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2014年4月17日 第3回 がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会議事録

○日時

4月17日(木)16:30~18:30


○場所

厚生労働省 低層棟 講堂(2階)


○議題

(1)がん患者・経験者の治療と職業生活の両立等の支援について
(2)その他

○議事

○江副がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第3回「がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様方におれかましては、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 初めに、本日の構成員の出欠状況でございますが、全ての構成員から御出席との連絡をいただいておりますが、池田構成員から少し遅れると伺っております。

 また、オブザーバーに異動がございましたので、御紹介させていただきます。

 職業安定局首席職業指導官室の大塚陽太郎室長補佐でございます。

 同じく、職業安定局雇用開発部雇用開発企画課の高島洋平課長補佐でございます。

 労働基準局労災補償部労災管理課の村岡幸生調査官でございます。

 労働基準局安全衛生部労働衛生課産業保健支援室の伊藤秀一室長補佐でございます。

 それから、申し遅れましたけれども私、健康局がん対策・健康増進課がん対策推進官に4月1日で参りました江副と申します。よろしくお願いいたします。

 それでは、以後の進行は堀田座長にお願いいたします。

○堀田座長 皆様こんにちは。お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日も、活発な御議論をいただきたいと思います。

 では、最初に、事務局から資料の確認をお願いします。

○江副がん対策推進官 資料の御確認をお願いいたします。

 まず、座席表、議事次第がございまして、

 資料1 がん患者・経験者の就労支援における課題とニーズに関する検討(案)

 資料2 職場等における取り組みについて(論点)

 資料3 職場等の就労支援に関する現状

 資料4 治療を受けながら安心して働ける職場づくりのために

 資料5 職場等における就労支援、櫻井構成員の提出資料になります。

 資料6 がん治療を受ける就労者に向けた支援、湯澤構成員提出資料。

 資料7 職場における「がん患者の就労支援」の取り組みについて、宮本構成員提出資料。

 資料8 医療機関や職場等以外の取り組みについて(論点)

 それから、参考資料が1~4までございます。

 資料に不足・落丁等がございましたら、事務局までお申し出いただければと思います。

○堀田座長 特に資料等に問題はございませんか。

 それでは早速、本日の議題に入りたいと思いますが。これまで2回の検討会がございまして、第1回は、全体的にがん患者さんあるいは経験者の課題・ニーズについて皆さんの御意見をいただきました。2回目は、その課題・ニーズを踏まえて医療機関における先進的な取り組みについて検討を行ってまいりました。

 今回は、職場等における取り組み、また、医療機関や職場等以外の取り組みにつきまして御検討を願う予定としております。

 まず、事務局から資料1「がん患者・経験者の就労支援における課題とニーズに関する検討(案)」、資料2「職場等における取り組みについて(論点)」、資料3「職場等の就労支援に関する現状」の説明をお願いします。

○事務局 よろしくお願いします。では、まず、資料1を御確認ください。こちらは第1回及び第2回検討会に提出されました資料、また御意見等を踏まえてとりまとめたものでございます。赤字で加筆している箇所が第2回目でいただきました御意見、資料に基づき加えております。

 例えば、「1.がん患者、労働者側からみた課題・ニーズ」では、「()心身の状況に関すること」で「卵巣がんや子宮がん等の婦人科系のがんは、がんに罹患することで心身の影響が特に大きいとの指摘がある」でありますとか、2ページは「情報がないまま、性急に仕事を辞めるという決断をしがちである」といった御意見がありましたので、こちらを加筆させていただいております。

 また、3ページの()ですが、がんの方だけではなくて患者の家族に関する課題ということも新たに指摘を受けておりますので、「看病等のため、がん患者の家族も、退職を余儀なくされる」といった課題・ニーズもこちらに加えております。

 5ページを御確認ください。「2.医療機関側からみた課題・ニーズ」ということで、「診療においては、職場環境や通勤状況など就労に関わる情報を把握しておらず、治療方針の説明においても就業のニーズを意識していない。『仕事をすぐに辞める必要はない』等の助言も行っていない」という課題・ニーズが挙げられております。

 次の6ページ以降ですが、第2回では「3.企業側からみた課題・ニーズ」ですとか、7ページの「4.その他の課題・ニーズ」もお示ししておりましたが、時間の都合上余り触れられていないところもありますので、今回のテーマが職場等における取り組みについてということですので、「3.企業側からみた課題・ニーズ」、「4.その他の課題・ニーズ」につきましても、御意見をいただければと思っております。

 続きまして、資料2を御確認ください。こちらも前回と同様に、論点という形で例を挙げさせていただきました。どのようなものが効果的と考えられるか、どのようなものが職場等にとって実施しやすいと考えられるか。また、取り組みを促進するためには、どのような方法が有効かということで、例としまして、企業へのがんについての普及啓発、そして、弾力的な就業規則の運用、職場における健康への配慮、産業医・産業保健スタッフを通じた支援、その他という論点を挙げております。もちろん、こちらで全て網羅しているとは思っておりませんが、御意見等があればおっしゃっていただければと思います。

 続きまして資料3を御確認ください。こちらは「職場等の就労支援に関する現状」ということで、第1回の検討会でお示ししたものの中で職場に関連する資料をつけております。

 2ページは、がん患者が働く職場の企業規模ということで、がん患者はあらゆる規模の企業で働いているということ。

 3ページでは、厚生労働省の中で主に雇用の場、主に治療の場、実態把握から実際の支援までこのような取り組みをしているということ。

 4~6ページは、その内容について1枚紙をつけております。

 今回新たにお示しさせていただきますのが7ページになります。こちらは、がん対策推進企業等連携推進事業ということで、民間に委託をしまして、現在パートナー企業1,236社あるいは団体に参加いただいております。内容としましては、企業連携の推進であるとか、コンテンツの作成、ウェブ運営などによる情報発信の推進。主に職域健診におけるがん検診促進に関する現状及び課題の把握。この中でも職域の就労支援に関する現状及び課題の把握といったことも行っておりますので、御紹介させていただきます。

 8ページ以降が、その中でアンケート調査を実施しております。アンケートの目的と流れということで、がんに関する事柄は大きな経営課題であるとして、3で示されているとおり、がん患者の就労については、現在の取り組み状況や課題を探ったということです。

 9ページ以降が、その結果になります。がん患者の就労支援についての取り組みを実施しているのは全体の10%であったということ。取り組みの例としましては、就業場所・時間の変更であるとか、治療についてのサポート、復帰に際しての支援、がん保険といったことが取り組みとして挙げられております。

10ページは、がんと診断された方の人数を把握している企業・団体は44%ということで、その課題としましては、個人情報のうちセンシティブな情報に当たるため積極的に支援しにくいといったような課題が指摘されております。

11ページをごらんください。こちらは就労の可否や復職時期などの判断者は企業側ということで、その内訳になりますが、人事・総務担当者の方が31.4%、また、産業医・産業保健スタッフの方が20%といった内訳の結果が出ております。

12ページは、回答企業におけるがんと診断された社員数の平均ということで、回答のあった全企業181社の平均値が8人ということになっております。その内訳としまして、大企業、中企業、小企業それぞれ平均値がこのような数字で示されておりまして、がん検診やがん患者の就労支援について対策を立てることが重要であるというデータが出ております。

13ページはファミリー・フレンドリー企業表彰ということで、仕事と家庭のバランスに配慮した企業等に表彰を行い、厚労省のホームページ等で御紹介させていただいているものです。積極的な取り組みをされている企業に対するインセンティブという形で、このような制度があるということを御紹介させていただきました。

 以上です。

○堀田座長 ありがとうございます。

 ただいま御説明いただきましたように、資料1は、前回と前々回の御意見のとりまとめということで、1回目に対して加筆していただいた部分がございます。きょうは、全体で十分に詰め切れなかった後半の部分、特に職場におけるというところを中心に書き足していけるようにと考えてございます。

 そして、資料2は、職場における取り組みについての論点ですので、先ほど事務局から説明がありましたけれども、これ以外の論点があっても構いませんので、言及していただければと思います。

 3番目は企業内アクションでしたが、この3つの資料に基づきまして、まず全般的に何か御意見いただくことがありましたら、よろしくお願いします。

 なお、御発言いただくときは、このマイクのトークのボタンを押して話していただくとランプがつきます。話し終わったら、これをオフにしていただきますように、よろしくお願いいたします。

 それでは、どなたかまず御意見を賜ることはありますか。確認でも結構でございます。

 桜井構成員どうぞ。

○桜井構成員 資料1に対して3点ほどありまして、1ページで訂正になるのですけれども、前回がんの部位ごとのデータを私がお出ししたかと思いますが、そこから来た言葉だと思っております。赤い部分の「卵巣がんや子宮がん等の婦人科系のがん」という言葉については、どちらかというと婦人科系のがんはというよりは、言葉的には後遺症や副作用により就労制限を伴うようなケースがありますというような言葉に訂正していただきたいなと思っております。

 2点目は、その下にある「病期別にみると」ということで、ステージ3が影響が大きい傾向があるということですけれども、この真意としては、多分休職中の患者に対するケアが非常に重要であるということで、ステージの比較をお出しさせていただいたということがありますので、休職中の患者に対するケアが必要という言葉と、同時に、ステージ4の方とステージ1の方の離職率がほぼ変わらなかったということは、コミュニケーションの問題だと思っているんです。なので、患者さんの個々のステージに対しては、職場とのコミュニケーションが非常に重要であるというような言葉に置きかえていただけると、真意が伝わるかなと思っております。

 以上です。

○堀田座長 ありがとうございました。事務局として、これに何かコメントはありますか。

○事務局 こちらに肉づけをし、報告書としてとりまとめていくものですので、さまざまな意見をいただいて、取り入れていきたいと思っております。

○堀田座長 最終的にはこれが報告書の骨子になるものですが、このための時間というのは5回目、6回目に十分とる予定ですので、ここでは確認や訂正程度にしていただければと思います。

 伊藤構成員どうぞ。

○伊藤構成員 資料3「職場等の就労支援に関する現状」の12ページは、がん対策推進企業等連携推進事業についての説明資料だと思いますが、がんに関する事柄は大きな経営課題とまとめられておりますけれども、これについてはどういう意味で大きな経営課題だと認識されているのでしょうか。この資料では、がんと診断された人の割合が出ているだけなのですが、それがどう経営課題と認識されているのかを教えていただきたいと思います。最終的なまとめとして、就労支援について対策を立てることが重要と書かれているものですから、まず、そこについて教えていただきたいと思います。

○堀田座長 この資料の元となる調査したのは事務局ではありませんので、答えづらいところがあるかもしれませんが、わかる範囲でお願いします。

○桜井構成員 私、企業アクションのメンバーをやっておりますので、このアンケート等々の監修にも携わらせていただきました。その観点から言うと、流れの中で出てきた言葉ではありますので、大きな経営課題としては、それぞれの企業の中で、これだけの人数のがん患者さんがいるので、離職されていってしまうということは人材の流出になりますよねということから、経営課題であるという趣旨で多分この言葉は使われていると思います。

