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2010年7月12日 第2回死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会議事録
医政局総務課医療安全推進室
○日時
平成22年7月12日(月)
○場所
省議室
○出席者
検討会メンバー(五十音順)
相田典子 (神奈川県立こども医療センター放射線部長) |
池田典昭 (九州大学大学院医学研究院法医学分野教授) |
今井裕 (東海大学教授) |
今村聡 (日本医師会常任理事) |
北村善明 (日本放射線技師会理事) |
隈本邦彦 (江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授) |
塩谷清司 (筑波メディカルセンター病院放射線科科長) |
宮崎耕治 (佐賀大学医学部附属病院長) |
門田守人 (日本医学会副会長) |
山本正二 (Ai学会理事長) |
和田仁孝 (早稲田大学法務研究科教授) |
参考人
深山正久 (東京大学大学院医学系研究科・医学部教授) |
オブザーバー
警察庁刑事局捜査第一課 |
文部科学省高等教育局医学教育課 |
日本医療安全調査機構 |
放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院Ai情報研究推進室 |
事務局
足立信也 (厚生労働大臣政務官) |
阿曽沼慎司 (医政局長) |
岩渕豊 (医政局総務課長) |
杉野剛 (医政局医事課長) |
塚原太郎 (大臣官房総務課参事官(医療安全担当)) |
渡辺真俊 (医政局総務課医療安全推進室長) |
石川義浩 (医政局医事課課長補佐) |
○議題
1 医療機関等における死亡時画像診断の現状等について
2 その他
○配布資料
資料1 | 第1回死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会議事録 |
資料2-1 | 死亡時画像病理診断(Ai=Autopsy imaging)活用に関する検討委員会 第二次中間報告(今村先生提出資料) |
資料2-2 | 医療・医学における死亡時画像診断(Ai)活用に関する検討会 答申(今村先生提出資料) |
資料3 | 診療関連死調査と死後画像(深山先生提出資料) |
資料4 | 小児医療の現場からの問題提起(相田先生提出資料) |
○議事
○医療安全推進室長 定刻を若干過ぎましたけれども、第2回「死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会」を開催させていただきます。本日、お集まりの皆様方におかれましては、ご多用の折、当検討会にお集まりいただき、誠にありがとうございます。本日は、菅野先生、長谷川先生からご欠席との連絡をいただいております。また本日は、深山正久先生 東京大学大学院医学系研究科人体病理学・病理診断学部分野教授にもご出席いただいておりまして、後ほど資料の説明を行っていただく予定です。なお、オブザーバーとして、警察庁刑事局捜査第一課、文部科学省高等教育局医学教育課、日本医療安全調査機構、放射線医学総合研究所重粒子医学センター病院Ai情報研究推進室からご出席いただいております。それでは、以降の進行につきましては門田座長、よろしくお願いします。
○門田座長 門田でございます。本日は、お集まりいただきましてどうもありがとうございます。まず最初に、足立政務官からご挨拶をお願いします。
○足立政務官 皆様、お疲れさまです。前回もこの検討会の中で、目的、そしてその方法といいますか、手段といいますか、それをはっきりさせる必要があるというのは門田座長のほうから話がありました。本日の2回目も死因究明に資するということと活用ということがポイントだと私は思っております。前回は、まさに現場でやられているお二方から説明がありました。今回も、これはずっと日本医師会で積極的に取組みをされていることもありまして、その説明も資料で出てくる、そしてまた、お二方から説明があるということです。これをいかに活用して、亡くなったときのその原因の診断について、提供者側も受ける側もいかに納得が高まるかということのためにこの画像診断を活用するという趣旨です。皆様方の活達なご意見をいただいて、さらに前へ一歩進めていきたい、そういう気持ちです。本日は、当然、選挙の後ですので地元でしっかりやらなきゃいけないこともいっぱいあるのですが、まずはこの会議に出席させていただいて、方向性をしっかり定められればと、共有できればと、そのように思っております。どうかよろしくお願いいたします。
○門田座長 ありがとうございました。政務官も、この検討会をいかに重要視されているかというふうにお聞きしました。本日の資料について事務局からご確認をお願いします。
○医療安全推進室長 それではお手元の配付資料につきまして確認をさせていただきます。本日の議事次第があります。そして、資料1「第1回検討会議事録」です。資料2としまして、メンバーの皆様方には、冊子でお配りしておりますので資料番号が付いておりませんが、「死亡時画像病理診断活用に関する検討委員会 第二次中間報告」及び「医療・医学における死亡時画像診断活用に関する検討委員会答申」ということになっています。資料3が「診療関連死調査と死後画像」、そして資料4が「小児医療の現場からの問題提起」、以上でございます。
○門田座長 ありがとうございました。いかがでしょうか、欠落等はありませんか。ないようでしたら、ただいまから議事に入らせていただきたいと思いますが、カメラ撮りはここまでということにさせていただきたいと思います。
それでは、前回の検討会では、事務局からの厚労省の取組状況の説明のあと、先ほどからもありますが、塩谷先生から「Autopsy imaging:死後画像診断の現状と問題点」について、山本先生から「Aiの現状について」をご説明をいただきました。今回は、先ほどもご説明がありましたが、日本医師会の今村先生から「医療・医学における死亡時画像診断の活用に関する検討委員会の答申」などについて。深山先生から「診療関連死調査と死後画像」について。これは、平成20年度及び21年度に実施した厚生労働省科学研究費での研究の成果ですが、その結果の報告。最後に、相田先生から「小児医療の現場からの問題提起」についてと。この順に従いましてご説明をいただきたいと思っております。それでは、先生方のご説明の前に、資料1について事務局のほうからご説明をお願いしたいと思います。
○医療安全推進室長 資料1ですが、第1回の議事録です。既に皆様方には内容をご確認いただきまして厚生労働省のホームページに掲載しているものですが、何かありましたら会議終了後、事務局までお申し出いただければと思っています。以上です。
○門田座長 今日中にということですか。いつまでにですか。
○医療安全推進室長 今日お気づきになれば今日ですが、もし今日中に間に合わなければ、また後ほどでも構わないということです。
○門田座長 もう既にお目通ししていただいているとは思いますが、何かありましたら、いまのようなことですので、事務局までお申出いただきたいと思います。
それではまず最初に、今村先生から資料2に基づいてご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○今村先生 日本医師会の今村です。本日は、日本医師会の取組みについてご説明させていただく機会をいただき、誠にありがとうございます。日本医師会では、本検討会の趣旨・目的と同じような目的で、2007年度に死亡時の画像病理診断の活用に関する検討委員会を発足させていただいて、いままで答申書を出させていただいております。本日は、2008年度と2009年度の報告書のご説明をさせていただきたいと思います。冊子になっていて、大変小さな字なので、パワーポイントでご説明できなくて大変恐縮ですが、頁を追って説明したいと思います。
まず下に、平成21年3月と書いてあるのが2008年度の報告書です。これは、主に医療機関で、特に救急の現場等でAiを既に活用しているという現状の調査を全国的な規模で行ったものが中心となっています。12頁までがその報告書の趣旨ですが、13頁以降に、実際のこのアンケートの質問の内容と全ての回答が出ておりますので、またお時間があればお目通しをいただければと思います。
概略について申し上げたいと思います。2頁をご覧ください。中ほどの「アンケート調査結果」のところで、病院の団体に協力をいただいて、6,150施設の病院に調査書をお送りしました。有効回答が2,450施設、その中で実際にこのAiを行ったことがある医療機関が35.8%です。以下、このアンケートの回答をいただいたところ、実施したことがあるという群をA群、したことがないというところをB群として、さまざまな設問というか問合せをしています。そのA群の方がどういうケースで行ったことがあるかというと、既に実施しているところでは、「治療中の患者以外の救急搬送後」というところが多く、治療を既にされている方、あるいは病院内での急変、病院内の自然死というのは、実際にやっていないところがもしやるとすれば、こういう状態で行いたいと。既に実施されているところは、やむを得ず救急の現場で実施していて、まだやっていないところで、もしやるとすれば、院内の死亡について行いたいということがわかります。
3頁の下のほうの「費用」です。これは、実施しているところのA群では、52%が自施設からの持ち出しだと、そのうちのほぼ8割は、すべてを自施設で賄っているということです。それから4頁の図2になります。これは、コストをいただいているとすれば一体どのぐらいの受領額かということを平均値で出したものです。A群のほう、つまり実施しているところが適正だと思う額と、まだ実施していないけれども、今後実施するとすればこのぐらいが適正だと思う額を比べてみますと、実際に受領している金額は、適正だと思う金額よりも安くなっていると。A群はb群よりも高い金額を適正だと思っておられます。これは、やはり実際に実施をしてみると、大変費用のかかる検査だということがわかると思っております。
同じように5頁の図4をみていただきますと、過去に20回以上Aiを実施したことのある施設は、A群全体、既に実施したことがあるけれどもそれほど回数が多くないところと比べると、やはり適正金額を高く設定する傾向がみられると。それだけ日常的に、こういったAiを実施しておられるところから見ると、やはりある程度費用がかかるものだということがわかります。6頁の図5なのですが、これはちょっと母数にばらつきがありますが、ケース別で、一体誰がその費用を負担しているのかというものを示しているものです。救急搬送の場合には、現状として遺族が支払っているケースがほかのケースに比べて多いという傾向がみてとれます。
7頁の図6ですが、一般施設で、主にCT装置に限ってのAiですが、そのときの問題点はどういうことがあるかというと、やはり「費用」の問題が非常に多いと。そのほかの問題として、法的な問題、死亡診断書の責任の所在、それから一般患者さんの目に付くということ、衛生・感染症、時間的・人員的な制約、撮影機器や読影技術といった問題がこの時点で挙げられます。こういった調査に基づいて、この2008年度は8頁にありますように、今後Aiをどのように展開していくかということで、「Aiセンターの展開」と「幼児死亡に対するAiの施行」について触れております。これに基づいて、今度は2009年度のほうに更なる検討を加えさせていただきました。
