ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会)> 第6回遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会議事録(2013年12月20日)




2013年12月20日 第6回遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成25年12月20日(金)13:00~15:00


○場所

三田共用会議所 大会議室C~E


○出席者

(委員)

山口委員長 谷委員長代理
位田委員 伊藤委員 今村委員
梅澤委員 小野寺委員 中畑委員
中村委員 那須委員 本田委員

(事務局)

厚生労働省:三浦技術総括審議官 中山研究企画官 許斐課長補佐 松倉専門官
文部科学省:宮脇室長補佐

○議題

1.前回(第5回)委員会での主な議論について
2.遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しにおける検討事項について
3.その他

○配布資料

資料1 第5回専門委員会での遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しにおける検討すべき事項の主な議論
資料2 遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しにおける検討事項
資料3 11 記録の保存について
12 個人情報の保護に関する措置について
13 人権保護に関する事項について
14 その他
参考資料1 総括責任者の責務と調整機関について
参考資料2 各指針における個人情報の保護等に関する措置についての比較
参考資料3 第3回及び第4回専門委員会での遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しにおける検討すべき事項の主な議論

○議事

○中山研究企画官 

それでは、時間となりましたので、第6回「遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」を始めさせていただきます。本日は、皆様お忙しいところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。本日の委員会ですが、辰井委員から御欠席、位田委員は30分ほど遅れていらっしゃるということで御連絡をいただいております。

 次に、配布資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、委員名簿に続きまして、資料1としまして、前回の1115日での議論の内容をまとめた資料。資料2は今日議論を行う項目について、3は本日議論を行う内容の論点という形でまとめております。その後、参考資料123とございます。青いいつも使う参考資料を置いてありますが、これはそのまま置いていただくようにお願いしたいと思います。

 それでは、山口委員長お願いいたします。  

○山口委員長 

では、早速議事に入りたいと思います。議題1、前回の議事内容ですが、事務局から順次説明をいただけますでしょうか。

○許斐課長補佐 

では、資料1を御覧ください。まず、前回委員会での議論の内容についてのまとめを御覧ください。

7「多施設共同研究について」。多施設共同研究を円滑に行うに当たって、新たに規定すべき、あるいは留意すべき事項があるかについて御議論いただきました。一応、現状ですが、現行の指針では、多施設共同研究のように複数の研究機関で共同研究を行う場合、共同研究(全体)に係る業務を総括する者についての規定はありません。一方、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針では、研究(全体)に係る業務を総括する者を総括責任者と定義し、総括責任者は参考資料1に示した責務を行うことになっています。

 また、現行の指針では、共同研究を行う際、治療を行わない機関(ベクター等の作製やベクター等で遺伝子導入した細胞等を作製する機関)についての定義はありません。一方、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針では、当該臨床研究のために用いられるヒト幹細胞等を調製する機関を「調製機関」と定義し、調製機関が果たすべき要件を掲げています。こちらも参考資料の1に載っています。一方、現行の指針では、遺伝子治療臨床研究で使用される遺伝子その他の人に投与される物質については、共同研究であるか否かに関わらず、治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)において求められる水準に達している施設において製造されるものに限られていました。

 そこで、議論です。まず、多施設共同研究における研究を総括する者等についてです。御議論の内容ですが、共同研究においては、研究機関ごとに生じる副作用や重大な事態を取りまとめる総括責任者を置くべきである。また、各研究機関に研究責任者は必要である。安全性の観点から総括責任者を設置し、情報の周知徹底を行うことは必要である。多施設共同研究を行う場合、従来は施設ごとに研究計画書等について厚生労働大臣に意見を求めている。研究計画書等を総括責任者の所属する施設が代表して、厚生労働大臣に意見を求める方法も考えられるといった御意見をいただきました。

 調製機関については、欧州のようにGMPに準拠した一定の管理の仕組みが必要ではないか。調製機関を定め治験薬GMPに準拠するよう求めた場合、大学に企業と同様の運用レベルを求めるのは難しいのではないか。in vivo治療のように、患者の細胞は使わずウイルスベクターを作製するだけの場合、調製機関とするのは異和感がある。遺伝子治療では、細胞を調製する場合とウイルスベクター等を作製した場合があるが、ウイルスベクター等を製造するだけであれば、機関内に倫理審査委員会は不要ではないか。ex vivo治療では調製機関といった整理が必要かもしれないが、in vivo治療については現行の指針に新たに上乗せする必要はないのではないかといった御意見をいただきました。

 以上をまとめまして、多施設共同研究における研究を総括する者等については、多施設共同研究といった複数の研究機関で共同研究を行う場合、共同研究(全体)に係る業務を総括する者について新たに定義を設ける方向で検討する。この場合、現在見直し中の「疫学及び臨床研究に関する指針」との整合性を図ることとする。調製機関については、調製機関に対して新たな上乗せ要件は求めないこととする。なお、遺伝子治療臨床研究に使用される遺伝子等については、治験薬GMPに準拠した品質管理等を引き続き求めることとするといたしました。

 ページをめくり、8「審査について」です。8-1、現行の指針では、施設内倫理審査委員会IRBによる審査と、実施施設の長が厚生労働大臣に意見を求める二段階審査を行っている。IRBの審査の質を担保するため、審査委員の責務として新たに規定すべきことはないかについて御議論いただきました。現状です。現行の指針では、IRBが満たすべき要件について、専門性については規定されていますが、審査の質を担保するための委員の教育及び研修については規定はされていません。一方、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針では、IRBの委員に対する適切な教育及び研修について規定が設けられています。

 御議論としては、遺伝子治療に関する倫理審査委員への教育を各施設で求めるのは厳しいのではないか。教育・研修については、施設内だけでなく学会等も含めた外部のものも含めると良いのではないか。教育・研修については、e-learningもあり得るのではないか。教育・研修の方法については、倫理審査委員会の負担も考えて配慮が必要である。研究指針によってIRBの委員の教育・研修については要件にばらつきがあるので、整合性を図ってはどうかといった御意見をいただきました。

 まとめとしては、倫理審査委員の質を担保するため、委員の教育・研修については、委員の負担も考慮してほかの指針と整合性を図りながら規定することとするとしました。

8-2、遺伝子治療臨床研究の新規性の判断の要件を見直す必要はあるかについて御議論をいただきました。現状です。現行の指針では遺伝子治療臨床研究の新規性の判断として、下記枠内の要件を掲げています。新規性の有無は、厚生労働大臣が複数の有識者の意見も踏まえて総合的に判断しています。これまでの判断では、例えば、組換え型腫瘍溶解性ウイルスを用いた遺伝子治療臨床研究については、進行性膠芽腫に対する適応の審査が終了した後、当該腫瘍溶解性ウイルスを用いた前立腺がんや進行性嗅神経芽細胞腫に対する適応は新規性無しとなっていました。ここでは、議論として、要件2の新規の疾病について、がん腫の場合には、臓器の違いや投与方法の変更等に関する新規性の判断は有識者の判断でよいのではないか。治療薬の投与量の増加や異なる機関における同一ベクター等の新たな製造によるリスク等について個別に判断が必要である。新規性の判断は、現行の要件のままでもよいのではないかといった御意見をいただきました。

 まとめとして、遺伝子治療臨床研究の新規性の判断の要件は、現行の指針と同様の規定とすることとするとしました。

9「実施施設から厚生労働大臣への各種報告について」。現行の指針では、実施施設の長は遺伝子治療臨床研究の実施について、厚生労働大臣に意見を求めるほか、当該研究の質及び安全性の担保のため、以下に示す報告に関する業務を行うこととなっているが、提出期限等について細かい規定はありません。現状です。現行の指針では、遺伝子治療臨床研究の進行状況については、実施施設の長は必要に応じ厚生労働大臣へ報告を行うこととなっていますが、総括責任者が実施施設の長に定期的に報告する義務はありません。ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する倫理指針では、研究責任者(総括責任者)は、研究機関の長(実施施設の長)に対して、当該臨床研究の進捗状況については、少なくとも年1回報告をする責務があります。

 次に、現行の指針では、被験者の死亡その他遺伝子治療臨床研究の実施に際して生じた重大な事態及び遺伝子治療臨床研究の実施に影響を及ぼす恐れがある情報について、速やかに厚生労働大臣に報告することになっています。また、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針でも、重大な事態については同様に「速やかに厚生労働大臣へ報告すること」となっていますが、いずれの指針も提出期限は定めていません。ただし、本指針の施行通知においては15日以内を目安に報告することとなっています。

 これを踏まえて御議論をいただきました。遺伝子治療臨床研究の進捗状況については、多施設共同研究における進捗状況についての報告は、多施設であっても施設ごとに作成し報告する必要があるのか。一方で、共同研究であれば報告内容は共有可能なのか。これについて、研究機関の長に報告することが重要であって、その方法については柔軟に対応してもよいのではないか。進捗状況の報告は、他の指針との整合性にも留意が必要ではないか。また、報告の方法については、研究計画書等にあらかじめ記載しておくとよいのではないかといったものがありました。また、重大な事態等についての厚生労働大臣への報告については、研究計画書には3日以内に第一報を行うように記載してある。治験の場合の取扱いや他の指針との整合性も図るべきといった御意見をいただきました。

