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2013年9月12日 第8回社会保障の教育推進に関する検討会 議事録

政策統括官(社会保障担当)付社会保障担当参事官室

○日時

平成25年9月12日(木) 15:00~17:00


○場所

厚生労働省12階 専用第12会議室


○出席者

委員

権丈善一座長 梶ヶ谷穣委員 栗原久委員
細野真宏委員 前田昭博委員 増田ユリヤ委員
宮台真司委員

説明者

宮崎三喜男教材検討PT委員 株式会社政策研究所
株式会社東京リーガルマインド 株式会社放送映画製作所

事務局等

唐澤政策統括官(社会保障担当) 福本参事官(社会保障担当)
込山政策企画官 松江社会保障専門官

○議題

・教材案について
・地域社会保障教育推進事業(モデル授業)の実施について
・その他

○配布資料

資料1-1 今後の検討会の取り組みの方向性について(案)
資料1-2 教材検討PTにおける議論の内容
資料1-3 社会保障を教える際に重点とすべき学習項目(案)
資料1-5 社会保障に関する映像教材の方向性について
資料2-1 地域社会保障教育推進事業実施要領
資料2-2 株式会社政策研究所
資料2-3 株式会社東京リーガルマインド
資料2-4 株式会社放送映画製作所

○議事

○権丈座長
 ただいまから「第8回社会保障の教育推進に関する検討会」を開催いたします。

 委員の皆様方には、御多忙のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

  本日は、広井委員と宮本委員が欠席でして、文科省の塩見課長が急に来られなくなったということで、欠席させていただくことになっております。

 また、本日より参加される新しい委員の方を御紹介したいと思います。
 本検討会では大杉先生に委員として長く御活躍いただいておりましたが、今年度より国立教育政策研究所部長へ移られた関係でおやめになられました。
 そのために、教育学、教育行政に通じた有識者の方として、東洋大学文学部の栗原教授に新たに御就任いただきました。 
 栗原委員、よろしくお願いいたします。

○栗原委員
 どうぞよろしくお願いいたします。

○権丈座長
 また、本日の議事の中で資料等の御説明をお願いする関係で、こちらの方々をお招きしております。

 私のほうから向かって左側で、まず都立高校の宮崎先生。御挨拶をお願いします。

○宮崎教材検討PT委員
 よろしくお願いします。

○権丈座長
 映像教材の制作会社である株式会社放送映画製作所さん、よろしくお願いいたします。

○放送映画製作所三輪様 
 よろしくお願いします。

○権丈座長 
 地域社会保障教育推進事業を受託いただいている株式会社政策研究所さん、株式会社東京リーガルマインドさん、株式会社放送映画製作所さん。よろしくお願いいたします。

(3者、起立一礼)

○権丈座長 
 早速議事に入りたいと思いますが、まず事務局のほうから本日の議題と配付資料について確認をお願いしたいと思います。

○込山企画官  
 御説明申し上げます。

 本日の議事につきましては、1枚目の議事次第に書いてあるとおりでございます。
 まず、1点目の議事は「教材案について」でございます。
 御参考までに資料1-1をおめくりいただきたいと思います。
 こちらは、前回の検討会におきます御提案と御承認いただいた内容でございます。 
 「今後の検討会の取り組みの方向性について」といたしまして、今後の教材等の検討につきまして、まず1つ目は、社会保障を教える際に重点とすべき学習項目を整理しようということ。
 2点目といたしまして、その項目に即して、例えばきちんと文章化するなど、その具体的な内容を明確化するという点。
 3点目は、さらに追加的な教材といたしまして、学習のモチベーションを高める映像教材の検討を行う。
 4点目といたしまして、各学習項目の理解向上に資する副教材(紙ベース)を検討する。こういうことの御提案と御承認をいただいたところでございます。

 これらの項目につきまして御検討いただくために、教材検討PTを設置させていただきました。これまでの間、このPTを7回開催していただきまして、種々精力的に御検討いただいたところでございます。

 本日は、教材検討PTで御作成いただきました教材案をこの場で御報告させていただき、検討会の先生方に御議論いただきたいと考えております。

 御議論いただきました成果物につきましては、秋以降に予定しておりますモデル事業、地域社会保障教育推進事業におきまして試行的に授業で使用していただき、生徒にとってのわかりやすさ、先生にとっての使いやすさなどを御検証いただきたいと考えております。

また、委員の細野先生におかれましては、とりわけ年金に関しまして、高校生向けの工夫を凝らした年金教材を御提案いただきました。
 この年金教材につきましても本日御報告申し上げ、モデル事業等での御活用を御検討いただきたいと思います。

 資料につきましては、資料1-1から1-9が今、申し上げた関連の資料でございます。
 続きまして、議事2「地域社会保障教育推進事業について」でございます。
 昨年度もこのモデル事業を実施させていただいたところでございますが、今年度もこちらのモデル事業を実施する予定でございます。
 先ほど申し上げたとおり、議事1で御検討いただいた教材案を教育現場で試行的に使用していただき、検証を行っていただきたいと思います。
 そうした社会保障教育の全国展開に向けた基礎資料としての活用を考えているところでございます。

 関連する資料につきましては、資料2-1から2-4でございます。

 本日の議題については以上でございます。

○権丈座長
 どうもありがとうございました。

 では、ここで議事1であります教材案について、事務局のほうから御説明をお願いいたします。

○込山企画官
 では、続けて御説明申し上げます。
 資料1-1につきましては、先ほど御説明申し上げたとおりでございます。 
 資料1-2は、先ほど御紹介申し上げました教材検討PTにおける議論の内容でございます。
 PT にお集まりいただきました先生方は、実際に各高校で授業をしていただいている先生方でございます。
 また、メンバーに入っていたたいだ先生の中には、教科書などの教材制作の御経験のある方も含まれております。
 先ほど申し上げたとおり、7回にわたりまして精力的に御議論いただいたところでございます。この場をかりて厚く御礼を申し上げたいと思います。 
 そこでの検討の結果、成果物といたしまして資料1-3、1-4等々ございます。
 まず、資料1-3は「社会保障を教える際に重点とすべき学習項目(案)」でございます。
 こちらは、前回の検討会におきましても御提示させていただいたところでございます。

前提といたしまして、昨年度実施いたしましたモデル事業や高校の先生方へのヒアリングによりますと、実際の現場において社会保障に使える授業のコマ数は2コマ、3コマであるということ。
 また、モデル事業やヒアリングを通じて、重点的に教えるべき点や教えるのが難しい点といたしまして、社会保障の理念、内容、課題ということが挙げられました。このため、 今後の教育の内容といたしまして、理念、内容、課題につきましてきちんと教えていくことが必要であろうという御議論がございました。

そういった点をこの学習項目(案)といたしてまとめさせていただいたところでございます。

なお、先ほど申し上げたとおり、前回もお示ししたところではございますけれども、前回からの修正点が赤字になっているところでございます。

例えば「自助・共助・公助」という言葉を前回使っておりましたが、高校生にとって若干難しいというか、理解が及ばない点もあろうかということで、例えば「リスクと自立と社会保障制度」といった形に書きかえさせていただいているといったところなどございます。

また、それぞれの項目につきまして若干の注釈を補足するなどの変更をさせていただいているところでございます。

こちらが資料1-3でございます。

続きまして、資料1-4でございます。

こちらは、「社会保障を教える際に重点とすべき学習項目の具体的内容」を一定の文章化という形でお示しさせていただいているものでございます。

大きく分けまして、「社会保障の考え方」「日本の社会保障制度」「公的年金の意義」「公的年金のしくみ」「医療保険の意義・しくみ」「介護保険の意義・しくみ」「社会福祉・公的扶助・公衆衛生の意義・しくみ」「あるべき社会と今後の社会保障」という章立てにさせていただいております。

最初の「社会保障の考え方」「日本の社会保障制度」というパーツが、項目で言う「社会保障の理念・考え方」に該当するところだと思います。

そして、それぞれの保険制度の内容・仕組み等につきましては、「社会保障の内容」に当たるところでございます。

最後の部分が「課題」という形で対応させていただいているところでございます。

内容につきましては、説明を若干はしょらせていただきますけれども、理念のところ、考え方、日本の制度という点におきましては、社会保障制度というのが、生活上のリスクに対して、社会全体でセーフティネットをつくるものである、社会全体で支えようとする仕組みであるということ、こちらを明確に記述していただいております。

とりわけ社会保障制度の役割として、今、申し上げたような全ての人々の生活のリスクを分け合うこと、それによってもたらされる安心感が制度の基本的な考え方なのであるといったところを強調させていただいております。

さらに、社会保障の機能・役割として3つの機能、「生活安定・向上機能」「所得再分配機能」「経済安定化機能」があるといったことを記述していただいております。

2枚目でございます。ページ番号では3ページ、4ページでございます。

加えて、それぞれの公的年金の意義等々について書いていただいております。

リスクにも関連するお話でございますが、年金についても、自分や自分の家族の身に何が起きるか予測することができない中で、長生きリスクや、重度の障害を負うかもしれないといったリスク、また、一家の大黒柱の方が亡くなるかもしれないといったリスク、そういった予測できないリスクに対応しているものであるといったことをこちらでもきちんと明記していただいております。

次のページの「医療保険の意義・しくみ」について、国民は誰でも保険を使って医療を受けることができるといった国民皆保険の意義ということや、新しい保険制度である「介護保険の意義・しくみ」について記述しております。

加えて、税を財源とする制度でございますが、「社会福祉・公的扶助・公衆衛生の意義・しくみ」について簡単な説明を加えております。

最後に、「あるべき社会と今後の社会保障」といたしまして、課題を記述していただいています。

高齢化による今後の社会保障給付費の増加等々といった問題や、また、非正規雇用の労働者の方がふえているといった問題、また、ひとり暮らし、共働き世帯の増加といった世帯構造、社会構造の変化がある、そういったことを記述していただいているところでございます。

簡単でございますが、資料1-3と1-4についての御説明は以上でございます。

○権丈座長
  どうもありがとうございました。
  それでは、まず資料1-3と資料1-4について、議論をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

よろしいですか。もし何もなければ、次のところの説明をし終えて、そこからまたもとに戻ってという形でやろうと思うのですけれども、よろしいですか。

では、よろしくお願いします。

○細野委員
  細野です。

今のこの話について、内容的な話でなく、扱いについて根本的なことを伺いたいと思っているのです。

資料1-4については、いわゆる教科書用のお手本を作成したということでよろしいのですか。

○込山企画官
 こちらは、先ほど申し上げたとおり、必要な学習項目に対応して、項目だけですと箇条書きになってしまいますので、一応文章であらわさせていただいたものです。

