ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(風しんに関する小委員会)> 第1回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会及び 厚生科学審議会感染症部会風しんに関する小委員会議事録(2013年9月30日)




2013年9月30日 第1回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会及び 厚生科学審議会感染症部会風しんに関する小委員会議事録

○日時

平成25年9月30日
13:00~15:00


○場所

国立感染症研究所共用第一会議室


○議題

(1)風しんに関する小委員会の設置について
(2)風しんの流行について
(3)風しんに関する特定感染症予防指針の策定について
(4)その他

○議事

○結核感染症課課長補佐(難波江) 第1回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会及び厚生科学審議会感染症部会風しんに関する小委員会を開催いたします。開会に当たり、佐藤健康局長より御挨拶申し上げます。

○健康局長(佐藤) 佐藤敏信でございます。もう既に御挨拶をした方もいらっしゃるので簡単に申し上げますが、72日より矢島の後を受けましてこの職にございます。引き続きよろしくお願いいたします。また、本日はお忙しい中お集まりを頂きまして、本当にありがとうございます。また、平素より、風しんはもとより感染症全般に関しまして、大変お力添えを頂いておりますことを、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 私から申し上げるまでもありませんけれども、風しんは過去においては非常に減少し、その中で56年ごとに全国的に大きな流行を繰り返すなどしておりました。最近になりまして、またその様相に特徴が出てまいりまして、取り分け成人男性といったようなところで流行が起こるようになりまして、今年も、今日お集まりの先生方だけではなくて、マスコミや国民の皆様にも、大変な御心配をお掛けするような流行があったということでございます。

 私どもも、今年の流行に関しては終息をしたと見込みますが、それにしても、これでよかった、ああ、よかったということではなくて、中長期的にこの問題をどう考えていくのかということに取り組まないといけないと思っております。そうした中で、このワクチン分科会予防接種基本方針部会と厚生科学審議会感染症部会の下に、本委員会を設置されたということでございます。また、国立感染研の感染症疫学センターの方にも、事務局として参加していただく中で、この問題について十分な御議論を頂きますようお願いをいたしまして、簡単でございますが冒頭の挨拶とさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

○結核感染症課課長補佐(難波江) なお、佐藤局長は公務のため、途中退席させていただきます。御了承ください。

 続きまして、本日は第1回目でございますので、委員の御紹介をさせていただきます。お手元の資料を1枚おめくりいただいた所に委員名簿がございます。これに沿って御紹介させていただきます。

 独立行政法人国立成育医療研究センター総長の五十嵐隆委員です。国立感染症研究所感染症疫学センター長の大石和徳委員です。全国中小企業団体中央会理事・事務局長の加藤篤志委員です。なお、加藤委員におかれましては、本日は御欠席との御連絡を頂いております。独立行政法人国立国際医療研究センター国際感染症対策室医長の加藤康幸委員です。三菱重工業(株)横浜製作所総務部健康管理センター産業医の北原佳代委員です。公益社団法人日本医師会常任理事の小森貴委員です。愛知見豊川保健所所長の渋谷いづみ委員です。山口県環境保健センター長の調恒明委員です。群馬県立赤城養護学校小児医療センター分校教頭の高橋慶子委員です。国立感染症研究所ウイルス第三部長の竹田誠委員です。読売新聞医療部の館林牧子委員です。横浜市立大学附属病院病院長の平原史樹委員です。一般社団法人日本経財団体連合会経済政策本部長の藤原清明委員です。福岡市立西部療育センター長の宮崎千明委員です。なお、宮崎委員におかれましては、本日は御欠席との御連絡を頂いております。京都市保健福祉局保健衛生推進室保健医療課感染症予防担当課長の吉山真紀子委員です。また、本日は参考人として川崎市健康安全研究所の岡部所長に御出席いただいております。

 続いて、事務局の紹介をさせていただきます。健康局結核感染症課長の正林です。同じく結核感染症課課長補佐の氏家です。結核感染症課長補佐の西川です。私は結核感染症課課長補佐の難波江と申します。また、本会議においては、国立感染症研究所感染症疫学センターも、事務局に加わっていただくこととしております。本日は、第三室長の多屋室長に参加いただいております。

 続いて、配布資料の確認をさせていただきます。1枚目は議事次第、委員名簿です。資料1「風しんに関する小委員会の設置について」、資料2「風しん・先天性風しん症候群(疫学情報)」、資料3「国内で流行のある風しんウイルス遺伝子型について」、資料4「海外の風しんの流行状況」、資料5「風疹流行および先天性風疹症候群の発生に関するリスクアセスメント」、資料6「今後の進め方及びスケジュール案について」、参考資料1「麻しんに関する特定感染症予防指針」、参考資料2「今回の風しんの流行に対する厚生労働省のこれまでの対応」です。不足がありましたらお申し付けください。冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきます。御協力をお願いします。

 ここからは委員長に進行をお願いいたします。資料1にありますとおり、本委員会の委員長については、予防接種基本方針部会長と感染症部会長が指名することとなっています。五十嵐委員の御指名を頂きましたので、五十嵐委員に委員長をお願いします。よろしくお願いいたします。

○五十嵐委員長 御指名を頂きました成育医療センターの五十嵐と申します。どうぞよろしくお願いいたします。両部会長の御指名ということですので、委員長を引き受けさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 議事に入る前に、この委員会では副委員長を指名することになっております。私としましては、大石委員に副委員長をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

                                  ( 異議なし)

○五十嵐委員長 それでは大石委員にお願いいたします。また、今日は岡部先生にも参考人として御出席いただいておりますので、是非積極的に御発言を頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 議事に入ります。今日は第1回目ですので、資料の説明後に御質問を頂き、次回以降の委員会で議論が必要となる論点及び御意見について、最後にまとめて発言を頂きたいと思います。資料1を事務局から説明していただきたいと思います。

  ○結核感染症課課長補佐(難波江) 資料1です。この風しんに関する小委員会の設置について、親部会である予防接種基本方針部会長及び厚生科学審議会の感染症部会長が定めたものです。「設置の趣旨」です。風しんは、かつて国民の多くが自然に感染する疾患であり、56年ごとに全国的に大きな流行を繰り返す疾患であったが、予防接種の進展とともに流行は小規模化し、2004(平成16)年の約39,000人の推計患者以降、流行は見られていなかった。

 しかし、平成24年から、首都圏や関西地方などの都市部において、2040代の成人男性を中心に患者数が増加し、2013年、今年の710日までに、12,469例の患者、8例の先天性風しん症候群が報告されている状況になっています。ちなみに、平成24年は、年間2,392例の患者、5名の先天性風しん症候群が確認されています。

 現在、患者の報告数は減少傾向にあるが、今後の流行の有無にかかわらず、中期、長期的視点に立って、風しんの対策を進める必要があることから、風しんに関する特定感染症予防指針の策定に資する検討を行うため、本小委員会を設置するというものとなっております。

 委員ですが、委員会の委員は別紙のとおりとする。委員長は両部会長の指名によるものとする。委員長は副委員長を指名することができる。必要に応じ参考人を招致することができる。

 その他ですが、委員会の議事は原則公開とする。議事録についても、ホームページに掲載させていただく予定です。ただし、個人情報の保護に支障を及ぼすおそれがある場合、又は知的財産権その他個人若しくは団体の権利利益が不当に侵害されるおそれがある場合には、委員長は会議を非公開とすることができる。委員会の庶務は、厚生労働省健康局結核課が行う。その他、小委員会の運営に必要な事項は、委員長が定めるとなっています。

○五十嵐委員長 ただいまの事務局の説明について、御質問はございますか。特にございませんか。

 それでは資料2、資料3、資料4の説明をお願いします。それぞれ説明が終わりましたら、質問を受けます。よろしくお願いします。

○国立感染症研究所感染症疫学センター(多屋室長) 資料2です。まず、風しん・先天性風しん症候群の現在の疫学情報です。風しんという病気は、発熱、全身性の発しん、耳介後部、後頭部、頚部などのリンパ節腫脹を主症状とする疾患ですが、主な3症状がそろわないことはよくあります。また、感染しても症状が出ない不顕性感染が1530%程度あると言われています。この写真は、左側が大人の写真で、国立国際医療研究センターの忽那先生から、今回の流行に際して多く大人の患者を診察されましたので、御提供いただきました。右側は、本日も御出席の岡部先生からご提供いただきました写真で、従来感染研のホームページに掲載している小児の発しんと、耳介後部のリンパ節腫脹を示したものです。

 次にいきまして、今年37週までに報告された風しん患者の症状です。3つの症状がそろわないことがあるといったとおりで、発熱が89%、発しんが99.5%、リンパ節腫脹が71.8%、関節痛・関節炎は、成人で発症すると小児よりも発症頻度が高いとされていますが、18.9%という報告でした。

 次は、1982年のサーベイランス事業開始から全数報告になる前の2007年までの小児科定点あたりの風しん患者の報告数の推移を示したものです。一番下に、予防接種の制度を記載しています。1977年から、女子中学生に対し、妊娠初期の風しん罹患予防が大きな目的だったと思いますが、女性にのみ定期接種が開始となりました。サーベイランスが開始され、小児科定点あたり10という数字は、1週間に1つの医療機関に何人の患者が受診したかを示すもので、初期の頃は小児科定点が約2,000数百箇所、1999年以降は約3,000か所の小児科定点から御報告を頂き、それを定点の数で割ったものとなります。お示ししましたように、56年に1度大きな流行があることが分かります。また、流行はおおむね23年連続して春から夏にかけて起こっていることも、このグラフから分かります。

1989年から1993年までは、麻しんワクチンの定期予防接種のときに、麻しん、風しん、おたふくかぜの混合ワクチンであるMMRワクチンを選択してもよいことになっていましたが、おたふくかぜのワクチン株による無菌性髄膜炎の多発により、19934月にMMRワクチンの使用は中止となっています。

