ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会)> 社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会第5回議事録




2010年10月26日 社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会第5回議事録

雇用均等・児童家庭局

○日時

平成22年10月26日(火) 11:00~13:00


○場所

厚生労働省 専用第12会議室


○出席者

委員

才村委員長 磯谷委員 大村委員 長委員 佐藤委員
庄司委員 松風委員 豊岡委員 中島委員 松原委員
水野委員 吉田委員

オブザーバー

古谷参事官 (最高裁判所) 進藤局付 (最高裁判所)
飛澤参事官 (法務省) 羽柴局付 (法務省)

厚生労働省

高井雇用均等・児童家庭局長 石井大臣官房審議官 田河総務課長
高橋家庭福祉課長 杉上虐待防止対策室長 千正室長補佐

○議題

(1) 施設入所等の措置がとられている場合の施設長等の権限と親権の関係について
(2) 一時保護中の児童相談所長の権限と親権の関係について
(3) 一時保護の見直しについて
(4) 保護者指導に対する家庭裁判所の関与の在り方について
(5) その他

○配布資料

資料1「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する中間試案」に関する意見募集の結果について
資料2第5回児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会論点ペーパー

○議事

○才村委員長
 定刻になりましたので、ただ今から「第5回社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会」を開催いたします。委員の皆さま方には、御多用のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、磯谷委員より少し遅れるとの御連絡をいただいておりますが、委員全員に御出席いただく予定です。
 まず、事務局より資料の確認をお願いします。

○杉上虐待防止対策室長
 資料の確認の前に、本日は中途半端な時間の開催で誠に申し訳ございません。このような時間にもかかわらず皆さまにお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局からもあらためて御礼申し上げます。
 また、厚生労働省で人事異動がありましたので、紹介させていただきます。まず、雇用均等・児童家庭局長の高井でございます。

○高井雇用均等・児童家庭局長
 高井でございます。よろしくお願いいたします。

○杉上虐待防止対策室長
 大臣官房審議官、雇用均等・児童家庭および少子化対策担当の石井でございます。

○石井審議官
 石井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○杉上虐待防止対策室長
 家庭福祉課長の高橋でございます。

○高橋家庭福祉課長
 高橋でございます。よろしくお願い申し上げます。

○杉上虐待防止対策室長
 それでは、資料の確認へ移らせていただきます。

○千正室長補佐
 それでは、資料の確認をさせていただきます。まず議事次第、座席表がございます。そして資料1としまして「『児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する中間試案』に関する意見募集の結果について」、資料2としまして「第5回児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会論点ペーパー」でございます。それから、机上に参考で「児童虐待防止対策の強化について」という横置きのポンチ絵と参考となる通知集が配布されております。説明については割愛しますが、今年に入ってから虐待による死亡事件が相次いでいることもありまして厚生労働省としてもさまざまな対策をとっております。それをまとめた資料でございますので、御質問等があれば後日、事務局へ照会いただければと思います。それから、磯谷委員は遅れていらっしゃるということで、1番目の議題についての御意見を紙でいただきましたので配付させていただいております。資料は以上でございます。不足等がございましたら、お申し出ください。

○才村委員長
 続きまして、今後の専門委員会の進め方等について、事務局より説明をお願いいたします。

○杉上虐待防止対策室長
 それでは私から御説明申し上げます。これまで4回の専門委員会を開催させていただきまして、各論点について自由に御意見をいただく形で議論を進め、さらに、施設関係者や里親の方のヒアリングなども実施してきたところでございます。また、民法の見直しについて検討しております「法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会」においても、8月上旬に「中間試案」として一定の議論の整理がなされ、パブリックコメントが実施されたところでもあります。パブリックコメントの御意見等も踏まえつつ、さらに議論が進められているところであります。
 本委員会としましても、大変恐縮ですが今回を含めて4回の日程を確保させていただいておりまして、引き続き取りまとめに向けた議論を進めていきたいと考えております。具体的には、今回と次回で論点ごとにこれまでの議論を整理し、見直しの方向性について御議論いただければと思っているところでございます。その御議論を踏まえた形で、第7回と第8回で報告書の素案のようなものをお示しして、取りまとめに向けてさらに御議論いただければと事務局では思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。今、事務局から今後の段取りについて説明いただきましたが、御質問等がございますか。
 ないようですので、事務局より提案していただいた形で進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。まず、事務局から資料1の説明をしていただいて法制審議会の方の動きを少し御紹介いただき、続いて資料2の論点ペーパーについて御説明いただいて、御議論いただければと思います。それでは、お願いします。

○千正室長補佐
 資料1について、説明させていただきます。この資料1は法制審議会の中間試案ということでパブリックコメントをかけ、御意見を取りまとめ、今月公表されたものでございます。8月6日から9月10日までの期間、意見募集を行いまして公表されたものでございます。
 中間試案につきましては団体から15件、個人から19件、合わせて34件の意見が寄せられたということでございます。寄せられた意見について、少し論点ごとに紹介させていただきます。まとめ方でございますけれども、論点ごとに「賛成」「反対」「その他の意見」等に適宜分類しまして、その理由等の要旨を記載しております。
 まず、2ページの第1の1の(1)「親権全部の一時的制限制度を設けるものとする」については「賛成」との御意見をいただいたとのことです。
 次に2~5ページでございますけれども、1の(2)「親権の一部制限制度」につきましては多様な意見が寄せられたところでありますが、大きく言うと親権の一部制限制度としては、現行の管理権喪失制度のみとする「甲1案」、事案ごとに必要な親権の一部を特定して制限する「丙案」に分かれたということでございます。
 それから5~9ページの2の(1)「親権の制限の原因」、これは法律上の要件ということでございますけれど、アの「親権喪失の原因」につきましては、C案に賛成する意見が多数でございました。B案に賛成する意見も寄せられたところでありますが、A案に賛成する意見はありませんでした。それから、イの「親権の一時的制限の原因」につきましては賛成との意見が寄せられたところであります。
 次に、9~11ページの2の(2)「親権の一時的制限の期間」についてであります。これは原則を2年とし、必要な場合にはそれより短い期間を設定することができるというB案について賛成する意見が多数であったところでございます。
 それから、11ページの2の(3)でございますが「親権の制限の審判の取消し」の仕組みです。これにつきましては、いずれも賛成との意見が寄せられたところであります。
 11~14ページの2の(4)「親権の制限の審判又はその取消しの申立人」のうち、1「子ども自身を申立人に加えること」については、賛成との意見が多数寄せられたところでございますけれども、その賛成意見の中でも、一定年齢以上の子に限る必要があることや、子に対するフォローが必要である等の意見が添えられているものが少なくなかったという状況であります。また、2「取り消しの申立人」につきましては、制限された本人及びその親族も申立人とすることについて賛成との意見が寄せられたところであります。
 次に14~15ページの2の(5)「親権の一時的制限の場合の再度の親権の制限」については、何らかの再度の制限が可能となる規律を設けることを前提として、その規律の在り方についてさまざまな意見が寄せられたところであります。具体的には、更新制度を提案するもの。それから、親権喪失制度との関連を提案するもの。さらに、再度の制限の期間について提案するもの等が寄せられたところであります。
 次に、15~17ページの3「同意に代わる許可の制度」については、賛成と反対の両方の意見があったところでございます。
 17~19ページで第2の1「法人による未成年後見」ですけれども、これはいずれも賛成との意見が寄せられたところでございます。法制審議会の議論におきましては、ここでの法人というのは例えば児童養護施設を経営する社会福祉法人等が議論の時に想定されていたところであります。
 また、19~20ページの2「未成年後見人の人数」を複数でも可能とするということですが、これも賛成の意見が大多数であったというところです。
 21~22ページの第3の1「子の利益の観点の明確化」ということで、民法の親権に関する規定において、子の利益の観点を明確化することについて賛成との意見が寄せられたところであります。
 22~24ページの「懲戒に関する規定」ですけれども、これは見直すべきとの意見が多数寄せられたところです。なお、懲戒場の規定の削除はともかくとして、懲戒権の規定そのものを削除することによる社会的な影響を考慮し、慎重に検討すべきという意見も寄せられたところであります。
 法制審議会におきましては、こうしたパブリックコメントの御意見も参考にしながら、引き続き議論が進められているところでございます。資料1の説明は以上でございます。

