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2010年9月16日 第5回審査支払機関の在り方に関する検討会議事録

○日時

平成22年9月16日(木)14:00~16:00


○場所

厚生労働省5階 共用第7会議室


○出席者

足利委員、飯山委員、遠藤委員、齋藤委員、高田委員、高橋委員、田中委員、
長谷川委員、森田委員(座長)、山本委員、横倉委員、渡辺委員、井上ゲストスピーカー、
篠岡ゲストスピーカー、須藤ゲストスピーカー、滝口ゲストスピーカー、
土肥ゲストスピーカー、新原ゲストスピーカー

(事務局)
外口保険局長、唐澤審議官、武田総務課長、吉田保険課長、伊藤国民健康保険課長、鈴木医療課長、佐原保険システム高度化推進室長

○議事

○森田座長 皆様、こんにちは。時間になりましたので、ただいまから、第5回「審査支払機関の在り方に関する検討会」を開催させていただきます。
 まず、本日の委員の方の出席状況につきまして事務局より御報告いただくとともに、代理出席の方の扱いについて御相談申し上げたいと思います。お願いいたします。
○吉田保険課長 事務局、保険課長でございます。
 まず、本日の委員の皆様方の出席状況でございますが、粟生田委員、岩田委員、横倉委員、足利委員、村岡委員及び本日急遽、渡辺委員も御欠席、及び高智オブザーバーの方から御欠席という御連絡をいただいております。また、田中委員におかれましては、特に御連絡は入っておりませんので、追っかけお見えになるものと承知をしております。
 なお、座長の方からございました、委員が御欠席の場合の扱いについて、事務局としてお諮りをさせていただきたいと思います。
 当初、この検討会におきまして、委員が御欠席された場合のいわゆる「代理」出席のルールについて特段定めずに本日までまいりました。事務局これまで委員の皆様方の日程を調整させていただく中で、委員としてどうしても御都合をいただけないけれども、代理の方でというようなお声もいただくようになりました。つきましては、事務局としての御提案でございますが、委員の御都合がつかない日程にセットされた場合に、御希望があれば、あらかじめ代理出席という旨を御連絡をいただき、それをいただきました私ども事務局として座長に御報告をさせていただいた後、その検討会の当日には、その会議の冒頭で、座長から委員の皆様方に御報告としてお諮りいただく形にし、検討会として御了解をいただいた上で、代理の方に御出席をいただくというような手続上のルールを定めてはいかがかと思います。ただし、念のために申し上げれば、検討会、何かを決めるという形でこれまで進んでおりませんけれども、今後、検討会としての意思決定が必要な局面が生じた場合におきまして、その当日代理として御出席いただいている方につきましては、その意思決定には御参画いただかないという形での位置づけでいかがかと思いますので、よろしく御議論いただければと思います。
○森田座長 ありがとうございました。
 まず、最初に、ただいまの代理出席の場合のルールについては、これはよろいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○森田座長 ありがとうございました。
 本日の委員の出席状況及び代理出席について報告がございましたが、それでは、早速、それに基づきまして、本日欠席の横倉委員の代理として日本医師会の中川副会長、そして、足利委員の代理として社会保険診療報酬支払基金の田中経営企画部長に御出席をいただいておりますので、御了承をいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○森田座長 ありがとうございました。
 それでは、お二人の代理の方にはよろしくお願いいたします。
 続きまして、前回開催から本日までの間に事務局に人事異動がございましたので、それについて御説明をお願いいたします。
 よろしくお願いいたします。
○鈴木医療課長 8月30日付けで医療課長を拝命いたしました鈴木でございます。よろしくお願いします。
○佐原保険システム高度化推進室長 保険局総務課保険システム高度化推進室長の佐原と申します。どうぞよろしくお願いします。
○吉田保険課長 また、本日所用がありまして欠席をしておりますが、保険局の総務課長に武田が就任しておりますので、御報告を申し上げます。
○森田座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、事務局より資料の確認をお願いいたします。
○吉田保険課長 改めて、保険課長でございます。お手元の資料の山の中から御確認をと思います。
 本日の議事次第という形で、御出席いただいておりますゲストスピーカーの方々のお名前を含めた議事次第がございます。
 その後、第5回資料、右肩にございます資料1番から5番まで、ゲストスピーカーそれぞれの方々から事前に御登録いただきました資料を用意させていただいております。
 それと、パワーポイントがございます。机上配布してございます、黒いパワーポイントと黄色い小冊子になってございますものが滝口ゲストスピーカーから御提出いただいた資料でございます。
 それから、第5回参考資料の1といたしまして、前回第4回委員の御発言をまとめさせていただいたものを配付させていただいております。
 それから、あと2つ。本日、この場にゲストスピーカーであります新原さんの方から「発言要旨」と書いてございますペーパーを持ち込んでいただきましたので、この場委員の皆様方のお机の上に取り急ぎ配布をさせていただいております。
 また、日程(案)については、後ほど最後のところで御相談させていただきたいと思います。
 事務局より確認させていただきました資料の関係は、以上でございます。もし乱丁等ございましたら、途中で事務局の方にお声がけいただきますようよろしくお願い申し上げます。
○森田座長 ありがとうございました。
 それでは、既に委員の皆様には御案内しておりますが、本日は以前から予定しておりました、ゲストスピーカーの皆様に御出席いただきまして、御発言いただき、議論を進めてまいりたいと思います。
 本日は、お忙しいところ、また、遠路御足労いただき、御出席をいただきましたゲストスピーカーの方々を御紹介いたします。
 まず、井上内科医院院長で社会保険診療報酬支払基金福岡支部審査委員会審査委員長の井上仁人様でございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、医療法人済恵会須藤病院院長で群馬県国民健康保険団体連合会審査委員会会長の須藤英仁様。よろしくお願いいたします。
 続いて、広島赤十字原爆病院院長で社会保険診療報酬支払基金広島支部審査委員会副審査委員長の土肥博雄様でいらっしゃいます。
 続きまして、日本大学歯学部社会歯科学特任教授の新原英嗣様。
 篠岡歯科医院院長で社会保険診療報酬支払基金東京支部主任審査医院の篠岡美長様。
 株式会社メディカル・データ・コミュニケーションズ代表取締役会長で東京女子医科大学医学部非常勤講師の滝口進様。
 皆様、本日は御出席いただきまして、ありがとうございます。
 それでは、本日の議事に入らせていただきます。
 本日は、ただいま御紹介いたしました6名のゲストスピーカーの方々にお越しいただいておりますので、会議の時間の関係もあり、それぞれお一人10分ずつでスピーチをお願いしたいと思います。そして、その後で一括して質疑をお願いしたいと思います。スピーチの時間が短いとは思いますけれども、なるべく多くの方の御発言をいただきたいということで、このようにしたわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
 それでは、まず、井上仁人様よりお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○井上ゲストスピーカー 支払基金福岡県支部の審査委員長をしております井上仁人と申します。本日は、支払基金福岡支部の審査状況、次に、今まで委員の先生からいただきました御意見に対する私の意見を述べさせていただきます。10分という非常に短い時間なので、全部は述べることはできないと思いますので、資料として出しておりますので、ごらんいただければ幸甚です。
 まず、支払基金福岡県支部の現状ですが、審査員165名(医科・歯科)。それで、毎月約200万枚のレセプトを審査しております。あとは、医科について申し上げますが、1人当たり大体20~40の医療機関を持って、月5,000件から2万件のレセプトを審査しております。審査時間としては、月の中ごろ、土日フルタイム含めて大体約1週間でございます。平日は午後10時まで基金を開けていただいて審査しております。それで、大体1人延べ15~30時間の審査時間となっております。
 ここで申し上げたいのは、審査員は常勤以外はすべて本職を持っておりまして、その空いた時間で審査しておるわけでございます。したがいまして、どうしても審査時間が足りないという状況がございます。保険者から再審査請求の約3割は「査定されているじゃないか」「見落としが多い」ということを言われておりますが、これは審査時間の不足も1つの原因ではないかと思っております。
 次に、審査員の選任です。これは三者構成の問題と思いますが、医療機関推薦は、福岡県医師会に推薦依頼しておりまして、これはスムーズにいっております。次に、保険者推薦ですが、保険者に推薦依頼を行っておりますが、保険者では、適任者を推薦することが困難である場合が多く、したがって、退任者に後任者の推薦をお願いして、大体スムーズにいっておるのですが、それができない場合は、審査委員会で適任者を選んでお願いしておる状況でございます。学識経験者についても、同様でございます。
 次に、審査の合議制です。これは公正な審査を行うためにつながることですが、すべてのレセプトを合議することは物理的に不可能でございます。したがいまして、福岡支部では、このように、ペア審査、複数審査、審査専門部会、それから、主任審査による最終的な検討と。特に高点数、複雑なレセプトは、こういうことでできるだけ合議制をとっております。
 次に、審査取決め事項です。いわゆるローカルルールです。これは差異解消のために行っているわけで、審査委員間で意見の違うような事項が出ますと、直ちに専門医によるプロジェクトチームを組んで「福岡はこの線で行くぞ」ということで決定し、それを全員に徹底しております。現在、福岡では、約400のそういう取決め事項がございます。ちなみに、福岡県国保連合会では、この取決め事項が20~30と聞いておりまして、国保では、審査員の独自性を尊重しているように見受けます。
 以上が、福岡県支部の審査状況でございます。
 次に、今まで委員会で出ました意見に対する私の意見を述べさせていただきます。
 まず、審査格差についてですが、大支部と小支部で、査定率に最大4倍の差があるということで、非常に大きな問題になっておりますが、これにはさまざまな理由があって、ある意味仕方ないと思い、それほど大きな問題ではないのではないかと私は思っております。その理由として、まず、これも委員の先生方がおっしゃっておりますが、レセプトの99%は適正な請求で、残りの1%が査定されている。この1%の中で査定率の差異を問題にすることに果たして大きな意味があるのかと私は思っております。都市では、複雑なレセプトを多く請求する大病院が多く、審査委員も各専門医も充実していますし、逆に、地方では専門医が不足している。これも査定率の差となっているのではないでしょうか。
 そこで、支払基金では何でそのような差異が起こるかということで、査定率で3.6倍の差があって、同じ地域の福岡県とお隣の山口県でレセプト交換審査を行い、検証をしております。詳細は、まだ検証中ではっきりしたことは出ておりませんが、その要因の1つに、レセプトの返戻率という問題がございます。これは問題のあるレセプトは、山口県では医療機関に一旦お返しして「どういう理由ですか」と聞いて、それから、査定すると。福岡県では、そのままばっさり査定と。そういうことで実際3.6倍の査定率の差があるのですが、実際はそれほどないのではないかと、そういうふうに思っております。
 それから、ダブルスタンダードの問題が出ておりましたが、例えば耐糖能精密試験という糖負荷して、血糖値とインスリンの分泌を測る検査がございます。支払基金では「糖尿病疑い」でこの検査を全国認めております。ところが、福岡県の国保では「糖尿病疑い」では認めておりません。こういうものをダブルスタンダードと言うと思うのですが、こういうのは是非解消する必要があると私は思っております。
