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2013年7月19日 第3回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録
健康局結核感染症課
○日時
平成25年7月19日(金)
10:00~12:00
○場所
厚生労働省省議室(9階)
○議事
○今井室長補佐 定刻になりました。ただいまより、「第3回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会」を開催いたします。
本日は、御多忙のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。
本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御協力をお願いいたします。
また、傍聴の方は傍聴の際の留意事項の遵守をお願いいたします。
初めに、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、委員10名のうち伊藤委員、庵原委員、小森委員、坂元委員、西島委員、細矢委員、三村委員、山口委員の8名に御出席いただいております。福島委員、森委員の2名から御欠席の連絡をいただいております。
現時点で、厚生科学審議会の規定により、定足数を満たしておりますので、本日の会議が成立したことを御報告いたします。
また、本日は11名の参考人をお呼びしておりますので、御紹介いたします。
日本製薬工業協会ワクチン実務委員会委員長、第一三共株式会社ワクチン事業本部ワクチン事業部研究開発企画グループ長、上田徳仁参考人。
日本製薬工業協会ワクチン実務委員会委員、アステラス製薬株式会社ワクチン事業推進室次長、椎名邦彦参考人。
独立行政法人医薬基盤研究所理事長、米田悦啓参考人。
独立行政法人医薬基盤研究所理事・創薬支援戦略室長、榑林陽一参考人。
独立行政法人医薬基盤研究所創薬基盤研究部アジュバント開発プロジェクトリーダー、石井健参考人。
独立行政法人医薬基盤研究所研究振興部開発振興課長、楠博文参考人。
予防接種推進専門協議会委員長、慶應義塾大学医学部感染症学教授、岩田敏参考人。
予防接種推進専門協議会副委員長、福岡歯科大学全身管理・医歯学部門総合医学講座小児科学分野教授、岡田賢司参考人。
不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会座長、川崎市健康安全健康所所長、岡部信彦参考人。
不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会委員、国立感染症研究所ウイルス第2部室長、清水博之参考人。
不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会委員、川崎医科大学小児科教授、中野貴司参考人。
また、事務局に人事異動がございました。7月2日付で、佐藤敏信健康局長が着任しております。
ここで、健康局長より御挨拶申し上げます。
○佐藤健康局長 皆さん、おはようございます。ただいまも御紹介をいただきましたが、7月2日付で前矢島局長の後を受けまして健康局長として参りました佐藤敏信でございます。これまでお顔を存じ上げている方もいらっしゃいますけれども、引き続きどうかよろしくお願いをいたします。
私から申し上げるまでもないですが、平素から予防接種あるいはワクチン開発といったような分野でお力添えをいただいておりますことに、この場を借りて厚く御礼を申し上げる次第でございます。また、本日は大変暑い中、しかもエアコンの効きが余りよろしくないようですが、少し軽装にしていただいて審議を進めていただければと思います。
この研究開発及び生産・流通部会は2回を開催していただいているそうでございまして、委員の皆様はもとより、今日のように多くの参考人の皆様に御出席をいただきまして、ヒアリングの機会なども持たせていだたいていると聞いておりまして、今日もそのような方向で御審議をいただければと思います。
個別の議題としましては、今日は不活化ポリオワクチンの第 2期の接種に向けた研究開発について御議論をいただくということだと思います。
限られた時間ですが、どうか実りのある審議になりますようお願いを申し上げまして、簡単ではございますが、冒頭の挨拶にかえさせていただきます。どうかよろしくお願いします。
○今井室長補佐 それでは、議事に先立ちまして配付資料の確認をさせていただきます。
議事次第、配付資料一覧、委員名簿、資料1~資料4-2まで御用意しておりますので、配付資料一覧と照らして不足しております資料がございましたら事務局にお申しつけください。
また、日本ワクチン産業協会より第2回研究開発及び生産流通部会、資料1-1、我が国のワクチン産業と市場の動向の27ページの差しかえ資料が提出されておりますので、本日机上に配付しております。
冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
次に、審議参加に関する報告をいたします。予防接種ワクチン分科会参加規程に基づき、各委員及び参考人から、ワクチンの製造販売業者からの寄附金等の受け取り状況、申請資料等の作成への関与について申告いただいております。
本日の議事内容においては、議題2の(5)に関しまして、市場に流通される前の製品も含め、不活化ポリオワクチンの製造販売業者であるサノフィパスツール株式会社、一般財団法人化学及血清療法研究所、一般財団法人阪大微生物病研究会、北里第一三共ワクチン株式会社から過去3年度における寄附金や講演料、原稿料などの受け取りについて、各委員及び参考人より申告いただきました。
出席委員のうち、庵原委員が化学及血清療法研究所、阪大微生物病研究会、北里第一三共ワクチン株式会社から50万円以下の受け取り、また参考人のうち岡田参考人が4社からそれぞれ50万円以下の受け取り、岡部参考人が4社からそれぞれ50万円以下の受け取り、中野参考人はサノフィパスツール株式会社から50万円以上500万円以下の受け取り、化学及血清療法研究所及び阪大微生物病研究会から50万円以下の受け取りについて申告されております。
今回申告いただいた委員、参考人のうち、50万円以下の受け取りは審議へ参加し、議決に加わることができますが、50万円以上500万円以下の受け取りについては審議への参加はできますが、議決に加わることはできません。
また、岡田参考人より、4社のワクチンの申請資料等の作成への関与について、中野参考人より化学及血清療法研究所及び阪大微生物病研究会のワクチンの申請資料等の作成への関与について申告されております。
これらの取り扱いについてお諮りいたします。
○庵原部会長 ただいま、事務局から審議参加についての報告がありましたけれども、岡田参考人及び中野参考人がワクチンの申請資料の作成に関与しておりますが、当部会が必要と認めた場合には意見を述べることができます。
それで、岡田参考人は議題2の(3)の予防接種推進専門協議会からのヒアリングにおいて説明をいただくための参考人であり、また、中野参考人は議題2の(5)の不活化ポリオワクチンの説明をいただくための参考人ですので、ともに審議に御参加いただき、意見を述べていただきたいと思います。
ですから、審議に参加するという形でよろしいでしょうか。
(異議なし)
○庵原部会長 異議なしということですので、部会として了承したということで進めさせていただきます。事務局、よろしいですか。
それでは、今から審議を始めたいと思います。時間が限られておりますけれども、今日は盛りだくさんですので、できるだけ円滑に進めたいと思っています。
それでは、まず議題2の(1)の「日本製薬工業協会からのヒアリング」ということで、上田参考人より説明をお願いします。
○上田参考人 製薬協ワクチン実務委員会の上田です。今日は、よろしくお願いします。
事務局のほうから御要請のあった2点について発表させていただきます。1つは「世界のワクチン市場の動向」、もう一つは「日本におけるワクチンの研究開発の促進策について」を発表させていただきます。
まず2ページですが、こちらに示す12社がワクチン実務委員会のメンバー会社であります。
続きまして3ページがタイトルで、「日本のワクチン市場動向」から説明します。
4ページです。こちらに示すのが「世界のワクチン市場の進展」、2005年から現在まで、それから今後の市場の見通しについて示しているグラフでございます。ここに示すとおり、世界のワクチン市場規模は現在約2兆円、全医薬品の約3%を占めるというデータであります。世界におけるワクチン市場は近年急速に成長してきて、これからも着実に成長が期待されているというふうなデータを示しております。
5ページです。こちらには、世界のワクチンマーケットのシェアを示しております。ここに示す5社が、約8割の市場を占めているというのが現状であります。
6ページです。この大手5社の市場規模、年間の年商というものを示しているグラフであります。一番右に示している国内市場というのは、前回第2回の本部会で日本ワクチン産業協会の資料で国内市場についての発表がありましたが、その他とされているもの以外については内資品目、外資品目と区別できますので、それをこのグラフに並べてみました。外資品目というのは、左の大手5社の棒グラフの中に含まれている数字です。ここに示すとおり、1社で日本の全市場を大きく上回るというふうな外国のワクチン企業の大きさを示しているものと思います。
続きまして7ページ、研究開発の促進策についてお話をさせていただきます。
8ページです。まずは、疫学調査について書いております。当然、ワクチンメーカー各社が開発すべきターゲットというものの検討を行っているのが現状ですが、なかなか決断が難しいという部分があります。つまり、日本においてどのようなワクチンが求められているのかという疫学情報がまだ未充足である部分があると思います。
それから、一旦ワクチンが導入されたときに、その疾病がどのようになるのか。ワクチンによって疾病が減少していくのか。そういった疫学のデータもあるのですが、多くのデータというのは一定の地域、あるいは少数の医療機関の努力によって出されているデータでありまして、国レベルでワクチン導入前、それから導入後にどうなったのか。一部のワクチンについては、例えば細菌の血清型がどのように変化していくのか。そういうふうな大規模なデータをとっていく必要があるのではないかと感じております。こういったことが、このワクチンの意義について国民にしっかりと説明できる根拠にもなるのではないかと思っております。
2つ目です。新しいワクチンの研究開発においていろいろな技術が必要になっております。新規ワクチン開発というものが年々難しくなってきております。難しいワクチンのみが残っているような現状です。そこに新規の抗原探索をする技術というものもありますし、あるいはアジュバントについても新規ワクチンのアジュバントの開発というものが新しいワクチンの開発に非常に重要でありますし、デバイス・デリバリーの技術というものも必要です。
一方、近年、細胞培養の技術であったり、昆虫細胞で発現させる技術もありますし、発現の製造の技術というものも年々進歩しております。こういったものを単独の企業独自の技術、ノウハウだけで全てをカバーするのが困難な状況にあると思います。
3つ目ですが、ワクチンの研究開発のインセンティブはほかの医薬品と比べてなかなか働きにくい部分があります。
その理由として、1つは市場規模が小さいというところがあります。ワクチンの品目によっては、研究開発に必要なコストを後に回収するのが困難な場合もあります。それから、上市後の市場予測が非常に難しいという部分があります。特にこの定期接種になるのか、ならないのかによって市場規模は大きく変わります。
それから、ワクチンとの因果関係が不明ではあるというものの、その有害事象が発生したということによって積極的接種勧奨が中止されるというリスクもあります。
一方、副反応よって訴訟を受けるというリスクもある。そういったファクターというものが考えられると思います。
次に、9ページにいきます。「研究開発促進のために望まれる事項」として、次のことを挙げております。
まず「疫学調査に関する要望」ですが、どういったワクチンを開発するべきなのか。そういったものを専門家、場合によってはメーカーの企業のほうの意見も取り入れながら、開発すべきワクチンの対象疾患というものを定める必要があります。その中で、疫学情報ということで、国レベルで大規模な疫学の情報を定めて取り組んでいく必要があると考えます。そのために、国が大規模な疫学調査を行える調査体制を整備、実行する必要があるのではないかと思っております。
