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2013年10月29日 第24回原爆症認定制度の在り方に関する検討会議事録

健康局総務課

○日時

平成25年10月29日(火)16:00~18:00


○場所

厚生労働省 専用第18~20会議室(17階)


○議題

1.開会

2.議事
 (1)検討会報告の骨子について
 (2)その他

3.閉会

○議事

○榊原室長 開会に先立ちまして、傍聴者の方におかれましては、お手元にお配りしています「傍聴される皆様への留意事項」をお守りくださいますようお願い申し上げます。

 これ以降の進行は、神野座長にお願いいたします。

○神野座長 それでは、ただいまから第24回「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」を開催させていただきます。

 委員の皆様方には、大変お忙しいところ、またあいにくの雨模様にもかかわりもせず、御出席いただきましたことを、心より感謝を申し上げる次第でございます。

 議事に先立ちまして、事務局から委員の出席状況の報告と、資料の確認をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

○榊原室長 本日の出席状況でございますが、全員出席となっております。

 次にお手元の資料について御確認をさせていただきます。

 議事次第、資料一覧に続きまして、

 資料1 第23回検討会における主な発言

 資料2 検討会におけるこれまでの議論の整理

 資料3 田中委員提出資料

資料に不足、落丁がございましたら、事務局までお願いいたします。

 大変恐縮ですが、カメラ撮りはここまでとさせていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

○神野座長 カメラ撮りは、大変恐縮ですが、ここまでにさせていただきますので、御協力をよろしくお願いいたします。

(報道関係者退室)

○神野座長 ありがとうございました。

 前回は、これまでの委員の皆様方の御議論を整理いたしました資料に基づいて、御議論を頂戴いたしました。これを受けまして、今回は、前回お出ししました資料をもとに、委員の皆様方からさまざまな御意見をいただきましたので、それをもとに手を加えて、報告に向けた骨子について御議論を頂戴したいと思いますが、前回の御議論を踏まえて、前回お出ししました整理案をもとに事務局のほうに資料の作成をお願いしております。その資料を事務局から御説明していただいた上で、委員の皆様方から御議論を頂戴できればと思っております。

 それでは、事務局のほうから、作成していただいた資料について御説明いただければと思いますので、よろしくお願いします。

○榊原室長 それでは、まず、資料1「第23回検討会における主な発言」について御報告申し上げます。

○難しい整理になると思うが、それぞれの議論の意見について、どうウエートづけをしていくかということを配慮してほしい。

○司法と行政との乖離を含めて、今の認定制度は破綻しているから全面的に考え直すべきであるという意見と、今の認定制度をよりよくするという観点から議論を詰めていくべきではないかとの意見があり、振り返ると、そこが議論の出発点だろうと思う。

○(検討会では)司法との乖離をできるだけ埋めて、裁判にかけなくても済む制度をつくっていくにはどうしたらいいかを検討しようということ。だから、司法と行政の乖離がどういうところにあったかということから入らなくてはいけない。

○議論の流れから、こういう経過があったけれども結果的にはこちらのほうの意見が重かったとか、あるいは、方向性としてはこうであったとかと明確にする整理が必要ではないか。

○「新しい審査の方針」を啓発し、理解を得ていくという方向性が明確に示されてこなければいけないのではないか。

○(乖離について)認定制度に取り入れる前提なら、科学性がないものは入ってこない危険性が高くなってくる。だから、その部分の議論なくして乖離の解消はできないと思う。

○ウエートづけの前に、議論の結果、どこまで一致する点として到達し一致できない部分が残って、結果的には意見が最後は分かれるように持っていったほうが、お互いに歩み寄った形になる。最初から両論併記の書き方では、意見をぶつけ合って相入れないということだけで終わってしまう。

○「司法判断と行政認定の乖離の解消について」という柱が後ろになっているが、これを前のほうに持ってくる整理が、議論の流れからいうとベターではないか。

○司法は、科学的知見は重要だとしても、それにこだわってはいけないという言い方もしているので、そういう議論をしていかないといけない。

○司法と行政との乖離は(検討の)重要なきっかけの1つであるが、(検討会で)課せられた使命はあくまでも認定制度のあり方を考えているわけで、そのために多面的な視点が必要であろうということから議論が進んでいると思う。

○司法と行政の乖離がどういうものなのかは、今までの検討結果をきちんと集約する形でまとめる必要があるとは思うが、それはいわば書き出しの部分であって、その後はやはりテーマ別にきちんと詰めていくという作業になっていくと思う。

○判決のほとんどが今の法律の趣旨は何であるか、国の補償的な立場に立つ援護であるということを書いている。

○調査して出た科学的な結果は厳然として存在する。その事実を無視して全体の援護の話が行ってしまうと、ちょっとずれてしまうような気がする。(御協力を頂いた)これまでに亡くなられた被爆者の方たちは、科学の事実を世界に伝えるために努力してこられた。その貢献を全部無視していいのだろうかという気持ちが非常にある。

○(科学的な結果を)無視しているつもりはない。(裁判で)行政が(認定)却下した人の大部分を認定すべきだと言ってきた背景は科学的知見だけではない。

○被爆者手当を全員に支給すべきとの主張で、みんなに放射線起因性があるからと言ったことはない。原爆がいろいろ被爆者を苦しめてきたことから考えれば、被爆者全員に相当の手当があってもいいのではないかという言い方をした。放射線が起因する疾病について手当を加算と言っており、無視しているわけではない。

○資料3の2項(放射線起因性については、被爆者全員に手当を支給すべきだという意見がみられた)について、起因性をこういう趣旨で被爆者が主張していると書かれているのは全く納得できない。起因性を否定しているわけではない。

○少なくともがんに関して3.5キロ以内の方たちを積極的に認めていることにつき、疫学調査等ではデータが明確ではないところも認めているということを、書いておいてほしい。

○(資料3の4項)「測定できず不明である」ではなくて「残留放射線の影響は今となっては検出限界以下のレベルであること等から」というような形にしてほしい。

○(資料3の4項)「その影響は相当小さいとの意見~」について、事実としてあるので「小さく」として、その後に「意見がみられた」という形にまとめた方が正確である。

○(見直しは)今生きている被爆者に対するものでなければいけない。被爆者の寿命のことも考えなくてはいけない。「新しい審査の方針」にプラス裁判のほうの問題があり、入れ込まなければならないが、科学の世界、医学の世界も勉強しながら中身のほうを詰めていく必要がある。

○(資料3の4項に関し)行政は残留放射線の問題をほとんどネグレクトしているのではないかという指摘があって、いやそうではないという議論があった。それで、科学的知見としてはどういう捉え方があるのかと。それから、司法はやはり個別判断だからということで、そこの影響性を行政がどの程度に受けとめるべきかというような議論があった。(書いてある内容の)議論の経過を少し書き込んでいただきたい。

○(資料3の4項)「制度設計として取り込めないと割り切る」について、この書き方だと残留放射線は制度に取り込めないような形になってしまうので、現状の審査以上の知見を取り組むことができないなど、正確に書いてほしい。

○(資料3の4項)「健康に影響を与えるような量が確認されたことはない」について、ここまで言い切ってしまっていいかどうか、疑問に思う。

○(資料3の5項)放射線にかかわる疾患の確定的影響と確率的影響があるということは、もう全ての教科書に書かれている。確率的影響と確定的影響は分けて考えるということが、疾患の場合には必要ではないか。

○(資料3の6項)がん、白血病のたぐいと、「放射線起因性のある」という枕詞のついた追加された疾病で、審査の方針の書きぶりをわかりやすく整理するだけではなく、放射線との関係性で意味が違うことを明確にするほうが、科学的な説明もしやすいし、司法と行政とのギャップが解消していくきっかけになると思う。

○(放射線起因性のあるとして)追加された疾病というのは(放射線との)関係性がかなり薄いものも含まれている。その趣旨をはっきり書いていくべき。認定の要件というレベルで、積極的に全部認定していくということではないのだということを明確にするということが必要である。

○(資料3の7項)「治癒する見通しの高い疾患については、新たに対象疾患として拡大すべきではない」について、はしょった書き方になっているので、もう少し正確に書いた方が良い。

○(資料3の9項)司法判断は個別の判断だから、取り入れてもしようがないということで議論が出発しているのであれば、そもそも乖離を埋めようなんていう話にはなっていない。囲みの中をもう少し丁寧に書く必要があるのではないか。

○(資料3の8項)手当の区分導入に賛成と慎重論とが対立していた理解ではなく、むしろ区分ということがうまくできるなら、それがベターではないかという意見が大勢ではないか。区分の設定にそう大きな意見の違いはないとして、どういう点に注意をしていくべきかで様々な意見があったという整理が実情に合っていると思う。

○(資料3の9項、10項)論点を並べるだけではなくて、過去の行政の対応や、検討会の意見も含めて、埋めようとして経過を整理したほうが、前のほうに持っていく際には、良いのではないか。

○司法は最高裁の判例から、(被爆者援護法は)国家補償的配慮のある法律として、科学的な起因性について余りこだわってはいけないということを言っている。そういう流れの中で相当な蓋然性ではだめだという意味での高度な蓋然性でしかなく、放射線起因性を厳密に言わないといけないという意味での高度な蓋然性ではないはずである。

○法の趣旨があるからこそ私たちは議論をしていると、そのぐらいのことは言ってもいいのかもしれない。

○乖離の問題を最初に持ってきて、それから認定や手当、最終的に制度をどうするかという資料の組み立てにしてほしい。

○科学的に証明された影響があるのだということをどこかにきちんと押さえた上で、援護の(制度の)中に入れていただきたい。それは科学的にも証明されているものがあるとしいほしい。

○(資料3の9項、10項)乖離は完全には解消しないという表現は、余り印象はよくない。そもそも行政と司法との役割が違うのだから、乖離と言われるものについて埋めていく努力は必要であるが、やはり役割が違うことから、乖離が残ることはやむを得ないところがあるというニュアンスだった。しかし、完全には解消しないと言うと何か切り捨ててしまうみたいな感じなので、真摯な議論をしてきた経過からいうと余り適切ではないので、表現を工夫してほしい。

○本当に不条理な中で被爆した方々への国民の理解をしてもらう上で、そのアピールと制度設計はきちんとリンクさせて、方向性を見出していくのは、ものすごく大事だと思う。

○援護法の冒頭に書いているように、援護対策を講じるという法律なので、援護ということは当然の前提として、その具体的な内容をどこまで考えるのが適当かということで議論をしている。当然といえば当然のことですけれども、そこは最終的な報告で再確認しておく方が、社会的に国民的な理解も得られやすいのではないか。

○司法は、行政は(被爆者の援護を)考えているかもしれないけれども十分でないよと判決でほとんど言っている。

以上でございます。

 続きまして、資料2「原爆症認定制度の在り方に関する検討会報告書の骨子案」。

1.基本的な考え方(総論)

