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2014年1月17日 第5回労働市場政策における職業能力評価制度のあり方に関する研究会議事録

職業能力開発局能力評価課

○日時

平成26年1月17日(金)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 専用第8会議室(19階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)


○出席者

参集者

今野参集者(座長)
大久保参集者
北浦参集者
谷口参集者
松浦参集者

事務局

杉浦職業能力開発局長
尾形総務課長
伊藤能力評価課長
篠嵜主任技能検定官
小野能力評価課企画調整専門官
牧野職業安定局派遣・有期労働対策部企画課雇用支援企画官
岡労働基準局労働条件政策課労働条件確保改善対策室長

○議題

(1) 労働市場政策における職業能力評価制度のあり方について
(2) その他

○議事

○今野座長 「第5回労働市場政策における職業能力評価制度のあり方に関する研究会」を開催します。本日は、これまでの議論やヒアリングを踏まえて事務局で資料を用意していただいています。まず説明をいただいて、議論をしたいと思います。事務局から、資料等について説明をお願いします。

○小野専門官 本日、阿部委員、黒澤委員、笹井委員、内藤委員は、欠席との連絡を頂いています。また、大久保委員については、遅れて到着される見込みです。

 配布資料の確認をさせていただきます。資料1は前回の議論の概要、資料2は労働市場政策における能力評価のあり方のポイント(素案)、資料3は技能検定の労働市場政策上の課題と対応案、資料4は技能検定制度と業界検定構想の関係整理(試案)、資料5は「職業能力見える化」推進に資する能力評価体系整備の全体像のイメージ、資料6は職業能力評価施策に関わる国の関与の類型及びその考え方、資料7は現行の職業訓練・受講支援制度と能力評価の関係、資料8はジョブ・カード制度について、資料9はキャリア・コンサルティングについて、資料10は職業能力評価制度と教育訓練機会を組み合わせたキャリアアップ支援の具体的イメージ、参考資料1は来年度予算に盛り込んでいます業界検定のスタートアップ支援のポンチ絵、参考資料2は技能士の活用実態に係る調査です。資料は以上です。

○今野座長 事務局から資料の説明をいただいて、その後議論しましょう。お願いします。

○伊藤課長 それでは、私から一括して資料説明を申し上げたいと思います。お手元の資料1、第4回研究会で頂戴した御意見の概要です。前回、前半でJILPT、また谷口委員に御協力いただきまして、英、独、米における職業能力評価制度に関するヒアリング意見交換の実施をさせていただきました。ここにありますように、英国NVQQCFについては、もともと低学歴者層、あるいは移民対策という観点が強く、転職など外部労働市場での活用はあまり念頭に置いていないのではないか。また、ドイツのDQRに関し、EQFへの適合という、いわば外圧的な要因が主要な動機であって、就業機会の創出といったところについては、必ずしも考慮されていないのではないか。また、ドイツの資格は各評価制度共に職業訓練とのリンクを重視する傾向があってと、こういった点については本邦における検討においても参考になるのではないかと、こういった御指摘を頂きました。

 ここには書いていませんが、総括的に今野座長から、とするならば、仮にこの研究会の議論と非正規雇用労働者等のキャリアアップに資する能力評価の仕組みがうまく出来上がれば、ある種、世界初めてということも言えるのではないかという話も頂戴したところです。

 後半では、私どもから提供させていただきました論点資料などに基づきまして、様々な御意見を頂戴しています。1ページの下にありますように、技能検定など、現行制度の現状パフォーマンスについても、整理が必要ではないか。次のページにわたりまして、現在、雇用政策研究会などいろいろな場面での議論があるわけですが、労働市場(政策)におけることを標榜している研究会である以上、労働市場政策の方向性についてもポイントを成果物に記述する必要があるのではないか。なぜ、非正規雇用労働者が重点分野なのか、また、なぜ国の公的な関与が必要なのかといった観点に関し、3つ目の○に係ってまいりますが、人的資本の過小投資以外にマッチングの際の情報流通等々の観点から、そのロジックを明確化すべきではないかという御指摘を頂戴しました。

 また、能力評価と訓練の関連付けに関しまして、様々な公的訓練との連携が重要ではないか。また、一番下ですが、訓練の性格に応じて類型化した上で、それぞれの評価との結び付けを考えるべきではないかといった点です。

 さらに、次のページですが、前回の資料5、能開法の体系に関しまして、そこにありますような訓練と能力評価の有機的連携という能開法の思想が大変重要な点である、また、ドイツなども参考に、使用者側、産業界が訓練の中身にしっかりコミットすることが大変重要であるといった点。また、能力評価と職務経験との関わりといった観点。スペシフィックなスキルとジェネラルなコンピテンシースキルとの関係、関わりなど、それぞれ大変重要な点について御指摘を頂戴したところです。

 今回は、こうした前回の重要な御指摘も踏まえて、前回の資料で申しますと、資料4、主要な論点と整理の方向性の後半、能力評価制度のあり方、政策編、提言編全般に関わり、集中的に御審議をいただければと、事務局としては考えています。

 資料2以下が、今回、御議論いただく素材、たたき台として準備をさせていただいた資料です。資料2が、全体像に関わる部分です。今回、御議論いただきたいと考えています論点の柱立ての考え方としまして、上の囲みにありますように、もともとのこの研究会の出発の目的でありますが、労働市場における「職業能力の見える化」と、非正規雇用労働者等をはじめとするキャリア形成上課題を抱える各層のキャリアラダーとしての積極的活用促進を期すという観点で、ここにありますように大きくは3点ぐらいの課題に整理できるのではないかと思います。

1点は、もともとの私どもの問題意識でもある新たな業界検定の整備。これに併せて技能検定をはじめとする既存の評価制度についても、この新たな業界検定との役割分担などに留意をしながら、その位置付けを明確化し、また、ニーズ、課題に応じた見直しを行う観点からの御議論を頂戴できればと思っております。また、今申し上げました業界検定、技能検定などを含めて、当然、それぞれがばらばらに存在機能していることにはならないわけで、能力評価の仕組み全体の体系化という観点で、例えばレベル物指し、国の関与の下での質保証の仕方、そういった取組の中での比較等の客観評価の可能性を担保した上での公的支援等の可能性、こういったことが大きくは能力評価そのものに関わる御検討いただきたい課題としてあるのではないかということです。

 もう1つの大きな柱としては、この間一貫して御議論いただいてまいりました能力評価と教育訓練はもともと一体であって、それを統合的に運用することによって初めて能力開発の実が上がる。さらに、「労働市場政策における能力評価研究会」ですので、その成果を教育訓練、キャリア形成支援、マッチングといった労働市場政策上の関連制度と統合的に運用することによって、実が上がることが言えるのではないかと。そういった観点からの連携、基盤のあり方、これも、今後、御議論いただく重要な柱ではないかということで、まず御提示を申し上げたところです。

 今申し上げました柱で言いますと、資料31,2に相当する部分です。資料3ですが、前回、座長からも宿題を頂きましたが、民間の業界検定に関しましての課題と対応策等については、前回、資料として御提示していますが、技能検定についても、同じ形で検証が必要ではないかと、そういった御指摘を踏まえ、右上にはこうした観点からの能開基本調査の結果を記しています。また、技能検定の制度上のカバレッジ等の観点で、今年度新たに実施した委託調査の結果等を列挙していますが、ここは説明を割愛しまして、これら様々な調査に基づいて技能検定の活用実態について、左上にありますように、従業員の能力開発の目標、企業全体の技能底上げ、職場の共通言語形成という観点からは、相当程度のコントリビューションを評価されていると。それを前提にして受検勧奨策の企業の取組も認められるということです。

 ただ、他方で、現場の技能や変化に合致していないとか、あるいは受検機会の限定という御指摘もあります。また、採用等での要件スペックとしての活用は限定的ではないかと、こういう一般的な評価があると把握しています。

 その具体の要因について、左下ですが、技術、産業活動の変化により、技能と技能検定とで、把握しようとしている技能の内容に乖離が生じているのではないかと。実技検定の手法の実践性という、かなりプラティカルな課題、さらには、これは技能検定そもそものコンセプトにもかかってまいりますが、全国統一的な試験というコンセプトであるが故に、個別の企業のニーズの反映が難しいのではないかと、こういった一連の課題があるのではないか。受検機関に関しては、現行では、原則年1回の実施ですので、受検機会が限られている。受けたいときにすぐ受けられないという問題があるのではないかと。

 更に先ほど来申し上げていますが、もともとの技能検定制度の出発点にも鑑みて、制度設計上も採用に当たっての活用を主眼とした受検要件の設定になっていない側面があるのではないかなど、私どもはこのような点の認識をしています。それに対して右側にありますように、例えば、「試験科目及びその範囲」の見直し頻度を高めていくと。職種の見直しについては、特に北浦委員は大変お詳しいところですが、なかなか大きな制約もあるわけですが、作業の追加等の形で、より機動的に対応することが考えられるのではないかということです。実技試験の手法、試験課題についても、業界関係者の意見を随時反映する仕組みを設けていく必要があるのではないかと。

 更には、業界検定、この後で更に具体的な御審議をいただくわけですが、こちらが形になってきた場合には、もしかしたら今の技能検定対象職作業の中でも、新たな仕組みのほうがフィットすると、こういう見直しもあり得るのではないか。こういったかなり大枠の点。また、運営上の課題としては、受検機会の拡大であったり、あるいは高校生、訓練生といった就業前の者を対象とした技能検定制度の裾野に当たる3級職種の拡大ということが考えられるのではないかと、こういった点を概括的に指摘させていただいています。

 資料4ですが、ただいま申し上げました課題を抱えている「現行の技能検定制度」と、今、御審議をいただいています「業界検定構想」について、両者の関係はどのようなことが言えるだろうかを並べて整理してみた資料です。一番のポイントになりますのは、この表の中の3対象分野で、ターゲットの部分ではないかと思っています。現行の技能検定制度に関しては、どういう分野を対象としようとしているのかを、改めて今回のこの研究会の御議論も踏まえて整理を試みるとするならば、ここにありますように、「求められる能力が制度・技術・規格等との関わりで予め明確で、普遍性が大きく、変化の程度が小さい分野」がメインターゲットと言えるのではないかと。また、「顧客あるいは労働者自らの生命・安全確保等の観点から能力を厳格に評価する必要性の高い」分野ということが言えるのではないだろうか。

 それとの関わりで申し上げますと、御議論いただいています業界検定構想のターゲットに関しては、求められる能力が制度・技術・規格等との関わりが必ずしもあらかじめ明確ではなく、必然的に普遍性が小さく、逆に、変化の程度は、顧客のニーズ等に応じて、より大きなものをターゲットとすると。こういうことになるのではないかというものです。また、生命・安全確保等という観点から、厳格に能力評価をする必要性は技能検定制度の分野に比べると低いと言えるのではないか。

