ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会> 第3回死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会議事録




2010年8月5日 第3回死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会議事録

医政局総務課医療安全推進室

○日時

平成22年8月5日(木)


○場所

省議室


○出席者

検討会メンバー(五十音順)

相田典子 (神奈川県立こども医療センター放射線部長)
池田典昭 (九州大学大学院医学研究院法医学分野教授)
今村聡 (日本医師会常任理事)
北村善明 (日本放射線技師会理事)
木ノ元直樹 (弁護士)
隈本邦彦 (江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授)
塩谷清司 (筑波メディカルセンター病院放射線科科長)
菅野健太郎 (自治医科大学消化器内科教授)
長谷川匡 (札幌医科大学教授)
宮崎耕治 (佐賀大学医学部附属病院長)
門田守人 (日本医学会副会長)
山本正二 (Ai学会理事長)

参考人

江澤英史 (放射線総合医学研究所重粒子医科学センター病院Ai情報研究推進室長)

オブザーバー

警察庁刑事局捜査第一課
文部科学省高等教育局医学教育課
日本医療安全調査機構

事務局

足立信也  (厚生労働大臣政務官)
大谷泰夫 (医政局長)
岩渕豊 (医政局総務課長)
村田善則 (医政局医事課長)
木村博承 (大臣官房総務課参事官(医療安全担当))
渡辺真俊 (医政局総務課医療安全推進室長)
山本博之 (医政局医事課課長補佐)


○議題

1 関係学会等おける死亡時画像診断の活用等の検討状況について
2 その他

○議事

○医療安全推進室長 それでは定刻になりましたので、ただいまから第3回「死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中、またお暑い中をお集まりいただきまして、ありがとうございました。
   本日は、副座長の今井先生と和田先生からご欠席の連絡をいただいています。また、江澤英史先生、放射線医学総合研究所重粒子医学センター病院の先生にもご出席いただいておりまして、後ほど資料の説明を行っていただく予定にしています。
  また、4月30日付で事務局に異動がありましたので、紹介させていただきます。医政局長の大谷局長でございます。

○医政局長 大谷でございます。どうぞよろしくお願いします。

○医療安全推進室長 大臣官房総務課参事官の木村でございます。

○参事官(医療安全) 木村でございます。よろしくお願いいたします。

○医療安全推進室長 医政局医事課長の村田課長でございます。

○医事課長 村田でございます。よろしくお願いいたします。

○医療安全推進室長 医政局医事課課長補佐、山本課長補佐でございます。

○医事課課長補佐 山本です。よろしくお願いいたします。

○医療安全推進室長 それでは以降の進行につきまして、座長、よろしくお願いいたします。

○門田座長 はい。門田でございます。暑い中をご出席ありがとうございます。座長自ら言うのもおかしいのですが、非常に頻回に会を開いていますけれども、順調に進んでいるのではないかと喜んでおります。本日も短い時間ですが是非よろしくお願いいたします。
  それでは最初に、足立政務官からご挨拶をお願いしたいと思います。

○足立政務官 皆様お疲れ様です。お暑い中、本当にありがとうございます。これで3回目ということになるわけですけれども、前回はこの問題について過去に取りまとめをされているということで、医師会での取組、それから科研費での研究と結果、そしてメンバーであります相田先生からご発表いただいたわけですけれども、今回と次回は、学会からの報告と学会関係からの報告という形で、2回に分けてお聞きしたいと思います。それらをもとに大体まとめの方向に入っていければと、そのように考えます。
  私はいま予算委員会をやっておりまして、丁度2時半から答弁に関連する部分に陪席しなければいけませんので今日は冒頭だけになってしまいますけれども、是非とも皆様方、もともとあまりご存知でなかった方も、あるいは非常に詳しい方もいろいろいらっしゃると思いますし、また立場も逆の方々もいらっしゃると思いますが、最近の取組、これまでの取組を生の状態で理解されて前に進んでいただければと思います。
  余計な補足かもしれませんけれど、先ほど門田座長のご挨拶でちょっと思ったのですが、私は厚生労働省に来て、皆様もそうだと思うのですが、いままで「頻回」という言葉をよく使っていたのですが、これは医者以外はほとんど使わないと言われまして。「頻繁」と使うのであって、「頻回」というのはそれを聞いただけで医者だなと分かるぐらい珍しいということを、国会議員になってから言われました。余計なことですけれども。どうかよろしくお願いいたします。

○門田座長 ありがとうこざいました。それではカメラ撮りはここまでということにさせていただいて、議事に入りたいと思います。それでは本日の資料について、事務局からご確認させていただきたいと思います。お願いいたします。

○医療安全推進室長 お手元の資料の確認をさせていただきたいと思います。本日の議事次第があります。資料1は第2回の議事録。資料2-1と資料2-2は「Aiにおける診療放射線技師の役割」というものです。資料3「病理解剖における『死亡時画像診断』の活用について」。資料4-1「日本型の死因究明制度の構築を目指して」。資料4-2「司法解剖標準化指針」というもの。そして資料5ですけれども「異状死に対応できる第三者機関とAutopsy imaging」というものです。以上です。

○門田座長 ありがとうございます。委員の皆様、資料のほうは問題ございませんでしょうか。それでは議事に入りたいと思います。
   先ほど足立政務官からもお話がありましたけれども、前回では日本医師会のこれまでやられてきている内容についてご報告していただきました。また、東大の深山先生からは、厚生労働科研費で行った研究についてのご報告という形でご報告いただきました。また、小児医療の現場の問題点についても、相田先生からお聞かせいただきました。
  今回は学会関係から、それぞれの学会の方々の取組の状況について報告をしていただくということです。日本放射線技師会からスタートして、4名の方から。先ほどありましたけれども、江澤先生からもご報告いただくということにさせていただきたいと思います。それでは、資料1について事務局からのご説明をお願いします。

○医療安全推進室長 資料1ですけれども、前回と同じです。今度は第2回の議事録になっています。皆様方には内容をご確認いただいて厚労省のホームページにも掲載しているものですけれども、さらに何かありましたらおっしゃっていただければと思います。終わった後でも、それ以降でも構いません。よろしくお願いいたします。

○門田座長 それでは先ほどご紹介いたしましたように、各学会の検討状況についてのご報告をお願いしたいと思います。まず最初に、資料2に基づきまして北村先生からお願いいたします。

○北村先生 日本放射線技師会の北村と申します。このような機会を作っていただきまして、本当にありがとうございます。今日の説明は、これまでの本会のAiに関するかかわり、それからアンケート調査、CTやMRI検査を行う際のガイドラインの作成などについて説明させていただきます。
  「日本放射線技師会とAiとの関わり」については、前回、日本医師会のほうからありましたけれども、Aiに関する中間報告が出されたということから本格的な活動を開始しました。平成20年11月に、本会の中に「Ai活用検討委員会」を設置して、今年3月に「X線CT撮像等のガイドライン」を策定し発表したという形で、今日の資料の中のガイドラインがそれです。
  検討委員会では「Aiに関する現状調査」をホームページ上で平成20年に行いまして、それをもとにしながら検討を始めたということです。Aiに関するアンケート調査の設問内容は17項目です。また11番のCT装置の装置名とか撮像性能については、さらに深めた形でアンケート調査をさせていただきました。
  この主な点について、Aiの利用装置としては、やはり「CTのみ」が86%を占めておりまして、実施時間帯は「診療時間内」が70%、「診療後」が28%となっておりました。外部依頼先の画像送付については、やはりまだまだ「フィルム」が58%と、半分以上フィルムで行っていたということです。
  Aiの画像保管については「院内サーバー」53%、「放射線部内のサーバー」に36%ということです。実施するCTのうち、MDCT装置がやはり85%を占めておりました。AiのCT撮影条件は、回答者のうちほとんどが「設定なし」となっていました。撮影範囲についてはやはり「頭部・体幹部」が21%で、「全身」が19%、次いで「頭部」17%の順でした。
  感染防止策としては「滅菌パックの使用」はまだまだ13%ということで留まっておりまして、まだほとんど使用していない状況です。また、Aiの運用についての取決めも「なし」という状況の中で、現在Aiを実施しているということになっています。費用・手当等についても、やはり「費用設定・手当なし」が90%という状況でした。
  個別意見として一部紹介させていただきます。緊急時や結果を急ぐ場合は、診療放射線技師の助言が欠かせないので、Aiに関する専門教育制度の設立を望みます。日常業務の中にも依頼がくるので、一般診療の患者様のことを考えると、Ai実施時には感染防止策などの配慮が必要であると思っております。Aiに関するテキストがなく学習する機会も少ないので、最適な画像や撮影法・倫理的配慮なども学びたいという意見もありました。きちんと取決めをして行わないと、民間施設では大変だ。現在はそのような場面になると、必要性を言われれば断われずに行うという現状です。
  このようなアンケート調査を通して「Aiをめぐる問題点」です。やはり日常診断に供している画像診断装置(CT・MRI)など、診療に使っているものを使用している。診療時間内に実施されると、建屋の構造とか動線が、どのような形で遺体を運ぶのかが難しい。診療報酬に適用されていないので、コスト負担が大きい。まだまだ法的整備がされていない。検査手順や検査方法が標準化されていない。日常診断業務の多忙の中で、スタッフへの負担が重くなってくるというような状況でした。
  このような問題点が明らかになって、実際検査するのは我々診療放射線技師であることから、Aiに関する早急なガイドラインの策定が求められました。Aiに関するガイドラインは、「X線CT撮像等のガイドライン」としてMRIも含め策定いたしました。ガイドラインの構成は今日の会議の資料として提出しております。Ai実施時の基本事項、感染防止、撮影技術の標準化、画像データの保存・管理、教育・研修システムについては、Aiを実施する上で大変重要なものと位置づけております。
  次に「Ai撮影時の留意点」については、これもスライドの通りです。Ai受付、遺体搬入、Ai撮像、遺体搬出、画像読影、画像処理、画像保存、と分けて確認したいと思っております。
  まず「Ai受付」については、次のことを確認しておくことが必要です。?@検査目的。院内で死亡した患者かどうか、DOA患者なのか、医療関連死疑いの患者なのか、警察が関与する患者なのか。?Aそれに対する検査モダリティは何でするのか。?B画像データの取扱いはどのような形でするか。画像処理は3Dまでするのか、出力はフィルムなのかCD-Rなのか、画像診断に対する要求は何か。
  それから、?C受付の中で感染症の有無も確認しなくてはならない。それについては、納体袋(ボディ・バッグ)の利用も必要。それから防水シートやシーツの利用、時間帯の調整もしなくてはならない。?D遺体の状態はどういう状況なのか。死後の処理。腐敗、欠損、治療痕などがあるのかどうか。さらに遺体の中に挿入チューブ、カテーテルなどがあるのかどうか。それから?E搬入時刻。搬入経路の確認、一般患者等の状況。ということで、Ai受付の後にはAi検査依頼フォームの確立が絶対必要であろうということです。
  「遺体搬入」については、?F受け容れの準備。スタンダードプリコーション、検査室の空調管理はどうなっているか、検査室の周囲状況、遺体搬入経路。?G受け容れに際しての遺族の承諾書等の確認、遺体の確認、伝達事項があるのかとか。やはり、感染防止に対する準備がこれについては確実に必要になってくる。
  それから「Ai撮像」です。?H撮像については、撮像体位、原則はそのままの状態を維持して撮影するわけですけれど、人によってはアーチファクト低減を考えなくてはならない。それから、標準化した撮影条件で行わなくてはならないということです。?I感染への配慮。特に、撮影する場合には接触感染の防止をしなくてはならないということです。そういう意味では、撮像条件の標準化(ガイドライン)も必要になってくるということになると思います。
  さらに、撮影が終った後の「遺体搬出」です。?J汚染等の確認と除染。体液・排泄物の付着があるかどうか、臭気への配慮とかです。?KAi撮像後の報告書の作成です。使用装置、使用時間、撮影条件、撮影部位などをしっかりした形で残しておかなくてはならない。ということで、感染防止に対する汚染確認、あったかどうか、それと撮像に関する記録ということになろうかなと思っております。
  それから、画像読影、画像処理、画像保管および提供ということです。?LAi画像読影については、Ai専門技師による検像、まず一次読影、それからAi専門医、Ai情報センターに診断依頼という形になろうかと思います。?MAi画像処理。どこまで画像を作るか、目的に応じた画像処理。3D処理までするのか、3D-CGグラフィックまでするのかということです。?NAi画像保管および提供。Ai画像保管システムの構築と運用が必要で、それに伴って個人情報の保護も必要になってくるということで、目的に応じた画像処理と読影が必要です。それと、Ai情報の適切なマニュアル管理、これも必要になってくることになろうと思います。
  いま挙げた課題としては、Ai検査依頼のフォームの確立、感染防止に対する準備、撮影条件の標準化(ガイドライン)、感染防止に対する汚染確認、撮像に関する記録、目的に応じた画像処理と読影、Ai情報の適切なマニュアル管理が必要になってきます。
  これは、今年4月に厚生労働省医政局長通知が発出されました。その中の診療放射線技師が実施することができる業務の具体例として、画像診断における読影の補助を行うこと、もう1つが放射線検査等に関する説明・相談を行うことと出されております。Aiについても診療放射線技師は、得られた死後画像について読影の補助(レポート作成)を行うこと。 Ai検査について説明や相談を行うことが必要になってくる、ということが今後発生すると思われています。そのための教育がやはり必要になってくると思っております。
「Ai利用の課題と今後」です。やはり一定の品質を担保し得るAi画像を提供するためには、診療放射線技師がAi専門の教育を受け、Ai撮影の担当をすることが、最も時間的、経済的に有効であろうと思われます。特に装置管理と撮影技術の発展には技師の力が不可欠である。さらに、Aiによる医療訴訟の回避の可能性は、医療と患者の信頼関係の改善に重要なツールであるため、院内病死などにも適用されてきていることから、品質の担保のためにはCT装置の保守等の経費を含め、どの程度必要か費用対効果を試算する必要も出てくるだろうと思われております。
  これからの「Aiにおける診療放射線技師の役割」として、やはり、日本放射線科専門医会、医師会、Ai学会等が協力体制をとって進めていかなくてはならない。そういう意味では、今年6月に行われたAiに従事する医師・診療放射線技師の教育研修会、これが札幌で行われました。このような形で今後講習会・研修会が必要になってくるだろうと思っております。
「最後に」、Aiは、臨床医はもちろん、画像読影の放射線科専門医、それから我々撮像を行う診療放射線技師、そして剖検時には法医学や病理医が積局的にかかわりをもって行っている。Aiを行う上では、すべての職種が足並みの揃うような体制を整えて協力することが重要であろうと考えております。ありがとうございました。