 以上をまとめて、遺伝子治療臨床研究の進捗状況については、遺伝子治療臨床研究の質及び安全性の担保のために、実施施設の長は総括責任者から定期的に報告を受け、必要に応じ厚生労働大臣に報告することとするが、他の指針との整合性も図ることとする。重大な事態等についての厚生労働大臣への報告については、重大な事態等については、他の指針等との整合性を図りつつ、速やかに厚生労働大臣に報告することとするとしました。

10「情報の公開について」です。遺伝子治療臨床研究における情報の公開についてどのような方法で行うかについて、現状です。現行の指針では、実施施設の長は、計画又は実施している遺伝子治療臨床研究に関する情報の適切かつ正確な公開に努めるものとされていますが、具体的な情報公開の方法、研究計画書を登録するものや、登録方法については規定されていません。遺伝子治療臨床研究の実施について、実施施設の長は、厚生労働大臣の意見を求めているが、提出された研究計画書等の情報については、審査の過程で公開されています。臨床研究に関する倫理指針では、侵襲性を有する介入研究の場合、当該研究にかかる臨床研究計画を研究責任者が登録するよう求めており、研究機関の長は当該研究の登録がなされ、臨床研究計画及び臨床研究の成果の公開が確保されるよう努めるものとされていますとなっています。

 これを踏まえて御議論いただきましたが、遺伝子治療臨床研究も公開されているデータベースに登録されている。長期データベースに登録していれば結果も登録可能で公開されるといった御意見をいただきました。

 まとめとしては、遺伝子治療臨床研究は侵襲性を有する介入研究であり、その情報の公開については、臨床研究に関する倫理指針の規定に沿って、これまでと同様に登録することとなるが、遺伝子治療臨床研究に関する指針においても情報公開の規定を明記するとしました。以上です。 

○山口委員長 

ありがとうございました。それでは、順次、議論を確認いたしたいと思います。

 まず、多施設共同研究に関しては、特に議論の課題として、総括研究責任者と調製機関について議論をいただきました。総括研究責任者を明記するような形でまとめていただきましたし、また、調製機関については、現行の制度の中で読み込めるのではないかとしてまとめていただきました。これについて、まず、御意見、御確認、何か追加のことがありましたら先生方からお願いします。

                                  ( 了承)

○山口委員長 

では、7については、事務局でまとめた形で指針に取り込んでいくようにしたいと思います。

 次に、検討事項8の「審査について」に移ります。8-1IRBの審査の基準について議論をいただきました。特に、どのようにIRBの質を担保するべきかで、教育・研修について議論をいただきました。まとめとして、いろいろ議論をいただいたわけですが、他の指針との整合性を図りながら、委員の教育・研修については規定を設けてはどうかとなりました。具体的には、様々な方法があるとなっているかと思います。これについてはいかがでしょうか。

                                  ( 了承)

○山口委員長 

では、教育・研修、これは先ほど述べたように、他の指針との整合性を図りながら、教育・研修についての規定を設けさせていただく方向で進めたいと思います。

 続いて、8-2の「遺伝子治療臨床研究の新規性の判断の要件について」に移ります。現行では、大きく、新規性有り無しで、審査機関あるいは大臣への答申についての規定をとなっていますが、これを踏まえて、条文で示された要件を基に新規性について判断を行っていました。ただし、それぞれ申請ごとに具体的な中身を専門家の意見を聞きながら、どこまで新規性があるかを具体的に各申請ごとにケースバイケースで判断をしていたところです。

 まとめとしては、これまでのやり方、要するに新規性の判断については、その都度のケースバイケースの判断でいいのではないかと思っています。有識者の判断も含めて個別に対応していく方向でまとめていただいています。これについてはいかがでしょうか。

                                  ( 了承)

○山口委員長 

では、8-12まで終わりました。8-9です。「実施施設から厚生労働大臣への各種報告」です。これについては、遺伝子治療臨床研究の進捗状況についてのことでした。現行の指針では定期的な報告義務がありません。そこで、臨床研究における倫理指針に記載されているように、研究機関の長に定期的な報告を求めるとともに、その他の指針の整合性を図る方向でまとめていただいています。その報告については、施設ごとに別々に作成してよいのかとか、そういった意見もありましたが、これについては機関の長に研究責任者が報告する形でまとめていただいています。必要があった場合には、その報告については、例えば論文がまとまった時点とかそういうことかと思いますが、厚生労働大臣のほうに報告をいただくことかと思います。これについてはいかがでしょうか。

                                  ( 了承)

○山口委員長 

よろしいでしょうか。議論の2つ目は重大事態に関する報告です。これの提出期限についてです。これについては、3日以内に第一報を報告する。例えばファックスで緊急に報告するということを実質的に求めていました。この趣旨が、研究計画に対する現状を踏まえると、「治験や他の指針との整合性を図る方向で」とまとめていただきました。重大事態の報告に関してはいかがでしょうか。

○今村委員 

この項目だけに限ったことではないのですが、全て、他の指針との整合を図るという形になっていますが、一応、案を作っていただいて、それが他の指針と整合がとれているかどうかの判断はどのようにするのですか。

○山口委員長 

多分、後で事務局、間違っていたら訂正していただきたいのですが、臨床研究指針の検討が今行われていますので、特に遺伝子治療で更に付け加えるべきことがあれば付け加えないといけないとは思うのですが、臨床研究指針で多分読み込める所は臨床研究指針で読み込んだものをこちらに取り込んでいく方向かと思っていますが、事務局からもし追加があれば。

○中山研究企画官 

基本的にそれでよろしいと思います。例えば重大事態の報告などでは、医薬品の副作用の安全性報告みたいなものもあります。ああいったものも参考にはする形になるかと思いますが。

○山口委員長 

今村先生いかがでしょうか。

○今村委員 

分かりました。

○山口委員長 

ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。よろしければ9の実施施設の報告については、事務局でまとめたとおりにいたしたいと思います。検討項目10の「情報の公開について」です。こちらでは、遺伝子治療臨床研究について現行の指針では公開の方法について具体的な記載がありませんでした。その点についてどのように具体的に公開していくかの議論をしていただきました。情報の公開については、臨床研究に関する指針でも、具体的な方法について臨床研究に関する指針の具体的な記載があります。今の、今村先生の御質問も終わったのですが、遺伝子治療の研究もそれに基づいて公開されていくことになっています。今後、結果について同様に公開は可能であるという意見もありました。遺伝子治療に関しては、厚生科学審議会の所でかなりの具体的な項目が付いて、どういう計画でやるかについてはもう公開された議論の中で行われていますし、かなりの情報が公開されている。その上で、多分、UMINとかそういう所にももし追加で公開を求めていくという、具体的にはそういう形になると思います。本指針でも、今後、公開方法について明記していく方向としましたが、これについてもし何か追加等ありましたら。

○中村委員 

すみません、前回の委員会で発言の機会を失したものですから、発言させていただきます。情報公開については、結論はこれで全く問題はないと思うのですが、実は、別の問題が生じていまして、こういう計画段階で公開した情報を別の研究者が見て自分の研究に取り入れると言うか、全く真似してやるようなことが実際に起こっているみたいです。規模の小さな所で計画を立てて、今、登録をしないと公表の段階でストップがかかりますので、登録すると、それを大規模な施設が見て、先に患者をわっと集めて研究として報告するみたいなことがある。それから、またこれも問題なのですが、そういうことがあるから実は登録しないのだみたいなことを言う若手の研究者もいて、問題があります。この問題は、遺伝子治療臨床研究だけではなくて臨床研究全般に関わる問題ではありますが、ただ、嫌らしいのは、そのようなのは見ていないとアイデアを盗んだ研究者が言い張られると、もうこれ以上の証拠がないというか、議論のしようがないのです。そういう意味で、どうしたらいいのかなのですが、私自身結論はありません。ただ、そういうこともあるのだということを一度ここでは議論をしておかなければいけないのだと。対象者に対する倫理的な問題ではなくて、研究自体の倫理的な問題が含まれていますが、今申し上げたように難しい問題でありますが、敢えて発言いたしました。

○山口委員長 

ありがとうございます。多分、これはひょっとしたら、今まで遺伝子治療臨床研究を申請された先生方は、割とどこまで公開されているかというのをよく御存じだと思いますし、その点について、追加でコメント等をいただければ有り難いのですが。

○那須委員 

中村先生の御意見を聞いて、私もなるほどなと、全く想定外でしたから。ただ、遺伝子治療については、実際私たちやっていますが、二段階審査になっていますので、着想はできても、実際にその次のステップにはまず現実的に行けないと思います。通常の臨床研究はすぐ行けると思いますが、これはまずシステム上無理だと思います。

