ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医道審議会(医師分科会医師臨床研修部会)> 医師分科会医師臨床研修部会議事録




2010年7月7日 医師分科会医師臨床研修部会 議事録

○議事

                   
                   医道審議会 医師分科会 医師臨床研修部会
                   日時 平成22年7月7日(水)10:00~
                   場所 厚生労働省専用第21会議室(17階)


○臨床研修専門官 それでは、定刻より若干早い時間ですが、ご出席予定の方々が皆さん揃われましたので、ただいまより医道審議会医師分科会医師臨床研修部会を開催いたします。本日は、先生方にはご多忙のところご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 まず本日、飯沼委員の後任として、今回より三上裕司先生が委員に加わりましたので、ご紹介いたします。三上先生、一言ご挨拶をお願いします。
○三上委員 日本医師会の三上でございます。今期から生涯教育を担当することになります。この委員会にも加わらせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。
○臨床研修専門官 ありがとうございました。なお、吉岡委員は本日、所用によりご欠席、また、小川彰委員が到着が少し遅れるとのご連絡をいただいています。また今回は臨床研修制度の評価に関する研究実施状況に関連して、国立国際医療研究センターの桐野理事長に参考人としてご出席していただいています。
 それでは、議事の進行に入ります。相川部会長、どうぞよろしくお願いします。
○部会長 まず、資料の確認について、事務局から説明をお願いします。
○臨床研修専門官 それでは、資料を確認します。お手元の資料ですが、議事次第に加えて、委員名簿、それから1枚紙の参考人名簿です。座席表に続いて、資料1として、1枚紙の横表ですが、「初期臨床研修制度の評価のあり方に関する研究」です。同じく資料1ですが、左側にホッチキスで止めてあるもので、「初期臨床研修制度の評価のあり方に関する研究」の総括研究報告書です。それから、いちばん最後に、同じもので、参考資料もついた詳細なもので、分厚い物ですが、製本された物をつけています。紙の資料に戻りまして、資料2として、「臨床研修制度に対する評価の進め方について(案)」、それから、参考資料が3つありまして、参考資料1として「臨床研修修了者のアンケートについて」、参考資料2として「平成23年度の臨床研修における対応等について」、参考資料3として「臨床研修制度等に関する意見のとりまとめ」をつけています。不足等があれば事務局までお申しつけてください。よろしいでしょうか。
○部会長 早速議事に入りたいと思います。本日の議題は、議事次第にありますように、1.として、臨床研修制度の評価の研究に関する実施状況について、2.として、臨床研修制度に対する評価の進め方について、3.その他、となっています。本年2月の本部会において意見のとりまとめを行ったところですが、その中で、次回の制度見直しに向けた取組みについて、本部会において、平成22年度以降、継続的に検討を行い、必要な対応を行うとしたところです。これを踏まえまして、本日は臨床研修制度に対する評価の進め方について議論を行いたいと思います。議論の進め方ですが、まず議題1として、「初期臨床研修制度の評価のあり方に関する研究」の主任研究者であられる桐野先生から、現時点での進捗状況について説明を受けたいと思います。その後、議題2として、事務局より、臨床研修制度に対する評価の進め方の(案)について説明を受け、これを審議したいと思いますが、そのような進め方でよろしいでしょうか。
 それでは早速、桐野先生より「初期臨床研修制度の評価のあり方に関する研究の進捗状況について」のご説明をお願いします。
○桐野参考人 それでは、「初期臨床研修制度の評価のあり方に関する研究」ということで、昨年度示しましたので、時間をいただいて、概要について説明します。かなり立派な報告書で、冊子になっていますが、実際は最初の部分の10数頁に書いてある内容が本体で、それと、その間に行った5回の班会議の資料及び議事録がずうっと後ろに付いています。
 それで、頁番号の振り方が実際の、白いほうの資料と少し違っていますので、こちらのほうの「初期臨床研修制度の評価のあり方に関する研究」という所をめくっていただきます。その1つ前にサマリーの頁がありますので、そこもチラチラとご覧ください。報告書の文章についてかいつまんで説明します。最初は3頁となっているかと思います。「はじめに」という所ですね。そこには初期臨床研修制度の経緯と、見直しが行われるまでに至った大体の経緯が書いてありまして、そのような経緯を経て、今後の初期臨床研修制度の改善に向けて、臨床研修の基本理念に示してあるような人材養成ができているのか否かという問題と、医療の現状や、将来の医療や医学教育のあるべき姿に即した医師人材の養成を行っているか否かという点に関して、おそらくこの部会において様々なご提言がなされると思います。私どもの研究は、それに至るまでの評価のあり方について研究したわけですが、その段階でもまだ5、6年間しか経っていないこともあって、データの蓄積が十分でないことが指摘されました。ということで、今後、省令に定められた5年ごとの大きな見直し、それから、年度ごとの検証を行うことで、当部会で議論していた、共通の基盤になるような情報を蓄積しなければならない観点で研究を進めてきました。5頁のほうに研究班の構成がありまして、当部会の先生方もかなり入っていただいています。これまでに5回の班会議を行いまして、途中では、評価機構に関する岩崎先生のお話、それから、オンライン臨床研修評価システム(EPOC)に関するお話などがありました。それに基づいて、6頁の1)、2)と書いてあるあたりからですが、この評価のあり方の検討については、臨床研修制度の基本理念自体は研究で検討する対象とせずに、基本的な診療能力を身につけるという基本理念に基づいて評価の組立てをしてはどうかということがまず第1点です。第2点としまして、評価の対象については大きく3つの区分を設けて、1つは、研修医が定めた到達目標に達成しているかどうか、つまり、研修医の評価です。2番目は研修プログラム(研修病院)の評価です。3番目は、制度が及ぼす影響等も含めた、制度それ自体の評価です。それぞれのあり方について、どのような調査があり得るかを検討しました。
 7頁をご覧ください。これは一般的なことですが、評価のあり方については(1)から(6)に書いてありますように、今後の評価の情報収集に関しては、年度を超えた比較が可能となるような調査であり、できるだけ悉皆性が高くて、全体に満遍なく調査がいき渡っていることです。(3)に、客観性のある全体評価であることです。これは個人や施設の個別評価やランキングづけではないわけです。(4)に、評価の時間的コストもやはり考えなければいけません。大変な時間をかければ、確かに評価の情報精度は上がるかもしれませんが、評価疲れに陥ることのないような、簡素で効率的な評価である必要があります。それから、これまでに蓄積されたデータ、研究成果を活用して、よりよい調査にしていく必要があります。諸外国との比較も想定し、評価指標や手法の国際標準やデータ互換に考慮する必要があります。というようなことが基本的な原則として話し合われました。
 7頁の下のほうから、実際の評価項目についていろいろなことが書いてあります。まず、研修医の評価について、いちばん下の(1)です。要するに、適切な研修が行われているかどうかについて、研修到達目標の達成度の評価方法をどのようにするかです。まず、全ての基幹型病院1,059カ所のプログラム責任者を対象とした「臨床研修目標到達度評価アンケート」を実施してはどうかと書いてあります。その内容としては、研修医をどう評価するか、研修修了時の修了認定をどのようにするかについて調査してはどうかと言うことを書いています。
 8頁に移ります。(2)、研修医の基本的診療能力に関する自己評価です。つまり、診療能力が実際に培われているかどうかですが、これは後ほどのEPOCの利用なども関係してくると思います。(3)、これも結構大事なことです。到達目標、つまり、初期臨床研修の基本理念に基づいて到達目標が設定されているわけですが、その手直し、改善に向けては、卒前の教育や卒後初期臨床研修、あるいは後期臨床研修、そして、生涯教育に至る一連の流れの中で、まず第1に、新制度で2年間の研修を修了し、現在、後期研修を行っている医師を対象として調べる方法があるだろう。2番目に、卒前のコアカリキュラムと卒後臨床研修の到達目標の内容を具体的に比較検討し、調べる必要があるだろう。3番目に、経験した症例・手技等について、医師のキャリアを通して記録が保存され、研修の結果が総合的に評価できる方法等について検討する必要があるだろう、ということです。そのような調査については、(4)のEPOCが現在約60%で利用されていて、もちろんこれだけに限られるわけではありませんが、合理的で効率的なデータ収集を考えると、このEPOCを改善して、もう少し簡素で使いやすいものにした上で、使える所は使っていただいてはどうか、それを基にデータ収集してはどうかという意見がありました。
