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2010年7月7日 第2回医療裁判外紛争解決(ADR)機関連絡調整会議議事録

医政局総務課医療安全推進室

○日時

平成22年7月7日(水)


○場所

ホテル ルポール麹町 マーブル


○出席者

会議メンバー(五十音順)

今田健太郎 (広島弁護士会仲裁センター代表)
植木哲 (医事紛争研究会会長)
小野寺信一 (仙台弁護士会紛争解決支援センター代表)
北川和郎 (総合紛争解決センター)
児玉安司 (第二東京弁護士会代表)
小松満 (茨城県医療問題中立処理委員会代表)
小山信彌 (日本病院団体協議会代表)
佐々木孝子 (医療過誤を考える会代表)
鈴木利廣 (東京弁護士会代表)
田口光伸 (愛媛弁護士会代表)
徳田宣子 (福岡県弁護士会医療ADR代表)
中村芳彦 (法政大学大学院法務研究科教授)
西内岳 (第一東京弁護士会代表)
橋場弘之 (札幌弁護士会紛争解決センター運営委員会委員長)
前田津紀夫 (全国有床診療所連絡協議会代表)
増田卓司 (愛知県弁護士会紛争解決センター代表)
水田美由紀 (岡山仲裁センター代表)
宮脇正和 (医療過誤原告の会代表)
山田文 (京都大学大学院法学研究科教授)
山本和彦 (一橋大学大学院法学研究科教授)
和田仁孝 (早稲田大学大学院法務研究科教授)
渡部晃 (日本弁護士連合会代表)

オブザーバー

岡崎克彦 (最高裁判所事務総局民事局第二課長)

厚生労働省

岩渕豊 (医政局総務課長)
塚原太郎 (大臣官房総務課参事官(医療安全担当))
渡辺真俊 (医政局総務課医療安全推進室長)

○議題

1 医療裁判外紛争解決(ADR)機関の取組等の紹介及び意見交換
2 その他

○配布資料

資料1第1回連絡調整会議議事録
資料2-1札幌弁護士会法律相談センターの取組について(橋場弁護士提出資料)
資料2-2茨城県医療問題中立処理委員会の取組について(小松茨城県医師会副会長提出資料)
資料2-3広島弁護士会仲裁センターの取組について(今田弁護士提出資料)
参考資料医療ADR検証報告書(東京三弁護士会)

○議事

○渡辺医療安全推進室長
 定刻になりましたので、ただ今から第2回医療裁判外紛争解決機関連絡調整会議を開催開催させていただきます。若干、来られていらっしゃらない先生も、鈴木先生、いらっしゃいますけれども、ぼつぼつ始めさせていただきたいと思います。本日はご出席いただきましてありがとうございます。
 4月1日付で事務局のほうに変更がございましたのでご紹介させていただきたいと思いますが、私が1日にかわりました医療安全推進室長の渡辺と申します。お世話になります。よろしくお願いいたします。
 オブザーバーで参加させていただいています最高裁、岡崎課長です。

○岡崎課長(最高裁)
 最高裁民事局第二課長の岡崎でございます。この医療ADRのフォーラムは私どもとしても大変関心を持っておりまして、今後ともいろいろと勉強させていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○渡辺医療安全推進室長
 そうしましたら、以降の進行につきまして、山本座長、よろしくお願いいたします。

○山本座長
 本日はお忙しいところお集まりいただきありがとうございます。本日も、前回に引き続きまして、活発なご議論をいただけることと存じます。
 まず初めに、本日の資料につきまして事務局のほうから確認をお願いいたします。

○渡辺医療安全推進室長
 座ったまま失礼いたします。
 配布資料が全部で6種類ほどあります。ちょっと確認をさせていただきたいと思いますけれども、議事次第と資料1が第1回調整会議の議事録でございます。資料2-1が札幌弁護士会法律相談センターの取組についてというものでございます。資料2-2が茨城県医療問題中立処理委員会からのもの、資料2-3、広島弁護士会仲裁センターからのものでございます。資料3が総合紛争解決センターにおける医療ADRというものでございます。それと、参考資料といたしまして、東京三弁護士会からご提供のありました医療ADR検証報告書でございます。
 なお、検証報告書については当会議メンバーのみの配布となってございます。この資料は東京弁護士会等のホームページに掲載されておるということでございますので申し添えさせていただきます。
 以上でございます。

○山本座長
 ありがとうございました。
 資料は、皆さん、ありますでしょうか。特にないものはないでしょうか。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 前回の会議では、東京三弁護士会、愛知県弁護士会紛争解決センター及び千葉医療紛争相談センターからその取組状況についてご紹介をいただき、質疑応答及び意見交換を行っていただきました。今回も前回に引き続きまして各機関の取組状況をご紹介いただきたいと思います。
 今回は、札幌弁護士会法律相談センター、茨城県医療問題中立処理委員会及び広島弁護士会仲裁センターのやはり3カ所からその活動状況についてご紹介をいただき、その後、意見交換を行いたいと思いますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
 ご紹介をいただく前に、資料1について事務局のほうからご説明をお願いいたします。

○渡辺医療安全推進室長
 資料1につては、前回、第1回の議事録でございまして、既に委員の皆様方には内容をご確認いただきまして、厚生労働省のホームページに掲載しているものでございますが、何かございましたら、会議終了後、事務局までお申出いただければと思ってございます。
 よろしくお願いいたします。

○山本座長
 ありがとうございました。ご確認をいただければと思います。
 それでは、本論に入りたいと思います。
 資料の順番ということで、まず初めに札幌弁護士会法律相談センターの取組状況につきまして、橋場弁護士からお願いをいたします。
 よろしくお願いします。