○ 原爆症認定制度の在り方に関しては、累次の検討を経る中で、以下の考え方を共有。

 ・ 被爆者に寄り添うという視点に立つとともに、原爆症認定や医療特別手当の給付といった被爆者援護施策には、一般の福祉施策とは異なる理由があることに留意。

 ・ 一般の高齢者との単純な比較はできないが、すでに年金や介護保険といった一般制度のほか、被爆者には医療費が無料になるなどの諸制度が存在することを踏まえ、これらの制度に加えて特別な給付を行う原爆症認定制度について、国民に説明し、理解を得られるようにすることが必要。

 ・ まずは、現行制度をより良いものにしていくということを基本として、制度の在り方について見直しを行っていくべき。

○ 特に、本検討会設置の背景としては、旧「審査の方針」の下で相当数の国敗訴判決が出され、「新しい審査の方針」(平成20年3月)による認定審査の開始により、司法判断と行政認定の乖離は縮小したものの、なお、存在していること。

○ 本検討会では過去の裁判例について検討。行政認定は放射線起因性に関し科学的知見に重きを置くのに対し、司法判断は救済の観点から個別の事情を総合的に考慮するなどしており、こうした考え方を踏まえ、行政認定の方法を改めるべきとの意見。その一方、現在でも行政認定は救済の観点から厳密な科学的知見を超えて放射線起因性を認めており、乖離を埋めていく努力は必要であるものの司法と行政の役割の違いから、判決を一般化した認定基準を設定することは難しいとの意見。

○ 難しい課題であるが、被爆者の高齢化といった事情も考慮すると、後述するように、こうした司法判断と行政認定の乖離をどのように埋めていくかを考えていくことが大切。

2.各論

(1)放射線起因性について

○ 現行の被爆者援護法においては、原爆症認定を行う際、放射線起因性を要件。

○ これに対して、放射線に限らず、原爆症は皆が何らかの原爆の影響を受けているのだから、慰謝の観点から全ての被爆者を対象として手当を支給すべきとの意見。

○ 具体的には、新たな原爆症認定制度の方向性として、被爆者援護法に基づき支給される各種手当を一本化し、被爆者健康手帳を有するすべての者に支給する被爆者手当の創設を図るとともに、放射線起因性が認められる一定の疾病について被爆距離や入市の時間に関わらず障害の程度に応じた3つの加算区分をこの手当に上乗せするという提案。

○ しかしながら、この「放射線起因性」という要件については、国民の理解や他の戦争被害との区別といった観点から、制度を実施する上では欠かせず、被爆状況等の事情を問わず原爆症と認定することは不適当。むしろ、放射線起因性を前提として、認定の在り方を考えていくことが適当。

(2)積極的な認定の対象となる被爆状況について

(「新しい審査の方針」における取扱い)

○ 現行の「新しい審査の方針」(平成20年3月17日疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会)においては、一定の被爆状況(爆心地から3.5km以内の直接被爆等)の者の悪性腫瘍等について、積極的に認定するとしているが、この距離等の被爆状況に関する要件について、援護の観点から、更に拡大すべきとの意見。

○ これに対し、既に科学的には放射線の影響が不明確な範囲まで積極的な認定範囲を広げており、現状以上に緩和することは慎重に考えるべきとの意見が多数。

○ 被爆状況については、残留放射線を考慮すべきであるという意見や、残留放射線の影響に関しては現在では検出限界以下となってしまい被爆による正確な放射線量の検証は不可能であることから、被爆者は皆が何らかの原爆の影響を受けているとして、放射線の影響が認められている疾病は、個人の被曝状況に関わらず全ての被爆者を対象として認定すべきとの意見。

○ しかしながら、残留放射線については、認定審査に当たっても一定の評価をしており、広島・長崎での残留放射能調査のデータ、放射線影響研究所の見解などを見ても、初期放射線に比べ相当少なく、基本的に健康に影響を与えるような量は確認されていないというのが科学的知見である以上、残留放射線に着目して積極的範囲を現行以上に広げることは適当ではない。

○ また、放射線起因性を判断する際の基本は、放射線の被曝線量であり、これを正確に把握することが望ましい形ではあるが、現実の運用に当たっては、被爆当時の情報が限られている中で、国際的に広く認められている知見に基づき、距離等によって推計し、一定の外形的な標準を満たしたものを認定する方法をとっている。

○ 「新しい審査の方針」において、悪性腫瘍等について、「3.5km以内の直接被爆」等の外形的な標準が示されたが、引き続き、このような考え方で対応するとともに、以上のような趣旨を分かりやすく明示することが望ましい。

(3)積極的な認定の対象となる疾病について

○ 本検討会では、長瀧委員から、放射線が疾病に与える影響について、科学的な知見の整理が示され、本検討会で共有。また、科学的な知見を共通の認識として大切にしつつ、援護を行う際には客観的な根拠に基づいて行うべきとの認識を共有。

(悪性腫瘍、白血病について)

○ 現行の「新しい審査の方針」では、積極的に認定する疾病の範囲について、悪性、腫瘍、白血病、副甲状腺機能亢進症及び放射線白内障(加齢性白内障を除く。)並びに放射線起因性が認められる心筋梗塞、甲状腺機能低下症及び慢性肝炎・肝硬変。

○ 悪性腫瘍、白血病については、科学的に放射線との関係が明らかであり、これまでも数多くの事例を認定。

(非がん疾病について)

○ 一方、現行の「新しい審査の方針」において、積極的に認定する範囲とされている7疾病のうち、心筋梗塞、甲状腺機能低下症及び慢性肝炎・肝硬変の認定に当たっては、当該疾患の罹患に関し、「放射線起因性が認められること」が要件。

  また、白内障の認定に当たっては、加齢性白内障を除く、放射線白内障であることが要件。

○ これまでの認定状況をみると、悪性腫瘍、白血病等が中心であり、非がん疾病が認定された事例は少ない。

○ こうした状況の中で、非がん疾病について、爆心地から3.5km以内の直接被爆等については、悪性腫瘍等と同様にすべて放射線起因性を認め、認定すべきとの意見があったが、今日の科学的知見では、比較的低線量でも影響を受ける可能性がある悪性腫瘍等と異なり、非がん疾病については、低線量での影響は認められていないことから、悪性腫瘍等と非がん疾病と同様の取扱いを行うことは適当ではない。

○ 一方、司法判断と行政認定の乖離の一因として、現行の「新しい審査の方針」において非がん疾患の放射線起因性に関する具体的な認定要件が不明確であり、分かりづらいことも考えられることから、当該疾病に関する現行の取扱いについては、見直すことが適当。認定範囲を明確化するという観点から、それぞれの疾病について、科学的知見とともに、限られた情報の下で判断することの限界も考慮しつつ、「放射線起因性が認められる」といった抽象的な文言に代えて一定の距離等の外形的な標準を示し、それを満たしているものは柔軟に認定することが適当。

(現行の7疾病以外について)

○ 現行の「新しい審査の方針」では、悪性腫瘍、白血病のように科学的に放射線との関係が明らかな疾病だけでなく、大規模な疫学調査で放射線との関係について再現性が認められていない疾病を含め、幅広く取り入れ。

○ このような状況の中で、現行の7疾病のほか、科学的知見の確立していないものも含め更に多くの疾病を追加すべきとの意見もみられたが、明らかに対象とすべきものは既に含まれていると思料。

○ 今後も科学的知見を踏まえた対応が必要であり、科学の進歩等により、放射線に起因することが相当程度明らかになった疾病については、積極的な認定の対象となる疾病として追加することが適当である。なお、その際、一般的に治療を要さない患者が多いなど症状が重篤でない疾病については、疾病名のみに着目して積極的な認定の対象疾病とすることは慎重に考えるべき。

(4)認定基準の明確化等について

○ 国が敗訴した判決においては、科学的知見にも一定の限界が存することを踏まえて個別の事情を総合的に考慮すべきということが指摘されており、こうした判決の考え方を踏まえて認定の方法を改めるべきとの意見。

○ これに対し、裁判では個別の事例に基づいて判断が行われるのに対し、行政認定においては同様な状況なら同様の結論といった公平な判断が求められることから、乖離を埋めていく努力は必要だが、乖離を完全に解消することは難しいとの意見や、判決がこのように個別例である以上判決を一般化した基準を設定することは困難との意見が多数。

○ しかし、こうした限界を踏まえつつも、司法判断と行政認定の乖離をできる限り縮めていく努力が重要。そのために、行政認定に当たっては、科学的意見を基本としながらも、一方で科学的には不確実な部分があるといったことも考慮。また、生じている疾病が放射能の影響によるものか、加齢や生活習慣等によるものか原因の切り分けができなくなっている状況、医療技術の進歩により治癒する疾病も多くなっている状況など、原爆症認定を取り巻く状況の変化を踏まえて判断すべきと思料。

○ また、司法判断と行政認定の乖離が生じる背景としては、先述のように、現行の「新しい審査の方針」において「放射線起因性が認められる」ことが要件とされる非がん疾病の具体的な認定要件が不明確であり、分かりづらいことなども一因と思料。

○ 認定を申請した被爆者の理解と納得を得るためにも、現行の「新しい審査の方針」における認定基準をより明確化するとともに、個別の審査結果の理由を明確に示し、丁寧に説明する等の運用改善をすべき。こうした取組みが、ひいては司法判断と行政認定の乖離を縮めると思料。

(5)要医療性について

○ 現行、被爆者援護法においては、原爆症認定について、「現に医療を要する状態」にあること(要医療性)を認定要件として規定。

○ 現行の制度では治癒した場合、特別手当に移行することとなっているが、実際にはかなり長い期間、漫然と要医療性があると認められてきたケースが存在。要医療性の範囲の明確化や、要医療性の有無を客観的に確認する法則を導入することが適当。

(6)手当の区分の設定、基準などについて

○ 医療特別手当の意味を踏まえると、生命や日常生活への影響の程度、治癒や再発の可能性などから疾病の重篤度をグループ分けし、手当額を段階的なものとしてもよいのではないかという意見、手当額の区分については、例えば、疾病ごとなどの大くくりの基準とする、あるいは疾病によって認定期間を限定することも考えられるのではないかという意見など、区分の導入も一つの考え。

○ 他方、絶えず変化する症状に応じて額を変化するのは基準設定が難しく、また、煩雑となるため、受給者の負担軽減や行政事務の簡素化の観点から配慮が必要であるという意見、抜本的な認定基準の拡大なくして、区分の導入により現行よりも手当額が下がる方が生じることに納得が得られるのかという意見など、導入の実現可能性に関する課題の指摘。

(7)国民の理解など

○ 原爆症認定制度に関し、財政負担を担う国民の視点から見た場合、放射線起因性の認められる疾病の中には、加齢現象等により疾病にかかる事例も見受けられるため、先述のように、放射線起因性については引き続き要件とすることが必要。

○ また、医療特別手当の給付水準等を考慮すると、生命にとって大変危険であるとか、日常生活が困難であるといった疾病の重篤性を要件とした方が、理解を得やすいとの意見。

