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2013年11月8日 第4回再生医療製品患者登録システムの在り方に関する検討会・第2回体内埋植型医療機器患者登録システムの在り方に関する検討会 議事録

医薬食品局安全対策課

○日時

平成25年11月8日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省専用第23会議室(本館6階)


○議事

○事務局  では、定刻となりましたので、「再生医療製品患者登録システムの在り方に関する検討会」の第 4 回目、「体内埋植型医療機器患者登録システムの在り方に関する検討会」の第 2 回目、そして、両検討会の合同検討会として今回 2 回目となりますが、開催いたします。本日は、両検討会の構成員の先生方全員に御出席いただいており、検討会の開催要綱を満たして会議が成立していることを御報告いたします。また、本日、参考人として御出席いただいている先生方を御紹介いたします。慶應義塾大学内科第一三共心血管炎症学寄付講座特任講師でいらっしゃいます、香坂俊先生です。これ以降、議事に入りますので、カメラ撮りをされている方がおられましたら、ここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 では、以後の議事進行を座長にお願いしたいと思います。再生医療製品、埋植型医療機器の両検討会の合同開催ということで、前回に引き続き全体の座長につきましては、再生医療製品に係る検討会の澤座長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○澤座長 それでは、まず、事務局から本日の配布資料について確認をお願いします。

○事務局 それでは、お手元の議事次第の下半分になります配布資料一覧を御用意ください。まず、議事次第の次に座席表があります。資料 1-1 が「人工関節登録調査」、資料 1-2 が「 J-PCI レジストリー」、資料 1-3 が「日本心臓血管外科手術データベース (JCVSD) 」、資料 2 が「患者登録システムの目的と対象範囲に関する論点整理 ( ) 」です。そのほか、参考資料として、参考資料 1 が前回おまとめいただいた論点整理、参考資料 2 が再生医療製品の検討会の構成員名簿、参考資料 3 が再生医療等製品の検討会の設置要領、参考資料 4 が体内埋植型医療機器の検討会の構成員名簿、参考資料 5 が体内埋植型医療機器に関する検討会の設置要領、参考資料 6 が前回の議事録を配布しています。なお、配布資料の訂正をいたします。参考資料 2 の裏になりますが、参考人の一番下になります。厚生労働省医政局研究開発振興課の荒木室長となっていますが、堀裕行室長に代わっていますので、ここで訂正します。失礼しました。以上です。

○澤座長 資料はよろしいでしょうか。それでは、早速議事に移ります。まず、議題 1 、「患者登録システムの事例について」を議論いたします。本議題では、既存の患者登録システムの現状などについて前回も御報告いただきましたが、今回も種々の御報告をいただき、今後の議論の参考にしたいと思います。まず最初は、日本人工関節学会で運営されている人工関節登録調査について、埋植型医療機器に係る検討会の秋山構成員から御説明をお願いします。秋山先生、よろしくお願いします。

○秋山構成員 よろしくお願いします。人工関節登録制度は、日本ではまだ始まってそれ程年月が経っていませんが、現在ちょっと行き詰まりがありますので、御報告いたします。

 まず、人工関節ですが、これは股関節の人工関節です。いろいろな形があります上に、またいろいろな材質、またその材質の組合せなど様々な物があります。これは股関節で、これは膝関節。膝関節も同じですが、プラスティックの素材、それと金属の素材、セラミック、またそれをセメントで止めるかどうか、またその形もメーカーによって様々です。これがその素材ですが、現在はセラミックとセラミック、金属と金属、プラスティックと金属、またはセラミック化した金属など様々な素材が発売されていまして、人の体の中に埋め込まれています。これを見てもお分かりのように、いろいろな素材、またいろいろな形があり、それで成績が悪い物、古くなった物はどんどんと市場から淘汰されていっていますが、淘汰されるにはそれなりの理由があるわけです。

 人工関節は、 1960 年にイギリスの John Charnley という方が、金属とポリエチレンの組合せが一番いいというので開発されまして、現在はそれをモディファイしていろいろな物が各メーカーから山のように発売されています。日本には 1970 年に導入されました。当時の物はここで見られるように、大体 20 年ぐらいすると骨が溶けてきます。これはポリエチレンが磨耗して、それによって破骨細胞が誘導されて骨が溶けてくるわけです。それによって人工関節が緩みます。これを何とかしようと各メーカーがいろいろな素材、形の物を開発して、それがこれよりもいい成績になるかどうかを人の体に実際埋めて見ていたわけです。

1 つは、プラスティックは放射線を当てることによってクロスリンクをさせて、これによってプラスティックの磨耗は非常に少なくなりました。現在は大体 0.05mm年 間磨耗しますが、当時の物からすると大体 3 分の 1 から 4 分の 1 になりました。しかしそれでも磨耗を起こすので、 20 年、 30 年入れているとやはり先ほどのように骨が溶けてくるという現象が起こります。

 人工関節の登録制度、その国の全例の物を登録することによってどのようなことが分かるかと言いますと、疾患の把握、インプラントの情報、そのインプラントの成績、また、国別の比較、医者や病院へのフィードバック、成績の良いインプラント・悪いインプラント、またどのような手術をすると成績が良いか悪いかなども全て分かります。

 レジストリーの歴史は世界的には古くて、 1970 年代にまず北欧の国々で始まりました。その後、全世界に広がって、ヨーロッパではほぼ 100 %登録をほとんどの国で確立しています。また、ほかの国では、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどが主に行っていまして、アメリカでは国全体のレジストリーは今のところ成功していません。日本も始めています。一番最初に、このような人工関節のレジストリーがどのような成果を上げたかと言うと、まずスウェーデンから出ています。スウェーデンはこのレジストリーをすることにより人工関節の入替えの手術、再置換率が約 10 %低下しました。これは、アメリカで、もしこのレジストリーが成功していて 10 %再置換率が下がると、年間の医療費は大体 1,000 億円削減できたことが分かっています。

 もう 1 つは、このように経時的に再置換率をグラフに書いていくと、一番上のものと一番下のものの差が大体 3 年すると分かってきます。よって、そのインプラントが全例登録をして結果を見ていると、 3 年間きれいにグラフを書くとそのインプラントが悪いものか良いものかが分かります。例えば、一番上のものは 10 年間で大体 15 %のものが入替えの手術が必要になっているわけです。これはオーストラリアのレジストリーのデータです。

 このレジストリーがどうして最近世界中で着目されてきたかと言うと、実はこの「ニューヨーク・タイムズ」の記事があります。 2010 年にこの患者がニューヨーク・タイムズに載って、この患者は実は金属と金属が触れ合う‘ Metal on Metal ’という機種を手術で入れられたのですが、非常に成績が悪くて、入替えの手術をして、手術をしても痛みが強かったという記事が出たわけです。

 何が起こっていたかと言うと、これは、実は黒い物が股関節のインプラントの周り、筋肉又は骨などに入り込んでいますが、金属と金属が摺れ合うとこのように金属の磨耗粉が散らばります。これが実はアレルギー反応を起こして、骨、筋肉の壊死を起こしてしまいます。これをメタローシス、現在は ARMD と言っていますが、これは非常に強烈でして、金属アレルギーの反応によって腫瘍性の組織ができたり、また炎症反応によって筋肉と骨が完全に壊死を起こしてしまうので、このような症状が起こった患者は人工関節を入れ替えてももはや歩くことはできません。このインプラントの‘ Metal on Metal ’に関しては、イギリスのレジストリーとオーストラリアのレジストリーでいち早く分かって、現在 FDA MHRA においてはアラートがホームページ上に出ています。

 この結果、 2008 年から、このインプラントはゼロではありませんがほとんど使われなくなってきています。また、一部の商品は自主的に企業が製造中止をしています。でも日本では、実はこれは 2 5,000 例ほどこの 10 年間で使われていて、同じような症例がたくさん出ています。これは、アメリカでは現在集団訴訟になっていまして、最初の判例では 1 人の患者に 8 3,000 万円払いなさいという訴訟の結果が出ていますし、現在集団訴訟を呼びかけていまして、企業としては 1 人、大体 3,000 万円を払って合計 3,000 億円払いましょうという話にも進んでいます。日本ではまだ訴訟になっている症例はないそうです。

 また、金属対金属以外にもセラミックとセラミックが摺れ合うようなインプラントに関しては、右下にあるように体の中でセラミックが割れてしまいます。日本でも約 10 年前にこのようなことが多々起こって、全て入替えの手術をされたということもありまして、世界中でもまだセラミックは割れるという危険性があるわけです。このように、インプラントは承認されても実際に人の体の中でどのようなことが起こるかは後になってからでしか分からないわけです。

 日本における人工関節は、現在約年間 17 万例以上行われていると言われています。もともとこの日本人工関節登録制度は、日本整形外科学会が 2006 年から施行を始めて、 2008 年から 130 施設のトライアルを行い、また、 2011 年から現在日本人工関節学会に業務が移譲されています。これは 3 31 日と書いてありますが 10 31 日です。 10 31 日の段階で、現在全国で 152 の施設が参加していまして、登録の総数は股関節と膝関節だけ現在行っていますが、合計 7 万例ちょっとの登録が進んでいます。それで、現在日本人工関節学会では、来年から人工関節登録制度の運営委員会を作って、このようなメンバーで運営を始めたいとして進めています。

 実際の登録ですが、左半分 1 ページに患者と手術のインフォメーションを書きます。右側には、インプラントの箱の中に企業のバーコードシールが入っていますが、それを貼って事務局でバーコードを読み込んで製品のカタログナンバー、ロットナンバーなどを全て登録するようにしています。

 実際にどのような結果が出ているか簡単に御説明します。今年 3 31 日までの人工股関節置換術のデータです。大体 3 万例の登録のデータ解析で登録推移はこのようになっています。性別は日本ではほとんどが女性です。また手術ですが、日本は、実は 50 歳代からこの人工関節を入れる患者が非常に多いのが分かります。よって、寿命から考えると体の中で 30 年はもたないといけないことになります。

 どのような病気が多いか。日本は外国と違ってこの亜脱臼性の股関節症が非常に多いのが特徴になります。あと、手術時間がどれぐらいなのか。また、どのような手術方法で入れているのか。またセメントを使うもの、セメントを使わないものの比率が日本ではどのようになっているのか。また、コンピュータナビゲーションシステムを使っているのかどうか。また、 minimally invasive technique と言って、なるべく、小さい手術で筋肉などを痛めないようにして入れている人はどのぐらい医者としているのか。また、人工関節以外に補強部品を使うことがあります。このような物がどれぐらい使われているのか。また、入替えの手術は日本では何が原因で多いか。日本ではポリエチレンの磨耗によって人工関節が緩むのが今でも一番多いのが分かります。

 そのほか、インプラントメーカーのシールを入れているので、このようにコンポーネントの、どの企業が現在一番たくさん使われているのかも分かるし、また、実際にそのメーカーのどのような機種が一番たくさん使われているかも最初の手術、また入替えの手術別に分かります。また、細かい補強部品はどのような物が使われているかもデータとして取ることができますし、生体活性材料、人工骨が主ですが、このような物がどの程度使われて市場で売られているかというデータも取れます。また、個々の病院に関しては、参加登録病院に関して、全体でどのぐらいの手術をしているかもきちんと登録してもらえばこのようにデータが出てきます。入替えの手術はどこが多いのかもデータが出てきます。

