を医療チームの一員と捉える議論もございます。患者は医療の対象であって、業務を遂行するのは一義的には医療従事者であるということ。問題が生じた場合に、患者さんの参加によって、責任の所在が不明確になる可能性があると思いますので、患者さんの協力を求めることは全く否定するものではありませんが、その協力を前提とすることについては、危惧するところであります。患者さんの協力が得られないことは、良質の医療提供を行うことができない理由にはならないと思いますし、報告書の中でも「…各々の専門性を前提に…」という文言が入っていますが、この整合性も問われるだろうと思います。
 法律上の問題についてですが、医師法、その他の、職能ごとの身分法がございますが、これはやはり順守すべきだと思います。繰り返しで大変恐縮ですが、特定看護師の議論の中で示されている内容についても、現行法でいろいろその指示の内容を限定的にすることによって可能だと思います。特殊な免許を付与したときには、これまで医師が任されると判断して看護師に指示してきた行為が不可能となるわけですから、物理的に難しい中小、あるいは地方の病院においては、医師の業務負担が増えることがありますので、どうしてもそれを認めるということであるとすれば、その責任の所在を明らかにするような制度にしなければならないだろうと思います。もう1つ、保険診療上の問題につきましては、先ほど来のご説明にもございましたように、いろいろな職種の仕事ぶりに合わせた診療報酬上の評価はいただきたいと思います。
 ここから全日病の取り組みの若干の紹介と、私どもの施設の紹介ということで、中小病院での実態をご理解いただきたいと思います。これは全日病で進めました昨年の8月に予備調査で具体的に各職種が、現状どのようなことをしているのかということと、将来担うべき職種を調べた76の業務の内容です。○で示したもののうち、左側の棒、薄いほうのブルーが事務管理者、右側の濃い青いほうが看護管理者の方々にアンケート調査をしています。なぜ事務管理者のアンケートを取ったかといいますと、事務管理者自体が病院の中でのいろいろな運営を、どう見ているのかを是非知りたかったということです。
 ?Pに赤丸で示したところを見ていただきますと、左側の棒のほうが高い、ほとんどがそうなっているはずですが、看護の部門のところだけをピックアップしていますが、これ全ての項目で、左側の棒が高い。即ち事務管理者は看護師さんがいろいろな業務をしているというふうに、実態よりも多く見ているという証拠です。
 もう1つ、右側の看護管理者の回答を見ていただきたいのです。まず、いちばん最初の業務のところですが、我々の設問自体が現状補助業務と言われる、あるいはその他の業務と言われるものまで含めて広範な業務についてチェックをしていますので、例えば医療機器の保守点検だとか、献体の搬送、食事の配膳・下膳などを見ていますが、数は少ないとは言いながら、実際にまだ看護部がそのことを担っているということです。注射カートの清掃だとか、廃棄物の問題、物品管理も、このような状況になっています。5分の1ぐらいの施設でこのようなことが現実にまだ行われています。この3つの表はいちばん左側から、一般の病棟、ケアミックス、療養病棟という区分です。
 今後、看護師が将来的に行うべき業務についてチェックを行いましたが、これについても左側の薄いブルーの事務管理者側のほうが、それぞれの業務について望むところが多い。期待しているということの現われと一応判断をしたものです。
 一方で、看護管理者から見て、例えば吸引の処置あるいは口腔ケア、輸血の実際等々を見ますと、30%から50%ぐらいしかご回答をいただいていないわけです。これは病棟別でもそう変わらない。即ち、本来業務として考えていただきたいと思うものについても、これは我々の仕事ではないというふうに答えている部分があるということです。これは採血、輸血、注射に関する管理、それから食事介助ですね。食事介助についても3割ぐらいが、今後、将来の業務としては見ていないという結果でした。
 こういう表を出した目的は、今回のチーム医療の構築という高いレベルの話の中では、このぐらいの調査は何の意味もないようですが、実態はこうであると、こういう中で今後、どのような形でチーム医療の構築を多くの施設にお願いをするのかということを考えていただきたいと思ったわけです。
 続いてお示ししますのが、3つの病院の取組です。これは昨年の全日病の学会の中のシンポジウムで行ったものですが、まず練馬総合病院の取組としては、病棟の業務として、看護部以外の各職種に、このような業務分担がなされているということです。実に多くの取組がなされていて、先ほどのようないくつかの特殊なチームについての参加も含めて看護師以外の職種もいろいろな場面で、大きく関わっているという実態です。
 治療チームは7つほどあります。この練馬総合病院は大きな施設の1つですが、実際に既にチーム医療は行われていると、しかも可能な限りの分担と連携は行われているということは事実であるということです。これは同病院における抗がん剤の業務フローです。ご覧いただけますように、医師、看護師、薬剤師が、それぞれどのようにかかわり合いを持つかということを業務フローで示しています。先ほど来、質の管理のお話等々も出ていますが、質の高い業務の遂行、効果的効率的のためにも、「業務フローの見える化」というのは欠かせないだろうという発表でしたが、まさしくそう考えています。