 こういった基本的な考え方を押さえた上で、例えば、既にライセンス制度が確立をされている分野を除く、典型的には製造業、建設業の技能分野、あるいは、知的専門職分野を中心に、今の技能検定制度が機能している。それとの対比で言いますと、業界検定ターゲット分野に関して、具体的、典型的に申し上げるならば、対人サービス分野、あるいは事務系専門職分野が典型的な対象分野と言えるのではないだろうかと。こういった対象分野、その労働者と企業の双方のユーザーオリエンテッドな能力評価制度の構築を考えた場合に、今の技能検定制度と業界検定制度がターゲットにしようとしている部分について、どういう部分が適合し、どういう部分がはみ出すという考え方で、課題と現状を整理すべきではないだろうかということで、この表全体を整理しています。

 上のほうに戻りまして、今申し上げた対象ターゲットを前提に、現行の技能検定制度については、能開法上、「身についた技」(技能)と、「理論の体系」(知識)、更には、これらを活用した実践力も評価対象にしていることが言えようかと思います。

 これに対して、業界検定については、今申し上げた範疇では、こうしたものを正に評価の対象にしようとしているわけですが、変化といったことをキーワードに考えた場合には、知識・技能を具体的な職場環境で機動的に撥揮する実践力に、より重点を置くべきではないかという考え方が成り立つのではないかと、ここでお示ししています。

 また、2の能力評価の目的・効果という観点で申し上げますと、左側の技能検定制度の目標・目的が、もちろん一定当てはまるわけですが、業界検定構想に関しては、非正規雇用労働者などの就職、キャリアアップ実現といった外部労働市場の観点からの活用に、より重点を置くべきものではないかが言えるのではないかということを示しています。

4,4となっていまして、これは誤植ですので、4,54,6と、お書き換えいただければと思います。4を飛ばして、5です。今申し上げましたターゲット、目的に対応した評価方法として、現行の技能検定制度では、知識は学科、技能については、作業試験、要素試験、ペーパーテストなど、いろいろな類型があるわけですが、実技試験と、この2つに限定をして評価をしています。

 業界検定構想も、検定が客観性、標準性を標榜する以上は、当然、学科試験、実技試験を用いることになろうかと思いますが、先ほど来、申し上げていますような変化、多様性に対応する観点からしますと、例えば就業中の労働者については仕事ぶりの評価であったり、あるいは、逆にまだ就業に至っていない方については教育訓練歴という別の物指しも、その業種、職種、ニーズの多様性に対応した形で対応に組み合わせていくという発想があり得るのではないかをお示ししています。

6の、こうしたことを前提とした制度設計・運用に係る国の関与、業界団体の役割ですが、現行の技能検定制度でも、指定試験機関方式として、業界団体を活用する仕組みが既にワークをしています。128の職種のうち14です。業界検定構想に関しては、人材ニーズを直接把握し、採用選考、人事処遇の主体ともなる観点で、業界団体等がこの検定の開発、運用のより明確な主体となり、最低限の品質保証という観点で、国がどういった形でその基準の策定、運用に関わっていくかが課題となるのではないだろうかと思います。また、前半のほうでも申し上げていますように、能力評価の開発・運用とある種一体的に教育訓練プログラムの開発・運用を行う。それらの成果としての検定、能力評価の活用としても重要になるのではないかといった点を、この表全体として示しているものです。

 ただいま申し上げた内容について、全体の位置関係はこれだけでは非常に分かりにくいだろうということで、全体の見取り図的な資料を次の資料5でお示ししています。真ん中にある部分が、検定、能力評価そのものです。これと上の部分の教育訓練・プログラム、需給調整機関、マッチングは一体の関係です。あるいは、一番下にありますように、検定に関しては、能力評価基準が「中身」の基盤となり、様々な「共通ルール」の基盤の下で、さらには受検のインセンティブ・支援措置の下で「普及・市場性確保」を図っていくことを示しています。

 一番ポイントになるのは、真ん中の検定・職業資格そのものの部分の解説ですが、一番主要な軸が横軸です。先ほども申し上げました職業能力が、制度、技術、規格企画等に規定される度合いが大きいか、生命・安全確保の関連性から厳格性が必要か、より大きなものが左側と、こういう考え方です。補足的に垂直軸は能力水準であるという考え方になっています。

 こういった横軸の考え方で、様々な職業分野をあえて相当大胆に分類しますと、一番左側に来るのが「医療・福祉専門職、運輸職、技術職等」という部分ではないかと。次のグループとしては、「ものづくり技能職、知的専門職、その他技能要素の強いサービス等の関連職」と言えるのではないかと。さらに、その右側に、「それ以外の対人サービス等のサービス職、あるいは、事務系専門職等」という職群があるのではないかと。さらに、その右側は「その他」と。

 これと検定等との対応関係で言いますと、一番左側の職群に対しましては、おおむねライセンス制度が確立していると。右側のその他に関しては、公的資格はほとんどなく、民間資格が散発的に存在したり、あるいは、一番右側にありますように、もともと資格に馴染まない業種や職種分野も存在するのではないだろうかと。その真ん中のかなり大きな領域が、今回、この場で御議論いただく中心的なエリアとなってこようかと思います。

 その中で、ものづくり技能職、知的専門職等を対象とした制度としては、まず「技能検定制度」がある。以前申し上げましたように、制度的なカバレッジは3割ですので、この図は幅をやや控え目に設定しているわけですが、これは現行制度として既に確立しています。また、対人サービス、事務系専門職エリアに関しては、現状ではごくごく限られた資格制度は散発的にあるわけですが、体系的なものがないです。後ほどまた説明しますが、それが平成26年度の予算案の中で、予算事業ですが、「業界検定スタートアップ支援事業」が認められて、逆に、これは図示上は少し過大に書いていると思っているのですが、ここに初めて1つの出発点、取っ掛りができると、こういう形になるのであろうと。

 それぞれに関して、技能検定制度も、先ほど申し上げましたが、上位級、裾野の3級というような垂直的で考えますと、上、下、それぞれの方向での拡大が考えられないかという部分と、現行の技能検定は、上の括りの様々な職群に必ずしも全て対応しているわけではなくて、水平的な展開も当然考えられる。さらには、より実践的な評価方法という「中身」の問題もあります。

 それに対し、右側のエリアに関しては、ほとんど空き地ということで、そこに業界検定スタートアップ支援や非正規雇用労働者等のキャリアアップという視点からすると、レベル的には、恐らく今の技能検定より少し下のレベルを中心にスタートする形になるかと思います。これに関して、質保障の整備をしながら垂直的に上に上げていくこともあるでしょうし、当面は予算事業は4団体でスタートするわけですが、これを水平的にどう展開するかという課題があります。

2つの点線が微妙に重なり合っていますが、先ほども申し上げましたように、この業界検定と今の技能検定の中の指定試験機関方式については、類似する側面もあるという認識をしています。現行の指定試験機関方式と新たな業界検定の展開の有り様によって、両者の関係は、概念的にも、実態的にも整理が必要ではないかという観点で、この資料は飽くまでも概念図として示しているものです。

 また、今申し上げました視点の中に、あらかじめ、それぞれに国の関わり方の視点を盛り込んでいるつもりですが、考え方を能力評価に関わる国の関与の類型に絞って整理したのが、次の資料6です。先ほども少し触れましたように、ライセンス型、すなわち一番下にあります職業能力評価の類型の基軸と。これは先ほど来、説明しているものは全く共通ですが、能力評価の厳格性がより高い分野に関しては、基準等の設計も運用も国が専ら行い、その資格の効力も「業務独占」という最も強い効力を持っている。こういうグループが一番左側の1です。

 それに対して一番右側は、5純粋な民間資格型ということで、正に市場ニーズに応じて民間団体等関係者が独自に開発・運用し、市場ニーズの中で発達したり、廃れたりする分野があります。

 この間のエリアに幾つかの類型があるのではないかということです。その中で2ですが、国が基準を設計し、実施は国又は指定(認定)団体が運用するというものです。正に今の技能検定がこの類型で、技能検定以外には調理師試験、技術士などが該当するのではないかと思っています。資格の効力としては、「名称独占」が通例となっています。2の変形と言えないわけでもないのですが、国の質保障の関与のあり方について、一定弾力化することによって、逆に民間の発意や弾力性を確保すると、こういう類型があり得るのではないかと。したがいまして、基本的な基準、その他の制度設計は国が行うという基本的な考え方は共通ですが、その基準の有り様は、より緩やかで、逆に具体の設計等については民間等の主体の関わりが、より大きくなるという類型もあり得るのではないだろうか。

 純粋な職業資格としては、今申し上げた類型がどんぴしゃというのは、必ずしもなかなか見当たらないわけですが、広い意味での国の質保障という観点で言いますと、工業標準化法に基づく「JIS認証制度」や、薬事法に基づく医療機器の質保障の仕組みなどは、考え方、理念としては、今申し上げたことにかなり近いものがあるのではないだろうかということです。資料の編さん上、別ペーパーで付けさせていただいていますが、14ページです。今申し上げましたJIS、あるいは、管理医療機器の第三者認証の仕組み、すなわち国に登録している第三者機関が運用主体の質保障の具体的な役割を担うという類型です。

 さらに、今申し上げましたものとは、また別の類型として、国等はその資格に関わる情報公開という専ら手続的な観点からの要件の確認をした上で、その検定の運用が政策上奨励に資するといったものについて、後援、その他の緩やかな形でそれをサポートする仕組みです。例えば、文科省の様々な検定の後援という仕組みが存在するということで、この類型を4として掲げさせていただいています。こういった資料も御参照いただきながら、業界検定の立ち位置に関して御審議いただければと思っています。

 資料7以下が、後半のテーマに関わる部分です。前回の宿題ですが、訓練と能力評価の関係は、現行制度上ということです。前回も口頭で申し上げましたように、現行の訓練あるいは訓練の支援策について、離職者型、在職型、共通型と大きく分けられるものです。それに該当する公共職業訓練、求職者支援訓練、雇用型訓練等の制度の概要、対象者の要件等を、ここに掲げさせていただきました。

 能力評価との関わりですが、ここにありますように幾つかの類型があります。後ほども説明しますが、訓練を行った以上、その評価を行って、ジョブ・カードに反映するというタイプのもの。また、下の共通型にありますように、資格等を目指す講座をそもそも訓練としての支援の対象要件として位置付けているタイプのもの、及び公共訓練のように公共訓練実施の成果について技能照査をする。これは能開法の第21条に基づく、ある種技能検定に準ずる仕組みですが、訓練の成果を技能検定に類する別の仕組みの中で評価することにより、それを反射的に技能検定制度の受検の一部免除資格として活用するといった仕組みもあります。