 その後、1994年に予防接種法が改正され、19954月からは、義務接種は努力義務接種に変わり、集団接種は、かかりつけ医、医療機関での個別接種と変わりました。中学生は、女子だけでなく、男子も対象となり、また、流行のコントロールをすることを目的に、12か月から90か月未満の男女、幼児が定期接種の対象となりました。それ以降、患者数は大きく減っています。

20064月からは、麻しん、風しん混合ワクチンが定期接種に導入され、さらに6月からは2回接種制度も導入され、その後患者数は減っているのですが、2004年に少し小さな山があることがお分かりいただけるかと思います。

 次のグラフにいきまして、年齢分布です。従来、風しんは子供の病気と言われていましたが、2000年から2004年の流行に至るまで、小児科定点からの報告であるにもかかわらず、20歳以上の大人の患者や10代の患者が増えてきているという傾向が見られていました。

3ページの下は、小児科定点あたりの風しん患者の報告数を年ごとに示したものです。2004年に流行があったことが分かりますが、小児科定点からの報告ですので、大人の患者が把握できていない可能性があります。恐らく大人も多くかかっていたのが、この年かと思います。その後は、幸い患者の数は急激に減少しました。

 次のページです。2008年から、風しんも麻しんとともに全数報告の疾患となりました。全ての医師に届出義務があります。2008年、2009年、2010年は比較的少ない数字で推移していたのですが、2011年には海外で風しんの流行などもあり、海外で感染して、日本に帰国してから発症する方が小規模な集団発生を起こすことが各地で起こっていました。2012年には全国的な流行となり、201337週現在、14,000人を超える数となっています。

 次は、風しんの届出基準です。検査診断として、届出に必要な症状が1つ以上あって、さらにここに書いたような検査診断がされている場合を、検査診断例としてお届けいただきます。一方、検査はされていないけれども、ここに示した3つの症状を全て満たす場合は、臨床診断としてお届けいただくことも可能という制度になっています。

5ページの上は、実際の風しん患者の届出用紙となっています。2008年に全数報告になりましてからは、予防接種歴も1回目、2回目の記載、感染経路など、以前よりも詳しい情報を記入いただけるような届出用紙となっています。

 この届出用紙になってからの患者の報告数が、5ページの下です。2008年は麻しんの流行が大きかった年で、もしかすると修飾麻しんが風しんにまぎれている可能性があると思います。2009年、2010年は風しんの患者は非常に少なかったのですが、先ほど申しましたように、2011年に小規模な地域的な集団発生が散発していました。

 次のページです。2010年以降、先ほどとレンジが大きく変わっていますので御留意ください。2011年に小さな規模の地域流行が起こっていた翌年の2012年は、全国的な流行になり、2013年は更に大きな規模の流行となっています。918日現在、第1週から第37週までの累積報告数は、14,033人で、2012年の2,392人と比較しますと大きく増えていることが分かります。

7ページ、風しんには合併症がいろいろあります。その中でも特に重症なのは、風しん脳炎と血小板減少性紫斑病かと思いますが、多くは入院されて治療を受けていると思います。2012年の流行で風しん脳炎が5人、血小板減少性紫斑病が13人です。今年は、37週までで風しん脳炎が13人、血小板減少性紫斑病が63人報告されました。地域別に見ると、関東地方と近畿地方からの報告数が多く、北海道、東北、中部、中国、四国地方は、余り報告数は多くありませんでした。

8ページです。人口100万人当たりの風しんの報告数をグラフ化しますと、関東と近畿地方、特に近畿地方が最も多かったわけなのですが、九州、沖縄地方の例えば鹿児島県、近畿地方の和歌山県は、大都市が含まれている地域ではないけれども、患者数が多くなっていることが分かります。全国平均は、人口100万人当たり110人、それよりも多い県はここに挙げているように、大阪、東京、和歌山、鹿児島、兵庫、神奈川、奈良、京都、千葉となっています。年齢分布は、男性は203040代が最も多く、女性は20代が多いことが分かります。男性が1757人、女性が3,276人ですので、男性は女性の3.3倍の報告数です。

9ページです。このような流行がなぜ起こったのかについては、定期接種の制度によって、十分に説明できます。女子中学生にのみ始まった定期予防接種は、1995年から中学生男女と変わりましたが、かかりつけの医療機関での個別接種となったことから、中学生の接種率が激減し、2001年から2003年までの2年弱の間、197942日から1987101日生まれの方は、いつでも全員が定期接種として受けられるという制度が開始されたわけなのですが、対象者にこの情報が伝えきれなかったと考えています。接種率が急増するという成果が見られず、20039月に終了しました。

 一方、12か月から90か月までの男女については、1995年から定期接種として導入されていますが、2006年度からは、2回接種が始まりました。さらに、対象年齢も1歳から7歳半までの全てではなく、1歳で1回目、小学校入学前1年間で2回目というように制度が変更となりました。2008年度からの5年間については、麻しんの大流行ということもありましたので、中1、高3相当年齢で、麻しん・風しん混合ワクチンを用いた2回接種制度が導入され、風しんについてもこの制度は非常に大きな成果を上げたのではないかと考えています。2013年度からは、中1、高3への接種が終了しましたので、1歳と小学校入学前1年間の幼児への2回接種となっています。

9ページの下です。このグラフからも、なぜ2回接種が必要かということが分かります。これは、感染症流行予測調査事業で全国10数箇所の地方衛生研究所の先生方に風しんのHI抗体価を測定していただいております。それとともに、予防接種歴とともにグラフ化したものです。水色の部分が、ワクチン1回接種後にもかかわらず、抗体が陰性だった方です。黄色は、HI抗体価が低かった方、ピンク以上あれば恐らく感染予防が可能であるということです。1回接種ですと、抗体が付かなかった方、あるいは低くなっている方がいるということで、2回接種が必要と考えられています。

10ページの上です。5年間の11歳、2期小学校入学前、3期中14期高3相当の接種率を示しました。1期の接種率は、3年間95%以上を達成されておりまして、ここは非常に大きな成果だと思っています。2期も95%までもう少しです。中1と高3相当年齢で受ける2回目の接種については、3期中180%台の後半、4期高380%台の前半まで接種率は上がってきていましたが、これで終了してしまっています。

10ページの下は、私がNHKの方から取材を頂きましたときに、製作協力していただいたグラフです。101日現在の年齢で考えてみたときに、御自身は、ワクチンがどのような制度の時代を過ごしていたかが分かりやすいように、グラフ化されたものです。それぞれ生年月日と年齢を書いています。男性は197941日以前にお生まれの方は、1回も定期接種のチャンスがなく、女性は196241日以前にお生まれの方は、定期接種のチャンスはありません。女性については、中学生のときに集団接種をしていたピンクの所は、非常に接種率が高く維持されていました。一方、緑色の「中学生のときに医療機関で個別接種」となっている26歳から346か月の方については、接種率が激減しましたので、受けていない方も多いという状況です。あとは、一時期、幼児期に風しんワクチンあるいはMMRワクチンを受けていた時代があって、236か月から26歳です。一方、1990(平成2)42日以降に生まれた方は、2回の接種のチャンスがどこかであります。ただ、高3相当年齢で2回目のチャンスがあった方は、若干接種率が低かったですが、中1、高3の制度、小学校入学前1年間の2回目の接種の制度があったお陰で、今年はこのような大きな流行になっていますが、子供たちはほとんどかかっていないという大きな成果につながったのではないかと考えています。

11ページの上です。それぞれ生年月日で御覧いただいたほうが、御自身の接種の状況が分かりやすいかということで、IASRにまとめたものです。それぞれの生年月日、4月時点の年齢、そのときの接種率が高かったのか低かったのかを御覧いただき、御自身の予防接種状況を調べてみていただきたいと思います。ただし、正確に把握するには、御自身の母子健康手帳などの記録を確認していただくことが最も重要かと思います。

 次に、2012年度風しん感受性調査実施都道府県である、宮城、山形、栃木、群馬、千葉、東京、新潟、長野、愛知、三重、京都、山口、高知、福岡県の衛生研究所の先生方が、風しんのHI抗体価測定をしてくださっており、それを疫学センターでまとめたものです。男性と女性には定期接種の制度に大きな違いがありますので、抗体保有率にも大きな違いがあります。

 まず、青く囲っている所ですが、30代、40代に、最も大きな男女差があります。30代、40代の男性は、2割から3割が風しんHI抗体が陰性です。女性については接種率が高かったので、95%程度の抗体保有率ですが、赤のラインと青のラインの間の部分の方が、抗体価が低いと言われる方々に相当します。多分、妊婦健診で抗体価が低いので、お産が終わったらすぐにワクチンを受けるように産婦人科の先生から勧められているのが、青よりも上の割合の方になると思います。30代、40代では、約1割です。

 次に、赤い線で囲んだ20代です。男女差を見ると、女性のほうが若干高いのですが、1割程度の方が陰性、低い方が2割弱いらっしゃいます。50歳を過ぎますと、男女ともに定期予防接種の制度はありませんでしたので、ほとんど抗体保有率に変わりはなく、50歳を過ぎても風しんにかからずにきている方が1割程度いらっしゃることも、このグラフから分かります。

 次に、今年の流行を男女別、年齢別、予防接種歴別にまとめたものが12ページの上の段になります。これを定期予防接種の制度とともに記載してみますと、まず1期の接種率は高いですが、1歳はまだ受けていない方がいて、発症者が一番多くなっています。2期はほとんど発症者がいません。3期対象者、4期対象者は、若干患者の報告数は多くなっていますが、そこ以降の、例えば23歳の所でnotchがありますが、これ以上の年齢は1回あるいは0回の人で、それより若い方は2回の接種チャンスがあった方です。昭和5442日から昭和62101日生まれの男女の方は、26歳から33歳の所で多く発症されています。女性は20代の方が、最も多く発症されています。34歳以上の方は、男性は接種を受けるチャンスがありませんでしたので、今年に多く発症されています。51歳の所で、女性に少しnotchが見えますが、これ以上の年齢の方は定期予防接種を受けるチャンスがありませんでしたので、ここまでかからずにきて、今かかっているのかと思います。

