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2014年4月23日 第43回 がん対策推進協議会(議事録)

健康局がん対策・健康増進課

○日時

平成26年4月23日(水)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 22階 第14会議室


○議題

(1)今後のがん対策の方向性について
(2)がん対策の評価指標について
(3)これまでのがん対策の進捗について
(4)その他

○議事

○江副がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第43回「がん対策推進協議会」を開催いたします。

 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 事務局を務めさせていただきます、健康局がん対策・健康増進課がん対策推進官に参りました江副と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 初めに、本日の委員の出欠状況でございますが、本日は池田委員、内藤委員、野田委員より御欠席の連絡をいただいております。

 また、石井委員、佐々木委員におかれましては若干おくれているようでございます。

 また、新たに任命された委員を御紹介させていただきます。

 田村和夫委員が臨床腫瘍学会の理事長を退任されまして、協議会の委員についても退任されたために、後任としまして臨床腫瘍学会より理事長の国立がん研究センター東病院副院長、大江裕一郎委員に新しく参画いただいております。

○大江委員 今、御紹介ありました国立がん研究センター東病院の大江と申します。田村前理事長の後任としてこの委員会に参加させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○江副がん対策推進官 本日のがん対策推進協議会委員の定足数20名に対しまして、現在の出席委員は、おくれている方も含めますと17名でございますので、議事運営に必要な定足数11名に達していることを御報告申し上げます。

 また、本日は3名の参考人を招聘しております。

 まず、学習院大学経済学部長の遠藤久夫参考人です。

 それから、国立がん研究センターがん対策情報センター長の若尾文彦参考人でございます。

 それから、国立がん研究センターがん対策情報センターの加藤雅志参考人でございます。

 それでは、以後の進行は門田会長にお願いいたします。

○門田会長 皆さん、おはようございます。2カ月ぶりの会でございます。本日、新たに動き始めておりますが、2時間の審議、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 まず最初に、事務局のほうから資料の確認をお願いいたします。

○江副がん対策推進官 それでは、資料の確認をさせていただきます。

 資料1 がん対策推進協議会委員名簿

 資料2 社会保障制度改革国民会議報告書の意味するところと今後の医療・介護政策

 資料3 がん対策の評価指標について

 資料4 がん対策推進基本計画に基づいたがん対策の進捗状況について

 それから、参考資料が3までついてございます。

 その他、机上の配付資料としまして、川本委員より提出いただいております、厚生労働省委託事業「がん医療に携わる看護研修事業」により作成された教材をお配りしておりますので、御確認いただければと思います。

 資料に不足・落丁等がございましたら事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。

 それでは、以上をもちまして撮影につきましては終了させていただいて、カメラをおさめていただきますように御協力のほどをお願いいたします。

(報道関係者退室)

○門田会長 資料のほうは問題ございませんか。よろしいですか。

 第2期の基本計画ができた後からスタートしておりますけれども、今、検討していますのが今後のがん対策の方向性ということで、全ての患者が尊厳を持った生き方を選択できる社会の構築が重要であるということで、今、議論を進めてきております。前回は藤原参考人、濱本委員より新しい情報と個々の価値観に基づく治療、社会生活等における選択の実現ということでお話をお聞きしたということでございます。

 本日は、さらにその延長線で、先ほど御紹介のありました遠藤参考人より、社会保障制度改革国民会議での議論について御紹介していただいて、我々としてどのように考えるかを検討するということでございます。

 そして、本日のもう一つの大きな課題でございますが、第1期からずっと話題にしておりながらなかなか進まなかった評価ということです。今、評価指標を研究班のほうで検討してもらっていますので、そのことについて御報告いただき、そして、もう本年度は始まったところですが、実際にその評価指標をもとに中間評価に向けて進めていかなければならないということで、本日、できましたら、皆さん方の御意見を頂戴しながら決定していきたいと思っております。

 もう一つは、今、申しました中間評価ということで進んでおりますけれども、今、我々が立てている基本計画がどういう状況かという進捗状況について事務局のほうから御報告いただくことにしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、まず最初に、遠藤参考人よりお話をいただくわけですが、皆さん、少し考えていただきますと、2007年、第1期の基本計画の中で我々が主張しましたことは、医学、医療、がん医療を、死亡率を低下させるのだ、何はともかくそこからスタートすると同時に、がん患者さんの療養の質の向上あるいは緩和という方向性を打ち出していくことで、主に病気であり、また患者さんを中心に対策を組んできました。

 そして2期に入りまして、さらにそれだけでは済まないといいますか、ある程度医学医療の進歩のもとに、どちらかというと、患者さんが治療を受けた後の就業の問題とか、実際にがんをどう理解しているかというようながん教育の問題とか、もう少し社会全体の中でがん対策を考えていく必要があるということで、がんにかかっても安心して暮らせる社会の構築というような、少し広げた目で計画が進んでいます。

 今、我々は、その次の第3期のことを考えながらディスカッションをしましょうということできょうまで来ております。どちらかというと、1期、2期は、現状というのか、今の平面的な広がりをぐっと広げてきたということで、これから先、我が国が超高齢化社会に入ってどういう状況になっていって、それに対してどのように考えていくか、がん対策協議会としてもその視点なしには考えられないということで、きょう、国民会議のほうのディスカッションの内容、あるいは遠藤先生の御意見を聞かせていただくことにしてお招きしたということでございます。

 では、遠藤先生、よろしくお願いいたします。

○遠藤参考人 遠藤でございます。門田先生、どうもありがとうございます。

 それでは、時間もありませんので、早速本題に入らせていただきたいと思います。

 本日、社会保障制度改革国民会議の概要ということで御要請があったのですけれども、もう少し幅広い視点で、国民会議の報告書に書いてあることだけではなくて、その背景も含めた大きな流れについての話をさせていただければと思います。したがいまして、表題も「社会保障制度改革国民会議報告書の意味するところと今後の医療・介護政策」というような資料を配付させていただいております。

 それでは、ページをめくっていただきまして、1ページ、2ページでございます。ここでは何を言っているかといいますと、実は社会保障制度の改革につきましては、かなり以前からさまざまな形で議論がされてきているということであります。2ページの黄色になっておりますところに「平成25年8月6日:国民会議報告書とりまとめ」と書いてあります。ここで国民会議の報告書が取りまとめられたわけでありますが、この図からわかりますように、国民会議の報告書というのは独立して単独にあるものではなくて、この大きな制度改革の議論の中にあるものである。まずはそこのところを御理解いただければと思います。

 したがいまして、本日お話しする内容は、国民会議で触れていないようなもの、その背景事情であるとか、国民会議の報告以降、それに応じて動いている動きといったものも含めてお話しさせていただきたいと思います。そういう意味では、狭義の国民会議報告書の概要ではありませんということについてまずお断りさせていただきたいと思います。

 それでは、2ページをあけていただきます。「25年8月6日:国民会議報告書とりまとめ」ということですが、社会保障制度改革国民会議というのは、ここに書いてありますように、委員15名の有識者によって構成されていて、会長が慶應の塾長の清家先生、私が会長代理をさせていただいたということで、本日ここでお話しさせていただいているのだと思いますけれども、20回ほど議論いたしました。

 国民会議そのものは、改革推進法という法律によって設置されております。と同時に、この国民会議の報告書の意味合いは、これまでもいろいろな審議会からの報告書が出ているわけでありますが、そこと少し違う点は、ここで決まったことは法律に反映するということが決められているわけであります。

 何を議論したかというと、少子化、医療、介護、年金、各分野ということでありますので、医療、介護というのはその中の一つであるということであります。国民会議報告書で案がある程度まとまりまして、それに関連いたしまして、社会保障改革プログラム法という法案ができ、そしてそれが現状では成立しているわけです。

 これは何かというと、国民会議で議論した内容をどのような期限で行うかを法律に書くということです。つまり、スケジュールを法律で決めてしまうということです。この国民会議の報告書を受けてプログラム法は成立いたしました。

 現在は、そのプログラム法にのっとって該当する法律が審議される、あるいは審議される予定であるということであります。今年度は、介護保険と医療提供体制に関連した法律について、今、審議され始めるところですか。来年度は、どちらかというと医療保険に関するものが審議されるという流れになっているわけです。

 次の3ページでございますが、これは多分、もう見飽きたような資料かもしれません。そもそも社会保障制度改革をしなければいけない大前提としては、幾つか理由はあるわけですけれども、最大の理由は、この人口ピラミッドの変化であります。2025年は、75歳以上の後期高齢者と前期高齢者を足しますと、それぞれ総人口の18%と12%ですから3割になるということです。特に2025年は、団塊の世代という非常にボリュームの大きい世代が全て後期高齢者になる時代ですので、2025年というのが一つのターゲットになっているということであります。もちろん、高齢化はさらに進んでいくわけです。2060年、ここまで行くとどこまで正しいかわかりませんけれども、ますます少子高齢化が進んでいくという形になるわけです。

 ちなみに、2064歳の生産労働人口と65歳以上の高齢者の人口の割合を見てみますと、2012年は高齢者お1人を2.4人で支えるわけですが、2025年はそれを1.8人で支える形になるということで、これが医療費の負担の問題、それから医療提供体制をどうするかという問題の両方に絡んでくる。こういう背景があるということでございます。

 4ページは、社会保障給付費の伸びを見ているものであります。これは簡潔にいきたいと思います。上の表の「B/A」のところをごらんになっていただきますと、国民所得に占める社会保障給付費の割合がだんだんふえてきている。これは、高齢化するわけですから当然のことなわけですけれども、これを誰がどのような形で負担していくのかという問題が当然出てくるわけであります。

 年金につきましては増加しているわけですけれども、これは上昇を抑制するような仕組みが導入されているといまして、今後、医療、あるいは急速にふえてきております介護費、これらをどのようにしていくのかが大きな課題になっているということです。ちなみに「福祉その他」の中に介護費が含まれています。

 ちなみに、高齢になりますと医療費がかかるわけですけれども、それを見たものが5ページの2009年度の生涯医療費(男女計)でありまして、年齢別1人当たりの平均的な医療費を示したものであります。70歳未満と70歳以上がほぼ1対1でありますので、高齢期になって医療費はかかってくるわけであります。

しかも70歳以上がだんだんふえてくるということであります。

 また違う視点から見ると、1人当たり医療費では、70歳未満と70歳以上では、かつては70歳未満を1とすると70歳以上の1人当たり平均医療費は5倍でした。現在は介護保険などが普及したことによって4.7ぐらいに下がっておりますが、基本的には高齢化は医療及び介護の費用を増加させる。当たり前な話でありますけれど。

