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2014年4月23日 第4回障害児支援の在り方に関する検討会(議事録)

社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課 障害児・発達障害者支援室

○日時

平成26年4月23日(水)
15:00~17:00


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18階)


○出席者

【構成員】

加藤構成員  宮田構成員  田中 齋構成員  朝貝構成員  岡田構成員  片桐構成員  高木構成員  市川構成員  柏女構成員  柘植構成員  佐藤構成員  辻井構成員  田畑構成員  大南構成員

○議題

・関係団体からのヒアリング 等

○議事

【障害児支援の在り方に関する検討会(第4回)】

○柏女座長 定刻になりましたので、まだお見えでない先生もいらっしゃいますが、ただいまより第 4 回「障害児支援の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様方におかれましては、御多忙のところ御出席いただきましてありがとうございます。まず、事務局から、本日の構成員の出席状況と資料の確認をお願いします。

○阿萬障害児・発達障害者支援室長 本日は大濱構成員、田中正博構成員、石橋構成員、渡辺構成員から欠席の御連絡を頂いています。また、大塚構成員がまだ到着されておりません。なお、石橋構成員の代理としまして上野参考人に御出席いただいています。

 続いて資料の確認です。本日の資料 1 6 までは、それぞれ、後ほど紹介いたしますヒアリング対象団体から御提出いただいたものです。順序は後ほどのヒアリングのとおりです。資料の不足があれば事務局までお願いいたします。

○柏女座長 資料はよろしいでしょうか。途中で気が付いたらおっしゃっていただくようお願いします。

 本日は、前回に引き続き、関係団体からのヒアリングを行うことになっています。本日は 6 団体の方においでいただいていますが、年度初めの慌ただしいところをお集まりいただきました関係団体の先生方に、心より御礼を申し上げたいと思います。誠にありがとうございます。 2 時間という限られた時間ですが、是非、御協力をよろしくお願いいたします。

 事務局から、本日のスケジュール等について説明してください。

○阿萬障害児・発達障害者支援室長 まず、本日お越しいただいている団体の方々を紹介いたします。公益社団法人日本重症心身障害福祉協会、社会福祉法人全国重症心身障害児 ( ) を守る会、全国特別支援教育推進連盟、一般社団法人日本自閉症協会、全国児童青年精心科医療施設協議会、全国自閉症者施設協議会、以上の 6 団体の方々においでいただいています。

 次に、本日の進め方です。最初に 3 団体、後半に 3 団体と、 2 つのグループに分けてヒアリングを実施いたします。 1 団体 10 分程度で御発言いただきまして、説明後に 5 分程度を質問などの時間とさせていただきます。御発言、質疑、それぞれ時間がきましたら事務局より合図をいたしますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、ヒアリング前半の 3 団体の方々はヒアリング席にお移りくださいますよう、よろしくお願いいたします。

○柏女座長 早速ヒアリングを実施いたします。最初に、日本重症心身障害福祉協会より意見表明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○日本重症心身障害福祉協会 パワーポイントを見ていただきながら説明申し上げます。資料 1 を御覧ください。重症心身障害児者の数は、いろいろな統計がありますが、人口 1 万人当たり 3 4 人、定義を少し広げると 9 人という統計があります。最近のデータからは、小児期では出生 1,000 人当たり 1 1.5 人と推定されます。その中で、医療ニーズの高い超重症・準超重症児の 20 歳未満の在宅の件数は、少し古い調査で全国で約 5,000 人という調査がありますので、今はより増えて、在宅の超重症・準超重症児の 20 歳未満は 5,000 人以上と推定されます。このスライドに示して、皆さんのお手元にもあるとおりです。

 東京都の肢体不自由特別支援学校での調査によりますと、学齢期 (6 18 ) での超重症・準超重症児が 380 人です。この子供たちも含めて医療的ケアを日常的に要する学齢児は 788 人と、その 2 倍以上です。この超重症・準超重症と医療的ケアを要する子供との数のギャップは、このスライドにあるような、超重症・準超重症の判定基準を満たさないけれども医療的ケアを必要とする子供たちがより多数いることを示しています。

 次のスライドの、文部科学省の調査を見ても、現実に、全国で医療的ケアを日常的に要する学齢児は 8,369 人、そのうち在宅が 7,425 人と多数です。さらに、その中で重要なのは、人工呼吸器を使用している子供が学齢期で 878 人もいるということです。乳・幼児期を含めると、恐らくこの 1.5 倍ぐらいになるだろうという、そのような多数になっている状況があります。

 これらのデータから考えますと、次のスライドに示しますように、ポスト NICU 児、重症の救急医療の後の重症後遺症児、加齢に伴って重症化していく、そういうことを背景として、日常的な医療的ケアを要する在宅児童が約 1 万~ 1 5,000 人、そのうちの超重症・準超重症が 5,000 7,000 人、レスピレーターケースも 1,000 人となっていると推測される状況があります。

 少し飛ばして、以上をまとめますと、 18 歳未満の児童期においては、全国でいわゆる重症心身障害児である子供は約 2 万人ぐらい存在するであろう、その多くが医療的ケアを日常的に必要としている在宅ケースであるということが言えます。このような数字を、まずは施策の基本として押さえておく必要があると考えます。

 それぞれのライフステージにおいてのニーズとして、まず、初期においては、いわゆる育児支援という面が支援の中心となってきます。そのためには、在宅移行のための幾つかの支援、直接の在宅支援、また、そのための短期入所、親子入園等の様々な支援の組合せが必要です。

 次に、学齢期になってきた段階では、成長によるプラス面もありますが、多くの子供たちは特に思春期前後で重度化してきます。いろいろな医療ニーズが増えてくる。その中で、途中から経管栄養が必要になってくるということもあって、そこで、学校における学校のスタッフによる医療的ケアの実施が大きなテーマになってくる状況があります。

 少し飛ばします。子供たち及び家族にとっての 1 つの大きな支援のポイントは、いわゆるショートステイ。家族の病気、出産など、あるいは、家族の休息のためのレスパイト的なショートステイやレスパイト支援が重要な意味を持ってきます。

 次の資料を御覧ください。私たちの重症心身障害児者施設がショートステイの主な受入れ先となっていますが、ここでもかなりいろいろな問題があります。より拡充が必要ですけれども難しい。これは私たち公立及び法人立の重症心身障害児者施設での短期入所の受入れ状況を示すグラフですが、このように年を追って増えてきている状況です。しかしながら、超重症・準超重症を受ける場合には、なかなかその枠を増やせないという状況があります。

 こういう状況に対してどうしていくか。私たちの施設で超重症・準超重症を見ていく場合に、ここにあるとおり、少なくとも 4 万円は掛かるというような算定がされています。ほかのデータからも同じようなことがあり、最近は 4 万円では済まない、 5 万円ぐらい掛かるという状況も起きています。それに対して、超重症・準超重症への短期入所の施設給付費は、このように、まだまだそれに及ばない額です。したがって、こういう状況に対する対応が施策として、少なくとも経済的な支援としての施設給付金の面でも考慮されることが必要です。

 次の資料を御覧ください。生活介護施設においても、夜間の看護師を配置することで、例えば経管栄養だけの子供などはある程度の対応が可能で、したがって、そのような所での幅を広げていくことも 1 つの選択肢としてあります。さらに、現在、実際には一般病院でのショートステイ受入れがかなり行われている状況があります。それが公認されていない。しかも、病院の善意で行われている状況がある。それに対して、幾つかの自治体では、それを補助する費用を出したりしてカバーしていますが、このような費用補助もされていくべきであろう。

 さらに、幾つかの所では、日中レスパイトサービスが試みとして、あるいは、努力として行われています。診療所でのレスパイト、訪問看護ステーションでのレスパイトサービス、また、自宅での日中レスパイトサービスというのも行われつつある部分があります。これは、かなり自治体の援助などによって行われています。ただ、これについては、医療ケアが高度なケースの場合には看護師が付くことが必要ですが、これが診療報酬ではなかなか認められないということがあります。これは、自宅への直接の訪問支援に関わる問題です。

 次のスライドにありますが、介護保険の制度の中では、医療ではなくて福祉のサービスとして訪問看護が認められている。したがって、大きなテーマとしては、 1 つは、医療ニーズが高い子供たちに対して、このような制度での対応が行われて然るべきではないかということがあります。もう 1 つは、介護保険の中でかなり確立しているケアマネージメントが、障害児の場合には確立していない。特に医療ニーズが高いケースにおいては、このようなサービスが必要になってくるだろう。

 この図にあるように、多くの機関が関わっている。それに対して医療的な知識も必要である。ですから、医療ニーズが高い子供へのコーディネーションには、かなりの知識と専門性が必要です。そういう状況に対して、これをどのような体制にしていくか。人材育成をしていくことや、また、それに対する経済保障をしていくことが大きなポイントになってくると思います。

 次に、入所施設は、広い意味での重症児者へのセーフティーネットの役割を果しています。これに関しては、先年来の制度改革の中で、この絵にあるような、児と者の一体的な運用が認められている状況があります。私たちは、今後もこの一体的な運用が可能であることが必要であると考えています。その理由はここに幾つか示しているようなことで、細かくは省略いたします。

 入所施設において超重症児者を見ていく場合、また長期入所をする場合に、その財政的な基盤はまだ厳しいものがあります。一般の小児での入院料に比べて、障害者等施設での入院医療費は非常に低い。施設の場合には施設給付費がありますが、それを足しても必要経費には満たないという状況があります。したがって、セーフティーネットとしての入所施設の機能の維持、発展、地域を支える機能の発展のためには、特に超重症・準超重症への経済的な給付が診療報酬以外の面でも行われることが必要であろう。また、先ほどの話のように、児と者の一体的な運用が可能である現在の在り方が継続されることが必要であると考えます。

 後ろの文章資料にまとめたものを御覧ください。今回、医療との連携をどのように進めるべきかということで論点が挙げられていましたが、このように、日常的な医療を必要とする子供たちにとっては、医療・看護ニーズに対して、医療の面だけではなく福祉サービスの面からどう支援していくかということが、これからの大きなテーマです。