それが教科書になるかどうかというのは、今のところそこまで至っておりませんけれども、今後どういった形で使っていただけるかは、さらなる検討が必要だと思います。

○細野委員
 そうですね。

 その意味で、今までの教科書というのは、この検討会でも何度か議題に上がっていたと思うのですが、わかりにくいのは当たり前なのですけれども、単純に間違っていたり、ちょっとおかしいような記述が多々ある中で、このように間違った表記がなくて、最低でもこのぐらいは教えておいてほしいというものをつくらなくてはいけなかったという課題があったので、それをこういう形で出されたことはすごく重要なことだと思います。ただ、「仏つくって魂入れず」みたいな話で、最終的にどういうふうにこれが教科書に反映されるのかというところまでこの検討会で詰めていかないと進まないなと思っています。

 だから、別に次回というわけではなくて、その次の次でもいいのですけれども、いずれは教科書会社の方々にも来ていただいて直接意見交換をさせていただいて、具体的にどう反映させていけばいいのかも道筋をつける必要があると思います。

これは、誰にとっても悪い話ではなくて、非常に前向きな話ができるはずなのです。ただ、今までそういう場がなく、なおかつこういうベースになるものが存在しなかったから、おかしな不幸な状況が生まれてきていたので、少なくともこの検討会で、本当に必要なもの、これは最低やるべきなのではないですかというのを出せたので、そのもとでそういう場がこれからあると子どもたちにとって非常にいいのではないかと感じました。

○権丈座長
 どうぞ。

○込山企画官
  心強いお言葉、ありがとうございました。

今後の扱い方につきましては、文科省も含めてきちんと検討していきたいと思います。よろしくお願いします。

○権丈座長
 どうもありがとうございました。

 だから、これは教科書をつくる人たちにとっても非常に有益だと思うのです。今までは新書版とかを読みながらきっと書かれていたのだろうと思うような内容だったのですが、こういうのがしっかりと準備されるとありがたいという状況になると思いますので、これは私たち検討会のほうでしっかりとつくっていければと思います。

どうもありがとうございました。

  それでは、続いて資料1-5と資料1-6について、事務局から説明をお願いいたします。

○込山企画官
  御説明申し上げます。

  資料1-5が「社会保障に関する映像教材の方向性について(案)」、資料1-6が映像教材構成台本案でございます。

冒頭申し上げましたとおり、生徒さんの学習のモチベーションを高める、また、導入に資するための副教材といたしまして、映像教材の作成を検討するということに至りました。

   映像教材の方向性をお示しいたしましたのが資料1-5でございます。

こちらにつきましては、前回の検討会で御提示させていただきました。

その後、まさにプロの企画力を生かしていただくべく、制作会社の皆様方からの入札を実施させていただきました。

このたび、教育映像制作業務で数多くの御実績があります株式会社放送映画製作所さんが制作会社となりました。

なお、落札会社を選定するに当たりましては、社会保障教育映像教材等制作業務 に係る企画書評価委員会 を設けまして、教材検討PTの先生方にもこれにお入りいただきました。これまた大変お手数をおかけしました。ありがとうございました。

また、会社を決定以後、第6回、第7回の教材検討PTにはこちらの制作会社さんにも御参画いただきまして、シナリオの細かい点に至るまで意見交換をしながら、このシナリオ案の作成に当たってきた次第でございます。

現段階での成果物が資料1-6でございます。

本日は、シナリオ案、台本案につきまして種々御議論いただきまして、御承認いただきましたら、今後撮影に入っていただきたいと思います。

また、今後、試写、プレビューなどを実施するなどいたしまして、内容の確認をしながら、最終的な完成を目指したいと思っております。

このシナリオの内容につきましては、制作会社さんであります放送映画製作所さんより御説明をいただければと思います。

○権丈座長
 それでは、株式会社放送映画製作所さんのほうから説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

○放送映画製作所三輪様
 三輪と申します。よろしくお願いします。

 では、台本の説明をさせていただきます。

 めくりまして、1ページから説明させていただきます。

 まず、考えるきっかけを与えるために、プロローグで、MCと書いてあるのはキャスターみたいなものですが、MCさんが高校生にクイズを出していく。その中でさらに突っ込んだインタビューをしていくような形でストーリーが進むようになっています。

実際の高校生は、こちらにいらっしゃる宮崎先生の生徒さんに御協力いただきまして、実際に高校で8人の方に話を聞いて、こういうインタビューをやって、その中でエッセンスを編集して、高校生の生のリアクションを確認していくような形をとっています。

「公的年金の保険料は何に使われていますか」「公的年金は老後にもらえるので若い時にはもらえないものですか」「公的年金を受け取っている高齢者は、健康保険の保険料を払わなくてよいのですか」などといった質問を高校生にぶつけていきます。

この作品のイラストレーターにこの打ち合わせをするときにこの問題を出したら、2問ぐらい間違えるのです。大人でもなかなか知り得ることではないので、根本的な考え方を高校生に知ってもらうという形で疑問として提示していきます。

2ページ目です。ここからは高校生の2人の役者を通して物語が進んでいきます。

この3問のクイズを出して、実際には全部間違ってしまうわけですけれども、もっと知りたくないかとMCが振ることによって、2人が自分の身近な人たちに健康保険と公的年金について尋ねていくという形でストーリーが進んでいきます。

3ページ目のほうは、実際1回スタジオでMCが社会保障制度の根本的な考え方なり、あり方を説明するのを前振りとしてやりまして、3ページ目のせりふを言って、社会保障制度とは何ぞやとか、社会保険の場合、公的年金制度とか健康保険について、ざっくりと前振りの説明をしていきます。

4ページ目です。高校生の男の子、拓也君という名前をつけていますが、拓也君が、先輩の滝沢さんのお父さんが病気をしたということで、話を聞きに行くというストーリーの流れになっています。

 お父さんが胃がんの手術をして100万円以上の出費が出てしまったのですけれども、その出費を健康保険で負担して、かなり安く済んだという流れのストーリーが、4ページ目、5ページ目、6ページ目と進んでいきます。

この中のポイントとしましては、ただ安くなるのではなくて、急な支出が抑えられるということとか、6ページに出ています「いつ病気になっても安心」ということで、「安心」がキーワードになると思いますけれども、そういうキーワードを感じてもらうような形でストーリーが進んでいきます。

7ページ目です。このストーリーを受けて、MCがスタジオで健康保険についてさらに突っ込んだ解説を進めていきます。

7ページ目では、健康保険の基本的な仕組みの概念をこのようなイラストで説明していくような流れになっています。

こけしみたいになっているところは、イラストでもうちょっときれいに描き直しますが、そのようなイメージになっています。

8ページ目は、高校生がインフルエンザにかかったときの負担額について、実際は1万円だけれども、自己負担額は3,000円で済んでしまうとか、滝沢さんのお父さんの場合は高額療養費制度というものがあったとか、そういう説明をしていきます。

8ページの下のほうでは、「公的医療保険制度では、持病のある人とか高齢者といった、一般的に病気になりやすいと言われている人でも、高い保険料が必要になったり、健康保険に入れない、といったことはありません」等々の説明を補助的に入れていきます。

9ページ目です。キーワードとしては、「誰でも」「どこでも」「いつでも」平等に医療を受けられる制度というのが健康保険だよということで、MCの説明が終わります。

一番最初のプロローグで見たクイズの正解を言っていくという形の流れになっています。

  10ページ目です。今度は女子高校生のほうの話ですけれども、自分の家に行ってお母さんに話を聞くと。ただ、普通のお母さんですと、この辺の話は余り詳しくないと思いますので、社労士の資格を持ち、人事や総務系の仕事をしていて、そういうことに多少詳しいお母さんが出てきて、娘と一緒に年金の話をしていくような流れになっています。

 まず、「公的年金は保険である」という説明をした上で、11ページ目、では、保険とは何かということで、保険の説明が入ってきます。

これだけだと高校生にはぴんときませんので、実際にお母さんのお父さん、高校生のおじいさんが出てきまして、おじいさんを例えにして、おじいさんはどのようにして年金をもらうようになったかということを説明していきます。

解説のポイントとしましては、解説テーマ「年金は払った人しかもらえない」ということで、若いときに払っていたことによって老後にもらえるという流れを説明しています。

12 ページ目は、年金と貯金はどう違うのだろうということで、年金と貯金の違いについて解説していきます。

賦課方式の仕組みについて、もうちょっとかみ砕いた形で、働いている人、お年寄り、税金の流れについて説明していくような形でやっていきます。

13 ページ目では、貯金だけで老後を暮らす場合と年金をもらう場合の違いを出しながら、年金の終身給付とそれからもたらされることについて話をしていきます。

14ページ目は、貯金と年金を比べながら、それぞれのいい面、悪い面を考えていくという形をとっています。

ここで1度クイズの答え合わせをするような流れになっています。

15 ページ目です。それに付随して代表的な3つの年金、老齢年金、障害年金、遺族年金。特に障害年金と遺族年金については、大人でも知っている方が少ないと思いますので、これをはっきりわかるように、文字だけではなく、ここにお年寄りとか車椅子の人とか、実際のお葬式など、旦那さんが亡くなったような状況のイラストを付加することによって、それぞれの年金のイメージが伝わるような説明をしていきます。

15 ページの真ん中以降16ページまでは、公的年金、要は、大勢でお年寄りの生活を支えるということは、支えているほうの負担も減っていく、横世代の支え合いがあるという説明をやっていきます。

16 ページの最後のほうでは、解説テーマとして「年金の加入年齢」を挙げまして、年金の加入年齢は20歳ですので、高校2年生ですと、2、3年たったら年金を払わなければいけないということで、その辺をもっとちゃんと考えなければだめよということ、考えるきっかけを与えるような展開になっています。

17 ページ目は、公的年金の仕組みについて、MCがさらにちょっと突っ込んだ絵を使い、絵説きで説明するような流れです。

まず、お年寄りと働いている人と子どもという3つのグループをつくるのですけれども、17ページ目の真ん中のコマでは、例えば縦方向に家のイラストが出ることによって、昔の状況では同居していた。だけど、50年ぐらいの間に家族のありようが変わってきて核家族化が進みました、それで別居する人が増えましたということで、家のイラストが途中で切れていって、お年寄りと若い人たちの夫婦が別居していくというのが絵でわかるような形でやっていきます。別居、別居、別居で、全員が別居するわけではないので、同居も少し残っているような絵に変わります。

別居する人たちはそれぞれ仕送りをしていく。仕送りというイラストが出てくることによって表示をしていく。そういう社会的な流れになっていくという説明を入れていきます。

18 ページ目では、個々の家族でお年寄りを支えていた状況が、働いている人が保険料を払うことによって年金をそれぞれお年寄りに給付する、社会全体を支えていくという流れを示しています。

さらに、絵的には、例えば働いている人がすっと上に上がっていくと、そのままお年寄りになってしまって、逆に年金を受け取る立場になるということをアニメーションでわかりやすく説明します。

出ている絵は仮の絵ですので、人の顔等をもうちょっとわかりやすく描きかえる予定です。

解説テーマ「横(同世代間)の支え合い」ということを18ページまで説明しております。

19 ページ目です。今、説明したことの補足として、今までは個別に支えていて、家族ごとに負担が異なっていたのが、みんなで支え合うことによって社会全体で支えるというのをイラストでわかりやすく説明していくということです。

