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2010年10月22日 第54回労働政策審議会職業能力開発分科会議事録

職業能力開発局

○日時

平成22年10月22日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 共用9会議室(19階)


○議事

○今野分科会長 これより第54回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催します。本日の出欠ですが、高橋委員、三村委員は遅刻です。浅井委員、黒澤委員、水町委員、井上委員、滝澤委員、阿部委員、荒委員、浦元委員が御欠席です。
 議題に入ります。今日は、「求職者支援制度における訓練の在り方について」と、「第9次職業能力開発基本計画について」この2件について御議論をいただきます。まず、求職者支援制度における職業訓練の在り方についてです。事務局から説明をお願いします。

○松本総務課企画官 資料1です。前回10月5日に、中間的整理の論点の前半について、御議論いただきましたが、それに該当するのは資料1の1頁から2頁でした。その際に、井上委員から、「実施主体別の訓練数、定員数だけではなくて、それらの就職率はどうであるか」という御指摘を頂戴しました。7頁がその際に御指摘いただいた資料ですが、今回、新たにこれらについての就職率を示したものが、6頁です。
 認定された訓練のうち、既に終了して就職率が出ているものについて、就職率の実施主体別に集計したものです。就職率について、それぞれ「株式会社等」、「専修学校等」、「その他」に分けて集計したところ、就職率についての実施主体の違いによる差は、大きなものではないように思われます。ただし御留意いただきたい点として、「株式会社等」のほかの「専修学校等」、「その他」は分母が小さいという点です。以上が、前半部分の追加資料です。
 このあと8頁以降は、検討事項の後半です。中間的整理でいうと第4から第7までに関する資料です。9頁から10頁は、基金訓練を受講される方が、どのような支援を受けて就職に至るかの流れを示したものです。まず、?Aのように、ハローワークでの相談で、訓練が必要と判断された場合には、?Cの「訓練実施機関による選考」を経て、訓練を受講されます。
 訓練受講中の就職支援としては、訓練実施機関による?E?Fの右にある網掛け部分のような内容の支援があります。また、訓練実施機関とハローワークの連携により、?Fの横にある右側の出張相談などが行われます。また、訓練が修了したあとは、ハローワークにより?Hの右側のような訓練情報の提供その他の支援が行われています。
 次に11頁です。これは平成23年度予算の概算要求に関する資料です。ハローワークによる職業訓練受講修了後の担当者制による就職支援等の体制を強化するための概算要求が行われているところです。
 12頁から13頁は、訓練実施機関による就職支援の内容を、基金訓練と委託訓練とで比較したものです。基金訓練については、8月9日の認定基準の改正もありまして、多くの項目の支援が必須となっていて、また、職業横断的スキル習得訓練コースと基礎演習コースでは、キャリア・コンサルティングやジョブ・カードの作成指導も必須になっています。これら訓練実施機関による支援を支援するために、雇用・能力開発機構が支援を行っていて、基金訓練については、キャリア・コンサルタントの派遣、委託訓練については巡回就職支援指導員による支援がそれぞれ行われています。
 14頁から20頁で、訓練の個別の講座に関して、公開されている情報を比較したものです。これらは、いずれも中央職業能力開発協会、また雇用・能力開発機構のホームページで検索すれば表示される情報ですが、これを事項ごとに整理をしたのが14、15頁の表です。16頁以降は、具体的に表示される情報の例として参考添付したものです。
 14頁の事項については、この3つの制度のどれに関しても、ほぼ開示されているところですが、15頁をご覧いただくと、前半の一巡目の議論で御指摘いただきましたが、例えば「訓練でどのような資格が習得できるのか」「その後の実績はどうか」という点の情報開示につきまして、教育訓練給付はほとんど開示されていますが、他の2つについては、そうではない状況が整理されています。
 次に22頁で、訓練の評価と効果的な訓練の実施のための措置に関する資料です。公共職業訓練の委託訓練のうち、座学中心の訓練に導入されている就職実績に応じた費用支払制度の概要です。この委託訓練の就職目標値は65%ですが、就職率の実績の75%と55%を基準として、支払額に差が設けられています。
 23頁に、この制度の運用実績を示しています。平成19年度と平成20年度の実績を並べていますが、就職率が55%未満であるために支給なしだった訓練コースがおよそ2割です。75%以上で2万円支給だった訓練コースが4割強です。
 24頁、25頁です。基金訓練と公共職業訓練について、各種の指標に沿ったデータをお示ししています。これまでは就職者数、就職率はお示ししていましたが、真ん中の欄に、就職者のうち雇用期間の定めのない雇用として就職された方の割合、また関連就職された方の割合、そもそもの回答の回収率をお示ししています。
 ここで御留意いただきたい点としては、いずれも受講者の回答を集計したものですので、関連就職であるかどうかとか、雇用期間については、本人の認識で回答されているものです。また、雇用期間の定めのないという回答の中には、パート、アルバイト、常用派遣も含まれます。あと関連就職について、基金訓練については実践演習については、58.9%とお示ししていますが、職業横断的スキル習得コースと基礎演習コースについては、何をもって関連就職とするかの点が判然としないことがありまして、実践演習コースのデータだけをお示しています。
 次に論点として、26頁、27頁に、訓練を受講した後、更に訓練を受講することに関しての資料を付けています。26頁は現行の基金訓練の取扱いをお示ししたものです。現行の基金訓練はルールが2つありまして、レベルが高い訓練については、間隔を問わずに連続受講が可能です。一方、同レベル以下の訓練を続けて受講することは不可となっています。27頁です。こちらは公共職業訓練受講後の取扱いです。公共職業訓練の修了後1年間は、公共職業訓練また基金訓練も受講不可となっています。
 28頁は、前回5日にもお示しした、基金事業の運用改善事項をまとめたものです。
 次に、30頁から32頁で、中間的整理の項目で、訓練の事業運営体制の確保の関係です。まず30頁の網掛け部分は、現行の基金訓練の事業概要のうち、中央職業能力開発協会と、雇用・能力開発機構が担っている業務です。これらの業務を担うためには、職業訓練に関する知見やノウハウが必要であることを踏まえた実施体制の構築が重要だという御指摘を頂戴しています。
 31頁、32頁は雇用・能力開発機構の見直しに関する参考資料です。32頁は法案の概要です。
 34頁以降は参考資料です。今回の検討事項である後半とは直接は関係のないものも含めて、これまで御覧いただいたことのある資料の数字を更新したものです。資料の説明は以上です。

○今野分科会長 前回は前半をやりましたので、今日の部分について、皆さんからご意見をいただければと思います。

○高倉委員 訓練のメニューについても、今までもいろいろと意見が出ているとおり、時代に合った形で、どのようなメニューにしていくかは重要な問題ですし、そのメニューを拡充したり、充実していくことも必要だと思います。今回提案のあった、訓練機関に対する奨励施策や指導や監督の在り方、これについても見直しをしていく必要があると思っていますが、タイムリーに柔軟性をもって、その見直しもしていかなければいけないと思います。
 それで、32頁の法案の内容の(2)の?Bにもありますが、労使の意見を的確に反映させる仕組みが非常に重要だと思いますし、地域においても、どういった形で効果的な運営ができるかのチェック機能を設けるかは大事だと思うので、是非お願いします。
 あと1点は、この支援制度においては、地域差が生じないことが非常に大事だと思います。全国どこでも同じようなサービスが受けられる体制が必要だと思います。今地域主権戦略会議の中で、国の出先機関の都道府県への移管の論議がされているので、この新制度を効果的に運用するためにも、国のネットワークをどううまく使って、その一律的なサービスを地域でどう行っていくかの視点が、非常に大事だと思います。
 そういった観点から考えると、例えばハローワークが職業紹介から雇用保険、企業に対する指導や助成金による支援といった雇用対策を一体的に行っているのですから、キャリア・コンサルティングや申請から給付までを含めて、円滑かつ迅速なサービスの提供を図るためにも、例えば、ハローワークの機能を如何にそこに活用していくのかという視点も大事だと思います。いかがでしょうか。

○松本総務課企画官 まず1点目の御指摘ですが、労使の意見を随時お聞きし、効果的に事業を運営するための見直しなりの御意見を頂戴し、それを反映させるための取組みについてです。まず、32頁の機構におけるこのように反映させる仕組みというのは、もちろんすでに法案に入っています。一方、公的な訓練全体について、労使のご意見、訓練機関の意見、求職者側のニーズをいかに取り入れていくかは、極めて重要だと考えています。現在、国単位では中央訓練協議会、地方では地方訓練協議会を随時開催していますが、引き続きこのような取組みが必要なのではないかと考えています。
 2点目の、ハローワークが一貫したサービスを提供することによりサービスの向上を目指すという観点については、まさに御指摘のとおりです。どのようなシステム、体制を組むのが、利用者に効果的、効率的かといった点を踏まえて、検討していきたいと考えています。

