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2014年3月18日 第2回歯科診療情報の標準化に関する検討会 議事録

医政局 歯科保健課

○日時

平成26年3月18日(火) 14:00~16:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 共用第8会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

○小畑歯科医療専門官 
 定刻になりましたので、ただいまより歯科診療情報の標準化に関する検討会
( 2 ) を開催いたします。委員の皆様におかれましては、年度末のお忙しい中、お集りいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日はオブザーバーとして、警察庁刑事局より、井澤課長補佐、増岡係長に御出席いただいております。

 続きまして、事務局に変更がありましたので紹介いたします。歯科保健課長の鳥山です。

○歯科保健課長 
 歯科保健課長の鳥山でございます。よろしくお願い申し上げます。

○小畑歯科医療専門官 
 なお、今回の検討会につきましては、公開となっておりますが、カメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきます。

 それでは、資料の確認を行います。議事次第に続いて、座席表となっています。続いて資料一覧、右上に資料番号を振っています。資料 1 は、本検討会の設置要綱と裏面に委員名簿があります。資料 2 「歯科診療情報の標準化にかかる論点等について」です。続いて、参考資料 1 は、平成 26 年度「歯科診療情報の標準化に関する実証事業」仕様書です。

 続きまして、参考人提出資料 1 は、新潟県歯科医師会提出資料です。参考人提出資料 2-1 2-2 は、 ( ) オプテック提出資料となります。乱丁、落丁がありましたら事務局までお知らせください。

 住友先生、よろしくお願いいたします。

○住友座長 
 座長の挨拶ということで、歯科診療情報の標準化に関する検討会
( 2 ) に御出席いただきまして、ありがとうございました。前回が平成 25 8 7 日でしたので、もう既に 7 か月を経過いたしました。その間に実証事業も順調に進んでいるということで、本日その結果報告会になります。今日、この報告を聞くことは私個人としても大変楽しみにしております。その後で皆様方に御意見をいただくということで進めたいと思います。

 話は変わりますが、今日は 2 時に歯科医師国家試験の合格発表がありまして、 1 年前は私は大学に所属していましたので、どきどきしていました。今日は大変気楽な形で座長を務めさせていただきますので、皆様方、十分御討議のほどよろしくお願い申し上げます。以上でございます。

○小畑歯科医療専門官 
 資料の説明に移ります。資料
1 は、前回の検討会で御承認いただきました、本会の設置要綱となっています。改めて読み上げさせていただきます。

1. 目的。東日本大震災における身元不明遺体の身元確認において、身元不明遺体が有する歯科所見と歯科医療機関 ( 病院・歯科診療所 ) が所有する生前の歯科診療情報を照合・鑑定することによる身元確認の有効性が改めて示された。歯科医療機関が保有する電子カルテについて身元確認に資する歯科診療情報の標準化が図られていないため、モデル事業を通じて標準化の在り方について検討する。

2. 想定される主な検討内容。歯の部位情報の標準化等、処置コードの標準化等、個人情報の保護に関する方策等、その他、です。 3. 構成は、座長は検討会委員の中から互選により決定する。検討会の委員は、検討会の座長の意見を踏まえて追加することができる。

4. 検討会の運営等です。 (1) 検討会の審議の必要に応じ、適当と認める有識者を参考人として招致することができる。 (2) 検討会の議事は公開とする。ただし、特段の事情がある場合には、座長の判断により、会議、議事録及び資料を非公開とすることができる。 (3) 検討会の庶務は、医政局歯科保健課において総括し、及び処理する。となっています。裏面に検討会委員の先生方の名簿を記しています。

 続いて、資料 2 についてです。前回の 8 月の検討会では、委員の先生方から様々な意見を頂きまして、その御意見等を踏まえ、今回の検討会における論点メモを事務局で作成したものとなります。まず、「確認事項」として、歯科診療情報の標準化についてはデータの検索 ( 照合 ) とは切り離して考えるべき。データ格納のフォーマットとマスターについて検討することでよいか。なお、歯科診療情報のデータベース構築については現時点で議論はなされていない。「検討事項」として、迅速な検索に資するためにフォーマットが具有しておくべき条件は。画像データ等との連携について。自費診療や乳歯、国際化等への対応について。となっています。

 本日の検討会では、住友先生から発言いただきましたように、まず、 2 事業者からモデル事業の結果報告をしていただきますが、発表後について、主にこれらの項目について御議論をいただければと考えています。なお、平成 26 年度予算案において、歯科診療情報の標準化に関する実証事業として、 1,146 5,000 円が計上されています。その仕様書が参考資料 1 となっています。以上です。

○住友座長 
 これまでの事務局の説明で御意見、御質問がありましたらお受けいたしますが、ありませんでしょうか。

 それでは、プレゼンテーションをお願いします。

○小畑歯科医療専門官 
 まず、新潟県歯科医師会からお願いいたします。

○瀬賀参考人 ( 新潟県歯科医師会 )
 新潟県歯科医師会の瀬賀と申します。本日はお世話になります。よろしくお願いします。今回、新潟県歯科医師会で行いました厚生労働省実証事業について御報告、御説明させていただきます。

 まず、配布資料 1 2 ページですが、「東日本大震災が浮き彫りにした課題」です。東日本大震災において、 1 5,000 名以上の方々が犠牲となられましたが、御遺体の身元確認に当たり、皆さんご承知のとおり全国から多数の歯科医師が被災地に駆けつけまして、献身的努力により、非常に多数の身元特定に至っています。これは我が国において、歯による身元確認のための情報技術が大規模に適用された初めての災害であるとともに、全国で 6 8,000 件の歯科医院さんがありますけれども、その歯科医院に存在する歯科情報がいかに貴重な情報であるかを再認識させられたと思っております。

 しかし、ここで幾つか課題が浮き彫りとされました。 1 つ目が、平時の身元不明の場合は、例えば警察の方等が直接歯科医院さんに出向き、カルテやレントゲン写真をお借りするケースが多いですけれども、こういった今回みたいな平時と異なり大規模な場合どうなるか、こういったものが定まっていませんでした。歯科情報を入手してどうするかというルートが全く確立されていませんでした。また、この情報を入手しても基本的に歯科医院さん、カルテもそうですが、アナログ情報になりますので、こういったものをどのようにデータ変換すべきかについても、全く不明確な状態でした。これがまず課題の 1 つになります。

2 番目に、被災地において、各県で今、試行錯誤を重ねながらこうした IT 技術を用いて検視業務を行ってまいりました。ただし、これらが互換性のあるものになっていなかったといった点も挙げられています。

 そのほかに、震災を通じて歯科情報の保全の観点から、課題とされたことも幾つか挙がっています。例えば今回のように歯科医院自体が津波で流されてしまった、陸前高田などもそうですが、カルテ自体が流されてしまった所もあります。そのように歯科情報自体が消失してしまうケースや、そのほかに例えば、法定保存年数、カルテで 5 年、レセプトは保険者によって異なる部分がありますが、基本的には 5 年。あとそのほかにレセコンの更新やリースでレセコンを入れている医院さんなどもありますけれども、そういう所で例えば 5 年ぐらいで新しい機械になるケースもあります。

 そのほかに、これはまだ議論されていない部分にもなってくるのですが、歯科医院さんの廃業、世代交代等もあるのですが、日本の人口構造と同様ですけれども、歯科医師も実は高齢化が深刻な状況になります。今、日本歯科医師会の会員の平均年齢が約 59 歳、新潟県で 57 歳になっています。ちなみに新潟県ですが、昨年だけで 15 件の歯科医院さんが高齢等の理由で廃院されました。以前行った調査によると、 1 院当たり大体カルテが約 5,000 枚程度と言われていますので、例えば新潟県だけでも 15 件を掛けると 7 5,000 の歯科情報が、当然法定年数内は別としてそういった情報が消失し得る可能性もあります。これはまだ議論されていないのですが、一応そうしたこともあります。これは震災を通じて歯科情報の重要性が再認識された一方で、歯科情報保全の観点から考えて、これまで全く対策は講じられてきませんでした。

 スライドの 3 枚目の、実証事業の目的ですが、そのような課題を受けて、今回の実証事業となるわけです。これらを解決するには「歯科情報の標準化」は不可欠であるとして、どのような形式が適切であるのか、調査・検討を行ってまいりました。その原案となるものを策定することを目的としています。また、この標準形式が現実的な災害想定の下でどの程度性能を発揮できるのか。これは実際の被災地で検視業務に従事された方々のヒアリングを行い、検視・検案所、いわゆる我々は外乱と呼んでいますけれども、人為的なエラーがつきものであることを踏まえ、このように外乱に強く、また、個人検索・絞り込みが実現できることを目的として実験を行いました。

 スライドの 4 は、この歯科医院からのデータ提供「標準プロファイル」と書いていますけれども、今回、私ども実験に用いたマークシート様式、こういうものを用いています。スライドの 4 は上顎の部分だけですが、下顎の部分も同じように半分あります。このマークシート様式、この「標準プロファイル」と呼んでいるものについては、記載する項目が全部で 18 項目あります。情報量としてはそのほか乳歯とか、歯の咬合面等も含めて全部で 26 項目あります。この内容は通常の診療項目内容に基づくものであり、歯科医師の方であればすぐに恐らく書けると聞いています。今回の実験でもいろいろ、新潟県内もそうですが、ほかの都道府県の歯科医師会の先生方にも御協力いただき、書いていただいたのですが、大体慣れてくるとこのマークシートは、お一人で大体 5 分もあれば記入できる、そのように聞いています。こちらに標準形式が満たすべき基本要件を 3 つ書いていますが、一応、この 3 つが重要な基本要件であると認識しています。

 次にスライドの 5 枚目です。事業全体の流れになりますけれども、今、座長がお話されました第 1 回の検討会でも若干御説明申し上げましたが、もう 1 回ざっと事業全体の流れを御説明申し上げます。新潟県歯科医師会において、昭和 49 年より、かなり前ですけれども、 BSN アイネットという新潟県内の事業所様とレセプトの共同電算業務処理を行っています。現在は「 DENTAL フレンド ASP 」というレセコン機種になりますが、こうしたセンター方式を採用していまして、新潟県内の歯科医院さんは今現在約 4 分の 1 ほどになるのですが、 300 施設の医療機関がこの DENTAL フレンド ASP を使っています。今回の実験についてはこのシステムの利用のうち、医療機関 37 施設に任意でこちらに御協力をお願いして、今回 37 施設に御協力いただき、そのほか、このシステムのユーザーではないのですが、さらに 2 医療機関、計 39 医療機関に御協力いただき、実際に医院に来院された患者さんの口腔内を診査しまして、直近の歯科情報をマークシートで収集しました。これが 39 医療機関、 1,763 名分の歯科情報になります。もちろんこちらの情報については医院で患者さんにこの事業の内容を御説明申し上げて、さらに同意書も頂いて、記名を頂いています。そこの点は十分配慮しています。

