ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会> 第1回 がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会議事録(2014年2月17日)




2014年2月17日 第1回 がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会議事録

○日時

平成26年2月17日(月)16:30~18:30


○場所

航空会館 7階 701・702会議室
(東京都港区新橋1丁目18-1)


○議題

(1)がん患者の治療と職業生活の両立における現状と取組について
(2)がん患者等の就労に関するニーズ・課題について

○議事

○林がん対策推進官 定刻となりましたので、ただいまより、第1回「がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会」を開催いたします。

 事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん対策・健康増進課がん対策推進官の林と申します。座長が決まりますまでの間、進行を務めさせていただきます。

 それでは、まず初めに、厚生労働省・佐藤健康局長から御挨拶をさせていただきます。

○佐藤健康局長 皆さん、こんにちは。厚生労働省健康局長の佐藤敏信と申します。初めての方もいらっしゃいますが、どうかよろしくお願いいたします。

 厚生労働省の健康局というところが今はがん対策全般の担当をしているわけですが、歴史的に振り返ってみますと、もともとはがんの研究ということでスタートしました。具体的には対がん10か年総合戦略、このあたりからがんの研究ということでスタートしまして、がん本態解明ないしは治療法の開発ということでスタートしてまいりましたけれども、その後、そういう意味では対策が進んだのだろうと思いますけれども、医療の分野、あるいは、医療のみならず、告知の問題であるとか、がんの患者さんに対する心のケアとか、そういうところまで進んでまいりましたし、またさらには在宅ケアとか、あるいは化学療法を受けるとか、そういったところまで歩みは、ゆっくりではございますが、進んでまいりました。

 そうした中で、きょうは、言うまでもありませんけれども、第1回目ということで、「がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会」というものを開催させていただく運びとなりました。旧労働分野の方にとってみますと、こういう病気や障害を抱えた方に対する対策というのはもうこれまで何度も対応されていることと思いますが、健康局という立場から、こういう就労支援というものに取り組んで検討していただくというのは最初の機会になりまして、そういう意味では大変意義深い会になろうかと思います。

 私どもも、平成19年の6月にがん対策推進基本計画を策定し、その後24年には、2期目になりますがん対策推進基本計画。ここの中では、がんになっても安心して暮らせる社会の構築を全体目標にしていたわけで、そういう意味でも、繰り返しになりますが、がん患者の就労というものがクローズアップされてくるわけでございます。そういう大変意義深い会を開催させていただくことになりました。

構成員の皆様方におかれましては、足元の悪い中お集まりいただいたわけですけれども、限られた時間ではありますが、どうか実のある御議論をいただきますようお願いをいたしまして、冒頭の挨拶にかえさせていただきます。どうか本日はよろしくお願いいたします。

○林がん対策推進官 健康局長につきましては、業務のため、会議の途中で失礼させていただきます。

 続きまして、構成員の紹介をさせていただきます。アイウエオ順で紹介させていただきます。

 獨協医科大学越谷病院小児外科教授の池田均構成員でございます。

 日本労働組合総連合会総合労働局雇用法制対策局長の伊藤彰久構成員でございます。

 公益社団法人日本看護協会常任理事の川本利恵子構成員でございます。

 株式会社櫻井謙二商店代表取締役社長の櫻井公恵構成員でございます。

 一般社団法人CSRプロジェクト代表理事の桜井なおみ構成員でございます。

 一般社団法人日本経済団体連合会労災保険ワーキンググループ座長の砂原和仁構成員でございます。

 独立行政法人国立がん研究センター がんサバイバーシップ支援研究部長の高橋都構成員でございます。

 独立行政法人国立がん研究センター理事長の堀田知光構成員でございます。

 公益社団法人日本医師会常任理事の道永麻里構成員でございます。

 あと、新日鐵住金(株)君津製鐵所安全環境防災部安全健康室上席主幹の宮本俊明構成員につきましては、おくれて御出席との連絡を受けております。

 また、株式会社足利銀行人事部業務役の湯澤洋美構成員につきましては、本日は御都合により御欠席とのことでございます。

 以上、11名の構成員の方の御参加をいただき、本検討会を開催させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 また、本日は、参考人といたしまして、東京労災病院職場復帰・両立支援研究センター長の門山茂参考人に御出席をいただいております。

 続きまして、厚生労働省側を御紹介させていただきますけれども、まず、健康局以外から、オブザーバーとしまして、職業安定局総務課首席職業指導官室の國分一行室長補佐でございます。

 職業安定局雇用開発課の山下禎博課長補佐でございます。

 労働基準局安全衛生部労働衛生課の濱本和孝主任中央労働衛生専門官でございます。

 労働基準局労災補償部労災管理課の久野克人課長補佐でございます。

 続いて、事務局、健康局のほうを御紹介させていただきます。

 大臣官房審議官(がん対策、国際保健担当)の牛尾でございます。

 健康局がん対策・健康増進課長の椎葉でございます。

 健康局がん対策・健康増進課課長補佐の赤羽根でございます。

 同じく、主査の宮田でございます。

 どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは続きまして、資料の御確認をお願いいたします。

 座席表

 議事次第

 資料1 がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会開催要綱

 資料2 今後の検討のすすめ方(案)

 資料3 がん患者の就労や就労支援に関する現状

 資料4-1 治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会報告書概要

 資料4-2 治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会報告書

 資料4-3 参考資料

 資料5 がん治療と就労の両立に向けた現状と課題~がん患者・家族・企業の調査から~(高橋構成員提出資料)

 資料6 がんと就労~その現状と社会の取り組み~(桜井構成員提出資料)

 参考資料1 がん対策推進基本計画

 資料に不足、落丁等がございましたら、随時、事務局までお申しつけください。

 それでは、次に本検討会の座長を選出したいと思います。御推薦がございましたら、お願いいたします。

 桜井構成員どうぞ。

○桜井なおみ構成員 国立がん研究センターの堀田先生を御推薦したいと思います。

○林がん対策推進官 いかがでございますか。

(「異議なし」と声あり)

○林がん対策推進官 それでは、堀田構成員に座長をお願いいたしたいと思います。全員一致のようでございますので、よろしくお願いいたします。

 以上をもちまして、カメラを納めていただくよう御協力をお願いいたします。

○堀田座長 

ただいま御指名いただきました堀田でございます。

ふなれなことではございますけれども、がんと就労に関係しては大変大きな問題だと受けとめております。先ほど局長のほうから、見直しの第二期の推進計画の中で、全体目標として、がんになっても安心できる社会の構築、そしてまた重点的に取り組む課題として、働く人、あるいは小児に対する対策といったことがつけ加えられたことが紹介されました。そういう意味で就労問題は大変大きな問題でございます。また、がんになるということは、それだけでもかなり大きな負担でありますけれども、最近では、治療法の進歩、あるいはいろんな状況から、必ずしもがんが不治の病ということではなくて、長くつき合う病気になりつつあると言えます。その中では、やはり就労の問題は大変大きい。特に経済的な自立というだけではなくて、社会とのつながりとか生きがいとかいろんなことを含めまして大きな意味があると思います。

 そういった意味で、きょうは各分野、領域の専門の方々にお集まりいただいていますので、この検討会として活発な御意見をいただきながら、がんと就労問題の課題とこの方向性につきまして皆様のお知恵をいただきたいと思います。 それでは、早速ですけれども、ただいまから審議に入りたいと思います。

皆様のお手元にも資料があると思いますけれども、本日の議題(2)といたしまして、「がん患者の治療と職業生活の両立における現状と取組」について、まずは事務局から、資料1、2についての御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○林がん対策推進官 お手元、資料1をごらんください。「がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会」の開催要綱でございます。

 本検討会の開催の趣旨でございますけれども、がんに罹患される方が20歳から64歳まで約22万人で、7万人ががんで死亡されているという一方で、日本の全がんの5年相対生存率は57%ということで、がん患者・経験者の中にも、長期生存して社会で活躍している方々も多いという状況でございます。

 このような現状を踏まえ、平成24年6月に閣議決定されたがん対策推進基本計画では、全体目標に「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」が新たに加えられ、重点課題としても「がん患者の就労」が位置づけられるとともに、がん以外の患者へも配慮しつつ、3年以内にがん患者等の就労に関するニーズや課題を明らかにした上で、社会的理解の推進や就労支援策を講じるとされているところでございます。

 今般、がん患者・経験者の就労のあり方に関し、有識者の皆様の御意見を伺う場として本検討会を開催することといたしました。

 検討事項については、「がん患者の就労に関するニーズ・課題について」、まず検討し、その上で、「求められる方策」について御検討いただきたいと考えております。

 裏側に構成員の名簿となっておりまして、先ほど御紹介いたしましたとおりでございます。

 続いて資料2でございます。「今後の検討のすすめ方(案)」とさせていただいております。今回第1回はまず、がん患者の就労における現状や現在の取組について、事務局から御説明させていただいて、御質疑を賜りたいと思います。その上で、がん患者の就労における課題、ニーズについて、構成員の方々からお話をお伺いして、さらに御議論いただきたいと考えております。

第2回につきましては、課題やニーズについてさらに御討議をいただき、その後は徐々に先進的な取組についてお伺いしながら、どのような取組を進めていくべきかということの議論に移っていきたいと考えております。

 今後、月1回程度開催いたしまして、課題やニーズを明らかにしていくということ、それから、就労における支援のあり方を検討していくといったことで進めてまいりますが、その中で、さらに小児がん患者・経験者の就労支援のあり方についても時間を設けて御討議いただきたいと考えております。

 平成26年夏ごろのとりまとめを目指したいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。

 まずは以上でございます。

○堀田座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からの説明に何か御質問、御意見等がありましたらよろしくお願いいたします。

 よろしいですか。

 それでは、引き続きまして、事務局、そしてオブザーバーの労働基準局、職業安定局及び門山参考人より、資料3、「がん患者の就労や就労支援に関する現状」、資料4について御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○事務局(宮田) では、資料3をごらんください。まず、健康局より御説明させていただきます。

 2ページ目をごらんください。こちらは「各年齢までの累積がん罹患リスク」ですが、生涯では、男性では58%、女性では43%、2人に1人ががんに罹患する現状ですが、70歳まででは、男性は5人に1人、女性は6人に1人ががんに罹患するリスクがあるという現状であります。

 3ページ目は「がん死亡者数と全死亡者に対する割合」ですが、1981年にがんで死亡する割合が1位になり、現在は3人に1人の方ががんで死亡するという時代です。

 4ページ目をごらんください。こちらは「がんの5年相対生存率(全がん)の推移」をお示ししたものです。がん医療の進歩は目覚ましく、生存率は1993年~1996年では53.2%でしたが、最新のデータで、2003年~2005年にかけましては58.6%と着実に5年生存率が改善してきております。