○今野分科会長 ほかにいかがですか。

○中村委員 2点ほど意見を申し上げます。1つは、新制度である求職者支援制度については、恒久的な制度として創設されるわけですので、前々から提起されているように、その訓練の評価は受講者の就職率を指標とするべきだろうと思っています。先ほどの説明では、就職状況にあまり差は見られないということでしたが、とは言え就職率を指標とした対応をしていくべきだろうと思っています。
 そして、そのことを踏まえて、訓練実施機関の認定等を行う必要があると思います。また、受講者の就職先の分野、職種、定着状況を踏まえて、適宜訓練の実施分野、規模について、見直していくことが必要ではないかと思っています。さらに、訓練実施機関については、インセンティブとしての就職実績に応じた財政的支援の具体的な仕組みを検討していく必要があると思います。
 2つ目は、新制度の創設と現行の基金訓練との関係についてです。現行の基金事業については、来年3月までということで、期限つきになっていますが、新制度の施行期日とずれが生じると、現行の基金制度で訓練を受けている人が不利益を被る場面が出てくる恐れもあると思っています。したがって、新制度の施行に当たっては、現行の基金事業との切れ目のないような、円滑な接続、運営に努めていくべきだろうと思っています。2つ意見を申し上げました。

○松本総務課企画官 まず、訓練の認定関係の御意見です。本日お示しした資料は、あくまでも全体の数値ですので、個別の訓練については、成績のいい訓練機関、訓練コース、そうでないコースもあるところで、現行の基金訓練においても認定基準の改正をしましたが、新訓練においても、効果的な訓練が実施されるように、認定基準で、就職率を基に何らかの反映ができるような、質を確保するための制度化は必要だと思っています。
 また、関連就職かどうか、有期か無期かといった、就職先の質の状況も把握しなければならないと思っています。今回お示ししたデータのほかに、定着がどうなっているかも、一巡目の御議論でいただいていたところですので、そういった点の把握についても、研究をしていきたいと思っています。
 そういった数値を把握した上で、新訓練について、どのような分野にどのぐらいの量を設定するのかは、まさに先ほど御意見のあった中央協議会や地方協議会でご議論いただきながら、各年度の訓練に反映させるようにするのが適当ではないかと考えています。
 2点目の新制度と現行の基金訓練との接続の件ですが、まさに御指摘のとおりで、切れ目のない支援が実現できるような手当ては必要だと考えています。すでに10月8日に閣議決定されたところでは、現行の基金訓練の期間延長という項目が盛り込まれているので、切れ目のない支援が確保されるような手当てを講じていきたいと考えています。

○新谷委員 今中村委員から、現行基金訓練と新しい制度の接続の問題で御指摘させていただきましたが、それは財政の問題だけではなくて、気になっているのは現場の管理システムの問題です。もうすでに20万件の受講者がいるわけで、訓練のインターバルや受講歴をどのように把握して、新法につないでいくのかといったときに、これは紙の処理ではとても管理できないと思っています。
 もっとも、それは基金訓練と新法の訓練をインターバルのそれぞれの対象にするかの問題はあるのですが、仮に対象にするとすれば、受講歴の管理をシステムとして全国的にやるとすれば、今のうちから準備をしておかないといけません。これは前々から申し上げているITシステムの問題なのですが、これは基金の積み増しとともに、管理運営面についてもご準備をいただきたいというのが1点です。
 関連ではないのですがもう1点です。今日いただいた資料の14頁から公開情報の関係のデータが出ていて、これも、今の基金事業、委託訓練、教育訓練給付の内容で、それぞれ対比表があって、いい資料を出していただいたと思います。こうやって見る中でも、基金訓練の情報開示がほとんどされていないというのが×ばかりなのでわかります。
 今度、新法でつくる制度については、受講される求職者の方に訓練先の情報をきちんと開示する。特に就職率だと思うのですが、この訓練を受けたらこのような就職率の実績があるということが、特に分かるように、是非開示していただきたいと思っています。

○松本総務課企画官 まず情報の接続の問題です。現在管理している情報は、完全なシステム化にはなっていないわけですが、新制度ではシステム化の対応をしなければいけないと考えています。その準備も早目にしなければいけないというのは、全くそのとおりです。私どももそのように準備をしていきたいと考えています。

○新谷委員 情報開示の件ですが、新法の対応についてシステム化はやっていただいているようなのですが、いまある20万件については、どのように電子的に引き継ぐのか。要するに、紙ベースで受講歴を個人ごとのファイリングをして、ファイルを持ったとしても、それを全国でどのように突合するのかの問題は残るわけです。新法になって新しい申込者がきたときに、基金訓練との突合をどうするかというのは、紙ベースではとてもできないと思うのです。私はそこの接続のことを申し上げているので、新法のほうは当然システム化していただくのですが、現行の基金訓練との接続をどう考えるかについてお答えいただきたいのです。

○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 現行の基金訓練においては、個人の受講のデータ、給付の実績のデータは管理されています。あと個人について、この人は本当にこの人なのかの同定をする、いわゆる紐付けする作業に必要な個人情報について、どこまで入力が必要なのかは検討しなければいけないと思っています。例えば雇用保険のデータのように、同姓同名、同生年月日ぐらいで同定していくのか、その辺は見ていった上で、必要なものについてはシステム化して、すぐに移行できるようにしていきたいと考えています。
 いずれにしても、若干の手作業でデータ入力をすることが、今後は生じてくると認識していまして、求職者支援制度でどれだけのデータが必要なのかを見ながら、それに合った形での準備は進めていきたいと思います。

○今野分科会長 情報開示についてはありますか。

○田畑能力開発課長 情報開示についてですが、重要なことだと思っています。新谷委員から、就職率の開示の話を出していただきました。基金制度はまだ始まったばかりですので、開示すべき就職データが蓄積されていないということで、現時点では開示できていないのですが、今後データが蓄積されてくれば、開示できる情報も増えてくると思っていますし、新しい制度の中では、訓練を求める方が簡単に情報が入手できるようにと思います。ハローワークに行っていただけば詳細なデータは入手できるのですが、ホームページに載せる情報としては、現時点ではこのような情報となっています。新しい制度でどういった情報を開示すべきか、今の公共職業訓練、委託訓練で開示している情報も参考にしながら、できる限り求職者の方、こういった訓練を希望する方が、情報が入手できるような情報提供の在り方を検討していきたいと考えています。

○大久保委員 今の新谷さんの前半の話とつながる話ですが、失業者と一口に言っても、多様な人たちがいます。例えば今回の新法で大きな対象になる長期失業者です。その人たちはどのような訓練プロセスを経て、どのようなところに就職実現できるのか。特に長期失業者に対して有効な訓練、就職支援策はどのようなものなのか。そこの分析がとても大事なのではないかと思うのです。
 あるいは、もう1つの大きな柱となる、子育てなどで一時期職業から離脱していた女性が復職するときに、どのような訓練が有効で、どのようなところに就職できるのかの分析もとても重要だと思います。
 すでに20万件の受講歴のデータが積み重なりつつあるわけですから、システム化は当然しなければいけないと思うのですが、その上で適切な分析をしてもらいたいと思います。いわゆるハローワークのキャリア・コンサルタントがどこにマッチングをするのかのときに、直感だけでマッチングされてはうまくいくはずがないので、例えばその人が製造業の生産ラインを長くやっていて、同じような属性の人たちはどの訓練を受けて、どこに就職実現できているのか。そのデータベースを見ながら、ある程度の知識を得て、それに基づいてアドバイスをしていく形になっていくのが、1つの理想かと思っています。
 そのためにも、こちらの一番の関心は、長期失業者をどうやったらサポートできるのかについてで、そこの個別分析があまりされている気がしないので、そこをやりませんかという話です。後半の話は新谷さんの活用の話なので、その辺はどうでしょうか。

○今野分科会長 どうでしょうか。

○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 就職率ということで、類型化した対外的に公表できる数字ということでは把握しているのですが、大久保委員が御指摘のように、長期失業者あるいはその人の細かい個人的な属性も含めて、そのような点について分析はしておりません。最近になって就職の全体の数も増えてきていることもありますので、それぞれの属性ごとに、どのような訓練が最も就職率が高いのかについて、分析できる点については、今後は分析をしていきたいと思います。
 ここの数字でも出させていただいているように、まだ絶対数が多くない分野もありますので、そういうことも考慮しながら、数の状況を見ながら、必要な部分について、今後分析を進めていきたいと思います。

