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2010年10月5日 第53回労働政策審議会職業能力開発分科会議事録

職業能力開発局総務課総括係

○日時

平成22年10月5日(火)10時00分~12時00分



○場所

経済産業省別館 1111会議室 (11階)



○議事

○今野分科会長 ただいまから、第53回「労働政策審議会職業能力開発分科会」を開催いたします。本日は大久保委員、三村委員、黒澤委員、水町委員、大江委員、瀧澤委員、浦元委員がご欠席です。
 厚生労働省に人事異動がありましたので紹介いたします。大臣官房審議官職業能力開発担当になられた桑田さんです。能力評価課長になられた星さんです。基盤整備室長になられた白兼さんです。総務課企画官になられた松本さんです。
 議題に入ります。1番目の「求職者支援制度における訓練の在り方について」を事務局から説明していただき、その後議論をしていきます。

○松本総務課企画官 資料1をご説明いたします。「求職者支援制度における新たな職業訓練の在り方について」は、7月に議論の中間的整理をしていただきました。平成23年度中に新制度を創設するために、平成23年の通常国会に法案を提出する方針です。ついては年内に議論を取りまとめていただきたく、本日から2巡目の議論をお願いいたします。
 「検討事項」として、中間的整理の前半である資料の1頁から3頁にかけて、枠で囲ってある前半の第1から第3までと、第4以降の後半に分けます。本日は前半部分について主として議論をしていただきたく資料を準備しております。
 「対象者の範囲」は5頁から9頁にかけてですが、これはいずれも一度ご覧いただいた資料ですので、説明は割愛させていただきます。
 10頁からは「新訓練の内容と実施機関の確保」の資料です。11頁と12頁は既にご覧いただいた資料で、現行の基金訓練の概要を示したものです。
 13頁と14頁は新たな資料です。訓練のカリキュラム内容として「ワークガイダンス」「学科」「実技」「職場体験等」の4分類し、その時間配分を示したものです。13頁はモデルカリキュラムです。基金訓練1から3のいずれについても、職場体験等が必ず入っているのが共通項です。そのほかに基金訓練?@は、実践演習コースとして、各職業に応じた学科・実技を実施することになっております。基金訓練1は、基礎演習コースとして職業経験のない方を主として対象としていることもあり、90時間のワークガイダンスを入れているのが特徴です。
 14頁は若年者向け訓練です。いちばん上に参考として、実践技能者を養成する受講料有料の施設内訓練の事例を示しております。基金訓練45が、基金訓練の枠内で実施している、未就職卒業者向け訓練コースと合宿型若者自立プログラムの2件です。これらは、特定の職種を希望するに至っていない未就業者が主たる対象ということもあり、特定の業種というよりも、汎用的な内容になっております。いちばん下の特別な対象者向けの事例として、日系人向けの公共職業訓練を示しております。これは、日本語の教育に20%を割いています。
 15頁から20頁も一度ご覧いただいた資料の数字を更新したものですので説明は割愛させていただきます。
 21頁と22頁は、実際の訓練の長さの分布です。基金訓練、公共職業訓練のいずれも3か月が最も多く、その次は6か月です。公共職業訓練の2年というのは、平成23年度までの暫定措置として保育士、介護福祉士等の資格取得コースが特別に設定されております。
 23頁から26頁は新しい資料です。基金訓練と委託訓練の条件や基準がどう違っているかを整理したものです。主な相違点は24頁の真ん中辺りにある講師の基準です。基金訓練の方は適正に運営することができるもの。一方、公共職業訓練の方は、指導員免許を有する者又は学歴、実務経験、指導に関する講習の修了といった条件を設定しています。訓練期間の事業実績について、公共職業訓練の方は1年以上の訓練実績を問うております。
 25頁は、訓練の質の改善につなげる仕組みとして両者を比較すると、公共職業訓練の方が訓練機関全体の訓練コースの就職率の平均値を問う制度になっております。
 26頁は対象とならない訓練を列挙したものです。その中で上から2つ目の条件が、委託訓練については基礎的入門的水準のものは取扱いをしない扱いになっております。
 27頁からは、訓練の規模についての資料です。28頁から34頁までは一度ご覧いただいた、基金訓練の認定等の実績資料について数字を更新したものです。
 35頁は、直近10か年度分の訓練の実施規模、それから中段に失業率と失業者数、いちばん下に求職登録者数を一覧にしたものです。
 36頁は、中央及び地方における訓練の内容等を決める計画を議論したり、策定するための現行の枠組みを整理したものです。
 37頁から39頁は一度ご覧いただいた資料について数字を更新したものです。
 40頁からは参考資料です。今回の検討事項の前半とは直接関係のないものも含め、一度ご覧いただいた資料の数字を更新したものがほとんどです。48頁は、現行の基金訓練についてのいろいろな問題点などの御指摘、御意見を頂戴しているところですが、これらにどのように対応しているかを整理したものです。大きくその指摘事項としては3つです。受講態度に問題がある受講者がいるのではないか。出席について良好でない場合があるのではないか。訓練機関又は訓練講師が適切でない場合があるのではないか。これら、それぞれの指摘に対して現時点で既に対応しているものとして、受講態度に問題のある受講者は、最終的に退校処分もあり得ることを明確にしました。出席率も、すべて出席した人を出席として取り扱うという改善を行っております。実施状況が良好でない訓練については、次回以降の認定に反映させることとしております。
 資料の説明は以上です。なお、雇用保険部会も9月30日から2巡目の議論を開始したところです。私からの説明は以上です、よろしくお願いいたします。

○今野分科会長 ただいまの説明に対しご質問、御意見をお願いいたします。

○中村委員 今説明のありました、新訓練に関わる目的に関して若干御意見を申し上げます。求職者支援制度については、雇用保険を受給できない者を対象として、就労に向けた職業訓練の受講を支援する制度であるという認識をしております。したがって、長期の失業者あるいは自営業の廃業者などを、円滑に労働市場に復帰させるための労働政策の一環として構築すべきだと考えております。そして、現行行われております基金事業からの円滑な移行に配慮しつつ、意欲と能力をもって、安定的な就労を目指す者を対象に、職業訓練の受講を促し、生活給付を支給すべきものであると思っております。
 また、この新訓練の求職者支援制度に関わる財源についてですが、これまでも何回か申し上げておりますように、一般財源にすべきであるということを改めて申し上げておきます。以上です。

○今野分科会長 今のは、お伺いしておけばよろしいですね。

○中村委員 はい。

○新谷委員 1点質問させていただきます。資料の8頁の回答者属性についてですが、アンケートの結果を示しているところの上に書いてある回答数のうち、「本人の雇用保険を選択しなかった」という回答分を集めたということですが、有効回答数の3,625と、選択しなかったという回答の3,184の差について説明をしてください。

○松本総務課企画官 御説明が抜けてしまって大変恐縮でございます。御指摘のありました8頁又は9頁での3,625のうちの3,184の差である441は雇用保険を受給されていて、かつ基金訓練を受講されている方です。

○新谷委員 ありがとうございました。以前のこの分科会でも申し上げたのですけれども、今後この制度を考えるときに、制度の趣旨なり目的を先ほど中村委員が申し上げたように、もともと雇用保険が受給できない方を対象にする制度であるという基本については全然異論はありません。ただ訓練の対象者と、今後雇用保険部会で論議する給付の対象者を考えたときに、当たり前のことですが訓練をしないと給付は貰えないということからいくと、訓練の対象範囲の方が広いということになろうかと思っております。
 それを考えたときに、今質問させていただいたとおり、現在の基金訓練においても、平成21年7月10日付通達(職発0710第16号、能発0710第13号)において、雇用保険の受給者であっても、例外として基金訓練の受講の余地を認めるという運営を今はしていると思います。何を申し上げているかというと、前回申し上げたように雇用保険を受給されている方でも、給付日額が非常に低い方がたくさんおられます。雇用保険給付を受けている方の12.5%が月額に換算すると10万円以下の日額となります。今後これを恒久化するに当たってはほかの制度、要するに雇用保険の制度と、今回作る求職者支援制度との制度的な整合性を考えておかないと、今は基金訓練で一時的なものですから構わないといえば構わないのですけれども、恒久化に当たっては、制度の整合性を考えておかないといけないと思っております。
 給付の内容については雇用保険部会で話をしますのでいいのですけれども、とりあえず入口の訓練の対象者については、雇用保険の受給者についても、弾力的な取扱いをする必要があるということをここで確認させていただきたいと思います。以上です。

○松本総務課企画官 まさにそこは御議論いただくところですけれども、現行基金訓練の実情も踏まえて御意見を頂戴できればと思います。

○今野分科会長 それでよろしいですか。

○新谷委員 はい。

○高倉委員 いちばん最後に説明のありました、受講生の受講態度とか出席等の扱いに関する話です。受講要件について具体的な基準といいますか、例えば訓練への出席率が8割に満たない場合には以降の訓練は打ち切る。もちろん出産・介護・健康の事情があれば別ですけれども、そうでない場合はその時点で訓練を打ち切るといったような、具体的な基準を設けたような対応をするという考え方はあるのでしょうか。