 ちなみに、この辺は国民会議の報告書に入っていない話ですけれども、基本的なお話だと思いましてお話しさせていただきます。

 ページを振っておりませんが、6ページの「国民医療費の財源別構成割合の推移」をごらんになっていただきます。医療費というのは公費と保険料と患者自己負担で賄えるわけです。公費というのは税金プラス公債発行によって得たお金であります。これを見ていただきますと、保険と言いながらも、保険料の割合がだんだんと低下しております。逆に公費の割合がふえてきています。制度改革で自己負担率を引き上げているのですけれども、基本的に高齢者は自己負担率を低く設定している。世の中全体が高齢化して高齢者の割合がふえていますので、マクロで見ますと、自己負担の割合はそれほどふえていません。

 それに対して公費はだんだんふえている。なぜ公費がふえるかというと、高齢者の医療費は公費の投入割合が大きいのです。したがって、高齢者がふえてきますと公費がだんだんふえてくる。もう一つは、経済成長が非常に鈍化したということで、保険料だけではなかなか賄えないということで、国保を中心に保険に対する支援が行われた。これは公費を原資にしますので、これによっても公費がふえるということで、だんだんと公費の割合がふえてきているといます。

 それに関連して次ページですけれども、これはGDPに占める我が国の公的債務の割合を時系列で見たものです。この赤字が日本でありますけれども、現在、日本は200%を超えてGDPの2倍以上の公的債務があるということです。2位のイタリアと比べるとこれだけ大きな差があります。このような債務によってファイナンスしているお金を社会保障に投じてきているというのが現状でありますし、よりミクロで見ると、医療保障の中身も保険料よりも公費の割合がふえているということでありますから、こういう問題は放置できない非常に重要な課題になっているということであります。

 そこで、8ページ「社会保障制度改革国民会議報告書(抜粋)」の第1部になるわけでありますが、ここでこのようなことが書いてあります。「人の社会保障は、『自助を基本としつつ、自助の共同化としての共助(=社会保障制度)が自助を支え、自助・共助で対応できない場合に公的扶助等の公助が補完する仕組み』が基本」ということです。

 自助というのは何かというと、次の9ページに書いておりますが、自己負担の部分、あるいは市場からのサービスの購入です。サプリメントとか、アスレチッククラブに行くとか、そういう話であります。共助というのはまさに保険制度であります。公助というのは、財源を公費に求めるようなもの、したがって、介護保険や医療保険の公費部分であるとか、自治体が提供するサービスということです。これらがまざった形で医療保障制度、社会保障制度が運営されているわけですけれども、やはり順番があるということをここで言っているわけであります。ともかく自助を基本としようと。そこをさらに共助が支える。つまり、保険制度が支えて、そこで対応できない部分を公助で賄うという考え方。それが基本だと思いますので、そこのところを明らかにしたということであります。

10ページは「社会保障の機能の充実と給付の重点化・効率化、負担の増大の抑制」ということです。ただいま申し上げましたようなことがありますので、「現在の世代に必要な給付は、現在の世代で賄うことが必要であり、『自助努力を支えることにより、公的制度への依存を減らす』、『負担可能な者は応分の負担を行う』ことにより、将来の社会を支える世代の負担が過大にならないようにすることが必要」であると。

 つまり、これは何を言っているかといいますと、先ほど人口構成のピラミッドに出ておりましたように、高齢者の割合がふえてくる。そして、生産労働人口は相対的に減ってくるということでありますので、基本的には、保険料の負担あるいは税の負担も含めて現役世代の負担が大きいわけですから、余り現役世代に負担をかけるべきではない。それから、赤字公債の発行ということは、基本的にはその償還は若い世代の労働の付加価値によって行われるわけでありますので、これも後世代へつけ回しをすることになるものでありますから、極力、現在の世代で賄うことが必要であるとここで明示しているということであります。したがって、それは公的制度への依存を減らし、負担能力のある人は応分の負担を行うということ。

 現行ですと、例えば、高齢者の負担というのは、保険料にしても自己負担にしても低いわけであります。現役世代と比べて低いのですけれども、高齢者の中でも経済力のある人がいるわけですので、それは応分の負担をしていただくというようなことで、年齢による負担の差というよりも、むしろ負担能力というところに力点を置くべきであろうということで、いずれにしても、後世代へつけを回すことは非常に危険であるということをここで申し上げたわけであります。

11ページ「社会保障制度改革国民会議報告書を踏まえた改革の方向性」ということで、ここに3つのことが書いてあります。

 「社会保障の機能の充実と、財源確保及び給付の重点化・効率化による安定化」ということで、基本的に、効率化・重点化ということで、めり張りの効く資源配分をすることによって、医療費、介護費が社会保障全体も含めて余り膨張していかないようにするべきだということ。

 真ん中の2つ目は「子ども・子育て支援策の充実等、若い人々の希望につながる投資を積極的実施」ということで、実は日本の社会保障制度の特徴としましては、高齢者には厚いのですけれども、比較的若い人たちには薄いという傾向が国際的にあるものですから、そこのところを見直すべきだということ。

 一番右側が「年齢ではなく、負担能力に応じて負担し、支え合う」ということで、これは先ほど私が申し上げたことであります。

 このような流れで費用負担の議論が行われております。今後、医療保険制度改革あるいは介護保険制度改革の中でこういったことが少しずつ現実のものになっています。また、それに関連して、今、法律が審議され、あるいは今後されることになっております。

 次、12ページは、これまでは医療保険、介護保険の費用の話をしましたけれども、医療の話をするときは、ファイナンス、お金の問題、つまり保険制度の問題と、もう一つは医療提供体制をどうするかという2つの問題を考えなければいけないわけでありまして、これからは医療提供のお話に少し移らせていただきたいと思います。

12ページにるる書いてありますけれども、日本と外国とを比較しているわけであります。日本の特徴は、御存じのとおり、平均在院日数が非常に長い。なぜ長いかというのはいろいろ議論もあるわけでありますけれども、その辺は飛ばします。また人口当たりの病床数が非常に多い。これも過去の歴史の中でこうなったわけでありますけれども、こういう傾向があるということです。したがって、分母に病床当たりをとりますと、医師の数も看護師の数も国際比較すると非常に低いという形になります。ということで、平均在院日数が長くてベッドが多いというのが我が国の特徴ということになるわけです。

 こういう中でどういう対策をとっていくかということ、と同時に、ニーズのほうの変化も出てきているわけです。高齢化に伴いまして、ここではがんも出てきますが、がんだとか慢性疾患などが非常にふえてくるということになってきて、急性疾患から慢性疾患へと医療ニーズが変わってくる。こういう中でどのように対応していくのかということになるわけであります。

 実は、最初のページのほうにありますが、国民会議が開かれる前に議論されました社会保障・税一体改革の成案の中に、医療提供体制の今後のありようについての方針がかなり明確に書かれております。細かいことは省きますけれども、基本的にはこんな感じです。高齢化することによって、当然、医療需要がふえてくる。しかし、病床は国際水準でも多いのでふやさない。そのかわり機能を分化する。機能を分化して連携を強化する。ネットワーク化を強化する。と同時に、在宅と介護の強化をするということであります。医療資源は、どちらかというと、病院だけを見ると、急性期、超急性期に傾斜配分する。このような流れのものをつくることによって、現行の病床数でふえていくであろう医療ニーズを支えていこうというようなことです。ですから、医療機能の分化・連携、それから在宅の強化といったようなことが書かれているわけであります。基本的に国民会議の報告書もそういう流れを踏襲しているわけであります。

13ページであります。日本の医療の特徴というのは、

○ 日本の医療は世界に高く評価されるコストパフォーマンスを達成してきたが、多額の公的債務があることを踏まえれば、必要なサービスを将来にわたって確実に確保していくためには、医療・介護資源をより患者のニーズに適合した効率的な利用を図り、国民の負担を適正な範囲に抑えていく努力が必要。

○ 日本の皆保険制度の良さを変えずに守り通すためには、医療そのものが変わらなければならない。

ということで、14ページに「改革の方向性」ということが書かれております。ここに書いてあることが全てではありませんけれども、幾つか出ております。

○ 医療改革は、提供者と利用者が一体となって実現されるもの。「必要なときに必要な医療にアクセスできる」という意味でのフリーアクセスを守るためには、緩やかなゲートキーパー機能を備えた「かかりつけ医」の普及は必須。

 このゲートキーパー機能については、中医協等々で随分議論されてきたわけでありますけれども、ここではより具体的に「かかりつけ医」機能といったようなことが重要なのだと。つまり、受療に対しての一定の制約と捉えることもできますけれども、こういったことも必要なのだと。これはまさに医療提供体制を守るために大事だということ。フリーアクセスを守るためにもこうしないとだめなのだと。いわゆる大病院志向の見直しですね。

 そのためには、

○ 医療を利用するすべての国民の協力と国民の意識の変化が求められる。

ということで、受療行動に対してそれなりに考える必要があるということであります。

 今度は、

○ 急性期医療を中心に人的・物的資源を集中投入し、早期の家庭復帰・社会復帰を実現するとともに、受け皿となる地域の病床や在宅医療・介護を充実。川上から川下までの提供者間のネットワークは必要不可欠。

ということで、医療機能の分化、そして医療機関の連携、特に最後の受け皿になるような在宅介護を充実させるということ。これは従来から言われていたことでありますけれども、ここでまた改めたということで、ネットワーク化ということになるかと思います。

 もう一つが、

○ 医療・介護の在り方を地域毎に考えていく「ご当地医療」が必要である。

 これは、この国民会議でかなり明確に出された議論であります。これまでは、医療機能の分化と連携ということは言われていたのですけれども、何となく全国的なイメージなのです。これに対して、これは後でもお話しいたしますけれども、医療のニーズとシーズに関しては地域によってかなり違うということなので、そこをうまくそれなりに対応できなければいけないということであります。

 後は、まさにICT等々を使った分析をして疾病予防を推進する。疾病予防ということが一つの重要な医療政策の基調になっているわけであります。

15ページがその辺を書いたものであります。これは、社会保障・税一体改革の成案の中にあったものでありますけれども、現状では、医療法上は病床はこの左に書かれているような分類の仕方しかない。実質的には、診療報酬によって機能区分は細かく行われているのですけれども、医療法上はこのような区分である。これを医療法上もかなり分けて、相互の連携を強化させていく。そして、在宅や介護との連携、在宅の強化ということも行っていく。こういったことが行われようとしているわけであります。

 こういう医療提供体制を変えていく手段は、一つは、ファイナンスがあるわけです。ファイナンスで一番大きな影響力を持っているのは診療報酬による誘導です。もう一つは補助金であります。ファイナンスとは別に規制的な手法という病床規制のようなものがあります。こういったものを組み合わせながらやっていくということになるわけです。

 次のページは「9ページ」と書いてありますけれども、違いますね。これは同じようなことが書いてあります。この流れを受けまして、この26年度4月から新しく改定されました診療報酬の中でこのような方針に沿った形の改定が行われたということで、それぞれの機能分化を行っていこうということです。

 それから、外来というものに主治医機能を評価しましょうとか、在宅医療については質の高い在宅医療の提供の推進。これまでは在宅医療は数をふやすということが非常に重要だったものですから、ともかく数をふやすということだったのですけれども、質の問題も出てきたということで、質のいいところには高い報酬を出すという動きをつくっているということです。これは診療報酬によるお話であります。