○今野分科会長 ほかにいかがですか。

○上原委員 10月18日の日経の経済教室を読みますと、橘木俊詔さんという方がノーベル賞のマッチングの話で出ています。1つは、求職者支援制度などが典型なのかもしれませんが、あまり失業期間が長かったり、そういう部分に対する手当てが厚いと、そこにいるほうが楽なので就職しないという視点が1つあります。
 もう1つは、マッチングの問題で、企業というのは必ずしも不景気だから人が要らないというのではなくて、伸びる部分については人がいるわけです。そういう人を求める側の要求と、就職したい人たちとのマッチングがうまくいっていないのが、1つの大きな課題だと書いてありました。
 例えば地域の話がありまして、北海道や沖縄で就職活動をしても、なかなか企業が求人をしていません。そういう場合は、いくらハローワークへ行ってもマッチングは難しいわけです。だから、求職者が都市部に行ったりしないと、マッチングはできないのではないかというような、全然別の視点の課題があるのかと思います。
 もう1つは、入口がハローワークになっていますが、成功しているイギリスの例はテレビなどでもやっていましたが、街にその手の人がいて、ブラブラしている若者を、無理矢理窓口につれていくという施策をやっているとニュースに出ていました。最初の話と少し矛盾するのですが、待ちの姿勢という感じはするわけです。個人がハローワークへ行かなければ駄目なわけです。
 ところが、どこかのハローワークで聞いたら、ニートの例は本人が来ないで、両親が2人で来たという話で、話にならない世界もあるわけです。だから、そういう部分についても引き込んでいくにはどうしたらいいかという視点も、直接これに関連するわけではないのですが、ベースになる考え方としては要るのかと思います。

○今野分科会長 前半の話は一般論ですが、後半は今日のテーマでいくと、いかに誘導するかという話の一環ですかね。何かありますか。

○田中企画官 いまどうやって誘導していくのかは検討の段階だと思います。しっかりとハローワークに来ていただくためには、ニート対策、フリーター対策、自治体などと協力して、いろいろな取組みをしていますので、そういったところと、いかにうまく連携をして、引いていけるかだと思いますので、制度を転がしていくに当たって、そういう関係のある方々ともしっかりお話をしながら進めていくことにしかならないかと思っています。

○上原委員 もう1つ長期と関連するのですが、就職率が6割ということは4割の人は就職できないわけです。もう一方で、公共職業訓練の受講者は、1年経たないともう1回訓練できないという縛りがあります。そういう4割をどうするのか。大野委員が前回言っていたように、円高などで、企業環境はとても求人が増える動向ではないわけです。厚生労働省だけで解決できるのかわかりませんが、総理大臣が雇用と言っているわけで、その辺をどう考えるのかです。

○今野分科会長 厚生労働省だけでは無理ですよね。御意見としてお聞きしておけばよろしいですか。

○上原委員 はい。

○今野分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○三村委員 先ほど大久保委員が言ったデータを蓄積する問題は、非常に重要な問題だと思います。マッチングの問題は古くて新しい問題で、これは100年前から言われている問題です。労働力の形態もさまざまな形態になりましたし、就業のプロセスも多様になっているわけで、座学で研究していても無理なのです。
 ですから、基金訓練の受講者からデータを集めるとか、ジョブ・カードのデータを蓄積するなどして、どのように訓練からマッチングにつなげていくか、あるいは労働力を掘り起こしていくかを実際的に研究していく必要があります。
 労働力の問題より誘導の問題も先ほど出ていましたが、7月に引きこもり70万人、親和群155万人という報道がありました。子育てが終わって仕事をしたいという意欲を持つ層もありますが、なかなか社会的に機能しない層があるわけです。そういう層も自分の趣味だけは出かけると報道されているので、先ほどの上原委員の話ではないですが、ゲームセンター、レンタルDVDショップにジョブ・カードや基金訓練のパンフレットを置いておくとか考えてもよいのではないでしょうか。どう施策に転換したら有効なのかは、やはりデータを蓄積して、そのデータを分析するハイレベルな職業訓練学の研究機関が集約的に研究をしてその知見を施策に活かしていくシステムが必要と思われます。

○今野分科会長 もう少しちゃんと調査分析をしろという趣旨ですが、何かございますか。

○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 長期失業者だけではなく、例えば長期失業者あるいは職業経験が比較的浅い方については、現行では職業横断的スキル習得訓練コースあるいは基礎演習コースに入っていただいて、それが終わった後に実践演習を受けていただくスキームを準備しています。こういうスキームが機能しているのか、ワークしているのかどうかを評価しなければいけない、チェックしなければいけないという観点からも、それらの状況については、情報を把握した上で分析をすることは必須だと考えていますし、それらのデータについては、当然、求職者支援制度に活かしていただきたいと考えています。

○田畑能力開発課長 ハローワークに来た方だけではなくという話が上原委員からありましたし、三村委員からは求職者支援制度の案内をもっと手広くやればいいという話もありました。基金制度が発足したときに、当初は数字がどれぐらい出るかという話もあったものですから、かなり周知広報には力を入れて、いろいろな手段を使いまして、通常はハローワークになかなかお見えにならない方にも、そういった制度を知っていただくために、かなり努力をしてきました。そういった結果もあって、かなりの人に基金訓練についても、御存知いただいていると思っています。新しい制度についても、訓練の必要な方にきちんと情報が届くように、周知広報の在り方は心掛けていかないといけないと考えています。

○今野分科会長 いまの話の中で、基礎的な部分は基礎演習コースでやって、もう少しレベルアップすると実践演習コースでやる仕掛けになっています。でも、例えば長期失業者、ニートというのは、そこに乗らない人がたくさんいそうな気がするのです。毎朝起きられないとか、9時から5時までいられないとか。それは、今は自立塾みたいなものがやっているわけですが、そういうのは新しい恒久制度が出てきたときにどうなりますか。
 つまり、失業保険が切れてしまった人というのは、そこまでで就職できなかった人ですから、いろいろな人がいるわけです。そうすると、そういうことがすごく重要ではないかという気がするのですが、そこはどうでしょうか。

○伊藤キャリア形成支援室長 今会長からお話のあった点に関しては、現行の基金訓練スキームの中でいうと、合宿型若者自立プログラムにおいて、他の基金訓練と同様の座学、実習、職場体験といった要素に加えて、今もお話のあったような、より基礎的な生活習慣、コミュニケーション能力の形成を目指しての生活訓練的な要素を取り入れていますし、それ以外にも合宿ということで、生活場面を活用したトレーニング等、直接の認定要件の対象となる課程の外でも、事実上かなり手厚いサポートをしている状況です。
 合宿型に関しては4月からスタートしたばかりで、先月下旬くらいから修了者が少しずつ出てきている状況です。まだこういった場で正式にご紹介できるような、業務統計としての就職率は出てきていないのですが、既に修了者が出ているところに個別に照会する中で、終了直後の就職決定状況を把握する中では、もともと母数が少数ですが、8割ぐらいの方が就職しているというデータも出てきています。この辺りは、今後更に今日御議論いただいているような観点から分析していきたいと思っていますが、こういった社会的な機能が通常の人材育成を超えた機能として必要であるという認識は、もともと我々は持っておりますし、断片的ではありますが、今申し上げたデータから裏付けられていると思っています。
 あと、こういった機能を、まさにこの場で御議論いただいているような求職者支援制度という枠組みの中で位置づけていくのか、それと関連づけながら付帯的な別のスキームの中で、こういったニートあるいはニート的な課題を抱える方に対する支援の専門性が十分に担保できるような、別枠組のスキームの中で一体的に運用できる形のほうがより望ましいのか。そこはいくつかの選択肢があり得ると思っています。
 これらの点に関しては、この分科会における求職者支援制度そのものにかかわる基本的な考え方の議論も十分に踏まえた上で、今申し上げたような機能をどのように位置づけていくのか。その中には、先ほど上原委員から御指摘のあったような、黙っていても来ないような層をどう結び付けていくのか、ニート支援の代表的な拠点である地域若者サポートステーション事業の中では、すでにアウトリーチ事業ということで、高校や保護者からの申出を踏まえて、自立が期待されるのだけれども、なかなか足が前に進まないといった層に対する能動的な働き掛けも行いまして、そういった層がサポートステーションに行き、やがてはハローワークに来て、就職あるいは訓練受講に結び付いている事例も、まだ少数ではありますが生まれてきています。
 そうした、いわば入口の部分での能動的な支援、それから訓練等の体系的なスキームに合わせて、分科会長がおっしゃったような生活訓練的な要素を、どのような形で仕込んでいくのか。こういった課題ではないかと思っていますので、分科会の御指摘、御意見も十分に踏まえた上で、実効性のある全体スキームをよく整理していきたいと思っています。

