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2013年12月11日 平成25年度第2回水質基準逐次改正検討会議事録

健康局水道課

○日時

平成25年12月11日(水)
13:00~15:00


○場所

中央合同庁舎第5号館
22階専用第18会議室


○出席者

出席委員

眞柄座長 浅見委員 安藤委員 五十嵐委員 伊藤委員
遠藤委員 国包委員 西村委員 松井委員

○議題

(1)亜硝酸態窒素に係る水質基準の設定等について
(2)水道水質基準に係る今後の検討事項について
(3)その他

○議事

○豊住水道水質管理室長補佐
それでは、定刻となりましたので、ただいまより「平成25年度第2回水質基準逐次改正検討会」を開催いたします。
委員の皆様方には、御多忙中にもかかわらずお集まりいただきまして、ありがとうございます。
本検討会の開催に当たり、事務局を代表して厚生労働省健康局水道課水道水質管理官の田中より御挨拶申し上げます。
○田中水道水質管理官
田中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
委員の先生方には、年末のお忙しい時期に会議に御出席をいただきまして、大変ありがとうございます。
本日の議題は主に3つございます。
1つは、亜硝酸態窒素に係る水質基準など、これまでこの検討会で御検討いただいてきましたものに関して、必要な手続を行った結果について報告をさせていただくということが主な中身になります。来年4月1日からの施行を考えているものでございます。
2つ目は、この検討会では初めて検討することになりますが、最近の知見を踏まえた水質基準などの今後の改正の課題について、多くのものは再来年の施行を考えているものでございます。
3つ目は、前回もこの検討会で御議論をいただきましたが、突発的な水質事故時の対応についてということで、これに関しましては、今回御議論いただきますが、そこで全て結論というわけではなく、今回の先生方からの御意見、アドバイスを受けまして、事務局においてさらに作業を進めていきたいと考えているものでございます。
どの議題に関しましても、近々開催を予定しております厚生科学審議会にて御審議をいただくことを考えております。かなり盛りだくさんではございますけれども、先生方には、これまでの御経験、御知見から、事務局に対して良きアドバイスをいただきますよう、よろしくお願いいたします。
○豊住室長補佐
本日は、広瀬委員を除く委員の皆様9名に御出席いただいております。
マスコミの方におかれましては、カメラ撮りは会議の冒頭のみとさせていただいておりますので、御協力をよろしくお願いいたします。
それでは、以降の議事進行につきましては、眞柄座長にお願いしたいと思います。
○眞柄座長
それでは、まず、本日の配付資料の確認をしたいと思いますので、事務局より、配付されている資料の御紹介をお願いします。
○上迫係長
資料の確認をお願いいたします。
まず、議事次第がございます。この後ろ側に配付資料が書いてございますので、こちらを手元に置いてご覧いただければと思います。
続きまして、委員の皆様方には座席表をお配りしております。それが一枚ございます。
続きまして、資料1「亜硝酸態窒素に係る水質基準の設定等について」がございます。
この後ろに参考1、参考2がついてございます。同じ資料の中についております。
続きまして、資料2-1「最新の科学的知見に基づく今後の水質基準等の改正方針(案)」。
資料2-2「最近の水質基準項目等の検出状況について」。
資料3-1「突発的水質事故等による水質異常時の対応に関する考え方(検討状況)」。
資料3-2「水質事故等による水質基準値超過時の対応に関する検討」。同じホチキスどめの中に参考1から6がついております。
資料4が「浄水施設での対応が困難な物質について」です。
あと、参考資料1としまして検討会委員の名簿、参考資料2としまして「水質基準逐次改正検討会の公開の取扱について」をつけさせていただいております。
資料については以上です。過不足ございましたら、お知らせいただければと思います。
よろしいでしょうか。以上で終わります。
○眞柄座長
それでは、議題に入ります。
最初に、「亜硝酸態窒素に係る水質基準の設定等について」であります。事務局から説明をしてください。お願いします。
○上迫係長
改めまして、7月に池本の後任でまいりました厚生労働省水道課の上迫と申します。
まず、資料1「亜硝酸態窒素に係る水質基準の設定等について」御説明いたします。
先生方も既に御存知のとおりでございますけれども、水道法第4条に基づく水質基準、平成15年の健康局長通知に基づく水質管理目標設定項目については、最新の科学的知見に従い、逐次改正方式により見直しを行うこととされております。
初めに、昨年度も当検討会で御議論いただき、本年3月に開催された厚生科学審議会生活環境水道部会において了承された亜硝酸態窒素等に係る水質基準等の見直しについて御説明差し上げます。
まず、水質基準に関する省令の改正により、亜硝酸態窒素を水質基準に位置づけることについては、食品安全基本法の規定に基づき、本年5月31日付で厚生労働大臣より内閣府食品安全委員会の委員長に意見を求めていたところですけれども、7月22日付で食品安全委員会委員長より、添付しております参考1のとおり、結果が通知されたところでございます。これに基づき、「水質基準に関する省令」の一部を改正し、亜硝酸態窒素に係る水質基準(0.04mg/L)を追加するとともに、「水道法施行規則」「水道施設の技術的基準を定める省令」及び「給水装置の構造及び材質の基準に関する省令」を改正し、表1のとおり、薬品基準や資機材材質基準、給水装置浸出性能基準、検査回数等の設定を行うこととし、8月23日より1か月間、パブリックコメントの募集を行いました。また、それぞれの検査法に係る告示等の改正を行うことについても、10月31日より1か月間、パブリックコメントの募集を行いました。
次のページにまいります。水質管理目標設定項目のうち、アンチモン及びその化合物、ニッケル及びその化合物並びに農薬類の対象農薬リストに掲げる農薬のうち、旧第1候補群の2物質、具体的にはトリクロルホン及びメコプロップについて、表2のとおり目標値を見直すこととし、8月23日より1か月間、パブリックコメントの募集を行いました。また、本年3月の生活環境水道部会において了承された農薬類の目標見直し案のうち、先ほどの2項目を除く旧第1候補群以外の農薬類10項目については、表3のとおり目標値を新たに設定することとし、現在、パブリックコメントの募集を行っているところでございます。
3ページ目にまいります。8月よりパブリックコメントを実施したものについては、参考2のとおり、合計28件の意見が寄せられたところです。また、給水装置及び水道用資機材等の浸出性能基準等の改正については、「貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)」に基づき、世界貿易機関(WTO)へ通報し、9月23日から60日間、加盟国からのコメントを受け付けましたが、各国より内容に関する質問、意見はありませんでした。
最後に、今後の予定ですけれども、年度内に開催予定の厚生科学審議会生活環境水道部会において御審議いただいた上、関係する省令、告示、通知等の改正を行い、いずれも平成26年4月1日から施行することとしたいと思います。
以上で資料1の説明を終わります。
○眞柄座長
ありがとうございました。
それでは、今、説明があった事柄について、御質問や御意見ありましたら、どうぞお出しください。よろしいでしょうか。
それでは、特にないようでございますので、この資料の方針に従って水道部会で御検討くださいますようお願いをいたします。
それでは、続きまして、次の議題でありますが、「今後の水質基準の改正方針について」御説明ください。お願いします。
○上迫係長
初めに、資料2-1「最新の科学的知見に基づく今後の水質基準等の改正方針(案)」について御説明いたします。
先ほども御説明いたしましたとおり、水質基準については、最新の科学的知見に従い、逐次改正を行っております。本検討会において、内閣府食品安全委員会の新たな健康影響評価等の知見等に基づきまして、今後の水質基準及び水質管理目標設定項目の改正方針について検討いただきたいと存じます。
次に、2ページ目をご覧ください。食品安全委員会による食品健康影響評価の結果が示された農薬類以外の物質のうち、これまでに開催された厚生科学審議会生活環境水道部会において未検討のものが4項目ございます。水質基準項目では、いずれも消毒副生成物のクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、水質管理目標設定項目では有機物質のフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)です。これらの物質に係る対応方針案をまず御説明いたします。