 次に9頁、2)研修プログラムです。つまり、研修病院の評価ですが、(1)、卒後臨床研修評価機構が現在実施している認証制度のあり方については、1,059カ所の管理型病院に対して、残念ながら76カ所に施行されたに過ぎません。これは非常に時間を要する調査ですが、一方で、JCEPのサーベイヤーは現在300人近くになっているので、その方たちを上手に回っていただいて、すべての機関が一定期間内に、例えば、何年かに1度審査を受審するとした場合、どういうことが考えられるかも調査する必要があるわけです。
 10頁、(2)です。これは基幹型臨床研修病院の指定基準において、外形標準的なカットオフ値をおくとしたら、どういうことが調査の対象になるか。つまり、その根拠はどういうところかを調査する必要があります。現在、「年間入院患者数3,000人以上」という項目がありますが、今後、場合によっては基幹型病院の指定基準として、例えば、病床数550床などのカットオフ値を指定して行うべきであるという意見もあります。ただ一方では、質の良い研修ができるのであれば、病院の規模は必ずしも関係ないのではないかという意見もあって、その間の根拠に関する調査が必要ではないかということです。
 10頁の下の3)です。制度それ自体の評価は結構難しいことですが、少なくともこれに関係する項目としては、マッチング定員の今後の調整の仕方で、その根拠となるデータは何であるかについての調査が必要になるわけです。(2)地域医療計画と医師人材育成との連携に対する評価のあり方です。これはかなり広範なことが書いてありまして、それぞれの地域の疾病、外傷の発生状況、医療機関へのアクセス方法などを考慮して、医療機関の配置や医療機関における医師数などの点について、今後検討することのできるような調査項目を考えておく必要があるだろうと言っています。その1つの方法としては、医療施設調査やDPC病院のICDコーディングなどに基づいて、視覚化できるような地図情報システムを使ったもので、後で出てきますが、今後、そういうビジュアルな情報を整備していってはどうかということです。
 11頁の下で、(3)医師の地域別、専門分野別分布が明確となるような人材データベースです。これもかなり大きなことですが、卒後3年目以降の若手医師の地域定着率の問題というのがあって、これを裏づけるような客観データ、しかも、精密なそれがまだ十分にないのが残念な事態です。現在、2年ごとに三師調査が行われていまして、これもかなり膨大な調査ですが、これに医師の専門分野別情報をつけ加えた上で、もっと精度の高い地域別分布を出せるような方向に考えてはどうかなというわけです。
 12頁に移ります。(4)初期臨床研修制度以外にも複合的な要因が関与しています。ここから段々難しくなります。問題提起としては、地域医療に従事している医師が減少している問題や、基礎医学者が減少している問題なども、大まかに言いますと、初期臨床研修制度がある程度関与していて、また、他の要因もかなり深く関与している問題なので、今後、この問題についても正確なデータが収集できたほうがいいわけです。
 4番目に、先ほど申し上げた、研修医と研修病院、それから、制度そのものの評価を今後やっていくための体制について2点ほど書いてあります。1つは、臨床研修を行う病院からの迅速かつ効率的な情報システムを行うために、基幹型臨床研修病院の病院長、研修管理委員長、プログラム責任者、事務担当責任者の連絡方法、電子メールや電話番号を登録していただいて、現在それを整備しつつあります。(2)については、先ほども申し上げたような地図情報システムを使って、そして今後、様々なデータを地図上にビジュアライズするような方法を考えて、それを整備していけばどうかということです。
 以上のように、今後の全体の方向について大まかに述べましたが、それを全部ただちに実施することは困難ですので、13頁以降にある、今年度、平成22年度に向けて、具体的な研究について4項目ほど提案をしています。
 まず、(1)初期臨床研修を修了した医師に対するアンケートです。これは卒後4~5年を対象として、そして、自分が受けた研修プログラムが自分にとって良かったか否をかを調査する、それも病床規模、大学・非大学、地域別、診療科、男女、年次等のファクターに分けて分析してはどうか、できれば全国医学部長病院長会議にお願いをして、共同実施が行われるようであれば、そういうことを計画してはどうかと考えて、提案しています。
 (2)基幹型病院の指定基準強化に関する調査です。病院の規模と臨床研修の質の間の相関については、初期臨床研修制度では基本的診療能力として、幅広い診療科がある病院を基幹型病院としているわけですが、やはり質の相関について情報が乏しいので、特に小規模病院で一生懸命やっている所に関してはその実態を調べる必要があるわけで、卒後臨床研修評価機構のサーベイヤーの協力を得て、小規模病院が実際にサイトビジットをして調べてはどうか、そして、研修期間中に経験した症例数などの調査を行って、病床規模、入院患者数との関連について調べることを考えています。
 (3)医師の地域別データの整備です。これは先ほども出てきたことで、初期臨床研修だけにこだわらず、かなり基本的なデータの整備に関係することです。ここだけの情報ではないのかもしれませんが、初期臨床研修医の地図上での分布情報、後期研修医の診療科目別の地域別分布情報、そして、専門医の最適配置に関するシミュレーションの方法の検討などをやってはどうか。
 (4)全国規模の卒後臨床研修評価システムです。これは、前に出てきたEPOCの活用など、簡易型で使いやすいEPOCの検討などを行ってはどうかと提言しています。以上でございます。
○部会長 桐野先生、ありがとうございました。事務局から何か補足する点はありますか。
○医師臨床研修推進室長 先ほど桐野先生からお話がありました、人材データベースの構築に関連してお話したいと思います。参考資料1をご覧ください。「臨床研修修了者とアンケート」となっているかと思いますが、これは厚生労働省による、臨床研修を修了するすべての医師を対象にした調査です。現在2学年分について実施しています。平成19年度から開始した研修医、平成20年度から開始して修了した研修医を対象にした調査を行っています。毎年年度末に行っているわけですが、調査内容は参考資料の後ろにあるように、卒業大学や研修の場所、あるいは、研修した診療科、臨床研修修了後の勤務地、診療科等々、研修内容や研修後の進路に関する質問を設けています。調査結果については概要を公表する予定ですが、現在集計中です。このアンケートには医籍番号も書くようになっていますので、三師調査とリンクすることによって、長期的に医師の分布を経時的に把握することができると考えていまして、これについて、桐野先生とも連絡をとりながら、こういったものを情報として評価のほうに提供できればと考えています。以上でございます。
○部会長 ありがとうございました。参考資料1について説明をいただきました。
 ただいまの、桐野先生の説明と事務局からの補足説明に対して、これから議論に入ります。まずどなたか、ご質問、あるいはご意見はありますか。
○冨永委員 いま事務局から説明していただいた参考資料1についてですが、3、4年前に厚労省がでアンケート調査をしていただいていますが、その調査項目は、今回のことに関して、追加されたり変えられたことはあるのですか。
○医師臨床研修推進室長 臨床研修制度の見直しを行ったときですね。これは平成20年秋から検討しましたが、そのときの調査項目と大体類似しています。それ以前に研究班等で行われた調査とも大体類似した調査項目になっています。例えば、研修を振り返ったときの、全体としての満足度を聞くといったこともありますし、臨床研修を行った病院を選んだ理由などについても伺っています。違う所については、実際に研修したプログラムについて、その実績を診療科、あるいは都道府県、こういったものを聞いていますので、かなり具体的な内容が把握できるのではないかと思います。以上でございます。
○部会長 よろしいですか。その他、いかがでしょうか。
○山下委員 いまのご質問のアンケートですが、いつ頃わかりますか。今後の研究に参考になると思うのでお伺いしたいのです。
○医師臨床研修推進室長 このアンケート調査については今年度中にはきちんと整理をしていきたいと思いますし、後ほどご議論いただきますが、もしそういう評価の作業部会ワーキンググループみたいなものができれば、そういった所に提供してまいりたいと思っています。
○三上委員 桐野先生のご研究の中で今後やられるのに後期研修の方の地図情報を調べられるのですが、後期研修の経緯とか、卒後3年目以降ということですが、正規の職員というか常勤医になられた場合には対象にならないのかとか、定義はあるのですか。
○部会長 まず桐野先生からお答えいただいて。
○桐野参考人 私が答えたほうがいいかな。まだ具体的にそこまでは検討していません。
○部会長 事務局から何かありますか。
○医師臨床研修推進室長 研究班で議論されていたのを思い出して申し上げれば、具体的な定義ははっきりしていませんで、いわゆる後期研修というふうに言われている方たちということで理解しています。
○部会長 よろしいですか。
○三上委員 一応、正式のときには決められるということですね。