 もう 1 つの情報の流れは、歯科医院さんの、先ほどお話しました ASP 方式に蓄積されている歯科情報、患者さんの 1 号カルテの情報に近いものと言えば分かるのですが、これについて、院外掲示ですとかそういった形で周知し、この事業実施期間内に来院された患者さんに関する歯科情報を抽出しました。これが 13,381 名分になります。この 2 つの歯科情報を用いて、今回我々がこうした検索・絞り込みの実験を行っています。

 次の 6 番が今お話したデータの部分です。内訳はこちらに書いてあるとおりですけれども、先ほどお話したとおり、 DENTAL フレンド ASP 方式以外にも 2 件の施設があります。またこの中で記入ミス等で対応できないデータもありました。そうしたものも含め、今回我々実証事業を行っています。

 スライドの 7 は有効歯数のヒストグラムです。このグラフは非常に特徴的なものになりますけれども、向かって左側がマークシートのデータ、右側がレセコンのデータ、それぞれの分布図になります。例えば左側のマークシートについては、実際に医院で来院された患者さんの口の中を見ながら書いていますので、グラフを見てお分かりのとおり、ほとんど 30 とか 32 本、ほぼ全ての歯科情報が網羅されています。一方、右側はレセコンから抽出したデータは、グラフのとおり左と比べて非常にバラつきが大きいです。なおかつ例えば 28 29 30 31 32 といった大きい歯数の部分については必ずしも情報量は多くないと言えるかと思います。恐らく、レセコンの内容では非常に内容が乏しい、来院時期や治療内容によっては数本の情報しかもたない場合もあると、そのように認識しています。

 次の 8 ページは照合ロジックです。これはちょっと難しい考え方ですが、今回我々は大きく分けて 6 通りの方法で照合を行っています。1~3が「加点型」と呼んでいますけれども、4~6までが分類型です。どういうことかと簡単に申し上げますと、1~3は収集したデータのうち、一方は生前の情報、もう一方を仮想の死後情報とします。例えば先ほどお話しましたが Dental チャートであれば、一方の生の情報を Dental チャートの生前の情報、もう一方を人為的なエラーを加えたものを仮想の死後情報、そういうものを比較しています。例えば両者を歯牙単位で 1 本ずつ比較していって、合っていたら点数を付けて積み上げていく。 Dental チャートですから右上の 8 番が生前、死後とも「全部修復」 (FMC) で合っていたら 1 点付けていく。仮に 20 本合っていたら 20 点付けていく。そんな方法とか、2、3についてはもっと細かい要するに部分点を付けていくようなイメージです。 1 本の歯の中でも、全部修復と支台歯、 1 つの歯で複数の箇所がマークされる箇所があります。そうしたものについては 2 点付けていく、そうすると 32 本の歯であってもそれ以上の点数が付くという方法が2、3で、加点方式の点数の付け方が若干違うと思っていただければ結構です。

 4、5、6の、4については、今回の震災の中で、宮城県で実際に用いた Dental_Finder というもので、本日青木先生が御出席ですが、その Dental_Finder に基づくものが4、つまり 5 分類で実施したものになります。それになおかつ5、6は情報を加えて 6 分類、かつ 7 分類としたものです。そうした形で我々こういった 6 つの照合ロジックの実験を行いました。

 次の 9 がまず最初の実験です。マークシートのデータのみを使用しています。マークシートのデータは先ほどお話しました 1,763 件ありますけれども、 1 つを生前の情報として、これに外乱を加えたものを比較し、 CMC 曲線として評価します。これはまた後ほど詳細に御説明いたします。

 次のページですが、今、申しました「外乱」とは何かですが、いわゆる様々な人為的なエラー情報になります。例えば1として、「死後情報欠落」。これは御遺体が損傷し、歯が部分的に欠落している。歯が数本ないとか若しくは極端なこと言うと、上顎や下顎がそっくりないケース、そうしたものが死後情報の欠落。2「死後記載ミス」、検視の際の記載ミスです。例えば検案所が非常に明るさが乏しく暗かったりとか、御遺体の状況等によっては記載ミスが生じるようなケース。3生前情報の不足。例えば先ほどレセコンデータ、こうしたものを生前情報と仮定すると、棒グラフでも分かりますが、情報量としては非常に不足しているケースもあり得ます。こういうもの 3 つのケースを想定して 3 つの外乱の形で実験を行っています。それでは、なぜ外乱を加えるのかですが、実際の検視現場では、歯科情報に様々な外乱が加わっています。生前と死後は必ずしもピュアなデータ同士の比較にはなりません。今回の実験は東日本大震災において、検視業務に従事された方々からヒアリングを重ね、そういった御意見を加え、このような外乱を想定した上での実験を行っています。

 次のスライドがまず外乱なしの部分です。このグラフが CMC 曲線と呼ばれるものです。横軸がランク順位になります。縦軸がヒットする割合。横軸に 100 とありますけれども、この実験では先ほどお話しましたマークシートの情報が 1,763 件ありますので、横軸が 1,763 になります。そのグラフの一部を拡大したもので 100 まで抜粋したものがこちらになります。上から黄色や色の線がありますけれども、このグラフでは線が上にいくほどよい結果というイメージを持っていただければ結構です。まず、外乱なしのものについて説明いたします。生前、死後ともにピュアなデータ同士で外乱を全く加えていませんので、よい結果になっています。一番上の黄色い線の縦軸 1 位の所のクロスしている所がちょっと分かりにくいかもしれませんが、大体 94.2 %ぐらいになっています。同じく黄色の下から見て 17 位ぐらいの所で、 1,763 件ありますから 1,763 件中 17 位ということは、全体の 100 分の 1 、要するに上位 1 %以内にあれば 99.8 %、いわゆるほぼ 100 %近い形でこういう方がランクしてきます。今の部分のイメージとしては、例えば青木先生もお話されている、グーグルで検索にたとえます。検索していくともし仮に 1,000 件があれば曖昧検索でもいいのですが、そうした形で 10 番以内にはこういう方がヒットしてくるだろうと、そんなイメージで捉えていただければ結構です。これは外乱なしの場合はかなり高い確率で絞り込みができると言えると思います。

 次のスライドが実験 1 の1「死後情報欠落」です。先ほどは外乱なし、いわゆるピュアな情報同士の比較でしたけれども、これに外乱を加えたものがこちらの1です。グラフの右上から 32 本のうち、歯牙が 8 本脱落したもので、左下の部分が 16 本、 24 本それぞれ情報が欠落したものになります。先ほどのグラフと比較していただけると分かりますが、全体にグラフの線が下がっていることが分かると思います。御覧のとおりグラフの全体のバランスは下がるのですが、 16 本しかない場合、例えば左の下の部分にありますけれども、 16 本しかない情報であっても、これは全体の半分、下顎がないようなケースになるかもしれませんけれども、これでもかなりの確率で絞り込みができると読めるかと思います。この中でちょっと注意していただきたいのが、実はこの水色の線になります。水色の線が外乱が加わるにしたがってかなり段々下がってきます。これが今回宮城県で用いた Dental_Finder の方式になります。こうしたことで、外乱なしと比較するとかなり性能が落ちていると言えることが分かるかと思います。

 次のスライドが、実験 1 の2「死後記載ミス」です。安置所等での記載ミスですけれども、 32 本の歯牙のうち、右上から 1 本の記載ミス、同じく 4 本、 8 本と外乱を加えていった場合ですが、グラフのとおり余り極端に性能は劣化していません。右下もそうですが、 32 本のうちの 8 本、全体の 4 分の 1 で、結構間違いだらけかもしれませんけれども、その状況であってもかなりの性能を維持していると。一応、そのように思っています。

 次のスライドが実験 1 の3になります。「生前情報不足」ですが、これも同様に性能は余り劣化しません。分かりにくいかもしれませんけれども、 24 本不足の部分で、 sum1 sum2 とありますけれども、 sum2 は歯牙ありという情報も含んでいます。つまり生前情報が不足の場合、歯牙ありという情報が有効であるとそういうことが分かるかと思います。

 次のスライドは実験 2 です。これ以降の実験については外乱は加えていません。ここではマークシートのデータを、先ほどお話しました仮想死後データとしています。これに対してレセコンデータ、 13,381 件ありましたけれどもその中からこの 1,704 人に該当する方の情報を抽出し、そのデータとの比較・照合ということで今回の実験になります。

 次のスライドは先ほどの外乱なしの 11 ページのグラフと比べると分かりますが、グラフ全体が若干線が下がっています。この部分でどういうことが分かるかというと、レセコンからの抽出データでは情報量が不足していることが分かるかと思います。この中で一番上にある黒い線の部分については、この中で学習させて重みづけをして、最適化した線になります。最適化するとこのように若干性能がアップします。この場合でも上位 1 %を調べると、かなりの確率で該当者が見つかることがお分かりになるかと思います。

 次のスライドは実験 2 の、飽くまでも補足ということで、この絞り込み実験において、補足として幾つか参考でこうした条件を加えてみました。窩洞・被覆面の情報ですが、先ほど御説明した中には、咬合面の情報をあえて含めていません。ここで面情報を加えたものが上のグラフになります。これらの情報では一部性能が向上するものもありますが、実は面情報を加えても余り性能が向上しませんでした。これが参考になります。その下の性別、年齢については、一応参考として捉えていただいて結構ですが、若干性能がアップすることが分かると。大体 5 10 %アップするそんなイメージで捉えていただければ結構です。

 次に、実験 3 のマークシートデータ及びレセコン抽出データを全て用いた実験です。こちらは今回はデータの詳細を省略するのですが、母集団を大きくしました。全体 13,381 件とマークシートのデータとの比較になりますけれども、基本的には今お話した実験、レセコンの抽出データとほとんど同じような傾向になります。大体上位 1 %、ほぼ 6 割ぐらいの形で上位 1 %の絞り込みが可能と踏んでいます。これが実験 3 の結果です。

