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2021年1月25日 薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会 議事録

○日時

令和3年1月25日(月) 15:00~

 

○場所

厚生労働省 医薬・生活衛生局 局議室(6階)
オンライン開催

○議事

○衞藤座長 皆さん、こんにちは。定刻になりましたので、ただいまより、第20回「薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会」を開催いたします。皆様には、お忙しい中、御出席いただきありがとうございます。今年度は、新型コロナウイルス感染症対策のためオンライン開催とし、一般傍聴はSkypeによる視聴を可能といたします。

 議事に入る前に、構成員でいらっしゃいましたNPO法人京都スモン基金の矢倉七美子様が一昨年に、同じく構成員でいらっしゃった社会福祉法人はばたき福祉事業団理事長の大平勝美様が昨年それぞれ御逝去されましたので、謹んで御冥福をお祈り申し上げます。

 それでは、構成員の出欠状況について、事務局から報告してください。


○事務局(医薬・生活衛生局医薬品副作用被害対策室長補佐) 御報告申し上げます。本日は倉田雅子構成員から、欠席の御連絡をいただいておりますことを御報告申し上げます。


○衞藤座長 構成員の交代について、前回の検討会は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により令和23月に持ち回りで行ったため、一昨年に交代された構成員の方も含めて御紹介いたします。NPO法人京都スモンの会構成員高町晃司様、薬害肝炎訴訟原告団の手嶋構成員の後任として、全国薬害被害者団体連絡協議会副代表世話人の勝村久司様、社会福祉法人はばたき福祉事業団理事長の(故)大平構成員の後任として、同事業団の後藤智己様が新たに構成員として御参加いただくことになりました。勝村様、後藤様、高町様から一言御挨拶をお願いいたします。


○勝村構成員 勝村です。私は30年前に陣痛促進剤による被害で子どもを亡くしたことをきっかけに薬害の問題に関わってきております。21年前、全国薬害被害者団体連絡協議会が当時6団体、6つの薬害の団体で結成された99年の、結成された日に、私たちは文部科学省と交渉をしました。それまでの薬害の被害者団体は、厚生労働省と再発防止に向けて交渉していたのですが、それぞれの薬害の被害者団体が一つになって再発防止のためには教育の問題が大事だということで初めてみんなで文部科学省に交渉に行ったのが薬被連のスタートでした。50年前のスモンの方々は教科書から公害と並んでいた薬害の記載が消えていると指摘し、薬害エイズの記述は検定意見でダイオキシンの話に差し替えられたことが報道されていた時代でした。それ以降、私は薬被連の文部科学省交渉の担当となり、薬害ヤコブの和解で薬害教育の問題が盛り込まれ、C型肝炎の和解がきっかけにこの検討会が設置される経緯も含め、ずっと以前からこの検討会がとても大事なものであるとの思いで関わってきました。そういう立場で、議論に参加させていただければと思っています。簡単ではありますが、よろしくお願いします。


○衞藤座長 ありがとうございました。後藤様、お願いいたします。


○後藤構成員 後藤智己と申します。以前のはばたきの子宮癌の一応こちらの後任という形で、大平が昨年6月に亡くなり、私は大平と同じく薬害被害者として何度かラインで傍聴させていただいたこともあります。こちらも知りつつ、薬害教育の胆管癌防止に向けて私も構築したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。簡単ですが、以上で挨拶と代えさせていただきます。よろしくお願いいたします。


○衞藤座長 ありがとうございました。それでは、高町様からお願いいたします。


○事務局 高町様、御挨拶をお願いいたします。


○高町構成員 京都スモンの会の高町晃司と申します。矢倉会長が亡くなりましたので、その後任として引き継がせていただきます。まだまだ分からないことも多いと思いますが、皆様に御指導していただいて努力していきたいと思いますので、よろしくお願いします。


○衞藤座長 よろしくお願いします。ありがとうございました。本日はオブザーバーとして、厚生労働省の研究班である薬害資料データアーカイブスの基盤構築、及び活用に関する研究の藤吉先生、佐藤先生に御出席いただいております。

 次に、前回から事務局に人事異動もありましたので、改めて事務局から報告をお願いいたします。


○事務局(厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品副作用被害対策室長補佐) 事務局の人事異動を含め、報告申し上げます。医薬・生活衛生局長の鎌田、大臣官房審議官の山本、医薬・生活衛生局総務課長の込山、医薬品副作用被害対策室長の海老、室長補佐の阿部、それから私、狩集です。医薬・生活衛生局長の鎌田より、一言御挨拶を申し上げます。


○医薬・生活衛生局長(鎌田) 皆様、こんにちは。昨年4月に着任いたしました鎌田です。本日はお忙しいところ、お時間頂き感謝申し上げます。前回の検討会も、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で持ち回りという形になりました。また今回も、この状況でオンラインでの開催になりました。皆様には大変申し訳なく思いますが、御容赦いただきたいと思います。

また、私も昨年着任しており、他の者もそうですが、本来であればもっと早く御挨拶すべきところ、遅れてしまったことをおわび申し上げます。今申し上げましたように、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、この1年間、この薬害教育の取組を進める上で様々な制約、あるいは課題がありました。

一方で、PMDAに薬害の歴史展示室を開くことができました。いろいろな御意見がありますが、これも1つの進展であろうと考えております。その際には、先ほどお名前がありましたはばたきの大平様からも、お言葉を頂きました。他方、研究班の先生方におかれましては、研究課題に精力的に取り組んでいただいているものと承知しております。

本日は研究班の先生方、そして私どもの担当から御報告いたしますので、今後の薬害教育の推進を見据えて、活発な御議論を賜ればと存じます。簡単ではありますが、以上でございます。


○衞藤座長 それでは本日は、薬害教育教材に関する議題がありますので、前回に引き続き文部科学省の方にも御参加いただいています。事務局から、紹介をお願いいたします。


○事務局 文部科学省からの御出席者の方について、報告いたします。初等中等教育局教育課程課長補佐の野口様、初等中等教育局健康教育・食育課保険管理係長の川西様、及び同課の健康教育調査官の小出様に御出席をいただいております。


○衞藤座長 次に事務局から、本日の進行方法の説明をお願いいたします。


○事務局 本日はウェブでの開催のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので会議の進行方法について説明いたします。議題ごとに議題内容について、質疑応答の時間を設ける予定ですが、御意見、御発言をされたい構成員の方におかれましては、まず御自身のお名前と発言したい旨を御発言いただきますようお願いいたします。その後、座長から順に発言者を指名させていただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、お願いいたします。