 それに対して、今までの話のように、 1 つのポイントは、福祉予算からの訪問看護。介護保険で行われているような仕組みが今後十分に検討されるべきだということ。それから、特に介護保険で確立されているケアマネージメント、 6 番目の所です。これがより促進されるべきで、それは、訪問ステーションの看護師や、私たちのような施設のケースワーカーなどが、しっかりその力を発揮できて、その経済的な保障、裏付けがされるよう施策が必要であると考えます。以上、ポイントだけお話させていただきました。

○柏女座長 ありがとうございました。短い時間にポイントを明確に挙げていただきましたので、分かりやすく聞かせていただきました。ただいまの説明について、御質問等がありましたら御発言をお願いします。いかがでしょうか。ないようでしたら、最後の追加資料の所の説明を端折られた感がありましたので、もし何か補足すべきことでもあれば。

○日本重症心身障害福祉協会 時間がなくて端折りました 1 つに、学校教育の問題があります。これは、文部科学省の関係者の努力で、多くの子供たちが医療ケアを受けながらも社会の場である学校に通える状況になっています。ただ、通学手段の保障がされていない状況があります。それに対して、例えば通学バスに保護者等が乗ることも公認されるべきであるということ。今はそれが認められていない状況です。実際はある程度の黙認がありますが、それが厳しい状況で各地域によって地域差がとてもあります。それを、例えば福祉タクシーを使うとなると非常に出費が多くなるということがあります。幼児の通所、また成年の場合も看護師が添乗していることが多いのですが、学校の場合にはそれがほとんど無理な状況があります。

 それに対して何らかの対応が必要です。例えば訪問看護が関わることは、医療保険の上では建前として難しい。そのようなバス乗車に関しても、それから、例えば放課後デイサービスへ看護師が関わるという面に関しても、先ほど話したように、福祉の施策として訪問看護師が関わるという施策が、これだけ医療ニーズが高い子供たちが地域で過ごしている中で、教育、生活を支える、いろいろな地域生活の場を支えるためには必要であろうと考えます。以上です。

○柏女座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。

○田中 ( ) 構成員 この訪問看護の部分で、福祉でやるということについてですが、現在は介護保険の事業所が主として当たっていると思いますが、訪問看護師の養成というところは現在どのようになっているのでしょうか。

○日本重症心身障害福祉協会 小児の訪問看護に特化した訪問ステーションが幾つかできてきています。ただ、それだけでは足りない。一般の訪問看護ステーションもこのような重症支援の力を付けなければいけないということで、現在、小児科学会、小児科医会、小児保健協会の三者が合同で重症心身障害児者委員会というものができていまして、私はその委員長をつい先日までしておりまして、またこれから継続します。その中で、人材の育成、これは医者も看護師もそうですが、重症児に関わる医師を幅広く、専門施設の医師だけではなく、一般医療機関の医師もきちんと診ていける、それが地域で暮らすための条件です。それとともに、看護師が、一般の病院での看護師と一般の看護ステーションの看護師に力を付けていただく。三者合同の委員会では、そのような人材の育成、研修について、具体的に DVD を作ったりなど、そういう作業を始めているところです。その辺のバックアップもお願いしたいと思います。

○柏女座長 田中さん、よろしいですか。ありがとうございました。

 続いて、全国重症心身障害児 ( ) を守る会より意見表明をよろしくお願いします。

○全国重症心身障害児 ( ) を守る会 本日は、このような機会を頂きましてありがとうございます。資料 2 に沿って順次説明を申し上げます。 1 は「重症心身障害者に関する相談支援の課題」です。当法人では、指定障害児相談支援事業と一般相談支援事業の指定を受けて実施しています。重症児者については寄り添う支援が必要だということで、それを心掛け、相談者の事情に配慮して、昼夜を分かたず時間を掛けて関係者との調整に奔走しています。例えば、病院の NICU から在宅への移行の場合には、病院での医療従事者と家族との話合い、病院と福祉機関との調整などから始まりまして、在宅で生活する上で医療の問題と福祉サービス関係機関の連携、調整が必要になります。支援の道筋をつけるまでには、 3 か月、 6 か月の時間を掛けなければならない、そういうケースが多くあります。

 国は相談支援の体制整備をするに当たって、「基本的考え方」という指導方針の中に「利用者に寄り添う相談支援はきめ細かく継続的な支援が必要である」と掲げています。一方で、相談支援の効率化・省力化を進めるための留意事項として、柔軟な対応の工夫例を示していまして、数をこなすための簡略化を推奨しています。簡略化で済むような人もいますし、モニタリングなど定期的なものについてはそれでもよいと思います。しかし、先ほど申し上げたように、何回も足を運び、時間を掛けて丁寧に調整しなければならないものがあるということを御認識いただきたいと思います。つきましては、報酬体系を見直していただきたいということです。基本相談、計画相談の 2 本立てにするとか、あるいは、相談支援に関わる所要時間の長短を反映する加算方式、こういうものが必要ではないかと思っています。

 次に、 2 「在宅支援施策の充実」です。重症児者の親は可能な限り在宅でともに生活したいと願い、地域で安心して暮らせる施策の充実を望んでいます。重症児者の日中活動の場として、親は、通所・通園を期待しています。しかし、全国的に実施箇所数がまだ少ない状況にあり、この増設・整備を期待します。また、通所・通園の手段について、これは自力での通園はなかなか困難ですので、送迎のための車両の助成をお願いしたいということです。

 次に、短期入所の確保です。医療的ケアの対応が可能な短期入所の場所が不足状態です。短期入所は希望者が多いので、 1 か月前から予約申込みをし、競合する人との調整によって利用の可否が決まるという状態にあります。また、介護者である母親の急病など、介護できない状態になったときに緊急に利用が必要となることがありますが、なかなか利用できないというのが現実です。必要時に利用できる制度であるべきだと思いますので、よろしくお願いしたいということです。

 次は、訪問看護・訪問介護の充実です。医療的ケアの支援を必要とする超重症児が増加傾向にあります。最近、 NICU から退院した児童が増加している状況であり、地域生活を支える訪問看護の役割は重要なものとなっています。したがいまして、訪問回数、訪問時間を 2 時間以上、 3 時間程度を確保するように実施していただきたいとお願い申し上げます。

3 「医療型障害児入所施設の支援について」です。平成 20 4 月に改正法が施行されまして、児童と 18 歳以上とは適用される法律が異なることになりました。重症児者については、医療型障害児施設と療養介護の 2 本立てということになったわけです。重症児者は医療的ケアと日常生活支援を合わせて行うという障害の特性から、従来、児者一貫支援で実施されてきました。先般の制度改正においては、法律が異なっても従来どおり児者一貫支援体制を維持していただきました。このことについては感謝いたしております。しかし、今後、時がたつにつれて法律の建前が優先し、この一貫支援が崩壊するおそれがないとも言えません。今後とも継続実施していただきたいことを改めてお願い申し上げます。

 また、障害支援区分の判定で退所させられるのではないかと不安を持っている保護者もいます。建前だけで路頭に迷わせるようなことがないように御配慮をお願いします。

 次に、入所施設の役割・機能の充実です。重症児入所施設は、医療機関としての専門性の確保と同時に、在宅支援を積極的に実施する機能、セーフティーネットの機能を備えることでその存在意義を高める必要があると思っています。また、重症児者にとっては、施設は命を支える最後の砦としてなくてはならないものであります。平成 24 2 月の調査によりますと、入所待機者は 3,700 人、入所希望時期は「今すぐ」と答えた人が 38.6 %、将来に備えての入所希望が 28.1 %でした。待機者の中には、将来の障害の重症化、介護者の高齢化による介護力の低下、親亡き後を見据えての入所希望となっているものが多数あることが判明しました。したがいまして、親亡き後も地域や施設で安心して生活できる施策の充実を要望するものです。

 現在、地域移行が推進されていますが、重症児者の地域移行は本人の意思が確認できる者に限定されるべきだと考えています。本人の意思が確認できる者は、ケアホームの確保や、安心して移行できるよう中間的に対応する新たな施設体系についても検討する必要があるのではないかと考えますので、よろしくお願いいたします。

4 「強度行動障害児者についての施設支援の在り方」です。強度行動障害を有する者に対応する職員の人材育成が行われるようになったことは、大いに評価すべきことであると思っています。しかし、それと並行して、従来の重症施設への入所ではなく、組織的により専門性を備えた療育環境を持つ施設や在宅支援等が図られる必要があると考えています。

5 「医療入院への対応」です。重症児者が感染症、肺炎など、急性疾患に罹患する場合があります。その場合に緊急入院が必要になりますが、なかなか受け入れてもらえない。大変に困っています。緊急入院が受けられるように、医療機関の確保に筋道をつけていただきたいというお願いです。

6 「家族支援について」です。家族の中心は母親です。その母親が障害児に掛かり切りになると、家庭内に問題が起こるケースが多くあります。家族のきずなを維持する支援として、母親が家族に関われる時間を確保できるようにすることが必要であると思います。そのためには、母親を介護から一時的に開放する、つまり、母親の肩から介護の荷を下ろしてやることが日常的にできるような支援策として、短期入所・日中一時支援、訪問支援等の充実が図られるようお願いしたいと思います。それから、憩いの場の設置。これは母親同士が障害児と同伴でくつろげる場所を公的施設の中に設けていただくことはできないか、これを検討していただきたいということです。

 次に、重症児者を兄弟に持つ児童への支援です。障害児に兄弟がある場合には、障害児だけが愛されて、健常児は疎外されたという感情が起こります。兄弟の仲が精神的に不安定になることが多くあります。中には登校拒否となった子供もあります。このため、兄弟が持つ孤独感・葛藤からの開放が必要です。これは独り重症児の兄弟の問題だけではなく、全ての障害児の兄弟に共通するものであると思います。

 私どもの団体では、こうした家族の不満を取り除くことを目的に、障害児の兄弟を持つ同じ境遇の仲間を集めて交流の会を実施しました。自分だけが障害児の兄弟を持って母親から愛されない、不幸であるというような意識を変える取組です。母親から取り残されたという悩みは自分だけのものではないということを、同じ境遇にある仲間と共有することで、母親・障害児への不満の気持ちを氷解させ、気持ちが明るくなったことを実感しました。このような取組で家族のきずなを復活させることができれば、親亡き後に親に代わって兄弟が介護を担うことも期待できるのではないかと思います。障害のあるなしにかかわらず、このような取組で地方を元気にすることができれば、障害福祉にとって大いに意義があると思います。地方自治体の取組に期待をしています。

