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2022年1月25日 薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会 議事録

○日時

令和4年1月25日(月) 18:00~

 

○場所

厚生労働省 医薬・生活衛生局 局議室(6階)
オンライン開催

○議事

 

○衞藤座長 ただいまより第21回「薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会」を開催いたします。
皆様にはお忙しい中、御出席いただき、ありがとうございます。
今年度は、新型コロナウイルス感染症対策のためオンライン開催とさせていただきます。
構成員の交代について、前回の検討会以後、納得して医療を選ぶ会事務局長の倉田雅子委員が退任されたため、認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの坂本純子様が新たに構成員として御参加いただくことになりました。
坂本様から一言御挨拶をお願いできますでしょうか。

○坂本構成員 ありがとうございます。認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの坂本と申します。
以前より、薬害教育はとても重要なことだと考えておりました。また、特に若い世代と一緒にこのことを考えるのは、さらにこれからますます重要になるのではと思っております。
私自身は、ここにいらっしゃる委員の皆様がお書きになった本など、また薬害関係の貴重な記録などから多くを学ばせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

○衞藤座長 よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
また、本日は、オブザーバーとして厚生労働省の研究班である「薬害資料データ・アーカイブスの基盤構築及び活用に関する研究」の藤吉先生、本郷先生、佐藤先生に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
次に、前回から事務局に人事異動もありましたので、改めて事務局から報告をお願いいたします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 医薬品副作用被害対策室長補佐の狩集でございます。
事務局の人事異動を含め御報告申し上げます。
医薬・生活衛生局長の鎌田、大臣官房審議官の山本、医薬品副作用被害対策室長の今泉、室長補佐の荒木、それから、私、狩集、それから、係員の佐藤でございます。
医薬・生活衛生局長の鎌田より、一言御挨拶申し上げます。

○医薬・生活衛生局長 医薬・生活衛生局長の鎌田でございます。
本日は、お忙しいところ、お時間いただきまして誠にありがとうございます。
薬害は起こしてはならない、繰り返してはならないというのは、私ども医薬行政をあずかる者、携わる者としての原点でございますし、また、そのことは取りも直さず国民の皆様、社会のためになるものと私は考えているところでございます。
その意味で、この検討会、過去の薬害がなぜ起きたのか、また、繰り返さないためにどんな仕組みが考えられるかということを検討していく検討会、極めて大切なものだという考えの下に運営するところでございます。残念ながら、新型コロナの影響ということで、昨年に引き続きウェブでの開催となりましたこと、その辺は大変じくじたる思いがございますが、御理解を賜りたいと思います。
他方、この検討会、新型コロナの影響ということで、取組を進める上で厳しい制約があったところでございますが、研究班の先生方には精力的に取り組んでいただきましたし、また、このコロナ禍で、様々な新しい技術の取り組みによる対応が私たちの生活の中で進んでおります。そのことを踏まえた対応も、私どもも考えていきたいと思っているところでございます。
本日は、研究班の先生方、そして、我々の担当からの報告を踏まえまして、今後の薬害教育の推進を見据えて、先生方から貴重な御意見、活発な御議論を賜る場と存じます。よろしくお願いいたします。

○衞藤座長 また、本日は、薬害教育教材に関する議題がありますので、前回に引き続き、文部科学省の方にも御参加いただいています。事務局から御紹介をお願いいたします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 文部科学省からの御出席者について報告いたします。
初等中等教育局教育課程課課長補佐の野口様、初等中等教育局健康教育・食育課健康教育調査官の小出様及び同課の保健管理係の泉田様に御出席いただいております。

○衞藤座長 次に、事務局から本日の進行方法の説明をお願いいたします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 本日、ウェブでの開催のため、対面での進行と一部異なる部分がございます。会議の進行方法について御説明申し上げます。
議題ごとに、議題内容について質疑応答の時間を設ける予定ですが、御意見、御発言をされたい委員の方におかれましては、まず、御自身のお名前と発言したい旨を御発言いただくようお願いいたします。その後、座長から順に発言者の方を指名させていただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことをよく御確認の上、御発言いただくようお願いいたします。

○衞藤座長 それでは、本日の検討会の議題について報告をいただくとともに、資料の確認をお願いします。事務局から説明してください。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 まず、本日の検討会の議題についてでございます。
本日は、1点目として、薬害教育に関する今後の取組等について御報告いたします。
2点目として、薬害資料に関する研究班の今年度の活動状況について報告いたします。
次に、本日使用する資料について御説明いたします。
申し上げましたとおり、オンライン開催のため、事前にメールで送付させていただいております。
まず、本日の検討会の座席図、議事次第、名簿を送付しております。
そして、
資料1 薬害教育に関する今後の取組等について
資料2-1 薬害資料データ・アーカイブスの基盤構築・活用に関する実践的研究
資料2-2 インタビュー映像研究班の研究と「当事者実践」の展示
資料2-3 被害者運動史の検討
の資料を送付しているところでございます。

○衞藤座長 それでは、本日の議題に入ります。
最初の議題は、薬害教育に関する今後の取組等についてです。
事務局から報告してください。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 資料1の1枚紙を御覧ください。
「薬害教育に関する今後の取組等について」でございます。
1番目でございますが、令和3年度(今年度)の取組状況についてです。
令和3年7月末、『薬害を学ぼう』、視聴覚教材『指導の手引き』、その簡略版とともに、平成29年度、それから、30年度に実施されています、薬害に関する授業の実践事例集、それから、平成元年度の実践事例を中学校へ配布をしているところでございます。
また、本教材の紹介のための関係資料を高校へ配布しているところでございます。
また、『薬害を学ぼう』のウェブサイトに視聴覚教材、指導の手引き、授業の実践事例等を掲載しており、今年度も『薬害を学ぼう』の一部を抜粋した教材を授業用の素材として活用いただくように掲載をしているところでございます。
「2.今後の取組について(案)」でございます。
前回の検討会の際に御議論いただきましたが、高校の学習指導要領が改訂されまして、新たに公共という科目が必履修科目として設けられることになっております。何らか高校に対する取組について検討をするべきではないかという御議論も踏まえまして、薬害教育教材については、来年度(令和4年度)からは中学校から高校へと配布先を変更しているところでございます。
また、中学校に関しても、そうした薬害教育の機会がなくなるものではないと考えておりまして、御要望等を踏まえ、引き続き、薬害教育に関する取組を実施することについて検討を行っていきたいと考えております。また、その際、学校におけるICT環境の整備状況も踏まえまして、オンラインを活用した薬害教育教材の配信等についても、文部科学省とも連携しながら、検討を始めていきたいと考えているところでございます。
なお、薬害に関するモデル事業の実施、モデル教材の使用方法等に関するアンケート等でございますけれども、引き続き新型コロナウイルス感染症の感染拡大という状況もございますので、そういった現下の感染状況をにらみながら、踏まえて検討をすると考えているところでございます。
事務局からは以上でございます。

○衞藤座長 ただいま、資料1について御説明をいたしましたけれども、聞き取り等に問題はございませんでしょうか。
(首肯する委員あり)

○衞藤座長 それでは、御意見、御質問がございましたら、お願いいたします。
勝村委員、よろしくお願いします。

○勝村委員 案、ありがとうございます。前回の議論を踏まえて、高等学校で新たに公共をきっかけにスタートしていただけるというのに賛成で、その方向で進めていただきたいと思います。
加えて、公共のスタート時点でうまく軌道に乗せてもらう、軌道に乗るように持っていくことはすごく大事だと思うので、そちらの検討と、加えて、中学校に関しても、引き続きGIGAスクール構想などでと書いていただいていることについて、もう少し具体的に、教えていただければと思います。つまり、今まで中学校に配布していたものは高校に配布し、それが、かつ、スタート時点で、中学生の場合は中学3年のどの時期に配ったらいいか、どの教科と連携したらいいかというのは少し分かりにくかった面もあったのかなと思うのですけれども、高校の場合は、ピンポイントで全員が必修の、1年生でやることも多いかもしれない公共でという形で、まず軌道に乗せてもらいたいと思っているということが1つ。
もう一つは、加えて、今までどおり中学校に対してもオンラインを活用してやっていきたいと言っていただいている、その2つ目の中学校へのイメージについて、もう少し、今、案でお考えいただいていることを具体的に教えていただくことができれば、お願いしたいと思います。

○衞藤座長 では、事務局から御回答をお願いいたします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 お答え申し上げます。
中学校に関する取組でございますけれども、正直申し上げますと、なかなか手探りの面もございます。ただ、書いてありますとおり、オンラインの活用といったものが現下の感染状況の影響もございますけれども、広くなされるようになっているところでございます。
勝村委員からも御発言いただきましたように、中学校においては、どういった授業の場で活用いただくとか、活用する場面といったものがなかなか見い出しづらいといった課題があったところでございますけれども、こういったよりアクセスしやすくなるといったことで、より手挙げがしやすくなる、御希望される学校があった場合に、アクセスがしやすくなるのかなと考えております。引き続き、具体的な検討は必要でございますけれども、そういったニーズ、要望といったものをうまくすくい上げることを考えていきたいなと考えているところでございます。

