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2010年6月23日 第10回 厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会 議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成22年6月23日(水)
16時~19時


○場所

厚生労働省 専用第22会議室


○議事

【日時】平成22年6月23日(水) 16:00~19:00
【場所】厚生労働省 専用第22会議室
【出席委員】(50音順)
飯沼委員、今村委員、岡部委員、加藤部会長、北澤委員、倉田委員、
黒岩委員、澁谷委員、廣田委員、古木委員、宮崎委員、保坂委員、山川委員
【参考人】
阿部参考人、伊藤参考人、佐藤参考人、末廣参考人、杉本参考人、
曽根参考人、福田参考人、松谷参考人、渡邉参考人
【行政関係出席者】
上田健康局長、中尾大臣官房審議官、福島健康局結核感染症課長、
正林健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策室長、岸田大臣官房審議官
熊本医薬食品局総務課長、亀井医薬食品局血液対策課長、
鈴木新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長、松岡健康局生活衛生課長、
佐原大臣官房企画官、土肥健康局健康対策調整官


○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 ただいまより第10回厚生科学審議会感染症分
科会予防接種部会を開催いたします。まず、事務局より本日の委員の先生方のご出席状況につい
てご報告します。本日は岩本委員、宇賀委員、木田委員、坂谷委員からご欠席のご連絡をいただ
いています。また、櫻井委員は若干の遅れがあるということです。したがいまして、定足数に達
しておりまして会議が成立するということをご報告いたします。それでは加藤部会長、よろしく
お願いします。
○加藤部会長 ただいまより、第10回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会を開催させて
いただきます。まず事務局より本日のヒアリングの趣旨、目的並びに資料の確認をお願いします。
○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 前回までも同様ですが、第1次提言の中にある
6つの課題についてヒアリングを行いながら議論をしていただき、課題の整理をしていくという
ことを続けております。本日は2つ議題がありまして、1つは予防接種における関係者の役割に
ついて、もう1つは健康被害の救済についてということです。
 資料はお手元に座席図、それから会議次第、裏面に配布資料一覧が付いています。資料1、こ
こでプレゼンテーションの順番が書いてありますが、予防接種の実施体制については保健医療科
学院の曽根先生に全体論を言っていただいた上で法的な整理を事務局から申し上げます。都道府
県の立場から今村委員、市町村の立場から阿部参考人に言っていただいて、医療機関の立場から
保坂委員に言っていただきます。産業界の立場からは福田参考人、杉本参考人、伊藤参考人、松
谷参考人にプレゼンをお願いしています。
 テーマ丸2は救済制度について、現状を事務局から報告をした上で、被接種者の立場から末廣
参考人に言っていただいて、そのあと、海外との比較を佐藤参考人にお願いすると、こんな順番
になっています。具体的な資料ですが、資料2-1、これが保健医療科学院の曽根部長の資料です。
資料2-2、これは事務局資料でして、現在の法的整理、それからポンチ絵的な概説が付いていま
す。資料2-3、これは山口県の今村委員の資料です。資料2-4は郡山市の保健所の阿部参考人の
資料です。資料2-5が細菌製剤協会、これは国内メーカーとしてのプレゼンテーションで福田参
考人の資料です。資料2-6、これは海外メーカーからの見解で2人の参考人の資料が重なってい
ます。資料2-7、これは卸の連合会の代表として松谷参考人にプレゼンをしていただきます。
 次の議題の救済制度の資料3-1、これが現状についての事務局の資料です。資料3-2、これは
海外との比較で佐藤参考人の資料です。資料4、これは今年の秋からのシーズンのインフルエン
ザワクチンについて、それから、資料5が日本脳炎の第2次中間報告となっています。以上、乱
丁なり不足があれば言っていただければと思います。以上です。
○加藤部会長 ありがとうございました。資料のほう、よろしいですか。それでは、議事次第に
従いまして議事に入らせていただきます。前回に引き続きまして本日もヒアリングを中心としま
して今後の予防接種制度の見直しについての議論を進めさせていただきます。本日は「予防接種
の実施体制について」また「予防接種にかかる健康被害救済について」、これらをテーマにして
有識者の方々よりヒアリングを行いたいと存じます。本日は資料の1にあります8名の皆様に参
考人としてお越しいただいておりまして、それぞれのテーマにつきまして事務局及び各委員、参
考人の皆様からプレゼンテーションをいただくことになっています。その後、質疑応答を行いた
いと考えています。しかし、質疑に関しましては時間も限られておりますので、毎回のように約
お1人10分ずつの質疑応答をお願いします。
 それでは、ヒアリングのテーマの1つ、「予防接種に関する評価・検討組織」についての議題
に入ります。まず、参考人の1人目ですが、国立保健医療科学院公衆衛生政策部長の曽根智史参
考人より「予防接種施策における社会の役割分担」につきましてご説明をお願いします。時間は
約10分程度でお願いします。
○曽根参考人 ただいまご紹介いただきました国立保健医療科学院で公衆衛生政策部長をして
おります曽根と申します。今日はよろしくお願いいたします。
 お手元の資料とこちらのほうに両方映写しまして、お示ししたいと思います。まず最初に我が
国の感染症の歴史をちょっと紐解いてみたいと思います。この資料は私どもの保健医療科学院に
所蔵されていた資料から作成したものです。明治10年から明治45年までの感染症患者数の資
料ですが、ご覧になっていただくとわかるようにコレラとか赤痢とか天然痘といった感染症が、
多いもので年間十数万人の患者さんが発生しつつ流行を繰り返しながら、明治の末期になってい
きますと次第にその流行の波が小さくなっていくという状況でした。感染症は今とは比較になら
ないくらい、大規模な流行が周期的に起こっていたというようなことをご理解いただきたいと思
います。
 そういう中で、戦前の我が国がとれた感染症対策と言いますと、まず第1にやはり環境衛生で
す。上下水道の整備であったり、あるいは消毒であったりあるいは鼠族・昆虫の駆除、更に発生
した場合には患者さんの隔離、集会の制限等がありました。また、海外からの侵入を防ぐために
検疫体制が取られておりまして、これらに関する法律もできました。また、予防接種に関しまし
ては種痘が江戸時代末期から、例えば緒方洪庵とその弟子たちによって実施され、また明治政府
によっても種痘が実施されておりました。当然、全部をカバーするわけではなく、全体としては
やはり限定された対策が実施されていたということです。
 戦後、予防接種が効果的な予防手段として定着していったわけです。先生方は既にご存じかも
しれませんけれども1つのエピソードとしまして、ポリオが1950年代、60年代に流行してい
ましたときに、この図は、国立感染症研究所のホームページから取らせていただいたのですけど
も、1960年に5,000人を超える患者さんが発生したときに、ワクチンを緊急輸入しまして、1
か月の間に1,300万人ほどの接種を実施しました。その結果、翌年から急激に患者さんの数が減
りました。1964年からは定期接種となりましたが、予防接種が大変目覚ましい効果を発揮した
1つの例です。
 次に地域保健の流れを説明したいと思います。地域保健には2つの大きな流れがありまして、
中央集権的なものから地方分権的な流れが1つで、これは、つまり直接サービスは住民に身近な
自治体でという流れです。これは慢性疾患であったり高齢化への対応への転換が1つの契機とい
うか、理由となっていまして、全体としては国から都道府県へ、あるいは都道府県から市町村へ
の業務のシフトが進んでおります。従来の保健所法が地域保健法になりましたのが平成6年、こ
れによりまして市町村保健センターの役割が明記されたということもあります。もう1つ大きい
のは平成12年の地方自治法の全面改正で、地方分権の流れを決定付けた1つの大きな出来事で
す。更に、最近の平成の大合併による自治体の大型化もあり、様々な業務が都道府県から市町村
に移行してきているというのが1つの流れです。
 また、もう1つの流れとしまして、行政から民間へということで、直接サービスでは、民間で
できるものは民間にという流れがあります。これはもう、皆様、ご存じのことと思います。これ
は国民生活の多様化によって個別対応が求められるようになってきたり、あるいは保健活動もサ
ービスとして位置付けられるようになったことが背景としてあります。更に、行政の効率化の促
進ということもあり、役割分担が進められてきたわけです。その1つの現れとして、予防接種に
おいては集団接種から医療機関での個人接種という流れがありました。
 ただ一方で、感染症対策の特徴としまして1つは広域にわたる、つまり市町村や都道府県の境
界を越える対応が必要となるということ。それから、診断法、診断基準、対策の標準化が必要で
あること。それから、短期間に一斉に、しかも徹底的に対策を実施しなければならないという特
徴もあります。集団免疫という言葉がありますが、集団防衛的なアプローチが必要とされます。
従って、一面で規制行政の側面があるということ、また、医療機関の医療圏を考慮した調整が必
要になるということで、先ほど申し上げた単純な地方分権化とか民営化に馴染まない側面もある
ということです。現在は感染症対策等は都道府県が中心となって実施している状況ではあります
が、感染症対策の大きな特徴はこのようなものだと思っております。
 その担い手としては、もちろん、国民ひとり一人がそうですけれども、組織としては国、それ
から都道府県、それから政令市や一般の市町村、更に、医療機関(医療従事者)、医師会等の団
体、それからメーカー、流通、学会、その他の医療機関等が挙げられるかと思います。また、あ
とで強調したいと思いますが、役割の明確化はもちろん大切なのですけども、同時に連携を図る
仕組みがないとこれらの対策はなかなかうまくいかないということを考えています。
 次に、予防接種事業による国の役割というものを示しました。先ほどの感染症対策の特徴とい
うところに関連付けますと、その当該感染症の診断基準や検査法の統一であったりワクチンの接
種基準、これは優先対象者であったり時期であり回数の決定が含まれますが、それから品質・安
全性の効果の評価、新規ワクチンの迅速な承認、ワクチンの安定供給の促進があげられます。そ
れから副反応対策については、大変重要なところですが、予防であったりその基準であったりモ
ニタリングであったり、補償制度の整備も役割として大変重要になってきます。更に、各都道府
県の支援、また、科学的知見の収集・分析、それから分析した内容を国民にわかりやすく伝える
というのも大切な仕事かと思います。ワクチン研究・開発の支援、関連の法整備も国の大切な仕
事だと思います。感染症の動向の調査・把握(サーベイランス)も不断に行っていくべき大変大
切な役割かと思います。
 また、都道府県の役割ですが、二次医療圏レベル等での医療機関との連絡・調整、それから医
療従事者への情報提供、接種技術の支援、それから臨時接種の場合は県民への情報提供というの
も重要な役割の1つです。また、それに関連しまして保健所等での相談窓口の設置というのも大
変住民のニーズに合った役割かと思います。また、円滑なワクチン配備の調整等も必要とされる
機能かなと考えています。
 また、市町村の役割ですが、実際に接種をするのは市町村です。具体的な予防接種業務の運営
は直営の場合もありますし、医師会等に委託する場合もあります。また、現場での接種技術の管
理や接種対象者への個別通知、更に、いろいろな細かい情報の提供をきめ細やかにやることも重
要です。相談窓口、副反応情報の収集、医療機関との契約を含む調整、それから転入者や外国人
への対応、あるいは社会的弱者の方々への対応も必要な機能かと思います。また、関連して様々
な地域組織との協働・協力も必要ですし、一方で法定接種期間経過後の対応や財源確保などの現
実的な問題もあると思います。
 更に、医療機関(医療従事者)の役割としては予防接種業務の運営、それからワクチンの在庫
管理、品質管理、予防接種技術の徹底、被接種者への副反応などの情報提供、それから、これは
基本ですが、丁寧な問診と適切な接種判断、副反応が起こったときの対応、その情報の報告等が
大変重要な役割としてあると考えます。
 また、今日もあとでお話が聞けるかと思いますけれども、ワクチンの製造販売・流通の方々の
役割としましては、安全なワクチンの研究・開発・実用化、適切な供給量の確保、適切な流通・
分配、それから医療機関(医療従事者)への情報提供、副反応情報の収集・報告、発生時の対応
というのが挙げられると思います。
 以上、駆け足ですがまとめますと、地域保健の観点から見た予防接種事業における関係者の役
割としては、国はやはり大切な枠組みをきちっと設定すること、これには法律であったり基準で
あったりということもありますし、財政的なものもあります。また補償制度、それから副反応の
