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2013年10月30日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 議事録

医薬食品局食品安全部監視安全課

○日時

平成25年10月30日(水)13:00~15:14


○場所

中央合同庁舎5号館(厚生労働省)5階 共用第7会議室


○議事

○山本部会長 それでは、定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会」を開催します。

本日は、賀来委員、塩崎委員、竹内委員、益子委員、西渕委員が所用のため御欠席です。また石川委員が少し遅れていらっしゃるようです。

また、本日は参考人として、全国漬物協同組合連合会の脇坂専務に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。

次に、委員の異動がありましたので、事務局より御紹介をお願いいたします。

事務局  それでは、新たに臨時委員となられた先生方を御紹介させていただきます。

国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部長でいらっしゃった小西委員が退職されたことから、同研究所の食品衛生管理部長の五十君先生が就任されております。

○五十君委員 五十君です。よろしくお願いします。

事務局  また、国立感染症研究所感染症情報センターの第二室長でいらっしゃった多田委員が退職されたことから、同室長の砂川委員が就任されております。

砂川委員  砂川です。どうぞよろしくお願いします。

事務局  あわせて、事務局の異動がございましたので、御紹介させていただきます。

7月に基準審査課長に長谷部が着任しております。本日は、所用のため欠席でございます。

監視安全課輸入食品安全対策室長に三木が就任しておりますが、同じく所用により遅れて参ります。

同じく、食中毒被害情報管理室長に西村が着任しております。

○西村食中毒被害情報管理室長 西村でございます。よろしくお願いいたします。

事務局  また、9月に企画情報課長の國分が着任してございます。

○國分企画情報課長 國分でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

事務局  以上でございます。

○山本部会長 ありがとうございます。新たに委員になられた方々には、よろしくお願いいたします。

それでは、議事に入る前に、事務局から配付資料の確認をお願いします。

事務局  それでは、配付資料の確認をさせていただきます。

資料1「浅漬の製造を行う施設に対する立入り調査の結果について(平成25年度食品・添加物等の夏期一斉取締り)」ということで、冊子になったものを用意してございます。

資料2といたしまして、「『漬物の衛生規範』の改正について(案)」ということでございますけれども、タイトル「浅漬の衛生管理対策について」というポンチ絵と、後ろに衛生規範を一緒にとじたものが資料2になっております。

資料3が、「ノロウイルスによる食中毒の発生防止対策について」ということで、これも冊子になってございます。

それから、参考資料1といたしまして、「全日本漬物協同組合連合会の取組み」状況ということで、2枚、冊子になってございます。

それから、参考資料2「漬物が原因食品として特定された食中毒発生状況(過去10年)」という1枚の資料です。

それから、参考資料3が「都道府県等における漬物製造施設の届出制度等導入状況」で、これも両面1枚のペーパーです。

参考資料4が「漬物の衛生規範」になっております。

参考資料5がノロウイルス食中毒事例のまとめということで、週別SRSV検出報告数とあわせてとじたものになっております。

参考資料6が「ノロウイルスによる食中毒の予防について」ということで、本年10月4日付の通知です。

参考資料7はリーフレットになっておりまして、「ノロウイルスによる食中毒」について啓蒙したものでございます。

資料の不足等はございませんでしょうか。

○山本部会長 よろしいですか。

それでは、議事に入りたいと思います。本日は、「浅漬による食中毒の発生防止対策について」と「ノロウイルスによる食中毒の発生防止対策について(報告)」となっております。

それでは、「浅漬による食中毒の発生防止対策について」、事務局より説明をお願いします。

事務局  それでは、資料1に基づきまして御説明させていただきます。

少し経緯を御説明させていただきます。御存じの先生方もいらっしゃいますが、昨年8月に札幌市等で発生いたしました浅漬による腸管出血性大腸菌0157の食中毒事例を踏まえまして、昨年10月に本部会を開催し、審議していただきました。

資料の経緯のところにございますけれども、8月29日には各都道府県に対して、浅漬の製造を行う施設に対して立ち入り調査を行うよう通知し、その中間報告をもって10月1日に本部会と食品規格の合同部会で審議をいただき、漬物の衛生規範を改正し、それの周知徹底を図るということになりました。それに当たっては、年末一斉の取締り、それから今年の夏の取締りの結果を踏まえて、さらなる対策について、また検討するということになっておりました。同年11月に、8月に実施した結果を公表して、それからことしの3月には、昨年の年末一斉の結果を公表しております。

本年5月に、7月の1ヶ月間で、夏の一斉取締りとあわせて、浅漬の製造施設への調査を行っています。主に、1日の製造量が100kg以上あるような施設から、順次管理の徹底をしていただくということをお願いしております。

2番は、その結果の概要になります。

(1)ですが、今回、立入り調査を行った施設が2,867です。1日の最大製造量が100kg以上の施設が490ございましたけれども、この施設のうち、何らかの指導を行った施設は342ということで、全体の70%(前回72%)となっております。製造量が100kg未満の施設では、何らかの指摘を行った施設が91%という結果でございました。

(2)で、何らかの指摘というものが先ほどの結果でしたけれども、全項目が32項目ございますけれども、6割以上の項目が適合していたところは、製造量100kg以上のところで92%で、100kg未満の施設では69%であったということになっております。

(3)で、項目別に見ますと、記録に関する点で指摘が多くございました。記録以外の項目で見ますと、100kg以上の施設において最も多かったのが殺菌の関係で、「規定どおりの殺菌が行われていない」もしくは「殺菌が行われていない」施設が2割ほどありました。2番目に多かったのが、自主検査が行われていないということで、13%でした。いずれも殺菌の関係で言いますと、前回29%だったものが20%、自主検査の関係で言いますと、前回は19%だったものが13%で、若干の改善が見られたと思っております。それから、100kg未満の施設で一番多かったのは自主検査ということで、64%の指摘がありました。殺菌の関係で言いますと、55%の施設で指摘があったという結果になっております。

次のページからがそれぞれの詳細になっています。

参考1が前回3月に公表した、年末に実施した調査結果、参考2が、その前に行った調査結果、3回分をわかるように記載しております。おおむね先ほど申し上げた結果となっております。

4ページをご覧ください。項目別の指摘の状況です。色塗りをしているところが記録に関する点ということで、記録に関する点の指摘が多うございました。ただ、直ちに安全上の問題があるという話ではないこともございますけれども、製造量が100kg以上のところだと、左の番号の(2)の(6)-1、殺菌工程で指摘があったところが97施設の20%、これが一番多かったところでございます。その次を見ますと、(3)製品の自主検査が13%であったという結果でございます。

6ページ以降は、それぞれ自治体別の結果を添付しております。

立入り調査の結果は以上でございますけれども、参考資料2で過去10年の食中毒の状況も添付させいただいております。昨年8月の札幌市の食中毒以降は、同じく札幌市でノロウイルスの食中毒があったという状況です。それ以外は、特定されたものはありませんでした。

それから、参考資料3、昨年10月に、調査とあわせて、施設の把握ということで自治体にお願いしております。前回、御報告させていただいたものからすると、13自治体増えて、現在、140のうち104の自治体で何らかの制度を持ってやっています。もちろん、それ以外の自治体でも施設を調査して、把握して立入り調査を実施しているという状況になっております。

調査結果は、以上でございます。

○山本部会長 ありがとうございました。

御質問等あると思いますけれども、引き続き、本日御出席いただいております全国漬物協同組合連合会の脇坂専務から、連合会の取り組みについて御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○脇坂参考人 座ったままで申しわけございませんけれども、全日本漬物協同組合連合会、略して全漬連と申していますけれども、脇坂と申します。これからの説明は、全漬連と略して説明させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

初めに、本日、このような席を設けていただきまして、まことにありがとうございます。まず、全漬連の組織について、簡単に御説明させていただきますと、全漬連は、製造・小売企業と卸売企業で構成する中小企業等協同組合法に基づく連合会で、会員は連合会ということで、各都道府県の組合ということになります。現在、38都府県が会員で、北海道は入っておりませんので、9道府県が未加入になっております。それで、都府県の傘下に約1,000社の会員企業がぶら下がっている格好になっております。

それで、昨年8月、北海道で発生いたしました食中毒は、全漬連の会員企業が起こした事故ではありませんけれども、8名のとうとい命が奪われたということを漬物業界として重く受けとめまして、適切な衛生管理の実施は促進事業者の責務であるとの認識から、少なくとも全漬連の会員企業からは、このような事故を起こさない、また起こさせないという強い意思で、まずできることから対策を立てて対応するとの方針のもとに取り組みを実行いたしてきました。

お手元の参考資料1の説明に入らせていただきますけれども、まず会議等、取り組み、実施状況ということで区分して、できるだけわかりやすいような格好で資料を編集したつもりでおります。

まず、会議名のところで、できる対策からやるということで、昨年8月29日、理事会及び理事長の合同会議で当面の対策を決定いたしました。それで、真ん中の取り組みでございますけれども、(1)全漬連、(2)各都府県協同組合、それから裏面、2ページになりますけれども、(3)所属員企業、(4)コンプライアンスの徹底ということで取り組みを決定いたしました。

まず、1ページ目の全漬連の取り組みとして、(1)で浅漬、キムチの製造・衛生管理マニュアルの再配布と、マニュアルの周知・徹底という取り組みがありますけれども、その右側に実施状況ということで、全漬連傘下会員1,080社に対しまして、昨年は1,080社いたのですけれども、現在は1,020社ぐらいまでに減っております。それはちょっとあれですけれども、1,080社に対し衛生管理マニュアルを増刷しまして、9月7日に配布いたしました。

それから、取り組みの(2)、衛生管理シートの作成・調査ということでございますけれども、これは従業員の健康管理の把握とか、原料野菜の殺菌の有無、温度管理をやっているか、やっていないかといった簡単な項目を作成いたしまして、全漬連のこの当時1,080社に対しまして実態把握のためのシートを郵送しております。

それから、(3)で講習会の開催ということで、10月4日に全漬連の主催で衛生管理講習会を開催し、約190名の参加を得ております。

以下、(4)以降は、委員会の開催、その他ということで、(5)のその他の実施状況の最初のポツですけれども、全漬連には親会のほかに青年部会という組織がありまして、全国大会(九州大会)において、これは異例ではあったのですけれども、漬物の消費拡大と衛生管理の徹底を図るといったことを内容とする「宣言」を採択しております。