 ただ、そうして申し上げられることとしては、訓練と能力評価の制度的な関わりは現状では非常に緩やかであって、あるいは、もともと1パッケージの開発・運用という発想には乏しいことが言えるのではないかと思っています。

 訓練と評価を結び付ける仕組みとして、もともと期待されているジョブ・カードとキャリア・コンサルティングの中で能力評価はどう位置付けられているのかと。ジョブ・カードに関しては、もともと「職業能力見える化」ツールですので、評価の観点が入っているのは当然ですが、次の資料8にあるように、具体的には、1つは、ジョブ・カードのシートの中で、左にありますように、職務経歴・学歴・訓練歴・資格要件といった能力評価に関わる情報があらかじめ盛り込まれているという観点。それと、訓練受講者に関してジョブ・カードを活用した場合には、先ほども申し上げたように、今は訓練修了時に能力評価の制度をジョブ・カードに位置付けていく。それをジョブ・カードの一翼としてその後のキャリア形成支援の判断材料としていくという仕組みに今はなっています。

 キャリア・コンサルティングですが、皆様は御専門ですので、資料9の裏側ですが、能力評価との関わりについて追加した部分だけ説明申し上げますと、上から3段落目です。キャリア・コンサルティングは、職業経験、訓練受講歴、資格・免許等で表現される職業能力の労働市場価値や可能性を評価し、これらを踏まえ職業選択、能力開発の方向性や手法について、専門的な助言を行うといった職業能力評価と密接に関連した支援行為であるとしています。

 ただ、「職業に関する必要な技能、及びこれに関する知識の程度の適正な評価」そのものは含まれていないということで、キャリア・コンサルティング、キャリア・コンサルタントは、能力評価に関わる専門人材ではあるけれども、例えば、技能検定委員のような評価そのものの専門人材ではないことを念のために示しています。こういったジョブ・カード、キャリア・コンサルティングの現状を踏まえた上で、こうしたつなぎの仕組みのあり方を今後どう考えていくべきかも、御議論いただきたいポイントです。

 最後に、資料10です。今日、繰返し申し上げていますが、評価と訓練の組合せ、制度論ではなくて、飽くまでもこの組合せのイメージということで、この資料を提示しています。能力評価と教育訓練を組みあわせ、共通の人材像に基づき、また、対象者の属性や課題に応じて一体的な整備を図り、また、一貫して活用することによって、今回、この研究会の中で御議論いただいていますが、目的の非正規雇用労働者等のキャリア形成上の課題を抱える各層のキャリアアップ、的確なマッチングに結び付けることができるのではないかと考えています。そのために、典型的な訓練、検定等を含めてのキャリアアップの道筋を示していく必要があるのではないかというコンセプトで、例示的に示している図です。

 左側の図のピンク色のような囲みの部分が、雇用の世界という意味合いです。先ほども訓練についていろいろな類型があると申し上げましたが、求職者型、非求職者型、あるいは、企業主導型か個人主導型か、そういう幾つかの軸で類型があり、かつ、雇用型か非雇用型かということで、就職訓練の順番は類型によって幾つかのパターンがあるわけです。こうしたパターンは共通のものとして、青点線で囲んでいる訓練と、赤点線で囲んでいる検定等評価を、まず1パッケージにすべきではないかということです。それと、キャリア・コンサルティング、あるいは、それを踏まえてのキャリアアップ支援を挟み込むべきではないかということです。こういった一連の仕組みをつくることによって、訓練、検定、更には、キャリア形成支援の相乗効果が生まれ、更には、合格後、企業内で業界検定、技能検定のラダーが上がることによって、キャリアアップできることが期待されるのではないか。それをイメージ的に示しているものです。

 ただ、1点付言させていただきますと、右の欄の下にありますように、次の参考資料1にもありますが、業界検定のスタートアップ支援は、お陰さまで成長戦略関係ということで、予算の中で満額が認められました。ただ、当面の業界検定の対象分野、業種、職種と、今ほど申し上げました様々な訓練メニューの対象分野について、それぞれの目的、コンセプトがあってということで、最初から必ずしも分野が合致していくわけではないという側面もあります。

 したがって、本研究会の議論を通じ、方向性についておまとめをいただいた上で、具体的に言えば、重ね合わせ、統合運用については段階的に諮っていくというイメージかと、そういったことを考えています。

 参考資料としては、それ以外に、先ほど技能検定制度の課題として説明した内容の裏付けになるような今年度実施した調査結果なども示していますが、時間の関係もありますので、この辺りについては、次の中で、必要に応じて補足説明をさせていただければと思っています。時間を超過して恐縮ですが、事務局からの資料説明は以上です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○今野座長 資料そのものについて、ここは分からないとか、何か御質問はありますか。

○北浦参集者 前回の議論の流れでということなので、前回も言われていたのかもしれませんが、この資料の特に11ページで最終的な姿に近いところで、分かりにくい言葉が2つありますので、教えていただきたいと思います。1つは11ページの真ん中に、医療・福祉の専門職、ものづくり技能職うんぬんとあります。ものづくり技能職の技能要素の強いサービスというのは、どういうことをイメージしているのか。つまり、技能の要素という意味合いを教えていただきたいのです。

 その下に大きな枠組みがあって、括弧の中に*で「ハイエンドレベルは」というのがあって、そのあとに「キャリコン的手法による評価・マッチングが現実的」とあって、キャリコン的手法とは何ぞやということです。この2つを教えてください。

○伊藤課長 まず1点目です。左側から2番目の囲みに「技能要素の強いサービス」とあります。例えば、今の指定試験機関方式の対象となっている職種の中で申しますと、ホテル・レストランサービスなどは、対人性もあるのですが、技能的な要素もかなりあります。あるいはビルクリーニングなど、業種職種としては、ものづくり、あるいは生産工程に分類はされないが、職務内容の中に求められる能力という観点からすると、技能的な側面がかなり高いと思われるようなものを、取りあえず念頭に置いて、このような記述をしています。

○今野座長 キャリコン的手法はどうですか。

○伊藤課長 いささか情緒的で申し訳ありませんでした。この意図するところは、以前の研究会でも若干これに関連する説明をした記憶があるのですが、こうした検定に関しては、ただ技能検定でも特級といったレベルが設定されていることなどからも分かりますように、この検定に関し、現行の技能検定あるいは新たな業界検定についても、決してエントリーレベルだけの限定ということではなく、垂直的な階層性が求められるということだと認識しております。他方でハイエンドレベルに近い層の、例えば具体的な転職場面などを想定した場合には、その検定結果、特級を持っているということだけをもってとか、あるいはそれを主たる判断材料として転職を受け入れ先を決定をするということではなく、その他のある種のハイレベルのコンピテンシー、職務経歴、検定といった標準的、客観的側面に主眼を置いた手法による成果以外の観点から採否、その他の判断が行われるケースが多いのではないでしょうか。

 そういったことをどうやって評価していくのかと考えると、それというのは、ある種のハイレベル、極めて専門的なキャリア・コンサルティング的営みを通じて、初めて評価が可能になるのではないだろうかということです。まだ私どもも必ずしも考え方が整理されているわけではなく、あるいは行政施策として確立している部分ではないのですが、検定的な手法で一番上まで全てやり切ることは非常に難しいのではないかという問題意識を、いささかこなれていない、このような表現で表したということで御理解いただければと思います。

○北浦参集者 1つよろしいですか。後者は分かりました。前者のほうですが、技能要素の強いサービスと言っていますが、サービスだったら、みんな技能があるのではないか。そういう意味で言うと、技能要素の強いなのか、ハイレベルの高い技能を要求されるサービスという意味合いなのか。

○伊藤課長 レベルという観点では、ここは余り意図は持っておりません。

○北浦参集者 つまり、サービスでもパターン化される、あるいはマニュアル化されていく。それに繰り返し習熟をして済んでしまうものではなくて、その個人の、そこにおける1つの技能の発揮が要求されるようなレベルのサービスという意味合いですかね。

○伊藤課長 技能とかプロトコールとか。

○北浦参集者 知識とかそういうものを要求するような。

○伊藤課長 そういった観点の強い、現象的にはサービスだと。逆にいうと、それと対置されるものとしては、顧客、相手のニーズによって提供すべきサービスが場面場面で全て変わってくるというタイプのサービスもあるのではないかと。

○北浦参集者 分かりました。なぜ申し上げたかというと、その後の切り分けが、右側の新たな業界検定の対象がサービス職種なものですから、サービスのところに一定の区分を置いて、そこを境界線にして整理をされているのであれば、その辺をもう少し明確にしないと分からないなという意味です。以上です。

○大久保参集者 1つ目は、今の御意見に近い話ですが、今までは技能検定しかなかったので、新たに業界検定を、こういう定義をして作ったら、私がみる感じでは、指定試験機関方式の14職種は、性格的には業界検定ではないのかと思います。そこを本当に無理やりに分けられるのですか。

 というか、もう1つは技能検定の一部が、業界検定の位置付けに変わることがあっても、それはあり得るのだというのは先ほどお話があったと思います。そういう意味では、ここの部分の14職種についてお聞きしたいというのが質問です。

○伊藤課長 今の点は大変本質的な御指摘だと思っております。何分、議事録に残りますので、個別の職種名に言及することは避けつつ、ニュアンスを汲み取ってお聞き届けいただければと思います。

 技能検定制度しか能開法に基づく検定制度が存在いない中では、かなり多様な性格を持った職種を、1つの技能検定制度の中で位置付けて運用しているという側面があるということは御指摘のとおりだろうと思っております。

 その結果、指定試験機関方式の現行の14職種の中でも、改めてこういう軸を当てはめて、性格について考えた場合に、もともとピンク色の4つの括り自体が、先ほどの北浦委員の御指摘、それに対する私の説明にも現れているように、境界線というのは必ずしも確立しているものでは決してないのです。相当の幅があって、その中で今回の横軸の中で、制度や技術に規定される度合が大という軸も設定させていただいているのですが、指定試験機関方式の知的専門職の中では、法制度に依拠する、あるいは法制度に係る知識のウェイトが非常に高い。そういう意味では、この横軸で、かなり左側に位置していると解することができるものもあると。言い換えれば、そういうものに関しては、比較的こういう業界検定との関わりを考えても指定試験機関方式に馴染むものではないかという意味合いです。

