ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 職業安定局が実施する検討会等> 改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会> 第5回改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会 議事録(2013年12月4日)




2013年12月4日 第5回改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会 議事録

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成25年12月4日(水)
10時00分~12時00分


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

【委員】山川座長、阿部(一)委員、市川委員、伊藤委員、北野委員、栗原委員、小出委員、塩野委員、武石委員、田中委員、富永委員、本郷委員

【事務局】内田高齢・障害者雇用対策部長、藤枝障害者雇用対策課長、松永調査官、田窪主任障害者雇用専門官、境障害者雇用対策課長補佐、寺岡障害者雇用専門官

○議題

1. 差別禁止の枠組みと今後の論点
2. 差別禁止指針について
3. その他

○議事

○山川座長

 それではただいまから、第 5 回改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会を開催いたします。本日は、阿部正浩委員が欠席です。それから藤枝障害者雇用対策課長は国会業務の関係で、一時中座させていただく予定になっております。本日は、前回までのヒアリングに基づいた論点の整理をいたし、差別禁止の指針における論点について御議論を頂く予定になっております。これまでと同様、御発言の際は手を挙げて名前を言っていただいてから、発言されるようにお願いいたします。

 それでは、議題の「差別禁止の枠組みと今後の論点」と、「差別禁止の指針について」の議論に入りたいと思います。これらについては事務局から資料が提出されております。この点について説明をお願いいたします。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。よろしくお願いいたします。それでは、資料 1 について御説明させていただきます。

 「差別禁止の枠組みと今後の論点」と題した資料ですが、この資料自体は第 1 回目のこの研究会において、お配りさせていただいた資料が基となっております。その後ヒアリングを 3 回行い、そのヒアリングを踏まえて追記を行ったものです。具体的にはヒアリングにおいて、法的な枠組みに関する点に関して何点か御意見を頂いてその点を踏まえた追記を行っているものです。追記箇所については波線を引いておりますが、順次、御説明させていただきます。

 まず、 1 「差別禁止の枠組み」の (1) 対象となる障害者の範囲ですが、この四角の中を御覧ください。ヒアリングにおいて、障害者の定義に関する御指摘が何点かありましたので、改めて改正後の障害者雇用促進法に定める障害者の定義を記載したものです。

 障害者雇用促進法においては、障害者の定義は、心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者とされており、障害者基本法と同様の概念となっております。 (3) 差別の範囲マル1の四角の中を御覧ください。ヒアリングにおいて、いわゆる間接差別に関する指摘がありました。今般の法改正を行うに当たり、障害者雇用分科会でまとめていただいた意見書で、どのように整理がなされていたかを改めて記載したものです。すなわち、「間接差別については、マル1どのようなものが間接差別に該当するのか明確でないこと、マル2直接差別に当たらない事案についても合理的配慮の提供で対応が図られると考えられることから、現段階では、間接差別の禁止規定を設けることは困難である。将来的には、具体的な相談事例や裁判例の集積等を行った上で、間接差別の禁止規定を設ける必要性について検討を行う必要がある」とされ、今般の法改正においては、間接差別に関する規定は設けられませんでした。

 次ページの (5) として、差別禁止指針で定める内容を新たな項目として設けさせていただきました。これから差別禁止に関する指針について、御議論いただきますが、この指針は障害者雇用促進法に基づくものである、ということであり、その内容についても、障害者雇用促進法に定められております。そのため、差別禁止指針の法的枠組みについて、改正後の障害者雇用促進法の条文を改めて整理しました。

 差別禁止指針の関係条文ですが、まず、第 34 条と第 35 条において、障対法に定める差別の禁止を規定しております。第 34 条が募集採用に関するもの。第 35 条が採用後に関するものです。

 差別禁止指針の策定の根拠規定は、第 36 条となっております。第 36 条において、厚生労働大臣は前二条、これが先ほど申し上げた第 34 条と第 35 条を指します。この前二条の規定に定める事項に関し、差別の禁止に関する指針を定めるとされております。つまり、障害者雇用促進法に基づく差別禁止指針においては、第 34 条又は第 35 条に反するものかどうかの考え方を示すものとなっております。なお、合理的配慮についても、御参考までに条文を記載させていただきました。

 合理的配慮については、第 36 条の 2 から第 36 4 までに規定されており、合理的配慮に関する指針の根拠規定は第 36 条の 5 となっております。

 第 36 条の 5 において、厚生労働大臣は前三条、これがただいま申し上げた、第 36 条の 2 から第 36 条の 4 までを指しますが、前三条の規定に基づき、合理的配慮の提供に関する指針を定めることとしております。

 このように、差別禁止指針と合理的配慮指針は法律上、その策定根拠が異なっているとともに、その対象となる条文も異なるということです。

 資料 2 についてですが、ただいま御説明申し上げた資料 1 にある研究会で御議論いただきたい事項の項目に沿って、ヒアリングでいただいた意見をまとめ、それぞれについての考え方のたたき台を事務局で用意させていただきました。

 まず、 1 、指針の構成についてです。指針の構成案を事務局で示させていただいておりましたが、この点については、日身連、全精連のそれぞれの方から、差別禁止指針の構成については、概ね賛成との御意見を頂き、指針の構成については、指針の構成案で示したとおりとしてはどうかと考えております。

2 、基本的な考え方についてです。ここでは基本的な考え方において、記載すべき事項として、対象となる障害者の範囲、対象となる事業主の範囲、差別の範囲のほかに、どのようなものが考えられるかということでした。

 その他記載すべき事項については、育成会の方から見えない障害については、直接当事者に接することで共感が生まれ、障害理解が進む。このような障害特性について、指針に明記すべきといった御意見がありました。

 全精連の方からは、事業主が精神障害者に対する正しい知識と理解をより深めることといった御意見がありました。

 連合の方から、事業主や職場に働く労働者の障がいに対する正しい理解の促進と情報の共有が重要といった御意見を頂きました。

 これらの御意見を踏まえて、矢印の下の四角ですが、障害者に対する差別を防止するという観点を踏まえ、指針の「第 2  基本的考え方」に、事業主が障害特性に関する正しい知識の取得や理解を深めることが重要であること等を記載してはどうかと考えております。

 また、障害者の範囲について御意見がありました。ろうあ連盟の方からは、障害者基本法の定義を入れ込むことといった御意見がありました。

 日盲連の方からは、継続して就労が困難な人とされたい、との御意見がありました。この点については、先ほど資料 1 でも御説明させていただいた、差別禁止指針は、障害者雇用促進法に基づくものであり、対象となる障害者は、同法第 2 条第 1 号に規定する障害者となります。同法においては、すでに、心身の機能の障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者とされております。

 なお、障害者雇用促進法と障害者基本法は、心身の機能の障害がある者であって、継続的に社会生活等において、相当な制限を受ける者を対象としており、同概念であります。

 間接差別について御意見がありました。ろうあ連盟の方からは、消極的な ( 間接的な ) 差別を防止との御意見がありました。

 日商の方からは、間接差別については、障害者雇用分科会意見書のとおりとの御意見がありましたが、分科会意見書においては、「マル1どのようなものが間接差別に該当するのか明確でないこと、マル2直接差別に当たらない事案についても、合理的配慮の提供で対応が図られると考えられることから、現段階では、間接差別の禁止規定を設けることは困難である。将来的には、具体的な相談事例や裁判例の集積等を行った上で、間接差別の禁止規定を設ける必要性について、検討を行う必要がある。」とされており、今般の法改正においては、今後の検討課題とされたということを改めて確認させていただきます。

3 、差別の禁止についてです。まず、指針の構成案に掲げた項目例に沿って整理することについては、日身連の方から職場復帰を、全脊連の方からは、労働時間や再雇用の項目を追加すべきとの御意見がありました。

 なお、職場復帰については、障害者と事業主の十分な話合いと相互理解をもとに合理的配慮がなされることによって、職場復帰が可能となるとの御意見も併せて頂戴しました。

 また、中央会、日商のそれぞれの方からは、指針の構成案で示された項目例に沿って、記載すべきとの御意見を頂きました。

 これらを踏まえて、職場復帰、労働時間及び再雇用については、一定の職務配置や、業務配分に関する配置や、募集及び採用等の既存の項目に含まれますので、指針の構成案の項目例に沿って、記載することとしてはどうかと考えております。

