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2010年8月26日 第3回肝炎対策推進協議会
○議事
第3回肝炎対策推進協議会
日時 平成22年8月26日(木)15:00~
場所 はあといん乃木坂 フルール(地下1階)
○伯野肝炎対策推進室長 定刻となりましたので、ただ今より「第3回肝炎対策推進協議会」を開催させていただきます。委員の皆様方におかれましては、ご多忙の中、ご参集いただきまして誠にありがとうございます。本日は現時点で18名の委員にご参集いただいており、会議の定足数に達していることをご報告いたします。また南部委員からはご欠席のご案内、また保坂委員からは少し遅れるとのご連絡をいただいています。会議の開催に当たりまして、長妻厚生労働大臣からご挨拶させていただきます。よろしくお願いします。
○長妻厚生労働大臣 皆様、本日はお集まりをいただきまして、ありがとうございます。本日、第3回肝炎対策推進協議会ということで、林会長をはじめ、ご指導をいただきまして感謝を申し上げる次第でございます。本日の午前中、厚生労働省の平成23年度、つまり来年度予算の概算要求の説明を与党の部会に申し上げました。その中身につきましては、肝炎対策関連予算につきまして特別枠も含めて、総額244億円を要求させていただいたところでございます。今年度と比べて8億円増額して要求、要望することとしております。肝炎治療及び肝炎ウイルス検査の促進、あるいは肝炎診療体制の整備と研究基盤の整備等、これは個別通知等による肝炎ウイルス検査の促進、あるいは発見後の適切な治療を促す各種支援事業について等々を、盛り込ませていただいているところであります。
そして、これも皆様方からご指摘をいただきました、C型肝炎ウイルスに感染したおそれがある方への受診勧奨を進めるために、フィブリノゲン製剤を納入した厚生労働省所管のすべての医療機関、すべての国立大学病院、計249医療機関のうち、まだ訪問していない189医療機関に対して、平成23年度に残りのすべてを訪問調査を実施するということでも、予算を計上させていただいております。実際には年末の予算編成の過程で確定をするわけでございます。概算要求としてはそういう姿勢で臨ませていただきたいということで、ご報告を申し上げる次第でございます。
そして本日は、肝炎対策基本指針(案)について、皆様方から幅広いご意見をいただきますよう、事務局案についてより良いものにするために、皆様方のご指導を賜りますよう、心よりお願いを申し上げまして、私の挨拶といたします。なお、大変恐縮でございますけれども、中座をさせていただくご無礼をお許しいただくことも申し添えまして、私の挨拶といたします。よろしくお願いいたします。
○伯野肝炎対策推進室長 それでは長妻大臣は所用によりまして、ここで退席させていただきます。ここでカメラ撮りも終了させていただきますので、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。続きまして山井政務官の方から、ご挨拶させていただきます。よろしくお願いします。
○山井厚生労働大臣政務官 皆さん、こんにちは。まだまだ猛暑が激しい中、全国からこの肝炎対策推進協議会にお集まりをいただきまして、誠にありがとうございます。また林会長におかれましては、このご議論をおまとめの労苦をとっていただきまして本当にありがとうございます。今も長妻大臣からお話がございましたように、ちょうど今日、厚生労働省の来年度の概算要求というものが、先ほど厚生労働部会で一応、了承されました。正式な発表は4時から記者会見ということで、この後、長妻大臣の記者会見がセットされているわけですが、せっかくこの肝炎対策推進協議会が3時から行われているわけですから、肝炎に関する部分だけは少しフライングではありますが、皆さん方にお話をさせていただきたいということで、今、大まかな話を長妻大臣からさせていただきました。
本日は、1つは事務局がまとめました指針(案)について、ご議論をいただくことになっています。この指針(案)というのは、まだまだ不十分なものではないかと、私たちもその点は分かっておりますので、是非とも皆さんから活発なご議論いただければと思っております。
そしてこの概算要求について、もう少し詳しくお話をさせていただくと、後ほど記者発表もさせていただきますが、まずインターフェロン治療につきましては、今年の4月から一般世帯の方に関しては、原則1万円というふうに下げさせていただきまして、この4月から新たに核酸アナログ製剤を医療費助成に加えさせていただきました。ただ、残念ながら、昨年度の利用が2.6万人ということで非常に低迷をしておりまして、これはご存じのように、もともとは年間10万人、こういう医療費助成をさせていただきたいということだったのですが、一昨年が4万人台で、昨年度が2.6万人ということで低迷をしております。今年4月からは少し自己負担を下げましたので、増えるのではないかと期待をしておりますけれど、それでも非常に低迷をしております。
その中で、その分の予算に余りが生じている状況を踏まえ、この部分を少し減らして、それを振り替えて将来的にインターフェロン治療や、核酸アナログ製剤の治療を、より多くの方々に受けていただきたいという観点から、この対策協議会でも強くご要望いただいております検診の実施を拡大していくということを、今回、大きく予算で要求をさせていただいております。特別枠において検診の機会の提供にかかわる予算を、39億円要望させていただきました。また非常に重要である肝炎に関する研究についても、新たに5億円要望をさせていただいております。先ほど言いました、今までのインターフェロン治療などの医療費が、どうしてもなかなか利用が伸びなくて余ってしまう部分がありますので、その部分を少し振り替えて、このような検診機会の拡大、そして研究というふうに振り替えさせていただいて、緊縮財政の中ではありますけれど、先ほど長妻大臣からもお話をさせていただきましたように、244億円と8億円の増額要望をさせていただいております。
ただ、これに関しては、皆さんからもまたお叱りがあるのではないかと思いますが、この肝炎対策推進協議会でも、原告や患者の方々からも、一番大きな要望である肝硬変、肝がんへの医療費助成につきましては、現在のところ、残念ながら難しいというふうに考えております。肝硬変、肝がんの医療費助成の要望というものに関しましては、ずっと皆さんからお聞きをし続けてきておりますし、私たちもこのことについては十分承知しているわけなのですが、なかなかそこまでにはハードルが高いということを率直に申し上げざるを得ません。
この肝炎のことに関しましては、昨年、本当に多くの方々の署名や、あるいはご病気を押して運動をされた結果、肝炎対策基本法というのが昨年末に成立をいたしました。その肝炎対策基本法も、足掛け3年ぐらい実はかかっているのです。本当に皆さん方のお力で超党派でできたわけです。そして肝炎対策基本法によって設置されたのが、この肝炎対策推進協議会でありまして、まさにこの肝炎対策推進協議会というのは多くの方々の思い、肝炎の方々の命を救うための尊い思いが込められたものであると思っております。少し言い訳になるかもしれませんが、今の緊縮財政の中でトータルで特別枠も含めてですけれど、何としても肝炎対策の予算は増やさなければ、これは肝炎対策基本法をあれだけ苦労して通していただいた意味がない。またこの肝炎対策推進協議会を、こうやって開いていただいている意味がないということで、厚生労働省としましても、まだまだ不十分ではありますけれど、肝炎に精一杯力を入れたいという思いで、今回の予算を組ませていただきました。先ほどの治療費助成のことも含めて、まだまだ不十分であろうかというふうには思いますけれど、是非ともご指導をいただければと思いますし、今回のことは一歩前進とは言えませんが、半分前進と捉えていただいて、これから更に皆さんの意見をお聞きしながら、肝炎対策の充実に努めてまいりたいと思っております。皆様方、どうかよろしくお願い申し上げます。
○伯野肝炎対策推進室長 ありがとうございました。山井政務官におかれましても所用のため、ここで退席をさせていただきます。議事に入る前に資料の確認をさせていただきます。第3回肝炎対策推進協議会議事次第、座席表、配布資料一覧のほかに、資料1は、肝炎対策の推進に関する基本的な指針(案)で1~20頁、資料2は、B型肝炎患者としての医療費助成等についての意見(木村委員提出資料)で11~13頁、参考資料1は、肝炎対策基本法で1~6頁、参考資料2-1は、以前に阿部委員から出していただいた資料で7~12頁、参考資料2-2も、以前に阿部委員から出していただいた資料で13~14頁、参考資料3は、武田委員から以前に出していただいた資料で15~46頁、参考資料4は、以前に木村委員から提出していただいた資料で47~48頁です。参考資料5は、平井委員から提出していただいた資料で49~52頁、参考資料6は、以前に天野委員から提出いただいた資料で53~61頁です。また席上に配布していますが、阿部委員から提出していただいた「基本的な指針案についての意見」という資料です。資料の不足等はございませんか。よろしいですか。委員の皆様方におかれましては、本日の資料のお持ち帰りが難しいようでしたら、席上に置いてお帰りいただければ、後日、送付させていただきます。これより進行は林会長にお願いします。よろしくお願い申し上げます。
○林会長 それでは議事に入らせていただきたいと思います。これまでに第1回及び第2回の会議を開催してまいりましたが、各委員の方及び参考人の方からいろいろプレゼンテーションをいただきました。本日は第3回目で、本日の会議の主たる部分は指針案の検討ですが、実は前回の会議であまり時間がありませんでしたので、各プレゼンテーションに十分なご質問を受けていません。今回、お受けするというお約束ですので、最初に第1回目及び第2回目のプレゼンテーション等について、ご質問等がございましたらお受けしたいと思います。いかがでしょうか。前回、かなり時間をオーバーしてしまい、ご質問を受けることが十分ではありませんでしたので、ご質問を受けたいと思います。よろしいですか。それでは本日のメインの指針案の検討の途中でも、関連の部分がありましたらご意見、ご質問を言っていただければ結構だと思います。
本日の主たる議題である、肝炎対策基本指針(案)の検討に入ります。かなり長文ですので3つの部分に分けてご議論させていただきたいと思います。事務局から最初の3分の1のところで、1、2、3をご説明いただけますか。
○伯野肝炎対策推進室長 資料1をご覧ください。1頁に目次があります。第1から第9は、法律上の指針に盛り込むべき事項として、明示されているものを骨子として記載しています。第1に入る前に、肝炎の定義が法律上、明確にされていませんでしたので、法律の前文の趣旨等にかんがみ、喫緊の課題であるB型又はC型ウイルス性肝炎について、本指針では定めることとしています。
第1は、肝炎の予防医療の推進の基本的な方向についてですが、(1)は基本的な考え方です。これは関係者の理解、協力、連携の下、一丸となって肝炎対策を進めていく必要があるという内容です。
(2)は普及啓発です。2頁をご覧ください。検査の促進、差別、偏見の解消という観点から、正しい知識の普及啓発が必要であるという内容です。
(3)は肝炎ウイルス検査の更なる促進です。検査体制の整備、また受検勧奨を行っていくことが必要であるという内容です。
(4)は適切な肝炎医療の推進です。肝炎の医療については専門的な知識や経験が必要であることから、医療提供体制を確保していくことは非常に重要であり、特に地域の特性に応じた肝炎診療体制の整備の促進を進めていく必要がある。また医療費助成に関しては、抗ウイルス療法について助成を行っていますが、肝硬変、肝がんといった、より重篤な病態への進行を予防し、また遅らせることが可能であり、またウイルス量が低減することにより、二次感染の予防につながるという側面から、引き続き抗ウイルス療法に対する経済的支援に取り組むという内容です。
(5)は相談支援や情報提供の充実です。患者及び家族の方々の不安軽減のため相談支援は重要ですし、また分かりやすい情報提供が必要であるという内容になっています。
3頁で(6)は研究の総合的な推進です。これは肝炎のみならず肝硬変、肝がんを含めた肝炎の医療水準の向上に向けて、基礎・臨床・疫学の研究を総合的に推進していく必要があります。また肝炎対策を総合的に推進するための基盤となる行政的な研究についても、進めていく必要があるという内容です。