 次に「わかったこと」になります。今回の実験でどのようなことが分かったか。以上をまとめまして、 1 つ目、「標準プロファイル」、今回我々は 26 項目を設けましたけれども、東日本大震災でもお分かりのとおり、日本国内は一般の開業歯科医師さんが検視業務に従事しています。その場合、通常の診療で用いる用語をベースとして、一般の歯科医師にとって分かりやすくしたものが効率よく情報を収集することが可能になる。それを考えると今回 26 項目なのですが、必ずしも項目数が多いことはないと考えています。実際に記入いただいた歯科医師さんの方々からお話を聞いた段階でも特に、全くストレスなくスムーズに書けていると聞いています。

2 番目に、標準化情報として、この標準プロファイル程度の情報量を保持すれば、身元確認においてかなり高い精度で絞り込みが可能であると。検視業務では様々な外乱が生じますけれども、むしろ外乱がつきものかもしれません。例えばピュアな情報同士で高い絞り込みがあったとしても、もし外乱によって性能が大きく劣化するようではそれは当然困ります。そのため標準化情報には外乱に対して強くなければならないと思います。今回の実験で標準プロファイルの情報量を持っていれば、外乱にもとても強いと言えるかと思います。今回の実験でも分かりますが、生前情報の不足は絞り込みにも影響しますので、将来的にも情報がレセコンから出力できるようになるのかもしれませんが、やはり何よりも必要なものは、正確なカルテの記載、生前の歯科情報の整備、当然何よりもカルテの記載の大切さがここで浮き彫りになってくるかと思います。

3 番目に、先ほどもお話したのですが、窩洞面の情報は絞り込みには余り影響が少なかったと言えます。ただし、先生方も御承知のとおり、窩洞面の情報はアナログ的な情報かもしれないのですが、非常に特徴的な情報を持っています。また、 INTERPOL DVI や海外の歯科情報との互換を考えて、この標準化情報として窩洞面の情報は不可欠であると思っています。

 最後に、標準化によって何が可能になるのかという点ですが、ただいま御説明した歯科情報の標準化について、これがなされることで何が可能になるか、列記しています。 1 番目、災害・事故等を含む緊急時における情報提供の迅速化。マークシートやウェブ等を通じて、行方不明者の情報を迅速に提供する。 2 番目、平時の行方不明者に関する情報提供の推進。平時に警察に届けられる特異行方不明者、このようなものがありますけれども、歯科情報をかかり付けの医院から提供する。例えば標準的な出力データでお渡しすることもできます。当然プリントしたものもお渡しすることができるかもしれません。 3 番目、互換性のある歯科情報検索ツールの開発。各べンダーさんがこうした互換ツールを容易に開発できることも挙げられます。 4 番目、歯科情報検索機能を有する電子カルテ・レセコンの開発。メーカーとタイアップしながら、警察からの紹介の対象者がいるかどうか。こうした機能をレセコンに付加する。警察からもそのような御依頼等がありますけれども、そうしたことについても迅速に検索が可能である。次に、 5 番目、患者向けデジタル歯科情報のお渡し・お預かりサービス。例えば歯科情報カード、受診券等でもかまいませんが、この歯科情報を付加する。そういった中で最終的なライン来院のときに、歯科情報をカードで患者にお渡しすることも考えられるかと思います。最後に、歯科情報のバックアップ事業や歯科医院以外、歯科健診所見デジタル保存事業の推進、多様な考え方の歯科情報データベース事業など、いろいろ考えられるかと思います。

 新潟県の実証事業についてはただいま御報告のとおりですが、一応、標準化によってこのような大きな可能性がもたらされると思っています。冒頭に御説明した以外にも検討すべき事項として、既存の紙媒体、カルテもそうですが、それをどうすべきか。津波によってカルテが流出したら仕方ないです。データとして保管できないかという御意見もほかの県の歯科医師の方からもいただいています。あと、先ほどお話しました海外の歯科データとの互換、 INTERPOL DVI もそうですが、南海トラフ地震等も起こるかもしれませんし、 2020 年東京オリンピックもありますけれども、海外の方が国内で亡くなる可能性もありますので、そのために海外とのデータ互換をどうするかという課題も当然挙げられてくるかと思います。こうしたことを踏まえ、標準化情報をいかに活用していくか、今後の課題になるかと思います。

 我々新潟県歯科医師会としまして、新潟プロジェクトと申しますが、 5 年間、事業を行っています。 5 年前の 2009 年に IT 技術を活用した身元確認を提言しました。残念ながらこの 2011 年に東日本大震災が起こってしまいました。自然災害はいつ起こるか分かりませんけれども、南海トラフ地震では最大 32 万人以上の犠牲者が出るとも言われています。最後になりますが、歯科情報はこのような貴重な社会の共通資本という認識でおります。これをなくすことなく資本として有効活用するためにも、まずこの情報を標準的なものにする、いわゆる標準化が急務であると言えます。改めて歯科情報の標準化を早急に取組むべきと申し上げまして、御説明を終わらせていただきます。以上です、どうもありがとうございました。

○住友座長 
 ありがとうございました。何か個別の質問が今あればお受けいたします。また後で
2 つのプレゼンテーションの後、ディスカッションをしますけれども、何かありますか。

○玉川委員 
 16 ページの「重みづけロジック」とありますが、簡単に御説明いただけますでしょうか。「重み」とは何に対してどのような重みをつけたか、お願いします。

○瀬賀参考人 
 この部分は先ほどお話しました、加点方式のこの部分が合致していれば
1 点とか、そのような単純にやるのではなくて、いろいろな傾向を踏まえ、ある部分が 1 点、ある程度合っていれば 1.2 とか、そのように一応学習させて、重みづけをやっています。具体的な方法については、東北大学の青木先生から御協力いただいていますので、もしよろしければ、青木先生から御説明いただいてもよろしいですか。

○青木委員 
 震災のときもそうですが、震災の最中に、どんどん身元が見つかってきます。見つかってきた方というのは、
DNA によるものでも何でもそうですが、教師信号と言いますか、「答え」になってくるわけです。そうすると手元に「答え」がありますので、その「答え」ができるだけ早く見つかるように、システムをチューンしていきます。そのチューンするパラメーターがあるということです。グーグルなどでもそうですが、ヒット率が上がるようにやっていくということです。具体的に言いますと、今回一番効果的だったのは、治療の、例えば FMC なのかインレーなのか、あるいは CR の充填なのか、そういうところを重みにしてw(ダブリュー)と重みをつけて、それを調整していきます。それがないときは全部 1 点なのですが、そうではなくて、それが重みw(ダブリュー)点として、それを最もヒット率が上がるように、グラフが上側にくるように学習をしてやります。機械学習です。そうすると後で見るとその重みが、例えば今回のケースですと、ブリッジのアバットメントの点数が結構高かったり、そういうことが分かってきました。あと見間違えるようなものは低かったり、そうしたことが分かってまいります。そういう意味で、学習結果、今回の震災のときもそういうものを使っています。 Dental_Finder でもそうした格好でやっています。

○住友座長 
 よろしいですか。

○玉川委員 
 はい。

○住友座長 
 ほかにありますか。

 私のほうからちょっとお聞きします。外乱の死後記載ミスですが、これは記載ミスはそんなに多くないという意向があって、この 1 4 8 になっているのでしょうか。よく分からなかったのですが。

○瀬賀参考人 
 記載ミスについては、大体
8 本の記載ミスでもかなりのミスが多いと思うのですが、そうしたことを踏まえ、今回 1 4 8 、この 3 パターンでやっております。

○青木委員 
 例えば半分間違えるとか、実験としては全部やっています。
32 本までずっとやっていて、ですからグラフが系統的に下がってくるというような形です。ただ、先生方に伺うと、さすがにそんなに間違えることは証拠能力としていかがなものかというのもあるので、ここではこの 3 つだけ出したということです。

○住友座長 
 8 個で 3 つを比較することができて、ほとんど同じ結果が出ているなと認識しました。ありがとうございました。

 それでは、ほかにありませんでしたら、 ( ) オプテックのプレゼンテーションをお願いしたいと思います。一応、 20 分ぐらいでよろしくお願いいたします。

○佐々木参考人代理若松様 ( オプテック )
 オプテックの若松と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 初めに、このたび弊社で実施した実証事業について、簡単に全体構造を御説明します。実証事業の前準備作業として、全国の弊社カルテシステムユーザーから 89 歯科医院を無作為に抽出し、実証実験用の歯科所見を取得しました。歯科所見の取得については、個人情報保護の観点から連結不可能匿名化を行っております。これについては、後ほど改めて御説明します。

 次に、取得した歯科所見の中から「情報なし」を含まない歯科所見 1,537 件を更に無作為に抽出し、これらの所見を生前所見、死後所見として照合を行いました。照合方法は、歯科所見を分類化して照合するほか、分類化の加工をせずに、獲得歯科所見そのままによる照合を行い、最良上限域を統計的に調査しました。本実験の統計分析においては、医療分野の標準化にも取り組んでおられる東京大学の飯塚悦功名誉教授に御指導いただいております。また、左上に記載されている死後所見の作成と照合戦略は、本実証実験の対象外となっておりますが、標準化の観点から実際の死後デンタルチャートの記載用語について調査を行いました。以上が全体の構造です。

 次のページは、実際の死後デンタルチャートの調査結果です。調査対象は、各都道府県の身元捜査協力のホームページに掲載されている実際の死後デンタルチャート 200 件を集めて、その用語を整理しました。整理した用語一覧は、補足資料に示しております。

 調査の結果、使用されている用語やフォーマットが不統一であることが分かりました。例えば、咬合面のインレーの表記としては、「 In(O 、銀色 ) 」や「咬合面に銀色のインレー」といった記載がありました。また、用語と意味の対応の不統一、生前所見には用いられない死後デンタルチャート特有の言葉があり、そのままでは身元確認に使えないことが分かりました。また、今回、東日本大震災にて実際に死後デンタルチャートの作成に携わった先生方にインタビューする機会を頂きました。現場では、十分な電力もなく薄暗い環境では、正確な情報記録が困難であったり、御遺体の状態によっては口が十分に開かず、奥歯の情報獲得が困難であったということも伺えました。

 次に、このたび獲得した歯科所見について御説明します。今回、 89 歯科医院から約 38 万人分の歯科所見を取得することができました。実証実験では、この中から「情報なし」を一切含まない歯科所見 1,537 件を無作為に抽出したものを利用しております。この 1,537 件という数字は、統計学上 1 億件以上の対象からの母集団を推定可能な件数と言われております。

