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2013年9月27日 第1回社会福祉法人の在り方等に関する検討会 議事録

社会・援護局福祉基盤課

○日時

平成25年9月27日(金)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館5階共用第7会議室


○出席者

浦野構成員 雄谷構成員 高橋構成員 田島構成員 田中構成員 (座長)
千葉構成員 対馬構成員 西元構成員 藤井構成員 松原構成員
松山構成員 宮田構成員 森構成員 (全員出席)

○議題

1 今後の社会福祉法人の在り方について
2 今後の進め方について

○議事

○友藤課長 定刻になりましたので、ただいまから第1回「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 開会に当たりまして、岡田社会・援護局長より御挨拶申し上げます。

○岡田局長 社会・援護局長の岡田でございます。本日は、お忙しい中、お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。

 社会福祉法人につきましては、平成12年の社会福祉基礎合同改革から10年が経過しまして、措置から契約への転換であるとか、福祉ニーズの多様化・複雑化、NPO、株式会社などの福祉サービスの参入など、法人を取り巻く環境は大きく変わりつつあるという状況でございます。また、政府全体で取り組まれています日本再興戦略であるとか、規制改革実施計画、それから社会保障制度改革国民会議の報告書におきまして、社会福祉法人の大規模化、複数法人による連携、経営の高度化、法人の経営の透明性の確保や非課税扱いにふさわしい地域貢献などについて取り組むというところでございます。

 また、社会・援護局といたしまして、さきの通常国会におきまして、廃案となりました生活保護法の改正だとか、生活困窮者自立支援法を、可能な限り早期に改めて国会に提出して、その成立を目指すことにしているところでございますが、これらの法案の中で、従来の定職に対する福祉ではなく、その手前の段階にあります生活困窮者というものも新しく位置づけまして、それに対する支援を拡充していく取り組みをするなど、新しい福祉ニーズへの対応をしていこうというような取り組みを行っているところでございます。

 こうした中で、社会福祉事業の主な担い手であります社会福祉法人に対する期待は、我々もそうですし、それから国民の皆さんも非常に大きなものを抱いていると思いますので、こうした環境の変化にどう対応し、その上でどういうあり方として社会福祉法人があるべきかを改めて考え直す時期に来ていると考えているところでございます。

 社会福祉法人は、長年にわたって社会福祉事業を支えてきておられまして、実施の事業の種類、それから形態も非常に多岐にわたっておりますので、そのあり方に関する論点も多岐にわたるものだと考えております。この検討会では、こういった事情を踏まえまして、新しい時代にふさわしい国民や地域の期待に応えられるような社会福祉法人のあり方について、論点整理を行っていただきたいと思っていますので、皆様方の積極的な御意見を賜れればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○友藤課長 ありがとうございました。

 それでは、まず構成員の方々の御紹介をさせていただきたいと存じます。五十音で御紹介をさせていただきます。

 浦野正男委員でございます。

 雄谷良成委員でございます。

 高橋利一委員でございます。

 田島誠一委員でございます。

 田中滋委員でございます。

 千葉正展委員でございます。

 西元幸雄委員でございます。

 対馬徳昭委員でございます。

 藤井賢一郎委員でございます。

 松原由美委員でございます。

 松山幸弘委員でございます。

 宮田裕司委員でございます。

 森貞述委員でございます。

 それでは、本検討会の座長の選任に移らせていただきたいと存じます。

 選任につきましては、資料1の開催要綱の3(2)の規定に基づきまして、構成員の互選といたしたいと存じます。座長の御推薦がございましたらお願いをしたいと存じます。

 松原委員。

○松原構成員 田中委員が、社会福祉法人の政策や経営など造詣が深くいらっしゃいますので、田中委員を委員長に御推薦したいと存じます。

○友藤課長 ただいま、田中委員を座長に御推薦する声がございましたが、いかがでございましょうか。

(「異議なし」と声あり)

○友藤課長 それでは、皆様方の御賛同をいただきましたので、田中委員に本検討会の座長をお願いしたいと存じます。

 それでは、田中先生、座長席のほうへお移りください。

(田中構成員、座長席へ移動)

○友藤課長 それでは、頭撮りのカメラの方がいらっしゃいましたら、ここまでということで御退室を願いします。

(報道関係者退室)

○友藤課長 それでは、以下の進行につきまして、座長の田中先生のほうにお願いしたいと存じます。同時に、先生のほうから一言御挨拶を頂戴できればと存じます。

○田中座長 座長、進行役を引き受けさせていただきます、田中でございます。

 活発な議論をお願いします。社会福祉法人が今までこの国で果たしてきた成果、貢献については、敬意を表する人がほとんどであると思います。それについては異論がないのですが、では、このままでいいかというと、誰もそう思っていなくて、社会福祉法人ができることはまだまだあるはずなのに、眠っている能力や眠っている機能がある。それを含めて、社会福祉法人の新しいあり方を考えていく前向きの会だと理解しています。御協力をよろしくお願いします。

 では、早速議事に入ります。進め方としては、議事次第に沿って、事務局より資料を説明いただき、項目ごとに質疑の時間を設けていきます。

 初めに「(1)今後の社会福祉法人の在り方について」、事務局から資料の説明をお願いします。どうぞ。

○正野補佐 今日配付している資料は、資料1、2、3と、参考資料1、2、3、4でご  ざいますけれども、皆様、お手元に届いていますでしょうか。

それでは、資料2から御説明させていただきます。

 資料2は「社会福祉法人の現状」と題しております。

ここにお集まりになられている先生方は、そもそも社会福祉法人についてよくご存知の先生ばかりでいらっしゃいますが、法人の現在の概況について、共通理解を図るために、簡単に御説明をしていきたいと思います。

 まず1枚めくっていただきまして、3ページ目でございます。「社会福祉法人制度の概要」についての資料でございます。

 社会福祉法人は、社会福祉事業を中核的な事業として行うことを目的としまして、社会福祉法に基づき設立されている法人でございます。この法人の経営については、法律上原則が3つ示されておりまして、社会事業の担い手としてふさわしく、事業を確実、適正に行っていただくために自主的な経営基盤の強化、福祉サービスの質の向上、事業経営の透明性の確保、こういったことをしっかり図っていく必要があると明記されております。

 法人の運営につきましては、その非営利性・公益性に鑑みまして、運営に当たって強い公的規制を受ける一方で、税制優遇措置や補助金の交付を受けることができることになっております。

 現在の法人数は、都道府県、市で所轄しているものが19,407法人、地方厚生局、厚生労働省本省で所管しているものが403法人、合計で2万弱の法人数となっております。

 4ページ目は「第一種社会福祉事業」の資料でございます。

 先ほど申し上げました社会福祉法人の中核事業である社会福祉事業は、第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業の2種類がございます。第一種社会福祉事業につきましては、主として入所施設サービスでございまして、下の点の枠囲みにありますようなものがございます。

 代表例としましては、生活保護法に規定する救護施設、老人福祉法に規定する特別養護老人ホームなどがございます。

 これらの事業に関しては、一番下の枠囲みの中になりますけれども、経営主体につきまして、行政または社会福祉法人が原則、個別法によってさらに上乗せの制限がされている場合もございますが、原則的にはそのようにされております。

 5ページ目は「第二種社会福祉事業」の資料でございます。

 第二種社会福祉事業につきましては、主として在宅サービスでございまして、具体例としましては、老人福祉法に規定する老人デイサービス事業、障害者総合支援法に規定する障害者福祉サービス事業などがございます。

 下の枠囲みに書いてありますように、こちらについては経営主体の制限というのは基本的にございません。なお、個別法などで個別具体な制限がある場合もございます。

 6ページ目は、社会福祉法人が行う公益事業と収益事業の資料でございます。社会福祉法人は、その中核事業は社会福祉事業ですが、それとプラスして公益事業と収益事業を行うことができます。

 公益事業につきましては、社会福祉と関係のある公益を目的とする事業でして、具体例としては有料老人ホームの経営などが代表例でございます。

 収益事業につきましては、社会福祉事業と公益事業に付随して行う収益事業でございまして、例えば法人が所有している空き敷地を利用して駐車場を経営するとか、こういったものが代表例としてあります。

 いずれの事業も、その収益については、社会福祉事業と公益事業にしかその剰余収益が充てられないという制限がございます。

 7ページ目は、法人を取り巻く状況変化というものを図解したものでございます。

1950年代におきましては、救貧対策を基本としておりまして、その内容としては措置で施設処遇が中心、そしてその担い手としての行政、社会福祉法人が中心だったものが、介護保険法の成立や障害者総合支援法の成立によりまして、1990年代以降におきましては、福祉ニーズの多様化であったり、経営措置から契約への利用制度化、それに伴う株式会社、NPO等の多様な主体の参入などの状況の変化が起きております。

 8ページ目は、社会福祉法人の所轄庁の変化について記載した資料でございます。

 従来、社会福祉法人の所轄庁といいますのは、都道府県の区域であれば都道府県、指定都市、中核市であればそれぞれの市、そして2以上の県域にわたるものは国となっておりましたが、平成25年4月1日から第二次地方分権一括法が施行されておりまして、都道府県の中でも主たる事務所が一般市の区域内にある法人であって、その事業が市を越えないものに限り、所轄庁が一般市に権限移譲されております。

 この結果、今、法人の所轄庁というのは、一般市が729市所轄庁になっておりまして、2万の法人を800近くの所轄庁が監督・指導するといった状況になっております。

 9ページ目以降ですが、本来、この検討会は社会福祉法人の検討会ですので、法人単位の統計を御提示したいところなのですけれども、過去、統計が施設や事業単位の調査となっておりまして、現時点で法人という切り口での調査ではございませんので、このたびは過去の事業、施設ごとの調査を整理して、ここ10年程度の変化を説明したいと思います。

 1つ目は、入所・通所事業所を合計しまして、施設別にどのような社会福祉施設が増えているかというものを見た資料でございます。左側の枠ですけれども、高齢者の施設については、平成12年から23年を見ていただくとわかりますとおり、大幅に増加しています。障害者施設も同様に増加している。児童福祉施設は、そういった中で全体のシェアは減っているという状況でございます。

 右側は、それぞれの施設を経営主体別に整理して変化を追ったものですが、社会福祉法人の経営の数というのは、増加はしているもののシェア自体は若干減っている。かわりに営利法人経営の数が大きく増えているという状況になっております。

