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2014年3月27日 第5回 高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会 議事録

医政局研究開発振興課

○日時

平成26年3月27日(木)17:00~19:30


○場所

厚生労働省18階 専用22会議室


○出席者

【委員】

森嶌委員長 稲垣委員 桑島委員 曽根委員 田島委員
田代委員 花井委員 藤原委員 宮田委員 森下委員
山本委員

【事務局】

原局長 (厚生労働省医政局)
成田審議官 (厚生労働省大臣官房)
新原審議官 (厚生労働省大臣官房)
一瀬課長 (厚生労働省医政局研究開発振興課)
城課長 (厚生労働省医政局経済課)
赤川課長 (厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課)

○議題

1. 透明性確保等に関する製薬業界の取組み状況について(製薬協からのヒアリング)
2. 報告書(案)について
3. その他

○配布資料

資料1 委員名簿
資料2 製薬協提出資料
資料3 報告書(案)
参考資料1 高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(中間とりまとめ)平成25年10月8日
参考資料2 薬事法違反による告発について(平成26年1月9日:医薬食品局発表)

○議事

○一瀬課長 定刻となりましたので、第5回高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会を始めたいと思います。委員の皆様方におかれましては大変お忙しい中、本検討委員会に御出席いただきましてありがとうございます。本日、竹内委員から御欠席との連絡を頂いております。

 配布資料の確認をさせていただきます。一枚紙で議事次第と配布資料を記載したものがありますので、それに沿って御確認ください。資料1として「委員名簿」、資料2として「製薬協提出資料」、資料3として「報告書()」、参考資料1として「中間とりまとめ」、参考資料2として「薬事法違反による告発について」です。不足や落丁等がございましたら、事務局までお知らせください。資料のほかに本日、日本学術会議で取りまとめられた「我が国の研究者主導臨床試験に係る問題点と今後の対応策」というものが、机上に配布されておりますので、御確認いただければと思います。

 審議の円滑な実施のために、撮影はここまでとさせていただきますので、カメラの退室をお願いいたします。以降の議事進行については、委員長にお願いいたします。

○森嶌委員長 この委員会は、昨年930日に第3回の検討委員会で中間とりまとめをしております。その際、皆様に御議論いただいたものを中間とりまとめという形で公表しております。今日、この後に御議論いただくものの相当部分が、これを基礎にしております。昨年12月には、第4回の検討委員会を開いております。ここでは滋賀医科大学、名古屋大学、千葉大学から、本事案に関しての中間報告の発表を含む、その後の調査結果が公表されました。また、その後の状況等についても報告等があり、3大学からの説明とともにこれについて御検討いただきました。

 その後は皆様も御案内のように、我々の検討に基づき、それを契機として、薬事法違反によるノバルティス社の告発という事態もありました。更に、私どもとは別個と言いますか、並行して、臨床研究倫理指針が見直されることになっております。また、私どもは我が国の臨床研究に対する信頼回復のために早急な対応が必要であり、そのために法制度を見直すことを含めて検討が必要であるとして国において本年の秋をめどに、検討を進めるべきであるという提案をしております。このような事態の進展も含めて、私どもとしては、ここでこの検討委員会に一応の区切りを付けてはどうであろうかと考え、事務局とも検討しまして、今回、1つの区切りを付けるという形で取りまとめをすることにいたしました。本日の会議は、1つの区切りとしての取りまとめを考えております。そのような考えの下に、御議論をいただければと思っております。

 その前提としてと申しましょうか、その後の進展の一環と申しましょうか、議題1として、透明性確保に関する製薬業界の取組の状況についてお伺いしたいと考えております。そこで、今回は議題1として、日本製薬工業協会の方に参考人として御参加いただいて、透明性確保等に関する製薬業界の取組状況について、お聞かせいただければと思っております。

○稲垣委員 日本製薬工業協会医薬品評価委員会の稲垣です。資料2については、私から説明させていただきます。私もこの検討委員会に加わらせていただいて、皆様と一緒に検討作業を進めてきまして、本件により、日本の臨床研究の信頼性が失われたことを深く憂慮するとともに、本件の重大性をひしひしと感じているところです。製薬協の会長声明にもありますように、製薬協としてはコンプライアンスの徹底等を通じて、会員企業の規律意識やモラルの向上に継続的に取り組んできたところでして、今回の件は非常に残念なことであり、再発を防がねばということで、強く認識しております。そういうことで、私から資料2の内容について紹介させていただくとともに、この内容について本日、参考人として参加しております製薬協事務局の田中常務理事から、私で足りないところの説明の補足、あるいは質疑応答等で御協力いただければと思っております。

 資料2を御覧ください。実際の製薬協として会員会社に出している文書等を、資料2の後半のほうに付けておりますが、ここでは前半のパワーポイント資料で御紹介したいと思っております。

 まず1枚目の裏のスライドの1と書いてある所ですが、これは今までの製薬協の対応の経緯についてまとめたものです。昨年8月に高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会が設置されて以後、精力的に調査検討が重ねられてきたことは、皆様も御承知のとおりです。そして930日に、中間とりまとめ案が公表されました。この中間とりまとめ案の公表を受け、翌101日、このスライドの2段目にありますように、製薬協では中間とりまとめにおいて指摘されている産業側での要請について、速やかに検討に着手し、誠意を持って取り組んでいくとのことで、会長声明を出しております。会長声明については、後ほど紹介させていただきます。

 更に10月に入り、最終化された中間とりまとめを踏まえて、1017日に改善策の本格的検討を開始するとともに、23日に、この紙の下段に示したスライド2にありますように、中間とりまとめで指摘された内容で会員会社が直ちに取り掛かれる事項について、早急に実施するよう、理事長通達を発出しております。それ以後、中間とりまとめで要請された関係委員会、理事会等でも内容を検討しており、その内容を本日紹介させていただきます。

1枚目の下段のスライド2は先ほど述べましたように、中間とりまとめで指摘されたもので直ちに取り掛かれる3項目について、早急に実施するよう、会員企業に要請したものです。すなわち、研究支援での研究機関と製薬企業の透明性確保の要請に関しては、まず2点、上のビュレットの12にあります。医薬品医療機器の取引に付随する寄附についての考え方をまとめた「医療用医薬品製造販売業公正競争規約」の遵守、そして2番目が、「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」の早急実施を、最初の透明性確保の要請に対する対応として、直ちに出したものです。

3番目は、製薬企業の社内ガバナンスが欠如しているとの指摘に対して出されたものでして、利益相反の観点から、社内体制のガバナンス面の早急点検の要請が発出されております。この「ガバナンス面からの早急点検」というのがどのようなことか分かりづらい言葉かと思います。具体的には、臨床研究支援での労務提供に関係した各社の社員や組織の行動について、会社として把握すること、並びに公益通報などの社内受付窓口が機能しているかなどについて確認するということです。このように、直ちにできる3項目について、1023日に要請を出し、各社で対応いただいているところです。

 続いて、スライド3を御覧ください。こちらは先ほどのビュレットの12に関して、研究支援での透明性確保について、今まで製薬協が行ってきた取組について、皆様御承知のことでくどくなりますが、改めて解説したものです。この「医療用医薬品製造販売業公正競争規約」とは、昭和59年に「景品表示法第11条」の規約に基づき設定されたもので、医療用医薬品の取引に付随した医療機関等に対する景品類の提供を制限する規約です。この規約で言う「景品類」とは、物品や金銭とともに労務その他の役務の提供も含まれております。この内容において、まずはこれを徹底するようにという通達が、23日に出されたわけです。

 次の「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」は、皆様もよく御存じのことかと思いますし、後ほどパンフレットをお示しいたしますが、製薬企業が医療機関等にお支払いしている研究費、開発費、学術研究助成費、原稿執筆料、情報提供関連費等について、会員会社が各社それぞれ自社のホームページにて開示すべしとのガイドラインでして、平成24年度分を平成25年度に公開することにしておりました。平成262月に確認したところでは、製薬協加盟70社全てが公開しております。なお、本年はまず開示すべしということで、開示について一生懸命やってきましたが、ホームページのどこで開示されているか、場所が分かりづらい等の御意見もいただいております。今年は取りあえず開示することを目標にやってまいりましたが、来年度以降は今年度の経験を踏まえて、企業活動と医療機関の関係性について、より透明性を高める方向で各社取り組んでいただけるものと、我々も考えております。

 このように、既に中間とりまとめの中で言われていた内容で、直ちに実施できるものについては、昨年の段階で対応を取らせていただいたわけですが、追加の検討が必要だったものについて、今から紹介させていただきます。

 臨床研究に対する支援の在り方というのが、1つの宿題になっていたわけですが、検討の対象とした臨床研究の範囲について改めて下の図で紹介いたします。日本では、「臨床研究」と「企業」の治験という二階建ての構造になっているという言い方をよくされます。これらはいずれも被験者保護をうたったヘルシンキ宣言の精神を遵守するものではありますが、医薬品の承認申請を目的とする「治験」では、今では医薬品医療機器等法というように、略称も変わっておりますけれども、いわゆる薬事法の下で、GCPに従って厳密に試験を実施するようにということで、プロトコールに従った厳格な試験の実施が求められております。また、試験開始前にも当局に届出を出すとともに、試験の途中あるいは終わった後でも、当局のチェックを受ける体制になっております。

 これに対してアカデミアの研究者が自主的に実施する「臨床研究」は、施設内のIRBの審査を経て開始され、臨床研究倫理指針あるいは疫学研究等に関する倫理指針にのっとり実施されるということで、日本においては二本立ての制度が共存するという形になっております。承認申請を目的として実施する、上の段の「治験」は、製薬企業がスポンサーとなって実施し、製薬企業の責任の下で実施されますが、今回の場合はこの下、研究者が主体となって実施する「臨床研究」への企業の支援の在り方ということで、その在り方についての検討を行いました。

 次のページのスライド5を御覧ください。ここは昨年9月の中間とりまとめの方針に沿って、臨床研究への支援の在り方について、製薬協としての基本的な考え方を示したものです。まず自社医薬品に関する臨床研究というのは、研究者が主導で実施する臨床研究であっても自社製品に関する研究の支援は奨学寄附金ではなく、契約により実施することとします。これに伴い契約により実施するということで、臨床研究で使用されなかった研究費や物品は、後ほど企業に返還いただくということで、その旨契約書に明記したいと思っております。

 また、労務提供については従来、明確なルールというか、明記した形のものはなかったかと思います。今後はデータ解析業務など、研究の結果や中立性に疑念を抱かせるような労務提供は行わないということを、はっきりさせていただきたいと考えております。製薬企業としても、研究者が主導して実施される臨床研究では、研究者の独立性と研究の中立性が極めて重要であることを認識し、支援を行う際には利益相反関係に十分留意して支援をするということを徹底したいと思っております。

 下段のスライド6です。奨学寄附金の提供の在り方についても先ほどと同様に、中間とりまとめに示された方針に従って、奨学寄附金は学術研究や教育の充実・発展など、本来の趣旨に則った提供に限定し、自社の医薬品に関する臨床研究に対する資金提供の支援方法としては用いないということを、明確にさせていただきたいと思っております。また、奨学寄附金の提供に当たっては、社内の営業部門から独立した組織において、利益相反を十分確認の上、提供の可否を判断するとともに、その提供についての説明責任を果たせるよう、奨学寄附の経緯について記録を作成し、それを企業の中でも保管しておくという形にさせていただきたいと思っております。

 なお、奨学寄附は本来、使い道を指定しない寄附なので、研究者側でどういうように使うかというところは、研究者の判断によるわけですが、もし奨学寄附をしたお金で自社医薬品に関する臨床研究が行われていることを企業が知った場合は、できるだけ早く研究の支援を、契約による委託研究等に切り替えさせていただきたいと考えております。以上、中間とりまとめで示された方向に沿って検討された、臨床研究支援に対する製薬協の基本的な考え方という形で、紹介させていただきました。

 なお、この下の赤の四角の所です。この考え方は今後、関係団体等の意見を踏まえ、必要に応じて柔軟にかつ適切に対応していく所存です。ただ、一言付け加えさせていただきますと、「柔軟に対応していく」と言うと、ルールを緩めるのではないかと思われる方もいるかもしれませんが、我々としては、臨床研究の法制化等の話が今後検討されますので、それに伴って、更に何かの条項を付け加えなければならない部分も出てくるのではないかと考えております。そのような形で、必要な内容については今後も追加していくということで、臨床研究支援の透明性をないがしろにするような方向で、これを運用していくものではありませんので、その点については、誤解なきようにお願いいたします。

 後ろのほうに、実際の文章等を添付しております。5ページが今、御紹介した製薬企業による臨床研究支援の在り方に対する基本的な考え方について、会員企業にお示しする通知のための文案です。内容は御紹介したとおりですが、「1、はじめに」の下から2つ目のビュレットに、「会員企業にあっては、ここに示す基本的な考え方を、今後の臨床研究支援のための活動に、速やかに反映していくことを要請する」という形で、会員各社に具体的な行動を要請する記載内容となっております。裏がその続きです。