○杉上虐待防止対策室長
 続きまして、資料2の論点ペーパーの説明をさせていただきます。まず、資料の位置付けでございますけれども、冒頭に書かせていただきましたように、これまで当専門委員会において御議論いただきました検討すべき論点について、事務局としてさらなる議論の材料とすべく課題や方向性を整理したものであります。そのような位置付けのペーパーであると御理解いただきたいと思います。
 まず1点目は「施設入所等の措置がとられている場合の施設長等の権限と親権の関係について」でございます。(1)の「これまでの議論」にありますとおり、親権者等の不当な主張等により、必要な措置がとられず、児童の安定的な監護が図られないような状況は好ましくないという前提で御議論いただきました。その点について、さまざまな観点から御議論いただいたところでございます。
 1以降につきましては、それぞれの論点について改めて整理したものでございます。1は「施設長等について」でございます。施設長等の権限を親権に優先させることが適当ではないかという意見がありました。一方で、さまざまなケースがあるので慎重に考えるべきではないか。あるいは、児童の処遇に関する親との対立について、全てを施設長等に任せるのは難しいのではないかという意見があったと承知しております。
 次に、2の「児童相談所長について」でございます。現在は児童相談所長に権限はないわけでございますけれども、児童相談所長に身上監護権を付与して、その権限を施設長等に委託する方法が良いのではないかという意見がありました。一方で、児童相談所の体制の不備あるいは日常の監護に関する個別の対立を全て児童相談所長が対応することは現実問題として難しい。現在でも日常の監護は施設長等が担っているということで、施設長等の権限とするのが適当ではないかという意見もあったところでございます。
 3は「第三者機関について」ということで、いずれの方法を採るにしても、個々の処遇について親の意向が全く反映されないのは良くないのではないかということで、個々の処遇についても親の意見・不服を言える枠組みが必要ではないかといった意見がありました。2ページに移りまして、その際に都道府県児童福祉審議会のような現在ある仕組みを活用して調整する場が必要ではないかというような意見。あるいは、児童の処遇について意見が対立した場合に、第三者機関が意見を調整する仕組みは考えられるけれども、必ず事前に意見を聞くこととすると迅速性に欠けるという問題点があるとの意見があったところです。
 4の「司法について」でございますけれども、施設長等と親権の関係については、親権の制限が必要な場合など難しいケースは司法の判断に委ねた方が良いといった意見もあったところであります。また、児童福祉法第28条に基づく強制入所措置の切りかえや民法に基づく親権の制限の申立てによって、現在は司法の判断を求める仕組みになっているところでありまして、個々の処遇についてまで司法の判断ということになれば、かえって必要な措置が実施されなくなるのではないかという意見もあったところです。
 5「その他」でございます。いずれにしましても、親権者の意向が反映されないことになると、親権者が施設入所等の措置に同意しなくなる恐れがあるという意見。さらに、それが結果として子どもの保護が適切にできなくなるおそれがあるのではないかといった意見もありました。
 なお、「また」書きのところですが、施設関係者や里親関係者からヒアリングしたわけでございますけれど、施設長等の権限を優先すべきという意見であったと承知しております。一方で、可能となる監護の内容について示してほしいという意見も併せて聴取したところです。
 また、これまでに出た意見を取りまとめて「検討の方向性」ということで事務局としての整理を(2)でしているところです。これまでの意見を踏まえますと、施設長等が個々の処遇について親権者の意向に優先して行うことができる枠組みが必要という意見が大多数であったと思っております。一方で、調整する場や施設長等の判断の適正性を確保する手続が不可欠であるというようなことではなかったかと思っております。それで、3ページにございますけれども、一定の場合には第三者によるチェックや利害調整を含めた制度設計が望ましいのではないかということであったかと思います。
 これらを踏まえまして、(3)の「考えられる制度設計」でございますけれども、親権者の意向に優先して監護・教育・懲戒に関する措置をとることが可能である旨を児童福祉法上明確にしてはどうかというのが当委員会での議論の方向性ではなかったかと思っております。
 その上で、特に重要な事項について親権者と意見の異なる場合については親権者側の意向にも配慮するとともに、施設長等の適正な権限行使の確保といった観点から、施設長等が都道府県等の意見を聞くこととして、都道府県等が児童福祉審議会の意見を聞く形での制度設計が考えられるのではないか。それから先ほど申し上げたとおり、全て事前に聞いていたのでは、かえって児童の福祉が図られない場合があり得るということで、場合によっては事後でもよいのではないかというようなことで事務局として整理したところです。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。今までの議論を踏まえて、相当絞り込んだ形で制度の在り方について案を示していただきました。この点につきまして御議論いただきますが、その前に磯谷委員からご意見を頂戴していますので、まずそれを説明していただけますか。

○杉上虐待防止対策室長
 机上配布申し上げました「磯谷委員御意見」でございます。枠組み自体は賛成であるということで、ただ、権限については施設長等ではなくて児童相談所長が有するべきだと考えるということでございます。その理由としては、上の段の(1)にありますとおり施設長等の負担の軽減、(2)は措置権と一致させる方が望ましいのではないかということ。(3)では施設長等についても、いろいろな方がおられるので強い権限にふさわしいとは言い難いということでございます。
 また、児童福祉審議会の意見を聞くという制度設計そのものには賛成であるけれども、迅速な対応が可能かどうかという不安から、必要的に意見を聞かなければならない事項は絞って、むしろ反対に施設長等あるいは児童相談所長が必要を感じたときに意見を聞けるような設計を考えた方が良いのではないかというようなこと等について、文書で御意見をいただいたところでございます。議論のたたき台として御紹介いたしました。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。論点を幾つか事務局で整理してもらっていますが、まず御説明いただいた内容について皆さまで御議論いただいて、ある程度御意見が出たところで次の論議に移っていくというような進め方にしたいと思います。
 それでは今、説明いただいた論点につきまして御意見を頂戴したいと思います。

○庄司委員
 この論点ペーパーの中で、施設長と里親等を合わせて施設長等としていますが、施設長と里親を同等に考えてよいのかというのは少し慎重な議論がここでもあったかと思いますけれど、その点については一緒にしてよろしいのでしょうか。あるいは施設長と里親を分けて考えるかということを議論する必要があるかと思います。

○才村委員長
 例えば庄司委員として具体的に何か考えておられたら、お伺いしたいと思います。

○庄司委員
 具体的には考えていないのですけれども、そうは言っても、施設長等の資質について磯谷委員が多様であると言っておられます。里親はもしかするとそれ以上に多様かもしれないですし、里親になるためには認定研修を受けるだけですので、同等に考えてよいのかどうか、皆さまの意見を伺いたいと思います。

○才村委員長
 専門性がどの程度担保されているかということ。施設と里親では違うのではないかということですね。松原委員、お願いします。

○松原委員
 庄司委員の意見に賛成です。少なくとも施設の場合は組織として制度上は施設長になっているとしても、組織としての対応が可能だろうと思います。施設そのものの議論は後でまた発言したいのですが、里親の場合はお一人ないし御夫婦で対応しなければいけないので、かなり辛い場面があって。具体的には児童相談所長に委ねておかないと、個別に判断しにくいケースがたくさん出てくると思います。それから、数は少ないのですけれど里親の中には親族里親というものが規定されていて、この方たちは里親手当すら受け取っていないのです。そういうものを一括して「施設長等」という形で制度設計してよいのかどうかに少し疑問があります。

○才村委員長
 ありがとうございます。これに関連して、何か御意見がありますか。反対意見があればお伺いしたいと思います。反対というか、施設と横並びでよいのではないかという御意見があればお願いします。

○千正室長補佐
 貴重な御意見をありがとうございます。資料でお示しているような枠組みそのものについて賛成なのか反対なのかということと、仮に設けるとしても、このような問題点があるのではないか、こういう改善が必要ではないか。さらに、このような部分は検討が必要ではないかと。大本の御意見と、さらに具体的に詰めていくべき事項とを併せて御意見いただければ、事務局として引き続き検討を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○松原委員
 枠組みについては、庄司委員もそうだと思いますけれども賛成の立場から発言しています。その際の細かい制度設計のところでどうするかということで1点、里親の問題があって。
 もう1点、発言させていただきますと、施設長についてもきちんと子どもの利益を守れるために、ここでも議論になったと思いますが施設長資格が全くなくて誰でも施設長になれてしまうということで、事前の幾つかの枠組みを現実的なものにする手だては、法というよりは制度の中で考えていくべきことだと思いますけれども、そういったことも必要だと思います。
 それから、ここの論点にも出ておりますように、やはり独断専行にならないような第三者的なチェックをするシステム、これは場合によっては枠組みの中で児童福祉審議会のことが出てきますので、こういう枠組みをつくって、ある時点で対立したところだけではなくて、きちんと日常的にチェック機能がはたらくような制度設計ができないかと考えております。

○才村委員長
 今の最後の「日常的なチェック機能」ですが、児童福祉審議会には当然日常的なチェックは難しいと思いますが、何か具体的な案などがあれば。

○松原委員
 磯谷委員も書いておられますが、現実的には部会というものがつくれるはずなので、その中でやるか。あるいは、これは制度設計ですけれど、今は社会福祉施設一般に第三者評価が広がってきていますので、これは児童養護施設や乳児院等に法上義務付けられるかどうかは少し置いておいて、制度的に勧奨するような形で第三者評価を受けていただくというような形で、「日常的なチェック」についても幾つか手だてはあるのではないかと思っています。
 部会についても今は都道府県の自治体の場合に、いわゆる被措置児童の虐待に関する通報に関しての報告がありますから、そういった施設については部会自体が少し関与して、いわゆる改善のことについて手助けをするという方法もあるのではないかと思います。