○大久保委員 今のお話にも関連するのですが、24頁に基金訓練の実績表があります。就職率が全体で62.9%、回答率が78.3%ということです。この調査の中では、就職率が62.9%で、つまり残りの37%の人たちが現在どのような状態にあるのかは、何か聞いていないのでしょうか。つまり、引き続き求職活動を続けているのか、もう諦めてしまっているのか。そこが1つは気になります。
 回収率が78.3%なのですが、回答に応じなかった人のほうが、さらに不安な状態だと思うのです。それらの就職になかなか結び付かなかった人たちというのは、訓練を3か月とかやっている中で、おそらく某かの課題を抱えている求職者であることが見えているのだと思うのです。その辺りをどのような形で、どこかで1回しっかり分析してみるかという辺りも、先ほどの話の長期失業者の問題と同じですけれども、別途リアリティを持っている人を含めた分析あるいは研究会を立ち上げるなどして、しっかりとやったほうがいいのかと思います。

○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 とりあえずいまの現状を申し上げますと、3か月後の就職率の把握の際に、就職していない方についてその後再度訓練の受講を希望しているのか、あるいは就職活動中なのか、その就職活動はハローワークを中心にやっているのか、ハローワーク以外を中心にやっているのかについて、アンケートの形で答えていただく形にはなっています。
 ですから、当然ハローワークをお使いになっている方については、引き続きハローワークでの支援を受けていただく、あるいは訓練を希望される方については訓練の受講斡旋を行うことになっていますが、その他の方について、3か月を超えた方について、現状においては何らかの取組みをすることには至っていませんし、それ以上の情報は現時点では把握していません。

○今野分科会長 いま大久保さん、三村さん、新谷さんからありましたが、結局は政策評価をやる仕組みを作らなければいけないのではないかと。それを分析しよう、あるいは分析をするような研究会を作れ、分析をするような研究所があるのではないか、このような言い方をされたのですが、いずれにしてもそのような御議論が多いので、7の「その他」の辺りに、そのような点に関する記述を入れることが必要かなと思うのです。具体的にどうするかは今後考えるにしても。

○小野職業能力開発局長 しっかりと政策のフォローをして、それを次の改善に結び付けていくということで、実態の分析は大事だと思っています。
 それから、先ほどジョブ・カードの話が出ましたが、ジョブ・カードについて、平成20年度から始まって蓄積してきましたので、そういう方が就職して定着しているのかも含めて、JILPTで調査も含めて研究をやっていただいていますので、この問題もそのような形できちんとフォローしていきたいと考えています。

○高橋委員 前回の会議で学卒未就業者向けのコースの在り方について問題提起をさせていただいたのですが、その観点で1つお願いがあります。今年度から基金訓練で、学卒未就業者向けのコースをやられていると思いますが、実際にやられている実施機関の皆様に対して、全数調査ではなくサンプル調査ということで結構ですが受け入れられてて、学卒未就業者コースを今後恒久制度の下で行うとした場合に、学卒未就業者だけでコースを行うことについてどう思うのか。すなわち、一般のその他の方々と一緒にやらないことについて、御意見を聞いていただいて、それをフィードバックしていただければありがたいと思います。
 2点目は公開情報に関してです。今回資料の14頁以降にありまして、改めて見させていただきました。基金訓練は、基本情報はほかのものと同じように○が付いていますが、基本情報ですら、ほかのものとはだいぶ情報量が異なるというか、かなり簡易な情報に留まっているので、できる限り既存の制度と同じくらいの情報量を確保していくことが望ましいと思います。先ほど新谷委員がおっしゃられたことに関係して言えば、就職率だけではなくて、どういった業界、どういった業種に、主として就職されているのか。そういったことも含めて、なるべく情報量を確保していただくように努力していただいたらいいのではないかと思います。
 最後に非常に細かいことなのですが、資料28頁に、「基金訓練について寄せられた意見・要望等とその対応について」という1枚ものがあります。訓練受講者の意見を踏まえて、制度をよりよくしていくことは非常に重要な視点だと思うのですが、私が違和感を感じたのは、真ん中に「出席等の扱いについて」というのがありまして、下から2番目に「病気など突然の出来事で休んだときには、欠席扱いにしないでほしい」という要望に対して、それを受けて、本人の疾病・負傷の場合を追加したという運用改善が示されていますが、これから就職を目指していく方が、病気だといって、それを欠席扱いをしないということでいいのかどうか。健康管理も含めて、取り組んでいくということではないかと思いますし、この辺りはこのまま引き継いでいってほしくないというのが、私の個人的な意見です。

○今野分科会長 ご意見の中でいちばん最後ですか、どうですか。

○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 未就職卒業者のコースについては、従来の基礎演習コースを活用したのも専門コースを受講している場合、あるいは通常の基礎演習コースを受講している場合の両方のケースがあると思いますので、それぞれ御指摘、御要望に基づいて、調査を実施させていただきまして、御提供させていただければと思います。
 先ほど田畑からも申し上げましたように、基金情報の開示情報の充実については、できる部分について、公共職業訓練との並びも考えつつ、開示できるように努力していきたいと思います。
 最後の病気の点ですが、確認書類としては医師の診断書を出してくれということにしていまして、本当に出席が難しいものについて、どこまで自己責任で見るのかという部分もありますが、診断書が出るぐらい、医者にかからないと駄目な程度という部分については、救済しても構わないのかなということで対応させていただきまして、求職者支援制度でこれを導入するかどうかについては、再度御意見いただいた上で判断したいと思います。

○新谷委員 前回の論点だったので、最後に申し上げようと思っていたら、いま高橋委員から出していただいたので、新卒の学卒未就職者の取扱いについて1点申し上げます。御承知のとおり、この春も新卒の方々の就職は大変厳しかったのですが、来年の春はもっと厳しいと言われています。
 政府も、今度の経済対策で、新卒対策を盛り込んで、さまざまな助成金などを作っていただいているのですが、新卒の問題というのは、これからの長い職業生活を考えたときに、学校から職業へのプロセスがうまくいかなかった方に、きちんとしたケアをしていかないと、日本の将来に禍根を残すと思っています。
 そういった意味では、いろいろな施策を準備して、総力戦で取り組んでいく必要があると思っています。
 今回、新卒学卒未就職者のコースは独自に設けていただいているのですが、これは選択肢の1つとして、前も上原委員がおっしゃったように、中小企業はそんなことないのだから、そんなに甘やかしてはいけないというのは、確かにごもっともなことなのですが、例えば自分では介護をやりたい、医療をやりたいということがはっきりと固まっている方は、そちらのコースにいっていただければいいのですが、職業に就くに当たって準備が必要だと感じている方は、新卒未就職者向けの準備のコースを経て、そこから労働市場に入っていただくという準備が必要ではないかと思っています。
 もっともそういう準備が要らないほど、新卒者の就職状況がよくなって、もうこのコースは発展的に解消してはどうかという時期がくれば、改めて論議をすればいいと思うのですが、とりあえず今のような状況の中ですと、枠組みとしては新卒未就職者だけのコースを設けていただきたいと思っています。もちろん高橋委員のおっしゃるように、いまの状況の評価というのは当然やらないといけないと思っていますので、それはどのような形で評価するかというのは別途考えたいと思いますので、それは全然異論のないところですが、枠としてなくすというのは、私どもとしては賛成できかねるところです。
 それと欠席の取扱いについても高橋委員からありました。随分厳しいなと思ったのですが、今の運用ですと、診断書の提出を求めるということですから、診断書も御承知のように、今非常に高くなっていまして、5,000円ぐらいかかる医療機関もあります。そうすると、求職中でも、失業されている方に5,000円の追加負担を求めるというのは、かなり酷な運用だと思っています。それでも出さないといけないほど、重篤な病気であれば、出していただくということなのかと思いますが、そこの辺の運用も、置かれている環境を踏まえて、柔軟な対応を是非お願いしたいと思います。もちろん懸念されるようなモラルハザードの問題も、当然防止しないといけないと思っていますが、それは承知の上で、意見として申し入れたいと思います。

○今野分科会長 ほかにいかがですか。

○大野委員 この前にグローバル化していく国のことを申し上げて、国内の雇用の量が少しずつ減っていく恐れがあると思っています。逆に、グローバル化していって、海外でオペレーションをやっていく企業は、どういう人たちを求めていくかというと、海外で働いている日本人も重要な人材だと位置づけていくわけです。実際にJICAなどで働いていたことのある人たちを、アフリカなどで働いた経験のある人を、積極的に採用している商社もありますし、おそらくメーカーなども、そのようにこれからはなっていくと思います。日本人の雇用が少しずつ減っていくと思いますが、逆に全体としては増えていくのです。その中の貴重な戦力として、現地のことがよくわかっている人たち、しかもそれは日本のカルチャーを持ちながら、現地のことがわかっている人たちというのは、非常に貴重な戦力になっていくと思います。
 話は少し違うのですが、ついこの前に、雇用に関する雑誌を読んでいたときに、ある意味で日本の窮屈な社会が嫌で、オーストラリアに行ったらすごく適応して、こんなに自由に伸び伸びできる社会があるのだということで、そちらではとてもいい仕事をやれる環境があると言っている人がいたのです。たぶん日本の成熟した社会に対して適応感のない人たちも、たぶんいるのだろうと思います。
 その中で、海外で働く、あるいは海外でその仕事をする、いろいろな貢献をするということをしていく中に、大きな本人の職業人生が開けていく可能性があるような気がしています。日本の若い人たちは、かなり内向きになっていると言われていますが、ある程度のパーセンテージで、外で活躍できる人たちは相当いるのではないかという気がしていますが、そういった人たちに対する訓練の場があり得ないかどうか。適切な意見かどうかわからないのですが、申し上げた次第です。

