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2010年9月7日 介護・福祉ロボット開発・普及支援プロジェクト検討会 議事録

老健局振興課

○日時

平成22年9月7日(火)16:30~17:30


○場所

厚生労働省 省議室


○議題

(1)開会
(2)現状と今後の課題
 ・介護・福祉ロボットの開発の現状
 ・介護・福祉ロボット実用化に向けた安全基準策定
 ・介護現場とロボット
(3)意見交換

○議事

○川又老健局振興課長
 定刻となりましたので、ただいまから「介護・福祉ロボット開発・普及支援プロジェクト検討会」を開催させていただきます。
 本日はご多忙のところご参集いただきまして誠にありがとうございます。本日の議事進行は厚生労働省老健局振興課長の川又が務めさせていただきます。本検討会の開催にあたりまして、長妻厚生労働大臣よりご挨拶申し上げます。

○長妻厚生労働大臣
 本日は大変お忙しい中、関係各方面の日本の第一人者の方ばかりを、ご無理を申し上げお呼びをいたしましたところ、本当に快く、このプロジェクトに参加を快諾いただきまして心より感謝をいたします。
 本日は経済産業省の近藤政務官も出ていただいております。足立政務官と我々のアドバイザーの中山も来ております。
この介護ロボットというのは、本当に大きな成長の可能性のある分野だと考えておりまして、今介護の現場では腰を痛めてしまうという方が多いわけでございます。介護ロボットもそういう介護補助器具の延長線上のロボットももちろんありますけれども、それをはるかに超え、ある意味ではロボットスーツ、あるいは電気、神経の途切れた方が、脳に近い神経の電気信号を感知して、そしてそれに基づいて足を動かしたり手を動かすというような非常に高度なものから、あるいは食事を補助するような、これもスプーンをロボットの手が自由自在に動いて食べられるような、いろいろなものが、あるいはオムツについても、それがいちいち替えずとも排泄がすぐにできるようなものからですね、我々の想像の域を超えるような日本の素晴らしいこの技術が沢山あるわけで、さらに技術を結集すれば、非常に人に温かいロボットができるのではないかという風にも考えております。
 その一方で、世界の熾烈な国際規格をめぐる競争というものもあるわけでして、安全性に関する技術基準が確立していない、あるいはロボットメーカーと介護現場というのは今まではあまり馴染みが、どちらかというと生産現場とは馴染みがあったと思うんですが、そういうところの介護現場のニーズを把握する、ある意味ではマッチング、人脈、交流というのが今までなかったということなどもありますけれども、それぞれの課題を、今後ですね、英知を結集をいただいて、クリアして、なんとか技術基準、安全基準をうちたてて、それを国際的にも標準に持っていければ大変これはありがたいことだと思っているところであります。
 厚生労働省といたしましても、平成23年度の概算要求において、福祉用具・介護ロボット実用化支援事業として、ロボットの開発現場と介護現場のニーズのマッチングを行うためのものを計上したところであります。これは言うまでもないところでありますけれども、厚生労働省単独での取り組みだけではできません。経済産業省、あるいは介護の現場の皆様、そして今日はメーカーの方も来ていただいている、ということで、そういう方々が一体となって、これから少子高齢社会がさらに進んでいくわけでありますので、菅総理も所信表明演説で少子高齢社会を克服する日本モデルを打ち立てるのだと、こういうことを申しあげておりますので、ぜひ、皆様方の英知をいただければ幸いでございます。今後ともぜひよろしくお願いをいたします。

○川又老健局振興課長
 続きまして、近藤経済産業大臣政務官よりご挨拶いただきます。

○近藤経済産業大臣政務官
 ご紹介いただきました、経産大臣政務官の近藤洋介でございます。本日はお忙しい中、関係者の皆様にお集まりいただき、心から感謝申し上げます。
 経産省鈴木製造産業局長始め関係者集まっておりますが、省を代表して一言ご挨拶を申し上げたいと思います。
 また6月に新成長戦略を取りまとめた際にも、厚労省の足立政務官をはじめ、厚労省の幹部の皆様といろいろと議論をさせていただき、そして両省の連携についてですね、様々な分野で協力関係を築いていこうと、共に取り組んでいこうと、こういうことでプロジェクトを様々進めさせていただきました。
 そしてその中で介護・福祉ロボットについては、基本安全性、評価手法の確立、普及策の検討実施ということで、新成長戦略にも盛り込んだところでございます。
 本日長妻大臣のご提案により、こうした会議を開催し、その書き込んだ成長戦略の実現に向けて一歩踏み出すことができた、ということに心から感謝申し上げたい、このように思います。
 新成長戦略の中で強い安心の社会保障、強い社会保障、そして強い経済、と書いているわけですが、まさに、その実現のために、我が国のすぐれた物作りの技術を生かしながら、高齢化社会における生活の向上を来す、ということが求められているわけでありまして、課題解決型の分野のトップランナーが、この介護福祉ロボットの世界ではないかと、こう思っております。
 本日、介護関係の皆様、福祉関係の皆様、様々な方々お集まりいただいて、現場の方々、お集まりいただいている訳でありまして、また、メーカーの開発に関わる方々にお集まりいただいているわけであります。
 折角開発しても使い勝手が悪い、高機能だけれども高価格で手が出ない、ということでは普及は進んでいかないわけでありまして、また、高齢化社会の待ったなしで進む中で、両者がうまく連携して、一刻も早くこうした日本なりの技術を生かした介護福祉ロボットが普及する、そして高齢化社会を下支えしていくことが重要だと思っております。
 菅政権の一つの特徴が、省庁縦割りを打破していく、連携してことを進めていこう、というのが菅政権の特徴ではないかと思っております。
 制度面も両省一体となって大臣がお話になった標準化等々の話、さらには普及に向けた環境整備も含めて、両省一体となって議論を深めて、政策課題を明らかにし、そして新成長戦略の実現につなげていきたい、このように思っております。本日は率直なご意見を伺って参りたい、そして具体的な実行プランを練れる機会とこのように思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

