ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 職業安定局が実施する検討会等> 改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会> 第11回改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会 議事録(2014年5月27日)




2014年5月27日 第11回改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会 議事録

職業安定局雇用開発部障害者雇用対策課

○日時

平成26年5月27日(火)
10時00分~12時00分


○場所

厚生労働省専用第14会議室


○出席者

【委員】山川座長、伊藤委員、市川委員、北野委員、栗原委員、小出委員、塩野委員、武石委員、田中委員、富永委員、本郷委員、森氏

【事務局】内田雇用開発部長、藤枝障害者雇用対策課長、松永調査官、川村主任障害者雇用専門官、境障害者雇用対策課長補佐、寺岡障害者雇用専門官

○議題

1.報告書(案)について
2.その他

○議事

○山川座長

定刻を過ぎましたので、ただいまから、第 11 回「改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会」を開催いたします。カメラ撮りをする方は、ここまでとさせていただきます。

本日は、阿部一彦委員、阿部正浩委員が御欠席です。阿部一彦委員の代理として、森様に御出席いただいております。毎回お願いしておりますが、御発言の際は手を挙げて、お名前を言ってから御発言をお願いいたします。

本日は、「報告書 ( ) 」について御議論いただく予定になっております。事務局から資料が提出されておりますので、それでは境補佐より説明をお願いします。 

○障害者雇用対策課長補佐

事務局です。資料 1 について説明いたします。前回の研究会において報告書 ( 素案 ) について御議論いただいた際の、委員の皆様の御意見を踏まえて、修正したものとなります。修正箇所には波線~を引いております。順次御説明いたします。

1 ページの (2) 「基本的な考え方」についての 4 つ目のポツです。伊藤委員からの御指摘を受けて「社員」を「労働者」と修正しております。 4 ページの 3 の合理的配慮の提供に関する指針の在り方についての (2) 「基本的な考え方」についての 4 つ目のポツと、 12 ページ以降の別表においても、同様の修正を行っております。

6 ページです。マル2職場における合理的配慮の提供についての 4 つ目の○で、表現の適正化の観点から、「障害者は、事業主からの確認を待たず、事業主に対して自ら職場において支障となっている事情を申し出ることが可能であること」として、「差し支えない」を「可能である」と修正しております。

8 ページは、遠藤委員代理から、合理的配慮の内容に含まれないものを記載すべきと御意見があったことを踏まえ、 (4) 「合理的配慮の内容」についての 3 番目の○として、合理的配慮に当たらない措置の例示を追記しました。具体的には、「なお、例えば、労働者の日常生活のために必要である眼鏡や車いす等を提供すること、中途障害により、仮に配慮をしても重要な職務遂行に支障を来す場合に、当該職務を継続させること、などが合理的配慮として求められるものではない。」としてはどうかと考えております。

次に同じく 8 ページで、 4 つ目の○に「あらゆる企業」とありますが、伊藤委員の御指摘を受け、「あらゆる事業主」と修正しております。同様の修正を 12 ページ、「別表」の 1 つ目の○においても行っております。

同じく 8 ページの (5) 「過重な負担」についてで、北野委員からの御指摘を受け、判断要素の順番を変更しております。具体的には、素案ではオとしていた「費用・負担の程度」を、ウとして 3 番目にしております。また、イについては、「実現可能性」としておりましたが、遠藤委員代理の御指摘を踏まえ「実現困難度」として、併せて表現の適正化を図っております。ウの費用・負担の程度については、北野委員の御指摘を受け「当該措置を講ずることによる費用・負担の程度」と修正し、この修正に伴い、ただし書きを追記しました。カの公的支援の有無について、北野委員の御指摘を受け、「イ、ウについては、当該措置に係る公的支援」としております。 

9 ページの 1 つ目の○で、北野委員の御指摘を踏まえ、素案にあった「といった判断要素を踏まえ、」を落とし、「合理的配慮の提供に際し」を「当該措置の提供について」に修正しております。つまり、「以上を踏まえ、過重な負担については、事業活動への影響の程度、実現困難度、費用・負担の程度、企業の規模、企業の財務状況、公的支援の有無を総合的に勘案しながら、事業主が当該措置の提供について個別に判断することを指針に記載することが適当である。」としております。

9 ページの最後から 10 ページの冒頭にかけて、遠藤委員代理の御指摘を受け、「エ 障害者が職業における合理的配慮に関し相談したことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、周知・啓発すること」の例示として、「例えば、就業規則その他の職場における職務規律等を定めた文書に規定し、労働者に周知・啓発をすることや、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に記載し、労働者に配布等すること」を追記しております。