10ページ目でございますけれども、先ほどは、入所と通所を合計して全体の推移を追いましたけれども、今度は入所系と通所系ということで、事業所を分けて統計を分析すると、左側にありますように、入所系の事業所に関しては、社会福祉法人系の数は増加していますが、シェアは若干減っている。かわりに、営利法人の数とシェアというものが増加しています。

 右側にまいりまして、通所系の事業所ですけれども、こちらでも社会福祉法人経営の数は増加しておりますが、それを上回って営利法人の経営の数、シェアというものが大幅に増加しているといった状況でございます。

11ページ目から3枚程度は、今まで入所系、通所系という形で施設をまとめて御紹介しましたけれども、代表例として、高齢者、子ども、障害者から1個ずつ代表例として特別養護老人ホーム、児童養護施設、その次のページにまたがりますけれども、障害者支援施設、救護施設といった形で全体の状況をまとめたものでございます。こちらにつきましては、社会福祉法人の経営数が大体を占めているという状況でして、個別の例としてご覧になっていただければと思います。

14ページ目以降、ここから2枚は、先ほど御説明した通所系の事業所の具体例として幾つか施設の増減といったものをお示ししております。訪問介護事業、保育所、次のページまたがりまして、就労継続支援B型事業といった形で、具体例として記載しておりますので、こちらも参考という形でご覧になっていただければと思います。

16ページは、最初の概要のところに少し前出ししておりましたけれども、「社会福祉法人に対する規制と優遇措置」について記載した資料でございます。

 まず、社会福祉法人に対する規制としては、事業を実施するために供された財産はその法人の所有となって、持分が認められないということがございます。

 また、事業を廃止した場合の残余財産は、定款に定めた他の社会福祉事業を行う者に帰属することが基本でございまして、それができない場合には国庫に帰属することになっております。先ほど出てきましたように、収益事業からの収益は社会福祉事業と一部の公益事業のみに充当することになっております。

 また、所轄庁によって、措置命令、業務停止命令、役員解職勧告、解散命令等の監督指導に服するといったような重立った規制がございます。

 下にまいりまして、優遇措置の例としましては、1つは施設整備に対する一定額の補助、2つ目としましては、税制上の優遇措置、3つ目としまして、法人が経営する施設の職員を対象とした退職手当共済制度がございます。

17ページは、社会福祉法人を含めました公益法人と株式会社を法人間の制度比較という形でまとめた資料で、ここから4枚程度そういった資料が続いております。

 まずは、社会福祉法人を中心に御説明しますが、適宜、議論の参考に、他の法人の部分もごらんになっていただければと思います。

 社会福祉法人につきましては、まず根拠法は社会福祉法でございます。社会福祉事業を行うことを目的としておりまして、下のほうにありますとおり、出資持分は不可、残余財産の処分は、他の社会福祉事業を行う者か国庫といった形になっております。

18ページは、制度間比較の続きの資料でございます。

 このページは、主に指導監督の制度がどうなっているかでございますけれども、社会福祉法人に関しましては、大きな問題がない場合には2年に1回の定期監査が行われるということになっております。なお、外部監査を実施する場合には4年に1回にするなどの弾力化を行っております。

19ページ目は、法人間比較の3枚目の続きの資料となります。

 この資料では、各法人で閲覧請求があった場合に公表しなければならない法人の経営に関わる資料について記載しています。社会福祉法人については、対象者をサービス利用者、利害関係人にしておりまして、閲覧対象としましては事業報告書、財産目録、貸借対照表、収支計算書、監事意見書という形になってございます。

20ページは、税制上の比較の資料になってございます。

 細かにはいろいろと違いがあるのですけれども、例えば道府県民税、市町村民税といった地方税につきましては、社会福祉法人、学校法人以外の公益法人については、原則課税とされていまして、そこも非課税になっているという意味で、社会福祉法人は他の公益法人と比較しても、税制優遇を受けられている状況になってございます。

21ページは、社会福祉法人制度に関して、これまで行政等が行ってきた検討についてまとめた資料でございます。

 まず、平成9年に介護保険法が成立しまして、それを受けて平成10年に社会福祉基礎構造改革が検討され、12年に関連法の改正が行われております。それ以降でございますけれども、平成10年に社会的援護を要する人々の社会福祉に関する検討会というものがありまして、この中で福祉の対象となる問題の整理でありますとか、それを自主的、自発的に発見、対応していく取り組みの強化といったことが検討されたことがございます。

 さらに平成16年には、社会保障審議会福祉部会の中で、社会福祉法人の見直しについて触れられておりまして、その中で社会福祉法人はより積極的な公益事業を実施するべきではないかということや、評議員会や理事の構成を見直すべきではないかといったような提言が行われました。

 その後は、平成18年でございますけれども、これは厚生労働省の研究会ではなくて、社会福祉法人経営研究会のものですが、法人の規模の拡大でありますとか、ガバナンスの確立といった法人経営に着目して検討が行われた経緯がございます。

22ページは、先ほどの検討を踏まえて、厚生労働省としてどういう取り組みを行ってきたかということを記載した資料でございます。

 平成16年の提言に関しましては、公益事業を積極的に進める観点から、定款審査のあり方を弾力化したり、評議員会や理事の構成についての見直しを行っております。また、第三者評価の受審した法人に関しては、公益事業への資金移動の範囲拡大を認めるとか、運用上できる対応をしております。

 平成18年の報告書につきましては、規模の拡大の提言につきましては、社会福祉法人経営研究会で作成していただいた社会福祉法人における合併、事業譲渡、法人間連携の手引きを周知するとか、2つ目ですけれども、法人として公表すべき情報を追加して透明性の向上を図るといったことを要請ベースで行っております。

23ページは、今年になってから社会福祉法人についてなされた政府系の会議での提言をまとめたものでございます。

 まず、一番上の日本再興戦略、この6月に閣議決定されておりますけれども、この中では社会福祉法人が財務諸表の公表を推進すること、法人の規模拡大を推進して、経営の高度化を図るための仕組みを構築すべきであるといったことが提言されています。

 真ん中の規制改革会議実施計画では、平成24年度の財務諸表について、社会福祉法人と所轄庁で公表すべきよう要請するということと、25年度以降の財務諸表の公表について、効果的に行える方法を検討をということ、また、保育関係で第三者評価の推進について提言がなされております。

 最後の枠ですけれども、社会保障制度改革国民会議におきましては、社会福祉法人について、例えばホールディングカンパニーの枠組みのような法人間の合併や権利移転が速やかにできる、そういった制度改正を検討すること、また、下のポツにいきますけれども、法人の大規模化や複数法人の連携のほか、非課税扱いとされているにふさわしい国家や地域への貢献をもっと行っていくべきである、こうした趣旨の提言がなされているところでございます。

 資料2についての御説明は以上でございます。

○田中座長 ありがとうございました。

 本日は第1回で、基本的にフリーディスカッションです。ただいまの資料に対する質問でも結構ですし、資料に書かれていることをもとに御自分の御意見、問題提起をしていただいても結構です。フリーディスカッションですから、全員少なくとも1回は何か言っていただきたいですし、複数回言っていただいても結構です。どなたでも結構ですので、お手を挙げてください。

 森委員、どうぞ。

○森構成員 そもそも今回の在り方検討会の基本というのは、先ほども局長さんのお話しがございましたように、国民とか地域とかということを含めて、誰のためのあり方がこれから求められておるのかということが、一番大事ではないかと私は思います。

 そういう中で、この社会福祉法人の、いわゆるステークホルダーというのはいろいろあるかもしれませんけれども、先ほどの御説明にもありましたように、措置から契約へ変わったというそういう大きな転換というのは、利用者、ある面で国民、そういう視点でこの検討会の方向が示されなければ、例えば法人なら法人のための、もちろんそういうことも大事かもしれませんが、国民によりわかりやすい、そういうあり方が求められているのではないだろうか。ですから、そういう方向で議論がされれば、そして、こういう議論がされたことがわかれば、国民の利用者の皆さん方、あるいはその背後の家族の皆さん方にとっても、先ほど冒頭に座長がおっしゃいましたように、社会福祉法人が持っている、あるいは眠っているいろいろな社会的資源が地域に還元をされる、国民に還元されるようになればと思います。

○田中座長 議論の方向について、ありがとうございました。

 はい、どうぞ。

○千葉構成員 では、私のほうから幾つか。

 今まで御説明いただいた資料を拝見しますと、これまでもいろいろな取り組みが国のほうでされているということを理解しているつもりなのですけれども、その中で結構目につく言葉として、社会福祉法人における「公益事業の位置づけ」というのが、あちらこちらの見直しとか提言の中にたびたび出てきているように思います。

 当然それについては、先ほどの取り組みという中でも、正確に言うと、スライドでいうと22番の公益事業への資金移動の拡大という一定のものはありますが、まだまだ本体と密接不可分で規模の小さいものに対してだけ充当できるという、条件がついた上での弾力化だと認識しているのです。介護事業から公益事業に充てることについては、基本的に規制がないようでございますけれども、介護の社会福祉事業だけでなく、他についてもそれがもっともっと進めるべきなのかなということが一つあります。

 結局、そういう話が出てきているという背景に、社会福祉法人の持つ2つの側面というのがどうも裏にあるのではないかと私は感じています。どういう側面かというと、一つは、現在の財団・社団法人に対する公益認定のときよく言われる「行政事務事業の請負型法」人というか、「事務事業の実施型法人」というのでしょうか、そういう側面が一つ。それからもう一つは、本来の意味で不特定多数の利益を追求する公益法人としての側面であります。

 特に、本来の意味での公益法人というのは、社会ニーズとか地域のミッションを見ながら、主体的に何を問題として捉えて取り組んでいくか。それは法律に書いてある、書いていないではなくて、取り組んでいくというところがある。これは、先ほどの公益事業が何回か指摘されているという文脈ともつながってくるし、昨今のいろいろな指摘等も、結局その社会福祉法人が、「社会福祉」という名を冠していながら、制度で決まっている社会福祉事業は一生懸命やるけれども、それ以外はやっていないというような指摘、実際はそんなことはないのでしょうけれども、一般からはそういうような見方をされてしまうということは、多分そこは取り組みの側の問題と、もう一つはそれを社会に伝えるツールというか、情報開示というところにも問題があるのではなかろうかという気がしています。