モニタリング等のきちっとした枠組みを作ることも大変重要な役割だと思います。また、保健所
を含む都道府県としましては、感染症対策の中核として様々な連絡調整機能であったり、情報収
集・発信、あるいは技術的な支援が重要な機能として挙げられると思います。また、市町村は実
施の第一線として本当に円滑な安全な実施を行う、更に、直接住民と接するという意味では住民
とのコミュニケーションを図ることが大変重要な機能になってくると思います。医療機関(医療
従事者)は一言で言いますと、適正・円滑な実施、メーカーの方々においては開発、適切な供給
が大まかに言ったところでの重要な役割になると思います。最後、繰り返しになりますが、これ
らの役割分担はとても大切ですが、役割分担をしただけでは国民の安全・安心は図れないと思っ
ております。緊密な連携の仕組みを作っていく、あるいはそういう枠組みを設定していくことが
大変重要なことだと思います。以上でございます。
○加藤部会長 どうもありがとうございました。それでは引き続きまして「我が国の予防接種に
おける関係者の役割」につきまして、法律等における整理を中心に結核感染症課よりご説明をお
願いします。結核感染症課福島課長、約10分程度でおまとめください。
○結核感染症課長 それではお手元の資料2-2をご覧ください。予防接種法の条文上、国、県、
市町村等がどういう役割を果たすかという規定がどう書いてあるかということについて、概観を
したものがまず1頁目の下のところにあります。
 次の頁からお話ししたほうがわかりやすいと思いますので、2頁目を開いていただいて、まず、
現行の予防接種法の定期接種については、第3条で市町村の事務という規定がされているわけで
すが、ここにありますようにその一類、二類のうち政令で定めるものについて保健所長、特別区
及び保健所設置市の場合は都道府県知事の指示を受け、期日または期間を指定して予防接種を行
わなければならないということで、まず対象疾患については政令で定めております。どういう対
象、そしてどういう疾病について、どういう年齢の方についてということは予防接種法施行令の
ほうで規定がされております。これについて保健所長または都道府県知事の指示を受け、市町村
長が期日・期間の指定をして実施をするということで、実施主体は市町村になります。
 実際には市町村では個別接種、ポリオを除けばほぼ個別接種ですので、この場合医療機関に委
託をして行われるのが実際の事務になっています。副反応が出た場合の報告等についてはこれま
で既に報告したところですし、副作用の救済の件につきましては、またあとのほうのテーマで説
明したいと思います。
 2頁目の下のほうですが、臨時接種の場合、現行の予防接種法におきましては第6条1項の場
合は都道府県知事が一類、二類のうち厚生労働大臣が定めるもののまん延予防上緊急性があると
認められるときは、その対象者、期日、期間を指定して臨時に予防接種を行い、又は市町村長に
行うよう指示することができるということです。まず、対象疾患の指定を厚生労働大臣が行いま
す。その上で都道府県知事がその対象者、あるいはその期間というものを定め、直接に実施する、
あるいはその市町村長に行うように指示をするということになっております。例えばここにあり
ますように積極的疫学調査によって患者の周りの濃厚接触者の方にワクチンを打つ、リング・ワ
クチネーションをするというような場合があったり、あるいは都道府県内で、更に広く地域住民
に接種を行うという場合もあるということでこのような規定になっています。
 右の頁の3頁の上のほうですが、これは第2項です。厚生労働大臣が都道府県知事に指示をす
る場合、これは対象疾患の指定をし、そして都道府県知事に対して大臣が指示をするわけですが、
ここでは海外での新感染症の発生と書いておりますが、海外での発生、国内での広汎な発生があ
る、あるいは見込まれるような場合です。この第2項の場合は都道府県が自ら接種を行うという
ことになっており、市町村への指示はここではされていないということもありまして、新しい類
型の臨時接種が必要ということで先般来のご議論を踏まえた予防接種法案をいま、国会でご審議
いただいているところです。
 1頁目に戻りまして、予防接種の実施以外では、国は予防接種推進のための指針の作成をした
り、あるいは普及啓発、研修とか調査・研究を行ったり、あるいは保健福祉事業をを行ったりし
ていると、これは救済給付を受けた方に対する保健福祉事業ですが、そういうものを実施するこ
とが規定されています。
 また、県の役割として政令に定める疾患について、具体的には日本脳炎については実施しない
ことを指示することができまして、これによって、北海道における日本脳炎は実施されていない
ということです。
 それで、市町村の役割を見ますと、法に書いてあるもの以外では実際の救済給付の支出の支弁、
あるいは接種費用の支弁は市町村が行うわけですが、臨時接種の場合はその実施費用については
県と国が3分の1ずつで市町村が3分の1です。それから給付に関しましては、市町村が4分の
1、県4分の1、国2分の1という形で費用負担をすることになっています。定期接種につきま
しては市町村の支弁となっており、低所得者分については交付税措置がされています。
 それ以外の事務については、通知等で決められているということで、医療機関から市町村への
副反応の報告等についても、これは通知で決めているということです。それから、メーカー、あ
るいは医療機関は、この通知に基づく報告とは別に、薬事法に基づく報告というものが規定され
ているということで、全体で予防接種法においてはそれぞれの役割が決められているということ
です。私からは以上です。
○加藤部会長 ありがとうございました。それでは引き続きまして地方自治体の立場から説明を
お願いします。まず、都道府県の立場から、山口県健康福祉部長の今村委員よりご説明をお願い
いたします。恐縮ですが、時間は5分程度でお願いします。
○今村委員 都道府県の立場から発言させていただきますけれども、先ほど曽根先生のお話にあ
ったように感染症対策自身は都道府県が中核ですが、予防接種事業自体は市町村の関与が非常に
強いので市町村を絡めてお話したいと思います。
 それではまず、お手元の資料1頁ですが、予防接種制度の在り方というか目的を何に求めるか
によって地方自治体の役割、特に公的関与とか財源負担というのは深く関係してきますので、こ
の部分をしっかり論じ、決定する必要があるということを書いております。特に真ん中辺りにあ
りますけれど、「個人の健康の保持増進を図る面を重視した制度」の考え方というのが平成6年
に法改正でありますので、この部分をしっかり議論した中で抜本的な制度の見直しが必要という
のが都道府県の意見です。
 そして真ん中ですが、対象疾患についてですが、これはこの書いてあるとおりなのですけれど、
新たな疾患の発生やワクチンの開発に遅滞なく対応できるように、前回あったと思いますが
ACIPのような専門的な組織とか、あるいは法体系の整理が是非、必要だと思います。
 それでは、下のほう、実施主体・接種費用について少し論じたいと思います。いま福島課長か
らお話がありましたけれど、予防接種事務については定期接種は市町村の自治事務、そして地域
的な臨時接種は都道府県の法定受託事務です。そして、予防接種による健康被害の救済に関する
措置は市町村の法定受託事務になっています。そこでまず、臨時接種についての課題をお伝えし
たいと思います。
 2頁で、現在、予防接種法に入っておりません、例えば水痘とかHibのワクチン等が仮にこれ
から定期接種の対象となった場合には、現行予防接種法のままいきますと、市町村の財政需要は
相当拡大します。その財政措置の在り方についてしっかり検討しないと、これは実施できないと
思います。
 また、Hibワクチンなど、いま任意接種の費用を一部、市町村が公費助成しておりますので、
本来必要な予防接種をナショナルミニマムとして全国的に接種が保障されるべきものと考えま
すので、市町村に必要な財源措置を行った上で定期予防接種化すべきと考えます。その際、現在
一類疾患にかかる定期予防接種は概ね自己負担ということになっていますけれど、現状としては
市町村が独自に全額を負担しておりまして、完全に無料化されています。そういうことを踏まえ
ますと、全国で国民が同一の条件で確実に接種を受けるためには所得にかかわらず無料で接種を
行うべきと考えております。そのためには国はいま地方交付税が出ますが応分の財政負担を行う
べきであろうと思っております。しかもいまの地域主権の形からいけば、市町村の自主的な対応
が尊重できる観点からも補助金ではなくて交付金でと思っております。また費用対効果の面から
も有効な予防接種を保険医療で行う検討もあるのではないかと考えております。
 それから、毎回同じようなことを言って申し訳ないのですが、国民生活に重大な影響を及ぼす
もので地方が実施主体となる事業については国と地方の密接な連携が非常に必要なので、地方の
事務負担、財政負担が生ずる制度を定めるときには、地方と十分に協議して、その合意を得なが
ら進めていく必要があると改めて提言しておきます。既に去年の9月の終わり頃に全国知事会と
か市長会とか町村会の連名でそのことは申し上げているとは思います。
 次に臨時接種の在り方についてですが、これは2頁の下です。現行法における臨時接種は地域
的なまん延予防を想定していますけれど、現在、交通網が飛躍的に発展していますので地域的な
課題にとどまるケースはある意味では稀だと思います。むしろ国家的な危機管理の課題と思って
おります。したがって、病原性が高いなど感染拡大による社会的影響が非常に大きいので、そし
てまた緊急性が高いので全国統一的にこれは行うべきであって、国が予防接種全体の方針を定め、
予防接種についてノウハウのある市町村が実施主体となって全額国費で実施するスキーム、ある
いは国が実施主体となり全額国費でやるという、そして都道府県や市町村が協力するスキーム、
こういうものを原則として、従来の地域的なまん延防止のためのスキームはむしろ従たるものに
なるのではないかと考えています。また、新しい予防接種についても同様でして、スキームの検
討が必要だと思っております。
 次に3頁ですが、公的関与等ですが、これについては今後の検討課題で3つのポツがあります
ので、それに沿ってお話します。接種対象である国民の接種は努力義務、そして接種主体である
市町村は、あるいは都道府県も関与しますが、積極的勧奨の両論によって予防接種は促進される
ものと考えますけれど、接種対象者には努力義務を課さないけれど行政は接種対象者に対して予
防接種の勧奨を行うという、こういう今回の新臨時接種はいまさら言うのもなんですが再考が必
要だと考えております。
 また、接種費用の公費負担は勧奨にとても重要な手段なのですけれど、所得にかかわらず接種
費用を全国的に無料にするワクチンを決めるなど、やはり対象疾患の優先順位というのも変です
けれど、ある程度、全国的に対象疾患をきちんと定めて、それについては無料で行うということ
が必要ではないかと思われます。
 感染拡大防止を主目的とする疾患に関しての予防接種には、場合によっては学校入学の制限と
いうか入学時のある程度のチェック等、何かそういう工夫も必要だと思います。それでもし、そ
ういう形の中で完全に避けることができない健康被害の発生に関しては類型による差を設ける
ことなく十分な措置が行われるよう、制度を充実させていけたらいいのではないかと思います。
 最後ですが、これは都道府県の立場ということではないのですが、その他としてワクチンの確
保、それから実施方法、そして混合ワクチン開発の推進を挙げています。特に自治体としまして
は混合ワクチンの開発及び接種を是非推進していただきたいのは、被接種者とか保護者、それか
ら実施主体である市町村にとって今のままでは非常に負担が強いです。是非、これを進めていた
だけたらと都道府県としても思っております。再度申し上げるようですが、とにかく予防接種制
度の目的を明確にすることによって市町村、それから都道府県の費用負担も含めてある程度連動
して論じることができると思っております。以上です。
○加藤部会長 どうもありがとうございました。引き続きまして、地方自治体の立場のお2人目
です。実施主体でございます市町村の立場から、福島県郡山市保健所阿部孝一保健所長より説明
をお願いします。約7分程度での説明をお願いします。
○阿部参考人 紹介いただきました福島県郡山市保健所の阿部といいます。よろしくお願いしま
す。私のほうからは、いままで話がありました予防接種の実施主体としての市町村の役割を代表
して、郡山市の現状と問題点等についてお話をさせていただきたいと思います。
 資料2-4です。1と2は、郡山市の大体の概略です。郡山市は、人口が33万8,000人の中核
市でして、年少人口率が14.9%で、高齢化率が19.7%、これは今年の1月1日現在の数字です
けれども、年少人口は全国平均よりやや多く、高齢化率はやや少ないという、そういう人口構成
になっています。郡山市の組織の2番は抜粋ですが、いちばん上は保健福祉部がありますが、そ
の上に首長である市長がいて、副市長がおりまして、保健福祉部があって、その下に保健所があ
ります。保健所の組織としては、総務課、地域保健課、生活衛生課、検査課という4課体制にな
っていまして、そのうちの地域保健課が3つの担当制からなっていまして、主に栄養とか、がん
対策とかを行っている健康増進の部門と、いちばん下の、精神保健福祉、それから特定疾患を担
当している部門と、結核感染症を担当している部門とあります。この感染症対策を担当している
部門はプロパーの職員が5人で、臨時嘱託職員が3人ほどなのですけれども、9人ほどで感染症