3ページ目をご覧ください。クロロ酢酸については、耐容一日摂取量(TDI)が、現行と同様3.5μgとされたため、水質基準については、現行どおり0.02mg/Lを維持することが適当と考えられます。
続いて、4ページ目をご覧ください。ジクロロ酢酸については、10-5の発がんリスクを比較したところ、現行評価の1.43μgが1.3μgに引き下げられたことから、水質基準としては、現行の0.04mg/Lから0.03mg/Lに強化することが適当と考えられます。
続きまして、5ページ目をご覧ください。トリクロロ酢酸については、耐容一日摂取量(TDI)が、現行評価の32.5μgから6μgに大幅に引き下げられたことを受けまして、水質基準としては、現行の0.2mg/Lから0.03mg/Lに強化することが適当と考えられます。
6ページ目をご覧ください。フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)については、耐容一日摂取量(TDI)が、現行評価の40μgが30μg、すなわち0.03mgに引き下げられたことから、評価値を現行の0.1mg/Lから0.08mg/Lに強化することが適当と考えられます。
恐れ入ります、2ページ目にお戻りください。水質基準のうち、現行よりも基準値が強化されるジクロロ酢酸及びトリクロロ酢酸について、日本水道協会が出している水道統計水質編(平成22年度版)の水質検査結果に基づき、これらの物質が当該新基準値(案)を超えて検出されたケースを対象としまして、高濃度で検出された原因や検出を踏まえた対応についてアンケートを行い、本資料の9ページ目以降、別紙にまとめました。
ジクロロ酢酸に係る新基準値(案)を超えて検出された6地点のうち、廃止予定の1地点を除く5地点については、いずれも検出時に活性炭注入が行われておりませんでした。
一方、トリクロロ酢酸に係る新基準値(案)を超えて検出された22地点については、活性炭注入又は中間塩素処理や後塩素処理など、消毒副生成物を抑制する対策がある程度講じられていると考えられるにもかかわらず、新評価値(案)を超過したという地点もございました。
続きまして、7ページ目をご覧ください。農薬類については、表に掲げるとおり、1,3-ジクロロプロペンについて、評価値を0.002mg/Lから0.05mg/Lに緩和、オキシン銅について、評価値を0.04mg/Lから0.03mg/Lに強化、トリフルミゾールについて、評価値0.04mg/Lを新規設定、フェンバレレートについて、評価値を0.05mg/Lから0.04mg/Lに強化することが適当と考えられます。
最後に、8ページ目をご覧ください。新評価値の設定については、御説明いたしました対応方針(案)に基づき、年度内に開催予定の生活環境水道部会で方針を決定した後、付のとおり進めることを考えております。
まず、水質基準項目(ジクロロ酢酸及びトリクロロ酢酸)に係る新評価値(案)の設定については、食品安全基本法の規定に基づき、まず、内閣府食品安全委員会の意見を聞くこととします。その後、パブリックコメント手続を経て新基準値を設定し、平成27年4月1日から適用することとしたいと思います。
続いて、水質管理目標設定項目(フタル酸ジ(2-エチルヘキシル))及び対象農薬リスト掲載農薬類に係る新評価値(案)の設定については、同じくパブリックコメント手続を経て新目標値を設定し、平成27年4月1日から適用することといたします。
また、農薬類のうち、対象農薬リスト掲載農薬類以外の農薬類に分類されるものについては、生活環境水道部会における審議をもって新目標値を設定し、平成26年、すなわち来年の4月1日から適用することといたします。
資料2-1については以上です。
引き続き資料2-2「最近の水質基準項目等の検出状況について」をご覧ください。資料2-2ですけれども、平成22年2月2日に開催された第8回厚生科学審議会生活環境水道部会で了承された「水質基準項目と水質管理目標設定項目の分類に関する考え方」に従って、日本水道協会の水道統計水質編(平成19年度版~平成23年度版)の水質検査結果に基づき、分類の見直しを検討いたしました。
資料2-2の4ページ目をご覧ください。表3に掲げるとおり、水質基準項目については、分類要件1に該当しないものについて、水質管理目標設定項目への分類変更を検討することとしておりますが、5ページ目の表4に掲げるとおり、それに該当する項目はございませんでした。
また、水質管理目標設定項目は、同じく表3に掲げておりますとおり、分類要件1に該当し、かつ分類要件2にも該当するものについては、水質基準項目への分類変更を検討することとしておりますが、5ページ目の表4のとおり、亜硝酸態窒素がこれに該当いたしました。亜硝酸態窒素は、先ほど御議論いただきましたとおり、既に水質基準項目への分類変更が予定されております。
なお、農薬類のうち、クロルニトロフェンについては、水道統計水質編の過去3年分によりますと、分類要件2に該当いたしましたが、50%値を超過すると回答した事業体に対し、個別に聞き取りを実施した結果、いずれの地点においても誤記、つまり誤りと判明したことから、分類要件2には該当しないものと整理されました。
以上で資料2-1及び資料2-2の説明を終わります。
○眞柄座長
ありがとうございました。
それでは、資料2-1の2-2について、御質問や御意見ございましたら、どうぞお出しください。どうぞ、伊藤先生。
○伊藤委員
ハロ酢酸のうち、評価値が変わりますジクロロ酢酸とトリクロロ酢酸についてです。結論としてはこれで異論ございませんが、特にジクロロ酢酸につきましては、これまで評価値算出の際の扱い方がその時々で変わってきたということがありますので、私としては、現在の状況を委員の皆さんにわかっておいていただきたいし、議事録にも残したいと思いますので、少し発言させていただきます。
今回行われた評価の結論は、4ページの表の下に記載されています。発がん性を指標にした場合をみると、2通りの方法で算出されています。非遺伝子障害性を仮定しTDIから求めると0.06 mg/Lが得られ、遺伝子障害性を仮定しリスクレベルマイナス5乗から求めると0.03 mg/Lが得られています。そして、これら2つの毒性評価の方法を一方に定めるだけの科学的知見はないのですが、小さいほうの0.03 mg/Lを採用しています。これを確定値とし、基準値にしていこうというのが原案となっています。これは、従来の評価値算出の考え方とは異なっているところで、現在はこのような立場に変化しているということに注意していただきたい。これが1点目であります。
もう一つは、このように発がん性指標について2通りの計算を行って、0.06と0.03を得て、安全側として0.03を選んだように見えるのですが、実は、こうなることは計算する前からわかっているのです。この方法をとった場合、2つの評価値には必ず2倍の差が生じて、マイナス5乗リスクレベルから得られる値が必ず採用されることになります。
それは、ベンチマーク用量法の特性に由来します。まず、遺伝子障害性を仮定する場合。
ベンチマーク用量というのはリスク増分レベルが10-1レベルに対応する値であり、これから10-5レベルに対応する値を求めるためには、単に比例計算するだけなので、ベンチマーク用量に1万分の1を乗じてVSDを求めることになります。
一方、非遺伝子障害性を仮定する場合、今回は疫学研究または動物実験から発がん性に関するNOAELが得られなかったためベンチマーク用量法を用いたわけですが、このときのベンチマーク用量とはNOAELとみなされます。不確実係数は、発がん性を考慮して1,000。さらに割当率としては、消毒副生成物なので20%が適用されます。したがって、合計で、結局、ベンチマーク用量に1万分の2が乗じられることになります。
このように、遺伝子障害性を仮定して、VSDから算出した値のほうが常に2倍小さな値になり、必ずこの計算方法を採った場合の値が採用されるということです。こういうからくりになっていることを御理解いただけるとありがたいと思います。
なお、その後、発がん性指標と非発がん性指標について、それぞれ0.03 mg/Lと0.06 mg/Lが得られていて、安全側として小さいほうの0.03 mg/Lを選択するという手順は従来どおりでありまして、ほかの化学物質でも行われている手順かと思います。
以上、私の理解を含めて発言させていただきました。
○眞柄座長
いかがでしょうか。ほかにございますか。では、国包さん、どうぞ。
○国包委員
別のことになりますが、よろしいですね。基本的にはこういうことでよろしいと思うのですが、現場での対応と申し上げればいいでしょうか、後ろの資料にも、新評価値(案)を超過したケースについて割合詳しい情報が整理してございますけれども、ジクロロ酢酸はともかく、特にトリクロロ酢酸について、かなり超過しているところが多いですし、それと、先ほどの御説明、もし私の聞き間違いでなければ、ですけれども、全てが無理なく新しい評価値を守れるかどうか、ちょっとその辺、懸念もあるというような御説明だったように思うのです。このメモ書きを見る限りでも、今後ともかなりきちんと対応なり、あるいは指導なりしていかなければいけないのではないかと思っているので、その辺のところ、いかがでしょうか。