10 ページの「 4 おわりに」の 4 つ目の○で、阿部委員、伊藤委員、遠藤委員代理、北野委員、小出委員、富永委員の御指摘を踏まえ、「この他にも、障害者の就労の促進に当たっては、障害者と企業のマッチング機能強化、職場における障害者の把握、移動支援の在り方等、様々な課題があることから、行政において真摯に対応していくことが必要である。」を追記しております。事務局からは以上です。

○山川座長

ただいま事務局から御説明がありました報告書 ( ) は、前回の研究会での各委員の御意見、それから、事前にやはり各委員に御意見を照会した際にいただいた御意見を踏まえ、修正したものです。この報告書 ( ) について御質問、御意見はございますか。

○田中委員

日本盲人会連合の田中です。私が問題にしたいところが 1 点ございます。 (4) 「合理的配慮の内容」について、というところです。今、事務局から説明いただいた 3 つ目の○です。これは遠藤委員代理の意見に従ってということですが、「なお、例えば」ということで「労働者の日常生活のために」という文が 1 つあり、その次に「中途障害により、仮に配慮をしても重要な職務遂行に支障を来す場合に、当該職務を継続させることなどが合理的配慮として求められるものではない。」として、合理的配慮の内容とはならないというくだりが挿入されております。

私が問題にしたいのは、「中途障害により、仮に」という言葉です。この文章どおり考えますと、中途障害を負った方がいた場合に、事業主が実際には合理的配慮を提供しなくても、「仮に」合理的配慮をしたと仮定して、その仮定的に提供した合理的配慮の結果を事業主が予測して、重要な職務遂行に支障を来すと判断した場合には、事業主は当該職務を継続させることを求められないということになると、合理的配慮を提供しなくてもいい場合が、この指針に含まれてしまうわけです。

特に大企業の場合は、当該職務を継続させないということになっても、配置転換という問題が次に出てきます。ところがそういう余裕のない中小企業の場合には、この場合はもう従事させる職務がないということで解雇せざるを得ないという結論になる可能性もあるわけです。そうなると、合理的配慮をしっかり提供した上で、重要な職務遂行に支障を来すかどうかという点を適正に判断していただいた上でないと、このくだりは少し納得いかないと私は考えておりますが、この点について他の委員の方々からも意見を頂きたいと思っております。

○山川座長

今、御指摘のありました点について、ほかに御意見はありますか。

○栗原委員

今、お話いただきましたことは、内容的にはよく分かります。しかしながら、中小企業を対象に言われたような感じもするのです。大企業の場合は、いろいろな職種があると。例えば今までやっていた仕事ではなくても他の仕事に変わることもできる。しかし中小企業の場合は、それができない。もちろん何もやらないのではなく、できる範囲でさせてもらい、なおかつ仕事がうまくマッチングしないという場合には、やはり中小企業に対してそれ以上のものを求めるというのは、ある面では非常に酷ではないかという感じがいたします。

○山川座長

ほかに御意見ございますか。

○伊藤委員

伊藤です。私も田中委員と全く同じことを考えておりました。まず、この文章の中全体で、単なる「配慮」という言葉はおそらく初めて出てくるところであり、きちんと定義付けられた「合理的配慮」を行うことすら、これでは読み取れないという問題が 1 点あると思います。

また、それを「仮に」ということで、行ってもいない時点で事業主が判断をするということは、やはり適切でないと考えております。例えば、「合理的配慮をした上であっても支障を来すこととなった場合に」というような書きぶりにするなり、検討が必要だと思います。

○北野委員

田中委員と栗原委員は同じことをおっしゃっているのだと思います。どういう表記をするかということだと思います。栗原委員がおっしゃったのは、「仮に」という表記が、やってもそれが過重な負担になったりする場合ということだと思います。そうであるとすれば、仮にということで、何か仮定だけで実際に話し合ったりいろいろなことがなされないということが非常に心配で、話合いが一番大事ですので。ここはやはり、中途障害により、実際に話合いに基づいて合理的配慮を講じても、重要な職務遂行に支障を来す、「支障を来す」という言葉がどの程度のことを書いているのか、本当はわずかな支障でも何かすごくそうなるのかと。表現としては「重大な支障」ぐらいに書いてほしいのですが、そんなことを書くのは非常に大胆なと言われると、そこまでは求めませんが、やはり「中途障害により、実際に話合いに基づいて合理的配慮を講じても重要な職務遂行に支障を来す場合には、当該職務を継続させること」と、こういう表記にしていただけたらどうかと思います。以上です。