 そうは言っても、決して差があっていいというわけではございませんで、私どもも常に差異をなくすためにいろいろな努力をしております。それが次に書いているような問題でございます。
 次に、機械による一律審査についてですが、同じ疾患でも、重症度、性別、体格等の差で行う検査、治療が全く異なります。したがって、機械による一律審査は、私は絶対になじまないと思っております。
 それから、各都道府県に支払基金が必要かという問題でございますが、都市と地方では、大病院、医師の数の違い、急性期及び慢性期疾患の患者数とその内容の違い、人口密度、高齢者の割合等、審査の内容、質、環境がまるで違うので、都市の感覚で地方を、逆に、地方の感覚で都市の審査を行うのは無理ではないかと私は思っております。
 例えば九州各県を福岡に集めて、福岡で審査をするということになれば、福岡では、現在の何倍もの審査委員を用意しなければならない。現在は、ただでさえ審査委員のなり手がないのに、どうやって集めるのかという問題も起こってきております。
 次に、審査情報の公開についてですが、時間があれですので、お読みいただきたいと思います。
 そこで、私の考えとしまして、私は、支払基金の本部並びに国保中央会、中央がリーダーシップをもっと強く持っていただきたいと思っております。現在は、審査に関して、各県、各支部の独自性が余りに強過ぎるのではないか。したがって、差異が出ているのではないかと思っております。
 具体的には、いわゆるローカルルールを本部に集め、収斂させ統一化すれば、少しは差異が解消できるのではないかと思います。
 それから、支払基金及び国保連合会の審査委員、職員の人事交流も一つの手ではないかと思っております。IT化は当然進めるべきですが、審査に関しては慎重にお願いしたいと思っております。
 最後に、保険診療のルールブックである点数表の解釈だけでは判断できない部分が多くあり、また、学会のガイドラインにもルールブックから逸脱した部分が多く見られます。医療機関からは「最新の医学を理解していない」、保険者からは「こんなルール違反を認めるのか」と言われる中で、私たち審査委員は限られた財源の中で、世界に冠たるこの日本の皆保険制度を守るため、また、患者さんに最適な医療を受けてもらうために、審査という手段で医療機関を指導し、それを保険者に認めてもらうよう誠心誠意、中立、公正に審査していることを御理解いただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
○森田座長 ありがとうございました。
 続きまして、須藤英仁様にお願いいたします。
○須藤ゲストスピーカー 群馬県から参りました須藤でございます。私のこの審査についての考え方を述べさせていただきたいと思います。
 群馬県の国保審査委員会では、レセプトの審査業務に当たっては“For The Patient”ということで、患者さんのためになるかということを一番の主眼に置いて審査に当たっております。
 まず、大変話題になっておりますダブルスタンダードについてであります。社保・国保の審査基準の統一ということですけれども、群馬県では、5~6年前にかなり特殊な審査をする先生がいらっしゃいまして、かなり難渋した思い出があります。そのときに、社保・国保の審査基準を合わせようということが議題に上りました。その点につきましては、現在、2か月に1回程度、社保・国保の専任審査員、また、国保の会長、社保の委員長、それから、支払基準についての審査の専門家、議題によって変わりますから専門家、場合によっては群馬大学医学部等の更に学術的な専門家等を集めて、医学の進歩におくれないよう、また、時代に即した審査基準を示すように努力しております。
 分厚い資料で大変申しわけないのですが、資料2の8ページ辺りをごらんになっていただきたいのですが「脳外科領囲」というところがあると思います。脳外科の協議結果というところで、脳梗塞における高気圧酸素療法についてということはどうかというようなこと。また、ここに書いてあるような、ずらずらとかなりの数の脳外科領囲について話し合ったということであります。
 11ページには呼吸器領囲、それから、15ページからは今年の9月に行う糖尿病領囲についての議題がこのように並んでおります。
 これらの議題を、結果が出たことについては、18ページからございます『群馬県医師会報』に公表して、診療側の方の先生方に使えるような努力をしております。そのときの注意することは、上限、どこまで認めるということはなかなか言いづらい点がございます。そうしますと、一律にそこまでは大丈夫かというような議論になってしまいますので、かえって医師の裁量権を狭めるという考えを私は持っておりますので、私の出していることは、これをやると査定されるようなことがありますよという危険というか、そういうことはなるべく積極的に「保険室だより」ということで先生方にお伝えしているという現状でございます。このようなことで審査の基準の診療側に対して教えることに努力をしているわけでございます。
 ダブルスタンダードについては、先ほど福岡の先生がおっしゃいましたように、症例によって全部変わりますので、一律に全部を理解しろということは、私は不可能と思っております。
 次の2ページへ行っていただきたいのですけれども「審査基準統一に対しての審査委員会への周知徹底」ということで、審査員一人一人が全部審査基準を持ってしまうという危険が非常にあるわけであります。そのために、私ども群馬県では、国保の審査員と社保の審査員を年に一度一堂に集めまして、その1年間に先ほどの会議の結果とか、それから、国保中央会の7.3ルール、それから、支払基金のホームページに載っている審査基準等をすべてもう一度出しまして、確認していただくようなことをしております。
 それから、もう一つ、診療側に対しての今の審査基準の徹底についてですが、群馬県では11の区域が分かれるのですけれども、その区域ごとに、保険診療の講習会と申しまして、年に1回ずつ2時間しっかり保険のルール、その他についての講習を行っております。これは、私ども審査機関、それから、関東厚生局にも御協力いただきまして、療養担当規則、それから、保険診療の話題、また、今回の審査の基準等について徹底するようにしております。集団的個別指導のもとにこれを行っておりますので、すべての医療機関に出席を依頼しております。その中で、普通ですと、事務職員の出席ということで終わってしまうことが多いのですが、群馬県の場合には、すべて管理者ということで、医師がすべて出ておりますので、年に1回のこういうレクチャーでも、保険ルールの徹底は十分なされているのではないかと理解しております。
 それから、4)番にまいりまして、画面審査ですけれども、委員の皆様はいろいろごらんになっていると思いますが、国保では二画面審査を行っておりまして。二画面は情報量も非常に多いので、私どもは症状詳記の点から、また、病状の理解、その他については、その二画面で十分行えていると理解しております。
 それから、5)番にまいりまして、査定率が審査機関の評価となり得るかどうかということですけれども、これは私が今まで申しましたように、まさにNOと言いたいと思います。これまで述べてきましたように、保険診療のルールについては、診療側の理解が深ければ深いほど査定率は下がると思います。群馬県では、診療側に対して徹底した情報提供を行っておりますので、そのような点で査定率が低いのは当然と見ております。また、診療費そのものが西高東低というふうな西が高くて東が低いという傾向がございます。群馬県の場合、37~38か、40番目か、その辺のレベルの診療報酬の請求でございますので、そこらへんでも査定率が低いのは当然というふうに私は理解しております。
 「社保・国保は統一すべきか」という問題でございます。これは支払基金が1件当たり幾らの事務料、国保の方が幾らの事務料というところまでは私は知っておりますけれども、その各機関がどの程度のコストがかかっているかということには、私ははっきり申しましてわかりません。しかしながら、この審査委員会というものがたとえ一つになったとしても、審査員各々すべてが審査基準を持つようでは、ダブルスタンダードの解消には全くなりません。それから、更に弊害とすると、長年やってきた審査員で声のでかい審査員、例えば私がもしかしたら言われるかもしれませんけれども、そのような者が勝手にルールをつくってしまい、それによってやるという弊害も非常に大きいと思っております。ですから、この統一には私ははっきり反対とも言えませんけれども、その弊害もしっかり考えておくべきではないかと思っております。
 7)番目として「厚生労働省への要望」を書かせていただきました。レセプトの電子化の進展に伴い、画面審査導入など、電子レセプトに対応した審査体制の構築を行っておりますけれども、症状詳記等に関する補足説明資料は電子化されていないということ。紙ベースのために、表示されている画面と症状詳記等に関する補足説明資料を見なくてはいけないということで煩わしくなっているというようなことです。このようなことで、電子化の点では、もう進めなくてはいけないと思いますけれども、個々の審査においては、先ほど福岡の先生がおっしゃいましたように、一律の審査に陥りやすいという弊害が非常にございます。私は、これは「コンピュータの挑発」と呼んでいるのですけれども、例えば1か月の間に、肺炎の患者さんが3回以上胸部のレントゲンを撮った場合には、3回以上のレントゲン撮影はどうかというようなことが出てくるわけであります。しかしながら、これは千差万別でありまして、もう死にそうになるような重症な肺炎から、肺炎一つの名前をとりましても、本当に軽い肺炎までいろいろあるわけでありますので、ここら辺のところは、是非審査の上では注意をするようにというように、いつも述べております。ですから、ここら辺のところを電子化を進めるのは結構ですけれども、審査員会としては是非注意していきたいと思っております。
 それから、更に、厚生労働省にはもう一つ要望ですけれども、社会保障カードの件が取りざたされているふうに思います。私どもの病院を見ますと、約6,000件の外来の件数がございますけれども、その中で返戻が28件、そのうちのいわゆる資格がない、資格喪失等の返戻が17件でありまして。いわゆる病名の不備とか、過剰とか、そういうことの返戻よりも資格の返戻の方がはるかに多いわけであります。厚生労働省としては、これだけ電子請求のことを進めたわけでありますから、診療側に対して、その資格等の審査がスーッとできるような体制を是非つくっていただきたいと私は思っております。
 大変勝手なことを申しましたけれども、私の意見として述べさせていただきました。どうも御清聴ありがとうございました。
○森田座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして土肥博雄様、お願いいたします。
○土肥ゲストスピーカー 私は広島の支払基金で仕事をしておりますが、平成8年に立ち上げました基金本部の審査に関する支部間差異解消のための中央検討委員会の委員を平成15年からやっておりまして、その立場から、今まで検討したものから皆様に事例をお示しして御説明していきたいと思います。
 1)番の「差異の現状」でございます。これは大変膨大な資料の中から、わかりやすい、説明しやすいものを抽出したものでございます。
 「1.精密の取り扱い」であります。これは糖尿病疑いという、先ほど井上先生からもございましたが、耐糖能精密。この耐糖能検査は、糖尿病かどうかを診断する検査ですが、これは通常のものですと200点、精密検査ですと、インスリンの測定をしますので900点となってございます。疑い病名で精密は要らないという昔からのセントラルドグマをお持ちの先生方が多ございまして。これで一般的な200点の点数をやって糖尿病が確定したら、今度はもう一回900点の高いやつをやるのであります。つまり、2回やることになります。しかも、糖尿病が確定していれば何度でもやれると、こういう立場なんです。
 私は、そこでちょっと井上先生と2年前に対立したのですが、糖尿病疑いのときにやって確定したら、糖尿病の精密耐糖能試験は要らないという立場でございます。それを認めるときもありますが、それはほかの理由で耐糖能が非常に変化した可能性があるというふうなときに認めるので、そういう立場でやってきております。