20 ページ目では、さらに公的年金についての突っ込んだ説明として所得の再分配について説明しています。

これも前回の委員会で御提案がありましたので、いろいろ考えたのですが、例えば所得の高い人と所得の低い人が出てきて、所得の高い人は低い人よりも払っているお金が若干多い。だけども、実際年金をもらうときには基礎年金というのが付加されるので、このイラストでは、所得の高い人はお金を2つ分払ったら、年金では基本的に4つもらう。だけど、所得の低い人はお金を1つ分払ったら、基礎年金が足されて3つになってしまう。倍率的には2倍と3倍で、所得の低い人のほうが、自分が負担したものよりももらえる年金の額が多くなっているということ、所得の再分配が果たされているというのを絵でわかりやすく説明しようと思っています。

これはまだ概略を説明した図ですので、今、こけしのようになっている絵も、わかりやすく全体の図を整理して、このような展開を見せていこうと考えています。

21 ページ目は、今までの説明の流れとして、MCが高校生にもうちょっと聞きたいことがあるかということを尋ねて、それぞれ高校生が疑問をぶつけております。

公的年金への加入年齢について、どうですかという話をしたり、支払いを猶予するシステムとか免除するシステムがありますよという説明が入ります。

22 ページ目は、高校を卒業したときはどうなってしまうのか。高卒で就職する高校生の方もいますので、就職すると年金を払わなければいけないという仕組みを説明するという形になっています。

22 ページ目の10では、年金と貯金のバランスはどうでしょうかと。年金は万能ではありませんので、いろんなことを考えながら自分のライフを考えていかなければいけないということを解説していきます。

一応、ここで話は終わるのですけれども、23ページ目では、冒頭で実際の高校生にインタビューしますので、年金のこととか保険のことを尋ねて、いろんなリアクションが返ってくると思いますので、では、それについてどのように考え、これからどのように学んでいけばいいかということをまとめて、ラストシークエンスを構成していきたいと考えております。

以上です。お願いします。

○権丈座長
 どうもありがとうございました。

 それでは、今、御説明がありました資料1-6について議論をお願いいたします。宮台委員、よろしくお願いします。

○宮台委員
  宮台と申します。

  とてもよくできた構成だと思います。

ただ、ラストに全体のまとめがあるといいかなと思いました。よく授業などでも、今日はこれを話しましたというふうにして、鍵になる概念を思い出してもらうということをやります。全体としてわかりやすいものの、情報量が多いという面があるので、そのようなプロセスがあると、それをカバーできるのではないかと思います。

やり方はいろいろあると思います。箇条書き風にキーワードを出すようなやり方もありますし、あるいはセンテンスで保険とはこういうことでしたみたいなところから始まる20秒、30秒のサマライゼーションもあり得るのではないかなと思います。

いずれにしても、最後にまとめの部分があるといいと思いました。

以上です。

○権丈座長
 どうもありがとうございました。

 ほかに何かございますか。前田委員、お願いします。

○前田委員
 このような形で出来上がりますと、私ども委員のほうも安心してきます。今まではずっと文字、字面を追っていましたので、果たしてどういうふうにでき上がるのかなと思っていましたけれども、多分これがそのままDVD、映像という形ででき上がりますと、すごくわかりやすくなってきますし、生徒がこれを20分間見て、そのことについて後で先生からいろいろとコメントをもらうという形で授業を進めていかれるのだと思います。

 この中で、年金というのは老後の年金だけでなくて、障害年金、遺族年金というのもあるのだよというのをちゃんと入れていただいておりますが、そこもきちっとPRしていただかないといけない。年金はどんどん減っていくというのが今週の週刊誌に載っていましたけれども、クイズの中でも一番最初のところで「公的年金は老後にもらえるもので若い時にはもらえない」と。これはクイズとして障害年金の話につながっていくのでしょうが、老齢年金だけでなくて、ぜひ障害年金、遺族年金にも力を入れて教えていただきたいと思っております。

 私は社会保険労務士ですが、「お母さんは社会保険労務士の資格を持ち」云々ということが10ページの原稿の中に出ていますが、削除しないで、ぜひ載せておいていただきたいのです。

以上です。

○権丈座長
  どうもありがとうございました。

  ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。お願いします。

○宮台委員
  先ほどのラストのフィニッシュの仕方につけ加えまして、この映像教材はDVDで配付されるのだと思いますが、DVD用のA4判1枚表裏程度のハンドブックというか、ハンドブックというほどの量はない、ライナーノーツのようなものがあると、先生にとっては教えやすいだろうと思いました。

場合によっては、そうしたハンドブックに教科書なら教科書、あるいは何らかの文字教材との対応関係を示す対照表のようなものが入っていると、生徒から質問があったときに対応がしやすいだろうと思いました。

もう一つは、構成台本の3ページの真ん中あたりにありますせりふナレーションで「MC『このような不確実な出来事に対して社会全体で支えていくために、社会保障制度が生まれました』」と書いてあるのですが、これがいつ生まれたのかということは結構大事な問題で、近代社会になって生まれたものではありません。講とか催合といった相互扶助のシステムがそれぞれの民族や社会には本当に古くから、いつ始まったかわからないという時代ぐらいから存在をしているわけです。

お互いに拠出したお金を積み立てておいて、必要な人間がそれを使うシステムなるものは、いわゆる近代国家以前から存在するということで、それを示すことによって、ここでも何度も議論になりましたが、社会保障の制度の中でも、年金を含めた保険制度は、救貧に対しては防貧でありますし、再配分に対してはリスク分配という側面があり、その意味では、国家が本来なすものというよりも、社会的な相互扶助を国家がサポートするという形でやるのだという話、国家よりも社会の相互扶助なのだという面を強調する意味でも、歴史的な沿革に数十秒でも触れたほうがいいかもしれないと思いました。

以上です。

○権丈座長
  どうもありがとうございました。
  かなり要求が高度で、どういうふうにしていくかというのがありますけれども、本日の議論を踏まえて事務局と制作会社のほうで検討していただきたいと思うのですが、よろしいでしょうか。

  私のほうも今までずっとこれを見ていたはずなのだけれども、「払う」「もらう」でよかったっけと思って、「年金をもらう」という表現を変えたいという議論が随分となされていたなと。これはここの議論ではなくて、ほかのところでです。

医療のところでも、「誰でも」「どこでも」「いつでも」ということですが、自分が書いた国民会議の報告書の中に、これを変えるとかいうようなことを書いていたなというのがあって、後ほどまた検討させていただきたいと思いますので、そういう形での微修正を終えた後に実際の撮影に入るということになると思いますけれども、よろしいでしょうか。

栗原委員、お願いします。

○栗原委員
  東洋大学の栗原でございます。

  ぱっと見せていただきまして、長い時間をかけて検討されてきた中身ですので、非常に充実したものができているなということを感じました。

  今、宮台先生のほうからお話がありましたように、このDVD20分。学校によって差がありますけれども、一般的に高等学校の授業は50分ですので、恐らくそのうちの20分でこれを見せて、その後に先生の授業、あるいは次の授業でこのビデオの中身を振り返りながら授業をするという形が行われるのが一般的だと思います。

  そのことで言えば、この教材が授業全体の中でどう活用できるかというような指導案ではないですが、先ほど宮台先生がおっしゃったワークシートのようなものがあると非常に使い勝手がいいだろうなと思いました。

  例えばNHK特集のようなものは、それ自体が非常によくできていて、そのものを1時間見せてしまうと、何となく授業が終わったような感じで、言葉は悪いですけれども、丸投げができてしまうのだと思うのです。

逆に言うと、それでは先生方の主体性が生きてこない。

先ほどおっしゃったように、例えば歴史的なことがいろいろ事細かに書かれてしまうよりも、先生が生徒から質問されたとき、あるいは授業の中で即話ができるような、先生方向けのマニュアルのようなものが付随されていて、ビデオの中で全て語り切ってしまうのでなくて、これを活用して先生がどう授業をできるかということのほうが勝負だと思いますので、そういうものが用意されているといいなと思っています。

宮崎先生や梶ヶ谷先生はよく御存じのとおり、学校にはこの手の教材がたくさん送られてきて、多くの場合は封もあけられずに、翌年3月、あるいは異動が決まったりすると捨てられるということが実際なのです。ですから、封をあけていただいて、少なくとも「はじめに」の部分だけを見ていただく。そしてコンピュータにDVDを突っ込んで見ていただけるまで持っていけるようにするためには、今、言ったようなDVDをめぐる補助のマニュアル等々があると、実際に使いやすいのではないかなと思いながらお話を聞かせていただきました。

以上でございます。

○権丈座長
  どうもありがとうございました。
  どうでしょうか。今のところも含めて事務局のほうと制作会社のほうで御検討いただきたい。と同時に、予算と時間と相談しながら御検討いただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

  ほかに何かございますでしょうか。では、お願いします。

○細野委員
  この流れになったので、根本的な大きなところを伺わせていただきます。

  仮にこの教材、DVDができましたとしましょうか。

論点が2点あると思うのです。

1つ目は、若干キャパオーバーだし、かつ平坦かなと。構成台本上、そう見えるので、そこはもうちょっとテレビっぽいというか、映像ならではの特性を活かしメリハリをつける演出をしていただけるといいのかなと思うのです。

そういうものがクリアされたことを前提に、さらに大きなことを伺いたいのは、まさに栗原委員がおっしゃったように、これは今まで多々つくられているDVDと何が違うのですかという根本的なところをどなたかに伺いたいのですが、よろしいですか。

○権丈座長
 お願いいたします。

○込山企画官
  大変難しい御質問だと思いますが、まさに封をあけていただくために値するかということだと思います。

まず、形式のことを申し上げると、こういった検討会の先生方にお集まりいただいて、ある意味、厚生労働省もきちんと関与した形で作成したものであり、生徒さんにお伝えしたいメッセージ、付加価値がきちんとついたものであるということは、形式として一つあろうかと思います。

加えて内容的にも、社会保障制度の意義を授業で展開していただくに当たっての導入、取っかかりとして、生徒さんのモチベーションを高める工夫を考えていただいたような内容になっていると思います。

そういった点が今までの一般的なDVD等とは違う点ではないかなと考えております。

○権丈座長
 どうぞ。

○細野委員
 そのとおりですよね。だからこそ、1コマの授業50分が全体だと仮定したときに、いかに20分のDVDとその次の30分のところをリンクさせ、総合的に提示するのかというところが、このDVDプロジェクトにおいてはすごく重要だと思っているわけです。具体的には、まず、多くの学生は、そもそも社会保障云々というのが全然わからない段階で聞いているので、今まで「常識」と思っていたことはそうでもないぞと感じるわけです。その際に、「社会保障というのはこういうものだ」ということがうっすらわかればよしとするかどうかが焦点となるわけですが、恐らく宮台委員も冒頭におっしゃっていたように、うっすらぐらいな感じで終わってしまうのではないかなと。だからこそ、ある程度のまとめをし、要点を強調することが必要だと思うのです。