○ あわせて、原爆症認定や医療特別手当といった被爆者に対する援護については、一般の福祉施策とは異なる理由があることに留意し、その旨、一般国民への周知を実施。

以上でございます。

○神野座長 どうもありがとうございました。

 それでは、本日は今、御説明いただいた資料のうち、資料2の骨子案をたたき台にしながら御議論を頂戴できればと思っております。

 議論をなるべく生産的に進める上で、区切りながら議論を進めていきたいと思いますが、行きつ、戻りつしていただいて構いませんので、当面最初の総論に当たる部分、1ページ目から2ページ目ですけれども、基本的な考え方、総論について御意見を頂戴できればと思います。

 田中委員、どうぞ。

○田中委員 その前に、私の資料もお配りしてあるはずなのですけれども、前もって皆さんには郵送で読んでいただいておりますので、きょうここでの説明は省かせていただきます。そのことは、座長に断っておきたいと思います。

 それから、骨子案全体についてなのですけれども、適当であるとか、適当でないとか、思料はまだいいのですけれども、善悪の判断が加わっています。この判断は、厚労省がこう判断しているという格好で出されたのですか。

○神野座長 いえ、前回御議論があった中でもって、軽重をつけろとか濃淡をつけろという御意見がございましたので、事務局と私と相談の上でつけております。

○田中委員 座長との相談の上で適当であるという言葉だとか、適当でないとか。

○神野座長 適当だということでやっておりますので、御意見を頂戴できればその旨についても。

○田中委員 わかりました。

○神野座長 冒頭の発言は、それでよろしいですか。

○田中委員 はい。

○神野座長 それでは、ほかの委員の方々、いかかでございましょうか。

○田中委員 基本的な考えのところで、幾つか正確にしたほうがよろしいかなと思います。

 これは、中間のまとめで書かれたことだと思いますので、それを修正したいということはいかがなものかと思うのですけれども、例えば最初のところに「一般の福祉施策とは異なる理由があることに留意」と書いてあるのですが、異なる理由というのは何かというのをここでは明確にしておいたほうがよろしいのではないかと思いますので、例えば戦争の被害であるということだとか、法律の中に国家補償的な配慮があるということだとか、そういうことを明確に表現しておいたほうがよろしいのではないかと思いますので、私のほうから意見として述べさせていただきます。

 次の点ですけれども「すでに年金や介護保険といった一般制度のほか、被爆者には医療費が無料になる」という表現がしてあります。これは、中間のまとめでも確かにそのようになっているのですけれども、医療保険制度というのがあります。私たちの医療については、医療保険制度が適用されていますので、ここに年金や医療保険及び介護保険という格好で、医療保険も書き加えていただいたほうがいいのではないかと思います。

 次に「医療費が無料」となっていますけれども、この表現は一般の国民に対しては誤解を招くと思いますので、健康保険の医療費の自己負担分が無料になっているということですので、医療費全体が無料ではありませんので、そこは正確に表現していただいたほうがいいのではないかと思いますので、修正の意見を言わせていただきます。

○神野座長 わかりました。

 これは、田中委員が御指摘のとおり、中間報告の中で入れた文言ですので、御意見は御意見として頂戴しておいて、一応確認をとりながら進めておりますから、どういう表現ぶりにするか御意見として承っておきます。

 ほかにいかがでございましょうか。

 荒井委員、どうぞ。

○荒井委員 今、田中委員の御指摘の、骨子案の最初のポツ「被爆者援護施策には、一般の福祉施策とは異なる理由があることに留意」をもう少し具体的に書いたほうがいいのではないかと。私もそれは考えられるかなりの案だと思うのですが、もし書くとすると、どういう方向で異なる理由を把握するかということを一応確認しておく必要がある。

 あえて、ここを具体的に書くとすると、結局今の被爆者援護法の1条に書いてあった「原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ」ということになると思うのです。それ以外の書き方をするということになると、制度の根幹にかかわる議論になると思いますので、ここをもし具体的に書くとすれば、援護法の冒頭の前書きのところに今、私が読み上げたところが書かれてあるのですが、それでよければそれを書くことは、私は結構ではないかと思います。それ以外のことを書き込むとなると、大変な議論になる可能性があるということですが、いかがでしょうか。

○神野座長 これはおっしゃるとおり、もしもやるとすれば、ある程度オーソライズされた文章を持ってこざるを得ないかなと私も思います。

○草間委員 今の御意見ですけれども、最初のところに「原爆症認定や医療特別手当の給付といった」という例を一応挙げているわけです。

先ほど田中委員は、どこが違うか具体的な例示を挙げたらどうかという話だったのですけれども、既に「原爆症認定や医療特別手当の給付といった」という例示を挙げて、違いがありますと言っているので、今回はこれで私は十分ではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。もし、田中委員の言ったようなことで入れるとしたら、全体を変えなければいけないので、ここに言葉を入れるだけでは済まないと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○神野座長 わかりました。ほかに意見がなければ、少し考えさせていただきますが、いずれにしても、ここのところはこの委員会でも1回了解した文章をそのまま持ってきておりますので、このまま残しながら、解説を加えるとすると、オーソライズされているというか、至極前提に決められている文言を持ってくるしかないかなと思います。ですので、少し考えさせていただきますが、基本的には確認しながらやってきているものなので、ここについては解説というよりも、参考として法律を引用するということにとどまるかなと思います。

 ほかにいかがでございましょうか。

○田中委員 先ほどの荒井委員の発言が、皆さんの頭に多少残っているかもしれませんので、ちょっと確認したいのですが、前文のどの部分を読まれましたでしょうか。「原子爆弾の投下の結果として生じた」という部分ですか。

○荒井委員 第1章の前に前書きがあります。その終わりのほうを先ほど読み上げたのです。

○田中委員 「放射能に起因する健康障害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ」という部分ですね。

○荒井委員 そうです。

○田中委員 わかりました。

○神野座長 ほかにいかがでございましょうか。よろしいですか。

 そうましたらば、後で戻っていただいて構いませんので、次に各論のほうに入らせていただいて、最初の(1)と書いてあるところでございます。

○田中委員 済みません、各論の2ページに書いてあります基本的な考え方の部分ですので、確認しておいていただきたいなと思うのが幾つかあります。放射線起因性に関し、科学的知見という言葉をずっと言ってきまして、何を意味するかということも、たびたび御質問したりしたのですけれども、これは明確にしておかないと、いろいろなところで違う使われ方をしているように思えるのです。ですから確認しておいていただきたい。できたら、文章でも明確にしていただきたいなと思うのです。

 1つは、放射線起因性という言葉が使われるのですけれども、私は2つあるのだと思うのです。それは単純に疾病に対する起因性。長瀧先生が資料として出されましたように、この疾病はこれだけの放射線の影響があるという起因性の問題です。

 もう一つは、認定と関係するのですけれども、被爆者の疾病の放射線起因性というときに放射線起因性という使われ方をすると思うのです。それをはっきりしておかないと、例えば私どもは放射線起因性を否定はしていないのですけれども、放射線起因性を単純に被爆者の疾病の起因性と理解して議論が展開されると、非常に注意しなければいけないところがあるものですから、その区別をはっきりしておいていただきたいということが一つです。

 もう一つは、科学的知見と盛んに言うのですけれども、科学的知見とはそもそも何なのだということで、草間先生に何を意味するのですかと質問したことがありまして「それは国連科学委員会が言っていることを意味します」とお答えいただいたのですけれども、そうだけ言ってしまうとなかなかよくわからないところがありますので、例えば私は、UNSCEARに報告している放射線量と、疾病との因果関係に関する結果があります。まず、それが1つあると思います。

 2つ目は、DS86だとか、DS02による放射線量を推定するという方式があります。これも科学的知見なのです。

 3つ目は、疫学調査による相対リスクといいますか、寄与リスクとも言われていますけれども、かつて原爆症の認定で原因確率として使われた言葉があります。これも疫学調査という結果で得られたので、科学的知見なわけです。

 それらが科学的知見と言っているときに、どれを使っていっているかというのは、人それぞれ違う受けとり方をしているのだと思うのです。今の原爆症認定の問題を扱ったときには、DS86とかDS02というのは、線量の推定の方式はいいのですけれども、あくまでも何回も申し上げてきたように、初期放射線。爆発した瞬間の放射線の被曝線量だけしか推定できないわけです。だけれども、原爆症認定にかかわっては、ほかの誘導放射線だとか、残留放射線だとかというのがあるわけですから、それの線量にはDS86とか、DS02というのは単純に使えないわけですから、一緒くたに言われるということはいけないのではないかと思うのです。

 それから、疫学調査の結果なのですが、これは科学的に確かに知見なのですけれども、この疫学調査の結果については、集団訴訟の中でもいろいろ議論があって、限界があると言われておりますね。だから、例えば対象の選択がまずい選択をやっていたとか、結果としては確立の問題として出てきますので、ここの確率を認定に適用するのがいいかどうかという問題も出てきますので、それらを一緒くたにして科学的知見と表現されると、私はやはり最終的な結論のところが、切り捨ての方向に使われていくという心配がありますので、言葉の中身をきちんと確認しながら進めていっていただきたいなと思っております。

○神野座長 最初の起因性は2つあるというのは、疾病に対する起因性と、疾病の起因性というのは。

○田中委員 それぞれ認定を申請している被爆者の病気の放射線起因性。それをただ放射線起因性と言ってしまう。それは共通の認識ですねと言われると、それはそう簡単に言えないでしょうというのが私の意見です。

 というのは、被爆者の被曝線量というのは確定できませんよというのはたびたび申し上げていましたね。確定できない線量で起因性を論じるというのは、おかしい、間違っていますね。だから、認定しようとする被爆者について、放射性の疾病についての放射線起因性というのを言うのは、私は間違いであると思っているのです。

○神野座長 どうぞ。

○荒井委員 最初に御指摘の、疾病に対する起因性を問題にする場面と、個々の被爆者の方の疾病が放射線に起因しているかどうかというのは、確かに使われる場面は違うのですけれども、目標にしているところは全く同じだろうと私は理解しているのです。問題は、いわゆる原爆症の認定のときには、個々の被爆者の病気にかかっておられるのが放射線のせいなのかということを問題にする。

 さて、そのときに、これは田中委員もかねがねおっしゃっているように、それは現在の被爆者の浴びた放射線の量というものを、直接身体検査をしてはかるなんてことは不可能なわけです。そこで認定の基準として、これまでのいわゆる科学的知見に基づいて、疫学的なものもあるでしょうし、論文的なものもあるでしょうが、それに基づいて一定の病気については、放射線とのつながりが立証されていると見て対象疾病に取り組んできている。そういう関係ですね。その議論が大変いろいろあると思うのですけれども、少なくとも2ページで使われている放射線起因性というところを、ここで詳しくしたり書き分ける必要は、私はないと思います。これは、この表現でよろしいのではないかと。

 それから、科学的知見はどの程度のものをもって指すか。それはそれぞれの方の意見というか、科学的知見の評価というのはあろうかと思います。

 例えばここの在り方検討会の1回目、2回目でとりわけ参考人でおいでになった丹羽先生とか、あるいは当時の谷口分科会長がいろいろ御指摘でありました。どういうものを科学的知見と言うかというのは、一定の理解、了解があるのだろうと思うのです。そこをここの報告書の中で書き分けるということは、報告書の趣旨と若干ずれてくるし、そんなに簡単にどこまでが科学的知見に値するかどうかということは、そう簡単には言い切れないのではないでしょうか。