○松風委員
 この会議は少し時間が空いていますので、少し確認させていただきたいと思います。親権・監護権の一時停止と親権者に優先して監護権を施設長等あるいは児童相談所長に与えるということの関係について、重なる部分と重ならない部分はどういうところなのかということについて、少し整理が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○才村委員長
 これは法制審議会の中間試案でも述べられていますけれども、施設長の監護にはいろいろと細々したこともあると思いますので、それを全て司法の判断に委ねると硬直してしまうのではないかという意見もあったと思います。その辺りの説明を、事務局にお願いします。

○千正室長補佐
 まず民法の方で、親権の全部の一時停止という仕組みを設けることに賛成の意見が多い状況でございますけれども、それは裁判所に申立てをして、親権を一定の期間を区切ってすべてを止める。そして原則としては必要な未成年後見人を立て、また未成年後見人がいなければ、現行法に基づけば施設長等がその親権代行者になると思いますけれど、そうした枠組みの中で子どもを育てていくということで、これは親権に関する権限がすべて止まるということですので、あらゆる問題が基本的には解決するということでございます。
 それから、今ここで提示しています施設長等の権限と親権の関係でございますけれども、現行の児童福祉法第47条の第2項、資料にも参考の規定を5ページに付けさせていただいておりますけれども、児童福祉法第47条の第2項という規定がございまして、親権者がいる者についても施設長や里親は監護・教育・懲戒に関し、必要な措置をとることができるという規定がありまして、施設長や里親には監護権と類似の規定があり、権限が付与されているわけでございますけれども、その権限行使を親権者の意向に優先してできるようにしようということで、言ってみれば親権の一部、監護・教育・懲戒に関するいわゆる身上監護のような部分について、司法の判断を求めなくても、親権制限の申立てをしなくても行政の中でできるような枠組みをつくっていこうというのが、こちらの論点でございます。

○松風委員
 そうすると、一部一時停止と同じということですよね。要するに、身上監護および教育権・懲戒権に関する親権停止と同じになるということ。

○千正室長補佐
 機能としては、そのように御理解いただいてよろしいかと思います。

○松風委員
 例えばそこで親権者と争って、司法に委ねるというような段階を踏むということではなく、明確にその権限については与えられているということですね。

○千正室長補佐
 はい。そのような枠組みを今、考えております。身上監護の部分で日常なものも含めまして施設の方でできるようにしてはいるものの、なお例えば携帯電話の契約ですとか、財産の関係というのは、今考えている枠組みの外にございますし、あるいは身上監護の問題でも、あまりにも不当な主張が繰り返される場合には、なお一時制限の申立てという道は開かれているという前提で考えております。

○松風委員
 整理ができたと思うのですが、その際に例えば手術とか、いわゆる重篤な医療とか、教育の人生を変えるような選択といったようなことについては例外を設けるといったようなことが検討課題として残っていると思いますけれども、それとの関連は要するに法上の枠組みと一部そのようなものを残すということに。

○千正室長補佐
 御指摘いただいたように重要な問題について本当に良いのかという部分は残ると思っておりまして、その意味で一つは施設長だけではなくて児童福祉審議会のチェックを受けるという仕組みがあり得るのではないかというのが一つと、そうは言ってもそれよりも親権の一時制限、裁判所に申立てをしてやるべきではないかという事項は現場においていろいろあると思いますので、そこは少し整理したいと思っております。

○吉田委員
 重なるかもしれません。そうすると、例えば施設長の権限が優先するという場合に、それでもなおかつ親権者がそれに従わない場合には、これは親権の一部ないし一時制限につなげるというルートは残しておくということですね。ただ、その場合には親権者の権限に対して施設長がどこまで優先するのかということに関しては、一部制限の制度をどのようにつくるかということと関係してくると思います。例えば一部制限がかなり広い範囲までおよぶ。日常の事柄以外についてまで制限しようとすれば、これはそうした司法手続が必要になってくるだろうということになりますね。一時的な制限に関しても、事柄に応じてこうした単なる優先では済まない場面も出てくるという制度設計として考えてよろしいわけですね。それでつながってくるということ。

○千正室長補佐
 はい。

○吉田委員
 とすれば、その範囲の問題が自ずと出てくると思います。
 続けて、よろしいですか。このような親権者と施設との対立の状況ですけれども、かねてから申し上げているように親権者と施設ないし児童相談所との紛争に関しては、中立の機関が独立して判断するのが望ましいだろうと思います。その意味では、原則論に立ち返るようですけれども、本来は司法の仕事ではないかと思っています。ただ、現実的にそれが可能であるかということはここで相当議論されておりますので、ではそれに変わる手段として何が望ましいのだろうかということになってくる。当面はそのような方向で考えざるを得ないのではないかと思っているところです。対立場面で施設長の権限が優先するという考えですけれども、先ほどお話がありましたように、これだけでは終わるわけではない。その延長線上に一部一時制限が控えているという位置付けで、これを考えていくということでよろしいかと思います。
 ちょうど磯谷委員も来られましたので。施設長と児童相談所長のどちらの権限にすべきかは大変悩ましいところで、理屈から言えば措置権限を持っているというところで児童相談所長が行うことになるかと思います。ただ、施設長の中にいろいろな方がおられるのと同時に、児童相談所長もいろいろおられると思います。ですから、どちらが良いということを確実に言うのは大変難しいと思います。その点、両方とも質の確保を同時に進めていかなければいけないということは共通していると思います。ただ、実質的に児童相談所長が判断するとした場合に、相談所長、実際には児童福祉司になりますけれども、今の児童福祉司の仕事量からいって果たしてどこまでそれをカバーできるだろうかという点も同時に考える必要があるかと思います。むしろ、私としては今のところはまだ身近なところということで施設長の権限と置いておいて、それをいかに実質的に機能させるかという方向でいく方が実情に合っているのではないか。といいますのは、児童相談所長にこうした優先的な権限を持たせるとなると、いろいろなところで法的な手当が変わってくると思います。そこがまだ十分に想定できていないということが一つあります。

○才村委員長
 児童相談所長か施設長かという議論が今、出ていますが、その件に関して豊岡委員お願いします。

○豊岡委員
 現状で申し上げますと、施設に入っている子どもに何か問題があったりすれば、児童相談所に連絡がきて、施設側ともいろいろ相談したり、どのような方向でいこうということもあります。児童福祉法第47条の第2項で優先するということで現在は施設長に権限があるわけですので、そこはうまく現実として流れていると思っていますし、大きなトラブルがあったという事例もあまり記憶がないものですから、そのような中で、今ここであえて施設長にあるものを児童相談所長に持ってくる必要性があるのか。吉田委員が言われましたように業務量の問題も当然あると思いますので、私としては児童相談所長というよりも施設長に置いておいた方が良いのではないかという印象です。

○才村委員長
 できるだけ議論を絞り込んでいきたいと思いますので、磯谷委員からペーパーを事務局を通じて紹介いただいたのですが、この件に関してどうでしょうか。

○磯谷委員
 ありがとうございます。もう御紹介いただいたということですので、この内容を繰り返すつもりはございません。先ほどお話がありました児童相談所長もいろいろということは、もちろんそのとおりでありますけれども、児童相談所長が権限を持つということは当然児童相談所が組織としてやっていくということになるわけで、例えば一時保護についても児童相談所長の権限になっていますけれども、あれはきちんと児童相談所として決めているわけなのです。ということで、施設長の方もそうかもしれませんけれども、そこのところは必ずしも保障されていないのではないかと、外から見ると思います。児童相談所の方がきちんとした決定ができるのではないかと全般的・一般的には思います。現状で児童福祉法第47条第2項で特に問題が生じていないというのは、それはまさに今はそうかもしれませんけれども、これから強い権限があるということが明確になっていく中で、果たして現状のままでいけるかどうか。そこのところがはっきりしてきますと親とのトラブル・対立が鮮明になってくる可能性がある。そのようなことからすると、今後はこのままですと施設長が矢面に立ってトラブルが頻発することも十分考えられると思いますので、そこはよく考えた上で決めなければいけないと思っています。

○豊岡委員
 児童相談所も何かトラブルがあったときに、現状でも施設長に「はい、お願いします」ということではなくて、相談をしながらいろいろ協力して親御さんに対応しているという実態がありますので、児童相談所が施設からあっても「そのように決まっているのだから、あなたたちだけでやりなさい」ということにはならない気がするのです。そのようにしたいというか、そのような現状ではないかという気がします。

