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2014年2月24日 第8回改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会 議事録

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成26年2月24日(月)
14時00分~16時00分


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

【委員】山川座長、阿部(正)委員、市川委員、伊藤委員、北野委員、小出委員、塩野委員、武石委員、田中委員、富永委員、本郷委員、小林氏、森氏

【事務局】内田高齢・障害者雇用対策部長、藤枝障害者雇用対策課長、松永調査官、田窪主任障害者雇用専門官、境障害者雇用対策課長補佐、寺岡障害者雇用専門官

○議題

1.合理的配慮指針について2
2.その他

○議事

○山川座長

それではおおむね定刻ですので、ただいまから第 8 回改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会を開催いたします。本日は、阿部一彦委員、栗原委員が御欠席です。阿部一彦委員の代理として、森様に御出席いただいております。また、栗原委員の代理として小林様に御出席いただいております。

毎回お願いしておりますが、御発言の際は手を挙げて、お名前を言ってから御発言をお願いいたします。

本日は、議事次第にありますように合理的配慮の指針についての 2 回目で、「合理的配慮の内容」「過重な負担」の議論を行いたいと思います。事務局から資料が提出されておりますので、この資料の説明をお願いいたします。

○障害者雇用対策課長補佐

事務局の境です。それでは資料 1 について説明させていただきます。前回の研究会において次回、すなわち今回の議論とさせていただきました合理的配慮の内容と過重な負担について、ヒアリングで頂いた御意見をまとめ、それぞれについての考え方のたたき台を事務局のほうで用意させていただきました。

3 「合理的配慮の内容」についてです。日身連さん、脳外傷友の会さんから、具体的な事例を挙げるべき。経団連さんから、具体的事例を数多く並べることになれば、それを必ず実施すべき義務内容と誤解するおそれがある。また、具体的な事例を明記するにしても、障害者雇用に当たり数多く取り組まれているものが合理的配慮であることを周知することが必要との御意見。経団連さんと日商さんから、事業主が大きな負担を負うことになれば、かえって障害者の雇用が進まなくなるのではないか。中央会さんから、個別具体的な事例の列挙により個々の企業の負担になることも予想され、指針作成に当たって配慮すべき。また、ハードルが高い具体例を列挙すべきではないとの御意見。日商さんから、多くの障害者雇用の現場で定着しているもの、必要最小限の内容を示すことが肝要との御意見。連合さんから、障害の特性や職場において配慮すべき点についても記載すべき、との御意見を頂きました。

また、ヒアリングにおいて指摘されました事例については、別紙 1 にまとめておりますが、適宜、御参照いただければと思います。それらの御意見等を踏まえ次のように整理してはどうかと考えております。

資料 1 2 ページです。これまで条約上の用語を用いて合理的配慮と説明をしておりましたが、それはそもそも何かということで、職場における支障等を改善するために必要な措置が合理的配慮と位置付けられる。その上で、合理的配慮の内容に関する理解を促進する観点から、障害者雇用に取り組んでいる事業主が行っている配慮事例は別紙 2 にまとめておりますが、これを参考に多くの事業主が対応できると考えられる措置を事例として指針に記載することとしてはどうか。具体的には、別紙 3 の内容を指針に記載してはどうかと考えております。

この事例を書く場合に当たりなお書きで、合理的配慮は個々の労働者の障害や職場の状況に応じて提供されるものであり、多様かつ個別性が高いものであることを踏まえ、指針に記載された事例はあくまでも例示であり、あらゆる企業が必ず実施すべきものではないこと及び指針に記載されている事例以外であっても合理的配慮に該当するものがあることを指針に記載してはどうかと考えております。

ここで別紙 2 について簡単に御説明したいと思います。これは労働局において把握した障害者を雇用する上での配慮事例をまとめておりますが、多くの事業主にできるであろう事例を収集し、 300 人未満の企業の事例を挙げております。一部企業規模の影響をあまり受けないと思われる事例については、 300 人以上の企業の事例であっても掲載しております。その場合には、※を付けた上で人数を記載しております。ここで挙げている具体的な事例について主なものを紹介します。

例えば「募集及び採用時」については、障害種別に関わりないものとして、面接時に家族等の同席を認めるといったもの。聴覚・言語障害者であれば、面接を筆談により行うといった事例。 5 ページで内部障害であれば、面接時間が長くならないよう配慮するといったものがありました。

また「採用後」については、 1 ページに戻り障害種別に関わりないものとして、担当者を定める。視覚障害であれば、虫眼鏡を使用するため資料をコンパクトに作成する、危険箇所の確認をする。 2 ページで聴覚・言語障害ですが、指示書の作成、メールの利用、危険箇所の注意喚起など。 3 ページで肢体不自由であれば、入口の段差を可能の範囲でスロープ化する、机を壁側に配置して中央部分の動線を広げる。 5 ページで内部障害であれば、体調が辛いときの休憩や休暇の取得を認める。

6 7 ページは知的障害。業務マニュアルの作成や区切りのいいところで休憩を入れる。同じく 7 ページで精神障害は、 1 つずつ順を追って業務を指示する、体調を考慮し、希望する勤務日・時間を尊重したシフトを組む。 9 ページ発達障害であれば、指示を明確に出す、集中できる席に移動させる。 9 10 ページで難病に起因する障害であれば、トイレ回数が多いことの理解や通院に配慮した勤務シフトにする。同じく 10 ページで高次脳機能障害であれば、仕事内容をメモにして渡す、本人の体調に応じて業務負荷を変更するといった事例がありました。

次に別紙 3 について説明します。「多くの事業主が対応できると考えられる措置の事例 ( ) 」。「合理的配慮は個々の労働者の障害や職場の状況に応じて提供されるものであり、多様かつ個別性が高いものであることを踏まえ、ここに記載された事例はあくまでも例示であり、あらゆる企業が必ず実施すべきものではないこと及びここに記載されている事例以外であっても合理的配慮に該当するものがあること」と※を付けております。

その上で個々の事例で「視覚障害」は、募集及び採用時は募集内容について音声等で提供すること。採用試験を点字や音声等により実施すること。採用後は、業務指導や相談に関し、担当者を定めること。本人のプライバシーに配慮した上で、他の社員に対し障害の内容等を説明すること。これら 2 つはどの障害類型にも共通の事項として挙げております。視覚障害固有のものとして拡大文字、音声ソフト等の活用により業務が遂行できるようにすること。出退勤時間を柔軟に設定すること。職場内の机等の配置、危険箇所を事前に確認すること。移動の支障となるものを通路に置かない、机の配置や打合せ場所を工夫する等により職場内での移動の負担を軽減することを挙げております。

次に「聴覚・言語障害」で、募集及び採用時については、面接時に、家族等の同席を認めること。面接を筆談等により行うこと。採用後については、個有のものとして、業務指示・連絡に際して筆談やメール等を利用すること。出退勤時間を柔軟に設定すること。危険箇所や危険の発生等を視覚で確認できるようにすること。

「肢体不自由」で、募集及び採用時については、面接の際にできるだけ移動が少なくて済むようにすること。採用後については、固有のものとして、移動の支障となるものを通路に置かない、机の配置や打合せ場所を工夫する等により職場内での移動の負担を軽減すること。机の高さを調節すること等作業を可能にする工夫を行うこと。スロープ、手すり等を設置すること。体温調整しやすい服装の着用を認めること。出退勤時間・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること。

「内部障害」で、募集及び採用時については、面接時間について、体調に配慮すること。採用後については、固有のものとして、出退勤時間・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること。本人の負担の程度に応じ、業務量等を調整すること。

「知的障害」で、募集及び採用時については、面接時に、家族等の同席を認めること。採用後については、固有のものとして、本人の理解度に応じて業務量を徐々に増やしていくこと。図等を活用した業務マニュアルを作成する、業務指示は内容を明確にし、一つずつ行う等作業手順を分かりやすく示すこと。出退勤時間・休暇・休憩に関し、体調に配慮すること。

「精神障害」で、募集及び採用時については、面接時に、家族等の同席を認めること。採用後については、固有のものとして、障害の内容に応じて業務指示を明確にし、一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと。出退勤時間・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること。できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること。本人の状況を見ながら業務量等を調整すること。

「発達障害」で、募集及び採用時については、面接時に、家族等の同席を認めること。障害の内容に応じて、文字によるやりとりや試験時間の延長等を行うこと。採用後については、固有のものとして、障害の内容に応じて、業務指示を明確にし、一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと。出退勤時間・休暇・休憩に関し、体調に配慮すること。感覚過敏を緩和するため、サングラスの着用や耳栓の使用を認める等の対応を行うこと。

「難病に起因する障害」で、募集及び採用時については、面接時間について、体調に配慮すること。採用後については、固有のものとして、出退勤時間・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること。本人の負担の程度に応じ、業務量等を調整すること。

最後に「高次脳機能障害」で、募集及び採用時については、面接時に、家族等の同席を認めること。採用後については、固有のものとして、障害の内容に応じて、仕事内容等をメモにする、一つずつ業務指示を行う、写真や図柄を多用して作業手順を示す等の対応を行うこと。出退勤時間・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること。本人の負担の程度に応じ、業務量等を調整することを挙げております。別紙 3 は以上です。