○橋場委員
 札幌弁護士会の橋場でございます。今日、貴重な時間をいただきましてありがとうございます。
 私は弁護士になって18年目なんですが、1年目から医療過誤の患者側の代理人として活動してきたということと、それから札幌にこのADRを立ち上げるころ、平成14年ごろだったと思うんですが、その準備の期間、日弁連のこのADR委員会に通わせていただいているということで、医療とADRの両方を見てきている。今後もこの仕事はライフワークにしていきたいと思って考えております。
 今回、資料2-1というのが配られているんですが、これは実は今日いらっしゃる早稲田大学の和田先生と一緒に、昨年の秋に札幌の厚労省主催で行われました医療安全のシンポジウム、それにパネリストとして参加させていただいたときに、札幌近郊、北海道ということで、自分の身の回りの地域における医療事故の数字というものを自分なりにいろいろインターネット等調べまして、どういう状況にあるのかというものを把握したというところです。それと併せて、札幌における医療事故のADRがありますので、その実態について若干ご報告させていただきたいと思います。
 では、座って失礼いたします。
 まず、札幌には、1枚目のグラフですけれども、1ページ目、医療事故問題研究会という、これは弁護士会とは関わりがあるものではなくて、医療問題に興味を持つ弁護士約50人弱が集まりまして8つの弁護団を組んでおります。ここに医療に関して相談をしたいんだという電話が入れば、事務局から医療事故の相談カードというのを無料で送りまして、それに記載していただいて返していただく。それについて、返ってきたものについては、その弁護団の主任の弁護士から電話をして、1回目は無料で相談を受け付ける。やはり医療事件ですから大体1時間ぐらいかけてじっくりお話を伺うという、こういう仕組みになっております。
 このほかにも各弁護士事務所で医療事故の相談を受け付けることがあるんですが、その実数はなかなかつかめません。この医療事故問題研究会だけで、平成18年度から22年度の6月15日までの速報値を記載したのがそこのグラフでございます。他の地方はどのような状況にあるのかよく分かりませんが、減ってきているというのが実態でございます。
 平成18年度に230件ぐらいでしょうか、そのぐらいの相談があったものが、昨年度、平成21年度では150件少しと相談数が激減しているという状況です。
 それから、もう一つ、棒グラフの右側にあるのが現実に弁護士が相談をした件数、左側のこの数字が多いほうが何らかのアクセスがあった、調査カードを送った件数ですので、実際に弁護士の相談があった件数というのは平成18年度で130件程度、昨年度は75件程度といった、こういった感じです。これは無料相談で、市のコールセンター等にも広く周知されておりますので、まず何かあればここに電話をいただくという、こういうルートができているんですが、医療事故の相談件数が減っているというところです。
 これはどう考えたらいいのかということは皆さんに教えていただきたいところでもあります。
 次、めくっていただきますと、法律相談センターというのを弁護士会が運営しておりまして、特定分野の専門の弁護士を紹介してほしいと、こういう依頼があったときにはその弁護士を紹介するようにしております。ここは相談は無料ではなくて、30分、5,250円というところで、弁護士事務所に行っていただいて医療の相談をしていただく。これは患者側に限っております。医療機関側からの相談ではありません。推移としてはこういう動きでありまして、特にこれは激減とか、そういうことはありませんが、平成21年度は若干増えているというところです。ただ、この弁護士が受任する件数というのはそれほど多くはありません。平成17年度には12件ぐらいになっていますが、昨年度は9件程度というところでございます。
 その法律相談センターと同じフロアに医療ADRのADRセンターがつくられております。これは平成17年度に立ち上がりまして、札幌の場合はそれほど活発な動きというものではありません。お隣の仙台などと比べると、平成17年度から今日まで札幌で受理した件数は全部で139件です。これは仙台の1年分ぐらいですよね。それから、名古屋の大体1年分の3分の1程度というところです。これに応諾してきているのが、約7割の相手方がADRの土俵に乗ってきていただいている。7割です。それから、応諾していただいた中で約55%が和解に至っているというところでございます。
 医療ADRが専門的にできたのが昨年の6月なんですが、それ以前にも通常のADRセンターで医療事件を受理しております。現在まで10件受理しておりまして、そのうち今継続している、まだ動いている事件が1件あるんです。ですから、終わった事件は9件で、和解に至った件数は4件です。ただし、取り下げで終わった1件がどうもADRの手続き外で和解をされたようで、手数料を払いたくなかったのか分かりませんけれども、実際は9件中5件が和解に至っているというところです。
 それから、病院側が紛争解決センターでの解決について応諾してくる、いわゆる土俵に乗ってくるかどうかという点につきましては、今までの10件中9件が手続に乗ってきていただいております。1件だけがこのセンターでは解決できませんということだったんですが、詳細な30ページぐらいの経過報告書ですか、そういった答弁書を出してきていただいて、こういう理由でここでは解決できないんだということでしたので、ほぼ100%の応諾率というか、そういったところです。これは何が原因しているかというと、この2ページ目の下に「札幌医師会通信による弁護士会医療ADRの告知」とありますが、医師会に対してADRを立ち上げたときにいろいろ資料を持って説明に行ったわけですけれども、札幌市のこれは医師会ですけれども、ADRセンター、札幌弁護士会から何か書留郵便が来たときには必ず医師会に連絡をしてくださいということで、これは医師会会報ですが、こういった告知がなされている。
 それから、ここの顧問弁護士、札幌市医師会を管轄する顧問弁護士が元ADR委員会の委員だったということもあって、積極的に応諾していただいて、和解できるものは和解し、そうでないものは和解はできませんというような形で解決するんですが、いずれにしても、参加しよう、そこに行かないということではないということですね。門前払いということは札幌の場合はございません。
 それから、運営なんですが、各地方弁護士会の運営はなかなか厳しいものがありまして、札幌は申立手数料として1万500円をいただいて、いわゆる期日手数料といって、途中で1回ごとに幾ら幾らという、そういうものはいただいておりません。解決した場合には、通常の弁護士会のADRと同じぐらい、これが高いか低いかは議論があるところでしょうけれども、300万円以下であれば8%の成立手数料というのを双方折半でいただいている。300万円から増えていけば逓減していくという関係にありますが、そのような費用をいただいて運営しているということです。
 まだ1件しか医療の関係では成立していませんが、一般事件でいろいろ計算してみたものがありまして、この139件今まで受けていて、平成17年の夏からですけれども、この調停事業の収支は25万5,000円の赤字です。それで、1件に割りますと1件当たり1,837円弁護士会が持ち出しているといった収支になっております。
 ただ、これには賃料ですとか人件費のことは考えておりませんので、それ以外の収支ということで、収支とんとんというのが札幌の実態であります。このADRはこういう財政的にどう切り盛りするかというのも一つのテーマでありまして、ボランティアで終わっていいのかどうかということも含めまして、札幌は何とかしのいでいるということです。
 ただ、弁護士の調停人に払う、成立した場合の報酬というんですか、ご苦労さんというお金は3万円にとどめている、他の会よりも極めて低いというところでこういう数字を保っているというのが現状です。
 それから、札幌地方裁判所の、じゃ医療訴訟事件はどうなっているのかと、ちょっとその周辺に目を配ってみますと、資料の3ページという右下に書いてあるところの上のグラフでございます。
 北海道の場合で、札幌地方裁判所の管轄では、平成15年の6月に医療集中部というのができまして、ほとんどの札幌地方裁判所管内の事件は1つの部で医療事件が扱われます。そこが受理した件数、いわゆる新しく訴えが提起された件数が白いほうの棒グラフで、何らかの形で解決に至ったのが黒いほうの棒グラフです。
 これまたどんどん減ってきているというのが現状です。平成19年の51件だと思いますが、それをピークに平成20年はがくんと減りまして、去年は31件の訴訟提起ということでございます。22年もほぼ同じようなペースで進んでいるというところです。後で全国の数字もちょっと紹介しますが、こういうところでございます。
 それから、その下が、これは参考までですけれども、全国の医療事件の終結態様別の件数でございます。認容判決というのがどんどん減っているというのがこの傾向であります。ついに、つい最近、最高裁の平成21年度の数字が出たんですが、また落ち込んで認容判決の率は25.3%というのが平成21年度の数字でございます。
 その次のページを見てもらいますと、右下に4ページというところですね。
 全国の医療訴訟事件がどうなっているのかというところです。平成16年が訴え提起の数が一番多かった年で、これがピークです。平成16年の数字がたしか1,000件を超えていますが、1,110というのをピークに次第に減ってきております。平成17年が999件、平成18年が913、平成19年、若干増えて944、平成20年が877という数字でありました。
 つい最近公表された最高裁のホームページに載っている平成21年の訴え提起の総数が733件とピークのときよりも約3分の1減少しているというのが、医療訴訟、訴えですけれども、この実態でございます。この原因は一体どこにあるのかというのがなかなか分からないところで、1つは、医療安全の取組が充実して、かなり病院の中、医院の中で吸収されている率が高いのかどうかという論点もありますし、それから医療の顧問の弁護士が頑張って、訴訟外の示談をきちんとやっているのかという、それが増えたのかどうか、もう一つは調べられなかったのが、今日は最高裁の岡崎さんがいらっしゃっていますが、簡易裁判所の調停の使われる率が増えた。なかなかそうとは言えないのかもしれませんが、なかなかこれが数字がつかめないところで、特に弁護士会のADRがごおんと急に増えて解決しているというわけではないので、一体なぜこう減っているのかというところは、私もまだ原因がしっかりつかめていないところです。
 それから、医療訴訟事件の平均審理期間は確実に減少してきております。平成20年で2年ちょっとですね、24カ月ちょっとというところですので、ことしの新しい報告でもここはそれほど変わっておりません。2年と少し、正確なところでは25.2カ月ですね。訴え提起から判決や和解やいろんな取り下げとかあるんでしょうけれども、全部ならすと約2年とちょっとかかっている。平成5年の40カ月を超えているものからすれば、物すごく早くなっているというところが特徴だと思います。
 ちなみに、札幌地裁で言いますと、鑑定人を選任する時間を短くしようということで、弁護士会と大学病院側の協力がありまして、昔は6カ月も7カ月もかかったケースもあるんですけれども、今は鑑定人の選任については確実に一月以内で鑑定人が決まる。推薦を大学病院に求めるんですが、これは大体2週間ぐらいで複数の鑑定人の候補者が挙がってくると、そういうスピードになっております。
 北海道の特徴なんですが、医療ADRに医師の調停人を入れるかどうかというこの論点とも関わるんですが、北海道には3つしか医学部を持つ大学がありません。北海道大学と札幌医科大学と旭川に医科大学の3つだけです。ですから、道内で医療事故が起これば、ほぼ大体、情報として伝わってしまいますので、道内の事件を北海道内の医師が鑑定するとか、調停に入ってきていただいて専門委員として関わっていただくということは非常に医師を危険な立場に置いてしまうと、立ち位置を非常に危ないものにしてしまうという危険性がありますので、弁護士会側としては、裁判所との協議会があるんですけれども、鑑定人を推薦していただくときに、患者側なり病院側の希望があれば、北海道内ではなくて道外の医師を鑑定人に推薦してほしいということで、今のところ運用としてはほぼ、特に診療して鑑定書を書かなきゃいけないとか、そういう事案でない限り、北海道とは関わりのない医師を鑑定人に選んでいるというのが訴訟の実態でございます。
 札幌の弁護士会が主催する医療ADRでは今のような状況がありますので、今のところ医師の専門委員というのは入れていない、準備していないというのが札幌の現状でございます。
 それから、最後におまけみたいなあれですが、5ページ目です。これは医療安全のところでテーマになっていた医療の萎縮に関わるんではないかということで、これは最後の数字は私独自の調査で調べたものですが、平成11年に横浜市大の患者取り違い事件がありまして、平成16年に福島大野病院の有名な産科の事件がありました。その辺から警察への届出総数が激増しております。これについては、民事事件の訴えの提起の数が減ってきているのと比較して、さして減ってはいないのが現状だというところでございます。平成20年の数字につきましては、警視庁に、私、手紙を書きましたら、こういう数字ですということを教えていただきましたので、これは警視庁の内部では公開できる数字ということで、平成21年についても調べてみようと思っています。
 ただ、検察庁に送致された件数の中で、どの件数が不起訴になり、どれが罰金になり、どれが公判請求になったのかというところは、いろいろ手をつくしたんですけれども、これは法務省のほうでも公表している数字はないということで、私の力ではここは調べることができませんでした。一時、最高裁の委員会の中で元検察官の方の弁護士の方が資料を出しておられまして、ある程度の概数については報告されているんですが、正確な数字というのはまだここをつかめておりません。というのが札幌の現状でございます。
 流れとしては、医療自体の相談件数も減り、裁判になる件数も減っている。医療ADRはちょっと低調ですが、申し立てがあれば、病院側はほぼ全件出てきていただいているというのが札幌の現状点でございます。
 以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。
 それでは、ご質問等もあろうかと思いますけれども、質疑につきましては3つのご報告が終わった後にまとめてお願いできればと存じます。
 引き続きまして、茨城県医療問題中立処理委員会の取組状況につきまして小松委員のほうからお願いいたします。