○医師臨床研修推進室長 そういうものは位置づけられてはいません。
○部会長 法令では「後期研修」というものは用語としてもありませんし、部会長としてではなく私個人の理解ですが、初期の研修を修了し、それを医籍に登録するということをもって、その後は日本医師会など、あるいはその他いろいろな機関で行っている生涯教育なども含めたものが、「初期研修後の研修」ということで、「後期研修」という定義になる、その期間等は定められていない。いわゆる後期研修という言葉が実際にはよく使われているという理解ですが、よろしいですか。桐野先生のここで書かれている後期研修というものに関しても、期間とかその他に関してははっきりと定義したものではない。いわゆる一般的に初期研修修了後の専門医制度あるいは生涯教育というものについて、「後期研修」という表現をなさったと考えてよろしいのですか。
○桐野参考人 現実的には、卒後4、5年目ぐらいの学年に対して調査を行う以上のことはありませんで、厳密に後期臨床研修のカテゴライズするとか、範囲をガッチリ決めるというのは、まだそこまではありません。後期臨床研修が、例えば専門医制度とかそういうのにだんだん結びついてくれば、徐々に自然にはっきりしてくる問題であって、ここで強引に何かやるという問題でもないように思います。
○三上委員 イメージとしては何かの非常勤の、いわゆるレジデントと言われる正規職員になる前で、就職自体がまだ流動的な状況をイメージしていますが、そういう感じですか。
○桐野参考人 本当に卒後4年目とか、つまり初期臨床研修が終わって2年目とか3年目を対象にしているわけで、1年目、2年目ぐらいを対象にしているわけで、初期臨床研修修了後の1年目、2年目の診療調査と考えていただければいいと思います。
○部会長 この点に関してよろしいですか。その他にいかがですか。
○河野委員 桐野先生の非常にバランスのいい、いろいろな枠組の問題点を整理していただいて、非常にありがたく整理できたと思います。この中で1つ前から気になっていましたのが、臨床研修制度の問題と地域医療の問題は、どうもここでいつも密接に出ているのですが、いままでの見直しの経緯もそういった問題から始まったとは思うのです。ただ、地域医療の問題はそのゴールが見えないと、研修制度のあり方そのものにも非常に大きな影響はあるのではないかと思うのです。
 今回も桐野先生のおまとめの中で、10頁の3)にそういったところについても言及されており、非常にわかりやすく、私個人としては前から疑問に思っていたところをおまとめいただいたのです。西澤先生はご存じのように、これから10年、20年は高齢化が進み、日本の医療の疾病構造から医療はこの20年余りが非常に急激に大きく変わってくるわけです。すなわち、いまの初期研修を受ける方々がまさにそのときの医療を担う人たちになるわけですので、そうしますと11頁に書いてあるような地域医療ビジョンとか地域医療計画と地域の問題、それが1つ見えてきませんと、研修のあり方を議論していても、私はいつも何かわかりづらいと思ってきたものですから。
 そうしますと、ここで重要性をご指摘いただいているのですが、ただ、これをどのようにこれから領域の問題でいろいろなところに関連する問題ですが、これをどのように検討し、まとめていくのかがまだ、あまりにも大きな問題でということかもしれませんが、先生のお考えとしては、どのような形でこれの検討する場を設定していかれるということですか。
○桐野参考人 この委員会でまとめたのは、初期臨床研修制度を評価するときに、どういう基本的姿勢が必要かが目標でありましたので、ここに書いてある地域医療計画云々という所は、その範囲を超えた内容だと思うのです。ただ、議論の過程で出てきたのは、地域医療についていろいろな地域における偏在とか、絶対数の不足、診療科における偏在の問題はあるのですが、具体的にどの程度で、どこにどういう問題があるかというデータが本当に不足しているのです。だから、ここで申し上げていることは、まずそれからやるべきであると。それ以上のことを申し上げることは、難しい。それを具体的にどう判断するかは、また、この調査を明らかに超えることですので、客観的なできるだけ正確なデータを基にご判断をいただきたいと、まとめて言えばそういうことです。
○河野委員 先生のご指摘、おっしゃることは、十分わかります。ですから、地域医療ビジョン等々は、基本的には地域、地域が自分の所のしっかりしたビジョンを持った上で、その病院の基幹病院等々を含めた議論に持っていかないと、何かそういったデータのないまま、どこを配置して、医師の配置という何かわかりづらい。
 先ほど申しましたように、非常な高齢化が進みますと、例えば在宅医療の問題とか、非常に変わってくる可能性があります。そうすると、研修ということ自体が非常に変わってくる。例えば、先進医療についても、どこでどういうウエイトを置くのかも、ここ10年、20年という非常に短い期間で変わってくるものですから、かなり早急な手立てが必要ではないかと。それが研修にも結果的にはかかわってくるのではないかということで、早急な対応が必要ではないかと私は思っています。よろしくお願いします。
○矢崎委員 2つ問題点があって、1つは、この臨床研修制度で研修医がどのぐらい基本的な診療能力を修得しているかどうかを客観的に評価すべきというご指摘があって、桐野先生の班研究ができたと思います。それに対応して研修病院がどういう体制になるかと。いま、これは桐野先生の方向で大変ご指摘のバランスがよくまとまっていると思います。
 もう1つの問題は、いまご指摘のように、地域医療の崩壊という課題があったときに、地域の医師が、例えば診療科別でもいいですが、どういう状況にあるのかという概数も把握できてないと、そういう大きな問題があるわけです。それをどうしても把握する必要がある。基本的なデータが必要で、ここの「地図情報」ということが書いてありますが、その対応として、先ほど事務局から臨床研修修了者に対するアンケートというお話がありましたが、私は修了者が進路をある程度決める、先ほど後期研修というお話がありましたが、修了後3年とか4年ぐらいのあとの時点で切ってアンケート調査をして、どういう状況におられるかというアンケート調査があると非常に有用ではないかと。
 もう1つ、2年ごとに行われる三師調査、これをいままであまりこういう議論に役立った概数は出ていても、地域ごとの正確な状況は把握できませんでしたので、行政的に可能な範囲でもう少し、現在、実際にどの地域でどういう診療科で、実際に働いてもらえるかどうかということまで欲張ると、三師調査で大変でしょうが、そこまでの情報が集まれば大変素晴らしいのではないかと思うのです。それは行政のサポートがないと、研究班でいろいろまとめることが難しいので、そういう点を是非お願いできればと思います。
○部会長 確認ですが、参考資料の1の2に書いてある「臨床研修を修了するすべての医師に対する調査」というのは、ちょうど修了する3月にアンケートを出して、その後の進路についてほとんどの方が決まっていると思いますので、自分は決まっているというところで出すと。そのときに医籍登録番号を書いていただくので、2年後の三師調査とその後はマッチできるということですね。
○医師臨床研修推進室長 はい。
○部会長 三師調査は、私個人も2年に1回書いて報告していますが、情報としては簡単な情報ですが、それなりの情報ではあります。いまのような目的ではさらに深い情報が取れるかということ、可能かどうかということですね。それについてどうですか。
○医師臨床研修推進室長 まず卒後4、5年目の方を対象にしたアンケート調査については、現在、桐野先生のほうで計画をしているところがあります。もう1つは、継続的にそういったアンケートができるかということかと思いますが、この研修修了者アンケートを取ったあと、三師調査でどういう診療科を主たる診療科にしているのか。しかもどこの地域で就業しているか、就業している所も病院か診療所か、医育機関か、こういったことがわかるようになっていますので、もしそういった診療科がどういうふうになっているかを把握するだけであれば、三師調査と研修修了者アンケートの組合わせで、ある程度のことがわかると思います。
 4、5年目の方たちに対して、そのときの考え、意向を改めて聞くということになると、アンケートをまた改めてやらないといけないと思いますが、従業地、あるいは診療科の変化、変遷を見るということであれば、研修修了者アンケートと三師調査を組み合わせることによって経時的に追いかけることができると思っています。
○部会長 三師調査は法令に基づいて行われますから、100%回収できるという方向になっているわけです。例えば、そのときに専門医の取得状況などという項目、これは今後の三師調査でいまの目的に役に立つのですか。
○医師臨床研修推進室長 はい、現在、平成22年12月に届出をしていただく調査様式について検討をしており、そういった広告ができる専門医についても、そういった所に盛り込めるのかどうかを検討しているところです。
○部会長 多少は三師調査の情報もさらに深まることかとも思います。
○医師臨床研修推進室長 あともう1つは、現時点の医師の分布、さらにいえば、各病院が必要とする医師について必要医師数調査を行っています。それはすべての病院と、あと分娩を行う診療所に対して行っていますので、病院ベースでどのぐらいのドクターがどういう診療科にいらっしゃるかは、ある程度把握できるのではないかと思っています。