○川又老健局振興課長
 ありがとうございました。既にご紹介もございましたが、厚生労働省から、成長戦略を担当しております足立政務官にもご出席いただいておりますので、ご紹介をさせていただきます。
 その他の出席者につきましては、時間の都合もございますので、恐縮ですがお手元に配布させていただいております参加者名簿でご紹介にかえさせていただきます。
なお、長妻厚生労働大臣におかれましては、途中やむを得ず公務のため退席の予定となっておりますので、あらかじめご了承いただきたいと思います。
 それでは、議事の方に入りたいと思いますが、まず最初に、簡単にではございますが、資料1という紙がございます。今、大臣、政務官のご挨拶にもございましたが、本日の会の趣旨の確認ということでございます。「介護・福祉ロボット開発・普及支援に向けて」ということで、介護現場における課題、介護・福祉ロボット実用化のための課題、ここにつきましては、大臣、政務官のご挨拶にございましたので、繰り返しになりますので、省略をさせていただきます。
 資料1の下に、四角で囲ってあるところでございますが、今日はじめてご出席の民間の方々もいらっしゃいますので、確認をさせていただきます。
 1つ目の星でございますが、介護現場のニーズと企業の技術との間のマッチングを行うとともに、介護現場における不安感の解消を目指すことにより、実用化を促進する。2つ目の星でございますが、介護・福祉ロボットの安全性基準の策定、国際標準化の推進を行うとともに、導入に対する公的支援・制度的な普及策を講じることにより、国内における早期普及を図るとともに、世界的な優位性を確保する。という趣旨でございます。この趣旨を念頭に置いて、意見交換いただければと思います。参考資料につきましては、これまでの主な提言等でございます。説明は省略させていただきます。
 続きまして、本日お越しいただいております、パナソニック株式会社副社長 桂靖雄様、同社のロボット事業推進センター所長 本田幸夫様より、介護・福祉ロボットの開発の現状等につきまして、プレゼンテーションいただけるということですので、よろしくお願いいたします。

