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2010年10月19日 第10回再生医療における制度的枠組みに関する検討会 議事録

医薬食品局審査管理課

○日時

平成22年10月19日(火)15:00~17:00


○場所

九段会館「鳳凰」


○出席者

委員

永井座長、阿曽沼委員、伊藤委員、小澤委員、片倉委員、神山委員、木村委員
澤委員、鈴木委員、土屋委員、花井委員、早川委員、前川委員、武藤委員、毛利委員、森尾委員、大和委員

オブザーバー

山本内閣府参事官、渡辺文部科学省研究振興局研究振興戦略官
八山経済産業省大臣官房企画官、三宅(独)医薬品医療機器総合機構上席審議役

行政庁出席者

間杉医薬食品局長、平山大臣官房審議官、成田審査管理課長、宇津企画官
國枝監視指導・麻薬対策課長、宿里監視指導室長
福本経済課長、池田医療機器政策室長、高山医療機器政策室長補佐
谷再生医療推進室長

参考人

佐藤厚生労働省研究開発振興課治験推進室長
青井京都大学iPS細胞研究所教授
西山産業革新機構執行役員

○議題

1.開会
2.第9回主な議論のまとめ
3.関係者からのヒアリング
  ・臨床研究・治験促進策について
  ・資金面からの開発支援策について
  ・iPS細胞関係
4.希少疾病用医薬品・医療機器の指定要件について
5.確認申請の方向性について
6.意見交換
7.閉会

○議事

○宇津企画官
 それでは、出席予定の先生方全ておそろいですので、第10回再生医療における制度的枠
組みに関する検討会を始めさせていただきます。
 本日欠席の連絡をいただいております委員は稲垣委員、高杉委員であります。
 また、本日、オブザーバーである経産省の荒木課長にかわり、八山企画官に出席いただ
く予定になっております。少し遅れていらっしゃるようです。
 また、本日はヒアリングということで、厚生労働省研究開発振興課の佐藤室長、それか
ら3時半ぐらいの予定でありますが、産業革新機構から西山執行役員に来ていただく予定
です。また、京都大学から青井先生に来ていただいております。よろしくお願いします。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。
 お手元にお配りしております資料は、議事次第、座席表、委員名簿、開催要綱、それか
ら資料1として第9回、前回の主な議論のまとめ、資料の2-1から資料の2-4までと
いうことで、ヒアリングの資料を4点、資料3としまして、希少疾病用医薬品・医療機器
の指定要件について、資料4といたしまして、確認申請の方向性について、資料5として
今後のスケジュールであります。
 また、前回お配りした第8回検討会主な議論のまとめについて、前回の検討会の中で小
澤委員から指摘がございましたので、その中の2.(4)に審査機関の競争原理の導入と
いうものを追記した修正版をお配りしております。
 また、参考資料といたしましては、参考資料の1から8までの資料をお配りしておりま
す。
 不足等ございましたら、事務局までお知らせください。
 よろしいでしょうか。
 それでは、カメラ撮りのほうはここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたし
ます。
 それでは、以降の議事進行につきましては、永井先生にお願いいたします。よろしくお
願いいたします。

○永井座長
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
 まず、お手元の議事次第をご覧いただきたいと思いますが、最初に簡潔に前回の議論の
主なまとめについて事務局よりご説明をお願いいたします。
 続いて、テーマごとに関係者から発表を10分行っていただき、質問を10分お受けします。
その後に希少疾病用医薬品・医療機器の指定要件、確認申請の方向性についての意見交換
を行いたいと思っております。
 では、前回第9回、主な議論のまとめについて事務局よりご説明をお願いいたします。

○宇津企画官
 それでは、資料1をご覧ください。A4の縦の一枚でございます。
 第9回検討会主な議論のまとめでございます。
 前回はFDA、フランスのAFSAPPS、それからドイツのポールエールリッヒイン
スティテュートのほうから専門家に来ていただいて、説明をいただきました。
 内容は多岐にわたっておりますが、主に質疑があった点について記載しております。
 大きく2つに分けて、有効性・安全性の評価、管理の在り方について、それから質の高
い製品を迅速に開発する方策についてです。
 有効性・安全性の評価、管理の在り方については、主に2点ということで、AFSAP
PASの方、それからFDAの方のコメントを記載してあります。
 2.の質の高い製品を迅速に開発する方策についてでございますが、まず1つ目、開発
初期からの助言・相談についてということで、ドイツのほうでイノベーションオフィスの
説明がございましたので、その点を記載しております。
 また、(2)審査官の教育についてということで、FDAの方からご紹介がございまし
た。
 1つ目が採用の時点では科学的・臨床的な経験を重視し、薬事・規制については、On
 the Job Training等を行っているということ、それからFDAの特殊
な点としては、研究業務を併せてやっているということでございました。
 それから、(3)の確認申請であります。
 これについてご意見をいただいておりまして、1つ目が時間がかかる。早い段階から相
談できるようにしてほしいと。確認申請を廃止して事前相談というものに振り替えてはど
うかという点、それから確認時の判断がその後の治験、承認申請につながるよう審査側で
共有してほしいということ、あるいは早い段階から専門家に意見を求めるべきということ。
それから、新たに予定されている事前相談の中では、品質安全性に加えて、プロトコール
といったものの議論も併せてやるべきではないかというご指摘、最後に確認申請が終わっ
ても治験・承認申請に進まないのはなぜかということを考えるべきということでございま
した。
 それで、この議論のまとめに関連しまして、参考資料の7、8として紙をお配りしてい
ます。
 参考資料の7、2枚紙になっておりますが、第8回再生検討会における22年度結論分に
ついての確認事項、これは前回確認をいただいた点でございますが、この中でアカデミア、
ベンチャー企業が受けやすい相談事業を開発初期の段階から行うべきというご意見をいた
だき、確認させていただきました。
 それで、1枚おめくりいただきまして、参考資料の8でございますが、現在私どものほ
うで日本発シーズの実用化に向けた医薬品・医療機器薬事戦略相談推進事業ということで、
来年度予算の中で約5億円の予算をかけて、この検討会でもご指摘いただいた相談事業を
行おうということで予算要求をしている段階でございます。
 真ん中のところのバーがございますけれども、基礎研究から承認申請までという流れの
中で、治験の前の段階、治験実施に向けたシーズの改善、改良、評価といった、そういう
開発初期の段階においてのアカデミアの方、それからベンチャー企業を中心とした相談事
業というのを新たに立ち上げたいということでございます。アカデミアの方たちが受けや
すいように、相談料についても考慮したものを考えたいということで予算要求をしている
ところでございます。こういうこともございますので、いろいろな点でご支援をいただけ
ればと思っております。
 事務局の説明は以上でございます。

○永井座長
 ありがとうございます。
 ただ今のご説明に何かご質問ございますでしょうか。
 この薬事戦略相談というのは、ほぼ決まっているんでしょうか。

○宇津企画官
 これから取れるかどうかというところで。

○永井座長
 予算が取れたらということですね。

○宇津企画官
 今要求をしている段階でございます。

○永井座長
 その場合には、申請者は高額の費用負担なくこういうものを受けられるということでし
ょうか。

○宇津企画官
 そのようなことを目指しています。

○小澤委員
 同じ点なんですけれども、薬事戦略懇談会とPMDAの業務範囲が分かれているという
のはどういうことなんでしょうか。

○宇津企画官
 薬事戦略懇談会というのは、この相談事業の言ってみれば在り方について、産学官で相
談をして検討しようということで設けられているもので、実際の相談は機構のほうでやる
ということでございます。

○小澤委員
 そうすると、私どもは2回相談を受けなくちゃいけないということなんでしょうか。

○宇津企画官
 そういう意味ではございません。戦略懇談会というのは相談事業とは違いまして、制度
的なことをいろいろ検討いただくということで、例えばこの検討会でもご指摘をいただい
ていますけれども、早い時期から専門家が関わるような制度にしてほしいというご意見が
あったと思います。そういう点を検討していただく、どういう相談の形がいいのかという
ことを産学官の方々からご意見いただくということです。

○永井座長
 ほかにいかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 また追い追い議論になろうかと思いますので、その都度ご指摘いただければと思います。
 それでは、これから関係者からの発表ということで、最初に文部科学省研究振興局、渡
辺戦略官においでいただいておりますので、よろしくご発表をお願いいたします。

○渡辺戦略官
 文部科学省研究振興戦略官の渡辺です。
 それでは、お手元の資料2-1に基づきまして、文部科学省における臨床研究・治験促
進の取り組みについて、簡単にご紹介させていただきます。
 資料では最初に具体的な文科省の取り組みとして、23年度の概算要求について記載して
おります。もちろんこれまでに橋渡し研究のプログラムとしてで、文科省が初めてトラン
スレーショナルリサーチに取り組んで、約10年が経ちますが、研究費をいくら出しても、
それだけではなかなかパイプラインとして継続的に研究が実用化のほうに向かっていかな
いということがわかり、平成19年度から橋渡し研究を支援する拠点というものをつくって
まいりました。それを、来年度はさらに加速させるため、「明日に架ける橋」プロジェク
トとして、研究費と研究を支援する仕組みをセットにして実用化につなげていくような取
組を考えております。
 それから、もう1点は再生医療については、特にこれは文科省、厚労省、経産省の3省
が協動して、再生医療の実現化のために、再生医療の実現化ハイウェイ構想というものを
考えていますので、これを具体的にご紹介します。
 本日は産業革新機構の方もいらっしゃるようですが、この「明日に架ける橋」プロジェ
クトというのは、いろいろな方々といろいろな話をする中で、ライフサイエンスに限らず、
やはり基礎研究から実用化の間というのは、どうもデスバレーがあって、その部分を越え
ていくのに、なかなか日本では資金面についても国だけではとてもじゃないけれども、全
てカバーできない。海外であるようなベンチャーが少ないというような状況で、国だけで
はなくて、産業革新機構とも連携をした形で投資ができるような仕組みを新しく考えたの
がこのプロジェクトです。
 本日は、特にライフサイエンス分野の橋渡しを支援する仕組みと特に研究を支援する仕
組みについて、具体的にご説明します。
 文部科学省では、平成19年度から「橋渡し研究支援推進プログラム」を開始し、北は北
海道から九州まで、これまでに7カ所の拠点を整備してまいりました。座長の永井先生、
それから澤先生、このお二人は東大及び大阪大学の拠点のリーダーをお願いしています。
 これらの拠点はあくまでも拠点自らが研究を行うのではなく、当該大学を中心とした研
究者のシーズを育成して、出口としての医師主導治験や、先進医療・高度医療、企業への
ライセンスアウトなどへつなげていくということが大きな目的であります。現段階で当初
5年間のプログラムの終了まではまだあと1年半ありますが、既に治験へ移行しているシ
ーズが4件、企業へのライセンスアウトが10件、先進医療・高度医療が5件ということで、
具体的な成果が出てきています。
 このプログラムは研究ではなくて開発ということが前提ですので、大学の場合、具体的
な臨床研究をやっていくとき、どうしても治験外の臨床試験を行って、それがGCP対応
でないために企業主導治験へ移行される段階で、また1からデータをとり直すということ
がいろいろなところで指摘されているわけですけれども、このプログラムの中では、こう
した大学のマインドも変えていくということも大きなミッションの一つとしています。そ
のために、各拠点には補正予算等を活用しまして、GMP準拠のセルプロセッシングセン
ターを整備しておりますし、開発のパイプラインとして、医師主導治験から企業治験へと
向かう一つの流れ、それからもう一つの治験外の臨床試験を行った場合には、先進医療、
または高度医療、そして最終的には保険医療化と、医療として普及させていくという流れ
をきちんと作っていけるように、各拠点では10件程度のシーズを抱えていますが、これら
のシーズの開発の出口というのを明確にして、プログラムマネージャーやデータマネージ
ャーが各シーズに対してサポートをする形での支援を実施しています。
 資料左側の五角形のチャートには、特にこれは整備の状況として人材がどの程度まで現
時点でそろってきたかということが書いてあります。赤い線が今年の4月時点の状況です
が、目標としているような例えばシーズの評価、試験物製造、臨床試験の計画をつくる人
等、概ね最終的な目標とするところまで人材が集まりつつあるわけですけれども、これは
7つの拠点の平均であって、まだ拠点ごとにばらつきがあります。
 例えば、既に今治験を2件走らせている京都大学ですと、この赤い線がほとんど外まで
埋まっているような状況ですけれども、そこまでは達してない拠点もあります。こうした
ことについて、来年度も含めて確実に達成していきたいというふうに考えています。
 特に来年度実施予定のネットワークにつきましては、これまでは点としての拠点がそれ
ぞれ個別に存在していたわけですが、これを地域単位、あるいは疾患別で連携を組んで、
例えば多施設共同の臨床試験についても取り組んでいけるような体制を強化していきたい
というのがポイントです。
 次に示すのが、各拠点における主な再生医療関連のシーズについてです。全体で今約80
程度のシーズが動いているうちの、大体4割程度が再生医療関係のシーズであるという状
況であります。
 今年の3月には、こういった再生医療関係のシーズについての公開シンポジウムを開催
しましたけれども、多くの方々に関心を持って参加していただきました。
 次に示すのは対象疾患別開発のパイプラインで、大体真ん中のほうが再生医療ですが、
左側の色がないところから真ん中の黒い部分、それから右の赤い部分というふうに、左か
ら右に向かって開発が流れていくというパイプラインができつつあるということが見てと
れると思います。一番右にある星印は、これは被験者の登録中であって、医師主導治験に
到達しているようなシーズがこれだけ今現在であるということであります。
 それから、少し話は変わりまして、研究費を支援する仕組みについてご説明します。先
ほどの橋渡し研究の支援のプログラムは、あくまでも研究を支援する仕組みですので、そ
こは走るガソリンがないと開発が進みません。もちろんこれまでにも経済産業省と協力し
て、NEDOの研究費で支援していただいている方であるとか、あるいはそのほかの研究
費で研究を進めている方を支援していますが、より具体的な開発のシーズを支援していく
上で、この上にあります産業革新機構とJSTが基本協力協定を結びまして、具体的な研
究開発に対して支援できるような体制ができつつあります。これはもちろんライフサイエ
ンス分野に限りません。
 この事業はあくまで研究費ですけれども、こうした研究費を支援する仕組みと、各拠点
において研究が進んでいく段階でそれらをマネジメントしていく仕組み、これらを連携さ
せて、有効に活用していきたいというふうに考えています。
 それから、最後になりますが、具体的な再生医療についての取組です。
 文科省では、10年ほど前から再生医療の実現のプロジェクトというものを継続して実施
してきています。特にこれはiPS、ES、そうした細胞からかなり基礎的な研究を含め
て継続しているわけでありますけれども、特に来年度に向けて、これをより具体的な形で
出口にいかにして近づけるかということで、再生医療の実現化ハイウェイというのを3省
の協働により取組もうとしています。
 これは、端的に申し上げますと、研究費を継続的に支援していくという仕組みですけれ
ども、例えば実際に研究費を公募して課題を採択する段階で、通常であれば文科省なら文
科省、厚労省なら厚労省が別々に審査して採択するわけですけれども、これを採択の段階
で、かなり基礎的な研究についても関係省が協働して採択の審査に当たっていく。出口に
向かって進んでいけるような研究については、ある段階から文科省から厚生労働省への支
援というふうに、継ぎ目無く継続して長いスパンで支援できるような、そうした仕組みに
ついて、特別枠で要望させていただいています。
 もちろんこれはあくまで研究費として継続していく仕組みですので、これに対して橋渡
しのプログラムにおいて、こうした研究をさらに支えていくため、より密接に連携して、
かなり基礎に近い部分から出口に近い治験・臨床研究に近いところまで継続的に支援でき
ないかということを来年度以降取組んでいきたいと考えています。
 この再生医療実現化ハイウェイにおいては、5年から7年というような長い期間の研究
から、あるいは体性幹細胞等の比較的短い期間のうちに臨床研究まで到達できるものまで、
幅広い分野の再生医療について支援をしていきたいというふうに考えています。
 具体的な話だけで、余り大きな全体的な話ではないんですけれども、少しでも文科省の
取り組みについてご理解いただければ幸いです。また、何かありましたら後ほど質問等で
お答えしたいと思います。
 以上です。