 ただ他方で、横軸を考えた場合に、それほど左に近いとは言えないもの、すなわち技能検定しかない中で、指定試験機関方式の指定要件に合致しているということに位置付けてはいるのですが、こちら側ができてきた場合には、実は右側に近いのではないかと思われる職種分野が決して存在しないわけではないと私どもも考えております。そういう意味では、2つ並べた上で、それぞれの職種の性格、あるいは先どカスタマーオリエンティッドということも申し上げたのですが、企業労働者に本当に役に立つという意味で、どちらの仕組みが、より有効なのかを改めて考えていくべきではないかということは、私どもも認識として持っております。

○大久保参集者 ということは、この14職種の中には技能職と呼んだほうがふさわしいものと、サービス職と言ったほうがふさわしいものと両方入っているということですよね。

○伊藤課長 はい。

○大久保参集者 分かりました。業界検定の評価方法についてですが、もともとその領域でずっと経験を積み上げてきた人たちもいると思いますから、そういう人たちが新しくできた業界検定のレベル認定を受けるのだとすれば、過去にやった実績などの証拠物や資料を提出した上で、その経験をきちんと評価してもらって認定を受けるというようなものが評価の中心になってくるような感じがしています。もちろん検定ですから、客観性という観点は重視しなければいけないものの、いわゆる学科試験、実技試験が中心ではないように思うのです。

 これを見た場合に、ふっとイメージが湧いたのは、フランスの商工会議所がやっている検定があって、職種ごとに今、所属している会社の人たちが、ちゃんと「間違いないですよ」とサインをするような、要するに履歴とか具体的にやったことの事実、成果物のレポートをドンと提出して、それに基づいてその領域の専門家がその人にインタビューをするという形で認定をしているのです。どちらかというと、業界検定はそちらのニュアンスに近付くのではないか。つまり、それぞれのスペシャリストとかプロフェッショナルな領域の先人たちが、ちゃんとその領域で技術を持っているということを、一番確認しやすい方法で確認するという感覚なのではないかと思うのですが、どうですか。

○伊藤課長 先ほど資料4に関して、ここに示しているように業界検定構想について、今の技能検定でも収まりそうな部分と、はみ出す部分があると申し上げました。大久委員が御指摘された具体的な評価方法が、違いが一番顕著に現れてくる観点の1つではないかと思っています。

 現行の技能検定制度については、全ての職種をその対象とし、また国家検定制度としての客観性重視という観点で、手法についても完全にこの2つに限定しました。ただ、実技試験という大枠の中では一定のバリエーションを持っているわけですが、今回の業界検定については、この資料にあるように、業種・職種の特性、企業等のニーズを反映した実践的な評価の仕組みにしていく上で、検定手法の多様性、幅の広さ、それぞれの業種・職種の特性に応じた取捨選択ができることが大変重要なポイントではないかということは、私どもも全く同じ認識です。

 そういった中で、このペーパーでは書き切れていないのですが、大久保委員から御指摘のあったような、職務経歴に関わった成果物とか作品といった形で表現をすることが、この人の実力を最も端的に表していて、業界企業も得心できるような、そういう分野であるならば、例えば大久保委員がおっしゃったような手法も、当然新たな業界検定構想の中の有力な評価・手法として位置付けるべきであるという考え方を持っております。

 考え方としては例示的におっしゃったような考え方も飲み込める。ただし、この業界検定に、別の資料にあるような、国が何らかの関わりを持ち、またその人が検定に合格しているという成果について、労働市場上、国としても一定の責任あるいは裏打ちをしていくということであるとするならば、その手法の合理性などについても、どうやって国の立場で確認をするかは、次の課題としてもちろん出てくるかと思います。イメージ、方向性としては、今、大久保委員がおっしゃったようなイメージで考えておりますし、むしろそういう具体的なアイディアをどんどん頂戴できれば、それを盛り込んでいきたいという考え方です。

○今野座長 資料そのものに対する簡単な質問というイメージがあったのですが、議論が始まったので進め方を変えます。これは今回のテーマが資料2から資料6までが1パッケージというか一括りで、検定とか能力検定はそのもののテーマであり、それ以降は周辺との関係ですよね。職業訓練との関係とか労働市場制度との関連ですから、今の議論は、みんな前半戦に関する議論なのです。したがって、資料2から資料6に関わる範囲内で御質問、御意見、何でも結構ですという仕切りにさせていただきたいと思います。仕切り直しということで、どうぞ。資料7以降は駄目ですよ。

○北浦参集者 それでは、資料4ですが、今までの議論もそのとおりだと思います。この中で1つ気になっているのは、特に資料43の主要対象分野のところで、技能検定制度とそれ以外に分けるところに、生命・安全確保があります。これは技能検定制度の発生的なところ、本来の趣旨からいくと、一番重要なポイントですが、それをメルクマールとして、あとのところもそういう整理をされているので、生命・安全確保ということになると、ものづくり系であるとか、建設、製造関係を中心にするようなものになる。そうすると、サービス関係はなかなかここに入りにくいのではないか。顧客の安全をどう解するかというのはありますが、そういう意味では、この要件をメルクマールとして分野を分けていくのは難しいのではないかと思いますが、そこはどのようにお考えですか。

○今野座長 その前に私から、議論の仕方について整理します。過去の経緯があって現行の技能検定がありますということを前提に、例えば今おっしゃられたような自らの生命・安全確保という点では、ちょっと関係なさそうなものが入ってしまっているみたいな過去の経緯を前提に議論する仕方と、それを忘れて議論する仕方がありますね。どうぞ。

○伊藤課長 私がお答えしようと思っていたことのかなりの部分を座長からお話いただいたのですが、ここにある2つの軸というのは、必ずしも現行の技能検定制度でなく、要件として確立をしているというものではなく、改めて業界検定議論の中で、技能検定制度、業界検定制度の立ち位置を考えたら、政策的にこういう軸の下で検討することが妥当ではないかという仮説の下で御提供しているということが1点目です。

 その次に、その上で今の技能検定職種の対象職種は、こういう軸の中でどう評価できるのか。そこでの大久保委員のお尋ねに対する答えともかなり重なってくるのですが、生命・安全確保という軸で見た場合でも、114職種は大体収まっていると、取りあえずは概括的に整理するとして、指定試験機関については幅があると。私どもは必ずしも生命・安全確保という観点から、その軸でいうと、右側だということに限らず、例えばもしかしたら、こういった点については生命・安全確保とは違うのではないかという御指摘もあるかもしれませんが、キャリア・コンサルティングであったり、知的財産管理といった現行の指定試験機関方式の対象となっている職種に関して申し上げますと、もちろん、ものづくり分野における生命・安全確保とイコールではありませんが、個人、若しくは法人の、ある種の社会的生命、立場にも関わるような大変重要な役割を担っているとしております。

○今野座長 社会的生命か。

○伊藤課長 少し大げさかもしれませんが私の説明としては、そういう感じも持っているのですが、そういう顧客の利害や立場に相当密接に関わるようなミッションになっている職種も、この指定試験機関方式の、ここで分類するところのいわゆる知的専門職分野の中には含まれてないわけではないと。この軸で見た場合には必ずしも最初から該当しないということでもない。ですから、むしろ先ほどの大久保委員の御発言に対する答えと同様に、改めてこういう軸で見た場合に、今の14職種について、あるべきポジションというのはどう考えられるのかという、その次の段階の議論にむしろ結び付いてくる話なのかなという問題意識を持っております。

○北浦参集者 安全の問題もどこまで拡張して考えるかによって、そこは整理の仕方もあると思います。それよりむしろ上のほうの、ここで言う技術指導との関係が不明確、やや不定型であるということとか、あるいは普遍性が小さいものとか、変化が大きいとか、そういったものにおいて、非常にフレキシブルな形でしか評価制度を確立できないような分野という、やや技術的制約みたいなところで、両者に違いがあるのだったら、かなり拡張的に考えられるという気がしたのです。

 ところが、今、価値概念みたいなものを入れてしまうと、それぞれ理屈を付ければよろしいのですが、切り分け方が難しくなってしまう。極端に言うと、技能検定はものづくりで、業界検定はサービス全部なのだと割ってしまえば分かりやすいのでしょうが、その中の中間領域を整理するときのメルクマールを一体何にするのか。今は2つ書いてありますので、その安全等の2つの基準、後のほうも安全というのを結構強く書いていますよね。むしろそれで整理したような感じが非常に強い。どちらに重きを置いてやっていくのかによって中間領域のところを、どちらに引っ張っていくかという議論が変わってくるかなという気がします。

 あと細かいことを言えば、技能検定だけを言っていますが、実態としては社内検定とかいろいろあるわけで、それなどはかなり右側に近い。そういうのも含めて整理しなければいけないのですが、これは細かい話ですから、最終的な整理の形の姿だと思います。大枠として、ともかく今のメルクマールをどこに置くかはよく整理をしたほうがいいかなという感じがします。

○大久保参集者 今の2つの切り分けのところは、職域と生命・安全うんぬんという話だけでは説明がつかないと思います。もともとなぜ技能検定を作ったのか、業界検定はなぜ今作ろうとしているのかというところを加えて説明しないと難しい感じがするのです。

 この業界検定も、そんなことに国は関与する必要はないとか、本当に必要だったら民間がやるのだろうという意見がまた出てくるのです。国が関与して今これを作ることの必要性も踏まえて、この2つの違いを説明したほうがいいのではないかと思うのです。

○伊藤課長 なかなかすぐには十分な答えができないのですが、今、両委員から御指摘された点は、今回の議論整理に一番の支柱になる部分ですので、今回いただいた御意見を踏まえて、よくよく整理をしていきたいと思います。

 先ほどの北浦委員の御指摘を踏まえ、改めて考えるに、生命・安全確保という観点に関して資料5で言うと、ライセンス型と非ライセンス型を切り分けるという意味で非常に有力な軸だと思いますが、ここ以降について更に切り分ける軸としては、少し説得性が弱いということは、北浦委員の御指摘のとおりだと思っております。そういう意味では、単純に2つ並べるということだと御理解いただきにくく、あるいはむしろ誤解を招くという観点だと。どのような、よりきめ細かい整理が可能だということだろうかと、取りあえず受け止めています。

 今、大久保委員から御指摘があったような、ここにあるようなある種スタティックな軸、整理とは別に、今回の業界検定制度、それによるキャリアラダーの整備の必要性を、もう少しダイナミックな観点から業界検定、技能検定の関連性あるいは軸について整理をすることも非常に有力なアイディアだと思っています。直ちにそれに対してどういう整理がということの、なかなかアイディアが思い当たらないわけですが、着眼点については大変重要な点を頂きましたので、そこは次回に向けて整理をさせていただきたいと思います。