 もう一つは、行政事務委託型との関連で言いますと、確かに社会福祉事業の多くは、今日、市場による供給というか利用者助成型の事業に移っております。さはさりながら、いまだに措置として残らざるを得ない事業というのも多数あります。これについては、それはそれでしっかりやらなければいけないし、例えば介護保険でも何でもそうですけれども、利用契約型事業になってもやむを得ない事由による緊急措置という条項は、どの法律にもまだ残っています。それを誰が担うかという話も含めて、それはもともと社会福祉法人が担ってきた固有の分野であるということも勘案すると、福祉が利用契約型に移ったという部分だけに目を奪われるのではなく、措置事業を実施するという側面も忘れてはいけないと思います。それはたとえば、憲法89条の公の支配に属しない慈善・博愛事業に対する公金の支出禁止の部分にも絡んでくる。財団・社団の公益認定では行政請負型は公益に該当しないとされるけれど、89条の規定上、社会福祉法人がそれらを担わないと他の法人形態では公の支配が確保されない。つまり社会福祉法人の場合、請負型事業でも法人の存在意義となる本来ミッションだというところは忘れてはならないと思っています。

 最後にもう一点なのですけれども、社会福祉法人というのは、非営利で公益性の高いとよく言われますが、非営利、確かに持分は積極的な規定がないから認められていないという論理構造になっていると思うのです。ただ一方で、例えば医療法54条では、「医療法人の剰余は配当してはならない」というような規定がありますが、それに類するような規定が社会福祉法においてはない。このため措置から介護保険になり運営費の使途制限がなくなったことに対応して、老健局の老発第188号通知で法人外の資金流出が禁止と言うことが示された。しかし、これが3.11のときに、被災地に対して社会福祉法人が善意を寄せようとしたときに、法人外資金流出だとして当該通知の解釈をめぐり何かもめたという事態があったというのは聞き及んでいます。やはりその辺も、法人制度としてお金をどう処分できるかというところのスタンスが明確になっていないためではないかと思います。

 だから、法人の非営利性というのをどう明確にしておくのかというのは、実は隠れたダークホースみたいな問題ではないかと思っております。

 以上です。

○田中座長 千葉委員から問題点の指摘をしていただきました。ありがとうございます。

 松山委員、お願いします。

○松山構成員 私が社会福祉法人の勉強をしていてどうしてもわからないことは、補助金や措置費の形で税金が毎年どのくらい投入されているのか、という点です。16ページにある社会福祉法人に対する優遇措置の中で「施設整備に対し、一定額は補助される」等々、公費が投入されています。しかし、毎年、社会福祉法人全体に地方自治体と国をあわせてどのくらいの税金が投入されているのかデータを探してもわからないのです。これはどこかを見ればわかる数字なのでしょうか。

○田中座長 事務局、お願いします。

○友藤課長 先生、御指摘の資料というのは、私どもは持ち合わせおりません。自治体は自治体で補助金を出されていますので、それを集計したものというのは現在ございません。

○松山構成員 ということは、例えば今年度、国と自治体あわせて社会福祉法人制度全体に税金がどのぐらい流れているかというのは今の時点では把握できないということですね。

○友藤課長 していなくて、結局、今、社会福祉事業をやっています民間にも補助をしている場合もございまして、切り分けをして集計しているということはございませんので、多分集計しようと思ってもなかなか集計できないような状況です。これは本当に自治体の皆さん方にもそこをお願いして切り分けをして、1個1個集計していかないと出ないという状況になっているかと思います。

○松山構成員 そうすると、この会議でどういう結論になるかわかりませんけれども、財務諸表をきちっと公開しましょうというお話が出たときに、では税金をどのくらい投入しているかということについても、国民から多分聞かれることになると思います。作業は相当大変と予想されますが、一度やっていただく必要があるのではないか。その方法は厚労省にお任せします。

○田中座長 審議官、お願いします。

○古都審議官 若干、補足いたしますと、要するに、制度上で言うと二重予算制と言いましょうか、ドイツの医療制度が典型なのですけれども、ドイツの場合、病院は州立でありますとか、いわゆる資本の部分は公費で出します。そして、運営費のほうはドイツの社会保険で払うという形で、ある意味分離をしています。

 日本の医療保険制度の場合は、医療保険の診療報酬一本で、キャピタルコストとランニングコストをあわせて出しています。もし法人に公費が投入されていると見るならば、医療の場合は全体が保険料と税で賄われているとするならば、その総額を見ればいいのだろうということだと思います。

 社会福祉法人は、措置制度の時代までは、特に入所型の施設については、キャピタルコストとランニングコストを分けていましたから、施設整備費補助金については、2分の1が国で、4分の1が地方、4分の1が法人負担ということですから、もし先生のお考えどおりでいくならば、毎年の予算額でどれだけ整備をされたかというのがまず資本への公費の投入だったと思います。

 一方、措置費は、国と地方で按分していますから、それは全部税でありました。2000年まではそういう形で、各事業ごとの投入されているものを積み上げれば社会福祉法人に入っている公費部分がおおむね幾らかということが出ます。それ以外に、在宅サービスについては自治体からの委託でありましたので、委託先を市町村が選択をする。そのときに、例えば訪問介護事業は対馬先生がよく御存じですけれども、当然民間企業がやる場合もありました。そういう場合は、ある意味、民間企業にも委託という形で公費が出ているということだったと思います。

 現時点におきましては、補助金についても、この20年ぐらいの間に、自治体に税源移譲したりいろいろしたりした部分があるものですから、言ってみれば特別養護老人ホームについても、介護保険以降は、大きな施設については国の補助というものは現在ありません。むしろ小規模な施設にはハードについての公費補助が一部入っています。それから、それ以外のものについては、ランニングコストもキャピタルコストも介護報酬でやっていますという経営の形になっていると思います。

 ですので、もしやるとするならば、そういう事業ごとに精査をしていって、積み上げていって、マクロで見るというのがぎりぎりの手法かと思います。それは精査できるかどうかやってみたいと思います。

○田中座長 引き続きどうぞ。

○松山構成員 大変ありがとうございます。

 いずれにせよ、今回のこの会議というのは随分注目されていると思うのです。社会福祉法人制度を今後10年、20年強化していく上で、国もしくは地方自治体がどのくらい財源負担をしないといけないかというコンセンサスもある程度つくらないといけないと思うのですけれども、そのロジックを組み立てるためには、今おっしゃっていただいたようなデータを不完全でもいいから見せていただいて、説明する必要があるのではないかというのが私の意見です。

○田中座長 御指摘ありがとうございました。検討していただきます。

 藤井委員、どうぞ。

○藤井構成員 今、松山委員がおっしゃったこともそうなのですが、やはり社会保障全体と言いますか、国のあり方全体として、いかにこの国家を効率的に運営していくかということが問われている中で、局長も座長もおっしゃっていただいたように、社会福祉法人が、過去実績があるという前振りがあるわけですけれども、しかし、残念ながら何もやっていないではないかとか、あるいはお金が随分たまっているではないかという非難があるのが現状なのだろうと思います。

 ただ、あえて言いますと、これは社会福祉だけのことではなくて、教育もそうでしょうし、あらゆる公共的なことに関して、どこにどのようにお金が流れているかというのが、国と地方との関係で明確になってきていない。ですから、松山委員の御指摘は福祉の問題だけではないので、それこそ内閣全体を挙げてやっていただかない限り分けにくいような話をしておられるのだろうと思うのです。私はやるべきだと思っておりますが、この委員会では手に余ると言いますか、もうちょっと大きな枠組みをつくっていただく必要があるのかなと思います。

 森委員のおっしゃったように、この委員会というのは何のためにあるか。森委員は利用者のためとおっしゃいましたけれども、国民のため、住民のためにあるということなのだろうと思います。そのときに、社会福祉法人というのは何なのかと。憲法89条から必ず始まるわけでございますけれども、この憲法89条という規定が諸説ございまして、何であるのかもよくわかっていない前提でございますので、私はもう少しグローバルに考えて、先進諸国の中で、ノンプロフィットの団体、これがヘルスケアとか、福祉であるとか、医療であるとか、あるいは教育において存在していない国はない。税制上の優遇措置も必ず受けているということが何でなのか、我が国の社会福祉法人は何がだめなのかという観点も一つあるのでないかと思います。

 そのときに、千葉委員がおっしゃったことにつながるわけでございますけれども、なぜノンプロフィットが重要かというと、営利が第一目的でないというのがノンプロフィットの重要なところだと思いますし、そのときに分権的な意思決定、つまりその地域にあったことを利益に相当する部分をきちんと還元していけているよねと。特にアメリカなんかでは、この還元しているかどうかというのは非常に問われております。どれくらい還元しているのだということが問われておりますし、法人格をとることと、税制上の優遇措置をとることを分けている国もございます。

 ですから、分権的に、税金として政府に全てを巻き上げられて、政府が使うお金だけでは心もとない。社会福祉法人、ノンプロフィットの団体がもうかったお金でもってそれを地域に還元するという仕組みも重要ではないかという一つの文化でございます。これが今の社会福祉法人は残念ながら相当弱い。

 もう一つは、プロフィットにない部分として、ヘルスケアとか教育でございますから、対価を求めにくいものが非常にあると。そういったときに、そこに対して新しいサービスを提供していったり、開発していったりすると。これは社会福祉法人、今日、雄谷委員がいらっしゃっていますけれども、お話を聞くだけでも絶対これは社会福祉法人でしかできないというようなことをやっておられるところは幾つかございます。幾つかあるのですが、社会福祉法人全体としてやっているように余り思えない。非常にスピード感がない。スピード感があるのは、NPOであったり、今や一般社団だったりすると。お金がないと動きませんというのが、社会福祉法人だったりするという現状があるのだと思うのです。

 この分権的意思決定で地域に還元するということと、サービスの質とか開発ということを考えたときに、千葉委員が社会福祉法人は何だったと考えたときに、一つが請負型、もう一つが公益型とおっしゃった社会福祉法人というのが、配っていただいた資料でいいますと、3ページ目の3に「運営」とございますけれども、「運営に当たって強い公的規制を受ける一方で」と、ここの文章がまさに、憲法89条からぶら下がっている話なのだろうと思うのですが、むしろ請負型をこれまで進めてきたと。これ自身は、海外の研究者からも日本の社会福祉法人はノンプロフィットとして、請負型に徹している変わった法人であるという指摘を受けておりますし、この請負型がなくなればいいとは私は思っておりませんけれども、やはり片方の公益的な、地域地域のニーズにかなったことをやっていく。しかも、対価を求めないものに関しても新しいニーズに対応していくということをどうやっていくかということを考えていくのだろうと思います。