対策、予防接種事業を実施しています。これが概略です。
 3番目から本論に入ります。(1)予防接種の実施ということです。先ほど言いましたように、
保健所の地域保健課の感染症対策担当が実際の予防接種事業の事務を取扱いまして、郡山市が
(社)郡山医師会に実施を委託しているという形になっています。現在、郡山市に住所があって、
里帰りとか等で他の市町村で接種することも可能となるような予防接種の広域化というのを実
施していまして、そういう場合には、郡山市と(社)福島県医師会、県の医師会とで委託契約を
結んで、他の市町村でも予防接種が受けられるような体制を取っています。これは県内だけでし
て、他都道府県での接種はまだそこまで広域化の対応ができていない現状にあります。実施して
いる予防接種ですが、予防接種法に基づく8種類の疾病に対する予防接種を実施しています。そ
の次は実施方法ですが、先ほどから出ていますように、ポリオワクチンの接種が集団接種である
以外は、医療機関での個別接種となっています。
 (2)です。事業の実際の実施状況です。先ほども言いましたように、医師会と委託契約を結ん
でいますので、郡山市と(社)郡山医師会、広域接種の場合は、郡山市と(社)福島県医師会と
の間で「個別接種にかかる予防接種業務委託契約書」というのを締結しています。これに基づい
て、医療機関での個別予防接種を実施していただいているところです。これは郡山市独自かもし
れないですけれども、郡山市から個別接種の受託を希望する医療機関については、郡山医師会が
主催して受託講習会という講習会を年2回開催していまして、その個別接種を受託するためには、
2回実施開催している医師会主催の講習会を少なくとも1回受講しなければならないという義
務が、これは医師会の規定になりますが、そういうのがありまして、これで予防接種の実際の安
全とか、質を高めるための担保という、そういう試みを行っています。最後に述べますが、ここ
近年いろいろ制度が変わりましたけれども、そういう際は、郡山市と郡山医師会に設置していま
す小児保健予防接種委員会という部会がありまして、この部会との間で円滑な実施に向けて随時
協議を図っています。
 (3)です。費用負担は、一類疾病の定期接種は、全て市が負担しています。二類疾病の定期接
種は、実費の一部負担があります。先ほどから出ています臨時接種については、実績がありませ
んので、コメントは差し控えたいと思います。
 2頁です。任意の予防接種に対して郡山市では、一切いまのところ独自の助成は行っていませ
ん。議会等からいろいろ質問はされるのですが、やはり任意接種であれば健康被害救済制度とか、
そういう問題があるということで、もう少しこの部会の結論とかそういうのを見てというような
答弁をさせていただいています。
 (4)副反応情報の収集についてです。これは様式が決まっています。「予防接種副反応報告書」、
「コッホ現象事例報告書」等によって、報告を医療機関から上げていただくよう協力を依頼して
情報収集をしています。ただ件数としては、年1件から2件ぐらいかなというところです。予防
接種の完了率ですが、一類疾病の定期の予防接種は、2種混合ワクチンを除いて、大体90%以
上の高い完了率で推移しています。小学校6年生対象のジフテリアと破傷風の2種混合ワクチン
は、60%代とちょっと低い値となっています。
 (6)未接種者対策です。未接種者対策の前に、対象者への通知として、全ての子どもさんを対
象に、1カ月時に予診票を各本人に、対象者に個別に送って接種を呼びかけるという対応策をと
っています。それでも接種しない方に対する対応としては、予防接種台帳をいまシステム化とい
うか、コンピューター化、データベース化されていますが、そこから未接種者を抽出することが
できますので、それを抽出して個別通知によって接種勧奨を行っています。また、4歳児、10
カ月児、1、6、3歳児健診時に、母子健康手帳等で接種を確認して、未接種者へ接種勧奨を行っ
ています。
 最後に、日本脳炎ワクチンについての流れを述べさせていただきます。平成17年5月の積極
的勧奨の差し控えで、翌年平成18年度の1期の初回の接種率が1%まで落ち込みました。ただ、
関係者の努力で、平成21年度、昨年度は、1期初回の接種率が約70%まで回復しているという
現状にあります。
 最後に、予防接種を実施する自治体からのお願いということで、2つほど挙げさせていただき
ます。1つは、平成17年度のBCGの直接接種、平成18年度のMR混合ワクチンの2回接種の
導入、平成20年度の中学1年生、高校3年生年齢相当の者に対するMR混合ワクチンの追加接
種等、予防接種制度がひんぱんに変わりまして、現場では市民への周知とか、母子健康手帳の印
刷のし直しとか、医師会との委託契約の変更等について、非常に多大な労力が費やされたという
現状があります。予防接種の実施主体である市町村のこのような状況も考えていただいて、制度
改正がひんぱんに必要となるような改正ではなくて、抜本的な見直しをした予防接種法の改正を
お願いしたいと思います。
 2つ目は、今回の議論で、仮に任意接種の対象疾病が定期接種に位置付けられることになれば、
接種を希望する住民にとっては朗報ではあるのは間違いないのですが、先ほど今村委員がおっし
ゃいましたように、市町村にとっては職員を増やさなくてはならないとか、財源を確保しなけれ
ばならないなど、そういう大きな問題が予想されますので、国とか都道府県の財政支援等につい
ても議論していただきたいというお願いです。以上です。
○加藤部会長 どうもありがとうございました。続きまして、実際に接種を行っています立場か
ら、日本医師会担当常任理事の保坂委員より説明をお願いします。約5分程度の時間でお願いし
ます。
○保坂委員 資料はございませんが、いままでの参考人や委員の方々のおっしゃったことに、私
どもとして特段付け加えることはないと思うように、皆様の意見にほぼ賛成です。
 本日申し上げたいことは4点あります。まず理念の一貫性の確立をお願いしたい。これまでの
予防接種行政のあり方を顧みると、理念の一貫性に欠けていることが現場の混乱を招いていると
指摘せざるを得ない。例えば、マウス脳による日本脳炎ワクチンについて言えば、1例の重大な
副作用の発生により接種勧奨を控えたことにより、実質的に接種できない世代が発生している。
年齢の縛りについては、公衆衛生の観点からも、極力縛りを外し、より多くの国民が接種を受け
られる環境を今後整えるべきである。何歳ぐらいのときにやるべきだということはあっても、何
歳から何歳までは定期であって、それを外れると定期ではないという考え方については、変更し
ていくべきであると考えます。なぜ日本脳炎の接種勧奨を控えたのか、今回の乾燥細胞ワクチン
においても、重い副反応や健康被害が数例でも発生すれば、また接種勧奨を控えることになるの
か、接種することによる日本脳炎感染回避のメリットと、非接種による感染のリスクについて、
国として理念、姿勢を国民に対して示し、また、副反応が起きたときの対応について、かなりき
ちんとした枠組みを作っていくべきだと思っています。
 2番目に、法の制定や改正に当たって、法の制定や改正に当たる行政側に必要なことで、いま
まで欠けていたと思われるのは、その内容が国民や各地域の、地方自治体も含めてですが、住民、
各地域の医療機関にどのような影響を与えるかという想像力に欠けていたことだと考えていま
す。想像力をもって全て対応していくということが今後必要であるかと思っています。理念の一
貫性の確立と併せて、具体的運用における柔軟性を併せ持ったシステムを作ることにより、いか
に国民の健康を効率的に確保するかということを常に考えて、目先のことに捉われない大きな視
点をもった政策を立てていただきたいと思っています。
 3番目に、予防接種における公費負担についてです。現状の定期接種における国庫支出は地方
交付税交付金の形をとっています。しかし、地方財政が悪化している現状においては、現状の方
式では、地域による大きな自己負担格差を生じさせています。先ほどの今村委員の話では、いま
地方分権の時代なので、やはり補助金ではなくてというお話もありましたが、現在の地方の現状
を見ますと、もしその地方交付金でやるとすると、かなりの多額のお金を入れてもそこで予防接
種に使われるということがなく、国としては予防接種の分で地方交付金を出しているのだけれど
も、現実には、地方の財政が厳しいことからほかのことに使われてしまうという部分が強いので、
私どもとしては、できれば国庫10分の10の補助制度に移行していただければと考えています。
予防接種で防げる病気で命を失ったり、あるいは重い後遺症に苦しむ子どもたちを救うためにも、
地域間や経済的格差に関係なく、希望する全ての子どもに公費でワクチンを打てる環境を国とし
て早急に整備していただきたいと思っています。
 4番目、集団接種導入に当たっての注意点です。集団接種で行うことが適切な予防接種も確か
にあると思います。今回の新型インフルエンザのワクチンについてはそうであったと思いますが、
その集団接種をもし再度導入することを前提とするならば、集団接種のあり方について、その接
種を受ける方たちが健康被害を受けることがないような集団接種のあり方についての、やはりあ
る一定のルールをかなりしっかり国のほうでお示しいただいて、それに沿った形での集団接種を
行うようにお願いしたいと思います。以上です。 
○加藤部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの曽根参考人、そして事務局、ま
た、予防接種施策の現状についての説明が行われましたが、実施主体、もしくは実際に予防接種
を行っておられる立場の今村委員、阿部参考人、保坂委員からのプレゼンテーション、説明があ
りました。これらの方々、各委員、参考人に対しまして、各委員からの質問、意見をいただきた
いと思いますが、いかがでしょうか。
○廣田委員 最初にお話いただきました曽根先生に、意見をお伺いしたいと思います。この予防
接種制度、予防接種事業についての役割負担と、これを円滑に普及させるための役割分担という
のは、ちょっと異なるのではないかと思うのです。制度とか事業の役割分担、特に費用負担とな
ると、もう御上か個人かということになってしまうわけですが、、普及するということを考えた
場合、例えば、2009年、この前からの新型インフルエンザワクチンの場合は、米国では州によ
っても異なりますが、企業が個人が受ける場合の接種費用を補助するとかですね、そういった普
及を助けるための役割負担というのが存在すると思うのです。そういったことが、日本の制度の
中でも定着できるのかというような状況について、ちょっと曽根先生の意見をお伺いしたいと思
います。
○曽根参考人 確かにおっしゃるように、普及を推進するためのいろいろな仕組作りというのは、
やはり制度に関連付けて考えていかないといけないと思います。お金が生じる話では、なかなか
その辺を作っていくのが難しいかもしれませんけれども、例えば、情報提供であったり、安全性
の確保であったり、そういう面においては比較的スムーズにいろいろな役割を集結して円滑に進
めていくことが可能あると考えています。ある意味でのリスクコミニュケーション的なところが、
それぞれのステークホルダーに必要とされると思います。やはり、そういうところは、いろいろ
な知恵とか得意分野を出し合ってやっていく必要があると思います。以上です。
○加藤部会長 よろしいですか。他の委員の方は。どうぞ。
○飯沼委員 曽根先生にお伺いしたいのです。3頁の地域保健の流れの(2)の所に、いま予防接
種の話がありました。集団接種から個別接種と、いま保坂先生もおっしゃられましたが、皆さん
が感じておられると思いますが、集団接種が絶対に必要になることになると思います。そのため
の学問的な裏付けと言いますか、そういうのはどうお考えでしょうか。
○曽根参考人 その辺りは、本当に専門家の先生がいらっしゃるのですが、例えば、急激に集団
接種率を上げることによって、集団の免疫水準を短期間で確立するという面では、集団接種の意
義があると思います。最近3月にJAMAに載せられた論文でも、集団免疫をある程度一定規模
に上げますと、接種を受けていない人も疾病の罹患率が下がるというデータもあります。接種を
受けられない様々な疾患や合併症を持っている方も、その周りの健康な人たちが集団で接種率が
高くなると、罹患が少なくなるということです。そういう意味でも、いろいろな安全性を十分加
味した上で、そういうやり方もあるのかなと思います。その辺は、岡部先生がとてもお詳しいと
思います。
○加藤部会長 飯沼委員よろしいですか。
○飯沼委員 ありがとうございました。
○澁谷委員 今村委員にちょっと教えていただきたいのです。3頁の所の中程の所に、学校入学
の制限というのが出てくるのですが、ちょっとイメージしにくくて、どんな感染症とかどんな予
防接種の関連をイメージしたらいいのでしょうか。少し教えてください。
○今村委員 制限という言葉がちょっときつかったかもわかりませんが、小児期にやる予防接種
で、いま定期になっていますものを、小学校の入学前に一応やっているかということを指摘でき
る方法があると、これはとてもいいのではないかというか、それが大事なのではないかという意
味です。予防接種を可能な限りたくさんの人が受けるためにこういう仕組みを設けたらどうかと
いう意味で書きました。
○澁谷委員 ということは、接種をしていないと入学させないと、そういうことなのですか。
○今村委員 そこまで私どもがいますぐに書けないので、そういう仕組みを強制的ではないけれ
ど、そういう方向に行くような仕組みはないものかという提言です。学校に入れないということ
