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2013年11月28日 第4回日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会 議事録

健康局がん対策・健康増進課栄養指導室

○日時

平成25年11月28日(火)
10:00~12:00


○場所

厚生労働省専用第22会議室


○出席者

構成員<五十音順・敬称略>

宇野 薫 (株式会社タニタヘルスケア/ネットサービス推進部 管理栄養士)
江頭 文江 (地域栄養ケアPEACH厚木 代表)
大竹 美登利 (東京学芸大学 理事・副学長)
岡村 智教 (慶應義塾大学医学部 衛生学公衆衛生学 教授)
佐々木 敏 (東京大学大学院 医学系研究科 教授)
幣 憲一郎 (京都大学医学部附属病院 疾患栄養治療部 副疾患栄養治療部長)
生源寺 眞一 (名古屋大学大学院 生命農学研究科 教授)
鈴木 一十三 (株式会社ローソン マーケティングステーション 部長)
高田 和子 (独立行政法人 国立健康・栄養研究所 栄養教育研究部 栄養ケア・マネジメント研究室長)
高戸 良之 (シダックス株式会社 総合研究所 課長)
武見 ゆかり (女子栄養大学 食生態学研究室 教授)
田中 延子 (公益財団法人 学校給食研究改善協会 理事)
田村 隆 (つきぢ田村 代表取締役社長)
中村 丁次 (神奈川県立保健福祉大学 学長)
伏木 亨 (京都大学大学院 農学研究科 教授)
藤島 廣二 (東京農業大学 国際食料情報学部 教授)
藤谷 順子 (独立行政法人 国立国際医療研究センター病院 リハビリテーション科 医長)
八幡 則子 (パルシステム生活協同組合連合 事業広報部 商品企画課 主任)
渡邊 智子 (千葉県立保健医療大学 健康科学部 栄養学科 教授)

事務局

佐藤 敏信 (健康局長)
椎葉 茂樹 (がん対策・健康増進課長)
河野 美穂 (栄養指導室長)
芳賀 めぐみ (栄養指導室長補佐)

○議題

1.開会
2.議題
 (1)日本人の長寿を支える「健康な食事」について
    <調理、給食領域>
 (2)その他
3.閉会

○議事

○河野栄養指導室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより「第4回日本人の長寿を支える『健康な食事』のあり方に関する検討会」を開催いたします。

構成員の皆様方には、御多忙のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

なお、本日は、田中啓二構成員、原田構成員におかれましては、御都合により御欠席となっております。

それでは、資料の確認をさせていただきます。

検討会の議事次第、座席表、構成員名簿をおめくりいただきまして、資料1としまして、田村構成員提供資料の「日本料理について」。

資料2としまして、宇野構成員提供資料の「体脂肪計タニタの社員食堂」。

資料3といたしまして、高戸構成員提供資料の「給食事業(事業所)におけるヘルシーメニュー」。

資料4としまして、田中延子構成員提供資料の「学校給食と食に関する指導」。

資料5といたしましては、A3の1枚紙となりますが、「日本人の長寿を支える『健康な食事』の概念整理に向けた枠組み(案)」となっております。

なお、先生方のお手元には、それ以外に黄色の紙ファイルに第1回から3回の検討会の資料を配付しております。

また、局長並びに課長につきましては、国会業務の関係で後ほどおくれて参りますので、御了承願います。

これ以降の進行につきましては、中村座長にお願いいたします。

○中村座長 皆さん、おはようございます。

 それでは、本日は、日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方について、調理、給食領域からということですので、田村構成員、宇野構成員、高戸構成員、田中延子構成員に話題提供をいただきます。

お一人15分ずつ御発表いただき、それぞれの御発表の後に質疑の時間をとりますので、御自由に御質問ください。

今回と次回はこれまでと同様、構成員の先生方から話題提供をただきますが、年始の第6回から「健康な食事」の概念整理や基準について、先生方から話題提供をいただき、論点を踏まえて、具体的な議論を行う予定となっておりますので、よろしくお願いします。

まず最初に、料理について、田村構成員に御発表いただきます。

皆様方も御存じのように、おいしいことというのはとても重要でありまして、おいしいものをつくり、おいしいものを食べるということは、日常的な食事において重要な点かと思います。

本日は、日本料理のプロである田村構成員に調理という観点から話題提供をいただきたいと思います。

では、田村構成員、よろしくお願いいたします。

○田村構成員 おはようございます。

 御紹介いただきましたつきぢ田村の田村でございます。

私は、祖父の代から三代にわたりまして築地で料理屋を営んでおります。そろそろ70年を迎えようかというところでございますけれども、60年という還暦の年を越しまして、何となく今、もとへ戻っていっているような時代ではないかというふうに最近、特に感じております。

というのは、祖父がいつも口癖のように、日本は水と空気と安全はただだという言い方をよくしておりました。しかしながら、最近は、水はペットボトルで買い、安全はいろんな会社に頼み、そして空気は酸素バーとかに行きまして空気をすーすー吸いながらお金を払っていく。そんな時代になっていってしまっているのですが、やはり食べ物に関しましては、料理の内容についても、諸外国の素材が入ってきたり、調理方法も炭からガスになり、ガスから電気になり、電気から真空調理になりというふうに少しずつ変わってきていると思っております。

その中で、この会議でも話題になっております減塩について考えてみますと、今まで塩とたばこは専売公社でつくって、それ以外のものは売ってはならないというお国の規定がございました。

ところが、十数年前からミネラルの多い塩とか、いろんなうまみのある塩というものを売っていいぞということで規制が緩和されまして、料理内容もそれにつれて変わってまいりました。

なぜかといいますと、塩はなくてはならない人間の中の成分であり、料理としては調味料の核となるものであるというのが私の考え方でございます。ですから、塩がきいていないと、お酢を使っても鯖が締まらないとか、味がぴっとこないとか、いろんなことが生じます。

ここにも書いてありますけれども、酢を使ってものを締めるという日本語がございます。「酢締め」をするという言い方ですが、酢でものを締めるということは絶対にあり得ないです。塩で締めて酢をきかせるというのが正しい日本語でございます。

なので、非常に塩というものが大事。

先ほどの話に戻りますが、今までの精製塩、食塩と言われている塩を使って例えばアサリとかシジミの砂を吐かせようとしましても、彼ら、彼女らは、これは本物ではないな、これは薬だなという考え方を持ってしまって、砂を吐きません。今のように天然の塩を使いますと、もとへ戻ってくれる働きをしてくれます。

貝はそうなのですが、人間は貝のように正直ではございませんので、塩とか砂糖とか、にせものであってもしょっぱい、甘いということを感じる。それによって日本料理、その他の料理が成り立っていくというような非常に不可解な現象が起こるわけでございます。

ということは、塩がきちっとしていれば、あるいはおだしがちゃんととれていれば、塩分が少なくても、うまみが十分あればおいしい料理ができるというのは、ごく当たり前のことでございます。

一番大事なことは、愛情を込めたからお料理がおいしいとかとよく言葉で出ますが、愛情を込めても、愛情を込めなくても、まずいのはまずいし、うまいのはうまいのです。愛情を込めたのよという一言でその料理がどう変わっていくのか。全く変わらないわけです。

みそ汁があって、漬物があって、御飯があって、焼き魚があってとか、そういう一般的な日本料理ということでお話をしますと、例えば家族の人数分だけみそ汁をつくる。そのときに御家庭で、うちのおみそ汁はだしがどのくらいで、みそが何グラムで、大根が何グラムというふうにはかっておつくりになる方はほとんどいらっしゃらないと思います。大体こんな感じと。いいかげんにつくってしまうというのが、いいかげんなわけでございます。

例えば4人家族がいたとします。子供が2人いて、お父さんとお母さんという構成の中でみそ汁をつくったとします。お母さんは、みそ汁をつくるときに、おだしをひくか、ぱっぱっとだしの素を入れるか、それはともかくとしまして、そこに具材を入れて、そこにみそを溶きます。

みそを溶くときのタイミングというのは、具材に火が入ったところで火をとめて、さっとみそを溶く。それからおわんによそうというのが料理としての原則です。それを日本の言葉で言うと、「煮えばな」と言います。

みその香り。

そのみそも、今のようないい塩、自然塩ではなく、食塩でつくった家庭のみそは、非常にちくちくしたみその味がします。

煮えばなを子供が食べる。

子供が食べ終わりました。その後、お母さんがもう一回温めて食べる。

最後に、夜中にかえってきたお父さん、まだ御飯を食べていない。まだ食べていないのとか言われながら、またみそ汁を温めていただいて、御飯を夜中に食べる。そのときには既に煮えばなを過ぎて、みそ汁を過ぎて、みそ煮込みになっている、そういうみそ汁を食べさせられているという現状もなくはないと思います。

ですから、よく皆さんが口にする「料理は愛情」というのは、大根なら大根、豆腐なら豆腐を入れて、そこでとめておいて、その後に食べる分だけ温めてみそを溶く、その一手間が煮えばなを3回つくってくれるのではないかと思います。

愛情を込めて料理をするということはそういうタイミング、間をきちっととることではないかなということで、食育の講演会とか、幼稚園のPTAの方に呼ばれたりしたときにお話をしていることでございます。

 日本料理にはそれだけではなくて、調味料その他、今、便利なものが出てまいりましたけれども、日本でできた調味料、料理酒とかみりん風調味料とか、税法上非常に安くつくろうという調味料などを使いますと、確実においしくないものができます。なので、きちっと本物を使っていただく。ちょっとでもいいから本物を使っていただくということが料理には絶対欠かせないことだと思います。

私の祖父は昔、「五味調和」というものを提唱しておりましたが、5つの味を調和させるというのが日本料理であるというふうに言われます。

甘い、辛い、酸っぱい、苦い、最近の研究では、うまみというのが第5の味ということになっておりますけれども、祖父の時代は、うまみというのが余りはっきりしていなかったようでございまして、そのころは、甘い、辛い、酸っぱい、苦い、そして香辛料、唐辛子とかワサビとかの辛さ、そういうものを5つの中に入れておったのですけれども、今ではうまみというものを1つの味として、五味というふうに言うようになったようでございます。

 大根、ニンジン、ネギなどもそうですが、調理方法、切り方、刻み方によって味が変わってまいります。

例えば繊維が縦にある大根を輪切りにして切りますと、縦のかたい繊維がやわらかくなりますので、御年配の方がいらっしゃるお宅では、そういうふうにしてみそ汁をつくるとやわらかく食べられる。

縦に繊維を切りますと、しゃきしゃきっとした食感で食事ができるというぐあいに、つくり手が誰を基準に調理をするかということで、切り方一つとりましても大事なことではないかなと思います。

ここに写真が載っておりますけれども、毎月毎月料理を変えるようになっているのが日本料理でございまして、フランス料理やイタリア料理や中国料理のように大体メーンのメニューがあるということではなくて、魚や野菜が四季によって変わってくるのが日本料理の特徴ではないかと思っております。その四季を味わっていただく、そしてそのときの五感を味わっていただくというのが日本料理の最大の利点であると思います。