○眞柄座長
どうぞ。
○田中水道水質管理官
確かに国包委員御指摘のとおり、トリクロロ酢酸に関しては、新しい基準値について、今の段階では守れないという回答があるところはございます。大体半分ぐらいのところがそのような回答になっているのではないかと思います。
私ども考えておりますのは、1つは、実際に検出された最高値を見ますと、新基準値の大体2倍ぐらいの値までの範囲におさまっておりますので、そう大きく超えていないだろうというのが判断の材料になっております。
それから、消毒副生成物でもございますので、必ずしも年中超えているということではなく、季節的な対応である程度対応ができるという部分もあるのではないかと思っております。活性炭の注入量等を適時増やすということで対応できるという部分もあるかと思います。
平成27年4月1日からの施行と考えておりますが、いろいろな種類の対応でどうにかクリアできるのではないかと思っております。先生御指摘のとおり、こういった事業体から私どものほうにも、基準の遵守に関していろいろと問い合わせがあると思いますが、そういった時にはできるだけ丁寧に対応して、基準が守れるようなアドバイスを適時にしていきたいと考えております。
○眞柄座長
ありがとうございました。
ほかにございますか。よろしいですか。
それでは、特にこれ以上の御意見もないようですから、資料2-1と2-2に基づいて、水道部会において方針を決定していただきたいと思いますので、お願いいたします。
それでは、その他の議題で、まず、資料3-1と3-2について、事務局から説明をしてください。お願いします。
○豊住室長補佐
それでは、資料3-1及び3-2につきまして、突発的水質事故等による水質異常時の対応に関する考え方についての検討状況の御説明を申し上げたいと思います。
資料3-1をご覧ください。こちらは、前回6月21日の本年度第1回水質基準逐次改正検討会におきまして、「突発的水質事故発生時等における摂取制限による給水継続について」ということで資料をお出しいたしまして、一度御議論をいただいたものでございますが、もう少し整理をしたものでございます。
まず、「1.検討の必要性」というところでございます。水道水は、飲用に適する安全な水でなければならないものでございますが、同時に市民生活に不可欠な生活用水でもございます。昨年5月の利根川のホルムアルデヒドによります水質事故の際、浄水のホルムアルデヒド濃度が上昇いたしまして水質基準値の超過がございましたので、千葉県内水道事業者におきましては給水停止に至っておりまして、87万人の市民生活への影響が生じております。
この事故で給水停止の原因となりましたホルムアルデヒドですが、この水質基準値は長期的な影響を考慮しまして、かつ十分な安全係数を用いて設定されているものでございます。
また、一方で、平成23年3月の東電福島第一原子力発電所からの放射性物質の放出事故のときの対応としましては、飲用水は別途確保するとしながら、摂取制限を用いつつ、給水を継続するという措置が講じられたところでございます。
このように、突発的な水質事故等によりまして水質異常が発生した場合の対応につきましては、これまでも「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等並びに水道水質管理における留意事項について」という、平成15年10月10日に発出しております厚生労働省健康局水道課長通知に示してきているところでございます。水道水は飲用のみならず、炊事、洗濯、風呂、水洗便所等に使用され、利用者の利便性の確保のみならず、都市機能や公衆衛生の維持に不可欠なものでございますので、この通知に基づいて水道事業者等が対策を実施するということでございますけれども、近年、先ほど御紹介いたしました水質事故等の経験を踏まえて、断水によるさまざまな影響を考慮いたしまして、摂取制限等の対応を行いつつ給水を継続することにつきまして、選択肢として水道事業者等が適切に判断できるような考え方を取りまとめていくというものでございます。
この「検討に当たっての前提」を2.にお示ししております。まず、水道事業者等は、水道法に基づきまして、一般の需要に応じて飲用に適する水を常時給水することを求められております。そのために原水の水や量、地理的な条件、水道の形態等に応じました施設整備を行いまして、施設の管理、運営、そして水質検査等を行う必要がございます。また、原水の質の悪化や、あるいは突発的な水質事故があっても、必要な監視体制、浄水設備の高度化、配管のループ化、配水池容量の確保、緊急連絡管の整備等によりまして、浄水の水質を含めて給水への影響を最小限にとどめる必要がございます。したがいまして、今般、突発的水質事故等による水質異常時の対応に関する考え方、ということで検討しているわけでございますが、これは、これまでの措置の必要性を何ら変更するものではございません。
また、水道によって供給される水につきましては、法第4条に掲げます要件を備える必要がございます。具体的には「水質基準に関する省令」によりまして、水質基準項目及び基準値が定められているところでございます。これらの水質基準項目ですが、人の健康の保護の観点から設定されております、いわゆる健康関連項目と、それから、生活上の支障の観点から設定されております、いわゆる生活関連項目からなりますが、また、健康関連項目の中には、病原微生物に係る短期的な影響を考慮しているという項目と、それから、長期的な影響を考慮している項目とがございまして、それぞれの基準値の科学的な意味が異なることを理解する必要がございます。
さらに、水道事業者等は、水道法第23条第1項に基づきまして、その給水する水が人の健康を害するおそれがあることを知ったときは、直ちに給水を停止しなければならないことになっております。
このような法律上の枠組みの中で実施をしていくわけでございまして、水質異常時の対応というのは必ずしも一律に定まるものではなくて、水質事故の状況ですとか、給水区域の規模、地域性に応じた摂取制限、給水停止による社会的影響、応急給水等代替手段確保の実現性、広報体制等を鑑みて、水道事業者等が個別に判断する必要があるものと記載をいたしております。
めくっていただきまして、3.になりますけれども、「摂取制限等を伴う給水継続の考え方」をこちらにお示ししております。
まず「定義」でございますけれども、突発的な水質事故等によりまして、水道事業者等が最善の措置を講じてもなお、一時的に浄水中の有害物質の濃度が基準値を一定程度超過する場合におきまして、水道事業者等が低減化対策を講じつつ、利用者に対して水道水の直接飲用を控えるよう広報し、あるいは煮沸勧告しつつ給水を継続する、これをここでは「摂取制限等を伴う給水継続」と定義をいたします。
これは、水道の安全性を確保した上で給水停止を可能な限り回避することによりまして、利用者への負担を軽減するための手段でありまして、水道事業者等が安易に行うべきものではございません。これまでの水道事業者等が築き上げてきました水道水への安全確保に対する取り組みを後退させるようなものであってはならないとしています。
なお、水質事業者等が直ちに必要な改善を行いまして、摂取制限に至らず収束する場合ですとか、生活関連項目に係る場合、あるいは病原微生物に係る場合につきましては、ここでの検討対象から除くことといたしております。
(2)に「摂取制限等を伴う給水継続の条件」をお示ししております。((1))から((7))までお示しをしておりますが、まず((1))平常時においては、水質基準を満たすものであること。
それから、((2))給水が継続される浄水は、誤って飲用したとしても直接的な健康への悪影響が生じるものではないこと。
((3))生活用水としての使用には支障のないものであること。
((4))摂取制限等について、利用者に対して適切な周知を行うこと。特に、乳幼児、妊婦、病院の入院患者などのセンシティブな集団に対する周知には十分配慮するものであること。
((5))水道事業者等は、直ちに原因究明及び必要に応じて低減化対策を実施すること。
((6))水道事業者等は、摂取制限等を実施するに当たっては、応急給水等の飲用水の確保を行うこと。
最後に、((7))摂取制限等を解除するに当たっては、給水栓において、水質異常に係る項目について、水質基準に適合していることを確認すること。
以上7つ、給水継続の条件を掲げてございます。
次に、(3)ですが、先ほど挙げました条件の中で((2))に関連するところでございますけれども、「健康影響の観点からの給水継続に関する指標」の説明を挙げております。水道事業者が摂取制限等を伴う給水継続を行うに当たっては、健康影響の観点から悪影響のないことを確認する必要がございます。そのため、国におきましては、短期的な摂取によっては健康影響の懸念がないレベルについて、情報を事前に整理をいたしまして、給水継続に関する指標、現在は仮称でございますけれども、こちらを取りまとめることとしております。
