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2013年12月4日 第3回医療法人の事業展開等に関する検討会 議事録

医政局指導課

○日時

平成25年12月4日(水)16:00~18:00


○場所

厚生労働省専用第22会議室(18階)


○出席者

委員

田中座長 猪熊委員 今村委員 大道委員 梶川委員
川原委員 鶴田委員 西澤委員 橋本委員 長谷川委員
日野委員 松井委員 松原委員 山崎委員

参考人

川渕 孝一 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授)
田原 芳幸 (内閣官房 日本経済再生総合事務局 内閣参事官)
松山 幸弘 (キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)

○議題

医療法人等の間の連携の推進について

○議事

○田中座長 定刻となりましたので、第 3 回「医療法人の事業展開等に関する検討会」を開催させていただきます。お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございました。

 議事に入る前に、事務局より資料の確認をお願いします。

○伊藤指導課長補佐 資料の確認に入る前に、出席の状況を御報告いたします。本日は各委員全員に御出席いただいておりますことを御報告いたします。

 資料の確認をさせていただきます。お手元の資料を御確認ください。本日の資料は、資料 1 「医療法人等の間の連携の推進について」、資料 2 「医療機関による健康増進・予防や生活支援の推進に関する議論のまとめ等について」、参考資料 1 「第 3 回医療法人の事業展開等に関する検討会参考人名簿」、参考資料 2 「『非営利ホールディングカンパニー型医療法人』に関してお聞きしたい事項等について」、参考資料 3 「産業競争力会議提出資料」、参考資料 4 「松山参考人提出資料」となっております。資料に不備等がありましたら事務局までお伝えください。

 また、資料 2 については事前に各委員に御確認いただいておりますので、その旨、御報告させていただきます。

○田中座長 本日は、議題に関連して参考人をお招きしております。お越しいただきましてありがとうございました。事務局より事前に御紹介をお願いします。

○伊藤指導課長補佐 御紹介させていただきます。まずは産業競争力会議から、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授、川渕考一参考人です。

○川渕参考人 よろしくお願いいたします。

○伊藤指導課長補佐 内閣官房、日本経済再生総合事務局内閣参事官、田原芳幸参考人です。

○田原参考人 田原でございます。よろしくお願いします。

○伊藤指導課長補佐 キヤノングローバル戦略研究所から研究主幹の松山幸弘参考人にも御出席いただいております。

○松山参考人 松山です。よろしくお願いします。

○伊藤指導課長補佐 なお、産業競争力会議の方々については、御予定もあり、 16 40 分頃に退席されるとお聞きしておりますので、その旨、御報告させていただきます。

○田中座長 早速ですが議事に入ります。本日の議題は「医療法人等の間の連携の推進について」です。初めに事務局より資料の説明をお願いします。

○伊藤指導課長補佐 資料に沿って御説明いたします。資料 1 「医療法人等の間の連携の推進について」を御覧ください。 1 ページ目です。こちらの資料については、第 1 回の検討会でも提出させていただいたように、社会保障制度改革国民会議等で、今回の議題に関することが指摘されています。

2 ページ目です。こちらは、社会保障制度改革国民会議の報告書で、今回の議題に関して指摘されています。具体的には下線を引いている部分ですので御覧ください。

3 ページ目です。いわゆる「経済財政運営と改革の基本方針」においても、同じように「医療法人間の合併や権利の移転等に関する制度改正を検討する」旨が記載されています。

4 ページ目です。「社会保障制度改革推進法第 4 条の規定に基づく『法制上の措置』の骨子について」においても、下のほうの下線の所に、「医療法人間の合併、権利の移転に関する制度等の見直し」が記載されています。

5 ページ目です。「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律 ( ) 」においても、同様に「医療法人間の合併及び権利の移転に関する制度等の見直し」が規定されています。

7 ページ目です。今回の第 3 回の検討会では、主にホールディングカンパニーについて御議論いただこうと思っています。ただし、医療法人の横の連携を強化するための様々な制度見直しを行う前に、現行制度において明らかに不合理な点があれば修正すべきだと考えております。そこで、この認識の上で、事務局からは、医療法人社団及び医療法人財団の合併について御提案させていただきたいと思っています。医療法人社団及び医療法人財団の合併については、最近、厚労省及び都道府県に対して、可能かどうかという照会はあるものの、現行の医療法を見てみると規定がないという状況です。

 一方で他の制度を見てみると、一般社団法人及び一般財団法人の合併については、法律で認められており、行うことができるという整理になっています。今回御提案を申し上げる前に、座長や西澤委員など、各有識者にお聞ききしつつ、また、その方々から御紹介していただいた方にもいろいろとお聞きしたのですが、現行の医療法において、医療法人社団及び医療法人財団の合併が認められていないことの理由については、明確には分からず、ニーズがなかったのではないかと推測されるが、正確には分からないという状況です。

8 ページ目です。現在、社団と財団の合併については認められていませんので、そのため、現在、例えば財団の事業を社団に事業譲渡を全てした上で、社団が解散して財団に事業を寄せるという手法が採られていますが、それと合併との違いについて整理したものが 8 ページ目です。大きな違いは、一番下の課税関係の所です。事業譲渡した後に解散するというスキームを採った場合には、事業譲渡というのは、税法上単なる財産の売買ですので、課税されるという状況になっています。

 一方、合併であれば、税法上の適格合併に当たれば、被合併法人の譲渡した資産の譲渡益に対して課税はされないということで、やはり課税関係のところは大きな違いが見られると思います。

9 ページ目です。こういった今まで御説明したことを踏まえた上で、もし各委員に御議論いただいて異論がないようでしたら、医療法人社団及び医療法人財団の合併について認める方向で進めてはどうかと考えております。なお、その場合の合併前後における法人類型については、下の表のとおり、現行においては、「持分なし」と「持分なし」のときには「持分なし」、「持分なし」と「持分あり」のときは「持分なし」、「持分あり」と「持分あり」のときに、新たに法人を設立する場合には「持分なし」、合併前の法人が存続する場合は「持分あり」、「財団」と「財団」が合併するときには「財団」という形式になっています。

 これを踏まえて、「持分なし」と「財団」が合併する際には「持ち分なし又は財団」、「持分あり」と「財団」が合併する際には「持分なし又は財団」ということで整理してはどうかと考えております。これについては、後ほど御議論を頂ければと思っております。

10 ページ目です。今回メインで議論していただくのがホールディングカンパニーについてですが、その前に、「医療法人等の間の連携の推進に関する論点について」で整理させていただきました。

11 ページ目です。目的の項目の 1 つ目の○については、第 1 回の検討会でも示させていただいたものです。中小規模の医療法人を大規模集約する目的ではなく、地域の医療提供体制において医療法人間の横の連携を強化し、病床の機能の分化及び連携など地域医療の再構築を進めるという観点や、経営に行き詰まった医療法人を健全な形で再生するという観点から、医療法人の合併や権利の移転等に関して検討を行うべきではないかという視点。

 今回もう 1 つ事務局のほうから新たに追加させていただきました。 1 つ目の○については主に医療法人の議論でしたが、地域において医療機関を経営する法人主体としては、社会福祉法人等もありますので、そういうところも踏まえた上で、医療法人のみならず、医療機関を運営する社会福祉法人、独立行政法人国立病院機構、地方独立行政法人などとの横の連携の強化も視野に入れて、必要な検討を行うべきではないかということで、目的についての論点を設定しております。これらの目的を踏まえた上で、その手段として、具体的にどのような方策が考えられるか。また、「ホールディングカンパニーの枠組み」等についてどのように考えるかなど、具体的な手段について今後議論していただこうと思っております。

 最後の※の所です。今後の具体的な手段に係る検討イメージについては、まず大きく提案されているのが「ホールディングカンパニーの枠組み」ですので、まずこれについて議論していこうと思います。また、産業競争会議からは 2 つ目のポツの所です。医療法人が所有する遊休スペース等があれば、高齢者向け住宅の用途に使用することなどを目的とした賃貸事業を附帯業務に追加してはどうかという御提案もありますので、これについても検討していきたいと考えております。

 また、ホールディングカンパニーについては、出資を伴う形での医療法人等の間の横の連携の強化策ですが、例えば出資を伴わない形での医療法人等の間の横の連携の強化策についてはないかどうか。また、医療法人の分割を認めるなど、現行法制度についてはほかに見直すべき点はないかということで、今後いろいろと議論していただこうと思っております。事務局からは以上です。

○田中座長 続けてヒアリングを始めます。産業競争力会議、松山参考人の順に説明をお願いいたします。

○田原参考人 産業競争力会議の事務局である日本経済再生総合事務局の参事官をしております田原です。本日は 10 29 日の産業競争力会議医療・介護等分科会で増田主査から提案があった非営利ホールディングカンパニー型医療法人制度の検討の内容について説明をするよう、厚労省医政局より要請があったことを受けて参加しております。そもそも産業競争力会議の医療・介護等分科会とは何かということについて、まず簡単に御説明させていただきたいと思います。