○勝村委員 ありがとうございます。
そういう方向で、今まで中学校に配布していたものを高校に配布してもらうということになっても、引き続きこれだけオンラインの授業が広がっている中なので、中学校のほうでも、よりいい形で使ってもらうことは本当に可能だと思うので、動画のコンテンツも増えてきていますし、インターネット環境も整ってきていますので、ぜひ、いいプランを出していただければありがたいと思います。よろしくお願いしたいと思います。
もう一つ、高校のスタート時点のときに、学校現場では公共という科目が初めて始まるということになります。皆さん、どういうふうにシラバスとか、1年間の計画を立てていこうかということで現場の先生方も初めて検討をされていると思います。一回やってしまうと、翌年以降も同じようにやっていけばいいということになる可能性があるのですけれども、最初の年のスタート時点で、まず、こういう教材もあるのだなというのを周知していっていただきたいということとかも、前回お願いしていて、随分御尽力いただいていると思うのですけれども、その辺りの進捗状況とか、今、スタート時点にうまく入っていけるような工夫や方策は、具体的にどんなような状況になっているのか、お聞かせいただければと思いますが、いかがでしょうか。

○衞藤座長 事務局、いかがでしょうか。

○医薬品副作用被害対策室長 医薬品副作用被害対策室長の今泉と申します。
今のお話について、可能な範囲でお答えさせていただきたいと思いますけれども、高校のほうには、モデル的にこういう教材ですよというのを既にお送りしているという状況ですので、それをどういう形で導入というか使っていただくかというのを、文部科学省さんとももう少し具体的に調整をしながら、今から進めるという状況になっています。
ただ、教材自体は、内容については高校のほうには送って、御理解をいただいていると理解しておりますので、進め方の部分をもう少し具体的に調整が必要かなと思っているところであります。
なので、すみません。具体的に、いつから、どういう形で、どこでというところまでは、今の時点ではお答えはちょっと難しいのですけれども、早い段階でうまく導入して使っていただけるようにということで、高校のほうにもいろいろ働きかけをしていきたいなと考えております。

○衞藤座長 勝村委員、よろしいでしょうか。

○勝村委員 よろしくお願いします。

○衞藤座長 高等学校の話題になっておりますけれども、私のほうからちょっと一言確認しておきたいということで発言いたしますが、高等学校の平成30年度告示の学習指導要領は、令和4年度から学年進行で開始されることになっているはずです。
そして、「薬害問題」という言葉は、公民科の公共と公共科の政治・経済に記述されております。それぞれ高等学校学習指導要領の解説というところに入っております。ですので、ここにこういう言葉が入っているということは、既に教科書づくりの中でこういったものは当然検討されているはずですので、中学校のときとはその辺の背景の条件が異なっております。
中学校のときには、薬害に関する資料は、学校から正式に配られる教科書等の中には全くなかったわけですけれども、今回は、そういった意味では、教科書にはこういった記述がどのようにあるかは別として、あるはずでございまして、公民科、公共では、この薬害問題を取り扱うことに関しては、「理解できるようにする」という記述になっておりますので、必ず書いてあるはずですし、公民科の政治・経済では、製品事故、薬害問題の扱いということに関しましては、「触れる」という言い方になっているように思いますので、若干取り扱いの強弱はあるかと思いますけれども、そういう状況ではないかと思いますけれども、文部科学省の教育課程課の方から、そのことに関して何か御助言があれば、よろしくお願いいたします。(配付資料「各高等学校 御担当者様宛『薬害を学び再発を防止するための教育について』」P2、P3参照)

○文部科学省初等中等教育局教育課程課長補佐 文部科学省教育課程課の野口でございます。
今、お話ございましたように、高等学校の学習指導要領が改訂されまして、この4月、来年度から年次進行でスタートすることになっております。先ほどお話がございましたように、新たに、全ての高校生が学ぶ公民科の科目として、公共という科目が導入されますけれども、その公共の中で学ぶ事柄として、より活発な経済活動と個人の尊重を共に成り立たせることが必要というような文脈の学習指導要領の記述がございますけれども、そこに関連する、先ほどお話がありました解説の中で、「薬害問題なども扱い」といったことも記載がされているところでございます。
また、公共を学んだ後に、さらにそこに上乗せで学ぶ公民科の科目としまして政治・経済というのがございますけれども、ここにおいても学習指導要領の解説の中で、「薬害問題などを扱い」というような記述がございまして、こういった学習指導要領及び解説の記述を基に、4月から各高校で指導が行われることになっているところでございます。
以上でございます。

○衞藤座長 ありがとうございました。
現状を一応確認するために御発言をいただきました。

○勝村委員 ちょっとよろしいでしょうか。

○衞藤座長 どうぞ、勝村委員。

○勝村委員 私ばかりで申し訳ないのですけれども、私の問題意識の繰り返しになりますけれども、このように学習指導要領に載せていただいたわけで、それでいよいよ始まるというタイミングなので、非常に期待しているところですけれども、放っておいても、薬害について教えてもらえるというふうには僕はあまり想像できないという楽観できない感覚があります。
例えば、よく言われていることで、日本はこれだけ地震とか台風とか来ているけれども、多くの高校では、理科で地学を教えていません。物理、化学、生物、地学の4つあるのに、地学を教えていない。なぜかというと、理科の先生が地学を学んだ経験がないからなのです。理科の先生になっている人は、みんな大学入試の頃から物理か化学か生物の3つから2つ選んで勉強している。だから、高校でも大学入試に関係ないということで、理系の人は地学は学ばなくてもいいというような空気になってしまっていると。いざ理科の先生になった人は、本当は地学も教えなきゃいけないわけですが、自分が勉強したことがないので、教えないでおこうということになっていて、日本は、防災教育と地学の教育がほとんど空洞化しているということになっています。
同じように、大阪教育大学の先生らとも話をしているのですけれども、現実的にいろいろ大学の学生等にもお話をさせてもらう機会をいただいているのですけれども、社会科の先生が、教師になるための勉強の中で薬害を学んでこなかったので、今から新たに教えていくということは、今の社会科、地歴公民科の先生方は薬害を知らないから難しい。僕たちは医学部・薬学部というところに行っている学生さんたちにも話をしますけれども、薬害と副作用被害の違いもやはり分からないし、どんな歴史があったのかも学んでいない。
ということなので、これは実際意味のある形で教えてもらうことができるか、という問題がある。公共の科目の中でも、いろいろと教えるテーマがあるので、飛ばしてしまいがちになるのではないかと予想をしてしまいますし、いざ教えるとなっても、意味のある形で教えてもらえるのか。そもそも薬害と、今、ある程度教育が普及している薬物乱用との違いが、本当に現場の社会の先生方が理解して教えてもらえるのかという、その辺りから丁寧に見ていく必要があるということがあると思います。新カリキュラムの導入時にうまく入っていかないと、例えば、もう既に何年もやられている政治・経済とかに今から薬害を入れてもらうということは相当ハードルは高いと思いますので、何かプッシュする力が要ると思いますし、例えば、センター試験に薬害の問題が出た、だから、参考書でそれを学ばなければいけないという形とかは、いいか悪いかは別にして、一気に普及するのだろうなということは想像はします。
どのようなやり方がいいのかも踏まえて、本当にこれからの私たちの思いである、子供たちを将来薬害の被害者にも加害者にもしたくない、ということが、教育できちんと伝えていってほしいということが実現するために、今、このタイミングでほんとやれることを、精いっぱい知恵を絞っていただいてやっていただきたいなということを、改めて要望しておきます。
以上です。

○衞藤座長 勝村委員、ありがとうございました。
資料1について、ほかに御発言のある方はいらっしゃいますか。

○坂本委員 COMLの坂本です。発言よろしいでしょうか。

○衞藤座長 坂本委員、それから、栗原委員という順番でお願いします。

○坂本委員 ありがとうございます。
本日初めての参加ですので、皆様既に議論されていることもあるかもしれませんがお伺いします。先ほど座長のほうから、高校での薬害教育をどの教科でとりあげるかにつきましてお話がありました。同時に今、勝村委員がおっしゃっていましたことにも関連しますが、どういうふうに取り上げていくのかを考えるのに、これからが非常に大事な時期ではないかと思っております。
その上で、中学で使っていた『薬害を学ぼう』を、また、高校でもそのまま使うという理解でよろしいのでしょうか。もしくは、そこに何か新しいものを加えるのでしょうか。中学生と高校生では関心の持ち方が若干違うとか、授業等の取り上げ方も違うというときに、いま何か考えていらっしゃることがもしあれば、教えていただければと思います。もしくは、現場の先生方に教え方などをかなり委ねていくことになるのかも含めて、実情をお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。