 なお、合理的配慮がなされることにより、職場復帰が可能となることについては、合理的配慮の提供の問題と整理されると考えております。これは四角の下の※で記載しています。

 次に募集及び採用についてです。ヒアリングで御指摘があった事例を別紙でまとめております。ヒアリング団体から御指摘いただいた事例を、指針の構成案で示した項目ごとにまとめております。

 なお、後ほど説明いたしますが、ヒアリングにおいては、差別に当たらない事項が意見として示されたので、別紙の 5 ページに「差別に当たらないものとして示された事例」としてまとめております。

 また、今回ヒアリングで合理的配慮の提供の問題ではないかと思われる御意見もいただいたので、 6 ページ以降に「合理的配慮の観点で検討すべきと考えられる事例」として、整理させていただきました。

 それでは、募集及び採用において示された主な事例ですが、日身連、日盲連のそれぞれの方からいただきましたが、障害者は正社員にしない、障害者は契約社員にしかしないといった募集を行うこと。また、複数の団体からいただきましたが、募集条件に何らかの条件を付すること、例えば、文字が読めることやコミュニケーションがとれること、といったものです。これらの例を踏まえて次のように整理をしてはどうかと考えております。資料 2 にお戻りください。

 資料 2 5 ページです。障害者は正社員にせずに、契約社員や嘱託社員にしかしないという募集を行うことなどの事例を踏まえて、例えば、募集又は採用に当たって、障害者であることを理由に、その対象から障害者を排除することや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることが差別に該当すると整理できるのではないかと考えております。

 また、募集に際して、「簡単な暗算や読み書き」、「音声言語によるコミュニケーション」等の一定の能力を有することを条件とすることについては、その条件が業務遂行上不可欠なものと認められる場合もあり、その条件が業務遂行上不可欠なものと認められる場合は、障害者であることを理由とする差別に該当しないと整理できるのではないかと考えております。

 一方で、募集に当たり、業務遂行上不可欠ではないにもかかわらず、あえて条件を付していると判断されるときは、障害を理由とする差別に当たるものと考えております。今、申し上げたようなことを指針に記載してはどうかと考えております。

 なお、通勤支援については、合理的配慮の提供の問題として、合理的配慮について御議論いただく際に御検討いただければと考えております。

 採用後についてですが、例えば、育成会、 JDD ネット、連合のそれぞれの方から合理的な理由・根拠がない賃金格差といった事例。連合の方からは、仕事を与えない又は過度に単純な作業のみを課すことといった事例。日身連の方からは、昇進の機会を与えないことといった事例。 JDD ネット、連合のそれぞれの方からは、障害を理由に職場でのキャリアアッププログラムを提供しないことといった事例を御紹介いただきました。

 これらを踏まえると、次のとおり整理してはどうかと考えております。

 「合理的な理由・根拠がない賃金格差」や「障害を理由に職場でのキャリアアッププログラムを提供しないこと」等の事例を踏まえ、例えば採用後の各項目について、障害者であることを理由に、その対象から障害者を排除することや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることが差別に該当すると整理できるのではないかと考えており、今、申し上げた内容を指針に記載してはどうかと考えております。

 ヒアリングにおいて、差別に当たらない事項を明記すべきとの御意見を頂きました。例えば、経団連の方からは、積極的差別是正措置など合理的な理由がある場合は、法違反にならないと例示する必要があるとの御意見です。

 経団連、日商のそれぞれの方から、合理的配慮が提供された上で、労働能力等を適正に評価した結果としての異なる取扱いは、差別的取扱いには当たらないことを明示する必要があるとの御意見です。

 経団連、中央会のそれぞれの方からは、障害者求人において、障害者がどのような支援・配慮を必要としているかを把握するため、ヒアリング等を行うことは差別として取扱うべきではないといった御意見がありました。

 これらの御意見を踏まえて、以下の事項は、「障害者であることを理由に、その対象から障害者を排除することや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすること」には該当しないことから、差別に当たらない事項として、指針に記載してはどうかと考えております。

 具体的には、「障害者を有利に取扱うこと ( 積極的差別是正措置 ) 。」、「合理的配慮を提供し、労働能力等を適正に評価した結果として異なる取扱いを行うこと。」、「合理的配慮の提供の結果として障害のない者と異なる取扱いを行うこと。」、「障害者求人の採用選考又は採用後において、合理的配慮を提供するため、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認すること」を差別に当たらない事例として記載してはどうかと考えております。

 先ほども申し上げたとおり、合理的配慮の観点で、検討すべきと思われる事例は、別途、整理いたしましたが、これらについては、合理的配慮について御議論いただく際に御検討いただければと考えております。

 なお、参考資料として、ヒアリングでいただいた御意見をまとめておりますので、適宜、御参照ください。説明は以上です。

○山川座長

 資料 1 及び 2 について、事務局から説明していただきました。資料 1 につきましては、前提となる法令あるいは分科会報告の確認的な趣旨のものなので、特段問題はないと思いますが、特に何か御質問等がありますでしょうか。よろしいでしょうか。

 中心となるのは資料 2 になります。今回は差別禁止指針についてです。資料 2 については、大まかに言って、指針の構成、基本的な考え方、差別の禁止の 3 つの論点が出てきていますが、御質問、御意見を御自由にお願いいたします。

○田中委員

 日本盲人会連合会の田中です。第 2 「基本的な考え方」について 3 点ほど意見を申し上げます。まず 1 点目は、全体のことです。現在、差別解消法の関係で基本方針の議論も同時に進んでいます。雇用促進法の差別禁止指針ともかなり関連しますので、これは事務局へのお願いですが、その基本方針の議論の進行状況等を把握できるところで適宜報告を頂きたいと思います。

2 点目は、差別の範囲についてです。事務局から説明がありましたが、間接差別については規定しないということであります。ところが、少し先の、募集・採用の所で、「一定の能力の条件を付するということは、業務遂行上その条件設定が不可欠と認められる場合には差別に当たらない」という記載があります。これは裏を返すと、条件の設定が業務遂行上不可欠であるとは認められない場合には差別になるということになります。今までの整備では、恐らくこれは間接差別に当たるものだと思うのです。具体例を言うと、例えば運転免許証の取得という条件設定を募集・採用で付す場合、運転手の募集であれば業務遂行上不可欠です。したがって、差別に当たりません。しかしながら、一般の事務職員の採用について運転免許証の取得ということになると、これは業務遂行上不可欠ではない。したがって、これは差別に当たることになります。この運転免許証の取得という基準は直接差別には該当しないわけです。つまり、基準としてはニュートラルですが、運転免許証の取得を要求されると視覚障害者は事実上排除されてしまう。これを「間接差別」という言葉を使うかどうかは別として、どう整理するのか。これを直接差別と言うのか。表現は事務局にお任せしたいと思いますが、直接差別、あるいは、これに準ずる効果を持つものとか、何かそういったものを入れていただかないといけないのではないか。実際はこういう別の基準を立てて排除することが多く行われることが予想されるからです。その点を少し御議論いただきたいと思っています。

3 点目は、「その他記載すべき事項」の所で、障害の理解を進める、情報を共有するというような御提案があります。これは大変重要なことだと私も思っています。これももう 1 歩進めて、事業主の方々が障害者を採用した場合に、障害者を 1 人の社員として受け入れる、受容する、仲間意識と言いますか、 1 人の社員として認めた上で受け入れるということが、障害者にとって雇用の継続につながるのです。これは差別禁止で書くのか、合理的配慮で書くのかは、私もまだ判断がつきませんが、前提として、 1 人の社員として受け入れていくというようなところまで指針に入れてもいいのではないかと思っています。