 次に、感染原因・感染経路です。成人が9割という流行になっていますので、どこで感染したかについては、職場関連が最も多く、次いで家族、学校・保育所・塾は、それよりも少なくなっています。医療機関で感染した方が15例と報告されています。このように、大人での流行を受けまして、先天性風しん症候群の赤ちゃんの報告が、最近は毎週続いております。先天性風しん症候群は、難聴、白内障、緑内障、先天性心疾患という、目、耳、心臓に主な症状を持つ症候群ですが、難聴が最も頻度が高いと言われています。その他、様々な症状の赤ちゃんがいると思います。

13ページの下です。1993年にギリシアであった風しんの流行がBMJに載っていましたので、引用しました。1980年代はワクチンがされていなくて、子供を中心に流行していましたが、ワクチンの接種率が中途半端であったこともあったのか、1993年には10代後半と患者年齢が上昇しています。

14ページです。その結果を受け、風しん患者数が4月をピークに認められていますが、その後半年を経て、10月に先天性風しん症候群の赤ちゃんが多く報告されているギリシアの事例があります。

 現在、日本では先天性風しん症候群は全数届けの疾患となっています。ただ、20063月までは届出基準が今とは異なっていまして、症状が複数なければ届出対象になっていなかったことから、20064月からは届出基準が若干変わっています。まず、1999年から2004年までの先天性風しん症候群の赤ちゃんの報告数は、2004年に10人の報告があり、この年に「風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言」が平成168月に出されました。

16ページです。20064月からの届出基準です。症状が1つあって、検査診断される。すなわち、出産後に風しんウイルスに感染したのではなく、体内で感染したことが検査診断で確認されれば、届出の対象として、全ての医師に届出をお願いしています。届出表は16ページの下にあるとおりです。

 その次に、最近の報告数です。2005年は2人でしたが、2006年、2007年、2008年とゼロが続いていました。2005年、2009年、2011年は、日本での流行はほとんど起こっていませんでしたので、海外で感染され、国内で診断された方が目立つようになっていました。一方、17ページの下ですが、2012年の流行から2013年の流行によって報告されたCRSの赤ちゃんの報告は、2012年が5人、2013年が13人で、現在18人となっています。2012年の42週というのは、10月ということになります。

 お母さんが妊娠中のいつ風しんにかかったかについては、妊娠の5週から17週で、中央値は11.5週でした。妊娠中に風しんにかかった方が多いですが、「なし」あるいは「不明」の方もいらっしゃいます。一方、お母さんの風しんワクチンの接種歴については、「あり」の方がお一人いらっしゃいますが、多くは、「なし」か「不明」となっています。

18ページです。これは風しん患者数と先天性風しん症候群の赤ちゃんの報告を同記させたものです。緑が風しん患者の折れ線グラフ、赤がCRSの赤ちゃんの報告数です。先ほどのギリシアのグラフと考え合わせてみますと、2013年の大きな流行後、半年を経て、CRSの赤ちゃんの報告が増えてくるのではないか、ということが心配されます。

 報告されたCRSの赤ちゃん18人の症状は、目、心臓、耳の3つに症状のある方が1人、先天性心疾患と難聴の方が1人、白内障が1人、先天性心疾患のみの方が11人、難聴のみが4人、その他紫斑、小頭症、黄疸、脾腫、網膜症、精神発達遅滞、骨病変となっています。ただ、最も多いのが難聴ということを考えると、まだ報告されていない患者もいるのではないかと考えています。

19ページです。ピンクが今年の毎週の報告数、紫が昨年の報告数です。四角で囲んだときに、妊娠20週ぐらいまでであった妊婦から生まれた赤ちゃんが先天性風しん症候群と診断されているわけですが、今年の5月をピークとする大きな流行のときに妊娠20週ぐらいまでだった赤ちゃんについて、今後なるべく早くに診断をすることができればと考えています。そうすることにより、早い支援もありますし、治療も早くに進められるのではないかと考えています。ワクチンには個人を予防するということだけではなく、ワクチンを受けたくても受けられない妊婦や、その他基礎疾患のある方を守る、社会を守るという役割があることを考え、最後のページですが、ポスターを作って予防啓発を進めているところです。

○五十嵐委員長 風しんの臨床的な特徴、その合併症、最近までの流行状況、CRSについての大変分かりやすい説明を頂きました。御質問のある方はいらっしゃいますか。

○竹田委員 12ページの上の棒グラフで患者数が書かれていますが、2223歳をピークとした女性の患者がなぜ発生しているのかが、一番重要な点だと思います。その1枚前の血清疫学のデータを見ると、決してその世代の女性の免疫が特に低いということはないと思うので、そうすると、中学男女が病院に行かなければならなかったことが主な原因ではないと思うのです。

 このレベルの抗体価で駄目だということであれば、今後も延々とその状態は続くと予想されます。むしろ、なぜこの世代の女性に患者が発生したかというのは、1つの予想としては、その世代の女性が交流を持つ世代の男性、30代、40代の男性に大きな流行があるので、感受性を持った方々が広く感染を受けたということなのかという印象を私は持っています。そういった意味で、なぜこの世代の女性に流行が起こったのかに関して、多屋先生の御意見を頂きたいと思っています。

○国立感染症研究所感染症疫学センター(多屋室長) 12ページの上に記載しましたように、女性の患者報告数は20代、23歳をピークとするところです。この年齢の女性というのは、幼児期に風しんワクチンを1回受ける、あるいはMMRワクチンを1回受けるという世代になっていた女性です。麻しんのワクチンについては比較的高い接種率だったのですが、風しんのワクチンについては麻しんよりは接種率が十分とは言えなかったということがあります。

 そして、緑の線を引いているのですが、ここに大きなnotchがあるのはなぜかというと、これよりも若い方というのは、高校3年生相当年齢のときに2回目のチャンスがあったということで、発症が予防されているのかなと思っております。予防接種歴は、多くが紫、いわゆる接種歴不明で、ワクチンを受けていませんという方がこのようにいらっしゃるわけなのですが、男性と比べますと、女性のほうがワクチンを受けていた方が多かったということが考えられますし、抗体保有率も、男性のほうが女性よりも若干低く、9割を切るか切らないかぐらいで、女性については95%程度、抗体価が低い方を合わせると2割ぐらいいらっしゃいますので、これぐらいの数となってもおかしくはないかなと思っています。

 また、先生がおっしゃるように、20代後半の方が、30代、40代の男性と、職場やいろいろな所で接触される機会が多いことから、感染を受けるチャンスがあったことも考えられるかと思います。2回のワクチンを受けることの効果と、1回接種のチャンスがあったとしても、受けていないという方がいらっしゃったのがこの理由ではないかと考察しています。

○竹田委員 翌年以降に流行させないためには、女性がもっと接種しなければならないのか、成人男性が接種しなければならないのかが重要になると思うのですが、免疫保有率は、ほかの若い世代と比べても、この世代の免疫保有率は悪くないのですが、この世代に発生が起こっているというのは、予防接種の接種率が低いこと、1回接種が原因ではないのではないかという印象を持っています。

○国立感染症研究所感染症疫学センター(多屋室長) 先生がおっしゃることもあるかと思うのですが、1回の接種だけでは抗体が付いていない方が、9ページの衛研の先生方の報告にもあります。2回のワクチンを受けておくことは重要かと思っています。

 あと、女性については、今後妊娠を希望される方には予防接種が勧められていますが、ワクチンを受けたことがない、あるいは不明という方がほとんどという状況ですので、是非そういう方はワクチンをあと1回受けておいてほしいと希望しています。男性については1回もチャンスをお持ちではないので、その方が受けてくださらないと、30代、40代の抗体陰性者の蓄積は解消しないであろうと考えています。

○渋谷委員 11ページですが、感受性の調査を都道府県で何ヶ所かやっていますが、感受性実施の都道府県というのは、例えば今後増やしていくのか、そもそも感受性検査はどのようにして始められたのかということと、今回流行のあった近畿は余り入っていないと思うのですが、このポイントをどうやって選んでいくのか、もう少し流行調査の様子を教えていただけますでしょうか。

○国立感染症研究所感染症疫学センター(多屋室長) これは何十年来、ずっと毎年行っている調査で、全国の地方衛生研究所の先生方が抗体を測定してくださっています。今日も調先生が委員で御出席されています。毎年、各都道府県の総括の方に、来年度の希望調査などもさせていただいております。風しんのHI抗体の測定という、感受性調査を実施していただける県の先生方には御協力を頂いているところです。近年、採血が非常に難しくなってきたということもあって、全ての都道府県での実施は困難なわけですが、今後は実施していただける先生方には御協力をお願いしていけたらと思っています。

 もう1つ、現在のところは都道府県の地方衛生研究所の先生方が御協力してくださっているのですが、今日は岡部先生もいらっしゃっていますが、今のところ政令指定都市の衛生研究所の先生と一緒に調査させていただくことができていませんので、都市部がどうしても抜けていることから、是非、そういう都市部の方々の抗体保有率も調査に入れていける仕組みになればいいのではと考えています。

○岡部参考人 CRSの患者が増えていますが、調査としては難しいのかもしれないのですが、CRS患者のお母さんの年齢とか、感染経路とか、特徴的なところはあるのでしょうか、それとも全く不明のままなのでしょうか。

○国立感染症研究所感染症疫学センター(多屋室長) お母様の感染の状況については、風しんの届出のところで、もし妊娠中ということであれば、妊娠何週という記載をしていただいているのですが、その方がどうであったか、それだけを取り上げているわけではないのですが、今回の流行で最も多かったのが職場関係、同僚の方が発症されていたという記載でした。一方では、どこで感染したのか分からないという報告もありましたので、このように大規模に流行してしまうと、そのような感染経路だったのかなと思っております。

○岡部参考人 子供を出産する年齢層に多いのですか、それとも違うところで何か特徴が出たりしているのでしょうか。

○国立感染症研究所感染症疫学センター(多屋室長) 16ページの下が、先天性風しん症候群の赤ちゃんの届出用紙です。赤ちゃんの年齢については書く所があるのですが、お母様については、妊娠中の風しんの罹患歴、何週に風しんにかかったかということと、お母様がどこで感染を受けたと思うかということ、ワクチン接種歴という情報しか記載欄がありませんので、こちらからお母様の年齢は分からないことになります。

