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2013年6月25日 第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成25年6月25日(火)
16:00~18:00


○場所

新橋会議室 8E会議室(8階)
(東京都港区新橋2-12-15田中田村町ビル)


○議事

○今井室長補佐 定刻になりましたので、第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会を開催いたします。本日は御多忙のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。

 本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御協力をお願いいたします。また、傍聴の方は、傍聴の際の留意事項の遵守をお願いいたします。

 初めに、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は小森委員、福島委員、三村委員から御欠席の御連絡を受けております。また、西島委員より、 10 分程度遅れて御出席されるとの連絡を受けております。現時点で委員 10 名のうち 6 名の出席をいただいており、定足数に達しておりますので、本日の会議は成立したことを御報告いたします。また、一般社団法人日本ワクチン産業協会理事・第一三共株式会社の菊池参考人、一般社団法人日本ワクチン産業協会常務理事の高山参考人、国立感染症研究所所長の渡邉参考人に御出席いただいておりますことを御報告いたします。

 それでは、議事に先立ち、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第、配付資料一覧、委員名簿、資料 1-1 から 2-3 まで御用意しておりますので、配布資料一覧と照らして不足しております資料がありましたら、事務局までお申し付けください。

 冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。

 次に、審議参加に関する報告をいたします。予防接種・ワクチン分科会参加規程に基づき、各委員及び参考人からワクチンの製造販売業者からの寄付金等の受取り状況、申請資料等の作成への関与について申告いただいております。本日の議事内容において、個別に調査審議される品目はございませんので、今回の審議への不参加委員はおりませんことを御報告いたします。

 それでは、庵原部会長に議事進行をお願いいたします。

○庵原部会長 それでは、議事に入ります。まず議題 1 の「日本のワクチン産業と市場の動向」ということで、最初に菊池参考人から資料の説明をお願いいたします。

○菊池参考人 ワクチン産業協会理事の菊池でございます。資料の説明をさせていただきます。本資料は、 2005 4 月にワクチン産業ビジョンを作る際に提出した資料を、改定して作っております。

 まず 1 ページ目です。ワクチン産業協会について説明しておりますが、一昨年より細菌製剤協会からワクチン産業協会に移行して、より産業の振興に努めていくということで活動をしております。

 次ページです。ワクチン産業協会の協会会員についてお示ししております。順不同ですが、上のほうにメーカーがあり、販社等が並んで、日本のワクチンに関する多くのメーカーが参加している状況です。

 ワクチン産業の話に入ります前に、若干ワクチンの果たしてきた役割をレビューさせていただきます。 3 ページです。これは皆さんも何度も見られた図になりますが、 1800 年以降、多くのワクチンが開発され、感染症に貢献をしてきたということで、現在まできておりますが、まだまだ開発中のワクチンもありますし、できていないワクチンも多く見受けられるというのが現状です。最近の話題としては、感染症以外のワクチンも研究されているという現状です。

 次ページです。国内におきましては、特に特筆すべき事項としては、 1961 年のポリオの大流行のときに、当時の厚生大臣の英断で、国交のなかったソ連などからポリオワクチンを緊急輸入して、感染拡大を防いだということが大きな出来事です。 1970 年代に入ってポリオを制御できているのは、日本を含めて数か国しかなかったということで、いかにこのワクチンの意味付けが感染症について大きいかということを示しています。

5 ページです。「ワクチン接種率低下が引き起こす流行」ということで、日本においては百日咳の事例を出しております。 1974 年、最初 DP から始まって、 DwPT に変わった全菌体ワクチンで始まったのですが、それによって一部の脳症が発生して、結局不安が起こって接種率が一挙に低下したという時期があり、接種率低下によって公衆衛生が崩れて大流行をして、打たないことによって、 3 万人以上の患者と、 100 人以上の死者が出たという苦い経験がありました。その後、研究開発を進めて、無菌、無細胞性ワクチンを導入し、世界に先駆けて百日咳対策に貢献したという歴史があります。

 この辺のワクチンの接種とアウトブレイクの関係というのは、世界的にも一般的で、有明な学者の PLOTKIN 先生の有名な図ですが、ワクチンの接種率の上昇に伴い、当然関係あるなしに関わらず有害事象数が増えていきます。それに伴い、ある意味では信頼性の低下が起こり、それに伴って接種率が一旦低下してアウトブレイクを起こして、やはり打たないといけないということで、接種されて制圧に入ってくるということです。よく分からない有害事象というものの中には、いろいろなものがあって、この辺の扱いというのは、やはり健康な人に打つもの、投与するというものは非常に難しいなと。例えば造影剤も同じ部類に入ると思うのですが、医薬品開発を担当している我々としては、それを痛感するところです。

 次から「日本のワクチン産業の変遷」です。これは前回のプレゼンのリマインドになりますが御紹介します。戦後 1948 年に予防接種法が制定されまして、 57 年にアジアかぜを契機として、インフルエンザの量産体制が確立されていきます。 1960 年代、 70 年代は、特に政府の指導、厚生科学研究などを実施して、国が一体となった国防という意識でのワクチン開発が行われてきて、大きな成果を上げてきたという理解をしております。

 次ページです。しかしながら 1990 年代に入り、これはインフルエンザを例にとっていますが、平成 6 年ぐらいから、ほとんど打たれないという時期が数年間続いてまいります。これはいろいろな要素がありますので、一概には言えませんが、非常にワクチンの産業の停滞を招いたのは間違いありませんし、国民のコンセンサスという意味では、非常にワクチンに対して冬の時代が起こったということを契機に、予防接種法の改正、義務接種から勧奨接種になっていったり、いろいろなことが起こってきたというのが、一旦、インフルエンザに関してはリセットされた状態が起こったということが、歴史上大きな問題です。

9 ページです。「ワクチン産業の特徴」ですが、国家的な危機管理と密接に関係しておりまして、公的政策の影響を受けやすい。すなわち、定期接種化されないと市場の安定が変わりまして、接種率に関わる行政の動きによって産業の状態が変わってくると。また定期接種化されない初期のワクチンというのは、やはり新しいワクチンであれば、啓発活動を十分に行わないと接種率は上がりませんし、民意等、マスコミを含めて一気に接種率が上がってしまうこともあるということで、生産と研究開発とのかね合いが難しいというものです。

 また、 3 番目、今の風疹の問題等でも出てきておりますが、製造のリードタイムが非常に長く、その上、有効期間が短いということで、突発的な需要等の増に対して即座に対応するのは非常に難しいという特性を持っています。

 次ページです。ワクチン特有の製造・供給の問題についてですが、もう 1 つは原材料は生物の影響を受やすい。これは卵の例を出していますが、例えばパンデミック、若しくは鶏の感染を起こすと、鶏自身、卵等も含めて動くことができなくなってしまいますので、供給ができなくなるとか、大きな問題が生じます。また、一度製造を中断してしまいますと、製造設備の再開に非常なる時間がかかったり、技術的にも比較的特異なために、一般の低分子で見られるジェネリック等の参入等は非常に難しい状況です。

11 ページで「ワクチン製造のリードタイム」について、若干補足の説明をしておきます。原液製造から原液バルク、国家検定、自家検定まで約 1 年から 1 年半。これは生ワクチンの例ですが、それを製剤化して製品化して、国家検定、自家検定を含めてまた半年弱、物によっては 1 年半から 2 年近くかかってしまうというのが生ワクチンの現状です。したがって、接種に対する予想を 2 年ぐらい前から行っていかないといけないということで、非常にこの辺のことに関しては、接種予想を各社がそれぞれにやるのか、若しくはいろいろな方と相談しながらやるのかというのが、今後考えないといけないところかなと思っています。

 次です。「流通構造の違い」です。これは低分子の一般の医薬品と比べております。これに関しては恐らく流通の部会の中の名称に入っていますので、これに特化したお話は別途あると思うので簡単に御説明します。低分子医薬品と比較しまして、ワクチンに関しましては、主に製造メーカーと販社が別になっている所が多いということと、卸を通じて市町村の一括購入など一般の医薬品にないものがあります。また、特に有効期間が短かいインフルエンザとかは、返品という低分子医薬品では見られない習慣があるということで、これも産業の安定には非常にリスクになるところです。

13 ページから、日本、アメリカ、ヨーロッパのワクチンがどのように開発、発売させてれてきたかを並べています。説明は詳しくしませんが、 1985 年から 90 年ぐらいまでは、日本もアメリカもヨーロッパも、同じぐらい開発されていたということです。

 次に、 1990 年から 2004 年ぐらいまで、日本においては、先ほどの社会環境の影響やいろいろなことを含めまして、ワクチン冬の時代で、約 15 年ぐらい全くワクチンが開発されない時期があったということが、ワクチンラグにつながっているところです。

16 ページです。 2005 年に入りまして、ワクチンの開発が、日本でも発売がなされるようになって、時を同じくして、ワクチン産業ビジョンも発出されまして、ワクチンに対する動きが大きく変わってきました。

17 ページですが、日本では多くのワクチンが上市され、ワクチンラグはほぼ解消に近くなり、製品についてはほぼ満たしてきたというのが現状です。

18 ページ、 19 ページは、詳しく説明すると時間を要しますので、「日本で販売されているワクチン類と製造販売業者」を一覧にまとめています。これは別添の所にもほかの詳しいものもありますので、御興味のある方は見ていただければと思います。

20 ページは「ワクチン生産額の推移」です。先ほどワクチン冬の時代と言っていました 1995 年。これは生産量から希望納入価格をもとに協会にて推計したものなので、実際に各社の売上げを足すと、若干の違いがあることは御了承ください。 1995 年で約 400 億ぐらい、このときで医薬品オールからすると 0.6 %の比率です。 2005 年はインフルエンザが再開されて、高齢者の勧奨接種などもありまして 700 億弱ぐらいまでいきます。これで医薬品の 1 %。 2007 年でワクチン産業ビジョンが出されます。 2012 年度になりますと、かなり大きな数字で 2,700 億ぐらいになっていまして、これは医薬品の 3 4 %に当たっています。この中にはキャッチアップやいろいろなものもあるので、一時的に増えたものも含んでおりますので、これが本当の市場かどうかというのは言い切れないというところはあります。

