ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 国際課が実施する検討会等> 国際的なActive Aging(活動的な高齢化)における日本の貢献に関する検討会> 第1回 国際的なActive Aging(活動的な高齢化)における日本の貢献に関する検討会 議事録(2013年6月14日)




2013年6月14日 第1回 国際的なActive Aging(活動的な高齢化)における日本の貢献に関する検討会 議事録

○日時

平成25年6月14日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省9階省議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題

(1)アジア諸国における高齢化と施策の現状について
(2)アジア諸国での高齢化に関するニーズと対応について
(3)その他

○議事

○杉田専門官 おはようございます。

 定刻になりましたので、ただいまから第1回「国際的なActive Aging(活動的な高齢化)における日本の貢献に関する検討会」を開催いたします。

 本日は、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 まず、開会に当たりまして、厚生労働省国際課統括調整官の堀江裕より御挨拶を申し上げます。

○堀江統括調整官 皆様、おはようございます。

 本日は、お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 私がむしろ新参で、皆さんを見ていますと、いや、久しぶりとか、いろいろと名刺交換も話題が弾んでいたようで、いい会になりそうな予感がしております。

 本日のこの会議は国際課長主催ということになっていますけれども、海外出張中でもありまして、厚生労働省で担当の統括をしております堀江でございますが、御挨拶をさせていただきます。

 世界の中で、日本が高齢化が一番進んでいる国でもあり、また、最長寿国でもあるわけでございますが、ほかの欧米諸国などと比べますと、スピードが速かったというのが一番の特色になっているところでございまして、きょうの資料にも出てまいりますけれども、今後、アジア諸国では、日本並み以上のスピードで高齢化が進んでいく国がたくさん出てきますので、そうしたところは各国で課題になっているわけでございます。

 私自身、3年前までの3年間、JICAの長期専門家といたしまして、タイの高齢化の取り組みに、JICAの国際協力初のプロジェクトということで参加させていただきました。アジアの各国で、そうした高齢化に関する対応をどうしていかなければいけないかというあたりについて、大変関心が高まっているというのは肌身で感じてきたところでございまして、何の御縁か、こちらのほうにまた担当させていただくことになりましたので、よろしくお願いしたいと思います。

 そうしたタイのようなプロジェクトは、これからほかの国でも必要になるかもしれませんけれども、この検討会で、どういうふうに協力をすると、各国にとって、とりわけASEANの各国にとって有益なのかなというあたりを、こちらのほうから能動的に考えていこうというのが趣旨でございます。

 まだコミュニティーの力が残っている、強いASEAN各国などで、どういうふうにしていったらいいだろうかということを御検討していただけたらと思いますし、また、そうした中で、日本のほうも、日本がある意味通り過ぎた部分、あるいはなくしてしまいかかっている部分、また学んでいけるような部分もあるのかなと思っておりますので、日本にとっても学ぶべきものが出てくるといいなと副次的には思っております。

 また、本日閣議決定ということになりますけれども、成長戦略の中にも医療技術、サービスの国際展開ということで、ASEAN各国などへの政策形成支援や医療、介護等の海外展開を図るということで記載されていまして、人材教育システムの供与とか政策形成支援ということで、日本の医療なり介護なりのいいサービスあるいは機器なども、もしその地域に合うのであれば、また御活用いただければという期待感も含まれているということです。

 もともと成長戦略を目的につくった検討会ではありませんけれども、ちょうど時期もあってきているということが言えるかと思っております。

 今回、ASEAN各国を初めとしますアジア諸国における高齢化について、現状、課題、ニーズを明確にしまして、日本の経験、知見を活用した国際協力の推進のための戦略を議論するということで、お願いしたいと思います。

 この検討会には、国内外の保健・福祉の御見識をお持ちの方々にお集まりいただいていますけれども、何分Active Agingということで新しいテーマでございまして、御議論いただく中でいろいろとお世話になりますが、お願いしたいと思います。

 それから、最初のほうで申し上げましたけれども、国際展開といいますか、国際協力、どういうふうに受け手の皆様方にお役に立てるかというのが趣旨になっているということもございまして、そうしたときに即戦力になる資料を準備したいということから、こうした官公庁の会議では少し異例ですけれども、説明資料は英語表記のものが多くなっておりまして、御理解いただければと思います。

 どういうふうに戦略を立てていくかみたいな部分は日本語でもいいのかもしれませんけれども、外国の皆様に御説明するようなもの、そうしたものを、さあ、行くぞといったときに、また英語に直していると随分時間もかかるということから、可能な限り英語の資料を用意していますので、御理解いただければとお願いいたします。

 どうもよろしくお願いいたします。

○杉田専門官 続きまして、構成員の皆様を座席順に御紹介させていただきます。

 まず、江口隆裕構成員です。

 大泉啓一郎構成員です。

 萱島信子構成員です。

 尾身茂構成員です。

 鈴木隆雄構成員です。

 曽根智史構成員です。

 林玲子構成員です。

 堀田聰子構成員です。

 以上、8名の方々に検討会の参加をお願いいたしております。

 次に、本検討会の座長の選出についてですが、座長は尾身構成員にお願いしたいと考えていますが、いかがでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○杉田専門官 それでは、尾身構成員に本検討会の座長をお願いいたします。

 検討会の運営に関してお知らせですが、本検討会は公開で行いまして、議事録は事務局でまとめたものを各構成員の皆様にお目通しいただきまして、その後、厚生労働省のホームページに公開することといたしますので、この点につきまして御了解願います。

 次に、お手元にお配りしております資料の御確認をお願いします。

 資料は、一番上に議事次第があります。

 その次に座席表がありまして、その次に資料1「開催要項」が両面印刷になっております。

 資料2「アジア諸国の高齢化の現状とActive Agingにおける国際協力の方向性について」は、27ページまでの資料で、ホチキス止めの資料となっております。

 資料3「林構成員資料」は、15ページまでの資料になっています。

 資料4「堀田構成員資料」は、6ページまでの資料になっています。

 資料5「今後のスケジュール(案)」は、1枚の資料になっております。

 以上ですが、資料に不足がある場合は、事務局までお知らせください。大丈夫でしょうか。

 それでは、以降の進行は尾身座長にお願いいたします。

 写真撮影は、座長の御挨拶の後までとさせていただきたいと思います。

○尾身座長 座長ということで指名された尾身でございます。

 今回のテーマは、高齢化という点で世界のトップランナーになっている日本に対して、国際社会の期待は強いので、皆さんの御協力をいただいて、当検討会の円滑な運営に努めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 そういうことで、早速ですけれども、本日の議題に入りたいと思います。

 まず、事務局より、検討会の趣旨及び「アジア諸国の高齢化の現状とActive Agingにおける国際協力の方向性について」を説明していただきます。

○山内国際協力室長 国際協力室長の山内でございます。

 それでは、私から説明をさせていただきます。

 資料1が「『国際的なActive Aging(活動的な高齢化)における日本の貢献に関する検討会』開催要項」です。

 先ほどから何度も出ておりますように、日本は高齢化のトップランナーでございまして、2050年には、世界でいいますと60歳以上の人口が20億人まで達するのではないかと予測されている中で、特にアジア諸国においては、その速さが日本を超えるのではないかという予想も出ているところです。

 日本がトップランナーなのですが、これまでの日本の取り組みについて、アジアを初めとする開発途上国に、これまでの経験や知見を共有して、当分野における国際協力を推進するという期待があります。

 このような状況を踏まえて、高齢化の対応について現状、課題、ニーズを開発途上国において明らかにし、日本の経験・知見を活用した国際協力を推進するための戦略について検討するということが本会合の目的、趣旨と言えると思います。

 本検討会の構成ですが、この資料1の裏面に名簿がありますので、ご覧いただければと思います。座長は、先ほど尾身先生にご決定いただきました。

 検討事項ですが、2つありまして「(1)アジアをはじめとする開発途上国における高齢者施策の現状の整理」「(2)高齢者保健福祉分野における国際協力の在り方の検討」となっております。

 それでは、資料2をご覧ください。「アジア諸国の高齢化の現状とActive Agingにおける国際協力の方向性について」という資料です。本資料は、現状の整理ということと本検討会における有識者の先生方の議論、検討の材料ということで、用意させていただいているものです。

 早速、下の部分ですが、これからの議論の方向性といいますか、このような形でやっていってはどうかという概念、コンセプトの図です。

 一番下にありますように、先ほど説明もありましたとおり、User-oriented、戦略としてこれから使っていこう、ユーザーに使いやすいようにしようということで、資料も英語の部分もあるのですが、そのようなUser-orientedなものをつくっていこうというコンセプトがまずあります。

 そのために、この図の上のほうですが、ASEANの地域の中でのProblem、課題とは何かということと、右側のほうですけれども、日本の知見、経験は何かということについて、これから検討し、議論していただき、その中でPriorityを設定しつつ、Solution、解決策はあるのかどうか、どういうことをやっていけば、協力をしていけばいいのかということを議論していただくということになると思っています。

 その後にStrategy、戦略なのですが、例えば、どのようなフレームワークで協力を行っていけばいいのか、BilateralRegional、あるいは民間と共同でというような、いろんなやり方があるかと思いますが、そのような方向性であったり、どのような政策形成におけるアプローチがあるのかといった具体的な手法に関する検討も、今後、行っていく必要があるということになります。

 1枚めくっていただきまして、Active Agingとは何かということになりますが、真ん中にWHOPolicy Frameworkがありまして、Active Agingに関する定義が出てくる部分がございます。

 定義としては、Active Agingというのは、健康や社会参加、あるいはSecurity、このようなQOLを最大限に獲得していくという、人が高齢化していくに従って、Enhanceしていくというものであるという定義が出てまいります。

 それを受けて、2012年にはWHOの戦略の中で、ヨーロッパ地域のAction Planというのが出ておりまして、その中で、Active Agingの範囲として、例えば予防、NCDsのコントロールであったり、あるいはHealth systemsそのものを強化していかなければいけない、また、高齢者に対して健康や社会サービスのアクセスを容易にしていかなくてはいけないという、そういった行動についての記載がございます。

 その下にこの続きがございますが、そのようなヨーロッパでの行動計画を受けて、例えば議論の土台となるようなPlatformをつくったり、本年におきましては、ヨーロッパの各都市の市長が集まって、Dublin Declarationのようなものを今後つくっていくという話もあります。

 その下にありますように、日本におきましては「健康日本21」に、日本の高齢者において、その参加を促進するということは地域を活性化するものであって、日本においては、超高齢化社会の中で、そのような活性化していくような取り組みの重要性についての記載がございます。

 さらに、厚労省の取り組みとしては、Productive Agingあるいは地域包括ケアの研究調査レポート等も出ております。これにつきましては、また後で、ご発表で出てくるように聞いております。

 続きまして、次のページでございますが、先ほど申し上げましたWHOPolicy Frameworkの中で、Active Agingにつきまして3つの要素があると定義されており、その3つが、HealthParticipationSecurityとなっております。