5ページの上にある「風しん発生届」に、ここに書く欄が特にないものですから、備考欄であっても、もし妊娠をされているという場合は、妊娠何週という記載をお願いしているところです。

○小森委員 多屋先生にお聞きするのが妥当かどうか分からないのですが、CRSは、これに伴う自然流産、人工流産との関係についても、以前からよく指摘されているところです。母体保護法の運用等の問題、様々な問題がありますので、そこをどこまで把握するかというのはいろいろな問題があるのだと思います。先生がお分かりになる範囲で、特に最近の動向について、知っていることがありましたら教えていただきたいと思います。

○国立感染症研究所感染症疫学センター(多屋室長) それにつきましては、今日委員として御出席の平原先生の研究班で調査が進んでいると伺っておりますので、平原先生から現在の状況などをお教えいただいたほうがよいかと思います。

○平原委員 今、小森先生からも御指摘のあった話というのは、確かに重要な話です。2004年の緊急提言ができたときに、妊婦は不用意に、風しんかもしれないといって、すぐに中絶するようなケースがまま見られていた時代がありました。そういったことも含めて、妊婦に対しては、適切な情報、検査、リスクの説明をきちんとしましょう。カウンセリング・マインドを含めた窓口を設定しましょうというのが、2004年にできています。

 幸いにして、その後実際に妊婦が風しんにかかるというケースが非常に少なかったような時代もありましたので、その後の状況はみんなの情報共有ということで済ませていたのですが、2011年、2012年の辺りから、再び妊婦の相談事例が出てきているということです。実際には、妊婦の相談に当たっている施設は全国で16施設が窓口になっているのですが、相談いただいた方たちにはかなりいろいろな情報をお伝えして、必ずしもかかった方全ての赤ちゃんが、先天性風しん症候群になるというわけではなく、状況によってリスクのアセスメントは違っていますので、そういった話をさせていただいている状況です。

 今年の状況はというと、今のところはまだ全部は把握できていません。研究班で近々集まって、その辺りの可能な限りの情報を集めましょうということです。

 多くの施設では、相談して、必ずしも羊水検査までに至らずに、そのまま赤ちゃんを産みますという方も大勢おられるというのも、うちでの情報からは伺っております。ですから、適切な情報をお伝えすることは非常に重要なことだと思っておりますが、今年はそういう御相談をした事例は、前年と比べて4倍ぐらいの数になっているというのが実態ですので、近いうちにまとめていく形で、これは大石班でまとめさせていただく準備を進めているところです。

○五十嵐委員長 それでは、資料3の御説明をお願いいたします。

○竹田委員 なるべく専門的になり過ぎないように、流行のウイルス学的背景についてお話させていただきます。1枚目の下ですが、麻しんウイルスでも風しんウイルスでも「遺伝子型」という言葉がよく使われますけれども、遺伝子型というものは、塩基配列のちょっとした違いからウイルスを区別しているもので、疫学流行の調査のために使っています。ただ、誤解していただきたくないのは、ウイルスとしてはウイルス遺伝子型が違っても性質は全く同じですし、抗原性も全く同じですので、ワクチンの効果に何ら影響はありません。

 次のページは、多屋先生からも御説明がありましたように、これまで5年に1回ずつぐらい大きな流行があって、2004年以降は余り大きな流行がありませんでした。ウイルスの遺伝子型の解析は過去にも行われていますが、データは余りたくさんはありません。2010年~2013年以降は1E2Bという遺伝子型のウイルスが主に流行しています。2ページの下の図は、世界中でも風しんウイルスの遺伝子型の調査が始まっており、世界では2020年を目標に多くの地域で風しんを排除しようという働きがありまして、そのために世界中でこのような解析が行われています。

3ページの上は、左のほうが世界で見た遺伝子型の分布で、右が日本の分布です。日本の2013年、緑の2Bと青の1Eというものが主流になっていますが、この傾向は世界の傾向とほとんど同じです。その下の南東アジア地域の流行の遺伝子型の分布は、日本は青の1Eと赤の2Bが主なものです。特に赤の2Bのほうが多いですが、これは台湾や香港、ベトナム、タイなどで主に見られているもので、中国やフィリピンでは検出されていません。

4ページは系統樹というものですけれども、上の赤いドットの付いたものが日本で、2010年以降分離されたウイルスですが、ここで示したように1E2Bそして1jが少し分離されてきています。その下のほうは2Bの遺伝子型についてもう少し詳しく見たものです。緑の点の付いたものが2011年に分離されたもの、青が2012年、赤が2013年です。これは2Bというものも少し詳しく見ますと、123というようにちょっと系統の違ったものが分離されています。ここから、2011年に流行を起こしたウイルスと2012年以降流行を起こしたものはどうも違うということが分かります。

 次の5ページの、1Eについてもやはり同じことが言えまして、同じ遺伝子型の1Eですが、日本で分離されているものは大きく2つに分けることができます。45と書いているもので、4のほうが日本で2010年~2011年に流行したもので、5が2012年以降流行しているものです。ここから言えることは、201011年に流行したものと最近流行しているものは同じ1Eでも、どうも違う由来のウイルスであろうということが分かります。

 それらの全てをまとめたものがその下の図になります。2011年まではオレンジ色で書きました2Bの2というもので、東南アジアで主にはやっているもので、それから1Eの4というものがはやっていたのが、2011年以降はそれらのものが一旦途絶え、2012年以降、135この3つの、少なくとも3種類に分類することのできる風しんウイルスによって流行がもたらされているということが分かります。

 それらをまとめますと、近年複数のウイルス株が我が国に入り込んできている様子です。少なくとも3種類のウイルス株による感染が2012年から現在の風しんの流行の原因となっています。麻しんと同様に、くり返し海外から風しんウイルスが入り込んできているようでして、そのことが流行の一因であろうと考えられます。以上です。

○五十嵐委員長 今の御説明について、何か御質問はありますでしょうか。

○平原委員 45ページに系統樹がありますけれども、これは201112年で例えば2B2Eが今度は1Eに変わっているのですが、こういうのは日本の中で変わったということはないのですか。それとも、やはり外国から直接来ているというのが考え方としては妥当なのでしょうか。

○竹田委員 そこはちょっと難しい点ではあるのですが、系統樹的に枝から幹へ戻ることはないので、そういう意味で見ると、違ったものが入ってきたと考えるほうが考えやすいです。

○五十嵐委員長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、次の資料4の御説明をお願いします。

○結核感染症課課長補佐(氏家) 資料4について御説明いたします。「海外の風しん流行状況について」です。1ページの下段は、風しんの世界での現在の流行状況ですが、各国によって報告体制が異なっており、日本のように全数報告をしている国から、定点報告、又はサーベイランス自体がないというような国もあり、世界全体での罹患者数は不明となっています。ただし、日本が所属する西太平洋事務局では、現時点でも5か国で風しんのワクチンがまだ定期接種に導入されていないなど、こういった経緯もあって近隣の国でも流行がくり返されているというような事情もあります。先天性風しん症候群に関して、WHOは世界で年間11万人の発生があるというように推計されています。

2ページを御覧ください。ワクチンが風しんの対策に有効なツールとなりますが、1996年から2012年にかけて、この風しんのワクチンを導入している国というのは2倍以上に増えています。ただし、まだ60か国では風しんのワクチンの導入が済んでおらず、生まれてくる赤ちゃんに対して半分もワクチンが打てていない状況です。

WHOによる麻しん・風しんの対策目標について下段で説明させていただきます。図には、6地域の事務局がありますが、各地域で上段の黒字で書かれている数字が麻しんに対する排除目標の設定年数です。赤い文字で示されているものが風しんに対する排除の設定年数です。WHO全体としては、2020年までに麻しんと風しんを、少なくとも6つある地域の事務局のうち、5つの地域で排除をしたいというような目標を掲げています。日本が所属する西太平洋事務局のほうでは、黒い字で2012と記載があります。これは麻しんに対して2012年までに排除を行うということで、日本も同様に2012年までの排除目標を立てて、対策を行ってまいりました。ただし、風しんに関しては、コントロールについて言及していますが、具体的な目標設定は現時点では、ないという状況です。風しんの、ほかの地域で風しんに関する目標を設定しているのは、アメリカの地域とヨーロッパの地域で、アメリカに関しては2010年の排除目標、これは既に達成したという整理になっています。2015年を目標にヨーロッパが今、風しんの排除を行っていますが、現時点では、まだまだサーベイランス体制が十分でない地域があり、今年も流行が見られている地域があるという状況です。

 続いて参考資料2も併せて御説明いたします。今般の風しん流行に対する厚生労働省のこれまでの主な対策ですが、厚生労働省としては昨年の5月以降、自治体に対し、7回の課長通知を発出して、各これらの項目について情報提供等を行ってまいりました。具体的な対策内容については時間の関係で割愛させていただきますが、そのあとの裏に添付していますポスター、若しくはターゲット層を絞ったリーフレットの作成等を行って、風しん対策に当たってきたところです。以上です。

○五十嵐委員長 資料4と参考資料2について御説明をいただきましたけれども、何か御質問はありますでしょうか。

○小森委員 資料42ページ目の最後のスライドですが、WHOの事務局の麻しん・風しんのエリミネーションの達成については、北米地区ですか、これが2010年に達成をしたことについての具体的な戦略及び戦術がどのようであって、どういう経過で達成をしたのか、あるいはそのもの問題点、反省、総括はどうであったのか、これが日本が行うときに非常に重要な参考になると思うのですが、その点についていかがでしょうか。

○結核感染症課課長補佐(氏家) アメリカ地域全体での取組みというものに関しては、またこちらでも資料をまとめて、調査させていただく必要があると思いますが、アメリカの国自体は風しんの対策というのは日本よりもワクチン施策も含めて早期から導入していたというような経緯もあると理解しています。