 参考資料 3 1 枚目が、産業競争力会議の親会議、全体会議の議員の名簿です。安倍総理を議長として、議長代理が麻生副総理、副議長に甘利経済再生担当大臣、以下、御覧のような閣僚の方々と民間議員の方々をメンバーとする会議体です。

 次のページは、産業競争力会議の医療・介護等分科会の位置付けです。本年の 9 月から産業競争力会議の下に 4 つの分科会を設けました。 1 つは雇用・人材、もう 1 つは農業、 3 番目に医療・介護等分科会、もう 1 つフォローアップというのがあります。この分科会は座長が甘利経済再生担当大臣、官房長官、経済産業大臣、ほか関係大臣が参加しています。そのほか民間議員の方々がそれぞれ分担して参加をしています。医療・介護等分科会については、増田議員、長谷川議員、新浪議員がメンバーであり、主査が増田議員です。

 次のページです。ポンチ絵のようなものがありますが、これが分科会で増田主査が提案をした「医療・介護等分科会の今後の具体的な検討項目 ( 概要 ) 」という紙です。そもそも何を議論せよと言われているかというのが、この上の「日本再興戦略 (H25.6.14 閣議決定 )( ) 」とある所に「医療・介護分野をどう成長市場に変え、質の高いサービスを提供するか、制度の持続可能性をいかに確保するかなど中長期的な成長を実現するための課題が残されている。」と書いてあります。日本再興戦略が 6 月に閣議決定しており、そこに医療・介護分野で様々な施策が書いてあるのですが、その中に、まだ検討していない課題があるであろうと。その課題について検討せよというのが分科会のミッションです。

 「今後の具体的検討内容」として、下にベン図のようなものがありますが、 4 点掲げております。1「効率的で質の高いサービス提供体制の確立」、2「公的保険外のサービス産業の活性化」、3「保険給付対象範囲の整理・検討」、4「医療・介護の ICT 化」です。この 4 点について検討を 10 月から重ねております。本日の議論の対象になっている「非営利ホールディングカンパニー型医療法人制度の検討」については、この中の1のアジェンダの 1 つとして入っております。

 次のページです。こちらが今ほど御説明したポンチ絵とともに増田主査から提出があった「主査ペーパー」と呼んでおりますが、それの抜粋です。 1. [効率的で質の高いサービス提供体制の確立]ですが、まず < 検討の視点 > として、効率的で質の高いサービス提供体制を確立するためうんぬんと。さらには、「病院・施設完結型」から「地域完結型」への転換が必要でありうんぬんと。そのために、地域内の医療・介護サービス提供者の機能分化や連携の推進等に資する制度が求められている。具体的にそうした制度を考えていきましょうという問題意識から議論をしています。基本的には、これは社会保障制度改革国民会議の報告書の内容を踏まえた、増田主査も国民会議のメンバーでしたので、そういう流れになっているということです。

 「『非営利ホールディングカンパニー』型医療法人制度の検討」ですが、こちらは既に御覧いただいているかと思いますが、社員等の要件や社員総会等の意思決定の在り方、出資規制等の見直し、剰余金の分配などの論点を掲げております。無論、こうしたことを実現するには、これだけの論点で済むとは思っておりませんで、制度設計の詳細については引き続き検討しなければならないと考えております。

 以上が説明ですが、事前に 50 問近い質問を頂戴しております。まずはじめに、質問にお答えする前にお断りしておきたいのが、先ほどの説明で申しましたが、本ペーパーは飽くまで増田主査のペーパーでして、こういう会議体ではたまに事務局がペーパーを出したりするのですが、これは事務局のペーパーではありません。したがって、増田主査の了解を得た範囲でしかお答えできないことをお断りしておきます。

 あと、先ほども申し上げたように、制度の詳細については今後検討していくことを想定しておりますので、現時点ではお答えしかねるような質問もあることを御理解いただければと思います。

 個々のお答えに入る前に、提案の趣旨について幾つか強調させていただければという点があります。 1 点目は、飽くまで非営利性を確保した制度とすることを前提とした提案であること。例えば、営利企業の病院経営の参入などを目指すものではないということです。これにより、医療の公共性といったものは阻害されないと考えております。

 先ほども申し上げましたが、社会保障制度改革国民会議報告書において、機能の分化、連携の推進に資するよう、例えばホールディングカンパニーを含むような法人の合併や権利の移転等を速やかに行うことができる道を開くための制度改正を検討する必要があるとされていることを踏まえての提案です。国民会議で提唱をされている姿が実現できるよう、現行制度で対応しづらい点を改めるという趣旨です。何もない白地から我々が勝手に考えたものではないということです。

3 点目は、既存の医療法人等がホールディングカンパニーに移行することを強制するといった提案では全くありません。飽くまで現在の合併や事業譲渡等の経営統合の手法に新たなメニューを加えるという提案です。また、当然のことながら、株式が公開されているわけではありませんので、こういった制度で医療提供者等の意に反した敵対的な再編や統合が行われるといったことはないと考えております。

 以上が強調しておきたい点ですが、以下、質問への御回答に移らせていただきます。一つ一つの質問にはお答えするお時間もないかと思いますので、質問を趣旨別にくくって、その趣旨別に答えさせていただければと思います。

 まず、議決権の配分方法について幾つか御質問を頂いております。とりわけ、議決権の配分について、出資割合に応じて議決権を配分するのは適切なのかといった趣旨の御質問を何問か頂いております。議決権ルールについて、主査ペーパーに書かれてある内容は、各参加法人が新法人の設立時に定款で当事者間の合意に基づくルール設定を可能とすることを想定しています。必ずしも出資割合に応じた議決配分のみを前提としているわけではありません。

 剰余金の分配についてです。これは非営利性の確保と言ってもいいかもしれませんが、そういった観点からの質問も幾つか頂いております。非営利性の確保の関係では、剰余金の分配については、傘下の非営利団体からホールディングカンパニー型法人への剰余金の分配など、グループ内の非営利団体の間での剰余金分配を認める一方、グループ外部への剰余金の分配を禁止することで、グループ全体としての非営利性を担保できるのではないかと考えております。

 ホールディングカンパニー型医療法人の活動に、地理的制約を設けるべきではないかという御趣旨の質問も何問か頂戴しております。先ほど御紹介した主査ペーパーの < 検討の視点 > の中に、効率的で質の高いサービス提供体制を確立する、あるいは、「病院施設完結型」から「地域完結型」への転換が必要である、更には、医療イノベーションや医療の国際展開を進めていくためには、アメリカにおける IHN のように国際的に通用する規模・質を持った医療機関の存在が求められるなどいろいろな検討の視点がありますが、こうした様々な目的の達成に資するような制度とすることが念頭にありますので、地理的制約を課すという議論は、分科会では、現状は行っておりません。

 制度に対するニーズがあるのかという御趣旨の質問を何問か頂戴しております。合併や事業譲渡の制度が既に存在していますので、新制度のニーズは乏しいのではないか等々の御趣旨かと思いますが、本提案は、複数の医療法人、あるいは医療法人と社会福祉法人などを束ねて一体的に経営することを法制上可能とする非営利法人を創設してはどうかという提案です。これにより、合併や事業譲渡とは異なり、既存の医療法人や社会福祉法人などを維持したまま、地域包括ケアや地域医療の再生など様々な目的に応じて、一体的・効率的な経営が、ファミリーなど属人的な結び付きに頼らない透明性の高い形で可能になるといったメリットがあるのではないかと考えております。

 さらに、具体的なニーズはあるのかといった質問も頂いております。こちらについては、現場のほうから、こうした制度があれば活用したいとのお話を伺っているところです。

 経営権の放棄を余儀なくされることから、誰も参加しないのではないかという御趣旨の質問も頂戴しております。繰り返しになってしまいますが、本提案は、合併や事業譲渡に加えて新たな経営統合のメニューを追加するものです。既存法人は残存しますので、合併と比較して経営統合のハードルは低くなるのではないかと考えております。

 また、経営統合の助成策といったことは考えているのかという御質問がありました。そうしたことは、現時点では議論をしておりません。

 営利法人との関係について御質問を頂戴しております。ホールディングカンパニー型医療法人と営利法人との関係については、営利法人がホールディングカンパニー型医療法人の社員となることは想定しておりません。したがって、ホールディングカンパニーが営利法人に支配されることはないと考えております。他方、ホールディングカンパニーと連携して地域包括ケアを担う介護事業等を行う営利法人について、ホールディングカンパニー型医療法人から当該営利法人への出資といったことは認めてはどうかという提案をしております。