 私は結論的には、総論のところは御指摘がありますけれども、この表現で差し支えないのではないかと。議論としては、おっしゃるようなことはわからないでもないですけれども、ということでございます。

○神野座長 高橋委員、どうぞ。

○高橋進委員 ここは総論の中では、行政認定と司法判断の比較をしていると思うのですが、そういう意味で司法判断というのは、科学的知見に乗っかっていないかとは言えば、そんなことはないと思うのです。科学的知見の上に乗っかっているけれども、その限界を勘案して、個々の事情を考慮しているということだと思うので、双方ともに科学的知見には乗っかっているとは思いますから、私は総論の部分で、これ以上ここを書き込む必要はないのではないかなと。

 科学的知見をどこまでを知見と言うかということについては、各論の中で幾つか記述があるわけです。例えば残留放射線とか、そういうところで違いが出てくるので、ここではこのまま科学的知見と書いておいてもいいのではないかなという気がします。

○神野座長 ここはいかがでございますか。

○田中委員 総論の中で必ずしも詳しく書かなくてもいいと思いますが、放射線起因性については、各論でやります。ここには書いていませんけれども、そこではちゃんと明確にしておいたほうがよろしいかなと思います。

 科学的知見は、何を科学的知見というのかということについては、項目としては議論をするところがないのです。それは、新たに何か加えていただければいいかなと思います。

○神野座長 どうぞ。

○高橋進委員 そこは改めて各論をもう一回議論して、その上で再定義しなくてはいけないということであればしてもいいのかなと。というのは、繰り返しになりますが、各論の中でも、何をもって科学的知見と言うかということについては、ある程度意見は分かれているという記述もあるわけですから、一度各論を議論してからでもいいのではないかなと思うのです。

○神野座長 いかがでしょうか。どの科学的知見が問題かということが、具体的になった時点で明らかにしておけばいいのであって、ここは漠然と捉えておくのは。

○高橋進委員 私はそう思います。決して科学的知見ということについて再整理することを否定するものではありませんけれども、とりあえず各論のところで議論して、違いがあるかどうかというのは、はっきりさせていってもいいのではないかと思います。

 ですから、別に現時点で科学的知見について書き込まないからそれでもう、未来永劫ノーだということではなくて、議論次第だと思います。

○神野座長 よろしいですか。

○田中委員 はい。

○神野座長 それでは、各論の「(1)放射性起因性について」について御意見等々を頂戴できればと思います。いかがでございましょうか。

○田中委員 ですから、ここでも最初に出てくるわけです。「原爆症認定を行う際、放射性起因性を要件」とすると言ってしまう場合に、先ほどの2つの概念が一緒くたになってしまうのです。私としては、認定を行う際、対象疾病が、放射性起因性があるかどうかというのが要件であると言っていただかないと、被爆者の病気に放射線起因性があるかどうかというのが要件であるとなると、それではいけないのではないかというのが私の意見です。

○神野座長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○潮谷委員 田中委員のおっしゃりたいことは、何かぴんと来ていないところがありまして、もう少しかみ砕いて、そこの部分をおっしゃっていただけると、大変助かりますけれど、ごめんなさい、何か理解する力が弱いというふうに思いますけれども、なかなか質問の意図が明確に見えてこないところがありまして、もう一度よろしくお願いいたします。

○田中委員 ある疾病が放射線の起因性がかなり高いかどうかということについては、長瀧先生が膨大な報告を出されましたように、この病気は、放射線と非常に関係が深いという意味での起因性というのがありますね。それは、私どもも全面的に認めなければいけないところ、医学ですから、そのことを言うことはいいのです。

 だけれども、もう一つは、私の病気が放射線起因性があるかどうかと言われたとき、放射線起因性がある病気でありながら、例えば、がんでありながら、私のがんに放射線起因性があるのかどうかという議論をされると、それは、そのままいいですよとは言えないということです。

○神野座長 高橋委員。

○高橋滋委員 御主張は、よくわかります。けれども、現行の法律のたてつけを見ると、原子爆弾障害作用に起因して疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者という書き方をしています。これは、個々の被爆者の方の疾病についての放射線起因性を問題にする条文だと思いますので、そういう意味では、田中委員のおっしゃる後者の起因性を問題にしているのではないかと。

 かつ、我々も個々の疾病についての起因性を求めることが行政上の給付としては適当ではないかという形で議論してきました。それは、田中委員がおっしゃるように、疾病が放射線起因性から既に認めるという御主張もありかと思いますが、現行の法律のたてつけとしては、後者のほうの起因性を問題にしているのではないかと思います。また、現行どおり、そこを出発点にすべきではないかというのが、今までのここの議論の大勢だったと思います。ですから、そこは御主張が少し違うのではないかと思います。

○神野座長 どうぞ。

○田中委員 この法律ができたときは、私の記憶だと、そんなに厳密な、放射線の起因性を問うていないのですね。法文そのものにも放射能という書き方であって、放射線と問うていないのです。放射線の影響については、その法律ができた当時は、そんなによくわかっていませんでしたから、病気についても、だから、原爆の被爆者たちが苦しんでいる状況を見ながら、この法律をつくっていったのですけれども、放射線に関する研究がどんどん進んでくる。例えば、初期放射線がどれぐらいかというのが、その後、わかってくるわけですね、長い時間たって、そういうのがわかってきた段階で、放射能の起因性を放射線の起因性と厳密に限定して適用しようとすると、その法の趣旨に沿わなくなってくるのだと、私には思えるのです。

 しかも、個別の被爆者の放射線量というのは、そのときの調査だとか、政策だとか、推定できない状況にあるわけです。ですから、被爆者個人の被曝線量を推定できないものについて、その線量と病気との関係の起因性を問うというのは、間違いではないかと、私は思っているのです。

○神野座長 石委員、どうぞ。

○石委員 そこが、恐らくきょうの田中さんと、そうではない意見の方との分かれ目だと思いますけれども、結局、ある人がこの種の対象者になるかどうかというのは、その人が持っている病気が、客観的にある範疇で起因性だと言われても、その人は、またほかの属性からその病気を持っている可能性があるわけですよ。典型的には加齢ですね。だから、年をとれば、白内障なり前立腺がんになると、それが放射線起因性かどうかをチェックするのが、結局、識別をしなければいけないので、田中さんの御意見はわかりますよ、それがわからないグレーゾーンは全部一把一からげにして、もう被爆者という概念に入れてしまおうと、こういうことですね。これは、1つの考え方としてあるかもしれないけれども、それは、だんだんこれから議論していくとわかりますように、国民に対してどういう説明をするかとか等々のほかの議論が入ってきたときに、そうはいかないでしょうと。

 これもたびたび外形標準的な議論も出ていますけれども、これは田中さんは余り好きな言葉ではないようだけれども、要するに、個人がかかっている病気について、やはり判定をするのが、恐らく科学的知見であり、放射線起因性の問題、今、高橋さんが言われましたけれども、多分そこしかないのでしょうね。

 それで、前回、長瀧先生の御説明を聞き損なったのだけれども、客観的にある病気が放射線と関係があるということはわかるのでしょう。ただ、個人が持っているときについて、個人はほかにいろんな毒性を持っていますからね、それはわからない。それを何かの手段でぎりぎり詰めていく、その判断に科学的知見という漠とした言葉を使っているわけだけれども、私は、このキーワードについて、あちこちセマンティックな議論をしても余り意味ないと思っているのです。議論がどうしてもそこへ行きがちなのですけれども、これは、誰に対して行う報告書ですか、一般国民も一応対象とするのでしょう。私は、一般国民は、そんなにぎりぎり何とかの何とかという、各国際機関がやったような、検証に基づくような、細かい定義に基づく放射線起因性とか、科学知見というのは要求していないと思いますから、そこを私は、余り、ほどほどのところ、ほどほどと言うと、大変失礼なのだけれども、ほどほどのところで収めないと、議論はかえって混乱すると思いますね。

○神野座長 ありがとうございます。

 坪井委員、どうぞ。

○坪井委員 御承知だと思うのですが、釈迦に説法ですけれども、とにかく原爆症というものは、特に原爆というのが初めての問題ですね。だから、入市から最初の問題、したがって、わからないことが多いわけですよ。何度も何度も経験して人類が出ることは問題ではないからね。しかも、68年前にばんばんとやっただけで、あとはばんばんやってはいけないですけれども、それでいろいろ積み重なったものはないのですね。

 ですから、今から68年前のを調べてもだめだということは、たくさんあるわけです。そうなると、私の考えでは、具体的にこの病気はどうとなると、それは、放射線関係の人たちの専門家の領域を我々が一生懸命やってもわからないところはいっぱい出てきますね。だから、具体的になれば、なるほどこの問題は難しい。

 したがって、我々は、やや抽象化された言葉でまとめないと、一つ一つやるようになったら、厳しく、厳しくいったら、今度はもう分科会は要りません。我々が出したままのを行政がぱっぱとやれば終わりかと、こうなるわけですね。分科会は分科会の意見もあるわけですから、こういう考え方を我々は持っておりますという程度にしないと、それは、分科会もいろんな意見を持っていますからね、我々も持っているというようなことで、行政もいろいろ素人の闘いを裏のほうではやっているかもわからないですよ、やらなければいけない。この問題でも、司法と行政が、私は知らぬ顔をしてるわけはない、我々が一生懸命やって会議の問題をやって、行政と司法もやらなければいけないと、私は思ったのです。

 したがって、今のように余りにもきつく、きつく行こうにも行けない、だから、どうしても起因する病気だというような言葉になっていくのですよ。だからこそ、新しい審査の方針でも、いろいろあれば、また、再々直していきますと、こういうことも入れているわけですから、我々は今回までは、これまでですと、大体いいのではないかと私は思っています。

 ちょっとつまらないことを言いましたけれども、これは、私も厳しく考えるほうが好きなのですけれども、今のような考えを私は持っています。

○神野座長 ありがとうございます。あとは、いかがでございますか。

 どうぞ。

○三藤委員 9ページの(4)の。

○神野座長 飛ぶのですか。

○三藤委員 今の議論に関連がありますので。

○神野座長 どうぞ。

○三藤委員 基本的に、今の認定制度の枠内で考えていこうといったら、これは、個人の疾病の起因性という考え方は、皆さんおっしゃるとおりだと、私も思うのです。

 ただ、9ページの(4)の3番目の○、この中で記載されているように、科学を基本としますよと、しかし、科学にも不確実な部分があるといったことを考慮して何らかの対応をするとなると、その段階では、個人の疾病の起因性ではなくて、対象疾病の起因性という考え方が出てくる可能性は、私はあると思っているのです。

 だから、この中で不確実な部分を考慮するような段階で、このような考え方を持ち込むことができるかどうかというような話も1つあり得るのではなかろうかと、私は思いますけれども。