 一方、17ページにつきましては、医療機能の分化ということだけではなくて、もう一つの連携ということ。特に川下のほうの連携でありますけれども、こういう地域包括ケアというネーミングのもとでこれを重視したいということです。ここに書いてあるものは「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現」ということで、医療・介護の連携だけではないのです。予防・住まい・生活支援までも一体化するという方向で考えるということです。

 それから、認知症の高齢者がふえるということで、地域包括ケアシステムもさらに必要になるということです。

 もう一つの問題は、後で資料を出しますけれども、高齢化の進展状況は地域によって大きな差があるということですから、将来的な医療ニーズにも大きな差が出るということでありますので、その問題があるということ。

 それから「地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要」。つまり、何を言いたいかといいますと、このように、単なる医療と介護の連携ということだけではなくて、住まいや予防みたいなものも連携をしていく必要がある。それは当然のことながら地域をベースにするということでありますけれども、その地域の特性はかなり違うものがあるので、それを国が一つの方向で決めるというのではなくて、むしろ市町村、都道府県、とりわけ都道府県にさまざまな意味で影響力を果たしていただきたいという流れ。これが今回の国民会議の報告の一つの特徴ででした。

18ページでありますけれども、これは入院医療についての病床機能の分化の流れです。もう時間をかなり超過しておりますので、これはちょっと飛ばさせていただきます。

19ページは「地域ごとの高齢化の特徴」ということです。これも御案内かと思いますけれども、左側のグラフで75歳以上の将来人口が一番多いのは埼玉県です。その次が東京都になっておりまして、全国平均を上回って高齢化が進んでいくということです。右側は、逆に75歳未満の人口で、これはどこも減ってくるわけでありますけれども、過疎地域のほうが減り方は大きいということでございます。

 つまり、これから言えることは、急速に高齢化が進んでいくのは埼玉、千葉、神奈川の一部、それから東京という大都市でありまして、むしろ地方都市は人口の減少という形になってきて、高齢化の速度はそれほどはふえない。もう十分高齢化している。こういう流れがある中でどのような医療提供体制をつくっていくのかということになります。これがまさに御当地医療の背景になるわけであります。

 そのために今回は都道府県の役割の強化を図るという形で法律の改正が進んでいるところであります。もともと都道府県は医療計画というものを決めなければいけない義務があるわけでありますけれども、その医療計画の中に地域医療ビジョンというものをつくりまして、その地域が必要となるような医療提供体制をより明らかにするということが求められております。今、それに付随してさまざまな仕掛けの議論が行われております。実は私が座長をしているのですけれども、病床の機能を報告する仕組みがもうそろそろまとまりつつあるところであります。そういったものを都道府県が集めるわけですけれども、都道府県はさらに医療ニーズの将来推計のようなことをやって、そこを示しながら医療関係者との間で将来的にどのように医療提供体制をしていくかということを検討する。こういったことが考えられているわけです。

 そのためには新たな財政支援。「新たな」というのは何かというと、基本的には補助金であります。基金をつくりまして、それを補助金として使う。診療報酬による機能分化の誘導というのは大きいのですけれども、基本的に診療報酬は全国一律ということがあります。それに対して基金は都道府県の実情に応じて使おうと。これは、具体的にどういう方法でやるかはまだ決まっていないし、医療関係者は大変関心のあるところですけれども、消費税財源を使ってやっていこうということなので、比較的恒常化されるのではないか。いずれにしても、そういうことで、特に医療機能を変えていくために必要なコストに対して財政支援をしようということが考えられているということです。

 さらには、有効利用に関する都道府県の役割の強化ということで、都道府県の権限の強化ということもここで入れるということ。これがまさに都道府県の強化ということで、それぞれの地域に応じた形で医療提供体制を改善していく。今、こういう流れが進み始めたというか、検討を始めたというレベルかもしれませんが、進みつつあります。

 最後のページでございます。るる申し上げましたけれども、子育て、医療・介護、公的年金制度とありますけれども、医療・介護を見ると、このような形で国民会議の報告書がまとめられるということで、

○ 「病院完結型」から、地域全体で治し、支える「地域完結型」へ

 まさに機能分化と連携、あるいは地域包括ケアと言っているようなことがこれに関連します。

○ 受け皿となる地域の病床や在宅医療・介護を充実。川上から川下までのネットワーク化

○ 地域ごとに、医療、介護、予防に加え、本人の意向と生活実態に合わせて切れ目なく継続的に生活支援サービスや住まいも提供されるネットワーク(地域包括ケアシステム)の構築。

○ 国民の健康増進、疾病の予防及び早期発見等を積極的に促進する必要

ということで、これもいわゆるメタボ健診等々で推進されているということであります。

 このようなことを提供体制のありようとして提言しているということです。

 早口で、しかもあちらこちら話が行ってしまいまして大変おわかりになりづらかったかもしれませんけれども、恐縮でございます。報告は以上のとおりさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

○門田会長 遠藤先生、どうもありがとうございました。

 わずかな時間に大きな話としてこれから先のお話を聞かせていいただきました。多くの委員の皆さんはほとんど認識されていると思うのですが、いろいろな問題を整理していただいたということと、これから先の、国民会議の立場からの解決策の方向性を幾つか示していただいているということだと思うのです。本協議会は、患者さんを代表する委員の方もいらっしゃっていて、医療現場の方が多いわけですので、遠藤先生にいろいろな御質問を頂戴させていただけたらと思います。

 どなたか御質問あるいは御意見ございませんか。

 中川委員。

○中川委員 ありがとうございました。

 遠藤参考人の御資料の8ページ目、社会保険の基本的なあり方は、自助を基本とし、それを共助が支えるということでしょうか。

 私は、がんの臨床医をやっておりまして、終末期まで診ることが多いので、今、進行がんから末期がんにかけて、とりわけ分子標的薬が多数導入されて医療費が非常に上がっている。実は一昨年、私の義理の妹が大腸がんで亡くなりました。医療費総額は大体5070万程度でございました。ほかの患者さんに聞きましてもそんなところでございます。

 新しい薬が保険収載されて使われるのは大変結構なことですし、義理の妹の場合にもそれを享受してきたわけですが、この分子標的薬の生存期間延長というのが2週間から3カ月程度であるものが多いわけです。今後、こういった薬がどんどん使われていった場合に、混合医療というものを今後考えていかれるのか。

 私は、どちらかというと、それには反対なところがあります。医療の格差というのは非常に健康を阻害するということがわかっておりますし、がんにおいてもそうですし、健康寿命という点でもそうだと言われています。この辺、個人的なお考えでも結構なのですが、将来的な方向を教えていただければと思います。

○遠藤参考人 ありがとうございます。

 薬剤費の高騰に伴って、その費用負担を自助で行うということであると、その選択肢の一つの中に混合診療ということがあり得るのかどうか、こういうお話だったと理解いたします。

 薬剤費が高騰しているということはそのとおりだと思います。例えばDPCの中で新規に高額薬剤費が使われますと、DPCを一旦外しまして出来高にしますので、高い薬が1年間に出てきたかというのがよくわかるのでして、それは非常にふえてきております。それをどのように費用負担するのか大変難しい問題になるわけです。それで費用対効果をどう考えるかということを、今、中医協の下部組織で検討しています。ただし、それは薬価をどうつけるかという話になるのです。そうではなくて、今のお話は、もう保険から外したらどうかというお話ですけれども、結論から言うと、私は保険外併用療養費、あるいは混合診療という形になるかもしれませんが、その考え方は決して自助にはならない、結局、国民にとって便益をもたらすことにはならないと基本的には思っております。

 1つは、質の評価の問題です。国内の治験をしなくても使えるということになるわけでありますので、それをどう考えるかという問題が1つあるわけであります。はっきりいって、そういうことになれば、多分、必要性の高い薬ほど保険外併用でメーカーは申請してくると思います。なぜならば、国内での治験コストなどは必要にならなくなるわけですし、変に保険収載すると薬価はたたかれますから、それもなくて自由価格で売れるという形になると、それは多分いつまでも保健対象外として残る。競争製品がうんと出てくるようなことになって、これはやはり3割自己負担にしたほうがいいかなと判断した段階で、もしかしたら保険収載に行こうとする気になるかもしれませんが、基本的にはいい薬が保険外にずっといる可能性もありますので、それこそ中川委員がおっしゃったように、所得格差によってのアクセスが拡大してくることがあり得ると考えます。基本的には適切な治験を行い、適切な公定価格をつけていく、そして適切な自己負担割合で使えるという現行システムの中にいかに入れていくか、そこに努力を傾注するべきだと私は思っております。あくまでも個人的な見解であります。

○中川委員 もう一点よろしいでしょうか。

○門田会長 簡単にお願いします。

○中川委員 ありがとうございました。

 今、遠藤参考人の言葉の中に「中医協」それから「費用対効果」という言葉が引用されました。私、放射線治療が専門で、また、学会の中では健保担当の理事もしておりますので、粒子線治療の将来についてちょっとお尋ねしたいのです。

 現在、陽子線治療、重粒子線治療は先進医療になっておりまして、これは固形がん全般を対象にしてございます。ただ、先進医療については学会からの要望が出せないわけですが、私ども日本放射線腫瘍学会としては、陽子線治療については小児がんのみ、重粒子線治療については骨軟部肉腫のみを対象として保険収載を認めていただくようお願いしてまいりました。私は6年間やっておりますが、残念ながら通ってはいないのです。小児がんについては、この新しい基本計画の中で一つの柱になりまして、また、小児がんの拠点病院が15カ所指定されているわけであります。

 小児の場合には、通常のエックス線治療でやりますと、成長障害といって非常に低身長になる。130センチ、140センチというような、サーバイバーとしても非常にハンディキャップを持つ。就職率も、結婚の比率も非常に低いわけです。これが陽子線治療になるとピンポイントにできますので、成長障害が防げる。国際的にも小児がんについては認める方向にあると理解しております。

 今、陽子線治療は年間に150件です。300万弱の先進医療の自己負担ですから、5億以下でございます。これについて、引き続き費用対効果を含めて中医協の中で御議論していただきたいと思っております。これはお願いです。

○門田会長 堀田委員、どうぞ。

○堀田委員 少し大きな話になって申しわけないのですが、日本の人口が高齢化していく中で、がん患者数はふえていくことが予測される中で、がんにかかわらず、医療を地域に戻そうという動きは私も大変賛同するのでありますが、地域に戻ったとき、何を基準に医療や介護を提供していくかというところが問題です。今まではどちらかというと家族力を当てにするような医療や介護があったのですが、今やそれはもう当てにできない中で、個々の医療を地域で提供しよう、あるいは介護を提供しようと思うと、個別化が進みますので、手間暇が余計にかかると思うのです。