○山川座長

ほかに何かありますか。

○塩野委員

塩野です。今、お話が出ています「仮に」という言葉の意味ですが、実際に合理的配慮を行ってからでないと、事業主が重要な職務遂行に支障を来すか来さないかの判断ができないことになると、色々な合理的配慮があるかと思いますが、例えば、機器の導入や、設備の改善を行っても活用されない場合もあるのではないかと思います。その意味で、この「仮に」という意味は非常に重要ではないかと思います。

○富永委員

富永です。大変議論があるところかと思います。 2 点あって、 1 つは今、塩野委員が言われたとおりで、複数の措置があるときは、やはりそれのどれかに決めないといけない。一つを全部やり遂げてからでないと次の措置に移れない、というのは、無理な話ではないかと思います。エレベーターを作るという措置もある、段差をなくすという措置もある、いろいろありますが、エレベーターを作ってからでないと次の措置は駄目とか、そういうことにはならないはずです。だから、実際に措置をやってからでないと駄目だというのは、おかしいのかなと私は思っております。

あと、「配慮」という言葉だけになっている点ですが、条文などを見ると、「合理的配慮」については、「障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため」に必要な措置となっております。配慮をしても結局その重大な職務遂行ができないのなら、それは「必要な措置」にならないのではないかと思います。改善効果がない措置をわざわざ求めるのはおかしい、それはもう合理的配慮には当たらないのではないかと思います。

この文章の言っていることは「当該職務を継続させること」は無理だということなので、他の措置として何か合理的配慮、別の形での配慮を尽くすことになるのかと思います。何か措置を打っても全く仕事ができないという場合は、その仕事をそのまま続けさせることは無理ではないかと思います。

確かに、中小企業などでは、「その仕事」ができなくなれば解雇になるのではないか、というのはあるかもしれません。でも、それは非障害者の場合も同じであります。仕事ができない、全く労働契約の債務の履行ができない場合、労働義務を果たし得ない場合はそうなります。ただ、その場合にも直ぐに解雇になるわけではなく、業務の中身を何とか調整して、他のできる仕事があればそれを担当業務に移し替えたりできないか、とかいったことは、もちろん検討すべきであると思います。

○山川座長

本郷委員、お願いします。

○本郷委員

商工会議所の本郷です。中途障害のケースについては、事業主が思い込みで一方的に判断してはいけないというのは、そのとおりだと思います。しかし、配慮をしてもなお、重要な職務遂行に支障を来たすことが見込まれる場合には、当事者間の話合いの中で別の配慮の仕方を模索することもあり得るのではないかと思います。ただし、中小企業の場合は、どうしてもそのような形で配慮ができるかどうかは、個々の企業の状況に応じて異なるのが実情だと思います。その辺りは少し考えていただきたいと思います。

○山川座長

種々御意見をいただいております。 3 つぐらいに論点が分かれるような気がします。 1 つは、「仮に」ということの趣旨ですが、現実に種々の配慮を実施した上でなければいかないとすべきかということ。 2 番目は、やや関連しますが、意見を聞くといった手続的なプロセスを全く経ないで、一方的に決められるかというような手続との関連。 3 番目はワーディングの話と、 3 つぐらいあると思います。この点は、事前に御意見を伺った上での修正案ですので、それをお願いした事務局で何かありますか。

○障害者雇用対策課長補佐

今、いろいろと御議論いただいた点に関してですが、まず、ここの書きぶりの内容について事務局がどのように捉えていたかを説明いたします。ここは、合理的配慮を提供しても、元の仕事をこなすことができないと、通常、判断できる場合があろうかと思います。そういった、実際にやってみなくても、それは無理だとある程度お互いそう思われる、見込まれているような場合に、そういう状態にもかかわらず、元の仕事にひたすら戻してくれというようなこと、その元の仕事に戻ること自体が合理的配慮であるかといわれれば、先程来出ておりますとおり、あくまでも有効な能力の発揮の支障となっている事情を改善するものが合理的配慮ですので、それには当たらないということを再確認させていただいたものです。

ここは少し言葉足らずなのかもしれませんが、当然、あくまでもその元の仕事に居続けさせることが合理的配慮ではないと書いたということです。では、そこの仕事には戻せないけれども、何かほかの職務に就かせるとか、そういったような合理的配慮の検討は当然やらなければいけませんし、この事例はそれを否定するものでは全くありません。ただし、先程来出ておりますとおり、合理的配慮は企業の規模等、状況に応じて決まってくると思われますので、元の職務にそのまま戻すことができないとして、どのような合理的配慮をするのかについては、その事業の状況に応じて御相談していただくことになろうかと考えております。

「配慮」としたのは、この場合は、職場における支障を改善していない措置ということになってしまいますので、何かをやってもそれが結局結び付かないということですから、それを合理的配慮と言うとややおかしいのかなと思いまして、あえて「配慮」という言葉にしましたが、仮定の話でいえば、考えられる「合理的配慮」を何かしても駄目という意味でございました。そこは、そういう意味合いでこういう表現を使わせていただいたところです。