 ただ、それでも25分とかが限界であって、残りのところでそれを生かしながら、体系的にこう教えればこの20分を見せる意義があると先生方に思ってもらえるというところは、現時点だと提案ができていないような感じがします。そこがこれを進めていくに当たっての重要な課題だと思うので、方向性だけでも伺えたらと思います。

○込山企画官
 その点につきましては、今後またいろいろ御議論いただきたいと思いますけれども、前回の御議論もございましたように、幾つかの複数の教材を用いて授業を展開していただこうというのがもともとございます。

この映像教材を最初の入り口、取っかかりとして、一つは例えば先ほどの文章化したような内容やワークシートという形で、それらを組み合わせて生徒さんの理解に資するような形にしていただきたいと思います。

そのためには、どういうふうに授業を展開していくのか、構成していくのかというのを、このようなパーツを踏まえた全体像、鳥瞰図みたいなものを考えなければいけないのかなというのが、先生方の御意見を拝聴して感じたところです。

これはまたいろいろ御議論いただきたいと思います。

○権丈座長
 よろしいでしょうか。お願いします。

○宮台委員
  栗原委員と細野委員がおっしゃった危惧は、僕も持っております。

似たような形式で思い出すのが自動車の免許の更新の際の講習、あるいは恥ずかしながら僕が何度も受けた免停講習というのがあります。免停講習のほうが感情的に非常に強いもので、あなたは今のような態度を改めない限りとんでもない人生になってしまうというふうに脅されて、感情的に動揺し、ある種の変性意識状態に陥ったところでレクチャーが入っていくという形になっているのです。

この検討会でも、単なる知識よりもコミットメント、つまり、この制度に単にあずかるというよりも、自分たちで支えていくという気構えが子どもたちに生じるようにする必要があるという話になっておりました。

その点から言っても、映像は知識よりも感情の部分に訴えかけて、それを引き継いだレクチャーの部分、スピーチの部分で知識的なことを補っていくというめり張りのつけ方もあるのかなと思います。

栗原委員がおっしゃったように、DVDで完結する必要がもしないのであれば、今のような感情的な要素と知的な要素というふうに分担するというのが、免停講習から学べるやり方ではないかと思いました。

○福本参事官
  ありがとうございます。

  今日、素材というのを全体でお出ししたつもりであるのです。

全体をお示しをしたということなのですけれども、今まで、特にワークシートというところだけをやってきたと思うのですが、今回、教えるべき内容、あるいは先ほど教科書という話で、教科書にするにはいろんなプロセスがあるものですから、あえて「教科書」とは言わなかったのですけれども、テキストいう形で、読めばわかるとか、あるいは振り返って生徒たちが自習できるという意味でのテキストベースに落としたものと、いわゆるワークシートという形で、深める、あるいは生徒たちが考える、あるいは教師の方々と対話をする形で自分のものにしていくという素材。

もう一つはこのDVDDVDは、前回申し上げた話として今回つくったつもりなのですけれども、いわゆるイントロダクションとして動機づけ、宮台先生から前回も免許講習の話を教えていただきましたが、そういうものがあって、その後、免許講習であれば、教官が教則に基づいて少し話をするとかいうのがあって、まとめがある。

全体50分、あるいは50分掛ける2回の100分の中で、これを用いてどう組み立てるかというところが、実際生徒が高校3年間の中で、たった50分、あるいは50分掛ける2回の100分の中で何を学べるかというところの肝になるのだろうと思います。

その意味では、今日の後半のところでお話をするのですけれども、こういうものを用いて実際組み立ててみる、実証というのをやっていただく中でこういうのがフィットしているかどうか。

最初にもちょっとありましたが、さらにこの3つを補うような補助線のようなもの、あるいは指導書と先生がおっしゃいましたけれども、教科書があって、参考書や問題集がある中に指導書というのが現場ではあると聞きました。教科書会社が売っているらしくて、見せてもらえないかと言ったら、先生以外には渡せません、役所の方には売れませんと断られましたが、そういう指導マニュアルのようなものがあるわけです。教科書や問題集をつなげていって50分の授業をどうするかというものに資するものだろうと思うのです。

今日、3つの素材をつくっておりますが、これを組み合わせてどうするかというのがポイントだと思っていますので、現場の先生からももっとお伺いしたいと思いますし、何よりもこれを使っていただく、あるいはこれをモディファイしていただいてもいいのですが、これがうまくフィットしているかどうか、特にこの秋の今回の実証というのは、そういうところにポイントを置きたいと考えております。

○権丈座長 どうもありがとうございました。

 私も福本参事官の話と同じ話をしようとしていたのですけれども、イントロダクションとしてDVDがある。そして今までつくってきた医療のワークシート、年金のワークシートというのは、このビデオと独立でも何もないわけで、それとリンクしている話ですし、社会保障という授業そのものが今まで高校の中になかった。その中で授業というものをやっていきたい。組み込んだ。2コマをつくった。さてと言ったときに、先生たちの中で、教材にどんなものがあるのかという中で、目の前にこのDVDがあるということは、今まで高校の中にどんどん送られてくるDVDとはスタートラインでかなり違うというのもありますので、当然関心をひくのがいいのはいいのですけれども、そういう意味で、こういう社会保障というもの、高校生に伝えるべきものは何だということをちゃんと議論した形でつくっていったものというのは今までないと思うのです。

だから、高校の中に授業をシステムとして組み込んでいくというところ、その中の選択肢、そしてその中でのイントロダクションで、あとは今までつくってきたワークシートとリンクさせていきながら、10月、11月ぐらいに模擬授業の中でどういうふうに利用していっていただけるのだろうか、そういうことを検討していくのだろうなと思っております。

ということで、時間になりましたので、次の資料1-7と1-8に移ってよろしいでしょうか。

○込山企画官
  御説明申し上げます。

  資料1-7が「『社会保障の理念やあり方を考える』ワークシート及び活用マニュアル(案)」でございます。

資料1-8が「『身近な社会保障を学んでいく』ワークシート及び活用マニュアル(案)」でございます。

御案内のとおり、これまで検討会におきまして4種類のワークシートを作成していただきました。これらのワークシートにつきましては、既にホームページ等に掲載させていただいております。

ただ、一方で、その内容につきまして、この検討会におきましても、分量が多くて、ちょっとレベルが高いのではないかとか、20分程度で使うにはちょっと大部であるといったこと、また、字体を大きくして、生徒が記入しやすいようなレイアウトといった工夫が必要ではないかなど、御意見をいただいていたところでございます。

そういった御意見を踏まえまして、既存の4種類のワークシートを最大限活用しつつ、これをさらに使い勝手のよい形に御検討いただいたところでございます。

これらにつきまして、教材検討PTにおきまして御検討いただいたところでございますので、こちらについて御報告を賜りたいと思います。

資料1-7につきましてはPT委員の宮崎先生から、資料1-8につきましては増田先生から御報告を頂戴したいと思います。

よろしくお願いいたします。

○権丈座長
 それでは、まず資料1-7の説明を教材検討PT委員を引き受けてくださっております宮崎先生のほうからお願いします。

よろしくお願いいたします。

○宮崎教材検討PT委員
  国際高校の宮崎と申します。よろしくお願いいたします。

  今回、教材検討PTに入れさせていただきまして、この教材の作成に携わらせていただきました。また、この教材をどのように活用したらいいかということを本日話すということなのですが、実際に国際高校の授業で行いましたので、その感想を踏まえてお話をさせていただきたいと思います。

  先ほどから話が出ているように、高校では通常50分授業が基本ですが、私たち現場の教員は、導入、展開1、展開2、まとめ、といったような構成で授業を考えます。最初の5分、10分を導入として、生徒に「今日の授業はどんなことをやるのだろう」と興味を持たせます。そして展開1、展開2で授業内容の本質のところを触れ、最後にまとめを行い、課題を整理させるということが一般的だと思います。

  では、資料1-7の1ページをごらんいただけますでしょうか。

まず最初に、クイズがあるのですが、これがまさに導入に当たるところです。

クエスチョン1で、「君たちが部活動でけがをし、病院で3万円支払いました。実際は幾らかかったでしょうか」と、クエスチョン2で、「年金は20歳から払うけれども、20歳から受け取ることもあるのでしょうか」と質問をします。このように社会保障制度の基礎知識がほとんどない生徒に対して、クイズという手法を使い、まず興味を持ってもらうということにしました。

結果として、クエスチョン1の方は生徒のほとんどが正解しておりました。3割負担ということは多くの生徒が知っているようです。あとは、どこまで深く突っ込むかだと思います。このクイズに続けて、「私の父親が実は心臓の手術をして100万円かかったのだけれども、窓口で幾ら払ったと思う?」と追加で質問したのですが、このクイズに対して生徒は「30万円」という答えしか出てきませんでした。このようなところから高額療養費制度の話も少ししてあげると、後々の授業につながってくるのかなと思い、最初のクイズに関して手法として有効かなと考えております。なお2つ目の質問ですが、「年金は20歳から受け取る場合があるか」という質問に対しては、ほとんどの生徒が「20歳からはもらえない」と答えていました。ですから障害年金や遺族年金の話をすると、生徒はとても驚いた顔をし、「じゃ、18歳で亡くなったらもらえるのか?」など、たくさんの質問が出てくるといった様子でした。

次に2つ目のところに行きます。クイズの下の欄です。

 ここでは「あなたが望ましいと考える『社会保障制度』とは?」という項目で、縦軸に高サービス、低サービス、横軸に低負担、高負担を示し、「君たちならどこがいい」というのを考えさせることを行いました。これは現場の教員がよくやることなのですが、黒板に模造紙を張りまして、前に出てシールを張らせていくという手法をとりました。なお「当然サービスがよくて、負担は安いほうがいいと思うだろうけど、それは現実的にありえないからね」と、低負担高福祉の枠にはシールを貼らないように指示をしました。結果はどうだったかというと、ほとんどの生徒が高サービス・高負担のつまり右上のところにシールを張ったのが特徴的でした。この後にも出てくるのですが、税金なり社会保障料が高いということは嫌だが、しかし、「ちゃんとサービスが返ってくるのであれば、それはそれで仕方ない」というか、「そうあるべきだ」と思っている生徒が多いようです。このワークのいい点は、ただ縦軸に高サービス、低サービス、横軸に低負担、高負担のどこかという4分割ではなくて、例えば右上のゾーンでも、かなり右上のほうにシールを張る生徒と、原点に近いところにシールを張る生徒がいて、友人のシールを張った場所を視覚的に見ることで社会保障制度を客観的に考えることができる点にあると思います。