いずれにせよ、ワクチンに関する政策というものは科学的根拠に基づいて行っていくべきと考えておりますので、そういった疫学情報というものが非常に重要な位置を占めると思っております。
先ほど申しましたように、創薬技術促進が非常に重要と思っておりますし、1社だけではなかなかできない。企業が複数集まってもなかなかできない。すなわち、オープンイノベーションという形で産学がしっかりと連携できるような仕組みが必要ですので、そういった環境を整えていただくことが望ましいと思います。
次に、「研究開発インセンティブ向上に関する要望」として、市場性の大きくないワクチンの開発費の補助をいただければ開発が推進するだろう。それから、定期接種になるということは非常にその企業にとっては大きなインパクトもありますので、どのようなワクチンが定期接種化に資するのか。その決定のプロセスを明確化していただくことが必要だと思います。
国民へのワクチン・予防接種の重要性・必要性の啓発も重要かと思います。これは、接種率の向上という観点でも非常に重要です。国策として、国がワクチンの重要性、あるいは政策をしっかりと国民に訴えることによって、これも進むことであるだろうし、あるいは製薬協としても努力できるところはあるかと考えております。
それから、健康被害に対する救済というのは定期接種については現在十分補償、救済制度があると思っておりますが、任意接種についてはいまだ十分ではないという状況でありますので、この充実が必要であります。場合によっては、今まで国がワクチン政策をなかなか前に進められないという背景に、国が訴訟を受けるリスクがあるということも一部あったかと思います。そこで、アメリカであるような制度、すなわち簡易な裁判のところで和解を行い、そこで訴訟を行うという形も可能性としては検討できるのではないかと思います。
「その他の要望」として、接種スケジュールの異なる小児のワクチンを混合させた混合ワクチンの接種スケジュールを明確化することが必要です。治験を促進するために、小児の治験実施施設の整備をしていくことも大事です。PMDAの審査期間というのは随分短縮してきましたが、さらなる審査・相談体制の充実・迅速化が必要だと思います。
その他の要望として、10ページにまとめております。前回の部会でも議論になりましたが、感染研のリソースというものが十分ではない。特に大規模な疫学調査を行うということであれば、そういったところは補強しなければ実現できないのかもしれません。
2つ目、小児の予防接種スケジュールというのは定期接種という中で定められておりますが、風疹、百日せき等、破傷風、日本脳炎等を含む成人の予防接種スケジュールの策定が必要と考えます。
3つ目ですが、「細胞培養ワクチン実生産施設整備等推進事業」において、今後適切なフォローアップが必要と考えます。国の危機管理というべき大事な事業ですが、この整備された生産体制の維持のための新たな施策が必要ではないでしょうか。
2つ目に、実際に今年度末には承認が出るだろう、このワクチンを実際どのように使っていくのか。安全性・有効性、あるいは小児への使い方等、そういった研究を推進させていくことが必要だと思います。
最後になりますが、この部会にこれからいろいろな研究開発、あるいは流通等の議論があると思いますが、またこのように企業のほう、産のほうから意見を述べさせていただく、あるいは実情を説明させていただくということがあれば非常に幸いだと思います。
以上です。ありがとうございました。
○庵原部会長 ありがとうございました。ディスカッションは医薬基盤研究所のヒアリングが終わってからまとめてということを予定していますので、上田参考人に対する質問は後でということになるかと思います。
それでは、引き続き医薬基盤研究所からのヒアリングに入りたいと思います。では、米田参考人よろしくお願いします。
○米田参考人 医薬基盤研究所の米田と申します。よろしくお願いいたします。
私のほうからは、医薬基盤研究所におけるワクチン開発研究の現状につきまして、資料2-1の1ページ目を使って、まず概要を御説明したいと思います。
医薬基盤研究所は、厚生労働省所管の独立行政法人として医薬品・医療機器の開発に向けた基盤技術を研究し、研究開発を振興することを通じて革新的な医薬品などの創出に貢献して、国民保健の向上を目指すということで平成17年4月に設立されまして、ことしで9年目に入っております。
この4月に体制が一新されまして、私もこの4月に理事長に就任し、後で御説明いたします創薬支援戦略室の室長である榑林理事が理事に着任、それから前山西理事長に相談役、竹中アステラス元会長に相談役として加わっていただいて、このような体制で現在研究所を運営しております。
それから第2期の中期計画、今は4年目に入っておりますけれども、3本の研究の柱を掲げて進めてまいりましたが、そのうちの1つに次世代ワクチンの研究開発というものを大きな柱として進めてきております。
研究所の組織図を見ていただきますと、研究所に加えてこの5月から創薬支援戦略室が加わっております。それから、研究所の中には創薬基盤研究部として10個のプロジェクトチームを有しております。それから、難病・疾患資源研究部として6つの研究室などで難病にかかわる細胞とか遺伝子の事業並びにそれを利用した研究開発を進めております。それから薬用植物に関係するセンター、霊長類のセンターを有しております。
それで、その研究部の中に次世代ワクチンを研究する領域としまして3つのプロジェクトチームを有しております。1つはアジュバント開発プロジェクト、感染制御プロジェクト、それからワクチンマテリアルプロジェクト、この3つのプロジェクトチームを中心にしてほかの研究プロジェクトとも連携しながらワクチンの研究開発を進めているところであります。
それから、ことしに関しましては1つ特筆すべきこととして、霊長類医科学研究センターに、ここではカニクイザルを用いた研究をしておりますけれども、封じ込めレベルがP3の研究施設を現在建設中でありまして、これは世界一の研究設備になる予定でありまして、これらを用いてこれからますます感染症のワクチン開発が進められるものと考えております。研究所全体としましても感染症のみならず、この疾患を含めた形でワクチンの研究開発をこれからますます発展させていきたいと考えております。
具体的な研究内容につきまして、アジュバント開発プロジェクトのプロジェクトリーダーであります石井より説明をさせていただきます。
○石井参考人 ここからは私、石井が話させていただきます。
まず、医薬基盤研究所のワクチン開発研究及び関連創薬支援が今までどういうふうに行われてきたかという経緯と、その後、このワクチン開発、それから創薬支援に関する課題、そして展望のお話を簡潔にさせていただきます。
まず、なぜ医薬基盤研究所がワクチンの創薬をしているのかということであります。その経緯をお話させていただきますと、以前ワクチン産業ビジョンが策定されましたが、それに基づき医薬基盤研究所は創薬支援の研究の中心になりましてワクチン開発研究のコンソーシアム、ワクチン開発研究機関協議会が発足しております。
この趣旨としては、先ほど申し上げましたようにワクチン産業ビジョンの理念に基づき、ワクチン研究開発を促進するというところで、日本のワクチン開発にかかる基礎研究を行う研究機関の代表及びオブザーバーとして厚労省、PMDA、細菌局、製薬協にお集まりいただきまして活動を始めました。そのときに、ワクチン開発の研究の方向性及び普及、そして関連機関への提案などを議論しまして話が進んだ経緯がございます。
時を同じくしまして、内閣府のほうから出されましたスーパー特区事業に次世代感染症ワクチンイノベーション特区としまして基盤研が中心となり、申請し、採択した経緯も同時にありました。そのときに、いわゆるオールジャパンということで、日本の感染症ワクチンの研究者及びそれに関連する企業、臨床機関、そして基準づくりに至る関係の方々にお集まりいただき、まさにワクチン開発研究のコンソーシアムが立ち上がったということになります。
この詳細は参考資料等を御参考にしていただきたいと思いますが、その中で特記すべき成果が基盤研の中からも出ております。そのうち、2つをお話させていただきます。
まず、霊長類医科学研究センターの保富センター長のお仕事ですが、いわゆる基盤研オリジナルとして新しい結核ワクチンの開発が進んでおります。これはスーパー特区に至るまでのサポートを受け、そしてリバースジェネティックス法によるいわゆる新しいベクター、ヒトパラインフルエンザ2型ウイルスということを開発されまして、その中で結核の抗原を組み込み、新たなワクチンを開発されました。
2010年に国際特許を申請された後、短期間でAERASという海外の機関のNPOになりますが、治験、GMP製造の段階、そして最終的には国内で新会社が設立され、同医科学研究センターの霊長類でのPOCも含めまして開発が進んでいる。新たな基盤となる成果が出たということになっています。
先ほど理事長のほうからお話がありました新しい施設の紹介が参考資料の15ページに載っておりますので御参照ください。
また、アジュバントはワクチンの開発において必須の重要なコンポーネントとして認識されつつありますが、我々基盤研におきましても新規の核酸のアジュバントの開発を進めております。
ここで特記すべきは、まずアジュバントの開発プロジェクトが中心となりまして、今までとは違うアカデミア治験チーム、英語でいいますとAcademic Research Organization 、AROを開設し、大阪大学の医学部附属病院、微生物医療研究所、そして治験薬の提供をしてくださる企業と連携をしましてAROを開設しております。そこで、24年度までに非臨床試験を終了し、PMDAに治験前相談、25年、ことしの7月からですが、日本初の新規核酸アジュバント入りのワクチン、これはマラリアのワクチンになりますが、健常人に対する医師主導型の第 1相を今年度以内に終了予定であります。
そこにおきまして、いわゆる小さなバイオベンチャーによる核酸のGMPロットの作成、そしてまた日本初のアジュバントの臨床試験、そして大阪大学にとっては初の健常人に対する医師主導型治験というところが始まっておりまして、これも成果の一部として紹介させていただきます。
また、医薬基盤研究所におきましては、開発研究の支援としましてワクチン開発のみならず審査行政への貢献を目指しております。その成果の一部をお話させていただきますと、まず感染症の予防のワクチンの臨床試験、非臨床試験のガイドラインを前山西理事長が代表の研究班として議論しまして、そのガイドラインを発令するに至っております。
また、2011年にはパンデミックインフルエンザに備えたプロトタイプワクチンの開発に関するガイドライン、昨年度におきましてはWHOにおけるアジュバント入りのワクチンのガイドラインが、現在パブコメを募集している最中でありますが、ここにもPMDAの担当者とともに深くかかわらせていただいた経緯がございます。
最近になりまして、基盤研ではさらに新たなコンソーシアムを立ち上げ、次世代アジュバント研究会というものを発足させております。これは、先ほど申し上げましたようにワクチンの創薬の一端としてアジュバントは非常に重要ですが、日本で集まる会がないということでこれもアカデミア、製薬企業、ワクチンメーカー、バイオベンチャー、そしてPMDAの担当者にも毎回参加いただきまして、最初は勉強会を兼ねた会で、その後に厚労省の指定研究としまして特に安全性のバイオマーカーを探索するということで、アジュバントのデータベースプロジェクトというものが立ち上がっております。これは、参考資料の10ページに一部紹介させていただいております。
このような経緯で、医薬基盤研究所が短期間にワクチンの開発研究に携わることになりました。我々は現在、医薬基盤研究所におきましてワクチン開発研究、それから関連創薬支援におきましてどのようなことを課題とし、その後、展望、今後の戦略を考えているか、御紹介させていただきます。
まず、「「ワクチン開発研究および支援」における現状と課題」でありますが、実はこの抽出作業は幾度も行われておりまして、その紹介として参考資料の4ページにHSレポートのNo.66、規制動向調査報告書というものを紹介させていただいています。