○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 委員御指摘のように、基本的には出席率が8割に満たない場合については、それ以降は打ち切りになりますので、もし給付を受けているのであれば、その月以降の給付は貰えないという形で運用しています。今回は午前中あるいは午後の半日出たとしても1日としてカウントしますよ、出席日数に見ますよという形で運用していたものですから、それを止めて、より出席の取扱いを厳格化したということです。

○松本総務課企画官 御指摘の点については、まさにこれも御議論いただきたいところです。就職の意欲・能力のある方に対して訓練を受講していただいて、労働市場に戻っていただくのが新制度の趣旨ですので、そういう観点から適切な制度設計の在り方については私どもも検討の必要があると考えておりますし、まさに委員の皆様に御議論いただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○今野分科会長 何か良いアイディアはないのかと振られてしまいましたが、何かありましたらそのうちに。

○荒委員 47頁で、就職率が今まのところ61.9%とあるのですが、目標値がありましたら教えてください。

○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 今年度については60%です。

○荒委員 それでは、満たしているということですね。

○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 まだ年度途中ですので、この数字が落ちないように引き続き就職支援に取り組んでいくことになろうかと思います。

○荒委員 失礼ですけれども、60%という目標値はどういう根拠なのでしょうか。

○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 公共職業訓練の委託訓練の就職率の目標がそれより若干高いことも踏まえつつ、公共職業訓練の方が65%の目標となっておりますので、基金訓練については対象者は先ほどから話に出ておりますように長期失業の方とか非正規社員を繰り返していた方ということで、比較的就職が困難な方が多いということで、目標設定については60%とさせていただきました。

○今野分科会長 よろしいですか。

○荒委員 あまり納得はしていないのですけれども。

○今野分科会長 一応委託訓練を1つのベンチマークにして、それよりは就職の難しい人が対象だから少し下げたという趣旨ですね。

○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 はい。

○荒委員 とりあえず、今のところは。

○上原委員 単純な質問なのですが、13頁の標準型の介護の訓練を3か月終了した人が、結果としてなかなか就職できなかったというときに、ある期間を経て基金訓練?Bのコンピューターみたいなの(職業横断的スキル習得訓練コース)を受けられるのかどうか。仮にそういうのができるのであれば、何回ぐらいまでできるのかとか、間のインターバルはどのぐらいまでいいのかということを考えているのかどうかを教えてください。

○松本総務課企画官 ある訓練を受けた後に、次の訓練を受ける場合にどれぐらいのインターバルが適当かという議論は、まさにそこも御議論いただきたいと考えております。一旦訓練を受けたら、二度とほかの訓練は受けられないというのは不適当だと思う一方で、労働市場の状況又は訓練を受けて仮に就職した方であっても、その後の離職なり能力の状況から見て、別の訓練を受ける必要がある場合もあろうかと思います。そういういろいろなケースも想定しながら、どういうルールであるべきかという点の検討は是非とも必要かと存じます。

○今野分科会長 基金訓練では、1か月のインターバルを置かなければいけないということでしたか。

○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 基金訓練は基本的に時限なので、インターバルという考え方ではなくて、最大2年間しか給付は受けられないことになっています。あとは組合せのパターンを決めていて、横断的スキルのコース、あるいは基礎演習コース+実践演習コースという形で、あるいは公共職業訓練ということでパターンを決めているだけで、あとはマックスその両方の訓練を受けた場合であっても、2年を超えない範囲の給付ということで決めています。基金訓練についてはそのインターバル、要は実践演習を介護で受けて、その後にITをいつ受けては駄目という形にはなっていないです。

○井上委員 新訓練の内容と実施機関の確保のところで、資料の39頁に実施主体別・コース別基金訓練の認定件数及び定員数ということでデータが出ています。実施機関がずっと並んでいて、やはり株式会社はコースも多いですし、定員数も多くなっているということでいくと、当然基金訓練のお金はそこへたくさん行っていることになるのだと思うのです。
 今後についてですが、この演習が終わった後にどれだけの就職率が確保できているのか、安定的な雇用が維持できているのか、それをきちんと検証した上で訓練実施機関の確保は行わなければいけないと思います。25頁に訓練の質の改善につながる仕組みということでいろいろ罰則もあるようです。これだけコースも定員も多いというところでいけば、その辺はしっかりと検証しなければいけないのではないかと思います。
 それから訓練の内容ですが、労働力需要との関連の強い内容とすることが必要だと思います。その上で、個々人のニーズに合わせたものができればいいのではないかと思います。以上です。

○松本総務課企画官 委員の御指摘のとおりかと存じます。39頁の資料については、就職率のデータをもって検証すべきというお話でしたが、現時点では修了して3か月を経過した訓練の数がまだ比較的少ない時点ですので、訓練機関別の比較をするほどの分母が揃っていないこともあります。これは、お示しできるデータが揃った時点で、何らかの形でお示ししたいと思います。

○高倉委員 新訓練の内容にも関わる部分ですが、就労への結び付きを強化する必要があると思うのです。もちろん訓練の期間中は当然ですけれども、その訓練の前後を通じたキャリア・コンサルティングを充実していくことも必要な観点だと思っています。例えば、ジョブ・カードを活用したキャリア形成と就職支援の促進をすると同時に、デュアルシステム的といいますか、企業内の実習訓練を一定の条件下で制度化するようなことも考えたらいいのではないかと思っています。
 さらには、求職者が希望するコースがないとか、いっぱいだという場合にはハローワークの認定に委ねるようなことも工夫すべきではないかと思うのですが、いかがですか。

○松本総務課企画官 就職のための支援についてはまさに訓練だけではなくて、訓練の前後でよくよくキャリア・コンサルティングをして必要な訓練を受けていただいて就職していただく。就職していただくのが最終目的ですので、そういう意味での指摘は全くそのとおりだと思います。どのような支援が適当か、すべきかという議論もよくよくお願いしたいと思っています。次回以降の後半のところでも、そういう視点の資料を準備したいと思いますので、御指摘を賜りたいと思います。
 訓練の内容として、実習を制度化することについては、職場体験などは必ず入っているというのが現行の基金訓練なのですが、これを新訓練でどこまでやるかということについてはまた御意見を引き続き頂戴したいと考えております。
 大変恐縮ですが、3点目の希望するコースがない場合のハローワークについてどのような御指摘を頂戴したのでございましょうか。

○高倉委員 希望者が希望するコースもないし、いっぱいだし、入れないような場合にハローワークを活用した認定制度みたいなものをやって、とにかく何かできるような状況を作った方がいいのではないかということです。

○松本総務課企画官 訓練がない場合に、できるだけ訓練を受講できるような、要は遠い所の訓練も含めての紹介であるとか、訓練がない場合のキャリア・コンサルティングを何か付加的にできないかとか、いろいろな代替手段も含めて総合的な求職者支援をしなければいけないというところも考えなければならないと思います。

○今野分科会長 前半におっしゃられた就職支援については、そういう能力をしっかり持つというのは訓練をする機関も重要です。もし重要だったら、機関認定基準を何らか考えることになります。

○松本総務課企画官 就職支援を訓練機関がやるという視点での基準も考えなければならないと思います。それは御指摘のとおりかと思います。

○新谷委員 2点質問させていただきます。先ほどからの答弁の中に、就職率の話が出てきています。先ほども荒委員が質問されていたのですけれども、47頁の就職率と、先ほどは委託訓練との対比でおっしゃられたのですが、訓練修了3か月後に報告を求めるという扱いに、この対比表を見ると委託訓練も基金訓練もそうなっていると思うのです。それぞれの就職率を算定するときのアンケートの報告の回収率について、それぞれどういう数字になっているのかをお聞かせください。
 仮に基金訓練の方が低いとなれば、その回収率を引き上げるための方策をどう考えるのかというのも併せてお聞きしたいのが1点目です。
 2点目は、本日初めて示された資料の48頁に、基金訓練に寄せられた意見・要望の中で、先ほども出ていましたけれども訓練コースに対する評価で、講師が若くて経験不足の印象を受けた、基金訓練を受講したけれども就職できるほどの技術水準には達しなかったという意見が寄せられていると思います。能開機構の方で、たくさんの訓練コースの開拓をしていただいたと思うのですが、今後これを恒久化するに当たって、訓練・教育の品質の保証をどのように考えていくのかということについて、現時点での考え方があれば教えてください。以上です。