ではないし、これはちょっといくらなんでも無理と思います。
○澁谷委員 ありがとうございました。
○宮崎委員 2つ質問したいのです。1つは、交付金と補助金のことで、これは複数の方に質問
がわたるのですが、交付金と補助金のどちらがいいのか、税金を使う側として、また出す側とし
て、一体どうなのだということをもうちょっと聞きたいということです。もう1つ、広域化の問
題は各自治体で非常に苦労されて、広域化が進んだ所となかなか進まない所があるのです。何が
広域化を逆に阻んでいるかということと、広域化について国は一体どう考えているか、あまり国
は関与していないようにも思うのですが、その2点について、国、今村委員、保坂委員などに質
問します。
○加藤部会長 今村委員と阿部委員ですか。国も、では厚生労働省と、1分程度で。県からいき
ますか。
○今村委員 県というよりも、むしろ先ほどから申し上げましたように、市町村に直接交付金が
いきます。先ほど保坂先生もおっしゃったように、確かにいま財源の非常に厳しい中で、交付金
としていった場合に、それが間違いなく予防接種に使われるかどうかという危惧はありますが、
やはり、市町村の首長の各々の考え方というのは非常に大事だと思います。補助金でもっていく
ほうがいいのではないかという考えが都道府県にもありますが、先ほど申し上げましたように、
ある種の予防接種を定期予防接種にしたときに、それは必ず必要と思う予防接種なので、国が全
部丸抱えの、いわゆる公費全額の負担の仕組みを作ることだと思います。だから、定期予防接種
をどれにするかということが、これからの議論ではないかと思っています。
○阿部参考人 市町村の立場からは使い道が限定されている補助金のほうがいいことはいいの
ですが、受益者負担という別の考え方もあります。被接種者から負担金を徴収するという考え方
もありますが、絶対に接種率が下がってしまうので難しいと思っています。基本的には、使い道
が限定された補助金、負担金のほうを希望します。
○加藤部会長 宮崎委員からの質問ですので答えにくいと思いますが、厚生労働省福島課長、簡
単にお答えください。
○結核感染症課長 広域化のほうから先にお答えします。広域化というのは、先ほど郡山市でお
っしゃったような市町村相互乗入れのことだと思います。住民の利便性あるいは接種機関の確保
という観点では、広域化は望ましい方向ではないかと考えていますが、それについて、国として
明示的には示していないと思います。
 財源の問題です。地方交付税交付金と、負担金のどちらがよいかという問題ですが、国の立場
でどちらがいいと申し上げるものではないと思います。法的に、実施主体である市町村に実施義
務を掛けているわけですから、交付金になろうとも、負担金になろうとも、市町村は実施しなけ
ればいけないということになりますので、それはどちらでもできます。ただ、交付金であれば、
どうしても基準財政需要額に応じて算定され、あるいは市町村の財政状況によって交付金が来る、
来ないということがありますので、そういう面では明確に来る負担金のほうが望まれる場合もあ
りますし、先ほど郡山の保健所さんからお話があったように、一般に市町村の中で衛生担当課が
財政課と予算の話をする場合に明示的に何に使うかとしたほうが、財政課との交渉がしやすいと
いう個別事情もあるようにも思います。予防接種に関しては、法的に市町村に実施が義務づけら
れていますから、負担金でも交付金でも実施されるものと考えています。
○加藤部会長 時間の関係で先に進みます。引き続いて、ワクチンの製造、販売、流通メーカー
の立場から、順にご説明をお願いします。まず、国内メーカーの立場から、社団法人細菌製剤協
会の福田仁史参考人からご説明をお願いします。
○福田参考人 細菌製剤協会の福田でございます。本日は、メーカーと販売会社という2つの立
場で、ご報告をさせていただきます。よろしくお願いします。
 いちばん下のスライドです。ここに一般的なワクチンの流通をお示ししました。左にある製造
販売業者というのは、メーカーを意味しています。メーカーあるいは販売会社から供給されたワ
クチンは、一旦卸売販売業者に納められ、予防接種の実施主体である市町村を通じて医療機関、
もしくは直接医療機関にワクチンが納品されていきます。この間、メーカー及び販売会社におき
ましては、適正使用情報が日常的に提供され、安全性情報の収集に務めます。これらの収集され
た情報は、国に定期的に報告されています。
 次の頁です。今回のパンデミック時の新型インフルエンザワクチンの流通スキームをお示しし
ました。これは厚生労働省より示されたスキームです。説明するまでもなく、非常に複雑な流通
経路をたどっております。
 下に、この間に販売業者等が行ったことを記してありますが、この複雑な流通の中、一定のル
ールの中で医療機関に納めているということで、都道府県別、医療機関別の納入数量を日常的に
把握し、定期的に国に報告してきました。また、接種事業制度に関する医療機関からの照会に当
たっても、都道府県で対応できないケースも含めて、メーカー及び販売会社で対応してきました。
 次の頁です。メーカーから供給された新型インフルエンザワクチンの供給量と生産量を示しま
した。左のグラフは供給開始から終了まで、当初厚生労働省と契約した約5,400万人分のワクチ
ンが、計画どおりに供給されたことを示しています。右の小さなグラフには、各社4社の供給量
の内訳を示しました。今回のパンデミック新型インフルエンザワクチンの流通を経験しまして、
今後に向けてということで、何点か要望させていただきます。
 私どもメーカー及び販売会社に当たっては、非常に公共性の高いワクチンを扱う企業として、
パンデミック発生時などの国の接種事業に対して、これまでどおり、可能な限り積極的に協力を
行っていきたいと思います。ただ、この際に国においては、以下の点について、特段の配慮をお
願いしたいと考えています。
 まず1点目です。国の事業あるいは要請に応じて企業が製造や流通を行う場合、国においては、
後々発生する費用も含めて十分に見通しを立てるとともに、想定外の費用が発生した場合は、迅
速・柔軟に確保し、提供していただくことを要望いたします。
 次の頁です。2点目ですが、パンデミックが起きた場合は、非常に短期間に大量のワクチンを
供給する必要が出てくるため、大容量のワクチンバイアルを供給することを検討しなければなら
ないと考えます。先ほどの議論の中にもありましたが、短期間で大量のワクチンを供給した場合
に、接種側においても、集団接種ということで接種を進めなければ、接種率はなかなか上がって
こないと考えています。先ほど保坂委員からも指摘されましたように、こういうことを想定して、
事前に集団接種のあり方について協議が必要であると考えています。
 3点目です。パンデミック、特にH5のような非常に病原性が高い感染症が発生した場合、十
分な時間的猶予がないままに、例えば国家検定を受けないままワクチンを供給する場面も想定さ
れます。そういったときに、健康被害等が発生した場合を想定し、その補償のあり方についても、
事前に協議をしていただきたいと考えています。
 最後に、これは要望というよりも私どもの考えですが、これまでも法規制の有無に関係なく、
国の予防接種事業に積極的に協力してきました。今後とも可能な限り、努力と協力を行ってまい
りたいと考えています。以上です。
○加藤部会長 続いて外資系企業の立場から、お2人の参考人にご意見を伺います。まず、グラ
クソ・スミスクライン株式会社取締役バイオロジカルズ担当、またパンデミック・インフルエン
ザ政策支援本部長の杉本俊二郎氏と、万有製薬株式会社ワクチン事業本部シニアディレクターの
伊藤嘉規氏からお願いします。
○杉本参考人 本日は予防接種事業の適正な実施について、外資系企業の意見を述べさせていた
だく機会をいただきまして、大変ありがとうございます。加藤部会長をはじめ、委員の先生方に、
まずお礼を申し上げます。
 資料2-6をご覧ください。外資9社を代表し、私GSKの杉本と、万有の伊藤が発表させてい
ただきます。
 まずはじめに主な論点であるパンデミック流行時、のパンデミックワクチンについて、GSK
の杉本が発表させていただきます。また、パンデミックワクチン以外のワクチンについての影響
も若干ありましたので、平時の対応についてもあわせて、万有製薬の伊藤から発表させていただ
きます。
 次の頁です。このページにパンでミックワクチンの課題と今後の対処について纏めました。今
回のパンデミック時に経験した主な課題は、ワクチンの必要量、ワクチンの承認プロセス並びに
接種体制の3点です。
 まず最初の課題はワクチンの必要量の確保です。優先接種順位が決まって、5,400万人に優先
接種する方針が出されました。一方で、優先接種の対象外の健康成人が無防備になったというこ
とが挙げられます。全国民がワクチンでパンデミックインフルエンザを予防できるワクチン量の
確保が必要です。ここでテキストに「高齢者」という言葉が入っていますが、これは削除いただ
けますでしょうか。
 第2の課題は、ワクチンの承認プロセスです。我々から見て、パンデミックワクチンの承認プ
ロセスが若干明確でなかったという気がします。国産のワクチンは株違いという判断の下で、新
規に承認する必要がなく、可及的速やかに製造が始まったと理解しています。一方、海外からの
輸入ワクチンですが、今回は特例承認というご配慮をいただきましたが、それでもなお審査プロ
セスにより時間的に大きな制約を受け、国産ワクチンと比較して、市場への配置が大きく遅れま
した。タイムリーなワクチン供給に課題が残りました。
 3番目の課題として接種体制です。個別/集団あるいは接種場所等、先ほどから議論が出てい
ますが、接種を希望する方々が、自由に接種場所を選択できる季節性インフルエンザのワクチン
の体制を利用したために、新型インフルエンザに対応するという意味では、需要と供給のアンバ
ランスが生じて、結果として流通に混乱をきたしたと考えています。
 これらの課題について、各々今後の対応について、以下のような配慮が必要ではないかと考え
ています。
 まず必要量です。新型インフルエンザ総括会議の最終報告でも謳われていますが、予防のため
のパンデミックワクチンを全国民に準備するということが方向性として出ています。非常にいい
ことなのですが、現時点では国産ワクチンを、一時期に全国民に供給することができないという
現状ですので、輸入ワクチンが必要だと思います。
 次のパンデミック時に迅速に供給できる体制かについて、現時点では若干の問題があると考え
ています。機動的に国内外のワクチンを接種できる形にするには、今回特例で承認いただいたも
のも、通常の承認プロセスに乗せて、国産ワクチンと同様将来株違いという形で、可及的速やか
な機動的対応をできるようにするべきだと思っています。
 また、接種体制、プログラム等、供給の確立をめざした、いろいろな関係の方々の協議の場が
必要だと考えています。次頁の上段にまとめていますが、これらは後ほど見ていただくとして、
海外メーカーとしては、政府の方針に従って、パンデミック時であっても国民に必要なときに、
必要な量のワクチンを供給することに尽力するつもりです。
 以上今回のパンデミックでのワクチンに関係する主要な論点ですが、今回のパンデミック時に
おいて、その他のワクチンについても若干の影響が出たように思います。平時の対応も重要かと
思いますので、この点について万有の伊藤から発表させていただきます。
○伊藤参考人 万有の伊藤です。パンデミックワクチン以外のワクチンへの影響と課題について、
ご紹介します。まず、昨年度の事例からご紹介させていただきます。23価肺炎球菌ワクチンが
2009年のH1N1インフルエンザの流行に伴い、このワクチンの需要が短期間で急激に高まりま
した。特に二次感染で、肺炎球菌性感染症におけるリスクに関する報告、また日本感染症学会に
よるガイドラインにおいて、その影響により急激な需要増により、品薄状況を招きました。
 これに対し、米国本社への緊急輸入、そして国家検定を迅速にしていただきましたにもかかわ
らず、8月は2008年に対して2009年は8倍の使用量でした。この影響もあって、9月は多くの
医療機関からのご要望に対して、ご要望にお応えすることができず、大きな市場の混乱を招いて
しまいました。こういったことから、今後は検討が必要とされる事項について、ご紹介させてい
ただきます。
 外国為替及び外国貿易法第52条に基づく輸入手続きについて、緊急時には平時より速やかな
事務処理にご配慮をしていただきたいと思います。また、国家検定に関する相談や調整していた
だく窓口を、一本化していただければと思います。3点目です。パンデミックの発生に伴い、需
要が急増するワクチンについては、全世界同時に供給不足に陥るリスクもあることから、政府に
よるある程度の備蓄をお願いしたいと思います。
 次の頁で、平時ワクチンについての課題と提言です。まず課題です。1点目は、接種率が十分
でないワクチンがほかの先進国に比べて非常に多いです。2つ目は、任意接種ワクチンについて
は需要予測が非常に難しく、安定供給が難しい状況です。3つ目は、ワクチンギャップが存在し
ます。
 提言です。1つ目は、任意接種ワクチンをより多く定期接種ワクチンに組み込むことにより、
ワクチン接種プログラムを充実したものにする。安定供給の確保という観点からも、任意接種と
いう接種環境を改善していただき、全てのワクチンを計画的に接種する制度及び接種環境の整備
をお願いしたい。2つ目です。任意接種ワクチンの場合、供給側は需要予測が極めて難しいため、
この需要予測に関して、いろいろな多方面の方々の協力をいただきたいと思います。次に、速や
かな新ワクチン導入のために、承認要件の明確化、海外での出荷時規格や検定結果の受け入れを
