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2013年5月24日 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会 議事録 

○日時

平成25年5月24日(金)
15:00~


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

出席委員(16名) 五十音順

小 川    聡、 奥 田 晴 宏、 加 藤 総 夫、 神 田 敏 子、
佐 藤 田鶴子、 鈴 木 邦 彦、 武 田 正 之、 手 島 玲 子、
豊 見  雅 文、 野 田 光 彦、 林    邦 彦、 平 石 秀 幸、
古 川    漸、◎松 井    陽、○松 木 則 夫、 山 田 清 文
(注) ◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(5名)

木 村    剛、 佐藤 雄一郎、 増 井    徹、 村 田 美 穂、
本 橋 伸 高

行政機関出席者

平 山  佳 伸 (大臣官房審議官)
赤 川  治 郎 (審査管理課長)
俵 木 登美子 (安全対策課長)
矢 守  隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
森     和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
佐 藤  岳 幸 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
中 野    惠 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中、御参集いただきありがとうございます。

 本日は、木村委員、佐藤雄一郎委員、増井委員、村田委員、本橋委員より御欠席との御連絡を頂いております。現在のところ、鈴木委員がまだお見えになっておりませんが、当部会委員数21名のうち、15名の委員の御出席をいただいていますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。

 それでは、松井部会長、以後の進行をお願いいたします。

○松井部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、報告をお願いいたします。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日席上に議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しています。また、議事次第に記載されている資料1~13をあらかじめお送りしています。このほか、資料14「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料15「専門委員リスト」、資料16「競合品目・競合企業リスト」を配布しています。

 続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告します。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。

 資料16の1ページ、「リクスミア皮下注300μg」です。本品目は「2型糖尿病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 2ページ、「ボンビバ静注1mgシリンジ」です。本品目は「骨粗鬆症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 3ページ、「イルトラ配合錠LD、イルトラ配合錠HD」です。本品目は「高血圧症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 4ページ、「プレセデックス静注液200μg『ホスピーラ』、プレセデックス静注液200μg『マルイシ』」です。本品目は、「局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 5ページ、「エビリファイ錠3mg、同錠6mg、同錠12mg、同OD錠3mg、同OD錠6mg、同OD錠12mg、同散1%、同内用液0.1%」です。本品目は「うつ病・うつ状態」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 6ページ、「トラマールカプセル25mg、同カプセル50mg」です。本品目は「各種癌及び慢性疼痛における鎮痛」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 7ページ、「ペンレステープ18mg」です。本品目は「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 8ページ、「アンブリセンタン」です。本品目は「慢性血栓塞栓性肺高血圧症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 9ページ、「乾燥スルホ化人免疫グロブリン」です。本品目は、ステロイド剤が効果不十分な場合における「視神経炎」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目は、なしとしております。以上です。

○松井部会長 ありがとうございます。ただ今の説明について、御質問はありますでしょうか。

 それでは、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、委員の皆様の御了解を得たものといたします。それでは、委員からの申出状況について報告をお願いします。

○事務局 各委員からの申出状況については次のとおりです。

 議題1「リクスミア皮下注」、退室委員はなし、議決に参加しない委員は、野田委員、平石委員です。

 議題2「ボンビバ静注」、退室委員は平石委員、議決に参加しない委員は、小川委員、加藤委員、武田委員、野田委員、林委員です。

 議題3「イルトラ配合錠」、退室委員はなし、議決に参加しない委員は、小川委員、加藤委員、野田委員、平石委員です。

 議題4「プレセデックス静注液」、退室委員はなし、議決に参加しない委員、林委員、平石委員です。

 議題5「エビリファイ錠」他、退室委員はなし、議決に参加しない委員は、小川委員、武田委員、野田委員、平石委員、山田委員です。

 議題6「トラマールカプセル」、退室委員はなし、議決に参加しない委員は、野田委員、平石委員です。

 議題7「ペンレステープ」、退室委員はなし、議決に参加しない委員は、平石委員です。

 議題8「アンブリセンタン」、退室委員はなし、議決に参加しない委員は、武田委員、平石委員です。

 議題9「乾燥スルホ化人免疫グロブリン」、退出委員及び議決には参加しない委員はなし、以上です。

○松井部会長 ありがとうございます。本日の審議事項は9議題、報告事項は4議題です。早速議題1について、機構から概要の説明をお願いします。

○機構 審議事項議題1、資料1「医薬品リクスミア皮下注300μgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より、説明させていただきます。

 本剤はGLP-1受容体作動薬であるリキシセナチドを新規有効成分として含有する糖尿病用治療薬の注射剤です。GLP-1は内因性のDPP-4により速やかに分解されますが、本剤はDPP-4による切断に抵抗性を示すexendin-4の構造に類似しており、GLP-1受容体に結合することでインスリン分泌を促進し、血糖降下作用を発揮します。海外においては2013年1月現在、欧州で承認されています。

 本品目の専門協議では、資料15に示す先生方を専門委員として指名させていただいています。

 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。

 有効性については、本剤とSU剤との併用療法に関して、国際共同第III相試験が実施され、審査報告書55ページ表23に示しましたように、主要評価項目とされた投与24週時までのHbA1c変化量において、プラセボ群に対する本剤群の優越性が検証されています。本剤とインスリン製剤との併用療法に関しても、別途国際共同第III相試験が実施され、審査報告書59ページ表27に示しましたように、主要評価項目とされた投与24週時までのHbA1c変化量においてプラセボ群に対する本剤群の優越性が検証されています。

 安全性については2つの国際共同第III相試験における有害事象及び副作用の発現状況、審査報告書77ページ~86ページの「()安全性について」の項に記載しましたように、低血糖症、胃腸障害、膵炎等の個別の事象について検討した結果、適切な注意喚起等がなされることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断しました。

 製造販売後調査については、95ページ「()製造販売後調査の計画について」の項に記載しましたように、調査症例数3,000例、観察期間3年間の特定使用成績調査が計画されており、低血糖症、胃腸障害、過敏症反応等について情報収集される予定です。

 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断しました。本剤は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は8年が適当であると判断しています。なお、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。

 なお、薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。委員の先生方から、御意見、御質問をお願いします。いかがでしょうか。

○小川委員 今の内容と少し離れますが、製品名について、PMDAの見解を伺いたいです。御承知のとおり、ファクターXaの阻害薬で、2011年に承認された深部静脈血栓の予防薬が「リクシアナ錠」と言います。何が問題かというと、今、心房細動の脳梗塞予防のための適用拡大の試験をしており、恐らく来年出てくるのではないかと思います。そうなると心房細動と糖尿病はかなり患者さんがオーバーラップするので、もちろん注射薬と内服薬という違いはあるのですが、オーダリングシステムで入力するときに、頭文字が全く同じになるのではないかと思います。「リクシアナ錠」と、今回が「リクスミア」なので、聞いただけでも似ています。恐らくオーダリングは、「RIKUS」と最初の5文字が全く同じになるのではないかと思うのです。

○機構 アルファベットの字を、まず御説明させていただきたいと思います。本剤のつづりは「LYXUMIA」となっています。先生の御指摘のように、リクシアナ錠が既に承認されているのですが、錠剤か注射剤かというところまで販売名に記載させていただいていますので、そこで区別がつくということで、機構としては、投与経路が違うものに関しては、基本的に受け入れているというのが現状です。ただ、先生の御意見も踏まえまして、この品目で対応できるのかというのは別ですが、今後、領域が重複するような錠剤や注射剤などに関しては、注意をして、販売名等も検討させていただきたいと思います。

○小川委員 同じような低阻害薬で、「リバーロキサバン」は御承知だと思うのですが、販売直前になって、「リバロキサバン」だったのが、一般名で「リバーロキサバン」と延ばすようにという変更があり、かなり現場で混乱しました。これも、アルファベットだと確かにスペルは違うのですが、オーダリングだと「RI」で始まると思うのです。そうするとこの2剤が並列に出てくる可能性があって、しかも糖尿病で心房細動の患者さんは両方使わなければいけないケースもありますし、あるいはどちらか一方ということも当然あるので、誤処方、誤投薬を、患者さんの混乱を避けるために、今から間に合うのであれば、この名称変更を御検討いただければと思います。

○松井部会長 ほかの委員の先生方は、いかがお考えですか。日本人はLとRが非常に苦手ですけれど。

○山田委員 大変重要な御指摘で、オーダリングミスを防ぐために、もし可能であれば検討していただいた方が、私もいいのではないかと思います。

○松井部会長 ほかの委員の先生方はいかがですか。

○野田委員 オーダリングの場合は、いずれにしても日本語ローマ字入力で入力することになりますので、やはり少し考えていただいた方がいいかと思います。

○審査第一部長 販売名については、私ども安全関係の方と検討してまいったのですが、先生方の御指摘もありましたので、この販売名について持ち帰って、関係の部署と少し検討いたしまして、その結果について先生方に御報告するということにさせていただければと思います。

○松井部会長 お聞きします。委員の先生方で、これは混同を避けるために変えた方がいいとお考えの方は、挙手をいただけますか。

 ありがとうございます。全員がそのようにお考えだということを、重視していただきたいと思います。よろしくお願いします。ほかの点についていかがでしょうか。

○佐藤()委員 有効性について聞かせてください。先ほど、資料16で競合品目が3種類出てまいりました。これらの有効性についての違いを教えていただきたいと思います。

○機構 既に承認されている3剤と本剤に関して、効能・効果が若干ずつ異なっています。今回の品目に関して、国内でそれらの薬剤と直接比較した試験はございません。1つ海外でエキセナチド、商品名「バイエッタ」として販売されている製剤との比較はされていますが、その試験の結果では非劣性ということが示されています。御質問の趣旨は位置づけのところかと思うのですが、本剤に関しては、他の3剤が持っていないインスリンとの併用効能を、今回の効能・効果の中に含めています。ですので、他の3剤とまた違う患者層の方々で使われる薬剤でもありますので、そういう意味で少し今までの薬剤とは位置づけが異なってくるかと思います。