 それから、これは古い事例ですが、膠原病などに使用するイムランとか、エンドキサン。イムランは臓器移植に使う薬です。エンドキサンはがんに使う薬です。しかしながら、これらは免疫抑制作用が減って非常に強いものですから、プレドニンを長期療養ずっと使っている。ないしは、それがうまく使えないというふうなものに広く使われている薬であります。これを認めるかどうかというのが支部間差異で出てくるわけです。
 それから、医療現場ではよく知られているが、適応としてないもの。これはソルメドロールという、これもステロイド剤ですが、これは代謝が非常に早くて、注射を一発やりましても、数時間のうちにさっと行くものですから、それでよく使われております。これを多発性硬化症、または、ぜんそくの重積発作、神経症に使われています。これも適応がないものですから、使うとか、使わないとかということがありますが、現場では、これを使わないと救命的にもならないというようなことがあって認めておることが多いのであります。
 それから、再発、難治性のがんに対して、通常のがんの化学療法をやっていかなかったもの、Second line、Third lineとしての抗がん剤としてこういうようなものが言われています。
 それから、禁忌薬の取り扱いですが、NSAIDsという普通の痛みどめですね。これは胃潰瘍ないしは急性胃粘膜障害という重篤なものを起こすことが知られていますが、起こすことが知られているために、胃潰瘍を持った人にはこれが使えないという格好になっています。しかしながら、リウマチ等で長くこれを使わなければならないという人がいます。そういうときに抗潰瘍剤と併用するのですが、抗潰瘍剤を出していく潰瘍の病名があります。これは禁忌であるということで、これを認めるか認めないのかというふうなことが起こってまいります。
 それから、検査の縛りが、これは解釈の本の縛りが強過ぎて効果的に使用できなかったもの、これはsIL-2Rという検査がございますが、これは悪性リンパ腫が確定したものについて、その経過、観察のために使えというように解釈の本にはなっていますが、現実には悪性リンパ腫かどうかの鑑別に大変たくさん使われています。これは学会からの要望もありまして、20年度の解釈では変更になっております。しかし、それまでは、査定をするのか、理由がわかるから使うのかというのでは随分問題になったものであります。つまり、例えば頸部ないしは鎖骨上下のリンパ節がはれてきているときに、それをとって調べるのですが、そのときにsIL-2Rは、採血をして血清で調べることができますので、sIL-2Rが極端に高ければ恐らく悪性リンパ腫と。悪性リンパ腫であれば、確定診断をつけたら、すぐ化学療法を始めよと。ところが、これがもし肺がんですと、鎖骨上下にリンパ節転移のある肺がんは、もうそういう意味では根治的に手術をする対象になりません。したがいまして、非常に低侵襲なものにしてなるべく化学療法にということで、大きな治療計画の岐路に立つものであります。これは前回の解釈で変更になっております。
 それから、医療従事者の安全から、どこまで認めるかと。内視鏡検査とか、心カテとか、透析患者において、B型検査、C型の肝炎ないしは梅毒の検査を認めるかどうか。これも長い間の論争でございました。現在では多くのところが認めていると思います。
 それから、疾患に対して有効な薬剤がないもの。非結核性抗酸菌感染症、または、原発性の不明がん、こういうふうなものには、こういう形での薬がないものですから、恐らく効くであろうというものを使っているというものであります。それも多くはそれなりの専門家ではコンセンサスが得られておって使っているものであります。
 こういうふうなものが、大きく分けてこの8つの事例ぐらいがいろいろな話で出てきたものであります。
 これをやっている途中に、平成16年から、いろいろ検査、及び薬は始めは出てこなかったのですが、支部間差異があるけれども、おおむね75%以上収斂した症例については、検討委員会で検討をして、情報公開をしようということになりました。これは情報公開をする場合には、保険者側にも医療側にも両方に同じように公開をしているわけであります。
 次のページです。
 支部間差異検討委員会で検討した結果は、審査委員会のイントラネットには常に掲示されておりまして、それで他支部の状況を見ながら、それぞれの支部での方針をもう一回再検討するもとになっています。こういうものが、なぜ支部間差異が生じるのかということでありますが、今多少申し上げましたが、個々のケースで、1対1、こういう傷病名でこういう検査を認めるか、こういう傷病名でこういう薬を認めるかということでやりますと、非常にわかりやすい話になってしまうのですが、そうではなくて、その一つ一つの個々の症例の原疾患が何があるかということで大きく審査の内容は変わってまいります。例えば原疾患が白血病である場合の肺炎というふうなものでは、抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤等の使用も、通常の肺炎とは当然異なってくるので、そういうふうなことで大きくレセプト上は異なります。
 したがいまして、ある程度こういうものについてはこれは認めよう、こういうものについてはこれはちょっとやり過ぎよということでは決めるのですが、個々のレセプトに関しては、そのレセプトの全体を原疾患を含めた形で調べていかないと審査ができないということになっております。以前、支部間差異のときも、○△×ということで評価をしていたのですが、○であっても、傾向的なものは査定する、×であっても、理由がわかれば認めるということで、それではなかなかわからないではないかということで、現在は、無条件で認めるものは◎にしまして、だめなものは×というような格好でつけております。
 そうした中で新たな問題点が出てまいりました。先ほども出ましたが、ガイドラインの出現であります。関節リウマチにTNF-αの阻害剤を使用するときの諸検査、HBsとか、HCVとか、ツベルクリン反応、胸部レ線、KL-6、Dグルカン、胸部CT、BNP、これは関節リウマチに免疫抑制を更にかけるようなお薬をやりますと、B型肝炎、C型肝炎が活性化したり、または、結核が出たり、それから、心不全、間質性肺炎等々が出ますので、あらかじめこれは検査をしておけというのがガイドラインであります。問題は、ガイドラインが出ているのですが、例えば間質性肺炎の疑いを持っているのだから「間質性肺炎の疑い」という病名をつければいいのですが、それがなくても認めるかどうかということが今問題になっているところであります。
 それから、最近、高齢者に対して今までほとんど治験もできてないことが多ございまして、高齢者が施設にいて、せん妄とかいうような状況になりましたときに、もっと強い薬をやりますと、今度は寝てしまうのですね。そうすると、ずっと寝てしまう。ということで、セロクエルという統合失調症にしか使えないお薬ですが、こういうものを使っていることがございます。
 それから、ジェネリックの問題は既にいっぱい議論されていると思いますので、省きます。
 6)番のまとめは、一傷病対一診療行為の対比で行いますと、線引きが容易に見えるように見えますが、実際は1枚のレセプトを見て判断をいたしますので、原疾患、または、免疫抑制剤、ステロイド、抗がん剤の使用等をよく勘案して審査をしているということが現状でございます。傷病名と診療内容が合致していれば、じゃ、査定はしないのかということでございますが、実は、私はつい先月多く査定してしまったのですが、そこの医療機関では、340のレセプトの枚数がありました。3,000点以上が95枚、5,000点以上が61枚、6,000点以上が53枚、つまり、普通の診療としては異常に点数が高いのです。中身を見ました。そうすると、6,000点以上では、実に88.6%が生保の患者でした。IgEをアレルギー性Th-2の名前でちゃんと合っている、そして、IgEの測定をしているんです。これはすべて生保でした。それから、CTを28例やっております。24例が生保で、1例だけが原爆で、あと3例だけがどちらでもないと、こういうような医療機関のものは、僕は病名とあれが合っていても査定をいたしております。だから、こういうのはそういうことではうまくできないということであります。
 それから、今の支払基金の審査では、抽出機能がついています。つまり、僕が今なぜこうやって生保が何例ということを言えるかといいますと、これはおかしいなと思ったときに、じゃ、生保だけをパッと集めて見る。例えば3,000点以上で集めて見たときに、生保が何ぼかというのが抽出機能ですぐ出るのです。これは非常に重宝しておって、ITがいけないとは僕は絶対思っていません。ただ、ITで一傷病名一疾患、また、一傷病名一診療行為ということでやりますと、前の先生方のおっしゃるとおりですが、それをうまく使えば非常に有用であると思っております。
 審査に対する心得ですが、基本は、解釈と日本薬品集であることは間違いありません。しかし、迷うときは、診察している立場として、診療に困るようになるかどうかということで判断をしております。
 以上でございます。
○森田座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして新原英嗣様、お願いします。
○新原ゲストスピーカー それでは、私の方からお話をさせていただきます。
 私は、大学を出てから、診療実務者、行政担当実務者、審査担当実務者、そして、保険者側として、勿論被保険者、時には患者として、健康保険制度を取り巻くすべての立場に身を置いてこの制度の運用を現実的に見てまいりました。今日ここでお話しすることは何かの意思だと思い、率直に問題点をお話しさせていただきたいと思います。
 1つは、社会保険診療報酬支払基金に業務委託をしている多くの保険者が、社会保険診療報酬支払基金の仕事等に満足していないという現実であります。審査支払は、健康保険法第76条第4項目で示しますとおり、保険者の本来業務の一つであり、審査支払に対する責任は保険者にあります。支払基金には、健康保険法第76条第5項を根拠として、外部委託しているにすぎません。通常は、仕事に責任を負わなければならない委託元が委託先の仕事等に満足していない場合は、みずから仕事をするか、委託先を変更するのが社会常識です。本来、保険者の本来業務であり、保険者が責任を負うべき審査支払業務を保険者みずから行うこと、外部委託先を変更することを実質的に阻害しています、平成14年12月25日付厚生労働省保険局から健康保険組合理事長あてに発出されました「健康保険組合等による審査および支払」という表題の「保発第1225001号」通知を廃止・変更する必要があると考えております。
 支払基金の仕事に満足していない保険者がみずから仕事を行う。また、外部委託先を変更することを現実的に可能にすることで、社会保険診療報酬支払基金を競争的環境に置くことができると考えております。支払基金の仕事に満足している保険者は、当然支払基金に外部委託すればよいわけであります。
それでは、なぜ社会保険診療報酬支払基金の仕事等に満足していないかという理由でありますが、1つ目は、多くの保険者は審査に満足していないということです。本日、検討会でお話をさせていただくに当たり、保険者で、歯科の事後点検をしています多くの人たちから、実例とともにたくさんの意見が寄せられました。そのすべてを紹介することはできませんが、約束でありますので、特徴的な5事例だけ載せておきました。後ほどお読みください。?A~?Dは、保険者が再審査請求をしても、支払が認められている事例です。その他多くの事例が寄せられていますが、時間の関係上、5事例のみ紹介させていただきます。
 2つ目の審査に対する満足していない点は、多くの保険者が、そのような審査の結果としての査定率の低さに満足していないということです。支払基金発出の文書によりますと、平成21年9月審査分の歯科審査の査定結果を見ますと、歯科点数査定率は0.078%で、そのうち原審査で査定されたものは0.037%、保険者再審査で査定されたものが0.041%となっています。保険者再審査で査定された0.041%の0.005%は単月審査分ということで、本来、支払基金の原審査で査定されるべきものです。
 同月の医科点数査定率は0.281%、原審査で査定されたものは0.227%でありました。
 歯科におきましては、保険者再審査での査定の方が原審査における査定より高い状況にあります。このことより、現行の体制下におきましても、歯科レセプトの流れを調剤と同じようにすることが求められます。すなわち、単月審査と縦覧審査の両方を行う保険者における審査を先に行い、保険者審査の結果で疑義の生じたレセプトを「社会保険診療報酬支払基金の審査」に回すようにすることが効率的であり必要であります。