なお、発言者の方が多いときには、発言されたい方がスカイプのメッセージ欄に御記入いただくことで、座長より発言者を順番に指名いたしますので、適宜メッセージ機能も御利用いただきますようお願い申し上げます。


○衞藤座長 本日の検討会の議題について報告いただくとともに、資料の確認をお願いします。事務局から説明してください。


○事務局 まず、本日の検討会の議題についてです。本日は、1点目として、薬害教育に関する本年度の取組について報告いたします。2点目として、薬害資料に関する研究班の今年度の活動状況について報告いたします。3点目として、令和23月に設置した薬害の歴史展示室の現状と概要について報告すると共に、今後の活用方策案、展示資料の充実に向けた対応案を整理しておりますので、それについて御議論いただければと考えております。

 次に、本日使用する資料について御説明いたします。今年度はオンライン開催のため、事前にメールで送付させていただいております。まず本日の検討会の座席図、議事次第、名簿を送付しております。

そして、資料1「薬害教育に関する本年度の取組について」、資料2-1「薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築および活用に関する研究」、資料2-2「インタビュー映像研究班の成果と証言映像の展示」、資料3「薬害の歴史展示室について」。また、参考資料として「薬害を学ぼう」のテキスト、「薬害を学ぼう」教員用指導の手引き、「薬害を学ぼう」指導の手引きの簡略版、実践事例集を送付しております。


○衞藤座長 それでは、本日の議題に入ります。最初の議題は、薬害教育に関する今年度の取組についてです。事務局から説明をお願いいたします。


○事務局 資料1を御覧ください。薬害教育に関する本年度、令和2年度の取組について、報告申し上げます。まず、薬害教育教材の周知についてですが、令和28月末に『薬害を学ぼう』、視聴覚教材『指導の手引き』、『指導の手引き(簡略版)』とともに、平成29年度及び30年度に実施された薬害に関する授業の実践事例集と令和元年度の実践事例を配布しております。また、『薬害を学ぼう』のWebサイトには、今年度は『薬害を学ぼう』の一部を抜粋した教材も授業用の素材として御活用いただけるように、新たに掲載をしているところです。

 2.薬害に関する授業の実施についてです。薬害に関するモデル授業についてですが、残念ながら新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の防止の観点もあり、令和2年度においては実施校の募集及び実施は行われず、活用事例等の改訂も行っていないところです。ただし、昨年度、モデル授業を行っている学校から、モデル授業ではないものの、薬害に関する講演を実施したいとの申し出を頂いておりますので、学校名を挙げさせていただいておりますが、岐阜県池田町立池田中学校において、薬害に関する講演を実施していただいているところです。また、京都府京田辺市立田辺中学校においても、栗原敦様による講演等を、年度内に実施予定と御連絡を頂いております。

 3.教材の使用方法等に関するアンケートについてです。新型コロナウイルス感染症の発生に伴い、学校現場等に負担を掛けられないという制約があることから、今年度については行っていないところで、使用方法等について御意見があれば、副対室の共有アドレス等にお寄せいただくようにと御案内をしているところです。なお、別添資料に付けておりますけれども、令和元年度のアンケート結果においては、おおむね現場の理解をいただいいているといったことも表れていると考えております。詳細は、別添の資料を御覧いただければと思います。

 4.今後の取組についてです。教育教材の周知については、引き続き配付を行っていきたいと考えております。また、授業の実施、それからモデル教材の使用方法等に関するアンケートについては、現下のコロナウイルス感染症の感染拡大の状況等を踏まえながら、検討したいと考えております。なお、併せて昨年度持ち回りで、第19回の検討会を開催させていただいているところですが、その際に委員の皆様から頂戴しました主な御意見として、「Webアンケートとすべきではないか。また、回収率が低い所について、発送時期は6月、8月でもよいのではないかとも考えられる。宛先について工夫の余地はないか。高校生用の資料等についても作成を検討すべきでないか。作成から10年たったということも踏まえ、改訂を検討すべきではないか」といった御意見を頂いていますので、併せて御紹介いたします。資料1についての説明は以上です。


○衞藤座長 資料1、議題1について報告を頂きました。報告事項ではありますが、御意見や御質問がありましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。特にないでしょうか。


○勝村構成員 御報告ありがとうございました。ほぼ10年間にわたりこの間御尽力いただいてきたことに敬意を表します。平成2930年度の実践事例集を作る際には、私は大阪で高校の教員をしているのですが、当時の同僚の社会科の先生にも、牧野高校だったのですが、いろいろを実践していただきました。これも、「薬害を学ぼう」のホームページにも載せてもらっています。また、自分の教え子で中学校の社会の教員をしている者にも手配をして、授業もやってもらいました。これも、枚方市立杉中学校の事例としてテレビや新聞で紹介もしてもらいました。私自身も、栗原さんから紹介を頂いて、立命館宇治中学の実践例として紹介されていますが、お話をさせてもらったということもあり、皆さんのこの間の御尽力に関しては、私もよく理解しているつもりでいます。

その上で、現場の社会の先生たちといろいろ話をする中で、御存じのとおり令和4年の高校の入学者、今から12か月後に入学する生徒から、高校は新カリキュラムになります。文科省の方も来られていますから、文科省の方が詳しいですが、大体10年に一遍のペースで学習指導要領が改訂になります。それで公民分野は、これまで現代社会、倫理、政治経済から、どれか1つを選ぶということだったのですけれども、新たに現代社会の代わりに公共という授業ができて、これが一律に高校生全生徒に必須となります。社会科の先生方は、この公共という新たな授業の教科書を用いて、どういう授業をしていこうかということを、来年1年間掛けて考えるというタイミングになっています。

 薬被連と文部科学省との交渉の中で、文科省の方にも御尽力いただいて、現在公民分野の新たな学習指導要領の解説には、薬害という言葉を3回出していただいて、薬害教育を進める形でしていただいています。委員の皆さんのこれまでの議論の中でも、私が承知している範囲でも、やはり中学3年生は義務教育なので、中学生に義務教育として全国民に伝えたいという面がある一方で、中学3年生というのは受験の直前でもあり、どうしても人権教育として扱う形が増えていってしまうということ。一方で高校ですと公民の中で扱い、例えば共通テストなどのテスト問題にももちろん消費者問題として出てくるでしょうし、教科として非常に大事にしてくれるでしょう。