○山川座長

3 点、御要望と御意見ということになるかと思います。第 1 の、差別解消法に関して、現在作成中の基本方針とそれとの関係について、事務局から何かありますか。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。まず、今の 1 点目、差別解消法においても基本方針を定めるということで、その御議論が始まったと認識しています。具体的には、 11 11 日だったと思いますが、障害者政策委員会で第 1 回目の御議論が始まったと認識しています。現在我々が伺っているところでは、来年度の上半期までに基本方針を定め、それを受けて各省で定める対応要領・対応指針については来年度中の策定を目指すと聞いています。雇用分野については、雇用分野を障害者雇用促進法に委ねるとなっていることから、差別解消法に基づく、いわゆる対応指針は策定しないのですが、障害者雇用促進法に基づく指針を定めることになっています。各省の検討は来年度の後半に始まるものと思いますが、雇用分野については非常に重要な問題が多数あると考えていますので、早い段階から御議論を始めていただいたということです。政策委員会でも、労働政策審議会、こちらは研究会ですが、雇用分野の議論はお互いにきちんと把握しておく必要があるだろうと御指摘を頂いています。事務局としても、節目節目において障害者政策委員会での議論の状況などをまとめて御報告いたしたいと考えています。

2 点目の、差別の範囲については、間接差別と直接差別との異同の問題かと認識しています。これはかなり抽象的な概念なので、その抽象的概念をどこまでこの指針において深掘りするかということは別途あろうかと思いますが、大きな考え方としては、やはり、直接差別というのは差別の意図が重要な判断要素になるのではないかと考えています。先ほどの条件が、結果としてそれが不可欠でなかったというときに、それを即差別と言っていいものかどうなのか。ある程度、障害者を排除する意図があって、その排除するための方便として条件設定したと認められるようなこと、これは間違いなく差別的取扱いだと思います。そういったものを基本的な視点に置いていますが、この点については、今後、研究会、分科会などで御議論を深めていただきたいと思います。

3 点目については、事務局としても今の御意見は重要な観点ではないかと思っています。これをどのような形にするのか、差別禁止指針で書くべきなのか、今後もう 1 つの議論になってくる合理的配慮の指針で書くべきかについては、この研究会での御議論を深めていただきたいと思います。

○山川座長

 田中委員の御発言の 2 点目、 3 点目についても事務局から説明がありましたが、この点も含めて、田中委員、いかがでしょうか。

○田中委員

 ありがとうございました。 2 点目の、差別の意図ですが、これは主観的なものになるので、なかなか判断が難しいと思うのです。ほかの委員の方にも是非御発言いただきたいのですが、業務遂行上不可欠なものとは認められない基準が設定された場合には差別的と推測する、推認するというような話になるのではないかと私は思っていたのです。ただ、必ずしもということも十分あり得る。必ずしも差別的と思っていないこともあり得るわけです。そういった場合に、誰が判断するのかというところがあります。ここは救済の問題になってくるのかもしれませんが、例えば障害者から、設定された条件について、これは差別的意図を持った条件だということで申出があった場合には、事業主が、それはそういう意図を持ったものではない、業務遂行上不可欠なものだということの説明を行うとかですね、何かそういった手当をしないと、障害者にとって差別的な扱いを受ける場合があるのではないかと思うのです。

○山川座長

 この点は、ほかの委員の方々の御意見もということですので、何か御意見がありましたらお伺いしたいと思います。

○北野委員

 今の田中委員の御発言の中で、差別の意図の問題ですが、これが非常に難しいのは、差別の意図のあるなしにかかわらず、と私たちが考えているのは、いわゆる偏見を企業主さんが持っていらっしゃるような、本人は偏見を意識してはいらっしゃらないのですが、一般的に障害者に対する偏見を持っていらっしゃるときに、主観的にそれを認識されていない場合に、これは本人は意図していないのですが、偏見ですから、明らかにそれが反映されてしまう可能性が出ます。やはりここは、今おっしゃったように、「一方、募集に当たって業務遂行上不可欠でないにもかかわらず、あえて」と、この「あえて」という言葉が意図のことをおっしゃっていると思うのですが、「あえて」という表現は非常に危険だと私は思っています。「あえて」を取るべきです。そうしないと、言いましたように、一般的に企業主さんが偏見を持っていらっしゃるときは、主観的にそうしていないと思っていることもあり得ますので、「あえて」という言葉を取っていただきたいと思っています。

 それから、田中委員がおっしゃった 3 番目については、 2 ページに追加していただいた部分の、指針の第 2 、「障害者に対する差別を防止する観点を踏まえ」という基本的な考え方の中で、はっきりここは、「全ての事業主は障害者を平等な被雇用者として受け入れるために、障害特性に関する正しい知識の取得や理解を深めることが求められる」というぐらいの表現にしておくべきだと思います。「重要である」では、重要であるからやりました、というのでは済まない。「求められる」ぐらいの表現をしていただきたいと思います。はっきり義務付けるというと非常に厳しい表現になるのでしょうけれども、求められているということぐらいは明確にしておくべき時代にきていると私は考えています。

○山川座長

2 点目と、 3 点目についても、具体的な文章案についての御意見を伺いました。ほかに何かございますでしょうか。伊藤委員。

○伊藤委員

 まず、基本的な考え方については、具体的な修文案が出てまいりました。連合の意見も書いていただいていますが、今回のたたき台では、事業主が理解を深めることが重要だと書いてありますが、私どもとしては、今日も議論があったように、同じ社員として仲間なのだということの理解が非常に重要だと思っています。そういう意味でも、職場に働く労働者全体で理解をしていくことが必要だと思っています。そういった趣旨が入るような形にする必要があると思っています。

 それから、間接差別かどうかについては、これも私がヒアリングで申し上げた部分ですが、募集条件で、活字や口頭による試験に対応できる方とか、自力通勤ができるとか、そういう条件を課すことが意図的かどうかは分からない、難しいところですが、そういう条件で事実上絞ってしまう、門前払いしてしまうことがあってはならないと思います。これを間接差別という類型で書くかどうかは今後の検討課題ということもありますので、そういう類型を作るかどうかは別としても、何らかの形で記述する必要があると思います。資料 1 1 ページの「差別の範囲」の所に、分科会意見として、「直接差別について禁止すべきである。また、車椅子・補助犬その他の支援器具等の利用、介助者の付添い等の社会的不利を補う手段の利用等を理由とする不当な不利益取扱いについても直接差別に含まれるとすることが適当」とされて、直接差別を広く認識する考え方が既に分科会で示されています。こういったことも踏まえながら、いわゆる間接差別を受け止める形で指針に入れる必要があると思います。

 もう 1 点は、今までの議論に即して申し上げます。募集・採用で、業務遂行上不可欠なものというのは採用の自由と関連するところだということは理解します。一方で、 5 ページの 2 つ目の○の少し下には、「その条件が業務遂行上不可欠なものと認められる場合は、障害者であることを理由とする差別に該当しない」と記述されています。ただこう書かれてしまうと、業務遂行上不可欠であるとするだけで門前払いしてしまうことができてしまいます。資料 1 2 ページの一番上の分科会意見書では、「合理的配慮が提供された上で労働能力等を適正に判断した場合は差別に当たらない」としています。やはり、合理的配慮を前提に、業務遂行上不可欠という判断がされるべきだと思いますので、単に「業務遂行上不可欠と認められる」という判断ではないと思っています。また、例えば新入社員は社内での教育訓練などをした上で業務遂行ができるようになっていくわけですし、単純に、業務遂行上不可欠ということだけを理由とするような書き方は広くなり過ぎると考えます。長くなりましたが、以上です。

○山川座長

 伊藤委員の御意見では、 1 つは、これまでの論点で出てきました、「理由として」といういわば差別意図の意味をどのように考えるかという点の御指摘がありました。もう 1 つは、やや広がる論点で、募集・採用に関する業務上不可欠なものについて、合理的配慮を踏まえるという理解ではないかということ。その 2 点の御指摘だと思います。この点も含めて更に御意見を伺いたいと思います。

 

○栗原委員

 栗原です。委員の皆様方の言われることは重々よく分かるのですが、私は雇用する立場で言わせていただきますと、企業にも大会社から中小企業といろいろあるわけです。その中で、委員の言われることができる体力のある会社、できない会社というのは当然出てくるのです。その会社ができる範囲で合理的配慮ができるという内容でやっていただかないと。例えば今の募集に関して、大会社と中小企業では仕事の内容が違うと思うのです。ということは、ある程度大手の企業であれば仕事の内容というのは幅が決まっているというか、その中での仕事をやればいい。ところが、中小であれば、ある程度はいろいろなことをやらなければいけないのですね。事務だからといって机に座っているばかりではない。やはり、いろいろなことをやらなければいけない。そうしますと、募集の際にも、先ほど運転免許証という話もありましたが、事務だから座っていて仕事だけやればいいのかというと、そうでない場合もあるので、一概にそれを、配慮されないとか差別と言われると非常にきついものがあると私は思います。やはり、募集に際して、応募された方が、こういうことをやってほしいという合理的配慮を求めるのも結構なのですが、受けるほうとして、その企業の体力によってそれが当然違ってくるということも御理解いただきたいと思います。