21 ページです。「ワクチン産業ビジョンの骨子」を、産業の立場からコンパクトにまとめてみました。ここに書いてある大きなポイントとしては、ワクチンメーカーは研究開発・製造に特化したスペシャリティーファーマを目指す。これは、ワクチンメーカーという意味では製造を担当している所を中心に理解しています。そのために、国内のメガファーマとの戦略的提携が必要である。これはワクチンメーカーが国内の製薬会社と連携しているところです。更に、シーズ獲得のため、外資との戦略的協力・国内研究機関との共同研究を進める。これはオープンイノベーションを含めた国内研究機関との連携とか、外資との提携となります。国内市場の拡大、外資メーカーからの技術移転、外国市場への展開により収益構造を改善していく。その収益を用いて研究開発に充当していって、継続的な新製品の上市につながる。産業育成には、国の政策的な関与が不可欠ということをワクチン産業ビジョンに書いてある、というのが産業界から見たまとめです。

 次ページです。我が国で開発が予定されているワクチンを、会員各社から情報を集めたものです。まだ出せないものもありますので、これは一部だというように理解してください。ここに書いてあるようなワクチンが今開発中であり、これ以外にも今後ワクチンを含めていろいろなものを開発中であるというように認識しています。

23 ページです。また、会員会社から集めた情報によりますと、世界中でこのようなワクチンが開発されているということを御報告しておきます。

24 ページに、「ワクチン研究開発を進めるために望まれること」。これは是非ともコメントをしてくださいということで、まとめさせていただきました。我々産業界から見ますと、やはり感染症対策の明確な目標設定というのがトップメッセージ、本当は総理大臣なのかもしれませんが、そういうところにトップメッセージがあって、例えば、 VPD(Vaccine Preventable Disease) 、ワクチンで治せる病気に対してはワクチンを使用していきましょう、というような明確な方針があり、また、必要なワクチンが明確に示されて、定期接種化への見通しが明示されるということによって、開発に対するリスクというのは大幅に減少しますので、コストを含めて、随分開発は促進するであろうと思われます。また、感染症対策に係る体系的な疫学調査ということが多くの所でうたわれていますが、ここは研究開発にとっては重要なポジションでありまして、国として取りまとめて疫学調査が行われるというのが理想だと理解しています。

 あと、基礎研究分野への支援。例えば考え方として、オープンイノベーションをやるときに、産学官連携でやっていくときに、例えばもう既に始まっている JSC などを多く拾えるような環境ができるとか、小児の治験に対する環境整備がなされるということが、非常に研究開発の促進につながっていくと理解をしています。

 また、承認審査における厚生科学研究の成果が有効に活用できると、やはり研究開発が促進され、より早いワクチンの提供につながっていくのだと理解をしています。

 ワクチン接種率向上のための啓発活動の継続的な推進。これに加え、マスコミの真実に基づいた正確な報道が非常に重要だと思っていまして、この辺をいかに推進していくかというのが、国民に正しい理解をしていただく上では重要だと理解しています。

 あと、医学・薬学教育におけるワクチンの理解向上。医学・薬学にもワクチンの授業というのはほとんどありませんで、これは教育という意味でも重要かと思っております。

 最後に書きましたのは、研究開発振興と若干ずれるかもしれないのですが、細胞培養ワクチンの新型インフルエンザの実生産施設整備事業において、各社は申請を終了していますが、「完了後の継続的な危機管理対応とワクチン研究の推進に対する国の積極的な協力」というところは、例えば今から小児もやらないといけない。また、何種類かのワクチンが一遍に出てきますので、どういう打ち方をすればいいのか。そういう研究であったり、より良いワクチンを作っていくための基礎研究、改良研究などをしていかないといけない。それは実際に売物ではないので、事業にはなってこないわけですが、それに対しては国全体として協力をお願いしたいことと、やはり備えるために立てた工場を維持していかなければならない。大きさにもよるのですが、ただ置いておくだけでも 10 億、 15 億とか、やはり保つことだけでもかかってくるのです。また、起こったときのための原材料をホールドするだけでも相当なお金がかかるというのを、やはり一企業に委ねるというのではなくて、国全体で考えていくというのが重要ではないかということが、産業協会で聴取した意見です。以上でございます。

○庵原部会長 続いて、事務局から資料 1-2 の説明をしていただき、その後この資料に関しての討論となります。事務局から説明をお願いします。

○今井室長補佐 資料 1-2 は、事務局から国内のワクチンメーカーに、 2001 年のワクチンの輸出の実績、現在実施中のものと過去の実績を含めた、外国への政府開発援助、国際協力機構等での援助、それから外国メーカーへの製造技術提携について照会し、頂いた回答を取りまとめたものです。

○庵原部会長 このような輸出実績もあるということですね。要するに、国内向けだけではないことを表したということです。それでは、今から菊池参考人の資料等について、質問がありましたらお願いします。ワクチンの研究開発の促進策については、渡邉先生からの報告の後にまとめて討議する形になりますので、とりあえずは菊池参考人の資料に関して質問がありましたらお願いします。

○坂元委員 川崎市の坂元と申します。貴重なお話をありがとうございました。菊池参考人に 1 点お尋ねしたいのですが、資料の 24 ページの上から 4 ポツの疫学的データなのですが、実際、我々自治体でも定点やいろいろな所から患者から検体を取って、国立感染症研究所で、ある意味疫学データが集積されていると理解はしています。ここで言っておられる意味は、例えばワクチンを開発するときには単に細菌だけではなく、その下のファージ分類のようなものまで必要で、そういうものがないという意味でおっしゃっているのか、この辺りの疫学データに関してもう少しお聞かせ願えればと思います。

○菊池参考人 これは、恐らくいろいろな方がいろいろな意見をお持ちな部分だと思います。やはり、本当に疾患がどこにいるというものを、系統的に国としてまとめる作業は、疾患を登録するシステムなどがあり、やられている部分もありますし、逆にやられていない部分もあるのですね。それを、やはり国の公衆衛生においてどのような分布になっているなど、その辺りを系統的にやっていただくと、我々も当然努力しますが、いろいろな開発にも促進されやすいということです。

 細かいことを 1 つお話しますと、例えば日本脳炎などは恐らく患者からどうのこうのというよりも、多分ブタにどれだけいるかとか、そちら側になってくるのでしょう。物によって疫学の考え方も変わってきますので、いろいろな所でまだ未充足な部分がたくさんありますねということを、皆さんから頂いた意見としてまとめています。

○庵原部会長 これは、現在感染研を中心としている疫学のサーベイランスを行われていますが、それも踏まえて、十分な部分と不十分な部分があるという御意見だということですか。

○菊池参考人 はい。

○庵原部会長 分かりました。その他、いかがですか。

○山口委員 同じく 24 ページの一番下に書いていただいていますように、生産設備の推進事業の完了後の継続的なということ。先ほども説明いただきましたように、維持するだけでも相当なお金がかかってくるわけです。当然パンデミックが起きたときには対応していかないといけないので、それが継続されることが非常に重要だと思いますが、国の支援が求められるのが、それを継続するための支援なのか、あるいはそれを使うことをより広い、例えば簡単に言えば、ほかの製造などに用いてもいいというような、いろいろな意味が含まれているようなのですが。

○菊池参考人 今、説明をいただいた最後の部分は、もう既に国は使っていいとおっしゃっています。それは、使う努力は我々がしますが、そう簡単にほかの製品に使えるわけでもありません。それは、努力はしていきます。ここで申し上げている一番大きなことは、やはり設備が整備されましたと。それは、皆さん事業として参加して、お金は頂いて設備は整備したわけなのですが、これを実際にいつ起こるか分からないのに備えていくのに、いろいろなお金もかかってくるわけで、実は設備が整備されてからが本当の事業なのではないかなという考え方を我々は持っています。

 そういう意味では、この維持だけではなく、やはりまだやっていない小児を継続して開発していく。それから、先ほど申しましたが、アジュバントの入っているものや入っていないものなどいろいろありますよね。それを、例えば全国にバンとばらまいたら、同じ物を同じように打てるか。あるいはそれを交叉して打ったらどうなるか、といったいろいろな研究もしなければいけませんし、より国民に安全でいいものを提供するための継続的な改良研究や新しい研究も必要になってきます。このようなことを含めて、どうやったら国民の皆様に安心して過ごしていただくような環境をつくれるかを一緒に考えていきたいというのが、産業の意見です。

○伊藤委員 ワクチンというのは、例えば今回の風疹も含めてですが、ある意味でアウトブレイクがいつ起きるか分からない、ニーズがどう出るか分からないので、それを常に維持しなければいけないというのは大変な産業だろうと思います。取り分け、インフルエンザのようなものですと、実際の医療現場から使わなかったから返すとか、一時期流行が起きそうだから大量に買い占めて、使わなかったから返すということが、巷にはやはりあるのだろうなと思います。そういう意味では、生産をされて無駄にされている、最終的に破棄をしなければいけないようなものがあり、それが最終的にコストを持ち上げているなりという問題があるのだろうと思うのです。具体的なデータは、どれぐらい実際生産されたものが使われているというのは分かりますか。

○菊池参考人 詳しいデータは手元に持っていませんが、例えば昨年度は実はものすごい返品が多くて 30 %以上ありました。やはり、通常多くの企業が 15 %マックスぐらいで考えている中で、そういう返品が起こると、非常に産業としてはつらい状況には陥ると思います。それが読めないのが、非常に大きいです。それと、やはり 12 月を過ぎたら、もう打たれないのですね。打たれないけれども、もしものために作っておかないといけないなど、いろいろな環境があります。ですから、ほぼ返品されるだろうと思いながら作っている部分もあり、それは産業のことだけを考えるのではなく、いろいろな国の状況などを考えた上で生産計画を立てていかないといけないという、普通の医薬品とは少し違う特殊性があるという理解をしています。

