ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(血液事業部会安全技術調査会)> 平成25年度第2回血液事業部会安全技術調査会(2013年9月20日)




2013年9月20日 平成25年度第2回血液事業部会安全技術調査会

医薬食品局血液対策課

○日時

平成25年9月20日(金)11:00~13:00


○場所

航空会館 501・502会議室
(東京都港区新橋1-18-1)


○出席者

出席委員:(10名)五十音順、敬称略、○委員長

内田 恵理子 岡田 義昭 白阪 琢磨 杉浦 亙 新津 望
濱口 功 牧野 茂義 山口 照英 ○吉澤 浩司 脇田 隆字

欠席委員:(1名)敬称略

大戸 斉

参考人:

田所 憲治 (日本赤十字社) 日野 学 (日本赤十字社) 五十嵐 滋 (日本赤十字社)

事務局

浅沼 一成 (血液対策課長) 野村 由美子 (血液対策企画官) 上田 恵子 (血液対策課長補佐)

○議題

1.血液製剤に関する報告事項について
2.血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした核酸増幅検査(NAT)の実施に関するガイドライン改訂について
3.その他

○議事

○上田血液対策課長補佐 皆様、おはようございます。定刻よりやや早いですが、御出席者の方、皆様そろわれましたので「平成25年度第2回血液事業部会安全技術調査会」を開催いたします。

 なお、本日は公開で行うこととなっておりますので、よろしくお願いいたします。

 本日の出欠状況ですが、大戸委員より欠席の連絡がございましたので」、安全技術調査会委員10名中9名の御出席をいただいていることを御報告いたします。

 また、本日は、日本赤十字社血液事業本部より、経営会議委員の田所参考人、副本部長の日野参考人、安全管理課長の五十嵐参考人にお越しいただいております。よろしくお願いいたします。

 カメラの頭撮りは、ここまででお願いいたします。

それでは、以降の進行を吉澤委員長にお願いいたしたいと思います。

○吉澤委員長 おはようございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、7月下旬に国内で初めて献血血液からシャーガス病の陽性検体が出まして、8月14日に開催された第2回目の運営委員会で、この会議を速やかに開いて、安全対策を検討すべきであるという結論となりました。本日はこの御意見を受けての開催となっております。

 後ほど牧野委員より前回の運営委員会の結果報告をいただき、その後、運営委員会後に結果が判明した日赤の遡及調査の結果を御報告いただきます。そして、最後に安全対策についての案を事務局から説明していただきます。そういう手順で進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、資料の確認を事務局からお願いいたします。

○上田血液対策課長補佐 それでは、皆様、お手元の資料をごらんください。

 資料1、シャーガス病陽性献血の遡及調査結果、日本赤十字社よりの資料がございます。

 資料2、シャーガス病の安全対策(案)について、事務局資料がございます。

 資料3、血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした核酸増幅検査(NAT)の実施に関するガイドライン(改正案)がございます。これは後ほど説明がございますが、直前に開かれましたNAT小委員会の資料でございます。

 資料4、血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした核酸増幅検査(NAT)の実施に関するガイドライン(改正案)(修正履歴あり)がございます。

 資料5、NATガイドラインに対するコメントでございます。

 参考資料1、血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした核酸増幅検査(NAT)の実施に関するガイドライン(現状版)がございます。

 資料の確認は以上です。

 不足がございましたら、事務局に御連絡ください。

○吉澤委員長 ありがとうございました。

  それでは、運営委員会の座長である牧野委員から、8月14日開催の第2回の運営委員会の結果報告をお願いいたします。

○牧野委員 8月14日にされました運営委員会ですが、これには全委員が出席されました。

 そこで、本件について、事務局より報告を受けました。

 運営委員会としましては、この報告を受けまして、次の2点を決定しました。

 本件の陽性血液を投与されたと考えられる受血者について、日赤は引き続き遡及調査を継続し、追ってその結果を報告していただく。

 2つ目は、これらの遡及調査の結果を踏まえて、シャーガス病に対する血液製剤の安全対策について、近く安全技術調査会で議論していただく。

 この2点です。

 なお、安全対策に関しては、運営委員の方々からも、スクリーニングとしての抗体検査の導入や検査法の確立、疫学調査の強化などの意見が出されました。これらの点につきましても、安全技術調査会での議論が必要であるという結論となりました。

 運営委員会の報告は以上です。

○吉澤委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、事務局から資料2の説明をお願いいたします。

○上田血液対策課長補佐 申しわけございません。先に遡及調査の報告をしていただきます。

○吉澤委員長 失礼いたしました。それでは、日赤から遡及調査の結果をお願いいたします。

○五十嵐参考人 それでは、資料1をお願いいたします。「シャーガス病の安全対策・疫学調査について」報告させていただきます。

 「1.安全対策・疫学血の進捗状況」ですけれども、ここに記載したものは、8月14日の運営委員会で報告したものと、基本的には同じものを再掲させていただいています。

 シャーガス病の安全対策としましては、平成241015日採血分より、下表の1~3のいずれかに該当する方に、献血の受付時に申告をお願いしています。

 該当献血者の血液は、血漿分画製剤用の原料血漿としてのみ利用するという、製造制限を実施しています。

 実施状況ですけれども、平成25年7月30日現在で集計をしています。

 対象ですけれども、1、中南米諸国で生まれた、または育った。

 2、母親が中南米諸国で生まれた、または育った。

 3、1に該当しない方で、中南米諸国に通算4週間以上滞在した。

 こういう方に対して申告をお願いしています。

 延べ人数ですけれども、中南米諸国で生まれた、または育った方が1,748人。

 母親が同様の方が239人。

 滞在歴のある方が5,248人。

 計7,235人となっています。

 全献血者がこの期間400万余りでしたので、献血者の割合が0.18%ということになります。

 2ページをお願いします。「2.疫学調査」です。

 実施期間は、平成25年1月8日から実施をしています。愛知、岐阜、三重、静岡、東海4県の血液センターで、1月8日から開始しました。その後、4月23日より全血液センターで実施をしております。