○柏女座長 どうもありがとうございました。ただいまの御説明に御質問等がありましたら御発言をお願いします。田畑さん、どうぞ。

○田畑構成員 田畑です。資料の 2 ページの、地域移行の部分についてです。ケアホームの確保や、安心して移行できる新たな施設体系についても検討する必要があるという御指摘ですが、新たな施設体系のイメージ等をお持ちであれば、お話いただけませんでしょうか。

○全国重症心身障害児 ( ) を守る会 医療的ケアが必要な子供たちですから、その医療的ケアがある程度軽減したような状態になって、例えば地域に移行できるときに、地域に移行するまでにもう 1 つワンクッション、中間的な施設が必要ではないかということです。その施設はいつでも医療ケアが対応できる、つまり、近くに医療機関があるなど、そういうようなものができればと思っているわけです。

○柏女座長 よろしいでしょうか。

○田畑構成員 はい。

○柏女座長 ほかにはいかがでしょうか。宮田さん、お願いします。

○宮田構成員 全国児童発達支援協議会の宮田です。北住先生にもお聞きすればよかったのかもしれませんが、短期入所の機能というのは非常に重要な役割だと思います。先ほどの発表では、いつも一杯だと言われていましたが、この部分は、いわゆるレスパイト機能と緊急の保護との 2 つの役割を、同じ短期入所の機能として受け入れてしまうところに問題があるのではないか。そういう意味では、制度的に分けるような、緊急の部分は空けておいても施設としてそれなりにペイするような制度が要るのではないかと思うのですが如何ですか。

○柏女座長 では、お二人にお伺いしましょう。

○日本重症心身障害福祉協会 短期入所も幾つかの意味合いがあって、 1 つは、急にお母さんが病気になったとか、家族が病気になってお母さんがその付添をしなければいけない、そういう場合の、今日、明日でも見てほしい、今晩からでも入れてほしいという非常に緊急の場合と、また、中期的な、例えばお母さんのお産です。これは統計を取ってみる価値はあると思いますが、重症心身障害者でも、次のお子さん、二番目のお子さんを産んでいる方がかなりいらっしゃいます。それはこの緊急入所があることによっていて、なければ、かなり出生数が減る。今の少子化対策としても重要だと思います。ですから、ある程度の準緊急的な対応、単なる家族の休息というよりも、そういう面でのトータルな支えとしてのショートステイ。それから、御家族が疲れてしまうということに対しての、休息としてのレスパイト。さらに、先日もありましたが、家族の入学式に付き添いたいけれども付き添えない、そういうことでの利用。

 私たちとしては、明日でも入れてほしいということに対して何とか対応できるようにしなければいけないけれども、そこまでの余裕がないということも現実です。ですから、いつでも受けられるベッドが 1 つあって、ほかに幾つかがあれば、それが望ましい。ただ、それは 1 つの施設ではカバーし切れなくて、やはり、地域でそのようなネットがあって、あそこなら今は空いてそうだとかいう形で、 1 つの施設で対応するというより、地域のネットワークの中でそういう受皿を作っていく。その組合せをどうしていくかということになると思います。

○柏女座長 守る会はいかがでしょうか。

○全国重症心身障害児 ( ) を守る会 今のお話のように、北住先生がおっしゃるとおりです。いつも空けておくということができるかどうかという問題です。その場合には、当然、収入がないわけですから、その数もごく少数でいいと思いますが、そうしたものに対する補償的なものがあればとも思っています。よろしくお願いしたいと思います。

○柏女座長 よろしいでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。加藤さんお願いします。

○加藤構成員 今の宮田先生の質問に少し関係すると思いますが、 2 つの団体にお尋ねします。重要であるというのはよく分かりますが、我々の事業でも、全国的に見て地域間格差や施設間格差が大きくあるのですが、 2 つの団体の場合には、その辺がどうなっているのでしょうか。また、それに対してどういう手立てを講じておられるのでしょうか。

○日本重症心身障害福祉協会 明らかにあります。長期入所の受皿に関してもそうだし、ショートステイに関してもそうです。例えば東京の場合、非常に厳しい状況の中で、今度新たに施設を増設される場合に、長期入所よりは短期入所を増やしていくという方針であるということもあります。そういう施設側の問題と、それから、それぞれの施設が置かれた地域の問題で、今のように、ある程度熱心な自治体の場合には、いつでも受けられるように、ベッドが空くときにはベット確保料を足してもらうところもあれば、それがなく、そのために施設もなかなかそれを用意できない。ニーズがどんどん高くなっているので、実際にどうなのか、各自治体なり、公的な経済面でのバックアップがどうなのか、我々の団体では今その調査を始めようとしているところです。

○柏女座長 守る会からはいかがでしょうか。

○全国重症心身障害児 ( ) を守る会 今のお話のとおりです。今の話のように、それぞれ地域差があるのは事実です。特に都会は足りないということで、今はもうそうなっていると思いますが、ベッド数を一般の医療機関にも拡大していますが、医療機関にやっていただく場合はいろいろと問題がある。つまり、専門性のある重症児施設などの所は実際に預かっていただいても安心できる。ところが、医療機関の場合には、ただポンとベッドを空けて、そこに入れるということは、重症児に限ってではないと思いますけれども、非常に難しい。とにかく、自分では動き回ることも、何も発言できないわけですから、そういう人に付き添いがきちんといないと、なかなか難しい。その付き添いに親が付いたら何の意味もないわけです。逆に言えば、そういう人に付き添いが付けられる制度ができれば、あるいは一般の病院でもいいのではないかと思います。

○柏女座長 よろしいでしょうか。時間もまいりましたので、後で総合的に御意見をお伺いする時間が取れるかもしれませんが、次に移りたいと思います。守る会の皆様、ありがとうございました。

 続いて、全国特別支援教育推進連盟より意見表明をよろしくお願いします。

○全国特別支援教育推進連盟 全国特別支援教育推進連盟の大南です。今日は、私と、お手元の資料 3 1 ページに当連盟の構成団体が書かれておりますが、 5 番目にあります全国特別支援学校知的障害教育校 PTA 連合会の会長であります奥村さんに来ていただいております。追加資料が 1 枚と、カラー刷りの冊子があります。これは、文部科学省の委託を受けて、全国特別支援学校長会と、特別支援学級設置学校長協会等の御協力を頂いて作り上げたものです。説明をするときに、 29 30 ページを使わせていただこうと思っております。

 構成団体は 15 団体ですが、教育関係もありますし、福祉、医療、保健、あるいは労働関係と非常に多岐にわたっておりますので、限られた時間の中で内容を絞って説明をさせていただきます。私からは、追加資料の 1 「支援の対象となる障害児について」、学校教育法、同施行令、施行規則に書かれている障害をここに挙げてみました。これが教育の対象ですので、就学前から卒業後までを考えていったり、放課後、休日を考えますと、この年齢でいくと 19 歳以下で考えていく。高等部の生徒は 18 歳ですが、中には 19 歳で 1 年就学猶予をしている人たちもおりますので、この範囲で考えたらいかがかと。これが第 1 点です。

 第 2 点目は、就労支援です。お手元にあります資料の中では、 10 11 ページに進路の状況を掲げてあります。就労支援ということで申し上げておりますので、緑色の所が就職者の割合です。この割合を見ていきますと、これが 2011 年のデータですが、そんなに大きな変化はないと思います。それから、少し前の 1997 年と比べますと、就職者の数はかなり上昇しています。しかし、昭和 54 年、 1979 年というのは、養護学校教育の義務制、視覚障害と聴覚障害を除いた障害児が、ここで全員が学校へ行けるようになった非常に記念すべき年なのです。このときの卒業生を見ておりますと、当時は中学校の特殊学級と呼んでいましたが、ここの卒業生で 5,200 人も就職していたわけです。しかし、今は高等部を含めて約 4,000 人ぐらいです。これだけ少なくなっているのは、どういうことなのだろうか。 1 つは、産業構造が変化をしたこともあるわけですが、この 3,000 人近い生徒たちはどこへ行ってしまったのだろうかというのが、教育界のなぞの 1 つであるわけです。

 そこで考えられることの 1 つとしては、学校だけでは高等部 3 年生の現場実習の指導に十分な手立てが講じられていない。いないと言うと学校に叱られそうですが、実は私も 1960 年から 12 年間、中学校で就職を担当してきたわけですが、その当時と今では就職というか、企業の状況がものすごく変わってきています。例えば、知的障害者の人たちに一番合う玩具を組み立てていくとか、メリヤスのシャツを縫製するという仕事が国内に余りなくなったこともあると思うのですが、それに代わった仕事は当然あると思うのですね。そういう開発が十分でないことと、指導をどうするかという問題で、ジョブコーチの方々の支援が頂けないだろうか。学校にいるときからそういう支援が得られると、よりいいのではないか。

2 つ目は、企業へ就職したあと定着率はそれほど悪くはないのですが、定着してほしいなというところがあります。それから、法定雇用率は非常に大事なことなのですが、雇用率の対象にならない企業、今で言いますと 49 人以下になると思うのですが、ここに対する障害者の雇用をどのように進めていくか。昔の話をして恐縮ですが、かつてはむしろ 50 人以下の企業で知的障害や児閉症の方々が仕事ができる場が確保されていたことを考えていきますと、現代はどうなのだろうかとお考えいただければと思っております。では、あとは奥村さんにお願いしたいと思います。

○全国特別支援教育推進連盟 全国特別支援学校知的障害教育校 PTA 連合会会長の奥村です。娘が、この 3 月に都立の王子特別支援学校を卒業いたしました。今は、社会福祉施設で仕事を始めたところです。本日このようなお時間を頂戴しまして、ありがとうございます。

 私からは、大きく 4 つの点についてお話をさせていただきたいと思います。 1 点目は「放課後等のデイサービスの在り方」についてです。まず最初に、全国特別支援学校長会よりのお願いを申し上げます。1放課後等のデイサービスの在り方については、福祉制度の改定に伴い、以前と比較すると広がりが出てきました。しかし、重度心身障害児を対象とした放課後等のデイサービスについては、一部の大規模医療施設等がある地域以外はいまだ不十分であるため、早急に条件整備をお願いいたします。