 ここからは美原記念病院という、脳神経外科を中心として回復リハビリテーションまで、ほぼ施設の中で完結する医療を進めている所の実態です。ここでお示ししますのは、5つほどの実際の事例で、その効果がどうであったかを示したものです。左側の上のほうに、そのいろいろな場面で、どの職種が係わっているかを示していますが、下のグラフで入院患者におけるBCランク率が上がっているにも係わらず、いちばん下の棒ですが、褥瘡の発生率は下がっている。したがって、こういう取組が褥瘡の対応にも良かっただろうということです。
 経口摂取の話です。これも各段階で関与している職種が示されています。下の表で見ていただけますように、平成20年度のところでは、明らかに経口摂取の開始のタイミングが3日までにほとんど終っている状況になってきていることを示しています。
 薬剤の管理ですが、薬剤の管理がこのような形で行われることになったことによって、インシデントレポートがどうなったかということですが、これは実際に薬剤の投与実施に伴うことも含めて、いちばん上の折れ線グラフで、状況が非常に良くなってきている。ヒヤリハット事例が減っているという事例です。
これはリハビリテーションに関してFIMの改善度を見ているものですが、真ん中の棒、平成20年度を見ていただきますと、+23.2ということでして、これは在院日数も含めて非常に結果がよいことを示しています。
これは実際にチーム医療という観点からは少し外れますが、未収金の対策についても、当初から医事課も含めていろいろな対応をすることによって、未収金が減っているという内容の発表です。即ち病床規模に合わせまして、一定以上のコメディカルのスタッフを配置をしたことによって、実際に、本当にそれが効果的であったのかという証明をしなければならないだろう。こういう形で実証することが必要であって、近森先生も触られましたが、こういう実証によって診療報酬上の評価をしてもらうという仕事が必要だということの発表でした。これは永生病院という長期の療養を行っている大きな病院の例ですが、ここにおいてもお示しをしますような、チーム医療は既に行われていることを示しています。
 続きまして私どものところをお示します。私どもの施設は脳外科を中心として、病床稼働が大体100ぐらい、在院日数が17日、DPC7:1看護です。医師、看護師、病棟薬剤師、リハビリ、管理栄養士等々の配置の実数はご覧のとおりです。現在、大きく4つほどのチームが動いていますが、最近ではERAS(術後の回復力強化)もこの11月から稼働しており、私どものような規模の所でもこのような活動が既に行われています。
 急性期のチーム医療が現状どうなっているのか、素晴らしい取組は、既に委員先生からご説明がございましたが、何といっても、患者、家族を中心に、それぞれの職種がいろいろ動かなければならないだろうと考えます。組織は病院の場合、縦系列の職能別の流れが多くて、横の連携はなかなかというのが、これまでの問題点でしたが、患者を中心とすることによって、各職種の連携に繋がることと同時に、特別な専門チームである栄養管理等々のチームが作られる横のプロジェクトチームが出来ることで、その管理の連携も広がってくるだろうということです。
 先ほど情報とか標準化のお話がお2人の先生からも出ましたが、当然パスを使ってということになっていますし、リスクマネージメントの観点からも、これらの職種がいろいろな立場で関わっていると思っています。私どもの施設では残念ながら臨床心理士、歯科医の方々はまだ入っていただいていませんが、これからは脳卒中という疾患の特殊性から考えると、いろいろな時間帯で飛び込みがあったりということを考えると、看護師そのものにも心のケアも必要だと考えていますから、臨床心理士さんにも参加いただくような取組が必要だろうと考えています。
 私どもの所は回復期ではなくて、亜急性期の病棟を持っていますが、回復期もほぼ同様だと考えます。ここではチームリーダーが基本的には脳卒中診療の担当医からリハビリの専門医、あるいは認定医に変わってしまうということです。上のほうに看護師を置いていますが、この活躍が非常に大きくなるだろうと思っています。
 それから、この辺りからは介護に関係する職種が当然絡んできますし、例えば装具を作製するための義肢作成士の方々、これは外部の方々ですが、そういう方々も一緒にチームを組んでいかなければならないという状況にあるということです。慢性期においてはチームリーダーは、私は医師よりも看護師になるのではないかと思いますし、さらに一緒にやるグループとして、介護を担当する者があげられるだろうと思います。その病気によって少しずつ変わってくるのが実態ですし、そう変わらなければならないだろうというふうに考えた取組が行われています。