 5ページ目をごらんください。こちらは「性別・年齢別がん罹患者数」をお示ししております。生産年齢人口、1564歳におけるがん罹患者数は増加しており、2008年の最新のデータの全罹患者数80万に対しまして、20歳~64歳の方は全体の32.4%と、がん患者は増加しており、うち3人に1人は就労可能な年齢で罹患されているというデータが出ております。

 6ページ目をごらんください。こちらは「仕事を持ちながら悪性新生物で通院している者」です。男性は50代から60代にかけてピークがあり、女性は40代から50代にかけてピークがあります。それぞれ、男性では14.4万人の方が、さらに女性では18.1万人の方が、計32.5万人の方が悪性新生物の治療のために仕事を持ちながら通院しているという状況です。

 7ページ目をごらんください。こちらは「がん患者が働く職場の企業規模」を示したものです。ごらんのとおり、企業の規模にかかわらず、悪性新生物の治療で通院する15歳以上の被雇用者はあらゆる規模の企業で働いていることがわかります。

 8ページ目をごらんください。こちらは全国に397ある「がん診療連携拠点病院相談支援センターにおける相談の内容」です。その相談員に、過去に相談を受けたこと、相談の内容をお聞きしたところ、働くことに関する相談を受けた方が3分の1の34.6%いらっしゃる。さらに、働くことに関する相談や話の内容としまして、仕事と治療の両立の仕方が39%と一定程度の就労に関する相談があったことを示されております。

 9ページ目をごらんください。こちらは昨年1月に内閣府が行いましたがん対策に関する世論調査です。「現在の日本の社会は、がんの治療や検査のために2週間に1度程度病院に通う必要がある場合、働き続けられる環境だと思うか」と質問しましたところ、全体では約7割の方が「そう思わない」と回答されております。年齢別に見ましても、20代から30代にかけてはその傾向がより強く見えます。

10ページ目をごらんください。こちらも同じ世論調査で行ったものですが、がん対策について政府としてどういったことに力を入れてほしいか質問しましたところ、50%の方が「がんによって就労が困難になった際の相談・支援体制の整備」を挙げられております。

11ページ目をごらんください。こちらは「がん患者・経験者の就労問題」としまして、がん患者を対象に調査を行った結果、がんの診断後、お勤めの方では34%の方が依願退職されており、または解雇の方も約4%程度いらっしゃったという現状です。また一方で、自営、単独、家族従業者では、約13%の方が廃業したというデータが出ております。

12ページをごらんください。こちらはがんと診断された後の職業と収入の変化をお示ししたものです。まず、有職者の診断前後の職業変化ですが、約4割の方が「他の仕事」または「無職になった」。また、有収入者診断前後の収入変化では、こちらも約4割の方が、収入が減った、あるいは収入がなくなったと答えられております。平均年収の変化も、診断前後では約2分の1と収入が減っている現状を示しております。

13ページをごらんください。こちらは「小児がん経験者における就労の現状」ですが、「現状と課題」としまして、小児がんの年間発症患者数は2,0002,500人程度で、その治療成績の進歩は目覚ましく、5年生存率は7~8割に及ぶとされています。その中で、治療終了後、成人期にさまざまな身体的晩期合併症や心理的・社会的不適応を呈する小児がん経験者が存在しています。就労は、小児がん経験者が社会人として長期的な自己実現を目指す際に、自立を得るために必要と考えられております。

 これは厚労科研の研究班の研究内容ですが、小児がん経験者(学生は除く)で就労の有無を165名の方に聞きましたところ、就労ありの方が132名、就労なしの方が31名でした。その中で就労なし31名の内訳ですが、約7割の方が晩期合併症をお持ちであり、その方に調査しましたところ、就職活動したが、不採用であった方、また、晩期合併症のために就職は無理であるというような回答も得られており、やはり小児がん経験者にとっては晩期合併症が就労支援を行う上での一つの重要な考えるべき課題ということが示されております。

 続きまして、14ページ以降が「国の取組」ということで示しております。15ページががん対策基本法です。こちらは平成19年4月に施行されまして、がん対策を総合的かつ計画的に推進するために定められたものです。これに基づきまして厚生労働大臣はがん対策推進基本計画案の作成を行い、がん対策推進基本計画を作成し、これに基づき、さまざまながんの施策を取り組んでおります。

16ページをごらんください。こちらは、先ほどもありましたとおり、がん対策推進基本計画の2期目のものです。黄色で色づけしておるところが新たに盛り込まれた就労に関する部分です。重点的に取り組むべき課題としまして、働く世代や小児へのがん対策の充実、そして、全体目標としまして、がんになっても安心して暮らせる社会の構築。分野別施策及びその成果や達成度をはかるための個別目標としまして、9番に「がん患者の就労を含めた社会的な問題」ということが新たに位置づけられております。

17ページをごらんください。こちらは、そのがん対策推進基本計画より「がん患者の就労について」の部分を抜粋しております。この中で取り組むべき施策としまして、がん以外の患者へも配慮しつつ、がん患者経験者の就労に関するニーズや課題を明らかにすること。あるいは、働くことが可能かつ働く意欲のあるがん患者が働けるよう、治療と職業生活の両立を支援するための仕組みについて検討すること、また、医療機関は、患者が働きながら医療治療を受けられるように配慮すること。そして、事業者は、がん患者が働きながら治療や療養できる環境の整備、さらに家族ががんになった場合でも働き続けるような配慮に努めることが望ましいということが掲げられております。

18ページ目をごらんください。そこで、現在、厚生労働省ではどのような取組がされているかということで、横軸に「主に治療の場」「主に雇用の場」、そして縦軸に「実態把握」「支援方策の検討」「実際の支援」ということでこのように書いております。詳細につきましては後ほど各担当者から説明させていただきますが、「主に治療の場」としまして、「実態把握」「支援方策」では労災疾病等13分野の研究が労働者健康福祉機構で、また、健康局でも厚生労働科学研究で研究を行っております。

 「主に雇用の場」では「実態把握」から「実際の支援」までは職業安定局のほうで、がん患者等に対する就職支援モデル事業、さらに「実態把握」「支援方策の検討」としまして、労働基準局安全衛生部のほうで、治療と職業生活の両立等の支援対策事業をしております。

 健康局では、「主に治療の場」の「実際の支援」としまして、がん診療連携拠点病院の相談支援センターへの就労の専門家の配置を行っております。

19ページをごらんください。「厚生労働省科学研究費(健康局)による就労分野の研究」ですが、ここに挙げておりますとおり、各研究代表者の方々が、これまでにがん患者さんを対象としたアンケート調査、あるいは勉強会の開催、マニュアル集の作成等をされております。

20ページ目をごらんください。こちらは、先ほどの関係図の中でお示ししました健康局の「がん患者の就労に関する総合支援事業」です。こちら、内容としましては、がん診療連携拠点病院、全国に397カ所ある拠点病院の相談支援センターに、本年度から社労士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントなどの就労の専門家を週1回程度配置しまして、がん患者さんに対して、就労に関する、問題発生した場合にさまざまな相談対応を行って、適切なアドバイスを行うという事業を始めております。

 健康局からは以上です。

○濱本安全衛生部労働衛生課主任中央労働衛生専門官 労働基準局安全衛生部でございます。

続きまして、資料の21ページをごらんいただきたいと思います。「治療と職業生活の両立等の支援対策事業」ということで、本年度から実施しております。事業の趣旨・目的は、ここに書いたとおりでございまして、先ほど健康局のほうからも御説明がありましたとおり、治療を継続しながら就労しなければならない労働者などがふえていると。そういった中で、職場復帰支援、あるいは通院や治療と仕事の両立、こういった体制の整備というのが非常に重要であるということでございます。

 そういう中で、後ほど説明があると思いますが、平成24年に開催されました「治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会」というのがございまして、この報告書の中でも、この両立支援の重要性が指摘されておりまして、特に行政の取組として、企業等に対して、治療と職業生活の両立を支援するためにどう取り組むべきか、こういったものを示したガイドライン等を作成することが必要ではないかと提言されています。

 これを受けまして、私どもでは、本事業で作業関連疾患、これはがんのみならず、作業関連疾患ということで若干幅広く捉えておりますが、こういった疾病を抱えた労働者が就労を継続するために、事業場における支援対策、これを検討することを目的としております。

事業の概要といたしましては、こういった長期にわたる治療等が必要な疾病を抱えた労働者の就労継続に関する事例をまず収集して、就労継続支援のあり方に関する検討を行うとともに、最終的には就労継続支援の指針等を作成して広く関係者に周知したいと思っております。

 特に治療と職業生活の両立支援といいますものは、医療サイドのアプローチと、この受け入れ側である事業場サイドのアプローチというのが非常に重要でございますが、これが両輪のようにうまく機能して円滑に進むものかと考えております。この事業としましては、後者の事業場サイド、特に産業医を中心とした産業保健スタッフを中心にして、この両立支援を進めていく上での留意点、進め方についてまとめていこうというものでございます。

 3番目に書いております「主な事業の内容」でございます。この事業、一応3カ年を計画しております。本年度、平成25年度につきましては、長期にわたる治療が必要な作業関連疾患等の疾病を抱えた労働者の就労継続に関する事例等の調査ということで、直接、こういった疾患をお持ちの労働者あるいは医療機関などにヒアリング調査など行いまして、その結果をまとめて、労働者の就労継続支援に関する留意事項を専門家の検討を経まして作成・周知することにしております。今まさにその途中でございます。

 次年度、平成26年度につきましては、25年度に作成しましたこの留意事項を活用して事例集の作成となっておりますが、これはモデル事業場などを選定いたしまして、そういったところでこういった留意事項に基づいた支援を進めていく、それを事例として収集するようなことを考えております。さらに、事例集を収集いたしました後、事例集の周知を図るということを計画しております。

 平成27年度につきましては、最終的にそういった結果をとりまとめて、先ほど申し上げましたように、この両立支援の対策に関する事業場側のアプローチとしての指針の作成、あるいは指針の普及ということを実施していきたいと考えております。