○松井部会長 ほかによろしいですか。

○神田委員 2つ教えていただきたいと思います。1つは、今のとも少し絡むかもしれませんが、製造販売後調査において検討する項目が多い、したがって使用上の注意もたくさんあるように感じられます。そういった中で適正な使用が難しいのではという感じを持ったのですが、こういった中で承認されることは、このお薬の必要性が非常に高いのかということを、改めてお聞きしたいと思います。

 もう1つは、本日の御説明にはなかったのですが、資料の中で□□□□□□□□□□について、当初申請があったということですが、臨床データパッケージの充足がされていないという指摘があって、取り止めになり、併用療法□□になったという説明がありました。そういった申請に当たって何か最低限クリアしなければならないことが、あるのかないのか、指摘されるまで分からないことなのか、あるいは少ないデータでも、場合によっては承認される可能性があって出てきているのかという辺りが、分からなかったので教えていただきたいと思います。

○松井部会長 2点についていかがですか。

○機構 まず1点目の、製造販売後調査での検討課題の多さと、使用上の注意の多さになりますが、この点に関しては既に承認されています類薬と、余り変わらない量というところだと思います。ですので、位置づけ的に、これだけが何かをとても注意しなければいけないというものではなく、GLP-1製剤全般としてやはり注意していただくべき内容があるので、その点は使用上の注意にも記載させていただいておりますし、製造販売後調査でも情報収集をしていただくということにさせていただいております。この剤の必要性のところは、繰り返しになりますけれども、他剤とは少し違う併用効能を持っていますので、今まで使えなかった部分が本剤によって使えるようになるということで、必要性自体はあるものと考えています。

 2点目の、□□□□の臨床データパッケージの不足について、機構では対面助言の相談業務を行っています。本剤につきましても□□□□□□□□□□□□いただければ、こちらから助言することは可能であったと思います。ただ、今回の剤に関しては、そのような□□□□□□□□に申請に至ってしまったということで、今回このような判断に至ったところです。申請者としてどのように考えていたかというところは、審査報告書67ページ()で少し触れさせていただいておりますが、今あるデータで何とかなるのではないかと思っていたというのが正直なところです。ただ、機構と、その後に専門委員とも議論をしてまいりましたが、その中でやはり不足ということで、今回このような対応をしています。なお、審査報告書にも記載していますが、今後まだ開発を続けるということですので、最終的に良い結果が出れば□□□□も使えるような形に、今後は申請等がなされて来るのではないかと考えています。

○松井部会長 ほかによろしいですか。

○野田委員 審査報告書72ページの「基礎インスリン」というのは、具体的には持効型と中間型という理解でよろしいのでしょうか。

○機構 はい。効能・効果の方には明記をさせていただいていますが、「持効型溶解インスリンまたは中間型インスリン」と、指し示させていただいています。

○野田委員 何か具体的に、審査報告書内にも記載があった方がよいような気がしました。

○機構 どこかで定義をしておくべきだったかもしれません。申し訳ございませんでした。

○豊見委員 3ページの申請時効能・効果で、「ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る。」と書いてあり、他剤でもこういう表現はよくあることは知っているのですが、1.の「□□□□□□□□□□□」で十分な効果が得られない場合は、もういいわけですね。

○機構 3ページの記載については、申請時の効能・効果となっています。承認効能・効果については、2ページの半分より下の部分に、効能・効果ということで、本剤は「2型糖尿病、ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る。」ということで、「1.スルホニルウレア」、「2.持効型溶解インスリンまたは中間型インスリン製剤」という形にさせていただいています。

○豊見委員 1.が申請時のときに出されたけれども、これは駄目だったというように解釈していいですね。

○機構 はい、そのとおりです。

○豊見委員 分かりました。

○山田委員 細かい点ですが、1.8添付文書()の1ページの、「使用上の注意」の項目の中に、類薬では肝機能障害のある患者には、慎重投与と十分な使用経験がない、というような記載があるかと思うのですが、この薬にはないということは、肝機能障害のある患者さんに対しても安全だという臨床データが、今回の薬剤ではあったというような理解でよろしいのでしょうか。

○機構 肝機能障害患者については、審査報告書89ページを御覧下さい。第III相プラセボ対照試験併合データということで、次の90ページの表50に、合併症あり・なしの場合での安全性に関する層別解析の結果を載せています。現時点で合併症あり・なしにおいて、大きな安全性上の懸念の差というのは見られていませんので、今回慎重投与の所には記載をしていません。しかしながら、今後広く使われていった場合の安全性は、無論見ていっていただくべきだと思っていますので、製造販売後調査の中でもその辺りの調査をしていただくようにお願いをしているところです。

○松井部会長 肝機能障害については、92ページ「総合評価」の4行目に触れられてはいますけれども、山田委員、いかがでしょうか。

○山田委員 ありがとうございます。

○松井部会長 ほかにありますか。特にこれ以上の御質疑はないでしょうか。

 それでは、先ほどの市販名に関しては御検討いただくということで、そのほかの点について、議決に入ります。なお、野田委員、平石委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。そのほかの委員の方、検討事項付きでということですが、承認を可としてよろしいですか。

 ありがとうございます。それでは、検討事項付きで承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。議題2に移ります。平石委員におかれましては、議題2の審議の間、恐れ入りますが別室で御待機ください。

── 平石委員退室 ──

○松井部会長 それでは、機構から説明をお願いします。

○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品ボンビバ静注1mgシリンジの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より、説明させていただきます。 本剤は、ビスホスホネート系薬剤であるイバンドロン酸ナトリウム水和物を有効成分とする月1回投与の注射剤です。

 ビスホスホネート系薬剤の経口剤では、服用後少なくとも30分間は横にならないなどの制約によってコンプライアンスを長期間維持することが困難であるとの観点から、投与頻度の少ない経口剤や注射剤の開発が行われています。このような背景から、本邦では、類薬の経口剤として、連日投与及び週1回投与のアレンドロン酸ナトリウム水和物錠、連日投与、週1回投与及び1か月に1回投与のリセドロン酸ナトリウム水和物錠、連日投与及び4週間に1回投与のミノドロン酸水和物錠等が承認されています。また、注射剤としては、4週間に1回点滴静脈内投与のアレンドロン酸ナトリウム水和物注射液が承認されています。

 本剤の海外の承認状況については、3か月に1回投与の注射剤が2006年1月に米国及び2006年3月に欧州で閉経後骨粗鬆症の治療薬として承認され、2013年2月現在、世界90か国以上で承認されています。

 本品目の専門協議では、資料15に示す先生方を、専門委員として指名させていただいています。

 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。

 有効性については、審査報告書42ページの表12を御覧ください。骨粗鬆症患者を対象とした国内第II/III相試験において、主要評価項目とされた治験薬投与開始時から投与36か月後までの非外傷性椎体骨折の発生頻度について、リセドロン酸の連日経口投与群に対する本剤1mgの月1回投与群の非劣性が示されました。

 安全性については、審査報告書44ページの表14を御覧ください。国内第II/III相試験における有害事象及び副作用の発現状況、また、審査報告書47ページ~57ページに記載しましたように、顎骨壊死、低カルシウム血症、急性期反応等の個別の事象について検討した結果等から、適切な注意喚起及び情報提供がなされることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断しました。

 製造販売後調査については、66ページ~67ページの「()製造販売後調査の計画について」の項に記載しましたように、顎骨壊死、低カルシウム血症、急性期反応等の安全性に関する情報や腎機能障害患者及び高齢者等における安全性及び有効性に関する情報が収集される予定です。

 以上のとおり、機構での審査の結果、「骨粗鬆症」を効能・効果として本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断しました。本剤は、新有効成分含有医薬品であるため、再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。

 なお、薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方から御質疑をお願いします。いかがでしょうか。

○手島委員 52ページの2行目ですが、経口剤のときには過敏症の発現が10万例当たり0.03例、静注になると10万例当たり2.7例と推定されるということで、過敏症の発現率が静注で高くなっていると思います。この辺り、IgE抗体の産生や、スキンプリックテストなどはされているのかどうかということと、市販後の中にも過敏症の調査をするという項目があるかと思うのですが、抗体産生等の測定はされるかどうかということを、お聞きしたいと思います。

○機構 まず発現率についてですが、推定に用いている患者数が、経口剤は□□□万人、注射剤は□□万人ということで、分母が値にも影響していると思います。製造販売後調査において過敏症が発現した場合には、必要に応じて検討されるとは思いますが、抗体の確認がされるかどうかは、申請者に確認しておきます。

○松井部会長 この点について、手島委員、いかがですか。

○手島委員 原因を特定するという意味では抗体の産生等を調べられた方がいいと思うのですが、それは申請者の方にお話いただければと思います。

○機構 必要に応じて測定するように伝達させていただきます。

○松井部会長 そうはいっても、調べられるかどうかは分かりませんね。

○機構 そうなのです。本薬特異的な抗体というのが調べられるのかどうか確認はさせていただきますが、いずれにしても、発現率が非常に低く、急性期に発現するような場合等もあるかと思いますので、そこは、用法・用量上でも、「緩徐に投与する」ということで、少しずつ投与して、医療機関で注射されるものですので、投与後の観察等は十分に行っていただく予定にはしています。

○松井部会長 調べてみるということで、よろしいでしょうか。

○林委員 今の52ページで、経口剤では10万例当たり0.03例で、注射剤にすると10万例当たり2.7例ということで、率が増えている。その理由が、経口剤の方は□□万人オーダーの分母があって、注射剤は□□万人だということでしたが、分母が変わると率というのは変わるのでしょうか。

○機構 先生がおっしゃっているのは、投与期間に応じた発現率を計算しているか、という御質問でしょうか。

○林委員 そうではなくて、経口剤に比べて注射剤が多かった理由が、分母が違うことかということです。

○機構 発現数が少ないので、1例の違いが数字に影響してしまっている可能性があるかもしれないと思っています。

○林委員 先ほどの質問は、7例と35例が違うのではないかという質問ではなくて、発現の率が0.03例と2.7例と違いますよね。

○機構 はい。

○林委員 その理由を教えていただきたいです。

○機構 7例と35例というのが、実際にデータベース上で投与されていると推定される患者数で割った中で、□□□万人分の35例ということです。

○林委員 分子で出てきた発現の例数だと、分母に応じて当然変わるので、いいと思うのですが、先ほど質問のあった2行目の0.032.7というのは、10万例当たりと計算されていますね。