○パナソニック株式会社 桂副社長
 ただいまご紹介いただきました、パナソニック副社長の桂でございます。本日は長妻大臣はじめ厚生労働省の幹部の方々、また近藤政務官はじめ経済産業省の幹部の方々にこのような機会を与えていただきまして、心から感謝申し上げます。
 私どもの方からは、現在医療・介護ロボットの実用化に向けたプロジェクトチームを結成いたしておりまして、その会合におきます弊社の取り組みや、また課題認識について、この場で少しお話しさせていただこうかと考えております。医療・介護ロボットについては、弊社重点事業と位置づけておりますヘルスケア事業の柱の一つという風に考えておりまして、ものづくりを生かしながら、新たな輸出産業へ発展する可能性のある分野であると、有力な成長分野であると考えております。
 しかしながら、実用化という面では、先ほど大臣なり政務官なりからもいろいろご指摘がございましたけれども、まだまだその実用化に向けては課題が残っておるというところでございまして、民間企業の努力だけではなかなか解決できないという部分がございます。したがいまして、制度的、財政的な支援なども含めて、官民一体となった事業推進が必要であると考えております。
 これから、ロボットビジネス推進協議会の意見も合わせまして、私どもの実務責任者であります本田の方から、実情につきましてのご報告をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○パナソニック株式会社 本田ロボット事業推進センター所長
 パナソニックでロボットを担当しております本田でございます。それではお手元の資料に基づきまして、「超高齢化社会に挑戦するパナソニックのロボット事業」ということについてご報告させていただきます。
 1ページおめくりいただきまして、皆様、ロボットとお聞きになるとどういうイメージをもたれるでしょうか。おそらく、人それぞれいろんなイメージがあろうかと思います。それで我々パナソニックでは、ロボットの事業を始めるに当たってきちっと定義をしっかりしておこうということで、左の図にありますように、人が主体、ロボットはアシストに徹すると。パナソニックのロボットというのは、これを実現するために、「認識」、センサーになります。「知的判断」、コンピューターになります。「作用」、アクチュエーターとかメカトロになります。3つの機能があれば、自律をアシスト、力をアシスト、移動をアシストと、下の写真ありますけれども、人をアシストするということでロボットの開発をしていきたいと考えております。
 そう考えますと、その利点というのが右手にありますようにいろんな利点が出て参ります。老若男女、ハンディキャップを持った人も、みんなが活き活き、元気に働ける社会を実現していきたいと。そのためにアシストロボットを開発するということでスタートを切りました。そう考えますと、下の右の方にあるんですが、ロボットの技術の開発方向が変わって参ります。我々の開発の技術の方向は介護から自立支援であります。そうしないとなかなか事業にならないということで今開発をしております。順次ご報告させていただきます。
 2ページ目ですけれども、パナソニックのロボット事業の全体像を模式的に表しております。私たちのコンセプトは、生活すべてのシーンでQOL、生活の質を高めよう、そのためにロボットを開発するということにおいております。分野としましては、この図の下から作業労働分野、工場であります。医療福祉分野、病院とか介護施設になります。一番上が快適生活、家になります。皆さんご存知のとおり、工場分野では既にロボットが多数使われております。この分野は着実に進化させて参ります。
 工場からロボットを出して、一番市場が大きいと思われる家庭に入れていきたいんですが、実は工場ではロボットはカゴの中で、人と触れあわないような形で動いております。家庭に入れますと、人と触れあうロボットになりますので、残念ながら国際的に先ほど大臣からお話がありましたとおり、安全の法規制というものができておりません。
 これにつきましては昨年の9月から経済産業省さんの強いリーダーシップをもちまして、生活支援ロボット事業推進プロジェクトというのが、実用化プロジェクトというのが始まりまして、安全の法規制をISOを含めて確立していこうということで、着実に成果を出してきております。しかし、その第一マイルストーンが2012年から13年になります。我々企業サイドとしてみましたら、そこまで事業ができないということでは開発が進みませんので、真ん中にありますように、まず人と触れあうのではなくて、モノを取り扱う業界のロボットを、病院では例えば薬を取り扱うロボット、このあたりは自動化が進んでおりませんので、ロボットをしようということで今順次開発をしております。
 3ページ目ですが、ここから、私たちが開発しているロボットを幾種類かご紹介させていただきます。まず1枚目はロボティックベッドと呼んでいるロボットであります。これは真ん中の写真にありますように、ベッドが車いすに自動的に変わります。当初は、先ほど大臣のお話にもありましたとおり、介護者が患者さんをベッドから車いすに移乗させる作業というのは、非常に大変な、二人がかりの作業で、介護者の7割以上の方が腰痛になるということで開発させていただきました。
 昨年の国際福祉機器展に展示させていただいて、いろんな意見をお聞きしました。一番うれしかった意見は、2つありまして、1つは若い女の方が、パナソニックのロボティックベッド、非常におしゃれだよね、という言葉をいろいろ聞きました。老若男女すべてが使えるようなロボットを開発したいという当初の目的が、少しなりとも実現できたのではないかと思っております。もう1つは、すべての人が、老人の方なんですけども、私は寝たきりになりたくはないんだという声が非常に大きくありました。このロボットは、介護者を支援するとともに、本来の目的は寝たきりからの解放をしようということで開発を進めております。
 そこで、福祉機器展の結果を受けまして、右の中央にありますように、各種IT、見守り安心サービスとか、バイタルセンサーをつけて、いろんな健康情報をとるような開発に進化させてきております。ただ、ご存知のように、こういうようなセンサーを入れますと薬事法の医療機器の対象になりますし、薬事法とか、医師法とか、個人情報保護法とか、いろんな乗り越えていかないといけない課題が、商品化に向けては多々あります。
 次のページ、4ページですけれども、4ページは薬を混ぜるロボットであります。日本人の死因のナンバーワンががんになっております。がんは別に死に至る病気ではなくて、治る病気でもあるわけですから、抗がん剤を家庭でうつという時代にきております。ところが、抗がん剤というのは劇薬でもありまして、薬剤師さんが左の写真にありますように、クリーンベンチの中で、かなりしんどい作業をしながら薬を作っております。こういったものはロボットがすればいいじゃないかと。人が指示するだけでロボットが調合すればいいじゃないかということで開発を進めております。
 下にありますように、このロボットの目的は、医療従事者の、これは我々が作った造語でありますが、危険な作業はロボットにさせるというノーハザードポリシーを実現するというロボットということで開発を進めております。この技術は、クリーンな中で、無菌環境な中で調合をいたしますので、将来の再生医療の技術にも生かせる基盤技術になるのではないかということで今開発を順次進めております。
 次のページをめくっていただきまして5ページ目ですが、5ページ目は皆さんよくご存知の自律で動くロボットであります。他社さんもいろいろ開発されております。実はこれは事業化、小さいのですがしておりまして、皆様が健康診断で血液を採取された検体の検査をする工場で、15台が連携して、人と連携しながら働いております。幸いなことに4年間、無事故、無トラブルで、ロボットが非常に人と共に働くことで役に立つということが証明されましたので、順次拡大していきたいと思っております。
 このロボットの目的は、下にありますように、ロボットはパートナーだと。いつでもどこでもロボットで生活を支援するんだということでロボットの開発をしております。すなわち24時間稼働ができますし、省エネ、真っ暗な中でもロボットは働くことができます。また先ほどご紹介しましたロボティックベッド、これは寝たきりからの解放という言葉を使ったんですけれども、例えば車いすでどこへでも行けるんですが、大阪でロボティックベッドを使っている方が、東京で仕事をしたいと、でも東京へは行けないのであれば、ロボティックベッドを通じて動きを把握できる、パートナーのロボットが代理で働くことも考えられるんではないかということで開発を進めております。
 次の6ページなんですが、突然洗髪ロボットというものを紹介しております。これは私事で恐縮なんですが、昨年の8月に突然網膜剥離で右目が剥離してしまいまして緊急入院をしまして、2週間入院いたしました。いろんな気づきがあったんですが、中でも一番困ったのは、夏ですから暑いですので頭を洗うことができないんですね。女性の方に聞くと、毎日でも洗いたいんだが現場は忙しくて一週間に一回しか洗ってもらえない、それはほぼどの病院でも同じだと。こういったものこそロボットでやるべきだということで、幸いにして東京大学のIRTの共同研究でマニピュレーターの開発をしておりましたので、その技術を生かそうということで、今順次開発をしております。今月末の国際福祉機器展で参考出品で発表する予定であります。これは先ほどお話ししましたとおり、社会に出ていくときに、身だしなみがきれいでないと社会参加は後押しできないじゃないかと、いつでも洗髪、きれいにおしゃれと、ひきこもりを防止するためにこのロボットを使おうということで開発を進めております。
 以上がパナソニックが開発しているロボットのご紹介でありますが、次のページにロボット関係者の意見をまとめたものをご紹介しております。これはロボットビジネス推進協議会、220社以上が集まっている協議会でありますけれども、この協議会の医療福祉WGでまとめた結果をまとめております。四象限あって細かいのですが、上の段が制度的な課題になります。下の段が市場的な課題になります。左半分が開発段階での課題になっております。右側が商品化後の課題になっております。まとめますと、法的な問題もいろいろあり、マーケットの問題もあると。一企業ではどうしようもできないと。今こそオール日本体勢で様々な課題を解決し、海外に勝っていかないといけないということではないかということで、この4月に意見収集の結果を発表させていただきました。
 次のページ、8ページが、じゃあ海外の動向はどうかということなんでありますが、海外では国を挙げて医療・介護ロボットの実用化・普及活動を本格化しつつあります。まず法規制を逆に強化しております。オーストラリアや英国では、先ほどロボティックベッドのところでご説明いたしましたとように、ノーリフトポリシー、介護者の身体を痛めると、人権を守れないようなことでどうして人を守れるんだ、ということをトップの方が言われて、人が人を抱えないというようなことで、リフト機器やロボットの導入が進んでおります。また右は抗がん剤の混合についてです。これも被曝の未然防止ということで、この1、2年、欧州米国で急速にロボット化が進んでおります。ロボットといいますのは社会実証が必要でありますが、下の段に社会実証の体制の整備について、関係の国のご紹介をしております。国の支援体制が整備されつつありまして、国民の参加意識も非常に高いと。例えばデンマークなどは先ほどのロボティックベッドをぜひ持ってきてほしいと、我々と一緒に開発しようじゃないかということを言われております。韓国、アメリカ、シンガポールも同様であります。
 次のページがお願い事項になるのですが、今までお話ししましたとおり、ロボット技術は日本がナンバーワンであります。これは今のところナンバーワンであります。ここの強みを結集して経済成長につなげる施策が今まさに必要であると考えております。真ん中のこの絵はですね、診断から治療、リハビリ、自立に至るまで、すべてがつながりあっております。どれか一つだけをとっても強い力にはなりませんで、これがシームレスにつながることが必要だと。すなわち左にありますように病院まるごとのソリューションとか、右にありますような家まるごとのソリューション、というような形にまでしないと、ロボットというのは事業にならないと考えております。
 お願い事項ということで、実はこの4月にロボットビジネス推進協議会の方から声明を出さしていただきました。下にありますように1つは安全基準の確立、2つ目は現場の実証機関の拡大、3つ目はそれに合わせた法の環境整備をしていただきたい。具体的には右にありますように、NEDOの生活支援のロボットプロジェクトを継続して拡大していただきたい。2つ目は今いろいろな特区ができておりますが、これを積極的にロボットに活用して社会実証を強力に推進していただきたい。3つ目はそれにあわせて迅速な行政対応、迅速な立法、時限立法になるかもしれませんが、規制の強化をおこなっていただきたいと。例えばノーリフトポリシーとかノーハザードポリシーとかになります。
 最後のページですが、東京大学の情報工学科の佐藤知正先生が常日頃提唱されていることを絵に描かせていただきました。見守りロボットシステムを中心に、テーラーメード医療とか省エネとかいろんなものがロボットでつながります。生活支援ロボット技術を活用し、労働人口の質と量を拡大させることができますので、それをもって世界初のグリーンライフイノベーションを起こしていきたいと考えております。
 長妻大臣はじめ近藤政務官、足立政務官、関係皆様のご支援とご指導をいただきまして、なんとか事業を起こしていきたいと思っております。以上で、私からの報告とさせていただきます。どうもありがとうございました。