お願いしたいと思います。
○加藤部会長 続いて、流通業者の立場からご説明をお願いします。日本医薬品卸業連合会副会
長の松谷高顕氏からお願いします。
○松谷参考人 流通の立場から、今回のワクチン流通についてお話をさせていただきます。2頁
です。一連のインフルエンザワクチンの問題で、今年の2月を省みて、国とワクチン製造販売業
者・流通業者、医療機関、医師会など、関係者の役割分担をもっとはっきりさせるべきだという
こと、接種の優先順位の在り方についても、検討する必要があるとされました。
 また、新型インフルエンザH1N1についての対策総括会議の報告書によると、ワクチン接種
に関するガイドラインの策定をより綿密にする必要があるということ。ワクチンの接種回数や費
用(ワクチンの価格を含むもの)、輸入ワクチンの確保問題等についても、改めて研究する必要
があるということ。優先接種対象者についても、議論する必要があるとされました。
 また、国や都道府県をはじめ、関係者が連携した流通体制の構築も必要であるとされました。
また、新型インフルエンザワクチンについては、返品を含めた、現在残っている在庫問題につい
ても検討する必要があるとされました。
 また、インフルエンザワクチンについては、昨年は新型インフルエンザの問題がありましたが、
それ以前は季節性のインフルエンザワクチンの問題でも、多々問題がありました。そういうこと
で、平成20年度については、国の指導で、医療機関からの予約注文については、予約注文はそ
の年の9月頃から始まるのですが、その予約の維持は12月の時点で1度解除又は保留をして、
予約以外のところにも納められるようにしようという指示がありました。それから、医療機関の
初回の注文量については、前年度の実績を上回らないように配慮すること、追加注文を受ける場
合も医療機関の在庫を確認してからにするということ、大量注文に対しては分割納入をすること、
返品については改善に努めること、ワクチン不足時には都道府県から融通の要請のあった場合に
は品質確保を確認すること、国が流通在庫を把握し、都道府県に情報提供すること。これについ
ては、我々卸の連合会では、47都道府県の在庫を1週間ごとにすべて国に報告しておりました。
都道府県は、インフルエンザの対策委員会を設置し、ワクチンの安定供給対策を講じることとい
うことで、対策委員会には、県及び医師会、医療機関、卸も参加することになりました。
 季節性インフルエンザワクチンの流通には、生産量の需要見込みを春頃に決定するわけですが、
安定供給に支障がないように見込数で生産されているわけですが、一部医療機関から、過大な需
要量見込み、在庫の偏在が過去に発生したことがありますので、このような意味で留意するとい
うことです。
 偏在した医療機関の在庫については、この調整は医薬品卸業者ではお得意さんでもありますの
で、それはなかなかできないので、この調整は県や医師会のご協力がないとできないということ
です。
 医療機関の在庫状況については、接種を希望する人たちに、どこの医療機関にどれくらいの在
庫があるかの連絡はされていません。それから、ワクチンですので、返品を前提とする商習慣が
季節性ワクチンについてはあったわけですが、最終的には返品できるのだからということで、い
くつかのところから過大な注文が出る傾向がありました。これは一昨年までのことで、昨年は新
型インフルエンザということで、5月19日にこのことについての意見陳述をさせていただきま
したので、それは別紙に添付していますので、そちらを見ていただければと思います。
 主な問題点としては、先ほどメーカーから話があったように、流通スキームということで、都
道府県の役割という中に、納入医療機関や数量について、都道府県が基本的には決めるというこ
とになっていたのですが、それについて、それを卸に代行させるという県がいくつかありまして、
我々は非常に負担が多かったということと、非常に医療機関からの苦情も多かったということで
す。
 特にこの点について言いますと、希望医療機関というのは、手挙げ方式でされたところが多い
ものですから、実際に季節性のインフルエンザを接種された医療機関の数に比べると、新型につ
いては、約6割から8割ぐらい多い医療機関数になってしまいました。東京都で言えば、5,000
件だった医療機関が、新型では1万件になっていたということで、配付に苦労したということで
す。
 医療機関に対しては、最初は非常に注文が多かったわけですが、途中から治療薬の効果だとか、
いろいろな意味で、接種希望者がだんだん少なくなってきて、その意味では今度は過剰在庫が生
じたのですが、それについては、今回は公定価格で配給制という形でやったものですから、返品
は認めないということになっていまして、そのこと自体が大変問題になり、そのことについて医
療機関から卸業者に対して返品要請が非常に多くきていまして、私どもも困っている次第です。
 これは手前味噌ですが、医薬品の配送担当者はそのような医療機関にしょっちゅう行っている
わけですから、その意味では配送している人間については、是非優先接種対象者にしてほしいと
いうお願いをしておりましたが、認めていただけませんでした。そのような状況です。
 今後の問題として、パンデミック等については、価格としては公定価格・配給制の供給が、そ
のままされることが望ましいと考えています。
 全国共通のワクチン供給基本マニュアルの設定ということで、今回のスキームを参考にして、
問題点のあったものを直しながら、共通のマニュアルを是非作っていただきたいと思います。
 行政と流通業者、各都道府県に我々の協同組合や協会がありますので、そことの情報交換は大
変重要であるので、今後も続けていただきたいということです。
 先ほどからも出ていますが、個別接種が主体でしたが、一部の市町村や医師会で集団接種をさ
れたところについては、比較的スムーズに済んだということと、製品的には大型包装で、10ml
のワクチンがそのようなところでは使われましたが、個別接種をしているところについては、
1mlや0.5mlとの交換をして、実際には10mlが大量に残ってしまったということです。したが
って、今後パンデミック時の集団接種のあり方については、十分に検討していただきたいと思っ
ています。
 医療機関の在庫情報については、それぞれの都道府県に、それぞれの医療機関の在庫状況がわ
かるようにと。卸の在庫状態は全部伝えてあるのですが、医療機関の在庫状況についても、パン
デミック時にはきちんと捉えられるようにすべきではないかと思っています。
 それから、パンデミック終息時に、流通業者・医療機関に在庫が残った場合、流通業者の回収
経費も手当てした上で、返品を容認するような対策を、事前に返品問題もきちんと手当てをして、
新しいスキームを作っていただければと思っています。以上です。
○加藤部会長 杉本参考人、伊藤参考人、松谷参考人から、ワクチンの国内メーカー、海外メー
カー、卸流通業者の立場から、ご意見がありました。各委員から、ご意見やご質問がありました
ら承ります。
○澁谷委員 伊藤参考人に質問します。接種するワクチンの種類が増えてくると、お母さんや子
どもたちは一度で接種が済むようにということで、混合ワクチンを望むことが出てくると思いま
す。平時、混合ワクチンの製造について、メーカー側から何か課題はあるでしょうか。
○伊藤参考人 課題というのは輸入に関することでしょうか。
○澁谷委員 製造、輸入です。
○伊藤参考人 特に課題はございません。海外では混合ワクチンは多く使われています。我々と
しても、日本へのできる限りの導入を希望しています。
○飯沼委員 松谷参考人にお聞きします。生物製剤を返品する商習慣が悪いということで、私も
季節性ワクチンの返品を少なくする努力を徹底的にさせていただきまして、減りました。しかし、
まだそれが残っているということは、一方では売り方の体制もあると思うのです。そのような商
習慣は絶対に学問的にやめるべきで、返品したものは廃棄するしかないのです。ということは、
それを見込んで、返品分までワクチンの値段に乗せてあると思うのです。もし返品がなくなれば、
いまのワクチンよりもっと安いものができると私はずっと思っていました。
 そういうことで、医療機関の先生方には、生物製剤を返すことは絶対に考えるなということは
我々の仕事ですから、それを1つやっていきたいと思います。
 商習慣として、それは絶対にやめるべきで、医療機関側だけの問題ではありません。特に、今
回の問題に関しては、重複予約等で余ったという理由のほとんどが医療機関側に責はありません
ので、これは返品は何とかしてくださるとは思いますが、松谷さんがおっしゃったように、国に
それをやっていただくように我々も願っています。
 是非とも卸のほうでも、商習慣としてそれはやめていただきたいと思います。ご意見をお願い
します。
○松谷参考人 季節性インフルエンザの経験で言うと、どれぐらいつくったらいいかの予想をし
て、2,400万人分だとかをつくったり、その年によって違うわけですが、最終的に使われた本数
の大体15%ぐらいは残ってしまうのが、予想と現実との違いがありまして、その15%は基本的
に季節性インフルエンザの場合は返品をいただいて、それをメーカーに返して、メーカーはそれ
を破棄しているというのが、普通の季節性インフルエンザの自由な取引になっていたのですが、
今回の新型については公定価格で国が買い取った形なので、メーカーについても、国に売ったも
のが戻ってくるという、複雑な関係にあるので、いま非常に悩ましい問題になっているのだと思
います。
 実際に、生物由来製品自体が、予想と現実との違いがあって、完全に一致することはあり得な
いし、5年ぐらい前には少なくてパニック状態になった経験があるので、一定率戻ってくるとい
うことは、製造原価の中に入れるぐらいにして、きちんと破棄できるように、有効期限の切れた
ものが医療機関に残ることのないようにするほうがと。ですから、どのくらいのパーセンテージ
を見込むかについては、もう少し専門家なり、それぞれの各年の結果を見ながら、今後検討して
いっていただきたいと思っています。売らんかなという姿勢ではやっておりません。
○保坂委員 飯沼先生のご意見ですが、返品というのは、あくまでも再流通できる形で返品する
ということではないということです。もし使いきる分だけを医療機関が購入するということにな
り、そこで余裕がない供給だと、非常な混乱を招くので、ある程度余裕をもったワクチンの量が
市場に出て、医療機関にもあることは絶対に必要だと思うので、飯沼先生のご指摘の生物製剤を
返品して、それを再流通させることについての先生の意見には賛成ですが、それが直ちに商習慣
の上での返品をやめることには結び付かないと私は考えています。ある程度の余裕をもっている
ことが必要かと思います。もし、余裕をもってやって医療機関が在庫を持ったときに、返品をな
しとするとすれば、当然その部分は医療機関は患者負担に乗せていかなければいけないというこ
とになって、それもかなり問題があると思うので、その辺はもう一度整理していただきたいと思
います。
○加藤部会長 大体保坂委員におまとめいただいたという感じですが、古木委員から何かありま
すか。
○古木委員 私は医療関係者でないのでよくわからないのですが、福田さんの説明の最後の頁の
「今後に向けて」の要望3で、こういうことが起きた場合の健康被害の補償もという話がありま
した。過去にこのようなことがあったから、このような補償もしてもらいたいというご意見だっ
たのですが、事例的にはどのようなものがあるのでしょうか。
○福田参考人 過去の事例というより、今回のようにH1の場合は病原性があまり強くありませ
んでしたが、H5の場合は病原性が強いです。さらに、そこから国家検定を受けない状態で供給
しなければいけない状況が発生したときに、想定しなかったような健康被害が発生するケースが
想定されるのではないか。そういうケースが想定されるのであれば、事前に被害救済をどのよう
に考えるのかを協議しておくべきではないかということです。
○加藤部会長 健康被害の件が出たので、次のテーマに移ります。「予防接種にかかる健康被害
救済について」です。まず、我が国の予防接種にかかる健康被害救済制度の現況について、結核
感染症課よりご説明をいただきます。
○結核感染症課長 お手元の資料3-1に従ってご説明します。1頁の下のほうですが、予防接種
の場合、関係者の過失がない場合でも、不可避的に健康被害が起こることがあり得ますが、そう
いうことがあり得るにもかかわらず法に基づいて予防接種を実施しているわけですから、特別な
配慮として、法による救済措置が不可欠と考えているわけです。
 2頁です。そのために昭和51年の予防接種法の改正において、予防接種健康被害救済制度が
法的には位置付けられました。救済制度は、6頁の上のほうにありますが、昭和45年から予算
措置としてやっていましたが、法律上位置付けられたのは昭和51年です。定期または臨時の予
防接種による健康被害が出た場合に、厚生労働大臣の認定を受けて、市町村が給付を行うとなっ
ています。
 参考にありますが、予防接種法に基づく予防接種以外の場合は、PMDAの医薬品副作用被害
救裁制度、あるいは生物由来製品感染等被害救済制度による給付があります。
 2頁の下です。予防接種法の健康被害救済制度の概要ですが、健康被害を受けた方が市町村に
申請し、市町村は都道府県を通じてそれを厚生労働省に申達します。厚生労働省では、疾病・障
害認定審査会の感染症・予防接種審査分科会の意見をお聞きして、そのご意見に従って、それが
予防接種による健康被害かどうかの認定あるいは否認を行います。その結果に従って、市町村は
支給、不支給を決定します。