 地域医療や医療機関への影響に関して幾つか質問を頂戴しております。大規模グループが地域医療や既存医療法人に大きな影響を与えるのではないかという質問ですが、本提案は、合併や事業譲渡などの既存制度に加えて、医療法人や社会福祉法人の連携を円滑化するためのメニューを追加するものです。地域を大組織の支配下に置くことを目的としたものではありません。なお、合併や事業譲渡とは異り、個々の医療法人が存続することから、元々の医療法人などが地域において有してきた地域住民との信頼関係や、地域性や患者特性への配慮などについては、合併の場合よりも維持が容易になるのではないかと考えております。

 また、非営利ホールディングカンパニー型医療法人の適正規模をどう考えるのかといった質問を頂戴しております。その点については、現時点では議論は必ずしもしておりませんが、先ほど申した < 検討の視点 > にあるような様々な目的の達成に資するようにするためには、規模に関わらず利用できる仕組みとすることが望ましいのではないかと考えております。

 非営利ホールディングカンパニー型医療法人の業務や組織の内容等について多くの質問を頂戴しております。まず、非営利ホールディングカンパニー型医療法人が自ら医療事業等を行うのかどうかという質問を頂戴しておりますが、医療事業その他の事業を自ら行うことも排除はしておりません。この点については、まだ十分に議論を行っておりませんが、例えば、個々の医療法人が出資をして共同事業を行う法人を設立して、その法人が事業を行うといったような形態もあり得るのではないかといったことも考えております。

 また、非営利ホールディングカンパニー型医療法人の資金調達はどのように行うのか。恐らく、持株会社とのアナロジーで言えば、束ねる持株会社は資産を余り持っていないので、何を担保にどうやってお金を借りるのだといったような御趣旨の質問かと理解いたしましたが、こちらも十分に議論を行っているわけではありませんが、例えば、資産を保有する傘下の法人がホールディングカンパニーに対して債務保証を与えることで、ホールディングカンパニーが資金調達を行う方法等、様々な方法があるのではないかと考えております。

 ホールディングカンパニーを公的病院再編の受け皿とすることを議論しているのかといった御質問も頂戴しております。現時点ではそうした議論は行っておりませんが、自治体病院などの公的病院がホールディングカンパニーに参加することについては、分科会で別途、非公式のヒアリングを行っておりまして、そうしたヒアリングの場では有識者の方よりご意見があったところです。

 ホールディングカンパニー型医療法人の傘下の法人同士で医療機関の間の病床移転を認めることを検討しているかといった質問も頂戴しておりますが、現時点ではそうした議論は行っておりません。

 ホールディングカンパニー傘下の非営利団体のイメージについて御質問を頂いております。これについては、医療法人や社会福祉法人等をイメージしております。

 このほか、ホールディングカンパニーの機能や組織について、統治機構の在り方や、社員や出資者の構成、既存法人への支配の集中度、説明責任の範囲、収益分配のルールなど詳細な質問を頂戴しておりますが、御質問いただいたような事項を含めて、今後、制度設計について議論する必要があると考えております。私からは以上です。

○田中座長 ありがとうございました。続いて、松山参考人からお願いいたします。

○松山参考人 御報告申し上げます。約 10 分ということですのでちょっと早口になりますが御了承ください。参考資料 4 の「医療事業体と非営利ホールディングカンパニー」を御覧ください。非営利ホールディングカンパニーおよびそれと混同するおそれがある IHN という概念の区別をまずした上で、米国の事例、それから米国以外の事例、我が国で活用する場合にどういうことが想定されるかということを御説明いたします。

 資料の 2 ページ、 3 ページです。まずホールディングカンパニー機能があるかないかに関係なく、急性期から在宅に至るまで、地域住民が医療のために必要とする機能を全て持った事業体のことを IHN(Integrated Healthcare Network) と言います。医療提供体制が民中心か公中心かに関係なく、各国は今このようになりつつあります。その目的は、地域包括ケアのミスマッチの解消です。つまり医療は技術進歩が激しいものですから、常にその提供体制の在り方というのは変わっていかないといけない、それをよりスムーズに行うための仕組みということです。

4 ページです。このように、インテグレートした仕組みができた理論的背景は、 2009 年にノーベル経済学賞をもらったウィリアムソンが明確に論じています。産業ごとにそれぞれ最適な事業体の組織構造がある。医療に関しては、 1 つの広い地域を見たときに、その地域に中核となる全ての機能を持った事業体がないと、実は地域包括ケアというのはなかなかできないということです。これは中核的機能を持つということですから、その医療市場を独占するわけではありません。あとで議論になると思うのですが、そのマーケットの 20 %から 30 %ぐらいを抑える事業体があれば、そこがまずデータの集積をして、行政当局にそのデータを提供するという意味です。

5 ページです。アメリカの医療経営者にヒアリングした結果です。他の産業と違って、医療の場合、株式会社病院は臨床の技術開発にあまり関与せず先進医療に消極的です。というのは、コストがかかり赤字になるからです。これは医療における市場の失敗と言えます。そこで、その役割を担うのが実は非営利の地域ネットワーク IHN なのです。一番下に書いてありますとおり、アメリカで大規模な非営利 IHN が登場し世界に医療のパッケージ輸出までも行っているのは、その経営者の使命が利益の最大化ではなく地域経済社会の発展にあり、ブランド競争で勝つことにあるからです。そのためには優秀な人材を集めないといけない。だから赤字になる先進医療に積極的に取り組む一方、その財源を他の部門で稼ぐのです。様々な臨床研究を支援し先進医療を普及させるために自分たちが存在するとその医療経営者は言っていました。ちなみに、米国のヘルスケア市場の約 7 割はこういう非営利の医療事業体が占めています。

6 ページは、 IHN とホールディングカンパニーの関係ですが、 IHN であることとホールディングカンパニー機能があることは分けて考える必要があります。垂直統合した事業体は各国に存在します。その下に非営利子会社もしくは株式子会社をぶら下げるようになっているのが米国でして、日本、オーストラリア、カナダ等は子会社がない。しかし、医療介護サービスを提供する全部門を包含した IHN が存在するということです。

 更に詳しく米国の事情を説明します。 8 ページです。一番上に 4 つの類型があります。まず、医療提供部門と保険部門が、連結経営しているものと非連結のものの 2 つに分かれます。連結している場合に、 3 つに分かれて、医療提供部門が保険部門より大きい、その逆。それから、3が医療提供部門と保険部門が同規模というものです。共通しているのは、非営利要件とグループ形成と組織求心力のコンセプトです。非営利要件は、利益は特定の個人ではなくて、全て地域社会に還元されることです。売却された場合の財産帰属先は地域社会もしくは政府です。グループ形成は、ホールディング機能を持つ親会社はあくまで非営利。その傘下に非営利子会社と株式子会社がぶら下がる。ただし、そこで注意しなければいけないのは、医療提供部門は全て非営利という点です。保険部門も非営利です。では、なぜ株式会社がぶら下がるかというと、医療周辺事業で企業との合弁事業のチャンスがたくさんあるからです。これは大規模になってくるとそこに人材が集まっています。患者の情報もあります。したがって世界中から企業がきて、そこでいろいろな研究開発をしようとする。そのときに合弁の話がありますので、そこで初めて株式会社の議論が出てきます。あと、海外進出は全て株式会社です。組織求心力ですけれども、これはお金の関係ではありません。あくまで価値観というか、使命感と人事権です。重要な意思決定機能は中核非営利会社に一元化するということです。

9 ページです。なぜこの IHN が出てきたかという理由です。どの国でも政策によって財源がいろいろな診療科にシフトします。全部持っていればその財源シフトの影響を組織の中で吸収できる。かつ医療技術の進歩及び高齢化の進展等で地域の医療・介護費用、すなわちマーケットが大きくなれば、その分必ず増収増益が可能な事業体になれるということです。それからもう 1 つは、保険部門を持っていることによって、そこで新しく開発された臨床技術を国の政策に関係なく、自分の保険子会社で診療を給付対象にして実験することもできるということです。これが上手くいった所が更に大きくなる方法として、ホールディングカンパニー機能があるのです。その結果、国や自治体よりも強固なセーフティネット事業体が生まれます。基本的に民間非営利病院を核にした地域ネットワークの場合、政府から補助金は 1 ドルももらっていません。  11 ページです。全米に 550 ぐらいの IHN がありますけれども、その中で最も経営力が高いと言われているバージニア州の Sentara Healthcare からヒヤリングを 11 月にしてきました。彼らが言ったのは、まず、経営管理はトップダウンで決める。ただし、臨床現場、つまり医療の現場はお医者さんに全部任せるという仕組みです。それから、ベンチマーキングを駆使していろいろな評価をしています。医師個人の評価表というのも作るのですが、これはその本人にしか伝えない。目的は、もし本人が納得すれば改善点を議論して、無料の指導医を付けてレベルアップを図るためということです。3が重要です。アメリカのみならず、オーストラリア、カナダ等でも地域ネットワークの投資の在り方としては、病院はできる限り小さいものを作る。浮いた財源で高機能サテライト施設に投資していく。これによって地域住民のアクセス向上と機能の強化を図っているということです。