○松本総務課企画官 回収率ですが、基金訓練の現時点でのデータは平均で76.9%です。これは、訓練修了から時間が経てば経つほど上がっていくのですが、平均では76.9%です。一方、平成21年度に実施された、機構からの委託訓練については97%という数字が残っています。この回収率の差を引き上げていく、差を埋めていく方策について、現時点で事務局として検討しているのは、まずはインセンティブ措置が入るとすれば、それらの訓練機関の回収努力がより一層促進されるであろうということを考えております。また現行基金訓練では、回収率が低い場合の改善計画の策定であるとか、認定への反映という条件設定をしておりますので、そういうものも選択肢に入るのではないかと考えています。以上が改善方策です。
 恒久化するという観点から、特に新訓練においては品質保証が重要ではないかという御指摘はまさにそのとおりかと存じます。現行基金訓練で問題が生じているところは、新訓練では極力問題が発生しないような条件設定が必要だと思いますので、それは認定基準であるのか、それともその実行上の運営指導の点なのか、そういういろいろな選択肢をいま検討しているところです。もし委員の皆様から御意見があるのであれば、是非賜りたいと思います。事務局としても、当然対応が必要だと考えていて検討しているところです。

○大野委員 新谷委員の3番目のところなのですけれども、訓練の中身がどれだけ改善していくかというと、1回目よりも2回目の方が改善していくのが望ましいわけです。そういう訓練が果たして有効であるかどうか、どれだけ有効になっていくかというところのモニターをどのようにやっていくかというところがものすごく大事なような気がしております。答弁の中でも、それは考えていきますという話なので、是非その辺のところをよくわかるような形での進め方が必要なような気がいたしますので、そこを是非お願いいたします。

○今野分科会長 本日の資料に、基金訓練と今度の訓練との対応表がありましたが、それはモニタリングの仕掛けについての比較表でして、認定基準がどう違うかということもモニタリングの問題なのです。そういうのを見ていただいて、やはりここは足りないぞということであれば指摘していただきたい。先ほどの就職率もモニタリングなのです。モニタリングには入口の問題と、プロセス上のチェックの問題と、アウトプットのチェックの問題と3段階ありますので、その辺をバランスよくやる。あまり入口をきつくしてしまうとがんじからめになってしまうし、あまり結果重視だとプロセスを無視してしまうしということで、なかなか難しい制度設計だと思います。そういうのをお考えいただいて、企業の経験も踏まえてこうやったらいいぞということを、この会の外でも結構ですのでインプットしてあげると事務局は大変助かると思います。いいですよね、いやだとは言わないよね。

○松本総務課企画官 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○今野分科会長 難しいですね。

○大野委員 でも、そこは避けて通れないと思っております。これから、日本の企業も相当教育量を増やしていくと思うのです。グローバル化していく前提になっていくと、教育の量をどんどん増やしていかないと成功できないという背景があります。
 増やすには、どうやってその効果を見るのだという、当然そこのところがはっきり説明できないと、教育の現場に社員を引っ張り出せないことになります。そこのところは、こういう効果があるのだということを最終的には言わなければいけない。それは、おそらくこういう場でもそのようになっていれば、教育というものの効果とか必要性がよりわかりやすくなるのではないかという気がしています。

○今野分科会長 今のお話は、企業内でも人事が教育訓練プログラムを作ると、現場から「そんなの役に立つのかよ」と言われている。したがって、それを説得しなければいけないのだというお話ですので、たぶんそれは一緒です。

○高橋委員 私の記憶ではこの週末だったと思うのですが、NHKのニュースで基金訓練についてのニュースがあって、たまたまテレビをつけていてそれを見ました。そのときに2人の方を取り上げていたと思います。1人は女性労働者で、たぶんITの実践演習を受けていたのではないかと思います。そのときに、レベルが自分にとっては低すぎるという不満をおっしゃっていたような気がします。
 それに関する質問ですが、本日示された48頁のところで、就職に直接結び付く実践的な訓練を行ってほしいという要望が寄せられているということでしたが、レベルに関してはどのような意見が実際に今寄せられているのか。今行われている訓練プログラムに関する、プログラム自体の評価はしているのか、あるいはそういうことをするのならどういう形でするのかについてお伺いします。

○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 基金訓練に関して申しますと、レベルについては基礎と実践ということで区分しております。実践演習コースが基金訓練の中では最もレベルが高い位置づけにはなっているのですが、実践演習コースの次に公共職業訓練ということで、さらにステップアップする訓練機会が提供されることもありますので、そういう方は次の公共職業訓練なりを受けていただくことはあるのかと考えております。ですから、どちらかというと、先ほども申し上げましたように、比較的レベルがそれほど高くない方が、基礎的なところから始めて、それを終えて実践に移っていただくという組合せをそもそも前提とした訓練であったということで、レベルの高い方がそれなりにいらっしゃって、実践演習だけで十分だという方がこれほど多く出てくることを当初はあまり予定しなかったのは事実なのかと考えております。
 要望としてさまざまな御意見をいただいております。基礎を複数回受けたいのだけれどもという話、あるいは実践演習を別分野で受けたいという話は要望として出ることはあります。そこは本人の適性や能力を見ないと軽々には判断しにくいのです。これもご存じのとおり、裏返しとして訓練を受ければ給付が受けられる。要は訓練を受けている間は給付が出るということで、給付金目的とまでは言わないですけれども、どちらかというと目がそちらへ向いている方がいないとも限らないので、その辺の見極めは実際問題として難しいということです。
 ただ、ハローワークでの受講勧奨が入口でかかっておりますので、そこで本人の適性を見て基金訓練、必要であれば公共職業訓練を受講あっせんするということで、本人のレベルにできるだけ対応していくのが現行の仕組みであると考えております。

○今野分科会長 もう1つのご質問は、個別のプログラムに対する評価はどうしているのですかということです。

○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 個別の評価については、モデル・カリキュラムなりを示して、それに合致しているかどうかということでスタートするのですが、プロセスの管理というのは、10月1日からPDCAの形で、先ほどの就職率や回収率の話、受講生なりからの相談、苦情が多い所については改善をお願いするということで、一定程度実績を反映させた形で見直す仕組みを今導入しつつあるということです。如何せん立ち上がって1年少しということもあって、まだそこがきちんとした形で反映される形では運用されていないということです。いずれにしろ、PDCAでの管理という仕組みを今入れて運用しているところです。

○高橋委員 これからは意見ですので、聞き置いていただければ結構ですが、いくつか問題提起も含めてさせていただきます。新谷委員の発言にも関連するところですが、対象者の範囲に関するところです。本日示された資料でも、6頁の真ん中の※のところに、雇用保険の受給資格者については、例外として基金訓練の対象者として差し支えない運用をしているということです。この制度を恒久化していくに当たっては、やはり保険制度の中にいる人と、保険制度の外にいる人とは明確に分けていくべきではないかというのが私の個人的な意見です。
 保険原理の中にいる人も、例外として受けさせていくとすると、一体どこまでを認めていくのかという非常に難しい問題も発生してくるのではないかと思っております。この制度は、あくまでもこの前我々がまとめさせていただいた中間的整理でも、雇用保険の受給資格がない者を対象とすることが適当だと明確に規定されておりますので、そこを徹底した方がよろしいのではないかというのが私の個人的な意見です。
 もう1つは、前回私は個人的には反対を申し上げましたが、新卒未就業者も対象にしていくような方向で動いているようにも感じます。本日も明確には示されてはおりませんけれども、新卒未就業者をどういうプログラムに誘導していくのか。新卒未就業者は新卒未就業者だけで構成されるプログラムで訓練をしていくのか、それとも新卒未就業者ということではなく、ほかの方々と一緒に訓練をしていくのかということは1つの大きな論点ではないかと思っております。そこは皆さんの御意見をお伺いしながら、私も今後意見を述べてまいりたいと思っております。
 先ほどインターバルの話が出ましたけれども、現行の訓練機関が最長で2年というのは少し長いのではないかという感じがしております。早期の就職に結び付けていく制度にするならば、おそらく原則は1年ぐらいでいいのではないか。もちろんガチガチに縛るということではないかもしれませんが、その中でインターバルも適当に設定して、この「適当」というのはいい加減にとという意味ではないのですけれども、要するに重複して受け続けるようなモラルハザードを防止していくような仕組みを講じていくべきではないかという感じがしております。
 先ほどの回答にも出ていましたが、基礎的な演習コースというのは1度のみの受講で2度、3度という形で受講するのは適当ではないのではないかという感じがしております。
 訓練実施機関に関しては、私も今回新谷委員と一緒に委員をさせていただく関係もあるのですが、国際規格がこの9月に発行しております。ISO29990が発行して、今後は国内でもガイドラインが作られ、認証システムなども作られてまいりますので、そことの関係も十分踏まえた検討をしていく必要があるのではないかと思っております。以上です。

○今野分科会長 まだ御意見があろうかとは思いますが、このテーマはまだこれから何回かやっていくことになりますので、本日はこの辺にさせていただければと思います。次の議題は「第9次職業能力開発基本計画」についてです。事務局から説明をお願いいたします。