これは非常にいい報告書でありまして、詳細は省略しますが、その下のスライドにあります、まさに8つの提言が先ほど製薬協のほうからもお話がありましたが、日本のワクチン開発研究における課題を非常にうまく抽出されていると考えております。
それに加えて、我々は現在その課題としまして、ここにいらっしゃる皆さんには釈迦に説法になりますが、ワクチン開発研究はたとえ治療薬があっても感染症対策としては必須である。どちらかを選ぶという形にはならない。それから、開発から行政までまさにグローバルな対応が求められていまして、オールジャパンという名前は聞こえがいいですが、オンリージャパンになってしまう危険性もございます。そういう意味では、グローバルな対応が非常に重要になります。
その次の3番、4番は感染症の話に特化しておりますが、ワクチンの開発研究となりますと実は感染症の枠を超えて広がっておりまして、これは創薬の手段として低分子、中分子、高分子、細胞等々ありますが、生物製剤の一翼を担うワクチンは実は感染症以外の疾患に関しても創薬の手段として非常に強い広がりを現在世界じゅうで見せております。
また、その下側になりますが、単独のチームでのワクチン開発はアカデミア、企業ではほとんど不可能になってきているということも非常に重要な課題となります。我々が考えていますのは、まさに製薬協でもお話がありましたが、産学官連携のもと、ワクチンのデザイン力、研究力プラス予算を結集しまして、ベストであるのは一つ屋根の下の施設ができるのが好ましい。
これはなぜかと申しますと、こういう場合はプロダクトが育つ以外に人材が育つということが非常に重要ですので、一つ屋根の下がベストではないかと考えていますが、なかなかそうもいかず、基本的にはバーチャルなコンソーシアムをただ立ち上げることによりましてプロダクトは育つであろう。繰り返しになりますが、ワクチンの開発研究チームがあってもファンドがない場合は、いわゆる後で述べます死の谷を越えられないということが明確になっておりますので、これをお話させていただきます。
まずその次のスライド、6ページの下になりますが、「基盤研が想定する次世代ワクチン開発研究のイメージ」があります。これは、まずワクチンを開発するには防御抗原が要る。そして、デリバリーベクタープラスアジュバントがコンポーネントとして必須になってきております。これはアカデミアでもつくれますが、実は開発に向けてきちんとGMPのロットをつくれる開発、製造のチームができることが必須となります。
その長い開発研究期間の中、重要研究領域であります、もちろんターゲットの疾患の研究者、ヒトの免疫の研究者、そして免疫・ターゲットの相互作用の研究者がバックアップする必要があります。そのチームの中には連携分野とありますが、臨床情報を持った分子疫学をされている方、インプットのスクリーニングをされている方、トキシコゲノミクス、それからバイオインフォーマティックス、この辺りは必須になります。また、生体イメージングやDDS技術、その上にも書いてありますが、霊長類を用いたヒト外挿試験等もほとんど必須のものになっております。
その次のスライドを見ていただきますと、基盤研は小さな研究所ではありますが、そういう目で見ますとこの基盤研自体で行っている研究、それから後で説明があります創薬支援戦略室等のサポートがあれば大体のことはカバーできているということが言えるかと思います。その他にもたくさんプロジェクトがありますが、その紹介は参考資料を御参照ください。
また、後ほどお話がありますが、新たに立ち上がりました創薬支援戦略室との連携も非常に重要だと考えております。その理由は、ワクチンができても、その後アカデミアがちっともおもしろいと思わない非臨床試験、そして臨床試験のほうが実は非常に重要であります。そのいわゆる死の谷を埋めるためのプロセスを、ぜひ基盤研が総合してサポートしたいと考えております。
それで、ワクチンに限っていいますと抗原アジュバントの最適化、POCの獲得を下の3つの項目に関してアカデミア、基盤研究部、戦略室が総合してサポートしつつ、その後、製剤化、臨床試験に至るときにはファンドはもちろん必要でありますが、戦略室が主体となって開発をサポートするということを考えております。
私のほうの担当部分は、以上でございます。
○楠参考人 続きまして、研究振興部の楠のほうから、医薬基盤研究所におけますオーファンドラッグ・オーファンデバイスの研究開発促進制度について御説明させていただきます。
オーファンドラッグ・オーファンデバイスは御承知のとおり、患者さんの数が非常に少ない疾病を対象とした医薬品医療機器でございまして、これらのところは開発にかかる手間とか費用というのはそのほかの高血圧とか患者さんの多い疾病と同じだけのものがかかるんですけれども、開発して販売に至ったところで患者さんの数が少ないということで市場規模が非常に小さいということで、企業が開発を絞る。そういった促進制度を国としてやるということで、日本では平成5年にできた制度でございます。
制度の概要につきましては、8ページの上のスライドのほうにありますけれども、まず医薬品開発企業のほうから、これは希少疾病用医薬品に該当しますということを厚生労働大臣に対して認めてくださいということをお願いしてもらいます。厚生労働大臣は、薬事食品衛生審議会の意見を聞きまして、これが希少疾病用医薬品であるということを認定いたします。
そこから、我々のほうの研究開発促進制度がスタートいたしまして、基盤研では助成金の交付、指導助言、それから税制控除を受けるための試験研究員の認定の業務を行っております。また、PMDAでは優先審査、審査期間の短縮、それから厚生労働省におきましては再審査期間の延長、手数料の軽減といったような優遇措置を行っております。
8ページの下でございますけれども、これらの制度を利用しまして平成5年から平成24年度、ことしの3月31日までに希少疾病用医薬品として指定された品目が300品目、医療機器が23品目ございます。これらの中で、基盤研のほうに助成金の交付をしてくださいというお願いがあったものが約半数に当たります。医薬品で152、医療機器で14、そのうちこれまでに承認されたものは約6割に当たります医薬品で95、医療機器で6品目となっております。
これらの300品目の全ての一覧は、基盤研のホームページにおいて公開をしておりますので御参照いただければと思います。
続きまして9ページの上でございますけれども、ではワクチンについてはどうなっているかということでございます。新型インフルエンザが起きましたときに、当時ワクチンのほうは医薬食品局の血液対策課が所管をしておりまして、医薬食品局長からパンデミックなインフルエンザが起きたときには確かに患者数は増えるけれども、起きる前は患者はゼロだろうということで、新型インフルエンザワクチンに関しては希少疾病用医薬品として申請することができるというような見解が出されまして、9ページの上にあるような品目がこれまでに新型インフルエンザワクチンの中で希少疾病用医薬品の指定を受けたものでございます。
これらのうち、左から4つ目のカラム、助成期間のところに数字が入っているものが、これまでに基盤研のほうで助成を行ったものでございます。平成22年以降のものについては数字が抜けておりますけれども、平成22年以降のものは厚生労働省のほうで別にワクチン製造に対する助成金の制度ができまして、22年~24年まで3年間、これは基盤研の助成金とは重複して助成を受けることはできないというふうな仕組みになっておりまして、この22年~24年のものについてはそちらのほうの助成を受けたということで基盤研では助成をしておりません。
ただ、この制度が25年3月31日で終わりまして、下の2品目につきましては今年度、開発企業のほうから基盤研に対しまして助成金交付の申請がございまして、先週末に助成金交付決定通知書というものを企業に対して発出したところでございます。
これらの品目のうち、右から3つ目のカラムを見ていただきますと、その日付が入っているものがめでたくこれまでに製造承認を受けて上市されたものでございまして、開発中といった6品目については現在開発中というような状況でございます。
私からは、以上でございます。
○榑林参考人 それでは、引き続きまして創薬支援戦略室について説明差し上げます。
この創薬支援戦略室と申しますのは、本年度予算の成立を受けまして創薬支援ネットワークの本部機能を担うものとして平成25年、本年の5月16日に医薬基盤研究所に設置されました新しい組織です。
まず、この創薬支援ネットワークについて簡単に説明差し上げたいと思います。この事業は文部科学省、経済産業省及び厚生労働省による健康医療イノベーション推進のための府省横断的なプロジェクトでございます。具体的には理研、産総研、医薬基盤研、それから創薬技術基盤を保有する大学等がオールジャパンでネットワークを構築し、日本で欧米諸国に比べると弱いと言われているアカデミア型創薬を強力に支援するというものでございます。
1つミスタイプがございまして、コラボレーションの「協力」となっておりますが、これはストロングということの「強力」でございます。御訂正をお願いいたします。
こういったネットワークを構築してアカデミア創薬を支援することによりまして、優れた基礎研究成果を医薬品としての実用化に確実につなげていくということが、この創薬支援ネットワークの目標でございます。
これまでそのスタッフの採用を進めてまいりましたが、最終的に今年度の上半期末までには約30名の創薬エキスパート、これは製薬会社で実際に創薬プロジェクトにかかわった豊富な研究開発の経験を持つ者としておりますけれども、こういった方々の採用を目指しております。この創薬支援戦略室、日本初の本格的な公的アカデミア創薬の支援組織として製薬協等、関係各方面から大きな御期待と御支援をいただいているところでございます。
次に、1枚めくっていただきまして創薬支援ネットワークの概要、これはどんな形でこの事業を進めていくかということのポンチ絵でございます。
左下に「国内大学等で生み出された優れた創薬シーズ」といったものを四角で囲っておりますが、こういった基礎研究の成果を医薬基盤研、理研、産総研及び大学研究機関等が支援をして、実用化あるいは医師主導の治験、企業導出といったものの出口に向けて切れ目なく支援をしていくという体制を構築いたします。
スライドを1枚飛ばしまして、次に最後の「創薬支援ネットワークの支援対象」といったスライドを開いていただきたいと思います。まず、これは創薬支援ネットワークの支援範囲、機能範囲を示したものでございます。私ども、支援の対象としておりますのは、First in Class創薬の支援でございます。創薬といっても、いろいろなスタイルがあるわけなのですけれども、企業さんで行う創薬研究開発のプロモーションと、私どもが行うものはここで区別をする。まずアカデミア創薬であるということと、それからその中でもFirst in Class創薬を目指したものに注力したいと考えております。
支援の対象とするモダリティーですけれども、これは低分子化合物、天然物化合物といったオーソドックスなものから、抗体あるいは今後感染症予防に加えましてさまざまな疾患の治療への応用展開が期待されておりますワクチンにも力を注ぐ予定でございます。
これ以外に、新しいモダリティーとしては核酸、細胞等が期待されておりますけれども、こういった新しいチャレンジングな創薬プロジェクトも積極的に支援をしていきたいと考えております。
支援を対象とする疾患領域でございますが、これは国が定めるところの重点8領域としております。すなわち、がん、難病・希少疾病、肝炎、感染症、糖尿病等々でございます。
創薬研究は基礎研究から臨床研究までさまざまなステージで構成されておりますけれども、私どもが支援の対象とするのは主に探索、標的選択から前臨床試験といったいわゆる応用研究と呼ばれるステージのもの、これを中心に切れ目のない技術・戦略両面での支援を行っていきたいと思っております。
1つ戻りまして、「創薬支援ネットワーク協議会」というスライドをごらんになっていただきたいと思います。これは、この事業、創薬支援ネットワーク、それから創薬支援戦略室、医薬基盤研究所でございますけれども、これと国の各機関との関係を示したものでございます。ネットワークの所管の協議会といたしましては、関係府省の局長級で構成されます創薬支援ネットワーク協議会がございまして、その上には内閣官房健康医療戦略室がある。このような構造になっております。
以上、私から創薬支援戦略室について説明差し上げました。
○庵原部会長 どうもありがとうございました。