 もうちょっと言わせていただきますと、これに関して言うと、今日の資料を拝見させていただいても、やはり社会福祉法人がそういうことをやっていくのだと皆さんおっしゃるのですけれども、どこにも書いていない。社会福祉法第24条に経営の原則と書いてあるのですけれども、ここにも書いていない。

 日本の法律の場合に、コンメンタールというのが法を補うという講学上の妙な構造になっていると認識しておりますが、担当審議官が以前書かれた社会福祉法のコンメンタールによりますと、この24条が意味するところは、「地域におけるさまざまな福祉需要にきめ細かく対応し、制度の谷間に落ちてしまった人々を救済していくために、創意工夫する」と書いてある。ですから、講学上の考え方から言えば、これも含めて書いてあるのだということになるわけですけれども、別に裁判しているわけでも何でもないので、結局どこにも書いていないから、やらなくても誰も怒らないということが起こっていますので、まずはそれをやるのだということを明確にしないと、何人もの社会福祉法人の経営者の方に、「これからどうなるのに金をためていて何が悪い。地域貢献するなんてどこに書いてあるんだ」というふうに言われましたので、ここを必ず進めなければいけない。

 最後に一つ、社会福祉法人がこうなってきた背景として、一つは、福祉というものを社会福祉法人が独占してきたというやり方から、選択とか、競争とか、マーケットを上手に使って効率的にいいサービスを提供しようではないかという考え方です。日本にあった一つの考え方。もう一つは、財源的な理由もあり、地方にどんどん分権して、分権的な意思決定をしたほうがいいのだと。この2つの考え方があったのだと思うのです。

 これから政権が変わる中で問い直されてきているところはあるのですけれども、社会福祉法人に関しても、恐らくこの両方は進めなければいけないという現状でありながら、では、例えば市にどんどん権限が移譲されました。高浜市とか一部の市では、このおかげでますますいい地域になっている。しかし、このせいでひどいことになっているところもある。地域分権というものが、住民自治を意味しないで、何もしない団体自治になってきているという現実を見たときに、国がそれに対してどう関与していくのだという視点を持たないと、現場の社会福祉法人でしっかりやっていきたいと思う社会福祉法人を現に邪魔している地方公共団体もあると思います。うなずいていただいている経営者の方が何人かいらっしゃるので、我が意を得たりということでございますけれども、このあたりもぜひ範囲に広げていただきたいなと思います。

 以上です。

○田中座長 お二人の両側の委員から、請負型と公益型の意味をしっかり考えようという御指摘がありました。資料2の3ページの税制優遇の理由が公的規制だけではおかしくて、地域に貢献するから税制優遇という公益型のことがここには書かれていないのではないかという大変根本的な指摘だったと思います。ありがとうございます。

 高橋委員、お願いします。

○高橋構成員 今までのお話も十分理解できるし、また、我が国の制度は世界的にも評価されている部分が相当高いと思います。先進国の会合にいろいろ出ても、これだけ細かな制度を公的になされている。ただ、推進する社会福祉法人のありようが、今いろいろと問われているわけですけれども、私も子供時代から、少年保護や児童養護の戦後の戦災孤児たちと一緒に生活をしてまいりましたけれども、公益性というのは、高いかどうかは利用者が判断するものだと思うのです。その利用者が判断をするのだけれども、そのプログラムを、実際にニーズをどう咀嚼し、または成立させていくかの判断は、それこそ現在であれば社会福祉の現場にいる実践者であろうと思うのです。

 そういう中で、例えば地方公共団体におろされていって、どれだけお金を出しているかというよりも、いわゆるアドボゲートしていくような役割の中での法人が、実際に住民のために市町村にどういう働きかけをして、それがまた資金として変わっていくか、サポートされるかというところのそういうサイクルが、先ほどからお話しになっているように、お金があるからやるのだという法人、ないからやらないのだということではないのだろうと思います。

 ですから、今日的な社福の仕分けというものも、当然、今回の会議の目的でもあるのかもしれませんが、そういうところに視点を当てれば、使命はなにかということで例えばアメリカのチャータースクールに代表されるようなやり方もあるのではないか。第一種の社会福祉事業、第二種の社会福祉事業だけではなくて、他の財団がイノベーションとして仕上げられているような、そういう方法もあるのではないだろうか。いわゆる大手を振って社会福祉法人としてやれる事業と、まだ先は見えないけれども、そうした利用者に寄り添いながらやっていくような、本当にそういうニーズというものを咀嚼していくような、特に児童養護などは、これからの日本の産業構造の中では、労働力としてももっと育てなければならない部分があるわけですが、法によって18歳で切り離されて、貧困の連鎖、虐待の連鎖の中で自分たちもまた苦労していくような、そういうものではないはずだと思います。そこを改善していくのが社会福祉としての使命でもある。制度による事業経営によりミッションというものがだんだん失っているのが、今の社会福祉法人ではないかとも思います。

○田中座長 社福のミッションの大切さを言っていただきました。

 西元委員、どうぞ。

○西元構成員 ありがとうございます。

 先ほど藤井先生もおっしゃられましたが、先生方がおっしゃられた一つは、投下される福祉費用に関して、それは効果的であったかどうか、これも非常に重要な問題だと思います。これはしっかりと精査しなければいけない、私もそう思います。

 ただ、後半でおっしゃっていただいたように、2000年の基礎構造改革以降、社会福祉法人は地域福祉事業というのが一つの大きなミッションになっています。地域福祉事業を行っていこうとすると、いわゆる制度内事業だけでは追いつかないという部分があるわけです。特に生活支援の部分は、したことが言えるのだろうと思います。

 今回、田中先生のほうでも地域包括ケア研究会に出していただいておられます地域包括ケアのシステムを構築していくというところでも、当然のことながら制度外事業というのは必要になってくるだろうと思います。しかしこの制度外の事業は必要な費用がどこからも弁償されない事業にもつながっていくことになります。社会福祉法人にとっては、どこからもお金が入ってこない事業も、やらなくてはいけないとおもいます。例えば私の法人では孤立化防止のために孤立化防止拠点をつくっていきましたが、行政からは全くバックアップがないみたいなこともあります。どちらかというと足を引っ張られるようなこともあるのです。行政の批判をするわけではないのですが、地域貢献事業とはなにか、一体どういったものを地域貢献と位置づけていくのか。社会福祉法人は今まで制度内事業だけに頼ってきたといえます。行政からの指示を受けないと事業を進めることができない、請負業だとも言われますけれども、請負業しかできないような状態があったということも御理解いただきたいところです。

 そうした中で、そういったことにもう慣れてしまって、制度内事業以外のことはなかなか積極的にすることが難しいという、そんな判断もどこかでしながら、しかも中央行政の顔色もおうかがいしながら、「これやっていいんですか、悪いんですか」といったことをお聞きしながらやっていかないとできない部分というのも随分あるわけです。

 ここでは、一体どういったことを指して地域貢献というのか。それから地域貢献をしていることをどう評価されるのか。誰にとって貢献なのかということなどの評価をどういった形でするのか。これが非常に大きな問題だと考えます。

 もう一つは、費用の問題なのですけれども、やはり事業を展開していくときに、人、物、金、情報といったマネージメントに必要な要素というのがあると考えます社会福祉法人にはヒトや金、モノなどの積み重ねがあるので、内部留保というお金だけではなくて、目に見えない資源というのもいっぱいあります。専門性もその一つなのですけれども、それを使ってやろうとしたときに、現行の制度の中でのストラクチャーというものが随分手かせ足かせになってしまうという現状もあります。例えば地域で買い物難民がいらっしゃるとすれば、買い物にお連れしていきたいですよね。そうしたときに、デイサービスセンターの車を空いている時間に使って、デイサービスセンターの運転手を使ってやろうとすると、これは目的外使用ということになって、制度違反です。できないのです。でも、これはもうやってしまえばいいではないかと自分たちは思いながらやることになるわけです。また買い物のサポートをしたから住民からお金をとってもいいのかというと、お年寄りの場合は、低資産、低所得の人たちが随分いらっしゃるので、なかなかそれはできない。フードディザ-トの対応についても同じなのです。そういったことはたくさんあるのです。

 もう一つ、行政のことをさっき藤井先生がおっしゃっていただいたので、行政が私たちの政策提案をさせていただいたときにどう反応されることがあるかお話をいたします。例えば、市の中ではいろいろな地域があるのですけれども、全ての日常生活圏域毎に同じようなサービスが同じように展開しないとだめなのだという理由で、まずは私たちの政策提案ははねられるのです。「あんたの地域だけがやったらだめじゃないか」ということではねられたりするわけです。それは絶対平等の原則なのでしょうけれども、絶対平等は、こんなときに地域性や個人のニーズで地域のニーズというのは決まってくるのに、こんなことを今どき言っていていいのかという状況もあるわけです。

 ですから、社会福祉法人というのは、こういうことをやるべきだということを、それからもっとストラクチャーの部分で緩和するということもお考えいただかないと、また背中を思い切り押していただかないと動かないのかもしれないなという気がします。よろしくお願いします。

 以上です。

○田中座長 現場での苦労を聞かせていただきました。

 では、田島委員。

○田島構成員 今のお話を聞いて、いろいろなことをたくさん思い出しましたけれども、長い間の行政指導といいましょうか、そういう中で、枠にはめられてきてしまったと、行政のほうは枠を外してくれたのだけれども、固まった枠が取れていないという状況があるのかなというのが一つ。

 もう一つは、地方に権限が移譲される中で、地方の行政の方々が、そうでないところもたくさんございますけれども、市民を見ているというよりかは、かつての慣例に沿って大変厳しい指導をされているような状態もまだ残っているのではないかなと思っております。

 例えばお金がない、ある、いろいろな法人がありますけれども、固定資産税というのは、お金が儲かろうが、儲からなかろうが払わなければいけない必要な経費ですから、固定資産税分ぐらいは、東京の中心街にあると大変高いかもしれませんが、これをきちっと使って何かをするというような考え方に変えていかないと、住民の皆さんの理解が進まないし、先ほど高橋先生がおっしゃったのでしょうか。制度がたくさんできてきますが、制度が完備したように見えれば見えるほど、そのすき間に落っこちてしまう人たちが必ずいらっしゃるわけで、それを社会福祉事業ではないけれども、社会福祉を目的とする事業という文言もございますので、それが公益事業に値するのか、期間が短いから値しないのか、人数が少ないから値しないのかというのは、これは行政との話し合いで決まっていくことだと思いますので、積極的に展開していかないといけないのだろうと思っています。