○門田座長 ありがとうございました。非常に具体的なお話をしていただきました。それではご質問を受けたいと思います。いかがですか。
  それでは私のほうから。この最後から4枚目、「Ai利用の課題と今後」の1)で、Ai専門の教育というところで、決め事はたくさんあるということは分かるのですけれども、実際に撮像する技術的なことというのは、何か特殊なことはあるのですか。

○北村先生 特に技術的なことについては、大きなことは多分ないと思います。ただ、死後画像と生体の画像とに違いがあるので、そこのところをどういう形で表現するのか、どういうシークエンスで撮影するとか、そういうことは必要になってきます。それから、いままで我々が教育されていない倫理の問題とか、そういう死後の問題とか、いろいろな課題が出てくると思うのですね。その辺はやはり、一般的な教育ということも必要になってくるのではないかなと思っております。

○木ノ元先生 ご発表いただいた、最初の「Aiに関する現状調査」がありましたけれども、回答数171名で施設数134施設ということなのですが、これはAiの目的とかそういうことについてのデータはあるのですか。どういう目的でAiをやったのかというものは。

○北村先生 そこまではやっていなかったのです。一応、現状はどうなっているのだろうかということで、急遽始めたということです。

○木ノ元先生 Aiをやったか、やらないかというところをメインにということですか。

○北村先生 はい。

○木ノ元先生 わかりました。

○山本先生 先ほどの補足なのですけれども、実際にご遺体を撮る場合というのは、生体とかなり異なるところがありまして、生きている方でしたら、手を上げて胸のところを撮るのですけれども、亡くなった後は手を組んだりするのですね。そうすると、線量の関係とかが異なってきますので、やはり専門の技師さんがある程度知識をもった上で検査を行うというのが重要だと思いました。

○門田座長 ありがとうございます。そのほか、いかがですか。
  このアンケート調査で驚いたのですけれど、実施時間帯が診療時間内というのが多かったのですね。

○北村先生 そうですね。見るとやはり、時間外でなくて診療中の内で、依頼が来たときすぐにやるという形で、検査の合間をみてやるという形が多かったみたいです。そういう意味ではやはり感染のこととか、いろいろな配慮が必要になってくると、いまの現状では思われます。

○隈本先生 この調査で、マニュアルがないケースが多いということなのですけれども、本当にAiですという認識で行っているのか、あるいは医療現場では亡くなっていることが明らかであっても死因究明のためにAiとは敢えて呼ばずにやっていることもあるという話も聞くのですが、この調査の場合はそれとの区別は付いているのでしょうか。

○北村先生 調査は2年前ですから、そこまでは厳密な形の区分けはしておりません。ただやはり、その前はAiという感覚はなかったのはたしかですね。死後画像を、写真を撮る、検査をするという意識だけで依頼を受けて、撮影しているというのが現状だと思っています。

○門田座長 そうすると、このAi云々ということが話題になりだすと、逆に今度抵抗感が出てくる可能性もあるのですか。

○北村先生 ただ、いまの現状の中では抵抗感というよりは、その整備がしっかりされた状態の中で検査をやりたいというのが、やはり診療放射線技師が思っている、アンケート調査の中の一部だと思います。

○門田座長 ほかにいかがでしょうか。

○今村先生 ちょっと聞き漏らしたかもしれないのですけれども、検査目的、先生がお話になった受付からというところで、院内の死亡かDOAか、医療関連死か、警察が介入したケースかと、こういう区分けをされているのですが、今回実施されているところの総数の中でのそういう内訳のようなものはあるのでしょうか。

○北村先生 これは、まだそこまで行った状態ではなくて、ガイドラインを作る段階でこれが必要でしょうと。ただ今後ですね、これからやはりさらにこれを調査して、これを分けていかなくてはならないなと判断しております。

○今村先生 そうすると、救急で搬送されてきた方を撮ったか、院内で亡くなった方を撮ったかという区別は分からないということですか。

○北村先生 そうなります。

○今村先生 ありがとうございました。

○門田座長 ほかはいかがでしょうか。

○宮崎先生 宮崎です。当院でオープンして、実際に撮像に関してはほとんど技師の方に迷惑をかけるのですね。当院の場合には技師長がAi学会に深くかかわっておられますので、そこのところは結構スムーズにいったのですけれども、これが普及するに当たって、放射線技師会として、全体的にこれをやるという同意は得られるのでしょうか。

○北村先生 いま、技師会としてのAi検討委員会というガイドラインを作ったということですね。これは同意を得られるかというわけではなくて、現実的に検査依頼があったら断われない状態ということになろうかなと思っております。そういう意味で、どういう形かで標準化された条件の下で。病院ごとに方法はちょっと違うと思うのですね。それをしっかりした形で作ってくださいということが、ガイドラインの中にも書かせていただきましたけれども、そういう意味では、全国共通な形の一率な検査をできるような状態で、我々がしたいというものを提案しているという形になろうかと思っています。

○門田座長 よろしいですか。そのほかいかがでしょうか。
  いまのご発言と関連するのですけれど、実際アンケート調査で返ってきていますけれど、返って来ていない人たちが、頭から反対の人たちから来ていないとか、そういう感じというのは何かありますか。

○北村先生 現況的には、検査について反対というのはないです。そういうことはいままで聞こえてきていません。そういう意味では、どういう形でかかわっていくか、それをどういう条件下で行うかということを、やはり整備していかなくてはならないというのが技師会としての役割だと思っています。

○門田座長 そうすると、良し悪し、するしないではなくて、やるべきことをピシッと整備するということが大事だと。

○北村先生 そういうことですね。

○池田先生 先ほど話があった中で、いまの技師さんたちが積極的にかかわっていただけることに関して、アンケートにもありますけれども、法的整備の必要性という項目があったのですけれど、それについては技師さんたちは一体どういう法的な裏付けが必要だとお考えなのですか。

○北村先生 いちばん、調査した頃は、医療機器を使ってご遺体を検査していいのかというのが、まず頭にあった。それから、遺体の管理というのか、それをどうするのか。いままで救急の現場で行っていて、そのまま亡くなってから検査したとかですね、その取分けというか、なかなか難しい問題があるということと、やはり外部から依頼された場合の対応の仕方とか、それが整備されていかない限りは、問題が多くあるということだと思っています。

○池田先生 やはりその辺については、いまのところ法的な整備まで整っていないと技師さんたちはご協力いただけないというわけではないのですね。

○北村先生 そういうわけではないです。やはり、そういう確固としたもので確立された中で仕事をしたいというのが皆さんの気持ちだと思っています。決して検査をしないということではありません。

○木ノ元先生 すみません、もう1つ質問なのですが。実際Aiをやって死因究明ができたとかできないということについては、わからないのですか。そこまで調べていませんか。

○北村先生 そこまで調べていませんが、ある程度、診療放射線技師、この検査をやる方たちは、画像読影まで判断できる方もいます。ただ、そこまでどうなったかと、その死因究明の画像診断の結果が返ってくることがあまりないので、その辺は1回整理していかなければならないと思っています。

○門田座長 そのほかいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、北村先生の発表はここで終わりたいと思いますが、また最後に総合的に何かあれば、そのときにご質問をいただきたいと思います。北村先生、どうもありがとうございました。引き続き、資料3に基づいて長谷川先生からお願いします。