○永井座長
 ありがとうございました。
 それでは、質疑はこの後の厚生労働省からの発表の後にまとめて行いたいと思います。
 続きまして、厚生労働省医政局、佐藤治験推進室長からご発表をお願いいたします。

○佐藤治験推進室長
 厚労省研発課の佐藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私どものほうからは、厚生労働省におきます臨床研究、あるいは治験の活性化の施策と
いうことで、実際に具体的な個々のシーズをどうするかというものではございませんで、
全体的に治験、あるいは臨床研究の施設を中心とした活性化、こういう施策についてご紹
介を申し上げたいと思います。
 これはよくご承知、ご覧いただくものかと思います。そもそも国が治験活性化、臨床研
究の活性化が必要になった歴史的な経緯をお示しさせていただいたものでございます。
 ここにございますように、90年の後半からいわゆる新GCPが公布され、かつ完全施行、
さらにICHの成果として外国臨床データの受け入れの拡大と、こういうものが進みまし
て、日本の治験の数というものが減少したものでございます。
 なお、ここで折れ線グラフが薬事法に基づく治験の届出の総数でございます。それから、
棒グラフにつきましては、いわゆる新規の薬物を日本で初めて治験を行うためのもの、い
わゆる新規の治験届、いわゆる30日調査の対象となるというものでございます。このよう
な違いがございます。
 2000年から2000年の前半にかけましては、いわゆる治験の総数が400で前後いたしまして、
治験の空洞化といったご指摘をいただいていたところでございます。
 この空洞化を何とかしなければいけないということで、まず2003年に全国治験活性化3
カ年計画というアクションプランを打ち立てまして、これが3年プラス1年と4年間実際
にはアクションプランとして行いました。さらに、2007年から新たな治験活性化5カ年計
画ということで、現在も進行中でございます。
 そして、この新たな治験活性化5カ年計画、治験活性化と書いてございますが、治験と
臨床研究は両輪の関係がございます。臨床研究を活性化することによって、その治験の実
力も向上し、治験の経験が積めば臨床研究に応用ができると、こういうことでございます
ので、両面に関しての活性化を図っているところでございます。
 このグラフをご覧いただきますように、おかげさまで2009年の治験の総数が553件、さら
に新規の治験届出の数も着実に右上がりというような状況でございまして、このアクショ
ンプランにつきまして、効果が出ているものと我々は分析をしているところでございます。
 さらに、この5カ年計画自体、具体的にはどういうものかと申し上げますと、大きく5
つのアクションプランに分かれているところでございます。
 この中で1つ目がいわゆる治験・臨床研究を実施する医療機関のインフラ整備というも
のでございまして、実際に治験等を企画・運営できるような中核病院を全国で10カ所整備
をしたところでございます。さらに、その中核の周りに連携をとりながら、実際の治験・
臨床研究を円滑に実施できる拠点医療機関を30カ所整備をしたところでございます。この
インフラ整備以外に、例えば治験・臨床研究を実施する人材の育成、確保ということで、
医師、コーディネーター等の養成確保、さらに国民の皆様方への普及啓発と臨床研究、治
験のご理解をいただく、そしてその上で参加を支援するというようなこと、そして4点目
として、治験・臨床研究の効率的な実施と企業負担の軽減ということで、例えば書類の統
一化、あるいは医療機関と治験依頼者たる企業との役割の明確化、こういうもの、あるい
は実施体制の公表等を行っております。
 その他といたしまして、規制上の問題、省令やガイドラインの見直しということで、国
際基準との整合、あるいは被験者保護の仕組み等について整備をしたところでございます。
 中核病院につきましては、ここに書いてございますように全国で10カ所、具体的に慶応、
北里等々の機関を指定しているところでございます。
 拠点医療機関につきましては、ここにありますように岩手医科大学ほか30機関、これが
拠点医療機関として指定をしているところでございます。
 さて、先ほど申し上げましたように新たな治験活性化5カ年計画自体が平成19年度から
開始をされているところでございまして、ちょうど昨年度が3年目、中間年に該当する年
でございました。この中で、中間年で達成状況を評価いたしまして、それに基づいて必要
な見直しをすると、我が国の状況を的確に反映した方策をとっていくことが必要であると、
これは実はこの5カ年計画をつくった当初に書かれたものでございまして、このようなも
のを踏まえ、新たな治験活性化5カ年計画の中間見直しに関する検討会というのを設置い
たしまして、この5カ年計画が導入される前の状況、そして1年目、2年目、このそれぞ
れの整備状況、取り組み状況につきまして調査をした結果、レビューをして、この5カ年
計画自体の今後の方向性、残りの期間の方向性、新たに強化すべき事項等について検討を
いただいたところでございます。
 合計で8回、活発なご議論をいただいたところでございまして、この検討会には実際に
医療機関の立場、あるいは治験依頼者の立場、そしてSMO、CRO、それぞれいろいろ
な立場の方にご参加をいただいて評価をいただいたところでございます。
 この中で5カ年計画の後半に、今後取り組みをより強化すべき事項ということで、幾つ
か挙げられております。
 日本の場合、まだまだ1機関当たりの症例集積性が少ないということで、この集積性の
向上をより強化する必要があるだろうということ。
 それから、やはりそれぞれの治験、あるいは臨床研究のさらなる効率化、業務の効率化
等を図っていく必要があるだろうと。さらに、IRBとして共同IRBのようなものも活
用したらどうかというようなご指摘をいただいているところでございます。
 3点目として、研究者の育成、教育等をより強化すべきという話、それから研究者のみ
ならず、治験等に必要な支援人材、例えばCRCの方々の確保等もより強化すべきであろ
うという課題を出していただいております。そして、国民への普及啓発ということもご指
摘をいただいているところでございます。
 最後に治験にかかるコスト・スピード・質に関しましては、コストはまだ欧米に比べて
高いということでございますが、スピード、質に関しましては、関係者の努力によりまし
て欧米と遜色がないということで、逆にオーバーリアクションによって、それが過剰な負
担にならないように留意すべきであるというようなご指摘をいただいたところでございま
す。
 残りの期間につきましてはこのような形で取り組みをしていきたいというふうに考えて
おります。
 さらに、インフラ等の体制の整備のフォーカスでございますけれども、これまではどち
らかというと臨床に近い開発後期、いわゆるフェーズ2bとかフェーズ3、このようなとこ
ろの体制整備に注力していたところでございますが、今後国としてやっていくべきことと
いうことで、例えば早期の治験のフェーズ、あるいはPOC(プルーフ・オブ・コンセプ
ト)の試験、こういうようなものに注力をする。あるいは先ほど文科省のほうからもご説
明がございましたトランスレーショナルリサーチ、このようなもののこちらの部分に、よ
り注力をすべきであるというような検討会のご指摘でございました。
 これからの注力のもう一つの方向としましては、エビデンスの創出につながるような大
規模臨床研究、研究者主導のこのような研究を行って、標準治療の確立につなげる、こう
いう2つの方向に国の注力をシフトすべきであろうというような結果になっております。
 これを踏まえまして、私ども23年度の予算要求でございますが、新薬・医療機器の創出、
臨床試験拠点の整備事業ということでございます。先ほどの開発早期の段階、早期探索臨
床、こういうものを実施できる拠点の整備を行えるよう予算要求をしたところでございま
す。
 ここにキャッチフレーズで書いてありますが、世界に先駆けて臨床試験を実施、日本発
の革新的な医薬品・医療機器を創出するということでございます。
 日本発のシードというものは、世界で見てもかなり多いと思いますが、次に実際に臨床
に着手しようと思っても、早期の部分というのが日本ではなかなかこれまで実施ができて
いないということで、臨床、実用化につきましては、海外にその手をゆだねてきたという
のは、残念ながら否定ができないところでございます。これまでの現状を打破し、かつ日
本で初めて人に投与するような試験をやることにより、日本が主導的な開発を行いながら、
世の中に医薬品、医療機器を出していくというようなことを目的としたものでございます。
 概要といたしまして、この左側、非常にビジーなスライドで恐縮でございますが、企業、
臨床研究機関が有する日本発の新規薬物・機器の早期・探索的な臨床試験を実施するよう
なインフラ、こういうものを整備する予定の医療機関、例えば疾患としましては癌であり
ますとか神経・精神、脳血管領域、こういうようなものに重点を当てて公募をいたしまし
て、これは現在5カ所を予定しているところでございますが、日本発の有望なシーズを評
価して、革新的な医薬品を世界に先駆けて創出しようというものでございます。そのため
に必要な体制整備を行っていこうということでございます。
 この特徴としましては、単に体制整備だけではなくて、体制整備等と個別の具体的な研
究費を連動させることによって、迅速な実用化を図るというようなことを特徴としており
ます。
 金額につきましては、ちょっと要求ベースでございますが、このような状況でございま
す。
 実際にどのような内容に支援をするのかと、拠点整備についてでございますが、右側に
書いてございますように、医師主導治験をこの早期・探索の部分で実施する場合でござい
ますが、例えばGMP対応での治験薬の製造、あるいはプロトコールの作成、データ管理、
治験相談費用、こういうもの、さらにインフラの部分につきましては、例えば研究者、臨
床研究コーディネーター等の人材、診断機器等の整備ということでございます。
 それ以外につきましては、この中間見直しの検討会で幾つか指摘をされておりますので、
これについて強力に取り組んでいく予定でございます。
 厚労省からは以上でございます。