次のポツですけれども、8月29日に決定しました全漬連の取り組みと、これは非会員の方でもダウンロードできるようにということで、「衛生管理マニュアル」をホームページ上に掲載しております。

次のポツが、農林水産省と厚生労働省あてに漬物製造業への指導等を文書で要請いたしております。

次が、(2)各都道府県協同組合の取り組みでございますけれども、(1)ブロック会議等は、各都府県で理事長会議等を開催しております。38都府県でやっております。

それから、衛生講習会の開催ということで、各県の組合で衛生管理講習会を25都府県、延べ32回行っております。それから、文書によって代替した県が13県。

それから、(3)衛生管理についての注意喚起の文書を傘下組合員に郵送、メール、FAXを全件でやっております。

以下は、地方公共団体の連携とかその他ということですので、省略させていただきます。

裏面の2ページ目ですけれども、所属員企業の取り組みに対して、全組合員1,080社に対してやろうと思ったのですけれども、集計したりするのもあれですし、まず役員企業33社に対してやっても、結果的には多分同じことになるのではないかということで、役員企業33社だけ調査を実施いたしまして、(1)から(5)までまとめております。朝礼やミーティングで周知徹底を図ったということで取りまとめてあります。

それから、(4)がコンプライアンスの徹底ということで、正副会長とか役員は、各会合のときに法令遵守の徹底を要請するようにということでやってきております。

次に、3ページ目ですけれども、当面の対策を受けまして、昨年の1031日に正副会長会議を行いまして、中長期対策を決定いたしております。(1)から(11)までの取り組みを決定いたしまして、実施状況として、(1)が1ページ目の(2)で配布いたしました「衛生管理シート」を、当初の回収予定日では回収率が2割ちょっとしか行っていなかったのですけれども、これじゃいかぬということで、再三再四、催促いたしまして、12月末時点で回収率が93%まで上がっております。

それから、(2)で、北海道の食中毒事件を風化させてはいけないということで、毎年6月を衛生管理月間として定めまして、ことし6月から実施しております。後ほど説明いたします。

それから、(3)、漬物衛生管理ステッカーを作成して、工場内・事務所に貼付するように指導しております。ちなみに、参考までにどういうものをつくったかというと、ちょっと回していただければ。物は同じで、配色が違うだけで、裏をはがしてすぐ張れるようにということで、注意喚起のためにこういったステッカーも用意いたしました。

あと、(4)以下は、県や保健所が開催する衛生講習会の情報案内ということで、ちょっと省略させていただきます。

次の4ページですけれども、ことしになりまして、6月を衛生管理月間と、昨年の正副会長会議で定めましたので、まず6月の取り組みとして、衛生管理月間実施要領なるものを作成しまして、(1)から(5)までの取り組みを行うようにしました。

それで、実施状況としては、マニュアルの作成・配布、これは漬物衛生規範が昨年10月、改正されていますので、それを取り入れたマニュアルをつくろうということで、ことし3月に委員会を立ち上げまして取りまとめて、現在、最終案を取りまとめ中でございます。それで、各委員の了解を得た上で、年内に傘下会員に配布する予定としております。ただし、今回、この部会で漬物の衛生規範が改正されると、その辺、また少し遅くなるかもわかりませんけれども、できるだけ早く行いたいと思っております。

それから、衛生管理講習会の実施につきまして、(1)でブロック講習会を行いました。実施状況として、東北、関東中部、関西、九州の5ブロックありますけれども、全て6月に実施しろという話にしておりましたけれども、ちょっと遅れて9月に実施したところもありますけれども、5ブロックが行っております。それから、各都府県でも講習会を開催しなさいということで、まだ13都府県しか行っておりませんけれども、これから行うところもあります。順次、できるだけ全県やるように指導しているところでございます。

それから、昨年に続きまして、衛生管理に関するアンケートを実施いたしまして、結果、1018日現在で回収率が94%と。去年が93%だったものですから、100%を目指したのですけれども、どうもこの辺で壁があるように思います。それで、この94%回収したうちで、浅漬を製造していると回答した企業349社に対しまして、例えば殺菌をやっているか、やっていないかの問いに対しまして、未実施と答えたところには、なぜ未実施なのかという理由とか、いつまでぐらいをめどに改善するのかといった調査を改めて行っております。それで、余り協力的でないところに対しましては、県組合と連携して随時改善の指導を行っているところでございます。

それから、(4)全漬連への加入促進ということで、後ほどちょっと述べたいと思いますけれども、非会員、いわゆるアウトサイダーと言っておりますけれども、そういったところにできるだけ全漬連に加入してください、魅力ある全漬連にしたいということで、漬物技能評価検定の構築ということで、ことし5月に模擬テストを行い、今年度中に本試験まで実施したいということで努力をしております。また、漬物オンラインストアということで、全漬連のホームページで全国の漬物を紹介いたしまして、インターネットで購入できるといった制度も今、立ち上げておりまして、これの充実・拡充ということで、魅力ある全漬連として、会員企業の強化を図っているところであります。

その他としては、(1)から(4)までありまして、この辺は省略させていただきたいと思います。

それで、私どもといたしましても、今、このように努力してきておりますけれども、団体としてしできる限りの対策に取り組んできておりますけれども、まだ努力が足りないと農林水産省のほうからは叱責されているところでございます。そうは言っても、団体としてできることには限度があると思っておりますので、いわゆるアウトサイダー、非会員の関係ですけれども、どのぐらいあるか、正直言って、私ども、把握しておりません。一説では、1万施設以上あるとも言われております。それから、昨年の厚生労働省の立入り調査の結果では、浅漬企業だけでも5,500施設という公表結果が出ております。

全漬連の会員企業、1,000社でございます。施設数に直したとしてもそんなにふえるとは思っておりませんので、圧倒的にアウトサイダーのほうが多いのではないかと思っております。したがいまして、行政サイドから、会員、非会員の別なく、同じように指導していただければと思っております。

最後に、0157大腸菌による食中毒は、日本だけではなくて、海外でも発生しております。また、0157大腸菌の宿主は牛とも言われているような研究もあります。また、カナダでは0157に対するワクチンが使われているとも聞いておりますので、私ども漬物業界としても、今後とも食中毒を起こさないよう最善の努力をして、消費者の評価を得て、おいしくて、かつ安全な漬物の供給に努力をしていきたいと思っております。行政のほうにおかれましても、0157大腸菌をもとから絶つとか、食中毒のリスクが少しでも少なくなるような対策をお願い申し上げまして、終わらせていただきたいと思います。

どうもありがとうございました。

○山本部会長 ありがとうございました。

ただいまの事務局及び連合会からの説明に関しまして、御質問、御意見をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

工藤委員  ありがとうございました。

ちょっと質問させていただきたいのですが、行政が行いました、ことし3月末の立入り調査、浅漬製造を行う施設の2,867施設と、今、全漬連の御説明がございました浅漬の製造工場349と、ちょっと数字が違うのですが、これはこの中に入っているということでしょうか、別ということでしょうか。それが1つ。

事務局  資料1の2ページ目に、これまで3回立入り調査を行ったものが書いてありまして、下のほう、参考2のところ、昨年11月に行った時点での立入りが5,500弱ぐらいあります。当初、かなりの時間を設定して調査を行いましたので、幅広に立ち入ったという状況もあります。年末の調査の結果が3月、今回の夏の調査の結果が一番上になりますけれども、何らかの指摘があったところを中心に、さらには100kg以上つくっているようなところを中心に、もちろん時間的な制限もありますけれども、立入り調査を行って改善等の指導を行っておりますので、基本的にはそれらが含まれている形になっております。

工藤委員  ありがとうございました。

そうしますと、含まれているかどうかというのは、ちょっとわからない、含まれているだろうということですね。連合会傘下の会社が。

事務局  それは、会員さんの名簿が出ていますから、基本的には入っていると思っていただいて結構でございます。

工藤委員  もう一つですが、調査結果を公表とありますが、本当に基本的な質問で申しわけないのですが、どこへ、どういう形で公表するのでしょうか。

事務局  基本的には、報道発表資料などで、1つは記者会への投げ込みであったり、ホームページへ掲載したり、もちろんその結果をもってさらなる指導ということで、自治体あてにまた通知を出しますので、それらのホームページへの掲載といった形で公表している。もちろん、この食中毒部会も公開でやっておりますので、それも公表の一つということです。

工藤委員  ありがとうございました。

○山本部会長 ほかにございませんか。中村先生。

中村委員  資料1の4ページ、5ページ、衛生規範に基づき指導を行った項目ごとの施設数が出されておりますが、特に5ページのその他のところです。先ほどの説明では、記録等の問題があったところが多かったという話だったのですけれども、その他のところで使用水の衛生管理、従業員の衛生管理、従業員の衛生教育といったことができていないところが10%から20%あるということでございます。

これにつきまして、以前もこの部会で申し上げましたけれども、特に地方自治体、都道府県とか一部の市が、こういった食品製造については許認可権限を持っていますので、そういったことを使いながらきちんと指導していただきたいと思いますし、それでも従わないようなところはどんどん公表していただいて、酷な話かもしれませんけれども、死人が出る前に潰れてもらったほうが国民のためだと、私自身は思っております。食品をつくるということに対して、健康問題が起こるのだぞということをきちんと理解をした上でつくってもらわないと困る話でございますので、ぜひその辺の御指導のほど、厚生労働省を通じてよろしくお願いしたいと思います。

○山本部会長 ありがとうございました。私も、この使用水の衛生管理については、ちょっと気になっているところです。基本的には、管理運営基準が守られていないとまずいのではないかということなのですけれども、そういうことで、許可業種じゃないところがあるのでしょうか。

事務局  法令的に言うと、政令で定める営業許可の対象業種というものには入っていないですけれども、例えば事件の起こった北海道では、自治体の定める許可業種になっています。もちろん、そういったものになっていないと、指導もなかなか十分に行かないということで、先ほど御紹介した参考資料3にございますように、許可にする、しないというのは置いておいて、少なくとも届出制度とか、事業者を把握して指導できるような体制をとってくださいということをお願いしています。