○井上総務課長 資料2-1から資料2-4に沿って説明させていただきます。職業能力開発基本計画は、職業能力開発促進法に基づいて、国全体の職業能力開発に係る中期的なビジョンとして策定していただいているものです。この計画の期限についての有効期間は5年です。現行第8次計画は平成23年3月で期限切れになるものです。つきましては、平成23年度以降の第9次計画についてのご審議をお願いしたいと考えております。資料2-1は、本日御議論いただくためのたたき台として用意したものですので、資料の説明は資料2-2から順にさせていただきます。
 資料2-2は「第8次職業能力開発基本計画の概要」です。現行計画の概要ということです。この計画の特徴は1「計画のねらい及び期間」のところに表れています。第8次計画の対象期間内においては、2007年問題が課題となっていたこともあり、我が国経済を支えてきた、「現場力」の低下等の課題に対応していくというのが1つの特徴です。もう1つは、働く者一人一人の職業キャリアの持続的な発展、職業キャリア形成を実現していくことが大きく謳われています。
 2「職業能力開発施策の実施目標」ということで5点掲げられています。1点目は、職業キャリア形成支援政策推進の視点です。職業キャリア形成をどのように進めていくかを、職業キャリアの各側面に則した形で視点が設定されております。
 2点目は、職業キャリア形成支援政策の展開ということで、これはもう少し具体的に職業キャリアの各側面に照らしてどうやっていくか。(1)現に働いている方のみならず、そのほかの方も含めてどのように職業キャリア形成支援を行っていくか。(3)職業生涯の全期間を通じて職業キャリア形成支援を行っていくことなどが述べられております。3点目は、労働力需給の動向に応じた職業能力開発の促進です。これは、雇用対策との関連もある部分です。
 4点目は、働く者を育てる環境の再構築です。先ほど出ておりました企業における「現場力」の強化を図るために、若年者の育成等の仕組みの再生、技能継承の促進を行うということです。5点目は、官民協力による「公」の形成です。政策を実現していくための基盤整備について述べられております。
 3「職業能力開発の基本的施策」については、具体的な施策について7本の柱で書いてあります。1は労働市場のインフラの充実です。多様な職業訓練機会等の確保、職業能力評価に係るインフラの充実、職業キャリア形成に向けた情報提供体制の充実が述べられております。2は、働く者の職業生涯を通じて持続的なキャリア形成への支援です。職業キャリアの段階に応じた支援の充実。福祉から自立に向けた職業キャリア形成への支援などが盛り込まれております。
 3頁で3は、雇用失業情勢や産業分野の動向に応じた職業能力開発の促進です。4は、「現場力」の強化と技能の継承・振興です。5は、地域貢献分野として教育・文化・環境等がありますけれども、そういう地域貢献分野の創出と教育力の強化です。6は、国際化と職業能力開発です。7は、施策自体と申しますよりは、そうした施策を推進するための体制といった観点の整備です。職業能力開発施策の推進体制の整備ということで、公共部門と民間部門との役割分担及び連携、国と地方公共団体との役割分担及び連携などが盛り込まれております。
 資料2-3は「職業能力開発基本計画(第八次)のフォローアップ」です。これは、現行計画について、その後どのような取組みを行ったか、その進捗状況や実績はどうなっているか、評価や今後の課題はどうかを取りまとめたものです。基本的施策等進捗状況と実績の部分を中心にご説明させていただきます。
 1頁で「多様な教育訓練サービスを提供する主体の育成及び活用」です。ここでは、委託訓練の年度別実績、委託先種類ごとの実績をお示ししております。下の方で「企業の人材ニーズを踏まえた職業訓練のコースの設定」ということで、これは離職者訓練(施設内訓練)と、在職者訓練について、PDCAサイクルによる訓練カリキュラムの見直しの状況を整理したものです。その下は情報通信、介護分野などについての訓練の実施状況ということで、こうした分野の委託訓練の実績を整理しております。
 2頁の下の段ですが、「職業能力評価に係るインフラの充実」ということで、これは職業能力評価基準の策定なり取組みの状況です。技能検定制度について、職種の追加及び廃止、試験基準の見直しの状況を整理しております。
 3頁は、「キャリア・コンサルティング環境の整備」です。ここでは、キャリア形成促進助成金の利用状況、キャリア・コンサルティングの技能検定2級試験の実施状況、キャリア・コンサルタントの養成の状況などを整理しております。
 4頁から5頁にわたり、職業生涯の各段階における支援について書いてあります。4頁は「準備期における支援」ということで、座学と企業実習を組み合わせた日本版デュアルシステムの実施状況、ニート等を対象とする地域若者サポート・ステーション事業の実施状況などを整理しております。
 5頁の上の方の枠で「発展期における支援」です。キャリア形成促進助成金の活用状況、雇用能力開発機構のキャリア形成支援コーナー等における、キャリア・コンサルティングの実施状況、委託訓練の実施状況などをまとめてあります。下の枠では「円熟期における支援」ということで、NPO法人を活用した委託訓練の実施状況をまとめております。
 6頁は「障害者への支援」ということで、特別な支援を要する障害者に対する訓練の実施状況、一般の公共職業能力開発校における知的障害者等を対象とするコースの設定状況、委託訓練の実施状況などをまとめてあります。
 7頁は「母子家庭の母や、生活保護受給者等への支援」ということで、これは都道府県が実施主体の事業ですが、母子家庭の母などを対象とした職業的自立促進事業の実施状況を書いてあります。下の枠では「パートタイム労働者や派遣労働者等の能力開発についての環境整備」ということで、委託訓練の実施状況、派遣労働者の能力開発セミナーの開催状況などを整理しております。
 8頁は「雇用失業情勢に対応した職業能力開発」です。これは、離職者訓練について、施設内訓練と委託訓練に分けての実施状況を、就職率も含めて整理してあります。
 9頁は「産業動向等に対応した職業能力開発」です。これは、先ほどのものとも若干かぶってまいりますが、情報・通信分野、介護分野、サービス分野における委託訓練の実施状況などを整理しております。下の覧で「『現場力』の強化に向けた職業能力開発」ということで、中小企業からのオーダーを受けて行うオーダーメイド型の訓練の実施状況、職業能力開発施設からの指導員の派遣、施設の対応といった訓練への支援の状況をまとめております。
 10頁の下の枠は「技能の振興のための施策」ということで、各種技能競技大会の実施状況について整理しております。
 12頁は「質の高い人材育成に向けた国際協力」ということです。そうした人材育成についての国際協力の事業として、1つには我が国の技能評価システムを、相手国の要望に応じてシステムの移転などを図っていく移転促進事業の実施状況、ASEAN地域における人材養成協力事業の実施状況、職業能力総合大学校における外国人留学生の受入状況などを整理しております。
 13頁は「外国人研修・技能実習制度について」です。外国人技能実習制度の適正な運営に役割を果たしております巡回指導の実施状況について整理しております。
 15頁の下の枠は「国と地方公共団体との役割分担及び連携について」ということで、これは現在雇用能力開発機構が実施している訓練についてということですが、地域において関係者、関係行政機関のご参画をいただきながら、地域で雇用能力開発機構が実施する訓練コースについて計画を策定し、あるいは実施状況をチェックしといった形で進めているものを整理しております。資料2-3については以上です。
 資料2-4は「第9次職業能力開発基本計画参考資料」です。表紙をめくると「目次」があります。大きく3部からこの資料全体を構成しております。1つは「我が国の労働市場について」です。我が国の人口の推移など、労働力需給に関する各種の調査結果などを取りまとめております。1頁めくり、2頁目は「職業能力開発施策の概要」です。現行の職業能力開発施策について、その内容と実績を整理しています。
 67頁は、先ほど高橋委員からもお話がありましたが、この度民間における教育・訓練サービスについて、ISOによる国際規格が発行しました。これまでの経緯については、いちばん上の枠に整理してあります。発行したという部分については?V「検討・発行スケジュール課題」の2つ目の○に書いてありますように、本年9月に発行したということです。
 68頁で、この新たな規格については、その規格の目的にありますように、非公式教育・訓練分野の企画などについて、共通認識を事業者と顧客に提供する。質の高い専門的な学習サービス実施のための包括的なモデルを提供すること。その規格の内容としては大きく2つあります。1つは「学習サービスの提供」ということで、サービスの内容としてどういうことに留意しなければならないか、もう1つは学習サービス事業者としてのマネジメント、どうしたことに配慮しなければならないかといったことが書かれています。
 この規格については、どういうことに留意しながらというところを中心に書かれており、我が国において民間分野における教育・訓練実施機関が、実際にどのようにすればこの規格に適合したような形で事業運営ができるかというところについては、必ずしも明確ではありませんので、今後、関係者による協議会の中でこの規格を実際に活かしていけるガイドラインの検討などについての取組みを進めていきたいと考えております。
 恐縮ですが、この資料の目次のいちばん最後の頁をご覧ください。3「新成長戦略」とありますが、これは本年6月に閣議決定された新成長戦略ということです。2020年度までを対象期間として、新成長戦略という形で、政府全体の中長期的ビジョンを取りまとめているものです。内容については、これまでの分科会でご説明させていただいているものです。
 資料2-1は、今般新たな計画として第9次の基本計画の御議論をお願いしたいということです。本日は、いちばん最初の全体的な議論をお願いするに当たり、事務局として用意させていただいた視点、たたき台です。いちばん上の○では、最近の労働力需給の面などにおけるトレンドについて整理しております。2つ目は、成長が見込まれる分野における公共職業訓練の推進です。1つ目の○のところは、新成長戦略もそういう考え方ですけれども、今後成長が見込まれる分野を担う人材をどのように育成していくかということです。2つ目の○は、ものづくり分野における人材育成をどうしていくかという視点です。
 次は「非正規労働者等に対する雇用のセーフティネットとしての能力開発の強化」の1つとして、今御議論いただきました求職者支援制度の関係です。もう1つはジョブ・カード制度の関係です。
 次は「教育訓練と連携した職業能力の評価システムの整備」ということで、職業能力形成機会に恵まれない方などを対象とし、職業訓練を行いながらその成果を評価することができるような仕組みを検討する必要があるのではないかという意識です。
 2頁で、「職業生涯を通じたキャリア形成支援の一層の推進」です。これは、それぞれの方が必要なときにキャリア・コンサルティングを受講できる環境整備が必要ではないかという意識です。そのほか技能の振興、特別な支援を必要とする者に対する職業能力開発の推進、職業能力開発分野の国際協力の推進ということで、主な施策を整理しております。
 いちばん最後は「我が国の職業能力開発のプロデュース機能の強化」ということですが、これは施策自体というよりも、今後施策を推進していくに当たり、どのような体制・基盤が必要になってくるかという意識です。これは、我が国全体として、多様な人材育成の担い手がある中で、国全体としての中長期ビジョンの策定や、その人材、訓練のカリキュラムや指導技法などについてのインフラ整備を行っていくことが必要ではないかという意識に基づくものです。
 今後の進め方についての事務局としての考え方ですが、先ほど申し上げましたように、現行の計画は平成22年度いっぱいで切れますので、年度内に計画を策定していただき、新年度から新しい計画に円滑に移れるようにお願いしたいというのが1点です。
 それから、期間を同じくして、各都道府県においても職業能力開発計画を作成することとなっており、各都道府県からは、国の基本計画の内容・方向性をも参考にしながら検討したいという要望があります。つきましては、年内に第9次計画の基本的な姿についてお示しをいただければ大変ありがたく存じます。
 具体的な検討の進め方ですが、先ほどの求職者支援制度の検討などと併せて、委員の皆様方大変お忙しい中を恐縮でございますが、今後は月2回程度のペースでご検討をお願いできないかと考えております。また、本日総論的な御議論をいただき、そうした御意見などを踏まえた形で次回以降各論のテーマについて御議論いただくという形でいかがかと考えているところです。よろしくお願い申し上げます。