冊子を移って、平成22年3月、2009年度の答申をご覧ください。冒頭の2頁は、2009年度は改めて我が国における亡くなった方たちの遺体の取扱いの現状と問題点です。まず、医療施設内で亡くなられた場合、どういう取扱いを受けるのかと。それから心肺停止状態で搬送されてきた場合にどういう取扱いを受けているか。医療施設外でご遺体として発見された場合にどういう取扱いを受けるか。4番目に警察への届出・通報後にどういう取扱いを受けるか。5番目としてご遺族が警察に届け出た場合と。現状考えられる全てのご遺体の取扱いについての流れをここで触れさせていただいています。右側の3頁に、フローチャートで、現在のさまざまな法的な根拠に基づいて、どういった解剖が出されて、どういう書類を最終的に死亡診断書であるとか、死体検案書の交付であるとか、報告書、鑑定書といった全ての流れをこういったフローチャートでまず整理をして、Aiがどこの部分に活用できるのかということの判断をするための1つの材料として、整理させていただいています。
4頁ですが、もう先生方はご存じのとおり、日本の解剖の現状は、解剖率が非常に低くて、把握されている解剖率が2.8%にしか過ぎないということ、監察医制度のある地域が所在する5都府県の解剖と、それ以外の差が際立っていること、それから病理解剖も年々減少しているという問題があることを書かせていただいています。
5頁です。死因究明に関する問題と解決の方向性というものをいろいろなパターン分けで書かせていただいております。まず、医療施設内で予期せずに亡くなられた場合には、大変トラブルになりやすいと。決して司法解剖がトラブルの解決にはならないということを言っております。心肺停止状態で搬送された場合に、医師が体表から死因を判断することができず、結局、医療機関の負担で病理解剖が行われていると。医療施設外で死体として発見された場合の警察医の出動に対する対価や法医学者の減少の問題があると。診療関連死に遭遇したご遺族が警察に届けた場合に、警察が捜査することなどが挙げられています。こういった現状の中で、実際には多くの医療施設で、先ほど2008年度で申し上げたように、Aiが導入されていることを述べております。
5頁の1番下の段落を特に説明させていただきたいと思います。既に多くの医療施設でAiが導入されていて、Aiを行えば医師にとっては検案の手がかりとなり、所見があった場合にはご遺族に解剖を勧めやすいと。また、こういった像は保存されていますので、保存された撮像データを開示して、第三者が読影することも可能であると。データを開示することは、医療者の「隠していない」ことの意思表示であり、遺族の不信感を拭う効果が想定される。このことは医療者を遺族からのトラブルから防衛するのみならず、死因の究明を切望する遺族の希望を叶える一助となって、誰もが迎える死にとって、その原因が究明されない不幸がなくなることは国民の希求であると述べさせていただいています。
具体的にAiをどう活用するかという提言として、6頁にありますように、日本医師会としては、限られた人材、限られた財源の中でできることからやったらよいのではないかということで、まずは小児と心肺停止状態で救急搬送された患者についてAiを行うことを提言しています。小児の場合には、虐待が社会問題化しており、親の心情的な側面から解剖が拒否されるケースも多く、一方Aiならば拒否をされる親御さんもいないだろうということで、小児については全例Aiを行うべきであるということです。心肺停止状態で救急搬送された患者については、犯罪の見逃しや学術的な側面からもAiを活用すべきとしておりまして、それ以外でも医師が必要と判断した場合の積極的な活用を望んでおります。
7頁です。それでは一体、一人当たりの費用と全体としての費用をどれだけ試算すればよいのかということで、中ほどにあります小児に関しましては、我が国の2008年の小児年齢(0~14歳)の死亡数を見ますと、乳児(0歳)2,798人を含めて4,820人であります。日本医師会としては、一体のAiの費用を52,500円で試算しておりますので、これを全例に実施したとしても2億5,000万円という金額でこれが実施できると考えます。また、心肺停止状態で救急搬送された患者につきましても、これまた大変大雑把な計算になりますが、大体、心肺機能停止患者の搬送の内、1カ月後の死亡者数は約10万人です。そのほとんどが心拍が再開することなく搬送後まもなく亡くなられているということで、非常に荒っぽい計算で恐縮ですけれども、約50億円でこれが実施できると考えておりまして、この両者を国庫からの拠出で実施していただければと思っています。
4.むすびですが、医療現場におけるAiについては臨床医のみならず、医師だけではなく診療放射線技師も積極的に関わることが望ましいと。また、死後の画像読影の専門家がきちんと診断し、第三者の意見を聞くことができる体制を整えることが重要であり、そのためには専門家の育成、ガイドラインの策定、将来にわたってデータを統一的に集積していく必要があると考えています。全ての死体を検案できるというのは、いま現在は医師のみですので、医師はほぼ100%の死に関わっており、日本医師会はこういったいまのような提案について提言をさせていただきたいということでまとめとしております。ありがとうございました。
○門田座長 こういう詳しい調査が既に行われているということは、おわかりいただけたと思います。ただいまご説明いただきました件について、委員の皆さんからご質問いただきたいと思いますが、いかがですか。最初に、2008年のものについては、全部医療用の機器でもって行われているのですか。
○今村先生 病院団体への調査ですので、特にそういう特別な施設でということではなくて、病院に出したアンケートなので、医療用のものです。
○門田座長 問題の所に、感染の問題とかをチラッと触れられていたと思うのですが、そのあたりは、現場では徐々に増えてやられるようになってきているという中では、どういう扱いでもってそれが。
○今村先生 詳細までは、また、そういう問合せをして聞いたりということをしていませんので、あくまでこちらからの一方的な投げかけでのお返事で、どういうことが課題でありますかということなので、こう返ってきているのです。既に実施している所は、仕方なく、やむなくやっているということなので、何か体制を整備しているというよりも、救急の患者が運ばれてきて、原因がよくわからないので、とりあえずは原因究明のために撮っておきましょうということで撮っているものがほとんどで、あるいは警察からの依頼があるということです。まだ実施されていない所が、こういう問題があるから我々はなかなか簡単にはできないのだと、そういうものもだいぶ含まれているのかとは思っています。
○門田座長 委員の皆さん、ご質問をどうぞお願いします。
○今村先生 この委員会の委員長が池田先生でいらっしゃるので、補足をしていただければと思いますが。
○門田座長 何か補足事項がありましたらお願いします。
○池田先生 これは3年間にわたって日本医師会の諮問によって、今回はそこにいる山本先生も委員でいらっしゃいますが、3年間一緒にさせていただいきました。これはあくまでも医師の職能団体で日本医師会に対する提言ですので、一般的には臨床医の先生方、病院の最前戦で小児救急に携わっている先生、救命救急に携わっている先生方に、安心ということはないですが、そういうふうな場合の死因究明の一助として益になる提言という観点から提言をしたということになると思います。
ですから、全体の医療というよりも、いま申し上げたように小児救急の問題、小児の虐待の問題等の防止、救急医療において死因究明、病院における病態の解明とか、外傷病態の解明とか、そういうものに資する提言を日本医師会としてしたいということでしたので、そういうところに限って提言しました。この提言のいちばん問題になっているのが費用の問題と読影の問題ということになりますので、その辺を重点に提言させていただいています。
○足立政務官 質問といいますか、確認になると思うのですが、2008年度の部分で、A群とB群に分けた場合に、施行したことのない、つまりB群は、治療中の患者とか病院内での急変であるとか、要するに自院内でのことにかなり期待感がある。それに対して2009年度の提言の中で、当面以下の対象に行うべきというのが、小児と心肺停止状態で救急搬送された患者などと。1つは確認ですが、小児も心肺停止も、これは治療中の患者、あるいは関与していたというか経過中の患者というか、それも含まれているのか。そうでないとしたら、まだされたことのないところがかなり希望されているケースと、提言のところで違いがある気がするのですが、そこはいかがですか。
○今村先生 我々としては、小児については、全例、とにかく亡くなったときには、必ずしもCTに限ったことではないと思うのです。CTでわからないものもたぶんあるでしょうから、例えばレントゲンとCTを併用することもあるかもしれませんが、何らかの形で、我々の当初の想定は、院外でお亡くなりになったお子さんは、原因もわからないし、体表からだけではなかなか検案できない。それは解剖もなかなかご家族が同意できないから、そこはきちんと全例をやりましょうと。病院の中の場合には、ある程度診療の過程の中できちんと原因がわかっているケースについては、それを実施するかどうかについては、まだ私どもとしては、この中でそこまで触れているわけではないのですが、院外からの方については、少なくともお子さんは全例をやるべきだと言わせていただいているのです。政務官のご質問のお答になったかどうかわからないのですが。
○足立政務官 この前、塩谷先生が、入院中あるいは治療中の患者の最後の画像と亡くなったあとの画像、そこでチェックすることによって、かなり精度の高い診断ができるのではないかという話をされていた気がしますがね。
○今村先生 それは医学的には当然そうだと思います。病院の経過中ずっと撮っていたものと、亡くなったあとでどう違うかということで、実はそこに何か新しいことが起こっていることも当然あり得ると思います。それは医学的にはそういうことが病院の中でも実施されてもいいと思うのですが、その場合に外で亡くなって来られた方に、全例をその法的に撮って費用をどうするかという話と、また病院の中でのその部分をどう整理するかは、ちょっと違う部分があるかと思うのです。全例を撮るなら撮るということでやったほうがいいとは個人的には思います。
○今井副座長 いまのお話になって、院外から運ばれた方、それは全例をやってもいいと思うのです。塩谷先生がお話になったかもしれませんが、院内でずっときちんと画像診断も含めてさせていて、主治医もある程度死因も特定できている場合、そのあとにまだどうしても必要かは、十分に検討する域があると思います。
○山本先生 私が小児を設定した場合に、まず虐待を念頭に入れたというのがあるのです。その場合、私は全例を是非やってくださいという形で申出をしました。なぜかというと、Aiをやる、やらないを判断するのが、実際に患者を診る主治医の小児科の先生なのです。その先生がやるかやらないかを決めなければいけない。その判断が小児科の先生にあるとすると、やって何もなかった場合には問題ないのです。ただし、やらなかった場合に、後々になって異常が見つかってしまった。そうするとその主治医の先生は、「なぜあなたはやらなかったのだ」と判断されてしまう可能性があるのです。要は、誰がやる、やらないを決めるのではなくて、小児の場合は全例をやる。そうすることによって臨床の先生方を守ることも1つ側面としてあると思います。
○和田先生 小児に関しては、外からのは全例というお話だったと思うのですが、外からのものについては、いままさに山本先生がおっしゃったように、全例だということにしておけば、医療機関側の決定の負担を軽減できるということでいいのかと思うのですが、問題は院内の死亡ですね。
もちろん医師からみてこれはAiが必要だと思われる症例はあると思うのですが、やはりご遺族の意思、その決定を尊重しなくてはいけないだろうと思います。おそらくAiに関しては、解剖と違って、嫌だと、撮らないでほしいというよりも、むしろ撮ってくださいというケースが多いだろうとは思うのです。ただ、非常に微妙な感情の問題で、亡くなった直後にルールでAiを撮ることに決まっていますと告げたとしても、遺族の神経を逆なでする場合もあるかと思います。合理的に考えれば必要なのですが。病院の中で、ある程度対応の仕組みを整えておいて必要性が微妙なケースについては、遺族の判断・意思というものをどこかで汲みとる仕組みにしておかないといけないかと思います。