○坂元委員 もう 1 点なのですが、この承認審査における厚生科学研究の成果の活用とあるのですが、よく自治体でいろいろなフィールド調査と厚生科学研究に協力することがありますが、我々の認識としては、厚生科学研究は非常にレベルの高い研究だと自治体としては認識しています。これが、承認審査のときに生かされないというのは、どのような意味でしょうか。もしお教えいただければと思います。

○菊池参考人 詳しくは申し上げにくいところもありますが、なかなか審査上は我々が要求しても取り上げてもらいにくいのが現状です。近々でいいますと、 DPT の二期は中山先生がいろいろ御苦労されてデータを取られていますが、そういうものはなかなか活かしにくいというのが現実にはあります。やはり、審査する側の立場も当然ありまして、表に出しても誰が見ても公平のような審査をしないといけないわけですので、それに対して我々は何かが申し上げられるような立場でもありません。その辺りは、やはり民意が必要なのかもしれないと思います。

○庵原部会長 要するに、厚労 科研の結果と申請資料として取り扱いにずれが生じてくるようなときがあります。今、菊池参考人が言われたのは、小学 6 年生の DT DPT に変えようというスタディーが行われたのですが、結局、スタディーの結果に対する科学的な考えと、申請資料の取り扱いに関する規則的なところとのずれがあって、なかなか進みづらいということが実際あったということで、これ を言っているのだと思います。

 それと、この返品は、インフルエンザだけでしたか。ほかのワクチンは、返品はない理解でよろしいですか。

○菊池参考人 基本的には、そうですね。

○庵原部会長 そうすると、期限が切れたワクチンも、それぞれの医療機関で廃棄されている。ないしは例えばポリオなどは OPV 以降大分期限を切れたものがマスコミを騒がせたことがあるのですが、そういうものは全部メーカーに戻して、メーカーで処理するわけですか。

○菊池参考人 基本的にはそういう理解をしていますが、ケースバイケースもあると思います。正確でないといけないので、また調べてお答えしたいと思います。

○庵原部会長 といいますのは、期限が切れても物の力価は十分あり、生ワクチンですと生きた状態でありますので、それはやはり処理する以上は不活化なり何かきちんとした処理をしなければいけないので。

○菊池参考人 もちろん、そうしないといけません。

○庵原部会長 そうすると、それはメーカーの責任になるのか。

○菊池参考人 基本的には、戻すことになると思いますね。

○庵原部会長 分かりました。

○西島部会長代理 やはり 24 ページの基礎研究分野への支援の拡充ですが、ワクチンの基礎研究というのは下から 2 番目に「医学・薬学研究におけるワクチンの理解向上」とあるように、なかなか広く基礎研究としてはしにくいところがあり、大学等のアカデミアの中でこういった研究がしにくい状況にあると思います。そのようなことについて、基礎研究で一番活発にやっているのは感染症研究所だと思うのですが、ここで拡充することについて、企業サイドからはどのようなことを希望されるか。

 もう 1 点は、このワクチンの基礎研究について、諸外国で特にアメリカ、ヨーロッパなどではこの辺りの基礎的研究分野はどのような人たちが担っているのかについて、情報があれば教えてください。

○菊池参考人 まず国内ですが、実は日本国内には基礎研究で優秀なアカデミアはたくさんいらっしゃいます。それをいかに産業につなげるか、実用化につなげるかが非常に重要だと思っています。実際、我々もそういう先生方とたくさん物にするために努力をしているところですが、ある意味、事業として成り立つかどうか分からないような国防につながるような感染症に関して、例えば産学官連携でオープンイノベーションしてものをやっていこうというときには、ある意味それに対するファンドや、先ほど説明しました JST は、国がお金を出したり製薬会社がお金を出したりしているファンドが今できているのです。そのような研究を促進するようないろいろなファンドがたくさん立ち上がると、それはそれなりに必要な物が世の中に出やすくなるという意味で、これは書いております。

 例えば、もしかしたらこれは将来作っても打たれるかどうか分からないようなものを、大きなお金をかけて開発するのは難しいことなので、その辺りに関するいろいろな支援というか、一緒に考えていける場があればいいのかなと思っています。

 それから、海外に関しては、申し訳ないのですが、正確な情報を持ち合わせておりませんので、恐らくいずれそういうお話もしていただける方もいらっしゃると思いますので、今回は控えさせていただきます。

○庵原部会長 海外の状況について、事務局は何か情報をお持ちですか。海外のワクチンの研究について、伊藤先生、何か御存じないですか。

○伊藤委員 今すぐに持ち合わせているものはありません。ただ、海外と我が国とでは、一番大きいのは接種を国が勧奨をしているかどうかではなく、医者や医療関係者がこのワクチンは必要だということで患者に説明をして打っているようなところがあるのではないかという気がします。そういう意味では、今の日本のワクチンのあり方が、国が推奨するから打つのだということではなく、もう少し医療関係者が自らどのワクチンを使うことが国民にとって必要なのかという情報発信をすることのほうが、多分重要なのではないかなという気がしております。

○庵原部会長 私から確認なのですが、 1 つは 24 ページのワクチン使用方針の明確化ですが、これは逆に言いますと今話題になっている水痘のワクチンや B 型肝炎のワクチンなどが定期になるとなれば、やはりそれに対して企業はそれなりの設備投資をするなりをして、準備するのだということを含んでいますか。

○菊池参考人 そういうことも含んでいますし、やはり VPD はかかった後に治療するよりも、まずはワクチンで防ぎましょうという大きな国の方針があると、産業の考え方も変わってくるのではないかという理解をしています。

○庵原部会長 それから、ちなみに一般的に割とヨーロッパはメーカーが治験の表に立ってやっている所が多いですね。ただ、アメリカが帯状疱疹のワクチンの治験は、ニューヨークの某金持ちがファンドを作って、何万人規模の治験をやったという人は海外にはおられると。日本も、そういう人が出てくると。あれは、確か 5 6 万人規模の治験を高齢者の帯状疱疹ワクチンということで、あれはメーカーは一部は噛んでいますが、ほとんどはファンドでやったということで、一般人のファンドが結構使われています。特に、フェーズ2からフェーズ3の早い段階では、結構ファンドが動いているようですね。というような情報は、以前はありました。

○細矢委員 ワクチンラグの話で、図表を示していただいたのですが、 2005 年以降になりますと、確かに国内でも使えるワクチンは増えているのですが、実際の新しいワクチンの開発がないですよね。実際にメーカー、作っている側としては、何が国内でのワクチンの新規開発が起こらなかった原因と考えていらっしゃいますか。

○菊池参考人 現在は新しいワクチンは相当研究されて、やられています。多分、先生は、この 15 年間何もなかったのが印象に残っていらっしゃるのだと思います。今現在、私の所属する会社でも、相当精力的に新しいワクチンは研究していますし、混合ワクチンも当然研究していますが、そのワクチンが本当に物になったら国民が使う環境になるかというのが、やはり促進に大きな影響があり、作っても接種する環境が形成できなければ、当然事業にならないので負債になってしまうこともあります。最初に申し上げた VPD はワクチンを使いましょうという国民のコンセンサスを含めた世論が出来上がるのが、促進に関しては一番大きいのかなと思います。

 それから、先ほど海外の話が出ましたが、例えばアメリカの場合、小学校にはワクチンをきちんと打ったという証明を見せないと、私の子どももそうだったのですが、日本と違う環境が海外にはあるのかなという理解をしています。

○伊藤委員 確かに、参議院の附帯決議の際に、 VPD はワクチンで予防すべきであるという基本方針を示しなさいということが書いてあったと思いますので、多分そういったこともこれから話されると思うのですが、本当にそれだけが原因だったのかどうか。要するに、 15 年間もブランクがあった原因が解消されないと、本当にこれだけでいいのか、もっと別な要因がないのかをお聞きしたいわけですが。

○菊池参考人 その期間の原因は、いろいろなものが混在していると思います。先ほど申し上げたマスコミの報道の問題、例えば新型インフルのブタのときでさえ、毎日報道していたのは今日何人死んだとしか報道していないのですよね。実際のところ、季節性インフルとどちらがどうだというのも分からないような状況で、そういう報道になってしまったり、ちょっと副反応かもしれないと言ったら大きな報道になったり、そういうものが集団で見たらマイナスに働いてしまったりということがあるのかなと思います。

 それから、やはり技術の進歩が足らなかった部分、我々も反省しないといけない部分もありますし、 1994 年に予防接種法の改正があったのが一番大きいのかもしれませんね。そういうものが、今是正されて、今年また改正されたりして、こういう機会もできたりして、随分環境は変わってきたと我々は理解しています。

○庵原部会長  1990 年代は、いろいろファクターがありますよね。感染症は抗生剤でみな治るのだということで、感染症をやる研究者がいなくなるだろうというのが、確か 1994 年頃の話題だったのが、今はまた感染症に対しての研究者が要るとか、ワクチンが要るという風潮もあったと思います。伊藤委員、何か質問はありますか。

○伊藤委員 幾つかあるのですが、ワクチンと医療用の医薬品が、流通経路が違うのが、これは問題なのか、それとも問題ではないのかという認識をまず教えていただきたいと思います。それから、通常の医薬品であれば、同じクラスの医薬品は次に出てくるのですが、最近出てきているワクチンは特定の会社だけが持っていらっしゃるのが多いような気がします。そういう意味では、同じ効能を持つ医薬品は、国内でも開発されているのでしょうか。その 2 点を教えていただきたいと思います。

○菊池参考人  1 つ目の流通ですが、一応流通の違いがあるということを示しただけで、これが問題だという認識は持っていません。唯一申し上げると、返品というのは特殊な習慣であるとは理解しています。もう 1 つのお話は、正確に聞き取れなかったので、もう一度お願いします。