 検査方法としましては、Ortho社のELISA法を用いています。この検査法については、後でお話をさせていただきます。

 「疫学調査対象者数」の隣に「安全対策対象者延べ人数(実人数)」ということで、1ページにありました人数を掲載しています。括弧内の数字は、この期間に2回以上献血していただいた方がいらっしゃいますので、実人数ということで、概算の数字ですけれども、掲載をしています。

 疫学調査対象者は、1に該当する方が705人、2に該当する方が67人、3に該当する方が1,514人、計2,286人いらっしゃいました。

 調査応諾率は、1が74.7%、2が56.8%、3が66.1%。3の方につきましては、何回も献血していただいた方が多くて、実人数で表しますと、80.5%になります。

2,286人の方の血液をELISA法で検査した結果、2,254人は陰性でしたけれども、陽性の方が1人見つかったという結果です。

 「3.T.cruzi抗体陽性献血者情報」ですけれども、中南米滞在歴等確認票、上の表の1及び2に該当する40歳代の男性です。中南米で生まれて、お母様も中南米で生まれた方になります。

 本年6月に献血された血液から、T.cruzi抗体検査陽性及びDNAが検出されました。

 この方には、献血歴がありまして、そのうち赤血球製剤9本、血漿製剤2本が医療機関に、また、原料血漿7本が分画製剤メーカーに供給されていました。

 供給された輸血用血液の保管検体のT.cruzi抗体検査は、いずれも陽性でございました。

 運営委員会では、ここまで報告させていただきました。

 この資料作成に間に合わなかったんですけれども、今週初めに第2例の抗体陽性者が明らかになりました。

 その方も1例目と同様に、中南米滞在歴等確認票1及び2に該当する40歳代の男性です。本年8月に献血された血液から、T.cruzi抗体が検出されています。この方は初回の献血でございまして、過去の献血ですとか、輸血用血液に使われたということはございませんでした。

 続きまして、3ページ目をお願いいたします。1例目の献血者の血液につきまして、遡及調査を行った結果になります。

 計9回分の献血で、11本の血液が患者さんに輸血されていたという状況です。11名のうち、5名の方は既に死亡されていました。6人の方が存命でした。

 ただ、200712月に献血の4番の患者さんにつきましては、かなり御高齢な方で、家族の方からの同意が得られなかった。遡及調査の意義などをお話させていただいたんですけれども、高齢で、寝たきりのような状態でありましたので、これ以上の検査はしてくれるなということで、検査は断念しています。前に採血した検体があれば、それを使わせていただこうと思っていましたが、それもございませんでしたので、その時点で遡及を諦めたという状況です。

 その他、5名の方、1番の下の方、2番、3番、8番の方につきましては、検体をいただきまして、検査した結果、全員が抗体陰性ということで、感染していないことを確認しております。

 ここまでが遡及調査の結果です。

 3以降は、海外の状況、今回の疫学調査に用いている検査法について、御紹介をさせていただきます。

 4ページ目「3.輸血による感染」ですけれども、これはTRANSFUSIONに掲載されている、今まで輸血による感染が明らかになった、または疑われている症例の一覧でございます。

 その表の1番から11番までが、輸血による感染が特定された症例になります。

 右から2つ目の「Products」、どの製剤が使われたかというところを見ていただきますと、1番から11番に関しましては、全て血小板製剤でございました。12番以降は、血液から感染したことが疑われる症例、あるいは感染した可能性がある症例ということで、掲載されていますけれども、新鮮な全血液と血小板が主にそういう疑いを持たれている状況でございます。

 5ページ目です。「4.海外における献血制限、検査の実施状況」ということで、紹介をさせていただきます。

 米国は、下の国とは異なりまして、国内感染があります。そのため、居住とか滞在による制限がないという状況です。未検査の場合は、1回抗体検査を行い、陰性であれば使用するという状況でございます。

 カナダにつきましては、中南米での6カ月以上の滞在歴、母親または祖母が中南米で出生したものも含まれています。血小板製剤や凍結血漿には使用しないという制限がかかっている状況です。