 現在、日本人工関節学会のホームページ上にこのレジストリーのバナーを作っています。ここの所から参加手続もできますし、また 1 年ごとの年次報告書も PDF ファイルで入れています。もう 1 つは、現在、今ちょうど調整中ですが、 UMIN を使ってウェブ登録システムを立ち上げているところで、来年の春までには全ての調整が出来上がる予定になっています。

 では、日本人工関節登録制度の現在の課題について少しお話をします。 2012 年度は、人工股関節で大体 7,800 症例、人工膝関節は 7,600 症例が登録をしていますが、矢野経済研究所のデータが正しいとすると、大体日本は全体で人工股関節置換術は 4 7,000 例、膝関節に関しては 7 万例が 1 年間に行われていると言われていますので、登録率は人工股関節が 16.7 %、膝関節は 10.9 %にとどまっています。

 実は、 ISAR(International Society of Arthroplasty Registers) というのがあって、これのメンバーシップの規定に、 80 %以上の登録率でなければそのデータは信頼性がないということで、 Full Membership をいただいていません。現在日本は、今言いましたように 10 %ちょっとですので、この Associate Membership にとどまっています。

 もう 1 つは、運営予算の問題があります。運営予算は、昨年度までは京都大学医学部の整形外科の委任経理金で全て賄っていましたが、 7 月から福島県の復興予算の関係でそこに事務局を一部移して、 2 年間のみ人件費として 2 人出していただいています。また、来年度からは日本整形外科学会と日本人工関節学会及びインプラントの各メーカーから少し寄附金を頂けるのではないかというので話を調整しています。

 諸外国においては、オーストラリアのレジストリーはほぼ 100 %の登録率になっていますが、これは、政府がほとんど運営予算をサポートしています。ニュージーランドに関してもほぼ 100 %登録が終わっていますが、ここも政府とニュージーランドの整形外科学会がほとんどの費用をサポートしています。ユニークな予算案の編成をしているのはイギリスです。イギリスは、人工関節のコンポーネント、インプラントに実は課金制度をしていて、 20 ポンドを課金しています。よって、大体 1 つの症例で 3,000 円を集めるようにしていて、全体として 3 億円から 4 億円を集めて運営資金にしていると言われています。

 現在のところ、問題点としては、まず安定した運営資金を確保する必要があります。それは国か企業か学会か、また寄附に賄うかなどという問題点が 1 つあります。もう 1 つは、参加率が上がらないことです。まず 1 つは、学会として広報活動はしていますが、義務化するわけにはなかなかいかないので、現在、大体登録率は 10 %から 20 %以内、それ以上なかなか参加してくれる施設が増えないというのが現状になっています。できれば、国から何かそういう義務というか、何かに連動させてほぼ 100 %の登録率が得られるようなことができれば理想的だと思っています。

 もう 1 つは、現在は FDA 又は ISAR などを中心として各国のデータを摺り合わせようという話が出ています。それに必要なのは、やはりコンプライアンスが登録率が 80 %以上なければそういうインターナショナルなデータ解析には参加できないので、そのための専門的な人員とまた予算が現在必要になっています。以上です。ありがとうございました。

○澤座長 ありがとうございました。非常に分かりやすく、人工関節登録制度について人工関節学会の取組を秋山先生からお話いただきましたが、どなたか御質問とか御討議ありますでしょうか。

○大和構成員 先生、どうもありがとうございました。オーストラリアとニュージーランドでほぼ 100 %というお話があったと思うのですが、何か特徴的な工夫とかそういったものはあるのでしょうか。

○秋山構成員 聞いていますが、別に義務化しているわけではありません。イギリスも 100 %近くなのですが義務化していません。まず 1 つ、日本と大きな違いは、手術ができる病院の数が圧倒的に違います。イギリスでも大体 450 施設ぐらいなのです。ところが、日本は実際どれぐらいの病院で人工関節を入れられているか把握できませんが、手術ができる病院は多分 4,800 ぐらいあります。よって、年間に 1 2 例しかしていない病院もすくい上げるとなると、自主的に登録してくださいというのはなかなか難しいと思います。

○永井構成員 イギリスは課金と言いましたが、支払うのは誰ですか。保険者なのか患者なのか。

○秋山構成員 インプラントの中に入っていて、それを何か第三機関が徴収してレジストリーの事務局に払うことになっているそうです。基本的には国がサポートしたそうですが。

○永井構成員 そのお金は業者が払っているということですか。

○秋山構成員 そういうことになります。インプラントの中にプラスアルファーされています。

○大須賀構成員 すみません、先行しているヨーロッパの国々の登録フォームと、それから日本の先生方が作られた登録フォームは大体同じような内容を全部聞かれているのでしょうか。

○秋山構成員 ほとんど同じですが、バーコードシールを入れている所は多分ヨーロッパでもそれほど多くはありません。それのコンピュータ解析を今立ち上げていますが、それはかなり複雑で、ドイツなどは代替システムが出来上がったと言われていますが、大体医者が書いたりとかそういう物で賄っている所が多いです。ただ、ほとんどの施設は、今言ったように、 1 枚医者が書くので、たくさんは書きませんので、 1 枚で全ての情報がというのを心懸けている国が多いと思います。

○澤座長 ちょっと確認なのですが、日本もドクターが手書きなのですか。

○秋山構成員 そうです。

○澤座長 バーコードの分は。

○秋山構成員 バーコードの分も貼っていただいて。

○澤座長 バーコードは貼っておくのですね。

○秋山構成員 シールになっているので、貼って。

○澤座長 器具に付いているものは貼っておいて、紙ベースで登録をサブミットすると。

○秋山構成員 それをファックスか郵送で事務局に送っていただいています。

○澤座長 そしたら事務局側がバーコードを見てということなのですね。

○秋山構成員 はい。

○澤座長 なるほど。それに対してのインセンティブみたいのはあるのですか、書いたドクターに対して。

○秋山構成員 いえ、基本的には今のところは全くのボランティアになっていますので、 UMIN のシステムが立ち上がるとその施設のデータは全て手術の患者の管理ができることにしています。

○澤座長 自分の施設にフィードバック。

○秋山構成員 はい。

○澤座長 データがフィードバックされることが 1 つの。

○秋山構成員 はい。

○澤座長 ほかにいかがでしょうか。

○朝比奈構成員 医療施設がものすごく多い日本は、ですから、メーカーが多いと言っても数は限られていますね。メーカーが入ってくるようにはなってはこないのですか。登録にメーカーがどこに出したというのが分かれば、こういうフォームを出してくださいみたいなのを一緒に付けておけば自動的にいくのではないかなという気がするのですが。

○秋山構成員 それはインプラントメーカーですね、情報は持っていますが患者データを持っていないのです。この人工関節登録制度は患者のデータと手術のデータを入れているので、そこが企業だけでは分からない。

○朝比奈構成員 反対に、企業にそういうデータを付けてインプラントを売るようにさせるとはならないですか。

○秋山構成員 基本的には患者の個人情報なので、これは全て倫理委員会を通してもらっているので、企業とか問屋がデータを私たちに送るとかそういうことは多分できないと思います。

○西田構成員 確認ですが、登録するのは諸外国でも医師がされているのですか。諸外国は一般に医師を手伝うような人たちが多いので、登録率が高い可能性があるのではないかと思うのですが。

○秋山構成員  1 つはそういう方、いわゆる医療秘書のような方がいることもあるし、医者自身が書いていると言っている方もイギリスではいました。日本の施設でも医者が書いているのが多いですが、私の病院ではそういう事務の方がやっている所もあります。

○西田構成員 一般に日本ではそういう方はいない、諸外国に比べたら非常に弱い点なので、登録率が日本で悪いのはそういう点も影響しているのではないかなと思うのですが。

○秋山構成員 それはあると思います。ただ、諸外国は割と人工関節はセンター化していますので、やはり小さい病院は余りやっていないというのがそういう点でもアドバンテージだと思います。

○澤座長 ほかはいかがでしょうか。

○祖父江構成員 国際的に登録率が 80 %以上でないと参加できないということなのですが、登録率をどうやって測定するかというのはスタンダード化されていますか。何かとっていますか。

○秋山構成員 それは分かりません。多分、業者とかの卸とは照らし合わせているのだと思います。

○祖父江構成員  100 %というのはどうやって推定しているのかということですね、数として。

○秋山構成員 そうですね。取りこぼしがあるかどうかはちょっとそれは分かりませんが、基本的には 100 %と諸外国は言っていますが。

○澤座長 ほかにはいかがですか。

○本村構成員 何が分母となるかということも関係するのですが、入力された内容がどれだけ正しいのかというバリデーションはどのようにされているのか、あるいは今後どのようにしていくように考えられているのかをお聞かせいただければ。

○秋山構成員 諸外国でもそれは今問題になっていまして、データのバリデーションはやはり 100 %とか、ヨーロッパの国々ではほかの人員を割いてやっているそうです。日本では、やはりそこまでは今は無理ですのでやっていません。

○澤座長 ほかはいかがですか。あと、私からもう 1 つ、学会として、やはりそうは言っても 80 %以上でないとグローバル化できないとしたら、これはどういう取組を今努力されようとしているのですか、登録率を上げることに関して。

○秋山構成員 日本人工関節学会では、少なくとも評議委員の先生方の施設には参加するようにお願いしているのと、それと今年法人化したのですが、そのときに評議委員の要綱の中に参加することを含めています。日本整形外科学会ではまだそこまではいっていませんが、もともとは専門医を採るための教育研修施設があるのですが、それの要綱に入れていただきたいという要望は出したのですが、専門医制度が 4 年後に代わるので、どうもそのやり方ではちょっと無理ではないかとは思っています。

○澤座長 ほかにいかがですか。御質問等がなければ、秋山先生どうもありがとうございました。大変参考になりました。

○秋山構成員 ありがとうございました。

○澤座長 次に、「 J-PCI のレジストリー」につきまして慶應義塾大学の特任講師の香坂先生に御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○香坂参考人 慶應義塾大学の香坂です。本日は、 CVIT という冠動脈インターベンションを中心に扱っております学術集会の学術委員会で執り行っております J-PCI レジストリーについて、簡単に紹介させていただきたいと思います。

 冠動脈インターベンションは、冠血管内にカテーテル、ワイヤーを通じて進入しまして、狭くなっている、あるいは詰まっている部分を解除するという治療方法です。 1970 年代後半に開発され、 1980 年代、 1990 年代から循環器内科の心臓の、狭心症、心筋梗塞、そうした虚血性心疾患の中心的な治療法として確立されてきております。現在、こちらにありますとおり、日本の 755 の施設において J-PCI の登録は、年間、 18 6,770 件となっております。症例数にしますと、 15 3,516 例となっております。

 年間の登録症例数です。こちらの J-PCI が始まりましたのが 2008 年で、 2009 年、 2010 年、 2011 年、 2012 年と、年を経るに従って、 10 万人規模、 15 万人規模、 20 万人規模と、順調に症例数を伸ばしております。赤い線で引かせていただきましたのが、このあと説明があるかと思いますが、心臓血管外科のデータベース、つまり、心臓バイパス手術による手技との比較で出しております。こちらの比率が、日本では国際的に PCI のほうが多い比率となっておりまして、 10 1 ぐらいの割合となっております。一般的には、大体 4 6 1 ぐらいかと思います。