○山川座長

ただいま説明を受けましたが、何か更に御意見等はありますか。

○田中委員

いろいろ御意見をありがとうございました。事業主側の御意見は、よく理解しました。ただ、私が心配している点は、実は障害者というのはどうしても能力がないと見られがちなわけです。したがって、今まで普通に仕事をしていて、例えば視覚障害になったと。自分は、必要な機器、サポート機器などを駆使すれば仕事ができると思っている。しかし、事業主が、そういったサポート機器を仮に導入しても君は仕事ができないと判断した場合に、問題が起きるのではないかというところの懸念なわけです。したがって、確かに全ての場合に合理的配慮の提供を行わなければ次の判断ができないという点は、不適切だろうと思います。やはり合意点としては、北野委員が言われ、座長に御指摘いただいた手続のところを、話合い等の手続を含むような表記にしていただきたいと、私は思っています。

○山川座長

その他、特にありませんか。今、田中委員からも提案がありましたが、ここは、おそらくは、合理的配慮の現行法の規定の解釈の確認的なことを事業主向けの指針として記載するという位置付けになろうかと思います。そういう点からは、合理的配慮と考えられるものをいろいろ手続の中で検討しても、従前の重要な職務を遂行できないだろうというようなことになった場合には、それでもなおかつ従前の職務に就かせることは合理的配慮に含まれないというようなことの確認的な趣旨になる、そのようなものとして意味があるのかと思います。ただ、先ほど田中委員もおっしゃられたように、また私も申しましたように、あくまで、全く意向を聞かないで一方的に決定するというようなことではなくて、意向を聞くというような、既にほかの場面で書かれております手続の中で、先ほど申したような意味での配慮をしたとしても、重要な職務を遂行することもできないであろうということになった場合の事例として記載する、そのような趣旨を明らかにした上で記載してはどうかと思います。

また、富永委員からも指摘がありましたが、従前の職務に就かせることはできない場合であっても、ほかの職務に就かせるといったようなことも、合理的配慮の中身として検討する必要がある。これは、事業主の状況によって変わってき得るので一律には言えないかもしれませんが、その点の記載が現在のところありませんので、事業主の状況に応じて別の職務に就かせるといったような合理的配慮の検討は、別の次元の問題として必要となり得るというようなことを、追記してはいかがかと思います。

○北野委員

私は、座長のおまとめでいいと思います。

○山川座長

今のは口頭でのものですので、表記の細かい点はなお修文の必要があるかもしれませんが、そういう趣旨で御了解をいただければ、私に一任ということでお願いできればと思います。それでは、ほかの点について御意見等はありますか。

○伊藤委員

伊藤です。 3 ページの「差別の禁止」の所の募集・採用に関する部分の 1 つ目の○で、募集に際して、一定の能力を有することを条件とすることに関しての記載があります。ここの書きぶりを見ますと、一定の能力を有することを条件とすることについては、「業務遂行上特に必要なものと認められる場合」は差別に該当しない、という書きぶりになっているわけです。しかし、提供可能な合理的配慮によって、一定の能力の水準を満たすことが可能となる場合もあり得るのではないかと思います。そういう場合に、募集時に一定の能力を有することを条件とするのであれば、合理的配慮があり得るということを併せて示すべきことを明らかにしておく必要があるのではないかと思います。修文案をいいますと、「指針には」からの部分ですが、「特に必要なものと認められる場合は」とありますが、「特に必要なものであり、障害者が必要とする合理的配慮を確保しても、業務遂行が困難と認められる場合は」というような書きぶりをするなりして、合理的配慮があり得ると、それをもってして一定の能力を判断するのだということを書くべきではないかと思います。