○今野座長 うまく整理できないのですが、多分、議論を整理しやすくするためには、取りあえず技能検定を忘れたほうがいい。生命・安全とか普遍性とかの適切な基準で職種を区分して、この区分については、こういうタイプの国の関与が合理的であるというマップを作って、そこに現行技能検定を置いてみる。このような理屈でいったほうが整理がしやすい。現行の技能検定を前提にすると、過去の歴史のいろいろあったのを説明しようとしてしまう。そうすると、一番重要なことは、職種とか職域を分けるときに生命・安全、普遍性あるいは他の何かが良い基準なのかどうかという問題と、それで職種と職域を切り分けたときに、それぞれに対して、なぜ国の関与が大きくなるのか、小さくなるのかという「なぜ」の問題ですね。関与の仕方と職種の分け方と、両者を組み合わせたときの理屈の3点セットがそろえば、議論としてはきれいに整理ができる。その後、技能検定と業界検定を登場させるというほうが、議論としては整理がつくかな。

○伊藤課長 その後に登場するわけですから、現状説明というよりは今後の在り方という観点でということですね。

○今野座長 そうそう。では、片方の資料では、その観点からしたら、技能検定というのはこんな状況にありますよとか、業界検定はこんな状況ですよというのは、それはそれでいいということです。

 そう考えると、メルクマールが生命・安全確保と、今のところは普遍性とか変化ですね。もう少しいいアイディアがないかなと思うのですが。

○谷口参集者 国際的な視野でいくと、流れは職業訓練と評価をセットで進めていくというのが、わりと国際的には一般化しつつあります。そこで原理になっているのはコンピテンスなのです。コンピテンシーとか、そのネイティブは、その辺の使い分けは余りはっきりしていないらしいのですが、仮にコンピテンスとしますと、使用者というか、雇用主側が要求する実際的な職務能力をしっかりと見えるようにしてあげることが、この研究会でもターゲットになっているのではないかと思います。

 つまり、安全あるいはうんぬんというのは、日本の資格制度の発展から多分イメージしてくるものだと思います。つまり、日本の資格制度は国が認定の主体となってきたというのが基本的な流れですよね。それといわゆるスキルの改定を国が代理するというか、こういう立場で安全とか健康といったところが重要なポイントになるわけです。

 ところが、この研究会で目指そうとしているのは、労働市場の中で、例えば非正規労働者が、いかに個々の人たちのコンピテンスを分かりやすく見せられるかが、これまでの議論のポイントではなかったかなと思います。

 先ほどの議論に戻るのですが、例えば私は最初から違和感を感じたのは、資料5で、技能検定が先にありきで、今野座長もおっしゃいましたが、初めからここが不可侵領域で、ものづくり分野を中心に、ここはもう侵さないというか。そうではなくて、仮に技能検定が非常に長い歴史を持つ職業訓練と同じ歴史を持ちますが、それはそれとして、技能検定というのは、英語能力の検定に例えてみると3級とか2級とか1級とかという英検ですよね。非常に刻みが大きいわけです。しかも、この技能検定の場合、学科試験と実技試験ということで、試験の内容というのは非常に大意的なもので、ポテンシャルを表現するだけのもので、実際的な仕事の能力はきちんと表現できているかどうかというと、怪しいと私は見ているのです。

NVQでも、レベル5では最初は分けていましたが、大体ターゲットになる所がエントリーレベルということで、レベル2とか、レベル1といったところが非常に需要としては高くて、ターゲットになってきたわけです。その辺りでも、レベル12の間とか、23の間とか非常に刻みが大きい。それでQCFなどという新たな展開が出てきたと思うのです。

 仮に現行技能検定が、それはそれとしての役割は持ってきたわけですし、きちんとした形式もあるわけですし、国家検定でもあるわけです。ただ、コンピテンスをきちんと表現できているかどうかという視点で、もう1つカバーできる評価システムがあってもいいのではないか。そのときには、あらかじめ「ものづくり分野」を除外するのではなくて、英語の能力でいえば、TOEICのようなスコア方式みたいな形で表現するという、現行の技能検定にはないようなもの、そういうことだって考えられるのではないかと思います。

 こちらでも高いレベルの能力評価は困難ということが書かれていて、その際にはキャリコン的な評価手法、実際にイギリスで言うと、アセッサーのような、正にコンピテンスを確認するというような方式。実際に既にジョブ・カード制度では、評価の方法においては、かなりそれに近い方法が取られているわけです。それはなぜかというと、訓練にOJTを組み込んでいるために、実際的な職務能力をきちんと評価しましょうということだろうと思います。そういう意味で、あらかじめ業界検定の対象領域で、技能検定はものづくり分野を多く占めているから、そこを外しましょうというのはちょっと違うなという感じがするのです。

○今野座長 先ほどの話と全く同じですね。現状を切り口にするか。例えば先ほどの話では、普遍性が高い、つまり変化がない職種は、なぜ国がやらなければいけないかとか。その理屈もありますね。単なる効率性かね。

○伊藤課長 社会全体のコスト。それから、その検定というものに、それを受検する労働者と個人と企業というのも可能な限りの客観性と公的信頼性を求めますと。そういう意味で言うと、検定の開発・運用主体として、国だけでは評価しようとする能力ニーズを負い切れないものは別にして、制度・規格等に依拠して国をはじめとする公的機関が検定等の開発・運用を主体として、民間もそうかもしれないのですが、国等の公的機関もふさわしい分野に関しては、今申し上げたような観点から、一般的にカスタマーが、あるいはステークホルダーが、そういう国の関わりを希求する。それがむしろニーズであると。あるいは資格のバリューの1つの源泉であるということがあります。

○今野座長 そう言ってしまうと、業界検定は客観性は余り要求していないとか、公的信頼性は余り要求していないということになってしまうから、それは余り望ましくないですよね。

○伊藤課長 相対的な違いということです。

○今野座長 相対的でも、それはまずいのではないですか。今のは、業界検定はクオリティーが悪くてもいいという話ですよね。

○伊藤課長 クオリティーというよりは、能力評価としてのクオリティーはとちらが高いとか低いということではなく、業界検定がターゲットとしようとしている分野からすると、測る能力自体が常に変わっていくもの、場面場面で違うものなのですと。だから、評価そのものの質が別に低いということではなくて、評価の方法の弾力性が必然的に高くならなければいけないという考え方ではないかと思っているのです。

○今野座長 そうすると、例えば対人サービスでも普遍的なものというのはいろいろありそうだよなとか思ってしまうのです。どのように切るか。労働経済学の人たちは、外部性と言っているんだよね。そうすると、ここで言う変化が少ないなどというのは外部性が大きいということですよね。

○伊藤課長 そうですね。

○今野座長 だから、それは国がやらなければいけない。変化が大きいとか、特定分野スペシフィックだと、外部性は小さいのかな。そうだよね。うまく整理できないけど、もうちちょっと。

○大久保参集者 視点が少し変わってしまうのですが、技能検定と業界検定の並んだ比較説明は、隘路に入っていまして。目的は業界検定を説明するのだったら、このやり方だと、かえって分かりにくくなってきているような感じがして、作戦としては業界検定のイメージをもう少し明確にしたほうがいいのではないかという気がするのです。

 非正規で、この職域に就いている人がたくさんいる職業領域で、かつ非正規の中でも、かなりラダーがあって、レベルアップを追っていって、その延長線上にエリアの地域限定社員とか一般の正社員という道までが、現実にそういう形で存在している職域。だから、そこにはラダーが必要で、それがあることによって、より安定的な地位を得たり、正規への道が開かれる。そういう職業はそんなにたくさんないような気がするのです。現在、地域限定社員という雇用形態を当てはめている職域を、ちゃんと代表的なものを出して、そういうものを中心にもう少し具体的に業界検定を説明していくほうがいいと思うのです。

若干気にしているのは、それも指定試験機関方式でやれないのかという議論が出てくるのではないかと思っていて、むしろ、そちらの角度からもう一回見たほうがいいのではないかと思います。

○今野座長 そこもまた議論が同じで、どういう場合が指定試験機関方式がよくて、どういう場合が業界検定か。もう少し一般論でいうと、資料6でいろいろな関わり方のパターンがありますが、結局は、どういう場合に1がベストで、どういう場合に2がベストでという話ですよね。

○伊藤課長 論点としては、そういうことですね。

○今野座長 そこのロジックさえ、しっかりしていれば、資料5は今のところは評判が悪いのですが、私としては、このぐらい大きく構えておいたほうが、厚生労働省が今後この問題をどうやって変えていくかというときのマッピングになると考えているのです。ですから、大久保さんが言われたことも考えながら、でも大久保さんが言われたようなことは、実はマッピングのここということを意識できるようにしておいたほうが。

○伊藤課長 そこにスコープを当てて。

○今野座長 後々便利だもの。そうすると、技能検定も将来どうするかということが出てきますね。何かいいアイディアはないですかね。

○北浦参集者 資料6に触れられたので、そこで言うと、国がどう関わるかということは、ここで言う資格の効力の考え方、つまり、「業務独占」なのか「名称独占」なのか。これはもともとロジックがあるわけで、それとの兼ね合いが出てくる。今、ここでいう業界の検定制度、評価制度というのは、一体どこへ位置付けるかというのが、正に名称独占まで持っていく話なのか、全くフリーであれば全くフリーの話であって、そうではなくて、ある程度国も関与しつつ、業界の自主性で作っていくのだという、そこの思想の整理になるので、恐らく効力の問題です。先ほど言っていた中間うんぬんという話で、実は一番大きいのは、効力のところで、やはり規制機関にこだわってしまうのは、国家資格ですというところを持ってきたいというところがあるわけです。ですから、ここのところを国の関与の、あるいは政策的意味合いのロジックを整理していただくということではないかと思います。

○今野座長 それもまた全部、同じところに関わります。なぜ名称独占にするか、つまり名称独占にするしないの基準が、ある程度明確にしてあれば、先ほど言った職域の定義がはっきりしていれば、こういう職域はこういう性格ですというのが出ますから、そうしたらその基準で評価して、これは名称独占とは違うねとやればいいだけの話でする。個別にはいろいろあります。そうなると、また同じところに帰りそうだなということです。

○伊藤課長 今、一貫する多岐にわたる御指摘をいただいております。最後に座長がおっしゃった点に関して言うならば、もちろん業界独占は全く別の必要性なので、これは置いておいて、名称独占に関して言うならば、1つには技能検定であれば技能士、あるいは調理師法であれば調理師と、そういった資格を有している。その質保証に国が関わり、責任を持っている。これがある種の印籠とする裏打ちとして1つあって、なおかつ、市場における活用に応じて、名称独占に関しては当該名称は他者は用いてはいけない。それに関わる罰則規定も設けているというところがメルクマールで、それを作る段階で国が保証するだけではなく、その運用に当たっても国が裏打ちをしている人と、そうではない人が同等に扱われないようにということで、運用においても国が裏打ちをしていく、コミットしていくということに、今の名称独占制度の政策的・制度的には言えます。