次に資料 1 に戻ります。「過重な負担」についてです。資料 1 3 ページで、ろうあ連盟さんから、誰がどのように行うのかとの御意見。日身連さんから、財政的コストの面からの判断、業務遂行に著しい支障が生じるか等を判断要素と考えるとの御意見。日盲連さんから、企業規模、不可欠性といった指摘もありました。経団連さん、日商さんから、企業規模、財政状況、公的支援の有無、職務遂行への影響等を総合的に勘案すべきとの御意見。中央会さんから、事務所や工場等の構造やそれらが自己所有か賃貸かとの御意見。連合さんから、企業規模や企業施設の所有形態等を企業経営に与える影響を踏まえて個別に判断されるものとの御意見がございました。これらの御意見を踏まえ、次のように整理したらどうかと考えております。

過重な負担を判断する要素として、以下のようなものがあるのではないかと考えました。「事業運営への支障の程度」です。合理的配慮を講ずることによるその企業の事業運営への支障の程度が過重な負担の判断要素となる。次に「実現可能性」です。事業所の立地状況等により当該措置を提供するための機器や人材を確保することが可能かどうかが過重な負担の判断要素となります。

次に「企業規模」です。当該企業の企業規模が過重な負担の判断要素となります。「企業の経営状況」では、当該企業の経営状況が過重な負担の判断要素となります。「費用・負担の程度」で、費用・負担の程度が過重な負担の判断要素となります。次に「公的支援の有無」ですが、「実現可能性」、「費用・負担の程度」については、公的支援を利用できる場合はその利用を前提とした上での判断となります。

以上を踏まえ過重な負担については、事業運営への支障の程度、実現可能性、企業規模、企業の経営状況、費用・負担の程度、公的支援の有無を総合的に勘案しながら、事業主が個別に判断することを指針に記載してはどうかと考えております。事務局からは以上です。

○山川座長

ただいま、資料 1 について事務局から説明いただきました。御質問、御意見がありましたらお願いします。田中委員どうぞ。

○田中委員

日本盲人会連合の田中です。全体に関する意見として、 1 つ確認をします。先ほど事務局から、過重な負担のところで「事業運営の支障の程度」が 1 つの考慮要素だという御説明がありました。恐らく、事務局でも表現を随分苦労されたと思いますが、一障害当事者としては、障害者を雇用する場合にマイナスのイメージで捉えていただきたくない。障害者も 1 人の戦力として業績アップに貢献できるのだと。そのための合理的配慮であると。恐らく、ここに出席されている委員の先生方及び事務局も思いは一つかと思いますが、その点を念のため確認したいと思っております。

その上で、合理的配慮の提供の点について、私から 4 点意見を申し上げます。 1 つは、別紙 3 を見ると、全ての障害について「本人のプライバシーに配慮した上で、他の社員に対し、障害の内容等を説明すること」という項目が挙がっております。これは大変重要なことだと思っておりますが、障害の内容を説明することに加えて、必要な配慮はこういうものだという説明も、他の社員の方々に行っていただきたい。そこは 1 つ重要なことかと思います。「障害の内容等」とありますので、この「等」の 1 文字に必要な配慮ということも読み込むこともできるのかもしれませんが、例示ということであれば、「必要な配慮等の説明も行う」というような記載にしていただけたらと思います。

2 点目は、同じく別紙 3 で、各障害の記載はあるのですが、中途障害についての対応という点がありません。中途障害の場合、新たに障害者を雇用する場合よりも、社内の雰囲気や制度に習熟しているわけなので、採用を維持することについては企業側にも十分なメリットがあると考えます。どういった項目を挙げるかというと、 1 つ考えられることは、リハビリ的な勤務体系を考えてもいいのではないかと。一旦、中途で障害を負うと、障害に対応する時間がかなり必要になります。障害を背負ってしまった本人も、有給を使い切っただけで十分対応ができるかは疑問です。ある程度の休職期間を置く、あるいは復帰したときに、給与はもちろん減額になっていくとは思いますが、ある程度勤務時間を短くするなり、少しずつ復帰に向けた対応を合理的配慮として考えていただけたらと思います。

○山川座長 

4 点ということですが、先ほどの確認の点も含めて事務局からお答えしていただきたいと思います。最初の確認の点は、正に確認という御趣旨で、障害者の方々が企業にとって戦力となり得るというのは、私も個人的には共通の理解であろうと思ってはおりますが、そのほかの点もありましたので、事務局から何かありますか。境課長補佐どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

1 点目ですが、障害者雇用が支障であるということではなくて、過重な負担という判断要素を考えるに当たって今のような表現にしております。当然、障害者雇用が負担であるという考え方に立った表現では全くありません。これは、差別禁止部会意見書においても、業務遂行に支障が生じるのかといった書きぶりもありますが、恐らくそれもそのような考え方に立ったのではなくて、過重な負担を説明するときにこのような用語を使っているだけだと思います。ほかに良い表現があるかどうかは、また御議論いただければと考えております。

合理的配慮について、今 2 点ほど御指摘いただいておりますが、「本人のプライバシーに配慮した上で、他の社員に対し、障害の内容等を説明すること」の部分については、必要な配慮の説明もあるのではないか、という御指摘かと理解しております。障害の内容を説明するということは、この人はどういうことが苦手であるといったことの説明になるので、そういったことはなかなかできないので配慮するということも表裏一体の話ではないかと思っております。それをもって読めるということにするのか、  例示として付け加えるのかについては、また御議論をいただければと考えております。

次に、中途障害についての記載がないのではないかという御指摘がありました。中途障害については我々も考えたのですが、先生がおっしゃったような復帰して働くときに短時間勤務のようなことをするといったことは、中途障害であろうが最初から障害者の方であろうが、体調に配慮して業務量等の調整をすることは、全障害類型には書いてありませんが、一部の障害類型には明確に書いております。そのような内容は、中途障害だから必要になるというよりも、中途であろうがなかろうが必要となるものという考え方で記載しております。そのため、中途障害についても目配りしたものと考えております。

前回、合理的配慮の手続の御議論をしていただきましたが、その際にも、採用後についての手続きに中途障害があることをはっきり明記しているので、それらについては書いているものと思っておりますが、ある障害類型ではこれでは読み切れないとか、固有の問題があるかないかについては具体的に御議論いただければと考えております。

○山川座長

田中委員、今のお答えへの御発言をなさいますか。 3 つ目、 4 つ目についての御発言でも結構ですが。

○田中委員

取りあえずお答えいただいたので、 3 点目と 4 点目について意見を述べたいと思います。

3 点目、 4 点目は、同じく別紙 3 で、個別障害に関してです。視覚障害者の募集及び採用時のところですが、点字や音声等により試験を行うという記載があります。視覚障害で一番苦しむのは、点字や音声試験を行ったときに、試験時間が足りなくなる点なのです。公務員試験等々は 1.5 倍、あるいは 2 倍という延長率があるので、試験時間にも配慮していただきたい。これについても「点字や音声等」とありますが、「等」に読み込めるのかどうか、例示ということであれば試験時間の記載も御検討いただきたいと思っております。

4 点目は、聴覚・言語障害のところです。これも募集及び採用時の部分ですが、「面接時に、家族等の同席を認めること」とあります。本来なら聴覚障害委員の方に意見を伺いたいところですが、家族の同席というよりは、むしろ手話通訳者なり要約筆記者の同席のほうがニーズが高いのではないかと思います。この点は、日身連の森委員にも御発言いただきたいと思いますが、気になったので意見を申し上げます。

○山川座長

それでは、お名前も出ましたので、森代理、いかがでしょうか。

○阿部 ( ) 委員 ( 森代理 )

日身連の森です。実は私も、家族の問題は少し抵抗があるのではないかという感じがしていました。もし、障害者の全員の人たちに言うのならいいのですが、特定のところだけ言っているのです。どういう意味だかよく分からない。これは勤めるということですから、成人だと思うのです。その成人のところに家族をわざわざ入れるのは、余りうまくないのではないかと。「コミュニケーション補助者」とか、そういう言葉のほうがいいのではないかという気がしておりました。点字についても、時間を入れなければまずいのではないかと思っておりました。

また、誠に失礼になるかも分かりませんが、別紙 3 を読んで感想を言うと、日本に合理的配慮の規定を持ってきた意味が、これでは弱いのかなという感じがします。中小企業等も保障しなければいけませんが、大企業もあるわけですから、こういう言葉でいいのかなという感想を持ちました。

○山川座長

追加的に御感想も頂きました。先ほどの田中委員の御要望との関係で、表現、あるいは例示の意味に関わる点もありましたが、事務局から何かありますか。境課長補佐どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

1 点目の試験時間の問題ですが、発達障害については試験時間の延長等を行うことと書いております。これは我々も御指摘をいただいていたので書いております。ただ、これは多くの事業主でできるかという問題なので、改めて明示的に入れるかどうかは御議論だと思いますが、こういったことを書いてあることからすれば、視覚障害のところに入れるというのは 1 つ御判断としてあり得るのではないかと考えております。