○水野委員
まず今の論点からですが、先ほど磯谷委員がいらっしゃらないうちに施設長と里親がどうしてできるのかという御議論があったのですけれど、これも磯谷委員の御判断を前提に考えれば、恐らく児童相談所長に形式的な権限を与えておいて、信頼できる施設長には典型的に多くの権限を授権する形になり、里親にはもう少し日常の権限だけを主に授権するという形で仕分けができる気がします。ですから、私も悩んではいるのですが、磯谷委員のおっしゃる形で児童相談所長に権限を与えておいて、授権のところでその幅を左右するといろいろ動きが取りやすいように思います。
 全体の制度設計の仕組みですが、私はできるだけ現場のケースワーカーに大きな力を与える形で制度設計をする方が良いと思います。親との対立があると、とかく中立的な司法の関与という議論があるのですが、日本の司法はおよそそのように関与して働くことはできません。さらに、現場のケースワーカーは、再統合を目標にして助けに入る形で関与しておられます。つまり親に敵対的というのではなくて、まず親の助けに入ろうとし、親のニーズに応える形で入っていただいているのが圧倒的多数なのですから、そこに大幅に授権する必要があるように思います。フランスの制度設計では司法・裁判所が児童虐待対応のいわば中核のキーになっていて、司法が行政と一緒になって親に日常的に対峙するという制度設計になっているわけですが、日本は決してそうはなれない設計です。イギリスは日本と違い重要な場面では全部司法の許可を得るという形になっているのですが、イギリスではフランスとは違って、行政がもっと第一面に立って親と対峙しています。イギリスでは最近死亡事件がありまして、日本のように始終はないのですが、たまにあると大問題になります。膨大な報告書が上がって大臣レベルで国家問題になり、最近の法改革がなされましたが、その改革でケースワーカーに非常に大きな権限を持たせて、入院の決定権限も与えて余分な仕事はさせないことになりました。書類書きで現場の力を奪ったりしないで、権限を与えて子どもを救うことに専念してもらうという改革が行われたと聞いています。
 日本の場合は、ここのところたくさんの死亡事件があって報告書もそのたびに出されるのですが、とにかく子どもを救うよりも報告書を書くエネルギーで現場は疲弊している、ただでさえ乏しいエネルギーを疲弊しているという痛ましい話を伺います。ともかく現場にできるだけ権限をおろして、現場が疲れないようなところで、保護者の不平を聞いたり制度設計をしたりする必要があります。社会福祉審議会等で一部制限の司法申立てをした方が良いという判断もその一案ですが、その準備も現場が疲れないように、制度設計で組んでいくという方針が、今の日本の改革には必要ではないかという気がしております。以上です。

○才村委員長
 どうもありがとうございます。論点の一つは児童相談所か施設長かということ。それと先ほど吉田委員がおっしゃった質の担保。それをバックアップする仕組みをどうするのか。その二つと、もう一つは里親と施設を同じに扱ってよいかということですが、あまり時間がないのですが、その件でもう少し御意見を頂戴したいのです。

○松風委員
 今の点から考えまして、例えば社会福祉審議会に諮問するということになりますと、要するに行政が諮問するわけで、社会福祉審議会としては行政に対してこうしなさいという意見が出るわけでございますので、行政側に何らかの権限がないと、それを行使することができないということになろうかと思います。そのような意味からすると、児童相談所長に権限を付しておいて現場に委託するといったような方法が合理的ではないかと思います。先ほど、司法と行政との関係を整理したくて意見を聞かせていただいたのですけれど、そのような意味からしても、親権の一時停止にかなり近い内容を含んだものを権限として有するということになるのであれば児童相談所長の方が良いのではないか。そこが日常瑣末のことと、どこまで権限を付与するのかということが非常に幅広いので混乱していたのですが、そこを厳密に考えるのならばその方が良いのではないか。日常的なことは施設長に判断をお願いすることを児童相談所長が措置と同時に委託すればよいと思います。

○才村委員長
 今、松風委員がおっしゃった前者の方ですけれど、事務局で整理してもらったペーパーでは、まず親権行使するに当たって児童相談所長に相談する、児童相談所長の判断を仰ぐということになっているのです。児童相談所長が児童福祉審議会に意見を聞く。そのような仕組みになっていたと思いますが、それでよろしいのですね。

○千正室長補佐
 ここで想定していますのは、「重要な事項」と書いていますけれど、まさに日常なことは施設でよいのだろうということです。ただ、非常に重要なことや対立が鮮明になっている事項は、一度行政に戻していただくというか相談していただいて、さらに児童相談所だけではなくて第三者機関の意見も聞きながらやっていくというのが、事案の軽重とその手続のバランスが取れるのではないかという考えであります。
 実際には児童福祉審議会に相談があるような場面は重要な事項で、かつ、もめ事が鮮明化している状況でございますので、そうすると何が想定されるかというと、例えば親御さんが同意入所の同意を覆すという場面に近いような状況ではないかと考えられます。そうすると当然、施設よりも児童相談所が親との関係の矢面にまず立って措置自体をどうするかということを含めて先を見越していかなければいけない事例ではないかと考えております。

○松原委員
 現行でも措置権者は都道府県知事で、それを児童相談所長が実際には行っているということで、ここは子どもに対する責任を持っているのは変わらないと思います。ただ、日々の監護のところを児童相談所長がやれるかというと、やれないので今のように施設長等にそれを認めているのだと思います。それをより明確化しようということであれば、あえてここで措置権限をいじるということでなければ、現行の制度そのものの強化を図れば事務局のような考え方でもよいし、私は先ほど水野委員が授権するとおっしゃっていましたけれども、法的にはそのような考え方かもしれませんが、その形でやらないと、日々の生活を児童相談所に判断せよというのは難しいですし、現行ではいろいろと親とのトラブルがあって強引に引き取られそうだというときは、必ず児童相談所はかかわっていらっしゃるので、そのような形で現行体制をより強化していく。そのような意味では現場が力を得ていく形が取れれば、それでよいのではないかと思います。

○佐藤委員
 この論点ペーパーによると、恐らく問題は、現場で問題が起きたときに親権者の不当な主張とか必要な措置がとられない、児童の安定的な監護が図れないということを誰が判断するかということだと思いますが、これは委託を受けた施設長がする他はないと思います。そこで議論をしていたら、その間に子どもにとって不利益な状態がもっと続くと考えざるを得ないだろう。すなわち、措置という行為そのものが行政処分として発生しているわけですから、その状態から出発して考えれば、誰が判断すべきかは自ずから明確であろう。それは措置が同意であっても、あるいは強制であっても、その限りにおいては親権は事実上一定の猶予期間のような状態にあると理解して、それを代行するのが本来は都道府県知事で具体的には児童相談所長であって、その児童相談所長をきちんと法律の中に書くか、あるいは法の運用上のこととして明記するかはともかく、施設長にそれらの権限を委託していることをはっきりさせた上で現場の施設長が判断し、なおその後に児童相談所がそれをオーソライズするという仕組みにしたらよいのではないかと思います。
 里親との問題は、私は制度のことなどを詳しく知らないままに発言させていただきますが、里親もそういう流れの中で施設長と同じような役割を持っているとするのがまず前提で、その上で一般の児童福祉施設とは違うという事情について運用上いろいろ配慮するということでクリアできるのではないか。
 むしろ児童福祉審議会は、それらが全部終わった後に登場した方が良いのではないかと思っていて、例えば施設長はいろいろだとか、児童相談所長もいろいろだとおっしゃるけれども、私の経験で言えば都道府県の児童福祉審議会はもっといろいろで、到底これらの問題を責任を持って議論するようなメンバー構成にはなっていない。その人たち個々に責任があるというわけではなくて、私は一つの県しか知りませんけれどもそのように言わざるを得ないと思います。施設長の資質がいろいろだということに関しては、乱暴に言えば「仕方がない」ということで、もし間違いがあったら、後でどのようにそれを是正できるかということをあらかじめ考えておくようにしないと、これらの難しい判断をできる施設長がそろうまで待っていたら、子どもは何人も傷つき亡くなってしまうことになるだろうと思います。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。もう時間がなくなってしまったのですが、最後に磯谷委員、お願いします。

○磯谷委員
 1点だけです。措置権が児童相談所(都道府県)にあるということから、施設長が何か問題があっても最終的には例えば措置先を変更することで対応できるので、実質的には今の制度であっても児童相談所などが権限を持っているということになるという考えもあるかもしれませんけれども、実際に措置先を変更するかどうかという場合には、いろいろ他の要素も考えなければいけなくなるわけです。例えば個別のところについて、非常に施設長の行為が問題だとしても、例えばその子どもがそこの施設に居ついて、友達もできて、学校に定着して、そこの学校に馴染んでいる。そうすると施設長の問題だけれどもそこから子どもを引き上げることが子どもにとって良いのかという決断を児童相談所は迫られるわけです。常に他のものとバランスを取らざるを得ない。そうすると、実質的に措置権限があるといってもそれが本当の意味で実効性があるのかどうかは非常に疑問だと思います。むしろ児童相談所長がその権限を持つことによって、ダイレクトにその問題について決定ができるということになりますので、その方がより望ましいと考えております。以上です。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。まだまだ整理しなければいけない問題がたくさんあるのですが、時間の関係でこの論点につきましてはとりあえず以上にさせていただきたいと思います。また事務局で、今日の御意見を踏まえてもう少し絞り込んだ状態で、もう一度案を整理していただきたいと思います。
 それでは、次の論点について事務局から説明をお願いします。