○長尾委員 非常に経過とか今後のことについて非常によくまとめていただいているので、ありがたいと思います。そもそものいろいろな地域医療の崩壊とか臨床研修制度が引き金になったのは事実でしょうが、根底にあるのは医師の絶対数が少ないということもあったと思います。それについてはここでは触れませんが、あとの平成22年度からの臨床研修のプログラムの変更、これが始まったわけで、いまのアンケート調査はまだこれの始まる前の段階の人たちへのアンケートということになると思いますし、その後の経過を今後、平成22年度からの専門医療へ早く行った人たちについてはどうなるかについては、少し時間が今度の5年後の見直しについては、若干時間的にも足りない分があるのではないかと思っていますので、そこら辺のことをきちんと継続して調査をしていただければと思いますし、そもそもの基本理念については変えられないということで、これはこの方向に基づいて是非とも進んでいただきたいと思います。
 8頁の(3)には、「臨床研修の到達目標」の設定が妥当なものかどうかを検証すべきということも書かれているのですが、これはその前の段階の1)にあります研修医の到達目標の達成評価がきちんとどのように評価されるか、それがなければなかなか妥当かどうかという評価は難しいと思いますので、研修医の到達目標が十分達成できて、それがどのように評価されるか、ここがなければ全然次の段階には進めないのではないかと思いますので、その辺の到達目標をどのように達成し、それがどのように評価するかを、まず厚労省も含めてきちんとやっていただきたいと思います。
 先ほどからの地域別の専門分野は非常に大切なことだと思いますし、ここで医療機関のことが触れられているのは、主にこれは病院のこととして触れられているのではないかと。病院における専門医の問題とか、人員の必要数とかも先ほど言われましたが、もう1点は、これは日医も協力していただかないといけないとは思うのですが、診療所の分布、つまり標榜科も科別とか、専門医別であるとか、今後、そういったこともすべて含めてきちんと把握して今後出していかなくてはいけないと思います。
 これはここでの論議からは離れることではありますが、それによって地域別でどの程度の診療所も必要かどうか、そういったことも含めて、病院だけでなくて診療所も含めた配置のあり方、そういったことも含めて検討する、是非とも今後設けていただければと思っています。
○桐野参考人 到達目標の設定に関する件に関しては、ご指摘のとおりと思いますが、卒前・卒後の目標項目について、もう少し調整というか検討が必要ではないかというご意見があり、それについては卒前・卒後の調整というか、ただ重複しているから駄目というわけではなくて、卒前にも卒後にもきちんとやらなくてはいけない事項もありますので、その辺のところはそういう問題として検討する必要があるのではないかというご意見がありました。
○小川(彰)委員 先ほど矢崎先生がお話になった2番目の問題ですが、地域にどのぐらいの方々がどういうふうに働いているかに関しては、室長が先ほどお話になりましたように、いま必要医師数実態調査が医政局長から発せられ、これは7月20日が締切りだったと私は認識していますが、その報告が上がれば、大体は把握できるわけですよね。いつまとまるのですか。
○医師臨床研修推進室長 現在のところ8月末までにまとめたいと考えています。
○小川(彰)委員 もう1つ、先ほどの長尾先生がおっしゃった後半の部分ですが、開業医の先生も含めて、例えば診療科の把握に関しては、一応、三師調査の中で全部出ていると認識しているのですが、その辺は駄目なのですか。
○医師臨床研修推進室長 項目としてでしょうか。
○小川(彰)委員 例えば、先ほど長尾先生がおっしゃったのは、開業の先生も含めて各地域でどういう科を標榜し、また、どういう科で働いているかを把握することに関しては、三師調査の調査項目に入っていると私は理解をしているのですが。
○医師臨床研修推進室長 はい、そのとおりです。病院・診療所も含めてその主たる診療科、あるいは従事している診療科について調査をしていますので、あとは集計の仕方かと思いますので、それはまたいろいろな先生方のご意見を伺いながら、目的に合った集計をしてまいりたいと思います。
○小川(彰)委員 そうすると、今後の臨床研修修了者のアンケートがあって、桐野班で卒後4、5年目の医師のアンケート調査を行う、これが三師調査と連動して、さらに必要医師数の実態調査の結果、この4つがそろえば、解析できる基本データとしてはかなりそろってくるのではないかと理解をしているのですが、それはそれでよろしいわけですね。
○医師臨床研修推進室長 そのように努力してまいりたいと思います。
○山口委員 先ほど長尾委員からあった到達目標の達成度というお話は、今回のいろいろな見直しの成果がどういう格好で表れるかを評価する上では、非常に重要な点かと思います。臨床研修者のアンケートを拝見しても、質問事項でそれに関する質問は、例えば問8の「あなたが経験した臨床研修を振り返って全体として満足度についてお答えください」と、この質問ぐらいしかなくて、あとは地域医療にかかわるような「どこにいますか」「どこの出身ですか」「卒後、研修が終わったらどこへ行きますか」とこういうことが書かれていますが、あまり達成度に関する質問はないように思います。初期研修の到達目標がどこまで達成されたかという点は、今回いろいろ見直しを行って、例えば初期研修の専門教育に向けての時間を非常に近づけた場合と、従来の2年間の研修といろいろな選択ができるようにしたと思うのですが、そのことの評価は、到達目標の内容より達成度が重要だと思います。必修科目の選択数によって達成度がどうであったか、その意味でアンケートはもう少し何とかならないかという感じがします。
 達成度に関して、例えばEPOCのようなものを使って何らかの評価ができないかを是非検討していただきたいと思います。一応、研修を修了したということは、各項目を達成したということで修了になっていますので、ただ単に修了をもって達成度というと、「全員達成しています」という返事しか返ってこないように思います。もう少し客観的なアプローチの仕方がないものかという感じがしていますので、是非よろしくご検討いただきたいと思います。
 このアンケートでお伺いしますが、対象の医師は、平成22年3月に修了した者について3月1日から4月30日までにやるということは、すでに終わっているという理解でよろしいのですか。
○医師臨床研修推進室長 はい、そのとおりです。
○山口委員 そうすると、そのあとのデータの集計というだけですね。
○医師臨床研修推進室長 そうです。
○山口委員 わかりました。
○部会長 私の理解でもし間違っていたらご指摘願いたいのですが、このアンケートに関しては、主に医師の進路に関するアンケートであって、研修の達成度あるいは評価に関してはまたEPOCなりでやっていると。主に進路に関して着目したアンケートということだけ。
○医師臨床研修推進室長 はい、主に進路に関してのアンケート内容になっています。ですから、到達目標の達成度について調べるということであれば、別の調査ということになりますし、桐野先生のほう、あるいは研究班に入っていらっしゃる齋藤先生のほうで行われているのは、達成度を評価する方法についてアンケートを取っていますので、そういったものと、さらに達成度についてどうなのかをまた踏み込んで調査をするとすれば、別の仕組みをつくらなければいけないかと思っています。
○小川(秀)委員 桐野先生がいらっしゃる間に明確にしておきたいところがあります。このあり方に関する研究は非常によくできて、吟味されていると思います。10頁の(2)の「基幹型臨床研修病院の指定基準における病床規模または年間入院患者数によるカットオフ値設定について」というのが、この委員会でも相当もめた部分であります。「年間入院患者数3,000人以上」と「急性期の病床数150床以上を有し」といろいろなことが書かれています。大学病院の最少病床数550床程度のカットオフ値を設けるべきであるという論拠に、大学病院の最少病床数550をもってというのが、大学病院以外で働く先生方は、自分たちの病院はベッド数こそ少ないけれども非常に充実した内容がある、あるいは臨床研修に必要な領域を十二分にカバーしているという論議があります。大学病院が最初に行うべきとの意見もあるが、必ずしもそうでなくても良いという部分、その人たちが息抜きができるような、あるいはより良い研修ができる病院も条件により選べるという補完的なことを追加していただければと思います。例えば、その地域においては他にないので、この病院にどうしても補完的役割を果たしてもらわなくてはいけないというが如き文は、それが1つであります。
 11頁で、先ほどから問題になっていますが、「後期研修または専門医研修以降の」といった場合には、これは全くファージの言葉であります。後期研修には、専門医専攻生コース、大学院に入っていくコース、地域医療、総合診療科的なものをやるとか、いろいろな進路があります。この中で大きく抜けているのは、大学側とすれば、大学院に入っていくコースですがこれが明確に示されていないと思います。