○永井座長
 ありがとうございました。
 それでは、ただ今の渡辺戦略官、佐藤室長の発表についてご質問等ございましたらご発
言お願いいたします。
 これは今パブコメを受けつけていらっしゃるんですか。

○佐藤治験推進室長
 今日まででございます。

○永井座長
 もし今日お聞きになられてご意見のある方は何か入れていただければと思います。

○佐藤治験推進室長
 ぜひともお願いしたいと思います。

○鈴木委員
 最初の文科省のほうに対してなんですけれども、3月の説明会というのを聞かせていた
だいたんですけれども、その場では非常に研究初期の段階からしっかりとした、今は既に
GCPというのがあるんだから、それをきちんと守った形でやっていくべきだという強い
指導力の発言があって、文科省は随分厳しいというか、しっかりとしたやり方を最初から
求めるんだなと、言い方は随分きつかったんですけれども、医師の裁量権みたいなものに
ゆだねた野蛮なやり方はだめだというような言い方までしていまして、文科省のこれから
の方向性として、そういうふうな割と厳しいといいますか、きちっとしたルールに早期か
らのっとった形を指導していくという、バックアップしていくという方向性をお考えでし
ょうか。

○渡辺戦略官
 私の目の黒いうちはといいますか、特に文科省の中でもライフサイエンスの研究につい
ては、当然科研費の基礎研究もありますが、そうしたものと違って、特にこの橋渡しのプ
ロジェクトは出口を見据えた研究を行っているわけで、これも開発だと。したがって、今、
先生がおっしゃったように、我々としてはこのプロジェクトのシーズとして開発するもの
については、あくまでもGCP対応で最初からやっていただくということで考えています。
もちろんそれ以前の基礎的な研究はいろいろな形であると思うんですけれども、この開発
のシーズとして育成していくということで、ひとたび各拠点で採択した場合には、当然の
ことながらGCP対応ということでやっていきたいと思っていますし、我々としては、こ
うした世界に打って出られるような医薬品開発を目指していくという方向性を、このプロ
グラムを通じて大学に普及していきたいというふうに考えています。

○永井座長
 阿曽沼委員どうぞ。

○阿曽沼委員
 研究初期の段階からGCPでやるということは大賛成で、そう出来る様に検討していく
必要があると思いますが、GCPで、医師主導臨床研究をやっていく場合に、治療の安全
性の担保という意味で保証などの対応で経済的な問題が治験をやるのとは違い、あるので
はないかと思います。そういう問題についての何か財政的な支援等は現実的にはどんなふ
うにお考えでいらっしゃいましょうか。

○渡辺戦略官
 今現在各拠点に対して支援しているのは、まさにそうした、研究そのものではなく、拠
点のデータマネージャー、あるいはCPCを動かすための人件費、メンテナンス経費など
です。
 これは、現在委託費で整備しているんですけれども、来年度以降は可能であれば補助金
化して、各大学の取組について、よりフレキシブルに取組めるような形で支援していきた
いと思っております。そういう中で、補助の対象として、優先的にご指摘のようなものに
対して支援できるような格好で措置していきたいと思います。

○阿曽沼委員
 すみません、ちょっと私の質問が悪かったようです。経済的な問題と申しましたのは、
患者さんに対する補償の問題という点です。当然治験の場合でのGCPではきちんと保証
金の対応等を企業等が対応されていらっしゃいますよねしかし医師主導での。初期段階の
臨床研究においては患者さんへの補償の対応の問題は、結構財源問題でハードルが高くて
難しい対応を余儀なくされるのではないかと思うのですが。厳密にGCPで対応するとい
うことは、それも含めて難しいという意見もありますが、その辺についてはいかがでしょ
うか。

○渡辺戦略官
 詳細については、関係者で詰めていかないといけないですけれども、研究そのものに対
してのお金の使い方のフレキシビリティが増すことを考えていますので、そうした中で、
患者保護については、我々だけで全て対応できるわけではありませんので、今後は研究を
さらに進めていく段階で、厚生労働省とも相談しながら進めていきたいと思っていますが、
極力そういった初期の段階の研究についても、当然GCPで対応できるようにということ
が念頭にあるわけですので、具体的な形で支援できるようにはしていきたいと考えていま
す。

○永井座長
 伊藤委員どうぞ。

○伊藤委員
 患者の団体なので、いつもなんですけれども、全く素人なので分からないので、1つは
厚生労働省のほうへの質問が1つと文科省への質問が1つ、それから意見を1つ述べたい
と思います。
 1つは、厚生労働省のほうでGCPを公布されて、完全施行になって、この治験の数が
減ってきますよね。それはなぜだったのかということも疑問なんですが、それは何らかの
理由があって、きちんとしなきゃいけないということで規制したんだと思うんですが、そ
れ以降全国治験活性化3カ年計画とか5カ年計画の中で伸びてきますね。それは何かGC
Pの規制がいき過ぎたのか、それとも何かそれで緩めたらまた伸びていくのか、じゃ、今
後そういうことがまた起こるのかというようなことがちょっと分からないので、このでこ
ぼこがよく理解できませんということでご説明いただければ大変ありがたいと思います。
 それから、文科省の発表で研究費について米国が9億6,300万ドルのときに日本が45億円
とか、いろいろありますが、この比較というのは日本はこれで足りているという金額なの
か、それともこれは文科省だけで、実はほかに厚労省もあって、あれこれあって、合わせ
ればもうちょっと何とかなっているという数字なのか、ちょっと分からないので教えてく
ださい。
 それから、治験活性化5カ年計画の中間年で見直しを検討されているふうにここに書か
れていますが、実は私どもの患者会でも治験の患者集めとか、様々なことでかなり協力を
した経験がございまして、中にも1件本当に苦労した経験があるんですけれども、そのと
きも議論になったことだし、心配したことは、患者の金額的な補償というだけでなくて、
参加のときのいろいろな費用補償もあるんですが、最終的には患者さんの参加を多くする
ためにはどうしたらいいかということと、ほかに患者の人権、事故があった場合だけじゃ
なくて、患者の様々な人権とか尊厳を守るようなシステムがこの検討会の中で議論されて
いるのか、あるいはそういう立場の方が入っておられるとしたら、どういう立場の方がそ
こに入っておられるのかということをちょっと意見として述べておきたいし、聞きたいと
ころです。
 以上です。

○永井座長
 手短にお答えいただけますか。

○佐藤治験推進室長
 減少した結果は、ちょうど外国データの受け入れと新GCPの施行というのがほぼ同時
期でございますので、どちらがメインかというのは、現在明らかでありませんが、この活
性化に伴いまして環境整備、単に医師1人がやる、あるいは企業だけがやるというだけで
はなくて、例えばCRC、支援スタッフ、やりやすい手続、方法等の結果、このように治
験の数が増えてきたというふうに思っています。
 それから、中間見直しに関しましては、先ほどは説明を飛ばしてしまい申しわけござい
ませんが、患者の代表の方もお集まりいただきながら、患者の視点に立って治験の活性化、
臨床研究の活性化についてのご意見を頂き、議論をしております。

○永井座長
 渡辺戦略官、お願いします。

○渡辺戦略官
 研究費につきましては、日米の政府の研究費というのは、どの分野をとってみても1桁
以上違います。これはもちろん国家予算の規模の違いもありますが、これは歴然たる事実
であります。当然お金が増えれば必要な研究はできるんですけれども、むしろ我が国とし
ては、少ない研究費の中でいかにプライオリティをつけて、強いところを伸ばしていくか
ということに取り組んでいかなければならないというふうに考えています。

○永井座長
 よろしいでしょうか。
 ちょっとまだご質問があるかもしれませんが、次の予定が詰まっておりまして、次に産
業革新機構の西山執行役員にお話を伺いたいと思います。渡辺戦略官、佐藤室長におかれ
ましてはありがとうございました。
 では、西山執行役員お願いいたします。