○小松委員 小松でございます。茨城県医療問題中立処理委員会についてご説明いたしたいと思います。
 まず、設立に至った経過からお話ししたいと思います。
 平成14年に日本医師会で未来ビジョン委員会というのができていたんですね。これは、50歳以下の若い医師による委員会でありまして、日本医師会をどのような方向に持っていくかというようなことを検討する委員会でした。私たちの茨城県医師会の中の役員の一人がこの未来ビジョン委員会に入っておりまして、そこで彼が医療問題について考えたことがきっかけでございます。そこで、いわゆる医療問題というのが、医事紛争、それが患者と医師との間にコミュニケーションのないことが主な原因であって、そこの中には患者さんのサイドの誤解あるいは医師側の説明不足、そのようなものが大きな原因となって、話し合うことによって解決できる問題も数あるのではないかということが提案されました。それで、このような中立的に相談できる委員会をつくれば何とか医事紛争というものが少なくなるのではないかということを日本医師会に提案したんですね。
 しかし、そのことは日本医師会からは取り上げられなかったんですね。茨城県医師会に帰ってきて、彼はまた同じことを、それでは茨城県だけでも独自でもやってみようじゃないかということを提案したんですけれども、茨城県でも、それは医事紛争委員会というのがあるんだから、それでいいんじゃないかというふうになってしまったんですね。そして、平成16年に茨城県の医師会長が、今回、日本医師会長になった原中先生にかわりました。そこで、再度提案して、これは絶対やらなきゃ駄目だということを言いまして、原中会長が、それではやってみようじゃないかということで実現するに至ったという経過がございます。
 平成17年にまず準備委員会を立ち上げたんですね。これは弁護士さんと、それから地方紙の社長、それから大学の教授と一般市民代表と医師会の委員として私たち3人入ったんですけれども、それで準備委員会を立ち上げて、このようなものをつくりたい、だから協力をしていただけないかということを提案したわけです。6回準備委員会をやりましたけれども、最初の3回は全く相手にされませんでしたね。医師会が医師の不利になるようなことを、患者の味方になるようなことはやるはずがないという意見が主でした。全く信用されていないという状況で、これはもう大変だ、いわゆる地方紙の社長、弁護士、大学教授、その方たちに、医療機関が患者さんのサイドに立った組織をつくって何かをやろうということは考えられないというふうに見られていたということを非常に衝撃を受けました。しかし、そのときに私たちの役員は、この状態、現在の医事紛争というのは、そういうことを、中立的な委員会をつくらなければ解決できないんだということを説明していってやっと納得していただいて、それではやってみようかということになってできたわけなんです。
 それで、今度は医師会を説得するのが大変でしたね。今度は医師会のほうも、弁護士が入ってきて、自分たちに不利になる組織になっちゃうんじゃないかというようなことを言う方々が多かったです。けれども、これも、これは決して医療機関に不利になる問題ではなくて、かえって1人で医事紛争に対して患者さん側と対応して悩むよりは、第三者を交えてやったほうがはるかにストレスが少ないという説明をしまして納得させました。それで、平成18年3月18日に理事会で通りまして設立に至ったということになっております。
 それで、実際に動き出したのは6月中旬に動き出したわけなんですけれども、委員会の目的というのは、この資料の1ページ目、患者側と医療機関側が第三者を交えて中立の立場で問題処理への話合いができるということを目指しております。そして、一番問題になったのは費用をどうするかということだったんですね。私たちは、医師会でお金を出したのでは、これが中立と言えるかどうかということを一番問題にしました。
 ところが、この費用を出すところがどこもないわけですよね。こういう会をつくりましたからNPOみたいにして寄附してくださいといきなり言っても、そんなもの、寄附する人は恐らくいないと思うんですね。それで、どうしたらいいかということを話合いましたところ、弁護士先生、それから他の委員の方々が、それは私たちが中立的であるという実績を上げれば、お金がどこから出ていても納得させることができるのではないかというようなことを主張されました。そして、それであれば私たちが医師会で費用を出してやってみましょうということになって始まりました。
 だから、現在は費用も医師会で出しますし、この委員会、あっせん・調停会議といいますけれども、それをやるのも医師会館の中でやっております。それで、現在は費用は茨城県医師会として年間400万円を予算に組んでおります。それで、申立者及び費用ですけれども、これは、患者側、医療側どちらからでも申し立てることは可能ですけれども、申し立て費用は一切無料にしております。これは、だれでも申し立てることが可能であるということを求めているからです。時々、費用を取ったほうがいいのではないかという意見もあるんですけれども、結論的に言うと、弁護士会、それからその他の委員の先生方から、これはただでやるべきだ、取るものではないというようなことを言われて今に至っています。
 同じように成功報酬をどうするかという問題も、これは私たちも提案いたしました。時間を割いてもらっているわけですから、成功報酬をどうするか、これも弁護士会から不要ということを言われました。だから、この委員会は茨城県の弁護士会の先生方の本当に犠牲的な協力によって成り立っていると言っても過言ではないと思っております。
 次ですけれども、5番の委員会の構成ですけれども、これは一応15名以内としております。それで、弁護士、学識経験者、これは大学教授とか新聞社の社長とか、あとは市民代表、それから医師ということで現在は10名ですけれども、今度13名に増やす予定にしております。それは、この委員も交代しなきゃいけないので、いろいろな事情でやめなきゃならない人もいるので、メンバー交代のために経験させておいたほうがいいだろうということで増やすようにいたしました。
 それから、次の6番の申し立て・会議についての概要ですけれども、まず申し立ての患者サイド、医療機関、この両方から、どちらからでも結構なんですけれども、県医師会のほうに電話なり、あるいは直接来るなりして、こういう事案で相談したいということで参ります。それを医師会の担当職員が聞きまして、中立委員会とはどういうものかということを説明しまして申し立ての申込書を送ってもらいます。そして、それを委員長は弁護士の先生がやっていますので、委員長にこういう案件が来ていますけれども、受理しますかというようなことを言いまして、それで調停会議を発足させるというシステムになっています。
 あっせん・調停会議、これが、患者側、医療機関側、両方集まってやる会議なんですけれども、この調停会議というものをやっております。それは、調停委員は3名の委員から成り立ちます。弁護士1人ですね。それに市民代表と学識経験者のうちから1人、医師の委員が1人と3人をセットにして行います。弁護士が調停委員長になるケースが多いです。開催場所は先ほど言ったように医師会館です。患者、医療機関両者が一緒の場所で待機するということは避け、両方別々の部屋に待機してもらい会議の場へ誘導し始めます。大体、会議の開始時間は夜になります。6時半頃からになることが多いかと思います。
 次のページをお願いします。
 会議への出席者ですね。原則として、これは申立人、本人の出席をお願いしていますけども、お年を召されているとか、あるいは体調が不十分であるとか、場合によっては亡くなってしまった方もおるわけですから、そういうときは代理人の出席をお願いしています。それから、申し立てられた主に医療機関ですけど、医療機関側も一番いいのは担当した医師がよろしいわけですけれども、責任者である院長あるいは上司、部長とか、そういう人に来てもらっている。まれに弁護士が出てくる場合もございます。これは弁護士だけが出てくることはありません。一緒に必ず医療の実際を説明できる方々に来てもらっているということが事実ですね。
 次に、あっせん調停会議の開催ですけれども、あっせん調停会議というのはどういうところか。要するに、最初に始まったとき、裁判よりも時間が短くて相手の補償とか賠償額とか、そういうことを決めてくれるというようなうわさが立ちまして、そういうことを目指してきていたということもあったんですけども、そのようなところではない、あくまでも基本的には患者と医者との間の行き違いをお互いに理解し合う場であるよということを説明して始まります。だから、医療機関に責任がある、責任がないということを判定する場所では決してないということを説明して話合いに応じてもらっています。それで、医療機関側には、自分たちの非がある場合は素直に謝罪してほしいというようなことを言って、そのようにやっています。
 それで、会議は、まず最初に一般的には申立者から意見を聞いて、そして次に申し立てた相手側の意見を聞いて、双方の意見を少しずつすり合わせていくというようなことをしています。それで、うまくお互いに歩み寄ってきたと思えれば、直接両方を一緒に呼んで、一緒の場で話し合って解決に持っていくというような方法をとっております。
 大体、最初に始まったときの1年目は会議のやり方もうまくなくて、1年以上、1年半ぐらいかかってしまったものもあるんですけれども、最近は大体3回まで、半年以内には解決しましょうということを申し合わせてやっております。だから、1回目で余りにも双方の意見の食い違いがあったときは、これはもう調停できない、終わりにしましょうということになることもあります。
 大体、会議はやはり2時間です。それで、合意に至った場合は和解契約書をその場で作成してもらいます。これは、最初和解したものを和解しましたといって、後で和解書をつくってサインしてもらおうと思ったら、帰ってから考え方が変わっちゃったというようなことがあって、ちょっとこれはまずい、その場でやっちゃったほうがいいということになりまして、その場で和解させちゃう、署名してもらうというようなふうにしております。
 委員会のこれからの問題としては、やっぱり運営が医師会でこのままやっていていいのかなというのがいつまでたっても疑問は残ります。
 結果は次のところを見てほしいんですけれども、今まで取扱った件数です。これは申し立て件数ですね。平成18年度、最初の年で14件ございました。19年が8件、20年が14件、平成21年度13件と大体10件をちょっと超えたぐらいが行われています。合意件数、平成18年度2件、平成19年度1件と少ないんですけれども、これは平成18年、19年、特に18年度はそれまで要するに長い間紛争状態にあった事例が多かったんですね。こういうものができたからここに行ってみましょうということで出てきたんですけど、多くはもうこじれてしまっていて、結局、要求するものがやっぱり基本的には合意とか何かの問題、損害賠償にどうしてもいってしまったということがあって合意ができなかったという部分もございます。
 そして、その後、19年度からは一応もうちょっときちんと分かりやすくしましょう、ここでできる範囲のことを説明しましょうということになって8件と減ったのではないかなと思っています。20年、21年度は合意件数が6件、8件と増えてきていますね。
 これは早期に来ることが、紛争が始まって近い例が多いんですね。だから、時間がたつに従ってこれはこじれてしまってなかなか解決にいかない。問題が起こったときにはできるだけ早期に患者さん側と話し合う、自分のところの説明をよくするということが、昔から言われているように基本的に医療機関側の努力する義務があるのではないのかなと思っております。
 それで、結果として解決しなかった事例も、今までは毎日のように医療機関に苦情を言いに来ていた人たちが来なくなった。1回、2回で、あとはそれでおさまったというようなことも聞いております。結果的に、これは私たちがやって、医療機関にも大変メリットがあった、患者さん側にもあるんじゃないのかなというような感じは受けております。
 申し立て件数の中で相手方が応諾せず会議を開けなかった例なんですけど、これは3件あります。1つ目は精神病院の問題でありまして、やはり何かそういうメンタルな面でちょっと受けても同じじゃないかなという医療機関側の考え方で受けられないということ、これは専門家同士の話し合いまたは裁判に行った方がいいというようなことで受けなかった例です。2件目は相手方が当時勤務医であったため使用者を通すべきと判断したもの。3つ目は医療機関において既に問題解決一歩前まで来ており、このまま自力で解決をはかりたいとの理由でした。
 医療機関側に聞いているんですけれども、これで医療機関側というのは、このあっせん調停会議に出てよかったことは、医師がその中に入っていることで非常に安心感があるということでございました。結局、弁護士だけという考えではやはり医療機関側の抵抗というのがあるのかなという感じを受けます。医療問題に関して、本当に現在の医療状況がどうなっているかということを医師が説明することができますから、それで安心感があるということを言っていることが多いですね。
 この三者でやるわけですけれども、医師会からは3人出ているわけですけれども、医師は聞かれたときだけ発言するようにしています。医療問題、この状況に対して実際の医療はどうなっているのか、これで正しいのかどうかということを聞かれたときだけ発言する、主にそういうことにしています。こっちが決して出しゃばって自分のほうから発言するようなことはしないようにしております。
 解決金ですけれども、これは解決は額としては非常に少ない額になっています。それは、大きな問題は、結局先ほどの札幌の問題で、ここに「医事紛争処理委員会からのお知らせ」というところに「医師賠償責任保険の適用にならないことがあります」と書いてありますね。これは前回のときも、私、質問したことなんですけど、結局こっちだけで勝手に額を決められないんですよね、賠償保険で。だから、高額になった場合は医療機関では医師賠償責任保険から払われないと、結局、約束が反故になる可能性がありますから、余り高いものはちょっとできない。それで、そういう高かった場合には、医事紛争委員会という別な委員会がありますから、そちらで有責か無責か決めて、それで大体の額を決めてもらってから中立委員会にもう一回戻すというようなやり方をしております。解決のお金というのは、金銭なしでも3件ありますけど、やはり幾ばくかの10万円とか20万円、そういう解決金というか見舞金みたいなことは出てくるのかなというようなことでやっております。
 4番ですね、あっせん調停会議回数ですけど、1回のみが12件、これは第1回目の会議で合意できたもの。まとまらないということで終わりということにしちゃったものですね。2回が19件、3回7件、4回3件、5回開催が2件というような状況です。
 次のページですけれども、終了までの期間ですね。2年以上が1件という問題、1年半以内が2件というようなことですけど、大体今は半年以内に終わろうと努力しております。ただ、これは半年になっても、もっとやれば解決しそうだというときはもう一回延ばします、それは。その辺は柔軟性を持たせてやっております。
 大体そんなところです。
 今日、聞いたところでは平成21年度分で持ち越されていた案件が機能の調停会議で1件合意に至ったと聞いております。21年度の案件は13件のうち9件合意したということで、今のところまあまあうまくいっているかなと思っております。
 以上でございます。

○山本座長
 ありがとうございます。大変興味深いご報告をいただいたかと思いますが、やはり質疑につきましては後でまとめてお願いできればと思います。
 それでは、最後に広島弁護士会仲裁センターの取組状況につきまして今田弁護士からお願いいたします。