○上原委員 私も全く同感です。だから新谷さんが言うのもよくわかるのですが、アメリカ型ではないけれども、入口一括新入生で入るのではなくて、2、3年は何が適しているのかを考える期間も必要かもしれません。
 今大野さんが言っているように、日本は間違いなく雇用環境はシュリンクしているわけで、伸びるところはどこかといったら国によってばらばらですが、アジアは間違いなく伸びるわけです。それだったら、伸びるほうの雇用市場に、どのように対応していくのかを国として考える必要があると思うのです。伸びないところにお金を払って、訓練をして、あとから出てくる成長分野に振るのはそれで方向として正しいわけですが、もっと伸びて、雇用の間に合わないところに、不足しているところに人を送っていくことも、大きな戦略だと思います。そういうことを国がどのようにやれるのかはよくわかりませんが、議論する必要はあると思います。

○今野分科会長 お2人がおっしゃられたのは、いまやっているテーマよりも次のテーマにぴったりなので、少し横に置かせていただいてよろしいですか。
 私も一言くらい言わせていただきますが、今日のペーパーで、例えばちゃんと訓練をしたら、訓練の達成水準がわかるようにしておくことが必要だとか、あるいは、受講者が個々の途中段階でもどういう成果や達成度になっているかということもきちんと把握しなければいけないとか、あるいは、先ほどの話では訓練のパフォーマンスを結局就職率で見るとか。こういう3つぐらいのお話を聞いて私が思ったのは、前も審議会で出たし、私も前に言ったのですが、就職率だけでいいのかという問題がいつもあって、労働市場が悪くなったら就職率は落ちる。欧米などの訓練機関の評価の事例を見ていても、大体、アウトプットとしての就職率と訓練成果としてのプロセス評価との組合せで、全体を評価するという形に必ずなっているのです。そうしないと、就職ばかりがうまくいくように、当然、訓練機関は動いてしまうのです。
 ですから、バランスをよくするには、訓練でどれだけ能力が上がったのかということも少し考えなければいけないかなと。そうすると、先ほど私が言ったほかの2点との関係なのですが、どういう知識、技能水準を習得するのかといったときに、それをどう測るかということがあるわけですよね。そう考えると、既に職業能力評価基準みたいなものを持っているので、そういうものとうまく連携しながらできないものですかね、という話なのです。
 今の職業能力評価基準のままでは使えないのかもしれませんが、何かそういう視点をいつも入れておいて、全体の制度設計をしていっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。あとは考えていただければいいのですが、何か、とりあえずご意見があればお聞きしておきます。いいですか、私の勝手な言いっ放しで。

○松本総務課企画官 まずは御意見を賜ったということで、また検討させていただきたいと思います。

○今野分科会長 はい。それでは、次の議題に行きましょう。もう1つ大きい議題がありますので、2つ目に行きます。今回のテーマはまだ引き続き議論がありますので、またそのときにでもご意見を言っていただければと思います。2番目は「第9次職業能力開発基本計画について」です。お願いします。

○井上総務課長 資料2-1から2-3で説明をさせていただきます。まず資料2-1は、「職業能力開発についての検討の視点」です。前回、第9次の基本計画の第1回目のご議論、総論にわたるご議論をいただいたところですが、今回から全3回にわたりまして、いわば各論の部分を一通りご議論いただく、その第1回目に際してのたたき台として資料2-1をご用意しているものです。
 資料2-2は、この参考資料です。前回、各論点にわたります資料全体をお出ししておりますが、それは今日お手元にあるラベンダー色の資料です。これは毎回こういう形で置かせていただきたいと思いますが、その資料の中から本日のテーマに関係する部分を抜粋いたしまして、さらに若干の新しい資料を加えて構成しております。
 資料2-3は前回における主なご指摘です。
 資料2-1をご覧ください。「職業能力開発についての検討の視点」です。前回、たたき台でいくつかの論点を挙げさせていただいたうちの大きく2つの論点を今回整理しております。その1つがその枠で囲んでおります「1 成長が見込まれる分野・ものづくり分野における職業訓練の推進」です。1をさらに(1)、(2)という形で分けております。(1)が成長が見込まれる分野の人材育成です。
 1つ目の○ですが、今後、成長が見込まれる分野の発展を確実なものとしていくには、求人ニーズに即した人材を多様な担い手、これは国もあれば、都道府県、民間の教育訓練機関、企業等々さまざまあります。そういった多様な担い手によって人材を供給することが重要で、そのために戦略的に施策を打ち出すことが必要となっているのではないかということです。ここで「新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)」の中から今後成長が見込まれる分野に関する記述の部分を抜粋して*で付けております。
 次の○ですが、ここ以降は今後の進め方という部分です。成長が見込まれる分野、その中でも新分野については、国は産学官の有識者の方の参集をいただき、そういった新分野における人材ニーズの把握と、職務内容等についての必要な基礎研究に取り組む必要があるのではないか。
 次の○ですが、それに続きまして、その基礎研究が終了した分野については、訓練カリキュラムや指導技法の研究開発を行い、開発した訓練カリキュラム等については、広く職業訓練を行う主体において活用できるインフラとして、その普及を図っていく必要があるのではないかということです。
 次の○です。これは先般、指導員の人材養成の在り方についてご議論いただき、方向性を出していただいたところですが、教える人材と、そういった意味での職業訓練のインフラということで、ハイレベル訓練、次の頁ですが、スキルアップ訓練について適切に実施していく必要があるのではないかということです。
 次の○です。これは、前回発行されたということでご紹介いたしました民間教育訓練サービスに係る新たな国際規格ISO規格、これの発行を踏まえまして、訓練について質を保証する仕組みを構築することが必要ではないかと、そういったISO規格への適合性を確保するためのガイドラインについて、早期に検討することなどが必要ではないかということです。
 次の○は公的な職業訓練です。公的な職業訓練と申しました場合には、施設内あるいは委託といった形を含めた公共職業訓練、現在行われております基金訓練、あるいは現在、制度検討をいただいております求職者支援訓練などが含まれてまいりますが、そうした公的な職業訓練の実施の主体として、民間教育訓練機関が重要な役割を担うのではないかということです。
 (1)の最後の○ですが、成長が見込まれる分野における職業訓練については、大学等と連携して効果的なカリキュラムを開発していくことも考えられるのではないか、というものです。
 続きまして、1の柱の大きな2つ目のところです。(2)ものづくり分野の人材育成です。
 1つ目の○では、我が国の経済社会が持続的な発展を続けるためには、我が国の基幹産業であり国際競争力を有するものづくり分野を支える人材育成が重要ではないか、ということです。
 次の○では、ものづくり分野の人材育成、訓練の特徴としまして、訓練の実施に当たって高額な設備を要するといったような特性があるということに鑑み、なかなか個々の企業あるいは民間教育訓練機関において実施することが困難というようなこともあることから、引き続き国自らが訓練を実施するといった取組みも必要ではないか、ということを書いております。
 次の○ですが、ものづくり分野における人材育成を推進していく際にも、最先端の技術革新にも対応し得る人材を育成する、そういった観点から訓練カリキュラムなどの訓練のインフラ整備が重要ではないか、さらに、訓練が時代のニーズに応じたものとなるよう、訓練カリキュラム等を不断に見直していくことが必要ではないか、ということです。
 3頁の○ですが、最先端の技術革新に対応し得る人材育成のための職業訓練のみならず、ものづくりの基本となる技能を習得するための職業訓練が、引き続き重要なのではないか、ということです。
 そして、ここの最後の○ですが、技能者を育成する職業能力開発大学校・短期大学校・ポリテクカレッジと工科系大学、高専との連携を深め、それぞれの特長を活かすことができる職業訓練、あるいは教育というものを実施していく必要があるのではないか、ということを書いております。
 4頁をご覧ください。本日ご議論いただきたい大きな柱の2つ目です。枠囲みをした「2非正規労働者等に対する雇用のセーフティネットとしての能力開発の強化」です。ここでは大きく3つに、(1)、(2)、(3)という形で分けております。1つ目が(1)雇用のセーフティネットとしての職業訓練の在り方です。
 1つ目の○では、雇用失業情勢の変化に的確に対応するため、雇用のセーフティネットとしての離職者訓練を実施する、それと同時に、雇用保険の受給資格を有さない求職者等の方々についても、新たなセーフティネットとしての職業訓練を実施する支援が必要ではないか、ということです。
 2つ目の○ですが、これは先ほどのご議論でも出ておりましたが、公共職業訓練に加えまして、新たなセーフティネットとしての求職者支援制度に基づく訓練、これらの訓練の実施分野や規模等についての調整を図り、計画を策定するといった機能を果たすため、中央と地方に労使関係者、あるいは関係行政機関などが入った協議会を設置し、これを活用して職業訓練が企業と地域のニーズに合ったものとしていくことが必要ではないか、ということです。
 次の○では、訓練が時代のニーズに応じたものとなるよう、訓練の内容を基本的に規定いたします職業訓練基準の見直しを行うとともに、PDCAサイクルの活用によって訓練カリキュラム等を不断に見直していく必要があるのではないか、ということです。
 その次の○は、こうした公的な訓練の実施に際し、民間教育訓練機関の活用、民間教育訓練機関によって実施していく際には、効果的な訓練の実施のためインセンティブ方式を活用し、あるいは、これも先ほどのご議論で出ておりましたが、訓練の受講者の選択に資するような情報提供を行っていくことが必要ではないか、ということです。
 (1)の最後の○ですが、訓練受講者の早期かつ円滑な再就職を促進するために、訓練受講前、受講中、受講後のそれぞれの段階において、必要なキャリア・コンサルティングを行うとともに、職業安定機関が実施している再就職支援措置との連携強化を図っていく必要があるのではないか、ということです。
 大きな2つ目、(2)第2のセーフティネットの創設です。これは、現在ご議論いただいております求職者支援制度の関係です。ここの内容につきましては、(2)の記述は、この求職者支援制度のご議論の内容を今後お取りまとめいただく段階で、その内容を反映したものにしていきたいと考えているところです。
 5頁です。5頁の3つ目、(3)ジョブ・カード制度の普及促進です。1つ目の○では、入口でのキャリア・コンサルティング、企業実習と座学を組み合わせた訓練、こういったことから出来ておりますジョブ・カード制度につきまして、これまで約30万人の方がジョブ・カードを取得するといった実績になっております。このジョブ・カード制度が職業能力形成機会に恵まれなかった方などにとって、有効なツールとして機能していると評価できるのではないか、ということが1つ目です。
 2つ目の○ですが、そうしたジョブ・カードのこれまでの普及状況、あるいはジョブ・カードのそうしたツールとしての機能発揮ということもあり、「新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)」においては、平成32年(2020年)までの目標として、「ジョブ・カード取得者300万人」ということが設定されておりますが、ジョブ・カード制度の活用場面を広げるための取組みとして、公共職業訓練受講者等々、幅広い層への普及を進めていくことが必要ではないか、というものです。
 ここの最後の○です。第2のセーフティネットである求職者支援制度、あるいは職業訓練と連携した能力評価のシステム、現在、内閣府を中心に検討されておりますキャリア・アップ戦略、キャリア・ダイン、こういったものが入ってくる部分ですが、そうした関連する制度においてもジョブ・カードをツールとして活用することが期待されるのではないか、ということを整理しております。
 続きまして、資料2-2についてご説明申し上げたいと思います。ここでは、前回お出しした資料を抜粋したものに、今回新たに資料を加えているということで申し上げましたが、今回新たに資料を加えている部分について申し上げたいと思います。
 2頁をご覧ください。求人数に占める産業別割合の推移です。3頁は、職業別有効求職者数割合の推移です。4頁は、職業別有効求人倍率の推移です。5頁は、右のほうが毎年度作成します公共職業訓練計画、公共職業訓練計画自体の中では分野別の設定はされていないのですが、それによって実施した各年度の職業訓練の実績を訓練職種別に見るとどうなるかというのが右のほうです。左のほうは、先ほどありました求人数に占める産業別割合の推移です。職種と業種ということで、完全に対応するわけではありませんが、一定比較できるように整理したものです。
 10頁をご覧ください。平成21年度の公共職業訓練の実施状況です。これは、その訓練の実施主体であります雇用・能力開発機構、都道府県、それから訓練の種類は、離職者訓練、在職者訓練、学卒者訓練、これをクロスした形で受講者数、就職率を整理しているものです。
 30頁をご覧いただきたいと思います。ハイレベル訓練(案)のカリキュラムイメージ(案)です。この資料自体は、先般、指導員訓練についてご議論いただいたときにお出ししているものですが、前回出していなかったということでご紹介させていただきます。
 33頁です。PDCAサイクルによる訓練カリキュラムの不断の見直しです。これも、以前にご覧いただいている資料ではありますが、新たに加えたものということです。
 39頁から43頁です。これは、前回はジョブ・カードの様式について記載欄を空白のような形でお出ししておりましたが、今回、実際の記載例を加えた形でお出ししているということです。資料についての説明は以上です。