 よくよく読み込んで、つなぎ合わせると出てくるのですが、この辺をより明確にしていただくと良いと思います。先ほどは大学以外の病院のことを考えて頂きたいと申し上げましたが、大学としての特徴的大学院の問題です。これは院生として常時在籍する、常時大学院に集まって勉強する、いわゆる昔でいう甲論文と、社会人でいろいろな病院で働いているけれども、大学院に籍を置いて、指導を受けながら、臨床の場に密着した10年、15年、20年かけてやっていく人、いわゆる乙論文コースの人に対しても、コンシダレーションしているのだという表現が加わると、バランスがいいと思いました。
 それから、参考資料の1の問8ですが、あとで分析するのに困るくらいのたくさんの質問が、問7にあります。これを問8でまとめて、満足している点はピックアップできると思いますが、満足していないという改善点を、どうやってこの回答からピックアップするのか。この部分が足りないから補充してほしいという現場の意見が汲み上げられるような質問を考えていただければと思います。
 問17も、先ほど言った卒業した大学の大学病院云々のたくさんの進路がありますが、臨床以外の道は、基礎医学、行政機関とポッと分かれますが、ここを少し補完して頂ければと思います。桐野先生は十分におわかりのように、実際には大学にいながら、臨床に籍を置きながら、基礎医学的な勉強をしていく、Physician-Scientistのような人を育成していくというスタンスが重要です。今はメディアの報道から地域医療というのがすごく表に出ていますが、地域医療に十二分な心配りをしつつも、研究部門を臨床の場に密着しながらやっていくようなトランスレーショナル・リサーチを荷う人材を育成するというのも、今後の大きなポイントですので、その辺をちょっと追加、工夫していただければと思いました。
○桐野参考人 簡単にお答えします。カットオフ値については、ここに書いてあるように、そのような議論がありまして、仮置きで550と書いてありますが、例えば特定機能病院で400という数もありますし、この数自身には何の根拠もありません。
 ただ、初期臨床研修の評価についてはランキング付けをしようというのではなく、質の向上のため、言ってみれば認証評価的なことをやる必要があるだろうというときに、すべてを押し並べて認証評価をやることがベストなのですが、もしそれが大変に難しい場合は、一定の外形標準を置いて、もしそれに該当しないようなところについては、認証評価で非常に内容がよければ、当然その病院も加えていくというやり方があるのではないかという議論がありました。ですから、もう遮二無二カットオフしてしまうということを言っているわけではありません。
 卒後の後期臨床については、いま小川先生がご指摘のように大学院の問題がありまして、大学院でも、どちらかというと専門職大学院的な運営をしておられるところもあれば、研究者養成に主眼を置いて教育をしておられる大学もありまして、なかなかいろいろありますので、現状において押し並べて1つの方法というのは難しいです。当然そこを配慮しなければならないことは、ご指摘のとおりだと思います。
○小川(彰)委員 先ほど来、到達目標の満足度が、研修でどれくらい担保されているかということが議論になっているわけですが、実は桐野班の中でも、かなりの時間を割いていろいろと議論になりました。例えば新しい臨床研修制度で、臨床研修をやった人と、臨床研修をやらなかった人のコントロールが取れないわけです。コントロールのない中で、比較試験はできないのです。したがって、この到達目標が満足できたかどうかに関しては、本人がコンファタブルだったかどうかという主観だけで、そこには客観性は一切ないわけです。
 客観性を割る数とするなら、2つのプログラムを走らせて、臨床研修をやったのと、臨床研修をやらなかった方の2つを比較検討しなければ、科学的なエビデンスは出てこないわけです。そうすると、どんなに頑張っても、どのような設問を作ったにせよ、主観であり、本人がコンファタブルに2年間過ごせたかどうかしかないわけです。
 要するに、大学時代の4年生から5年生にいくときのCBTの到達目標と、国家試験の到達目標、そして、臨床研修制度2年を修了する到達目標が、基本的には同じだということはエビデンスとして、明確に文言として出ているわけですから、この辺をベースにして議論をしていかないと、本人たちの主観とか、感じ方をいくら言っても、この臨床研修制度がいいことだったのかどうかという結果は、科学的な根拠としては出てこないと思います。
○三上委員 先ほど参考資料1の問8の満足度に対して、「不満である原因をわかるような形にしてもらえないか」という話がありました。日本医師会の中にも臨床研修医部会というものがありまして、研修医の方々に集まっていただいて、いろいろとご意見を伺っています。
 やはり大学病院の研修の方と、そうでない臨床研修の病院で研修されている方とでは、かなり違います。基本的には、全体としては大学病院のほうが評判が悪いという印象がありますが、そのようなところを、どうやって改善するのかということができるようなアンケートを、事務局には作っていただきたいです。
 それから、桐野先生のほうの12頁の上のほうの(4)に、「初期臨床研修制度以外にも複合的な要因が関与している問題」とあります。この中には、基礎医学者が減少していることがありまして、これは研修制度が始まって以来、ずっと気になっていたことで、これについては非常に難しいということなのですが、アンケート調査の10番、11番、12番で、その辺が少し出るかと思っていたのですが、これだけでははっきりしないかなと思うので、桐野先生にもお伺いしたいのですが、明確となるような評価項目手法をある程度想定されているのであれば、教えていただきたいと思います。
○桐野参考人 12頁の(4)は、まだ内容はないです。ないのですが、基礎医学者については、基礎医学のほうの生理学会、解剖学会などの先生方が調査しておられるデータでは、確かに減少しています。しかし、その減少自体は、初期臨床研修制度が始まる前から始まっていて、特に初期臨床研修制度に入ってからは深刻であると。非常に深刻で、法医学や解剖学、病理学の解剖3科においては、今後は本当に深刻です。ただ、初期臨床研修制度の問題として、どのくらい扱えるかはわかりませんが、この正確なデータは、医学教育全体の観点から非常に重要であるという指摘ぐらいしか、私にはできません。
○山下委員 評価のところで小川彰先生がおっしゃったことと重なるのですが、それからアンケートに関してのご要望とご質問がありまして、これから詰めていくわけですが、もう1つの視点としては、本当に客観的なものはないけれども、終わった人たちが、初期臨床研修で勉強したことは自分の専門医またはキャリアパスの中で役に立ったと思っているかどうか、このような視点での評価が、いままでなかったのです。
 それがすべていいとは言いませんが、我々の目的は素晴らしい医師、それは家庭医、専門医、基礎研究者であってもいいのですが、そのような人たちをつくることが目的であって、初期臨床研修は目的ではありません。いわゆる教育のプログラムです。そのために、どのようなことをここで教えておくべきかという評価を、どこかでしておかなければいけないと思います。それは時代によって変遷するだろうと。できれば、それを桐野班の中で私も一緒に勉強させていただきながら作っていきたいというのが趣旨です。
○長尾委員 先ほど小川先生が言われたエビデンスというのは、難しい部分があるかとは思うのですが、臨床研修制度の目的というのは、基本理念に掲げてある臨床研修は医師としての人格を涵養し云々ということで、基本的な診療能力を身に付けるようにすることが、いちばんの目的だったと思います。
 これは初めから専門医のほうへ志向していくことがあって、それの裏返しのような形で、全体の診療能力をある程度基本的なものを身に付けることが、やはり大切なことであったと。
 今回の平成22年度からの見直しは、若干それが逆戻りしたような形になっている部分で、私は非常に残念なのですが、例えば精神科でも、卒前でもいろいろと研修はあるわけですが、実際に研修に入ることによって、患者さんと接することで、医師免許を持ってから診療に携わることによって、偏見的なものがなくなって、患者さんのこともわかり、精神科のこともわかっていくと。これは以前は、専門科にいっている人たちは、ほとんどそういうことがなかったわけで、医師の中でも非常に偏見が強い。精神科にかかっている患者さんというだけで、もうお断りという人も、結構あるわけです。
 そういったことがなくなっていくし、ほかの診療科を回って、いろいろな実践的、基礎的な知識を身に付けることは、非常に大切なことですので、その辺はきちんと踏まえた上で、今後も臨床研修制度を考えていかなければいけないと私は思っています。
○部会長 同じようなことに関して、議題2でもご意見をいただくことができますので、まず議題1に関してはいろいろとご意見をいただきました。また、この特別研究事業には、本部会の小川(彰)委員、西澤委員、山下委員の3名の委員が、分担研究者としてお入りになっていることもありますので、ただいまのいろいろなご意見を踏まえて、この研究を進めていただきたいと思います。
 また、厚生労働省からの進路に着眼したアンケートに関しても、このあとでも検討できますので、議題2に進んでもよろしいでしょうか。
(異議なし)
○部会長 議題2「臨床研修制度に対する評価の進め方について(案)」、まず事務局より資料の説明をお願いします。