○今田委員
 広島で医療ADRの責任者をやっております今田健太郎と申します。着席して報告させていただきます。
 皆様のお手元の資料の2-3をご覧いただきたいと思います。
 広島では、ことしの1月より医療ADRのほうをスタートさせまして、現在3件の申し立てがあります。広島では2カ月に1回程度、仲裁人、それから仲裁センターの委員会の委員などが個別具体的な医療ADRの事例検討会議というのを行っておりまして、ノウハウの蓄積とか、それから問題点の共有などを図っているところであります。
 広島では、医療ADRをなるべく成功させるという趣旨から、丁寧な運用でスタートしたいということで、現在は医療側から1名、患者側から1名、合計2名の仲裁人で回しているところであります。
 申し立て状況でありますけれども、第1号事件、第2号事件は患者側から、第3号事件は病院側からということになっておりますけれども、3件とも今のところ応諾をしていただいております。
 広島では、医療仲裁センターというものがどういったものなのか、そしてどういうメリットがあるのかというのを記載した書面を申し立て書と一緒に送るようにしておりまして、その内容をいろいろと工夫をして書いて、なるべく応諾していただくような形で運用しております。
 第1号事件について申し上げます。
 資料では、ただ今進行中というふうになっておりますけど、第1号事件は残念ながら4回目で取り下げとなってしまいました。第1号事件は、事案の趣旨は、交通事故で入院したけれども、包帯を強く巻かれてしまって後遺症が残ったという訴えであります。こちらは、一度民事調停のほうで申し立てがありましたけれども、病院側のほうが民事調停の場では1円も出さないということで不成立となった事案であります。本件につきましては4回ほど審理を重ねました。そして、病院側も数十万円までの解決金を支払うというところまで歩み寄りを見せまして、和解条項まで実は作成されたところでありました。しかしながら、第4回、成立予定日に医師本人が出席しなかったということで、感情がこじれてしまって不成立になってしまいました。
 先ほど小松先生のご指摘もありましたけれども、3回目で成立していればうまくいっていたのかなとは思いますけれども、この方、申立人の方は耳が不自由な方でして、常に筆談でやっておりました。ですので、大変時間を要したということと、医師が出席できないことの理由の説明等についても、手話通訳者などが同行していればまた言葉の行き違いなどが防げたのではないかなというように事例検討会の場では課題として残ったところであります。
 それから、第2号事件につきましては現在第3回の期日が入っているところです。
 こちらは、病院側も日弁連の医療ADRの監事の先生が代理人についておりまして、積極的に応諾していただいておるところです。現在、争点を整理中です。
 この第2号事件の問題点は申し立て適格でありまして、実際に治療を受けられた方はもう輸血の措置などによって亡くなっておられます。ということで、そのうちの相続人の一人が申し立てをされているところでありますけれども、結局、可分債権ということで法定相続分だけの請求ということになってしまいますので、病院側としては、そのうちの1人の相続人との間で仮に和解ができたとしても、第2次的な紛争が発生するのではないかといった危惧を持たれているところではあるようです。
 それから、代理人という方を連れてこられるんですけれども、この代理人というのも、弁護士以外の代理人をどの範囲まで認めるのかということについては広島弁護士会でも確立されたルールがないところでありまして、今後ちょっと検討していかなければならないところかなというふうに考えております。
 それから、第3号事件は病院側からの申し立てでありまして、ビタミンK欠乏症ということで、高次脳機能障害の障害が残っておられます。医師会内部においても、これは高次脳機能障害で3級の認定が出ておりまして、一定額までは保険会社より支出されるけれども、それを超える部分については自己負担となる。ただし、医療機関側としては、過失の部分で言えば、厳密に言えば争いはあるんだけれども、公開の法廷でさんざんやり合うよりは、1億円にどれだけ上積みするかということで、双方納得の上で早期解決を図りたいという意向が強いという事例でございます。こちらについても、現在、争点整理中でありまして、次回、第2回目の期日が予定されておる。
 それから、広島弁護士会では、私のほうが5月27日に地域の中核病院でこの医療ADRについての講演会を行いました。医師、看護師が100名程度出席していただいて、医療ADRというものがどういったものなのかというのをいろいろと熱心に聞いていただきました。概ね感触としては好感触で、こういった紛争に仮に巻き込まれた場合には積極的に利用を考えたいというような声がある一方、お医者さんのほうから、ここで話した内容が、将来、刑事事件の資料に使われるのではないかとか、あるいは民事訴訟において何か資料として出されるのではないかといったような懸念を持たれているようなお医者さんもいらっしゃいました。あるいは、仲裁人が必ず金額を出されるのか、その金額に事実上拘束されることになるのではないかといったようないろいろな疑問を持たれておるようで、この辺は弁護士会としてもきちんと説明、それから説明の工夫をして、医療ADRにより応じていただけるようなPRをしていかなければいけないかなというふうに思っております。
 最後に、今後の課題でありますけれども、広島弁護士会は、現在医療側が2名、それから患者側が4名、仲裁人として確保しておりまして、実際の仲裁の場では色分けはしておりませんけれども、合計6名というのでは余りにも仲裁人の負担が大きいということで、必ずしも医療経験がない先生であっても仲裁人として入っていただくことで一連の仲裁を進めることができないかどうかということをADRの先進会である隣の岡山県などを参考にしながら今後進めていきたいというふうに思っております。
 それから、広島では医師会との連携というのはほぼ皆無でして、いろいろ努力はしておるんですけれども、今後、医師会さんとの連携も深めていかなければいけないかなというのが現時点での大きな課題になっております。
 以上です。

○山本座長
 ありがとうございました。
 それでは、本日予定しておりました3つの機関からのご発表が全て終わりましたので、ただ今のご説明あるいは資料に関する質問も含めまして、委員の皆様から幅広くご発言をちょうだいできればと思います。
 ご質問、ご意見のある方は挙手をお願いいたします。
 どうぞ、児玉先生。

○児玉委員
 第二東京弁護士会の児玉でございます。いろいろな地域の活動の多様性を聞かせていただきまして大変勉強になりました。
 ADRというものの本質は人と人の心の間に橋をかけるような仕事でございますので、そういう関係づけと連携ということに関しまして感想を2点申し上げます。
 1点目は保険会社との関係ということでございますけれども、東京三会、いずれもADRで金額の提示や有責・無責判断につきまして、応諾をしていただいた上で話合いの過程で、医師会や、あるいは保険会社のほうでご判断といいますか、ご意見、ご見解をちょうだいして、それを踏まえて納得はしていただきながら、そこにも一つきちんとした連携の橋がかかって解決事例を積み重ねているところでございまして、この辺は、基本的に保険というものの性質上、トップダウンでADRそのものについて直ちにこういう対応をせよということは多分難しく、一例一例の事実を見ながら是々非々でそのご判断をしていただくもののように思いますが、いずれにしてもその問題についてはADRがこうやって認知されていくにつれ、連携が強化されていき、容易に越えられる溝になっていくのではなかろうかというような印象を持っております。
 2つ目は、小松先生のご報告の中で感じたことでございますけれども、やはりこのADRというのは患者さんと医療者側の対話であると同時に、医と法の対話という側面がございまして、また医療側の先生というかお医者様を入れてはおられるが、積極的に発言はしないで、むしろ学識経験者や弁護士が入って紛争解決を促進しながら、そして意見を求められたときに医師が専門家として発言をするということで、そういう意味では弁護士会で各地で行われておりますモデルの中でADRの和解あっせんのあっせん人あるいは仲裁人候補者等と呼ばれている立場に加えて、医師会の先生方が専門委員としてご参加をいただくというようなこともしばしば話題に出ているところでございまして、そういう意味では、このADRという場を通じて医と法の対話と連携の在り方が進んでいくのが大変望ましいと思っておりますし、そういう意味では茨城県医師会での小松先生の取組に大変感銘を受けた次第でございます。
 以上でございます。

○山本座長
 ありがとうございます。ADRについての本質的なコメントをいただいた形ですが、小松委員、どうぞ。

○小松委員
 今のお話の中で賠償額のお話が、私、前回も聞いたんですが、これは私たちも一番最初問題にしたことでございまして、それで損保会社とも話して、やっぱり最初に相談してほしいということを言ったんですけれども、ただ私たちは、もし最初に話し合っていても、恐らく損保会社でそんなこと、これは先にそっちで話したから、自分たちに相談しなかったから払いませんよというようなことは社会正義上できないと思ったんですね。だから、もうこれはそのままいきましょうと。こういう規約は日本医師会の医師賠償責任保険には書いてあるんです。だけど、それは、恐らくはそういうことは起こり得ないということで始めました。
 恐らくは、賠償額は時間が超えるよりこれでやられたほうがはるかに安く解決すると思うんですよね。損保会社もそのほうがいいと思ってくるんじゃないかと私たちは思っております。

○山本座長
 ありがとうございます。保険の問題については前回もかなりご議論をいただいたかと思いますけれども、一つの方向が示されたのではないかと思います。
 今の点でもほかの点でも……どうぞ。

○宮脇委員
 医療過誤原告の会の宮脇と申します。
 全国でこういう形でADRの機関が努力を積み重ねられているということについては、私たちとしても非常に心強く思っています。最近の被害者からの相談で、病院が事故当初は責任を認めていたんですけれども、そのうち大分態度が変わってきて全く話合いに応じなくなった、もうADR機関にお願いしようと思うんだけどというふうな話がぽつぽつ聞かれるようになっているので、そういう点では、今日のお話を伺って、各ADR機関で医療者と被害者を結びつけていこうという形で地道に努力を積み重ねておられることに対して敬意を表したいというふうに思っております。
 医療裁判になぜ医療被害者が訴えるのかというと、もともと医療裁判に行くまでには、医療の専門の弁護士を探すことであるとか、鑑定医を探すであるとか、それから裁判の中でも医療機関側と戦っていくと裁判所のハードルが非常に高くて、先ほど北海道の先生がお話しになられたように、勝訴率も25%という程度で、一般の経済的な面からすると全く割に合わない裁判なんです。それでも真実を知りたいという思いに突き動かされ、あえて敗訴が予想されたとしても何らかの手がかりを得たいという思いで裁判という形になっていくケースがあるわけなんですけれども、ADRの今日のお話の中で、北海道や茨城については非常に受任率も高いということで、それから解決していく割合も増えているということでは、医療機関のほうが被害者に対して納得できるような情報公開がかなり進んでいるということであれば、今後にとって展望があるなというふうに思います。そういう点で東京弁護士会もいろいろ工夫されていることは今日の資料でも出されておりますけれども、実際に調停に当たられていて、今日報告された委員の先生方は、医療機関からの正直な情報公開という点で、実感としてはいかがなものでしょうか。

○山本座長
 小松委員、お願いできますか。

○小松委員
 医事紛争委員会というがあって、これは前置きですけれども、医療機関側から申請して、こういう苦情が来ました、だからご判断してくださいと医事紛争委員会のときに上げてくるんですね。それで、資料も一緒に出してくるわけなんですけれども、それが全部そろっているかどうかというのは分からないですね。ただ、足りない場合は、これはないか、あれはないかと聞くわけですけれども、それで出してくることはあります。
 この中立委員会の場合は、まず患者側と医療機関の間でいろんなやりとりがあります。その間に疑問点は、大概の人はこういうところが疑問だから、これはないのか、あれはないのかというようなことを持ってきますので、そのときに中立委員会の委員は、それが患者サイドから言われれば、これを出してください、あれを出してくださいと言えば、まずほとんどの医療機関は対応します。それは隠しているかどうかは分かりませんよ。
 1例ないというのがあったのは、5年以上過ぎたMRIの写真だったんですけれども、それは倉庫に置いておく場所がないから他県の倉庫に移したんですね。それが見つからなかったんですね。それは、ただコピーはあるんです。現物を出せと言われたものだから、それが出せなかったことが1例ありますけれども、コピーはございました。
 まず、患者サイドが要求する資料というのはほとんど出されますね。

○山本座長
 ありがとうございました。
 ほかのADR機関でもし今の、どうぞ。

○佐々木委員
 茨城のほうのすごい成功されておられる、医療者と患者の対話を築かれているというのは大変いいことだと思います。だけれど、この医療ADRというのは2つあって、対話型ADR、また裁判準拠型ADRというのがあるんじゃないかと思います。対話型ADRということにおきましては、コミュニケーションをどのようになさっているのかなと思うんですけれども。医療者と患者に向き合ってちゃんと思いを伝えてほしいという、医療者側も思いを伝えたいという気持ちがあると思うんですね。患者も言いたい。そのお互いの言うその場におきまして、コミュニケーションの仕方というのはどのようになされているのかなと思います。
 そしてまた、対話が決裂しましたら裁判に行くわけですけれども、裁判というところは、やはり医療裁判というのは、人間の生命、身体、健康、そういうようなものを裁くのに、法律的とか、また損害賠償とかいう、そういうようなものは望んでいないわけですね、私たちは。医療者と向き合っていただきたい、そして本当に心を通じ合って解決していきたいという思いがございますので、対話型というのは必要だと思いますので、まずコミュニケーションの仕方はどうなさっているのかということをちょっとお聞きしたいと思うんですけれども。

○山本座長
 小松委員、申しわけありません。

○小松委員
 私たちは、特別のコミュニケーションはどうすればいいとか何かということはやっておりません。ただ、説明、話をまず聞くことから始まるんです。申立人とこっちの委員が対面してやるわけですが、その人の訴え、それがどういうことに疑問を持っているのかということをまず聞いて、それで次に医療機関側から、こっちの申立人が、患者さんはこう言っていますよ、あなたはどう考えますかということをまず次に聞きます。また、それを返して、それを繰り返すわけですね、しばらくの間。その間に、弁護士が中心になってやるわけですけれども、医療問題で患者さんにこれはこういうところで誤解しているなというところがあれば、これは医者の言っているほうが正しいですよと、こういうものです。そうして、医者の言っていることに疑問があれば、私たちはそれはちょっとおかしいんじゃないのかというようなことは言います。それで、すり合わせていってやっぱり何回か話している間に誤解は解けてくることが多いんですね。ただ、これはそれで解けない人もおります。これは事実でございます。