 私どものほうとしては以上でございます。

○國分職業安定局総務課首席職業指導官室室長補佐 続きまして、22ページをごらんいただければと思います。職業安定局でございます。

 私どものほうでは、今年度25年度から、がん患者等に対する就職支援モデル事業ということで、全国5カ所のハローワーク、職業安定所のほうに専門の相談員を配置いたしまして、がん診療連携拠点病院と連携したがん患者さんに対する就職支援モデル事業を開始してございます。詳しい内容につきましてはここに書いてあるとおりでございますけれども、診療連携拠点病院のほうに出張相談という形で、ハローワークのほうから出向いて相談を受け付ける。そして、その中で、労働市場ですとか求人情報などを提供する。ハローワークのほうでも、その求職者のそれぞれ個別の状況に応じた相談、職業紹介というものを実施してございます。

 今年度、全国5カ所、東京、神奈川、静岡、兵庫、愛媛で開始しておりますけれども、26年度は、予算が成立できれば、全国12カ所に拡充して、少し地域ブロックなども考慮して対象地域をふやす。それから、がん以外、肝炎とかそういうところにも少しモデル的に取組を開始できればと考えているところでございます。

こういったモデル事業をやりながら、就職支援に関するノウハウ、知見を蓄積いたしまして課題を見つけ、どういった課題に対して解決できるか、企業さんへの働きかけとか企業側への問題ですとか、そういったところを明らかにして、次につなげていくことができればと考えているところでございます。

 簡単でございますが、以上でございます。

○堀田座長 続きまして、門山参考人、お願いします。

○門山参考人 門山でございます。

 当初我々に与えられた目的は、医療政策に提言できるエビデンスのある医学研究を行うと。それによって、がん罹患勤労者の職場復帰阻害因子を抽出し解決策を提言するというものでありました。そのため、全国の企業、主治医、産業医等にアンケート調査を行いましたが、企業側ではやはりまだ関心が薄いし、産業医と主治医との連携はまだ不十分であると。ただ、主治医側には、通常、日常診療をやっておりますとどうしても働くことに関しての相談はあって、ニーズはあるのではないかというようなことがわかってきました。

 患者さんへのアンケート調査ですが、多岐の因子、医学的因子、ステージを含め治療法、いろいろなことを検討しました。その中で、なかなか統計学的な有意差というのは出てこないのですが、雇用形態ですとか学歴ですとか収入ですとか、そういったものである程度のことは出てきます。もちろん、ステージでもある程度のことは出てきますが、有意差というのは出てきません。やはり有意差が出てきやすかったものというのは、ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント・スケール(UWES)と言われているようなもので、就労に対してポジティブな考え方があって、なおかつ就労能力がある方がやはり就労を継続しやすいというようなことがわかってまいりました。

 そういったわけで、エビデンスベイストメディスンというものをここに当てはめるのはなかなか困難があるのではないかということで、個々の症例に関して、その物語をつづって、ナラティブなベーストメディスンを構築して、症例を集めていくというような方式に変えていきました。そういったわけで、試行的な介入を、どうやったら患者さんが仕事をやめないで、一回やめてしまって再就職というのは非常に難しいお話なので、仕事をやめない方法を考えるということを、各労災病院、7つの労災病院で行ってまいりました。そして、今それの解析中であります。

患者さんの復職に当たっては、これは高橋先生から教えてもらったことですが、いろいろな登場人物が出てくる。その中で私たちのできることは、病院が主体となって、コーディネーター、主にMSWやがん専門医、がん専門の看護師等が主体となったコーディネーターが活躍して、両立支援を整備させていくというものではないかと考えております。

 以上です。

○堀田座長 ありがとうございました。それでは、まとまった意見交換は後ほどにお願いします。○久野労災補償部労災管理課課長補佐(企画担当) 先に資料4を御紹介させていただければと思います。労災補償部労災管理課でございます。

 資料4-1をごらんください。「治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会報告書」ということで、こちらの検討会につきましては、平成24年2月から4月にかけまして、労災補償部長の参集で有識者の方々にお集まりいただきまして議論を行ったというものでございます。本日御出席の構成員の方々のうち何名かにも御参加いただいているというものでございます。

この検討会の中では、労働者ですとか、企業、産業医、産業保健スタッフ、医療機関といった、疾病と職業支援に関する関係者の方、それから学識経験者の方に参集いただいて、それぞれの関係者の対応ですとか連携のあり方、それから、それを促進するための支援策のあり方といったことについて検討いただいております。特定の疾病を議論の対象にしたものではありませんけれども、がんとか糖尿病、メンタルヘルスといったものについては有識者の方をお招きしてヒアリングを実施したというものでございます。

この報告書の概要につきまして、大きく3点に分かれておりまして、まずは「働く世代と病気の関係」ということで一番上に書いてございますけれども、いわゆる過労死の原因と言われるような脳・心臓疾患ですとか、精神疾患といった作業関連疾患の増加、それから、近年の医療技術の進歩などを背景に、治療を受けながら就労する労働者の方がかなりいらっしゃる。また、高齢化の急速な進展で今後支援を要する労働者も増加するというような問題意識のもと、両立支援の現状と課題ということで、一部の企業や医療機関では既に取組が進められている、そういった関係者の取組や連携について、まだまだ十分ではない部分もあるのではないかというような議論でございました。

 具体的には、そこにも幾つか例示ございますけれども、定期健診の後のフォローアップが不十分であるとか、疾病やその治療に関する知識、理解が不足しているのではないか、また、柔軟な雇用管理の取組が不十分ではないかといったような幾つかの例示がされてございます。そういった問題意識を踏まえた上で、両立支援のあり方としてどういったことを進めていくべきかということで、下のほうにございますけれども、まず、そもそも両立支援ということについては、やはり労使双方にとって、人材育成を行ってきた労働者が病気で休業・休職したときにもきちんと職場復帰して生き生きと働き続けることが重要であると。社会的にも、そういった職業生活と私生活の両立ということについては、ワーク・ライフ・バランスの観点からも重要であろうということでございます。

 そういった点で、今後関係者が個人のプライバシー保護に留意した上で情報共有や連携を図りながら取組を進めていくことが必要であろうと。行政も既存の仕組みや政策を活用しながら、縦割り行政を排除して一元的に取組を進めることが必要であるというようなことで考えております。

 その下のほうに幾つか、それぞれ関係者の取組ということで表になってございますけれども、企業の場合は、労働安全衛生法の措置の徹底ですとか職場風土の形成、それから、産業医・産業保健スタッフについては定期健診後のフォローアップや医療機関などの連携、医療機関においては、職場復帰や復帰後の治療と職業生活との両立に関する相談体制の整備など、それから、労働者自身にとっては日ごろからの疾病の予防や早期発見など。

 行政の取組としまして、その下に5点ほどございますが、1つは両立支援についての社会的な認識の向上、それから、労働者の規模やニーズ、関係者の取組状況の実態把握、また企業や労働者からの相談に対する支援体制の整備、また、先ほど安全衛生部のほうから御説明ございましたが、関係者が取り組むべき方法を示したガイドラインやマニュアルなどの作成、好事例の収集等による企業の自発的な取組の促進といったようなことを挙げてございます。

 簡単でございますが、以上でございます。

○堀田座長 それでは、ただいま事務局、あるいはそれぞれの立場からの研究の報告というところで御説明いただきましたけれども、これにつきまして、総合的な討論は後でするとしまして、今の発表にスペシフィックな質問とか御意見ありましたらよろしくお願いいたします。

 先ほど門山参考人から、なかなかエビデンスとしてのデータをとりにくいというお話をされましたけれども、どちらかというと個々人のマインドセットがり労働意欲なんかにつながってくると、同じ条件でもポジティブな人とネガティブな人では仕事への反応が違ってくるということですね。

○門山参考人 そうですね。前向き研究を行った時点で、初回の時点で、仕事に対してのポジティブな就労意欲がある人というのはやはり仕事を続ける傾向がある。それは有意差があって出てきます。あと、ワーカービリティインデックスというのは就労能力をはかるもので、いろんな項目がなっていますけれども、既往歴ですとか、病欠日数ですとか、いろんな要素が入ってくるインデックスですけれども、実際に仕事ができる人、やっている人はやはり継続できるというようなことは言えそうだと思っています。

○堀田座長 同じ条件でも、人によって反応が違うのは当然だと思うのですけれども、どうやってマインドセットを変えていけるのかというのは今後の課題かなと。

○門山参考人 難しいですね。

○堀田座長 ありがとうございます。ほかに御意見。

○伊藤構成員 質問でもよろしいでしょうか。

○堀田座長 大丈夫です。質問お願いします。

○伊藤構成員 当検討会の検討事項は、がん患者等の就労に関するニーズ、課題に対して、求められる方策ということですが、資料3の現状の資料では、治療と職業生活の両立等の支援対策事業の内容として、事例集作成や指針の作成といったものがあります。こちらはがんだけが対象ではないというのは理解しているのですが、重なりがあるのかないのか。当検討会で検討したことが、今申し上げた支援対策事業で作成する指針の中にも盛り込まれることになるのかなど、すみ分けがあるのかないのかも含めて、関連性についてもう一度わかりやすく教えていただければと思います。

 資料3の18ページに、これまでの対策の全体像があるわけですが、今回の検討はここには書かれていないということでよいのでしょうか。また、この資料の内容は、今回の検討とどのような関連があるのかについて、確認させていただければと思います。

 

○堀田座長 それでは、事務局のほうからお願いします。

○林がん対策推進官 ありがとうございます。資料3の18ページに、これまでの対策の全体像ということで、どのような対策を行ってきたかということを記載しております。

まず、この検討会で行うことは何かということでございますけれども、この18ページの図で見ると、労災補償部のほうで青い線で囲んだ治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会というものでかなりいろんな検討をしていただいていると。資料4で御紹介したとおりですけれども、本検討会においては、がんというところにさらに着目して、治療と職業生活両立という言葉になっておりますけれども、その就労支援のあり方について、この全体像についてさらに掘り下げていきたいというところでございます。

そのために、議題の中では、がんの患者さんの就労に関するニーズや課題について、まずよく御議論いただきたいと考えております。その上で実際の支援方策について検討していく。この18ページで言うと「支援方策の検討」や「実際の支援」の部分について、どうやっていったらいいのかということを御検討いただきたいと考えてございます。

そういう意味では、ここの18ページのさまざまな事業とオーバーラップする部分もございます。私ども、健康局でどういったことをやっていくかということについて、もちろん、この検討会の動きを踏まえたものにしていきたい、今後そのために御検討いただきたいと考えておりますし、各他部局からも本日こうして、これからもオブザーバーとして参加していただくことになっておりますので、そういった中で相互にいろんなフィードバックを与え合いながら検討、あるいは事業が進められればいいと考えております。