また、12月にはユネスコの無形文化遺産になる可能性があるということもありますが、今の日本料理を見ておりますと、日本料理からどんどん離れていっているような料理がもてはやされて、本物の日本料理は何なのか。切ったり、焼いたり、蒸したり、生で食べたり、日本の島国のよさというものがだんだんと失われつつあり、諸外国の食材がどんどんと入ってきて、そして日本の食材もだんだん少なくなってきている中、それを珍重しながら料理をしていくということが現状ではないかと思います。

また、最近、いろんな偽装ということで、今度「偽装と現実」などというエッセイを書いてみようかなとも思っておりますけれども、だますということではなく、ちゃんと今までどおりに、ふだんどおりに、昔どおりに食べていって日本料理が確立していくことが、これから私たちにとっては非常に重要なことではないか。特にそうやって無形文化遺産などになったら余計注目を浴びると思います。そのときに本当にふんどしのひもをしっかり締めて、きちっと立ち向かっていくということも私たちにとっては大事なことではないかと思います。

ここには女性の方もいらっしゃるので余り変なことは言えませんけれども、あるとき、『 SEX に強くなる100の食材』という本がございました。本の題名というのはとても大事で、「健康な100の食材」と書いてもほとんど売れないと思いますが、そういう言い方をすると、ぽっと手にとってつい買ってしまいます。

つい買ってしまいまして中を見ますと、実はほとんど普通に食べている食材、例えばタラコですとか、鶏肉ですとか、レバーですとか、ニンジン、キャベツ、ゴボウも含めて、いろんな野菜、繊維質、たんぱく質、カルシウム、全てのものが100ずらずらっと並んでその本が成り立っておりました。

だから、何だと思ったのですが、健康であるということは、普通の食事を普通にちゃんと食べるということが大事なのだと。バターのとり過ぎとか、そういうものをなるべく控えるということももちろんそうなのですが、例えばバターソテーをつくるときに、最初からバターを入れるということではなくて、サラダ油で焼いて、そして香りづけにちょっとつける。調理をするときに調味料を入れるタイミングというのも大事なことかと思います。ですから、ゴマ油ですとか、バターですとか、しょうゆですとか、そういう香りのものというのは非常に大事なことだと思います。

料理の中で何が一番大事かといったら、つくるタイミング。煮物をするときは煮て冷ませを繰り返すというのを私はいつも言っております。

焼くときは、しっかり皮から焼いて、裏にする。

そういう調理の方法、当たり前のようなものを今、学生たちや、呼ばれたときには、きちっと家で自分で切って焼いて食べてくださいというような話をしております。

最近の現状を報告させていただきました。

○中村座長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの田村構成員の御発表内容について、質疑に移ります。御質問、御意見がありましたら御自由に。どうぞ。

○伏木構成員 田村さんは著名な和食の料理人ですので、ぜひお聞きしたいと思うのですが、日本料理は物すごくたくさんの食材を使います。先生はたくさんの食材を使って、かつ割とシンプルなだしの味つけをしておられるのですね。これは多分素材を生かすということを意識されておられると思いますが、素材を生かすというのと海外の料理の違い、あるいはそれが子供たちなり、それを食べる人にどういう感じを起こさせるか。例えば感謝の心だとかあるかもしれません。

○田村構成員 日本の食事をするのには「いただきます」という言葉が必ず入ってきます。「ごちそうさまでした」という言葉があります。「ごちそうさま」というのは、走って探すということになりますけれども、日本の島国のよさというものをきちっと子供たちに伝えるということは、別に外国の食材あるいは外国の料理がだめということではなくて、日本の一般的な家庭の料理を知らずに、いきなり外国の料理を当たり前のようにして、例えばハンバーガーですとか、パスタですとか、カレーですとか、それはそれでいいのですが、それだけではなくて、ちゃんとおみそ汁を飲み、御飯を食べ、漬物を食べというふうに一汁三菜という基本をまず親が教える。そんなチャンスをつくることが大事ではないかと思います。

○中村座長 ありがとうございました。

 ほかに。どうぞ。

○藤島構成員 貴重なお話、ありがとうございました。

 1つ教えていただきたいのは、食事の写真、非常に美しいのに驚いているのですが、日本人の場合、先ほどのおいしさとの絡みで、見た目のおいしさ、あるいは舌で味わうおいしさというか、そのあたりの関係、あるいは割合と言ったら変なのですが、そういったところはどうなのだろうかということ。

あと一つ、前回のお話の中で「孤食」ということがでてきたのですけれども、おいしさを味わう上では話をするというのも1つの要因かなと思っているのですが、話をするというのはおいしさにどういうふうにかかわってくるのだろうか。その辺のところを教えていただきたいと思います。

○田村構成員 和食の「和」というのは、稲を口にするというふうに書きます。のぎへんに口というのは「和」という字になります。ですから、人と一緒に食事をする、稲を口にする、それが和む、それが和食につながっているというようなこともありますけれども、まず最初のお話の見た目で楽しんでいただくと。お弁当箱のような前菜は、11月の菊の時期にお出しをするお料理でございまして、菊畑をイメージしております。といっても、菊畑って何みたいな、最初から一つ一つ全部説明をしなければそれが伝わってこなくなってきているような時代にもなっておりますので、菊のイメージをこの中に入れて秋を感じていただくということなのです。

 日本料理は、1人欠席だからお弁当箱に入れてくれると言うと、結構入ってしまうのです。これをよく見ると本当にちょっとしか入っていないのですが、そういうふうに少しずつ、少しずつ60種類ぐらいの食材を使います。

1つのコースの中で同じものを出してはいけないというのが決まりになっています。例えばマツタケとかタケノコとか、その季節にしかないものは3回は出していい。でも、それ以外のものは1回しか出してはいけないという懐石料理の決まりがございます。ですから、2回はだめなのですが、3回はいい。同じものが何度も何度も出てくるようなものはだめですよというのが懐石料理の決まり、ルールになっております。

なので、そういうふうに食材がどんどんふえるわけですけれども、今はその辺で歩きながら食べるとか、コンビニの前で座って食べるという若者がふえておりますが、そういうことをなるべくみんなが減らせるような時代になってもらいたいなと願っております。

○中村座長 ありがとうございました。

 ほかに。藤谷先生。

○藤谷構成員 大変勉強になるお話、ありがとうございます。

 素材をたくさん使うということは、結果的にさまざまなものを食べることになって、それが健康にもつながるし、または切り方も様々なので、噛んで、顎を使うことが健康につながると思いました。

お伺いしたいのは、外来の素材で栄養的にどうしても使わなければいけないものというのはあるのでしょうか。具体的には、たとえば牛乳です。奈良時代からチーズはあったことになっているのかもしれませんけれども、牛乳は外来食材と思います。そのような、日本料理だけではさすがに厳しいかなというような食材というのはあるのでしょうか。

○田村構成員 ここにも書きましたけれども、フォアグラを使った料理も大分前にやったことがあります。日本の食材だけを使うというのは非常に困難だと思います。

 今、日本でつくられている食材は大体4050%弱と言われておりますので、輸入したものに頼っていかなければ日本人の口の中には絶対入らないと思います。

 なので、日本料理をつくったからといって、どこの肉を使ってはいけないとか、牛乳はだめだよとか、チーズはだめよとか、そういうことではなくて、そういうことをうまく使いながら、日本料理の中にそういうアイデア、日本料理らしくしていくというのが僕ら料理人としての役目だと思っています。

 ですから、僕らは調理人ではなくて料理人と思ってやっておりますので、栄養士さんと僕らが一緒になるとスーパー料理になるのではないかといつも思っております。

○藤谷構成員 ありがとうございます。

○中村座長 ありがとうございました。

 ほかに。どうぞ。

○幣構成員 大変ためになるお話、ありがとうございます。

 1点だけ手短にお伺いしたいのですが、日本人の食事というのは日本料理というふうに考えるべきなのか、よくわからないのですが、私たちが病院でお出しする食事というのは、田村先生がおっしゃった季節感というのがすごく大事だと思っていまして、また、季節に応じて栄養成分も変わると思うのです。夏場にとらないといけないビタミンCなどは、夏の野菜を食べることによってビタミンCがたくさん入る。

こういう点で日本料理、和食というものを考えたら、季節感があるというのはすごく大事だと思うのですが、田村先生としては、季節の食材をどのように普通に使っていかれる、または季節感のない洋風なものと比べると、特徴というのはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。

○田村構成員 それは何を考えるということでなくて、毎朝、魚河岸に行っておりますので、そのときに朝から季節感を感じているので、ことしはちょっと魚がずれているなと。江戸時代は秋にサンマを食べるというのがある。なぜかというと、銚子のほうにサンマが泳いでくるわけです。ところが、海水が暖かいのでこちらへ来ない。だから、とりに行っていた。ことしはもっと暖かくなってきたので、もっと遠くに行ってしまった。なので、もっと遠くへ行ってしまうと、船の燃料費のほうが高くなって、サンマがとれないということがあります。今までは7月中旬ぐらいからあったのが、ことしは10月ぐらいにやっとサンマが来るという状態になっています。

なので、そういう季節感というのも昔と今とでは大分変わってきていると思いますが、無理に季節を走り、旬、名残という、今までの文章の中にあるような、あるいは本の中で出てくるような、これを何々しなければいけない、この月にはこれを使わなければいけないということではなくて、自然の中の季節感というものを大事にしてやっているつもりでおります。

○中村座長 ありがとうございました。

 ほかにございますか。武見構成員、どうぞ。

○武見構成員 お話、ありがとうございました。

日本食のよさというか、それを実現していくには、まとめて言うと、手間を惜しまないことと、一定のお金、経済的な余裕がないと、なかなかこういうことができないような側面もあるように感じたのです。

そうなると、例えば今の外食の場面などを考えると、1食を非常に安く済ませたいとか、あるいはお弁当でも1食300円にもならないような食事を求めているところで日本食のよさを実現できるものなのか。実現するとしたらどの要素がどう取り入れられるのか。その辺のことについて、お話を伺いたいと思います。

○田村構成員 私どもの店は、敷居が高いのではなくて、値段が高いとよく言われるのですけれども、実現するとか、しないとかというのは、皆さんの御家庭で今までそれが実現できていたわけです。実現できていたのに、実現できないような現実をつくってしまった企業や社会というものがあると思います。

それは、家庭でちゃぶ台を囲んで御飯を食べようとかそういうことがなく、それぞれの子供がそれぞれ食べる、それからファストフードのように手軽に食べられる、そういうものができてしまった。

手紙を書いて郵便ポストに入れて、彼女にちゃんと届くかしら、あるいは公衆電話に100円玉を入れて彼女の声を聞こうかなと。そんなことがあった時代なのに、今はぴぴっとやったら全員にわっと行ってしまう。そういう時代なので、どういうふうにしたらお金がないのにこれを実現できますかという質問は、私にとっては本当に不可解なことだと思います。