 それから、医療 IT 100 %の標準化は目指さない。これはできないという判断です。ただし、核になる部分、例えば 80 %から 90 %は標準化しています。しかし、事業規模拡大とともに追加でいろいろな医師グループが参加してきますので、全部標準化するにはコストがかかりすぎる。そんなことはできないということです。要するに、大事なのは情報を共有するカルチャーです。これをいかにして作るかに専念しています。それから、アメリカの非営利 IHN の場合も法人税が免除されています。バージニア州だと連邦税を合わせて 35 %ですけれども、それを免除されていることに経済的インセンティブはありません。というのは利益の 50 %ぐらいは地域還元しないと経営者がクビになったり課税されるからです。技術進歩が加速する中で世界標準の医療を提供するのが目的ですけれども、これは海外から患者を連れてくるということではありません。あくまでその地域住民が、自分たちが受けている医療はベストに近いということを納得してもらえるような仕組みを作っていくことが使命なのです。

12 ページです。その中で非営利ホールディングカンパニーの機能を使って大規模化して、医療産業集積を作っている所があります。有名なのはピッツバーグの UPMC 、これはピッツバーグ大学医療センターですけれども、法人としては大学とは全く別で、独立した事業体です。

13 ページにその概要が書いてあります。 2013 6 月期実績で年間収入 1 兆円です。臨床研究で、医師・科学者約 7,000 人を一元管理して、その人材と情報集積に対して、世界中から企業が集まっている所です。年間 500 億円から 600 億円を地域に還元しています。それから、株式会社を使って海外進出もどんどんやっています。一番下にあるように、日本の民間病院がここから研修プログラムを買っています。非常に評判がいいということです。

14 ページです。アベノミクスの観点からいうと、もし、医療のパッケージ輸出するのであれば、例えばこのような UPMC と競争するということになるということです。しかし、日本の場合、医療事業体があまりにも脆弱です。米国には 1 兆円規模の地域医療ネットワークが少なくとも 5 6 か所あります。メイヨークリニック、ハーバード大学が組んでいるマサチューセッツ総合病院が形成するパートナーズ、コーネル大学とコロンビア大学の合弁医療事業体などです。そういう所がライバルになることを認識した上で、日本も体制をつくらなければいけない。米国以外がどうなっているのかというのは 16 ページです。オーストラリアのビクトリア州のメルボルン周辺にある医療公営企業です。これは規模が約 1,300 億円。 40 か所に拠点を持っている公立の IHN です。ホールディングカンパニー機能はありません。

17 ページです。カナダの場合は、 British Columbia 州ですが、年間事業規模 1 2,000 億円、これが一元管理されているということです。

18 ページです。こういう IHN の仕組みを誰が考えたのかというと、実は日本が一番最初で、長野厚生連とか聖隷福祉事業団がその例です。

21 ページです。これは私の意見ですが、ホールディングカンパニー機能を付与する場合の 3 つの視点です。〈視点1〉は、医療産業集積の核となるメガ非営利事業体を日本にも作る必要があるのではないか。少なくとも 2 3 か所できれば、海外と対抗できると考えています。〈視点2〉は、過疎地の事業体が合併して、地域医療包括ケアを担う非営利の事業体になるニーズがあるのではないか。これは具体的にある地域から相談を受けて、約半年ぐらい検討したことがあります。そこは最終的にはいろいろ障害があってできなかったのですが、現場の医療法人の経営者の方から真剣な御相談がありました。〈視点3〉は、現実の問題として、持分あり医療法人であっても、グループ経営をしている所が既に今あります。それを追認するような形で、非営利でなくてもホールディングカンパニー機能を一部認めてもいいのではないかということです。例えば海外進出するときは当然株式会社の子会社病院を作って出ざるを得ないと思いますけれども、そういうことも念頭に置く必要があるのではないか。

22 ページはその概念図です。私の意見ですが、日本の医療提供体制の問題点は、民間医療法人にあるのではなくて、税金を使って過剰投資を続けている国公立病院にあるのだろうと思います。そこをベースに、まず非営利のネットワークを作る。“公益”と書いてあるのは民間的経営をするという意味です。そこにホールディングカンパニー機能を付与して、そこと理念が一致すれば、社会医療法人や社会福祉法人がグループに参加する。そのときの条件は、患者さんの情報共有ということです。そういうグループができたときに、それ以外の法人が、そこと競争するのか業務提携するのかはそれぞれの御判断ということだと思います。

24 ページです。今、全国に都道府県単位で、医療連携の情報共有のネットワークができています。しかし、そのモデルと言われる長崎県のあじさいネットを持ってしても、 9 年間で普及率 2 %です。この弱点は、やはり情報を共有する核になる事業体がまだ小さすぎることが原因だと思います。そこで、例えばその医療圏で 2 3 割のシェアを持つ事業体を作って、それが情報集積し情報共有による医療連携を進めていけば、あじさいネットのような情報共有ネットワークの利用の普及が進むのではないかというのが私の意見です。以上です。

○田中座長 ありがとうございます。産業競争力会議の方々は 16 40 分ですので、残念ながらここで御退席です。本当は質疑したかったのですが、残念です。松山参考人には残っていただけますか。

○松山参考人 はい。

( 産業競争力会議の方々退出 )

( 田原参考人退出 )

○田中座長 参考人の側からもこちらの委員と自由に討議していただくようにお願いいたします。

 ただいまの、事務局の発表及びヒアリングを巡って、委員の方々から御自由に意見や、産業競争力会議に対しては質問できませんが、厚労省事務局への質問はできますので、お願いいたします。

○今村委員 余りに、「非営利ホールディングカンパニー」という言葉自体が唐突に出てきたということで、考え方を整理するのにもう少し時間が要るのではないかというのが正直な感想です。

1 つ、最初の産業競争力会議の方が言われたところの議決権の問題を申し上げたいと思います。これについては当事者や設立したカンパニーが決めればいいというお話だったと思いますけれども、非営利性を担保するには、既に平成 17 年の「医業経営の非営利性等に関する検討会」報告で、持分による議決権ということをすれば、これは非営利性の担保にはならないと結論づけられております。状況がその時点と今とそんなに変わっているのかと言えば、非営利性の担保ということについては、格段の事情があるとは思いませんので、こういったことから言いますと、 5 ページの拠出額の多寡にかかわらず 1 1 票という現行の関係法令に定めているとおりでよいと考えています。

 それから、医療法人のときには、この地域できちんとした住民の医療を確保するのだというのが大前提になっていると思っております。そういったことからすると、今、松山参考人からお聞きしたことについて言えば、非常に大規模化が謳われているように思うのですが、必ずしもそういうものとは相容れないのではないかと考えます。一方、先ほどの産業競争力会議の方は、大規模化というものは必ずしも目指さないという言い方をされました。参考人によって意見が相当違うのかなということで、こっちはどの方向に行くのかなと思います。やはり私どもとしては、地域住民の視点というものを最も大事にしなくてはいけないように思います。

 また、海外と対抗するうんぬんというお話もありましたけれども、そういうのとはまたちょっと意味合いが違うのではないでしょうか。別に海外の医療制度と対抗するためにこのことが検討されるものではないと思っていますので、ここのところは、お聞きしたときの私の感想ということで申し上げたいと思います。

○橋本委員 まず、過去 2 回欠席したことをお詫び申し上げます。先ほどの参考人のお話を伺って、ちょっと考えたいところが。要は経営の統合というものをどのように考えるのかという話に今日は集約しているかと存じますが、先ほど IHN(Integrated Healthcare Network) などの話が出てきましたが、若干私の拙い知識で辿ると、そういう系統が非常に盛んなアメリカの歴史を見ますと、少なくとも 1980 年代、 1990 年代、それから 2000 年代に入って大体 10 年おきにその目的が変わってきていると分析しております。 80 年代はいわゆるバーティカルインテグレーションなどの言葉が流行りだしたころで、いわゆる経営の効率化を図る。具体的には間接費を軽減し、アメリカの場合は民間保険とのニゴシエーションが必要なので、そういうバーゲニングパワーを増強するということ。それから一部には患者の囲い込みといったような現象が起こっていたと思います。そのビジネスが余り伸びなかったことから、 90 年代に入ってからはいわゆる利用者のほうの価値をどのようにつくるのか。バリューチェーンという言葉に基づいて、どのように利用者にとって質の高い価値あるサービスを提供するのかという形の展開になっていったと考えています。