7ページが昨年10月に出された製薬協の会長声明です。ここの上から10行目ぐらいにありますように、規律違反やモラルの向上に継続的に取り組んできた当協会にとって、今回の事案は誠に残念かつ遺憾なことと、深く憂慮しているところではありますが、それとともに、医学・薬学等の学界と産業界が相互に連携し、イノベーションの新薬の創出等を通じて、人類や社会に貢献していくことは非常に重要なことであり、そのためには産学間における高い規律意識の共有や、資金提供等に関する透明性の確保が極めて重要であるということを改めてうたわせていただいております。「当協会としては」と続くのが、中間とりまとめ案を受けて指摘されている産業側への幾つかの要請において、速やかに検討し、誠意を持って取り組んでいくというところでございまして、この内容を紹介させていただいたところです。

 後ろに付いているのが、製薬企業と医療機関等の関係についての透明性ガイドラインです。これは製薬協の会員会社及び医療機関、医療関係者の皆様に、このルールについて周知徹底いただくために配布させていただいた資料です。この透明性ガイドラインというのは、先ほど紹介した研究費あるいは研究助成費等について、各社それぞれ幾らぐらい出しているかを公表するものです。その公表の内容は、10ページの「公開対象」に示されている項目の費用を公表します。本年2月の段階で製薬協70社、いずれもこれを公開していることを確認しております。ただ、公開したとは言ってもホームページの場所が分かりづらく、なかなか探しづらい等の御意見もいただいております。これについてはさらに透明性を高めるべく、今後とも取り組んでいく所存です。臨床研究の透明性確保等に関する製薬協の取組については、このような形で進めさせていただいております。

○森嶌委員長 日本製薬工業協会から、田中参考人がおいでになっておりますけれども、何か追加的に御説明はありますか。

○田中参考人 今のところはございません。

○森嶌委員長 それでは、今の稲垣委員の御説明に対して、御質問あるいは御意見等はございませんか。

○曽根委員 稲垣委員はこの検討委員会で、バルサルタンの臨床研究事案の真相解明とか改善策について我々と一緒に取り組んできた。当然そこでのいろいろな議論の内容は、製薬協へパイプ役として伝えて頂いているわけです。今、参考人という立場で、透明性確保へ向けての取り組みを製薬協の立場から御説明がありましたが、内容的に余りにも抽象的な内容です。今年に入っても、残念ながら東大の血液内科のSIGN studyにノバルティスが労務提供として患者のデータを社員が持ち帰り集計しているというような、あり得ないことが起こっています。そういう事態についても、稲垣委員が言われた内容には一切ない。この委員会のメッセージが会員企業へ全く還元されていないし、コントロールにも効を奏していない。ちゃんとした対応策ができていないのではないか。

 通常、ああいう事態が起こったら、バルサルタン事案を教訓に、それに対していろいろな調査とか点検をやるべきだと思うし、会員企業に対して見解とか提言とかを出して再発防止に努めるべきです。そういったことも踏まえて、今日は、透明性確保に向けての取り組み内容を具体的に説明していただかないと誠意がみられない。会員各社がバルサルタンの臨床研究事案の問題を、全然学んでいないというか、同じようなことをやっているところに、非常に問題がある。その点をどう考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

○森嶌委員長 日本製薬工業協会からおいでになっておられますので、田中参考人からお願いします。

○田中参考人 ありがとうございます。今の曽根先生の御質問は、中間とりまとめ以降もこういう取組をしましたと言いながら、なかなか徹底できていないのではないか、製薬協としてガバナンスをどう発揮しているのかという御質問だと思います。この件につきましては、先ほど稲垣委員からも説明がありましたように、例えば101日の会長声明とか、1023日の理事長声明等々、事あるごとに会員会社に警鐘を鳴らしています。その繰り返しを行っているというのが現状です。社内体制のガバナンス云々についても、早急に点検せよという連絡をさせていただいて、これを個別に聞いたわけではありませんけれども、各社の状況について徹底するようにと、その都度連絡はしております。

○曽根委員 もっと具体的な対応策をやっていただきたい。私たちもこの半年の間に、日本医学会が2011年に公表した最初のCOIマネージメントのガイドラインについて、今回のバルサルタン臨床研究事案が発生してから、再発防止のためにもっと研究者が分かりやすく、遵守しやすい内容に改定をしています。学術会議も、山本委員のほうから話があると思いますが、研究者主導の臨床試験の問題点の対応策をとりまとめ、提言として出しています。そういうことも考えると、製薬協はほとんど再発防止のための具体的な取り組みをしていないのではないか。

○稲垣委員 昨年、バルサルタンの件があった後も、似たような話が繰り返されたという点については、非常に遺憾であり残念に思っております。これが正直な感想です。ただ、実際にやれることという意味では、社員の行動あるいは組織がどのような行動をしているかというところを会社として把握し、その行動が良いのか悪いのか、悪いことに対してはやめるように指示を出すことが、社内ガバナンスの徹底です。それが昨年の中間とりまとめの中でも言われたことであり、それを進めるように、各社に強くお願いしてきたわけです。そこはアクションとして取ってきました。それでも、まだ問題点が再発したところに会社側での見落としがあり、その意味での甘さがあったのかもしれません。ただ、やるべきこととしては、社内のガバナンスの徹底という中間とりまとめで言われていた方針を更に徹底していくことで、先生が言われた、問題が起こったじゃないかとのご指摘に対しても、もう一度繰り返してガバナンスを徹底していくよう各社にお願いしていくことしかないと考えています。

 かつ、今回の新たな検討の中で従来、曖昧だった部分を明確にさせていただきました。昨年の段階で直ちにできることとして、従来示したルールに従って、こうしなさい、ああしなさいと言ってきておりますが、ただそれでもグレーゾーンの部分はそのまま残っていて、奨学寄附金や臨床研究でどこまでの支援をしていいのかというところは、グレーなままだったのかとも思っております。そのためにこのような事態が起こったわけで、その辺りは曖昧な部分をまず明確にすることと、明確にした内容を各社が遵守してくださるように徹底することが、今の段階でのアクションです。浸透するのになかなか時間がかかるのかもしれませんが、このようなことが起こらないように取り組んでいくことになるかと考えています。

○曽根委員 1つだけお願いしたい。臨床研究への資金提供についての奨学寄附金は、どこの施設に提供されているのか、非常に分かりやすい。既に透明性ガイドラインに基づき、関係企業が公表する項目Bを見れば分かるわけです。今問題になっているのは労務提供、特に特殊な、専門的な面での研究支援として、役務提供は透明化されていないと思っています。労務提供の在り方について、我々サイドははっきり議論もしていないのですが、製薬協も明確でないという発言をされていましたが。

○稲垣委員 今までは明確ではない部分が残っていたと認識しています。

○曽根委員 それであれば、是非、労務提供に関する指針的なものをきちんと作られて、それを会員企業が遵守するような形に、早急にやっていただきたいと思います。それがお願いしたい点です。

○稲垣委員 今回の内容としては、「データの信頼性及び試験の中立性に疑義を抱かせる労務提供」という言い方をしております。そこについてどこまでという明確な内容での検討が必要であれば、また相談して検討させていただくことになるかと思っております。

○田中参考人 曽根先生からご質問いただきました労務提供に関しては、いろいろなパターンがあると思います。労務提供を全て一切合切駄目というわけではなくて、個々についてQ&Aを作りながら、明示していきたいと思っております。確かに指針を早急にという御意見は、しっかりと賜りたいと思います。

○桑島委員 去年の103日に、ノバルティス社に対して会員資格停止処分となっていますけれども、製薬協でこれからいろいろなルールがあると思うのですけれども、それから外れてしまう可能性がありますね。

○田中参考人 会員資格停止の件に関しては、製薬協の中での委員会活動等々の役職・資格を停止したわけで、逆に、守るべきコンプライアンスの研修や、会員会社として当然守っていただく会議等には出てきていただいています。

○桑島委員 「会員資格」と書いてありますが。

○田中参考人 会員資格というのは、委員会活動をするような会員資格を停止したということです。

○桑島委員 製薬協ではなくて委員会会員という意味ですか。

○田中参考人 製薬協の除名という話ではありません。製薬協の会費も払っていただいています。

○田代委員 先ほどの曽根先生の発言と少し関わるかもしれません。私もこの「考え方()」の中身は、このようにやっていただきたいと強く思うものです。しかし、この実効性がどう担保されるのかがよく分からないのです。この通知が出されて、本当に加盟企業がこの方向に舵を切ったということを、社会的に確認できる方法を用意していただきたいと思います。例えば、現時点で製薬協加盟の各社に対して、臨床研究の支援についての現状がこうなっていたものが、この通知が出た、それを受けて各社が体制を変えたことによってこのように変わった、あるいは現状は奨学寄附金でやっていたものが、このような形で契約に移り変わっているということを、例えば1年後なら1年後にきちんと評価するということをやっていただかないと、本当にこの通知が意味のあるものなのかというのが見えにくいかと感じています。その点についてはいかがですか。

○田中参考人 田代委員の御指摘のとおりです。私どもは提出資料の9ページ、10ページで、透明性ガイドラインの項目について示しております。そこでは、例えばB項目であれば奨学寄附金が○○大学○○教室○○件○○円まで明確にしております。そういったものを確認しながら、実効性が確認できると考えております。そういう意味では、幾つかの問題点はあるのですが、2年目の公開になり、透明性を更に高める取組をしていけば、委員から御指摘のあった点については、しっかりとクリアにできると考えております。

○花井委員 ありがとうございます。質問と意見です。スライド5の労務提供については、こういうようになっていますけれども、どれがどうかについてはQ&A等々を作っていただけるということで、それはとても大切なことです。やはりどれがそれに当たるかというのが分かって、それが公開されれば、受ける側も分かるわけです。ですから、その形を是非作っていただきたい。点検についても田代委員が指摘したとおり、それがちゃんとできているかどうかを見てほしいというのが1つです。

 それと、ホームページが分かりにくいという話もしかりです。これも具体的に公開している所を探して、全部直リンクを許可してくれれば、ポータルを作ってしまうというのはあるかもしれませんが、私もページを探して、結構苦労をしたのです。それも細かいガイドライン的なものがあって、こういう形で公開するという形があったほうがいいし、それもできているかどうかを言っていただいて、具体的にこうするのだよ、それでこうなったのだよ、ということをやってほしいと思います。公開に関連して一部には、なぜ勝手に公開するのかという趣旨の意見もあり、あらぬ誤解を招きますから、例えば必ず資金提供前に、提供するなら公開しますと言っておくとか。それをもらわない自由は常にあるわけですから、そういう疑念は全くなくなると思うので、そういうことの徹底とか。これはガイドラインですけれども、実務上きっちりできるようなことを決めていただきたいというのがお願いです。

 それから質問です。今回は研究だけに対応されたのですけれども、広告の在り方について、製薬協として特に今回、新たに検討したことはないわけですか。

○田中参考人 ありがとうございました。最初の御質問、Q&A対応のところは、しっかり取組ませていただきたいと思っております。

 それと、資金提供前にというご指摘ですが、現時点では事前に公開しますという同意書を、必ず取っております。ですから同意書に御同意いただけない場合、サインをいただけない場合は仕事をお願いできない、資金を提供できないとなっています。同意書については透明性ガイドラインが始まる時から公開に先駆けて、実施させていただいていますし、今後も続けていきたいと思っております。

 広告については現在、製薬協に、「医療用医薬品製品情報概要・専門誌広告作成上の留意点」という解説書があります。広告についてはその中で「通常広告」「品名広告」「記事体広告」という3つの分類があります。その分類について今一度、各企業が広告の趣旨に沿って広告をしているのか確認しております。パンフレット等もかなり細かいところまで、製品情報概要審査会という委員会で内容をチェックしています。もっとも、ここでできるのは新発売のときのいわゆる総合パンフレットです。作成上の留意点をしっかり守る通知も出しています。

○花井委員 今後とも、そこを是非よろしくお願いしたいと思います。

○稲垣委員 広告に使用するデータ等については、業界中にコードがありまして、それを遵守する形で信頼できるデータを使用するよう会社として判断するという形になっております。徹底というのは、確かに今後とも必要なことだと思っており、田中理事が言ったような形で検討を進めたいと思っております。

○宮田委員 2つお尋ねしたいと思います。1つは、社内のガバナンスです。今回は営業のMRさんが臨床研究の起点になっていたようなところがあります。今、製薬企業各社はMRさんというか、営業と、メディカル・アフェアという情報提供のところとを、明確に分けようとしていらっしゃると思うのです。そういったことをより加速するような方針を、まず明確にすべきではないかと私は思います。