 スペインにつきましては、日本と違うところは、流行地域で居住した供血者ということで、4週間ということではなく、滞在歴ではなくて、居住歴に限定をしている。

 英国につきましても、4週間以上農村部に居住または就労ということで、日本の滞在歴とは大きく異なっているという状況です。

 オーストラリアは、流行地域で出生した、または流行地域で輸血を受けた供血者からは分画原料のみにするということで、やはり滞在歴等はないという状況になっています。

 最後はWHOですけれども、中南米での出生で、ここには祖母まで含まれています。滞在歴、居住歴につきましては、農村部に限定をされています。

 世界的にはこういう状況になっております。

 6ページ目、海外で実施された検査、あるいは遡及調査の結果について、幾つか文献がございましたので、その抜粋でございます。

 1つ目は、米国のNew York Blood Centerの遡及調査の結果でございますけれども、生存が確認された48名の受血者注、遡及調査可能であった7名のうち、5名が抗体陰性、2名が陽性だったそうです。陰性者5名については、赤血球4名と血漿1名が輸血されていた。陽性者2名に輸血された製剤は同一ドナーによる血小板でして、血小板フェレーシスと赤血球を一緒にとるという献血をやっているようで、そのうちの赤血球は、上の4名のうちの1名でございました。同一ドナーから同時に採血された血小板で1名感染があったけれども、赤血球では感染がなかったという結果です。

 2番目は、Canadian Blood Serviceですけれども、抗体陽性献血者13人中11人については中南米出身、乗りの2名は母親が中南米出身で、本人にも短期間の滞在歴があったそうです。

 生存が確認された66名の受血者中、遡及調査が可能であった50名、赤血球30名、血小板6名、その他14名となっていますが、全て陰性であったという結果でございます。

 7ページ目、England及びWest Walesにおける限定的スクリーニングの検査結果ということで、表には2012年にこの地域で行われたT.cruziの抗体検査の結果が示されています。

 表の2段目になりますけれども、2,144人検査をしまして、陽性は0だったということです。

 この地域では、1998年から検査をしているとのことですが、抗体陽性が確認された献血者は、これまでに3名ということが書かれていました。

 フランスにおける限定的スクリーニングです。2007年5月から200812月まで、17カ所の血液センターで限定的なスクリーニングを実施した結果、全献血者の3.5%に当たる163,740名について検査をしまして、そのうちの5名が陽性、全員が流行地域の出身者であったということが書かれていました。

 8ページ目が、今回、我々が疫学調査に用いた抗体検査法のバリデーション結果です。検体をいただいて、まず初めにOrtho社のELISA法で検査をいたします。これで陽性が確認された場合は、アボット社のCLIAで確認をするという検査を行っていました。

ELISACLIAを比べていただきますと、1番目については、ELISAで陽性、CLIAで陰性という結果でしたけれども、ELISAの値につきましては、カットオフぎりぎりの値でございました。逆にCLIAのほうは、真の陰性検体とは明らかに数値が異なって、カットオフは一応1と定められているんですけれども、陰性検体とは明らかに値が異なるということで、区別はできるだろうということで、基本的にはほぼ同等の感度であろうかと思っております。

 隣にはほかの検査、IFAですとか、イムノクロマト法、あるいはPCR等での検査結果を参考として示してありますけれども、ほかの方法でネガティブであったものも、ELISAあるはCLIAでほとんど検出されているという状況です。ELISAにつきましては、これまでに3,000検体近く、献血者の血液を測定していますけれども、偽陽性というのは1例もないという結果でございました。

 私からは以上でございます。

○吉澤委員長 どうもありがとうございました。

 この後、資料2の説明を事務局からいただきますが、ここまでのところで、確認しておきたいこと、御質問、御意見がありましたらお願いしたいと思います。総合討論は後ほどいたします。

 ここまではよろしいでしょうか。

 それでは、引き続き、資料2の説明を事務局からお願いいたします。

○上田血液対策課長補佐 資料2をごらんください。今回の事例のまとめになります。

 「1.本事例への対応」ということで「(1)献血者への連絡について」ですが、先ほど日赤から説明がございました疫学調査ですが、この結果は陰性・陽性にかかわらず、御本人に通知しているところです。

 本件についても、御本人に通知を行うことができました。御本人が直接医療機関のもとを受診され、主治医を通して、御本人御了承のもと、主治医を通しまして、情報をいただいたといった状況です。

 「(2)輸血を受けた患者への対応について」は、先ほど説明がございましたので、こちらからは割愛させていただきます。

 「2.今後の方針」をごらんください。

 「(1)基本方針」です。先ほどの説明にもございましたが、平成2410月以降、献血による血液製剤については、シャーガス病に対する安全性は、問診によるハイリスク者を特定した製造制限という形で、確保されていると考えています。しかしながら、これ以前の献血による輸血製剤については、感染の可能性というものが、残念ながら、ゼロとは言い切れないと考えております。といいますのも、シャーガス病は無症候性の潜伏期が長く、供血者が感染に気づかないまま献血をしたことも十分に想定されるということです。万が一、受血者の輸血感染が明らかになった場合は、早急に対応しなくてはならないものと考えております。したがって、実施可能性を踏まえつつ、今までの献血に対する調査を実施しようと考えております。

 その案が「(2)過去の献血に対する具体的な対応と検討事項」でございますが、マル1.疫学調査です。これは繰り返しになりますが、問診該当者に同意を得て、抗体検査をしているものでございます。これについては、抗体検査をしておりますが、主な目的を陽性者の遡及であると考え、陽性結果の遡及を進めることで、過去の検体に対する対応を徐々に行っていこうというものです。

 したがって、その効率を上げるために、今、5,000例までという目標がございますが、これを継続していただいて、さらに同意者に対する同意率といいますか、今でも80%から70%の方に応諾いただいている状況ではございますが、これをなるべく効率よく導入していただくような工夫をし、調査を続けるということを考えております。