○神野座長 どうぞ。

○田中委員 この文言、これは、そういう積極的な意見より、むしろ消極的な意見だと、私は思っているのです。

○神野座長 どこですか。

○田中委員 今の9ページは、放射線によらないものものあるのだから、そう簡単に判断してはだめだよということを言っているみたいに聞こえるのですね。

○荒井委員 9ページの議論は、また後なのでしょう。

○神野座長 後なのですが、飛んでいただいても構いませんが、では、当面いずれにしても3ページのところというか、1のところは、よろしいですかね。

 どうぞ。

○草間委員 3ページの3つ目の○のところで、最後に「手当に上乗せするという提案」と、ここだけは提案となっているのですね。

○神野座長 提案もあったということですね。

○草間委員 今まで意見という形で書かれているので。

○神野座長 そういう意味ですか、何でここだけ提案なのかと。

○草間委員 提案というと、この委員会の提案なのかどうかというのがはっきりしないので、ほかとの並びを考えると、ここは意見というふうにしていただいたほうがいいかなと思います。

○神野座長 わかりました。

 あとは、よろしいですかね。

 どうぞ。

○田中委員 ページでいきますと、これも2つ目のところに、私どもが言ったことですけれども、被爆者は、皆が何らかの原爆の影響を受けているのだからというふうに引用されているのですけれども、これは、放射線の影響を受けているのだからというのが、提言にもそういう表現をしてありますので、正確にしていただければと思います。

○神野座長 わかりました。ほかに、よろしいですかね。

 それでは、また、もとに戻っていただいても構いませんので、どうぞ。

○荒井委員 言葉にこだわるわけではないのですけれども、何らかの放射線の影響というのではなくて、多かれ、少なかれという意味でおっしゃっているのではないのですか。程度の差はあれと、何らかの放射線というのは、文章として、またよくお考えいただくことになりましょうけれども。

○田中委員 これは、残念ながらよくできていないかもしれないのですけれども、提言でそんな表現をしたような気がするのですね。それを、ここで引用されたかと思うのですが、いいですよ、言葉ですから、何らかの放射線でも。

 だから、私どもが全ての被爆者を対象にして手当を考えるべきだと言ったときに、今、健康管理手当の該当をしない人たちがありますね。それは病気でないからというような言い方にもなっているのですけれども、そういう方たちも、やはり放射線の影響を受けていているのだということを言いたかったために、そういうふうになっているのです。

○神野座長 わかりました。ちょっと後で発言を、事務局のほうで確認してもらいますが、いずれにしても放射線に限らず、被爆者は何らかの放射線の影響を受けているのだからというと、ちょっと国語的に言うと、同源反復みたくなるので、ちょっと考えさせていただいて、御発言の方の趣旨に沿うような表現ということでよろしいですね。

 つまり、放射線に限らず被爆者は何らかの放射線の影響を受けているのだからというと、突然読んだ人はちょっと理解に苦しんでしまうので。

○田中委員 ですから、原文は放射線に限らずとはなっていないのです。そういう文言が入って、こうなってしまったのです。

○神野座長 ですので、御発言の意図をもうちょっと斟酌して、沿うような形でということですね。

○田中委員 この文章で、そこを修正するとおかしいです。

○神野座長 それでは、いずれにしても(2)の積極的な認定の対象となる被爆状況についてというほうに移らせていただければと思いますが、ここについて、御意見がございましたら、ちょうだいしたいと思います。いかがでございましょうか。

 特にございませんでしょうか。

○田中委員 済みません、またこだわりまして、最後の○のところです。適当、不適当という言葉が使われているのですけれども、被爆状況等の事情を問わず、原爆症と認定することは不適当と書いてありますね。3ページの一番下。

○神野座長 1のほうですか。

○田中委員 はい、戻しているような感じで、これは、不適当なのですかね。被団協が提言で要求しているのは、こういうことなのですね。個別被爆線量は推定できないから、被爆状況の事情を問わないで認定しなさいと言っているわけです。それが不適当だということになっていますから、どうして不適当なのでしょうかと、こういう言い方をしてよろしいのでしょうか。

○石委員 ここは、ワンセットでできているのですよ。ここは、A案とB案となっているわけですよ、ここは各論として、上から3つ目がA案で、4つ目がB案なのですよ。だから、B案の中で、こういうことをトータルで言っているわけですから。

○神野座長 列挙しているわけで。

○石委員 これは、A案とB案と対立させて理解しないと、部分的にとって、A案のほうから見て、B案の一部がおかしいというのは、ちょっとまずいので、これは、これでいいのではないですか。

○田中委員 その場合は、意見というふうに入れていただいて。

○石委員 意見とか、適当だとか、提案とか、いろいろ望ましいとか、何だかんだつきますけれども、これは、最終的な案をつくるときに、大体お役所の答申というのはそうなのだけれども、響いてくるの、こういう言い方が。

○神野座長 ここは適当という意見ですので、特に価値判断を入れていないので。

○石委員 では、ここの議論を集約すると、共有できるというのが一番の、あと、適当だとか、多数だとか、単なる意見だとか、そういうふうに今の段階では整理しておくというだけの話ね。

○神野座長 そうですが、多数とちょっと適当というのは、適当は、その発言内容にかかわってくることだけですけれども、多数だったというのは、少し気にしておいていただければと。

○石委員 多数と。

○神野座長 だから、多数の場合には、最終的にまとめるときに、かなり効いてくるかも。

○石委員 そういう目配り、気配りで読んでいないと、トーンの置き方を間違えてしまうということね。

○神野座長 はい。

○石委員 わかりました。

○田中委員 そのとおりです。各所にそれが出てくるのです。これは、私どもの意見が不適当と言われたことになりますから、それは、承認できませんよということになるのですね、これだったら、という意見があったというのだったら、確かに意見はありましたので、いいのですけれども、ということなのです。これからあちこちにそれが出てきますので。

○神野座長 わかりました。どうぞ。

○荒井委員 前回、私、ウエートづけに少し気を配っていただきたいということを言ったのですけれども、例えて言えば、今のところは、不適当という意見が多数という書き方だって、私の気持ちからすると、そのほうが適切だろうと思うのですけれども、そこは、そこまで書かずに、石委員のお話だと、B説の意見として書かれている。むしろ全部に広げるというのは不適当というのが、ある意味ではコンセンサスという理解なのですけれどもね。

○高橋進委員 そこは、書き方の問題だと思うのですが、3番目のA案に対して、4番目は、B案というよりは、3番目も含めて考えた上で、トータルで見たときに、何か神様が適当だと言っているように聞こえてしまうおそれはある。であれば、むしろ、誤解を避けるためには、適当とする意見が多数と言ったほうが、私はむしろ逆に誤解がないのではないかというふうにも思うのですが、誰が適当と判断したのかという議論になってしまうので。

○神野座長 そうですね。ここで少し多数ではないかという意見をいただければ、それに越したことはないと。つまり、価値判断を入れるのは、なかなか難しいので。

○高橋進委員 いや、それは、わかるのですが、その価値判断を、あえてそこをぼかしたがゆえに、逆に違う誤解を招かないかという、絶対的な正義はこっちにあるのだ、

みたいな言い方にならないかというところを、むしろ懸念するのですが。

○神野座長 わかりました。

○高橋滋委員 別の点でいいですか。

○神野座長 どうぞ。

○高橋滋委員 5ページのところの現行の認定基準の記述についてです。確かに外形基準もとっているのですけれども、一方で、個別的な事案についての総合的な判断という枠組みも残してあります。したがって、前者の外形標準だけ余り強調しないほうがいいのかなと思っています。

 個別的に、総合的に判断するやり方もとりつつというのを「現実の運用に当たっては」というところの後に入れて頂く、「新しい審査の方針」においてという次の○の部についても同じようなことをやっているのだということをきちんと書いていただいたほうがいいのかなと思いました。それは、司法と行政のかわりの話で、司法の個別的な判断ということも、行政でもそこら辺は考えているということを明確に表現することは必要なのではないかと思います。よって、表現を余り偏らないで書いていただければありがたいと思います。

○神野座長 どうぞ。

○田中委員 もう一点あるのですけれども、ここで言う外形的な標準というのは、3.5キロだとか、それから100時間以内に入市とか、そういうことを今の基準で決めていますね。これを説明するのは、やはり外形的標準であると言わざるを得ないのだと、私は思うのですよ。だから、これを抜いてしまうと、では、3.5キロはどうだということになりませんか。

○高橋進委員 抜くのではなくて、この外形的な標準にプラスアルファーしてと言い切っていいかどうかわかりませんが、個々の事情も勘案していると、行政は、全く個々の事情を勘案しているわけではないということですね。

○高橋滋委員 ええ、個々の事情を無視してはいないということを入れておいていただければと思います。審査の基準には、両方、2つ書いてあるわけですから、そこのところはちゃんと入れておいてください。

○神野座長 どうぞ。

○荒井委員 今の高橋滋委員の御指摘に、私も賛成なのですが、つまり、ここでかなりの時間を割いて問題にしてきたのは、今の認定対象にされている疾病を広げることができるかどうかという点に議論が向けられてきましたね。それについては、長瀧先生のほうでのおまとめをベースにして考えてみると、新しい審査の方針で広げられている疾病以外に広げていくというのは、かなり難しそうだというふうに、私は受けとめたわけですけれども、それでは、何が一体広がっていくのかと言ったときに、1つには、新しい審査の方針で、がんとか白血病とかという以外の放射線起因性のある何々というのがありますね。それをどういう基準でやっているのかというのが、放射線起因性をどういうふうに仕分けているのかというあたりがはっきりしないから、もう少し何らかの方法で、いわゆる明確にすると。あるいは、私はもうちょっと医療分科会の基準というのではなくて、もう少し客観的な基準として書いていけないか、これが1つある。

 それによって、今よりは、はっきりしてきたり、あるいは幾らか広がりがあるかもしれないと、新しい疾病というのは、なかなか難しいけれども、科学的な知見が、もし広がってくれば、それは、それで取り入れる余地がある。

 今、対象にしている疾病でも、認定が幾らかしやすいように、明確化ということと多少なりとも広がる余地が出てくる可能性というのは、さっき申し上げた、放射線起因性のあるという枕詞のついているあの疾病の類型であると思うのです。だから、そこらあたりが1つの、少なくともできる限り広げていくという手立てとして。

 もう一つが、先ほど高橋滋委員の御指摘の総合的認定という、これは、今の新しい審査の方針でも、わざわざ項目を分けて、もろもろの諸条件を勘案して総合的に認定するという1つ基準がうたわれているわけですね。これは、結果的には、それほどそれに基づいて、いろんな疾病とか、あるいは対象疾病の中で、客観的な距離的、時間的要件から外れたものが、総合的認定で拾われる事例というのは、そう多くはないかもしれませんけれども、やはり、物差しとしては、大事な物差しだろうと思うので、これは、やはり残していく方向で報告書にも取り上げていただくほうが、ここでの議論の趣旨に合っているのではないかと思います。