 この資料に1点、追加点があります。インドを含む東南アジア事務局の麻しんに対する排除の目標ですが、今年の913日の会議において、2020年の排除設定というものを行われておりますので、資料におけるその東南アジア事務局の麻しん排除目標を示す黒の部分、これはまだ設定がない、となっていますが、2020年に決定されたということで、追記いただければと思います。

○五十嵐委員長 米国等の対策については、後日御説明いただけるということでよろしいでしょうか。

○結核感染症課課長補佐(氏家) はい。

○岡部参考人 参考資料2のほうに関連で、政府と言いますか、厚生労働省の対応ですけれども、これは今回のということで随分いろいろ努力はされていると思うのです。平成16(2004)年のときに、平原先生が私の研究班と一緒になってやった研究班で、緊急提言というものを出しています。いくつかのものが実際の行政施策として取り入れられているとは思いますけれども、やはりそういう緊急提言をしたのがどのように実施されている部分があったのか、実施されてない部分があるのか、それぞれ事情によって、できることとできないことがあると思うのですが、どの程度の実効性がもたれたか。これは次のステップに結びついていくのではないかと思うのですが、そのようなことをレビューしておくということで、是非そういったようなものを出していただければと思います。

○結核感染症課課長補佐(氏家) はい、併せて資料を取りまとめさせていただきます。

○五十嵐委員長 よろしくお願いします。

○平原委員 今、岡部先生から御発言がありましたけれども、岡部先生の班のところで2004年に緊急提言ができて、これは4つ骨子があります。1つはワクチンがその当時この状況ですから、ちょうど高校生、大学生ぐらいだったのですが、打っていない世代がいて、これからどんどん発症するよというような、その辺にフォーカスが絞られていたので、とにかくその人たちはワクチンを打ってくださいと。妊婦さんたちの周辺の人たちも打ってくださいと。ワクチンをとにかく打ちましょうというのが1つ。それから妊婦さんの窓口が、今まで産科医の実地医家だけに任されていたのが、国としても全国にこれだけの施設をつくりましょうと。それで15施設が相談窓口になりましょうというのがつくられたのが2つ目。それから、全例を把握しないといけないので全例を把握してくださいということ。2回接種は是非必要ですという、この4つです。

 このうちの1つのワクチンだけが残っているのです。あとは全部もう実際に動いている状況です。相談が100%かと言われれば、なかなかそこのところは問題がありますけれども、風しんのワクチンをとにかく推進しましょうというのが一番大きな骨子だったのですが、4つのうちの1つ目の一番大きな骨子のところがやっぱり十分でないと。この当時も厚生省の方々も学校の先生方も保健所の人たちもみんなが一生懸命やったのですが、高校生、大学生たちがちょうどその当時に、打ってくださいというのに反応しなかったのです。その人たちがピッタリと並行移動して、今の世代をつくっているというのが現状です。

○五十嵐委員長 御説明ありがとうございました。ほかはいかがですか。それでは、資料5を大石委員から御説明をいただきます。

○大石委員 資料5は「風疹流行および先天性風疹症候群の発生に関するリスクアセスメント第二版」です。これは国立感染研で7月に初版を出しましたそのあとに続くアップデート版です。本日、感染研のWebのほうにアップする予定です。7ページありまして、ちょっと長いですので、特にアップデートした部分について御説明させていただきます。

 まず1ページ目の「背景」です。2013924日現在、週当たりの報告数は昨年以下に減少しており、2008年以降最大の風しん流行が落ち着いてきている。しかし、この数年の流行は、妊娠・子育て世代の成人に患者が多いという特徴があり、今後のCRSの発生増加が懸念される、ということです。

 「風しんの疫学的所見」については、一番下のポツに、2004年に患者推計数3.9万人とありますが、下から3行目から読みますと、2012年から報告数が急増し、1年間で2,392人と、2010年に比べ27倍となった。その後も報告数は増加し続け、201311日~918日の約9か月で14,033人と20121年間の約5.8倍となり、2012年同期と比較すると約8.5倍となった。20131月から9月までに報告された地域は東京都、大阪府、神奈川県、兵庫県、千葉県、埼玉県の6都府県で約75%を占めている。一方、人口100万人当たりの報告数では、大阪府、東京都、和歌山県、鹿児島県、兵庫県、神奈川県、奈良県、京都府、千葉県の9都府県が、全国平均を超えた。過去4週間の報告数を見ると、東京都、大阪府、神奈川県の3都府県で、約54%を占めた。性、年齢群別では、男性が77%、うち20ないし40代が82%、報告全体を分母とした場合には63%となっている。女性では20代が40%と最も多い。予防接種歴は64%が不明で、30%が無しであった。

2013年の診断週別の風しん報告数は全国では第1922週の800人台/週をピークとしその後減少し、33週以降は、100/週を下回っているという状況です。2012年には風しんの合併症として、急性脳炎が5例、血小板減少性紫斑病が13例報告され、2013年は918日時点でそれぞれ13例、63例が報告されていた。職種別の職域における風しん流行の記述があります。風しんとして報告された2060歳男性中、何らかの感染原因・感染経路の記載があった者は2,274(23.6)であり、うち職場での感染に関する記載のあった者が973(42.8)であった。

 続きまして、「先天性風しん症候群(CRS)」についての記載です。過去の1965年の沖縄の流行については、前回のものと同じです。3ページ目の3ポツ目の記載で、199941日~2013911日の間にCRS37例報告された。2004年の10例を除き、年間の報告数は02例であったが、現在の風しん流行が始まった2012年以降は、18例のCRSが以下の地域から報告され、東京8例、愛知2例、大阪2例、兵庫2例、埼玉1、千葉、神奈川、香川が1です。先天性風しん症候群では、難聴の頻度が高く、しばしば単独で認められるが、米国における風しんの際には、2万人のCRSが確認されているが、そのうち最も難聴が多くて、11,600人が難聴、3,500人が失明であったとされている。

 続いて「風しんに対する免疫」に関するパラグラフですが、ほぼ記載は前回のリスクアセスメントと同じです。

 次の「風しん含有ワクチンの副反応」についても前回のリスクアセスメントと同様のものです。

5ページの「2012年からの流行に対する対応」は、厚生労働省による対応については、前回のものと同様で、先ほど氏家課長補佐が話されたとおりです。そのパラグラフの下から2番目のポツのパラグラフでは、第5回予防接種基本方針部会において、風しん含有ワクチンの需給状況について厚生労働省健康局結核感染症課から状況が報告された。風しんワクチンについては年度当初より約8万本追加して22.5万本の供給を見込み、MRワクチンについては年度当初より約107万本追加して約471万本の供給が見込まれていることから、5月、6月に任意の予防接種者数の急速な増加により、今回以降にMRワクチンが一時的に不足するおそれが生じたものの、関係者による前倒し出荷・増産等の対応や任意の予防接種者数の減少等により、全国的な不足は回避できる見込みとなり、優先接種者への特段の配慮は現時点で必要ない状況となったことが報告されました。

 産婦人科を対象とした相談体制は同じです。

 最後にリスクアセスメントですが、次の6ページです。本流行は、かつての小児を中心とした流行と異なり、男性は2040代、女性は20代の発生が多く、妊娠・子育て世代が中心である。CRS発生リスクを考えた場合、この世代中心の風しん流行は深刻である。

CRSの発症は、風しん流行から2030週程度の時間差があるため、先ほど多屋先生のほうから紹介のありましたギリシアのCRS発生の報告です。こういったエビデンスがあります。2012年以降のCRS報告は、東京都が全CRS報告数の44%を占めているが、風しん流行状況から想定すると、他の地域でも今後CRSの報告が増加することが予想される。2012年以降に報告されたCRS患者の症状は、先天性心疾患が最多であったが、一般的には、最も頻度が高い症状は難聴とされている。未診断・末報告例の存在が推察されることから、CRSの全体像は正確に把握されていない可能性がある。CRSの診断は必ずしも容易ではないが、2012226日に課長通知で示されたように、CRSが感染症法上の全数届出対象疾患であること、及び、風しん報告数増加地域での妊娠初期検査で風しん抗体陰性又は低抗体価の妊婦から出産した新生児に対し、先天性風しん症候群を念頭に置き注意深い対応を行う必要がある。

2013911日現在、週当たりの報告数はかなり減少しているものの数十例程度と継続しているが、再流行する可能性は否定できない。患者報告数は、人口規模の大きな関東と近畿地域に多かったが、比較的人口規模の大きくない県でも人口100万人当たりの報告数の多い自治体があること。必ずしも大都市のみで流行が起こるわけではない。

 さらに、CRS予防の観点からは、今後妊娠する可能性のある女性で、風しんウイルスに対する免疫を十分に持たない女性に対する妊娠前のワクチン接種が最も重要である。この場合、ワクチン接種前には妊娠の可能性についての問診を行うことに加えて、少なくとも接種後2か月間の避妊が必要なことを説明する必要がある。しかし、風しん含有ワクチン接種後に妊娠が分かった場合でも、世界的に見てもこれまでにワクチンによるCRSの発生報告はない。

 一般的に風しんは家庭内・学校・職場・医療機関等で風しん感染が拡大することが知られており、そのような場合における感染防止対策が重要である。学校保健安全法による出席停止期間は発疹が消失するまでである。風しんウイルスの排泄期間は、発疹出現の前後約1週間とされている。解熱すると排泄されるウイルス量は激減し、急速に感染力は消失するとされているが、感染者が症状を有する期間は出勤や外出等を控えることで感染者の周囲の者への感染拡大を予防することが重要である。このように結んでいます。以上です。

○五十嵐委員長 これについて、御質問はいかがでしょうか。それでは、資料6の今後のスケジュールについて、事務局から説明をお願いいたします。

○結核感染症課課長補佐(氏家) 資料6を御覧ください。上段に「今後の進め方について()」として提示しております。現在策定を予定している指針については、感染症法に基づき、下記の項目を含むこととなります。具体的には原因の究明、発生の予防及びまん延の防止、医療の提供、研究開発の推進、国際的な連携、その他です。これらの各項目について、今後の委員会で数回に分けて検討を行っていただきたいと考えておりますが、いかがでしょうか。