○今野座長 これも先ほどと同じで、では、なぜ国が質保証をするのですか。それはこの仕事はこういう特性があるから保証するのですという話ですよね。だから、名称独占で行っていいですよと。

○伊藤課長 企業の立場あるいは労働市場政策上、一定の能力を持っている人と、そうではない人を区別することに意味があるのだと。企業にあっても、その個人のキャリア形成にあっても意味があるのだ、あるいは、より意味が大きいのだと。ただ、そこでの職業能力の特性が、あるグルーブと、あるグルーブでは違いがあるので、具体的な検定の開発や先ほど大久保委員から御指摘があったような具体的な評価の手法が、大きくはこういう属性のものとこういう属性のものに分かれているのだと。今の議論と流れは逆かもしれませんが、大体同じようなことを言っていることになると思います。

○今野座長 今の議論でも、この人はできる人、この人はできない人というように労働市場が関わると、そういう情報は重要で。

○伊藤課長 シグナルとして。

○今野座長 重要なのですね。

○伊藤課長 はい。

○今野座長 それは全ての職業についてそうなので、それにもかかわらず、なぜこの職業だけ国が保証するのかという、そこのロジックなのです。今おっしゃられた区別しなければいけないということは必要なのですが、それでは国が保障しますというロジックにはならないのです。これも先ほどと同じ問題なのですからね。

○松浦参集者 考えがまとまっていないのですが、技能検定については、生命の安全、非常に高い公共性の観点から国がやるべきだということですよね。今回の業界検定スタートアップ支援は、平たく言うと、企業がやらないから国がやるべきということですよね。「国がやるべき」という点では一致しているのですが、理由を同じ土俵で説明するのは難しいのではないかと思います。両方とも労働者保護という目的が背景にあるのですが、技能検定は公共性の観点からやるべきで、業界検定は現状を放置しておくと労働者のキャリア形成に就くことに支障が生じるので国がやるべき、ということなのではないかという気がします。これを同じ土俵、共通の軸で整理するのは、難しいのではないかと思います。

○今野座長 その点については、労働経済の人たちは、国がやるべきことはいいのですが、それ以外の分野をどうやって国の関与の程度を切り分けるかというと、外部性が大きいと企業も教育しないし、自分も教育しないので、そこで国が大きく関与しなさい。外部性が小さければ相対的な放置をしなさいという切り分けでいいのではないですか。

○松浦参集者 ですから、業界検定については、それで説明できると思いますが。

○今野座長 そこが実際には濃淡があって、単純に言うと、外部性有り無しなのですが、もう少し言うと、外部性大、中、小、ゼロというのがあって、ゼロは全部放っておけ、大のものは大きく関与する、中のものは中ぐらいに関与する。

○伊藤課長 過不足なく関与する。

○今野座長 そうすると、中ぐらいのところに業界検定が入るとか、大きい所に今の技能検定みたいな仕組みが入る。多分労働経済学の人たちのロジックからいくと、そうなるのではないか。

○伊藤課長 先ほどの指定試験機関方式と業界検定の関係、今、松浦委員に御指摘いただいたものと両方踏まえての話ですが、現象的に言うと、今の指定試験機関方式も業界検定も程度の話は別にして、国の作った制度の上でプレーヤーとしては業界団体の民間ですという意味では共通しているのですが、制度の思想からすると、技能検定制度については、このように対象職種を政令で定めてということで、実際には業界団体の働き掛けが端緒となって指定に至るというケースが多いわけです。理念的・制度的にいうと、やはり指定試験機関方式も含めて、技能検定については能開法の目的に基づき、それにより適合する必要性が高い職種は国が選定し、特定をしていく。プレーヤーとして、あなたは一定の要件を満たしているから、この技能検定制度の運用を委ねていくという類型です。

 それに対して、業界検定は本当に大きな枠組みを国が作るのだが、あらかじめ国がここと、ここをやれ、やりますということではなくて、この枠組みの中で、業界が主体的に検定を開発・運用することが、当該業界における労働市場上あるいは企業経営上、有用と思う場合には、手を挙げてくれと。緩やかな基準に適合する場合には、それを業界検定にふさわしいということで某かのサポートをしていく。いわばトップダウン型か、ボトムダウン型かという違いは少なくともあるのではないかと思っています。

○今野座長 それと都道府県方式か指定試験機関方式かというのは、ラフに言ってしまえば、効率性だと。

○伊藤課長 そうですね。財政面も含めた効率性。

○今野座長 それらを選択するときには効率性だと。

○伊藤課長 だから本質的な違いではないという整理になるのではないかと思います。

○北浦参集者 今の議論で何となく気になってくるのは、規制的な見方で捉え過ぎてしまってはいけないのではないか。業界のこういう制度を作ろうというのは、単に規制的な意味合いだけではなくて、もっと利便性とか先ほどの政策目的が、これで整理されると思いますが、そのための今ある社会的なインフラとして作るのだという、そちらの側面があるので、そちらを強調しないと、かつてあったように、単に技能検定は規制であるという議論に陥ってしまう。そうすると、意味合いがどんどん変質してしまう。もちろん、そういう公共性の観点からの意味合いはありますが、余り規制的な色彩だけで議論に陥らないほうがいいのではないかと思いました。

○今野座長 先ほどの労働経済学の人たちが言っている外部性だけで単純に言ってしまうと、1つの理屈としては入職口でとか、非正規は全部技能検定、つまり、外部性が非常に高いから。そうすると、技能検定の1級は外部性が低いから、これはもう少し民間に任せて、ただ業界検定と。多分そんなのは1つの理屈なのです。外部性ではっきり言ってしまうと。これは既にそういうのがあったのですが。

 あとは政策的な関与については、そういう絵を描いたときに、本来的に国が中程度関与しなければいけない。でも、業界は動かないからプッシュするぞという政策もあるのです。だから両方ありますよね。

 ということで、この辺でやめて後半へ行きましょう。

○伊藤課長 よく整理させていただきます。

○今野座長  資料7以降で職業訓練との関係とかキャリコンとの関係で御意見があったらお願いします。これとの関係で大久保さんが言われた既存の職業経験をちゃんと評価をして、評価結果を資格という形で認定しましょうかという話は一種のジョブ・カードの延長ですよね。

○伊藤課長 はい、そうです。

○今野座長 ジョブ・カードのあと、出口で資格として付ければいいという話ですよね。

○伊藤課長 資格を含め、より総合的・統合的に「職業能力見える化」を図る共通ツールとしてジョブ・カードを、どう強化して活用していくのかという課題と言い換えることができるのではないかと思っております。

○松浦参集者 職業能力評価と職業訓練との連動という意味では、ジョブ・カードが機能していると思うのですが、結局それを採用にどう結び付けていくのかというところを、この報告書でどこまで書き込めるかがポイントになってくると思います。インタビュー調査などでも、よく出てくるのが、資格を取っても、頑張っても、結局採用されないという不満なので、そこが一番ポイントだと思います。

○今野座長 今でも業界検定も採用には関係ないというか、相対的に関係がないという意見があるのが現状ですよね。

○伊藤課長 以前に業界ヒアリングの結果についても御報告しましたように、もちろん持っている人と持っていない人を比べれば、持っている人のほうがいいのです。非常に具体的な話としては、採用選考活動のスペックとして明記をしてしまうと、応募者が限定されるという、逆にマイナスの効果もあるということで、現状で言うと、ハローワークも含めて需給調整機関の実際の求人スペックとして技能検定も含めた資格が位置付けられているケースは少なく、マッチング場面で、今ある能力評価の仕組みも、必ずしも従前に活用し切れていないという課題を私どもは認識しております。

 そういうマッチング場面での資格の有無を効率的マッチングという観点でどう盛り込むかという観点と、先ほど大久保委員の指摘の中で、経験・資格の信憑性、深みみたいなものをインタビューで確認するという御指摘がありましたが、これも非常に重要な点だと思っています。その外形的・客観的な検定等で表現される世界ではなくて、企業の側の最終的な統合評価の中で、能力評価というものをどのように活用していくか。これは必ずしも制度的な話ばかりではなくて、むしろマッチングサービスの運用に関わる課題も多々あるかなと思っています。

○今野座長 1つの理想型は、業界検定までできて、業界の人が集まって検定を作って、その資格が取れるような教育ができたら、業界はそれを取った人しか採らないと宣言すればいい。自分たちで作った訓練コースで、自分たちで作った能力評価をした人材だから、そこでしか採らないと言ってくれれば、これで出来上がります。ドイツは基本的にかなりこのタイプですよ。ドイツは訓練コースもそうだし、能力評価に使用者がものすごくコミットしている。コミットした以上は責任を取れ、採用しろよという。しかし、そういうようにというのは難しいな。

○北浦参集者 規制的にかぶせることは難しいけれども、誘導というような、ある程度誘導することはできるかもしれないですね。

○松浦参集者 最初の段階から使用者側にコミットしてもらうことで、採用に向けた協力も得られやすくなる面はあると思います。

○今野座長 私の理解では、ドイツはコミットのときに初任給の決定も労使でコミットしていますから、パッケージでコミットしているということです。その代わり入職口だけの話ですが。

○大久保参集者 例えば小売業などで言うと、最近よく相談される悩みは、ベテランの非正規の人たちがいると。例の非正規の規制の話もありますので、だんだん何年もベテランとしてやってきた人たちについて、ある段階で終わりにする人と、そこから地域限定社員や正社員などに持ち上げる人とに分けなければいけないが、これをどういう基準で分けるのか。これはやはり明確にしておかないと職場が非常に乱れるので、何か欲しいわけです。そういうところに業界検定みたいなものでレベルを評価して、取れている人を継続して無期雇用していく候補者にしていくと。そして賃金も上げてという場面に使えるというのが、1つのいいイメージだと思います。もし、そういう形の運用になじんで業界検定が定着していった暁には、そのレベルを取っている人をいきなり外から地域限定社員として採用するという話になっていくのではないかと思います。ですから、2ステップないと、いきなり採用に使うという話にはなかなかならないわけです。