○堀田座長 がん患者を抱えると経営の重荷になるというような意味ではなくてですね。

○桜井構成員 そうですね。

○堀田座長 伊藤構成員どうぞ。

○伊藤構成員 わかりました。資料1の6ページ「3.企業側からみた課題・ニーズ」の2つ目の○にある「・」を上から見ていきますと、職場における雇用管理上の困難さを非常にネガティブにとらえたような意見が幾つか列挙されています。企業側が持っている認識が大分違うように感じました。先ほどの資料3のように、企業にとっては経営課題であり、貴重な戦力を失ってしまうという認識が共有されていると言えるのかというギャップを非常に感じておりますので、これも課題だということなのかもしれませんけれども、そういった部分はもう少しすり合わせといいますか、企業側からも課題の認識を持っていただく必要があるのではないかと思います。

 特に3つ目の「・」は読み方によっては、余り言いたくないですが、価値のない人はがんになっても関係ないというようにも読めるような違和感があるものですから、そういった共通認識がまず必要なのではないかと思います。

○堀田座長 ありがとうございます。これは問題点として出てきた意見をとりまとめたので、そういう見方も一部あるということで、それが正しいということではなくて、そういった見方がまだ残っているというとらえ方ではなかったかと思います。何か御意見があれば。

 湯澤構成員、何か御意見ございますか。

○湯澤構成員 一部こういう考え方が残っているというような理解で私もおりました。ですので、がんの治療がなかなか難しいと言われている時代からすると、こういった意見も出やすいのかなと思いますが、現在のところはつき合って就労もしていけるというように医学が進んでおりますので、こういった観点からもこのあたりは柔軟に課題としては変わっていくものかなと思っています。

○堀田座長 ありがとうございます。

 伊藤構成員がおっしゃるようなネガティブなことでというよりは、こういう意見や空気がまだ残っているものに対してどうするかというふうにとらえていきたいと思います。

 そのほかの点はいかがでしょうか。砂原構成員どうぞ。

○砂原構成員 1点だけ。資料1の3ページに、患者の家族に関する課題ということで今回追加していただいておりまして、これがないと言うつもりはないのですけれども、看病等のため、がん患者の家族も退職を余儀なくされている方がどのくらいいるのかというような数値みたいなものがわかれば、それを入れていただけると、より説得力が出るのかなと感じましたので、お伝えしておきたいと思います。

○堀田座長 ありがとうございました。

 そのほかいかがでしょうか。宮本構成員どうぞ。

○宮本構成員 第1回のときにちょっとだけ申し上げたところでございます。資料1の6ページの「3.企業側からみた課題・ニーズ」の一番下ですが、「○病名・病状など、労働者の健康状態の把握が難しい。」の4つ目、「医療機関から企業側、ここに産業保健スタッフが括弧の中に入っていますが、こちらで情報を得ることが難しいという点に関連いたしまして、例えば、産業医への診療情報提供書が保険適用されないというような問題を何とか改善できないかということを申し上げましたので、書き方はいろいろあるかと思いますが、報告書に入れていただければと思っております。

○堀田座長 ありがとうございました。それでは、書きぶりはいろいろあるかもしれませんが、事務局のほうでそれも含めるようにお願いいたします。

 そのほかはいかがでしょうか。伊藤構成員どうぞ。

○伊藤構成員 違う点でもう一つ発言させていただきたいと思います。今日は特に「3.企業側からみた課題・ニーズ」以降を議論するということだと思いますので、これまで振り返ってみますと、「企業側からみた課題・ニーズ」に入れてもいいのではないか、入れるべきではないかと思うことがあります。これまで労働者側からみた課題・ニーズとして挙がっていた3ページの真ん中あたりに、病状の把握がなされないまま退職勧告を受けたり、就職差別があるといった話が出てきておりますし、データでも4%が解雇されているといった資料もこの間出されていたと思います。こういうものを見ますと、これが不当な取り扱いでないのか、私の立場から言いますと非常に懸念を持つところです。「3.企業側からみた課題・ニーズ」には、そういった法令遵守的な観点からは課題が挙がっていないように思います。企業側からはそう思っていないということなのかわかりませんけれども、法令遵守というのはここに出てきている課題の中でも、とても重要な課題だと思いますので、いずれかの場所ではその点について触れていく必要があると思います。

 以上です。

○堀田座長 ありがとうございます。

 今の点は、資料2の論点の中にも入れておくべき内容ということで理解させていただきましたので、また御議論いただきたいと思います。

 今まではどちらかというと、今までのまとめみたいなことで、これからの議論の前提みたいな話です。きょういろいろまた参考意見をヒアリングさせていただきますので、そこまで引き続きお願いしたいと思います。

○桜井構成員 1点だけよろしいですか。資料1の7ページの「4.その他の課題・ニーズ」の一番上の四角の中に、要は、がんに対するイメージですとか、そういう意識による差が非常に大きいですよということを書いてあるのですけれども、きょうお持ちした資料で参考資料4がお手元にあるかと思いますけれども、これは私どものほうで、がん経験者がいる職場といない職場でコミュニケーションの調査をしたことがあります。その結果を持ってきたものなのですけれども、関連して4ページですけれども、部下にがん患者さんがいたことがありますよという職場と、全くがん患者さん、もしくは「がんの治療をしています」と社員から言われたことがないという職場で、コミュニケーションに対して非常に差が大きいということが明らかになっています。これは4ページもそうですし、5ページもそうです。多くの職場は、御本人に対して多分がんだろうなと思っていても聞かないほうかいいというような意識を非常に持っている。でも、一度がん患者さんとおつき合いがある上司の方、周りの方は、いやいや、そうではなくて、こまめにコミュニケーションをとったほうがいいんだよと思っているという結果が非常に顕著に出てきましたので、できればコミュニケーションにおいて、がんに対する個人的な経験量の差というのが、就労継続に対して非常に大きいんだよということを一言書き添えていただければと思います。

○堀田座長 ありがとうございます。

 それでは、このたたき台につきましての議論は、きょうはこのぐらいにさせていただきまして、次に進ませていただきたいと思います。

 次は、資料4の説明をお願いいたします。

○伊藤産業保健支援室長補佐 それでは、資料4について御説明させていただきたいと思います。

 この資料は、平成25年度に厚生労働省からみずほ情報総研に委託いたしまして、がんには限りませんけれども、治療と職業生活の両立について労働者や事業者、医療機関に対してアンケート調査あるいはヒアリング調査を行った結果をまとめたものでございます。

 資料4の裏表紙をごらんいただきたいと思います。上のほうにアンケート調査が書いてございまして、ちょっと字が小さくて恐縮ですが、2)調査対象ということで、労働者につきましては5つの疾患につきまして1,000人ほど、事業者につきましては従業員数30人以上の企業につきまして3,000件、医療機関につきましても1,000件ほどアンケート調査を行ったところでございます。

 労働者向けの調査が、赤い字の白抜きのところに書いてございますが、右から2つ目にございますが、今後の就労継続の意向ということで、非常に多くの方が仕事を続けたいと思うということで回答をいただいております。

 一番右の罹患後の就業形態等の変化でございますけれども、変化なしという方が66.9%でございますが、一方で、退職・転職等を含むという方が、○で囲んでございますが16.2%という数字が出ているという状況でございます。

 次に、事業者向け調査、緑の白抜きのところにつきましては、事業所の規模によっていろいろ対策が異なっているということで、上の一番右側、長期休職者を対象とした復職プランにつきましても、500人以上ですと作成しているところが71.6%ですが、49人以下ですと19.4%。また、柔軟な働き方のための制度の整備状況、下の欄の一番左側でございますけれども、これも規模によって大分異なっているという状況でございます。

 最後に、青字の白抜きのところで病院向けの調査でございますけれども、相談窓口のある病院における就労に関する相談件数ということでございますが、非常に多いという赤い字と、どちらかというと多い、薄い水色が0.4%と4.5%で、相談窓口のあるところでも余り活用されていないという実態が見てとれるところでございます。

 また、ヒアリング調査につきましては、労働者、事業者、医療機関について、それぞれ限られた数ではございますが、実施したところでございます。

 次に、中身の説明をさせていただきたいと思います。2ページをごらんいただきたいと思います。「1 治療と仕事の両立を取り巻く現状と課題」ということでございまして、一番上に傷病を抱える労働者が必要としている支援ということで、緑のバックグラウンドになっているところでございますけれども、労働者が仕事と治療を両立する上で必要だと感じる支援が、柔軟な勤務形態あるいは休暇・休業制度あるいは風土の醸成といったところが上位に来ているという状況でございます。

 また、真ん中あたりに事業者における制度面・運用面の取り組み格差ということで書いてございますけれども、こちらはどちらかといいますと、今、疾病の関係で対策というのがメンタルヘルスが非常に注目を浴びているということで、右側に研修・教育の実施状況ということで円グラフが書いてございますけれども、メンタルヘルスについてのみ実施しているところが19.3%、2割弱あるのに対しまして、他の疾病について実施しているところが8.9%、1割にも満たないといったような状況でございました。

 また、医療機関における取り組みにつきましては、経済的な問題ですとか、仕事への影響に対する問い合わせ、就業内容や就労制限に関する書類作成・情報提供の依頼などに対応しているということでございます。

 次に、3ページでございますけれども「2 産業医等産業保健スタッフの役割」ということでございまして、「1.産業保健スタッフによる労働者の健康管理」ということで、ヒアリング調査で一番下に具体的な取り組み事例ということで、労働者全員との面談の実施、あと就労中の労働者に対して無理のない就労継続を支援ということで、まずは労働者に会って情報を得るといったような取り組みがなされているところでございます。

 4ページをごらんいただきますと、「2.産業保健スタッフと医療機関等の連携」ということで書いてございます。特に、こちらでは企業側から見ると医療機関から必要な情報がなかなかとれないといったような話があったようでございまして、5ページの一番上をごらんいただきますと具体的な取り組み事例ということで書いてございますけれども、あらかじめ主治医に確認するときに、就労の可否や就業上の可否について確認する項目を事業者として、D社、E社、F社と書いてございますけれども、なるべくこういう項目立てをして、必要な情報が得られるように工夫しているといった事例が見られたところでございます。

 次に、6ページの「3 職場環境の整備・改善」でございます。こちらは復職の関係でございますけれども、真ん中に労働者の事例ということで、業務負荷への配慮のもと治療と仕事の両立を実現ということで、柔軟な勤務で無理なく就労を継続した例ですとか、あるいは近いところの社宅を手配してもらって、通勤への配慮を受けながら就労を継続した事例がございます。