第2は、予防のための施策に関する事項です。(1)は今後の取組の方針についてですが、新規感染の予防という観点から、正しい知識の普及啓発が重要です。
(2)は今後の取組が必要な事項についてです。日常生活上の感染予防の留意点、集団生活が営まれる施設ごとの感染予防ガイドライン等の作成を行い、またB型肝炎についてはワクチンがありますので、その有効性、安全性に関する情報提供を行っていくという内容です。
第3は、検査の実施体制及び検査能力の向上に関する事項です。(1)は今後の取組の方針についてですが、肝炎ウイルス検査については様々な検査体制がありますので、受検状況について、その実態を正確に把握することはなかなか難しいというのは、第1回の田中委員からのご発言にもあったとおりです。しかしながら、推計されるキャリア数と医療機関を受診しているであろう患者数の推計の差を考えると、まだまだ肝炎ウイルス検査の未受検者や、また受検していても検査結果を正しく認識していない方々が大勢いることが推定されます。したがって、次の方針でアからですが、少なくとも1回は検査を受けることが可能な体制を整備していく。イについてですが、すべての国民が検査を受けることが必要であることについての普及啓発を行っていく。ウについては、受検結果について受検者自身が正しく理解できるように、検査前及び検査結果通知時に正しい知識についての情報提供を徹底していく。4頁でエですが、医療従事者に対する肝炎検査を含めた肝炎医療の研修を実施していくという内容です。
(2)は今後の取組が必要な事項についてです。アですが、国は肝炎ウイルス検査の実施主体である地方公共団体に対して、検査の実施とその体制整備について働きかけを行っていくとしています。イですが、国は産業保健に従事する方々の協力の下、職域を含めた受検勧奨を行っていく。ウですが、行政以外が実施しているいろいろな肝炎ウイルス検査がありますので、国は、その検査、検診について継続して実施していただけるよう要請をしていく。エですが、国は、受検前おび検査結果通知時において受検者の方々が肝炎の病態、治療、予防について正しく認識できるように、分かりやすいリーフレットを作成して配布していくという内容です。オですが、医療機関において肝炎ウイルス検査が実施されていますけれども、その検査結果を医療機関から受検者に適切に説明していただくよう、働きかけを行っていく。カですが、今、溝上先生にも委員になっていただいている、肝炎情報センターで実施していただく研修があります。最新の知見を踏まえた肝炎検査を含む肝炎医療に関する研修が行われるように、国が指示をするという内容です。第3までは以上です。
○林会長 ありがとうございました。ここまでについて順次、ご意見を伺いたいと思います。前文で肝炎の定義等が書いてありますが、ここで何かご意見がございましたらお聞きしたいと思います。いかがですか。よろしいですか。ここは普通の肝炎の定義ですので問題はないかと思います。次の第1ですが、肝炎の予防及び肝炎医療の推進の基本的な方向で、(1)から(6)までの記載があります。ご意見、修正等がありましたらお聞きしたいと思います。いかがですか。
○阿部委員 委員の阿部ですけど、私、先ほどお話がありましたように意見を提出させていただいていますが、そのとき一緒に各項目にわたっていますので、どのようにしたらよろしいでしょうか。
○林会長 ここに該当するところで、この文章で特に修正等を行いたい点がございましたら、言っていただいた方がいいと思います。
○阿部委員 個々の部分でということですか。
○林会長 はい。
○阿部委員 それでは初めの部分から、お話させていただきたいと思います。今日配布した基本的な指針(案)についての意見ということで、提出させていただきましたので、それを見ていただきたいと思います。1項から9項まであって、その下に、肝炎対策基本法前文の趣旨にかんがみということで載っているわけですが、前文の内容をここに項目だけ入れてきました。文章の内容をここに入れて、アンダーラインの部分が言いたいことですけれども、例えば県の方といろいろお話をした際に、県の方では、国の責任なんだから何で我々がこんなことまでやらなければいけないのか、というお話をされますので、ここのところは第1項の(1)の基本的な考え方の下の部分の3行です。それを一番初めの部分にできれば入れていただいて、地方公共団体あるいは医療関係の方たちが一緒に肝炎対策に取り組むというメッセージを、ここで出していただければと思います。
○林会長 今のところですが、第1の基本的な考え方の下の3行を、前文に入れた方がいいのではないかというご意見ですね。
○阿部委員 前文の内容も、例えば国の責任というところは載せなくても、一緒にやりましょうというところを入れていただきたいということです。これまでの取組と今後の展開ということで、これも現状の認識とありますけど、アンダーラインの部分で、「さらにウイルス性肝炎患者は高齢化が進み、病気が重篤化、肝硬変、肝がんに苦しんでいる。今までのウイルス肝炎対策は重症化しないための医療費助成は進められてきているが、重症化した肝硬変以降の患者に対する支援の在り方については、ほとんど検討されてこなかった。基本法施行に当たり、今まで実施してきたこれらの施策を検証し、基本指針により具体的施策の展開に結び付けていくこととする」ということで、今まで肝炎対策が、基本指針の附帯事項にもありますように、肝硬変、肝がんも含めた検討をしていただきたいというか、方向を明確にしていただきたいという意味で、入れさせていただきました。
○林会長 分かりました。今の委員のご意見は検討させていただきますが、それ以外の委員の方で、最初の部分に何かご意見はございますか。よろしいですか。第1のところですが、阿部委員の文章を拝見すると肝炎の基本的な考え方のところと、4番目にありますが、次に第1のところの肝炎の予防及び肝炎医療の推進の基本的な方向(1)から(6)があります。ここについては何かご意見がございますか。文章は皆さんに配布して読ませていただきますので、簡潔に要点だけ言っていただいた方がいいと思います。
○阿部委員 分かりました。ここも基本的な考え方の6行は同じなのですが、アンダーラインの部分です。「肝炎患者の置かれた環境、病状により、対策も違うことから、肝炎患者の実態調査をして、その実態に応じた対策を講じることによって、肝疾患による死亡を減らすことなど、具体的施策の目標や達成時期を設定し、当協議会において定期的にその達成度を評価する」という内容を、できれば挿入していただきたいということです。
○林会長 4の方はよろしいですか。
○阿部委員 4は、案の方は「都道府県において地域の特性に応じた肝炎診療体制の整備促進に向けた」となっているのですが、これも都道府県に任せるのではなくて、もうちょっと国の方も一緒になってというイメージで、お願いしたいと思います。
○林会長 ほかにご意見はございますか。今のことで何かご意見はございますか。なければ先に進みますが、よろしいですか。
○天野委員 阿部委員がおっしゃった中に、「具体的施策の目標達成時期を徹定し、当協議会において定期的にその達成度を評価する」とあるのですが、事務局が出してきた基本的な指針案には、達成時期、目標が設定されていないですよね。最後に、5年経ったらこの協議会で見直しをするということになっていますけど。
○林会長 5年以内です。
○天野委員 その5年以内に見直すとしたら、この目的とか達成時期が決まっていないと、何を基準にして評価するかわからないと思います。ですから、この目標達成時期を設定するということは非常に大事かと思います。よろしくお願いします。
○林会長 おそらく、このことは後にも同じことが出てまいりますよね。目標時期の達成を、この文章に明記するかどうかということだと思いますか、事務局の方、この点でご意見はいかがですか。
○伯野肝炎対策推進室長 目標については、数値目標ということかと思いますが、それをどのように設定するのかは非常に難しい課題があると思います。例えば検査の受検状況についても先ほどお話させていただきましたが、なかなか実態が十分に把握できない状況にあります。第1回に田中委員の方からもご発言がありましたが、その目標の設定というのが現実的にどういう目標で、どういうことができるのかというのは、是非、委員の方々からもご意見をいただきたいと思っているところです。
○林会長 田中委員、いかがですか。こういう文書を作るときに我々も、患者数の推定のところからあまり根拠がなくて、いつも困難を極めているのですが、この数値目標の設定というのは、特に田中先生はご専門だと思いますので、いかがでしょうか。
○田中委員 第1回の発表のときに、なかなか検査数の把握は困難だということで、割合として日本全国の国民中、何割が受けたのかという数値で表わすことは難しいというのは、皆さん、お分かりになると思います。いろいろな検査法があり、健康増進法、老人保健法、匿名検査、無料検査、いろいろなドッグ等、いろいろな場で受けていますし重複もしています。それを数値として出すのは難しいとお答えしたわけですが、難しいからそのまま放っておいていいかというわけではないと思います。できるところで数値は出していかなければなりませんけど、私が考えるのは、指針の中に数値として記載した場合、その根拠は何か。あるいはその数値目標が達成できなかったときに、もともとの数値の根拠は何だったのかということの議論が繰り返されます。もともと把握が難しいところでの数値目標の提示は、出しにくいのではないかと思っているのです。国もいろいろな体制を作っていると思いますし、もちろん国民も責務として検査を受けなければならないし、前向きに検査勧奨を勧めて行くにしても数値の提示は難しいかと思います。
○天野委員 1回目の田中先生のレクチャーによりまして、数値目標というのが難しいということ。それから検査の場合ですといろいろな窓口でやっていて、それでいま、つかめていないということはよくわかるのですが、数値ということだけでなくて、達成目標という形で決められるところがある気もするのです。それから田中先生は、180万人がまだ検査を受けていないと推計なさっていますが、それをどれくらい減らすことができるのかとか、そういうことで母数がわからないとしたら、いまいる180万人をどういうふうに減らしていくのか。そういう目標というのは決められないのでしょうか。
○田中委員 何をやっていくかという目標を掲げるということですか。数値ではなくということ。
○天野委員 数値が難しいとしたら、達成目標という形でもいいですから、何しろ目標を定めないと評価ができないのではないかと思います。
○田中委員 それは、私も委員としてそう思います。第1回の発表のときに申し上げたように職域ではなかなか進んでいないとか、受けていない人でも自分は受けたくないと思っている人がまだいるとか、そういう面から見て立てなければならない対策はいろいろあると思っているので、数値ではない目標で何か掲げることができれば、私、個人的に委員としては、その方が指針に盛り込むにはいいかなと思っています。
○天野委員 この協議会で、そこのところも。
○林会長 具体的な対策を書くことは可能なのですが、実際、肝炎の検査を実施するのを、例えば80%にしてやろうという、その80%の根拠を算定するやり方がない。それが田中先生のご意見ではないかと思います。
○田中委員 そうです。数値を設定してしまうと、数値目標を合わせることだけに目先が行ってしまう可能性があり、これは本来的な意味での対策ではないと思っています。対策を進めるためには、本どういうことを目標にしたらいいかを考えたほうが、具体的な数値設定よりも効果的ではないかと思います。
○天野委員 そういうことを、この協議会でも考えていただきたいと思います。
○林会長 分かりました。ほかにご意見はございますか。
○阿部委員 実態を把握することが困難であるということではありますが、例えばそうであれば、もっとモデル地域を決めてやっていきましょう。例えば私の県で恐縮ですが、岩手の場合は、40~75歳までの母数で言うと32%になっています。今年からは各市町村別に受診率を出してもらうということで進んでいますが、ちょっとそこがトーンダウンして、40歳の方でどのぐらい受診したのかということになってしまったのです。ある程度の前提を持てばできないことではない県もありますので、是非、それは前向きにやっていただければなと思います。
○林会長 それは、おそらく岩手県とか人口の少ない県ほど、基本的には目標の数字的な設定は、より容易かも分かりません。東京のようになかなか困難な所も、おそらくあるかもしれません。それは阿部委員のおっしゃるとおりではないかと思います。