 一方で、全体の財政が厳しいので地域に戻そうという議論があります。要するに、病院医療でお金がかかるから在宅へという議論との間にずれあるように思うのです。私は、地域に戻すことは経済的に効率が進む方向ではないので、そういったときの全体の財政の考え方というのは、このあたりはどのように整理されているのかお聞きしたいと思います。

○遠藤参考人 国としてどのように考えているかということはむしろ厚労省に聞いていただきたいのですけれども、基本的にそのお考えというのは、もう少し一般化しますと、一つの病院でずっと診ているのではなくて、病態に応じてそれぞれの機能に合った病院に移っていただいて、最後は在宅という形。しかも、質を落とさないようにしたほうが医療費は下がるのか、逆にふえるのか。つまり、まとめて治療した方がコストは安いのかどうか。よく出てくる議論で、塾と家庭教師のどちらのほうが授業料が高いかという議論があるわけです。個別対応していけば実際にコストがかかるではないかというような意見があって、むしろ在宅のようなことをして本当にきちんとしたケアをするとコストがかかるのではないかという議論はあります。その流れの議論と私は判断するわけです。

 しかし、病院にいることによって不必要なサービスといったものがあるので、そこら辺を除けばかなり削減になるのではないかということが一方の背景にあるわけです。どちらが正しいのか。本来であれば、同じ質にして、医療のアウトカムを同じにしながらコスト比較する必要があるのですけれども、そんなものは絶対できません。私も医療経済学者の端くれですけれども、そんな論文は見たことがない。分析はなかなか難しいというのが実態です。在宅医療は家族介護等々によって対応しているからコストが下がって見えるかもしれませんが、それができなくなるとコストはどうなるのかという議論は潜在的にはあるかなと思っております。

○門田会長 今の件に関して、費用のほうの話を中心に動かしていくとぎすぎすしてくる可能性があるのですけれども、我々が考えていかなければならないのは、特にここの協議会としても、がん医療ならがん医療の患者さんにとっての本当の医療のクオリティーをどのように考えていくかという場合によれば、病院完結型から地域完結型ということを単純に性善説的に考えると、戦後、我々は病院の医療というのにならされ過ぎました。医療は病院でするもの、元気になったら家庭に帰るものということが時代とともに相当変わってきている。そういう中にあると、病院で医療を受けているのが患者さんにとって、国民にとってどうなのか、その質をどう評価するのか。メディカルサイドからすれば、そのあたりの研究が今まで余りなかったことから考えると、その辺の進歩をもってまた遠藤先生らと話をしていくことが必要になるのではないかという気がするのです。

 遠藤先生。

○遠藤参考人 まさしくそういうところであります。

 先ほどコストのお話という形で御質問があったものですから、私、多少踏み込んだ形でお話し申し上げましたけれども、厚労省といいますか、国の考えというのは、基本的にコストを安くするために在宅にシフトしているというスタンスは必ずしもとっていないわけであります。まさに生活をしながら治療していくというような視点に立つと、特に高齢者の場合には病院というのが適切な生活の場なのかどうかということに対しての新しい提案だということなのです。ですから、「がん」ということはどうなのかというのはまたちょっと違う話なのかもしれません。

○堀田委員 ちょっとだけですが、要するに、経済効果とか、そちらのほうから攻めていくと、先ほどのようにぎすぎすした話になるので、生き方の問題としてもっと深めないといけないのではないかと思うのです。高齢になって、いろいろ不自由なことがふえてくる。がんでもそうです。今まで余り語られませんけれども、高齢者にがんがふえている中で、一方では認知症もふえているのです。認知症も500万人ぐらいいるということになると、認知症でがんを罹患するという方も当然何百万単位で出てくるわけですから、こういった人たちに適切な医療は何なのかというのをかなり突っ込んで真面目に考えるべきでしょう。今の医療の技術だと、90歳でも元気であれば、当然、胃の全摘手術ぐらい安全にできます。技術だけで言えばです。だけれども、分子標的薬も使おうと思ったら使える状況で、本当にそれがいい結果を生むのかどうかも含めて、生き方の問題として詰めるべき話だろうと思います。

○遠藤参考人 一言だけ。

 国民会議の報告書はまさにそこの視点をかなり強調して書いてあります。したがって、地域包括ケアを医療費の問題として触れているつもりはないのであって、今後、どのようなケアをしていく体制をとるべきなのかということを生き方の問題と絡めて力説していると私は理解しております。

○門田会長 ありがとうございました。

 緒方委員、どうぞ。

○緒方委員 私は患者会「コスモス」というところの代表しておりまして、がんの患者の経験をしております。

 ここ10年ぐらい、入院の日数が劇的に少なくなってきています。ひとくくりにひとり暮らしであったり、高齢である人も短い入院日数での退院を余儀なくされるということが見受けられます。それは今の時代いたし方ないとして、退院したのちどうなっているかといいますと、充分なケアがうけられていない状況が見受けられます。がん患者は、御存じのように、65歳にならなくても介護保険などが使える状況があります。しかしながら、それはある程度進んだがんで、いわばターミナルの患者さんでなければ使えないという状況があります。その谷間で、ターミナルではない、65歳以上でもない、でも、明らかに介護が必要だ、でも、入院は十分させてもらっていないという方たちが見受けられて、たいへんそうです。ですから、必要な人にちゃんと届く制度であってほしいと願っています。そこのところをぜひお考えいただきたいとお願いいたします。

○門田会長 ありがとうございました。

 ここの協議会の特色は、医療者と同時に、実際にその現場にいらっしゃる患者さんの今のような御意見がございます。また、御質問そのほかいろいろとあるか思うのですが、少し時間を超過しています。どうしても私はこういう質問をしたかったのだというのがあれば事務局のほうに送っていただいて、お忙しい遠藤先生ですが、内容によっては御意見をいただいて、事務局を介して返事をさせていただくという形にしたいと思いますけれども、よろしいですか。

(「異議なし」と声あり)

○門田会長 では、そのようにさせていただきたいと思います。

 遠藤先生、どうもありがとうございました。

 それでは、次の議題に進みたいと思います。

 冒頭にも申し上げましたけれども、がん対策の指標というのは早くから検案になっていたものですが、昨年度から議論を進めてきて、研究班にいろいろと作業をしていただいているところであります。前から今年度の予定の中にも入っておりましたけれども、もう4月に入りましたので、ある程度内容を決めて、そして調査を始めることを迫られているということでございます。

 そこで、研究班として、きょう2人の参考人の方、1人の細川委員に今までまとめてきていただいておりますので、この指標についての御報告をお願いし、できましたら意見を頂戴して、できれば最終的な決定の方向に進みたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 最初に、若尾参考人、よろしくお願いします。

○若尾参考人 国立がん研究センターがん対策情報センターの若尾です。貴重な機会をいただき、ありがとうございます。

 では、資料3を使って御説明させていただきます。

 まず、資料3の表紙ですが、訂正が1点あります。資料3-1のところに「別添資料1 研究参加者リスト」とありますが、別添資料1は「採用指標一覧」ということで修正してください。別添資料2も「採用指標一覧」の詳細版となっていますので、別添1のところだけ修正してください。

 それでは、資料を進めさせていただきます。

 まず、めくっていただいて2ページです。これは前もお出ししたものですが、昨年の11月にこの3つの研究班が立ち上がりまして、半年間で今年度はかる指標についての検討を行いました。私の担当する班は、一番左のカラムで、緩和ケアを除く分野別施策、それから全体目標、療養生活の質の維持・向上の部分についての検討を進めました。

 本日は、その下にありますが、デルファイ法による分野別施策の指標案の策定、フォーカスグループインタビューに基づく全体目標の指標案の策定、さらにパイロットとして行われました患者診療体験調査からのフィードバック、それらを踏まえて今年度をはかる指標、調査案を提示したいと思っております。

 まず最初に、分野別施策について御説明します。

 4ページをごらんになってください。これは「第2期がん対策推進基本計画」ですが、私の班で対象としますのは、緩和ケアを除くということで、1の中の3を除いています。それから、指標を考えるに当たりまして、がん登録は指標ではかるものではなくて進めるものですので、がん登録を対象外としています。それから、がんの予防とがんの早期発見につきましても、もう指標がある程度確定しているということで、これを対象外にしました。それ以外のことを対象としています

 5ページをごらんなってください。まず、全体目標の2番目、3番目のところにピンク色で「フォーカスグループインタビューに基づく全体目標の指標案の策定」とありますが、本来の目的は、2番目の「全てのがん患者及びその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の向上」だったのですが、3番目の「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」は連続しているものですので、あわせて考えております。

 それから、1の分野別施策の中ですが、このように9つの分野があって、さらに医療の分野が細かく分かれています。これを一つ一つやるということではなくて、3つの分野に分けました。医療分野、研究開発分野、社会分野ということで、それで医療分野の中を4つ、研究開発分野の中を2つ、社会分野の中を3つのカテゴリーに分けて、この3つの分野で検討させていただいております。

 資料をめくってください。

 この研究を行うに当たりまして多くの方の研究参加者の御協力をいただきました。参加者としましては、研究参加に御同意いただきましたがん対策推進協議会の委員の方々、前期のがん対策推進協議会の委員の方々、協議会委員の方々に推薦いただいた今の3分野の専門家の方々、それぞれ10名から20名程度ということになります。ただ、3の分野別の専門家につきましては、十分な数を推薦で補充することができない部分につきましては事務局で推薦させていただきました。その結果、計74名の方に御協力をいただきました。特に年末、年始、さらには年度末の大変お忙しい時期に、協議会委員の方々、あるいは前期の委員の方々、さらに各専門家の方々に非常に多くの御苦労をおかけしてこの指標案を作成させていただきました。御協力いただいたことをこの場をかりて御礼申し上げたいと思います。

 7ページ以降は、それぞれ実際に参加していただいた名簿となりますので、これはばっと読み飛ばして、後でまた御確認ください。

12ページをごらんになってください。この実施に当たりまして、11月からスタートしまして、1128日と12月に3回、実施方法の説明会を開催させていただきました。さらに、郵送調査で実際に協力者の方々に13ページにあるような評価シートをお送りして、その指標の評価と新たな指標の提案をいただきました。これを3回行っています。3回行ったのですが、このように大体2週間で御返事をいただくということで、非常に短い間に100を超える多くの指標についての御評価をいただきました。最初は77でスタートしたのですが、1回目では100を超える新たな提案をいただき、さらに2回目も新たな提案をいただいていることでどんどんふえていってしまうということで、3回目には、構造指標としてはかれるものについてはこの対象外として絞った形で評価を行っています。

 評価の方法としましては、黄色い枠の中にありますが、施策目標との関連性、問題の大きさ、意味の明確さを9段階評価で採点していただきまして、それを論点で評価しております。

14ページをごらんになってください。それらの3回のサーベイの結果について3月21日、22日に各分野別に最終検討会を行っています。その結果、各分野ごとの上位の5指標について、その最終検討会に参加していただいた方々の意見も参考に確認していきまして決定しております。