 この 18 万という数値ですが、どのぐらいに相当するのかを表しておりますのがこちらの表になります。 J-PCI レジストリーの 2012 年の PCI の症例が大体 18 万例としまして、診療実態調査として毎年各施設にアンケート調査で、どのぐらいの症例を行っているかということで調査させていただいている症例が大体 24 万例ということで報告が上がっておりますので、その中の大体 75 %程度が登録されているという算段になっております。そのほか、こちらに Elective 、つまり、予定で行われる PCI と緊急で行われる PCI 、そして、急性心筋梗塞の症例 (AMI) として提示しております。あと、施設ごとの件数別の割合もこちらに提示させていただきました。

PCI を受けていらっしゃる方のデータ数が大体 15 万例ということなので、年齢の分布がどうなっているかということを見せていただきますと、 104 歳の方などは極めて例外的ですが、大体、日本の人口の分布に沿うような形で出てきています。例えば戦争の影響で出生率が減ったところは、やはり PCI の件数も減っている。あと、出生減少はほかにもいろいろと原因がありますが、そういったところは、この PCI の件数にも反映されているところは見えるかと思います。平均年齢は、冠動脈疾患の疾病を持っている方の年齢と大体合っておりまして、大体 68 歳から 69 歳ぐらい、中央値は 71 歳となっております。これは、国際的なスタンダードと比べるとかなり御高齢の方が多いということになります。米国の統計では、大体 63 歳、 64 歳というところですので、この辺りも、日本の冠動脈疾病の構造が少し違うのかなということを物語る内容となっております。

 続きまして、患者さんの背景についてです。 J-PCI レジストリーのほうは医師の自発的な登録というシステムをとっております。医師のほうで、自分が行った PCI に関して、その場で、あるいは週にまとめて、月にまとめてという形で登録される方が多いと伺っていますが、その疾病背景、男性が多いとか、高血圧、糖尿病、高脂血症、そうしたリスクファクターの多さ、この辺りは国際的な基準とそれほど変わりがないという結果が出ております。糖尿病が、逆に欧米と比べて若干多いかなというところも出ております。そして、この辺りで国際的なところと一番違うところは、 PCI の既往、 1 PCI をやられていて、 2 回目、 3 回目で PCI で入られる方、冠動脈インターベンションで入られる方が非常に多く、バイパス症例で PCI インターベンションに入られる方が比較的少ないというのは先ほどの 10 1 という比率が反映されているところかなと思います。

 入院時の診断名についてです。冠動脈が、心臓の血管が詰まってしまう病態は、急に詰まってしまう、いわゆる急性心筋梗塞あるいは不安定狭心症といった病態のほかに、徐々に徐々に狭くなって症状が定期的に出てくるような、安定狭心症といったような病態もあります。その割合が、大体 1 1 というところになっております。これは患者さんに御高齢の方が多いというところも反映されるのですが、欧米と比べますと、緊急カテーテルの症例が 5 %から 10 %程度少なくなっているというところが少し特徴的かなというところになっております。

 こちらの表ですが、今現在 J-PCI で進めておりますのが、定義を国際的な標準に沿って統一しようということです。下のほうの NCDR ACC と出ておりますのが米国の PCI( 冠動脈インターベンション ) の登録システムを担っている学会あるいは組織ですが、 J-PCI の定義もなるべくそちらの定義と合わせて同じスタンダードで、高血圧ならば、これが高血圧だ、出血の合併症が起きたら、これが出血の合併症だというところの定義をそろえようというところでここ 2 年ぐらいは動いてまいりました。その定義も大体統一化ができてきましたので、あとは、米国のレジストリーが大体 150 項目、日本の J-PCI の項目は、医師が自発的にやっていて 1 10 件ないし 20 件やるような施設もありますので、そういった所の負担にならないように大体 20 項目から 40 項目というところに落ち着いていますが、それをどこまで近づけるかというところが昨今の課題となっております。

 レジストリーがなぜ必要だったかというところの背景について少し説明させていただきます。 1 つは患者さんの視点の問題です。自分たちの知識が果たして、欧米から主に入ってくるエビデンスにのっとったガイドラインで日本の患者さんを治療していって正しいのか、さらに、近々で行われてきている大規模ランダム化研究の結果がそのまま当てはまるのかどうかというところも、後付けで日本人のデータを取っていかなければ何も分からないというところがあります。その検証のために J-PCI のデータを大ざっぱなところでつかめないか、ということで使っております。

 例えば、 65 歳の方で急性心筋梗塞で明け方に来院された方がいらっしゃいましたと。 6 時半にチームが集合して責任病変に対して PCI を行ったところ、院内の経過は、太股の部分からカテーテルインターベンションを行うのですが、そこから少し出血があったと。出血がありましたが問題なく 1 週間ぐらいで退院されてお薬を導入されたという方なのですが、この出血があったということをカルテに書いてしまうと、 1 行だけなのです。これがどのぐらいの割合で起きていて、どういった影響を及ぼしているのかというところを見るのは、大きなデータベースがないと分からないようなことだと思います。といいますのは、出血が起きる確率は全体の症例からすると 4 %ぐらいで、例えば 1 週間に 10 例ないし 20 例やっているような施設でようやく 1 例、 2 例あるといった程度で、経験の中では見過ごされてしまうようなことを大きなデータベースを使って組織全体あるいは術者全体にフィードバックをかけていくといったことをしております。

 これはこちらで解析させていただいた内容ですが、例えば喫煙の方、透析の方、そして、緊急時に行われるようなインターベンションには非常に気を遣う必要があるということを。これは 4 %の症例、 19 万例、 18 万例ありますとそれなりの、何百例、何万例という数になりますので、どういった方がなりやすいのかということを階段付けしやすくなります。そういった生きた情報を現場の先生方にフィードバックしていくということがデータベースとしての 1 つの、患者さん目線からすると大きな役割ではないかと考えております。

 もう 1 つは少し大きな視点で、パブリックのほうからどういった役割を果たすことができるのかということです。これは私どもで将来的な課題として捉えている部分が多いのですが、 2 つの事例を紹介させていただきます。

1 つの事例は、これは米国での PCI レジストリーでの社会へのフィードバックという観点で論文として発表されたものですが、マサチューセッツ州で PCI の結果を全例登録しましょうという法律が整備されまして、その登録が始まってから成績が出るようになりました。成績が公表されるということで、どれだけ急性心筋梗塞の治療に影響を与えたかというものです。マサチューセッツ州で登録が始まりますと、急性心筋梗塞に対するインターベンションの割合が、こちらのグラフに図示されておりますとおり、少し減りました。少し減りましたが、急性心筋梗塞全体の 30 日間の予後は変化がなかったということなので、これはもしかすると、成績が公表されることによってハイリスクの症例で PCI インターベンションをやることによって危険率が増すような症例がうまく避けられるような効果があったのではないかということが示唆されております。

 まだ中身まで解析ができていないようなところがありまして、外から見てこういうところがありましたというところで参考程度に過ぎないのですが、レジストリーの中で、より適切な症例が選ばれるようになったのではないかと言われております。

 もう 1 つは長期的な予後を追ったものです、どういう施設で行われた PCI が一番結果が良かったのかということを。一般的には Volume が多ければ、つまり、 PCI をたくさん行っている施設であれば、手術をたくさん行っている施設であればあるほど成績がいいのではないかと取られておりますが、我々、安定している PCI を行うに当たりましては、その前に患者さんに少しバイクをこいでいただいたり、あるいは走っていただいたりして虚血の評価を行うことが通例となっております。その虚血の評価を行わずに安定している症例に対して急にインターベンションを行ってしまうと少し Quality が落ちるのではないかと言われているのですが、こちらで high Volume PCI high Volume の付加試験を行っている施設が一番成績が良く、付加試験の Volume low PCI Volume だけが high というのは、このグラフの中で、赤の線になりますが、一番成績が悪いとなっております。ですので、高い Volume でやればいいという問題ではなくて、適切な形で手術あるいは PCI を行う前の試験が行われているかということも検証されなければならないということの 1 つのメッセージかと思われます。こういった方向で、医療の Quality 又は Outcome に対してレジストリーから貢献できるということも 1 つのポイントかと思われます。

 米国では Physician Quality Reporting System が法令化しているのですが、レジストリーに登録することによってこの PQRS がカバーできているということが 2012 年に法律で通りましたので、このレジストリーの登録が患者さん側への寄与に直接つながっているということで、もうこういった登録が法的に要求される時代に入ったと言われています。

 ここで私は、米国の経験と日本の経験とを比較しましてこういったレジストリーに対するスタンスの違いを少しだけ述べさせていただきたいのです。

 米国は、こうして Taxpayer に対してデータを返さなければいけないという視点が強いかと思います。そのために法律でデータをどんどん、州ごとに出しなさい、あるいは病院ごとに出しなさい、個人で出しなさい、というところがどんどん立法化されております。それが driving force となって、主に施設が人を雇ってそれぞれの術者のデータを出していく。それによって、自分たちの施設、自分たちの病院の術者のデータをそのデータベースセンターからもらうことで少し金銭、あるいはサービスのやり取りみたいな形でこういったデータベースが動いているという所が一般的で、医師は手術あるいは PCI を行うけれども、データの登録は病院側で人を雇ってやって、結果的に病院側は術者に対する成績表を手に入れることができるという動きでやっている所がほとんどかと思います。そういった所が、年間、これこれの金額をデータベースセンターに払って、その結果、データが返ってくる、というようになっています。

 これに関して、 J-PCI をはじめとする日本の registration system は学会ベースのものが担っている所がほとんどですので、専門医制度あるいは施設認定制度のデータの登録が医師に対する driving force となっていて、金銭的なやり取りは極めて少ないというところが日本のデータベース登録の unique かつ Quality が高いところかと思うのです。その辺りのことをどういかしていくのか、あるいは、このまま医師主導のものに頼り続けていいのかというところは、これから、 J-PCI のほうでも議論を続けていかなければいけないところかと思います。

 最後にこうした登録システムで寄与できるポイントとしましては、直接的なのですが。 PCI レジストリーでは植込デバイスの登録も行っております。例えば、植込デバイスとしてはステントや金属性のメッシュを入れて再狭窄を防ぐというものが一般的なのですが、それが何パーセントの割合で使われているか。この中で DES と書かれているものが薬剤溶出性ステントといいまして、抗がん剤を塗ったステントになります。その抗がん剤の使用率が全部の PCI の中で大体 73 %となっていますが、日本中の施設からデータが集まってきますので、これはそれぞれの PCI でこの薬を塗ったステントが使われている割合がどうかというところを色別に示したものですが、やはり、理由までは掘り下げることはできないのですが、地域間格差が明らかにある。その PCI の中で全く使っていないような都道府県もありますし、ほぼ 100 %の症例で使われているような県もあります。そういったところの違いをあぶり出すことによって、どちらの方向に向かっていくべきなのか、あるいはここに介入する余地があるのかというところを検証するようなことができる可能性を秘めております。