使用水の衛生管理のところは、年に1回、検査しなさいという項目がありまして、検査の実施といった観点でのものであって、飲めないとか、そういう話、直ちに害があるということではないと理解しています。

○山本部会長 ありがとうございました。

ほかに御質問ありませんか。

今までの御報告、それから連合会の取り組み等を伺って、施設を把握していくことが1つ大事な取り組みなのかなということは感じておりますし、それらを把握した上で連合会が働きかけられる部分というのはどれぐらいあるかというのを、連合会としてももう少し検討していただいて、会員をふやすような方向の取り組みも必要なのではないか。そういう意識の高いところがつくっていけるような形に、地方自治体の指導を展開していくように、厚生労働省のほうからもそういう指導をしていっていただければなと考えるところですけれども、ほかに。砂川先生。

砂川委員  感染研の砂川です。今回の部会のほう、私、初めて委員として参加させていただくので、議論をかなりされてきた部分なのかもしれませんが、どちらかというと製造量が少ないところが、製造量の多いところに比べると指導を受ける割合が非常に多いということで、そのあたりに対する情報の周知徹底などについて工夫していく必要があるのかなというのが情報として見受けられました。

この衛生規範に基づき指導を行った項目に関するところなどを見てみると、例えば北海道の事例を思い出してみると、(2)製造・加工の(4)の原材料の流水洗浄あたりは結構重要な項目だったりするのですが、ここは製造量にかかわらず割と守られているのかなと。ただ、その上の各工程の微生物汚染等の防止については、製造量の多さ、恐らく工場の規模によって、そのあたりの遵守状況がちょっと違うということで、こういったあたりは大きな改善ができるところなのかなと見受けられました。中心の業者さんへの情報の伝達というあたりについての工夫をぜひしていただきたいと思いました。

あと、北海道は全漬連の中には、まだ入っておられない。

○脇坂参考人 入っていないです。この事故が起きまして、北海道の有志で集まりまして任意組合は結成したのですけれども、当全漬連のほうに加入すると上納金が必要だということで、まだ入っていただけない状態です。

砂川委員  ありがとうございます。

○山本部会長 事務局、よろしいですか。

事務局  御指摘のとおり、小さいところは指摘事項がなかなか多い状況です。ただ、流通量を考えますと、ある程度の規模を有するところから順次指導していこうということで、これまで行ってきています。ただ、小さいところもそれなりの規模に応じた指摘・指導を、ちょっと時間をかけてやっていかないといけない部分もございますので、その辺、現場の保健所もなかなか苦労しているところではありますけれども、引き続きその辺も対応してまいりたいと考えております。

○山本部会長 よろしいでしょうか。どうぞ、寺嶋委員。

寺嶋委員  全漬連の脇坂様にちょっとお聞きしたいのですけれども、先ほどの衛生規範に基づき指導を行う、4ページの製造・加工工程の殺菌工程で、製造量が多いところと少ないところ、両方とも比較的指導が高いということになっています。全部が浅漬ではないかと思うのですが、衛生規範で記述されている殺菌法が次亜塩素酸で塩素が絡んでいるということから、漬物に塩素臭が残るので使うのをためらう方が多いと聞いているのです。全漬連の約3分の1の浅漬を製造されている方たちの中では、そういう殺菌工程に塩素を使うというのは抵抗があるものなのでしょうか。

○脇坂参考人 全漬連の会員の中でも、浅漬をつくっているところでまだ殺菌をしていないと回答してきたところが10%ちょっとあります。厚労省の公表した資料よりは少なくなっておりますけれどもね。今の御質問ですけれども、次亜塩素酸で殺菌した浅漬と、していない浅漬を食べ比べた場合に、圧倒的に殺菌していないほうがおいしいのです。スーパー等のバイヤーさんに食べさせてみると、そういう結果になっております。

しかし、そうは言っても、厚生労働省のほうの漬物衛生規範で殺菌しろということで、マニュアル的な格好で決まっておりますので、私のほうとすれば、できるだけマニュアルに沿った形で製造するようにという指導をしておりますけれども、今、おっしゃられたように、がんとして、しないほうがおいしいのだ、水洗いだけで十分だと言って頑固一徹を通しているところも正直言ってあります。

寺嶋委員  ありがとうございます。

そのバイヤーさんの味覚試験というのは、ブラインド試験でやっているのですか。

○脇坂参考人 そこまでは確認しませんでしたけれども、どちらが殺菌したということを表示しないで、2つの漬物を出して食べ比べさせたら、どっちがおいしいかということで。だから、実際はブラインドかもわかりませんけれどもね。

寺嶋委員  ある程度塩素臭というので、味覚的にも違いがわかってしまうということですか。

○脇坂参考人 プールじゃないですけれども、塩素臭がするとか。東京の水道あたりも大分少なくなりましたけれども、塩素臭がすると敏感に感じる人もいると思いますので、そういった微妙なところがあるのではないかと思います。

寺嶋委員  ちょっと話がそれますが、先日、食品監視員さんの全国大会がございまして、そこで千葉県の山武郡の保健所の方なのですけれども、浅漬を生産している事業者さん、そんなに数は多くないのですが、そこの方たちを含めて、殺菌工程の一つということで、次亜塩素酸で洗う方法を検討したときに、ブラインドテストによる味覚試験を実施されています。その結果に基づくと、本当に味が違うという方は4割程度で、違いがわからない方が6割ちょっと切るぐらいいらっしゃったのですね。ですので、明らかな違いがあるかというのはどうなのかなと思うのですけれども、その辺について、ブラインドテストだったのですかとお聞きしたのです。

○脇坂参考人 私のほうも実際に立ち会ったわけじゃないので、あるメーカーさんがやった結果の聞きかじりで、正直言って、そこまで詳しく把握しておりません。

寺嶋委員  ありがとうございました。

○山本部会長 では、中村委員、どうぞ。

中村委員  済みません、今のことに関連して質問なのですけれども、殺菌したかどうかというのは表示されているのですか。というか、消費者がわかるようになっているのですか。

事務局  いえ、それは表示の義務項目ではないので。

中村委員  わかりました。ありがとうございます。

砂川委員  事例の調査をすると、水洗いのところ、そこで流水洗浄ということに注目したのですけれども、水にぼんと入れるだけといったものが見受けられて、その後の殺菌の工程のときに、有機物がまだかなり付着した状況で消毒されるような場合があったと思います。ですので、そういった意味で消毒も大事なのですが、ぜひ流水洗浄のあたりをお忘れになることなく、それをしっかりやった上で必要なレベルの消毒をしていただくことが、恐らく基本的に重要だろうと思うので、一言コメントさせていただきます。

○山本部会長 ありがとうございました。何かコメント、ありますか。

○脇坂参考人 今のあれですけれども、まず原料を流水洗浄するというのは基本中の基本で、例えば少しでも汚れ、泥といったものがついていた場合には、次亜塩素酸でやっても薄まったりしますので、徹底的に最初の段階でやっていると思います。

砂川委員  消毒のところを強調し過ぎると、どうせ後で消毒するからいいやという感じで、流水による洗浄のところがおろそかになるような感じも少し見受けられたりして、ちょっと気になっております。

○山本部会長 御指摘ありがとうございました。

特にほかに質問がないようでしたら、今後の対応について、事務局からお願いします。

事務局  資料2に基づいて御説明させていただきたいと思います。今、お話にも出ていましたように、塩素、もちろん次亜塩素酸ナトリウムにこだわることはなくて、衛生規範にはそれ以外の塩素系のもの、余りにおいがしないものも追加しているのですが、そこのところについて、実施していただけていない、実施しないケースがまだまだ見受けられる状況です。したがって、一律の200ppm5分、100ppm10分という固定の方法に限らずに、それ以外でも十分衛生管理ができるということであれば、そういったものも対応していこうということで、資料2のほうを御用意させていただいております。

全体的な絵になっておりますけれども、左側が従前の衛生規範ということで、もともと昭和56年につくられていて、浅漬ではなくて、古漬のようなものの異物混入の防止等を主につくられているものだと理解しています。前回、昨年10月に浅漬の件を踏まえまして、特に浅漬に必要と考えられます、原料の低温管理とか飲用適の流水での洗浄、それから次亜塩素酸ナトリウムなどによる消毒という一連の工程を追記したという状況です。今回、まだ塩素消毒というものにこだわらない方法というものも、一律の殺菌方法にかわる方法ということで導入できないかということで、HACCPによる衛生管理の手法というものを取り入れていってはいかがかと考えています。

先ほど全漬連さんからも御紹介がありましたけれども、従来から連合会さんでは、HACCPを取り入れた衛生管理のマニュアルというものをつくられていて、地道に普及について努められてきている状況です。したがって、一律の殺菌方法にこだわらないで、それぞれの施設によって対応できるようなものにしてはどうかと考えています。

砂川先生からもお話がありましたように、野菜の種類、それから細胞壁による有機酸の量の出方等々によっても、殺菌の効果というのはそれぞれ違ってくるだろうと思います。したがいまして、真ん中のところにあります、従来の浅漬の衛生規範にある規定。特に、(5)の100ppm10分、200ppm5分という規定がありますけれども、これにこだわらないで、原料の生産段階から適正に生産されたものを仕入れて、もともとの菌数を落としたもの、落ちているものを仕入れて、さらに工場内でふやさないように管理していただくということが工程管理によって行われるということであれば、それはそれで認めるべきであろうと考えています。

ただ、それには個別のデータが必要になってくると思います。もともとこの塩素自体の殺菌の規定というものは、大量調理施設マニュアルに平成9年に導入されたものですが、いろいろなデータがありまして、0157で5乗程度落ちるというデータもあれば、一般生菌数で2乗程度だろうというデータもございます。右下側にございますけれども、その辺も少し補完するようなデータもそろえて情報提供することによって、それぞれの施設に応じたものができるのではないかと考えています。

寺嶋先生からも御紹介ありましたけれども、全国の食品衛生監視員の協議会でつくる研修会でも、各地で、一般生菌数ですけれども、水洗いでどのぐらい落ちるかとか、データも少しずつではありますけれども、出てきておりますので、それらを集約した形でまとめていければと思っています。