○今野分科会長 ありがとうございました。それではご意見、ご質問をお願いいたします。
 その前に、先ほど大野さんと上原さんからのご意見があったので、その点について何かご意見はありますか。言ってみると、雇用の成長分野を政府は新成長戦略でこういうことを書いているけれども、それ以外にこういう分野があるぞとお二人が話したと、そういうことかなと思うのですが。突然で難しいですか。

○井上総務課長 いいえ。新成長戦略も、資料2-1の1の(1)の*で抽出した部分ですが、ここが新成長戦略の中でいちばん成長が見込まれる分野に関連した記述となっております。このほかにも、グリーン・イノベーションですとかライフ・イノベーションですとかアジア戦略といった形で、さまざまな分野が取り上げられております。それと同時に、新成長戦略では、おそらくそういった新しい部分が強調されたため、従来から重要な基幹産業であったものづくりの分野があまり出ていないというところがあります。そのものづくりの分野を(2)の所で特筆する形で挙げているということです。私どもとしては、新成長戦略に示されたような新分野を含むものづくり分野、そうしたところを含めた人材育成が必要と考えております。

○今野分科会長 よろしいですか。まだ何か言いたそうですよね。

○大野委員 たぶん、今のお話も含めてですが、どのぐらいの雇用量がそこに生まれてくるのかというそこのところが、やはりある程度、量的な規模観みたいなものが出てくる必要があるのではないかという気がいたします。基幹産業と新成長産業というのはおそらく、新成長産業は将来的に伸びていくのは確実なのでしょうけれども、出だしは遅いのですよね、通常は。量として雇用の量がグッと増えていくのは、やはりある程度マーケットが非常に膨らんできてからの問題ですから、そこの端境期みたいな、助走期間が相当長いという場合があるのだと思うのです。そういうものも含めて、量的な規模観でどのぐらいを達成していこうという、そこのところがやはり必要なのかなという気はいたします。

○新谷委員 関連してよろしいですか。

○今野分科会長 どうぞ。

○新谷委員 資料の組み立てを2つに分けていただいて、非正規を中心とする訓練とセーフティネットとしての訓練と、成長が見込まれる分野の訓練の促進ということで、論点を2つに分けていただいてわかりやすくはなったのです。ただ、今の厚労省の説明を聞いていて、実は経産省の「産業構造ビジョン」を横目に見ながら聞いていて、いかにギャップが大きいかということをつくづく感じました。
 前も申し上げたように、政府として我が国の成長力なり競争力をどう高めていくかというのは、今年6月に政府が新成長戦略をまとめたわけですが、産業育成を担っている経産省が成長が見込まれる分野にたぶん予算を投入して産業育成をやっていくと思うのです。そのときにここに書いてあるような、環境とか医療とかあるのですが、いま大野委員がおっしゃったように、そこに必要とされる人材の現状と将来について、要するに産業人材というのは、どういう人材が何人ぐらい必要とされていて、今のギャップがどれぐらいあって2020年の新成長戦略のターゲットの時期にはこれくらいになるという分析を経産省のほうはやっていると思います。この論点ペーパーに書いてあるように、*で3行か4行ぐらいの分析ではなくて、やはり成長する分野としては一体どれくらいの雇用の増加が見込まれて、そこに必要とされる人材像というのはどういうものなのか、それに対して訓練をどう施していくのか、その訓練は国が、もちろん厚労省がやる部分がありますが、それは前回申し上げたように、企業がやる部分はどこで、文科省がやる部分はどこで、それと公共職業訓練でやるものはどこでと、こういう役割分担の中で今回の提起がないと、公共職業訓練だけポンと抜いてきても新成長戦略の中での位置づけというのは、全然見えないと思うのです。そういう視点が全然ないものですからギャップが非常に大きいなと感じた次第です。
 前回申し上げたように、離職者訓練の重要性は当然ですがそういった全体像の中で今回の第9次の今後5年間の計画をどう立てていくか、それが我が国の成長性なり競争力にどう資するかというところで、こういう今日いただいた資料も、毎年毎年出てくるような現状の資料ではなくて、長期のビジョンを語れるような資料がないと、実績がどうのこうのという過去の延長線上で論議する話ではないと思いますので、そこの資料をきちんと押さえていただいて作っていただいたほうが、今後の第9次基本計画という中期ビジョンの策定に資するのではないかと思っております。