○山口委員長 

ありがとうございます。多分、委員も遺伝子治療だけは、ヒト幹もそうだと思うのですが、一旦そこに登録してきちんと一応大臣の了承を得なければ先に進めませんので、後から来たものもここの遺伝子治療臨床研究の審査会にかかることになるかと思います。その辺が他の臨床研究と違うところかなという気がするのですが。谷先生何かございましたら。

○谷委員長代理 

那須先生のお話は、確かに日本においてはそうだと思いますが、例えば、情報が海外に出てしまった場合には、恐らく他国の研究者が真似ることはあり得ると思います。ですから、倫理性も規制も全く異なる国が情報を得て同様な臨床研究を行うことは十分あり得ると思いますので、そこをどうするかは、遺伝子治療に限らず細胞療法等においても確実に問題を含んでいると思います。

○山口委員長 

せっかく中村先生に問題を提起していただいたので、例えば、遺伝子治療だとウイリー( Wiley-Blackwell とかその辺に登録したり、あるいは、NIHのクリニカルセンターに登録されたりするケースもあるかと思うのですが、その時期は非常に微妙なことになってくることが考えられるのでしょうか。それは追加で御意見がいただければ。

○谷委員長代理 

特に特許面で、日本では治療法に対する特許はありませんね。例えば治療用ベクターというのではなく、方法自体を盗用されて取られてしまうことはあり得るのではないかというのはいつも懸念しています。ですから、我々プロダクト自体はもちろん特許を取って臨床試験を開始するわけですが、全体の治療デザインに関しては、現在の登録システム上は隠せず、容易に模倣され得るという問題をいつも孕んでいるなと考えています。 

○小野寺委員 

別に真似をしたわけではないでしょうが、例えば、フランスとイタリアは完全に同じようなベクターを使って同じ臨床研究を走らせています。研究におけるプライオリティと言うときに、新しいベクターにかなりの特許があればそこに制限を掛けることは可能ですが、古いベクター、つまりレトロとかレンチウイルスベクターとなるとほとんどもう特許はないですから、新たなプライオリティを見いだすのは難しいと思います。一般的な話になるかもしれませんが、このような科学的なプライオリティ(特許がかかっていない)を守ることに罰則をつけることが難しいでしょうし、また、逆に罰則が厳しくなれば、企業が参画しにくくなると思います。私も答えはないのですが。

○山口委員長 

ありがとうございます。なかなか答えはないような気がするのですが。多分、国際的に、例えば海外のものに登録するとなると結構リスクは出てくるかなと。ただ、もう1つは、せっかく今まで遺伝子治療臨床研究の審査は、審査の初期ステージ段階から割と公開して、そのことを共有することでいい意味でオープンな研究がされてきた面があるのかなという気がするのですが。中村先生、今のような、なかなかまとめは少ないと思うのですが。

○中村委員 

私自身も答えがないと思いますし、新しい指針に書き込めるのかどうかも分かりませんし、それから、罰則と言っても、先ほど申し上げたように証拠がないという問題点もあるのは、すみません、重々承知しています。ただ、そういう意味では、先生方が御指摘のように、遺伝子治療臨床研究においてはなかなかそれは、特に国内では余り問題はないだろうなという気がしますが。ただ、国内のデータベースでも外国からも見ることはできますので、これは外国のデータベースに登録だけではなくて、問題は変わらないと思っています。

○谷委員長代理 

例えば日本語で書かれた学会や研究会の抄録を、外国のラボで日本人のポスドクに読ませて情報を得ているという話はよく聞きますので、英語のみならず日本語での国内情報も解放されているのが現実だと思います。

○山口委員長 

ありがとうございます。中村先生の問題提起は非常に重大な所というか、重要な所だと思うのですが、正直申しますと、今の時点で答えはないような気がするのです。ただ、今までの制度としていい面は、変えないほうがいいのではないかなという気がちょっとしています。

○中村委員 

蛇足ですが、8ページに書かれているまとめの方向性については、もうこれはこのとおりだと思っています。

○山口委員長 

ありがとうございます。多分、そういうリスクがあることをちょっと念頭に置いて、まとめるときでも考えていくという方向かなという。私自身が判断するのはその程度で、もし何か事務局でその後プラスアルファのことがあれば、多分今は答えはないような気がするのですが、あれば御検討いただくような形かなという気がします。

○中山研究企画官 

これは臨床研究全体の話だと思いますし、基本的にこれをここで今やっているのは、臨床研究で、今までも公開されているのだけれども、遺伝子治療のガイドラインの中には公開の旨の明記がなかったので、一応そこは明記しますと言っているだけであって、基本的には臨床研究全体の話として受け止めたいと思います。

○山口委員長 

ですから、臨床研究のほうで、もしその辺の議論があったらまたこちらにフィードバックしていただけると有り難いなと思います。

○谷委員長代理 

よろしいでしょうか。つまり、臨床研究概要を情報公開してからなるべく短時間に臨床研究が完了すれば、このような盗用によるダメージは最小限に抑えられると思います。従って臨床研究期間が2年も3年もかかるような体制で進めるのはなるべく避けたほうが望ましく、加速化して行うことは、知財の保護という面からも非常に重要だと思います。

○山口委員長 

ありがとうございます。これは多分、皆さん望んでいるところかなと思います。できるだけ急いで、稚拙にはならないのですが、できるだけ早く臨床研究がスタートできるような審査をしていくことが求められていることかと思います。ありがとうございました。では、先ほど中村先生にも言っていただきましたが、まとめの所についてはこれで了承を得たということで、このような方向で進めていただければと思います。つきましては、本日の審議議題ですが、資料23について事務局から説明をお願いします。

○許斐課長補佐 

まず、資料2は、今回の指針の見直しにおける検討事項のリストで、114まであります。本日は、1114について検討を行いたいと思います。

 次ページからの資料3を御覧ください。本日の検討事項の1つ目は、11「記録の保存について」です。遺伝子治療臨床研究において、治療終了後長期間が経過してから有害事象等が発症することも想定し、現行の指針で規定されている記録の保存期間を変更する必要はないか。

 現状と課題は、現行の指針では実施施設の長は遺伝子治療臨床研究に関する記録に関して、研究終了後少なくとも5年間保存しなければならないとされています。一方、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針では、研究責任者はヒト幹細胞臨床研究に関する記録等を適切な管理下で、総括報告書を提出した日から少なくとも10年以上保存しなければならないとされています。さらに、研究機関の長は、ヒト幹細胞臨床研究に関する記録等を研究責任者が適切な管理の下で保存できるよう、必要な体制を整えなければならないとされています。

 検討のポイントは、遺伝子治療臨床研究においては、治療後、長期間経過してから有害事象等が発症することを想定し、現行の指針で規定されている5年間より長期間にわたり記録を保存してはどうか。また、その場合、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針や再生医療等の安全性の確保等の法律等の規定との整合性を図ることとしてはどうか、としています。参考としまして、下の※1に書いたとおり、記録の保存については、治験における医薬品の場合には、いわゆるGCP省令において、治験依頼者自ら治験する者(企業治験や医師主導型治験)の場合、その治験を実施する者が、治験に関する記録を製造販売承認日又は治験の中止若しくは終了の後3年を経過した日のうちいずれか遅い日までの記録を保存することとなっています。また、特定生物由来製品(主に血液製剤)については、薬事法の施行規則第241条において、使用する側(薬局の管理者や病院・診療所等の管理者など)が、使用した日から20年間、製品名や製造番号、患者氏名・住所などの記録を保存しなくてはならないことになっています。そういったものの、製造者側に当たる者が、例えば生物由来製品(ワクチン、遺伝子組換え製剤)10年間、特定生物由来製品に関しては30年間、記録を保存することになっています。これらの生物由来製品については、未知の感染性の因子を含有している可能性が否定できないので、このような長期の記録の保存が必要となっています。遺伝子治療薬については、今後、再生医療等製品として扱われる方向で、再生医療等製品には生物由来製品や特定生物由来製品の考え方が適用されることが予想されますので、参考のためここに記載しました。

 本日、御議論いただく記録の保存については、研究を行った機関がその研究記録を何年間保存すべきかを御議論いただきたいと思います。

○山口委員長 

記録の保存については、他の臨床研究での保存の期間等も参考に示していただいています。記録の保存は、現行の5年間で十分なのか、もう少し長期にわたったほうがいいのではないか。もしかすると、それぞれの製品ごとに変わるかもしれませんので、その辺について御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

○中畑委員 

アラン・フィッシャーらの白血病のデータ例などを考えてみましても、5年というのは余りにも短い。それが10年がいいのか20年がいいのか。ただ、ある一定のところで線は引かざるを得ないと思います。長ければ長いほどいいというわけでもないので、ある一定のところで現時点では全部線を引くということで、10年がいいか、20年がいいか、どちらかだと思います。

 もう1つ、記録の保存とそれから、使ったベクター、場合によっては、遺伝子導入した細胞そのものを保存することも必要かもしれません。その記録の保存と実際のものの保存とを分けて議論する必要があるのではないかと思います。