具体的には、めくっていただいて、7ページになります。食品等の取扱いということで、第1に、当然ではございますけれども、まず浅漬の製造に当たっては、管理運営基準に従って、以下のとおりで行うこととしております。これは、10月に改正した浅漬だけの内容をここに盛り込んで、一まとめにした形。全て下線を引いておりますけれども、従来、いろいろな場所にあったものをまとめた形になっています。ただし、2の方法による場合はこの限りではないとしておりまして、次の8ページ、2で、前項によらない場合は、HACCPによる工程管理をするということを記載しています。

具体的には、9ページで(6)の(1)からございますけれども、農林水産省さんで推奨されている野菜の栽培から出荷までの衛生管理指針、農業生産工程管理、堆肥等の管理、水の管理が適正に行われているような施設は多数あると、ホームページ上でも記載されておりますけれども、こういった施設から原料を購入して、特に(4)、砂川先生からもお話がありましたように、特に葉物などは、葉と葉の間を十分に流水で洗浄する。後は通常どおりになりますけれども、必要な場合には塩素による殺菌などももちろん、それは行っていただければ結構なのですが、基本的には低温管理で菌をふやさないという管理をする。それぞれは、実際には保健所等によって監視をしていただくことになります。

10ページの3は、浅漬以外ということで、従来からあったものを記載しております。

14ページ以降は、はくさい浅漬の例ということで、連合会さんがマニュアルに記載されていたものを参考に、工程図、危害のリスト、総括表を記載しております。

説明は以上です。

○山本部会長 ありがとうございました。

ただいの事務局からの説明に関しまして、御質問、御意見をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。今村委員。

今村委員  2つほど質問があるのですけれども、1つ目は、今回HACCPを使うことで次亜塩素酸のかわりにしていいということなので、私の目には大分緩くなったように思えるのです。浅漬の話は、もともとの野菜とかに細菌がついていて、それをよく洗って消毒することで落とさぬ限り、対応がなかなか難しいのではないかと思っていたのです。

HACCPというのは、いいものを仕入れるというのはあるかもしれませんけれども、もともとついているものを野菜の上にふやさないようにする。あと、事故が起こったときに対策がとれるということが目的ですから、今の基準よりも大分緩くなったように見えるのです。その辺は、確かに次亜塩素酸に漬けたらにおいがついて、漬物としてどうかという話があるのかもしれませんけれども、その辺にどんなふうに天秤にかけて、ここに至っているのかを教えていただきたい。その後、もう一つ。

事務局 200ppm5分、100ppm10分という方法が、先ほどの砂川先生の話にありましたけれども、どれだけの効果があるかという点が1つはあります。当然、流水洗浄とあわせることによって、必ずしもそこまでやる必要はない可能性もあって、それらについては、科学的根拠をもってきちんと立証できるなら、それでももちろん構わないと考えていますけれども、むしろ緩くなると言っていただけるのは、ある意味あれなのかもしないですけれども、逆にいろいろと管理しないといけないというので、業界の方々からすると物すごく厳し過ぎるという感想のほうが多いように聞いております。

今村委員  その点、全くそう思います。HACCPそのものを入れることは、漬物業界にとっては衛生管理としてはいいことで、厳しいことだと思います。ただ、例えば0157のようなものに対して、もともといるものに対しての対策という意味では、今までも例があった、ユッケとかでも同じような議論が繰り返されていますけれども、どうしても排除できない場合が出てきますから、その部分に対しては弱くなるのではないか。強くなることとの天秤の上で、これを進めていくということであれば、相対的に食中毒が減るという判断をされたということなのかなと思ったのですけれども、その辺はいかがでしょうか。

事務局  同程度のレベルの管理ができればということは、もちろんそのとおりですけれども、野菜ですから、もともと持っている、持っていないという観点では、牛とは違うのだろうと思います。堆肥とか従業員の健康管理の問題とかで、後からつくという観点のほうが、この浅漬は重要なのだろうと思います。ですから、レバーとか生肉とはちょっと違うのだろうと思います。

一方では、残念ながら8月の事故の調査結果、もともとの菌の由来がはっきりしていないという点もあって、原料ではなかっただろうと言われていますので、当然原料段階から従業員も含めた工程管理をするということで、これまでと同じレベルの衛生管理が保てるのであれば、それは認めていこうというものになります。

今村委員  もう一つ、HACCPを使っていれば次亜塩素酸を使わなくていいということは、逆にその工場がHACCPを使っていることを何らかの形で認めていく形になると思うのですけれども、その工場がHACCPを入れているという場合は、どこかの認証を受けているような形なのか、自分自身がHACCPだと言った時点でHACCPなのか、その辺の区分けはどんなふうに考えておられるでしょうか。

事務局  いろいろな議論がHACCPに関してはありますけれども、HACCP自体は必ずしも認証するものではないので、あくまで自主管理の一つの方法ですので、認証がなければならないものではないと認識しています。ただ、一方で、これまで余り取り組まれていなかった業界に入れるというのはいろいろ不自由な面もあるので、技術的なサポートを我々としても、また連合会さんと一緒になって導入していきたいと考えています。

○山本部会長 よろしいでしょうか。渡邉委員。

渡邉委員  今回の北海道の事例で、汚染原因がどこであるかはっきりしなかったということで、野菜であるかもしれない、調理従事者であるかもしれない。個人的には、ほかの事例等、いろいろ考えると、恐らく野菜だろうと思うのです。

それで、9ページに、原材料に関して製造工程が遵守され、適正に実施されている場合は、そういう原料を使いなさいと書いてあります。つまり、これはある意味で言うと、HACCPの危害要因の同定をちゃんとチェックすることが、浅漬業者ではなくて、野菜をつくるところにかかっているようにも読み取れないことはないのですけれども、そこまでやる予定なのですか。これは、結構大変なことで、もちろんそのぐらいやってほしいと思うのですけれども、そうすると恐らく浅漬以外のほかの野菜もこれに入ってしまう。浅漬で規定されると書いてあるから、浅漬だけなのですか。この辺の取り扱いは。

事務局  基本的には、そういった事業者、製造業者さんで原料を購入する際の契約に当たって、そういう管理ができているところから仕入れていただくという受け入れの段階での管理ということを念頭に考えています。基本的には浅漬を考えていて、それ以外の古漬のようなものは従来でも議論になりましたけれども、乳酸発酵して菌のフローラができているようなところはある程度抑えられるという、ある意味発酵食品的なところがございますので、漬物の全体規範の中では、浅漬に特化して規定すればいいのではないかと考えています。

渡邉委員  野菜をつくる農家の方々は、HACCPをどの辺まで厳しくするかということにかかるのだと思うのですけれども、危害要因がそこに含まれていないということをある程度実証する必要があるのか、それともこういう管理でやればオーケーですよということを厚労省で何か規定を出すのか。何か起こった場合に、HACCPに基づくということで危害要因云々という規制がかかるとすると、今回の浅漬業者だけじゃなくて、農業をやっている人たちも大きなインパクトがあるのではないかという気がするのですけれども、その辺は農水省等との関連というのはちゃんとできていると考えてよろしいのでしょうか。

事務局  9ページに、先ほどの説明の中でもございましたけれども、原材料の受け入れに当たっては、農水省が今、進めていらっしゃる指針に基づいて、GAPを遵守されているものを受け入れていただくというのが一つの参考になろうかと思います。先ほども今村先生から、従来型とHACCP、むしろ緩くなるのではないかというお話がございましたけれども、微生物をコントロールするための加熱工程があればいいのですけれども、直接的に低減させる方法がない中でどうするかということについては、全ての工程管理についてしっかりやっていくという点で、HACCPを取り入れることによって、先ほどの原料の受け入れ。

後ろの17ページでも、総括表といいますか、例として書かれていますけれども、重要管理点で書いているように、ここの受け入れも一つの管理ポイントとして重要なのだろうと思いますし、砂川先生からあったように、洗浄することも微生物を低減させる方法として、その工程は重要だと認識した上でしっかりと守っていただく。また、それに加えて、さらに必要であれば次亜塩素酸等による消毒をしていただくということで、それぞれ工程を危害分析していただいて、必要なところに対しては、それぞれ管理していただくということで、総合的に微生物の低減を図ろうというのが、このHACCPによるものだと考えております。

そういうことによって、先ほど御指摘があったように、逆に言うと、次亜塩素酸だけに頼らない方法で全ての工程が管理されることによって、よりいいものができるということも期待されるのではないかと思っております。

○山本部会長 恐らく渡邉先生が思っておられるのは、この指針というか、規範ができて、つまりHACCP方式を選択することになったら、GAPをやっているところから仕入れなさいと書いてありますよと。それでいいのですかということなのですけれども、本来、HACCPの考え方だと、それも一つのやり方だし、検収によって、ちゃんと汚染していないことを確認したものをちゃんと入れるというやり方もとることは可能なはずなので、そこに運用上の柔軟性というものがもう少しあってもいいのではないかという御意見じゃないかと思います。その辺について、ちょっと補足しておいていただきたいのですけれどもね。

事務局  記載ぶりについては、御指摘を踏まえて、座長とも御相談して修正させていただきたいと思います。

○山本部会長 ほかにございますか。基本的には、従来型とHACCP型に移行できるという方向で、なるべくならばそちらを使ったほうが、より効率的な管理ができるのではないかという趣旨のもとで、これをつくり上げたということだと思います。もし、今、渡邉先生からおっしゃっていただいたような細かい点で、どうしても懸念されるようなところがお気づきのようでしたら御発言いただくということで、よろしいでしょうか。もし、ないようでしたら、私と事務局でまとめまして、もう少し文言を修正した形のものを皆様方にお諮りして、最終案としたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。

石川先生、どうぞ。

石川委員  済みません、遅れまして大変失礼いたしました。

今日は浅漬の衛生規範ということなのですけれども、資料をざっと見せていただきまして、漬物の専門の方がおいでになっているということで、参考資料4の用語の定義を見せていただいて、漬物の用語が出ているのですけれどもね。ここは食中毒の部会なのですけれども、原材料が野菜ということになっていますけれども、ほかの漬物はこの範囲の中に入らないかどうか。