家族等の同席については、ニュアンスとしてどうだったかということは反省しております。ただ、おっしゃっていただいたとおり、聴覚障害の方であれば、コミュニケーションの補助という意味で「家族等の同席を認めること」を書いております。その関係で、障害類型によってややニュアンスが違うのですが、具体的な事象として出てくるのは同席ということなので、狙いとしては、コミュニケーションの補助という観点で、何らかの同席があってもいいのではないかという考え方でした。

率直な感想ということで、厳しい御指摘も頂きましたが、私どもは別紙 2 を作るに当たって、日本の企業は障害者雇用に真摯に取り組んでいただいているという評価もできるのではないかという思いも抱いております。大企業もというお話がありましたが、合理的配慮については全ての事業主ということで、中小企業も含めた全ての事業主にその義務が課せられております。また、御検討いただいている指針自体が全ての事業主を対象としているという問題もあります。そのような合理的配慮の仕組みや指針の性質を念頭に置いた場合、多くの企業で実施できるものといった観点が必要なのではないかと考えております。いずれにしても、別紙 3 において事務局が示した事例が適切かどうか御議論いただければと考えております。

○山川座長

それでは、これから更に御議論いただきたいと思いますが、何かありますか。

○北野委員

私から 2 つ申し上げます。 1 つは、 2 ページの「職場における支障等を改善するために必要な措置が合理的配慮と位置付けられる」と。正にそうなのですが、余りあっさり書いているので、雇用促進法の改正があって、 36 条の 3 項の表記で、障害を持つ労働者の方が持っていない方と均等な確保及び能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者等の配置とその他必要な措置が、合理的配慮であると書いてあるので、そこをもう少し明確にしていただきたいと思います。

2 つ目は、これは表現だけの問題だと思いますが、つまり、 4 つ目の○の「あらゆる企業が必ず実施すべきものではない」という表現は、企業が必ず実施すべきものではない、やらなくてもいいというネガティブな表現に読めるので、ここは表現としてもう少し工夫が要るのではないかと。「あらゆる企業が必ずしもそのとおり実施すべきものではない」といった表現をしてもらわないと、必ずやるべきではないと読んでしまうと、やらないほうがいいのではないかという表現にも読めるような気がするので、表現の仕方だけの問題ですが、そこを工夫していただければと思います。

○山川座長

この囲みの中の表記は、本日の議論のために簡略化して書かれている部分がかなりあろうかと思います。また、例示ということは、先ほど来の 2 つの意味があって、限定されないということと、常に必ず必要になるものではないという 2 つのバランスをどう取るかということがあって、このような表記になったのかもしれません。工夫の余地はあると思いますが、何かありますか。境課長補佐どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

今、座長がおっしゃったとおり、 1 点目もまさしく法律に条文がありますので、実際の指針等に書くときにはもっと丁寧に書くことになろうかと思います。やや端折ってしまった面があったかと思います。

2 点目は、北野委員がそういう意味ではないとは思うけれどもとおっしゃってくださったとおり、そういう意味ではありませんが、そのように読まれかねないという御指摘だと思いますので、どのような表現ができるのかは検討させていただければと考えております。

○北野委員

よろしくお願いします。

○山川座長

表記については、先ほど来の御指摘も含めて更に御検討いただきたいと思います。

○伊藤委員

伊藤です。 1 つ質問ですが、資料 1 の「合理的配慮の内容」の中で、別紙 2 を参考に別紙 3 の内容を指針に記載してはどうかということで、今日、御提案があったと理解しております。その別紙 2 を参考に、多くの事業主が対応できると考えられる措置を記載してはどうかというお考えだということです。

確かに、以前ヒアリングでも、経済団体からは多くの事業主が取り組むことができるようなものを例示として掲げるべきという趣旨の発言が出されていますが、今回の別紙 2 の「配慮事例」という資料で、都道府県労働局において把握した事例というのは、およそ全部の労働局から聞いている事例なのでしょうか。多くの企業で行えるような措置というのが 1 つのポイントのようなので、把握された事例の中で複数の事業所で取り組まれているものをピックアップしているのでしょうか。今日お示しいただいた資料からは読み取れないので、別紙 2 からピックアップして別紙 3 になっているということについての御説明を、もう少し丁寧にしていただきたいと思います。

○障害者雇用対策課長補佐

別紙 2 については、全国の労働局などに障害者雇用対策課から質問を投げて収集した事例です。多くの事業主を考えるときに、中小企業かどうかを 300 人で判断するということがあるので、 300 人を 1 つの目安にして別紙 2 にまとめております。

申し訳ありません。局は 11 局をこちらから指定した上で行っております。先ほどの答弁は訂正します。それは、ある程度事例が集まるであろう所を選択しております。別紙 3 については、別紙 2 そのものというよりも、別紙 2 を参考にということで、別紙 2 をある程度事例の具体例、相場観として意識しながら、別紙 1 における障害者の方々からの御意見等も見ながらまとめたものです。

○伊藤委員

伊藤です。そうなると、別紙 2 だけにとらわれずに、事務局で総合的にこれまでの議論等を踏まえて別紙 3 を作られたということだと思います。今日以降の議論が、また別紙 3 に反映されるということだと理解しました。

○山川座長

御質問、御意見等はありますか。

○市川委員

JDD ネットの市川です。私は印象として、全てが負担であるという前提に立っているのかなという気がして、残念に思いました。田中委員がおっしゃったのも同じで、これは給料分働くようにするという発想だと思うし、もらう側もその分を働けるようにしていただくという前提であれば有り難いと思っております。

また、事例をたくさん挙げることは、かえって不都合になるという御発言もあったかと思いますが、特に新しい障害については事例をたくさん知っていただかないと、そもそも理解をしていただけないということがあるので、是非そこは御判断いただきたいと思います。これまで十分支援がなされているのだから、その延長上でやればよいという考えも前回出ていたように思いますが、障害そのものが知られていない場合は新たな支援を考えていかなければいけないわけですから、これも少し違う考えに立っていただけたらと思います。

私は発達障害のほうから出ているので、別紙 3 の発達障害の所を見ると、「面接時に、家族等の同席を認めること」と書いてあります。「等」についてはジョブコーチなどを考えているのだと私は理解していますが、必ずしも全員がということではなくて、必要な場合という前提で書いていただいていると理解しております。

文字によるやり取りや試験時間の延長というのは、この間お話したかもしれませんが、現在、センター試験の場合、申請して認められれば試験時間の延長、あるいは別室受験、更には特別な字、活字が大きくなければ駄目な場合ということで、受験が可能になっております。センター試験で認められた場合は、本番の大学入試も全部認められるようになってきております。これは、海外のこういうことに対する障害者への対応を踏んでやっていると思います。そうなると、今後、就労の場においても似たようなことを考えていただけたら有り難いと思っております。

また、発達障害の場合、非常に個別性が高いのと、外見でよく分からないところがあります。採用後の所にも、感覚過敏を緩和するため、サングラスの着用や耳栓の使用を認めてほしいと書いてありますが、これは基本的には視覚が過敏か聴覚が過敏かということで、これ以外にもマスクが必要な方がいたり、手袋をしないと接触覚が過敏だという方もいます。

今日配っていただいた資料 1 の「過重な負担を判断する要素としては以下のようなものがあるのではないか」ということで幾つか出ていますが、ここに書いてある問題の中で、いろいろな所に出てきていますが、費用が掛かるので中小企業は大変だということがよく出てくるように私は理解しております。発達障害等については、決して新たな機器が必要ということでもないし、特別な人材というよりは、理解していただける人材が増えればうまくいくわけです。過重な負担を判断する要素として、この中でどれが当てはまるかと先ほども考えてみたのですが、 1 番がどうかなという程度で、ほかは余り変わらないということで、障害もいろいろな種類があることを前提に考えていただけると有り難いと思います。目の前にいる人は、障害でくくれないような、みんな違う問題を抱えていると思いますので、是非その辺りは御配慮いただきたいと思います。

○山川座長

幾つか頂きましたが、何かありますか。

○障害者雇用対策課長補佐

「負担」という用語が残念であるということですが、これは大変申し訳ありませんが、条約もそのような表現になっておりますので、御理解を賜れればと考えております。

事例をたくさん挙げるということですが、一方で事業主から見ると、余りいっぱいありすぎても何が何だか分からなくなる面もあるのではないかと考えております。先日来、この研究会の場でも申し上げておりますが、指針とは別に事例集のようなもの、特に障害理解を進めることも非常に重要であると考えております。これは合理的配慮の提供以前の問題として、そもそもどういう障害があって、どういった特性をお持ちなのかを広く周知していくことは、行政として非常に重要な事項であると考えておりますので、そういった局面でしっかりやっていかなければいけない事項だと考えております。