人間というのは、楽をしてしまうとそれが当たり前になってしまいます。ですから、だしをとるということが当たり前だった、ぬか床で漬けるというのが当たり前だった、御飯を炊くというのが当たり前だったことが、できたものが何でも買えてしまう。それがすぐそこにある。だから、コンビニエンスなのです。

コンビニエンスの人もいますけれども、そういう方々の努力も大事なことだと思います。

しかし、そういうことに甘んじてしまう以上、日本料理を昔のように安く食べようよという考え方は、これから非常に難しいと思います。

とはいうものの、やっている人がいます。

この間も「親子料理コンテスト」というのがあったのですけれども、子供と親が一つになって、親は背中を見せながら、子供は親の背中を見ながら一生懸命お料理をしている姿を見たときに、ああ、まだ日本は捨てたものではないなという感じがいたしました。

そういう人たちがまだ残っているのだよということをそこで感じたので、この間もちょっとエッセイに書いたのですが、どこかの時代に何かがずれてきた。だから、それを振り子のようにもう一回戻していこうというのは本当に不可能なことだと思うのです。

なので、どの辺まで戻せるかわかりませんけれども、ここにいらっしゃる方々、あるいは日本料理店を営んでいる若者たちがいろいろ講習会に行ったり、NHKの「きょうの料理」とかの場面を通じて、日本料理というのはこんなに簡単に、こんなにおいしく、こんなにすてきにできるのだという雰囲気をもう一回戻していってあげなければいけないのではないかな、そういう気がいたします。

○武見構成員 ありがとうございました。

○中村座長 ありがとうございます。

 まだ御質問があると思うのですが、核心的な話に議論が進んできておりますので、あとは総合討論の中でもう一度議論したいと思います。

時間の関係がありますので、次に参りたいと思います。

続きまして、給食関係の御発表に移ります。

今後、本検討会では健康な食事の基準を定め、健康な食事を広く浸透させるために認証制度の議論をしなければいけないかなと思っております。

そういうこともありますので、話題提供ということで、「体脂肪計タニタの社員食堂」というテーマで、宇野構成員に御発表をお願いしたいと思います。

○宇野構成員 それでは、発表させていただきます。

 事業所給食の一例としまして「体脂肪計タニタの社員食堂」について発表させていただきます。

 株式会社タニタの管理栄養士の宇野薫です。よろしくお願いします。

 株式会社タニタは、1944年設立の、東京都板橋区にあります社員数1,200名の企業となります。

 ページをおめくりいただきます。

「健康をはかる」を事業ドメインとしまして、体組成計、体脂肪計、歩数計、活動量計、血圧計、睡眠計、クッキングスケール、塩分計、電子尿糖計、温湿度計など、さまざまな健康計測機器の製造販売を主な事業として展開をしております。

 タニタが考える健康サイクルですが、食事、運動、休養の健康の3本柱のバランスを保つことで適正体重を維持するということです。

1990 年に、体重と体脂肪についての情報を集め、肥満解消と健康を科学する研究機関、体重科学研究所を設立しまして、会員制の肥満予防改善施設、ベストウェイトセンターを立ち上げ、食事、運動、休養の観点から科学的に適正体重の実現をサポートしてまいりました。

その知見をもとに、はかって、その後どうしたらいいのというお客様のニーズにお応えする形で、生活習慣の中に無理なく取り入れていただけるような食のソリューションとしましてタニタ食堂を、運動のソリューションとしまして手軽なサーキットトレーニング「FITS ME」の運営を、睡眠をはかるソリューションとしまして睡眠計「スリープスキャン」を、適正体重を維持し続けるために体組成データをウエブで管理できる会員制の健康支援サービス「からだカルテ」の運営を行っております。このように、計測機器だけではなく、さまざまな健康管理ソリューションを提供させていただいております。

 3ページをごらんください。

 私どもタニタでは健康プロジェクトというのを社員向けに実施しております。

その導入の背景ですが、2008年4月から特定健診・特定保健指導がスタートすることになり、「健康をはかる」を企業経営の柱とし、事業展開するタニタとして、社員の健康管理は重要なファクターで、社員の健康リテラシーの向上と、実際の健康増進を目的にスタートいたしました。

 プロジェクトの概要を御説明いたします。

このプロジェクトは、2009年1月からスタートし、通信機能を備えた歩数計と体組成計とインターネットを使い、ワンストップ、かつ継続して社員の健康管理を行う取り組みです。

 モチベーション継続のため、歩数を競うイベントを開催したり、保健指導対象者に対して個別指導を実施、社員食堂を活用した食育、食育セミナーの実施を行っています。

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 ほかにも、始業前のラジオ体操や、健診時に筋肉量や骨量などの体組成のチェック、尿糖のチェックなどを行い、社員が自分の健康状態を把握し、継続的に健康管理できる支援体制を構築しております。

 はかることは動機づけの効果があり、社員は、「はかる、わかる、気づく、変わる」のサイクルを回しながら自己管理ができるようになっています。

 私どもタニタは、「我々は、『はかる』を通して世界の人々の健康づくりに貢献します」という企業理念に基づき、肥満の予防改善のNo.1トータルサポート企業を目指しますということで、常に独創的なアイデアで技術、システムを構築し続け、すぐれた商品とサービスを提供するという基本方針に基づいて、世界から肥満と飢餓をなくし、適正体重の維持を目標に事業を展開しております。

そのコンセプトを守り、タニタの社員食堂を展開しております。もともとはベストウェイトセンターの一施設として会員向けに食事を提供していた施設でしたが、ベストウェイトセンターが発展的に解消されたのを機に、1999年より社員食堂としてオープンいたしました。社員の健康づくりの一環で運営を行ってまいりました。

オープン当初は、まずい、味がしない、午後になるとおなかがすくなど社員から厳しい意見が上がりましたが、栄養士のほうでメニューを改良し、今のレシピができ上がりました。実際に食べることで体感型の食育として効果があります。

 5ページの下に社員食堂のコンセプトをおまとめしてあります。

 主菜が1品、副菜は2品、御飯と汁の定食スタイル、一汁三菜のスタイルになっています。

 エネルギーは1定食500キロカロリー前後。

御飯は普通盛りで、100グラムを推奨。

 野菜はたっぷり150250グラム使用。

塩分は3グラム前後。

 余分な油や脂肪はカット。

野菜は大きくカットし、かみ応えをアップする。

「はかって」つくる、盛りつける、食べるということで、クッキングスケールや計量スプーンを使ってつくるということや、御飯を食べるときにはかっていただくなど、旬の食材を多く使って健康情報の提供を行うという特徴がございます。

主食は、胚芽米や雑穀米を取り入れたり、食べる順番で、汁、副菜、主菜、主食の順に食べて血糖値の急上昇を防ぐような工夫もセミナーなどではお伝えしています。

 食べる時間は20分以上かけて食べていただくということで、食堂のテーブルの上にはタイマーが設置されています。

 次のページをごらんください。

 「調理の工夫(カロリーを抑えるコツ)」としまして、見える油(脂)、見えない油(脂)のコントロールで、サラダ油、オリーブオイル、ドレッシング、マヨネーズ、肉の皮、肉の脂、ひき肉の脂など食材にもともと含まれる脂を意識してコントロールしています。

 また、たんぱく質の過剰摂取を避けるよう、主菜の肉、魚、大豆製品は100グラム程度に、和え物やいため物に加えるたんぱく源は少量としています。

 種実類は適量を使用するようにしています。

主菜が揚げ物の場合、組み合わせの副菜には油を用いないようにし、定食全体のカロリーをコントロールする工夫を行っています。

揚げ物の頻度は少なく、煮物、蒸し物、焼き物を中心とした調理方法となっています。

「調理の工夫(満腹感を抑えるコツ)」ですが、大き目に切ってかみ応えを重視するということが一番の特徴になっています。

ゆでる、いためる場合に加熱し過ぎないようにすること、かみ応えを残すような工夫がなされています。

種実類などを用い香りを出し、食べたときの満足感を上げるような工夫がなされています。

7ページをごらんください。

「調理の工夫(塩分を抑えるコツ)」ですけれども、ワインビネガー、バルサミコ酢、レモン汁、酢やかんきつ類で酸味を活用したり、唐辛子、タバスコ、カレー粉などの辛みを活用したり、だしは昆布と鰹でとって汁物や煮物に使ったり、砂糖や蜂蜜も適宜副菜に用いたり、シソ、ミョウガ、ショウガ、ネギ、ハーブなどの香味野菜を用いたり、コクを出したり、小さい副菜のかわりに果物にするなどして塩分を抑える工夫を行っています。

ドレッシングや調味料を卓上に置かないというのも特徴の一つとなっています。

タニタ社員食堂の利用者の声では、ダイエットに成功した、塩分の強い料理を避けるようになった、野菜をしっかり食べるようになった、便利が改善した、血圧が改善した、風を引きにくくなったなど、健康の維持、増進を利用者が実感、体感することができています。

同じ500キロカロリーでも、メロンパン1つ、ファストフードなどのセットなどと異なり、低カロリー、かつバランスのとれた定食スタイルを実現しています。実際の社員食堂では、麺、カレーなど単品メニューはありません。社員は、健康維持にはこの定食スタイルがベストバランスということをわかっています。

 社員のヘルスリテラシーの向上は長年の成果と考えられます。

 社員は、摂取カロリーと消費カロリーがイコールであれば体重を維持できるということを体感できております。

 ダイエットが必要な場合も、リバウンド防止のため減量は月1~2キロを目安にと伝えております。

 次のページをごらんください。

 9ページの右上が社内の風景ですけれども、社内の至るところに体組成計が置かれており、全員が歩数計を携帯し、歩数や消費カロリー、体組成の変化、消費カロリーと摂取カロリーのバランスなどをウエブ上のグラフで確認し、自主的な健康づくりが習慣化できています。

健康管理は正しく、楽しく、簡単にできないと続けられないということがわかっておりますので、社内対抗の歩数イベントを実施する一方で、健康企業のリーディングカンパニーとして、社長からのトップメッセージで、健康づくりに取り組むよう「健康管理も仕事のひとつです」と宣言されています。その様子が10ページの下のポスターになっています。

11ページをごらんください。

 このように社員向けに展開していたタニタ健康プロジェクトは、医療費削減にも効果がありとしまして、メタボ解消事例として24年の厚生労働白書でも取り上げられ、25年「健康寿命をのばそうアワード」で厚生労働大臣最優秀賞を受賞いたしました。

 その一方で、社員食堂のヘルシーメニューをまとめたレシピ本が2010年1月に出版され、続く3部シリーズで累計532万部の大ベストセラーとなりました。

その後メディアでも多く取り上げられ、芸能人のダイエット企画や映画への展開、全国からのセミナーの御依頼が年間700本、受講者数延べ8,000人という現状になっております。

次のページをごらんください。

関連のコラボ商品も、東洋ライスの「金芽米」、森永乳業のプリンやアイス、お煎餅、みそ汁、お茶など次々と発売されています。

タニタ食堂やレシピは、ウエブやアプリ、電子書籍などでの情報提供も行っております。

メディア等での発信が続き、お客様からの社員以外でも食べられる場所を提供してほしいというお声にお応えする形で、社員食堂のレシピを忠実に再現し、タニタ式の食スタイルの体験を通じて日常の食生活を見直していただける施設としまして、丸の内タニタ食堂を2012年1月にオープンさせていただきました。