○神野座長 はい、わかりました。ほかにいかがでございますか。

 どうぞ、潮谷委員。

○潮谷委員 ただいまの荒井先生の御意見は、7ページの4のところの中に、ここにも書かれておりますので、ここの問題を非がん疾病についてという項目の中で押さえていくのか、この5ページのところの中で表現していくのか、そういった問題ではないかなと思います。

 以上です。

○神野座長 ありがとうございます。あれでしたら(3)のほうにも移っていただいて構いませんので。

 どうぞ。

○田中委員 4ページの最後に残留放射線のことを触れているのですけれども、初期放射線に比べて相当少なく、基本的に健康に影響を与えるような量は確認されていないというのが科学的知見で、ここに出てきたのですね。ここまで言ってよろしいのでしょうかというのが1つ。

 もう一つ、初期放射線に比べてというふうな言い方は適切ではないのではないか。初期放射線というのは、中心部の強いのから、2キロだとか、2.5キロなんて非常に弱いですね。そういうところは、残留放射線と重なる部分も出てくる可能性は、私はあると思うのです。だから、こういう比較の表現は、私は正確でないと、むしろ科学的ではないと思いますので、ちゃんと表現していただいたほうがいいと思います。

○神野座長 どうぞ。

○高橋進委員 まさに、科学的知見が、どこまでが科学的知見なのかということについて、田中委員と、その他の多数の方との間で意見が違っているのだと思うのです。

 残留放射線の影響なりについて、多数の方は、ここに書いてあるように思っていらっしゃる。だから、科学的知見について、少し中身は違うと思います。

 したがって、ここもある意味では、科学的知見である以上、最後に「適当ではない」と書いてありますが、適当ではないとする意見が多数だというふうに書いておけば、より正確なのだと思うのですけれども、だから、ここで科学的知見に対する認識が違うということがはっきりするわけですから、その違いをはっきり書くという意味では、多数かどうかということをつけ加えれば、はっきりするのだと思います。

○田中委員 残留放射線についての意見については、違いがあるというのでよろしいのですけれども、初期放射線と比べてという表現は、正しくないと、私は申し上げた。そこは修正していただければと思います。

○高橋進委員 そこは、私は専門家でないのでわからないのですが、そこは本当にどうなのでしょうか。

○草間委員 今、田中委員が言われるように、初期放射線も距離によって違います。やはり爆心地に近いところはかなりですけれども、今、外形的基準になっております、3.5キロ以遠は、初期放射線による線量も少なくなるわけです。そこで、初期放射線に比べて相当少なくという部分を削除してしまっていいと思います。

○神野座長 これは、ちょっと事実を確認させていただいた上で、今の草間委員のことを参考にさせていただき、修文させていただきます。

○草間委員 特に、これは残留放射線ですので、誘導放射線と放射性降下物と両方あります。誘導放射線だけだと、距離にかなり影響をうけますけれども、放射性降下物の場合は、西山地区とか、距離が離れたところです。確かに田中委員が言われるように、こういう形で書くと科学的ではないのではないかと指摘される可能性がありますので、とっていただいていいと思うのですけれども。

○神野座長 わかりました。それは、事実を確認した上で修文させていただきます。

 どうぞ。

○田中委員 もう一つ、残留放射線を議論しましたとき、余り深く議論できなかったので、残留放射線の外部被曝と内部被曝がありますね。内部被曝問題というのは、まだよく研究もされていないし、わからないことがたくさんあるのだと思うのですけれども、そのことをちょっと触れないといけないのかなと。

○神野座長 これもちょっと、高橋委員、ありますか。高橋委員、何かございましたら。

○高橋進委員 そこのところは、門外漢には、その修文は判断し難いところなので。

○神野座長 どうぞ。

○草間委員 残留放射線に関しては、余り議論されていないというお話ですけれども、残留放射線についての議論は十分したつもりなのですね。では、これをもう一回、二回やったら十分かというと、今あるデータの中で十分議論をしていると思います。DS86でもきっちり残留放射線に関して項目を起こして書いていますし、そういうことを考えると、十分議論していないというのは、私は適当ではないと思うのです。もうこれ以上議論しても新しい知見が出てくるわけではないので、とりあえず、今ある知見では十分、そういったことを書く必要はないのですけれども、私は、やはりここでは議論したということにしておかないといけないのではないかと思います。

○神野座長 ありがとうございます。それでは、よろしいですかね。

 では(3)のほうに移っていただければありがたいのですが「積極的な認定の対象となる疾病について」というところですが、いかがでございますか、先ほどの議論との関連で、また出していただいても構いません。

 どうぞ。

○田中委員 長瀧先生が報告された最初のほうですね、それが関係してくるのだと思うのですけれども、援護を行う際には客観的な根拠に基づいて行うべきとの認識を共有となっているのですが、客観的な根拠というのは何かというのがよくわからないので、長瀧先生は、何か被爆者に対する援護は特別な見方をしないといけないというようなことをおっしゃったような気がするのですね。振り返ってみればいいのですけれども、それを表現するのだとしたら、例えば政策的な配慮に基づいてやらなければいけないとか、そういうような表現にしたほうがはっきりするのではないかと思うのですが、これは、長瀧先生の意見を聞いたほうが、よろしくお願いします。

○長瀧委員 私申し上げたときは、科学的な知見を共有するということがベースにあって、そして、それよりも広げるときには、やはり説明する理由が要るのではないかと、それをやはり国民の方あるいは委員会として外に発表するときに、わかるような理由をやはりつけたほうがいいと、そういう意味で申し上げた。

○神野座長 長瀧先生の趣旨に合うような表現を考えてみますが、仮置きでこうさせていただいております。よろしいですかね。

○田中委員 私は意見を申し上げましたけれども、もう少しやわらかい表現ということになるのでしょうかね。例えば、国民の理解を得るような客観的な根拠をと、こういうのをつけ加えていただければと思います。

○長瀧委員 客観的な根拠というよりも、少なくとも外に対して説明できる理由が、やはりあったほうが、あるいは説明すべきだと。

○神野座長 わかりました。あとは、いかがでございましょうか。よろしいですか。

 そうすると、後でまた戻っていただいても構いませんが、(4)の「認定基準の明確化等について」というところに入らせていただければと思います。いかがでございましょうか。

 ここも特にございませんでしょうか。

 どうぞ、荒井委員。

○荒井委員 9ページの(4)の認定基準の明確化のところは、認定基準の明確化等とあるのは、司法と行政との乖離をどう埋めていくかというところも、この柱のところでかなり拾い込もうとしていると思うのです。私は、ちょっと整理が素直に入ってこないのが、3つ目の○なのですけれども、最初の○のところでは、科学的知見にも一定の限界があるということが判決の指摘であると、そういう指摘を踏まえて、現在の認定方法を改めるべきだという意見、これが1つの意見。

 これに対して、司法は個別だということを中心にして、判決を一般化した基準を設定することは困難という意見が多数と。

 3つ目の○のところに来て、最初の「こうした限界を踏まえつつも、司法判断と行政認定の乖離をできる限り縮めていく努力が重要。そのために、行政認定に当たっては、科学的知見を基本としながらも、一方で科学には不確実な部分があるといったことも考慮」。ここまではわかるのですが、その後のくだりです「また」というところ、生じている疾病が放射線の影響によるのか、加齢や生活習慣等によるものか原因の切り分けができなくなってきていると、それから、医療技術の進歩で治癒する疾病も多くなっている。

 つまり、科学には限界があるというのは、どちらかというと、余り厳密な科学的な因果関係を求めることに対してブレーキをかける方向の意見ですね。どちらかというと、やや緩やかに広げて認定していく。

 ところが「また」以下のところは、どちらかというと、それぞれの項目は広げなくていいのではないかという方向の意見。それが、最初の○と2つ目の○の違う意見の次に出てきて、3つ目の○は、一体これはどう判断すればいいのかと、何か分裂してしまいそうな違うことが書かれているのですね。

○石委員 「しかし」なのだから、いいのですよ。別の意見を言っているわけですよ。

○荒井委員 私の意見としては、この「また」以下は、どちらかというと、8ページの終わりのところに敷衍してもっていっていただければいいので、ここはどちらかというと、多数の意見は、判決の事例を全部拾うのは難しいですよと、だけれども、できるだけ縮めていくためには、科学に不確実な部分があるといったことも考慮していきましょうというところで切ってしまって、そこから後の、いろいろ治癒しやすくなっているとか、取り巻く状況の変化というのは、むしろここから外して、前の8ページの終わりのあたりにふくらますというほうが文脈としてはすっきりするのではないかと。

 それで、3つ目の○は、要するに何を言わんとしているかというのが、つまり違う意見を一緒の項目に取り込んでいるから、わけがわからなくなるという印象を持っております。何とか整理をお願いできればと思います。

○神野座長 ありがとうございました。ちょっと考えさせていただきます。

 ほかにいかがでございましょうか。

 どうぞ。

○田中委員 8ページの3つ目の○のところに「一般的に治療を要さない患者が多いなど症状が重篤でない疾病については、疾病名のみに着目して積極的な認定の対象疾病とすることは慎重に考えるべき」。これは、また意味が私にはわからなかったのです。

○神野座長 8ページですね。

○田中委員 何かもっと、治療を要さない患者が多い。

○神野座長 重篤でない疾病については。

○田中委員 重篤でなくたって、治療するか、しないかというのは別の問題ですね。重篤は関係ないですね。

○神野座長 はい。

○田中委員 その疾病の場合は、積極的な対象疾病とすることが、しなくてもよろしいという文章ですね。

○神野座長 そうです。

○田中委員 意味がわからないのです。

○神野座長 どうぞ。

○草間委員 多分、これは、子宮筋腫のようなものを想定しているのではないかと思うのです。子宮筋腫の場合は、必ずしも、ホルモンの関係とか、必ず治療しなければいけないというのではないことなどを考慮して、ここは子宮筋腫等を念頭に置いて言っているものと、私は理解しているのですけれども。

○田中委員 私がお聞きしようかと思ったのは、今、子宮筋腫が放射線と関係しているという報告が出てきていますね。それで、ふやさなくてもいいということになってくると、子宮筋腫みたいなものは、どうなるのかなとか、また、これから幾つか出てきます。そういうのは、どうするのかなというのが、私の疑問としてあったのですね。

 というのは、私どもは、放射線と関係があるという疾病があれば、もうそれは認定の対象にするべきだと主張していますからね。だから、子宮筋腫は、ここでは考えなくていいみたいな感じになるのです。その疾病で十分だという言い方をされているから、これは、それとの関連ですか。

○神野座長 意見としては、そういうことになりますね。これもちょっと文化系の世界ではちょっと。

 どうぞ。

○長瀧委員 これは、ここに出てきた、前の議論がどこまでされたか、よく覚えていないのですけれども、統計学的にだけ言えば、有意の結果が、子宮筋腫について何度か報告があると、それは確かなのですけれども、では、その疾患についてどういう治療をするのか、ただ見ていればいいのか、積極的に何かどんどん進んでいく病気かというと、比較的おとなしくて何も起こらない病気なので、そういう病気を積極的に原爆症という中に入れるかどうか、草間先生がおっしゃったとおりなのですけれども、ここに書いてあるのは、そういう意味でしょうね。