○堀田座長 伊藤構成員、それでよろしいですか。

○伊藤構成員 はい。

○堀田座長 そのほかの御意見、よろしいでしょうか。

今、事務局から説明ありましたように、全体の話に広がってしまうとフォーカスが定まりませんので、あくまでがんに特化した問題にフォーカスを当てて現状の分析と対策を考えていくということで整理したいと思います。ありがとうございます。よろしいでしょうか。

それでは、続きまして、議題(3)の「がん患者等の就労に関するニーズ・課題について」に入りたいと思います。がん患者さん等の就労支援について、これまでの取組も踏まえまして、高橋都構成員と桜井なおみ構成員からきょうは資料を用意していただいております。お二人に続けて御発表いただいた後に議論したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

まずは高橋構成員からよろしくお願いします。

○高橋構成員 国立がん研究センターの高橋と申します。よろしくお願いいたします。

私どもの研究班で平成22年から25年まで4年間、厚労科研がん臨床研究の枠で、がんと就労のテーマで研究に取り組ませていただきました。実は国内、国外、大変動きがシンクロしているのですが、がんと就労に関しての社会的な、あるいは学術的な注目が急速に高まっております。平成20年ころを境にしても、本当に驚くほど論文が出ております。

私自身も、実は平成20年ごろに、35歳以下で乳がんと診断された方々の社会的な困り事に関するインタビューをやっていた中で、それまで余り意識していなかった就労問題ということに関する発言が余りにも多かったことに驚きまして、それがこのテーマに取り組むきっかけとなりました。

それで、きょうは15分ですけれども、この4年間でさまざまな調査をやらせていただいたのですが、その主なところの御紹介と、4年近く取り組んでみて今現状で考えている課題についてお伝えしたいと思います。

資料5の2ページを見ていただきたいのですけれども、再三お話に出ておりますように、「死に直結する病気としてのがん」から、「長くつき合う慢性病」に変わりつつあります。しかし、一般市民は全くそうは思っておりません。いろいろな広報で、2人に1人はがんになるとさまざま言われております5年相対生存率も6割近くに上がってきたといろいろな機会で言われておりますけれども、一般市民、それは新たにがんになった方も、企業の方も、そうは思っていないわけです。

2011年に「日本人のがんイメージ調査」というのを研究班でやらせていただいたのですけれども、がん体験を持たない一般市民2,300人に、日本人は一生のうちでどれぐらいがんになるかということを伺ったところ、2人に1人から10人に1人までの選択肢をつくったのですが、この3ページの下、8.5%、9.9%と書いてある赤いところが、2人に1人はがんになると回答した回答者の率です。ですから、2人に1人ががんになると知っている人は対象者の1割にも満たない。

1枚めくっていただいて、生存率のほうです。9割前後、9割以上の5生率を持っているがんもございますが、この調査時点で乳がんは85.5%、精巣がんは92%の5生率でした。この赤いところが正解で、青い棒グラフというのは回答者分布ですけれども、もし乳がんや精巣がんが9割ほど治るということを一般市民がわかっていれば、この赤い線のところに回答が集まるはずなのに、ずっと悲観的なところで回答されています。ですから、がんは現実よりも「治りにくい病気」と理解されています。ですから、こういう偏見というのは企業側にも、あと、がんになった御本人にもあるわけで、こういう社会の中に御本人は復帰していくということを押さえて考えなくてはいけないと思います。

そして、先ほど来登場人物というお話も出ておりましたけれども、これは5ページのところで、就労支援を考えるときに、やはりさまざまなフィールドと登場人物がおられると思います。今まで、私ももともと内科医なのですけれども、医療機関の中だけでものを見ていた。だけれども、がんと就労ということを考えるときに、本当に自分の立ち位置、自分が知らないところに入っていかないと全くものが見えてこないということを実感しております。

具体的には、がんになった御本人は、医療機関では患者さんと呼ばれ、そこには、ここに挙げたような登場人物がたくさんいて患者さんを支援するわけですけれども、同じ御本人が職場では労働者になって、職場には上司・同僚、人事・経営者という方々がそれぞれ違った形でかかわります。さらに、産保スタッフもおられます。そして、地域では一市民としているわけです。

この各フィールドの連携が不可欠なのですけれども、今までフィールド間の連携が余りなされていなかった。この連携がなくてはいけないというのは皆さんわかっているのだけれども、具体的にどこからどのように取り組んだらいいかということが問題になっていると思います。

私どもの研究班でやった、御本人、御家族対象のインターネット調査の結果をちょっと御紹介します。これは2011年の暮れから2012年の1月にやりましたけれども、7ページ、返信431名です。ただ、これはどういう方にどういうルートで伺ったかということで、こういう単純集計のパーセントは当然大きく変わるわけですけれども、一つの例としてお聞きいただければと思います。

調査時に、診断時の職場をやめていた方が全体の4分の1、25%ほどおられました。これは御本人でやめた方が25%。御家族にも聞いているのですけれども、御家族が退職なさった方が28%に上りました。ですから、これはがんになった御本人だけの問題ではないということが明らかです。さらに、退職後再就職した方のうち半分以上は、再就職先に病名を開示しておりませんでした。これは面接、あるいは応募の段階で開示することが不利益になるという御判断だからだと思います。さらに、正社員の資格を喪失した方が4人に1人、個人所得の減少は半分に及びました。

8ページ目ですけれども、ではどういう方が退職しやすいかという関連要因を見ました。そちらのほうがまだ統計的にいろいろものが言えると思うのですけれども、扶養家族がない方、非正規雇用の方、産業医がいらっしゃらない職場で働いている方は、ほかの要因を全くコントロールしても、有意に退職しやすい結果に出ておりました。

さらに、職場の悩みを相談したことがあるかどうかというのも、悩みがあったとしても周囲に相談したことがある方は6割にとどまりました。「相談するほどではなかった」という意外に困っていない方も多いのですけれども、「相談するという発想がなかった」「相手がいなかった」「相手の助言に期待できなかった」など、安全で効果的な相談窓口さえあれば、ひょっとしたら相談なさったかもしれないのにという結果も出ています。

「考察」ですけれども、回答者の約4分の1が罹患後に退職して、約半数の個人所得が減少しているという、明らかに大きな問題になっています。そして、産業医のいらっしゃらない小規模企業の勤務者、非正規雇用の方、扶養家族がいない方は有意に退職リスクが高いです。ですから、こういう危険因子を持つ方への支援というのは喫緊の課題なのですけれども、扶養家族を持つ方が、ほかの要因を統制しても有意に退職しにくかったということは、見ようによっては、養うためにとにかく無理をしていないか、そういう解釈も成り立つと思います。

実はこの調査は報告書にまとまっておりまして、全てダウンロードしていただけますけれども、こういう数字の部分以上に、私どもがこれは本当に大変だと思いましたのは、自由記述です。皆さん本当にびっしり書いてきてくださいまして、何に困っているか、どのように工夫したか、どういう情報があればよかったか、それについて非常に細かく書いてくださっています。

そこの具体的な困り事についてちょっと申し上げますけれども、10ページからですが、経済的困難はもちろんですが、会社に支援制度があっても、それが御本人に伝わっていないということ。あと、正確な病状把握がなされていない退職勧告が早期に行われてしまうこと。会社の中で個人情報が守られなかったり、健康配慮が不十分だったりすること。見えにくい症状に理解が得られないことなどなどが挙げられています。

さらに、職場関係者とのコミュニケーションとして、上司や同僚にどこまで何を伝えたらいいか、あと、医療者側の問題として、診療時間が平日昼間に限定される以上、これはもう休まざるを得ない。その両立をどのようにするか。本人の心理的問題、身体的問題などが挙げられました。

それから、関東地区の規模・業種がさまざまな事業所の人事、あるいは役員の方にヒアリングさせていただいたのですけれども、こちらでも大変さまざまなことがわかりました。まず、その方々が何に困っておられるか、そしてどういう支援が欲しいとお考えになっているかということですけれども、まず、病名や病状の情報がないということです。何か様子がおかしいと思っても、病気について何をどこまで、会社側が言ってくれない御本人に聞けるのか、あと、病名がわかったとしても、病状をどのように把握したらいいのか。さらに、本人の就労力の問題。就労力に波があるとき、あるいはパフォーマンスが低下した従業員が特定の部署に、「ふきだまる」という表現をお使いになったのですけれども、たまったときに、その部署全体のパフォーマンスが落ちてしまう問題。さらに、同僚の不公平感への問題。そして、これはどこの会社も大変御苦労なさっていますが、企業活動の質の維持と従業員支援のバランスの問題です。

そして、欲しい支援として、類似業種の他企業はどうしているのか。相談できる個別の困難事例を、一般論ではなく相談できる場が欲しい。主治医とコミュニケーションをとる具体策が欲しい。対応Q&A集、人事向けの勉強会やマニュアルが欲しい、などでした。

これらを受けて研究班でさまざまなQ&A集とかマニュアルをつくってみたわけですけれども、その啓発・広報を今させていただいているところです。企業側のコスト負担が少ない対応策が求められていますけれども、少なくともこのヒアリングに応じてくださった方々は、どのように両立を支援したらいいのかという問題意識は持ってくださっておりました。

この後は、「治療スタッフによる就労支援」「相談窓口による就労支援」、さらに、「事業所での支援」、そして、働くご本人、両立したいと思っておられる、がん診断を受けた方に期待されることをまとめましたが、お読みいただければと思います。

4年間取り組んできまして、これは非常に応用問題だと思いました。ですが、先ほど御提示したようなさまざまな関係者、登場人物がいる中で、御本人、御家族、あと事業所、医療者、一般市民それぞれのフィールドで何をどのように具体的にしていったらいいかという提言が必要で、これはこれだけ個別性の高いがんという病気、本当にこれはがんの種別、治療、あと患者さんの要因だけではなくて、企業要因も入ってまいりますので、そういう個別性が高いところで、一つのマニュアルで対応などできないと痛感しております。

そういうところで、それぞれの登場人物に向けた相談窓口と相談スタッフの充実化、それから、好事例の共有と工夫の説明。特に地方業種別、規模別、使えるリソースの作成と広報が必要だと思いました。

ただ、対応している会社というのは、自分たちがいいことをやっているとは思っていらっしゃらなくて、これが当たり前だという問題意識で対応していらっしゃる。だから、好事例を集めるときに、なかなか集まらない、見えてこないのですね。これが本当に当たり前だと思ってくださっているので。なので、今まで集まった好事例というのは、本当に偶然わかったり、さまざまな企業対象のアンケートの自由記述にびっしり書いてきてくださった人事の方の追加ヒアリングなど、そういうことで出会っていくのだと思います。