J-PCI のこれからの PCI あるいは監視下のインターベンションに対する活用としましては、こういう大きなパイを 1 registration system として用意しておきまして、疑問が上がったデバイスあるいは疑問があった治療法又は合併症に関してうまくピースを切り出してきて、その部分のデータをより深い所で 1 年間に限って頂く、あるいは登録していただく、そして、その解析を進める。あるいは、こういった集団の症例に関してフォローアップが必要なので、こういった方に関しては、 180 日間限定でフォローアップをお願いするといった活用法が考えられております。ほかの、データクリーニングとかデータの Quality の向上に関しては、これから学会のほうで予算と相談しながら、どんどんその Quality を高めていこうというところかなというようになっております。こんなところで J-PCI の紹介を終わらせていただきます。御清聴のほど、ありがとうございました。

○澤座長 ありがとうございました。御質問等はいかがでしょうか。これは確認ですが、これはドクターが自主的に入れているのですか。

○香坂参考人  7 割から 8 割ぐらいの施設ではドクターが入れておりまして、 1 割ぐらいの施設では専属のコーディネーターあるいは事務の方が登録していると書いてあります。

○澤座長 それにしても、これは学会が何か、プロモーションの仕方ですけれども。これはかなり率が高いですよね、 75 %ですか。それは学会側が何かしているのですか。

○香坂参考人 学会で行っていることとしましては、専門医あるいは認定医は、レジストリーに登録されている症例でしかカウントできないということは、実を言うと非常に大きいかと思います。あとは、登録することによって、あとで外科からも話があるかもしれないのですが、学会でそのデータを使って発表しているものに関しては、少しマークが付くとか、また、登録されている症例に対して、施設別にああいった成績のフィードバックを返すようなシステムを構築して提供しているというところがあるかと思います。

○澤座長 運用の費用は学会がやっているのですか。

○香坂参考人 運営の費用は、当初は学会から出ておりました。今も学会から出ている形なのですが、研究費の形でも少し補助を頂いているものがございます。

○澤座長 企業は関係していない。

○香坂参考人 そうですね、企業は全く関係しておりません。

○澤座長 ほかにはいかがですか。

○永井構成員 これは PCI を行った時点の断面調査ということですか。

○香坂参考人 そうです。

○永井構成員 そうすると、フォローアップ・スタディはないわけですね。

○香坂参考人 おっしゃるとおりです。

○永井構成員 外科だったら断面調査である程度実態は分かるのですが、再狭窄がどうだとか、長期の合併症予防などというと、そこはカバーしていないということになりますね。

○香坂参考人 そのとおりです。その辺は欧米でも少し問題になっております。欧米のほうでは、 Medicare Medicaid 65 歳以上あるいは貧困者を対象としたデータベースと結合することによって生死だけは分かるようにというところで研究が進んでいるところかと思います。

○澤座長 長期のレジストリーにまでは至っていないということですね、結局は、今のところは。

○香坂参考人 そうですね、 18 万例という数なので。長期をやるのであればある程度、どの疾患に絞るかということになるかと思います。

○一色構成員 少し補足させていただきたいと思います。私はインターベンションの治療学会のほうの、今日、香坂先生に来ていただくことでお願いした張本人なのですが、少しだけ補足です。

 やはり学会主導でやっているレジストリーの一番の弱点は、先ほどの彼のデータにもありましたが、 750 施設程度の参加施設なのです。現実的には今、恐らく 1,500 からそれ以上の施設が日本では、インターベンションはされているという事実があります。ですから、参加していない施設が登録率として、概算で約 25 %ぐらいの症例分があるのではないかということですが、強制力は持っていないということになるのだと思います。

 それから、全く学会に属さなくてもできるわけなので、専門医は私は全然要らない、だから登録もしないという、意図的に絶対入れないという人たちが入っている。そういう所の施設のデータはもしかするとレベルが低い可能性があって、成績を下げている可能性があるのですが、そういう所のデータは全く反映されてこないという、その辺はちょっと限界になるのだろうと思います。

○澤座長 ありがとうございます。ほかに何か御質問等はございますでしょうか。これは今後どのような方向に、今、一色先生が課題をおっしゃいましたけれども。これは、やはり運営していくに当たって、学会の費用とか、かなり負担になっていますよね。これはまだ学会で継続的にやっていかれるような。

○一色構成員 この点は香坂先生のほうがいいのかもしれないのですが。結局、症例数が非常に多い分野なのですよね、年数を経るごとに膨大なデータベースになっていくということなので。その辺をホールドしていくのが、学会で単純にやっていけるのかどうかということについては、やはり非常に危惧しているところがあります。先ほど、これも香坂先生のお話の中にありましたが、それから整形外科の話もあったと思いますが、国によっては義務化しているわけなので、やはり義務化して、いわゆる保険の支払いの条件に入ってくるようなことをしないと全例登録は到底及ばないと、逆に言うと、そういうシステムにすれば必ず登録されるようになるという、そういう仕組みではないかと思います。

○澤座長 ありがとうございます。

○永井構成員 ただ、これは、全例登録すればよいのかという話でもあると思うのです。実態調査をするのにはよいかもしれないですが、大事なのは、予後や費用対効果です。そこまでをスコープに入れておかないといけないのではないかと思うのですが、そこはどうですか。

○一色構成員 そうすると結局、目的が何かということに尽きると思うのです。ですから結局、予後調査ということになってくると、これは非常に膨大なパワーが必要になってきますし、その症例がどうなったかと。例えばそこの患者さんについては、全く別の医療施設でフォローされている患者さんのほうが多い現状になりますので、やはりシステムを、何を目的にして、どういうレジストリーをするのかという、その成り立ちの問題が非常に大きくなってくるかと思います。

○澤座長 ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。先ほどの整形外科の人工関節のデータベースも参考になりましたが、 J-PCI のほうも、非常にアクティブにやられながらの中でのいろいろな課題も、これから我々が議論していく上でかなり参考になったかと思います。香坂先生、どうもありがとうございました。

 それではもう 1 つ、日本心臓血管外科手術データベース (JCVSD) について、本村構成員から御報告をお願いいたします。

○本村構成員 よろしくお願いいたします。私は心臓外科医でデータベース立ち上げ以来現在 14 年目になります、日本心臓血管外科手術データベースの話をさせていただきます。これまでの成り立ちと、現状で、今、何ができるかということをお話させていただければと思います。

 もともとは心臓外科というのは、いろいろな侵襲度が高いのは皆さん御承知のことと思いますが、その中で我々がどれぐらいの成績を出しているのかというのが、実は自分たちのことを自分しか知らない、全国的にどうなっているか分からない。それが十数年前にランキング本などというものが出まくりまして、特にそういったところでは心臓外科がターゲットになって、いろいろな有名な外科医の方、病院が出て、それが本当なのかどうか誰も知らない、外科医も知らない、もちろん国民の方々も分からない、誰も Control できない、マスコミは面白く書き立てる。そういう状況があり、やはりそれはまずいのではないか、そういったことは自分たちで Control すべきではないかということが、非常に強い気運となり、我々の究極の目的としては、 Quality を良くする、我々の Quality を良くすることによって、国民の方々の福祉向上に努める。これが我々のこのデータベースを構築することによって達成されるのではないかということで始めました。

 発端は、 1999 年にアジアの心臓血管外科学会の理事会で話題になりまして、実は、それよりも先立つこと 10 年以上前から北米では STS National Database という巨大なデータベースがあり、ヨーロッパでは EuroSCORE というものを中心とした非常によくソフィスケイトされたデータベースができていました。北米とヨーロッパでこういったきちんとした巨大なデータベースができていて、何でアジアではできていないのだというのが話題になりました。ところが、アジアでこういったことができるとはとても思えない、混とんとした地域でできるとは思えないということで、まずは日本でパイロットスタディ的にやってくれと。それでうまくできそうであればアジア全体に広げようというのがきっかけで始まりました。

2000 年に帰ってきて、学会でディスカッションして、 UMIN というのが東京大学にありますので、東京大学が中心となってこういったものを作ってほしいということになりまして発足いたしました。最初は 5 施設だけで始まり、もちろん学会からサポートはしていただきましたが、完全にボランタリーな状況で、強制力ゼロ、やりたい人だけ集まってくださいということで始まりました。入力項目は、北米のデータベースと全くイコールにしました。コピーペーストしました。そうすることによって、将来、北米と日本の成績を極めてイーブンな形で比較検討することができるという意味をもって北米のデータベースとイコールにしております。

 少しずつ参加施設が増えてきまして、ただ、参加施設が増えるのも非常に苦労しました。というのは、このデータベースは大体 1 人の患者さんで 150 200 項目ティックしないといけません。 A4 のページで言うと大体 10 数ページになります。心臓外科医というのは非常に忙しい人種で、それを激務の中でやるのは非常に抵抗があってなかなか参加していただけなかったのですが、学会でいろいろとアピールしたり、宣伝したり、インセンティブを付けたりなど、メリットを宣伝して、やっと少しずつ増えてきました。 2008 年には、そのデータの解析をすることによって予測死亡計算式、 JapanSCORE と呼んでいますが、それができるようになりました。これはまた後で述べます。それを契機にして参加施設がグッと増えました。

2011 年には、それが発展的に National Clinical Database という、外科関連 9 学会から 11 学会合同で構築するような、全日本の外科全体のデータベースに発展しました。そして 2011 年からは、心臓血管外科専門医の申請とリンクしました。つまりは、心臓血管外科の専門医を取りたい人は、このデータベースにデータを入力しないといけないというルールを作りました。そうすることによって、専門医が欲しいという、あるいは更新をしたいという外科医は、全てこのデータベースに入力をするというスキームが完成しました。そうすることによって、また述べますが、今は 500 以上の施設、ほぼ全ての病院がこのデータベースに参加しているところです。

 運営体制ですが、このデータベースの事務局がありまして、これは任意団体です。この任意団体を日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、そして先天性の心疾患を扱っている小児循環器学会、この 3 つの学会がサポートしてくれています。そして、この事務局の中に幹事会、学会で言うと理事会のようなものですが、最高決定機関、そしてその下に 3 つのワーキンググループ、データを誰がどのように使うのか、どうやって公表するのかを吟味するデータ利用検討委員会、そして、項目が本当に正しいのか、曖昧でないのか、何を今後変えていうべきことなのかを吟味する項目検討委員会、そして、その入力されたデータが本当に正しいのか、オーディットをするという意味で、病院を直接訪問するというサイトビジット検討委員会、この 3 つのワーキンググループを立ち上げて走らせております。

 これが、累積のデータの入力数です。これは成人部門だけです。先天性部門は入っていません。当初 5 施設でこのように入っていまして、現状では大人の施設だけで 516 施設、先天性を入れると、子ども病院という大人をやっていない病院がありますので、それを入れると 540 以上です。累積で言えば、大人だけで 22 万件入っていまして、昨年 1 年間、 2012 年で、大人だけで言うと 5 840 件入っています。これは、我々が既に日本胸部外科学会が別のアンケート調査で知っている大人の症例、大体 5 4,000 ぐらいの数の、ほぼ 90 %以上の数が既に入っています。ということで、ほぼ 100 %の日本の心臓外科の症例がここに入ってきているのが現状です。