○田中委員 治療を行わないでいいものだからということで、原因があるけれども治療は行わなくていいのですかね、何か私はよくわからないのですけれども。

○長瀧委員 ですから、ここの文章だけを見ると、慎重に考えるべきということで、同じようにどんどん、例えば、がんとか、重篤な疾患と同じように考えないということも必要、というのは、それを慎重に考えるべきと言ったのではないかと、必ずしもみんな平等ではないのだという、そういう言い方のような感じがいたします。

○神野座長 どうぞ。

○高橋進委員 そういう意味では、放射線との因果関係がはっきりした病気であったとしても、要医療性がなければ、認定の対象にしないということをここで言っているということでいいのですね。

○長瀧委員 それをここで議論していただきたいということだろうと。

○荒井委員 今のような理解もあると思うのですが、私は、ここは、今後の科学の進歩によって、放射線とのつながりが確認できるような新しい疾病が出てくるかもしれませんと、それは、取り込む意欲を持っていなければいけませんと。

 しかし、そのときにも重篤度と言いますか、必ずしも治療なくてもという病気もあるかもしれない。因果関係は認められるかもしれないけれども、今後の問題として、そこは慎重であっていいのではないかというところにウエートが置かれていると思うのです。

 それから、子宮筋腫の御説明がありましたけれども、今後の問題として、どういう病気が出てくるかもしれませんけれどもという前提があるのではないでしょうか。

○神野座長 それは、そうなのですが、どうぞ。

○潮谷委員 今のところは、症状が重篤でないというような言い切り方になっているのですけれども、その重篤であろうと、なかろうと、今後の疾病名に着目した積極的な認定、ここは慎重に考えていくべきというのが妥当であって、ここに重篤であるか、ないかと、そういう評価が入ることは、ちょっと問題ではないかと思いますし、慎重に考えるべきというのは、決して切り捨てていきますとか、対象にしませんとか、そういったような積極的な意味合いをここに含んでいるということではなく、慎重に考えましょうと。結果としては、幅を広げて考えてくということもあり得るでしょうし、そうではないというようなこともあり得るでしょうということで、考えていけば、この慎重に考えるべきという文言は、決して不適当ではないと思うのですが、重篤でない疾病という言い切りは、ちょっといかがかなという思いがします。

○神野座長 大分重篤は、議論をしたのですけれども、どうぞ。

○草間委員 これに関しては、医療特別手当というものにどういう意味があるかというところで議論されたのだろうと思うのですが、一番最初のところにもありますように、医療費に関しては少なくとも自己負担分も無料になってできるわけです。そこで医療特別手当は重篤度等にも注目して、重篤であるということで不安も大きいでしょうという形で、それを重篤度というふうにあらわしていただいているのではないかと思うのです。

 これから子宮筋腫を初めとした、例えば良性腫瘍などが出てきたときに、疫学調査の結果などにより、それで直ちに認定しましょうというのではなくて、やはり重篤度等を十分考慮した上で慎重に判断しましょうという形でこういう表現になっていると私は理解しているのです。

○神野座長 一応、議論はマトリックスとして重篤度は入れて議論したのです。

 荒井委員、どうぞ。

○荒井委員 私は重篤度は残すべきだろうという意見でございまして、先ほどのがんと一緒にはいかないよという、非常に素人にもわかりやすいお話、今の草間委員の御説明もその流れだろうと思いますので、ここでの議論としては、新しいものには取り組んでいかなければならない。しかし、やはり病気の重さ、命にかかわるかどうかといったようなことも含めて、重篤度という言葉は残すべきだろうと思います。

○神野座長 ありがとうございます。

 田中委員、どうぞ。

○田中委員 今のところは何回も言ってきましたのは、認定制度というのは申請した病気の治療費を全額国が持つかどうかという制度なわけです。重篤であるか重篤でないかということは関係ないわけです。だから重篤でなくたって治療していて、治療費を払っていれば、それが放射線に起因するのであれば、それは認定しないといけないのです。手当を出すかというのは別の問題だと主張してきたのですけれども、それを一体にされるからすごくなるので、認定には重篤である重篤でないというのは関係ないのだと私は思います。

○神野座長 ただ、ここはあれですね。

○田中委員 これはむしろ厚労省の方に説明していただいたほうがいいと思うのです。

○神野座長 いや、認定の対象となる疾病ですので、こちらは額の多額のほうになるわけですね。これはかなり重篤度を入れて議論をしてきたことは事実です。

 長瀧委員、どうぞ。

○長瀧委員 その次の5のところの要医療性を実際にどう考えるかということで、重篤と言うとその言葉はまた別になりますけれども、ただ観察していればいいという病気と、治療しなければいけないという病気と同じに扱うのか。すぐに医療行為が必要だと言うのか、あるいはそのまま見ていればいいという病気かという意味で慎重に議論されたほうがいい。そういう意味ではないかと思います。

○神野座長 したがって、ずっと関連しますので、一応4に行ってまた戻っているのですが、4、5を含めて議論していただいて構いません。要医療性はごくわずかですので。

○高橋進委員 やはり、この議論のところですが、重篤でない云々ですけれども、例えば子宮筋腫を念頭に置いた場合、この病気は要医療性があるかないかによって認定するかしないかということなのではないかと思うのですが、重篤云々ではないのではないかと思うのですが、違いますか。

 子宮筋腫というのは、済みません、よくわからないのですが、子宮筋腫の種類によっては治療しなくてはいけないということなのか、それとも子宮筋腫という病気は放っておいていいから、そういうことであればそれは要医療性はない。だから重篤ではない。だから認定しないということになるのではないかと思うのです。あるいは子宮筋腫であっても進行すれば治療しなければいけないということであれば、それは要医療性が出てきた時点では認定の対象になるということなので、病気で切るのではなくて、症状で切ることになるので、病名で切るのか症状で切るのか、そこの違いをはっきりさせたほうがいいように思うのです。

○神野座長 荒井委員、どうぞ。

○荒井委員 素人で恐縮なのですけれども、ここで議論されてきた経過からすれば、症状でもって区別するのはなかなか大変だろうから、疾病そのものが類型的に言って重い病気かどうかというところで振り分けるべきではないかという議論だったと思うのです。

 重篤度を問題にするのはどうか、要医療性というのは私はちょっとむしろ問題があるのではないか。つまり要医療性というのが、今の原爆症認定制度の中で対象疾病それぞれについてどういう医療が行われるか、必要かというあたりで使われるわけであって、ここでの8ページの議論というのは、新たな対象疾病をふやすことができるかどうかというときに、いわゆる病気の類型としての重さということを考慮して考えていこうではないかという意見だろうと思うのです。ここで要医療性というは適切ではないのではないかと思います。

○田中委員 何回も申します。10条はそんなことは言っていません。病気になったら治療費を全額負担するというのが10条です。重篤は何も言っていないのです。軽くても治療したらそれは負担しなければいけないのです。放射線が起因して病気になったら。それが10条なわけです。重篤だとかどうとかは10条は関係ないのです。それをごちゃごちゃにするから議論がおかしくなるというのを私は途中で何回も申し上げてきたのです。だからここで言うのであれば、重篤度は要らないのです。一般的に治療を要さない患者が多いと言っているわけですから、治療していなければ認定できないわけだから、重篤度は関係ないのです。

○荒井委員 いろんな場面でこの重篤度の議論というのは出たと思うのですが、例えば今の新しい審査の方針のもとでのがんではない4類型、5類型については、がんと同じにはいかないのではないか。だからコンセンサスとまで言えるかどうかは別として、それは期間限定という考え方だってあるだろう。恐らくこれはコンセンサスとまでは言えないにしても、例えば給付内容を違えてもいいのではないかという議論が幾らか出たと思うのです。そういう同じような議論として、新しく対象にするような知見が出てきたら取り込むことにはなるかもしれないけれども、重さということはやはり新しく取り込むときには慎重に考えたほうがいいという意見として出てきたと思うので、段階づけをする議論とかなり重なって議論された経過はあったと思うのですが、段階づけをするかどうかにかかわらず、新しい病気を対象に取り込むかどうかというときにはやはり重篤度ということは考えていいのではないかと私も思っておりますし、これまでの議論もそういう流れでこういう指摘が出てきたのではないか。

 簡単に言うと、先ほどの長瀧先生のがんとそれ以外とは同じにはいかないのではないかということに尽きるのではないでしょうか。それはだから大事な1つのメルクマールというか、振り分けの基準になるのではないかと思います。

○田中委員 法律の方ならどうして10条を正確に理解していただけないか、私は不思議でしようがないのですけれども、別ですね。10条は要するに病気になったら治療費を出すということを言っているだけですから、それが認定なのです。それは交代される前の佐々木副市長もそうだとおっしゃったし、多分、厚労省もそうだとおっしゃると思うのです。重篤度は認定に関係ありますか。局長にお聞きしたいのですけれども、10条の適用に重篤度は関係ありますか。

○佐藤健康局長 今、認定の話をされていたので、ここは医療の給付の話ではなくて、10条は医療の給付のことを書いてあると思います。今、お話いただいているのは認定の話だと私は理解して聞いておりました。

○田中委員 医療の給付をするかどうかというのが認定でしょう。

○佐藤健康局長 それは違うと思います。

○田中委員 だって厚生労働大臣が認めた疾病については、医療を給付すると言っているわけでしょう。厚生労働大臣が認めた病気というのが認定。

○佐藤健康局長 私の理解が間違っているのであれば教えていただきたいのですけれども、今、認定に関する話をされていたと思います。だから条文で言うと24条とかですかね。そういう話だったように理解していました。今、10条の話をされましたが、10条は医療の給付なので。

○田中委員 でも、手当は厚生労働大臣が直接手当を認定するのではなくて、10条に基づいて疾病を認定したものについて、その被爆者に手当を出すというのが25条か24条なので、直接認定でないはずなのです。

○神野座長 長瀧委員、どうぞ。

○長瀧委員 端的に言いますと、ほかの病気と比べて医者から見ると変わった病気なものですから、ですからその議論を慎重にここでして、皆さんが入れると決めればそれでいいし、そこはただ慎重にというのは、ちょっとほかの病気と違うという意味で私は申し上げたのですが、まとめの言葉は事務局のほうで慎重まとめて、私はただこの病気はちょっと違うよ、それをどうしますかという意味でここで議論していただければ、私自身は別に。

○神野座長 高橋委員、どうぞ。

○高橋滋委員 認定の審査の方針で、一定の要件のある方について7疾病に書いてある場合には、類型的に積極的に認定するということになっているわけですね。8ページで言っているのはまさにそのことを言っていて、疾病名のみに着目して積極的に、ここの文章がよくわからないので混乱しているのだと思いますが、積極的な認定の対象となる疾病とすることは慎重だという趣旨だと思います。要するに重篤になって、放射線起因性があれば、そのような場合には個別的に認定するわけです。新しい審査基準はそういう構造になっていると思うのです。だから、その7疾病に加えて、これに罹患していれば積極的に認定しますというふうな疾病として挙げるのはどうかという、そういう話をしているのだろうと思います。