 また、7ページの一番上に、少しの工夫で働きやすい職場づくりということで、余り堅苦しい制度だけでなくても、例えば事例ということでございますが、手術後食事の回数を増やして少量ずつ摂食することになったDさんにつきましては、会議中の飲食はしづらいので、会議中に気兼ねなく飲食できるように、Cさんが出席者全員に軽食を出すようにしてくれたということですとか、短期記憶障害が残ったEさんについては、ボイスレコーダーやノートを活用していると。あるいは、直属の上司がスケジュールを管理してくれるといった少しの工夫で働きやすい職場づくりといった事例も見られたところでございます。

 この事業につきましては、今年度も継続して行うこととしてございまして、今年度につきましても事業所に出向いていきまして事例集を作成したりとか、あるいは研修会を行う予定にしてございます。

 以上でございます。

○堀田座長 ありがとうございました。

 これは厚生労働省が進めております支援対策事業の報告書のまとめで、かなり詳細な調査結果を出していただきまして、これも資料として今後の議論に生かしていただきたいと思います。

 特別にこれについて御質問等はありますでしょうか。先ほどの事務局資料にもありましたけれども、がんの患者さんは、あらゆる規模の職場で実際は就労しているという状況がありますので、それを踏まえて規模の違いとか、あるいは産業医の立場から問題を今後出していただきたいと思いますので、その中でも資料として使っていただければと思います。

 それでは、続きまして、職場の取り組みについての検討ということで、資料5、資料6、資料7を一通り続けて御説明いただいた後で、質疑応答に移りたいと思います。

 それでは、まず、櫻井構成員から、資料5「職場等における就労支援」の説明をお願いいたします。

○櫻井構成員 それでは、資料5、弊社の事例を御紹介申し上げます。

 櫻井謙二商店、千葉県銚子市の従業員29名、アルバイト・パートが13名、合計42名の会社です。先ほどの資料で言いますと、大変問題の多い規模の会社ということですが、その中でもいろいろ工夫してやっておりますので、お聞きいただければと思います。

 創業が昭和7年、今年で82年になり私が4代目です。

 社員の構成ですが、年齢が社員1865歳、パート・アルバイトは3374歳までのメンバーがおります。退職後でも可能な時間枠で好きなだけ働いてくださいという形にしておりますので、74歳になっても短時間で来てもらっているパート社員もおります。

 それぞれの社員はいろいろな問題を抱えており、育児中、介護中、シングルマザー、がんだけでなく糖尿病を抱えていたり、心疾患があったり、リウマチがあったり、知的障害のある社員もいます。

 保険者は協会けんぽになります。産業医の先生がおられる会社も多いですが、うちぐらいの会社規模ですと産業医の先生はもちろんおりませんので、地域産業保健センターの方が会社に訪問してきてくれます。具体的には会社で年1回やる健康診断書をお持ちになって、それを市の担当医の先生に見ていただいて、代表で私がドクターからこの社員はこういうところに気をつけたほうがいいよねということを一人一人の健康診断表を見ながらフィードバックしていただくといったようなつき合い方をさせてもらっています。

 早速、事例です。弊社には40歳代で乳がんに罹患した社員がおります。2009年でした。後で聞くと、がんですよと言われたときに、それは仕事どころではないし、人生観は変わるし、退職も全く考えないわけではなかったと。ただ、当時私の配偶者が7年間がんと一緒に普通に働いており、がんであっても割と普通に仕事できるんだなというようなことを目の当たりにしておりましたので、本人も自然にできるかもしれないと感じたという背景があります。そこで、まずは休職という道を選びました。

 手術、抗がん剤、放射線治療、本人の希望でこの間9カ月間は丸ごと休職しました。その間は傷病手当金を受給しています。休職中は月に1回治療の通院のついでに会社に寄り面談しておりました。本人の気持ちが、そろそろ働いてみようかな、髪も生えてきたし、会社に出てこようかなというようになるのを待ち、でも、不安を取り除くために、2時間のリハビリ勤務という形を提案してやってみました。割とすぐに自信も取り戻し、次の月から一日7時間勤務にすることができました。給与は時間給に変更しました。これは柔軟に対応しやすくするためです。2人で話し合って決めましたが、体調が悪ければお休みがとれる、調子がよければもう2時間働いちゃおうかなという働き方ができる、とりあえずやってみようよということで時間給ということです。

 周りの社員に、自分たちと彼女が、あるいは病気になるまでの彼女と今ここにいる彼女が、また違う給与体系で働いているということを明確にするためにも、これはよい制度だったねということは後ででた話です。

 通常、正社員は一日8時間働いているところを一日7時間勤務で3年間、その後フルタイムに戻り、今に至ります。3年かかった理由は本人の希望です。それまでのフルタイムでバリバリ働いていたような仕事の仕方ではなく、自分の生活や人生を大事にするような生き方に変えていきたいという希望が強くあり、そういう形にしました。

 フルタイムに戻った理由は、時間を置いてそろそろ戻れるかなということを、私からアプローチして、、戻ってもらったような形になります。患者さんは時間によっても、治療の程度によっても、気持ちも働き方に対する考え方もどんどん変わっていきますので、お互いに都度話し合うことが最もうまくいったポイントなのかなと思っています。

 ここで会社の課題としては、特にがんならではの心配なのかもしれないですが、万一の再発などに備えることだと思っています。万が一彼女が再発してしまったら、最初に受給していた傷病手当金はもらえませんので、会社として対応できる制度として、有給休暇の積立制度を始めました。これはがんだけでなく、私傷病でお休みをとらなければいけなくなった社員に使ってもらおうと思っています。

 具体的に会社と本人のした工夫です。本人が自分の仕事をやってくれる人が困らないようにということで、とても細かい配慮をし、業務をマニュアル化してくれたことが功を奏しました。残された社員の私たちは空いた1人分の穴、その瞬間の1人とはいえ29分の1の大きな労働力ですので、カバーできるかどうかもわからないままカバーに入っていったわけですが、とりあえずやってみようと。どうしてもできなかったら、パートさんに手伝ってもらおうというようなことでスタートしました。仕事のボリュームアップによって時間がかかってしまった人には時間外手当の支給、内容が大きく変わって責任が伴う場合には、職務手当の増額ということで対応してきました。幸いにしてこのケースでは9カ月の間新たにパートさんを雇用することもなく、やってこられました。

 一番よかったのは復職時に、社員のメンバーがよく帰ってきてくれたねと迎え入れてあげられたことです。私たち9カ月結構必死で頑張っちゃったけれども、よく帰ってきてくれた、ありがとうと。あなたが2時間いてくれるだけでどんなに心強いかという感じで迎え入れてあげることができたのは双方に大きな喜びでした。そして、本人が時間枠7時間でほかのメンバーと違う勤務体系になっても、お先に失礼します、ごめんね、ありがとうねというコミュニケーションを非常に上手にとってこられたこと。それは、大したことではないかもしれないけれども、日常の中で一番大事なことだったなと思ったので記載させていただきました。

 うまくいかなかった事例2です。こちらは、中途採用で入ってきた40歳の男性社員でしたが、入社してから、社長、実は僕、肺がんだったんですという告白がありました。そんな事情は全然関係ないからと、早く言えばよかったのにということで、その場はよかったのですが、その後再発の疑いが生じ、同時にうつ病が診断されました。休職に入り、定期的に連絡はとっていました。がんのショックは、がんになりましたと言われたとき、再発しましたと言われたとき、あなたにはもうする治療がありませんと言われたとき、この3つが一番メンタル的にショックの大きい瞬間です。再発しましたと言われた社員がうつになってしまって休職したときの、投げかけ方としては、もう一回治療をして元気になって帰ってこようよということなのですが、それがなかなかうまくいかない。彼の場合は結局リハビリ勤務なども勧めましたが、先生からはまだ無理だと言われました、とにかく退職させてくださいの一点張りになってしまったんです。そうなってくると、私ができることはたった一つです。わかった、退職していいよと。でも、元気になってまた働きたいなと思ったら、必ず連絡しておいでと。これは保険の言葉みたいなものですけれども、いざもう一回働こうと思ってハローワークに行って職を探して困難な現実にぶち当たってしまったときに、あのときにそういうふうに言われたよなと思って戻ってきてくれる道を一つ開けておいてあげることができたらば、それでいいと思いました。彼からの連絡はまだありません。

 2つの事例を御紹介しましたけれども、日々仕事をしておりまして、会社の中ではがんだけでなくいろいろな疾患やメンタルなど、さまざまな問題があります。でも、今まで一緒に働いてきた経験を積んだ貴重な人材が更にが人生経験を積んでパワーアップして戻ってくるという意味では、社員が困難に遭ったときに後で迎え入れたほうが会社にとっての財産になります。

 最後にまとめです。ただ働くことが楽しい、元気に戻ってこられたという姿は職場にいい風となります。今、元気な社員もしっかり健診を受けるようになります。自分や家族が罹患したときに真っ先に相談に行く先ができます。お互い様の空気が当然のようになります。ですので、私は何があっても社員が戻ってきたときには、このように対応していきたいと思っています。

 そして、おまけの話です。私の配偶者は結局7年後、GISTという希少がんで亡くなりました。その関係で、私はGISTの患者会の副理事長をやらせてもらっています。先日、2年間手術を重ねてなかなか仕事に戻れなかったメンバーが、医師主導の臨床試験に入れていただいてかなり元気になりました。その間、桜井なおみさんがやってくださった患者さん向けの就労セミナーに参加し、自分が会社に復職する時に、どういうことを伝えればいいのだろうかということを勉強しました。何ができて、何ができなくなって、何に配慮が必要で、そういったことをまとめて会社に持って帰ったそうです。会社はそれを受け、本人が驚くぐらいよくしてくださったということです。休憩室までつくってくれたそうです。リハビリ勤務を終え、彼はきのうからフルタイムで復職することができました。

 復職希望の患者さんから、これをやってくれるとうれしいなということを伝えることができたら、どんな企業でもできることはちゃんとやってくださると思います。そういう相互のコミュニケーションがとても大事だと思ったとてもうれしい話でしたので、御報告させていただいて終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

○堀田座長 ありがとうございました。具体的な事例を通して、いろいろな体験あるいは実際に取り組んだことをお話しいただきました。

 では、続きまして、湯澤構成員からお願いいたします。

○湯澤構成員 湯澤でございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、足利銀行におけるがん治療を受ける就労者に向けた支援ということでお話をさせていただきます。

 手元の資料、スライド2をごらんください。当行足利銀行は、創業明治28年。業種は金融・保険業となります。

 有害物質等の取り扱い業務はございませんけれども、シフト勤務と一部高所作業などを含む設備担当者がおります。

 平成25年3月31日の職員数は3,116名です。

 企業内産業保健スタッフとしましては、嘱託の産業医1名、嘱託の精神科医1名、産業保健師1名でございます。

 スライド3をごらんください。「はじめに」と書かせていただいております。産業保健スタッフの役割と思っておりますが、産業保健スタッフは働く人が笑顔で精いっぱい仕事に取り組めるよう職場環境の調整や健康管理の支援を担当いたします。病気予防のための健康教育や健康診断を実施して、病気の早期発見に努めること。また、働きながら受ける治療のサポートや復職支援などを行い、企業としてできる限り健やかな状態で仕事ができるよう支援するというものです。