○医師臨床研修推進室長 資料2「臨床研修制度に対する評価の進め方について(案)」です。相川部会長と相談し、用意しました。基本方針は、次回の制度の見直しに向け、この研修部会において、制度に対する総合的な評価を行うというものです。評価を行うに当たっては、この研修部会とは別にワーキンググループ(WG)を開催し、臨床研修の実施状況や地域医療への影響などに関する実態を把握し、論点を整理するというものです。
 参考資料3「臨床研修制度のあり方等に関する検討会の意見とりまとめ」等を踏まえ、評価項目を設けています。そのようなところで指摘された課題、あるいはこれまでの研修部会でのご議論、そして桐野先生の研究の結果等を踏まえ、整理をすると、主な評価項目は以下のとおりではないだろうかとしています。
 まず、(1)制度の運用状況に関する評価です。これは現在の制度を前提とし、それがうまく行われているか、運用されているかどうかというものです。例えば研修医の基本的な診療能力が高まったのかどうか、病院の指導体制、管理体制はきちんと行われているのか、研修プログラムの内容は到達目標を達成するようなものになっているのか、研修医の処遇、研修医の修了状況、募集定員や研修医の分布、こういったものがどうなっているかということで、制度がうまく運用されているかどうか、そういうものを評価の対象にしてはどうか。
 (2)として、この制度が導入されたことによる影響に関する評価として、これまでも指摘がありましたように、研修医のキャリア形成に与えた影響、地域医療に与えた影響等を評価すべきではないか。
 (3)として、医学教育との関連もご指摘をいただきましたので、卒前教育の状況や生涯教育の状況の実施状況をしっかりと把握することが重要ではないか。こういった(1)から(3)までの評価を踏まえて、臨床研修制度そのもの、現在の枠組みに対して、しっかりとした総合的な評価をすることが、項目として考えられるのではないかということです。
 実態把握の方法については、先ほど来ご議論をいただいていますように、現在ある既存の統計データの活用、またヒアリングや改めて実施するアンケート調査、そして臨床研修病院への訪問調査、関連団体が実施するような調査、こういったものを踏まえて、実態把握をし、論点の整理を行うという考えです。
 4番目に、WGの開催として、この評価を行うに当たって研修部会とは別にWGを開催し、評価項目については、いま主なものとして挙げたもの以外にも、必要なものについては適宜追加をし、実態把握や論点整理を行う。その結果については、この研修部会に適宜報告をするという形ではどうか。そして、10名程度で構成して、年に数回開催するというWGを開催してはどうか。
 次回の制度の見直しに向けたスケジュールを考えますと、今回の見直しは平成22年度の研修医に適用しましたので、5年以内ということであれば、平成27年度から始める研修医について適用することになります。そうしますと、平成26年度には募集をすることになりますので、逆算すると、今年の10月ぐらいからWGを開催し、約2年間WGで評価を行い、研修部会に報告し、この研修部会で制度全般の見直しを1年ぐらいかけて検討します。それで、ようやく平成25年中にそのようなものができて、平成26年度から募集をする形になりますので、こういったスケジュールを想定し、このような評価の進め方という案をまとめたところです。
 これに固執することなく、これを基にまた先生方からご意見をいただいて、そのご意見を踏まえながら、評価を進めてまいりたいと思います。
○部会長 ただいま事務局が説明しましたように、いままでの部会でのご意見なども踏まえて、このような案を用意しましたので、委員の方々から積極的なご意見をいただきたいと思います。先ほどスケジュールを説明しましたが、平成26年の募集のときには、これができている必要があるのですね。
○医師臨床研修推進室長 そうです。平成27年度の研修医に対して適用するので、平成26年度初めにはもう制度ができていないと、病院のほうも準備できないということになりますので、そういうことを念頭に置きながら準備を進める必要があると思います。
○部会長 すでにこれに関しては、先ほどの議題1でも、各論的なご意見を一部はいただきました。山下先生、どうぞ。
○山下委員 質問と要望が1つずつです。1つは、先ほどの小川(彰)先生と小川(秀)先生のご質問に関連していますが、(3)に医学教育とあります。生涯教育は、大学院とか基礎研究も入ると思うので、そうすると、かなり文部科学省のカバーするエリアと重なっていると思うのです。要するに、去年にこの部会でも小川(彰)先生がご質問されましたが、共同でこのプロジェクトを考えるというものがありましたが、あれとこのWGをどうやって共同歩調を取るのか、ワークシェアするのか、その辺はわからないのですが、そのようなビジョンはどのようになっているのでしょうか。
 もう1つは要望です。膨大なカバーするエリアを考えると、10名というのは、大変なことになると思うのですが、WGのメンバーとして、私はこの臨床研修の制度設計、また運用をした先生以外の人から選んでいただきたいと思います。そうしないと、抜本的にいまの問題を客観的に見て、ご指導いただくというのは、現時点での制度設計に携わっていない人がニュートラルな立場で、国民の立場でお話ができるのではないかと思います。
○部会長 すでにいくつか各論的なご意見を山下先生からいただきましたが、できれば資料2の部分で、大きな項目の順番を追って議論をしていってよろしいでしょうか。もちろん項目間で関連することもあると思いますが、まず、この基本方針として2つの○がありますが、特に2番目、いま山下先生からお話もありましたが、研修部会と別にWGを設けてそれを開催すると。この辺は、すでに部会の中でも、「独立した」とか、そのような表現で検討するグループの位置づけについてはご意見はいただいてはおりましたが、このような基本方針でよろしいかどうかについてご意見をいただきたいと思います。
                 (特になし)
○部会長 よろしいですか。基本方針としては、いままでも委員の方々からいただいた意見を参考にして、このような案を作らせていただきました。
 それでは評価項目です。ここには「主なもの」と書いてありますが、これについて、(1)~(4)ですが、まずは全体としての運用状況に関する評価、導入の影響に関する評価、関連する医学教育の実施状況の把握、制度そのものということで、先ほど小川(秀)先生から、大学院も1つのキーワードとありまして、アンケートなどには大学院の部分が抜けていることもあったかと思いますが、評価項目全体としては、このような評価項目でよろしいかどうか。さらに重要なことが抜けている、これは要らないということはありますでしょうか。
○山下委員 順番が違うかもしれないので、そのときはご指導ください。
 基本的に、どこかで国試のあり方もかかってくるのではないかと思うのです。卒前教育にもかかってくるのですが、いまの時点ではペーパーテストですが、(CBT、OSCE)と書いてありますが、これと国試のあり方によって、臨床研修のあり方もだいぶ影響を受けるように思いますので、その辺もご検討いただければと思います。
○部会長 これは、医師国家試験改善検討部会が4年に1度開催されていまして、この委員の中にも何人か委員の方がいらっしゃるかと思います。私はたまたま部会長をしていたことがありまして、そこでも卒前教育、国家試験、その後の初期臨床研修との連携を視点においた改善検討委員会の報告書が出ています。もちろんそれも踏まえて、またさらには、この臨床研修制度の委員会から、国家試験改善検討委員会に提言する方法もあるかと思います。それでよろしいですか。
 評価項目に関してはいかがでしょうか。まずは制度の運用状況に関する評価、[1]から[6]に関しては、またWGなどで詳しくやっていただくこともありますが、制度の運用状況は当然評価しなくてはいけないと思います。よろしいですか。[1]から[6]に関しても、ご意見はございますか。別のWGにお願いするとなると、この部会としての意向を、そのWGに投げ掛ける必要がありますので、どうぞご意見をいただきたいと思います。臨床医の基本的な診療能力、受入病院の指導・管理体制、受入病院の研修プログラム、受入病院における研修医の処遇、臨床研修の修了状況、募集定員及び研修医の分布ということです。
○長尾委員 最初の[1]研修医の基本的な診療能力の到達目標の達成度ですが、これをきちんと何らかの形で掴めるようにすることは必要だと思います。いまのところ、各基幹病院、また研修協力病院等にほぼ任されている部分がありますし、基幹病院の中では、ある部分で非常に偏りが出ているところもあるかと思っています。
 いつも精神科のことで言いますが、例えば精神科の到達目標と言いながら、ある総合病院では、入院の症例を診るのに、1週間だけやらせているというところがあるわけです。そのようなところが、本当にきちんとした到達目標が達成できているのかというのは、非常に疑問があります。
 こういうのは、逆に変な誤解や偏見を招く元になりますし、そういう到達目標を達成されているのかどうか、本当にそれがきちんとした中で行われているのかを、何らかの形できちんと見ていただきたいと思います。これはほかの科でもそうだと思いますが、その辺のチェックをどうするのかを考えていただきたいと思います。