○阿部委員 ちょっと特殊な田中先生の方からの研究のお金が、大分来ていましたので、それでやっていたというのがあるみたいですけど、いずれそういうところもあるので随時でもいいから、やっていただきたいなということです。
○林会長 分かりました。
○外山健康局長 健康局長です。今のご議論の参考になるかどうか分かりませんが、こういう指針で数字を目標に掲げることは難しいのですけれども、命じられて書いた素案の事務局案で、例えば第3の肝炎検査の実施体制及び検査能力向上に関する事項で3頁ですが、(1)の今後の取組の方針についてということで、アで「すべての国民が、少なくとも一回は肝炎ウイルス検査を受けることが可能な肝炎ウイルス検査体制を整備する」といった形で、この計画の期間で達成できるかどうかは別にして、すべての国民が1回受けるという提示の仕方も、こういった指針で一つあるのではないかと思っています。
先ほど大臣あるいは政務官が申し上げたように、来年度の予算事業ではなかなか医療費助成の方が使われないというのは、検査の掘り出しがまだ不十分ではないかということで打って出る。あるいは無料のクーポンをもっと配る、あるいは手帳を配るといった今までない形で検診を受けてもらう。それを予算事業としてやった結果がどの程度までなるかは、推量的になかなか難しいですけれども、それをやる。ただ、そうは言ってもいろいろな手法があるわけですから、評価という点でカバー率がどの程度になるかというのは別途、こういう指針の方で求めることによってカバーする割合を常に評価し、達成率を見ていくというのもあると思っています。
○林会長 ここは、そういう意味では目標としては明確な目標が書かれていますが、これは実際、どの程度達成されたかの評価を具体的に数値として、この文章に書くのが可能かどうかもちょっとご検討いただきたい。よろしいですか。それでは次の第2ですが、肝炎の予防のための施策に関する事項です。
○武田委員 先ほど言っていただいた、少なくとも1回は検査をするということはすごくいいことだと思いますが、ここを書いている以上は今年度からしていただけるのでしょうか。ここに書いていることを、きちんと実行していただくことを国の方は考えているのでしょうか。
○外山健康局長 体制としては保健所であったり、あるいは企業であったりということがあるのですが、それでも不十分なので我が方の考え方としては、こういう肝炎対策基本法に基づく指針を受ける形で、それをバックにいろいろな施策を予算事業という形で更に進めたいと思っています。今年度から直ちにすべての体制が整っているわけではなくて、これを踏み台にして物事を進めていきたいという立場です。
○武田委員 少なくとも来年度からというようなことは、考えているのですか。ただ書いているだけなのか、それとも本当にやる気があるのか。
○外山健康局長 来年度から実現できるかどうかは別にして、そういうふうな今まで手の届かなかったところ、あるいは気づかれなかったところに打って出て、その結果、直ちに100%なるかどうか分かりませんが、こういった目標に向かって新しい切り口で進んでいきたいと思っています。
○林会長 よろしいですか。それでは次、先ほどの第2で肝炎の予防のための施策に関する事項のところです。何かご意見はございますか。(1)が今後の取組の方針について、(2)が今後、取組が必要な事項についてです。
○保坂委員 遅れてまいりまして、それですぐに発言させていただいて申し訳ありません。この肝炎の予防のための施策に関する事項について、どうしても皆様に知っていただきたい。あるいはこの指針の中に入れていただきたいということがあって発言させていただきます。そもそも予防は、今予防する手段があるわけです。ワクチンがあります。B型肝炎のことですが、ワクチンについて諸外国では定期接種として、すべての子どもに打つことは原則になっていることです。我が国においても母子の垂直感染で、お母様がB型肝炎のウイルスを持っている方については、赤ちゃんにワクチンを打つということで非常に高い効果を上げているところです。肝炎ウイルスが世界から駆逐され撲滅できる状況があるわけではありませんので、まだ残念ながらウイルスはあちこちにたくさんいるわけです。不幸にして肝炎になってしまった、こちらにいらっしゃる方々やご家族を二度とつくらないめために、せっかくワクチンがあるのにやらないということは、肝炎対策基本法ができたいま、そのことがこの指針に一言も入っていないことは私は大変な問題だと思います。
もちろん、なってしまった患者さんの方が、いかにいい治療を受けられるかということも非常に重要なことですけれども、それと同時に、これ以上肝炎を増やさないということは、国として絶対やらなければならないことだと思いますので、是非、そこのところをこの指針の中に入れていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○林会長 分かりました。これはいま肝臓関連の学会で議論されているところですが、溝上委員、何かご意見がございますか。
○溝上委員 いま、ご指摘がございましたように、この点については現在、肝臓学会をあげて厚労省の班会議を中心に取り組んできています。何故なら、ワクチンというものを考えたときに、年間100万人生まれる子どもたちに打つとすると、理論的に何人かは必ず副作用が起こります。100%安全ということはあり得ないのです。しかし、この様な問題は確かにございますが、学会としてはB型肝炎ワクチンの接種を進めるということには基本的には賛成です。そこで、先のようなワクチンに関する問題点についての検討はしっかりやる必要があると思っていますし、この数年で急速にこれらの問題点について検討してきた。また、検討中であるということは自信を持って言えると思います。
○林会長 これは現在、いろいろなところで検討がなされています。
○保坂委員 直ちに、すぐ全国民にやりましょうということを、こういう指針の中に盛り込む必要はありませんが、その方向を検討すると言いますか、せっかく指針を作る以上は入れていただきたいと思っています。実は予防接種部会というのが厚生科学審議会の中にあって、その予防接種部会でいま、このB型肝炎のワクチンも含め、先ほど肝臓学会の先生がおっしゃったようなことを含めて検討中で、それはそれとして科学的なことをやっていくことは必要ですが、肝炎対策と言ったときに、ワクチンの安全性や有効性に関する情報提供を行うという程度のことではなく、もう少し踏み込んできちっと書いていただかないと納得できないなと思います。
○林会長 分かりました。それはこの文章を改正するときに少しご検討いただくようにします。この件についてほかにご意見はございますか。第2の項目はよろしいですか。ごもっともなご意見だと思いますので検討していただきます。次に第3で肝炎検査の実施体制及び検査能力向上に関する事項です。先ほど少し議論がありましたが、(1)の今後の取組の方針、(2)の今後、取組が必要な事項について、いかがでしょうか。阿部委員から文書をいただいていますが、要点を言っていただいた方がいいかもしれません。
○阿部委員 私の資料の2頁ですが、先ほど(1)の部分についてはお話しました。(2)の部分ですが、今後、取組が必要な事項ということですけれども、これは今の検査の体制が二本立てになっているわけです。そういうものも地方公共団体の方ともっと突っ込んでいただいて、単に1つをやればいいということでなく、患者の側から見てもいろいろな問題がありますので、そういう問題をもっと都道府県なり市町村まで行って調べていただき、今後、対策を検討していただきたいと思っています。
○熊田委員 あとで治療の方で出てくると思いますが、基本的に前向きに考えると、正しい診断、高い医療技術を持った診断、いい薬剤を早くということになるのですが、検査も同じです。同じ検査をどんどんやるのではなく、新しい検査法を早くやっていくという体制にしないと、例えばユニバーサルワクチンの話が出ますけれども、では実際にどこからうつったかというジェノタイプの保険審査すら、全く承認されないわけです。審査は肝臓学会からも、それからPMDAに既に出していても、ずっと放ったらかしになっていて一度も審査されないというか審査が進まない。そうなると感染の経路を言っているときに、そうした新しい検査法が早く使えるようにする体制も、ここに盛り込んでいかないといけないのではないか。それは薬剤でも同じで後で申し上げますけれども、そういう検査法を早く取り入れてやっていくことをしないと、不十分になるのではないかと思います。
○林会長 これは我々肝臓関係の学会で、いつも議論になるところなのです。実際の検査治療をやる上で必要な検査が、なかなか保険診療できないという問題をいつも抱えていますので。熊田委員からそういう意見がありました。
○鳥越委員 私は全くの素人なので、皆さんはご存じなのかもしれませんが、肝炎ウイルスの検査というのは具体的にはどういうふうにしてやるのですか。私はがんの患者なので、がんの検診というのはCTスキャンから始まって、エコー、大腸の内視鏡、胃の内視鏡等々いろいろあるのですが、実際には本人がその気にならないと検診はできないわけです。だから、がんはなかなか発見されないわけですけれども、肝炎ウイルスの場合、これを見ていると肝炎ウイルス検査という定められたものが1つあって、例えばこれを人間ドックの中に1項目として入れておけば、それで済むものなのか。それとも非常に面倒な手続が要るのか。肝炎ウイルス検査と書いてあるので素人で申し訳ないのですが、どなたか教えていただければありがたいです。
○林会長 肝炎ウイルス検査には、B型肝炎とC型肝炎の両方あります。
○鳥越委員 それは分かります。
○林会長 どちらも血液を採って、B型肝炎の方はHbs抗原というのを調べれば、感染しているかどうかについては分かります。
○鳥越委員 そうすると、血液検査をすればわかるということですね。
○林会長 はい。実際、そういう制度はできているのですけれども。
○鳥越委員 そうすると、例えば人間ドックというのは職場とか、主婦の場合でもある程度自治体がやっていますから、人間ドックというのは比較的やるのです。ただ、人間ドックの場合は、どこまで、何を検査対象として入れるかというのは地域や職場によって違って、例えばがんの場合は、おそらくレントゲン程度で終わってしまうので、肺がんなどはレントゲンで見つかったときは終わりですから、CTをやらなければいけないのですが、CTまではやりませんよね。大腸がんの場合は便潜血反応ということで検便まではやると。検便で見つかって、その次は精密検査へいくということがあるのですが、この肝炎の検査が血液検査でわかるということならば、人間ドックの中に全部組み込んでしまうといいのではないですか、その辺はどうなのですか。
○林会長 人間ドックの中の肝機能のGOT、GPTは、ほぼすべて出てきますけれども、この項目については任意で、本人が検査をしたい場合には付け加えるという項目になっています。
○鳥越委員 それはHIVと同じ考え方ですね。
○林会長 はい。
○鳥越委員 HIVも本人が申し出ないと検査しない。腫瘍マーカーでもそうですね。がんの場合にPSAをやるというのは、ちゃんと言わないといけない。そうすると肝炎の場合も本人が申告しないと駄目だと。
○林会長 どうしても患者さんの側は、例えば輸血とかをしていると肝炎を自分で疑いますので項目を入れられるのですが、自分で輸血等を受けていませんと本人は肝炎でないと思うので、ドッグ検査項目に入れられないのです。
○鳥越委員 しかし、第3の(1)のアで「すべての国民が、少なくとも一回は肝炎ウイルス検査を受けることが可能な肝炎ウイルス検査体制を整備する」と書いてあるので、それだったら、これは例えば人間ドックに全部組み込むということをすれば、どうなのだろうと素人の考えで思ったのです。
○林会長 人間ドックはどうしても個人のお金でやるものなので、その内容について国なり地方公共団体が決めることができないということです。いまは保健所等に行くと肝炎検査ができる体制はできていますから、ご本人が検査に行っていただければ分かりますが、人間ドックの項目にすべて入れるということは、今の段階ではできないことになります。
○保坂委員 いま鳥越委員がおっしゃったことは、ドッグという言葉と自治体等がやっている検診、あるいは企業がやっている検診との混同があって、会長先生のお答えもずれてしまったところがあります。