○機構 はい。

○林委員 これが違うのは、分母の人数が注射剤と経口剤とで違うということが理由ではないですよね。

○機構 そうですね、10万例当たりということで補正はしています。

○松井部会長 両方とも10万例当たりの頻度ですね。

○林委員 人数が多いから率が減るということではないですよね。

○機構 そういうわけではないです。すみません。誤解を与える表現になってしまいました。

○松井部会長 この点について、いかがですか。よろしいですか。

 抗体については、調べてみるというお答えだったと思います。ほかに、いかがでしょうか。

○佐藤()委員 3ページには、経口剤等ですと、30分は横になってはいけないという服用上の注意について書かれています。本薬を投与したときの、薬の分布動態についての質問ですが、静注で1か月に1回投与したときには、全身の骨に行き渡って、それがゆっくりと骨の代謝の動きに応じて使われるのか。逆に、経口剤で毎日何回かに分けて投与したときには、それだけの分布ができないのか。飲み方のコンプライアンスを考えるのではなくて、その効果、骨の再生、出入りをするというので、濃い薬でも構わないからということなのでしょうか。むしろ、現在投与されている経口剤の場合には、排出されてしまうことがあるのかとも思うのですが、その辺を教えてください。

○機構 経口製剤ですが、吸収率が悪いということもあり、なおかつ、経口投与時に食物中のカルシウムなどとキレートを形成するので、そこで消化管からの吸収が妨げられるということがあります。また、食道の上部消化管に滞留した場合の粘膜刺激性を加味して、服用後少なくとも30分は横にならない等の制約が起きています。投与量としては、血中に入るものが少ないということもあるので、多くなっています。

 ビスホスホネート製剤ですが、ハイドロキシアパタイトにくっつくということもありまして、主に骨に分布します。ビスホスホネート製剤全般ですが、腎臓で代謝されるということもありまして、審査報告書17ページで、動物に標識体の本薬を用いた非臨床試験における分布試験が行われていまして、骨、腎臓に主に蓄積するという結果が得られています。したがって、標的臓器の骨に行くというのが、ビスホスホネート製剤の特徴になります。静注製剤では、直接骨と腎臓に分布しますので、1か月に1mgの用量になっています。海外の経口剤の投与量は、1か月150mgになっています。注射剤である分、投与量として少なくなっているということになると思います。

○佐藤()委員 これが人に使われてきて、静注用1回でいいというような、いろいろなメリットがあるとすると、今後は、この類の薬はこういうパターンの投与に変わってくる傾向があるのですか。もう一つ、骨に行くと言われましたが、骨基質に行くのですか。この薬自体はどこに作用して、骨が再生されてくるオステオブラストを動かしていくのか。2つの質問をお願いします。

○機構 1点目についてですが、この品目ではありませんが、投与間隔を延ばしたビスホスホネート製剤の注射剤というのが開発されています。2点目については、骨粗鬆症の場合は骨吸収が進んでいるので、破骨細胞でアポトーシスを起こすというメカニズムになっており、骨代謝回転を抑制するという作用になります。

○佐藤()委員 そうすると、オステオクラストの方に効果を示す薬であるということですね。

○機構 はい、そうです。

○松井部会長 ほかには、いかがですか。

○加藤委員 54ページに心房細動についての報告がありますが、7)に、本剤0.5mg群で1.7%、2例、2例と、様々な上室性頻脈、上室性期外収縮/心房細動などが出ていて、類薬でリセドロンでは1.0%、4例となっております。この辺の記述を比較して読んでみると、一見リセドロンよりも多いような印象があるのですが、そこにおいて治験薬との因果関係があるのかどうか。最後には「副作用と判断された」と出ていますが、これらは比較的、心房細動及び上室性期外収縮が多いように感じます。まず、そういう心房細動に対して異常はないという判断の根拠は何かということが1つです。それから、そのことを踏まえて、1.8添付文書()の申請後添付文書()に、「その他の副作用」というのが表になっていて、1%未満という副作用もたくさん出ているのですが、ここに不整脈に関するものが全く載っていない。これは、何か理由があって、あるいは何らかの根拠に基づいて載せていないということなのですか。教えていただきたいと思います。

○機構 1点目についてですが、国内の臨床試験、海外の臨床試験等も含めて心房細動のリスクを評価させていただいています。国内試験では、御指摘いただきましたように、リセドロン酸群で1.0%、本剤群で1.2%、若しくは0.5mg/月群では1.7%となっています。次の段落の、海外の臨床試験の併合解析で、プラセボ群0.9%、本薬群0.8%ということで、両群で同程度ということもありましたので、総合的に判断しまして、心房細動は注目すべき事象ではありますが、現時点で大きな問題になるものではないと考えています。しかしながら、発現率が本剤群で少し高いということもありますので、潜在的リスクとしては考えておりまして、引き続き製造販売後調査で情報収集をする予定にしています。

 2点目の添付文書についてですが、先ほどの%というのは有害事象の発現割合でして、この中で副作用と判断されたものに加えて海外での発現傾向等も踏まえて、企業として添付文書の記載が考慮されています。現時点で、プラセボ群と海外の臨床試験の併合解析ではありますが、同程度であったということで、こちらの方には入れさせていただいていないということになります。

○松井部会長 記載しなかったということですね。よろしいでしょうか。

○加藤委員 理由のロジックは理解しました。54ページの記述などを見ても、因果関係についての記述がないのですが、回復、軽快に至らない事象は、心房細動が2例、上室性期外収縮、それから1mg/月群で心房細動4件というのは、かなり多いような気がするのです。これは海外で余りないから記述しなくてもいいというのは、どうかと思いました。今後の市場後の調査を詳細にして、情報を流す必要があれば、的確にここに記載していただければと思います。

○松井部会長 よろしいですね。ほかにございますか。

 それでは、議決に入ります。なお、小川委員、加藤委員、武田委員、野田委員、林委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。

 本議題につきまして承認を可としてよろしいですか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。別室で御待機の平石委員に入室していただいてください。

── 平石委員入室 ──

○松井部会長 それでは、議題3に移ります。機構から説明をお願いします。

○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品イルトラ配合錠LD及び同配合錠HDの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より、説明させていただきます。

 本剤の概要につきまして、審査報告書3ページを御覧ください。本剤は、既承認のアンジオテンシンII受容体拮抗薬であるイルベサルタンとチアジド系利尿薬であるトリクロルメチアジドを有効成分とする配合剤です。これら二つの有効成分はいずれも降圧剤として承認されております。

 本剤の開発は、2009年から塩野義製薬株式会社により開始され、今般、国内臨床試験成績等を基に、イルベサルタン100mgとトリクロルメチアジド1mgの配合錠及びイルベサルタン200mgとトリクロルメチアジド1mgの配合錠の医薬品製造販売承認申請がなされました。なお、イルベサルタンとトリクロルメチアジドの配合剤は海外では申請・承認されておりません。

 本品目の審査に関して、専門委員として、資料15に記載されております委員が指名されました。

 本品目の審査の概略について説明させていただきます。

 有効性については、審査報告書15ページの表4及び表5を御覧ください。イルベサルタン100mg単独にトリクロルメチアジド0.5又は1mgを上乗せしたときの降圧効果を検討する目的で、イルベサルタン100mg単剤で効果不十分な高血圧症患者を対象とした並行群間試験が実施されました。なお、報告書中で「I」はイルベサルタンの配合量を、「T」はトリクロルメチアジドの配合量を意味します。有効性の主要評価項目であるトラフ時坐位拡張期血圧と、副次評価項目の収縮期血圧のベースラインからの変化量について、I100/T0.5mg群では、イルベサルタン単独群に対する有意差は認められませんでしたが、I100/T1mgではイルベサルタン単独群に対する有意な血圧低下が認められたため、本剤のトリクロルメチアジドの配合量として1mgが選択されました。次に、審査報告書17ページの表7及び表8を御覧ください。こちらの試験は、イルベサルタン200mg単独にトリクロルメチアジド1mgを上乗せしたときの降圧効果を検討する目的で、本態性高血圧症患者を対象とした並行群間試験です。有効性の主要及び副次評価項目は先ほどの試験と同様であり、I200/T1mg群において、イルベサルタン200mg単独群に対する有意な血圧低下が認められました。なお、本試験ではイルベサルタンの含量が異なるI100/T1mgI200/T1mgの降圧効果の関係も検討され、高用量配合剤の降圧効果は、低用量配合剤投与時の降圧効果を上回ることが示唆されました。以上の結果も踏まえ、審査報告書21ページ中段に記載されている用法・用量及び用法・用量に関連する使用上の注意の記載は妥当と判断しております。

 安全性については、審査報告書15ページの表6や17ページの表9を御覧ください。本剤は、チアジド系利尿薬であるトリクロルメチアジドを含有しており、尿酸値上昇をはじめとするトリクロルメチアジドで懸念される有害事象の発現に留意する必要があると考えております。トリクロルメチアジド単剤と比較した臨床試験データは得られていないものの、本剤の臨床試験において尿酸値上昇に関連して投与中止に至った症例は認められず、治験薬開始後に尿酸低下薬の開始や増量によって対応が行われた患者の数は本剤群とイルベサルタン単独投与群で同程度でした。本剤群の尿酸値上昇の程度及び尿酸増加に関連する有害事象の発現状況を踏まえても、本剤の尿酸値上昇リスクは、臨床的に管理できる範囲のリスクであると考えられ、現時点ではトリクロルメチアジド単剤又は既存のチアジド系利尿薬を含有する配合剤と同様の注意喚起とすることで差し支えないと判断しました。