家族等の同席ということも、これは発達障害の方であれば必ずやることではないということだろうと思いますが、ここに書いてあることは、発達障害の方であればとか、ある障害の方が来たら必ずこれをやるということでもありません。当然、その前提にあるのは必要であるかどうかなので、これは今回の合理的配慮の共通の話として、必要な際に行うと御理解いただければと思っております。

個別性が高いというお話もありましたが、先ほどマスクや手袋が必要なこともあるということでしたが、そういったことも意識して、感覚過敏と書いた上で、例示を記載したということで、工夫をいたしました。

過重な負担に関しては例えば、今、発達障害の所で事務局として示しているものの中には、費用がそんなに掛からないのではないかと思われるものもあります。それはそのとおりだと思いますが、ここの「過重な負担」というのはあらゆる障害類型を考えていく中で決めていく基準ですので、そこの判断は個々の状況に応じて行っていくものと考えております。もともと合理的配慮の考え方については、大元の議論の前提として個別性・多様性があるということがあったかと思います。個別性・多様性がある中でどのような基準を抽出するかという作業なので、どうしても個々を一つ一つ当てはめたときにはうまく当てはまらないこともあろうかと思います。そうは言っても、個別性が高い中でも何らかの基準を立てなければいけないことによるものだと考えておりますので、そこは御理解いただければと考えております。

○山川座長

本日のテーマの関係でもあろうかと思います。本日は、法的義務としての合理的配慮と、いわばその例外としての過重な負担に絞って資料を作っていただいているので、若干全体的なイメージが捉えにくい部分があろうかと思います。指針全体、あるいは報告書、それ以外の支援ないし情報提供、様々なことを全体として見るとどうなるかということは、別途御議論、御検討いただくことがあろうかと思います。

○小出委員

育成会の小出です。境さんから御説明いただいた合理的配慮を行う上での前提条件として障害理解が非常に重要であって、今、障害範囲が非常に広くなったということ、新しい障害も加わったということで、合理的配慮の項目を理解するため、雇用側に理解していただくため、それぞれの障害理解のための資料等を整えてその理解を促進していただくという御説明いただいたので安心しておりますが、合理的配慮について各障害者、あるいは障害者団体がこれだけ自分たちの障害はこうだということについてたくさん事例を述べていることそのものは、障害の理解がまだまだ少ない証拠だと思いますので、是非その辺りはお願いしたいと思います。

改めてもう 1 つ、それぞれの合理的配慮の所に「本人のプライバシーに配慮した上で、他の社員に対し、障害の内容等を説明すること」とあります。ある程度の規模、数十人規模であれば、その人の働いている職場はほぼ顔見知りということで理解はできると思いますが、 300 人程度で製造業となると人の入替わり等があります。

この研究会が始まる直前に、昨年の秋ですが、特別支援学校で雇用者を集めて就労促進セミナーを行いました。そのときに、グループ討議の中で職場の障害者担当の方が手を挙げて言われたことが、新規に採用した方々に対して、あるいは障害者の方に対して、帽子あるいは名札の色を変えるといったことで、障害があることを知らせているということでした。これは差別に当たるのでしょうかと、疑問符が付きました。この場合、「他の社員に対し、障害の内容を説明する」とありますが、示すというのはいかがなものかとの疑問が企業からあったので、どうなのかなと思っております。

○山川座長

今の御質問は、この場で御議論いただくのか、事務局にお答えいただくのか、もし何かありましたらお願いします。

○障害者雇用対策課長補佐

1 点目の障害者理解については、重要な問題であると考えております。 2 点目の問題は非常に機微に触れるところがあろうかと思いますが、今回この事例を挙げるに当たって、「本人のプライバシーに配慮した上で」という文言をあえて入れた趣旨を御説明します。我々は、障害理解も重要であることから、ほかの社員の方にいろいろ知っていただくことが重要なのではないかと考えていたのですが、一方で本人からすると知られたくないということも、場合によってはあるのではないかと考えております。そこは本人の意思を十分勘案する必要があるであろうということで、「本人のプライバシーに配慮した上で」という文言を入れました。

繰返しになりますが、合理的配慮というのは、事業主と障害者本人の相互理解の上でなされていくものなので、具体的な措置が障害者として非常に困るといったようなことがあれば、話合いの中でしっかり結論付けていただくことになるのではないかと考えております。

○山川座長

前回議論した合理的配慮のプロセス、進め方とも関わりのあることかという感じがします。北野委員どうぞ。

○北野委員

別紙 3 を読んで正直な感想ですが、それぞれの障害特性に応じて大体○が 4 つか 5 つあります。そのうち 3 つは全く同じ表現をされています。 3 つが同じであるということは、私のイメージとしては、 3 つないしは 4 つは全ての障害者に共通する合理的配慮になるのではないかと理解しております。 3 つないしは 4 つ、業務指導や相談に関して担当者を定めることと、出勤や休暇・休息について体調等に配慮すること、あるいは本人のプライバシーに配慮した上で、他の社員に対し障害の内容等を説明するというのは全部に共通しているので、ここは共通項として全ての障害者に共通する合理的配慮という形でおまとめいただいて、プラスそれぞれの障害特性に一般的な合理的配慮、○が 1 つか 2 つそれぞれあります。

例えば精神で言うと、それ以外に書いてあるものが 2 つあります。 1 つが「障害の内容に応じて、業務指示を明確にし、 1 つずつ出す、作業手順についての図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行う」、これは正に発達障害の方の支援に非常にフィットした表記です。例えば、これが統合失調症の方や鬱系の方に合っているのかと言われると、一般的にはそうとは言い切れないと思います。個別性の部分は個別性の部分として表記をしていただいて、一般的なそれぞれの障害に共通する部分と、それぞれの特性に応じた部分についてどのようにまとめるかは、もう少し工夫をされてはどうかと思います。例えば、できるだけ静かな場所でというのは、一般的に精神の方全体に当てはめる項目とは思いにくいのですが、当てはまる方もいます。まとめ方を工夫していただきたいということが 1 つです。

2 つ目は、募集及び採用時ですが、これは大人の障害を持っている方に対する対応であると理解しております。支援は必要ですが、面接時に最初に家族を強調されるのはいかがなものかと。大人としての対応という面では、面接時に支援者等の同席という形で、支援される方を先に強調していただいて、その中に家族もあってもよいと。大人としての障害者に対する認識を明確にしていただきたいというのが 2 つ目です。

3 つ目は、いろいろな障害を持っている方々から、中途で障害を持たれて職場復帰されたり、いろいろなことについての思いがあって、それは最初の業務指導や相談に関してという大きな項目になるのでしょうけれども、できれば職場復帰や業務の変更、あるいは職場環境の変更等への対応、調整を含めた業務指導や相談に関して担当者を定めていただきたい。余り表現を細かくすると企業側にプレッシャーが掛かるのであれば、そういうことが業務指導や相談の中に入っているのだということを踏まえていただけるような表記にしていただければと思います。

○山川座長

おおむね 3 つの御意見かと思います。 1 つは、障害ごとに共通のものをくくりだしてまとめる。一方で、精神障害の中でも特定の類型によって違う部分があり、その辺りが難しいということで、整理の仕方の御意見でした。 2 番目が家族の同席というところで、コミュニケーション等における支援という趣旨での表記にならないかということでした。 3 番目が、業務指導や相談をより具体化するような表記をどこかに盛り込めないかということでしたが、何かありますか。境課長補佐どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

共通事項を出すか出さないかは、見せ方の問題ではないかと思いますので、御議論いただければと思います。共通事項を出さなかったのは、これを使うときには具体的に障害の方がおられて、この障害とはどんなものだろうということで見ると考えると、それぞれに書いたほうが見やすいのかもしれないと思ったので、どうしたら見やすいかは御議論いただきたいと思います。

2 点目は、確かに家族を強調しすぎるのはどうかというのは御指摘のとおりかと思いますが、どのような例示がいいのかについては多角的に御議論いただきたいと考えております。

最後の職場復帰における相談等についてですが、「業務指導や相談」としているので、細かく書けば書くほど、逆にそれ以外のものは入らないのではないかとか、そこは微妙な匙加減があるかと思います。ある程度どういったものなのかという共通の理解を深めることは重要かと思いますが、そういったことも踏まえてどういった表記にするかは検討したいと考えております。

○伊藤委員

伊藤です。別紙 3 について意見を述べさせていただきます。今、まとめ方について問題提起がありましたが、私もこれを読んだときに全く同じことを感じておりました。共通事項が多々あって、これを書き分けている理由がよく分からなかったところがあります。また、とても微妙に違う表現もあって、どう理解していいのかというところもあるので、基本的な共通事項、総論的なものを 1 つ作ることを提案したいと思います。

障害ごとに見る方がことに対する便宜を図って、こういうまとめ方にしたという御説明がありましたが、重複障害も多々あるので、仮に事業主が主たる障害の部分だけを見て、他の所を見落としてしまうことがあってはならないと思います。共通的な部分は共通で、それ以外を障害種別ごとに書き分けることにした上で、重複障害についての留意事項も書いておく必要があると思います。