○山川座長

ただいまのお話は、案の 3 ページの 1 つ目の○に関する、「一定の能力を有することを条件とすることについては」のお話でした。ほかに、何か御意見はありますか。

○北野委員

今の伊藤委員の指摘は、大事な所なのですが、この間、この議論をもう少しきちんとしておけばよかったのですが、当然、それは 3 ページの下から 3 行目、「差別に当たらない事項」の所で、「合理的配慮を提供し、労働能力等を適正に評価した結果として異なる取扱いを行うこと」ということは、これは差別に当たらないと。これは、当然、合理的配慮をして、ということが前提になっておりますので、当然、合理的配慮をして、実際に業務上特に必要なものが遂行できるかどうかが一番大きなところになると思います。今、伊藤委員がおっしゃったのは、必要、あるいは可能な合理的配慮の提供の下でという表記がない場合に、障害を持っている方が、表記の中でこういうことができる人と初めに書いてあると、合理的配慮のことについての表記がない場合に、その能力条件のみがボンと出てくるものですから、障害を持っている方、合理的配慮をしたらできる方の場合も尻込みされてしまって、折角できる可能性のある方が尻込みをして、合理的配慮に基づいて広く有能な障害者の人材を確保するという、新しい法律を作って有能な人材を確保し、広げるための法律ですので、この方々を確保することをこれのためにかえって狭くしてしまう可能性がありますので、今、伊藤委員がおっしゃったように、 3 ページの上から 4 行目の「指針には」という所で、「募集に際して必要な」あるいは「可能な合理的配慮の提供の下で一定の能力を有する」と書くか、あるいはその下の「遂行上特に必要なもの」の所に、合理的配慮の提供の部分も踏まえるか、あるいは初めの「募集に際して」という所で、募集に際しては、採用後の話合いの下で合理的配慮がなされることを前提にして一定の能力を有するということを考える、というような説明を入れていただけたら、働く方がもっと幅広く募集されるのではないかと思いました。

○山川座長

ほかに御意見はありますか。

○栗原委員

栗原です。言われることはよく分かるのですが、それをやっていますと、中小企業では雇用が進まないということになってしまうと思うのです。私はこの文言に問題があるとは思っていません。中小企業で例えば中途採用の募集をかけるということは、即戦力で募集をするわけです。ですから、例えば経理の人が今足りないから経理が欲しいという場合は、経理ができる人を募集する。それができない方を、少し勉強させてということは、まずやらない。そこまで余裕がない。ですから、ここに書いていることを一般的なもので見ていただいて、あとの内容については、できる所がやっていただければと、私はそう思っているわけです。ですから、これをあまり縛られるような文言を入れられると困るなという感じがいたします。

○山川座長

ほかにありますか。

○富永委員

富永です。 2 点ほどあります。 1 つは、これは条件を付けることがいいかどうかという話です。業務上特に必要と認められる場合に、その条件を付することができるかどうか、一定の能力を有することを条件とできるかどうかという話です。私の考えていた限りでは、合理的配慮とは個別的にその労働者について与えるべきものですので、条件を付ける段階では、どんな人が応募してくるか分からないのに、それについて合理的配慮を尽くせば満たすということは先に分からないので、「条件を付けることができるかどうか」というところでそれを考えるのは、おかしいのではないかというのが 1 点です。

もう1点、採用した人について合理的配慮を尽くすというのは、これはもう企業側の義務なので、それが書いていないからといって、「合理的配慮なしでできる人でないといけない」という条件が付けられたものと読むことはできないのではないかと思っております。ここで「合理的配慮なしでそういう能力がある人」と解釈するのは、そっちがおかしいのかなと思います。合理的な配慮を尽くして、そして能力がある人でしょうと、普通はそう読むのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○塩野委員

塩野です。この点について、少し意見を述べさせていただきます。募集・採用の段階では、ある意味、雇用関係がないという中では、合理的配慮の提供について、具体的な対応を想定した上で、当該募集条件を満たすかどうかを事業主が判断するのは、改正法の趣旨からある意味当然だと思います。その際、想定される合理的配慮は、募集・採用段階ですので、あくまでも事業主が、障害者の方との話合いの中で、具体的な内容を色々と伺いながら対応していくものだと考えます。

○山川座長

それでは境課長補佐、どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

この箇所について説明いたします。 3 ページの 1 つ目の○ですが、ここの書きぶりの趣旨について確認させていただきます。ここは、要するに事業主が求人をするに当たって、雇いたい人にはどういう条件が必要で、どういう能力を持っている人を雇いたいかという条件を付けることの是非についてのところであって、個別のマッチングの段階ではないということを、まず確認させていただきたいと思います。ですので、ここは要するに、求人に当たって条件を付することができるか否かについての検討の箇所です。

一方で、求人に付してある条件を応募者が満たしているか否かというのは、その求人に対して応募してきた障害者との間で発生する事柄ということを考えますと、段階が異なりますので、場面が異なるものを無理やりこの 1 つの文章に入れるというのは、なかなか意味が通じなくなるのではないかと考えております。