○山口委員長 

そのとおり、非常に重要な点を御指摘いただきました。後で議論になると思いますが、遺伝子治療におけるロングターム・フォローアップ、長期のフォローアップについての課題も関連してくるのではないかと思います。御指摘にありましたように、X-SCIDのときなどは実際にもう5年たったぐらいから発症していることを考えると、5年が十分ではないという御指摘はそのとおりだと思います。ただ、全てのものがいいのか、それとも、それぞれリスクに応じた分類なのか。それから、そういうものと、今のベクターや被検液の保存についても議論いただきたいと思います。

○小野寺委員 

正に中畑先生のおっしゃるとおりで、NIHFDAでは染色体にインテグレーションするベクターのレンチやレトロベクターでは15年、アデノやAAVベクターなどインテグレーションしないものはそれよりかなり短い訳で、そこが一般的な再生医療や臨床研究とは違う遺伝子治療の特異性だと思います。つまり、使うベクターによってフォローアップに年数を変える。ベクターによって年数を変えるのか、あるいは一括して15年などとするのかなどは論議によるところだと思いますが、基本は、白血病等が起こる可能性があるものは長期的にフォローアップする必要があると思います。あとは子供の場合は重要で、特に免疫不全症の場合は小さな子供で治療しますので、大人の10年と子供の10年では発達の段階が大分違うと思います。ベクターで分けるかどうかは分かりませんが、このような遺伝子治療(免疫不全にインテグレーションするタイプのベクターを使用する)では10年以上のフォローアップは必要かと思います。

○谷委員長代理 

小野寺先生の御意見はもっともだと思います。恐らくこの問題は、ベクターと疾患に依存しており、対象となる細胞がどれぐらい幹細胞性を有しているかなどが重要にになってくると思います。これをしっかりと決めておかないと、例えば総括責任医師の研究者としての活動余命が大体10年ぐらいだと思います。そうすると、その後を誰が継ぐかという問題がどうしても生じますので、これは明確に義務づけていただいたほうが宜しいと思います。

○山口委員長 

誰の責任で保管するかということですね。谷先生の御指摘のように、研究責任者が教授であったとして、教授が定年退官された後、どなたが責任を持つかという、その辺も含めて考えていかなくてはならない問題だと思います。具体的にどこまで書くかというのは難しい問題があると思いますが、参考にあります、生物由来製品あるいは特定生物由来製品の場合は企業ですが、こういうものを議論したときに、企業も必ずしも全部残っているわけではない。潰れてしまう企業もあるかもしれませんので、その場合にどうするかという議論をしました。その場合には、場合によっては地域の行政機関などに委ねるなど、そういうことも考えられるのではないか。中山さん、その辺を覚えていませんか。

○中山研究企画官 

すみません、覚えていません。

○山口委員長 

やはり、記録はきちんと残しておかないといけないということと、今度は、責任をどこにして、なくなった場合にどういう保管をしていくかという問題も絡んでくるのではないかと思います。ほかにございますか。

○中村委員 

どこが責任を持つかという点については、やはり、その研究機関あるいは研究機関の長にせざるを得ないのではないかと思います。

 それから、もう1つは、発想の転換です。施設で保存しておかなければいけないということですが、逆に、治療を受けた本人に情報を出して、本人に管理させることも考えてもいいのではないかと思っています。例えば、私が研究に関わっているクロイツフェルト・ヤコブ病ですが、ヒトも硬膜移植によって発病します。ところが、発病して、どうも硬膜移植が疑われて、手術していると本人は言っているのですが、もうかれこれ30年前の話で、手術した医療機関に問い合わせると、もう診療録はない、手術の記録もないということで、本人も亡くなって、硬膜移植例かどうか永久に分からないという例もあります。そういうときに本人にそういった記録を持たせてくれたらいいということを考えています。もう1つ、私が関わっている研究が走り始めていますが、子供の病気で、川崎病については、最初に川崎先生が御覧になった方が、もう私と同じぐらいの年です。川崎病は子供の血管炎なので、将来、動脈硬化が進行するのではないか、普通の人より進行しやすいのではないかとか、そうではないとか、いろいろな説があって、データも出てきているのですが、まだ分からない状態です。可能性としてあり得るのは、もし川崎病の既往があると動脈硬化が進みやすいとすれば、40歳代、50歳代になったときに、虚血性疾患や脳血管疾患のリスクが非常に高くなる可能性があると思うのです。そのときに、本人が川崎病にかかったことを知らなければ何もコントロールのしようがないのです。それで、小児科の先生方は御存じの方もいらっしゃると思いますが、「川崎病急性期カード」という、簡単にまとめた小さなカードですが、急性期から退院するときに本人に持たせて、あなたは川崎病にかかって、急性期の心臓の状態はこうでしたということを、子供ですから、まず親御さんに渡して、親がそのうち子供に渡すということで進めています。そういったことを参考に、将来何かが起こったときに、実はこの人はこういう治療を受けていたということが分かるような情報を本人に管理させることも考えてもいいのではないかと思っています。

○山口委員長 

非常に重要な御指摘でした。例えばワクチンなどの場合にもそういうケースが確かにありました。受けたかどうか、必ずしも自分でもフォローできていないところがあります。その辺も少し関連するのではないかと思います。

 私なりに、頂いた意見の中で共通する点を考えますと、記録の保管に関しては、現時点で考えると、10年以上は必要であろうと。ただし、リスクに応じて、記録の保管は長くする必要がある場合もあるだろうという御意見だったと思います。施設の保管については、研究責任者がひょっとすると代わることがあるかもしれないし、最終的には施設の長、施設の責任でということだったと思います。私は個人的にはその辺が妥当な線ではないかと思います。もう1つ、施設だけで記録を保管しておくのではなく、患者あるいは被験者個人への情報提供という形もあるのではないか。そういう御意見を頂いています。

 それから、今すぐに答えが出るかどうかは分かりませんが、検体の保管についても検討すべきではないか。検体の保管や投与したベクターそのものの保管は、大量になってくると、ほかの臨床研究もありますので、どこまで施設の中でできるのか。その辺を含めてやっていくべきなのか。梅澤先生、再生医療では保管を求める方向でよろしいですね。

○梅澤委員 

はい。決めたところですが、今、正確に何年でしたか。57102030年というような、その中から選んだような気がします。

○山口委員長 

検体の保管は全てができる話ではないので、可能な限りということになってくると思いますが、そういう方向でという御意見であれば、それも取り込む形で検討していただきたいと思います。

○今村委員 

有害事象等が起こったときに責任がどこにあるのか、そういう意味で、管理をどうするのか、責任者をどのように定めるかということですが、これは研究施設自体が問題になる場合と、もう1つ、かなり個人が責任を負わなければいけないという、2つの状況が考えられると思います。ですから、保存の責任をどのように定めるかを書き込むときには注意が必要ではないか。受け継いだその機関の長が、ほとんど何も関わっていないときに有害事象等の責任を負わされることになると、これも少しおかしいことになるのではないかと思います。

○山口委員長 

多分その辺があって、保険などにできるだけ入っていただく形で今はやっているのではないかという気がします。その辺については、責務の問題と原因究明との両方があるのではないかと思います。薬事のほうでは副作用救済でいける可能性がありますが、その辺が大きく違うところで、そこに当たるものが保険なのではないかと思います。その辺について何か事務局からありますか。

○中山研究企画官 

保管の義務と、誰にどこに責任があるかという話とは別ではないかと思って聞いていました。保管の意味では、先ほどの御議論のように、研究者が代わったときにうまく引き継がれないということから言えば、機関に責任を持ってもらうほうが、そういった担保はしっかりできるのではないかと考えています。また考えさせていただきます。

○山口委員長 

責任の所在というか、保管の責務はもちろんあると思うので、その辺については、書きぶりの中でどのように書くかは検討させていただきたいと思います。

 大体、御意見を頂きました。先ほど最終的にまとめたことプラス、今の保管の責務の記載の方法については更に検討していただくことでよろしいでしょうか。

 では、次の議題の、個人情報の保護に関する措置についてです。事務局から説明してください。

○許斐課長補佐 

12 「個人情報の保護に関する措置について」です。現行の指針では、個人情報の保護に関する措置について、疫学研究に関する倫理指針とほぼ同様の記載がされている。疫学及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに合わせて整理することは可能か。

 現状と課題は、現行の指針では個人情報の保護に関する措置について、疫学研究に関する倫理指針とほぼ同様の記載がされており、本指針特有の規定はありません。参考資料2の表に、個人情報の保護に関する措置について、臨床研究に関する臨理指針が左、疫学研究に関する臨理指針が真ん中、遺伝子治療臨床研究に関する指針を右のカラムに示しています。疫学の指針で「研究対象者」となっている所は、遺伝子治療の指針では「被験者」、「研究を行う機関の長」の一部が「実施責任者」となっていますが、ほぼ同様の内容になっています。

 検討のポイントは、遺伝子治療臨床研究は臨床研究の一分野であり、個人情報の保護に関する措置についての規定は、今後統合予定である疫学及び臨床研究に関する臨理指針で規定される事項に準ずることとしてはどうかとしました。