○川又老健局振興課長
 ありがとうございました。ご質問等あろうかと思いますが、引き続きまして、経済産業省よりのご報告をお願いいたします。

○濱野製造産業局産業機械課長
 経済産業省製造産業局産業機械課長の濱野でございます。資料3に基づきまして、簡潔にご説明させていただきます。まず資料の2ページをおめくりいただきまして、ロボットの定義について書いてございますが、基本的に工場における生産材として使用される産業ロボット、それから医療福祉、防災、生活支援等々で活用が期待されるサービスロボット、に大別されております。その例を写真で掲載させていただいております。
 1枚ページをおめくりいただきまして、ロボット産業政策の対象と課題につきまして、こちらの方で整理をさせていただいておりますが、サービスロボットにつきましては、機能に応じて、右側に表を掲載させていただいておりますが、およそ5つに大別されております。
 1つ目はコミュニケーション型、これは癒し系でありますとかセラピー系でございます。それから?Aでございますが、移動作業型、これは操縦中心、先ほどご説明のございましたベッド、車いすの統合型といったようなものがございます。それから自律中心。それから?Bのロボットスーツでございますが、人間装着型、というのがございます。次が搭乗型。これは車いすロボットでございます。それからヒューマノイドロボットと呼ばれておりますが、汎用型がございます。右の表につきまして、白いところが実用化段階にございますもの、色刷りの部分が開発段階にございます。人との接触度合の少ないコミュニケーション型でございますとか、一部の移動作業型を中心に実用化が進展してございます。右側の表の中にパロ、マイスプーンというものがございますけれども、次のページで改めてご説明をさせていただきます。
 また一番右端でございますけれども、汎用ヒューマノイドロボット、これは研究開発段階でございます。それから、ただいま議論になっております生活支援ロボットでございますが、これは実用化まで後一歩というところで、その実用化に向けた課題の例につきまして、5ページの方で整理しておりますので、順次ご説明させていただきます。
 1枚おめくりいただきまして4ページでございますけれども、ただいまお話を申し上げましたパロ、それからマイスプーンでございます。パロにつきましては、一般家庭でのペット代替、それから医療福祉施設におけるセラピーを目的とするロボットでございまして、頭を撫でますと気持ちよさそうな顔をする、あるいは名前を呼びますとうれしそうに鳴く、といったことで、認知症の予防、軽減に効果があると言われております。平成17年から約1,700体が販売されておりまして、20年末から海外販売を開始、デンマークの地方自治体が、介護施設等での導入のため150体公共調達をして、その他の国でも導入をされております。
 それからマイスプーンでございますが、先ほど大臣からお話がありましたけれども、手の不自由な方が身体の一部を動かすだけで、自分で食事ができるようになるというものでございまして、顎でジョイスティックを上下左右に操作することで、専用の食事トレーから食べたいものを口に運んでくれると、そういうものでございます。
 1枚おめくりいただきまして、先ほどお話を申し上げました、生活支援ロボットの実用化に向けた主な課題をこちらの方に整理をさせていただいておりますけれども、人との接触の度合いが大きい一方で、やはり対人安全の技術、それから基準が確立されていない、ということで、企業の方々の開発リスクが高い、ということがございます。このため対人安全技術、安全性確保の基準・ルールの整備が必要でございますし、あわせて病院など関係機関での実証を進めることが必要でございます。また、開発に費用がかかりますため、導入初期において製品価格が高いということがございますため、基盤技術の開発、そのモジュール化によりまして開発コストの低減が必要でございます。また導入に対する公的支援・制度的な普及策を講じていくことが必要であると考えております。さらに個別の用途・機器で見ますと、必ずしも大きな市場ではないということがございます関係で、海外も視野に入れて市場を開拓することが必要でございまして、そのためにも、安全基準などの国際標準、これをリードすることが重要である、ということでございます。
 1枚おめくりをいただきまして、ただいまのような課題を踏まえまして、当省におきまして、先ほど政務官からお話がございましたけれども、生活支援ロボット実用化プロジェクトというものを実施しておりまして、23年度の概算要求額で18.9億円を要求させていただいております。この内容でございますけれども、生活支援ロボットについて、対人安全技術の研究開発を行いますとともに、その安全技術を組み込んだロボットを使った実証試験を通じまして、安全に関するデータを収集分析いたします。それを踏まえて安全基準案を策定し、また安全性の検証手法を確立する。さらには国際標準化を目指すというものでございます。定量的な目標・効果も書いてございますけれども、こうした取り組みを通じて、これは産業ロボットも含めててございますけれども、2020年に2.9兆円、2035年には9.7兆円まで拡大が予想されるロボットの市場拡大に貢献をしたいと考えてございます。さらに実施体制、3ポツでございますけれども、現政権の下、平成21年度補正予算におきまして、生活支援ロボットのこうした安全性検証を行う世界唯一の拠点として、「生活支援ロボット安全研究センター」の設立が措置をされております。これは平成22年の11月頃に完成予定でございます。つくばでございます。ここに試験機関、認証機関、研究機関などが結集いたしまして、ロボットについて安全性検証手法の確立を行いながら、企業の対人安全技術の向上を図っていく、そういうプロジェクトでございます。
 1枚おめくりいただきまして7ページでございますが、このただいま申し上げました実用化プロジェクトの事業イメージでございますけれども、大きく2つからなっておりまして、1つ目は?@でございますが、安全性検証手法の研究開発、というものでございまして、安全性について評価試験、さらには実証試験を通じまして、安全性の検証手法を開発していくというものでございまして、あわせて安全基準案を策定いたします。ここに写真を載せておりますけれども、左側の写真は電波暗室でございまして、遠隔操作ロボットの通信性能を評価するための装置でございます。右側の写真は物理的な耐性試験を行う装置でございます。さらに2つ目の固まりが、?Aから?Dということで、移動作業型、人間装着、搭乗型と整理させていただいておりますが、これは具体的な安全技術を組み込んだロボットでございまして、安全試験の対象となるロボットのイメージでございます。
 次のページの8ページ・9ページに、大きな写真を掲載させておりますので、8ページ目をおめくりいただきたいと思います。先ほどご説明もございましたけれども、ロボティックベッドでございまして、これはベッドと車いすの統合ロボットでございます。さらに真ん中でございますが、お掃除ロボットでございまして、これは安全性等について技術を確立し、さらに検証評価をすることで、人と共存する公共生活空間において清掃することが可能となる、これがさらには荷物の搬送ロボットへも応用が期待されるというものでございます。その隣が警備ロボットでございまして、これも人が行き交う複合商業施設での巡回警備、案内業務が可能となるようなロボットでございます。
 1枚おめくりをいただきまして、先ほどもお話で出てございますけれども、?Cとして人間装着型生活支援ロボットスーツHALというものでございまして、これは高齢者、障害者の方に対しまして、上肢動作支援、食事支援でありますとか把持支援、それから下肢動作支援、立ち座り・歩行支援、さらには全身動作支援、というようなことを実現するものでございます。その右が搭乗型でございますけれども、左側が介護者用、右側が要介護者用ということで、粗々の整理をしてございますけれども、病院内での移動支援等をするものでございます。
 ただいま申し上げましたプロジェクトの実施体制について、10ページでまとめさせていただいておりますけれども、ただいま申し上げました?@から?Dにつきまして、それぞれここに記載をさせていただいているような実施体制でプロジェクトを推進しているところでございます。例えば?@の安全性検証手法の研究開発につきましては、日本自動車研究所、産総研、労安研、名古屋大学等々が参加していただいております。先ほどお話がございましたロボティックベッドにつきましては、?Aということでパナソニックさんに参加をしていただいている、そういうようなものでございます。
 ページを1枚おめくりいただきまして、11ページでございますけれども、生活支援ロボット実用化プロジェクトのマイルストーンという風に書いてございますけれども、プロジェクト全体の大きな流れを整理をしております。これをざくっとご説明申し上げますと、一番上の矢印でございますけれども、安全技術を組み込みましたロボットを実際に設計・開発をいたしまして、そのロボットにつきまして、2番目の矢印でございますけれども安全性についての試験項目・試験方法・手順等の検討をした成果を踏まえて、評価試験、さらには実環境・模擬環境でやる実証試験を行います。こうした試験を通じまして、その成果を上の方にフィードバックいたしますとロボットの安全技術の改良になり、ひいては対人安全技術の確立につながると。さらには実証試験を通じてデータを分析して安全基準案を作っていくと。さらにこの実証試験のデータを下の方にフィードバックをいたしますと、試験項目とか試験方法、手順、こういう風に改良した方がいいんじゃないか、ということが起きてきます。そうしたことを続けることによりまして、安全検証手法を確立していくと、そういう全体の大きな流れになっております。
 1枚ページをめくりまして、安全試験の設備の開発事例を写真として掲載させていただいておりますけれども、左側の静的安全性試験装置と申しますのは、例えば何度の傾斜角までなら車いすロボットの安定性を確保できるか、というようなことを試験する装置でございます。真ん中でございますが、ランニングマシンのようなものでございまして、移動型ロボットの走行耐久性等を試験する、というようなものでございます。右側の電波暗室につきましては、外からの電波を遮断する部屋でございまして、先ほど申し上げたようなものでございます。下でございますが、ダミーを用いました衝突安全性評価試験といったようなものがございます。
 最後でございますけれども、介護・福祉ロボット産業の普及促進のイメージというものを整理をさせていただいてございますけれども、左側の上でございますけれども、対人安全性の確立につきましては、ただいま申し上げましたような、この実用化プロジェクトを通じましてしっかり取り組んで参りたいと思っております。
 さらにその下側に目をお移しいただきまして、あわせて規制改革・助成措置といったことについて、関係省庁と連携をする必要があると思っておりまして、これは新産業構造ビジョンの方に書いてあることを書いてございますけれども、2010年から11年にかけては、介護・福祉ロボットの有効性について実利用環境下での実用試験をするということで、厚生労働省さんにやっていただくということになってございます。さらに、安全性が確立したものについての普及策について制度面も検討するということで、これが本検討会の検討スコープにも入っていくと考えてございます。
 さらに視線を右に移していただきまして、2012年から13年にかけてでございますけれども、開発状況に応じて個別の安全基準、さらには認証体系・インフラの整備、普及策の実施等を通じまして、右側でございますが、2014年頃以降につきまして、介護施設あるいは病院といったBtoBへのロボットの本格導入、さらには在宅介護といったBtoCへの導入というようなことを、全体のイメージとして考えて、これに向けてしっかり取り組んでいきたいと考えております。
 以上、駆け足で恐縮でございますが、ご説明を終わらせていただきます。