○山川座長

同種の御意見ということでしたが、ほかに何か御意見、御質問等はありますか。小林代理どうぞ。

○栗原委員 ( 小林代理 )

障害者団体の方々からいろいろな御意見が出ていて、こちらから言わなければいけないような感じがしたので、一言発言します。

障害の種類、個別性といった御意見が出ていましたが、多くの事業主、特に中小企業の事業主がそれぞれの障害の種類や、それには多様性があるとか個別性があるということについても、なかなか御理解いただいていないのが現状だと思います。ですから、全く雇用しない企業もかなり多いような現状があって、私どもとしても非常に心苦しく思っています。そういう点では、是非とも厚生労働省で、これは指針の検討なので、違った意味で障害にもいろいろな種類があることと、個別性があることを分かりやすく社会に知らせていただきたい。

また、例示や事例ということについては、これはあくまでも指針であり、骨格をなしているものです。個別具体的な事例については厚労省なり高・障・求機構なりで事例を集めているわけですから、それを広く伝えていただきたいと思います。その事例の深化というか、掘り下げていただいて、より具体的な状況を、もっと詳細が分かるような良い事例から好ましくない事例も含めて御紹介いただけると有り難いと思います。そのための予算拡充に、是非とも頑張っていただきたいというお願いです。

今日の「多くの事業主が対応できると考えられる措置の事例」については、ある程度の例示は必要だと思いますが、今回事務局でお作りいただいた別紙 3 は、言葉遣いなどは配慮する必要がある、又は変更することも必要だと思いますが、こういうことで募集及び採用、採用後にこういうことを配慮しなければならないのだという意味では、このぐらいの量がいいのではないかと感じております。何年後かに指針の見直しも当然必要ですし、実際に精神障害の方々が本格的に雇用対象となる時期に合わせて、もう少し積み重ねた企業の状況を踏まえて、こういうところももう少しできるという例示を含め考えていく必要はあると思いますが、現状はこの程度でいいと思っています。

なぜ、そういうことを言っているかというと、先ほど申し上げたとおり、多くの中小企業で障害者を雇用していない企業が多いことを踏まえると、まず障害者の方々に戦力になっていただく意味も含めて、事業主の方に御理解いただいて、多くの事業主が取り組めるものを例示していくことが必要なのではないかと感じております。

○山川座長

行政への要望も一部含まれておりましたが、事務局から何かありますか。

○障害者雇用対策課長補佐

まさしく、好示例のようなものを集めて広く周知していくことは、以前この研究会でも御紹介しましたが、高・障・求機構のリファレンスサービスのようなもの、これは御存知の方からは「こういうものはあっていいね」という評価を頂いていますが、それがあることを周知できていない面があるのではないかと考えております。そのリファレンスサービスに載せている事例の充実とともに、そういったものがあることについての宣伝にも力を入れていかなければならないと改めて思っております。

○山川座長

他にございますでしょうか。塩野委員どうぞ。

○塩野委員

塩野です。先ほど言われました意見と似た意見になるかと思います。今回別紙 3 で、「多くの事業主が対応できると考えられる措置」ということでまとめていただいております。企業側からすると、障害の個別性がある中で、これだけ簡潔に配慮事項をまとめていただいたのは非常に有り難いことだと思います。表現などでいろいろ御意見はあるかと思いますが、多少表現は見直すにしても、私も指針に載せる事例としてはおおむねこの程度が、企業側としては有り難いかと思っています。

ただ、個別に 1 点だけその内容について意見を申し上げます。「出退勤時間を柔軟に設定する」という項目が入っておりますが、各社の事業内容によっても状況はかなり異なります。例えば、ライン業務に従事していただく、あるいは顧客先との折衝等に入っていただくケースもあるかと思います。そのような場合は、こういった対応は難しいのではないかと思っています。その意味では、「多くの事業主が対応できると考えられる措置」の典型例としては、ふさわしくないのではないかという考え方も持っています。

○山川座長

2 点で、 2 番目の点は御意見ということであったかと思います。以上の点、又は別の点でも結構ですけれどもございますか。伊藤委員どうぞ。

○伊藤委員

伊藤です。出退勤時間を柔軟にするということについて、現に就いている仕事の性格上それが難しい場合があるというお話だったと思います。正にそのような状況で障害者に働いていただく上での工夫の 1 つとして出退勤時間を柔軟にする。それが柔軟にできるような仕事への配置ということも、本人との同意の関係を踏まえて対応することが必要ではないかと思います。これは是非必要だと考えます。

○山川座長

他に何かありますか。今の点は、合理的配慮の問題なのか、あるいは過重な負担の問題なのか、そういう論点もありそうに思います。境課長補佐どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

出退勤時間を柔軟にというのは、特に精神障害者の方からよく言われる典型的な例であろうかと考えております。今回、労働局などを通じて集めたときにも、シフト制の所で、その人だけある程度昼間にシフトを固定してあげるというような例もあったことから、例示として書いてはどうかということで御提案させていただきました。

これはなかなか難しいところではありますが、一方で多くのということでどう考えるかというお話だろうと思います。座長から過重な負担の問題ではないかとの御示唆を頂きましたけれども、恐らくシフトの関係上どうしてもできない場合というのはあろうかと思います。個々の事業所の対応を見たときに、過重な負担のところで述べさせていただいている事業運営上の支障、やはりそこでかなり支障があってどうしようもないような時にまで、義務としてやれというのはできないだろうと。そこは過重な負担として判断されることも出てこようかと思っております。そういう中で、当然そういう過重な負担で判断されることもある事例ではありますが、そういう事例をここに載せるかどうかということは御議論いただく話なのかと考えております。

○山川座長

他に何か御意見はございますか。田中委員どうぞ。

○田中委員

日本盲人会連合の田中です。先ほど北野委員から、「家族等の同席」という表現について、「支援者」というぐらいの表現のほうが適当ではないかという御意見がありましたが、私もその点は賛成です。支援者という程度のほうが幅もあって、柔軟な対応が可能かと思いますので、その点は賛成の意見を述べたいと思います。

  それから、過重な負担について事務局への質問になるかと思います。本日、参考資料ということで様々な納付金制度に基づく助成金の一覧を出していただいております。この助成金の適用要件には、障害者手帳の等級等が要件として記載されています。しかし、今回の合理的配慮の提供という面では、手帳の有無とか、等級というものは関係ありません。したがって、使いたくても企業のほうが使えない制度も多くあります。この研究会でというわけではないのですが、公的な支援や助成制度について検討する場を設けていただくことができないのか。それが必要ではないかという考え方を持っております。その点、今後どういう方向の考え方をお持ちなのかについて 1 点伺います。

もう 1 点は、今回の改正障害者雇用促進法は、地方公務員についての合理的配慮には適用になります。地方公務員のほうは、例えば民間における職場介助者のような納付金制度に基づく助成金の制度などが全くなくて、地方自治体の財政を考えて、どれだけの人を充てるかというようなことになるのだと思います。今後、各地方自治体に対応要領が順次制定されていくと思うのです。その対応要領で定めていくのか、この指針を基に何か自治体のほうへ働きかけをしていくのか、この辺りの関係についても少し伺えたらと思います。

○山川座長

3 点で、 1 点目は御意見でした。 2 点目の助成金の今後の在り方の件、それから地方公務員の件は御質問であったかと思いますので、境課長補佐からお願いいたします。

○障害者雇用対策課長補佐

助成金については、今回の合理的配慮の提供義務、あるいは昨年の法改正に当たり、精神障害者を法定雇用率の算定基礎に入れるような改正をいたしましたので、そういうものに対する支援の在り方を我々は考えなければいけないという宿題を負っているものと考えております。具体的に助成金を見直した際には、例えば雇用保険二事業であれば、雇用保険法施行規則の改正なども必要になってまいりますので、そういう場での御議論も出てくることはあろうかと思います。いずれにせよ助成金をどうするかというのは、合理的配慮だけの問題ではなくて、いろいろな観点から見直していくことを検討していかなければいけないと考えております。

地方公務員の介助者の話についてですが、納付金制度に基づく助成金ですので、納付金を支払っていない国・地方公共団体に支出するのは制度上困難です。それを事業主たる地方公共団体が独自の財源措置で行うのは何ら排除されていないものと考えております。地方公共団体が独自の問題として、今回の指針なども踏まえた上で、それぞれ地方公共団体がどのようにやっていくかを検討していただくものと考えております。

○山川座長

よろしいでしょうか。

○田中委員

そうすると地方公共団体が、出された指針を参考にして独自にそれぞれで考えていただくということで、特に働きかけとかそういうことはないのでしょうか。

○山川座長

境課長補佐どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

言葉足らずで申し訳ございませんでした。地方公務員法制については、総務省が管轄となっておりますが、我々のほうから総務省に対しては、こういう指針なりがまとまった際には、このような形で法律に基づいて指針を作成したので、地方公共団体にもきちんと周知、あるいはこれに基づいた必要な対応を取るようにということを、総務省から一言添えて、指導という言葉が正しいかどうか分かりませんが、総務省からも一言地方公共団体のほうへおっしゃっていただく、というような働きかけは厚生労働省としてもさせていただきたいと考えております。