Healthは、例えば、リスクファクターあるいは機能を提言したり、生活機能を維持したりするような、健康あるいは社会サービスを提供することであったり、Participationについては、本当に社会参加を増進するようなサポート活動であったり、Securityについては、社会的、財政的、あるいはその基本的な人権の保障であったり、そういうものが含まれているということのようです。

 その下の図は、国連のヨーロッパ地域における行動計画があったと思うのですが、その中でActive Agingに関する投資の重要性を訴えている概念図でございまして、右のグラフを見ていただくとわかるのですが、その縦軸がいわゆるActive Agingの基本要素でございまして、横軸が年齢でございますが、Active Agingに投資をすることによって、健康、社会参加を増加させていくということができます、早い投資ほどその効果は大きいという概念がそこに書いてあります。

 続きまして、次のページを見ていただきますと、このようなWHOの枠組みにおきまして、HealthParticipationSecurityで、どのようなものが具体的にあるのかというものが記載されており、例えば、先ほど申し上げましたような予防、サポート活動、リスクファクターを減らすための活動、あるいはHealth systemsの強化、サービスの提供であったり、あるいは専門人材の育成であったり、そのようなものがあります。

 社会参加におきましては、教育活動あるいは雇用の確保であったり、社会参加、ボランティア活動、そういうものが挙がっております。

Securityについては、それこそ健康保険、社会保険、人権を守るための活動であったり、そういうものが挙げられておりまして、その下の「Examples in Japan」と書いてあるのが、日本における、これはあくまで例示でございますが、このような枠組みに当てはめるとこのようなものが行われているのではないかなということで、必要十分なものではないのかもしれないのですけれども、挙げさせていたただいております。

 続きまして、その次のページですが、ここにありますのがASEAN地域における高齢化関係における指標の現状でございます。

 青い枠がついているところが、いわゆる高齢化率と申しますか、2025年において60歳以上の人口の割合がどれぐらいかという予測でございますが、その順に並んでおりまして、日本が1位なわけでございますけれども、その中でも、今後、急激に高齢化が予測されております、例えば、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、ミャンマーという順に並んでおりますが、タイなどは、2025年には21.3%と高齢化の進展が著しいと予測されています。

 その下の図でございますが、その中で、本検討会におきましても、このような状況を踏まえて、どのような国が今後協力していく候補として挙げられるのかということを考えていく上で、このような形で整理しているわけなのですが、ここは、縦がいわゆるGDPであらわす国の経済規模でございまして、横が先ほど申し上げました高齢化の率で、2025年までにどの程度高齢化が進むかと考えた場合に、ODAの対象国の中で、特にこの中等度の経済規模がありながら、高齢化が今後早く進んでいくだろうと考えられる、グレーの枠の中の国々が特に協力の余地が大きいのではないか、と整理した図です。

 続きまして、次のページですが、それらの国々の中で先行して国際協力がタイで行われておりまして、これはJICAの事業でございますが、地域のコミュニティーを基盤とした保健福祉サービスをつくり上げるというモデル事業をやっております。

 これは、2007年から続いており、現在、第2フェーズのプロジェクトとしてLTOPというものができておりまして、こちらのほうでは高齢化を念頭に長期療養型のサービスモデル、日本における介護事業等のモデルを参考にしながら、人材育成を行い、特に行政における持続可能なサービス、そういうモデルをつくり上げるということを目標にやっているものでございます。

 続きまして、その下ですが、このような事業が行われている中で、高齢化に関する課題を各々の国々の中で今後見つけていき、日本における経験を生かせないかということを考えていくわけですが、この表で、右側の「高齢化に関する課題等」でASEAN諸国における調査をこの検討会の中でも行っていくわけですが、それらの活動を通して、今後もう少しこれを詳細に埋めていくこと、特に調査対象国の中においては、そのようなことを今後、行っていきたい。

 例えば、タイでしたら、今そういう事業が行われている中でも、プライマリーケアは整備されつつも、もうちょっとサービスのクオリティーとか範囲を広げていく必要があるとか、いろんなことが言われていたりするわけなのですが、そういった具体化を今後はやっていく必要があると考えております。

 その次のページですが、その中で高齢化がどんどん進んでいくということをこの図で示し、いわゆる倍加率というのでしょうか、日本の赤い線のところが真ん中にありますが、日本の高齢化の進展、7%から14%へ、65歳以上の人口ですが、今後ASEAN諸国、特にタイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアというものを見たときに、日本より傾きが急であるということで、進行がかなり早いと予測されているということを示している図でございます。

 その下はそれを数字に整理した表でして、日本は7%から14%までに25年かかっているのですが、タイでは23年だろうと言われているところです。

 その次のページです。日本はどのような変遷をたどっていたのかということを示している図でして、1960年代から高齢者福祉というものが取り組まれてきた経緯がございまして、この時期から年金であったり保険であったりということが行われていて、1963年に老人福祉法ができてきたということです。

1970年代には、対象拡大ということで高齢者医療を無料化したりしたという状況がありまして、1980年代におきまして、老人保健法ができて「ゴールドプラン」が始まったとございます。1990年代に入りますと「新ゴールドプラン」ができて高齢者社会対策基本法というものができました。2000年には、介護保険が始まるという非常に画期的な状況がありました。

 それを下の図で見ますと、高齢化の率とその年ごとの変遷をグラフにしたものでございます。高齢化14%のところを見ていきますと、ちょうど14%だったのが、日本でいうと「新ゴールドプラン」というものができた時期でございまして、90年代の半ばということになります。

 今のものを横に見てみますと、タイでしたら、ちょうど2022年、2020年代の前半にあたる感じになるのかなと思います。当然、アジア各国が日本のような形をたどるわけではないということは承知しつつも、各国がどのような現状にあるのか、これからどういくのか、という意味で、このような参考図をつけさせていただいております。

 これ以降は「Appendix」として、各国の高齢化あるいは医療、医療の支出であったり、医療保障あるいは雇用の保障等に関するデータを、まだ埋め切れていないところもあるのですが、つけさせていただいておりますので、本検討会における議論の参考にしていただければと考えてございます。

 長くなりましたが、私からは、以上です。

○堀江統括調整官 ちょっと補足させてください。

 今、室長から説明がありましたけれども、2ページのところにございますように、Problem Identification、問題の特定で、日本の経験のPortfolio、どんなものがあるのか、それぞれを整理して課題をつくっていくということです。

 きょうの説明は、Active Agingとは、健康、参加、安心、安全のようなもので整理されてきているのだよということを紹介させていただいた上で、特にASEAN諸国のProblemというものに、どういうふうに、特に数値のようなもので整理できるか、あるいは問題として認識されているか、私ども自身に知識があるものも限られていますので、それぞれの著作などを参考にしながらまとめさせていただいています。

 今、最後のほうでは、日本の経験、さすがにこれは厚生労働省でございますので、どんなことをこれまでやってきているかというあたりの棚卸しを試みていますというものであります。

 説明の中で英語のものからやっていますので、ぱっとNCDsと言われて、NCDsって何だ、困ったなと思う人もいるかもしれませんけれども、Noncommunicable diseasesということで、感染症でない病気、日本のよく使う言葉で言えば、生活習慣病というのに近いのかなと思います。

 一例ですけれども、11ページのところに、私の経験もありますので少し敷衍させていただきますと、タイの経験というのがありますというのが書いてあって、左と右にphase1と2、phaseという言い方では必ずしもないかもしれないのですけれども、とにかく2つのプロジェクトが経験、実績としてあります。

 1つ目のプロジェクトは、どちらかというと、まさにProblem Identificationというのですか、問題を発見しようというものが振り返ると実は中心になっていた、そこから始めましょうというプロジェクトだったように思います。今は介護モデルというのを試行してみましょうということで、2ページ目のところでいうと、Solutionに少し近づいているような感じがいたしております。こういうようなことでございます。

 そういう意味でいきますと、タイの経験というのは一つのものですが、そういうものを踏まえながらこの2ページの部分ができてきたなというところもあって、どちらが先にあったのかという話はあるのですけれども、参考にしていただければと思います。

 やはり今後の倍化係数というのですか、7%から14%までにかかる年数がアジアは短い、この辺は、大泉委員が御著書で2007年ぐらいのところで発表されたあたりが、一つ大きなきっかけになっているのだと思いますけれども、こんなふうに、今、進んでいますという報告を補足させていただきます。ありがとうございます。

○尾身座長 どうもありがとうございます。

 タイを中心にアジアの現状等を話してもらいましたが、質疑応答、議論の前に、構成員の2名の方から少し話題提供をお願いいたしたいと思います。

 まずは、林構成員から話題提供をお願いいたします。

○林構成員 御紹介にあずかりました、国立社会保障・人口問題研究所の林と申します。よろしくお願いいたします。

 きょうは、人口のほうから見たグローバル・エージングということと、話題提供ということで、どういった切り口があるかということなどについて、15分ほどと聞きましたので、手短にお話をさせていただければと思います。

 資料3のほうになっております。

 今、山内室長のほうからWHOを中心にしたいろいろな取り組みについて御説明がありましたので、それ以外のグローバルな、国連関係だとかそういうところで、どういう動きが今あるかということについて、去年あたりからかなり私自身もいろいろ参加しておりましたので、それを含めてお話しします。

 まず最初には、去年、UNFPA(国連人口基金)のほうが、10月1日というのは世界高齢者デーということで、世界の高齢化に関するシンポジウムを、世界一の高齢国である日本の東京で、事務局長のババトゥンデ・オショティメインさんがいらっしゃいまして、ここでシンポジウムをいたしました。

 社人研のほうでも、翌日にラウンドテーブルということで議論をするセッションを設けさせていただいております。

 それと同時に、世界の人口高齢化に関するレポートというものがありまして、これは、この下に書いてありますウエブサイトから、日本語版も概要ということで出ておりますし、全文がダウンロードできます。

 そこでこういったレポートを出しながら言っていることとしましては、まず、山内室長のプレゼンにもありましたように、2002年にマドリッドで高齢者問題世界会議というのが開かれまして、そこの「マドリッド国際行動計画」というのが、世界的な高齢社会化を対策していくときの、これからバイブルみたいな形になっていくものだと思いますけれども、それを守っていきましょうということです。

 あとは、高齢女性、特にUNFPAGender issuesが重要だということで、高齢女性の差別を解消、所得補償としての年金制度、もしくは、ソーシャル・プロテクション・フロアと書いてありますが、最低限の所得を高齢者にとっても確保しなければいけない。

 それから、高齢者の労働をどう考えるか。例えば、プロテクションがないアフリカなどでは、就業率がかなり高くなってきている。ただ、この下にも書きましたけれども、教育をして就職をして退職をするという「三箱セット」と書いてあったのですが、そういったものは既に規範ではない、高齢者で働きたい人は働けるような、そういった社会をつくるように制度をつくっていかなければいけないということも述べられています。

 それから、日本でいうバリアフリーですけれども、住宅や移動手段、交通手段、そういったものについての物理的環境を、もっと高齢者にフレンドリーにしていこうというようなことが書いてあります。