 私たちは、子どもたちを薬害の被害者にも加害者にもしたくないということで、人権教育としての特別授業的な形だけではなく、公民分野の中で、学校教育として薬害というものを学んでもらって、日本の将来、子どもたちが薬害の被害者にも加害者にもならないようにするという意味では、公共の授業の中に取り入れてもらうということのためには、非常に大事なタイミングになっていると、少し前からずっと思っていました。

今日は、あらかじめこの議題が予定されてないので、十分説明してもらうことは厳しいかもしれませんが、私の希望としては、できるだけ至急に、これから新たな公共という授業を、1年間どのようにシラバスを組んでどのような教材を作っていくかということを、日本中の高校の教員がこれから来年1年掛けて取り組みます。その中に、薬害という1ページを入れてもらうということが、今後日本の教育に薬害の防止の教育が定着する、非常に大事なことだと思っていますので、そのためにもこの検討会が非常に大事な役割を担えるのではないかと思っています。

そういう認識があり、中学校への教材配布とともに、高校へも「薬害を学ぼう」を使ってもらう、手段に関してはこれから議論できると思いますけれども、高校に関して何らかのアクションを、できれば来年度の前半ぐらいに起こすということの検討をお願いしたいという意見です。以上です。


○衞藤座長 ありがとうございました。勝村構成員から、令和4年度から高等学校で公共という科目ができる中で、この薬害を位置付けられないかという趣旨の発言でした。そのほかにありますか。


○花井構成員 今、勝村委員の話を聞いて、結構潜在中のタイミングというニュアンスが含まれていたように思います。現状の立て付けの中でどうかという問題はあるにせよ、そうなると事務局のほうで、これまでも中学生に配っている『薬害を学ぼう』なのですが、高校でも活用してもらうという取組はこれまでもやってきたのですが、何か加えてこのタイミングで可能なことというのは、事務局としては何か考えられないのかなというのが1点です。

 あとは、文部科学省にお願いして、文部科学省は各学校に何らかの説明会などのいろいろな機会をお持ちというように承知しているので、そこに厚労省として文科省にお願いをするとか、そういう可能性がないかを事務局のほうから教えていただけると、今の勝村さんの提案をいかせるかなとは思うのですが、いかがでしょうか。


○衞藤座長 事務局から見解をお聞かせいただけますか。


○厚生労働省医薬・生活衛生局総務課医薬品副作用被害対策室長 副対室です。まず高校については、今までもパンフレットとして配付はしていないのですけれども、ホームページ等に掲載している資料を御活用いただけるように、各教育委員会を通じて周知をさせていただくということは、これまでも取り組んできております。

また、今回勝村構成員から御提案がありました、もっと何かこのタイミングでできないかということについては、今までの取組に加えてどのような形でできるのか、また今年1年間の取組の中で、文科省にも御相談させていただきながら、どういった周知ができるのかはありますが、そうした取組をより積極的にやってほしいという御要望だと受け止めましたので、それについてはこちらとして検討させていただきたいと思います。


○文部科学省初等中等教育局教育課程課課長補佐 文部科学省教育課程課の野口と申します。本日は、このような機会を与えていただき、ありがとうございます。先ほど、委員の方から御指摘がありましたが、おっしゃるとおり令和4年度から新しい高等学校の学習指導要領に基づく授業が、年次進行でスタートします。その中で、新たに公共という科目が必履修科目として設けられることは、おっしゃるとおりです。これについて、現行と改訂の状況ですが、まず現行においては現代社会、倫理、政治経済というのが、公民の中で科目としてあり、必履修科目としては現代社会を取っていただくか、若しくは倫理、政治経済を取っていただくかという状況です。

現行の学習指導要領の現代社会の中では、個人や企業の経済活動における役割や責任、それから消費者に関する問題というような観点が書かれております。学習指導要領には解説というものがありまして、これは指導要領を踏まえて具体的にこのように扱ってほしいというものを、文科省が書いているものです。この中で、現代社会、政治経済両方について、薬害問題などを扱うというようなことが触れられているところです。これを踏まえて、現行の教科書などでは、最新のものが手元にないのですが、過去のものですと何らかの形で、教科書で薬害に関することが触れられているような状況です。

 新しくできる公共の中でも、同じように経済活動と個人の尊重を成り立たせるというような趣旨のことが書いてあり、解説の中で薬害問題などを扱うというようなことが例示として書かれているような状況です。ですので、これまでも現代社会、政治経済の中で、何らか解説等を通じて触れられていたのですが、新しい学習指導要領の中でも公共において解説の中で、薬害問題について触れられているのが現状です。ですので、新しい学習指導要領に基づいても、引き続き何らかの形でこういった取組を、各学校現場が続けていくことは可能なのかなと思っております。

また、新しい学習指導要領が改訂されるタイミングもありますし、これから進めていくというような状況ですので、先ほど厚労省の方もおっしゃいましたように、現行でも事務連絡等を出させていただいて、その中で高校の部分についても強調するような形で書かせていただいたり、メールマガジン等で周知をさせていただいているところですが、今御指摘いただいた点も踏まえて更にどのような形で周知ができるのかについては、厚労省とも御相談をしながら検討してまいりたいと思っております。以上です。


○衞藤座長 ただいま御説明いただきましたが、よろしいでしょうか。ほかに発言はありますか。


○勝村構成員 勝村です。文科省と厚労省の方々、御説明ありがとうございました。現行でも、私たちは文科省さんと毎年交渉をお願いしているとおり、承知しているところなのです。私が実際に高校の現場で、モデル授業などをいろいろお願いしたり、いろいろなシラバスについて話をしていく中での実感として、これまで御尽力いただいたことは、もちろん一定の成果、意味があると思うのですが、一旦授業を一年間してしまっている先生にとっては、なかなかその中に別の授業内容を入れていくということが簡単ではなく、何らかの刺激が必要だと思います。つまり、薬害の授業をやってくれた人というのは、私に言われたことで、そんな大事な話があるのかと気付いてやってくれているということになります。どの先生も、それぞれ、一旦パワーポイントなどを使うにしても、この科目は、1年間かけて、こんな授業内容でやっていくというのが1回身に付くと、翌年もそれと同じ内容を繰り返していくということがあります。

 また、今、文科省から御報告があったとおり、これまでは現代社会か政治経済か、倫理か、どれか1つが必修であったので、学校ごと、学年ごと、誰かがその授業をやっているということで、どんな内容をやっているかが統一感がなかったので、日本中、この授業は絶対にみんなが受けているという授業がなかったのが、今度からは新しい、同じ「公共」という教科書を持つことになるというタイミングです。