その上で、また確認させていただきたいのは、おっしゃるとおり、今回の改正により、障害者というだけで応募を拒否することは差別でございまして、求人の条件を満たしているか否かの判断に当たっては、どのような合理的配慮ができるかというような検討をしていただくことになろうかと思います。一方で、先程来出ておりますが、求人に付した条件が障害者にとってどのように影響するかは、正直言って分からないところがあろうかと思います。障害者の機能障害は、障害者によって様々ですから、事前にどのような配慮ができるかということは網羅的にはできませんし、あくまで個別のマッチングのときに当事者間で御検討いただく話であろうかと思っております。そう考えていきますと、やはり今回、法律上、合理的配慮の提供義務というものが事業主に課されたことは明確でして、そういう法律上はっきりしている中で、では障害者においては、求人に応募するに当たって、自分はこういう配慮があればこの条件を満たすことができるということは、障害者の方も積極的にきちんと説明いただく必要があるのではなかろうかと考えております。

障害者の方が合理的配慮がなされるかどうかを不安に感じられるということについては、先ほど富永委員からもありましたが、法律上明確になっているということ、それについては、行政としても、まさしく、ここにお越しいただいている障害者の団体の方々に対しても、障害者の方に対する周知について御協力をいただきながら、やはりこれからは、合理的配慮の提供が義務付けられているということを、行政として障害者の方々にお伝えさせていただくことが非常に重要であると考えております。

○山川座長

藤枝課長、どうぞ。

○障害者雇用対策課長

課長の藤枝です。若干補足させていただきますと、この研究会で差別パートを御議論いただいたときにも、確かに今、北野委員から御指摘があったように、条件を付けていると、それを見ただけで諦めてしまうとか、尻込みをしてしまうのではないか、あるいは、本当に特に必要な条件なのかどうか分からないのではないかというような御議論があったと思います。そのときは、それを踏まえて、やはり求人の内容について障害者から問合せがあった場合には、そこはきちんと事業主の方から説明していただく、こういう仕事でこういう条件が必要なのだということを話していただくことが必要ではないかという御議論があり、それを踏まえて、 3 ページ目の 3 番目の○ですが、「問合せ等があった場合は、事業主が説明することが、事業主と障害者の相互理解の観点からも重要である」という記載をさせていただいた経緯があったと思います。

今、境から説明しましたように、どういった配慮があれば自分はこの仕事ができる、というようなことも、話合いの中で当然していただくという趣旨ではないかと思っています。

○山川座長

御意見はありますか。

○北野委員

課長や境さんや富永委員のおっしゃったことはよく分かります。そのとおり、この合理的配慮の提供は義務付けられているので、合理的配慮の提供の下で一定の能力を有することというのは、当然のこととして含まれているということでしたら、当然のこととして「合理的配慮に基づいて、一定の能力を有する」という表記を最初の 3 行目に入れていただいて、別に何ら問題はないのではないかと。つまり、そこは表現として確認していただいたらいいのではないかと思います。それが 1 つです。

もう 1 つは、栗原委員の御指摘の中で、私は栗原委員のおっしゃっていることはよく分かるのですが、ちょっと誤解されているのは、つまり即戦力を求めていると。おっしゃるとおりで、一定のトレーニングが必要であるとか、一定の勉強をしてもらわなければいけないということは、合理的配慮の問題ではありません。合理的配慮というのは、一定のハード面、ソフト面で、今回の別表で書いてあるようなことをやっていただいてということにしても、時間をかけて、来てからまたトレーニングをずっと積んで、そこまでしないと、まだすぐには戦力にならないとか、そこまでのことではなくて、要するに、こういう配慮をしていただけたら即戦力として活躍できるということを前提に考えているということです。

○伊藤委員

伊藤です。今の事務局からの説明ですと、 3 ページの上から 3 つ目の所で、問合せに対して事業主が説明することが重要だということが明記されているということです。個別にどういう状況かという話までは多分できないのでしょうが、合理的配慮を行う余地があるという説明をするということなのだと思います。「合理的配慮を行うことを含め」あるいは「行う余地があることを含め」など、ここに「合理的配慮」という言葉を含めていただくことも、 1 つ考えていただければと思います。

○山川座長

ほかに御意見はありませんか。これも観点としては、こちらは 4 つになるのではないかという気がします。整理しきれていないかもしれませんが、第 1 は、個人的にはこれが重要かなという感じがしているのですが、冒頭で北野委員がおっしゃられたこととも関わりがありますが、条件を満たしたかどうかの判断については、合理的配慮の提供が前提になる、あるいは、合理的配慮をした場合にどうなるかというような点が前提になる。これは、 3 ページの下から 3 行目との整合性の観点からいっても、そうなります。実質的には、こちらはかなり重要なポイントではないかという感じがいたします。

2 点目は、事務局がおっしゃられて、富永委員も最初におっしゃった、 3 ページの 1 番目の○は何の問題かというと、条件の提示が差別に該当するかしないかという問題である。つまり、この箇所で書くとすると、合理的配慮の提供をした上で云々ということを記載しないと、差別として違法になるかという問題であるということですね。