そして、働こうとなさる方と事業所が最終的に、win-winという言葉を使いましたけれども、両方が納得できる対応がないといけないのだと感じました。個人の就労力をフェアに評価していただいて、がんになったから、イチゼロで、いい、悪いという話ではなくて、がんになったこの方がこの会社でどのように貢献できるのかということを関係者が考えて対応策を検討することで、企業側も働く側も両者に納得感が醸成できるのではないかと思いました。

もしそこができれば、たとえ、残念ながらやめる、続けられないという結果になったとしても、納得してやめられるものだと思います。やめさせられたという形にならないと思います。

この検討会について、がんに関する各論を検討する場なわけですけれども、ほかの働きづらさを有する方々との共通点・相違点をこの4年間考えてみて、がんというのはやはり罹患者数が多いこと、病状が千差万別であること、多くの場合、パフォーマンスの低下は一過性で、就労力は回復することが多いこと。これもかなり個別性があります。しかしながら、先ほど申し上げたように、「死に直結する病気」というイメージが根強いこと。それと、ここに書き落としましたが、これは大変大きいのですけれども、例えばメンタルヘルスや労災のような場合には、企業側の働かせ方が悪かったのではないかという、一種後ろめたさも存在すると思います。

しかし、がんの場合には、私傷病と片づけられがちです。あくまでもその個人の問題でしょうと片づけられる背景がないわけではないと思いますが、これはがんに対する対策を考えるとともに、その共通点・相違点をやはり深く考えていかなければいけないことだとこの4年間感じております。

以上です。ありがとうございました。

○堀田座長 ありがとうございました。4年間の研究成果をまとめていただきました。その4年間の間でも大分マインドセットが変わってきたという気もします。、しかし、まだ一般社会の中ではがんのマイナスイメージというのは大変大きくて、それが就労等にも影響している可能性があるという御指摘だと思います。

 続きまして、桜井なおみ構成員から御説明をお願いいたします。

○桜井なおみ構成員 私の資料のほうですけれども、それぞれの資料の右端のほうにページ番号が入っておりますので、これでお話をさせていただこうと思っています。

 まず、表紙のほうで、私の所属、3つほど書いてありますけれども、就労に関係して特化しているのは、一番上の一般社団法人CSRプロジェクトとなります。団体の簡単な紹介をいたしますけれども、2007年に、自主的な研究班として調査等々を行っています。現在、電話の無料相談ですとか、これは200人以上の方に利用していただいておりますけれども、あるいはサバイバーシップラウンジといって、いわゆる患者サロンと呼ばれるものですね。それから、厚労科研のほうの山内班の中で、例えば社労士さん、医療者、ピアサポーターの方、それぞれの対象者向けの研修会というものも行っております。あと、人事向けというものも行っております。

 あと、最近ですけれども、小児がんの方のソーシャルスキルトレーニングということで、ホップ・ステップ・ジャンププログラムということもちょっとやっております。こうした現場で患者さんの声を聞きながら、どんなことを望んでいらっしゃるのかということをきょうはちょっとお話しさせていただこうと思っております。

 2ページは頭なので飛んでいただいて、3ページのほうにいきます。患者さんの声ということで、2007年の調査結果から、これは400人ぐらいの患者さんの調査なのですけれども、それから、その翌年にやった2009年のほう、n値が1,200人という方でやっております。同じ質問をやっております。働き続けることに対してどのような支援が必要ですかということです。

いろいろ挙がってきてはいるのですけれども、総じて、それぞれの対象ごとで言いますと、やはり企業に対しては労働時間に柔軟性を持たせてほしいと。それから、休暇を取得しやすいような労働環境とか風土、こういったものをやはりつくっていただきたいということが挙がっております。

 ただ、もう一つとしまして、雇用者側が幾ら頑張っていても、やはり社会とか行政のほうが変わらないとなかなか難しいのではないですかということで、社会的な制度ですとかシステムの整備を要望されている患者さんが非常に多かったです。

 4ページのほうに細かい内容を書いてあるのですけれども、これは後で見ていただければいいのかなと思っています。私どものところは、たくさん患者さんからはがきですとか手紙をいただくのですけれども、ちょっと代表的なものを幾つかお話しします。

 「4月に乳がんの手術をし、化学療法を受けながら仕事も続けています。上司に理解してもらえないような、目に見えない不調が多く、このまま仕事を続けていけるのかとても不安で悩んでいます」ということです。それから、「去年の4月にがんの手術をし、7月まで仕事をしながら抗がん剤の治療をしました。そのときの職場の方の誤解や言葉にびっくりするような、がんに対する差別、情報不足というようなものを感じました。自分を守るためには自分が情報を多く知っていることが大切だと思います」と、このようないろいろな意見をいただいていることをちょっと加えさせていただきます。

 5ページのほうに飛んでいただきまして、こういったところから離れた、離職してしまう要因としてどんなものがあるのかということで、医学的な要因と社会的な要因と心理的な要因と、この3つのフィールドでちょっと分けて整理してみますと、医学的な要因というのは、やはり体力の低下というもの、それから後遺症、特に倦怠感ですね。薬に伴う倦怠感というものは結構出てきていることがわかってきております。それから、遅くなって出てくる晩期後遺症ですね。小児のほうの、こういった問題なんかもあります。それから、最近の治療形態の大きな変化として、通院型の治療だったり薬の静脈注射、そういったものではなくて、錠剤型の治療がふえてきている。それから、長期化しているということも背景にあるのかなと思っております。

 社会的な要因として一番大きいのは、職場の理解ということを言っている患者さんがとても多いのですけれども、では理解って何なのだろうということを少し考えていければと思います。

心理的な要因としては、価値観の変化というのは非常に大きいです。がんを機会にして何か新しいことを気づいたとか、そういったものから会社をやめてしまう方もいます。逆に、メンタル的な対応力が低下してしまって、どうもうまくいかないで自分から身を引いてしまったという方たちもいらっしゃいます。

簡単に言いますと、患者さんの声を総合的に言うと、この3つを柔軟につなぐような社会システムというのが今のところないのかなあと思っております。

 6ページ目のほうに行きまして、私どもも最近相談を受けていて、非正規雇用の方がとてもふえているのですね。割合的に言うと、正規雇用、今、社会的に4割、非正規雇用が4割、個人事業主の方が2割ぐらいいらっしゃるのですけれども、この非正規雇用の方の問題というのは、これから多分社会問題として相当出てくるのではないかと思っております。正規雇用の方と比べまして、有期雇用になりますので、非常に離職率が高くなっております。低所得者層の方がとても多いですし、年齢によってもお給料が上がってきません。ですので、このあたりをどのように支援していくのかということが課題になるかなと思っています。

 それから、個人事業主の方というのは、やはり柔軟な働き方自体はできるのでありますが、生活自体が直撃されます。それから、治療後も事業に大きな影響が出るということがわかってきています。

 参考資料をつけているのですけれども、35ページのほうに、この個人事業主の方の調査結果というのを載せておりますので後ほど見ていただければと思いますけれども、大体7割ぐらいの方が、銀行の融資ですとか取引、こういったものにも影響を受けてしまうということが問題として出てきております。

 続きまして、今の雇用戦略の現状ということをちょっとお話しさせていただこうと思います。8ページ目のほうに行きます。これは少子高齢化社会の問題としてやはり浮き彫りになっていることで、2050年、私も多分支えられる側に入っていくと思うのですが、「半数が全員を支える時代が到来する」という、これが非常に大きな社会問題だと思います。

 9ページです。先ほども出ておりましたけれども、この中でも、がんは当たり前になってきますよということが出てきます。

問題としては2つ挙がってきます。まず1つ目の山として、女性の社会進出とがんというところ、それと、男性のがんとして、雇用年齢の長期化とがんという、こういう2つの問題が出てくるかなと思います。

10ページのほうに行きまして、これからの雇用戦略というものですけれども、今の雇用人口、労働力というのはやはりキープ、確保しないと今後の社会保障が成立しないよねということで、今さまざまな支援方策が行われております。例えばシルバーの人材雇用ですとか、特に子育て、女性の支援の問題、それから、ニートですとか若者への就業支援というものでいろんなものが加えられているのですが、この中に、慢性疾患というような疾病という概念が全く入っていないのですね。それぞれの対象ごとに何十万人増という数字がありますけれども、慢性疾患、がんという疾患に遭われた方、何十万人という数を考えていくと、戦略の中でがんというものを考えない理由はないのではないかなと思っております。

11ページのほう、これは先ほども出ておりましたけれども、そんな中で社会に飛び出すと、国民の7割は「仕事との両立は無理」と考えてしまっているわけで、この中でどのように働き続けていくのかというのがかなり難しくなってくるのかなと思っております。

 それから、12ページのほうは医療費の話です。医療費どんどん上がっていくばかりですけれども、この中で、65歳未満で一番多い医療費の出費は何かというと新生物、要は悪性新生物、がんになります。1兆5,000億円ほどを占めるのですね。出費を占めるということは、いわゆる健保組合のほうも結構しんどいはずなのですね。ですので、こういうところも総合的に考えていかなくてはいけないのかなと思っております。

13ページのほうに行きまして、仕事を失ったことでの労働損失、逸失損失と言われているのですけれども、これも厚労省の科研費の研究結果から、最大1.8兆円ということが出てきております。これはかなり最大額で見積もっているかなあと思いましたけれども、14ページのほうを見ていただいて、コストバランスということで考えますと、医療費も消費します。それから、社会にも仕事を失うことで影響を及ぼしてしまうということで、社会コストに対してもダブルパンチを及ぼしてしまう、それもかなりな金額で及ぼしてしまうということが、このがんと就労の社会に対する影響度なのかなと思っております。

15ページのほうですけれども、今の社会の動きですとか企業の動き、それから労働者個人の動き、いろいろなものがあると思いますけれども、やはりがんと就労というものは社会の一部としてこれから私たちは考えていかなければいけないことかなと思います。

駆け足になりますけれども、17ページのほうには、患者さんから挙がった要望をそれぞれの社会モデルの中で落とし込んだものになります。患者さん自身は、やはり自分自身を知る、病気を知ることとか働く権利を知る、それから、相談者を持つというようなこともとても大切です。