 満足していない3つ目の点でありますが、多くの保険者が、審査委員会の構成に満足をしていないということであります。現在は、すべての審査委員が医師・歯科医師で占められておりますが「告示」「通知」「疑義解釈事務連絡」に記載されている内容や「薬効」などについては、医師・歯科医師でなくても審査可能です。現実に、支払基金の審査においても、基金職員の事務共助に負うところが大きい状況です。ちなみに、今年の7月の原審査査定件数のうち、事務共助が関与したものが67.9%に上っています。
また、学識経験者審査委員は、平成15年までは行政が中心となって選考していましたが、組織変更されてからは、支払基金の支部に設置されています学識経験者審査委員選考協議会で選考するようになりました。しかし、この学識経験者審査委員選考協議会の構成メンバーは、支部長以外はほとんどすべて審査担当者サイドで占められております。公正な選考をしていることを疑われる状況にあります。なお、保険者側の審査委員につきましても、支払基金支部から業界団体に一括依頼している支部が存在する現状に対する不満を保険者職員から聞いております。
 4つ目の満足しない点は、多くの保険者が審査にかかる費用に満足していないということです。今月10日に発表されました健康保険組合連合会に加入する健康保険組合の昨年の決算見込を見ますと、2008年度より赤字が2,416億円増し5,235億円となり、過去最悪となっております。80%以上が赤字組合であります。なお、今年も6,000億円を超える赤字が見込まれています。
 全国健康保険協会の昨年度の単年度収支を見ましても、2008年度の赤字よりさらに2,292億円増加し4,830億円の赤字です。国庫補助率を医療給付額の13%から16.4%に引き上げましても、全国平均の保険料率が昨年の8.2%から今年は9.34%に急激に引き上げられております。
 支払基金の審査支払にかかる手数料は、業務委託元である保険者の財政状況に影響されることはなく、極めて価格弾力性が低い状況です。保険者は単月審査のみ行う支払基金の審査にかかる費用のほかに、保険者みずから単月審査と縦覧審査の両方を行う事後点検にかかる費用も負担しており、審査に二重の費用をかけております。
 諸外国の公的医療保険制度における審査の状況を見ましても、審査を単月審査と縦覧審査に分けたり、単月審査と事後点検に分けたりしている国はありません。したがって、保険者が審査に二重の手間と費用をかけることもありません。
 多くの保険者が「3人で1人を支える現在でも厳しい財政状況にある保険システムが、あと40年程でやってくる1人で1人を支える環境においても機能するのだろうか」という危惧する現況下で、毎年800億円を超える費用を要する支払基金への外部委託に対する妥当性と効率性に疑問を抱いています。
 保険者と保険医療機関が直接話し合い、問題を直接解決していくことにより限られた医療財源を効率的に使う必要があります。
 5つ目の満足していない点は、多くの保険者が、厚生労働省の通知が保険者の事後点検を実質的に制限しているということに不満を持っているということです。
 1つは、保険者の再審査の申出期間が、旧厚生省の課長通知により厳しい制限を受けているという事実です。保険者からの再審査請求の消滅時効は、民法第167条第1項及び第703条により、支払われた日の翌日より起算して10年です。
 医療機関の再審査請求の消滅時効は、民法170条第1号より、請求を行うことができるとされる診療月の翌月の1日から起算して3年でございます。しかし、昭和60年4月30日付、保険発第40号・庁保険発第17条「社会保険診療報酬支払基金に対する再審査の申出について」、及び同日付で出されました、保文第272号「社会保険診療報酬支払基金に対する再審査の申出について」においては再審査の申出期間を「支払基金が定めた6か月以内とする」という旨記載されています。
 保険者で事後点検をしている多くの人たちから、「支払基金支部は、この通知を根拠に『他の県では6ヶ月までの所もある。1年までみてあげるから、1年を超えたレセプトは提出しないで下さい。』と申し込まれ、1年を超えての再審査を受け付けてもらえない。審査の責任は保険者にあるのにおかしい。支払基金では医療機関からの再審査は、法律の規定どおり診療日の翌月より3年間受け付けている。保険者は法律上10年であるが、せめて同じ3年くらいまで再審査に提出したい。」という不満の声がありました。国民皆保険制度であることを考えますと、支払基金の決定を追認したこの通知は、法律で定められている国民の権利を著しく侵害していると言えます。
 なお、保険者が事後点検で縦覧審査に入れるのは、早くても支払基金にレセプトが提出されてから4か月目でございます。この通知の廃止・変更が必要です。
 更に、保険者は調剤レセプトの突合審査において明らかに適応のない薬剤も、調剤レセプトの合計点数が1,500点を超えなければ請求どおり支払わされています。支払基金では「平成18年3月10日付保発031001号の【調剤報酬請求に対する審査の実施について】により、保険薬局の調剤報酬明細書のうち1,500点以上のものについて審査を申し出ることができるとあることから、本レセプトは審査対象ではありません。調剤報酬明細書1,500点以下のレセプトについては申出されないようにお願いいたします」というコメントをつけて再審査請求レセプトを保険者に戻し、再審査を拒否しています。
 歯科においては、歯科調剤レセプトの合計点数が1,500点(15,000円)を超えるケースは非常にまれですから、処方せんでの「適応傷病名なしの薬剤投与」はほとんど査定されることがありません。ちなみに、支払基金の平成21年9月歯科審査における再審査での調剤査定率は、全国で0.000%、金額に直して30万円です。この通知の廃止・変更が必要です。
 また、多くの保険者は、支払基金が組織替えして、不完全ながら「民間法人」になった後も、支払基金で設置した会議の決定内容に対する厚生労働省の追認通知が多いことに対する不満を持っています。適応外薬剤の保険請求の可否などは厚生労働省でしっかり議論を積み上げ、責任を持って決定すべきであると考えます。
 そのほかに、多くの保険者が「診療報酬点数改定時の改定内容」や審査に影響を与える厚生労働省発出の「疑義解釈事務連絡」の内容に不満を持っております。1つだけ事例を挙げれば、今年4月30日付で発出されました「疑義解釈事務連絡」に「診療報酬明細書の「傷病名」欄の記載に当たり、慢性歯周炎(軽度・中等度・重度)は、Pと省略して差し支えないとされているが、全顎にわたりP病名が記載されている患者に対して、必要があり抜歯を行う場合「傷病名」欄の記載において、更に、抜歯部位及びその重症度を特定して記載する必要はあるか」という問に「必要ない」と回答したものがあります。この回答に、保険者において事後点検をしている多くの人たちは「抜歯をした歯もわからないのに支払をしなければならないのか」と憤っております。
 「診療報酬点数改定時の改定詳細」や「疑義解釈事務連絡」の内容は、診療担当側とのみ事前打ち合わせをするのではなく、保険者側とも事前打ち合わせをすべきです。
 以上、いろいろ申し上げてまいりましたが、審査支払機関の現状に対する責任は厚生労働省にあります。当検討会における目的・議題・問題点の多くは、20年ほど前より議論の俎上に上がっておりました。特にここ10年間は常に問題とされてきた内容です。どうか、この検討会が国民のために機能して「現状維持」の理由づけや「検討会を行ったという事実」をもって問題解決をサボタージュするための検討会とならないことを心より祈ります。少なくとも審査・支払を本来業務の一つとし、責任を負わされている保険者が、外部委託先の仕事等に満足していない場合は「みずから仕事をする」あるいは「外部委託先を変更する」ということができる、当たり前の権利が実態として確保されるべきです。よろしくお願いをいたします。早口となりましたことをお詫び申し上げます。
 以上です。
○森田座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして篠岡美長様、お願いします。
○篠岡ゲストスピーカー 篠岡でございます。私は東京の歯科の審査会で主任審査委員をさせていただいております。
 今のお話しされた新原さんも歯科でございますが、今の新原さんのお話の中にある、例えば保険者が憤っているという特徴的な5事例に対してとか、非常にまれなケースを取り上げておっしゃっているように思いますけれども、これについていちいち私のコメントを今言っていくと、私が用意した分がお話しできないので、とりあえず私が用意した意見を御報告させていただきたいと思います。
 東京の基金の歯科審査会は、三者構成で行われておりまして、23名ずつ69人で行っております。診療担当者代表は、東京都歯科医師会に推薦依頼をして、学識経験者は、いつも言われていますが、選考協議会において選任された者が当たっております。保険者代表は、協会健保、共済組合、組合健保から、それぞれ12名、2名、9名が推薦されています。また、69名のうち、医療顧問が3名、主任審査委員6名がおります。その9名の内訳は、学識経験者が8名、保険者代表が1名です。医療顧問については、これまでは常勤主任審査委員として週5日フルタイムの勤務をしておりましたが、今年から制度変更に伴い、週4日1日6時間の勤務となり、余裕の生じた時間はできる限り診療に従事することが望ましいとされています。医療の現場から長らく離れていては、審査に支障を来すとの考えに基づく変更であると思われ、これは大変いい傾向であろうと私は思っております。
 続きまして、審査委員会の日程ですけれども、土日祝日を含めて連続して7日間開催されております。会期初日には「研究会その1」があり、最終日には協議会及び「研究会その2」が行われます。また、会期前に、再審査の下調べで全審査委員が1日執務しますので、一般の審査委員は毎月8日間執務することになっています。審査の時間は、午後1時~5時までの4時間とされていますけれども、それぞれの審査委員の事情を勘案し、午前8時~午後9時まで部屋が開いており、審査可能とされております。
 「研究会その1」及び協議会は午後3時開会です。主任審査委員は、そのほかに再審査の下調べ後の会期初日までの3日間で再審査の確認作業が行われます。会期終了後3日間で、返戻レセプトの確認及び主任審査委員の合同打ち合わせ会が開催されます。また、再審査の小委員会も同日開催されます。
 報酬につきましては、審査業務手当として、1回24,800円が支給されております。審査委員の都合により執務できない日もあることから、1回で6時間以上従事した場合は、長時間業務手当として、2回分の49,600円が支給されます。ただし、一月に7回分が限度となっております。再審査の下調べに対しては22,800円、研究会手当は1回について2,650円、交通費として1日1,300円が支給されます。この額が多いと見るか、少ないと見るかは、人によって異なるかとは思いますけれども、本業を犠牲にしての長時間従事を考えると、私は少ないのではないかと思っております。
 執務状況ですけれども、直近の数か月間の統計を取りますと、審査期間7日間、その1人当たりの平均は24時間36分となっています。1時~5時までということなので、1回4時間、7日間だと28時間、フルタイム出た場合はそうなりますけれども、24時間36分ということで、率にすると88%ということです。ちなみに、診療担当者代表は、28時間36分と102%執務しております。保険者代表はやや少なく、72.3%の20時間、学識経験者は89%の25時間執務しております。また、初日と最終日午後3時に開催される研究会や協議会の出席状況は、初日は率で92.3%が出席しております。診療担当者代表は99%、保険者代表は82%、学識は96%と、皆さんよく出てくださっていると思っております。また、最終日協議会の日は、全体で91%、診療担当者が98%、保険者代表が78%、学識経験者が98%となっております。再審査下調べは、3日間のうち1日で処理することになっておりますので、毎月100%執務していただいております。