 その点で気になるのは、一つは、お金の問題については、流動比率は非常に高いのですね。千葉先生の御専門ですけれども、一般企業は100あればいいか悪いかぐらいのところを、400とか500とか、TKC全国会の調べですと470ぐらいでしょうか、今すぐ払わなければいけないお金に対して、払えるお金は四.何倍もある。やはりお金の使い方がちょっとけち臭いというのでしょうか、もっと上手に使うことができるのではないかということがございます。

 最後にもう一つだけ、先ほど、松山委員からのお話にもあったのですけれども、毎年10月1日付でしょうか、社会福祉法人の現況報告書が所轄庁に提出されているはずでございます。これが、何かもっとうまく電子化でWAMに出すという話が出てもう6~7年経ちますが、さっぱり出ていませんし、電子的な方法で集めて集計をする。そうすると、国庫と民間、国、自治体、あるいは民間の調整機関との助成金が区別できるかどうかは、今できませんか。できますよね。そういうもので相対がわかるのではないかなと思っています。

 実は、5年ぐらい前になりますが、私、滋賀県で2年間、社協さんと一緒に調査に入りまして、1年目は公開していただけませんでした。2年目は県の方が御協力していただいて、墨塗りをした上で、大津市以外、中核市以外の社会福祉法人の現況報告書を全部合算したことがございますが、たしかに松山先生が御指摘のように、右と左が合わない、貸借対照表が合わないとか、減価償却しているはずなのに経費で一括で建物の購入をあげてしまっていて真っ赤になっているとか、物すごいものは除いて集計をした覚えがございます。

 事業系法人16,000、社協さんが16,000幾つかだけでも、既に何十年という蓄積で紙ベースであるわけですから、その辺のことも、行政のほうで、役所のほうでぜひご検討いただけたらなと思っています。この課題はもう昭和60年ごろからずっと言われている話がやはりできていないわけで、ここでやらないと公益法人改革が、もうここで5年の期限が終わりましてあるわけですから、そこで本腰を入れて決着をつけなければいけない。決着というか、明確な方向を示さなければいけないのではないかなという感想を今のところは持っております。

 以上でございます。

○田中座長 ありがとうございました。

 それでは、雄谷委員、お願いします。

○雄谷構成員 石川県の雄谷です。

 先ほど西元さんが言われましたが、背中を思い切り押していただかないとという話もあるでしょうし、あるいは思い切り行き過ぎたら崖から落ちるのかなと、そんなこともあるのでしょう。ただ、私たちは、今、社会福祉法人の求められていることというのは、まずは論点は2つに分けなければいけない部分があるのかなと。

 一つは、やはり公益性や非営利性を明らかにすると。これは当然なことなのです。当然なすべきこと、あるいはやらなくてはいけなかったことがしっかりやられていなかったのではないか、そういったことなのだと思うのです。ですから、この部分に関しては、しっかりと説明責任を果たしていくという姿勢は、当然求められると思いますし、そうあるべきだと思います。

 もう一点の観点のほうというのは、きょうの「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」、このタイトルに、私は「地域における」というものがつくのではないかなと考えています。これは、なぜ括弧づきで「地域における」というものがつくかというと、先ほど森さんも言われましたが、誰のための今回の会議ですかと言われたときに、社会福祉法人がどう対応できるかということを考えると、やはり地域なのだろうなと。措置から契約に移ったという側面は、実を言うと、時代の流れで大きく国から地方にという流れを生み出してきている。人々の生活も一様ではなくてどんどん多様化している。

 そうすると、今、厚労省の方々を目の前にして、国が紋切り型だと言うつもりはありませんが、時代が変わって、実を言うと地域に応じたフレキシブルな対応が求められる。その中に公益性というものの証明が求められるということで、なかなか相反するかもしれないことをあわせてやらなければいけない。しかし、地域の福祉のグランドデザインみたいなものを今後考えていかないといけないのだろう。そして、そのグランドデザインというのが、実を言うと一本でつくれるようなものではなしに、各地域によってつくり上げられていくものなのだろう。その場所によって、人によって、随分違うのではないか。その担い手として誰が必要なのだということは、社会福祉法人かもしれませんし、そうではないかもしれませんが、いずれにしろ地域とは何かということを社会福祉法人は真剣に考えていかなくてはいけない。

 地域とは何かということを考えたときに、社会学的に言うと2つあるのかなと。1つは、やはり住民が継続的にそこに暮らしているという、住み続ければ地域と呼べる。もう一点は、密着性ではないかなと思っています。この2点を、そこに住み続けて、そして人とかかわっていくということをその地域に応じて対応していくということになると、その受け口というのは、やはり公益性、非営利性を抱えて、かつそのことに思いをずっと持ち続けてきた社会福祉法人の出番なのではないかなと考えています。

 もちろん、地域分権をされていくごとに、地域にいろいろな制度が移っていく、そんなときに財源問題等々はあるということはもちろんなのですが、その中で、地域に密着をして、継続して、かつ密着して、住民を今度は巻き込んでいく。与える福祉ではなくて、ともに地域をつくっていく、参加型の福祉をつくり上げていく。以前はお城を中心に城下町があって、あるいは寺社仏閣を中心に門前町があった。だんだん崩壊しつつある地域を再生していくのは、実を言うと福祉ではないかなと思います。

 ですから、私は当事者ですので、あえて社会福祉法人がその役目を担いますというのは、「お前言い過ぎだろう」と言われるかもしれませんが、少なくとも福祉が地域の核になっていくということは明らかなのだろうと思います。

○田中座長 ありがとうございました。

 対馬委員、お願いします。

○対馬構成員 対馬でございます。

 これからの話は、社会福祉法人の理事長、株式会社の社長、それから学校法人の理事長の三つの立場で話をしたいと思います。グループの母体は社会福祉法人で、昭和582月に特養の経営を開始し、更に3月にデイサービスセンターを開設しました。日本でも早い時期に在宅に取り組んだ一人だと思います。その後、デイサービスセンターの利用者から、訪問介護のサービスを提供してほしいとの要請があり、行政に指導を仰ぎました。その時代は、社会福祉法人で訪問介護の経営ができなかったとので、やむを得ず株式会社を設立したわけです。こうした意味でも、私は株式会社で介護事業に取り組んだ草分け的な存在だと思っています。

 そのころは、相対契約や市町村の委託でホームヘルプ事業を経営していたわけですが、株式会社で収益が出ないうちはいいのですが、やがて介護保険ができ収益が出るようになったときに、株式会社でが事業として介護で儲けるのはけしからんといった社会的批判を受けるのではないか考えたのです。介護保険の財源は税金であったり、国民の保険料でありますので、入ってきたお金をどうやって使ったのかを明らかにするべきだと考えました。そのためには上場するのが一番いいだろうということで、介護産業で一番最初に上場を試みました

 上場しますと、ルールとして四半期開示の監査法人による決算監査、そして内部統制と極めて厳しい監査があるわけであります。

 一方、学校法人は、入学金、授業料で経営を成り立たせますが、一部補助金が入ってきます。そのため学校法人の場合は公認会計士または監査法人を用いるとなっているわけであります。社会福祉法人も開示しなさいという流れは当然のことなのですが、先ほど各先生からもお話しがありましたが、社会福祉法人で開示されている財務諸表を見ると、適正な決算処理がなされていないように見受けられる法人があります。開示も大事ですが、その前に決算処理が正しく行われているかということが極めて大事だと思います。開示前にきちんと公認会計士、もしくは監査法人にチェックをしてもらい、適正なものを開示することが大事だと私は考えます。これについては、今回、この委員会で検討する項目に挙げて欲しいと思います。次に、利益が出たらその利益をどのように地域に還元するか、このことが今後の社会福祉法人の役割ではないかと考えています。

○田中座長 ありがとうございます。

 学校法人や上場株式会社に比べると、決算処理が曖昧である、曖昧なものを公表されても特段の価値はないと、強いステートメントをありがとうございます。

 浦野委員、お願いします。

○浦野構成員 皆様の御意見を伺いまして、改めていろいろ考えさせられたのですけれども、私は、社会福祉法人の持っている、眠れる状態なのだろうけれども、その潜在的な力というものをもう一度再確認をして、これをいかに発揮させていくかという方向で議論をしたい、そのためにどんな打つ手が必要なのかなということを議論したいなと思っております。

 潜在的なもの、例えば社会福祉法人は今、全国に15,000あるという御説明がありました。たしかに、例えば非常にすぐれたNPOがユニークな活動をある地域でしている。すばらしい活動は全国各地にいろいろあると思います。だけれども、例えば今の生活困窮者の問題といったようなこと、これは全国どこにでもあることで、これに点ではなくて面的に取り組めるとしたら、社会福祉法人という、社会資源を有効に活用していくということが実は一番いいやり方なのだろうと。そのときに、補助金つけますよ、委託費つけますよということでは決してないのですけれども、やはりそういう潜在的な力というものを活用する方策を考えていきたいと思っております。

 また、先ほど地域との関係で言いましたけれども、幸いに社会福祉法人は、株主に配当金を払う必要はないわけですから、税金も今のところは払わなくていいと言ってくれているわけですから、それは地域に還元し得る潜在力を持っているわけですし、逆にそういう組織体だからこそ、地域から資源を獲得して、またそれをサービスに変換して、地域に戻すというような、そういう循環構造をつくるというのは、営利組織ではなかなかしにくいようなこともやれる可能性は持っている。いろいろな可能性はある。

 いろいろな可能性があるのだけれども、そして、かつては多分、我々の先輩たちは、それをやりたかった先達というのはいっぱいいたのだろうと思います。だけれども、まさに枠の中にきっちり入れられてしまっていて、できなかったという思いを残しながら我々の世代に託した人たちがいっぱいいるのだろうけれども、我々の世代が、逆に言うと、そこを縛られて、そこの型どおりに仕事をすることに慣れきってしまって、型から離れられないというのが問題だろうと。そこを社会福祉法人側にどう啓発をしていくのか、そして、先達がやろうとしていたことをもう一回新しい時代にやるという、そういう方向で議論をしたいなと思っています。

 それから、そのことにあわせてやろうとするときに、やはり多少邪魔が入ることがあるのです。邪魔が入るというのは、身内からも邪魔は入るのですけれども、まさにそれは60年の間に頭が完全に固まってしまっているという状況の中で、何か新しいことをやると、後ろからも石が飛んでくるような現象もあるのです。