新たな科目なので、高校の現場の感覚からすると、先生方は来年1年間で、これまでの現代社会と教科書がどう変わっているのか、どのように1年間の授業を組み立てていったらいいのかというのを、再来年自分が受け持つかもしれないという先生は、研修を受けたり情報収集をし始めます。実際、来年度の終わりぐらいに、いよいよ新年度で新しいカリキュラムの公共を誰が受け持つのかがはっきりした段階で、本当にシラバスの作成にかかっていきます。

 私は、是非このタイミングで、日本中の社会科の先生方に、『薬害を学ぼう』という教材があるということ、実践例も蓄積されているということがまず伝わること。実際に、それがやれるかもしれない、やれそうだというモデル授業の中身まで伝わっていくことが、大事だと思います。それが、学習指導要領の解説などでも求められていることなのだということも伝わっていく。そして、それが非常に大事なことなのだということも伝えていくと。そのような情報が1年目に入ると、自然とずっと定着していくと、思います。それこそが是非この検討会で目指してほしい形なのではないかと。非常に大きなチャンスではないかと思います。

今日は、余りこの話をする時間はないかと思いますので、私の希望としては、できれば新年度の「公共」の授業に向けて、これまでの中学校、高校との兼ね合いをどうするのか、これまでの教材をどうしていくのか。特に「公共」を中心とした学校教育に関するテーマを中心とした検討会を、近々それだけのテーマでもう1回設けていただけたら、私なりにいろいろな具体的な現場からの提案などもさせていただくこともできます。

それから、厚労省や文科省でも、このような範囲だったら協力できるというお話もお聞きしながら、何かしたいなと。来年度の前半ぐらいで、高校現場に対して、今までやっていただいたこととはひと味違う、更に何かができないかなと思っていますので、皆さんに検討していただきたいなというのが、座長への御無理なお願いですが、以上です。よろしくお願いします。


○衞藤座長 御意見として出していただきました。事務局からまとめていただけますか。


○厚生労働省医薬・生活衛生局総務課医薬品副作用被害対策室長 事務局です。今の御意見も踏まえて、どういう形でできるのか、来年度に向けて積極的に検討してほしいというお話だと承りました。具体的なやり方も含めて、検討会という形なのか、個別に御相談させていただく形なのかは、いろいろとやり方があるかと思います。皆様にも御意見を承りながら進めていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。


○衞藤座長 まだ御意見等があるかもしれませんが、今後の議題もありますので、この議題の審議は以上といたします。栗原さん、御発言はありますか。


○栗原構成員 よろしいですか。


○衞藤座長 はい。手短にお願いします。


○栗原委員 今の高校での授業の促進の件について、過去にも高校でもやってもらいたいという御意見が、たしか岩手医大の高橋先生のお話があったと記憶しております。もしよろしければ、高橋先生のお考えを一言御紹介いただけたらと思うのですが。


○衞藤座長 高橋さん、お願いします。


○高橋()構成員 高橋です。勝村さんの御意見は、本当にすばらしいと思います。大学においても1回カリキュラムが走ってしまうと、なかなか変更がかからないので、作り上げるタイミングで入れていくのは、非常によいと思います。私は秋田にいたときに、進学校で1回だけ、高校生を対象に、全学年集めてやらせてもらいました。そうしたら、やはり「知らない」、「そうだったんだ」という話がありますので、やることに非常に意味があります。ですから、時間が短かくてもいいので、この機会があったほうが私はいいと思います。ありがとうございます。


○衛藤座長 はい、ありがとうございました。それではこの件の質疑はこれで終了として、2に移ります。「薬害資料に関する研究班の今年度の活動の状況について」に移りたいと思います。今年度も昨年度に引き続き、薬害資料に関する研究班の活動が行われたとのことですので、研究班からの御説明をお願いいたします。


○藤吉オブザーバー よろしいでしょうか。


○衛藤座長 はい、藤吉先生、お願いいたします。


○藤吉オブザーバー 追手門学院大学の藤吉と申します。よろしくお願いいたします。スライドは事務局でめくってくださるということで、よろしくお願いいたします。これまでの研究及び今年度の研究について御報告をいたします。次のスライドをお願いします。もう一枚次のスライドをお願いします。

 この辺りは、既にお集まりの皆様には御承知のことと思いますので、こういうきっかけで始まったことを一応、確認のため御覧いただければと思います。次のスライドへお願いいたします。はい、2013年から3年間法政大学の金ギョンナム先生が携わられて、その翌年の2016年度から、大阪で研究代表者を私藤吉が引き継いでいます。研究場所が東京から大阪に移っています。

 従来、大阪人権博物館リバティ大阪という所にスペースを間借りして作業を続けておりましたが、この夏に、都合により大阪市内の港区弁天町にあるテナントビルに移転して作業を継続しています。研究協力者の皆様にも引っ越しに当たっては、大変な御尽力を頂き、ありがとうございます。次、お願いします。

 作業スペースでは、当事者団体資料、主には原告団の資料を調査して整理をしています。11点の作業をしていますので、なかなか遅々として進まないのですけれども、それなりにめどが立ってきた資料分もありますので、これについては後ほど御紹介をしたいと思います。それ以外に資料を保管している各団体への訪問や保管状況の調査を進めています。今年度に関しては、こういう事情でオンライン等でいろいろお話を伺うというようなこともやっております。

 直近では、年末に最近実施をしましたけれども、当事者団体や弁護団の皆さんに進捗状況を御報告しています。例年ですと、薬被連の世話人会の場にお邪魔して、その時々の進捗状況や課題などを御報告し、御意見を頂戴するのですけれども、今年度に関してはちょっとそれができなくて残念ですが、それ以外の所で当事者の皆さん、それから弁護士の皆さんからお話を伺っています。

 将来的にはということで、資料館の具体的な在り方を考えようということで、基本的には被害をテーマにした資料館の調査というのも進めています。場合によっては当事者の皆さんにも御参加いただいて、その場で意見交換をしたり、あるいは館の学芸員の皆さんにお話を伺ったりということもして、私ども研究班がイメージを作るとともに、当事者の皆さんにも資料館はどういうものがいいのだろうかと考えていただいて、フィードバックを頂戴しています。次、お願いします。

 資料調査の現状について御報告します。ファイルとアイテムという言葉が出て来ていますけれども、もちろんフラットファイルとかドッチファイルとか、物理的なファイルの中に、とじられているものと考えていただいて問題ありません。例えば、それ以外に封筒に入った紙の束一式のようなものもありますが、あるまとまりで存在しているものをファイルレベルの資料、そのファイルの中に含まれている11点の資料をアイテムレベルの資料というふうに区別しています。