○山口委員長 

個人情報保護についての説明と、検討のポイントもまとめていただきました。今後作られるであろう疫学臨床研究の指針に関する臨理指針で示される項目に準ずるとしてはどうかという提案です。これについて、例えば遺伝子治療に特有のことで追記すべきことがある、こういう点は追記すべきだという点がありましたら、御意見を頂きたいと思います。

○位田委員 

遅れて来まして申し訳ありません。基本的にはこの方針でいいと思いますが、もともと、臨床、疫学の両方の指針の個人情報保護の規定は、個人情報保護法ができたときに改正されて入っているはずです。同様の規定がゲノム指針にも入っています。どれが一番先だったかは覚えていませんが、個人情報保護法が2004年ですから、多分、そのすぐ後にゲノム指針を改正して、そのときに、研究目的の特定や安全管理措置など、細かな規定がずらっと入って、それがそのまま同じような形で、ゲノム指針を見習うような形で、臨床研究指針や疫学研究指針、ESの指針もそうだと思います。ですから、元に戻るのであれば、個人情報保護法から臨床、疫学の規定になっているので、むしろ個人情報保護法を引いてきて、それに倣うというのが本来だろうと思います。資料3には「個人情報保護法」という法律の名前が入っていないので、むしろ個人情報保護法をベースにした臨床研究指針、疫学研究指針の規定に準ずるという形のほうがいいのではないかと思います。

○山口委員長 

臨床研究指針のほうで、そこも含めて検討されているということでよろしいのでしょうか。

○中山研究企画官 

はい、それでいいと思いますが。

○山口委員長 

分かりました。

○小野寺委員 

この場で論議していいのかどうか分かりませんが、最近、染色体挿入タイプでは、次世代シークエンスを使って全ゲノムをシークエンスする流れになってきており、今後はその流れが一層加速すると思いますので、ゲノム指針との関わりがどうなるのかをよく聞かれることがあります。そこが、遺伝子治療がほかの再生医療とは違うところで、遺伝子治療では細胞投与後に、ゲノムを解析する、ベクターが入った場合やその周囲などの配列を最近はかなり広範囲で調べられることになっています。ですから、それを単にゲノム指針として新たに出すのか、遺伝子治療の臨床研究として考えるのかという点は論議していただければいいのではないかと思います。

○山口委員長 

多分、この点などはiPSのときに関連するお話ではないかと思います。中畑先生、その辺について何かございましたらお願いします。

○中畑委員 

特に臨床的にiPS細胞を再生医療に使うという研究の場合は、安全性をどうやって担保するかということがかなり議論されています。最終的には、全ゲノムをシークエンサーする、あるいは、エクソームだけは全て読み、変な挿入がないかどうかとか、がん遺伝子が活生化されていないかどうかなど、かなり広範に安全性を担保する方向に進んでいます。その場合、当然、提供されたドナーの方の遺伝情報が全て読まれてしまう格好になってくるわけですが、その扱いをどうするかということで現在議論が行われています。

○山口委員長 

これは必要に応じてゲノム指針へのきちんとした準拠を求めていく。ゲノム指針については、当然、そこはもう指針の中に書かれていることに対応するということでよろしいでしょうか。

○中畑委員 

そうですね、iPS細胞の場合は、細胞の安全性という観点から。iPS細胞は今はいろいろな方法で遺伝子を入れて作るのですが、その過程で生じた変化と、場合によっては、ドナーが本来的に持っているgermlineの異常として、それぞれの核庫にみんな持っているもの、そういったものをどう分けるか。遺伝子導入に関わって起きた異常は、それはものによっては全て排除する格好で不合格として使わないのですが、本来ドナーがgermlineで持っていた異常をどこまで再生医療に許容するのか、それは飽くまでも安全性という観点から見ているのですが。そのため、当然、個人情報はしっかり保護されている形で対処しようとしているのです。

○山口委員長 

目的としては安全性担保ということであって、読むのだけれども、どういう病気の遺伝子があるかという話ではないということですか。

○中畑委員 

その場合も、当然、ドナーとしてインフォームド・コンセントを取るときに、そういった検査もやりますということと、そこで得られたものから万が一ドナーの方が思いも掛けない遺伝子異常を自分が持っていることが判明したときに、そういった情報を知りたいのか、知りたくないかということも含めて、ICを取る。現在そういう形になっています。

○今村委員 

日本医師会では、こういう問題について結構ナーバスになっています。ゲノム情報などは、結局のところ、非常に大きな個人情報、最大のと言ってもいいかもしれません。そういったものが、どの程度の許容性を持って保護されるのか。臨床応用するときに、国際競争という観点から、医学の発展、医療の進歩に対応していかなければならないという点でも、個人情報は非常に大事な要素だと思います。しかし一方で、個人情報が、研究のためということで流出、乱用されることになると、安全性うんぬんとともに、社会的な影響と言いますか、個人だけでなく、当然のことながらその周りの縁戚、血縁者にまで広がってくる。そうすると、将来このような疾患が予想されるとか、民間保険に入るときにどうだとか、結婚すること自体に対するいろいろな問題など、社会的な影響が相当大きくなってくるのではないか。医学・医療の進歩と併せて、そのような個人の権利をどのようにして両立させていくのかについて、いつも激しい議論が起こってくるのです。ですから、今は個人情報保護法の問題について言われましたが、かなり厳格に対応し、かつ、研究の進歩にもストップを掛けないような、2つながらの対応が求められているのではないかと思います。

○山口委員長 

今のお話について、中畑先生、コメントがあるのではないでしょうか。

○中畑委員 

全ゲノムのシークエンスをされたとしても、当然、どの個人の遺伝情報をそこで得たかということは分からない。その前には、個人情報保護にのっとり、特定できないような形で情報が保護される、絶対に個人には戻らない形の保護がされているわけです。ただ、実際には、そこに来たiPSの元になった細胞はどなたから来たかは分からない形で使われるとしても、そこにある遺伝情報は全て読まれてしまう。そういう形ですが、それがどなたから来たものであるかは一切分からない形で、そこで個人情報が保護される。個人には戻れない。その過程で、恐らく連結可能匿名化という形になると思いますが、いずれにしても、匿名化されて、どなたから来たものかは分からない形で保護されることになるのではないかと思います。

○今村委員 

大きく言えば国策として、こういう分野をやっていこうという大きな方針があって、これについては日本医師会としても十分に対応していかなければいけないという基本的な認識はあります。一方に、私が申し上げたような、11人の国民、患者を大事にしなければらなないという視点もあるので、そこをいつも考えながら対応していく、対応していってくださいということを申し上げています。

○位田委員 

先ほどの小野寺先生の御質問について、私ははっきり把握していないのですが、ゲノム解析をするときにどの指針を使うかという話でしょうか。それとも別の御質問でしょうか。

○小野寺委員 

ここに盛り込むかどうかは別として、最近は患者の血液を使って全ての遺伝子を読んでしまうのです。そのときに、俗に言うインシデンタル・ファインディングという予期せぬものが出てきたときどう対応するかということです。これは私の意見ですが、そういう解析をすることを、それは違った意味での個人情報になるので、単純にここで書かれている臨床研究の文言と一致するのではなく、やはりゲノムに関することも文言として加えておくほうが良いかと思います。臨床研究ではゲノム指針は関係ありませんが、やはり遺伝子治療では遺伝子を触るので、「ゲノム指針にも留意した個人情報保護が必要ではないか」という文言を入れたらどうか、私はそういう意見ですが。

○位田委員 

いろいろな指針と法律がミックスしているのだと思います。今まで遺伝子治療でやっていて、それが再生医療に入ってくる部分については、当然、再生医療新法が掛かるので、これは法律でやらないといけない。それ以外の遺伝子治療は、この新しく改正する指針で行う。ゲノム指針はゲノム指針で、ゲノム解析する場合には全部ゲノム指針が掛かるのですね。それから、臨床・疫学の場合も、臨床研究、疫学研究でゲノム解析をする場合には、その部分にはゲノム指針が掛かる。集合がこう重なっていますので、この場合にはこちら、この場合にはあちらという形で、1つの研究の中でも、どこの部分にどの指針が掛かるのかを研究者や研究機関がはっきり認識して適用しないといけないと思います。他方、その外側と言いますか、もっと一般的に、個人情報保護法というものがある。ただ、個人情報保護法は、行政機関、地方公共団体、独立行政法人に適用される個人情報保護法と、一般の民間に適用される個人情報保護法とは少し範囲が違います。民間に適用される場合には5,000件だったと思いますが、5,000件以上の個人情報がある場合にのみ個人情報保護法が適用されるので、個人情報保護法ができたときにゲノム指針を改正したのですが、そのときに、「上積み横出し」という表現で、個人情報保護法の内容がゲノム解析に全部掛かるようにという形でゲノム指針はやっていると思います。