 さらに私どもは、この5月ぐらいから、在宅医療に積極的に関わるようにいたしました。ここでの大事なポイントは、ケアカンファレンスでいろいろな職種が集まって来る場面です。ここでは院内でいろいろなチームが集まって来るのと違いまして、それぞれに、それぞれの事業所があって、そこから人が集まって来る格好ですので、何としてもこのカンファレンスを充実させるということが、チームの取組には重要だと思います。ここでは、行政も含めますし、介護の部門との連携がどうなるかを考えることは、もう必須の事項であると思っています。在宅医療をチームとしていろいろやりながらこれを充実していくためには、在宅の中で起こった出来事をスムーズに受け入れてもらう入院用の診療支援の病院だとか、診療所の存在も欠かせない。これも含めて全体としてチームだという考え方だろうと思っています。
 いまや病気や病態に合わせて、医師や看護師が中心ではなくて、多種多様な職種の有機的な連携がチーム医療を支えていると思います。実際に垂直連携をするのか、水平連携をするのかは別としましても、施設間の連携を視野に入れたチーム医療という観点での考え方も必要ではないかと考えています。
 このような現状をご説明申し上げまして、このワーキンググループチームにお願いをしたいことを最後にまとめてあります。これまでの検討会の中では委員が限定されたせいもあるのでしょうが、看護師の業務の拡大が主眼となってきているように思うわけで、そこは問題だと考えます。
 また、医政局長の通知から、看護師以外の職種に関する業務拡大の内容もお示しいただきましたが、前回の当ワーキンググループでの各職種、職能の団体を代表して、医療現場で実践をしている方々のお話を伺っていますと、必ずしも合致しない部分もあるだろうということがございますので、まずは何らかの形で業務の実態調査を各職種についてをやっていただきたいということが第1です。
 次に急性期から、さらには在宅医療まで、各種の医療チームの活動に関する情報を広く収集をお願いをしたい。それらのモデルを示してほしいということが第2点。
 もう1つ、途中でもお話し申し上げましたが、やはり質ということを考えますと、各チームの業務フローの「見える化」をするという検討をしていただいて、その活動の方針も示していただければ、有難いと思う次第です。
 日本の医療を守るという立場で言いますと、中小病院で何をするのかを考えることが、大事な視点だというふうに常日頃考えておりますので、このような観点でのお話をさせていただきました。ありがとうございます。
○山口座長 ありがとうございました。それでは最後に川越委員からお話をいただきます。
○川越委員 私がこれから話すことは、在宅の緩和医療ということで、末期がんの方を家でみるという話をしたいと思います。理論はあまり優れていませんので、私の経験を話すことが多くなると思いますが、ご了承いただきたいと思います。
 先ほどありましたように統合性(Integration)とQuickness、Efficiencyという3つが在宅では非常に大事だということを前回申させていただきました。今日はこの話を中心に組み立てました。
 たぶんチームケアが一番シビアなのが在宅ではないかと思っています。いろいろな問題の背景がありますが、私が強調したいのは、在宅というのは、いまのフレームで言いますと、慢性という感覚が非常に強いわけですが、急性期の患者をケアしなければいけなくなったこと。つまり、これは末期がん患者になるわけですが、そういうことがいちばん問題を複雑にしているのではないか。いま一緒くたに在宅という括りでやっていることが、チームケアを考えていく上で、1つ大きな課題になるのではないかなということです。
 私は今から20数年前から、がんの方を家で最後までみるという取組をしてきました。これは1年間の在宅死の数と、在宅死率ですが、当初は質の確認ということを念頭にやりました。そして、これは本当にやらなくてはいけない医療だと確信しましたので、それを量的に増やすためにはどうしたらいいかということを追求していくことにしました。
 そこでこのパリアンという組織を2000年に立ち上げまして、そういう取組を実践しました。これは本当に試行錯誤しながら作り上げてきました。これはパリアンの組織図ですが、基本はこの組織の中に医師と看護師が一緒にいるという、病棟と同じタイプをとっています。
 具体的にどういうことを大事にしたか、一体化したチームでケアを提供するということですが、まず哲学・実施方法を共有する。考え方を共有するということで、医療に関しては、やはり医者がこういうやり方をやりますよということを示さないと話になりませんので私がそういうこと、いわゆる理念というようなものを掲げているわけです。
 そして、具体的にこうやりますよというものを、医行為に関する指示書を出しています。リアルタイムの情報共有、これは非常に大事で、在宅でここまで求めたら、また川越のところだからできると言われそうなので躊躇したのですが、あえてここに出したのです。電子カルテと、オリジナルで作った訪問看護記録システムを共有のサーバーを介して情報共有できる形をとっています。それから、チーム連携ということで、そういうカンファレンスなどもやっています。そして24時間ケア体制もきっちりやると、こういう体制で在宅医療を提供してきました。
 最初の問題であるチームの統合性、インテグレーションの問題です。統合性が特に要求されるのは、やはり医者と看護師のチーム、これは病棟でも同じだと思いますが、これをどうするかが、やはりいちばん大きな課題です。これから話すことは、法律をもう1回いまの時代に合わせたものに整理しなければいけないという、私の意見なのですが、現行の中でどれだけできるかということです。