○今野分科会長 ありがとうございました。それでは、今日初めてのテーマですので、言ってみれば頭出しということです。しかも大量の情報を提供されて、こんなに一遍に読めないというぐらいの量ですので、お帰りになってゆっくり読んでいただいて、次回以降アイディア、御意見をいただくことにさせていただきます。とりあえず今日は全体的なことで御意見があったらお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○新谷委員 今日は初回の議論ということですので、全体的な話から意見を申し上げたいと思っております。非常に多角的な視野から資料を作っていただいて、それほど雇用をめぐる問題が難しいというか、難問を抱えているのだなと思います。非正規の問題とか地域雇用の問題とかフリーターの問題とか、そういった問題の指摘は資料の中にちりばめられているのですが、1点気になるのは、政府が今年6月にまとめた新成長戦略に関連する論点です。今後10年、20年にわたって日本がどこの分野で成長力、あるいは競争力を維持しながら国の発展を遂げていくのかという視点から言ったときに、成長のエンジンとなる人材をどのように捉えて、それをどのように開発していくのかという大きなマクロ的な視点が、もう少し切り口としてあったらいいのではないかと思います。
 例えば、2-1の最初の辺りに成長分野とか書かれているのですが、これから日本がどこで外貨を稼いで食べていくのかと言ったときに、ものづくり分野は基幹産業として残るというか、これを大きくしていかないといけないのではないかと思うのです。そういった意味で、「現場力」についてはここに記載されているのですが、それだけではアジア諸国との競争に勝てないわけで、例えば先端技術を担う高度人材の育成とかグローバル人材の育成をどうしていくのかといった視点が、少し乏しいように思います。それは厚生労働省だけではなくて、経済産業省、あるいは大学院との関係で言うと文部科学省との連携にもなってくるのでしょうけれど、厚生労働省は人づくりを担う主管官庁として、縦割り行政に陥らずその辺は他の省庁を利用するぐらいの情報発信力を持たれたらいいのではないかと思います。
 その中で、人づくりは何も国だけがやる話ではないと思いますし、企業との役割分担、企業の中でも大企業と中小企業との役割分担、それを国はどこをどう支援できるのかといった大きな切り口から、基本計画を策定していってはどうかと思います。今日は具体的な話ではありませんが、大きな切り口からの視点としての意見を申し上げました。

○今野分科会長 ほかにいかがでしょうか。今日は今のような御意見をバーッと言っていただいて、ぶつけて終わりということにしたいと思います。

○大野委員 今の新谷さんのお話は、誠にもっともだと思っております。たぶん、これから日本のグローバル化していく企業は、日本での雇用を少なくしていく形になるだろうと思います。雇用量は、ある意味では減っていく部分があるだろうと。そういうところで、海外で活躍する人も当然必要になってくる。そういった意味で、グローバル人材をどうやって育てていくかという問題が大きな問題としてあると思うのですが、もう一方で国内に残る人たちは一体どういう産業を伸ばして、どういう産業についていって、その質を高めていくかという、この2つの課題を同時にやっていく必要があると思うのです。
 そうすると、これからの国内に残る産業で、成長性の高いものに大きく人材を投入していかなければいけないということと、もう1つは、海外で働く人たちも日本で出てこなければいけない。今非常に国内指向というか、そういう人たちが多いと言われていますが、これは世界の流れと全く違う方向に我々の心が行っているところであって、そこを相当大きく変えていかなければ、日本の成長はあり得ないという気がしています。そういった観点から、職業訓練、あるいは人材教育を捉えた方がいいのではないかと。おっしゃるようにマクロ的に考えて、産業構成をどのように持っていくのかということは、全体として考えていく問題なのではないかという気がします。

○中村委員 今回言うべきかどうか迷ったのですが、前々から大きな問題意識として持っていたものですから、発言をさせていただきます。資料2-4の88頁ですが、「職業能力評価基準について」というタイトルになっておりまして、これまで42業種について大変ご苦労されてこの評価基準が策定されているわけですが、私の認識は、残念ながら現実にはまだまだ活用されていないのではないかと考えております。先ほどの2-3の第8次のフォローアップ表の「評価及び今後の課題」というところですが、この中身も「企業における一層の活用促進に努める必要がある」ときれいな文で書いてありますが、あまり活用されていないのが現実ではないかと思っております。したがって、さらなる活用させるための方策をどうするのかということを、真剣に考えていく必要があるのではないかと思います。
 その際、例えば経済産業省で作っているITスキル標準は結構活用されていると聞いておりますので、その辺を検証しながら、いかに活用させていくかを検討されたらいいのではないかと思っております。

○井上委員 第8次のときにも議論しましたが、職業キャリア形成支援に関連して、準備期、発展期、円熟期というのがあったと思います。資料2-3に、それの評価及び今後の課題ということで、4頁に準備期における支援ということでデータが出ております。この間、私も随分言ってきましたが、準備期というのはもっと早い準備期、小学校とか中学校において働くということをどのように伝えていくのか、そういうことが必要ではないかとずっと思っております。この4頁の資料を見ると、年超フリーターとか地域若者サポート・ステーションということで、ある程度職に就けないでいる人たちのサポートはできているのですが、そもそも学校教育のところでどのようにするのか、そういうことも必要なのではないかと思います。
 資料2-1の2頁の最後に、「我が国の職業能力開発のプロデュース機能の強化」とありますが、この間の産業構造の変化、高度化による職種転換は激しい、すさまじいものがあると思います。これは指導員もそうですし、働く者もそうだと思うのですが、そういう意味で職種転換、労働力の移動がスムーズにいくような対応を公的職業訓練で行うことが必要ではないかと思います。そういう意味での国のセーフティネットは、きちんとしなければいけないのではないかと思っています。