以上のような導入を踏まえまして、2ページ目の「日本の税金や社会保険料は高いか、低いか」という話に移っていきます。

基本的に社会保障制度は政治・経済の授業を中心に行うことが多いと思うのですが、政治・経済の学習指導要領においては「大きな政府と小さな政府」という概念がありまして、「高負担・高福祉の社会がいいか、低負担・低福祉の社会がいいか」と対立させる構造に教科書はなっています。そうすると、「北欧型の社会にすべきか、アメリカ型の社会にしていくべきか」という二項対立、つまり「どちらの方がいいと思いますか?」というような授業展開をする教員が多いのではないかと思います。しかし、この図を見せることで、日本と一番右側にあるデンマーク、スウェーデンの間にも、たくさんの国があることを視覚的に理解できると思います。つまり、日本が北欧のようなところまで行くという選択肢だけではなくて、それ以外の選択肢もたくさんあるんだということを学ぶことができるという点で、このグラフは非常におもしろかったかなと思います。なお、この図を見て、「日本の負担料もそんなにアメリカと変わらないのですね」とか、「アメリカはもっと低いのだと思っていました」と言っていた生徒もいました。

それでは、次の3ページをごらんください。

「『社会保障制度』を整理してみよう」というワークになっており、ここがいわゆる展開1に当たるところだと思っております。

公民科の教員としては憲法25条は押さえたいという気持ちがありますので、憲法25条の条文から、「社会保険というのは社会保険料を財源の中心としており、社会福祉・公的扶助・公衆衛生は税金を財源にしている」というところを強調しました。

恥ずかしながら、私も今まで間違ったメッセージを伝えていたのですが、経済が専門でないと、社会保障=税金と教えてしまう先生も結構多いのが現状です。高校生にとっては「保険」というのを理解できていないのが現状なので、税と社会保険料の違いがよくわかっていません。したがって教員も社会保障=税金と教えてしまうことが多いのですが、この点に関しては重要な点であるため、税金と社会保険料の明確な違いを丁寧に伝えたほうがいいだろうと思い、このような形式にしました。

次に「必要度に応じて所得を再分配するという社会と、貢献度に応じて所得を分配するという社会」についてのワークです。ここの図から、社会保障には「安心」というメリットがあるということを伝えていきたいなと思って、このような形になっております。「見えるコストと見えないコスト、見えるベネフィット(便益)と見えないベネフィット(便益)」という言葉がありますが、つまり、税金が高いとか社会保険料が高いというような「見えるコスト」については伝えやすいのですが、社会保障のベネフィット、つまり便益の方は、なかなか見えづらい、伝えづらいというところがあり、授業にて教えづらいというのが私の今までの感想でした。ゆえに「年金は危ないのではないか」という言葉に代表されるような、社会保障のマイナスのイメージばかりが高校生に伝わっているような感じがしましたので、この図を使用し、支払ったコストに対しては、ちゃんと返ってくるベネフィット(便益)があること、またそのベネフィット(便益)とは、社会保障制度があるからこそ生まれる「安心」であるということを伝えられるよう工夫しました。

ちなみに、生徒に「所得に関係なく平等であってほしいものは何だと思いますか」と問いかけると、最初に返ってくる言葉は「育児」でした。育児するのは親の所得に関係なく平等であってほしいという思いが強いようです。しかし、残念ながら年金とか介護という言葉はなかなか出てこず、高校生にとって、年金や介護というのは、かなり遠い話のようでありました。やはり、その点が大きな課題なのかなと思います。

では、4ページの方にいかせていただきます。

ここが展開2にあたるところで、一番深く考えてほしいところです。と言うのも、教材検討PTの中でも、この話が非常に盛り上がり、ぜひここを生徒に考えさせたいという話し合いになった経緯があります。

このワークの前提となっている、「社会保障のニーズは、大きい小さいではなくて、風船のようなものであり、どこかが少なくなれば、どこかが補わなければいけない」という発想は、実は現場の教員にはほとんどありません。権丈先生から、「例えば日本が低負担・低福祉の社会を選択し、税金や社会保険料を安くしたと仮定したとき、高齢者は誰が見るのだろうか。結局、家族の負担が大きくなるだけではないか」と教わったとき、非常に勉強になったので、これはぜひ高校生にも伝えたいなと思いまして、3つのパターンを例示したワークを作成しております。

一番上は、F(ファミリー)に大きく重きを置いている社会、つまり家族依存型であり、日本がこれに該当します。真ん中はG(ガバメント)に大きく重きを置いている社会、つまり政府依存型ですので、北欧の社会がこれに該当します。一番下はM(マーケット)に大きく重きを置いている社会、つまり市場依存型の形で、アメリカ型の社会だと位置づけました。どの形もデメリットはあり、例えば日本のような家族依存型だと、家族の負担が非常に大きくなり、北欧のような政府依存型ですと国民の負担率は相当高くなります。またアメリカのような市場に依存するという社会だと格差が大きくなるデメリットが生まれます。このようなデメリットまで提示して、「どのような社会がいいと思うか」ということを考えさえ、最後は前に出てきて発表させ、その理由を述べさせる。このような授業を実践いたしましたので紹介させていただきました。

最後になりますが、生徒と話をして印象的だった点を2つほどお話ししたいと思います。

一つは、口では「税金が高いのは嫌だ」と生徒は言っていますが、それでもじっくりと話を聞くと「ちゃんと使われるのであれば仕方ない」という声が強いと言うことです。高校生も大人になってきましたので、これだけ高齢化社会が続いていく中で、今のままではだめだということを何となく感じているような印象を強く持ちました。

もう一つは、「君たちが65歳、70歳を過ぎて、高齢者になったときに生活するためのお金がないと困るだろう」という話をすると、「僕はそんなに長生きしませんから」と返ってくるのです。「長生きしないから大丈夫」と未来に対してあまり深く考えない傾向が今の高校生は強いんですね。

しかし、「お父さん、お母さんには長生きしてほしいんじゃないの?」と話すと、そこでちょっと立ちどまって、「親には長生きしてもらいたい」、そのときに誰が面倒を見るのかと考えたら、「年金という制度があるとありがたいし、もし自分が不慮の事故で先に死んでしまったら、自分の親は誰が面倒を見るのだろうと考えた」ということを話していました。高校生に「君たちが高齢者になったら」という仮定の話ではなかなか社会保障制度は身近に感じさせることは難しいのですが、「家族」という切り口から社会保障制度を考えると、遠い話が少し身近に感じられるのではないかなと思ったところです。以上です。よろしくお願いします。

○権丈座長
 どうもありがとうございました。

 それでは、資料1-8の説明を増田委員よりお願いいたします。

○増田委員
 増田です。よろしくお願いいたします。

 資料1-8は、都立足立新田高校の三野先生が、去年もこちらでつくったものといいますか、社会保障についての授業をしていただいた先生なのですが、その先生とのプランが一緒になったものです。

 給与明細について扱ったらどうかと三野先生がおっしゃいまして、それをもとにつくられたものが資料1-8「『社会の一員として生きていくこと』とは」というものです。

この話をしたときに宮崎先生から、これをやると盛り上がり過ぎるのではないかというような御意見もあったのですけれども、今日DVDの台本を見て、私もちょっと頭の中で考えまして、DVDでうっすらわかった後にこういうことを考えさせると、またちょっと違ってくるのかな、両方ともこれで生きてくるのかなというような感触がありました。

最初に、このプリントだけで授業を構成するということはどうですかと事務局のほうから言われたのですが、授業の展開を考えるときに、DVDがあってこういうものを使っていくと考えていくと、では、このくらいのことがわかったか、わからないかといううちにこういうことを考えるというふうになってくると、さっきこれを言っていたねというようなこちらの問いかけも、このプリントを使っていく中でしていけると思うのです。

1枚目です。これは多分子どもたちの金銭感覚とか家庭生活とか、私はこんな生活をしたいという理想なども出てくると思うので、どちらかというと学力ということよりも、自分の興味・関心の中でつくっていけるような授業になっていくのではないかなと思っています。

「頑張ってやりくりして生活しているあなたは、以下の事態に直面しました」という問いについても、DVDの中で似通ったものが提案されていますので、そういうものと照らし合わせて話をしていけたらいいのではないかと思います。

2枚目です。これは私がこの検討会の最初からしつこく言っていたのですけれども、自分の人生を自分で考えさせて、リスクはどんなものがあるかということを考えていきながら、では、そこにどんな保障があるのかということも全部自分たちで考えてもらう、人生すごろく、人生ゲームみたいなものをつくったらどうかということを申し上げてきました。

事務局のほうからつくっていただいたワークシートの中で、これを利用してこんな活用ができるのではないかと思ってつくっていただいたのが2枚目です。人生でいろいろリスクがあるのだなということは何となくDVDでわかったし、それを保障してくれるものもあるのだとわかったところで、では、幾つのときにどんな人生を送るのかということを考えながら、そこで起きたリスクに関してどんな保障があるかということで、この中を埋めていくということなのです。

これは、使い方によってはただ用語を埋めるだけで終わってしまうという使い方にもなってしまうかもしれませんが、そのあたりは教える先生に少しアドバイスになるようなものを幾つか提案させていただいて、それでこの中を埋めていきながら、自分たちもこういうことで社会でお互いに支え合っているということがわかってくれればいいかなと思っています。

すごく難しいこととか、細かいこととか、用語を間違えたらいけないとか、そういう授業展開をイメージしているわけではなくて、こうなんだ、ああ、そうなんだ、社会ってそうなっているんだということがここからわかってもらえればいいかなと思います。

自分の人生もそこの中で少し楽しく考えてもらえればいいかなと思っています。

3枚目は、それに付随する形で給付と負担という形になっていますが、日本の社会ではそういうことがどれだけなされているのかということが金額的に示されていますので、これを全部細かく説明していくと授業の時間が足りませんので、これは必要に応じて使っていったらいいのではないかなと思います。

そこまで話していくと理論の話にも入っていきやすいかなと思いますので、例えば4ページ目の年金の基礎知識に関してとか、保険料を払い始める時期もDVDで一度話していますので、ここでもう一回おさらいみたいになると思います。

払えないときにはこんな形の免除の対象があるということをまたここで押さえるというのが4ページ目です。

5ページ目です。これもPT委員会のほうで少し議論がありまして、デフレの時代に育った子たちは物の値段が上下するのがわからないという話もあったのですが、難しい物価スライド制とかそういうものをここで教えようと思わず、物の値段というのは変わるのだということをわかってもらって、それに対する保険というものがあるということを理解してもらうために、「昔の物の値段を考えてみよう!」というものが5ページ目のところについています。

私と三野先生でつくったほうは、先生の持っていき方といいますか、話し方、子どもたちとのやりとりの中でうまく使ってもらえたら、すごく生きてくる教材になるのではないかなと思っています。

以上です。

○権丈座長
  どうもありがとうございました。

  それでは、資料1-7と1-8について議論をお願いいたします。細野委員、よろしくお願いします。

○細野委員
  僕は、宮崎先生の国際高校の授業を一度拝見させていただいたのですが、その後、バタバタになり、お話しする機会もなく、公の場で述べさせていただきたいと思います。