2番目です。そうは言っても、最近そういう本部を立ち上げた製薬企業の実態をお尋ねすると、以前MRだったものの名前、看板を変えただけという状況があるのです。組織を作った上で、その教育体制をどうするかということが、今度の事案のようなことを再び起こさせないために、非常に重要だと思うのです。そういう意味では社内体制の整備と、それに伴う人材の配置転換、看板の掛け替えによる教育をどうやるか、それをどうやったかということも検証可能な形で担保するような手立てをお考えになっていただきたいと思います。

 もう1つは、医師の方々は言いにくいでしょうから言います。奨学寄附金というのは、実は日本の医学研究を養っている面があるのです。それを皆さんが委託研究にすると言ったときに、ある医師たちに聞くと、医学研究が止まってしまうのではないかという懸念をしていらっしゃる方も、現実にはおります。曖昧さというものが、ある意味では自由な研究を許していたところもありますので、奨学寄附金を全部なくしてしまって受託研究にすることが、日本の医学研究そのものに対して、実はネガティブなインパクトもあると思うのです。

 そういう意味ではもうちょっと公明性を担保した、医学研究を支援するような仕組みを。皆さん売上げの4%から5%ぐらい、透明化ガイドラインで公表するに値するようなお金を使っていますから、それをどうやってもうちょっと善用するような、清らかな臨床研究支援のための資金ソースを作るかということも、是非とも御検討いただきたいと思います。これを枯らしてしまうということは、実は我が国の製薬企業にとっても、非常に重要な、将来を失う問題であると私は思っています。最近政府も、そういったものを作りたいと言っている面もあるので、その仕組みについては是非、御協力を頂いて、もうちょっとクリアな、競争を公明正大に公募するようなファンディングの在り方というのも、検討していただきたいと願っています。

○稲垣委員 宮田委員の、奨学寄附金が重要だという御指摘は、誠にもっともだと思っております。製薬協としても、この中で書かせていただいたのは、奨学寄附金をやめるということではありません。使い道あるいは研究の中立性について、疑義を抱かせるようなことは避けるという目的で、自社品での研究についてサポートする際には、奨学寄附はやめるということです。ただ、本来の目的である学術研究、あるいは教育の充実に対しての奨学寄附金については、今後とも必要なものであり、継続していくということで考えているところです。

 要は、そこの使い道です。研究の不透明さをなくすための仕組みとしてどういうものがあるかというところは、様々な考え方があろうかと思っております。それとともに、学術研究のと言いましても、各社それぞれがどの領域での学術研究を支援したいかというところでも、いろいろな考え方があります。その辺りの調整は難しいところもあるかと思います。やはりそこは各社の判断を入れる余地があってもいいのではないかと、私としては考えているところです。

○宮田委員 その考えも分かりますけれども、ここの委員会でも何回も議論したように、会社がしたい臨床研究以外に、国民のための臨床研究というものがあります。それに関しては税金を投入すべきです。しかし税金の投入額が少ないと思いますし、税金だけでは十分賄えないと思っています。それは多分、育薬あるいは安全性に関する情報が得られる可能性がありますので、皆さんにとっても良いことだと私は思うのです。そういう意味では皆さんがコントロールしないお金をチャリタブルに基金として出すことも、一度は検討してみたほうがいいのではないかと私は思っています。

○森嶌委員長 私は医薬品の被害者救済基金という制度を作り、随分昔にいたしました。その基金は政府の基金ですが、ある意味で製薬会社に医薬品副作用被害を出さないようにするために、医薬品の売上げから毎年一定の金額を出させて医薬品副作用被害者に補償金を給付するという制度です。日本製薬工業協会は臨床研究推進を目的とした協会でないことは確かですけれども、今は政府に対する不信感があったり、政府自身の基金がどんどん減っている状況で、日本製薬工業協会自身が基金を持つかどうかは別として、協会がイニシアチブを取って民間の公的なファンドを作るというのは一つの考え方だと思います。宮田委員が育薬とおっしゃっていましたが、特定の企業だけではなくて、製薬業界全体が国民全体のために、日本の製薬企業の将来のためのファンドを作り、そのファンドに各企業がそれぞれ拠出する。そして、ここにおられるような立派な先生方を審査員にして、将来どういうことを研究すべきかというアイデアを出して、ちゃんとした研究機関にお金を出すような制度を、是非考えていただきたいと思います。

 私は別の所でいろいろな奨学基金などの審査員をやってきましたが、文科省も含めて、日本の基礎的なR&D、とくに、基礎的な社会科学的な研究の基金がだんだん減っているのが現状です。よその国に比べて、日本は危機的な状況になっています。良いかどうかは別として、中国などは国家的にどんどん金を出しています。後になって被害が出た救済基金に金を出すぐらいなら、それを前倒しにして被害を予防する研究にお金を出すことも是非、検討課題に入れていただければと思います。

○山本委員 本日机上にお配りしましたが、たまたま今日付けで日本学術会議から「我が国の研究者主導臨床試験に係る問題点と今後の対応策」という提言を出しました。これは、一般的な研究不正の問題と臨床研究に係る研究不正の問題を合わせて、官邸から学術会議に、少し何とか科学者が考えろということで依頼が来たものに対して、半年間ぐらいかけて検討してきたものをまとめた一つの提言です。

 この中では臨床研究者自身、医療機関・施設に対する現状分析と提言、学会等に対する分析と提言、製薬業界に対する分析と提言、国に対する分析と提言、という5つの項目でいろいろ書いています。その中の4番目の製薬業界に対する提言というのが今日の話題とからむかと思います。私はたまたま学術会議の生命科学の部の部長をしているものですからこの委員長を仰せつかっていますが、曽根先生には幹事として入ってもらって、いろいろ有益な御意見をいただいてとりまとめたところです。先ほどの曽根先生の御意見は一段踏み込んでいたと思うのですが、最初の稲垣委員の御説明を伺って、多分製薬協のおっしゃっていることと我々が求めていることとは、基本的にほとんど一致していると思っております。

 まず、臨床試験に関しては奨学寄附金ではなくきちんとした契約を結ぶことです。それから、医療機関に対しては臨床研究の管理センターを作れということをこの中で提言していて、契約はこの管理センターが監視をする。そういう形で、研究者個人と企業が直結で何とかするというのではなく、間にきちんと機関が入る、そういうことを提言しています。宮田委員が言われたように、この提言も奨学寄附金全部を否定しているものではありません。ではなくて、ある市販後の医薬品に対する効能を調べるときの臨床試験に関しては、きちんと契約を結んでやれ、と提言しているわけです。実際に実態がまだそこに落ち着いていないのではないかと言われる曽根先生の先ほどの御意見は、それはそれで非常にごもっともだとは思うのですが。

 それから、国に対する提言という形になっているのですけれども、あるレベル以上の社会的なインパクトがあるような臨床試験、非常に大規模なものであって、その結果が医療経済まで左右するような大規模臨床試験に関しては、むしろ国が組織を作って、例えば研究代表者を公募するとか、そこまで介入して臨床試験を行っていいですよという許可を出す。資金的にも国のお金も少しは出す。しかし全面的に税金で市販後の医薬品について検討するのは、多分国民側からしても認められないことでしょうから、そこに対しては製薬業界全体として、社会的責務として基金を作って、インパクトの大きい臨床試験については基金からサポートをする。そういうシステムを作ってほしいと提言をしています。それがどこまでいけるか、なかなか難しい提言だね、とおっしゃる方もあるのですけども、それは製薬業界としてこういうものを受け入れる用意があるかどうかですね。先ほど宮田委員と委員長が言われましたけれども、ある程度以上の非常に社会的なインパクトのあるような臨床試験は、製薬業界としても社会的責務としてサポートするという考えがあるかどうかという点を伺わせていただければ非常にありがたいと思います。

○田中参考人 ありがとうございます。山本委員の御指摘は本日机上配布頂きました資料の13ページの「公的な機関による透明性を確保した」というところだと思います。我々としてもまず公的な枠組みができれば、しっかりと御提案について議論する用意はあると思います。まず枠組みが先か、というご議論もあるのでしょうけども、貴重な御意見として伺いたいと思います。ありがとうございます。 

○稲垣委員 若干追加させていただきます。山本委員の今の御指摘も非常に重要なところかと思っております。この私の話の中でも「研究の中立性」という言い方で言っているところがあるのですが、大きな研究、臨床現場で参照されるエビデンスを作るような研究に対して、もし企業が研究助成をした場合、助成したことで研究の中立性に疑義を招くような結果になると、その研究自身が無意味なものになっていしまいます。それを避けるべく企業側としては、研究の中立性を大事にする形で支援に取り組んでいかなければいけない。では、そのときにどのような支援の仕方があるかは、結構大きな問題をはらんでいる内容かなと思うのです。例えば、エビデンスを作る臨床研究で全ての会社が一律に支援を行うというのも難しい場合、研究費を出したところ、出していないところで、なんやかんや言われるような話になってはかないませんし、その問題を避ける取組みが必要です。そうすると、参考人が言われたような何かの公的な仕組みが前提になって、そのうえで中立性を保ったうえでの助成の在り方、そういう助成方法が論議できるようになると我々としても有り難いなとは思っております。御意見ありがとうございます。

○藤原委員 2点ほど製薬協の関係で聞きたいのですが、1つは、この会でも1度聞いたことはあると思うのですけど、メーカー公取協さんが臨床試験に際して試験薬の提供をしてくれる判断を多分してると思うのですが、その辺りのフローがサイトに行ってもなかなかはっきり見えてこないというのがあって、我々医者は最近全部書類にサインしてお金いくらもらいますよとやっているのだったら、メーカー公取協さんのいろいろなフローも判断基準として詳細なものを公開していただければなと思うのが1つのお願いですね。

 もう一つは、臨床研究というのは別に医薬品を使うものだけではなくて、医療機器とか診断薬とか一般用とか、もっと危ないのは美容や健康食品、化粧品を使った臨床研究もどきとか、診療と研究の区別が非常につきにくい領域もたくさんある。その関係の学会を見ると非常に学会が派手だったり、夜、いろいろなイベントをしてみたり、どこから金が出てくるのだろうとよく思うのですけど、それに関係して製薬協さんは団体なので、上位の団体が経団連であったり商工会議所や中小企業の集まりかもしれませんけど、そういうところと連携してほかの分野の人たちに何か働きかける。製薬協さんだけが努力してもほかの臨床研究をやっているメーカーさんはたくさんあるので、そこを何か働きかけとかはされているのでしょうか。

○田中参考人 藤原委員の御指摘につきまして、医薬品公取協はもっと判断基準を明確にし、さらに透明性の高い公開にすべしとの点につきましては、組織が違うのですぐに私が「はい」となかなか言えないところではありますが、意見をしっかりと医薬品公取協にお伝えしたいと思っております。また化粧品や診断薬については、団体としての交流はあるというわけではありませんので、私から「承りました。すぐに御連絡します」とは伝えられる状況ではありません。ただ非常に大切な意見だということで、機会があれば必ず連絡したいと思います。

○森下委員 私も意見だけお願いします。透明性ガイドラインにつきまして労務提供を明らかにという話が載っておりますけれども、大学病院という教育機関で正規職員、非常勤職員等で中に入っている場合には、今後、(4)の「公開対象」の項目に入れていただくほうがより世間的にも分かりやすいのかなと思ったのが1点です。

 もう一つは、「製薬協の取組について」をまとめられてる一方で、医療機関にも周知徹底して両輪でやる必要があると思っています。せっかくまとめて実効性の話も出ておられましたが、医療機関としても労務提供を求めないとか、過度なお金を求めないような仕組みも合わせて考えていかないといけないですし、逆に業界からも提言されてもいいのではないかと思いました。

○桑島委員 研究機関は分かるのですけれど、例えば学会への寄附金についても言及されておられますか。最近の学会は非常に派手になってますので学会に対する寄附金の在り方、透明性はどのようなことで担保されているのでしょうか。

○田中参考人 透明性ガイドラインの10ページの資料を見ていただきますと、B項目の学術研究助成費の中には学会寄附金、第○回○○学会○○円とか、学会共催費についても明確に開示しております。そこで御理解いただけたらと思っております。