 本ですと、一冊の単体のものが資料ということになりますけれども、こういうアーカイブズ資料の場合、それがどのファイルに納められているかというのも、結構重要な手掛かりになりますので、そういうことをイメージするツールとして活用していきたいと考えています。次のスライドお願いします。

 今申し上げましたように、書籍というのは単体で独立して読めるものです。もちろん当事者の皆様が書かれた手記のようなもの、あるいは日記のようなもの、それは単体で独立して読ませるだけの強さを持っているものですけれども、例えば団体が会議をする、会議の準備をする、会議をする、会議の後でまとめを作るというふうな、時系列に沿った作業というものがあり、そういう時系列に沿った作業に沿って資料が作られていますので、内容も重要ですがそれと同じぐらいどういう文脈で作られたものかというのも重要になってきます。

 これをアーカイブズの世界では中身、内容、Content、日本語ではコンテンツですけれども、コンテンツと文脈、Contextというような言い方をしています。同じ文面の会議資料でも、事務局レベルで準備した段階、それが会議を経て承認を得た段階、これでは資料の意味合いが違ってくる。そういう流れを意識した資料整理を進めており、その流れを意識して見られるような資料の目録提供をしたいと考えています。次、お願いします。

 今申し上げたことをまとめています。著者名とか本のタイトルとか、そういうものを手掛かりにピンポイントで検索するのが書籍の検索、本の検索だとしますと、同じテーマであっても、同じタイトルであってもそれがどの文脈の中に置かれているかによって、資料の意味合いが変わってきます。ですからそういうことも見通せるような、見渡せるような検索システムの提供を次年度は考えて、ようやくその準備ができるだけの資料調査が進みましたので、そういうことを考えています。次お願いします。

 アイテムレベルまで調査の済んだ資料が、ようやく奈良女子大学の島津先生の御尽力の下で調査がほぼ完了に近づいていますので、今申し上げたような文脈、その資料がどういう流れの中でどういう時点で作られたのか、その文脈を加味した検索システムに載せてみて、団体の資料というのが本を探すときの検索の仕方とはちょっと違う形で出てくるものなのだということを、示せるような画面を用意したいと考えています。次、お願いします。

 これとは別に、関西学院大学の佐藤アキヒコ先生にしばらく前から加わっていただいて、証言映像研究班が活動を進めています。もともとは厚生労働省の事業として、証言映像の作成が進められていて、それを分析することから始められていますけれども、近年になって単に出来上がったものを調査分析するところから一歩進んで、実際に当事者の皆さんとコラボをしながら証言映像、展示価値という言葉が恐らく使われると思いますけれども、資料的な価値とは別に、展示価値を持った映像というのを作れないかということまで手を広げて活動してくださっています。これについて詳しくは、実際の佐藤先生もお越しですので、佐藤先生から御報告いただけると思います。次お願いします。


○厚生労働省医薬・生活衛生局総務課医薬品副作用被害対策室長 すみません、佐藤先生、こちらの画面の不具合でスライドが表示できないようです。先生方の皆さん、今お手元に資料をお持ちだと思いますので、資料2-2をお手元に御用意いただきまして、お話を聞いていただければと思います。


○佐藤オブザーバー 分かりました。では、こういう感じでやるしかない。では1枚目、インタビュー映像研究班の成果と証言映像の展示というスライドを御覧ください。見えますか。では2枚目に行きます。

 2枚目は映像研究班の活動とその成果というタイトルでスライドがあると思います。ここではこれまでの活動について書いておきました。インタビュー研究班はそもそもは先ほど藤吉先生が紹介してくださったように、証言映像の分析をしてその薬害に関するアーカイブとして役立てるための知見を蓄積するために編成されました。

 ですので、証言映像は今PMDAのほうから50本ほど展示していると思いますけれども、まだそれの50本全部ではないのですけれども、数多く分析して、そのファイルを社会学的に、私はそもそも語りの分析が専門ですので、そして薬害の研究をしているのですが、その語りの分析を用いて社会学的に記述するという作業を行ってきました。

 その分析結果というものは、それぞれの映像ファイルに特有のものであるために、今回細かい話ができないと思うのです。ただその結果は薬害とは何かということに関する、非常に概念視的な研究と結び付いて、幾つかの成果が出ています。またそれと同時に実は被害者の方々の経験から、薬害を理解することが、重要な要素を形作っているのだということが、1つの重要な業績としてありますので、特にその観点を伸ばしていく、展開していくということで今回進めている活動について、研究についてお話していきたいと思います。

 次のスライドを見てください。次は、証言映像が行っていることとタイトルを付けているものです。行っていることの書き方は、社会学あるいはディスコース分析という私の方法の特有のものなのですけれども、証言映像というのは単に何かを媒介しているものではなく、それ自体何らかの言語的な活動を行っているという観点で分析していくわけです。

 その分析結果の概略を述べますと、これまで薬害とは何かという説明というのは、それぞれの発話状況つまり証言者の方々も薬害とは何かという経験を語られていると考えるわけです。そう考えた場合、今まで4つの言説、4つの説明の様式が薬害の説明に関与してきたと考えられます。

 まず1つ、典型的に分かりやすいのは医学・薬理学的な原因に対する言及です。これを私は原因論と名付けました。しかしそれだけではなくて、例えば問題発生とかその管理などの責任に対する言及というものもある。これを責任論と言うことができるような、そういう説明の様式です。それから薬害というのは、実は御存知の方もいらっしゃるかもしれませんけれども、日本に特有の概念なのです。これは我々の調査で明らかになっているのですけれども、それがどう成り立ってきたのかを考えると、実は産業資本主義とか、産官医の癒着など社会構造に関する言及を通じて、それぞれのばらばらの問題ではなく、実は1つの薬害という問題なのだと考えられるようになってきた。これを社会構造に対する言及ということで、構造論と呼んでいます。

 それから、ここが大事なのですけれども、薬害というのは単なる体の不具合とか副作用だけではなく、それによって差別とか社会的な排除とかといったことを経験するような、大きな問題となっているわけで、そのことに対する言及というものが附随するわけです。これは特に被害者の方々に非常に重要な意味を持つ局面でもあるわけで、これを社会的連帯に関与するものとして連帯論と呼んでいます。こういう4つの説明の様式というものが実はあって、これをその文脈に応じて人々は使って、薬害とは何かというものを説明していく、表していくとなっていくわけです。