○西山執行役員
 ただ今ご紹介いただきました産業革新機構の執行役員をしております西山と申します。
本日はこういう機会を与えていただきましてありがとうございます。
 では、着座してご説明させていただきます。
 本日は産業革新機構による開発支援についてご説明せよということでございますので、
前半、産業革新機構とはそもそも何をやっているかということをご説明させていただいた
上で、特にライフサイエンス分野、私自身はもちろん再生医療の専門でも何でもございま
せんが、ライフサイエンス分野について、どういうふうに取り組んでいるかということに
ついてご説明をさせていただきたいと思います。
 まず、産業革新機構とは、ということで、2ページをあるいは画面をご覧いただければ
と思いますけれども、私ども本日の恐らく議題に関わるベンチャーにももちろん投資をさ
せていただいておりますけれども、産業革新機構そのものの目標は、一言で言えば、一番
上に書いてございますように、我々はオープンイノベーションと言っておりますけれども、
そういう意味での産業、企業や組織の壁を越えたような新しい事業に投資をし、付加価値
を生み、次世代の産業を育てようと、あるいは育てろというのが私どものミッションでご
ざいます。したがって、決していわゆるベンチャーキャピタルということで、ベンチャー
だけに投資をするという組織ではございません。
 組織的には、ごく簡単にご説明をさせていただければ、左下にございますように、政府
がほとんど財政的な負担というか、支出をしているわけでございますけれども、現時点で
政府の出資が820億円、それから民間から19社から100億円ご出資をちょうだいしておりま
して、それとは別に産業革新機構が行う借り入れに対する政府保証枠というのが8,000億円
ついております。もちろんこれはあくまで枠でございますので、あるから全部使うという
趣旨ではございませんけれども、最大これらを活用すれば下に書いてございますように、9,
000億円の投資能力があるということになっておりまして、私ども運営期間が15年でござい
ますので、15年の前半が大体投資期簡だといたしますと8年とか、それぐらいを使って、
最大限この9,000億円の枠を使いながら投資活動をしていくということで、昨年の7月から
営業を開始しております。
 私自身は経済産業省からここに出向をしておりまして、もともとこの組織自身は経済産
業省としてプランをしたものではございますけれども、一番下に小さく書いてございます
が、投資対象に業種の限定はないということで書いてございますとおり、我々の組織その
ものがオープンイノベーションを標榜しておりますので、各省さんとも連携をしながら、
業種の垣根なく、様々な事業に投資をしようということで、私ども組織にも、例えば厚生
労働省さんからもご出向していただいているという、そういう組織でございます。
 1ページ飛ばさせていただきまして、4ページに進みまして、我々オープンイノベーシ
ョン、オープンイノベーションと言っているんですが、それだけでは少し分かりにくいと
いうことで、典型的には何をしているかというのを3つ挙げさせていただいております。
 3つございます。
 1つ目は、後で少し詳しくご説明いたしますけれども、一言で言えば知財ファンドとい
うことになります。大学が典型でございますけれども、大学や公的機関、あるいは場合に
よっては企業にある特許をなかなかその大学の持っている特許だけでは十分活用されない
のではないかという発想から、それをまさに大学や公的研究期間の壁を越えて結集をして、
事業化をするためのファンドをつくろうというのが1番目の話でございます。
 2番目、ベンチャー企業等の事業拡大と書いてございますけれども、ここは典型的には
私どもとしてベンチャー企業に投資をしようということでございますが、私どもの視点は
2つございます。
 1つは、当然ベンチャーキャピタルというのは民間にもございますので、我々のミッシ
ョンとしては、後で具体的に申し上げますように、民間のベンチャーキャピタルではなか
なかカバーできないくらいの簡単に言えば思い切った規模の投資を特にベンチャー企業の
成長段階、ベンチャー企業ができる段階では、当面必要な額が少額でございますので、民
間のベンチャーキャピタルでもお金を出しやすい規模ではあると思いますので、少なくと
も現段階では、いわゆる成長段階に思い切った規模の投資をするということを心がけてお
ります。
 それから、第2、まさにこれがオープンイノベーションの点でもございますし、本日の
話題とも関わることだと思いますけれども、私どもはライフサイエンスも含めて、日本の
技術をうまく活かしていくためには、ある種の技術のバトンタッチをしていかないと、ベ
ンチャー企業だけで完結的に開発から製造、販売まで全てを担っていくことはなかなか難
しい場合が多いというふうに思っておりまして、実際にまさに日本の技術、あるいは創薬
のアイデアを、実際の薬、あるいは医療機器に結びつけていくためには、ベンチャーと大
企業の共同が必要な場合が多く、その橋渡し役を私どもとしては担いたいという、この2
つを心がけております。
 それから、3番目には、本日の議題とあまり関係がないので、簡単にさせていただきま
すけれども、いわゆる産業再編的な大企業の事業部門を切り離して再編するといったよう
なことも手がけようとしております。
 投資のセグメントとしては、極めて広範囲にわたっておりまして、次のページでござい
ますけれども、当然その中にライフサイエンスというのも位置づけられております。
 それで、以上を踏まえまして、今まで投資をしてきたもの、これは一つ一つご説明をし
ていますと非常に長くなりますので、詳細は省かせていただきますけれども、イメージを
持っていただくために、まず一番左側にいわゆるエレクトロニクス、ITの分野で、これ
までいわゆるベンチャーに3つ、GENUSION、フラッシュメモリのベンチャーです。
それから、ゼファー、小型風力のベンチャーです。それから、ENAX、リチウムイオン
電池のベンチャーに投資を決定してきております。
 先ほど申しましたように、それぞれそこに書いた額の投資を決定してきておりますが、
いわゆる民間のベンチャーキャピタルの平均的な投資額は、1ベンチャーキャピタルが1
ベンチャー企業当たり1億円を投資するというのが平均値でございますので、ここに書い
てあるような額の投資というのは、もちろんこの事業がうまくいくかどうかは私どもの今
後の努力次第、あるいは対象企業の努力次第でございますけれども、かなり思い切った規
模の投資をしているということは、この数字からご理解いただけると思います。
 それから、ライフサイエンスについて、知財ファンドの話を後でさせていただきます。
バイオベンチャーについてもこれからご説明させていただきますけれども、昨年の末以来、
我々としてバイオベンチャーへの投資をいろいろ検討してきておりまして、なかなかまだ
成果が出せなくて、我々もいろいろもがいているところでございますけれども、これも最
後下駄を履くまで分かりませんが、恐らく近々ようやく最初の投資を発表させていただけ
るような段取りになるのではないかというふうに期待をしております。
 8ページ以下、ライフサイエンスに特化をしたお話をさせていただきます。
 8ページのお話は皆さんよくご案内のことだと思いますので、詳しくは申しませんけれ
ども、我々に対して投資が期待をされているのは、いわゆる言葉がいいかどうか分かりま
せんけれども、通称「死の谷」と言われるベンチャー企業がなかなか苦労をする、そこの
下に書いてございますように、前臨床から典型的にはフェーズ2ぐらいまでの資金を供給
するということが期待をされております。
 先ほど申しましたように、私どもの視点としては、もちろんベンチャー企業だけで完結
するようなものがあれば、それは別に否定しようというものではございませんけれども、
将来的には多くの場合、それを大企業と組んで製造、特にグローバルに販売をする。ある
いはさっきの話に戻れば、フェーズ3の治験を行うということになりますと、当然そうい
う連携が必要になってまいりますので、そういう橋渡しもできるようなもの、つまり端的
に言えば、今すぐかどうかは別にして、製薬企業が将来そのベンチャーと組んで一緒にや
りたいというものに注力して取り組んできております。
 参考1、参考2は詳細を省かせていただきますけれども、残念ながら皆様ご案内のとお
り、日本の場合、研究レベルではいろいろな成果があるにも関わらず、日本の創薬ベンチ
ャーを日本の国内の製薬メーカーが活用するという事例、ベンチャーと製薬が共同すると
いう事例は極めて少ないというのが実態でございます。
 9ページ、10ページに書いてございますように、今や創薬のもとをたどればベンチャー
企業が起源になっているというのが世界の主流でございますし、自国内、あるいは地域内
のベンチャーと協力をしていくというのは、10ページの下に書いてございますように、ア
メリカでもヨーロッパでもいろいろ起こっているということでございます。
 ということで、一つ一つはまた省略させていただきますけれども、11ページにございま
すように、私どもとしては、まず、とりあえず、もちろん創薬に限るということではござ
いませんけれども、1つ大どころという意味で創薬ベンチャーを主として去年の暮れ、11
月ぐらいから協力を仰いで、ご関心のある企業との間で、そこに書いてございますような
観点について、我々としてご支援が可能かどうかということについて議論をさせていただ
いております。
 私どもは、政府から与えられているミッションが一応補助金ではなくて、投資としてお
金を使えということでございますので、具体的に将来的にそれがもちろん一つ一つは市場
化したり、失敗したりするにしても、最終的にそれが産業に結びつく確率がどれぐらいあ
るかと、先ほど申し上げたような大企業との連携が具体的に可能かどうかという観点につ
いて、様々な観点からスタディをさせてきていただいているということでございます。
 そういったことを、一つ一つは省きますけれども、13ページのような視点から評価をさ
せていただいてきております。
 それで、まだ1つ目の投資が発表できていない段階で申し上げるのがいいかどうか、私
どもはこの1年弱、10カ月ほど取り組んできた中から、14ページに書いてあることがなか
なか創薬ベンチャーへの投資、これはほかの先ほどご紹介したように、私ども既に投資を
させていただいたライフサイエンス以外のベンチャーでも半分以上が共通する点でござい
ますけれども、なかなか実際にやってみると難しい点というのが多々ございます。これは
今日メッセージとしてぜひお伝えをしたい点でございまして、よくご存じの方は別に問題
ないと思いますけれども、一般的にはベンチャーがなかなか苦しいので、要するに技術の
目利きをして、お金をベンチャーにきちんと投じればベンチャーが育つというふうに思わ
れがちなのですけれども、実際にはお金だけの問題という例はほとんどございません。全
く多面的な問題をはらんでおります。
 14ページに具体的に3つ、4つ書かせていただいておりますけれども、要するに日本の
場合、創薬ベンチャーを含むベンチャー企業が当面している問題というのは、もちろん現
場のベンチャー企業の中では必死の努力が行われているとは思われますけれども、私ども
として先ほど申しましたように、将来的に、今すぐかどうかは別にしまして、製薬企業と
の協業の可能性も含めてスタディをするために、外部有識者、ライフサイエンス分野の専
門家、内外の製薬メーカーの研究開発、あるいは製品開発の第一線でやってこられた方々
に、このベンチャー企業を見ていただいておりますけれども、なかなかそこに書いてござ
います事業化プロセスのグランドデザイン、あるいはどういう治験をやっていくかという
ところの設計が必ずしもいわゆる製薬企業から見ると思ったとおりになっていない。
 したがいまして、ちょっとページがまたぎますけれども、15ページにありますように、
実際我々が投資をしようとすると、かなり基礎的なデータにまでさかのぼって、データを
全部かき集めて外部アドバイザーに一つ一つ、1ページ、1ページ見てもらって、きちん
としたデータの構築、収集、整理というのを1からやり直すということをしていかないと、
なかなか評価ができないというのが多くの場合の実態でございます。
 それから、2、3、4、5は大ざっぱに言えば関係をしている似たような問題でござい
ますけれども、長らくベンチャー企業をやってこられた結果、簡単に申し上げれば知的財
産権とか、あるいは株主とどういう約束をしているかというのが極めて錯綜しております。
つまり知的財産権がだれにあって、そのベンチャー企業が何を持っているか、どの範囲の
ものか、勤めてきた人たち、いわゆる職務発明との関係はどうなっているか、あるいは株
主さんにどういう権利を与えているかというのは、極めて錯綜をしております。したがっ
て、これはライフサイエンス以外のベンチャーもそういうことが多いのですけれども、実
際にお金を投じようとすると、今まで結んでこられた知的財産に関する契約、あるいは株
主さん、特に日本の場合、40人、50人というふうにアメリカに比べて10倍近い株主の数が
平均的におられますので、この40~50人の株主さんと一つ一つ私どもが直接交渉して、簡
単に言えばベンチャー企業に有利でない契約を見直さないと投資ができないというのが実
態でございます。
 細かいことは余りいろいろ申し上げませんが、一言で言えば創薬ベンチャーに対する投
資はお金だけの問題ではないと、それだけの一言で言えば経営の事業体制を立て直すだけ
の努力を、だれか、私どもがなるべくチャレンジしようと思っているのですけれども、し
ていかないと投資に結びつくのはなかなか大変であるというのが実態でございます。
 その上で16ページにいきまして、再生医療ということで取り上げさせていただきました。
私どもはもちろんまだバイオベンチャーは一つも投資決定をさせていただいておりません
ので、余り特に再生医療に絞って、そんなにえらそうなことを言える立場にはございませ
んけれども、今申し上げたようなバイオベンチャー、一般の課題とも関係をしているので
すが、やはり日本全体でバイオベンチャー、あるいはなかんずく再生医療というものを振
興していこうとすると、一つ一つの技術のネタをどうこうするというよりは、開発から販
売に至るまでのバリューチェーンをしっかりと国の中でつくっていかないと難しいのでは
ないかという印象を持っております。
 特に再生医療の場合、創薬と違って大企業にそういうノウハウが蓄積しているわけでは
ございませんので、バリューチェーンを支えるノウハウを蓄積するようなプラットフォー
ム的な企業の育成が必要ではないかというふうに考えております。
 その意味で、これは私ども自身の課題でもございますけれども、こういうプラットフォ
ーム的な企業というのを育成していこうといたしますと、なかなか我々の持っているエク
イティと書いてありますけれども、リターンを追求する、国のお金がもとになっていると
はいえ、基本的にはリターンを出さなければいけないエクイティだけでは、なかなかプラ
ットフォーム的な企業、つまりほかの数々出てくるベンチャーに治験とか開発、あるいは
製造のプロセスでサービスを提供するような企業をつくるというのは、なかなか難しい場
合もございますので、グラント、いわゆる補助金等々との有機的な連携が必要だというふ
うに私どもは考えております。
 ということでございまして、今、再生医療を具体的に念頭に置いてやっているわけでは
ございませんけれども、16ページにございますように、例えばJSTさん、科学技術振興
機構さんとは9月に相互協定を結びまして、こういう彼らの持っている研究開発支援措置
と我々の投資機能をうまく結びつけることによって、実現できるような案件がないかとい
う議論をスタートさせたところでございます。
 最後に、17ページに先ほど一言申しました知財ファンドの仕掛けが書いてございます。
これは世界的にも新しい取組でございますので、成功するかどうかは分かりませんけれど
も、発想といたしましては、大学や公的な研究機関に散らばっている、つまり一つ一つの
大学が持っている一つ一つの分野の特許だけでは、なかなか事業化ができない、つまり使
う側、つまりライフサイエンスの分野では製薬企業やベンチャーを起こそうとする方にと
っては、なかなか十分な範囲の特許がないというものについて、大学や研究機関の枠を越
えて集めて、それを事業化することにつなげていこう。あるいは単に集めるだけではなく
て、先ほど申しましたように、残念ながら端的に申し上げれば、大学の特許の場合、基本
的には研究目的で特許が取られておりますので、将来事業化していくにはデータが不十分
であったり、周辺特許が押さえられてないという事例はたくさんあるわけでございますの
で、そういうものに私どもは投資としてお金を出して、特許を取ったり、あるいは周辺特
許を押さえたり、追加的なデータをとるというお金をこのファンドが支出することで、強
い知財群をつくっていこうということで取組を始めております。私どもが、最終的には当
面3年間で6億円、最大10億円出資をし、製薬企業、武田さん、第一三共さん、エーザイ
さんとともに今出資をして事業を開始したところでございます。
 その具体的な分野としては、真ん中のブルーの四角の中ほどに書いてございますように、
一応ES幹細胞、バイオマーカー、がん、アルツハイマーといったような4分野を対象に
取り組んでいこうというふうに考えているところでございます。
 一応お時間の制約もございますので、私の説明は以上にさせていただきます。
 ありがとうございます。

○永井座長
 ありがとうございました。
 それでは、ただ今のご説明にご質問のある方はご発言お願いいたします。
 いかがでしょうか。
 阿曽沼委員、どうぞ。

○阿曽沼委員
 ご説明ありがとうございました。幾つかご質問させてください。
 先ず、第一点目は、こういった投資ファンドの運用という意味では、ポートフォリオ全
体をどういうふうにして戦略的に策定していくかということが非常に重要だというふうに
思うんですが、投資対象全体で考えると、例えばライフサイエンスだとか、新エネルギー
だとか、いろいろな分野での投資案件があると思います。産業革新機構では、そのポート
フォリオとして、ライフサイエンス分野には今後大体どのぐらいの規模が投資されていく
必要があるとお考えになっているのかという点です。
 それから、第二点目は、私が聞いているところによりますと、約50社程度の創薬ベンチ
ャーやバイオベンチャーが呼ばれ、エクセルシートで50枚ぐらいの資料をご要求されて、2
0年から30年の事業計画をつくって来て欲しいと言われたとの事です。これには多くのベン
チャーが大変苦労されたと聞いています。当然、そんな中には今おっしゃったように、い
わゆる組織としての基盤が不十分であるとか、皆さんから見れば不十分な対応が浮き彫り
になった部分もあるかもしれません。しかし、産業革新機構は一般の民間ベンチャーキャ
ピタルとそもそも設立意義も違うのですから、ネットプレゼントバリュー、つまりNPV、
現在価値を重視してリターンを求めるような判断では、投資そのものが進まないのではな
いのではないでしょうか。そもそもライフサイエンスとか創薬ベンチャーへの投資判断に
NPV重視ではなじまないのではないかと思います。なじまないからこそ、一般の民間ベ
ンチャーキャピタルと違う産業革新機構があるんじゃないかと思いますが、その点につい
てはどうお考えになりますか。
 第三点目は、創薬ベンチャーだとか、ライフサイエンス関連ベンチャーにお金が入りに
くいのは、お金の問題だけではないんだというご説明でしたが、本当にベンチャービジネ
スの目利きがきちんと正しくできているのかということも疑問があります。ベンチャーが
抱えている問題の中には、日本の制度というものがネックになっているということがある
と思いますが、その点でのご回答いただければありがたいと思います。