13 ページをごらんください。

「丸の内を健康にして、日本経済を元気にしよう」をキーメッセージとしまして、情報発信の拠点として運営をしております。

コンセプトは、社員食堂のコンセプトをそのまま再現するという形で、食券機で食券を御購入いただき、クッキングスケールを設置したカウンターで御飯もお客様御自身でよそっていただくセルフサービスのスタイルをとっております。現在も多くのお客様が御来店されています。

 健康、食事、情報発信の基地としまして、イベントやセミナーなども行っております。

14 ページをごらんください。

現在の営業時間は11時から15時ですが、土・日や夜はイベント、セミナーの開催が中心となっております。

こちらでもスポーツ用品メーカー様や食品メーカー様、美容業界様とのコラボセミナーや、従業員向けの食育セミナー等を開催させていただいております。

食堂の横には最新式のプロフェッショナル仕様の体組成計が置いてあり、カウンセリングルームに管理栄養士が常駐しており、カウンセリングを実施しております。

空間演出では、アロマやBGMを工夫し、癒しの空間を提供しています。

タニタのヘルシーメニューを通じて食を通じた健康づくりを再認識していただき、毎日はかることを意識することから健康づくりが簡単にできることをお伝えしております。

食事・運動・休養のベストバランスの御提案を通じてお客様の健康づくりをサポートさせていただいております。

タニタは、「健康をはかる」から「健康をつくる」へ、適正体重を維持することでの健康増進を応援いたします。

タニタ社員食堂を一つの参考事例としてお役立ていただけましたら幸いです。

以上で発表を終わります。

御清聴ありがとうございます。

○中村座長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの宇野構成員の御発表内容について、御質問がありましたらお願いいたします。岡村委員、どうぞ。

○岡村構成員 社員全員の方の健康管理をこの食堂を通じてやるという話なのですけれども、実際のサイエンティフィックな評価みたいなのはどういうふうにされているかというのをお聞きしたい。

前に社員全員の健康状態をよくするような介入研究をやったことがあるのですが、運動と喫煙はうまくいくのですが、栄養が物すごく難しくて、特に塩分については、社員食堂だけ改善しても、反動で家に帰ってからもとに戻ってしまうので、一向に減らないみたいなことをちょっと経験したことがあるのです。その辺のモニタリングというか、評価のほうはどういうふうにされているか、ちょっと教えていただきたいのです。

 体重は多分減ると思うのです。体重を減らすほうが簡単にできて、塩分のところが最後までうまくいかなかったことがあるのですけれども、この事業の評価、社員さんの健康度の評価をされていたら教えていただきたいのです。

○宇野構成員 産業医のドクターが体重科学研究所の所長でもありまして、血液検査のデータ等は複数年分をモニタリングさせていただいています。

 食事の内容のアンケート調査等も行っていますが、まだきちんとまとめ切れていないというのが現状のところです。

○岡村構成員 また教えてください。

○宇野構成員 ありがとうございます。

○中村座長 ありがとうございました。

ほかに。どうぞ。

○藤島構成員 今の御質問とちょっと関連するのですけれども、食堂を1990年に始められたということで、効果が出始めるのがいつごろなのかということと、その期間が必要であったのはなぜなのかということを教えていただければと思います。

あと一つ、先ほど食事には20分以上かけるというお話だったのですが、私もどちらかというと短いほうだから特にそうなのですが、その根拠、なぜ20分というところが出てきたのか、そこを教えていただければと思います。

○中村座長 どうぞ。

○宇野構成員 効果が上がるのに何年かかるかというのは、そのときからいるわけではないのでわからないのですけれども、きっと教育に時間がかかる。社員も入れかわりがありますし、本来であれば新入社員にきちんと教育して、そのままリテラシーの高い状態でというのがいいと思うのですが、中途社員等もおりまして、まず適正な食事というものがわかるのに時間がかかるし、それを自分のスタイルに取り入れていただくというのも時間がかかると思うので、教育にきっと時間がかかったのだろうなと。どのくらいから成果が出始めたのかは社に戻ってみないとわからないので、調べてみたいと思います。

20分の効果については、エビデンスを調べたことはないのですけれども、早食いの方が多い。特に昼御飯は、お忙しい方が多くて、ちゃちゃっとお席で食べて戻られる方も多いし、朝御飯もきっと時間をかけて召し上がらない方が多いと思うので、満腹中枢を刺激するという観点からも、20分ぐらい、長い時間をかけてゆっくり食べてくださいということをお伝えしています。

○中村座長 どうぞ。

○岡村構成員 よく満腹感を感じるまでに時間がかかると言いますね。それは直接20分だからということではないわけですね。

○宇野構成員 20分かどうかはちょっと。済みません。

○岡村構成員 そうですか。

ありがとうございました。

○中村座長 どうぞ。

○伏木構成員 社員の人は体格とか代謝の個人差が大きいと思うのですけれども、それはこの食事の中でどういうふうに調整されていますか。

○宇野構成員 社員も体組成をはかっているので、筋肉量とか基礎代謝が個々人で数字としてわかっていて、あとは活動量計を持つことで消費エネルギー量も1日どのくらいというのもわかっていて、個々人で調整をしていただいているというのが現状です。

主食量を100グラムでというふうにお話ししたのですが、150グラムだと何キロカロリーというふうに説明をして、主食で調整をしていただいている。あとは、ほかの朝や夜、飲み会の席で調整をしていただいているというのが現状です。

○伏木構成員 このくらいの量と奨励はされているけれども、でも、私は体が大きいからとか、すごくスポーツをしているからというので調整できるわけですね。

○宇野構成員 そうですね。個々人で調整をして。

○伏木構成員 同時に運動を取り入れていて非常にすばらしいと思うのですが、しかし、運動を取り入れていくと、今度はたくさん食べてもいい体になるでしょう。その辺の調整も。

○宇野構成員 もちろんです。社内でもランニング部とか、トレーニングを自主的にするルームもありますので、運動を行って、その後飲みに行ってしまうこともあるのですけれども、そこで調整をしている。

体組成をはかり続けることで自分の体重増加を抑えるということをしています。

○中村座長 どうぞ。

○八幡構成員 貴重なお話ありがとうございました。

 非常に共感できたところが「健康管理も仕事のひとつ」というところなのですけれども、社会人たるもの、自分の健康をきちんと維持していくということが社会的な責務であるということは、気づくようでいて、なかなか気づかないことかなと思ったのですが、社員の方々が健康管理は仕事の一環であるというふうにモチベーションを維持していくところの秘訣が、お話しいただいた歩数イベントとか社長様からのお話以外にあるのであれば、教えていただきたいと思いました。

○中村座長 どうぞ。

宇野構成員 ありがとうございます。

歩数イベントも個人戦がランキングで張り出されたり、あと、グループ戦、部署対抗とかで張り出されて、あめとむち政策ではないですが、御褒美の賞品が出たり、罰ゲームで花見の席とりをするとか、そういう仕掛けもあったりします。

 一応歩数計を毎日持って、1週間に一度体組成計に乗るというのがルールにありまして、それをしないと、上司のところにサボっているというメールが届くのです。なので、本当に徹底して管理されている。うちは健康機器のメーカーだからそれができるのかもしれないのですけれども、そういった仕掛けがございます。

○八幡構成員 ありがとうございます。

○中村座長 ありがとうございました。

 また総合討論で御意見をいただきたいと思います。

 続きまして、「給食事業におけるヘルシーメニュー」というテーマで、高戸構成員から御発表をお願いしたいと思います。

○高戸構成員 よろしくお願いします。

 私のほうは今回、事業所給食においてどのような健康な食事、ヘルシーメニュー等の取り組みが行われているかということと、先ほどから議論になっておりますけれども、基準を決めて普及していく上での課題についての話題提供をさせていただこうと思っております。

では、めくっていただいて2ページ目からです。

今、タニタ食堂の御紹介がありましたけれども、基本的に事業所給食というのは、平成14年から健康増進法に変わって、社員の健康づくりの場であるということが規定されております。そのため特定給食施設等では栄養管理基準が設けられておりまして、そこで管理をするということになっています。

利用者の身体状況、栄養状態、生活習慣病等を定期的に把握し、これらに基づき、適切な熱量及び栄養素量を満たす食事の提供を行わなければならないことになっておりまして、我々給食事業者は、97%が委託になっておりますので、そちらの委託元から利用者のアセスメント情報をいただきながら、栄養計画、実際に給食でどのような食事量を出すかというところをつくり、食事を提供させていただくというところをやらなければいけないというふうになっています。

この手法自体も、十分に管理し切れていると言いがたいところもありますが、実質的にはお客様とのコミュニケーションをとりながら給食事業を進めていくということになっています。

 給食事業の役割というのは、食環境を整えるということが主な役割になっています。

利用者のアセスメントをもとにした栄養計画。

献立作成と提供。ここに栄養価表示や適切な情報提供を行うということが含まれています。

 さらに、実際に健康づくりにつながるように低エネルギー、低脂肪、低塩などのヘルシーメニューの提供を行うことによって、利用者の方々への健康づくりに寄与するということで、食堂そのものを栄養管理の場にするということが今、求められていることでありまして、昔、給食というのは、先ほど早食いの話がありましたが、「安い、早い、たくさん」がある意味合い言葉になっておりまして、私が入社した二十数年前ですと、ほとんど丼御飯で、まずたくさん出すこと自体がお客様から求められていましたが、最近は、主食の量、ボリューム感も含めてコントロールできる食堂が求められるようになってきております。

 実際に御提供しているヘルシーメニューについて一部御紹介いたします。3ページ目をごらんください。

 お客様からヘルスアセスメントをしている情報をいただきます。例えばある事業者では、肥満が20%、やせが10%、高血圧が12%というようなことをいただいた上で、給食会議等が毎月定期的に開催されますので、そちらで設置者、企業様側の担当者と保健師、私どもの栄養士あるいは調理師が参加しまして、どのような給食運営をすべきかという会議が行われます。

この事例ですと、産業医の方から肥満があることと、脂質異常症が非常に高いということで、脂肪代謝異常あるいは高血圧についての食事提供を考えてほしいということでのヘルシーメニューを提供するという形になっています。

あわせて、栄養計画の中には産業医の方からの講話を入れていただく形になっています。

実際にヘルシーメニューとして提供するメニューというのが下の絵になっております。

例えば低塩分であれば、鯖のみそ煮を従来のメニューと比べて45%カットする。

あるいは低脂肪につきましても、メニューによって、食材の部位を変えるとか揚げ方を変える、あるいは衣のつけ方を変えるなど。これは先ほどタニタさんでも御紹介がありましたように、調理の工夫やなどをうまく活用しながら低脂肪、低塩分というところを目指していきます。