 参考資料1に、麻しんの予防指針を付けております。この感染症予防指針に関しては、既に指針を策定しているものが性感染症、後天性免疫不全症候群、インフルエンザ、結核、麻しんの5疾患あります。この麻しんについての予防指針を参考資料として添付しております。

 今後のスケジュールについての案ですが、小委員会を56回程度開催する中で、この各項目について話し合い、実際の指針についての内容を策定していきたいと考えております。最終的には2月頃を予定しておりますが、予防接種基本方針部会及び感染症部会に結果を報告し、審議と承認を得た後でパブリックコメントを実施し、年度内の指針の公示を目標としたいと思っております。

○五十嵐委員長 本日の資料の説明は以上ですが、資料6の今後の進め方についてこれから御議論いただきます。私としては、これから皆さんに御意見を頂き、次回以降に論点を整理した形で提示し、個別の論点について更に議論を深めたいと考えておりますが、そういう方針でよろしいでしょうか。

                                   ( 異議なし)

○五十嵐委員長 ありがとうございます。それでは、資料6の今後の進め方についての案の1「原因の究明」についてお諮りいたします。本日の資料でも、今回の流行の内容と、感染症研究所からの評価を発表していただいたわけですが、原因あるいは現在の予防対策に関する問題点等について整理をしておくことは、今後の指針の策定においても重要と考えております。昨年から問題になっている風しんの流行の原因について、流行の規模、地域、罹患患者さんの観点等から、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。また、今回の資料の他に追加して議論すべきものがありましたら、それについても御発言いただきたいと思います。

○大石委員 「原因の究明」又は「発生の予防及びまん延の防止」の所にかかると思うのですが、先ほど申しましたように、今回の風疹流行が職場で発生しました。アウトブレイクが進行していく中、種々の事業所での流行の情報が感染症疫学センターにおいて探知されるのですが、なかなか対策を実施することが出来ませんでした。今後の対策の実施のためにも、職場での風疹流行のメカニズムを調査するということが必要です。本日は産業医の先生も出席されておられますが、事業所での予防接種を含めた感染対策をどのようにしたら実現できるのか、ということを今後検討していくべきではないかと考えております。

○五十嵐委員長 職場で2040歳代までの男性が感染することが多いということで、当然職場で移っている可能性があるという御指摘でした。

○平原委員 これは2004年の時もそうだったのですが、ちょうどその頃が高校生、大学生ぐらいですから、要するに自分で行動するパターンの人たちなのです。フォーカスになるのは職場であるというのは大体絞られているのですけれども、そこにいる成人男女が、どのようにしたら本当に行動してくれるのかという部分が一番のポイントだと思うのです。前の時にも、高校生と大学生に「打ってください」と散々みんなが言ったのですけれども、結局は余り打たなかったのです。1歳の子供は親御さんが一生懸命保護しますから、ワクチンを必ず打つから、今の子供は本当に守られています。そういうパターンが大人はできないのです。どのような方法がそういう世代の人たちにリスクアセスメント、リスクのリテラシーというか、そういうことを浸透し、それでそういう行動をしてもらえるかという、その辺が一番重要なことかと思っています。

○五十嵐委員長 大変貴重な御指摘だと思います。

○岡部参考人 今度、風疹に関する特定感染症予防指針ができるのは非常に歓迎しています。資料6にもあるように、特定感染症予防指針にはSTDHIV、インフルエンザ、結核、はしかがあります。はしかは、これをきっかけにエリミネーションに相当強く動いたと思います。他の予防指針ではなかなか問題点が多くて進まない中、はしかが動いたというのは、このようなものを基本的に行うべきことを示し、法的なというところまでは行かなくてもかなりの裏付けになるものであり、保健所であるとか衛生研究所、あるいは学校の動きも出きました。先ほど大石委員、あるいは平原先生もおっしゃっていたように、ターゲット年齢層ががはしかとは違うので、そこの事を念頭に置いてちゃんとやらなくてはいけないだろうと思うのです。

 それから、はしかの時にはSSPEの親の会の方に来ていただいて、実際のご苦労を随分お聞かせいただきました。そういう意味では風しんでは、CRSということがあります。私たちは割にCRSの家の方、保護者の話を伺う機会もあるわけですが、意外にそういう声は広く聞こえてこないような気がするのです。お家の方の了解もいると思いますけれども、できたら実際にどのような状況なのかということも、この委員会において、伺っておいたほうがいいのではないかと思います。

 もう1つは、疾患への対応などがあると思います。今後は残念ながら今回の流行でCRSの患者さんがさらに出てくる可能性があると思います。そうなったときに早期発見であるとか、それの対応をどうするのかというのは、この指針の中に入れておいていただいて、CRSの子供さんをどうやって育てていくかの支援。もう1つは、はっきりCRSの症状が出なくても、実際にはかなり長期にウイルスを排泄していることがあるので、出産時あるいは保育園などでの感染源としての問題も出てくると思うのです。そのような方が逆に余り注意されすぎて無用の差別にならないように、しかし他への防御はしなくてはいけないというバランスの観点での項目も是非この中に入れておいていただければと思います。

○五十嵐委員長 いろいろな御指摘をありがとうございました。

○大石委員 岡部先生の御指摘のとおり、CRS児のウイルス排泄にどのように対応していくかということは重要な課題です。この件については、当センター内でも早い段階から議論を進めてきました。今回は産科の平原先生とか、小児科の宮崎先生、あるいはセンターの中のスタッフで協力して、短期間のうちにCRS児の対応についてQ&Aをまとめました。この内容は本日までに感染研のホームページにアップする予定です。

 そのQ&A中では、CRS児の差別につながらないように配慮しながら、記述しております。CRS児が保育所へ行けるのか行けないのかの判断だけでなく、もっと根本的な問題として、CRS児が実際にウイルス排泄をしているのか否かの調査研究も必要になってくると思います。

 一方、そのQ&Aとは別に、感染症疫学センターの中で、CRSサーベイランスの研究に関する倫理申請を進めております。CRS児の届出のあった症例について、児のウイルス排泄及び岡部先生から質問のあった、お母さんの状況とか感染経路の詳細を、一部後ろ向きになりますが、今後は前向きに研究を開始できると考えているところです。

○小森委員 私も岡部委員には基本的に賛同しますが、3点あります。1点は、小委員会又は上の部会及び分科会でこれから議論するということなのです。希望としては、しっかりエリミネーションという目標を持って指針を立ててほしいと。当面の対応ということであってほしくないということが1点です。

2点目は、小委員会の委員に、親御さんの会等が参加しておりません。そういう方々の声をしっかりお聞きしていくことが重要だろうと思っています。

3点目は、小委員会の設置目的等については理解しております。これは中期的な観点から議論するということは極めて重要だと思います。とはいえ、来年の対策が喫緊の課題です。そのことについては、上の部会での審議を踏まえ、厚生労働省は行政として的確に早急に対応すべき点が幾つもあるわけです。そのことについて、しっかり生かす議論の形を是非取っていただきたいと思います。この3点を是非お願いいたします。

○五十嵐委員長 御指摘ありがとうございます。

○高橋委員 学校関係の話をさせていただきます。私は、以前教育委員会に勤めていて、麻しん流行の時にはいろいろな対応を御指導頂きながら進めた経験を持っております。まず、1点目として、今は、就学時健康診断が始まっている時期です。入学を来年度に控えたたちの健康診断のチェックの中で、きちんと予防接種の履歴を確認したり、そこで担当者から、未接種だった場合には事後措置として助言されたりという重要な機会です。この時期も生かしていけると大変有効かと思っております。

 ここでは、家族の方が付き添っていることが多く、その待合いの時間等をうまく活用しながら予防接種のこと、予防接種で防げる感染症のことなども正しく伝えていくことが大切だと考えています。

 2点目は、学校現場での健康教育です。小学校、中学校、高等学校の保健学習で、感染症の予防について学習します。先ほどお話がありましたように、健康な行動がとれるかどうか、いわゆる実践力の育成について、さらに具体的な指導を進めていく必要が更にあると感じています。

3点目は、流行の状況の把握です。学校関係では、国立感染症研究所の皆様に御協力いただいて、感染症情報収集システムの導入が、多くの県や学校で始まっています。これによって全国、それから自分の県内や、地区の感染症の流行状況の把握に非常に役立っているところです。学校では、低学年の子どもたちが、風しん等にかかる率が高いという報告もされましたけれども、その家庭では妊娠の可能性のある家族がいらしたり、職場でも妊娠の可能性のある先生たち等もいるわけです。従って、情報の把握と、的確な提供がセットで必要になってくるかと考えています。

4点目は、正しい理解をしていくために、分かりやすい資料を提供していくことが大切だと感じています。子どもたちや一般の方たちにも理解してもらえるような資料の作成も一緒に考えていただけると有り難いと思います。

5点目は、保育園・幼稚園の子どもへの指導と、家族への情報提供は、学校も含めて地域の母子保健と一緒に連携しながらやっていくことがとても大切だと感じています。行政との連携も図れる道筋を確認していければいいかと思います。

○渋谷委員 1つには、特定感染症予防指針を作る目的があるかと思います。これは小森委員も言われたように、ある程度中長期的な見通しが必要だと思います。一方で、すぐに何をしなければいけないかということも並行して検討していく必要があるかと思っています。

 ターゲットになる若い人たち、その職域の人たちのことを考えると、産業活動からいうと海外との行き来がとても重要だろうと思います。特に東南アジアの対策と、日本の対策とはギャップがあるわけです。そういうところも1つ課題になるのかと考えています。

 地域の保健所や地方衛生研究所のことを考えると、その流行時にどこまで疫学調査をするか、抗体検査をするかとか、積極的な疫学調査や届出、報告をどの程度していくのかということについても検討しておく必要があるかと思います。やはり届出をしていただかないと、察知することがなかなかできないということがあります。今は届出基準は変わったわけですが、そういうことも含め、流行の時には何をどれだけ検査をするか、ということも含めて検討をしておく必要があるかと思います。