 これが入力ページです。我々は Web-base でして、ログイン ID とパスワードを各施設のデータマネージャーに発行していて、そこでウェブ画面にログインしていただいて、このウェブ画面から直接入力をするという形式です。こうすることによって、例えばファイルメーカーやエクセルで入れておいて、年に 1 回、年に 2 回、ボンと入れてもらうよりも極めて安価に、そして、項目が変化したときも、セントラルのほうでこのプログラムを変えてしまうだけで、すぐに出き上がってしまうということで、このログイン ID とパスワードさえあれば、世界中どこからでも入力しようと思えば簡単にできてしまうというシステムでやっております。

 術前の危険因子が、大体 33 項目です。この 33 項目を入れて、術中の項目をまた数十項目、そして、術後の合併症の項目を入れて、これは急性期だけですが、大体術後の 30 日目に生きたか、死んだか、この 30Days 30 日後死亡率を中心にして登録をしています。長期のフォローアップは、項目は持っていますが、必須項目とはしておりません。オプションとしております。ですから、病院によっては、真面目にずっとフォローアップを 5 年間入れてくれている所もありますが、基本は 30 日までの成績です。

 基本的には外科医が入力していますが、こういった作業はすごく煩雑なものですから、なかなか入れてもらえませんでした。そして、外科医に対するインセンティブをどうするか、我々はお金を持っていませんのでお金を配るわけにはいきません。したがって、いろいろなことを考えました。

1 つは、術前のリスク計算式を配る。それを日々の臨床の現場で使っていただく。 2 番目は、施設レポートのフィードバック。自分たちの成績、合併症の発生率がどのような数字であるのか、それが全国と比べてどの位置にあるのかを、瞬時に分かるようなシステムを作りました。 3 番目ですが、いろいろな学会がいろいろなアンケートを持ってきます。年間、こんな弁膜症疾患をどれくらいやっているのだとか、例えば、ある学会が冠動脈のバイパス手術の極めて細かいことを何例やっているのだなどというものを、いっぱい学会が聞いてきます。全ての医局がいろいろなアンケートを頭を悩ませながらやっているわけです。このデータベースにきちんと 100 %入力しておいていただければ、そういったアンケートにもコンバートして、瞬時に年 1 回出せるようなコンバーターを作って、その先生方に使っていただけるようなサービスをいたしました。こういった 3 つのサービスを始めて、随分参加が増えるようになりました。

JapanSCORE というカリキュレーター、サマリー機能、そして、基幹学会アンケートへの入力支援です。最初が JapanSCORE ですが、これはヨーロッパで既に 20 数年以上の実績がある EuroSCORE が、実は世界中に広がっていたのですが、これの日本版です。これは UMIN ID というもの、医療機関の方であれば御存じだと思いますが、 UMIN が発行する ID とパスワードを持っていれば、誰でもが世界中からアクセスして利用することができます。こういう JapanSCORE を検索していただくとすぐにヒットします。ページを開いていくと、最初にこういうページが出てきます。男性か、女性か、年齢、そして心臓外科ですので、バイパス手術なのか、弁置換や弁形成の弁膜症の手術なのか、あるいは大動脈瘤、大血管の手術なのか。そういう大きく 3 つのカテゴリーに分けて、我々は計算式を作りましたので、まずそれを選んでいただきます。

 そうすると、例えばこれはバイパス手術ですが、これぐらいの 15 項目ぐらいの入力のページが出てきます。これをティックしていくわけです。そうすると、瞬時に 30 日プラス、 30 日以降でも、要するに退院できずに亡くなった方、いわゆる手術死亡率、院内死亡率が出てきます。あるいは、それプラス、死ななかったとしても合併症、透析になってしまったとか、脳硬塞を起こしてしまったとか、縦隔炎になってしまったとか、そういった主要合併症も合わせたパーセンテージが瞬時に出てきます。

 この例では死亡率が高そうに見えますが、これは 80 歳の透析患者さんで、術前脳梗塞もあってという、非常に重症な方の数字ですが、いずれにしても、こういったものがすぐ分かります。したがって、患者さんへの説明をするときに、あなたの、我々日本全体のデータを使っての予測死亡率が何パーセントですよというのが、下一桁まで出ます。ですから、例えばこれを、バイパス手術プラス弁置換をしようとしている、それを弁置換を加えるべきかどうかというときに、弁置換を加えた場合、バイパスだけでやった場合、あるいは弁置換でも 1 弁だけの場合、 2 弁置換をやった場合をそれぞれやり分けて、数字を変えて患者さんに提示することができます。そして最終的には、その患者さんが決定する。そういう情報提供、極めて正確な数字をお出しすることができるということは、臨床現場としては非常に大きなメリットだと思っております。

 さらに、例えば内科の先生であれば、こういった、自分が心臓外科に紹介をしたいと思っている患者さんがどれぐらいのリスクであるのかを、極めて正確に数値として把握できる。「これぐらいのパーセントであればバイパスに回しましょう」とか「これだけ高いパーセントなら、やはりステントにしましょう」などといったことが、内科の先生方でも分かるという、そういったことが今すぐにでも世界中でできるということです。

2 番目は、フィードバックレポートです。こちらにあるのが、その施設、これはウェブでポンポンと入れていただくと、もちろん自分の施設だけですが、何月何日から何月何日までの自分の所のデータを、 enter key をポンと押すと、ザッと出てきます。自分の所の合併症、バイパスの場合、弁の手術の場合、大血管の手術の場合、 3 つのカテゴリーにページを分けて、全てそういう合併症の発生率が全部出てきます。この横には日本全国のデータが下一桁のパーセントまで出てきます。したがって、まずは男女差から、平均年齢から、 30 日の院内死亡率から全て、全国の数値と自分の施設とを比べることが瞬時にできます。しかも、その期間を区切ることができますので、例えば術者が替わった、教授が替わった、部長が替わった、あるいは 1 年間のサマリーを簡単に、瞬時に行うことができるわけです。

 そして、合併症の中でも、例えば再出血が多いとか、感染が多いとか、脳梗塞が多いなどということが、分野別に、項目別にすぐに分かるようになっていて、自分の病院がどこに弱点があるのか、どこが強いのかなどということがすぐに分かるようになっていて、こういったことを日々見ることによって、自分たちの施設の Quality Improvement に直結することができるということになっております。

 胸部外科学会が毎年膨大な詳細なアンケートを提出しなさいというふうに来ます。これがまた、非常に各施設に大きなストレスとなっているのですが、このデータベースの 250 項目にきちんと全てのデータを入れていただいていると、このアンケートにほぼ間違いなくコンバートできるというサービス、システムです。ですからこれは、その施設が 100 %入っているのが条件ですので、このコンバーターが使える条件としては、去年 1 年間、自分の施設は 100 %入れましたよということをメールあるいは書面によって事務局に届け出た人だけに、これを使えるボタンを提供するというサービスをしております。したがって、そこの施設は必死になって 100 %入れる、そういったこともインセンティブになっているかと思います。

 これが 3 つのワーキンググループです。その中のデータ利用検討委員会です。これは我々のものすごい膨大なデータ、血と汗と涙の結晶だと私は思っておりますが、そのデータを誰が解析して、誰が使うのか、そしてどこに、どのようにアウトプットするのか、誰のためにするのか、誰の金を使ってやるのかなどといったことを検討する必要があります。これは極めて透明性が高くやらなければいけません。したがって、この検討委員会というのは、言わば教授クラス、理事会クラスの先生方に集まっていただいて、それに対して全国から公募を募ります。学会に抄録を出すようなフォームに、何年から何年までのこの項目を使って、こういう目的で、こういう分析をしてほしい、そして、これはどこに発表します、どういう形に使いますというようなことを出していただいて申請します。それを年 2 回、この委員会を立ち上げて審査しております。これがそのフォームです。

 この分析の費用にもお金はかかりますので、今のところは学術的にアカデミックな目的に使う場合は、基本的には無料でやっています。そういったことを含めて、もしそういう資金があれば、科研費を取ったのでそれを使って解析をしてほしいなどといったことがあれば、我々としては助かりますので、そういったことも記入して提出していただいています。ただし、データはきっちりと入れておいていただかないと、自分のところは全然入れずに全国の何万件のデータを使わせろというのはちょっとまずいと思いますので、少なくともその施設は過去 2 年間は入力が完了している、 100 %入力しているというのが証明された施設だけに手を挙げていただくという条件を課しています。

 これが現在進行形のプロジェクトです。これは我々のホームページに随時載せておりまして、今、どういうプロジェクトが申請をされて、アクセプトされて、走っている。そして、こういうプロジェクトはもう既に論文までいっているというのが全て分かるようになっています。したがって、二重に投稿したり、二重に何も知らずにダブルブッキングをしたりということがないようにしています。

 今まで原則的には英文論文で出していただくようにしていますが、我々のデータを使った論文が既に 10 篇以上出ています。当初は、我々事務局を中心にして、全体のデータを使ってのリスクモデルを使うなどといったデータ解析の論文ばかりでしたが、ここ数年は、各施設から、小さなマイナーな病院であったとしても手を挙げていただいて、アイデアが良ければ、そして、委員会が「よし、オーケー」と出せれば、そこの方々に解析の結果を使っていただいて学会発表、そして論文化していただいております。非常に大きな病院からマイナーな病院の方々まで、様々に活用していただいております。

 そして、何よりも我々がすばらしいと思ったのは、日本中のデータの成績が、実は非常に良いということが分かりました。学会レベルでシンポジストとして出てくる先生方のデータはもちろんいいのです。世界的な成績ではありますが、日本中、おしなべて何百施設の数字の平均値が、正にアメリカと同等、あるいはそれ以上に良いというのがサイエンティフィックに証明されました。これは、もちろんアメリカに発表いたしましたが、欧米もびっくりしましたし、何よりも日本人がびっくりしました。諸先輩方からは、やはりすばらしい、日本の成績は世界に誇る、平均値として世界に誇るデータであるというのが分かったということで、非常に励ましの言葉を頂きました。そして、私はいろいろな学会で心臓外科の先生方に、「これまで日本の心臓外科医の成績は悪いというか、国際学会に行っても非常に肩身の狭い思いをしていたかもしれませんが、これからは堂々としていてください」と。「廊下の隅を歩くのではなくて、廊下の真ん中を歩いてください」と。「日本の心臓外科の成績は良いのです」ということを胸を張って言えるようなことができたとも思っているわけです。

 サイトビジットというのは 2 つ目の委員会ですが、この我々のデータが良い、良いと言っても、本当に良いのか、それは誰も分かっていないわけです。ですから、このオーディット、バリデーション、データの信憑性を確める必要性がありますので、我々は毎月、月に 1 回、病院訪問をしております。これは査察という意味ではなくて、その病院のデータが本当に正しく入力されているのか、あるいは入力項目の定義が曖昧なために間違ったことをやっていないのか、ミッシングデータがあった場合、どうしてそこがミッシングになっているのかを、我々事務局と現場の先生とが十分ディスカッションをする場、そして、より良いデータベースを作る場として、前向きな意味でのサイトビジットとしております。