 歯科所見取得の際の連結不可能匿名化の手段としては、歯科所見を部分的に他人とシャッフルするということをしております。具体的には、一口腔を上下左右の 4 ブロックに分け、 1 人の歯科所見が 4 人の歯科所見の組合せから構成されるように加工しております。さらに、その後に左右の歯番を入れ替えることも行っております。なお、上下顎の入替えは行っておりません。これらの仕組みの妥当性については、向殿明治大学名誉教授を委員長とする倫理審査委員会を開催し、承認を得ました。今回の実証実験では、乳歯を含む歯科所見、またシャッフルをしている関係から、正中をまたがるブリッジ及び部分義歯を含む歯科所見は取り除いております。

5 ページのグラフは、今回取得した 38 万件分の歯科所見における「情報なし」の指数別の歯科所見人数を示したものです。ここで言う「情報なし」というのは、その歯に対して一切の歯科所見情報が記録されていないことを意味しております。歯科所見に「情報なし」が含まれる理由としては、初診時に一口腔にわたる歯科所見の記録がなされていないことや、レセコンメーカー間でデータ形式が統一されていないことによって、歯科医院で利用しているレセコンを他社のものに入れ替える際に情報が欠落してしまうことが想定できます。ちなみに、一口腔 32 歯にわたって「情報なし」を全く含まない歯科所見は、一番左の僅か 5,598 件で、全歯科所見の 1.5 %弱ということが分かりました。

 歯科所見の分類化は、小室先生の基礎研究で用いられている 12 分類から 2 分類、厚生労働省から御指導いただいた 17 分類について調査を行いました。弊社のカルテシステムでは、一部面情報の取扱いを行っているので、各分類について面情報を含めた照合についても調査を行っております。

7 ページは、歯科所見の照合です。照合は、獲得した歯科所見を「生前所見」及び「死後所見」とし、本人の特定割合を調査しました。照合の組合せとしては、 7 ページのマトリックスのように本人同士の組合せを含めて約 118 万組になります。この 1 マスである生前所見と死後所見の組合せに対して、 1 歯ずつ歯牙状態の「一致」・「不一致」を評価して、不一致数を算出しました。全部で 32 歯評価することになるので、全て一致の場合は「 0 」、全て不一致の場合は 32 となります。マトリックスの対角線上のマスは本人同士の組合せになっているので、不一致数は「 0 」となります。それ以外で「 0 」となっている箇所は、同一所見と判定された他人との組合せになります。ある死後所見の照合、このマトリックスで言うと横 1 行で見たときになりますが、この不一致数「 0 」の箇所の合計数が 1 であった場合は、同一所見として他人が含まれず、本人ただ 1 人を特定できたことになります。

 照合実験の内容は、 8 ページに示すとおりです。一口腔 32 歯にわたる照合のほか、実際の御遺体に見られるような上顎なし、下顎なしの状態も想定し、上顎のみ、下顎のみによる照合についても行いました。ただ、奥歯の状況が確認しづらいことがあるという現場の先生のお話から、前歯・小臼歯のみという状態についても照合実験を行い、参考までに大臼歯のみの状態についても実験を行いました。

9 ページは、実験 1 の一口腔 32 歯における各分類の同一所見判定組数です。横軸は不一致数 0 32 歯、縦軸は同一所見と判定された組数です。縦軸は、累積の同一所見判定組数なので、どのグラフも一番右は先ほどのマトリックスの総組み合わせ数 118 万組となっております。左上のグラフは、歯科所見を分類せずに照合を行った場合ですが、全一致における同一所見判定数は 1,537 組で、同一所見と判定されたのは全て本人同士の組合せとなりました。その他の分類した場合のグラフで分かるとおり、分類が粗くなるにつれて、不一致数の増加に対する同一所見の判定組数の増加傾向が強くなることが分かります。

10 14 ページは、各実験における本人特定割合をグラフ化したものです。各ページとも、左側には面情報を含めない照合結果、右側には面情報を含めた照合結果を示しています。一口腔における照合では、先ほど御説明したとおり、不一致数「 0 」における同一所見は全て本人同士の組合せだったので、本人特定割合は 100 %となっております。全一致の状況は、各分類とも高い本人特定割合となっていますが、 2 分類においては 5 割程度と低くなっております。また、このグラフから分かるとおり、 17 分類と 12 分類はほぼ同じ傾向となることが分かりました。照合に面情報を含めた場合は、分類が粗くなるほどその効果が大きくなり、 3 分類と 4 分類はほぼ同じ傾向となることが分かりました。

 次のページは、上顎のみによる本人特定割合です。一口腔の場合と比較して、評価に使える歯数が半分になっているので、「分類なし」における全一致の場合でも本人特定割合は 85 %まで低下しています。また、評価指数が少ないことで、不一致数の増加に対する本人特定割合の低下割合は大きくなっています。

 次のページは下顎のみの場合です。結果としては、上顎のみとほぼ同じ傾向となっておりますが、全体的に本人特定割合は低下しています。この理由としては、下顎前歯部における平均情報量 ( 歯科所見の特徴の度合 ) が前顎上歯部と比較して低いことが原因と想定できます。歯科所見の分類別頻度分布は補足資料に示しております。

13 ページは、前歯・小臼歯のみの場合です。本人特定割合は、下顎のみの場合と比較して全体的に高く、上顎のみの場合と比較して全体的に低い結果となりました。評価歯数の少ない上顎のみよりも本人特定割合が低くなった理由としては、大臼歯の平均情報量が高いことによることが想定されます。

 大臼歯のみで照合を行った結果が 14 ページです。照合に使える歯数が 12 歯と少ないにもかかわらず、全一致のケースにおいては前歯・小臼歯よりも高い本人特定割合となることが分かりました。

 照合実験のまとめとしては、一口腔「分類なし」における照合では、 1,537 件全ての所見に対して本人を特定することができ、 17 分類と 12 分類はほぼ同じ本人特定割合となることが分かりました。面情報を含めた照合では、 6 分類以上では大きな変化はなく、 4 分類と 3 分類がほぼ同じ傾向となりました。また、上顎のみ・下顎のみといった部分的な照合においては、大臼歯が照合に大きく機能することが分かりました。

 まとめです。以上のことから、歯科所見の照合をする上での問題点として次のようなことが挙げられます。コンピュータ側の問題としては、第 1 に業界全体で用語やデータ形式の統一が図られていないことが挙げられます。それに加えて、一部のメーカーではデータそのものに暗号化が施されている場合があったり、自費診療など取り扱っている情報の範囲にもばらつきがあります。これらのことから、歯科医療機関がレセコンを他社のものに入れ替える際に、それまで使っていたコンピュータに記録していた診療情報が移行困難となり、多くの情報欠落へとつながります。記録上の問題としては、コンピュータ側の問題と同様に、実際のデンタルチャートにおいても用語や意味が不統一であることや、限られた診療時間の中で 1 号用紙への所見記録が不十分になってしまうこと、カルテ保管期間を超えてカルテが廃棄されている場合の照合、今回対象外とした生え替わりのある乳歯の取扱いといったことが挙げられます。運用上の問題としては、多数の御遺体に対して一定品質のデンタルチャートを記録することは極めて時間が掛かることが挙げられます。

 これらの問題の解決に向けた御提案としては、身元確認対象者数の規模に応じた分類方法の選択やスクリーニングプロセスの設計や実証、この例については次に御説明します。データ形式の標準化と流通化、地域や出身大学による用語の差異を吸収可能とする歯科所見用語辞書の標準フレームワークの設計と実証、口腔内情報の長期保管や定期的収集を可能とする法制度の整備といったことが挙げられます。

 戦略的な身元確認プロセスの例として、多段階スクリーニングを御説明します。このモデルでは、東日本大震災のような非常に多くの身元確認対象者が発生する状況を想定しています。このような状況では、短時間でいかに多くの身元確認者をスクリーニングするかが重要になるため、スクリーニングを 3 段階に分けて行う手法を取っております。第 1 段階のスクリーニングとしては、タブレット端末を利用して、 4 分類を使って死後所見を作成します。 4 分類を選択する理由としては、死後所見の作成を専門知識を有する歯科医だけではなく、一定の教育を受けた警察官等が行えることにあり、その利点として人海戦術を展開できます。死後所見の記録手段として、タブレット端末を用いることで、死後所見の入力作業の効率化や生前所見との照合依頼を現場から直接行えるようになります。入力された死後所見はサービスセンターへ送られ、サービスセンターは現場から受けた照合依頼に基づき、各医院の歯科医療機関にある電子カルテ内容との照合を仲介し、その結果を現場へ提供します。以上が第 1 段階のスクリーニングです。

 スクリーニングの結果としては、 3 つの身元確認者のグループに分類されます。 1 つ目は、本人のものと想定できる電子カルテが特定できたグループ、これは電子カルテ候補が 1 件ヒットしたということです。 2 つ目は、本人のものと想定できる電子カルテが複数発見されたグループ、 3 つ目は本人のものと想定できる電子カルテが発見できなかったグループです。 1 つ目のグループ、本人のものと想定できる電子カルテが特定できた身元確認対象者は、その後、法歯学者等の専門家による分類なしの死後所見入力プロセスへ移行します。専門家は詳細な死後所見を作成することができるので、この工程でより精度の高い照合を行い、本人特定の絞り込みを更に追究することが可能になります。 2 つ目のグループ、該当電子カルテが複数発見された身元確認対象者は、第 2 段階のスクリーニングへ進みます。 3 つ目のグループ、該当電子カルテが発見できなかった身元確認対象者は、この段階で照合可能電子カルテによる更なる絞り込みができないので、照合を行う地域を更に拡大したり、歯科所見以外による身元確認プロセスへ移行することになります。照合地域拡大の例としては、遠隔地からの旅行者が災害に巻き込まれ、当該地域の医療機関に電子カルテが見つからないようなケースです。

 第 2 段階のスクリーニングでは、 12 分類化を行えるチームで死後所見を入力します。この工程での死後所見の作成対象者は、第 1 段階のスクリーニングで電子カルテの存在可能性がある方々に絞り込まれているので、効率的に死後所見作成を行うことができます。 12 分類で作成された死後所見は、再度サービスセンターへ照合依頼を掛けられることになります。その結果としては、先ほどと同様に本人のものと想定できる電子カルテ候補が一意にヒットしたケース、複数ヒットしたケース、全くヒットしなかったケースの 3 パターンに分類されます。

 第 3 段階のスクリーニングでは、専門家チームによる死後所見作成が行われることに加え、身元確認対象者がある程度絞り込まれていることから、サービスセンターから送られてきた電子カルテを参照しながら作業するといった手法も取れるので、効率よく作業を進めることができます。以上が多段階スクリーニングモデルの具体例です。