○曽根委員 1つだけ確認します。今、臨床の場で非常に心配されている医師がいます。それはC項目、原稿執筆料、講演料、これが平成26年度から医師別に件数と総額が公表される予定です。我々が一番懸念するのは、企業間で公表の仕方に大きな違いが出る可能性です。ある企業は全てのデータを公表するが、もう一方の企業では閲覧の場合に2段階、2段階にするとかあるいは記載や撮影は一切許可せずに、のぞき見的な閲覧にするとか、そういった情報が伝わってくる。透明性ガイドラインに「公開対象」と書いてありますので、製薬協として是非とも統一していただきたい。一番いいのはやはり1段階で全て公表する方向でやって欲しい。先ほども話がありましたようにやはりチェックですね。公表方法についての点検をしていただかないと、「努力しています、通知しています」という説明では、今の段階では社会は許さないと思います。是非点検をして、出来ていなければその企業を指導をする。それでも言うことを聞かなければそれ相応の措置をするということも、是非ここで製薬協として明言していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○田中参考人 曽根委員の御指摘は特に今年度のC項目の公開方法についてというご質問と思います。冒頭稲垣委員からもありましたように、私たちは透明性ガイドラインの基、情報公開を2013年度初めて取り組みました。これは御承知のとおり一国を挙げて全て実施した国は世界でも類を見ない話です。まず公開することが第一歩であったと考えています。ただし、2013年度は初年度ですから、少し各社用心していたのか不安になったのか、慎重に実施したと思います。会員会社は、お互いのホームページの公開状況をよく見て、これで大丈夫だなというのが分かってきています。公開年を重ねる度に、より透明性の高いものができるものだと思っております。

 御質問のC項目につきましても来年度が初めてですから、会員各社は少しどこまでだという不安も持ちながら取り組んでいるのも事実です。ただし先生がおっしゃられたとおり、本来の方式でも、2段階方式でもしっかりと透明性を高める、確保するよう再三お願いしております。例えば会員会社70社の窓口担当者や責任者会議等々でも、さらに透明性の高い取組みを実施してほしいということについては再三申し上げています。ただ、C項目の詳細開示については来年度からの実施ですのでまだチェックができていない状況です。いずれにしても初めての取組みで、他社はどうするのだろうと模索している状況は間違いないと思います。しっかりと高い透明性の確保につながるような活動にしていきたいと思っております。

○宮田委員 ちょっと付け加えますが、先ほど山本委員から教えていただいた学術会議の提言には、しっかり2段階法や閲覧制限がかけられるなど、国民には公明性に欠けた運用となっていると指摘を受けています。ですから多分そういう後押しがないと、対医師というのは皆さん対顧客でもあるので弱いでしょうから、こういった公的な後押し、今日の議論もそうですけども、必ず皆さんの透明化を高める方向で国民は望んでいるという声の一つになると思いますので、是非そういう追い風を利用して毅然とやっていただきたい。

○田中参考人 ありがとうございます。しっかり取り組ませていただきます。

○山本委員 1つ申し上げますと、学術会議の委員会には文系の先生方、法律家も入っていまして、割合、国民目線になっているところもあります。ですから1つはどこまでは公開しなくていいかという上限の金額の感覚が違うのですね。医療界の方々が考えておられるのと、それ以外の一般の方々が高額と思われる金額が全然違っているということがあります。ですから本当に透明性を高める、ここまではいいだろう、これぐらはいいだろうというのはやめて、提言には全部きちんとデータベース化するとまで書いてありますけど、そこまでやっていただきたいと考えております。

○森嶌委員長 私は文系でして、以前に医学会の総会に招かれたことがありますが、学会だというのに製薬業界のスポンサー付きでパーティーで鏡割りなどをしたりしているのですね。医学界は製薬業界に対して知的資産の提供者として、また医薬界の需要者として大きな支配力を持っているので、医学界の人たちは製薬業界から多額の金銭を得ることを当然のことと考えているとうに思えます。ですから今日の話を聞いていても、製薬業界を責めるのも結構ですが、そんなことを公表したらこれからおまえらに協力しないぞ、と製薬業界に対していうような学者や病院がいないように、医学界も襟を正すことが、製薬業界にちゃんとやれと言うと同時に必要なことのように思います。今、山本先生が言われたように普段金銭の桁が違うところに住んでいると、目線が違う医学界に対してもうちょっとやらないと、製薬業界が襟を正そうと思っても、後から医学者からどこかで報復されるのではないかということになれば、なかなかやりにくいのかなという感じがします。そこで、ここにおられる医学界の先生方が、医学界にも我々のここでの議論を徹底させるようにおっしゃっていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは田中参考人、大変お忙しいところありがとうございました。それでは、本日いろいろ注文が出ましたが、大変難しいところもあろうかと思いますけれども、できるだけ実現に向けて御努力いただくようにお願いいたします。ありがとうございました。

 それでは次の議題2の報告書()に移りたいと思います。先ほども申し上げましたが、930日に中間とりまとめを行いましたが、第4回目を昨年12月に開催しました。そして先ほど申し上げましたが刑事告発ということがありました。今日の会合も含めていくつかの展開がありましたが、今まで繰り返し申しましたように、私どもには、事実解明について強制権限がありませんので、かなり精力的にヒアリングなども行いましたけれども、誰が実際にデータ操作をしたのかを突き止めるということまではできておりません。やはり、そのような権限を持った機関に委ねるほかない。これは恐らく全ての委員が認識されたことだろうと思います。

 しかし委員の大変精力的な御検討の結果、ある程度のところまでは事案の解明ができると同時に、具体的な事案の解明はともかくとして、全体的な製薬協会と臨床研究に関するいろいろな諸問題が明らかにされると同時に、どういう方向で問題を解決していかなければならないのか、再発防止のためにどういうことをしなければならないかについて検討し、ある程度の方向が出てきたと思います。現時点で一応一定の考え方をとりまとめる段階まできていると考えております。

 私どももこれまで法制化の検討ということも申しておりましたが、厚生労働省の方でも法制化の検討を始めなければならないと考えておられますようで、私どもの検討会としてはここで一定のとりまとめをしようということであります。そこで案を事前に各委員にお送りしましたが、かなり切羽詰まったところで案をお送りして、御意見を伺って、各委員の御意見も反映したものに書き直した案を今日また示したこともありまして、必ずしも皆さん、十分に検討する時間がなかったとは存じますが、手元に配布している資料3に案を示しています。特に皆様にお示しした後に、委員の意見なども入れて修正した要点も含めて、簡潔に事務局から資料3について説明していただきたいと思います。では、よろしくお願いします。

○一瀬課長 事務局です。それでは、資料3の「報告書()」に基づきまして説明させていただきます。こちらの報告書()ですが、昨年の108日に取りまとめていただいた「中間とりまとめ」をベースにして、その後に分かりました新しい事実を追記したり、読み直して分かりにくい部分は分かりやすく書き直したり、そういった修文を加えています。大きく変更したところをかいつまんで御説明申し上げます。

4ページを御覧ください。4ページには当初、中間とりまとめで書いていた2大学以外の残りの3大学、滋賀医科大学、名古屋大学、千葉大学からそれぞれ調査結果が報告されましたので、それについて記載しています。

 滋賀医科大学については661例中、67例についてデータが異なる事例があったということで、恣意性が否定できないのではないかという大学の調査結果がありましたことを記載しています。また、その調査結果を踏まえ、医学雑誌のほうから同論文が撤回されたことを記載しています。名古屋大学のほうは、全部で1,150症例中、数例でカルテと入力データの相違点があった。恣意的なデータの操作はなかったということが書かれています。千葉大学のほうは、調査ができた症例109例のうち、58%の相違が見られた。意図的なデータ操作は明らかでなかったということが書かれています。また、その他の紙媒体の資料については廃棄されたということを記載しています。

8ページを御覧ください。8ページの中段の「臨床研究の企画立案」のところで「一方」の段落になりますが、「一方、大学等の研究機関においては、この時期、同種同効薬が数多く流通する疾患領域において、根拠に基づく標準的治療法の整理・検討がすすめられた」と記載しています。こういうバックグラウンドがあったために、こういう事案が起きたのだということを記載しています。

13ページを御覧ください。こちらにも先ほど出てきた滋賀医科大学の記載をしていますが、滋賀医科大学の記載については、先ほど申し上げたとおり1割の研究データの誤りがあったということです。今まで出てきていた京都府立医科大学、慈恵会医科大学のときと製薬メーカーの関わり方が違うという点、また、データの改ざんが疑われる点に関して研究者の関わり方も異なっている点、そういったものが異なっていて、大学によってノバルティス社との関わりが異なることを記載したところです。

14ページですが、この検討会において5つの大学の調査結果の報告をまとめたところです。京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学、滋賀医科大学の3つの大学については、データの操作又は恣意性が否定できないという調査報告を大学がしています。名古屋大学については恣意的なデータ操作はなかった。千葉大学については現時点でデータ操作は見当たらないといったことが書かれています。ただ、この大学の取組方として、この事案が発生して速やかに取り組んでいる大学、そうでない大学がありますので、臨床研究実施機関としての管理能力が、ひとつ反映されたものではないかということを記載しています。また、15ページの一番最後の所ですが、ノバルティス社元社員の各研究への関与の度合いも大学によって異なることから、それは臨床研究実施機関の能力の差によるのでないかということを記載したものです。

16ページですが、先ほど曽根委員からもありましたように、この事案が起こった後もまだまだこういう事案が続いているということで、中段の所で「昨今、本件事案に留まらず、臨床研究を巡る様々な事案が明らかになってきており、今後の再発防止策の具体的検討・実施にあたっては、これらの事案についても参考の上」という記載を加えています。

21ページの上になりますが、○3データ改ざん防止対策の構築という項目に3行加えています。「このように臨床研究実施機関においては、臨床試験の開始前にデータ管理が適切に行えるよう、必要な人材確保・組織体制整備に努める必要がある」というように、人材確保・組織体制の表現を加えています。

22ページの中段ですが、○2研究支援に係る製薬企業の透明性確保に付け加えた部分として、「また、本件事案やその他の臨床研究事案を踏まえ、日本学術会議等様々な機関が利益相反管理等に関する提言を行っており、これらについても十分留意すべきである」と記載しています。これは先ほど山本委員から御発表がありました本日付のものが抜け落ちていますので、昨日末の段階での引用文献となっていますが、適宜修正したいと考えています。

24ページの上で、○2製薬企業のガバナンス等の徹底という項目の中に「また」以下ですが、「また、製薬企業は、法令や各種ガイドライン等のコンプライアンスの状況を点検するとともに、より一層、法令等遵守に努めるべきである」という記載を入れています。続いて、(4)その他で(対応が必要な主な事項)として、「臨床研究の実施機関は臨床研究倫理指針の適合性に関する自主点検を適時適切に行う必要があること」。「臨床研究倫理指針違反事案その他データのねつ造など臨床研究の信頼性を揺るがす事案の存在又はその疑いが生じた場合、臨床研究の実施機関は、直ちに調査委員会を立ち上げ、早急に事実解明及び必要な対応方策を講じる必要があること」という記載しています。

27ページの一番上で、(2)学会ガイドラインについてですが、今回の事案に関連した論文が高血圧のガイドラインのほうに引用されていましたので、その後、どうなったかを記載しています。「撤回された論文について当該ガイドラインから削除し、適宜修正を行った」と追記しています。

28ページの中段ですが、「なお、本件調査について、中間とりまとめの時点では速報を記載したが、本報告書では第4回検討委員会で報告された最終結果を添付した」ということで、主な臨床研究実施機関による自主点検の結果を後ろに記載しています。

29ページ以降の「むすびに」で、前回の中間とりまとめから大幅に書き直しをしています。今回のこの「むすびに」の書き方としては、この検討委員会で様々な制限がある中で御議論いただき、明らかになった事項を網羅的に概要という形で記載しています。(1)今回の事案にかかる臨床研究の企画立案について、大学側研究者に特定の医学的研究課題の解明を目的としたとは考えられない動機が認められること。

(2)今回の臨床研究事案のノバルティス社の関与については、元社員一個人が関与していたというよりは、実態としてはノバルティス社として今回の事案に関与していたと判断すべきものであること。また、ノバルティス社が今般の事案に対して提供した奨学寄付金は、スポンサーとしての役割を果たすものであり、奨学寄付金本来の趣旨と異なるものであること。こういったことを記載しています。

30ページで、(3)大学側研究者における利益相反管理がずさんであったこと。また、倫理審査委員会が事案発生の歯止めとして機能していないこと。こういった大学における問題点を記載しています。(4)今回の臨床研究事案にかかるデータの信頼性は大学間で異なるものであり、事案が判明した際の大学における調査の迅速性や内容は大学間で大きく異なること。こういった大学の管理能力の違いといったことが書かれています。その後、「本検討委員会としては」と記載していますが、先ほど委員長からありましたとおり状況が変わってきたこと。ノバルティス社を薬事法違反の疑いから検察庁に告発したと公表したことなどを記載しています。