○木ノ元先生 平成22年3月の冊子の6頁、「Aiの活用に際しての提言」という中の下半分ですが、「以下の対象にAiを行うべき」で、?@「小児」とありますが、いまお話が出ていたところです。院外での小児に関して全例をやりましょうというご説明があって、ここに虐待との関係の記述があるのですが、気になる文章というか、この趣旨を確認したいのです。「Aiは非破壊的であるから親の理解を得られやすく」、次ですが、「Aiまで拒否する親は虐待の可能性が高いとも見なし得る」と書いてあるのです。これが気になりました。
いま和田先生がご指摘のように、お子さんが亡くなられた親御さんの気持になったときに、画像といっても放射線を当てるわけですので、中を透かして見られてしまうこともあるわけですから、いろいろな背景事情の中で、その親の気持としては、たとえ院外で亡くなった小児の場合であっても、撮ってくれるなという親もいるとは思うのです。その場合に、「虐待の可能性が高いと見なし得る」ということで、拒否する自由があまりないかのような印象を与える気もしてしまうのですが、拒否する自由は小児の院外死亡の場合にもあるということでよろしいわけですよね。それを確認しておきたいのですが。
○今村先生 この表現については、確かにおっしゃるとおり多少書き過ぎているという感じはあります。これはあくまで委員会から日本医師会に答申をいただいたもので、私が申し上げるのもどうかとも思いますが、それは先生のいまおっしゃったとおりかとも思います。
ただ、院外の方に実施する大きな趣旨が、虐待を見落とさないこともあるとすれば、そういった撮ってくれるなという方の意思を尊重することも大事だけれども、それを認めていれば、結局、虐待の方の見落としが出てしまう可能性も否定できないので、そこはできればきちんとご説明をして、全例の方に実施できる仕組みにしたほうがいいのではないかとは思っています。
ここの書き方が悪いからそれはというのは、確かにもう少し表現を改めたほうがいいかと。ただ、これは公の文章ではなくて、あくまでも日本医師会という民間団体の意見なので、そこはご容赦いただければとは思っています。
○相田先生 小児の現場は、当然、虐待の頻度の高いところを考えれば、頭の理屈ではこの提言も納得できますし、やるべきだと、私もやったほうがいいだろうということで、総論はわかるのですが、現場は全く準備ができていないし、たぶん小児科の先生は基本的にお忙しいですし、私もいままで「Autopsy imaging」ということは、名前だけ聞いているような雰囲気で現場の診療をやってきました。ですから、かなりその辺は、小児医療の業界、小児科学会をはじめ小児科医会とか、小児に関連する学会、および診療関係の人と説明をしつつやっていかないと、その方向ばかりに走ってしまうと、現場のほうが全然ついていけないという問題点があると思います。
いまご質問のあった、拒否する自由があるとなると、やるガイドラインはなくなってしまうわけです。それに関しては拒否したから、どういうふうにお話していいかを現場の小児科医に投げかけるのはすごくきついことだと思うので、ある程度の指針がないと、ただでさえ忙しい小児の現場は余計混乱すると思いますので、その辺も考えていただきたいと思います。
○池田先生 この文章を作った責任者として、いまのこの部分について釈明するわけではないのですが、提言自体は、全体を読んでいただくと、前段階のほうで死因究明制度に関する問題点を挙げて、その中で、小児の医療の現場では虐待が数多く散見される時代になって、小児科の先生方も虐待を見落とした場合にいろいろ責を負われる可能性も、そういう流れの中でこういう表現になったのです。
いまお話があったように、何らかの制度設計をする以上は、見落としが1つあってはいけない、あるいは見落としをなくさないための制度設計ということで、Autopsy imaging(非破壊検査)で、要するに解剖は拒否されるかもしれないけれどもという前段階の前提があって、その上でAiだったら全例に施行するべきだし、最低限そこはしてほしいという趣旨でこう書いたということになりますから、私も制度設計、あるいは何らかのことを決めるのでしたら、小児については全例施行ができるという制度設計にしていただきたいと思います。
○門田座長 今回のいまの資料については、これは日本医師会に対する提言として出てきたものです。ここから参考にして、最終的には我々がどういう形にまとめていくかということですので、いろいろな形でいろいろな参考意見や考え方をお聞きしておいていただけたらと思います。
その他いかがですか。医師会からのもので、国からの予算というか費用という形、これは実際はどういう考え方で国からという形が、現場は楽でいいのですが、その根拠はどう考えていったらいいのでしょうね。どこかが負担しなければならないというのは分かるのですが、どういう形でやっていくのかについては、何かその辺りのことのディスカッションはあったのですか。
○今村先生 制度として、先ほどから申し上げているように、こういう死因究明というか、死亡の原因をはっきりさせることは、ある程度国の責任だということをまず前提にしているのです。先進国として、そういった原因がよくわからないまま、あるいは体表の検案だけでほとんど死亡が想定されている、推定されている仕組みはおかしいのだろうということが前提にあって、国の責務としてまずやっていただきたい。
それをどういう形で実施するかというのは、これはいろいろな制度設計があるのだと思います。例えば、診療の中であれば診療報酬といっても、なかなか診療報酬自体もいま伸びがない中で、それは難しいかもしれないし、どこの財源でやるのかというのはあるのです。例えば、この中にも一部ご家族が救急の現場で支払っているケースもあって、それを誰が、どう、どの程度負担するのかは、今後また議論していただかなくてはいけないのですが、我々の考えとしては、制度として子どもは全例やることを前提に言っていますので、その部分については金額的にもそう大きなものではないので、国庫の拠出でやっていただきたい。
それから「現場が疲弊しないように」と、これはいみじくも相田先生がおっしゃった。そこで小児の先生たちが疲弊してしまうのでは、全く意味がないわけですから、我々は、きちんとした財源を確保した上で、人材もそうですし、いろいろな機器もそうですし、そういうものを整備した上で、国としてこういう制度をつくっていただきたいと、そういう提言です。
○門田座長 費用の面と診断技術、あるいはそのための人材育成制度ですか。
○今村先生 そうです。
○門田座長 このあたりは、さらに突っ込んで何らかの方向性とか案とかということは、ディスカッションはあったのですか。
○今村先生 ここまでの、こういうものが必要ですという最後のまとめのところで挙げさせていただいているので、例えば放射線の技師の団体とか放射線科の団体も委員会に入っていただいているので、それぞれの専門団体がそういったガイドラインを既におつくりになっているという実態もありますので、そういうものを活用していくことになるのかと思っています。
○門田座長 委員の方、ほかに何かご質問はありませんか。よろしいですか。先ほども申しましたように、これは1つの参考として我々の委員会とすれば、それをどう検討していくかと、また改めて細かいことについてのディスカッションを進めていきたいと思いますので、一応、今回はここで置いておきたいと思います。ありがとうございました。
その次は、深山先生から資料3に基づいてご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○深山先生 東京大学の深山です。今日、診療関連死調査と死亡時画像検査というか死後画像について、私どもが「診療行為に関連した死亡の調査分析」における解剖を補助する死因究明手法の検証に関する研究と、こうしたものを行って、その成果について説明していきたいと思います。
お話する内容ですが、診療行為に関連した死亡の調査の背景説明を簡単にしたいのです。その上で、班研究(2008年、2009年)を行って、あと、「マニュアル・ガイドライン」を作成しました。マニュアル・ガイドラインについては、ホームページからダウンロードすることが可能ですので、書き落としましたが見ていただければと思います。「humanp.umin.jp」です。
数枚を使いまして、診療行為に関連した死亡調査分析モデル事業に至る経緯を説明します。そもそもこのことは皆さんもご存じのように、平成11年の都立広尾病院事件があって、「異状死」届出を行わなかった場合に、刑事処罰の対象になり得るということで、医療事故に対するマニュアル等を作成して、21条に沿った届出を行うように指導したことに端を発して、病院でいろいろ混乱が生じてきたということになっています。
平成16年に内科学会・外科学会・病理学会・法医学会の4学会、基本領域19学会共同声明によって提言は行われて、警察に替わる第三者機関への届出制度の確立が必要であろう、「診療行為に関連した死亡の調査を行う中立的専門機関」が必要だと、こういうお話になってまいりました。それで2005年に、診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業が立ち上がって、本年からは日本医療安全調査機構がつくられて、こうしたモデル事業を行っているという現状です。
その際に、診療関連死はどういうものかについて日本学術会議の提言の中から拾ってまいりますと、合併症死、事故死、過誤死、こういったものを現代の医療では疾患が非常に複合的になっていて、診断、治療行為も複雑なものになっているので、即座に振り分けるのは困難であるという指摘があります。その死が担当医師にとって、合理性をもった上で、病死と説明できても、場合によっては自己の医療行為に関わる合理性の判断を第三者医師(あるいは医師団)の見解に求めるべきであると、こういう提言がされていました。
こういうことで、こうした枠組をつくろうという努力がされてきて、おおむねこのようなものが考えられているのではないかを私が勝手にシェーマしたものですが、安全調査委員会があって、診療関連死の届出があった場合には、調査解剖、並びに臨床医・評価医が集まって検討をすると。診療関連死のレビューを行って、情報公開、事例の再発防止に役立てたい。医療機関に対しては、再発防止、再教育といった仕組み、患者には説明と救済を与えると、こういう仕組みであっただろうと。ただ、問題として、届出の入口のところ、異状死の振り分けといいますか、異状死といいますと全部異状死だと法医学のほうから怒られてしまうかもしれませんが、届け出るものは何か、再教育システムはどのようにすべきかと、こういう点で多くの議論があって、現在とどまっている状態にあると理解しています。
ここで想定された調査解剖は、いろいろ誤解がありますのでここで説明しますと、こうした解剖の種類はいくつか異なっていて、病理解剖、司法解剖、行政解剖があります。こうしたものの対象と、そこに加わる人間、臨床医の関与の度合、情報開示の点、こういった点でいろいろ異なっているわけですが、私どもは、調査解剖は病理解剖に近い形態で行われるべきであろうと考えています。
これを図で、先ほど今村先生から詳しいシェーマ、フローチャートが出ましたが、本当に大雑把にまとめてみますと、犯罪死は司法解剖、その他の異状は行政解剖・承諾解剖という形で処理をされていて、病死は病理解剖ですが、その間に救急外来死や診療関連死が出てきた。救急外来死は、ざっくりいけば行政解剖にいくべきものかもしれませんし、この辺についての制度設計は、私がどうこうというわけではありませんが、法医学会では死因究明センターという形で統一的に行うべきだという提案がなされていると理解しています。