  授業の感想等も含めて、この教材は基本的にはとても斬新というか、おもしろくていいと思っています。

最初のQ1、Q2の部分では、宮崎先生のキャラクターも生きて、とても和やかな楽しい場になっていました。ただ、あれは少人数で、子どもたちの資質の部分も小さくなくて、国際高校ならではの雰囲気というのがあったのかもしれません。けれども、仮に他の先生で違う学校だったとしても、先ほど宮崎先生から提示があった自分の父親の話や高額療養費に絡む話というのは、どんな場面でも使える話なので、それを体系化して出していけば、かなり一般性はあると思うのです。

そういった理由で見ていったときに、1枚目についてはほとんど問題を感じていません。

そして、2枚目の上のグラフは絶対に必要なグラフで、こういうふうに載せていただくのはいいと思います。ただ、個人的に子ども目線に立って思うのが、2ページの下のグラフは、正直言って子どもはわからないのではないかなと思っています。非常によく使われる図ではあるのですが、これはどのぐらいのかたがパッと見て把握できるものなのでしょうか。

上のほうのグラフは容易に解読できると思うのですけれども、下の図は、パッと見たときに縦軸と横軸の対応関係が非常にわかりにくいのです。よく見てみれば、縦軸は対GDPの国民負担率なのだというふうにわかって、横軸はこういうふうになるのだと。ただ、それがわかったところで、どう見ていけばいいのかというのもあわせて、解読するのに、かなり時間がかかってしまうのです。

だから、これをきちんと取り上げると結構ハードルが上がるので、「これをどうするのだろうな」と思っていたら、授業では時間の関係もあってか、するっと飛んでいたのですが、恐らくそれはこの図を使っているからこそ、やや非効率なことが起こってしまったのではないかなと思っています。

では、具体的にどうすればいいのかと言ったら、単純に「65歳以上の人口比率のグラフ」に変えて、「上との関係で考えてみよう」というふうにすれば、一個一個きちんと理解した上で、日本はどうなのだろう、アメリカはどうなのだろうという感じで、北欧とかと比べながら考えることができるのではないかなと思いました。

その流れでいったときに、一番最後の4ページ目は、ちょっと補足さえしてあげれば、この試みはとてもおもしろいと思っています。

最終的に重要な点は、最初に各自でシールを張っておいてもらうことで、自分の変化に気付きやすくし、その結果、「この授業を受けて変わりました」というところがより明確になり、画期的だと思っているのです。

ただ、そこに行く前段階として、「ああ、国際高校の子たちはやはりレベルが高いな」と思ったのが、3ページ目のイラストを見たときに、パッと成立してしまっていたのですね。とは言っても、彼らがどれだけ理解していたのかは正直わからないのですけれども、僕が3ページ目を見たときには、あまり「わかりやすい図だな」とは思えなくて、できたら、ここの仕組みのところも、もう少しわかりやすく提示してあげるべきではないのかなと。

そもそも別にこれは「全部で4枚にしなくてはいけない」といった制限があるわけではないですね。

○宮崎教材検討PT委員
  ないと思います。

○細野委員
  そう考えていったときに、3ページ目を、もうちょっと段階を追ってわかりやすく提示してあげると、最終的なページ、自分でG、M、Fみたいな感じで分けていくところが、もっと考えやすくなるのではないかなと感じました。以上です。

○権丈座長 
   よろしいですか。何かございますか。

 では、私が答えましょうか。

 2ページの下、よく見る図ですけれどもと言っていただいて、ありがとうございます。私が勝手につくって、昔からはやらせている図なのですけれども、下のほうに書いてあるように、「お年寄りは年金や介護、医療費など、社会保障の受給が多い」。つまり、社会保障のニーズは相当高いはずなのに、政府のほうにお金を回していない。これが日本人の生活の不自由さ、苦しさ、いろんなところに出てきているのだということ。上のほうだけを見てもらうと、日本のように国民負担率が低い国として、トルコ、韓国、アメリカ、チリとか、同じような水準の国はいっぱいあるではないかというふうな声が時々聞こえてくることになります。

ニーズの代理指標としての65歳以上人口比率というのを並べると、上の図の日本より、かなり左側にあるアメリカ、韓国、トルコ。こうした国々は、物すごく若い国なのです。

そういう国と同じ国民負担率でまともな社会保障、あるいはそういうものがなかなかできていないというようなニュアンスになっていきます。

だから、上の図だけを見せると、アメリカと同じなのだ、それでいいではないかというような状況になったりするのだけれども、社会保障ニーズは相当違うというのが、下の図がないとわからないという状況になってくるという話です。

下のほうの文章というのは宮崎先生が考えられて書かれています。「受給が多い」。多いのだったら、1人当たりの高齢者の受給は絶対薄くなっているはずですね。

そういうことを説明されていたので、私はいいのではないかなという気がしないでもないですけどね。

ほかに何かございますか。お願いします。

○唐澤政策統括官
  途中の経過をよく知らないまま不規則発言をして、まことに申しわけないのですが、ぜひこの機会に権丈先生にお伺いしておこうと思います。

4ページ目の「国によって様々なパターンがある」というのは、なかなかおもしろいです。

一番上の家族依存型というのは、一応日本ということになっているのだけれども、たしか20年ぐらい前はそうだったと思うのですが、これは2ページの下の図とも関連するのです。国民負担率で見ているのは、結局、必要な国民負担に対して実際上の負担が低くて、残りは国債で賄っているわけです。だから、例えば社会保障の給付の数字を上に並べると、もうちょっと順位が上ではないかと思うのです。私のデータを今、持っていないので。

○権丈座長
 それもあるのはあるのだけれども、社会保障の給付の水準もそんなに上ではないのです。真ん中辺までいかないのです。

○唐澤政策統括官
 半分がファミリーというのは大き過ぎるのではないかという感じがするのです。これはちょっと大き過ぎないかなというのが私の感じですが、いかがでしょうか。

○権丈座長
 なるほどね。
どうぞ。

○込山企画官
 今の点に関してですが、資料1-7「ワークシートの活用マニュアル」の2ページ目の右下に、大変小さいグラフで恐縮ですが、OECDの公的社会支出の推移と比較を掲げさせていただいていまして、これを見ても必ずしも上位ではないということがおわかりいただけると思います。

○権丈座長
  上位ではないのです。残念なことに給付水準も物すごく上位ではないし、高齢化水準という指標を横軸にとって比較してみると、悲しいくらいに低い水準にあるのです。

だから、家族依存型というのを一つの模型、モデルみたいな形だとしたら、日本はこの3つのうちだったらどれかなといったらば、これに一番近いかなという話になるようなところですね。

 ほかに何かございますか。お願いします。

○栗原委員
  ありがとうございました。

とてもすばらしい授業が展開されていた様子がわかって、驚きました。

シンプルな質問ですが、宮崎先生のこの授業は政治経済ですか。

○宮崎教材検討PT委員
 モデルは現代社会でやりました。

○栗原委員
 増田先生のほうは、教科は。

○増田委員
 私は、これはまだ授業はしていないです。

○栗原委員
 想定は。

○増田委員
 三野先生は家庭科ですか。

○権丈座長
 家庭科です。

○栗原委員
 わかりました。それをお聞きしたかったことが1点。

 もう1点は、この活用マニュアルの2ページ目のところ、先ほど宮崎先生の御発言にもあったのだけれども、「あなたが望ましいと考える『社会保障制度』とは」というマトリックスの中で、高サービス・低負担のセルをあらかじめ選択してはいけないことにする、理論上はあり得ないことだからということでしたが、これはもったいないなと思っています。当然負担はしなくない、でも、サービスは受けたいというのが人間の自然な感情で、でも、ここに生徒がたくさん張ってきたときに、それでは誰が負担するのかという問いのあり方も考えられる。

ここで言っている負担あるいはサービスといった場合の特に負担ですけれども、恐らくは年金保険料や税負担ということだと思うのだけれども、先ほど宮崎先生の資料の4ページにもあったように、当たり前だけれども、家族負担、それは高齢者だけではなくて、家族が負担するということも出てくるから、高サービス・低負担ということの負担というものを考えるきっかけにもなってくるのではないかなと思いながら見せていただきました。

ですから、シンプルに言えば、高サービス・低負担のセルをあらかじめ選択してはいけないという制約条件をつけないで授業を展開して、そこから見えてくるものがあるかなということを思いながら聞かせていただきました。

勝手なことを申し上げて申しわけありません。

○権丈座長
  どうもありがとうございました。

何かございますか。よろしいでしょうか。

これは大人もやらなければいけない問題ですね。

続いて、資料1-9について、事務局のほうから説明をお願いいたします。

○込山企画官
 資料1-9は「年金教材 10個の『10分間講座』ポイント」でございます。

 こちらは前回サンプルといたしまして2枚御提出いただいたところでございますが、細野先生のノウハウなどをもとに、細野先生に新しい年金教材を御作成いただきました。このたび10個のパターンを完成していただきまして、その点につきまして御説明を賜れればと思います。

よろしくお願いいたします。

○権丈座長
 よろしくお願いします。

○細野委員
  前回はサンプルで、こんな感じでつくってみたらどうでしょうということをこの場で提示させていただいたのですけれども、僕は、この検討会が始まった段階、1回目ぐらいからずっと考え続けていた大きな話があるのです。

まず、これは、もう全員一致になってきている話として、とにかく早い段階で学校教育で社会保障を教えなくてはいけないね、ということにはなっているとは思うのです。

ところが、具体的に「どう進めれば効率がよく、さらに精度もよくできるのかな」ということを考えていったときに、今のこの組織のままだと、今日も文部科学省の課長さんが急遽欠席されているみたいなのですが、厚生労働省は「教科書のこの部分の解説が、こう誤解して間違えているよ」といったということを専門職として指摘してあげることは非常に大事なことなのですが、それと同時に、学校の教育に乗せるためには、担当省庁である文部科学省が実際管轄していて、そこの協力が非常に大事だと思うのです。

そういったときに、課長さんだけでなく、そろそろ局長からずらっと並んでもらうような状況にしなくてはいけないのではないかなと思っています。

そのサンプルモデルとして、自民党がこの前の衆議院選挙から公約に掲げていて、今、実際進んでいる、高校で「公共」という分野をつくるということが決まっているのです。「公共」というのは、この検討会にとってすごく現実性のある、ようやく僕らの到達点が見えたなという話になると思うのです。

どういう話なのかといったら、先ほど出ていた現代社会とか公民とか、いろいろ科目がありますが、社会保障もチラッとは書いてあるけれども、全然わからない。だけど、実際に世の中へ出ていったときに社会保障の知識は必要だし、金融・経済の教育は必要だし、あるいは投資などの話も必要だと。だから、現状では「世の中に出ていく上で知っておかなくてはいけない知識がほとんど教えられていない」という問題があって、新しい「公共」という分野をつくって、子どもたちが世の中に出ていくときに必要な知識を学校で教え込もうということで、新しい教科をつくることを今、検討しているのです。