ただ、やはり召し上がっていただかなければ成り立ちませんので、できる限り人気のあるメニューを中心に取り上げていかざるを得ないということになります。ですので、てんぷらであったり、ショウガ焼き、チキン南蛮などを提供します。また、余りカロリーを絞り過ぎてしまうと揚げ物ができないということも出ますので、ボリュームのコントロールや、使っている食材を工夫しながら低塩や低脂肪を実際には目指していくという形になります。

次のところをごらんください。

一方で、先ほどタニタさんの御紹介もありましたように、基準を決めたヘルシーメニューというのも広くお伝えし、提供させていただくこともございます。

弊社の場合には、600キロカロリー前後、脂肪25%以下、塩分は3グラム以下ということを一つの基準としまして、写真にあるような弁当スタイルでの提供、あるいは下のほうにありますけれども、ワンプレートに近い形のヘルシーメニューということで、弊社ですと、ヘルシーメニューに「健美創菜」という名前をつけてお客様にアピールしながら、体にいいものあるいは健康につながっていくものというようなコンセプトを含めて御提案をさせていただいています。

弁当スタイルのほうは「さよならメタボ弁当」という名前がついているのですが、そのままメタボ対策に使えるようなメニューという形で、ある程度ターゲットをはっきりとさせて、それから基準をつくっていくというような御提供をさせていただくことがあります。ただ、この場合には、食数を50食とかある程度絞った形で提供させていただくような形をとっております。

ところで、ヘルシーという言葉が非常に広い範囲で使えます。「使えます」という表現がいいのかわかりませんけれども、さまざまな形での表現をさせていただいております。

最初に申し上げましたように、食堂へのニーズというのは、お昼御飯でしっかり食べたいというニーズが非常に高いです。人気メニューは、から揚げやハンバーグなどが不変なものですから、しっかり食べたいというお客様と同時に、お魚であったり、ヘルシーランチということで、健康にいざなうべく、食材あるいは中身で表現をしながらメニューを提供させていただいております。

魚料理は給食ではなかなか売れないメニューですから、今後どのような形でアピールしてお勧めしていくか、これはある意味永遠の課題になっているのですけれども、こういったこともヘルシーメニューと同時に行っております。

5ページ目になります。先ほどのタニタさんの事例でもございましたように、単純に給食をヘルシーメニューの提供にとどまるだけではなくて、給食事業者も先方とのコラボレーション、あるいはコミュニケーションをとった上で栄養教育を一緒にやらせていただきます。

私どもですと、「健康キャンペーン」という名称のもとに、食事を提供している脇に管理栄養士が立っておりまして、メニューに含まれている食材、栄養素の説明、あるいは例えば「健康日本21」が今年新しくスタートしましたが、「健康日本21」のあり方を説明しながら、運動や栄養の必要性も含めて管理栄養士がアドバイスしていくという機会を設けさせていただいております。

また、場所によっては、新たに別の場所を設けていただいて、例えばランチョンセミナーのように、ヘルシーメニューを提供しながら食事と健康のあり方をお伝えする機会をつくらせていただくこともあります。

前段で申し上げた産業医の先生方の講話のときに、あわせてヘルシーメニューを召し上がっていただくことと学んでいただくなどの連動ができるように、健康増進活動の一環としてヘルシーメニュー、あるいは食堂の利用を進めていただいているというのが実態でございます。

いろんな形でヘルシーメニューを提供させていただくのですけれども、6ページに給食会社におけるヘルシーメニューの基準はどのようになっているかということで、今年、日本給食サービス協会と日本給食経営管理学会で産学連携委員会がスタートしており、こちらでアンケートをとらせていただきました。

この結果は、つい先々週ぐらいに出てきたものなので、概略で申しわけないのですが、31社。これは全国の給食会社の比較的大手のところから情報をいただいております。

まず、本社でヘルシーメニューの基準が決まっているところが約半分になっています。

では、残りの「いいえ」となっているところがヘルシーメニューを提供していないかというと、決してそういうことではなくて、事業所ごと、あるいはお客様ごとに給食、ヘルシーメニューを提供しています。ですので、何らかの形で給食を提供させていただいているところではヘルシーメニューが提供されているということでございます。

その基準です。

エネルギーでも、一番低いところでは500キロカロリーから、高いところでは700キロカロリーというのが本社で決めている基準です。

この検討会が始まるとき、私がまだまだこの辺の基準がばらばらですというお話をさせていただいたのですけれども、やはり実際にこのようなばらつきがある。真ん中が600キロカロリーぐらい。平均すると630キロカロリーぐらいなのですが、各社、ヘルシーのあり方が定まっていないというのが実態かなと思っています。

 加えまして、提供しているヘルシーメニューというのはどのようなイメージを持っているか、どのようなことでヘルシーメニューとして提供しているかということで、こんな表現を使っていらっしゃいませんかと質問が、1から8までです。

「1 本社で定めた栄養基準で作成」という以外に、例えば玄米御飯やゴーヤチャンプルなど「使用されている食材がヘルシーなメニュー」であるもの、「食材を多くしている」「カロリーが少なめ」「脂肪や塩分など特定の栄養素が少ない」、「塩分やカルシウムなど特定の栄養素が多め」「産地直送など鮮度をアピール」などいろいろな形でヘルシーの捉え方を、どのように表現をされていますかという質問について、次のページの上段にあります。

真ん中にある赤いところが本社の栄養基準にそっているというところなのですが、それ以外にも「料理のイメージ」、あるいは「カロリー少なめ」「脂肪少なめ」というのが前半のほうに入ってきています。やはり栄養素が豊富であるというところも強調しながらヘルシーメニューの提案しているので、一概に「ヘルシーメニュー」の表現の仕方が画一化されていません。この辺の工夫も非常に重要だなと思っています。

さて、今回、話題提供の課題として出ていましたヘルシーメニューを提供する課題、今の課題でもあり、今後の課題でもあると思うのですけれども、ニーズはありますが販売量が少ない、あるいは原価自体が高くなるという、提供する側よりお客様へのサービスに関する問題が1つ。それ以外の「基準を満たす献立作成」や「味の調整」などは提供側の技能の問題ですが、幾つかの課題が示されております。

次のページをお願いします。

トータルで見ましたときに、では、健康な食事の基準を決め、普及していくときのメリット、デメリットとがあるのかという質問があったのですが、もちろん、メリットとしては国が決めた基準として利用者の方にアピールしやすい。これは非常に重要なことだと思っております。

もう一つは、食事の質をどうやって価値観として上げられるか。ここも非常に重要なポイントとしてあるだろうと思っています。

デメリットなのですけれども、正直申し上げてデメリットは基本的にないなと思っています。ただし、よく考えなければいけないなというところが、先ほど田村構成員への質疑の中でもありましたが、コストの見合いというところが当然出てまいります。食材費や加工費、あるいは人の手間、そういった部分をどのように考えていくかというのは、我々としては非常に悩みどころであろうということです。今、御説明したような従来のヘルシーメニューとの整合性をどうとっていくかというところもあります。

 また、サービス側の教育や利用者への普及。これもひっくり返せばメリットだと思うのです。提供することによって、従業員もこういったことを知らなければいけないし、伝えなければいけない。タニタさんの社員教育と同様で、これを伝えることによって普及活動として広まります。一方では、それだけのパワーがかかってまいりますので、そこら辺のところをよく考えなければいけないなと思っています。

つまり、デメリットと言えるほどのことではないと思いますが、十分考えなければいけないなというところは幾つかあるなと思っています。

そういったことを踏まえて、今回決められる基準への期待なのですけれども、できるだけわかりやすいこと。

先ほど「ヘルシーメニュー」という表現をさせていただいておりますが、では、名前をどうするのか。私どもの会社だと「健美創菜」という名前をつけていますが、普及させるために適切な名前も非常に期待すべきことだと思っております。

給食事業というのは、非常に規模感が大きくて、ここ5年、事業規模が余り大きく変動しておりません。なかなか経済状況が厳しい中で、少しずつシュリンクしている部分もありますが、社員の方々、働かれる方々以外にも、病院給食、老人福祉施設、学校給食、広範囲の方々に健康な食事をアピールする事業としては非常に規模感があるなというのが今の考え方です。

最後になりますが、そういった意味では、「健康な食事」の普及啓発等に給食事業というのは、ボリュームでのお手伝いができるだろうなと思っています。

1つの例としては、日本給食サービス協会には今、220社ほど加盟されておりまして、事業所給食だけでも2万軒の事業所、1日323万食の提供をする規模がございます。

こういった給食事業を通しながらヘルシーメニューあるいは健康な食事ということで、今年度新たにスタートしている「健康日本21」の普及啓発も含めてお役に立てると同時に、また、給食サービス協会等もさまざまな学会と連携をとりながら、エビデンスのしっかりとした食事提供をさせていただくことができるということで、産官学連携が始まっており、それらを含めて多分お役に立てる部分がたくさんあるだろうなと思っております。

以上です。

○中村座長 ありがとうございました。

 それでは、御質問がありましたらお願いいたします。どうぞ。

○生源寺構成員 非常に単純な質問ですが、8ページの給食の事業規模の単位はどういうものかということが1つです。

○高戸構成員 単位は「億円」になります。

○生源寺構成員 それと、昔に比べますと、食材の利用の地域による差は随分小さくなったとは思うのですけれども、こういう給食事業で、例えば関東、関西、あるいは大都市、地方都市といったことでメニューなり使う食材に違いがあるのか、あるいはそういうことへの配慮というものが多少はあるのでしょうか。

○高戸構成員 まず、私どもの大手の給食会社ですと、食材を一括調達という形になりますので、比較的安い市場から仕入れて全国配送するということがあります。

ただ一方で、生鮮のようなものというのは、地域の市場で安いものを購入して提供させていただく形がありますので、例えばメニューが統一されていても使われている産地が少し違うということは当然起こります。

一方で、メニューそのもの自体が地域によって違うこともあります。例えば肉ジャガに豚肉を使っているところと牛肉を使っているところの違いとか、それはお客様の地域性や好み等々を反映させるというところがありますので、若干の違いというのはもちろんあります。

○中村座長 ありがとうございました。

 ほかにございますか。佐々木先生。

○佐々木構成員 非常によくまとめていただいて、ありがとうございます。わかりやすかったです。

先ほどのタニタの方のと同じようなことを感じたのですが、ヘルシーメニューの中で一番よく出てくるのがカロリーということですね。そのカロリーを6ページできれいにまとめていただいたので、とてもわかりやすいのですけれども、一番多いのが1食当たり600キロカロリー、同じく1食当たり650キロカロリー。平均として1食当たり630キロカロリーということなのです。

ところが、勤労年齢の男性の必要エネルギーは、およそ2,5002,600キロカロリー。女性が2,000キロカロリー。

例えば600キロカロリー、タニタさんは500キロカロリーとおっしゃいましたが、それを3食食べたとしても最大が1,800キロカロリー。そうすると、男性の場合はマイナス500600キロカロリー。恐らくほかでそれを補ってしまうのではないかと考えるのですけれども、こういうお弁当のカロリー、エネルギーにどういう数字を当てるのかというのはとても大きな問題で、そこのところをかなり丁寧に科学をして、そして食べやすさ、おいしさ、受け入れやすさ、コスト、あらゆるものを考えて決めていくべきかなと思うのですが、いかがなのでしょうか。