31ページを御覧ください。最初の段落で「臨床研究が科学的に正当に行われるべきことは当然であり、その本来の目的は、医学的研究課題の解明を通じた『患者の利益』追求であるはずである。このことから、科学的正当性をもたない臨床研究は患者の不利益をもたらす可能性とともに、国益の大きな損失につながる。本検討委員会が検討対象として取り扱ったノバルティス社の高血圧症治療薬ディオバンの市販後大規模臨床研究に関する事案については、他の臨床研究事案との比較において、事実と異なる研究結果が医療現場に広く周知され、医師の処方行動の変更をもたらすことにより患者にまで影響が及んでいる点で社会的影響が際立つ。仮に、本事案以外の臨床研究事案がそこまでの影響を及ぼしていなかったとしても、同様な事案に関わった全ての研究機関、研究者、製薬企業等は、これを端緒として、患者を含めた医療現場に大きな影響を及ぼす可能性があったことを十分反省し、事実関係の積極的解明と社会に対する説明、再発防止策の徹底が求められる。また、医療関係者においても、医薬品の有効性や安全性に関する情報を製薬企業からの情報提供だけに依存するのではなく、自らも情報収集に努めるとともに、得られた情報を科学的に見極めるための研鑽も求められる」として、研究に携わる全ての者、また、医療を行う医療関係者においても注意しなければならない点を記載しています。

 「ノバルティス社のディオバンに関する事案は、先人が様々な実績を積み重ねて築いた我が国の臨床研究に対する信頼を損なうものである。一旦失った信頼を回復することは容易ではない。このような事態を招いたことに対する研究責任者及び関係大学並びにノバルティス社の責任は非常に重く、十分な反省と再発防止に向けた真摯な対応が求められる。信頼回復のためには、臨床研究に関わる全ての関係者が真剣にこの事案と向き合い、愚直に再発防止策を実行しつつ有用な研究成果を積み重ねていくほかないと考える。我が国の臨床研究に対する信頼を回復するには、行政のみならず、大学等研究機関、製薬企業、学界等、研究に関わる全ての者が真摯に取り組まなければならない」とまとめています。

 私からは以上です。

○森嶌委員長 ということですが、3日か4日の時間しかなかったと思いますけれども、皆様にはこれと少しバージョンの違うもので御意見は求めています。何か御意見がございましたら。

○曽根委員 用語の使い方ですが、臨床研究実施機関が何々すべきという書き方と、誰がすべきかという点で、例えば20ページの上から5行目に、「国は、臨床研究責任者及び実施機関の長の責務を明確化」という記載があります。「臨床研究の実施機関は」と書いて、何々すべきであるとの記載が結構ありますが、記載としては「長は」というように明確にすべきではないかと私は思います。

 もう一点は、「臨床研究実施機関の長は」としたときの解釈について、臨床研究、臨床試験、倫理審査などは病院でなされるわけですから、大学病院であれば病院長だと思います。この間、ある大学に行ったときに倫理委員会の委員長を病院長が担当しており、倫理委員会は第三者の立場で病院長から諮問されて答申する役目をはたすことから、これはあり得ないケースです。話を聞くと、医学部附属病院なので長は医学部長だという解釈をされていた。そうではありませんよという話をしました。もう少し誰がやるべきかということを明確にするためには、「長」の記載を入れるべき所は入れて明確にして頂きたい。実施機関の長は病院長でいいと思いますが、報告書に従って実効性のある対応をするという意味では明確化したほうがいいと私は思いますが、いかがでしょうか。

○一瀬課長 実施機関、又は実施機関の長という言葉の整理につきましては、その意味するところを踏まえて修正を加えたいと思います。

○森嶌委員長 ここでは、臨床研究をしている所では臨床研究の責任者になっているわけですね。そして長は医学部長か学長かはともかくとして、そこは臨床研究そのものの現場の長ではないですね。書き方として私はそう読んでいたのです。

○一瀬課長 そういう意味で記載しています。

○森嶌委員長 ということです。そういう理解でもう一度読み直して、混同があるようだったら直すということにさせていただきます。ほかに、いかがでしょうか。

○藤原委員 厚生労働省は、ノバルティスを誇大広告で告発していますけれども、今後のこういう事案の防止には広告を規制する。特に日本はDTCという消費者向けの医薬品の販売広告はないですが、専門家向けの広告は山ほどあって、例えば商業雑誌などを見ると大半が広告のページで占められているところがあり、あそこをうまくコントロールしないといけないだろうと思います。それがここでは抜け落ちているので、一部、薬事法のところで誇大広告とは書いてあるのですが、そこの広告に関してどう規制するのかというのは、ある程度書いたほうがいいのかなと思います。

 それに関して、先ほどの製薬協の透明性ガイドラインの中にも入っていなかったのですが、製薬企業が例えばある雑誌の号を買い取ったり、ページを全面広告にしたり、新聞でもそうですし、そういうところをたくさん広告でやっていますけれども、そこの支出というのは透明性ガイドラインには全然なくて、医師向けのところは書いてありますが、企業同士ですね、出版社とか雑誌社にお金を入れているのは透明性のガイドラインからは外れるのか。その2点を聞きたいのです。

○稻川監視指導室長 広告の規制のほうですが、26ページに追加した部分で、今後、「欧米の事例も参考にしつつ、広告の適正化法策についての検討を行うべきである」と御指摘を頂いています。これにつきましては、これから私ども、1つは研究班で、まずは広告の欧米の実態とか、あるいは今回の問題も含めた様々な問題が指摘されていますので、そういうものについて論点の整理をやっていきたいと思っています。それを受けて今後、どういう形の適正化方策が適当なのかについては議論していきたいと考えています。今の段階でこうすべきだというところまでのものを持っているわけではないのですが、問題意識を持って検討してやっていきたいと思っています。

○稲垣委員 あともう1点、透明性については田中参考人より回答いたします。

○田中参考人 製薬協の田中でございます。出版社等についての透明性については、昨年の1118日に、日本医学会利益相反委員会からも、公開すべきだという要望書を頂いています。現在検討をしていますが、いつからとか、どんな形で実施するのかというところまでまだ踏み込めていない状況です。仮に公開するとなった場合でも、事前に関係の出版協会等々とか同意書が要るものですから、今すぐにということではありません。ただ、検討しているということだけ御連絡させていただきます。

○桑島委員 せっかくですので、製薬協でいわゆる監視部門とかチェック体制とか、そういう部門はあるのですか。外部から問題を指摘されて初めて動き出すというパターンですか。いわゆる自主的なチェックは行っていないということでしょうか。

○田中参考人 広告についてでしょうか。

○桑島委員 広告についても、あらゆることについてです。

○田中参考人 先ほど解説書をお見せしましたが、新発売の場合のパンフレットについては全品目、製品情報概要審査会という所でチェックを入れています。

○桑島委員 広告はどうするのですか。

○田中参考人 発売後の広告、パンフレットにつきましては件数が非常に多いものですから、全部は見れていないという状況です。各社の社内にある広告審査部門を通ったものだけが、パンフレットとして出て行く状況です。

○桑島委員 膨大な量の宣伝広告を出している企業があるわけです。そういうものに対するチェックで「お宅の会社はやりすぎですよ」というような自主規制ができているかどうか。

○田中参考人 会員会社の相互監視です。このパンフレットはおかしいじゃないか、自社の薬と比較してここまでは言い過ぎではないかという苦情申立てがあって、その都度審査会で判断しております。

○桑島委員 苦情申立てが来てからですよね。だから誰か苦情を出さないと駄目なのですよね。

○田中参考人 基本的には、そうです。

○桑島委員 自らそういうチェックできる部門を設けたほうがいいと思いますけどね。

○田中参考人 製薬協内にですか。

○桑島委員 そうです。

○森嶌委員長 それはやり過ぎではないですか。厚生労働省が違法な広告やパンフレットをチェックするのは問題ないでしょうが、製薬協会が例えば広告のやり過ぎでも、必ずしも違法なものではなく、これは効きますよというのの行き過ぎを年中監視して、細別企業を規制するとすれば、何を基準にして何を取り締まるのでしょうか。

○桑島委員 それは外部規制よりも、自主規制のほうがずっと重要だと思います。ですから、外からの規制は好ましくなくて、むしろ製薬業界の中である程度規制して、やりすぎではないかという考え方も必要だと私は思うのです。

○森嶌委員長 でも膨大なものを製薬協で、何を自主規制するかということですけれども、私は法律家ですから、逆に規制というものの持つ恐ろしさを知っていますので、自主規制をする場合でも、何のために、誰の利益を守るための規制をするかということを十分に考えておかなければかえって問題があると思います。桑島委員のおっしゃることもよく分かるのですが、やるときにはかなり慎重にやらないと、下手をすると自主規制の名のもとに、大きな製薬企業が小さな製薬企業を潰すためにやるリスクだって、ないわけではありません。ですから、もしも製薬業界の中でそういうことをおやりになるのだったら、何のための規制で、誰の利益を守るために、どういう基準に基づいて、どういう方法で規制するのかということを十分お考えください。今、こういう事案があるので、それを念頭においてこういう監視体制が、なかったら駄目だ、駄目だとおっしゃるのは理解できますが、他面で明確な基準もなく業界規制をすることは自由な社会ではあまりやらないほうがいい。一般論ではありますけれども、おやりになるなら慎重にやっていただきたい。

○花井委員 今の議論ですけれども、この報告書の話なので、今、説明があったのは26ページの下の段ですが、このテキストの「また」以下の主体が今一、明確でないです。上のほうで薬事法で国はこうすべきと書いてあって、下は「専門誌等のマスメディアにおいても」と書いてあるのですが、マスメディアが十分検討すべきなのかというと、恐らくそうではないかなと思うのです。

○森嶌委員長 下の話ですか。

○花井委員 文章が。なので趣旨が、国が専門誌等のマスメディアの広告のあり方も薬事法との関係で検討すべきという趣旨の文章なのか、同時にマスメディア側もそれを留意するという文章なのかを明確にした文章にしないと、この文章ではマスメディアの問題もあるよねと書いてあるだけになっているので、ちょっと報告書の記述として曖昧だと思います。

○森嶌委員長 なるほど。

○花井委員 私の意見は、国も、いわゆる専門誌等のマスメディアにおける広告についても、上の問題意識と包含して検討すべきと書きつつ、マスメディアにも自重を求めるかどうか。私は求めたほうがいいと思いますが、皆さんの合意があれば両方に求める。今、製薬企業の件は議論がありましたので、それをどう記述するかは皆さんに委ねますけれども、取りあえずこのテキストではちょっと曖昧だろうと。

○一瀬課長 事務局です。今、花井委員がおっしゃったとおり、国は広告に関して検討を行うということで記載していますので、下の「また」以下の所につきましては、「メディアが」という意味で記載したつもりです。

○森嶌委員長 そうですね。

○花井委員 そうすると国は、このメディアについては。

○一瀬課長 広告規制全般の中に含まれますので。

○花井委員 含まれている、そうですか。

○稲垣委員 漢字の確認ですが、26ページで気になっているのは、「適正化法策」となっていて、これは法律を作るという意味でしょうか。

○河野治験推進室長 事務局ですが、私のタイプミスです。失礼いたしました。

○森嶌委員長 方向の「方」ですね。私も最後に聞こうと思ったのです。

○田代委員 広告の件は、確かにどこまでを広告とみなすか、それをどうやってチェックするべきかということは、先ほど事務局から御説明があったように、十分な情報収集と検討の上で考えて頂ければ良いと思います。ただ今回の事案についても、企業がお金を出して臨床研究をやっていただき、その結果、もともとの効能・効果とは違うものが出てきた場合、それを自由に宣伝に使えるという前提がなければ、恐らく起こらなかった問題だと思われます。私もまだ十分に調べてはいませんが、先ほど藤原委員が言われたように、諸外国においては、コンシューマー以外に医療者向けの広告をチェックする様々な仕組みがあるようです。この点で、出口の問題というのは非常に重要だと思っていますので、今回の事案の反省という点からも、26ページに追加で書いていただいた点は大変重要だと思います。

 あと実際の運用については、これは製薬協さんにお願いというわけではないですが、外資系の企業もたくさん入っていらっしゃるので、各国において医療者向けの広告が実際にどういうふうに規制されているのかは、恐らく情報を持っていらっしゃるのではないかと思います。そのあたりを検討していただき、日本でどういうふうにやっていったらいいか情報を上げていただくことが重要かと思いました。

○稲垣委員 情報を集められれば対応を取れるかもしれませんが、とりあえず御意見ありがとうございます。

○森嶌委員長 ほかに。

○花井委員 根本的な話で、このタイミングで最終的にけじめをつけましょうということに基本賛成です。

○森嶌委員長 最終的と言っているわけではないですけれども。

○花井委員 一応、けじめをと。ただ、この委員会のアジェンダの2ページの一番上を見ると「事実関係を可能な限り明らかにするとともに、その再発防止について検討する」とあります。後段はかなり状況も変わっているし、かなり踏み込んだ書きぶりがされていますが、前段については結構淡白です。具体的に言えば、最後の「むすびに」でも触れているのですが、それに関する記述は30ページの真ん中辺りの3行です。要は「本検討委員会による調査等の限界からデータの操作を誰が何の目的で行ったのかについてまで明らかにすることができなかった」と、前段のアジェンダがこれに尽きているのです。その前の所にも同じような表現が出てくるのですが、この「限界」をもうちょっと記述すべきではないか。