○林会長 会社の検診も今のところ、すべて強制ではありませんので任意になっています。
○保坂委員 一応、労働安全衛生法の中での企業に義務づけられている健診というのが1つあります。それから昔は住民健診という老人保健法で決まっている健診がありました。今はなぜか特定健診という、メタボ、メタボとみんなが言っている健診がありますが、鳥越先生がおっしゃったのは、そういう法で定められている健診項目の中に入れたらどうかというご提案だったと思います。それは同じところの健康局が絡んでいる健診のことなのですが、局長はいまお聞きになっているかどうか。そういうことに別枠できたときに肝炎の検査ができるということはあったわけですが、やることが当然であるというふうな形にしていくことは無理でしょうか。
○外山健康局長 なかなかここですぐ答えられない問題ですが、ご参考までに申し上げます。企業でやっている健診は、労働安全衛生法の観点からその企業で働く労働安全の観点から項目がまず定められていて、そして、そこに働く人は違う観点で任意でプラスアルファで必要に応じて肝炎のウイルスの検査を受ける、という思想です。そのほか、健保組合とかでやっているのも同様の話ですし、地方自治体でやっているメタボ健診というか、昔の老人保健の健診、健やかな健診の方ですね、あの方も、結局GOTとかGPTとかというところまでは、その法律の持つ思想の範囲内での健やかな体のためのチェックという観点であって、こういった感染に対するものはプラスアルファという形になっています。ただ、いま保坂委員がおっしゃいましたが、では、それを政策として上乗せできるのかできないのか、あるいはどういった理屈があればそういうことでカバーできるかというのは、大きな宿題というか、政策選択だと思います。ただ、申し上げたいのは、もともとのそのやっている根っこのところの思想が違うということをちょっとご理解いただきたいと思っております。
○林会長 これは我々も非常に重要だと思っております。人間ドックと会社でやっている検診と2つありますが、人間ドックの方は、どうしてもこれは任意のものなので難しいと思いますが、会社の方は。前、田中先生がご発表いただきましたが、以前に比べると会社の方の検診も、肝炎の項目はどんどん減ってきています。いま会社の個人の感染情報の保護など、いろいろな厳しい問題が出てまいりまして、今はむしろ昔より減っているという非常に厳しい状況にあります。
○外山健康局長 それで、先ほど大臣が予算の話をちょっとしましたが、今のその現状にどうやって新しい切り口を与えるかという点で、1つは制度論で打開するという方法もあるかもしれませんが、すぐにやるべきだというお考えもあって、今のところ来年度予算で。中小の企業が労働安全衛生法でやっている所ではプラスアルファでやっている所とやっていない所があるわけですので、できれば地方自治体の方が集中的に、いろいろ企業と相談して出前検診のような形で、要望書にも書いてあったと思いますが、自治体の方から打って出てやるとか、あるいは、よくよく相談して、こういった会社あるいはこういった企業の所ではプラスアルファでやっていないということが明々白々のときにはそういった所に集中的にクーポン券を配って底上げを図る、というようなことは制度全体をまだ変えなくてもできるのではないかと思っております。先ほどの予算事業ではそういうことをいま目指したいと思っております。
○林会長 それ以外に何か第3の項目。
○天野委員 先ほど熊田先生が検査や医薬品の審査を迅速にというようなことをおっしゃったことに関して、肝硬変、肝がん患者に対する支援ともちょっと重なってくると思うのですが。インターネットに載っていたことなのですが、非環式レチノイドのペレチノインという飲み薬が治験の結果肝がんの再発を抑制できることが明らかになったということが書いてあったのです。天野もそうでしたが、一旦肝がんを発症しますと、きちんと治療をしても次々と再発を繰り返すということがありますので、その再発を何としても抑制したいというのが患者にとって非常に切実な願いなのです。このような効果が実証されたお薬というのは、そのペレチノインにも限らず、是非、一刻も早く使えるようにしてくださいますようにお願いいたします。
○林会長 項目がほかの項目なので、そのときにその議論をさせていただいてよろしいでしょうか。
○天野委員 (頷く)。
○林会長 はい、覚えておきますので。この第3のところでそれ以外でございませんでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、時間もございますので、次の4、5、6に進ませていただきます。事務局の方、よろしくお願いします。
○伯野肝炎対策推進室長 それでは4頁、第4ですが、肝炎医療を提供する体制の確保に関する事項です。(1)今後の取組の方針についてです。検査の結果が陽性とわかっていても受診しない、あるいは、受診しても適切な治療に結び付いていないという実態があるかとお伺いしております。5頁です。まずアですが、地域における肝炎診療のネットワークの構築を進めていくというところが1点です。イですが、地域保健や産業保健に携わる方を含めた関係者の連携・協力の下、肝炎検査後のフォローアップを実施するということが2点目です。ウですが、労働と継続的な受療を両立させることができる環境づくりに向けて関係者の協力が得られるよう、必要な働きかけを行っていく。エですが、こちらは医療費助成の関係ですが、経済的負担軽減のための肝炎医療費助成等の制度の周知により肝炎の早期かつ適切な治療を推進していく、という内容です。
(2)ですが、今後取組が必要な事項です。まずアですが、地域保健や産業保健に従事する方が肝炎患者等へ提供するために必要な情報について分かりやすく効果的に提供するためのツールを作成していく。イですが、国が拠点病院の医療従事者を対象として実施する研修について研修計画を策定する、という内容です。ウですが、国が職場の先進的な事例を分かりやすく示したリーフレット等を作成して、各種事業主団体のご協力をいただいて配布をしていく。エですが、既存制度の周知という観点から制度を分かりやすくまとめてリーフレット等を作成していく、という内容です。オですが、肝炎情報センターはいま情報提供をやっていただいておりますが、そのホームページ等に分かりやすい形で掲載をしていく、という内容です。
第5ですが、予防及び肝炎医療に関する人材の育成に関する事項です。(1)ですが、新規感染の発生を防いで肝炎に係る医療水準の向上を図るために人材の育成が必要である、という内容です。まずアですが、新規感染防止に資する人材を育成していく。6頁、イですが、肝炎ウイルス感染が判明したあとに適切な治療に結び付けるための人材を育成していく。ウですが、肝炎検査を含めた肝炎医療に携わる方の資質向上を図っていく。エですが、地域における肝炎に係る医療水準の向上等に資する指導者を育成していく、という内容です。
具体的には、(2)にありますとおり、まずアですが、新規感染の発生を防止するために各施設における感染予防ガイドライン等の作成のための研究を推進して、その成果を普及していく、という内容が1点です。もう1点は、情報センターで、いま国立国際医療研究センターで中期目標、中期計画というものを立てて、研修もその中で実施していただいておりますが、拠点病院等の指導的立場に当たる医療従事者に対して肝炎検査を含む肝炎医療に関する研修が行われるように国から情報センターに指示をする、という内容です。
第6ですが、こちらが調査・研究に関する事項です。(1)今後の取組の方針です。これまで様々な研究を行ってきておりますが、今後の肝炎研究の在り方については、「肝炎研究7カ年戦略」という戦略がありますが、そちらを踏まえて実施してきておりますが、その過去の研究について評価を行って見直しを行っていくという内容、また併せて、肝炎対策を総合的に推進するための基盤となるような肝炎研究を推進していくという内容です。イですが、特にその成果について分かりやすい情報発信をしていく。(2)は具体的な今後の取組が必要な事項です。少し再掲になってしまいますが、アについては、「肝炎研究7カ年戦略」の評価・見直し、イについては、研究の成果について分かりやすく公表し、周知を図っていく、という内容です。
○林会長 ありがとうございました。それではまず4ですが、肝炎医療を提供する体制の確保に関する事項ですが、何かご意見等がございましたらどうぞ。
○阿部委員 ここの問題は、私たちは患者ですので、一番重要ではないのかなと考えております。具体的には、5頁のア、イ、ウの所でちょっと考えていることをお話したいと思うのですが。
やはり私たちも、47都道府県全部、診療体制について、一応いろいろな方が回って、要望書もまとめさせていただいたのですが、やはり体制そのものがうまくいっている所もあるし、うまくいっていない所もあると思っております。それで、そういう面でどんな問題点があったのか、あるいは。例えば、私の県は専門医が36人いらっしゃるのですが、隣の県は11人しかいらっしゃらないというような実情もあったり、例えば、今現在、おそらくほとんどの都道府県はそうだと思うのですが、認定しているインターフェロン治療の助成制度をやれるかかりつけ医とそれ以外のかかりつけ医についてはやはりちょっと区分がはっきりしなかったり、それ以外のかかりつけ医に行っている患者さんも非常に多いというような実態があります。その辺をもうちょっときちっと、専門医療機関とかかりつけ医というその区分をもう少しはっきり各都道府県に明確に示すというようなことが必要ではないのかな、と感じました。それもやはり国がある一定程度の、厚労省さんなどが行ってやはりもっと説明をするとか。
それで、患者の方からこういうのを言うのはあれですが、極めて我々が、要望書の中の調査したのもあるのですが、非常にいい意見もあるわけなのです。そういうことも取り上げております。ですから、そういう大規模ですごくうまくいっている県、あるいは中規模でうまくいっている県、あるいは小規模で、県などのやはりその体制を、診療体制をこういうふうにやってうまくやっていますよと。うちの方などだと、20万ぐらいの町でも専門医が1人もいない所があるのです。ですからそういう所、先生方が大変苦労して診療ネットワークを作られているので、そういうものが他の県でも活用できるのではないのかなと思いますので、次回、そういうことを我々も提案させていただきたいと思っております。
いま言いました指定かかりつけ医以外に通院している方というのも実は、高齢者の方などは他の病気もあったりして非常に多いわけです、循環器系の先生に行っておられるとかということで。それで、東京都さんが前に、1回目ですか、発表なさったように、ALTが31以上とか血小板が15万以下の人とか、そういうある一定の基準を設けて専門医療機関なり指定のかかりつけ医の方に紹介をする、というようなことは本当はもっと強硬に推奨していただきたいなと。
そういう意味で今日は、本家の田中先生がいるところで何なのですが、「健康管理手帳」というのを持ってきたのです。これは非常によく出来ていまして。実は私、吉澤先生から直接説明を聞いたことがあるのです。例えばいままで、問題になっているのですが、ウイルス検診に行って先生の方に受診しない人もかなりいるわけなのですよね。実際には、うちの方などでも5割ぐらいということを言われているのです。陽性者だよと言われて病院に行ってきましたというのをお手紙で返すような、そういうものも付属しているわけです。これも凝っていまして、そのとき行ってきた報告と、初回用と1年後の2つの手紙が付いている。これはウイルス肝炎研究財団の方で作って、ここにいらっしゃる林先生とか熊田先生も監修なさっているようなのでその辺のお話も伺いながら、できればこういうもので全国展開をしていけば、いま一般のかかりつけ医のところでなかなか肝機能も下げられないでいるというような方が実際いらっしゃるので。私は、やはり何かこういうツールがあった方が全国で一律に基本法が出来て、こういうのでやりますよというのがメッセージとして伝わるのではないかと思うわけです。