 本モデルにおいて、スクリーニングのフェーズを 4 段階、 12 段階、分類なしの 3 段階にしたのは、このたびの照合調査により本人特定割合が大きく 3 つのクラス、分類なし、 17 分類と 12 分類、 6 分類から 3 分類に分けられたことにあります。なお、このモデルを実現するに当たっては、死後所見及びレセコンメーカー各社のデータ形式の標準化が前提になります。また、海外まで含めたモデル展開を行う場合には、インターフェイス開発、死後所見用語辞書などの標準化も必要となります。

 最後に、データ形式の標準化の例を御説明します。データ形式の標準化とは、単に歯科所見を 4 分類で表現する、 6 分類で表現するといったことだけではなく、どういう構造でどのようなデータを取り扱うかということを定義することです。すなわち、データを仕舞っておく箱の標準化ということになります。例えば、 1 歯の情報は歯番や歯牙の状態、窩洞の情報などから構成され、窩洞の情報は更に面や状態、その面への治療情報から構成されるといった具合です。御参考までに、弊社における標準化の解釈・考え方は補足資料の最後に示しております。

 現状、このデータ形式はレセコンメーカーごとに異なっていますが、これらを標準化することで、初めて歯科所見情報の共有化やデータ流通化が可能になり、身元確認を効率よく迅速に行えるようになります。以上が弊社における実証実験の御報告です。御静聴ありがとうございました。

○住友座長 
 それでは、個別の質問をお受けします。オプテックのプレゼンテーションに対して、何かございますか。

○青木委員 
 1 点、オプテックは IT 企業らしく、私にとっては非常に分かりやすいので、皆さんにはどうかということはありますが、 18 枚目のスライドにあるように、我々の分野で標準化といったときには、データフォーマットの標準化も含むのです。ただ、今回の事業ではそこまでいっていません。つまり、どういう項目がいいのだろうかという Semantics 、つまり中身の議論をしているのです。実際に物を作っていくには、今おっしゃったように、マスターをどうするのかとか、データをどんな形式で持っておくのかとか、いわゆるコンピュータ業界の部分も含めた標準化が必要になると思いますので、その件は私から補足したいと思います。

 ただ、歯科医師の先生方が、こういう分野、あるいは法歯学、小室先生の分野とか、こういう所でどういうものがいいのだろうかということがある程度決まると、そこは技術者としてすぐにそういうチームも作れるのではないかと思っています。その辺りも本当は厚生労働省で音頭を取っていただきたいと思います。 SS-MIX 標準的なもの、つまりフォーマットがありますので、そういった部分が次に大事になってくるかと思います。

1 点だけ、「分類」とおっしゃっていますが、新潟県の例と用語が違う所があるのです。 6 ページで「分類」という用語、これは注釈が要るかもしれません。英語で「分類」というと「 Classification 」ということで、ある歯牙の状態をどの状態か分類するということかと思います。例えば資料の 17 分類、これは新潟のマークシートと同じ方式もやってみるという話かもしれませんが、そういったときに、もう御存じだと思いますが、例えばインプラントであって、支台になっていて、欠損であるというように複数に当てはまる場合がありますね。だから、どちらかというと 6 までは分類と私は見ますが、そこから重なり合いが出てきて、複数項目チェックが出てくるとなると、「特徴」や「特徴項目」になってくるのではないかと思います。用語の使い方がそれぞれ先生方でも違うので、そこは注意されたほうがいいと思います。「分類なし」とおっしゃっているのは、オプテックのカルテのそのままを「特徴項目」にしたということですね。

○佐々木参考人代理若松様 
 はい。

○青木委員 
 「
17 分類」とおっしゃっているのは、せっかくなので新潟のプロファイルの特徴項目にしたということかと思います。 6 分類は重なり合いがないので、本当に分類型でデータを表現したということではないかと思いますが、よろしいですね。

○佐々木参考人代理若松様 
 はい。

○住友座長 
 ほかに、どなたかいらっしゃいますか。なければ、
2 つの事業者のプレゼンテーションに対して、事務局でまとめた論点メモを横に置いて確認事項、検討事項を考えながら討議をしたいと思います。全体的に何かありますか。

○小椋課長補佐 
 例えば新潟県の資料の
7 ページですが、右側はレセコンデータのヒストグラムになっていて、これは全体で 1 3,000 件で、 32 歯そろっているのが 200 件程度なのです。そうすると、全体の割合の 1.5 %程度になります。それと同様に、オプテックのほうも確認すると、オプテックの資料の 5 ページで全部のデータがそろっているものが 5,500 件程度なのです。そうすると、新潟県の歯科医師会もオプテックも、レセコンから出てくるデータで全ての歯に情報が入っているものは 1.5 %なのです。両方共通して 1.5 %で、これを単純に考えると、私どもとしては、レセコンのデータからでは身元確認に使えないのではないかという結論に達するかもしれませんが、それに対する御意見は何かございますか。よろしくお願いします。

○佐々木参考人代理若松様 
 今おっしゃったとおりだと思います。今回、我々はカルテデータが持っている、生の分類化しない歯科所見を使ってかなり精度の高い数値を出すことができたので、診療情報の標準化を常にきちんと行う必要があると考えました。

○青木委員 
 私は実験を担当しました。非常に曖昧な状態になっている生のレセコンデータを使ったものが、新潟県の実験
2 16 ページです。ですから、全く絞り込みに使えないかというと、そうではなくて、いろいろと研究すると、 6 割方から 65 %ぐらいの方については、絞り込みまでは可能なのです。実際に東日本大震災でもレセ電のデータ、もう少し粗いデータですが、厚生労働省から使用してよいという通達を頂いたので、取り寄せて判明に至っていることがあります。絞り込みのところでそれを使っているということです。最終鑑定に持ち込むときは、診療録なり X 線画像を全部持って、これは小室先生のジャンルで法歯学の部分ですが、鑑定を行うので、そういった意味ではそういうやり方かと思います

 また、今、御指摘があったように、現在の平均的なレセコンでこのぐらいの絞り込みができるということですが、なお 1 号用紙などの入力について、オプテックさんも感じておられると思いますが、ちゃんと入れるようになると、非常に強くなると言えるのではないかと思います。

○住友座長 
 今の議論はそれでよろしいですか。ほかに何かありますか。

○多貝委員 
 歯科コンピュータ協会の多貝です。おっしゃったように、どこまで入力をされているかによって、かなり精度が変わってくると思います。我々が考えているのは、まず保険請求に必要な情報だけを入力されている医院があるかと思います。また、
2 号用紙の情報を、処置した所だけですが、入力されている所もあるかと思います。歯周病の検査の情報も入力されていれば、欠損かどうかは少なくともはっきりするかと思います。さらには、初診時に所見を全て、 1 号用紙の歯の絵のところの情報を入力されている所もあるかと思いますが、今の調査の結果をお聞きしてます、恐らく機能はその辺りまで進んでいるとは思うんですけれども、入力されている所はまだまだ少ないという感じを受けました。感想ですが、以上です。

○青木委員 
 P 病名の関係で言うと、新潟の実験では P 病名で「歯牙あり」となるので、そこはデータとして入っています。実は「歯牙あり」及び「欠損」の所は、先ほど玉川先生の御質問のときに間違えたのですが、「歯牙あり」と「欠損」の情報のウエイトが、最適化したときに非常に高いのです。「アバットメント」は中ぐらいなのですが、「歯牙あり」の情報と「欠損」の情報に、高い点数をつけると判明率が上がるということが出ております。オプテックさんはどうされているのでしょうか。 P 病名で歯牙ありとマークできますが、そこはやられていますか。

○佐々木参考人代理若松様 
 P 病名からどの部位に歯があるかが分かるので、それは活用しています。ただ、先ほども言いましたように、 1 号用紙は一口腔にわたる歯科所見が全て入力されているという保証がないので、今回提出した歯科所見の分布においても、健全歯となっているものが実際にはインレーやその他の歯科治療がされている可能性は残っております。

○小室委員 
 2 つ、質問と確認をします。新潟の資料の最後のページで、最初の項目に「災害・事故等を含む緊急時における情報提供の迅速化」とありますが、これは情報を提供することの迅速化ですから、データについてはどこに保存しておくと報告書に書かれるのかお聞きしたいと思います。

○瀬賀参考人 
 おっしゃるとおり、このデータについては検案所等で迅速に、マークシートでもいいのですが、情報提供を迅速に提供できるのですが、具体的にそのデータをどこに保存するのかは十分に検討されていないので、その辺りは報告書で問題提起ということで検討したいと思います。

○小室委員
 状況的には、各診療所で保管することになるのでしょうか。

○瀬賀参考人 
 基本的に、検索する場合は各歯科医院に保存されたデータを検索することになりますので、あくまでも歯科医院のデータが前提と捉えていただいて結構です。

○小室委員 
 今、死因究明の検討会で生前データベースの構築等をどうしようかという話はまだ進んでいないのが実情です。私は、第三者機関でもいいのですが、国のレベルで保存していただければというつもりで発言しておりますが、各診療所が情報を持っていて、有事の際に提供するとなると、その場合の整合性はどうしたらいいのでしょうか。そういうことには触れないで報告書を書いたほうがいいのでしょうか。

○柳川委員 
 今、小室先生からお話がありましたので、私からも少し申し上げます。会議の冒頭で確認事項と検討事項が出て、データベース構築については現時点では議論されていないという前提で、今日は御検討くださいということだろうと思います。ただ、警察庁もいらっしゃっているので、何を言うか心配という感じかもしれませんが、小室先生と私は先週も会議があって、死因究明の推進に関する法律ができて、
2 年間で推進計画を作らなければいけないということで、先週の会議で第 17 回を数えました。もともと歯科情報が極めて有効だということは前提にあって、ただ、その前に収集しやすいような状況を作っていくことの一環で厚労省のデータの標準化事業が始まったという認識でおります。先ほどの小室先生の御質問も正にそこで、迅速に集めることができる情報の形式、様式はどうしたらいいか、それはもちろん電子化したものも含まれるので、今日の新潟県歯科医師会とオプテックの実証実験の結果からも、レセプトデータだけで標準化には至らない。なおかつ、各ベンダーや電子カルテの標準フォーマット、様式の統一は必要だという結論が出たと思いますので、この後どうするかがとても大事だと思います。