○高戸構成員 先生がおっしゃるとおりで、例えば我々も基準を決める際に、日本人の摂取基準を含めて、お客様が必要であろうと思われるものから、先ほどタニタさんの計算にもありましたように、100200キロカロリーをマイナスするというのをまずベースにします。それに伴って600キロカロリーとしますが、結局、これは全ての食事として提供しているわけではございませんので、肥満予防、生活習慣病予防という方々をターゲットとした場合に、昼食ではこれを御提供しますということで、先生がおっしゃるように、確かにどこかで代償行為が起きている可能性は十分あるかと思います。

ただ、片側で、お昼1食でもこういったことをきちっと提供させていただくことによってコントロールしやすくなるということも事実だと思いますので、全て包含してヘルシーメニューとして出せるというのがベストだと思うのです。私どもも、それはどうあったらいいかというのをこの検討会を通じてやっていただけるとありがたないというのが一つあります。

○伏木構成員 1つだけ。私は人を使った実験、全然別のことをやったことがあるのですが、そのときに体重がふえも減りもしないような食事をベースラインとしてつくって、それから物を足したり、引いたりする、そういう実験系を組んだのです。

まず最初に、体重が一定になるような食事をつくるというのは大変難しくて、例えば性別と体重と身長、いろんなデータから詳細に計算したやつで1回やってみたら、ある人はどんどん体重がふえていくし、ある人は体重がどんどん減っていくのです。

結局、本人がこれをもうちょっと食べたいとか、少なくするということで調節しないと、何かで一律に数字を決めて、それで大体適正な体重、あるいは適正なカロリーだろうという判断は非常に難しいという経験がございます。

○中村座長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○佐々木構成員 伏木先生の実験の補足データですけれども、必要エネルギーの標準偏差は成人男性で1日当たり200カロリー。1SD200です。女性の1SD160キロカロリーです。物すごく大きいです。だから、恐らくそれがそのまま表現されたのだと思います。

○中村座長 どうもありがとうございました。

 宇野さん、コメントありますか。500というのはいかがでしょうかという話が私もちょっと気になっていたものですから。

○宇野構成員 ダイエット食として500600という定義でして、社員の中では調整をしてくれています。

○中村座長 社員が飢餓になるわけではないわけですね。

○宇野構成員 はい。栄養不足になることはないと思っています。

○中村座長 では、岡村委員。

○岡村構成員 給食のほうということなので、ちょっとあれなのかもしれないのですけれども、クライアントさんの意向というのがかなり入ってきますね。だから、いい会社はもちろんいい要求をされるのだと思うのですが、中には健康なんかどうでもいいから安くしろというところが幾らでもあるのではないかと思うのですが、そのときに対応するようなマニュアルとか、どういうことを勧めるとか、共通で取り組んでおられることというのはあるのでしょうか。

○高戸構成員 私どもの社員も「さよならメタボプロジェクト」というのを行いまして、実際に社員が数カ月でやせたということもあります。ですので、その必要性みたいなことをまずきちっとお伝えするということは、企画書等でも御提供させていただきます。

ただ、おっしゃられるとおり、価格の問題や、企業の考え方によって、それは要らないよと言われてしまうと、なかなかご提案できないので、機会があるごとに、例えば、今回のような検討委員会があるからいかがですか、あるいは「健康日本21」が新しくなりましたから考えましょうなどの形で担当者がお勧めに上がっていく、そういうことも我々は企業活動として継続させていただいています。

○岡村構成員 栄養管理面でのブラック企業みたいなものも恐らくあると思うので、個々人の名前はもちろん出せないのですが、こういう事例がありましたということがもし出てくれば、社会的圧力になるかなというのも少し思っていますので、またその辺は検討してください。

○中村座長 ありがとうございました。

 では、宇野委員。

○宇野構成員 やはりヘルシーメニューはお金がかかるというのが1つあると思うのですけれども、誰にお金を出させるかというのがあって、企業負担をしてくださる企業もあると思うのです。企業負担をしてくださる企業とそうでない企業の割合とかがあれば教えていただきたいのです。ちなみに、弊社は企業負担をしてもらっています。

高戸構成員 今、手元にそのデータはありませんが、確かに企業負担でやっていただけるところで違いがあります。また、契約そのものが管理費制と単価制と大きく分かれていまして、管理費制となると、社員は食事の負担がほぼない。実費であったら実費分だけです。単価費制になると、町場の食事と同じような形で、社員が管理費制のヘルシーメニューを300円で召し上がれるところと、600円とか700円で召し上がるというように企業の負担の仕方はかなり変わっております。

しかし、企業が健康に対して配慮されていないということではありません。いろいろな事情もあるかと思いますので、何とも申し上げられないのですけれども、ただ、ヘルシーメニューを提供してほしいというニーズは常にあります。我々としては、そこにどういった価値観をつけて御提供するかが重要かなと思っております。

○中村座長 ありがとうございます。

では、江頭構成員。

○江頭構成員 御発表ありがとうございました。

課題の中で出てきていたもので、今、ニーズもまだあるということなのですが、ニーズはあるけれども販売量が少ないとか、販売量が少ないこともあって原価も高くなる、そういったところが関連してくるかなと思ったのです。

先ほどのタニタさんもそうなのですが、社食で食事を出すことがそのまま教育になるというのは本当にそのとおりだなと思うのですけれども、結局、それを選んでもらえなかったり、選ぶ知識というか、いわゆる教育というところがすごく必要になるなと思っています。

私のところは高齢者が多いのですが、介護食品がたくさんあり過ぎて、結局、それが選択できないと適切な方に適切に使ってもらえないというところがあります。商品の開発とともに、付加価値として使い方とか運用、そういう教育的な部分も含めたことをいつもお話しするのですけれども、実際に教育ということはされているようなのですが、先ほどのタニタさんとの違いというところでは、事業者さんのヘルシーに対する思いというか、そういったところとともに、個々の職員さんの教育というものが必要になるのかなと思うのです。

もっと具体的にとか、こういったことがあるということであれば教えていただければなと思います。

○高戸構成員 御紹介したとおりになってしまうかもしれないのですけれども、今、私どもは給食会議を定例的に行っておりますので、企業様の思いはその会議で酌み取りながら、手段としましては、食堂の脇に立つ場合もあれば、例えば週間献立表をイントラネットで提示するときに、そこに情報提供する。

 あるいはテーブルにあるポップに記載させていただくとか、情報発信する機会あるいは手段というのは今、たくさんございますので、さまざまな機会を利用して御提案をさせていただくと同時に、弊社ですと、管理栄養士、栄養士を含めて3,000人ぐらいの栄養士がおりますので、栄養士教育の一環として社員教育をし、お客様に例えばちょっとした立ち話でも健康について御説明をさせていただく機会をつくるとか、そういったことを繰り返させていただいております。

○中村座長 ありがとうございました。

どうぞ。

○江頭構成員 双方向が多分必要なのかなと。情報の出し方として一方通行になってしまうと、受け取る人は受け取るけれども、受け取ってくれない人は流されてしまうので、そういったところの工夫というか、私たち栄養士側もそういったスキルが必要なのだなと感じます。

ありがとうございました。

○中村座長 では、あとお一人。藤谷先生。

○藤谷構成員 今の江頭先生のお話と同じで、タニタさんとの違いは、タニタさんでは、食事を出すことのほかにはかるとか気づかせるとか、そちらがあることだと思います。今のお話では、食事を出すことに追加しての工夫のレベルといったような、サービス的なもののようですね。教育とかモニタリングも含めたパッケージにお金を払ってもらわないと根づかないのかとも思います。給食業界の流れとして、基本は食で、それに附随していくのか、それとも食に関する栄養管理自体を受注する、例えば普通の会社で、いくら産業医がいても、その産業医が常に栄養に関する上手な講演会が打てるとは限らないですよね。そのようなことや社員の健康モニターも商品としていくと、お金はかかるのですが、実現率は高くなるのではないかと思います。

タニタさんはたまたまはかるほうがベースの企業なので、はかるグッズをたくさん持っていたというところがあるかと思うのですが、その辺の事業展開は何か考えておられますか。

○高戸構成員 例えば先ほど御紹介した「健康キャンペーン」みたいなものも、実際は本社から栄養士が行って啓発する場合もあります。セミナー、ランチョンセミナーをやる。そうすると、純粋に言えばそこはコストがかかってくるところで、場合によっては、そこに対してお金をいただくというような交渉をさせていただくこともございます。

ですので、先生がおっしゃるように、我々としては、事業化できるということが非常に望んでいる姿です。

ただ一方で、お互いコスト意識というのが非常に高いですから、その辺のところのバランスをどうとっていくかということで、健康というところに対しての価値が上がってくることによって、事業性というのは非常に拡大されるだろうなというところは、我々も非常に期待しています。なので、事業化も含めてアプローチをします。

○中村座長 ありがとうございました。

 では、先生、どうぞ。

○佐々木構成員 今の藤谷先生の御意見は非常に重要だと思うのです。誰が情報を伝えられるか。今回のこの場合にどういうパッケージがつくれるかという話なのですけれども、医者ができるか、栄養士ができるか。果たしてそれができているのか。栄養士がいて、そこへ出しているから、うちはやっていますよと言えるのか。

 例えば5ページの下、健康増進活動でランチョンセミナーをする。これ自身はとても大切なことで、こういうことをどんどん進めるような仕組みができればよいなと思っている側なのですが、下から2行目に「冷え性改善」と書いてありまして、冷え性改善のお食事というのは科学的にあるのですか。こういうことをしてもよいのですか。

すなわち、科学、人文科学も全て含めて、科学的に私たちが広めるべきもの、広めないように努力をするもの、ここの整理をきちんとする。それの教育も含めたものをパッケージ化するということがかなり大切なのではないかなと思ってお聞きしました。

補足でした。ありがとうございます。

○中村座長 ありがとうございました。

 ほかにございませんか。では、どうぞ。

○高田構成員 2点お聞きしたいのですが、1つは、恐らくメニューを何種類も出されていると思うのですが、意図したメニューが意図した方に選ばれているのかという評価がどこかでされているのかどうかということです。

 もう一点は、タニタさんとの大きな違いというのは、タニタさんは自社ですので、自社として動けると思うのですが、商品として給食を出していますので、健康管理部門には喜ばれるけれども、社員には全く喜ばれないということがあり得ると思うのです。幾らこの検討会で健康な食事としてこれが定義されましたということを売りにしても、全くそれが社員に喜ばれないものであったら、商品としては成り立たないですし、次の田中先生にもかかわるかもしれないのですが、残滓率が物すごく多くなったら、幾らいいものを出しても困ると思うのですけれども、その辺はどういうふうにお考えになるか。