○富永委員

 富永です。先ほど伊藤委員から御発言があった 2 点のうちの 1 点目の、間接差別についてです。最初に思ったのは、直接差別、間接差別といろいろと争われていますが、直接差別の射程と言うか、禁止できる範囲は、それほど狭いものではないということです。特に、「間接差別に当たってしまえば直接差別としては争えない」わけではないと思います。労働組合法などでも労働組合の差別、不利益取扱いなどがありますが、例えば労働組合が 2 つあって、両方に同じ条件で労働協約を結ぼうとした場合、同じ条件で合意を求めようとしても、これが差別になり得ることがある。例えば、労働組合の一方は生産性の向上に協力しますという方針だけれども、もう一方は絶対にしないという体制だったというときに、そこで、一方の組合が応じないことを見越して、「「生産性向上に協力する」という条件でなら労働協約を結びましょう」と言ったら、これは差別になる、差別意思が推認できるという話になります。ですから、直接差別の射程はそこまで狭くないと私は思っています。「同じ取扱いをするなら全然直接差別にはなりえない、間接差別でなければ争えない」というわけではないと思います。

 それから、指針の中身について、先ほど問題になった、資料 2 5 ページの上から 3 つ目の○、「募集に当たって業務遂行上不可欠でないにもかかわらず、あえて条件を付していると判断されるときは障害を理由とする差別に当たる」という所です。これは少なくともこういう場合は差別に当たるという意味だと私は思っています。仮に「あえて」を外してしまうと、「業務遂行上不可欠でない」と、後から判断されれば、もう、即、差別になってしまうことになりかねない。そうとは言えない、そこは判断の余地がある、と私は思っています。「あえて」という言葉が強過ぎるか弱過ぎるかは議論すべきかもしれませんが、「あえて」を外してしまうと、不可欠でなければ、即、全て差別になってしまうと読まれかねない。先ほども御発言がありましたが、中小企業などで事務員を雇うことになっていても、事務員の間でも仕事がいろいろと違っていることがあるというのはよくあるのではないかと思います。「運転手については免許は必須だ、事務職だったら免許は全く必須でない」かというと、そうではないのではないかと思います。中小企業で 1 人事務員を雇っているが、現在雇っている事務員は運転ができないというときに、運転ができる事務員を雇いたいという場合、これも駄目かというと、そこまで言えるのか?と、私はまだ判断がつきかねています。

○山川座長

 今のお話は、差別意図と言いますか、理由として要件の認定がどのように行われるかというお話だと理解しました。先ほどの栗原委員の御意見は、合理的配慮を考えるとしても、企業の体力やその中での職務の特性を理解していただきたいという御意見だということでよろしいでしょうか。北野委員、どうぞ。

○北野委員

 栗原委員のおっしゃっていることはよく分かりますが、合理的配慮の過剰な負担の問題で、アメリカでもかなり細かくて、大きな所と小さな所、小さな所でも、代替の利かない場合だとかどうであるとか、いろいろな条件が課されていますので、ここはむしろ合理的配慮の過剰な負担のところで議論すべきであって、差別的な意図、意図のあるなしにかかわらずという、これはやめてほしい。おっしゃったように、主観的な意図というのは、企業の方は偏見がある方とない方ではかなり差が出てまいりますので、私はやはり、「あえて」という言葉は変えるべき表現であって、「あえて」という言葉を差別の意図ということで考えていらっしゃるのであれば違う表現にしていただきたいと思います。

○山川座長

 今の御発言は、差別意図を前提にした上で文章を更に検討していただきたいと、そういう御意見でしょうか。

○北野委員

 更に詰めていただきたいと思います。

○小出委員

 育成会の小出です。まず、 1 の、差別解消法でも基本的考え方の議論があるということですが、言われたように、雇用という分野で、この研究会としては、ある一定の方向にまとめていただきたい。それを参考にしていただきたいということです。

 それから、差別の範囲、間接差別。これは言い出せばいろいろあります。障害特性によって条件が。障害のあるなしにかかわらず、例えばパソコンが使えることということ。使える、使えないとあります。例えば情報共有するのに電子メールでやれということになりますと、その器具を使える、使えないと、使えない人はこれを担当できないというところまでいってしまうので、非常に曖昧です。一番は、障害者ということがありますので、北野委員が言われたように、偏見がある、無意識の偏見ということがあります。その辺のところがありますので、本当に代表的なものを列挙するような形にするのも 1 つの手ではないかと思っています。

○山川座長

 先ほどの田中委員の、最初の、差別解消法の基本方針との関係も含めて御意見を頂きました。

○塩野委員

 塩野です。皆さん御意見があるところですが、雇用する企業側の立場からすると、いろいろと判断していくに当たって、そもそも「業務遂行上不可欠なもの」というのは、どういったイメージで考えればよいかを確認させていただきたいと思います。それから、「業務遂行上不可欠なもの」かどうかは、基本的に事業主が判断していいのか。「業務遂行上不可欠なもの」がどういうものかにもよりますが、「あえて」という言葉がいいかどうかは別にしても、意図的ではないということを表現していただかないと事業主としては判断できませんので、表現を工夫するような形で何か入れていただきたいと思います。

○山川座長

 「あえて」という文言について、表現はともかく、差別意図が必要であるという趣旨を明確にしてほしいという、そのように理解できますでしょうか。ほかに御意見を伺います。

○市川委員

JDD の市川です。先ほどから出ています、「その他記載すべき事項」の所で、障害者に対する差別防止という観点で、事業主が正しい知識の取得や理解を深めるというのはもちろんですが、やはり、もう少し採用後のことを考えれば、もう 1 歩踏み込んで、事業主が雇用者に対しても知識の取得や啓発に努めるぐらいまで踏み込んでいただかないと、その後のことを考えるとうまくいかないように思います。そのやり方については、できること、できないことがあるかもしれませんが、書きぶりとしては、もう少しそこも書いていただいたほうがよろしいと思います。

 それから、もう 1 点は、先ほどから出ていますが、結局、差別などについては主観が入ってくるではないかということで、この際、田中委員から「救済」という言葉が出ていましたが、これをどういう格好にするかは別として、少なくともきちんと説明できる機会を作っていただければ有り難いと思います。その点を御配慮いただきたいと思います。

○山川座長

 基本的な考え方の、事業主の理解という点について、伊藤委員からも同じような御意見があったと思いますが、事業主以外も含めた理解や啓発が重要ではないかということ。それから、第 2 は、救済との関係の説明という点の御指摘でした。

 基本的な考え方については、いわば理念を示すということで、合理的配慮の問題なのか、差別禁止の問題なのかという点も含めて、更に検討されるということだと思います。先ほどの事務局の説明はそのような趣旨だったのでしょうか。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。先ほど、塩野委員から業務上不可欠というのはどういうものをイメージしているのかという御指摘を頂いたと認識しています。この研究会でも、どのように考えるかというのは御議論いただきたいと思っていますが、我々事務方としては、抽象的な表現になって恐縮ですが、アメリカなどでも日本語訳では「本質的機能」などとなっていますが、求人においてなされている、その職種に必要となる能力と言いますか、機能と言いますか、作業、そういったものに関わるものについての条件というのは認められるのではないか。アメリカなどでは「周辺的業務」というような言い方もしているようで、業務において必ずしも必須ではないと考えられるようなもの、そういう意味でも「周辺的」という言い方をされていると思いますが、そういったものではない、というぐらいのイメージでこの用語を使っていました。どのように考えていくのかについては御議論を深めていただきたいと思っています。なお、業務上不可欠であるかどうかは、その職務でどういう仕事をしてもらうかを考えていただくのは一義的には事業主だと思っていますので、事業主がどのように考えて設定しているのかということが重要になってくるのではないかと考えています。