それから、いま言ったイの部分ですが、ここはフォローアップということで、これも第1回で説明があったわけですが、実際は7割の自治体で実施済み、あるいは医療機関で、あなたはC型肝炎あるいはB型肝炎なのでこういうことに注意してください、あるいはこういう病院に行ってくださいということをパンフレットなりで説明はしているということを言っているわけですが、そのあとの、結局、どれだけ行っているのかというのもわからないというような状況がいまあるわけです。そういう意味でこれはいいわけです。ただ、フォローアップというのも実際は県の機関など、あるいは検査機関などでやっていると。あるいはうちの方は、この間調べたら、保健所はやっていませんというような話が出てきました。平成19年に各都道府県における肝疾患診療体制に関するガイドラインというのが厚生労働省の方から出されているのですが、それには、保健所・市町村における受診勧奨の必要性ということが第1項目に載っているのです。ですから、市町村がいかに陽性であった人を病院に行かせるようなことを、市町村でやりなさいよ、あるいは保健所でやりなさいよと言っているのが今は残念ながら県の単位で、ちょっとパンフレットをやった、リーフレットをやったというだけで済まされているわけです。そんなことで、実際は市町村レベルでもうちょっと動いていただきたいと。
それから、ウの部分ですが、「関係者の協力を得られるよう必要な働きかけを行う」となっているのですが、これも文言だけでは労使だけで頼っているのではないのかなと思うので、ウイルス検診の費用を出してあげるとか、これから病気休暇の問題もあるのでしょうけれども、もう少し何か労使さんの方でお話をして、法的な整備とか、何か職場の整備をしていくというか、そんなことが必要ではないのかなと思います。
○林会長 分かりました。以前からいろいろなご意見があります、特に都道府県単位あるいは市町村単位の体制にかなり差があるというような。我々もそう思っております。だから、うまくいっている都道府県の事例をいろいろな所に提示をいただいておりますが、なかなか実際に体制の整備が行われない地方公共団体等があるというのは、我々もそのとおりだと思っております。それは、いろいろな工夫をしながら今後さらにそういうところをできるだけなくすようにしていく方策を、ここに書いていただいてはいるのですが、もう少し強く書いていただいた方がいいということと。あとは健康手帳ということで、それをうまく使っていただくと、うまくいく場合もあるということです。事務局の方、何かご意見はありますか。よろしいですか。
○外山健康局長 先ほどの平成23年度の予算要求の関係で、さらにいまご指摘のあった2点。1つは、「健康管理手帳」という名前になっておりますが、既に日肝協から第1回のときに要望が出ておりまして、読ませていただきました。それで、来年度の予算要求として肝炎患者支援手帳事業ということで、1都道府県当たり1万人、全部で47万人に対して、いまB型肝炎、C型肝炎の推計患者数は約44万人ほどいらっしゃると聞いておりますが、47万人に対して全員に手帳を配布しようということで、今、特別枠で要望して、といったことを記者発表していると思います。
もう1つは、イで「山梨県のようなコーディネーターの養成が必要」と書いてあります。これも地域の肝炎治療コーディネーターを養成する事業ということで、相手は市町村あるいは保健所の保健師さん、あるいは地域の医療機関の看護師さん、あるいは民間企業の健康管理担当者の方々といろいろあると思いますが、そういった方を、若干少ないですが、1都道府県当たり約50人、日本全体で約2,000人養成いたしまして、そこのところがネックになっているとお聞きしておりますので、こういった養成事業も来年度予算で要求するというように決めております。
○林会長 それ以外に4のところはよろしいでしょうか。
○武田委員 今後取組が必要な事項の中でエの部分ですが、これは、「今後の取組」というよりも今ある制度ですよね。今後取り組む制度というのでしたら、治療休暇というようなものはきちんと入れていただきたいと思います。やはり短時間というようなものも介護休暇とか育児休暇などにあると思うのですが、そのようなものを入れるとか、いくらか休んでいる間の、何カ月でも、最初のときとかつらいときとかのそういう、1年か72週のことですからその間の、やはり雇用保険の中のいくらかの支援をしていただくとか、そういうことをしてこそ今後の必要な事項になるのではないでしょうか。
○林会長 おっしゃるとおりで、これは既に現在施行されている制度で、リーフレットを作ってお知らせする、あとのリーフレットを作るというところが今後の取組の事項になっているのではないでしょうか。
○武田委員 はい。リーフレットですが、やはりそれには休暇手当というようなものも入れていただきたい、そういう制度も作っていただきたいと思います。
○林会長 ほかはよろしいですか。それでは、次は5、肝炎の予防及び肝炎医療に関する人材の育成に関する事項ですが、いかがでしょうか。都道府県によって肝臓の専門医等も人数にかなりばらつきがあるのは、それはご指摘のとおりですが、いろいろな制度を使いながら、専門医が少なくてもうまく医療供給体制を整備するようにいろいろな工夫も行われておりますので、基本的には専門医の数だけの問題ではないと思っております。何かご意見はございますでしょうか。
○阿部委員 私が質問する前に局長から答えていただきましたので、このコーディネーターの部分についてはやるということなのでよろしいのですが、言ってみればこの部分だけではなくて、やはり市町村の保健師さんというのは例えばウイルス検診の受診勧奨だとか、今後、次の肝硬変、肝がんなどの保健指導だとか、いろいろな面でかかわってくるので、是非ここのところは。山梨県のコーディネーターさんは、インターフェロン治療を勧奨するために、少ない専門医を補完するためにコーディネーターを養成なさったということです。ここは非常にいい施策ではないのかなと私は思いました。
○林会長 ほかはよろしいでしょうか。それでは、また後ほど全体でお聞きしますので次に進ませていただきます。6、肝炎に関する調査及び研究に関する事項という項目ですが、いかがでしょうか。
○脇田委員 感染研の脇田です。第5には予防及び肝炎医療に関する人材育成ということが挙げられていますが、肝炎の調査・研究に関しても、肝炎研究、いま感染研で基礎研究、あるいは臨床の先生方と臨床研究ということで進んでいますが、すぐに研究者が育つわけではなくて、今日から肝炎研究をやれと言ってもすぐにできるものではないということで、我々も若手の研究者を育てるべく一生懸命にやっていますが、そういった人材の育成ということについても一言入れていただいた方がいいのではないかなと思います。
それで、肝炎の研究に関しては、その成果が出てきてもなかなか患者さんのところに届かないというようなところがありますので、ここに書いてあるように、やはり情報発信というのをやっていかなければいけないのですが、一言だけ申し上げておきますと。この領域というのは、いろいろな医学研究領域がありますが、日本が世界的にかなり頑張っている領域で、日本の研究が肝炎研究を進めている、そういった領域だということも申し上げておきたいと思います。
○林会長 分かりました。ほか、ご意見はございませんでしょうか。よろしいですか。それでは、また後ほど、ございましたらおっしゃっていただければと思います。事務局、7、8、9をよろしくお願いします。
○伯野肝炎対策推進室長 それでは、6頁の第7からですが、医薬品の研究開発の推進に関する事項です。まず(1)今後の取組の方針についてですが、第6と多少重複する所があります。アですが、医薬品の開発等に係る研究を推進していくという内容です。イですが、治験及び臨床研究の活性化の取組を推進していく。これは7頁です。ウですが、審査の迅速化等の必要な措置を講じる。
(2)今後取組が必要な事項ですが、これも多少オーバーラップします。アですが、研究の推進について。イについては、治験、臨床研究の推進。ウについては、審査体制の充実・強化等を図り、承認審査の迅速化や質の向上に向けた取組を推進していく。エについては、国内未承認薬、海外で承認されているが、国内で未承認の医薬品等であってかつ医療上必要性が高いと認められるものについては、関係企業に治験実施等の開発要請の取り組みを行っていく、という内容です。
第8知識の普及と人権の尊重です。こちらは大分重複します。(1)今後の取組の方針です。まずアですが、検査の受検を促進して、肝炎ウイルスの新たな感染を予防するため正しい理解が進むよう、普及・啓発が重要である。イについては、早期かつ適切な治療を促すために普及・啓発が大切であるということ。ウについては、肝炎患者様等が不合理な処遇、待遇を受けることがないよう、すべての国民が肝炎に係る正しい知識を持つための普及・啓発を行っていく。
(2)今後の取組が必要な事項です。まずアですが、今年の5月にWHOの総会で世界肝炎デーの実施が決議されております。こういうことを踏まえまして、財団が実施している肝臓週間に合わせて普及・啓発を行っていくという内容です。また、B型肝炎については、最近、ジェノタイプAというタイプが報告されており、成人でも性行為等によって慢性化する可能性があるというところで、8頁ですが、そういう認識についても促していくということです。イですが、肝炎患者等への受療勧奨活動として関係者の協力を得た普及・啓発をを行っていく。ウについては、関係者に対する普及・啓発の媒体について国が策定をしていく。エについては、肝炎情報センターで情報提供機能を充実させるように国が要請をしていく。オですが、都道府県が拠点病院の相談センターを作っていただいていますが、その相談センターを周知するための普及・啓発活動を推進していく。カですが、企業等が実施する検査結果については、プライバシーに配慮した適正な通知と検査結果の取扱いについて周知をしていく。
第9、その他重要事項です。(1)ですが、患者等及びその家族等に対する支援の強化、充実です。1今後の取組の方針です。まずアです。相談支援体制の充実を図り、精神面でのサポート体制を強化していく。イですが、生じてしまった差別、偏見に対しまして、適切な対応を講じることができる体制づくりを進める。2ですが、今後取組が必要な事項です。アです。国は、都道府県と連携をして肝炎患者等やその家族等の不安を軽減するための情報提供、また、患者さん、家族の方々と医療従事者とのコミュニケーションの場の提供を推進していく。これは、第2回の会議のときに加藤参考人から肝臓病教室のお話があったかと思いますが、その内容です。イですが、国は肝炎患者等支援対策事業、これは都道府県に対する補助事業ですが、それを活用した具体的な支援策の内容について分かりやすい事例集を作成して、都道府県に配布をしていく。ウについては、国が拠点病院の相談員が必要な情報について整理をして、積極的に情報提供が行われるように肝炎情報センターに要請をする。エですが、国が地方公共団体と連携をして、法務省が人権擁護機関相談窓口を設けておりますので、その周知を図っていく。
9頁ですが、(2)地域の実情に応じた肝炎対策の推進です。こちらは、地域の実情に応じて肝炎対策を講じるための体制を構築して、市町村と連携をした肝炎対策を都道府県が推進していくことが望まれる。また、都道府県と市町村については、積極的に国をはじめとする行政機関との連携を図りながら肝炎対策を講じていくことが望まれる、と書かせていただいております。
(3)ですが、国民の責務も法律上ございますので、第6条の規定に鑑みまして、国民が主体的かつ積極的に活動する必要がある。イですが、国民一人一人が少なくとも1回は肝炎ウイルス検査を受検するよう努めること、と書かせていただいております。ウですが、国民一人ひとりが肝炎ウイルスの新たな感染の可能性がある行為について、例えば不適切なピアスの穴開け等かと思いますが、そういう正しい知識を持って新たな感染が生じないよう行動する。また、不合理な取扱いが生じることがないよう、正しい知識に基づく適切な対応に努めること、と記載をさせていただいております。
(4)定期的な現状把握による効果的、効率的な肝炎対策の推進です。国、地方公共団体における取組について、定期的に調査、評価を行って改善していく、という内容です。
(5)肝硬変、肝がん患者に対する支援です。肝炎から進展する肝硬変、肝がんは根治的な治療法が少なく、このため、不安軽減という観点から以下の取組を講じていくということです。まずアですが、医療従事者に対する研修、また研究の推進で肝硬変、肝がんを含めた医療水準の向上を行っていく。イですが、こちらは再掲になりますが、肝硬変、肝がんの患者さんを含めた不安軽減のための情報提供、また、医療従事者とのコミュニケーションの場を提供していく。ウについては、今年度から身体障害者福祉法における身体障害の対象に新たに肝機能障害が追加されておりますので、そのことを記載させていただいております。