○佐々木委員
 第三者機関が入っておられるということでしょうかね、そのコミュニケーションの間には。

○小松委員
 ええ、だから感情的にならないことですよね。人間は抑える者。たまには物すごく暴言を吐く人もいますけれども、それはやめてほしい。

○佐々木委員
 そうですね。だけど、そのコミュニケーション技法を持たれた方という、そういう方が進めていくというのも必要ではないかなとか思います。

○小松委員
 やっぱり弁護士さんは上手ですよね。うまくいろんな調整してくれますよね。本当にありがたい。医者がやったらとてもできないですね。

○佐々木委員
 ありがとうございます。

○山本座長
 よろしいでしょうか。
 それでは、ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ、和田委員。

○和田委員
 さっきもお話が少し出ていました応諾率の話ですけれども、この前も、そこをどういうふうにクリアしていくのか一つのテーマになっていたと思います。今日お話を聞くと、茨城の場合は医師会のところでやっておられるということで、医療側にも余り抵抗もないだろうと予測はつくんですが、北海道が存外に10件中9件で応諾されているという、これは非常に高い率ですね。少し耳に挟んだようなところでは、やはり10件ぐらいで一、二件ぐらいしか応諾してくれないというふうなところもあって、必ずしも手続主催者にお医者さんが入っているかどうかともまた違うような気もするんですね。
 その応諾率を決めているファクターには一体どんなものがあるのか考えた場合、一つの仮説的な考え方としては、医療機関そのものよりは医療機関の顧問弁護士のADRに対するスタンスというのが影響していることもあるかと思うんですが、その辺り、北海道の橋場先生のところで非常に率が高いということで教えていただければ。

○山本座長
 お願いします。

○橋場委員
 そのとおりでございまして、医療ADRを立ち上げるときに、患者側の事件を多くやっている弁護士のほかに、医師会の顧問をやっている事務所のいわゆる勤務弁護士たちも若手が入ってかなり熱心に活動していたという実態があるんですね。
 医療側も、今まで裁判には起こさないけれども、簡易裁判所の調停に持っていっている事件というのは実は結構あったそうなんです。それを患者側が弁護士会のADRに申し立てたときには、それを積極的に使おうじゃないかという、そういう理解と機運があるのではないのかなという気がしておりますね。
 さらにいけば、医療側も、今日の今田先生の紹介があった病院側が申し立てるというのがありますよね。そのときにADRを使うときの費用を医師賠償保険で使えるのかどうかというところについても真剣に今ちょっと協議しているようなところがありまして、やっぱり保険会社に分かってもらえれば、お医者さんの側の委員会がありますよね。あれは医師側の代理人として普通活動される委員会というふうに私は理解しているんですけれども、あそこの件数もかなり事件はたくさんある中で、まだまだ弁護士会の医療ADRに俎上に上がるような事件というのはたくさんあるのではないのかなという気がしています。
 札幌の特殊性は、さっき申し上げたとおりに、訴えられた病院側の顧問弁護士の理解があるという、狭い地域ですので、そういったことで今のところはうまくいっているというところです。

○山本座長
 小松委員、何か一言。

○小松委員
 今の橋場先生の話で、今の最後の発言は非常に問題なんですよ。医事紛争委員会のことを言われたと思うんですけれども、決してあれは医療側に立った委員会ではないんですよ。例えば茨城県医師会の医事紛争委員会はあります。毎年40件前後の紛争があるわけなんですけれども、それが上げられるんです。21年度の有責率、医療側に責任ありというのは6割です。委員が20人の委員でやるわけなんですけれども、これは極めて厳しいです。今は医療側に非常に厳しい。これは勤務医から開業医から入った専門の委員がいるわけですけれども、この委員会は非常に厳しいです。もうそれは行き過ぎじゃないのと思うようなことまで行きますね。ちょっとそこまでやられたら耐えられないよと。私たちは委員ですけれども、執行部ですから余り発言しないようにしていますけれども、ちょっと厳しいなというような意見が多いですね。
 それで、先ほどの和田先生の話で応諾率の問題なんですけれども、私たちのところは委員長は弁護士がやられているんです。その委員長の考え方が、来たものは全て受けるという考え方なんですね。弁護士が今3人入っているんですけれども、顧問弁護士はそこの中に入っていません。これは医事紛争委員会で別組織になっていますので、顧問弁護士を入れるとまるっきり医師会の関係になってしまいますので、顧問弁護士は入っていません。それで、1例だけ受けられないのが、委員長が受けないと言ったのが、やくざみたいな男が絡んでいて、これはちょっと紛争に対応できないというような、恐喝なんですよね、要するに。この事件はちょっと中立委員会の問題ではないだろうということで、それ1件は断りました。そういうことがございました。

○山本座長
 よろしいですか。
 それでは、ほかに。
 どうぞ、中村委員。

○中村委員
 中村でございます。
 このADRの問題を考えるとき常に話題になる論点として、ADRというのは相談の段階の件数は多いんだけど、実際にADRという形であっせんなり調停なりで申し立てされる件数というのは、今日のお話を聞いていてもそんなに数は多くないということがあります。前回の東京の場合もそうだと思うんですが、相談からADRにうまく結びつけていくためにどんな工夫をそれぞれされていらっしゃるのか。先ほどの小松先生のお話ですと、中立委員会の場合には、もともとアクセスしてこられる方は申し立てを当初から予定されていらっしゃると思うのですが、もうちょっと幅広く、特に弁護士会なんかの場合でしたら法律相談からADRへというような結びつきというのが一つあると思うのですが、基本的には患者さん側の申し立てがほとんどだとすると、そこがうまくつながっているとスムーズにADRにアクセスでき、これは医療だけに限らずADR一般の問題だと思うんですが、そのための工夫が特に医療の場合どういうことが考えられるのか、またどういうふうに実際に実践をしていらっしゃるのかについて、札幌や広島あるいはほかの弁護士会でも結構でございますので、少しご意見をいただければと思います。

○山本座長
 いかがでしょうか。今……じゃ、北川委員。

○北川委員
 大阪の北川です。
 医療に限らないというようなお言葉もありましたのでちょっと甘えて発言させていただきたいと思いますけど、大阪では従前、弁護士会ADRということで民事紛争処理センターというのをやっておりまして、こちらでは、手続相談に来られた方に対して中身の話もやっぱり聞きますので、聞いたやつをまとめて申し立ての書をつくる手伝いをさせていただいていたというようなことがありました。人によってどういう手伝いをするかというのは違うんですけれども、私の場合ですと、当事者とかは自分で書けるでしょうからそのまま置いておきまして、どういう示談あっせんを求めているのか、それでその理由は何かということについていろいろ聞いたやつをまとめて、別紙としてつければこれをいいというような形にして本人に差し上げるというようなことをしておりましたので、相談に来られた方は、比較的、少なくとも私が相談に関与したものについてはそのまま申し立てていかれる、もしくは後日その別紙をつけて送ってこられるというような形が多かったというのがありまして、今現在、弁護士会ADRは総合紛争解決センターに発展的解消をしていまして、それで一体だれが受け付け相談をするんだというようなことで、当初はしてなかったんですけど、なかなか形式的なことが分からなくて申し立てに至らないというようなことも多かったようなんです。
 例えば医療ADRの関係で言うと、だれが申立人でだれが代理人かも分からへんような申し立て書みたいなのも本人さんの部分もありまして、それで悩んで書けないというようなものが相当あったんじゃないかと思われますので、総合紛争解決センターのほうでも、申し立ての補助、そういう制度を採用することにいたしました。
 民事紛争処理センターの場合は毎日2時間ずつぐらい当番でやっていたんですけれども、総合紛争解決センターの場合は、ほかの団体さんも多いので、なかなかそこまでのことは決められないということで週1回なんですけど、これは報酬を出すという形でしっかり相談していただいて、できるだけ申し立てにスムーズにつなげるようにというように現在運用を始めました。
 以上です。

○山本座長
 ありがとうございました。
 児玉委員、先ほど手を挙げておられました。

○児玉委員
 第二東京弁護士会の児玉でございます。
 法律相談からADRの応諾に至るプロセスで、やはり実際に初動で、例えば医療安全支援センターから法テラス等の公益的な法律相談に携わる弁護士への相談窓口への紹介件数が統計上も大変多数に上っておるわけですけれども、こちらからの医療ADRの利用率が、今はっきりとした統計はまだ把握をしておりませんが、東京都等の私が知る限りの情報では、それほど公益的な法律相談に携わった弁護士が関わってADRを利用するあえて言えば利用率というものがまだまだ改善の余地がある状況にあると思います。
 それから、もう一つはADRの先ほど来話題になっている応諾率、医療機関側が応諾をするかどうかという場面で、率直に申し上げてそのようなことがないのではないかと思って始めたことではありますが、医療側に立たれる弁護士の先生がADRに余り理解を示してくださらないというような地域も特定の地域ではあるのですが、特定の地域ではございますが、実際にあるというようなお話を承っておりまして、この点で、お隣に座っておられます日弁連ADRセンター委員長の渡部先生を中心といたしまして、各会のADRの取組の連絡調整をしていく中で、弁護士会の中で医療ADRに対する理解をさらに深めていく啓発、連絡調整、それから情報提供等の地道な相互理解の理解を深める取組というのが必要になってくるのではないかということが1点でございます。
 2点目は応諾率ということで、もう一つのファクターは、個々の弁護士のクライアントとしておられる医療機関あるいは医療界の先生方と、それから法律家の間の相互理解の問題でございまして、この点につきましても、日弁連ADRセンターでの連絡調整を行う医療ADR特別部会の中で、各地で今ADRの取組、現場で一生懸命始まっておりますので、個々の取組を医師会、あるいは病院団体、あるいはその地域の中核となる基幹病院の先生方、あるいは現場で診療に携わっておられる開業医以下の多くの先生方にどのように認知をしていただき、理解をしていただくかという、そういう相互理解を進めるような取組を今どのようにスタートしようかということを検討し、また各地の工夫を促し、アイデアをお出しいただくように連絡調整を行っているところでございまして、まさにこういう場を厚生労働省にご用意いただいているわけで、こういう場を通じて、医と法の対話と相互理解、そして医療ADRへの理解の広がりが出てくるといいなという期待感を持ちつつ、また私どもの取組も強化していきたいと思っております。
 以上でございます。

○山本座長
 ありがとうございました。
 どうぞ、増田委員。

○増田委員
 先ほどの中村先生の相談からADRにどう結びつけるかということなんですけれども、愛知県の場合には、医療ADRでもそのほかの一般のADRも相談前置というのをとっているわけではございません。ただ、先ほど橋場先生から札幌の医療過誤問題研究会というのが報告されましたけれども、愛知県でも医療事故の情報センターというものがありますし、医療過誤問題の研究会といったところもございますので、そういったところに相談に来た方から相談を受けて、それがADRで解決することがふさわしいということであれば代理人になったり、あるいは自分が代理人にならないまでも弁護士会の紛争解決センターを紹介していくと、そういった形での持ち込みがされているというのが実情だろうと思います。
 ただ、こういった研究会に関わっていない弁護士、例えば交通事故等の相談を受けているような弁護士からも申し立てがされています。愛知県では、弁護士会紛争解決センターにおいてどういったADRがなされているのかといったことを弁護士会の会報で広報したり、あるいは各自治体の無料法律相談にパンフレットを置いたりしていますので、実際にどういった形でADRがなされているかというその実績の問題と、あとどういった形で広報していっているのかということが申し立て件数、相談からADRに結びつける一つの要素であろうかというふうに思います。
 それからあと、応諾率につきましては、愛知県の医療ADRについては90%ぐらいの応諾率がございますけれども、これもやはり特に医療側の弁護士、顧問の弁護士であり、あるいは保険会社の弁護士をされている、そういった先生方が非常に積極的に出てこられるというところがありますので、まず応諾率を上げるためには医療側の先生方に理解をしてもらうということが先決だろうというふうに思っています。
 以上です。