 今日は宮田さんもいらっしゃいますけれども、大阪の社会貢献事業を手本にして、地元神奈川でも生活困窮者の支援事業をやろうということを去年から準備をしておったのですけれども、身内からも弾が飛んでくるというような、「なかなかいらんことをするな」というような声もある一方で、この事業について、では県に「こういうことをやりたいと思います」と言ったときに、「いいですね、やりましょう」と簡単に返事はこない。「国に聞いてみる」という話で、「国から答えがきましたか」というと「もうちょっと待ってくれ」ということで、その答えをもらうだけでも半年かかるのですね。半年かかって、しかも、こちらとしてはこんなことを文書でプランを一応お示ししても、なかなか文書では出しにくいので「いいと思いますよ」という担当者の答えしか出せないみたいな状況もある。

 こちらとしても、いろいろ仕込みをして、第二種社会福祉事業の生活困難者に対する云々の一番目の項目でやりますよという格好ですけれども、法人が連帯してやるということで、法人がお金を出し合うというところが、なかなかそこの解釈が難しいところです。結構細かいところでの障害は出やすいということで、その辺の行政の風土というのもこれから考えていっていただく必要があるのかなと。ただ、そのことだけが最大の障害ではなくて、むしろ我々自身のほうに大きな障害があるということは、我々も認識をしているということでございます。

○田中座長 個別の社会福祉法人だけではなくて、それが連帯して行うときのお金の出し方等は、打破しなければいけない大きな制約なのでしょうけれども、それを指摘していただきました。

 宮田委員、どうぞ。

○宮田構成員 大阪の宮田と申します。

 今、浦野委員から御紹介ありましたように、大阪では老人福祉施設部会というところで、生活困窮者に対して、法人から基金を集めて、その基金をもとにいろいろな福祉ニーズに対応する相談をいただいているのですけれども、おっしゃるようにその基金を拠出するときに、結構行政とのあつれきと申しますか、最終的には会費という形で落ち着いたのですけれども、もちろん公費なので、そこは野放図に何でもかんでもオーケーというわけにもいかないですが、もう少し柔軟な対応をしていただけることが、今後ますます、そういう社会福祉事業ではない社会福祉を目的とする事業を対象とするところをやっていけばいくほど、多分その辺の資金使途の問題は出てくるのだろうと。それは裏腹の関係で、そこを余り緩め過ぎると、何かまずいところに使われる可能性だってありますから、そこは慎重にしながら、その一方で、そういうところにしっかりと資金を使えるようにしていただきたいなというのが一つ。

 一方で、我々自身の問題として、松山委員からも昔からの御指摘がございますように、BSが左右合ってないとか、そういう基本的な財務会計の問題ですね。そこは我々としてはしっかりとやっていかないと、そもそも法令違反ですから、毎年提出しているはずなのに、それは行政のほうもチェックしているのかなというのが、我々の中でもちょっと疑問が残るところでもあります。

 もう一つは、正確な財務諸表をつくる、公開していく、当然のことだと思います。あと、今、言われるような留保金がたまっていると。それは決して多いからだめとか、少なければいいのだという議論ではなくて、それは何の目的で、どんな計画のもとにためているのかということがきちんと説明できていないことが問題なのだろうと思うのです。そこは、我々としてはしっかりとやっていかないといけない、物すごく大事なところだと思います。

 特に、今言われているように、社会福祉施設の再構築をしていく、施設を建て替えるなどというときには、固まった資金がいるわけですけれども、そこに対してしっかり、ではあなたの法人の施設は何年経ったときにどのタイミングで建て替えて、そのときの資金計画はこうですよと、あらあらの計画がきちんとあって、それに対してこれだけ目標を立てて貯めていますという財務計画があれば、それは決して、そこが多いとか少ないとかいう問題にならないのだろうと。そこが欠落している、計画がないままにとりあえず貯めているみたいなところが問題になっているのだろうなという気がしています。

 以上です。

○田中座長 松原委員、お願いします。

○松原構成員 社会福祉法人の経営のあり方としましては、当然、ミッションを遂行するために経営効率化を図るということでいいと思うのですけれども、では社会福祉法人のミッションとは何なのかというと、やはり皆さんが何度も御指摘なさっているように、地域ニーズに合ったサービスを行って、地域貢献をすることだと思います。

 今、新たに何が地域貢献なのだと探すというのもあるのですけれども、私は何よりも第一は、第一種社会福祉事業をしっかり行うこと、これが地域貢献だと思います。だからこそ、第一種社会福祉事業を行っていて非課税になっているよということなので、まずこれをしっかりやることが地域貢献なのだという自覚をしっかり持つべきで、それから社会福祉法人も、自分たちは第一種社会福祉事業をしっかりやっているということで、堂々と胸を張って、これで地域貢献しているのだと主張すべきだと思います。

 ただ一方で、この第一種社会福祉事業を行うに当たって、行政事務の請負型という御指摘がありましたけれども、まさにこの言葉がいうように、お役人の前で失礼ですけれども、役人仕事になっていて、創意工夫がない。大変失礼しました。そういう面がいろいろ問題になっているのであって、本来は、今、行うべき第一種社会福祉事業を創意工夫の気持ちを持って行っていれば、それが地域貢献だと私は思います。

 ただもう一方で、特養が第一種社会福祉事業になっていますけれども、昔はこれはそうでした。ただ、介護保険が始まって、そして今、ユニットケアがこれだけ広まって、社福の中には、低所得者を入れないと言ってしまっているところまである中で、これが第一種社会福祉事業なのかなと疑問に思います。ここがなぜ非課税なのかなと。ここらに対する整理というのは、今後は必要ではないかと考えております。

 もう一つ、社福というか、特養の経営の調査など何度もさせていただいておりまして、つくづく感じることは、「この財務諸表を県が受け取っているのですか」と確認すると「受け取っています」ということなので、行政チェックが十分されていないことは明白ですので、この点の指導が必要だろうと思います。

 あと、もっと多角化すべきという話もございますけれども、財務諸表さえろくろく作れない、バランスシートがバランスしないのが大体2割近くあったかと思いますが、そういう状況で多角化とかしてしまうと、ますます非効率な税金を使うような事業をふやすことになりはしないかという懸念もございますので、まずは経営指導のほうも一方でしっかり行っていく、そして、社会福祉法人の方々も自信を持って、創意工夫を持って、今やっている事業が地域貢献という気持ちで取り組んでいただきたいなと思います。

○田中座長 ありがとうございます。

 バランスシートがバランスしない法人が2割あるようでは、ガバナンスは大問題ですよね。

 課長、何かありますか。

○友藤課長 行政のほうから、説明が足りませんでしたが、第一種と第二種、どちらでも社会福祉法人がやる場合には。

○松原構成員 存じております。

○友藤課長 それで、第一種と第二種の切り分けでございますが、第一種については規制を強化するというところがございますけれども、これは入所系が中心ということで、あくまでも特養が代表的な例になろうかと思いますが、これについては、特にだんだん悪くなっていかれるというのが御高齢者の方、そういう方が多うございますので、結局つい終の棲み家になってしまうと。人権を守る上で、対外的になかなか目に見えにくいところがあるということで、規制を強化しなければいけないということで、第一種社会福祉事業に位置づけをしているということです。

 ですから、非営利になるとか、そういった観点で区分をされているわけではなくて、人権を守る上で厳しい規制をかけている。そういった違いで、規制の度合いで、一種、二種を分けているということがございます。そこについて御理解をいただければありがたいかなと思います。

 ですから、特養をどうするかというのはまた別の観点がございますけれども、社会福祉事業として問題というよりは、どちらかと言うと、最初に御説明させていただいたとおり、個別法での議論になりますので、ここでの検討の場の議論には直接関係しないのかなと思っています。念のため、申し添えさせていただきます。

○田中座長 一当り発言がありました。あと20分ほど第2ラウンドがありますので。

 藤井委員、どうぞ。

○藤井構成員 第2ラウンドのトップバッターで申しわけございません。

 委員の皆さんの話を聞いていまして、改めて考えさせられることが非常に多くて、大体、私が今考えたのは、4つぐらいの切り口かなと思います。

 一つは、今、課長がまさにおっしゃって、私の先ほどの発言の趣旨だったのですが、社会福祉法人というのは、そもそもこういうものだからという沿面と培ってきたルールのもとで考えるのはやめたほうがいいのではないかというのが私の意見でございます。

 といいますのは、例えば特養が社福に限定されているのは、政治的な決着の上でそうなっているのだと理解しておりますが、特養を株式会社がやるということに違和感を持つ人は、今そんなに多くないと私は思います。こういう建てつけになっていますという説明は無駄だとは思いません。憲法89条はすぐに変えられませんので重要だとは思うのですが、そもそもノンプロフィットの団体が社会福祉法人としてどのような活動が必要なのかという観点なのだろうと思うのです。これが一つ目の切り口です。

 2つ目に関して言いますと、先ほど来、お話がありますように、頑張っておられるところとそうでないところが何でもあると。これは私の意見です。どうしようもないところがあります。どうしようもないというのは、やめていただいたほうがいいところが確実にあります。真面目にやる気がないと。特養がたまたま焦げついた土地があって、固定資産税を払わなくてよくて、儲かるらしいから始めたという、それ以降で福祉の気持ちとかそういうのがあればいいのですけれども、そうではない。全くそういうことやる気がないという方々の話を考えますと、入り口と出口、社会福祉法人になれるのは誰か。そして、適切でない方、あるいはこれから日本の社会が変わっていく中で、保育がどうなっていくのか、さまざまなサービスのウエートが変わっていく中で、合併したり、分割したりといったような立てかけの話をどうつくっていくかという入り口と出口の話をやらなければいけないでしょう。

 入り口の話に関していいますと、今の規定では、明らかにハードルはお金だけということに事実上なっていると思います。もちろんさまざまなチェックを行政はなさいますが、事実上のハードルはお金だけ。もう一つのチェックは基礎自治体、市町村の意見。これは市に移管された部分がありますけれども、今、社福の許認可を外部の人間を入れてやっているところは余り多くないと思うのです。埼玉県は例のああいう事件がありまして、私も入らせていただいて、外部の人間が入ってやっているのですが、県としては地元自治体も賛同しておりますというのは、非常に重要な項目なのです。当然のことだと思います。