次に、(4)でございますが、「利用者への周知と飲用水の供給」でございます。摂取制限等を伴う給水継続を行う場合、水道水の水質は、誤って一定の期間にわたって飲用したとしても、直接的な健康への悪影響はないという前提でございますけれども、利用者の安心確保とリスク低減の観点から、テレビ、ラジオ、広報車等を用いて周知する体制を整備することが必要です。また、摂取制限を行う場合には、応急給水等により、利用者に対して飲用水の供給体制を整備することが必要です。
また、先ほど((4))にも挙げておりますけれども、乳幼児、妊婦、病院の入院患者など、特定の配慮が必要な利用者に対する周知についても十分配慮する必要がございます。
さらに、食品製造業等につきましては、原料となる水の質にかかわるというものでございますので、水質基準を超過する場合の対応については、あらかじめ周知をするとともに、摂取制限等を伴う給水継続の際の適切な連絡方法を確立することが必要であります。
こういった考え方を受けまして、4.ですが、「摂取制限等を伴う給水継続実施にあたっての留意点」を挙げております。水質異常時にあって摂取制限等を伴う給水継続を行う場合には、あらかじめ平常時において、ここに掲げられております課題について方針を定めておくことが必要でございます。
具体的には、迅速で周知徹底しやすい広報の方法、摂取制限、給水停止の際の応急給水対策、摂取制限解除の方法、再発防止の観点から事後にとるべき措置(施設整備等)、それから、摂取制限等を伴う給水継続実施に関する平常時からの周知、食品製造業、病院などへの対応の方法、臨時モニタリングの実施方法、摂取制限が発生した場合の水道料金の考え方、業務を包括委託している場合における責任分担について、こういったことをあらかじめ方針を定めておく必要がございます。
そのため、特に中小の事業者等が、今後、こういった対策を実施するに当たって参考とできるような資料について、水道事業者等及び国において、特に国においては、迅速で周知徹底しやすい広報の方法、摂取制限解除の方法、食品製造業、病院などへの対応の方法などについて、参考となる資料の作成作業を進めていきたいと考えているところでございます。
続きまして、資料3-2でございますが、こちらは、今、御紹介をいたしました資料3-1の検討に当たって参考となる情報をまとめているものでございまして、今年度から開始をされております厚生労働科学研究「水道における水質リスク評価および管理に関する総合研究」のリスク管理、割当率ワーキンググループの中で作業をしていただいているものでございます。
この1ページ目の1.と2.は、先ほどの資料3-1と重複いたしますので、説明は割愛しまして、おめくりいただいて2ページ目をご覧ください。「3.給水継続、停止と摂取制限に関する利点、欠点」ということで、突発的な水質異常があったときに、給水の継続に当たって摂取制限をするのか、しないのか、あるいは広報するか、しないかといったことと、それから、給水停止という4つのケースに分けまして、それぞれ利点、欠点を整理したものでございます。
例えば、給水継続の中で、摂取制限なしで広報もなしという場合にあっては、利点、欠点ありますけれども、特に欠点の上の2つ目を見ていただきますと、水道利用者が状況を知らずに状況を使用して、水道事業者の信用が低下するおそれですとか、食品産業等が知らずに生産した製品に瑕疵が生じるおそれがあるといった欠点が考えられます。
一方、利点としましては、飲用水、生活用水の使用は可能でありますし、大きな社会的影響は回避されるといった利点が考えられます。
次に、摂取制限なしで給水継続をしながら広報をするというケースですが、こちらにつきましては、広報、問い合わせ対応等の作業は生じますけれども、留意点として、短期間飲用しても健康影響のおそれがない範囲である必要がある、ということがございます。
また、給水継続で摂取制限あり、かつ広報活動ありとした場合、水道利用者の健康影響に係る不安が軽減される等といった利点が考えられます。
一方で、主な欠点として、広報、問い合わせ等の作業、留意点をご覧いただきますと、先ほどと似ておりますが、誤って飲用しても直接的健康影響のおそれがない範囲である必要があるというところがございます。
また、摂取制限ありということですので、飲用水を別途確保する必要があるということがあります。
右側の給水停止のほうを見ていただきますと、水道が出なくなりますので、水道利用者の健康影響のおそれ、不安が回避される、あるいは誤飲のおそれが軽減されるという利点はございますが、生活用水が確保できない、代替となる水が入手できない場合には著しい健康影響が生ずるおそれがある、市民生活への影響が極めて大きく、都市機能が停止するおそれがある、トイレ、手洗いができず、衛生状態が悪化するおそれがある等々といった欠点が考えられるところでございます。
次に、「4.諸外国の状況」でございますが、海外で仮に基準値が超過した場合にどのような対応がとられているかということを、同じワーキンググループで調べていただきました。こちらは後ろのほうの参考資料を見ながら御説明をしたいと思います。参考3をご覧いただけますでしょうか。4枚めくっていただきますと、参考3、パワーポイントになります。
まず、米国の状況でございますが、米国の飲用水の水質規制の仕組みといたしましては、第1種飲料水規則と第2種飲料水規則がございまして、第1種飲料水規則のほうが特に健康に関係する項目ということで、法的拘束力のあるものでございます。こちらに最大許容濃度としてMCL、残留消毒剤最大許容濃度(MRDL)が設定をされているところでございます。
こちらに違反する場合として、下をご覧いただきますと、三角形のピラミッドがご覧いただけます。Tier1、2、3ということで違反の度合いが分けられておりまして、Tier1は、短期暴露によって健康に深刻な悪影響が出る可能性がある場合がこちらに位置づけをされております。
めくっていただきまして、第1種飲料水質規則違反、あるいは状況のうち健康への深刻な悪影響の潜在性がある場合ということで、先ほどのTier1以外の全ての基準違反、それから、モニタリングと測定基準に関する深刻な違反について、Tier2が位置づけられております。その下にTier1、2以外でのモニタリング、あるいは測定基準に関する違反などがTier3と位置づけられております。
この1から3のそれぞれの段階ごとについて、広報の原則が示されております。例えば、Tier1であれば、違反を知ってから24時間以内に住民及び一時滞在者に対して情報を届ける。Tier2については、違反を知ってから30日以内、あるいは違反が続く場合には原則3カ月ごとに文書によって広報をする。Tier3については、違反等に気づいてから1年以内に原則文書によりまして、レポート等で受水者に対して連絡をできるようにするといった形になっております。
広報に含まれなければならない情報といたしまして、次のページ、上のほうに、ハンドブックの中で具体的にどういった情報を含むべきかが示されておりまして、さらに下に英語の事例が書かれておりますけれども、同じハンドブックの中で、通知例文も示されてございます。
次に、めくっていただきまして、英国の事例を御紹介いたします。英国の場合は、EU加盟国に適用されておりますEuropean Drinking Water Directiveに準拠いたしまして基準等が定められております。
基準超過時の対応といたしましては、ページ下の段に基準超過時の対応についてヒアリングした結果が示されております。英国におきましては、水道水質基準を超過しても給水を停止することはほとんどないということで、洪水、物理的な事故などの断水は起こり得ますけれども、給水は停止しないようになっております。
その理由といたしましては、例えば、給排水管内の圧力低下で管路内に汚染物質が混入するというリスクですとか、トイレ洗浄水が得られないことで衛生環境が悪化する健康リスク、ボトル水や給水車により代替水を供給するためのロジスティック上の問題があります。
ただ、ごく小規模の事業体で、すぐに技術的な対応をとることができない場合にあっては、給水の停止ということもあるだろうという話でございました。
右上を見ていただきますと、こちらにも先ほどのようにピラミッドをお示ししております。水道水質基準を超過した場合の対応として、こちらの3つのいずれかの勧告を出し、必要な場合には代替給水を行いながら給水を継続することになっております。
一番上はDND、”Do not use for Drinking, Cooking or Washing”とあり、飲用、調理、洗浄には使用不可。真ん中がDND、”Do not use for Drinking or Cooking”ということで、飲用、調理には使用不可。一番下がBWA、”Boil Water Advice: Boil before use for drinking and food preparation”ということで、飲用、調理には煮沸をする、ということになってございます。
勧告を出す際には、水道水をどの用途に使っていいのかを具体的に詳しく周知をするということでございまして、先ほどの3段階に分けて周知が行われているということでございます。