例えば、今まで私たち歴史的に、そのときは委員じゃなかったのですけれども、例えばからしレンコンとかフグの卵巣の漬物といったものもあるわけですね。こういうものは、この漬物の範疇には入らないのか。ちょっと別の質問になるかもしれないのですけれども、この衛生規範というものが野菜の漬物の衛生規範と正確にはなるのかどうか、ちょっとお聞きしたいのです。

○脇坂参考人 今の御質問なのですけれども、私ども漬物連合会としては、あくまでも野菜漬物、農産物漬物という格好で定義しておりますので、先生が今おっしゃられたように、例えばフグの卵巣とか、北海道に行けばニシンの挟み漬けみたいなことで、ニシンが主ではくさいが従みたいなこともあります。ただ、ニシンの挟み漬けみたいなものは、ある程度漬物として扱っておりますけれども、あくまでも主体は農産物漬物ということでやっております。定義もそういう格好になっております。というのは、農林水産省で行っておりますJAS法に基づく用語の定義でも、あくまでも農産物漬物ということになっております。

以上でございます。

○山本部会長 よろしいですか。はい。

石川委員  それでは、事務局のほうにお聞きしますけれども、それでこの食品衛生分科会の中で、これは漬物の衛生規範と書いてあるのです。それでよろしいのかどうかということだと思いますけれども、いかがでしょうか。

事務局  もともとは、恐らくJAS法に合わせた形で野菜を主に考えて、昭和56年につくったものと理解しています。ただ、文言上、定義上、決して入らないという形にはなっていないのですけれども、当然、古漬のような、発酵して衛生的な観点での管理というか、制御が、菌の抑制といいますか、されているようなものであれば、安全上の観点から一定の考慮されるところはあるのだろうと思います。御指摘のように、魚介類であるとか、その他のもので何らかの衛生管理が必要なものが出てきましたら、また検討を進めていきたいと思います。

石川委員  今から変えたほうがいいですよ。

○山本部会長 石川先生の御意見では、全体を含めるような、もしかしたら、くさやみたいなものまで入ると、そういう考え方でしょうか。

石川委員  歴史的な事実もあるわけなので、そうしたら、今回は例えば野菜の漬物をとか、国民に正確にわかりやすく定義をきちんとやって、規範をつくるべきだと私は思うのですよ。

事務局  衛生規範に漬物の定義として、「野菜、果実、きのこ、海藻等を主原料として」ということで範囲を定めて、それらの範囲のものについての衛生規範ということで定義づけております。また、これ以外の原料を漬けたものについて、また新たな衛生上の観点から、どういうリスクがあってどういう管理が必要かということの検討も必要でございますので、この延長線上ということではなくて、またそれは別途検討する必要があろうかと考えてございます。

○山本部会長 恐らく漬物と言ったときの定義がこのようになっていることから、一般的には野菜を主原料としたというのが漬物の感覚、一般的な人が思う漬物のイメージなのだと思うのですけれども、ほかのものの話になってきますと、ハザードが変わってくることもありますし、製造工程が変わってくる話ですので、特に魚などだとボツリヌス、ヒスタミンのことを絶対考えなきゃいけなくなりますけれども、こういう野菜類の場合に、特に。事務局、ありますか。

事務局  今の御指摘も、漬物の中で規範として設けていたところに浅漬による食中毒事故が起こったということですから、それを教訓として、いろいろなものについても、そのような保存性のないものに対して、どう扱うかというのは常に念頭に入れておく必要があるという御指摘だと思いますので、その点については十分配慮したいと思っております。

○山本部会長 はい。今後、定義だけではなくて、食品の多様性というものが出てくると思いますので、そういうことを考えていっていただければと思います。

砂川委員、どうぞ。

砂川委員  短く。私、経験がないので、もしかしたらとんちんかんな質問かもしれません。今回、HACCPによる衛生管理、これは恐らく監督とか指導とか助言を業者の方々に行っていくのは、従来どおり自治体が行っていくということですね。国がもうちょっと出ていくといったものではないですね。ちょっと確認です。

事務局  基本的には、国内で製造する事業者さんへの監視・指導というのは自治体で行っております。ただ、漬物に限らず、漬物以外のところではHACCPの推進というものを行ってきていますので、自治体の一般的な能力という観点では、ある程度あるのだろうと思っています。ただ、漬物に関する科学的なデータが不足しているところはあるので、それらは補っていきたいと思っています。

○山本部会長 あとは、食品衛生監視員に対する教育等に関しては、厚生労働省が主導的に指導していく。直接やるかどうかは別に、システムの形はいろいろ考えられると思うのですけれども、厚生労働省主導でどんどん教育のほうも進めていただくことは必要だと思っております。

ほかにございますか。それでは、ある程度御意見が出てきましたので、その御意見を踏まえて事務局と一緒に私のほうでまとめさせていただくということで、また皆様方にはメール等を通じてのお諮りになるかと思いますけれども、御確認いただくことになるかと思いますが、よろしくお願いいたします。

では、次の議題に入りたいと思います。「ノロウイルスによる食中毒の発生防止対策について(報告)」です。

事務局より説明をお願いします。

事務局  資料3になります。ことし3月の当部会でも御議論いただいたところですけれども、その際に昨シーズンの発生状況等、昨シーズン流行したということで御報告させていただいております。

それで、少しデータを更新したものがありますので、先に御紹介させていただきたいと思います。参考資料5になります。ノロウイルスの場合は、どうしても冬場がピークになりますので、通常の年単位で切るよりはシーズンごとに切ったほうがいいだろうということで、年度という形がいいのかどうか、ちょっと置いておいて、年度という形で区切らせていただいております。

昨年、2012年から2013年にかけてのシーズンというものが、最初のページにありますように、患者数が1万6,815名ということで、この10年間を見ますと2番目に多いという結果になっております。

次のページは事件数になりますけれども、昨シーズンのものが件数にしますと395件で、同数で2番目という結果になっております。3月の部会で野田先生からも御紹介いただきましたけれども、少しタイプの違うものが流行したということもあったのだろうと思っております。

参考に3ページ目が、国立感染症研究所で取りまとめられております感染症発生動向の42週のものです。今シーズンは、昨シーズンと比較して少ないと言っていいのかどうかわからないですが、やや立ち上がりが遅目だろうと思っています。

4ページ目は、これも国立感染症研究所でまとめられたものですけれども、地方衛生研究所からのSRSV、ノロとサポの検出報告になっております。いずれも同じような状況です。

資料3に戻っていただいて、いずれにいたしましても、昨年度の2番目の発生を踏まえて、今シーズンも早目に対策をとっていかないといけないということで、記載のような形をとっております。

1番が、ことしの10月にあらかじめ事業者に対して指導してくださいという旨の通知をしております。済みません、これは参考資料5と書いていますけれども、参考資料6になります。調理従事者を介した汚染原因が一番多いということで、それぞれの年末に向けて注意喚起なり指導を行っていただくようお願いしています。

また、通常12月に行っています年末一斉取締りを11月に行うということも含めています。また、なお書きのところにありますように、11月から1月までの間を「ノロウイルス食中毒予防強化期間」として、関係団体でも取り組みをしているという御紹介をさせていただいております。

参考資料7に、昨年策定したものの数字をリバイスしたものになりますけれども、作成して、あわせて各自治体のほうにお送りしています。

それから、資料3に戻っていただいて、3番になりますけれども、先ほど申し上げましたように、年末一斉の取締りということで、例年12月に実施していたものを、ノロウイルスが流行するシーズン、最初の期間である11月に実施するように。そして、大量調理施設であるとか、それらを含む給食施設といったところを重点的に監視指導を行うようにお願いしています。

それから、4番の関連通知といたしまして、3月にも御審議いただいたコーデックスのガイドラインを受けた管理運営基準の改正の通知、それから大量調理施設マニュアルの改正の通知。

(3)で、国立医薬品食品衛生研究所の野田先生のところで研究いただいておりました一般食品からの検査法も、あわせて通知させていただいている状況です。

それから、5番で、関係団体による取組みとして、先ほど申し上げましたけれども、強化月間を設定して啓発活動をされたり、また全国で5カ所の講習会の開催を予定されております。

また、(3)で、テキスト、ポスター、リーフレットなども配布されると伺っております。

その次のページから添付しているものは、これらの講習会等の一部ということで、野田先生の資料の一部になっております。

今シーズン、ノロウイルスの予防、年間を通して見ますと患者数が6割を超えているという状況ですので、発生する前に取り組もうということで、これらについて取り組んでいる状況でございます。

○山本部会長 ありがとうございました。

それでは、今日は野田先生からノロウイルスの話をしていただくということで、「ノロウイルス食中毒の現状と対策」について御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

野田委員  では、11月になりますと、ノロウイルスの本格的な流行が始まりますので、ノロウイルスの感染症の予防に関する基礎的な知識をもう一遍おさらいしていただくということで、今日お話させていただきます。

PP

今日の話は、食中毒・感染症の発生状況、それから特徴、予防法。最後、事務局からお話がありましたけれども、検査法について、多少触れる予定です。

PP

事務局から説明がありましたように、ノロウイルスの食中毒は事例数で約4分の1、患者数で半分ぐらいを占めていますが、昨シーズンは60%以上がノロウイルスによる食中毒でした。

PP

一方、過去10年間程度の大規模食中毒事例を見ますと、20事例のうち約半数はノロウイルス、原因食品・施設としては、基本的には不明ですけれども、仕出し屋が提供したお弁当が中心になっています。このように非常に大規模な食中毒を起こしてしまいます。

PP

原因食品につきましては、従来、二枚貝等が原因とされていましたけれども、現在は調理従事者からの2次汚染を受けた食品が主流を占めています。原因食品として特定される事例は多くなく、原因食事として特定された事例が多数を占め、仕出し弁当とか宴会料理、給食が多くなっています。

PP

御存じのように、ノロウイルスは食中毒だけではなくて、感染症も引き起こします。ノロウイルス食中毒の患者は、大体1万人から1万5,000人程度ですけれども、感染症発生動向調査に基づく感染性胃腸炎患者数から推定するノロウイルスの患者数は100万人を超えるということで、実際はそれらの多くの患者が感染して、たまたま調理施設とか集団施設に持ち込まれることによって、ノロウイルスの食中毒、感染症に至ることになります。