○山川座長

 その前の、基本的な考え方については、どこに置くかも含めて、文章の問題でもありますので、事務局としても更に検討していただくことでよろしいですか。

○障害者雇用対策課長補佐

 はい。先ほど来の基本的考え方について、現在の事務局の案としては、おっしゃるとおり、事業主が理解を深めることが重要というところに記載としてはとどまっていますが、職場の同僚における理解も重要ではないかということ、また、同じ労働者として扱う、扱うという言葉が適切かどうか分かりませんが、同じ労働者、仲間として遇していく、対していくことが重要であるなど、そういったことについて、どこまでどのように書いていくべきか、どの指針で書くべきかについては、この研究会での御議論をどのようにまとめていくべきかの考え方、案なりを示させていただきたいと考えています。

○山川座長

 事務局からは、説明と言いますか、問い掛けと言ったほうがいいかもしれませんが、業務上不可欠というものをどのように考えるか、本質的な部分云々の話がありました。アメリカでは、これは合理的配慮とも関連して位置付けが検討されているという記憶もありますが、この点、業務上不可欠という考え方ないしは言葉についても御意見を頂きたいと思います。武石委員。

○武石委員

 何か明確な答えがあるということではありませんが、アメリカの例がありますが、アメリカとではかなり雇用慣行が違っていることを前提に考えなくてはいけないと思います。職種にもよりますが、比較的典型的な仕事だったり、ブルーカラー的な仕事であれば、アメリカの場合は職務の内容が比較的明確であるのに対して、日本の場合は割と人を見ながら仕事を任せていくという部分があるような気がします。業務遂行上不可欠なものと言った場合に、そこをギリギリ、そこを定義付けていくと日本の現状には合わないという実態もある。具体的な回答ではないのですが、そういう印象があります。

 ついでに、先ほどの間接差別の議論について申し上げたいのですが、直接差別と合理的配慮を義務付けることが今回の差別禁止の考え方の底流にあります。間接差別というのが合理的配慮の提供によってかなり対応できる部分があるのではないかと考えています。つまり、直接差別と合理的配慮の提供で、さらに、間接差別というものを考えなくてはいけないようなことがあるのかどうかということについては、よく分かりません。あえて間接差別ということを言わなくても、今の考え方の整理でおおよそいいのではないかと考えています。

○山川座長

 第 2 点については、合理的配慮の問題として間接差別についてもかなり対応できるのではないかという御意見でした。北野委員。

○北野委員

 今の必須業務と付随的な業務の件です。栗原委員もおっしゃったように、必須業務というのは基本的にエッセンシャルな業務が求められているのですが、付随的な業務を他の方に代替していただくことが可能な業務の場合は、必須業務のみが基本的に位置付けられますが、付随的な業務を他の方が替われないぐらい小さな企業で、付随的な業務もどなたかがしなければいけない、そのときに代替される方がいらっしゃらないというぐらいの規模になりますと、これは当然付随的業務も一定は関係してくることになります。ですから、必須業務だけに決まってくるのは、大きな企業の場合はそれ以外のところで回せる。しかし一方で、おっしゃるとおり、規模によって、そこは必須業務と付随的業務の関係はかなり整理する必要が今後は合理的配慮において出てくるのではないかと理解しています。

○阿部 ( ) 委員

 日身連の阿部です。田中委員の問掛けについて、少しお話させていただきたいと思います。今、障害者政策委員会で基本方針を作っているということで、そもそも基本方針は今年度中に作るというのが、来年度上半期になったということもありますし、その後、各省庁では対応指針を作っていきます。

 そういう意味からは、こちらでの検討はある意味では進んでいるということですので、お互いの情報を相互に理解するとともに、こちらの指針づくりは、他省庁のこれからの対応方針づくりにも影響するという視点で進めていく必要があるのかなと、お話を伺って思いました。

 それから、田中委員のご指摘のとおり、障害者理解だけではなく、 1 人の社員として受け入れていくという意味が指針の中にあることは、すごくよいことだと思います。業務遂行上のことはなかなか難しい問題があるということですが、先ほど田中委員がご指摘したように、それが業務遂行上、必要であることの確認に関して事業主に説明を求めることができるかということは、求めることはできるということですよね。その辺についてちょっと確認のために発言いたしました。

○山川座長

 その点を田中委員からもう一度御説明をお願いします。

○田中委員

 業務遂行上、不可欠だということを、事業主側で決められるのだと思います。そのときに障害者は必ずしも不可欠だとは思っていないという場合にどうするかということで救済の話をちょっと申し上げて、もし障害者が理由の説明を求めた場合には、事業者としても、これはこういう理由で不可欠なのだという説明の機会があったほうが事業者にとってもいいし、相互理解に資するのかなという意味で説明を求めることができるとしたほうがいいかなと思いました。

 今までの意見をお聞きして、ついでに申し上げるのですが、栗原委員の御意見はもっともかと思います。結局不可欠性というのは、北野先生もおっしゃっていましたが、事業規模とか、その企業を取り巻く周辺の諸般の事情を考えて、一義的に決まるものではないというのは確かだと思います。以上です。

○栗原委員

 栗原です。今、田中委員が言われたので、ちょっとトーンが落ちてしまうかも分かりませんが、先ほどのお話で法定雇用率が現在 2 %です。今後、上がることはあっても、下がることは当然ないわけです。ということは、今は 50 人に 1 人は雇わなければいけない。それがハードルがもっと下がってくるわけです。 40 人、 30 人になるかも分からない。そうすると、ある程度の企業に全部該当してしまう事柄なのです。ですから、余り細かいことでこれを規定されてしまうと、そういう企業について、どうすればいいのですかという話になるのです。

 今、田中委員が言われて、先ほど私はそこまで言いませんでしたが、例えば総務だったら、役所だのどこに行くというので、車を使うわけです。経理だったら銀行へ行くわけです。それをほかの人に頼むわけにいかないわけです。ですから、その業種によっては募集内容が限定されることはあり得るということをお願いしたいということです。

○山川座長

 これまでのところ、指針の構成、基本的な考え方については御意見を頂きましたが、意見の対立という感じではないかなと。どう書くかについて、更なる検討をお願いしたいというふうに理解できるかと思います。

 間接差別についても、間接差別そのものを盛り込むという御意見では必ずしもない。現実に現行法の下での理由としてというのをどのように考えるかということでは、理解として共通しているのではないかと座長としては把握しております。

 業務上の不可欠さについては、企業規模等も含めて会社によって状況が異なるという点も御理解は基本的に共有されているかと思いますが、その上で 1 つはどのように書いていくかという問題で、これまで出てきたお話ですと、余り具体的な例を事細かに書くよりも、むしろ田中委員あるいは市川委員、阿部一彦委員からも出たかと思いますが、説明が強調されて、この 2 つは私の理解では、かなりリンクしてくる。個別的にいちいち書くことが難しいということと、個々的な点は説明が重要になるということかなと私なりには整理したいと思います。

 あと、業務上の不可欠をどのように考えるか。更に具体的に理由としてということをどのように考えるかについては、更なる御議論があり得るかという感じを持っております。そのほか、まだ御議論をいただいていない点もあろうかと思います。北野委員、どうぞ。

○北野委員

6 ページも、もうやっているのですかね。

○山川座長

 ええ、全体で。

○北野委員

6 ページは私は気になりまして。実は私は政策委員会の委員もしておりまして、いろいろな議論があるのですが、 6 ページの下から 2 つ目のポツで「合理的配慮を提供し、労働能力等を適正に評価した結果として異なる取扱いを行うこと」。最後の「合理的配慮の提供の結果として、障害のない者と異なる取扱いを行うもの」という表現は、差別ではなくて区別であると言われるかもしれませんが、合理的配慮をそもそも権利条約で求めているのは、平等な取扱いのために合理的配慮を提供するということが原則なのです。何のために合理的配慮をするかというと、基本的に平等な取扱いをすることを求めているためにやりますので、表現として合理的配慮を提供し、労働能力等を適切に評価した結果として異なる取扱いを行う場合、「平等な取扱いが困難な場合においては」という表現にしていただかないと、やってもいいと捉えてもらったら困るのです。一般的には平等な取扱いをすることは原則で当たり前なのです。ですから、当然平等な取扱いが困難な場合においては、異なる取扱いをすることもやむを得ないのだという理解をしていただかないと。そこは私は譲れない、今回の障害者権利条約の中で非常に大事なところだと理解しております。