最後、10頁ですが、(6)基本指針の見直しです。こちらは法律上、少なくとも5年ごとに検討を加えて、必要があると認めるときには変更しなければならないとされております。裏を返すと、必要があるときは、基本指針策定から5年を経過する前であっても、これを見直し、変更することとする、と記載をさせていただいております。
○林会長 ありがとうございました。それでは、7の項目ですが、肝炎医療のための医薬品の研究開発の推進に関する事項です。熊田委員から先ほど検査のことで少しご発言がございましたが、先ほど天野委員の非環式レチノイドの発言もおそらくここに該当するところだと思っております。熊田委員からご意見はございますか。
○熊田委員 先ほども検査のところで申し上げたのですが、先ほどジェノタイプのAが広がっていてと。このジェノタイプが測れない、保険が通っていない、肝臓学会からも4年も前からずっと出しているのだけれども残念ながらまだ審査中であるというのがずっと続いているという現状がありますから、矛盾してしまうのです。ですから、検査法の進歩が必要であると同時に、やはり患者さんに一番歓迎されるのは治療法の進歩だと思います。そのときに、ここに書いてある文章は、基本的には、別に肝臓でなくてもすべての薬と何も変わってはいない。では肝臓はこの10年ですべて決着するぐらいの。いま日本の肝臓の人たちの肝炎、肝硬変、肝がんの人たちのことを考えると、この中にやはり学会からの要望とか、あるいは何かの文章を入れないと。ここでは別に何も、ほかの、腎臓とか心臓とか、何も変わっていないわけで、昭和35年に出来た薬事法に従ってやっているということになると、いま天野委員も言われたような、医者はいいと思っていてもPMDAの方の担当官が「いや、これは駄目だ」と言ったら通らない。そういう状況を打破しないと実際の患者さんに届かない、医者は何も手に持っていませんから。だから、そこはきちんとやっていただかないと、この文章では全く同じで、いままでの薬事法と何も変わっていないわけですから。せっかく肝炎対策基本法が出来たら、そこはきちんと学会の要望とかそういうものを加える、あるいは治療の進歩のものを何か加えるような文章を一部に入れてほしい。
○林会長 天野委員、先ほどのご意見に何か付け加えることはございますか。
○天野委員 先ほども申しましたように、いま肝硬変、肝がん患者というのは本当にせっぱつまっておりまして、待っている時間はないのです。ですから、効果があるというお薬はなるべく早く、どういう形にしても使わせていただきたいと。先ほども申しましたように、非環式レチノイドががんの再発の抑制に効果があったと出ているわけですから、これは是非早く使わせていただきたいという気持でおります。
○林会長 あと、事務局の方、何かご意見が、微妙な問題も含んでいるのですが。
○伯野肝炎対策推進室長 すみません、ここは我々の部局だけではお答えしかねるところがあるのですが。
○外山健康局長 このような貴重なご意見を聞くためにこの協議会はあるわけですので、持ち帰って保険局等々とよく、ほかの部局もあるかもしれませんが、相談させてもらいたいと思います。
○林会長 分かりました。
○外山健康局長 ありがとうございます。
○林会長 7のところでほかの委員のご意見はございませんでしょうか。よろしいですか。続きまして8ですが、肝炎に関する啓発及び知識の普及及び肝炎患者等の人権の尊重に関する事項です。1が今後の取組の方針、2が今後取組が必要な事項ですが、何か。
○松岡委員 7頁、第8(2)アの「近年我が国における感染事例の報告がある急性B型肝炎(ジェノタイプA)は」というのがありますが、この「従来のタイプに比し、性行為により感染が慢性化することが多い」という書き方はちょっとおかしいのではないかと。ジェノタイプAは感染が慢性化することが多いというのは正しいのですが、これだけを読むと、これからのB型肝炎は性行為感染症だけかというイメージが強くなるのではないかという感じがしましたので、ちょっとご検討していただきたいと思います。
○林会長 分かりました。それはおっしゃるとおりだと思います。少し検討いたします。
○松岡委員 それと。8についてと言われましたよね。そのほかのところについてもなのですが、私もこれ、メールでいただいたときに一通り目を通したのですが、具体的に5年後の肝炎対策がどんなに進んでいるのかイメージがわかないと。文章も同じ繰返しみたいな所が多いなということで、せっかくこれだけ集まって何回も論議して抽象的な表現だけではつらいなと思いますので、少しでも具体的な目標項目をイメージさせてがいただけるようなことをしていただきたいと。
○林会長 ええ、具体的におっしゃっていただいた方がいいと思います。
○松岡委員 例えばなのですが、いろいろな報告がある中で、例えば東京ではこんなことができていますとか、山梨の例とか岩手の例とか言われたら、5年後までにそれが全国でできるように。全部はできなくてもここならできるとか、そういう検討を是非やってもらいたいと思います。
○林会長 分かりました。ほか、よろしいでしょうか。それでは次、9番目ですが、その他の肝炎対策の推進に関する重要事項というところです。文章が少し長いですが、どこからでも結構ですので、ご意見がございましたらどうぞ。
○武田委員 9頁の肝硬変、肝がんに関する支援ですが、肝機能障害の身体障害者の認定の件なのですが。私たち薬害肝炎では、救済法が出来てから毎年定期的に大臣協議というのを行っております。その席で大臣がおっしゃったのは、身体障害者の、4月から始まったのですが、それを改善すべき点があるかとか、今後どのようにしていくとか、きちんとしたことを。ここに書いているのですが、「遅くとも年内にはその実態調査の中身を公表して、改善すべき点があるか否か。これは、障害者制度改革推進会議というのがまた別にありますので、その場などにおいて障害者の定義や身体障害者手帳制度の在り方についても議論してまいりますけれど、昨日始まりました推進協議会での場でもそれを公表して、当然マスコミにも公表して、我々としての対応を考えていきたい」とこの間大臣もおっしゃっていただいたのですが、これはきちんとしていただけるのでしょうか。いつまでにしていただけるとか、そういうことはあるのでしょうか。
○林会長 事務局の方、よろしくお願いします。
○伯野肝炎対策推進室長 すみません、こちら、担当部局に確認をさせていただきます。
○林会長 それ以外。
○天野委員 やはりいま武田さんがおっしゃった肝機能障害による身体障害者手帳の交付のことなのですが、その認定基準というのが余命幾ばくもない重度の肝硬変患者しか当てはまらないような感じだと思います。私の夫の天野秀雄は、食道静脈瘤破裂から5度目の肝がんで亡くなるまで、16年間、ずっと末期の非代償期の肝硬変という、永続する障害を抱えておりました。その肝硬変の合併症の治療ですとか、肝がん治療のための入退院を繰り返していたわけなのです。そのように生活に支障を来すような状態でもチャイルドピュー分類のグレードCが3カ月以上続くという、そのような認定基準を満たす状況には1回もなったことがないわけなのです。でも、生活に苦しみながら、入退院を繰り返しながら亡くなりました。合併症が出るような非代償期の肝硬変になったら、あるいは肝がんを発症したら、その時点で障害者として認定していただきたいと私は思っております。
ほかの疾病との公平性も勘案された上で認定基準を緩和していただきたいと思います。例えば心臓病ですと、ペースメーカーを入れていますと、それで1級に認定されるようなのです。知り合いにペースメーカーを入れている方がいらっしゃいますが、非常にお元気で、いろいろな所に旅行をなさったり、山登りもなさったりすると。そういうことがありますので、それと比べると、この認定基準が肝臓の場合は厳し過ぎるのではないかという気がしております。
○林会長 ほか、よろしいでしょうか。
○阿部委員 意見の3頁、私の提出した資料の。
○林会長 阿部委員の3頁です。
○阿部委員 はい、ということで。今の肝硬変、肝がん患者に対する支援ということで、アンダーラインをずっと引っ張って項目で分ければよかったなと今感じているのですが。先ほど熊田先生からもお話があったあれなのですが、肝硬変、肝がんは、いま、根治的な治療が少ないというか、ほとんどないわけですよね。ですから、可能性のある非環式レチノイドのような発がん抑制剤が、あれは副作用もなくて非常にいいという報告もありますので、是非早急に働きかけていただきたいなと。
それとあと、インターフェロンの少量長期投与というのが今かなり。全国で調査をすると、よほどの方が今、実際はやられていると思います。保険認可もされているわけですが、なかなかそれの効果というものが、海外の方でやった効果があまりないのでということで。海外の方は3.5年でしかない。ところが、これは4年以上やらないと効果が上がらないと言われているような治療だということで。今からまた検討しますということで、治療戦略会議の議事録を見ますとそのようになっているのです。
ただ、今から同じ条件でこれをやってしまいますと、結局、3.5年以上とか4年以上、実際治験をしなければ効果が検証できないということになってしまいます。いま必要な人、いま実際にやっている人、では、全然効果がなくてやっているかと言いますと、私の身の回りでも多々、何人もいない会員ですが、非常に効果があって本当に肝機能がまるっきり正常値になったという人も何人かいらっしゃいますし、いままでの実績というのはいっぱいあると思うのです。ですから、そういうものを拾い出してもっと効果を。これから治験をするのではなくて、既に長いこと治療をされているわけですからそれらを拾い上げて、何とかこれも医療費助成などに結び付けていただきたいと思います。
あとは、時間があれだと思うので。2番は、先ほど山井政務官が治療費の支援はなかなか大変だということがありました。2番というか、肝硬変、肝がんに進展した患者の医療費の件ですね。それから、3番の「総合的な保健指導を必要としている患者も多く」ということで、一番下の所です。ここは、行政も含めた保健指導も入れた体制の確立を何とかお願いしたいということで、先ほどコーディネーターも育成するということでしたので、その辺も含めてお願いしたいなと思います。
最後というか、(6)の基本指針の見直しという所です。これもやはり「必要に応じ適宜評価を行い、必要があるときは基本指針策定から5年を経過する前であっても、これを見直し、変更することとする」と。「適宜評価」と言うのですが、やはり何か目標がなければ、これも評価にもならないということで、何とか、できることから目標を決めてやっていったらどうなのかなと。
私のあれですが、この下に「市町村における肝炎対策」ということで。佐賀県の神埼町という所で、今は神埼市になっているのですが、肝がんを半分以下に減らした、というような実績を公衆衛生情報というので発表している資料を次の5頁に付けました。要は、肝硬変、肝がんの対策というのは医療費の支援だけではないのですよね。ですから、もっと行政も一体になった支援が必要だという意味で、2は私の町の取組で、保健師さんが個々に回っていろいろな保健指導とか、そういうこともやっておりますし、例えば医療講演会なども、インターフェロン治療の講演会が圧倒的に多いわけですが、やはり肝臓をいたわる食事と日常生活のポイントというような。肝硬変などになると、やはりアルブミンとかが少なくなってくるわけですが、それにもかかわらずほとんど、いままでの日常生活というか、食事そのものになっているという状況がありますので、是非ここはわかっていただければなと。
あとは、最後の3段目ぐらいで「キャリアの年齢構成」という所があるのですが、これは統計上、なかなか表には出てこないのですが、うちの方の町で全部年齢を調査、もちろんしております。それで言うと、80代も19%もいらっしゃるのです。80代の方が660人のうちの19%。2割ぐらいの方が80代。病院の先生はよく「何歳まで生きる気なの」と言われるというのですが、実は、全然問題なくて80歳になっているのではなくて、肝硬変、肝がんで80歳を過ぎても大変な苦しみを負っているという状況になっているのです。ですからやはりこれは、全国の昔の感染率を今の年齢に当てはめますと、うちの町とほとんど同じ数字になってくるのです。やはり全国ではそれだけ高齢者の方が肝硬変、肝がんで苦しんでいるということですので、私、はじめに肝硬変、肝がん、肝炎のような感じで初めの所で入れてくださいと言ったのですが、来年度は予算がなくてできないのであっても、指針では是非何らかの肝硬変、肝がんを今後、例えば患者を実態調査をするとか、あるいは何らかの支援をするとか、そういう方向づけだけはこの指針の中でやっていただきたいと思います。