 また、尿酸値上昇以外で、イルベサルタン又はトリクロルメチアジドで発現する可能性のある有害事象につきまして、各単剤投与時よりリスクの増大は示唆されておらず、各単剤と同様の注意喚起を行うことが妥当と判断いたしました。

 過度の血圧低下の懸念に対しては、本剤は高血圧症治療の第一選択薬としないことが注意喚起されております。

 以上の検討の結果、本剤は添付文書に記載されている注意等に従い、本剤の投与が適切と判断された患者に対して適正に使用されれば、承認の可否に影響するような安全性に関する重大な懸念は認められないと判断しました。

 次に本剤の配合意義について説明いたします。審査報告書19ページの中段を御覧ください。イルベサルタンと低用量のトリクロルメチアジドの配合は、薬理学的観点から、チアジド系利尿薬に特有な副作用を抑えつつ、イルベサルタン単独投与に比し、より高い降圧効果が期待できること、また、国内の高血圧治療ガイドラインにおいて、降圧利尿薬としては低用量のチアジド系利尿薬の投与が推奨されていることから、臨床試験においてイルベサルタン単独投与を上回る降圧効果が示された本剤を配合剤という形で臨床現場に提供することは意義があると判断しました。

 製造販売後調査については、審査報告書27ページの上段を御覧ください。使用実態下における長期投与時の安全性及び有効性を確認することを目的に、高血圧症患者1,000例を対象とした使用成績調査を実施し、臨床試験において投与経験が限られていた75歳以上の高齢者、腎機能障害患者等における安全性等について情報収集を行う予定です。

 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は、毒薬及び劇薬には該当せず、生物由来製品又は特定生物由来製品にも該当しないと判断しております。再審査期間は6年とすることが適当であると判断しております。

 なお、薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。委員の先生方から御質疑をお願いいたします。

○松木部会長代理 配合剤については、度々問題にしているところで、ARBとチアジド系で、ARBが効かないときにARBとチアジド系を足して配合したら効いたというのは、当たり前といえば当り前です。つまり、ARBが効かない患者に対して更にARB+チアジド系を使うという臨床試験の意義がよく分からないです。それなら、単独でチアジド系を使ったときと、どのぐらい違うかというデータを出さないと、配合の意義が出てこないと思うところが1点目です。それから、臨床現場でARBとチアジド系の配合剤の需要は高いのかどうか、その点も聞きたいと思います。

○機構 利尿薬単剤と比較しないといけないということなのですが、現在利尿薬単剤で使用されている患者は、臨床現場でも少なく、利尿薬単剤との比較が実施されていない所は許容可能と考えております。また、高血圧治療ガイドラインにおいて、降圧剤は1剤で効果不十分な場合は、2剤、3剤と上乗せすることが推奨されておりますので、イルベサルタンで効果不十分な患者を対象として、トリクロルメチアジドを上乗せすることで、より降圧効果が認められることを示す試験が実施されたことも、機構としては適切と考えております。

○松井部会長 そういう意味で、その配合剤を使用する需要が高いとお考えですか。

○機構 ARBと利尿剤の配合剤の意義が高いのかというところは、臨床現場においても高いと考えられていると思います。

○松井部会長 いかがですか。

○松木部会長代理 ARBが効かない患者に、単独でチアジド系をしても効かないだろうということですか。

○機構 いろいろな配合剤が出ている中で、それぞれ特徴がありますので、今回はこの品目に関して御説明させていただきたいのですが、この薬の場合には、少量の利尿薬を配合することによって意義を示しているところがあります。現在、単剤の利尿薬の承認用量は、降圧剤としての用量としてはかなり高い用量が設定されていますので、利尿薬の低用量の必要性が言われているところがあります。それも踏まえて、今までARBと少用量の利尿剤の配合剤が既に4剤市場に出ており、これが5剤目なのです。そういったところでも、ARBと少量の利尿薬に関しては、ある程度配合意義が臨床現場でも受け入れられていると考えております。

○松木部会長代理 いや、質問しているのは、臨床試験のやり方なのです。2剤の配合剤の効果を見るときに、1剤に対して全然効かない前提の患者だけを選んで、その患者にもう1剤を足したら効いたというのは、何か配合の効果があることを示すデータとしては適切ではないような気がするのです。一番分かりやすいのは、やはり1剤を使ったときと2剤を使ったときで、2剤を配合した方が、効果が強いという方が非常に分かりやすいと思うのですが、その辺りはいかがですか。

○機構 こちらに関しては、臨床評価ガイドラインの、降圧配合剤の評価方法で、今のところ2通りのやり方が推奨されております。1点目は、この剤の1試験目で用いられたように、単剤不十分の患者を対象として、そのまま単剤を継続して投与する群と、2剤を投与する群を比較して効果を示すというアドオンの効果を示すものです。もう一つは、御指摘いただいたように、単純に高血圧症の患者、特に効果不十分という条件を付けずに、その患者に対して単剤の用量を複数用量、もう一つの単剤の用量も複数用量に振って、例えば2×2の2用量ずつの組み合わせと単剤を比較する要因試験という、2通りの試験方法が推奨されております。基本的に、いずれの方法を取ったとしても、単剤に対する配合剤の降圧効果が強いことが示されれば、配合剤として認めるということで、これまで評価を行ってきております。

○松木部会長代理 配合剤については、第一部会でも何回も議論しているところです。今のアドオンを認めるということは、何か配合剤を推奨しているように取れるのですが、今までそのような試験でやってきたから、今後もそれを続けるということでしょうか。

○機構 少なくとも、実際の臨床の投与対象としては、効果不十分例が対象となって、そこにもう1剤上乗せされているので、臨床現場の対象をより想定したアドオン試験が要因試験と比べて得られる意義が低いということではなくて、やはりその試験で得られるエビデンスはほぼ同様と解釈してよいと考えております。もう少し申し上げますと、アドオン試験の方が試験としては実施が困難な場合もあり、そこについて不適切な試験であったとは考えておりません。

○松井部会長 ほかにはいかがですか。

○林委員 今の議論に関連しているのですが、例えば15ページの表4、5は、イルベサルタンを100mgに固定して、利尿剤00.5、1mgと比べているのですね。

○機構 はい、そうです。

○林委員 一方、17ページの表7、8では、利尿剤を1mgに固定して、イルベサルタンを100mg200mgと、本当はここで0があると今の答えが出てくる試験計画になるのではないかと思います。

○機構 そうですね。御指摘のとおり、ここにT1/イルベサルタン0という群がいると、いわゆる要因試験という形になりますが、その点は開発段階から議論しておりまして、機構としてもその群を設けるべきだというところも指摘したのですが、承認にそのデータが完全に必須か必須でないかと考えたときに、この試験においても解釈は可能であろうと申請者が独自に判断し、適切な試験デザインとしなかったということになっております。

○松井部会長 ほかにはありますか。よろしいですか。

 それでは、議決に入ります。なお、小川委員、加藤委員、野田委員、平石委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。

 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。それでは、議題4に移ります。説明をお願いいたします。

○機構 審議事項議題4、資料4、「医薬品プレセデックス静注液200μg、『ホスピーラ』及びプレセデックス静注液200μg『マルイシ』の製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より、説明させていただきます。

 本剤の有効成分であるデクスメデトミジン塩酸塩は、選択的な中枢性α2アドレナリン受容体作動薬であり、本邦においては、2004年1月に「集中治療下で管理し、早期抜管が可能な患者での人工呼吸中及び抜管後における鎮静」の効能・効果で承認後、24時間を超える使用に関する臨床試験が実施され、2010年8月に投与時間の制限を削除した「集中治療における人工呼吸中及び離脱後の鎮静」の効能・効果で承認されております。本申請効能・効果である「局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静」については、本邦において20 月より臨床試験が開始され、今般、有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。海外では、2013年2月現在、「外科的手技及び他の手技の処置前及び/又は処置中の非挿管患者の鎮静」の効能・効果にて、米国、カナダ、オーストラリア等25か国で承認されております。

 本申請の専門委員としては、資料15に記載されております5名の委員を指名いたしました。

 審査内容について、臨床試験成績を中心に説明いたします。

 有効性について、審査報告書5ページ、表1の下1~6行目を御覧ください。モニタリング監視下での局所浸潤麻酔、伝達麻酔等による非挿管手術又は処置時に鎮静を必要とする患者を対象とした国内第III相試験(DEX-301試験)において、本剤0.5又は1.0μg/kgの初期負荷投与を行った後、0.20.7μg/kg/時の範囲で持続静脈内投与をしたとき、主要評価項目である治験薬投与中にOAA/Sスコア4以下に到達及び維持するために、プロポフォールの追加投与を必要としなかった患者の割合において、本剤初期負荷投与0.5μg/kg群及び1.0μg/kg群のプラセボ群に対する優越性が検証されました。審査報告書7ページ、表4を御覧ください。モニタリング監視下での硬膜外麻酔又は脊髄くも膜下麻酔における非挿管手術時に鎮静を必要とする患者を対象とした国内第III相試験(DEX-303試験)において、本剤0.0670.250.5又は1.0μg/kgの初期負荷投与を行った後、0.20.7μg/kg/時の範囲で持続静脈内投与したとき、主要評価項目である治験薬投与中にOAA/Sスコア4以下に到達及び維持するためにプロポフォールの追加投与を必要としなかった症例の割合において、本剤初期負荷投与0.5μg/kg群及び1.0μg/kg群のプラセボ群に対する優越性が検証されました。

 次に安全性について、審査報告書14ページ、表10を御覧ください。国内第III相試験2試験では、海外第III相試験と同様に、本薬の薬理作用から予想される低血圧、徐脈、高血圧等の心血管系に関する有害事象や呼吸抑制に関連する有害事象が主に認められておりますが、重篤な有害事象や中止に至った有害事象の発現が特に多い傾向は認められておりません。なお、心血管系に関連する有害事象や呼吸抑制に関連する有害事象については、製造販売後調査において引き続き検討する予定としております。