 次にスライド4をごらんください。がん治療を受けながら就労を目指す方への基本的な考えを結果形成への参加としています。こちらは必要な情報の提供をまず受け、さらにその情報を整理するという支援を受けて、病気や状況を理解した上で、御本人が中心となって行動していくということです。

スライド5をごらんください。目次として挙げさせていただいていますが、産業保健スタッフとして治療を受ける御本人はもちろん、雇用している会社にも有益であるために、現在取り組んでいる支援と心がけていること、皆様の声をお伝えしてまいりたいと思います。

 スライド6です。まず、がんによる継続治療や長期療養が必要となった際、こちらは長期欠勤の報告書や御本人の希望、また所属長からの連絡などにより、産業保健師が初回面談を行います。

 スライド7、初回面談の内容は大きく2つ。1つは、病状・治療及び検査の状況と今後の予定です。主治医から病状の説明を受けているかどうか、その内容。入院・手術・抗がん剤治療、今後予想される治療。業務遂行に影響のある症状や、薬の副作用などをお聞かせいただきます。面談のときは、御本人と治療への不安を一緒に整理して、次回の診察時に何を質問するかも一緒に考えております。

 もう一つは、今後の就業に関する考えです。継続勤務の希望を確認します。実は、皆さん病気の報告というのは会社にしてくれるのですが、その際働きたいですという気持ちを伝え忘れる方が多いのですね。なので、あえて改めて働きたい気持ちを会社に伝える機会をつくっております。こうすることで、御本人は自分の希望を伝えられたという安心感を持っていただけていると思っています。そのほか、上司や同僚、人事担当者や保健師などに対する要望、さらに家族の支援状況や御意見などもお聞きいたしております。

 スライド8をごらんください。面談の中では、職場に迷惑をかけてしまうという罪悪感であったり、だれにどこまで病気のことを相談すればいいのだろうかと、雇用の継続や処遇、休職期間の不安や治療費の心配などが多く聞かれます。このような不安に対して企業の支援体制についてお話をします。

 お話しする内容はスライド9にお示ししてありますが、このときは診断間もないときなので、御本人は病気の不安と同時に余命の不安も抱えていらっしゃいます。ですので、先々必要になるであろう詳細な情報というのは控えさせていただき、まずは治療と復帰に銀行も精いっぱいの支援を行うという方針を強くお伝えしております。

 スライド10をごらんください。入院もしくは治療中で出勤していない場合は、定期的に連絡を取り合い、回復状況の確認をいたします。抗がん剤の副作用が強いときは電話1本かけるのも辛いので、連絡は本人のペースに合わせて、窓口も一本化をいたします。ここで大事なことは、入院中は本人にかわり復職に対する意欲や職場への感謝の気持ちを伝えて、職場の支援が継続されるよう配慮することも産業保健師による大切な支援になってきます。

 さらに病状回復と治療が進んでまいりますと、スライド11のリハビリ出社時の対応を行います。御本人からリハビリをしたいと希望があった場合には、主治医の診断を依頼します。診断書は本人から職場の対応を伝えてもらう場合と、本人を通じて主治医にアポイントをとった上で診察時に同席してアドバイスをいただく場合があります。

 本日は別紙として、主治医から復職に際して受理した具体的な診断書の例をお配りしております。後ほど御参考になさってください。

 準備が整いましたところで、次に本人の了解のもと、職場での配慮項目の確認と周知を行います。内容は緊急時の対応や下痢・嘔吐がひどいときの休憩時間の調整、疲労感が強いときに横になって休養できるスペースの確保などです。当行は銀行でございますので、不特定多数のお客様が来店される支店で、抗がん剤治療を受けた方が一番心配なのは感染症の問題です。職場全体で手洗いとうがいを徹底する、それから、本人はマスクを着用する、また、女性は抗がん剤による脱毛、色素沈着、リンパ性浮腫など、容姿に影響のある副作用に特に配慮して復帰を勧める必要があります。

 リハビリが進んで次のステップ、スライド12になります。職場復帰時・復帰後の対応です。復帰時とリハビリ開始時はスライドの内容を確認して、主治医と産業医の意見を聞き、人事部長あてに報告書を作成して協議いたします。スライド1718に、その参考資料を載せてございます。

 復帰になりますと通常業務が基本になりますので、定期的な受診の際は遅刻や早退などで対応したり、土曜日に受診日をシフトするなど工夫される方が多いです。

 次にスライド13をごらんください。支援時に心がけていることを書かせていただいております。1つ目は、御本人の気持ちに寄り添うこと、気持ちを聞かせていただくということです。御本人が安心できる場所で時間をとってお話を伺うようにしています。

 2つ目は、家族や同僚は大切な支援者であるということです。御家族に同席いただいた際には、御家族の方にも担当の連絡先をお伝えするようにしています。個人情報に抵触するような質問があった場合は、本人を通してお聞きいただきますが、御家族の心配にもできる限り対応させていただいております。

 また、働く世代は、子どもや高齢の親御さんに対して病気のことをどう伝えたらよいか、伝えないほうがよいのかというふうに多くの方が悩まれます。どうしたらよいかをアドバイスするのではなく、悩みを傾聴して御本人が気持ちを整理していけるような情報提供を心がけています。例えば、同じような家族背景の方がどんなふうに子どもに話をしたかお伝えしたり、資料となる冊子をお渡しするなど、御本人の意思決定を支援いたしております。

 3つ目は、支援は本人の継続雇用と銀行の人材活用が目的であるということです。銀行の就業規則という平等のルールの中で双方の利益を追求した支援を行っています。だれしもが病気にかかる可能性がある中で、ルールの中での支援ということは周囲の理解と協力を得るためのベースになるものだと考えております。

 4つ目は、治療と就労、治療が優先ということです。がん治療が必要になったときに職場や同僚に迷惑をかけたくないと思う方は少なくありません。でも、私たちはいつだれが病気になるかわかりませんので、元気な人が病気になった人の分をフォローして、病気になった人が元気になったら、その役目を担ってほしい。焦る気持ちが強い方には、企業としてそういう思いをお伝えいたしております。

 また、治療と復職のために使えるツールは数多く情報収集に努めます。有益かどうかというところは本人と主治医と相談していくことかと思っております。そして、御本人と職場の情報というのは相互に正確に伝え、理解を求めるように心がけております。

 ここで職場の皆さんの声なのですけれども、スライド1415に御紹介させていただいています。

 戻る職場があることが治療の苦しさを和らげてくれた。治療中も同僚とのコミュニケーションや待っているという言葉に励まされた。会社の状況や異動などの情報を定期的な連絡で知ることができ、取り残されたような感情が緩和された。副作用の少ない日は復職に向けて体力づくりをしようという前向きな気持ちになった。自分で思っていた以上に体力が落ちていた。リハビリから開始できてよかった。同じ病気で復帰した人が職場にいることを知って安心できた。復帰して治療を支えてくれた職場の仲間に恩返しがしたい。職場への説明に人事部や産業保健スタッフが同席してくれて、今後の治療と支援してほしい内容がうまく伝わって安心できた。職場と相談して整理した職場の状況を主治医に伝え、受診日や副作用に対しての配慮をしてもらえた。抗がん剤を金曜日に打っていただいて、土日の副作用が強いときに御自宅でお休みになって、なるべく元気なときに出勤したいという御希望でした。

 最後にスライド16をごらんください。「おわりに」ですが、がんに罹患された方の多くが、病気にかかる以前と同様のパフォーマンスができないというような偏見をなくすためには、本人と会社が互いに利益を得られるのだということを示すことが大切だと思っています。そのためには、多くの方の社会参加と職場復帰の実績が必要です。これまでの支援から、戻る職場や待っている同僚の存在、銀行の期待というものが本人の闘病意欲向上の一助になると感じています。また、がんの治療を受けながら仕事を続けるためには、本人の就労に対する意欲と家族の協力、そして、主治医と医療スタッフの支援が不可欠です。産業保健スタッフは本人の気持ちに寄り添い、医学的・心理的な知識のほか、労働法や就業規則、雇用形態などの就労環境に留意しながら、これら社会的な資源をつないで、コーディネートしていく活動が求められていると感じております。

 以上で、私の発表を終わります。ありがとうございました。

○堀田座長 ありがとうございました。規模が違っても、かなり精神風土は似ているとは思いました。やはり職場復帰を待っているというメッセージや、休んでいるときのコミュニケーション、定期的な連絡といったことがとても重要だと思いました。

 続きまして、宮本構成員からお願いいたします。

○宮本構成員 新日鐵住金株式会社の宮本でございます。資料7「職場におけるがん患者の就労支援の取り組みについて」をご参照ください。私は主に産業医の立場としてお話しさせていただきます。

 1ページの下に、本日お話しすることとして書いてございますが、大体のアウトラインといたしまして、企業の健康管理におけるがん患者の就労支援活動というものが健康管理の中でどう位置付けられるのかということについてお話をいたします。特に昨今、高齢従業員の増加によりまして、在職中のがん患者が大変多くなってきており、また、治療の進歩で在職死亡例は減少していることから、復職例が増加しているということに直結しており、まさに就労支援のニーズが非常に高まっているという状況でございます。

 職場におけるがん患者の就労支援は、実際にはどういうふうにやっているのかにつきまして、先ほどのお話にもありましたが、特に産業保健スタッフからの支援と主治医との連携についてお話をしたいと思います。実際にどういうパターンで復帰しているのか、あるいは産業医がいない場合の話も先ほど出ていましたので、その課題への対応などについて、あるいはソーシャルキャピタルの重要性について、お話ができればと思っております。

 3ページ目、企業の健康管理の重要なミッションといたしまして、大きくやるべきことが3つあると考えております。まず、1従業員が病気が原因で十分に働けないという事態はできる限り避けるという大きなミッションがあると考えています。これは、労働は国民の義務でもあり、また権利でもあるわけですから、病気が原因となって十分に働けないのは、病気の程度によってどうしても働けない事態もあろうかと思いますが、できる限り避けるというミッションがあると考えられます。

 それから、2従業員が働くことが原因で病気になるという事態、これは避けなければいけない。国民の義務である働くということが生存権を脅かしてはいけないわけですから、絶対に防ぐということで行われているものです。

 また、3従業員が働いていることで持病が悪化するということもできる限り防ぐ。これは持病を申告するという労働安全衛生法の制度もありますし、健康診断の制度もありますので、それからすれば事業者は従業員の持病を知った以上は、就労することで持病が悪化することを防ぐといったミッションもあると考えております。