○山川座長

 これは文章表現の趣旨に関わることかと思いますので、事務局で趣旨について御説明いただけますか。

○障害者雇用対策課長補佐

 表現そのものというよりも考え方として御説明させていただければと思います。今、御指摘いただきました 2 つ目の合理的な配慮を提供して労働能力を適正に評価した結果として異なる取扱いを行うことについては、「異なる取扱い」という表現がいいかどうかは別にしても、例えば賃金などいわゆる労働条件について差が出てくる、具体的には、ある人は 30 万円の賃金をもらっているが、ある人は 25 万円の賃金というのは、通常障害がない方でも当然あることですが、その方の業績の評価なりに基づいて出てくるものかと考えています。

 そういう意味でここで申し上げたかったのは、要するに障害者と障害のない方が必ず同じ処遇になるということではなくて、障害のない方でも労働能力を適正に評価した結果に付随して出てくる結果の差は、それを差別というわけにはいかないのではないかということを意図したものです。それを書くに当たって、この表現がいいのかどうかについては、御議論が出るのではないかと思いますが、ここは基本的には分科会意見書の表現を踏襲したと思っています。

 その下のほうですが、「合理的配慮の提供の結果として障害のない者と異なる取扱いを行うこと」というのは、表現がもしかしたら誤解を招いてしまったかもしれませんが、ここで意図していたのは、合理的な配慮のところでもう一回御議論いただきたいと思っていますが、ヒアリング等においても、例えば研修でも同じ期間、同じ時間でやるのが本当にいいのかどうか。障害特性によっては、時間も少し多く取ってあげるということも合理的配慮ではないか、という御議論があったかと思います。今の例で申し上げますと、研修期間が、例えば障害がない方は 5 日で終わるところを、障害がある方は理解のスピードに合わせて、 5 日を 7 日にするということがあったときに、結果だけを見れば研修期間が 5 日と 7 日というのは異なるわけです。それを差別と言われてしまっては、事業主としては合理的配慮の提供のしようがなくなってくるということですので、そういったことは差別ではないということを入念的に書いてはどうかという意味です。表現として適切かどうかというのは、別途御議論いただければと思っております。

○伊藤委員

 伊藤です。 6 ページの労働能力の適正な評価については、現状でも疑問があるところがあります。例えば、最低賃金の減額特例では、労働基準監督署の許可が必要になるわけですが、これが実際にどのように運用されていて、一般の事業所とか A 型の事業所、特例子会社でそれぞれどのような違いがあるのか、何パーセント減額されているのか、事業所の類型ごとに減額されている実態にあるのか、対象者は何人いるのかといった実状も明らかになっていません。適正に評価した結果ということを定性的に書くのは分かるのですが、それが実際にきちんと運用できる保証があるのかということが重要になってくると思います。そういう意味でも、最低賃金に関する資料の提示をこの場でもいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○山川座長

 今の伊藤委員の御発言は、資料提供の要望と、それを踏まえて更に検討をというご趣旨かと思います。特例について、事務局はいかがですか。

○障害者雇用対策課長補佐

 最低賃金の減額特例というのは、法制度に基づいておりまして、障害者雇用促進法の差別禁止の話とは、やや世界が違う話ではないかと考えております。おっしゃるとおり、最低賃金減額制度というものがあって、その制度が適正に行われているかどうかという視点が重要であるというのは、そのとおりかと思いますが、それを差別かどうかという話とリンクさせるのも少し異なるのではないかとは思います。そこは研究会として、本当にそれを御議論するかどうかについては、また御判断いただければと思います。

○調査官

 障害者雇用対策課調査官の松永です。今の説明に補足ですが、最低賃金の減額特例というのは行政の取扱いです。一方、 6 ページで挙げているのは、あくまでも企業の中における従業員の評価の仕方の問題で、ここで異なる取扱いというのは、企業の中の健常者の従業員と、障害者の従業員間での異なる取扱いをどうするかというところです。先ほど境からも御説明しましたが、合理的配慮を提示したとしても、能力の評価で健常者と障害者の間で、一定の差は出てくるのも致し方ない部分があると思います。それによって出てきた差は差別ではないのではないかということで、ここで書いているものになります。このようにここで言っているのは、あくまでも企業の中の評価の仕方の問題ですので、行政の取扱いとしての減額特例と、それとは異質なものなのかと思っているところです。

○伊藤委員

 伊藤です。私の理解では、事業所がその業務の遂行に直接支障を与えているかどうかを判断して、行政に対して許可申請を出すのだと思っています。それを許可するかどうかは行政の判断であり、この人は業務遂行に著しい支障を与えているという事業所の主張が正しいのかどうか、適正なのかどうかをどのように判断しているのか。そもそもそういう判断基準もよく分からないので、そういうところを 1 つの例として最低賃金でどのように取り扱われているかということを表していただきたいということです。

○山川座長

 関連付けということで藤枝課長からお願いします。

 

○障害者雇用対策課長

 中座して申し訳ありませんでした。課長の藤枝です。先ほど伊藤委員が言われた最賃特例の適用の基準とか、そういったもので資料としてお出しできるものがあれば、労働基準局とも相談の上、提供させていただきます。先ほど調査官の松永より申し上げましたように、そこはあくまで、最賃の特例制度の考え方、最低賃金制度の範囲でこの問題をどう考えるかという話でしたので、ここで御議論いただきたいのは、企業の評価の問題として、それを差別として取り扱うかどうかの観点での御意見を頂ければということです。

○山川座長

 私の理解でも、伊藤委員のおっしゃられたのは、最低賃金そのものを問題にするというよりも適正な評価がなされるかどうかということの問題提起として例を挙げられたのかなと理解しております。それは先ほどの北野委員の御発言とも問題関心としては共通しているのではないかと理解します。

○富永委員

 富永です。 6 ページの下から 2 つ目の〇で「合理的な配慮を提供し、労働能力を適正に評価した結果として異なる取扱いを行うこと」というのが先ほど問題になっていたと思いますが、これは合理的な配慮を提供して、労働能力を適正に評価した後で、「誰と異なる取扱いをするか」ということについて、認識が違っているのではないかと、私は拝聴していて思いました。

 労働能力を適正に評価して、合理的な配慮を受けていない人と同じ労働能力を備えるに至った場合、そういう同じ労働能力の人と同じ取扱いをするのは当たり前のことです。これに対し、合理的な配慮を提供して、労働能力を適正に評価した。それでも、合理的な配慮を受けていない人と比べて少し落ちていたか、または上がっていたか、どちらでもいいのですが、とにかく違っていた時に、その結果として、その違いに応じた取扱いをすることは全く問題ではないと私は思います。

 「誰と比較するか」という話ですが、合理的な配慮を受けていない人がいる。その人がその能力に応じた取扱いをされるということを言っているのであって、労働能力を適正に評価して、労働能力が違う人と異なる取扱いを行うことは大丈夫だということを言っているのだと思うのですが、そうではないのでしょうか。

 その下の〇も同じように、解釈のしようによっては違う2つの解釈で読めるということなのかなと思います。合理的な評価をして、労働能力を適正に評価した。例えば、一般の非障害者は 100 である、合理的な配慮を受けていない人も 100 であると言ったときに、それを理由として障害者と異なる扱いを行うことは駄目です。しかし、合理的な配慮を受ける場合に、合理的な配慮の結果として、合理的な配慮の提供自体が違う取扱いなので、その意味で違う取扱いをするというのは当然なのではないか、それがこの〇の意味かと思いました。

 あと労働能力の適正評価がなされているかどうかというのは、査定権のことかと思います。もちろん使用者の裁量は広いのですが、査定権の濫用に当たるときは審査が入りうるのではないでしょうか。例えば労働組合でも、労働組合員の評価を見ると、非組合員と同じ能力のはずなのに非常に低い評価ばかりだというときは差別と推認できるということになると思いますが、そういうことかなと思います。

○山川座長

 今の御発言の特に前半は、合理的配慮を提供した上で同等と評価される場合には同等と扱うべきであるということが前提になっている文章であるという御理解ですね。その点も含めて、更に御意見はありますか。北野委員、お願いします。