○山川座長

他に何かありますか。武石委員どうぞ。

○武石委員

武石です。別紙 3 の事例の書き方について、障害者団体の皆さんと経営者とではいろいろ御意見があると思います。私のレベル感としては、別紙 3 として今出されているのを前提というか、 1 つのたたき台として考えるのがいいのではないかと思います。細かく書くものから、一切事例は出さないとか、いろいろな選択肢の幅がある中で、先ほど山川座長もおっしゃったように、これが事業主に対する義務として絶対にやらなければならない事例ではないのですが、先ほどの議論でもありましたように、これが出ていくと、これはある程度事業主にやっていただく 1 つのひな型として定着していきます。中小企業の皆さんができるようなレベル感でいうと、このレベルでの事例の提示になっていくのかということを 1 つ申し上げます。

それから障害の特性とか、業務特性によってとは言っても、いろいろなバリエーションがあるということは当然なので、これはこの障害には当てはまらないとか、この障害だったらこういうのがあるというのは当然のことです。そこを言い出すというか細かくすると、それはもう少し好事例集的なもので、事業主に御覧いただくというレベルのものになっていくのかという気がします。

その事例の書き方で気になるのは、例えば精神障害とか発達障害の所の 2 つ目の○で、「障害の内容に応じて」というのが頭に付いているのですが、これを言い出すと、全部「障害の内容に応じて」「業務の特性に応じて」となってしまいます。それは前提として、「個別の事情に応じて」というのがあるということで、何とかに応じてみたいなのは削ってしまってもいいのではないか。

先ほど伊藤委員もおっしゃっていたのですが、障害によって微妙に表現の違うのがあります。具体的に申しますと、知的障害の 2 つ目の○が、「本人の理解度に応じて業務量を徐々に増やしていくこと」となっています。内部障害だと、「本人の負担の程度に応じ、業務量を調整すること」となっています。基本的に内部障害のような表現が全体を通して統一されているような気がするのです。知的障害だけが「徐々に増やしていく」という表現になっています。多分同じことだと思うので、微妙に違うのは統一できるかなと。

それから、知的障害の次も、「図等を活用した業務マニュアルを作成する」というのも、他の障害だとちょっと違う表現ぶりになっていたりします。同じ内容であれば、同じ表現にしていただくほうが誤解がないかという気がします。それは、全体の共通版として書くのか、障害別に書くのか私もどちらがいいのか現段階では分かりかねるのですが、統一が見られない部分について気になりました。

○山川座長

最後の部分は、恐らく意識して書き分けた部分と、必ずしもそうでない部分とありそうな気もしますが、境課長補佐お願いします。

○障害者雇用対策課長補佐

最初の説明の際に、表現の違う所についてもう少し補足して説明すべきだったと反省しています。今の例で頂きました、本人の理解度なのか、本人の負担なのかですが、内部障害の方は恐らく疲れやすいというところから出ている業務量の調整です。それを考えると、「負担」という表現が適正ではないか。一方で知的障害の方は、特に体が疲れやすいとかそういうことではなくて、まさしく理解するのにどうしても時間がかかってしまうことがあるという特性に基づいております。そこは意識して書き分けをさせていただきました。

知的障害の「図等を活用したマニュアル」に対し、例えば高次脳機能障害の所で少し表現を変えて、「仕事内容等をメモにする」というのを、高次脳機能障害のある意味、特性として書き加えさせていただいております。高次脳機能障害の方は、記憶に困難があるということですので、それを補う形でメモが非常に重要になってくるので、そういう意味で高次脳機能障害のほうはそういうものも特出ししました。

他にもいろいろあろうかと思いますが、我々として意識しないでもし変わっていたものがあるかないかという点については、再度整理させていただきたいと思っております。これ以外に、こことここの差は何かということがもしありましたら、それは事務局のほうに御質問を頂ければ改めて御説明させていただきます。

○山川座長

その点はよろしくお願いいたします。他にありますか。本郷委員どうぞ。

○本郷委員

本郷です。先ほどから指針のことが出ていますので、私からも意見を申し上げたいと思います。例示とはいえ、指針に合理的配慮の具体例を記載することは、事業主にとっては少し重い話ですので、できれば指針には多くの事業主が対応できるものを、必要最小限の範囲で示していただきたいと思います。このぐらいの配慮であれば私たち中小企業でも十分できると思っていただくことが重要であると思いますので、ご理解をお願いいたします。

また、最後のページの四角の中のマル2の「実現可能性」の所に、「事業所の立地状況等により当該処置を提供するための機器や人材を確保することが可能かどうかが過重な負担の判断要素となる」とあります。ここの所はもう少し細かく書いていただいて、事業所の構造上の問題などによって、手すりやスロープ、あるいは大きな機器などの設置が困難であるというケースもあると思います。こうしたケースも実現可能性の観点から過重な負担と判断されるという理解でよろしければ、記載に加えていただければ有り難いと思います。やはり、賃貸のビルの場合は自分たちの一存で改修できませんので、そうした点も考慮して記載していただきたいと思います。

○山川座長

2 点頂きました。 2 番目の「立地状況等」に関して御指摘、御意見がありましたが、境課長補佐からお願いいたします。

○障害者雇用対策課長補佐

これはヒアリングの場の意見でも出ておりましたので、書くべきであったと反省しております。御指摘のとおり、建物の構造上の問題であるとか、貸主の了解が得られないなどの理由により対応が困難な場合も当然想定されますので、そのような場合はやれと言われてもできないということになります。それは、ここの実現可能性の判断要素として判断されるものと考えております。

○山川座長

何人かお手が挙がりましたが、阿部委員どうぞ。

○阿部 ( ) 委員

阿部です。私からは 2 つあります。 1 つ目は、現在別紙 3 は障害ごとに分けて書いていますが、これとは別に時系列順といいますか、募集及び採用時に、この障害ならこういう対応をという書き方もあるのではないかと思います。というのは、先ほど若干触れられましたが、中途障害に対応する部分が明確には書かれていなくて、中途障害の場合には採用後のところをレファレンスすればいいという見せ方もあるのではないかと思います。障害ごとに書くというやり方もあるでしょうけれども、時系列ごとに書くというやり方もあるのではないかと思いました。

2 つ目は、過重な負担の所の 4 ページで、過重な負担の判断要素としてのマル4の言葉遣いなのですが、「企業の経営状況」というのがあります。企業の経営状況というとかなり幅広い意味があるような気がします。ここには、もしかしたら企業規模とか、費用・負担の程度というようなのも入ってしまうのかということなのです。 3 ページのこれまでの意見の所を見ると、「企業規模」「企業の財政状況」という言葉で書いてありますから、それに合わせたらどうかという気がいたしました。参考までに。

○山川座長

2 つの御意見を頂きました。境課長補佐からお願いいたします。

○障害者雇用対策課長補佐

1 点目については、先ほど採用後のところでも、伊藤委員からだったと思いますが、共通事項みたいなものは先に書くという御意見も頂きましたので、内容というよりも様式をどうするかについてはまた考えさせていただきます。

2 点目については、我々は「経営状況」と書いてしまいましたが、ここでイメージしたのはどちらかというと「財政状況」で黒字とか赤字ということがメインになってくるのかとは思っておりました。この研究会の場で御異論がなければ「財政状況」という修正もあるのではないかと考えております。

○山川座長

今の点の前に、伊藤委員と北野委員のお手が挙がっておりましたので、伊藤委員からお願いいたします。

○伊藤委員

伊藤です。過重な負担に関して意見を言わせていただきます。別紙 3 で微妙な表現の違いに意味があるという説明がありましたので、非常に奥行きの深い表現が多分ここにもあるのだろうと思います。私には、過重な負担の判断要素としてマル1からマル6に書き分けた趣旨が十分理解できておりません。非常に重複感があるようにも感じます。

具体的にはマル1の「事業運営への支障の程度」とマル3の「企業規模」というものがありますが、「企業規模」は事業運営への支障の程度にも影響があると当然思います。それはマル5の「費用・負担の程度」にも関わってくる。マル1とマル4とマル5の関係も非常に重複があるのではないかと思います。これが、障害者と事業主双方が容易に理解できるような表現なのかというと、まだそういうレベルではないように感じました。整理の仕方として、もう少し重複のないような形、あるいは重複がないということが明確に分かるような形で整理ができないものか検討をお願いいたします。

また、マル6の「公的支援の有無」に関して、マル2とマル5については「公的支援の利用を前提とした上での判断となる」と書いてあります。重複の話に関連するのですが、マル3の企業規模についても公的支援の有無と関連があるのは明確だと思います。本日頂いた参考資料 1 の中にも、例えば上から 3 つ目の「障害者初回雇用奨励金」は中小企業が対象ですし、その次の「中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金」も中小企業が対象です。中小企業に対する公的支援制度があるということからすれば、マル3の「企業規模」との関係がここには明確に出てくるのだろうと思います。