現在、モデル事業の中で、調査解剖を行ってから報告作成までの間に、どのようなプロセスを経てこうしたものが作られているかを説明したのが、この図です。依頼を受けてから解剖施設における解剖調査を行います。これは病理、法医、臨床の立会医という方たちが立ち会って、肉眼所見を基にした結果をご遺族に説明します。この結果を考慮しながら評価委員会をいっていって、最終報告書に行き、遺族、依頼病院に説明していくと、こういう流れで行われています。解剖調査の場合は、肉眼的に行った場合と同時に、またいろいろ標本を作成したりして、最終的な解剖調査報告書が、(g)という段階、あるいは(f)という段階で取り入れられていくという構造になっています。
現在の場合は、原則として解剖調査を行うのだという形で進められています。ところが、医学の「解剖調査」への抵抗感や否定感情があった場合、どうするのかと。解剖調査体制を構築できるのか。画像情報のみで十分に医療評価が行えるのではないか。遺体がない場合でも調査を行うべきではないかと、こういう議論がいろいろ出てまいります。そこで、「診療行為に関連した死亡調査分析」における解剖調査を補助する死因究明手法の検証に関する研究が始まったという流れになっています。
班研究の概要をお示しします。2008年度、主にシミュレーション研究、症例検討会などを行いました。次の3つは、2009年にかけて行ったものです。分担者、検討委員会、症例検討会を組織したということがここに書かれてあります。
最初に、診療関連死の状況を、簡単に皆さんにつかんでいただきたいということもあって、シミュレーション研究について説明します。これはモデル事業の公表症例、これはホームページに行っていただくと、そういう事例が現在は80例ぐらいあると思いますが、この当時41例を使って、臨床情報に基づいて解剖調査前にどのぐらい有用かの判断を下すシミュレーションを行ったということです。
(a、b、c、d、e、f、g)とある有用性の分類に従って、画像のみで十分である、解剖する必要はない、eは解剖が必要であるという形のシミュレーションで、解剖の必要が高いほうが赤、低いほうが青ということで示してありますが、事例についてはそこにありますように、実際の公表事例ですので、このような形のものをホームページで検討することができます。
この事例を分析して、そこに2方向クラスター分析の結果が書いてあります。横軸に並んでいる人たちは、参加された放射線科の先生方、病理の人、法医の人、救急の方が2人入っています。縦軸に事例の数が書いてあって、右の隅に事例の番号が振ってあります。見ていただきたいのは、症例の中にクラスター1、クラスター1.2、クラスター2と3つの大きなクラスターの症例群に分かれることを見ていただきたいと思います。もう1つは、これを拡大したものですが、放射線科医であろうが病理であろうが、この判断は非常に個人によっていろいろ違ってくるのだということです。それぞれの判断の事例が青と赤で表示されていますが、赤が高いほど病理解剖が必要だという人たち、青が必要なのは画像診断のみで十分だということで、横に出てまいりますのが、それぞれの事例についてずっと判断がこう書いてあるということです。
3群に分かれて、1つは、解剖数が必要だと予想されるのは、冠動脈のイベント、不整脈、敗血症で亡くなった症例であると。解剖調査で次に必要だと思われた症例群は、外科手術であるとか、産科の症例であると。画像検査のみで十分ではないかと予想された症例群は、大血管のイベントが起こった症例ではないかと。こういうふうに大きく分かれてきたわけです。
実際に実施を行って、私どもは主に死後にCTを撮って、そのあと病理解剖あるいは法医承諾解剖を行うことをして、比較検討をしていく。平成20年度は、教訓的症例を検討会において提示して討論をし、一致性、有用性に関する評価を行ってまいりました。このような評価基準を使って5段階評価で総合評価をして、病態解析や死因究明が可能であるかとか、1という段階のほうが死後画像の有用性が高く、5がどちらかというと死後像のみでは不十分であるというようなスコアを付けてもらう。それから、主病変、副病変、死因、病歴の有用性や生前画像の有用性なども含めて検討を行ったということです。
例えば、モデル事業の症例は実例で、これは死産で生まれた方ですが、詳しくは臨床経過を略してあります。死後画像においては、有用な所見はこの時点では得られなかったが、解剖を行ったところ、大量の羊水の吸飲と諸臓器の貧血が明らかになって、解剖調査のみではなかなか難しいわけですが、これに臨床経過を加えて、臍帯からの出血の可能性が考えられたということで、これは死後画像のみではなかなか不十分であったということに多くの方が賛同しているということを、そういう円グラフで示しています。
こういうことで検討会における議論の集約としては、死後画像における病変検出に関して、正確度の高い病変が確かに存在するということ。異状所見の死因に対する寄与を評価するためには、他臓器を含めた総合的な検討が重要だということ。こうした死後変化を含めた「画像上異状所見」、ならびに「画像上陰性所見」の正確度、それに関するエビデンスの集積が必要であろうと。こういう議論になってまいりました。
そこで平成21年度には、複数の放射線画像診断医が独立して同一の画像を読影して病理と対比する、こういう研究を1つ行った。多数症例、調査票を用いて病理所見との一致性、有用性を比較していただくことで症例を集積した。それに併行して以下のようなガイドラインとマニュアルについて案を作った。こういうことになります。
実際に行った症例についてお示ししております。ここに病理解剖、針生検のみの症例、法医承諾解剖、司法解剖、モデル事業解剖症例ということになり、私どもの所は、連続的にオートプシー室の隣に補助CTを設置し、ほぼ1年間にわたって全例を撮影し、病理対比をしました。症例が75症例集まっているということと、それだけ連続的に症例を提供できることがありましたので、東大の症例を基盤にして連続的に50症例、これを10名の放射線画像診断医に送って診断をしていただきました。簡単な臨床概要を与え、画像はすべてお送りしたということで、報告書を作成してもらうと、こういう取組みです。病理解剖のあとの主診断、副診断、代表的所見を取り出してきて、それがどのぐらい読影報告書の中に反映されているかをチェックして、正診率を算定する。同じ複数の症例に見られるものについては、病変の平均的正診率を求める。こういうことを行いました。
実際上の方法が書いてあって、10名に依頼をして戻ってきた報告書総数が349枚で、本来500名来ないといけませんが、大変お忙しい中で努力をしていただいて、平均7名が1症例について読影する。診断員5名から10名の1症例についてそれぐらいの報告書が集まってきたということで、50症例に見られた449病変について、どのぐらいの正診率であったかということを検討したというのが次の表になります。
例えば、大動脈解離という症例を見ていただくと、3症例あって、そこは正診率の範囲が86%から100%であって、平均正診率は92%であるということで、非常に良く診断されているということが言えます。腹水を取り上げると、腹水の量にもよるのかもしれませんが、29%から100%だけれども8割は正診率があった。ところが、この急性心筋梗塞という所を見ていただくと、4症例あって、0から17%の範囲内で、平均正診率は4%であったということで、こちらは死後CT画像ではなかなか診断しにくいような病変なのだというような、病変によって正診率の高いものと低いものもあり得る。
それをまとめたのがこの表になります。70%以上あったものと30%以下であったものを列挙して、ほぼ確実に診断できるもの、現時点では診断が難しいもの、これは現時点のCTを用いた場合に難しいものというようなことであります。難しいものとしては、全身性の感染症、血栓症、塞栓症、こうした心筋梗塞といったものがなかなか難しいだろうと。例えば、この事例として示しているのは、膠原病の患者で、発熱、倦怠感が出て、1カ月後に腹水でお腹が膨れてきて亡くなった方の死亡事例です。解剖をしてみると、粟粒性の結核で腹膜炎のあった症例です。実際上、肺には、血栓上の浸潤影というのは指摘できる方もいらっしゃいますが、難しい事例の方もいたというようなことで、例えばここの複数の放射線画像の診断医による読影結果の所を見ると、この粟粒結核の疑いということを指摘できる方は、10人中3人の方は指摘できたけれども、ほかの方は指摘しなかったということで、一定の難しさがあるということです。
次に、病理死後画像所見と病理画像の総合的な一致性と有用性について検討した結果をお示ししたいと思います。実際に対象となったのが、病理解剖や法医承諾解剖、モデル事業や司法解剖などで、それぞれ、それなりに死に一定の特徴があって、必ずしも一緒に全部分析するのは適当かどうかということは問題かもしれません。病理解剖についても、肉眼所見での評価にとどまったのと、これは時間が限られていたせいなのかもしれませんが、組織検査まできちんと行って終了したものまであって、多少、違いがあるということです。見ていただくと、例えば、上のすべての症例を含んだ形で行うと、ネクロプシーを除いているわけですが、大体、一致水準が1、2と高いものが24.3%であったということです。施設によって若干の異なりはありますが、3割から2割といったようなラインに入ってくる。組織検査まで終了して精度を高めたということになると、1,2の一致水準がおよそ21%である、こういう数値になっております。
この真ん中のものを用いて実際の分布を調べたのが次の円グラフになります。その1,2の水準が21%で、3,4,5と続いていく。4,5というのは病理解剖の必要性が、実際の解剖調査の必要性が非常に高いだろうと考えられるような度合である。それで、先ほど最初に有用性の検討をシミュレーションで用いたのですが、この一致基準と有用性の対応関係をお示ししたのがこの対応表になります。この1,2という所の2については、病理解剖による確認が必要であると私どもは考えますが、それはほとんど必要ないのではないかというふうに判断される方も一部にはいらっしゃると思います。一部の症例もそういう形で判断されるかもしれません。そうした形で分析をしてみると、解剖の必要性はほとんどないというふうにはっきり言い切れると思われるものが3%であって、このCの46%の間が色彩が多少異なっていますが、病理解剖による確認が必要であるが死後画像は有用であるというような形の判断になります。
ただ、先ほどのシミュレーションでお示ししたように、外科手術とか、そういう点での症例というのは、これは検討会の資料の中には載せてありませんが、右開胸で食道がんを手術した後、後縦隔の胃管挙上を行って、そのヘブも行って、10日後に出血をして亡くなった方です。死後画像では、この胃管に出血があるということはわかります。ただ、実際上、どのような形でこれが出血をしたのかということは、この局所を細かく分析していかないとまずいわけですが、当然、ここに噴門潰瘍が右鎖骨下動脈と腕頭動脈のここの所にできて、ここの血管を食い破っている像なのですが、こうした所の細かい分析も、実際上は外科手術の場合は当然必要になってくるでしょう。
それから、これは腹部大動脈瘤の手術の後、透析をされて、しばらくした後、急性大動脈解離になって亡くなった患者ですが、実際上は、大動脈解離で入院中に落ち着いていたときに亡くなったという症例で、死後画像ではここの右の前頭葉にデンシの低い所がありそうだというようなことはわかったという指摘がありましたが、実際上、大変ひどい大動脈解離と同時に、死亡の原因は全身にコレステリン塞栓がばら撒かれて亡くなったということが、死後解剖をすることによってわかったという症例です。