○大野委員 以前メンタルヘルスのことを申し上げましたが、働きながら精神を病むケースが非常に多くなってきているという問題にどのように対応していくかということは、非常に大事なことだと思っています。
 質問が1つあるのですが、メンタルで苦しんでおられる人たちの統計が果たして日本にあるかどうか。産業別とか職業別にあるかどうかということですが、そこの実態をきちんと知らないと、どのぐらいの頻度で増加しているのかがわからないと思うのです。これは職業に就いた人たちの中で起きている問題としてあるわけですが、ここをきちんと対応しないと、健全な働く人たちを作り上げていけないという問題に、我々は関心を払うべきなのではないかと思うのです。労働時間を減らしていくとか、あるいはコミュニケーション力をどうやって付けていくかとか、万が一なったときのカウンセリングをどうやっていくかというところを、統計を見ながらやっていくという、そこが大事なことだと思っています。この中でも若干触れていましたので、是非そこをやりながら、健全な職業を作り上げるという視点が必要なのではないかと思います。自殺する方も相当増えていて、ここずっと増えているわけですが、そこの問題も大事な観点ではないかと思います。

○今野分科会長 今ご質問があったので、働いている人の中でメンタルで苦しんでいる人の発生状況がわかる統計があるのかというご質問ですが、私の知る限りではないと思うのですが、いかがですか。

○井上総務課長 今手元にはありませんが、厚労省の担当部局で把握している数字があるかと思いますので、次回以降お示ししたいと思います。

○大野委員 毎月毎月どのぐらい増えているかを見るべきだと思うのです。これを治していくには産業医がどうしても必要なのですが、産業医の体制が日本全体できちんと確保できているかどうかという問題も大事だと思っております。まず、データを知ることが非常に大事だと思います。

○井上総務課長 今の御指摘の点も含めて、データも整理してお示ししたいと思います。

○高倉委員 今のもだいぶ近づいていましたが、実際のキャリア形成とか仕事に関する能力開発以外の部分もちゃんとやっておかないと、いくら幹だけやっても、働くことの重要性が何だとか権利が何だとか、先ほども少し出ましたが、大学でその辺の話があるような労働講座があるのかとか、連合も今いくつかの大学で労働講座をやっていますが、そういう連携をさらにやっていくのも非常に大事なことだと思っています。

○高橋委員 私も今の御意見に大変賛成します。大学は800近くあり、進学率も5割を超えていて、ひと昔、二昔前の大学生と今の大学生はかなり変わっておりますし、別に大学に限るわけではありませんが、在学中から職業意識をいかに醸成して、スムーズに、失業を経ずに、あるいは非正規という形を経ずに就職していくためにも、そういった視点をこの計画にしっかりと盛り込んでいく必要があるのではないかと思います。若干今の世相を反映しすぎている部分もあるのかなと、非正規に注力が置かれすぎているところがありますので、もう少しバランスを整えていく必要があるのではないかと思いました。

○浅井委員 少子高齢化が制約要因であると必ず書かれるのですが、今お伺いしている議論にもありますように、働く意欲、特に先ほどの資料1の48頁の基金訓練における受講生の態度を見て、私は改めて愕然としたのです。ここまで来ても、基金訓練を受けるという状況に来ても、なお就職する意思がなくて、お金だけもらって逃げるとか、マナーが悪いとか、授業妨害、秩序を乱すような訓練生がいると。働くということは本来つらいことであり、苦しいことであり、遊園地に遊びに行くのとは全然種類が違うと思うのですが、あまりにも働くことの魅力とか楽しさという面を強調して小さいころからやっていくと、就職してみると「仕事ってこんなに大変だったの。じゃあ辞めようか」とか、心が耐えられない、ボキンといってしまうという、非常にアンバランスが生まれているのではないかというのが非常に気になります。自分のプライベートな経験ですが、特に我々の世代は男女雇用機会均等法の1期世代ですから、いかに男性たちにいじめられたか、その中で歯を食いしばって頑張ると。私は子どもが2人いましたから、今のような温かい産休や育休なんてなかったし、その中でとにかく必死になって、自分のポジションを確保して生きていくしかないと。ここで辞めたらあとがないのだというぐらい齧りついて、しかも、私の場合は子どもを2人産んでから大学院に行きましたから、いわゆる訓練制度を子ども2人抱えて無職で受けて、5年間もかかると。それでも必死になって行ったというのが、ここにいるような年の多い世代には常識だったのではないかと思うのです。
 今の方たちは、明日王子様がすばらしい仕事を持ってきてお金持ちになれる、すごく楽してお金が稼げるという幻想を抱きすぎているのではないかという気がします。ひょっとしたら、働くことは苦しいことだということも若いうちからしっかり教えていかないと、親もこんなに苦労して働いて、苦労してお金を出して子どもたちを高校に入れ、大学に入れ、やってきたのだということをどこかでちゃんと教えていかないと、あまりにも夢を見すぎるのではないかという気がしてきたのですが、いかがでしょうか。

○今野分科会長 ありがとうございました。そろそろ時間なのですが、皆様からだいぶ意見をいただいたので、私から1つだけ感想を言わせていただきます。小さいことなのですが、何か具体的なアイディアがあるわけではないのですが、国際協力の推進ということで、これまで日本が人材育成の国際協力で念頭に入れていたのは、アジア、ASEANとか、そういう所ですね。そうした協力の時代は終わったのではないか。つまり、日本が何か持っていって教えるという時代はもう終わっているのではないかという気がしていて、協力と言ったときに、ともに何かを作る協力プロジェクトならわかるのですが。もしかしたらその辺も発想の転換が必要かなと、何となく思っているのです。具体的に何か政策があるとか、そういうことではないのですが。もうタイから自動車を輸入する時代ですから、少し発想の転換があってもいいかなというのが私の感想です。
 ほかにもう1つぐらいあればと思いますが、よろしいですか。それでは、今日は第1回でで、これ以降1月に2回という急ピッチでやるということですので、これからたくさん発言の機会があると思いますので、そのとき積極的に発言をしていただきたいと思います。
 3番目に入ります。「平成23年度の職業能力開発局重点事項と予算要求について」ということで、ご説明をお願いします。

○井上総務課長 資料3をご覧ください。「平成23年度職業能力開発局重点施策と概算要求の概要について」です。平成22年度の重点施策と概算要求について、3月に当分科会でご説明した際にいくつかの御意見をいただきましたので、今回はできる限りそれを反映したものとしております。
 3点ありまして、1つは一般会計、労働保険特別会計、その中の雇用勘定等といった財源区分を明確にしたということが1点です。2点目は、1つの予算が複数の政策、施策に含まれる場合重複計上ということで整理していたわけですが、重複計上というのはなかなか全体の姿が見えにくいというお話がありましたので、今回可能な限り重複計上はやめております。3点目ですが、これは施策と概算要求と書いておりますように、職業能力開発局部分もそうですが、厚労省全体として従前から施策の方をベースに整理していたということがあって、なかなか予算の全体象が見えないのではないかという御指摘がありました。具体的には、最後の方に出てきますが、施策、政策別に予算との対応関係を示したあとに、そういった形では整理しにくいものについてその他の予算ということで整理しているということです。これらを前提として内容に入ります。
 平成23年度の要求額は1,384億円、前年度が1,408億円ですので、24億円の減ということです。事項要求ですが、これは年末までに予算編成過程において予算の額、内容などを詰めていくものですが、具体的には求職者支援制度の部分がこれに該当します。この1,384億円の内訳ですが、一般会計が125億、雇用勘定が1,256億、労災勘定が約3億ということです。
 この予算を7本の政策の柱で整理しております。第1は、「雇用のセーフティネット機能の強化・成長分野を支える人材育成のための職業訓練の充実強化」ということです。1ですが、人材ニーズを踏まえた計画的な人材育成の推進ということで、これは国、各地域ごとに関係者、関係行政機関の参集をいただき、公共職業訓練、今ご検討いただいている求職者支援制度の訓練について、訓練の分野や規模といった訓練計画について協議いただき、その訓練計画の実施状況をチェックしていただいて、次につなげていくといった仕組みを作っていきたいというものです。
 2は「介護・福祉、医療等の分野における職業訓練の推進等」ということで、これは離職者訓練の関係です。離職者訓練については、平成22年、厳しい雇用・失業情勢に鑑み、22万人の訓練定員を確保する予算としたわけですが、23年度要求においても同程度の訓練定員が確保できるようにしていきたいと考えております。
 3は「国際標準化等の動向を踏まえた教育訓練の質保証のための取組の推進」ということで、これは先ほどお話が出た新たなISO規格を、国内で実際に活かしていけるようなガイドラインの検討等を行っていくという考えです。
 2頁をご覧ください。第2は、「ハローワークを拠点とした積極的就労・生活支援対策」ということです。この中に求職者支援制度の創設が含まれております。
 第3は、「教育訓練と結びついた実践的な職業能力評価制度の構築」です。1が「ジョブ・カード制度の推進」ということで、これはジョブ・カード制度の普及・推進などの事業、ジョブ・カードによる雇用型訓練、委託訓練の経費といったものを含んだものです。2、3ですが、職業能力評価基準、あるいは技能検定制度について必要な取組みを進めていきます。
 3頁をご覧ください。第4は、「職業生涯を通じたキャリア形成支援の一層の推進」です。3は、「学校教育段階からのキャリア形成支援の推進」です。これは学校教育段階から文部科学省とも連携して取組みを進めているところですが、キャリア教育を担うことができる人材の育成を進めていきたいというものです。平成22年度は高校段階での専門人材の育成ということで行っておりますが、平成23年度はさらに中学校段階での取組みを進めたいと考えております。
 4は、ジョブ・カード交付の担い手を育成するジョブ・カード講習の拡大実施などを通じて、キャリア・コンサルティングを受講することができる環境整備を進めたいというものです。5は、各種技能競技大会の開催などを通じての「ものづくり立国の推進」です。
 4頁です。第5は、「若者の就職促進、自立支援対策」です。1は、ニート等の若者を対象とした地域若者サポートステーション事業について、拠点数の増と支援内容の充実を図っていきたいというものです。
 第6は「障害者の職業能力開発支援の強化」ということで、障害者の職業訓練にも座学と企業実習を組み合わせたデュアルシステムを導入していきたいということです。
 第7は「人づくりを通じた国際協力の推進」ということで、1は、「新たな技能実習制度の適切な実施」です。これは本年7月から施行された改正入管法に基づいて、技能実習制度の適正な運営を図っていきたいというものです。
 5頁、6頁をご覧ください。先ほど冒頭で3点目として触れた、政策ベースでは分類しにくい経費について概要をお示ししているものです。大きく都道府県関係予算、独立行政法人雇用能力開発機構、法案が通れば高齢・障害・求職者雇用支援機構ですが、その関係、その他に区分しております。都道府県関係の予算の主なものですが、都道府県が実施する施設内訓練に必要となる経費について交付金を交付しておりますが、これが119億円、公共職業訓練を受講する期間中の訓練手当の支給に要する経費の一部を負担するための経費、これは国と都道府県の折半ですが、これが18億円といった内容になっております。
 独立行政法人の関係部分ですが、これは平成23年度予算では高齢・障害・求職者雇用支援機構の交付金などについて、総額585億円ということです。これは次の頁に詳細がありますので、そこでご説明します。その他として、キャリア形成促進助成金、施策の方で挙げた以外の国際関係の経費です。
 7頁をご覧ください。これは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構について、施設別に人件費と業務経費に分けて、平成22年度と平成23年度の予算額を示したものです。以上です。