○潮谷委員 私は今、そのようにおっしゃったのですけれども、むしろ積極的な認定の対象となる疾病としてという、この文言の理解が本当に積極的に認定しましょうと言っていながら、実は重篤でない疾病ということにこだわって、慎重にというようなことというのが、せっかく上のところで積極的に認定するという意向が示されながら、重篤であるかないかというようなことで、そこは一歩引いてしまっているという文章の解釈をしたのですけれども、重篤でない論議というのは確かにたくさんいたしました。でも、今、申し上げたように、積極的な認定の対象となる疾病として追加することが適当であると言い切っていながら「なお」以降の中でその基準の中に重篤であるかないかということが1つの認定のときの基準的なものになっていくというのはいかがかなという、そんな解釈をしたところです。

 もう一つは、やはりここは医療とのかかわりが非常に出てくると思うのですけれども、申請したときにこれは重篤であるかないかという1つの判断が動いていくと思うのですけれども、しかし、その起因性がもしかしたら重篤に陥っていく可能性。そこあたりのことも考えられていくのではないか。だからここのところで慎重に考えるべきという文言がちゃんとつけられていると私は理解したところでありますので、やはり重篤でないという、そこのところにはこだわりを持ったところです。

 以上です。

○神野座長 わかりました。では、ここの書きぶりというか、文章もおかしなところがあるので再考させていただくということにさせていただければと思います。

 ほかいかがでございましょうか。話が4、5まで行っておりますので、5ぐらいまで広く見ていただいて構いませんが、ございましたら。よろしいですか。

 そうすると時間も押していますので6、最後の7あたりまでいただいても構いませんので、御意見を頂戴できればと思います。

 田中委員、どうぞ。

○田中委員 10ページの一番下のところになるのですが、理解と納得を得るために現行の新しい審査の方針における認定基準をより明確化するということは、これは荒井委員もおっしゃっていました、今、潮谷委員もおっしゃったのですけれども、放射線起因性が認められるという書き方をしているのが説明不足なので、それを明確にしたらどうかという発言もありましたね。そういうことですね。

○神野座長 はい。認定基準をより明確にするということですね。

○田中委員 どこかそれに関連することがあったような気がするのです。そうすると放射線起因性がついたというのが4つあるのですね。その4つの疾病について1つずつでも書くとかいうことになるのでしょうか。取っ払ってしまえば問題ないのですね。

○神野座長 起因性を取っ払えばということですか。

○田中委員 起因性を取っ払えば単純明快なのです。3.5キロと100時間と100時間以上入市したという、それに該当する。今、争いになっているのは一番そこのところではあるのです。この前の大阪の地裁の判決でも、その人たちが全部認定すべきだという大阪地裁が判決を下しましたね。追っかけになりますけれども、集団訴訟とまた別の新たな裁判が起こって、最終でも2回目の判決になりますが、8人の原告について全て認定すべきであると。しかも厚労大臣は控訴しませんでしたね。そういう中身と関係するのです。その4つの疾病は。だから取っ払えば一番単純になる。

 私も取っ払ったらというのをずっと言ってきたのですけれども、この2年間全然取っ払うということは厚労省はやられなかった。だからまた裁判が起こってしまってこの前の判決になった。あるいは続いて判決がまた出てくると思うのです。そこで控訴しないということは、裁判すれば認定するよということになってしまうのです。裁判できない同じ条件の人はどうするのですかね。健康上、経済上、それは厚労省自体が差別することになってしまいます。だからそこのところをきちんと解決するということをやっていかないといけない。それが私たちの仕事だと思っているのです。

 取っ払えないのだったら、何か別の制度を考えたほうがよろしいと私たちは考えてきたのです。

 以上です。

○神野座長 ここは10、それから7と書いてある。つまり認められるという文言に変えて、少し具体的に書き込みましょうと。

○荒井委員 関係してよろしいでしょうか。被団協事務局長の田中先生から意見としていただきましたね。今の議論に関係するのですけれども、きょう席上で配られました「第23回検討会における議論の整理に対する意見」の一番最後の8ページです。8ページの下のほうですが「(2)おわりに」の1つ上のところの3、審査基準をできる限り明確化するという項がありまして、この明確化というのは非がん疾患の認定基準から3.5キロや100時間という限定を外し、より狭い基準に改定する。例えば非がん疾患の放射線起因性には閾値を設け、入市被爆者は一切認定しないことを明示する等を考えているのでしょうかという、この御指摘に関連するのですけれども、私も明確化ということについて何度か発言をしたわけですが、それはまさに今の新しい審査の方針、積極的に認定する疾病として7つ書いてあって、しかし、後から加えられた3つ、4つについては放射線起因性がある。これが非常にわかりにくいのです。

 8ページの3の御指摘というのは、逆に言うとがんでない、後から加えられた疾病についても3.5キロ、100時間以内であれば全て積極認定だという何か前提がおありなのではないか。あの基準はそうではないと思うのです。100時間、3.5キロであっても白内障はともかくとして、甲状腺などについては放射線起因性が認められるという場合の積極認定なのです。だから3.5キロ、100時間という限定を外すという趣旨での明確化を言っているのではないけれども、そもそもから言うと現在、3.5キロを100時間であれば全部それが認められるべきかというと、それは今もそうではないという、そこの理解が少し違っているのではないかと思いますので、別にそこを一切認定しないことを明示するなんていうことではない。そういう趣旨での明確化ではない。しかし、3.5キロ、100時間であれば甲状線でも何でも全部認められるべきだということを前提にしているのであれば、それはちょっと違うのではありませんかということは確認的に申し上げておきたいと思います。

○田中委員 私も新しい審査の方針をいろいろ言っているときに、放射線起因性がついていないものについても放射線起因性が推認される以下の疾病と言っているのです。新しい審査の方針のどこかに入っていると思うのですけれども、その頭の言葉は、原爆投下により約100時間経過後からと条件を言って、3つの条件を言って、放射線起因性が推認される以下の疾病についての申請がある場合はと言っているのです。それで悪性腫瘍、白血病、甲状腺機能亢進症があって、その次にまた放射線と出てくるのです。これはおかしいのです。二重に放射線と言っているのです。どうして放射線が推認される以下の疾病で、さらに放射線起因性が認められるという言葉が必要だったのでしょうか。

○荒井委員 私の理解は、ここが不明確なために若干判決で放射線起因性が認められる心筋梗塞、甲状腺という、その枕詞の起因性が認められるということを軽く見るというのか、そういう判決が出ている一因になっているのではないか。これは私の理解ですけれども、つまり、上のほうで推認されると言ってしまっているのですけれども、下のほうでもう一度起因性が認められるというのは、類型的に全部推認はしないのです。この基準というのは。そこの理解がかなり違うのが、これはきっちりすべきであるということを言いたいわけです。

○田中委員 でも、集団訴訟で乖離が残ったのは、前半のがんについては乖離は解決していったのです。乖離が残ったのは今の部分なのです。乖離が残っているから、それを解消するように厚労省と私どもと交渉しよう。大臣とも協議しようという形になっているのです。だから、その乖離をなくすのが非常に重要なのです。しかも2年間でそれが解決できなくて、次の裁判が起こっていて、まだ司法はこの人たちを認定すると言っているわけです。入市の人も含めて。だとすれば、司法と行政の乖離を埋めようとしたら、そこはどうするのですか。依然としてつけるのでしょうか。それをまた外形標準を持ち込んできて何かやろうというのであれば、例えば2キロ以内の何とかかんとかというふうに言うのか、それは後退ですね。また裁判に負けます。

○神野座長 何かありますか。

○荒井委員 結局また繰り返しの議論になってしまうのですけれども、一応この報告書というのか骨子案では、そこをどういうふうに具体的に埋めていかなければいけない、具体的な方法として幾つかは拾われているのです。それは新しい審査の方針を明確化する。明確化することによってギャップが幾らか埋まるだろうというのが1つありましょうし、私の言う総合的認定は残すべきだというのも1つでしょうし、新しい知見があれば加えていくべきだというのも1つでしょうし、それ以上に全くそこをなくしてしまうということはなかなか難しいのではありませんかというのがここでの議論の経過だったのではないでしょうか。だからそこはどうしても意見の違いとして残るところはあると思うのですが。

○神野座長 高橋委員、どうぞ。

○高橋滋委員 適当という言葉がここでかなり対立を招いているようです。適当であるという意見が多数とか、それが要するに皆さんの意見であればそうしていただいて、私自身もある種この疾病について、全て類型的に認定するというのはこれまでの議論ではなかったのではないか。すべきだという意見は多数ではなかったのだと思います。

 ただ、司法と行政の乖離の中でそこのところが微妙に食い違っている部分があるので、その食い違いを埋めるためにまさに類型化、司法の判断を見ながら外形基準を取り入れて、そこは紛れがないようにして頂くことが良いのではないでしょうか。

 もう一つは荒井委員がおっしゃったように、司法の判断を横目で見ながら個別的認定という方向で頑張っていく。この2つが司法と行政の乖離を埋める1つの手段かなと思っております。よってそういった意味では外形的標準化ということは1つの有効な手段ではないかと思っています。私自身はそう考えますので、そういう意見が多数かどうかはわかりませんが、ここで確認していただければありがたいと思います。

○神野座長 田中委員、何かありますか。

○田中委員 時間がないからあれなのですけれども、今の外形標準で決めたのは科学的知見の厳密性を問わないで、法の精神にのっとってやったほうがいいということでできているわけですね。だからそうだとすれば、あとの4つの疾病についても同様の考え方をどうしてできないのでしょうかというのが私たちの疑問です。恐らく裁判所もそういう疑問を持っているのだと思います。だから認定するのです。

○神野座長 高橋委員、どうぞ。

○高橋滋委員 司法は総合認定なので、自由心証主義に基づいて全体の判断で判断を下していきます。行政認定の場合はそういう方向もありますが、1つは類型的に拾うということと、可能な限り個別に残りの部分を判断していく。この2つのやり方で判断をしていきます。そこは、ですから乖離を埋めるものとしては、そういう行政認定の枠組みの中で穴埋めをしていくという方向が妥当なのではないかと思います。

○神野座長 そろそろ時間ですが、何かございましたら。よろしいですか。

 それでは、時間でございますので、どうもありがとうございました。熱心に御議論を頂戴しました。

 きょういただきました御議論を踏まえまして、また次回に少し今の御意見を咀嚼しながら反映して、次回に報告書案を提出させていただければと思っています。

 一応、本日時間でございますので、この辺でこの検討会は終了させていただきたいと思いますが、事務局から補足すべき点がございましたらお願いいたします。

○榊原室長 次回の日程につきましては、日程を調整の上、追って御案内いたしますので、よろしくお願いいたします。

○神野座長 それでは、この検討会はこれにて終了させていただきます。最後まで熱心に御議論を頂戴した点を感謝申し上げまして、終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 


(了)

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