 あとは、人口高齢化そのものが経済発展を阻害してきたという証拠はないということで、特にこのレポートでは、こうした世界の人口の高齢化は祝福すべきものであるということを非常に強調しています。

 もう一つ、MDGs、ミレニアム開発目標の目標年が2015年ですので、その後でどういった開発目標を世界で設定していくかということが、今、国連システムの各所で話されているところですけれども、前回のMDGsはみんなが参加して決めなかったという批判があるので、今回は、フェイスブックとかツイッターとか、そういったものを活用しながらウエブ上でみんなが議論できるという形で、次の開発目標の中身が議論され続けているのですけれども、済みません、ここにウエブアドレスを書くのを忘れましたが「world we want」とグーグルでタイプすると出てくるサイトにあります。

 その中で、一つのテーマとして人口変動(Population Dynamics)というものが取り上げられておりまして、その中で人口移動、ユースバルジ、これは若者がふえてきて社会が不安定になるといった論点ですけれども、それから人口都市化、世界の人口の半分は都市に住んでいるという、人口高齢化と並んで人口都市化という点が挙げられております。

 ただ、この中身としては、格差と差別をなくしましょう、高齢者に対するデータはまだまだ不十分ですということが書かれているのみで、すごくたくさん議論が進んでいるという感じではないように思われます。

 その次の4番のスライドですけれども、この間、開催準備会議というのに行ってきたのですが、第6回アジア太平洋人口開発会議というのがことしの9月に開催されることになりまして、これは10年に1回、UNESCAP、国連アジア太平洋経済社会委員会のほうで開催されているもので、この中では人口高齢化が一つの大きな課題としてクローズアップされています。

 今はまだ協議中ですけれども、その中の項目として既に挙げられているものとしては、高齢者の人権、法令、法制度をつくっていかなければいけないし、虐待を防止しなければいけないということ、各分野の連携体制の構築と政府としての予算確保、特に高齢化というといろんな分野が入ってきますので、そこの連携体制をいかにとるとかということ、高齢女性への視点を入れながらということです。

 それから、日本でも問題になっていますけれども、高齢者の貧困、社会的孤立をどういうふうに防止していくか、皆年金というものをつくれるかどうか、ライフコースアプローチと継続ケア、これは予防・急性・慢性・長期・終末期と全てにわたってアテンションが必要である、対策をしていこうということ、在宅・地域包括ケアといったことが挙げられており、ユニバーサルデザインといったこともあります。

 また、やはりこうした開発途上国も含めますと、今までは子どもや女性のデータは集まっていたのだけれども、高齢者のところが抜けているところがかなり多くて、高齢者の統計データもきちんと、今後、整備していかなければいけないということや、既に高齢化が進んだ国のグッドプラクティスを取り入れていこうということも盛り込もうではないかということが今、話されております。この各国グッドプラクティスは、日本について特にいろいろインプットできていけたらいいなと会議でも発言しました。

 こうしたような国連の動きがありまして、さらにILOなどのほうでも、健康保険や年金などのほうでいろいろ動きがあると思います。私はちょっと存じ上げませんので、またインプットを適宜いただければと思います。

 それで、次から話題提供ということですけれども、まず、これは国連の統計、前のプレゼンでも使われていましたけれども「The 2010 Revision」ということで、一応ここで統計を出しております。ちなみにもうすぐ「The 2012 Revision」が出るはずですので、そうなるとまた新しくアップデートしていく必要があるのかなと思いますが、このような形で今が2013年、これから2064歳は働き盛りが増えていくけれども、世界全体的に見ても65歳以上がどんどんふえていく。逆に世界的に見ると0~19歳はもうこれからほとんど伸びない。これは非常なインプリケーションだと思っております。

 それから65歳以上人口が、今後、世界の地域別にどのように増えていくかというところですが、もともとアジアというのはたくさんの国がありますので総人口割合自体が大きいのですが、65歳以上人口もアジアで大きく伸びていく。アフリカも2100年にかけてはわっと増えていくという推定結果になっております。

 次のページをめくっていただきまして、スライドの7なのですけれども、これが先ほども何度も出てきました65歳以上人口割合ということで、ここに、一番上の点線は「日本」と日本語で書いておりまして、その次に「Japan」と書いておりまして、これは何かといいますと、点線が社人研のほうで出しております中位推計の推計人口を使って求めた65歳以上人口割合、下のものが国連の推計による日本の65歳人口割合で、実はこれだけ差が出ているということです。

 これは何かというと、国連の人口推計は、必ず出生率が2.01、置換水準に戻っていくというのを前提につくっていますので、そういった意味でかなり楽観的といいますか、人口減少もそんなに進まない、逆に言うと、開発途上国の人口は低下が遅いというような推計になりますが、実は、今回4月に国連の人口開発委員会に行ってまいりまして、この点がやはり若干議論になりまして、そんなに2.01に上がらないのではないかということを、多くの国が気づき始めています。

 ということで、ここのその他の国、ここはアジアのほうを挙げさせていただきましたけれども、日本に続いて韓国、シンガポールというのが何か似たようなトレンドでありまして、その次に中国とタイという形でありますが、これはかなり2060年を超えてからわっと下がっているのですけれども、今、申し上げたような出生率が2.01に戻るという前提で計算していますので、これはもしかしてタイでも中国でもそんなにならないのではないだろうかということがあります。

 なので、この65歳以上人口割合は、よりこの後で下がるというのはもしかしてないかもしれない。そこのところはあと50年後の話ですのでなかなかわからないけれども、一応そういうことは念頭に入れておく、考えておく必要があると思います。

 ただ、例えばモロッコのように、出生率がわっと下がって2.1ぐらいでそのままとまっているという、何かおめでたいというか、いい国もありまして、あるいはそうした、あるところで社会がバランスをとってという国も出てくるかもしれませんし、これは今後の楽しみということだと思います。

 その次なのですが、中国で、やはり一人っ子政策をとりましたので、高齢化がかなり進んできているということで「未富先老」と中国語で言うのですけれども、豊かになる前に先に老いてしまうのではないかということが、今、非常に話題になっているのですが、本当にそうかということです。

 非常に単純にここに表に出したのは、今の1人当たりのGNIが、日本、韓国、中国、タイ、シンガポールでこういうようになっていて、65歳以上割合はこれこれになっておりますということで、この65歳以上割合が達成した日本の年をその下に書いておりまして、そのときの日本のGNIはどのぐらいだったかと単純に書いております。

 これを見ますと、韓国や中国は何となく日本のパターンと似ているというところが見えるわけで、中国については未富先老ではないのではないかということも考えられたりするわけですが、タイの場合、シンガポールの場合というのが、若干傾向が異なっているということが、日本が1万ドルあったときの65歳以上割合が今であって、それがタイでは半分ぐらいの所得になっている。シンガポールでは、逆に4倍ぐらいになっている。

 ですので、やはりASEAN諸国では、人口高齢化と経済の関係などが東アジアとは、また違ったものがあるのかもしれないなというのが推測されますけれども、先ほど山内室長がおっしゃられたように、日本の経験がそのままいくわけでもないということもありますので、今後いろいろ見ていけたらと思います。

 次に、論点ですけれども、これは、地図で落としてみて、高齢化の割合がアジアはかなり高くなってきているということですが、この下は何かというと、例えば中国一つを取り上げますと、大きい国ですので、各省別に見てみたものがこれになります。

 これを比べてみると、中国の中でも韓国と同等程度の高齢化を持つ省がかなりあって、省といっても8,000万人ぐらい人口がある省もありますので、本当に国一つぐらいなのですが、今、韓国と同じレベルという色になっているのが、江蘇省や安徽省、重慶や四川省といったところです。

 これは何かというと、人口移動、田舎から都会のほうに行っているということによる、過疎化のようなものが起こっている。これは今、日本が人口減少と言っていますけれども、人口減少は地方でかなり早くから始まっていた。その人口移動による影響というのがかなりありまして、アジアのメガシティーというのは非常に人口が巨大化していまして、それに対応するものとして、アジアの農村部の高齢者医療などを今後どうやっていくか。

 例えば、韓国では人口の半分ぐらいが都市化しているのですが、逆に農村部での独居老人率というのは、日本や台湾よりも高くなっているという結果が出ておりますので、そうしたものをどう対処していくのかというところがあるということです。

 次のページに行かせていただきますと、そうした「高齢化の家族の変容」ということで、これは国連の「Population Aging and Development 2012」という資料から、日本以外はとらせていただきました。

65歳以上で独居もしくは夫婦のみの世帯の人口割合が、日本の場合は65歳以上人口割合が54%と、半分以上の65歳以上の人が独居か夫婦のみです。これが、ほかのアジアの国々では、中国では何と男性ではもう40%近くが独居もしくは夫婦のみということになっていますし、インドネシアやマレーシア、タイ、ベトナムも非常に高くなってきています。

 これは、日本における高齢者独居の推移というのが、その下に書きましたけれども、日本では1980年にまだ28%だった、そうした状況に既にアジアの各国はもうなりつつある。中国ですと、日本でいうと1990年代半ばぐらいということになりますので、これは非常に大変なことがいろいろこれから起こるだろうということがあります。

 ただ、日本の場合、その小さいコラムみたいなものに書いたのですが、20012011年にかけて、同居は減っているけれども、近居がその分ふえている。

19912001年にかけてはこうした動きは余りないのですが、特に2000年代に入ってからこうしたことが起こっているのは、特に都市近郊とかそういったところで、人口減少で土地が余ってきていて、それを農地にするのではなくて、近くに住んでいたら便利だけれども、一緒に住んでいるとややこしいからとかそういうことで、近くにおうちをつくっていくということがふえているのではないかなということです。

 家族というコンテクストがアジアの中である中で、同居率だけを見ていても、もしかしてわからないかもしれない。また、近くにみんなが住むためには、どのような施策をつくっていったらいいのかということがポイントになるかなと思います。

 「保健医療と社会保障」ということで、多くの論点があるのですけれども、まず、医療技術者の国際移動、これは高齢化だからということよりは国際交流ということもありますが、今後、例えば2015年にASEANの中で移動が自由になる、EUのようなことをするということになっていまして、かなり送り出し国も受け入れ国も戦々恐々というか、準備をしているところです。

 そうした流動化していく中で、日本がどのように対応していくか。言葉が日本語という中で、どのようなことをしていけるのか。ただ、例えば5Sといった、日本の品質管理のやり方を、アフリカの病院管理にJICAを通じて役立てようとしているのですが、5STQMや、特に病院の介護スタッフ、看護師スタッフたちの日本独特のすばらしい運営方法がありますので、こうしたものを研修生を受け入れることなどで、いろいろな形で世界に広げていけるとよいのではないかなと思います。

 医療保険なのですが、やはり日本は皆保険で1960年代からやったという歴史がありますけれども、東南アジアのところは、もう既に日本で言う混合医療で非常に動いていて、既にプライベートでいいものがある中に、どうやって皆保険を入れていくのか。タイで30バーツ医療などをしましたけれども、それを実際にクオリティーを高く持っていくにはどうしたらいいのかというところは、かなりチャレンジングなところがあると思います。