 そのほか、途中で3回目のサーベイで除きました構造指標につきましては44。これは、はかれるものははかるということで、はかるものとして扱っております。

 最終的には474491の指標について選定をいたしました。その91につきましては、それを書き出したものが39ページの「採用指標名一覧」であります。こちらでは見やすいように指標のタイトルだけを分野別に並べています。

 それから、少し進んでいただいて43ページには、「採用指標一覧」という形で、指標名、それのデータ源、さらには指標の算出方法などを細かく書かせていただいております。この番号のところにカラーで緑のもの、黄色いもの、赤いものがついています。今回は、測定可能性というのは採点はしていただいたのですが、評価の対象外としています。はかれないと思われているものでも何か新しい手法を開発することではかることができるのではないかという可能性を考えて、可能性については排除して採点したのですが、やはり最後残ったもので、今年度はかることは難しいだろうと思われるものについては赤、なかなか困難であるが試行を試みるということには黄色をつけています。

 戻っていただいて、15ページに今の表をまとめたのですが、各分野別に、医療分野で50、研究開発分野で11、社会分野で15の指標をはかることになりました。細かいサブカテゴリーは下に書いてあるとおりです。括弧の中の黄色が試行するもの、赤については困難と思われるものです。

16ページをごらんになってください。これらの指標のデータ源についてお示ししたものです。はかるものが76、プラス試行が6で、全部で82となりますが、それらのデータ源は、拠点病院調査あるいは現況報告書等からはかるもの、それから、数字を打っていないのですが、上から4番目の患者診療体験調査が11+1+2、「1」ははかりませんで、13項目については、後半で御説明します全体目標の患者診療体験調査とあわせてはかるということを想定しております。そのほか、DPC、レセプトから算出するもの、あるいはPMDAの御協力でデータを出していただくもの、合わせて76項目を考えております。

 ここまでが分野別施策です。

 2番目としまして「フォーカスグループインタビューに基づく全体目標の指標案の策定」について御説明します。

18ページの下からごらんになってください。まず、これは一昨年度、平成24年度に策定された「がん診療体験調査」について説明したものです。こちらはイギリスのNHSなどで使われているがん診療体験調査をもとにしまして、緑の8つの四角がありますが、この8つの概念で構成された98項目のパイロット版の調査票をつくりまして、第38回「がん対策推進協議会」で測るということを決定していただきました。ただ、この後の第39回「がん対策推進協議会」でこの診療体験調査ということで緑の吹き出しになっていますが、とるべき対象が十分にカバーされていない、あるいは施策の評価になっていない等の指摘をいただいて、見直すことになりました。その後、この体験調査を見直すということだったのですが、これがそのまま実施できない形になりまして、今回、11月になって私どもで新たに、この上にあります2つの全体目標から指標の項目を考えたということです。前は、下から診療体験をもとに積み上げていったのですけれども、今回は全体目標からおろしていったという形にしています。

19ページをごらんになってください。フォーカスグループとしまして、これは、今の協議会の委員の方々、前期の協議会の委員の方々、あと、がんセンターの患者市民パネルの一般の患者さんなどを含めまして26名の方々に7つのフォーカスグループインタビューを実施しました。

 それから、このフォーカスグループインタビューに参加できなかった協議会の方々などにアンケート調査を行いまして、合わせて50名の方々から242の話題を挙げていただきました。こちらにつきましても、非常にお忙しい中、グループインタビューに参加、あるいはアンケートに御協力いただきましてありがとうございました。

20ページをごらんになってください。242につきましては事務局のほうでカテゴリーに分類しました。それがこちらの赤枠で囲んでいます6つのカテゴリーです。「医療の進歩」「適切な医療の提供」「適切な情報提供と相談支援」「経済的困窮への支援」「家族の介護負担の軽減」「がんになっても孤立しない社会の成熟」という6つのカテゴリーについて、この分類でいいか、インタビューで抜けていたものがないかということを一度フィードバック、中間報告させていただいて確認させていただいています。

21ページをごらんになってください。これも事務局の作業なのですが、この6つのカテゴリーに基づいて242から43の要素を抽出しました。

 資料の54ページをごらんになってください。この「●」が242の中から抽出した43の要素です。それぞれの分野、6つのカテゴリー別に分かれているとともに、何がどうなれば全体目標が達成できるかということで主語がついています。患者さんがどうなるか、医療者がどうなるか、社会がどうなるかということで、またサブカテゴリーを分けています。これをもとに、3月22日に協議会の前委員、今の委員の方々7名に最終検討会を行いまして、この43から特に重要と思われる要素について10項目を抽出していただきました。

 その資料は、次の22ページをごらんになってください。青いところが6つの要素となっています。上側に3つの全体目標を書かせていただいています。この青い中の「●」と「➣」がこの検討会で10の要素に絞り込んだものです。上と下の関係は、「医療の進歩」は「がんによる死亡者の減少」「全てのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上」「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」につながっています。「6がんになっても孤立しない社会の成熟」は、主に「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」につながっているというように縦のつながりがあると見てください。

 この抽出した10の要素について、特に患者さんがアウトカムとして拾えるものを7つに絞りました。それが「●」の部分です。それが23ページにあります「特に重要な要素」の7項目が患者さんが関連するこの7つの要素となっています。この7つの要素の中には複数の事項を含んでいるものがありますので、それを分割したのが一番右の「文意ごとに分割」のカラムになっています。この中でもよりアウトカムに近いものとその手前のものに分けて、よりアウトカムに近いものを赤字としております。

24ページをごらんになってください。今の分類しました9つの項目から、実際にそれを質問する項目としまして19の質問項目を策定しました。同じく、よりアウトカムに近い部分を赤字としております。

 もう一度、25ページをごらんになってください。先ほどと同じような図ですけれども、今回、上からおろしてきて全体目標からこの6つのカテゴリーをつくりました。6つのカテゴリーをもう一度振り返ってみますと、一昨年度行いました診療体験調査でカバーしていたのは、この緑の「適切な医療提供体制」と「適切な情報提供・相談支援」という診療体験に直結する部分で、回りの「医療の進歩」、あるいは「経済的困窮への対応」「家族の介護負担の軽減」などについてはやはり視点が抜けていたということで、一昨年度の調査ではカバーできない部分も、今回、上からおろしてきたことでカバーすることができたのではないかと考えています。

26ページをごらんになってください。今の全体目標のところをさらに展開したものです。9の要素を展開して、上の4つについては、よりアウトカムに近いところ、丸番号は6つのカテゴリーについて。1つのカテゴリーで複数含んでいるものもありますので、2が複数あったりします。水色の枠の中の5つ並んでいるのが、アウトカムに遠い部分の5つの項目となっています。

 これらと前半で述べました施策別指標について関連を見ますと、実際にはこの矢印はもっとあるのですが、ある程度の関連があるのではないか。一番下にがん対策推進基本計画の分野別の項目があって、例えば、医療のところにはこの4つの水色の四角が並んでいて、「がんに関する相談支援と情報提供」ではその上の相談支援のものがあって、その関連するのが「3十分に情報が提供されている、相談できる環境があると感じる」「4経済的な理由により治療を断念することがない」ということ。教育についても、教育の矢印はもっとふやすべきだと思うのですが、上のほうに関連しているということで、この分野別施策をある程度まとめるようなものがこの全体目標の19項目の下に並んでいる5つの項目に関連する質問が該当するのではないかと考えております。

 実際の質問項目は先ほどの表にもありましたけれども、後ろの56ページのほうに19の質問項目の案を示させていただいています。

 3番目としまして、パイロット調査からわかったことについてフィードバックを御説明いたします。29ページをごらんになってください。こちらは一昨年度の終わりにフィックスされたものですが、途中で実施主体がなくなった、実際には研究班がなくなってしまったということで、この調査票の案を国立がん研究センターの運営費交付金の研究開発費の中の研究班で引き取らせていただいて、13年7月からパイロット調査という形で行わせていただきました。

 検討項目としては、調査項目の選定と実施方法の検証ということで、主に2について御説明します。

30ページをごらんになってください。6つの拠点病院で調査を実施しました。これは各病院でやりやすいやり方をお願いしましたので、配付方法、患者さんの選択方法等、ばらばらになっています。トータルで約4,000件を配付して2,000件集めているという状況です。

 この実施上の課題としまして、まず、研究ですので、倫理審査委員会を通すということで、ここに大きな労力と時間のロスがあったということと、3つ目のポツにありますが、拠点病院で実施するに当たっては、研究というと協力がなかなか得られにくい中で、指定要件などに関連した事務連絡等で公的なものとして位置づけていただくことが重要だと思います。

32ページをごらんになってください。あと、患者さんの抽出方法等につきましては、がん専門病院であったり、大学病院であったり、一般総合病院であったり、それぞれの病院の状況、体制によって配慮点が大きく変わってきます。

 済みません。31ページへ戻ってください。もう一つ、倫理審査委員会で重要なことがありました。倫理審査委員会の判断によって実施方法、患者さんのサンプリングに大きな差が出るということが確認されました。具体的に言いますと、担当医との関係が悪化することを懸念した倫理委員会では、必ず担当医に質問する患者をセレクトするというような条件としたところもあれば、セレクトすることによって非常にバイアスがかかるということで、セレクトしてはいけないというような倫理審査委員会の判断があった施設もあって、それぞれの倫理審査委員会の判断によって大きくバイアスがかかるということが確認されました。

33ページをごらんになってください。患者さんの抽出方法として、院内がん登録からとる、DPCのデータからとる、あるいは外来で全患者に配付するというような方法があるのですが、それぞれ一長一短あるのです。実際には患者さんの基礎情報とリンクしてその患者さんがどういう治療を受けたということと結びつけないとその評価が難しいと思いますので、この院内がん登録を使うのが患者さんをセレクトする一番いい方法ではないかと考えました。

34ページをごらんになってください。では、その中で実際に何人について調査を行うかということ。あくまで試算なのですが、例えば全拠点病院397施設で全てのがん患者さん約60万人に調査をしたとした場合、データの質等、非常に低くなりますし、回収率も落ちると思うのですが、これをやろうとすると6億5,000万円のコストがかかると算定しました。なかなか現実的ではないだろうということで、現実的なものとすれば、一番下にありますが、100の施設に対して、1施設当たり100名の患者さん、1万人を対象としてやるというのが、今年度実施するには現実的だと考えました。

 それで、実際の今年度の実施案ですが、36ページをごらんになってください。まず、診療体験調査から19項目、分野別施策から13項目の指標を出しました。緩和からも3項目、体験調査でやるというものが出てくるということで、これらを合わせて100施設。都道府県拠点51プラス各地域拠点から1、それから国立がん研究センター中央病院・東病院の2を足して100施設で1万例で実施するということとなります。

 実施方法とすれば、院内がん登録のデータから2012年の診断症例をリストアップして、それをもとに匿名IDのリストをつくって病院で顕名化して、病院から患者さんに郵送して、郵送回収は事務局で集めるというようなことを考えています。