 以上の審査を踏まえ、本剤の局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静の効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は、1-(4)新効能医薬品、1-(6)新用量医薬品であり、再審査期間は4年とすることが適当と判断しております。

 なお、薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。それでは、御質疑をお願いします。

○武田委員 まず各群の例数が余り多くないですね。それから、いろいろな臨床科の手術が混ざっておりますが、こういったものに関しては同等に評価してもよろしいのでしょうか。

○機構 まず、症例数が少ないところについては、その通りかと思います。本剤の有効性をきちんと評価ができる例数を集めてきていますし、あとは海外にも既に臨床試験成績が存在しているところもあるかと思います。そして、いろいろな診療科の手術、処置が入ってきていることについては、審査報告書に記載がございます。

○武田委員 10ページですね。例えば、表7を見ますと、DEX-301試験では整形外科、耳鼻科、口腔外科、形成外科、病巣切除、乳房生検、カテーテルアブレーション、それから消化器の内視鏡手術なども入りますね。こういったものを全部一緒に扱っていいのかという気がします。

○機構 確かにいろいろな手術があるのですが、一つ一つ検証しなくてはいけないのかと言われますと、一つずつを見る必要というよりかは、この薬の効果として見るときに、もともとの局所麻酔や手術に影響するものではなく、鎮静の評価をすることになりますので、鎮静がかかるかどうか、適切な鎮静が得られる用量範囲かどうかを評価する上では、これらの手術をまとめて評価するところに、それらの処置が影響することは余りないだろうということを前提として、臨床試験を組ませていただいております。実施された臨床試験の中で個々の手術・処置別に評価しておりますが、今のところ何か懸念されるような点は認められておりませんので、全体として局所麻酔下の非挿管での手術及び処置の鎮静に使う薬剤として承認していくことは、問題ないのではないかと考えております。製販後では、この個々の手術・処置別の有効性及び安全性についても問題ないかを再度確認することを申請者には伝えておりまして、申請者も実施する予定としております。

○松井部会長 ただ今の点について、林委員、お考えはありますか。

○林委員 確かに例数は少なくなると思うのですが、一つの所に集中すると多分今度は適用を絞らざるを得ない形になるのかということだと思いますので、今御説明があったように、鎮静効果が広くみられるところを中心に見たというような解釈でよろしいかと考えます。

○松井部会長 症例数についてはいかがですか。

○林委員 それは、多い方がいいとは思うのですが、今言ったように、多分多様な手術が考えられるので、どちらかというとそういった個々の手術での違いは、製販後に見ざるを得ないのかとは思います。

○松井部会長 武田委員、いかがでしょうか。

○武田委員 臨床の必要性から見ればやむを得ないと思うのですが、例えば硬膜外麻酔や脊椎麻酔をやっている患者に対する鎮静は、麻酔科が管理していますね。それ以外に、例えば消化管内視鏡手術とか、各科で局所麻酔を使ったり使わなかったりというところの鎮静は、状況が全然違うと思いますので、これを全く一緒に考えていいかどうかは、これから次のこういった薬の場合に検討していただければと思います。

○小川委員 今のコメントにも関連するのですが、そういう意味で市販後調査の難しさがあるのではないかと思います。いろいろな病態で一律に扱って、どういう報告が上がってくるのかです。例えば、今の内視鏡のような現場において、すべての項目をきちんとモニターさせるような縛りはつけるのですか。

○機構 まず、申請者には、本剤をどういう状況下、どういう条件で使わなければいけないかという基本的な条件、例えば添付文書の警告や重要な基本的注意で注意喚起している内容である、施設としてはモニタリングのための器材がある所ですとか、血圧動態や呼吸動態をモニタリングする医療従事者が必要であることですとか、医師については、この薬に対する知識や鎮静のレベルの評価をする知識が必要であることを周知していただく予定です。申請者は本剤を使用する医師が必要な知識の学習ツールも準備しておりますので、本剤を使用する医師にはそこにアクセスをいただくような形を取りたいと思っています。また、本剤を使用する施設において、使用実態の情報収集を行う予定としており、その中で副作用などが挙がってきましたら、その対応を考えていくこととしておりますので、状況の把握と次の対策は取れるのではないかと考えております。

○小川委員 かなり慎重にいかないと、麻酔科が管理の手術のときはいいと思うのですが、それ以外の通常の外来診療で使われた場合の心血管系のイベントに対応できる先生がどのぐらいいるかもありますので、かなりモニターをきちんと条件付けないと、最初の段階では危険が伴うのではないかと思うので、よろしくお願いします。

○機構 ありがとうございます。我々としても懸念している事項ですので、申請者には伝えさせていただきます。

○松井部会長 委員としての質問ですが、鎮静は成人だけですね。

○機構 はい、そのとおりです。

○松井部会長 小児の鎮静は大問題になっていますので、確認しました。ほかに御質疑はありますか。

○加藤委員 この薬はすごく有名で、今症例数が少ないというのを聞いて、むしろ逆に驚いたぐらいで、適応外で相当使われていると思うのですね。切れ味はいいですし、安全性は高いということで、例えば審査報告書8ページを見ても、臨床的位置づけについてというところにあるように、麻酔薬及び麻酔関連薬使用ガイドラインにも記されていて、現実にこの薬は相当適応外でこういう目的で使われていると思うのですね。それで、今のような症例数が少ないのではないかという御指摘なのですが、実際には臨床の現場で使われていて、適応外で使われてきた現状、あるいはこの先適応外で使われる現状はかなりあるのではないかと思います。麻酔科のドクターが、プレセデックスを気に入って使っている例をいろいろな方から伺います。そういうものも、販売後調査のようなものできちんと管理して、状況を把握して、症例あるいは例数に何らかの形で組み込んでいって、調査するというような方針はあり得ないのでしょうか。

○機構 1点確認させていただきたいのですが、今までの適応外の使用に関するものを調査に反映させるということでしょうか。

○松井部会長 そうではないですね。

○加藤委員 そうではなくて、一つは今までのレトロスペクティブにでもいいですし、今後も例えばここに書いてある、非挿管での手術及び処置時だけではない鎮静も使われる可能性があるので、そういう状況に関して実際には適応外で使った場合の情報収集をするような体制が整っているのかどうか。それも含めて、これから市販後調査の例数に組み込んでいくのかどうかということです。

○機構 製販後調査という意味では、既に承認されている範囲内でということになると思いますので、その中で適応外を追って行くことは難しいかと思います。ただ、申請者としては今回の適応拡大に伴って、すべての納入施設を回ってその状況を把握することとしておりますので、その中で適応外の状況も把握することは可能かと思います。その点についても実施するよう伝えたいと思います。

○佐藤()委員 歯科の領域でも、特に口腔外科なのですが、歯科麻酔医がついてやっております。聞きますと、適応外使用はかなり行われ、静脈鎮静法という名称で、局所麻酔と併用して、意識下でいろいろ患者に聞きながらできるということです。ただし、気をつけなければいけないのは、先程から出ていて、添付文書にもありますように、必ずその専門の者がオペレーター以外にそこについていて、コントロールできるというところを指示して、適応を通れば適応外が外れてくる領域が多くなると思います。是非適応外というような言葉が使われないで、使われるようにしていただくと、先ほどのような問題点が出なくなってくるのではないかと思います。逆に、もし何か問題があるのであれば、そこで集約できると思いますので、条件のところをしっかり押さえてモニタリングしていただきたいと思います。

○機構 御指摘ありがとうございます。我々としては、本剤は非挿管で局所麻酔を使うときに使用することを想定しているのですが、局所麻酔を使用しないような所でも本剤が使用されることはないかということを懸念しており、効能・効果では局所麻酔や非挿管という文言を付けて、できる限り制限をするようにしております。特に安全性については重要だと思っておりますので、そこについては製造販売後に、申請者にはきちんと情報を入手して、こちらへの報告とそれに対する対応を取っていただくようにお願いしたいと思います。

○松井部会長 確認ですが、武田委員がおっしゃったようなモニターの装着や、麻酔医と規定できるかどうか分かりませんが、然るべき医師が立ち合うということは条件として付けられるのですね。

○機構 警告や重要な基本的注意にはその旨を記載しておりますし、また申請者には本剤を使用する条件を、医療現場に伝達していただくようにしております。また、製販後では、使用実態調査を行っていただきまして、添付文書等で注意喚起されているような、想定されている状況と異なる状況下で使われていた場合には、本剤を使用する条件をフィードバックしていただく予定としております。

○松井部会長 この用法・用量の2番目に、局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静という記載が、安易な使用をかえって促進してしまうことがあってはならないということに、私を含めて委員がすべて共通の懸念をしているということを強調したいと思いますが、よろしいでしょうか。ほかに発言はありますか。

 よろしいでしょうか。では、その点を含めまして、議決に入ります。なお、林委員、平石委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。

 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告といたします。それでは、議題5に移ります。説明をお願いします。

○機構 審議事項議題5、資料5「医薬品エビリファイ錠3mg、同錠6mg、同錠12mg、同OD錠3mg、同OD錠6mg、同OD錠12mg、同散1%及び同内用液0.1%の製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より、説明させていただきます。

 本剤の有効成分であるアリピプラゾールは、大塚製薬株式会社において開発された非定型抗精神病薬であり、海外では2013年3月現在、65以上の国又は地域で承認されており、「大うつ病性障害の補助療法」の効能・効果では11の国又は地域で承認されています。本邦では、2006年1月に「統合失調症」の効能・効果で、2012年1月に「双極性障害における躁症状の改善」の効能・効果で承認されています。20 月より本申請に係る臨床試験が開始され、有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更申請が行われました。

 本申請の専門委員としては、資料15に記載されています4名の委員を指名しています。

 審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。

 まず、有効性について、審査報告書10ページの表5を御覧ください。国内第III相試験では、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(以下「SSRI」)又はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(以下「SNRI」)で十分な効果が認められないことを前方視的に確認した大うつ病性障害患者を対象に、SSRI又はSNRIに本剤又はプラセボを上乗せして、本剤の有効性及び安全性を検討しています。その結果、本試験では、本剤3mg/日の固定用量群と3~15mg/日の可変用量群が設定されていましたが、こちらの表に示したとおり、いずれの本剤群においても最終評価時におけるMontgomery-Asberg Depression Rating Scale(MADRS)の変化量においてプラセボ群と比較して統計学的な有意差が認められました。