3 点目は、ここも手続の関係で、今、伊藤委員からも若干お話のあったことですが、もともと募集・採用については、希望する措置を申し出るというようなことが要件になっております。そこで、相互にコミュニケーションを経る中で、具体的な合理的配慮の中身が検討されていくということです。そうすると、条件を満たすかどうかは、こういう配慮があれば満たすこともあるということを、事業主の側で受け止めて検討するという説明のプロセスが重要になるように思われます。

4 点目は、周知の問題です。もし条件として書くとしても、個別的なことは手続の中でしか決められませんので、ごく一般的なこと、つまり法律の文言どおりのことぐらいしか多分書けないであろうという感じがいたします。それは法律の周知の問題として整理することもできそうだということ。以上の 4 点ぐらいに議論のポイント、ないしは考慮事項が分けられるのかなという感じがしております。難しいところですが、まずは合理的配慮の提供が条件の判断の前提であることを明らかにするということはどうかと思います。

それから、先ほどの手続的な点で、伊藤委員の御提案のように、むしろ 3 ページの 3 つ目の○の所に、手続の中で、障害者側から、このような配慮があれば条件を満たすことができるというようなことを説明して、その中で合理的配慮を個別的に検討していくというようなことが、プロセス的な意味からいうと自然で、条件を付すること自体が違法かどうかというようなこととは別に、自然に読めるのかなという感じがいたします。

それから、合理的配慮を講ずる義務があること自体は、中小企業を含めて、あらゆる募集の際に共通の認識になるように周知を図っていくという整理ではいかがかと思っております。そのような趣旨を記載するということではいかがでしょうか。これも、先ほどと同様、細かな表記まで考えた上で申し上げているわけではありませんが、以上のような趣旨を書くということで、御異論がなければ、これについても御一任ということにさせていただければ幸いです。境課長補佐、どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

周知の関係の話は、 4 の「おわりに」でも、行政による様々な取組が必要だということで、いろいろな啓発活動などを書いておりますので、周知の関係は 4 の「おわりに」にある程度書いてあるということでもよろしいのかなと思ったところです。

○山川座長

特に、周知の記載位置まで、 3 ページの 3 つ目の○のなお書きにという趣旨は、私は考えていませんでしたが。では、そういう方向でよろしいでしょうか。

ありがとうございます。では、ほかの点についてもよろしくお願いいたします。

○北野委員

「別表」に関してなのですが、この前私が別表に関して、 2 つ以上障害を持っていらっしゃる方について、別表の最初の所で、何かそのことを表現の中で、例えば 2 つの障害を持っている方の場合は、 2 つの別表をそれぞれ参照していただいてということを表記してほしいと。つまり、障害が重複している場合には、それぞれの障害の配慮項目を踏まえて合理的配慮というものを考えていただきたいということを申しました。確かに、その表現だけでは、個別の条件の中で表にぴったり当てはまるかどうかは、それぞれ個別性が大きいものですから、障害の個別性の配慮の問題、個々の状況の配慮の問題と、もう 1 つは、今日、座長もおっしゃられている、手続的な、つまり話合いの中で決まってくるということが不明確だということもありましたので、別表の最初の解説の所に、「障害が重複している場合にはそれぞれの障害の配慮項目を参考にして、個々の状況に合わせた合理的配慮を企業主と当該障害者との話合いに基づいて講ずることが望ましい」というぐらいの表記で、つまり参考にされたらどうかなと。なぜそういうことを考えたかといいますと、当然、これはそのために作った別表ですので企業は参考にされるでしょうが、一方の障害しか企業の方が見なくて、ほかの障害のことを見落とされることはないと思うのですが、障害を持っている本人は、私は実はこういう障害もあるのですと話合いの中で言われた場合は、企業主の方が、そうですかと。その場合は、気が付かなかったほうの障害についても、一般的な配慮項目を参考にされて、これは参考に使っていただくために作ったものですから、別表の価値も上がると思いますので、そういう形で少しそういう表現を入れていただけたらどうかなと考えました。

○山川座長

この点について、御意見はいかがでしょうか。

○障害者雇用対策課長補佐

事務局です。合理的配慮は、おっしゃるとおり障害者の個々の事情と事業主側との相互理解の中で提供されるべき性質のもので、それは障害が重複しているかどうかという観点ではなくて、個々の障害者の障害の状況に応じているものと考えていたため、現案の注記においても、「合理的配慮は個々の労働者の障害や職場の状況に応じて提供されるもの」と記載させていただいております。そう考えますと、今、御指摘いただいた趣旨を踏まえますと、この個々の労働者の障害には、当然、重複障害は含まれるということですので、ここで重複障害が含まれるということを明記するというようなこともあるのではないかと考えております。