 これまで 69 施設、直接行っていまして、日々の手術台帳を見せていただいて、それと過去の我々のデータとが正しいかどうかを、基本的には数の上では一例漏らさずチェックしております。死亡例に関しては、全例カルテを挙げていただいてチェックしております。そして生存例に関しては、アットランダムに 5 %ぐらいの数のカルテを挙げていただいて、データベースとチェックをしているわけです。齟齬がある場合には、それをお互いディスカッションして、レポートをお返しするようにしています。そして、例えば 1 か月以内にそのデータをリファインしてくださいとお願いして、リファインをしていただいたものを最終確定としているわけです。したがって、この 69 施設に近い病院の入力データは、もう既にほぼ完璧と我々は考えております。

 こういったデータが、データベースを使うことによって本当に Quality が上がっているのか、 Inprovement につながっているのかというのがこのグラフです。これは、赤線がデータベースの初期参加施設の 44 施設です。つまり、最初からこういうデータベースということに興味があって、これはやはり我々のためになり、患者さんのためになるであろうという志を持った施設であろうと私は信じているわけですが、そういった方々の、これはバイパス手術の成績です。これが、年を経るごとに改善しているわけです。 1 パーセント未満の死亡率まで下がっているわけです。全国平均も下がっているのですが、ここまでは下がっていない。そして、途中から参加した施設、要するに「まあどうかな。これはしんどそうだから余り参加するのもどうかな。でもまあ、たくさんの所が入ったからやっぱり我々も入ろうかな」という半信半疑で入っていただいた 87 施設はなかなか激的には下がってこないというふうなことです。

 したがって、やはりこのデータベースに志を持って入っていくという、データを日々入力する、そしてそういうフィードバックを活用するということが、このデータの改善につながっているのではないかと思っております。このようなシステムが、外科学会全体に認められて、我々のシステムが NCD としてコピーペーストされて、今、日本中に広がっているところです。

 我々のデータを使ってどういった具体的な数字が出るかというのを、 Volume-Outcome というバイパス手術を例にしてお示ししたいと思います。これも英文でパブリッシュされているので詳細に見ることができるデータですが、要するに、施設のバイパスの手術数とその成績が、やはりその数によって変わってくるというデータです。バイパスの年間手術症例が 15 以下、 30 まで、 50 まで、 51 以上という 4 段階で分けた場合に、その 30 日死亡率が、小さい病院では 3.8 %あるのが、大きい病院では 1.61 %、 2 倍以上離れてしまうというデータです。これは Risk-Adjusted しておりませんので、簡単な症例では低く出る、難しい症例では高く出るというものをアジャストしていない数字です。

 これはもう少し詳細に行ったデータで、 3 段階に分けた、これは我々のデータベースを使ったものですが、やはり 30 50 51 以上で区切ると、これぐらい数字が大きく変わってしまう。そしてそれが、数というのが、病院全体での数なのか、 Surgeon 一人一人の数なのかによってどちらが効いているのかを調べました。病院ごとの数、 Surgeon ごとの数というものをいろいろな角度で調べると、 Surgeon ごとの数は、どういうふうに計算しても差が出てきませんでした。一方で、病院ごとの数は、いろいろな計算をすると全てやはり有意差をもって差が出てくる。ということは、 Surgeon の数ではない。要するに、外科医個人の実力ではなくて病院の実力で総合力というものが効いているのだということが分かりました。したがって、神の手というのが本当にあるのかどうか、神の手ではなくて、もっとそれを支える人の力が大事ではないかという解釈を、我々はというか、私個人はそういうふうに解釈しています。

 これはもう 1 つ、病院の数と Surgeon の数を掛け合わせて解析したものです。これは Risk-Adjusted したものですが、この 30 例、 50 例、 51 例以上と、これは病院での数。今度は外科医がやった数、年間 15 以下のどちらかといえば若手の数と、 16 例以上やっているどちらかといえばベテランの数を比べると、小規模病院でのベテランの死亡率と、大規模病院の若手の数値を比べると、後者のほうがいいのです。つまり、やはり若い方、あるいは初心者と言われる人でも、大きな数の病院でやると成績は良いという。こういったことから、研修施設はやはり大きな病院、ある程度の数がないとできないのではないかというので、心臓血管学会の専門医も、その施設数を認定する際に、ある程度のかさ上げ、施設の数を重視してきているのは、こういう数値をもって背景としているわけです。

 最初に申したように、この専門医制度に最終的にリンクすることができました。そうすることによって、申請をする側のものすごい書類の操作をする必要がなくなりました。日々はしんどいのですが、データベースにきちんと入れておくと、いざ申請、あるいは更新するときに非常に事務作業が簡単になり、また一方で、それを扱う事務局、あるいは審査する先生方も非常に楽になりました。お金も楽になりました。これが。実は私自身の、 5 年前に心臓外科学会の専門医の更新をしたときに提出した書類です。これはカルテのコピー、個人情報を消して手術記録のコピーを全部出せというルールですので、これぐらい出したのです。出した審査の先生に怒られました。「おまえは出し過ぎだ」「もっと考えろ」「見る人間の身にもなってみろ」などと言われたのですが、今回、今年、データベースを使えるようになって、私の場合もうこれで終わりです。つまり、これぐらい違うという。こういうことが、専門医とリンクすることによって、これは申請する側がこれぐらい違う。そして、審査する側がこれぐらい変わってくる。いろいろな意味で省力化が得られるということです。

 今、我々がどこまでできるかというお話をさせていただきましたが、今後の展開は、こういったデータを使って、まずやはり外科医が良くなる。これがまず第一だと思っています。それを使って、公的機関、もちろん厚労省、いろいろなデバイスを使う方々、治験、こういったことに関してはメーカーも入ってくるかと思います。そして、マスコミの方々への正しい情報提供、そしてもちろん、そういったことを通じて、患者さんへの正しい情報提供、最終的には当初念頭に置いていたアジア地方への展開、そして北米との協同研究、そういったことも含めて、もう既に始まってはいますが、そういったことに展開していきたいと思っております。まとめとしてはこういうことです。以上です。ありがとうございました。

○澤座長 本村先生、ありがとうございました。私も心臓血管外科で、このデータベースを活用させてもらっているのですが、 14 年間の努力の結晶で、本村先生は非常に熱く語ってくださいました。 14 年間全部、本村先生がやってこられたということですので、非常に大きな成果を出しているという話です。御質問等ありますか。

○坂井田構成員 命に直結することなので、本当にすばらしいお話を聞かせていただきました。 100 %入力していないと駄目とおっしゃったのですが、もし抜けている部分があるのはオール・オア・ナッシングで取り扱われているのでしょうか。

○本村構成員 抜けているというのは、つまりはそこの施設のその先生が専門医を要らないと判断しております。ですから、ほぼゼロになるのではないか。心臓外科医が専門医なしで心臓外科の手術をできるかというと、恐らくその辺りが PCI と違うところで、ちょっと難しいのではないかと思っております。心臓外科医 1 人ではできませんので、必ず外科医の助手などが 1 人、 2 人必要ですので、そういった若手の先生が一緒に働いてもらおうと思うと、その若い先生方に専門医を取らせてあげる、あるいは更新させてあげることを考えないと、若い先生は入ってこないことになります。そうすると、その病院、そのチームとしては専門医にインボルブされざるを得ないと考えておりますので、これは将来的にはほぼ 100 %になると私は思っております。

○澤座長 ほかにはいかがでしょうか。運営費用は、結局、学会がまかなっているのですか。

○本村構成員 そうですね。この 2 つの学会から年間数百万ずつ出していただいておりまして、それだけでやっていたのですが、ほとんどしんどくなってきまして、今は参加施設から協力金と言って、これも必須ではなくボランタリーですが、 1 施設、年間 1 万円ずつ頂いております。

○澤座長 大体幾らぐらいの費用が要るのですか。

○本村構成員 今のところは極めて格安でやっておりまして、ラフには年間 2,000 万の予算でやっています。

○澤座長  2,000 万ぐらいですか。でも、それもほとんどボランタリーですよね。

○本村構成員 そうです。ですから、もちろんいろいろな作業の日当はゼロでやっています。

○澤座長 ですよね。それをどこまでできるかですよね。

○高橋構成員 この National Clinical Database について聞きたいのですが、これはほかの学会の、そういうデータベース構築を助けるというような働きをするのでしょうか。

○本村構成員 これは外科学会が基本になっておりまして、我々心臓血管外科も全てそうなのですが、外科学会の専門医を持っていない限りは、心臓血管科の専門医は取れないのです。ですから、そこの外科学会の専門医を取るためには、このデータベースを使いなさいという目的で NCD が発足されて、その入力システムやプログラムを作る過程、それをどうやって運用するかなどというノウハウを我々のデータベースを使って構築したということです。

○澤座長 専門医制度は 2 階建てになっていて、心臓外科のリスクが高いので 2 階のほうが先に出来たのです。 1 階が、これを援用して出来たのですが、 1 階は入力項目が少ないですよね。

○本村構成員 大体、 A4 1 枚です。 11 項目でいいのです。

○澤座長 それで各外科系の学会は、消化外科学会などはみんな、今、 2 階建てに構築されているので、 NCD は年間に 130 万件ぐらいですよね。

○本村構成員 そうです。日本全国で大体 3,000 施設をカバーしていまして、もう週単位で何万件というのが入ってきて、もう数百万入っています。

○高橋構成員 各手術、手技に対して 1 個ずつということですか。

○澤座長 全部入っています。それは小さい病院でおできを取ったとかまで入れてもいいのです。ですが、それは入っていない施設も多少はあるかもしれません。そこはもう、専門医ではない人の、必要のない人の手術だと思います。ですから、専門医ということでの縛りが、今やはりモチベーションにつながっている。

○本村構成員 そうですね。現状ではそうだと思います。

○中谷構成員 先生も言われましたように、手術そのもの、あるいは術後 30 日までの状況については、すごく有効と思うのですが、 J-MACS など長期のフォローをするときに、どのようにインセンティブを続けていくのかが、問題だと思うのです。手術および周術期と長期のデータ収集をどうリンクさせるかが大きな課題と、 J-MACS をやっているほうから思うのですが、先生はどう思われますか。

○本村構成員  1 つには、フォローアップする際にはなるべく項目数を減らして作るのが 1 点と、そして、手術は年間 5 万件やっているのですが、その全ての手術においてフォローアップをやらせるかどうかは、もう少し考えたほうがいいかなと思っております。例えばバイパスだけとか、弁置換だけとか、大動脈瘤だけとか、あるところに絞った上でやっていく。そこで様子を見て、データを見て、 Quality Improvement にどうつながるかを見て、横に広げるのがいいのではないかと考えております。

○鮫島構成員 この入力項目とフィードバックレポートというのは、多分、最初に作られて、その後更新や見直しはやられているのでしょうか。

○本村構成員 はい、やっております。どんどん変わります。今は年に 1 回変えるようにしています。途中でガチャガチャ変えると解析不可能になりますので、年に 1 回変えるようにしております。ですから、年ごとに解析をして、そういうレポートの根拠としていくようにしております。

 アメリカでもどんどん、どんどん変わっていまして、ものすごく項目が増えていますが、欧米では入力する人が外科医ではなくてデータマネージャーというナースなのです。ですから、幾ら項目を増やそうが、外科医は全然気にしていないのです。もっと増やせ、もっと増やせと言って外科医が勝手に決めて、データマネージャーがヒーヒー言いながら入れているのが現状です。日本ではちょっとそれは無理ですので、なるべく増やさないようにしております。