○山本座長
 ありがとうございました。
 じゃ、小野寺委員、どうぞ。

○小野寺委員
 仙台の小野寺ですが、医療ADR内のADR一般の申し立て件数をどうやって増やすのかということから、ちょっとお話をしてみたいというふうに思っています。
 仙台は、弁護士の数が約330人ぐらいで、毎年申し立て件数が110件ぐらいですね。ですから、弁護士の数にしてみれば率は低くはないんですけれども、なかなか110件を突破できないので、どうやったらもっと増やせるのかということで、この前ちょっと興味深い調査をしてみたんですが、330人の弁護士で申立人、代理人になった人あるいは相手方になった弁護士の4年間の数を集計してみたんですが、3分の1の弁護士が使っている。3分の2の弁護士は全く使っていないということが分かったんですね。つまり、ADRを使っている人はまた使う。使わない人は一向に使わないという二極に分化しているということが非常にはっきりしたんです。そうだとすると、その3分の2にどうやって切り込んでいくのかということですね。
 要するに、弁護士が絶えずお勧めメニューとして頭の中にADRを置いているかいないかということが件数を増やしていく場合の大きな要素だろう。3分の2の弁護士さんは多分調停というふうにいっちゃうんだろうと思うんですね。ADRというのは知識としては知っていても、メニューとしてまでは浮上していないという現象が分かったので、そこをどうやって突破していこうかといろいろ議論した結果、一つの方策としては仲裁人に若い弁護士を補助者としてつけよう、もう義務的につけちゃおう、1年生、2年生のときの弁護士さんをもう仲裁人のそばに置いて、弁護士会に入ったときからADRを頭の中にたたき込もう、そうすればその先生は自分の事件を抱えるようになってからADRのことを頭の中に置いて相談を受けるだろうということが1つです。
 それから、もう一つは、このADRが広がっていくかどうかというのは専門分野に広がっていくかどうかだろう。例えば、建築紛争をADRで解決できるか、あるいは犯罪被害者をADRで解決できるかという、この専門分野が外縁を広げていくんだろうという問題意識に立って、仙台の場合は犯罪被害者とか、あるいは建築紛争委員会のトップの弁護士をインタビューして、どうやったらADRで建築紛争あるいは犯罪被害者を解決できると思いますかというインタビュー記事を拾って皆さんに投げかけていくことを検討中です。
  それから、裁判所で毎年やっている医療問題の懇談会がありますね。毎年、弁護士会としてはADRの現状を報告して、仙台の名立たる病院の院長先生にADRというのがあるんだよということをお伝えしているということで、これもかなり長い地道な広報活動あるいは実績を積み上げていく中で少しずつ、先ほども先生がおっしゃった対話と連携が築かれていくんではないかなというふうに思っています。

○山本座長
 どうぞ、植木委員。

○植木委員
 千葉で医療紛争相談センターを主催しています植木です。今までとはちょっと違う視点からの発言となりますが、よろしいですか。
 今日のご報告もそうですが、前回の場合もそうでしたが、ADRの主体となっているのは弁護士会が中心になってやられている紛争解決センターの経験であり、そこでの特有の問題が前面に出てきているというふうに思っております。いずれもお話の最初の出発点が法律相談という観点から問題が捉えられているのです。したがいまして、その法律相談の中でそれができるだけ裁判にいかないために、ADRを利用した場合の問題点はどうなるのでだろうかという、そういう趣旨のご発言が多かったように思います。
 ただ、我々の場合は、千葉の場合はそういう出発点が法律相談ではございません。多分、茨城の場合もそうだと思いますが、出発点はあくまでも医療に関する不信の解消、あるいは医療に対する紛争の相談から出発しているという点です。したがいまして、我々の場合は、それに対処するためにはとにかく徹底的に医療相談を行い、それに懇切丁寧に応えてやる、これが一番大事だと思っております。前回もお話をしましたように、それをしっかりやりますと大体8割ぐらいは紛争にならないでちゃんと解決するんだというのが大前提でございます。
 その中でなぜこういうことを申し上げるかというと、最終的には医療ADRというものの特殊性を、対話であれ、和解、仲裁であれ、どういうふうに理解して紛争の解決を図るかということだろうと思います。それは1つには、紛争の原因について当事者間に争いがあるというときに、調停委員が弁護士さん、あるいはその関係者だけであられるときに、それだけで因果関係等々の問題に争いがあるとき、それを専門の医師を排除して本当に紛争の解決ができるだろうか、それが弁護士会中心のセンターに対する疑問の出発点であります。そのためにはやっぱり調停委員の中に、何らかの形で医師の専門家が入っていただくほうがよろしい、というスタンスで我々はやっているわけであります。当事者もそれを望んでいる。それが裁判をしないでも紛争を解決できるADRの歳代のメリットであると考えます。
 それからさらに第2番目に、仮に因果関係がある程度明確で、争いの内容が一応はっきりしており、あとは補償だけの問題である、あるいは損害額の算定の問題だということになったとしても、それはもちろん法律的な判断でありますから、弁護士さんが調停委員としてそれに対するある種の基準を策定し、妥当な解決提案を出すというのはそれでいいんでしょうけれども、ただその際であっても、結局具体的な金額を決める際に何が問題になってくるかというと、やっぱり診療機関や当該医師の違法度の問題が重要となります。そうしますと、この事件はひどいなとか、あるいはこれは医師としてはやってはいけないことだとか、当時としてはやむを得なかったとか、ある種の注意義務の内容についての評価、そういうものをやっぱり考慮しないと具体的な金額は出てこないだろうと思います。したがいまして、そういう意味でもやっぱり医師の専門家としての関与が調停にあたってはどうしても必要になってくる。これが2点目であります。
 それから、第3点目ですが、今日の小松先生のお話とも若干関係するわけですが、結局、医療ADRで解決する最終的な目的は一体何だろうか、という問題です。裁判と違う医療ADRというもので目指すべき目標は一体何だろうかということに関わると思うんです。我々は、同種の事故の再発を防ぐことを歳代の目標にしており、当該事故の解決を図るということは当然のことでありますけれども、同時に同じような事故が再び出てくるということだけは防がなければいけない、と考えています。そういうこととの関連で言いますと、私も若干経験をしたところでありますが、病院の代理人の先生が出てこられていろいろとお話をしてある程度まとまってくるわけなんですけれども、どうしても代理人の場合は当該事案の解決には一生懸命になるわけですが、その事案の解決を通して何が問題になっているのか、何が今問われているのかということについての評価が十分なされない傾向にあります。したがって調停で問題医となった点が病院側に十分伝わらない、あるいは当該医療従事者に伝わっていない点が気になります。そういうところからすれば、私は若干の勇気を持って言いますと、できるだけ代理人と同時に病院の関係者も和解のテーブルに同席していただくほうが、二度とそういう問題を起こしてはいけないんだ、あるいはどうしたら再発を防げるのだろうかということを考えていただくためにはベターではないかと、そういう印象を持っています。
 以上です。

○山本座長
 よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 どうぞ、小山委員。

○小山委員
 病院の代表ということでもって出席させていただいています東邦大学の小山と申します。
 今、病院の応諾率の話題が出ておりましたけれども、確かにいろいろな問題を含んでいると思いますが、まず1つはADRは何なのと言われたときに、この会議もそうなのですが、例えば茨城県あるいは千葉県のように医師会がやっているようなADRもあるし、弁護士さんが中心となってやっているADRもある。ここの中の根本的な違いは、特に今茨城県の小松先生がおっしゃったのですが、当時者同士を連れてくるということを一大目標にしている。ここだけだったらば我々も分かるし、我々もやっぱり努力していかなきゃならないという気はあるんですけれども、名古屋とか、あるいは札幌もそうだという話だったんですけれども、代理人同士の話合いをするんだったらば何もADRの必要があるのかという疑問が我々の中に出てくるんですよね。一番大事なのは、患者さんが納得できるような解決の仕方をする一つの方法としてこのADRというものがもし出てきたんだとしたらば、やはり医療の場合は当事者同士が出てくるようなものをADRというふうに僕は位置づけたほうがいいのではないかと思いますよ。そこのところがどうもはっきりしないので、医療側は何となく、どっちなんだろうなというふうに思いながら、もし代理人同士だとしたらば、今、鈴木先生がおっしゃったけれども、ある評価が必要だということになった場合には、中立的な評価というのは、裁判所のほうが中立定な評価ができるし、ちゃんとした結論が出せるだろうというような気がするんですよね。それが弁護士さんのところで全部評価をされてしまうようなADRだとすると、ちょっと違うのかなという認識を持っているところがあります。
 それから、もう一つ、このADRに参加するかしないかというのは、先ほど札幌の方もおっしゃっていましたけれども、やはりその病院の弁護士さんがどの程度ADRにということは、これは非常に大きな要素になります。病院で何か起きたときには、ADRから話が来た場合には、どうしましょうかという相談を必ずしますので、これは逆に我々の問題というよりも弁護士さん同士の間の問題であるんだと思います。
 医療側とすれば、この10年間、恐らく物すごい努力でもってこの医療安全あるいはこういうことに対しての対応に対して並々ならない努力を僕らはしてきたと思うんですよね。それが先ほどから話が出てきているように、医療紛争が少しずつ減っているということはあるんですけれども、でもいまだに厳然としてあることは事実ですので、ただこれも、今、鈴木先生がおっしゃったような形の8割ぐらいは話合いをすると……

○鈴木委員
 植木先生です。私ではなくて植木先生。

○小山委員
 植木先生がお話しになった8割ぐらいは話合いで解決するというレベルのものなんですよね。これが代理人同士になっちゃうともっと複雑な話になっちゃって違う方向へ行くんですよね。だとすると、もうそこにいるよりも裁判のほうがいいよというような考え方も医療側には出てくるのではないかというふうな感じがいたします。
 以上です。

○山本座長
 どうぞ、鈴木先生。

○鈴木委員
 小山先生、ちょっと誤解があると思うんですが、私は東京三弁護士会でやっているのですが、申立人は大半が患者さん側です。代理人がついていないことも少なくありません。非常に多いです。代理人がついている場合も、ご本人は必ず出頭しています。
 しかし、病院側は代理人しか出頭しないということが間々あります。あるいは、病院の責任者が出頭したとしても、担当医が出頭することはほとんどありません。申立人の患者さんは、担当医との間で話をしたいと言いますけれども、病院側は担当医を出すわけにはいかないというものも非常に多いです。しかし、私たちはタイミングを見計らって、担当医と直接対話をすることを何とか実現できないだろうかということを、代理人がついている場合も、あるいはついていなくて病院管理者が出てくる場合もお話をして、それはタイミングを見計らって院内でそういう対話を行うこともあります。
 ですから、本人同士の対話を望んでいる対話型といったときに、患者さん側は必ず本人が出てきますけれども、病院側はその対話の対象者は病院管理者であることがすごく多いんですね。あるいは、医事課の担当者であることが多くて、そこのところが、ですから病院側がむしろ直接ご本人が出てきて話合いを成立させるということにどういうふうにしたらいいかというところが、今、対話型の問題点の一つなのではないかというふうに思います。
 患者側が、本人を差しおいて弁護士が出ていってどんどんしゃべるということはほとんど少ない、少なくとも東京三会、弁護士会型の場合には少ないというふうに言えると思いますが、いかがでしょうか。ここに参加している弁護士の方々、皆さん、うなずいておられると思うんですけれども。