 遺伝子治療臨床研究でホールゲノムで解析する場合には、例えば、ゲノム指針に準拠する、あるいは、ゲノム指針を適用するという項目を入れておけば、先生が御心配になっている点は回避できるのではないかと思います。ですから、遺伝子治療の臨床研究をやるときに、この指針がそのまま掛かるところと、この指針プラス、ゲノム解析をするところはゲノム指針でやるという形で、1つの研究の中で2つの指針が一緒に適用されるという形になるのだろうと思います。

 先ほど中畑先生がおっしゃったiPS細胞の場合には、これは再生医療新法なので、今度は新法でゲノム解析をどう扱うかの問題です。あちらは法律ですから。こちらは法律ではない、拘束力のない指針なので、少し扱い方が違うかもしれません。

○谷委員長代理 

位田先生の御意見に関連しまして、ゲノムの解析研究の倫理指針は個人情報保護法案を基に作られていますので。、九州大学では ゲノム解析を含む観察研究はゲノム委員会だけで審査され、ゲノム解析を含む介入研究は(原則として)臨床試験倫理審査委員会だけで審査されていると思います。基本的には、どのような研究もできるだけ1つのIRBで承認できるようにしたほうがよいという考えに基づいています。

 今回の平成25年度のゲノム指針の改定から、匿名化要件に連結可能匿名化が取り入れられましたため、そういう意味では、ガードを固くしておかないと、先ほど今村先生が懸念されていた問題が発生する可能性がありますので、それは各研究者および各施設が十分に配慮しながら研究を実施していくべきであると思っています。

○位田委員 

一言だけ補足します。臨床・疫学指針の見直しでも、当初、ある研究の中でゲノム解析をするときには、その研究全体がゲノム指針によるのか、そうでないのかという議論がありました。しかし、どちらかではなくて、ゲノムに関係するところはゲノム指針が適用され、それ以外は臨床研究なり疫学研究が適用されるということで、重なって適用されますので、どちらかを選択するという話ではありません。その点が、どうも現場で必ずしもうまく理解されていなくて、ホールゲノムにしろ、ピンポイント的なゲノム解析にしろ、ゲノムが入れば全部ゲノムで、臨床研究指針は適用されないと誤解されている傾向がありますが、そうではありません。確かに、どの指針も、研究が重なったときに、どういう場合にこの指針を適用するかという、その書き方が余りよく分からない書き方になっていたので、今回はきちっとそれを書き分けて、臨床研究をする場合には一般に臨床研究指針が掛かるのだけれども、その中でゲノム研究をするときには臨床研究指針以外にゲノム指針も掛かるのだという形になる。遺伝子治療臨床研究でも同じだと思います。

○山口委員長 

厚生科学研究費の申請でどこに○を付けるかという所で、複数にまたがるというような形になろうと思います。臨床研究の指針、遺伝子治療薬の指針、ゲノム指針が○にされた場合には、それぞれ全部が掛かるという説明だと思います。

 かなり深い議論をしていただきましたが、議論を踏まえますと、遺伝子治療臨床研究に関しては臨床研究の一分野ですから、個人情報保護に関しては主として疫学及び臨床研究に関する倫理指針で規定される事項に準ずる。プラス、必要に応じて、例えばゲノム指針が掛かるものであれば当然それは掛かった形でやっていただくことだと思います。そういうまとめでよろしいでしょうか。個人情報保護に関しては、今村先生から御指摘があったように、厳密な遂行を求めることになろうと思います。

 次に、これも少し似たテーマですが、13の人権保護に関する事項について説明してください。

○許斐課長補佐 

13 「人権保護に関する事項について」です。現行の指針では未成年者に係る、いわゆるインフォームド・アセントについて特に規定は設けておりません。小児の遺伝病患者に対する遺伝子治療臨床研究も踏まえ、新たにインフォームド・アセントについて規定する必要はないかとしました。現状と課題ですけれども、現行の指針では未成年者に係る、いわゆるインフォームド・アセントについて規定は設けておりません。疫学及び臨床研究に関する倫理指針やヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針では、インフォームド・アセントの定義はなく、次のページのように記載されております。一方、ヒトゲノム遺伝子解析研究に関する倫理指針では次のページのように、いわゆるインフォームド・アセントについて規定されております。次のページを見ると、基本的に研究対象者が未成年である場合、研究者は研究対象者本人に分かりやすい言葉で十分な説明を行い、理解を得るように努めるといった内容が記載されております。検討のポイントですが、疫学及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに合わせて、いわゆるインフォームド・アセントを用語として定義し、指針内に記載することとしてはどうかとしました。一番下の※ですが、疫学及び臨床研究に関する倫理指針の見直し合同委員会の中間とりまとめの内容になっております。以上です。

○山口委員長 

特にインフォームド・アセントは小児科の分野で非常に重要なポイントになってくるかと思うので、インフォームド・アセントを用語として定義して明確にしたほうがいいのではないかという事務局からの提案です。これについて御意見をいただければと思います。

○今村委員 

世界医師会ではヘルシンキ宣言を出して、いわゆる患者さんの保護あるいは被験者の保護ということに国際標準といいますか考え方を示しております。今回ブラジルでの総会で、ヘルシンキ宣言の改定が行われました。その中で特に言われているのが弱者に対する保護、弱者の立場をきちっと考慮してくださいということです。インフォームド・アセントについても当然そこに入ってくるわけで、先ほど言われたように、疫学あるいは臨床研究に関する指針の見直しでもこのことが言われておりますので、これと全く同じような形で遺伝子研究についても同じようなレベルのものが求められると思います。

○山口委員長 

多分これはほとんど異論はないだろうと思うのです。

○位田委員 

3 ページの一番下の※のところで、欧米では一般的にインフォームド・アセントというのは未成年者の場合に使われる、ベルモント宣言辺りから出てきてると思うのです。ところが裏側の臨床研究に関する倫理指針になると、未成年者及びその他の行為能力がないと見られる被験者ということですので、未成年者以外にもインフォームド・アセントが関わってしまって、何を世界標準というか国際標準というのか、問題があります。同じインフォームド・アセントという言葉を使って欧米では未成年者に限って使っているのに日本では未成年者以外の、例えば認知症の方とかにもインフォームド・アセントという言葉を使ってしまう。これはここの問題というよりも、むしろ臨床疫学研究指針のほうの問題なのですが、そこをきちっと、全ての指針において整理をしておかないと、日本の国内ではいいとしても、今度は国際的にもっていったときに、インフォームド・アセントというと恐らく未成年者の場合だけしか考えないので、ここで文句を言ってもしょうがないですし、私も臨床・疫学研究指針の見直しの委員でもあるので向こうでも言うのですが、ちょっと気をつけないといけないと思います。もう1つは、私、元々インフォームド・アセントという言葉を使うのに反対で、つまりどの先生方も、小児科の先生はよく御存じだと思いますけれど、ほかの先生方は必ずしもインフォームド・アセントという言葉はなじんでいない。インフォームドコンセントは皆さん御承知ですけれど、インフォームド・アセントとは何かがまだあまり浸透していないのに新しく使っていいのかなというのがあります。これは個人的な考え方ですけれど、私自身はインフォームド・アセントという言葉を使うのは賛成ではないので、むしろゲノム指針のように、「いわゆるインフォームド・アセント」みたいなほうがいいとは思っているのです。すみません、最後のは付け足しです。

○山口委員長 

最初のほうの話は先ほど今村先生がおっしゃった弱者への保護というところで広がってるのですかね。

○位田委員 

そうですね。

○山口委員長 

位田先生からは、いわゆるアセントという言葉が一般的なのか、その辺の疑問を提示いただいたのですけれども、未成年者あるいは等と括らせていただきますけれども、できるだけ理解をしていただくというところは多分異論はないと思うのですが、その辺はもし。

○小野寺委員 

おっしゃられるようにアセントという言葉はなかなかなじみがないと思うのです。実際多分そのせいなのか臨床研究指針ではアセントという言葉は使っていないと思います。ただ先ほどおっしゃられたように、小児科レベルではかなりアセントという言葉は使っていますので、遺伝子治療においてアセントという言葉を使っても良いかと思います。ただ、私的にはアセントといっても幅広くて、成育の場合であれば16歳以上の方というのは保護者と同じような同意書でアセントを取るのです。その場合記名します。例えば中学生とか小学生になってくるとそれに見合ったようなパンフレットを作っていく。それで署名による同意は取らないということがあるのです。ですから、これら全てアセントとして入れていいのかということになりますので、これは個人的な意見かもしれませんけれど、私はここに臨床研究に書かれているように同意を得るという程度で止めておくのがいいのかなという気はします。

○山口委員長 

よろしいでしょうか。多分言葉の使い方、言葉がどれだけ広くなじまれているかという点は非常に注意をしないといけないと思います。その辺は言葉の使い方について今後検討していただくとして、中身的にはもう臨床研究の指針で問われた未成年者等に対する説明や、インフォームド・コンセントに相当するものを記載していくという方向に意見はまとまっているように思います。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは次の課題に移りたいと思います。14、その他について説明をお願いいたします。