 これは厚生労働省の科研でやったのですが、法律を変えないで看護師さんの裁量権を拡大するためにはどうしたらいいかということです。その基本条件としまして、前提条件と言ってもいいと思いますが、医師と看護師が共有した哲学をもって行う。そして緊密な連携、それが前提だということを申しました。レポートにまとめまして提言したわけです。そして、法律(医師法第17条、第20条、保助看法第37条)的な制約をどうやってクリアするか。それは医師の指示体系を工夫すること、つまり約束指示をする。詳しく話すと長くなるのでコメントに書いています。
 こういう指示が在宅で具体的にどこで必要なのか。足浴が医行為だから医師の指示を待てという先生もいらっしゃるので、ちょっとびっくりしたのですが、そういうのは除いて疼痛緩和と死亡診断、これはいまの医師法をそのまま適用しますと現場の看護師さんたちが非常に困っている問題です。そのことをこういう標準指示書を設けてやっていったらいいのではないかということを提案しています。
 疼痛のことを話しますと、こういう話が出たらいつもパスを作って、それを示してやったらいいのではないかという考え方がどうしてもあり、それはお手本としてあっていいと思いますが、医者というのは自分の考え方を持っておりますので、それを大事にしなければいけないということで、ここの中で強調したことは、チームの医療的なリーダーになっている医者が、どういうことを考えて、どういうやり方をやるか。つまり、個々の医療チームであったとしたら、そこはしっかり示さなければいけない。それは口では駄目なので文書できちんと示しなさい。それもいい加減なことを書かれたら困りますので、最初、必須内容としてここに書いたようなものは、必ず書いてくださいという具合にやりました。
 もう1つの問題は、では、看護師さんはこの指示書に従って誰でも全部包括的にやったらいいのかということ。それはやはり問題があると思います。やはり看護師さんのレベルといいますか、例えば、いま認定看護師とか専門看護師という制度がありますが、そういう方ができるという意見が当初あったのですが、そういうやり方でやれば、全国どこでもできるというような制度ではないのです。むしろそのチームの中で看護師のレベルの1つの基準を設けて、どこまでやってよいかをきちんと決めたらいいのではないかと、提案をしました。
 これは私たちの所でやっているわけですが、看護師さんのレベルを、在宅の末期がん患者さんの経験によって、レベル1から3まで3段階に分けまして、経験年数の多い方はかなりの裁量権で、医師に対しては事後報告でいいよという形で、疼痛緩和のことも対応する形を提案いたしました。
 次に統合性の話ですが、そのTime Lagの問題があります。つまり、在宅で私がやっている緩和医療というのは、実は急性期医療に属するわけなので、これは在宅医療の従来の考え方からいうと、わりとのんびりしていいよと思われがちですが、そういう医療ではないのですね。その理由を示したいと思います。
 皆さんのお手元の資料には書いてあるので見てください。これは少し古くなっていますが、1,000人を超えた人、このときは870ですが、我々が在宅死に関わった症例のデータです。我々がケアに、関わる期間は平均53日なのです。つまり非常に短い。しかもこれ見ていただいたらわかりますが、ほとんどここに固まっているわけです。しかも4人に1人は1週間以内に亡くなる。そういう医療に我々は関わっているわけなのです。しかも患者を苦しめる症状、痛みなどがそうですが、それは日々変化いたしますし、日々悪化していく。そして最終的に例外なく死ということになりますので、これはいままでの在宅イコール慢性型で安定しているという考え方と変えて、こういうチームワークにしろ考えていかなければいけない。末期がん患者の場合にそのスピード性が特に要求されるのは、こういう理由によるわけです。
 Time Lagの問題ですが、相談外来を受診した末期がん患者に対応するということを決めて在宅医療が始まるまでの話です。私が勝手に在宅移行Lagなどという言葉を作ってしまったのですが、これを見ていきますと、相談に来られて実際に退院されるまでは、大体1週間ぐらいかかっているのですね。
 今度、退院した患者さんを我々在宅の医療者が入るまでに何日かかるか、これは在宅開始Lagと勝手につけていますが、これはこのとおりなのですね。1週間かかっている。我々のところはほぼその当日に関わるということです。これを見ていただくとわかりますように、在宅移行Lagというのは、実は在宅側の問題ではなくて、病院で準備をするまでの問題だということが言えると思います。
 では、どういう問題があるかというと、たくさん書きましたが、1つ退院前カンファレンスということが非常に大事だということで、厚生労働省にインセンティブをつけていただいています。これは慢性の患者にとっては、非常に大事な問題だろうと思います。けれども、我々の関わっている足が速い医療においては、調整に時間がかかりますと、Time Lagの大きな原因になるのですね。むしろ担当の医者から私に一言こうこうこうだと直接言っていただいたらわかるような問題です。
この後の話にも出てまいりますが、これは我々に関しては、むしろ足を引っ張っているというようなことになっています。