 3頁の上のほうに同じ図がありますが、実際の事務は、この図で示したような流れになります。
市町村長が給付をすることになっていますので、市町村に申請され、市町村で予防接種健康被害
調査委員会がつくられ、厚生労働省において認定審査をする上で必要な資料の収集等についてサ
ポートをし、ドクターや健康被害を受けた方からの情報収集をして、市町村からその申請書が申
達されてきます。それ以降の流れは、先ほど申し上げたとおりです。
 疾病・障害認定審査会というのは、厚生労働省の審議会の1つですが、この中にこの3つの分
科会がありまして、そのうち感染症・予防接種審査分科会があります。これは感染症法等に基づ
く、入院措置等の不服審査請求の問題、それから予防接種法に基づく認定という、2つの仕事を
行っています。
 次の頁です。予防接種法の中での給付の中身は、医療費、医療手当、障害児養育年金、障害年
金、死亡一時金と葬祭料です。遺族年金、遺族一時金は、臨時の場合と一類定期の場合が死亡一
時金、二類定期は遺族年金または遺族一時金となります。4頁に、具体的な給付額があります。
これについては、これまでも何度かお示ししたことがあります。
 実際の給付件数です。各年度、認定された件数は概ね40から60件程度です。審査件数は50
から70件程度です。認定割合は概ね8割を超えます。具体的な中身してどのようなものが多い
かというと、医療費、医療手当が最も多く、認定全体の相当部分を占めています。それ以外では、
障害児養育年金、障害年金が多くなっています。死亡一時金については、ここに示したような数
になっています。遺族年金、遺族一時金ですが、これはインフルエンザの定期二類で、平成19
年度から平成21年度までは認定がありません。
 健康被害の救済について、5頁の下にありますが、予防接種法では、適正目的、適正使用の場
合のみならず、不適正使用の場合も、その救済の認定の対象にしています。PMDAのほうは、
適正目的、適正使用によるものに限定されています。いちばん下に、今回の新型インフルエンザ
の予算事業で行っている予防接種については、特別措置法による救済の制度がありますが、これ
については、予防接種法による救済と同様です。
 費用負担については、予防接種法では市町村が給付をするわけですが、実際の費用負担は、国
が2分の1、都道府県は4分の1、市町村は4分の1となっています。PMDMのほうは、製薬
企業等からの拠出金、一般拠出金と付加拠出金の組合せです。特別措置法では、国の事業ですか
ら全額国庫負担となっています。
 6頁です。これは健康被害救済制度の変遷です。先ほど申し上げましたように、昭和45年に
閣議了解に基づき、予算措置が講じられていましたが、給付額はここにあるように非常に低いも
のでした。昭和51年に予防接種法が改正され、健康被害救済制度が創設されましたが、その際
の給付額は右にあるとおりです。
 平成6年に予防接種法が改正され、このときは法の目的そのものに、予防接種による健康被害
の迅速な救済を図ることが追加され、先ほど申し上げた保健福祉事業が法定化されるとともに、
給付設計の抜本的な見直しが行われ、救済救付額の大幅な改善、あるいは介護加算の新設が行わ
れました。そして平成13年に二類定期というものが導入されまして、これについては一般の
PMDAの医薬品副作用救済制度と同程度の救済水準とされています。6頁の下は参考条文にな
っています。
 7頁です。損害賠償責任の問題ですが、国においては予防接種法に基づく給付がありますが、
それとは独立したものとして、予防接種に基づくいろいろな事故等があった場合には、国家賠償
法に基づく損害賠償請求の対象となり得るということです。国賠法では、第1条にこのような規
定があります。
 医師への損害賠償請求についてですが、予防接種法に基づく予防接種を行う場合、7頁の下の
ほうにあるように、予防接種法施行令で、市町村又は都道府県知事が、法第3条第1項の定期接
種、第6条1項、2項の規定による「臨時接種を当該市町村長又は都道府県知事の要請に応じて、
協力する旨を承諾した医師により行うときは」と書いてありまして、法律上は医師というものは
出てきませんが、施行令のほうで、医師が協力することが規定されています。この場合、予防接
種法に基づく健康被害については、国家賠償法の損害責任が問われた場合であっても、原則的に
は接種を行った医師は損害賠償責任は負わないということになっています。しかしながら、医師
に故意または重過失があった場には、国は当該医師に求償する場合もあります。これは国家賠償
法第1条第2項に規定があるということです。
 ワクチンの製造販売業者の場合ですが、企業の場合、民法あるいはPL法に基づく損害賠償請
求の対象となり得るということです。説明は以上です。
○加藤部会長 続いて、ワクチン接種を受けて、健康被害に遭われた立場を代表して、末廣英昭
さんです。末廣さんは全国予防接種被害者の会の会長です。よろしくお願いします。
○末廣参考人 ただいまご紹介いただきました全国予防接種被害者の会の末廣です。私たち予防
接種の被害者は、旧の予防接種法による接種による被害です。いまいろいろと説明を受けました
が、現代の新しい接種方法で接種されていれば、私の娘もこのような被害に遭うことなく生活が
できたのではないかと思います。この会議の発言の内容について、どのようなことを述べればい
いのかということで、私も質問したのですが、実際に思っていることを述べればいいということ
ですので、私が感じていることを、皆さんに説明させていただきます。
 予防接種は社会防衛の一環として、その病気にならないように、予防のために弱毒したワクチ
ンを幼児に接種し、免疫をもたらすものと思います。
 当時私は行政に対して、疑うこともなく、広報での連絡で、昭和46年10月21日、小学校の
体育館の接種会場に行ったことで、私の人生が変わりました。いま思い出しますと、昭和40年
頃というと、欧米諸国では予防接種の副反応の重大さに注目し、対策を取り始めた時分だったと
思います。
 日本では、予防接種事故が多発しているにもかかわらず、公表することなく、人権を無視し、
罰則をもって強制接種を行い、死亡する者、重度の後遺症が残る障害者になることなどの事故の
発生を公表していませんでした。私の娘は38歳になりますが、誕生9カ月後に三種混合、DPT
の接種以来、現在病院通いを行っています。
 予防接種の副反応は、ワクチンの種類、接種年齢によって違いますが、多くは知的障害、身体
障害、てんかん体質になり、娘は左腕に接種したため、左上下肢麻痺、MR検査では右半分の脳
死の状態で、天候不順や急激な温度差の風などを受けると、即てんかんが発生します。被害者の
多くは、複数の合併症で苦しんでいます。てんかんを止めるため、抗痙攣剤の服用を忘れると、
翌日にはてんかんが発生します。また、抗痙攣剤は歯茎を弱め、歯の治療では専門の大学病院に
出かけ、治療を行っています。
 てんかん治療は静岡市の静岡神経医療センターに定期的に通院し、脳波検査を受けていますが、
変化がありません。薬は近くの病院でもらっているのですが、変化があれば静岡の病院とすぐに
つながるようにしています。
 左手の握力はゼロ、左足は右足との差で歩行困難であり、舗装道路ではまだいいのですが、地
道、砂利道では、歩行不可能で、立ち止まり、つまずいては転んでいます。
 強制接種で事故が多発した昭和48年、各地で接種が中止となり、被害者が各地で集まり、東
京、大阪、名古屋、九州と集団訴訟が提起され、私も昭和50年より20年間、高裁判決に大阪
まで出向きました。
 裁判で陳述された母親は、被害の発生が幼児期で、子どもの健康を願って、自分が予防接種に
連れて行き、1本の注射で生まれもつかない障害者に変わり果てた我が子を見て、母親は自責の
念で、自分の目が黒いうちは、この子の面倒は私が見ると証言されていました。
 我が子の障害を見て、親は不憫と思い、ともに生活してきましたので、親の子離れ、子の親離
れができません。20年に及ぶ裁判闘争で、当時の厚生大臣は、被害の重大さを認められ、原告
である被害者の前で謝罪されました。そして、厚生大臣より詫び状が届き、大臣名で、予防接種
被害者健康手帳が発行されました。
 ある原告は、今後親の高齢化が進むが、親が老人ホームに入っても我が子を身近に置きたい。
また、子も親の顔を1日1回見ることで心が休まるので、これらの条件を満たしてほしいと発言
されまして、はや16年が過ぎました。
 被害者の会の会員は、各地の原告で裁判終了後、厚生省との話合いの場で、救済事業は進める
が、各地の要望がバラバラでは対応が困難であり、統一できないかとの要請で、平成6年7月に
全国予防接種被害者の会を設立しました。国も救済事業に向けて、財団法人予防接種リサーチセ
ンターの中に、予防接種健康被害者保健福祉センターを設置、各地の原告被害者の親を運営委員
として選任、会議に参加しましたが、被害者の親以外、被害の実態を理解してもらえず、理解し
ていただくまでに歳月を要しました。
 被害の実態については、口で説明するより、被害者の会が作りました映像があるものですから、
映像を見ていただければ、よく理解していただけるものと思います。お願いします。
(映像の上映(東京訴訟で使用したもの))
○末廣参考人 まだ実際の映像は長いのですが、時間の関係で映像を流しながら私の陳述をした
いと思います。平成11年、国は初めて健康被害者実態調査を行いましたが、集計するだけで、
被害者のほうについての対応はなかったかと思います。運営委員会で実態調査を要求し、10年
ぶりに平成20年の暮れに実施されましたが、この間、国は予防接種法の改正、介護保険制度、
成年後見制度、障害者自立支援法、接種ワクチンの改良、接種方法が改善され、社会情勢も大き
く変化しました。旧法の被害者の救済事業は進まず、5年後の見直しをするという附帯決議が付
きましたが、進展がありません。運営委員会の席上、被害が合併症であるのに、認定基準は身体
機能障害が基準になっているようで、「『合併症』という文面があるのですか」と出席された課長
補佐に質問したところ、即答されず、「調査する」とのことで、後日、「合併症による認定基準は
ない」との返事。被害は合併症なので、実態に合った認定基準で行うべきだと思います。
 10年ぶりに実施された調査では、最高年齢者は70歳を超えています。国に代わって救済事業
を行っている予防接種リサーチセンターでの救済対象者は455名ですが、346名の返信で76%
の返信率でした。調査方法は、厚生労働省の調査協力依頼書の文面を付け、都道府県、政令都市
に送付、そして市町村を経由して個人に配付されました。調査の結果で最も反映しているものは、
1.「調査が10年間実施されず、歳月が生み出した介護者の高齢化、被害者本人の高齢化に対す
る不安で、早急に対策を講じてほしい」、2.「国の救済事業を代行する予防接種リサーチセンタ
ーの強化」を求めています。被害者が全国に分散しており、介護に追われて情報交換の場にも参
加できません。リサーチセンターが抱える地方の保健福祉相談員の活動を求めています。
 今後の救済制度についてですが、被害者の居住地、家族構成等で異なってくると思います。私
の知人で1人息子で48歳になる被害児は、離婚騒動で家庭は乱れ、5年前、父親は他界し、母
親は持病があり特別老人ホームに入所、被害児は入所施設に収容されています。また、被害児を
持つ父親は、娘の治療のため会社よりの転勤命令で退社され、娘との生活を選ばれました。昨年、
被害者の会の役員である父親2人が被害児を残して他界され、母親は認知症と診断され、弟が被
害児の兄と母の介護をしています。財政豊かな市町村はよいのですが、入所できない被害者、入
所できても施設内での団体生活に対応できない被害児を見てきました。
 私には3人の子どもがおります。長女が被害者です。次女は、高校進学での三者懇談で福祉の
ほうへ進学を決めました。障害を持つ姉を見て判断したと思いますが、私は自分の好きな道を選
ぶよう説得しましたが、聞き入れず、大学まで進学し資格を取りました。3人目は息子ですが、
大学卒業後、一般の会社に就職したのですが1年で退職し、姉と同じ福祉の道へ進み、資格を取
得し関係部門で就職しています。
 各地で被害者の親と話し合う機会はありますが、「接種さえしなければ」と発言され、私も同
感です。1本の注射が被害者本人の被害だけではなく、家族全体の人生にも影響を与えているの
です。親亡きあと、社会生活のできない被害者を誰が見るのですか。兄弟のない人、兄弟のある
人は、兄弟が見るのですか。健康で生まれた子どもが被害に遭い、国の医療行政の犠牲者です。
親は心配でなりません。
 国は平成18年、障害者自立支援法を実施されましたが、問題点が多く、各地で裁判が起こさ
れ、見直しするということで和解が成立している所もあります。現在の救済制度は複雑過ぎて、
私たちは理解に苦しみ、行政の窓口に行っても、要領を得ません。
 最後に、今回の実態調査での取りまとめとなりますが、国に対しての提言として、1.「緊急事
態、介護者の入院・死亡時等発生時の迅速な対応」、2.「福祉サービスの向上。国は平成22年の
救済事業に対して、前年比50%削減し、被害者の救済ができるのでしょうか」、3.「年に3回開
催される予防接種リサーチセンターの運営委員会に出席していただき、実情を把握してくださ
い」、4.「国の代わりに救済事業を行っているリサーチセンターの存在を、市町村と被害者に周
知徹底させること」、5.「市町村の担当窓口業務に対し、対応の改善を促すこと。地方自治体に
対して、指導の徹底を図っていただきたいと思います」。
 今回の実態調査を基に、昨年末、厚労省に対して要望書を提出しましたが、厚労省は、都道府
県・政令都市に対し、事務連絡として書面を配付していただき、ありがとうございました。被害