○伊藤委員 例えば、肺炎球菌ワクチンにしても最近出てきた HPV にしても、普通新規の医薬品であれば、同じクラスのものが出てくると、 DPP-4 阻害薬のようなものはワッと各社から出てきたりもします。ワクチンに関しては、余り出てくるような見通しが見えないのですが、実際は開発をしていて今後たくさん出てくる予定なのか、それとも開発さえもしていないのか。それは、特許関係などいろいろあってできないのか、その他いろいろな問題があるのかどうか教えていただけますでしょうか。

○菊池参考人 今は、我々冬の時代にやっていなかった部分、外資系の会社が新しいワクチンを作ったものが日本に入ってきているような状況になります。ただし、今研究しているものは、ハードルの高いワクチンが残っているのですね。例えば、先ほど例示していましたが、ハードルの高いワクチンがあり、日本でもたくさん研究はされています。それがまだ実用化のめどが立っていないだけで、それに対して日本がやっていないという話ではありません。いろいろな会社がいろいろなものを研究していますが、今出てきているのは外資系が先に研究をしていたものが製品として出てきて、日本の会社は冬の時代にやっていなかったものの差が今の質問のところに当たります。

○伊藤委員 具体的には、例えばあと 1 2 年のうちに HPV ワクチンが国内のメーカーが作って出てくる、あるいは肺炎球菌ワクチンが出てくるということはあるのでしょうか。

○菊池参考人 近々には、そうそうは起こらないと思いますが。例えば、より良いユニバーサルな肺炎球菌などは、考えている人はたくさんいると思います。

○森委員  22 ページの「わが国で導入・開発が予定されているワクチン」なのですが、これに関して開発が本当に行われるのかということと、もう少しその内容を詳細に示していただけますでしょうか。

○菊池参考人 これは、会員会社からのアンケートの結果で、その詳しい 1 1 つを説明するのは難しい話です。ここに載っているよりも、もっとたくさん候補はあると理解していただいて結構です。これが、フェーズ3と書いてあるものは、当然出すための準備をしているという理解で、何も書いていないものは、もしかしたらアーリーなのかもしれないということです。

○坂元委員 先ほどの返品の問題なのですが、川崎市は一括購入していて返品ゼロという形でやっています。ただ、問題点が、先ほどの流通システムの中で、どうしても一括購入の場合、問屋限定にしますので、問屋が扱う製品が限られてしまう。そこがいわゆる現場の先生方からもう少し多様なものが扱えるといいという希望があっても、こういう流通経路ですと、入札相手が問屋なので、問屋がこの製品を限定してくるのですね。ということがあり、例えばそういう意味でもう少し問屋とメーカーの間の多様化が進むと、仮に川崎市のように行政で一括購入、返品ゼロというと、先ほど見たときに 30 %も返品があれば、確かにメーカーに取っては非常に大きなダメージが防げます。

 我々が実際にやっているのは、開業医の先生から注文が来ると問屋に連絡して、問屋にその開業医の先生に届けてもらうというシステムなのですね。ところが、この先生はいつも大量に注文して期限切れになってしまうという先生には、こちらから「先生申し訳ないけれども」という形で、少し数量制限のようなこともやっていて、なるべく返品をしないようにはしています。ただ、返品に関しては、全部行政が最終的には負っている形を取りますので、少しそこの流通のあり方でもう少し多様性があるシステムが開発されれば、例えば現場の先生はもっと多くのワクチンが使える、しかも行政が一括購入できるというシステムができるので、その辺りはいかがでしょうか。

○菊池参考人 流通は、多分卸連などもお話される機会もあるかもしれませんので、細かいことを申し上げるのは適切ではないかと思います。その辺りは、やはりニーズに応えたことをやりたいとは思うのですが、この卸は何系などというのがどうしても世の中にはありまして、それを多種類そろえるとコストも上がるなど、いろいろなことがあります。今現在では、そう簡単にはいかないのではないかと考えております。

○庵原部会長 大体時間もきましたので、この辺で一度終わりたいと思います。あとは、総合討論のところでまたお願いします。インフルエンザワクチンの返品問題は、いつも問題になっていますので、これはどこの部門でやるかは別として、どこかで取り上げていかなければいけない問題だろうと思っています。予防接種室としては、どこかで話し合う必要があるだろうということで、どの部門がいいかは別として、頭に入れておいてほしいと思います。

 それでは、続いて議題 2 の「予防接種及びワクチンの品質管理に求められる感染研の役割」ということで、渡邉所長にお越しいただいておりますので、よろしくお願いします。

○渡邉参考人 資料 2-1 に基づいてお話させていただきます。まず 2 ページ目ですが「感染研のミッション」ということで、感染症の疫学情報の解析及び感染症の発症メカニズムの基礎的な研究、基盤的な研究及び予防として使われるワクチンの国家検定、品質管理業務を行うことによって、全体的に厚労省の行政の科学的な支援を行うというのが感染研の大きなミッションになります。最終的には、国民の健康維持にそれが役に立つということになるわけです。

3 ページです。特にワクチン行政に関して見た場合に、どういうことがあるか 2 つに分けて記載しています。 1 つは予防接種政策に関する総合的かつ恒常的な評価。これは、予防接種・ワクチン分科会等への貢献をするということもその中の 1 つにあります。 2 つ目にワクチンの品質管理。これは、医薬局と一緒にこれに関わることになります。もちろん PMDA もここに関わってきます。

4 ページは、ワクチンの科学的評価のためにどういうデータが必要か。 1 つは防御効果等。その科学的なエビデンスを取るための 1 つ、疾患サーベイランスを行うこと。病原体サーベイランス。先ほど話が出てきましたけれども流行予測事業。これが 3 本柱になります。

 そのほかに、接種法、経済的効果等がありますけれど、これは感染研が特にこれに積極的に関わっているわけではありません。副反応調査、市販後調査においてもこれはメインに PMDA 等が情報の収集等に関わりますけれども、感染研としては、何か問題があった場合に厚労省と積極的疫学調査等に関与するということがここに入ります。次に、ワクチン開発研究及びワクチンの品質確保に関する研究、研究部門としてはこれが入ってきます。

 次のページですが、まず「感染症サーベイランス体制」。ほかの部会等でも話が出ているかとは思うのですが、簡単におさらいしておきます。感染症法に基づく疾患が約 104 5 ぐらい挙げられていますけれども、それらの疾患を診断した医師は必ずそれを保健所に届け出なくてはいけないという法律の下に、情報が集まるような仕組みになっています。その中には全数把握とするものと、定点把握するものが分かれています。また、病原体等に関しても、各病院等で検査等をしたりする場合もあるわけですが、そのときのデータ及びそこでは十分できないようなものに関しては、保健所から地方衛生研究所に検体が送られて、地方衛生研究所で病原体の同定及びそのあとの解析を行う。そこで十分できなかったものに関しては、感染研にその検体や病原体が送られさらに詳細な解析が行われたり、又は技術的な支援を感染研が行うことになるわけです。

 それらの全ての情報が中央感染症情報センター、つまり感染研の感染症疫学センターのほうに寄せられ、そこでデータの収集及びまとめ及び解析されたデータが、 6 ページの感染研のホームページに、 1 つは患者情報の解析結果が、「週報 (IDWR) 」という形でホームページに出てまいりますので、是非活用していただければと思います。そのほかに、病原体情報というその解析結果が、「病原微生物検出情報」という形でこれもやはりホームページに出ております。そして、それを月報という形でまとめたものが IASR として、国内及び国外にも発信できるようにしてあります。

 先ほど情報が十分でないというお話ですけれども、どこまでが十分かはなかなか難しいところもあると思いますけれども、一応こういう感染症法に基づいて、定点把握なり、全数把握したデータはここにまとめられていますので、このデータで傾向は分かるというように考えられます。ただ、あくまでこれは受動的サーベイランスでありますので、報告された数が上がってくるということで、本当にそうなのかと、実数はどうなのかと問われると、真の実数であるとは言いきれないところは確かにあると思います。それをやるためには、積極的サーベイランスを行うことによって、ある一定の人口を対象にして、そこの中での各疾患の全てを調査するというやり方を取らないと、なかなか実数は出てこない可能性があります。これをやるためには、相当の数の人と資金源が必要であるということになると思います。

 続いて 7 ページは「感染症流行予測調査事業」です。これはワクチンとして接種されるような疾患に対しての感受性調査、抗体保有状況調査を行うものです。下の四角の中に書いています、ポリオ、インフルエンザ、日本脳炎、風疹、麻疹、百日咳、ジフテリア、破傷風については毎年やるものと数年ごとにやるものと分かれています。これを検体数としては数千の健康人の検体を用いて実際の抗体調査を行うことによって、どのくらいの人々がその病原体に対しての抗体を保有しているのかが分かります。ある意味では、ワクチンの効果判定にも利用できることになります。

 それと感染源調査を行っています。対象病原体は、インフルエンザ、日本脳炎ウイルスで、ブタにおける感染状況を調査しています。先ほどお話しがありました件ですがここを見ていただければ日本の中のブタの日本脳炎ウイルスの感染状況が分かります。今後は昨今の肺炎球菌、ヘモフィルスインフルエンザ (Hib ) がワクチンとして導入されましたので、これらの菌の血清型がどのように変化するか。つまり肺炎球菌は今7価、 13 価及び 23 価が使われていますけれども、これだけではなくて全部で 96 ぐらい血清型がありますので、それらがワクチンを投与した後に患者から分離される菌がどういう血清型に変化していくのかが今後調査されていくことになっています。

 ヘモフィルスインフルエンザに対しても b 型が今はワクチンの対象ですが、 b 型以外の菌もありますし、 non-typable のものがどんどん出てくる可能性もありますので、その辺の状況も今後この感染源調査を行うことによって、そのデータが蓄積されてくると考えられます。 Hib については今月号の IASR でまとめる予定ですので、結果が出てまいります。その結果によりますと、ワクチン導入後に b 型の分離率が非常に減っていますので、ワクチンの効果があるだろうという実体的なデータが出てまいりますので、是非それを御覧いただければと思います。