○香坂参考人 先ほどの御質問で、 Registration のフォローアップシステムということが何回か出ているかと思うのですが、私は日本でのやり方と米国のやり方を見させていただいていて、医師が登録する Registration system を踏襲するシステムを続ける以上は、フォローアップは切り離したほうが絶対にいいと思います。医師の業務の範囲内にフォローアップというものが絶対に入ってこないので、外来で患者さんを診ること=フォローアップということではないのです。ですので、フォローアップを絶対に入れてこないといけないシステムを作るのであれば、そのためのマンパワーが絶対に必要になると考えたほうがよろしいかと思います。

○澤座長 あともう 1 点だけ、ユニークなというか、バリデーションをきっちりやられているということですよね。この効果はどうですかね。このバリデーションというのは重要ですか。

○本村構成員 いろいろな論文を出すと、バリデーションをやっていますかというのは必ず聞かれます。おまえのところのこのデータがどれだけ正しいのだと必ず聞かれます。ちゃんとというか、もちろん 100 %ではありませんけれども、ルーチンワークとして必ずこのパーセントとしてはやっていますよという、これが大事だと思っております。

○澤座長 ありがとうございました。もう時間も押してきましたが、本村先生、どうもありがとうございました。

○本村構成員 ありがとうございました。

○澤座長 この 3 つのデータベースのお話は、課題も含めて大変参考になったかと思います。

 時間が押していますので、次の議題「患者登録システムの在り方」について事務局から御説明ください。

○事務局 では、資料 2 「患者登録システムの目的と対象範囲に関する論点整理 ( ) 」を御覧ください。あと、併せて本日の参考資料 1 となっております「患者登録システムの在り方に関する論点項目」も御覧ください。これは前回の合同検討会において御了承いただいた項目ですが、今回は、この前半部分に当たります論点 1-1 から 1-3 までについて、御議論いただければと考えています。

 資料 2 に沿って説明させていただきます。「論点 1-1  目的」についてですが、<検討のポイント>として、 1 ページ目から 2 ページ目にかけて記載しています。まず、再生医療製品につきまして、 iPS 細胞技術等の応用により、医療分野に大きな革新をもたらす早期実用化に向けた国民の期待が非常に高まっています。一方で条件・期限付きの承認制度の導入に伴いまして、比較的少ない症例数に基づく有効性の推定や、安全性の確認に基づいて、上市されていくこととなりますので、その市販後の有効性・安全性を確実にフォローアップしていくことが、患者の方々の安全・安心を図る上で極めて重要となります。患者登録システムは、これらを支える公的な基盤 ( インフラ ) として不可欠なものと記載しています。

 一方、埋植型医療機器につきましては、人工関節のように何らかの不具合が発生した場合でも、製品そのものの不具合なのか、あるいは医師の手技要因、患者要因などが縷々存在しまして、現行の不具合報告制度のみでは、製品そのものの不具合が検出されにくいというものもありますし、患者登録システムを通じた患者の予後のデータ収集・分析から不具合の検出が可能となることが期待されます。

 企業や医療実施者だけでなくて、学会や行政も関与する公的な登録システムを構築することで、より信頼性の高いデータの収集を行うことが可能となるものと考えられます。

 登録システムが実行性のあるものとするためには、関係する各ステイクホルダーが、それぞれにメリットを感じられるようにすることが重要でないかとしています。例えば、医療者・医療機関においては、集積されたデータを解析して、より良い治療法や製品を選択すること、あるいは患者への説明に活用。学会や医療機関においては、医療者・医療機関における製品の施用状況ですとか、施用された患者の予後のデータを収集できることで、専門医の認定や診療ガイドライン、治療指針などの作成に役立てることができるのではないでしょうか。

 メーカー企業においては、登録システムにより収集されたデータを使用成績調査等に活用することによって、より質の高いデータ収集が可能となり、また、製品の改良ですとか、次世代の製品の開発に向けたフィードバックも可能となるものと考えています。

 私ども行政側においては、不具合報告制度では難しかった不具合発生率の把握が可能となり、治験などでは得られなかった長期使用における副作用や不具合の早期発見、あるいは類似の製品間での有用性の比較、著しく成績不良な製品の検出などが可能となるものと考えています。

 また、国民や患者さんにおいては、施用後のフォローアップが確実になされることによる安心感ですとか、あるいは有効性・安全性のデータの集積、複数の製品間での成績比較などを通じて、より質の高い医療の提供を受けることができるといったことです。

 網羅的にあらゆるデータを収集することによって、様々な分析・評価が可能となりますが、データの入力、管理等にかかる労力ですとかコストも勘案して、登録するデータの範囲や種類について検討する必要があるのではないかと考えています。

 事務局より叩き台として提示させていただいている<取りまとめの方向性(案)>ですが、 3 点まとめています。患者登録システムの目的としては、市販後の使用状況や患者の予後のデータを収集し、迅速な安全対策や、新たな製品開発等を通じて、医療の向上に役立てられることにあるのではないか。登録システムによって収集されたデータは、薬事法に基づく承認の際に、企業に課せられる使用成績調査などに活用できるようにする必要があるのではないか。各ステイクホルダーそれぞれについてメリットが感じられるようにするとともに、それらに過度の負担を強いることなく、登録システムの肥大化・複雑化を回避する必要があるのではないか、としています。

 続いて、「論点 1-2  対象範囲」についてです。<検討のポイント>としまして、薬事法に基づき承認を受けた製品に関しては、自家培養表皮「ジェイス ® 」の使用成績調査や補助人工心臓を対象とする J-MACS といった患者登録システムが、既に実施されている状況です。前回の検討会で、それらについての報告がなされたところです。

 一方、「再生医療等の安全性確保に関する法律案」に基づく再生医療については、「第一種再生医療等」から「第三種再生医療等」まで、リスクに応じた提供の手続が検討されている過程にあるなど、現時点においては、患者登録を必要とする範囲が確定していないという状況です。

 埋植型医療機器については、人工関節のように既に広く普及している製品であって、長期の安全性や複数製品間での比較等を評価すべきものと、これから承認されてくる新規性の高い医療機器とを区別して、それぞれに必要な登録システムを検討する必要があるとしています。

 <取りまとめの方向性(案)>としまして、 5 点まとめさせていただいています。本検討会において取り扱う患者登録システムの対象範囲としては、薬事法改正法案に基づく「再生医療等製品」及び「埋植型医療機器」が施用された患者とするのが適当ではないか。「再生医療等の安全性の確保に関する法律案」に基づく再生医療については、別途、リスクに応じた提供等の手続の検討等と併せて検討されるべきではないかとしています。

 再生医療等製品については、「条件・期限付き承認」の段階から登録対象とするのが適当ではないか。埋植型医療機器については、既存の医療機器と新規性の高い医療機器に分けて検討するとともに、学会などで運営されている既存の登録システムの活用を検討すべきではないかとしています。

 新規性の高い医療機器については、承認された際に、以下のような観点から、患者登録システムの対象とすべきか否かを総合的に判断するのが適当ではないかということで、 3 つ掲げています。薬事法改正法案に基づく「使用成績評価」の対象となるもの。生命維持の目的で使用されるリスクの高い医療機器。国内に初めて導入される機器であって、使用経験が少ないもの。

 登録を継続する期間としては、これまでに述べましたように、当面のところは、再審査期間又はそれに準ずる期間を念頭に置くこととして、それ以降については、登録の意義や目的が異なってくるということも考えられますので、改めて検討する必要があるのではないか、とまとめさせていただいています。

 最後に、「論点 1-3  登録するデータの種類、システムの機能」です。<検討のポイント>としまして、登録データの項目は、患者情報、診断時の情報、製品情報、医療機関情報、手術時の情報、観察情報、 QOL に関する情報などが想定されます。登録システムの肥大化・複雑化を回避し、入力者に過度な負担がかからないように配慮すべきであるということ。再生医療製品、埋植型医療機器ともに製品の種類・タイプは様々であって、その種類・タイプに応じた登録データ項目を設定する必要があるということ。データセンターには、データ入力やデータが集積された時点において、各関係者のニーズに応え得る機能を備える必要があるということ。

 <取りまとめの方向性(案)>として提示させていただいているのが 5 点あります。登録データの項目は、先ほど申し上げましたような情報が想定されますが、登録システムの肥大化・複雑化を回避するため、登録データ項目には必須項目と任意項目を設けた上で、必要最小限の項目に絞るべきではないか。登録データの項目は、全ての製品に共通する基本項目と、製品や製品群、あるいは診療領域ごとに特有の項目とに分けて設定すべきではないか。

1 つの基本システムに、新たに承認された製品を対象として追加していくことを想定した場合、新たに入力項目の設定など、フレキシブルに改修が行われるようなシステムを構築していく必要があるのではないか。データセンターの機能については、入力データの品質を確保するため、入力エラーの検出などの、データの入力サポート機能のほか、参加施設への監査機能を備える必要があるのではないか。また、入力されたデータの項目・内容の検索・抽出、更には入力されたデータの集計とその結果の公開が求められるのではないかということで、事務局でまとめさせていただいています。

 本日、あと残りの時間は限られていますが、事務局の案に必ずしもとらわれず、御議論、御意見を頂ければと思います。どうぞよろしくお願いします。

○澤座長 ありがとうございます。 1-1 から 1-3 までの御説明を事務局にしていただきましたが、まず 1-1 、目的の所から議論させていただきたいと思います。この目的、事務局にまとめていただいているものに関して、御意見などはありますか。

○永井構成員 この整理の中に「予後」という言葉が出てきます。短期的な予後と、中長期的な予後は違うということを、よく認識できるようにしておいたほうがよいと思うのです。先ほどの議論でも、アプローチの仕方やコストが全く違ってくるので、ただデータを集めて予後を見たいというだけの表現ですと、誤解が生じる可能性があると思います。

 もちろん短期的な予後、あるいは実態調査という話と、断面的な観察ということと、もう 1 つ、コストもかかる中長期的予後、費用対効果、そういう異なる性質の調査に、これからどう取り組むかという問題だということは、初めによく認識しておいたほうがよいと思いますし、そういう表現のほうがいいと思います。

○澤座長 非常に重要なポイントで御指摘いただきましたが、ほかはいかがでしょうか。

○祖父江構成員 今回初めて出るので、あまり流れを考えた発言ではないかもしれませんが、ステイクホルダーの人にメリットを感じやすい仕組みにするための 1 つの要素が、即時性というものだと思うのです。すぐに結果が出てくるということですね。全数把握ですとか、詳細なデータを集めるとか、複雑な仕組みになればなるほど処理に時間がかかって、タイミングとして 1 年、 2 年、どうしても処理にかかってしまうとなると、その結果を待っている人たちにとっては、いつのデータなのだということになりますので、ですから、いろいろ完璧な仕組みを考えるという際に、あまりに複雑な仕組みを作ると、かえって結果が出てくる時間が遅くなって、利用者側にとっては少し不満があるということになると思うので、即時性という点をかなり考えた仕組みを作ったほうがいいのではないかと思います。

○澤座長 ありがとうございます。これも非常に重要なキーワードではないかと思いますが、中谷先生、 J-MACS は即時性というのはどんな感じですか。

○中谷構成員 データの集積数とかの基本データに関しては、最近では 3 か月程度ごとに出しています。しかしデータを確認、フィックスするのに時間がかかっているので、 1 年目のものをまとめて出したところです。現在は 1 年単位で纏める形で進めています。