○長谷川先生 それでは、病理学会の立場からお話させていただきます。最初に、これはいままでも随分お話があったと思うのですが、「医療における病理解剖の役割」ということで、病理剖検の意味ということでそこに挙げさせていただいています。反省すべき問題点を明らかにするというのが、診療に役立つということで、病理解剖の重要性があります。卒前卒後教育に、医療の検証の場として重要な役割があるということを、最初に述べさせていただきます。
  日本の医療を一定の水準に保つための病院における「病理解剖」機能を維持、充実させていくことが、病理学会としては非常に大事であると考えています。いまAiの検討もなされていますが、ある程度病院の中で病理解剖技師あるいは標本作成費用についても配慮していただける病院もあるのですが、多くはまだ保険診療から外れていますので、厚労省としても是非その辺りを公費でお願いしたいというのが、引き続き私たちの希望です。
  今回のAutopsy imagingと病理解剖のかかわりということで、私たちの経験をもとにいくつかお話させていただきます。Autopsy imagingは、昨年出ましたガイドラインからの抜粋ですが、狭義のAutopsy imagingと広義のAutopsy imagingの2つがあります。狭義というのは、画像を撮像して、例えば脳に出血があるということがわかるわけですが、下にあるように病理解剖を行って情報が付加されると、つまりそこに出血を起こすような出血性素因があったということで、この患者さんの出血は単なる脳血管の障害だけではなくて、全身の、例えば肝硬変があって出血を起こしたということが非常に重要な意味があります。もちろん、いろいろな状況に応じて撮像する場所を限定していく意味はあると思うのですが、広義のAiのほうが広い意味での情報が得られるということを述べたものです。
  次に、私たちの大学では放射線科の兵頭先生と協力しながら、図の中では放射線科と病理学ということで、右側の取組を行っています。兵頭先生もよく話をするのですが、Aiだけですと、先ほども申しましたように、狭義Aiとなるとどうしても情報が足りないということで、病理と連携をしていくと。先ほどの北村先生のお話にもありましたが、みんなで協力をしながらやっていくことが大事だということです。実際、死亡時画像診断の院内装置をどうするか。例えば私たちの所では感染防御対策もとりますし、撮像時間をどうするか、動線をどうするかと、いろいろ技術の方とも協力しながらやっているわけです。
  それから、大学という所ですので、学生や研修医の教育のために非常に重要だという認識があるわけです。Autopsy imagingもそうだと思うのですが、ご遺体を前にして学生や技師や医師がどのようにして遺族と接していくかが、非常に重要だと私たちは考えます。今日は文科省の方もいらしていますが、平成20年度の「質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)」の支援をいただきまして、死亡時画像診断による教育支援プログラム、副題としては人間性豊かな医師の育成を目指してということで実施してきました。
  これは、Aiと病理解剖に学生が参加し、患者の死を体験すると。かつ、そういったものに対してどのように遺族の心情を組み取る場を提供できるか。それから、Aiと病理解剖を両方経験することで病態の理解が進むことを、教育上のメリットがあるとしています。私たちは、従来から学生主体の臨床病理検討会(CPC)を開催していたわけですが、これにAutopsy imagingを組み込むと。それから2番目にもありますが、遺族と学生に面談をしてもらって、遺族の心情を組み取るという2本立てで行っており、非常に高い評価をいただいています。しかし、なかなか現実的に医学生の教育の中に、患者の死をどのように扱うか、臨死あるいは死後に対する教育が十分でないこともあり、私たちの取組もまだ不十分なこともあり、なかなか遺族面談にまで道が遠くて、いま今年度最後の面談をやっている状況です。
  3番目の臨床病理検討会CPCに関しては、Aiと画像との対比で、いまの学生や若い病理の先生は、放射線の画像を見る経験が非常にありますので、放射線の画像と病理の所見を対比して見ることが教育的な効果が高いと。それは、大きなメリットだろうと思います。そういった所見を発表したり、遺族面談まではいかないのですが、主治医と面談をして、主治医がどのように患者に接したかというCPCの発表を学生自身に行わせ、メディカルソーシャルワーカーの教員にコメントをいただくということで、毎年CPCを開催してきています。
  実際この取組は、学長以下倫理委員会の審査も受けていますし、大学附属病院の診療放射線技師の方の協力も得ていますし、CPC委員会といってCPCを開くための臨床各科の先生方の協力も得ています。下にありますように、コア教員という放射線医学講座・放射線部、病理学講座・病理部、緩和医療学講座の教員が中心となって、事務局のサポートもいただいて推進をして、医学部教授会で報告をしたり、またそれを学生の評価、あるいは外部評価をいただいて活かして、PDCAサイクルといいますが、そのようにして今年度最後ですが、3年間の取組を行ってきている状況です。
  これが、実際のAi実施の様子です。当初は右下のMRIも用いてやっていたわけですが、これは実際に診療の時間内でしか使えませんし、現実的にこれを行うのは非常に難しいわけですので、左上のCTを使ってこのようにボディー・バッグに入れて息漏れをしないように配慮しながら、感染防止策もとってやっています。
  このように、医学生と担当医師が一緒にご遺体を移送しています。下の写真は、援助をいただいて院内サーバーとディスプレーも設置して、実際にこういう画像を提示し、それを見ながら病理医も解剖をすると。かつ、それを横の白衣の学生も見学する取組をずっと行ってきています。
同じように、学生が搬送に協力しています。これは、地下の専用の放射線治療の操置なのですが、それを使って撮像しています。下にありますように、病理医が解剖をして、その周りを学生や研修医が見学すると。いつもCTの画像と対比させながら、ディスカッションしながら病理解剖をしている状況です。
  私たちは、Aiセンターのように多数症例をやっているわけではないので、全体でも取組が始まってまだ10例しかできていません。ここで見ていただくとわかると思いますが、救急とICU、いわゆる来院時、心肺停止状態で病理診断あるいは病態が全くわからない患者さんや、ICUですと外科の手術後に多臓器不全を起こしたと。決して医療関連死というわけではないのですが、患者さんに説明をするという意味でも、Aiと病理解剖が非常に重要だということを、特に臨床医の先生方にも理解していただいて、こういう症例にはAiと病理解剖をやったほうがいいということで多くなってきています。実際、それ以外の症例も当然入っているわけですが、2つほど実例をお話させていただきます。
  1例目は71歳の男性で、臨床診断は食道癌で全身に癌の拡がりがあり、かつ腹部大動脈瘤、高血圧陳旧性脳梗塞という多彩な病気が付いている患者さんです。臨床上の問題点としては、進行期の食道癌で、化学療法と放射線治療、手術を行いました。通常ですとある程度落ち着くはずなのですが、すぐ全身転移が出現して亡くなられたので、患者さんの癌の拡がりについてAiと病理解剖を行った症例です。
  写真は、左下の矢状断のCTの構築像ですが、第4胸椎にこのように転移性の癌、扁平上皮癌があるわけです。全身にも拡がりがあるのですが、胸椎転移の所は、腫瘍が実際、後縦靱帯までは及んでいたのですが、その後ろ側の硬膜やくも膜、脊髄まではいっていないということです。これは、放射線画像が詳細に撮られたということで、左上のように合わせて矢状断で脊椎を病理で解剖時に撮りまして、そこを矢状断で標本に作成したというところです。通常、このような解剖の標本の取り方はしないのですが、こういう病態あるいは病気の拡がりと画像を合わせて、病理標本を作成し検討するという意味で、非常に意味があったという1つの例です。
  さらにこの患者さんは、癌の拡がりのほかの所は転移の場所はわかっていたのですが、治療してから亡くなるまでの間に時間があって肺のCTが撮れないということで、肺の病変がよくわからなかったのです。左上にありますように、マクロではあまり変化のない肺なのですが、CTではこのように間質性肺炎か癌性リンパ管症かというような像が拡がっていました。当然この患者さんの基礎疾患を考えますと、やはり癌性リンパ管症だと放射線科の読みもそうだったわけですが、実際に右で見てみますと胸膜発症を来たした癌がありまして、リンパ管の中に癌がたくさんあったということで、癌性リンパ管症だったという意味で、放射線画像を裏付けるような病理解剖の所見を1つ提示させていただいたわけです。
  次は、72歳の女性の方で、救急で来られた患者さんです。来院時、心肺停止状態で、突然倒れたということで頭部打撲と裂傷があったと。自宅玄関前で倒れていたということで搬入されたわけですが、腰椎穿刺の結果は血性随液でくも膜下出血だったということです。外傷性のくも膜下血腫なのか、ほかの動脈瘤の破裂なのかというのがわからなかったと。通常は当然動脈瘤だと思うのですが、裂傷、打撲があるとそういうことも考えないといけないと。
  実際CTでは、くも膜下出血というのはきれいにわかるわけです。しかし、左下のように開頭すると、くも膜下の下に瀰漫性に出血があって、これはくも膜下出血であると。CTだけですと外傷かもしれないのですが、この患者さんがもしCTだけしか撮られていないとすればですが、開頭して見てみますと前交通動脈の嚢状動脈瘤という最も多い場所の動脈瘤が破裂したということで、この患者さんは外傷性ではなかったと。そういう意味でもAiと解剖を一緒に行うことが非常に病態の理解、病理診断上の有用性があるということは言えると思います。
  これは実際に学生教育のためのCPCということですが、院内のCPCでも左上のように放射線科医がAiの画像を説明して、右下のように病理医が病理の結果を説明するという意味で、院内の教育にも役立てている状況です。
  まとめますと、「病理解剖上の有用性」という観点からは、死亡時画像診断は病理解剖を行う際に解剖が許可されていない部位、例えば頭蓋内、脳から一定の情報を得ることができますし、死亡時画像と対比しながら解剖することで、より詳細な病理解剖を行うことができるということがあります。
「ご遺族への説明」という観点からですが、死亡時画像を提示し、病理解剖を納得して受け入れていただく手段になることが期待できるわけです。実際私たちの所は、両方やることは当然納得いただいているわけです。また、その結果もご遺族に説明する際には、画像と病理解剖の結果を両方説明するということで、より納得していただくことにつながるのではないかと思います。
  「教育」という観点から見ますと、学生にとって病態の理解はしやすく、非常に教育的効果があると。そして、またCPCで通常の臨床情報に加えて、情報の厚みが増して、より深みのある討論ができる。臨床医にとっても画像の所見と併せて、解剖を依頼した担当医にとっても納得できる結果を得られるということで、我々の取組の一端、1つの限られた経験ですが、Aiと病理解剖を一緒に行うということは非常にメリットがあることは言えると思います。以上です。

○門田座長 ありがとうございました。ただいまの長谷川先生の説明に対して質問を受けたいと思いますが、いかがでしょうか。

○江澤先生 すばらしい研究をありがとうございます。大変感銘しました。ただこの発表は、札幌医大における取組であって、病理学会としての公的な意見ではないですよね。そうすると、これはタイトルはちょっと違うのではないかと思います。

○長谷川先生 もちろんアオザサ理事長ともお話して、内容も吟味していただきましたし、私たち以外のいくつかの施設でもAiと病理解剖を一緒にやっている所もあると思います。概ねこういうことであろうということで、最低限お話させていただいたわけです。

○江澤先生 私も病理学会員ですが、こうしたことを病理学会全体でディスカッションする場がこれまでなかったように思いますので、病理学会の公論とするのはちょっと難しいのではないかと私は思いますので、申し上げさせていただきます。

○長谷川先生 もちろん、今後病理学会の中で広く議論をしていくことはすごく大事だと思いますし、一応理事の先生方には賛同いただいているわけですので、今後、江澤先生がおっしゃられたように、学会全体でもう少し今回のをきっかけとして議論していくことは大事なことだとは思っています。

○門田座長 ありがとうございました。

○木ノ元先生 最後から2つ目のスライドで、「ご遺族への説明という観点から」というのがありまして、研修の中で学生も入ってご遺族に説明するプログラムも入っていると理解してよろしいわけですか。

○長谷川先生 まだなかなかそこまではできていなくて、学生が遺族とどのように接していくかというところのカリキュラムとしてはっきりしていないものですから、今後はこういうカリキュラムをやるべきだということで、準備は進めているのですが、まだそこまではいっていません。