○杉上虐待防止対策室長
 資料の6ページでございます。「一時保護中の児童相談所長の権限と親権の関係について」ということでございます。施設入所等の場合と異なりまして、現在の児童福祉法では一時保護中に児童相談所長の監護、教育、懲戒に関する権限自体が明記されていないということで、これについて親権に優先すべき旨を、施設入所等の措置がとられている場合と同様に規定してはどうかというような論点です。特段の反対意見はなかったと承知しております。
 (2)の「検討性の方向性」ですが、今申し上げたとおり、同じような規定の方向で設計を検討してはどうかということ。
 (3)も同様ですが、当該権限が親権に優先すべき旨を明確にすることとしてはどうかとしております。この場合の児童相談所長は一時保護を行った児童相談所長と考えられるのではないかということです。なお、一時保護については一時的、暫定的な処分ということで、個々の処遇について問題が生じる機会は多分少ないだろうとは思いますが、先ほど御議論いただいた第三者的な仕組み、具体的に言いますと児童福祉審議会の意見を聞くような枠組みを設けることにしてはどうかということにしております。以上です。

○才村委員長
 ありがとうございます。この件に関して御意見を頂戴したいと思います。吉田委員、お願いいたします。

○吉田委員
 先ほど言い忘れたこととつなげて話をします。児童福祉審議会に意見を聞くということで枠組みが提示されていますけれども、3ページに戻りますが、先ほどから出ています「重要な事項」についてというように絞り込んで、児童福祉審議会の意見を聞くとなっております。ただ、3ページの※印の2で、親権者が児童福祉審議会における検討を望んだ場合はどうするかという検討事項が入っておりますけれども、この点については大変大きな議論だと思います。前にここで意見が出ましたが、やはり親権者は自分がどう考えているかをきちんと聞いてほしい。そしてどう決めるかということよりも、親権者と施設ないし児童相談所との対立関係をどう調整して、それを次の段階にどうつないでいくかが大事になるわけですから、施設なり児童相談所長だけが児童福祉審議会にかける判断権限を持っているのは制度として本来の意図に沿ったものになるかどうかということを懸念します。そうした意味では、どのような方法になるかわかりませんけれども、何らかの形で親権者が検討を望む場合に児童福祉審議会の土俵に乗せられるような仕組みが必要だろうと思っています。
 それから、施設長と児童相談所長の持つ権限ですけれども、現在の児童福祉法第47条では監護、教育と懲戒ということになっていますが、居所指定はどうなるのか。同じ施設の中でも分園に移ったりということもあります。そうした場合はやはり監護、教育の一環として考えればよいのか、それとも居所指定の権限までやるのか。少し細かいことかもしれませんが気になっているところです。
 それから今のお話で、一時保護中の児童相談所長の権限に関しては、今の事務局からの説明で了解ではありますけれども、やはりこの点に関しても先ほどと同じようにというか、むしろ一時保護の場合の方が児童相談所と親権者の対立は激しくなる可能性がありますので、そうした点に配慮した制度設計が必要だろうと思っています。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。今、具体的に御意見を頂戴したのですが、それに関連して。水野委員、お願いいたします。

○水野委員
まず最初に質問をさせてください。事務局は今の吉田委員の前提になっている点についてどのようなことをお考えになっているのでしょうか。児童福祉審議会の意見を聞くのは、「重要な事項」については行政がいちいち児童福祉審議会の意見を聞くという制度設計か、それとも「重要な事項」であったとしても別に親と対立していないときには聞かなくてもよい、つまり、親と対立したときだけに行政が聞くということにしているのでしょうか。それとも、さらに行政からは児童福祉審議会に働きかけずに、親がこんなことは承知できないと思ったときに、親がそれを児童福祉審議会に申し立てられるという制度設計か。その三つのうちどれを考えていらっしゃるのでしょうか。
 私の意見を申しますと、最初の、重要な事項についていちいち許可がいるとするのは重すぎると思います。先ほども申しましたけれどもできるだけ現場に権限を与えたいと考えております。

○才村委員長
 事務局、お願いいたします。

○千正室長補佐
 「重要な事項」であっても、親権者と施設の意見が一致していれば調整する必要はないと考えられますので、親権者と意向が対立している場面において児童福祉審議会の意見を聞くということを想定しております。

○水野委員
申立ては児童相談所側で申し立てるのでしょうか、もちろん親にも申し立てる権利は認めるのでしょうけれど。

○千正室長補佐
 親権者と「重要な事項」について意向が対立している場面について、なにがしかの第三者機関の意見を聞くような仕組みが良いのではないかと考えているのですけれども、「重要な事項」で親権者と意見が対立しているときに、そのようなケースは児童相談所が児童福祉審議会に意見を聞くとするのか、対立しているけれども児童福祉審議会の意見を聞くことまでは親権者は求めていない場合も考えられるので、そこの範囲をどうするのかという御意見をむしろ聞きたいという思いがあって※印の2を書きました。

○才村委員長
 水野委員の方で何か具体的に範囲をお考えであれば。

○水野委員
先ほどの吉田委員の御発言ともつながりますけれども、親の方で児童福祉審議会に申し立てるときだけでよいだろうと思います。そのときに、親に対する親切なガイダンスは不可欠であろうと思いますけれども、児童相談所で親の意向をくんで審議会の意見を聞く必要はないだろうと考えております。

○才村委員長
 それからもう一つは、この児童福祉審議会は児童相談所や施設長の判断をバックアップする機能もあると思います。ですから、本当に重大な手術を受けさせるかどうかを施設長だけに任されると、あまりにも荷が重い。そのような意味で、施設長の判断をオーソライズするような機能も一方で担っているのではないかと思いますが、その辺りはどうでしょうか。

○水野委員
 そのような制度設計もあり得ると思います。その辺は、つまり親に対してどのような形で説得していくかですが、フランスのように司法がかかわっている場合には、司法が結局すべてを決めていくのだからという形で、ケースワーカーは親に寄り添えるのです。「判事に理解してもらわないと困るので、このようにしましょうね」といういい方で説得して親に寄り添うことができます。父親役と母親役とでもいうのでしょうか、司法の判断は行政の援助を見ていて、決定権限はあくまでも司法側にあるという形ですから、現場のケースワーカーは非常にやりやすくなるわけです。それが日本の場合には、父親役も母親役も全部行政が兼ねてやらなければならないので、親の攻撃も受けますし、支えもしなければならない。そういう意味では難しく困っていらっしゃるのはわかりますので、もし現場でその方がやりやすい、つまり父親役を児童福祉審議会がしていることで、その方が制度設計として組みやすいということであれば、それはもちろんあり得る判断だろうと思います。ただ、ともかく現場に権限を下ろして躊躇なく動き、子どもを救える制度設計を強くお願いしたいと思います。

○才村委員長
 ありがとうございます。児童相談所長に権限を付与した後の問題は施設長の権限とかなり重なると思います。ですから、一時保護に特化した、施設長と違って一時保護所で必要ではないかということがあればお伺いしたいと思います。先ほど吉田委員が、親との対立は児童相談所の方がやはりかなり多いわけですから、そこの配慮は要るとおっしゃったと思いますけれども、そういう形で一時保護に特化した意見があればお伺いしたいと思います。共通する部分については先ほど議論が白熱してこれという方向が出なかったので、これについてはもう少し掘り下げて整理していく必要があると思います。一時保護に特化された部分で何か御意見があれば頂戴したいと思います。ないようでしたら、申し訳ないのですが時間の関係もありますので。
 大村委員、お願いいたします。

○大村委員
 一時保護に特化した意見はないのですけれども、先ほどの前の方の共通の問題について1点だけ詰めていただく際に検討していただきたいことを申し上げておきます。一時保護の場合も含めて児童福祉審議会の意見を聞くような仕組みをつくるということで、それ自体は結構なことだと思いますけれども、この意見を聞くという性質がどういうことなのかということです。先ほどの議論を伺いましたけれども、施設長が権限を行使するにせよ、児童相談所長が権限を行使するにせよ、児童福祉法第47条第2項で付与されている措置を行う。その権限の範囲内で行う事柄について意見を聞くということを考えているのか、その権限の範囲内に入るかどうかわからない、あるいは外に落ちてしまう事柄について処理をするために意見を聞くことを考えているのかで制度の出来上がりのイメージは違うと思います。先ほど出ていたような重大な手術をするということが児童福祉法第47条第2項の権限の中に入っているのかどうかということについては疑義があり得るところだと思います。ですから、権限の中に入ることについて意見を聞くということだとすると、今の重大の手術という例が果たしてふさわしいかどうかということが問題になりそうですので、その辺の整理をお願いするとよいかと思いましたので、一言申し上げました。

○才村委員長
 どうもありがとうございます。非常に重要な点を指摘していただきました。これについては、また引き続きまた議論をしていただかないといけないと思っております。どうもありがとうございました。

○吉田委員
 一時保護に特化したということになるかどうかわかりませんが、一時保護の場合は期間が短いので、児童福祉審議会にかけるとすれば、かなり迅速な対応が必要だろうということが一つです。
 それから、就学児についての学校の問題は、やはり里親や施設で異なってきますから、それは重要な事項というくくりにするかどうかは別として、一時保護の場合には考えておかなければいけない事柄だろうと思います。

○才村委員長
 ありがとうございます。それでは、まだ他にもいろいろと論点がありますので、とりあえず以上にさせていただきたいと思います。
 次は「一時保護の見直しについて」です。事務局から、お願いいたします。