 次に、安全性についてですが、審査報告書21ページの表14を御覧ください。国内第III相試験では、錐体外路症状の発現割合が高く、特にアカシジアの発現割合が高い傾向でしたが、アカシジアはいずれも軽度又は中等度で、投与中止に至ったのは1例のみであったことから、投与継続に大きな影響を及ぼすものではなく、現行の添付文書における注意喚起を継続することで大きな問題はないと考えています。また、審査報告書22ページの図1を御覧ください。国内臨床試験において、体重が増加する傾向が認められていることから、既に添付文書で注意喚起されているように、本剤投与時には体重の変動を注意深く観察し、体重変動が認められた場合は、合併症の可能性を十分に精査することが重要と考えています。また、審査報告書30ページ、「6)自殺及び他害行為に関連する有害事象について」を御覧ください。国内外臨床試験において、本剤の自殺関連有害事象の発現リスクは示唆されていませんが、臨床試験では自殺の危険性が高いと判断された患者は除外されていること、本剤の投与対象は既存の抗うつ薬の投与対象に包含されると考えられることから、自殺関連有害事象の発現リスクについては、既存の抗うつ薬と同等の注意喚起を行う必要があると考えています。

 次に、効能・効果について、審査報告書36ページの1行目を御覧ください。申請時の効能・効果は「うつ病、うつ状態の補助療法」でしたが、本剤の臨床的位置づけを効能・効果で明記すべきと考えること、「補助療法」との用語は現時点で統一的な医学用語として確立されているとは言い難いことから、本剤の効能・効果は「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」とした上で、効能・効果に関連する使用上の注意及び用法・用量に関連する使用上の注意において、SSRI又はSNRI等で十分な効果が認められない場合に、それらと併用して使用するよう注意喚起することが適切と判断しました。

 次に、用法・用量について、審査報告書44ページ「()用法・用量について」を御覧ください。国内第III相試験の3~15mg/日群と3mg/日群の有効性を比較しますと主要評価項目だけでなく、ほとんどの副次評価項目において一貫して3mg/日群で有効性が高い傾向が認められていること、3~15mg/日群では3mg/日群と比較して錐体外路症状等の安全性リスクが認められていること、海外臨床試験においても用量反応性を検討した試験は存在しないことを踏まえ、本剤の推奨用量は3mg/日のみとし、必要に応じて最大15mg/日までの増量を可とすることが適切と判断しました。

 以上の審査を踏まえ、本剤の「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請は新効能及び新用量医薬品であり、再審査期間は4年とすることが適切と判断しています。

 なお、薬事分科会には報告を予定しています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。御質疑をお願いします。いかがでしょうか。

○佐藤()委員 2ページの本薬の効能・効果の所で統合失調症、それからbipolarmanicの状態の改善と書いてあります。今回は、depressiveの状態で、今までのものでは十分に効果がなかったものに対して効果を得るという目的ですが、少し考えると逆のような感じがします。bipolarmanicを改善する目的と、今回のdepressiveを改善する目的には、大きな違いがあるのでしょうか。

○機構 本剤の効能・効果はこれで3つ目になりますが、統合失調症と双極性障害に関しては主にドパミン神経系が関与するとされております。うつ病・うつ状態に関しても、今までセロトニン系やノルアドレナリン系に作用する薬剤が承認されてきていますが、さらにドパミン神経系もうつ病・うつ状態に関与しているのではないかとも言われています。今回のアリピプラゾールの効能については、既にセロトニン系やノルアドレナリン系に作用する薬剤を投与しても効かない患者に、ドパミン系も抑えてあげれば、効果不十分であった患者に対して効果を示すのではないかというものです。3つの病態いずれにもドパミン系が関与している可能性があることは共通していると思います。

○松井部会長 既存の治療に対して十分な効果が認められない場合に限るというのは、そういうことですね。

○機構 そうです。

○佐藤()委員 変な言い方ですが、手の打ちようがなくて、理論的にそれでいけるのかということで、使ってみたら効果があったからということで、こういう薬として効能が出てきたのですか。

○機構 佐藤委員がおっしゃったとおりで、アリピプラゾールだけでなく、非定型抗精神病薬全体に関して、臨床で使ってみたら効いたということがあって、承認を取得するための開発が始められたものです。

○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。特にございませんか。

 それでは議決に入ります。なお、利益相反に関する申出に基づきまして、小川委員、武田委員、野田委員、平石委員、山田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。

 本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告といたします。では議題6に移ります。

○機構 審議事項議題6、資料6「医薬品トラマールカプセル25mg及び同カプセル50mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より、説明させていただきます。

 本剤は、オピオイドμ受容体作動作用に加えて、モノアミン再取り込み阻害作用を有すると考えられているトラマドール塩酸塩を有効成分とするカプセル剤であり、本邦では2010年7月に「軽度から中等度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」を効能・効果として承認されています。海外では2012年5月現在、「中等度から高度の疼痛の治療」の効能・効果で、100か国以上の国又は地域で承認されています。本申請効能・効果である「慢性疼痛」については、本邦において20 月より臨床試験が開始され、今般、有効性及び安全性が確認されたとして製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。なお、本剤は、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議での検討結果を受けて、平成22年5月21日付けで申請者に対して開発要請が行われています。

 本申請の専門委員としては、資料15に記載されています5名の委員を指名しました。

 審査内容について、臨床試験成績を中心に説明いたします。

 まず、有効性について、審査報告書9ページの図3及び11ページの図4を御覧ください。非ステロイド性消炎鎮痛剤の投与により十分な効果が得られない慢性疼痛を有する日本人変形性関節症患者を対象とした第III相試験(以下、「P3-1試験」)及び非オピオイド鎮痛剤の投与により鎮痛効果不十分な慢性疼痛を有する日本人帯状疱疹後神経痛患者を対象とした第III相試験(以下、「P3-2試験」)が実施されました。図3はP3-1試験、図4はP3-2試験の結果を示しています。用量漸増期に非盲検下で本剤100400mgの範囲で適宜増減し至適用量を決定した後、二重盲検期に至適用量の本剤又はプラセボを投与したとき、主要評価項目である二重盲検期における「鎮痛効果が不十分」をイベントとした本イベント発生までの期間は、いずれの試験においても、本剤群ではプラセボ群と比較して統計学的に有意に長く、本剤の有効性が示されました。

 次に安全性について、審査報告書15ページの表9及び16ページの表10を御覧ください。比較試験及び長期投与試験では主にオピオイド鎮痛剤に特徴的な有害事象である便秘、悪心、傾眠、嘔吐、浮動性めまいが認められました。また、長期投与試験において、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害性疼痛、複合性局所疼痛症候群及び線維筋痛症患者ではオピオイドに特徴的な有害事象の発現割合が高い傾向が認められましたが、ほとんどの事象は軽度又は中等度であり、疾患により重篤な有害事象及び中止に至った有害事象の発現割合に大きな違いは認められませんでした。

 本剤の臨床的位置づけについて、審査報告書2122ページ、「()非がん性慢性疼痛治療における本剤の臨床的位置づけ及び効能・効果について」を御覧ください。トラマドールは弱オピオイド鎮痛剤に位置づけられることから、本剤は非ステロイド性消炎鎮痛剤等の非オピオイド鎮痛剤では十分な疼痛管理が得られない慢性疼痛患者に適用されるものと考えています。また、がん性疼痛患者においてもこの臨床的位置づけは同様であることから、その点が明確になるよう、効能・効果を「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患における鎮痛:疼痛を伴う各種癌、慢性疼痛」とすることが適切と判断しています。

 以上の審査を踏まえ、本剤を「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患における鎮痛:慢性疼痛」の効能・効果で承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請は、1-(4)新効能医薬品であることから、再審査期間は4年とすることが適切と判断しています。なお、薬事分科会には報告を予定しています。

 また、事前に加藤委員より効能・効果についてコメントを頂いています。非がん性慢性疼痛に対する薬物治療は、ペインクリニック学会のガイドラインに基づき、必ずしも「鎮痛薬」に分類される薬剤だけではなく、「鎮痛補助剤」に分類される薬剤が、第1選択となる場合も少なくないことから、効能・効果を「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な」とすることは誤解を招き得る表現であり、「非オピオイド鎮痛剤をはじめとする薬物療法で治療困難な」又は「非オピオイド鎮痛剤ならびに鎮痛補助剤で治療困難な」などの表現にする可能性はないか、との内容です。御指摘のように、特に神経障害性疼痛に分類される痛みに対して、抗うつ薬等も第1選択薬としてガイドラインに示されています。非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬に対する処方ガイドラインでは、オピオイド治療以外のすべての治療が行われ、それらが無効であった場合にオピオイドによる治療を選択するとされており、本剤もこれに該当するものと考えています。また、効能・効果における「非オピオイド鎮痛剤で」は、オピオイド鎮痛剤以外の治療を指しています。鎮痛薬の使用を選択する以前にそれ以外の適切な治療が検討されている必要があるとされている点については、本剤の医療従事者向けの資材において、より詳細に臨床現場に情報提供させていただく予定です。この効能・効果の文言については、すでに、非がん性慢性疼痛に対する効能・効果を有していますトラムセット配合錠やデュロテップMTパッチ等と同じであり、これらの薬剤の使用において現時点において、特に問題等は報告されていないことも申し添えさせていただきます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 加藤委員からの御質問ですが、いかがでしょうか。