○北野委員

4 ページに戻ってしまいますが、精神で一番問題になっているのは、職場復帰の問題です。これは合理的配慮がなされることによって職場復帰が可能な場合は、合理的配慮の提供として整理されると説明してもらっていますので、それでいいのかとも思うのですが、特に精神とか神経的な障害を理由として職場復帰が拒まれるケースは非常に多くあります。その場合に障害を持った、あるいは障害を持っている雇用者に対する職場復帰に必要な合理的配慮をすることというのは義務付けられていると読んでよろしいのでしょうか。職場復帰に関しては、かなりいろいろな問題を起こしています。職場復帰に関しては、もともと雇われている方が復帰する場合には、合理的配慮を実施することは義務付けられていることを明確にしていただくことをお願いしたいと思います。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。合理的配慮の提供義務は、障害者に対するものとしてかかっておりますので、今の職場復帰というのは中途障害の場合が典型例として想定されるのではないかと思います。中途障害であっても、その方が障害者であることについては変わりがありませんので、その方についての合理的配慮の提供の義務はかかってまいります。職場復帰において、どのような合理的配慮がなされるべきなのかについて、合理的配慮の議論の際に、御議論いただければという趣旨で書かせていただいたと御理解いただければと思います。

○山川座長

 よろしいですか。

○北野委員

 格段の強調をしていただきたいという意味です。

○山川座長

 この項目に関しては、これまで余り御議論がなかったかと思いますが、この点についてもし何かあればお願いします。伊藤委員。

○伊藤委員

 項目例ということですが、これは何かを参考にして作られているのですか。男女雇用機会均等法の指針を参考にしたのかとも思ったのですが、賃金という項目があったでしょうか。これは何かを参考にされたのか、考え方を教えていただきたいと思います。

○山川座長

 境さん、お願いします。

○障害者雇用対策課長補佐

 御指摘のとおり、男女雇用機会均等指針を参考にはしております。ただ、男女に関しては、賃金について労働基準法の世界で禁止されていますので、男女雇用機会均等指針において、賃金の項目がないものと理解しております。

○伊藤委員

 参考にしているものがあるということで、まずそれを前提にしますが、ヒアリングでも意見があった労働時間や、職場復帰、再雇用といった点をどのように取り扱うかについてですが、男女雇用機会均等法の指針では該当する所がないのか、あるいはどこかに含まれているということなのか。素朴に考えて、労働時間というのは、配置や募集・採用に含めることが妥当なのかという感じがしました。

 配置というのは、業務や職務の内容のことを指していて、時間という量的な概念にはなじまないような気がしました。また、募集・採用というのは入口の話で、職場復帰、再雇用は入口かもしれませんが、ちょっと性格が違うのではないかと思いました。何かを参考にして、それに合わせたほうがいいというのも分かるのですが、これをあえて別の項目に立てるということも排除されないのではないか。むしろそのほうが分かりやすいという意見があれば、それでもいいのではないかというのが私の意見です。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。今、御指摘いただたいた点ですが、再雇用については、いわゆる採用そのものであるということで、これは明確に読めるということになっていますし、職場復帰、労働時間は言うなれば業務配分という考え方が配置にはあると、均等法の世界にもあると聞いております。労働時間というのが何を意味しているかというのは、全脊連の方のヒアリングの際に必ずしも明確ではなかったのですが、例えば我々が伺っているところでは、シフトの入れ方で、障害者についてはあまりシフトを入れてあげないとか、そういった意味で労働時間に差が出てくるという問題もあると聞いております。それはまさしく配置、業務量の配分の問題ですので、配分で読めるのかなとは思っています。そのように無理やり読むのではなくて、あえて分けるということももちろん選択肢としてはあるかと思いますが、そこは御議論いただければと考えています。

○山川座長

 この点について、ほかに御意見がありましたら。市川委員。

○市川委員

 私の理解ですが、配置というのは、どの職場にという意味ですよね。私は発達障害のほうで来ているのですが、発達障害の方の場合、職場が変わっただけで、やる気が起きる人から、全然なくなってしまう人もいるので、配置の問題というのは何らかの考慮が必要ではないかと思っていますので、その点も是非考慮していただきたいと思っています。

○山川座長

 配置については項目として入れるということは御異論がないと思いますが、その際の中身について、更に考慮をいただきたいということかと思います。労働時間、職場復帰等については、ほかに御意見等ありますか。この点は指針というものをどのように最終的に書くか、あるいは指針そのものの問題、解釈の問題といろいろありますし、指針の分かりやすさの点とも関わりがあろうかと思います。

○障害者雇用対策課長

 課長の藤枝です。補足で、 4 ページに第 1 4 回までの意見を列記いたしましたが、その中で、冒頭御説明したように、日商様から男女雇用機会均等法の内容に沿った項目とすることが事業主にとって分かりやすいのではないかという意見もありましたので、当然労働時間とか、再雇用の問題が指針の外に出るわけではなくて、どこの項目で読むかという問題なので、均等法並びで、こういう整理でいいのかなという形で事務局案としては提示させていただいたということです。

○山川座長

 ほかに御意見はありませんか。武石委員。

○武石委員

 項目はすごく細かいのですが、昇進と昇格という言葉は均等法は入っていなかったでしようか。私は均等法はうろ覚えなのですが。それから配置と、そのあとの配置転換というのもあると思いますので、配置転換と降格があるので、昇格がないのは違和感があるので、その辺りは整合性を全体に取ったほうがいいかなと思います。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。これは均等法指針の項目に沿っております。均等指針において、昇進には昇格を含むと明示されておりますので、概念上は当然入っているということです。

○山川座長

 よろしいでしょうか。これは、均等指針に沿ってということがヒアリングで出されて、しかし賃金は均等法の問題ではないということで加えられたという、ヒアリングでの経緯に基づくということで、事務局としてはそれほど強固にこだわるという趣旨ではないという理解でよろしいでしょうかね。

 とはいえ、あまり法体系的にバラバラという印象を与えるのもいかがかという感じもしますが、この指針の性格、特に障害者雇用という性格に合わせて御検討いただくことはやぶさかではないということかと思います。特にほかになければ、今日の御意見を踏まえて、更に検討いただくということでいかがかと思います。

○本郷委員

 本郷です。募集及び採用についてですが、 5 ページの囲込みの論点で、 1 つ目の○について確認させてください。これは一般求人に障害者が応募してきた場合を想定した内容ということでよろしいのでしょうか。もし、そうであれば、それを明確にしていただきたいと思います。

〇障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。ここで想定していましたのは、一般求人で、例えば正社員の求人があって、障害者が応募したときに「うちは障害者は正社員では雇わないんだよね」ということで、応募を拒否するとか、そういうのは当然障害者を排除しているということと理解してこの例を挙げて、その上で差別に当たる事例としてこういう考え方にしてはどうかと書いたものです。 

○山川座長

 本郷委員の御質問は、 2 番目の○について、一般の募集であるという前提でよろしいかということですね。

○本郷委員

 一般の募集が前提であるということで、もしよければ、そこを明記していただければと思っています。

○山川座長

 その点はよろしいでしょうか。

○本郷委員

 結構です。

○山川座長

 今、御説明のとおりということでしょうか。

○障害者雇用対策課長補佐

 はい。

○山川座長

 本郷委員、よろしいでしょうか。

○本郷委員

 はい。

○塩野委員

 塩野です。 6 ページの「差別に当たらない事項」について確認させてください。「積極的差別是正措置」とあって、「障害者を有利に取り扱うこと」は差別に当たらないとあるのですが、例えば、複数人の障害者がいたときに、特定の障害者だけを有利に扱うということもあるかと思います。それによって障害者の間では多少有利不利が発生してしまいますが、これは認められると考えてよろしいでしょうか。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。今回の障害者雇用促進法は、障害者と障害ではない方との均等な取扱いを求めるということで、均等の取扱いを求めると言ったときには、例えば障害者を有利にすることというのは、障害のない方から見れば差別的行為であるということに本来はなりますが、今回、分科会で御議論いただいた際には、障害者を一般の方に比べて有利に取扱うこと自体は差別と位置付けないと、明確に御判断いただきましたので、障害者を有利に取り扱うこと自体は否定されないというように整理したところです。その考え方からしますと、一般の方と比べて障害者が不利に取り扱われていない限りは、障害者雇用促進法上の差別としては取り扱われないと考えています。