○木ノ元先生 この遺族に対する説明なのですが、基本的に直接遺族とかかわるのは、病理医の先生になるわけですか。

○長谷川先生 まだ私たちは、担当の臨床医がAiの画像の結果と病理解剖の結果をお話しているというところで、現実的にはまだできていません。

○木ノ元先生 2枚目のスライドですが「剖検は、全身の病理医学的検索を通じて医療を反省し、明日の診療に役立てるという重責を担っている」という1文があります。医療を反省するということになると、診療行為関連死亡と結びつくというイメージで理解するわけですが、診療の過程ではもちろん画像の検査を行ったりしても、その結果は担当ドクター、主治医に伝えられます。主治医が、それを一応材料として総合的な診断をした結果は、主治医の責任の下に患者ないしは家族に説明するということでいきますよね。
  死後の画像を撮ったときに、それが診療行為の範疇なのかどうかとも関連するのですが、どういう形で遺族に説明するかというシステムをきちんと考えておかないと、説明窓口がいくつにも増えてしまうことになるります。診療行為中であれば最終的には患者、家族にどうしますかという選択の判断を委ねることができるのですが、死後になると専門家の意見だけが残って、それが独り歩きしてしまうという危険性もあるのです。その辺りを、きちんとシステマティックにする必要があるのではないかという認識なのですが、それはいかがでしょうか。

○長谷川先生 先生がおっしゃられることがごもっともで、病理医の言っていることと放射線科医が言っていることが、どうも前の臨床医の言っていることと違うということになるのは、それも公平だという意見もあるかもしれませんが、現実においては、やはりまだ主治医の責任というか、主治医に対してこういう結果でしたということで、窓口は一本化していくほうがいいかなと私自身は思います。もちろん、今後それを含めてどうしていくかということを、ディスカッションしていく必要も当然あるだろうと思います。

○菅野先生 私は内科学会の代表という形でも来ていますので、お伺いしたい点がいくつかあります。先生のお話は病理解剖に加えてAutopsy imagingをやることによって、病理解剖の精度も上がる。あるいは、今後病理解剖とAiを対比することによって、Ai自体の診断度の向上や限界を明らかにするという意味で、非常に有用であろうと。それが、また学生教育の役に立っているという趣旨だったと思うのですが、病理学会全体での議論がまだないというお話もありました。
  お伺いしたい点は、Aiが病理解剖に代わるものではないという点では、おそらく一致されているものだと理解してよろしいと思います。というのは、このごろ内科学会の認定医として、病理解剖を要件とすることが1つありますし、施設認定にも病理解剖の件数を規定していまして、それを何とか緩和してくれという意見がかなり多く寄せられている状況があります。いまの内科学会の立場は、やはりそこはまだ容認できるレベルではないということで拒絶しているわけです。そういう意味で、先生のお考え、あるいは病理学会としてのお考えの概略をお話いただければと思って質問させていただきました。

○長谷川先生 先生のおっしゃるとおり、解剖の裏付けがあってこそのAi、決してAiを否定するものでもありませんし、Aiをやれるものはどんどんやっていくことがいいと思うのですが、やはり認定医の教育、内科専門認定施設の基準要項、あるいは認定専門医の申請にも解剖は必須ですし、解剖をやってこそというのは非常に大事です。もちろん私たちもAi以外の通常の病理解剖もこの2、3倍ぐらいやっているわけですが、病理解剖を抜きにしてやっていくことはないだろうと思いますし、解剖あってのことは非常に大事だと思います。ですから、それはまさに私もそうですし、理事の先生方もおそらく同じだろうと思います。ただ、全体の必要な症例に関してのAiをやっていく、あるいはそこに病理医が協力するということに関しては、私たちはやりたいと思っているわけです。

○菅野先生 追加です。Aiは病理解剖が行われない例に代替措置として行うという趣旨ですが、先生の話を伺いますと、病理解剖を行う例にもAiを行うべきであると聞こえるのですが、それでよろしいのでしょうか。

○長谷川先生 そうですね。Aiがないと困る、その辺の重みづけはどこまであるかというのは、症例ごとにもかなり違うと思うのです。例えば、開頭が許可されていない部位でAiの画像があるということは、これは大きなメリットはあります。あと、通常は解剖のできない頭頸部、四肢、骨軟部など、病理解剖をしたから頭の先から爪先までわかるかというと、そうではないこともしばしばありますので、やはりAiが補助的にあるということは、情報の量としては非常に増えるという意味で、あるほうがもちろんいいと思いますが、絶対に必須かと言われれば、それは状況にもよるのではないかと思います。

○門田座長 それに関係して、先ほどの症例は解剖を承諾してもらったあとAiをした、あるいはそれは別個に進んでいったのか、この症例はどうだったのですか。

○長谷川先生 これらの症例は、Aiをやるということと、解剖をやるということを両方進めているのです。患者の選択の中に、両方いいですよとおっしゃられることは、このようにやっているわけで、解剖してから、Aiはどうですかというわけではないわけです。

○門田座長 その逆はないのですか。

○長谷川先生 うちの大学はAiのみということはやっていません。Aiをやる症例は必ず解剖というのは、後ろにくっ付いていますので、Aiのみということではやっていません。

○江澤先生 病理解剖の重要性はすごくわかるのですが、私も13年前に病理認定医を取ったのですが、そのときの必須の条件として、解剖経験が100例でした。それがその2、3年後に75例になり、50例になり、いまは40例になったと思っています。それが、本当に病理解剖が重要であれば、認定医の解剖基準を下げるという理由が非常に論点が破綻していると思うのです。なおかつAiよりも解剖が大事だということになると、非常に日本の死因究明制度に対しては、ある意味で病理解剖も下がっているということになってくると、それ以下になってしまうのではないかと思います。今後、病理解剖をどうされたいのですか。

○長谷川先生 死因究明に関しては、私自身も直接一緒にやっているわけではないので、これをどうするかというのは、今後の議論とか、こういうノウハウが蓄積されて、そういうことに活かしていくということだろうと思うのですが、そこに関してのコメントは私ども難しいのですが。
  先ほどの先生の質問があるのですが、私たちがAiと病理解剖の両方をやっているというのは、最初は臨床医からAiだけをやってくれないかとか、いろいろ言われたのです。先ほどのお話にもありましたが、技師のマンパワー、読影医の不足などもあって、教育の現場でこれを活かすという目的があったが故に、Aiと病理解剖ということになったわけです。だから、決してこれが一般の病院すべてにおいて、Aiと病理解剖の両方をやらなければ駄目だということはないわけです。最初にお話をしましたが、これは私たち自身の経験に基づいているわけで、そういったところの知識とか経験が役に立てばいいとは思うのですが、決して一般化できるとは思っておりません。

○江澤先生 病理解剖自体が減っているという事態に対して、病理学会はどのようにお考えなのですか。

○長谷川先生 いろいろな原因はあると思います。放射線画像の進歩も当然言われています。生検、手術症例の診断が忙しくなってしまったという現状と、病理医が不足しているという大きなマンパワーの不足は、原因としてはあると思います。

○江澤先生 解剖数自体が減っていますよね。

○長谷川先生 そうですね。確かに解剖数は減っています。

○木ノ元先生 先ほどの門田先生からの質問と関連します。Aiと病理解剖の実施で、そのときにご遺族に対してどのような説明をして了解を得るかという話が出ていましたが、このような統計は取っていないのでしょうか。ご家族に、病理解剖とAiという方法があるという提示をしたところ、ご遺族としては、解剖のように遺体を切り刻まれるのはかなわないけれども、Aiというのがあるならそちらをやってくださいと。そのレベルでいいということで、Aiだけを希望するという家族がどのくらいいるか。そのような統計を取ろうということはされていないのですか。

○長谷川先生 現実的にはそのような声は聞きます。Aiだけならいい、もちろんそのような方もたくさんいらっしゃると思うのですが、具体的にどのくらいの方がAiのみでいいかとか、解剖がなければ駄目だというのは取っておりません。それはすごく重要なことだと思います。

○木ノ元先生 科学的な重要性の巧拙については、もちろん専門家の研究の中でAiか病理解剖かという議論をやっていただくのは結構だと思うのですが、我々医学の素人の立場からすると、そこで死因究明という土俵に乗せて考えたときに、どのようなメニューがあるかという最終的な選択、遺族側のそういった思いみたいなものも入れた上で、何が必要、重要かという議論をしていただくのが、社会的なコンセンサスが得られやすいのではないかと思います。

○長谷川先生 全くおっしゃるとおりだと思います。

○今村先生 ただいまのお話は、前回の深山先生のAiに対する、亡くなった方に対する限界と有用性を説明した上で、同意を得た上で撮る。当然ご遺族の同意が必要だというのは当然なのですが、私も自分の家族が最近大病をして、病院に入院して手術したのですが、画像の診断というのは、途中までの診療行為の中でMRやCTを散々採っているのです。その説明の下に、我々は同意をしながら治療を納得して進めています。したがって、画像を撮ることに対する抵抗はほとんどなくて、最終的に、亡くなったあとに、亡くなった人の画像をまた撮るのかということについての同意は当然必要だと思いますが、そこで解剖とどちらの選択というメニューを同列には言えなくて、家族からすると、画像を撮ることに対する抵抗はないのではないかと思います。

○木ノ元先生 いまの点に関連してです。これはここでの議論に直接関係するかはわかりませんが、死後画像診断を推し進めていったときに、死後に画像を撮って初めてわかったことが仮に増えてきたとすると、なぜ生前に撮ってわからなかったのかという率直な疑問が出てくるわけです。
  そうすると、いままでの生前の画像診断がプアーだったのではないかという検証もやっていかないといけない。例えば1カ月に2回以上やったら費用換算されないという縛りの中で臨床をやっているという現実を踏まえて、死後にわかったものが、なぜ生前にわからなかったのだという疑問に、医療界全体としてどのように答えていくかを議論していかないといけない気がするのです。

○隈本先生 私は一般市民の立場でこの検討会に参加しています。解剖がいいのかAiがいいのかという比較は、研究としてされていることはいいと思うのですが、いま問題となっているのはそこではないと思います。Aiがない現状では、体表面から見て、この人はこういう死因でしょうねと解釈されいる。、つまり、体表面からの観察だけで死因が決まってしまっているという現実があるのではないか。国民の中にもそのような不安があるわけですが、そういう現状に対して、Aiを導入するのかしないのかが問題なのであって、それに関して、同意するのかしないのかというのは、制度ができて、説明を受けた患者、遺族の方が、同意をするかどうかを考えればいいことです。ここでAiと解剖とどちらが同意が得られにくいのか、得られやすいのかと議論をしていても、あまり意味がありません。むしろ国民に同意を求めるとすれば、1回当たり5万いくらという負担をして死因を究明してほしいと考えているのか、そうでないのか問うという、非常にわかりやすい論点だと思うのです。
  制度として作るとすれば、税金ないしは何かの形で費用負担するのは、研究者ではなく国民ということになるわけです。その国民が死因究明を望んでいるかどうかということです。できるだけいい形で着地させるということは、ここにいらっしゃる専門家の皆さんに是非考えていただきたいことなのですが、受け入れられるのだろうか、受け入れられないのだろうかという議論は、この検討会ではしなくてもいいのではないかと思います。