○川又老健局振興課長
 ありがとうございました。最後になりますが、厚生労働省より資料4につきまして簡単にご説明させていただきます。
 おめくりいただきたいと思います。恐縮ですがページを振り忘れておりまして、ロボットであればこんなミスは犯さなかったと思うのですけれども、なにぶん人でございますので、申し訳ありません。
 1ページ目ですが、介護の担い手ということで、労働力人口が減少する一方、介護にかかる介護職員数が2025年にかけて倍増、という資料であります。
 次の下のページですけれども、介護の現場で働く人の主な悩み、ということで、身体的負担が大きい、あるいは介護事故で利用者に怪我をさせないか不安、といった内容が含まれております。このあたりはロボットというのが一つの解決策になりうる、ということでございます。
 おめくりいただきまして、様々な調査研究において、介護現場でロボットというものがどのように捉えられているか、ということでいくつかご紹介でございますが、一番上の未来のロボット産業構造について、ということで、切実な場合ほど個別的である、多様なニーズにきめ細かくこたえる仕組みが必要、というようなご指摘。あるいは2番目ですけれども、ロボット導入に対しての意識調査、被介護者の身体に触れる作業については否定的だと、一方、掃除とか洗濯とか、触れない作業については肯定的、といことで、ある意味で研究者と介護の現場での意識のズレなどが指摘をされているところでございます。その下のページに医療福祉施設でのロボット導入事例ということで、先ほどもご紹介がありましたがHALの導入がなされているという例がございます。ご紹介でございます。
 1枚おめくりいただきまして、介護保険における福祉用具ということで、福祉用具の貸与・販売ということで、介護保険の給付の対象となっているものがございます。その次のページに主な種目が写真で紹介をさせていただいております。車いす、特殊寝台等々ございます。
 1枚おめくりいただきまして、福祉用具につきましては、適宜追加をしてきております。21年より給付対象となった福祉用具のご紹介をしております。次のページですが、福祉用具の安全性ということで、なによりも介護の現場、人を相手に、人に接触するということでございますので、安全性ということが極めて重要だということでございます。
 1枚おめくりいただきまして、これは経済産業省さんから公表されております重大製品事故ということでございますが、電動車いす、あるいは介護ベッドにおきまして、重大な事故が起きているということもございますので、安全性には特に気をつけなければならない、留意しなければいけないということでございます。
 最後のページでございますが、大臣の挨拶の方にもご紹介ございましたけれども、来年度の概算要求におきまして、厚生労働省の方で、「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」という形で、開発する側と現場のマッチングを目的とした予算を要求しているところでございますので、ご紹介をさせていただきます。簡単でございますが、説明は以上でございます。
 説明は以上でございますので、あとは自由に意見交換したいと思いますので、どなたからでも、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか、介護の現場からのご感想なりでも結構ですし。