さきほど実現可能性についての御意見がありました。もちろん構造上の問題などは考慮する必要があるというのは理解できるのですけれども、それが未来永劫対応できないのかということとは別だと思います。対応の時間軸についても検討が必要だと思います。これぐらい待てば対応できるのだとか、時間に関係なく全く無理なのだという説明にならないようにする必要があると思います。

最後になりますが、最初に田中委員がおっしゃったところですが、マル1が「事業運営への支障の程度」という表現になっています。まるで障害者を 1 人雇うことで会社が傾いてしまう、潰れてしまうというようにも感じられ、雇用機会を求める障害者に対する消極的な姿勢をもたらしてしまうのではないかと思います。それこそ、障がい者が雇用されることによって整理解雇されてしまう人が出るのか、というようなメッセージを持つように感じました。この「事業運営への支障」というのは非常に大げさな表現になっていると思いますので、理解しやすい表現にする必要があると思います。

○山川座長

境課長補佐どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

過重な負担についての御意見を頂きましたけれども、マル1マル2マル3マル4マル5マル6というのは、我々も相互に独立しているとは考えておりません。それぞれの要素が絡み合うところはどうしてもあるのだろうと思っております。だからこその 2 つ目の○が「総合的に勘案しながら」というところになっております。そういう前提で書かせていただいておりますけれども、その表現でいいかどうかというのはまた御意見を頂ければと思います。そこはもともと我々自身も、これがそれぞれに独立して、全く他の要素を、それぞれの事例を考える際に他の事例を考慮しないというようには捉えていませんでした。

「公的支援の有無」をなぜ入れるかというきっかけから御説明させていただきますと、過重な負担を考えるときに、一番最初に来るのは費用の負担だろうと思っております。費用の負担を考えるに当たり、特に障害者団体の方からも御意見を頂戴しておりましたが、費用・負担を考えるといっても、そのときにはきちんと公的支援があるのならば、その公的支援を活用することが大前提であろうという御意見だと認識しております。その観点から我々としては、特に実現可能性のほうも費用ではないけれども、何らかの措置、人的支援というものをやるときに、公的なサービスを受けられるのであれば、その公的サービスの利用を前提に考えるべきであろうという観点から、マル6がなければ実現可能性、費用・負担の程度について、公益的なサービスがあってもそれの利用を考えなくていいというようなメッセージになってはいけないだろうということで書いております。

企業規模のところはおっしゃいますとおり、中小企業に対して手厚くやっているところはありますが、ただ、それもつまるところ、大企業であれば 2 分の 1 を行政が出すところを、中小企業であれば 3 分の 2 が出るという話です。いずれにせよその結果としての 3 分の 1 の額が費用・負担として中小企業が持てるかどうかという判断要素になってまいりますので、それは費用・負担の程度のところで、御指摘の点も読めるのではないかと考えております。

対応の時間軸ですが、この過重な負担を考えるときというのは、まさしく今これをやってくれというときにできるかできないかという話です。どうしても今の段階ではできないという話はあろうかと思います。ただ、前回の合理的配慮の手続のときにも触れさせていただきましたが、ある程度定期的に確認することが望ましいであるとか、あるいは障害者から今ならできるのではないかという申入れといいますか、事業主に働きかけるということが想定されているところから、そういう観点については 1 度判断したら一切もうやらなくなるというものではないというのは、その手続の書きぶりからしても明確にさせていただいているのではないかと考えております。

○山川座長

難しいところで、重複性の問題と相互関連性の問題と表現の問題の 3 つが全て絡まり合っている。相互関連性のところは整理し出すと、恐らく整理解雇の 4 要件・ 4 要素と同じに、すごい議論になりそうな感じのするところでありますけれども、なお整理等の工夫ができないかを御検討いただければと思います。北野委員どうぞ。

○北野委員

過重な負担のところに入っていたようですので、私の思いを述べさせていただきます。合理的配慮の部分が、今回の雇用促進法の改正で法的義務になったというのはとても大きなことです。法的義務になって、一方で各企業がどのように理解していただけるのか。あるいは、各企業の体力との関係でどこまでやっていただけるのかというのは、非常に大きな問題だと私たちも理解しております。そのときに、過重な負担をどう考えるのかということです。

もう 1 つは、公的支援をどこまで打つのかということ。あるいはアメリカの ADA のように合理的配慮をされたり、障害者の雇用に積極的な企業に関する税制上の優遇措置であるとか、そういうことについて全体としてまずこれを進めていく方向で、公的支援をきっちり打つということと、税制上の優遇措置をどう展開するかというところをまず踏まえておいて、それでは過重な負担をどこまでどのように理解するか、ということが大きなテーマなのです。

資料の過重な負担についての「 1 回から 4 回までの意見」の中で、非常に適切な、的確な御意見が出ております。この議論を踏まえると、マル1からマル6までのまとめ方がこれだけでいいのかどうかということが気になりました。 1 回目から 4 回目までの御意見の中で、○の 7 、の経団連の御意見の中に、非常に的確なことが書いてあります。「合理的配慮の提供は障害者との相談後に行うものであることから、目的の正当性、職務遂行上の必要性、実現可能性、社内の秩序・規律への影響度合など、合理性の判断が求められ、その上で、過重な負担となる場合、事業主は提供義務を負わないことを明記すべき」と。これは、非常に的確な把握をされていると思います。

つまり、この目的の正当性であるとか、職務遂行上の必要性であるとか、実現可能性というのは、合理的配慮を相互で議論するときに企業側と障害者が相談されて、合理的な判断の下で、こういう合理的な配慮をしようという議論になるのです。そのように考えると、今回のまとめの中で、 2 番目に「実現可能性」という表現をされているのは、合理的配慮そのものを最初にどのように作っていくかというところの議論でされるべき議論でありますから、ここはアンデューハートシップの議論ではないだろうと思われます。

2 つ目は、「事業運営への支障の程度」であるとか「費用・負担の程度」というのは、企業の負担の程度や事業運営への支障の程度というものを全体として、そのことについて過重な負担の中身を議論しているわけです。ここは、明らかにトートロジーの概念になっていると思われます。ですから、残るとすれば「企業の規模」、それから阿部委員におっしゃってもらったとおり「企業の財政上の状態」、あと大事なことは企業設備の所有の形態です。要するに、賃貸か自己所有かというのは、非常に大きな影響を与えますのでこの問題、それから「公的支援の有無」の 4 つが、これはアメリカの ADA 法のアンデューハートシップでもほぼこういう議論をしていますので、この辺りをクローズアップして、あとのトートロジーになるようなものは基本的に整理したらいかがかと個人的に思いました。

○山川座長

境課長補佐からお願いいたします。

○障害者雇用対策課長補佐

まず、ここにどうしてこのような形で書いたかという観点で御説明させていただきます。費用・負担の程度、支障の程度というのはトートロジーではないかという御指摘を頂きました。この場合の費用・負担の程度というのは、合理的配慮の措置を行うに当たり具体的にどのぐらいの費用が掛かるのか、その費用を過重の負担の中では考えなければいけないのではないかということ。事業運営への支障の程度というのは、先ほど出退勤のところの議論でも出ましたが、シフト制をやっている所ではなかなか柔軟な設定ができないであるとか、それは運営上できないこともあろうかと思います。そういう意味では、事業運営への支障の程度と、費用・負担の程度というのは異なる概念ではないかと考えて記載しております。

目的の正当性、ここでは合理性の判断となっておりますけれども、ここで職務遂行上の必要性ということを書いておりませんのは、冒頭の御議論でもありましたが、合理的配慮というものが、職場の支障を改善するために必要な措置であることが大前提ですので、まさしくそこで読んでいて、そこをクリアしたものを実際に事業主のほうで提供できるかどうかを判断するというのが、この過重な負担ではないかと考えています。

そのときには、確かにこの職場における支障を改善するために必要な措置であっても、それが非常に高額であった場合などは、なかなか対応が難しいことも場合によってはあるだろうと。そういう個々の事例に応じてそういう費用の負担や、すみません、先ほど「支障」という言葉はふさわしくないと言われておりますが、ここでは使わせていただきますが、その措置を取ることよって支障がある場合にはなかなか難しいのではないか。それ以外にも、そもそもできるのかどうか、費用はそんなに掛からないけれども、例えばスロープを付けるのにそんなに費用が掛からなかったとしても、自己所有ではなくて、貸主の御理解を得られないような場合は、費用面はできるけれども、実現可能性のところでなかなか問題があるというように、個々具体的な措置をこれらの 6 つの項目で、それぞれ当てはめて考えていって、総合的に判断をしていかざるを得ないのかなという考え方ではありました。

北野委員のおっしゃっていることと、もしかしたらずれているかもしれませんが、事務局としてこの案を考え、お示しさせていただいたのは、今申し上げたような考え方に基づくものです。

○山川座長

北野委員どうぞ。

○北野委員

もちろんいろいろ考えられて作ったことはよく分かっています。確かにマル3とマル4、つまり費用が一定以上掛かってしまうから困難であろうということは、はっきり言うと企業の規模であるとか、企業の財政上の状況が一番大きなところで出てまいります。ここはマル3とマル4と、それから公的支援を受けるかどうかというマル6と、もう 1 つ私が追加した企業環境で所有の形態も含めた項目を整理していただいたら、どれぐらいやれるかということの話は出てくると。