 一方、 2000 年以降に入ってからは、それで一人一人の価値を高めることはできても、結局、国民全体としての価値に繋がっていないというところから、次に出てきたのが、現在のオバマプランの中でも非常に重要な概念の 1 つとされているアカウンタブルケアオーガニゼーション、要するにサーブする集団、もしくは地域の人々の健康に対して責任をもって健康資源の管理・運用・発展を受け持つ形で医療機関ないしは福祉機関が統合した形で、そういうサービスを提供するという形に展開しているかと思います。今、松山参考人から伺ったのは、そういった意味ではかなり古いタイプのものを伺ったように感じています。

 また、現在のメイヨーとかクリーブラントなどのビジネスモデルなどもちょっと展開して伺いましたが、どちらかというと彼らが儲かっている理由は、医療本体そのものよりは臨床治験、新薬開発のところでオープンラボを動かして、企業からたくさんお金が入るようになっているというところがポイントですので、むしろそちらの規制緩和をしていただくと、槍玉に挙がりました東京大学ももう少し稼げるようになるのではないかということを、一応、ここでは申し上げておきたいと思います。

 基本的には、ここでの議論をする上でこの経営統合がどういうレベルのものを目指すのか、どれを日本が選ぶのかといったことをまず固めてからでないと、ガバナンスとかファイナンス支援とかテクニカルな話に終始しかねないというところを少し危惧しております。

○田中座長 テクニカルな話よりも上位概念を先にしっかりしろということです。

○松山参考人 御意見、どうもありがとうございました。まず、御指摘の点ですけれども、私の認識とちょっと違う点がありまして、それは、 80 年代はバーティカルインテグレーションではなくて、ホリザンタル、水平統合ですよね。同じ種類の病院群が合併して規模の利益を追求したという時代があって。

○橋本委員 いいえ、 80 年代は既にボストンでは、例えば Deaconess Hospital から出た Lahey Clinic などがバーティカルインテグレーションをやっています。これはハーバードビジネススクールのケースレポーターのケースシナリオでもなっています。

○松山参考人 でも、この IHN の統計ができ初めたのが 1994 年からでして、そのときは全米に 200 を超えるぐらいしかありませんでした。それが 1999 年に 604 になると言った具合に、全米に急速に広がりました。ですから、 IHN の歴史を見るといわゆる垂直統合ということであれば、 90 年代がスタート時点と認識しています。、それからオバマケアの ACO に関しては、今のバーティカルインテグレーションつまり IHN を否定するものではなくて、 ACO IHN がやっているわけですから、少し違う概念ではないかと思います。

 それから、メイヨークリニックや UPMC は確かに臨床研究で寄付をもらったりしていますけれども、基本は臨床部門の収益で全体の財務諸表が成り立っています。寄付等のお金というのは収入のごく一部だと思います。それから、 IHN というか、その医療事業体にもよりますけれども、通常は財団で寄付を受けて、それは医療機関経営には直接使えないようになっています。

○橋本委員 寄付をやっているのではなくて、企業からの委託研究費です。寄付は確かにフィランソロピーは一時期に比べると遥かに減ってしまっていて、アメリカの病院でも今はフィランソロピーでくっている病院はないということは存じ上げています。

 それからあともう 1 つ言いますと、臨床で飯を食えている理由は価格が全然違うからです。

○松山委員 価格の面は確かにおっしゃるとおりです。医療機関側が値段を決めるということです。ただし、これは 11 月に具体的なデータをもらってきましたけれども、医療機関が言っている価格と実際に受け取っている金額、つまり保険会社と医療機関が交渉して決めている最終価格は、医療機関が言う定価の 4 分の 1 から 2 分の 1 です。

○大道委員 海外のいろいろな制度のこともいいですけれども、少し議論を元に戻して、非営利ホールディングカンパニーというのは元々手段なのでしょうけれども、何か目的化しているように見えてしょうがないです。元々、なぜこれをやるのかというのは、初めに目的が書いてあったとおり、地域医療における連携の強化、機能分化ということだと思うのです。となってくると、医療機関における機能分化、連携、情報共用の在り方をどうするかということを深く考えないので、先にこっちにもっていくというのはちょっと本末転倒な気がいたします。

○田中座長 まだ内閣府のほうでも別に具体的に決まっていないことが多いようで、先ほどの質問に対しても、これは主査の個人的見解であるというお答えが多かったですね。その意味では、まだこちらも議論をするのは難しいのかもしれませんが、皆さんがおっしゃった、上位概念のことでも結構ですし、非営利ホールディングというコンセプトについても結構です。どうぞもう少し御発言をお願いします。

○今村委員 今、大道委員からも御指摘があったように、この非営利ホールディングカンパニーありきという議論ではないと思いますし、先ほどの社団と財団の統合という問題ですけれども、これも絶対あってはいけないとは思いませんが、しかし、そのことがどれほど地域医療に貢献できるのかということを議論しなければ、初めに統合ありきという問題でもないということでこの場は始めるべきではないかと思っております。私自身、どちらにも完全に反対をする立場ではありませんけれども、やはり地域の医療というものを重視するべきであって、ともすれば地域医療が崩壊するかもしれないという状況において、このような議論は慎むべきだろうと思います。

○梶尾指導課長 今、大変最もな御指摘をいただいておりますけれども、一応、念のための確認的なコメントです。今日の資料 1 4 ページないし 5 ページに、その前の国民会議の報告書もそうですけれども、 5 ページが今、国会でも議論いただいていますプログラム法案の条文です。これの第 4 条という所で医療制度の関係が書いてあるわけです。ここで、第 1 号のニと書いてあるのは、まずは本文で「政府は」ということで、「効率的かつ質の高い医療提供を構築する」うんぬんということで、そういうことのために検討をして措置を講じなさいと。その一号に「病床の機能の分化及び連携並びに在宅医療及び在宅介護を推進するために必要な次に掲げる事項」。このイ、ロ、ハの所に医療部会や検討会でやっています病床機能の報告制度とか、地域医療ビジョンをつくり、それを実現していくための財政的な支援といったこともやっていく、またあるいは、医療従事者の確保などをやっていくと、そういったことがイ、ロ、ハにあって、それと並行して、そのときの 1 つの手段としてそういった経営というところについても新たな選択肢ということを検討する必要があるのではないかということで、これだけを先行してということではなくて、まずは全体を目指していく中で経営の部分についても検討していく必要があるだろうという問題提供を頂いています。その部分だけを持ってこられてもちょっとどうかというのがあるかもしれませんけれども、そういったところを御検討いただければということです。

○田中座長 この法案は、地域で必要な医療を確保するためという上位目的が書いてあるとの説明ですね。

○大道委員 田原参考人が帰られたのでちょっとあれですが、先ほどのお話の中で、非営利型ホールディングカンパニー制度ができれば、現場で活用したいという事例があるというお話でした。厚生労働省のほうでそういう具体例を何か御存じでしょうか。

○伊藤指導課長補佐 ニーズに関しては、事務局でも、ある地方の社会医療法人が、ホールディングカンパニーの仕組みを使いたいということで、 1 度お話を聞きに行ったことがあります。その際、詳しく聞いてみると地域医療の再編のために活用するホールディングカンパニーというよりも、自分たちが事業を拡大していくためのツールとして使いたいという趣旨の発言でした。したがって、今回議論していただく形での、ホールディングカンパニーについてのニーズというのは正直言って、事務局としては聞いていません。ただ今回、産業競争会にはそういうニーズがあるということで御発言いただいていますので、具体的に我々もどこかと聞きつつ、そこは確認したいと思っています。

○松山参考人 今の御指摘の関連ですけれども、私がこのことを考えている 1 つの理由は、これから在宅ケアにシフトをするという政策の方向があると思うのですが、在宅ケアをするときに、開業医の先生方が 1 人で 24 時間年中無休でやられるケースというのが結構見られていて、 1 つの地域で 10 人、 20 人のそういう先生方がおられるにもかかわらず、それぞれ独立しているがゆえに、実は地域全体で見たら、 1 24 時間年中無休体制はできない。その解決の方法として、ある会社がグループを組んで、お互いに補完し合うということをやられて、ある程度機能していると思うのですが、しかし、個人で独立してやりたいという考えの先生もおられる。そうしたときに、地域の共有財産として、非営利の大きな事業体があって、その先生が休暇を取ったり学会に行ったりすることができるように、人的資源をサポートするという仕組みをつくる必要があるのではないか。そういうことにも使えるのではないかというのが私の考えです。

 それからもう 1 つは、医療機器をどんどん買っているのですが、稼働率は必ずしも高くないですよね。高度な医療機器に関しては、地域の共有財産として、非営利の事業体が持っていて、それをオープン方式で開業医の先生、もしくは民間病院の方々が使えるというようなことを考える時期に来ているのではないかというのが私の意見です。