○衞藤座長 まず事務局から、回答をお願いします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 ありがとうございます。
配布先が中学から高校へ切り替わるということで、ただ、教材そのものは、引き続き従前の内容のものが使用されるというところでございます。これまで中学校の中で使用する中で、一般に理解が十分に及んでくるのが中学校3年生以降ではないのかというお話もあったところでございます。活用いただく際、先生方の活用する方策にもよってきますけれども、これまで教えられてきた内容がより一層深く理解がされていくということなのかなと考えているところでございます。
もちろん、新しい公共という科目の中で活用されるということでございますので、先ほど勝村さんのお話にもございましたけれども、そういった薬害といったものがどういった社会背景の中で起きているのか。それが、例えば歴史的なものとか、そういった他の社会的な要素などとうまくリンクしていく、そういったことも期待できるのではないかなと考えているところでございます。

○衞藤座長 それでは、よろしいでしょうか。
栗原委員、お手を挙げていたように思いますけれども、いかがでしょうか。

○栗原委員 MMR被害児を救援する会の栗原です。
たしか、ほぼ1年前のこの会議で勝村さんのほうから提案があって、賛同があって、ここに至っているわけですが、高校への教材の配布の件ですね。
今の坂本さんのお話と私も同感なのです。ただ、私自身に具体的なものがあっての質問ではないですが、過去にも高校配布であれば、中身の見直しが要るのではないかということを発言した記憶もあるのですが、あるいは、その指導の手引きを高校での授業に対応するような何か再検討をするとか、その辺りどうなのかということを、つい先ほど勝村さんが、これが実際授業に導入される場合の懸念を述べられましたけれども、勝村さんのお考えも聞きたいし、それから、文科省の方々もいらっしゃるので、そういった方々から、高校配布に当たっての改訂の必要性、あるいは指導の手引きの見直しの必要性などについてのお考えをお聞きしたいなと。
それと、副対室のほうにお尋ねしたいのは、配布時期はどうだったのですかね。私が聞き漏らしたかもしれませんが。
以上です。

○衞藤座長 複数の質問をいただきましたが、最後の質問のほうを先にお答えいただけますか。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 副対室からでございますけれども、配布時期に関しましては、夏頃を予定しているところでございます。

○衞藤座長 最初の質問は、文科省さんから何かありましたらお願いします。

○文部科学省初等中等教育局教育課程課長補佐 文科省でございますけれども、今、ちょっと専門的な観点からこれがというのは、この場でなかなか申し上げにくいところがございますけれども、以前から拝見させていただいた感触としては、中学3年生で使うのが、今回、公共で使うとすると、公共は高校1年生又は2年生で扱いますので、仮に1年生で履修するとなると学年としては1年しか違いがないかなというところはございます。
その上で、内容としては、基本的には、薬害に関する内容について基本的な部分がかなり示されて、分かりやすくなっているものなのかなと思いますので、今すぐこの場でこうというのはないのですけれども、ぱっと見た限りでは、何かこうしたほうがいいというのはすぐにはないかなと思っているところでございます。

○衞藤座長 勝村委員、今の栗原委員からの御要望に対して、何かありましたら簡単にお願いいたします。

○勝村委員 先ほどもちょっとお話をさせてもらいましたが、今、逆に栗原さんの御質問を聞いてちょっと思ったのですけれども、中学生に送るときにも、最初はパンフレットだけだったのが、最近は、一緒に指導案みたいなものも一緒に送ってもらうようになったり、今、まさに最初の今つくっている案にもありましたけれども、オンラインの1人1台とかの授業との連携も示してもらえていると思うのですけれども、先生方が、この指導案に沿ってやっていけばいいのだなと。先生方が教科書についている指導書のように、先生方がまず先に勉強をしておいて、生徒に話ができるようにパンフレット以上の先生向けの情報が同封されているということは、先生方が授業をする上で大事だと思います。パンフレットだけが送られてくると、パンフレットを配って終わりということが起こり得ると思うので、そのパンフレットは生徒たちで、先生方はパンフレット以上の一回り多い情報で、勉強がその同封されている資料でできて、その上でシラバスの例などもあり、こういうワークシートなども使えますよ、と、それがそこに同封されていたり、ダウンロードできるリンク先が示されていたということなども踏まえて、中学校向けでも、途中からそのようにしてもらっていたので、それがいいのかなと思いますので、そういう配慮も含め、できるだけこれまでやってきたことを引き継いでやっていただきたいなと思います。
それから、夏頃という話を聞いて、ちょっと思ったのですけれども、高校の場合、試験範囲というのが必ずあって、試験範囲が終わってしまうとその項目は終わりみたいになるわけですけれども、今の教科書のたてつけで言うと、この薬害の教材が使われるとしたら、公共の教科書のこの章のこの節の、というように、例えば消費者問題がこの辺から出てくるからということになってくると、教科書会社によって順番は多少違うのでしょうけれども、実は、1学期に消費者問題は終わっているから2学期に配られても、これはテスト範囲にできないなみたいなことが起こり得ないのかとか、ちょっとマニアックな質問ですが、もし、文科省さんで何か見解をお持ちであるようでしたらお聞かせいただければと思いました。

○衞藤座長 この問題は、内容が少し多岐にわたるようなのですけれども、ちょっと時間進行の都合上、今日はこれを長くやっているわけにまいらないと思いますので、申し訳ありませんけれども、この議論はここまでといたしまして、御意見は事務局のほうにメール等でお寄せいただけたらありがたいと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、この議題に関しての質疑は以上といたします。
次の議題、「薬害資料に関する研究班の今年度の活動状況について」に移ります。
今年度も昨年度に引き続き、薬害資料に関する研究班の活動が行われたとのことですので、研究班から説明をいただきたいと思います。
それでは、藤吉先生、大変お待たせして申し訳ありません。よろしくお願いいたします。

○藤吉オブザーバー ありがとうございます。

○衞藤座長 藤吉先生、すみません、ちょっとお待ちください。今、傍聴者の方がいらっしゃるということで、メンバーの紹介を事務局から簡単にさせていただきますので、その後、よろしくお願いいたします。少々お待ちください。

○藤吉オブザーバー はい。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 御報告が遅れて、恐縮でございます。
本日、画面上の傍聴の方、お名前が出ているところでございますが、事務局のほうから、御紹介を申し上げます。
ふるかわ様、くにえだ様、あらい様に傍聴で御参加をいただいているところでございます。
それから、先ほど冒頭で御説明ができておりませんでしたが、構成員の方、くすりの適正使用協議会副理事長高橋洋一郎委員でございますけれども、本日、石橋耕太郎様が代理で御出席をいただいているところでございます。
以上でございます。

○衞藤座長 御説明ありがとうございます。
藤吉先生、大変お待たせして申し訳ありません。もし、可能でしたら、藤吉先生のほうから画面共有をしていただけますでしょうか。皆様のほうには資料としてはお届けしてあります。
ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