2点お願いします。

○高戸構成員 まず、メニューの販売動向、ターゲットになる方が選んでいただいているかどうかというモニタリングについては、正直全部ができているわけではございませんで、例えば給食の場合、ある程度食数を限定させていただいておりますので、申し込み制みたいな形をさせていただくところには完全にそのターゲットに合った形で提供させていただいております。

ただ、50食限定となると、企業としてはメタボの方をターゲットにしているのですが、メニューを選ばれるのは女性が多くなるなど、それはヘルシーであり、かつ健康づくりのために召し上がっていただくものですから、決してターゲットが外れているわけではございませんけれども、では、それが本当にターゲットに合っているかどうかというところにつきましては、追っかけられているところと追っかけられていないところがあります。そこは先方様との話し合いも含めた活動になってくるかなと思っています。

実際に喜ばれているか、喜ばれていないかというところは、我々もメニューをつくっていく上で非常に困っております。

例えば御紹介した4ページ目のヒレカツのように、売れるあるいは喜ばれるメニューを中に入れていくということで残滓自体は少ないです。選んでいただければ、ほぼ召し上がっていただきますので、食べ残すということもありません。選ばれないでそのまま捨てられないように食数をある程度コントロールすることによってカバーしていますので、大きく残滓、ロスになることは少ないのです。

メニューそのもの自体を、できるだけ召し上がっていただきたいものをターゲットに合わせて工夫させていただいているというのが現状でございます。

○中村座長 ありがとうございました。

 ちょっと時間の関係があるので、最後のスピーカーに移りたいと思います。

それでは、「学校給食と食に関する指導」というテーマで、田中延子構成員のほうからお話をお願いいたします。

○田中(延)構成員 よろしくお願いいたします。

 1ページ目の「学校給食の目標」なのですけれども、学校給食法が昭和29年に定められて、それから54年ぶりに大改正がありまして、平成21年4月から施行された学校給食の目標なのですが、それまでは一、二、三、七、適切な栄養の摂取と、日常生活における食事についての正しい理解と望ましい食習慣、明るい社交性、食料の生産、流通、消費、これは前の昭和29年の法の目標になっていましたが、四、五、六については新たに加えられた目標です。

この中には、自然の恩恵の上に成り立つものであることの理解とか、自然とか生命を尊重する精神とか、食生活が食にかかわる人々のさまざまな活動に支えられていることを理解することで勤労を重んずる態度を養うのだとか、食文化について新たに加えられて実施されております。

次のページをお開きいただきたいと思います。

21 年の改正のときにつけ加えられたものの中で学校給食実施基準というのがありまして、これは児童生徒1人1回当たりの必要栄養量を示したものです。

これについては、一定水準を確保したいという意図がありまして法律に位置づけております。

この基準につきましては、児童6~7歳、8~9歳、1011歳の小学校低・中・高、それから1214歳の中学校のものをお示ししております。

主な栄養素等としては、エネルギー、たんぱく質、脂質、ナトリウム、そのほかに管理することが望ましいものとしてマグネシウム、亜鉛を示しております。

この基準につきましては、全国的な平均値を示したものですので、これを適用するに当たっては、これをそのままうのみするのではなく、児童生徒の体位とか地域の実態を踏まえた上で、個々の栄養教諭、栄養職員が適切に準用していくことということが書かれております。

下の表は、1日の必要量に占める学校給食の割合です。

これにつきましては、1日のうちの1食ですので、33%を基本としていますが、家庭の食生活を調査した結果、足りない栄養素、例えばビタミン類とか、カルシウム、マグネシウム、それらについては学校給食で補うように設定されております。

しかし、この中でも、鉄などは33%になっていまして、実際に家庭でこれがとれているのかといいますと、非常に不足しているのですが、学校給食においても、鉄を例えば1日のうちの50%補うとか、40%補うということは不可能でして、最低1日の分の33%は確保していこうという基準になっております。

次のページが「学校給食の歴史と意義」です。

学校給食は、明治22年、山形県の鶴岡町の私立忠愛小学校で、お寺が経営していたので、貧困児救済と就学奨励の目的で実施されたという記録になっております。

学校給食発祥の地の碑が鶴岡町にあります。

その後、徐々に学校給食が日本に広がっていくのですけれども、第二次世界大戦の影響で学校給食を継続することができなくなり、終戦のときにはほとんど給食ができない状況になっていました。そこで、アメリカの指導によってララ物資とかユニセフ、米国寄贈の小麦粉によって給食が実施されるようになっております。

昭和21年のときに文部、厚生、農林の3省が連携した通知を出したというのは非常に画期的と言われているのですが、ここで戦後の学校給食をどういうふうにやっているのかという方針が出されております。

26 年にさまざまな資金がカットされるということになって、学校給食は廃止の危機を迎えます。学校給食関係者とかさまざまな方の要望があり、それから政策的なこともあったと思うのですが、29年に学校給食法が成立、公布されました。

そのときに、時の文部大臣が提案理由として、「小学校等においてその教育の一環として学校給食が適切に実施されるということは、とりもなおさず、児童が自らの体験を通して、望ましい日常の食生活の営みを学び取ることであって、学校給食が児童の現在及び将来の生活を幸福にする所以であり、教育的に実施される学校給食の意義はまことに重要であります」と言っております。

このときに日本の給食の方針として、就学奨励とか貧困対策というよりは、これを子供たちの食育につなげようという意図でこの給食法ができたと思っております。

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昭和31年、32年には、学校給食法が小学校だけだったのを中学校にも拡大し、夜間課程を置く高等学校、盲、聾、養護学校の幼稚部及び高等部における学校給食に関しても法律がつくられております。

ですので、学校給食は小中学校の義務教育、夜間定時制高校、特別支援学校の幼稚部、高等部に実施されているということになります。

昭和51年には米飯が導入されます。

平成9年ごろから、子供たちの肥満ですとか、偏食ですとか、朝食欠食とか、さまざまな食に関する問題点が明らかになってきまして、それらを改善するために平成17年に栄養教諭制度が開始されております。

現在4,630名。全体の栄養教諭を含めますと、35%の方々が栄養教諭として食に関する指導を実施していただいております。

学習指導要領に「食育の推進」という言葉が載っていなければ学校ではやっていただけない、家庭でやればいいでしょうと言われるわけですので、平成20年に学習指導要領に「食育の推進」を明記しました。

そして、平成21年に学校給食法、先ほどお話ししましたが、それまでは「国民の食生活の改善」という目的でしたが、「食育の推進」ということに変え、広い意味での役割を学校給食に担わせるという形になっております。

その下のグラフは、学校給食実施率の向上とともに、児童の体位がどのように変化していったのかということを示したグラフです。

赤の折れ線グラフが学校給食の実施率です。昭和23年ごろには非常に実施率が少なかったのですけれども、だんだん実施率が伸びて、現在は小学校で100%、中学校では80%程度の学校で給食が実施されています。

ピンクの棒グラフが身長、青の折れ線グラフが体重の推移になっています。ですので、学校給食が児童生徒の体位の向上に、全てとは言いませんけれども、確かに貢献してきたということがこのグラフを見てわかっていただけるのではないかと思っております。

次の5ページです。

学校給食の形態としては、主食、おかず、ミルクがそろった完全給食とミルクのみのミルク給食、そのどちらでもない補食給食という3つのパターンがあります。

国が推進しているのは完全給食ですが、主食、主菜、副菜で示されている完全給食の例で、上が「キムタクごはん」という御飯、キムチとたくあんを入れた御飯ですけれども、すごいネーミングだなと思います。

あと、汁物、主菜として鰆の塩焼きとお浸し、デザートとしてミカン、そして牛乳は必須という形になっております。

米飯給食が今、5日間のうちの全国平均で3.2回実施されていますので、その他の1.8回は麺かパンの給食になります。

下の給食はパンの給食で、コッペパンとジャムとグラタンとミネストローネ、フレンチサラダ、牛乳というメニューで、こういうメニューが主食、主菜、副菜のそろったメニューだということで、例をお示ししました。

次のページをお開きいただきたいと思います。

学校給食は、学校における食育の中核として実施されております。

食に関する指導の必要性が叫ばれるようになったのは、平成9年の保健体育審議会の答申においてです。その中で、さまざまな食に関する問題が起きていて、将来の生活習慣病の不安が非常に子供たちに見えてきている。ですので、生涯を通じた健康づくりの観点から、さまざまな食に関する指導を行っていかなければいけないということが提言されております。

さまざまなことを通して食に関する指導が実施されております。

ここの下は東京の例で、東京の畑で大切に育てられたトウモロコシが学校給食に提供されるということが載っていますが、これは1つの例としてごらんいただきたいと思います。

次のページです。

しかし、食育に関しては特定の教科があるわけではありません。学校給食を中心に、食に関連する教科と関連させて、発達段階に応じた指導を展開していく必要があります。そのために、国が示している方針としまして、子供の食生活の実態を把握した上で、それらを改善するためにどのような力をつけていったらいいのかという目標設定を行って、さまざまな教科とか給食時間に指導する、それらを通して子供たちに改善を図っていくのだという方針を掲げております。

食育推進基本計画にも、学校において食に関する指導の全体計画を全ての学校でつくるということを掲げております。

下には、どのようにして学校給食と教科をつなぐのかという例をお示ししました。

御飯、鶏肉と納豆のかき揚げ、ゴーヤの酢の物、梨、牛乳というメニューだとすると、例えば4年生の理科では「季節と生き物」、季節の移ろいによって植物はどういう変化をしていくのかということを学びます。そのときにゴーヤを使います。ゴーヤの種をまいたときに、子供たちにこういうメニューを出すことによって、きょう自分がまいたゴーヤがだんだん実をつけていくとこういう食べ物になるのだねということで、それを育てていこうという意欲を高めたり、ゴーヤについての学習をさせるなど、給食を通して理解を図るということ。

みそ汁だとしますと、3年生の国語で「すがたをかえる大豆」とか、5年生の家庭科で「ごはんと味噌汁を作ろう」というときに、これらを教材としながら学習の効果を高めていくということに活用されております。

その他、給食の時間においては、配膳を通して衛生とか安全について学ぶ。

食事をするということを通して、例えば姿勢を正しくして食べるとか、よくかむとか、人に対して嫌な思いをさせないようなマナーとか、そういうことについて日々学んでいきます。

献立を見たり、食べたりしながら、栄養バランスとか食文化、この料理に使われている食品がどのように生産され、流通して自分の口に入るのかということを日々の給食を通して学ぶようにということを推進しています。

次のページをお開きいただきたいと思います。

「食に関する指導目標と発達段階に応じた食に関する到達目標」ということで、右側の表は、各学年に応じた到達目標の例を示しています。

右側の枠は、食事の重要性、心身の健康とか、食品を選択する能力、感謝の心、社会性、食文化、学校教育を通して6つの目標を掲げて、これらを子供たちに身につけさせていくことをねらいとしています。

右側の表は、その6つの目標とリンクさせて、1年生だったらば、嫌いな食べ物でも食べようとする意欲を持つとか、食品の名前がわかるというところから、6年生には楽しく食事をすることが人と人とのつながりを深めるのだということとか、1食分の食事をつくれるようになるとか、感謝して残さず食べるということについて、学年に応じて指導しています。