○澤座長  1 年ぐらいごとのデータになっているということですね。

○中谷構成員 やっとデータ数も、集まってきたところです。

○澤座長 そんなに多くないですかね。

○中谷構成員 データーを確認してフィックスするのにある程度時間がかかっているので、今のところ、 1 年毎にフィックスするという形にして、それをまとめるという形で、始まったところです。どこまでスピードアップするかは、今後の課題と思っています。

○澤座長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。その他のことにつきましても。

○朝比奈構成員 永井先生がおっしゃった、断面を見る、予後をフォローアップするというので、システムが全く違うということだったのですが、この「方向性の次」という所に、薬事法に基づく承認の際に企業に課せられるうんぬん」というのがありますけれど、それは薬事法に基づく調査というのはどういうものか、私はよく知らないのですが、これに一致するようにするためには、予後も見ていくようなシステムを構築しなければいけないということにはならないのですか。その辺の目的を、今、永井先生がおっしゃったのがはっきりするのだったら、これは取り除かなければいけないということも、考えなければいけないのではないかと思います。

○澤座長 そうですね。

○永井構成員 今でも薬事承認の際に、いろいろなタイプのデータが求められと思います。例えば慢性心不全の治療法では、中期的な予後を見ないといけないのです。短期的に効果があるというだけでは、認められないということになっています。しかし、概して薬事承認のときに求められるのは、短期的なことです。

○朝比奈構成員 断面的に見れば。

○永井構成員 ええ。ですから、その後に中長期的な調査をして、本当に意味があるかどうかを、しっかり評価できるようにしないといけないということです。それがないままに、本当によい治療をしているかどうか分からない医療が増えてしまうのも、問題だということです。

○澤座長 現状で PMS が、どの製品にも課せられているのですよね。その辺りを事務局は、 PMS をどんな感じで今やられているのか、前例なども含めて、それから期間とか、どうやって製品ごとにやっているかというのは分かりますか。

 要するに現状の調査を、やっていないわけではないですよね。ちゃんとやっているのでしょうけれど、レジストリーにまで行っていないというところで。

○事務局 医療機器に関して、まず御説明させていただきますと、再審査制度というのがありまして、新医療機器という、新規性の高い医療機器が承認される際には、 3 年であるとか、 4 年であるといったような形、あるいは希少疾病のような症例数の少ないものであると、最大で 7 年ぐらいという形で、再審査期間というのが設定されます。その間、使用成績を調査するという形になりまして、有効性も安全性も含めて調査することが義務づけられるという形になっています。

 医療機器については、今回の薬事法の改正で、少し制度が変わる形になっていまして、これまで新規性の高い新医療機器には、一律に再審査期間というものが設定される形になっていたのですが、法改正後については、そういった承認後の調査が特に必要と認められるものに関して、 3 年とか、 4 年とか、もっと長い期間をかけられるとか、フレキシブルにできるような制度に、少し変わるといったことはあります。

 再生医療製品については、これまでの医療機器の制度と同様に、再審査期間が付くという形になりますが、それ以上に期限付き、条件付き承認というものが付きますので、少し制度としては変わった形になるかと思います。

○澤座長 現状でもそういう制度はあるのですが、しかし今回、この患者登録システムをしっかり作って、やはりそこを、このような目的の下にやっていこうという観点においては、やはり現状の……制度が、必ずしも十分ではないという状況ではないのかなとは思うのですが。そういう観点から目的を、このように書いていただいているということで、その他はいかがでしょうか。

○高戸構成員 再生医療製品ということに関して言うと、今までお話を聞いていた状況と大きく違うのは、恐らく今後は特定の、例えば心臓外科、整形外科など特定の職種に関わらないで、一般製品として出されるという特徴があると思います。

 すなわちユーザーが様々です。例えば再生骨であれば、歯科医が使うとか、自由診療で、美容外科で使うというような様々な場合があり、その場合、学会がリンクするレジストリーが可能になるかという所に、大きな問題があると思います。そこはどのように考えられているかお聞きしたいです。

○澤座長 そうですね。

○高戸構成員 ユーザーの職種が様々です。

○澤座長 先生の今のお話の中の自由診療は、ここで議論を置いておくのですよね。

○高戸構成員 自由診療で製品を買って使うということも多いと思います。

○澤座長 これはどうですか。再生医療についての考え方ですよね。事務局のほうで答は出ますか。

○高戸構成員 それは今後の検討でもいいと思うのですが、やはり製品ですので、購入して使用する多くのユーザーが出ると思います。それは心臓外科とか、そういった限られたものとは全く違う領域の話と思います。例えば極端な例ですが、比較的安価な製品が出て、全国の歯科医の方が使うようになった場合、レジストリーシステムとして学会が機能するというのはなかなか考えにくいです。ユーザーが非常に多くなる可能性も考えて、このシステムを構築されたほうがいいのではないかと考えます。

○澤座長 御意見ということで。ほかはいかがですか。論点 1-1 の中に書いてあることで、気になる所、もしくは修正点など、今のこれぐらいでよろしいですか。再生医療側では、大和先生などはいかがですか。

○大和構成員 無難にまとめられていて、欠点はさほどないと思うのですが、本当のことを言うと、何でこれを作らなければいけないのかということに関しては、やはり少し弱いかなと思います。書きぶりとしては、全ての書いてあることは間違いではないし、いいことがいっぱい書いてあるのですが、第三者に「是非このシステムをやりましょう」という、その説得力は少し欠けているのではないかと思います。

○澤座長 ほかはいかがですか。西田先生は何かないですか。これぐらいでいいですか。

○西田構成員 意見を感じていたのは、大和先生と同じです。今回、このような取組を行うきっかけになったのは、新法、薬事法改正など、そういうことからだと思いますが、そういうことが、あまり表現として出ていないということが感じられました。

○澤座長 もう薬事法改正のほうは、国会で審議されていますよね。ですから、それも踏まえた現状の、なぜこれがスタートするようになったかというところは、やはり安全性とか有効性、逆に言うと条件付き承認のような、早く承認するシステムがいる、再生医療特有の審査が必要だとか、そういう書きぶりが確かにいるのかなという御意見だと思いますし、あと、やはり永井先生がおっしゃった費用対効果とか、祖父江先生が即時性とおっしゃいました。この辺りの文言も入れていただくのがいいのかなと思うのですが、医療機器側ではいかがですか。一色先生はどうですか。

○一色構成員 ある程度玉虫色になってしまうのは避けられないのかもしれないのですが、行政が求めるデータと、医療者側が自分たちのフィードバックなどに使いたい情報というのは、必ずしも一致しないわけですね。ですから市販後の有効性、安全性などのデータを確実にフォローアップするという目的に対しては、今の私たちのデータベースの中から確実に引っ張り出せるものなのかどうかという点は、検討しなければいけないと思います。目的が違うものを合わせるとなると、どのような項目を入れていかなければならないかを十分に検討していただかないと、総論的にはいいのかもしれないのですが、具体的になったときには問題になると思います。

○一色構成員 あとは、ものすごく新規性が高い、リスクが高い機械の場合は、そんなに症例数も多くないし、きちんとした登録が十分に可能ですし、実際に今でもうまく稼働していると思うのですが、 PCI のように年間何万件にもなる症例数の多い場合のデータベースでは、かなり違ったシステムにならざるを得ません。製品によって、違った対応をするべきという印象を持っています。

○澤座長 秋山先生はいかがですか。

○秋山構成員 取りまとめの方向性としては、やはり総論的な感じがするのですが、実際問題、ここの 3 つ目に書いてある各メリットを感じられないと、登録制度の意味はないと思いますが、やはり人工関節に関しては、登録率をいかに上げるか。整形外科の病院が多いので、登録率をどのように上げるかということと同時に、運営費用をどうするかという問題の両方がかかってくると思いますので、こういう 17 万例を登録するということになりますと、年間に何十という新しい人工関節が発売されてきて、それを 3 年から 5 年ぐらいで駄目になってくる前に、承認後に短期間でそれを見極めるということに関しては、もう諸外国では、大規模なアンケート調査などは全く意味がないと言われてしまいましたので、全例登録して、それで 3 年以内に解析しなさいというのが当たり前な時代になっていますので、登録率を上げて、かつ運営資金もきちんと安定して得られるようなシステムということに関して、どういうシステムがいいのか。どこかに負担するというよりは、どういうシステムを組むかということが大切ではないかと感じています。

○澤座長 ありがとうございます。ほかはいかがですか。

○永井構成員  運営費のことを、もう少し明確に出したほうがよろしいと思います。学会等で運営されている、既存のデータを活用するというだけで本当によいのか。もっときちんと国の役割なり、当事者の負担を考えなければならない。場合によっては医療費から一部負担するとか、何か運営費について、もう少し踏み込んだ表現があったほうがよろしいと思います。

○事務局 運営費も含めた管理運営の在り方につきましては、次回の大項目、論点 2 の中で引き続き御議論、御意見を頂ければと考えています。よろしくお願いします。

○中谷構成員 今、人工関節でも言われたように、これは日本だけの問題ではなくて、補助人工心臓もそうですが、やはり対世界の観点でデータの項目数を考える必要があります。入力すべきデータを少なくしたいけれど、国際性ということを考えたときに、ある程度のデータが必要になってきます。その視点も、組み込んでおく必要があると思います。

J-MACS でも、 I-MACS という世界的なデータベースとの対応を考えていくことになっていますし、やはり国際性については考えるべき重要な点と思います。

○澤座長 非常に重要なポイントだと思います。私も TAVI のほうの、今ちょうど日本で承認されて、これからこの治療が進んでいくのですが、やはりレジストリー化をということで、先日もアメリカに行ってきまして、 TCT の先生方と相談して、海外とのハーモナイゼーションというデータベースを、それは非常に国際性という、中谷先生がおっしゃった意味で、非常に重要だと思いました。

 そういう所も目的の中に入れていただいたら、例えば先ほどの本村先生のお話では、日本の成績はいいのだということも、海外と比べて一緒にやっていくと段々出てくるわけで、そういうのは非常に国民に向けて、やはり大きな情報発信につながる。それを目的ということでも追加していただければというのは、私は座長ですが、是非入れていただけたらと思います。

 ほかはいかがでしょうか。時間がきてしまいましたので、座長の不手際で論点 1-1 しか議論できませんでしたが、論点 1-2 以降はまた次回に議論させていただければと思っているので、よろしくお願いします。本日頂いた御意見を基に、適宜、事務局のほうで修正していただいて、また次回に議論させていただきたいと思います。

 それでは、事務局のほうで何か御報告はありますか。

○事務局 

議題その他については、本日は特にありません。本日は大変お忙しいところ、非常に活発な御議論をいただきまして、どうもありがとうございました。速記録については出来上がり次第、構成委員の先生方にお送りしまして、確認・修正を経て、厚生労働省のホームページに掲載する予定としています。

 次回の開催予定は、 12 25 ( ) 16 時からを予定しています。どうぞよろしくお願いします。

○澤座長 それでは、これで本日の会議を終了します。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

医薬食品局安全対策課
(代表電話)03-5253-1111

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