 マル2.ですけれども、こちらについては、献血者のうち、中南米出身者というカテゴリーで同定できる保管検体があると聞いております。これを可能な限り検討し、シャーガス病について検査をしていくということを考えております。実施可能性等については、御意見をいただきながら、これから詰めていくところでございますが、現段階ではこのようなことを考えております。

 以上より、総合的に考えまして、現在の問診によるリスクの特定、製造制限による安全対策、それと並行して行っております、同意取得による疫学調査を継続することを、現段階では考えております。

 以上、御意見をお願いいたします。

○吉澤委員長 どうもありがとうございました。

 簡単にまとめますと、輸血を受けた人の遡及調査をした段階では、感染例は1例もなかったということが確認されました。

 2例目の陽性のドナーにつきましては、初回の献血で、過去に輸血に使われた履歴はないということで、受血者の遡及調査は不要ということでした。

 外国の例を見ますと、感染事例というのは、全て血小板輸血を受けた例に限られており、それ以外のものについては、今までのところ、事例はない。

 こういうことを踏まえての議論になりますけれども、先生方の御意見をお願いいたします。

 もしよろしかったら、先に幾つか聞かせていただいてよろしいでしょうか。

 日赤から説明していただいたTRANSFUSIONのバリデーションのところですけれども、幾つかの測定法がありますが、患者検体と書いてあります。この検体は全部病原体がいる検体なんですね。いるということを、何らかの方法で確認された血清という意味ですね。

○五十嵐参考人 患者として来られた方からいただいた血液です。

○吉澤委員長 原虫の有無についての確定診断の場合は、どの辺まで確かなんでしょうか。

○五十嵐参考人 原虫が血液に出てくるときと、出てこないときがありますので、確定診断のときにはなかなか難しい。抗体検査のOD値が高ければ、まず虫がいるだろうということを聞いています。PCRで陽性になれば、確実なんですけれども、PCRが陰性の場合は、判断が難しくなるという状況だと思います。

○吉澤委員長 測定法を評価するためには、標準物質が必要になると思いますが、T.cruziについてそれは確立されているんでしょうか。

○五十嵐参考人 標準物質としてはないです。

○吉澤委員長 ほかに御意見いかがでしょうか。

○山口委員 事務局の説明もそうだったと思うんですけれども、2つに分けないといけないということだと思います。過去の献血から受血された方への感染をどう把握していくかというところで、1つは、今後、複数回献血者が陽性になったときに、さかのぼれるというのは、非常に明確だと思うんですけれども、もう一つは、複数回ではなくて、単回あるいはそんなに来られなかった方というのは、もしやろうとすると、資料2の2の(2)のマル2.、献血者のうち、中南米出身者の保管検体検査を可能な限り検討というのは、献血に来られない方にも同意を得て、検査をするという趣旨でよろしいんですか。

○上田血液対策課長補佐 今、その方法論は詰めていますが、同意の問題は、専門の先生等にも相談いただきながら、必要な同意はとって進めていかなくてはならないと思っております。

○山口委員 もしとれるなら、それを進めていただくことは非常に重要だと思います。やれる範囲のことは、やっていかざるを得ないという気がします。同意を得られない方の検査をするというのは、かなり難しい問題が出てくると思うので、その辺はプラスαの同意のとり方の問題などもあると思います。

 もう一つは、今後のこととして、今の抗体検査を継続するかどうかという話があると思います。海外の動向を見ても、抗体検査でポジティブではだめなんですけれども、渡航していない方などは、ネガティブであれば、リエントリーができる。今、中南米出身者の方は、血漿分画製剤にしか使えないという話になっているんですけれども、先ほど吉澤先生がおっしゃったみたいに、ネガティブが確実かと言われると、その辺の問題点はちょっとあるんですが、例えばアボットとかこの辺が、FDAで承認されている検査でネガティブと言えるんだったら、リエントリーということも検討してもいいという気がいたします。一旦ネガティブということが確認されれば、その後、その献血者の方については、さらなる検査は不要になるかと思います。

○吉澤委員長 ありがとうございました。

 今の御意見は、日赤から説明いただいた5ページ目のところにある、今後どうするかということについての御意見かと思いますけれども、今後の方向については、アメリカ型でいくのか、カナダ型でいくのか、スペイン型でいくのか、WHO推奨型でいくのか。日本はどういう方向でいったらいいんだろうかということは、今から考えておく必要があるかと思います。

 岡田先生、どうぞ。

○岡田委員 先ほど山口委員がおっしゃいましたけれども、これは2つです。つまり遡及をどうするか、あとは将来どうするかということで、これを一緒に議論すると、わからなくなってしまいますので、まずは遡及をどうするかということを決めて、その後に今後どうするかということを議論したほうがいいと思います。

○吉澤委員長 わかりました

○岡田委員 実際8月の段階では1例だったんですけれども、その間に2例目が出た。あとは班研究の報告などを見ますと、中南米出身の住民の方を調べると、数パーセントの方が抗体を持っているという報告もありますので、今まで中南米出身の方が献血された中に陽性者はいる可能性が非常に高いと思うので、何らかの形で遡及をしなくてはいけないということで、どういうふうに遡及をしたらいいかということを議論していただきたいと思います。

○吉澤委員長 山口先生、どうぞ。

○山口委員 1つは、先ほどの繰り返しになってしまうかもしれないんですけれども、パイロットのサンプルが残っているわけですから、過去の献血者のうちで、同意が得られるものについては、可能な限り検査をしていくという方向で進めるのがいいのではないかと思います。