そこでのプロジェクトチームに呼ばれ、自民党の政調で、完成版に近いものを説明してきました。そのときは、まさに文部科学省の局長からずらっと並んでいるような状況で、議員さんを前に説明したのです。

結論から言うと、それはとても響きました。やはりこの試みは間違っていなかったのだなというふうに思って、どこまで言っていいかわからないのですけれども、プロジェクトチームの座長には、教科書をいきなりつくるというのは、いろんな段階でハードルがまだ高いから、副教材をまずつくってくれないかと言われるぐらいの状況にまでなっています。だから、その意味では、実際の社会保障教育の実施に向けて動き出しているのだなというところは感じています。

そういったときに、今月の頭、自民党の最大派閥の清和政策研究会が5、6年ぶりぐらいに軽井沢で、メディアも含めて100人規模の勉強会をしました。僕がそこに講師として行って、まさにこれの完成版をもとに、議員さんを前に説明してきました。

その結果、前回もお話ししたように、表面的な対象は高校生とは言っていますけれども、大人にとっても絶対必要な内容なのです。派閥のトップの方も含めて、目からうろこの連続というふうな話で、特に文科省系の議員に絞って話を振っていったのもあるのですが、だんだん政治のほうも、社会保障教育がいかに重要なのか、あるいは、この検討会でずっと言っていた「天動説、地動説」という話をようやくわかってくれるぐらいまで状況が進んできたと思っているのです。

実際に文科省が本格的にこの場に来ていただいたほうがよっぽど進みが早いので、できたら早い段階でそうしていただけないかなということを考えているのです。

福本参事官、もしくは唐澤統括官、そういう方向性についてはいかがでしょうか。

○唐澤政策統括官
  細野先生のお話はよくわかります。それから実際に使ってもらうということであれば、文部科学省に推していただくことも必要だと思いますから、そういうことをやっていかなければならない。

同時に、教育の現場で受け入れやすい工夫も必要です。また、現場の先生方も、環境教育も進めてほしいとか、福祉教育にも取り組んでほしいとか、いろんなことを言われているので、教材を使ってもらえる時間の確保ということも考えていかなければならない。今日の時代に重要な教材として使いやすいものをつくっていくという努力を今、やっていただいていますが、そういうことと並行してやるということが大事だと思います。政治的な面からのアプローチでは浸透しにくい面があります。

必要なことは文科省にお願いをしますので、よろしくお願いしたいと思います。

○権丈座長
 お願いします。

○前田委員
 今のことに関連して、今年のお正月ごろ新聞記事に出ていましたが、文科省のほうでキャリア教育を充実させていくということを政策として挙げていると思うのです。今の話はその一環かどうかわかりませんけれども、キャリア教育そのものは職場体験、職業訓練をしたり、というような記事でございました。その中に社会保障等の教育も例えば2コマ、3コマでなく、10コマぐらいとれるように組んでいただきたい。そのときの記事は年間を通してやるという話でしたので、多分今、進んでいると思いますが、社会保障というのは国の根幹で一番大事な部分ですから、キャリア教育の中に積極的に取り組んでいただくように統括官のほうからもお話を進めていただきたいと思います。

 以上です。

○細野委員
 今の唐澤統括官の意見に簡単にお答えしながら、きちんと説明に入りたいと思います。

 まず政治家に向けてというわけでなくて、僕にとってみたら「政治家」とか「官僚」とか「一般」とか「メディア」という分け方自体がすごくつまらないものに感じていて、国民全員がみんな共有しなくてはいけない。どこかの縄張り争いとか、そんなことは個人的には関心が無い状況なので、それでいったら、別に文部科学省も厚生労働省も全部垣根をなくすぐらいの感じでないといけないと思っています。その中で政治家にも協力してもらい、きちんと全員で課題を共有しながらやることが重要だと思うのです。

政治家は、市町村とかそういったところにもきちんと目ききがきくので、そこと話をしながらきちんと進めることもできる。全員が「ひたすら自分ができることを一生懸命やり続ける」ということが必要不可欠なのです。

そういったときに僕がまずできることはこれだろうということで、前回も少しお話しした「10個の10分間講座」。現状として、とにかくできるだけ早く教育を機能させる、ということを考えたときに、社会保障用の教育に2、3コマとれるだろうという話にはなっていたのですけれども、ただ、2、3コマでもとれない高校があっても不思議ではない。

では、その場合であっても、例えば朝のホームルームのときに10分間使ってもらうことぐらいはできますね、と。「たった10日間の朝のホームルームだけでみんなが必要な社会保障の知識、これが終わってしまうのです」という持ちかけ方だったら、使ってもらえる頻度というのはかなり上がっていくと思います。

という意味合いで「10個の10分間講座」というタイトルをつけました。

これは、高校の50分の授業でちゃんと使ってもらえれば、2コマで終わるようにしています。

1ページ目から簡単に説明します。

前回も軽く言いましたけれども、まず最初に、「『100歳まで生きる』が当たり前の時代に?」みたいな形になっていて、「Q1 世界一長寿といわれる日本人女性の平均寿命が86歳です。では、現在65歳の日本人女性は、その後平均で何年生きると思いますか?」というところで、なかなか興味深かったのが、一般の方だったら、普通に引き算で考えて、答えは21年だねという感じで考えると思うのです。

ただ、議員でも多くの方が実際2番を選んでいるのです。つまり、平均寿命と平均余命という話がまだ世の中では全くといっていいほど伝わっていなく、いろんな誤解があるのだなというところからまずスタートしていきます。

人がどんどん長生きしていっているのだというところも、日本だけでなくて、世界中の人間がどんどん年齢が上がって、長生きしているのだということをわからせないと、年金の支給開始年齢引き上げの話も、いつまでたっても本質が全く伝わらないと思うのです。

まず、こうやって人が長生きしているときに、「払う期間が一緒で、もらう期間がどんどん延びていると、この先どうなるのだろうね」という問いかけがあっていいはずなのですが、それを考える基盤すらない。そこで、Q2みたいな、人が100歳以上生きるなんて、例えば1970年代では考えられなかったわけですが、今だったら、100歳を超えるのが結構当たり前のような状況になっているというところまで、まず見せていく。

その上で、次のところでは、「今の高校生だったら、平均年齢を考えたら、95歳ぐらいまで生きると想定しておくのが無難だろう」という冷静な話ができるわけです。そういったときに、老後に実際に必要なお金は平均で大体8,300万円ぐらいなのだということをちゃんとわかってもらいながら、「不安、どうしよう」といった感情が出て、老後を身近な問題として捉えられるようになるのです。

その段階で2ページ目に行きます。ここでようやく年金を出す。ただ、教科書流の解説からそろそろ脱却したいと思っていて、先ほど一番最初に教科書のサンプルとしてあった図表は、やはり難しいのです。あれで見せていったら、いつまでたっても年金はよくわからないぞと終わってしまうので、「年金お弁当論」をきちんと伝えていく必要がある。

これは、「年金だけで暮らしていける」というのがどこかにすり込まれているところがあるから、「そもそも日本のような低負担の国では、年金だけでは暮らしていけるようにはなっていない」というところを当たり前にしないといけないわけです。

そこで、そもそも「払っている保険料が少ないのだから、もらえる年金だってお弁当ぐらいの話なのだ」と説明する。日本の年金の位置づけというものを、そろそろきちんと教えないといけないのだろうということで、年金お弁当論というのは非常に重要だと思っています。だから、あくまで「死ぬまでもらえる弁当」だということをまずきちんと伝える。

その上で結局、一番やるべき話というのは何かといったら、9ページ目なのです。

そもそも「年金とは何ぞや」みたいな話がわかっていったときに、どうしても将来に対して物すごく大きな不安があるわけです。それが9ページ目の上に書いてある「1970年代では8.5人が1人、2010年のときは2.6で1人、2050年のときは1.2人で1人を支える」という、この図なのです。

これは、いわゆる「未納が増えると年金が破綻する論」と全く同じで、「少子化が進めば年金が破綻する」というところも、この図から極端な錯覚が起こってしまっているのです。

この図は物すごく怖い図だと思っていて、「呪いの図」もしくは「悪魔の図」と言ってもいいぐらい、とにかくこの図で識者も含め、多くの人が確実につまずいてしまうのです。実は、天動説、地動説というのはここにあるのだということをまず把握する必要があるのです。

では、どうすればほとんどの人達が疑いもなく地動説のほうに行けるのかといったときに、現状の説明では2つ足りないと思っています。

1つ目は、この図は2050年でとまっているところに大きな問題があって、2050年以降の話というのが丸々抜けているのです。つまり、団塊の世代などの極端な人口構成比の部分だけが抜き出されたこの図だけ見たときに、パッと見で、すごい勢いで減っているわけです。だから、2050年以降、何にも書かれていなければ、小学生の算数的な見方をすれば、8.5人が2.6人に減って、1.2人に減るのだから、次は0.何人に減るだろう、と錯覚するのです。ただ現実には、出生率の改善傾向とか下げ止まっていることなどを考えたときに、あくまでこれは「団塊の世代」などの特殊な人口構成の極端な部分だけを見せているから、そう錯覚するのであって、実は2050年以降は大きな変化がないというふうにきちんとわからせるということが一つ重要です。

そのもとで重要なのが、1ページ前に戻ってほしいのですが、高校生の授業の場で目標とすべきなのは、この悪魔の図、呪いの図を見たときに自発的に突っ込みを入れられるということを、もう一つの重要なポイントにすべきだと思っているのです。

昔、8.5人の人たちが払っていた保険料は、すべて高齢者に渡したのかといったら、当然そういうことではないのです。それはちゃんと積立金という形で残っているのだと。それが2050年以降で、1.2人で1人を支えるような状況になっていったときに、だんだん保険料が少なくなっていくから、その分、積立金を取り崩していって、「団塊の世代」という、極端に人数が多かった世代の人たちの部分に対応していくというふうになっている。

このように、短絡的な9ページの上の図だけを見ているとわからないものなのです。

これらをあわせて見せて考える必要性があるわけです。要は、これをあわせて見せるということをこれまで誰もやってこなかったから、この図がずっと普及し続けてきたのです。

だから、子どもたちがこの図を見たときに、「あっ、テレビの説明では、へそくりの話が丸々抜けていて、わざと煽るように誘導しようとしているな」というぐらいまで突っ込みを入れられるようにしたら、かなり教育の効果が高いと思っているのです。

○権丈座長
  どうもありがとうございました。

  では、細野委員のこの教材に関しては議論する時間もありませんが、これはほぼ完成品ですので、これから先、モデル事業の中で学校側に提供して、それも利用していただくという形でやっていこうと思いますので、よろしくお願いいたします。

  時間も押していますので、次の資料2-1の説明を企画官のほうからよろしくお願いいたします。

○込山企画官
  資料2-1、2-2でございます。地域社会保障教育推進事業に関する資料でございます。

昨年度に引き続きまして今年度もこちらのモデル事業を実施することを予定しております。

ただ、昨年との違いにつきましては、1つは、教えていただく方は学校の先生にお願いをするということ。

2点目は、昨年度ございました体験学習については割愛させていただくということ。

3点目は、先ほどからも御議論がございますが、教材につきましては、基本的にこの検討会で御制作いただいたものを使用する。ただし、授業を担当される先生によって若干の工夫をしていただくということは、もちろん結構でございます。