 続いて 8 ページは、実際に流行予測調査事業によってどういうことが分かるか、一部を示しています。今、問題になっている風疹に関して抗体保有状況、この赤で書いてあるのが抗体価 (HI ) 8 倍ということですが、これ以上の抗体価を持っていれば感染防御として考えてもいいのではないかという値です。この赤の所を見ていただきますと、男性の場合は 20 代から 50 代ぐらいの線が少し沈んでいます。つまり、抗体保有率が人口全体の 80 %前後ぐらいしか持っていないだろうということで、現在、風疹がこの年代の人たちに流行していることが、このデータがあるのでそれが説明できることになります。女性の場合には、この年代の人たちは抗体を持っています。これはおそらくワクチンがこの年代の人にも打たれていたのであろうと考えられるわけです。

 こういう抗体保有状況の調査は、非常にワクチンの効果及びワクチンのポリシーを考える場合にも大きな意味があるデータであると考えています。この抗体保有状況調査の結果は先ほど言いましたような、疾患に関して是非これも感染研のホームページに出ていますので、過去 20 年ぐらいのデータが全部これで見られることになりますので、この結果をワクチンの施策等にも応用していただければと思います。

9 ページは、感染研がワクチンのどういう研究をしているか、主立ったものを少し挙げさせていただきます。主にシーズの開発を行っています。なぜかというのは次のページに書いてあります。「エイズ研究センター」は、今、センダイウイルスベクターを用いた T 細胞誘導型ワクチンを開発しておりまして、これは既にもう我々の手からインターナショナルエイズワクチンイニシアチブのほうに離れて、こちらが主導的に、ルアンダと英国で臨床試験の第1相を行うということを行っております。

 「病原体ゲノム解析センター」は、先ほど出ました現在の HPV ワクチンがセロタイプ依存的ですので、もう少し全体のセロタイプをカバーできるようなユニバーサルなものを開発するということで、 L2 分子というものをワクチンの対象に使ってこれの開発をしております。一部は既にあるメーカーとの共同研究となり、そちらのメーカーのほうが主導で進めるというよう時期に入ってきています。

 「インフルエンザウイルス研究センター」においては、インフルエンザの季節性ワクチン及び細胞培養ワクチンの研究等を行っています。また、フラビワクチンと肺炎球菌ワクチン、これもユニバーサルなものを狙って開発しています。ほかに新規 BCG ワクチンの開発など、いわゆる疾患として社会的に非常に問題が大きいであろうものに対してのワクチン等の開発を主に行っています。それ以外のいろいろなことの研究も行っているわけですが、それが直接的にまだワクチンを目指すようなものではなくて、基礎研究的なものは更に多くのものが挙げられると思います。

 もう 1 つ研究として重要なのは、後で述べます国家検定の問題と絡みまして、国家検定は動物試験を使って評価等を行うことがありますけれども、なかなか動物等だと検査結果のばらつきが大きいとか、又は動物の 3R の問題等と絡みまして、試験に使う数を減らす方向が世界的な流れになっていますので、将来的には in vitro の系で品質管理、安全性等が評価できるような系の開発を進めております。具体的に何をやっているか示してありませんけれども、かなりの数のものを行ってきております。

11 ページを御覧ください。感染研は少し COI が絡むところがありますので、なるべくそこは気をつけるように我々は行っています。なぜかと言いますと、感染研は国家検定という品質管理機能をもっていますので、自分の所で開発して自分の所で検定するのは何ぞや、というようなことを問われてはまずいので、そこは COI に抵触しない範囲でのワクチンのシーズを開発することをメインに行って、基礎研究から臨床研究への橋渡しまで行って、それ以後はメーカー等にやっていただくというのが基本的な考えです。場合によっては公平性が確保されていて臨床試験等にも絡んでいけるものもあれば、そこも考えたいというようには考えております。

 それと、既存の及び今後の市場に新ワクチンの品質を保証するために必要な、先ほどの試験法の開発です。これは in vitro の安全性試験法とか、遺伝子発現等を用いての副作用解析とか、網羅的なゲノム解析を用いたワクチンのロットの均一性の試験等々を今現在進めているところです。ワクチンの開発優先順位の選定においての発生動向調査のデータ (disease burden) が重要です。この辺は非常に重要だと思いますので、先ほどの疫学調査等のデータをそういうところに反映できるようは質のものにする、という方向性を示しています。

 続いて、国家検定に関して簡単に説明いたします。医薬品の国家検定の中で、医薬品の品質を守るために設けているのがこの国家検定でありまして、そのうち、医薬品の中で保健衛生上特別な注意を要するものがこの国家検定の範囲に入っています。その中にはワクチンとか抗毒素血清、血液製剤が法的に指定されています。その指定された医薬品はロットごとに検定を受け、これに合格したものでなければ販売等ができないという「ロットリリース」ということが法律で定められ、検定機関として感染研が法的に定められております。

14 ページ、「ロットリリース」です。製造販売承認を受けたワクチンを国の規制当局がロットごとに品質を審査し市場へ出荷する、リリースをするという許可制度です。現在、ロットリリースの要求事項として、 WHO が掲げておりますのは、製造所が作成した Summary Lot Protocol のレビーを行うこと。 Summary Lot Protocol というのは製造所の責任において、製造工程及び試験結果の全てを要約した文書です。それとはまた独立して、製造所が行っている実施試験とは独立して、国家検定としても国の機関がテスティングを行うということが WHO 等で決められて、この 2 つに基づいて国家検定を行うことになっています。

15 ページは「ワクチンにロットリリースが必要な理由」ということです。健康者にワクチンを用いるということでは、特に品質が高いものが要求されるということであります。また製剤が生物を用いて作られているものが多いということで、やはり生物間の変動があること、および品質管理においてもバイオアッセイを用いることがあり、そこでもデータの変動等が考えられるとして、そういうものを総合的に判断した形でリリースをしなければいけないという考えから、このロットリリースが行われているわけです。

 続いて 16 ページの、「国家検定の試験は『生物学的製剤基準』に準じて実施される」ことが、厚生労働大臣の告示によって決められております。その生物学的製剤基準は最低限それをクリアしなければならない事項ということで、 Minimum Requirements for Biological Products をメーカーに要求しており、力価及び品質・安全性の問題について、クリアしなければいけないことが決められているわけです。その中から必要なものとして検定基準が選定されて、それを実際、感染研ではテスティングを行っているわけです。

17 ページの検定試験です。これはもちろん製造業者が品質管理に必要なものというのは試験を行っているわけですが、その中で特に重要なものは、一部はダブルチェックの形で感染研でも別途に試験を行う、テスティングを行うという仕組みになっています。もう 1 つは先ほどの SLP 審査、この 2 つに合格したものが世の中にロットリリースとして出てくるわけです。

18 ページはまたくり返しですが、去年の 10 月から、正式的にはこの Summary Lot Protocol が日本でも導入されております。それまでは Summary Lot Protocol のシステムはなくて、自家試験記録を参考に使うということになっていたわけですが、 WHO 等の指導も受けまして、こういう制度を日本も国際的な基準にのっとった形で行うようになっています。

19 ページは全体の開発・審査・承認・製造・販売の工程の中で、感染研が実際に関わっている部分をブルーで示しています。まず、非臨床試験及び臨床試験が済んだものが、製造販売承認を得るわけですが、その最初の品質の安全性及びそこの承認書に書かれている試験方法等の妥当性等をチェックするために、承認前検査というのを感染研は行っております。そして、そのデータ等も加味された形で PMDA 等が審査をし、実際的には厚労省の中で承認が行われるわけです。その承認された結果、生物学的製剤基準がそこで認められ、そして検定基準も作られて、その検定基準に基づいた試験が感染研で行われて、同時に SLP の審査が行われ、承認規格を満たし検定に合格しているロットのみがロットリリースで出ることになるわけです。

 一旦、市販された後は、副反応のモニタリング及び GMP 査察等が行われていくわけですが、副反応モニタリングの一部に関しては、先ほど言いましたように感染研も関係しています。 GMP 査察は主に PMDA が行うわけですけれども、これにも一部必要な場合には感染研が専門家という立場でもって関わっています。

20 ページです。 1 つのロットだけの解析結果だけではなくて、検定において重要なのはトレンド解析を行うということで、恒常性が保たれているかどうかも重要な側面になるわけです。そのために、製造所の自家試験記録及び感染研の検定、テスティングの結果等もコンピュータに入れておき、そのトレンドを解析して、一部おかしな結果が出れば、たとえ検定の合格範囲内であっても、これはおかしいということで、まずは厚労省に伝えて、メーカー等にもその情報等を流し、品質管理上問題はないのかどうかをチェックしていただく。何か問題が起きる前に早期発見をして、健康被害に至らないようなことを行うということが、このトレンド解析の結果を用いる重要な意味をもってくるわけです。

21 ページは、日本以外の国でどのような国家検定 ( ロットリリース制度 ) を行っているかを調べた結果をここにまとめております。日本は先ほど説明しましたように、全ロット検査で、試験も全ロット試験を行うということですけれども、 EU も原則的には全ロットの SLP 審査、試験を行っております。ただ、 EU の場合は、 EU に参加している国が 27 か国ぐらいありますので、その中のどこか 1 つの国がこれを満たしていればほかの国はそれに従うというのが、いわゆるセントライズ方式という、中央方式というのを行っています。 EU 全体を 1 つと考えれば、日本と同じようなことをやっていることになるわけです。米国も SLP としては全ロットを行っています。試験に関してはサンプルは全部提出させて、そのうちのどの試験を行うかは FDA が決める。何の試験を行ったかは表に出さないというのが米国のやり方です。なかなかその実態が調べようとしても表に出てきておりません。カナダは、米国と同じような形が行われているというように考えられます。

 続いて 22 ページです。現在 WHO を中心として、ワクチンの品質管理の国際的標準化という動きがあります。感染研もその中の一部として機能しているわけですけれども、世界的に同じ基準に乗った製品を世界的に供給していこうというのが WHO のスタンスでありまして、全ての国が同じようなレベルに達するような、いろいろな意味での教育及び啓蒙啓発が行われているところで、感染研もWPRO地区に対しての貢献という形を現在行ってきているところです。