それからもう1つ、これは病院の方はすぐわかりますが、診療報酬上に検討をしていただきたいのは、“試験外泊"ということがあります。退院前に患者さんが家の生活に慣れていただくということで、“試験外泊"をするときに、在宅チームがいまの診療報酬上では入れない。もちろん入ってもいいのですが、無報酬で入る格好になっています。つまり何かあったら病院に電話をしなさい、何かあったら救急車で病院に戻って来なさいと、そういう形になっていますので、不安を増強することになりますし、病院依存をますます高めるということになるわけですね。ですから、この点は診療報酬上で、例えば“試験外泊"というときには、在宅のチームが入ってもいいよという検討をしていただきたいなと考えています。
 在宅ケア開始Lag、つまり患者さんが家に帰ってから、我々医療者が関わるまでにLagがいくつかありますが、1つ皆さんに是非知っておいていただきたいLagがあります。いま高齢者などは、医者から医者という考え方ではなくて、病院からケアマネとか地域包括に繋がってしまいますので、そこで移行が停滞してしまうことがしばしばあるのですね。いわゆるケアマネLagと勝手に書きましたが、病院と診療所の間に地域包括とかケアマネが入ることが、1つの在宅に入る道になっています。最近はかなり少なくなりましたが、時々まだ医療が入っていなかったのかと驚くケースがあります。こういうことを指摘したいと思います。
 在宅対応Lagは、何か問題が起きてから在宅で対応するまでのLagということです。これは非常に大事な問題ですが、緊急時の対応をしっかりしている所に対しては、それなりの評価をしなければいけない。単に24時間ケアをやっているというのも、ものすごく厳密にやっている所と、そうでない所があります。
 これは私たちこういう格好でやっていますよというものなのですが、看護師が2人、緊急当番でおります。それが他の対応をしているなどして繋がらなかったときには医者に直接患者さんが連絡することもあります。ほとんどは1番の看護師、調べましたら直近のデータでは週に5、6回対応しています。看護師が対応をして、こういう格好でやる。このところをしっかりやっていかないといけない。きっちりした24時間対応をしているという所に対しては、診療報酬上の加算、いまは一律に24時間ケアをやっているかどうかというようなことで、診療報酬上の加算といいますか、規定がなされていますが、ここをもう少し細かく分けるようなことをやっていただいてもいいなと思っています。
 効率性のことなのですが、ここは在宅のマニュアルを作る以前に、そもそもこういう急性型の患者さんにチームとして関わるときに、どうあるべきかというところにかかっていきます。つまり非常に無駄が多いのです。
 1つの例を出します。これは1人暮らしの肺がんの80代の方で、家で亡くなった方です。経過としては1年近くかかって、非常に長い方です。平均では2カ月ぐらいで終わりますので。これを6分の1ぐらいに縮めたら、標準的な経過になるのですが、実はその中の関わりを見ていきますと、医療の関わりというのは当然最初からあるわけです。訪問看護は少し遅れて入っています。このときは、元気な間は在宅医療という考え方よりも、むしろ外来診療で対応できます。つまり関わりのIntensityというのは、当然、経過とともに変わってくるということです。 家族ももちろん関わるわけです。
 では、いわゆる福祉のほうはどうかというと、この方、元気なとき配食サービスを受けていました。ヘルパーさんが入ったのは最後の少しなのですね。しかも家族がもっともっと入るようになったら、もうヘルパーはほとんど最後は要らないという状況になったわけですね。
 実はこの方、もともとは独居ですから、地域の総力を挙げて見てきたところがございます。ヤクルトの配達人もある意味でチームの一員に入っていただいたのですが、ボランティアも入ることがありました。そして、最期までできたわけなのですが、こういうところのコーディネーションといいますか、調整は実はケアマネの仕事ではない。つまり、こういうことで多職種の方が関わりますが、そのコーディネーションといいますか、マネージメントというのは、チームの中は訪問看護師がやるべきだろう。そういうものに対しての評価をしなければいけないのではないかと思います。
 これは私たちのデータです。当初は疼痛緩和が中心ですが、全例に関与しているのはもちろん医師と看護師。去年からはソーシャルワーカーというか、コーディネーションをするスタッフがいます。先ほど言った調整をする人です。ケアマネとかホームヘルパー、ここはアウトソーシングです。見ていただきたいのは、薬剤師が最近非常に入って来ているということです。これは本当に一体型のチームの一員だろうと考えています。
 薬剤師さんが初めて訪問するときに打ち合わせをしているわけですが、薬剤師さんはこういう急性期の医療では必須です。
 先ほど、どういう表現をされていたか忘れましたが、液体酸素の業者など下支えをする方たちがたくさんいらっしゃるわけですね。これに要求されるのは素早いですが、こういう方にケアのカンファレンスに来ていただいても、効率性から考えたら非常に無駄になります。病院と診療所の連携が非常に大事だということはわかりますが、本当に関係者がズラーッといなければいけないのかなということをちょっと考えています。