○今村先生 木ノ元先生のご質問で、診療中に撮った画像がプアーだったのではないか。当然そのようなこともあるかもしれませんけれども、先ほどのプレゼンでもあったように、生前治療をしているときになかった病気が起こるというのは、医療の場合に当たり前のことで、病気が進行していけば、いろいろな変化が起こります。そのような変化が起こるということを皆さんに理解していただくためにも、大事なのではないか。逆に、それがわからないまま亡くなってしまうよりは、ずっと価値のあることではないかと思っています。

○門田座長 そのほかにもあろうかと思いますが、時間の関係でここで打ち切らせていただきます。最後に時間があれば、そこでディスカッションの続きをしていただきます。次に法医学会から、資料4に基づいて池田先生からお話をしていただきます。

○池田先生 日本法医学会から、死因究明に資する死亡画像についての見解について、まとまっているところを発表します。今日は中園理事長に代わり、私からご説明します。
  いま病理学会の議論にもありましたが、死因究明ということは、そもそも法医学というのは法律にかかわる医学的事項を研究する学問ですので、法律にかかわる医学的事項とは何があるかとなりますと、いまも問題になっていますが、日本は厳然として戸籍制度があるので、戸籍に登載されるためには出生証明書を出さなければいけません。一方、亡くなって戸籍から抹消する場合には死亡届が必要です。昨今いろいろと問題になっていますが、死亡届を出さなければ戸籍は抹消されないばかりか、住民票もそのままになります。
  そのような現状の下で、死亡届を自分で出せるかというと、自分では出せません。他人が出したらすぐに死んでしまうかというと、そうでもありません。何が必要かというと、死亡診断書、死体検案書が必要です。そういう中で、法医学者は究極的に法律にかかわる医学的事項でいちばん大事なこととして、死亡診断にかかわっているという意味で、死因究明についても見解をまとめることになると思います。
  まず3頁です。そもそも「死因究明制度は、『何故』必要なのか」ですが、法医学会のコンセンサスとしては、「安心・安全」な日本社会の構築を目指すためにということです。これは医師法第21条でも、同じような内容がいま議論されています。究極的には犯罪の見逃しの防止、事件・事故の見逃しの防止。食中毒・食品汚染、国民にそのようなものが蔓延したときの見逃しの防止。新たな感染症、社会保障、保険、生命保険、損害保険、介護保険、年金問題等、いろいろな対応があります。
もう1つ、死因究明制度自身に不備があるということは、日本法医学会も十分に承知していますし、司法解剖に至る手順に不備があることも、法医学会員の共通した認識になっているので、日本中どこにいても、等しく国民として恩恵を受けることができる制度が必要だということです。異状死があった場合に、いまの制度としては検視をして、司法解剖をするという手続があります。
  それとは別に、司法解剖に至らないような遺体については、死因究明をなすということで、この死因究明については、今回の日本法医学会が提案している「死因究明医療センター」については、司法解剖に至らない遺体について、いかに死因を究明するかということになります。死因の究明に当たっては、どうしても検案が必要になります。検案を経た上で、必要があれば解剖することになります。この検案のところに、本日話題になっている死亡時画像診断あるいは死後画像診断がかかわってきます。
最初に、日本法医学会が提唱している「死因究明医療センター」については、都道府県に設置して、検案・解剖検査部門、病理検査部門、血清生化学検査部門、薬毒物検査部門をつくる。そのほかにも最近の学会の認識として、人類遺伝学の分野、法医放射線学の分野、死後画像検査の分野となると思います。薬物については、昨今の人手不足で、1つの県で賄うのは無理であろうということで、中央の分析センターをつくって行うといま考えられています。
法医学でいう死因究明というのは、単に死亡の原因を究明するというだけではなくて、究極的に戸籍抹消に至る死亡診断書、死体検案書を正確に書くということになってくると、大事なのは単に死因が何かという問題ではなくて、死因の種類が何かにいき着くというのが我々の考えです。
例えば海から上がった遺体が溺死であった場合に、死因が溺死であることについては、死後画像で十分に診断できると我々も思っています。ただ、溺死の原因が何なのか。自分で飛び込んだのか、酔って落ちたのか、突き飛ばされたのか、それによって、自殺、他殺、事故死ということになると、保険給付にも影響が出てきます。あるいはそのほかの諸々の現象が、ご遺族のみならず亡くなられたご本人の名誉の問題等まで発生してくることになりますから、そのような面で、正確な死因究明をしたいというのが、この死因究明センターの骨子です。いま申し上げたように、薬毒物分析センターについては全国的に展開することはまず無理だと考えられるので、中央あるいは管区ごとに集めることになると思います。
  お配りした資料を大まかにまとめたところが、死因究明医療センターのこのスライドです。死因究明医療センターは、専門知識を有する医師による検案、さらに検案で死因が明らかでない場合に解剖する。この死因究明医療センターの構想が出たときに、死因究明医療センターではすべて解剖するのだと誤解があったのですが、決してそのようなことではありません。専門的な知識を有する医師が検案します。この専門的な知識ということについてもいろいろと議論があると思いますが、いま検案、死亡診断書、死体検案書を発行しているのは、決して法医学者だけではなく、監察医、警察医、一般の臨床の先生方、特に救急の先生方は、死亡診断書、死体検案書を発行していますので、そのような医師による検案、さらに検案で明らかにでない場合に解剖することになると思います。これはあとでお読みいただきたいと思いますが、人口100万人当たり1人を配置する形で、解剖補助、ご遺族への対応を含めて、2名の職員を配置することになると思います。
  予算についてですが、ここには1人当たり200円となっています。これはアメリカの病理学会が、アメリカは病理と法医が一緒ですが、メディカルエグザミナーとの間で計算して、国民1人当たり200円の負担により、十分な死因究明ができるのではないかということです。この中にもありますが、日本においては、これだと240億ということになりますが、それほど必要はないと考えています。人件費だけで100億程度だと考えています。現実可能な都道府県から設置をしていくことになると思います。
  2の「設備」に出てきますが、各都道府県に設置するとしています。新たな施設が準備できるまでの間は、解剖施設を有する大学や自治体の基幹医療機関に事務所を構え、法医学教室、協力の得られる医療機関、病理部門、画像診断部門を合わせて、連携機関群を形成して行います。
  これもよく言われる話ですが、日本において死因究明医療センター構想が出るまでは、ドイツの形態を踏襲したものですが、法医学教室はすべて大学の機関にあると。したがって、人員等も自由にならない、予算にも制約があり、不利な点がある。逆に、大学の中にあることによって、病理部門、画像診断部門との十分な連携、協力が得られることがあります。そういう面では、いまのような形で、大学の中あるいは大きな基幹病院等に設置していただければ、従来と同じような活動ができるのではないかと考えています。これによって、検案、剖検、諸検査、死亡時画像診断を分担して実施するというのが、我々の考えです。
  検視との関係という意味では、本来検視は犯罪捜査の端緒にすると。検視規則で、行政検視をして犯罪性があると認めた場合には、警察署長に連絡をする。警察署長は法医学の心得のある者、一般的には警察医等と一緒に司法検視を行い、それにより、さらに必要があれば司法解剖を行うということで、検視というのはそもそもが犯罪捜査の端緒のためのものとなっていますが、それでは日本法医学会の目指す死因究明制度にはなりません。
  要するに、犯罪性がなければいいだろうという程度の死因究明しかできないということになって、1つ申し上げるだけでも、例えば保険の給付にも、犯罪性がなければ外因死でも、内因死でも、どちらでもいいのだということでは、公平な給付にはならないという考え方からいうと、検視ともある程度協力はしますが、異状死のうち犯罪性があるやないやの部分については、警察あるいは司法機関と、死因究明医療センターの当該医師とが綿密に連絡を取って行って、犯罪性がある場合には、あとは司法手続は従来どおりという形がいいのではないかと思っています。
  同じように、警察医の先生方に対しても、いま申し上げたように一般臨床医の先生、救命救急センターにおいてDOAできたような場合に、死亡診断書、死体検案書を発行するような場合にも、死因究明医療センターの医師と連携して行うことによって、より精度の高い死因究明ができるのではないかというのが我々の考えです。
  最初にお話をしましたように、安心・安全な日本社会の構築、あるいは死因調査の適正化、それによる国民の公衆衛生の向上を目指すため、専門知識を有する医師による検案、解剖をする。それには、日本において、いまの死因究明制度があまりにも貧弱で、あまりにお金をかけていないので、それでは安心・安全な社会にはならないのではないかということで、新たな制度、組織の整備が欠かせないということです。
  死因究明が必要な場合、日本中のどこに居住していても、等しく国民としての制度の恩恵を受けることができる。それで犯罪性の有無に鑑みて司法解剖と。この司法解剖の制度にいくことについても、日本法医学会では異論があります。司法解剖にいった場合には情報が公開されない、それによりご遺族の感情も穏やかにならない、あるいは医療の進歩を妨げるなど、多々問題があることは十分に認識しておりますが、これについては基幹法律である、刑法、民法、特に刑法、刑事訴訟法がある以上、法医学者はすべて法律に則って仕事をすることを旨としておりますので、これは別のほうの議論で、解剖制度あるいは司法解剖の制度、刑法を変えていただけるというのでしたら、それはそれで法医学者はそれに則って仕事を淡々と行うというのが、いまのところのコンセンサスです。
  最後に、いまの立場をお話しする前に、2009年に「司法解剖標準化指針」が出たのですが、これはいま申し上げましたように、もう1つの資料です。全国80の大学があって、法医学者が各大学にいますが、司法解剖をしている法医学者はすべてではありません。大学の法医学教室にいて司法解剖を全くしていない法医学者も多々おります。司法解剖は法医学者のボランティアということになりますし、逆に嘱託する側から言えば、究極的なことを言えば医者でなくてもいいということになって、現在はありませんが、私が法医に入った当時は、Non MDの先生が堂々と司法解剖をしていた時代もあります。ですから、そういう面で最低限の指針を作ったのです。
  これについてもまだ作成の途中になりますが、2009年度版の各種検査の2.5.6のところに、解剖を行って、組織学検査、中毒学検査、微生物学検査、生化学検査、血清学およびDNA型検査。その他の検査として、解剖医は必要に応じて病理学あるいは放射線医学、臨床医学、法歯学、法人類学等に関する検査を実施する。その際は、その検査結果について、専門家の助言を得られる体制を整備する。この辺が死亡画像診断について、専門家の先生方の助言ないしは協力を求めるに当たって、学会として提言している内容になります。
  最後になりますが、最初にお配りした資料の13頁です。「検案・検視における画像検査について」ですが、日本法医学会が目指す死因究明という面においては、基本的に解剖前診断としての死亡時画像検査の意義は大きいものと。今後、一層、死後CT撮影の意義を医療関係者に普及させ、撮影の協力を得る努力が必要であると明記しています。ただし、現状では画像所見と肉眼所見との対比がいまだ不十分なものがあるので、死亡時画像検査の所見に基づく死後診断を実際例に応用と。この実際例に応用というのは、正確な死体検案、正確な死亡診断書、死体検案書を作成するにおいては、いまだ時期尚早ではないかと考えています。今後、死因不明死体だけでなく、明らかに外因死等も含む多くのCT検査を実施し、これと平行して解剖による死因究明を行い、両者のデータが多数蓄積された上で、はじめて死亡時画像検査を死因究明に応用することが可能となるものと考える。そのためには、収容先の医療機関よる検査・検視体制の充実の一環としての検査に留まらず、今回提言している死因究明制度において、剖検・検査施設等の設置の際に、死亡時画像検査の導入も積極的に図られるべきだろうというのが、いまの日本法医学会の提言です。
  ただ、この提言は平成21年度1月で、去年のお正月の提言となっています。さらに、この提言をまとめたのは、さらにその前の年になるので、このあと死亡時画像検査については、この1年で格段に進歩していることは、日本法医学会も十分に認識しています。これについては、先般6月の日本法医学会の総会においても、いくつか評議委員会等で議題が出まして、死亡時画像診断を法医学者が適切に利用するに当たって、何らかの指針が必要なのではないかということも出ましたので、いまその取りまとめを急いでいるのが現状です。
  もう1つ申し上げますと、死亡時画像診断あるいは法医解剖という手技は、いずれも死因究明については1つの手技にすぎないというのが、我々の考えとなります。解剖することにより、正確な死亡診断書、死体検案書が書けるというわけでもありませんし、死亡時画像診断をすることによってすべて書けるというわけではありません。ただ、昨今の進歩を見ますと、日本法医学会としても、死亡時画像診断を行って、十分にエビデンスの揃った撮像、画像で、正確な死亡診断書、死体検案書が書ける症例が出てくるのであれば、それは望ましいことですので、できるならば、異状死のすべてに死亡時画像診断ができるようなシステムができると、国民の安心・安全な生活ができる死因究明制度の向上に役に立つのではないかというのが、日本法医学会のコンセンサスです。