○部会長 到達目標の達成度というのは評価の根幹ですので、その辺の技法なども含めて検討していただくと。そのほかにいかがでしょうか。
○河野委員 先ほど申し上げたことと重複することがあるのですが、今後のプログラムはどのようなものが必要か。その中で、いまご指摘のあった精神医療というのは、老年化が進むに従って非常に重要になってくるであろと。それから在宅です。在宅医療をやる上では、公衆衛生的な知識は非常に必要になってくると思うのです。そういったものについて、初期研修から後期研修に入ってしまいますと、そういうことを学ぶ機会がほとんどなくなってきますので、具体的にどのようなことが項目として挙がっているかはまだ見ていないのですが、そのような、これから10年、20年の医療で、必要な項目をご検討いただけたらと思います。
○部会長 (1)の[1]に関しては、根幹のところですが、受入病院の指導、管理体制、研修プログラムなど、いくつか例示がありますが、WGに示して評価を進めていく方法に関して、何かご意見はございますか。研修医の処遇、そのほか宿舎などもいくつかあるのでしょうか。臨床研修の修了の状況。先ほど修了と到達は同じだというご意見もありましたが、未修了、中断の方もときどきおります。それも1年中断というのではなくて、数か月の中断の方も実際にいるようですが、そのようなものをどのように評価するか。定員及び研修医の分布。大体このような案を作ってみましたが、よろしいですか。
                 (特になし)
○部会長 そうしますと、(2)制度の導入による影響に関する評価ですが、これも非常に大事なところです。これについてはいかがでしょうか。
○西澤委員 まず、(2)の[2]ですが、地域医療に与えた影響として例が載っています。先ほどの桐野先生のご報告にもありましたように、地域医療に与えた影響というのは、臨床研修制度以外の要因がかなり多いということなので、その辺りをきちんとでるようにと。項目だけで見ると、何となく臨床研修制度だけの影響に見えますので、そこら辺はそうではない書き方をお願いしたいと思います。
 それから、(2)は全部評価項目なのですが、(3)に関しては、「関連する医学教育の実施状況の把握」となっています。ほかのは「評価」となっているのですが、ここだけ評価ではなくて、内容自体も評価とは違うのではないかと思いますので、この辺りはどのように解釈すればいいのでしょうか。
○医師臨床研修推進室長 私のほうで、(3)については、医学教育をこちらで直接評価するというのは、所管が違うと考えておりますので、ただ臨床研修制度を評価するに当たって、医学教育の実施状況をしっかりと把握をしていなければ、臨床研修制度の評価ができないという趣旨で、しっかりと医学教育の実施状況を把握をするという項目を、評価項目ということで立てたわけですが、それがおかしいということであれば、例えば「その他の項目」とか、そのような項目でもよろしいかと思いますが、趣旨としては、実施状況をしっかりと把握をして、臨床研修制度の評価に反映するということです。
○西澤委員 わかりました。私もこれを把握すること自体は賛成です。ただ、ほかが評価という表現なので、その辺りの整理さえきちんとしていただければ結構だと思います。
○部会長 よろしいですか。この「把握」という言葉は、非常に悩ましいところでして、この部会あるいはWGが評価までするのかということよりは、把握をして、関連するところにコメントするようなことはできるかとも思いますし、また把握をした結果を臨床研修制度にフィードバックして、臨床研修制度との連携をさらに上げていくことはできるということで、案では「把握」という言葉を使ったということです。
○医師臨床研修推進室長 もう1つ補足しますと、先ほど山下委員からご質問のあった、文科省のエリアと重なっているということですが、そういう趣旨で、文科省で評価をすることはあり得るかと思いますが、こちらでは卒前教育の実施状況をしっかりと把握した上で、臨床研修制度の評価につなげていくという趣旨で書いています。そういう意味で、文科省とはしっかりと連携しながら、評価を進めていきたいと思っています。
○冨永委員 「基本理念」ですが、これができた背景には、国民の日本の医療に対する要望とか、一部不十分だという評価があって、「一般的な診療において頻繁に関わる負傷または疾病に適切に対応できるよう、基本的な診療能力を身につける」、ということが盛り込まれたのだと思っています。
 したがいまして、いま西澤委員が言われましたように、資料2の(2)の[2]に関してですが、地域医療に携わる医師が少なくなったということは、いろいろな要因があって、臨床研修制度だけではないと思っています。その少なくなった人の中でも、本当に地域医療に携わっている、地域医療というのはいろいろな意味がありますが、都市部ではないところ、どちらかというと田舎で地域医療に携わっている方もかなりいらっしゃると思います。そのような地域の医療に対する、地域住民の評価も臨床研修制度が始まってどうなったのか、少し考慮に入れていただいたらと思います。
○山下委員 地域医療に関してですが、やることはほぼ同じになると思うのですが、地域医療に与えた影響というと、何とかは悪もので、何とかはよくてという話にどうしてもなってしまって、マニュファクトリアルに関係しているということで議論になって、それは実は例えば臨床研修制度を改革しようというときの足枷になりますので、地域医療に与えた影響のいちばん大事なことは、地域医療でネットワーク化をやろうと。厚生労働省も臨床研修だけではなくて、地域医療再生機関をやっていると。要するに、地域の医療のネットワーク化の中で、臨床研修をどのように活かしていくかという視点で、もう少し大きな視点で検討していただいたらいいのではないかと思います。
 それぞれの県で、中核になっている病院のやり方とかは全部違うわけで、それを1つの方法で、このようなものがいいと言われると、困ってしまうのです。ですから、地域医療のやり方。大学病院が悪者になりますが、我々は大学病院の生き残りのために言っているわけではなくて、地域医療は本当に疲弊していますから、それをやると。
 ただ、大事なことは、ある特定のスーパーマンが1人いたからいいというわけではなくて、先ほど河野先生がおっしゃいましたように、これがずっと未来永劫にわたって地域医療、特に高齢化してくると医療の内容は変わってきます。それにネットワークで対応していくというシステムを、ここから持っていかなければいけませんので、地域医療に対する影響というのは、実はやっていることは同じなのですが、文言的には、大学病院の派遣の機能をどうにかしましょうというと、大学病院は生き残りのためにこれをやらせているのだというような意味になりますので、その辺はちょっとお考えいただきたいと思います。
 もう1つは3番目のことで、把握していただくというのは評価の第1歩ですが、是非文科省と厚生労働省で、いろいろなシステムを共同して、何か案を出していただく。ただ把握するだけだと、教育というのは非常に大事なことなので、それが止まってしまいます。要するに国家試験の形を変えないと、いまCBT、臨床実習をやって、OSCEをやっているときに、非常に臨床能力は上がっているのですが、いわゆる国家試験をペーパーテストでやっているがために、いわばペーパーテストに応じた試験勉強をどうしてもやらざるを得ません。そうすると、臨床も実地能力がそこで後退します。また上がる。これは無駄です。
 ですから、そういう一連の流れの中で教育をしていくというシステムは、どうしても必要なわけです。それは国家試験は厚生労働省、医学の卒前のCBT、OSCEは文科省と言っていては、いつまで経っても溝が埋まらないので、せっかくこのようないいシステムを作られたのであれば、少なくともここの部分だけでもいいですから、文科省と十分なチャンネルを作って、提言していただければと思います。
○部会長 先ほどの国家試験との連携などに関しても、厚労省と文科省で、医事関係の課長が課長職を襷掛けにして実際に務めた、あるいはそれぞれの委員会に、厚労省の委員会には文科省の方がオブザーバーということで、連携が少しずつ進んではきていると思いますが、さらにそれを促進するというご意見だと思います。
○小川(彰)委員 いまのことに関連してです。ちょっと各論的になってしまうかもしれませんが、マッチングで、大学教育の6年一貫教育が非常にマイナスの面を受けていることがあるので、そこを(3)の関連する医学教育の把握の中に、例えばマッチングが学部教育に及ぼしている影響とか、そういうことも含めて入れていただければと思います。
 それから(2)制度の導入による影響に関する評価に、地域医療がありますが、先ほど1回議論になった大学院生についてです。基礎医学者の激減に関しては、実は基礎医学者あるいは大学院生というのは、平成12年までは増えていたのです。それが急に減ったのは、平成16年の影響がどうかということによりますが、いま実はいちばん大変なのは、これは厚生労働省の三師調査の中の「大学病院に勤務する医師」という中に、臨床系と基礎系があって、さらに「その他の医師」の中に、「大学病院に勤務する大学院生あるいはその他の基礎医学者」という範疇があります。それらを足さないと正確なものが出てこないのですが、それを足しても、基礎医学研究者はほとんど29歳以下ですから、フル・ファカルティで働いている人はいないと予測。平成20年の29歳以下の大学院生が全国で164名なので、80大学で割ったら、1大学2名です。