 というのは、具体的に申し上げると、例えば私は府立大学とノバルティスと元社員の方にインタビューしたのですが、府立大学に関してはデータが修正された時期はインタビューで明らかです。データ固定が2回ありましたからね。そうすると、この時期だというのが分かっていれば、普通に考えればその時のデータを置いていた事務の責任者と、具体的な研究者たちにもインタビューすれば、府立大学に関してはもうちょっと明らかにできたかもしれないと思っています。時間が許せば是非、インタビューしたいと思ったのですが、それが許されなかったのは、この研究会のポテンシャルの限界ではなくて、時間と予算の話になるのかどうかというのがあって、だから限界というのは、ここについてはここまでは分かったとか、この状況であれば例えば各関連大学がデータを変える可能性ができたのか、できないのか。その大学の研究者であれば可能だったのか。そういうところがテキストとしては一気に飛躍しているのです。明らかにできなかった、だから最終的にはみんなで責任を負うべきだとテキストの全文はなっている。その飛躍の部分が余りにも大きなアジェンダの一本柱の前の大きな柱なので、ちょっとそこが飛び過ぎている。この委員会として、もし閉じるというのであればもっとできた。もちろん限界があるというのは座長がおっしゃったとおり、それは皆さん認識しているところだと思います。しかし、もっとできたという部分も確かにあったわけで、そこを諦めたと言っては何ですが、閉じるということであれば、ちょっとこれはあっさり書き過ぎているので、そこはもうちょっと記述したほうがいいのではないか。これは大きな話で、細かい話は後のほうがいいですよね。大きな話はそんなところです。

○森嶌委員長 私が出席できなかったものについて議事録を見たのですが、例えば人によって同じ事実について言っていることが違うわけです。もしもこれが刑事裁判で私が裁判官でしたら、反対尋問をするとか他の証人を呼んで来ることができますけれども、ここではヒアリングで証言と言いますか、言っていることが違っても、どちらが正しいかということを物証とか人証などによって確認はできないわけです。違ったものは違ったとなります。ですから、花井委員がおっしゃるように、その時にいた研究員なりを呼んで来ることはできるかもしれませんし、できないかもしれません。できたとして、その時に食い違ったものについてどうするか。裁判所ではないので、一致すればいいですけれども、食い違った場合には確認をする手立てがないわけです。違ったものは違った。元社員の言っていることと、ノバルティス社から出てきているいろいろな証言とは違っているのですが、私としては確認しようがないところがあります。もちろん、花井委員のおっしゃるように、呼べるか呼べないか分かりませんが、できる限りの人を仮に呼んだとしても、限界があるのではないかという気がします。これは他の委員の方にも伺ったほうがいいかと思います。

○田島委員 私どもとしてはできる限りの調査をしたわけですけれども、その後、今年の19日になって刑事告発がなされていて、この後は捜査機関のほうで捜査していますので、この段階で更に私どもがいろいろな方をお呼びしてお話を伺おうとしても、なかなかその方たちがその場で話をされることが難しい状況になってしまっています。我々は任意にお話をお聞きすることしかできませんので、そこで供述を拒否するなり出頭を拒否した場合に、無理に引っ張って来てお話をお聞きすることもできません。何より事実関係を確定するには物証がなければ、人の証言だけでは食い違いが絶対に出てくることは否めませんので、それを質すための物証が必要ですけれども、それ自身も捜査機関のほうにいってしまっていると、告発の以降では、この場で事実を解明することは不可能に近いような状況になっていると考えますので。これは捜査機関に委ねるべきであろうと思います。

○花井委員 原理的にそうであるということを私は承知していて、刑事が並行して走ったということも承知しています。私が何にこだわっているかというと、例えとして的確かどうか分かりませんが、私は薬害エイズの被害者なので、薬害エイズでは刑事と民事が両方走ったのです。あのときも各国、例えばアメリカであればIOMが、カナダであればクレーバー委員会という公的な委員会が、この薬害エイズの真相究明というか調査をしたのです。これは再発防止のために必要だからやったのです。日本だけはそれができずに、いわゆるNIRAという所に割と急づくりな報告があるだけです。

 これを、国としてちゃんとやるべきだという議論のときに、刑事をやっているから、刑事が進んでいけば事実が明らかになるだろうという話でした。私たちはそれを20年間待ち、強制捜査もあったのですが、刑事で立証する、法廷で明らかにするという話と、このように国の政策として事実を明らかにするのは違うのです。

 もちろん、ポテンシャルとしてこの委員会に限界があるということは承知していて、クレーバー委員会やIOMのような大規模な資金も時間もないので、それはできないということは分かるけれども、役割は違っていても、公的に大臣から2つのアジェンダを与えられて報告書を出す限りは、私たちとしては単に限界があるということは踏まえた上でも、ある程度、こういうところが限界であって本来はもっとちゃんとすべきだとか、中立的な検証はもっと体制ができればやりたかったとか、そういうような主張をちゃんとしておかなければいけない。

 刑事に委ねたら、それで何か真相が分かるというのは、薬害エイズの経験で言うと、被害者は永遠に見つからない真相を刑事に探し続けたのです。それはいわゆる真相究明とは違う。誰が悪いだとか犯人探し的なものでもあるし、今回の薬事法に関しても、薬事法で違法かどうか立件するための動きを検察がするので、そこでの解明と、日本のこれからの臨床研究や、こういう不正を防ぐためにどうするかという解明は、違うということは骨身に沁みている。その経験からこの委員会として、確かに委員会としては小振りですけれども、当時のクレーバー委員会やIOMに匹敵する役割を与えられたのであれば、ここはこの委員会がやりたかったことというか、ここまではできた、でも本来はもうちょっとこうすればできたということを記述していいのではないか。そのことをこだわっているのです。だから、これでもっとやればできるんだということを申し上げているわけではないので、そこの書きぶりだけ考えていただけないかという意見です。

○森嶌委員長 公開の席上で議事録に残ることを承知の上で、こういうことを申し上げるのは問題でしょうが、外国のこういう調査委員会でしたらちゃんとした調査権限が与えられます。ここではマンデートは与えられました。事実を調査しろという使命は与えられましたけれども、調査をするための権限は与えられていないのです。ですから、例えば個人については非公開にするということで、ヒアリングをどうするかというときには、幸い、任意で出て下さいと言った人達は出てくれました。しかし、呼んだ人が出て来てくれなかったり、大学に資料を「出せ」と言っても「処理してしまいました、資料はありません」と言われたら、それでおしまいですね。その意味で花井委員のおっしゃることは十分に分かるのですが、ここに、刑事手続きが動き始めたのでやめましたということを正面から書けなかったのは、そういうことです。

 限界があると言ったのは、正面から権限もなく事実解明をしろと言われてやったけれど、ここまでしかできなかったということを、報告書としては、書かないということです。議事録には残りますが、今、花井委員からお話がありましたので正直に申し上げます。その意味で、確かにこれだけ見てマンデートは2つありながら、最初のはちゃんとやっていないではないかと言われると、マンデートの点だけから言うと確かに事実解明の点で不十分であった。しかし、これは一番最初に申し上げましたように、皆さんには非常に精力的にやっていただきました。ヒアリングも、マスコミの人たちにはかなり評判が悪かったのですが、非公開にするなどの工夫をして、できるだけのことはやりました。ところが、ヒアリングの中身には矛盾する証言が多かった。しかし、我々には反対尋問をしたり、物証を出させたりという強制的な権限はありません。大学についても、私は大学がきちっとしたものを出してこないのはおかしいと思いますが、「資料ありません」と言ってしまえばそれっきりです。こちらとしては大学の出してきたものを前提として考えるほかない。様々な制約がありますが、報告書の中で、制約が何かということを全て書くわけにはいきませんから、制約の中で、できるだけのことをしたということで我々として分かり得た事実を要約したものを、最後にまとめとして入れたわけです。

 花井委員のおっしゃることはよく分かりますけれども、我々の委員会がそういう性格の委員会だったということを、花井委員だけでなく皆様にも御理解いただきたいと思います。

○宮田委員 この議論は第1回目でやった覚えがあります。

○森嶌委員長 そうなのです。

○宮田委員 つまり法的根拠のない調査委員会が、いかに脆弱であるかということを申し上げたと思います。

○森嶌委員長 そうです。

○宮田委員 ですから、この調査委員会に犯人探しを要求されても難しいのではないかということも申し上げました。ただ、そういうような委員会しか作れない国であるということは書くべきではないでしょうか。つまり、先ほどの花井さんの経験から私はよく分かりましたけれども、刑事で犯人を探すということと、次に国としてこういった問題を再び起こさないように、政策的な転換を提言する委員会の役割は違います。私たちは、どちらかというと後者の役割を担うべきであるというのを、1回目に議論した覚えがありますけれども、それをやるにしても権限が足りなかったということは明白です。そういう国なのだということは書くべきだと私は思います。

 特に、ノバルティス社を刑事告発するに当たって薬事法の誇大広告、私が言うと何か誤解を受けますけれども、それでしか告発できないという異様な法体系を持っていて、ひょっとしたら手を染めたかもしれない医師たちに関しては、今、検察がどんどん入っていますけれども、最終的に罪を問えないというものでしか実は告発ができなかったという異様さは、この報告書から読み取れる方は読み取れると思いますが、もうちょっと明確にしたほうがいいのではないかと私は思っています。これは書きぶりで是非やっていただきたいのです。余り露骨に書くと、この報告書そのものが実効力を失ってしまう可能性があるので、議事録にはいっぱい書かせていただきますけれども、何かもうひとつ工夫が必要なのではないか。

○森嶌委員長 我々はジャーナリストでないということを、まず申し上げるのと、国の検討委員会ですので、今の御意見は十分に分かりますが、厚生労働省としてこれは最終的に大臣に提出するわけで、ある意味で国を批判することは構わないのですが、これだけに限らず、こういうことをやるときに評論家的なのは、こういった検討会には適さないと思います。こういう国なのだということを論評することは、少なくとも委員長としてはお受けしかねます。報告書に、書くとすればどういう書き方がありますか。

○宮田委員 それは、この臨床研究に関わる被験者保護と、適正化の担保をする立法をもっとやるべきだということを、「むすびに」に書くべきだと思います。「むすびに」をよく読むと何も書いていない。

○森嶌委員長 こういう性格の検討委員会の座長を務めて、国に対してこういう報告書を出して将来の国の政策に生かしてもらうためには、それなりの根拠と説得性を持ったものを書かなければなりません。今、おっしゃったことは分からないわけではありませんが、「むすびに」に書くとすればどういう書き方があるでしょうか。マスコミ風でなくて、提言をしていただければと思います。

○宮田委員 ですから、これに関しては、要するに秋口までに臨床研究の被験者保護と質を確保するような法律を検討するということは、もう既に決まっていますね。

○森嶌委員長 それは決まっています。

○宮田委員 ですから、それを今後、強力に検討を押し進めて、秋までに結論を明確にするということは「むすびに」に出したほうがいい。

○森嶌委員長 それは提言しています。ここにもそれは書いてありますね。

○宮田委員 「むすびに」。

○一瀬課長 事務局からよろしいですか。まず宮田委員がおっしゃられている関係の話ですが、16ページから「信頼回復のための法制度の必要性」という項目がございます。18ページの2行目に「公的な監視機能を新たに構築すること」うんぬんという記載を入れております。当然これを検討していくべきだという御提言を頂いております。また、「むすびに」の所でも30ページの下から10数行目に、これらを担保するための法制度等の必要性について提案をしたという記載を既に入れております。

○宮田委員 そこはよく分かっておりますので、それをもうちょっと「むすびに」の前のほうにもっていけないのかというのが私の希望になります。

○森嶌委員長 では伺いまして、中身は入っていますので。

○宮田委員 ですから、それをうまく。

○森嶌委員長 ほかに御意見のある方。それでは、花井さんが細かいところがあるというので。

○花井委員 今の件と関連するのですが、今の件は議事録にも載りましたので、座長のお考えに沿うのですが、結構踏み込んだことを書いてある割に、例えば17ページの真ん中辺りの「臨床研究実施機関におけるさならる費用負担が一般に困難な現状を考慮すると、規制強化によりうんぬん」と書いてありますよね。これはいつも論点になる、いわゆる法制を厳しくすると、臨床研究そのものができなくなってしまうではないかというバランスの書きぶりなのですが、このバランスの書きぶりがちょっと配慮し過ぎているのではないかと思います。なぜかというと、我が国で必要な臨床研究は、ちゃんとした研究が必要で、ガイドラインが要るじゃないかと。それがちゃんとしていなかったらガイドラインが反映したら今回のことのようになるわけだから、ちゃんとしたルールを作る必要があると言っているのに、この体制でも必要な研究ができるというように、逆に言えば裏返すと読めてしまうわけで、もちろん現実のことは配慮するという記述はいいのですが、書きぶりとして、具体的には2か所ぐらいあるのですが、例えば17ページの「本検討委員会としては」から続く18ページにつながる文章ですが、その真ん中辺りに「公的な監視機能を新たに構築することはうんぬん」とあって、「有効であるとは考えるものの」という書きぶりなのです。これはやはり「考える。」で1回止めた上でやらないと、ものの、やっぱりいろいろあるよねという、ここ10年の問題点なのです。10年前からそうしたいけれども、研究が止まってしまうねという議論をやっていたわけです。今回の経緯で、やっとちゃんとしましょうということになったのだから、ここは「考える。」とした上で、どういう配慮が必要かとかなどは別途書くような文章にして、1文にしないほうがいいと思います。以上です。