○吉澤委員長 過去に献血された血液の検査をする際に、一人一人に同意をとるというのは、あまり現実的ではない上に、それを日赤が全部背負ってやるというのは、かなり大変なことだと思います。1つの案ですけれども、例えば研究班と呼んでいいのかわかりませんが、感染症の専門の人、疫学の専門の人、場合によっては、倫理的、あるいは法的なことも必要かもしれませんから、そういう人達のアドバイスも得ながら、日赤も協力して、検査を進めていくということは考えられないのでしょうか。

 その場合でも、一人一人から同意を得ることは必要だと思われますか。もし、同意を得るとしたら、どのようにしたら良いと思われますか。

○山口委員 同意のとり方は、運営委員会でも非常に議論になったところでして、現在の中南米の献血者の方も、先ほど事務局から説明がありましたが、7割、8割の方は同意をされているんですけれども、逆を言えば、2割の方は同意をされていないということがあると思います。受血をされた方の安全性を考えたときには、本来、検査をしたいというのが、正直なところなんですけれども、検査を希望していない方がいらっしゃるということを、どう解決していくのか。

 サイエンスの問題では、やったほうがいいのはもちろんよくわかるんですけれども、希望されない方の検査をどうできるのかというのは、例えばこういう検査をするので、もし異存のある方は申し出てほしいというやり方、言わばウェブ上にそういうことを公開することによって、検査を可能にするというやり方もあると思います。ただ、これは先ほど吉澤先生がおっしゃったみたいに、倫理の専門家とか、その辺も含めて、同意のとり方に関しては、考えるべき事項だと思います。

○吉澤委員長 私どもがウイルス肝炎の血清疫学的調査を行った際に、献血された血液については、将来の輸血の安全を確保するために、研究用として使わせていただくことがありますという一筆が入っていたことを根拠に仕事をさせて頂いた経緯があります。過去の検体を調べる場合には、このように現実的に対処していかなければ実効のある調査はできないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 牧野先生、前の運営委員会での御議論についてお願いできますか。

○牧野委員 山口委員がおっしゃったように、現在の検査自体は7割の方しか行っていない。血液製剤の安全性を問う場合、7割でいいのか? 残りの未検査の部分の安全性が全くわからない状態で、今後進んでいいのか?ということが1つあります。過去の検体を調べるに当たっても、同意というものが非常にネックになってきますので、受血者の安全を考えた場合、ある程度検査を行っていくように現実的に考えていくべきであろうという意見は出ておりました。

○吉澤委員長 ありがとうございました。

 同意が得られないから、対象の一部しか検査はできませんでしたということでは過去の問題を精算したことにはならないのではないかと思います。大丈夫かと言われれば、大丈夫ではないわけです。やはり年を区切って、何年から何年まで期間を区切ってでも対象検体については、可能な限りローラー作戦で検査を行った上で、過去の検体についての調査は打ち切りというような、現実的な対応をしないと、これはずっと尾を引くことになると思いますが。

牧野先生、考え方としてはそんな感じでよろしいんでしょうか。運営委員会での議論との食い違いはありますでしょうか。

○牧野委員 そういうことだろうと思いますが、そこを判断する上で、シャーガス病の感染の認識度が今まではそう高くなく、非常に特殊なものとしてありますので、以前はどうで、今からはどうだとか、疫学のデータも含めて、専門家の意見も踏まえて、行っていく必要があるだろうと思います。

○吉澤委員長 野村企画官、お願いします。

○野村血液対策企画官 恐れ入ります。過去の献血の確認について、補足をさせていただきます。

 資料2の裏をごらんください。交通整理のようなお話になるかと思いますけれども、今、先生方から、2つの方法での過去の調査について、御指摘をいただいたかと思います。

 最初は今後に向けて過去の調査をしていくという意味では、今、実施をしている疫学調査が、5,000例で当初終わるということで計画をされておりまして、今、日赤からいただいた資料の2ページ目にございますけれども、7月の段階で2,280人ぐらいに調査をしていますので、これが早晩終わることになります。この調査については、疫学調査そのものは一旦閉じるかもれませんけれども、抗体を検査するということを継続することでいかがかということになりますし、その中で、今、御指摘があったように、検査をできるだけ多くの方々に受けていただけるのかということについて、どんな工夫があり得るのかということについて、きょうも御議論をいただければと思います。

 それから、過去に保管をされている検体になりますけれども、これがマル2.に書いてあるものになります。問診を始めたのが2410月からになりまして、その後、疫学の調査も始まっていることになりますけれども、さらにその前に献血をした者については、日赤からも補足をいただければと思いますが、平成16年以降分について、問診のデータが残っているということで、渡航された経験がある方については、何とか追えるかもしれないという話がございます。今、委員長からも御指摘がありました実行可能性を考えると、このようなデータの中から、検査の対象となる方を特定していくという工夫もあるかと思いますし、製剤として、輸血製剤ということになろうかと思いますけれども、どういう製剤をつくられた方になるのか。例えば成分献血をされたような方は、どうするかというお話があると思います。