者にとって強い味方です。以上です。ご清聴ありがとうございました。
○加藤部会長 続きまして、「日本と米国とにおける救済制度と関係者の責任の比較」について、
ご説明をいただきます。東京大学政策ビジョン研究センター特任助教であられます佐藤智晶先生
からお願いします。約10分程度の時間でお願いします。
○佐藤参考人 ただいまご紹介にあずかりました東京大学の佐藤と申します。本日はこのような
貴重な機会を頂戴いたしまして、まず心よりお礼申し上げます。早速、始めたいと思います。
 本日ですが、米国の制度を中心に紹介したいと思います。先ほど厚生労働省の担当の方から日
本の制度についてはご説明がありましたので、米国の話をしたいと思います。米国では、通常時
と公衆衛生上の緊急事態で異なる救済制度を持っており、その内容も大変異なっています。米国
の制度はよく日本でも紹介されているわけですが、最近、アメリカの制度もあまり機能していな
いのではないかという見解が論文等で紹介されていますので、今後、アメリカの制度が十分に機
能しているかどうかも検証してみる必要があるだろうと思います。今日、そのことを説明します。
 米国で救済制度がどうして導入されたかといいますのは、本日の予防接種部会の中でも出てき
たことと重なる部分が多いわけですが、アメリカでは1918~1919年にかけてスペイン風邪が大
流行し、多数の方がお亡くなりになったと。それを機にすべての州で何らかの強制接種制度が維
持されています。宗教上の理由や信条を理由とする拒否は可能なわけですが、強制接種制度が維
持されています。しかしながら副反応はどうしても起こってしまい、それを機に不法行為・製造
物責任訴訟が多数起こされたと。それによって損害保険会社が保険商品を提供しないということ
になり、そうするとワクチン製造業者はワクチンを供給できないということになって、それでは
困ると。だから、救済制度をつくろうということになったと言われています。
 救済制度の種類ですが、大きく分けると4つあります。通常時と公衆衛生上の緊急時で分けら
れており、一般的に知られていますのは(B)と(D)です。(A)と(C)については、今日は時間の関係
上紹介しませんが、あまり機能していないということです。(A)と(C)に共通するのは、合衆国が
不法行為・製造物責任訴訟の被告となり、全責任を負うのだと。(A)は限度額なしで、(C)は限度
額ありなわけですが、そういう形で制度設計していましたが、あまり機能しなかったと言われて
いますので、今日は(B)と(D)についての説明に限定します。
 最初に(B)です。(B)については3点重要な点があります。1つは、ワクチンに賦課した物品税
を資金源とする無過失補償制度であるという点。2つ目は、補償内容が、先ほど(A)の制度では
限定額がなしだったわけですが、限定されています。死亡一時金で比べますと、アメリカでは
25万ドルが支払われることになっており、我が国と比べても非常に限定されているかと。先ほ
ど4,280万円と数字を拝読しましたが、アメリカのほうが若干少ないのかという印象を受けます。
3つ目ですが、これは大変我が国とも大きな違いとはいえますが、原則としてこの補償プログラ
ムを利用しないで不法行為・製造物責任訴訟を起こすことができないということです。この頁に
なりますが、2番目の所に書きましたが、補償なしの決定を受けるか、もしくは補償額に不服な
場合でなければ、訴訟はできないのが原則です。以上が(B)の制度で、平時の一般的な制度を説
明しました。
 次に、(D)の緊急時のより一般的な制度として有名なPREP、緊急事態準備対応プログラムに
ついて説明したいと思います。この制度は連邦保健省の長官が公衆衛生上の緊急事態を宣言した
場合に、パンデミック・エピデミック製品の処方、流通または製造を行う者および国に対して当
該製品の処方、使用等に関連する不法行為を理由とするあらゆる損害賠償について、免責を認め
るものです。その代わりに公費による補償プログラムが設けられています。請求先は、先ほどの
(B)のプログラムでは裁判所に行くことになっていましたが、緊急事態のプログラムについては
連邦保健省になっています。ただ、予算措置がまだ十分に講じられていないのが現状であり、機
能するのはこれからということです。実際に公衆衛生上の緊急事態宣言自体はいくつか発せられ
ていますが、このプログラムが使われたという報道はまだないです。
 あらゆる不法行為を理由とする損害賠償について免責を認めると申し上げましたが、未必の故
意の不正行為によって重大な身体障害または死亡を引き起こした場合には、この免責の対象外と
なっており、その未必の故意の不正行為を行った場合については、補償プログラムと損害賠償請
求の選択が可能です。しかしながら、実際に訴訟を提起した場合には、請求者は厳しい証明責任
を追っており、一般的な民事の不法行為・製造物責任訴訟よりも損害賠償を実際に得るのは難し
いと考えられています。
 次の所は表です。簡単にまとめてみたわけですが、通常時の場合は、国は一般的にCivil
immunityと言われ、国家無答責、責任を負わないことになっています。医者に関しても救済制
度が訴訟に前置されていますし、製薬企業に関しても同じです。緊急時に関しては、国も医者も
製薬企業も免責される、未必の故意の場合だけが除かれるということです。
 最後の頁になります。日米ともに違いはありますが、無過失補償の救済制度があります。ただ、
アメリカの場合は、通常時と公衆衛生上の緊急事態というので分けているということです。米国
については、先ほども申し上げましたが、救済制度の活用が訴訟に前置されている、もしくは緊
急事態のほうであれば免責されているわけですが、我が国においては救済制度を活用せずに損害
賠償請求訴訟を提起することが可能です。そういう違いがあります。
 我が国についてどのような制度をこれからつくられるのかはわかりませんが、少なくとも救済
制度を訴訟に前置または免責とすることについては、医師・製薬企業といった関係者の負担軽減
には資するものでありますが、一方では被害者の方の権利を一部制限するという側面があろうか
と思います。その救済制度の前置や免責はアメリカのような制度になるのかもしれませんが、そ
れを日本に導入する場合には、憲法上の裁判を受ける権利との関係や、国家賠償請求法との関係
について整理が必要であり、難しいのかという印象を持った次第です。以上で終わります。
○加藤部会長 ただいまの事務方の説明、だいぶ先のことになりますが、また末廣参考人、佐藤
参考人のご説明について、委員の先生方から何かご意見、ご質問がありましたら、お受けします。
いかがですか。
○黒岩委員 厚生労働省にお伺いしたいのですが、資料3-1の5頁の表ですが、基本的なことを
お伺いしたいのですが、そもそも予防接種とは何かということの根本から議論しましょうという
ことでこのヒアリングが行われているということからあえてお伺いしたいのですが、予防接種法
で健康被害の救済についての費用負担ですが、これは国2分の1、都道府県4分の1、市町村4
分の1、こういう分担になっているという哲学はいったい何ですか、教えてください。
○結核感染症課長 哲学というのは、なぜ国が全部見ないかというご趣旨ですか。
○黒岩委員 そうです。
○結核感染症課長 健康被害、予防接種はもちろん自治事務である場合、あるいは法定受託事務
である場合があるわけですが、この費用、割合をどうするかは別として、住民の健康を守るとい
う自治体の役割、あるいは国の国民を守る役割等の中で健康被害が出た場合の救済については、
それぞれが応分の負担をしているというふうに理解をしています。
○黒岩委員 その下の「新型インフルエンザ」の所だけは、全額国が負担していると、これは要
するに哲学がばらばらだということですよね。
○結核感染症課長 新型インフルエンザの今回の事業については、国が実施主体で行った事業と
いうことでして、この場合は国が健康被害の救済については全体の費用を持つと、国独自の事業
ですから国が全額負担をするということで特別措置法では規定されているということです。
○山川委員 佐藤参考人に1つ質問があるのと、その次に末廣参考人がおっしゃられたことに関
して、意見を追加的に申し上げたいと思います。まず佐藤参考人に質問です。アメリカでは通常
時と公衆衛生上の緊急事態で制度が違うというわけですが、緊急事態の認定は誰がどういうふう
にしてやるのかという点と、通常事態の健康被害補償プログラムは25万ドルを限度とする、最
高額は25万ドルのようですが、緊急事態の場合の救済内容はどうなるのですか、もしおわかり
でしたらお教えください。
○佐藤参考人 まず緊急事態の宣言をどのような形で行うかということからですが、連邦の健康
保健省の長官が判断を下して出すということで、すでにいくつか出されているということです。
 2つ目ですが、実は緊急事態対応プログラムの補償額については、まだ何ら詳しいことは決ま
っていませんで、公表資料では一切出ていません。実際、その予算措置さえもようやく付いてい
るのですが、額が平時と比べても全然少なくて、まだ全然動いていないようです。
○山川委員 末廣さんは被害者の会の代表をお務めなわけですが、今日のお話を委員の先生方、
事務局の方々にも聞いていただく、こういう機会があったことは非常によかったと私は思うので
す。なぜかと申しますと、私は予防接種被害者の代理人として、末廣さんがおっしゃられた20
数年にわたる裁判を東京地裁・東京高裁・最高裁と担当した弁護士の1人です。35、36歳のこ
ろから代理人を20数年務め、終わったときにはすっかり年を取っていました。
 その直後に厚生省は予防接種法を大幅に改正して、現在の形のかなり充実した被害救済制度等
もつくりましたし、接種の安全も図られたわけです。20年近く前の東京高裁の判決では、日本
の国家賠償訴訟上初めてといわれる厚生大臣個人に重大な安全接種の措置をとることを怠った
責任があると。現場の公務員の方々とか個々の医者の問題ではなくて、大臣が安全な接種を実施
するように、そういう体制をつくらなければならないにもかかわらず、それを怠ったとして国が
敗訴したわけです。東京高裁の判決は、厚生行政、予防接種行政に対するものすごく厳しい批判
であったわけです。
 それが終わったあと厚労省は、当時まだ厚生省ですが、予防接種行政を大きく転換するという
ことになって、私のように被害者の代理をかつてした者も、被害者の声を代わって反映させてほ
しいということで、この審議会の委員にも引っ張り込まれたといいますか、ならされたというこ
とです。
 いまの写真を拝見しますと、吉原さんという方が出てきておられました。吉原家は、お父様は
東北大学の立派な教授でしたが、お子さんは充さんといって写真に出ていましたが、10年以上
も前に長い間の介護生活を受けた上で亡くなられました。当時から20年近く経って、それで感
染症についても世界で新しい危険な感染症がいろいろ出てきて、予防接種行政が対応する問題も
この20年の間に大きく変わってきたかとは思うのですが、当時、東京高裁の判決で厳しく批判
された安全な接種を怠ってはならないという原点は、20年近く経ちましたが、忘れてはいけな
いと思うのです。
 今日、いろいろの事情の変更のもとで、集団接種が望ましい場合があるのではないか、という
意見、というほど強くはないかもしれませんが、サゼスチョンなり印象的なお話がありましたが、
そういうこともあるいは考慮しなければいけないのかもしれませんが、かつて裁判所から厳しく
批判されたあの原点はやはり忘れないようにしなくてはいけないのか、というふうに私は今日の
末廣さんのお話を伺いながら改めて思ったわけです。
 私自身も、私達が、担当したご家族、吉原さんに限らずみんな高齢になっておられます。とき
どきそういう方からご相談を受けるわけですが、最も典型的なお1人の方は、つい数日前も私は
お話をしたのですが、46歳ぐらいの被害児の男性です。お父様とお母様はいましたが、お父さ
んは10数年前に亡くなりました。お姉さんが1人いましたが、そのお姉さんに両親は「この子
の将来の介護を託したい」と言ったわけですが、お姉さんも不幸なことに別の病気で若死にをし
てしまいました。いまや85歳のお母さんと46歳の重症の障害児が2人で生きています。お母
さんの最大の心配は、自分が亡くなったあと、この子はどうすればいいのだと。特に耳に障害も
あるものですから、ほかの人とのコミュニケーションができないという問題もあるわけです。
 私も相談を受けて、しかし、弁護士としては何ともお助けのしようもなくて、本当に悩んでい
るところです。いまも事故は減ったとはいえ、認定の申請も年間に何十件も上がってきています
し、重篤の障害が予防接種関連だと認定されることも少なくないわけですが、そういうふうに被
害が永続的に続いていくということを改めて思い起こして、新たな時代の予防接種行政を考えな
くてはいけないのだとは思いますが、安全な接種という一方の原点を忘れないようにしたいと思
いました。
 末廣さんのお話を伺って私もそういう思いを強くしたのですが、今日は委員の方々や厚労省の
事務局の方がたくさんいらっしゃるので、このお話、あの写真を見ていただいたのは、非常によ
かったと思いました。若干、主観的な印象を込めて申し訳ありませんでしたが、申し上げました。
○加藤部会長 いろいろご意見はあると思いますが、次に移ります。議題その2「その他」の報
告です。その他として事務局より報告事項がありますので、順をもってご説明をお願いします。
まず、2010年、2011年シーズンにおいて使用するインフルエンザワクチンに関して、結核感染
症課よりご説明をお願いします。
○結核感染症課長 お手元の資料4に従いまして説明をします。前回も、来シーズンのワクチン