○北浦参集者 やはり先ほど座長がおっしゃったように、出口のほうで受けるほうの企業なり業界のニーズが鮮明に出た形で制度を作っていかないと、実効性がなくなってしまうというのは重要な点だと思います。ただ、その意味において1つ考えておかないといけないのは、これにはアウトサイダーが必ずいるということです。業界団体を考えていった場合に、全部インサイダーではなくて、結構アウトサイダーの部分は大きい。そこのところはせめてきっちりやるようにしていかないと、全然、実態的に意味がない。むしろそこに乗らないと損だという形で、ほかのアウトサイダーも含めて影響力を及ぼすためには、どこまで強く及ぼすかは分かりませんが、それを生かせるような形を付けなければならない。そこが1つ重要な点だと思います。実態的にも、ともかく100%独占しているような所はそんなにはなく、みんなアウトサイダーがあるのですよね。そこをやはり考えておいたほうが良いと思います。

○伊藤課長 今の北浦委員の御指摘に関して言うと、確かにアウトサイダーもいますし、主要団体のカバレッジも業界によって異なるわけです。あるいは主要な業界団体が複数並存するというケースもある。今までの指定試験機関方式、あるいは技能検定に関連する別制度の認定技能審査などの取組の経過を見ると、こういった能力評価の取組について、業界としてその必要性を認識したことをもって、例えば複数の団体がその旗の下で大同団結したり、アウトサイダーがインサイダーのほうに徐々に向かっていくベクトルができたりする。ですから現状で言うと、アウトサイダーや複数団体の存在は当然、前提としないといけないのですが、むしろこうした取組をある種の奇貨としながら、今ある団体の構成やカバレッジが必ずしも前提ではなくて、アウトサイダーも含めた業界全体としての物差し作りの必要性を共通認識化してくれて、より広がりが生まれる端緒、起爆剤となるような使われ方をすると、なお望ましいという見通しを持っています。

○北浦参集者 だからこそ、業界団体だけでやるのではなくて、もうちょっとパブリックな形で認証しないといけないというロジックもあるのかなという感じがします。

○今野座長 なるほど。ただ乗りをやらせるということですね。

○伊藤課長 それも1つの重要なロジックですね。

○今野座長 ただ乗りをやらせるのは、経済学者は好きだからいいです。

○伊藤課長 労働経済的に成立し得るロジックの1つではないかと思います。

○今野座長 私の知っている限り、確かに、この訓練を受けてこの資格を取ったら業界は必ず採りますという事例は、日本にはないと思うのですが、それと似た仕掛けはある。ちょっと違うけれども、認定訓練は一種のそれですよね。最初に雇用してしまうけれども、必ずある訓練は受けてきて正社員で採りますから、認定訓練というのはそのスタイルなのです。認定訓練とか、もしかしたらトライアル雇用も近いですかね。

○伊藤課長 ある意味、共通の性格を持っています。

○今野座長 あの辺と、調節とかできないですかね。そうすると出口統一もできるし。

○伊藤課長 訓練と評価のパッケージという意味での代表的、象徴的な仕組みということですね。

○北浦参集者 歴史的に見ると認定職業訓練は、技能者養成制度が発展したものですから、おっしゃったとおりの意味合いを持つだろうと思います。それを今日的に活用することは可能だと思います。今回の枠組みも、多分そういう枠組みを飲み込んだ形で、もっとオープンに作るというのはあるでしょうね。

○伊藤課長 現状でも御案内のように、地域における中小建設事業者の共同型の認定訓練校などでも、受講者の減少という問題はあるにせよ、それぞれの地域で重要な役割を果たしているという事例はありますので、そういったものとは、今御議論いただいていることは、確かに一定の親和性はあると思っています。

○今野座長 認定訓練というのは、建設しかないのですか。

○伊藤課長 いいえ、そうではないです。製造もかなりあります。製造の場合は主に企業単独型です。

○今野座長 対人サービスは。問題はそちらですね。対人サービスの認定は。

○伊藤課長 現象的に少ないかな。理美容等は一部ありました。今御議論いただいているような典型的な、あるいは業界検定のターゲットとして一般的に訓練されるようなものでは、ほとんどなかったと思います。

○今野座長 歴史的に見ると認定訓練というのは、政策的には縮少してきた政策ではないですか。違うのですか。

○尾形課長 政策的に縮小してきたと言うよりは、現実には。

○今野座長 予算を縮小してきた。

○尾形課長 自治体の裏負担があるので、なかなか進んでいないということです。ただ日産やトヨタのように、あれを使って結構人を集めている所もあるので、全部一概に評価するものではないと思います。

○伊藤課長 和洋裁とか調理とか、ものづくり以外でも、どちらかと言うと伝統的分野が中心です。

○今野座長 ほかにいかがですか。

○松浦参集者 谷口先生がおっしゃったアセッサーについて、私は余り詳しくないのですが、キャリア・コンサルタントとは相当違うのですか。

○谷口参集者 基本的には違うと思います。ただ、人の能力を評価するという役割で、それは公平な立場で評価するということです。

○松浦参集者 アセッサーは職業能力評価の訓練を受けているのですか。

○谷口参集者 そうです。専門職として評価を行うということです。ジョブ・カードの場合はその仕事に詳しいということで、OJTをお願いした企業に評価をお願いすることが基本になります。私もその評価のためのマニュアルに関わったことがあります。そういうもので、できるだけ平準化するような仕組みを取っております。

○松浦参集者 日本でも、そういう取組がなされているということですね。

○谷口参集者 日本でもです。

○今野座長 先ほど大久保さんが言われたフランスでも、そういうアセッサーはいるはずですよね。これまでの経験を評価するのですから。

○大久保参集者 一般的にアセッサーと表現している人たちのイメージは、どちらかというと仕事をしている現場の上級者が、評価する訓練を追加的に受けて、アセッサーとしてのタイトルを取るというイメージが近いのではないですか。先ほどのフランスの話でいくと、完全に審査員なのです。出てきた書類の信憑性を見る感じなので、多分ちょっと毛色が違うと思います。

 逆に言うと、キャリア段位制度のときの設計もやりましたが、例えば介護などでいくと、アセッサートレーニングをやっていて、もう何千人かのアセッサーがいるのです。その人が介護の現場で項目リストを基にして、実際にやっていることをチェックして、できている・できていないとやっていくのがアセッサーです。それはトレーニングを受けた現場の人で、基本的にその会社の社員なのです。それだけだと、さすがにお手盛りになる危険性がリスクとして入るので、それとは別に。

○今野座長 社員の監査役みたいなもの。

○大久保参集者 審査員とは別にいて、出てきた書類を基にして別のものと突き合わせた上で、最後に審査をするのです。ですから、そういう感じになっているのではないですか。

○伊藤課長 重層的な仕組みということです。

○松浦参集者 自己評価も飽くまでも主観的なものなので、自己評価の高い人が実際に現場で評価されているとは限らないという指摘があります。現場の評価も、現場の評価担当者が辛口か甘口かで評価結果が随分分かれるところがあります。客観的な評価に近づけるという意味では、本人、現場、アセッサーという重層的な評価の仕組みが有効なのだろうと、今のお話を伺って思いました。

○今野座長 それをすればするほど、今度は逆にコストが掛かるのですね。

○伊藤課長 それとのバランスですね。今のジョブ・カードの評価シートですと、取りあえずはそれは並記という形で。

○松浦参集者 それに乖離があると、その意味を考えるわけですね。

○伊藤課長 それを指導の切り口にしていくというのが、取りあえず現状での活用の仕方です。

○谷口参集者 評価の対象者として、これまでの議論で非正規をかなり強くイメージして議論を進めてきましたが、その際は労働移動を前提に評価の話をしてきたのです。非正規でもかなりの割合を占めていて、女性が主に担っているパートの実態は、結構長期的に働いているわけです。その中で時間給がどのように決められるかが客観的かどうかが、問題ではあるのではないかと思います。

 今野先生はその辺が詳しいかもしれませんのでお聞きしたいのですが、実は私は学生のための授業で、教材に使っているNHKのドキュメンタリーがあるのです。東北地方のスーパーで、かつては鮮魚などは専門職として正社員ですが、職人さんが主に担っていたけれども、そういった人たちをどんどん非正規化というか、パートに置き替えていくと。刺身を作ったりといったことも、パートの女性がやるようになってきたと。そういった人たちの能力検定を社内検定できちんとやって、例えば自給を30円上げるとか50円上げるとか、そういうドキュメンタリーがありまして、社内検定の教材として使っているのです。要するに、社内検定でパートをランク付けして賃金を決めるというのは、必要性があってのことですが、そうでない仕組みをとっていない所が結構多いのではないか。そういった所を公的な仕組みでカバーしてあげるというのは、どうなのでしょうか。

○伊藤課長 私も今の谷口委員のパートタイマーの話を聞いて、スーパーマーケットの話がすぐに思い浮かびました。第2回の研究会においても業界団体のヒアリング状況ということで、一連の御紹介を申し上げた中で、スーパーマーケット協会のいわゆる「S検」と言われるものがあります。これは結果として、パートタイマーが対象のボリュームゾーンになっているわけですが、純粋な民間の業界検定です。ただし私どもの事業の評価基準をベースにして開発したものです。

 大多数の大手スーパーマーケットがS検に参画する中で、一貫して御説明申し上げているように、採用選考という意味では今あるパートタイマー等の従業員が対象ですので、余り活用されておりませんが、参画している各企業においては、パートタイマーの昇給昇格にも活用している事例はあります。民間独自の取組でも大同団結をすれば、谷口委員がおっしゃったような観点で機能する可能性はあります。○今野座長 そういうように業界でやっているS検定があって、今後は業界検定になると、何か良いことはあるのですか。

○伊藤課長 それは正に制度設計次第だと思うのです。先ほど申し上げたように、今回、業界検定スタートアップ支援を予算事業として位置付けて、開発やトライアル実施に関しては国の事業として位置付けて、予算負担をしています。ですから今後、この場での議論を踏まえた設計の中で、スタートアップに関わる財政面を含めた支援ということになるでしょうし、業界検定の名称独占うんぬんという議論にも関わってきますが、合格者の効力・効能として、1級、2級ということで正に業界の、もっと言うとインサイダーだけの評価になってくるわけですが、その効力を国として、ある種のサーティフィケイトということで位置付けた場合、より市場性が出てくる。少なくともそういう観点でのメリットは追求していく必要があるのではないかと思います。

○大久保参集者 社内検定を持っている会社があって、そういう業界で新たに業界検定を導入したとき、今やっている社内検定が業界検定に相当するという突き合わせの認証をやって、それに相当しているものについては自動的に業界検定として出すという接続はやられますか。

○伊藤課長 今、大久保委員がおっしゃったような相当弾力的な仕組みもあるでしょうし、同一業界の中でかなり共通性のある社内検定を行っている場合に業界検定の仕組みの中で共通項をある程度出し合っていくと。その共通項については、正に名実ともに業界検定ということで整理をした上で、企業スペシフィックな部分については更にそれぞれの企業で付け足すと。ですから、そこはいろいろなバリエーションがあり得るのではないかと思います。私どもも具体的な制度設計まで詰めて考えているわけではありませんが、方向性としてはそういうように。