37ページをごらんになってください。患者体験調査の部分で、この全体目標と分野別施策の一部をカバーするものをやって、そのほか拠点病院調査、あるいはDPCPMDAへの依頼などで今年度の調査をさせていただきたいと考えています。

 最後、38ページをごらんになってください。指標を策定して計測することで変化や違いを捉えて改善に結びつけることができます。直近の課題としましては、来年の6月に予定されています中間報告を目指して、まず今年度測定するということ。ただし、今後、それだけではなくて、今回指標をつくりましたけれども、今回のものがベストではないと考えます。今後、状況も変わってきますし、それぞれの委員の参加者のなれとかによっても重要視するものが変わってくると思いますので、継続的にそれを改善していくとともに、一部の指標については継続的にはかっていく必要がある。1回はかっただけで終わりではなくて、あるいは1回決めて終わりではなくて、継続的にはかり、継続的に改善していくことが必要で、それには、矢印の下に書かせていただいていますけれども、研究班は今年度で終わりますが、次年度以降、継続的に実施・検討する枠組みをつくっていただかないと、がん対策の進捗を継続的に評価することはできないのではないかと考えました。

 長くなりましたが、以上となります。ありがとうございました。

○門田会長 ありがとうございました。

 引き続き、加藤参考人のほうからも御説明していただいて、細川委員が終わってから意見交換をしたいと思います。

 時間が相当過ぎていますので、緩和としての特色のあるところを説明してください。

○加藤参考人 はい。よろしくお願いします。国立がん研究センターがん対策情報センターの加藤雅志です。

 資料のほうは58ページをごらんください。

 私のほうですが、若尾先生の隣の欄に記載がありますが、加藤ががん対策の中での緩和ケアの指標作成に取り組んでおりますので、本日、そちらを中心に御報告いたします。

 そのほかのものとして、2と3に書いてありますが、そちらのほうも順次進んでおりますことをここで報告させていただきます。

59ページは、実際にこの指標作成に御協力いただいた方について御紹介しております。48名の方々にご協力いただきました。そして60ページ以降は、具体的に御協力いただいた先生方の一覧を掲載させてもらっています。御協力くださりました先生方に御礼申し上げます。本当にありがとうございます。

64ページに具体的に進めてきた方法を書いています。これは、若尾先生が進めている研究班と一緒にやらせていただきまして、同様の形で行いました。最終的な検討会を経て、我々のほうは、最終的には11カテゴリーの中から15指標を作成するというようなプロセスで、本日報告させていただく指標を作成いたしました。

65ページに、具体的に作成した指標の一覧表を出しております。11カテゴリーとしては、記載にある通り「死亡場所」「医療用麻薬の利用状況」から始まって11の項目がございまして、その中で各カテゴリーで1つのものや複数のものがあるというような状況になっております。

 こういった指標をどのように計測していくのか。66ページを見ていただきますと、指標に対して既に情報としてあるもの、そして、これから計測の方法を考えなければいけないものなどがございます。

67ページは飛ばしていただいて、68ページをごらんいただきたいと思います。具体的に、15ある指標について書いております。こちらの15の指標は、案の途中では77あったものを15に絞っております。そして、そのカテゴリーを代表性あるものということで選んでいます。この最終指標を初めてごらんになる方々は、おそらく、ほかの指標もいろいろとあるのではないかという御意見もあるかと思いますが、その点も十分議論を経て、本日報告させていただきました15の指標になっています。

 色がグレー、緑、黄色、赤となっておりますが、こちらも先ほどの若尾先生の報告と同じ意味での色合いをつけております。計測可能であろうというものがグレーの4項目で、先ほど若尾先生が言っていた患者さんの調査の、緩和から追加があるであろうと言っていたこの3項目は緑色にしています。

 黄色については、平成26年度、実際に計測するということを考えていったときに幾つか調整が必要なもので、実際にはかれるものもあれば、解決すべき問題があり難しいものもあるだろうというもので、7項目あります。赤は、今年度は実際すぐには難しいだろうということで1項目あります。

 この黄色のものを見てみると、例えば68ページの7番の項目ですが、一般市民への緩和ケアの普及状況ということです。これは一般市民の方々は緩和ケアをどのように認識しているのかというもので、これまでもやっている世論調査を想定しております。こちらのほうを平成26年度に実際にはかれるかというと、政府内でのいろいろな調整が必要だと聞いていますので、そういった意味で、26年度すぐに計測はできないけれども、ただ、今後はやっていくということを考えております。

 一方で、68ページの4です。赤色に塗っています「緩和ケア専門サービスの普及状況」も重要だという結論に至りました。しかし、専門的な緩和ケアの定義というものが決まっていないので、そういったもの考えるということであれば、少し時間が必要であるということで赤になっております。ただ、これは日本全国の緩和ケアの進捗状況をはかるための指標という観点で計測することは、今、難しいだろうというものがあるのですが、一方で、拠点病院については、拠点病院の現況報告などいろいろな状況を伺う機会があるとも聞いています。したがって、拠点病院に関してはできるだけ情報を集めていき、この指標を直接はかれないにしても、できるだけそれに準ずる指標、また、参考になる指標は研究班としてしっかりと集めていきたいと考えております。

70ページ以降は、具体的に既存で指標があるものなどについては現時点でわかる範囲で載せています。70ページの死亡場所に関する調査というのは、そこにあるように、人口動態統計でもしっかりとした数字があるというものもあれば、一方で、75ページの「一般市民への普及状況」にあるように、経年的にしっかりとしたデータはないが、世論調査でピンポイントではかっているものもあるということがあります。

 一方で、最後の80ページなどの遺族調査などは、過去にある研究グループなどがこういった調査をしているということで、過去のデータはございますが、全国的な調査をするということになれば、また別の枠組みが必要だというものもあります。こういったものも、まずははかれるものははかりつつ、そういった体制もつくって、今後、経年的に指標として使えるようにブラッシュアップをしていきたいと本研究班として考えております。

 以上になります。

○門田会長 ありがとうございました。

 引き続きまして、細川委員、お願いいたします。

○細川委員 京都府立医科大学疼痛緩和医療学講座の細川でございます。よろしくお願いいたします。

 私のほうは経過報告と研究方法の説明です。前回の協議会でかなり難しい課題であるということを御報告させていただきました。幸い、その後、いろいろと検討いたしました結果、こなせる課題もあり、できない課題もあるということが分かってきました。実際の研究、調査は6月から本格的に動き始めますけれども、この検討の内容等について報告させていただきます。

 この研究は指定研究で、研究課題は「がん診療拠点病院におけるがん疼痛緩和に対する取り組みの評価と改善に関する研究」です。81ページです。

 本研究の目的は、「本邦の緩和ケアの均てん化に資するために、全国のがん診療拠点病院において“がん疼痛緩和の質の評価”を検証するために、定期的に行うことができる各種評価指標を用いた評価システムを確立すること」です。このために、がん診療拠点病院を実施調査いたしまして、実際に各種評価指標について検証し、それに追加の修正を行い、“がん疼痛緩和の質の評価”をある程度客観的に可能ならしめます。

 次に82ページをお願いいたします。

 この研究の背景といたしましては、まず海外でも本邦でも緩和医療、がん疼痛のケアは長きに亘り行われてきました。しかしがん疼痛緩和の質を客観的に評価するということにおきましては、いわゆる緩和ケア先進国と言われる幾つかの国で試みられてきましたが、現時点で実際にあらゆる国、学会からコンセンサスを得られているような信頼性や妥当性の確認された指標は全くないということが現実です。

 また、しばしば用いられますのがオピオイド鎮痛薬、いわゆる医療用麻薬の各国での使用量、消費量です。この消費量は日本でも海外でも数字で出されてはいるのですが、調べてみるとその内容が工場からの出荷量であったり、卸から出された量であったり、実はそれぞれの国で統一された形で出された数字は出ておりません。よく御存じのように、アメリカなどでは、いわゆるオピオイド鎮痛薬、麻薬というものは、非がん性慢性疼痛に対して使われているものがもう8~9割以上と言われているような状況で、がん性疼痛、つまり緩和ケアで使用されている量は極めて少ないことも分かってきています。

 この10年間で国内での消費が増えてきたフェンタニル注射薬は、もちろんがんの痛みにも使われるケースも少しはあるのですけれども、そのほとんどは術中の麻酔・鎮痛もしくは術後の鎮痛に使われています。本邦では手術後の痛み、術後痛は一言で言えば、長きに亘りほったらかしのような状態でした、今は術後痛を放置すると、手術創の治りも悪いし、感染症も起こりやすく、がんに関しましては転移が進むとか、さまざまなデータが出されてきたため、いまでは麻酔科を中心に積極的に術後痛の軽減に対応しているわけです。そういった背景もあり、フェンタニル注射薬は、ほとんどが術後鎮痛目的に使われています。このような薬剤の消費量をモルヒネの消費量と合わせて換算式を用いてモルヒネの総量に計算しなおして、オピオイド、医療用麻薬の国内使用量と考えるというのは、かなり無理があります。つまり、我が国でも、海外でも、消費されるオピオイド鎮痛薬、麻薬が実際に緩和ケアでどれだけ使われているかは全くわかっていないのです。これが、まず一点。

 第二点は、専門的で高度な緩和ケアを行えている施設では、かなり早期から“がんの痛み”の治療を的確に行っています。がんの手術の術後痛からやっているわけです。まさに“がんと診断されたときの緩和ケア”ということです。そうしますと、以前、痛みが強くなってから大量に使用しなければならなかったオピオイドの量がそれほど必要でなく、かなり少ない量でコントロールできるケースが非常に多いのです。また早期から“がんの痛みのケア”を始めると、消炎鎮痛薬やアセトアミノフェン、それから、医療用麻薬に指定されていないオピオイド鎮痛薬であるトラマドール、そういったものでかなり長い間コントロールできる症例が非常に多いのです。そうすると、オピオイド鎮痛薬をたくさん使っていることが、必ずしもその施設のがん性疼痛緩和の質を反映しているとは言えないのです。ただ、全く使わないか極めて少量しか使用されていなかった施設で、その使用量が増えた場合は確かに“がん性疼痛ケア”のレベルアップがあったと考えられます。

 この指定研究に最初は入っていませんでしたが、がん診療拠点病院で、がんの痛みに対してのみ使用されるオピオイドの使用量を病院毎にきちんと出せる方法があるかどうかという研究を追加することになりました。

以上を総合しますと、研究のもたらす結果として、がん診療拠点病院において、がん疼痛への対応とその結果を検証するためのある程度の評価システムが開発されるのではないかと私自身も期待しています。これを毎年各施設で定期的に行うことにより、他施設との比較もある程度できる可能性があります。施設レベルでのがん疼痛緩和の質を評価し、その施設のがん疼痛緩和ケアの取り組みが他施設と比較して、もし劣っていれば、改善できることに繋がります。こういったことから全国各がん診療拠点病院施設でも、それ以外の緩和ケアを行う施設においても、がん疼痛緩和・ケアの質の評価・改善にその指標を用いることができるのではと考えています。