 証言映像を見ていますと、そこで重要なのはもちろんそういった一般的な説明様式とともに、それが個人的な経験である。被害経験というのは極めてその人の人生に関与するものですので、それがどういう個別性を持つものかということに対する言及もある。この2つが相互補完的に存在しているというか、機能しているのが証言映像という形式を持った言説、言葉、語りのわけです。このようになっています。

 社会学的には1つのドミナントストーリーとオルタナティブという言い方があるのですけれども、それはともかくとして、これらが両方あって初めて証言映像として、あるいは薬害とは何かが分かるということを、重要な意味として捉えていただきたいと思うのです。

 実は当事者として、どういうふうにこの薬害を語るかは、極めて個別性というものを示すという非常に重要なことであることが分かると思います。

 次の証言映像分析と、当事者経験の展示ということで、今までやってきたそのようなある種の発見なのですけれども、そういったことの分析結果は結果的に言うと証言映像の展示の仕方それ自体を、何らかの形で工夫する必要があることを、指し示していると思うわけです。すなわち専門家とか映像作家の方々が、薬害とはこういうものだということを示す、ある種の番組みたいな形で作るのではなく、そうではなくて当事者自身による当事者としての経験をベースに編成したもの。そういう映像が多分必要なのではないかと考えられるのです。

 そういう証言映像が、どう可能なのかということを、今年度に入ってから検討しています。昨年度の最終部分とともに今年度に入ってから研究してきました。そこで証言映像をどういうふうに考えるか、展示をどういうふうに考えるかということなのですけれども、証言映像を薬害アーカイブズの1つのユニット、1つの部門と考えると、やはり当事者による被害者の方々に薬害の言説を示している、社会的連帯というものを示しながらこれを展示する必要があるだろうと考えられるわけです。そこで考えられる映像には、映像の価値を分類して考える必要があるだろうと。

 1つは、アーカイブズという、やはり記録ということはとても重要なので、記録的な価値が求められることが分かると思います。ただしそれだけではなくて、それを人々に示して社会的連帯を通じ、薬害の防止を図るという観点から、展示的な価値というものを示す必要があると思うのです。

 したがって、この現代においてはやはり多くの人々に薬害の問題というものを、社会的連帯の観点から理解してもらうための展示が必要だと考えるわけです。

 次にいきます。したがって、今あるような、ただ1時間以上のものもあったと思うのですけれども、長く証言映像を置いて見てもらう形ですと、なかなか人々に届かないと思います。もちろん資料的な価値はすごく高いのですが、それだけでは展示的な価値は発揮できないだろうと思います。したがって、従来蓄積されたそれを利用しつつも、当事者の経験とその観点を基に編成して、視聴者あるいは聞き手、そこに来てくださった人に連帯を喚起するような短い映像を作って、それを展示することで蓄積されてきた証言映像、つまり記録のほうに誘導できるような動画を作り上げる必要があるのではないかと思います。

 その手法をいろいろ検討してきましたけれども、やはり当事者が参加してこれを作ることはとても重要なことですので、プロフェッショナルな方にお願いするというよりは、当事者、つまり被害者の方々に参加していただきながら、デジタルストーリーテリングという手法がありますので、それを用いて新しい動画を編集していく活動を、今ちょうど行っているということになります。

 今年度から行っていて、今、打ち合わせをして、今度ちょっと作ってみるという形になっています。私のほうから報告は以上ですが、分かりましたでしょうか。資料が大丈夫だったかと。


○衞藤座長 ただいまの藤吉先生、佐藤先生からの説明に関しまして、報告事項ではありますが、御質問や御意見がありましたらお願いいたします。特にございませんでしょうか。


○花井構成員 話を聞いていて、次の議題に特に関係あると思うのですが、これは私だけではないと思うのですが、当事者がずっと活動していくときに、薬害というものを語るわけです。それぞれの当事者が大学の授業などでも語るのですが、それがあえて第三者の専門家が語るのではなくて、当事者が語るということの意味というところに、実は私たちの手の内があったわけです。私たちが行くから分かってもらえるだろうという確信は、実はその手の内があって、佐藤さんのプレゼンは、こちらの手の内をばらされている感じてもあるのですが、そうやって言語化してもらうという経験は今までなかったので、そういう意味で言えば、当事者が教育に参加して、そこで当事者がいろいろな人に話すということの価値を、いわゆる展示として可能であるならば、我々という複数で一人称を語るのも何ですが、被害者が学校現場などで授業をして語っているという、局所的な個人の力に依存しているものが、敷衍的な展示ということにできる可能性というのを思えたので、是非厚生労働省としても、次の議題にも含めてですが、やはり当事者の語る価値は何かというところが、ある意味で相対的に展示に生かされるという方向性を探っていただけたらというように思いました。


○佐藤オブザーバー 先ほど勝村さんがお話されていたこととか、文科省の方がお話されたことも関係するかもしれないのですが、展示的な価値というのは博物館とか資料館だけではなくて、もっと広い場所で多くの人に語り掛けることができるようなものとなっていく可能性もありますので、これは作っている最中ですから、その可能性については検証していく必要がありますが、そうすると、例えば授業で使うといった可能性もありますので、私は方向としてはいいのではないかと思っています。今、花井さんがおっしゃったことを踏まえて、少し編成を考えながらやっていきたいと思います。


○衞藤座長 ほかに御発言はございますでしょうか。よろしいですか。後の議題とも関連するかと思いますので、また何かありましたら、そのときに御意見等をお願いしたいと思います。本日、皆様に頂きました御意見については事務局において整理しまして、必要に応じて皆様に御相談いただきたいと思っております。

 それでは、昨年3月に設置した薬害の歴史展示室についてとのことですので、事務局から説明をお願いいたします。


○事務局(厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品副作用被害対策室長補佐) 資料3「薬害の歴史について」を御説明いたします。資料3を御覧ください。2ページの「薬害の歴史展示室の設置までの経緯」について、御覧ください。「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」で、いわゆる最終提言についてですが、この中に薬害資料について記載がなされているところです。厚労省として、最終提言の内容を踏まえて、可能な範囲で「収集・整理」「保管」「展示・活用」という機能を実現すべく、諸々の取組を行ってきたところです。

 その中の1つとして、令和23月に、資料の展示・活用を行う「薬害の歴史展示室」をPMDAに設置したところです。新型コロナウイルス感染予防のために、見学は予約制という運用を採っておりますが、1月当たりの訪問者数については最大で30人程度となっております。