○今野座長 究極の質問です。現在民間独自検定で行われているものはなぜ技能検定ではないのですか。先ほどの問題になってしまいますが、S検はなぜ技能検定ではないのだろう。現実はもちろん違いますよ。

○伊藤課長 取りあえず、まず率直に。現象的・経過的に申し上げますと、技能検定における指定試験方式における手続上の申請が行われていないということです。私どももそういう観点で、余り精査してきたわけではありませんが、以前にも別の資料で御説明申し上げているように、指定試験方式は団体としての要件と、検定そのものの要件があります。現状の民間検定で言うと、特に試験の実施方法などに関して、恐らくは今の指定の要件を満たさない部分があるのではないかということです。ただ、大枠の方向性としては、技能検定でやろうとしていることと全く違う営みではなく、学科と実技の2本立てで一定客観性を持った、ある程度のロットの試験を実施しております。例えば、仮に今の技能検定制度を前提としたとしても、こういったもののやり方の見直し、ブラッシュアップをすることによって、将来的にそちらに付けることもあり得ますし、業界検定のほうが整備された場合には、もちろんそちらに乗ってくる可能性もあるだろうと。

○今野座長 今の技能検定の認定というのは、この領域が本来的に合っているか合っていないかを評価しているのではなくて、ある一定の手続上のことができていれば、技能検定という。

○伊藤課長 現実論としてはですね。

○尾形課長 1つだけ補足します。技能検定というのは非常に伝統的な分野です。ただ、その当時のことを考えてみると、当時は国策として、この分野の技能者だけはきっちり養成しなければいけないという分野でやってきたわけです。他方でスーパーの補助的・代替的業務をやっている人たちを、国策として何が何でも養成しなければならないかというと、それはニーズとして全然違うのではないかというのは、はっきり言えるのではないかと思います。

○今野座長 ということは、原則として国策という基準が入るということですか。

○尾形課長 入ると思います。大久保委員が先ほどから何度もおっしゃっているように、国策としてなぜここに光を当てるのか、こういうやり方をするのかというのは、必ずセットだと思っています。

○北浦参集者 そこの説明の要素が大きいと。もう1つあるのは、業界団体の複雑性もあるのです。それが1つのすっきりした形になっていればいいのですが、乱立しているとか入り乱れているときに、それを業界の検定制度として認めるかという難しさがあります。共同歩調を取ってやってくれればいいけれども、現実には、そこを微妙に切り分けて、この業界団体のやる1つの技能職種の検定制度ということで、多少似たようなものがあり得てしまうというのが現実の姿なのです。ですから、やはり業界団体も主体に結構引っ張られてしまうところがあるのです。その辺を含めて、もうちょっと広範に制度設計ができるようになればというのが、今回の1つのポイントだろうと思います。

○今野座長 S検は、今回の業界検定の1つのリーディングケースですよね。違うのですか。

○伊藤課長 今回のスタートアップ支援との関わりで言いますと、正にその団体自体がどういう考え方を持つかが出発点ですが、現状ではそれについてイエスともノーともなかなか。ただ、イメージ的に申し上げますと、現在の業界検定を初めとする既存の技能検定制度等だけではカバーし切れない、新たな「職業能力見える化」ニーズとの関わりで言うと、比較的適合性の高い分野の1つであろうということは、一般論として言えると思います。

○大久保参集者 業界検定は具体的に予算が通って、幾つかの業界団体に申請されて良いものであれば、それに予算を付けるということになるのですが、その場合の要件については、業界団体単独ではなくて、例えばそこと教育訓練機関が連携して、訓練から検定の認定まで全部やるというのを要件にするのですか。その辺りはどういうオペレーションの姿をイメージしているわけですか。

○今野座長 では、そこまで来たし、時間もないから。今日は予算の話もしてくれるのですか。

○伊藤課長 それでは今のお答えかたがた、参考資料1の補足説明をいたします。先ほど時間の関係で、余り詳細な説明に至らなかった23ページです。概算要求段階の情報については第1回でも少し御紹介申し上げましたが、この議論と、ある種並行する形で、まずは予算事業でのトライ、実践研修を進めようという考え方で概算要求に、この業界検定スタートアップ支援を盛り込んでおります。冒頭に申し上げたように、15,000万円で4団体程度という規模で、満額の予算案の位置付けがなされております。

 若干補足いたします。通常、こういった委託事業に係る予算は単年度単年度ですが、1つの団体を取ってみても、能力分析、評価ツール開発、評価者の育成、更にはトライアル実施検証と、とても1年では収まらないということで、2か年事業実施が継続可能な、少し特殊な予算の仕組みとして仕立てております。実施団体に関して、先ほど委員からお尋ねがあったような観点では、いわゆる調達要件に関しては省内議論中ですので、まだ確定しておりません。そういったものを省内で確定した上で、1月末あるいは2月といったタイミングで、競争的な調達方法による業界団体からの企画の応募を受け付けるという手続を経た上で、今後、一定の要件の下での団体の選定を行っていくという仕組みに入り、新年度当初からこの事業がスタートしていく。これがまず大きな流れです。

 したがって、先ほどの大久保委員の御質問にイエスとかノーと答えられるほど、私どももの方針は固まっておりません。ただ、いわゆる委託事業ですので、私ども国と契約した上で、必要な経費については一定の基準の下に委託を指名するという仕組みですから、契約の相手は1つです。ただ、ここにあるような業界検定の目的を達成する上で、当該実施主体がスタンドアローンで役割を従前に発揮できないケースも当然あり得ようかと思っております。その場合に、例えば教育訓練関係機関とか職能団体とか、そういった業界検定が持っているリソースをこの事業の遂行上、補足するようなリソースを持った団体と連携した事業実施体制企画ということは、少なくとも一般論としてあり得るものという考え方でおりますし、そういった企画が排除されないようなルール設定を、これから詰めていく必要があるという問題意識は、私どもも持っております。

○今野座長 今日は難しい議論が多かったから、疲れてしまいましたね。全体的で結構ですので、言い残したことはありませんか。私が言い残したことを言っていいですか。きれいに行っているかどうかは別として、先ほど読んだ資料5が好きです。例えば、業界検定みたいなものを本当に強力に進めて広げてくると、やはり能開法上は全体をどうするかを考えないといけないと思うのです。ですから、この絵が良いかどうかは別にして、全体的なマッチングを考えて、技能検定も含めて全体的にどうするかという視点も持ちつつ、今回はどういうやり方をするかということでやっていただきたいと思います。

○伊藤課長 一方で大久保委員から御指摘があったように、新しく作る、注目の集まる業界検定そのものの意義や立ち位置を明確化する資料も必要ですし、同時にこういう全体像も。

○今野座長 多分、そうしておくと大久保さんが言われた、「それをなぜ制度がやるのか」というような質問があっても、全部きれいに答えられると思うのです。それはここの研究会の役割ではなくて審議会かなということで、審議会に宿題をお渡ししておきましょう。

○大久保参集者 資料5の一番右側にある、「その他多様な分野」というのは、先ほどの議論でいくと、余り外部性が存在しない所であると。つまり、その分野の技術・技能についても極めてファームスペシフィックなものであるとか。

○今野座長 あるいは狭い業界とか。

○大久保参集者 あるいは、未経験の人を採用して、内部育成型で自己完結するような領域が、その他の多様な分野であるとするならば、こちら側の3つについては、今言った外部性・一般性みたいなことで1回くくると思うのです。くくった上で、この分野について職業能力の見える化を推進することが、労働市場の機能の効率化であったり、職業能力開発の推進に貢献するのだと。だから、ここについてはそれぞれの分野で一番やりやすく、合理的な方法において推奨していくということを、最初に書いたほうがいいのではないかと思うのです。

○伊藤課長 御指摘の趣旨は大変よく分かりました。

○今野座長 外部性だけだと経済学者に引っ張られて気に入らないから、何かほかのものはないかなと。

○伊藤課長 外部性に合ったようなというロジックを追加すれば。

○今野座長 もちろん外部性はいいのですよ。ほかに言い残しはありますか。

○谷口参集者 特に大久保委員の後付けになるのですが、イギリスのNVQにしてもアメリカのSQLスタンダードにしても、なぜあんなことをやったのかという背景の主要なところが、産業競争力と言いますか、労働力の質というのが、両国とも共通なのです。幸いなことに日本では、そうした問題意識から能力評価をきちんとやりましょうという政策には入ってこなかったのです。それは基本的に優れた労働力に恵まれていたということなのでしょう。そうした側面で「国策」という言葉から連想したのです。仮にそうした能力評価を行うための主要な背景を公にするということは、やはりきちんとさせたいなという気がします。

○伊藤課長 国策というか、先ほど総務課長からもお話がありましたが、最近の例で言うと、指定試験機関方式のキャリア・コンサルティング技能検定などは、正に労働市場政策上のある種の国策として推進するということで位置付けられています。そういう意味では先ほど座長がいみじくもおっしゃったように、外部性というのも1つの基軸としながら横軸を整理するというのが、今日の議論を踏まえて私どもに課せられた課題だと認識しております。そういう国の政策としての必要性とか幾つかの軸を、かつ、余り複雑にならないように分かりやすく、どういう順番立てて説明するかということだと思います。各委員の御指摘を踏まえた資料5に相当するものも含めての整理は、しっかり試みておきたいと思います。

○今野座長 ここは研究会ですから、資料は大きくいきたいですね。では、時間になりました。

 今日は専ら資料5の横軸をどうするかということで、最大の議論が行われたと思います。最後に事務連絡をお願いします。

○小野専門官 次回、第6回は213日の木曜日、10時から12時の開催を予定しております。場所等の連絡は、追ってさせていただきます。

○伊藤課長 いま座長から総括いただいたように、次回は横軸の概念整理が最大のポイントです。同時にこれまで今の職業能力評価制度の現状やその活用、方向、教育訓練の関係など、幅広くいろいろな御指摘をいただいておりますので、できればこれまでの議論に関し、資料5に相当するものはそれはそれとして、私どものほうで骨子案といった形で、全体像を一度整理させていただいた上で、更に今日御議論いただいたような点にポイントを絞って、御審議いただければ有り難いと思います。かつ、年度末は更に皆様方も大変御予定が入って、お忙しくなると思っておりますので、近々第7回、3月の日程も並行的に調整させていただければと思っております。何とぞよろしくお願い申し上げます。

○今野座長 それでは今日は終わります。ありがとうございました。


(了)

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