PP

そのため、折れ線グラフで示しました感染性胃腸炎の発生動向と、食中毒を含めた集団発生の発生件数は、このようによく一致しまして、11月、来月から急激にふえてくることが予想されます。来年3月ぐらいまでは多発すると見られます。

PP

事務局からも説明がありましたように、今シーズンの流行状況につきましては、まだノロウイルスの動きは活発ではありません。

PP

隣に研究班長がおりますけれども、厚労科研費の「食中毒調査の精度向上のための手法等に関するための調査研究」の分担研究において、全国の地研の先生方の協力で、ノロウイルスの今シーズン検出された遺伝子型について情報提供をいただきました。昨年流行しましたのは、2012変異型と言われる遺伝子型GII/4で、全ノロウイルス患者の約4分の3程度は、このウイルスだったと推定しています。

現状ですけれども、きのう時点におきまして、多くの自治体からノロウイルスの検出報告は受けておらず、顕著な動きは確認されておりません。報告を受けたものにつきましては、少数ですが、このようにGII/4以外にもGII/2、3、5、6といった多様な遺伝子型が検出されています。したがって、今後これらがどのような動向を示すかは、現時点では何とも申し上げられない状況です。

PP

続きまして、特徴についてお話いたします。

PP

今さらですけれども、臨床症状としては、発熱、嘔吐、下痢あたりが主徴です。潜伏期間は1日から2日程度です。発症率につきましては難しいのですが、これは食中毒事例から見た発症率で、喫食した人の20%から70%程度が発症するというデータがございます。

PP

ノロウイルスの感染経路につきましては、基本的には感染源は全て患者の便中に排泄されたウイルスか、嘔吐物中に排泄されたウイルスです。そのウイルスが感染した調理従事者から調理中に食品汚染して食中毒を起こすケース、これが現在、主流を占めています。二枚貝等につきましては、便から下水道に行き、そこで処理し切れなかったウイルスが海を汚染して、このような貝類に蓄積されて、それを加熱不十分、または生で食べたときに食中毒に至ります。

感染症の感染経路としては、基本的には接触感染で、患者からの直接的な接触感染もあれば、患者の手指等を介して、ドアノブとか環境を汚染して2次汚染する場合があります。それから、嘔吐物あたりの処理が不十分ですと、ノロウイルスが乾燥して塵埃となって、空気感染に似た感染なのですけれども、ほこりやちりを吸って感染したことが推定される事例が報告されています。それ以外には、例えば患者から直接お母さんのほうに飛沫が飛んで、飛沫感染が起こるケースもあります。

このように、経路は多彩ですけれども、全て口から入る経口感染を起こします。

PP

物理化学的性状につきましては、ノロウイルスは培養することができませんので、基本的にはわからないことが多いわけです。このデータは、ボランティアの感染実験に基づくもの、あるいは代替ウイルスによるものの結果です。pHは非常に安定で、消毒に関しましては、エンベロープを持たないために、一般的に使われているアルコールが効きにくいとされています。加熱につきましては、60℃、30分程度で感染性を保持し、温度につきましては低いほど安定です。このことが冬季に流行する一つの要因となります。それから、乾燥状態でも比較的感染性を長く保持しまして、凍らすことによってウイルスが死滅することはありません。

PP

感染しますと、便中あるいは嘔吐物に多量のウイルスが出ます。こちらが便、こちらが嘔吐物のウイルス量をlog(ログ)で示してあります。赤が発症者のケース、緑が非発症者のケースです。発症者の場合は、1g当たり10億個以上のウイルスが出るケースがあります。非発症者では、比較的少ない場合もありますが、発症者と同程度、ウイルスが出る場合もあります。嘔吐物中には、1g当たり100万個程度のウイルスが出るとされています。

PP

10億個のウイルス、1g当たりが存在しますと、仮にそれが0.1g、ちょっと便が手についた状態を想定しますと、それがお風呂に溶けますと1cc当たり約100個。それから、シンクの水に溶けますと1cc当たり2,000個程度。コップ1杯に溶けますと、1mm3 当たり、すなわち水1滴程度に1,000個程度のウイルスが含まれることになります。したがいまして、ごくわずかの汚染があっても、このように環境を汚染してしまいます。

PP

ノロウイルスの症状は、一般に2日程度で治りますけれども、便中には、その後しばらくの間ウイルスが排泄されてきます。検査方法によって、どのぐらいの期間まで検出されるかは異なりますけれども、高感度のリアルタイムPCR法等で検査しますと、10日目で100%、1カ月ぐらいたっても、まだ4分の1の人からウイルスが排泄されます。したがいまして、症状が治った後でも長期間、ウイルスが便に出てくることが特徴です。

PP

また、感染しても症状を起こさない不顕性感染を起こすことがあります。不顕性感染率につきましては十分なデータはありませんけれども、東京都で起きました集団発生事例において、喫食した人から発症、非発症にかかわらず調査した結果ですと、非発症者の20%程度からウイルスが見つかったということで、この程度の割合で不顕性感染を起こすと推定されます。

PP

以上のように、感染しますとふん便や嘔吐物中に大量のウイルスが排泄されます。症状が消えた後も、長期間ウイルスの排泄が続きます。感染しても症状が出ない不顕性感染を起こすことがあります。不顕性感染を起こしても、便中にウイルスを大量に排泄します。一方で、感染力が非常に強く、少量のウイルスでも感染すると発症してしまいます。また、環境中で感染性が長期間維持されまして、なかなか不活することができませんし、一般的に使われるエタノールでは効きにくい。ウイルスが非常に小さいので、除去が難しい。このような特徴によって、ノロウイルスの食中毒の制御が難しいということが言えます。

PP

次に、ノロウイルス食中毒の予防法に関してお話します。

PP

食中毒予防の3原則は、清潔に調理する「付けない」。冷却して保存。迅速に調理する、「増やさない」。そして、「やっつける」。加熱して、細菌を死滅させるということです。ウイルスは細菌とは違いまして、人の腸管細胞の中でしかふえることができません。したがって、ふやさないということは、ノロウイルスについては当てはまらず、「付けない」と「やっつける」の2原則になってしまいます。しかしながら、「やっつける」自体は加熱すればいいわけですけれども、汚染された場所を特定することが難しいということで、付けないことを確実にするためには、調理施設の中にノロウイルスが入っていない状態をつくる必要があります。

そこで、ノロウイルスの食中毒を予防するためには、「やっつける」、「付けない」の前に、施設内に持ち込まない。それから、仮に持ち込んだとしても、施設内に汚染を拡げない、感染を拡げないといった対策もあわせて行う必要があります。

PP

施設内にウイルスを持ち込まないためには、持ち込む要因を把握しておく必要があります。調理従事者が持ち込む場合は当然ありますし、施設の食品等の納入業者が持ち込む場合もあります。また、利用者の場合でも、不顕性感染を起こしている場合もありますし、お子さんが急に発症して施設内で嘔吐するケースもありますし、下痢を起こしてトイレを汚染するようなこともあります。また、ノロウイルスに汚染された食品によって持ち込まれるケースもあります。したがいまして、持ち込まないという対策を確実に行うためには、調理従事者だけでなく、関係者、利用者、そして食品に対しても注意を行う必要があります。

従事者に関しましては、感染したら休む。手洗いの励行。健康状態の把握が重要になります。利用者に関しましては、利用者専用のトイレをつくるなどの施設の改善や、利用者に対しての注意喚起を行う必要があります。

PP

一方、そのように持ち込まないという対策を行うことは、なかなか難しい側面もありますので、今度はそれを施設内に仮に持ち込まれたとしても、拡げないという対策を行うことが必要です。そのポイントとしましては、1つは嘔吐物を代表とする汚染物の適切な処理を行うこと。それから、定期的な清掃・消毒を行うこと。それから、トイレ後の手洗いを徹底すること。ここに書いてある定期検査というのは、ノロの検査を行えということではなしに、衛生的な環境が維持されているかというATP簡易検査などを使って、施設環境がきれいであることを確認していただきたいということです。

PP

それから、熱を加えることに関しましては、事務局から説明がありましたように、コーデックスで加熱基準が設定されたことに加えて、食品の安全性をより確保するという両方の面から、現在は中心温度を85℃~90℃で90秒間以上保つことが必要とされています。

PP

食中毒の場合には、予防3原則の最後が「加熱する」なのですけれども、ノロウイルスの場合は、非加熱の調理食品だけでなく、加熱の調理食品であっても、加熱後に汚染が起きて食中毒を起こすケースがありますので、最後のとりでが、付けないということになります。この付けないということを確実に実行することが最も重要になります。当然、不顕性感染を起こしたり、回復後もウイルスを排出するケースもありますので、ノロウイルスを保有しているとしても、食品に付けないように十分な取り扱いを行う必要があります。

また、ノロウイルスは食品を直接触るときだけではなく、食器や調理器具を汚染して間接的に食品が汚染されるケースもありますので、食器や調理器具を扱うときにも、食品を扱うのと同じように注意して扱う必要があります。

PP

実際の食中毒事例から見てみますと、調理従事者からの2次汚染のケースでは、これは全て学校給食の事例でございますが、焼き上げた後のパンを軍手で持つことによって汚染した事例。それは、軍手からウイルスが見つかったことで証明されています。

それから、パンに振りかけるためのきな粉と砂糖を素手で混ぜて、パンにまぶすというきな粉ねじりパンというものがあるのですけれども、そのきな粉と砂糖をまぶすときにウイルスが汚染して、結果的にパンが汚染した事例。

それから、給食用のカップを素手で持って、その結果、カップに入れられたデザートのみかんが汚染して食中毒になった事例。

それから、シンクに嘔吐して、その処理が不十分な状態で野菜等を処理した結果、トマトサラダが汚染された事例、このような事例があります。

したがいまして、食品だけではなしに、食材、食器、環境等を扱うときの注意が極めて重要です。

PP

以上の持ち込まない、拡げない、付けないということを具体的にどのようなことで徹底するかということにつきましては、徹底した手洗い。環境の清掃・洗浄。汚染物の処理。健康管理、この4つに集約されると思います。