 それから、一番大事な同意のお話については、倫理の専門家にも御意見をいただく必要があるかと思いますけれども、委員長がおっしゃったように、御本人を特定した形で検査をするのか、あるは匿名化をして、個人情報の連結を切った形でやるのかによっても異なるかと思います。ただ、こういった病気でございますので、献血をされた方が、仮に感染をしていたとしても、症状がないので、気づかない状況であるということや、先々の予後を考えたときに、本来教えることが可能であれば、教えたほうがいいのかどうかといった議論もあろうかと思いますので、そういう辺りは、まだ絞り込めないところもございますが、広く御意見をいただければと思います。

 済みません、補足をさせていただきました。

○吉澤委員長 日赤や関係者に余りにも負担がかかり過ぎないような形で、現実的に対処しつつ調査を進めることが必要だと思います。

 今回のシャーガス病への対処には多少の時間をかけることも可能なことから、これを機会に目先のことだけではなくて、様々な角度から検討を加えつつ対処しておくべきかと思います。今回のことを通じて、調査、対処のあり方を多少なりとも体系化しておくことができれば、今後新しく入ってくる病気に対する際に役立てることもできると思います。この点に関して、いかがでしょうか。

 岡田先生は、IPFAで色々な感染症が問題になるたびに議論に参加しておられましたけれども、どうでしょうか。ウエストナイルから、何から今から入ってくる可能性のある病気はいっぱいありますね。

○岡田委員 それはありますけれども、シャーガス病に関しては、国内で感染するというと、臓器移植とか輸血しかない。ウエストナイルとか、デングみたいに、ヒトからヒトへいくものとはちょっと違うので、そういう面では、ある限局した対策で防げる疾患だと思います。

 話を戻しますけれども、シャーガスに関して、過去の中南米出身者の抗体検査をして、供血者に知らせる、知らせないは別にして、受血者が感染しているかどうかというのは、遡及しなければいけないのではないかと思います。そのときに、いつまで遡及できるのかということが、血液の安全性の事業としては重要ではないかと思います。そのときに、倫理的、公衆衛生的な観点から、過去の保管検体を供血者の同意が必要なく検査できるということが可能であれば、そういうところはサイエンスレベルとは違うので、その道の専門の方のアドバイスを受けて、過去の検体を検査すべきではないか。陽性が見つかった場合は、その血液を実際に使われた人を遡及しなければいけないのではないかと思います。

 今までのTRANSFUSION、海外の報告を見たりしますと、リスクが高い製剤と低い製剤があるので、全てやるかどうかというのは、今後の議論ですけれども、遡及はやらざるを得ないと思います。そのときに、日赤にどの程度負荷がかかるかというのは、まだ判断できません。

○吉澤委員長 山口先生、どうぞ。

○山口委員 先ほど吉澤先生がおっしゃったように、例えば従来Bの感染率とか、Cの感染率を血液の安全性上やるというのは、多分連結をとった上での研究だったと思うので、それは明確に分けられたんだろうと思うんですけれども、今回の場合には、先ほど事務局の説明にもありましたように、受血者へのアプローチが必要になってくるところがあると思います。

 もう一つは、ポジティブになった場合、御本人に知らせるかどうかということも、本来、知らせてあげるべきものであろうと思うので、そういうことを考えたときに、そういうことに対応しないといけないという意味での倫理的な面を解決しておいたほうがいいのではないか。やること自体はやったほうがいいと思うんですけれども、その辺の倫理の解決をしておいたほうがいいのではないかというのが、私の意見です。

○吉澤委員長 いろいろな御意見があると思いますので、先生方からいろんな御意見を出していただいて、ある方向性は出しておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 白阪先生、どうぞ。

○白阪委員 非常に難しいお話をお聞きしていると思います。資料2の裏に出しておられるものでいえば、前向きか、後ろ向きかで話が違うと思いますが、前向きについては、現行の安全対策で、全例スクリーニング検査が必要かと思います。

 過去については、ものすごく議論があるところで、陽性者の検体が出た場合、遡及調査ができるのか。日赤さんは、どなたに輸血されたかというデータを全部お持ちなんでしょうか。もしそれがある程度のところまでということであれば、そこから以前は遡及調査できないわけですから、それ以前について、どなたであるという特定が、どれだけ意味があるかということは考えていいと思います。

 それから、この案にあるように、実現性という意味では、マル2.、データのあるところからされたほうがいいと思うので、平成16年度以降分については、これこれ、こういう方については、協力的に遡及をされる。それ以前については、海に向かって船を出すようなもので、どこまでやればいいかわかりません。

 先ほど数字のあった5,000例とか、そういうことは、ある程度議論しながら進められるのがいいのではないか。

 同意については、倫理の問題がございますけれども、そこは陽性がわかることによるメリットも大きいので、その辺については、倫理の御専門の先生によく御検討いただけたらと思います。

○吉澤委員長 ありがとうございました。

 少し付け加えさせて頂きますと、陽性の検体が得られたときには、検査の標準物質として公の立場で管理をし、必要とされるときに必要とする人が合理的に使えるような体制をつくるということも考えておいては、いかがでしょうか。

 他にいかがでしょうか。牧野先生、どうぞ。

○牧野委員 前向きの検査として、スクリーニング検査をして、3つの分類に入る方は、現在7割ぐらいの実施率ではあるのですが、これも本人の了解が得られた人に限って行っていくということになるのですね。

○吉澤委員長 これについては議論が必要ですが、少なくともハイリスク、ミドルリスクのぐらいの人までは、検査をしますということで合意が得られれば、合理的かと思いますが、その場合、陽性だった人には、結果を教えることになるのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