○小山委員
 一部そういうところもあるんだと思うんで、それは個々の事例によって違ってくると思いますけれども、ただ一般的にそれを受けるといったときに、例えば前回、たしか名古屋ですか、80%以上がそれぞれが代理人になっているという事実もありますよね。そこにご本人が入っている。我々とすれば、ある意味、病院の中で非常に患者さんとの対話に努力しております。かなり無理難題を言ってきます。とんでもない時間帯だったり日曜日だったりしますけれども、それに対しても医療側は非常に一生懸命今対応しようとしているんですよね。対応しようとしているんですけれども、そこにADRというものが出てきたときに、これならいいよねというふうに思ったんですけれども、どうも内容が当事者同士の本当の対話になっているのかなというのは、例えば今の茨城県とか千葉県なんかのデータを見ますと、ああ、これはそうですねという感じはするんですけれども、今の弁護士さん代表の方々のADRの報告を聞きますとやっぱりちょっと違うのかな。それは、この前の患者代表の佐々木さんも少しおっしゃっていましたけれども、患者さんが望んでいるのは当事者同士の話合いだということなので、やっぱり我々もそれは努力していく必要がありますけれども、そこら辺のプロパガンダというんですか、広報というんですか、本人同士がやるのがADRですよ、医療界のというような話をしていただければ、それなりのほうに行くのではないかというふうに思っております。

○鈴木委員
 千葉や茨城はまさしく医師会が関与している。つまり、だから医師会が関与して……

○植木委員
 千葉の場合、医師会は関与していません。純粋のNPO法人です。

○鈴木委員
 医師会は関与してないですか。千葉の場合には医療関係者ですし、茨城の場合には医師会がイニシアチブをとっているんですね。ですから、直接対話をしようということでつくった制度になり得るんだろうと思うんですけれども、弁護士会がやっている場合には残念ながら、東京三会は応諾率が3分の2ぐらいでしたかね、3件に1回は応諾してこないわけですけれども、応諾してくる場合でも、要するに医師の側が積極的に紛争解決をしたがっているのかどうかというのがはっきり見えないケースが少なくないんですね。
 そういう中で、私たちは、裁判所のように判決とか、そういう権力を持っているわけではないので、紛争解決という共通の方向性をどうやって共有できるのかというところから出発してやっているんですね。ですから、私は医事紛争に35年ぐらい関与していますけれども、ことしで日本で初めて医療裁判が起きたときから107年がたちますけれども、多くは、最初の100年間は医療側は対話を拒んできた医療事故に関して、しかしこの10年ぐらいは医療側も対話を拒んでいくほうがかえってリスクが大きいというふうに思って、対話を促進しようというふうになってきたかと思うんですけれども、この紛争を解決することに価値があるという共通の価値観を見出せるかどうか、つまりここに座って解決できるのか、座って無駄なのではないか、そういう実績も絡んでいると思うんですけれども、そういう辺りが、私たちから見ると、医療側が本気で紛争解決しようとしている事案のほうがむしろ少ないというふうに思うんですね。
 ですから、ここは要するに紛争解決という共通の価値観を共有するためにはどうすればいいのか。つまり、直接対話を阻んでいる要因は何で、それを促進するためにはどうすればいいのかということを、専門職能集団の責任や法的責任も一方でありますけれども、他方で紛争解決することのメリットが医療界でどのぐらいあるのか。ほったらかしにしておくメリット、デメリットと紛争解決したほうがいいというメリット、デメリット、そこの比較もしながら、多少、効率主義になりますけれども、全体的に紛争解決することが至上の共通の価値なんだということをどうやって盛り上げていくのかということがこれから求められてくるのではないかというふうに思いますけど。

○小山委員
 お言葉を返すようですが、紛争解決したくないと思っている医者なんて1人もいません。あり得ません、それは。

○鈴木委員
 いやいや、それは先生、言い過ぎですよ。

○小山委員
 だけど、紛争解決しなければ、終わらない以上進まないんですよ。

○鈴木委員
 それじゃ、なぜ100年間対話を阻んできたんですか。裁判所しかなかったんですよ。

○山本座長
 じゃ、渡部委員、どうぞ。

○渡部委員
 こういう場が議論を深めるのならば、大変価値があって、相互の理解が進むと思うんですが、余り言い合いになってもどうかなという気がいたします。
 私は日弁連の立場で申し上げますが、先ほど札幌の発表の中で、裁判所の勝訴率が25%ということがありましたけれども、その中に隠れていて、明らかでないのが和解率の問題がありまして、最高裁の岡崎課長は、オブザーバーの達名なので、なかなか言いにくいところがあるのでしょうけれども、私が代わりに申し上げますと、和解の数がかなり多いので、それを含めると、和解は支払額がゼロの場合もありますけれども、大体が患者側に、何がしか払われることが多いので、それを含みますと7割方、患者側の勝訴になっているのではないかという感触を、私は持っております。ただ、平均審理期間を見ますと1年半以上かかって審理が長くなっているわけですね。
 ところで、弁護士会の宣伝をするのが私の立場かもしれませんので申し上げますと、弁護士会のADRの場合は原則3回で半年以内に解決するという大体の目標がありまして、現実にも、大体そうなっているところでございます。
 そこで、先ほど札幌の例で応諾率が9割という話がございましたけど、札幌の場合は、2年前に、日弁連ADRセンターの中に医療ADR特別部会ができまして、その検討過程を経て、札幌の医療ADRができました。
日弁連ADRセンター医療ADR特別部会において、私の考えていたのは、医療機関側が弁護士会に対して抱いているイメージ、すなわち、弁護士会が患者側に立っているのではないかという見方でありまして、医療機関側から余り信用していただいていないのではないかと感じている部分がございました。
それならば医療機関側の代理人の先生に、まず理解をしていただくことが重要であろう。そうすれば、結果的には、実は患者側のためにもなるのではないか。各高裁所在地に医療ADRをつくるときに、医療側の代理人の経験豊富の方と患者側の代理人の経験豊富な方と両方入れて、立ち上げに努力していただくという形をとりました。
 それは、参加していただくことによって、弁護士会の医療ADRに対して両方からの理解を得られるということが目標としてもありました。
そういう形でやっていきまして、この3月に8高裁付近に、は弁護士会の医療ADRは立ち上がったわけですけれども、そうしていきますと、今、札幌の例でありますように、医療ADRの監幹事の中に医師会の顧問の方もいらして、弁護士会の医療ADRというのは必ずしも患者側のやめだけではないんのだ、それは医療側にもちゃんと配慮してやってもらえるんだという理解が生まれてきたところにこの応諾率が生まれてきたのだと思います。……、
弁護士会ADRというのは権力的契機がありません。弁護士会ADRは判決できませんし、当事者は出頭を拒否をできるわけですね。それが9割方来ていただけるというのは、医療側の少なくとも代理人が弁護士会ADRを信頼しているということですね。
だから、そこは、そういった感触、弁護士会ADRに対し、医療側と患者側双方から、信頼感を抱いていただくということが我々にとっては重要かなと思っております。そしてこれから、我々日弁連としてやるべきことというのは、保険の問題、医師会の問題、いろいろあります。患者側の先生方は弁護士会の医療ADRを信頼していただいていると思いますし、医療側の先生もかなり信頼がだんだん高まってきている。
問題は、依頼者の側の先生達の弁護士会ADRに対する信頼感の問題です。医師会側の先生とか病院側の先生の信頼感がどれだけ高まってきてくれるのかというところにあるものですから、そこの信頼関係が高まるような工夫をしなければならないと思っています。立場上、今口に出して詳しくは言えませんが、そういった工夫をいろいろとこれから各方面にやっていきたいなと思っております。児玉先生が先ほどちょっと言われたこととつながるのでございますけれども。

○山本座長
 ありがとうございました。
 それでは、和田委員、どうぞ。

○和田委員
 ずっと議論を伺っていて2つ軸があると思うんですね。
 1つは医療側か患者側かということですけれども、実はこれは余り本質的な問題ではない。ADRに対する医療側の不信感の構図というのはそうではなくて、医療側の論理と法律の論理とのギャップというところにあるんじゃないかと僕は思うんですね。先ほど鈴木先生がおっしゃったことは非常によく状況が分かるのですけれども、ただ例えば神奈川の当事者が来られていて、弁護士さんも来られている、こちら側、医療側は弁護士しか出てこないというときに、そこの場の議論で、だれが主導権を持って定義しているのか。そのときに、例えば患者さん側が真相を知りたいというときには医療経過の事細かなことも知りたいと思っておられて、ところが弁護士から見ると、法的権利を守ってあげようとする場合に注目すべき事実関係があり、そこにちょっとずれがありますよね、医学的な真理と法律的な評価というところでも。そうしたときに、例えばその患者さんが、真相を知りたいという言葉にもっと情緒的な意味をも含めているときに、例えばその患者さんが、真相を知りたいという言葉にもっと情緒的な意味をも含めているときには、それをだれがその場でコントロールするのかという辺りが一番の問題です。僕は患者さん側も医療側もそういうずれを感じている部分があると思うんですね。ですから、その辺りの内実のようなものが、メカニズムのようなものをもう少し詳しく教えていただければと思います。

○鈴木委員
 弁護士が関与すると、法的責任の有無に限局して対話を進めていくのではないかという誤解があるように思うんですけれども、私たちは、申立人が何を望んでいるのか、あるいは病院側がどういうことをご希望しているのか、そこを中心に考えようとしています。ですから、その先に法的責任が出ることはありますけれども、まずは法的責任を入り口にしないという形で進めていこう。
 実は、私は、医療機関が話合いに積極的になれない要因の最大のものは、話合いをすれば結局法的責任が追求されるのだといういわば法的責任への恐れみたいなものが多分あるんだと思うんです。ですから、弁護士会がやっているADRが法的責任の有無を判断する機関だというふうに誤解を受ければ、それは応諾しないだろうというふうに思います。
 ともあれ、法的責任は場合によっては棚に上げてでも、まずは実情をお互いに何を希望しているのかというところからいく。しかし、その先に一応の説明がされて、いろいろ問題が生じて、やはり医学的に見て問題のある事案だということも病院側も一定認識してくるということになれば、その次のステップとして、それでは最終的な解決として法的責任を絡ませる必要があるのかどうか。多くの場合にはそこはやっぱり法的責任も絡まざるを得なくなるという形になるんだろうと思うんですね。
 つまり、法的責任というのは、損害の公平な分担という損害賠償法の理念が、さっき児玉先生が医と法の対話とおっしゃいましたけれども、必ずしも医療界の中には、損害賠償責任ということが損害の公平な分担を図るシステムなんだということがご理解いただけていなくて、東京地裁の13医科大学と弁護士会と裁判所の初期の対話の中に、民事上の損害賠償でもって鑑定人がこれは有責じゃないかと言うと、この先生が刑務所に行くのかというふうに考えたので、なかなかそこは踏み込んで法的責任に言及するわけにいかないんだという、それはすごく大きな誤解ですよね。
 ですから、そういうようなところが解きほぐれてきていて、法的責任といっても、損害賠償責任の場合には、被害者といいますか患者さんに生じた金銭的な負担が、その一部が病院側もシェアしていく必要があるのではないかという、そういうようなやわらかい対話をしていくことによってそこが乗り越えられる場合も少なくないのではないかというふうに思います。