それから、この補足の所ですが、MRIを使用することによって、CT装置を用いた場合に比べて、一致率、有用性が向上した症例が、特にこの法医承諾解剖の場合に急死の例に多くあったということは非常に特徴的なことで、こうした行政解剖の対象となるような急死の症例に対しては、今後、このMRI装置などを用いた検索は続けていくべきではないかと考えられました。それから、私どもの解剖前の情報として、CT画像を用いることについてどのぐらい有用であったかというフィードバックですが、このような先ほど挙げた確度の高い疾患、粗大病変といいますか、そういったものを前もって認識すること。それから、占拠性病変の場合の一致情報の把握などに役に立ったというフィードバックはありました。
ということで、死後CT画像で病気の全貌がわかるわけではないだろうということは私どもがこの研究を通じて思ったということと、画像診断医の正診率の高い病変と低い病変があって、こうした点をしっかりとご遺族に説明して、有用性と限界を説明した上で、納得した上でご遺族もこの死後CT画像ないしMRIなどについて同意される場合はすべきでしょうけれども、死因といいますか、そういったものを非常に問題にされている場合には、確実な分析は解剖調査と臨床評価だということは述べてもらわないと、かえって、その情報を提供しなかったことになってしまうのではないかというふうに考えた次第です。
このガイドラインは、死後画像実施撮影マニュアル、あるいはこうしたものを院内で実施する前にいろいろな準備をしないといけないというふうに思われますので、「実施・撮影マニュアル」。それから、読影のときに、これは山本先生を中心につくっていただいたわけですが、死後変化を病変と誤認しないための「読影ガイドライン」とか、こういうものに対応した病理「解剖マニュアル」などを整理して、先ほどの所に分析表にしてあるということです。私どもの提言として設けたものは、ここに文書として書いてあります。以上、ちょっと駆け足でしたが、説明いたしました。
○門田座長 詳細に検討された結果をご報告いただきましたが、ご質問を受けたいと思います。いかがでしょうか。
○山本先生 追加で先ほど配らせていただいた1枚があるのですが、ちょうど深山先生が発表していただいた東大の症例2の内容です。今回、私が深山先生の班員として参加した研究の中なのですが、基本的には、病理解剖を補助するという形でお手伝いをすると。班員は5名いるのですが、放射線科は私1人という、なかなか難しい、なおかつ、そのとき私は、千葉大の講師でしたので、あまり強く言える立場ではなかったというのもご了解ください。
それで、この1例だけ、後でまた見直してみたのですが、死産のケースです。こちらのほうで、1から5段階評価というふうになっているのですが、この5段階評価が解剖でわからないという項目はないのです。あと、私たち、基本的に解剖は最終的な手段で死因究明には必要だというのは当然理解していますので、画像だけでわかるというおこがましい意見は、到底言えないというところも理解していただきたいと思います。そうすると、1とか2というのはなかなか難しいのですね。画像だけでそんなこと言えるのかというと、なかなか言えない。ただし、この症例に関しては、大きな項目だけ赤枠で囲みましたが、死後画像の評価の要点は、1つは脳が腫脹し、もう1つは肺に含気がなく、未呼吸の状態という意見がここで述べられているのですが、解剖も基本的には未呼吸で、脳軟化高度。私的には、たぶん、これは同じことを言っているのではないかと思うのですが、一致性と有用性の評価というのは、5の所が66%になってしまう。これはなぜなのかなと思ってしまうのですが、解剖でもなかなか結論が難しい、それをどうするのかという項目が抜けたためにこの評価が出てきてしまったのかなというのが1つあります。これは、私、放射線科の普通の読影医としての一意見です。以上です。
○門田座長 この辺りの評価法、いまご説明いただいたものが2008年の段階で、例えば放射線科の読影する技術というものが評価をされた後に、比べられたのでしょうか、それとも、いわゆる普通の放射線科のドクターに評価してもらったというだけのことなのでしょう。
○深山先生 そのCTを撮像して放射線科の方に読んでもらったと。ですから、通常のCT装置を使っているということで、特殊な画像診断装置を使ったということではありません。
○門田座長 診断装置もそうですし、診断者も特殊な教育を受けることなく、いわゆる普通の放射線科で診断のほうをやっておられる人ということですね。
○深山先生 班員あるいは協力者を見ていただくと、そこに載っていると思いますが、塩谷先生、山本先生を含む、たぶん5人までは放射線教室の教授の先生だったと思いますが、死後画像の専門家としては塩谷先生と山本先生が入っておられる。
○塩谷先生 私は、この班研究で読影のテストに参加させていただきましたが、通常、我々放射線科医が読影する画像というのは、前回の検討会でも言いましたが、来院時心肺停止状態で救急外来に搬送された後に亡くなられた患者で、亡くなられた直後にCTを撮影してその読影をするというような、そういう画像が多くなっております。今回の診療関連死調査で読影に回ってきた画像というのは、死後数日経ったものが非常に多い。あとは、通常は撮影をするときに腕をこのように挙上しますけれども、挙上していないような画像ばかりでしたので、死後数日経つとどうしても死後変化が出てくるために、読影が非常に難しいものになる。それで、どうしても死後画像の評価が低くなってしまうのだというふうに考えています。
○深山先生 先生、24時間以内に撮影したものです。
○塩谷先生 そうですか。それでも、モデル事業の症例は時間が経っているのですが、このテストの50症例は、ほとんどが病理解剖の症例で、亡くなってから24時間以内に撮影しているものです。ということですが、どうしても、亡くなった直後に撮ったCTと比べて、血管の中にガスが出てきますし、脳浮腫だとか肺の浮腫も非常に出てきまして、解釈が非常に難しいものになる。それで、私自身も、画像自体が解剖にとって代わるというふうには考えていませんが、大ざっぱにわかるというのは非常に大切だと考えております。あと、解剖する人にとってもガイドになるという意味では、提言とは少し違いますけれども、解剖が前提になっている症例でも必ず画像を撮って、ある程度全体を把握した上で解剖をなさるべきではないかと考えております。
○今村先生 ちょっと教えていただきたいのですが、16頁の先生のご説明の中で、もちろん、現時点では解剖と臨床評価というのがいちばん正しい診断になるのだと思います。もちろん、解剖でもわからないケースも当然あります。その中で、ご家族に説明をして、なるべく解剖を前提として、というお話だったように伺ったのです。当然、そうなのだと思うのですが、いま塩谷先生がおっしゃったように、その前に全例とりあえずやるということではなく、先生は、わかるものとわからないものがあるので、確度の高いものについては画像診断もあるかもしれないけれども、そうでないものは解剖だけをやればいいというご説明に聞こえたのです。それで、あくまで、これは結果的にこういう病気があった、だからわからなかったのだという、その事後の検証であって、亡くなられた後にはどういうことが起こっているかわからないので、とりあえず画像だけは撮っておきましょうということが可能なのではないかと思うのですが、その辺はいかがですか。
○深山先生 ここで私どもが想定しているのは、「診療関連死」であるということです。診療行為に関連して亡くなったご遺族が向こう側にいて、どういうようなことで亡くなったかということを医療側が説明するというそのテーブルの上でそういうものを、例えばこの死後画像というのはどのぐらいの有用性があって、これを撮ったらどのぐらいわかるのかという限界もきちんと説明した上で用いないと、ご遺族が非常に誤ったことを考えて、死後画像ですべてわかるのですかと。その説明で一旦は納得してしまうかもしれないし、あるいは後で不信感を増大させるかもしれない。だから、この持っているものの有用性をきちんと説明した上で、ご遺族との話合いに用いることは可能だろうと、こういうふうに私は説明したつもりだったのですが、言葉が足りませんでした。
○今村先生 こちらの聞き方の問題だと思うのですが、撮る方と撮らない方があるような制度なのかなということ。つまり、撮った後に、いま先生がおっしゃったように、ご家族にこの情報の正確性についてきちんと説明した上で、解剖も必要だからやったほうがいいのではないですか、ということの流れになっているのかなと。そこがわからなかったので伺ったのです。
○深山先生 例えば診療関連死において、どのような形のものをつくっていくのかということは、この委員会が関係しているのかどうかわかりませんが、多くは、調査委員会とかを院内でつくるにしても、ご遺族との話合いというのは非常に重要なファクターになっていると思います。ですから、その際に、診療の途中で亡くなったという状況下のご遺族に、また別の不信感を抱かせるようなことがあってはいけないと思いまして、その持っているものの有用性と、どういうことだったら全部わかるのかという疑問にきちんと答えるべきだというふうに考えたので、このようなことを提案させていただいたということです。
○和田先生 2点申し上げたいのです。まず、死因究明に関しては、私は素人でわかりませんが、Aiはもちろん限界がある。ただ、いろいろな先生方のお話を聞いていると、病理は病理でまた限界があり、法医は法医の解剖をしても限界がある。それぞれ限界があって、100%死因究明ができるということは、それなりにあるでしょうけれども、そうではない例も結構多い。ですから、いま先生がおっしゃったことは非常に重要で、Aiの限界というのはきちんと理解していただかないといけないし、同時にそれは病理の解剖でも法医の解剖でも同じことだと思うのです。そこは理解していただかなければいけないというのが1つ。
それから、ご遺族にとって死因がわかればもちろんいいのですが、予期しない形で亡くなったときに、病院側が「死因はわかりません」と言った段階で、ものすごく疑心暗鬼になってくるのだと思うのです。そのときに、例えば、Aiを撮らせてください、これはもちろん限界はありますと。だけど、撮った結果、消去法で、死因としてこれとこれの可能性はないことはわかる。だけど、まだほかの可能性はあって、それはよくわからない。こういう「根拠に基づいたわからなさ」というものと、何もないところで「わからないです」と言われて疑心暗鬼になるのと、これは大きな違いがあると思います。後の病理解剖なり法医解剖につなげていくということももちろん1つのシステムとしてありますが、AiはAiで、独自でも遺族との対話の中で、わからなさの質が違ってくるので非常に意味があることだと思います。
○木ノ元先生 質問なのですが、資料の12頁目に正診率という表があったと思うのですが、その下の表と上の表なのですが、下でほぼ確実に死後CT画像により診断される部分が70%以上という数字があって、31%から69%と30%以下という3分類されていますね。その上の表を見ると、「平均正診率」というものと「正診率の範囲」ということがあって、胸水とか腹水については平均正診率はかなり高いのですが、症例によっては30%を切るようなものもあるという、こういう理解でいいのですね。そうすると、この下の70、31、30というのは、平均正診率で分類されているという理解でいいわけですか。
○深山先生 そういうことです。
○木ノ元先生 そうすると、これは70%以上はほぼ確実にという話なのですが、その中に例えば、症例によっては29%になってしまうものが含まれているとすると、これは法律家的な発想から言うとどうなのかということがあります。要するに、死因究明というその究明の位置づけが、遺族の考えと医者の判断・考えと落差があるのではないかという視点と、もう1つは法的な因果関係の議論との間に落差があるのではないかということを十分認識しなければいけないと思っているのです。診療行為関連死亡といった場合に、ここで先生がおっしゃっている正診率というのは、おそらく、直接死因的な要素のことだと思うのですが、診療行為関連死亡でご遺族なりが何をいちばん知りたいかというと、診療行為と死亡との間の関連なのです。そこを法的な秤で因果関係という要件に当てはまるかどうかということを知りたい。法律家の助言を得てそういうことを知りたいという中で、この直接死因の正診率の数字が、あたかも診療行為と死因との間のかかわりについてそのぐらいの確率でわかるのですよというような宣伝になってしまうとすると、これは大いなる誤解を生むというか、極端なことを言えば、医療冤罪という最近問題になっていることの温床になる可能性があると私は懸念しているのです。その辺りのお考えを聞かせていただければと思います。