 2特別支援学校の幼児、児童、生徒も、卒業後は居住地域での生活をする可能性が高いことから、放課後のデイサービスを地域にある関係機関が積極的に受け入れる体制を構築していただきたく存じます。特に、視覚障害者は対応が難しいという先入観から、保護者も敬遠しがちです。様々な障害種別に対応できるサービス内容の改善をお願いしたいと思います。

 3視覚障害者は全体数が少ないことから、保護者間の情報交換もほかの障害種別に比べ、どうしても機会が少ないのが現状です。障害種別を超えた保護者同士の交流が、ポジティブな場となるよう期待しております。

 続いて、私ども全知 P 連からのお願いを申し上げます。東京都内では、市区町村によって格差が大きいのが放課後デイサービスの現状かと存じます。事業所によっては、移動支援との連携等により、利用者の要望に添うような方策を実施している所もありますが、全てのニーズに応えられているわけではありません。 NPO 法人などが運営する事業所の場合は、保護者の金銭的な負担が大きくなることは否めない状況です。保護者の就業率も上昇している中、放課後の居場所の必要性は高まるばかりです。通常の学童への対応と合わせまして、障害のある児童・生徒の放課後の過ごし方については、制度を整えていただくばかりでなく、訓練的な要素も取り入れるなど、運用に際しての様々な支援もお願いしたいところです。

2 点目として「ライフステージを通して一貫した支援を進めるための方策について」、申し上げます。就学前の公的な療育機関の充実が望まれます。また、法改正により学校種の選択が正式に認められ、その時々で最適な教育の場を選択したいという保護者の希望は高まるものと思われます。我が子の障害について理解する途上にある保護者に対して、付かず離れずの立場で情報提供があり、必要な場合には適切な療育を行い、相談することができるような場所が大切になるかと思います。

 就学前の個別支援シートについては、各市区町村において策定されることが定着してきております。就学に際しては、ただ書類を渡すだけではなく、保護者及び幼稚園教諭・保育士・就学前施設の担当者・主治医などの関係者、進学先のコーディネータが実際に顔を合わせるケース会議を持つことが大切になるのではないでしょうか。このことは、特別支援学校の高等部を卒業した後、成人期へ移行する際にも同様であるかと思います。この要望については、全国特別支援学校設置学校長協会よりも要望が出されております。

 続いて 3 点目として「特別支援教育との連携の進め方について」、申し上げます。学齢期の個別指導計画については、学期ごとに保護者と担任とが話し合いを重ねて、しっかりと計画されています。それぞれの達成度も評価され、『学校生活の記録』等で保護者にも伝えられております。ただし個別の支援計画については、年度当初に面談等で保護者の意向も聞き取り策定されておりますが、余り活用されていないように感じております。本人の福祉サービスの利用状況の多寡によるものかと思いますが、在学中から社会資源の活用を知っておくことは大切です。特に、特別支援学級や通常の学校から特別支援学校に進学・転学してきた生徒については、丁寧な情報提供が必要かと思います。

 また、社会資源の活用には、それぞれの地域の障害福祉課と特別支援学校や特別支援学級、ひいては通常の学校との更なる連携が必要になってくるのではないかと思います。地域の福祉関係の事業所や NPO 法人などが、相互に情報交換をして連携していくことも大切であると存じます。この要望についても、全国特別支援学級設置学校長協会からも要望が出されております。

4 点目として、相談支援の体制整備についてです。特に、乳幼児期の相談支援体制を整えることが大切であると思います。我が子の障害をまだ理解できていない時期には、気持ちが揺れ動く保護者に寄り添うことができる専門家の存在が重要になります。各市区町村の療育センター及び民間の療育施設の担うべきところであると思いますが、専門家の配置を十分にしていただきたいと思います。また、民間の施設への助成も必要かと存じます。これについては、全国ろう学校 PTA 連合会からも要望が出されております。

 最後にその他として、 4 点ほど申し上げます。 1 点目は、視覚障害においては同行援護制度を通学、通勤にも適用できるようにしていただきたいと思います。 2 点目は、視能訓練士や歩行訓練士の盲学校への配置や、厚生労働省管轄訓練施設との連携を要望いたします。 3 点目は、医療的ケアの実施が今後更に充実され、看護師が適正に配置されるよう、財源措置をお願いいたします。 4 点目は、小児慢性疾患児童等自立支援事業に、教育の現場からの連携・参加を、自治体に促していただきたいと思います。推進連盟より代表いたしましたので、他団体の要望も申し上げさせていただきました。

 障害者権利条約も満を持して批准されました。今後とも、障害のある児童・生徒に対しての充実した施策を是非お願いしたいと存じます。以上です。

○柏女座長 ありがとうございました。ただいまの説明について、御質問等がありましたらお願いいたします。

○宮田構成員 まず、放課後等デイサービスなどの福祉制度が学齢期中心に広がってきており、設置していかなければならないという御要望があったのですが、ただ特にキーパーソンになる特別支援教育コーディネータの先生方が、福祉制度についてどれだけ念頭に入れて活動されているかが問題になると思います。研修制度があるわけですが、中教審の特別支援教育特別委員会でも発言いたしましたが、福祉制度に関する部分が少ないのではないか。個別の教育支援計画の中で地域生活をしっかり押さえるなら、やはり福祉制度の利用の部分が入らなければならないだろうと思います。その点をどう考えられるかが 1 点です。

 それから、就労支援に関して追加資料の 2 (3) で「ジョブコーチ等による」という部分がありましたが、経験的に高校 3 年生でやると遅いのではないかと思うのです。姫路市では、我々のセンターの就労継続支援 B 型事業に高校 1 年生で実習に来ていただいて、そこである程度 3 年間の計画を学校と一緒に考えるようなシステムをやっております。まだ 2 年なのですが、割といいのではないかと考えています。 3 年になると、大体親御さんも学校も決められていて、就労移行支援事業を使って就労できるケースも、やはり安定したというか、ずっと使える就労 B のほうへ決められていたりするところもあります。この部分は制度的にはないのですが、もう少し早く就労支援とのタイアップが要るのではないかと思うのですが。

○柏女座長 では、今の 2 点についてお願いできますか。

○全国特別支援教育推進連盟  1 点目の特別支援教育コーディネータの資質の向上については、いろいろな所で研修が行われているわけですが、宮田構成員の御指摘のように、福祉の部分が少し弱いかなと思います。手前味噌なところもありますが、当連盟で昨年からコーディネータ養成講座を開始をしまして、今年度も開催するのですが、その中に必ず福祉関係の方を講師に招いて講議をしていただく、あるいは演習をしていただくことを計画しています。今の点は、校長会に是非伝えたいと思っております。

 それから 2 つ目も、ここでは高等部 3 年と書いたのですが、おっしゃるとおり 1 年からやれればこんなにいいことはないと思っておりますので、この点についても校長会から改めてお願いをするような形をとらせていただきたいと思っております。どうもありがとうございます。

○市川構成員  JDD の市川です。今、ちょうど本省で障害者の雇用をどうするかという検討会が別途開かれておりまして、私もそちらに顔を出しています。例えば、経団連や日本商工会議所などの方の場合は、障害者の雇用というのはお金が掛かるものだと。したがって、中小企業ではできないのだということを盛んにおっしゃるのですが、私は知的障害や発達障害の場合は、大南構成員がおっしゃったように小企業でも十分できるので、この点をもっとアピールしていっていいのではないかと思って聞かせていただきました。ありがとうございました。

○加藤構成員 奥村さんにお尋ねしたいのですが、少し放課後デイの話が出たかと思うのですが、御案内のように今、放課後デイがものすごい勢いで増えている状況かと思います。結果として、例えば特別支援学校の校門に子供たちが下校するのを待ち受けていて、放課後デイ事業者が事業所に連れて行くというようなことをやっている。それは、ニーズがあるからそういう事業所が出てくるのでしょうが、私としては悩ましいと思っているのです。本当にそれでいいのかなと。

 ニーズがあるからやる、それはそうなのでしょうが、本当に彼らがいつも何かカプセルの中にずっと入ったままで生活を余儀なくされるような事態、状況が起きている。あるいは、これを放置すると、ますますそういう状況が拡大していくのではないかと。それは、本当に彼らのこれからの人生にとって。保護者にとっては放課後忙しいのだから、ちょっとそこにいてよみたいな話でいいのかもしれないですが、本人のこれからの生活や育ちを考えたときに、本当にそれでいいのかなというのを私などは感じるのですが、その辺りは親御さん、あるいは PTA として何かそのことについて話題になっているようなことはありますか。

○全国特別支援教育推進連盟 今、加藤構成員がおっしゃったことは、 PTA でも話題になりました。特に、特別支援学校の小学部の児童に関してはその状態でいいのかと。やはり、家で過ごす時間も大切ではないかという話が出ました。そうかといって、中学部、高等部はどんどん行かせていいのかというと、またそこもあるのでしょうが。もちろん親御さんも就業率が上がっておりますので、放課後切実な問題として居場所の提供をということで、またそれもたくさん増やしていただいていますので、利用率も上がってきているとは思うのですが、そこの根幹的ところで、やはり子供への親としての接し方やそういう時間を持つことも、片方では大事だねという話は PTA では確かに出ております。

 ただ、悩ましいところがあり、私は仕事を持っておりませんでしたが、 PTA のお仕事をさせていただくに当たって、預かってもらえる場所があったことは大変時間が保証されて有り難いことでしたし、使い方の問題はあるかと思います。

○柏女座長 まだ幾つか御質問、御意見もあるかと思いますが、時間が過ぎておりますので、ここまでにしたいと思います。ありがとうございました。

 それでは、ここで説明いただく団体の方の席の交代をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

                           ( ヒアリング団体の入替え )

○柏女座長 後半のヒアリングを続けます。どうぞよろしくお願いいします。

 まず、最初に日本自閉症協会より意見表明をお願いします。

○一般社団法人 日本自閉症協会:日本自閉症協会の山崎です。本日のヒアリングでは、私は自閉症をはじめとする発達障害を中心にしてお話をしたいと思います。なお、皆さんのお手元に配布されている資料には項目が振ってありますが、これはこの委員会で以前に配布された「論点整理」の順番に従ってお話を進めたいと思います。時間が非常に少ないものですから、全部をお話するわけにはいきませんので、 6 点に絞ってお話をしたいと思います。