○藤吉オブザーバー 失礼します。追手門学院大学の藤吉と申します。今日はよろしくお願いいたします。
今年度まで研究代表者を務めさせていただきました。かれこれ6年になります。その総まとめということで御報告をいたしたいと思います。よろしくお願いします。
内容は、これまでの研究活動、今年度の研究活動、それから、今後の展望ということで、簡単に10分以内で御報告をさせていただこうと思います。
そもそもの始まりは、既に御列席の皆様には御承知のことと思いますが、「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」の提言から始まっています。かれこれ10年以上前のことです。
「すべての国民に対する医薬品教育を推進するとともに、二度と薬害を起こさないという行政・企業を含めた医薬関係者の意識改革に役立ち、幅広く社会の認識を高めるため、薬害に関する資料の収集、公開等を恒常的に行う仕組み(いわゆる薬害研究資料館など)を設立すべきである」というこの提言を受けて、もともとは法政大学にお勤めだった金慶南先生が、名義としては研究代表者、上司の方のお名前が入っていますけれども、実質的には金先生が差配なさって研究活動をお始めになりました。その最終年に私が加えていただいて、何か被害者団体の資料を粛々と目録取りをしながら整理をするという、こういう作業を続けてくださいということで、それを引き継いで、私自身は資料整理の具体的作業自体については、素人ですので、専門の奈良女子大学の島津先生という方にお願いをして、院生さんの指導などもお願いしながら続けてきました。
当初配布のスライド資料では、私が誤記をしていますけれども、2016年から2020年まで大阪人権博物館、リバティおおさかというところで間借りして、作業をさせていただきました。2020年からは、大阪市内の港区(区が抜けていました。すみません。)のテナントビルに移転をして、同様の作業を続けています。この秋から、被害者団体関係者の高齢化を受けて解散せざるを得ない、自分たちで持ち切れない資料について、緊急避難的に受け入れる場所をということで、作業場とは別に、同じ建物の別室を1室お借りしています。
作業スペースでは、当事者団体資料の調査と整理を進めていまして、福岡スモンの団体の資料については、ほぼアイテムレベル、封筒に入っていたり、実際大きなファイル、ドッチファイルとかフラットファイルとかいろいろありますが、ファイルにとじられているもの、その一固まりをファイルレベルと言い、そのファイルの中に一点一点ある資料のことをアイテムレベルと言いますけれども、福岡スモンに関しては、ファイルレベルを超してアイテムレベルまでの調査と目録の作成がほぼ完了しています。ただ、それをそのまま生で出していいかどうかというのは、また、議論の余地があるところです。
これとは別に、広島スモン基金の主に弁護団・原告団の皆様が独自でデジタルアーカイブを作成されて、それを紹介するという研究会をオンラインで持ちました。実際に拝見をすると、当時の診断の記録を生のまま、墨塗りなし、マスキングなしでデジタル化なさっていますので、これをこのまま公開するのはちょっと厳しいのではないかというところで、その後も、広島の皆様にお話を伺いながら、どうしたらいいかということを検討しています。
福岡スモンの資料調査に基づく研究報告を、また、追って御案内をさしあげることになるかと思いますが、3月の上旬に予定をしています。
もともとアーカイブズといいますのは、組織がそれぞれの業務に応じてつくっていく資料というか、記録、書類を整理していくものですが、被害者団体の場合には、様々な業務に付随して様々な資料が入ってきていますので、そういう資料をどのようにしたら有効に検索できるかということを、島津先生と大学院生の下山さんに紹介していただく予定です。
もう一つ、箱ごとにどのような特徴があるかということについてのご報告を、立命館大学の小森達郎さんにお願いをしています。今、京都大学大学文書館にお勤めの橋本陽さんにアーキビストの立場からこの報告についてのコメントをいただく予定です。追って、また、御案内をさしあげますので、御都合がおつきの場合は、よろしく御参加をお願いいたします。
それ以外に、資料を補完する原告団・弁護団への訪問調査とか、実際に被害の記憶を伝える資料館への訪問調査をやろうとした矢先にコロナが広がりまして、2019年度に東京のハンセン病資料館と大阪の西淀川公害資料館、この2つの施設別々に見学会を組んで、薬被連の関係者の方とも御一緒に館内を見学して、どういう展示が可能だろうかとか、どういうふうに資料を見せたらいいだろうかということを考えるための手がかりにしていただきました。
ここで5年以上作業をさせていただいて考えるのは、もともとの提言にあります「二度と薬害を起こさない」ということについてですが、これは、実際に当事者の方々もいらっしゃるので御検討いただきたいのですけれども、薬品による被害を起こさないという意味にもし限定するのであれば、これは薬をつくってくださる製薬会社、それから、医療に関わる方々、それから、実際に監督官庁である厚労省の皆様の役割が大きい。それぞれの専門家・専門分野をお持ちの方々の役割が大きいということで、私も含めて一般庶民としては、へたに使うと大変なことになるから気をつけなさいよという、そういう「消費者教育」のレベルで、「二度と薬害を起こさない」ということを子供たちにも伝えていくものなのかなと考えるわけですが、あえて、今、ずっと続けている被害者団体の資料を保存し、ゆくゆく可能であれば公開するという意義がどこにあるかということを、改めて考えてみなければならないというふうに考えています。
どういう実験が不備でこれを安全な薬と届けてしまったのか、どこに見落としがあって、これを安全な薬と認可してしまったのかというのは、これは一般市民のレベルでは分からないことですので、その意味で被害者団体の資料の意義というのを、別途、考える必要があるだろうということを考えますと、現状では公開されていない製薬企業の資料とか行政資料の存在が、実際、原告団の皆さん、弁護団の皆さん、八方手を尽くしていろいろな証拠となるような資料を集めていらっしゃいますので、オープンになれば、こういう資料がもっとしっかりと出てくるのではないかという、そういうことを知る手がかりになるという意味で、被害者団体の資料は貴重である。
それから、「薬害を起こさない」という、薬の被害を起こさないということに特化しないで、もっと広く取れば、これは佐藤先生、本郷先生の領分になりますけれども、薬で健康を損なった人たちに、どのような困難が降りかかるかを、かかった当初の日記とか、御家族の介護・介助の日記などを通じて知る手がかりになるだろうと考えます。
そういう意味で、薬害に限らず副作用被害に遭った人たちに、どういう支援が可能なのか。これは安全だと言われていたけれども、この人には安全ではなかったという場合に、どういうような支援が可能なのかを検討するときの手がかりになり得ると考えられる。これは、行政資料とか製薬会社の資料からは、恐らく知ることができない、貴重な証言が詰まっているものであろうと思います。
私自身は、全体の班長と言いつつ、実際には、資料整理のところに関わっていますので、証言映像の研究班と被害者運動の研究班については、それぞれ佐藤先生、本郷先生から御報告をいただくことになっています。
ここまでやってきまして、資料の調査と整理はそれなりに進んだと言っていいと思うのですが、資料整理だけでは資料館の準備は進まないと言わざるを得ないというのが、現時点での感触です。もちろん、資料館と名のるからには、資料のない資料館というのは考えられないわけですが、資料はあるけれども出せないとか、資料はあるけれども真っ黒にしないといけないとか、そういう資料ばかりがあっても資料館の機能は果たせないということで、そろそろ資料整理ばかりではなくて、資料館の在り方そのものの検討をしないといけない時期ではないかなと考えています。別途、資料をどのように活用するかについては、これからも、細々と続けていきたいと思いますが、もう少し違う視点で資料館というものを考えていく必要があろうかというのが、現時点での感触です。
資料整理は、粛々と、細々と続けながら、例えば展示とかアウトリーチ、今回の高校生・中学生の薬害教育もそうだと思いますが、そういうアウトリーチなども含めた資料館機能について、ウェブの時代ですので、インターネットで出せるものをどんどん公開していくことも含めて検討をしていく必要があるだろうということで、来年度から、桃山学院大学の本郷正武先生に班長になっていただいて、新たな研究班の体制を組んでいただくということになっています。
5年間、長い間どうも御支援をありがとうございます。研究班自体は代表が代わって続きますので、引き続き御支援をお願いしたいと思います。
以上です。ありがとうございました。

○衞藤座長 藤吉先生、ありがとうございました。
ただいまの藤吉先生の御発表に関しまして、御質問や御意見のある方はいらっしゃいますか。
栗原委員、どうぞ。

○栗原委員 どうもありがとうございました、藤吉先生。
私も時々研究班の協力者として大阪のほうへ寄せていただいて、できるお手伝いさせてもらったりしているのですが、今の藤吉先生のお話の中で、スライドの8番辺りですね。「被害者団体資料保存の意義」という項目で、以下3つありましたけれども、企業資料・行政資料の存在を知る手がかりとか、薬で健康を冒された人々にはというところ、あるいは、副作用被害に遭った人々への支援方法云々という、ここらは、私自身、今まで藤吉先生のお話を聞く中では、これまであまり指摘されてなかった新しいお考えが出てきたなということを感じました。ここで、例えば行政資料の存在云々という点についてですが、後で、時間の範囲で、また、発言させていただきたいと思います。
以上です。

○衞藤座長 ありがとうございました。
ほかにございますか。
ありがとうございます。
それでは、続いて、資料2-2についての説明をお願いしたいと思います。佐藤先生よろしくお願いいたします。