PP

手洗いにつきましては、これは東京都のデータでございますが、代替ウイルスを100万個つけまして、いろいろな方法で手洗いを行った結果、どれぐらいウイルスが残ったかというデータでございます。通常、皆さんが行っている流水で15秒行う手洗いでは1%程度になったそうです。1万個程度残っていますので、この手洗いだと不十分であることになります。最も効果的な手洗いであったのは、ハンドソープで10秒もみ洗いした後、流水で15秒すすぎを、このもみ洗いとすすぎを2回繰り返すという方法が最も効率的で、その方法ですと0.0001%、数個レベルまで落ちたということで、食品取扱業者の方にはこのような手洗いが推奨されることになります。

PP

手洗いを行うタイミングにつきましては、当然食品取扱施設の中では、大量調理施設衛生管理マニュアルに記載されているときに行う必要がありますが、それだけでは不十分で、日常生活においてノロウイルスに感染しないための手洗いというのを徹底する必要があります。特に、嘔吐物を処理したり、お子さんの嘔吐や下痢便を処理したとき、公衆トイレを使用した後には、特に注意が必要です。

PP

次に、環境の清掃・洗浄の意義につきましてです。

PP

環境の清掃・洗浄の意義をいま一度考えてみたいのですが、当然、衛生的な環境を保って、一般細菌や食中毒菌を減らして、細菌が増殖充足できないような環境をつくること。それから、2次汚染を防止すること。当然、きれいな環境で作業を行うための衛生意識の向上とか、いろいろな役割があると思います。

ウイルス学的にはどうかということですけれども、実はウイルス学的にも非常に重要です。1つは、ウイルス量を減らすということがあります。次に、有効な殺菌・消毒が行えること。最後にウイルスの存在性自体も低下できるということがあります。

殺菌・消毒が有効に行えるということに関しましては、先ほどの漬物に関して議論がありましたように、事前の手洗いによって有機物を少なくしておかないと、次亜塩素酸ナトリウムを含めて、消毒剤自体は有効に作用いたしません。

上のグラフは、清浄環境で次亜塩素酸ナトリウム、アルコール、市販消毒剤等を使ってネコカリシウイルスの不活性実験を行った結果です。未処理の場合が10の5乗から6乗程度のウイルスがあった。そのときに、これらの処理で、このように塩素であっても、それからエタノール類であっても、市販の消毒剤の一部であっても、このようにある程度ウイルスを減らすことができます。

しかしながら、汚染環境、ここでは5%のアルブミンが含まれた状態ですけれども、で行いますと、清浄環境では有効性があったものでも、なかなか効きにくくなります。高濃度の塩素では、その場合でも有効に作用したということで、いかに清浄な環境を維持するかということが殺菌・消毒に重要であるかを示しています。

PP

一方、ウイルスの生存性に関しましても、清浄環境だと死滅しやすいというお話をしたのですけれども、その根拠となるデータです。上が清浄環境で下が汚染環境です。赤が感染価の動きを見たもので、この青とか緑はウイルスの遺伝子の定量を見たものです。一番上の2つがノロウイルスとネコカリシウイルスの従来の方法で見たもので、下は現在、我々が開発中の、感染性粒子だけをできるだけ見つけるように工夫した検査法で見たものです。ここの時点が乾燥した時点を示しています。

清浄環境では、この10の4乗から5乗いたウイルスが、乾燥した時点でウイルスの感染価は検出できなくなります。一方、10%のビーフエクストラクトが入った汚染環境ですと、このようにじわじわウイルス量が減っていきまて、60日ぐらいまでは感染性粒子を検出することができます。この結果からも、乾燥状態においても清浄環境ではウイルスが死滅しやすいことが示されます。

PP

それから、乾燥の方法につきましても若干違いが出まして、上は強制的に風乾して行った結果、下は自然乾燥で乾燥させた結果です。強制的に乾燥させますと、このようにウイルスの感染価の低下が早くて、自然乾燥させますと感染価の低下が緩くなります。このことから、乾燥自体を強制的に行うとウイルスの不活化が速くなることを一方では示していますが、汚染環境でない非汚染環境で行っても、同様なことが言えます。

PP

液体中におきましても同様なことが言えまして、上がきれいな環境、下が汚染環境のデータです。きれいな環境ですと、室温で見ますと、3日目では感染がなくなりますが、10%のビーフエクストラクトが存在していますと、9日目でも2log(ログ)程度しか落ちず、ほとんどウイルスの不活化は観察されません。

PP

以上のようなことから、清掃や洗浄といったことはウイルス学的にも非常に意義があって、これらを徹底することはノロウイルスの予防に極めて重要であると言えます。

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以上のことから、現在は基本的には次亜塩素酸ナトリウムを推奨しているわけですけれども、使い方によっては、アルコール類とか酸性電解水、その他効果が確認された消毒剤等を使うことができると考えます。手洗いにおきましても、アルコール類とか酸性電解水あたりを使うことによって、ウイルスの不活化を進めることができると考えています。

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汚染物の処理につきまして。

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ここが現場では一番難しいのですけれども、本人は処理したと思っても、そこにはウイルスが残っているケースが非常に多いと考えられます。自分自身はちゃんとやったと思うのですけれども、当然きれいにはなるわけですが、目に見えなくてもここにウイルスが残っていますので、それから汚染が広がることが実際の現場では起こり得るわけです。火事の場合は、目に見えるのですけれども、消化と同じように初期の対応というものが最も重要になります。

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そのときにどのように対応するかということに関しまして、まず物理的に除去すること。次に、熱を加えること。最後に消毒剤の使用ということを考えていただきたいと思います。当然、対象物によっては熱を加えることができなかったり、消毒剤を使うことができなかったりするわけですけれども、この順番を守って方法を選択することが大切です。

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具体的に嘔吐物やふん便の場合を考えてみますと、当然、物理的に除去することは、廃棄して捨てたりぬぐい取ることを意味します。きれいになったものについて、加熱することを考えます。スチームアイロンで熱を加えるとか煮沸するといったことで不活化を考えます。

それらを行うことができないようなケースにおいては、次塩素酸ナトリウムあたりで消毒することを考える。手洗いにつきましても、流水でできるだけウイルス量を落として乾燥させて、エタノール等で消毒する。この順番を守ればウイルスが生き残るリスクは減ると考えます。

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処理した後、どうしてもウイルスが残っている可能性がありますので、そこはしばらく使わないような形で対処することが望まれます。

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ノロウイルスの汚染が起こりやすい場所というのは、当然、便や嘔吐物が汚染したところですけれども、そこから手指等を介して2次汚染を起こしたところが汚染しますので、水道の蛇口とかドアノブ、洗面台あたりが環境の清掃や洗浄の中心となります。

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健康管理ですけれども、ノロウイルスに感染したと思ったときは、個人として、そしてまた組織として対応していただく必要があります。当然休んでいただくのが一番ですので、組織としては休ませていただきたい。それから、できるだけ医療機関を受診してノロウイルスの検査を受けて、陽性であった場合はしかるべき対処を行う。2次汚染の防止に努めて、そのことについても責任者へ連絡を行う。このような形の対応が必要になります。

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一般的に、従業員の衛生管理というものは、本人だけしか行っていないケースが多いと思うのですけれども、家族あるいは近い知人・隣人あたりの健康管理についても把握することによって、本人が不顕性感染を起こす可能性というものを、このような情報から得ることができますので、その辺も含めた健康管理を行っていただきたい。

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最後に、検査法についてお話します。食品からのウイルスの検出につきましては、先ほど述べましたように、食品が特定される事例が非常に少ないということがあります。その原因としては大きく2つありまして、1つは、これまでの通知法では、二枚貝を中心とした食品でしか有効な検査が行われなかったということ。もう一点は、食品のような汚染レベルが少ないものを患者の便と一緒に検査しますと、コンタミネーションを起こす危険があります。それから、食品検査をする場合には非常に多数の検査を行う必要があるということで、検査そのものが余り十分には行われていなかった。検査法の問題と検査体制の問題、両方があることによって、実際にこれまで検出されたウイルスは二枚貝を中心として、それ以外からは検出されることは少なかったということがあります。

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一方、現在は調理従事者からの2次汚染が原因とされる事例が多いという背景から、何とか食品一般からも検出できる検査法を確立したいということで、厚労科研費の援助を受けまして長い間検査法の開発に取り組んできました。その1つがパンソルビン・トラップ法と我々は呼んでいますけれども、今回、22日に通知法の改正とともに通知された方法です。

この方法は、食品の種類に異存せず、同一手技で検査ができること。それから、多検体処理も比較的容易であること。特別な検査機器が要らないといったメリットがありますが、一方で必要な試薬として、これまで余り使われていないパンソルビンとか抗血清などが必要になります。

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実際に食品の検査を行いますと、例えば焼きそばのように油が多いもの、ポテトサラダのように炭水化物が多いもの、このように乳剤化するわけです。

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これまでの方法ですと、このように乳剤化した上清において食品由来の成分が一緒に混入してきます。これを従来の方法では、ウイルスと一緒に超遠心分離等で濃縮するために、食品由来の成分とウイルスを完全に分離することが困難であったことから、検出率が十分ではなかったということです。

そこで、ノロウイルスに対する抗体を添加して、パンソルビンと言いますのは、黄色ブドウ球菌の菌体そのもので、表面にプロテインAというたんぱくを含んでいます。このプロテインAというのはIgGに結合しますので、結果として黄色ブドウ球菌とIgGとノロウイルスの3つの複合体ができます。複合体ができますと、黄色ブドウ球菌は低速の遠心で落とすことができますので、容易に回収できます。

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黄色ブドウ球菌がこのようなボールだと考えると、ノロウイルスは表面のつぶのようにくっついた状態です。

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そのような状態で、先ほどの食品乳剤を遠心しますと、今度は黄色ブドウ球菌菌体だけ回収することができます。そうすると、あとはこれから抽出操作を行ってウイルスを回収することができるということで、このような食品から夾雑物を完全に除いて、ウイルスだけを大体1,000倍に濃縮することができる方法です。

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この方法自体は、秋田県の斎藤先生が開発した方法です。¥検出限界を調べた結果ですと、1g当たり数十個のウイルスがあれば見つけることができます。