○今野分科会長 ところでその経産省の資料は、どういう人材がどの程度必要かということは分析してあるわけですか。

○新谷委員 参考に申し上げておくと、例えば環境エネルギーなどですと、2007年には29万9,000人いるのですが、これが2020年の段階ですと66万1,000人に、36万人の雇用増が見込まれるとあります。また、先端分野などですと、これはロボットとか宇宙の分野ですが、これは56万人に対して119万人に増えるという分析をしているのです。経産省は産業人材室という部署があって分析をされていると思うのです。前回申し上げたように、その辺の経産省の産業育成というミッションのところと、我々の人材育成というところのリンクをどう考えるかというところをきちんと押さえておかないといけない。能力開発の視点のブレイクスルーをしないと、過去の延長線でこれを積み上げていくのではなくて、成長戦略を政府が打ち出したわけですから、省庁が、縦割りではなくて、やはり一体となって人材育成をやっていく必要があると思います。

○今野分科会長 その計画に、今おっしゃられたのは人数なので、どのような人材がどの程度必要かという分析もしているのですか。

○新谷委員 たぶんあると思います。今持っているのはポンチ絵の簡単なものですが、大部のビジョンであり、本冊はものすごく分厚いものが作ってありますので、その辺の連携がどうなっているかというところをお聞きしたいわけです。

○今野分科会長 どうですか。

○井上総務課長 国全体として、各省が連携した形でどのように人材育成を進めていくかという全体像については宿題としていただいておりまして、現在、整理しております。経産省の出しているビジョンにつきましても、その中で今回の第9次計画との関係性について整理して、次回以降、お出ししたいと思います。

○今野分科会長 ほかにいかがですか。その前にちょっといいですか。一般論で聞いてください。産業が伸びたときにどういう人材が増えるかといったときに、各産業のアクティビティと人材のニーズとの関係について、きちんとしたデータを持っている所などはないと思うのです。だから、経産省も含めてそういうデータベースはどこもできていないと思うのです。だから、こういうアクティビティをとったらこういう人材ニーズと関連するという、一種の何ですかね、人材ニーズのきちんとしたデータベースがない。だから、たぶん経産省も。

○井上総務課長 いま分科会長がご指摘いただいた点、実は以前、そういった国全体を横断して、業種を横断して、それぞれの業種でどれだけの雇用創出なりが可能かということを定量的に出してみようという話もあったのですが、それはなかなか結果を結ばなかったというようなところもあります。私どものほうも、いろいろと制約がありますが、先ほど新谷委員のご意見のあった部分は、それを前提としながら整理させていただきたいと思います。

○大久保委員 資料2-2の2頁に「求人数に占める産業別割合の推移」というのを出していただいているわけです。直近の平成21年度の比率がそこに出ているわけです。先々どのような見通しになるかということもあるのですが、少なくとも現在、こういう事実があるわけです。1つは、こういう求人数に占める産業別割合をベースにしながら、それぞれの産業において今後どのような人材が必要になってくるのかとか、どのような技術が必要になってくるのかということをしっかりと整理する、ということがまず基本線になければいけないのではないかと思います。成長が見込まれる分野というように政府の新成長戦略で出しているのは、いわゆる産業的に支援する、その中のどこにフォーカスをするのかという話だけです。それだけでは、職業訓練の計画としてはたぶん不十分だと思います。
 また、ものづくりは基幹産業として非常に重要であると前回の中の指摘にもあったわけです。それを否定するつもりは全くないのですが、一方ではやはり9.4%の雇用吸収ですから、現在、就業推移率も17%ですから、それ以外のところがずっと職業訓練でそれほど十分に練り上げられずに、ものづくりは得意だけれども、ほかは得意ではありませんという状態を脱しなければいけないことに対しても、それはあまりしっかりした考え方がされていないというか、全体的に言うと、古くさいという印象を私は受けるわけです。
 製造業の分野においても、1つは環境とかエネルギーという問題は非常に重要で、環境が非常に重要になってきている中で、昨日も小平の訓練、総合大に行ってきました。訓練コースのそれぞれのところで、環境に適応する分野の卒業研究を各自がやりはじめているわけです。ああいうものを組み込んでやっている、それを取り入れてやっている人たちは、就職はやはり圧倒的に引く手あまたです。みんな就職していった。つまり、製造業の領域においてもそういう変化に直面しているわけですから、中身も変化させていかなければいけませんし、製造業においてこそ、まさしくアジア戦略というのは重要になっているわけですから、それへの対応をしていかなければいけないということです。
 旧来の製造業の人材育成をやるのではなくて、次の製造業の時代に必要な人材育成をやるということが大事なわけです。その辺り、もう少ししっかりときちんと考えていただきたいと、総論的にちょっと物足りなさを表明しておきたいと思います。

○今野分科会長 何かお聞きしておけばいいですか。何かありましたら。

○井上総務課長 いま貴重なご指摘をいただきまして、言ってみれば、たぶん新しい芽の部分だと思いますので、定量的に整理することはなかなか難しいかもしれませんが、おっしゃられたような、ものづくりにおいても新しい芽なり新しいトレンドが出ており、それに対応していくことについて整理したいと思います。

○大江委員 私も、いま大久保先生が言われたように、産業別の視点というか、それが少し薄いというか。私は全体のことはよくわからないのですが、建設関連で言いますと、ここにも、産業就業者で言うと8.8%、500万ほどいるわけです。しかし、実際は求人とかそういうところになかなか数字が出てこない。しかし、投資もどんどん減って、就業人口もどんどん減っているのです。いま、将来的に人材が枯渇して、結果として技能が継承されなくなるという事態が危ぶまれています。ここをどうするかということは、私たちの分野でも相当議論があるのです。そういう視点から言うと、この産業別の、要するに成長が見込まれる分野と、ものづくり分野というのは成長が見込まれない分野かもしれないのですが、その中で産業別の分野のことを少し、漁業にしても農業にしても林業にしてもそうなのですが、もう少しきちんと位置づけられて、技能継承ができるようになるということが大事なのではないかと考えているのです。

○今野分科会長 もう1人、新谷さん。

○新谷委員 いまお二方から製造業、ものづくりの話が出たので私のほうも意見を申し上げます。確かに製造業では産業別の就業者の割合とか新規の求人の割合はそんなに高くありません。ところが、日本の貿易統計は財務省から出ていますが、財務、サービスの中で産業別に占める割合から申し上げると、日本の輸出高の9割以上が実は製造業で担っているのです。ですから、外貨を稼ぐ産業はどこかと言うと、いまの日本の構造でいくと、それは製造業しかないのです。だから、そこのところも実は視点として焦点を当てておかないと、就業人口の割合がこうなのだからどうだこうだという論議とともに、それが担っている産業がどういう位置づけにあるかということも、是非検討の中に入れていただきたいと思っております。

○高倉委員 関連で、「産業構造ビジョン2010」の冒頭に何が書いてあるかと言うと、「自動車中心の1本足打法から成長5分野の八ヶ岳構造へ」というのがボンと出てくるわけです。というと、自動車はいままでご苦労さんと、ものづくりはいままでご苦労さんと、今度はもう成長分野でやりますから、というようにもとれるわけです。中をよくよく見てくると、既存のものづくりに対する話はあまりないわけです。間違っていけないのは、大野さんも少し言われましたが、新成長分野というのは、それは今後望めるのですが、やはりものづくりというのをベースに置きながら、そして新たに見込まれる分野もプラスアルファでやっていくというのがまずなければ、これは絵に描いた餅になるわけです。
 そういう意味ではそのように感じられるような文言が少し入ってきているのですが、まずベースはそこを押さえておいてもらわないと、これはいかんなと。それで、ものづくりだってまだまだ成長分野なのですよ。成長するのですし、いま先生が言われたように環境だって、自動車産業だって電機産業だってそうです。環境ビジネスなども相当のノウハウを持っているわけですよ。だから、それ自体がまた自動車産業の中で、電機産業の中でも成長していくと思います。いままでとは違う、何か新しいものだというイメージは経産省などにもあるのです。地方自治体にもあるのです。だから厚労省は、雇用の問題に関わってきますから、是非その辺はしっかりと発信をしていただきたいという要望です。