 審査基準についてですが、審査は療養担当規則、告示、通知、Q&A等の事務連絡や基金本部回答、基金本部における支部間差異解消のための委員会における集約事項、及び、東京支部における取り決め事項等に基づいて行われています。基金本部回答につきましては、以前は、閲覧可能とはしていましたが、事務局において管理し、審査の参考としての取り扱いでしたが、3年ほど前からは、審査委員全員に配付し、審査基準とするよう周知されております。
 また、医療機関の傾向的診療・請求にも十分注意を払って審査をしております。特に、私たち歯科医師として審査しているものですから、こういった告示、通知、Q&Aに合致するかどうかというのは事務でもわかりますし、コンピュータのチェックでもある程度出てきますけれども、こういった診療上の傾向、もしくは不当な請求の疑いがあったり、不正な請求の疑いがあるというようなチェックは、医療担当者でないとできないものだと認識しておりまして、かなり重きを置いて審査しております。
 ローカルルールとして、数とか回数による基準は東京においては全く設けておりません。例えば屯服の投与につきましては、1日2回分で、2日分4回と決めている支部もあるというふうなことを聞いておりましたが、東京ではそのような取り決めはなく、傾向的に多量に投与している医療機関についてはチェックをいたしますけれども、一方、1回の処方で少量ずつ投与して、数回処方しているような医療機関についても、チェックの対象として審査しております。
 合議体制につきましては、審査上疑義が生じたケース、または、審査委員会において判断に差異が生じているという事項については、毎月の最終日の協議会において提案し、協議の上決定し、周知されます。しかしながら、限られた時間の協議会では、いきなり協議することは困難なので、主任審査委員の合同打ち合わせ会や再審査小委員会であらかじめ検討された結果を運営委員会に報告し、そこで、更に協議を重ねていただいた上に協議会に諮られるという段取りになっています。また、最終日の協議会「研究会その2」が終了した後に、勉強会と称し、当日の出席者のほとんどが居残って、提供された資料について意見交換を行う会をたびたび行っています。ちなみに、8月の協議会においては、2件が取り決め事項として決定されました。また、その後引き続いて開催されました勉強会においては、5件のレセプトについて討論が行われました。これについては、そのうち集約されてくれば、協議会で取り決め事項として決定されるのではないかと思います。
 「審査委員間における差異について」です。分担審査を行っておりますことから、自分の担当分を粛々と審査していると、審査委員間に差異が生じていることにも気がつかないで判断処理している場合もあります。したがって、協議会、研究会や勉強会等、全体会において協議し、差異の解消・縮小を図るだけでなく、判断困難なケース、または、査定・返戻を行う際には、できるだけ隣り合った者同士で意見を交換したり、確認し合うよう求められております。そのため、席の配置につきましても、三者構成における立場の異なる者同士が隣り合うように配慮しています。ということは、診療担当者同士がずらっと並ぶということはないということです。このように種々の方策を講じておりましても、厳然として処理に差異が存在します。また、うっかり間違いや誤認による処理もありますので、査定レセプトについては、会期内に医療顧問が再度点検を行います。また、返戻レセプトについては、会期終了後に、医療顧問及び主任審査委員による確認・点検を行います。したがって、傾向的請求や指導を目的として返戻されるレセプトについては、その1枚を見る限り妥当と判断されることもあることから、その旨わかるよう記載して返戻することとされております。また、これらの確認作業により処理が変更された分については、原審査員にフィードバックをしたり、また、変更件数につきましては、研究会、協議会に報告されております。再審査案件につきましては、全員による分担審査の後、医療顧問、主任審査委員による確認が行われ、判断が異なった案件については、再審査の小委員会において最終決定をいたしております。
 「社保と国保における差異について」ですけれども、それぞれの審査委員会は独立した権限を持っておりまして、それぞれが協議し、判断基準を定めておりますので、差異が厳然として現実的にあります。また、基金本部回答や支部間差異解消のための委員会資料等も部外秘とされておりますので、国保への情報提供はされておりません。このことからも差異の生じる要因の1つでもあります。しかしながら、差異があると言っても、全体から見ればごく一部で、それによる金額も非常にわずかな額です。とはいえ、差異はないにこしたことありませんので、東京においても、昨年、社保・国保の連絡協議会が設置されまして、8月にも実質的な協議を行っております。具体的例により、それぞれの判断を示し、差異の判明した事例については持ち帰り検討をされることによって差異の解消を目指しております。
 以上、簡単でありますけれども、東京における現状報告をいたしましたが、審査委員の長時間の従事や事務共助が成熟してきております。また、返戻や電話連絡、文書連絡等により、医療機関に対して間違いのないレセプト作成を指導して実を上げております。最終的には、医療機関において正しいレセプトを作成していただき、審査において査定・返戻のない状況が達成されることを念願いたしております。
 以上でございます。ありがとうございます。
○森田座長 どうもありがとうございました。
 それでは、最後になりますけれども、滝口様、よろしくお願いいたします。
○滝口ゲストスピーカー それでは、早速ではございますが、スライドを使って簡単に話を進めさせていただきたいと思います。
 我が国の公的医療保険制度は、その給付に関して、療養という現物で給付すると定められております。保険者は医師ではございませんので、みずから療養を給付できませんので、そこで医療供給者に給付事務を委任するという形をとっております。これは、療養の給付事務に関して委任はしておりますが「指定」というふうに呼ばれておりまして、これは「療養担当規則」という約款に基づく付従契約であり、かつ、対価を定めておりますので、双務契約で公契約の一種と解されております。この対価に関して、毎月診療報酬の請求がなされておりまして、保険者はこれを審査の上支払うものとするという健康保険法76条の4でこれを規定しております。
 実は、この審査は債権債務の確認手続の一環とされておりまして、私法上の一般取引債権の手続と何ら変わりがなく、適正な支払額を確認するための点検措置にすぎないという法的解釈が最高裁の判例で確立しております。お手元の黄色い資料の28ページにその詳細を記してございます。
 一方で、この審査は、健康保険法76条の5で「基金に委託できる」として、外注を容認しております。つまり、この審査機関は委託を受けておりますが、これも私法上の業務委託そのものでございまして、健保連がまとめて基金と契約をする形をとっております。そのときの保険者と審査機関の立ち位置は、本来はこの図のごとくでありまして、保険者から委託をされて審査をし、保険者に対してアドバイスをするという位置づけでございます。
 ところが、昭和23年支払基金法の成立に併せて当時の保険局長通知で数度にわたって基金の利用を強制し、併せて省令でレセプトはすべて各都道府県の審査支払機関に提出するよう定めたので、あたかもこの図のように審査機関が医療供給者側と保険者側の間に立つような形になってしまっております。結果として、すべてのレセプトを行政の権限として基金が審査を決定しているかのごとき認識が、医療供給者と保険者双方に定着しているというふうに考えられます。
 先ほどの28ページの資料5は、その誤解ゆえに基金の決定を不服として起こされた訴訟で、実は、基金の決定は法律上の効果ではない、したがって、行政処分に当たらないという判決に解説を加えたものでございます。
 さて、こういった前提に立って支払機関の機能をまとめて整理をいたしますと、?@及び?Aに関しては一般に議論になることが少ないのではございますが、ただ、さまざまに便利な決済システムが民間でできるようになった今日、果たして基金がそれを仕切ることが妥当かどうかということは大いに議論の余地があると存じます。?Bにつきましては、これは表向きの機能でございますが、実際には、先ほどの図で示したとおり、?Cの調停機能を上手に組み込んでおりまして、実は何の権限もないにもかかわらず、極めて上手に診療報酬の債権債務を裁いてきた仕組みと言えると思います。つまり、基金の最大の存在意義はこの?Cにあると考えて差し支えないのではないでしょうか。
 それを踏まえて、現行審査支払機関の問題点といたしまして、まずは、多様なニーズに対する個別対応性の欠如が挙げられるのではないかと存じます。昭和23年以降、まだ国民が画一的なサービスでよしとしていた時代はよろしかったのでしょうが、今日のようにさまざまに多様なニーズが当たり前になってまいりますと、中央集権的な仕組みがうまくいかないということが考えられます。個々の保険者単位の方がうまくいくのではないかという考え方もございます。
 ?Bにつきましては、その機能をきちんと明確に分離をした上で、改めて審査機能と調停機能をきちんと議論すべきではないか。その上で、審査機能と調停機能を分けた上で、別々の組織が運営する。特に現行の審査支払機関はその調停機関として位置づけるのが合理的ではないかと考えております。
 まとめますと、審査支払機関の今後の在り方といたしまして、主業務としての調停機能、これはADRの形が最も望ましいと考えております。?Aにつきましても、小さな保険者がみずから審査体制を整えるのが困難な場合、審査機関がそれを請け負うというのは問題がなく、むしろ、健康保険法本来の趣旨に沿ったもので、保険者のアドバイザーとしての位置づけが考えられると存じます。しかし、この?@の主業務としてのADRこそが今後の機関の目指すべきものというふうに先ほども申し上げたとおりでございます。
 実は、私どもは10年ほど前から、診療報酬の直接請求・審査ができないものかとさまざまに検討を重ねてまいりました。その間、規制緩和の追い風もあって、一昨年の秋から、実際の直接請求審査を2つの健保組合でスタートさせまして、今日に至るまで順次参加健保数を増やしてきております。
 私どもが「レセネット」と呼ぶ直接審査支払の概要をここにお示しをいたします。まず、医療供給者が直接各保険者に診療報酬を請求します。現在はまだ調剤薬局のみの参加にとどまっていますが、保険者みずから請求を審査した上で、疑義のあるものについては、請求先に直接問題点を指摘いたします。ここでいきなり査定をすることはいたしません。当事者間で直接協議をし、合意すれば直接支払をいたします。合意に至らないときは、あらかじめ取り決めた調停の仕組みに委ねることになります。それでも解決しない場合は、裁判で決着をつけるというルールをあらかじめ定めた上でこの制度を運用しております。これは一昨年の11月からスタートして、徐々に増加してきた健保数と参加薬局数及び月々の取扱レセプト件数を示しております。
 これは1健保の単票審査のみを表にしたものでございますが、非常に面白い結果が出ておりまして、資格過誤につきましては、おおむね10日に請求がございますと、その月の末にはすべての支払が完了いたします。その間に、すべて資格の過誤についてやりとりをいたしまして、修正を済ませてしまいますので、その次の月からは指摘の件数が半減いたします。7月と1月はこれが増えておりますので、おそらく異動等に伴う資格過誤のレセプトの増加があったのだろうと推察されます。
 更に、内容の過誤に至っては、双方の納得で解決が図られるので、スタートして数か月でほとんど激減をしてしまいます。当初36件あった過誤レセプトは、おおむね数件にまで減少するということが起こっています。更に、調剤レセプトでございますので、突合して、医科の方のレセプトに過誤があると考えられた場合は、支払基金に意見を求めることができるとされておりまして、まさにこれは支払基金がADRとして具体化していることの証左だと考えられますが、そのとき保険者の主張の60%は基金で認められるのですが、医療機関が納得してこの決定に従うのはその3分の1に限られております。これは、まだADRとしての機能が医療機関側にその裁定を納得するための仕組みとして十分に理解されていないということがございます。
 最後に、診療報酬の直接請求・審査・支払の効果についてです。これは今申し上げたように、まず診療報酬決済の迅速化。これは10日の請求で、その月の月末までにはすべて支払が完了しております。資格過誤につきましても、極めて速やかにこれが是正されますし、次の柔軟化と申しますのは、これは例えば7が1と間違えているであろうというような明らかなケアレスのミスに対しては、すぐにそれを提出した薬局の方に修正して、それをそのまま認めるという対応をとっております。当事者間の直接の意見交換による納得・合意は非常に重要だと考えておりまして、先ほどもお示ししたように、非常に急速に過誤レセプトが減少いたします。