○西山執行役員
 ありがとうございます。
 順番にお答えさせていただきます。
 1番目、ライフサイエンス分野で幾らというようないわゆる枠のような設定はさせてい
ただいておりません。ただ、一般論として申し上げると、先ほど申しましたように、私ど
も全体としては、それは枠を設定しない理由というのは、これは別にライフサイエンスに
限りませんけれども、私ども政府の出身ですから、そういうこともよくあるので、分かり
ますけれども、枠を設定するとプラスもマイナスもありまして、マイナスから言うと、枠
を消化しようというふうになりがちであると、これは別にライフサイエンスに限りません
けれども、ということなので、幾ら幾らの枠というのを今のところ設定しているものでは
ありません。
 ただ、枠がないからお金が足りなくなるんじゃないかという点については、先ほど申し
ましたように、一応投資能力としては9,000億円の投資能力がございますので、今話題にな
っているような分野について、十分なお金が準備をできない、枠がないからお金が足りな
くなるという心配は恐らくないのではないかというふうに考えております。
 それから、2番目、どういうふうに審査をするかというのは、もちろん我々も100点のこ
とができているというふうにはもちろん思っておりません。試行錯誤の中でやってきてお
りますけれども、こういうデータはとらせていただきますけれども、もちろん、いわゆる
リターンだけでは判定をしておりません。まず、我々として重視をしている点は、先ほど
も繰り返し申し上げておりますけれども、いずれにしても我々が投資をするものがいずれ
本当に薬になって、患者さんに届くかどうかというのは、これはさすがに重視をしないと、
それこそ単なる投資になるので、そういう点を重視をすると、大企業とだけ結びつくのが
いいかどうかは別にして、最終的に治験環境とも関わるかもしれません。治験環境をくぐ
り抜け、それをパスし、販売網があって、きちんと患者さんにお届けできるという体制が
できる見通しがあるかどうかという点は、きちんと確認をしないと、もちろんこれも100%
求めるということではありませんけれども、それなりに蓋然性があるというところは、見
させていただくということを中心にやっております。
 データのとり方、何を求めるのがいいかということについては、いろいろご議論がある
と思います。これは率直に申し上げて、我々も昨年実質スタートをした直後に、まず創薬
ベンチャーについて取り組んでみようと、それも待つよりは、こちらから積極的に働きか
けて、いろいろ資料を出していただこうということで、ややこちらからプロアクティブに
これもあれもお願いしますとしてしまったところの中で、そういう意味ではいろいろ今、
委員からお話のあったようなこともあったのかと思いますが、その点については我々も運
用をしながら、当然必要なことは見直して、過重なことはお願いをしないということには
したいというふうに思っております。
 それから、3番目、目利きについてはいろいろな議論がございますけれども、我々とし
ては基本的には先ほど申しましたように、お一人、お一人の目利き能力をどうこうすると
いうのは、なかなか難しいところがあるわけでございますけれども、一応私どもとしては、
内外の製薬メーカーでまさに簡単に言えば役員として第一線で製品開発、あるいは研究開
発をやってこられた方を数名外部有識者としてお願いをしておりまして、その方々に先ほ
ど申しましたように、実際のデータ、一枚、一枚をご自身に見ていただいて、やっていた
だくということ、それは逆に申しますと、外部有識者の方がそこまでやらないと、とても
自分たちとしては、きちんとした目利きができないということでやっていただいておりま
す。
 ただ、もちろんこれもいろいろな分野が変わればいろいろなより適した目利きの方とい
うこともございましょうから、その点についてはいろいろ皆さんからアドバイスもいただ
きながら考えていきたいというふう思います。
 それから、治験の環境等々については、これもなかなか我々も悩みをもちろん抱えてい
るところでございまして、どうしても我々はまだ1件も投資してないので、えらそうなこ
とは言えませんけれども、我々が投資しそうなもののある部分のものは、どうしても海外
で当然事業を始めるものが多いというのが実態ではあります。もちろん我々は国のお金で
もともとは始めているものでございますから、できればもちろん日本の中で先に製品化す
るということをしていただけるのが理想だとは思っておりますので、ぜひそういうような
環境が整備されれば、私どもとしても大変ありがたいというふうに思います。
 ただ、私どもとしては、やや逆から言うと、現に薬を開発されている方を世に出すとい
うことも重視しなきゃいけないので、それは海外ですから、私たちもやりませんというわ
けにはそれはとてもいきませんので、それは私どもとしては、海外だからやらないという
つもりはございませんが、趣旨を生かすにはそういう環境が整ったほうが本来的だという
ふうには思っております。
 以上です。

○永井座長
 よろしいでしょうか。
 お時間はよろしいですか。
 もう1人、ちょっと西山さんのお時間の都合がありまして、小澤委員から手短に。

○小澤委員
 今のちょっと反論もありますが、その前にまずコメントと質問を2つさせてください。
 産業革新機構さんの前身はイノベーション創造機構という名前がついておりました。イ
ノベーションはスピードが命というのを私は感じております。やはり時間をかけ過ぎかな
という気がしておりまして、この辺はちょっと私の個人的なコメントです。
 質問は2つあります。
 まず、反論から。海外展開云々の話がございましたが、再生医療、まずこの場では再生
医療のプレイヤー、特に企業は今事業を縮小するか清算する、という方策か、もしくは海
外に展開せざるを得ないという傾向があります。当社もシンガポールに事務所をつくりま
した。この清算、縮小か、もしくは海外に行くかというような選択、我が国の中ではなか
なか悩ましい決断をせざるを得ないというのがあります。
 その中で質問は、産業革新機構が厚生行政に望むこと、そして我々企業に望むこととい
うのにできれば日本の中で先にやってほしいというのがありましたが、それはかなり難し
いかなと私は思っております。意見を聞きたい。
 それから、2つ目の質問は、当枠組み検討会では、原則薬事法の中でやりなさいという
のがこの2年間の2年目の議論になっております。しかしながら、実際には薬事法と医師
法、医療法といいましょうか、両方の中で事業というのは展開されております。非常に難
しい質問だと思いますけれども、産業革新機構さんとしましては、医師法に関しても、医
師法の中での事業に関しても、もちろん薬事法と同じように投資をされる予定なのか、お
答えいただきたいと思います。

○西山執行役員
 1番目、スピード重視だろうと言われているのは、まさにおっしゃるとおりでございま
すので、我々としてなるべく早く、これは分野を問わず決断をしていかなきゃいけないと
いうふうには思っております。ライフサイエンスでは、なかなか言葉どおりのことができ
てないということについては、我々も忸怩たるものがございますけれども、だからライフ
サイエンスのことが議題になっているときにライフサイエンス以外のことを答えても仕方
がないんですけれども、ここに書いてあるものについては、ご相談を預かってから平均的
には4カ月ぐらいで投資の判断はしてきております。それはそうしようということでござ
います。
 それから、第2にさっきの国内外の話では、これはすみません、必ずしもそれは私も再
生医療についてご説明したというつもりではなかったんですけれども、お答えは先ほど申
し上げたとおりなんですが、私どもとしても、第1のミッションは現に再生医療を含めて、
現場で苦労されておられるベンチャー企業の方に我々の支援がお役に立つ、あるいは我々
のミッションにかなうことがあれば、お手伝いをするということでございますので、それ
が海外だから我々がやらないということは全くございません。
 ただ、最後のご質問とも関わっているのかもしれませんけれども、我々としては具体的
に特に投資をした暁については、いろいろ関係省庁、それはもちろんどの省に限らず、い
ろいろな助言や協力の要請ができるというふうになっておりますので、そういうことの中
で、できれば、日本の中で製品につながるような環境を整えていただきたいというのが一
般論としては、私どものミッションだろうと思います。
 それから、3番目については、私も具体的な知見がそれほどあるわけではないので、簡
単なお答えはできませんけれども、まず一般論として申し上げれば、何法だから投資する
とかしないとかということは、我々自身にはございません。ただ、我々の投資というのは
あくまでこれはライフサイエンスも含めて、先ほどのお話と結びつくと思いますけれども、
もうかるとかもうからないということじゃなくて、きちんとした事業として育ち、それが
でき得ればグローバルに展開をしていくようなものに投資をしたいと。
 つまり私ども1件もやってなくてえらそうに言うのも何ですけれども、数限りなく投資
をするというわけにもいきませんので、どうしてもそういうものにフォーカスをしていく
という必要がございますので、そういうことにかなっているものであれば、もちろん合法
であれば、何法でやっているからいいとか悪いとかという観点は、私どもそのものはそう
いう観点を持っているわけではございません。
 以上です。

○小澤委員
 私もその答えでいいと思うんですが、現状は薬事法の中でプレイしている企業で利益が
出ている会社はございません。しばらくは利益は出ません。これは日本の現状でございま
す。

○永井座長
 まだいろいろご質問あろうかと思いますが、ちょっと時間の関係がありますので、西山
さんには本日はありがとうございました。
 それでは、続きまして京都大学iPS細胞研究所教授の青井貴之先生からご発表をお願
いいたします。