そうしましたら、今、説明がありました医薬基盤研と、それから製薬協の発表に関しまして、何か御質問がありましたらお願いしたいと思います。どうぞ。
○三村委員 製薬協の発表について質問させていただきます。
「日本におけるワクチン研究開発の課題」という8枚目のもので、大変興味深いお話なのですが、実はちょっと確認させていただきたいのは、インセンティブの働きにくいということの中で市場規模が小さい。この辺りは非常によくわかりますが、市場規模予測が困難である。それから、定期接種・任意接種により売り上げは大きく異なるという話がございます。
どちらかというと、こちらは感染症対応のワクチンを前提としてお書きになっていらっしゃると思うのですが、売り上げが大きく異なるという言葉の意味は、例えば需要の変動性とか不安定性が非常に高いものと、そうではないものとある。市場規模が小さくても、やはり一定の需要変動がある程度安定的に見込まれるものと、そうではなくて非常に需要の変動性が高いものでは、例えば市場規模が大きくても意外となかなか企業として取り組みにくいところがあると思いますので、その辺りを意識されているのかどうか。
そしてもう一つ、そこからいきますと、定期接種と任意接種によるというのは大変重要な条件だと思うのですが、全てが定期接種になるというわけではないかもしれないと考えますと、10枚目のスライドに「成人の予防接種スケジュールの策定」とあります。この場合は多分任意接種ということだと思うのですけれども、その場合のスケジュール化というのはどのような程度の条件整備があるといいのかということについて、もしお考えがありましたらお願いいたします。
○上田参考人 まず、定期接種、任意接種によって大きく異なる。市場予測が困難というのは、例えば任意接種であれば予測が困難という意味合いもあれば、将来定期になるのか、任意になるか。これがわからなければ高くなるか、低くなるか。定期だったら高い、任意だったら低いということを意味しています。
それで、当然全てのワクチンが定期接種、公的なお金で接種されることにはならないとは思うのですが、9ページのほうにも書いているのですが、定期接種化のプロセスの明確化、どのようなものであればどう判断されて定期接種になっていくのかというところがわかれば、そこはより確度の高い推測ができる。こういった効果のあるワクチンであれば、例えば定期接種を通して認められる可能性はあるだろう。だから、高く市場は読めるから、開発費が大きくてもそれは回収できるだろう。そういった意味で書いております。
○庵原部会長 どうぞ、三村委員。
○三村委員 今のお話は、明らかに開発というところに前提を持っていらっしゃるんですけれども、いわゆる上市されて生産と認識されてくると、恐らくそこにおける一種の需要変動の予測性とかという話ももう一つ入ってくると思っております。
あくまでも開発というところでは確かにそのとおりだと思うんですけれども、需要変動的なものが大変高い分野とそうではない分野となってくると、一種の収益基盤の安定性というものが出てくるかと思いまして、それについてお願いいたします。
○上田参考人 それは研究開発とは少し違う規模になると思うのですが、生産ということになれば、その生産計画をどのように立てるか。需要をどのように読むかというところでその計画を立てていく。そこの話については、今回はフォーカスして話をしておりません。
○庵原部会長 ほかによろしいですか。どなたか御意見ございますか。
では、まずは伊藤委員からお願いします。
○伊藤委員 製薬協の方にですが、ワクチン以外の医薬品のことを考えますと、例えば糖尿病薬にしても医師とか一般の方々に対する様々なニーズの掘り起こしをして、その上で研究開発をし、かつ啓発をしながらつくっていく。それに対して、今お話をされていることは、行政からニーズがあれば私どもはやりますけれども、そうでなければやりませんというふうに聞こえてしようがないのですが、そういう体質は今後変えていく予定はあるのでしょうか。多分、皆、共通して考えていることではないかと思います。
もう一つはいろいろなリスクというのは実験動物と違ってヘテロな患者さんを対象にすると、全ての人に安全なワクチンができるはずはない。そういう意味でリスクとかをきちんと説明するというのは、やはりかかりつけの先生方をはじめとして医師が先頭に立ってやらなきゃいけないのだろうと思っているのですけれども、そういったことに対する取り組みが製薬協として不足しているように見えるのですが、今後そういった取り組みがされていく予定があるかどうかを教えていただけますでしょうか。
○上田参考人 まず1点目の、定期だったら開発するけれども、任意だったらやらない。決してそういうことを言っているわけではありません。開発を始めるときには、将来どういった市場予測、売り上げがあってというふうなことを考えて、それで開発費がどれだけ必要か。
企業として当然、各企業は国に対して必要なワクチンを供給したいという思いがあるんですが、やはり企業の中の意思決定として開発に必要な費用がどれだけで、将来それを回収するのにどれくらい期間がかかる。そういったファクターも非常に重要であると言わざるを得ないというのが実情であるということです。
繰り返しになりますけれども、将来の予想をするときに定期接種になるのかどうか。それを予想するときに、どういったプロセスで定期接種に定められるのかということがわかっていれば、そのワクチンのプロファイルを考えたときに、それに該当するのかどうかということがある程度予想がつくという意味です。
それから、2点目ですが、当然おっしゃるところ、副反応あるいは有害事象、副反応というものはつきものである。これは全ての医薬品でもそうですが、ワクチンも例外ではありません。ワクチンで特にこれが重要になってくるというのは、健常人に対して用いるという点です。そこに対しては、ワクチンを接種することによってその副反応がどのような確率で発生する可能性があるのか。あるいは、仮にワクチンを接種しなかったときにどのようなリスクが待っているのか。そういったワクチンの正しい理解を促すということは、非常に重要と思っております。
それで、回答になるのですが、製薬協としては国民に対する正しい理解を促すということが重要と考えておりまして、本年度ですが、メディアを対象にしてワクチンに関する講演会、メディアフォーラムを開きました。それで、メディアの方が正しく理解することにより、正しく新聞あるいはテレビ等で報道することによって、国民が正しく理解できる環境を生み出したい。そういうふうなことを考えて実施しました。こういった取り組みは、これからも継続してやっていきたいと考えています。
○庵原部会長 では、坂元委員どうぞ。
○坂元委員 川崎市の坂元でございます。
1つお聞きしたいのですが、今、伊藤委員からもありましたように、定期接種化されないとなかなかその開発が難しいという場面で、以前からワクチンそのものをいわゆる医療保険でみられないかという議論を自治体の中で繰り返し議論はしてきた。
その1つの理由としては、やはり今、予防接種が自治体固有の業務になっていて、自治体の垣根をなかなか越えられないといういろいろな問題がある。自治体によって料金が違う。自治体によってプロモーションが違う。いろいろな問題がある中で、医療保険化すれば例えば残りの自己負担を自治体が独自の予算で見ていくことが可能じゃないか。
そうすれば、仮に定期接種化できないワクチンも医療保険で見ればそれなりのインセンティブが働くのではないかということで、自治体としてはそういう議論をしてきた中で、製薬協としてはワクチンの医療保険化についてどのように思われるか、御意見をお伺いしたいと思います。
○上田参考人 可能性の1つとしてはあると考えておりますが、十分な議論を製薬協内では行っておりません。
可能性の一つとしてはある。ただ、そもそももっと違う形もあるのではないかと考えています。
○庵原部会長 私から基盤研に聞きたいんですけれども、今ワクチンを開発するターゲット、ディジーズバーデンとかいろいろなことを考えているようですが、現在結核のワクチンとかマラリアのワクチンとか開発されていますけれども、基盤研が目指しているワクチン開発のターゲットというのはグローバルな視点ですか。それとも、日本の視点ですか。
その辺りも含めて、今ワクチンの開発のどの辺りを目指しているか。基盤研の中でコンセンサスみたいなものがありましたら教えてください。
○石井参考人 私の個人的な意見も少し入りますが、基本的に基盤研のスタンスとしてはメディカルシーズとメディカルニーズがあって、それに対する創薬の手段として低分子や高分子、細胞も加えた形でワクチンの両方が成り立つかというような考え方で創薬支援を行っていく予定です。
つまり、メディカルニーズが感染症の中のVPDであればもちろん創薬の支援になりますが、それ以外のこともワクチンの療法として考えております。そういう意味では、少し考え方が違うかもしれません。
○庵原部会長 ということは、感染症だけではなくて、後で述べられたいろいろな疾患に対してのワクチン療法というものを加味して開発を進めておられるということですか。
○石井参考人 そうです。それはこの資料にも示させていただきましたが、感染症に関しては感染症の疾患一つ一つに対して、ワクチン開発は私は必須だと考えています。
○庵原部会長 ありがとうございました。
それでは小森委員、次に山口委員お願いします。
○小森委員 日本医師会の小森でございます。
医薬基盤研究所の御発表でお聞きしたかったのですが、いろいろ取り組みをされて実際に成果も上がっているということで敬意を表したいと思いますけれども、逆にいうとまた見えてきた問題点、課題で幾つか御説明になりましたが、ブレークスルーするために一番何が問題だと思っていらっしゃるのかということだけポイントを1つ、2つくらいお聞かせいただければと思います。
○石井参考人 それは、技術的なところでしょうか。
○小森委員 技術的、あるいはつまりトランスレーショナル・リサーチとして実際に成果をさらにブレークスルーしていくための一番の課題はどこかということです。
○石井参考人 まず技術的なところでいいますと、ワクチンの開発は以前の病原体を弱毒化してワクチンにするという経験的なところから、現在分子生物学、免疫学等で分子のレベルの設計ができるようになりました。そういう意味でのブレークスルーとしては、図にも示しましたようにデリバリー、アジュバント、抗原探索能力が非常にブレークスルーとしては重要です。
ただ、もう一つ非常に強い思いで課題として述べさせていただいたのは、その後、いわゆる企業として開発するインセンティブといいますか、それとは別にアカデミア・リサーチ・オーガニゼーション等の、つまりアカデミアン・ドリブンなワクチン開発におきましては、やはりワクチンデザイン力を持ったチームがいない。そして、ファンドがない。つまり、開発予算がないという2点が非常にブレークスルーが必要な点と申しますか、そう考えております。
○小森委員 そうしますと、1番の問題点はDNA等の関連について諸外国に先行されているというような知的財産権の問題もあると思いますけれども、もう一つは国としての応援、財政的な支援、あるいはまたファンドをつくるメカニズムをしっかりしていく。こういう理解でよろしいでしょうか。
○石井参考人 1つ追記させていただきますと、欧米でも例えばマラリアや結核やHIVに関しましては製薬企業が開発しているとはいえ、そのほとんどのファンドがNPO等の公的なものを使っています。そういう意味では、これは利益がどうこうというインセンティブとは別に開発が進んでいる理由でもあります。
○庵原部会長 山口委員、どうぞ。
○山口委員 製薬協と基盤研に、それぞれ1つずつ質問させていただきたいと思います。
まず、製薬協の御説明で最後のスライドですけれども、「細胞培養法ワクチン実生産施設整備等推進事業」という国の大規模な支援を得てつくられたわけですが、その中の適正なフォローアップが必要という話ですけれども、1点目として整備された生産体制の維持のための新しい政策、これは国からこういう支援が欲しいというお話なのか。それとも、先ほどちょっとお話がありましたけれども、これそのものが細胞培養ワクチンでパンデミックなインフルエンザワクチンを主に生産する設備ですけれども、それ以外に多数の開発が進めば、それが施策として生きてくるという話なのかという点についてです。