○佐藤オブザーバー 佐藤です。
では、私の班の報告に行きたいと思います。
証言映像班と呼ばれていますけれども、「インタビュー映像研究班」と呼んでいます。この研究と「当事者実践」ということで、基本的なコンセプトとか、やってきていることについて話をしていきたいと思います。
まず、これまでの活動ですけれども、そもそもは厚労省のほうで録っていただいている証言映像の分析を通して、アーカイブスに役立てるための知見を蓄積するために編成されました。
映像を社会学的に分析していく、私はディスコースとか言説とかインタビューの分析が専門なので、それらを分析していくというところをやってきたのですけれども、ただそれと同時に、薬害とは何かというか、薬害の概念史的な研究をもとに、薬害について語る専門家の方々、それから当事者の方々つまり被害者の方々の言説の分析ということをやってきまして、そのさいにいろいろ気づいたことをベースにしながら、証言映像を展示するときに、どういうふうに考えたらいいのかということを特に検討してきました。
そこで特に気づいたこととして取り上げたいのは、「当事者としての実践」――これは社会学的な言い方ですけれども――の重要性ですね。どういうことかというと、薬害というのは、医薬系で言えば、医薬品による健康被害のうち社会問題化したものというふうに定義されていたり、一般に理解されていたりすると思うのですけれども、実はそれだけでは薬害を理解することは不十分で、その不十分さに対するアクセスの仕方が、これまでいろいろ整えられていなかったと思うのですね。
そこで、今までの薬害事件に関する問題意識とか語られ方ですね、それを調査して研究してどういうことが分かってきたかというと、幾つかの「薬害をめぐる考え方」あるいは「語り方」というものがあって、それは主に4つに分けて考えられる。
それがどういうものかというと、原因に対する言及と、それから、それを起こしたという責任に対する言及ですね。そして、この薬害が起こる社会構造に対する言及、この3つが特に社会科学では80年代ぐらい、90年代ぐらいまで論じられてきたのですけれども、そこで取りこぼされてきたのは何かというと、当事者の方、被害者の方々の手記とか発言とか、そういった方々の語りです。
薬害を社会現象として考えるときには、彼らの語りを外すわけにはいきません。そこでそれを含めて考えると、実は彼らはその薬害によって社会から排除される、ある差別されるという経験を、薬害の一部として経験しているわけですね。あるいは薬害そのものとして経験しているわけです。だから、それもまた薬害の重要な局面である。ということは、実は4つの局面、あるいは4つの語り方が薬害としてあるということを明らかにしてきました。こういう研究をやってきました。
そこで重要なことは、専門家による薬害の説明だけでは、薬害を考える上では不十分だということです。どういうことかというと、当事者が感じて、被害を被っているその状況そのものも薬害の一部として重要な局面であるということですから、したがって、その意味で当事者にしか語れないことを示すことが、薬害を知るということと、そして展示することにとって、とても重要な局面だと考えられるわけです。そこを抽出して証言映像を展示するのに際して、重要な局面として押し出していかなくてはいけないのではないかなと思っているわけです。
したがって、証言映像をこの薬害アーカイブスの一つのユニットとして捉えると、その被害者による薬害言説が表している、「差別され排除されている、その状況からもう一度社会に受け入れてもらう」というか「受け入れるべきだ」という主張を示すことが、今後に薬害を二度と起こさないという、再発防止を考える上では必要なものだと思いますので、それを示すような、あるいはそれを訴えかけるような展示の仕方が重要なのではないかと思っているわけです。
そこで、証言映像の記録を分析すると、そこでは、それをどう用いるかということも含めて2つの価値が考えられます。一つは昨年度も申し上げましたけれども、記録として長く保存して、藤吉先生の班などと同じ形で、ある種の記録としての価値を保存していく。
そして、もう一つは、再発防止ということを考えると、これを人々に見てもらって、そこで展示をして理解してもらうという局面に関係する、展示的な価値ということが重要だと考えられます。インタビュー映像班の活動は、今はどちらかというと、展示的な価値をどういうふうに実現するかを探求することが重要ではないかと考えて、その局面を検討してきました。
そうすると、言ってみれば、ここら辺のファイルはちょっと細かい社会学的な分類というか認識の話を書いていますけれども、要するに、当事者の映像は、それを通して、人々に連帯を訴えかける。つまり、その被害者の人たちも同じ市民として、我々と同じ社会に生きている市民としての価値を認めるということが大事ですので、それを訴えかけるようなカテゴリー的な類縁性とか同一性を示すことが、基本的な方針になっていくわけです。
それをどうするかというのが、この証言映像の展示ということに関しては重要になってくるわけですね。それは言ってみれば、ある種の空間的な、現代という時間が同一であるところの空間的な連帯です。一つつけ加えると、記録というのは要するに、時間的に過去から未来にわたって、時間的な連帯を実現するための方法ということになるわけです。一方で、展示するというのは、空間的な連帯を実現するための方法です。ですので、それ特有の方法が要るだろうというわけですね。要するに、記録だけではなくて、展示特有の方法が要るだろうというふうに考えられるわけです。
そこで、2つの方法をいろいろな専門家の人とかと議論しながら考えまして、1つは、昨年度の終わりに申し上げたと思うのですけれども、当事者が主体的に制作に関与するような映像の制作ですね。
もう一つは、今年度から、試験的にこういうふうにやったらどうだろうかというふうに、プロのカメラマンの方とかと議論しながらちょっと進めてきている、市民としての薬害被害者(当事者)の画像、要するに、写真とかポートレートとか、そういったものを制作して、それを展示するというのはどうだろうかということを考えています。
そこで、まず一つ前者のほうの映像ですけれども、昨年度末から始めているのが、デジタル・ストーリー・テリング(DST)と言われる方法で、言ってみれば、被害者の方々の経験を映像化するという、そういう映像の制作です。DSTに関しては、DSTの経験豊かな方にいろいろ教えていただきながら、基本的には、専門家がつくるというよりも、その当事者が当事者自身の視点を基につくるということで、当事者が主体的にこれを編成していくということを行ってもらっています。
後者のほうは、先ほど言いましたように、ポートレートの撮影と展示で、試験的に始めているところですので、後でちょっとお見せしたいと思いますけれども、まだこれからという感じですね。
そこでその前者のDSTという方法ですけれども、現在のところ1本試作しています。実は、21年度もう一、二本つくろうと思っていたのですが、残念ながらコロナのこともあって、なかなかお目にかかれなくなってしまっています。そういう方々と一緒にワークショップでつくっていくものですが、集まるということが基本的にできないので、なかなか難しいと思うのですけれども、一回集まってやったときの映像をつくりましたので、ちょっとそれをこれから見ていただきたいなと思います。
これを見ていただくポイントというか、そこに書いてありますけれども、まず、本人が、自分が感じたこととか考えたことを書いていただくのですね。それをストーリーに書いていただくということです。そして、それをご本人が朗読していくという形で音声をつくります。それから、当事者の方が望むようなある種のイメージとか、実際の映像とか使いながら全体を編成していきます。専門家として、薬害ってこういうものですよとかそういうことは言いません。そうではなくて、こちらはサポートする形で、ソフトウェア操作とか、どちらかというと議論しながら、一緒になってつくり上げていくという形です。だから、プロフェッショナルにつくっていくという形とは違うわけです。
大事なのは、被害者の方々の経験とか主体的なニュアンスというところだと思います。そして、それこそが、薬害のある種の再発防止のための市民的な連帯を可能にするものではないかという前提になっていますので、そういう観点でつくったものです。
では、ちょっと共有ファイルを切り替えて、見ていただこうと思います。
 
「証言映像:薬害に生きて、そして逝った息子(2021)」(約10分30秒)
(公開用バージョンではないため、当事者の意向も踏まえて今回の記録は省略する)
 
○佐藤オブザーバー 今のはちょっと長めで、10分30秒あるのですけれども、すみません、時間を取りました。「薬害に生きて、そして、逝った息子」という、遺族の方に最初プロットを書いていただいて、そこで、ちょっと話し合いながら、映像とか画像とかを使いながらつくりました。こういう形で被害というものを語るというか、経験を語るというのをつくっていくというふうに。
これはどうしてかというと、証言映像というのは、1本1時間ぐらいあって、現実的に言って、やはり人が見ないのですね。私も、博物館などでいろいろな被害、戦争被害なども含めていろいろな問題の被害を見てきましたけれども、いろいろ各地のものを見て、時間的なものとか、それから、見ていく経路の中でどういうふうに経験的に可能なのかということとか、あるいは記録にたどり着くための展示というのはどういうふうにあり得るのかということを考えた上で、特に被害者の方々の経験が先ほど言いましたように社会学的に言うと大事なので、そこからこのような方法でやってみようかなというふうにしてつくってきました。
これを被害に遭った方に見ていただいたりとかして、同じような形で積み上げていけたらいいかなと思っています。ただ、今回見ていただいたものは完全版ではありません。というのは、公開に関して言うと、ほかの方が映っている部分もあるので、それはマスキングとかして工夫をする必要があるかなと、ご本人と打ち合わせをしています。
これが、DSTの一つの試験的な状況です。
そして、もう一つはポートレートですね。ポートレートはどうして必要かというと、被害者の方々にとってみると、これは社会学的なところでもあるのですけれども、「被害者であること」に閉じ込められているというか、アイデンティティーの問題や、役割の問題などがあると思います。このファイルの2番目に書いてあるように、「被害者」に期待され、規範的に与えられるカテゴリーですね。その問題です。薬害に関連して生きているだけではなくて、「同じ市民」として生きているということを示すことを通じて初めて、人びとに薬害の意味というものが十分理解されるのだろうと思うわけです。
したがって、「ステレオタイプ化された被害者像」にならないための当事者というものを人々に展示して示していくことのために、これが必要なのではないかと考えて、今、試験的に撮影を行っています。
そこで、写真家の方と相談して、デジタルメディアですと記録がなくなるということがどうしてもあって、そのためにデジタルのデータをずっとフォーマットを替えるというか、ハードディスクを替えながら保存していかなくてはいけないのは大変です。その意味ではフィルムが最強だということです。最近は、フィルムが減ってきてなかなか大変なのですけれども、フィルムで肖像を撮影するという活動を行い始めています。例えば、こういう形でポートレートを撮る。これらは当事者の方々ですけれども、このようなポートレートを撮る活動を行っています。
この2つですね。DSTとポートレートというものを展示のための研究活動として、これからも行っていこうと思っています。その一方で、証言映像の分析も重ね合わせていくことを通じて、記録と展示という2つの価値を実現するような研究を、これからもやっていこうと思っています。
映像班からは、以上です。どうもありがとうございました。