○森嶌委員長 ちょっとすみません。何行目ぐらいですか。

○花井委員 18ページの上から4行目ですね。

○森嶌委員長 分かりました。失礼しました。

○花井委員 一応案文も事務局にはメールで、こう書いたというのは送ったのですが、採用次第では、余り良い文章でなかったかもしれないので、そこは。そのときに私が考えた文章は、「考える。」で、「これら制度を整備するに当たっては」と書いて、「臨床研究実施機関に対する影響を考慮した上で」と書けばいいのではないですか。「さらに検討する必要があると考える。」というのは行政用語では、霞ヶ関文学から言えば、かなり後退した表現ですね。これは最初に作ったテキストなので、恐らく中間報告段階のイメージで、今かなり踏み込んできているので、その意味ではこのテキストは整合していなくて、踏み込んで、「これら制度を整備するに当たっては、我が国の臨床研究うんぬん」という、「当たっては、臨床研究の実施機関に対する影響を考慮したうえで、さらに」とか、そのように書いたほうが、全体としてはすっきりすると思います。

○森嶌委員長 そうですね。これについては、確かに今言われたようなことですね。しかも中間報告のときのでしょうね。

○花井委員 あの段階ではもう少し踏み込んでいましたよね、状況がね。

○森嶌委員長 それでは、これについてはお預かりしてもよろしいですか。確かに霞ヶ関文学と言うかどうかは別として、「ものの」と書いてあって「検討する必要があると考える」となると、何かやらないよという。

○花井委員 やらないと読めてしまいますね。

○森嶌委員長 そうですね。こう言うと、被験者保護の観点から有効だと。だけれども、やらないよ、というようにも読めますので、ここは検討させていただきます。

○桑島委員 29ページの所で、「大学側研究者に特定の医学的研究課題の解明を目的としたとは考えられない動機が認められること。」というのがあるのですが、これは結構なのですが、今非常に横行しているのは、いわゆる種まきトライアル(シーディングトライアル)といって、いわゆる特許切れの製品に対抗するために、企業が新しい薬に切り替えてもらうための臨床試験が非常に多くなっているのです。いわゆる完全にこれは医学的な解明目的ではなくて、販売戦略なのです。それは非常に大事なことなので、実は。保険診療の中で新しい高い薬を処方してもらおうという意向はあるので、どこかで規制というか、牽制しておかないと、これはどんどん増えてくる可能性があるということなのです。どこでそういう一語を盛り込むかなのですが、あるいは今後そういうところはないと思うのですが、実際にはものすごく横行しているという現実がありますね。この前のノバルティス社の白血病治療薬に関するSIGN研究もそうです。

○森嶌委員長 この29ページは、今回の事案ではない。10年前の話で。

○桑島委員 それに関係して、ある程度牽制しておかないと。

○森嶌委員長 それは伺っておいて、どこかに書き込める所があるとすれば書き込みますが、ここのコンテクストはまた。

○桑島委員 これはまとめですからね、この部分ではできません。

○森嶌委員長 今回の話ですので、ここに入れるとちょっと昔の話と今の話がごちゃごちゃになりますので。

○曽根委員 今の点についてですが、日本は資本主義社会だし、営利企業としては当然、薬の販売活動を行って資金回収しないと存続できない、しかし、そこに不正とか、社会から見て疑惑があるようなやり方であれば、当然究明すべきであり社会的な制裁を科すべきだと思います。きちんと透明性を確保して適正にやる限りは、それをしてはいけないということは言えないと私は思います。

○桑島委員 ただ、個人的に言えば、一般の患者さんが、普通の従来薬でもいいという場合があるわけですよ。それをあえて高価な新薬で置き替えてしまうということに対してどう考えるかということです。患者の不利益になるような試験はやるべきではありません。

○河野治験推進室長 事務局でございます。委員長がおっしゃっていただいたように、「むすびに」の所の該当の部分については、この事案に関して可能な限り明らかなったことを書いています。

 その一方で、お手元の16ページの2段落目に、今御指摘のあったような、昨今、本事案にとどまらず、いろいろな事案が明らかになってきていて、今後の再発防止策の検討・実施に当たっては、これらの事案についても参考の上進めていくべき旨の記載もありますので、今の御懸念についてはここで受けられると考えます。

○桑島委員 もうちょっと具体的にしたほうが分かりやすいと思いますが。

○森嶌委員長 まあ、そのときに今の曽根委員のように、クオリフィケーションを付けると、ここのところがやたらと長くなりますし、これがあれば、これもあるということになりますので、この辺で私としては御勘弁いただけたらどうかと思いますが。議事録にも残りますので、この16ページの話の中には、今、桑島委員がおっしゃったような事例もあり得て、これは十分留意しなければならないということにさせていただきます。

○田代委員 まとめの「むすびに」の所ですが、今回かなり手を入れていただいて、クリアになったところがあると思うのですが、4点書いて頂いたうちの、(1)(2)ははっきりしていると思うのですが、30ページの上の所の(3)(4)の区分けが読んでいてよく分からなかったのです。私なりに理解すると、(3)のほうは大学のほうの実施体制の問題だと思うのですが、(4)の所もそれに関するものがかなり入っています。むしろ (4)は、問題が起きたときに機関がどのように事後対応するかということに焦点があって、例えば不正行為みたいなものが発覚したときに、各施設が迅速にきちんと対応するべきだ、ということにつながる部分なのだと思いました。しかしここでは、それとデータの管理体制が脆弱だということがくっついてしまっているので、後半の2文目のほうはむしろ(3)に入れてしまい、臨床研究実施の体制が脆弱だということでまとめたほうがすっきりするような気がしたのですが、いかがでしょうか。

○森嶌委員長 (1)は企画立案とか、十分なあれがないのに、あるいは目的もちゃんとしていないというようなところでも始めてしまったと。(2)がそこにノバルティス社が乗り込んで、いわばデータの改変が起きるようなことを大学と一緒にやったと。(3)は、この大学の研究者がconflict of interestがきちんとしていなかったじゃないかと。これは研究者のほうからなのですが。(4)は、そうはそうだけれども、大学によってこれが随分違っていて、大学によっては、これで研究プロジェクトをやっていいのかなというのもありますし、まあまあという所もありますし、また、これくらいならやってもいいのだろうという大学もありました。その後の対応について、いまだもって何も対応が出来ていないところもありますし、ちゃんと対応した所もあるという、その意味で(4)は大学間によって違いがある。だから一概におよそ大学というのは駄目なところだとか、10年前の大学も今の大学も研究機関が全部駄目だとか、全部よくなったというのではなくて、違いがありますよという話です。

○田代委員 分かりました。つまり(3)のほうは研究者の問題で、(4)は実施機関の問題という書き分けをここではされているという理解ですね。

○森嶌委員長 はい。

○田代委員 そうだとすると、(3)の所に「実施体制が脆弱」というような言葉が入ってくると、ちょっと混乱するような気がするのですが、今の趣旨がはっきり分かるように、記載を整理してもらったほうが分かりやすいのかなと思っています。

○曽根委員 私もこの(3)(4)については質問しようと思っていました。実施体制と管理体制に分けるべきと思うのです。研究者の実施する体制の問題について、少し追記をお願いしたいのは、今回のバルサルタン事案の場合、多施設の共同研究となっているが、倫理審査が本来、研究代表者の施設で、全体の実施計画書についてなされるべきなのに、それぞれ別個でなされ、統一した倫理審査はなされていなかった点です。それから、倫理審査記録が全く残っていないということから検証ができなかった点です。大学での検証が出来なかったことからも、他の施設における研究の質が全く保証されていないという点です。もう1つは施設・機関の管理体制。ここで言われている管理体制というのは、ただ倫理審査をしたり、利益相反状態の管理をしたらいいというのではなしに、記録保存も含めて、施設としてどのような形で管理責任を果たすべきかという視点です。日本学術会議でも臨床研究の質と信頼性をいかに確保するかで非常に議論になり、法学系の方から、バルサルタン事案は管理が組織としてできていないのではないかとの指摘があり、臨床研究管理センターを設置して対応すべきだとの提言となりました。そのような視点を踏まえて明確にされるならば、 (3)は実施体制側の問題、(4)は管理体制、個人の管理と施設・機関としての管理とされたら、非常にきれいに問題が整理されるのではないかと思うのですが。

○森嶌委員長 私は(3)が管理体制なのです。(1)がどちらかといえば個人で、(3)は大学側の管理体制なのです。そこで研究者が労務提供に依存する、このような基本的な実施体制をちゃんと大学側が管理していないということですから、その意味では田代委員がおっしゃるように、ちょっと分かりにくいところがあるので、これは管理体制が悪い。(4)は、管理体制というのは大学によって違うじゃないかと。

○田代委員 多様性が余りにもあるということを(4)で示している。

○森嶌委員長 (4)で言っているわけです。これだけはその違いが分かるように書きます。

○稲垣委員 恐らく(3)は研究者主導の臨床研究を実施する際の組織が、企業治験ならば企業が実施すべき役割であるスポンサー機能を果たしていないということで、その組織がサポートしていない機能が全部ここに書かれているのかなと私は捉えています。その観点で分かりやすくなるよう記載整備すればよいわけで、私としては逆に企業治験の連想から、スポンサー機能の記載だと思っていたのでここには違和感を感じませんでした。利益相反とか、研究の把握、進捗管理、データ管理、プロトコール管理等を含めたスポンサー機能というのは、臨床研究ですごく曖昧だった点で、どこが臨床研究全般の責任を持つのか明確になっていなかったのを明確にするというので、ここの(3)というのは非常に良いことではないかと思っていました。その観点で多分明記されれば、よく分かる形になるかと思うのですが、いかがでしょうか。

○森嶌委員長 どうですか、事務局、今の話で。そんなに書き替えなくても、幾つかの言葉でいいのではないかと思いますが、どうでしょうか。

○河野治験推進室長 事務局です。研究者個人の話をしているのか、機関全体の話をしているのかというところをもう一度整理してほしいという御指摘だと思います。

○森嶌委員長 機関全体の話のつもりなのです。(1)のところは研究者というか研究責任者がちゃんとしていないのに引き受けてきてしまったというのが(1)です。(2)がそれに対応する企業です。(3)はそういう研究者がいるときに、大学の側はきちんとそれをチェックするという機能はない。これは責任者のほうもその一部ではありますが、主としたものとしては、研究機関側の組織の管理の仕組みという趣旨ではあったはずですが。

○河野治験推進室長 整理いたしまして、また御相談いたします。

○森嶌委員長 それでは、宮田委員のちゃんと立法をしようというのが、最後の結論には入らないかもしれませんが。

○宮田委員 ただ、先生、1つだけ言いたいです。17ページの2段落目で「ICH-GCPの遵守を新たに求めたところ、遵守を求める前に比べて臨床研究実施件数が減少したとの報告もある」とわざわざ差異としていますが、別に臨床試験の数が減っても悪くはないのではないですか。今までのようにいい加減な臨床試験で、サイエンスにもなっていないようなものが減ることは私は別に悪いことではないと思っているので、ここにこれを差異としている意味がよく分かりません。その結果、減ったままでずっと英国がいたわけではなくて、臨床試験の件数は上がってきましたし、この件数が変わったというのも、法律がGCPの実施によって、件数のカウントの仕方が変わったという方もいらっしゃるので、これをこのまま差異とすると都市伝説が独り歩きするのではないかという嫌な予感もしますね。

○田代委員 今の点に関しては、私自身は特に違和感はないというか、実態はどうだったかということは、最終的には歴史的に検証されると思いますが、現実問題としては、既承認薬を使った臨床試験全てにデータの品質の担保を求めたことによって、様々な問題が起き、現在EUの臨床試験指令は変わろうとしているわけですよね。その中では全てのものに一律の規制を課すことはやめるという結論が出ているわけで、私の個人的な理解ですけれども、EU臨床試験指令は余りうまくいかなかった、だから変えなければならなくなった、という現状があるわけです。そういう意味では、やはり一律の規制を臨床試験全体にかけることはふさわしくないという結論が1つ出たのだと思います。その場合、法的根拠がなくていいという話ではなく、リスクベースドで考えましょうということになったので、そういう意味ではここに一文あってもそれほど違和感はないのです。