 3ページ目ですが、薬害の歴史展示室の見取図です。後ほど触れますが、この中でパネル展示とか、実物資料、視聴覚素材を設置しているモニターの位置等を御参照いただきたいと思います。4ページは写真で、3ページの見取図の内覧図です。

 5ページは、今後の活用方策についてです。6ページ目からまいります。薬害の歴史展示室の今後の活用方策についてですが、更なる活用を図っていくために、具体的に以下のような方策が考えられるのではないかと考えているところです。例えば省内とか民間企業に対して、研修への活用の呼び掛け、学校に対して授業等への活用の呼び掛け、その他、Webサイト等で何か効果的な周知のチャンネルがないかといったことも考えているところです。

 7ページは、展示資料の充実についてです。さらに、8ージの内容を御覧ください。パネル展示についてですが、現在は、いわゆる4薬害(サリドマイド、スモン、HIV、薬害肝炎)につきまして、年表、薬害教育の取組のパネル等を展示しているところです。来年度以降の拡充については、下の参考に掲げていますが、他の類似施設の展示内容も参考にしつつ、引き続き検討していきたいと考えております。

 9ページは、現物展示についてです。現在は4薬害について、被害者団体に御協力いただいた上で、団体の活動記録、書簡、横断幕、医薬品の実物などについて展示を行っています。こちらについても来年度以降の拡充について、他の類似の施設の展示内容を踏まえつつ、参考にしながら引き続き検討していきたいと考えております。

 10ページは、映像資料についてです。現在、テレビモニターで「薬害を学ぼう」の教材用の映像資料を常時表示しております。先ほど内覧図の写真で御覧いただきましたが、この中にあったテレビ機器を利用して視聴できるところです。来訪者が選択して視聴できる視聴覚端末に、これまで撮影した50名の方の証言映像を収載しております。来年度以降については、短時間で視聴可能な映像資料の作成・公開とか、各団体が保有する映像資料のうち、公開可能なものについて、一定のルールの下での受入れといったものが考えられます。上記のほか、他の施設の展示内容も参考にしつつ、引き続き拡充策を検討したいと考えております。

 その他です。各種パンフレット、関連書籍についても、他の展示施設の展示内容等を参考にしつつ、拡充を図っていかれればと考えております。その際、対象となるような資料についての例示についても列挙しております。また、今の展示施設の御説明に併せてですが、昨年度、第19回の本検討会において、持ち回り開催の際に、委員の皆様から、この展示室について当方からの紹介を受けて、検討会でも活用方策について議論すべきというように御意見を頂いておりますので、そうした点も踏まえまして、本日は幅広く忌憚なく御意見を頂ければというように考えております。事務局からは以上でございます。


○衞藤座長 それでは、ただいまの事務局からの御説明に関して、御質問や御意見がございましたら、よろしくお願いいたします。展示資料室に関しての御意見はございませんか。


○高橋()構成員 これは、一般の人に対しての広報はどのような形でされているのでしょうか。


○事務局(厚生労働省医薬・生活衛生局総務課医薬品副作用被害対策室長) PMDAのホームページ内で、「薬害の歴史展示室があります」という御案内はさせていただいております。オープンしたのが緊急事態宣言の直前だということもありまして、場所は虎ノ門になるのですが、虎ノ門に来てくださいとも積極的には言い難く、そういった点についてはまだ周知が行き届いていないということになるのかなと思っております。


○高橋()構成員 分かりました。


○衞藤座長 そのほかにございますでしょうか。


○勝村構成員 先ほどの佐藤先生の話にもありましたように、記録的価値と展示的価値という整理はすごく大切だと思いました。PMDAに置いている現状の規模で考えると、素直に考えるならば、現実的にはPMDAを訪れた製薬企業の方とか、そういう方が待ち時間に少し見るということになると考えるのが自然かと思います。

 そういう意味で、そのような場で、確かに記録的価値はあるけれども、非常に長い時間の映像が見られる形になっているということでは、ミスマッチしているということもあり、展示的価値、対象者、ここならこういう人がこういう形で来るだろうからということは、意識していただいたほうがいいのかなという気がします。

 一方で、限られた、今たまたま作ることができている場所、空間、規模と、そこを充実させていくという短期的な話と、一方で少し中長期的に、資料館、アーカイブを記録していく、又は本当に学校の子供たちが見に来られるようなレベルのものにしていくという議論と、関連していきつつも中長期的な議論と短期的な議論に分けなければいけないのかなとも思っています。そこで、中長期的な議論という形では、どのような状況になっているのかということもお聞かせいただければと思いました。


○事務局(厚生労働省医薬・生活衛生局総務課医薬品副作用被害対策室長) 事務局としては、まず、できるところからというところで取り組ませていただいておりまして、今回、PMDAという新しい場もできましたので、そちらの活用を図っていきたいと考えております。

 中長期的にはいろいろと課題はあろうかと思います。研究班の皆様の研究活動を通じて、いろいろと明らかになってきている部分もございます。そうした中で、今まで資料を集めて調査をしていく、さらにその映像で記録、展示というパートまで御議論も広げていただきながら、研究を進めていただいております。

 そういったところも活用しながら、皆様の御意見もいろいろ伺いながら、中長期的な点については、引き続き検討させていただくということになろうかと思います。


○衞藤座長 今の点も含めて、ほかに御意見はございますか。


○花井構成員 今、室長からもお話があったので、それでよいとは思うのですが、この時期に虎ノ門の空間にという話ですし、逆に、この時期で、このようにリモートでいろいろなことが行われている中で、ブラウン管を置いていますから見てくださいというのは、もう次の展開としては、ある程度ネット上で世界各国から見られるというような、海外にはそういうものも存在するようなので。なので、研究班の課題としても、実際の展示の見せ方というリアルなものと、リモート上、ネット上にうまく乗せていくという方向も中長期的な課題としていただけたらと思いました。


○衞藤座長 そのほかにはいかがですか。


○後藤構成員 今、御説明いただいたように、今回のPMDAの中にある資料室というのも、我々がそもそも構想するものはもっと大きな規模の資料館だったと思っているのですが、端緒という形で、一歩目という形でPMDAに、こういう資料を集積する場所ができたということは、我々も非常に有り難いことだと思っています。