○青井教授
 京都大学の青井と申します。iPS細胞研究所というところから参りました。
 本日は再生医療に向けたiPS細胞の現状と課題ということで少しご説明させていただ
きます。
 若干配布資料と異なったスライドを追加しておりますけれども、前の画面をご覧いただ
ければと思います。
 iPS細胞、人工多能性幹細胞と訳しておりますが、それは体細胞から誘導される細胞
株でありまして、無限に増殖することができる。すなわち自己複製能と様々な細胞になる
ことができる分化多能性を有しておる細胞であります。
 そして、これら先ほど述べた2つの性質はES細胞、胚性幹細胞と共通の性質でありま
すけれども、それに加えまして様々な健常者、あるいは患者さんをドナーとして樹立可能
であること、胚を使用しないということでありまして、そういった特徴がある細胞である
ことから、再生医療を初め幾つかの用法が期待されている細胞でございます。
 さて、私たちiPS細胞の研究者の現時点での重要な課題は、iPSの多様性というこ
とがございます。
 iPS細胞は現時点では様々な作製方法がございます。そして、その異なる作製方法は、
できましたiPS細胞の安全性、あるいは分化能力、様々な細胞になる能力の違いにつな
がっておるということが分かっております。例えばc-Mycというがん源遺伝子を染色
体に挿入されるような方法を使ってiPS細胞を樹立しますと、腫瘍発生につながるとい
うことが分かっております。
 それから、もう一つ重要な課題は、同じ方法でつくり、あるいは1回の作製工程、我々
はお皿の上で細胞を飼うわけですけれども、一つのお皿の中から複数のiPS細胞がとれ
てきますけれども、このような複数のiPS細胞であっても、クローンごとに安全性、あ
るいは分化能力の違いがあるというのが現状でございまして、恐らくこれはここしばらく
は解消されることはないだろうという状況でございます。
 したがいまして、よいつくり方をすれば必ずいいクローンができるというところにはま
だいっておりませんので、よいクローンを選び出す方法の確立ということが重要でありま
す。そして、そのよいクローンかどうかという評価にはコストも時間も非常にかかるとい
うことが重要な点でございます。
 先ほどのスライドにつきましては、それを説明するデータを幾つか持ってまいりました
けれども、マウスのiPS細胞から神経細胞をつくって、ネズミの頭に移植すると、そう
しますとあるネズミでは腫瘍ができてくる、できないものもあったんですけれども、腫瘍
ができるネズミがいるということが分かりました。
 そして、様々なクローンでこの実験を行ってみますと、これは縦軸ができました腫瘍の
直径を示しておりまして、ですから上にあるプロットほど成績が悪いわけでありますけれ
ども、そうしますと多くのものは悪いんですけれども、しかしいいクローンもあります。
右から2番目、335、D1というのは、全てゼロのところにプロットが並んでおりまして、
いいと。しかもこの右端と右から2番目といいますのは、全てが同じ作製方法でありまし
て、しかも右端と右から2番目は同じネズミの細胞から、そして同じお皿の中からできて
きたクローンでありますが、そこでもいいクローンと悪いクローンがあるということであ
ります。
 これは同じところを切り抜いた図ですけれども、ただここで注目すべきは、このいいク
ローンというのは5回の実験を行ってますけれども、毎回いい成績を示しております。こ
れはどういうことかと申しますと、最初に述べましたiPS細胞の基本的な性質、自己複
製能、同じ性質を保ちながら無限に増殖するという性質によるものでありまして、最初の
性質が決まれば、そのまま増えていくと、何度実験に使っても概ね同じ結果を示すという
ことであります。
 すなわち私たちはいったんよいiPSのクローンを得ることができれば、それをラージ
ロットでたくさんつくって準備することができるということであります。
 これもネズミですけれども、よいiPSを使って神経細胞をつくって、脊髄損傷を起こ
したネズミに移植しますと、いいクローンでは上の写真のようにきれいに治るというか、
腫瘍をつくらないわけですけれども、悪いクローンでは毎回腫瘍をつくるということで、
いいクローンを移植したほうでは機能改善も見られたという成績でございます。
 これはプリントをハンドアウトしておりませんけれども、ヒトのiPS細胞でも、詳し
く述べませんけれども、腫瘍化のリスクを調べる試験方法を今開発していますが、これを
見ていただきますと、これは全て同じつくり方でつくったiPS細胞なのですけれども、
クローンは3回実験をしておりまして、3色で1セットなんですが、クローンによって成
績が随分ばらばらであるということが分かります。
 しかし、いいクローン、水色というか、画面で言うと紫色になりますけれども、低い数
字、下に張りついているほうがいい成績ですけれども、それは何度やっても少なくとも3
回やって、3回ともいい成績を示すし、悪いものは3回やっても3回とも悪い成績を示す
と、紫の矢印でございます。
 こういったクローン間に差があって、そしてよいクローンは常によい結果であるという
ことを、示す成績をヒトのiPS細胞でも得ております。マウスとヒトのiPS細胞、い
ろいろな試験法で、再現性を持ってよいクローンは常によいということでございます。
 そうしますと、私たちが現時点でできることは、とにかくよいクローンを選び出して、
そしてそれを増やして使うという方策が正しいであろうと現在考えております。
 さて、どうやってよいクローンを選んでいくか、あるいは逆にどうやって危険なクロー
ンというものを選び出していくかということでありますけれども、マンガでiPSを用い
た再生医療のモデルを書いてございます。
 このiPSを用いた再生医療のモデルの特徴は、この製造工程、あるいは調製工程が非
常に大きい位置を占めることでございまして、ここには非常に多くの作業工程、多くの試
薬や機材を使います。それから、長い時間、評価などを含めますと1株で移植まで持って
いくのは、最初にドナーから細胞をいただいてから1年以上かかると思いますけれども、
そういった時間もかかります。これは特徴でございます。
 そうしますと、種々の懸念されることにつきまして、例えば感染症、その他の汚染とい
うことに関しては、もちろんドナー由来のもの、そして製造中の工程に起こるものとござ
います。それから、遺伝子異常もドナーが持っているドナーの細胞が持っているようなゲ
ノムやエピゲノムの異常というものと、一方で調製工程中に生じるそれらの変化というも
の、いずれもありますけれども、従来のこの調製工程が短い再生医療と比べますと、この
リスクの大きさ、重さといいますのは、総体的には調製工程で生じる懸念が大きくなると
いう特徴があろうかと思います。
 一方で、例えばこの時間がかかることによりまして、ドナーの感染症なんかに関しては
ウインドウピリオドをまたいで再検査する、ペア血清をとるなどができますので、むしろ
リスクを低減できるかもしれません。
 安全性評価、幾つもの問題点があって、ちょっとビジーなスライドで全ては申しません
けれども、汚染と申しましたけれども、感染症、病原体の混入等に関しては、多くは従来
の規制を適用可能な部分が多いかと考えております。
 生物学的な振る舞い、造腫瘍性を中心としたそういったものの懸念ですけれども、これ
は従来の規制で示されているものももちろん援用しながら、新しい細胞ですので、つくっ
ていく必要があると考えております。様々なここに挙げましたような問題点がございます。
 いろいろな試験方法がありますが、一つ一つの単一の検査方法ではそれぞれ問題点や不
充分さありますので、複数の方法を組み合わせてやっていくことが必要だと思っておりま
す。
 このiPSの再生医療をどう扱っていくか、これからつくっていく、今からつくるに当
たって、1つ強調しておきたい大事だと思うことは、一番下に書いています可能なことと
不可能なことをきちっと整理して、それを研究者側も正直に示して、その上で規制当局、
あるいは社会との議論をしなければいけないと、これを肝に銘じております。
 例えば、奇形腫という種類の腫瘍ができる。これは先ほど示した実験の成績ですけれど
も、できるとすれば半年以内に大体起こっております。色のついた、線じゃなくて色を塗
りつぶしているものが腫瘍ができた症例なんですけれども、縦軸にできたときの週数が書
いてございますけれども、多くは半年以内にできた。つまり半年の経過観察を動物実験で
すれば、奇形腫をつくるクローンか、そうでないクローンかというのは大体区別できるだ
ろうということでありまして、これは私たちは前臨床試験の段階でチェックすることがで
きると思います。
 しかし、キメラマウスという実験がございますけれども、別の実験系とご理解ください。
そこに腫瘍などができてくる。あるいは早期の死亡、早く死ぬということが起こるんです
けれども、これは横軸、weekですけれども、50週間、つまり1年を超えてからぐっと悪い
群では上がってくると、2年ぐらいたってもまだ異常が起こってくるということでありま
して、こういったものはなかなか経過観察として難しいわけであります。そして、実験動
物として用いているネズミの寿命は2年ぐらいですので、その後に何か起こっているかも
しれませんけれども、それはディテクトできません。
 右下はあくまで参考ですけれども、広島における白血病の発症の成績です。1945年が左
端でありまして、発症のピークが被爆時の年齢が40歳ぐらいの人だったら、被曝後30年ぐ
らいたってからピークが出るということであります。
 病気というのは、複合的な要因で起こってまいりますので、そのリスクというものの評
価は非常に慎重でなければいけないということはありますが、しかし一方で可能なこと、
不可能なことというのがあるということでありまして、これを整理することが大切だと思
います。
 そういった科学的状況の中で臨床応用を適切に実現すべく、正しい、よいクローンを選
ぶためには、系統的に選ばれたクローン、いろいろなつくり方、どうやってつくるのがベ
ストかと、系統的に選ばれたクローンを用いて、いろいろな評価方法を使って、そしてし
っかりとしたデザインで、しっかりとだれかがマネジメントした研究を行って、最終的に
はリスクベネフィットバランスなどを考慮して判断を行っていくということが重要だと考
えています。
 さて、このような性質のiPS細胞でどういった医療をしていくかですけれども、我々
はiPSをつくりますと、まず増やしまして、そしていったん凍結することになります。
凍結保存、そして一部解凍して培養を再開し、分化細胞をつくって徹底的に評価いたしま
す。これはいいクローンだと、使えそうなクローンだということになりますと、まだ次に
並列で凍らせた、恐らく同等であると考えられる保存しているものを解かしまして評価を
行うと。そして、この同等性の評価というのを行っていくということであります。
 このようにして、兄弟のサンプル、保存している兄弟の製品が同等であるということが
分かれば、ほかのものも恐らく同等だろうと考えて使用すると、こういうことが正しい形
ではないかと考えております。
 この過程については、ドナーが自己であっても、他家であっても、樹立した株を一旦凍
結しておいて、その一部を用いてしっかりとした評価を行うというステップをへて、それ
と同等と考えられる凍結ストックから実際に移植する製品をつくることが必要だと考えて
おります。
 この製品というのはいろいろなレギュレーションで、製品の品質の評価、検証というの
が求められるわけですけれども、この分化させる前のiPSの細胞をどう扱うかというこ
とが、なかなか、勉強いたしましても、既存の規制のどれに当てはまるのかというのが難
しいかと考えております。
 バンクという言葉をこのごろよく使ってしまうんですけれども、従来の例えばマスター
セルバンクとか、そういった語は必ずしも適切、それにぴたっと当てはまるものではない
と考えております。
 言葉が適切かどうか分かりませんけれども、私たちはiPSセルバンクという、このよ
うにしっかり評価したものをたくさんそろえておくということを考えてございます。
 さらに申しますと、ある種の細胞、例えば神経なら神経で臨床使用が可能なものをつく
ることができたiPS細胞を使って、今度はほかの細胞に分化させて、いろいろな実験、
データを積み重ねると。そして、同等性が評価されましたら、これを使うと、こういった
ことができれば、そしてさらにはこの保存しているものを他の施設に移動すること、移送
して使うことができれば、非常にコストが低下いたしますし、いろいろな治療の開発速度
が上がるというふうに考えております。
 これを医療の枠組みといったようなことで少し考えてみますと、従来の医療は採取、調
製、移植というのは、一対一の関係にあったと思われます。しかし、iPSを用いますと、
iPSを樹立し、分化誘導するというプロセスのそれぞれに高い専門性を要します。そし
て、対応する機関はそれぞれ複数になるということがございます。これこそがiPSの利
点を生かせる制度かと考えておりますので、このような制度、このiPSという細胞のい
い部分を行かせるような制度設計をご検討いただければというように考えております。
 以上です。時間が延びまして失礼いたしました。

○永井座長
 どうもありがとうございます。
 それでは、ご質問、ご発言お願いいたします。

○鈴木委員
 どうもありがとうございました。
 今バンクの重要性ということで、しかもできることとできないことを整理してというお
話の中で、恐らく時間の関係で省略されたんじゃないかと思うんですけれども、実際に異
なる人から、同種から移植する場合は、組織適合性とか免疫拒絶の問題が出てくると思う
んですよね。実際には、多分ドナーとしてホモザイゴスの人を選べば、カバレッジが高く
なるという、例えば数十種類のドナーの細胞を選べば、例えば9割ぐらいまではカバーで
きるとかという現実的な話があると思うんですけれども、その辺もちょっと補足説明して
いただくとよろしいかなと思ったんですが。

○青井教授
 ありがとうございます。
 今おっしゃっていただいたこと、iPSは最初に述べましたが様々な方をドナーとして
つくれると、個性の分かった方からつくれるという特徴がございますので、もちろんその
個性の中にはHLAが判明した方というのもございます。それで、再生研の中辻先生の試
算によりますと、日本人のポピュレーションですと50株、HLA3座、ABDRの3座が
ホモのユニークなタイプのホモザイゴスの細胞を50株そろえておけば、人口の90%は3座
一致でカバーできるだろうという試算がございまして、恐らくそのレパートリーをそろえ
ることができれば、相当に拒絶反応というものに関しては有利であろうというふうに考え
ております。したがいまして、私たちは将来的にはそういった、ただしこれは臓器により
まして、拒絶の程度というのは非常に大きく異なると思いますし、3座一致でありまして
も、もちろん免疫抑制剤がフリーになるかといいますと、そうではない可能性が高いとは
思いますけれども、より治療成績を向上させるためには、そういったものを想定しており
ます。
 ただ一方で、そういうレパートリーをたくさん、いろいろな種類の細胞のクローンをそ
ろえているものが、バンクという概念だという誤解がいろいろなところでちょっとこのご
ろあるような気がしまして、必ずしもそうではなくてもきちっと評価、検証された、しっ
かりした株がまず1株であってもありましたら、それは非常に有用であろうというふうに
考えておるということを強調させていただきたいと思います。

○永井座長
 ほかにいかがですか。
 大和委員。

○大和委員
 どうもありがとうございました。
 先ほどお示しいただいたスキームは、多分初めてiPSで認証するときとか、極めて初
期の段階ではということでは、先生の先ほどのスキームで全く問題ないと思うんですけれ
ども、どこかの時点で産業化するときに、例えばCiRAの役割であるとか、この番組の
役割といったものに関して、既にお考えがあるようでしたら、お聞かせいただけるとあり
がたいんですけれども。

○青井教授
 研究の進捗というものは、常に我々の期待を裏切ったりする場合が多いので、つまりあ
と何年かたてば、ひょっとしたらあるつくり方をすれば必ずある種類のあるクオリティの
ものができると、ある場所にたどり着くというものがひょっとしてできるようになりまし
たら、そうすればこの株、この株というのを大量に増やしてというよりは、世の中に出回
る株の数が増えてもいいということになるのかもしれません。
 一方で、そういうことが難しくて、今のようにまだクローンをしっかりと徹底的に調べ
て、選び抜かれたものを大事に使うということが重要だといたしましたら、それはその評
価方法などを確立するのは、私たちCiRAの役割だと思いますし、それでここの凍らせ
てiPSを増やすというところは、一段階しかマンガとして書きませんでしたけれども、
これが2段階できるように、凍らせてまた起こして増やして、また凍らせて、そこからス
タートということができましたら、幾つかの国内の拠点となるところにこれを配りまして、
そしてそれぞれまた同等性を確認して、それを使っていただくと、そういったようなこと
はできていくかと考えております。