○衞藤座長 佐藤先生、ありがとうございました。
ただいま、佐藤先生から御紹介いただいたものに関しまして、御質問、御意見等はございますでしょうか。
栗原委員どうぞ、お願いします。

○栗原委員 佐藤先生、どうもありがとうございました。今まで、何回かお話を伺ってきた中では、今日は具体的な作品があって、私のような者でも、少し具体的なイメージが持てて、証言映像を大分たくさんの人数撮りためられてきていますけれども、やはり裁判が終わって、こういういろいろな分野の先生方の力を借りながら、これから、薬害の真相が少しずつ少しずつ分かっていくのかなという、そんな感じを持ちました。だからこそ、今、被害者団体が持っている資料であったり、あるいは先ほどの行政資料云々という話もありましたけれども、関わりのある資料をとにかく残すことが、最も基本的なことであるという自覚も、今、改めて持ちました。
以上です。

○衞藤座長 ありがとうございました。
ほかに、御発言はございますか。
花井委員、お願いします。

○花井委員 佐藤先生、ありがとうございます。
今、アーカイブのほうのデータベース化の映像を、実際に伝えるための展示の仕方というのもちょっと進捗してきたところで、そろそろその結果を広く市民がアクセスできるような状態にしてほしい局面に、これは試験的でもいいのですけれども、映像のほうは厚生労働省の事業としてやっているので、所有者は国になっているのですけれども、その国が所有するものと、それから、資料班が整理しているものは、まだ残りの所有権は移管していない、各団体所有になっているのですね。
そういうものですし、資料館があるわけではないので、一元的に展示するのは今の状況ではできないのですけれども、一方で、PMDAで一定程度展示していくという方法もあって、あれも試験的と言ったら怒られますけれども、展示を開始しているということで、デジタルコンテンツをそろそろ市民にも公開できるようなものを、この研究班なのか、国の事業なのか分かりませんけれども、着手していただけると、また、私どももそれを市民の一般の方に紹介、もしくはインターセクショナリティという言葉が今はやっていますけれども、そういうインターセクショナリティという領域のグループ等々にもお示しして、ディスカッションすることによって、薬害再発防止だけでなくて、ヘルスケアシステム全体とか、社会全体とか、そういうことによりよい価値を見い出してもらうようなことをしていけたらと思います。よろしくお願いいたします。

○衞藤座長 ありがとうございます。

○勝村委員 勝村です。

○衞藤座長 勝村委員、どうぞ。

○勝村委員 佐藤先生、ありがとうございました。
アーカイブも非常に大事なことで、保存がされていくということが大事なのですけれども、同時に、保存されているということが貴重なのはあくまでも保存されているということで、それにいかにたくさんアクセスしてもらえるか。資料も、研究者ならば閲覧できるけれども、それを一般に伝えたいために、何か読みやすい本にする必要があったり、映像も、例えばNHKが「薬禍の歳月」という番組をつくるに当たっても、ものすごい量の映像は、NHKの資料として保存されるように残っているのでしょうけれども、そこから限られた時間で見せる編集をして、それをみんなに見せて伝えていくということになると思います。
その両者が絡み合って、保存されたものを伝える意味で、教育にも生かしていけたらということになっているので、この辺り、今日いろいろな先生方のお話を聞かせてもらって、うまくつながっていけばいいなと本当に思いましたので、今、この映像とか、10分間ぐらいになっているものなんかに、社会科の先生などもアクセスできて、それが、また、紹介されていくみたいな、そんなつながりが本当にできればと今のお話から思いました。薬害エイズの90年代の頃、今、大阪でも、高校生たちは、阪神大震災も全く知らないのですよね。同じように、90年代の悲惨な薬害エイズも、先生方でさえ、若い先生は知らない世代で、そういう意味でアーカイブは大事です。さらに、それを見やすく、しかも、被害者のステレオタイプにはまらない、ということにもすごく共感しましたし、うまく教育なんかともつながっていけるように工夫していただけたら、ありがたいなと思いました。
以上です。

○衞藤座長 ありがとうございました。
ほかに御発言はございますか。

○後藤委員 後藤ですが、よろしいですか。

○衞藤座長 どうぞ。

○後藤委員 はばたき福祉事業団の後藤です。
佐藤先生、ありがとうございました。非常にすばらしいというか、被害者の方の実情というか、実像がよく伝わる映像だったと思いますが、こういった取組は、今回見ている中で、一つの薬害に集中しているのかなとは思うのですが、我々は活動がまだ続いているところなので、やりやすいところもあるかとは思うのですけれども、ほかの薬害についても、また、問題の質が違うというか、なかなか難しいところはあろうかと思うので、ぜひ、そういったほうの取組もしていただいて、課題というか、今後どういうふうな薬害という一つのつながりの中で、どういうこういう映像資料ができていくかというところは、ぜひ我々も興味もあるところですので、そういった方法で続けていただければと思います。
それと、先ほど花井委員からもありましたけれども、そろそろこういった資料をどういうふうな公開の仕方をしていくかということで、先ほど、藤吉先生からの御発表にもありましたけれども、そろそろ資料館の在り方そのものの検討に着手する時期というような御提言がありました。
そういった我々はもともと薬害資料館というものを求めていて、それが資料館というステップであるのか、インターネット上のバーチャルなものであるのか、具体的にどういうふうに進めていくかということを、そろそろ本格的にというか、考えていかなければならない時期で、そういったことをこういった検討会でもっと積極的に議論できればいいかなと思ったのですが、今回、議題にはなかったのであれなのですが、そういった前へ進めていくという意味で、厚労省の方に、どういうスピード感で、今後、研究班がやっていることはあるのですけれども、国としてどういうスピード感で進めていくかというところも、ぜひ提示していただきたいというか、今のところの、今後、研究班が続くということはあるのでしょうけれども、それ以外に、どんな進め方をしていくかというところの目算というか、今のところの計画とかがありましたら、ちょっと教えていただければありがたいのです。

○衞藤座長 事務局からお願いいたします。

○医薬品副作用被害対策室長 副対室の今泉ですけれども、今、いろいろお話しいただいた中で、特に来年度の研究班においては、先ほどもちょっとお話出てきましたけれども、アーカイブスの構築ということで、記録、資料を保存するということから、さらに、どういう形で展示をしていくか、広報していくか、伝えていくかというところに重点を置いていただくというふうに伺っています。
我々の中でも、単純に、その資料を保管しておく箱をつくるというよりは、むしろ、どういう形で世の中に、皆さんにいろいろな資料も含めて知っていただくかというところが大事だなと思っていますので、そこは、研究班の先生方とも協力しながら、例えばそれがホームページとかデジタルがよいのかというのも含めまして、今後、考えていきたいと思っています。
スケジュール的にどうなのかというお話もありましたけれども、まさに、来年度、そういう形で展開を中心にやっていくという話で研究班からも聞いておりますので、そこは、具体的にどこまで年度の中で進められるかという研究班の話でもありますけれども、そこを見ながら、具体的に、先ほど所有権の話なども出てきましたけれども、実際に、どの程度まで進められるかというのを少し横目で見ながら、では、現実的に来年度はどうするかというのも、少し進捗を確かめながら、肝炎の方々も関係していると思いますけれども、関係者でちょっと連携しながら、少し前に進めたらなと思っております。
以上です。