もう 1 つのお願いは、そういうことを整理していただいて、これを総合的に勘案しながら事業主が個別に判断することを指針に書いていただいています。それでは、こういうことを勝手に勘案して、勝手に事業主が決められるのだという理解というのは、そういうことを基本的に踏まえながら事業主が個別に判断するということ。つまり、この項目は一切考慮しない、これは一切無視、勝手に企業が自由に判断できるというようには取れないような、そこはお互いの信頼関係になるのですけれども、表現としては「を基本的に踏まえながら事業主が個別に」というのは、事業主が個別に判断するものですからそれでいいと思います。「基本に踏まえる」ということを表記に入れていただけたらと思います。

○山川座長

今の点の関連でしたら境課長補佐から。

○障害者雇用対策課長補佐

1 つだけ補足させていただきます。先ほどの私からの回答で漏れていました。自己所有という指標ですが、申し訳ありませんが、これはマル2のほうで読める話ではないかとは考えております。先ほど本郷委員からも御指摘いただきましたが、項目として別に立てるかどうかは別にして、少なくともマル2では読めるという考え方には立っておりました。

○山川座長

富永委員どうぞ。

○富永委員

富永です。過重な負担の判断要素のところで、感想めいたものを述べさせていただきます。判断要素の中には、互いに相互に影響があるものもありますけれども、視点が多くてそれほど困ることがあるのか。むしろなくて欠けてしまったらまずいのかなと思います。一番問題になっているのはマル1とマル5の関係かと思いますが、マル1について、アメリカのガイドラインを読んでいるとこんな場合があります。落ち着いた雰囲気のナイトカフェとかバーとか飲食店があるとします。もちろん照明を暗く落として落ち着けるようにしています。そういう所で視覚障害のある方を雇おうとする場合に、その視覚障害者は少し視力が弱くて、照明をすごく明るくしてくれたら読めるというときに、照明を明るくする費用・負担の程度はなきに等しいです。電気代が少しかかるかもしれませんが、そんなに大きなものではありません。ただ、業態としてナイトカフェをやっているのに、それを諦めないといけないのか、いやそんなことはないという話があります。その意味で事業の性質との関係での影響があるというのはあるのかと個人的には思います。お金・費用面だけではない要素があるのかもしれないと思います、マル1とマル5はそれぞれあってもいいのかなと思っています。

マル3とマル4も同じで、マル3は特に配置転換です。この仕事はできるけれども、あの仕事はできないという障害のある方がいて、それはその方のできる仕事に回したいとします。それは企業規模と関連してきますので、大企業であれば、赤字を垂れ流していようがその方のできる仕事はあるでしょう、そこへ回してよということは当然言えるはずだと思います。逆に、優良企業で黒字だけれども、小さな企業で人を回せるような仕事がない、 1 人分のポストがないという場合もあり得ます。その意味でマル3とマル4は関連しているけれども、やはり視点としては別々にあってもいいのかなと個人的には思って拝見していました。それが 1 つです。

もう 1 点は関係ないのですけれども、合理的な配慮の例の事例で、中身はたたき台として良いものだと思っていますので、内容については賛成します。書き方について、例えば括り出すのがいいのかどうなのかという話がありました。これは見やすかったらそれでいいと思います。分かりやすかったらそれが一番いいと思います。ただ、もし括り出す場合に余り細かく括り出してしまうと、見えにくくなります。法律をやっている人たちから見ると、括り出すというのは常識的なことで、情報を節約できるメリットがあります。だけど例えば日本の民法を見ると、この書き方のせいで、労働に関する条文は 10 ぐらいしかないのですが、それを理解するためには、まず民法総則のところで、民法全体に通用する共通ルールがあって、その次に債権総則で債権の共通ルールがある、その次に契約総則で契約の共通ルールがあって、その後で売買の規定も準用されるので見てね、ということで、いろいろな場所を見て、初めてやっと分かる構図になっています。もちろん括り出して情報を節約するのはいいのかもしれませんけれども、余り細かくやってしまうと、法律的な考え方を持っていない人には分かりにくくなってしまうのかなと。そこは程度問題で、柔軟に一番良いポイントを見付けていただければと思います。そういう感想を持ちました。

○山川座長

見やすさの点等については、作ってみて御検討いただければと思います。残り時間が 5 分ぐらいになりましたが、塩野委員お願いいたします。

○塩野委員

塩野です。過重な負担の判断要素として、資料 1 にあるように使用者側としては 10 項目の例示をさせていただいています。事務局案の中には置き換えられていないものについて意見を申し上げます。障害のある方が働く場合の難しさに着目すると、「職務・職種・業種」は要素として必要ではないかと考えています。

「過去の雇用実績」や「合理的配慮の取組み状況」についても、誠に残念ながら 1 人も障害者を雇い入れたことがない企業が未だ相当数存在する現状を考えると、障害を持つ労働者と、事業主との相互理解という制度の趣旨を浸透させる意味合いからも重要ではないかと思っています。

「健康配慮義務を含む労務管理上の必要性」、「職務遂行への影響」、「企業の経営方針」については、「事業運営への支障の程度」に含めて読み換えているのが事務局案だと考えられますが、それでは、それぞれの趣旨が曖昧になってしまうのではないかと思います。

更に、ここでは取り上げられておりませんけれども、障害が進行していく場合や、経営環境の変化など「採用後の状況変化」についても過重な負担の判断に際して勘案する要素ではないかと考えています。

○山川座長

北野委員どうぞ。

○北野委員

今の塩野委員の御発言は、分かるところと心配なところがあります。 1 つは 10 項目挙げていただいている経団連の中で、特に業種であるとか、企業の経営方針ということがありますが、どのような内容を指しているのかがよく分かりません。明確に合理的に根拠があること以外のことが仮にあるとすれば、これは明らかに問題です。業種や企業の経営方針で、障害をもっている方に対して何かおっしゃるときには、そこのところは気を付けていただかないと、今後障害者の就労支援の問題で無益な軋轢を生んでしまうということで気になりました。その辺は御配慮いただけたらと思います。

○山川座長

判断要素については、恐らく考え出すと切りがない点もあります。先ほどの重複性、相互関連性、表現の問題とありましたが、更にその深度ないし具体的な程度の問題もあろうかと思います。つまり、抽象化すると少なくなりますけれども、具体的に書くとなると非常に項目が増えてきて、抽象的な項目の中に具体的な問題をどれだけ含められるか、あるいは要素を更にブレイクダウンしたような形で、どこかで説明するようなところが必要になるかどうかという問題とも関わっているように私としては思っております。事務局から何かありますか。

○障害者雇用対策課長補佐

今頂いたところというのは、ある程度我々としては踏まえたつもりでこの 6 つに集約しました。なかなかくみ切れてないものがあるのかいないのかについては、御指摘いただければと思います。雇用実績であるとか、そういうものもどのように考えていくのか。雇用実績などについては、雇用していない所が新たに雇用した場合には、初めて措置を導入することになりますので、初期コストみたいなものがかかるという問題意識ではなかろうかと考えました。それは、つまるところ費用・負担の問題に帰着するのではないかと考えていました。

そのように受け止めたということですが、それではちょっと違うニュアンスがあるとか、それだとどうしてもこういうニュアンスが読めないということがありましたら、引き続き御指摘等々を頂ければと考えております。

○山川座長

座長のタイムキーピングの不手際でほぼ時間になってしまいましたけれども、特にどうしてもということがありましたら。伊藤委員どうぞ。

○伊藤委員

伊藤です。最後のほうで過重な負担について漏れや落ちがあったらよくないということもあって、重複があってもいいのではないかとか、いろいろもっと項目があるのではないかという御意見がありました。一番初めにありましたように、障害者に働いていただき、企業でいかに戦力化するための措置を講ずるかという視点を是非持って検討を更に進めていただきたいと思います。

○山川座長

これまで頂きましたような御意見も踏まえ、更に事務局で適宜取りまとめていただき、それをまた検討していただくことになります。別紙 3 の合理的配慮の中身ですが、種々御議論いただいて、どのように整理していくか、それから例示の中身、更には表記についていろいろ御意見を頂きました。それから柔軟な出退勤時間については若干の留保もありましたが、それらの点を除けば、こうした項目そのものを盛り込むことについては、おおむね共通の理解が得られたと整理してよろしいでしょうか。そういう理解も踏まえ、また事務局のほうで取りまとめをしていただいて、検討をお願いしたいと思います。

次回の日程について事務局から説明をお願いいたします。

○障害者雇用対策課長補佐

事務局です。次回は 3 25 ( ) 15 時から 17 時の開催になります。場所は共用第 8 会議室 (19 ) です。

○山川座長

3 分ぐらい延長してしまいましたけれども、本日の研究会はこれで終了いたします。大変充実した御議論をいただきまして、ありがとうございました。


(了)

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