 これらの事から、日本の医療が世界一だと言われてきたにもかかわらず、あるいはOECDの一部の疾患で、世界一の医療を提供していると言われているにもかかわらず、基礎医学の沈滞が起これば、医学全体のレベルが下がるわけで、少なくとも10年前は20歳以下の大学院生は500名ぐらいはいましたので、もう圧倒的にいなくなっている。基礎医学者全体の減りではなくて、20歳以下の数が減っているわけです。それが急激に臨床研修制度と連動して減っている事実がありますから、これは制度の導入による影響に関する評価の中に、基礎医学あるいは大学院生もきっちりと評価していただかないとまずいと思います。
○部会長 大学院に関しては、先ほど小川(秀)委員からも指摘がありましたが、私も気がついてはいたのですが、いまのご指摘も伴ってですが、三師調査のほかにも、アンケートの3頁の17の項目ですが、もし臨床系大学院に進学するという、1つでは、例えば循環器内科の教授のところの大学院生に3年目からなるという方は、○の付け様が非常に難しくなってきます。でも、実際には臨床系大学院のもかなりあるということで、いまのような場合には、01か02になってしまうのかなということですので、その辺の把握も具体的にできるかなと。
 それから、基礎医学の場合にも、大学院に進学する人もおりますし、大学院ではなくて基礎医学を専攻する方もおります。ですから、そのようなことも含めて、いくつかその辺のところも細かく調べていただくということ、特に大学院という切り口からも、情報を把握していただくということでよろしいですか。
○河野委員 方向違いの話になって申し訳ないのですが、ただいまのご議論の中での基礎医学が疲弊してきているというのは、医療全体において大変な問題だと思います。これは国立大学に限ったことかもしれませんが、総人件費の改革で定員削減が行われています。それが、臨床のほうは経営しなくてはいけないものですから、どこの大学も臨床系の席は削っていないのです。どこの医学部も大体基礎系を削っているのです。ですから、ポジション自体がどんどんなくなっていって、基礎の医者の席がないというのは、どこの大学でも実情です。
 ですから、大学院を受けるも何も、医者のいる場所がない、席がすごく減少していることが実態としてあるので、そこを解決しない限りは、なかなか基礎系の改善にはならないです。席がないわけです。これはここで言ってもいかがかとは思いますが、是非厚生労働省からも、その辺のところを何かの折にはよろしくお願いします。
○山口委員 いまの話とは違うのですが、基礎医学者の話がこのような話で取り上げられるのであれば、臨床系の中でも外科系の医師が非常に減っている、という点も注目する必要があると思います。臨床科の中でも、片や3Kでないような領域は増えている。それについては、おそらく初期臨床研修だけの話ではないと思うのですが、初期臨床研修でいろいろ見たがために志望を変える人がいるのは当然で、是非臨床科の中の昔と違った変化、ある意味のアンバランスについてもご検討下さい。専門医制度の検討でも、専門医の研修に定員を設けるかというような検討もされています。臨床専門科の選択と初期臨床研修とはいろいろ広いつながりはあると思いますので、専攻領域の増減との関連についても、是非検討いただきたいと思います。
○部会長 いろいろとご意見をいただきました。すでにご意見がありましたが、この制度の導入による影響に関しては、制度の導入が主たる原因になった、あるいはきっかけになった、あるいはマルチファクトリアルの要因の中の1つになったと。いろいろなことがありますが、それも含めて総合的に実態を把握し、影響に関する評価をしていただく。そのような方向でよろしいですか。特に、基礎医学、大学院とも含めて、実態を把握していただくことにさせていただきます。
 最後に、先ほどすでに話がありましたが、実態把握の方法についても、ここに(1)から(4)までありますが、いかがでしょうか。
○三上委員 確認させていただきます。実態把握の中身は、WGのミッションと考えていいのですよね。
○部会長 はい。
○三上委員 参考資料1は事務局が作られたものでしょうけれども、基本的には実態把握はWGのミッションということですね。
○部会長 この(2)のアンケートというのは、参考資料1とは別のアンケートです。もちろん参考資料1のアンケートも、これに取り込んで検討するということです。
○医師臨床研修推進室長 このペーパー自体は研修部会でどのように評価を進めていくかというものですので、実態把握の方法をここで大体まとめていただければ、実際に調査を行うのは厚生労働省であったり、桐野先生の研究班であったり、評価のWGであったり、そのように実施主体はいろいろありますが、そういうものを集約して実態把握をして、最終的にここの研修部会で検討を行うと考えていただければと思います。
○部会長 このようないろいろな方法で調査すると。関係団体が実施する調査というのは、具体的にはどのようなことが考えられますか。
○医師臨床研修推進室長 いまのところは具体的なものはありませんが、いろいろな病院団体あるいは医師会、大学でも、それぞれされると思いますので、そういったものがあれば、実態把握の材料として使わせていただくと。
○部会長 全国医学部長病院長会議、あるいは日本医師会、いろいろなところがあるかと思います。大体そのような方法で、WGを開催して、この部会に報告していただくということです。
 WGのメンバーについては、先ほど山下先生からも具体的なご提言もありましたが、現在は有識者10名程度を考えているのですが、さらに山下先生のようなご意見を含めて、ほかにも、このようにしたほうが良いという具体的なご意見はございますか。部会では独立してというようなご意見もあったのですが、考え方としては、この部会がこのようなことで検討するということをWGに投げ掛けて、WGから報告を得るということですね。
○医師臨床研修推進室長 WGは、この研修部会の下に作るということではなくて、ここでご議論いただいたものを事務局で整理をして、別途WGをという形で作って、そこで評価をまとめていただいて、それをこういう研修部会でご報告をするという形になります。
○部会長 それとは別に、この研究事業の平成22年度の報告が上がってくるということですね。
○医師臨床研修推進室長 はい。平成22年度の研究の成果というのは、この研修部会に直接ご報告するというよりは、WGに報告をして、そこで揉んでいって、最終的に論点整理、実態把握を整理したような形で、研修部会にご報告して、制度のあり方についてご議論いただくことを考えています。
○部会長 平成22年度も報告のときに資料としていただくということですか。
○医師臨床研修推進室長 それは可能です。
○部会長 具体的に、平成23年度以降の特別研究事業については、現時点では白紙ですけれども。
○医師臨床研修推進室長 WGで、こういった調査が追加で必要だとか、いまご議論いただいたようなことを受けて、新たにやるということであれば、平成23年度もということはあり得ると思います。
○部会長 それが全体像だと思いますが、いかがですか。そのようなことで進めてよろしいでしょうか。スケジュールに関しても、先ほど申しましたように、平成26年にはできていないと、平成27年度に適用できないということです。
 それでは、大体ご意見をいただいたと思いますが、そのほかにご意見はございますか。全体のことでもいいですし、それぞれの項目のことでも結構ですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
                 (特になし)
○部会長 意見も出尽くしたように思いますので、評価の進め方については、基本的に資料2の案に沿い、また現在いただいたご意見を踏まえ、進めていきたいと思います。事務局では、いまいただいた委員の皆さんのご意見を踏まえて、評価を進めるということでお願いします。最後に事務局から何かございますか。
○医師臨床研修推進室長 例年どおり、臨床研修病院の指定の申請がきていまして、7月下旬に審査資料を先生方にお送りいたしますので、審査をよろしくお願いします。
○部会長 そのスケジュールは、この次の会議は。
○医師臨床研修推進室長 指定の審査の研修部会という形になろうかと思います。
○部会長 具体的に臨床研修病院の指定の審査をしていただくことになります。これで本日の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会を終了します。委員の先生方には、大変貴重なご意見をいただきました。ありがとうございました。また、桐野先生には参考人としてありがとうございました。これで終了します。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省医政局医事課
医師臨床研修推進室
            

代表: 03-5253-1111
(内線4123)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医道審議会(医師分科会医師臨床研修部会)> 医師分科会医師臨床研修部会議事録

ページの先頭へ戻る