 今後の課題として、いま病院が在院日数の短縮とか、病床数を減らすという施策がある中で、在宅への多大の期待がかかっています。それが現状のチームを何か少しやったので、本当に答えられるのかという問題が、根本的に考え直すといいますか、例えば困難事例、本当に難しく、在宅ではいまの常識ではできない方がどんどん増えてきています。それから今申しましたように、急性期在宅医療というものの概念整理をして、それに見合った制度を新設しなければいけないと考えています。これはご承知のように単独世帯が夫婦子ども世帯の数を既に追い抜いて、どんどん増えている。独居の問題をどうするかというのは、非常に大きな問題です。一般では一人暮らしというのは、家で看られないという固定観念が出来ていますが、そんなことを言ったら、これからの時代は独居が増えて病床を減らせないよ、ということになってしまうわけですね。
 これは我々のデータです。独居といってもいろいろなタイプがありまして、天涯孤独型のタイプもありますし、必要になったら家族が出てくるというようなタイイプもあるのです。少なくとも遺産は任せなさいという家族は結構います。生きている間は知らないと言っていても、型のタイプは1のB、Cと、天涯孤独、これは家族の介護力は、全く当てにならないものですね。これが大体3割から4割いるのです。我々の所では家で亡くなった独居の方が、直近では全体の7%弱になっています。そういう方も最後までみるということなので、こういう分け方をして、これは独居と言えどもちゃんとみれるというようなシステム、チームケアというものを考えていかなければいけない。
 これは教科書的ですから、いわゆる公的なフレームだけでは独居の方を最後までみていくのは無理で、その中に地域力を結集するような、そういうことを包んだチームというものを考えていかなければいけない。
 急性期の在宅医療を担うチームというのはどういうことか。これは先ほど在宅に触れていらっしゃる皆さん、大体触れてくださったのですが、よせ集め型チームではやはり駄目で、一体型のチームにしてほしい。それは診療報酬上の評価ではなくて、制度新設を視野に入れた改革といいますか、そういうものをやっていただかなくてはいけない。
 寄せ集めとは何ぞやというと、これはまさに今行われているわけですが、治療病院で治療が終わって地域に帰って来た。その方をどうやってみるかというと、元の診療職員や訪問看護がありまして、そこから適当な診療所を選ぶ。
 これは実はこのとき初めて出来るチームなのです。私が当初申しましたように統合性の問題、スピード性の問題、無駄の問題といったら、これは実は正直いって、こういう足の速い患者さんを対象にしたときには、まずいところばかり出てくる体制なのです。長期で時間がある方は、むしろ余裕がゆっくりありますから、私はこれでもいいと思います。むしろこれをどうやって充実するかという考え方がいいと思います。
 こういう末期がんの方のような、足の速い方にはそのパラダイムを変えないといけないと思います。それは在宅緩和ケア専門チームを、地域にある意味で展開できる。これは届出制ではなくて、きちんとした基準を作って認定制にしなければいけないと思います。そして、患者さんが出たら、そこがすぐ基本的には対応する。そして一般の診療所の先生方にも、もちろん助けていただかないと、ここだけで全部みるのは不可能ですから、どちらかというと、イージーなケースはこういう所でやっていただいて、一人暮らしとか、患者さんと一緒にいる息子が統合失調症だとか、そういう難しいケースはこちらでやる格好にしていけばいいのではないかと思います。それで一体化したチームは、基本的には看護と医療といいますか、医者が一体化したチーム体制をとっている。
 調剤薬局とは深い絆がないとまずいのですが、こういう形を考えています。実際に我々がやっている形です。
 最後になりますが、こういう一体型のチームが1つ地域に出たら、地域の状況が変わるのだという話をしたいと思います。
 仙台の岡部先生という方がいらっしゃいます。丁度我々と同じような働きをしているのですが、これは彼らの爽秋会が1つ出来たことによって、仙台市が変わってきたという例なのです。これはがんの方の在宅死数が出ています。こちらは岡部先生たちが何人診たかということです。つまり並行して動いているわけです。ここが1つ出来たことによって地域の在宅死が増えてきた。これは当初10%であったのが4、5%嵩上げするという役割をしているわけです。
 これを彼の膝元の青葉区という所に限ったら、もっと著明です。
 実はそういう同じようなことが大阪の豊中市でも見られています。これを見ていただいたらわかりますが、いろいろな地域の在宅死率が出ていますが、豊能地区が飛び抜けてポンと、あるところから上がっています。これはどうしてかといいますと、実は2004年に豊中市で千里ペインクリニックという、丁度、我々と同じような考え方でやっていらっしゃる先生がチームで誕生したことが反映している。本当に千里ペインクリニックが関与しているかというところまで詳しい分析ができないので、エビデンスとして出せないのですが、そういう具合になっています。