○全国老人保健施設協会 高椋副会長
 全国老人保健施設協会副会長の高椋です。私の研究者としての主題は、ICF上のActivityとParticipationの整理です。様々活動等の難易度に応じた区分(classification)作りとその調整が私のライフワークであります。
 それで非常に、最初から言いづらいことを申し上げるのですが、病気に対しては「診断学」という仕組みがありまして、classificationがはっきりしていないと、一体何をするべきなのか、すなわちその診断に基づいてターゲットを見つけ、ひとつ一つの「薬」を当てはめていくのが、ある意味医療的なロジックなのです。ロボットについても、多少の成功例が出てきているでしょうが、今回のような場合は、まず「人の心身」を考え、その行為・行動のどこをターゲットに、どのようにアシストするかという整理、すなわち基本ができていないと思うのです。
 例えばロボティックベッドにしても、ベッドから車いすに変形する。アイデアは判るのですが、このベッドから車いすに乗った方が、トイレに行く時はどうするのですかとの単純な疑問が生じます。すなわち、まだ、人間の生活行動の理解が不十分なのではないかと心配になります。
 ご自分のことを考えればよいのです。ベッドから椅子に、自分が行動する際にはどのようにするかをしっかり考える、人間の行動の一局面しかアシストしないのなら、現実の生活(現場的なケア、生活支援)とはマッチしていかないと予測されます。一番に、人としての行為・行動のパターンが整理され、そのパターンに対してどのような技術的なアシストしていくのかと整理が必要だと考えられます。
 このプロジェクトを進める上でのスキームとして、早急に整理された方がよいと思います。
 「何かができない」、例えばベッドから乗り移る、トランスファーと言いますけれども、介助者に腰痛が発生する。しかし、支援方法(やり方、技術等)によっては発生しない。相当に介護現場に入り込まないと真に有用・有益な生活支援ロボットの開発は困難ではないですか、と入口で申し上げておきたいと思います。

○日本在宅介護協会 伊藤福祉機器部会長
 日本在宅介護協会の福祉機器部会長をしております伊藤と申します。私はロボット関連の経済産業省なんかのロボット産業政策研究会等々にも、今までも何度か参加させていただきながら、今日、経済産業省からお話があった部分についてもある程度理解しているつもりですが、そこでもお話をしたのですが、やっぱりモノだけがあって、それが効果的に実際の施設の環境の整備がなされた中でモノを作ろうとしているのかどうか、というのはものすごく疑問に思っております。
 どうしても技術先行型の、独りよがりの部分になりつつあるというのも、やっぱり否めないなと記憶しています。本来、私どもの生活を支援するというものでいいますと、モノだけではなくて、「人」「モノ」「環境」そのものが総合的なきちっとした噛み合わせの中で、これをシステムとして支えたうえで、どうサービスを作っていくかということだと思うんですが、どうしても技術先行型になりますと、そのことのシステムということでのサービスというのが飛んでいると。
 要は人のサービスと組み合わせる。今、仰った部分と生活の流れの部分がきちっと捉えられずに技術だけが先行したもの、そしてモノが先行するというようなことが多くあるような気がしてます。そういう意味でいいますと、これからのこの政策を作るにあたっては、モノだけに焦点を当てるのではなくて、その部分をプラスするソフトの部分、ないしはサービスの仕組みをコーディネイトする部分等々も含めて、実証としての場をつくるとか、それをシステムとしての部分として支援するとか、そういう総合的なシステム開発を含めた支援というのがどうしても必要という気がします。
 それぞれ、パナソニックさんの開発の部分等々、いろいろ高度技術が活かされているというものの、やっぱりモノ作りが先行しすぎているということは否めないような気がします。それと厚労省からもご紹介がありましたけれども、福祉用具という部分とロボットという部分についてのつなぎ方というのも、もう少し工夫すればもっと本当の生活に密着したモノになってくるし、それ自身がソフトと絡まった部分の中で、介護だけではなくて自立心につながるものだということがつながってくるような気がします。
 そこで何が言いたいかと申しますと、モノだけに焦点を当てるんじゃなくて、ハードとソフトを組み合わさった、いわゆるシステムの部分としてどうつなぎ合わせるかということについての支援をどう作っていくかということが無い限りはなかなかうまくいかない。今現実に福祉用具がなかなか上手に使いきってないのは、やっぱりそこのところがモノとしての部分だけを検討されているということが強いように感じる部分がございます。もう少し人が使うとか、もっといいますと、いいモノを作るということじゃなくて、利用者が使いたいとか、要はそれを使ったらこんな風に変わるんだとか、いうことなんかも説明しきれる部分、その場合にはこんな風なソフト部分があって、それを組み合わせたものとして、セットでモノを活かせると、そんなことが必要じゃないかという気がしています。
 そういう意味では、このモノが作られた段階でこれを見せる化する、また見える化するということをぜひ活かしていただきたいと思います。以上です。

○日本慢性期医療協会 富家常任理事
 日本慢性期医療協会の常任理事をしております富家です。まず、自分の経験の事例からなんですけれど、僕はガンダム世代ですので、ロボットスーツHALというのに興味がある。病院で、今202床の療養病床をやっているのですが、そこに導入しようと思って、10日間ぐらい来ていただいたことがあるんですけれども、その中で、どうしても装着に10分くらいかかって、それを使うために理学療法士が1名つきっきりになってしまうことで、それで一人の方をリハビリしなければいけないということで。うまく使えばすごくいいリハビリ器具になるのかなと思ったのですけど、そこでセラピストが一人取られてしまうと、コスト的な部分で、1体500万円するロボットを買って、しかも年収500万円以上する理学療法士を一人使ってやるというリハビリが、非現実的かなというところで断念したのと、また会社の人に言われたのが、これHALは医療器具ではなく介護器具ですので、リハビリの医療器具として使わないでくださいという風に言われたのですが、どうしてもそう使わないと、病院での存在意義がなくなってしまいますので、そこら辺の法整備が必要になってくるのかな、というのが、導入してみようと思って考えた感想なんですけれども。
 それともう一つ、もしここで夢を語っていい場所であれば、現場の方からすれば、できれば介助犬とか盲導犬とか、そのロボットができると、介護の現場というのはもしかすると、先ほど人とのつながりというような話をされていたと思いますけれども、ベッドが患者さんを運ぶロボットではなくて、患者さんを手助けするロボットが、盲導犬のようなロボットができれば、例えば認知症のある方が、おしっこをするのを忘れてしまっているときに、トイレに行きましょうと言ってくれる人が横にいつもいれば、そして歩くのが不自由な方がちょっとトイレに、そして買い物に行く時に、シルバーカーのように手伝ってくれるようなロボットがいればいいなと。今、自律で動く車いす、モーターで動く車いすもあるんですけど、認知症の人に乗っていただくと、暴走族のようになってですね、病院中の壁を破壊したり、人を轢いたりしてしまうという結果もありますので、なかなかそういうのが使えないんですけれども、手助けをするのであれば、自分の行動の範囲内からは出ませんので、そういうようなロボットができると、病院の一床に一台、介助犬みたいな介助ロボットを置くことが、未来の病院になるのかなってウキウキはするんです。そのロボットが薬の時間ですと教えてくれたり、飲んだか飲まないかも確認してくれると、誤薬とかがなくなりますし、配薬でミスしたりもありますので、そういうのがあればいいなと思っています。以上です。