○北野委員

そういう形で入れていただけますか。

○山川座長

そのような形でご修正いただきたいと思います。ほかに御意見はいかがでしょうか。

○塩野委員

今、座長にまとめていただいた障害が重複する場合については、これまでも何度も申し上げておりますように、ここに重複するかどうかを入れるか入れないかによって、事業主側の対応が決して変わるものではないと思います。もし加筆していただくのであれば、職場や現場が混乱しないような形で表記等を工夫していただければと思います。よろしくお願いします。

○山川座長

混乱しない形でというのは、当然、そのようにしたいと思いますが、事務局でその辺りの表記の仕方については、先ほどお話があった以外に何か考えられることはありますか。

○障害者雇用対策課長補佐

おそらく、「個々の労働者の障害」の所に、重複障害を含むということで書かせていただいてはどうかと考えております。それは、もともと障害の状況に応じて、個別、具体的に話をされていくということですので、そこに重複障害も当然含まれているのだと、ある意味、当然のことですので、それを確認的に記載すると整理させていただければと考えております。

○山川座長

よろしいでしょうか。その他にもしありましたら、お願いいたします。もし、ないようでしたら、様々な御意見をいただき、おおむね議論は尽されたのではないかと考えます。本日も含めて、様々な御意見をいただきました。この研究会として、一定の合意は得られたというような形で、報告書を障害者雇用分科会にお示しすることが重要だと考えております。本研究会で様々な意見をいただきました。私自身がたまたま障害者雇用分科会の分科会長でもありますので、これまでいただいた御意見は、当然、議事録に残ることになりますが、これを分科会の場においても、必要に応じて御紹介をさせていただくことになると思います。

こういったことも含めて、本日、あるいはこれまでにいただいた御意見をどう報告書に落とし込んでいくかについては、本日については先ほど説明しましたような修正をする点も含めて、書きぶり等についても、私、座長に一任とさせていただければと思います。その上で、事務局に指示しつつ、最終的な報告にまとめさせていただきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。

よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、本日の議事は以上となります。報告書は、できる限り早いうちにまとめた上で、記者発表を行うことを予定しております。その日時については、事務局から追って御連絡いたします。先ほど申しましたような観点からの修正があることを含みおきいただきたいと思います。特段ほかにないようでしたら、研究会を終わるに当たり、内田雇用開発部長から御挨拶がございます。よろしくお願いいたします。

○内田雇用開発部長

雇用開発部長の内田です。この研究会は、昨年の 9 月から計 11 回、ほぼ 1 か月に 1 回以上、御多忙の中を御参集いただき、大変御熱心に御意見をいただきました。厚く御礼を申し上げます。

本研究会では、平成 25 3 月の障害者雇用分科会の意見書と、改正障害者雇用促進法を踏まえて、差別の禁止に関する指針及び合理的配慮の提供に関する指針の在り方について御検討いただきました。合理的配慮の手続などの指針に盛り込むことが必要な事項に関して、お示しをいただいたところです。私どもは、この報告書を座長から今後頂きましたら、労働政策審議会の障害者雇用分科会に報告書を報告させていただき、本報告書を最大限に尊重しつつ御議論をしていただくことを予定しているところです。

最後になりましたが、この報告書の「おわりに」にもありますが、障害者差別の禁止・合理的配慮の提供等が円滑に施行されるよう、行政による様々な取組が求められております。今後、私どもとしても、この研究会でいただいた御議論を踏まえて、一層力を尽してまいりたいと考えております。委員の皆様方からも、引き続き、様々な場面において御指導いただくことになると思います。今後とも、よろしくお願いいたします。長期間にわたり御議論いただきまして、本当にありがとうございました。

○山川座長

ありがとうございました。私からも、これまで研究会において、各委員の皆様方から大変貴重な御意見を頂戴しながら、議論を重ねてまいりました。その中で、皆様方からは非常に真摯な御意見と御対応をいただいたことに感謝申し上げたいと思います。皆様方一致して、この課題の重要さを認識されている、その表われではないかと思い、敬意を表させていただきたいと思います。

先ほど、部長の御挨拶にもありましたように、この研究会の報告書を踏まえ、今後の分科会での検討を経た指針策定に是非つなげていただきたいと、事務局にもお願いしたいと思います。このような形で、この研究会を終わりたいと思っております。各委員の皆様方におかれましては、非常にお忙しい中、精力的に御議論をいただき、誠にありがとうございました。どうもありがとうございました。それでは、終了いたします。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 職業安定局が実施する検討会等> 改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会> 第11回改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会 議事録(2014年5月27日)

ページの先頭へ戻る