それから、企業の中では、就労環境、休みやすい企業をつくっていったり風土をつくっていくこと、それから、いわゆる私傷病ですね。がんも含めて、介護等々も含めた制度を充実していくこと。それから、職域でのがん教育ですね。今、小中学校のがん教育というものが非常に動いてきておりますけれども、では大人自身ががん教育ってやらなくてはいけないのではないですかということで、この職域でのがん教育。7割が働けないのではなくて、そのように思っているところを、特に直属の上司を含めたり、人事担当者においては必要になってくるのではないかなと思っております。それから、産業医や産業保健師の活用ということも挙げられるかなと思います。

病院モデルにおいては、相談支援センターや相談機能の拡充、あるいは、夜間や休日診療の拡大というもの、それから、身近な医療従事者としての就労の視点を付記すること、こういったものがあるかと思います。

地域モデルにおいては、「ハローワークに行っているのだけれども・・・」という患者さんの声をよく聞きます。やはり離職して一番最初に行くハローワークでのがんの就労の相談ができたらなと思いますし、地元には社会保険労務士という強い味方もいらっしゃいます。患者会もあると思います。ピアサポーターもいると思います。こういった方たちと知恵を共有することも大切なのではないかと思います。

行政モデルもあります。例えば傷病手当金給付制度というのがありますけれども、これは、今、取得の開始日からということになっております。ですので、再発するしないにかかわらず、一回とってしまうと、1年6カ月、あるいは3年という権利があるのですけれども、これをとったら終わりになってしまうわけですね。したがって、離職の背景要因として、長いこと職場をあけてしまうということもあるかと思いますので、このあたり、制度を変えていくということにおいては、ぜひ、開始日でなくて、累積ですね。1疾病に対して100日とか200日とか、そういう期間の分け方にできたらなと。こういうことも柔軟な働き方を押す一歩になるのかなと思っております。

それから、中小企業等においては、やはり休職中の職員に対して健康保険とか厚労保険とか、こういった保険を払わなくてはいけない。生産性が全くないのに税金の負担だけさせられてしまうというのが非常に痛いところなのですね。ですので、この休職中の職員に対して社会保険料を免除できるとか、こういった制度なんかもあると非常にうれしいなと思います。

それから、行政モデルとしてできるのではないかと思うのは表彰制度です。今、子育てですとか介護ですとか、いろいろな分野で表彰制度というのが行われております。働くということに関しては、特にこれはお金はそんなにかけないでできるということ、それから、好事例を共有することもできるという非常にいいメリットを持っているのかなと思いますので、ぜひほめて伸ばすということができればありがたいなと思っております。

このほか、細かいことを言いますと、最近、小児がんの患者さんのスキルアッププログラムをやっていて思うのは、福祉的就労という考え方を少し拡大できたらどうなのかなということを思っております。小児がんの経験者の方は、働くという場面、いわゆる社会的な評価を初めて受けるという場面になって、社会的な後遺症、これに気づくことが非常に多いです。でも、障害者の手帳をもらうとかそういうことは難しいですので、できれば、意欲を伸ばすということで、福祉的就労、いわゆる支援事業のA型、B型のほうに何とか入れられたらなということを、見ていて思うところです。

それから、ちょっとここには書いてないのですけれども、職業訓練ですね。キャリア転向がなかなかしづらいということもありますが、いわゆる職業訓練校というのも卒業生を出さないといけないので、慢性疾患を抱えている患者さん、休みが多くなってしまって授業の日数が足りなくなるという悪循環があります。この結果、職業訓練の卒業生を出せないということで、行政からペナルティをもらってしまうということから、面接の時点で、慢性疾患の方を嫌がってしまうケースもありますので、ぜひキャリアチェンジできるような行政モデルを考えていくことが、がんになっても安心して暮らせる社会かなと思っております。

ただ、これまでもいろいろな事業の説明がありましたけれども、右側にニコちゃんマークが書いてありますけれども、かなりこのあたりは進んできているかなと思います。悲しい顔をしている部分、企業モデルと行政モデルのほうが、少し調和を持ちながらできないと、なかなか患者さんだけの頑張り、あるいは企業単独での頑張りはうまくつながらないのかなと思います。

18ページに行きますけれども、今こういう検討会等に必要なのは、フェアとケアという視点がとても大切なのかなと思います。公平と配慮です。

19ページのほうに行って、今日本の社会は、企業なり社会全体をどういう方向に持っていきたいのかなと考えますと、フェアが高いけれどもケアが低いとか、フェアが低いけれどもケアが高いとか、こういうところでなくて、多分、両方がバランスよくとれたところなのかなと思っています。ぜひここに持っていけるような社会の制度づくりというものは非常に重要になってくるかなと思います。

20ページのほうは、簡単につくった、患者さんの声を整理した循環のシステムということを挙げております。それぞれの中でシステムはまず改革していくこと。ちょっと改革することで生み出せる経済的な効果等々あります。この行政システムをつくっていくこと。それから、やったものに対してやはり評価をしていくことですね。こういったものは企業の努力にとどまらせるのではなくて、もう一段上に上げていく比較的取り組みやすいものとしてあるのかなと思います。それから、より創造というものを考えていければなと思います。

がん対策の推進基本計画のほうにもありますけれども、働く意欲のある患者さんたちが社会にそのまま力を持っていけるような、こういう翼の保障型、生活両立型の社会というのをつくっていければなと思います。

めくって最後は、ちょっといい言葉だなと。「働く」というのは「人」のために「動く」、こういうことを医療と今回のこの検討会の中で皆さんの立場を生かして考えていくことができればなと思います。

少し長くなりました。ありがとうございます。

○堀田座長 ありがとうございました。ただいま桜井構成員からは、患者の立場で、今まで収集したデータに基づいていろんな問題点を整理していただきました。今のお二方の御発表を受けて、これから意見交換を始めたいと思います。

 まずは質問を最初に受けたらどうかと思いますが、高橋構成員の御発表に何か特別に質問等はございますか。あるいは言い足りなかったことはありませんか。

○高橋構成員 総合討論の中で。

○堀田座長 それでは、桜井構成員の御発表に何か確認しておきたいことは特にありませんか。

 今、有識者の立場、研究者の立場、それから患者さんの声という形で発表していただきましたけれども、この会には、雇用者側のいろんな立場、あるいは医師会、看護協会等から構成員が出ていらっしゃいますので、できたら、感想も含めて率直に御意見いただきたいと思います。いかがでしょうか。

 こちらから勝手に指名させていただいてもよろしいでしょうか。

まず、今、患者さんとか有識者からの発表がありましたので、それとは違う雇用者側の御意見を伺いたいと思います。まずは櫻井構成員にお願いします。

○櫻井公恵構成員 ありがとうございます。中小企業、私、社員30名、パート・アルバイト10名、40名ぐらいの規模の会社の経営者の立場から発言させていただきます。

 最後の桜井なおみさんの発表は、私が実際に雇用する立場で、中小企業の立場で助けていただきたいことも含めた発表でした。傷病手当金の柔軟化、社会保険料の免除、こういったことをちょっと手助けしてくれると、自分のところの社員が再発してしまったときにこういうふうに助けてあげられるのになあという、自分が自信ないところを後押ししてくれる制度ということで、心強いコメントでまとめていただいたと思います。

 あともう一つ思うのは、会社を経営していると、がんだけでなくて、いろいろな疾病を抱えた社員がおります。うちには、知的障害持った子が、長く働いているのですけれども、御縁があって、県のからフレンドリーオフィスということで表彰をいただきました。

これをもらって何が得かというと、最近になって、低利で融資をしてもらえるという特権が与えられるようになったのですね。ああそうか、こういうこともあるのか、この手もあるのかということで、これも、がんだけでなく、ほかの疾病を抱えた人の雇用を守っているというようなプラスアルファの一つの事例として、御紹介できると思います。

 あとは、いろいろありますけれども、一人でしゃべると長くなるので。

 

○堀田座長 ありがとうございます。御配慮いただきまして。自由に御発言いただきたいのですけれども、一わたり、異業種の方から御意見いただきたいと思います。湯澤さんはきょう休みなのですね。足利銀行人事部から来ていただいているので御意見いただきたかったのですけれども、きょうはいらっしゃらないので、それでは、宮本構成員、今の御発表で何か御発言いただけますでしょうか。

○宮本構成員 産業医や産業保健師の活用と書いてあるのはとてもいいことだなと思っておりまして、ちょっと疾患は違うのですが、メンタルヘルスという心の健康問題で休業した人の復職を支援するというガイドラインが国から出されているので、同じように、がんで休業した人が復職に対して産業保健スタッフを活用して支援するですとか、あるいは、そもそも就業規則をつくっても、それが知らしめられてないだとか、患者さんが不安になってしまうとか、そういったところに対する窓口の役割を産業保健スタッフに持たせるというのはとてもいいことではないかと思って拝聴しておりました。

○堀田座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 それでは、砂原構成員、よろしくお願いします。

○砂原構成員 私は日本経団連を代表して今日この席に座らせていただいておりますけれども、基本的に企業は従業員を大切にしたいと思っています。非常に大切な従業員、特に、先ほども出ておりましたように、これから高齢化がより進んでいく中で継続して働き手を確保していくことが重要な課題のひとつだと思います。

そういう中で、万一病気等で離職してしまえば、新たに社員を採用して労働力を確保することになります。そのためには採用コストもかかりますし、何よりも、一時的には労働力が減って、また、新たに採用した人が仕事に慣れるまでは時間もかかるということもあります。一方で、高橋先生のお話にもあったように、がんというのは原則私病であるわけでございまして、事業主としてそれに対してどれだけサポートしていけるのかを考える必要があるのかなと感じました。また、がんであるということを隠して就業しないとなかなか職につけないといったご説明がございましたけれども、事業主としてはがん患者である、がん経験者で後遺症等に悩まされているということを知った時、その方に対する健康配慮をどのような形で行うのが適切なのかということも考えなければなりません。それをきちんと受けとめて、それに対応していくことをどのように今後考えていけばいいのか、そんなことも考える必要があるのだろうなということを感じました。

○堀田座長 ありがとうございます。今日は労働側から出ていただいております伊藤構成員のほうから、働く立場ということになるかもしれませんが、よろしくお願いします。

○伊藤構成員 

高橋先生から、非正規労働者が4割に達しているという前提のお話をいただきました。まさにそれが現実でありまして、雇い止めにあう場合があるなど、非常に雇用が不安定で、正社員よりも疾病を抱えている場合のリスクは非常に高いという問題について論点を示していただきましてありがとうございました。

 そもそも、これは非正規だけでないですけれども、9ページには、産業医がいない中小企業勤務者や非正規、扶養家族がいない者は退職リスクが高いということで、養うために無理をしていないかという考察が書かれております。