 がん患者の就労支援に関しましては、病気が原因で十分に働けないということを避けることと、就労で持病が悪化する、すなわち就労によって疾病の経過に悪影響を及ぼすようなことをさせないようにしようということであれば、1と3に主に該当するであろうと考えております。もちろん職業性のがんの話があれば2ですが、余りそれは多くはないので、主に1と3です。したがいまして、できる限り避けるという言い方をすれば事業者の義務ではないのですが、誠意を持って当たるものだという理解をしております。

 4ページは、高齢の従業員が増えてきたという実情です。平均年齢が必ずしも上がっているわけではないのですが、定年の延長ですとか、さまざまな団塊の世代の対応等もありまして、高齢労働者が増えてきているということでございます。

 上が、某事業場の平成25年の従業員構成で、下が平成8年の従業員構成ですが、17年前の平成8年では40歳代に山があったものが、そのまま50歳代後半から60歳代に山が来ているという状況がありまして、これによりますと当然がん患者がふえるということになってございます。

 5ページですが、某事業場の中で数日の年休でおさまらなかったがんの休業患者が3年間で新規でどこの部位に発生したかというデータです。従業員が約4000人の事業場ですが、発生部位は極めて多岐にわたっております。胃や大腸や肺が若干多いということはありますが、本人が自分で見つけやすい頸部の悪性リンパ腫等もあり、この職場は男性主体の職場なのですけれども、実に多岐にわたっており、ほぼ全例が職場復帰しています。これを考えますと、例えばがん検診でどこかのがんを早期に見つけようとしても、限られた資本でどこをターゲットにすればいいかというのは大変迷うところでございます。

 6ページは、企業でがん対策として実際にどんなことがされているかということをまとめてみました。まず、先ほど言いましたミッションの2番目になりますが、職業がんの予防につきましては、発がん物質である特定化学物質等の対策は有害業務対策としてきちんとやるというのは当然でございます。この上で、一次予防、二次予防、三次予防と考えますと、全てのがんに対する大きなリスクである喫煙に関して禁煙指導あるいは受動喫煙防止対策、肝炎ウイルス等の感染検査、あるいは過剰飲酒の防止教育ですとか、食事や運動等の教育というのはございます。これは一次予防として行われておりますが、すぐに成果が出るものではないということでございます。

 二次予防となりますと、先ほど申しましたように、がん検診などで早期発見、早期治療なのですが、どこにターゲットを絞るかという問題、また会社がやるという義務があるわけでもないので、がん検診の機会をどこまで提供できるか、福利厚生の部分として、どこまで提供できるか、という問題があります。あるいは健康保険組合や地域を活用することで、どうやってそちらに誘導できるか、ということです。その基本となるために健康教育を実施して、がんに対する意識を高めるということはさせていただきますけれども、二次予防だけですべてが対処できるわけでもありません。

 そして、三次予防は再発防止や残存能力の活用とすれば、先ほど申し上げましたが、がん患者の就労支援というケースが大変多くなってきているということでございます。

 7ページですが、がん患者の就労支援に役立つ5つのポイント、これは高橋先生のされている厚労科研の研究班のホームページからいただきましたが、患者さんの仕事に関する情報を集め、あるいは悩みに対してのサポート、希望を聞いて配慮、仕事を継続しながら、あるいはスムーズに職場復帰できるようにとなりますと、この内容がすべて私の立場からいけば産業医と主治医の連携が鍵だということになると思います。

 では、産業医とはどういうポジションかということが、8ページにあります。右側の上にありますが、主治医は労働者のところに書いてございます。労働者が患者だった場合ということになりますが、医師・患者関係の中で主治医は患者のために尽くすとなりますし、一方で、事業者はどこにいるかというと、労働安全衛生法等で健康管理の実施主体が事業者と位置づけられておりますので、事業者はさまざまなことを従業員に対して配慮するという安全配慮義務がある。ただし、何をしたらいいのかがわからないということがありますので、技術的な部分を衛生管理者に委任しつつ産業医に聞きなさいということになっています。

 産業医はと申しますと、労使から独立した立場で公正な判断を行うというポジションとして考えていただいてよろしいかと思います。ここに保健師さんも入るということになりまして、産業医は個々の従業員の方で疾病や健康リスクを有する方等に関しまして、専門的な支援を行ったり、保健指導を行ったり、さまざまな情報提供を行ったりという法律上の職務もございます。

 一方、事業者が従業員の健康管理をどういうふうにするか、これはもちろん集団に対してあるいは個別に対しての問題として、これを事業者に対して指導、勧告、助言を行うという専門的な支援を行う立場がございます。

 上司あるいは職場はがん患者である従業員の配慮をどう行うか、例えば、どういうふうに職場復帰をさせるか、どういうふうに外来治療に協力したり悪化を防ぐ対処をとっていただくかということを事業者に対して指導する立場ということになります。主治医の方から直接文書で事業者に出しても、例えば、職場の管理者がその内容がわからないといった場合、彼らにかみ砕いて説明し、具体的にどうすればいいかを一緒に考えたり、となりますと、産業医と主治医がうまく連携をとるということが、スムーズに就業してもらうには一番重要なことだと考えております。

 9ページになりますが、産業保健スタッフ活用の重要性と書いてございます。湯澤構成員や私のような産業保健スタッフは、社員と職場をよく観察して把握している医療専門職になります。だれがどこでどんな仕事をしているか、あるいはどういう作業にどんな負荷があるのか、職場の人間関係はどうか、どこに健康状態を悪化させるリスクがあるのか、いろいろな措置が必要なのか、配置転換や負荷軽減措置が可能なのか等について十分把握しているということになります。主治医と産業医の連携は、言い換えれば患者把握と職場把握の連携ということになりますので、もちろん円滑な就業にはとても重要なことと言えます。

 実際にどんなことをやっているかといいますと、10ページですが、主治医から職場復帰OKという診断が出ますと、情報提供をいただくことを私の場合は原則としています。がんに限ったわけではなく、メンタルヘルスにしても糖尿病にしても脳血管疾患にしても、全ての疾患で2週間以上休業した方は原則いただくことにしております。もちろん患者への説明文書がしっかりしていれば、それでも良いとしています。本人の理解と医師からの説明ないし情報の双方を確認するということになります。

 それをもとに産業医の面接を行い、いろいろな病状の確認もさせていただき、診察もさせていただきつつ、本人の承諾があれば上司を交えて就業上の条件等の検討あるいは実行可能性の検討をしましょうということをしております。場合によっては家族を交えることもございます。

 職場復帰の可否判断と就業措置に関する専門的意見を産業医の意見書として出させていただきます。これは私のところでは復帰診断書という名称を使っております。

 そして、復帰審査委員会で復帰可否と復帰方法を最終決定いたします。がんの場合は抗がん剤を使っているケース等もございます。そういった情報は、本人が開示OKと言えば委員会内で開示させていただき、これは非常に限られた人しか見ませんので、その情報の中でどういう配慮を行い、人事措置はどういうふうに処遇していくかということを決めて、本人の希望を極力かなえるようにするということをしております。そして職場上司や産業保健スタッフがフォローアップを行うということになります。

11ページに具体例を幾つか出してございます。肺がんが見つかったというケースでございますが、化学療法実施中に出勤希望があり、主治医の意見も聞いた上で産業医面接をして、復帰可能だけれども過勤務を禁止し、机上業務に限定するように職場に配慮してもらうことで出勤しましょうと判断しました。化学療法を3コース実施したら効果があったから手術をするということになって手術になりました。その後も復帰の希望が強いというということで、また主治医の御意見を聞いてOKをもらった上で産業医面接を実施し、職場の状況等を踏まえて少し就業制限を追加して復帰したと。特にこの方は、会社の貴重な財産でもあります経験豊富な方であり、後進の育成ということについて大変高いスキルをお持ちだったので、そちらをメインにしてもらおうということにしました。

 ただ、就業中に再発が認められまして、また化学療法を行うということで4コースほど行ってもらった後、経過がいいので復帰したいということで、本人の希望も確認し、主治医のOKもとって面接もして、復帰審査委員会を経て復帰。復帰してみましたが、その後また転移が見つかりまして、休業して化学療法を再度実施し、また復帰希望ということでしたが、今度は体力が相当に落ちていることがありましたので、短縮勤務から入ろうということを経て戻っています。

 この方については、かなり病状としてはよくなかったのですけれども、本人が生きる気力になるということで、自分はどうしても就業したいと申し出られました。かなり面接したのですが、では、本人の意向をサポートしましょうということで、こちらも頑張っていろいろ職場と交渉いたしまして、限界とは申しませんが、本人がやり切ったというくらいまで就業したというケースでございます。

 なお、いろいろな書類に関しましてフォーマットは事業場の中では統一していますが、全国展開をしている会社の中では、事業場ごとにバラバラなので、こちらでは表示は控えさせていただいております。

12ページは、直腸がんのケースですけれども、現場のオペレーターに直腸がんが見つかり、人工肛門等があって、抗がん剤を使うためにCVポートという持続的に注入する入り口を胸に設置してということで、化学療法を行いながらの生活ということでございました。本人が就業を希望するということでしたので、主治医から情報提供をいただき面接をした上で、本人もぜひ上司にも知ってもらいたいということだったので、上司同席の上でお話をしたというケースです。化学療法の影響はありそうなのだけれども、本人は元気だから出たいと。ただ、現場のオペレーターであり、作業の内容からいっておなかを大きく切っているということから就業制限は必要だろうということで、就業制限を幾つか付与いたしまして、この範囲内でやっていただきたいということでお願いしたと。

 この方は、化学療法を12コース実施して、その後うまくいって効果があって問題ないということで、人工肛門を除去して腸をつなぐという手術を行いました。有害物を扱ったりすることがあったので、そうなるとお風呂に入って帰らないといけないですとか、暑熱職場で汗をかいたりとかさまざまなことがあって、人工肛門があるうちは制限しないと無理だなということだったのですが、この方はこの手術が終わった後は傷がしっかりふさがったら大丈夫そうだねとなりました。術後の状況をみながら制限を緩和して現場に復帰していただいているという状況でございます。

 このように、さまざまな対処ができるという点では、産業医をうまく活用していただくとよろしいかと思いますが、13ページになりますけれども、産業医がどのくらいいるかという問題がございます。私のような専属産業医というものは1,000人以上の従業員がいるところに義務づけになっております。あるいは保健師さんがいるところで大体一事業場あたり300人以上の、比較的大きな事業場になろうかと思います。どなたか産業保健専門職がそれなりの頻度で職場にいるとなりますと、およそ300人以上の事業場と考えますと、就業人口が800万人程度になります。実際に50人のところで産業医の専任義務がございますが、小さくなればなるほど専任率はやや下がるということがございます。