 次に資料 2-3 ですが、 1 つは、 SLP が日本にも導入すべきであるということで、 3 年間の WHO 等における SLP の審査制度を調査し、医薬局長宛てに答申書を出して、それに基づいて実際に SLP の審査が行われるようになりました。

 資料 2-2 は、現在行っている国家検定制度がグローバルに見た場合に、少し違いがあるというところで、世界の中ではどうなのかを調査し、日本の国家検定制度はどこが違うのかを明らかにすることによって、それを将来的に変えていく必要があるのかどうかを議論するものです。 1 年目の報告書が 2-2 にあります。 4 ページ以降に、国家検定制度の見直しの検討や GMP 調査の連携のあり方及び製造販売承認制度と国家検定制度の整合性、運用の問題及び国家検定における製剤基準と製造販売認証書の位置付け、及び国際調和の観点からの国家検定制度のあり方などの議論をしているところです。そのさわりの所をここにまとめてありますので、参考にしていただければと思います。以上です。

○庵原部会長 ありがとうございました。国家検定をグローバル化していこうという流れの中での研究だと思いますけれども、何か御意見と御質問はありますでしょうか。

○伊藤委員 ワクチンの H5 などの新型インフルエンザの開発をさせていただいていますと、各測定機関ごとに HI とか中和とか、 SRH 試験はきちんと日本でバリデーションを捉える所はないと思っているのです。試験方法の標準化を、国内でどこかが基準を作っていただかないと難しいと大変思っております。感染研から出されている情報開示は、臨床医として便利に使わさせていただいております。

 ただもう 1 点、ワクチンを見せていただくと、生物学的製剤基準は本当に必要で、全ロットの調査は本当に必要なのだろうかと。製造販売をされる方の PL 法でカバーができないのかどうかと常に思っておりました。多分そういったことも含めて、今議論をされている最中だとは思っておりますが、今後の見通しについて教えていただけますか。

○渡邉参考人 まず、試験法の標準化ですけれども、確かにインフルエンザワクチンの力価の試験法は、今のような抗体を用いての方法とか、 HPLC を用いてのもう少し蛋白の含量を見る方法とか、いろいろな方法がやられています。その辺の検討も踏まえて、今は先ほども言いました品質管理の研究で一部は行っています。ただ、生物学的なディフュージョンの方法を用いたりするとばらつきがあり、難しい面は確かにあります。ですから、標準品をきちんと置いた形でメーカーとの間のすり合わせも感染研としては適時やっておりますので、そういうぶれがないような方法等も考えないともちろんいけないとは思っております。

 それと、全ロット検定が必要なのかどうかですが、これは PL 法とかいろいろな形でいいのではないかというようなお話もありますけれども、ただ、世界的に見ても先ほど示したような形で、今のところはどこの国も全ロット検定です。将来的に全ロットをやらなくていいシステムができるかどうか、これは WHO も含めて、世界的な意味での検討が必要だと思います。

○庵原部会長 先生にちょっとお聞きしたいのですが、 SLP 審査をすることで、逆に全ロットをしなくてもいい方向へ向かいたいというのが WHO のスタンスと読めるのですが、その辺は WHO はどういう方向へ向かおうとしているのですか。

○渡邉参考人 おそらく、グローバルな標準的な方法をやる意味合いはそこにあるのだと思います。最終的にはそうなる方向で動いているのだと思います。ただ、今申しましたように、日本以外の国もまだ全ロット検定をやっていますので、日本がすぐそちらのほうに動くかというと、世界の流れの中で動いていくのではないかと思います。

○坂元委員 ちょっと素人質問で申し訳ないのですが、前回のポリオの生ワクチンから不活化に切り替わったときに、それ以前に巷ではもう未承認の形の不活化ポリオワクチンがかなり大量に出回って使われて、その後、承認されて定期接種の形で出てきたときに、 1 つは非常に自治体にとって値段がボンと上がったことがあった。ここら辺の説明として自治体からいろいろ聞くと、この国家検定の部分で落ちる割合があって、その部分を見ているというような説明があって、これが本当かどうかということ。実際に日本の検定がいろいろな品不足とかが出てきたときに、検定が通らない等々、自治体にメーカー等から説明があった。その辺も含めて日本の検定、つまり、未承認のワクチンであっても、多分ヨーロッパで生産していればヨーロッパの検定が通って入ってきているのだろうと。ただ、日本の国家検定を得てない未承認ということで、その辺の情報がいろいろあって、自治体としても、 1 つその辺をどうやって説明すればいいのかという問題点。

 それからもう 1 点、ワクチンの供給不足のときの 1 つの説明として、ここの製造工程で、製造工場ごとの承認が必要ということで、新たにそれを増産するときに、別の同じ会社の工場に移したときにその承認等で非常に時間がかかって、増産が難しいというような説明もあったので、その辺を、誠に素人で申し訳ないのですが、お教えいただければと思います。

○庵原部会長 これは渡邉所長だけの質問ではないですよね。

○渡邉参考人 私が答えられる範囲を超えているかもしれません。

○庵原部会長 所長の範囲の中で答えていただいて、足らない部分は予防接種室なり、菊池参考人の部分もあるかと思いますので。

○渡邉参考人 今のお話だと検定が足を引っ張っているというようなことかなと思うのですが、決してそういうことはないと思いますけれども。検定で落ちるものを見込んで価格を掛けているというのは、ちょっとメーカーの人に聞いてみないと分かりませんけれども、そういうことがあるのですか。

 実際に出荷停止になったのは 2011 年でも幾つかありますけれども、それは国家検定だけの問題ではなくて、製品上の問題があって、自主的にメーカーが出荷停止をしているので、やはりそういう意味では安全性等をメーカーの方々も考えられた上でやっているのだと思います。

 先ほどから話が出ていますように、ワクチンは健康の人に打つので、それは最大限安全性を確保する必要があります。その安全性を確保しても副反応は一部起こりますので、その辺をどのようなスタンスで国が考えるのかが一つの課題です。先ほど言いましたように、日本がロットリリースをしなくても、どこかの国がやればいいという考え方もあると思います。でも、アメリカもカナダもほかの国も、決して今のところそういうことをやっていません。自分の国のものは自分の国で安全性を確保するというスタンスですので、日本が特別なことをやっているわけでは、私はないと思います。

○庵原部会長 ちょっと菊池参考人に、ラインがどうのというのはどういうことなのですか。

○菊池参考人 背景が分からないので何とも言えないですけれども、基本的には製造ラインが変わるとプロセスバリデーションも全て要りますし、 GMP というのは最後にできたものがよければいいというものではないので、それはもうラインが変われば一から全部、製造プロセスをバリデーションして、保証できるものをメーカーとして出すしかないので、当然時間はかかると。それを査察も受けてもらわないといけないので、時間はかかると思います。

○庵原部会長 この辺は山口委員のほうから。プロですので、ラインに関して何か付け足すことがありましたらどうぞ。

○山口委員 今、菊池参考人の言われたとおりだと私も思います。

○庵原部会長 要するに、ラインを変えるたびにバリデーションを評価して、きちんと作るだけの能力があるラインだということを評価した上で、やっと作り出すということですね。

○山口委員 それはワクチンでなくてもほかの生物薬品でも皆同じことだと考えています。

○庵原部会長 海外未承認うんぬんの話題が出たのですが、これは結核感染症課のお話ですので、事務局から何かお答えすることはありますか。

○坂元委員 未承認をいいと言っている訳ではなくて、未承認の段階で確か 2,000 円ちょっとでやられたのが、承認されたら一遍に 5,000 円以上になったというので、自治体側としてもその説明を議会等からどういう理由なのかと結構聞かれて、その理由に困ったこともあって。自治体としては未承認をやるつもりは毛頭ないということなので、その検定自身が悪いというように決して申し上げていることではなくて、その辺のなかなか納得していただけないところがあるので、質問させていただいたということです。

○庵原部会長 厚労省でオープンにはできない部分も入っているかと思いますが、どの辺までお答えできるでしょうか。

○今井室長補佐 当然、定期接種は検定に合格したものを使うことになっております。価格厚生労働省のほうでも価格の配慮をメーカーさんにお願いしているところです。

○庵原部会長 ほかに何か御意見はありますか。

○山口委員 日本の感染研の役割が 2 つ海外と違うところがあるのは、多分 CDC FDA の検定機関と両方の機能をもっているところがあって。これはいい、悪いの問題ではなくて、そういう特徴をもって感染研はやられているところだと思いますけれども。多分、メリットとデメリットが。先ほど COI の問題もあると思いますし、その辺をちょっと、メリットはこういうところにあるとか、 COI はきちんとやらなければいけないとかそういうのがあると思うのですが、ちょっと教えていただければと思います。

○渡邉参考人 この問題はもう感染研にとって何十年も続いている問題であります。確かにアメリカ的な発想で NIH CDC FDA と、 3 つの別の機関に分かれるというのは 1 つのやり方だと思います。ただ、アメリカの CDC の長官と話したときに、アメリカのやり方が一番いいわけではないと彼らも言っています。それぞれの国々がそれぞれのシステムを持っていると。ですから、その国の実情にあったやり方でやるのがいいのではないかというのがアメリカの CDC の長官の意見でもあります。

 感染研の職員は全部で 380 人ぐらいの人数で、7千人規模の職員を持つアメリカの CDC なり FDA に対抗するのは所詮なかなか難しいということです。アメリカと総人口は 2 倍しか違いませんので、もし、それぐらいのことを要求するのでしたら同じぐらいの機関を作るべきであるというのが、私の個人的な意見でもあります。ただ、その少ない人数の中でどのように効率的にやるのかというと、 1 つはサーベイランス的なことを分かった人間が、同時にいろいろな基礎研究なりワクチンの検定等をやるのも非常に効果的、また効率的なのではないかと思っています。それを分断して 2 つか 3 つに組織を分けた場合に、どれだけそれが効果的あるいは効率的なのかどうかは考える必要があります。私の個人的な意見としては、日本は日本のやり方があるのでそれに自信を持って行えばよいと思っています。先ほど言いましたように、別にアメリカのやり方が全てではないので、日本は日本のやり方が、今のところはいいのではないかと。余裕があれば、もちろん分けることも 1 つの選択肢ではあろうかとは思います。