○和田委員
 要するに民事手法は損害の配分なんだということ意味づけ自体が、先生は、今、ソフトとおっしゃったけれども、多分、患者さんから見たり、あるいは医療側から見れば、それ自体まだ非常にハードで、問題の本質はそういうところじゃないんだ、もっと別のところに問題があると感じている。民事司法の機能として、もっともっと広がりがあることを本当は望んでいる。それを損害の公平な分担だと言っているのは我々法律家だけなんじゃないでしょうか。

○鈴木委員
 だから、最後の出口のときにそういう問題が出ることもあるということを申し上げているので、それを入り口にしてはいけないということを申し上げていますね。

○和田委員
 それは、分かっています。

○山本座長
 どうぞ。

○前田委員
 我々の受ける印象は、でも今、まさに和田先生がおっしゃったような印象を持つんですよね。特に鈴木先生のまさにそういう言い回しですと、我々はそういう感情を持たざるを得ない。
 それから、さっき紛争を解決したくない医者はだれもいないと小山先生はおっしゃいましたが、まさにそのとおりで、ただその土俵が皆さん側にあるのか、あるいは中立な場所にあるのかという問題だと思うんですよ。
 恐らく、医療者が話合いの場に立てない状況が一時的につくられたんですね。今ADRというものができ始めて、我々は積極的に患者さんと対話をすることは全く違和感はございません。ただ、一時的にはやっぱり医療者が基本的に医療被害の加害者と扱われていた時期があることも、これは否定できないですよね。
 要するに、医療にミスがないのに過誤と言われ、我々に責任がないのに被害者と言われ、それをまたマスコミが後押しをして、患者さん側の弁護士さんたちがそれを追い風にして、まさに我々は黄門様に裁かれる悪人のように扱われた時期があるわけですよ。
 それをちょっと今こらえてもう一度やり直そうとしているときに先ほどのような言われ方をすると、非常に我々はつらいですよね。

○鈴木委員
 いやいや、しかし……

○山本座長
 ちょっと、じゃ児玉委員、どうぞ。

○児玉委員
 私は現場の実践をやっておる人間でございますので、余り学問的な理念系に踏み込むこと自体もちゅうちょを感じるのですが、先ほど来の議論の中で、非常に純度の高い純粋系あるいは理念系として、例えば医学の論理か法の論理か、院内の対話か院外の対話か、対話型ADRか裁判準拠型ADRか、医療相談か法律相談か、当事者による対話か代理人を介入させるか、どちらかかというある意味純粋に極端な議論、それから最後、私、心に響いた大事な言葉ですが、加害者か被害者かというような、極端な純粋な言葉というのは南極と北極の果てで話をしているようなもので、南極の果てにも北極の果てにもペンギンもいないかもしれない。我々がいるのはその間の人の世界ですので、人と人がそれぞれ心を持ち、言葉を持って語り合う中で、語り合える土俵を何とかつくりたいという願いはぜひとも共有していきたいものだというふうに思っております。
 以上でございます。

○山本座長
 どうぞ。

○小松委員
 今、鈴木委員と小山委員の話を聞いていまして、まさにこれが今の現実の状況なんですよね。
 このADR、患者と医療側との対話をしていきたいという、それによって植木先生が言われたように、事故の再発を防いでいきたいということを願っているわけなんですけれども、確かに今まで医療機関に対するバッシングというのは非常に強かったわけですね。特にそれで、医療事故に対しても、医療機関側がやはり昔、隠ぺいしたとか何かという問題が言われてきましたよね。それは事実あったんですよ。だけど、それは責められて仕方ないんですけど、現在、医療機関側でそのようなことを考えている人たちはもうほとんどおりません。その代わり、そのころに一方的に医療機関が弁護士会からたたかれたという、要するに、鈴木先生もそうだったのかもしれませんけれども、医療事故専門の人たちの弁護士にたたかれたということはトラウマになっています、医療機関は本当に。
 それで、弁護士会主導ということに対しては、やっぱり納得いかないという人が多いんですよ。これは事実でございます。だから、ここで、患者と医療機関との対話と同じように、医療機関と弁護士会、医師会と弁護士会、医師と弁護士、この対話がこれから必要になってくるんですよ。このADRをやるにしても、最初私たちが始めようとしたとき、弁護士の先生も、そんなことをやるはずがないと、こう言われたわけですから、そのような誤解があるわけなんですよ。今はそうじゃない。医療機関はそうじゃなくなっています。今、小野寺先生が、仙台では医師会とこれから話し合っていくと言いました。それが非常に大事なんだと思う。弁護士会と医師会が話し合っていく、それによってこのADRというのがこれからどんどん発展してうまくいくほうに私たちが努力しなきゃいけないんですね。
 これが駄目だ、あれが駄目だと言っていても駄目なんですよ。お互いに理解し合わない限り、医者と患者どころか、弁護士と医師と理解し合わなきゃ駄目だと私は思っているんですね。そのようにしていく会にしてほしい。お願いします。

○山本座長
 ありがとうございました。
 最後、小松委員から……どうぞ。

○宮脇委員
 基本的な質問ですが、渡部先生から、高裁の範囲でADRを少なくともカバーできるとお話しがありました。前回からのお話では地域的なカラーが相当強いなという思いがありまして、それから全国を見渡せばADR機関ができているところというのは一部ということもあります。被害者は全国にいるわけです。例えば青森であれば仙台がADRを受けてくれるのか、それから群馬、埼玉はどうなのかとか、そういう疑問に我々はしょっちゅう直面しています。そういう点で、ADRを受任する領域は高裁の範囲と言うのが、今の到達点なのかどうなのかご確認いただければと思います。

○渡部委員 全国弁護士会の紛争解決センターや仲裁センターには、管轄はございませんので、要するに全国各地どの地方の方でも、例えば青森の方が東京の仲裁センターに申し立てることもできるんですね。ただ、アクセスの問題がありまして、それはなかなか難しいからやはり仙台でやっていただく、今のところはそれしかないんです。
 ただ、医療ADRを立ち上げていない弁護士会ADRにおいても、医療紛争は扱っています。全国の弁護士会52会のうち26弁護士会30センターの仲裁センターなり紛争解決センターがあるんですね。ここでは、医療ADRのないところでも、一般の事件として、普通の事件として受け付けていると思いますので、それは対応可能だと思います。ただ、東京三会方式のように、医療側の経験豊富な先生、患者側の経験豊富な先生という、そういう方々が付いて、弁護士会医療ADRの手続をやっていただくというわけにはいかないかもしれませんけれども、ただ、受け付けはしていると思います。
 それから、全国規模で仲裁センターなり紛争解決センターをもう少し拡大していこうかというのは、今、実は来週にでも日弁連ADRセンターの会議にかけたいと思っているのですが、拡大の方向で考えております。日弁連としてもそのように考えておりますので、それはADRとして、医療紛争に限らず一般の紛争も弁護士会ADRで解決できるような形をとっていきたいと思っております。

○山本座長
 ありがとうございました。よろしゅうございましょうか。
 どうぞ、中村先生。

○中村委員
 医療者と弁護士という話が出ましたけれども、私はさっきからお話を聞いて1点だけ気になるのは、ADRというのは紛争解決が目的だというふうにおっしゃられて、それは、医療者、弁護士、そこは共通の思いだというところです。
 しかし、私は、ADRというのは別にそこですべて解決を図らなくても、それが法的解決だろうと、あるいはそれ以外の解決であろうと、やはり患者さん本人が一番そこでの主役であるはずであって、その方が何を望んでいらっしゃるのかが重要で、先ほど児玉先生から話合いの場というお話がありましたけど、例えば説明会方式ということで、ADRをそういう説明会の代わりに使うというようなことが、前、愛知県弁護士会のセンターの方からお話を聞いたことがありますが、いろんな使われ方がADRであっていいはずです。そこの中で完結的に何か最後まで和解をしなければいけない、和解をしてこそ初めて成果なんだというふうに位置づける必要がそもそもあるのだろうかという根本的な疑問があります。その話合いの場をつくるということ自体がむしろ設置目的の大きな意味なのではないか。
 特に、今日、東京三会の検証報告書に載っておりますところで、私g1つ気になるのは、この7ページのところを見ると、先ほど応諾率の話が出ましたけれども、応諾率について、7ページの下のところに、不応諾事件25件のうち、代理人が選任されている事件は申立人11件、相手方6件である。不応諾事件では、申立人、相手方とも代理人選任率が低い傾向にあるということ、特に相手方において、その傾向が顕著であることが指摘されています。
 相手方の代理人選任率が低いというのは、先ほどから和田先生が指摘されたことだと思いますけれども、弁護士の方の認識がまだ十分でなくて、医療側の病院等を説得できない、あるいは弁護士自身がADRに対する認識が乏しいということがあるんだと思います。そして、特にその申立人本人が申し立てたものに関しては応諾をしてくれないという病院がまだあるということは、やはりその手続の中で解決が目指されるのだと理解すると、そこへ行ってもこれまでも話し合っているけども無理だから、行っても解決は困難だ、あるいは過失が問題なんだから行っても無駄だというふうな認識が最初からあるのではないか。しかし、その場で第三者を交えて話し合うことそのものに意味を認めるのであれば、そういうことについてもとりあえずは応諾をして、話をしてみて、その展開によって、場合によったら訴訟という選択をせざるを得ないかもしれないけれども、話合いの場そのものを閉ざす必要はないんじゃないかと思います。その意味で、ADRというものをどういうふうにそもそも位置づけるのかということをやはり前提としてもう少し議論をしておく必要があるように思います。

○山本座長
 ありがとうございました。本質的な問題を提起いただいたかと思いますが、残念ながら、私の不手際で既に予定されていた時間を経過しております。
 本日は文字どおり大変活発なご議論をいただきまして、前回はちょっと個人的には皆さん、ややかみしもを着けてご遠慮があるのかなというふうに思っておりましたが、本日は大変率直なご意見の交換をいただけたかと思います。
 恐らくは、このような形で率直に対話を積み重ねていくしか問題を解決していく方法はないんだろうというふうに思いますので、そういう意味では、意見の対立はもちろん残ってはおるわけでありますけれども、大変有意義な会合であったというふうに私自身は思っております。
 それでは、また恐らくフリートーキングで今日のような議論を継続していただく機会というのは今後の会合の中で引き続きあると思います。今日はここまでとさせていただきたいと思います。
 次回も今回と同様、3機関程度から取組状況をご紹介いただき、その後、意見交換を行うという方向で考えております。次回、取組状況をご紹介いただく機関につきましては、事務局から後日ご連絡をさせていただきますので、その際にはご協力方よろしくお願いいたします。
 以上で、本日の議題は終了ですが、最後に事務局のほうからお願いいたします。

○渡辺医療安全推進室長 ありがとうございました。
 次回、第3回の会議の日程についてでございますけれども、別途調整をさせていただきたいと思います。
 また、今、座長先生からもございましたように、次回の取組状況の発表につきましては、本日、資料を提出いただいていましたけれども、お話まで行かなかったと思いますけれども、北川先生を初め、個別にお願いをさせていただきたいというふうに思ってございますので、皆様方のご協力を引き続きお願いできればと思ってございます。
 以上でございます。

○山本座長
 それでは、本日はこれで閉会いたします。長時間にわたるご議論、どうもありがとうございました。
 次回以降の開催につきましても引き続きよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。


(了)
<照会先>

医政局総務課医療安全推進室

室長 渡辺真俊: 内線2570
室長補佐 今川正三: 内線4105

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