 まず、第 1 点目です。資料の 1 ページの 1 (1) 1障害児の範囲です。私たちは発達障害の範囲を、発達障害者支援法の定義よりも少し幅を広げてもらいたいと思います。昨年 5 月に発行されたアメリカ精神医学会の DSM-5 に、「神経発達障害」という新しい項目が記載されました。そこには知的発達障害が含まれました。以前から考えておりましたが、知的障害と自閉症をはじめとする発達障害の区別をどうするのかという問題と、現実に特別支援学校に在籍する児童生徒の約 3 4 割が自閉症をはじめとする発達障害を持っているということです。この辺がうまく整理されていかないと、知的障害の有無で区別されるという問題が出てくると思います。

 なお、言うまでもないことですが、発達障害者支援法に書かれている定義をよく読んでみますと、 ICD-10 DSM- 4が混在している書き方になっているのです。この辺も今後検討する必要があると思います。

 なお、論点の中に「障害のない子ども」の問題が出てきますが、実は障害のない子どもを診断することは非常に難しいのです。障害があるということを見つけることは、容易とはいえませんが、根拠がありますのでできますが、障害がないということを明確にするのは、相当長期にわたる観察をしなければなりません。

 第 2 点目です。 1 ページの下のほうの2家族支援の重要性です。ここでは「症状形成過程」という言葉を使いましたが、これがなかなかコメディカルの領域の方々には理解していただけない問題なのです。症状形成過程にはいろいろな要因が複雑に関与しており、ある年月をかけて複合しながらいろいろな症状を形成してくるのです。この形成過程の中に「愛着」とか「愛着形成」という言葉が出てくると、あたかも半世紀前に登場した心因論のような考え方と誤解されてしまう可能性があります。そういう点で、家族支援というのも、さまざまな要因や状況を十分に注意して行わなければ、ご両親や保護者の方々にかつてのような圧力をかける可能性があると思います。

2 ページの上から 3 つ目の○に書いてありますが、私たちは発達障害者支援法の発達障害の定義の中の「発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者」を、「発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受ける者」と修正すべきと考えており、そういう視点で障害のある人たちにかかわって頂きたいと思います。

 第 3 点目は、学校教育のことに触れられたいと思います。連携の問題で、論点整理の中に「地域の保育所・幼稚園・子ども発達センターとの連携」という項目が出てきます。今まで 3 団体からお話があったように、連携というのは言葉で言うのは易しいのですが、実際には非常に難しい問題です。 3 団体とも人材の問題に触れられていましたが、 1 つ例をとってお話しいたしますと、各地にある子ども発達センターで仕事をしている人たちが、果たしてどれだけの教育と訓練を受けてきているのかについて、私たちの目から見て非常に危なっかしいという気がいたします。実際、就学支援相談の段階になってご両親からこれまでの療育指導の経緯についてお話を伺いますと、「子ども発達センターに通所していたが、評価について何も言われなかった。どういう方針で療育をしているかの説明が何もなかった」ということをよく聞きます。私は就学指導委員会にある情緒障害部会の入級判定会議に、そこの地区の子ども発達センターのスタッフにも是非参加していただきたいということをたびたび要請していますが、ほとんど出てきて頂けないのです。

 第 4 点目は、 4 ページの (2) その他の障害児通所支援の在り方、 (3) 障害児入所支援の在り方についてまとめたいと思います。入所施設については、多分、全自者協の方から後ほど触れられると思いますが、強度行動障害の問題が一番大きな問題になると思います。通所施設でも、強度行動障害を示す人たちがだんだんと多くなってきていて、グループホーム、ケアホームでも対応しきれなくなってきています。突然興奮してスタッフに暴力を振るうという場合に、一体どのように対応していくのか、これは非常に問題があると思います。

 そういう点で、私は 4 ページの下のほうに書いていますが、入所施設と連携できるようなシステムを地域で作っていく必要があると思います。そういう準備をしておかないと、なかなか緊急の場合に対応しきれないし、通所施設でうまくいかないから、またはグループホームでうまくいかないからといって、すぐに精神科病院に入院というのも非常に問題があるわけです。是非、施設入所と地域生活の二項対立的に考えるのではなく、総合的なシステムとして考えてもらいたいと思います。

5 ページの上のほうに、強度行動障害の問題を出しました。親亡き後をどうするのか。高齢化した両親や家族の問題をどう考えるのかも喫緊の課題です。幾つかの施設では、既に高齢化問題についての検討が始まっていますが、まだまだ不十分です。そういう意味で、入院 ( 入所 ) 施設・通所施設、地域社会が本当の意味での連携をどのように機能させていくのか、緊急に検討すべき問題だと思います。

 第 5 点目、 5 ページの3強度行動障害への対応です。全自者協の方からも出ると思いますが、最近、入所施設や学校で、いろいろな不幸な事件が起きました。そういう事件を見ていますと、担当者だけが責任を負わされていると考えられるわけです。施設全体としてどのように対応していくかという視点が欠けているようです。ある施設では、 2 人の強度行動障害のお子さんに対する対応に非常に苦慮して、担当の職員が周囲から責められて、今年の 3 月末にその施設の 3 分の 1 の職員が退職しました。こういうことが連鎖的に起きてくる可能性があると思います。

 医療との関連の問題ですが、施設における環境調整の問題は十分に考える必要がありますが、薬物療法との併用も非常に重要であると思います。ただ、薬物療法も、こういう障害のあるお子さんについての臨床経験が豊かな臨床医が担当しないと、大量の薬物が与えられて逆効果になってしまう場合があるわけです。そういう点では発達障害の医療に熟達した専門医の養成の問題も考える必要があります。

5 ページの一番下に、精神運動興奮状態になって精神科医療施設に措置入院となることがあることを書きましたが、多くの精神科病院は、統合失調症や感情障害を中心に治療してきた伝統がありますので、発達障害の人たちに対応するノウハウが非常に乏しいのです。そういう点では、是非、厚生労働省が中心になって、この検討会にも動いて頂いて、日本精神科病院協会との協議をして頂きたいのです。そして、いわゆる措置症状が解消した場合に、もとの施設に戻れるようなシステムを是非考えてもらいたいと思います。

 第 6 点目、 6 ページ目を御覧ください。発達障害児の支援の在り方についてですが、ここで強調しておきたいことは、配置医師とその他の臨床医との関係の問題です。厚生労働省からの通知によりますと、配置医師についてのいろいろな規定が出ていますが、施設または、その施設で仕事をしている臨床医の先生方に聞きますと、非常に分かりにくいというのです。ある県では、半分以上の配置医師であった内科医が中心なのですが、辞めてしまったという事実もあります。ですから、通達の仕方を明確にして、分かりやすくしていただきたいです。

 ご両親や保護者の方々からの要望では、医師選択の自由を保障してもらいたいということが多いのです。この辺をどのようにして整合性を保っていくのか。二重請求の問題は非常に大きな問題で、この問題を解消しようとして、配置医師に関する通達が出たと思いますが、まだまだ末端まで浸透していないと思います。

 少し時間を超過いたしましたがお許しください。これで終わります。どうもありがとうございました。

○柏女座長 ありがとうございました。ただいまの説明について、御質問等がありましたら御発言をお願いいたします。

○辻井構成員 非常に実態をうまくまとめていただいた発表を、ありがとうございます。 1 件はコメントで、 1 件は質問です。

1 つは、ここに山崎先生にお出しいただいたように、支援する側が自閉症、発達障害のことを正しく理解する機会、特に事業所の場合に、そういう教育を受けずにきてしまうというところがあって、これについては何らかの標準的な手法を、やる以上は必ず学ぶというか、実施できるというような仕組み、そういう標準的なサービスをある程度入れるという発想は、福祉のサービスの中では要るのかなということは思いました。

2 つ目は質問です。そういう意味では、障害の度合いというのを、例えば支援程度区分などでやっていくような場合、自閉症の方たちの場合はどうも実際の支援のニーズからすると程度区分が軽く出てしまうというか、実態がうまく捉えられないというような傾向があるような印象があるのですが、その辺のところはいかがでしょうか。

○日本自閉症協会 第 1 点目の問題は、支援者といわれている人たちの養成課程をしっかりしてもらいたい。そういう点では、辻井先生にお言葉を返すようですが、辻井先生が大学で教育をしている学生さんにも、臨床経験が豊かな人にきちんと指導してもらいたいのです。

 第 2 点目は、標準的な指導法といってもかなり千差万別です。それから、障害支援区分も検討されておりますが、実際に 1 1 例に当たって評価してみますと、なかなかうまくいかないことがあります。というのは、第 1 次評価をする人の力量にも関係しますが、的確に実情を把握しきれていないのです。例えば「言葉がありますか」と質問しますと、お母さんはパパ、ママと言いますよと答えますが、すぐに「言語がある」と評価してしまうことになり、子どもの実態とはかけ離れた評価になってしまうのです。障害支援区分の評価を担当する人たちのトレーニングが必要であると思うのですが、それが果たして行われているのかどうか、私には少し疑問があります。

○柏女座長 では、市川さん、お願いします。

○市川構成員 日本発達障害ネットワークの市川です。私は自閉症協会の副会長もやっているので違うことを言うつもりはありませんが。先生がおっしゃったとおりで、私も強度行動障害については医療と連携しない限りうまくいかないだろうと。その場合、先生がおっしゃったように、統合失調症とか鬱病だけを診ている医療機関ではなくて、もっと知的障害をきちんと診られる医療機関を増やすという発想でなければいけないと思います。それから、日精協に頼めばそれが増えるかということは、私も何年もやっていますが、それは別の方法を使わないと難しいのではないかと考えています。したがって、その辺りのところを、是非いろいろな団体にお願いして。

 私が 1 つ思っているのは、厚生労働省は平成 17 年から平成 19 年まで、子供の心の診療拠点病院構想というのを作っていただいて、それは母子保健課が中心になられているので、やはり小児科の先生方が中心なので、なかなか強度行動障害という概念は理解していただけないのです。これは、是非できれば精神障害のほうのセクションで扱っていただかないと、今も拠点病院を作ってみましたが、実際には小児科の病院はほとんどいなくて、児童精神科の病院だらけなのです。そこを考えてみると、後で話があると思いますが、そういうのを入れる場合に、精神障害課に中心になってやっていただけると有り難いと。初めから私はそう思っているのですが、部長さんもいらっしゃることなので、よろしくお願いいたします。