○日本理学療法士協会 半田会長
 日本理学療法士協会の半田と申します。会長というより個人的な立場で述べさせていただきたいのですけど、私個人的に医療職・介護職の腰痛ということを生涯の研究テーマにしてまして、ずっと介護職の人たちの腰痛を、いろいろな機材との関係を調べていた訳です。なんで腰痛がここまで発生するか、先ほど高椋先生も言われたテクニカルの問題が一つあります。ところが居住空間と機材の関係ともう一つ、どなたかご指摘がありましたが時間軸の関係が多いんですよね。
 例えばパナソニックさんが出された「洗髪ロボット」。二人がかりでやりますよ、だけどこうしたら一人でやれますよ。だがこの姿勢にするまでに、何人かかってどれくらい時間がかかるのかが現場では問題なんですよね。寝たままさっと洗ってやった方が早いっていうのが非常に大きな問題なんです。
 時間というところがすごい大事な要素で、この時間をどう節約できるかっていうことをロボットが実現しないと、先ほどから言われているように、ロボットスーツに着替えるのに10~15分かかりますよというのでは現場では意味しないということになってくるので、洗髪ロボットなどいろいろなものができた時に、そこで働く人たちが時間軸で考えたときに、時間の節約になりますね、ということが大きくクローズアップされないと、汎用性が高まらないのではないかなと。そのことが多くの医療職や介護職の腰痛を引き起こしている、そのように私は過去何回も研究しまして、ぜひこのロボットの先に、時間軸での捉え方、こうしてあげたら早くできますよ、こうしてあげたら楽ですよ、というのも判るんですけど、洗髪ロボットの姿勢、体勢、どうして移すのかということを総合的に考えると、決して現場の人は楽ではない、という結論になると、なにも使わないということになるのではないかなと。ぜひ時間軸でもご検討願いたいという風に思います。

○日本作業療法士協会 中村会長
 日本作業療法士協会の中村と申します。いろいろなご意見聞かせていただいて、まさにこういう場が、作り手と使い手が共同になって、本当の検討会の意義だと思っています。それからこのプロジェクトをぜひこういうコンセプトで今後進めていただきたい。たぶんあとワーキングとかいろいろできると思うのですが、使い手とものづくりがですね、一緒になって検討する場をぜひ、それをコンセプトとしてやっていただきたい、というのと、こういうのが始まるにあたりまして、伊藤さんも言われましたが、ニーズ調査を徹底してやるべきではないのかなと。
 私は作業療法士ですが、現場におりますと様々なできないこと、やりたいことなどの要望がいっぱい出てきます。まさに臨床は宝の山と言えます。現在開発されている福祉用具をどうやって普及を図り、ロボットなどの活用で、解決できるものはいくつもあると思います。しかし、開発の過程でシーズ優先であったのも事実です、今後は、このプロジェクトのように、ものづくりの過程で、そのニーズを吸い上げて、開発が進むようなシステムを是非つくっていただきたいと思います。まず、医療、介護施設、在宅の各ステージで細かいニーズ調査をやっていただいて、今後の制度設計といいますか、国の産業を興すためにどうやったらいいかを検討できるようにしていただいたらありがたいと思います。

○全国介護事業者協議会 佐藤副理事長
 民介協の佐藤でございます。この問題については、非常に現場は関心度は高くあります。ただ、経産省の方からロボットの定義についてはお示しいただいたわけですが、利用者側に立つ、自立を目的とする支援型、そして介護する側の、介助側の労力を軽減する、負担を軽減する支援型、その辺のところをもう少し絞り込まないと、いろいろな技術的なものを詰めていく段階で、時間ばかりかかるんじゃないかと非常に思いました。
 私たちとして、今できている、既にある程度信頼性のある、安全性も含めて担保できているようなものをですね、制度的にどう適応するかということをぜひ検討いただきたい。特に障害者自立支援法や介護保険法で、生活用具だとか、補装具とか、そういったところで、介護保険では貸与と購入と改修というような項目が出ているわけですが、その辺の適用から、まだまだ自治体との協議も在るわけですけども、具体的に進んでいないという状態ですね。ですからもうできているもの、あるいはやれているものから、それをどう現場に落とし込むかということをすることで、道はもっと開けていくのではないかなということを非常に強く感じました。
 そういう意味では、制度的な、今日、川又課長からもありましたように、福祉用具として見ていくならば、やはり購入の10万円という限度額が、年間10万円ですから、それが果たしてどうなのかとか、住宅改修が3段階まで変わるまでは20万円しか出ないという住宅改修費の問題がどうなのかとか、あるいは月々の用具についてのレンタル、貸与について適応範囲がどんどん追加になっていますけど、その範囲を増やすとか、具体的なことが一歩前に出ればですね、非常に早く動くのではないかなということを非常に感じました。意見でございます。以上です。

○全国老人福祉施設協議会 武藤21世紀委員会幹事
 老施協の21世紀委員会の武藤と申します。21世紀委員会というのは、若手経営者の委員会になってまして、その中で、若手の経営者の中では、ロボットに対しての関心がすごく高くてですね、私は今日すごくわくわくしながら参加させていただいたのですが、皆様いろんなお話があった中で、すごく思うのが、若手の現場の介護職員ですね、すごい期待をしています。ロボットが導入されることによって、もちろん現場の仕事の職員が軽減できるというところを期待してはいるんですけれども、なんかこう、今日の見せていただいた中では、部分的なところだったんですが、もしできたらですね、介護現場の若手職員と対話していただけたらなと思うんですね。きっと私たちの現場でやっている、介護の現場の中で、本当に人がやらなくてもいいところは沢山あると思うんですね。あるいはロボットでなくても、機械的なものでなんとかなるところというのが沢山あるという感じがするんですね。今ここで具体的なことを話すところではないと思うんですが、ぜひ、そういった若手の現場職員を集めた中で、ぜひ開発される方々と、もしできたら現場で話をしてみたい、ひととおり見ていただいてやっていただけるといいなという風に思いました。