同じページの下段をご覧ください。例えば、今回、私どもでも検討している化学物質の場合などは2つ目のクロポツで、超過項目が化学物質の場合ということでございますけれども、給水を継続しながら、他水系の浄水とブレンドしたり、処理プロセスを改善したり、水源を切り替えたりして対応するとあります。短期的な暴露では健康影響を生じない濃度であれば、医療機関や行政機関の見解を利用者に情報提供しながら給水を継続するものです。
極端に濃度が高く、短期暴露で健康影響が出るレベルと判断されれば、飲料しないようDND勧告を出して、ボトル水や給水車による代替給水を行うという形になっております。
めくっていただきまして、4に、例えば、DNDの場合の通知例などが紹介されております。
次に、もとの資料3-2に戻っていただきまして、5ページ目、5.でございますけれども、「断水に関する国民ニーズの把握」ということで、昨年度までに実施をしておりました厚生労働科学研究の「飲料水の水質リスク管理に関する総合的研究」におきまして、断水に対する意識調査をいたしております。この結果として、断水時に困る用途ということで、トイレ、お風呂、シャワー、手洗い、飲み水、調理用水ということで、この順に断水すると困る用途が挙げられております。
この調査で、水質基準を満たさない場合の断水についての意識を質問しており、その結果、飲み水と調理用水は別途確保される場合、「生活用水に利用できる水質であれば断水しないでほしい」という意見が86%、大多数を占めており、生活用水としての給水継続の必要性が高いことが示唆されていると考えられます。
また、東京都水道局により、一般家庭による用途別の水使用量の調査が行われておりますけれども、こちらも先ほどの調査と類似の傾向を示しており、断水の場合に、やはり使用量の多い生活用水に困るということは考慮しなければならないのではないかと考えられます。
最後に「まとめ」になりますけれども、大規模な水質事故などにより水質異常が生じた場合に、摂取制限等の対応を行いつつ給水を継続することは、利用者の安全確保、利便性の確保のみならず、都市機能の維持、公衆衛生の維持の上からも必要な選択肢であると考えられます。
一方で、健康影響の観点から摂取制限を広報すべき最低濃度として、水道水の摂取制限に関する指標のような値をしっかり検討していく必要があると考えております。
なお、お配りしております資料の参考6に、米国EPAから示されておりますUS Drinking water health advisory programの値と、それから、我が国の水道水質基準の中で、アロケーションが10%から20%ということで設定をしておりますけれども、この割当率を変えて100%にした場合等の試算を、表6-2に試算値としてお示しをしておりますので、御紹介をさせていただきます。
以上です。
○眞柄座長
ありがとうございました。
それでは、ただいまの、検討過程ではありますが、御説明いただいた事柄について、御質問や御意見があれば、お出しください。お願いします。どうぞ。
○五十嵐委員
細かいことで申しわけないのですけれども、資料3-1の2ページ目、(2)の摂取制限等を伴う給水継続の条件の((2))給水が継続される浄水は、誤って飲用しても直接的な健康への悪影響が生じるものではないことと書いてありますけれども、あえてここに「直接的な」という言葉をつけ加えたというのは何か意味があるのでしょうか。同様の表現が(4)とか、至るところにあるのですけれども、逆に言えば間接的なということもありますし、必要なければ取るという表現もあると思います。「直接的な」と入れた理由は、何か意図があるのだったら教えてください。
○豊住室長補佐
「直接的な」という文言を外したとしても、この場合において意味は変わらない浄水を考えておりますので、文言の整理をするときに、書き方については再検討したいと思います。
○眞柄座長
ほかにありますか。
今の御質問に関係するのですが、WHO憲章で健康の定義がありますね。浅見さん、御存知ですよね。説明していただけますか。
○浅見委員
身体的な健康影響だけではなく、精神的な健康影響がないようなものを健康と定義するという趣旨のことをおっしゃるのではないかと思います。
○眞柄座長
だから、社会的にも健全であることというのが非常に重要だと思うのです。健康の状態というか、定義というのは、いつも同じではなくて、ある意味では社会的なレベルによって変わるわけです。
今の直接的な健康影響があるとか、ないとかというのは、今まで、我々、水道水を供給するという使命で考えていた健康というものの考え方を、この際、少しは変えようということなのかなという気がしたのだけれども、五十嵐さん、そういうつもりで聞かれたのですか。
○五十嵐委員
いえ、「誤って飲用しても」という言葉が最初にあったので、飲用した場合には健康影響が潜在的にもあるのか、あるいは直接的に急に毒性が出るのかという意味でそこの言葉を使ったのかなと思ったのです。
○眞柄座長
ありがとうございました。
ほかにございますか。伊藤先生、どうぞ。
○伊藤委員
今の誤って飲用ということに関連する話になります。資料3-2の後ろ2枚の参考6は現在研究中の内容であると承知しております。参考6の1ページ目の下のほうに、その試算方法が書いてあって、これを拝見すると、今の基準値レベルに対して、何とか許容濃度を上げようとしていること、そして、その許容範囲もほどほどの倍率になるようにしようという工夫の跡が伺えるものと拝見しました。
その結果、1ページめくっていただいた表6-2の最後列に試算値、そして基準値に対する比が括弧で書いてあります。子供のほうを見ることとすると、基準値に対して2倍から4倍ぐらいであれば大目に見ようという話になるかと思います。したがって、これはこれで良く工夫されたもので、批判するつもりはありません。
しかしながら、前のページの最後に、VSDに基づいている場合には、マイナス5乗ではなくてマイナス4乗リスクの相当値から試算してみることになっているのですね。こういう操作をしないと表6-2のような結果が得られないわけです。しかし、もしこれをしてもいいということであれば、その上にあるTDIから求める場合も、例えば、TDIの10倍まで許すこととし、一方、割当率は変えないというケースも設定できるのではないかと思いました。また御検討いただければありがたいと思います。
○眞柄座長
ほかにございましたら。どうぞ。
○国包委員
私、前回も申し上げたかもしれませんですが、こういった方向で検討して、実際の実務の中で反映させていこうということに関して、ぜひ積極的に進める方向でやっていただきたいなと思っております。というのも、この資料の中にも、今、御説明があったように、アメリカとかイギリスとか、それ以外にも幾つかの先進国でこういったことはどちらかといいますと当たり前に近い形で、きちんとした規定がありますし、そういった目で見ますと、日本の場合は、必ずしもその辺が明確ではないので、ある意味ではむしろ遅れをとっていると言っても差し支えないような状況ではないかなと思っております。
ただ、それは、単に、超過した場合でも給水を継続していくのにどうすればいいだろうかという、そういう目ではなくて、むしろ基準を超過したときに、その時々の状況に応じてですけれども、どういうような扱いをすべきかということを、もう一度基本的なところから整理して、その中で、場合によっては、こういう条件のもとであれば給水の継続、それも一定の条件のもとでということになりますけれども、それもあり得るというのが一つの選択肢になると思うのですね。
そういった意味では、今日の資料の中でも、摂取制限等を伴う給水継続というのが、ばん、と頭にあるのですけれども、それよりも、基準を超過したときに、例えば、水道事業体はどういうようにすればいいのだとか、あるいは、現状の日本の状況で言いますと、都道府県の水道担当は果たしてこういったことに関与するのかとか、そういったことはこの中には何も盛り込まれていないのですけれども、変化する状況に応じて、水道事業体だけでは済まないと思うのですが、いろいろな関わりのあるところ、国ももちろんその一つですけれども、そういったところが時々にそれぞれの事態に応じて、どういうように判断して動くのかということを明確にしていかなければいけない。その辺、もう少し基本的なところが整理されるといいなと思いました。感想です。
○眞柄座長
ありがとうございました。
ほかにいかがですか。どうぞ。
○田中水道水質管理官
まず第1点目、伊藤委員から御指摘をいただいた、参考資料6として示しております試算でございますけれども、これはあくまでも毒性の質の評価を行わずに試算を行ったものでございます。これを一つの試算としてここではお示しをしておりますが、先ほど五十嵐委員からも御指摘のありました、誤って飲用しても健康への悪影響が生じないというレベルを設定するに当たっては、やはり毒性の質を考えた上で、指標の検討をしていかなければならないと思っていまして、伊藤委員の御指摘のあったようなVSDの考え方、TDIの考え方のようなものも、短期の毒性以外に長期の毒性も踏まえて考えていかなければならないのかもしれませんが、そういった点も踏まえて、今後さらに、この試算値だけではなく、別の試算もやっていかなければならないと思っているところでございます。