○日本自閉症協会 今の件は、精神科病院に長期にわたって入院させるという考えではないのです。緊急な場合に、精神科病院の救急を担当している各病院は、発達障害、自閉症、アスペルガーと聞いた途端に、「うちは専門家がいませんから」といって門前払いになってしまう。それが困るので、まず 1 回引き取ってもらって、ある程度落ち着いたら、もとの入所施設なりグループホームに帰していくようなシステムを作ってもらいたいという希望です。

○市川構成員 おっしゃるとおりなのです。ただ、厚労科研でもう報告してありますが、実際に日精協の病院の中には、一定の割合で強度行動障害の方が入院しっ放しになってしまっているのです。そういうことも含めて、きちんと対応していくということをみんなで考えていく時期になっているのではないかと思います。よろしくお願いします。

○柏女座長 加藤さん、御発言をお願いします。

○加藤構成員 ありがとうございました。 3 ページ目の子ども発達センターのことで、私たちはそこの当事者なものです。弁護するつもりは全然ないのですが、いずれにしろ、 4 月になって職員を採用してという話になるのですが、この場にも元大学の先生、今現在大学の先生がたくさんおられるので言いにくいのですが、結局、新卒の職員ではほとんど役に立たないのです。ですから、結果として OJT 的に、現場で何年も掛けて養成していくのです。

 そうすると、その養成期間のゆとりというか、事業所としてのいろいろな意味での人事的、財政的なゆとりがなかなか確保できないところで、現場では大変苦労しているのだろうと思うのです。その辺について、何かいい方策というのは提案して。

○日本自閉症協会 それぞれの地域で、事例検討またはケーススタディをしっかりとやって、そういうところに子ども発達センターのスタッフも含めて参加してもらいたいのです。今の人は、検討会で厳しく問題を指摘されると、その後は出て来ないのです。非常に打たれ弱いのです。そういう点で、私たちが訓練を受けていた頃は、怒られても怒られても行ったものですが、そこのところをうまくやらなくてはいけないと思いながらも、私は職員のための診療をしているのではなくて、子どものための診療をしているものですから、そういう点でつい厳しくなりますが、是非各地域でのケーススタディを活発にしたほうがいいと思います。

○柏女座長 ありがとうございました。事務局に 1 つお願いですが、今日の議論で、例えば今の話だと、専門職の養成の関係とか、つまり子供の分野にかかわるケアワーカーやソーシャルワーカーの養成の話とかが、いわば障害児支援に固有の問題ではなくて、保育士養成だと雇用均等・児童家庭局の保育課で担当しているとか、そこに障害関係の教育のカリキュラムを充実させてほしいとか、そういうことを要請していくことも大事だと思っているので、そういう論点の中、今まで挙げた論点の中で出てきていない論点がこの中では挙がってきていると思いますので、 3 ページぐらいにわたっていた論点整理の所にも、この中で出てきたことを入れ込んでいただければ有り難いと思います。

○阿萬障害児・発達障害者支援室長 承知いたしました。

○柏女座長 どうもありがとうございました。

 続きまして、全国児童青年精神科医療施設協議会より、御意見の表明をお願いいたします。

○全国児童青年精神科医療施設協議会 全国児童青年精神科医療施設協議会(全児協)を代表してまいりました、東京都立小児総合医療センターの田中でございます。スライドを出しますが、一部を除きお手元のプリントと同じです。

 私たちの団体に関してごく簡単に御紹介します。 1971 年に、病棟機能を持つ児童精神科医療施設の合同研修会として発足いたしました。全国で 10 施設余の時代をかなり長く経て、最近はようやく全国で正会員施設が 22 、オブザーバー会員施設 11 という数になってきました。これは決して多い数ではなく、児童精神科入院病棟がない都道府県がかなりあるということです。

 研修会には 500 人の職員が集まるのですが、かなり現場で無理をして、時間とスタッフを割いて集まる理由は、児童精神科の医療施設の特殊性がかなり高く、我々自身のアイデンティティを保つのが非常に難しいためです。全国に散っていて、それぞれ孤立しているけれども同じ仕事をやっている人たちが集まって、どういう苦労があるかをシェアするということが理由の一つです。

 また、民間の医療施設がほとんどないのは全く採算が合わないからでして、ほとんどが公立病院です。団体として、こうした児童精神科独特の医療経済状況を何とか好転させようという働き掛けをしております。

 さらに、先般のような大災害があった際には、そこに入院している子供たちのケアを全国の残りのどこの施設でやるのかということも、喫緊の課題になってまいります。そのような状況下で相互にケアし合うシステムでもあります。

 この団体と関連して、「子どもの心の診療ネットワーク事業」というものがあります。これは児童精神科医が非常に少ないという答申を受けて始まった事業で、当初は全国で 11 の都府県で、その多くは全児協の病院が中心になって、そこを拠点にして児童精神科医などのネットワークを作っていこうという事業です。

 この事業の全体像としては、全国各地でいろいろと違う事業をやっておりますので、全自協の一病院として私たちの病院がやっていることを中心にして、今の児童精神科医療が発達障害の子供たちとどうかかわっていくかということをお話ししたいと思います。

 私たちの病院のネットワーク事業への参画状況ですが、私たちの科の母体は梅ヶ丘病院という都立の子供専門の精神病院でして、当初はその梅ヶ丘時代からやっていた各種のセミナー、講演のようなものを始めに事業の中心に据えて、広く私たちが培ってきたノウハウを周りに対して発信してきました。しかしそれだけでは発達障害を診ることができる児童精神科医を増やすことになかなか直接につながらないことを痛感してまいりました。そこで、昨年度からこの事業を使って人材育成のほうに少し重点をシフトし、私たちの病院が持つ療育機能を研修の現場としたスタッフ養成を行うようになりました。

私たちの病院について少し説明させていただきます。当院は、梅ケ丘を含む都立の 3 小児病院を統合する形で 2010 年にオープンしました。このため全 561 床中、精神科が 202 床という小児病院ではかなり特異な形態をとっております。外来が予算規模で 750 人/日ほどで、そのうちの 140 人が精神科の外来です。

 児童精神科としての規模は、常勤医が 11 人、後期研修医が 15 人おります。研修期間は 3 年ですので、毎年 5 人ずつ新しい児童精神科医を生み出すことになります。新患数は年間 1,250 人ぐらいです。実際は、これにプラス院内から紹介される人たちがいるので、 1,500 人ぐらいにはなると思います。新しい入院が 500 人です。

 外来新患・新入院いずれも、おおよそ半数強が発達障害の子供たちで占められます。私たちの病院にとって発達障害に関係を持つ上では、この数をどのようにこなしていけるかが非常に大きなテーマになってまいります。私たちの病院を受診する希望をされて、待機になっている子どもたちの待機日数は増加し続け、現在 170 日を超えています。それだけ受診希望者が多いということです。

 予約が半年先では、緊急性のある強度行動障害や精神科的救急医療には全く対応できませんので、ホットラインと緊急入院システムという形で、本当に緊急性のある患者に関してはすぐにでも診察をする、必要があれば数日以内に入院ができるというシステムを作って、ようやく緊急の要請には応えています。実数でいうと、昨年はこういった緊急受診の相談が 250 件ぐらいありまして、そのうちの 6 7 割、 150 人ぐらいが緊急入院をしております。全体の数、新患の数あるいは入院の数の中で、これがかなり大きな数を占めているということがお分かりいただけると思います。

 本日も何度か議論に出ている強度行動障害の子供たちについては、専用の一病棟があり、 25 床で対応していますが、個室の運用が難しいために入院の必要に応じきれていないのが現状です。その病棟には専門の医師がいて、行動療法的な手法も動員しながら、何とか家に帰れる形を探すのですが、かなり時間が掛かってしまいます。そのため入院の待機児童が一番多い病棟になっている状況です。

 医療機関としての集中的な治療的介入、本当に医療的な介入が必要なのはそんなに長い期間ではありません。それは薬がちゃんと決まるまでで、あとはどうやって元の生活に慣れていくかということが問題なのです。そこで十分に短期の医療の役割が機能するためには、強度行動障害に対応できる福祉施設とのより柔軟な連携が必要なのではないかということを痛感しています。なかなか元の家や施設に帰れないという問題があるのですが、現実には、この子供たちを見ていたのかと思うような手のかかる子供たちを、施設ではかなり見ていてくれるという状況もありますので、そういう子供たちを融通無碍に見ていけるシステムが必要かと感じています。

 発達障害に関する地域連携の問題に戻ります。

 初診待機が半年にもなってしまうというのは、非常に軽症な人たちが私たちの所に来てしまって、そのせいで私たちが本来診るべき重症例、緊急例を診ることができなくなっているという問題が生じているためでもあります。

 ここに描いた図は、地域、家庭をベースにして、そこからだんだん子供を絞り込んで、私たちが一番下の所で、守るべきもの、本当に必要なケースを診る流れを構想したもので、こういうシステムがうまく動けば、満遍なく必要な子供たちが必要な医療を受けられるのではないかと考えられます。

 初めに子供たちが診てもらうのは、ここにあるような乳幼児健診システムとか、かかりつけの先生たちなのです。あるいは、幼稚園や保育園で見つかった子供たちが、かかりつけの先生にかかるのですが、ここにシステム上のネックがあります。かかりつけの先生たちが、まだうまく子供たちを診察できていない状況がありますし、その下にあるのが、先ほど議論にあった地域の子供発達支援システムなのですが、ここへの繋ぎが地域によってはなかなか円滑ではありません。

 発達支援センター自体にアセスメント機能があれば、現在よりうまく中核的な病院につなぐことができ、最終的に私たちのような入院機能を持っている医療機関につなげていけるはずですし、こういうシステムがうまく作動するためには、ここに挙げたような機関同士が上手に連携をして、必要なときに必要な子供たちを診る、そして、また地域に返していくというシステムの構築が必要なのではないかということを感じているところです。

 こうしたネットワーク構築のためには、適所に信頼できる人材が必要ですので、今私たちがしようとしていることはその人材をどうやって作るかということです。そこで、自分たちが持っている療育をモデル的な実践的教育の場として利用することで、地域の発達支援センターのスタッフを育成することはできないかということに取り組んでいます。一緒に来た藤原が、そこのプロジェクトのリーダーです。