 介護保険ですけれども、日本は介護保険をやりましたということでいろいろいなノウハウがありますが、例えば台湾やマレーシアの方々と話をしていると、うちのところはもう移民で、ホームヘルプというか、メイドさんとして来られる方が全部やってくれるのでということで、そうした中で介護保険料をどれだけ払うか、介護が必要ではない人も払わなければいけないのだけれども、そういうところにどれだけコンセンサスが得られるかというところで、移民型社会と非移民型社会で異なったアプローチが必要になるだろうということがあります。

 それから、中国でちょっと言われていたことなのですが、教育水準もどんどん高くなっていますので、高齢者が高学歴化しているので、またこれまでとは違ったアプローチができていくのではないか。

 あと、家族で見るか、社会で見るか、国連のほうでNational Transfer Accountということで、国と公的な資金、私的な資金がどのように世代間で移っていくかという分析をしておりますが、こういうものを捉えて見ていくことがあります。年金制度をどのように構築できるか。それから、先ほど申しました、アジアの開発途上国における高齢者のデータの整備をしなければいけない。

 それから、終末医療ということで、これも話し出すと非常にたくさんの話がありますが、どこで最後を迎えるのかということは、考えていかなければいけない問題だと思います。

 最後に、ここの下に置きましたこの写真は、長崎大学の増田先生から御提供いただいたのですが、エチオピアの南部諸民族州のボリ村というところの村の集まりになっていますけれども、これは何かというと、向こうからぐるっと年の順に並んでいるのですね。

 これは、結婚式かお葬式か何かだったのですけれども、ご馳走である牛の肉をみんなで食べるのを、年の順から食べていく。こうした年功序列というもの、アジアもアフリカもそういったトラディショナルなものがあり、日本の社会としてもありましたので、こうしたものを今後どういうふうに捉えていくのかというポイントが一つです。

 最後のスライドですけれども、老いをどう捉えるのかというところで、今のエチオピアの村ですが、ここは全部で292人の村人がいる中で「ガルタ」というのがお年寄りという意味の言葉なのですが、その人が16名いる。ということは、5.5%です。それで、世界各国の平均寿命と60歳以上人口の総人口に対する割合というのを見ますと、平均寿命が低い国々では5%近辺の国が多い。なので、どんなに平均寿命が低くても、ある程度5%は高齢者がいる。これはエチオピアの村でもそうでした。

 ですので、65歳以上が高齢者と考えるのではなくて、例えば、上位5%の人が高齢者と考えたらどうかというふうにして、日本の場合、計算すると81歳ということになりますので、ちょうど何となく我々の感覚にも合うかなということで、81歳まで元気に生きるのはどうしていけばいいのかというのがActive Agingだと思いますし、健康寿命という考え方も入れながら、今後、高齢化ということを考えていけたらいいなと思います。

 長くなりましたが、以上で話を終わりたいと思います。

○尾身座長 林委員、ありがとうございました。

 それでは、引き続き堀田構成員からお願いいたします。

○堀田構成員 堀田でございます。

  私はグローバル・エージング、とくにASEANにおける高齢化についてはふだん意識しないことをやっていまして、既に非常に勉強になりました。ありがとうございます。

 専攻はケア人材政策、特にケア関連領域での雇用管理で、今日は地域包括ケア研究会の議論の紹介をというご依頼を頂いたのですが、この研究会でも担い手にかかる問題を中心として議論に参加させていただいてきました。

 その立場で、資料2でも御紹介いただきました地域包括ケアシステムに関して、とりわけActive Agingとの関連から話題提供をとのことで、何をお話しすればいいのだろうと悩みつつ、資料4をご覧いただければと思います。

 住み慣れた地域での尊厳ある暮らしを最期まで支えるために持続可能なシステムのあり方についての検討ということで、この地域包括ケアシステムという言葉が最初に出てきたのは、平成14年度の高齢者介護研究会というものです。その後、平成20年度、21年度、24年度、今年度も続くようですが、14年度に出てきた地域包括ケアという考え方を、より深めていく形で議論が重ねられています。こうした議論は、介護保険や報酬の見直し、社会保障と税の一体改革などにおいても反映されつつあるというような位置づけの研究会ということになります。

 まず、直近の平成24年度の地域包括ケア研究会2012の概要を最初にお話しして、地域包括ケアシステムということが言われるようになってから、直近の研究会に至るまで、特にこのActive Agingの中のParticipationに関連づけながら、高齢者の位置づけというものがどう変わってきたのかを、ざっと御紹介したいと思います。

 「2.地域包括ケア研究会2012の概要」で、地域包括ケア研究会2012の全体の枠組みを御紹介します。資料の5ページ、6ページに、事務局がつくられた概要版をつけています。この研究会の名前で検索いただければ報告書はダウンロードできるようになっています。

 地域包括ケア研究会2012は、平成21年度までの研究会の中で2025年に向けて地域包括ケアシステムを構築する上での論点整理や具体的な提案をやってきたわけですが、より踏み込んだ形でシステム構築への工程を展望するための論点整理という位置づけで行われました。5ページの下のスライド、これが改めて地域包括ケアシステムの考え方を整理したという部分です。6ページ、上に関連する諸主体が取り組むべき方向、下に個別の論点として、住まい・生活支援、医療・介護連携、サービスのあり方ということについての議論がまとめられています。

 今回の議論にどれだけかかわりがあるかわからないのですが、恐らく諸外国での適用を考えるというときに、基本的なコンセプトづくり、理念や考え方のレベル、それにかかわる複合的なシステム、制度、体制というレベルと、人材養成をどうするかというレベルと、地域におけるマネジメントをどうするかというレベル、さまざまなレベルで議論する必要があるのだと思います。そこで5ページのほうに戻りまして、考え方がどのように整理されたのかということを、まずざっと御紹介させて頂きます。

 昨年度の2012研究会の特徴なのですが、これまでのところで既に地域包括ケアシステムの5つの構成要素というのは「住まい」と「生活支援」そして「医療」「介護」「保健・予防」と整理されていたのですけれども、今回の整理でやや進化している部分があります。

 これまでは、5つの構成要素を花びらのような形で描いていたのですけれども、それをニーズと需要に応じた「すまいとすまい方」というものが基盤、植木鉢として位置づけ、その中に「生活支援・福祉サービス」が、生活が継続されるための前提である土、その上に3つの葉っぱ、専門サービスですけれども、これが、それぞれの方々のニーズあるいは状況の変化に応じて、組み合わされて提供されるという形で、構成要素自体は変わっていないのですが、位置づけの整理を行いました。

 後の議論ともかかわりますが、5つの位置づけの整理に加えて、植木鉢の受け皿として「本人・家族の選択と心構え」を書き込んだことも特徴です。

 それから、この下のところの「自助・互助・共助・公助」ということについては、後で流れの中で御紹介したいと思いますが、費用負担による区分という考え方から、この5つの構成要素をどう実際に支えていくかという整理も進められました。

 続きまして6ページ、この地域包括ケア研究会なのですが、先ほど触れましたとおり、2025年を目標として実現していくための論点なり方向性の整理であって、我が国でも、これができ上がったものという位置づけではなく、諸外国にも適用するときにも重要だと思うのですが、まだまだたくさんそれぞれやるべきことがあって、それを整理しているというのが、この6ページの上の図になります。

 主体としての本人、介護者のところは後で触れますが、とりわけ今回の研究会の中でも余り十分な解が出されているとは思いませんが、論点として多く上がってきたのは、市町村あるいは都道府県のところです。

 地域包括ケアシステムというのは、地域を基盤とするケアと統合ケアという2つのコンセプトの組み合わせと言われていますが、とりわけ地域が地域にとっての最適をどう選んでいくのか、地域それぞれが地域の文脈でモデルをつくっていくためにどうしたらいいのか。

 そのために、日本では保険者、主に市町村レベルですけれども、ここに書き込まれていますが、その地域が主体的にそれぞれの課題とか資源をしっかりとわかった上でモデルをつくっていく。それも前のページでごらんいただいた5つの構成要素にわたって、国民会議の中では「地域包括ケア計画」などという言葉も出てきていますけれども、5つの構成要素にわたって、現状を把握してローカルオプティマムを実現していく。

 その地域マネジメントの主体として市町村がどうしたらいいかということに関しては、結構多くの時間を割いて議論が行われたと思います。

 しかし、これについては、まだ論点整理が行われただけであって、具体的にどうしたらいいかということについてはこれからの課題ですし、先ほども地域ごとにとても差があるということを林構成員もおっしゃいましたけれども、それぞれの地域がどのように地域にとっての最適を選べるようにするか、この自治体なり何なりのマネジメント力をどう上げていくかというのは、我が国でも非常に課題だと言われたということです。

 下は個別の論点ですので、とりあえずは飛ばさせていただきます。

 資料の1ページ目に戻っていただきまして、今、2012の研究会については、全体の構成、特に他国への適用を考えた場合に、基本的なコンセプトづくり、複合的なシステムの構成要素、人材養成は今回組み込まれていませんが、さらに、地域マネジメントのあり方というあたりに配慮すべきであるというような考え方から、まず全体を御紹介しました。つづいて3番目では、社会参画との関係から高齢者がどのように位置づけられてきたのかということを、この地域包括ケアの文脈の中でざっと概観したいと思います。

 最初に、これは皆様も周知のとおりかもしれませんが、2000年に始まった介護保険ですけれども、その中で高齢者自身、国民がどのように位置づけられているのかということを取り上げています。

 第四条を見ていただきますと、本人が健康の保持増進に努める、要介護になっても自分自身の力の維持向上に努めるものとするということ、それから、共同連帯の理念ということも含めまして、努力と義務ということで、自分のことは自分で、助け合いをしながらということがもともと法に書き込まれているということです。

 その後、高齢者介護研究会以降の流れなのですけれども、まず「2015年の高齢者介護」の中では、互助という枠組みが出てこなくて、自助の努力を尽くして、さらに地域における共助の力を可能な限り活用することによってというような考え方で整理がされています。

 この「2015年の高齢者介護」の中では、とりわけこの自助ということに関連して、尊厳を支えるケアの確立への方策の一つとして、介護予防を進める視点というのにかなり多くの議論が尽くされていまして、次のページに行きますが、高齢者自身の健康づくりや介護予防、地域社会への参加で、高齢者自身が助け合いの仕組みの主体になる、社会参加とか社会貢献、就労、生きがいづくり、健康づくりといったものがトータルで介護予防につながるといったようなことも書きこまれているところです。

 こういった議論を受けた形で、2006年度、平成18年度に介護予防事業を含む地域支援事業が導入されています。

 先ほども触れましたとおり、地域包括ケアシステムのうちの一つのコンセプトであるところの、地域を基盤とするケアという議論の中では、日本での地域を基盤とするケアというものが介護予防から始まっているというのは興味深いところです。

 同時に、地域包括支援センターがスタートをして、諸外国では地域を基盤とするケアというのは、公衆衛生アプローチに基づきながら、地域住民の信念あるいは地域住民の参画を得ながらつくっていくものと言われていますが、これからどこか他国に適用していくというとき、どのように地域を基盤とするケアというものをデザインするかという際、我が国のアプローチの特徴であると思います。