○宮田委員 今、御説明を受けて分かりましたけれども、そうしたら、EU指令そのものも変わりつつあるというような事情経過を入れておいたらいかがですか。それが先生の意見か現実の事実か分かりませんが、一律はまずいのだというような根拠であれば、それはより明確になるのではないでしょうか。そうすると、次の議論はどこで線を引けばいいかという議論が出てきますので。

○田代委員 正にそのとおりだと思います。

○桑島委員 宮田委員がおっしゃった、臨床研究件数が減っていいのではないかというご意見ですが、我々臨床現場から言うと、やはり医学的な課題は多いので減るということは好ましくないのです。本当の意味での医師主導型の、医師が日頃の日常臨床で課題とすべくことは解決しなければならないということはあります。

○宮田委員 先生のおっしゃることは分かりますが、先生が先ほどおっしゃったシーディングトライアルが増えていいというわけではないですよね。ですから、臨床試験にも種類が。科学的に意味がある、クリニカル・クエスチョンに答える臨床試験であれば、その数は減らしてはいけません。でも、余計な贅肉がどうも日本にはありそうなので、それは多少減ってもいいのではないかというのが私の考えです。

○桑島委員 今お話になったように、リスクベースドのマネージメントということは言われています。やはりリスクに応じたルール作りが必要だと思います。

○山本委員 全体を読んでいて、14ページの(6)のその他という所が文章が全体的にこなれていないような感じがして、気にはなっているのですが。文章としても「本検討委員会」という主語が。

○森嶌委員長 すみません。何ページですか。

○山本委員 14ページの(6)のその他です。ここに一応事実経過が書いてあって、「その結果」何とかしているというのが、各大学がしているということなのでしょうけれども、文章としては「本検討委員会」から始まっているので、主体がよく分からなくなっているのと、パラグラフの最後の所に、結論的に「このような事案が生じた際に迅速かつ適切な対応がとれることも、臨床研究実施機関としての能力を反映する一つの要因となりうるものと思われた」というのは、これは何が言いたいのかよく分からないという感じがしたのですが。

○河野治験推進室長 事務局です。14ページの「今回、本検討委員会は」という、主語が「検討委員会」になっていますが、「報告を受けた。」というところで一遍文章が切れていますので、検討委員会は報告を受けたという記載内容です。

 後段の「臨床研究実施機関としての能力を反映する一つの要因となりうる」という記載については、大学で常日頃からきちんと管理ができているのであれば、調査だって迅速に進むだろうということを考えますと、きちんと調査ができるかどうかということも臨床研究実施機関として重要な能力なのではないかと、そういったような趣旨でここは記載されています。

○山本委員 ただ、体制を作るとなると、起きてからどうするかということではなくて、それ以前にどういう体制ができているかということが大事になるので。これは結果を評価しているという意味ではそれは正しい記述かもしれないけれども、今後のことを考えるためにはちょっと文章的に気になる感じがしました。まずもって、そういう事案が起こる前に対応が取れるようにしておかないといけないわけですよね。起きてから、できたから良かった、悪かったという問題ではないと思いますので。

○宮田委員 今の関連です。先ほどからもその議論がいっばいあったと思いますが、田代委員の御指摘で。ノバルティスにはガバナンスという言葉で、いわゆる組織として体制を作ったとしても、体制をきちんと事態に応じてきちんとマネージできるかというようなことを問うはていたのですが、大学ではこのガバナンスというのを問うのはいけないのですか。

○山本委員 そんなことはないですよ。使ってますよ。

○宮田委員 いいですよね。だとしたらそのような言葉で、ノバルティスにもガバナンスをここで問うておりますので、この報告書の中で、大学においてもそういったことに対応するガバナンスの整備が求められるとか、同じ言葉で表現したら分かりやすいのではないかなと私は思います。

○河野治験推進室長 事務局ですが、今の山本先生、宮田先生の御指摘を踏まえますと、例えば15ページですが、「事案が判明した際の大学における調査の迅速性や内容は大学間で大きく異なるとの印象を受けた。」そのあとに、例えば「このような違いは、大学としてのガバナンスの違いを現すものと考えられる。」という趣旨を入れるという考え方はいかがでしょうか。

○山本委員 今のほうが自然な感じがします。

○森嶌委員長 ということで、それでよろしいでしょうか。

○花井委員 今の所は恐らくそのテキスト、それはそれでいいと思うのですが、恐らく今回こんなことが起こったのに、ちゃんと調査を、いつまで経ってもぐずくずしたとことがある。それを揶揄することをちゃんと残した趣旨だと思うので。だから優しく書いているからこういうふうになってしまうので、こんなことが起こったのにまだやっていないのか、ということの批判をちゃんと残したというので、そこはいいかなと。

○山本委員 それはもう「問題である」と書いてあればいいのではないですか。

○花井委員 もう書いてしまったほうがいいと思いますけどね。割とここはやはり格調高い言葉で書こうとして、本当に意味が分かりにくくなっているということがあると思います。

○森嶌委員長 私もこのぐらいのことは書いてもいいと思うのですがね。まだやっていないじゃないかと。

○花井委員 もう1か所。9ページの上から3段落目。「医学的研究課題の」から始まるテキストなのですが、「の解明に向けられたものとは言えない臨床研究については、本来必要な臨床研究実施につながる」と書いてあるのですよね。つまり「医学的研究課題の解明に向けられたと言えない臨床研究は、本来必要のない臨床研究実施につながる」という文章がおかしくて、意味が私が考えているのと同じだとすれば、医学的研究課題の解明に向けられたとは言えない臨床研究は、本来必要のないものであり、とちゃんと書いたほうがいいのではないですか。

○森嶌委員長 医学的研究課題の解明に向けられていない臨床研究は、「本来必要のない可能性があり」ですね。

○花井委員 「臨床研究は本来必要のないものであり、特に被害者保護の観点から」とすればすっきりする。その意味であればそう書くべきで。

○森嶌委員長 必要があるものと言えないのだったら、本来必要のないものですよね。それでいいですね。

○一瀬課長 はい、花井委員のおっしゃるとおりです。その意味で書いております。

○森嶌委員長 ほかに。

○森下委員 これは私の希望です。20ページの所で、「データ改ざん防止体制の構築」という所で、「臨床研究実施機関においては」というところで、赤字で追記をしてくださっています。「臨床試験の開始前にデータ管理が適切に行えるような、例えば必要な人材の確保・組織体制の整備に努める必要がある。国は、臨床研究実施機関が必要な人材を確保できるよう人材の育成に一層努めるべきである」というところで、国の取組についても触れてくださっているのですが、このような事案の再発防止をするためにも、日々頑張っている臨床研究コーディネーターがいるわけです。けれども、実際、臨床研究の支援まではなかなか治験のようには普及をしていない状況がありますし、今後もこの問題はすぐには解消しないと思っておりますので、是非、報告書の中に必要な人材について幾つかの具体的な職種を明記してくだされば、それを後ろ盾に普及も進むのではないかと思っておりますので、そこを1点お願いしたいと思います。

 もう1点が同じく21ページの「その他」の所ですが、前段では、「今般の事案に係る被験者や患者・国民に対し十分な説明ができるよう、その体制を整えるべきである」というようにお書きくださっていて、その下はUMINなどのデータベースの登録・更新のことについても触れておられるのですが、このような介入研究については「結果の公表」についても、研究者の責務の中で入れてくださるほうが情報公開が進むのではないかと思います。

○森嶌委員長 これはどうですか。私はこの道の研究者……、取るほうがいいでしょうか。それはどこに入るのですか。

○河野治験推進室長 事務局です。ただいまの御指摘ですと、21ページの赤字の部分の「このように臨床研究実施機関においては」、その次の「必要な人材」という所の前に、例えば「医師、CRCなど、必要な人材確保、組織体制整備に努める必要がある」とこういった例示を挙げるというのも一案かと考えられます。

○森下委員 ありがとうございます。

○河野治験推進室長 もう1つは22ページの臨床研究計画の登録・更新結果の公表につき、その徹底を図るべきである、といったような文言を加えるというのが一案です。

○森下委員 ありがとうございます。

○森嶌委員長 それから、先ほどの花井委員が霞ヶ関文学とおっしゃった、18ページの所ですが。この所は、「構築することは、臨床研究の質の確保や被験者保護の観点から有効であると考える」でいいですか。18ページ。

○花井委員 「有効であると考える」で。

○森嶌委員長 「有効であるとは」ではなく、「有効であると考える。」でピリオドを打ちまして。

○花井委員 さっき申し上げたのは、これら制度を整備するに当たっては、臨床研究の実施機関に対する影響を考慮したうえで進めていく必要があると考える。

○森嶌委員長 「考える」でピリオドにしまして。

○花井委員 そうすれば。

○森嶌委員長 その次は「我が国の臨床研究に対する信頼を回復するには早急な対応が必要であり、そのための法制度に係る検討について」の所に飛びまして、「臨床研究の実施機関に関する影響をも考慮したうえで、国は本年秋を目処に検討を進めるべきである」ということで、「考える」でピリオドで、「ものの」を切って、「さらに検討する必要があると考える。「なお」といきます。もう一度読みますと、「新たに公的な監視機能を構築することは、臨床研究の質の確保や被験者保護の観点から有効であると考える。」。そして、「我が国の臨床研究に対する信頼回復のためには早急な対応が必要であり、そのための法制度に係る検討について、」ここに多少気に食わないかもしれませんが、「検討について、臨床研究の実施機関に対する影響をも考慮したうえで」を入れまして、ここに何かちょっと入れたほうがいいかもしれませんが、「国は本年秋を目処に、検討を進めるべきである」と。あるいは臨床研究の実施はこちらに入れたほうがいいかもしれません。いずれにしても、法制度に係る検討について、これも考慮にした上で、法制度を進めるという形で、こういうことはやらなければいけないのだ、有効なのだということを入れておいて、臨床研究もマイナスにならないことも少しは考えなさい、というようなことで入れようと思いますが、どうでしょうか。

○花井委員 私はもっとシンプルに上の部分だけ「考える。」としてとめた上で、それ以下はままでもいいかなと思ったのですが、森嶌先生の案のほうがもっと深く踏み込んでいるのでよいと思います。

○森嶌委員長 では、そういうことで。多少今ので文章の落ち着きが悪いから、ちょっと文章を入れ替えるかもしれませんが、基本的にはそれで。そのほかの点については事務局が対応したということでよろしいでしょうか。7時半には終わる予定でしたが、10分ばかり過ぎましたが、ほかにありませんか。よろしいでしょうか。それでは、先ほど「最終的に」と言われましたが最終的ではありませんで、当検討会としては、一応の締めくくりをして、これから倫理委員会が倫理指針を出すと。それから、我々から全く手が離れてしまいましたが、刑事告発が進んでいます。法制度のほうはどのように我々とからむか分かりませんが、それはそれで、この委員会と平行するのか、そこはよく分かりません。しかし、この委員会はこれで完全におしまいになるのではありませんが、多分、事実の解明については、刑事告発が入ってしまうと、ここで事実調査をしようとしても警察のほうの捜査との関係があって関係者の協力を得ることが難しくなることは確かです。報告書には書けませんけれども、議事録には載ってもやむを得ないと思います。ということで、これからこの委員会を適宜開くということはあるかもしれませんが、この段階で、一応報告書を作りまして、これを大臣へ提出するということになるのでしょうか。

○一瀬課長 今日頂きました御意見を踏まえまして、修正した上で大臣のほうへ報告します。

○森嶌委員長 訂正したものは一応また皆さんのほうにメールなどで。

○一瀬課長 まずは事務局と委員長とで御相談させていただきまして、その修正版を各委員の皆様方に御確認いただくという作業になります。

○森嶌委員長 ということです。次回の開催につきましては日程調整等、議題等も含めまして、事務局とも調整をいたしまして、後日連絡をさせていただきます。また、本日の議事録につきましては作成次第、委員の皆様に御確認をいただいて、その後公表させていただきたいと思いますので、併せてよろしくお願いします。読み間違いまして、事務局が読むものを私が読んでしまいました。どうも失礼いたしました。早く終わらせようと思ったら事務局の分までやってしまいました。以上で閉会でございます。では、事務局、何かほかにございますか。

○一瀬課長 委員長からおっしゃっていただいたので、特段ありませんが、話題にのぼりました、法制度の必要性の検討会につきましては鋭意準備中ですのでお知らせしておきます。以上です。

○森嶌委員長 それでは、本日は熱心に御議論いただき、ありがとうございました。


(了)
<問い合わせ先>

医政局研究開発振興課担当:高江

電話: 03-5253-1111(内線2542)

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