○永井座長
 ほかにいかがですか。
 このiPSのゲノムの増幅とか欠失という話がよく出るんですが、これはいかがですか、
少しコントロールできるめどというのは見えてきているんですか。

○青井教授
 ご指摘ありがとうございました。
 若干補足いたしますと、iPS細胞、あるいはES細胞でもそうなのですけれども、こ
のような細胞を長期に培養しておりますと、いろいろなゲノムの増幅、欠失、あるいはエ
ピゲノムの異常なども起こってくるということが以前から知られておって、そして私たち
自身でも調べますとやはりございます。
 そして、今非常に解像度の高い方法で調べますと、ほぼ全てのクローンに必ず異常が発
見されるということでございます。
 もちろんなるべく大きな変化が起こらないような培養方法の追及は現在も続けておりま
すけれども、しかし一方でそういったものがあれば必ず使えないという、危険であるとい
う考え方をしてしまいますと、恐らくは使うクローンはなくなるのではないかと思ってお
ります。
 例えば核型異常なんかですと、ないクローンというのは見つけることができると思うん
ですけれども、まじめに調べますと、ゲノムのある程度コピーナンバーの変化というのは
出てくると思います。したがいまして、どういったところのコピーナンバーの変化があっ
たら、そのクローンは絶対使わないでおこうというように、コピーナンバーの変化がある
中でも、チェックポイントは絞り込んでいくというのが現実的な対応であり、例えば何十
個かの重要と考えられるがん抑制遺伝子のパネルを作って、そこの欠失がないかを見ると
か、そういった考え方しかないのかなというふうには現在は考えております。

○永井座長
 それから、もう一つバンクにしたときにESのバンクとiPSのバンクで比較したとき
に、iPSならではのメリットというのはどういうところでしょうか。

○青井教授
 それは先ほど申しましたように、拒絶反応の点から、もしHLAのレパートリーがたく
さんそろえれるとしましたら、それはiPSのメリットであると、利点であろうと考えて
おります。
 中国の研究者と先日会いましたら、中国ではES細胞でもドネーションが山ほどあるの
で、HLAのホモのバンクをつくっているんだとおっしゃっていまして、相当な数をして
いるとおっしゃっていたんですけれども、ちょっと日本で現実的にそれは難しいと思いま
すので、その点は大きなメリットではないかというふうに考えています。

○永井座長
 よろしいでしょうか。
 それでは、大分時間も押していますので、青井先生には今日わざわざおいでいただきま
してありがとうございました。
 では、議題の4にまいります。
 希少疾病用薬品・医療機器の指定要件について、事務局よりご説明をお願いいたします。

○宇津企画官
 それでは、ご説明いたします。
 資料3、横書きの一枚紙をご覧ください。
 希少疾病用医薬品・医療機器(オーファンドラッグ・デバイス)の指定要件ということ
でございます。
 オーファンドラッグ等の制度については前々回でご説明いたしました。それで、今回ご
意見等をいただきたいというのはオーファンドドラッグ・デバイスの指定要件のところで
ございます。
 指定要件には3つの要件がございまして、対象患者数、それから医療上の必要性、開発
の可能性というものがございます。
 それで、この開発の可能性のところでございますが、通常の医薬品等でありますと、開
発の可能性があるといいますと、第2相試験ぐらい、用量設定とか用量反応性で用量が大
体どれぐらいで効果があるかと、そういうのが大体分かった段階を目安にしております。
あるいは海外で承認をされているとか、そういった点で開発の可能性があるかどうかとい
うのを判断しております。
 ただ、これを再生・細胞医療製品というものにあてはてみますと、物によって、開発の
ステージを第1相、第2相、第3相と区別することがなかなか難しいものもございます。
 そういったものについて、開発の可能性をどう考えるかということでありまして、この
再生・細胞医療製品の特殊性というものを考えて、この分野の開発の可能性については、
開発の可能性があるかどうかということについてまず全てテーブルに載せて、開発の可能
性があるかどうかというのをケースバイケースで判断してはどうかということをご提案し、
委員の先生方からご意見をいただければと考えております。
 よろしくお願いいたします。

○永井座長
 ありがとうございました。
 ただ今のご説明にご質問いかがでしょうか。
 早川委員。

○早川委員
 今のケースバイケースで判断するというのは結構だと思います。

○永井座長
 ほかにいかがでしょうか。

○澤委員
 これは私も今まで再生学会からの提言としても申し上げてきた点でありまして、こうい
うふうな形で指定要件をきっちりと明確にしていただくというのは、大変歓迎すべきこと
かというふうに思います。特にケースバイケースということも非常に重要ですし、まずは
安全性をしっかり確認した上で進めると。
 それから、5万人に達しないというレベルでいくと、再生医療のレベルだとかなりのケ
ースがここに入るかなというふうに思いますので、ぜひこういう形で進めていただければ
というふうに思います。

○永井座長
 毛利委員、どうぞ。

○毛利委員
 私もこの点に関しましては非常にありがたいと思いますけれども、1つちょっと質問に
なりますけれども、いわゆる要件を満たすかどうかのことに関しては、全てこれを取り上
げて、例えばヒアリング等、何か検討する場というのが何か設けられていくのでしょうか。
そういうことであれば、全てのせていただいてというのはありがたいなと思います。

○宇津企画官
 オーファンの指定については、指定の申請書がありまして、そこに対象患者数、医療上
の必要性、開発の可能性についての裏づけの説明資料というのをつけていただきますので、
それを出していただいて、ケースバイケースで検討させていただくということでございま
す。

○毛利委員
 そういうことであれば基本的に賛成いたします。

○永井座長
 よろしいでしょうか。
 早川委員、どうぞ。

○早川委員
 関連してなんですけれども、これはオーファンドラッグ・デバイスの指定要件から入っ
た場合の再生医療への取り組み方というか、見方だと思うんですね。これは別に再生医療
に限らないかもしれないけれども、例えば非常に疾患が重篤であるとか、あるいはその疾
患に対する治療法がないとか不十分であるとか、あるいはQOLを著しく損なう疾患とか、そ
ういうのを例えば再生医療で何とかしようとする場合にも、今のP1、P2、P3という
概念はある意味ではアプリカブルにしていただくと、適用できるようにしていただくとい
うふうなケースバイケースの考え方、これはいかがでしょうか、個別審査になると思うん
ですけれども。

○宇津企画官
 ご質問の趣旨をちょっと確認させていただきますが、オーファンの指定をして、その指
定を受けたものについて今後開発ができるようにということで種々の支援をして、臨床試
験に入っていくということでありまして、そのための指定要件でございます。
 オーファンの指定要件については、医療上の必要性ということがありますので、代替す
る治療法がないとか、先ほど早川先生のおっしゃったような要件が入ってございます。
 それで、ご趣旨として、こういう指定を受けた後、治験のデータをとって、さらにそれ
らをまとめて、申請の段階でそういう考え方をということをということであれば、そうい
うことというご指摘ということで承りたいと思っています。ほかにもご意見がいただけれ
ばと思いますが。

○早川委員
 私が申し上げたのは、今までのシステムにとらわれずという、例えばここの枠組み検討
会のお話であったので、いいご提案はこのオーファンの中で全てを必ずしも片づけなくて
も、必要に応じて今のような適用、最後の部分、P1、P2、P3を必ずしも区別しない
ような形の見方の試験の仕方、あるいは評価の仕方というものを審査の一つのオプション
として、あってもいいのではないかと。だから、オーファンの中でどうしてもそれをして
ほしいという話では必ずしもない。中でも構わないんですけれども、そういう意味です。

○永井座長
 そこはいかがでしょうか。

○宇津企画官
 審査のご指摘と思いますので、オーファンだけに限らず、最終的にはリスクアンドベネ
フィットという考え方になると思いますが、その考え方をあらゆる情報を総合してという
ことでのご指摘かというふうに思います。

○永井座長
 前川委員、どうぞ。

○前川委員
 オーファンドラッグに指定をされると、開発側のモチベーションがかなり上がるという
ふうなこともありますので、できれだけフェーズの早いうちにその辺りを見きわめていた
だいて、指定していただければ開発が加速できると考えますので、よろしくお願いしたい
と思います。

○永井座長
 ケースバイケースですから、多少いろいろな意味がそこに入っているから、それもケー
スバイケースであるということでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 森尾委員、どうぞ。

○森尾委員
 医科歯科大学の森尾ですが、この指定要件を満たすかどうかと、特に医療上の必要性と
いうところを判断するためには、かなり高度な知識だとか経験が必要じゃないかと思うん
ですが、このオーファンドラッグ・デバイスに含まれるというものは、うちもそうだうち
もそうだとかなり数があるんじゃないかと思うんですが、その対応についてどういう組織
でどう対処されていくかということに関しては、アイデアがあるでしょうか。これは今ま
でのシステムでいかれるのか、あるいはもうちょっと拡充されるとか、前回の議論でも何
かリスクベネフィットの判断をするために、いろいろなところから専門家の意見が必要だ
という意見があったものですから。

○宇津企画官
 簡単に指定の流れを申し上げますと、指定を希望する方から指定の申請が必要な資料を、
厚生労働省審査管理課のほうへ出していただきます。その後にそれを受けて、PMDAのほう
で具体的な検討していただきますが、その検討に当たっては外部の専門家、その分野の専
門家の意見を聞いて、その判断も参考にしつつ、報告書をまとめていただいて、審査管理
課のほうに出していただく。
 その後、関係する部会でご審議いただいて、最終的に了解が得られれば指定をすると、
そういう流れになっておりまして、ご質問の専門家を交えてということについては、交え
てやっているということでございます。

○成田審査管理課長
 補足させていただきますと、オーファンへの指定も含めまして、正式に申請していただ
く前にいろいろご相談を受ける形もとっておりますし、特に今回、薬事戦略相談というこ
とで、今予算要求中ではございますけれども、その制度ができれば、当然ながらそういう
制度の中でいろいろご相談というか、対応をさせていただけるのではないかなというふう
に思っているところでございます。
 冒頭に、薬事戦略相談のところで産官学の懇談会とはどういうものかという話がござい
ましたけれども、どういう内容の相談を対象にするのか、あるいは、シーズといいますと
かなり広くなると思いますので、まずどういうものから優先的に対象とするのかなど、そ
ういったことも懇談会でご検討いただこうかと思っているところでございます。

○森尾委員
 逆に事前相談を推奨されるということでよろしいですか、システムができればというこ
とですけれども。

○成田審査管理課長
 前回EMA、あるいはFDAの方からもお話がございましたけれども、先端的な製品の
取り扱いについては、できるだけ早い段階でPMDAとディスカッションしていくような
ことが本当に実用化につながるのではないかというふうに思っておりまして、そのために
薬事戦略相談ということをご提案させていただいたところでございます。どの程度実現す
るか分かりませんけれども、できればそういう形を活用して、イノベーションにつなげさ
せていただいて、患者さんにいいものを届ける、実用化につなげることができればと思っ
ているところでございます。

○永井座長
 よろしいでしょうか。
 澤委員。

○澤委員
 一つ確認なんですけれども、HUDとか、コンパッショネートユースとか、いろいろな言葉
があったんですけれども、それはオーファンという言葉でまとめられたんですねというの
が1つと。
 それから、最終的にこれがどういう形で厚労省側から表現していただけるのか、通知と
かになるのかとか、ホームページ上に出るのかとか、どんな形で最終的に公表されるのか
というのをちょっと教えていただければと思います。

○宇津企画官
 まず、これは、最初のご質問のコンパッショネートユースとHUDということとは別のこと
でありまして、オーファン指定をして開発を促進するという制度についてのことですので、
オーファン指定の考え方ということで整理をしたいと思っています。
 また、どういう形で公表かといいますと、この検討会でご意見をいただいておりますの
で、この検討会の報告書の中でまず明確化をしたいというふうに思っております。
 関連して、こういったものの審査についてどういう考え方にするのか。例えば、HDE
の審査の考え方というのはFDAのほうでありますけれども、そういった審査の考え方に
ついては、先ほど早川先生のほうから少しコメントがりましたが、ケースバイケースでリ
スクアンドベネフィットを判断するというふうに私は理解しております。

○永井座長
 大和委員。

○大和委員
 オーファン指定になると、企業さんの負担が重くなるというようなデメリットみたいな
ものが既に分かっていたら教えてほしいんですけれども。

○宇津企画官
 まず、デメリットということになりますと、助成を受けますと、それで開発が成功した
場合は、成功した分の一定割合といいますか、それを助成金を上限にして返還していただ
くこととなります。