○杉上虐待防止対策室長
 それでは引き続いて7ページの「一時保護の見直しについて」です。これまでの議論ですけれども、まず一時保護について司法のチェックを受ける仕組みを設けるなど、司法関与を強化することが望ましいのではないかといった議論の一方で、司法や児童相談所の体制を考慮する必要があり、過度に重い手続を加えることによって、かえって一時保護が実施されない状況に陥いる状況になることは避けるべきということから、現行の制度の維持でよいのではないかという意見もあったところです。
 さらに、司法関与以外の調整の場、あるいはその次の「さらに」のところですけれども、一時保護されてしまった親の意見を聞く枠組み、あるいは親のサポートといったことも重要ではないかといった議論がなされたところです。
 「検討の方向性」は、これまでの議論を考えますと、一時保護について司法関与を強化することは、現状の司法あるいは児童相談所の体制からすると、かえってよくないのではないかという議論の方向であったと思っております。そうは言っても、一時保護の権限の強さを考えますと、今の不服申立てや行政訴訟などの通常の行政救済システムだけでなく、より親の意向に配慮することが必要ではないか。あるいは一時保護がいたずらに長期化することを防ぐ観点からも手続的な配慮をさらに設ける必要があるのではないかということ。こういったことから、行政内部ですけれども第三者機関が一時保護のチェックを行う枠組みを設けることとしてはどうかとしております。
 「考えられる制度設計」ですが、御承知のとおり現行では一時保護は2か月を超えてはならないこととされておりますが、さらに児童相談所長又は都道府県知事が必要と認めるときは引き続き一時保護できるということで、行政の判断によって長期の一時保護が可能な制度となっていることを踏まえつつ、2か月を超える保護者の同意のない一時保護については、その延長の是非について、これは例えばですが、第三者機関である児童福祉審議会の意見を聞くこととしてはどうかということでまとめております。先ほど申し上げたとおり、手続保障という観点から、このようなことにしてはどうかということでペーパーを整理したところです。
 なお、少し数字の御紹介ですけれども、これは平成21年の数字で一部推計の数字が入っておりますが、一時保護の件数が1万562件ということで、そのうち2か月を超えるものが1,767件で16.7%、同意がなく2か月を超えるものの件数について申し上げますと351件ということで全体の3.3%という数字になっております。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。今、御説明いただきました論点について御意見を頂戴したいと思います。
 吉田委員、お願いいたします。

○吉田委員
 一時保護の期間に関しては、当初から一時保護の持つ効果の大きさに鑑みて、従来は無制限であったものを有期限にするということでつくられたと理解しておりますけれども、実際の運用からすると、ほとんどノーチェックで2か月を超えているということで、果たして超える場合に保護者に対する教示が行われているかということも明らかでない。もし、おわかりであれば教えていただきたい。そういう点で、今回の一時保護の見直しで特に2か月を超えるものについては何らかのチェックが必要だろう。児童相談所長の判断でできるといっても、それを正当化する根拠がないわけです。司法判断という方法が一つあるかと思いますが、それが難しいということであれば、やはり第三者的な所で適否を判断する。また、その判断の過程で親の態度の変容も期待できるかもしれないということで、私はやはりこうしたチェック機関をつくることは必要だろうと思います。

○磯谷委員
 この一時保護につきましては私自身もそうですし、また日本弁護士連合会としても一時保護について司法審査を導入することが望ましいということを以前から申し上げてきました。日本弁護士連合会としても意見書を既に公にしているところです。ただ、既にいろいろと議論がある中で、なかなか児童相談所の体制や司法の体制、あるいは現場の御理解といったところがまだ十分に整っていないと感じるところです。日本弁護士連合会の意見書の中でも一足飛びに司法審査を導入すべきだと言っているわけではなく、やはりきちんと状況を整備した上で導入すべきだという意見を述べているわけですけれども、仮にその辺りが現段階ではなかなか難しいということであれば、直ちに司法審査というのは必ずしも適切ではないのかもしれないと感じているところです。以上が、司法審査に関する意見です。
 それから2点目は、今の2か月を超える部分に対する対応ですけれども、やはり児童福祉審議会の意見を聞くということは、司法審査などを導入しないという前提からすると、その中では望ましい対応だろうと思っています。ただ、これは意見も書かせていただきましたが、やはり迅速に判断ができるのかというところがまず一つ。私も東京都の児童福祉審議会に長くかかわらせていただいておりますので、そういった指摘もあるのですけれども、一方で全国の児童福祉審議会が一体どのように機能しているかが正直よくわからない部分もあります。その辺りを実質的に考えますと、やはり例えば児童福祉法第28条の申立て、あるいは一時的制限などの申立てをやっているケースについては当然外してよいだろうと思いますし、また親権者が同意しているものについては、あえてここでまたチェックをする必要はないと思いますので、そのような形で必要なものをある程度絞り込んでチェックできるようにするのが現実的ではないかと思っております。以上です。

○水野委員
 今の磯谷委員の御意見と同様に、ともかく司法審査は現実的ではないと思います。その代わりになるものとして児童福祉審議会ということですが、同意があればもちろんよいわけですから、同意なくして2か月を超えた351件を児童福祉審議会の意見を聞くという制度設計が実質的に可能であれば、もちろんその方が筋が通ると思います。精神病の方の精神医療審議会のチェック機能ですが、例の宇都宮病院事件などで国際的な非難を浴びて、強制入院のシステムを変えたときに、国際的には精神医療審議会が司法裁判所の機能を果たすという言い訳をして制度設計をして動かしているわけです。それとパラレルに考えたときに、これはどこまでパラレルに考えられるかということが私も悩ましいところです。つまり当時、宇都宮病院事件が顕著でしたように、精神病院の方では患者をたくさん受け入れておくと儲かるシステムになっていて、ですから被害者がうまれてその人権を守らなければならなかったですし、それでも司法を経由してということではとても無理なので行政の審議会を入れたわけですが、今後の一時保護所の方は、御存じのように子どもを預かっていて儲かるような一時保護所はどこにもありません。そういうところで351件というケースですが、このケースを同意が得られないのであれば、審議会承認の手続きの手間がかかることになり、その手間に耐えられずに親元に返してしまうことにならないかということが一番危惧されるところです。そのようなことにならずもしちゃんと子どもたちを守っていただけるならば、手続論的にはもちろんここで2か月を超えるわけですから、第三者機関の意見を聞くというルートを組む方が親権者の権利を守るという点からは当然に筋だろうと思います。ひとえに、あらゆるところに人手の保障がないので、そのような中でどのように制度設計を組んでいくかという非常に悩ましい問題ではあるのですが、その制度設計についても、現場の御判断を大事にしていただきたいと思います。

○千正室長補佐
 数字を御紹介しますと、虐待の一時保護は先ほど言った1万500件余りで、同意がなく2か月を超えているのが351件ですけれども、先ほど磯谷委員からも御発言がありましたが、やはり児童福祉法第28条の申立てを既にしていて、きちんと司法の判断を仰いでいるケースにまで児童福祉審議会の意見を聞く必要はないのではないかと思っておりまして、そうしますと351件の中に既に児童福祉法第28条の申立てをしているケースは除いて考えるのではないかと思っております。この委員会の第3回で最高裁判所からお出しいただいた資料ですけれども、児童福祉法第28条第1項事件のうち、最高裁判所と雇用均等・児童家庭局で把握している158件の事案についてお調べいただいたものですけれど、一時保護を開始してから26.6%が2か月以内に申立てをしているということですので、これはあくまで推計となりますけれども、351件のうちの4分の3程度が対象となるイメージを持っております。

○磯谷委員
 数字の点についてですけれども、先ほど「親権者の同意がある場合は」という話をしましたが、今の実務では一時保護において同意書などは取っていないわけです。そうすると、もしここで制度として同意書を取るという話になりますと、そこのところは同意しないというか、同意書を書かないというようなことがもう少し増えてくる可能性があるので、そういう意味で数的には先ほどの351件の4分の3よりは多くなってくる可能性は想定しておかなければいけないと思います。

○吉田委員
 2点ありまして、今、磯谷委員がおっしゃった同意は一時保護の場合の要件ではありませんから、それで区別するかどうかというのは現場の判断が大変難しいところだと思います。むしろ、子どもの立場から考えると親が同意していようがいまいが自分はなぜここにいるのか、不当に2か月置かれているという状況から考えますと、やはり同意の有無で切ってよいのかということが素朴な疑問としてあるのです。これが一つです。
 もう一つは、先ほど佐藤委員がおっしゃった児童福祉審議会の質の問題です。児童福祉審議会に掛けるときに親と施設が対立する、全国的にも児童福祉審議会に施設長の代表の人が入ったりすることがあるのではないでしょうか。そうした場合に、果たして児童福祉審議会の判断が適切に行われ得るかどうか、圧力はないのか。ですから、やはりこのような委員会を設けるときに、先ほど部会という話がありましたけれども、できるだけ利害関係者が入らないような構成にしたり、判断の材料の集め方等、これはやはり行政から何らかのガイドラインが必要になるだろうと思います。児童福祉審議会が適切に機能し得るような枠組みと基準が。