私もそう思いますし、今、病気休暇制度が設けられているところが9割ぐらいあるというデータもありますけれども、有給休暇の取得率が十分改善していないという実態がある中で、休暇を取得できないことに加えて、非正規の中には一般健康診断の対象にもなってない方もいるということもあって、無理をして、経済的な理由のためにぎりぎりまで働いているということがあって、心身の状態を悪くしていないかということも非常に心配になったところであります。

 それから、桜井委員のプレゼンテーションで、行政モデルという中に、傷病手当や社会保険料免除など、幾つか提起があり、表彰制度というものもあります。子育て支援や次世代育成支援対策と非常に共通性があると感じました。そうなると、がんへの対応にとどまらないというか、どの範囲まで広げるかという検討も必要になってくるのではないかと感じました。

 また、福祉的就労の提起がございましたが、これについては、社会参加という意味の非常に価値のある考え方だと考える反面、労働法が適用されないことから、悪用されないかという問題意識を持っております。ワークルールの確立ということについてもあわせて検討する必要があると考えています。

 以上です。

○堀田座長 ありがとうございます。社会システムとして会社の中でも、いろんなルール、あるいは国からのルールあるのだけれども、それが浸透して皆さんがちゃんと使っているのかどうかというのはいかがですかね。要するに、就労を支援する仕組みがない、ないと言っているのだけれども、実際には活用できるものが現場にはあるのかどうかという話ですね。高橋先生なんか、そういう調査を結構やっておられたと思うのですが、どうですか。

○高橋構成員 困っていらっしゃる方の声を聞いて、これは桜井構成員も本当に聞いていらっしゃると思うので、こういうことがあるのですよ、こういうセーフティネットがあるのですよということを、その方の状況に特化して誰かが細かく教えて差し上げるという窓口は必要だと思うのです。だからこそ、CSRプロジェクトさんでやっていらっしゃるようなサバイバーシップラウンジのようなものが非常に効果的だと思うのですけれども、これは本当に個別的な問題ですので、この方がこの文脈で何に困っているかということをしっかり聞いて、この方に使えるセーフティネットをアドバイスしてあげるような、患者さんが使える、御家族も使える窓口というのは必要だなと思います。それがいろいろな都道府県に使いやすい形でいってくれれば、とても効果的だと思います。

○堀田座長 現状の窓口は、とりあえずはどこですか。

○高橋構成員 相談支援センターは一番津々浦々にあると思いますが、相談支援センターの相談員の方々も、相談力が不十分だという自覚を持って、もっと勉強したいとおっしゃっています。

○堀田座長 会社にはそういう相談窓口もあるのですかね。

○桜井なおみ構成員 資料6の38ページあたりを見ていただきたいのですけれども、「がん罹患前に勤めていた『企業規模』と『会社制度利用の有無』の関係」です。100人以下と1,000人以下と1,000人以上。1,000人以上はいわゆる大企業になってきますけれども、これで分けたものですね。中小企業はなかなかそういうのりしろのある経営というのはできていないかと思いますけれども、逆にないので、配慮していく、個人的に応援していくという、規則に定められないよさというのはあるのではないかなと思います。

逆に問題なのは1,000人以上。ほとんどあるはずなのです。ホリデー休暇制度とか、40年で1遍とれる休暇制度とかいろんな制度があると思うのですけれども、半分の方が、あっても利用していないという。休めない企業ってとても多いのですね。私も仕事、今もやっていますけれども、やっているときは、ほとんど有給休暇って使ってなかったですし、ここにいらっしゃる大部分の方がそうなのかなと思っていますので、休めるような企業風土をもっとつくっていかないと、みんなが疲れ死んでしまうのではないかなと思っています。

 それから、相談相手も、先ほど高橋先生のほうからもお話ありましたけれども、39ページと40ページのほうにありまして、がんに罹患したことを職場に言っていますかというと、半数以上の方が言ってないのですね。言ったとしても直属の上司どまりで、いわゆる医療室、産業医、産業保健師の方には、二番手以降でもなかなか上がってこないという現状はあります。相談相手が見えないのですね。なので、もっともっとこのあたりも、教育、意識からしてちょっと変えていかないとというのを思うところです。

○高橋構成員 今のお話を伺って本当にそうだと思ったのですけれども、例えば就業規則とか、新たな何らかの法制度とか、そういうことを変えることで対応できる部分は明らかにあるわけですね。ただ、その一方で、もう個人のコミュニケーションに尽きるという部分もあり、たとえ就業規則があったとしても、それ以前の人間関係とか、決まり以外の部分で左右されることというのもあると思います。ですから、その両方に個別的にどのように対応していくかということをがん文脈で考えていかなくてはいけないというのはなかなか応用問題だなと思っています。

○堀田座長 

ありがとうございます。いろんな切り口があって、それぞれ、例えば大企業はいろいろ仕組みが整備はされているかもしれないけれども、どのぐらい本当に使われているのかという話がむしろポイントだろうし、逆に、小企業だと、取り組みができてないというのではなくて、恐らく、経営者の考え方が如実にそこに出てきて、やるところは物すごくやっていて、家族的な配慮ができているという部分もあるのでしょうね。そういったことはありますので、一概にどっちがいいというのは言いにくい話だと思いますけれども、一方で、困ったときの窓口がどこにあるというメッセージが皆さんに伝わっているかどうかというのは非常に大きいと思うのですね。

 次は、医療現場で、今がんの地域連携拠点病院には必ず相談支援センターがあって、それが機能しているはずなのだけれども、先ほど高橋構成員の発言のように、まだ相談員のトレーニングに不十分な部分があるかもしれませんが、とりあえずそこをとっかかりにしていく必要があると思います。医療者側のほうにちょっと話を振りたいのですが、小児の問題については今まで触れておりませんでしたので、池田構成員にご発言お願いします。

○池田構成員 発言の機会を与えていただきましてありがとうございます。

 小児に関しましては、現場の医者はこれまで治療成績を何とかして上げようということに専念してきたものですから、きょうのお話にあるような成人の領域におけるような、就労に関する現状分析とか対策がまだまだこれからだという段階であろうと、きょうお話を聞いて認識いたしました。

 小児がん経験者の場合ですけれども、小児というのは、もちろん、皆さん御存じのとおり、成長段階にありますので、就労の前の就学の段階から、就学、就労というふうに続けてものを考えていく必要があるだろうと、きょうお話を聞いて1つ印象に持ったわけであります。

 もう一点、先ほど晩期合併症というお話も出てきましたけれども、患者さん、治ったといっても、治療によって晩期の合併症を持っていらっしゃる方、たくさんいらっしゃいますし、また、2次がんといって、さらに新たにがんが出てくるという心配も抱えながら生活している方がいらっしゃいます。ですから、そういう視点で、そういう方たちにどのように学業の継続、それから、就職することの支援をしていくかということはこの検討会で御検討いただければと思いました。

 1点だけ質問させていただきたいのですけれども、先ほど桜井さんから福祉的就労というお話があったのですが、よくわからなかったので、もう少し説明していただければと思います。

○桜井なおみ構成員 ありがとうございます。福祉的就労というのは、就労継続支援事業というのがございまして、a型、b型とあるのですね。要は、時間単位なのか、それ以外の契約なのかというのがあるのですけれども、これには障害者の方しか参加できないのですね。私たちも小児の経験者の方の実際の支援をしていて、明らかに記憶障害があるなとかいうのはやはり仕事をしてみるとわかってくるところがあるのですけれども、手帳をとれるかというとなかなかとれない現状があります。

あと、現実的にも、仕事という部分で、公平という観点から言うと、ばりばりに働いていらっしゃる方と同じ金額をとれるだけのアウトプットがあるかというとちょっと難しい部分もあるのかなと思っています。ですので、その中間的な、白か黒かではなくて、グレーな働き方ですよね。そこを意欲を応援するような、そういう事業モデルの中に、例えばジョブコーチとか含めて、小児の方たちが一旦そこでトライできるようなシステムがあるとすごく社会に出る前の一歩が踏み出せるのかなと思っています。

○堀田座長 どうぞ。

○池田構成員 ありがとうございます。先ほど、晩期合併症を持っている患者さんもいっぱいいると話しましたが、一方で、治って元気にされている方もたくさんいらっしゃるものですから、そういう意味では、本人が持つハンディキャップをきちっと判定して、それに応じた就労支援ができればいいかなと思いました。どうもありがとうございます。

○堀田座長 そのほかの御意見いかがでしょうか。

医療現場で、どちらかというと今の医療供給体制は、病気をもちながら、あるいは治療しながら働く環境にあるのだろうかというところも先ほど話題に出ました。道永構成員、その辺はいかがでしょう。

○道永構成員 先ほどから産業医の話がありましたので、ちょっとそのことをまずお話しさせていただきたいと思います。

 産業医がいる企業というのはかなり大きくないといないということがまず現実で、産業医の先生にちゃんと相談できる方は、どちらかというと恵まれていると思っています。先ほど資料3の労働者健康福祉機構の研究の中で、「産業医と主治医が情報共有するツールが必要」というのがありました。がんの治療に関しては、クリティカルパスというのがあるので、それと同じようなものが産業医の先生と主治医の先生との間で情報を共有できるような、そういったものができればいいのかなあと思っています。

 あと、治療に通うのにどうしても平日お休みをしなければいけない。今、外来治療ができているのでそういうことが多いと思うのですが、そのときに、医療機関側が日曜日にやったり、夜間診療やったり、そういうところを柔軟性持たせるようなことができたらいいなと思います。それぐらいでしょうかね。

○堀田座長 

そうですね。実際、医療機関が診療している時間には働いており、土曜日、日曜日は、あるいは時間外になると病院は閉まっているというぐあいですと、どうしても診療のために職場を休まなければいけない状態です。医療現場ではこうしたことに何か対応しなければいけないとは思いつつ、医療現場の労働強化をますますしないといけないという二律背反みたいな状況があるのは事実です。ここはやはり解決しなければいけない問題ですね。

川本構成員は、どちらかというとがん看護師は、患者さんに一番近いところにいていろんなお話を、接することも多いですよね。そういう意味でのサポーティブな立場にあるのですが、いかがですか。

○川本構成員 ありがとうございます。高橋先生の説明がありましたけれども、がん患者の就労支援の登場人物で、医療機関、職場、地域と全然それぞれがつながってない、連携が不十分だという点は、私どもも、すごく心配している点でございます。医療機関に勤めている看護職は、かなりの数がいるのですが、治療などに専念するような業務体制になっております。産業看護職が目指すような就労という視点の考え方とか支援の仕方を余りよく知っていないというのが現実です。