○加藤委員 私が気になったのは、効能・効果で「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患における鎮痛」です。1つは癌における鎮痛、もう1つは慢性疼痛で、癌における鎮痛に関しては、非オピオイド、弱オピオイド、強オピオイドと段々上がっていくというのはWHOのガイドラインに従っていると思います。慢性疼痛の場合は、第1選択薬とされているものが、もう既に鎮痛薬という分類ではないような、抗うつ薬であったり作用機序がよく分からないものであったり、いろいろなものが含まれていて、オピオイドをやるかどうかは第3選択ぐらいになってきています。その患者さんがいた場合に、「非オピオイド鎮痛薬で治療困難な」という表現があったときに、それ以外にも「鎮痛補助剤」という言葉がこの中で使われていますが、いわゆる鎮痛薬でないものを既に試していないものがあると、ガイドラインとしてはそれを試せと書いてありますが、これがこう出てくると、どの段階で使っていいのか臨床的に混乱するのではないかと思いました。表現として私が提案したかったのは、「非オピオイド鎮痛剤を含む薬物療法で治療困難な」というようにした方が現場の混乱は少ないのではないか、ガイドラインとの整合性がつくのではないかと思います。

○松井部会長 その例として、各種癌、慢性疼痛ということでしょうか。

○加藤委員 その例というか、非オピオイド鎮痛剤、これは薬理学的にどういう分類になるのか定義が難しいところですが、慢性疼痛に関しては、いわゆる鎮痛剤ではないもの、例えば抗うつ剤であったり抗不整脈などが、第1選択で使われているので、それを使った場合に治療が抵抗性であったということなのか、それとも、それをこれから使う前に、慢性疼痛に最初にこのトラマールカプセルを使っていいのか、ガイドラインとの整合性で現場が難しくなるのではないかということです。表現だけの問題です。

○機構 御指摘のとおりの、鎮痛補助剤は入らないのかということについては、先ほども申し上げたとおり、オピオイド鎮痛剤については、薬物治療以外の治療を含め、ほかのオピオイド鎮痛薬による治療以外の治療によって効果が得られない場合に使うものと考えていますので、薬物治療に限定されないものと考えています。この位置づけについては、神経障害性疼痛等、個々のものではなく、オピオイド鎮痛薬の処方ガイドラインの中にはその旨はっきり記載されていますので、そのガイドラインを参考にしていただければ対応できると思います。また、この薬についても間違いなく使われるようにガイドラインも引用して、ここで示す「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な」というのを適正使用ガイド等で、きちんと具体的に例を示して情報提供させていただきたいと考えています。

○松井部会長 いかがですか。

○加藤委員 もちろん、そうやって情報を流していただくのは当然のことと思います。ただ、「非オピオイド鎮痛剤で」というのが、オピオイド鎮痛剤以外のすべてという意味になるというのは日本語としてどうかと思うのですが、どうでしょうか。

○機構 既にもう承認されてしまっている薬剤にそのような記載がありまして、そちらと記載を変えてしまうと、臨床的位置づけが違うのかという誤解を招くところもあるかと思いますので、文言は既承認のものと合わせることが必要ではないかと考えています。

○松井部会長 では、これは説明で補っていただくことにしましょうか。

○加藤委員 そのようにしてください。ただ、慢性疼痛のメカニズムあるいはその治療は国内外でも非常に研究が進んでいて、いろいろと新しいターゲットが見つかってきていると思います。過去においてそうだから次からはそのままでいいということではなくて、急速に変わり得る状況の分野だと思いますので、御検討ください。お願いします。

○機構 御指摘ありがとうございます。

○小川委員 今の点の文言ですが、1行目に「各疾患における鎮痛」と書いてあって、その下の2つの表現が変なのではないでしょうか。「各種癌に伴う疼痛」と書くのであればいいのでしょうけれども、癌を鎮痛するようにこれは読めます。むしろここは、「各種がん性疼痛と非がん性慢性疼痛」というようにまとめることはできないのでしょうか。これは言葉が変だと思います。上は、各種癌が対象で、下は疼痛が対象になっているので、少し表現を考えた方がいいのではないかと思います。

○機構 上の方に「下記疾患における鎮痛」と付けてしまったので、「鎮痛」と「鎮痛」が重なってしまうのを懸念して今の文言になっています。

○松井部会長 「鎮痛」の項目としてこの2行があるということですか。

○機構 そうです。ただ、癌に効くように見えるというのはおっしゃるとおりだと思います。この薬は癌に効くものではないので、「各種癌における疼痛」などほかの文言の方がより適切だと思いますので、既承認のものとの整合性もありますが、そこについては検討させていただきたいと思います。

○松井部会長 よろしいでしょうか。ほかに特にございませんか。

○松木部会長代理 細かなことですが、審査報告書の図2、3、4についてです。この表現で、縦軸に「累積生存率」と書いてあって、これは中止になったものをやめたということですから、添付文書にあるような「効果持続率」などのような表現にしておくと分かりやすいと思います。最初に読んだときに私は誤解をして、何かものすごく危険なことをしているのではないかと思いました。

○機構 御指摘ありがとうございます。生存=イベントという形で取ったときの残ったものなので、その文言は改めさせていただきたいと思います。

○松井部会長 ありがとうございます。ほかにございますか。

○審議役 これは、試験のプロトコールで新規開発者がこのような名前にしたので、審査報告書はそれにのっとってここに付けたものです。なかなか分かりにくいところはあると思いますが、ただ、実際にこれが上市されて世の中に出るときに、現場で誤解されないように、添付文書等で記載する場合には表現を工夫させていただきたいと思います。2段階でやらせていただくことでよろしいでしょうか。

○松木部会長代理 前回も指摘させていただきましたが、審査報告書の主語がよく分からないことが多いのです。これは申請者の考えだとか申請者のデータで、こちらは機構の付けたものだと、「機構は」とわざわざ書いてある所はありますが、基本的にはここに書いてあるデータなどは全部申請者のデータで、最後に「機構としては」という一文が付いているという、そのような書き方が基本だということですか。

○審議役 おっしゃるとおりです。今、御指摘いただいた所は資料の概略になっていますので、これは基本的には申請者側の集めた資料及び主張です。その後に機構の試験の評価として、「機構は」という主語が書いてある部分は機構の判断ということです。

○松井部会長 ほかにございませんか。

 それでは、議決に入ります。なお、野田委員と平石委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。

 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないと認めますので、承認を可とし、薬事分科会に報告といたします。議題7に移ります。

○機構 審議事項議題7、資料7「医薬品ペンレステープ18mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より、説明させていただきます。

 本剤は、リドカインを有効成分とする貼付剤であり、本邦では199410月に「静脈留置針穿刺時の疼痛緩和」を効能・効果として承認されており、2012年6月に「伝染性軟属腫摘除時の疼痛緩和」に対する効能・効果が追加承認されています。本申請効能・効果である「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」については、□□月より臨床試験が開始され、今般、有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。

 本申請の専門委員としては、資料15に記載されています5名の委員を指名しました。

 審査内容について、臨床試験成績を中心に説明いたします。

 有効性について、審査報告書12ページの表4を御覧ください。太田母斑、扁平母斑、異所性蒙古斑又は外傷性色素沈着に対する皮膚レーザー照射療法を受ける患者を対象とした第III相試験において、本剤を顔面又は顔面以外の体幹・四肢のレーザー照射予定部位に60分間貼付したとき、有効性評価項目であるレーザー照射時の治験薬貼付部位の治験薬非貼付部位に対する疼痛VAS値の変化率において、本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証されました。また、審査報告書10ページ「()一般臨床試験」の項の4段落目を御覧ください。単純性血管腫、苺状血管腫又は毛細血管拡張症に対する皮膚レーザー照射療法を受ける1歳以上の患者を対象とした一般臨床試験において、本剤を顔面又は顔面以外の体幹・四肢のレーザー照射予定部位に60分間貼付したとき、有効性評価項目であるレーザー照射部位の疼痛VASは、「痛くないまたはレーザー照射の感覚はあるが痛くない」が34.5(29例中10)、「少し痛い」が58.6(29例中17)と、多くの患者で疼痛が緩和されたと評価されました。

 次に安全性について、審査報告書16ページの表11を御覧ください。第III相試験及び一般臨床試験では、成人及び小児ともに本剤貼付部位に関わらず、主に適用部位局所の有害事象が認められました。因果関係が否定されていない有害事象は適用部位紅斑4例及び蕁麻疹1例のみで、いずれも軽度の事象であり、本剤貼付時の安全性に大きな問題は認められませんでした。

 最後に小児における本剤の用法・用量について説明いたします。実施された臨床試験では、1歳未満の小児に本剤を貼付したとき及び1歳以上の小児に2枚を超える本剤を貼付したときの安全性及び薬物動態は検討されていません。しかしながら、年齢に伴う体表面積の増加に伴い、より広範囲のレーザー照射が必要になる場合や、1歳未満の小児において局所麻酔薬を用いた皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和が必要となる場合が想定されることから、小児の用法・用量について検討を行いました。審査報告書1719ページの「2)貼付枚数について」の項を御覧ください。まず、1歳以上の小児における最大貼付枚数は、一般臨床試験において1歳の小児に本剤2枚を貼付したときの安全性上の特段の問題は認められなかったこと、小児の血清中リドカイン濃度の結果を踏まえ、標準体重に基づき各年齢における最大枚数を設定した場合に、臨床上問題となる血清中リドカイン濃度の上昇が生じる可能性は低いと考えることから、1歳以上の小児において、年齢に応じた最大貼付枚数を設定することは可能と判断しています。また、1歳未満の小児への本剤の使用に関して、審査報告書2223ページの「()小児における本剤の使用について」の項を御覧ください。1歳未満の小児に対するリドカインの使用経験は蓄積されており、本剤の副作用自発報告等を踏まえても、本剤2枚までが使用されたときに安全性上問題となる可能性は低いと考えることから、1歳未満の小児においても本剤は使用可能と判断しています。なお、小児の年齢別の安全性については製造販売後調査において確認する予定です。

 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請は1-(4)新効能医薬品、1-(6)新用量医薬品であることから、再審査期間は4年とすることが適切と判断しています。

 なお、薬事分科会には報告を予定しています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。議題7につきまして御質疑をお願いします。