それから、国包委員から御指摘のあった点、1つは、単に水質事故時の対応というよりも、水質基準を超過したときにどういうふうに考えるのかということでございますが、まさにそういったところは丁寧に水道事業者に指導していかなければならないところであろうと思っております。私どもとしては、資料3-1の4のところで、今後の留意点としてこれから検討を進めていく課題としてさまざまな点を挙げてございますが、こういった中で、今、先生の御指摘のあったようなところもなるべく含めて検討していかなければならないと思っております。こういった形で、国としてもある程度関与した形で、この取り組みに関しては動かしていかなければならないのかもしれません。どのくらいの程度で国が関与するかということに関しては、さらにこれから検討していきたいと思います。
○眞柄座長
ほかにございますか。
憲法25条の2項に、国は、公衆衛生の向上に努めなければならないという文章がありますね。水道法の水道の目的に、水を供給することによって、公衆衛生の向上に資すると書いてあります。それで、水質基準は水道法の第4条で規定していますね。水道法の第5条は施設基準で、4条に定める水質基準を満たすことができる施設をつくるというのが水道法の第5条です。水道というのは、水道法にも書いてありますように、総務省も言っているように、独立採算で、水道料金は総括原価でやると決まっています。ということは、要するに、水道のシステム全体がどのようなもので水道法の目的を達成することができる、それにかかる費用は水道利用者が負担をするという原則にあるわけですね。今回議論してきたような、水質基準を超えたときにどうしようかということは、これまで議論をされてこなかった事柄で、今回初めて議論されるようになったことだと私は理解をしています。
一方で、水道法を昭和32年に制定した当時の日本人の多くは、水道が整備されることを期待している向きと、水道が整備されることによって、水道というシステムを通じて供給される水が原因で集団水系感染症が起きるリスクが高まるから、そういうことがないような施設というので、施設基準が水質基準と連動してできているのだろうと私は理解をしています。
そういう背景の中にあって、環境省の環境基準の生活環境項目を決めた当時は、最初は水道の原水基準が今の生活環境項目のもとになっているわけですね。あの環境基準があれば、今の生活環境項目で言う水道1級、2級、3級の施設があれば、水道法の水質基準を満たす水が供給できますよという社会的なコンセンサスがあったと思うのです。
それで、今、この時点で水質異常時の対応というのは、原発の事故もあるし、それから、利根川水系の前駆物質もあったのですが、そういう水道システムとして対応ができない異常事態がこれからも発生するという予見があって議論をしようとしているのか、そういうことはもうこれからないけれども、時々、施設の整備や、古くなった施設の更新が必ずしも十分いかないところは、こういうトラブルが起きる可能性があるから、そのときの対応の方針を決めておこうというのか、どちらなのかということを明快にしておく必要が、私はあるのだろうかなとは思いますが、その辺の議論は今後検討していく中で明らかにしていただきたいと思いますが、現時点でどういうふうにお考えになっていらっしゃるのかなという気がします。
それから、浅見委員も国包委員もよく御存知のように、WHOのガイドラインはおよそ150から160項目ぐらいですね。WHOのガイドラインはどういうものかというと、あのガイドラインを参考にしつつ、それぞれの国の社会的、あるいは環境、諸条件を配慮して、実施施行可能なナショナルスタンダードをつくるためのガイドラインだと書いてあるわけですね。
そうすると、我々は、水道の水質基準というのは、施行されても、水道事業体は必ず遵守するのだという前提で水質基準の項目や基準値を決めてきた経緯があると思います。先ほどのクロロ酢酸や何かでも同じことだと思うのですが。
だから、今の水質基準は、前提として、この水質基準のレベルであれば、水道事業体は達成されるだろうと考えながらつくられてきたと思います。それが今の事故とか何とかのときにはどうこうしようということは、繰り返しになると思いますが、これからはそういう事故がまだまだ起きる可能性がある、だから、この際、非常時の対応を決めようと考えるのかどうかというところをやはり明快にしておかないと、水道事業体だけではなくて、国民もどういうふうに思うのだろうかなと、私は直感的には思います。十分解析していないですが。
それから、厚労省はビル管法で、建物の中の再生水を使っている場合は、この水は再生水を使っていますよという掲示をしなさいとしているのですね。でも、あの再生水というのは、どう考えたって、あの水質基準を見たときに、感染症が出るはずはないわけですよ。
それでもああいうふうな書き方をしている。そういう意味では、非常に保守的な立場に立っていて、下水処理場の再利用水の考え方に比べれば、厚労省のビル管法の枠組みの中の再生水利用のときの行政指導はかなり保守的だと。そういうものに比べて、今日議論していることはどうなのだろうかというのは一つ感じました。
それから、もうひとつは、資料の参考3にアメリカの飲料水水質規制の枠組みがあって、多分、日本の水道の水質基準、健康影響に関するものに関しては、やはり第1種飲料水規則とほぼ同じ水準で、保守的な考え方に基づいてつくられてきているだろうと思います。
当然、そこには法的規制力もあるわけで、それは施設基準の第5条とリンクするのですが、その辺のところをもう少し考えてみる必要があるのかなと思いました。私の感想ですから、今、答えていただかなくても結構ですが、その辺のところも今後検討していく必要があるかなと思いましたので、一言申し上げました。
ほかにいらっしゃいましたら、どうぞ、お出しください。
○浅見委員
ありがとうございます。この検討を研究班のほうで実施をさせていただいている中で、いろいろな海外の状況を拝見いたしますと、日本の場合だと、水質が悪くなるという場合には給水停止をするのが二者択一のような感じになっているのですけれども、海外の場合は、そうでない場合もある程度想定をして準備をしているというのと、広報とセットで考えているというのは、改めて感じております。24時間以内にとか、10日以内にとか、30日以内にというのを利用者の方に知らせるという、そういう手段を確保するとか、あと、衛生部局とか、ほかの部局との調整を十分行えるようにということを最初から想定しているということがありまして、日本の場合ですと、今までちょっとタブー視されてきてしまっていたというか、起こってしまったらしようがないのだけれども、そのときはもう止めるしかないという、考えがとまってしまっているところもあるかなと思いますので、今回、広報のやり方等ももう少し情報収集をして、そういう事態に備えていく必要があるのかなと思います。
といいますのは、水質事故の件数自体は全国であまり減っておりませんで、年間100件程度は水質事故が起こっておりますし、このアルデヒドと放射能の事故だけではなくて、いろいろなところで、特に小規模なところでは水質事故は散発をしていまして、小さな給水停止とか、そういうことは起こっているのですけれども、かたや都市生活のほうは、皆さんの生活自身のほうは、トイレですとか、いろいろなことが水道に依存して生活をするようになってきているので、急に止まってしまうと非常に混乱を来すというのが昔よりも厳しい状況になっているというのが、今回の検討の一つの要素ではないかと思っています。
先ほど環境基準のお話がありましたけれども、環境基準の生活項目の微生物に関する部分は全く守られておりませんで、遵守していない割合が80%ぐらい出てしまっています。
大腸菌の数でいきますと、水源にしてはいけないぐらいのところを、一生懸命処理をして使っているところもあるわけで、そういう実態からいきましても、水道のシステムは今まで以上にしっかりしなければいけないし、こういうことになってしまったときにはどうしたらいいかというのを備えておかなければいけないと思います。
また、応急給水自体は、地震のときにも非常に必要になることでして、今回のアルデヒドの事件のときも、あれだけ大きな放射能の事故があった後についても、応急給水の場所がなかなかわからないとか、住民の方々にとっては、なかなか情報が伝わらないということは、結局、繰り返されてしまっていますので、この際、皆さんでもう少しそういうことを考えられる機会になっていくといいのではないかと思っております。
以上です。
○眞柄座長
ありがとうございました。
ほかにございますか。
水道の衛生行政の果たす役割が、こういう形で進めようとすると、水道事業体だけではできないところがあるわけですね。ところが、今は保健所では水道のことをできなくなってしまっている。国民との接点を誰がするのだろうかというのが少し不安になるのですが、そこらあたりは、遠藤さん、どう思いますか。クリプトのことも含めて。
○遠藤委員
私は微生物担当ですので、いつでもその観点から見ているのですけれども、病原微生物の突発事故は化学物質に対する対応とは異なり難しいなという思いで聞いておりました。