 そういう点を、せっかく同じ職種なので、どうにか連携できないのかと、私どもも、大きな課題と思っております。そのあたりを、知識が少しでもふえるように、研修をしたり、普及啓発していきたいと思っています。

最初に受診してきていただいたときに、情報のナビゲーターになって、生活を支援するという視点をかなり最初から入れなければこれからはいけないだろうということを考えております。けれども、看護職は数が多いものですから、少しずつということになるかと思います。

 きょう、足利銀行の湯澤さんがお見えではないのですが、実際にされている支援内容は、同じ看護職でさえも知らないときもございますので、お互いに情報共有しながら、手を携えてやっていきたいと思っています。

 もう一つ質問ですが、最初に事務局側のほうから御説明いただきました就職支援です。がん患者に対するモデル事業で、拠点病院に出張相談等で入ってこられているのですけれども、このたくさんの事例とか情報はどのような形で蓄積されて、今後どのように使っていかれるのか。特に病院に関してどのような御相談が多いのかなどを含め、ぜひ今後のことを教えていただければと思います。○堀田座長 どなたに質問しますか。事務局ですか。

○川本構成員 事務局にお願いします。

○堀田座長 いかがでしょう。

○國分職業安定局総務課首席職業指導官室室長補佐 今、ハローワークのモデル事業の出張相談について御質問いただいたのですけれども、今年度から始めたばかりで、全国5カ所でそれぞれやり方がちょっと違っているというか、例えば東京では国立がん研究センターの中央病院さんのほうに御協力いただいていて、今、おおむね週に1回、ハローワークの専門の相談員が病院のほうに出向いていって、それで相談に応じると。その相談に応じる際に、事前に病院のほうから研修を受けさせていただいて、その病院の支援の特徴とかを十分に、出向いていく職員も理解をした上で、守秘義務なんかも配慮しながら対応するというようなやり方をとっていると。

 それから、神奈川では月1回、それぞれどういうやり方をとっているかというのは事細かに承知していないのですけれども、あと、静岡、愛媛ではやはり週1回出向いていって、兵庫では月1回ぐらい。それぞれ病院との連携の状況に応じて対応する。それから、どのぐらいの就職相談に対するニーズがあるかどうかというようなところも、事前によく相談してもらって、どういう対応するかということで対応している。

ですから、東京ですとか静岡、愛媛では大体週1回ぐらい出向いていって相談に応じるということですので、連携する中で、今後、さらにどういう課題があるのかとか、どういうニーズがあるのかというのを少しずつ明らかにしていければいいかなと思っています。

済みません。まだ始めたばかりなので、具体的にこれからというところではあるのですが、東京なんかの例で申し上げますと、きちっと病院の取組なんかを理解した上で対応させていただいていると、そんな状況でございます。

○堀田座長 ありがとうございます。そのほかに何か御意見や御質問、あるいはつけ加えることがありましたらお願いします。いかがでしょうか。

 門山参考人、今までの議論を聞いていて、何かありますか。

○門山参考人 僕が思うには、65歳以上で認知症の発症率が10%、恐らくがんもそのぐらいの数になると思います。これで20%ですね。65歳以上の人で20%の人たちがもし就労に入ってこないとなると、そういう社会というのはどういうものになってしまうのかというのはちょっと空恐ろしいような気がします。

これだけ多い疾患ですから、制度、金銭的なものと限定して考えてしまったときに、それだけ多くの人を救える財源があるのかというとまたちょっと難しいだろうと。ここは、多くの人たちが病気になっている人たちを支える風土、そういう社会をつくっていくことが非常に重要なのではないか。それにはやはり、がんという病気がどういう病気で、どれだけの数がいて、治る人がどれだけいて、働ける人がどれだけいて、また認知症の人も、働ける人もいるしということをちゃんと啓発していくことが、やはり風土を形成する上で一番大事だろうと思います。

 その風土ができた上で、もし必要であるならば、財源が確保できるのであれば、そういった財源を確保できた上での制度というのがつくれれば理想ではないかと思っているのですが。

○堀田座長 ありがとうございました。どうぞ。

○櫻井公恵構成員 ありがとうございます。制度もとても大事で、後押ししてほしいところではあるのですけれども、そのように助けてほしいことのほかに、私たち、現場にいると、本当に今すぐでもできることや今すぐやらなければいけないこともとてもたくさんあり、そういう事例を共有するというのはやはりとても大事なことです。もう一つには、今あるものをちょっと使い方を変える、ちょっと枠を広げるというだけで、がんの患者さんや、今困っている人たちが救われるというところもとてもたくさんあると思います。

今回、雇用関係助成金の御案内を読んでいて、この障害者の枠が、例えば先ほどの小児がんの患者さんの就労の支援にちょっと広がるだけで助かることがすごくたくさんあるのですね。そういったものを情報交換しながら、この検討会でまた前に進むことができたらなと思っています。

 

○堀田座長 ありがとうございます。

○門山参考人 少なくとも公的な助成金なり高額医療費等は、がんに限って言えば、告知した段階で、医事課あたりできちんと説明すべきものだと。利用できる社会資源は、医事課なりMSWできちんと説明すべきだと思っています。

○堀田座長 現在でのある制度を有効に使っているかどうかという問題と、仕組みが足りないという問題を、先ほどの風土も含めてですけれども、そういうのを切り分けて議論していく必要がありますね。既にあるものについては、いかに普及するかということでありますし、がん患者というくくりの中で、もうこの人は職場では当てにならない人みたいな対応では当然いけないわけで、その人その人の治療段階や、あるいはその病気状況によって、持っている社会的なアクティビティというのがそれぞれですから、そういったものにきめ細かく対応できるかどうかですよね。

患者ではあっても、もう一方では生活者、社会人、労働者でもあるという状況の中で、決して患者で一色ではないわけです病院に入院していると、我々医療者は、患者さんという見方になってしまって、余り生活者という見方が薄れがちです。実際、今日では、在院日数も非常に短くなって、10日から2週間ぐらいで外来での療養に移行ということになりますと、当然、地域に戻っていくわけですね。ですから、地域社会の中でどのように生活者として、あるいは就労者として暮らしていけるのかという視点を持つ必要があります。病院はただ単に患者さんに治療を提供しているだけではだめでないかということだろうと思うのですね。そういう考え方は医療関係者の中でも自覚はされてきているという状況だと思います。

きょうで結論出してしまうわけではないので、今回はは現状認識と申しますか、がんの関係者さんの就労に対する現状、取り巻く状況、そしてまた、これまでの国やあるいは企業、あるいは医療機関そのほかの取組の状況、そして就労に対する課題をそれぞれ挙げていただきました。

きょうでとりまとめるというわけではありませんので、今回の議論をベースにして、次回どういうことを議論すべきかという課題の整理をして、今の予定ですと大体3月中ごろになるようでありますけれども、次回に臨みたいと思います。

どうぞ。

○桜井なおみ構成員 ちょっとしゃべり過ぎているのですが、やはり足りていないものを改善していくとか、足り過ぎているものもあるのかなというのを思っていて、先ほど高橋先生もおっしゃられていたのですけれども、企業に行くと、企業が当たり前だと思っているけれども、すばらしい取組が結構たくさんあるのですね。今、櫻井公恵さんのほうから話がありましたけれども、どんなことが今自分にできるのかなと、レシピ集みたいなものってとても想像しやすいかなと思っているのですね。

そういう意味で、お金を、新しく財源確保して回していくというのはすごい難しいかなと思うのですけれども、例えば子育てにしても、ほめて伸ばして、すごく風土ができてきたかなという部分あるのですね。10年前だったら、多分、お子さんのいる女性の方とお子さんがいない女性の方だったら、お子さんのいない女性の方を採っていたと思うのですよ。そういうところで、風土をつくっていくというところ、門山構成員もおっしゃられていましたけれども、そういう意味で、せっかく、がん対策推進室からがん対策健・康増進課という「課」になったので、一次予防の生活習慣の部分と、2次予防の健診の部分と、3次予防でリハビリテーション、社会に戻るというその3つを総合評価したような表彰制度みたいのがあると、比較的コストかけずに、好事例も共有できるし、企業にとってもいいことがあるのかなと。それはひいては患者さんにとってもいいところにつながっていくのかななんていうことをちょっと思っていました。

場違いかもしれないですけれども、ぜひそういう視点も含めて、早期発見的な視点も含めて議論していただければと思います。

○堀田座長 そのほかに何か次回までに用意しておくことの提案がありましたら。

○高橋構成員 具体的な提案というか、こういう考え方もありではないかということだけで一言ですけれども、風土というのは長く続くから風土になっているわけで、風土を変えるのはとても難しいのですが、それは日本人全体のアンケートとかそういうのをやって数字が変わるのを待つのには時間がかかるでしょうけれども、個人の意識というのは意外と簡単に変わるものだなという実感を持っています。それは、患者さん御自身もそうかもしれないし、医療者も企業も意外ところっと変わることというのは、ある実例というか、そういうことに接しますと、ああそういうものなのだと思います。ですから、先ほどできることをレシピ集というお話が出たのですけれども、それぞれの立場で、大変なことを労力使わなくてもできるレシピというのはかなりあります。

治療スタッフによる就労支援については、告知の確定診断の段階で、「早まってやめないでね」と一言言うだけ、5秒で、早まってやめない方がふえます。そういう、病院の中に職を準備するのが病院の就職支援、就労支援ではなくて、本当に簡単にできるのだということを医療従事者向けの講演では最近言わせていただいているのですけれども、レシピ集っていいのではないでしょうか。

○堀田座長 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。せっかくですから御発言いただければ。もうあと数分ですが。

よろしいでしょうか。

きょうはとても建設的な御意見をいただきました。非難の応酬になると困るなあと思っていましたけれども、そういう感じでなくてよかったです。ポジティブに就労問題を捉えて、どうしたら、患者の皆さんの就労、あるいは療養生活の質が向上するかというところでお互いに知恵を出し合っていける、そういう基盤になるような気がしました。ありがとうございます。

きょうのところは一応これでおさめさせていただきまして、次回にまた課題を整理して御意見を賜りたいと思います。

それでは、事務局のほうからお願いします。

○林がん対策推進官 次回の開催でございますけれども、先ほど座長からもありましたように、3月に開催する方向で調整しております。正式に決まり次第、またアナウンスさせていただきます。

○堀田座長 それでは、きょうはこれで散会いたします。ありがとうございました。


(了)

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