 墨田区では区長さんの協力があって、在宅でがんの方が年間何人亡くなったかを調査していまして、詳しいデータが出ています。私たちの所は2000年6月にオープンしたのですが、その前、つまり1999年はがんの在宅死率は、墨田区6.4%でした。これは日本の平均です。それが徐々に上がって、現在はこの2倍から3倍、2.5倍ぐらいになって15%になっているのです。これどうしてかというと、この下に私たちが関わったケースを書いているのです。私たちが3.3%、3.4%になりましたよということで、従来この6.4%になった方は、ほとんど変わっていないということなのですね。現在のままでは、墨田区はせいぜい上がっても1%は上がらないのではないかなと、そういう状況だろうと思います。
 これは診療報酬上の、あるいは制度を検討していただきたいということを最後にまとめました。その中でいちばん考えていただきたいのは、そういうマニュアルとか何を作ってお茶を濁すということではなくて、現在、在宅でこういう急性期の患者を診ることになったら、それ相応の制度を認定していかなければいけないという具合に考えています。あとは資料を見てください。
 これが最後になりますが、在宅ケアチームの総合的な力が上がりますと、在宅ケアが実施できるがんの患者さんが増えていきます。それは逆に言いますと、在宅ケアのチーム力が上がっていきますと、必要な条件、例えば一人暮らしは駄目だとか、老老は駄目だとか、日中独居は駄目だとか、医療的に難しいことをやっているのは駄目だとかということはなくなりますので、その敷居が低くなっていく。これが新しい時代のチームケアの考え方ではないかなということだろうと考えています。以上です。

○山口座長 ありがとうございました。いろいろな立場から4人の委員の方にお話をいただきました。残念ながら、もうそれほど時間はないのですが、4人の委員のご発表に対して、何かご質問、これはというのがありましたら、限られた時間ですが、質疑応答をさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○高本委員 いちばん大きな問題は、特定看護師の業務拡大をどうするかという問題だったと思うのです。徳田先生がこう言われたのは、特定看護師みたいなのを作るなと。今でもできるではないかと。川越先生の講演はナースが実際処方まである程度、裁量権を広げているわけですよね。これは法的には特定看護師とか、そういう制度をやはり作らないといけないのではないかと私は思います。そうすると、先生の所の北海道の黄色とか緑とかいう所も、医師が少なくても何とかやっていけるのではないかなという感じがしますけれどもね。
○徳田委員 基本的に、例えばそういうように特殊なケースと言いますか、いまのようなところで、必要なものは当然だろうと思います。そのことは全く私は否定はしませんが、ある制度を作るということになりますと、それが普遍化されるときに、前回も触れたかと思いますが、正看の制度が出来たときに、結局そこで少しその差が出たことも含めて、それからいま認定あるいは、専門の看護師さんが出来ていますが、その現場での状況も、これは表に出してどうのこうのとできなかったので、お話はしませんでしたが、実際にいろいろなことを聞きますと、必ずしも活用されていないということも含めると、私は駄目だというのではなくて、慎重に構えなければならないだろうと。
 それから今のような現場で、どうしても必要な役割分担も、それは局長通知みたいなことでいいのかどうかは別として、そういう形でもクリアされるのだろうと思うのですね。だから、本当に制度化をして、そういう形のものを作るのがいいのかということについては、慎重にお願いをしたいというのが1つです。
 先ほど来、北海道のことなどをお話しさせていただくのは、やはり底上げの問題がすごく大きいのだと。予備調査のお話をさせていただいたのも、残念ながらまだ本来業務以外のこともしなければならない看護師さんもいらっしゃるのだと。これを同時並行的に私はやっていただきたいということです。よろしいでしょうか。
○高本委員 それは看護業務以外のは看護補助員とか、補助看護とかいうようなシステムもまた作らないといけないと思います。私、前にもお話ししましたが、ME技師というのは心臓外科にとっては救世主みたいなもので、役に立っています。我々はそのお陰でずいぶん専門的なことに専心できるものですから、非常によくなりました。外国もそうですが、医学がどんどん分化しておりますから、それぞれの専門家を作っていかないと、いまの医療はやっていけないだろうと思うのです。しかも、それは決して先進的なものだけではなくて、いま言ったような高齢化だとか、地域の人が少ないとか、そういうことも含めてですね。これはある所はお金も要りますが、そういうところをカバーしていかないと、いまのままの定められた職種だけでやろうというのは、はっきり言って無理ですよ。
○徳田委員 やはり標準化と言いますか、それはいま先生がおっしゃられたように、MEのお話も当然のことだと思います。現場としては必要としています。それは十分私も認めるところですし、脳外科においても手術の際にそういうスタッフを入れながらやっていることは当然あるわけですから、それは本当に認めます。