 ほかの病原体についても、日赤では今までに経験があると思いますが、田所先生、いかがでしょうか。

○田所参考人 安全対策として、今、行っているのは、製造制限という対策です。今後の安全対策としては、検査だけではなく、製造制限も十分に有効な方法であると考えています。検査の場合は、過去のために検査をするのか、それとも、検査をして陰性の人血液を使うためにやるのかというように、何のためにやるかという点をはっきりしておかなければいけません。例えば、使うためと言うけれども、それはその人たちを受け入れなければいけないほど、献血の確保というのが難しいのかどうか。そうではないとした場合の理由は何なのか。それは献血の意思がある人の善意を活かすためにやるのか。そのあたりの論理をきちっと整理する必要があるという気がいたします。

 普通、検査をするかしないかというのは、その病気の頻度の問題であったり、潜伏期が長いことや、無症候期が長いこと、最終的に重篤な病気になることがあるかどうかということを考慮すると同時に、日本では余り議論になっていないのですが、本当は実際に事業としてどれだけの効果があるのかという、コストエフェクティブネスという議論もしなければいけません。日本では難しい議論ではあるのですけれども、今後はそういう基本的な議論というものも必要かと思っています。

 また、先ほど言った検査、製造制限以外に、もう一つ、日本ではvCJDへの対策としての献血制限というものがありました。過去に1日でも英国にいたら、献血しないでくださいということで、数万人を一挙に対象外とした経験がございます。このようにかなり対象者を絞っておいて、献血制限という考え方もないわけではありません。

 今、皆さんの議論は検査1つに集中しましたけれども、ただいま申し上げましたように3つぐらいの方策がある中で、それぞれどういう役割があるのか、あるいはメリット、デメリットは何なのか、必要性があるのかという議論をきちっとしないといけないと考えています。

○吉澤委員長 ありがとうございました。

 シャーガス病の場合、vCJDとちょっと違うところは、南米で生まれた人、居住もしくは行ってきた人たちが対象ですので、献血制限をかけたときに、差別の問題が出てくる可能性も考えると思います。それも念頭に置いた上で、どのように安全性を確保していくかという線で、議論を進める必要があるかと思いますが。

 山口先生、どうぞ。

○山口委員 おっしゃるとおりだと思うんですけれども、2割の方とか、3割の方が検査をしてほしくないという一面があるのは、感染に対する差別の感覚があるんだろうと思います。前のHTLV-1の検査に関しては、その結果を教えてほしいかどうかということを聞いたということもございます。要するに検査結果を聞きたくないという方も、献血者の中にいらっしゃると思います。そういう意味で考えたときに、献血結果は必ずしも教えない。ただし、対象者に関しては、検査をしていただく、検査はこちらでやりますという対策もありかと思います。

 もう一つ、先ほどのvCJDとの違いは、検査をして否定ということができる。要するに否定であれば、先ほど言いましたように、リエントリーみたいなこともできますし、そういうところが大きく違うんだろうという気がいたします。

○吉澤委員長 岡田先生、どうぞ。

○岡田委員 今後のことのほうが、恐らく結論が出やすいかと思いますけれども、現在の製造制限ということで、輸血用血液に関しては、安全性が確保されています。

 何が問題かというと、資料1を見ますと、去年の1015日から7月30日までに7,235名の方が問診に該当したわけですけれども、その中の5,248人、大体73%に相当するんですが、これは日本人の旅行者だと思います。旅行者ですと、サシガメなどがいる地域に入っているような人は、余りいないと推定されるので、リスクは非常に低いだろう。そうすると、今の製造制限ということで、確かに安全性は確保されますけれども、同時に本来であれば、輸血に使える貴重な献血者を失うという面もあるわけです。

vCJDの場合は、試験法がなかったので、献血制限ということで安全性を確保したわけですけれども、シャーガス病に関しては、複数のキットで抗体検査ができるので、問診で引っかかった人を検査して、輸血に利用できる人は輸血に利用できる。抗体陽性の人はもちろん使わないということで、献血者も確保できるし、安全性も確保できるということで、将来的にはこちらのほうがいいのではないか。安全性だけではなく、献血者の意思を尊重するということで、抗体の検査は必要だと思います。

○吉澤委員長 濱口先生、どうぞ。

○濱口委員 出されました方針でいいのではないかと思います。今すぐにやらなければいけないことは、もちろん今後の方針なんですけれども、5,000例まではデータを収集して、その上で、今、幾つか挙がってきた課題をこれから検討するということで、時間的余裕があると思います。

 過去のものについて、遡及調査まで、どの範囲までやるのかということは、先生がおっしゃっているような、研究班の中でやれるということであれば、余り倫理的なところは問題にならないのかもしれないんですけれども、遡及調査まで組み合わせてやっていくことになると、そこら辺のバックのほうもきちんと整理した上でということになると思います。幾つかのことを同時並行でやっていく必要があるだろうと思いますけれども、どちらかというと、過去の検体についての整理を早く終わらせてしまうことが、今、一番望まれていると思います。疫学調査が終わった時点で、将来のことをきちんと整理するという方向だと思っております。