 ところが、この地元自治体で賛同しておりますというのは、地元自治体のほうでいろいろうわさ話を聞きますと、今回はあそこの先生にお願いしたから、次回はあそこの先生だと。どういう意味かよくわからない、そういった理由でやられているものもありますし、入り口問題で言いますと、どういった人たちに入ってきていただけるのか。私は実績がいいと思っております。例えばNPOでも、あるいは株式会社でも、年収が数億になるぐらいまでというのは、営利のことは余り考えられない状況ですから、そういった実績をお持ちである者が社会福祉法人になり、できると。それからチェック、必ず外部の人間を入れて許認可をやりなさいというようなことがあってもいいと思いますけれども、入り口を整理していただきたいのと、出口問題は合併とか、そういったことになるのですけれども、これに関していうと3番目の論点があると思うのです。

 3番目の論点というのは、社会福祉法人は規模の差が非常にある。先ほど御説明がありましたように、基礎データがないので全然わからないのですけれども、企業でいいますと、大企業と言われるものは、御存じのように、数で言うと1.2%だと。ただ、人数ベースで言いますと、小学校の社会で学ぶことなのですけれども、従業員ベースで言いますと3割が大企業、付加価値ベースで言いますと約5割が大企業ということで、大企業にとって重要なルールとは何かということで、商法改正、会社法改正がなされて、平成13年以降、非常に活発な合併とか事業分割とかできるようになってきております。

 それに対して、小企業というのが、サービス業で言いますと、従業員が5名以下といった条件でございまして、社会福祉法人で5名以下という社会福祉法人はまずない。小企業はないのだと思うのです。ところが、一般の会社でいいますと、小企業というのは、全体の数でいうと87%を占める。従業員規模でも23%を占めるというこの小企業、中企業、大企業という中で、どこを狙った施策かというのが、会社の世界ではやられていると思うのですが、今の社会福祉法人と一緒くたにされた議論なのですけれども、非常にレンジは狭いと思います。売上で1,000億を超えている社会福祉法人は数えるほどですし、100億レベルでも数十はないと思います。大体10億切るあたりでかなりあるという状況だと思うのです。

 この規模の方々に、先ほど来出ている財務諸表をきちんとできる、できないの話で言いますと、一般の会社では、小さな規模でも書けている。なぜ書けているかというと、税務署が入ってくるからでありまして、やはり外部からのチェックがない限り無理だろうということになるのですが、先ほど対馬委員がおっしゃったように、では、数億の規模の監査法人を入れるかというと、これはまた難しいだろうということで、規模のことを想定した適切な仕組みというのを考えなければいけないですし、やはり効率化を目指すということになりますと、100億、1,000億の社会福祉法人、ノンプロフィットの団体ができていくというのはいいことだと私は思いますし、そういった方々が効率的に仕事をするためには、今は事業譲渡という仕組みしか社会福祉法人はできませんけれども、分割ですね、分割も吸収分割だけではなくて新設分割、会社法にあるような仕組みです。そういったものをつくることによって、より大きな法人がグローバルに展開するタイプ。

 グローバルアンドローカルの部分のローカルは、アメリカなんかで聞きますと、非常にでかい規模のノンプロフィットの団体ですね。必ず各地域でボードをもうけているようです。つまり、理事会が地域地域にあるという仕組みで、先ほど来出ている地域貢献の仕組みというのは担保できているのだと思うのです。

 今、申し上げていることは、入り口と出口の話から、4番目の論点のアクセルとブレーキという話をしておりますけれども、特にブレーキの話に関して言いますと、松原委員のおっしゃった、まずは本業をしっかりやれよということですね。これをどうしっかりやっていないかという話があるのだと思いますけれども、もう一つはお金の使い方。これがやはり社会には問われているわけでございますし、松山委員がオープンにしていただいたおかげで、私は知っていても言えなかったことなのですが、業界の誰もが知っているお金のたまり過ぎという問題がオープンにされたわけです。

 このときに、現在の議論では、去年田中先生が委員長で、松原さんが中心にやられた内部留保の検討会もそうですし、経営協でやられた内部留保の検討もそうなのですが、お金が余っているというときに、そもそも自分のお金で投資した分の減価償却分を持っていることはクリアなのではないか。それは持っていていいのではないかという前提で全て話が進んでおります。

 というのは、先ほど田島委員がおっしゃったように、流動比率はどんどん高まります。つまり、当面使わないお金はどんどんたまるのです。これは、企業であれば、このお金を新しいニーズに対して投資しているという問題があります。では社会福祉法人は、例えば特養、30年後に特養ができるまでこのお金をずっとためておいて、金庫に眠らせておいていいのだろうか。松山委員がよく指摘される非常に勢いのある法人を見ますと、やはりこの金額少ないです。新しいニーズに対して対応していくようなことをしております。このあたりもきちんと整理した上で、私はきちんと地域貢献財務みたいなもの、あるいは地域貢献会計みたいなものをつくらせて、それをチェックして、これに達していないということが社会福祉法人に達していないという意味ですよということは伝えないと、現に多くの法人も、たまっている、たまっていないとはどこで線があるのということを皆さん悩んでおられますので、たまっているというのはどこを指しているのかということは明確にして、しかも各法人がそれを出す。それは住民に見ていただく。たまっている部分は地域で使いましょうという流れにするのが、今、国民全体が一番理解できる。松山先生、そうではないかと私は思っています。

 以上です。

○松山構成員 例えばということで、この場で言うのが適切かどうかわかりませんが、データを申し上げます。

 今、2011年7月に発表した財務諸表の推計を再度やっておりまして、できれば早い時期に公開したいと思っているのですが、それで見ると、まず医療法人に比べて社会福祉法人のほうが施設種類に関係なく黒字率は高いです。その上で、社福の社会からのニーズは、これからますます拡大するので、内部留保というのは大きいほどいいと私は考えています。

 しかしながら、今、藤井委員から御指摘がありましたけれども、どういう法人があるかというと、病院あり複合体で、事業支出が年間89億円で、純金融資産、これは預金額から借入金を差し引いて、かつ退職金の積立金も除いたものですが、230億円という法人があります。これは事業支出の2.6倍。同じように、病院あり複合体で、年間支出が26億円で、純金融資産が44億、1.7倍。病院あり複合体で、事業支出が176億円、これは結構大きなところですけれども、純金融資産が200億、1.1倍。この状況は病院あり複合体のみではありません。高齢者専業社会福祉法人で年間支出が8億6,000万に対して、純金融資産が19億、2.2倍。それから、障害者施設でも年間支出が5億4,000万で、純金融資産が14億、2.5倍ということです。これは逆に言うと、これらの法人の経営者は非常にすぐれていると思うのです。経営能力が高い。であれば、もっと活躍してほしいと思います。

 この委員会の結論というのは先になると思うのですけれども、財務諸表を公開するということは、こういうデータが全部国民の目にさらされる。そのときにきちんと説明できるロジックを考えておかないといけないと私は思っています。

 最後に一点、非営利の意味ですけれども、日本だと非営利というと、税優遇を受けて、税金を免除されて金銭的に得なような感じで考えられるのですけれども、最初に藤井委員がおっしゃったように、海外では違います。例えばアメリカでは、医療介護福祉事業体で大きなものが500以上ありますけれども、そこは連邦税と州税あわせると、通常35%の法人税を払わないといけないのですが、それを免除されます。そのかわり、利益の約5割を毎年拠出しています。黒字経営している限り、内部留保はたまり続けます。ですから、その地域で活躍している大きな事業体は、内部留保をキャッシュで1,000億円以上持っているところがたくさんあります。でも、誰からも批判されません。なぜかというと、それをどういうふうに使うか地域住民にわかっているからです。

 万が一、本来払うべき税金よりも少ない貢献しかしていないと、CEOが州議会に呼ばれます。場合によっては首になります。要するに、非営利は税金を免除されて金銭的に得だと考えている社会福祉法人経営者が多いように感じていますが、米国の非営利の考え方の方が明らかに正しく、日本の間違った風潮は改める必要があります。

 以上です。

○田中座長 貴重なデータを含めて、またアメリカの例、ありがとうございました。

 森委員、どうぞ。

○森構成員 お聞きをしておりまして、ことわざに「角を矯めて牛を殺す」、要するに内部留保はいかんということ、これを誇大に云々するのではなくて、今おっしゃいましたように、その内部留保をいかに使って、先ほど来、皆さん方のお考え、特に雄谷委員がおっしゃいましたように、実は平成15年ぐらいからだと思いますけれども、地域福祉の考え方が、これは市町村がそれぞれ住民を巻き込んで地域福祉計画をつくっていく、こういうことの発展的なのが、田中先生の地域包括ケア、ある面では高齢者も障害者も、地域でいかにということ、そういう面でお金を使うというのは、社会福祉法人のすごく大きな役割ではないかと私は思います。

 ですから、社会福祉法人というのは、これからますます地域にとって、一つの地域資源であると同時に、まちづくりの大きなキーパーソンというか、そういう役割を果たしていかないといけないのではないかと思います。そういう中で、内部留保の問題とか、あるいはもう一つ問題になるのは、いわゆる措置から契約になった中で、理事会の意思決定、これは決算のことでも、恐らく理事会で決議をして出しているはずですけれども、そうすると理事会というものがどういうポジションを持たなければいけないか、こういうことが問われるのではないかと思います。その辺をぜひともまた皆さん方で御議論していただければと思います。

○田中座長 千葉委員、どうぞ。

○千葉構成員 内部留保の話も出てきているので、少しお話ししようと思います。

 まず一つは、藤井委員おっしゃったように、普通、企業だったら手をこまねいて、現預金をためていないよと。これはまさにそうで、企業経営者の場合、現預金をためているというのは、収益機会に対して資金を投じない無能の証拠とよく言われますね。だけど、社会福祉法人の場合は資金を貯めざるを得ないような事情もある。

 例えば普通だったら企業の場合、当然元入れ金は少なくても設備投資が高くなったとき、足らず米は借入金をする、借入金をして返済をしていくわけだけれども、それも利益で返済できないときは、さらに資金繰りのために借り入れを回していくということも考えるわけです。少なくとも利払いを損益の中で払えている範囲においては借り入れをしていっても財務は悪化しません。

 そういうことでいえば、企業の場合はそういう金融スキームを持てるのですが、社会福祉法人の場合、多くの所轄庁においての監査において、借金の返済に充てるために借金を重ねるということ自体を不適正という形で指摘するようなところがあって、みんなそれをおびえている。そうなると、やはり自分たちの稼ぎの範囲で返済しなければいけない。返済額を満額利益計上していかなければいけないという事情がある。