○大和委員
 何か市販後に調査が重くなるとか、そういうところはないんですか。

○宇津企画官
 それはオーファン指定されたからというわけではなくて、オーファンの場合は実際には
申請される段階でのデータに限界がございますので、そういう場合には例えば市販後にフ
ォローをして安全性、それから有効性のデータをとるということになります。必然的にオ
ーファンの場合はそういうものが多くなると、それはオーファンの指定を受けたからとい
うわけではなくて、その医薬品、医療機器についてケースバイケースで、市販前で得られ
た情報を補完するために、どういうものが必要かというのを個別に判断をして、例えば承
認条件でデータを求めているところです。

○大和委員
 このポイントは非常に重要で、オーファンかどうかということよりも、今、宇津さんが
おっしゃったところが非常に重要で、とりあえず再生医療で展開していくだろうと考えら
れている適応はそういう試験なんですよね。余り大量に見れないし、安全性に関しても100
%保証できるほど治験が組めないだろうと想定されるので、当然市販後のほうに重きがあ
ると。しかし、それは、これは宇津さんの発言として議事録に残りますので、ぜひPMD
Aの皆さんも共有していただいて、そういう観点で審査していただければと思います。
 よろしくお願いします。

○宇津企画官
 これは先ほど早川先生からも話があったケースバイケースということになりますけれど
も、最終的にはリスクアンドベネフィットで、ベネフィットが上回ると判断したときに承
認ということになりますけれども、それはケースバイケースでいろいろなデータ等を見つ
つ判断をするということになるかと思います。

○永井座長
 ということで、よろしいでしょうか。
 それでは、最後の議題ですが、確認申請の方向性について、事務局より説明をお願いい
たします。

○宇津企画官
 資料4でございます。
 確認申請の方向性ということですが、確認申請については、これまでの検討会でも治験
届と並んで制度をご説明してきました。それで、本日ご相談というのは、その方向性をど
うしていったらいいかということについてご意見をいただきたいということであります。
 真ん中のところに丸がありますが、確認申請の方向性についてどう考えるかというとこ
ろであります。
 大きく2つ記載してあります。
 方向性としては、確認申請という制度は残したまま運用の見直しを図るもの、あるいは
代替策というものを明確化した上で、それに替えて廃止をすべきというものでございます。
 まず、運用の見直しの利点としては、全ての品目について、治験前に確認申請というこ
とで十分な確認が可能であるという点、一方留意点としましては、手続の合理化、透明化
というのを図る必要があるということで、例えば部会審議の必要性でありますとか、標準
的事務処理期間の必要性でありますとか、確認時の判断を共有できるかどうかということ
でございます。
 一方、代替策を明確化した上で廃止ということでありますが、利点としましては、開発
期間の短縮が期待できるという点、一方留意点としては、代替策を考えずに廃止すると、
治験の調査について、30日で対応できないケースの増加というのが考えられます。それに
対して、制度的担保をいかに図っていくかということと、代替策がどのようなものかによ
っては廃止の効果が限定的になるということが、留意点としてあると思います。
 こういった観点から、方向性としてどのようなものがよいかについてご意見をいただけ
ればと思います。

○永井座長
 いかがでしょうか。

○神山委員
 非常に初歩的な質問ですけれども、30日調査というのは、配られている参照条文、80条
の2の3のところに、「届出をした者は、当該届出をした日から起算して三十日を経過し
た後でなければ云々」と書いてあって、「この場合において、厚生労働大臣は、危害の発
生を防止するため必要な調査を行うものとする」と書いてありますが、これが30日以内に
調査をしなければならないと読む条文ということでしょうか。

○宇津企画官
 そのように解釈しておりまして、それで仮に問題があれば、治験届を出された方にその
旨を言って、治験の開始をその問題点が解消するまでやめていただくということになりま
す。

○早川委員
 確認申請をどうするかというのは、今までの議論に非常にたくさんありましたように、
その後の治験をどうするのか、承認に関する評価をどうするのか、市販後どうするのか、
みんな関係してくる問題なんですね。
 それで、今これから何分ぐらいとって議論していただけるのか、それともあまり時間が
今日はないということであれば、次回きちっと議論したほうがいいような気もいたします。

○永井座長
 それは状況によってですね。ですから、ご意見があればどうぞ。

○早川委員
 よろしいですか。
 じゃ、今までのことも含めて、少し時間をとらせていただいてよろしいですか。
 それでは、これは確認申請をやめるかやめないかということの問題は非常に大きいんで
すが、実は今までの問題点をいろいろ拝聴していると、結局事前相談から治験審査、承認
申請に至るまで、その製品や対象疾患に関する専門家と密接に連携をとりながら事を進め
てほしいというのが一番大きなご指摘であったし、肝要というふうに思います。ですから、
制度がどっちに行ったとしても、そこのところがしっかりしなければというのが第1番目
の意見です。これは今まで再三繰り返し言われてきたご意見でもあると思います。
 第2点目ですが、確認申請にしろ、先ほどの30日調査に近いような別のシステムにしろ、
結局この治験前の品質安全性評価というのは、治験に入っても差し支えがないかどうかと
いうことが判断できることが可能なデータ、情報が得られているということを確認すると、
それが基準になっているはず、それ以上のものではないということですね。
 具体的に言えば、使用した製品の品質と臨床データの関係が突き合わすことができる程
度に品質特性が把握されている、あるいは恒常性が担保されていいればよいということが
1つですね。
 それから、もう一つは想定されるリスクが排除されているかをチェックすると、これが
主眼であったはずです。ここのところで未知のリスク論にとらわれ過ぎないことが非常に
大事なのだろうというふうに思います。
 第3点目、未知のリスクも含めて、そういう情報を全て開示して、患者さんの自己決定権
の判断材料とする方向で進めると、これがむしろ必須不可欠ではないかというふうに思い
ます。
 第4点目ですが、治験審査等の際に、信頼性が置けると判断される臨床研究データとい
うものがある場合、これが参考資料の一部とできると。とりわけヒト幹のチャンネルで進
められているような研究データを参考にするということは、臨床研究から実用化への切れ
目のない移行を実質的に可能にするための重要な要素であると思っております。
 ここでは、ヒトでの安全性はもとよりのこと、POCとして活用できる場合もあるというこ
とが期待できますので、治験開始の是非の判断や評価の際に、そういうことも留意、勘案
すべきだろうというふうに思います。
 第5点目、承認審査の場合においても、倫理的な条件を満たしておって、専門家によって
信頼性が高いと判断される臨床研究データは、これが参考資料として活用できるようにで
きないのかというふうに思います。
 第6点目、製品の種類、特性、対象疾患によりましては、市販後調査の徹底を前提にして、
それで承認を行うと。対象としては、先ほど出てまいりましたような希少疾患であるとか
重篤なもの、QOLが著しく損なわれているもの、それからほかの治療法がない、あって
も不十分、あるいは選択肢をもう一つ提供するというふうな観点で、さらなる治療への展
望を開ける可能性があるもの、こういう観点から考えてほしいというふうに思います。
 第7点目、最終的にこういう流れで必要な事項はもちろんガイドライン化していただいた
ほうがいいんですが、さらにQAなんかを活用して、審査の運用、あるいはそこに関する
理解と認識の共有化を図っていく。特に前から言われていますように、自己と同種、ある
いは細胞の起源、細胞の種類、特性の違いと対象疾患の組み合わせでケースバイケースに
関するケース毎の在り方というのを絶えず整理し、それなりの答えを用意しておくと、あ
るいは模索しておくと、それを積み上げて情報提供していくということが重要であって、
これは学会とか研究班のいろいろな活用が必要なんだろうというふうに思いますが、要す
るにそういうことをベースにした議論として、この確認申請をどうするかというようなこ
とを議論していただければというふうに思います。
 長くなりましたけれども以上です。


○永井座長
 少し問題点を整理して、また先生、次回以降項目を挙げて、これについて皆さん問題点
を共有したほうがいいように思いますが、事務局、いかがですか、今の点、全部お答えい
ただかなくても、進め方について。

○宇津企画官
 そうですね。問題点を整理して、ただ先ほどおっしゃったのは確認申請ではなくて、審
査の点もございますので、ちょっと問題を整理して考えたほうがいいかと思います。そう
いうことであれば、問題点を整理して、次回ということでやりたいと思います。

○毛利委員
 一つだけなんですけれども、ここに書かれました代替策というのがある程度明確になら
ないと、なかなかちょっとどういう形になるかというのが見えないものですから、それも
含めてお願いしたいなと思います。

○宇津企画官
 代替策については、先生方からもご意見があればと思って明確化はしていませんでした
けれども、これまでの議論ですと、例えば、今予算要求しております薬事戦略相談とか、
そういうもので、確認申請の段階よりも前の段階、開発初期の段階から、治験に入る段階
での安全性というのはどういうデータが必要なのか、そういうものについて整理をし、そ
のデータについて集めていただいて、確認申請や治験届の直前でそういうデータが必要か
どうかという判断をするのではなくて、事前に必要なデータを見据えてデータをそろえて
いただいて、治験までいっていただくと、そういう流れにしてはどうかということで考え
ております。
 ですので、代替策について、1つの考え方としては、薬事戦略相談という相談制度とい
うものに振り替えるということを考えてはどうか、ということでございます。

○小澤委員
 私も代替策は当然この薬事戦略相談のことだと思って、ずっとここのところ聞いていた
ので、それで5億円で予算もつけるかなと思っていたんですが、ぜひともお願いは、今日
の冒頭であった参考資料8の中で、私の理解ではここの薬事戦略相談のボックスとその右
にさらにまた治験相談のボックスが分かれている。私が今までこの検討会で聞いてきたの
は、この治験相談のところまで含めたものが戦略相談であるというふうに認識をしており
ました。このボックスが分かれているというのはよろしくないと私は思っていますので、
これも併せて検討していただきたいと切に思います。

○宇津企画官
 どうもご指摘ありがとうございます。図ではそうなっているんですが、実際の相談では
プロトコールを抜きに開発の相談というのは難しいというのが現実だと思いますので、そ
こはそのように考えていただければと思います。

○早川委員
 同じことだと思うんですけれども、先ほど確認申請の話と治験、あるいは承認審査の話
が別なのでという話をされたんですが、これはずっと今まで連続性を持ってほしいという
話があって、そういう中で私は発言させていただいたということだけ加えさせていただき
ます。

○片倉委員
 本件はちょっと継続議論という形にまずしていただきたいということと、薬事戦略相談
と、多分企業さんがやるときは通常の総合機構との対面助言というのを利用すると思うん
ですけれども、そことの区別がちょっと我々委員のほうで明確に把握できてないというこ
と。
 それと、機構の対面助言を使う場合は医薬品と医療機器のカテゴリーしか今ございませ
ん。ですから、そこら辺をどうするのかということを併せて、薬事戦略相談は再生医療と
いう窓口だけで全部やるのか、そこら辺の考え方も具体的な中身として提示いただいた上
で、再度議論させていただければと思います。

○永井座長
 ご意見たくさんおありのようですから、今日は取りまとめせずに次回引き続き議論いた
だくということにしたいと思いますが、次回までにぜひ委員の先生方、ただ今のご意見、
考え方、論点、それからポイント、あるいはご提案、こういうものを事前にお届けいただ
いて、それをもとにして次回さらに議論をしたいというふうに思います。そういうことで
事務局、よろしいでしょうか。
 本日の議題は以上でございますが、事務局から連絡事項をお願いいたします。

○成田審査管理課長
 どうもありがとうございました。
 今、座長からお話がありましたように、整理をさせていただきまして、次回またご議論
をお願いしたいと思います。
 また、先ほど早川先生をはじめいろいろご意見を頂きましたけれども、再生医療ですの
で、新しい考え方で開発を進めるというのは当然だと思いますが、基本的に、審査や承認
するかしないかのところは、疾患に対する有効性の評価でございますので、そこは例えば
既存療法の有無であるとか、そういうところで当然変わってくるところでございますので、
まさにケースバイケースというところがかなり大きくなると思います。ただ、疾患の評価
に当たりましては、技術的に新しいということで期待できるのかもしれないですけれども、
あくまでも出されたエビデンスで評価するというのが原則というふうに考えておりまして、
そのために治験をどうやっていくのか、そういうところはできるだけディスカッションし
ていくということが重要ではないかというふうに思っております。
 資料等につきましては、整理させていただきまして、また次回ご議論いただきたいと思
います。

○永井座長
 ということでよろしいでしょうか。
 では、本日はこれで終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

医薬食品局審査管理課
企画官 宇津(内線4223)

代表: 03-5253-1111
直通: 03-3595-2431

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