 死因究明に関する推進計画は、 4 月にも内閣府で取りまとめということで、小室先生も私も忸怩たるものがありますが、主体となるのは目的が身元確認であれば警察庁でしょうし、生前の歯科情報を標準化するということであれば厚生労働省だと思うのです。ただ、生き死にだけではなく、厚労省も監察医務医を所管されていたり、あるいは埋葬法などの関係もありますから、全く無関係ではないと思うのです。その背景には、日弁連の先生もいらっしゃっていますが、個人情報保護等の法整備の関わりが出てくることもあるかと思います。今できることということでは、正にこの会議で 1 年間検討して実証実験をやったわけですから、この後、身元確認に資する歯科情報のデータベース化に向けた取組をどうしていくかという方向付けをしていただくことが極めて大事だと思います。少なくとも今日、 2 者から発表のあった電子化した情報についてのカルテベンダーと各社の互換性を取ったり、標準化していくところを進めていただきたいと思います。

○住友座長 
 オプテックは、
18 ページのデータの標準化とその必要性のところで、ある意味ではデータ形式がメーカーごとに異なっていることが問題だと。この統一性は可能性があるのかどうか。それはどういう形で統一すると言うのか、その辺りはどういう議論になるのでしょうか。これはメーカーの特色、セールスポイントだから、それを統一するのは非常に難しいのではないかということで聞いているのですが、その可能性について、どなたかお答えいただけますか。

○佐々木参考人代理若松様 
 データ形式については、歯牙の所見から客観的に読み取れる情報になるので、メーカーごとの特性などとは切り離されている話だと認識しております。

○青木委員 
 IT の立場から言うと、先生がおっしゃったところは技術的には全く問題ありません。もちろん、委員会でちゃんとここが決まった後に決めていく必要がありますが、それは IT が非常に得意な分野で、音頭だけ取っていただければ、むやみやたらにお金が掛かるものでもないし、決まれば会議で決めていく格好になるのではないかと思います。

○住友座長 
 私が発言したのは、この検討会の意義はそういうものを前面に出して、各メーカーがそれに合わせてもらいたいという意向があるのです。てんでばらばらで良いわけではない。それは全体的に考えたときに全くナンセンスな話であろうと思っております。ここで出してくる結論は、非常に次のステップに重要であろうと思っております。

○玉川委員 
 今のお話に関して、歯の番号や歯の状態、歯根の状態等についてはレセプト電算コードというものがあって、各レセコンベンダーはそのフォーマットに変換する機能は恐らくお持ちだと思います。ないのは何かというと、先ほど青木先生がおっしゃったように、歯牙の状態、口腔状態を表すような標準のもの、例えばこの歯はインレーが入っているとか、新潟の分類で言うと金属冠が入っているといった分類の部分がまだないと思いますので、この部分を検討すること。

 もう 1 つ、それは歯の技工装置の標準的な表現とも関係があると思うのです。技工装置というのは、装着、あるいは口の中にセットするという行為があって、初めて人と一緒になるわけで、今回ここでお話されている歯の状態は技工装置と歯とが一緒になったものですが、それとは別の世界で、技工装置のトレーサビリティを含めて技工装置の標準化も必要であろうと考えています。両者が一緒になって口腔状態を表せるもの、それが何らかの強制力を持って、柳川先生がおっしゃったように機器のところに挙がっていると、今回の問題は多く解決するのではないかと思っております。

○住友座長 
 事務局に確認ですが、今日の論点メモの確認事項で、歯科診療情報の標準化についてはデータの検索・照合とは切り離して考えるべきという部分の意図するものを、少し説明していただきたいと思います。

○小畑歯科医療専門官 
 歯科診療情報の標準化の原点と言えるところになると思いますが、前回のこの会で、標準化とデータの検索は少し交錯した状態で議論が行われたという印象があったので、切り離しはしなければいけないのですが、検索や照合が簡易に精度よく行われるために、どのようなデータ形式を持っておかなければいけないか、実証実験の結果を踏まえて今後検討していきたいと。そのためにどのような条件を具有しておかなければいけないかについて御議論いただければと考えております。

○住友座長 
 先ほどの新潟県歯科医師会のプレゼンテーションで、診療情報の標準化についてとデータの検索の部分のポイントについて、今回の実証事業から説明いただけますか。一度確認をしておきたいと思います。

○瀬賀参考人 
 本日お配りの資料の
19 ページを御覧ください。今、お話いただいた中で、今回我々が行った実験で幾つか分かったことがあるのですが、基本的な考え方として、今回、歯科診療情報の標準化の有効性がいかがなものかということの論点から考えると、まず、私どもはこの「標準プロファイル」という形のマークシートを御提示しましたが、この「標準プロファイル」の情報量を持っていればかなり精度の高い確率で身元の絞り込みができる、これが 1 点になります。

 もう 1 点ですが、こちらに書いているとおり、ではこの「標準プロファイル」の項目は非常に多いのではないかという意見、先ほどもお話したのですが、こちらについては、実際に開業医の方から見ると、今、通常の診療で使う用語ですので非常に分かりやすい、簡単にできるといえます。

 それと、もう 1 点なのですが、これは特徴的なことにも挙げられるのですが、今実際、私どもは各県を回って、こういった実際にチャートの転記実習等を行っております。 1 例を挙げると、日本歯科医師会等で出ているこういった身元不明の御遺体の、今使っている手書きのデンタルチャートがありますが、ああいったものを参考にしながら、今私どもは、このマークシートへの転記の実習等も行っているのですが、その中で特筆すべきことかもしれませんが、実は警察の方からも御参加いただいています。歯科医師であれば当然書けるのですが、実は警察の方も、この手書きのデンタルチャートからマークシートへの転記といった作業を行っていて、実際に全く予備知識もなくそういったものをポンと出されても、警察の方はかなりの高い精度でマークシートに転記していただいています。そういったことも踏まえて、我々が今回考えたマークシートは非常に分かりやすいと認識しております。

 そういったことを踏まえて、基本的な考え方として、有効性という観点から言うと、今回私どもが御提案した「標準プロファイル」は基本的にこういったものの情報量を共通のデータとして持っていれば、先ほどのメーカーさんの部分はあるのですが、そういったものが標準化情報として、今後ある程度入出力できるようになれば、非常にいいのではないかと思っておりますし、その中でも、当然今後検討してくることになるのですが、海外とのデータの互換を考えると、やはり歯面情報、例えばそういったものを含めて当然検討していくべきであると、一応、今はそのような認識でおります。

○青木委員 
 住友先生から
3 点あったのですが、私のほうからちょっとだけ補佐という意味で述べます。この、照合と切り離すデータの検索とはと言っているのは、全く今おっしゃったとおりで、新潟の 8 ページに何か英語で細かい字が書いてありまして、我々がパッと考えただけでもこういうふうに照合の論理というのは、何とか照合、何とか照合といろいろ出てくるのです。やはり大学によって違うし、メーカーも、オプテックさんも考えればいろいろなものが工夫できる状態になっていますので、これをどれかに決めようということではないということが、厚労省の先ほどの御説明です。そのデータ形式を決めておけば、ここの1から6、あるいは別なものでもいいのかというのは、それはベンダーの自由、あるいは大学なり研究の自由というのが厚労省の御議論だと理解しております。

 それから、先生がおっしゃっていたデータフォーマットの、いわゆるオプテックさんが書いているような、ああいうところは難しいのか?ということなのですが、データ形式やコンピュータのフォーマット、これはやはり、こんなことを言うと厚労省の方から怒られるかもしれませんが、この親委員会の下部のワーキンググループのような形で、例えば玉川先生のような方、あるいは医療情報に詳しい、今までにやったことがある方を委員長としてお任せして、親委員会の項目が決まれば、その下部委員会でそういうものを、レセコンのフォーマットに沿って、それから、先ほど言った歯科治療のいろいろな技工の関係の部分も考慮しながら作業するということは十分あり得るのではないでしょうか。そういう所にお任せしてやる。

 そのときに、例えば ISO の標準等、今、 ISO でもフォレンジックの部分を標準化しましょうとインチョンの会議で動きだしています。それにキャッチアップというか先行しながら玉川先生などのところに作業を早目にやっていただくほうがいいのではないでしょうか。ここで議論するよりは、そういう類いの仕事ではないかと思います。

 もう 1 つ前の、小室先生が御議論いただいたこの委員会としてのスタンスは、多分、非常に政治的に一番難しいところで、新潟の資料でいうと最後の 20 ページの所なのですが、小室先生がおっしゃっているのは、例えば最後の部分です。「多様な考え方の歯科情報データベース事業」、これは小室先生と柳川先生が、今、いわゆる政府の非常に重要なところを決めるお立場になっていて、そこである主張をされて、最後の部分、歯科データベースが大事だとおっしゃっているのです。しかし、リストの一番上のようなことは、例えば緊急時に集めますので、それはレセコンからピッと印刷するとか、マークシートで取るとか、何でも今でもできる。多貝さんのところの日本歯科コンピュータ協会で合意して作ってしまえばそれはできることなのです。

 つまり、一番上と下というのは、実は相反するわけではなくて、どちらもできるようなことになります。そのときに、小室先生が一番下のほうを、今非常に歯科の分野では主張されているということで、この委員会としてどうしましょうかというところです。新潟のレポートとしては両論併記でいいと思うのですが、そこはちょっと、非常に考えなければいけないところではないかと思います。

○小室委員 
 私が
2 点確認というか、まだ 1 点しか話してないのですが。

○青木委員 
 ああ、そうでしたね。

○小室委員 
 まず
1 点目からです。私の希望でもありますが、情報の提供の迅速化、これは歯科診療所がデータを持っていて、有事の際にはこうするのだというような固定観念で報告書を書かないでいただきたいと思います。これからの整備がありますので、死因究明の会議が継続審議になった場合には、どの辺りで情報を保存するのかを審議したいと思っていますから、歯科診療所内で保存し情報を流すようなことは余り強く書かれないでもらいたいと思ったりします。

 先生が最後におっしゃったところは慎重にしなければなりません。「多様な考え方の歯科情報データベースの事業の展開」など、この生前データベースがありますといろいろな事業を展開することは可能なのだと思います。しかしながら、前々回の死因究明の会議のときに、生前データベースを構築することは良いとしても、ビッグデータとして各方面で活用することはないのですかと危惧されているような質問がありました。私はそのときには「いや、身元確認にしか使いませんから」と答えてありますので、これを今後何が可能になるかというような書きぶりになることは、少しく控えていただければ有り難いと思います。柳川先生、それでいいでしょうか。

○柳川委員 
 はい。

○小室委員 
 是非よろしくお願いいしたいと思います。

○住友座長 
 事務局に聞きたいのですが、平成
26 年度も引き続きこの事業があるですよね。今年度は言わば実証事業ができたと。これを紹介するということで、それについての意見を、今、頂くという形なのです。少し話が平成 26 年度の話に展開しつつあるので、もう 1 回戻してみて、今回のこの 2 つの実証事業の中身について、これでは駄目だとか、これでいけるのではないかとか、皆様いろいろなそういう想いがあると思うので、また、問題点としてここに書かれていないものがあれば出していただくということです。