 「診療報酬の請求・決済を超えたさまざまな協力」と申しますのは、直接対話によって、それぞれ面と向かった薬局と健保側の対話が可能になります。いろいろな情報を共有することによって保険業務や保健事業の協力が推進をするというふうに考えております。
 ?D番目の「審査支払機関の意見の変化」と申しますのは、これまでは、単に「いかがでしょうか」といった保険者点検の再審査請求のレベルをはるかに超えて医学的見地であるとか、過去の査定事例等を添えて提出をいたしておりますので、基金の対応も緊張感を持ってなされているという状況が起こっております。
 まだまだ問題はたくさんございますけれども、少しずつこれらの問題を解決して、請求・支払側双方が納得する診療報酬の審査・支払における新しい形を確立したいと考えております。
 以上でございます。
○森田座長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま御発言いただきましたゲストスピーカーの皆様のスピーチにつきまして、御質問・御意見等がありましたら御発言いただきたいと思います。
 齋藤委員、どうぞ。
○齋藤委員 お二人の委員に同じ質問をしてもよろしいでしょうか。ちょっと変な聞き方になりますが。
○森田座長 はい。
○齋藤委員 群馬県の診療報酬審査委員会の須藤先生と広島県の土肥先生のお二人に同じような質問をしたいのです。
 今、ダブルスタンダードのことがこの会始まって以来繰り返し出てきているわけですが、須藤先生の資料の15ページに「糖尿病領囲(今月予定)」といういろいろな設問があって、その中に、5番に「例えばDPP-4阻害剤とインスリンの併用は可能でしょうか」という非常に難しい質問が恐らく現場から挙げられていると思うのですね。これは糖尿病学会の専門医の間でもかなり議論の分かれるところで。そして、須藤先生のところでは、群馬大学の専門家の意見を聞いているということで、それも誠に妥当だなと思うのですが、広島でこれと同じ問題を挙げると、広島大学の医学部の先生の御意見は当然違ってくると思うのですね。学会の中でも意見が割れておりますから。そうすると、領囲によっては、これは地域間格差はもう避け難く発生してくるものであって、それを解決しようというのはちょっと不能命題ではないかなという気がこの須藤先生の御発表とか、あるいは土肥先生の御発表を聞きながら思っているわけなんです。果たしてそう言い切れるかどうか、お二人の意見を伺いたい。
 それから、これも前から問題になっているのですが、じゃ、社保と国保では審査基準に格差があると。どちらかというと国保の方が緩やかで社保が厳しいとか、そういう印象は前回のゲストスピーカーの山口病院長も言っておられたわけですね。そういう状況を須藤先生と土肥先生はどういうふうにお考えになるか。それを是正すべきなのか、是正するにはどうしたらいいのか、ちょっと御意見をその2点に絞って伺いたいです。ローカルのダブルスタンダードの問題と、それから、社保と国保の間のダブルスタンダードの問題、ちょっと須藤先生の方から教えていただけますか。
○森田座長 お答えいただきたいと思いますけれども、今日は大変大勢のスピーカーの方がいらっしゃって、質問がたくさん出る可能性もございますので、できるだけ簡潔にお答えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○須藤ゲストスピーカー 先ほどのDPP-4とインスリンの併用のあれは、確かに今月の話題ですので、これについてどういう意見が出てくるかというのは、私、外科が専門なものですから、これについてどうかというのはちょっとわかりませんが、少なくとも、先ほど申しましたように、群馬大学の考え方、大学陣の考え方みたいなのは入れて当然やるというふうになっております。
 先ほどの地域間格差ということに関してですけれども、地域間格差の是正ということに関しまして、私はここの会長になってから、積極的に各連合会はどう対応しているかということで、中央会に対しての設問は常に投げかけるようにしております。いわゆる7.3ルールという70%の連合会が賛成している、または反対しているというようなことで、大体のコンセンサスがどこら辺にあるかということで、そこら辺のところは地域間格差をなるべくなくすというふうな考え方でやっております。しかしながら、それを全部厳密にやれるかというのは、私もちょっと疑問に思っております。
 それから、社保・国保の審査の問題ですけれども、先ほども申しましたように、せんじ詰めるとそんなに違いはないような感じを私は持っております。と申しますのは、何回も何回も国保の審査委員、社保の審査員のそういうあれをしていますと、このように物すごく膨大な数がいわゆる審査委員から出てくるのですけれども、その中で違うのは本当に1つか2つで、これについてはちょっと保留にしておこうということを言わざるを得ないこともあります。しかしながら、そこら辺のところも今何とか是正するような努力をしている状態です。
 以上です。
○森田座長 それでは、土肥先生、お願いします。
○土肥ゲストスピーカー DPP-4阻害剤とインスリンの併用というものについては、我々はいまだ支部査としての検討はいたしておりませんが、こういうものは医学的判断というように我々は一応まとめております。したがいまして、これはレセプト1枚をきちんと見た上で判断するということになっていますので、非常に長い期間の糖尿病を患っているとか、いろいろな合併症があるとかということを勘案してやることになっておりますので、最初からこういうものすぐ使うというものについては、恐らくどこの委員もこれは問題があるということで、すべての糖尿病にこういうような治療をするのは問題があると思います。ただ、100人の糖尿病の中の1人が非常に長く難しい症例があって使っていることがわかれば、これは認めています。ですから、これはダブルスタンダードということではなくて、レセプト1枚を見て判断をするというのが基本であります。
 それから、社保と国保の間は確かに医療機関からは言われることは多少はありますが、それは我々の方も是正するようにしていますので、こちらで通って、こちらで通らないというようなものについては、随分風通しがよくなっていっていると思います。お互いそれぞれの理屈がありますので、話せばわかると思います。
○森田座長 ありがとうございました。
 よろしゅうございますか。
 ほかにいかがでございましょうか。
 それでは、高田委員、どうぞ。
○高田委員 滝口先生にお伺いしたいですけれども、先ほど御説明いただきました、調剤の直接審査「レセネット」の方なんですけれども、私どもは保険者としても非常に優れた仕組みだと考えております。でも、スタートされてまだ期間が短いということで、全体の普及には少しかかるのかなと思うのですけれども、最後のところにありましたように、医療機関と保険者という当事者同士が納得と合意を得ると。これはやっぱり本来の在り方だと思うのですが、そういったところでもう少し普及させるに当たって何か困っているような点があれば、ちょっと御教示いただきたいなと思います。
○滝口ゲストスピーカー 始めてまだ1年半でございますので、さまざまに解決しなければいかん問題がたくさんございますが、1つは、行政側の対応をもう少しフレキシブルにやっていただければと。例えば、今、直接審査を始めようという健保組合については、年2回の組合会でしかこの決定ができない。しかも、1薬局が増えるたびにこの組合会の決議を経なければいかんと。しかも、そのときの手続として、一からすべての書類を整え直して厚生局に提出をしなければいかんということになりますと、これだけでその書類を整えて申請をするためには膨大な手間がかかります。これはもっと速やかに。直接審査を開始するということを決めるのは確かに組合会として重要な意思決定かもしれませんが、一旦直接審査をやってみようということを決定された以上、その意気に感じて参加をする薬局は、理事長の専決等でただそのリストに加えるというだけで十分だろうと考えておりまして、このあたりの対応は非常に重要だろうと思います。
 あと、今お話はなかったのですが、今私どもは調剤薬局だけの拡大しかできておりませんが、これは、勿論、医科レセプトについても、当事者間の納得は非常に重要だと思いますが、医科レセプトの場合は、医師の裁量権にかかるところが多々ございますので、それに対して、調剤レセプトに関しては、事実上、処方せんに対する決定権・変更権が薬剤師にはございませんので、これは比較的合意を得やすいという事実もございます。調剤レセプトについての数を拡大をした上で、このあたりの議論をもう一度俎上に上らせることができればというふうには考えております。
○高田委員 ありがとうございました。
 最初に、レセネットに参加する場合に、最初に組合会の決定というのはよくわかりますが、1薬局が増えたときに必ずまた組合会でやるというところと、申請方法につきましては、是非、行政の方もフレキシブルな対応をいただければ、私どものような地方のところでも参加できるのではないかと思いますので、よろしく御検討をお願いしたいです。
○山本委員 この場で珍しく調剤が話題になっておりますので、一言議論に参加をしたいのでありますが、2点ほどございまして。今の滝口先生のお話の中で、医科の方は裁量権があるが、薬剤師はないという御指摘でありますが、それはいささか誤解が生じているようでありまして。先生は医師でいらっしゃるからでありましょうけれども、少なくとも処方せんに対する異議を発する権利はございますので、ただ言われたままに調剤をしているのであれば、薬剤師である必要はないと理解しておりますから、ただいまの御発言につきましては、ちょっと理解を改めていただきたいのは、公の場ですので、薬剤師そのものの問題にかかわりますので、1点そこだけは訂正方をお願いしたいと思うんですが。
 なお、それでも、確かに医師の裁量権の方が強いというのはよく理解できますが、薬剤師側には医療が発生する場がございませんので、発生した結果が処方せんになるわけでして。そもそも発生した側の者だけが直接請求されて、発生源の方が直接請求されてない状態で、その中でものが整理されるかというと、片方だけ、つまり、我々からすれば弱い方だけが叩かれているという感じがしますので、是非、今、高田先生が言われましたけれども、少なくとも両方が揃った状況になるようなことを、うまくできる方法をお考えいただいて、医科の方にももし直接請求が本当に必要ならば、そういうことも是非進めていただきたいと思います。
 その一方で、先ほどのプレゼンテーションを拝見しまして、確かに非常にうまく機能しているという気がいたしますけれども、今、保険者によっては、地域でかなり力関係が多分出てくるところがあるのではないか。そうしたところでは、どちらにしても否応なしにということになってしまわないような仕組みを考えてネットで組んでいただきませんと、そもそも本来的なオンライン請求をするという趣旨がどこかへ消えてしまいますので、そのあたりもこのシステムの是非ではなしに、直接請求をしたいと思う側、あるいは直接請求をしようと思う側の中で、そうしたずれがないようなことを是非お願いをしたいと思います。
 もう一点、新原先生のお話の中で、もし私の誤解が少しあったらと思ってお聞きするのですけれども。調剤レセの話で、1,500点以下のお話が出てまいりましたけれども、お話を伺った範囲では、調剤の方は何もなくて、そう通ってしまうという無法地帯のように聞こえるのですが、そういった御趣旨なのでしょうか。
○森田座長 それでは、新原さんに先にお答えいただけますか。
○新原ゲストスピーカー 現実に歯科の再審査の調剤の査定状況を見ますと、歯科では調剤レセでほとんど査定が出ていない。これは現実の数字で出ておりますので。
 また、歯科の調剤レセで1,500点(15,000円)を超えるレセプトなんて、病院でない限りは、大きな病気でない限りはほとんどないのですね。ですから、そういう面でお話をしたわけです。
○山本委員 わかりました。