 目標として何年までに何をやる、という進行管理ができるような指針のほうがいいような気がしますので、ある程度何年のうちに何をする、というようなことも盛り込めたらいいかと思います。

○渋谷委員 1つには、特定感染症予防指針を作る目的があるかと思います。これは小森委員も言われたように、ある程度中長期的な見通しが必要だと思います。一方で、すぐに何をしなければいけないかということも並行して検討していく必要があるかと思っています。

 ターゲットになる若い人たち、その職域の人たちのことを考えると、産業活動からいうと海外との行き来がとても重要だろうと思います。特に東南アジアの対策と、日本の対策とはギャップがあるわけです。そういうところも1つ課題になるのかと考えています。

 地域の保健所や地方衛生研究所のことを考えると、その流行時にどこまで疫学調査をするか、抗体検査をするかとか、積極的な疫学調査や届出、報告をどの程度していくのかということについても検討しておく必要があるかと思います。やはり届出をしていただかないと、察知することがなかなかできないということがあります。今は届出基準は変わったわけですが、そういうことも含め、流行の時には何をどれだけ検査をするか、ということも含めて検討をしておく必要があるかと思います。

 目標として何年までに何をやる、という進行管理ができるような指針のほうがいいような気がしますので、ある程度何年のうちに何をする、というようなことも盛り込めたらいいかと思います。

○五十嵐委員長 具体的な内容まで含めてありがとうございました。

○竹田委員 長期的視点に立てば、今は1期と2期の接種率が、97.5%と93.7%と非常に素晴らしい接種率になっているので、これが継続できれば、はしかの流行がない状態も続きますし、長い目で見れば風しんも確実になくなってしまうと思います。ただ、この接種率を維持することは言うは易しですが非常に大変だと思いますので、それをどうやって維持していくのかを指針の中でも強調していければと思います。

 そういう中でも麻しんがこれだけ減ったのは、何と言ってもワクチン接種率が上がったことです。一方、風しんがこのように成人男性のものになっているのは、ワクチンの接種のプログラムと深く密接に関わっているので、そういう中でいかにワクチンが重要であって、効果があるのかを強調できればと思います。

○北原委員 職域でという立場で意見を述べさせていただきます。私は産業医ということで、ある一定規模の事業場で勤務しておりますけれども、日本の多くの事業場が、産業医という専門職がいない、ということを前提に事業者がどう協力ができるのか、を具体的に考えなければいけないというのが、大枠として私の意見としてあります。

 働いている若年層の方たちに感染が拡大している原因としては、症状が正しく診断されないうちに、熱等の症状があっても頑張って出勤してきてしまっている、ということもあるのではないかと思います。また、これは医師会の先生方の御協力も必要かと思いますが、地域で診察をして頂いた先生方が、風しんを疑うような症状があった方に対し、出勤の可否等に関する御指導をより適切にいただけないだろうか。出勤ができる状態か否かの判断は会社ではなかなかできないので、その辺りの御指導をいただけるといいのではないかと思います。

 また、風しんの抗体価が低いかどうかということが、自分自身では分からない。ご自分の母子手帳を自分で見てくださいと言っても、20代、30代の男性がお母さんに電話をして、母子手帳を見ることはなかなかできないのではないかと思うのです。そういう意味で、抗体価が何らかの形でチェックできると、ワクチン接種にという行動につながるところがあるような気はしております。その仕組みの構築はかなり大変かと思いますが、一案としてあろうかと思います。

 あとは啓発活動が非常に重要です。経団連の方にも来ていただいていますけれども、やはり事業主の方たちに対しても、啓発活動を継続していく。感染が終息していくとすぐに感染対策に対する意識が下がってしまいますけれども、継続することがポイントかと思います。

○竹田委員 北原先生のおっしゃったことで思うのは、成人の方に症状があって医院に行っても、なかなかすぐには風しんという診断が付かなかったりすることが1つの原因かと思うのです。指針の中で、どうやって早期に診断を付けられるかというメカニズムを考えていければ、多少は効果があるのではないかと思います。

○加藤委員 竹田先生の御指摘と関連してなのですが、今回の流行は成人に偏っているということで、これまで小児科が対象疾患というのでしょうか、内科医にとってはまだ風しんという疾患が十分認知されていないところもあると思います。そういうことも、この委員会で取り組んでいければと思います。

○吉山委員 私は、保健センターを統括する部署におりますけれども、竹田先生のお話の中でも、1期と2期の予防接種の接種率のお話がありました。やはり、感染症対策をいかに母子保健のいろいろな事業の中に組み込むかということも必要なことかと思います。乳幼児健診の中でのワクチンの予防接種の話というのは必要な項目です。

 学校教育の中でも、今は保健センターでも出向いて、いろいろ性教育等も行っておりますので、そういう場面でも若い世代へのアピールはしていくべきかと、その辺も考ていただきたいと思います。

○五十嵐委員長 いろいろ具体的な御意見を頂きましたので、これを事務局で指針内容に反映すべく検討していただきたいと思います。次回以降の委員会でも、また取り上げると思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 時間のこともありますので、次の「発生の予防及びまん延の防止」について、やはり委員の先生方から御意見を頂きたいのですが、何かございますでしょうか。職場では、例えば風しんの抗体価を定期的に測るようなことは、今まで余りされていなかったですよね。

○北原委員 それは全くないと思います。

○五十嵐委員長 医療関係者の場合、例えば看護師さんだとか、医学生等は、臨床実習に入る前に抗体価を必ずチェックして、低い場合には適切な対応としてワクチンを打つようなことはしてきたのですが、このような状況のときに、全ての職場においてこういうことをするというのは余り現実的ではないですよね。

○北原委員 そうですね、やはりそこには費用という壁もありますし、それは誰が持つのかということもあります。ただ、麻しんが流行したときに、新入社員に対して健診時にチェックをした企業はあるようです。

○五十嵐委員長 それを、例えば風しんの抗体価も一緒に調べるなどという動きは余りないわけですね。今のような流行があったときにでも、そういうことをやるような企業はまだ余りないということですね。

○北原委員 そうですね、そこまでの企業は私が知る範囲ではないかと思います。ワクチン接種を社員に対して広い範囲でやっている企業はあるようです。

○小森委員 この会議に、今回は中小企業団体中央会、経団連から委員が出ておられます。非常に大事なことだと思うのです。特に風しんに関しては重要です。藤原委員とは、「新型インフルエンザ等有識者会議」でも御一緒させていただいて、経団連のお立場からの御意見はお聞きをし、計画なりガイドライン、あるいは行動計画等に反映させていただく過程は極めて重要だったと思っています。

 今のお話とも若干関連しますが、例えば健保連の保健指導という観点からも大事なことです。この費用と支弁を私たちは、医療あるいは保健活動は消費ではなくて、投資だということを申し上げています。企業のトップの方々の御理解は極めて重要な課題です。そのような観点から、ある意味でその現状、それに対する受け止め方等について、こういう団体の方からの御意見を是非聴取もしたいし、お聞きしながら計画を練っていく。

 そういう中で、企業活動の一環として、もし御主張があったら、指針の中にも是非取り込んでいくということは、今後のこういう活動にとって極めて重要な観点なので、是非そういうことも入れていただきたいと思います。産業医のお立場で北原委員がおっしゃっておられますが、私もいろいろな所で、様々な活動に携わっておりますが、いろいろな所でトップの考えが極めて重要なので大変期待もしておりますので、是非よろしくお願いいたします。

○五十嵐委員長 藤原委員から、現時点で何かコメントはありますか。

藤原委員 私自身、職場における安全衛生とか労働規制のところについては余り詳しくないのです。小森先生がおっしゃったのは、インフルエンザ等の対策で、企業のBCPといいますか、事業継続計画の中でインフルエンザの議論をしていたのです。今のお話を伺っていて、確かに職場を経由した、しかも職場での若い世代の感染経路がかなりあるのだとお伺いして、その重要性を認識しました。今後は関係の部署とよく連絡を取りながら、またこちらのほうに申し上げることがあればさせていただきたいと思います。本日のところは御容赦いただきたいと思います。

○岡部参考人 私は企業の中にはいないのでよく分からないところもあるのですが、そういう若い社員等々の健康を守るということは、結局は企業にとってもマイナスではない。逆に欠勤も少なくなるし、家族の心配も少なくなるというメリットが何らかの形で調べられて、アナウンスされると非常に効果が出てくるのではないかと思います。

 風しんもエリミネーションは最終的なターゲットであるとは思うのですけれども、これを良いことをやろうと思って一気にドカンッとやろうとしても、今度は実行性のほうが難しくなってくることがあるので、その辺は渋谷先生がおっしゃったような、ターゲット・イヤーみたいなものを決めて、あと何年間でこのぐらいのことをやって、次のステップへと。恐らくこういうのは5年やったらおしまいというわけではないでしょうから、その辺も視点に入れる必要があると思います。

 はしかの特定感染症予防指針で、5年間中高生をやってというのは、最初は海外の会議へ持っていくと、どうして日本は一気にある年齢層をターゲットに、いわゆるイムナイゼーション・デーのようなもので一気にやらないのかということは随分批判されたのですが、今になってみると、逆にWHOあるいは他の国々から、5年ぐらいかけてステップを一歩一歩踏んでいったというのは非常に評価されているということもあります。そういう意味では、はしかのそういうステップの踏み方はお手本にしていいのではないかと思います。

○五十嵐委員長 参考になる御意見をありがとうございます。他によろしいようでしたら、時間も押しておりますので、3の「医療の提供」について御意見を頂きたいと思います。

○小森委員 医療の提供というと、例えば予防接種をする体制、これにはいろいろな議論が当然あるのだと思いますし、財源の問題も当然あろうかと思います。当委員会としては、分科会又は部会、更にその下にある風しんに特化した委員会ですので、飽くまで財源の問題ではなくて、医学的・科学的観点からということに徹して、予防接種行政について、風しんについていかにあるべきかということはしっかりと書いていただきたい。、