○上田参考人 恐らく前者のほうだと思うのですが、細胞培養の施設を維持するのには年間多額の維持費が必要になってきます。それで、それを維持していかないと、いざパンデミックが発生してワクチンを製造するときにワクチンを製造できない。あるいは、ワクチンを製造するために、例えば培地などの原材料というものも保管しておくということになれば、これについてもやはり有効期限があったり、いろいろなコストがかかってくる。
それで、メーカーに国の危機管理を任せているという状況は必ずしも安定した確実な方法ではない。あるいは、企業の負担というものがかなり大きい部分があるということです。当然、企業としてもこの設備を使って新たな、先ほども言いましたように細胞培養を用いてつくるような新しいワクチンもございますので、そういったものに応用していくというふうな努力も当然必要と考えています。
○山口委員 ありがとうございます。
それと、基盤研のほうに御質問させていただきたいんですけれども、ワクチン開発、感染症のほうが主になるでしょうが、日本で少し個人的に思っているのはアジュバントの開発が非常におくれているのかなという気がしております。
それで、先ほどの説明でも、石井先生がもとからすごくアジュバントの開発をされていることはよく存じ上げているんですけれども、正直言って石井先生以外は日本というのはアジュバントの開発が全般的におくれているのではないか。その辺が基盤研だけでというか、それぞれどういうふうな日本でのアジュバントの開発というのが行われているか。それをどういうふうに今、評価されているのかを教えていただければと思います。
○石井参考人 ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりでありまして、それが理由になりまして平成22年度に次世代アジュバント研究会というものが発足しております。
このアジュバント開発がおくれている理由は、昨今のワクチンの副反応の問題等も無視はできない点だとは思いますが、逆に免疫学の研究からするとアジュバントなしではワクチンはできないという一方のドライブフォースもあります。
その上で考えますと、日本はいわゆる技術として非常に強いものをお持ちの方が多いと思うんですが、それがどうしても創薬に結びついていないという現状がございました。その意味でも企業と、それからPMDAの審査の両方に加わっていただきまして、安全性に最も注力を置きつつ、開発の裾野を広げていくという活動は行わせていただいております。
○庵原部会長 さまざまな意見があるかと思いますけれども、ちょっと時間が押していますので、この辺で製薬協と基盤研への質問は終わらせていただきます。
ただ、これは大事なことですので、予防接種基本計画の取りまとめに向けて、またポイント、ポイントをつかんで今後の課題として取り上げていただければと思いますし、また必要時に基盤研とか製薬協の方をお呼びすることがあるかもしれませんけれども、そのときは御協力よろしくお願いいたします。
この辺りまでは非常にベーシックな話ですけれども、今から現実的な話に入りたいということで、議題2の(3)の「予防接種推進専門協議会からのヒアリング」ということで、岩田参考人と岡田参考人、よろしくお願いいたします。
○岩田参考人 よろしくお願いいたします。予防接種推進専門協議会で委員長をしております慶応大学の岩田でございます。
本日は、今後、「開発を期待するワクチンについて」ということで、予防接種推進専門協議会から意見を述べさせていただくわけですけれども、この予防接種・ワクチン分科会に予防接種推進専門協議会として参加するのは今回初めてということで、まず最初に私のほうから簡単にこの協議会の概要について御説明させていただきたいと思います。
資料3-1をごらんください。この協議会は2010年の10月に発足いたしまして、亡くなられました国立病院機構三重病院名誉院長の神谷先生が最初に委員長としてつくられました。亡くなられた後は、私が引き続き委員長をさせていただいております。
参加学会はスライドの1に示した14学会で、日本小児科学会、日本小児科医会、日本小児保健協会等、小児系の学会、それから日本産科婦人科学会、日本呼吸器学会、日本渡航医学会等の成人が主に入っている学会、それからウイルス学会、ワクチン学会、感染症学会、細菌学会、環境感染学会等の感染症関連の学会と、臨床、基礎を含めましてワクチンと関連する14学会が参加してございます。
当初設立された目的は、2枚目のスライドにございますように、予防接種制度を見直して、小児、成人に必要な予防接種を国内で有効に接種できる体制整備に貢献するということで、米国のACIPのような組織を構築していくというようなことを目標にしておりました。
そういうようなことを目標に、裏を返していただいて3枚目のスライドですけれども、これまでいろいろな声明とか提言とか要望を提出してきております。中には、日本医師会様と共同のキャンペーンを行ったり、あるいは予防接種に関する評価・検討組織に関する提言を行ったりということで、これまでやってまいりました。
この4月の予防接種法の改正で、新しい予防接種に関する評価・検討組織も整備されましたので、今後我々はアカデミアの代表としてこういった意見をまとめることができると思いますので、今回は開発を期待するワクチンについてということで意見をまとめてまいりましたけれども、アカデミアからの意見を述べていくことで予防接種に関する評価・検討組織にいろいろ協力をしていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
それでは、引き続きまして岡田のほうから「開発を期待するワクチンについて」、述べさせていただきます。
○岡田参考人 資料3-2をごらんください。予防接種推進専門協議会から、これは先ほど岩田委員長が御説明を申し上げましたように、14学会の予防接種委員会がある学会もあれば、予防接種委員会がない学会もございますけれども、それぞれの学会から今回アカデミアとして開発を期待するワクチンについてという意見を募集しまして、このような形でまとめさせていただいています。
まず、最初に「混合ワクチン」として、麻しんワクチンベースとしては御存じのように今、国内ではMRワクチンがございます。それにおたふく風邪ワクチンであったり、水疱瘡ワクチンであったりするようなMMR、あるいはMMRV、それからMRVというような麻しんワクチンベースでの混合ワクチンを期待したいという意見がございました。
裏をめくっていただいて、2ページ目は混合ワクチンの中でDPTワクチンベースでございます。これは後で議論があると思いますけれども、現在、不活化ポリオワクチンを含めた4種混合ワクチンが日本国内で利用できますが、それにHibのワクチンであったり、B型肝炎のワクチンであったり、海外で使われています6種、あるいは7種混合ワクチンとして、この理由は学会の委員会からいただいたそのままの言葉にしておりますけれども、これは多くの皆様が御存じのように、例えば接種回数が減りますし、接種率が上がってそれぞれの疾患の減少につながるというのが一番の目的だろうと思いますし、医療安全の観点からも混合ワクチン化をしていくメリットがあるということだろうと思います。
それから、(3)番目の「その他」としては渡航医学会からもありますし、渡航用のワクチンとしてもございますけれども、A型肝炎とB型肝炎の混合ワクチンというのが開発を期待したいワクチンでございます。
2番目は「渡航者ワクチン」として、これは先ほど岩田委員長から御説明がありましたけれども、グローバルな視点としてはこのようなワクチンが望まれるのではないかということで、今、国内にある狂犬病のワクチンであったり、コレラのワクチン、それから髄膜炎菌のワクチンと腸チフスのワクチンは少し承認申請が出されていると伺っています。あるいはダニ媒介脳炎であったり、デング熱、それから先ほど基盤研からございましたようなマラリアのワクチンなどが、渡航者用のワクチンとして開発を期待したいというワクチンでございます。
続いて、3ページ目をごらんください。3番目に「現行ワクチンの改良」を望みたいという意見がございまして、それぞれのワクチンでございます。
1番目の結核のワクチンは、現行のBCGは重症の結核を防ぐということではかなり効果を示していますけれども、肺結核に関してはなかなか効果がいまひとつということもあって、結核感染を予防できるワクチンが必要ではないかという御意見がございました。
さらに、百日咳では御存じのように成人対策が必要で、これは喫緊の課題でございますし、日本だけではなくて世界からも百日咳ワクチンを改良しないといけないということが言われています。
続いて、インフルエンザワクチンはここの理由のところに書いてありますけれども、例えば4価のワクチンであったり、もっと効くワクチンをという話もございますし、先ほど出てまいりました組織培養インフルエンザワクチンを早くということ、それから経鼻のワクチン、高齢者用のワクチンであったり、今、開発が進んでいます全粒子のワクチンを早くというような希望がございます。
続きまして、同じように下にいきますと、おたふく風邪ワクチンはどうしても無菌性髄膜炎の合併率というのが問題になりますから、ジェリルリンと同じくらいの低い無菌性髄膜炎の率のワクチンが欲しいということもございますし、肺炎球菌ワクチンは13価ということが承認されたと伺っていますけれども、莢膜ワクチンだけではなくて共通抗原としてのタンパクワクチンも欲しいというアカデミアからの要望でございます。
B型肝炎は一番下にも一緒にありますけれども、もうちょっと免疫原性が高いワクチンができないか。VLPを用いるなどして、免疫原性を上げてほしいという要望がございます。
それから、子宮頸がん予防ワクチン、ヒトパピロマウイルスワクチンはアメリカなどで今、男性への接種が進んでいますけれども、日本国内でも男性への接種適応拡大。
それから、水疱瘡のワクチンは帯状疱疹ワクチンとして成人用のワクチンとしてできないかということがございます。
最後に、4ページ目をごらんください。4ページ目は「新規ワクチン」として、これはたくさんのワクチンの候補があって、一番意見が多かったのはRSウイルスに対するワクチンでございますし、さらに疾病負担が非常に多いノロウイルスのワクチン、それからグローバルな視点で進んでいますHIVのワクチン、ヒトパルボウイルスB19ワクチンであったり、サイトメガロ、単純ヘルペス、C型肝炎ウイルスワクチン、EBウイルス、エンテロウイルス71、マイコプラズマ、MRSA、A群溶連菌、B群溶連菌、それから感染症以外のこのような非感染性疾患に対するワクチン開発なども要望したいというのが、予防接種推進専門協議会から学会に参加している14学会からいただいた意見でございます。以上です。
○庵原部会長 ありがとうございました。
次に、資料3-3を事務局のほうから説明をお願いします。
○今井室長補佐 ことしの5月から6月にかけまして、結核感染症課から日本ワクチン産業協会加盟の17社に、国内で開発されることが重要と考えられるワクチンと、その理由について照会いたしました。12社から回答をいただきまして、この資料3-3はそれを結核感染症課のほうで取りまとめたものでございます。
開発が重要と考えられるワクチンとして、小児用混合ワクチン、渡航者用ワクチン、ノロウイルスワクチン、学童期以降のブースターワクチン、HIVワクチン、RSVワクチン、サイトメガロウイルスワクチン、結核菌ワクチン、インフルエンザワクチン、例えば改良したものですとか季節性の経鼻ワクチン、万能型インフルエンザワクチンといったもの、HPVワクチン、肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチン、単純ヘルペスウイルスワクチン、院内感染予防ワクチン、黄色ブドウ球菌ワクチンが挙げられております。
○庵原部会長 ありがとうございました。
まず、今、資料3-1、3-2、3-3に関しての質問をまず受け付けまして、それが終わりましたら総合的に今後日本が開発すべき優先度の高いといいますか、議題2の4のほうへ進んでいきたいと思います。
では、まずは質問ということで細矢委員お願いします。
○細矢委員 予防接種推進専門協議会に質問したいんですけれども、14関連学会団体から要望があったということですが、たくさんのものが挙げられています。
ただ、やはり優先順位というのがあるんじゃないかと思うんですけれども、このワクチンの中で特に要望が多い、緊急的に必要だ、あるいは重要だといったものについて教えていただければありがたいです。
○岡田参考人 御質問ありがとうございました。