○日本福祉用具・生活支援用具協会 清水専務理事
 日本福祉用具・生活支援用具協会、JASPAの清水でございます。私どもは福祉用具のメーカーの集まり、団体でございまして、いろいろ新しい福祉用具の開発については、開発したからこれをどやって売ったらいいだろう、どういう風に改良したらいいだろう、というような相談をよく受けます。往々にして、どうしてもシーズありきの開発が多くてですね、先ほど皆様から出てますニーズ、現場でのニーズにマッチングしたというのは非常に少ないです。まあ言うなれば千三つぐらいの感じでの開発が多いということで、ぜひ、現場でどういうニーズがあるのか、つまり今の、私ども現行の福祉用具をやっておりますけれども、福祉用具はどういう点で困ってるのかとか、使いにくいとか、そういったところにこのロボット技術の応用とかですね、充分生かせる部分がある。これも究極的になれば、先ほどパナソニックさんからのお話みたいな、理想的なロボットにもなるんだろうと思うんですけれども、そういった経験も必要だろうなという風に思います。
 例えばマイスプーンなんていうのは、私どもヨーロッパの展示会にも毎年行くんですけれども、ヨーロッパからは非常に期待されている用具の一つであります。これからの少子高齢化が進んでいくと、当然日本のマーケットは縮小の一途ということになると、私ども業界としてもぜひ国際化していきたいということで、簡単に真似される用具ではなくて、一歩進んだやつをどうしても出していかないと、海外との競争には勝てないというようなことからも、非常に期待される分野かなという風に思ってます。
 それから先ほど自立支援型でいくというような、パナソニックさんのお話もありましたけれども、私どもはむしろ今、介護支援、お世話をする側の支援というのが、どうしても労働力が足りなくなってますので、そういった現場の声というのが非常に大きいし、そういったものを両方あわせてですね、検討する必要があるかなと。
 それから安全性について、私ども現存の福祉機器については、いろいろ事故も、消安法の施行以来ですね、いろいろの福祉用具を使った中での事故が結構出てきている、顕在化してきているというような中で、やはり安全基準を作っていかなければならないと思うんですけれども、いろいろ経験している中ではですね、今出ているロボットだけでですね、標準化みたいなのはなかなか難しい。むしろそれぞれのロボットの中でですね、個別のリスクマネジメント、リスクアセスメントをきちっとやって、そのうえで安全性を確立していって、それが沢山種類が出てきた段階でですね、国際標準化、あるいは日本の標準化が先になるとは思いますけれども、それを国際標準化すると、いったような手法をとっていかないと、いきなり安全基準を先に求めるというのはなかなか難しいと思うので、これもそういう意味では沢山の数の機器が開発されることを望みたいという風に思っています。以上です。

○川又老健局振興課長
 ありがとうございました。予定していた時刻を過ぎてしまったのですが、もしパナソニック様の方で、なにか今までの議論を踏まえて一言あれば、よろしいでしょうか。

○パナソニック株式会社 本田ロボット事業推進センター所長
 いろんなご意見を聞きまして、ロボットビジネス推進協議会を含めまして、意見があるということはロボットに現場を含めて非常にチャンスがある、ということを今更ながら感じさせていただきましたので、ぜひいろんな意見を聞かさせていただいて実用に供するようなものを開発していきたいと思います。どうもありがとうございます。

○川又老健局振興課長
 ありがとうございました。他に、よろしいですか。

○中山アドバイザー
 今日はいろんなご意見ありがとうございました。最初のうちにお話のあった、やはり人とモノということで考えた場合に、やや技術先行で開発が進んでいて、本当に人の行為とちゃんとマッチングしているのかとか、あるいはその使い勝手等がですね、正しいのかとか、もっとニーズをきちんと見ていく必要があるんじゃないかというお話が、まさしくそのとおりだと思いました。
 これまではどちらかというとシーズ先行型できていたわけです。ここを契機に、ぜひニーズとシーズをうまくマッチングさせて、しかもそれが、ややもするとロボットは自律機械的にとらえてしまいますが、そうではなくてやはり人をアシストして、うまく矯正しながらやっていく方法があると思います。そういう意味ではぜひ、これを契機にうまくその辺が進んでいければいいと思います。そういう意味でこのプロジェクトがすごく価値があるんじゃないかと思っています。
 全体的に言えば、介護の人のニーズに対して、介護を支援する人のニーズに対して、やはり求人に対してなかなか追いつかない、あるいは一旦勉強して介護職についてもすぐやめてしまうというのが非常に多いわけで、そういうところが支えられるのがいいと思う。それとやはりロボットというのは24時間働けますので、寝なくてもすむし、不平を言いませんですね、文句を言わない。そして3つ目には忘れないと。このロボットの、24時間働けて、不満を言わなくて、それで忘れないという、この特徴をうまく生かしながら、これからの高齢社会をですね、しかも日本はロボットというのはすごく技術的に進んでいたわけですから、進んでいる技術をなんとか生かしながら、世界に、ややもすると今、デンマークとか、韓国とか、かなりナショナルプロジェクト的にやろうとしています。日本もですね、そういう意味で一丸となって取り組めるようになるといいなと、こんな風に思っています。

○川又老健局振興課長
 ありがとうございました。時間も過ぎておりますので、そろそろ終わりたいと思いますが、最後に足立政務官の方から一言よろしいでしょうか。

○足立厚生労働大臣政務官
 どうもありがとうございました。政権が変わって、昨年から近藤政務官と一緒に、縦割りじゃない、例えば経済産業省と厚生労働省で取り組みを共有しながらやっていけないかということで9つチームを立ち上げて、今までもやって参りました。そのある意味途中の成果が新成長戦略につながっていると先ほど冒頭のご挨拶にあったわけです。
 私としてはそんな中で今回のこのプロジェクト、検討会がどういう位置づけになるのかなと、ある意味私自身も今日の話、興味を持って実は聞いたところであります。そんな中で、イノベーションとですね、国内と海外ということをちょっと話をしたいと今思いました。皆様方にはもう言わずもがななことかもしれませんが、やはりシーズがあってそこから開発していく段階と、そしてそれを産業につなげていく、それを含めて全部イノベーションということだと思いますが、今回のここにいらしている方を見るとですね、開発から産業界が経済産業省、シーズから開発へというのが厚生労働省という感じなのかなと思いましたが、実は業界の方々もニーズがなかったら開発なんかしないですね。現場のニーズというのは実はものすごく把握している、そこからシーズにつなげていくのは実は私は先ほどのHALの筑波大学であったり、あるいは洗髪機の東大であったり、私はその、文科省という言い方が正しいのか知りませんが、研究者、そこの部分も入っていないと、ニーズから始まって産業まではつながらないんだろうという認識は持っております。
 本日の皆さんのご意見を伺っていて、やはり現場にいる方々は国内でどう使えるのか、どう使い勝手がいいのか、なにが利用できるのか、ということが中心になっている。しかし新成長戦略では、これを海外に打って出ようじゃないか、ということの方がむしろ大きな部分があってですね、そこら辺がかなり問題点としてですね、あるいはアジェンダとして整理できる部分がかなりあるような気が私はしましたので、その点を含めて、次回からさらに発展的な話ができればいいな、ということを私は感じました。今後とも皆様方にまたしっかり議論していただいて、ニーズからシーズへ、そして開発から産業へと、ぜひとも進めていきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○川又老健局振興課長
 どうもありがとうございました。それでは本日の検討会はこれで終了したいと思います。今後の進め方含めて、またご相談をさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。


(了)
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             法令係

代表: 03-5253-1111
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