○門田座長 日本法医学会が推し進めていることを中心に、最後に特にAiについても触れていただきました。ご質問はございますか。

○江澤先生 中園先生の代理ということでお伺いしたので、追加発言ですが、中園先生は文科省の研究費か何かで、今年度、長崎大にCTを導入すると。その際に、メンテナンスから診断まで、全部放射線科医にお願いするという決断をされています。それが日本放射線学会のシンポジウムで、長崎大の放射線科の教授がそのように公言されていますので、たぶん法医学会もそのような方向で放射線科医に診断をお願いすると、いずれは固まってくるのではないかと思います。

○今村先生 2点あります。このセンターが「死因究明医療センター」ということで、あえて「医療」ということを使われるのに、何か議論はあったのでしょうか。
  もう1つは、4つの部門があって、Aiは検案・解剖検査部門の中の1つの組織ということでしたが、いまの江澤先生のご質問にも関係あるのですが、この検案の部門の専門医と言っているのは、放射線の専門医、あるいはそこに放射線の技師が配属されるというイメージを考えているのでしょうか。

○池田先生 まず、最初の医療が入っているという点ですが、この点は法医学会でも議論がありまして、最初に申し上げましたが、死亡診断をして、死亡診断書、死体検案書を書くことが医療に当たるのかどうなのかということです。これは一般的には異論があるかもしれませんが、法医学会の意思としては、正確な死亡診断をして、正しい死亡診断書、死体検案書を書くことは、死者に対する最後の医療であるのだと。したがって、是非とも医療という言葉を入れたいという意見が強かったので、医療という言葉を入れさせていただきました。
  あとの話でいくと、死因究明医療センターというのは、どちらかというとドイツの方式を踏襲しているので、ディレクターがいて、その下に各部門があります。それについては、例えば病理検査部門だったら病理学の先生、画像診断部門ができれば、当然放射線科の先生、それも専門性をもった先生にお願いしますので、そのように考えていただいて結構です。

○木ノ元先生 法医学会のお立場としてのご発表を聞かせていただいて、理念は高いものがあると拝察しましたが、ちょっと気になったのは、司法解剖標準化指針というものが2009年版ということですが、これは2009年になってようやく出来上がったということなのですよね。

○池田先生 そうです。

○木ノ元先生 この中を見ると、例えば司法解剖の昔の教科書などにも書かれている三体腔の開検をやれとか、司法解剖をする場合には鑑定書を書きなさいという当たり前のことが述べられていますが、医療裁判を専門的に扱っている関係で経験的に申し上げると、頭部を開検しないまま窒息であると結論づけた法医の先生がいたり、時間がなくて、予算もないので鑑定書を作成していない法医の先生がおられたりするのです。鑑定書を出してくれというと、裁判に出てくるのは鑑定書ではなくて、解剖報告書という1枚のペーパーのみで、あと必要であれば口頭で説明しますという方が実際にいるのです。薬物の関係に関しても、ある事件で薬理学の先生に見てもらったら、司法解剖における死後血中濃度の数値が薬物動態理論からすると全然おかしいという結論が出てきたりということがありまして、法医学会としては非常に立派なお考えでやられているのはわかるのですが、法医の先生方個々人、私もいろいろな先生を存じ上げていて、立派な先生もたくさん知っているのですが、医療水準という言葉と対比したときに、法医の水準においてまだまだ問題があるものに個別的に遭遇しています。
  そういう意味では、いままでの死因究明という中で、法医の先生がどれだけのことができてきたのかということの反省と、それに代わる何かがないかというところが、死後画像診断というものの重要性というところにシフトしてきているという背景があると思っているのですが、いかがでしょうか。

○池田先生 先生のおっしゃるとおりだと思います。私は法医学会を代表してきていますが、個人的な感想として先生のおっしゃるとおりです。日本の法医学会の中のレベルは、かなり差があります。あまり言いたくはないのですが、司法解剖に限って言えば、逆に解剖に重点を置いて一生懸命司法解剖をして、すべて鑑定書を出して、裁判所からの要望に応じる、あるいは弁護側の要望に応じる。そういう先生は、解剖をすればわかるのだから死後画像はどちらでもいいのではないかと比較的考えがちです。。逆に、あまり解剖が好きでない、あるいは解剖が得意でないという先生は、死後画像を積極的に取り入れようと考えがちです。それがいまの現状です。
  素直に申し上げて、頭を開けないで司法解剖を済ませる、あるいは先生のご指摘のとおり、胸だけを開けて司法解剖を済ませるという不届きな法医学者がいることも事実です。これは私が言うのも何ですが、全く事実です。ただ、実はそれがあったもので、標準化指針を作成したということになります。
  本来、司法解剖の指針というものは、ちゃんと解剖している者にとっては必要のないものなので、それをあえて作らなければいけなかったというのは、先生のおっしゃるとおりで、あまりにも法医学者の中に解剖のレベルが低い者がいるということで、これは間違いありません。私自身はそう思っています。
  なぜかと申し上げますと、1県1医大になって、ただでさえ少ない法医学者が、先ほど申し上げたように大学の中にありますから、これは研究業績がないと教授になれませんので、司法解剖の手技、精度あるいは貢献というのは、当時は全く考慮されなかったということなのです。逆に、昨今それが見直されてきて、先生がおっしゃるように、日本法医学会でも自助努力で鑑定精度を上げようと。あるいは各大学も、1県1医大のところで、法医学者が鑑定に寄与していることを鑑みると、ちゃんと鑑定のできる先生を招聘しようという議論が高まってきたので、日本法医学会としては認定医制度も導入しましたし、作りたくもない標準化指針を作ったということになります。

○門田座長 非常に正直なご発言でした。どうぞ。

○隈本先生 この死因究明医療センターの構想の中の「専門性を持った医師」というのが、先ほどのご質問に対する答えでは、放射線科医の可能性もあるということだったと思います。構想のレベルで結構なのですが、これは各センターに何人の医師がいるという構想なのでしょうか。というのも、Aiをやるのは放射線科医であってほしいというのが、国民の希望だと思います。そして解剖が必要であったら病理の先生にやってほしいとか思うわけですが、そういう意味では、これでは「職員」としか書いていませんが、司法解剖が必要な場合は司法解剖、そうでない場合は病理解剖をするというような専門医、それと放射線読影をする放射線科医。もっと言えば、そういう検査部門の専門医が必要だと思うのですが、この職員の中にはお医者さんは何人いるのですか。

○池田先生 具体的には、先ほど申し上げましたようにドイツの形式を踏襲していますから、各部門にその分野の専門家の医師がいるというのは理想なのですが、日本法医学会でも提唱していまして、とりあえずできるところからやっていくことに鑑みると、例えば病理検査部門は、どう考えてもパソロジスト(pathologist)で、病理学でなければ駄目だということになると、例えば薬毒物部門であれば薬剤師を置くとか。逆に言うと、死後画像の分野といったら、これは当然放射線科の先生にお任せするのが筋ですし、当然のことなので、そういう面で、最終的に1つずつにできれば、最低限ヘッドとして1人ずつはほしいということになりますが、当面は先ほどもお話をしましたように、大学の中には放射線科もありますし、大きな病院には放射線科もあります。あるいは当該の県内には放射線画像を読んでいる先生がいらっしゃる、そのような方にお願いして、部門の一部を担っていただく形を考えています。

○隈本先生 その費用はどうなっているのですか。

○池田先生 日本法医学会のこれについては費用のことは申し上げませんでしたが、ここは厚生労働省の検討会ですが、日本法医学会としては、先ほど申し上げた死因究明を国民の安心・安全な生活のためにということから鑑みると、最後の医療ではありますが、厚生労働省にすべて資金負担をお願いするというのはおかしいのではないかと。もう少し上のほうで、内閣府の直轄で十分な資金をお願いするという中で手当てしていくことを考えています。

○門田座長 よろしゅうございますか。ひとまずここで池田先生の発表は止めとさせていただきます。本日最後のご発表ですが、江澤先生から資料5に基づいてご発表をお願いします。よろしくお願いします。