優先順位を本当はつけたかったんですけれども、それぞれ全て挙げてほしいというふうな形で言っていないのと、例えば委員の数であったり、それから挙がってきた数が全て均一ではありませんから、これを単に足し算しただけで一番優先順位が高いワクチンかどうかという議論がまとめられていなかったというのが実情でございまして、そのまま挙げているところで、もちろん重なったワクチンもございますけれども、どれが一番よく重なっていたかというのは今の段階ではよくわかりませんが、重なっているものもたくさんございました。
○庵原部会長 ありがとうございました。続いて、どうぞ。
○細矢委員 そうしますと、事務局のほうでまとめたこの意見は製薬協のほうに聞いたということですけれども、これも特に優先順位というのはついていないということですか。
○今井室長補佐 回答いただいた数の多いものから、リストでまとめさせていただきました。
○庵原部会長 ほかにございますか。
では、山口委員どうぞ。
○山口委員 優先順位という点ではないんですけれども、資料3-2の3ページですが、インフルエンザのワクチンの中で4価ワクチンとか、あるいは細胞培養インフルエンザワクチンというのは鶏卵からこちらへ移行するとか、あるいは4価ワクチンを入れようとすると多分、今、生物基の改定とか、そういうことが必要になる。
逆に言うと、そういうことをクリアすれば割とフィージビリティーは高いのかなとちょっと思ったのですが、その辺についてはいかがですか。
○岡田参考人 ありがとうございます。そういうものも含めて、いろいろな開発が目の前にあるようなワクチンからそうでないワクチンまで、全部ひっくるめた形でそのままにしています。
意見を聞いたときに、開発が望まれるワクチンとしか聞いていませんから、もうちょっと詳しく聞ければよかったんですけれども、そういう形でしか各学会に聞いておりませんから、このように非常に種々雑多なものが出てきていると思います。
○庵原部会長 要するに、何かいじればすぐに出てきそうなものから、出てくるまでに10年、20年かかるものまで全部雑多で入っていますので、まとめるのはなかなか難しいかと思うんですけれども、ただ、現場がこういう要望であるとか、製薬協がこういう要望であるとか、こういう考え方をしているというところがわかっていただければ、これをいかに行政に、要するに目先のものをちょっといじるだけですぐに出るのでしたら1年、2年で出てくるでしょうし、いやいや、これはお金をかけてしっかりと研究費をつけてというのだったら10年ぐらいを見越した長期的な展望が要るでしょうしというところが全部に流れているのかと思っています。
そこで、この中から先生方、委員の方々から優先度が高いと思われるとか、その辺の御意見がありましたらということで議題2の(4)のほうに入りたいと思うんですけれども、何か御意見はありますでしょうか。
では、坂元委員からどうぞ。
○坂元委員 予防接種の定期接種をやっております自治体の現場としては、できるだけ多くの多価ワクチンが出るということは非常に望ましいということで、できるだけ現在、定期接種化されているものを多価でお願いしたいというのが自治体の現場でございます。
以前、自治体のほうからも同時接種というのがなかなか自治体としては規則化されていないので、保護者から問い合わせがあっても、それは先生の任意でお願いしますという形しか言えないという現状の中で、これだけ定期接種がふえてくる。
さらに、今、定期接種化されようとするワクチンが出てくる中で、もう多価ワクチンというものを出さないと、多分、現場は非常に混乱するだろうということで、この辺は定期接種化されているものを第一優先に自治体としてはお願いしたいと思います。
○庵原部会長 それでは、その次に細矢委員どうぞ。
○細矢委員 今の意見に全く賛成なんですけれども、例えばHBVを考えるとか、あるいはMMR、MMRVを考えるということになると、定期接種化されていないワクチンというのが入ってきます。
こういったものについて、例えば製薬協のほうでは定期化されていないものを混合ワクチンとして開発するということは可能なのかどうか、製薬協にお聞かせいただきたいと思います。
○上田参考人 先ほどの議論の中で、任意接種であれば開発できないという意味ではございません。答えは、可能性はある。混合ワクチンの重要性というものは、会員会社のメンバーのほうでも同じような認識があると思います。
それから資料3-3ですが、これは日本ワクチン産業協会の会員17社に照会したということで製薬協、一部会員はオーバーラップしますのでほぼ同じだとは思いますが、少し違うのでコメントさせていただきました。
○庵原部会長 では、小森委員どうぞ。
○小森委員 予防接種基本方針部会の構成員の一人として、前回の議論でも最も急がれるワクチンはそこにも書いてございますように、ジェリル リン株と同等か、さらに低い。このワクチンが最も急がれるワクチンだと思っておりますので、そこを特に強調しておきたいと思います。
○庵原部会長 ムンプスワクチンの開発ですね。ただ、生ワクチンを今から開発すると20年ぐらいかかると私は思っているんですけれども、この場で開発経験者は、山口先生は余りかかわっておられませんか。以前、いろいろな人たちが水痘のワクチンの開発にかかわりましたけれども、10年、20年は見ておかなければいけません。
ただ、いい株が見つかれば、さっといくと思いますし、ムンプスは不活化ワクチンは効果がないというのは以前から出ておりますので、生でないと難しいということは確かです。
ほかに御意見ございますでしょうか。優先順位が高いということについて、これはこの場では皆、横並びみたいな感じもありますけれども、これが今ちょっと上田参考人とか基盤研の方が言われたディジーズバーデンをどう考えて、どれを頭に持ってくるかというところにかかってくるかと思うのですが、伊藤委員から何か御意見ございますか。
○伊藤委員 こんなところで言っていいかどうかわからないのですが、感染症ワクチンの臨床系の予防ガイドラインをつくった立場から申し上げますと、混合ワクチンは比較的簡単にいくはずだと思うんですが、その承認申請のハードルが高いということで製薬企業のほうが二の足を踏んでいらっしゃるような気がするんですね。
ですから、これはやはり国としてどうしても必要なものなので、承認申請のハードルをいじるというのはいかがなものかとも思いますが、ニーズと合わせて考えると、必要だというメッセージを出していくことが現場では必要なのではないかという気はいたします。
○庵原部会長 先ほどのインフルエンザの4価ワクチンに関しましても、基準をいじればという山口委員からの意見もありましたけれども、やはり新しいワクチンをつくるときに制約するものが幾つかありますので、どれが制約されているかというところを明らかにして、これだと簡単にクリアできますよとか、これだとちょっと時間がかかりますよとか、その辺の問題点がもう少し明確になればディスカッションしやすいかと思います。
まずは、この場で優先順位を決めるのはなかなか難しそうですので、製薬協のほうから出てきたのと、このワクチン、予防接種推進専門協議会に出てきたものの中で、どこをクリアすればいけるかとか、この辺は最初からかからなければいけないので大変ですよとか、その辺がわかるようなものをつくっていただけると、ディスカッションを今後しやすいかと思いますので、事務局は大変でしょうけれども、よろしくお願いします。
産科の先生などは今サイトメガロをものすごく重要視されていますし、ロタがクリアされた国は今後はノロが大事だといって出てきていますし、日本だとまだロタのほうが大事でしょうし、1つの病気がなくなれば次の感染症の重要性がかかってきたりとかということもありますので、その辺を整理していただけるとわかりやすいかと思います。
その他、追加で優先度が高いと言われているものはいかがですか。
そうしましたら、事務局には申しわけないんですけれども、この辺は早くできるもの、この辺は時間がかかるもの、クリアするためには何が要るかということをボックスタイプで表にしていただけると、予防接種推進専門協議会が協力していただけるということで、岩田先生、岡田先生、よろしいですね。言い出した以上は協力してもらわないと事務局が大変ですので、よろしくお願いします。
ここまででよろしければ、次にポリオの話題に入りたいと思います。「不活化ポリオワクチンの 2期接種に向けた研究開発について」です。これは事務局から、難波江補佐よろしくお願いします。
○難波江課長補佐 それでは、お手元の資料4-1「不活化ポリオワクチンの 2期接種に向けた研究開発について」の資料をごらんください。
一番頭に、注意書きを書いております。読ませていただきますと、この資料は技術的検討でありまして、国民に対して広く接種機会を提供する仕組みとして実施するには、前提としてワクチンの供給・実施体制の確保、必要となる財源の捻出等、これらの検討を行った上で関係者の理解を得るために、副反応も含めた予防接種施策に対する国民の理解等が必要ということで、あくまでも技術的検討のための資料だということを付記しております。
2ページですが、昨年9月に導入されました「不活化ポリオワクチンの接種スケジュール」、現行 1期の追加を打っているというスケジュールになっております。
次の3ページ目でございますが、この不活化ポリオワクチンの導入に当たりましては、昨年度までございました予防接種部会の下に不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会、今日は参考人3名の先生にお越しいただいておりますが、こちらを立ち上げまして御議論いただいて導入にこぎつけたというところがございますが、その御議論の中で不活化ポリオワクチンを導入している国の多くで2歳以降の追加接種、いわゆる5回目ですね。こちらを行っていることから今後、抗体保有率の経年変化の観察、不活化ポリオワクチンの5回目の接種の必要性及び必要な場合において、その接種時期の検討が必要であるという議論をいただいておりました。
本日、この件につきまして御審議いただければと思っているんですが、御指摘があったポリオに対する抗体保有率の経年変化、これはどういう枠組みで捕捉しているかと申しますと、まず感染症流行予測調査事業という国の事業がございまして、これをポリオに関しては血清中のポリオウイルス型別中和抗体の測定を年齢ごとに毎年実施しているというものでございまして、出生コホート分析などが可能となっております。
それから、研究班においても1つ目の大石班において約100名を対象にDPT-IPV、日本で導入されていますSabin株、接種後の3歳~7歳までの中和抗体の推移を計測しております。分担研究として、本日お越しいただきました岡田先生に主に取り組んでいただいている研究でございます。
それからもう一つ、「不活化ポリオの有効性・安全性の検証及び国内外で進められている新規腸管ウイルスワクチン開発に関する研究」、本日お越しいただいている清水参考人が代表を務められている研究班でございますが、流行予測調査によって得られた情報をワクチン接種歴別に詳細に分析することにより、中和抗体の推移を検証するといった事業も行われております。
次の5ページ目でございますが、 2期接種に関する「事実関係の整理」でございます。まず、不活化ポリオワクチンを導入している多くの国で2歳以降の追加接種を実施している。32か国のうち、2歳以降に接種していない国というのは2か国のみ、スペイン、スロベニアを除いて30か国では実施されているという状況でございます。
しかしながら、現在までのところ、この不活化ポリオワクチン最終接種が2歳までに行われた場合の終生免疫が獲得されることを示したエビデンスがないという状況でございます。スペイン、スロベニアにも確認をしましたが、2歳接種以降の抗体保有に関するデータを収集していないということでございました。
一方で、4歳以降に 2期接種を実施している場合には、長期にわたって免疫を維持することを示唆する報告があるということで、後ほど御説明させていただきます。
また、海外ではいまだポリオの流行が継続している国がございまして、そのような国からウイルスが日本に輸入されるリスクというのはまだあるという状況でございます。
続きまして6ページの下でございますが、他国での不活化ポリオワクチンのスケジュールでございまして、先ほど5回目と申しましたが、トータルで4回で、4回目を4歳以降に行っている国などがあるというものでございまして、アメリカなどは4回を4歳以降に行っている。それからスロベニア、スペインのグループのように2歳までに4回打ってそれで終わりというグループ、オーストラリアなどは0歳時に3回打って4回目を4歳に打つ。それから、一番下のグループは5回打つ。それで、5回目を4歳以降に打つというグループでございます。4歳以降の中では、9歳とか10歳で打っているグループもあるというものでございます。