○庵原部会長 渡邉参考人に確認したいのですが、今、サルとか、動物を使った検定が行われていますが、余りこの辺は意味がないというようなデータも最近出てきて、ないしは代わるものを作られていますが、その辺は積極的に変えていく予定ですか。

○渡邉参考人 はい。動物を使わないような方法というのを、先ほど言いましたように、例えば遺伝子解析のデータを用いるとか、将来的には iPS 細胞を用いるとか、いろいろなことがあり得ると思うのですが、そういうことの検討は行っております。ただ、バリデーションをちゃんとした上で変えていかないといけないので、すぐにパッと変わるかというと、なかなか難しい面もあります。もう 1 つは、この品質管理に使う方法というのは、 WHO が全体の音頭を取って、世界的な形でスタンダダイズの方法を決めることもしていますので、そことの整合性も必要で、感染研だけが新しい方法を開発するのではなくて、世界が同じ方向で向かって動いているということです。

○庵原部会長 もう 1 つですが、今、デングのワクチンの開発に黄熱をベースにしてデングの蛋白を入れたとか、日本でも水痘ワクチンのところにムンプスの遺伝子を入れたとか、キメラのワクチンの開発があちこちで進んでいるのですが、日本はキメラのワクチンに対して、検定とか、法的にそういうものを用いていいとか、その辺の動きは感染研はどのように考えておられますか。

○渡邉参考人 先ほど言いましたように、検定というのは承認事項の中で出てくることですので、そこでこういう検定方法を使うということが決められれば、それは感染研もそれに従ってやるということになるわけです。

○庵原部会長 となりますと、キメラのワクチンに関しては、どういう評価をするというのは、 WHO などの辺りが方針を決めてから動くというか、日本は今後どう動く予定という情報はお持ちですか。

○渡邉参考人 キメラのワクチンに対して、実際にどうするかというのは、まだ決めていないです。先生、何かご存じですか。

○山口委員 二通りありまして、不活化されているものと、生ワクチンを分けて考えたほうがいいと思います。生ワクチンについては、多分組換え生ワクに関しては、昔、組換え DNA 調査会等で議論をしたことがあるのですが、ガイドラインを作るかどうかまで将来的に見据えていたのですが、今はまだガイドラインはできていません。

 ただ、動物用の組換え生ワクに関しては、一応農水のほうで作っていまして、どういう評価基準でやればいいかというのは決まっています。それに従って、今、審査はされていると思います。ですから、日本では、まだヒト用の組換え生ワクが出ていませんので、出た時点で感染研を含めて、どういう生物基準を作るかとか、そういうことになってくるのだろうという気がします。

○庵原部会長 組換えの不活化はいいわけですか。基準はできているという。

○山口委員 組換えのただの蛋白質製剤になると、多分、複合製品の話になってくると思うので、そこまではまだ決められていないのだろうと思っていますが。

○庵原部会長 分かりました。

○西島部会長代理 先ほどの最後のページで、ワクチンの品質管理ということで、標準化に向けて WHO の協力機関として、感染研もメンバーとして加わっているということですが、このような取組、グローバルなことを考えていく上では、これから大変重要になると思うのです。この点について、先ほど人的な不足ということがありましたが、こういうようなことへ向けて、感染研は取り組んでいるということですが、このようなことはほかの ICH などがあったり、あるいはほかの工業製品で言いますと ISO などがあって、そういうところで、どうも日本は取組が弱いと。そういうような人材が不足しているということもあると思うのです。

 そういう中で、感染研がこのような取組をもっと進めていただきたいと思いますし、また、これは最終的には本省の関係もあると思うのですが、その辺に向けての取組と、本省との関係はどのようにされていくのかということについて、もう少しお話いただければと思います。

○渡邉参考人 本省の医薬局で、審査課又は血対課等、一緒にいろいろな会議にも出席して行っております。日本に貢献としては、 1 つは、こういう標準品を作る委員会に出てくださいと。又は、日本でそういう委員会を開いてくださいという要求がきております。我々も、それに向けてできるだけコントリビュートしたいと思っているところです。

○西島部会長代理 そういったことに向けての人材育成などについては、何か対策はありますか。

○渡邉参考人 これはなかなか難しいところで、今、検定検査品質保証室というのを 4 年ぐらい前に感染研内に作りまして、そこが 1 つの受け皿となって、こういう検定関係の国際協力等の窓口になっています。実際に、そこに 4 人いるのですが、そこで窓口となったのを、各研究部等に病原体担当ごとに振り分けて、そこで対応するという仕組みを作ってあります。 4 人で十分かといわれると、どこと比べるかという話になるので、先ほど言いましたように、 FDA と比べると月とスッポンという感じになるわけですが。

○西島部会長代理 そういう体制で、我が国の立場を十分に主張することは大事だと思うのですが、可能ですか。

○渡邉参考人 これはこの部会と関係のないことになって、人事要求の話になるのでここで発言してもよろしければ発言しますが、厚生科学課マターになってくるのだと思うのです。もちろん要求はしているのですが、なかなか今の日本の現状からすると、国家公務員の削減が叫ばれている中で我々のところだけが増員されることは難しいので、できればこういう部会で、是非大きな声で言っていただければ我々としても助かります。

○庵原部会長 立場上、回答は難しいことだと思います。

○森委員 品質管理からは少し外れてしまうかもしれないのですが、 2 日前にあった感染研での班員会議で少し聞いたのですが、今、風疹ワクチンがかなり話題になっているということで、皆様が接種されるようになってやや不足気味になっているのか、若干制限がかかっているということを伺ったのですが、それでワクチンメーカーが増産しているということなのですが、感染研でこのような風疹抗体保有率の調査を行ったということで、こういうものをもう少し早く情報公開して、実際は厚生労働省のほうからなのかもしれないのですが、ワクチンメーカーにもう少し早い時期に増産をお願いするという手立てはなかったのかと思うのですが、いかがでしょうか。

○渡邉参考人 抗体調査の公開は日常的にやっていますので、感染研のホームページを開いていただければいつでも抗体情報は見られます。かつ、いろいろな雑誌等にも、この結果等には広報しておりますので、ワクチンメーカーの方々が見られているのであろうと思います。

○森委員 それを国から積極的に増産を要請するとか、そういうシステムにしたほうが、このような事態にならないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○渡邉参考人 これは私の口から言うよりは、課長から言っていただいたほうが。

○正林結核感染症課長 先ほどワクチン産業協会のプレゼンにもありましたが、ワクチンというのは、作ってくださいと言ってそう簡単にできるものではないのです。大体 1 年半ぐらいかかります。今年のこの流行の状況を 1 年半前に予測できたかというと、 1 年半前というと、そもそも流行が起きていなくて、前回、 2004 年に 4 万人ばかりの流行がありましたが、風疹は 5 年に 1 度ぐらいで時々流行するのです。前回は 2004 年で、この 2013 年にこういうことの予想はなかなかできなかったのではないかと。今、残念ながらこういう状態になっていて、今からメーカーに対して増産してくださいと言っても、 1 年半後になってしまうのです。

○森委員 それを、こういう抗体検査を行っていて、例えば若い世代が抗体を持っていないということで流行することを予測するとか、そういうことを今後やっていかないといけないのではないかと思ったのです。それで、今ポスターとかコマーシャルが始まっていると思うのですが、そうすると、不足するということが見えてきますので、そういう前にメーカーに声を掛けていくとか、そういったことも必要ではないかと思うのですが。

○正林結核感染症課長 今の風疹のワクチンの状況は、 4 月は任意接種はせいぜい 9 万人ぐらいでした。ところが、 5 月に入って 30 万人を超えてしまって、このペースがこの後 7 月、 8 月とずっと続くと、秋頃にワクチンが涸渇するかもしれないと。秋頃のそういう事態を想定して、今回の情報開示をしたのです。

 秋に足りなくなると、例えば定期接種ができなくなるとか、そういうことを避けるために、今はできるだけ優先的に、これから妊娠される方、妊娠を希望する方、あるいはその周辺の方が優先というアナウンスをさせていただいて、本当に必要な人だけが打って、最終的に定期接種は守っていきたいと思って、今回のアナウンスをしています。

○庵原部会長 坂元委員、どうぞ。

○坂元委員 先ほど渡邉先生から国立感染研の規模という話がありましたが、私も非常に同感に思うのは、我々も地方衛生研究所を持っているのですが、保健所は地域保健法に必置規定という形で保証されているのですが、地衛研に関しては保証がなくて、非常にその辺の点で、地衛研の先生方の集まりから、いつも我々自治体の集まりのほうに、この辺のちゃんとした身分保証といったら変なのですが、そういうことを含めてのお願いがきているということで、何を言いたいかというと、こういうワクチン開発をやるときに、我々から見ていても、我々川崎市の衛研も、非常に国立感染症研究所にはお世話になっているし、非常にバックアップをしてもらっています。しかし、いつも感じるのは人手が非常に足りないということです。

 やはりワクチンというものをもっと強化していくためには、こういう地方衛生研究所とか、国立感染症研究所の機能強化に資本投下しなくて、ワクチンの発展はないと感じていますので、そういうところはこの中で特記していただいて、そういう機能強化は是非訴えていきたいと思っています。