○江澤先生 私は学会代表という意味では、Ai学会代表と理解していただいて結構です。私がここにいる理由は、Aiという概念の提唱者だからです。いまお話を伺っていて、放射線技師学会の先生は、放射線技師ですから画像がメインで、病理学会、法医学会の先生は、プレゼンの内容のほとんどが自分たちの領域の解剖になってしまいます。この検討会を考えたときには、Aiに関する検討会ですから、解剖のことがメインになっていくというのは、少々おかしいのではないか。解剖のことは解剖のエリアで話し合っていただくと。
  なぜこのようなことを申し上げるかと言いますと、解剖制度がいろいろ分かれていて、非常に混乱しているわけです。その解剖制度の上にAiを乗せるから、解剖制度の混乱がそのまま反映されてしまいます。でも、解剖制度のシステムがきちんとなっていないから、Aiに解決させるのは無理なのです。
  考えてみますと、Aiというのは画像診断ですから、当然解剖とは次元の違う検査なのです。ですから、Aiに関してシステム導入ということは、全く解剖と切り離して行うことができる。これが発表の要旨です。
  資料の1頁の「異状死に対応できる第三者機関」とAutopsy imagingは読んでいただければ結構ですが、この文書は2005年1月にモデル事業が立ち上がる直前に私が書いたものです。そして、東京監察医制度をベースにしたモデル事業、解剖をベースにしたモデル事業は失敗するだろうという予見をしています。5年経って、モデル事業というのは5年で当初1,000例を目標にしていたのが105例、モデル事業に要望があったケースも、200~300あったものが、対応できたのがその半分以下です。これは失敗と申し上げて間違いないと思っています。
  続いて、3頁の書類は、2008年11月19日に内閣府で死因究明制度に関する検討会があったときに提出させていただいたものです。骨格としては、申し上げることはこの当時と変わっていないわけです。この内閣府の検討会においては、厚生労働省の代表者の方も参加しておられたので、これは厚生労働省にも行っているはずなのですが、このような考え方が骨格として導入されたという形跡はありません。ここまでが事実です。
  スライドに入ります。Aiの導入の理由として、「死因究明は誰のため」。いま池田先生もいろいろとおっしゃっていましたが、これは安全とか幸福というと話がおかしくなります。シンプルに言うと、市民と社会が納得するためです。このために死因究明制度があります。市民というのは遺族です。まず遺族が納得すればいいだろう。しかし、もしここで犯罪体があった場合は、例えば遺族が犯人だった場合に、それは許されることではない。だから、社会の納得を併設するわけです。司法解剖とかの話は、この社会の納得という要素が大きな要素を占めます。けれども、市民自身の納得も当然重視されなければいけない。ただ、この市民の納得という部分に対しては、非常に欠落が大きかったと思われます。
  とにかく、いままでの死因究明制度が解剖しかなかったわけですから、解剖をベースに議論をしていますが、Aiというのは解剖とは次元の違う検査であり、独立した検査です。それなので、解剖医がベースにこういったことを議論しますと、Aiをアンダーエスティメイトし、さらにその導入を混乱させてしまうことになります。
  5枚目のスライドに日本医師会の資料があります。結局、司法解剖が6,500体、行政解剖が9,135体で、これは東京都23区・横浜市・名古屋市・大阪市・神戸市の5都市だけで9,135体です。これに相当する解剖体が、行政解剖、承諾解剖と言っているところもありますが、これが480体です。この解剖格差をベースにして、日本に遍く広く導入するシステムの構築は不可能です。ですから、解剖をベースにするのではなく、Aiをベースにした制度を導入し、Aiでわからない部分は解剖をお願いしていくシステムに変えていかないと、とんでもないことになると思います。
  なお、解剖に対して剖検率がどれぐらいかと、医療安全推進室にお伺いしたのですが、把握されていないということでした。その代わりに出てきたのが、警察庁の資料です。そうすると、国民全体が事件体だけ解剖すればいいのかという間違った印象を持ってしまうので、少なくともこのような死因究明制度の問題を議論するのであれば、解剖率という基礎データはしっかりと担当省庁で出していただきたいと思います。これは要望です。
  続いて、8頁の絵です。これがいまの日本の死者の実層です。110万人ですが、ちょっと丸めて100人とすると、解剖されているのは3体です。病院で亡くなるのが85人、そのうちの2体です。警察が扱う遺体が15体で、そのうち解剖されるのが1体です。ということは、いま解剖主体の学会の人たちがやるということは、この100体中3体の死因究明制度のことをベースに、ほかのことをやろうとしているわけです。ですから、ほかの97体のことが全く考えられていない制度になってしまう。これを大変危惧しているわけです。
  8枚目の真ん中のスライドの右側です。死因究明制度の骨格というのは決まっていまして、要するに体表検案をやって、次に画像診断であるAiをやって、そして解剖をやります。これしか結論はありません。それなので、このようなシステムになるように、医療、現場をアジャストしていけばいいという話になります。
  そうすると、死因究明制度としては、Aiによる死因確定率は非常に低いということが解剖の先生から出ていますが、これは低くて構いません。つまり、Aiでしっかりと死因確定できるものを死因確定し、わからないものは解剖をお願いすると。このように序列化するだけで終わるわけです。それを解剖と比較して云々というのは、序列化して、Aiでわからないものを比較検討していけば、知見が貯まっていきます。
  それで、結局ここにあるように、病理医でも法医学者でも、そういった方々がAiを行うと、これをアンダーエスティメイトしてしまう、あるいは診断しないで済ませてしまうことが実際にあるという症例が書いてあります。これは事実です。大事なことは、解剖をやられる先生たちがAiをやると、Aiをやったあとで解剖をやるものですから、まずAiで所見があったものは、そのあと解剖で追いかけるからこれは確認ができます。そしてAiでわからなかったものは、解剖によって見つかると印象づけられるわけです。だから、非常にAiをアンダーエスティメイトしてしまうのです。
  しかし、本来ならAiをやって、その情報をブラインドで解剖をやって比較しなければ、Aiの有用性はわからないわけです。絶対このようなことをやると、Aiではわかったけれども、解剖でわからなかったというケースが提示されるわけです。それが9頁の真ん中です。これは当院でやった第1例目ですが、腸骨の転移がCTで見つかりました。通常の解剖では腸骨をチェックすることはありません。ですから、解剖であればこれは見逃がされた症例です。
  このような症例があるはずなのに、例えば前回モデル事業の研究班で行った深山先生の発表では、プレゼンの中でそういったケースの報告は1例もありませんでした。そのようなものが、Aiに対するアンダーエスティメイトを非常に大きくしてしまいます。そして、Aiをアンダーエスティメイトして不当に導入することによって、不利益を受けるのは市民です。市民が望んでいる死因究明制度にアジャストできないものを作ってしまう。これが最大の問題です。
  先ほどお話をさせていただいたのですが、佐賀医大でAiセンターをつくった宮?ア先生がおられますが、いま実際に運用していていちばん多いのは遺族の要望だそうです。遺族の要望をかなえるためには、Aiセンターというシステムの導入が必須です。
  そのように考えますと、これまでの議論は「解剖至上主義」ということをベーシックに行われていました。11頁の真ん中の段の右側、解剖至上主義というのは、Aiを行ったら必ず解剖をしなくてはならないという人たちです。このように定義します。こういう方は、Aiは解剖の補助検査であるとおっしゃいます。いまから提唱するのは、社会にアジャストできるシステムとしては「Ai優先主義」です。Ai優先主義というのは、Aiを行い、死因がわかれば解剖を省略して、わからなければ解剖を進めるというシステムです。
  12頁の真ん中左で、例えばこのような症例です。これはCTによって脳幹出血がわかった症例です。脳幹出血で100%死ぬことはありませんが、例えば体表に何の変化もない人が死んでいて、CTをやったら脳幹出血があったといえば、死因はこれだろうと推測できます。比較対象は解剖ではなく、体表検案なのです。そのとき体表からでは、脳幹出血というのはわかりません。つまり、このような症例、Aiで確実に死因が確定できる症例を死因確定して除外し、残りに解剖を適用していくというシステムを作り上げなければならないということです。
  そういうシステムを作り上げるために、必要最小限なことが、Aiの検査を放射線科医もしくは臨床医が行い、その費用は医療費外から医療現場に導入されるというAiプリンシプルです。これがないと、まず解剖の先生がやるとAiに対してアンダーエスティメイトし、広くAiを低く評価するような話をします。そして、実際に診断しないで、Aiは役に立たないよというわけです。先ほど池田先生から、司法解剖に関してもそのようなことが行われているという正直な告白がありましたが、それは正直びっくりしましたが、解剖ですらそうであれば、Aiに対して法医学者がどのような態度に出るかは、大よそ見当が付くというものです。
  そして、Aiを医療現場のエンドポイントに置いて、医療従事者がやることによって、死因情報を捜査情報からレスキューして、一般の人たちに伝えることもできるようになります。そうしますと、医療のエンドポイントに置くのはAiセンターで、これは死後画像診断センターです。これは医療現場に併設して行えばいいということになります。
  そうした制度を作り上げれば、医療現場、こういったことを行うことによって、実は解剖の先生たちも非常に助かります。なぜなら、事前にきちんとした専門医が画像診断を行い、その情報を得て解剖することができるからです。つまり、解剖の先生たちが頑張ってAiを俺たちがやるという必要は全くなくて、放射線科医に是非お願いすると委託をしていけばいいわけです。それをしないのは、透明性にしたくない何かがあるのではないかと、邪推をしたくなるようなケースも多々あります。
  14頁の真ん中です。しかし、多くの国民が望んでいるために、Aiセンターは医療行政の後押しもなく、全く予算措置もないにもかかわらず、このように各地で動いています。ということは、医療現場で自立的に必要とされる施設だと。そして、それはまさしく患者のために作るものだということが、医療従事者の人はよくわかっているからです。
  提言としては、Aiにきちんと診断費用を入れることです。それから、Aiセンターもしくはそれに類似のセンターがここまでできているので、全国Aiセンター連絡会議を作り、そこで実際の症例に関して議論をしていく。これがAi導入を推進させるためのいちばんの早道であると考えます。
  最後のスライドです。解剖医の先生はAiは解剖の代替にはならない。先ほどいみじくもおっしゃられていましたが、それはこの解剖する3人のエリアでは正しいわけです。解剖をしないエリアには全く無力の発言です。そして、臨床医、検視官あるいは警察医の人たちは、その解剖をしない97人の人たちにも対応しなければなりません。そうすると、その人たちは、「解剖はAiの代替にはならない」というわけです。そして、死因不明社会を解消するには、解剖に拘泥しすぎてはならず、Ai優先主義にすべきだということになります。
  Ai優先主義は解剖の否定ではありません。解剖と整合性の取れた、きちんとした主張です。というのが、今日私がプレゼンしたいことでした。以上です。

○門田座長 はい、ありがとうございました。早くからこの方面で検討しておられる江澤先生としてのプレゼンを聞かせていただきました。どなたか質問をお願いします。皆さんを説得してしまった。

○江澤先生 単純な原理ですか。

○隈本先生 非常にわかりやすく教えていただきました。それで、医療費外から何らかの費用負担をするというのは、具体的にはどういう仕組みをお考えなのでしょうか。

○江澤先生 これは行政の方、あるいは政治の方が動いていただくのですが、考え方を変えていただくと簡単で、人はみんな国に納税しているわけです。そして、誰もが一度は亡くなる。だったらば、誰にも平等な検査であるのだから、それに対する費用負担がきちんとなされて当たり前、それができていないほうが、そういう国家のほうがおかしいのだということに気付くべきだと思います。医療費外というのは、医療というのは医学を使った治療ですから、生きた方に対する費用なのです。死んだ人の費用とバッティングさせると、必ず生きている人のレスキュウのほうが大事だというバッティングになり、これは絶対に勝てないです。だから医療費外からということになります。

○隈本先生 つまり具体的には、Aiのための予算を別途確保して、1回やるごとにいくらというのを行政、それが何省かわかりませんが、何とか省から出すという、そういう仕組みですよね。

○江澤先生 まあそうですね、私の提案はそうです。

○門田座長 そのほかいかがですか。よろしいですか。第1回目の会のときの基本的な考え方ですよね、聞かせていただいたと思いますが。

○隈本先生 ちょっと追加ですが、例えばいまAiセンターが全国にできて、それの運営費用補助というような形もあり得るのでしょうか。

○江澤先生 それはあり得ますよね、宮?ア先生。

○宮崎先生 是非それをお願いしたいと思うのです。第1回のときに申し上げましたが、現在はそれを要求する側の負担という形で行っているのです。そのためには、医師会とか司法、警察ですね、そういった所に集まっていただいて、オープンするに当たって状況説明をして、どのくらい要求が、要望があるかということを一応調べた上で開いたのです。ですが実際には、先ほど江澤先生のほうから紹介がありましたように、遺族の負担でばかりなのです。ご遺族は、やはり自分が負担してでも少しでもわかるのであればやってほしいということで、実際は遺族。だから先ほどの論理で言えば、税金払ってダブル負担という形になっていますので、これは是非そういう国の施策として考えていただきたいと思います。