病原微生物汚染では、間違って飲んでも健康への影響がないということはあり得ないわけですそこで対応としては健康弱者を意識した形でのコミュニケーションがとれているように、常日ごろからそういうシステムを構築して動かしておく必要があるものと認識いたします。
○眞柄座長
では、安藤先生。
○安藤委員
遠藤先生、あるいは浅見先生がおっしゃったこととちょっとダブるかもしれませんけれども、要するに、ビル管関係では、眞柄先生おっしゃったように、昔は衛生部局がちゃんと押さえていた。これが完全に崩れてしまった。今度は水道事業体に移って考えてみると、大きなところは厚労省が見ている。小さなところは都道府県が見ている。これがもっと小さくなる。これ、どうなるのかなというのは正直なところ不安ですね。中小規模の水道事業体というのはこれからどうなるのだろうか。ましてや自分たちでそういうものの検査はしていないという状況になるのですから。私は、米国EPAがまとめたヘルスアドバイザリー的な考え方を入れたらどうですかと、2、3回前にたしか申し上げたのですけれども、そのときご提案した議論に比べて、今議論していることは話がかなり進んできてしまっています。そうしますと、いわゆる中小はどういうふうにサポートできるのだろうか、広報まで含めてできるのだろうかということ等について相当考えておかないといけないと思います。大きなところは何とでもなります。だけれども、小さいところは完全に抜け落ちてしまう。勿論、そのようなリスクも少ないのでしょうけれども、抜け落ちる可能性が高いような気がいたします。
○眞柄座長
ありがとうございました。
どうぞ。
○遠藤委員
先ほどの私の話に追加させていただきたいのですけれども、健康弱者は薬を飲まなければならないことから、我々の飲料量と比べてかなり多量の水を飲まなければならないようです。そういう方々のリスクはそれだけで高くなるわけで、そういうことも考えなければいけない。水道関係者がこのようなことを知っている訳ではありません。そこで重要となるのは、例えばホームページなどでの一方的な情報提供ではなく、常日ごろから医療機関を含め関連機関と広く情報交換を行うことではないかと考えます。そのような基盤が構築されて初めて異常事態への対応が迅速かつ正確に行えるものと考えます。この点の重要性
を追加させてください。
○眞柄座長
では、西村先生。
○西村委員
先ほど浅見先生がおっしゃったように、広報との関係がすごく大切で、小さなところは逆に広報が行かないかもしれませんけれども、大きくなると、それも難しくなって、今まで水道というのは、安全であると同時に安心して清浄な水が来ているというものがあったのが、例えば、いつ、どういう状況でもとに復帰したかをきちんと広報してもらうというのは、国民的なニーズがあるような気がするので、その辺のところを十分考えてシミュレーションして、こういうところを立てていただくのがいいのかなと思います。
もう一点、ちょっと話は違うのですけれども、例えば、資料3-2の表1のところなのですけれども、給水継続で取水制限ありというときに、受水槽があるところで、水がたまっているか、空になるか、その辺、わかりませんし、容量にもよるのですけれども、例えば、水道事業体の方から安全だよと来たときに、大きな集合住宅で、いつ安全に飲めるのか、その辺のシミュレーションも十分していただいて、安心して清浄な水を飲めるのだよという今までの国民的な感情も損なわないような形でこういうシミュレーションをしていただければいいなというのは感じています。
以上です。
○眞柄座長
では、松井先生。
○松井委員
強いてはないのですけれども、これに関して、私のところの研究班で検討させていただいておりますので、今回の御説明はそれが大部分ここに盛り込まれた形なので、今、いろいろ議論いただいて気がついているところとしては、中小規模も含めたところのモニタリングの体制と頻度、これをどのようにしてこの中に入れていくのか。年に4回しかやっていないところで、水質事故という、突発的な事故をどのように対応したらいいのかというのは、一度こういう考え方を取り入れると、必ず、中小規模はどのように対応するのかということは常に問われてくると思うので、これはこれから検討していかなくてはいけないかなと思っています。
それから、長期的には、今までは基準を一回でも超えるか、ということで見ていたのですけれども、先ほど米国EPAの考え方が出ましたけれども、EPAは年平均といったもので基準の遵守を比較して見ているところですから、ここについてもやはり長期的には考え方をまとめていく必要があるのかなと思っています。
○眞柄座長
ありがとうございました。
では、伊藤先生、どうぞ。
○伊藤委員
今日の資料、あるいは今の議論を聞かせてもらった印象ですけれども、これまでの経緯や、現行の基準値の性格、あるいは管理体制とかいった、眞柄先生御指摘のいろいろな課題点はあることは事実と思います。ただ、昨今のRIやホルムアルデヒドといった予見できないイベントが今後も起こり得るということを前提として、この提案はなんとか前進させていくのが望ましいのではないかと思います。
一方、先ほど松井委員がおっしゃった、基準値超過した場合の解釈ですけれども、確かに慢性影響物質については平均が超過していなければいいということで、考え方としてはそのとおりなのです。ただ、日本の場合は、採用しているリスクレベルが10-5であるのに対して、アメリカあるいはヨーロッパでは10-6であるという差がある点には注意が必要です。10-6リスクレベルであれば、確かに平均値で十分でしょう。しかし、10-5の場合にどう考え、どうコントロールすべきかについては、今述べたリスクレベルの大小関係のことも考慮に入れて慎重に検討する方がいいだろうと思います。
○眞柄座長
ありがとうございました。
ほかにありますか。では、これについては、今日、全てのことを解決、結論を出すというわけではなくて、今後検討していかなければならない重要なテーマだと思います。そういう意味で、今後とも引き続き検討を行っていただきたいと思いますが、田中管理官、どうぞ。
○田中水道水質管理官
先生方、非常に多岐にわたる御意見、ありがとうございました。この場で全てお答えすることはできませんが、先生方の御意見をできるだけ取り入れて、今後の検討を進めていきたいと思います。今日、資料3-1としてお示ししているものが考え方の主な点を示しているものでございますけれども、1、2、3のあたりについて、この方向で少し検討を進めまして、4のところでお示しをしております留意点について、先生方の意見を踏まえて、さらに膨らませて、全体としてお示しをできるようなパッケージでお示しをするという形で進めていきたいと思っております。またいずれ、それの中身についてお示しをすることになるかと思います。また、この検討に当たっては、水道事業者や、いろいろな関係の団体と話をした上でお示しをすることを考えております。
以上でございます。どうもありがとうございました。
○眞柄座長
ありがとうございました。
それでは、もう一つ、資料4がございますので、これについて御説明をください。お願いします。
○豊住室長補佐
それでは、資料4につきまして、御説明差し上げたいと思います。こちらは、前回の逐次改正検討会の中で、水道危害項目(仮称)ということで御紹介をしたものでございますけれども、名称の見直し等の御意見もございましたので、ここでは「浄水施設での対応が困難な物質について」ということで書かせていただいております。
なお、囲みにありますとおり、こちらの資料につきましても、現在、厚生労働科学研究「水道における水質リスク評価および管理に関する総合研究」において検討中の事項でございますので、御了承ください。
こちらは、昨年の5月、利根川のホルムアルデヒドに係る水質事故を受けまして、昨年度末、水道水源における消毒副生成物前駆物質汚染対応方策についてということで検討会を設置して取りまとめをしております。ここに書かれております事故の原因物質でありましたヘキサメチレンテトラミンのように、浄水施設での対応が困難な物質について、水源に流入すると、給水に支障を生ずるおそれがあるような、浄水施設での対応が困難な物質を抽出して情報整理していこうということで、先の取りまとめを膨らませていく作業となっております。
「検討の対象とした物質」でございますが、ここに挙げられておりますのは、先の取りまとめの中で対象としたものと同じでございます。具体的には、((1))にございますPRTR法第1種指定化学物質のうち、その化学構造から塩素処理によってアルデヒド類を比較的高効率で生成する可能性があるもの。((2))の、PRTR第1種指定化学物質以外で、文献情報からアルデヒド類の生成が確認されているもの。そして、((3))の、浄水処理によりアルデヒド類以外の副生成物が、水道水質基準の超過又は性状の異常を生じる可能性のある物質。それか
ら、((4))の、そのほか水質汚濁防止法の有害物質や指定物質以外で、過去に水質事故の原因となったものを対象にしております。