 そうすると、再三こちらの方で申し上げていますが、先生は多分支払基金のお立場ですから、国保であれば、調剤報酬明細書はすべて目を通っていきますので、歯科であれ医科であれ、それは薬剤師なり何なりの審査の目を通るわけですけれども、そもそも支払基金は目を通すところがない。その中で1,500点以下の請求権があるかないかという問題と、具体的に審査する者がいないということでは、多少意味が違っておりましょうし。この中で、事務共助の形で事務の方々が審査をされていることに御議論を呈されていますので、そういった意味では、調剤報酬につきましても、ただいまの御指摘が仮に正しいとすれば、それを防ぐのは、むしろ支払基金に薬剤師を置くことがまず前提であって、そのことが問題なのではないかと私は理解するのですが、いかがでしょうか。
○新原ゲストスピーカー 実際のレセで、保険者さんで再審査をしまして、実際のレセプトの入ってくる内容のコメントに貼りつけられているのですね。「1,500点以下のものは提出するな」と。そのまま突っ返されてしまっているんですよ。それはもともとそういう通知があるからだというのが私の話です。
○山本委員 そこは理解いたします。したがって、それは直すべきだと思いますが。そもそも見るべき者がいない状態で返される。一次審査はどうなっているのかという意味では、当然手前ですくえるものがすくわれていないということになりますと、そのことは抜きにして、ただ返るぞというのだけが問題になるのは、薬剤師というか、調剤を担当する者としてはいささか納得しかねる部分がありますので、それも含めて御議論いただければと思います。
○滝口ゲストスピーカー 先ほど裁量権がないと申し上げたのは、レセプトが保険者に提出された段階で、その内容についての是非をめぐって、例えば処方せんが、薬の量とか種類とか適応とかといったものについて薬剤師が直接それを変更するとか、それについて薬が多いから調剤レセプトから査定するということはあり得ないという意味で申し上げたのであって、決して薬剤師の先生方に一切裁量権がないと申し上げたつもりはございませんので、このあたりは誤解のないように、お詫びをして、訂正をしておきたいと思います。
 あとは、医科レセプトとの突合につきましては、ある程度基金がその是非についての意見を言える状況を、これは厚生労働省がいろいろとお考えいただいてつくってくださった経緯があって、これをADRとしてもっと活用していく方向で、当然その発生源である医科レセプトとの突合による直接の審査も何とか道を開きたいというふうには考えております。
○森田座長 よろしいですか。
 ほかにいかがでございますか。
 それでは、足利委員の代理の方。
○足利委員(代理:田中部長) 山本委員の御発言についてでございますけれども、支払基金におきましても、調剤レセプトの審査につきましては、審査委員そのものではございませんけれども、かねての資料にも入れてございますが、調剤報酬専門役という薬剤師の方を今は全支部に配置しております。これは職員段階で審査事務を行う際に、まさに専門家である薬剤師の御意見も聞きながら審査事務を行った上で、その上で、医師である審査委員の御判断をいただいているという点は御理解をいただきたいと思います。
○篠岡ゲストスピーカー 先ほど、私の持ち時間の中でお話しできなかったので、少しお話しさせていただきたいのです。
 新原さんの出していらっしゃるこの資料の中で、先ほど、レアなケース、まれなケースについていろいろ述べられているということで、これがそんなレアでなければ大変な問題だということでセンセーショナルになっても困るので、私の方から考えをちょっとだけ言いたいのですけれども。新原さんの資料の2ページ目に5事例についてと書いてありますけれども「傷病名部位」欄に、要するに、病名白紙がたくさん出ているような御意見ですけれども、東京の場合、毎月120万件を処理しております。その中で1~2枚は医療機関から白紙のレセプトが出てくることはあります。ですけれども、それで、保険者に白紙が出ているということは、再審査で戻ってきているのは、最近ここのところ聞いておりませんので、まずないのではないかなと思っております。勿論、重点審査という形で審査会を通らないで事務処理しているところで、計数整理だけに追われて見落としたことがあるということで、たまにそういうことがあるかもしれませんけれども、まず、ないことだと思います。
 いちいちやっていれば時間がなくなってしまうのですが、もう一つ、4番目のところですけれども、医科では外来に行っているのに、何で歯科で訪問診療だということですけれども、これには2つほど大きく理由があると思うのですけれども。医科の方でも、訪問診療、往診をしている患者さんであっても、患者さんが例えばもともとの原疾患で定期的に検査に大病院に行かなければいけないというときは、病院に勿論搬送されて、家族の付き添いで行かれると思いますけれども、そうでないときは、医科の方でも訪問診療をなさっている。歯科の方もそういうこともあり得ると。歯科の方では、例えば介護保険を持っていて、介護の幾らだという形で、歩けません、往診してください、訪問診療してくださいという要望があれば、お伺いして治療に行っているのだと思って、そういう請求があれば、そのまま請求を認めております。
 ただ、こういうことで患者がピンピンして話しているというような話であれば、これはどちらかというと保険者機能の方の問題であって、保険者が被保険者に対して「あなたはピンピン動き回って買い物にも行けるのに、訪問診療を依頼したこと自体が悪いんだ」ということで、是非、被保険者に対して指導をしていただくという方向で対処していただければと思います。
 それから、1つ土肥先生にちょっとお伺いしたいのですけれども。土肥先生が、病名と内容に問題がなくても、傾向的であれば査定もするというお話がありました。東京の歯科の審査会でも、そのようなことはやっております。ただ、病名と内容が一致していても、査定したレセプトをもって保険者の方から貴審査委員会でこれについて査定してもらっているので、他のこの患者について、これも査定してもらえないだろうかというような再審査請求が結構出てくるのですね。それについてはどのような対応をしていらっしゃるかをお伺いしたいのです。
○土肥ゲストスピーカー そのケースを知りませんので、ちょっとわかりません。
 ただ、私は個々の医療機関に限らず、同じような傾向的なものは査定するべきだと思っていましたので、そういうことでやっています。ただ、これは変な話、10年選手ぐらいの審査委員でないとなかなかそれができないのです。だから、事務の附せんはついてきませんし、今も私も、例えば今の抽出機能によって、例えばこれは50%の症例があそこでは不生保なんです。高額は全部生保だったんです。そういうふうなことがわかって筆を入れることができるといいますか、そういうことなので、ほかにはあったけれども、実際にはなかなかやれてないのが現状ですが、長く見ていると、見ると何かおかしいというのはわかるのですね。そういうことで、この中身をきちっと見てみると、どれも同じような病名で、同じような検査をしていて、同じようにCTをやっていると。そういうことで入れたので。ただ、それについては同じようなことを言われてきても、それは1枚のレセプトですから、再審査が来ても、それは厳然と返せばいいと思います。
○森田座長 ちょっと話がずれてきたような気がしますけれども。
○山本委員 先ほど、支払基金の田中さんがおっしゃった調剤報酬専門役の設置につきましては、それは確かに有り難いと思っています。しかし、それはあくまでも専門役であって審査ではございませんので。ここでの問題は、審査の社保と国保のバランスというか、一貫性を議論にしているので、そのあたりは一歩前進だとは思いますけれども、それだけで終わっているのではない、その認識だけは是非持っていただきたいと思います。
○足利委員(代理:田中部長) 一言だけ。この審査委員会における薬剤師の取扱いにつきましては、まだ制度的な部分がございますので、まさにこの場で関係者の皆様で御議論いただきたいというふうに考えております。
○森田座長 長谷川委員、お願いいたします。
○長谷川委員 滝口さんにお伺いしたいのですが、私どもの検討会で、保険者による直接審査ができるかどうかというのは、将来の在り方を考える上で非常に選択肢として重要な部分を占めると思うのですが、トライアルとして、調剤では可能であったと。これからどういう形で増えていくかというのは、また、いろいろ試行で見ていかないといけないと思うのですが、医科ではまだそういった事例はないという理解でよろしいですか。
○滝口ゲストスピーカー はい。
○長谷川委員 そうしますと、両者の違いですね。まず、現在の制度の中で、医科での直接請求は可能かどうか。それがどうもまだ普及してないと思うんですが、そうすると、一番その妨げになっているような因子はどんなものがあるというふうにお考えか、せっかくおいでになったので、この機会にお教えいただきたいと思います。
○滝口ゲストスピーカー さまざまに問題点はあろうかと考えておりますが、一番大きいのは、先ほどもちょっと誤解を招いてしまいましたが、調剤のレセプトに比べて医科のレセプトは、余りにも医師の方の判断の幅が大きい。もしくは、例えば療養担当規則と保険の点数に従って、それ以外は一切だめといったような、先ほどから出ております統一的な審査基準でもあれば、これはやりやすいのかもしれませんが、ことごとく薬の量とか適応についてまで、個々のケースについて判断を余儀なくされるということになりますと、まず、その合意を取ることのプロセスが非常に困難だと考えております。
 先ほどから申し上げておりますように、もし支払基金がADRのような位置づけをきちっと法的に担保されるのであれば、これは恐らくそこの方向に道は開けるだろうと考えておりまして。殊に請求側もきちっと当事者で議論をした上で、双方納得がいかなければ、公正なADRがこれを裁決するという仕組みさえあれば、これは一気に直接やりとりをする可能性が大きくなるだろうというふうには考えております。最大の理由はそこだろうと思います。
○森田座長 それでは、高橋委員、どうぞ。
○高橋委員 新原委員の資料で、事実関係が私よくわからないのですが。新原委員がお出しになった資料の5~6ページ。5ページで「多くの保険者は、厚生労働省の通知が保険者の事後点検を実質的に制限していることに不満を持っています」と。その中で、例えば?@点目は「再審査の申出期間に厳しい制限を設けている」と。その根拠として、○の3つ目。保文第272号「社会保険診療報酬支払基金に対する再審査の申出について」と。これは大分昔のようですが。「再審査の申出期間を原則として6か月以内にする」と。これは昔の通知だと思いますけれども、私の理解では、行政手続法ができたときに、たしか行政指導は一般的には、法律の条文の解釈のようなものは拘束力はありますけれども、法律上の明文の根拠とリンクのないようなものについては拘束力は一般になく、単なる指導、お願い、ということではなかったでしょうか。しかも、これは民事上の原則は、上の方にお書きになっている「保険者は10年以内、医療機関は3年以内」ですから、今こういった通知が本当に生きているのかどうか。私は、本当はこれはもう効力がないのではないかなと思いますけれど。
 それから、次のページの6ページ、?A。先ほどちょっと議論がありましたけれども、1,500点を超えなければ請求どおり払うと。支払基金の方では、最近ですけれども「平成18年3月10日付け保発031001【調剤報酬請求に対する審査の実施について】と。これは1,500点以上のものについては再審査を申し出ることはできると。これは通知そのものはどう書いてあるか私もよく知りませんが、1,500点以下のものは審査を申し出ることはできないという制限をかけているのですか。これができないとしたら、明らかに法律に違反しますね。そんな制限は保険者は拘束されていませんから、事実関係でちょっと何か齟齬があるのではないかなというふうに考えるのですが、今の2点いかがでしょうか。
○森田座長 それでは、事務局、お願いいたします。
○吉田保険課長 今、新原ゲストスピーカーからの資料での御指摘について、事実関係に関するご質問がございました。今、高橋委員からの御質問にある以外にも、幾つかのほかの通知についても御指摘をいただいております。本日、このペーパーは新原ゲストスピーカーが当日持ち込みという形で拝見をした資料でございますので、お許しいただければ、事実関係、現在の考え方、あるいは、今後どういう論点があるのかということを整理をして、次回以降の御審議の中でお取り上げいただけるような手配を事務方としてさせていただきたいと思います。