○今野分科会長 大久保さんの発言は、私はこのように思っています。最近の厚労省の職業訓練政策の動きを見ると、例えば基金訓練もそうですが、全体的な動きは、訓練をするという実施機能は一部担うけれどもそれ以外に、インフラ整備というか、例えば人材をきちんと指導員を育成しようとか、あるいは関連の情報整備をきちんとしようとか、訓練をする実施機関に対して支援をきちんとしようとか、あるいは民間にいっぱい預けるので、トータル・コーディネーター機能でしたっけ、そういうのを充実しようと、そういう方向に移っています。
 たぶん、今回のこの計画でもそれが1つの柱で、もう1つは、そのようにした中で今度は実施機能です。実際の訓練の実施という所を見ると、従来のものづくり訓練は、それはそれで重要なのです。大久保さんは重要ではないと言っていないので、重要です。ただ、それ以外の分野をみんな民間に任せる、とやっているわけです。そうすると、そこの部分を任せるしか書いてないということだと思うのです。だから、ものづくり分野以外の分野についても何かもう少しあるといいよな、という感じかなと私は話を聞いていたのです。解釈が違ったら大久保さんからまたコメントしていただきたいのですが。ですから、実際には訓練の実施部分からすると、ものづくりは従来どおりきちんとやりますが、それ以外はグーッと民間委託で増えてしまっているわけです。この部分について、もうちょっと何かないのという感じだなと思っているのです。

○小野職業能力開発局長 いままでの議論を私なりに整理させていただきますと、まずこういう能力開発の在り方を考えるときに、これは当たり前の話なのですが、これからの産業のニーズと言うのですか、先ほど新谷委員なり、いろいろな方がおっしゃいましたが、その中で当然雇用需要がどうなっていくのか。これは成長率をどう見て、おそらく経産省などがやっているのは、産業連関表を使って雇用需要をそれで出しているという、そこに留まっているのだと思います。問題は、それをつなぐ個々の産業ニーズ、雇用需要があったときに人材ニーズは具体的にどうあるかと。これは雇用・能力開発機構のほうで少し分野別に、これはものづくりもそうですし、非ものづくり系も含めて、そういうかなりブレイクダウンしたものを、ニーズ調査をやりました。次回、こういうものをお出しして、それが雇用需要と先ほど今野先生がおっしゃった能力開発を考えるつなぎの部分ですよね。具体的なそれぞれの職務能力、それぞれの分野でこれからどういうものが必要になってくるのか、そこにニーズ調査をしっかりやった上で、これからの能力開発をどう考えるか。先ほど今野先生がおっしゃったのは、その上で、では、国がどういう部分を担い、民間がどういう部分を担い、民間の訓練機関、それから企業がどういう能力開発を担うのかという、次回までにそういう整理もして、議論をいただきたいと思います。
 一応、今回は課題別に出していますので、それが成長分野とものづくりという、いわゆる二分法のようになっています。先ほどのグローバル人材の話も、たぶん成長分野とものづくりという、より横断的な部分だと思うのです。グローバル化が進んでいる中で、国内だけで仕事をするという時代ではなくなったと、そういう人たちのキャリアアップなり能力開発をどう考えるかと、そういう問題指摘だと思います。その辺りも含めてご議論いただければいいのではないかと思います。

○今野分科会長 まだ時間はあります。

○三村委員 先ほど、民間任せでいいのかということで話がありました。成長率や雇用需要でこうした施策を立てる場合どういう分野に成長を見込むかというのも1つポリシーとしてあっていいと思うのです。いま世界のキャリア教育、キャリア・ガイダンスの流れとして、やはりグリーン・キャリアとかグリーン・ガイダンスという部分に非常に重きを置いています。いわゆる環境分野ですよね。なぜ環境分野に重きを置いているかと言うと、働く人や学ぶ若者たちが将来のことを特に小中高のキャリア教育で学んでいるわけですが、20年後、30年後、その子たちが働く場の環境はどうなっているかは非常に重要な問題なのです。そういった意味で、ポリシーとしてこちらで意図的に成長させていく分野があってしかるべきだと感じています。

○今野分科会長 ご意見としてで、いいですか。ほかにいかがでしょうか。まだ時間があります。先ほどはちょっと急いだのですが、今度はゆっくりいきます。

○三村委員 先ほどJILPTの研究の問題がありましたが、JILPTの研究の成果は、例えば総合大学校の職業訓練学とつながるとか、そういった、いわゆる研究の成果がどう連携し実際化されていくか、その辺は現在どのようになっているのでしょうか。

○今野分科会長 どうですか。

○井上総務課長 JILPTでも訓練、人材養成の研究を行っておりますし、同時に、訓練カリキュラム、訓練指導技法といったより実践的な部分になりますと、雇用・能力開発機構の職業能力開発総合大学校にも調査・研究部門があります。そちらの部分は総合大のほうで行っております。
 先ほど局長の小野が申し上げました人材ニーズ調査は、先般、総合大を通じて行っております。これはかなり企業に対するヒアリングなども行いまして、具体的な中身を含んだものになっております。

○今野分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○新谷委員 資料2-1の中で、これはいま話題になっている民間と国の役割が書かれているのですが、都道府県の訓練施設と国の分担というようなところは論点としてどのようにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

○井上総務課長 ここには明示的には書いておりませんが、国と都道府県の職業訓練における役割分担ですが、これはこれまでより、国は民間ではできない、都道府県ではできないものに特化して行っていくと。具体的には、国で行う特化していく分野というのは、高度なコストなどを要するものづくりの分野が中心ということです。
 一方で、都道府県では、そこの地域における産業ニーズ、人材ニーズに応じた訓練。例えば介護の訓練、事務の訓練、情報通信の訓練などを行うという形で、一応の役割分担はされていると考えております。

○新谷委員 第9次の基本計画を考える際にいま口頭でおっしゃっていただいたものを論点として入れておかなくていいのでしょうか。

○井上総務課長 はい、加えさせていただきます。

○今野分科会長 我々が加えたいと言えば加わるのではないですか。

○新谷委員 そうですね。

○今野分科会長 では、それは加えておいてください。ほかにいかがでしょうか。

○上原委員 5頁の○のいちばん上の「求職者支援制度を恒久制度とする」というのはわかるのですが、自分が心配しているのは、権利を取ったから永久固定みたいなことになると、いわばお役所的ということで、また事業仕分けなどにあいそうな感じがするのです。やっていく中でやはり、当然、どこかにも書いてあるようにPDCAで見直すということなのでしょうけれども、その辺をうまく書いたほうがいいと思うのです。そうでないと、権利として獲得したらもう放さないぞみたいなのがあると、一方で、先ほど言ったように、就職するより半年間10万円をもらっていたほうがいいということになりかねないので、その辺をちょっと心配するのです。

○今野分科会長 しかし、この恒久というのは、例えば、ここに「臨時的制度」とは書けないので「恒久」と書いているのではないかと思うのです。だから、恒久といって絶対いつまでも、100年間残ると、そういう意味ではないのだと思うのですが、何か書き方に問題があったら工夫していただくということでいいですか。

○井上総務課長 はい、工夫いたします。それと、2の(2)の部分につきましては、同時に求職者支援制度について具体的に突っ込んだ形でご議論いただいておりますので、そのご議論の内容をまた反映していきたいと考えております。

○今野分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○高倉委員 ジョブ・カードは、来週からの事業仕分けには乗っかるのですか。

○井上総務課長 乗っかると思います。

○高倉委員 そうですか。では、蓮舫さんに負けないようにしっかり理論武装してやってもらわないと。これは無駄だとか、費用対効果がないみたいなことになったら、予算が少なくなってしまうのでしょう。

○今野分科会長 私、顔を見られています。

○小野職業能力開発局長 皆さん、応援してください。

○今野分科会長 しっかりやれということでいいですね。

○小野職業能力開発局長 はい。

○井上総務課長 6月の新成長戦略においても、これまでの目標が平成20年度から平成24年度で100万人の取得というところを300万人に変更となっております。これは、そこにも書かせていただいておりますように、数を増やしたということだけではなくて、やはりジョブ・カードが平成20年度から、もともとはフリーターの方など、職業能力形成機会に恵まれなかった方という、そこから始まった制度なのですが、そこで大きな機能を果たしていると、あるいはそれ以外の方にも有用なツールであるということです。

○今野分科会長 それでは、そろそろ時間ですので。まだこのテーマは続きますので、またいろいろお考えいただければと思います。事務局から報告等について、どうぞ。

○井上総務課長 雇用・能力開発機構法を廃止する法律案の動向についてのご報告です。この法律案につきましては、12日に閣議決定をし、翌13日に国会に提出をいたしたところです。

○今野分科会長 それでは、ほかに何かございますか。

○井上総務課長 お手元の2冊の資料ですが、これは次回以降も引き続きご利用いただくということで、恐縮ですが、このまま置いておいていただけるようにお願いしたいと思います。

○今野分科会長 それでは、ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。それでは、今日はこれで終了したいと思います。次回以降の日程等については、また事務局から連絡をしてもらいます。
 最後に議事録ですが、本日は、労働者側は新谷委員、使用者側は上原委員でお願いいたします。それでは終わります。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

職業能力開発局総務課総括係

TEL: 03-5253-1111(内線5738)

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