○今野分科会長 ありがとうございました。それでは、ご質問、御意見をお願いします。

○新谷委員 資料を非常にわかりやすく作っていただきまして、ありがとうございました。非常にいい資料になったと思います。その上で教えていただきたいのは、政府の政調戦略の中に組み込まれているジョブ・カードなのですが、政府として2020年までに取得者300万人を目指すという目標が掲げられておりますので、予算もかなり重点的に投入されていると思います。その上で平成22年度が145億円の予算に対して、今回118億円となっているのですが、お聞きしたかったのは、ジョブ・カードの去年1年間の取得者の数と予算との関係なのです。145億円という予算をかけて、一体何人取得できたのか、要するにコストはどのぐらいかかっているのかを教えていただきたかったのが1点です。
 もう1点は、最後の頁で能開機構の経費について人件費と業務経費を分けて書いていただいて、よくわかるのですが、1点気になるのは、ポリテクセンターの業務経費がものすごく減少しているように見えるのです。これはどういう内容になっているのか教えていただきたいと思います。

○井上総務課長 あとのご質問からお答えします。7頁のポリテクセンターの業務経費が減少しているという部分ですが、これは平成23年度の概算要求の前提として、法案が成立して、今の雇用能力開発機構が新しい法人に業務を移管することを前提にしております。その際には、現在、雇用能力開発機構が委託元になっている離職者の委託訓練については都道府県に移管していく、また、雇用開発関係の助成金、キャリア形成助成金もそうですが、これらについては労働局に移管していくということで、これまでポリテクセンターの業務経費に挙がっていたものが、そういった所に移管されることによって減少するものが多くを占めております。

○高森実習併用職業訓練推進室長 ジョブ・カードの関係ですが、年度の実績で言うと、平成21年度は1年間で16万2,885人の方にジョブ・カードを交付しております。年度目標が15万人ということを掲げておりますので、目標は達成しております。
 予算との関係ですが、資料では平成23年度の概算要求と平成22年度の予算となっており、実はこの経費の中には訓練の実習経費、委託訓練の委託費、あるいは雇用型訓練の企業に対する助成等々が含まれております。カード1枚当たりのコストは今把握しておりませんので、検証させていただければと思います。

○今野分科会長 それでは、次回以降にお願いします。

○上原委員 今の予算の3頁の3番目の中段ぐらいに、学校教育段階からのキャリア形成支援の推進ということで、先ほども意見があって、それはそれでこういう雇用環境だからいいのですが、「中学段階に焦点を当てて、実践的なキャリア教育を担う専門人材を養成するための講習事業」というのは、具体的に言うと学校の先生ではなくて、全然別のキャリア・コンサルティングの人を教育して教えるという意味ですか。

○伊藤キャリア形成支援室長 今ご質問いただいた3頁の「学校教育段階からのキャリア形成支援の推進」の、講習の具体的な形態と対象者についてですが、キャリア教育の具体的な担い手としては、それぞれの学校の教員の方が学校教育課程・制度の中で、学校教育の一環として実施するという形態が1つあります。また、それ以外の形態として、昨年度も中学・高校のキャリア教育の事例についていろいろな観点から把握・分析を行いましたが、それぞれの地域のNPOや自治体、経済団体といったキャリア教育に関わるさまざまな機関がキャリア教育プログラムを開発して、教員の方との連携の下でそういったプログラムを提供するといったパターンの実施形態もあります。
 そういったさまざまなキャリア教育の実施形態を念頭に置き、この講習事業に関する具体的な対象者としては、1つは学校の教員自身にこの講習を受けていただき、より効果的、先進的なキャリア教育プログラムの開発・実行、若者の心の琴線に触れるようなより実効性のあるプログラムを実施するスキル・知識を身に付けてもらうというパターンのものがあります。また、今現在学校にキャリア教育プログラムを提供しているNPO等の機関のスタッフの方の一層のレベルアップを図っていく、あるいは、今現在はそういう取組みには至っていないけれど、今後学校と連携をして、キャリア教育に参画することを希望しているキャリア・コンサルティングの一定の資格を持った方々。大きくは、こういった3つぐらいの属性の方を対象にしております。
 したがって、プログラムについても、今申し上げたような受講者の属性によって、「ここはすでに知っているけれど、ここは苦手」といったいろいろなパターンがありますので、複数のプログラムの組合せの形でこの講習事業を実施するという考え方です。先ほどの総務課長の説明でも少しありましたが、今年度がこの事業の初年度で、段階的にやっていこうということで、今年度は高校対象の講習プログラムの開発等を行っており、年度後半に実施します。2年目は、その成果を踏まえて中学校を対象に、という考え方です。

○上原委員 後段の、大学等でジョブ・カードの取得を促進するための様式を開発するということで、これは何となくわかるのですが、先ほどお話があった難しい視点というのは、大学はビジネス・スクールではないわけで、その線引きというか、それは公益委員の先生方の専門でしょうけれど、そこをはき違えると変になってしまうのかなという気がするのです。あまり侵略しないようにした方がいいのではないかと思います。

○今野分科会長 注意して進めろということですね。
 ほかにもご質問はあると思いますが、今日はもう1つ議題がありますので、それを先にやって、時間があったらあとから御意見を伺います。次は「キャリア形成促進助成金の見直しについて」です。育成支援課長からご説明をお願いします。