 岡部参考人がおっしゃられたし、これは私達の提案でもあるのですけれども、抗体陰性者等については、ある程度の期限、例えば麻しんであれば5年間、3期、4期接種を行ったわけです。もちろん麻しんは年齢構成、その他いろいろ違うわけですし、5年でいいということではもちろんないわけです。しかし、いつかは必ず発症してくるであろうと予測される方々をターゲットにして、しっかり予防接種を行うこと等については明確に議論していただきたいと思います。

○館林委員 麻しんの時とは随分感染症に対する考え方も違っているので、今のほうがすごく理解はされやすいと思うのです。成人の方というのは、例えば子宮頸がんワクチンで子宮がん検診を受けましょうと言ってもなかなか進まない。医療に簡単にアクセスしない人たちというか、クーポン券を配ってもなかなか行かない。効率的に成人の男性の方々に医療を提供できる体制を考えていただけると有り難いと思います。

○五十嵐委員長 外国では、飛行場等にワクチン・ショットという名前で出店があって、お金を払うといろいろなワクチンを打てるというようなシステムがある国もあります。

○小森委員 館林委員から御指摘のあった、いろいろなリスコミュニケーションという立場から、マスコミュニケーションのお立場のことというのは、予防接種ではインフルエンザのことについてもいろいろな御意見等があって、リスコミュニケーションということでも、相当な分量をガイドライン等に書いてあるという経緯もあります。正にそこには委員の方々から、是非マスコミの立場からこういうことを、という提言があろうかと思いますので、そういう御提言も頂きたいと思います。私は、委員のお立場に立って仕事をしたことがないものですから、多分私たちとは違う素晴らしい提言をしていただけるのではないかと思いますので、是非よろしくお願いいたします。

○五十嵐委員長 本日は、すぐに意見を出せと言われてもなかなか出ないかもしれません。医療の提供についてはこれでよろしいですね。次に「研究開発の推進」について御発言はありますか。

○岡部参考人 ラボワークが主に研究開発ということで出てくると思うのです。これは、過去を遡ってほじくり返すという意味ではないのですけれども、この年代層にどうして風疹が出てきて、どういうポピュレーションに多かったのか。あるいはCRSがどういう状況の時に起きやすいかという、疫学的な研究を是非推進できるようなことをこの中に入れていただければと思います。

5番目の「国際的な連携」にもつながるのですが、例えばWHOの西太平洋地域の会議に出ても、風しんは、はしかと違って日本はそんなに遅れているわけでは決してなくて、むしろ風しんのワクチン、あるいはサーベイランスが行き届いていない国も多々ある中で、この現象は他の国にも将来起こり得ることだと思うのです。そうだとすると、それに対して今きちんとしたまとめをしておいて、それが提言に結び付くとすれば、大きい国際的な連携とコントリビューションになるのではないかと思います。

○五十嵐委員長 大変重要な御指摘だと思います。

○竹田委員 岡部先生の御意見に全く賛成なのですが、日本はセロ・サーベイランスも充実しているし、データも正確なので、恐らく数理学的なモデルでかなり正確に、どういうターゲットにワクチン接種をすれば、リソースは少なく、最も最大の効果を出せるかということがきっと解析できるので、私はそういうことはできないのですが、そういう研究をエンカレッジしていただければと思います。

 早期診断をすることが重要なのですが、これもまたリソースの問題があるので、いかにヒューマン・リソースも、経済的なリソースも少なくそういうことができるかという技術開発が重要になってくると思います。

○北原委員 風しんの発生届を拝見すると、感染地域という所があって、日本国内、国外と書いてあります。今、働いている方たちというのは、海外との行き来が非常に頻繁になっていて、1日とか2日で海外を往復するような動きが頻繁にあります。そうすると、渡航歴みたいなものがないと、日本国内なのか、海外で感染したのかがちょっと分かりにくいのではないかと思いました。海外からの感染がというお話がありましたので、そういう意味では渡航歴が、その後の調査にも何か役に立つのかと思いました。

○五十嵐委員長 この調査票については、将来検討する機会はありますね。

○事務局 はい。

○多屋委員 発生届出を見ていただいていると思うのですが、右側の段落の感染地域の1番が日本国内で、2番が国外で何々国にいつ渡航したかを書いていただく欄を設けております。そこに、風しんだと潜伏期23週間前にどこに渡航していたかというのを是非書いていただけると大変助かります。この届出のガイドラインなども、麻しんと同様に作ろうということで相談を進めておりますので、また御活用いただければと思います。

○五十嵐委員長 併せて「国際的な連携」についても御発言いただきたいと思います。疫学調査が必要だという御意見が出ているのですが。

○大石委員 風疹ウイルスのゲノタイプ、あるいはウイルス塩基配列による系統樹解析において、風疹ウイルスは麻しんウイルスと違って、アジア地域のゲノタイプも系統樹解析結果も割と似通っています。竹田先生にお聞きしたいのですけれども、渡航歴等が明確であれば、この人は海外からウイルスを持ち込んだということが風しんウイルスにおいても言えるのでしょうか?

○竹田委員 第一には渡航歴の調査が一番重要になってくると思います。渡航歴のエビデンスがあって、そこにウイルスの解析が合わされば100%という形で発表できると思います。

○大石委員 私の質問は、例えば、ウイルスが台湾で流行しているものと、日本で流行しているものと完全に区別できるということは言えるのですか。

○竹田委員 それは、ウイルスの塩基配列だけではなかなか難しいです。

○五十嵐委員長 他にないようでしたら、最後の「その他」の所なのですが、これはなかなか難しいのです。「麻しんに関する特定感染症予防指針」を御覧いただくと分かるのですが、これに相当するものとしては、例えば評価、推進体制、普及啓発の充実という項目が多分これに相当するのではないかと思います。風しんに関して、これらの項目に該当するような点で何か御意見がありましたらお願いいたします。

○岡部参考人 麻しんの場合は評価委員会みたいなものを設けて定期的に評価をやっています。それが次のステップを検討したりしているのです。風しんの場合もこの委員会がそうなるのか、あるいはどこがやるのかは明らかではないのですが、そのように常に評価をして、それで次のことを考えるといった仕組みは「その他」の所に是非入れておいていただければと思います。

○竹田委員 麻しんのほうも、対策推進会議、排除認定会議とあります。麻しんと風しんはMRワクチンですし、共にほとんど一体となって推進していく対策だと思うのです。今後、風しんで全く個別のそういう会議を作るのか、やり方として麻しんの所に入れ込むことが可能だったら、そのほうが効率的なのかと思います。

○五十嵐委員長 自治体として何か取り組むことを考えているような、特に20歳から40歳代の方に多いというような現状を踏まえた対応を計画しているような、あるいは討議しているような所はありますか。本日おいでになっている自治体の関係者の方から特にないでしょうか。

○吉山委員 京都市です。今回の流行に関して、予防接種を臨時的に実施いたしました。今年度末でそれを一時終わるわけですけれども、本当にそれで十分なのかということ。もちろん財政的な問題はありますけれども、ワクチンの効果が非常に大きいというのであれば今後どうしていくのか。京都市として、来年度は予算要求しようかというところで今検討しているところです。財政的な問題で実施できない所も、京都市だけでなくて他の所にもあると思いますので、その辺りのことは今検討しているところです。ただ財政的なこともありますので、抗体検査をどのようにして導入していくのかというのは、厚労省からも御提案のあるところですので、その辺りが今後どうしていくのかという辺りの御指導があれば非常に参考になると思います。

○五十嵐委員長 そのことも含め、これから検討したいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。他によろしいようでしたら、全体を通して言い忘れたこととか、追加したいことはありますか。

○調委員 原因の究明の所でお願いすべきだったと思うのですが、地方衛生研究所は、麻しん、風しんの遺伝子検査を行ってまいりました。麻しんについては、2008年の非常に数の多い時には、とても全数について遺伝子検査をできるような状態ではなかったわけです。患者数が減少し、平成2211月に、結核感染症課の課長通知によって、ほぼ全数について遺伝子検査をする体制に移行しました。

 これは、先ほどから議論されていますけれども、この株は地域の流行株なのか、それとも外国から来たものなのかを示すために、遺伝子の配列を決定する必要がある。地域流行株が無いことが、麻しんでいうと、その排除の条件になってまいりますので、非常に重要なところかと思います。そういう意味で、原因の究明の所で、地方衛生研究所における風しんの遺伝子検査を、いつから、どのような形でやっていくのかを記載する必要があります。

 現在、、風疹につきましても全数把握にはなっており、風しんの遺伝子検査もかなりなされています。地方衛生研究所で遺伝子検査をするという体制について、自治体に認識がないものですから、医療機関の方から風しんの遺伝子検査をしてほしいと思ったときに、実際にはは麻しん疑いということで検査依頼が来ている自治体が多いのが現状です。そういう意味で、この指針の中で、地方衛生研究所における風しんの遺伝子検査、をきちんと記載していただくというのは非常に重要なことだと思います。

 それから流行予測についても、これは国からの全額補助予算でできる事業ですので、比較的やりやすいのですけれども、これから政令市でどうやっていくかというのが非常に重要だと思います。

○小森委員 もう散々分科会、部会でも申し上げてまいりました。いつも同じことを申し上げて恐縮ですけれども、やはりCRSをゼロにしたいという強い意思の下で、風しんの抗体価の陰性の方々に対する、公費負担による検査並びに予防接種、ワクチンの接種について日本医師会としては強い意思で臨んでいることをあえて最後に申し上げておきます。皆さんの御協力を是非お願いいたします。

○五十嵐委員長 時間も過ぎましたので、本日のディスカッションはこれで終了いたします。事務局から何かありますか。

○結核感染症課課長補佐(難波江) どうもありがとうございました。次回の開催は1021日を予定しております。詳細については改めて御連絡させていただきます。

○五十嵐委員長 これで第1回の会を終了いたします。御協力をどうもありがとうございました。


(了)

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