 その後平成20年度の地域包括ケア研究会に続いていきます。ここで初めて研究会として、先ほどごらんいただいた2012にもつながるような、自助、互助、共助、公助という4つの主体の組み合わせの定義というものを行っています。2015年のこの報告書の中では、互助という整理がなされていませんでした。

 ここで、研究会としての定義に基づいた形で、さらにこの後、平成20年度以降の研究会というのは、補完性原理と、特にヨーロッパなどでは言われますけれども、自助が基本で、その後で互助、共助、公助の順番で取り組んでいくという優先順位のこと、そして、その役割分担の整理と協働のあり方ということ、次第にそこに関する論点が非常に多くなってきています。

 とりわけ20年度の中では、自助、互助の重要性の改めての認識、そして、地域の中での多様な互助をどう推進するか。その中で、地域の中での学びのプロセス、住民同士の学びのプロセスということにも書き込みがされています。

 地域住民をサービスの受け手としてだけではなくて、住民によるサービスであるとか、一番下の「住民の主体的な参加と学習」のところには、これは結構諸外国からも注目されているものの一つでもありますが、認知症サポーターとか、介護予防サポーターはどうかわかりませんが、それから、介護支援ボランティアとか、いろんな形で住民自身が対話の中で支え手になっていく、学び合いながら高めていくといったことについての書き込みがなされたのが20年度、この流れが続いてきていると思います。

21年度の研究会というのは、20年度の論点整理に基づいた形で、具体的な対応をどうするかということの検討です。

 その中でも、2025年の姿として、住民主体の組織の活用とか、改めて本人の力、セルフマネジメントを高める、自己管理を高めるためのケアマネジメントのあり方をどうすべきか、それから介護予防の文脈の中で、下線を引いていますけれども、高齢者同士が相互に教え合う、そういった関係の構築が進んでいるというのが、現在の姿ではなくて、2025年の姿として描かれました。

 こうした自助、互助の重要性の認識、とりわけ住民が受け手ではなくて、支え手としても、お互いに互助という枠組みの中でも活躍をしていくということが重視されていくというような議論の流れの中で、24年度には、介護予防・日常生活支援総合事業の導入がはかられています。この上に24年度の地域包括ケア研究会が行われたという形になります。

 先ほどごらんいただいた、後ろにつけていただいている2012の地域包括ケア研究会の論点整理を再び見ていただきまして、この中では、当事者あるいは主体としての高齢者というものがどのように書き込まれたかということについて、焦点を絞って改めて御紹介させていただきたいと思います。

 まず、5ページの下なのですけれども、ここで改めて「自助・互助・共助・公助」の整理がされています。先ほど御紹介しましたとおり、平成20年度の研究会の中で、既に一度定義づけが行われていたのですが、今回2012の研究会の中では、費用負担による区分という考え方に立った再整理が行われています。

 これは、お読みいただければおわかりいただけることかと思いますけれども、公助が税による負担、共助が介護保険なり医療保険なり社会保険、仲間同士の連帯のシステム化されたものによる負担というか支えるというもの、自助は、自分のことを自分で決めるなり、自分のことを自分でする、あるいは市場サービスの購入というものも含めた形で整理されていて、互助がそこに入らないものという感じなのですね。

 今回の研究会の中でも、これはアジアの国々とはまた違う文脈だと思いますが、我が国の中で互助というものを再びどう振興していくか、支え手としての互助というものをどう復興していくかということも、大きな論点として挙げられたところということになっています。

 この4つの枠組みの中で、高齢者自身について、まず、自助の主体として自分のことを自分でするだけではなくて、互助の枠組みの中でも、当事者団体による取り組み、高齢者によるボランティアや生きがい就労、ボランティア・住民組織の活動といったようなことが書き込まれていて、これも主体としての高齢者の位置づけのより踏み込んだ形と言えるかなと思います。

 それから、6ページの上のところでも、先ほど飛ばしましたが、今、申し上げたようなことが、主体としてということで改めて整理がされているところです。

 このシステムなのですが、今までのところは、どちらかというと、介護保険との関連を主に頭に置きながら長期ケアをどう支えるか、どうしても高齢者によりがちな議論となっているのですけれども、将来的には全ての住民のためのシステムであるということが左上のところで書き込まれています。

 それから、今のところは高齢者を中心に議論をしていますので、高齢者という真ん中の赤いところから伸びている線を見ていただきますと、高齢者自身を、改めてサービスの利用者である前にみずからの生活をみずから支える自助の主体と位置づけるとともに、先ほどの枠組みの互助のところですが、地域の支援の担い手となって高齢者自身の生活意欲向上と介護予防をどうするか、対応して、下のサービスのあり方のところでも、介護予防というものを、社会参加を促していくことが結果的に介護予防に通じるのではないか、これは2015の報告書の中でも言われたことですが、そういったことが改めて書かれたというのが、今回踏み込んだ点です。

 もう一つ、我が国はややおくれているというか、位置づけ、整理が難しいところだと思いますが、上のスライドの右上のところなのですけれども、介護者についても、これは2015の報告書でも書かれていたのですが、介護の社会化が進展しても、それでも負担は残っていくということで、介護者の位置づけと支援の考え方の整理というのもこれから大きな課題だろうということが、書き込まれました。

 なので、さまざまな意味で、支え手としてどうしていくか、自分のことを自分で、自助の主体だけではなくて互助の担い手としてもどう復興していくかということについても、大きな論点だということです。

 恐らく、持続可能なシステムをつくっていくというときに、諸外国に適用していくという上でも、この自助、互助というものをどう掘り起こしていくかということは大きな論点かなと思います。

 資料は戻りまして3ページ目ですけれども、こういった議論を受けているのか受けていないのかわかりませんが、最近の社会保障制度改革国民会議の中でも、今まで申し上げましたような、各自治体が地域に応じてモデルをつくるべきといった、地域のマネジメントの話であるとか、高齢者自身の社会参加による予防の推進であったり、先ほどちらっと触れましたけれども、地域包括ケア計画といったようなことにも言及されていますし、高齢者自身の支え合いによって介護予防なども考えていくべきではないかということが書かれています。

 ここまでが地域包括ケア研究会の2012に関連づけた、特に担い手としてのというところに結びつけつつ、議論の御紹介だったのですが、とりわけ担い手としての高齢者ということを考えますと、最近、この地域包括ケア研究会だけではなくて、当たり前ですが、さまざまな領域で、再び担い手として高齢者を位置づけるという議論がいろいろと進んでいるように思います。

 我が国の中でも、同時並行で議論が進んでいますが、必ずしもこれが連動しているかどうかというと、そうでもない部分もとても多いと思うのですけれども、諸外国でActive Agingなり地域の中で暮らし続けていくシステムということを考えるときには、ここにも挙げていますが、例えば、地域保健の中でもソーシャルキャピタルに立脚するとか、福祉の中でも住民と行政の協働、生涯学習、これは文科省ですけれども、学習活動と社会参画のかかわり、それから、労働政策の中でも高齢者雇用とか、新しい雇用システムへの転換というときの多元的な働き方、こういったようなことも言われているわけです。

 そういった関連する政策との連動というものも考えながら、トータルで現状が、我が国ができているということではなくて、論点になっていることは、恐らくこれから高齢化を迎える諸外国でも論点になるであろうということで、我が国でも連動がとれていない、あるいは、論点になっていることをどう各地域が読んでいけるかということの観点が必要ではないかなと思います。

 特に3ページの一番下に挙げましたけれども、社会保障制度全体として、これはヨーロッパなどでも同じですけれども、我が国もケアの文脈で自助、互助と言っているだけではなくて、労働市場への参加というものも促そうとしつつケアの世界でも自助、互助ということを言っていまして、結構このバランスは非常に難しいところで、労働市場への参加を促しつつ地域の中でのつながりということを進めていく、あるいは介護者の支援と言いながら就労もずっと続けていく、そうではないと成長が成り立たないというような、なかなか難しいバランスに先進国はどこも直面しようとしていて、そういった意味では、長期の視点も重要ではないかなと思います。

 最後は、さらっと触れますが、4ページのところです。

 これは、地域包括ケア研究会、我が国の文脈でということではなくて、諸外国の考え方の例を挙げているということなのですけれども、何度か申し上げていますとおり、地域包括ケアシステムは、日本だけが言っているものではなくて、既に高齢化に直面している諸外国にとっては、90年代からほぼ共通のヘルスケアシステムの改革の概念として、Integrated careというものが取り上げられてきています。

 特に、疾病構造が転換して、複数の慢性疾患を持ちながら地域で暮らす方々をどう支えていくかという観点から、各国でモデルをどうつくるかということが言われて、(1)はWagnerが提唱した慢性疾患ケアモデル、これはWHOでも既に提唱されているものですが、ここに書かれているような、患者と専門職の生産的な相互関係というものをどうつくるのか、受ける患者と与える専門職ではなくて、活性化された患者とプロアクティブなアプローチができる多職種チームの相互関係というものをどうつくるかということが、このモデルの中でも議論されています。

WHOでは今回これができる人材養成も視野に入れていくということだったので、この慢性疾患ケアが担える人たちのコアコンピテンシーというものの整理も行われているのですが、残念ながら、今のところ、どこの国でもこういったコンピテンシーを身につけられるような教育ができていないということも課題だと言われています。

 これから、これまでの経験を得て諸外国にというときに、まだどこもできていないと言われている、我が国でもチャレンジしようとしているモデルをつくるだけではなくて、その担い手というときに変わっていくモデル、変わっていく疾病構造あるいは健康観の中で、その支え手に求められるコンピテンシーも変わっていくという観点を持って議論をすることも必要ではないかなとの考えから、一応御紹介しています。

 これに関連して、この慢性疾患ケアモデルの要素の中で非常に重要な要素の一つがセルフマネジメント、自己管理の支援で、日本の議論の中でも自助をどう高めるかということが大きな流れになっていると申し上げましたが、まだまだ自助の主体としてという意識が、我が国あるいはアジア諸国で進んでいるとはなかなか思えないところがあります。

 自助の主体として、あるいは自分で律する、自律するというような考え方を進めていくためには、(2)番目でイギリスとかアメリカの考え方などを御紹介していますけれども、もっと早いころ、小学校、中学校ぐらいからの健康教育みたいなことも含めた形で、自分で自分のことを決める、そして、自分で自分の健康を考えるということ、さらに社会保障教育、地域へのコミットメント等に学びのなかでも踏み込んでいくというのが、日本でもアジアでも課題ではないかなと思います。

 最後、ケアラー支援、これも家族から社会へをどこまで進めるかということとの兼ね合いにもなりますが、EUなどでは下のような総合的なケアラー支援が社会政策全体で取り組まれてきていまして、こういった枠組みも、我が国でもどうなるのかわからないですが、今後、バランスを考えながら頭に置いていく必要があるかなと思っています。