○林会長 ほか、よろしいですか。
○瀬戸委員 素人なものですから、是非専門家の方に教えていただきたいのです。9頁(3)の国民の責務に基づく取組のイの所で、これは前にも出てきたのですが、「少なくとも1回は肝炎ウイルス検査を受検し」と書いてあるのです。これは、「少なくとも」と書いてありますから、1回受検すればそれで事が済むものなのか、あるいは、例えば何歳のときに受検をすればいいとか、そういったものは何かあるのでしょうか。
○林会長 今のところ、日本ではC型肝炎等の新規の感染はもうほとんどない状態ですので、1回受けて感染していないことが証明されたら、その方は安心していただける。陽性がわかれば、すぐ専門医の診断を受けていただければいいと。B型は、急性肝炎は最近また日本でも増えているのですが、もともと慢性疾患になる母子感染によるものについても、幼少のときに母子感染が成立しますので、成人になって一度検査をしていただくと、ウイルスに感染している・していないはもう分かりますということで、「少なくとも1回は」受けてくださいという文章になっております。
○武田委員 やはり1回受けたらそのようなものということは、今後、肝炎患者は少なくなるということですよね。いま、年をとっている方が一番、60歳代、70歳代が一番肝炎患者が多いということを聞いたのですが。
○林会長 1回受けていただきたいというのは、実は感染者なのですが、検査をしていないのでご本人が肝炎患者でないと思っている方を拾い上げるために、是非1回。
○武田委員 はい、それはわかるのですが。結局、肝炎患者というのは限られているというのか、ある程度の把握の数がわかると思うのです。それで肝硬変、肝がんの支援がないというのは、私はちょっとおかしいなと思うのです。というのは、今後、新たに増える方が少ない、肝臓の患者が少ない、年をとっている方が多いということは、肝硬変、肝がんの治療助成をしてもそんなに何十年も続くものではないということですよね。だったら、肝硬変、肝がんの治療の助成はするべきだと思っています。やはり国の薬事行政でそのようになったのでしたら、そこまではきちんと、限りのある年数ですので、肝硬変、肝がんという治療の助成をするのは当たり前ではないのでしょうか。そうだと思います。
○林会長 先ほど阿部委員の、私が答えていいかどうか分かりませんが。先ほどのインターフェロン少量長期投与については、今年のアメリカの肝臓病学会で5年目のフォローの結果が発表されるそうです。日本国内のことについては、私と熊田先生がそれぞれ厚労省から研究班を任されていますので、我々のところでもできるだけ調べる予定にはしております。高齢の方に多いというキャリアの実態については、田中先生をはじめ我々も十分認識しておりまして、田中先生のご発表をお聞きしても、我々もそのように思っておりますので、それはご安心いただいていいと思います。それ以外に何かご質問があればお願いいたします。
○阿部委員 何回も発言して申し訳ありません。今回皆さんもそうだと思うのですが、この資料が来たのが、つい3、4日前ぐらいで、私も資料を作るのに1日ぐらいしか時間がありませんでした。我々は患者として納得できない部分というのがありまして、3団体で要望書あるいは提言書をまとめているのですが、その中で重要とされる部分は肝硬変以後の生活支援、肝硬変・肝がんの生活支援、あるいは目標数値の設定、別にこれは目標値ではなくて目標でもいいわけですが、あとは治療休暇です。治療休暇については以前から国会などでかなり話はされていると思うのですが、なかなか具体化していかない。また、医療体制については、せっかく全国を調査しているのですから、我々ももう少し突っ込んだ提案をしていきたい。そのような意味で、この4点について私どもからプレゼンをしたいと思うのですが、次回その機会をいただければと思います。
○林会長 今の4点について意見を述べたいとのことですが、事務局としてはいかがですか。
○伯野肝炎対策推進室長 ご意見をいただく分には結構です。
○林会長 よろしいということですね。それ以外に何かご意見があればお願いいたします。
○天野委員 阿部委員と同じく、何回も申し訳ございません。先ほど検診の母数がなかなか分かりにくいということですが、がん対策基本法においては、がん登録ということが言われております。院内がん登録制度、地域がん登録制度というものがありまして、すべての都道府県で登録を行うことを求めているのです。肝炎ウイルス検診についても、このように全都道府県で検診の数を求め、集めるということはできないのでしょうか。
○林会長 それは今でもある程度やっていると思います。大阪府でも受診者、陽性者、実際に専門医療機関に行った人の数というのはすべて分かっておりますから、国もある程度の数字は集めていると思います。細かいところまでは発表されていないと思いますが、国は各都道府県の検査の数字を発表していますよね。
○天野委員 検査後です。
○林会長 天野委員が今おっしゃったのは、検査後ですね。
○天野委員 肝炎ウイルス検査。
○林会長 検査受診者数ですね。
○天野委員 肝炎ウイルス検査もこのように登録することはできないのですか。
○林会長 それは各都道府県から報告があるから分かっていますよね。
○伯野肝炎対策推進室長 都道府県が実施する検査と市町村が実施する検査、いわゆる公的な検査については当然上がってきております。ただ、武田先生が言われていた、企業が行う検診とか人間ドックの検診などいろいろなチャンネルもありますし、匿名で実施している検査もあるので、全体の数を把握するのはなかなか難しいということだったと思います。
○林会長 各都道府県が保健所等で実施しているものについては、すべて国に報告が来ていますので検査数等はわかっていますが、例えば会社の診療所で検査をした陽性者等はどこにも報告がありませんから、それは分からないです。
○田中委員 都道府県等の公的な補助により行われた検査については、ほぼ人数はわかっているのですが、全体で考えますと、いろいろな検査が継ぎはぎになっているのです。例えば、2002年から開始された老人保健法による肝炎ウイルス検査は、少なくとも1人1回の検査をという理念から始まったわけですが、5年間で約800万人でした。つまり、40歳以上の住民健診受診対象者のうち、約800万人が検査を受けたということです。40歳以上の住民健診受診対象者は、当時は2400万か2500万人ですので、約30%は受けたことはわかっていますが、残念ながら5年間で終わりました。その後、公的な補助による検査を何人が受けたかというのはわかりますが、対象となる分母がわかりにくいといったことがあり、何人中何人が受けたのかというのは、把握しにくいということなのです。しかし、公的な補助で行われている検査は国や県が把握してきているので、各県が実情や現体制にあわせて対策を立てていく、目標を立てていくというのが実情ではないかと思います。
○外山健康局長 記憶が定かではないですが、がん対策基本法では、がん登録は法律事項ではないはずです。ただ、がん対策基本計画の中ではそういった事柄を求めております。ご承知のとおり、個人情報保護法の壁とかプライバシーの問題もあって、よくやっている県ではある程度安定した数字がありますが、全国一律に、義務としてそれが制度化されて、安定した罹患率や登録制度が整っているという状況ではありません。
○鳥越委員 素人の意見で恐縮ですが、やはりどうしても肝炎ウイルス検査のことにこだわりたいのです。先ほどの説明では納得できなかったので、もう一度話を戻して申し上げます。がんの場合は、検診が早ければ早いほど、完治するという結果が出てくるわけです。肝炎ウイルスの場合も、やはり早く見つけた方がいいということですか。
○林会長 肝炎の治療のうち、C型肝炎については若いときに治療した方が今のところ治療効果は高いですから、検診も若いときにしていただいた方がいいという意味では同じです。
○鳥越委員 検査で早く見つけた方がいいことに変わりはないということですか。
○林会長 そうです。
○鳥越委員 それは間違いないですね。
○林会長 大丈夫です。
○鳥越委員 肝炎ウイルス検査の検査方法というのは、血液検査ということでよろしいですか。
○林会長 血液検査法で感染症は確認できます。
○鳥越委員 血液検査が主たる検査方法ですね。
○林会長 主たるものです。
○鳥越委員 4頁の2.今後の取組で必要な事項についての中のウに、具体的な検査の方法、どうやるかについて、「国は多様な検査機会の確保を目的として、医療保険者や事業主が労働安全衛生法に基づく健康診断の機会を捉えて実施する肝炎ウイルス検査において、継続して実施されるよう働きかけを行う」とあります。これを読むと、一見意味があるように思えるのですが、これは完全なお役所用語で、これでは何の意味もないです。働きかけを行う、一体どうするのですか。第3項のアに「すべての国民が少なくとも1回は肝炎ウイルス検査を受けることが可能な肝炎ウイルス検査体制を整備する」とありますが、具体的にはどうやるのか。先ほど言いましたように、「継続して実施されるよう働きかけを行う」というのは、一見聞こえはいいですが、実際には何をやるのか、具体性が何もない。
私の知識が浅いからかもしれませんが、血液検査でわかるのだったら、例えば人間ドック、もちろん、これは国がやることではなく、事業主や個人、自治体がやったりするわけですが、例えばコレステロール、尿酸値、肝臓の値といった、申告する、しないにかかわらず行われる血液検査のスタンダードというのは決まっているわけですから、スタンダードの中に肝炎ウイルスの血液検査というのは組み込めないもののかということなのです。肝炎ウイルスの血液検査というのは、例えばHIVとか腫瘍マーカーといったものに比べて、値段が張る、お金が高くかかるといった特段の事情があるのですか。
○林会長 これは値段の問題ではなく、実は人間ドック学会というのがありまして。
○鳥越委員 学会が決めているのですか。
○林会長 人間ドック学会が標準の検査項目を決めています。それに則ってやってくださいということをやっているのですが、冒頭にも少し申し上げましたように、肝炎検査の項目は以前よりは減っております。その理由は2点ありまして、1点としては、感染症であることから個人情報でクレームが付いて、人間ドック学会が外す方向にいったということ、もう1点は、いわゆる雇用者側から陽性者が出た場合の雇用条件等についていろいろな意見が出てきたので、人間ドック学会としてはその項目を入れることに消極的になっているということなのです。
○鳥越委員 消極的になっているのですね。
○林会長 先ほどもお話にありましたように、これは法的な拘束力はありませんので、学会から民間の人間ドックをやっている所に、これを項目に入れてくださいと何回も要望したのですが、そのような理由で現在は項目に入っていないということです。
○鳥越委員 その辺をこの協議会で、スタンダードの中に入ることができるように。もちろん、プライバシーや労働などいろいろな問題はあるでしょうが、そこは費用対効果と言うか、肝炎ウイルス検査をやることの意味とプライバシーの問題のどちらを採るかということだと思います。プライバシーの問題はあるけれども、肝炎ウイルス検査を早めにやった方が、その人の人生はハッピーになると思うのです。がんになった身から言いますと、早く検診をと思うのです。
例えば、この間芸能レポーターの梨本さんが肺がんで亡くなられました。おそらくギリギリまで検査をせず、レントゲンを撮った時点でもう駄目だった、検診が遅れたから3カ月で亡くなってしまったわけです。同様に、肝炎も早く見つけて早く処置することができれば、肝硬変や肝がんに移行せずに治療ができるということなら、この協議会に肝炎ウイルス検査をもっと推進できるような具体的な方策を考えてほしいと思うのですが、いかがでしょうか。
○外山健康局長 先ほどは説明が足りず、本当は具体的なことを書きたかったのですが、概算要求の発表が今日の4時とのことでしたので書きませんでした。実は労働安全衛生法の思想があって、それを越えて、このような検査を必ずすることが義務づけられればいいのですが、ちょっと枠がありまして、いま任意で上乗せをお願いしているという形です。しかし、それはそれで今後とも継続しますし、一方で、より具体的な事業として、1つには出前検診というのがあります。職域においては検査が十分でない企業もありますので、自治体から検診車のような形で実際に出向いて行き、そこで上乗せする、いろいろなパターンがあると思いますが、そういった事業をやりたいと。