○衞藤座長 ありがとうございます。

○後藤委員 よろしくお願いいたします。

○衞藤座長 資料2-2についてのディスカッションは、これで終了いたしたいと思います。
続きまして、資料2-3についての御説明を、本郷先生お願いいたします。

○本郷オブザーバー 初めましての方も多いと思います。桃山学院大学の本郷と申します。
今、資料を画面共有させていただいています。
私は、今年度からこの研究班に入りまして、自分のまず専門とするというところから慣れていくと、今年度はそういう活動になっています。
まず最初に、私の簡単な自己紹介ということで、今、桃山学院大学という大阪にある私大の教鞭を取っております。専門は医療社会学、社会運動論ということで、入り口はエイズの問題ですね。性行為感染とかそっちのほうのエイズの話から、だんだん薬害のほうにシフトしてきまして、特に、3番目にありますけれども、薬害エイズに関する被害者や医師へのインタビュー調査について、2004年からずっと関わってまいりました。
本もありますが、最近だと、今、画面共有していますが、こういうようなものだとか、あと、医学史辞典ですかね、そちらのほうで薬害の項目を書く機会があったりとか、薬害というのをどういうふうに伝えるかというか、定義するかとか、そういうふうなことでこの一、二年ぐらい頭を悩ませてきたという経緯があります。
あと、こちらのほうは、厚労科研で、そういう研究費とは別に、また、日本学術振興会というところの研究代表者もやっておりまして、2期目ですけれども、ずっと薬害、エイズ中心ですが、それから、だんだんサリドマイドとかスモンとかいろいろ範囲を広げて、ほかの分担研究者も含めますと、かなり学際的なプロジェクトというか、チームを組んで、薬害って何なのかとかいうふうな、割と基本的なところを詰めてきているというものです。
こんな本を一応書きましたということですが、こっちはどちらかというとエイズの話が中心です。
今回、今年度から関わるに当たって、そもそも薬害ってどう伝えるかといったときの大枠として、ただ薬による健康被害です、健康問題ですというふうな切り取り方ではちょっと足らないのではないかというふうな問題意識がありまして、それは、例えば、私とかが考えている、いつから薬害被害者って、薬害の被害者になっているのですかという、そういう自覚を持つのって、別に何か症状が出たら、これは絶対に薬害だとかというふうに最初からなるかといったら、そんなことはないのだと思うのですね。
最初はよく分からないで、だんだん広くなってきたりとか、また、それを誰かに教えてもらったり、弁護士さんの活動に触れてとか、同じ被害者の人の話を聞いてとか、いろいろな被害者認識に変わっていくはずなのですね。こういうのはBecoming Victimsとかという、そういうプロセスがあって、こういうふうな研究をしてきたりとかしています。そんな最初から、みんな薬害被害者ですというふうになるかといったら、そんなことはいまだに認められないとか、認めたくないとか、そういう方もいらっしゃるはずです。
また、この薬害の話をするときに、私は社会運動論の研究者なので、訴訟というふうな戦術を取ることが特徴的ではあるとは思うのですけれども、そこで公害問題とかとの連続性といいますか、時代背景で、スモンとかサリドマイドのときは、4大公害問題の訴訟とかもずっと行われてきているところですから、そこのつながりとかも見ていく必要があると思いますし、多分、教育の中でも、こういう時期にこういう公害問題があってねと言っても、なかなか今の学生にはうまく伝わらないところがあるので、その前から逐次説明するというふうな手順を取りますけれども、こういう薬害問題というふうなものは、ただそのものとしてあるのではなくて、いろいろなその関係の下にあって、どういうふうな解決が図られてきたのかという、そういう基本的なところが前提となる大枠をきちんと議論するべきかなというふうには、個人的な問題関心としてはまずあります。
今年度、この研究班で一応「被害者運動史の検討」ということで、被害者運動と言うと結構幅が広くなります。つまり、先ほどの公害問題もそうかもしれませんし、一口に薬害と言っても、薬被連に加盟しているところとそうでないものとか、いろいろ私の中でもどこまで掘ってよいものか、または、私の研究班というかチームには、研究協力者が3人いるのですけれども、それぞれ全然異なるバックグラウンドを持った人たちですので、薬害というのをどういうふうに定義しましょうねという話から、まず基本的なところを詰めて、いきなり文献を集めてくださいと言っても、そんなのは、そんな簡単にはいかないわけですね。
まずはとりあえず先行研究、今までは薬害に関するテキスト、本、論文とかあると思うのですけれども、それが、どういうふうな形で薬害という問題をどういうテーマで切り取ったりとか、どういうトピックが問題視されたりとか、そこを確認するというふうなことをしております。
そうなると、当然、薬被連に加盟していない団体、例えばクロロキンとか、私が何かいろいろ言っていると、クロロキンのことは知らないのかという突っ込みがあったりとかするので、全く知らないわけではないけれども、何でそういう話にならないのかなとかって不思議な感じもあるのですけれども、そういう薬害問題の外縁というか、境界線をどこら辺に、とりあえず狭く取ってもいいのですけれども、いろいろな先行研究を集めていく中で、どうしても広がっていくので、そこをきちんと考えていこうということは、その試行錯誤を、今年度まだやっています。
その中で、結局、薬害の定義問題で、先ほど紹介したこのテキストとか、ほかのところでも、私どもで、今、編集している本があるのですけれども、そちらのほうでも言うのですけれども、単なる医薬品による健康被害と言ってしまうと、すごく狭いというか、広過ぎると言うべきか、ちょっと単純化し過ぎしているのではないか。それよりは、「健康被害」という、例えば、それぞれエイズだろうが、スモンであろうが、肝炎とか、いろいろな症状が違っていても、私たち一緒に薬害被害者ですよね、これは薬害問題ですよねと切り取れるのは、結局のところ、ここに赤字で書いている生活上の被害といいますか、生活全般にわたる、ありていに言えば差別問題とか、人間関係が閉ざされてしまうとか、そういう問題ではやはり共通していますし、また、その加害者側と言われる人たちが共通しているとか、そういうところで一つになれるというふうなことがあるのではないか。
そういった点で、この研究班の中での基本的なコンセプト、または、その基準というか、薬害の基準というふうなものを、こういうふうに設定できたらよいかと思いますし、恐らくこれは学振(日本学術振興会)の科研(研究会)のほうにも言っているのですけれども、「薬害」という言葉は、日本だけの固有の言葉なのですよね。海外で薬害という言葉に類するものはないので、ここから説明しないと、海外で、日本ではこういうふうなのがありましてと言っても、理解してもらえないのですよね。そういったところも踏まえて、日本国内もそうですし、海外に発信する、どうしても我々はそういうふうな使命を持っていると思うので、そこをきちんと考えて、何でもかんでも集めるとか、何でも展示するというふうな話にはならないなということを、僕のほうは、そういうふうにブレーキをかけると言ったら変ですけれども、枠をしっかりつくっていきたいなと思っています。
あとは、先ほど出てきた背景となる、当時の時代背景ですが、ほかの問題との関連とか、そこら辺もやはり伝える必要があると思います。先ほど、地下鉄サリンとか阪神淡路大震災とかそういう95年はこういう時代ですよねと言ったときに、では、それはほかの5年とどうなのかとか、そういうふうな横並びで、いろいろな社会問題とか、被害者運動とか、それとの絡みで議論できたらよいかなと思っています。
それは、最近、犠牲者非難という言葉があったりしますけれども、そういう問題ともかぶるところがあるので、今、気になっているところです。
私、来年度から、この研究班の班長を拝命して、いわゆるかいらい政権みたいな感じですけれども、そこで「記録」と「展示」というキーワードで、これまで、記録というのは、アーカイブをつくっていくということを重点的にやってきたわけですけれども、それを残しつつ、展示というところに力を入れるということですね。先ほどのデジタル・ストーリー・テリングの話もありますし、そこの私の領分としては、基本的にそこを透視するというか、そのコンセプトをしっかり定めるというふうなところを目指していく。個人的にというか、私の班というか、チームでは目指していきたいと考えております。
私からは、以上です。

○衞藤座長 本郷先生、ありがとうございました。
御質問、御意見がありましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。
勝村委員、どうぞ。

○勝村委員 ありがとうございました。
かなり前ですけれども、僕たちも薬害の定義はきちんとしなければいけないなと話をしたのも大分前のことですが、この話だけ語り合っても一晩二晩となる。今日も、いろいろ薬害というとそこら辺りの話になりますけれども、未来の薬害を防止していきたいということと、なかなかうまくつながる、実感としてつながる定義ということを考える必要がある。高度経済成長時代の環境の公害、薬害というのは一つの、それはそれで本当に一つのその時代の正しい認識だったと思うのですけれども、公害のほうが環境問題に発展していく中で、薬害がどう発展してきたかという感じで整理が必要。僕たちは、薬害は薬が原因ではないということで、薬が原因なのが副作用被害というような、僕なんかは、そういうふうにも考えていて、いろいろな多面的な定義があるのですけれども、そういうことも議論して、社会学的にもいろいろな角度で見ていくことで、いろいろな議論はできると思うのですけれども、定義というのは極めて大事で。まさに教育なんかで変に定義されると、今、コロナ禍でもいろいろ思うことがありますけれども、時のマスメディアが報じてレッテルを貼ったものが、その薬害の一番の特質だというふうに、後々の歴史で理解されてしまっているところが、本当に当事者たちの実感と合っていたのか、みたいなこともあると思うのですよね。
なので、この定義というものを、当事者も入れて、真摯に研究してくれている皆さんに議論しているところで、改めて、今日は、その議論をする時間はとてもないのですけれども、定義という意味であれば、しっかり何かコンセンサスをつくるのですけれども、結局、ブレーンストーミング的にも始まっていくのと、今日、いろいろ定義してもらっていますけれども、僕は僕で、薬害の定義というだけで、かなりいろいろこだわってしまうことがあるし、それはここにおられる皆さんもそうだと思うのです。その辺り、きちんといい定義が、どこかでまとまらなければいけないと思っていたし、教育で、文部科学省にも、指導要領に薬害という言葉を書き込んで欲しいということでやってきているのですけれども、その定義はということは非常に大事なので、よい問題提起をしていただきましたし、研究していただいているので、ちょっとここは、改めて僕たちも考えて、薬被連でも考えていくべきだし、この検討会自身でも、そこが曖昧なままやっているということもあまりよくないのかなと思いました。
でも、すぐにできないので、それを研究してもらっているということで、ちょっといろいろ思うところがあるという意味で、ちょっと発言させていただきました。ありがとうございます。