 関口先生、何かございますか。今回の中で、もし先生がこういうところにポイントを当てる必要があるというアイデアがあれば、次の年につながっていくと思うのですが。

○関口委員 
 なかなかついていくの自体が大変な状況というか、ついていけていないというか、やはり難しいところがあって、ですから、そもそも今回のこれを踏まえて来年度どういう方向でやるという、来年度は何をするのかというのが、ちょっと私には基本のところがよく見えていなくて、何を申し上げていいのか分からない状況なのです。

○住友座長 
 それでは、ほかの方に聞いてみますが、警察庁の方々、何かございますか。この段階で何かあるかと言われても困るかもしれませんが、一応、本日聞いた感じで、例えば、実際にこのデータを欲しいと言ってくるのは、災害時、警察庁が主なのではないかと思います。ですから、こういう形で我々が議論していることの印象でも結構ですからお話いただければと思います。

○警察庁刑事局犯罪鑑識官付井澤課長補佐 
 私はここに来る前に、出身県では検視官もやっておりまして、今まで多数の検視もしてきていて、身元確認には歯が有効であることは、本当に、警察官になった頃からよく分かっています。今回のような
8 月から、そして今からの検討会が非常に有意義であることはよく分かっております。それで生前歯科情報を標準化して、最終的にはなかなか難しい問題があると思うのですが、データベース化によって、大規模災害のときに身元確認というのはとても有意義なことであって、有効なことではあるとは思うのですが、いろいろ説明を聞いていて、非常に難しい問題があるのだなと実感しているところです。○瀬賀参考人 実は私も新潟県において、今回こういった歯科情報を収集したのですが、県内の医療機関 39 の歯科医院に御協力いただき、 1,763 名分の患者さんの歯科情報を収集をしました。先ほど私も申し上げたとおりなのですが、マークシートの記入については、慣れるとそう時間はかかりません。大体お一人 5 分程度で済むのですが、何に一番時間を費やしたかと言うと、実は先ほどもお話が出ている、個人情報にも関わってくる患者さんへの同意です。

 この事業を行うに当たり、医院の窓口で、若しくは診察室でもそうなのですが、まず患者さんに事業の説明をいたします。こういった形で御協力いただけませんかといった御説明をします。そうすると、大震災のこともありますし、ほとんどの患者さんは、まずノーと言いません。大体皆さん「分かりました」という形でお引き受けいただくのですが、「じゃあ、この同意書に御記入いただけますか」となると、ちょっと躊躇される方が実は非常に多いと聞いております。最終的には皆さん、趣旨を御理解いただいて御記入いただけるのですが、そういった点から言って、今後、例えばこういった形で歯科情報を何らかの形で収集していく、まあ、データベースもそうかもしれませんが、例えば医院でデータを蓄積していくにしても、基本的には患者さんとしては歯科の治療に来たはずなのでしょうけれども、そういった形で運用されていくとなると、なかなかそういう点は周知が難しい部分もありますので、その点、今後こういった部分については検討していくことが必要ではないかと、今の認識としてはそんなことを思っております。

○青木委員 
 ちょっとまた、整理係で整理をさせていただきますと、実は先ほど新潟の
20 ページにある事業の中で、今、議論がちょうど小室先生の御提起があったところで、特に今、下のほうのデータベース事業の議論にやはり集中している。今の、例えば患者さんからの同意なども、やはり保存しておくという観点に議論が集中している。警察官の方もそういった想定で難しいとおっしゃったのかもしれないと思います。

 実際に、特に下から 3 つぐらいの所までは、結局、同意を得て取っておくということが基本になります。これを、同意を得ないで取れるという法律ができるかというと、小室先生、ちょっと難しいかもしれないですよね。柳川先生もここはいろいろ御努力されているところで、下の 3 つの所はかなりヘビーと言うか、きちんと国全体で決めていくと。

 それに対して、その上の所や、実際にもう既に災害時には緊急対応でやっているような部分、一番上や院内検索は、従来の枠組みで十分活用が可能な領域になります。院内検索ツールなどはもうどこでも使っていますので、こういったものはレセコンメーカーが標準情報に準拠して作ってくれればと思います。協会としては、そのためにお金は要るかどうかというと、余り要らないのではないかとおっしゃっていました。もちろん、あればあったでいいのかもしれません。ただ、そういうふうに院内だけで医院長だけが検索するなどといったところは、もう走れる話になります。ですから、基本的には、すぐ進める話と、やはり長い目で見て、国としてどうあるべきかという最後の方の部分とを、併記する必要があるのではないでしょうか。ただ、小室先生のお話は、どちらかというと、今、そういうものを進めているので、そこには特にウエイトをきちんと置いてほしいという議論だったのではないかと私は伺いました。

 科学的に、技術的に考えると、全部、上のほうはすぐ動けるような部分になってきて、東日本大震災でもしこれがあれば私どもは徹夜しなくても済んだという、何か月もかからずにできたと。これは間違いなく断言できます。上の所だけでもです。警察の現場にずっといましたが。そういう状況です。

○住友座長 
 私が本日聞いて感じたのは、マークシート方式は非常に照合としてはいいものだと思います。これを患者さん全部にこういうものを求めることが、えらく大変であることがよく分かりました。ただ、例えばレセコンでもってやるのは、ある意味、非常に瞬時にできるもののはずなのですが、統一性が取れていないゆえに今それができない。そうすると、話としては、私が結論付けるのではなく、後で皆さんに意見を頂きたいのですが、マークシート方式は照合としての確率は高いけれども、これを展開していくのはやはり限度があるのではないかと思うことがある。そうすると、レセコンなのだろうと思うのですが?そこで話を進めていくにはこの検討会から提案を出してそこの統一性を図ってくださいというふうに持っていくのがいいのではないかと思うのです。

 本来は、本当にレセコンでできるのかと言ったときに、多分、できると言ってしまうのですが、電子カルテとレセコンは根本的な違いがあるのです。ただ、やはり電子カルテが必要なのではないか。ただし、今の医療の現場に電子カルテを持ち込む、例えば POS を頭に入れた電子カルテを持ち込む教育から体制を変えていくことは、とてもじゃないけれどもできないのではないか。そうするとやはり、なじんでいるレセコンをベースにして進めていくことになるのかなと思うのですが、玉川先生、どうですか。

○玉川委員 
 電子診療録自体は、先生がおっしゃるとおり大変時間がかかると思います。ですが、差し当たって今持っているデータを何らかの形で変換して出すだけ、外乱と先生は呼ばれていますが、そういうものでもいいと、ある程度マッチするではないかということをベースにして、テクニカルな部分を先に進めることが、まずこの委員会としてはできることだと思います。

 では、電子診療録は本当に困りますかというと、実は困りまして、歯周病の病名、 P 病名と、欠損の MT 病名と、普通は両方足すと 32 本のセットになるはずなのですが、分割歯があったり、インプラントがあったりして、実はなかなか合わないところがありますので、どうしても精度として 100 %求められないところもあります。そこを追究するのではなくて、差し当たってできる形のコードを吐き出せるようなものにして、先生がおっしゃるように、こういう紙ではなくて、何か電子情報にレセコンから吐き出せる吐き出し口を持っておく。それが、できることではないかと思いますし、そうなると、最初にお話したように、厚生労働省の標準規格の中に、もう歯の部位コードがありますので、それを活用していただくことがいいのではないかと思います。

○住友座長 
 事務局でデータ格納のフォーマットとマスターについて検討することでよいかというところにつながっていくように思うのですが。

○青木委員 
 そうですね。正に玉川先生がおっしゃったとおりで、そういうところは、やはりここからもう
1 回、委員会なり何なりで、玉川先生なり適切な方にそういう詳しいところできちんと決めていただくと、先ほどおっしゃったような、今はレセコンで、ちょっと電子カルテ、 HL7 などには準拠はしていませんが、レセコンと言っても請求だけではなくて、今、治療項目が各社のものはある程度見えるようにきちんとなっていますので、その範囲でかなり有効なものができます。住友先生のレセコンのデータということで、第 1 点であると思います。

 それから、ちょっとマークシートのことについては、これはこれでいくらでも利用価値があるので、ここは、駄目と言うのではなくて。というのは、震災時などを想定したときに、これにマークして集めることができます。もちろん診療録も災害のときの亡くなった患者さんですよというのを、この間の震災のときは、御家族なり警察が来たときに、こんな分厚い診療録をそのまま頂いたのです。ところが、それに 1 枚付けて、「先生、そこに口腔内のマークだけしてください」というふうに使うことはできます。あるいは、先生がおっしゃったように、レセプトコンピュータで、それを一部吐き出して、それを修正して提出いただく。そういうルートができますので、是非マークシートも入れていただきたい。

 あとは、 ISO の標準では、ちょっと議論しているのは、佐々木先生に今、言っていただいていますが、ああいうマークシートでできる、あんな短い項目で標準になっているというのは日本だけではないかということです。というのは、治療項目が保険診療でガチッと決まっていますので、あれだけで先生方も書けてしまう。ほかの国だとそうはいきません。ということで、その部分を標準に持っていきたいという議論もあるという情報提供だけ差し上げます。

○住友座長 
 この段階でマークシートをやめるという訳ではなくて、やはりスピードとしては遅いかもしれないけれども、これはずっと積み重ねていく必要があろうと思っております。ただ、次の南海トラフか何か分かりませんが、早い時期に適用できるもののアイデアなどの構築が必要だと思います。それに並行して、マークシートはずっと緻密にやっていっていいのではないかと思います。

 単に私のアイデアで申し訳ないのですが、例えば玉川先生に、今ある問題点はある意味少し無視もするかもしれないけれども、次にはこういう形のものが適当なのではないかというものを、次の委員会のときにプレゼンテーションをしていただく。そうすると、方向性が非常によく見えてきて、そこで、まだそれをやるにはどこに問題があるかというところもはっきり見えてくる。今は何か問題点がごちゃごちゃになっているように思えるところがあります。工藤先生、どうですか。

○工藤委員 
 整理の整理になってしまうかもしれませんが、結局、震災の後、いろいろな団体がアンケート調査を取りました。この項目が全部ばらばらだったので、結局、訳が分からなくなってしまった。今回は、そのアセスメント表を統一しようという話ですよね。そのアセスメント表に何を載せるかをこれからやっていく必要があると解釈してよろしいですよね。