続きまして、不活化ポリオワクチン 2期接種をやる前の抗体は9割以上保有している。高い抗体保有率であったという報告でございます。
それから、その下の報告でございますが、 2期接種を10歳で打とうが、6歳で打とうが、いずれも18歳時で高い抗体を保有していた。10歳時で接種したほうが、6歳時で接種した群よりも高い抗体価を示した。ただ、いずれにしても、両方高い抗体価を示したというものでございます。
続きまして9ページでございますが、過去1年間の野生株ウイルスの発生状況でございます。アフリカ、ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタン、それからソマリアなども、さらに最近ではイスラエルのほうが患者は出ていないですが、下水から取れたという報告がございました。
下の10ページでございますが、事実関係の整理です。今まで述べたことと追加で加えたものを整理いたしますと、諸外国では多くは4~7歳時に追加接種を実施していて、アメリカのCDCの本では最終接種は4歳以降に実施されるべきであると記載されている。不活化ポリオワクチンの初回接種後、9歳ごろまで免疫を維持していると報告がございます。後ほど御説明させていただきます。
しかしながら、その後、さらに長期にわたって免疫を維持、もしくは維持できないことを示している論文は報告されていない。
2期接種を6歳時に行った場合と10歳時に行った場合は、18歳時の抗体価を比較するとどちらも有効な値を示したものの、10歳時の接種群のほうが高い抗体価を示したものと報告されている。これは、先ほど御説明したものでございます。
不活化ポリオワクチンに関するデータは、全て強毒株ポリオウイルス不活化抗原、Salk型のデータでございまして、今般日本で導入されているSabin型に関する検証というのは世界でまだどこでも行われていないという状況でございます。一般的に幼少時のほうが高い接種率が期待できるということで、これは後ほど御説明させていただきます。
次のページの上でございますが、これはドイツの4歳~9歳児を対象とした抗体保有率を調査いたしまして初回及び追加接種後の、ポリオが右の3つでございます。タイプ1、タイプ2、タイプ3で、一番左が今、言いました4~6歳児に調査したもの、右の3つのポリオのうちの真ん中が初回終了後、7~9歳児で 2期接種を終えた後の7歳~9歳児で調査したものでございまして、いずれも高い抗体保有率で示されているというものでございます。
その下でございますが、ドイツにおける9歳~13歳児を対象とした抗体保有率の調査結果でございまして、まず乳幼児期にOPV、またはIPVで3回接種を行いまして、追加接種を4~8歳児にまた単独で行って、さらに学童時期に5回目の 2期接種というものを行ったというデータでございまして、下の棒グラフの左側が4種混合、右側が単独を打ったものでございまして、8倍以上の保有率を見たものでございます。いずれも、高い値を示している。
右側はGMTで見ました変動でございますが、幼児期に追加接種を4~8歳児で打つとぽんと上がりまして、抗体が若干減りますが、学童時期に平均で11.4歳時に 2期接種を打つことで抗体が上がる。
ただ、いずれにしてもGMTで見ますと、かなり高い値を示しているというものでございます。
13ページになりますが、これは日本における年齢別の接種率でございます。上のグループが乳幼児期に打つ群と、下のグループが9歳以上で打つ群でございますが、乳幼児期の接種率というのは9割を超えているというものでございますが、一方で9歳以上で接種するとなると7割、8割といったような接種率にとどまるというものでございます。
以上を踏まえまして、以下の点について御審議いただければと思っております。1つ目が 2期接種のあり方について、それからそれに絡んだワクチン開発についてでございます。
続きまして、資料4-2を簡単に御説明させていただきます。こちらは、厚生労働科学研究の廣田班から御提出いただきました資料でございまして、昨年度まで御審議いただきました不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会でも経過を御報告いただいておりましたが、不活化ポリオワクチンを導入するに当たって生ポリオワクチンを接種した群と、Sabinの4種混合を接種した群と、単独のSalk株を接種した群、さまざまな接種グループがある中で、その互換性というものがあるのかどうかを検討いただいておりました。
これまでの報告では、初回の3回の接種については互換性が認められるけれども、その追加接種、4回目の互換性については研究を継続いただいていたわけでございますが、その結果を御報告いただきまして、一番下に書いておりますが、追加接種の結果、ワクチンの組み合わせ、測定抗原、接種前抗体価、接種年齢にかかわらず、いずれのグループも防御レベルをはるかに上回る抗体が誘導されたという結果でございました。
以上でございます。
○庵原部会長 ありがとうございました。
続きまして、岡部参考人、清水参考人、中野参考人から追加の意見がありましたら、まず清水参考人からどうぞ。
○清水参考人 やはり 2期接種を始めるであろう将来にわたって、ポリオ流行のリスクがどれだけあるかというのは非常に重要だと思います。
先ほど世界のポリオ流行の状況を示していただきましたけれども、現状では 2型のワクチン由来株によるポリオ流行というのはまだ世界で散発的に発生しています。
ですので、世界ポリオ根絶計画がどういうふうに進捗するかという状況によりますけれども、5年、10年のスパンで完全にポリオワクチンをやめて集団免疫がなくなるという状況をつくることはやはり危険であるということで、日本でも定期接種にIPVが入りましたが、IPVによって集団免疫を、あと5年、10年ぐらいは、ポリオ根絶の状況にもよりますけれども、集団免疫を維持していくことは必要だと思いますので、そのためにも 2期接種によってブースターをつけるということは、もし抗体価が下がるということがあれば特に必要ではないかと考えます。
その点からは、世界的に広く使われていますワイルドタイプコンベンショナルなIPVについては、資料でたくさんお示しいただいたように比較的長期間、血中の中和抗体価が維持されるということがいろいろなデータで示されていますけれども、日本で昨年の11月から導入された4種混合ワクチンに含まれているSabin IPVについてはまだデータがない部分が多いですので、中長期的な抗体の持続性については今後注意して、もし現行、海外で使われているIPVと比較して中和抗体が早く落ちる、免疫原性がWildタイプのIPVとSabinのIPVでは、当然似てはいますけれども、必ずしも同じではありません。 抗原量とかも違いますので、そこは検証して、もし中和抗体価が落ちるようなことがあれば必ず 2期接種ができるような手当て、ワクチンの準備、もし必要があるのでしたら臨床試験等も含めて考えておく必要があると思います。以上です。
○庵原部会長 岡部参考人、中野参考人、何か追加事項がありましたら。
○岡部参考人 それでは、岡部のほうからですけれども、もう一つオプションとして考えておかなければいけないのは、タイミングもあるのですが、我が国で今DTを追加でやっているわけですけれども、そのときに百日咳ワクチンが思春期年齢以降の百日咳に対して必要であるというような議論があります。
そのために、DTをDPTにしようという研究も行われているわけですけれども、そのときに、DPTではなくてDPT-IPVで、IPVの追加をやるということも十分可能性のあるオプションであるとして、これも視点において検討していく必要があるのではないかと思います。
本当にポリオ、IPVがいつまで必要かというのはなかなか議論のあるところですけれども、WHOのエンドゲームでは今IPVを先に導入して、その後、2価のOPVでいこうというような動きがあるので、非常に流動的ではありますけれども、そのまますとんと免疫がなくなるということも、今の段階ではこれでよしというところまではまだ十分いっていないのではないかと思います。
ただ、もう一つ追加ですけれども、3プラス1プラス1、あるいは3、しばらく経ってからプラス1で、ブースターをかけたときにはぽんと抗体が上がる。これはデータが出ているんですけれども、そうであるならばこの期間が少し長期にわたっても免疫のブースターがかかるのであれば、時間的には必ずしも早く免疫を上げることはないので、時間的には5回目のタイミングを後ろのほうにずらせる可能性もあるのではないかとは思います。
○庵原部会長 中野参考人、どうぞ。
○中野参考人 ポリオのワクチンは、子供たちがポリオにかからないように、大人も含めてですけれども、守るためのワクチンです。
諸外国がOPVからIPVに移行したときに、4歳以降の追加接種を設定している理由は、恐らくOPVをそれまで生ワクチンを使っていた国が多いと思いますから、不活化ワクチンになると腸管免疫その他でポリオに対する臨床的な有効性が弱いんじゃないかといった危惧があって、接種回数はやはり多くしたと思うんです。
ですから、どこの国のデータを見ても、抗体が下がるまで待っていた国はどこもなくて、追加接種のプレのデータは見ていますけれども、その後ブースターがかかると、さっき岡部参考人がおっしゃられたように、ブースターがかかるということはメモリ細胞があるということなのでしょうが、そういうデータが出ております。
私も清水参考人、岡部参考人が言われたように、抗体価を見ていって経過を見るということはもちろん大切なんですけれども、もしそれが十分に下がらない。その十分に下がらないという言い方は変ですが、例えば今の20代から40代の風疹は、病気が違うので同じように議論はできないですけれども、陰性者が2割いるだけで患者数を集積すれば疾病は流行するわけでございますね。
そうすれば、追加接種のワクチンというのは接種時期とともに考えますと、ドイツのデータを見ますと10歳前後でも十分な免疫持続とブースター効果が認められておりますので、日本で定期接種ワクチンがある時期に混合ワクチンということを念頭に置いて、製剤の開発を念頭に置いたスケジュールも含めて開発を進めておくことが必要と思っています。
○庵原部会長 参考人等や事務局からの意見が出ましたけれども、何か御質問はありますでしょうか。
まずは山口委員、どうぞ。
○山口委員 先ほど、気になる点はブースターが必要なんだというのは非常によくわかるんですけれども、例えばそれを今度は承認申請をしないといけないという話になると思うんですね。
そうすると、そのときにどういうデータが必要なのか、確認をしないといけないというお話であったかのような気がするんですけれども、例えばブースターをかけるとき、余りまだ抗体価が下がっていないときにブースターをかけたら、そんなに上がりが強くないような気がするんです。
ただし、それで持続をされれば、もちろんそれでいいということになるとは思うので、心配しているのは追加の試験のこういうデータがないと認められないのかとか、そういう点について十分な上がりがないとだめなのか、ある程度維持されるというか、そういう結果さえ確認できれば承認申請とか、そういうものはOKなのか。その辺について教えていただければと思います。
○庵原部会長 それは、事務局ですか。PMDAとか、審査管理課の話ですので。
○山口委員 ごめんなさい。そういう意味ではなくて、臨床の立場として抗体価が維持されていれば、それはブースター効果として担保できると考えていいのでしょうかという意味です。
○庵原部会長 要するに、1回のブースターで上がれば、もうそれで担保されていると考えていいかどうかという御質問ですか。
○山口委員 多分、ブースター効果がそんなにきれいに見えない可能性があるかなという気がします。
○庵原部会長 要するに、かけるタイミングが早過ぎるとブースターがかかりにくいんじゃないかということですが。
○山口委員 ただし、それでも十分な効果があるのであれば私は構わないような気がするんですけれども。
○庵原部会長 中野参考人、どうぞ。
○中野参考人 免疫原性という観点から申しますと、不活化ポリオワクチンの中和抗体価の上がりは非常に良好でございます。なおかつ、日本の子供たちは今3プラス1の4回接種を完了しておりますから、アメリカとかスウェーデンは初回免疫が2プラス1で、それでトータルで基礎免疫が完了して、その後、4歳以降の追加と、接種回数も日本は多いです。そうなりますと、十分に高い中和抗体価がある方に、おっしゃられるブースター効果というものを抗体価の上がりで見られると有効性がないという判断になっては困ると思うんですね。