○江澤先生 発想としておかしいのは、犯罪で亡くなった人は公費負担で解剖されて、そうではない一般の善良な市民は死因究明のときにお金を出さないというのは、国の形としていかがなものかと思いますが。

○木ノ元先生 その点なのですが、例えば病院で患者さんが死亡した後に警察がやって来まして、警察から病院に対してCTを撮りなさいと言われてCTを撮ります。そのときに警察からは、病院は負担しなくてもいいですよという話があるのですが、後で聞いてみると、警察からご遺族にしっかり請求しているというような話も聞いています。

○江澤先生 でしたらやはりもうオープンに、これは全部公費で出すと。問題症例にまず入れていけばいいので、総額としてはそんなに高いお金にはならないと思います。

○門田座長 はい、池田先生。

○池田先生 お金のことについては江澤先生のおっしゃるとおりで、中途半端の補助とか付けると、それはもう紐付きになるのは目に見えていますから、出す物は出す。先ほど私も言いましたけれども、やはりいまの話で警察がどうこうとかいう問題ではないわけです。警察は警察のための、犯罪捜査のためにやっているわけですから。それは国民のためということでしたら、もともとは税金ですから、負担してもいいのだというコンセンサスを得て、やはり、もっとちゃんとした所から全額支出する、それが当然だと思いますけれども。そういうコンセンサスはここでも得てほしいなと思います。

○隈本先生 私は最初の検討会のときからこだわっている点ですが、5万2,500円というのがいまの正当な金額だということなのですが、やはりなるべく多くの人がAiを受けたほうが国民の流液につながるとするならば、実費だけでというわけにはいかないのかと思うんです。こういうと少し反発されるかもしれないけれど、もともとCTがこれだけ世の中に普及したのは、国民がこれまで負担してきた医療費によって広がってきたわけでして、それを作ったAiの費用が、公定料金で一体当たり5万円というのは高いような気がする、これは本当に実費なのでしょうかというのが、ちょっと是非一度聞いておきたいなと思ったのですが。

○江澤先生 つまりそれは、実際に導入されればいろいろな議論が出てくるでしょう。いまゼロですから。このゼロというものを実費を付けるか付けないか、付けるのであればそういう議論になってくる。それは、5万が高いのかどうかというよりも、まずなぜ付けないのですかという素朴な疑問を発していただいて、そこから調整していけばいいのではないのでしょうか。

○門田座長 時間になったのですが、実際ここにいま話題になっていることというのは、今回は、いろいろな所の現在までの取組の報告をしていただいて、その内容を勉強させていただき、そしてこれから次のステップのことを考えるということできておりますが、この費用のことは最初からずっと話題になって、いちばん大きな問題であることは間違いないと思います。そして、1回目の足立政務官のお話もそうだったと思いますが、とにかくこの8月までに概算要求を準備したいというところに、いまの話でも結局そこに集約することになりました。もう今日はいらっしゃいませんが、あそこで公言されたし、私自身もそのタイミングまでに意見をまとめられるかどうか自信がありませんが、とお話を申し上げたのです。
  しかし、考えてみますと、もう皆さん大体意見の方向性はどうも決まったのではないのか。やはり、このAiがいろいろなレベルの違いというのか、考え方の差はあるにしても、いまの死因究明に向かって進めていくということにそれなりの意義はあることは間違いない。それで、実際まだ課題はたくさん残っている、そのうちの1つ大きなものが費用の問題であるということ。そして、特にその費用もまだまだこれから診断能を高め、あるいはその設備も含めてやっていくということで、簡単にサッサッと済むものではない。しかし、その方向で向っていくというのは、もうこの検討会とすれば、ほとんど反対はないと思いますが、そういう方針でよろしいですか。

                 (異義なし)      

           
○門田座長 では、この検討会は、Aiについては前向きに進んで行くということが3回だけですが、3回の検討会でもって皆さん意見が一致したということだということにさせていただく。そして、その次のステップです。お金の話が出ましたけれども、その他いくつかの問題、例えば実際の制度の問題、法律の問題とか、あるいは倫理的なものを含めても、いろいろと法律も含めて課題があるということだということは皆さん認識していただいています。そして、それをどういう形に進めていくにしても、結局予算措置を何らかの形でやっていかざるを得ないということで、この検討会とすればその意義もあることで、前に進む、そしてそれに対しては何らかの予算措置を検討会の意見として提言していくということも、これで良いと思いますが、それでよろしいですか。

  
                 (異義なし)      

           
○門田座長 では、そういう形でやっていきたい。いろいろ課題があることはいままでも何回も出てきていますが、その内容は今後詰めていくにしても、そういう形で予算措置をとにかく要求していきたい、こういうことだと思います。そこについては、死因究明あるいは現在モデル事業も含めて、直接医療関連死とこのAiとは関係がないということでスタートしていますけれども、何らかの形でつながりがあるわけですが、そういう方向も含めて現在行われているものに加えて、このAiを積極的に取り入れるということを要望していくとさせていただくということで、今日までの3回のまとめということでよろしいですか。

○池田先生 すみません、一言だけ。予算措置については全く異論はないのですが、最初に、先ほど来お話があるように、予算措置をしていただく場合に、どこの予算を出すかというのもここで議論をして。要するに厚労省の紐付きと言うと語弊がある、厚労省から出してもらうのか、あるいはもっと上からこういう予算措置をしてもらうのか、そこの辺を要求するような議論をしていただきたいと思います。厚生労働省からお金を出してもらうというだけの予算になると、結局たぶん範囲が限られてきて、結局切り捨てられる部分が出てくる可能性があると思うので、もっと幅広くもっと高い所から予算を出してほしいのだと提言すべきだと思いますが。

○江澤先生 いいですか。おっしゃるとおりで、その場合Aiに関して、警察庁からAiに出してもらうという、要するにそれにみんなが必要な部分、画像診断医に警察庁から入れるという、それが呼び水になって厚労省もやると、そういう形になっていくのがベストだと。いま出ているのもありますから。

○池田先生 全くそのとおりです。厚労省で出したら、たぶん警察庁のほうも犯罪薄の部分についてはお金を出さないと言って、そこら辺が切り捨てられる可能性があるのです。ですから、何か組織を作ってもいいのですが、やはり各省庁からお金を出す、あるいはもっと上からお金を出すというシステムにしなければ駄目だと思います。

○江澤先生 まず隗より始めよで、警察庁にそういう提言を法医学会がしてくださると、厚労省も動いてくださるのではないかと思います。

○門田座長 はい、どうぞ。

○隈本先生 この検討会がほかの省庁に予算を出せという提言はできるのでしょうか、仕組みとして。

○門田座長 事務局、どうですか。   

○医療安全推進室長 基本的に足立政務官の下に置かれています検討会ですので、その辺りの今後の進め方につきましても、政務官とご相談をしながらさせていただきたいと思います。

○門田座長 この委員の先生方のご意向は、いま皆さんおっしゃっておられるような、ほぼ厚労省の云々というのではないという位置づけを、上手に考えていかなければならないということの意見もあったということです。そういうことで、少し検討していただくということで、次回以降のその情報によってもう1回ディスカッションしていただくということにさせていただきたいと思いますが、この点よろしいですか。

○警察庁刑事局捜査第一課(倉木) オブザーバーで参加させていただいております警察庁の捜査一課の倉木と申します。いまAiの関係の予算のお話が出ましたけれども、私は特別にコメントをする立場ではございません。ただ、客観的な立場としてご紹介をさせていただけば、過ぐる7月15日に警察庁におきまして、この検討会においてもご紹介をいただきました、私どものほうでやっております死因究明の関係、犯罪死見逃し防止を中心としますが、こちらの研究会で中間取りまとめを取りまとめまして、公表しました。その中では、基本的には、検視死体検分の一環という形ではありますが、その中の項目の1つとして、CT検査の積極的実施ということは入れています。
  どの程度の予算規模になるか等々は、これは当然私どもは厚労省と違いまして非常に予算規模の小さな官庁でございますので、むしろ厚労省にお願いしたほうがという感じもいたしますが、もともと既にCT司法検視に関しては、若干ながらも司法CTの関係の予算も付いています。これについて、できる限り積極的に実施すべきという研究会の提言はいただいているところでございます。それだけを客観的にご報告をこの場で述べさせていただきます。
  ただ、先ほどの1点だけ、江澤先生からお話がありました検視官の声ということも、検視官だけではなくて現場の、解剖はAiに代替するものではないというお言葉として、臨床医と並んで検視官の名前も出てまいりました。私どもの組織の人間ですが、これにつきましては、申し上げさせていただくとすれば、その先生のコメントに対して直接のコメントは私は控えさせていただきます。先生は先生のご知見によりまして、この研究会に要請をされてお話をされておられますので。
  ただ、私どもといたしましては、研究会の先ほどの中間取りまとめでも、いわゆる解剖というものは非常に有用なツールであると。先ほどの法医学会のレベルの問題もございましたけれども、世界的な現時点での標準としては、解剖というのは非常に有用であるということの立場から、解剖率を向上すべしということを中間取りまとめの中ではいちばん大きな柱の1つとして。ただ、これは当然私どものお話ではなく、ある面だけのお話ではなく、いろいろな官庁からのお話でございますので、研究会の検討事項としてではございますけれども、取りまとめの中でも提言をされているところです。
  一応、警察としても、解剖というものの重要性というものは、CT検査の重要性と比較するかどうかという問題ではなく、解剖というのは非常に犯罪死見逃しを防止するためには重要なものであるという認識の下に、いま報道させていただいているということのみ、客観的な事実としてご説明をさせていただきます。以上です。申しわけございません、差し出がましいことをいたしまして。

○門田座長 ありがとうございました。

○江澤先生 1つお願いしたいことがあるのです。その検討会の議事録を公表していただけると、それを検討した上で意見を述べることができる。それはたしか国会でも、国会議員によって検討会の議事録の公開をということは言われていたと記憶しております。ですので、是非厚労省のこの会議と同じように議事録を公開していただけたらと思います。

○門田座長 それについてコメントありますか。

○警察庁刑事局捜査第一課(倉木) 国会でのご質問は、ホームページでの議事要旨の公開でありましたけれども、これにつきましては、国会でのご指摘をいただきまして、ある程度議論の内容のわかるものにつきまして公表をいたしております。

○門田座長 はい、ありがとうございました。時間も少し過ぎましたので、本日はここまでとし、いくつかの問題が残っております。問題と言いますか、さらにディスカッションしていただきたいことが残っておりますし、まだ引き続きこの会を予定したいと思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。本日は以上で終わりたいと思いますが、事務局のほうから何かご発言ございますか。

○医療安全推進室長 次回、第4回になります。先生方に日程調整等をさせていただいたものもベースにしながら考えているのですが、いまのところ、9月10日の午後あたりを予定しています。またご連絡申し上げさせていただきますが、よろしくお願いしたいと思います。本日はありがとうございました。

○門田座長 はい、よろしいでしょうか。頻繁に会を開いて、暑いさ中集まっていただきまして、無事今日も終わりました。本当に建設的な意見をおっしゃっていただいたと思います。以上で終わりたいと思います。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

医政局総務課医療安全推進室

室長 渡辺真俊: 内線2570
室長補佐 今川正三: 内線4105

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会> 第3回死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会議事録

ページの先頭へ戻る