○松原委員
 先ほどの同意に関して、児童相談所長が職権で保護したというケースでよいのですよね。そうだとすれば、そこで区分は付いていると思います。その上で、吉田委員がおっしゃった子どもの視点から言うと、現行の児童相談所にしろ一時保護所にしろ、いろいろな子どもたちが入ってきて必ずしも虐待を受けた子どもたちばかりではないのです。やはりそこで長期化する子どもについて、できれば一時保護委託も今は制度としてあるので、これは制度的なところで結構ですので、2か月を超える場合には子どもが生活する場についても児童福祉審議会で議論する一つの課題にしていただきたいと思います。
 もう1点は、ここの「親の意見を聞く、親のサポートをしなくてはいけない」というところは多分私が発言した部分だと思いますが、これはとても大切なことであると同時に、これは親子分離をされているケースすべてがそうだと思っていて、これは4の論点にもかかわってくるところなので、またそこでぜひ発言したいと思います。

○才村委員長
 ありがとうございます。最後におっしゃった「親の意見を聞く」ということですが、現実問題として親が強烈に一時保護に反対して非常にトラブルになっている。児童福祉審議会で親の意見を聞くということは実際にどのようなことなのか、想像できないのです。相当の親との調整の時間や回数も要ると思います。やはり親の気持ちに寄り添いながらソーシャルワークをやっていかなければいけないということになりますから、そういった機能を児童福祉審議会で本当にできるのかどうかということは少し疑問に感じているのですけれど、その辺りはどうでしょうか。

○松原委員
 私がこの間発言したのは、親の声を代弁するような組織、つまり児童相談所が現行でいうと第1項、第2項のところで指導を委託できることになっています。そのような形で委託する機関の人たちが親の声を代弁して、それが児童相談所を通じて、あるいは直接児童福祉審議会に出てくる仕組みができればよいのではないかと思います。ただし、前回発言しましたように、それが全国津津浦浦にそういった団体ができるのには時間もかかるでしょうから、その間はやはり親の意見というのは、それができないところは児童相談所では今、現実的には虐待対策班と家族再統合に分けて機能を持たせていますので、そのような現実的な対応をある期間はせざるを得ない。実験的にそのようなことを始めていって、成果が上がればそれを民間機関に委ねていくようなことを広げていくという展望はあってもよいのではないかと思います。

○豊岡委員
 今、児童福祉審議会のお話が出ていますけれども、一つ東京都の実情ということで申し上げれば、かなりタイトでそれほど余裕があって回しているわけではありませんので、ここでも児童福祉審議会が出てきて、前にも児童福祉審議会にというような項目がありましたので、その辺の児童福祉審議会の充実というようなことも一方で考えないと児童福祉審議会に出せばそれでよいということではないと思いますので、大阪府の実情はわかりませんけれども、これで児童福祉審議会が回るのかと、逆にそちらの心配もしてしまうものですから、その辺の配慮もお願いしたいと思います。以上です。

○才村委員長
 実は私も大阪府の児童福祉審議会の委員をやっております。言いにくいかもしれませんが、松風委員どうでしょうか。

○松風委員
 非常に日程的には御無理を委員にはお願いしている現状でございますし、児童福祉法第28条、要するに措置について保護者と対立する場合の議論は非常に精緻に行いますので、そのような内容でこの一時保護の問題についても行うことになれば、非常に難しいだろうと思いますし、先ほどの親権の要するに施設長および児童相談所長への付与ということについても、かなり限定しないと現実には難しいだろうとは思います。

○才村委員長
 保護者との調整というのは、児童福祉審議会に突っ込むというよりも、別の枠組みが要るのでしょうね。その辺はいかがでしょうか。

○中島委員
 保護者との関係ということよりは実情ですけれども、先ほどお話がありました一時保護の期間というのは、被虐の子どもだけではなくて加虐の方の加害側の子どもも入っていますので、多分職員も含めて非常に大変な思いをして対応していらっしゃる。子どもにとっても大変環境としては納得しにくい環境ですので、手続上の権限の問題もありますけれども、できる限りここは短期間の方が良いという前提で、できるだけ時間軸を短くできるようなことを考えていただく方が良いと思います。

○才村委員長
 ありがとうございます。それともう1点、この議論の中で論点として浮かび上がってきたのは、親の同意の有無に関係なくこのような仕組みに乗せた方が良いのではないかと。もう一つはあくまで親の同意のないケースについて、これに乗せるべきだという意見と二つに分かれたと思いますが、その辺りはどうでしょうか。
 ただ、一時保護所というのは緊急避難の場所ですから、長期に生活することを前提としていないのです。ですから、教育の問題や設備の問題、職員配置の問題など児童養護施設とは随分違いますから、いかなる親の同意の有無にかかわらず、そこで2か月を超える場合は意見を聞かなければいけないと思いますが、その辺りはどうでしょうか。

○水野委員
一時保護所の劣悪な状況というのは本当に胸の痛むところですが、そこから出したときにどこへ行くかということなのですけれども。親元に返してしまうことになりはしないでしょうか。もともと親元に置いておけないからわざわざ大変なのに引き離した、よほどでないと引き離されていない子どもたちなはずです。その子どもたちが親元に帰ることになってしまうことが危惧されるわけですが、委員長の御質問はそこから先は早く養護施設に移した方が良いという御意見でしょうか。

○才村委員長
 それぞれケースバイケースで事情はあると思いますが、多分2か月を超えるケースは家庭に返せない事情があるのだと思います。ただ、水野委員がおっしゃるように児童福祉審議会の意見を聞く手続が煩雑になってしまって、それを避けるために安易に家に帰してしまうという事態は避けなければいけないと思います。そこは児童相談所の良識に委ねるしかないのではないかと思います。松風委員、お願いします。

○松風委員
 今の件ですけれども、2か月を超えて一時保護所に置く事例というのはどのような事例だろうかと考えたときに、あまりだらだらと何もせずに置いているケースは非常に少ないのではないだろうか。何らかの形で措置が決められない、または行く先がないといったような、要するに児童福祉審議会で御意見をいただいたとしても、可能性としてどのような改善策が取れるかということについての問題を残しての意見というのは空虚ではなかろうかと思っているのですけれども、そのような意味では児童福祉審議会も何をどのように判断されるのかといったようなことでは非常に悩まれるだろうし、要するにオーソライズしてオーケーを出すだけの機関になってしまっては意味がないわけですので、そこは非常に問題だと思います。

○才村委員長
 豊岡委員、いかがでしょうか。児童相談所で仕事をされていて2か月を超えるケースはどのようなケースで、児童福祉審議会に諮るとすれば何を諮るのか。下手をすると形骸化しないかということだと思いますが。

○豊岡委員
 ですから、先ほども言いましたように、新たにこの2か月を超えるケースの問題が出てくるわけですから、基本的な考えとしては2か月を超えるものについては、すべてかけた方が良いと思いますけれども、それが実質可能かどうかを配慮しますと、少なくとも同意が得られないものについてはかける必要があるのではないかという印象ではいます。

○吉田委員
 確かに施設がいっぱいで子どもが入れないという形で2か月延びるというケースは少なくないと思います。ただ、そうした実情が児童福祉審議会を通じて明らかになるということであれば、もっと社会的養護の充実につながっていくし、むしろそれが児童福祉審議会の役割だろうと思います。児童福祉審議会がそうした意見具申をすることで児童相談所や一時保護所の実情がこれだけ延びている。ただ、もっとという方にも役割を果たすべきだと思います。ですから単なる言い訳のための、またオーソライズするためだけの審議会に終わってはいけないだろうと思います。

○千正室長補佐
 同意があるものも対象にするかどうかというところは、少しこの仕組みの思想というか考え方によると思います。主には、行政権限が強いので権利保護をしなければいけないという観点から同意のないものについて対象とするという想定をしておりました。要するに保護者の同意がないのに何か月もしてよいのかという観点からすれば同意がないものになるかと思いますが、一方で同意の有無にかかわらず、一時保護の期間が長いことそのものが問題であるというのも、そのとおりでございまして、それについては先ほど松風委員も言われたように、行き先の問題ですとか子どもの状態など、いろいろな問題があると思います。それから一時保護所そのもの、環境そのものの問題など、さまざまな問題があると思いまして、そこは児童福祉審議会でチェックすればすべてが解決するという問題ではないと思っております。

○才村委員長
 これを現実問題として同意なしまで広げてしまうと膨大な数になりますよね。ただ、親の同意の有無と子どもの利益とは全然別ですから、本来は2か月を超える事案については何らかのチェックシステムが要ると思いますが、計算すると約16.7%ということは3,000件近くになります。それをすべてかけるのか。下手するとそれは形骸化してしまうことになりますよね。その辺りが悩ましいですね。他に、御意見はどうでしょうか。
 佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員
 基本的に同意がないケースの方が戻すと危ないわけですよね。同意しないということは、虐待に関して言えば自分が虐待しているということを自覚していない非常に危険な状況だと思いますから、基本的にそういう親元には返さないという形の了解の上に、返すと危険だという認識の上にどのような形で児童福祉審議会をかませるかということを考えないと。
 よく児童福祉審議会もいろいろだという話の続きで言うと、そのような機微があまり共有されない危険性は多分にあると思うので、その辺りは十分な配慮が必要ではないかと思います。