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しかしながら、途中申し上げましたように、実際には実験室内の汚染をいかに防止するかという問題もあります。それから、この方法は今、いいところだけを述べましたけれども、方法論としてまだ完全ではなくて、特にリアルタイム検出系での検出感度は十分なものではない。このような問題点はまだ残っている状態です。

しかしながら、現在、食品一般からウイルスを見つけることがないという状況が続くということは、汚染経路の解明とか対策に生かすことができないので、今回の改定でこの検査方法を通知法にさせていただいたということです。

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最後ですけれども、ノロウイルスの予防に関しましては、特別重要な事項はなくて、食品衛生の基本、感染症対策の基本である、手洗い、健康管理、施設の清掃・洗浄あたりが大切だということを最後に述べまして、お話を終わらせていただきたいと思います。

○山本部会長 どうもありがとうございました。

それでは、事務局及び野田先生からの説明に関しまして、御質問、御意見等ございますか。はい。

小澤委員  今、御説明のあったウイルス濃縮法なのですが、1022日の通知で、これは当該通知を下記のとおり改正したので、食中毒調査等の際にはこの方法により実施されるようお願いしますという文言になっているのですけれども、これは、この方法以外の従来法を使ってもいいということでよろしいのですか。今後は、この方法によらなければ。

○山本部会長 誰に。

小澤委員  事務局の方に。

事務局  もともと平成15年の通知がありまして、それに今回のものを追加したという改正をして、今後はこの方法というのは全体を示していますので、もともとあった方法も、もちろん先ほど少しありましたけれども、ほかの食品に準用できる場合があるという記載もありますので、必ずこれでということはないです。先ほど野田先生が紹介された方法で必ずやらないといけないというものではないです。

また、食中毒調査の段階は、いろいろな方法で原因を究明するという一方の問題もありますので、いろいろな方法を駆使してやっているという現状もあるというのは、今までのとおりだと思います。

小澤委員  こういうノロウイルスの食品中の検査をするのは、ほとんど地方衛生研究所ということになると思うのですけれども、この通知に関しては、かなりいろいろ問題点があると我々の中では議論がありまして、その大きなものは、このウイルス濃縮法に必要な血液製剤、ガンマグロブリン製剤を使うことになっているのですけれども、実はガンマグロブリン製剤は医薬品ですので、医薬品の目的外使用に当たるということで、これは製薬会社と各検査機関がMTAを結ばないと使用できない。マテリアル・トランスファー・アグリーメントですね。この医薬品に関して、検査目的にこれを使用しますという同意を取りつけないと、恒常的に使用できないということになります。

これをある意味で、公定法的に提示されると、基本的にこの試薬の入手が非常に困難だということで、実施が困難になる。検査自体がほとんど実施できなくなると考えているのです。

しかも、血液製剤ですので、製造数が限られていて、しかもガンマグロブリン製剤というのは重症感染症とか免疫不全の患者さんに必ず使わなくちゃいけないので、ロットもきちんと管理して、しかも欠品が出ないようにしなくちゃいけないということで、これを目的外使用に大量に使用するということは、基本的には難しいということがありますので、この方法をスタンダードな方法として採用しなくちゃいけないということになれば、地方衛生研究所としてはとても難しい。

ということになると、現場ではこれはやれないということになりますので、食品からのノロウイルスの検査は一切やらないという方向に、実質的にはそういう方向になってしまうだろうと予想されます。

○山本部会長 野田先生、何かありますか。はい。

野田委員  ただいまの御指摘の点なのですけれども、検査法自体、抗体を使わざるを得ないということで、ガンマグロブリンは原則的にはその選択肢の1つとして、位置付けられています。基本的に、ほかの抗血清とかモロクローナル抗体あたりを使えば、必ずしもガンマグロブリン製剤を使う必要はないわけです。

ただ、実際多様なノロウイルスの検査に対応できる抗体というものを、現状でどのような形で入手するかという問題は一方であります。したがって、いろいろなウイルスに反応できるモノクローナル抗体の開発を進めるとか、業者のほうから、現在も汎用な抗体というものが市販されていますので、そのような抗体を使用させていただくような形に、今後持っていくとか、そういう形で対応することも今後は可能だと思われるわけです。

現状において、選択肢としてガンマグロブリンが主な選択肢になっているというのが否めないところは、確かに御指摘のとおり、あると思いますので、そこについての入手経路につきまして、できるだけこういった検査に対応できるような形で供給していただけるようなお話を進めさせていただきたいと思いますが、結果的にどのようになるかは、まだお答えできないということです。要するに、ガンマグロブリンというものを使わなければいけないというものでも、一方ではないということは御承知おきいただければと思います。

小澤委員  お言葉を返すようですが、現状ではヒト血清とか、ここに書いてあるウイルス特異的抗血清は手に入らないわけです。現状、ないわけですから。そうすると、ガンマグロブリン製剤を使うしかない。要するに、選択肢は現状でやるとすればここしかないのです。

ですから、ほかの可能性はあるよと言われても、それは理論上はあるのですが、現実にそういう製品もなければ、そういう入手経路も確立していない、供給する体制も全く整っていないというところでは、ガンマグロブリン製剤を使うしかないわけですけれども、これは明らかに医薬品ですから、医薬品を目的外使用することになりますので、非常に面倒な手続をして各地方衛生研究所がバクスターならバクスター、そういう製造会社と目的外使用に同意する旨の文書を取り交わさないと、これは使えないことになります。これは、地方衛生研究所全部、あるいは保健所の検査所全部でこれを取りつけてやるということは、基本的には不可能、極めて困難と思いますけれどもね。

○山本部会長 この通知を出した後も、前のやつを使えるということになっていますので。

野田委員  もちろんです。従いまして、従来の方法でやることは可能ですので、そちらで対応していただく方法もありますし、ぜひこの方法を使いたいという地研の先生であれば、この方法をやっていただければ、それはそれでできると思うのですけれどもね。

小澤委員  この通知の1ページ目の一部改正についての文書を読むと、今後はこの方法でやってくださいと読めるのですね。これは、問い合わせをすれば従来法でもいいですよという返答が返ってきたということです。ですから、この通知に関しては、多くの地研は、従来法はだめで、この方法を今後やってくださいと読んでいるのですね。文言を読んでいただければわかると思いますけれども、今後は食中毒調査等の際には、この方法により実施されるようお願いしますと書いてあるので、従来の方法もやってもいいですよとはなかなか読めないですね。だから、そういうことも非常に誤解を与えるということもあります。

それから、こういう文書を出されるについては、地方衛生研究所がこういう方法を果たして実施可能なのかどうかということをよく調査された上で、この文書を発出されたのかどうか、非常に疑問に思うというか、現場の事情を多分よく理解されていなくて、この方法を使ってくださいと文書をつくられたのではないかと解釈せざるを得ないということです。

少なくとも、私は地方衛生研究所全国協議会の会長をしておりますけれども、この件に関しては一切相談を受けていませんし、我々、全国協議会の理事あるいは感染部会長も、この件に関しては、この文書が発出されるまでは一切知らなかったということですので、これは非常に手続としては困るというか、現実に現場を預かる者としては、こういうことをされると非常に混乱しておりまして、ある意味では非常に困った事態になっていると言わざるを得ないです。

○山本部会長 事務局、お願いします。

事務局  もともと、この研究班で検討を行っている段階でパブリックコメントを募集していて、各団体さんには御案内していると聞いています。本年1月のノロウイルスの関係の通知の中にも、その旨を御紹介させていただいたところですけれども、確かに通知の文面がわかりにくいという御指摘については、修正する、もしくは説明する等、追加したいと思います。

小澤委員  それから、この方法を書いてある中で、ガンマグロブリン製剤を、製薬会社の製品名と製薬会社の名前をつけて文書の中に書き込んであるのですけれども、これは非常にまずい事態。先生、そう思われませんか。要するに、マテリアル・トランスファー・アグリーメントがない段階で、この会社のこの製品を目的外使用してくださいという文言を文書に盛り込むのは、ちょっとルール違反になりますね。渡邉先生。

渡邉委員  経緯はよくわからないところがあるのですけれども、ぜひお願いしたいのは、これは感染研も多分同じことだと思うのですけれども、厚労省が通知を出す場合には、別に許可じゃなくて、事前にこういうものを出しますということを、関係者、特に地研が実際の現場でやるわけですから、そこに前もって一言言っていただければ。感染研がもし出す場合には感染症課といろいろ相談しながら、地研とも相談して出しているのだと思うので、多分、その辺の誤解があったのではないかと思います。

事務局  いろいろ不手際がありまして、申しわけございません。また、先生方とも御相談して、修正すべき点は修正させていただきたいと思います。

○山本部会長 それでは、御意見をお聞きして、修正できるところはちゃんと修正しなきゃいけないということだと思います。

ほかにございますか。

今村委員  ノロウイルスの対策全体についてなのですけれども、これだけ数がふえていると、食中毒対策としてやっていくにはそろそろ限界なのではないかと、私の目からは見えます。例えば就業制限でも、ここまで広がってくれば考えるべきところまで来ているのではないかと思います。私の目には、コレラ対策を食品衛生対策として一生懸命やっているように見えて仕方がないです。就業制限とかになると、いろいろ難しい問題が出てくるのはわかるのですけれども、今、食中毒対策としてやれる限界までやってきていると思うのですが、ここまで来たら感染症対策としてももう少し力を入れてもらえるように考えてもらえないかと思います。意見です。

○山本部会長 ありがとうございました。そちらの方面の対策も当然必要なわけなので、食中毒関係というわけじゃなく、感染症の部局ともよく相談しながらやっていければと思います。いかがでしょう。

事務局  これまでも結核感染症課とも連携しながら通達を出したりしておりますので、今の御指摘を踏まえまして、さらに感染症対策の観点からも連携をとって、必要な措置を検討していきたいと思います。ありがとうございました。

○山本部会長 ほかにございますか。

特にないようでしたら。事務局はほかにございますか。

事務局  いえ、特にございません。

○山本部会長 それでは、少し時間が延びてしまって申しわけありませんでした。長時間の御議論、ありがとうございます。

食中毒部会は、これで終了させていただきます。

 


(了)

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