 そういうやり方で、発達支援に地域で取り組む体制を広げながら、さらには医師会とも連携をして、地域でのかかりつけの小児科医の診断精度をもう少し向上させられないか、私たちが病院から地域の医師に逆紹介ができるようなアクセスマップが作れないか、さらには、中核的な療育系の病院とももう少し上手に連携ができて、私たちの前段階ぐらいで頑張れる所がもう少しないだろうか、等という開拓をしていかなければいけない。あるいは私どもは都立病院ですので、都の行政にも働き掛けて、そういうシステムを作ることをサポートしてもらう必要があるのではないかということを感じています。

 少し時間を超過しました。以上です。

○柏女座長 ありがとうございました。ただいまの御報告につきまして、御質問等がございましたらお願いします。

○市川構成員 私は田中先生がいた病院の前の院長なので非常によく分かるのですが、そのときに私が感じたのは、余りにも需要が多いので、教育や福祉のほうに理解、啓発を求めるために、例えば保健所に行く、包括センターに行く、あるいは就学相談を手伝う、いろいろなことを私たちはお手伝いさせていただいたのですけれども、私が院長の立場で一番困ったのは、結局それをやりますと、国でいえば総務省に当たる所がありますので、そんなことをやっている暇があるのなら医者を減らすという論理が必ず出てきてしまうのです。そのときの錦の御旗が、厚生労働省はそんなことを事業として認めていない、本来業務ではないと言われてしまうのですが、一言「本来業務である」と言っていただけると、みんな安心して行けると思っているのです。これについて、厚生労働省はどのようなお考えかということを聞かせていただきたいと思います。

○柏女座長 何かお答えできることはありますか。

○阿萬障害児・発達障害者支援室長 制度的なことは見ないと言えないのですが、例えば発達障害者関係で言いますと、発達障害者支援センターは、以前は直接の相談を受けて対応することが多かったのが、間接的なところで、例えば児童発達支援センターですが、そういう所が発達障害の方々の支援がちゃんとできるような形にしていく、そのために発達障害者支援センターがその役割を果たしていく形に変更していくこともしておりますし、基本的なところは、直接そういう所が全て直接見るというのではなく、ほかの方々が発達障害の方も含めて見られるようにしていくという、全体の地域支援をやっていくことは非常に重要なことだと思いますので、そういう御意見を頂いたということで、報告書の中でどうなのかという形で御了解いただければと思います。

○柏女座長 今のことについて、田中さんから何かございますか。

○全国児童青年精神科医療施設協議会 結構です。

○柏女座長 では、辻井さんからお願いします。

○辻井構成員 非常にポイントを突いた発表をありがとうございます。 2 ページの図です。都市型のモデルとしては、 1 つこれはあり得るのかなとは思うのですが、おそらく全国の多くの地域ではこういう図もなかなか。県によっては中核の病院が 1 個しかなくて、児童精神科医が 1 名しかいないという所もあると思います。そもそも医療がどう関与するのかということに関連して、かかりつけ医の前のところに、福祉であれ子育て支援の相談機関で、ペアレントトレーニングの初級レベルのプログラムが当たり前にできるというような形のものを 1 個付けないと、やはり機能しないのだろうなということを何となく思いながら聞いていました。

 そのためには、母子保健が保健の中で医療と連動するという発想を、今まで最初に考えてきた部分を、福祉と連動あるいは子育て支援と連動していくという部分をもう少し強く作って、その上で 1 次の医療機関という。母子保健からすぐに医療機関というような、今のところの連携度合いの仕組みをとっている限り、パンクし続けるという構図になるのかなという。母子保健の在り様そのものがこういう発達障害なんかと絡むようなところ、しかしそれがまた大勢を占めるわけですから、そこら辺の構造を変えないといけないのかなと思ったりもするのですが、その辺りの御意見は先生のほうでありますでしょうか。

○全国児童青年精神科医療施設協議会 私も全く同じで、私が思うのは、例えば母子保健の健診のシステムとか、幼児教育の、ここでいうと幼稚園や保育園の現場の担当の人たちの診断精度というか、ふるいの感覚が上がっていく、的確にケアが必要な人を見分けられるような力を付けていく。長い目で見て、どうやったらそれができていくだろうかというイメージを持つことなのではないかなと思っています。そのために、システムを切り分けて、そこに医療としてどう絡むかというよりも、医療がどういうサポートができるかという構図で、新しいシステムを作っていくという発想が必要なのではないかなと、今、思っているところです。

○辻井構成員 そういう意味では、医療がタッチするのが早すぎるかもしれないところがあって、もう 1 段前のところで、例えば標準的なスクリーニングツールみたいなものをもう少し入れていく形で、保健師なり心理士辺りなりで一定の把握ができて福祉につなげられる。その上で、なおかつ必要な人が医療につながっていくというような、何かワンクッションを考えないと、ある意味切りがなくて、数が増えるだけパンクし続けるという構図になるのかなと思いました。

○柏女座長 柘植さん、お願いいたします。

○柘植構成員 今の議論と関連するかもしれないのですけれども、 1 ページの 2 b の所です。梅ヶ丘病院のされていたものを当初は引き継いだのだけれども、昨年度からは人材育成にシフトしているということで、発達支援スタッフの養成を行っているということでした。ここでいう「発達支援スタッフの養成」というのは、どういう人なのか、医師のことなのか看護師なのかコメディカルなのか、あるいは教員、保育士も含めての、いわゆる発達支援に全体的に関わる人全てのことなのか。

 なぜこのような質問をするかというと、例えば 7 8 年ぐらい前に東大の医学部が心の診療を作ったときに、幾つかのコースを作ったのだけれども、 1 つのコースはいろいろな方が来てくださいというコースを意図的に作って、問題解決を医師や教員だとかがチームで解決していくという仕掛けで、いい成果があったというのを聞いているのです。それで、 2 つ、 3 つ前のヒアリングで、特別支援コーディネータは福祉は知らないとか、それぞれの福祉なら福祉、教育なら教育、医師なら医師の専門性を高めることはそれぞれのところでやりながら、一定のチームで問題を解決するという訓練というか、トレーニングというか、シミュレーションというか、その場として、この発達支援スタッフの養成なのか。もしそうだとすると面白いなと思ったのです。

○全国児童青年精神科医療施設協議会 そのプロジェクトのリーダーが来ていますので、話を聞いていただければと思います。

○全国児童青年精神科医療施設協議会 御指摘があったように、幾つかのプログラムを用意しておりまして、今モデルでやっているのが、ある市とかなりパイプを深く持ちまして、保育園が 30 ぐらいあるのですが、各園から 1 人ずつ実習の研修に出していただいています。その先生たちに療育の場面に一緒に入っていただきまして、今そこにいるお子さんに対していただきながら、知識ももちろんお伝えするのですが、どう対するかということを実習していただく研修を 30 人全員にやるのです。それが 9 回のコースです。その先生たちに育っていただいて、各保育園に散っていただき、コーディネータとして機能していただくコースが 1 つです。

 もう 1 つは、いろいろな職種が来るという研修はペアレントサポート研修といいまして、ペアレントトレーニングの演習を入れたコースを 1 つ持っています。そこには、看護師、保健師、保育士、学校の先生、お医者様はなかなか来ていただけないのですが、いろいろな職種が来て、演習しながらグループワークもして、それぞれ議論を闘わせるというところで、 2 日間の集中でプログラムを組んでいます。

 そのほかにも、幾つかプログラムがあるのですが、今の目玉はその 2 本ということで、保育士のコーディネータ研修は、自治体の保育課、特別支援教育課もバックアップしてくれていまして、市としても、そういう養成をした後のフォローアップなども含めて、応援すると言ってくれているところです。

○柏女座長 まだまだ御質問はあるかもしれませんが、時間も過ぎておりますので、ここまでにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

 最後になりますが、全国自閉症者施設協議会より意見表明をお願いいたします。

○全国自閉症者施設協議会 全国自閉症者施設協議会の石井と申します。よろしくお願いします。本日は五十嵐会長の代理で参りましたので、よろしくお願いいたします。なるべく検討課題に沿って書かせていただいたつもりなのですが、全国自閉症者施設協議会の中で、いわゆる旧自閉症児施設は 3 施設しかありませんで、かつ、それぞれ置かれている地域も随分違うということもありまして、今日はその中で 1 つの意見ということでお聞きいただければと思います。

 検討課題に沿って 1 点目です。「障害児支援を進めるに当たっての基本的な視点」という所で、支援の基本理念と専門性ということについて特に申し上げたいと思います。先ほど辻井先生から、「共通した手法」というお話がありましたが、その手法を使っていくに当たっても、そのベースとなる理念の部分を押さえておく必要があると思いましたので、その意味で少し詳しくお話させていただきます。

 自閉症は一般に理解や対応が難しくて、療育や保育の現場で困難な問題を呈している場合が多いことは、御承知のとおりだと思います。そのときに、自閉症児をどう理解し、どう対応していけばいいかということも、もちろん考えなければいけないと思うのですが、そういった対症療法的な手立てを考える前に、まずは、どのように自閉症児を育てていくのかという、療育の方向性や目標を明確にしておく必要があると思います。

 自閉症児の支援を考えるに、自閉症という障害特性を持ちながらも、飽くまでも 1 人の人間ということが出発点としてありますので、「自己選択や自己実現をしながら人間らしく主体的に暮らしていけるようになること」を重視する視点に立って、幼児期の療育というのはその基礎を作る重要な役割を担っていると言えると思います。

 その療育を考えていく際に基本的な指針となるものは、これは通常の乳幼児の保育と何ら変わりがないと思われます。ただ、自閉症という障害特性ゆえに、生まれながらにして困難な条件を抱え、自立的な発達が進みにくい状態にある。そういう子供たちに対して、「人間らしく育つための発達を援助していく」ということは、そう容易いことではなくて、療育者たる援助者が、自閉症の障害特性のみならず人間への理解と想像力を深めること、それとともに様々な創意工夫を重ねて、自らの専門性の向上に努めていくことが不可欠であると思います。