 次は83ページですが、今まで約4カ月にわたり、「系統的文献検索専門家のレビュー」に時間を割きました。仮に人員と経費と時間をかけて研究をしても、それが最初のレビューの段階できちんとなされていないと、研究の結果出たデータが結局今後使えない可能性があるからです。

 実際の当たり試験の後、6月からまず1カ所のがん診療拠点病院において実施し評価します。その結果をもとに、幾つかのがん診療拠点病院において同じことを行います。そして最終的に、“がん疼痛への対応とその結果を検証するための評価システムを開発”していくというこになります。

 続いて、84ページです。この研究の実際の方法について説明します。

 研究の目的ですが、1がん診療拠点病院におけるがん疼痛ケアのレベル、状況がわかる指標をつくり、実際に測定できるようにする、2併施する研究として、以前、一つの評価の指標になっていた除痛率について、これは1点で痛みの程度を図るというものでしたが、これが指標として反映されるかどうかを他の指標とあわせてみて再検証する、3モルヒネに換算した医療用麻薬の使用量ががん疼痛ケアのレベルを反映するのか、4もし反映しないなら、その反証をきちんとし、国際的にレビューする、です。

 また、がん診療拠点病院だけでなく、今後、あらゆるがんを扱う病院のどこででもがん疼痛のケアのために使用したオピオイド鎮痛薬の量を実測するためのマニュアルも作ってみます。

 この3と4は、別途にワーキンググループを組織して行います。

85ページ、資料3です。

当たり試験であるステップ0から次のステップ3までの4段階に分けて研究を進めます。実際に調査が可能な患者の同定を行うステップ0は、神戸大学の木澤教授のもとで、神戸大学医学部附属病院のがん患者さんを対象にして行います。全体のデータを一定にするため、特定された1名のCNS(がん看護専門看護師)が病棟に赴き、ある特定の日の入院患者のリストから病棟看護師や医師の意見に基づいてアクセスできる患者を同定し、それを確認していきます。

 ステップ0で、患者を同定することが可能となれば、本試験のステップ1に入ります。これは、対象集団の同定方法をもう一度再検討することです。複数の疼痛の評価方法・指標等々を患者に諮りまして、その可能性を検討します。

 一般に“がん性疼痛”は、“がんそのものによる痛み”を対象と考えられるのですが、がん患者の持つ疼痛に対しては、別に“がん性疼痛症候群”という用語を用います。この二つが現場では混同されている状況があります。

 どういうことかと言いますと、かつてのようにどこでも、がん患者さんの痛みが放置されていた状況では、“がんそのものを原因とする痛み”が、“がん”疼痛のほとんどを占めていました。WHO、そして緩和医療学会が出しております「がん疼痛の薬物治療法のガイドライン」におきましも、“がんそのものが原因となるがん疼痛”を「がん疼痛」と定義し対象としています。しかし今は、御存じのように、60%以上の方が5年以上生存しサーバイバーとなる状況では、もともとある腰痛とか膝の痛み、治療に伴う痛み:術後の創部痛や化学療法後の神経障害性疼痛といったものは、がんそのものとは直接関係のない痛みですが、これもがん患者さんの痛みと考え、オピオイド鎮痛薬が使用されるケースが多々あります。この際のオピオイド鎮痛薬の使い方は、“非がん性慢性疼痛”に対する治療法に準ずるもので、根本的に考え方が全く違うものです。今回の研究の中でこの2つをうまく分けて分析できるかどうかの検証も今後のために必要になってくると考えています。

86ページをごらんください。ステップ2において、これらの検証、解析して1つの施設でまずできることを確認して指標を確定させます。そして、後は対象とする施設を広げながら、並行して運用マニュアルの作成をおこないます。これらから、まず一つの施設でさまざまな疼痛評価指標の信頼性や妥当性が出され、最終的にさまざまな施設で使える指標が確定し、それに用いる運用マニュアルがある程度つくれるということを考えております。    

これは8月から同じ神戸大学のがん患者さん約200例を対象とし、インタビュー調査及び自記式アンケート調査を追加します。今後、全国展開するためには、1名のCNSで対応できないので、担当となる病棟看護師のための教育用ビデオを作成し、それによって病棟看護師、もしくは担当する薬剤師の教育にあてます。

 調査項目は、皆さん御存じのBPIとか、MDASとか、VRSとか、先ほど言いました除痛率、またサティスファクションインデックス(満足度指標)と言われる、その痛みが実際その患者さんの日常生活にどれぐらい支障となっているかを見る指標もつけ加えることを考えています。

 最終が、87ページ、ステップ3です。この方法が多施設でできるようにする、またこれで出されたデータについて施設間の格差を検討する、できた運用マニュアルにより多施設で行ったものを持ち寄って確定する、ということです。最終的には我が国の全ての拠点病院で使用できる運用マニュアルを確定する。それから、少数の施設間ではありますが、施設間格差の程度や要因が明らかになる可能性がある。その格差とオピオイド使用量との関連が明らかになる。また各施設の規模に応じたデータ収集記録から、一定期間でどれぐらいの調査が可能であるのか、その信頼性のあるデータの収集にどれぐらいの時間、人手、経費等々を要するかというのも明らかになると思われます。

 このステップ3では、宮城県を中心とした5~10のがん診療拠点病院を対象に同じ方法研究を行います。概要は、87ページの図の通りです。

88ページ、資料4です。最終的には、オピオイド量の実測マニュアルをつくるため、このようなメンバーで既にワーキンググループをつくっております。ただ、でき上がってきましたデータの解析のために、あと、専門家3名を加えることにしています。

 実は、当たり試験を、私の所属する京都府立医科大学附属病院で、薬剤師と電算システムの要員にお願いし、やってみました。結果、電算システムが導入されているところでは、実際にがん患者に使用されたオピオイド量の抽出は可能でした。手術を受けられたがん患者さんの、術中に使われましたオピオイドの量の除外も割と簡単にできるということが分かりました。つまり、がんの場合、その病名がついていることがほとんどですので、がん病名の抽出から、がん疼痛に実際に使用されていたかどうかということを確認することは可能だということがわかりました。

 電算化されている施設であれば、恐らくどの施設でも同じ方法で可能と思われます。つまり、この運用マニュアルをつくれば、多くの施設でできるだろうということです。処方した薬剤を必ずしも飲まれていないケースが入院でも退院でも当然出てくるわけですが、これは近似値をとることで全体の評価には大きな影響は与えないと考えています。

 現在、日本ではまだ少ないのですが、非がん性慢性疼痛にもオピオイド鎮痛薬が使われることが今後増えてきます。これを統計上で分けることや全国レベルでどれだけその目的での使用があるかの計測は困難で、時間と経費はかかるかもしれませんが、最終的には、オピオイド消費量のデータを明らかにすることできるのではないかと考えております。ただ、その調査の範囲を1月から12月までの1年間とするのか、一般的に切られる4月から3月までするのか、1カ月分だけを抽出して12倍にして年平均として見ていくのかということの検討が今後行います。以上です。

○門田会長 ありがとうございました。

 時間を大分超過してしまったのですが、ただいま3人の先生方からお話をいただきました。この26年度の調査をして中間評価をしていく項目をできれば本日決定していただきたいと話をいたしました。若尾先生と加藤先生から御説明していただいた前半のところは、経過の話はいろいろあったのですが、内容的なことについては余りお触れにならなかったのです。ここにいらっしゃるメンバーの方のほとんどが作業部会の中に入っていらっしゃって、内容はもう御存じのことと思うのですが、改めてこのタイミングでこれについて何か御意見ございますか。

 どうぞ。

○永山委員 質問です。

 患者さんへの調査の100施設1万人というのは、全体目標についての19の問いと、あと、分野別のほうの13項目についてもあわせて聞くということでよろしいのでしょうか。

○若尾参考人 そのとおりです。

○永山委員 わかりました。ありがとうございます。

○門田会長 どうぞ。

○西山委員 私も質問です。

 指標に関しましては大変によくできた指標だと思うのですが、一番の問題は、その指標を集める対象、データ源だと思います。セレクションバイアスについてちょっとお伺いしますが、対象100施設の選択法とか、患者診療体験調査に参加してくださる患者さんの選択法とか、何か一定の方法があるのでしょうか。

 なぜかというと、疼痛管理に関しましては、緩和(の評価系)とかなり重なる部分があるのですけれども、全く違う結果が出てきた場合、特に麻薬の使用量などの評価が(データ源が異なるためにかなり)違ったものとなるような場合、その解釈は大きく違ったものになってしまうと思うのです。その辺のところをお話しいただけませんか。

○若尾参考人 まず、施設の選択については各都道府県で1拠点1施設というのですが、それについてはどういうものを選ぶというガイドはまだつくっておりません、検討されておりません。検討、調整の上、一定の基準をつくってセレクションするようにいたします。

 それから、患者さんのセレクションについては、院内がん登録からで、がん種を選んで、さらにステージなどを含めて、一定の、それも基準を合わせるような形での患者さんを選ぶようなことを想定しております。具体的なものはこれからということになります。

○門田会長 よろしいですか。そのほか何か。

 濱本さん、どうぞ。

○濱本委員 研究班の皆様には、このたびの大変な御作業、お疲れさまでございました。私は、3月21日、最終検討会の1部のほうに伺わせていただきました。そのときに、私を含めまして数人の委員の方々が、せっかくおつくりになったこの指標案が、それぞれどの全体目標、その下にあるどの分野別目標に対応しているか、それの分布と、どのアウトカムに結びついて、最終的なアウトカムにどのように結びついているかという関係がはっきり分かれば、より説得力が増すのではないか。反対に、計画に上げられた施策に対する指定指標に漏れがあったりした場合、それの指摘とピックアップ、検証、そして再指定につなげることができるのではないか、そうお願いしていました。で、若尾先生のほうで善処しますと言ってくださいました。今回、分野ごとの分布の表がそちらに対応しておつくりいただけたものと考えてよろしいでしょうか。

○若尾参考人 どちらかというと、26ページで、各カテゴリーと9つの要素と分野別施策との関係で、全ての矢印は書き切れていないのですが、ざっくりとしてこのあたりに関連するだろうということで、それをさらに個々の質問にベースでひもづけることはできます。ただ、関連するといっても、その関連の度合いも違いますし、近いもの、遠いもの、ありますので、本当にぼやっとしか見えないというのが現実だと思います。

 それと、全ての分野を網羅していないのは、今の時点でも明らかにわかっております。ただ、全ての分野を網羅するということよりも、今、各分野で重要と思われるものをはかるということでまず進める、その中で足らないものについては今後また新たな指標を検討していくという次のアプローチになるのではないかと考えます。