 あとは、そういう職種を、教育をどう作ってきたのか。教育のプログラムはどうだったのか、その整合性がどうなのか。その上でそれぞれにもう1つランクの上のものを作るのであれば、言い方は適切ではないかもしれませんが、先生がおっしゃるのであれば、特別MEとか、そういう名前が出てもいいのではないかなと私は思うわけです。だから、看護師さんのもっとレベルの高いものを作るのを否定するのではなくて、全体としていまやられている職種の中で、必要な業務についてあるのであれば、それを同時並行的に議論をしていただいて、では、最終的にこういうふうにするのだけれども、では最初に看護師さんだねと、こういう議論になるのであれば、それは非常にいいと思うのです。何となくチーム医療の全体の構図が、まだお話しされている段階の中で、ポンと出てきてしまうので、我々現場にいる者としては、少し違和感を感じるので、そこをうまくやってほしいというお願いをしているわけです。
○高本委員 ですからその1番の基本は、我々がどうのこうのと言うよりは、患者さんがどこの施設に来ても、患者さんはいい医療を受けたいと思っているわけですよ。そのニーズに我々がどう応えられるかと、こういう観点だろうと思うのです。そのために新しい制度が必要であったら、やはり必要だろうし、必要なくても今のままやれるというのなら、それはそれでもいいと思いますよね。その観点、いちばんのポイントはそこだと思います。
○川越委員 高本委員のおっしゃることはよくわかります。私が主張をしたかったことは、このチームケアというのは医師法、保助看法自体まで踏み込んだ議論をしないと、結論づけたりこれからの対応はできないということは、間違いないと思います。そういう意味で、高本委員の言われていることはよくわかります。
 ああいう法律が出来た時代と今はもう全然違い、想定しなかった仕事をする専門職がどんどん出ておりますので、そういうものを含めた肩書きを作るるということは私も賛成です。むしろそれをやらなければいけないと思っています。ただ、在宅で特定看護師というのを仮に作ったとしても、それがどういう働きをするのかなという、何のためにということを考えるのですね。例えばアメリカでは在宅で特定看護師が非常に活躍しているというのは有名です。
 1つ私が知っている例は、アメリカのオレゴン州なのですが、そこは、そもそも広大な土地に医者があまりいない所で、看護師が頑張らなければいけないというような所がありまして、いろいろな権限を相応の力を持った看護師に委譲しているわけです。例えばある限られたところまでの処方権、それから死亡診断も認めているのですね。では、翻って我が国の土壌の中で、そういう働きが必要かなということを考えなければいけない。私は、これはいまの段階では必要ないですし、処方権も医者が頑張ればいいと考えております。現場は特に在宅では困っておりません。むしろそういうことよりも、働きやすくするのは、運用面の工夫でいくのではないかなということで、在宅部門には特定看護師が必要だということは全く考えておりません。
○山口座長 今日は急性期、回復期から在宅まで、非常に広いところでいろいろ考えをおまとめいただきましたし、しかもその上下の関連もお話いただきましたので、いろいろな考え方が少し頭の中でまとまったように思います。この会としては引き続いていろいろな現場でのいろいろなところから見ていただいたチーム医療について、もう少し話題提供をしていただいていこうかと思っております。
 今日はもう時間がございませんので、ここで終わらざるを得ないのですが、次回に向けまして、皆さんそれぞれ各領域を代表されていますので、事務局に今日ありましたような、例えばそれぞれのチーム医療、どういう急性期なのか、回復期なのか、在宅なのか、いろいろなこともあるかと思いますが、そういう中で現在既に、ある程度行われているもの、あるいはこれから行われるべきだと考えるようなもの、その中における問題点とか何かを挙げていただいて、それを事務局に出していただく。それをまた事務局と座長でまとめさせていただいて、次回のこのワーキンググループでいくつかご発表いただくということを考えておりますから、是非ご協力をお願いしたいと思っております。
 最終的にとりあえず、この年度までにガイドラインを作ることになっていますが、実際ガイドラインというよりは、事例集的ないろいろなチーム医療の実例集のような形にしか、いまのところはならないだろうというふうに思いますので、そういうためにもいろいろな所から現在の実績のあるもの、あるいはこれから取組たいようなものをお挙げいただければと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 次回の日程について事務局からよろしくお願いいたします。
○石井補佐 次回につきましては12月9日の15時から17時を予定しております。ただいま座長からありましたように、次回に資料の提出ですとか発表等のご希望がある場合につきましては、12月1日(水曜日)までに事務局にその内容を含めまして連絡をいただければと思います。次回の会議開催の案内につきましては別途お送りいたしますので、よろしくお願いいたします。
○山口座長 時間が少し過ぎましたが、本日はありがとうございました。


(了)
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