○橋本委員 私だけ何か先頭に立ってあれなのですが、今のお話を伺う限りでは多分、ここにいらっしゃる、特に現場で開業していらっしゃる先生方からすると、既にそういった地域内での協力に関しては、医師会内のネットワークを通じて十分やられていらっしゃるという認識を持たれているような気がします。それを経営統合という形でやることによってプラスアルファが起こるメリットは何なのかといったことについて、松山参考人の御意見を伺わせていただけませんか。具体的にそういうスケジューリングであるとか患者さんをカバーするという点であれば、既に地域の医師会の先生方は協力して、既にやっていらっしゃると思いますけれども。

○松山参考人 その点については、うまくいっている地域もあるかもしれませんが、全体的にはまだ足りない部分がたくさんあるわけです。そこの認識が先生と私とちょっと違うのかもわからないですが、もっとうまくするためにはそういう仕掛けも必要なのではないかという御提案を申し上げています。

○長谷川委員 いろいろなレベルでの御議論はあると思うのですが、恐らくネットワークといってもいろいろな系統のレベルがあると思います。それで地域住民に対してサービスレベルが変わったというエビデンスというのは、きちんとした形では多分ないと思います。例えば、ホールディングを作るのが地域住民のためだといっても、そこの地域住民のためというところに関していうと、かなり議論は薄弱なものにならざるを得ないと。そうすると、今の組織の在り方というか、かなりテクニカルな話ですけれども、組織の効率化とか、むしろそちらのほうのニーズに対応すべきかどうかというように議論をもっと限定したほうがいいのではないか、効率的ではないかという気がいたします。そういった限定ということでもし考えるのであれば、例えば実際には、今はいろいろな形でのグループ化が行われていると。事務局の御説明にもあったように、事業譲渡はもちろん可能なのですが、実際には税法上の問題もあって、なかなか事業譲渡もしないと。そうすると実際にはグループであるけれども、複数の医療法人であるとか、こういったものを本部機能にもたせて、緩い結合のグループをつくっているところをむしろ整理するような、便宜を提供すべきかどうかということで御議論をされたほうがいいのではないかなという気がいたします。これは私からの提案です。

○田中座長 この国では事実上、緩い連合体でもしくは理事長 1 人による属人的結合で行われている例はたくさん見ます。そこを考えたほうがいいとのご指摘ですね。

 今までの話題は実は 3 層あって、 1 つは医療法人社団・財団の合併を認めるか否か、積極的に止めるか止めないか。今村委員のさっきの言い方をすると、そういう合併があってもいいのではないかとの提案が 1 つ。それと、非営利ホールディング、これは全くの新しい制度設計ですね、次元の違う話です。更にアメリカ流の IHN で国際競争をする方向は、もっと次元の違う話です。 3 層の話がありますので、それぞれについて御意見なり言っていただくといいと思いますが、ただ、大きくなればなるほど、抽象度が高すぎるのかもしれません。ほかにお願いいたします。

○山崎委員 医療の構造から考えると、従来は政策医療をするのは公立病院で、それ以外の医療をするのが民間病院と言う位置付けであったわけですが、その政策医療を担う公立病院が、きちんと政策医療ができているのかという検証ができないことと、また、個人病院でも既に政策医療に近い医療ができるだけの力をつけてきた病院があります。まず、こういった切り口で、医療提供体制をこれからどのようにしていくかということをきちんと整理しなければいけないと思います。というのは、公立病院の人件費が医療費収入の 120 %ぐらいという補助金漬けの医療をこのまま引きずっていくのか、また改革の邪魔をする、自治労対策をどのように整理していくのか、話し合う必要があります。

 私は地方の中核都市で病院を経営していますが、どうも今日の議論を聞いていると、自分の生活圏の中でホールディングカンパニーを作るというイメージがなかなか分かりません。一方では、地方では大分高齢化していますから、医療だけを提供しているのかというと、多くの病院が特養を持っていたりして介護も提供しているわけです。そういう現実を考えると、医療法人と社会福祉法人の合併をどうするかとか、合併させて経営の効率化を図っていくことのほうが現実的な検討課題なのではないかという気がします。

○田中座長 第 1 の課題であるタイプの違う医療法人同士の合併だけではなく、違う法人種別の合併も、もししたければ、そういうものがあってもいいのではないかという御意見です。

○山崎委員 問題点は、今度、政府が社会福祉法人に営利産業の参入を認めるようなことを言い出していることです。株式会社が特養を経営することになると税務の問題を同時に検討していかなくてはなりません。以前、非営利の検討会で検討して、持分のない法人を作るということで、平成 18 年に医療法の改正を行って、持分のない医療法人の類型を作ったのですが、その持分を放棄した途端にみなし譲渡課税が掛かる事態が生じ、誰も持分のない医療法人に移行できなかったということがあります。あのような失敗をまたしないように、法人類型の整理と同時に税法上の問題等を検討しないといけないと思います。

○松山参考人 先生の御指摘に私も賛成です。最初におっしゃった公立病院が補助金漬けになっているではないかということですが、私がこの研究をしたのは、そこを正すためです。というのは、米国以外のカナダやオーストラリアも、公立病院については広い地域でマネジメントを一元化しており、そこと民間医療施設とがある程度住み分けができているのです。例えば社会福祉法人と社会医療法人、若しくは、社会福祉法人と医療法人が合併して地域包括ケアに貢献するというときに、私が想定している国公立病院を核にして作ったホールディングカンパニーというのはそこには出て行かないのです。最大の使命は、そこの地域でミスマッチが発生したらそこを埋めにいくのが役割なのです。地域ごとの事情があるとは思いますが、そのような仕組みを作るべき時期にあるのではないかというのが私の意見です。

 それから、世界と闘うというときに、医療サービスで闘うのではないのです。私の申し上げているのは、臨床研究能力で負けないようにする必要があるという意味です。

○今村委員 臨床研究うんぬんというのは、この際、そう関係のある議論ではないのではないでしょうか。医療法人改革というのが臨床研究や治験と結び付けられるのは非常に違和感があります。それは少し違うと思います。

○松山参考人 それは私も同じであります。私は、医療法人にそれを大きく担わせることは想定していません。国公立病院の経営資源をもっと活用すべきではないかという意味です。

○松井委員 ちょっと議論がずれてしまうかもしれませんが、会社法を参考に、組織の法律という観点から 2 点ほど申し上げます。1点目として、合併の件につきまして、もともと日本の法律では、会社が合併できるという規定はありませんでした。また、民法上の公益法人も同様です。医療法人の場合、この公益法人の規定にならって合併の規定が存在していないのではないかと思います。この前提で、もし合併と同じことをしたいときは、厚生労働省から出されているように、解散をしてその財産を出資するという形しかありません。しかしそれでは二度手間ですから、会社法については、明治時代にこれらを一度の手続でできる仕組みを作ろうという需要が高まって、合併の手続が認められ、今日に至っています。もし、医療法人でも何らかのニーズ、つまりそういう二度手間を回避する必要、あるいは税務上のメリット等、そういう理由があれば、合併の規定を置かない積極的な理由はないと思うのです。たまたま法制度を作ったときの経緯でそうなっているだけでして、合併については前向きに検討する余地はあるのではないかという感じがしています。

2 点目に、ホールディングを作るという話ですが、これも会社法は 1990 年代に同じような経験をしています。ホールディングを作りやすくするという要請がなぜ当時出てきたかと申します、一方で、金融機関のように世界で競争するために巨大な組織を作っていかなければいけないという要請があり、他方で日本企業がもうガタガタになって不採算部分をどんどん切り離せるようにしていかなければいけないという要請があり、そのようなことがあって、ホールディングを作ったり事業を再編したりすることが容易にできるようになっていきました。では、現在、そういう強い政策目的が医療法人にどれだけあるのだろうか。本当にそれだけのニーズがあれば、これはもちろん積極的に検討する余地があるのだろうけれども、地域の中で連携をするというときに、わざわざそのような組織を作って統一的な指揮命令をしなければいけないような状況が本当にあるのだろうか。連携をするだけなら契約によって緩やかにこれを行うという方法もありますから、ホールディングが唯一の方法ではないはずです。私も、先ほど他の委員の方々からもございましたように、まず明確なニーズなり目的なりがあって、それに最も適した組織形態を探していくことが大事ではないかという気がしています。

 余分なことを一言申し上げますと、会社法でそういう事業の切り貼りやホールディングを作ることを容易にしましたが、それに伴う濫用事例ももちろんあるのです。たとえば会社分割などは、財産隠しなどにも使われてきたわけです。組織再編が容易になるということは濫用の可能性も常に付いて回りますので、そのような可能性があるとしてもなお新たな制度を導入するだけのメリットがあるという前提が必要だと思います。さもないと、制度を作ったのだけれど思わぬ方向に使われてしまって、想定していない事態が起こる可能性もあるのではないかと、少し危惧しています。