○許斐課長補佐 

では14「その他」です。安全性及び有効性の確保の観点から、治療による効果及び副作用について遺伝子治療臨床研究終了後の追跡調査その他の必要な措置について指針に規定する必要がないかとしました。現状と課題ですが、現行の指針では安全性及び有効性の確保の観点から治療による効果及び副作用について、遺伝子治療臨床研究終了後の追跡調査その他の必要な措置について規定はありません。ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針では、以下の括弧内のように規定されています。研究責任者はヒト幹細胞臨床研究終了後においても安全性及び有効性の確保の観点から、治療による効果及び副作用について適当な期間の追跡調査その他の必要な措置を講ずるよう務めなければならない、また、その結果については研究機関の長及び総括責任者に報告しなければならないとなっております。そこで検討のポイントですけれども、遺伝子治療臨床研究終了後においても安全性及び有効性の確保の観点から、治療による効果及び副作用について適当な期間の追跡調査、そのほかの必要な措置を講ずるよう努めることを規定してはどうか。また再生医療等の安全性の確保等の法律等の規定との整合性を図ることとしてはどうかとしました。以上です。

○山口委員長 

これは先ほどの11の記録の保管を補完するような形になるものです。ですから先ほど議論をしましたけれども、海外の遺伝子治療ではX-SCID等のこともありまして、かなりの長期にわたる追跡調査等が求められております。そういう観点から検討のポイントを挙げておりますけれども、これについて意見をいただければと思います。

○中畑委員 

以前この検討のポイントで述べられた安全性と有効性の確保の観点から一定期間の追跡調査を行う、またそれを報告するという、これについては恐らく異存はないのではないかと思いますので、私は賛成でございます。

○山口委員長 

ありがとうございます。

○位田委員 

適当な期間というのがどのくらいの目安なのかというのが一番問題だと思うのですね。

○山口委員長 

FDA のガイドラインと、先ほど小野寺先生も説明いただきましたけど、レトロウイルスに関していえば15年、5年間のウェットな検査と10年間のフォローアップということでトータル15年を求めております。これはなぜかというと、それだけは求めているというのと、それ以外のもし挿入変異のリスクのないものについては割と期間を短くしている。ですからリスクベースで期間を規定しようという考え方かと思うのですけれども、もしその辺について追加でありましたら。

○梅澤委員 

再生医療新法では、法律ですので罰則が付いてしまっていますので、適当な期間というか努力目標にしているところです。

 

○梅澤委員 

では、どのように努力目標かというと、実際に多くの患者さんを常に診ていらっしゃる、医療としてやっている部分もありまして、全てフォローアップすることは現実的に、もし有効性が見られなかったとき患者さんはそのクリニックにはもう、追跡、現実的にできないというのが事実でございますので適当な期間。しかし追跡するということに関しては先ほど議論の中でも当然であろうということで、このような書きぶりでいくということです。

○山口委員長 

ありがとうございます。

○位田委員 

そこがなかなか難しくて、医療として提供する場合と、こっちは臨床研究ですので、どこまできちっと書き込んで、どこからが少し努力目標にするか、です。いずれにしてもこっちは法的拘束力がないのでどう書いても努力目標にしかならないのですけれども、そこのところ目安を「適当な」ということで現場が混乱しなければそれでいいと思いますが、その辺りはいかがですか。

○山口委員長 

多分これ本体に書くとしたら、例えばコンセプトペーパーみたいな形でリスクベースを書いて出すという。FDAがガイダンスを、ロングタイム・フォローアップのガイダンスを出してますので、その中でそれぞれリスクベースのことを書いている。多分サイエンスの進展によっては変わってくる可能性があると思いますので、ひょっとしたらこれは事務局にお願いする、もしそういうものを出せるとしたら出していくような形に後でまとめておいたらいかがかなと思うのですが。

○中山研究企画官 

再生医療のほうがこういう書き方になっている理由はよく分かりますので、こちらの臨床研究で具体的に定められるのか、そうはしないほうがいいのか、その辺については検討させていただきたいと思います。

○山口委員長 

ありがとうございます。

○谷委員長代理 

確かにフォローアップというのは難しくて、我々の大学では現在センダイウイルスを使った虚血肢疾患に対する遺伝子治療臨床研究が実施され、現在経過観察中ですが、患者さんにカードを持ってもらい、何かあったときには必ず遺伝子治療担当医師に連絡して欲しい旨御願いし、CRCの方には1か月に1回程度は連絡を取ってもらっているのですが、大体死亡されたり、別件の事故等で入院されたりするのはその間なのですね。それで、その方が大体近くの病院に運び込まれたときに、そのカードは持っていらっしゃるのですが、その病院スタッフは誰も見ないという状態のようです。結局フィードバックがなされにくいのが現場の実状で、倫理委員会からもフォローアップの重要性を繰り返してはいますが、現状としては極めて困難な場合が多いようです。

○山口委員長 

制度として良くなっても、なかなか現実問題としての。

○谷委員長代理 

現実問題としてなかなか厳しいですね。退院後は患者さんのご自宅と病院との距離の問題も大きく、いざという段階では必ずしも大学病院にはこられず、連絡もとっていただけないようです。

○山口委員長 

先ほど梅澤先生が説明いただいたように、努力目標にせざるを得ない面があるということですね。

○谷委員長代理 

そういう面があると思います。

○小野寺委員 

多分そこが疾患による違いだと思うのですね。やはり私たちが診ている先天性免疫不全などの遺伝子治療における一番危険な有害事象は白血病発症であるので、やはりプロトコール上、年1回の骨髄検査が必要だと思います。また、どこまで書き込むかは別かもしれませんが、一律にしてしまうと非常に大変になってくると思います。多分一番良いと思えるのは疾患なのかベクターなのかによって、もちろん患者さんのフォローアップ、それは患者さんの意思に関わらず医療側として将来的な有害事象、造血系の異常が起こる可能性が高いことを考えて、それを比較的強制的に診ていく必要があるという意味で、ベクターや疾患各々に見合ったフォローアップの年限をプロトコール上明確していくのが良いと思います。仮に一律にフォローアップを決めてしまいますと、数年のフォローアップが切れてしまったときに、その後どうするのかという点で明確ではなく、フォローアップ期間を観察したからそれは適当だからと言われれば反論しようがなくなってしまいます。ですから、できればベクター、疾患ごとで一定の基準はあってもいいのではないかと思います。

○山口委員長 

今の意見は申請のときに適切な期間を定めるようなやり方もあるし、そのときに何らかの基準が指針本体でなくても出せるような形であればいいのかなと思いました。もう1つまとめてみますと、ほかに臨床研究指針あるいは再生医療との安全性確保の法律との整合性も図りながら、ロングタームのフォローアップについては定めていくという形でさせていただければと思います。その他についてはロングタームのフォローアップについて議論させていただきましたけれども、ほかにその他についてございませんでしょうか。

○那須委員 

全く違うことなのですが、遺伝子治療の指針の雑則の4番に、いつも気にしてた啓発普及という言葉が入っております。ほかの指針には多分入ってないのではないかと思うのですが、遺伝子治療ができたときに社会での遺伝子を触るのではないかというようなことがあって、あえて社会の認知、理解を得ようということで入れたのではないかと思うのです。その点についてコメントいただけたらと思います。

○山口委員長 

何か事務局から。当初と今は大分違うのかなという気がするのですね。当初は遺伝子関連に関して、ものすごくアレルギーがあった時代があって、そういうことかなという気がしてはいるのですが、なかなか答えが難しいかも。

○中山研究企画官 

おっしゃるとおりだと思います。ただ、この規定自体は維持しておくべきという。

○那須委員 

そうですね。それも合わせて議論いただいた。

○山口委員長 

多分海外のが、ものすごく遺伝子治療ということがわりと。例えば小野寺先生がよく行かれております、NPO的な活動やそういうのも含めて様々あるのが、日本では少ないということかなと僕は勝手に類推したのですが。

○中山研究企画官 

これを作ったときの経緯は分かりませんので明確にはお答えできませんけれども、先生方がおっしゃっているとおりだと思います。この内容を見ると、情報提供等啓発普及に努めるという趣旨は、今も変わるべきではないことかと思います。

○山口委員長 

多分これがあって今の研究のときの申請書もかなり公開されて、広く知らせるという状況になっているのかなと思ってはいるのです。

○那須委員 

基本的にいろいろ国から研究費を頂いてやる場合は、当然そちらの方向からもアウトリーチ活動をするようにとちゃんと入っておりますので、合わせて私たちは遺伝子治療をやるときにはかなり気にしてやっているという、ほかの指針と違うかなと思います。

○谷委員長代理 

フォローアップの問題も含めて、公的資金を得て研究を行う関係上、遺伝子治療を受けた患者さんを一つのレジストリーとして登録してその記録を残して、サンプルも長期的に保存できるような、システムを構築する方向性も必要かなと思います。