それを、これからどうしていくかという話の中で、先ほど花井さんがあったように、バーチャルな形でアクセスできるような形というのも、1つ検討していく事項かとは思うのですが、我々としては実物に触れていただいて、それを見ていただく。薬害の問題というのは、先ほども教科の中に入れるという議論もありましたが、そこに触れるということが難しいから、入口をどう作るかということが難しいかなと思っていますので、そういった場所の1つとして、この御時世ですのでなかなか難しいかとは思うのですが、発表していっていただきたいと思っていて、せっかく作っていただいた展示室を活用していくに当たっては、私としては何か活用方法を、そこに学芸員ではありませんが人を付けていただいて、どのように今あるものを活用できるかということを常に考えていただけるような形を取っていただけると有り難いかなと思っています。

これを端緒に、徐々にそれを拡張できるような形を常に目指していただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。


○衞藤座長 そのほかにございますか。


○栗原構成員 肝炎事件の検証検討委員会の最終提言においては、薬害研究資料館という「研究」という2文字を明確に入れていたと思いますが、後藤さんがおっしゃったように、PMDAの展示室は入口としてという意味合いは十分に理解できますが、ここで申し上げておきたいのは、現在幾つかの団体、特にスモンの被害者の団体ですが、ひょっとしたら近々に団体の資料が行き先が定まらずに、ごっそり消え兼ねないという状況があります。もちろん、どこかが受け入れるについて、所有権の移転の問題、あるいは公開の問題、権利の問題など、いろいろと確認しておかなければならない課題は多いわけなのですが、現実に消え兼ねないものが目の前にあるということも、構成員の皆さんに認識をお願いしたいと思います。また、厚生労働省あるいは研究班には、そういった問題に、迅速に対応できるように進めていただくことをお願いしたいと思います。


○衞藤座長 そのほかにいかがですか。

 これまでに、中長期的な課題であるとか、インターネットを通じた発信であるとか、説明員を置くこととか、薬害研究資料館は「研究」という文字が入っていたはずだとか、スモン等に代表されるような消えゆく資料に対しての迅速な対応という観点での取組が必要だというような御意見を頂いたところですが、そのほかにございますでしょうか。


○勝村構成員 先ほどの補足ですが、皆さんの御意見もお聞きした上で、やはり中長期的というのは、今回、PMDAでやっていることを1つのパイロットと言うか、それも限定されたPMDAに用事があって来る方が見る形に限定されやすいことを踏まえた上でです。それから、今、アーカイブの研究をやっている先生方も、記録を残すというような喫緊の課題を解決していかなければいけないということと、一方で展示的な価値というものを教育の観点から伝えていくことは大事だということと、そのように整理していただいているので、資料室をどう充実させていくかというときに、このPMDAにあるものをどうするかというところに限定してしまわずに、ゆくゆくはどういう形が望ましくて、いろいろとハードルがあるのでしょうけれども、どういうところを目指していくのかという意味で、中長期的な視点を皆で共有できるものを作っておいた上での、ここの議論という形であるほうがいいのかなと思います。よろしくお願いします。


○衞藤座長 そのほかはいかがですか。


○栗原構成員 後藤さんにお尋ねします。この検討会が発足して間もない時期に、希望者で国立ハンセン病資料館とか、後藤さんの所の資料室なども、複数でお邪魔したことがあるのですが、現在の、はばたきの資料室の状況、外部からの活用、利用者の状況とか、資料の内容、量、今後の見通しといったものを御紹介いただけたら有り難いのですが、いかがでしょうか。


○後藤構成員 はばたきライブラリーという形で、資料の収集と整理を進めているところで、ずっと続けてはいるのですが、我々はばたきも実際に被害救済と言うか、現在いる被害者への対応が優先事項になってくるので、そこで出てくる資料というのもどんどん積み重なっている中で、過去の資料を徐々に整理はしていっているところではあって、それが積み重なってきてはいるのですが、どの段階で、どの資料を、どういうように公開するのかというような議論は、正直言って進んでいないところが現状です。

 それは、こういった研究班であるとか、こちらの議論も見させていただきながら、我々の中ではまずは資料の整理を進めつつというところが、今のはばたきでの現状かなというところで、これが将来的には薬害の資料館という形につながっていけば、我々としては有り難いかなと思っているところなので、我々は我々で整理と言うか、それを進めさせていただきながら、どのようにこれが最終的に合流できるかというところを模索しているところというのが、正直なところです。


○衞藤座長 栗原さん、よろしいですか。


○栗原構成員 ありがとうございます。もう一点あるのですが、昨年の中頃でしょうか、我々当事者団体の者として、うかつなことであったのですが、スモンの団体で広島の方々の財団法人で広島スモン基金という組織がありまして、そこが数年掛けて、約1,000万円投入して、被害者、原告たちの訴訟に向けて用意した御自身の被害状況、医学的な資料あるいは自らまとめた「一代記」という言い方をしていましたが、そういった個人の資料を、遺族を含めた希望の方に返却する、あるいは電子化して今後の医療関係者あるいは研究者に向けて、活用してもらうという辺りを狙っているそうですが、広島スモン基金のアーカイブスを構築したことを知ったものですから、当事者のものとして、研究班、藤吉班にも呼び掛けましたら、お一人同行いただいたのですが、実はそういうことをやられた先進的な広島の方々は、厚労省の取組なり研究班の取組なりを全く知らなかったということで、驚いていました。日本にこのようなことをやっている所があったのかと言われました。

逆に言ったら、我々も同じ立場にある仲間として、そういう取組があったことを知らなかったということでもあったのですが、今後、交流を深めて、情報を得ていきたいと思いますし、向こうもそれは了解しておられますので、検討会の先生方あるいは厚労省も含めて、情報共有を進めていきたいと個人的には思っております。


○衞藤座長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。様々な御意見を頂いたと思います。ありがとうございました。

 来年度は、事務局において本日頂いた御意見を整理し、検討するとともに、構成員の皆様の御協力も得ながら、団体等の調整を行いつつ、御紹介しました歴史展示室の各種資料の拡充を図ることを進めていただくというようにまとめたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

○衞藤座長 特に御異議がないようですので、事務局はそのように進めていただきたいと思います。

 以上で本日の議題は全て終了いたしました。次回の日程等につきましては、事務局からお願いいたします。


○事務局 次回につきましては、事務局より日程調整を行いますので、どうぞよろしくお願いいたします。


○衞藤座長 これで本日の検討会は終了いたします。長時間にわたり御協力ありがとうございました。お疲れ様でした。 

 
(了)
<連絡先>

厚生労働省医薬食品局総務課
医薬品副作用被害対策室
TEL 03-5253-1111(内線2718)

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