○衞藤座長 ありがとうございました。
そのほか、御発言はございますか。

○本郷オブザーバー 私、ごく簡単にコメントさせていただくと、個々に持っている薬害の経験とか、こういう定義というのが多分あると思いますし、それはそれとして、もちろんインタビューとか手記とかそういったものも、僕は議論が好きなので、それを集めて、論文という形にしたいと思います。
一方で、現実に今、薬被連とかいろいろな形で薬害というのが実際にあって、実際に活動して、連帯していて、または、教科書に載せて、何か教える必要があるといったときの薬害というのと、何かちょっとずれるのだろうなというふうな気持ちがあって、そこをどうにかうまく捉えていければ、どういう違いがあるのかとか、どこら辺に落としどころがあるのかなんていうふうなことはずっと考えていきたいなと思っています。そんな簡単なことではないと思っています。

○衞藤座長 補足の御説明ありがとうございました。
御発言はございますか。
花井委員、どうぞ。

○花井委員 定義論は難しい問題なのですけれども、1つ研究班の皆さんにお願いしたいのは、例えば、水俣もいわゆる認定基準問題というのがあって、つまり、末梢神経障害という定義に始まったことの違いが半世紀以上、その定義から自由になれなかったというところはあって、これはいわゆる医学、メディカルサイエンス上の定義の話なのですね。あのとき、ちょうどそれに関わった椿先生はスモンの経験がある。だから、科学的な定義ということと、それから、今、私が考えている薬害とは何かというところの差を、科学技術と科学性というところとの距離というか、それがどういう位置関係にあるかというところを、もうちょっと深掘りしてもらうと、さっき勝村さんとか本郷さんがおっしゃられたような、薬害をどう使うのかというところの一つの指標になるかと思います。さっきの本郷さんの違和感の形で言えば、厚労省としては医薬系の、どちらかというとメディカルサイエンス寄りの定義に寄っていくわけですね、基本的に。そこが学際的にどのように、落としどころという言葉もありましたけれども、定義というか、薬害というのをつかんでいくかというところは、当事者と専門家と、もしくはメディカルの先生方も含めて詰めていけるようなことになればいいなと思っています。先生方、よろしくお願いいたします。

○衞藤座長 ありがとうございました。

○勝村委員 もう一言だけすみません。
僕らなんかは、クロロキンの横沢さんとかが、厚労省と交渉している場にも、何度も同席していたという経験もありますが、一方で、最近のいろいろな団体が果たして薬害なのか、薬害ではないのかというのを、医学的に専門家たちは、これは薬害ではないと言っている、どうなのかという、この辺りにどちらかレッテルをきちんと定義で貼ってしまって、勝つか負けるかというような運動論とは違って、そういうものを全部含めた、深い本当の薬害というものの意味合いをきちんと整理しておかないと、いろいろな利益相反のある人たちも出てくれば、だけど、被害者意識の言われた、僕は僕なりに薬害と僕が思っているものの共通点は、いろいろな多面的に、先生方がおっしゃるように、いろいろなところでそろっている共通のものがあって、その辺はきれいに明確にしていくことを、研究者という人がやってしまうと、それがレッテルになって、被害者たちは素人だからということになってしまうので、そこを後からなかなか触りにくいということになると思いますので、いろいろな研究者や専門家が薬害の定義を書いているのだけれども、僕としてはどれも非常に考えが浅いと思っていて、本気でもっと深く考えて、もっといろいろな細かいことを言いますけれども、本当にいろいろなものを見ていかなければいけない、未来も見ていかなければいけない、現状も見ていかなければいけない、歴史も見ていかなければいけない。でも、実際、それはあまり複雑ではなくて、確かにという共通点は深く考えていけば、さーっとシンプルに見られると僕は思っていて、そういう話をして、薬害の共通点で、僕はいろいろな議論を皆さんとして、なるほどとさらに考え方が変わっていくこともあると思うので、ぜひ、そういうディスカッションをしていきたいなという気がします。大事だというふうな思いを持っています。よろしくお願いします。

○衞藤座長 ありがとうございました。
様々な御意見ありがとうございました。
それでは、この資料2-3についてのディスカッションは、これで終わりにしたいと思います。
本日は、非常に限られた時間の中で、議題について、大変な熱心な御討論をありがとうございました。
本日、皆様にいただいた御意見につきましては、事務局において整理しまして、必要に応じて、皆様に御相談させていただきたいと思っております。最終的には、座長の私に御一任させていただきたいということを、皆さんにお諮りしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)

○衞藤座長 では、事務局から報告させていただきます。

○医薬品副作用被害対策室長 事務局ですけれども、一番最初の薬害教育の関係で、いろいろな御意見をいただいていたと思うのですけれども、そのポイントとしては、高校できちんと活用されることということで、皆さんそういう観点で御発言いただいていたと思いますので、実際に、どういう形で工夫ができるかというのは、文部科学省にもちょっと協力をいただきながら、我々でも少し考えたいと思います。その状況等につきましては、また、座長にも相談さしあげて、皆さんにも共有できればと思いますので、よろしくお願いします。

○衞藤座長 ありがとうございました。
それでは、改めて、皆様からいただいた御意見を基に、事務局とも相談して、最終的には、座長の私に御一任させていただくということでよろしいでしょうか。

○高橋委員 一つよろしいでしょうか。

○衞藤座長 高橋浩之委員、どうぞ。

○高橋委員 よろしくお願いします。
1つ提案があります。今日も結構議論になった、新しく始まる公民での薬害の扱いはとても大きなことだと思うので、次回以降の会議で、教科書の記述がどんなふうになっているかということを検討してはいかがでしょうか。私の記憶に間違いなければ、厚生労働省のほうで、薬害について教科書会社に説明したことがあり、それがどう反映されているかについて見る必要があると思います。また、我々がつくった教材に関しても、具体的に、薬害についてどんなことが教科書で扱われているかということによって、それを補完する形で行くかなど、作戦の立てようがあると思うのです。
そういった意味で、高校の教科書で、どんなふうに薬害が扱われているかというのは、とても大事なことだと思うので、この検討会で、次回以降、ちょっと考える機会があったらよろしいのではないかということです。

○衞藤座長 ありがとうございます。
次回以降への課題として、大変重要な御指摘をいただいたと思います。
全体として、ほかに御発言はありますか。
栗原委員、どうぞ。

○栗原委員 ありがとうございます。
今の高橋先生のお話を踏まえたら、例えば、最近は、1年に1回開催という状況になっていましたが、事務局としては、次回は、いつ頃をお考えになられますでしょうか。

○衞藤座長 次回の開催の見通しについて、事務局からお願いいたします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 お答え申し上げます。
実際に、公共の授業でどういった用いられ方をしていくか、新年度以降の教科書の書きぶり等、ある程度時間をかけながらウォッチして、整理する必要があると思っております。あまり空き過ぎてもと思いますので、そちらについては、調整の上、また、御相談させていただければと考えています。

○衞藤座長 ということでございます。
ほかにございますか。
それでは、本日はオンラインという形でございますけれども、大変熱心な御討議をいただき、ありがとうございます。
以上で、本日の議題は全て終了いたしました。
事務局から、次回のことも、今、お話がありましたけれども、改めて、事務局からお願いいたします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 申し上げましたとおり、次回の日程につきましては、本日の議題等も含めまして、追って、調整させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○衞藤座長 それでは、これで本日の検討会を終了したいと思います。長時間にわたりありがとうございました。
 

  
(了)
<連絡先>

厚生労働省医薬食品局総務課
医薬品副作用被害対策室
TEL 03-5253-1111(内線2718)

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