 一方で、一番最近の統計で平成21年になりますが、就業人口が5,800万人ぐらいいらっしゃる中で、産業医の制度が法的にカバーしているところが39.3%となっています。その中で、さらにアクティブに働いている産業医の方がいらっしゃるところがどのくらいかという問題があろうかと思いますし、患者さんの中に占める就業中の方という割合も考えますと、主治医から見ると産業医に対して情報を出そうと思っても、相手の患者さんのところに活動的な産業医がいるという確率が1~2割ということになってしまう点が、やや問題かもしれないなと思っております。したがいまして、今いる産業医をうまく使っていただく、あるいは保健師をうまく使っていただくことが重要であろうと思いますし、アクティブに動く人をふやすということも大事だろうと思われます。

 こういった中で、がん患者の就労は企業にとって不可避であるということにつきまして、従業員は働きたいし、働く権利も義務もあるわけですから、企業も本人の働きたいという気持ちを十分生かしたいということがあります。そうなりますと、本人の意欲と周囲の理解が非常に大切ということになってまいります。

 一方で、企業は従業員の雇用責任がございますし、技能や知識、経験を持った貴重な労働力なので何とかしたい。しかし、今度は企業の体力ということもありますので、どこまでできるかという課題が出てくるのではないかと考えております。

15ページ、がん患者の就労支援を進めるためには、ソーシャルキャピタルという社会資本が重要ということで、信頼と人的ネットワークと参加意識・規範ということをキーワードにして、こういったソーシャルキャピタルが豊かですと、治療タイミングを逃すことなくうまく治療が受けられますし、病気があっても体調に応じて仕事ができるということがあろうかと思います。

16ページです。就労支援を支えるキーワードとして考えることとして、まず『本人の意欲』、これは主治医からの正確な情報が本人にも産業医にも伝えられ、産業医からも不安を減らす情報が提示されることが大切です。そして『職場の誠意と安全配慮』、この点は主治医からの情報を踏まえて産業医からの意見や指示を正確にきちんと伝えたいということがございます。そして、『職場と本人をつなぐ産業保健スタッフ』、小規模事業場などで産業保健スタッフがいなければ、各都道府県の産業保健総合支援センターあるいは地域産業保健センターをうまく活用していただくと。そして、『ソーシャルキャピタル』を有効に活用することで、「がん患者は職場復帰ができる」のだという国民の合意と配慮ができればいいなと思うところでございます。

 私の資料説明は、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

○堀田座長 ありがとうございました。

 ただいまお三方から、それぞれの立場での取り組み状況あるいは経験・事例といったものを紹介していただきました。いろいろな問題点、積極的に取り組まれている好事例に当たる部分も多いと思いました。

 それでは、これを踏まえまして、皆様から御意見をいただきたいと思います。高橋構成員どうぞ。

○高橋構成員 とても貴重な御発表、大変ありがとうございました。理解がある事業主の方が企業文化に対して持つ力と、とてもコーディネート能力の高い、医療現場と職場をつなぐ通訳者になれる産業保健スタッフの方々がおられることのありがたさを改めて痛感いたしました。ただ、産業保健スタッフの方々のお力を知れば知るほど、今お話にもありましたように、いない職場をどうするかということが光と影のように見えてくるわけですけれども、主治医と職場、人事や上司とのコミュニケーションがいかに決定的に大事なものかというのは、研究などを通じて痛感しています。

 湯澤構成員と宮本構成員に質問なのですが、先日来うちの研究班で、職場と医療機関の過不足ないコミュニケーションを実現するためのバリアについて、産業医の先生に御協力いただいて、困ったケースを集めていたんです。主治医がよかれと思ってやったことが、御本人の復職に墓穴を掘る結果になってしまったケースなどです。そうしますと、よかれと思ってやったことの前に、そもそも主治医から診療情報提供書を出してもらえないという事例もかなりあります。

 それから、主治医がすすめる就労上の配慮の提案が非常にとんちんかんであって、患者さんの雇用契約と矛盾していたりするということもあります。それでも主治医が出した文書ですから、人事はそれになかなか逆らうことができず、たとえ事業所に産業保健スタッフの方がいたとしても、話がこじれるというケースもありました。

 3つ目は、就業可と書いてあるだけで、どういう配慮をしたらいいか、いつから就業可なのかという情報が一切ない、そういう情報提供書も実際にあるという御意見もありました。

 それほどコミュニケーションというのは難しいものだなということを実感するわけです。ここからが質問ですが、事業所と医療関係者が楽にコミュニケーションができるツールが喫緊に必要だと思うのです。今まで有病者の情報共有についていろいろな前例があるのではないかと思うのですけれども、例えば、情報共有のためのこんなツールは使えるのではないかというものがありましたら教えていただきたいと思います。また、情報提供書をいただくときに、会社のほうから「これについて教えてほしい」というポイントを出すという手もあると思うんです。既存のもので使えるツールには具体的にどういうものがあるのかを教えていただければありがたいのですけれども。少なくともメンタル不調などのツールで何か応用できるような、がんに関して検討するときにもたたき台になるような、既存のツールは何かございますか。

○堀田座長 湯澤構成員に伺っているんですね。あるいは宮本構成員でも結構です。

○宮本構成員 ありがとうございます。まず、既存のツールとしては例えば、メンタルの復職支援でもいろいろあるにはあるのですが、様々ながん患者に流用しようとすると、実際にきめ細かくやろうとすればするほど使いにくいものになってしまうので、私のところでは使っていません。ただ、主治医の先生には、本人と私が面接したうえで、治療経過や遺残症状あるいは今後の治療方針などを教えてくださいというお手紙はさしあげたり、本人から伝えてもらうこともあります。また、主治医から本人への詳細な説明資料があれば相当部分が代用可能なので、今のところは余り大きな負担にはならないよう気をつけているところです。ただし、主治医の先生の御負担はもしかすると高いのかなと、今お話しを聞いていて思ったところがございます。

 あとは、主治医の先生に該当する近所の大きな病院の先生方とのコミュニケーションは、例えば、医師会ですとか、病院の勉強会等でお会いしていろいろとお話をすることで、こちらからはこういうふうに出せばいいねというような申し合わせをしているところも出来たりしますので、そういった意味では今、先生がおっしゃったように、ツールをこれからつくっていく可能性はあるなと考えております。

○堀田座長 ありがとうございます。

 先生方のように、割と規模が大きくて組織がしっかりしている企業と、そうではなくて、櫻井さんのところみたいに従業員が少なくて産業医は置けないのだけれども、先ほど地域の産業保健について相談できるシステムがあるとおっしゃっていましたね。これは一般的に周知されているのですか。利用というのはどの程度やられているのでしょうか。

○櫻井構成員 多分、産業保健センターのほうで回ってくださるんですよね。先方からアポイントがあったのですけれども。

○宮本構成員 私も産業保健総合支援センターの相談員をやっておりまして、地区医師会で地域センターの運営委員もやっているのですけれども、特に地域センターでは地元の商工会議所等を通じて周知する努力は可能な限りしているというところです。ただ、どこまで本当に皆さんが知っておられるかはわからないところはあるのですが、大分知られてきてはいるかなと思っています。まだ十分ではないと思っておりますが。

○堀田座長 その辺の周知とか、実際にある仕組みがどうやって使われているかというのは、大変大きいですね。たまたま櫻井さんのところは気づいて利用されているのですけれども、そもそものきっかけはどうやってアプローチしたのですか。

○櫻井構成員 うちからではなくて先方から連絡がありまして、健康診断が終わられたら、こういうフォローをしますよという御案内があったものですから、でしたらぜひということでお願いしました。

○堀田座長 なるほど、わかりました。

 湯澤構成員どうぞ。

○湯澤構成員 先ほどの高橋構成員からの御質問ですけれども、私のほうでもツールということは特別何か用意しているということはないんですね。ただ、基本的には御本人の希望が重視というところなので、とんちんかんな答えが返ってこないようにするためには、就労のために会社が聞きたいことと本人が聞きたいことを同じにするという作業が必要になってきます。そのときに、復帰をするために何を聞けばいいんだろうねという共有のものをイメージするために、まずは、先生に診断書をいただく前に必要なことを御本人に聞いていただける準備をするということが大事なのだと思います。それについては御本人がどういう働き方をしたいかとか、職場環境がどうなのかというところを自身でわかっていないと難しいかなと思いますので、まずは御本人が中心となって、会社と本人が同じ聞きたいことができるように、共有のところをつくっていくというのが必要かと思います。

○堀田座長 ありがとうございます。

 川本構成員に資料を御用意していただいていますので、それを踏まえて御発言をいただけますか。

○川本構成員 それでは、発言させていただきます。参考資料3を見ていただきたいのですけれども、1枚目は今までもお話しが出ておりますので、スライドの2枚目から御説明させていただきたいと思います。

 治療を受けているときから一番かかわっているのは看護職でございまして、そこにございますように、医療機関におります看護職に対し、いろいろな治療を受けながら、患者さんはぽろぽろといろいろなことを漏らされます。そういうときにうまく看護職が支えられたらいいなと今改めて御意見を聞きながら感じたところです。実際に医療機関には看護職がおりますけれども、がんの患者さんに関する専門職の方がかなり存在しております。右のほうに医療機関における看護師ということで書いてありますが、2014年3月現在で専門職が4,198名日本全国におります。専門看護師が514名、認定看護師が3,684名おりますけれども、こういう方たちが中心になってかかわれれば、より深いところでもかかわれます。一般的には多くの看護師がそういう治療にかかわっているという現状でございます。

 その後、看護職がかかわっているのは、大規模な事業所でございますが、湯澤構成員のように保健師として健康管理室等にかかわっていらっしゃる方や、中小規模の事業所の方には、先ほどから何度も出ております産業保健総合支援センターにも保健師がおりますので、そういう方たちがいろいろな形で就労支援にかかわっております。

 それぞれの方が具体的にはどういうことをしているかといいますと、なかなか皆様に御理解いただいていないのが、スライド3でございます。医療機関の看護師がどのように就労支援していますかということですが、これは看護の内容でかかわってきます。私どもは、むしろ患者さんのいろいろな不安を聞くことによって、その不安の整理をして、御希望を聞いて、いろいろ症状のアセスメントをしながら就労上に起こる問題のアセスメントをするという形になっております。具体的には、有給休暇が残り少ないけれども、治療がこのまま続けられるだろうか、もし、帰って通勤するならどうだろうか、職場に戻って髪の毛が抜けたらどうしようかということを入院期間中にいろいろ漏らされておりますけれども、そういう状況を聞きながら、患者さん自身が自分自身でセルフケア、マネジメントできるようにということを中心にしながら指導しておりますので、どちらかというと、そのことを具体的に職場へつなげてあげればもっといいのだなというように改めて感じているところでございます。

 そのほか何をするかといいますと、治療上のスケジューリングの支援とか、就労継続や生活をしていく上で負担を軽減するように、その後のフォローアップなどを中心にやっております。どうしても中心は患者さん個別のセルフケア指導ということで力をつけるような形での看護を行っております。