 長くなりましたが、以上です。

○尾身座長 堀田委員、どうもありがとうございました。

 まず、事務局からの説明があって、あとは林構成員からの報告と堀田構成員からの報告がございましたが、あと少し、40分ぐらい残っていますけれども、議論をする前に事実関係について質問があったら、まずそちらから、3プレゼンテーションについて一緒にやってもらいたいと思いますが、何かありますか。どうぞ。

○江口構成員 大変に有意義で興味深い発表をありがとうございました。

 ただ、幾つかお聞きしたいのは、まず、事務局の資料2の6ページのUNECEの「Active Aging and Quality of Life in Old Age」とあります。これはすごくもっともらしいのですけれども、よくわからないのは、Hypothetical representation、つまり仮説のタイプで、どこまでがデータに基づいているのか。要は早くから投資すると全体的に健康によくなると書いてあるのですが、これについて何らかの理論的な根拠、データがあるのかどうか。こうなればいいなというのはよくわかるのですけれども、そこを教えていただけないかというのが1点目です。

 それから、林構成員の御説明で、この2枚目といいますか、世界地域別の65歳以上人口の推移というパワーポイントの6ページにありますが、これによるとアジアの高齢者が非常に伸びるのですね。アジアの65歳以上人口が伸びる要因は、平均寿命なのではないか。

 つまり、世界全体の65歳以上人口の中で特にアジアの65歳以上人口が伸びるわけですね。それは、アジアの平均余命というか平均寿命の伸びが大きいからなのではないか、そこの要因がわかればもうちょっと議論がしやすいのかなと思いますで、とりあえずその2点についてわかれば教えていただきたいかなと思います。

○山内国際協力室長 1点目の質問を答えさせていただきますと、図は概念図であり、すべてこのとおりにいくというものではないのですが、それぞれの要素について、例えば早期の投資、おくれた投資について、健康であったり、社会参加であったりとかを向上させるというような個々のエビデンスはそれなりにあり、それをベースに報告書が書かれていると理解をしております。

○林構成員 御質問をありがとうございました。

 本当に、確かにきちんと区別しなければいけないのは、高齢化率というときは、やはり少子化ということが大きな問題になりますし、もともと人口高齢化と話すときに、人口学者は最初はそれは出生率が落ちるということがまずは大きな要因であると言ってきたのですが、おっしゃるとおり、この6のスライドは高齢者の数そのものですので、この数として出てくるのは、若者がふえてきたこれまでのトレンドを引きずって、ベースが上がっているということもありますけれども、もちろん平均寿命が延びてきているということを設定して、こういう推計結果になっていると考えていいと思います。

○江口構成員 そう考えると、アジアというのはほかの地域に比べて割合に長生きするような条件があって、そういう意味では、それ自体は望ましい結果なのですね。

 問題は、それをどう支えるか、つまり、国際的な比較として、アジアの人はやっぱりいろんな理由で長生きする、その結果として高齢者が増大しているというのが、多分、他地域に比べた特徴になっているのですね。

○林構成員 推計ですので、設定値をどう持っていくかというところですが、一応これはこのまま延びていくという設定をしているということと、アフリカに比べて、その平均寿命の延びは非常に高くなっているということですので、逆に、もしこれから何か問題があったときに、平均寿命の延びが思ったとおりにならなかったら、こういう推計にはならないという危険もはらんでいると考えられると思います。

○尾身座長 では、その他、事実関係について御意見はございませんか。

○萱島構成員 簡単なことで恐縮なのですが、今回、アジアを初めとする開発途上国における高齢者施策の現状の整理ということで検討事項になっていますが、その範囲をどういうふうにお考えかというところです。

 中国、韓国が入っているのですが、資料の中には一部中国が入っていない表もあったりしておりまして、感覚的にはASEANを中心に中国も韓国もというのはわかるのですけれども、例えばモンゴルも横にあったなとか、南アジアはまだそこまでは行っていないのだけれどもとか、少しそこのところの比較の定義を教えていただければと思います。

○堀江統括調整官 少し確信犯的にいろんな概念を使っていて申しわけございませんが、ASEAN+3という世の中のフレームワークがあるものですから、それを使って資料を用意している部分がございます。

 ただ、中国、韓国というのは、ある意味コントロール群、比較対照群として見ていまして、日本に近い高齢化のスピードにあるような韓国があって、中国はASEANの中での最先端国のタイと比較的いろんな指標でも似ていますものですから、ASEANだけ見ていると視野が狭いかなということもあって、中国、韓国を入れてございます。

 それから、この国際協力というもので、先ほどのチャートをつくった中にも入っているのですけれども、シンガポールですとかブルネイですとか、いわば国際協力というものの、ODAの非援助国なども入れてございますが、そこも政策対話みたいなことはあり得るので除外していないというような形でございます。

 それで、南アジアはどうなんだ、モンゴルはどうした、アフリカはどうしたということですと、特にODAといいますか、国際協力実施機関でもあるJICAとの御相談でもありますけれども、今の時点では、やはりASEANを核において議論していただいたほうが拡散しないかなと思っています。

○尾身座長 大体、事実関係についての質問はよろしいですか。

 それでは、残り30分ちょっとありますが、少し意見交換ということで、きょうのプレゼンテーションが3つあったわけですけれども、これから、今のアジアの国を中心ということですが、ニーズがどうあるかということと、それから、日本が今までの経験、あるいは、経験だけではなくて、堀田委員からもありましたが、今、議論をされていることもあるわけですね。そういうことを踏まえて、どういう貢献ができるか、きょうは第1回目ですけれども、そんな話を少しできればと思いますが、どなたかありますか。

○江口構成員 いろいろ発言してすみません。

 非常におもしろい発表をいただいたわけですが、恐らく日本が貢献できるという前に、対象国をどう理解するかということが一番大事になると思うのです。

 今日いただいた資料というのは、例えば高齢化ですとかGDPですとか、客観的な要素だと思うのです。国というのは非常にまちまち、多様でありますから、まず何をすべきかということを考える前に、主観的要素といいますか、そこをもうちょっと深めて分析できないかと思います。

 家族とか地域という話が堀田構成員からも出ましたけれども、そういった家族と地域のつながりというのがそれぞれの国でどのような特性があるのか。それとの関係で、実は、今日は議論に全然出ていないのですけれども、アジアの国々もイスラム教の国があります。

 イスラム教国というのは、政教が分離しているかどうか微妙なところもありますし、宗教の日常生活に対する影響が非常に強い。そうなってくると、イスラム教の国における家族とか地域の捉え方というのが、ほかの国と違うのかどうかです。

 アジアの国々の中にも、結構イスラム文化圏の国があるわけです。ですから、そういうこともわかれば、検討のアプローチも随分変わってくるのではないかという気がするわけです。

 それとの関係で、先ほどの事実関係に関し、堀田委員のお話の中で、最後に、自助、互助、共助、公助という5ページにある議論で、新しい互助という概念を提示され、互助というのは、自助、共助、公助以外のものだとあります。

 問題は、そこで家族は自助なのか互助なのかということです。多分、自助というのは本人だけで家族は互助だという御議論ではないかと思うのですが、けれども、民法上は、家族というのは、直系血族、兄弟姉妹は扶養義務があって、法律上は扶養しなければならないということになっていますね。そういった法的義務のある関係とそうでない近隣の助け合いを一緒にしていいのだろうか、という疑問があります。

 それはそれとしても、新しい互助というのを考えるときに、日本の場合、70年代後半に、家族は福祉の含み資産だという日本型福祉社会論の提示があって、これにはかなり批判があったわけですね。したがって、家族も含めた互助というときに、それを超えた形で互助というものを提起できるのだろうかというのが非常に大きな課題です。

 そういう意味で、主観的側面としての家族とか地域とのつながりというのを日本自身がどうするのかというのは、この発表では、私はよくわからない部分もあったし、それから、多分、対象国のアジアの国々も非常に多様であると同時に変わりつつあると思います。そこがもうちょっとわかれば、日本として何をやっていけるかという議論の足がかりになるのではないかというのが意見です。

○尾身座長 どうもありがとうございます。

 今の江口構成員の問題提起は随分大切な問題だと思いますけれども、そのことを議論する前に、その他、こういう切り口で何かございましたら、お願いします。

 どうぞ、大泉委員。

○大泉構成員 日本総研の大泉です。

 3点ほど、今のお話をお聞きして思ったことがあります。

 一つは、このプロジェクト自体、この研究会自体ですごく魅力的だというのは、Active Agingという言葉だと思うのですね。我々が高齢化問題を考えるときに、社会が高齢者をどう支えるかということが中心になるのですが、ここでは高齢者が社会をどう支えるかという逆の発想があり、これはとても刺激的だなと思っています。

 林構成員がご指摘なされたように、高齢者は人口の5%と定義すれば、高齢者は81歳以上となるという御指摘は非常に面白いものでした。高齢化問題は、人口ボーナスの議論の裏返しですが、人口ボーナスというのは一つの枠組みでありまして、生産年齢人口を64歳までと定義していますが、実際は80歳でも構わない。

 そうすると、80歳まで働ける環境を作れば、日本の人口ボーナスはまだ続いているのですね。高齢者の定義を今一度考え直さないといけない。その点で、Active Agingというのは、非常に魅力的な考え方です。

 反対に、開発途上国を見ていくときには注意が必要です。実際に、中国もタイも憲法で60歳以上を高齢者と定義している。日本とは異なる高齢者の経済社会状況があるということですね。 

2つ目は、では、今回の研究会の対象地域についてです。ASEANが、対象地域になっているのですが、様々な国が属す地域ですが、実は共通の問題を抱えていると私は認識しております。それはどういうことかと申し上げますと、ASEANは、ミャンマー、カンボジア、ラオスは除けば、ほとんど中所得国の国であるということです。

 世界の中所得国が共通の課題を抱え始めているのだと思います。

 たとえば、林構成員がご指摘されたように、未富先老という問題、所得が豊かになる前に高齢化が来てしまうのだという問題はまさしくその一つです。

ASEANの社会保障制度整備のむずかしさは、都市と農村との大きな格差のなかでいかに公平な社会保障制度をつくるかにあります。

 例えばタイでは、バンコク周辺には1人当たりGDPが1万ドルを超える人が1,200万人くらいいます。タイ国全体の1人当たりGDP5,000ドルというところですが、それ以外の多くの人が1人当たりのGDP2,000ドル以下の地域に住んでいます。

 このような格差のある中で公平な社会保障制度をつくるのは非常に難しい。日本とまったく違う世界かというと、実は日本と同じような問題を抱えている側面がある。それは互助の必要性です。日本は、堀田構成員がおっしゃったように、今、互助の必要性が強調されていますが、実は中所得国の社会保障で重要なのは互助なのです。堀江調整官が3年間タイに行かれた目的は、まさしくタイの高齢化を地域福祉を通じてどうささえるかであったと認識しております。

 これは日本の知見の提供ということに加え、日本も一緒に考える問題なのだと思います。中所得国、ASEANにはそういう問題があって、まさしく我々は一緒に考える時期に来ているのだろう、これが3点目です。