○山川座長

 そうしますと、障害者間でというか、一定の類型の障害者を有利に扱うということも、積極的差別是正措置と言えるかどうかはともかくとして、差別には当たらない。塩野委員の御質問はそういうことの確認というか、お尋ねかと思いますが、そういう趣旨でよろしいですか。

○塩野委員

 はい。差別に当たらないということですね。

○市川委員

1 つ前の 5 ページの募集・採用の上から 2 番目で、多分簡単な暗算や読み書き、音声言語でコミュニケーションというのは、私どもから出したのかもしれませんが、これは何を意味しているかというと、暗算ができなくても計算機がやればいいだろうとか、音声のコミュニケーションについても音声言語以外のものでできるデバイスが出てきていますから、そういうものを使ってもらえばできるだろうという意味で出したので、これをもって、もし雇わないということが正当化されるとなると、我々が申し上げたことと若干ずれてきているのかと思うので、そこは是非御配慮いただきたいと思います。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。おっしゃられたとおり、これは合理的配慮の提供の問題になるのかと思いますが、例えば本当に暗算でなければいけないのか、例えば暗算ではなくて計算機を使えばとか、まさしくそういったときに計算機の使用を認めることというのも、合理的配慮の概念に入ってくるのではないかと思っておりますので、その辺の点も含めて、合理的配慮の提供の問題として御議論いただければと思います。これによってそういったことを一切排除するとか、そういったことを意図としたものではありません。

○市川委員

 このままの文章が出ますと、私は大分非難されると思いますので、よろしくお願いします。

〇障害者雇用対策課長

 課長の藤枝です。資料の作りとしては、我々のほうから差別の指針と合理的配慮の指針は明確に分けて御議論くださいとお願いしておきながら、こう言うのはちょっと矛盾があって、非常に恐縮ですが、そうは言っても、合理的配慮の議論もしていただいた上で、また差別指針、合理配慮の指針はどうあるべきかというのは、もう一度全体を御議論いただかなければいけないかと思っています。よろしくお願いします。

○山川座長

 指針そのものとしては、かなり抽象的なものにならざるを得ないかと思いますが、ここでは説明の趣旨として挙げたということかと思います。また、今日のご議論では、ここでも合理的配慮を前提とするというか、踏まえるというような発想になるということかと理解します。ほかに御意見はありますか。伊藤委員どうぞ。

○伊藤委員

 質問です。もしかしたら皆さんの共通認識なのかもしれませんので、私だけに教えていただければいい話かもしれません。 3 ページの障害者雇用促進法と障害者基本法が同じ概念であるという説明があるのですが、法律の規定を読むと、それぞれに違う目的があって、定義規定も違っていますので、同じ概念であるという理由がよく分かりません。同じ概念であるということが何で担保されるのかを教えていただければと思います。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。何をもって担保というと、非常に難しいところがありますが、両者ともに心身の機能の障害があるということが 1 つのメルクマールになっていること。かつ、その心身の機能の障害によって長期的な何らかの支障を生じていることについては同じであるということで同様としております。

 今回御案内のとおり、内閣府のほうですが、差別解消法について御議論いただきました。差別解消法も今回の改正障害者雇用促進法も同じ障害者権利条約対応ということでやっております。差別解消法も障害者基本法の概念を引っ張ってきておりますが、内閣府と当省の間では、それは同じということで外に対しても、今までも御説明しております。

○山川座長

 よろしいですか。

○伊藤委員

 もう一つ質問です。ろうあ連盟から、障害者の範囲に障害者基本法の定義を入れ込むべきではないかという御意見があるようですが、障害者雇用促進法に基づくこの指針でカバーできるという理解でよろしいですか。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。厳密に申し上げると、ここの指針というのは障害者雇用促進法の指針なので、この障害者の定義は何条に書いてあるかという御質問であれば、障害者雇用促進法の第 2 条第 1 号であるという説明にはなりますが、その第 2 条第 1 号というのは障害者基本法と同じ概念であるということですので、結論においては基本法と同様ということです。

○本郷委員

 本郷です。 7 ページの上段の四角の中に「障害者求人の採用選考又は採用後において、合理的配慮を提供するため、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認すること」とあるのですが、合理的配慮を提供するだけに限られてしまうと支障が生じると思うので、できればここは合理的配慮の提供のためだけに限らないようにしていただきたいと思います。

○山川座長

7 ページの「合理的配慮を提供するため」という所に関しての御要望ですが、この点はいかがですか。私から伺うのも変ですが、例えばどういう理由がほかに考えられますか。

○本郷委員

 採用選考において適性や能力を見極めるときに、やはり障害の状況などを確認しておくことは重要であると思います。

○山川座長

 分かりました。つまり、障害のない方についても必要となるような情報という趣旨でしょうか。その点はいかがでしょうか。どう書くかという表現の問題にも関わりますが。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。ここはヒアリングで頂だいた御議論を踏まえて書きました。今、御指摘いただいたような場合について、障害の状況を確認することということ自体を書くかどうというのは御議論いただきたいと思いますが、我々としては合理的配慮の提供でなければ駄目だというメッセージでは必ずしもありません。ただ、我々としても気に掛かっておりますのは、障害ということは、ここでも書いていますが、プライバシーに関わる問題なので、何でもかんでも聞いていい問題でもないのかなと思っておりました。

 今、座長からもありましたが、障害のない方にとっても、当然把握しなければいけない事項やそういったことを把握するために障害の状態を聞かざるを得ないということは、もしかしたらあるのではないかと思っており、そのような障害のない方にも当然確認することを、障害がある方についても確認すること自体は問題ではないと考えております。そういったものをここでどのように表現するかについては、引き続き御議論させていただけばと考えています。

○山川座長

 よろしいでしようか。表現ぶりについては更なる検討の機会がもちろんあろうかと思います。

 おおむね論点については御発言を頂いていると思いますが、ほかに何かございますか。 1 つ、田中委員が最初におっしゃった「理由として」というところの関係で、中身についてはそれほど御理解に差がないかと思いますが、特に説明というものをどのように考えていくか。例えば救済との関係もありますので、それを指針にどこまで書き込むかという問題もあろうかと思います。例えば、田中委員が言われたことは、使用者の説明が不十分だったりすると、理由としてという要件につき差別意図の認定につながる可能性があるとか、そういうことだったと思います。最初に御発言のあったことなので、若干不正確かもしれません。その関係で業務上、不可欠なものと認められる場合には云々という 5 ページの 2 番目の○については、なお検討すべき点が残っているかもしれません。田中委員、私の整理が不十分だったかもしれませんが、もし何かありましたらお願いします。

○田中委員

 日盲連の田中です。座長の説明で十分かと思います。話が別になるかもしれませんが、一般に解雇する場合には、企業側は解雇理由書というのを出すわけです。そういったものを参考にして見ると、例えば障害者がこの条件設定は業務遂行上、不可欠ではないと考えていた場合に、それは不可欠だと考える企業側の十分な理由の説明書のようなものがあってよいのかということを、救済手続として指針に盛り込んでいく。余りにも差別的な意図が裏にあるような事例であれば、別途訴訟になっていく可能性もあるかもしれませんが、そういう意味で申し上げました。

○山川座長

 この点は先ほども申しましたが、指針の書き方あるいは指針のスタイルみたいなものにも関わろうかと思いますので、またこれも改めて検討していただくことになろうかと思います。ほかに何か御意見等はありますか。事務局から特にこの点について、今日御検討いただきたいということはありますか。

 では、あと 5 6 分ありますが、特段ございませんようでしたら、本日はこの辺りで終了といたしたいと思います。今日は様々な御意見を頂きましたので、こちらについては事務局で取りまとめて、あるいは検討したもので、また改めて御議論いただくことになろうかと思います。それでは、次回の日程等について、事務局からお願いします。

○障害者雇用対策課長補佐

 事務局です。次回は第 6 回となりますが、 12 26 ( ) 10 12 時の開催になっております。場所につきましては、決まり次第御連絡を差し上げます。以上です。

○山川座長

 それでは、これをもちまして本日の研究会は終了といたします。本日は、お忙しい中、どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 職業安定局が実施する検討会等> 改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会> 第5回改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会 議事録(2013年12月4日)

ページの先頭へ戻る