 スライド4は、先ほどから出ております産業保健師の支援の内容ですので、こちらは省かせていただきます。

 医療機関内でのことを考えますと、スライド5を見ていただきたいのですが、いろいろなところで看護職は就労支援をしています。一番最初にまず身近にかかわっている看護職が、どちらかというと労働法や就業規則というような就労支援の手段や相談先について、基本的な知識・情報を十分に持ち合わせていない。ここをうまく使えば、うまく橋渡しができるのではないかということをすごく課題として感じております。意識改革をして、知識を与えるような研修をしていくことが大切かと考えております。

 それから、産業保健師のほうはいろいろなところでかかわっているのですけれども、実は職場内での活動が必ずしも一律ではなくて、さまざまなことをしなければいけないという状況になっております。

 それから、何度もお話が出ておりますが、すべての企業に配置されていないということで、絶対的な数が足らないということになっております。

 このような形の2つで共通する問題は、医療機関とがん患者さんの就労支援に当たる産業保健師との連携や、そういう仕組みがないというところが問題かと思っております。

 スライド6を見ていただきたいのですが、今、看護職員は平成24年時点で1537,813名おります。この中で看護師が1067,760名、69%を占めておりまして、保健師は5万7,112名という状況になっております。早い時期で看護職がかかわっておりますので、そこで何らかの就労支援をすれば非常に効果的になるのではないかということを、この数は示しているかと思います。

 実際に就労支援をする保健師の数は年々上がってきておりますが、まだ4,119名という実情でございますので、これを何とかふやしていただくことはできないかと考えているところでございます。

 最後、スライド7に、今後の対策等ということで3つ挙げさせていただいておりますけれども、看護職をうまく使っていただいて就労支援をする、基本的なところを何とか支えていきたいということと、連携を図っていきたいということと、産業保健師の数をもっとふやしていけないか、充実を図りたいということを課題として挙げさせていただいております。

 以上でございます。ありがとうございました。

○堀田座長 ありがとうございました。

 保健師の中で産業保健師の資格を持っている方というのは、どのくらいいるのですか。

○川本構成員 保健師の中で先ほど数を示させていただきましたけれども、まだ4,000ぐらいの数でございます。

○堀田座長 10%はいないということですか。

○川本構成員 保健師さんのほとんどが市町村に勤めておりまして、産業保健師のスタッフとして勤められている方が4,119名で、まだまだ少なく、7%ぐらいでございます。保健師の中でもそのぐらいの状況でございます。なかなか育成が難しくて。

○堀田座長 まだまだ絶対数が足りないということですね。その育成をどうするかという課題もあるのかもしれませんね。

 そのほかの点で何か御質問・御意見があれば。

○桜井構成員 よろしいでしょうか。先ほどの資料4の5ページ、湯澤構成員も言われたように、ページの上のところに主治医に確認する項目を規定という例がありますこれはすごくおもしろいというか、いいなと思いましたけれども、一方で、ひとり歩きすると怖いなというのがあります。ですので、湯澤構成員が言われたように、本人の希望を考えながら書いていくというところが診療情報提供に関しては重要なのかなと思います。

 これをやっていく上での課題としては3つほどあるかなと思っていまして、まず、1つ目としては、主治医に対する負担がやはり大きくなるかなと思っています。主治医が復職の可否やどんな仕事を患者さんがやっているかというところまで把握するというのは、非常に難しいのではないかと思っております。

 2つ目は、病院のシステムとして、診療情報を文書係の方が書かれるケースなどもありますので、そういうシステムもきちんとつくらないと非常に難しいかなと思っております。

 3つ目として、私も診断書等々を提出してもらうときがあるのですけれども、提携のフォーマットでないと料金が非常に高くなるんです。場合によっては民間の保険ですと、私も7,000円とか8,000円を払って書いてもらいましたので、そのあたりの金額的な負担をだれが持つのかというあたりも、実際にこれをやっていく上では課題になるのかなと思っております。

 以上です。

○堀田座長 実際の運用に関しては、いろいろ問題がありそうですね。

 そのほかいかがですか。伊藤構成員どうぞ。

○伊藤構成員 お3人さんのお話からは、資料1に書いてあるような課題と違う、非常にいい話が聞けて本当によかったと思います。櫻井構成員のお話は、先ほど私が話題にしました雇用管理上の課題を克服している、非常にすばらしい取り組みを実践されていると思います。こういうことが可能なんだということを実感し、大変にすばらしいと思ってお聞きできました。

 産業保健スタッフにつきましても、職場への説明に同席してくれて、うまく伝わってよかったとありますが、こういうことが必要なのではないかということを私は前に言ったつもりだったので、やはりそういう役割を果たしてくださっているのだなと思いました。

 あと、宮本構成員の主治医の役割と産業医の立場ということで、公正な立場で事業者と労働者に対して支援・指導等を行うという役割を果たされているということで、非常に大切な役割だということをよく理解することができました。そうしますと、資料1の3ページに、がん患者・労働者側からの課題・ニーズということで、職場において治療上必要な健康管理への配慮が必ずしも十分ではないという論点として、産業医の指示が守られなかったりするということが出てきます。今日のお話ですと、職場が産業保健スタッフの考えを十分に理解し、くみ取って、それがうまく機能しているということだったのだと思いますが、こういう指示が守られないことの背景について、ほかの職場についてはなかなかわからないかもしれませんが、何かわかるようでしたら御示唆いただければと思います。あるいは、お二方の職場では、職場に理解してもらうための工夫として、特段何か御苦労されていることがあるのかということをお聞きしたいと思います。

○堀田座長 それでは、どちらかお願いできますか。

 では、湯澤構成員、お願いします。

○湯澤構成員 産業医の指示が守られなかったりというところに関しましては、一言で終わるような指示だとすると、職場の理解であるとか、御本人の理解が共有できていない可能性がまず一つとあるかと思います。この指示が守られないというのは、だれが感じているかというところだと思いますけれども、本人なのか、産業医の先生が見ていて守っていないと思っているのかというところも多分重要なのだと思いますが、このあたりは御本人が職場環境がそうしてくれないというような御意見なのでしょうか。

○伊藤構成員 私は、この文章を読んで、職場において配慮が十分でないと書いてありますので、産業医なりがこういうようにすべきだと考えているのだけれども、職場のほうがそれを受け入れてくれないというようなことを意味しているのではないかと思って読みました。

○堀田座長 そういう現実があるかということですね。板挟みになってしまうような。

○湯澤構成員 実際にあると思います。ただ、あったときにそこで終わらせないということが大切かと思います。先生のこういう指示があったと思いますけれども、現状はこうですと。これについては、職場の協力をしていただけないでしょうかというようなアピールは必要かなと思います。

○堀田座長 ありがとうございました。

 私のほうから。宮本構成員と湯澤構成員は産業医であったり産業保健師をやっておられるのですけれども、職場復帰も含めてですが、就労ということに産業カウンセラーとか社労士との連携というのは、どういうふうにとっておられるのですか。直接就職でなければ余りそこは関係ないのでしょうか。

○宮本構成員 実は私は産業カウンセラーさんと復職について直接やりとりをしたこともないし、社労士さんと直接やりとりをしたこともないのです。多分社内スタッフでそれに相当する知識・経験をお持ちの方もいらっしゃるし、私たちも長くやっていれば、先ほど湯澤構成員の話にもありましたが、就業規則ですとか社会保険に関する知識はこちらも相当程度に持ち合わせるということで、大規模事業場であるために、今のところ余りそういった事例がないというだけかもしれません。

○堀田座長 医療機関側では、相談支援センターに社労士や産業カウンセラー置きましょうという話になっているんですよね。わかりました。

 そのほかに何かございますか。道永構成員、何かございませんか。

○道永構成員 まず、櫻井構成員のお話なのですけれども、やはり人数が少なくて、それぞれがみんな顔が見えているというのがすごく大事なんですよね。もちろん社長さんである方が、どれだけみんなに気を配っていけるかということがすごく大事です。そこで医師会としてうれしかったのは、地域産業保健センターから声がかかって、それを本当に利用してくださっているということがすごくうれしいと思っています。

 あと、産業医がいる会社は、前から申し上げていますけれども非常に恵まれています。ただ、やはり温度差があって、産業保健スタッフと事業所、労働者、その三者の中で本当に情報共有がうまくいって、それがいい方向にいっているところばかりではないと思うんです。ですから、それがツールになるのかどうかわかりませんけれども、ある程度積極的にそういったものをだれかが言い出してやっていくと、温度差がなくなってくるのかなと思います。

○堀田座長 ありがとうございます。

 時間の関係もありますので、戻っていただいても結構ですから、次の話題に進めたいと思います。職場や医療機関の取り組み以外の問題についての論点を整理していただいて、そこでまたお話ししたいと思います。

○事務局 では、資料8をごらんください。

 今、御議論いただいておりましたが「医療機関や職場等以外の取り組みについて(論点)」という形でまとめたものです。こちらも同様に、どのようなものが必要かつ効果的と考えられるか、そして、どのようなものが実施しやすいと考えられるか、また、その取り組みを促進するためにはどのような方向が有効かということで、例としまして挙げております。1つ目が、関係者の連携の促進について。2つ目は、多職種の協働について。3つ目は、利用可能な制度について。4つ目としましては、その他の取り組みについてを挙げさせていただいております。

 3点目の利用可能な制度につきましては、参考資料2に傷病手当金であるとか、介護休業制度の参考資料をおつけしておりますので、適宜参照いただきながら御議論いただければと思っております。

 以上です。

○堀田座長 ありがとうございます。

 これにつきまして少し意見交換したいと思います。まず最初に、成人で就職してからがんになったというような人がどうしても話題の中心になるのですが、実際は小児がんなどを患って、その後いろいろな後遺症を抱えたり、そういった形で就業した人も、それを継続していくにはどうしたらいいかという課題も一方であるのですが、池田構成員、そういうことにつきまして、御経験が結構あると思いますので御紹介いただけますか。

○池田構成員 きょう大変貴重なお話を聞いておりまして、まさに勉強することばかりで、私が今この段階で特に意見を申し上げることはないのですが、1つ、主治医から産業医へのあるいは職場への情報提供がなかなか難しいというお話がありましたが、例えば、学校などですと教師が主治医のところに出かけていって、体操には参加できますか、授業は何時間ぐらい参加できますかというような質問をするわけです。そういうことが例えば職場と主治医との関係でうまくできないのかどうかというようなことがあるのですが、その辺に関してはいかがでしょうか。