株をどうするのか、北澤委員からのご指摘がありましたが、できるだけ早く見通しをお示しする
ということでお答えしましたので、今日、その結果をお示しするものです。
 インフルエンザワクチン株の選定のプロセスは、1頁の下にありますように、昨シーズンとい
いますか去年の段階からいろいろな情報が入り、WHOにおいて南半球のワクチン株が決められ、
北半球の推奨会議があり、感染研において、国内での流行株の情報を集め、その解析に基づき、
感染研の所長から、健康局長に対して、ワクチン株の選定の回答がありました。それを健康局長
から医薬局長に伝達し、そして具体的なワクチン株を決定していくことになります。そして、9
月下旬にはワクチン出荷、10月からは接種開始というスケジュールです。
 次の頁ですが、感染研のほうから、2010年、2011年シーズンに使用するワクチン株について
は、まずワクチン株の構成としては、WHOの推奨どおりA(H1N1)pdm、今回の新型インフル
エンザ、それからA/H3N2、Bの3価ワクチンにすることが妥当とされています。ワクチン株に
ついては、まず来シーズンに流行が予測される株については、新型は今シーズンと同じもの、
H3N2については、A/パース/16/2009(H3N2)類似株、BについてはB/ブリスベン/60/2008類似
株ということの流行が予測され、具体的な製造に使用するワクチン株については、その中で抗原
性、増殖性から見て、ここにあります3つの株が選ばれています。新型はX-179A、H3N2は
X-187、B/ブリスベンについては野生株です。
 ここで、留意が必要なことがあります。ワクチン株をフェレットに感染させて得られる血清を
用いた試験結果、2頁の下の丸2の試験ですが、これからすると今年度のワクチン株から得られ
たワクチン接種により誘導される免疫では、流行株に対する効果が十分でない可能性が考えられ
る、示唆されるということです。
 この問題については、鶏卵培養によって製造したワクチンについては、毎年起こり得る問題で
あるということで、国民への情報提供、細胞培養への切り替えということが必要であるというこ
とのご報告をいただきました。
 2頁の下のほうに実験のやり方が書いてありますが、これはご専門外の方もいらっしゃるので
省きますが、3頁の上のほうですが、この交叉反応試験ですが、実はまずここをどう考えるかと
いうことです。
 1点目で、米国・EUも4頁に付けていますが、H3N2ワクチンについては、日本と同じ株で
ありますX187を使用するということになっていると聞いています。2点目ですが、過去にも同
様の実験が行われたことがありましたが、この際も懸念が示されたわけですが、人に対しては有
効であったという報告があります。もう1つ、2頁の?Aの実験ですが、この実験そのものがワク
チンの有効性を確認する試験としての評価が定まっていないものであるということで、現在、
WHOにおいてインフルエンザワクチン株としての適正の評価方法にこのような?Aの試験を加
える必要があるかどうかは、まだ検討されている段階だということでして、私どもとしては、3
頁の下にありますように来シーズンのワクチン製造株については、感染研から推奨された株を用
いた3価ワクチンを製造するということで考えています。
 「動物の血清を用いた交叉反応試験」の結果についてですが、引き続きWHOあるいは諸外
国等からの情報収集を行ってまいりたいと考えています。米国・EUにおけるこの評価あるいは
対応をどう考えていくか、これはFDA、EMAとCDCからの情報収集を今も行っておりますの
が、今後も継続的に行ってまいりたいと考えています。
 実はオーストラリアではX-187ではなくてX-183という株を使っていますが、オーストラリ
アのX-183でも同じ現象が見られていますので、間接的な情報にはなりますが、これに関する
有効性に関する情報も収集してまいりたいと考えています。
 このワクチンの有効性に関する臨床研究の実施の必要があるかどうかということも含めて、今
後、検討してまいりたいと考えています。
○加藤部会長 本日は国立感染症研究所より渡邉治雄所長にお越しいただいていますので、ただ
いま福島課長からご説明がありましたこと以上に何か補足点がありましたら、簡略にお願いしま
す。
○渡邉所長 動物を用いた場合には、確かに抗原性で落ちるというところはあるのですが、世界
的な状況を考えました場合に、WHO、CDCとも日本が推奨しているのと同じ株を使ってワク
チンを作るということですので、日本もこれに従ってやるのが妥当であると考えています。
○加藤部会長 この件に関して何かご質問がありましたら、質疑応答1分以内というお約束をお
守りください。
○飯沼委員 時間がないので申し上げますが、この間感染症学会、臨床ウイルス学会に行ってい
ちばんいい話がこれだと、2頁の下の話です。これを聞いて日本医師会が組織培養で早くウイル
スワクチンを作らなくてはいけないということの証明をしていただいたわけですが、学問的には
よくわかる話です。ここにはたくさんの報道関係者もいますので、これがヒトから取ったものを
卵由来でパッセージしていくと、ワクチンとしては抗原性が弱いものになってしまうのではない
かとお書きになると、それはまずい話です。要するに、もっと効率よくやるにはティシュカルチ
ャーに移してやったほうがいいということをこれは言っているわけで、その辺のところは卵をパ
スすると抗原性がなくなるような書き方をされないほうがいいと私は思います。
○加藤部会長 渡邉所長、いまの飯沼委員のご意見でよろしいですか。
○渡邉所長 はい、いまの先生の言われるとおりでいいです。
○加藤部会長 ただいまの事務局からの報告、渡邉所長の追加報告がありましたが、渡邉所長は
所用のためこれで退席ということです。お忙しいところ、どうもありがとうございました。ただ
いまの事務局から報告がありました対応の方針に従いまして、今後進めたいと存じます。
○北澤委員 基本的なところで事務局にお尋ねしたいのですが、前回の部会でもお尋ねしたので
すが、この3つが合わさった来シーズンのワクチンは、これは季節性インフルエンザワクチンと
いうものですか。
○結核感染症課長 これについては、まだ新型インフルエンザが流行期にある、あるいは再流行
するという段階で、いまの予算事業で行っていますし、予防接種改正法案が出ていますが、その
場合は新しい類型の臨時接種で行われるものになりますので、このワクチンは新しい類型の臨時
接種、あるいはいまの予算事業で行っている新しい類型の臨時接種であると同時に、高齢者につ
いては定期接種であると、若年者については新臨と任意のワクチンのが混在したものということ
になります。実際には新臨時として行うことになると思います。
○加藤部会長 よろしいですか。いままで議論されたことと同じことが起きてしまったというこ
とですね。
○北澤委員 そうですよね。具体的にどうなるのか、まだいまひとつ一理解できないのですが。
○加藤部会長 難しいと思いますが、福島課長以上のことはおしゃべりになれない可能性があり
ます。局長、何かありますか。
○健康局長 これは現行の予防接種の定期二類、要するに高齢者への季節性インフルエンザです
ね。これとしても使えるし、改正法が通れば、新臨時接種に使うワクチンとしても使える。要す
るに、新型インフルエンザのためのワクチンとしても使える。新型インフルエンザのワクチンが
3価のうちの一つとして混ざっているわけですけれども、それをどちらから見るかというだけの
問題であると、このようにご理解をいただければと思います。
○加藤部会長 北澤委員、よろしいですか。
○北澤委員 はい。
○加藤部会長 何となくよろしいようです。最後の議題ですが、日本脳炎に関する小委員会から
の第2次報告案です。小委員会は6月16日に開催され、第2次中間報告(案)が取りまとめら
れました。小委員会の委員長は私が務めている関係上、本日は副委員長である岡部委員に小委員
会の中間報告についてご説明していただきたいと存じます。岡部委員、よろしくお願いします。
○岡部委員 前回の中間報告のときも私が説明したので、それと同じ形で加藤委員長に代わって
説明します。お手元にあるのでは資料5になります。前回すでに小委員会の中間報告としていく
つかのことをまとめてありますが、その中で2期接種についてどうするかということがペンディ
ングになっておりました。
 資料5、最初の段落から2番目の所ですが、足りなかった研究的な内容といいますかエビデン
スを、ということで、旧来のマウス脳由来ワクチン、一応「旧ワクチン」と言っておきますが、
旧ワクチンで接種した人たちに新しいワクチン、これがベロー細胞になるのですが、新しいワク
チンを接種してその効果と安全性はどうか。新ワクチンで基礎免疫を接種した、つまり1期接種
を終わった方に新ワクチンで2期の追加をした場合に効果と安全性はどうか。というデーターが
求めれられておりました。こういうことがペンディング事項になっていたのですが、研究がまと
まり、添付文書の改正が行わました。したがって添付文書には、現在それに関する効果と有効性
についてが書いてありますが、これはあくまで添付文書ですので、それを受けた形で、これを2
期のワクチンとして法律として使えるかどうかが次の段階になります。
 そこで、1、2、3、4という番号の所に書いてありますが、1「添付文書の一部改訂を受け、
乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンを第2期の定期接種に使用可能なワクチンとして位置付けるべ
きである」。2「第2期の予防接種、この積極的な勧奨については、これは1期接種の追加ワク
チンもありますし、2期接種という両方をやらなくてはいけないのですが、供給は十分であろう
か、つまり現在のワクチンの生産状況。あるいは接種状況、一応100%が接種していただけると
いうことを前提で動くわけですが、実際に100%の接種率ではないだろうというところのワクチ
ンの状況といったものを見ながら、第2期の接種の勧奨について進めていく。これを今年の秋を
目処にして議論を行うこと」。3「こういった疫学状況、接種率、生産状況といったことになる
と思いますが、こういうものについて厚生労働省は情報を的確に提供すべきである」。4「第2
期の予防接種について、保護者から特に接種の希望があった場合には、ワクチン流通在庫量など
も勘案しなくてはいけないわけですが、市区町村においては希望者は接種が受けられるように、
その機会の確保に努めていただきたい」、この4点が委員会としての中間報告になります。
 前回の中間報告のときに、例えば積み残しの方をどうするかという議論があって、それについ
てはきちんと検討するというのが前回の中間報告で、これについては私も事務局に確認しました
が、現在のところ結論は出ていないけれども、議論として引き続き行うというご返事を事務局か
らいただいています。
○加藤部会長 ただいま岡部委員から小委員会の第2次中間報告案についてご説明がありまし
たが、この件に関して委員の方で何かご質問はありますか。よろしいですか。
○岡部委員 このデータは、昨年のパンデミックH1N1の流行時にありながら、非常に大変な
思いをしてできたわけで、これの協力には何と50人以上の小児科医、基幹病院、開業の先生方
の非常な努力、またその患者の方々の大変な努力と協力があってできたものだということを一言
申し上げたいと思います。
○加藤部会長 岡部委員から研究班を代表して協力された先生方または接種を受けた方々に謝
辞の言葉と受けとめます。日本脳炎に関する小委員会より提出された第2次中間報告書を了承し、
本部会の報告書として取りまとめることにします。
 本日予定しました議事は終了しましたが、ご意見があればお1人だけどうぞ。
○倉田委員 事務局にお聞きして、それが答えが「イエス」ならば、私はそれ以上何にも言いま
せん。もし「ノー」ならば意見として言いたいことがあります。今日も山川委員がおっしゃった
ように、非常にいろいろワクチンの品質の安全という問題が出てきましたが、これを実際に担当
しているのは医薬局の各課およびPMDAですが、その日本のワクチンの品質管理をどのように
やっているかということですね。ここの委員の先生方もそうですが、その話をきちんとしてもら
うほうがいいのではないか。というのは、ワクチンの推進をやっている小児科の某大学教授3
人が、「えっ、日本でもチェックしているの」と言われて、びっくり仰天したのですが、専門家
においてすらそういうレベルなので、ですから、きちんと公開の席でどうやっているかをやるべ
きだと思うのですが、それは私の意見ですが、いかがですか。「やる」と言ったら、新たにこれ
以上言いませんが。
○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 準備します。
○加藤部会長 準備するということでよろしいですか。
○倉田委員 はい、結構です。
○加藤部会長 時間もまいりました。司会も不手際で、15分ほど遅れまして申し訳ありません。
本日は以上で終了です。事務局から次回の連絡をお願いします。
○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 次回は7月の開催を予定していますが、議事、
日程等はまた追ってお知らせします。
○加藤部会長 本日は長時間にわたりましてご議論いただき、本当にどうもありがとうございま
した。これをもちまして第10回予防接種部会を終了します。

照会先:健康局結核感染症課(03-5253-1111 内線:2077)



(了)

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