○山口委員長 

多分レジストリーというのはなかなか本当に必要な望ましい行為だと思うのですが、制度としてやっていくのは意外と大変。

○谷委員長代理 

難しいと思います。

○山口委員長 

ありがとうございます。

○位田委員 

それは遺伝子治療の臨床研究を登録するということが難しいのでしょうか。今のレジストリーとしてお話。

○谷委員長代理 

レジストリーをやる場合に一定の組織構築が必要で、永続的にやるためには継続的な資金獲得が必須です。その資金をどのようにして獲得していくかということが非常に問題だと思います。それと、サンプルの保存に関しては、どこでどのように保存するかということが大変重要です。望ましくは遺伝子治療を受けた方の全てがレジストリー化されて、いつでもどこにおられるかフォローできる体制の構築が望まれます。がんの患者さんの場合残念ながらまだそんなに長くは皆さん生きられないのですが、小児科等の難治性疾患を対象にした遺伝子治療の場合には、一般に患者さんは長く生存されます。私個人としては終生フォローアップすべきだと考えております。そうなりますと総括責任者が大体10年で研究者寿命が無くなりますので、その後誰が引き継ぐかが問題で、やはり疾患レジストリーの組織が構築され、責任を持ってフォローアップができれば一番理想的であると考えます。

○位田委員 

それは厚生労働省がやる意思はないのでしょうか。がん登録がずいぶん長い間かかって何とかここまできているのですが、遺伝子治療の場合もそういうことがあり得るかなと。

○梅澤委員 

具体的にいくつかレジストリーが成功している例があります。例えば医師の学会等が主導して、特に骨髄移植や臍帯血移植においては、医師たちが自分たちの、いわゆる情報として積極的にやる、または埋込型人工心臓でも学会等が主導してやるということ。確かに資金的に大変なところはありますが、それについてはやはり民間主導型できちっとやるという。再生医療安全法に関しても、やはり同様に当然新しい新法の心といったものについてはレジストリーを進めていく。ただし、やはりガイダンスに書き込むといったレベルになると難しいところはあるけれども、そこは積極的に学会としてやっていくとか、そういう考え方があるのかなと思っております。

○位田委員 

お金がかかるところは学会がどこまで面倒を見るかということだろうと思いますし、それぞれの学会が別々にやっていて本当にいいのかという問題もあると思います。

○山口委員長 

多分規制当局の中でも、日本でなくて海外の規制当局のレジストリーの問題は遺伝子治療に関して言えば議論をしているところです。ありがとうございました。ほかにありませんか。

○本田委員 

ちょっと素人っぽい質問なのですが、気になったので、せっかく来たので是非伺って帰りたいと思ったのです。4ページのインフォームド・アセントを使う、使わないという問題もあるかと思いますけれども、素人としてよく分からなかったのですけれども、臨床研究に関する倫理指針には未成年だけでなくて、その他行為能力がないと見られる被験者、例えば普通に思い浮かぶのは認知症の方とかそういう方を指すのかなと思ったのですけれども、ヒト幹とかヒトゲノムのほうにはそういう方々に対する記載が一切ないのか、あるのだけれども未成年のところだけを引っ張ってきて書いてあるのかというのが分からなかったのと、ヒト幹、ヒトゲノムにそういう記載がないということは、その他行為能力がないと見られる被験者というのはそもそも対象として考えていないから書かれていないということなのか、その辺がよく分からなかったので引っかかってしまいました。そういうことによってもインフォームド・アセントという言葉が国際的には未成年者と割と定義されているのであれば、日本では行為能力がない人も入れるということであれば「いわゆる」としておいて、定義がまた変わってくるのかなと思ったので、現実どのようにされているのかを知りたかったので、すみません、後になってしまいました。

○山口委員長 

位田先生。

○位田委員 

私、ほとんど全部に関わっているのですけど、全部覚えているわけではありませんが、基本的にインフォームド・アセントという言葉は元々は使っていなかったと思います。最初にそれぞれの指針を作ったときに問題になったのは、同意能力のある人とない人という分け方だったと思います。同意能力のない人に関しては代諾者が同意をする、ここで止まっているのですね。ですが未成年者は、認知症とかそういうことではなく、年齢がいけばある程度理解をしていく、そういう状況にあります。発達上そういう状況にあるので、未成年者に対しては何歳までどのようにして同意をいただいて、基本的に親権者が中心ですが、代諾という形で同意をいただく。例えば高校生や中学生ぐらいだと分かりやすく話をすれば内容も分かるので、しかも自分の身体に侵襲を加える可能性が高い研究であれば、やはり本人が納得して研究に参加してもらうということも必要だろうということで、未成年者だけは未成年者というカテゴリーで扱っている。未成年者というカテゴリーを見るときには、実は欧米ではベルモント宣言以来ずっとインフォームド・アセントという言葉が使われているのでそれを持ってきたという形だと思うのです。そのときには認知症のような未成年者以外の人のことをあまり考えてなかったのですね。ところが臨床・疫学研究の指針を作るときにインフォームド・アセントという言葉を入れてやりましょうという話が、特に疫学をやっておられる方から出てきて、基本的にはそういう方向になっているのですけれども、そうすると、ではインフォームド・アセントというのは何かを定義するときに、未成年者は元々同意能力がない。そうすると同意能力のない人はほかにもいるよね、という話になって、その人にも分かる範囲で、認知症の人が全く何も分からないということではありませんので、精神的に正常なときもあるし忘れているときもあるということもあるので、その人たちにも分かりやすく話をして納得してもらうというほうがいいのではないか、という話になって、それがインフォームド・アセントに入ってくるという形になっています。今はインフォームド・アセントが未成年者だけではなくてそれ以外の、疾患なりもしくはその人の状況に応じて同意能力が完全でない人に対して一般的にインフォームド・アセントという言葉を使う方向で、議論が進んでいる。

○本田委員 

それは日本だけ。国際的にそういう方向で。

○位田委員 

日本の指針を作っているときにということです。国際的にはアメリカで使われ始めたと思うのですけど、インフォームド・アセントというのが出てきて、それは未成年者に関してだけの話なので、国際的にインフォームド・アセントというと基本的に未成年者が対象で、それ以外の場合にはインフォームド・アセントという言葉は使ってないのだろうと思うのです。私、全部調べたわけではありませんが。ただ日本の場合にインフォームド・アセントという概念を新しく入れたために、では、どこまでインフォームド・アセントでカバーするかというときに、未成年者が同意能力がない、もしくは不十分なときということであれば、それ以外の人たちでも同意能力がないとか不十分な場合もあるので、これもインフォームド・アセントでやりましょうという話になってきています。ただし、それで最終的にそうなるかどうかはまだ分からないと思います。

○本田委員 

ありがとうございます。臨床試験と疫学のところで基本的に決めるのだと思うのですけれども、インフォームド・アセントという言葉が一般的にはよく分からないので説明は絶対必要だろうと思うのと、未成年以外の方でも理解ができる人に対する対応というのは当然必要なことだと思うので、それは書き込む必要があるのかなと個人的に思っているのですけども、なかなか国際的に齟齬があるような感じに読まれるものは分からなくなってしまうというのは気になったので、ありがとうございました。

○位田委員 

若干私のバイアスもかかっております。私はインフォームド・アセントという言葉は使わないほうが、日本の指針では使わないほうがいいと思っているので。

○山口委員長 

申し訳ございません。ありがとうございました。ほかになければ、第4回専門委員会で指針に関して特に品質、安全性に関する専門性が高いということからサブグループを作るということで案件をいただいたと思います。そのサブグループの活動状況を報告させていただきたいと思います。サブグループでベクター等の品質、安全性に関する基準を具体的にどう定めていくかを議論しております。遺伝子治療の指針の見直しと合わせて、特に遺伝子治療薬の指針における基準とどの程度整合性を図る、被験者への安全性保護の観点からすれば品質、安全性については同レベルのものを当然求めるべきであろうということでまとまりましたので、それに沿った基準作りを作成中です。詳細な内容まで記載してしまうとフレキシブルな対応が取れない、特に科学技術が非常に進歩している、特に遺伝子治療の技術が進歩するところであまり具体的なものを書き込んでしまうと、例えばウイルスベクターの比活性に相当するウイルス粒子あたりの感染価の設定や、増殖性ウイルスを試験における検出感度などまで書くのはフレキシブルな対応ではないだろうということで、現時点では指針内に班や項目等を議論、どのように書き込むか、更に指針から落とした細則でどう書き込むかを議論し続けているところです。まとまりましたら皆さんに説明して議論させていただければと思っております。それ以外に事務局から最後にありましたら。

○中山研究企画官 

どうもありがとうございました。いつものとおりですけれども、議事録は作成しましたら皆さまに確認いただいて公開したいと思います。一応今回で一通り検討項目の議論は終わったということで、具体的な指針の中身をこれから事務局で案を作成するという段取りに進みたいと思います。したがいまして23日も候補としてあったのですけれども、そこはやらずに、228日に次回を開催したいと思っております。詳細については改めて連絡したいと思います。よろしくお願いいたします。以上です。

○山口委員長 

以上をもちまして第6回の専門委員会を終了させていただきます。今日はお忙しい中、ありがとうございました。


(了)
<問い合わせ先>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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