 3点目に少しだけ加えておきたいと思うのですが、では、互助をどう形成するかについては、農村開発とか村おこしとか、多分そういうものともかかわっており、これはまた初めに申し上げたように、Active Agingにかかわる話であると思うのですね。

 堀田構成員がおっしゃったように、社会参加と労働市場への参加をどうするのかということを、まさしく両方を一緒にしてしまう、地域で両方を一緒にしてしまうようなことが必要だということです。これは、開発途上国も実は日本も同位相にいるのです。そのようなことを考えると、我々も学びながら、支援を考えられるのではないか、そのようなことを考えます。

 以上、3点です。

○尾身座長 どうもありがとうございます。

○林構成員 どうもありがとうございます。

 互助という点で、本当におもしろいなと思うのですが、やはり、例えばESCAPの会議などにも行きますと、まさにそのCSOCivil Society Organizationといいますか、NGO、そうしたものをいかに活性化していくかというのがどの会議でも大きな点になっていて、それは、今、大泉構成員がおっしゃられたように、やはりまた互助しかないところの特にそういった特徴というのがあるのかもしれませんし、そうしたことは、非常にNGOCSOといったものをどういうふうに、今後、日本として捉えていくかというのは、一つのチャレンジだということもあります。

 あとは、例えば、日本の中ですけれども、ある地域で「ふれあいの家」というのがあって、そこで高齢者に介護予防の活動をボランティアがやっているというところの話を聞いていましたら、介護予防で来られる方があるときはボランティアになって行ってやる、ボランティアとそのサービスを受ける人が交互になっているということが、実際に行われている話を聞いたことがありまして、まさにそれこそ互助なのだろうなと思います。

 それは、市がそうした場所に補助金を出して提供して、あとは地域で運営しているという、そういうようなところですので、例えば開発途上国的にいうCSOだとかNGOという枠組みではないところで、かなり多くの互助的な活動が日本で行われていて、昔だったら自治会もあったし、そうしたものをどういうふうに明文化して見せて、それをもしかして伝えるものがあれば伝えていけるのかなと思ってはいます。

 あとは、先ほどは中国の省別に言いましたので、かなり大きいレベルですけれども、やはり地方分権というものをどう捉えていくか。あと、外国から各国に行くと首都からということになりがちですけれども、一番必要としている支援は、もしかして地方のほうにあるのかもしれないし、そうした視点を持ちながら活動していけたらいいのだろうなと思いました。

 以上です。

○尾身座長 どうもありがとうございます。

○大泉構成員 さきほどは互助について強調しましたが、1万ドルを超える地域に1,200万人ぐらいの人口があるバンコク周辺では、我々の経験や知見を生かすべきでしょう。

 今、JICAが取り組んでいる介護のサービスなどの支援は、まさしく我々が知見を生かせる分野です。先ほど、互助ということを強調したのは、実は農村というのは日本と同じような過疎ではないからです。

 東南アジア諸国のベビーブーマー世代というのは、1960年とか1970年代生まれ、つまり、人口抑制策が入る前の世代なのです。ですから、今4050歳ぐらいになっているのですが、この世代が農村に割とたくさんとどまっている。

ASEANの高齢化問題を考えるとき、都市と都市以外のところの高齢者を分けて考え必要があると思います。

○堀田構成員 皆様に関連しつつなのですけれども、私も3つあります。

 1つは、対象をよく知るということです。

 特に私が超不勉強なのですけれども、日本の場合は、御紹介した「2015年の高齢者介護」の中でもすごく言われたのですが、高齢者像がどんどん変わっていくということが前提になっていて、例えば、世代が下がっていくにつれて雇用者の割合がふえていくので、雇用者というのは、地域とのつながりはどうなのかとか、あるいは消費社会を経験しているので価値観は多様化するとか、そういった変化していく高齢者像にどう対応するかみたいなことが言われています。

 この対象として考えているアジア諸国の高齢者像というのは、現状も私はよく知らないのですけれども、このぐぐっと急に高齢化が進んでいくというこの期間に変わっていきそうなものなのか、ある程度現状の高齢者像を捉えていればいいのかということも含めつつ、主観的な指標というときに、変化も踏まえて何か情報が御提供いただけるとありがたいかなというのが1つ目です。

 2つ目は、互助のところです。

 先ほど江口構成員もおっしゃったように、我が国でもこれをどうするか、全然、解がない話をどうするかということを議論しているわけです。

 先ほど大泉構成員もおっしゃいましたが、まちづくり全体というのか、地域が地域の最適を選ぶということを何度か申し上げましたけれども、住民が住民の課題に気がつき、資源もわかり、それを結びつけていくということを考えると、広く都市計画とか空間計画、あるいはコミュニティーデザインみたいなものにもかかわってくる問題で、そういった観点からまちづくりとして互助をどう捉えているのか、コミュニティーデザインの中での位置づけという観点も重要かなと思います。

 そのとき、先ほど林構成員が御紹介くださった例にもありましたけれども、それもアジア諸国の変化がわからないのですが、旧来型のいわゆる住民組織とかというだけではなくて、普通のビジネスセクターという重要なステークホルダーがあります。

 例えば日本だけではなくてイギリスとかでも各国で、認知症のまちづくりなどでも言われていますけれども、旧来の自治会なり何なりみたいなものだけではなくて、銀行とか郵便局とか商店とかにとっても認知症の人たちへの対応はすごく重要で、住民組織だけではなくて、そういった関係するさまざまなセクターを巻き込んだコミュニティーデザインということも含めながら、このまちづくりというものの文脈で、広く自助と互助を捉えていくということも大事かなというのが2つ目です。

 最後、3点目は、先ほど林構成員が地方分権ということをちょっと触れられて、私は非常にそれが大事だと思っています。

 地域マネジメントの重要性というのは、地域包括ケア研究会の議論の御紹介でもちらっと触れさせていただきましたが、結局、国レベルで決めてしまえる、大枠をつくるべきもの、もちろんコンセプトとかとありますけれども、地域が地域をしっかりと見て、その資源と課題を見据えたモデルをつくっていける力がないと、壮大な無駄をつくっていくということになっていくと思います。

 ですので、かかわってくる要素を地域におろしていきながら、それは、現状で地方分権のあり方がどう進んでいるのか、地域マネジメントの主体がどのようにデザインされているのかということを踏まえつつ行われる必要があり、この地域という視点は非常に重要ではないかと思います。

 以上です。

○尾身座長 どうもありがとうございました。

 それでは、曽根構成員、どうぞ。

○曽根構成員 国立保健医療科学院の曽根でございます。

 議論を聞きながら、きょうは多分意見出し的な話が主だと思いましたが、どういうようにフレーワークとしてまとめていくのかというところを、これから考えていかないといけないのかなと思いました。

 比較や議論のフレームワークとしては、一つは、最初に事務局の資料で示されたActive AgingHealthParticipationSecurityというフレームワークで比較するということがあります。

 あとは、林構成員が出されたデモグラフィックな部分あるいはヒューマンリソースの面とかの比較と、先ほど江口構成員がおっしゃった宗教や、イスラムなどカルチャーの話もあると思います。あるいは先ほど堀田構成員がおっしゃった、社会における自助、互助、共助、公助といったフレームワークでどのように比較していくのか。そのあたりを、きょうはもう時間もありませんが、私たちが議論を深めていかないといけない点だと思いました。様々な話が出るのだけれども、どういうふうにまとめたらいいか、また実地調査に参加するときにどのような切り口、フレームワークで見ていくのかというところを考えなければならないと思います。

 以上です。

○尾身座長 では、鈴木構成員、どうぞ。

○鈴木構成員 国立長寿の鈴木です。

 大変に難しい問題にチャレンジするということで、よくわかるのですけれども、私は、この資料の中で、基本的に、データの中で欠落しているのが、高齢者というのが、60とか65歳以上を一括して扱ってしまっていることの問題点だと思います。

 でも、少なくとも日本の現状で申しますと、いわゆる60歳の方は、今、高齢者ではないわけです。65歳以上を高齢者としているのですが、全人口の2526%ぐらいを占めて、実数でいうと3,000万人がいるのですね。まず日本の問題ですけれども、この方々を一くくりに高齢者として議論を、私はできないものだと思うのです。

 今後のアジアのエージングでいかにそういったアクティブなエージングを日本の経験やノウハウを生かしていくかというときに、少なくとも、高齢者の中でも非常にアクティビティーが高く、ソーシャルパーティシペーションも十分可能な、日本で言う前期高齢者、Young old、それと、やはり自立の支援というものが、個人でもあるいは互助でも地域でも必要になってくる後期高齢者、Old oldですね。

 そういった区分けで考えないと、例えば、それこそ林構成員の今後の65歳以上の人口推移ですけれども、アジアだけが以上にふえていきますというと、何かすごくアジアでインパクトが大きいように見えるのですけれども、その中で、Active Agingを実際に担える前期高齢者というのはどのぐらいいるのかとか、本当にいろんな支援なり何なりが必要となってくるような後期高齢者がどのぐらいになってくるのかということを、分けて考えないといけないのではないかなと思うのですね。

 もちろん、ソーシャルインフラの度合いですとか、エデュケーションですとか、いろんなことを区分で考えていく。もちろん、カルチャーも違いますが、まず、高齢者そのものの健康とか高齢者そのものの自立というものを考えるときには、そういった対象の区分けというのでしょうか、そこのところをきちっと分けて考えないと、一方で非常に元気な高齢者がイメージされながら、一方で虚弱な高齢者がいる。その辺がごっちゃになってしまう議論になると、収拾がつかないのではないかなという危惧を少し持っております。

○尾身座長 どうぞ。

○萱島構成員 きょうは、専門の方々の大変深い議論を聞かせていただいて、大変勉強になりました。ありがとうございます。

 私自身は、JICAで社会保障分野も含めた社会セクターを担当しておりまして、堀江調整官が専門家として出られておられたタイのプロジェクトも所管しているところに今おります。

 そういう意味では、国内の高齢者対策についてはそれほど存じ上げていないのですが、ASEANや開発途上国からの高齢者対策についての支援要望は、まさに堀江調整官がおっしゃったように、特にASEANから、非常に多くなっています。現在、タイで本格的なプロジェクトを始めておりますが、本格的な事業は今のところこれだけです。ただ、同様な要望や希望というのは、いろいろな国から寄せられています。

 その中で感じますのが、開発途上国の方々は、具体的なシステムや制度をそのまま導入できるようなやり方、例えば、マニュアルであったり、人材育成の方法であったり、財政の仕組みであったりを要望することが多いのですが、まさにここで行われたような、高齢者対策のあり方そのものについての基本的な考え方ですとか、検討がないと高齢者対策の単純な移転というのはうまく行きません。ですので、まず、私としては、日本の高齢者対策が、どのような社会環境のもとで、どのような議論が行われ、どのように変わりながらできてきて、かつ、その課題がまだ今もどこにあるかということを、よくわかるように、開発途上国に示してあげることが非常に重要ではないかと感じているところでございます。