○深山先生 先生がおっしゃったように、そういう目でこのデータを見ると、必ずしも100%ではない症例が当然出てくるし、どの程度の確度でその診療行為との関連性を明らかにしたいかというご遺族の願いに、どの程度応えられるかということについて、その精度についてランキングが出てきて、おそらく診療関連死で、多くモデル事業で経験される症例については、非常に高い精度が必要なのではないかと私どもは思うので、そういう場合には、こうした解剖調査というものを行った上で、十分な臨床評価を行うべきだというふうには考えております。ですから、この表は、こういうものをもし用いて医療機関が説明をする場合に、すべてわかるわけではないし、得意な分野とそうでない分野があるというようなご理解のための一つのエビデンスとして出してあるわけです。病院側が、ご遺族との話合いで、ご遺族が満足されないものを提供してもしょうがないわけです。ただ、それを説明しないで、100%わかるというような形で説明をすると非常に危険であると。そういうふうに考えています。
○木ノ元先生 これは私の認識と、ここにいらっしゃる先生方の認識と違うところがあるのかもしれませんが、Aiと解剖と比べると、解剖の場合は、極端なことを言うと、死体を切り刻むということなので、ご遺体を損壊してしまうことになるわけですね。ですから、それよりは画像で見るほうが非侵襲的で納得が得られやすいということだと思うのです。解剖については確かにそうなのですね。ところが、いろいろなものを見ていくと、検査ということになってくると、死後のご遺体から血液を採取するとか尿を採取する、注射針で刺してというようなことがあると思うのですが、それはどうなのか。私が聞いた事例では、血液をご遺族の承諾なくして採った事例に関して、死体損壊罪ではないかということで病院が訴えられたケースがあるようなのです。
Aiの問題に関しても、先ほど少し述べたのですが、ご遺体に放射線を照射するということ。それが損壊になるかどうかは微妙とは思うのですが、死体損壊になるかどうかという議論と、死者のプライバシーの問題、つまり体の中を透かして見るということは、死者ですから個人情報保護法の問題にはならないのですが、死者のプライバシーの問題という議論を避けて通れないだろうと思います。だから、そのあたりの議論を度外視して、とりあえずAiという形ですべて撮りましょうという発想にいってしまうのは、法律家の立場からすると、少し危険ではないかという懸念を持っています。
○門田座長 この続きは別の機会にやりたいと思います。それでは、引き続きまして相田先生のほうからご説明をお願いしたいと思います。
○相田先生 今までの非常にきちんとした検討会や委員会での報告と違いまして、私のものは完全に現場でやっているもののAiに対する疑問点とか、正直申し上げて、小児の現場はAiの認識はまだまだです。うちの病院でやっていても、死後画像を頼まれないことはないのですが、全体でAiをやろうという雰囲気にはまだなっていません。それも含めてお話します。今回の私のこのプレゼンには、前の小児科学会の会長である横浜市大の横田教授をはじめとして、敬称は略させていただきましたが、以上の皆さんのご協力、ご助言をいただいております。
いまも申し上げたように、私自身はもうすぐ20年になりますが、小児病院で、一線として救急も含め、虐待も含めて現場の仕事をしておりますが、“autopsy imaging”という認識で死後画像をやった経験はありません。それが現場の小児病院では、ごく一部に先進的な方はいるかもしれませんが、現実だと思います。しかし、それでありながら、死後CT、死後MRI、死後エックス線写真の経験は実際は相当数あるのです。これを今はAiというふうにおっしゃっているのでしょうか、これをわざわざ剖検、病理画像という認識ではやっていなかったのです。これは現場のニーズがあったからで、その多くは、現実には死産で産まれたお子さんで、私どもの施設は周産期施設がありますので、胎児に異常があった場合には送られてきますので、残念ながら、1回も産声をあげなかったお子さん、蘇生はできたけれどもすぐ亡くなってしまったお子さん、こういう方は院内で産まれていて事件性もないので、本当の意味の死因究明ということでやっています。次のお子さんへの遺伝的な影響とか、きちんとしたムンテラが必要ですので、これはいろいろな形で撮っております。
診療関連死の死後CTは経験があります。特に、小児においては、今は小児虐待の問題が出てきていますが、これは日常的にいって毎日いらっしゃるわけではないのですが、日常的に診療としてやっています。どうしても脳死移植との絡みもあって、虐待は小児のAiではキーワードになると思いますが、一体小児虐待はAiで診断できるのかという問題があると思います。これは非常にアバウトなやり方で、私は生前の虐待は診断していますが、かなり有用だと考えております。
少し道が逸れますが、虐待に関しては、神奈川県警、警視庁を含め、1例だけ政務官の地元の大分県警からも頼まれたことがあるのですが、鑑定書も、先進医療もあるし、本当は書きたくないのですが、ただ、小児医療の現場としてdutyだと思ってたまに書かせていただいています。そういうときに他院のCTも見るわけですが、虐待で最も特徴的なのは頭部の損傷と骨折です。もちろん、腹部や肺にも損傷はありますが、それは普通の外傷とあまり変わりありません。死因の第一は頭部損傷で、硬膜下血腫が最も頻度が高いといいますが、虐待との関連が高い。当然、脳挫傷や頭蓋骨骨折があります。これは想像してもおわかりのように、血が出るわけですから、CTを撮ればかなりわかりやすいですし、脳挫傷もひどければわかりやすい。骨折は得意分野です。ただし、骨折に関しては剖検でもわかるかもしれませんが、この後で例を提示しますが、非常に微細な変化のある骨折があるのと、子どもの骨は非常に柔らかくて、大人の常識では診断できない骨折があります。つまり、その知識がないと診断できないということで、今回は大人を中心にやられている先生が多いと思いますので、具体的にどういうふうになるのかをお示しします。
これが、いわゆるShaken Baby Syndromeです。この画像は、1カ月で来たお子さんですが、非常に激しく揺すぶられて硬膜下血腫が半球間裂部にあって、ここには脳挫傷があります。これは19年ぐらい前の患者なのですが、前頭葉では皮質白質のコントラストがわかるのですが、この辺で真っ黒になっている状況で、これは典型的なShaken Baby Syndromeです。この子の頭蓋骨ですが、振られただけではなく、非常に暴力的にぶつけられているようで、大きな骨折があります。こういうのは画像診断が得意ですから、死後であろうとも、当然、診断できると思います。
ところが、これも乳児のShaken Baby Syndromeなのですが、当院に到着したときには、生前であれば誰でもわかるように、このように真っ黒というか、黒い所と白い所と斑になっているような画像です。矢印を付けたのが硬膜下血腫ですが、このぐらい少量であると、死後CTは見たことはないのですが、死後変化で脳が浮腫になってしまったら診断するのが難しいのではないかと想像します。この患者さんの場合も、これが出血かどうかが後で議論になったのですが、具合が悪かったので、やっと8日後にMRIを撮ったところ、これがT1強調像で、ここに血腫の信号が見られたので証明することができました。だから、こういう難しい症例に関しては、MRIも多少必要になる可能性があると思って症例をお見せしました。
次に、かなり診断に役に立つと思われる虐待における肋骨骨折です。このように、お子さんを振ってしまう場合には、頭はこのように振られるので先ほどのような損傷が起こり、加害者は通常の精神状態ではなく、いわゆる切れているような状態なので、小さい子どもの胸をギュッと圧迫することでいろいろな所に骨折ができて、特にこの後方の骨折はテコの原理で起こりますが、虐待に特徴的と言われております。
このぐらいは普通の画像でわかれば誰でもわかるのですが、残念ながら、誰でもわかるように、そんな何本も折れているとは限りません。このお子さんですが、上の肋骨の辺縁に比べてここがギザギザとなっています。たぶん、資料よりも生の画像を見ていただいたほうがわかるのですが、これは骨折です。こういうものに関しては、CTをやれば誰が見ても異常を拾い上げられるようになるということで、虐待骨折に関してはCTはかなり有用と考えられ、これは死後であっても有用性は変わらないと思います。
これは別のお子さんですが、骨に合わせて全身骨の一部として撮っています。これは第8肋骨の所に骨折があるのですが、少し変化があることは遠くからでもおわかりになると思うのですが、これは絶対に単純写真ではわからないです。こういうものもありますので、CTは肋骨骨折に関しては非常に役に立つと思います。
また、骨幹端骨折という言葉があって、これは小児虐待に非常に特異度が高いと言われています。ただし、この方はここは骨幹骨折です。骨膜反応が出ていて仮骨になって治りかけている。それだけではなく、ここを拡大すると、どこがおかしいのだと言われるかもしれませんが、ここの所がギザギザとしているのですが、おわかりになりますか。近い所にいらっしゃる先生はわかると思いますが、ここは線があって一層剥れているのです。これが骨幹端骨折というもので、剖検のときに触ったりしたのでは絶対に診断できないと思いますので、むしろAiをしないとわからない可能性のある骨折です。
また、これは虐待に特異的なわけではないのですが、こちらが折れていて、こっちの骨は大丈夫かというとそんなことはなくて、ここが出っ張っていますね。これはもう1本の骨も折れていて、ここが出っ張っているのですが、隆起骨折といいまして、子どもの骨は柔らかいのでボキッと折れないので、こういう特殊な骨折があります。これは剖検で、骨のここを剥いでもわからないのではないかというぐらい微妙な骨折です。こういうものもありますので、虐待をR/O(ルールアウト)するという意味であれば、Aiに関してはかなり力があると考えます。
いまはザッと虐待で期待できるようなところの画像をお示しした上で、こういうメニューでお話したいと思います。いま申し上げたように、読影には、いまのような小児解剖でお見せしたように、骨はまだ完全に骨化しておりませんで軟骨がたくさんある。その月齢、年齢における正常を知らなければ異常の診断はできないわけです。それから、疾患も年齢で特異性があります。虐待も、いまのように特殊な病態がありますので、この診断の知識がなければ、診断は当然できないわけです。
誰が小児のAiを読むのかという問題ですが、皆さん、先生方は医学生時代に、「小児は小さな大人ではない」と小児科で習ったと思います。ですから、いまのようなことを知っていないと、本当の意味で虐待のR/Oということはできないはずなのですが、私自身は小児画像診断の専門家と思って仕事をしていますので、寂しい話を申し上げます。現実ですが、日本小児総合医療施設協議会という団体があります。全国の小児病院と、大学に付随している小児施設などが加盟しています。29施設あります。その中で、ほぼ小児の画像を専門にやっていて放射線科専門医資格を持っているドクターがいるのは、全国でたったの14施設です。それで、数えました。その中で具体的に何人かといったら、ほとんど知っている先生があそこには何人ということで、25名ぐらいしかいません。これが現実なのです。そこのOBや引退された方や長く修業された方で、もちろん放射線科医にも、頭が専門だとか骨が専門だとかがありますので、それを除いて小児の頭から足の先まで対応できると考えられる先生が全国で何名いるか。これは約50名と考えてもたぶん多すぎると思うのですが、そのぐらいのレベルなのです。