○才村委員長
 ありがとうございます。どうしても返せないケースは児童福祉法第28条申立てをしているでしょうから、そういったケースは対象外になると思います。まだまだ御意見を頂戴したいのですが、もう一つ論点がございますので、この件に関しては以上にさせていただきたいと思います。
 最後に、4番目「保護者指導に対する家庭裁判所の関与の在り方について」、事務局から御説明をお願いします。

○杉上虐待防止対策室長
 では9ページ、本日ご議論いただく予定の最後でございますけれども「保護者指導に対する家庭裁判所の関与の在り方について」でございます。「これまでの議論」の1段落目にありますとおり、児童相談所の保護者指導に実効性を持たせる観点から、家庭裁判所から保護者に対しても児童相談所の指導に従うよう勧告する仕組みが要るのではないかという意見があった。「また」書きのところでございますけれども、そうしたことによって親権制限の審判などの後に続くプロセスの判断材料になるのではないかということ。そのような運用によって保護者指導の実効性も高まるのではないかという意見があったところでございます。
 一方で、司法の性格でございますけれども、司法は行政をチェックするのが本来の役割であるので、司法の役割を超えることになるということで、そもそもそのような制度を創設することは法制的に難しいのではないかという意見もあったところでございます。これに対して、そうであっても保護者指導の実効性を高めるという目的を達成するためには、こういった制度を設けてもよいのではないかという意見。あるいはそれ以外に法制的には難しいけれども勧告の内容、これは都道府県知事に対する勧告の内容でございますけれども、それについて家庭裁判所から保護者に対して事実上伝達するということで目的を達成する方法でもあるのではないかという意見もあったところでございます。
 「検討の方向性」でございますけれども、法制的に司法と行政の役割分担を考えると難しい面があることを前提に、運用面についてどのような保護者指導の実効性を高めるかについて検討することも必要ではないかということを(2)で書いています。
 それを踏まえて「考える対応策」で最後の2行目でございますけれども、勧告の内容を保護者に伝達するよう例えば児童相談所は家庭裁判所に対して上申するなどの運用面での対応について検討してはどうかとしているところであります。1枚おめくりいただきまして、いずれにしましても保護者指導のやり方等については難しい面があると承知しております。児童相談所が行う保護者指導の好事例というのをまとめることも必要ではないか。あるいはそういったものを全国の児童相談所に示す等によって、保護者指導それ自体の内容を改善するための取組も重要ではないかと考えているところでございます。以上です。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。児童相談所と裁判所との関係で、法制的には難しいだろうということですが。
 松原委員、お願いします。

○松原委員
 先ほどの発言の続きということになりますが、形式的に裁判所の勧告があっても、そこで指導に従うというかそういう支援を受けるということに実効性が担保されなければ、言ってもあまり意味がないだろうと思います。先に体制としてはそういった親が相談をしに行く。あるいは支援を受けるシステムを充実させていって、その後制度の在りようを考えるということが本筋だと思います。
 そのような意味で、もちろん児童相談所が取り組まれた事例の紹介も確かに大切だと思いますが、前の発言との関連で言えば、ここについてはぜひ民間組織の育成も図っていただきたいと思います。

○豊岡委員
 このペーパーですと裁判所は保護者に直接勧告するのは非常に難しいという内容になっていますが、研究会からもそうですけれども、少年法の中で保護者に対する措置規定もあって、少年法第25条の第2項に「家庭裁判所はその必要があると認めるときは、保護者に対して、少年の監護に関する責任を自覚させ、その非行防止するため調査または審判において自ら訓戒・指導その他適切な措置をとり」とありますので、ここのところをお願いしたいという再度の要望のような形になると思いますが、お伝えしておきたいと思います。以上です。

○才村委員長
 私も素人でよくわからないのですけれど、同じ裁判所の中のことですよね。今回は、本来は行政の在り方もチェックすべき家庭裁判所が行政をバックアップするというのはいかがなものかということだと思います。その辺りはどうなのでしょうか。
 水野委員、お願いします。

○水野委員
 今の司法の側からは、これは困るという反応が強いことは予測できます。法制審議会で私が親権制限の職権による発動を提案しましたら、裁判所側から強い反対意見が続出しましたので、非常に受け入れていただきにくいことはわかっております。原告と被告がそれぞれ主張立証を尽くして、アンパイアとして裁判所が判断をするというような伝統的な裁判のスタイルは、親権、あるいは後見のような問題では利かないというのが、世界的なトレンドでございます。
 裁判官自体の在り方がそういう中立的な判断者ではなくて、もっとカウンセラー的なといいますか、内容を構築していくような役割を担っていかざるを得ない。司法の在り方が世界的に見ればどんどん変わってきているところです。裁判官が行政と共に子どもの人権を守るために親に対してできる限りの事をするというスタンスから、考えるべきでしょう。フランス法の言い方を借りますと、親権制限の育成扶助は、親の自己批判の強制であるといわれるのですが、そのような種類の命令を出すことも十分考えられることだろうと考えております。

○磯谷委員
 私もこの点については1年半議論させていただきましたが、未だに納得が全くできていないということでございます。しかし、その議論は尽くしていると思いますので、裁判所の方へ質問は、法制的に児童福祉法第28条の枠では親に対して直接勧告することは難しいというお立場だったと思いますけれども、これが親権の一時的な制限ということになりますと、恐らくその問題はなくなるのではないかと思っておりますが、その辺りはどのようにお考えでしょうか。

○古谷参事官(最高裁判所)
 先ほど少年法の話も出まして、同じ家庭裁判所でなぜできないのだという話がありました。一つは、少年法の場合は処遇を決定すること自体が裁判所の役割になっていますので、それ自体は構造が違うというところは御理解いただきたいところです。児童福祉法第28条と親権の点で言いますと、児童福祉法第28条の方は、基本的には児童相談所等が行うことについて裁判所が承認するだけの手続ですので、それに比べると親権制限は裁判所が親権を止めるという構造になるので、司法と行政の役割分担でいうとハードルが低いというところはあろうかと思います。ただ、それにしましても基本的に行政的な行為を裁判所が行うことについての問題はあるところでございます。
 長いスパンでいきますと基盤整備等いろいろ含めて、家庭裁判所がどのように向き合っていかなければいけないのかを考えるべきところですけれども、現時点では制度的に何かを入れるのは難しいところであって、運用で制度に整合的なところでやれることはやるという話になるのではないかと考えています。

○才村委員長
 ありがとうございます。よろしいでしょうか。この「上申する」ということですが、長委員、実際の裁判の現場ではいかがでしょうか。勧告を出してもらうように児童相談所が裁判所に上申するという考え方。

○杉上虐待防止対策室長
 勧告の内容を伝達することです。

○才村委員長
 勧告の内容を保護者に伝達していただくように児童相談所が上申するということでしょうか。

○千正室長補佐
 そうです。すべてのケースでやるのかどうかという問題もありましょうし、児童相談所に勧告がくるわけですが、これは保護者にも知っておいてほしい。それも児童相談所から伝えるのではなくて、事実上裁判所から送っていただいた方が保護者も受け入れやすいのではないかというケースについて上申する。

○長委員
 御指名ですので意見を少し述べさせていただきます。私は以前にこの問題があったときに保護者を名宛人とするような形での勧告は構造上難しいという話をしました。ただ、運用などで何かを考えることはあり得るのかもしれませんと当時お話ししたのですが、そのときはまだ中身は明確に考えていたわけではないのですが、今回このような提案になったときに、これは私が懸念しているような構造を根本的に変えるものではないものですから、やり方によってはこのような考え方はあり得るのかもしれません。さらに検討している者がおりますので、説明してもらえればありがたいです。

○進藤局付(最高裁判所)
 「上申」というのがわかりにくい面があるのかもしれませんが、現行法も指導勧告については児童福祉法第28条第5項で児童相談所の御意見をお伺いすることになっているかと思います。児童相談所の指導がまずあり、そこに裁判所が勧告するというときに、児童相談所の御意見が反映されない形での送達が妥当かどうかという問題はあるかと思いますので、最終的には裁判所の判断とはいえ、運用として児童相談所の意見が取り入れられる仕組みづくりが必要ということで「上申」をお願いしたところです。

○才村委員長
 どうもありがとうございます。他に、いかがでしょうか。もうほとんど時間がなくなってきたのですが。よろしいでしょうか。それでは、御意見がないようですので、4番の論点についてはこれで終わらせていただきたいと思います。
 本日の議論はこれで終了となります。事務局から、今後の予定について御説明いただけませんか。

○杉上虐待防止対策室長
 次回は11月16日火曜日の10~12時ということで御連絡していると思います。場所はこの厚生労働省の建物の6階、共用第8会議室でございます。残された論点を具体的に言いますと、親権者等がいない児童等の取扱い、あるいは接近禁止命令の在り方について、本日と同じように御議論いただく予定となっております。
 また、今日も限られた時間でございましたので、追加の御意見等がもしございましたら、メール等でいただけたらと思っております。どうぞよろしくお願いします。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。それでは、本日はこれで閉会とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会)> 社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会第5回議事録

ページの先頭へ戻る