○青木委員  
 はい。

○工藤委員 
 そうなると、
1 つのアセスメントが 26 項目、これが 1 つのアセスメント表の意見項目になって、それは素晴らしいというのは分かったのですが。あとは、マークシートでやると、そんなに時間はかからないのだけれども同意がある。そこまでは合意でよろしいのですよね。

○住友座長 
 はい。

○工藤委員 
 そうすると、それをどのようにするかが、今度、決めなければいけないということですね。了解しました。

○柳川委員 
 本日の、その実証実験の結果は、私も
IT のことは全く詳しくないのですが、新潟さんのものでいくと 26 項目、マークシートにこだわっているわけではなくて、要するに項目の数ですよね。生前の治療記録というか口腔内の所見が 26 項目になっていたとしたら、照合に使うロジックはある程度、何でもいいというわけではありませんが、この実験では照合は 7 分類ぐらいであれば極めて精度が高いという結果ではないのかなと私は見ました。

1 点、話が戻って申し訳ないのですが、厚生労働省の主導で、今おっしゃったようなレセコンベンダーさんや玉川先生のような方が関わって、電子的な標準化というかフォーマットや形式の統一をこれから進めていく。これがまず前提であって、そうすると、各歯科医療機関にあるデータは、同じ様式になって収集しやすくなる。これはもう、先が少し見えたような感じがするのですが、いろいろあると思うので、データベースのことはまた細々申し上げません。ではその先に、例えば先ほどお話があった大規模災害で、津波で医院が流されてしまうとハードディスクも何もないのです。あるいは、本日問題提起があった、今後、歯科医療機関が後継者がいなくて廃院すると。そこには平均 5,000 枚近いカルテデータがあり、それは使えなくなるわけです。そうすると、当然ですが、バックアップが必要という話になって、大病院ならバックアップはどこでもされていると思うのですが、歯科医療機関はなかなかそうはいかない。ですから、収集しやすい形になった後、バックアップなどがどういう方向でできる可能性があるのかを伺いたいと思います。

○玉川委員 
 バックアップですが、実は今年の文科省の予算で、大学の病院情報システムのバックアップというのが付きました。我々の所でも、データのバックアップをテープにしていたのですが、それではなくて、西日本の大学は東日本に、東日本の大学は西日本に、それぞれデータセンターを置いて、毎日のデータをバックアップするという仕掛けが年度内には動く予定になっていますので、長い目で見ると、何がしかのそういうデータセンターにデータを置くだろうと考えています。

 そのときに、実は歯学部病院のデータをどうするかという話があり、医学部は青木先生が言われたように SS-MIX というフォーマットがありますので、そこで病名、処方、投薬などの内容は共通の形式で保存できるようになっています。歯科の情報を特別に今回追加することはできなかったのですが、病名の所に歯の部位の情報を追加して格納するための形式は、一応、暫定的には決めています。 SS-MIX がそういう歯の情報も入れて蓄積するようになりましたので、形式としては SS-MIX2 という新しい形式になっています。ですので、そこは先ほどもお話しした、厚生労働省の標準規格の歯の部位情報コードがそのまま入る形になっていますので、長い目で見たときにどうなるかという御質問に対して、多分そういう形で、どこかに集約をしていく。それで、集約したときにきちんと歯の部位が見えるかどうかを、これから我々は検証しようとしていると御理解いただけたらと思います。

○多貝委員 
 先ほど柳川先生がおっしゃった中で、各医院にあるデータベースが標準化というか共通化という形のお話があったかと思うのですが、実際には各社システムは過去からいろいろ引きずってきているものがありますので、動いている段階での共通化というのは難しくて、実際には、互換性がある標準的な形に書き出す機能を、それぞれ作り込むという形になるかと思います。

○青木委員 
 そうですね。

○多貝委員 
 各社でシステムが違うのと、あとは、入力される粒度というようなものも、それぞれ違うので、詳しくデータがあれば、それだけ細かい情報も含んだ書き出し方ができて、細かく入力されていなければ粗い形になるようなフォーマットが考えられたら各社、一番有効に使えるのではないかと思います。

 もう 1 つです。事前にデータを集めて置いておくということについてですが、電子レセプトについても、最低限のデータしか表には出したくないというお考えもあるかと思いますので、その辺のハードルについても 1 つ考えていかなければいけない問題ではないかと思います。

○住友座長 
 先ほど言われた、廃院される方のデータは、マークシートにでもその方が入れてくださればいいけれども、もうそれは使われないというふうに取れてしまう。柳川先生がそれを言われていたのですが、それではどういうふうにすればよいかという話が分からないのです。

○瀬賀参考人 
 歯科医師会のほうで、年に数件ぐらいなのですが、実はそういうお問合せがあるのです。高齢の先生方で、実はもう廃院するのだけれどもカルテがもう邪魔だと。とりあえず法定年数は過ぎているので、これを何とか処分したいというお話があるのです。御承知のとおり、そういったものですので簡単に処分はできないのですが、当然、法定年数を過ぎているということであれば、法に乗った形で処分していただくしかないのです。

 ただ、先ほどもお話のとおり、そういった形で 1 院につき約 5,000 人分の貴重なデータがどんどん失われていく可能性がありますので、もしできれば、マークシートでも何でもいいのですが、何らかの形でデータ変換できるのであれば、紙媒体で取っておくのはスペースがかかりますが、データとして保存するのであれば、青木先生も御承知のとおり場所は全く要りませんから、そういった点で当然、変換する必要があります。

○青木委員 
 補佐という意味で、ちょっとまた整理をさせていただきます。全く玉川先生のおっしゃるとおりで、実は多貝さんも先ほどネガティブなことを言ったのではなく、要は、今の各レセコンメーカーのデータベースの中の仕組みを全部統一しましょうと言われると、もう商品になっていますので、なかなかそこは難しいのです。要は、例えばそれを新潟のような
26 項目というのは、基本的にはそれぞれの粒度で大体吐き出せるのです。ですから、それを吐き出した形にして、それを例えば、先生がおっしゃったような医科のほうでは SS-MIX 標準のバックアップ事業は中核病院でやっています。宮城県もやっていますが、そういう所のデータセンターや共同事業に、歯科の部分も相乗りのような格好で乗せていく。

 では吐き出すのは何かと言うと、先ほど言ったような項目としては 26 項目ぐらいであれば、もう十分であろうということだと思います。つまり、細かく何を投薬したとか、どんな治療経緯になったなどではなくて、先ほどのような、要するに、あれはほとんど 1 号用紙ですよね。 1 号用紙の歯式そのものなのですが、あれをデータとしてバックアップして、玉川先生がおっしゃっているような医科のバックアップ事業の中に一緒に入れていくとか。そうすると、いろいろな事業が連携で進む可能性が出てくると思います。ですから、その吐き出す所をレセコンメーカーとしては想定していただくということかと。そういうことですよね。

○多貝委員 
 はい。そういうことです。

○小室委員 
 玉川先生、東西に
1 か所ずつできるデータセンターはどういう形なのですか。例えば建物が別にあるとか。

○玉川委員 
 建物は別にあります。

○小室委員 
 作るのですか。

○玉川委員 
 札幌と福岡だったと思いますが、
NTT さんが持っている所を借りてやります。

○小室委員 
 既存の所を使うのですか。

○玉川委員 
 はい。既存の所に入れると言うか、送って入れるのです。

○青木委員 
 NTT の関係ですよね。 NTT 経路です。

○玉川委員 
 そうです。

○住友座長 
 全体的にまだ質問があろうかと思いますが、予定の時間になってきて、強引にまとめてしまうとうまくないのですが、レセコンを活用する。それは
1 つの、どのデータを使うかが分かればできると。今度、平成 26 年度の検討会でそういう事例を出してもらうという必要があろうかと思います。

 それから、マークシートは今回、新潟がやって、非常に照合の度合いがいいと認識していますので、これは地道に続けていけば大きなデータになるのではないかと考えられる。これをどういう形で全国的に普及させていくかという方略が必要なのだろうと思います。

 もう 1 つ、やはり、せっかくのデータが破棄されてしまうのは非常にもったいない話で、これを今後どういうふうに対応していくか。そのデータを何とか継続使用できるような仕組みも考える。次回の検討会のテーマにもなってしまいましたが、そういうことが 1 つ見えてきました。

 ほかに何か、もし次の検討会で議論を是非したいということがあれば、残り僅かな時間ですが提案を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

○青木委員 
 1 点だけ。やはり海外の情報を少し取って、大体取ってはあるのですが、そことの互換などを考える。ある程度は想定していますが、玉川先生など少しデータに詳しい人に見ていただくとか。あるいは、小室先生も御存知だと思いますが、米国と INTERPOL が違っているとか、海外もかなり動いています。ですから、標準化の部分、先ほど申し上げた ISO やそれ以外にもデータ形式の標準化を NIST などで進めていますので、その辺りをちょっと検討する必要があるのではないかと思っています。

○住友座長 
 この前、韓国での
ISO の報告を受けています。それで、今度オリンピックもあるという話もあったし、やはり国際的なそういうものも見据えてやらなくてはいけないから、次の検討会は来年度の検討会になりますが、事務局も、そこのところも情報として集めていただければと思います。

 事務局から何かあれば、まとめとして説明をいただければと思います。

○小畑歯科医療専門官 
 数々の御意見ありがとうございました。整理としては、現有の電子カルテや電子レセプトのシステムをどうこうというのではなく、その書き出し先について標準化という枠で考えていこうということで御納得いただけるのではないかと考えております。

 また、平成 26 年度も、先ほども申し上げましたが、引き続き歯科診療情報の標準化に関する実証事業ということで行われる予定ですので、その辺りの本日頂いた御意見、それから、海外等、様々な情勢に合わせて、それらを取り入れて御意見を整理するということで進めたいと考えております。

○小椋課長補佐 
 来年度は、今、小畑が申したように進めていきたいと思います。あと、参考資料
1 ですが、これは来年度の標準化に関する実証事業の仕様書です。こちらは現在公募中で、 3 19 日までが公募期間です。提出期限としては 3 27 日の 12 時までとなっていますので、こちらのほうも是非よろしくお願いしたいと思います。 4 月中ぐらいに、提出いただいた中から委託先を決定したいと考えております。

 また、本日先生方から頂いた意見を基にして、来年度も実証事業を実施していきますので、また是非よろしくお願いしたいと思います。

○住友座長 
 それでは、本日の検討会はこれで閉会といたします。御出席いただいた皆様方、大変ありがとうございました。また、次回の検討会もよろしくお願い申し上げます。


(了)

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