2でございますけれども、「ホルムアルデヒドを生成しやすく浄水処理が困難な物質」につきましては、実験を行いまして、ホルムアルデヒドを生成しやすい物質のリストアップを表1及び表2に出しております。こちらは先ほど御紹介いたしました取りまとめの内容と同じでございますので、御説明は割愛いたします。
また、3ページ目、3といたしまして「ホルムアルデヒド以外の副生成物を生成しやすい物質」につきましても、文献情報ですとか、事故事例をもとに、浄水処理によってホルムアルデヒド以外の副生成物を生成しやすい物質の抽出といたしまして、こちらも先ほどの取りまとめの中で挙げているものと同じでございますので、説明を割愛いたします。
めくっていただきまして、4でございますが、「水質事故の原因となったことがあるその他の物質」でありますけれども、この表4の中で、一番下にございますスルファミン酸を、先ほど御紹介しました取りまとめの表から追加しております。
こちらは、下のほうに*3とございますけれども、スルファミン酸による結合塩素の異常生成につきまして、知見が追加で収集されましたので、追加をしたものでございます。
また、5でございますが、「水質事故の報告があるその他の物資」といたしまして、水質への影響についてはまだ詳細が不明ということで、表4には追加をしておりませんが、過去に利根川等での水質事故が記録されている物質として、スチレン、チタン酸バリウム、硫酸スズメッキ、硫酸バンド、硫酸ピッチ、硫酸第二銅、アミノエタノール、アミン含有液、ポリプロピレングリコール、これらを事故のあった物質として追加でここに挙げております。
なお、冒頭御説明申し上げましたとおり、現在、厚生労働科学研究の中で検討中でございますので、経過の御報告とさせていただければと思っております。
以上です。
○眞柄座長
ありがとうございました。
何か御質問や御意見ありましたら。
確かに化学物質で言えばこういうことだろうと思うのですが、最初のテーマであったクロロ酢酸とか、ここでもクロロホルムとかがありますけれども、要するに、藻類由来の有機物などというのは水道にとってみれば最も厄介なものです。小笠原あたりは熱帯の有機着色物質で、まるっきりアメリカの南部の湖や川と一緒ですし、北海道へ行けば、寒冷地の泥炭地水などもまさにそのものずばりですね。北海道ではないということになっていますけれども、シベリア、ロシアへ行けば、泥炭地水が原因でカシンベック病が風土病として存在しているわけですね。そういう水を飲んでいて骨に異常を来している人が世界にたくさんいるわけです。
先ほどの議論とも関係するのだけれども、水道水源として使わざるを得ないような水資源を、水道でこの際どう考えるかということをしていかないと、化学物質は化学物質でいいのだけれども、そこらあたりをどう考えるかというのは少し整理する必要があるのかなと感じました。今の御説明を伺いながら。
水質基準を超過するときに、いわゆる化学物質が原因でなる水質異常と、例えば、夏場で、水域での植物の生産性が非常に高くなって、その結果、消毒副生成物がどんと出てくる、これはさっきの議論から言うと、水質異常なのか、どっちなのかとか、要するに、水源の様相をもう一度整理をし直して、どこまでが水道事業の中で対応していかなければいけないか。水道水源2法の議論のときに、水道事業者が水域の管理者に保全をしてくださいと定義して、費用を負担するというような法律もつくられたのだけれども、実質的には有効には動いていない。しかし、あの辺のときの議論をもう一度振り返ってみて、要する
に、水源事故で起きることと、水源保全、水資源管理が不適切でなくて、水道が被害者的な立場に置かれて、水道利用者が不利益というか、不便を講じる事柄をどうするかということまで含めて少し議論をしないと、なかなか先へ進めないのではないかと思いました。
化学物質は化学物質で、今日のような対応で十分できるけれども、そうでないものをどうするかというのは、水道の水質基準にとってみれば非常に重要な問題だから、その辺のところも踏まえて考えていただきたいと思います。
ほかに。浅見先生、どうぞ。
○浅見委員
この表の作成のときに、先ほどおっしゃった消毒副生成物ですとか、もともと基準に入っているものそのものは入れられなかったというのがございます。もともとの基準ですとか、排水基準によって何らかの担保がされているものはまず除いてということで作成をしておりますので、そこは御了承いただきたいと思います。
アンモニアに関しましては、排水基準の中でも一部入っていると見えなくもないのですけれども、工業用に使われて、非常に大きな事故を起こしたことがあるとか、アンモニア自体の管理はそれほど十分に徹底されているとは言えない割に、水道事業者からいきますと、塩素の使用量が非常に変わりますので、突然変わることが非常に多いということで、事故事例が大変多く、これはぜひ、ということがありまして入れさせていただいております。
また、加えましたスルファミン酸に関しましては、多分、使用者の方は、タンクの洗浄ですとか、洗剤として使われて、化学物質を使っているというような意図ではなくて使われていて、それが流れてきて、急激に塩素消費量が変わるということで発見をされた物質と伺っておりますので、日ごろあまり気にされていないものでも、水道事業者にとっては困るというものはリストアップできるようにと思っております。
あと、眞柄先生から御指摘のありました自然由来のものですとか、地質由来のものですとか、そういったもので十分に、このリストの並びの関係で入れなかったものというのもあります。あと、前回の議論のときにも、微生物に関しまして、クリプトスポリジウムですとか、ジアルジアとか、そういった、水道にとっては非常に障害となってしまうものに関しましても検討が必要だと思うのですが、そういうものは微生物として別の方法で検討する必要があるということで、ここからは除いてありますので、今後、何らか有効な手だてを考えていけるようにと思っております。
○眞柄座長
ありがとうございました。
御承知の方も多いと思うのですけれども、アメリカ合衆国、それから、カナダの一部の州では、下水処理場の放流水を塩素処理して公共用水域に排出するのは禁じているのですね。それは、下水処理水を塩素処理してできる消毒副生成物が公共用水域の生態系の保全に有害であるという考え方から、そういう制度をとっているわけですね。だから、日本だってそういうことが起きないとも限らないので、そうなると、さっきのクリプトとか、大腸菌などというのはどうなるのか。彼らはオゾン処理を使っているのだけれども、臭素酸の問題があって、それもなかなかうまくいかない。ジレンマに陥っている。そういう意味では、日本も上流、下流の都市で実質的には繰り返し利用しているから、水道水源のことを、昔の日本はよかったのかもしれないけれども、これだけ、いろいろな意味で水をたくさん使って、いろいろなところで排出して、また下流で取水するというような社会構造、国家構造になってしまったので、水道もこれからいろいろなことを考えていかなければいけないのかなという印象を持っていますが、ほかにございますか。
特になければ、今日の予定は3時まででございますので、おおむね時間も来ていると思いますので、いずれにしても、議題の1と2はおおむねこの方向で、部会で議論を進めて、行政的な対応をとっていただきたいと思いますが、その他の事柄については、今後とも検討会、あるいはいろいろなところで厚労省として意見をまとめて、しかるべき方向になるように御検討いただきたいと思います。
それでは、あとは事務局にお返しします。
○豊住室長補佐
どうもありがとうございました。
それでは、事務的なことでございますけれども、本日の議事録につきましては、後日、事務局より送付をさせていただきますので、御確認をお願いいたしたいと思います。
また、本検討会は今年度から来年度までの2年間ということで設置をいたしておりますので、来年度も引き続き開催をしてまいる予定でございますので、よろしくお願いいたします。
それでは、最後に、事務局を代表いたしまして、水道水質管理官の田中より御挨拶を申し上げたいと思います。
○田中水道水質管理官
先生方、長時間の御議論、どうもありがとうございました。
本日の議題のうち、1と2に関しましては、先ほど眞柄座長からお話のありましたとおり、審議会にお諮りをして、しかるべき行政的措置をとるという方向で進めていきたいと思っております。
また、議題の3で御説明いたしました項目、まだ検討の途中でございますけれども、これに関しましても、審議会には検討の状況をお示ししたいと思っております。
3の課題に関しましては、まだ引き続き検討課題が多うございます。この検討会でも御議論をしていただく機会を設けたいと思っておりますし、また個別に先生方に御相談に行くこともあろうかと思いますので、どうぞ、その節にはよろしくお願いいたします。
本日はどうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

健康局水道課
TEL: 03-5253-1111(内線4033、4034)

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