さらには市町村でのモデル事業として、肝炎の部分は無料のクーポン券を配り、商工会等ともよく相談しながら重点的に事業を行いたいと。それらが先ほどの上乗せ、いままでの検診とは違って、上乗せとして研究は5億円、その事業には39億円というところで、いままでにない切り口の肝炎検査を上乗せしてやりたいと思っております。鳥越委員が言われた、さらにと言うか、制度の垣根を越えて追加するというのも1つの考え方だとは思いますが、それに似たものとして、事業の流れはちょっと違いますが、無料の検診も上乗せする形、市町村で使いやすい形で商工会や中小の企業と連携しながら、無料クーポン券あるいは出前検診といった形でやりたいと考えております。
○林会長 法的に拘束力のある企業の検診と、任意にやる人間ドックがあるのですが、両方とも対策を具体的に書いた方が、陽性者のピックアップということになると思います。
○鳥越委員 肝炎かもしれないから自主的に調べよう、ウイルスに感染していないかどうか調べてみようという人は、ある意味オーケーなのです。そうではなく、全くその自覚がなくて、自分は肝炎など関係ないと思っている人で肝炎に感染している人たちがかなりいる、それは相当な人数がいるだろうと思うのです。そのような人たちをチェックして見つけ出すことが大事なのではないですか。
○林会長 おっしゃるとおりです。
○鳥越委員 クーポン券を配っても、自分は肝炎ではないと思っていたら使わないのではありませんか。普通の検診行為の中できちんと見つかっていくような方法が何かないのかと思います。
○阿部委員 今の話ですが、私自身は会社に勤めていて、40歳のときに人間ドックに行ったのです。そのときはC型肝炎とは分からず、肝機能のある部分の値がちょっと悪いということで、それ以降ずっと調べたらC型肝炎だったということなのです。それから10年勤めましたが、C型肝炎を隠して仕事を続けている方というのもたくさんいらっしゃいます。たまたま私は大きな企業に勤めておりましたから、そのようなものはあまり感じなかったのですが、上司の理解がなかったり、小さな企業ですと、肝炎だとわかると辞めざるを得ない、リストラの対象になってしまったという方も現にいらっしゃいます。また、B型肝炎の人で介護の仕事をしている人などは、隠していないとほとんど仕事を続けることができない、そのような会員もいらっしゃいます。
職場で一律にやるということについては、私はかなり問題があると思いますので、やはり住民検診に行ってもらってやってもらうと。私自身がそうだったのですが、入社して以来、肝機能は一度も異常値がなかったのです。ただ、ZTT、TTTという数字があって、それがちょっと高かったのです。ウイルスのある、なしは分からなくても、肝炎では測ると数値が顕著に高いものがあるので、例えば職場の保健推進、私の職場は看護師さんがおりまして、病院に行きなさいとしつこく言われました。職場の中では、一定の指標を決めて受診を指導するといったことをしないと、いまは管理職になれる人も非常に少なくなっていますから、肝炎を患っていると言うだけで不利になってしまうのです。私も結局少し手前で降りて、辞めてしまったのですが、本当に勇気の要ると言うか、初めにかかった先生には「人生観を変えなきゃ駄目だよ」と言われました。
○林会長 今いろいろと対策を考えておりまして、会社によっては検査はするのですが、肝炎の結果は会社側にいかず、ご本人にだけしか通知がいかないようなシステムを採用している所もありますので、実際に肝炎ウイルスマーカーを測らなければ分かりませんから、測らざるを得ないと思いますが、それについてはいろいろな対策が考え得るものであると思います。鳥越委員が言われたとおり、いままで様々な検討が行われてはいるのですが、いろいろなハードルがありまして、なかなか実現しない点があります。もちろん、これは文章上で事務局に一度検討していただきたいと思っております。それ以外になければ、少し時間がオーバーしてきましたので、本日の指針案についての意見交換は以上で終了させていただきます。本日の意見を踏まえて、また事務局の方で指針案をご検討いただきたいと思いますし、次回、阿部委員からもご発表いただければと思っております。次に、2番目の議題に移ります。その他ということで、木村委員から資料が提出されておりますのでご意見をお伺いしたいと思います。
○木村委員 本日、指針案なるものが出されましたが、全体的なことで言いますと、現状の問題点として何があるか、それを出した上での検討がなされ、現状の良い対策なり、自治体の取組なりを参考にして、指針の内容に反映していただければと感じております。本日はB型肝炎患者としての医療費助成等についての意見ということで、3頁にわたる資料を提出いたしました。大枠で3項目挙げております。1項目目はB型肝炎患者特有の問題として挙げております。2項目目、3項目目についてはB型肝炎患者のみならず、全肝炎患者についての問題点、要望を挙げております。時間が少しオーバーしておりますが、ペーパーを読ませていただきます。
第1回の肝炎対策推進協議会におきまして、全国B型肝炎訴訟原告団、弁護団は薬害肝炎全国原告団、弁護団及び日本肝臓病患者団体協議会とともに、3団体共同の要望書を提出するとともに、核酸アナログ製剤等への医療費助成の在り方などについて、独自の意見書も提出させていただきました。現在、C型肝炎についてはインターフェロン治療が進展し、その治療費に対する支援によって治療機会が格段に広がり、3団体共同の要望書が指摘するとおり、肝硬変、肝がん患者に対する治療や生活への支援は極めて脆弱です。同時に、B型肝炎につきましては、核酸アナログ製剤への助成が開始されたものの、インターフェロン治療の場合とは異なり、医療費支援が治療機会の拡大につながらない深刻な実態であると言えます。私はB型肝炎訴訟最高裁元原告としまして、この協議会の委員となっている立場から、B型肝炎訴訟原告団、弁護団の意見書につきましてもご説明をし、委員の皆様によるご検討をお願い申し上げたいと思います。
1つ目としまして、まずB型肝炎ウイルス感染者・患者にとっては、現在の核酸アナログ製剤助成の在り方について、大幅な改善がどうしても必要です。肝炎対策基本法の施行以前は、肝炎ウイルスを抑える抗ウイルス薬の助成としまして、インターフェロン治療のみが対象とされてきました。しかし、私たちB型肝炎ウイルス感染者・患者の場合、インターフェロン治療は比較的若い患者にしか推奨されず、また効果も約30%程度の患者にしかないという実態です。ですから、肝炎対策基本法が成立する際に、B型肝炎の治療に効果があるとされる核酸アナログ製剤への助成が検討されたことは、私たちにとってとても大きな希望を抱かせるものでした。
しかし、肝炎対策基本法の施行とともに、核酸アナログ製剤への助成が開始されたとき、B型肝炎の患者の間には、率直に言って失望感が広がりました。それはこの助成の内容が、実際の私たち患者にとってメリットがほとんどないものだったからです。なぜかと言いますと、今回の核酸アナログ製剤への助成は、原則として自己負担限度額を月1万円、上位所得者では月2万円とするものですが、現在では核酸アナログ製剤の中で第1選択とされているエンテカビルの場合、薬剤の自己負担割合が3割で月額9,000円弱という支払いが実際です。自己負担額月1万円を超える助成制度では、実際の患者の経済的負担は軽減されないという事実がございます。
こうした実態が生じた原因としましては、相当高額な費用負担が求められるものの、治療期間は1年から1年半という比較的短期間で済むインターフェロン治療に対する助成と、同じ発想、構想で核酸アナログ製剤への助成の制度が、そもそも確立、設計されたためかと思われます。つまり、核酸アナログ製剤は毎月の自己負担額がインターフェロン治療より低額で、一旦服用を開始すれば、基本的にはいつまでも飲み続けなければならない治療です。服用を中止すると、肝炎が再燃、悪化する可能性が高いということですから、自己負担額を月1万円とするような助成の方法では、短期間の高額負担が求められるインターフェロン治療であれば、患者負担の軽減に役立つものの、比較的低額の負担が極めて長期間にわたる核酸アナログ製剤治療の場合には、患者の負担軽減にはつながらないという現状です。
取りわけ深刻なのは収入が十分でない患者の場合で、たとえ毎月の自己負担額が比較的低額であっても、服用期間が長期にわたる核酸アナログ製剤治療に踏み出すことができず、結果的に肝炎の悪化をもたらす危険性があるという点がございます。こうした事情から、私たちB型肝炎感染者・患者にとっては、核酸アナログ製剤の自己負担分を基本的にゼロに近付けていただけなければ、医療費助成の意味がないに等しいと言わざるを得ません。少なくとも低収入の者に対しては、自己負担をゼロにするという助成を導入し、安心して治療を受けることができるようにしていただきたいと強く希望しております。
2つ目としまして、肝庇護剤の助成に関してですが、先ほど述べたとおり、B型肝炎の患者にとってインターフェロン治療は必ずしも決め手とならない。そして、核酸アナログ製剤の服用が重要な意味を持っていますが、これにも大きな限界がございます。まず、核酸アナログ製剤服用による催奇形性、すなわち生まれてくる子どもに遺伝的な異常をもたらす危険性があるという点、こうした危険性をおそれて、子育て世代の患者の中には核酸アナログ製剤服用を断念するという患者が少なからずおります。また、核酸アナログ製剤の服用により、耐性ウイルスが出現する可能性も否定できないことだと考えております。この場合にも、対症療法である肝庇護剤に変更、または頼らざるを得ない患者が多数おります。このように、B型肝炎患者にとって現時点で最善であるとされております核酸アナログ製剤治療を受けられず、肝庇護剤という対症療法に頼らざるを得ない多数の者がおります。子育て世代であるか否か、あるいは耐性ウイルスが出現したか否かといった偶然の要因で治療費の助成制度に差別がなされるべきではないと考えます。ですから、私は肝庇護剤についても、核酸アナログ製剤と同様に医療費助成がなされるべきであると考えます。
3つ目として、先ほどの話にも出ておりましたが、検査費用についてですが、検査についてはB型・C型肝炎の感染者・患者にとって、ウイルスの活動性、また病状について、定期的に検査を受けることが病状の悪化、進展を防いで、自らの健康と命を守るために不可欠であります。しかし、取りわけ無症候性キャリアの場合ですが、慢性肝炎などに見られる「疲れやすい」といった自覚症状を伴わないため、決して安い費用とは言えない検査費用や仕事を休まなければならないなど、経済的、また社会的負担を嫌いまして、定期的な検査すら受けない傾向が実際にも見られております。しかし、こうした実態は無症候性キャリアである人々の健康を損なうとともに、病状の進展、悪化による事後的な医療費支出を増大させる等、予防的な医療行政の観点からも決して好ましくないことであると思います。そのため多くの無症候性キャリアが存在するB型肝炎ウイルス感染者・患者については、ウイルスの活動性や病状に関する検査費用についても、医療費の助成の対象になるべきであると考えております。
3点ほど挙げさせていただきましたが、B型肝炎患者のみならず、C型肝炎、全肝炎患者について、この2項目目、3項目目というのは当てはまることですので、是非参考にしていただき、指針の中にもより詳しく取り入れていただければと思います。皆様、よろしくお願いいたします。以上です。
○林会長 木村委員、どうもありがとうございました。私の不手際から、本日も時間が非常にオーバーしてしまい、申し訳ありませんでした。以上で閉会とさせていただきます。本日はご多忙のところご参集いただきまして、本当にありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。最後に、事務局から何かあればお願いいたします。
○伯野肝炎対策推進室長 長時間にわたるご協議をありがとうございました。最後に、指針策定に当たりましては、関係省庁との協議が法律で定められております。このため、今後は関係省庁と内容の調整が必要となってくることを申し添えます。次回の開催は10月初旬を予定しておりますが、日程、会場等の詳細については、決定次第、後日事務局よりご連絡いたします。本日はお忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございました。
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