○堀田座長 宮本構成員どうぞ。

○宮本構成員 私のところにも書きましたが、例えば、職場の方が本人の同意のもとに主治医のところに行って意見を聞くということがないわけではないとは思います。主治医の先生の予約をとって一緒に行ってよろしいかと聞く、これはメンタルヘルスの場合も、がんの場合も、あるいはほかの疾患の場合でもあると思います。ただ、そこでお手間をとらせるということもあるので、職場の方に説明するのと医療職に情報提供するのと、御負担にならないのはどちらがいいのか、なのだと思います。実際には、御本人の承諾があって、主治医もOKして同席を許されるのであれば職場の方の同席は良いと思いますが、上司が勝手に同行してしまうと、それはさすがに守秘義務とかいろいろ問題があろうかと思います。あくまでも本人の正当な許可があればということではないかと考えております。

○池田構成員 もう一点いいですか。小児がんの領域では、がんの子どもを守る会みたいな患者支援団体みたいなものが重要な役割をしていて、そこに例えば、患者さんあるいは御家族が悩みを持っていっていろいろ相談をする、そこにカウンセラーとか心理士、ソーシャルワーカーなどが援助できるというような仕組みがあるのですが、成人のがんの領域でそういう患者会みたいにものがどういう役割をしているかということが気になるのですが、いかがでしょうか。

○湯澤構成員 患者会のお力というのは大変大きいと思っています。同じ御病気でも、生活するにしても、仕事をするにしても、悩みはいろいろ違うんですね。ただ、経験した方が自分のほかにいらっしゃるということで、御自身の考えだけではなくて、ほかの考えも吸収できると。選択肢が広がるというところでは、大変患者会の存在というのは大きいかと思います。職場のほうでも積極的に病院で治療をされている方には、患者会の御紹介をしています。特に、抗がん剤などで脱毛してしまうような女性、皆さん同じ経験をして辛い思いをされて、どう乗り越えてきたかというところは、患者会でしか共有できない気持ちだったと当行の行員は申していますので、大変有用だと思ってこちらはお勧めしております。

○堀田座長 患者会の関係では、桜井構成員がまさにそれをやっておられるのですが、実際に具体的な事例で支援したりすることも結構あるのでしょうか。

○桜井構成員 ありがとうございます、手前みそなのですけれども、私たちは無料の電話相談をやっておりまして、全国の方に利用していただいております。社会保険労務士と産業カウンセラー、ピアサポーターが2人1組になって、1人の患者さんと50分間やっております。もちろん小児の方からも電話はありますし、成人の方からもあります。今まで多分300人ぐらいの方に利用していただいているのですけれども、その成果としては大きいと思っております。

 ただ、私たちがやったことがどれだけ長期的に成果が出ているのか、例えば、瞬間的なりその場なりには課題が解決したかもしれないのですけれども、2年後、3年後にどういう成果が出ているのかというところは、私たちもこれから取り組まなければいけない課題かなと思っております。それは多分、ハローワークさんのほうが今、拠点病院に入ったりですとか、社労士が拠点病院に入ったりということも今まさにスタートしたばかりですので、あわせてアウトカム評価というのは、患者会も、それから、病院においても必要なことなのかなと思っております。

○堀田座長 ありがとうございました。

 そのほか自由に御発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。桜井構成員どうぞ。

○桜井構成員 続けてなのですけれども、資料8ですが、きょう本当に非常に貴重なお話が聞けたなと思っております。それから、前向きな議論がすごくうれしいなと、一患者として思います。その会社だからできること、できないけれども制度があればできることというのがあるのかなと思っておりまして、今、介護も、子育ても、がんの治療も、慢性疾患も、何かと仕事を両立しなければならない、もしくはできる、それから、したい状態に日本はあるのかなと思っています。これからもあるのかなと思っています。

 そういった意味で、例えばアメリカのFMLA法ですとか、イタリアのキャンサーリハビリテーション法ですとか。やはり戦後の社会保障制度というのが長期療養型の支援制度をベースにしたものなんですね。これを今の両立支援型の制度に少しバージョンアップしていかないといけないのかなということは感じているところです。なので、企業側にすべて任せる、医療側にすべて任せるということではなくて、この検討会でそこまで変えるということは非常に難しいとは思いますけれども、せっかく参考資料2で今の就労にかかわる諸制度等も上がってきておりますし、また、先ほど櫻井構成員の資料5の一番後ろのページにも、傷病手当金のこんな使い方がいいのではないかとか、あるいは小児のほうでは介護休暇制度ですとか、家族にとってすごく使いやすい制度、でも、今はちょっと使いにくいという制度もいろいろあるかと思いますので、医療の進歩あるいは社会的な要請に基づいた制度のバージョンアップみたいなものも、資料8の上から3つ目の利用可能な制度と同時に、やはり制度自体も少し考えていければという文言が入っていくと、これから先につながっていくのかなということを思っております。

 もう一つは、一番下のその他の取り組みについて、がん教育が挙がっているのですけれども、私は今、小中学校あるいは高校に行ってがん教育をやっているのですが、同時に大人に対しても必要かなと思っています。ですので、職場や保健所というところでも、ぜひがん教育をやってほしいなと思っております。

 以上です。ありがとうございました。

○堀田座長 ありがとうございました。

 砂原構成員どうぞ。

○砂原構成員 今の桜井構成員のお話は、そのとおりだなと思いながらお聞きしておりました。がんで就業能力が一時的に低下した人に対するサポートをどうすべきかということを、この検討会では議論していると思いますが、がん患者・経験者の方をこういう形でサポートしようという話になったら、今度は肝炎の患者の方に対するサポートはどうすべきだとか、ほかの疾患の患者の方に対してはどうすべきだ、メンタル不調者に対してはどうすべきだ、という話になってきて、一方で今話が出たように、育児の支援であったり、介護によるいろいろな休業の支援であったり、そういうものもありますし、障害者の雇用という観点もあります。しかしながら、それらは別々にサポートを考えられているのが現状です。

 前から申しておりますけれども、企業は従業員を大切だと思っています。従業員を一生懸命教育して、職業のスキルが上がるような形でサポートして行く訳ですが、その方ががんに罹患して治療のために休職されて職業能力が落ちる。でも、その人がもう一回戻ってくれれば、そこまでに教育してきたものが活きる。でも、復職していただくためのサポートでいろいろなコストがかかるのも事実です。つまり、いろいろなことをやればやるほどコストがかかるのも事実です。そのコストを企業として負担し切れるかどうかというところも考えながら、いろいろな制度を考えざるを得ないのも事実であって、多分、みんなが一歩ずつ歩み寄りながら、どういう制度にするのがいいのかを考えなければいけないのだと思います。日本企業も国際競争にさらされており、コストを下げる必要があります。一方で、労働に報いるために賃上げも当然求められるわけで、す。そういう意味では、やはり企業も就労を継続してもらうために許容可能な負担におさまり、従業員も就労を続けるためにこういうふうに努力する、だから働き続けられるのだという形になり、医療者もこういうふうにやれば、患者さんがより回復して、次のステップに進めるような形のサポートができるんだという、みんなの創意工夫が集められればいいなというのを今の話を聞きながら感じておりました。

○堀田座長 ありがとうございました。後半にまとめ的な非常にいいお話を出していただきまして、ありがとうございます。いずれにしても、幅広い議論がまだまだ必要なのですが、今日のところは職場を中心にということでお話をさせていただきました。次回以降また論点を整理しながら、最終的には報告書にとりまとめてまいりたいと思います。

 最後に、何か追加の御発言がありましたら、よろしくお願いします。いかがでしょうか。伊藤構成員どうぞ。

○伊藤構成員 最後に説明していただいた資料8について質問をさせていただきたいのと、資料1に関しても意見を言わせていただければと思います。

 資料8についての質問は、下から2つ目の「利用可能な制度について」の中に、「労働関係の諸規則の運用」とあるのですけれども、このペーパーは医療機関や職場等以外の取り組みということですが、職場等以外でどういうことをイメージされているのかがわかりません。職場での労働関係法規の運用というなら理解できるのですが、職場等以外というのは何を指しているのかを質問させていただきたいというのが1点です。

 それから、資料1の4ページの、以前に発言をさせていただいている非正規雇用者について指摘をしていただいている点なのですけれども、1つ目で「非正規雇用者では、柔軟な働き方をしやすいが」ということで、割と積極的な評価をしているような表現となっています。しかし、実態を見ますと、非正規雇用者のうちの22.5%が不本意非正規といって、自ら望んで非正規の働き方になっているわけではない方が5分の1もいるのが実態です。この検討会が雇用を議論する場ではないのは承知しているのですけれども、非正規雇用労働者は常に雇止めの恐怖にさらされながら不安を抱えて働いているという面がありますので、柔軟な働き方をしやすいからと、自分で望んでいる働き方では必ずしもない、むしろ、そういった不安がある中で例えば、休暇制度等の社内の制度などが十分に使えているかどうかということについて、私はこの場に参加している中で繰り返し発言しているつもりですので、その点も御留意いただければと思います。

 以上です。

○堀田座長 ありがとうございました。

 確かに、先ほど櫻井構成員の事業所では正規の人が非正規になって、本人はかえって負担感が少なくてよかったという場面もあるけれども、逆のこともあり得るので、その辺はいろいろな対応や配慮が必要だと思います。

○櫻井構成員 例えば非正規で働いている社員の出産の場合は、子どもにべったりしていられる貴重な期間なんだから、好きなだけ子どものそばにいてあげてと申し上げます。非正規の社員は社会保障料の負担などは全然ありませんので、うちのほうではただ待っているだけという提供ができるんですね。そういった意味では、企業側の負担は全くなしに、席は置いたまま休職を続けられるというメリットもあると思います。

○堀田座長 まだまだ論点はあるかもしれませんが、お約束の時間もそろそろ迫っておりますので今回のまとめに入りたいと思います。

 ただ今の質問については、事務局から答えさせていただきます。

○江副がん対策推進官 1点目の御質問ですけれども、資料8のタイトルはたしかに語弊があったかもしれないのですが、医療機関や職場等以外の取り組みについてということで、それまでの論点は医療機関、職場にまさに特化した論点を扱っておりましたので、それも含めて幅広く御議論いただくという趣旨でございましたので、資料8の内容に医療機関や職場が関係ないということではもちろんなくて、関係者の連携の促進ということですと医療機関も当然出てきますし、幅広い総合的な論点という趣旨でございました。ですので、御指摘のあった労働関係の諸規則ということについても、もちろん職場が密接に関係してくると考えております。

○堀田座長 ちょっと書きぶりが誤解しやすい部分があったかもしれませんが、その辺はこの議論の中で深めていただくということで、次回以降またよろしくお願いいたします。

 それでは、本日の議論はこれで閉めさせていただきまして、事務局から今後の予定等につきまして、よろしくお願いします。

○江副がん対策推進官 活発な御議論ありがとうございました。

 次回は、5月12日、月曜日の16時からとなっております。想定しております議題としましては、小児がん、それから、これまでの議論の論点整理という2点を予定しております。場所については、追って御連絡させていただきます。

○堀田座長 本日は、これにて終了といたしたいと思います。御協力ありがとうございました。


(了)

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