○田中座長 地域で医療・介護が連携していくことについては全員賛成で、そのツールとしては、もっといろいろな方法があり得るので、無理矢理ホールディングスでなくてもいいだろう、と。

○松井委員 だけではない、と思います。

○田中座長 だけではない、ということですね。それに対して、医療法人間の合併は、したい所がしてもいい、積極的反対をするほどの話ではないと、その 2 つに分けて言っていただいたのですね。ほかの方はいかがですか。

○松原委員 合併しづらいようなことがあるのであれば、社団と財団の合併など、やりやすいように変えればいいと思っています。 2 つ目の、非営利ホールディングカンパニーの話については、正に先ほどからの議論の、何を目的にするかということが重要です。連携が目的であれば、これはかなり強制力を持って、地域で皆がここに参加しなければならないぐらいのことにしないと、地域連携に役立つような仕組みとしては機能しないだろうと考えます。先ほどのお話ではこれについて義務化や強制はないという話なので、なかなか連携には使いづらいだろうと思います。そうすると、この非営利ホールディングカンパニーの目的は、統合しやすいように、経営統合して大規模化しやすいようにすることになるかと。それが目的であれば、わざわざ非営利性を阻害するような、持分と議決権をリンクさせるとか、内部だけに限ったとはいえ配当も許すとか、そういうわざわざ非営利性を阻害するようなことをしてまで入れるメリットがあるのかについて、よくよく検討したほうがいいと思います。

○田中座長 的確なまとめをありがとうございます。相手がいなくなってしまうと、論争にならなくなってまいりますね。

○山崎委員 今日の資料の 8 ページですが。

○田中座長 何番の資料ですか。

○山崎委員 資料 1 です。 8 ページに「合併」という項目がありますが、税法上の適格合併に当たれば被合併法人の譲渡した資産の譲渡益に対しては課税されないと、さらっと書いてあります。「適格合併」というのはどういう税法上の条件だと適格合併になるのかと言うと、現実的には、両方の法人が同じような条件で合併というのは余りないと思います。必ずどちらかが小さくてどちらかが大きいというような。そうなったときに、この適格合併の条件に合わなければ課税対象になってしまうわけです。私は、合併をさせるということには反対していないのですが、合併させることによる条件をきちんと詰めておかないと、先ほどお話したように、後になって課税関係が生じて、法律は作ったけれども現実的には全然使われないというものになってしまう可能性があるような気がします。

○田中座長 正しい、当然の疑問だと思います。適格合併についてもう少し事務局から何か説明はありますか。適格であれば資産の譲渡益に課税されない点について、どの程度の厳しい要件なのか説明はありますか。

○伊藤指導課長補佐 例えば、持分の定めのない場合の合併のときの適格合併の要件としては、大きく 5 つあります。 1 つ目は、合併する両法人の双方の事業が相互に関連するものであること。 2 つ目は、双方の対象事業の売上金額、従業員数、資本の金額がおおむね 5 倍を超えないこと、また、双方の特定役員 ( 理事長又は理事等 ) のいずれかが合併後に特定役員となることが見込まれていること。 3 つ目は、被合併法人の従業員のおおむね 80 %以上が合併法人の業務に従事することが見込まれていること。 4 つ目は、合併後も被合併法人の主要な事業が合併法人で引き続き営まれることが見込まれていること。 5 つ目が、合併法人の出資を継続して保有することが見込まれる合併法人の職員が所有する被合併法人に対する出資の合計が被合併法人の出資の総額の 80 %以上であることとされています。これについては、医療法人の合併の際の要件ではなく、あらゆる法人合併の際の要件となっています。

○西澤委員 この IHN に関しては全く素人なので、今、一生懸命これを理解しようと思っていますが、幾つかお聞きします。 9 ページの真ん中辺りの3に、「医療提供部門と保険部門を連結することが収益」と書いています。この保険部門というのを具体的に教えてください。

○松山参考人 重要な御質問ありがとうございます。これはいろいろなタイプがありますが、端的には、例えば地域医療ネットワーク、つまり、医療提供部門の事業体があって、そこが地域医療の保険子会社を持つということになると連結できるのです。そうすると、医療機関側は保険部門の要請に応じて予防に力を入れるわけです。それがうまくいくと、病院に患者さんが来なくなって、その分収入が減りますが、保険部門で利益が上がるので、グループ全体としてはリスク分散ができて収益が安定するというメカニズムです。例えば、オーストラリアの場合は州政府が医療財源を握っています。その財源規模よりも小さい形で、先ほどの地域医療ネットワークを公立病院で、日本で言うと地方独立行政法人のような形で作っています。そこは財源を握っている州政府の直轄の医療公営企業なので、実質的に一体となって運営される。何をするかと言うと、政策に必要なデータを集積して、それを上に上げていくわけです。保険会社がある場合とない場合で何が違うかと言うと、例えば、米国で非営利の地域医療ネットワークを保険会社が連結している場合はレセプトがありません。レセプトは必要なくなるからです。それを最もうまくやっているのがカリフォルニアのカイザー・パーマナンテで、これは医療提供部門と保険部門の大きさが同じなのです。

○西澤委員 簡単に言ってしまうと、保険者と提供者が一緒になる。ある市が国民健康保険を持っていれば、国民保険の保険者であって医療提供もやっているというイメージだと考えてよろしいでしょうか。

○松山参考人 正にそのとおりです。日本の場合は少しまだ時間が掛かるかもしれませんが、都道府県単位で保険者機能を統合する方向にあると思います。そうすると、財源は県単位で管理がなされると思いますが、その下に、ある程度規模の大きな、これは国公立病院を核に作るべきだと私は思っているのですが、非営利事業体を作って、そこが保険者の必要とするデータを作成するというような仕組みを作る。どちらかと言うと、これはオーストラリア・タイプですね。オーストラリアやカナダに近くなると思います。

○西澤委員 もう 1 つ、質問です。 11 ページの6に、目的と言いましょうか、「地域住民の満足度向上」と書いてあります。地域住民というのは、医療提供の場合、日本では皆保険で全員平等ですが、アメリカの場合は皆保険ではないと思います。地域住民の範囲とは、そこの地域の全ての住民ということでしょうか。

○松山参考人 アメリカの場合は事業拠点を病院以外にもたくさん配置するのですが、そこに住んでいる住民の方ということです。オーストラリアの場合は、医療公営企業つまり地方独立行政法人が地区割りで作られていますので、その地区ごとに責任を負うのですが、地域住民は自分の意思でほかの地域の医療公営企業の病院で治療を受けたり民間病院で受けることは自分の選択権としてできます。というのは、医療の質に関する成績表が公表されているのです。それを見て住民が動くということです。

○西澤委員 オーストラリアではなく、アメリカだけでお聞きしたかったのですが、皆保険でないということでは、医療サービスを受けるのは保険に入っている方。入っていない方は、 10 ページにあるように、貧困者への慈善医療等の別の形でやっているという意味だと思います。日本は現在皆保険で、私たちは、やはり日本のこの皆保険システムはすばらしいものでこれからも続けるべきだと思いますし、 WHO にも評価されていると思います。お話になったのはアメリカの皆保険ではない中でのシステムの話であり、これを日本の皆保険システムの中にどう落とし込んでいくかということが、どうしても私には見えないので、その辺りはこれからの検討の材料ではないかと思っています。

9 ページに、「連携することで収益が安定」と書いてありますが、保険者が提供もすれば、両方持つわけですから、当然そこで必ず赤字にならないように工夫する。それから、10の、「担当地域の医療費総額が拡大する限り増収増益が可能」という辺りを見ても、これはどうしても我々の言う「非営利」とは少し違うのではないか。収益を目的としているように見えます。また 11 ページに戻りますが、提供体制も、病院は必要最小規模、浮いた財源で高機能サテライト施設群に投資ということで、そちらはアクセス向上、利益率も高いと書いてあります。我々は、病院もこれから高齢社会に向けて、やはり皆保険を維持するために、できるだけ無駄を省こうということですが、その視点が、急性期をやればコストが高いので、なるべくそうではない利益が高いほうへ持っていくというような書き方に見えます。そうすると、この「非営利」というのが被さっても、我々側のイメージの非営利とはどうしても私の頭の中ではうまく整理できません。その辺りも今後 IHN を理解する上でもう少し議論が必要ではないかと思いました。

○松山参考人 これを米国の場合に限って説明しますと、非営利の最大の要件は、そこで収益を上げたお金が特定の個人に行かずに全て地域に還元されるということが唯一の条件です。したがって、慈善医療などいろいろなことをするのですが、経営者の責務は全体で黒字にすること。通常、非営利医療ネットワークは年間の利益率 4 5 %を想定して予算を組んでいます。これは日本の国公立病院も同じだと思いますが、黒字経営しないと存続ができなくなるわけで、株式会社病院のように利益の最大化は目指さないけれども、ある程度の利益は確保した上で、その約半分ぐらいは常に地域還元している。そのガバナンスを地域住民が握っているということです。