○浅川育成支援課長 資料4に基づいてご説明します。1頁ですが、キャリア形成促進助成金の概要をお示ししています。事業の概要ですが、事業主が事業所内で職業能力開発計画を作り、雇っておられる方に対して計画的に訓練を行った場合に、その費用などを助成する助成金です。
 助成内容は4つのメニューに分かれており、1番が「訓練等支援給付金」です。これは2つに分かれております。1つ目は、事業主から従業員にこういう訓練を受けなさいということで訓練を受けさせる場合で、これが上の表です。非正規労働者の場合とジョブ・カード訓練の場合は、助成率などの上乗せがされております。ジョブ・カードについては、5分の4といった助成率が平成23年度までの時限措置として嵩上げされております。
 2番目の「職業能力評価推進給付金」ですが、これは技能検定等を従業員に受けさせる事業主に対して、その検定料などの一定割合を助成するものです。3番目の「地域雇用開発能力開発助成金」ですが、雇用情勢の悪い地域の事業所で訓練を行う事業主への助成率の嵩上げを行っているものです。4番目の「中小企業雇用創出等能力開発助成金」ですが、法律に基づく計画の認定を受けた中小企業事業主に対して、助成率を嵩上げして訓練費用を支援するということで、この4つのメニューに分かれております。
 これについては、平成23年度に見直して要求をしております。2頁になります。見直しの背景ですが、ご存じのとおり財政状況が非常に厳しいということで、全体の額の抑制が求められているということが1点です。2点目が、行政事業レビューにこの助成金がかかっており、そこでの指摘を踏まえた見直しを行う必要があるということです。行政事業レビューにおいては、助成金を出した先の現状把握が不十分といった指摘、大企業への助成の必要性やメニューの見直し等をきちんと検討するようにといった指摘がされております。これを踏まえて、平成23年度には見直しを行いたいと思っております。
 見直しの内容は下に書いておりますが、2つあります。1つは国費の有効活用です。矢印の右ですが、行政事業レビューの指摘を踏まえて、もう少し支給実態などをきちんと把握したいと考えております。2つ目と3つ目のポツですが、実績の低いメニュー、大企業向け助成の廃止といったことを検討しております。また、下の2つですが、財政負担の抑制といった観点から支給額の上限の引下げ、ジョブ・カード関係の訓練への助成率の引下げといったものを検討しております。
 5頁に実績があります。合計の右の欄が支給実績になります。平成20年度は約39億円の支給実績があったのですが、平成21年度は68億円近くに実績が伸びております。これは一時的に訓練等支援給付金の助成率を引き上げて、これはもう元に戻っておりますが、その結果によるものと、ジョブ・カード関連の訓練の実績が伸びていることが主な要因です。訓練等支援給付金の内訳の真ん中あたりの2つに、「対象認定実習併用職業訓練」「対象有期実習型訓練」とありますが、この2つがジョブ・カードのメニューで、これを足し上げたのがいちばん下のジョブ・カード制度関係訓練にまとめてあります。そこの数字を見ると、平成20年度と平成21年度ではかなり実績が伸びていることがおわかりいただけるかと思います。
 そのほか、職業能力評価推進給付金については9,200万円の実績、地域雇用開発の助成金については実績が非常に少なくなっております。また、訓練等支援給付金のいちばん下にあります自発的な職業訓練への助成のうち、労働時間を確保したり長期休暇制度を設けたりとする事業主に対する助成については、実績はゼロという状況になっております。このような実績を踏まえて見直しを行うこととしております。
 2頁に戻ります。2つ目の見直し内容の観点としては、事業主の事務負担の面から、現場から要望がかなり出ておりますので、支給手続を簡素化すること、申請書類を共通化したり、重複したものを削減するといったことで、事務面での負担を減らしていくことも検討しております。これによって、限られた財源を重点化しながら、できるだけ広い範囲の事業主に助成することを継続していきたいと考えております。
 具体的なスケジュールですが、3頁をご覧ください。平成22年度の10月1日から、支給額の上限の引下げをすでに行っております。ここに書いてありますとおり、一部のメニューについて5,000万円の上限となっているところを1,000万円に引き下げております。また、ジョブ・カードの一部の有期実習型訓練については、現在上限がない、青天井となっているものを、新しく上限500万円ということで設けております。平成23年度から手続面での見直し、メニューの改廃を行うことにしております。訓練等支援給付金の真ん中にありますが、大企業への助成廃止、長期休暇の特例、能力開発時間確保の助成の廃止、ジョブ・カードの助成率引下げ等については、のちほどご説明します。
 その下の職業能力評価推進給付金と地域雇用の助成金ですが、地域雇用助成金については実績がほとんどないということ、職業能力評価給付金については、全体の技能検定を受けておられる方に対してこの助成金を活用しておられる方が1.5%にすぎず、利用率が非常に低いということで、平成23年度から廃止したいと考えております。このようなスケジュールで進めていきたいと思っております。
 訓練等支援給付金のさらに詳細な内容が、4頁になります。ジョブ・カード制度に基づく訓練ですが、右の黄色い所が今回見直しているところです。本来は助成率を一時的に平成23年度まで引き上げていたところを、1年前倒しして、平成20年度にジョブ・カード制度が発足した当初の助成率に戻すことにしたいと思っております。そのほかの定額助成、初回の奨励金の20万円といったものも、同様の考え方で見直しを行います。また、?Cの「自発的な能力開発への支援」ですが、2つ目の勤務時間の特例を設ける事業主への支援、4つ目の連続3カ月以上の長期休暇制度を設ける事業主への支援制度については、先ほど言ったように実績がないということで、平成23年度から全体を廃止するとともに、そのほかのメニューについては大企業向けの助成を廃止したいと考えております。この新しい条件は、平成23年4月1日以降に開始する訓練から適用する方向で考えております。
 その結果の予算要求額ですが、5頁です。平成23年度要求が約87億円になっております。見直しましたが、平成22年度に訓練を開始する方がいらっしゃるので、それなりの実績が出るだろうと。そのキャリーオーバー分の支給が出てきますので、予算額自体は87億になっておりますが、支給条件自体は今申し上げたとおりの見直しを行うこととしております。以上です。

○今野分科会長 ありがとうございました。それでは、ご質問、御意見をお願いします。

○阿部委員 資料4の4頁の左側の3にありますジョブ・カード制度に基づく訓練の助成について意見を申し上げます。キャリア形成促進助成金のうち、ジョブ・カード制度関連訓練への支給実績は、平成20年度から平成21年度にかけて大幅に伸びております。これは、ジョブ・カード制度による職業訓練が増えていることの現れですね。全国の商工会議所では、訓練を受け入れる企業の開拓と訓練計画の作成を支援することで、ジョブ・カード制度の普及促進に協力しています。その結果、これまでに職業訓練を修了した約5,000人の7割強の約3,000人が、正社員として採用されるなど、非正規労働者の正社員化に大きく貢献しております。
 こうした実績は、各地商工会議所の企業に対する丁寧な支援はもとより、職業訓練を修了したあとに支給されるキャリア形成促進助成金が大きな役割を果たしています。職業訓練を実施する企業の8割強は中小企業です。この助成金により訓練に関わる経費負担を軽減できることは、中小企業にとって大きなメリットになっております。仮に平成23年度からキャリア形成促進助成金の助成額、助成率が撤廃、あるいは引き下げられることになれば、職業訓練を実施する企業にとってのメリットは大幅に薄れます。この制度を活用して人材の育成、確保を図ろうとする企業が減少することは避けられません。雇用を重視する政府の方針に合わず、ジョブ・カード制度の普及促進にも逆行することになります。
 今後も中小企業における正社員雇用を一層促進するためには、平成23年度においてもキャリア形成助成金の助成額や助成率は、現行の水準を維持すべきであると強く申し上げたいと思います。

○高橋委員 行政事業レビューにおける指摘のところで、大企業への助成の必要性に疑問ありという指摘を受けての見直しということですが、皆さんよくご存じなので、あえて申し上げることもないのかもしれませんが、国費と言いながら保険料を払っているのは事業主のみです。しかも、大企業もしっかりと払っているのに、大企業への助成の必要性に疑問ありとする指摘そのものがおかしいのではないかと。そのおかしい指摘に基づいて見直しをするという方針そのものも、おかしいのではないかと思います。

○今野分科会長 おかしい出発点はどこかという話ですね。ほかにいかがでしょうか。

○新谷委員 今の高橋委員の御指摘ですが、私どもも全く同じです。労働行政は公労使三者構成主義の下にこうした審議会の中で十分論議をして、決定していくべきものと考えております。新政権になってから、行政刷新会議の事業仕分けとか省内事業仕分けとか行政事業レビューとか、一部の有識者を集めてすぐ廃止だとか見直しだとかと結論づける。それは直ちに行政の判断につながってはいけない、今回はこういう形で審議会にかけていただいているのでまだいいのですが、ほかの局ではその結論に基づいて制度を廃止した局もあります。三者構成主義の中で、労使の協議の中で政策決定をしていくべきだと思いますので、全く高橋委員の意見と同じです。

○今野分科会長 ほかにいかがでしょうか。それでは、いろいろ御意見がありましたので、それを十分踏まえて、あるいは参考にしながら進めていただきたいと思います。
 今日はこれで終わりですが、もう1つ議題がありまして、「その他」についてご説明をお願いします。

○井上総務課長 去る3月23日の当分科会において諮問し、答申をいただいた雇用能力開発機構法を廃止する法律案について、この臨時国会に提出すべく準備を進めているところですので、ご報告します。

○今野分科会長 ありがとうございました。それでは、今日はこれで終わりたいと思いますが、ほかに何かございますか。よろしいですか。
 次回の日程等については、改めて事務局から連絡をさせていただきます。本日の署名ですが、労働側委員は中村委員に、使用者側委員は高橋委員にお願いしたいと思います。それでは、終わります。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

職業能力開発局総務課総括係

TEL: 03-5253-1111(内線5738)

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