 しかし、まさに田中先生とも前にやった、特養の内部留保の調査研究のときにも明らかにしたのですけれども、よく一般に言われている内部留保というのは、貸方、いわゆる純資産の分にある過去利益ということでありますが、これは貨幣資本である保証はない。実態として問題になるのは、実際の支払手段となる貨幣資本であって、貸借対照表では左側の問題です。

 この2つは違うのかというと違います。なぜかというと、その利益で上がったものを債務の元本返済に充てると、利益は残った状態で貨幣資本と負債が両建てで消えていきます。ということは、利益だけ残った形になるけれど、実際としての貨幣資本はなくなっている。ですから、そこのところをまず整理しなければいけないというのが、あのときの「実在内部留保」という概念だったかと思うのです。

 ただ、そうは言いながらも、では実在の内部留保が全部ゼロかということは決してなくて、それなりにある。そこから先は、各先生がおっしゃった議論に私も賛同しますし、そういうところも考えなければいけないのかなというのが一点ございます。これは、内部留保の関係で今、感じたところです。

 それから、第1ラウンドで各先生がおっしゃったいろいろな現象論的なものを私なりに把握して、また、先ほど藤井先生も「社会福祉法人制度前提ではなくて、一般としてのノンプロフィットのあり方というところから」という話があって、私もそうだと思うのですけれども、ノンプロフィットとは、そもそもなぜ世の中にいなければいけないのか、存在意義が何で認められるのかというと、その要件は非営利法人研究でほぼ定説として言われているのが大きく2つあります。

 一つは、市場の失敗を補完するものである。かつ、政府の失敗が存在するところに補完する機能を持っていること。簡単に言ってしまうと、プロフィットベースで企業がやっても供給できるニーズを満たすような世界、市場の失敗がない状態であれば企業に任せておけば良いのですけれども、市場に任せていくと供給されないまたは過少供給になるようなところは企業ではできない。これが1つ。

 その意味で言うと、今の介護保険というのは、実はかなり市場によって供給できるところに社福がいっぱいいる。これでいいのかという言い方はよくされます。そのためにイコールフッティング論という形で、競争条件の均衡ということを言われているわけです。ただ、外形上の活動レベルでの介護ということで機能を評価するのではなくて、社会福祉法人として担わなければいけない介護とは何というときに、例えば市場に任せていったら採算ベースに合わない人たちが切り捨てられるとかいうところがある。例えばそういう機能を補完しているのだという目線で言えば、同じ介護の活動をしていながらでも、社会福祉法人の固有の分野というのはあるはずで、そこのところが明確になっていない。これが多分、先ほど来おっしゃっているミッションという形で明示されていないというところにもつながってくるのかなという気がしています。

 それから2つ目、「政府の失敗が存在する」というところなのですが、簡単に言ってしまうと、行政としては、公平性を最優先に考える以上、やはり画一化せざるを得ない。しかしそうなると、またそれに基づいて制度を組むわけですから、どうしても世の中と間尺が合わないところが出てくる。いわゆる制度の谷間というものが出てきます。まさに、政府の失敗というのは画一性のゆえに出てくる制度の谷間みたいなところがあるので、社会福祉法人はそういうことも担わないとノンプロフィットでの議論に照らしたときの存在意義は認められないということになる。先ほど松原委員がおっしゃったように、制度のところはしっかりやる、これは当然なのです。しかしながらそれだけをやっていて公益性があるかというと、公益性を構成する要件というのは、今、申し上げた「市場の失敗」と「政府の失敗」というのと2つの掛け合わせの部分であるとするなら、社会福祉事業だけをやっているだけでは公益性があるとはいえず、制度のすき間のところをやってこそ、政府の失敗を補っているということになりますから、それは結局、今回のインフォーマルな、いわゆる社会福祉法人制度でいう公益事業をどう推進していくのかというところにもつながってくるのかなという気がしております。

 以上です。

○田中座長 大変活発な、シンポジウムのような感じで結構でした。理論編あり、現場の困難論あり、多岐にわたって発言がありました。

 事務局、これは論点整理するのが大変だと思いますが、きょうの論点整理の種としては、非常にたくさんのものが込められたので、可能だと思います。頑張ってください。

 では、最後に。

○松原構成員 企業と社福の財務状況を比べてもっと投資すべきだという趣旨のことがよく言われますけれども、特に多いのは、企業はこんなにお金を寝かしていないのだから、もっと社福も使うべきだと。

 しかし企業は、本当はもっと資金を持ちたいのですね。だけど、持てない理由は、一般事業は競争が激しいからです。すごい競争が激しいからこそ、どんどん投資せざるを得ない、また、どんどん費用化して使わざるを得ないという状態にあるということなのです。

 では、社福がメインとすべき事業というのはどういう事業か。そんなに競争が激しい事業なのかということも考えるべきで、先ほど御指摘があったように、営利がなかなか入ってこない、市場が成り立たないようなところを担っているからこそ、またそういうところが第一種社会福祉事業だと思うのです。こういうところは、普通、営利が入ってきて、利益を稼ごうと思ってもできないから入ってこないだろう、ここは税金を使って必要な供給量を確保しようという考え方があって、ああいう事業が成り立っていると思いますので、社福がメインとする事業というのが、一般事業のような競争の激しい事業と違う、どういう事業なのかと言ったら、なかなか市場が成り立たない、競争が一般事業のようにはない事業。そしてここでは社会的弱者を対象にしている。こういう事業では何が重要かというと、安定継続にサービスを提供することが何よりも求められます。そうなると、安定継続に重きを置いた事業スタイルにならざるを得ない。

 ここはしっかり御認識いただいて、別に投資することがいけないと言っているわけではなくて、投資していただいていいのですけれども、何かすぐ営利のように行動しなければいけないというのではなくて、そもそもどういう事業特色のところでサービスを提供しているのかという認識が非常に重要だと思います。

 以上です。

○田中座長 ありがとうございました。

 西元委員、どうぞ。

○西元構成員 お時間のないところ、失礼します。

 まだこのお話が論点に挙がっていないのかなと思いました。社会福祉法人の公益性に関してはお話がございましたけれども、透明性だとか、事業を運営していく、近代化を図っていかなければいけないとか、それから質の担保、向上をしていかなければいけない、これも社会福祉法人の大きな課題だと思っています。具体的なことを申し上げると、例えば同族とか家族経営というのが非常に多い法人ということが言われています。そうすると、まま起こっていることは、どこかは申し上げませんけれども、ワンマン経営になってしまう可能性が非常に強い。そういうふうになっているところが多い。それから、家族経営ということでやると、例えば施設を経営していらっしゃると、その施設長は専門性がなくても施設長として君臨する。これでは、近代的な経営運営ということはできないでしょう。このあたりについて、よほど厳しい第三者の目、もしくは行政の目というのが必要になってくるのではないかなということを思いました。

 それから、近代化ということで言っていくと、法人の組織運営なのですけれども、組織性というのをしっかりと担保していかなければいけない。組織性というのは、私はこう考えるのですけれども、権限と、責任と、義務とそれから規則化されたコミュニケーションの方法だと。こういったものがしっかりと組まれていて、例えば法人の理事会だとか、評議員会とか、監事だとかいますけれども、それだけでやっていくのではなくて、それ以外に経営委員会のようなものがあって、しかも内部監査というものがしっかりとしていて、独立した形でそれぞれが牽制体制をとっていく、そういった組織性というものを確立していくというのも一つの方法なのではないのか。

 先ほど申し上げましたように、施設長を、全然御経験がないとか、専門性がない方がおやりになるということができるようなシステムというのは、これはいかがなものかというううなことは、私自身も思っておりまして、それは質の担保という意味で、まず最初に取り組まないといけないことなのかなと思いました。

 以上です。

○田中座長 ありがとうございました。

 もう一つ議題というか、今後の話がありまして、資料3を説明してください。

○正野補佐 資料3をご覧ください。資料3は、この検討会のスケジュールのイメージの資料になります。今日、たくさんの御意見をいただきましたので、いただいた意見も整理しながら、あくまでイメージということです。

 今日はフリーディスカッションをしていただきまして、第2回目は、「法人の担うべき事業」、3回目に「法人の運営について」、4回目に「法人の透明性の確保」、5回目に「サービスの質の向上」を各月1回ペースで行っていきまして、これら一連の議論が終わったあたりで関係団体のヒアリングを行って、取りまとめに向けた議論を行っていくというイメージで進めていくことを考えております。

○田中座長 ありがとうございました。

 きょうの議論を踏まえて、いろいろな論点が出てきましたので、このタイトルは微妙に変わるかもしれませんね。1日に1個ではなく、もしかしたら別な論点が入ることもあり得ると理解していいのですね。そのために、今日フリートーキングしたので。

○正野補佐 はい、そのように考えております。

○田中座長 この進め方について、何か御意見ございますか。

 千葉委員、どうぞ。

○千葉構成員 1点質問なのですけれども、今回いろいろな各委員からお話があった中で、透明性とか財務諸表の開示とかに関連するものがあります。それについては、一方でこれまでの経緯の現状の資料の中で、今年12月までに開示のあり方について結論をというのがありますが、そことこの会合の関係というのはどうなのか教えてください。

○正野補佐 委員がおっしゃるように、規制改革会議におきまして、25年末までに公表のあり方を検討することになっておりまして、そちらについてもこちらの検討会で議論していただきたいと思っております。

 何月に議論できるかというのは、また検討させていただきたいと思うのですけれども、その会議との兼ね合いもありますので、年内のどこかで先にやらせていただくことも考えております。

○千葉構成員 わかりました。

○田中座長 藤井委員、どうぞ。

○藤井構成員 最初から枠をはめるようなことは言いたくないのですけれども、前提条件の中で議論しないと非常に大きな問題まで含まれておりますので、法改正とか、省令改正とか、そういったことまで踏み込んだ議論をここでやられることは前提になっているのか、是々非々なのか、前提でないのか、答えられる範囲でお答えいただけますか。

○友藤課長 その点につきましては、ここでは幅広に御検討いただければと。それをくんで、私ども法律に乗せるべきものがあれば、それはまたそしゃくして、さらに検討を進めていくという形で対応させていただきたいと思っております。

○田中座長 よろしゅうございますか。

 では、最後に次回の開催について、事務局から説明してください。

○友藤課長 次回の開催でございますが、1028日(月)ということで予定しておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと存じます。

○田中座長 では、本日予定していた議事をこれにて終了いたします。

 大変活発な議論を頂戴しまして、ありがとうございました。


(了)
<照会先>

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(電話): 03-5253-1111(内線2870、2871)

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