そうなると、先ほどの隆起骨折のような微妙な所見とかも含めて、現実にどう対応できるのかというのは現場からはものすごく疑問に思っています。残念ながら、その14施設のうち、日本医学放射線学会に専門医修練機関認定されたのはわずか7施設です。つまり、専門医教育の中でも、小児を読める専門家を育てる環境が整っていないのです。これは、今回の専門医の修練施設の規定の中で、どうしても患者のマジョリティは成人ですので、小児病院が機関認定されにくい施設基準になったので、この辺も、医学放射線学会と考えていかなければいけないと思っています。もちろん、我々小児画像診断医が十分にその辺を発信しなかったことは反省しております。専門医教育で、つまり小児画像診断をどう学ぶかの指針のない現実で、これを増やさないと、Aiが軌道に乗ってもうまくいかないのではないかという心配を持っております。
事例ごとに小児の問題を挙げていきたいと思います。まず、院内死亡ですが、何人もの先生がおっしゃっているように、心情的には剖検はすごく得られにくいです。Aiであれば受け入れやすいし、もしAiの結果で予想外のような所見が見られれば、そこで、例えば頭も開けられて、胸も開けられて、お腹も開けられて、というのは親御さんにはあれなのですが、どうしても疑問点がお腹にあったらお腹だけでも解剖はいかがですか、ということもクッションになると思うので、やることは建設的だと考えております。これは病理解剖を前提としてやる場合でも、連携することができると思います。私は病理はやったことがないのですが、解剖はものすごく大変だと思うのです。そうなると、重点的にどこを見るかというスクリーニングに役に立てる可能性があると思います。
あと、これは、実際にうちの病院でも剖検が決まっていて、病理の先生が剖検の前に頭だけでもMRIを撮ってほしいと頼まれるときがあります。剖検の時間というのがいろいろあるので、昼のうちに撮ってほしいと言われると、「ごめんなさい、それは普通の患者さんがいるので夜ならば撮ります」と。この間もあったのですが、剖検が始まって、ほかの所を先にやっていただいていて、夜、終わってから、「空きましたよ」と言って頭のMRI検査をして、また剖検室に戻るというようなことは現実の現場でやっております。ここに書きましたように、いわゆるRespirator brain、もう脳死状態のような感じで、2週間も1カ月もrespiratorが付いていると、実際は脳軟化で、頭を開けるとドロドロの形態ということは皆さんもご存じだと思います。そういう場合、一応、先にCT、MRIを撮ることで、マクロの解剖学的位置とかがわかる可能性があるので、病理解剖と連携して画像をやることは意味深いと思います。
院内死亡でも、しばらくいてから死んだ方でも小児虐待の疑いが捨てきれない方はいらっしゃいます。これは、普通の状況でやると、親の同意が得られるかどうか。「かわいそうでそんなことできません」と言われたら、今の制度ではそのままです。当然、autopsyも同意は得られないと思います。ですから、何らかの指針で、「小児は全例やるんですよ」でもいいのですが、そういう指針がないと実際にはできないであろうと思います。
次に、来院時心肺停止の問題です。これは、当然、虐待に代表される事件性のR/Oなのですが、異常死の届出との関連があります。たとえ、ほとんど死んだ状態で来たお子さんでも剖検は得られにくいです。これは先ほどの話と同じです。警察に、先ほどの医師法21条で届けをしたら、本来、法律ですから、現状保存と警察の検死が優先となりますし、病院側の判断ではAiができなくなります。もし司法解剖と一体となってAiが施行されると、司法解剖というのは原則結果は非公開ですから、法医学の教室にCT装置があって、そこでAiをされることは私はいいと思うのですが、もちろん、日本は法律も厳しいですし、装置の管理とかで技師なり放射線科医の関与は絶対に必要だと思いますが、もしAiは司法解剖の中身とされると、遺族と蘇生に尽力した医療者側に、死因が知らされない可能性がないのかということを素人なりに心配しております。もしこれであれば、Aiをやっても死因究明という意味があまりなくなってしまうのではないかということを心配しております。素朴な疑問です。
次に、いますごく話題になっていました診療関連死なのですが、これは適用が基本的に成人の場合と全く同じです。ただ、この場合も異常死の届けをしたらどうなるのだろうかという不安はあります。非公開で知らされないのでは意味がない。ですから、当然、法医解剖は鑑定書になって、裁判資料になるので法律的にいろいろ難しい問題がありますが、もし司法解剖と一緒にAiをされたとしても、鑑定結果とか、読影結果は要らないので画像情報だけでも公開されれば、みんなに情報が公開されることになると思いますので、この辺の取扱いも私としては気になっております。
次に、脳死移植の問題です。もうすぐ改正臓器移植法が施行されて、15歳未満からの臓器提供が許可されますが、当然、これは小児虐待など、事件性による死亡児を臓器提供者から除外するということが重要になります。別に添えました資料の8頁です。これは厚生労働省の貫井班の分担研究で、「小児法的脳死判定基準に関する検討」で、虐待をどうやって除外するかということの検討がされています。その中の8頁にチェックリストというのがありまして、これは死んでいないお子さんにも適用できるのですが、画像に関しては2)の下のほうの枠ですが、頭部CT、必要に応じてMRI、頚椎MRI、全身骨撮影、必要に応じて胸部CTと書いてあるのですが、実際、脳死判定される場合というのは、挿管呼吸管理中ですし、もし脳死判定前にするのだったらAiとは定義的には言わないと思います。
脳死判定後に画像検査をするならAiなのですが、結局、やる画像は我々にとっては変わらないし、目的も同じなのですが、脳死状態、挿管・集中治療下の患児の撮影は実際に大変です。それなのに、こんなの[(スライド中の隆起骨折のこと)]もわかるような全身骨撮影をICUで撮れと言われたら、実際、たまらないと思うのです。北村さん、そうですよね。うちの技師に聞いても、それは勘弁してくださいと。状態が悪いですから横にもできなくて、こんな写真を撮るのだったら、これは提案ですが、連れてくるのは大変ですけれども、全身CTは、今のCTでしたら分の単位、下手したら秒の単位で撮れますので、thin sliceの再構成データを保存さえしておけば、経験はないのですが、協力者の埼玉小児の小熊先生とも電話で話したのですが、先ほどの骨幹端骨折も、このような隆起骨折も、たぶん、再構成のthin sliceの再構成、MPRというのですが、画像をつくれば診断できるだろうと、放射線小児の専門家としては想像しております。この場合に、撮って、例えば5?oとか10?oの厚いものを残してもらっても困るのです。よその病院でも3Dの再構成ができるように、thin slice0.5?oから1?oの再構成データを保存していただければ非常にありがたいと思います。
これは脳死移植に限りませんが、どんな状態でも全身CTは、ご存じかどうか日本というのは、CT、MRIの機械を世界一持っていますので、アベイラブルですし、簡便で有用で、thin sliceの再構成データを保存するというのはAiをやるときの原則としていただいて、それを公開するようにしていただかないと、画像はあるのだけれども後から再構成もできないということでは、Aiの意味が減少してしまうと思います。これは肋骨がたくさん骨折している3DCTですが、これは肋骨にはわかりやすいですが、我々放射線科医はこのように縦合成・横合成の薄い0.5?oとか1?oがいちばん診断能が高いと思っていますが、再構成データがあるとこういうものがいくらでも後からつくれますので、これは非常に重要なデータになると思います。
おまけになるのですが、子どもを亡くした親御さんへの配慮は非常に重要だと思います。先ほどから法律関係の先生方には配慮のこともおっしゃっていただいていますが、我々診療の現場にいると、ただ子どもを亡くすということは大変なことで、虐待が隠れているかもしれませんが、そうでない親御さんもいるわけで、「Aiをした≒虐待を疑われた」と絶対にならない配慮が必要です。ですから、この意味においても、Aiの指針が必要で、疑うからしますということでは小児医療の現場は混乱すると思います。この辺はご理解いただきたいと思います。それで、小児死亡では原則全例Aiを行う。これができれば本当に素晴らしいと思うのですが、小児医、病院はたまらないなとちょっと思いますね。家庭内事故や来院時心肺停止の死亡では全例ルーチンにAiを行う。これは必要だろうと思います。家庭内事故というのが、いちばん小児虐待が隠れている場所なので、目撃者もいないというか、親がそう言ったというだけでは、残念ながら、小児虐待は診断できませんので、これは、厚労省でも学会でもいいのですが、ある程度、「そういう指針になっているのですよ」と親御さんに説明できないと小児の現場はたまらないと思います。
ただ、先ほど申し上げたように、小児画像専門医の圧倒的不足の問題で、先ほどのような微妙な骨折もあるのに、「とても診断できませんよ」と診断の先生たちに言われると、みんな小児病院のほうに来てしまったり、山本先生の所には小児を読める先生もいらっしゃるので心配していないのですが、読みきれるのか、対応しきれるのかというのは、現実に私の問題としては不安です。いまのままでうちの病院でAiをほぼ全例にやりましょうということになったら、私を含めて、もうすぐ専門医になる人を含めて今は4人で診断していますが、やりきれません。この辺は現実です。
今後のことなのですが、皆さんおっしゃっていますように、死後特有の画像変化に関してエビデンスの蓄積は当然必要で、これは我々放射線科医と病理の先生、法医の先生と一緒で対比を行って積み重ねていくしか方法はないと思います。次に、読む側の問題で、Ai読影医を育て増やすということは将来的に非常に重要になってくると思います。ただし、死後診断の専門家として、最初から死後診断を専攻するということは医者の世界で現実的ではありませんので、基本は生きている人の画像診断になると思います。今日は小児に関してのプレゼンですので、小児放射線診断を増やさなければベースのある人はできません。この日本の現状ですから、具体的には小児にも十分に対応できる放射線診断専門医を増やすことで、そのベースには放射線診断専門医を増やすしかないと思っています。先ほど今井先生に伺って確認したのですが、日本の放射線科の診断専門医は4,000人台です。全国で稼働しているCTやMRI装置よりも少ないです。生きている人の画像診断でもキューキューの状態でやっています。これで「死後のほうまで専門でしょう」と言われてきたら、かなりきついことにはなると思います。制度的に読める人を増やすことは絶対重要だと思います。それで、今までも何回も出てきていますが、適用や施行のガイドラインがないと、本当に現場は混乱になると思います。
最後の項目になりますが、大人の世界でも同じなのでしょうが、小児病院は、保険点数が、最近は小児の加算とかが出ているのですが、例えば画像診断部門で言えば、CTをやります、幼児・乳児が来て、「はい、寝てください」と言って寝るわけがないのです。結局、鎮静をする、お薬で寝てもらうということになるのですが、今の医療制度では鎮静にかかる費用は検査費用に含まれるとして、一銭もお金が取れません。全身麻酔をかければ別なのですが、麻酔をかけてまでやるということは、成育医療センターでは少しやられていますが、現実的には日本ではほとんどやられていませんから。そうなると、静脈麻酔をしないと、うちの病院は忙しいですから、飲んだ薬でのんびり待っているわけにいかないのです。CT、MRIの件数がかかわっていますから。そうなると、強い静脈麻酔をします。呼吸を止めるリスクはあります。そんなリスクがあるのに一銭もお金をもらえないという現状でCT、MRIの検査は小児の現場でやられているわけです。小児科の先生、小児外科の先生、小児脳外科の先生の献身でそういうことが支えられて、技師さんも大変な技術を持ってやってくれているのですが、それが現状なのです。