中学校は載せておりませんが、中学校については、1日分の食事を自分でつくることができるというような到達目標を掲げております。

文部科学省では、子供たちに指導していくときの教材として、食生活学習教材というのを小学校低・中・高と中学校の全ての児童生徒に配付しております。これらを活用して効果的に子供に指導していこうと。

低学年では、「なまえクイズの木」というのがあって、黄、赤、緑、熱や力となる食品には御飯とかパンとかうどんがあり、血や肉や骨になる食品には肉、魚がある。だから、バランスを考えて残さずに食べようねということを子供たちに指導しています。

お米について、行事食やおにぎりのつくり方の例を示すなどして、初歩的な、基本的なところから始まり、中学年になりますと、1日のスタートは朝御飯だから、朝御飯の大切さを学び、それから好き嫌いをしないで食べる。食べ物の3つの働きをしっかり考えて食べましょうとか、家庭や地域に伝わる料理を大事にしよう、行事食とかは感謝して食べようということを指導しています。

高学年になりますと、生活リズムということを考えたときに、朝御飯が大切なのだとか、栄養バランスをとることが大事ですよ。

親がつくってくれない場合には自分がつくって食べましょうというところまで指導していきます。

どんな食べ方がいいのかなということで、主食、主菜、副菜がそろうと栄養バランスがよくなるよということで、ここで初めて主食、主菜、副菜ということを学んでいきます。五、六年生で御飯の炊き方、みそ汁のつくり方、簡単なおかずのつくり方を学びます。

地域に伝わる料理を大切にしようということで、地域の産物、郷土料理、先ほど日本食の話も出ましたが、日本食とはこういうものということが指導されます。

次のページをお願いいたします。

最後に、中学生用の学習指導教材です。

中学生になりますと、ダイエットをする子供も結構多くなりますし、コンビニの活用というのを自分自身でするようになりますので、中学生の体と生活、健康と食事、バランスのとれた食事とか、朝食の大切さ、間食と夜食。夜遅くまで起きていて夜食をとる子供がふえてきます。ファストフードやコンビニエンスストアの賢い利用方法とか、成長期のダイエット、スポーツと栄養、食生活の変化とか、日本の食文化の多様化で外国の食文化についても学んでいくことになります。

これらの活動を通して小学校・中学校9年間を通して子供たちに食に関する知識と実践力をある程度身につけさせようということで、その中核になっているのが学校給食と考えております。

最後に、日本の学校給食は世界で最もすばらしい給食制度と言われております。

これは例で、ワシントンポストが「日本の生徒にとって、学習は食事から」。日本の学校給食は世界に誇るべきものであって、米国を初めとした外国は、安くて健康的でおいしい給食制度を構築するのに苦労しているのだけれども、日本は見事にそれが実現できていて、日本の給食はすばらしいということを一面全部使って報じています。

この間、私も中国に行ったのですが、中国でさえも日本の給食に学びたいという意識が非常に高いのと同時に、下のほうにありますが、なでしこジャパンの快挙は学校給食の影響が大きい、国を挙げて学校教育として国民の体位向上に努めた結果だとか、栄養摂取を目的とした学校給食を実施して、牛乳を飲む習慣を身につけさせて体位の向上に貢献したというふうに褒めているということが、私としては非常にうれしかったです。

ドイツでは、『日本人が知らない日本』というこんな厚い本を書いた学者の方がいらっしゃいまして、日本の学校給食は模範となるべきもので、日本の学校給食は世界で最善のものの一つだ、もっと誇っていいのだというようなことを述べております。

しかし、ドイツは日本のまねをすることができないから、ドイツはドイツのやり方を模索していかなければいけないのだということを言っています。

世界の学校給食を最近調べていますが、世界の学校給食が今、貧困対策できゅうきゅうとしている中で、日本は貧困対策、就学奨励からきちっと学校教育に位置づけた、それから食育を推進するものに高めてきたということ、一定レベルの確保をしようということ、こういう政策は日本独特のもので、非常にすぐれたものだと考えています。

1つの課題としては、学校給食法が奨励法であって、義務法でないために、いまだ20%の中学生たちが給食を食べていないということを考えますと、食育をしっかり推進していくためには、全ての子供たちが学校給食をツールとして使えるような体制を構築していく必要があるのではないかと考えております。

以上で終わります。

○中村座長 ありがとうございました。

 時間があと一、二分しかなくなってしまって申しわけないのですが、御質問、お一人か。どうぞ。手短にお願いします。

○鈴木構成員 さっさと終わります。

 田中先生が中学生に教えていらっしゃるコンビニエンスの賢い利用法というのは、やさしく書いてくれているのですが、これはだめよと言っていることとか、これはいいよと言っていることとか、こういうふうに使いなさいということが具体的にあれば教えていただきたいなと思います。

○田中(延)構成員 きょうは持ってきていないのですが、食育を行うのに、もう既にコンビニエンスストアが根づいている中で、それを否定するということは現実的ではないと考えていますので、どうせコンビニエンスを活用するならば、例えば野菜も一緒に買いましょうとか、偏ったものを食べるのではなくて、コンビニエンスストアの中から適切にバランスよく選んでいくことが必要だというようなことを記述しています。

これを載せたときには、コンビニエンスストアを奨励するのかと言って文部科学省はかなり批判をされていますが、それが子供にとって現実的だと考えて載せております。

○中村座長 大竹先生、どうぞ。

○大竹構成員 私は家政学とか家庭科教育をやっていますので、皆さんとはちょっと違うかと思いますけれども、特に学校教育においては、各教科との連携、特に家庭科は食の教育をしていますので、すごくかかわりがあるのですが、そういう中で、実はある市の全部の小学校、中学校で、栄養士さん中心に食育をどうやっているのかというのを調べたことがあるのです。

そうしますと、今、ここにも挙がっていますけれども、例えば小学校の教育の計画というのは、校長先生がこうやりましょうと言うと比較的うまくいって、各教科でずっと入っていくのですが、それは一、二年でだんだん紙だけになってしまうというところがあります。栄養士さんが校内の先生といろいろかかわりながらやるというのは非常に難しい場面があるかなと思って、その辺を少し考えないとうまく進まないのかなと思っていることが1つ。

そういう意味では、教科の時間を栄養士さんがいただくというのはなかなか難しくなっています。一方では、給食の時間がすごく大事で、そこで例えば10分でも20分でもとると、毎日毎日のことですので、トータルすれば年間で60時間ぐらい確保できるのです。

一方で、例えば家庭科で食をやっていると言っても、一番多いのが小学校5年生で60時間、中学校に行くと年間35時間しかできないのですが、いろんな領域をやりますので、食についてはほんの何分の1しかできないという中では、毎日の給食の5分、10分の中で、ある意味では教育計画を立ててやっていくというのは相当な力になるかなと思うのですが、そういう時間の確保。

同時に、その内容、ほかでどういうふうにやっているかというふうに連携する。家庭科と栄養士さんというのはつながっているようでつながっていない。栄養士はこんなふうに教えていて、家庭科ではこう教えていて、違うことを教えているから、子供たちはすごく混乱するのです。

そういう意味での時間及び内容の連携の仕方というのが非常に大事かなと思っているので、その辺がどうなのかというのが2点目です。

もう一つ、ターゲットが誰なのか。給食はお昼御飯が中心ですね。だけど、先ほど来出ていますように、私たちの食事というのは1食だけではなくて、朝と夜をどうするかという中で、特に私たちが学校で問題だなと思っているのは、家に帰っても親がいなくて、ほっぽり出されている子供たちはどうするかというと、一番手っ取り早くカップラーメンを食べてとりあえずおなかを満たす、そういうところが健康と食の問題で一番問題になっていく。

先ほど言っていましたけれども、それだったら親に頼らないで自分でつくりましょう、あるいはコンビニなども利用しながらバランスのとれた食事を自分で準備するという方はあると思いますが、そういう子供たちに対して、家庭の中にまで入り込んだ教育というのは相当難しいなと思っています。それは半分学校の中で実践をしながら、それをきょう自宅に行ってもやりましょうねというところまで踏み込んでいかないとできないかなと思っていて、その辺をどう考えていらっしゃるのかというあたりを聞きたいと思いました。

これはまた時間があるときにお話しくださってもいいです。

○田中(延)構成員 個別にお話ししたいと思いますが、手短にお答えしたいと思います。

 1点目のお話なのですが、それらのさまざまな問題があるために、国は栄養教諭制度というのをつくったのです。栄養士ではなかなか教員の仲間として連携がとりにくい。ですので、教育の資質を身につけさせて教員として配置することによって、他の教師たちを例えば指導したり、連携をとって指導したりすることができる栄養教諭制度をつくっています。

○大竹構成員 ごめんなさい。先ほど言った学校では栄養教諭も含めてということでした。

○田中(延)構成員 個別の人の資質の問題はちょっと置いておきたいので、制度としてどういうことを狙ったかというと、食育をやるには担任の先生が子供たちにしっかり指導していただくということが重要で、先生方はどちらかというと食育に関してはスキルが余りないわけですので、食の専門家である栄養職員が栄養教諭となって、先生方と一緒に連携をとって指導していこうというのが栄養教諭制度の趣旨です。

 給食の時間についても、栄養教諭が各クラスを回って指導するよりも、担任の先生にしっかりと指導していただいたほうがよっぽど効果があるわけですので、栄養教諭たちがその資料を配ったり、担任の先生に指導方法を伝えたりしながらそういう効果を上げていきたいというのが制度の趣旨です。

家庭なのですが、家庭はなかなか変わっていかない。ただし、仕事を持っている母親が食育に関してレベルが低くて、専業主婦は高いかのような誤解が結構あるのですけれども、調査をした結果は、仕事を持っている方のほうが一緒に朝御飯を食べて、子供に一緒に料理をさせたりということがあります。

やはり親を変えていくことはなかなか難しいので、子供を家庭に食育の実践者として戻すということも必要ですし、あと、家庭に対する情報提供も栄養教諭等を通じてやる。

子供たちを今、ちゃんと教育しておくことによって、将来のちゃんとした親を育てるという趣旨で指導していくことが必要かなと考えています。

○中村座長 あとは個々にお話をしてください。

江頭委員、また次回にさせてください。

先ほどから電気が消えまして、早くやめろと言っているので、この会議はこれで終わりたいと思います。

事務局から今後の進め方のスケジュールについて、お願いいたします。

○河野栄養指導室長 本日、資料5として「日本人の長寿を支える『健康な食事』の概念整理に向けた枠組み(案)」を提示しておりますが、今後はさらに論点を整理していただくことになります。

 次回は1216日月曜日10時から12時で、生産、流通領域の先生方から話題提供をいただきまして、その後、来年1月以降の検討会で「健康な食事」の概念や基準についての具体的な議論に入ることになりますので、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

○中村座長 どうもありがとうございました。

きょうはとても意見が盛り上がって時間が足りなく、また、さばきが悪くて申しわけありませんでした。

 これで本日の会議は閉会といたします。ありがとうございました。


(了)

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