○濱本委員 済みません。私の不明で申しわけないのですけれども、今、この26ページの表だけでよく理解できない部分があります。

 と申しますのは、指標が決定して、いよいよ調査に入るまでの間に、特に都道府県の担当者などは、どういう指標が決定されたかということをまず自分たちのほうで見て自県の計画を再検討していこうという動きを始められると思うのです。そうした自県で独自に立てている計画との兼ね合いを図るときに、この表つくって分布も表していただいた、これらを合わせて、よりわかりやすく細かな資料となれば、更に、行政御担当だけではなくて、医療御担当、私どものような患者側委員担当、そういった地方のものもわかりやすく検証ができるのではないかと思いますので、そのあたり重ねてよろしくお願いいたします。

○若尾参考人 ありがとうございます。

 そうですね。全体像については後ろについています別添資料のほうで見えて、そうすると、今、抜けているところが見えにくいということもありますので、全体の中でどこの部分の指標があるというのがわかるような形で整理させていただきたいと思います。

○門田会長 そのほかいかがですか。

 この件につきましては、第1期から重要な課題と言いながら、どんどんおくれて、本来であれば、第1期のときにこの評価をして、そして第2期が始まるべきものが、仕方なくおくれてしまったということで、第2期の前半でとにかくスタートするということ。このディスカッションを今まで何度かやってきても、完璧なものを求めるという意見と、できる範囲内でスタートするという両方の考え方があったわけですが、これ以上おくらせることはできない。我々にとって第2期に入っていて、それも中間に入っていますので、これをやらざるを得ない。だけれども、今、話がありましたように、ここは抜けているではないかというのが幾つか出てくる可能性は十分あると思う。可能性どころか、ちゃんとあるのだと思いますが、できることできないことということもありますし、この際、ここまで皆さんわずかな期間にたくさん集まっていただいていろいろやっていただいたものを、会長として、これは前に進む、とにかく、調査をしながら、今後進化していくものだという位置づけでスタートしたいと思いますが、そういう方向でよろしゅうございますか。

(「異議なし」と声あり)

○門田会長 ありがとうございます。

 それでは、最終的なことはこの研究班と私のほうで事務局と一緒になってして、とにかくスタートして調査を始めることにしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

○若尾参考人 ありがとうございました。

○門田会長 それでは、最後の方は時間があと10分しか残っていないのですが、事務局のほうから準備していただいております資料4について進捗状況の説明をお願いいたします。

○事務局 事務局でございます。

 そうしましたら、資料4に基づきまして簡単に御説明させていただきます。

 これまでもがん対策の施策については個別に御報告をさせていただいてきたところですけれども、今後の中間評価を見据えまして、基本計画に基づいてそれぞれの施策がどのように進んでいるかというのを表にまとめさせていただいておりますので、ごらんいただければと思います。

 資料4の1ページ目になります。具体的には、個別の施策のさらに上位というところで「がん対策のとりまとめ」という位置づけがまずございます。平成24年6月に新しい基本計画が策定されまして、その後、協議会で議論いただいておりまして、26年度の中間評価に向けて、先ほどの指標についてまずこれでというお話をいただきました。そして、平成27年度、最終的に中間評価をやっていただくことになっております。

 個別の施策につきましては、それぞれ制度的なもの、それから検討会といったものについて緑でお示しさせていただいております。それから、どちらかというと、事業といった色合いの強いものについて透き通った青でお示しさせていただいております。

 個別に見ていただきますと、がん医療について、まず1つ目の「放射線療法、化学療法、手術療法の更なる充実とチーム医療の推進」といったところについては、「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」というのがございまして、こちらで拠点病院の新しい指定要件ですとか、新しいがん診療提供体制について検討いただいたところで、これを踏まえて平成26年度、本年度から新しい指定要件による拠点病院等々の指定を進めさせていただいているところでございます。

 それから、「(2)がん医療に携わる専門的な医療従事者の育成」というところでは、医科歯科連携事業・がん医療に携わる看護師研修事業を進めさせていただいているところでございます。

 「(3)がんと診断された時からの緩和ケアの推進」では、今、緩和ケア推進検討会、緩和ケアセンター整備といったところを進めております。

 「(4)地域の医療・介護サービス提供体制の構築」では、在宅緩和ケア地域連携事業を進めております。

 「(5)医薬品・医療機器の早期開発・承認等に向けた取組」としては、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会が進んでおりますのと、臨床研究中核病院等を整備されておりまして、PMDAでは薬事戦略相談事業が行われております。

 (6)は3つございますが、希少がんについては、昨年度、希少がん対策推進事業を実施しておりまして、本年度はこちらの成果を踏まえて検討を進めてさせていただいております。

 「病理診断」につきましては、病理医養成等事業を進めさせていただいておりますのと、「リハビリテーション」については、がん患者に対するリハビリテーションに関する研修事業を昨年度までやっておりまして、今年度からはこちらは一本立ちしていただいて研修していただいております。

 「2.がんに関する相談支援と情報提供」につきましては、本年度から、がんと診断された時からの相談支援事業を実施しております。

 「3.がん登録」につきましては、昨年、がん登録等の推進に関する法律が成立しておりますので、こちらで進めさせていただくこととしております。

 「4.がんの予防」につきましては、昨年度からがん相談支援事業のたばこクイットラインというのを拠点病院に設置する形で進めさせていただいております。

 「5.がんの早期発見」につきましては、従前より実施しておりますがん検診がございます。がん検診のあり方検討会で科学的根拠等々を検討いただきながら、推進事業、それから企業アクション等々、同時に進めております。

 「6.がん研究」でございます。平成26年度からがん研究10か年戦略が策定されておりまして、こちらは参考資料3でもつけさせていただいております。

 「7.小児がん」でございます。こちらは、昨年度、小児がん拠点病院を指定しておりまして、小児がん中央機関についてもことしの2月に指定しております。

 「8.がんの教育・普及啓発」につきましては、今年度からがんの教育総合支援事業を実施しております。

 「9.がん患者の就労を含めた社会的な問題」というところでは、昨年度からがん患者の就労に関する総合支援事業を実施しておりまして、昨年末からがん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会を実施して施策の検討をしております。

 簡単ではございますが、以上でございます。それぞれの事業について説明資料を2ページ目以降でつけさせていただいております。

 以上でございます。

○門田会長 ありがとうございました。

 それぞれの検討会が進んでいるというのが中心になっていますが、内容的に特にどこかで問題があるということはないわけですね。

○事務局 はい。

○門田会長 我々とすれば、中間評価の中にどういう形であらわれてきて、本来、計画に書き込んであることが、検討会でやっているけれども、ここが十分ではないではないかとかいうようなことは我々の仕事になるわけですね。

○事務局 はい。

○門田会長 協議会とそれを実際に実行する厚労省の検討会という位置づけになると思いますので、我々は評価が大切になるということだと思います。

 ここまでよろしいでしょうか。

 そうしたら、せっかく立派な資料をここに出していただいているのですが、川本委員、これについて。

○川本委員 お声をかけていただきましてありがとうございます。

 先ほど説明されました基本計画に基づいた一覧表の中のがん医療の(2)と(3)に関連した成果というように御理解していただければと思います。

 がん医療に携わる看護師研修事業の中で行っております。特に緩和ケア推進検討会において、がんと診断されたときから緩和ケアの推進をということで、看護職に対して非常に期待が高いということがわかりましたので、この研修事業を始めさせていただきました。

 がんの専門看護師とか、認定看護師のスペシャリストの方が、ジェネラリストという一般の看護師の方の知識を高め、より緩和ケアの推進を図りたいということでこういう研修事業を始めたわけですが、スペシャリストの方がジェネラリストのために講義をするときに使う教材をということでつくらせていただいたものでございます。テキストになりましたので、本日配付させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

○門田会長 ありがとうございました。立派なものをつくっていただいております。

 ということで、ちょうど時間になりましたが、どなたか全体を通して何か御発言ございますか。

 どうぞ。

○濱本委員 手短にいたします。

 先ほどのがん対策推進基本計画に基づいた主ながん対策の推進状況について、この後、中間評価に向けて指標が決定し、調査が進むわけですけれども、実際、今まで既にこういった形でいろいろ施策を遂行するためにそれぞれの分野で動きをしてくださっていたと思います。今までそれぞれ報告をいただいておりましたが、これを改めて拝見しますと、先行きに求められる成果ですとか目的は書かれていますけれども、現在の進捗に関して報告というか、表記されている部分が非常に少ないと思います。この指標が全て中間評価を決定するものではないと思いますし、これまでの構造的な動きの評価は必ず必要だと思いますので、それをはかるために、全体の分野別の取り組みが俯瞰できるようなアクションプランのようなものをつくっていただいて、今、これはここまでやっていらっしゃる、また残念ながら手の付けられていない施策がある、というようなことをあわせ見ながら、この評価、検証をこの協議会の場で進めていけないかと思います。

○門田会長 ありがとうございました。

 第1期のときは、例えば二次医療圏に1つの拠点病院をつくるというようなことがどんどん実行されたけれども、患者委員の皆さんから出た意見は、それはわかったけれども、医療の質はどうなっているのか、そこのところがわからないと、これは早くしなければいけないのかというようなことがあったということで、今、いろいろな指標をという形でそちらに力が行っている。今、おっしゃっていただいたようなことは、当然ながら、それがどこまで進行しているかというのはわかるような形にしていただきたいということですので、それは事務局のほうでまた検討してください。

 そのほかいかがでしょうか。

 中川委員、どうぞ。

○中川委員 同じ資料4の1ページ目ですが、この中で「8.がんの教育・普及啓発」というのがございます。きょうは文科省の学校健康教育課からも参加されていますが、これから学習指導要領の改訂を含めて教育の中でがんが大きく取り上げられることになると思います。実は、今の大人たちはそういう教育を受けていないのです。御承知のように、がんというのは知識によって結果がかなり変わってきますので、世代間格差が生じる可能性が大きく危惧されます。したがって、先ほど事務局側から出ましたが、例えば、がん対策推進企業アクションなどの中で職域におけるがんの啓発に取り組む必要があると思っております。

 以上です。

○門田会長 非常に重要な点だと思います。

 小児というか子供の教育、そちらにちょっと力が。実際にがん教育ということは、大人を含めて、臨床の場にいらっしゃる方皆さんは、患者さんがどういう理解かというのはよく御存じと思いますけれども、そこのところの重要性というのは認識されていると思います。確かにそのとおりです。

 そのほかいかがでしょうか。よろしゅうございますか。

 それでは、先ほど遠藤先生の御質問ということも申しましたが、いつも申し上げていますように、きょう発言できなかった内容等がございましたら、事務局のほうにぜひメールで寄せていただいて、その内容についてまた次回何らかの形で応用していくようにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、会はこれで終わりたいと思いますが、事務局のほうで何か連絡事項はありますか。

○江副がん対策推進官 次回の日程につきましては、また調整させていただきまして御連絡させていただきます。ありがとうございました。

○門田会長 どうもありがとうございました。これで終わりたいと思います。

 


(了)

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