それに、ましてや、死後の検査まで病院費用を持ち出して、技師さんも医者も、読むのも撮るのもタダ働きというのは、これはもう本当に勘弁です。うちの病院も4月から独法化しました。人によっては自助努力をしなさいという言葉を聞きますが、今の保険医療制度のままで小児の医療は自助努力には限界があります。最大限、私の同僚も頑張っております。ですから、今回、私、いちばん最初に言いましたように、Aiというものに対する専門の知識もありませんし、自分がやっているという意識もありませんでしたが、推薦していただいたことで、小児の現場がどういうふうに動いているのか、本当にそれなりの専門知識がないと対応できないということをわかっていただける発言の場になると思って、全く専門知識もないのに委員をやらせていただくことにしました。何か、まとまらない話で申し訳なかったのですが、ご清聴ありがとうございました。
○門田座長 小児の特色といいますか、どちらかというと、我々、成人ばかり相手にしていると、つい気がつかずに来ていることの問題点、そのほかのいろいろな問題点、最後には医療費の問題まで幅広いことになりましたが、どなたかご質問ありますか。
○山本先生 相田先生、どうもありがとうございました。全くおっしゃるとおりのことで、先生方の負担を増やさないようにするためにはどうするか、それが今回の目的の1つだと思います。そのためには、撮影と読影をまず分ける。撮影はきちっと技師さんが正当な料金をもらって行う。そのためのガイドラインをきちんと制定する。また、読影は、これは法医の先生と同じなのですが、すぐに人が増えるわけないのです。ですので、読める所をきちっとつくって、そこに読める先生を集める。なおかつ、今回は異常死の問題がありますので、ある程度即時性がある対応ができるような組織が必要だと思いまして、私は4月からAi読影の情報センターをつくりました。
また、そこの中には、ここの「ご助言・ご協力」の中にある小熊先生も入っていらっしゃいます。もう1人、小児の専門家の高野先生も入っていらっしゃいます。できれば、相田先生にも入っていただいて、そういった先生が1人ではなくて、2人、3人で鑑定を行う形の新しいAiの鑑定システムというものを今始めておりますので、是非、それが認められるようになれば、各施設に負担がかからないような形でAiをある程度実施できるということが可能ではないかと考えております。
○門田座長 確かに、おっしゃられるとおり、現実的にどう対応できるかというお話をおっしゃっていただいたと思います。
○足立政務官 相田さん、北村さんにお聞きしたいのですが、私も最近のMRIとかヘリカルCTとか、要するにデータの量の問題なのですが、これはthin sliceの再構成データを保存ということになるわけですが、撮っている現場はいいですが、現実問題、最大に見積っても50名という中で、ネットワークをつくって送る必要があるわけですね。その場合に、元のデータまで送る必要があるのか。それとも、それは元の場所に保存されてあって、つくられたものだけを送る形になるのか。全部送るようになるとすれば、実際にまたそこに費用が相当かかってくるという現実の問題があると思うのですが、それはどうなのですか。
○相田先生 北村さんの前に少しだけお話します。今、私、スライドで出したのですが、再構成のデータを保存しましょうと言っています。生データは無理です。もちろん、生データがいちばんいいのですが、それの保存はちょっと無理なので、0.5?oがいいですが、1?oでもいいので、再構成データをつくる。そうすると、だいぶ容量が落ちるので、それはCDとかであれば十分に運べます。回線となると、それは無理かなと思いますが、CD、DVDであれば十分に大丈夫だと思います。
○北村先生 thin sliceで撮影すると500枚とか1000枚となり、すごいデータ量なのです。それを現場に保存している。ただ、その画像の再構成をどういう形でつくるかとなると、診療放射線技師の目で作るわけです。その写真をどういう形で送るかというのが、今後の課題です。また、画像再構成の実際については、今後の技師の教育の内容になると思います。ただ、CD、DVDでとか、画像はそういう形で送るというのが、今、通常やっているものです。
○相田先生 thin sliceのデータがあれば、それを3Dマシンでまた作り直すことができるので、例えば私などでしたら、もちろん、技師さんが作ってくれた画像で見るのですが、疑問があれば「作り直して」とか、自分で作りに行きますので、たぶん、専門家になればそういうことをやるので、それが作れる元の画像を保持しておくことが重要だという話で、先ほどの提案になっているわけです。
○足立政務官 国会答弁でも、小児の虐待こそ画像が最優先されるべきではないか、それでしかわからない部分がある、という話をしましたが、現実ではCD、DVDでという形ですね。
○山本先生 Ai情報センターではネットを介して送ってもらっています。その場合、圧縮をして、またこちらで展開するような形で、CD1枚分600メガバイトでしたら、10分以内で実速で可能となっています。ですので、現実的にはある程度大容量でも対応できる体制はできています。ただし、それを蓄えるデータベース、サーバーの構築もしていますが、何分、お金がないので何とかしてください。
○池田先生 いまのお話は大変ありがたいお話で、例えばデータを送って読んでいただく場合に、先ほどの山本先生のお話では、読んで意見書あるいは所見をいただくという場合に、その所見を読んでいただく先生あるいは送られる先生が、最終的に利用するわけですから、何らかの法律的に守られていないと、情報が流出するとか、その情報を使って死亡診断書を書くとか死体検案書を書くとか、刑事事件あるいは民事事件に利用するということになった場合に、先生方に負担がかからないような何らかの法的な裏付けとか、そういうものも含めてこういう所で議論をしていただきたいと思います。
○門田座長 確かに、そのとおりだと思います。そのほか、いかがでしょうか。
○今井副座長 相田先生のお話にも出てきたのですが、現在、私たち放射線科医がAiの画像をどの程度読めるかということなのですが、私たちの所は深山先生の研究班に参加させていただいたので、CDで送っていただいた画像を見て、私たち放射線科医の中で検討していましたので、ある程度はわかりましたし、1時間置きに24時間撮ったりということもしまして、死後変化というものについてある程度理解はしてきていますが、それをすべての放射線科医に広げるにはまだ相当時間がかかる。私たち放射線学会としても、最近、Aiのことを取り上げていますので、少しでも広げていきたいと思っていますので、その底上げですね。診断は難しいですので、その底上げについては十分にこれからも若い人の教育をしていくべきかなと思います。
○門田座長 そのほか、何かありますか。
○隈本先生 今日は深山先生のお話を聞いて大変勉強になりました。Aiをしないのに比べてAiをやったほうがわからないことがわかってくる、それは、単純に、プラスになることなので良いことだということについてよくわかりました。科学的に研究をしてみると、Aiだけではわからないこともあるのだということもはっきりしているわけですね。
ここはAiをどうしていくかということを議論する場なのですが、同時に、病理医が足りないとか、解剖をやる法医が足りないとか、そういう職種を目指す人が少ない、そしてその少ない理由として、ポストがないとか、そういう非常に深い問題があるということを認識しなければなりません。Aiをやって、病理解剖をしたほうがいいですよというとがわかったのに病理医がいないとか、そのような病理を志す人が少ないというようなことがそのまま放置されていたのでは、あまり国民のためにならないと思うのです。是非とも、ここではAiをどうするか、導入するか、Aiをやる体制がない状態よりはあったほうがいいに決まっているというところでは私も賛成なのですが、そのお蔭で病理医不足とか法医不足というところの根本的な「人がいないという問題」を忘れ去られないようにしてほしいなということを、今日のプレゼンを聞いて思いました。
○門田座長 この点は医学界、医療界といいますか、本当に重要な大きな課題だと思うのです。民主党政権が医師数を1.5倍にするということをおっしゃっていただいているわけですが、実際問題、私も医学界として、医師会の先生方もそうだと思いますが、全体としてどうあるべきかということについて、本格的なディスカッションが必要だと思うのです。
1つ、ここであえて申し上げるとすれば、私個人的な意見なのですが、いまのご報告でもありましたように、非常に専門分化してしまって、たくさん領域が出てきて、ここは知っているけれども隣のことは知らないというものをつくってきたのも、我々医学教育の現場にいる人間の責任だと思う。だから、数が必要なのか質がどうなっているか、そのテリトリーをどうしていくのかという、もっと我々も真摯に反省しながらやっていかないと、医師が足りないから医師の数を増やすというふうなことだけでは解決はなかなか難しい。これはここの場のテーマではないのですが、確かに、おっしゃるとおりで、いろいろな場でご意見を出していただいて、是非、本質は何なのかということをすべきではないかと思います。
全体的な話になり、司会の不手際で少し時間も遅れましたので、一応、本日はここで審議を止めたいと思います。先ほど、今井先生からもお話がありましたが、このAiというものの、本当の意味でどこまでどうかということで、前回も話になりましたが、できることとできないことの限界と必ずそれなりの意義のあることということは皆さんお認めされていると思います。その辺りについて、先ほど今井先生におっしゃっていただいた医学放射線学会のほうの話、あるいは病理学会、法医学会のほうの学会としての取組みも含めて、今後、お話を聞かせていただいてこの検討会の方向性を進めていきたいと思います。次回、できましたら、いま申し上げたような学会のご意見を聞かせていただけたらと思っております。そういうことで進めていきたいと思いますが、事務局のほうで連絡事項、その他ありますか。
○医療安全推進室長 次回以降第3回ですが、前回、日程調整をさせていただいたものに基づきまして、現時点で8月3日~6日ぐらいの幅の中で開催を予定しています。メンバーの先生方にはご協力方よろしくお願いしたいと思います。
○門田座長 最後に、足立政務官、何かございますか。
○足立政務官 特にこれといってはないのですが、先ほどの最後の全体のまとめのような話の中で、人手不足の話がありましたが、だからこそここにオブザーバーとして警察庁の方に来ていただいている。それから、国家公安委員長の下に死因究明の検討会がある。そこにもこちら側からもオブザーバーとして参加をしている。できれば、全体としての人の問題も含めて、こちら側から発信して引っ張っていくような会議にできればなという気持で私は臨んでいます。その両輪で動いているということだけ申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
○門田座長 ありがとうございました。それでは、本日の検討会はこれで終わりたいと思います。
<照会先>
医政局総務課医療安全推進室
室長 渡辺真俊: | 内線2570 |
室長補佐 今川正三: | 内線4105 |
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