 これは、実は言うのは易しくてやるのは難しく、日本人にとっては往々にして当たり前であることが、彼らは全く違う社会の中に生きているので、全く違うことをイメージしながら同じことを議論しているような場合もあります。

 また、やはり高齢者対策の問題は日本国内の問題であったこともあり、それを異なる文化や社会環境の中にいる人に、英語に直してわかるように伝える作業が必要です。その中で彼らが一番いいと思うものを彼ら自身が選択する、そこがないと具体的な協力というのはなかなか始められないなというのが、援助の現場にいて感じるところでございます。

 そういう意味では、それぞれの国の、例えば文化的な状況ですとか、家庭や家族や地域社会の状況をもう少し知る必要があるというお話もあり、そのとおりであると思うのですけれども、そういうことを念頭に置きつつ、では、それとは違う、日本のどのような状況の中で、日本の制度ができてきたのかということをわかるようにする方策が、今後は必要なのではないか、つまり、日本のことについても海外の人によくわかってもらうような、彼らが選ぶときに参考となるような日本についての分析や表現の仕方というものも、非常に重要かなと思っております。

○尾身座長 では、林さん、事務局の順番でお願いします。

○林構成員 ありがとうございます。

 先ほどの江口構成員のお話で、宗教、文化という話ですけれども、例えば、インドネシアは世界で1、2を争うイスラム国ということになりますが、ここは、本当にまさに祝福すべき高齢化といいますか、非常にうまく母子保健対策もやったし、人口計画も非常に力を入れてやって、あっという間に出生率も落ちて、それで高齢化に至るようにいったということです。

 この中には、そうした全国に広がるイスラムのネットワークとかいったものも、非常に大きな役割を果たしていたとは思われますので、今後の高齢化についても、やはり先ほどのCSOというか互助につながる話ですけれども、そうした地元に広がる宗教的なネットワークをどういうふうに生かしていくかというのは、一つの大きなポイントだとは思います。

 一方、この高齢化のときに、一番高齢化が低いなというのがフィリピンでして、ここはASEANの中でも非常に出生率が一番高いぐらい、東ティモールを除いてですけれども、非常に高くて、これはキリスト教カトリックという文化、宗教的背景が非常にある。

 なので、そうしたことで、もしかして今回のこの研究やプロジェクトなどには、フィリピンは対象にならないのかもしれないのだけれども、そこの視点を忘れてはいけないなということと、逆にフィリピンにおける、その高い出生率のほうが緊急性は高いというか、そうしたことも思いながらやっていかなくてはいけないなと思います。

 取りとめもありませんが、以上です。

○堀江統括調整官 多分、放っておくとあと何時間でも続くのだと思いますので、少し閉じる方向にいきたいと思います。

 何を申し上げたいかというと、こんなふうに次に向かって準備をしようと思いますというお約束をしながら、何か御意見があれば、また言っていただきたいと思います。

 まず最初に、鈴木委員から言われた一括高齢者、それはそのとおりだと思っていて、それを年齢でするのか、あるいは虚弱と元気という分け方にするのか、少し工夫をしながら整理したいと思います。

 それから、江口委員の話の中に出てきたのだったかと思いますけれども、要するに、もう少しこのActive Agingというときに、例えば、タイに行ったときなどですと、日本の社会の中で、民生委員のことなどもうちょっと知りたいと言われたようなこともあったりして、どんなものがあるのかというストックの整理というのはしたいと思います。

 きょう、ここで出したものは、確かに江口委員が言われたように、何か全てここではこうという感覚の集まりでもいけないということもあって、やや客観指標を重視したのは事実でございます。

 ここの12ページというところに「各国の社会保障制度の整備状況と高齢化に関する課題等」というのは、これは少しこわごわと、JICAの報告書などをもとに、少し手伝っていただける期間もあったので作成してみていて、こうしたものが、今度予習をするという意味では、各国の状況を整理、主観的な部分というのを整理していく試みかなと思います。

 それから、先ほど曽根委員から言われたように、これから調査もしていくわけなので、厚生労働省の別の事業でございますけれども、12月にはハイレベルミーティングという国際会議がございまして、それに向けて、各国に適切に問いかけをして調査ができるようなものがあれば、それを聞き出していくということもあるのかなと思います。

 それから、日本の仕組みはこんなものがありますというのをお見せする、社会の仕組みとしてこんなものがあるのですというのをお見せする中で、各国の状況の違いだとかというのをからめ捕っていくみたいなことが、一つあるのではないかと思っております。

 それぞれの課題は非常に重いので、国際課が担当するものの中で、足をとられないように注意しなくてはいけないなと思いながら考えたところでございまして、そんなふうに進めさせていただければと思います。

○江口構成員 少し柔らかい話をすると、先ほどイスラム教の話をしましたが、実は私は昨年研究でモロッコに行きました。モロッコというのはPolygamy、一夫多妻を認めているのです。そうすると、介護を考えると、例えば、1人の夫に妻が2人、3人いたら、夫が要介護になったらこれは結構家族が支えになるけれども、逆に妻が要介護になったらどうするのだろうかということも出てきます。

 ただ、イスラム教もどこまで厳密かによりますから、一夫多妻を認めている国と認めていない国があるのかどうかとかにもよります。

 そういうふうに、宗教というのはいろんなところに実は関係していて、先ほどの家族と介護を考える際にも宗教によって違ってくるのではないか。イスラム教というと難しい話に聞こえますが、非常にわかりやすい例で言えば、そういったような違いが考えられるということなのです。

○尾身座長 それでは、大体いいですか。

 私のほうから、最後にまとめということではないですけれども、感想と事務局へのお願いということですが、私の印象は、最初の会議で既に重要な課題といいますか、テーマはかなり出てきたのではないかという気がしています。

 きょう何人かの構成員の方から発言があったように、今回の課題は特にアジアの諸国に我々が何かサポートできることがあるかどうかというのが主題ですけれども、一方、我々自身がまだ考えているところがいっぱいあるわけで、相手国への支援をすると同時に、実は我々自身も学ぶ、学びつつやるというところが多分あるので、きょう、これがまず一つ大事なことだと思うのですね。

 それから、JICAなどが今まで厚労省とかいろんなところと一生懸命やっていただいた国際協力で、例えば感染症対策などというのは、比較的答えが一つスタンダードがあって、それをグローバルに適用しようということで、比較的Straight forwardという感じですかね。

 ところが、この今のNCDsという、先ほど堀江調整官からあったHealthのシステムだとか高齢者の問題、これは結局は地元、地域で行われなくてはいけないことなので、地域はさまざまで、場合によっては日本よりも進んだ取り組みがなされていることもある。

 これについて、先ほど、江口さんですか、まちづくりのありようというか、家族と地域というお話をしていましたよね。これが、各国によってもう千差万別ですよね。

 恐らく、これからのActive Agingというのは、今まで何度も出てきたように、コミュニティーのあり方と非常に密接に関係しているので、先ほどのDemographyという客観的な指標と同時に、もう既に堀江調整官が今のコメントの中でおっしゃっていたので安心しましたけれども、いわゆるストックのことが必要ですね。

 各地域、各国でどういう地域のあり方、どういう家族構成のあり方、これは必ずしも数字的にはあらわせない、ナラティブにやるしかないと思いますけれども、そういうことを少しまとめて、資料を幾つか必要だったら調査をするということになるのでしょうし、あるものをまとめるということでもあります。そういうことを少しされたほうがよくて、ただこの客観的なDemographyだけでは、恐らく議論は先に進まないのだと思うのですね。

 そういう意味では、家族と地域のあり方、そのことがないと、恐らく互助だとか自助だとかという議論はほとんど先に進まない。そういうコミュニティーのあり方によって、恐らくいろんな方法も変わってくるので、そういう資料をお願いしたいと思います。

 それから、いろいろ大事なポイントを言い出したら切りがないのですけれども、一つ私が一番大事ではないかと思ったのは、結局、おっしゃるように、開発途上国は、基本的には今までのODAでは各論が欲しいと言うのですけれども、恐らく今回は、例えば日本の包括ケア、先ほど堀田さんからありました、包括ケアのいろんな研究会の議事録を出したって、これは恐らく役に立たない。日本はこういうことがあって、いろんな法律がこうあって、こうやって規則ができたということをそのまま羅列しても、恐らく役に立たないでしょうね。

 そうすると、恐らく一番大事なことは、むしろ基本的な考え、どういうことでこれをやったんだという、基本的な哲学とか考えということが、むしろ開発途上国の人が参考になるという点では、そこが一番だと思っています。

 もちろん、最後のほうには、こういう具体的な方策もありますよということは、アネックスでつけてもいいけれども、それ自体を何も説明がないままやるということは恐らくなかなか役に立たないので、基本的な考えをしっかり示すということが恐らく大事だということです。

 戻りますけれども、そのためには、まちづくりが重要で、堀田さんから出していただいた資料の5ページ、葉っぱの絵が出ていて、今までは5つの要素を平板に並べていたのを、これがだんだんと変わって、住まいとか地域というのがまずあるという、こういうことが少し発展してきたわけですね。

 こういうことの中で、一体、各国がどういうコミュニティーのあり方、家族のあり方があるかということをまず概観的に知ることが必要になってきます。

 そういう文脈の中では、リソースの問題も、ヒューマンリソースもあるし、お金のリソースもあるし、一つ私がきょう林さんのあれで驚いたというかなるほどと思ったのは、アジアでは、我々のいわゆる伝統的な常識では、Extended familyというのがあって家族が大きいということで、独居をする人など余り少ないけれども、今はかなり出てきているということですね。

 そういう意味では、我々と共通の部分もあるし、同時に、まだ日本に比べて、WHOでの私の経験とすると、相対的にはまだ日本よりもコミュニティーがしっかりしている地域が多いですね。

 そういう中で、日本も学ぶところもあると思います。きょうの1回目で出された様々な意見を聞いていただいて、その客観的なデータ以外に少し調べるところがあればやってもらって、きょう、いろんな互助の問題が出たり、老人といっても一括りにはいかないのであるとかそういうことに、次回からは少し基本的な考え方というのを少しずつ練っていけばいいのではないかということで、事務局の方、よろしいですか。

 きょうは1回目で、私は大変いい最初の議論ができたと思います。

 それでは、資料5の説明をしていただけますか。

○山内国際協力室長 説明をいたします。

 「今後のスケジュール(案)」ですが、第2回は7月19日となっております。1618時です。その後の日程及び国内、海外調査につきましては、委員の皆様と個別に電子メール等で連絡調整をさせていただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。

 以上です。

○堀江統括調整官 今、資料を整理いたしますけれども、何分、皆さんは有識者の皆さんですので、また個別にいろいろと御相談しますので、いろいろと教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○尾身座長 では、そろそろ時間になりましたので、どうもありがとうございます。

 では、次回のことについて、事務局のほうから連絡はございますか。

○杉田専門官 次回の開催は7月19日金曜日1618時になっております。海外調査、国内調査につきましては、後日メールで御連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。

 それでは、これをもちまして、第1回の検討会を閉会いたします。どうもありがとうございました。


(了)

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