○庵原部会長 これはこの部会か分かりませんが、先ほどからサーベイランスといったとき、特に病原体サーベイランスをやろうとするときには、地方衛生研究所の位置付けが非常に重くなります。ですから、疾病負担を把握して、特に病気が減ってきた場合は、それをきちんと捉えるというサーベイランスというのが大事になってくると思いますから、地研の位置付けを明確にさせてほしいというのが坂元委員の意見ですし、逆に、各県の地研の人たちもそういうことを言われていますので、この辺も今回のワクチンの中に含めて考えていただけると有り難いというコメントです。

○渡邉参考人 その点は是非感染研としてもお願いしたいと思うのです。感染研は実際に現場に対応しているわけではないので、我々は地研をサポートするのが大きな役目の 1 つです。そうすると、現場で働いている方々が十分に機能できるような体制を作らないと、こういうデータも集まってきませんので、是非その辺はお願いしたいと思うのです。

 もう 1 つは、危機管理を考える場合に、そこの人材がある程度の年数そこで働けるような体制を作っていただけないと、特に技術者が 2 3 年ぐらいで変わってしまうと、例えばせっかく感染研で研修をしても、そこで研修された人がその技術を維持できないという状況が起こっておりまして、非常に大きな問題になっています。

 ですので、地方衛生研究所は各県とか市町村レベルでの人事権があるのだと思うのですが、そこにどのようにアプローチすればいいのか、これは厚生労働省というのか、どこでやればいいのか分からないところはありますが、是非その辺の人事問題についても、もし提言をしていただくのでしたら、人員確保と同時に、そういう研究者の異動等の問題も含めたことも提言していただければ有り難いと思います。

○坂元委員 今の渡邉先生の御意見は、私ももっともだと思います。現在、地方自治体では、どうしても研究職という特別なポストを行政のシステムの中に設けるというのが非常に難しくて、総じて、地衛研で働いている職員も行政職になってしまって、 2 年ぐらいで保健所のほうに出たり、衛生監視のほうにいってしまったり、研究技術の確保、維持というのが非常に難しいということも聞いておりますので、この辺の問題に関しては、地方自治体の集まりの場面でも、今の先生の御意見を各自治体に伝えて、人事面での配慮を自治体としても取り組んでいきたいと思っています。ありがとうございます。

○庵原部会長 これは結核感染症課の問題かどうか分かりませんので、厚生労働省の健康局の中で討議をする話題としていただければ有り難いかなと思います。

 時間も押してきましたので、最後の「ワクチンの研究開発の促進等について」ということで、菊池参考人の発表と、渡邉所長の発表等を基にして、各委員の方々がどういう意見があるかを、一言ずつでも述べていただけると有り難いかと思いますので、伊藤委員からお願いできますか。

○伊藤委員 厚生労働省から出されている資料 1-2 を見ても思うのですが、国内のワクチンが海外に輸出されているという話を余り聞かないです。本来は、ワクチンが最も必要なのは発展途上国とか、衛生環境が悪い所が必要なのではないか、そういうところに製造技術支援というだけで製品として輸出されていないというのが、ニーズがないのか、製造する余力がないのか、どちらなのでしょうか。それが、国際医療協力ができる 1 つの糧になるのであれば、日本の今後ありうべき道の 1 つではないかと思うのですが、物理的に無理なのか、無理ではないのかというのが、今後ワクチンの業界団体として、どういう方向を向いているのかを教えていただけますでしょうか。

○庵原部会長 これは菊池参考人ですかね。

○菊池参考人 今の御質問は非常に重要なところだと思っています。そもそも JICA などを通じて技術支援しているのは、そもそもその国で国防のためにワクチンを作れるのが一番適しているだろうということでやっているところはたくさんあると思います。ただ、輸出をするということを考えますと、まずは製造キャパという問題があるのと、コストの問題があります。それをかなえるだけの今の日本の状況ではなかったと思うのですが、今回大きな製造設備が事業の中でできていますので、そういう要素というのは、例えば外務省とか、いろいろなところと連携すれば、出てくる可能性はあるのではないかという理解をしています。

○庵原部会長 次に、坂元委員から何か御意見はございますか。

○坂元委員 臨床治験に関してですが、どうしてもワクチンの開発となると、赤ちゃん等が被験者になるということもあって、例えばこの辺の参加とか、説明同意とか、その辺の難しさ、それをどうやって啓蒙していったらいいかという点で、何か御意見がございましたらお願いしたいと思います。

○菊池参考人 非常に難しい御質問だと思います。これは多分ワクチンだけの問題ではないのかもしれませんが、お母さん方の VPD に対する理解が高まれば、より危険にさらされている状況も理解できるので、そういう治験に協力していただける方も増えるのかなと思います。国民のコンセンサスというか、世論というか、そういうものが非常に重要になってくるのではないかと思います。

○庵原部会長 これは菊池参考人側の 24 ページにも、小児治験のできるようなシステムなり何かをという提案がありましたが、これは日本のワクチンの開発を進めるためには、基礎の開発もそうですが、臨床治験をいかに進めていくかというのが課題になってくるということですので、この辺はこの部会で討議する話題かなと思います。細矢委員から御意見はございますか。

○細矢委員 質問ではなくて、私の意見でよろしいですか。

○庵原部会長 はい。

○細矢委員  1 つは、ここの研究開発のための基本方針として、 VPD というものはワクチンで予防すべきであるということをしっかりと入れていただきたい。そういうものが大事であるということを明確にすべきであろうというのが、第 1 点です。

2 つ目は、ワクチンの研究開発を国が主導して行うというのもいいのですが、同時に民間企業も参入すべきであって、我が国で作るためにはある程度の市場の確保が必要で、そのためには、開発されたワクチンについてそれが定期になる道筋を示してあげることが必要なのではないかというのが、第 2 点です。

3 点目は、先ほど厚生労働省の研究で行ったものがなかなかデータとしてというか、申請に使われないということがあったのですが、例えば公知申請で行うとか、あるいは企業が治験をしなくてはいけないとか、どういったものがあると接種期間を延長できるとか、接種方法、例えば筋注ができるようになるとか、そういったガイドラインのようなものが必要なのではないか。もう少し広く言うと、ワクチン開発全体についてのガイドラインも示しておかないと、なかなか研究開発のほうに向かないのではないかという点です。

4 点目が、感染症のサーベイランスですが、これは感染研でやっているのが、かなりいいところをいっているのではないかと思うのですが、アクティブサーベイランスにしようと思うと、これはなかなか大変だと思います。感染研でできるものではなくて、神谷・庵原班でやられているような、あるポピュレーションの中での発生頻度を見るしかないということになるのです。それをやるためには何を見るかをはっきりしないと、何でもかんでも出してくれといっても出てこないだろうと思いますので、企業からこういったものが必要なのではないか、こういうのが知りたいのだというのがあれば、作れる可能性があるのではないか。それをやるベースになるのは、恐らく感染研ではなくて、厚生労働科学研究費のような形でやるしかないのではないか。そういったタイアップがあれば、ある程度のアクティブサーベイランスができるのではないかと思いました。

○庵原部会長 サーベイランスに関しては、アメリカもパッシブな部分とアクティブな部分、この疾患はこの州でアクティブをやれとか、そのようなメリハリを付けたようなサーベイをやっていますので、日本も疾患ごとにそういうことを考えていく必要があるのかなと。それと、何でもかんでも全数把握は難しいということの理解もしてほしいということです。森委員から御意見はございますか。

○森委員 私もコメントですが、先ほど庵原先生に御提示いただきましたように、私たちは基礎研究として、ムンプスウイルスの遺伝子を挿入した水痘生ワクチンというものを作製しているのです。それを実用化したいと思っているのですが、その実用化に向けてどのようなことを行っていったらいいのかというのが、日本でまだ組換え生ワクチンが認められていないということで、難しいと考えております。そこで、そのような新たな基礎研究から実用化に持っていくためのガイドラインの作成を、是非お願いしたいと思っています。

○庵原部会長 幾つか日本で組換えの生ワクチンはできつつありますし、割とこの方面は日本が先に進んでいるようです。海外は組換え生ワクチンではなくて、不活化ワクチンをやっているような感じがありますので、その辺のガイドラインを作っていただけると有り難いと思います。西島委員、お願いします。

○西島部会長代理 私も意見です。御存じのように、エイズが出てから新興・再興感染症ということが非常に注目されてきています。それを考えれば、感染症というのは、我々はまだまだ継続的に対策を立てなければいけないということですが、その中で最も効果的な予防法あるいは治療法もあるかもしれませんが、これはワクチンということになるわけです。そういう観点から、先ほど菊池参考人の話の最後のところにありましたが、基礎研究分野の支援を、官と産と学が今以上に力を挙げて取り組んでいかないといけないと思います。このような研究は、ビジネスとしてはなかなか難しいところがあるということも事実ですが、国民の健康を考えたときには、そのビジネスを超えて取り組まなくてはいけないということを関係者が強く認識して、取り組んでいってほしいと思っております。

 渡邉参考人のお話の中では、先ほど少し質問にも出しましたが、グローバル化という流れの中で、品質管理に向けても、我が国もグローバル化の中で、品質管理に向けて世界をリードするような形の姿を見せるように、是非取り組んでいきたいと思っております。それには人材の育成、人的な確保が大変重要だと思いますので、これは国として是非考えていただきたいと強く思ったところです。

○庵原部会長 私は、間に意見を挟みましたが、先ほど西島委員も言いましたように、国民の健康を守るためには、産官学が協力してということが大事かなと思います。それから、サーベイランスとか、積み重ねの上に出てきますので、急にパッと出てくるものではないということで、日頃からの人材育成が大事だろうと。そのためにも、将来を見据えた姿が見えないと人材育成ができませんので、基本方針、こういうところでこれから目指す姿が出てくれば、産官学の協力もできやすいかなと思っています。

 今日で終わりではないので、また次回にでも意見を言っていただけるということで、次回、次々回で皆さんの意見をお伺いしたいと思います。事務局にマイクを戻します。

○今井室長補佐 次回は 7 19( ) を予定しています。正式な開催案内は改めて御連絡差し上げます。

○庵原部会長 これをもちまして、第 2 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会を閉会いたします。本日はありがとうございました。


(了)

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