ただ、臨床試験を含めた開発が必要であろうと申し上げた理由は、安心して打てる環境をつくるためには、安全性の面で担保ができているというデータが必要だと思うんです。そういう観点から、新しい製剤の臨床試験をやっておくことが必要であると思っております。
○山口委員 安全性の担保ができれば、ブースターでつくったら多分コンセンサスが得られているでしょうし、そこが見られればいいという話でよろしいわけですね。
○庵原部会長 私から2つ質問があるんですけれども、A型肝炎ワクチンは全粒子不活化ですが、あれではロングリブドプラズマセル(長命形質細胞、long-lived plasma cells, LLPC)が誘導されるだろうというのが出てきまして、そうするとこれはポリオのワクチンも全粒子不活化ですので、全粒子不活化の場合はロングリブドプラズマセル(LLPC)が誘導されれば追加は要らないんじゃないか。
というのは、A型肝炎も追加は要らないという形に今なっていますので、それと同じことがポリオでも起こるんじゃないか。それが1つです。
それから、今ディスカッションしておかなければいけないのは今、岡部参考人も言われましたけれども、これはあくまでもポリオ対策だけのディスカッションをするのか、百日咳、ジフテリア、破傷風対策も含めたディスカッションをするのか。そこがあるんですけれども、この辺りを参考人の方から御意見がありましたらお願いします。
どうぞ、岡部参考人。
○岡部参考人 私が申し上げたのは、あくまでもタイミングとして測るならば、やはりワクチンの接種回数は少ないほうがいいわけですし、ブースターが必要であるというところで、それを早くやらなければいけないのか、遅くやらなくちゃいけないのかということだと思うんです。
どこまで抗体が下がっているかというのは、中野先生がおっしゃったようにまだわからないわけですけれども、少なくともブースターがあるということではワクチン接種の回数も少なくすることであれば、既存に近い4種混合ワクチンの応用というような形で、年齢的にはDPTということで、全ての他の抗原もブースターをかけることができるのではないか。
ただ、もちろん、その量的な問題とか、そのときの効果をちゃんと検証しなければいけないということはあると思います。
○庵原部会長 中野参考人、どうぞ。
○中野参考人 ポリオ以外のワクチンスケジュールとの兼ね合いということに関しましては、目の前のことであればやはり百日咳対策、Tdap、DTというお話になると思うんですけれども、もっと大きく目を広げると、思春期から成人期のスケジュールとのコンビネーションも含めてという話になるんじゃないかと思うんですね。
もしポリオ根絶が早期に達成できなければ、ポリオ流行地に行く渡航者もいらっしゃるわけです。そういった方々にどんなワクチンを打つのか。例えば、Tdapの評価は今、百日咳対策という点でグローバルな流れは結構難しいところもあると思うんですけれども、成人のほかのワクチンとの兼ね合いも含めてという感覚でいいのではないかと思っています。
○庵原部会長 何か御質問はありますか。
では、坂元委員。
○坂元委員 質問ですけれども、この 2期の追加を実施するということなのか。
もし、そうであるとすると、既に終わってしまった子のキャッチアップを今度はやらなければいけないという議論も出てくるかと思いますので、その辺はもうそういう追跡調査をやらずに 2期を導入したほうがいいという議論なのか。それとも、やはり抗体価の値を追跡調査して、そのデータを見てからやったほうがいいという議論なのか。その辺は、もしかするとキャッチアップということになると自治体としては非常に関心が高いところなので、お教えいただければと思います。
○庵原部会長 清水参考人、どうぞ。
○清水参考人 先ほどもお話ししましたとおり、海外のIPVにはかなり長期的な免疫の維持に関してデータがありますけれども、Sabin IPVに関してはそのデータがありませんので、恐らくこれも全粒子ワクチンですので、免疫が長期間持続する可能性が高いとは思いますけれども、そこはやはり検証しなければいけない。
そこで、もしかなりWild IPVと違う下がりが早いということがあれば、これは必ず 2期接種を考える必要があると思います。
かなり急速に落ちるということですと、これは必ず早期に対応する必要があると考えます。
○庵原部会長 どうぞ、伊藤委員。
○伊藤委員 余り詳しくないので教えていただきたいのですが、これはNTで中和活性だけ見ていて、そのとき測った中和活性と、疾患を予防する基準が多分リンクしないのではないか。ある程度メモリセルを持っていると、その発症予防というか、感染をしていかない可能性はないんでしょうか。
そうだとすると、今の抗体価だけで議論するのはどうなのかなという気がするのですが。
○庵原部会長 私から、お答えします。一応、発症予防抗体はポリオの場合は中和で4倍ないし8倍で発症予防ができると、それは言われています。
清水参考人、この後、追加をお願いします。
○清水参考人 今おっしゃっていただいた点で、ポリオは昔、導入されて以降の長い経験から、少なくとも感染予防ではなくて発症予防においては中和抗体があるかないかで決まると考えられていて、その中和抗体が少しでもあれば発症予防する。それが高ければ高いほど、もちろん発症予防効果が高い。それはコンセンサスがありますので、ほかのいろいろな種類のもう少し複雑なことを考えなければいけないワクチンに比べると、その意味ではある程度単純に、発症予防効果に関しては説明されております。
○庵原部会長 あとは、御意見ございますか。
そうしますと、やはり抗体の問題点はSalkのデータはあるけれども、Sabinのデータがない。ということは、Sabinで本当にどのぐらいのタイミングで下がってくるか、ないしは下がった後プラトーになるのか、ずっと下がり続けるのかといったようなデータがまず必要だろう。それに応じて、 2期をやったほうがいいよという御意見がございますでしょうか。
では、岡部参考人。
○岡部参考人 まとめるのであれば、そのDPT対策も含めて検討するかどうか。これは、課題としてとっておくべきだと思います。
○庵原部会長 まずは、この場はポリオ対策という話で出てきたんですけれども。
ですから、DPT対策も含めて考える。要するにDPT-IPVにするのか、とりあえずはIPV単独で開発して、あとはまた混ぜるのかという話になるかと思います。
坂元委員、どうぞ。
○坂元委員 私も、DPTと合わせて考えるべきだと思うんです。もし追加が必要となったときにDPTを除外しますと、そこで例えば単独のIPVだけやるとなったときに、その時点で単独のIPVが供給できるかどうかという問題もあるので、やはりDPTと一緒に考えていくというのが自治体としては非常にありがたいと思います。
○庵原部会長 そうすると、この場の意見としては、まず要するにSabinのIPVを打った人の血清疫学をきちんとフォローするというのが1つですね。
2つ目は、前提としてその結果を見て 2期を接種するかどうか、ないしはその接種する時期を5歳がいいのか、それとも十何歳がいいのかということを検討する。さらに、そのときには百日咳対策も含めて混合ワクチンがいいのか、単独ワクチンがいいのかを検討する。この辺りかと思いますけれども。何か御意見ございますか。
そうなると、逆にSabinのIPVを単独で開発したほうがいいかどうかということに関しまして、何か御意見ございますでしょうか。WHOは、ポリオがだんだんなくなると、IPVはSabinでつくれというような方向に動いているかと思いますけれども、その辺も含めて何か清水先生、岡部先生から御意見がありましたらお願いします。
○清水参考人 単独のSabin IPVが必要かどうかというのは、その国、地域ごとによって違うと思いますけれども、今の世界的な流れの一つとしては今コメントいただいたように、やはり強毒株のIPVを大量につくるというのはバイオセーフティー上リスクがありますので、途上国も含めたいろいろな地域でつくることを考えると、より安価なIPVという意味でSabin IPVを開発するということをWHOも推奨して、今プロジェクトが進んでいます。
具体的には、それはWHOのプロジェクトとは違いますけれども、中国でもかなりSabin IPVの臨床開発が進んでいますし、これからたくさんの国でSabin IPVは恐らく使われるようになると思います。そのためにも、日本は世界で初めてSabin IPVを定期接種に導入したので、そのデータ、例えば今お話のあった中長期的な免疫の維持等のデータを出していくことは、日本国内だけでなく世界的にも非常に重要だと思います。
○庵原部会長 どうぞ、伊藤委員。
○伊藤委員 臨床開発をするのは、結構大変だと思います。複数のものを同時にいろいろ開発しろというふうに企業に要請するのは大変なのではないか。基本的にワクチンに関しては、有害事象がふえるのでなければ、IPVだけではなくてDPTと合わせたものを開発することを前提にした方針として、治験をやられるお子さんたちに御協力いただいて、そこに追加を接種するというような大枠の方針だけここで決めておいてあげたほうが、開発をする企業にとっては楽なのではないか。
単独のIPVをやって、また後になってDPTとの混合開発をしろと言われるともっと大変になるので、今後、DPTのことも含めて考えると、単独よりは両方含めての開発をという意見出しをしておいたほうが、国の政策としても楽なのではないかという気がいたします。
○庵原部会長 委員の先生方、順番に首を振っておられるので賛成のようですが、岡田参考人どうぞ。
○岡田参考人 私の立場で言えるものではありませんけれども、百日咳対策をずっとやってきた者としては、日本で開発したDTaPと日本でSabin IPVを混ぜ合わせた4種混合でポリオ対策、百日咳対策を一貫してやっていっていただければと思います。
○庵原部会長 これでまとめると、事務局、何か御意見ございますか。
○難波江課長補佐 ありがとうございます。今いただきました御意見に関しまして、我々の懸念としては、抗体保有が仮に落ちるとしたらどの段階で落ちるかわからない。その中で4種混合に絞って、今だとDTが11歳以上で打たれているわけで、それより前に接種しないといけないみたいな状況になったときに単独がないというような話になるかもしれない。
それと、資料の13ページでもお示ししましたが、実際の接種率を見たときに、11歳~12歳のDTが77%と、8割に至っていない。そういった状況で、そこでやるというのが妥当なのか。今、ここでそこまで絞ってしまっていいのかどうかというところは若干の懸念がございます。
○庵原部会長 そうしますと、百日咳対策も含めて開発を考えるということで絞らないという形でよろしいですか。
そうしますと、ポリオに対する抗体保有率の経年変化の調査は続けてやる、ないしは今後続けてもらって、その結果に基づいて 2期接種が必要になるかどうか。そのときに、ポリオ対策と百日咳対策を一緒にやるのか、分けてやるのかはまたその時点で考える、ないしはそれよりも先に百日咳のほうを何とかまとめていただきたい。そちらがまとまれば、ポリオ対策もまとまると思うんです。
というのは、ポリオは日本ではない病気ですけれども、百日咳は出てくる病気ですので、逆に言いますとそちらを早くまとめていただいたほうが、ポリオをつけるか、つけないかがはっきりしてくるんじゃないかなというのが私の個人的なコメントです。そうしたら、ポリオは一応両方でできるような形で考えていただくということでよろしいですか。
事務局、この辺でよろしいですか。
そうしましたら、時間が過ぎましたけれども、これで今日の課題が終わりましたので終了したいと思います。あとは、事務局のほうへお返しします。
○今井室長補佐 次回は、9月13日金曜日を予定しております。正式な開催案内は、改めて御連絡差し上げます。
○庵原部会長 では、長時間ありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。
ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産流通部会)> 第3回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録(2013年7月19日)