○佐藤()委員 記憶では、確か静脈留置するときは針の刺入部位に最低1枚貼ればいいということでした。今回は、レーザーを照射するときに1時間貼付してから行うということなのですが、この枚数、要するに用量については、その範囲が広くなるから広がるということでしょうか。例えば同じ部位に30分やって、もう1回剥がして、そこにもう1枚新しいものを貼るという意味ではなく、施術範囲が広いことから、この用量設定で最大どこまでいいかが問われている、という解釈でよろしいのですか。

○機構 その解釈で問題ありません。

○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。

○豊見委員 今回の効能追加には余り関係がないことかもしれませんが、この添付文書で、以前から不思議に思っているのが、処方箋による投薬ができないことが書いていないのです。ものすごく探したら、メーカーのサイトの奥の奥に書いてあるのです。1時間前というのは、民間の普通の診療所では、軟属腫などのときに処方箋による投薬をしたくなる時間だと思うのです。それが添付文書に書いていないというのは、添付文書の性格として書けない何かがあるのでしょうか。これは処置の薬であって投薬の薬ではないということを書いていただきたいのです。

○松井部会長 いかがですか。

○機構 効能・効果の所ですとか「ペンレステープ」の上の所には、「貼付用局所麻酔剤」と書いてあります。麻酔薬なので処置に用いるものではないことは分かると思います。処置に対する疼痛緩和に用いるものです。

○豊見委員 投薬に用いるものではないので、処方箋で切れないわけですよ。

○松井部会長 いかがですか。

○機構 本剤は最初の承認のときから処方箋医薬品になっていないので、その辺について関連部署とも議論いたします。

○審議役 先生の御趣旨はよく分かりました。ただ、情報をここに書けるかどうかは機構だけの問題ではありませんので、厚生労働省、関係部局と相談の上、検討させていただきます。御要望にそのまま沿えるかどうかは、この場ではお答え申し上げられません。

○豊見委員 保険に関して、例えばタミフルなどでは、予防は保険では駄目だということが添付文書に書いてあります。ですから、全く保険のことが書けないということはないと思いますので、できましたら添付文書にはっきりと書いていただきたいと思っています。

○機構 関連部署と調整し、検討させていただきたいと思います。

○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 委員として発言します。11ページの「審査の概略」に、「苺状血管腫は、ほとんどの患者で7歳までに自然消退するとされており」とありますが、その後の文章がうまく続かないことに気がつきました。「したがって、その一部の当該疾患を対象に含む臨床試験では」というのが正しいと思います。御検討ください。

○機構 御指摘ありがとうございます。適切になるように検討させていただきます。

○松井部会長 ほかにございますか。よろしいでしょうか。

 それでは、議決に入ります。なお、平石委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。

 本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告といたします。議題8に移ります。

○事務局 審議事項議題8、資料8「アンブリセンタンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より、説明させていただきます。

 品目の名称は「アンブリセンタン」。予定される効能・効果は「慢性血栓塞栓性肺高血圧症」。申請者はグラクソ・スミスクライン株式会社です。

 まず、対象患者数に関してです。慢性血栓塞栓性肺高血圧症(以下、CTEPH)は、器質化した血栓により肺動脈内腔が慢性的に狭窄・閉塞した結果、肺血管抵抗が増加し、息切れ等の臨床症状が現れる疾患です。本邦では、特定疾患治療研究事業の対象疾患に指定されており、平成23年度末におけるCTEPHの特定疾患医療受給者証所持数は1,590人であり、希少疾病用医療品の指定要件である対象患者数5万人未満を満たしていると考えています。

 次に、医療上の必要性についてです。CTEPH患者は右心不全を合併し予後不良となるケースが多く、平均肺動脈圧が50mmHgを超えるCTEPHの患者の5年生存率は約10%と報告されています。治療としては、器質化血栓を外科的に除去する肺動脈血栓内膜摘除術が根治治療としてありますが、こちらの外科的治療の不適応例や、こちらの手術を行った後も肺高血圧症が持続する、再発する症例が存在しています。このような症例では、血栓症に対する抗凝固療法、右心不全に対する強心薬・利尿薬、肺高血圧症に対する肺血管拡張薬等の内科的治療法が行われていますが、現在適応を有する薬剤は国内外に存在しておらず、医療上の必要性は高いと考えています。

 最後に、開発の可能性についてです。本剤は既に平成22年7月に本邦でも肺動脈性肺高血圧症の治療薬として承認されています。CTEPHは、こちらの病態と類似性が指摘されていることから、本剤の有効性が期待されています。実際、海外における肺高血圧症患者を対象とした臨床試験に組み入れられたCTEPH患者において、本剤の投与により症状が改善する傾向が認められています。さらに、2013年より、CTEPH患者を対象とする第III相国際共同試験が開始予定されていることから、本剤の開発の可能性はあると判断しました。以上、御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。委員の先生方から御質疑をお願いいたします。

 特にございませんでしょうか。

 それでは、議題8につきまして議決に入ります。なお、武田委員、平石委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。

 本議題につきまして、指定を可としてよろしいですか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告といたします。それでは、審議次第の最後の議題9に移ります。

○事務局 審議事項議題9、資料9「乾燥スルホ化人免疫グロブリンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より、説明させていただきます。

 申請者は、一般財団法人化学及血清療法研究所及び帝人ファーマ株式会社です。希少疾病用医薬品の指定要件の対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について順に説明いたします。

 まず、対象者数についてです。1ページの下方において、平成20年度及び平成23年度の厚生労働省患者調査、及びアンケートによる実態調査から推定された患者数は、それぞれ、2,000人、3,000人、1,339人であり、本剤の予定される効能又は効果における患者数は指定要件の5万人未満を満たすと考えられます。

 次に、医療上の必要性についてです。視神経炎は、視神経を構成する細胞が炎症により障害を受けて起こる脱髄性の視機能障害であり、発症後に急性の視力低下が見られ、通常、早期の視力回復を期待してステロイドパルス療法が実施されますが、ステロイドパルス療法に反応せず視力回復が得られないまま失明に至る患者に対する有効な治療は存在しません。本剤は人免疫グロブリン製剤であり、炎症、免疫系に対して調整作用を有することが明らかにされており、本剤の医療上の必要性があると考えられます。

 最後に、開発の可能性についてです。ステロイドパルス療法で十分な視力改善が認められない視神経炎患者において、静注用ヒト免疫グロブリン療法が有効であったとする報告があり、また、現在、国内第III相試験が実施されていることから、本剤の開発の可能性はあると考えられます。これらのことから、希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと考えています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。ただ今の審議議題につきまして、御意見、御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。

 それでは、議決に入ります。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告といたします。それでは、報告事項に移ります。

○事務局 報告事項議題1~4、資料1013-4について、まとめて事務局より御報告いたします。

 まず、報告事項議題1、資料10「医薬品ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0.8mLの製造販売承認事項一部変更承認について」事務局より、報告させていただきます。

 本剤は、アダリムマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体であり、現在、「関節リウマチ」等の効能・効果で承認されています。今般、アッヴィ合同会社より、「中等症又は重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の効能を追加する新効能・新用量医薬品としての製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断しました。

 続いて、報告事項議題2、資料11「医薬品アダラートCR錠10mg、同CR錠20mg及び同CR錠40mgの製造販売承認事項一部変更承認について」事務局より、報告させていただきます。

 本剤は、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬であるニフェジピンを含有する徐放性有核二層錠であり、「高血圧症」等の効能・効果で承認されています。今般、「高血圧症」の効能・効果に対し、1回40mg1日2回の用法・用量を追加する医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請がなされたものです。機構における審査の結果、承認して差し支えないと判断しました。

 報告事項議題3、資料12「医薬品メインテート錠2.5mg及び同錠5mgの製造販売承認事項一部変更承認について」事務局より、報告させていただきます。

 本剤は、アドレナリンβ1受容体の選択的遮断薬であるビソプロロールフマル酸塩を有効成分とする経口剤であり、本邦では、1990年に「本態性高血圧症(軽症~中等症)、狭心症、心室性期外収縮」、2011年に「次の状態でアンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンII受容体拮抗薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者 虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全」の効能・効果で承認されています。今般、心房細動患者を対象とした国内臨床試験の成績を基に、田辺三菱製薬株式会社より、「頻脈性心房細動」の効能・効果及び用法・用量を追加する医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断しました。

 報告事項議題4、資料13-113-4「医療用医薬品の再審査結果について」事務局より、報告させていただきます。

 これらの資料は、いずれも医薬品再審査確認等結果通知書です。資料13-1は、一般的名称は「ロサルタンカリウム」、販売名は「ニューロタン錠25mg、ニューロタン錠50mg、ニューロタン錠100mg」です。

 資料13-2は、一般的名称は「テルミサルタン」、販売名は「ミカルディス錠20mg、ミカルディス錠40mg、ミカルディス錠80mg」です。

 資料13-3は、一般的名称は「インターフェロンベータ-1b(遺伝子組換え)」、販売名は「ベタフェロン皮下注用960万国際単位」です。

 資料13-4は、一般的名称は「A型ボツリヌス毒素」、販売名は「ボトックス注用50単位、ボトックス注用100単位」です。

 これらの品目につきまして、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。報告事項は以上です。

○松井部会長 ありがとうございます。ただ今の報告事項につきまして、何か御質問、御意見はございますか。

○豊見委員 アダラートCRの用法の件です。これは、40mg1回の次がもう40mg2回ということで、例えば20mgを2回という用法が認められたわけではないと解釈してよろしいのですか。

○事務局 そのとおりです。

○豊見委員 了解いたしました。

○松井部会長 ほかにはいかがでしょうか。

 特に御質疑がないようでしたら、報告事項につきまして御確認をいただいたものといたします。本日の議題は以上です。事務局から、何かほかに報告はありますか。

○事務局 次回の部会は8月2日()午後3時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。

○松井部会長 それでは本日はこれで終了といたします。どうもありがとうございました。


(了)

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 益山(内線2746)

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