そうした点をポイントに今年度のモデル事業を実施していただきたいと考えております。

具体的にこの事業を受託していただきました各社さんから、具体的な方針、事業の進め方等々について御説明をいただきたいと思っております。

○権丈座長
 それでは、まず株式会社政策研究所さん、お願いいたします。

○政策研究所山本様
 それでは、御説明いたします。

 現在、各高校に当たっておりまして、ここでの紹介は2校になっておりますけれども、すぐに就職活動に入る工業高校、商業高校も探してみたいなと思いまして、一応打診しております。検討しますよということでお返事をいただいていますので、とりあえずここに2校だけ御紹介させていただきました。

 2番目といたしまして、授業内容についてです。これはあくまでも現在の私どもの案でございまして、この後、検討していかないといけないわけですが、基本的には資料1-4、1-8ぐらいを使いまして、身近なテーマの中から社会保障制度というものをまず理解していただきたいと思います。

現在、ビデオ教材を先に見せると、映像の情報として脳に深く影響されてしまいますので、私としては、逆に真っ白な中で社会保障制度というのはどういうものなのか、資料1-4を使いまして先生のほうからざっと概要を説明していただく。その中で皆さんに、ああ、そういうものかということである程度わかっていただく。

35 分、40分の授業の中で飽きてしまうケースもございますので、先ほど来御紹介いただいておりますテキスト、ワークシート、先ほどのゲーム的なものも入れて、先生が解説をしながら、各グループに分かれてディスカッションをしていただくということを考えております。

2限目でございます。まず初めに1限目の復習というものを先生が解説して、ここではセーフティネットの役割を十分に理解していただいて、それから映像教材。そうすると、先生のあの話はこういうことだったのかということで理解できるのではないかなと考えております。

最後に、高齢者だけではないのだというお話が先ほどから出ておりますが、そういうことも含めまして、「私たちの生活と社会保障」というものを用いて、私たちの生活を守る身近なものであるということを理解していただきたいと思います。

今後のあるべき社会の中で、社会保障制度というのは、人々が人間らしく生きていくことができる社会をつくる手段であるということを解説していただいて、そこで終わりということを考えております。

最後に、先生、生徒の皆さんにアンケートをしていただく。生徒が先生に質問したりしますので、大体5分から数分の中でアンケートを書きながら、そこでもお話し合いをしていただくというようなことを考えております。

以上です。

○権丈座長
  どうもありがとうございました。 
  続いて、株式会社東京リーガルマインドさん、お願いいたします。

○東京リーガルマインド桑山様
  株式会社東京リーガルマインドの桑山と申します。よろしくお願いします。

  まず、こちらのモデル事業を実施させていただくに当たりまして、弊社は高校生に対する就職の支援の事業をやっております。その中にセミナーとかインターンシップなどがあるのですけれども、中小企業の経営者さんと会いますと、義務教育で何を教えているのだとか、納税の義務とか勤労の権利みたいなものを学校でもっと教えたほうがいいのではないかという意見を多くいただいております。そういった意見を参考にさせていただきながら、そしてこの事業に携わっていくということを申し上げたいと思います。

まず、資料2-3の実施の予定校です。これは、実を申しますと、平成24年度に私どもでやらせていただいた高校さんにもう一回お声がけをしているという状況でございます。

   ただ、先ほど厚生労働省の御担当者様からお話があったように、今年は去年と大きく変わりまして、私どもは去年、専門家である講師を使ったのですけれども、今回はみんな先生ということで、打ち合わせのときに、この内容を教え切れるかどうかという不安を持っていらっしゃる先生もおりまして、ここら辺が少々変わっていく可能性というのはあります。

そこら辺のコーディネート力というのが私どもに試されていると思うのですけれども、そちらのところを進めながら、1の下のほうに少し書いていますが、私どもは東京の23区内の某区で高校生の就職支援事業などをやらせていただいておりまして、今、そちらでおつき合いのある高校に幾つか訪問してお願いをしているという状況になっています。

2番の事業内容についてです。

事業内容については、私どもは、こちらの資料、授業の組み立てを十分理解した上で、こういった映像教材は最初に持ってくるべきだと思っています。

私どもがぜひ強調させていただきたいと思っていますのは、2時限目のグループワークに大きく時間をとっていきたいと考えております。

先ほど東京都立国際高校さんの非常にすばらしい授業のほうを拝聴させていただいたのですが、私どもも、まず先生の声で講義をやって、そしてグループで自分の意見を述べて、そして友達、生徒の意見も聞いて、その上でこちらの内容を理解していく、今後の人生の糧にしていく。一番最初の社会保障教育の導入になると思うのですけれども、そういったことを狙っております。

実際の高校との交渉の中で、なかなか時間数がとれないというのが去年と共通の悩みでございます。この枠内で2コマでやるというのは、自分たちで1回シミュレーションをしてみたのですけれども、正直言ってなかなか厳しいなと思っておりまして、こちらのほうをもし3コマ実施できる場合は、このコマ数の中でおさめていることを時間を延ばしてやっていきたい。その分の交渉のほうも今後させていただきたいと思っています。

私のほうからは以上です。

○権丈座長
 どうもありがとうございました。

 続いて、株式会社放送映画製作所さん、よろしくお願いいたします。

○放送映画製作所住吉様
  株式会社放送映画製作所の住吉です。よろしくお願いします。

  弊社では、東京都立の学校4校と大阪府立の学校2校で考えております。

先生方はそれぞれ社会保障教育について今まで経験等があり、授業を組み立てる力がありますので、未定稿であります映像教材、本日のワークシートを先生方にごらんいただいて、今、先生方で授業案を考えていただいている途中であります。

基本は2コマで考えていただいているのですけれども、その学校の学力に合わせて3コマなり2コマで展開していただくことを考えております。

授業案自体は9月終わりぐらいに出てきますので、そこからまた細かい内容について打ち合わせをしていく次第であります。

以上になります。

○権丈座長
 どうもありがとうございます。

 今、3者から御報告があったのですけれども、意見交換をしたいと思うのですが、何か御意見ございますでしょうか。お願いいたします。

○前田委員
 2コマの中でどうやって先生、生徒に教え込もうかということで、事前の打ち合わせ等、御苦労されていらっしゃいますが、今、出てきている教材、DVDというのは、我々委員の先生方、わかっている先生方がつくった教材です。これからモデルで実施される先生方についても、事前の打ち合わせをやって、先生もある程度理解して生徒に教えるという形だと思うのです。

 将来的に学校の先生が全部取り扱うことになった場合、ふだんそういう社会保障ということに全くかかわりのない、接していない先生、生徒が勉強するわけです。ですから、そのあたりは、素人と言うと語弊があるかもしれませんけれども、ふだんそういう社会保障にかかわる先生が手づくりでつくる教材という感覚で、授業が終わった後、この教材に対してどういう工夫をすれば、全国の先生がすっと教材として取り扱って、生徒もすぐ理解できるのかというヒアリングをぜひ実施していただいて、それをまた戻していただくということをお願いしたいと思います。

以上です。

○権丈座長
  どうもありがとうございました。

  ほかに何かございますでしょうか。

今の前田委員の御発言はそのとおりだと思っておりまして、まず我々みんなで教材を考えていく。じっくりと時間をかけてカリキュラムを組んで授業をやっていただく。最終的には、現場の先生方に膨大な予習の時間という負荷をかけないで、授業を行ってもらうような形をつくらなければいけないわけです。そこをこちらのほうにフィードバックする形で情報を返していただく。この検討会は試行錯誤検討会ですので、まだトライ・アンド・エラーの状態で、いろんな形で試みていきながら形をつくっていく。

最終的には、今、前田委員がおっしゃったように、普通の高校の先生たちが、ある日突然教材があって、社会保障のことをやる、そこで普通どおりの時間をかけて準備をしてやるという形にまでどうにか持ち込む。そういうところまでやらなければいけないと思いますので、ぜひとも担当していただいた先生たちの御意見を私たちのほうに返していただくと同時に、もっと工夫の余地があるのであれば、どういう形でやっていけばいいかという御意見をどんどん返していただければと思います。

ほかに何かございますでしょうか。よろしくお願いします。

○宮台委員
  何が効果的な授業なのかをはかる物差しが大事で、よくわかった後、例えば受験用の知識のような形で取り扱われてしまうのであれば、この検討会で考えていることが実は実現していないことになります。繰り返しになりますが、自分たちがこの制度を支えなければいけないというコミットメントが大事なのです。

その点で言いますと、細野委員のほうから提示していただいたものはとてもよくできていると思います。わかりやすいところは、テレビ的なつくりで最初にクエスチョン・アンド・アンサーがあって、そこで、えっ、マジみたいな感じになって、その後、説明を聞いて、ほー、そうだったのかというふうに落ちていく。

実はこの意外性や驚きもある種の感情のフックで、その後、単なる知識を超えたかかわりというのを埋め込んでいくことも可能だと思いますので、その意味では、細野さんが提示された教材にあるテレビ的なつくり。テレビ的なつくりがなぜあるのかというと、実際それで人々が食いつくからなのです。なので、やはり参照するべき部分がないわけではないということであります。

僕は、最終的に知識を超えたかかわりの構えを生み出すという観点から、とりあえず感情を動かしていくということがとても大事だと考えておりまして、そういう観点からは、細野さんの教材の持っているメリットを存分に生かしていく、この考え方を生かしていくということが大事だと心得ております。

○権丈座長
 どうもありがとうございました。

 ほかに何かございますか。

 それでは、時間になりましたので、3者の皆様には検証と試行、試していくというようなことがありますので、よろしく御協力のほどお願いいたします。

これで本日の議事は終了いたしました。

何か連絡事項があれば、事務局からお願いいたします。

○込山企画官
 次回の検討会でございます。次回は、今後実施していただきますモデル事業の事業展開や教材の検証、また、先生方の御意見など、実施報告をいただきたいと考えております。

 その検討会の時期が近くなりましたら、また改めて日程の調整表をお送りさせていただきたいと思います。

なお、それぞれのモデル事業につきまして、学校側の御了解が得られる場合には、視察などの機会が設けられるよう調整したいと考えておりますので、そのときはまたよろしくお願いいたします。

 以上でございます。

○権丈座長
 どうもありがとうございました。

 これまでと同じように配付資料に関しては完成品をアップするという形で、完成品ができ上がるまではホームページのほうにはアップしないという形の方針でいきますので、よろしくお願いいたします。

 次回以降についてもどうぞよろしくお願いいたします。

 では、本日の第8回の検討会を終了させていただきたいと思います。

 本日は、貴重な御意見をいろいろありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官(社会保障担当)付社会保障担当参事官室

政策第三係: 03(3595)2159

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