 民間非営利病院を核に作ったネットワークの場合は連邦政府及び州政府から 1 ドルも補助金はもらいません。その代わり、経営に対する介入権も政府は持っていません。一方で、公立病院を核にしたネットワークもあります。その場合は州政府丸抱えになっています。

○田中座長 おっしゃるように、様々な制度の違いを前提として出来上がってきた側面は否めないですね。ほかに、いかがですか。

○梶川委員 私自身は医療実態にそう知見がある者ではありませんが、ほとんど皆様が言われていることと近い話です。そもそも、組織制度、合併や非営利のホールディングなど、組織制度自体は、それ自体がいいとか悪いということではなくて、やはり大前提となる政策目的とか、価値判断とか、サービス提供の在り方とか、経営方針、意思決定の仕方、こちらにどういう影響をもたらせたいのかということを前提に組織制度を御検討いただくことになるのではないかと思います。特に意思決定やガバナンスの在り方というのは、最終的な成果・目標に向かってどうあるべきかということだと思います。そういう意味では、 IHN のお話は、組織形態の在り方と言うより事業構造モデルに近いお話だとお聞きしていました。それぞれの話をどう整理すればいいかということを考えていたところです。こういう構造モデルというのは、今話題になった保険者の在り方等の社会構造モデルも含めた事業構造のモデルではないか。 IHN というのは、それが極めて効率的に運営できるというメリットのある形で、その前提の下で行われているのだと整理しています。

1 つ質問です。松山先生の説明の中の8で、ほとんどの部分は保険者との連結経営で、非連結の経営の中では医療提供部門とその周辺事業のみです。保険者との連結というのは、この事業構造モデルの中では相当大きなファクターになるように思うのですが、その辺の重みについて。また、それがない場合にも、この IHN について、その提供部門だけでもかなり有効性が高いのではないか。この辺についてお聞きしたいと思います。

○田中座長 松山参考人、お願いします。

○松山参考人 直近の正確なデータは分かりませんが、現在アメリカに地域医療ネットワーク、 IHN と言われるものが 550 ぐらいあると思います。そのうち、保険部門と連結できているのは 100 前後です。大部分は非連結経営で保険部門を持っていません。というのは、保険部門の組織カルチャーと医療提供部門の組織カルチャーはやはり合わないので、その両方をマネジメントできないと連結経営できないという問題があるやに聞いています。ここで重要なのは3の、医療提供部門と保険部門が同規模というものですが、これはカリフォルニアのカイザー・パーマナンテと米軍の医療ネットワークの 2 つが該当します。実はそこが、イギリス、カナダ、オーストラリアの医療改革のモデルになっています。というのは、財源と提供体制が公中心の国から見ると、本来、保険部門と医療提供部門が完全に一体化した組織カルチャーを作りたいということがあるのです。それは情報共有と情報分析でつながるのですが、それが最もうまくいっているのが米軍とカイザー・パーマネンテなのです。それを真似ようとして、オーストラリアなどはいろいろな改革をしているように認識しています。

○川原委員 先ほど山崎先生がおっしゃった適格合併というのは非常に大きな概念だと思っています。適格合併ができないが故に医療法人の合併を諦めなければいけないということになると、地域の中での医療提供体制に影響を及ぼすと思います。うまくクリアできるような、医療法上の仕組み、また、税制上の課税当局への要望も含めて、その辺もきちんと整理することも本当に必要なのではないかと思います。

○田中座長 その方向だとすれば、適格合併についても検討を進めるべきだとおっしゃっているのですね。

○川原委員 はい。 1 つの方策として、適格合併できるだけの素地というか、その辺をきちんと整理しておく必要があると思います。

○田中座長 本日の議論を伺っていると、 IHN については、確かにアメリカでは日本とは保険制度など全く異なる形で発達してきており、差し当たり参考にはするけれども、明日取り入れようという話ではなさそうですね。これからもウォッチする意味はあるかもしれません。

 非営利ホールディングスについては、上位目的である地域の医療のために、あり得る 1 つの方策かもしれないが、松井委員が言われたように、もしかするとマイナスがあるかもしれない。非営利ホールディングスこそは鍵だと断定するほど強いことは言えない。

 最初に話しました医療法人の合併については、医療法人を合併したい意欲を積極的に止める理由もない。ただし、箱だけ作ったけれども何も起きない事態がまた起きてはみっともないと、山崎委員に言っていただきました。それについては、取りわけ適格合併についての部分を医療側でも詰めるべきだ。こういうまとめでしょうか。

○松山参考人  1 点だけ、しつこくて恐縮ですが、私の意見を言わせていただきたいと思います。 IHN というのは特殊な概念ではなくて、日本にも既にたくさんあります。事例としては、長野厚生連や聖隷福祉事業団。それから、社会医療法人の中で社会福祉法人を持っている所が 50 60 あります。そういう所も、規模は大きくありませんが、実質的にそうなっています。その理由は、私の資料の 4 ページのウィリアムソンの理論にあるように、技術進歩に合わせた患者情報共有に基づく機能分化を進めていくためには、 1 つの事業体で全部を持っているほうが動きが早いのです。それをもっと進める必要があるのではないかというのが私の意見です。

○田中座長 おっしゃるとおり、現実的に進んでいる所は、今、名前を言われたような所を見ると、そちらに向かって進んでいるとの評価は可能ですね。

○松井委員 松山参考人に是非お伺いしたいと思います。長野の例を出されましたが、アメリカと日本を比較したときに、アメリカの IHN は、 12 ページの例にあるように、かなり地域的に広い範囲が対象になるのが一般的なのか、あるいはそれは地域によってその範囲はいろいろあるのか、いかがでしょうか。もし我が国で考えた場合、もっと狭い地域のものを考えることになると思いますが、アメリカではそれに類するようなものもあるのでしょうか。

○松山参考人 御指摘のとおりで、それは様々です。地域の特性によって作られていますので、例えば人口 30 万人ぐらいの所で公立病院を核に地域ネットワークを作って、そこが医療レベルでは全米でトップ 5 %に入るような病院を経営していて、そこに全米から研修医が集まるというような所もあります。ですから、ある程度の規模、別枠のように大きくなる必要はなくて、パッケージとしてある程度の規模があれば、技術進歩に応じた新たな投資財源を自ら生み出すことが可能になる。そのレベルになっていれば、それプラス補助金とか企業からの研究費をもらえばもっと発展できるのではないかということです。要は、医療の場合は地域間競争になっているのです。同じ地域にある医療機関の間ではある程度の役割分担ができているということです。

○松井委員 そうすると、仮に日本で議論する場合、地域間競争というようなことも視野に入れるべき、ということですね。

○田中座長 事務局からほかに聞いておきたいことはありますか。

○伊藤指導課長補佐 特にございません。

○梶川委員 細かい技術論で、先ほど適格合併の話が出ましたが、これは持分ありと持分ありを合併させるときの、その合併比率のような、この辺のところはもともとの制度設計の中で税的考え方も影響されると思います。その辺を整理の上で、税もどういう可能性があるかということではないかと思います。持分なしのようなものでは適格か不適格かという概念がもともと存在するのかなという気がします。持分あり同士の制度が一番やっかいではないかと思います。

○田中座長 医政局の目的としては、税を取られずに合併できる方向を考えたいのでしょう。

○伊藤指導課長補佐 努力したいとは思いますが。最初に申し上げたように、適格合併については医療法人だけのルールではなくて、法人が合併するときの一般的なルールですので、税務当局などと話をすると、当然ながら、医療法人だけ特別扱いというのは正直に言ってハードルが高い部分はあります。ただ、いろいろと御議論いただいて、必要なものについては厚生労働省としても必要な対応をしていきたいと思っています。

○田中座長 本日はここまででよろしゅうございますか。もう既に法律に書かれている事項については、技術的に、できるだけ医療界のためになるように前向きに進めていただく。ホールディングス等については、まだここで 1 回で結論を出せるような話ではないし、上位目的を忘れてはいけないと皆さんに強く言っていただきました。一方で、医療や介護の地域連携を進めることについては、この委員全員が賛成ですので、もう少し詰めたいと思います。

 それでは、本日はここまでとさせていただきます。松山参考人、ずっと付き合っていただきましてどうもありがとうございました。これにて終了いたします。事務局から次回の案内をお願いします。

○伊藤指導課長補佐 本日はありがとうございました。次回は、各委員に対して事前に御説明いたしましたとおり、必要な調査や論点整理等を行うためお時間をいただくこととし、次回の開催については追って連絡いたします。

○田中座長 言い忘れましたが、本日行われた議論については各委員に御確認いただいた上で事務局に整理していただきます。よろしくお願いいたします。活発な御議論をありがとうございました。これにて終了いたします。


(了)

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