 ただ、1点だけ。その前の直接審査に関して長谷川委員のお話からもございましたようなところにつきましては、後ほど、また、御確認いただければと思いますけれども、本検討会の第3回のときの参考資料という形で今日御報告がありましたような、現状でございますとか、考え方について提出資料などもございます。また、御参照いただければと思います。
○森田座長 高橋委員、今のでとりあえずお答えはよろしいですか。
○高橋委員 はい。
○森田座長 それでは、新原さん、どうぞ。
○新原ゲストスピーカー 今の質問に関することで、一言お答えしておきます。
 現実に、6か月規制はかかっております。保険者さんならみんな知っていることです。1年以上のものはほとんど見ないとか、6か月超えたら見ないとか、現実にあります。それが現実です。だから、この文書はまだ生きているということです。
 それから、ここに書いてある調剤関係のことでありますが、実際に、資料の6ページの上から9行目の平成18年の前のかぎ括弧から5行目ぐらい下までのかぎ括弧までは、これは実際の返戻レセプトのコメント欄にコメントされて突っ返された内容です。それも実例があります。それは1例や2例ではありません。かなりの量です。なお再審査申出期間について付け加えますと、ある県では、1年超えたものはほとんど見ないとか、そういう形で整理されています。しかし、医療機関サイドからのものは3年間見ているということで、保険者さんの方は、少なくとも3年受け付けてよという意見も出ているということです。
 以上です。
○森田座長 高田委員、どうぞ。
○高田委員 今の話に関連しますと、新原先生が御指摘された事項は、私ども保険者としても現実的にあります。これは、関連の雑誌などでも、たしか大阪の基金の委員長も、紳士協定だということで寄稿している部分もあります。実際の取扱いはほかの部分も含めて実態があります。
 それと、あと2点、ゲストスピーカーの方のお話に関連して、事務局の方にちょっとお尋ねしたいのです。
 まず1点は、平成20年5月1日の規制改革会議の医療タスクフォースの中で、紛争処理の在り方の見直しということにつきまして、前の前の保険課長の方が、調剤レセプトの先ほどの直接審査において認めたスキーム、支払基金から適正な審査に関する意見を受ける契約を医科のレセプトにおいても活用することについて、支払基金で検討するように指示していると。これは規制改革会議の議事概要にも公式に載っておりますが、もう2年以上経っておりますので、この検討状況をお聞かせいただきたいのが1点。
 それと、保険者が直接審査を行うに当たって最大の障壁となっているものは、各医療機関から個別に同意を取りつける。これが私どもの保険者の立場からいくと一番の障壁でございます。保険医療を行う医療機関を指定する場合は、保険者に代わって厚生労働大臣が指定を行うことになっております。これは、要は16万以上あります医療機関と保険者が実際に個別に契約をするのは現実的には不可能であるということからそうなったと聞いております。その一方では、そういう医療機関の指定は法律によって厚労大臣が指定することで公法上の契約になるということに対して、その医療保険の中の審査という非常に小さい部分につきましては、法律でない保険局長通知で、要は、16万やりたいと思っても全部できない、現実に不可能な仕組みとされています趣旨を御説明いただきたいと思います。
○森田座長 事務局、お願いいたします。
○吉田保険課長 せっかくゲストスピーカーの方々がおられる会で、事務方が長々とお話しするのはいかがかと思いますので、ポイントだけでお許しいただきたいと思います。
 先ほど申しましたように、お手元の資料、青ファイルの第3回の参考資料のところに、現在の直接審査支払についての考え方、あるいは、整理について書かせていただいております。まず、検討状況がいかんということにつきましては、私どもとしては、その当時、担当の課長が申し上げたとおり、引き続き議論をしているという状況でございまして、問題意識を持って取り組んでおります。まずは、調剤薬局がどのような形で直接支払の中で動いているのかということをウォッチすることから始めさせていただいておりますが、まさに、この審査支払機関の在り方の検討会などの場を通じて、それぞれ診療側、保険者側の皆様方お集まりの場ですので、第3回のときにも問題点をお示しして御議論をいただくようお願いしているところでございます。
 また、後者、通知についてというところにつきましては、私どもは全体として法律上のスキームとして、現在の保険契約はできておろうかと思いますが、その中における幾つかの項目については、通知レベルにおける関係者の御理解を得た上での共同的な合意の到達点という形で行政としてお示しをしているというのが現状でございます。その法規制の仕方を含めて御議論があるとすれば十分伺いたいと思いますけれども、現状においていかがかと言われれば、大きな法律の枠組の中で、関係者の御同意を得られた社会保険システムという、被保険者側、保険者側、そして、診療側という関係者の多い中での到達点を行政としてお示ししているというふうに御理解いただければと思います。
○高田委員 調剤の直接審査をウォッチしているから、医科の方については、具体的には検討はまだ進んでないという理解でよろしいのでしょうか。この在り方検討会があるかどうかというのは2年前にわかっているわけじゃない話ですから、その間の2年の間はどういうことをされていたのかということをお聞きしたいわけなんですけれども。
○吉田保険課長 医科についても、いろいろな機会にいただきました御議論を内部において検討をしているという段階でございますが、内部における検討はえてして見えにくいものでございますので、私どもとしては、今回このような形で在り方検討会を立てさせていただいた中で、御議論に供しているというつもりでございます。
○森田座長 それでは、高橋委員、お願いします。
○高橋委員 2つありまして。最初は、井上ゲストスピーカーにお聞きしたいことと、それから、須藤ゲストスピーカーにお伺いしたいことがあります。
 井上ゲストスピーカーの提出された資料の3ページの一番下ですけれども、3ページの一番下。「都市と地方では、大病院、医師数の違い、急性期及び慢性期云々」といわれまして、都市の感覚で地方を、あるいは、地方の感覚で都市の審査を行うのは無理ではないかというお話ですが、都市の感覚と地方の審査の感覚ということがよくわからないのですけれども。そうすると、審査はとにかくなかなか全国一本ではできないよと、多分こういう御趣旨だと思いますが、その辺を詳しくお話しいただきたいなと思います。
 それから、須藤委員の資料2の2枚目に、審査基準統一に対しての審査委員会への周知徹底ということで、群馬県では年に1回、社保・国保の審査委員全員集めて合同会議をやっているということで、審査の統一についての議論を行っているということなんですが。前回、この会議に出された資料でも、群馬県の査定率を拝見しても、社保と国保、社会保険支払基金と国保の査定率はかなり違いがあるのですけれども、それについてどういうふうにお考えになるかです。
○森田座長 それでは、井上さんの方からお答えいただけますか。
○井上ゲストスピーカー 私自身、かなり極端な言い方だったかなと思っておりますが、とにかく都市では大病院が多いと。当然、医療機械とか、使う薬とか、地方とは違ってくると思うのですね。地方がやっていないというわけではないのですよ。レセプトの枚数とかそういうことで。それから、老人の数ですね。それから、急性期疾患の数ですね。だから、地方の審査委員が審査できないとか、そういう意味ではなくて、ずっとレセプトを見ている過程において、レセプトの内容の質が違ってくるのではないかと。
 そして、1つは、前にも書いておりますが、専門医の数ですね。これも都市は全部充実しておりますし、地方はやっぱり足りないと。そういうことも含めて審査に違いがある程度出るのではないかと、そういうことを意図したわけであります。
○須藤ゲストスピーカー 査定率の問題ですけれども、支払基金の査定率と国保の査定率、群馬県の場合、両方とも47都道府県の中でも相当低いのではないかというふうに私は理解しております。支払基金と国保の差は、私たちその査定率に関しては全く意識しておりませんので、その差がどういうふうにして出たかというのは私はっきりわかりませんけれども。ただし、国全体の中で群馬がこの程度ということに関しては、我々のそういう周知徹底の1つは努力なのかなというふうには思っております。
○森田座長 高橋委員、よろしいですか。
○高橋委員 はい、わかりました。
○森田座長 それでは、篠岡さん、お願いします。
○篠岡ゲストスピーカー 再審査の申出期間について、戻ってしまって申しわけないのですけれども、今、6か月ルール、紳士協定があるということで、私どもはちょっと驚いているのですけれども、東京の歯科においては、3年間再審査請求を認めておりまして、それが膨大なものになっております。新原さんはかつて神奈川の常勤審査委員であり、審査副委員長をなされていたのですけれども、神奈川においても3年間受け付けていたと思います。神奈川も6か月で門前払いを食っていたことはないと思うので、なさっていたことは私も承知しております。
 もし、これがほとんどのところで6か月ルールで、これを守っているのだとすれば、支部間差異であったり、医科・歯科の差異であったりして、東京だけが6か月受け付けているのは差異、格差につながるのであれば、東京も6か月に修正しなければいけないかなと思っておりますので、情報をよろしくお伝えくださいますようお願いいたします。
 以上です。
○森田座長 地域で差があるということですが、それはもともとの制度の問題というよりも現実の違いの話だと思います。
 ほかにいかがでございますか。
 そろそろ終わりの時間が近づいてまいりましたけれども、もう御議論・御質問等はよろしいでしょうか。
 それでは、ほかに御意見・御質問等ないようですので、予定の時間となりましたので、本日の議論はこれで終了させていただきたいと思います。
 本日は、ゲストスピーカーの皆様には、お忙しい中御出席いただき、また、議論にも御参加いただきまして、ありがとうございました。本日のゲストスピーカーの方々のスピーチを、今後の当検討会の議論を深めるための参考とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 それでは、事務局より、次回の日程等についてお願いいたします。
○吉田保険課長 事務局からも、ゲストスピーカーの皆様方に御礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 次回以降の日程でございますが、次回第6回につきましては、御連絡申し上げておりますけれども、9月30日木曜日の午前10時から、場所はこの厚生労働省内の会議室を予定しておりますが、また、御案内申し上げたいと思います。
 なお、次々回以降、10月、11月につきましては、先般、委員の皆様方の御予定をいただきながら、現在調整をさせていただいております。本日は、委員の方のみという形で、現時点における調整状況(案)をお机の上に置かせていただいております。このような日付をもう少し各委員の御都合を伺いながら、10月、11月それぞれ少し頻回にならざるを得ませんけれども、御審議をいただくようお願い申し上げたいと思います。また、その際には、これまでの前々回でございましたか、全体の会議の進行をお諮りし、御審議いただきましたように、次回9月30日につきましては、引き続き、審査、特にそれもコストを始めとする御指摘に対応するような御審議をいただけるような事務局としてこれまでの御宿題あるいは論点をあらかじめお届けしながら御議論をいただきたいと思いますし、また、本日を含めて幾つかいただいております御要求資料につきましては、事務局として逐次それぞれこの場にお返事したいと思いますので、引き続き何かあれば、御指示いただきますようよろしくお願い申し上げます。
 事務局からは以上でございます。
○森田座長 それでは、特に何か御発言等ないようでしたら、これで終了させていただきたいと思います。
 それでは、次回は9月30日木曜日の午前10時から開催いたします。
 本日の会議は、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
<事務局>
厚生労働省保険局保険課: 03-5253-1111(内線3249)
厚生労働省保険局国民健康保険課: 03ー5253-1111(内線3265)

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