 療育の指針イコール保育の指針と、この場合は考えているわけですが、これは正に「保育所保育指針」の中にある一節というのが、そのまま引用されると考えましたので、引いてまいりました。

 「子供は、身体的にも精神的にも未熟な状態で生まれ、大人に保護され、養育される。その際、大人と子供の相互作用が十分に行われることによって、将来に向けての望ましい発育・発達を続け、人間として必要な事柄を身に付けることができる。中でも重要なことは、人への信頼感と自己の主体性を形成することであり、それは、愛情豊かで思慮深い大人の保護・世話などの活動を通じた大人と子供の相互関係の中で培われる。子供は大人によって生命を守られ、愛され、信頼されることによって、自分も大人を愛し、信頼していくようになる。大人との相互作用によって情緒的に安定し、大人の期待に自ら応えようという気持ちが育ち、次第に主体的に活動するようになり、さらに、兄弟を初め周囲のものに対して、関心を持ち、関わりを広め、増やしながら、自我がめばえてくる。このように発達初期に自分の行動を認めてくれる大人と相互関係を持つことにより、その後の一層の発達が促される。子供は自発的に身近な物事や出来事に興味や関心を示して働きかけたり、積極的に特定の大人との関係を作ろうとしたりするなど、自分の気持ちを明確に表現し、決定して行動するという自己の能動性に自信を持つようになり、言語や思考力、自己統制力を発達させていく」。これが、自閉症児においても、もちろん基本的には大事にすべきものと考えております。

 次に、「自閉症児支援を行う人材の専門性」ということです。援助者の専門性については、次のように考えられます。自閉症児への実際の療育の過程の中では、その子供のタイプによって変化の表れ方は様々であり、また順番どおりに発達が進むわけではない。例えば情緒の育ちが遅い子供のケースで、あるとき、その子にとって分かりやすいと思われる課題場面でその子の対応や認知が進んだり、あるいは表面的な問題行動が軽減したりということがあります。そのことは無論価値のあることですが、援助者の側が、その子供の表面的な行動の変化のみに着目して、能力の向上や認知を進めることだけに気を奪われてはならないと思います。ここでより大事なのは、なぜ情緒が育ちにくいのか、なぜ人との関係が育ちにくいのかということを頭の片隅に置きながら療育を進めていって、機会を見てその大事なポイントに立ち返るということ、療育の方向性を見失わないようにすることというのが、肝要であると考えております。

 自閉症児は、本人にも自分の気持ちを十分に自覚できていなかったり、一見すると気持ちと行動の因果関係がつかめないことをしたりと、援助者から見ても非常に分かりにくい、気持ちをつかみにくいことがあると思います。そこで、行動の背景にある気持ちや行動の意味を的確につかんで、それに合った対応をして、その子供への正しい理解や、その子供の気持ちの汲み取りの積み重ねによって、その子供の情緒を育てることがとても大事であると思います。つまり、子供の気持ちの的確な読み取りが、そうした人間関係を支えにして、自我の調整機能を育てていく上で欠くことができない、ある種の専門性の中の核心であると考えております。

 次に、障害児入所支援という、旧自閉症児施設としての支援類型の論点で、「現在の事業体系の検証」という所では、現状を申し述べたいと思います。

 まず、入所して来る児童が変化してきているということです。これについては、もともと知的な遅れを伴う自閉症のお子さんを主として受け入れるということで、ずっとやってきているわけですが、その場合、どちらかというと、御家族、特に御両親が対応に苦慮して、何とか家庭で生活を送っていたのがやがて限界になって、やむなく療育を求めて施設に入所させるとなるケースが多かったわけですが、最近はその傾向がやや薄れてきているように感じています。入所に至る主訴が多様化してきていると思います。

 例えば 1 つは、いわゆる措置から契約に移った支援費制度の施行以降、いろいろとサービスが増えてきた。先ほども児童デイが増えてきたという話があったと思います。そこで、特に幼児から小学生の時期においては、各種のそういったサービスを受けることで何とか家庭での生活が維持できていた。そこに両親の別居とか離婚といった養護性の欠如、あるいは場合によっては虐待に至ってしまうような、家庭自体の養護機能の低下ということで、措置入所となるケースが最近は増えてきていると感じています。

 その一方で、いろいろと増えてきたサービスを使いながら、ぎりぎりまで頑張る。なるべく施設に入らずに中学・高校まで頑張ってきたのだけれども、思春期になると体も大きくなって、行動障害も激しくなるというところで、さすがに耐えかねてというところで、ようやく中学卒業、高等部入学という時期になって入所希望というケースが多くなってきているように感じています。

 もう 1 つは、従来の知的な遅れを伴う児童だけではなくて、いわゆる高機能とかアスペルガータイプの、知的な遅れが軽減であったりほとんどなかったりといった方でも、行動上、得にコミュニケーションが困難で、対人関係でトラブルを起こしたりというところで、施設入所に至るというケースが出てきていて、それが自閉症児施設にも入ってきているということがあります。

 次に、保護者への対応も変化してきています。先ほどの入所児童の変化ということにつながる話なのですが、養護機能が低下してきているということと、価値観が多様化して権利意識も強くなってきているという部分で、なかなか従来のように療育を求めて委託してくるというよりは、手を離したくて入所に至るというケースも出てきています。その辺で、措置入所に近いような形の人も出てきているということがあります。そういった児童に対しては、ある部分では施設が親代わりにならなければならないことも出てきていまして、その部分で職員の負担も大きくなってきているということがあります。

 併せて、従来からの強度行動障害を示す児童の対応も、引き続き大きな課題となっていまして、特に、ぎりぎりまで地域で頑張ってきたというのは、もちろん大変なことですが、それが施設の中でも非常に大きな問題になってきているということはあるかと思います。そういった強度行動障害のお子さんに対応できる施設というのは少ないこともありますので、受入側のキャパシティの限界で入所を断らざるを得ないということも出てきています。

 さらには、児童施設としては 18 歳までということが基本的にあるわけですが、 20 歳までは何とか延長できるにしても、それ以降は成人のサービスを受けるということになりましたので、移行支援をしていかなければいけないのですが、なかなか地域移行というのは難しくて、特に自閉症児施設に入ってくるお子さんに関しては、引き続きあります。学校と協働しながら進路を探していくわけですが、成人施設への移行が大勢を占める中で、成人施設のほうもなかなか受入れをしてくれる所が少ないことがあって、移行の支援の難しさということが際立ってきていると思います。

 「新たな政策課題の検討」という所は、そういったことを受けての、自閉症児施設として、今、課題に感じていることを 2 点挙げています。 1 つは、人材育成です。強度行動障害に対応する人材ということも 1 つありますが、それに併せて、先ほど触れました高機能の方への対応も新たに生じてきていまして、その 2 つのことに対応できる人材が求められていることです。

 それから、強度行動障害に対応する施設、もちろん自閉症児施設だけではないですが、公立の施設も含めて受け入れている所はあるわけですが、なかなか受入れが難しいというところでは、専門的に行っている所を核にしたセンター機能を付加して、そこがある種の中心になって、強度行動障害の入所ニーズに対応していくことが必要になってくるかなと感じています。

 最後に「トピック別論点」という所で、発達障害児の支援の在り方に関して若干申し上げます。まず、発達障害児を地域で支援するためにはどのような体制が必要かに関しては、発達障害児に特化したサービス利用計画に基づくトータルケアという視点が必要だと感じています。これは「特化」したというところが力点で、既存の障害児サービス利用計画というものを作るようになってきているわけですが、それが発達障害児に特化したものとして作られるところを出発点に、成人期に至るまでを含めて、そのお子さんをどう育てていくのか、発達を支援していくのかという観点で、ケアプランを立てることが必要だと思います。その人材育成も課題だと思います。

 支援体制づくりとしては、既存のサービスを活用していくわけですが、例えばヘルパーにしても、児童発達支援事業にしても、自閉症とか発達障害のお子さん、特に行動障害系のお子さんに対応できる所が少ないという意味で、そこにコンサルテーションしていくということを、発達障害者支援センター、児童発達支援センターの中で、発達障害児に特化した支援が行える所が中核になって、コーディネートしていくことも今後は必要になってくるのではないかと思います。どうもありがとうございました。

○柏女座長 ただいまの説明について、御質問等がございましたらお願いします。特によろしいでしょうか。

 大変丁寧に説明していただきましたので、特に御質問もないかと思います。ありがとうございました。それでは、全体を通じて委員から確認をしたいことなどはございますか。よろしいでしょうか。

 それでは、今日はここまでとさせていただきたいと思います。次回もヒアリングを行いたいと思います。最後に、今日お見えいただきまして、貴重な御意見を提供していただきました 6 団体の皆様に、心より感謝申し上げたいと思いますし、またその頂いた御意見をこの検討会の中で是非生かしていきたいと思います。ありがとうございました。

 今後の予定等について、事務局から御説明をお願いいたします。

○阿萬障害児・発達障害者支援室長 皆様、本日はお忙しいところ熱心に御議論いただきまして、誠にありがとうございます。次回の第 5 回の会合につきましては、既に御案内させていただいておりますとおり、 5 9 ( ) に厚生労働省の会議室で開催いたします。引き続き関係団体からのヒアリングを実施する予定ですので、構成員の皆様方におかれましては、日程の確保などをよろしくお願いいたします。

 また、もう 1 点御報告がございます。 5 16 ( ) に社会保障審議会障害者部会が開催される予定です。その部会において、この検討会の議論の状況を報告させていただければと考えております。具体的な手続としては、次回を含めた 3 回分のヒアリングの内容について、できる限り簡潔にまとめたペーパーを事務局で作成をし、座長の御了解を頂いた上で、 5 16 ( ) の障害者部会に提出させていただければと考えております。その上で、障害者部会の委員の方々から意見も出ると思いますが、それについては 5 20 日の次々回に報告させていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

○柏女座長 今後の段取りについて、事務局から説明がありましたが、御質問、御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、これで第 4 回障害児支援の在り方に関する検討会を閉会とさせていただきます。皆様、お忙しいところ御参集いただきまして、本当にありがとうございました。次回もまたよろしくお願いいたします。


(了)
<照会先>

社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課
障害児・発達障害者支援室 障害児支援係
〒100-8916
東京都千代田区霞が関1-2-2
電話: 03-5253-1111(内線3037)
FAX: 03-3591-8914

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