○吉澤委員長 今の時点では、具体的にはどんな方策が考えられましょうか。

○濱口委員 実際、日赤に平成16年以降は問診のデータがあるので、そこまではたどれるということですけれども、その後、陽性になった場合、どの範囲まで遡及調査をやっていくのか。今回1例出たということで、相当大変な状況だったと思うんですけれども、これを過去にわたって10例近く、もしくはもっと出てきたりした場合、どうするのかということは、現実的に考えておく必要があると思います。

○吉澤委員長 そうですね。

 これまでに報告されたデータをもとにすれば、血小板輸血が受血者への感染の危険因子であって、それ以外の製剤からの感染はほとんどないわけですから、合理的に対象を絞っていきますと、受血者の遡及をするとしても、数はそう多くないだろうと考えられます。調査の実際については、何らかの研究班をつくって、そこで基本的スキームをつくって、進めていったらいいのではないかと思います。

繰り返しになりますが、調査を進める過程で、確かな感染例が見つかったときには、将来に備えて、その検体については、誰でも使えるような形で公に管理をしていくという、そのことも含めたストラテジーを決めた上で、始めたらどうかと思います。

 いかがでしょうか。大まかな方向性は出てきつつあるように思いますが。牧野先生、運営委員会での議論から、脇道へそれているところはないでしょうか。

○牧野委員 大体同じような議論でいっています。同意とか、個人情報とか、その辺りがどうしても皆さん気になるところで、そこがクリアされれば、後ろ向きの検査も、前向きの検査も、今日出ました議論と同じだと思います。

○吉澤委員長 色々な観点からの御意見を出していただけたらと思います。いかがでしょうか。

 新津先生、お願いいたします。

○新津委員 全性の面とはかけ離れてしまうのですが、今回、受血者の患者さんに対して短時間で同意をとって調べるというのは、医療機関としては、大変だったのではないかと思います。こういう方が出たときの対応というのは、個々の医療機関に任されると、現段階はなっていると思うのですが、そういうことも含めて、シャーガス病の専門家が各病院にいるわけではありませんので、もし患者さんが発生した場合、薬自体も未承認薬ですし、どの医療機関にどういう対応をしていただけるかということも、この機会に広く考えていただくことが、現場としては非常に大切かと思います。

 あと、輸血の同意書についてです。現在、シャーガス病については、全く触れられていないところもありますので、これを機会に各医療機関でその辺も検討していただくような、資料なり、何らかの方策をとっていただければと考えております。

○吉澤委員長 各医療機関に対して、シャーガス病の実態をきちんと広報することは、大事なことだろうと思います。

 ただいまのことは、事務局と相談して、進めさせて頂きたいと思います。

 岡田先生、どうぞ。

○岡田委員 疫学の研究を続けるということですけれども、これは10月ですから、ほぼ1年になります。そうなると、一度検査をされて、本人は知らないけれども、日赤が陰性だとわかっている献血者が、実際に献血の現場に来ていると思います。そのときの対応は、問診で引っかかるから、本人に説明して、検査を続けるのかどうかということです。

○吉澤委員長 日赤では、どのようにされていますか。

○五十嵐参考人 検査で陰性の方には、通知をしています。今回は疫学調査ですので、検査で陰性の方にも通知を差し上げています。

○岡田委員 その方が献血に来た場合は、どうなるんですか。

○五十嵐参考人 安全対策がそれとは別に決まっていますので、安全対策としては、出生と滞在歴になっていますので、陰性の方であっても、同じように原料血漿とはしません。

○岡田委員 使わないということですね。

○五十嵐参考人 はい。

○山口委員 せっかくの献血者、善意の方の意思をできるだけ尊重するという意味で、この問題はエントリーを決めておく必要があるんだろうと思います。ただ、逆にいうと、こういう問題に関しては、日赤で決められる話ではなくて、こういう場で、献血のこういう検査においてネガティブであれば、リエントリーを可能にするということを決められれば、それを受けて、対処できるのではないかという気がします。

○吉澤委員長 陰性が確認されて、その後、エンデミックなエリアに出入りがないときには、科学的にはリエントリーすることには全く問題ないと考えられますが、この問題については、諸外国の例も参考に議論した上で意見を集約し、この調査会の意見として、上部の血液事業部会に上げるということにすれば、よろしいのではないでしょうか。

○山口委員 それでいいのではないかと思います。

○吉澤委員長 よろしいでしょうか。日赤のほうもよろしいですか。

 濱口先生、どうぞ。

○濱口委員 リエントリーというのは非常に重要だと思うんですけれども、今、ここの中で一番ディスカッションしなければいけないのは、安全性をどう担保していくかということで、それにある程度集中すればいいと思います。その中で、6カ月だとか、4週間というのが、それぞれの国もしくは組織によって少しずつ違うので、その辺りも含めて、リエントリーの話というのは、そんなに長くない将来において、またいろんなデータをもとに考えてもいいのではないかと思います。私ももちろんポジティブなんですけれども、リエントリーの話と遡及調査をどうしようという話が、同時並行でというのは、少しずらしたほうがいいと思います。

○吉澤委員長 リエントリ-の問題については、先ほどの方向でいけるかどうか別途議論して詰めていきたいと思います。

○山口委員 確認なんですけれども、再献血に来られた方で、前にネガティブでも、その場合はもう一度検査をすることになるんでしょうか。今、そういうふうにされているかどうか、確認したいと思います。

○五十嵐参考人 もう一度希望されて、検査をされた方はいらっしゃいます。でも、ごく少数です。1回検査をして、陰性という結果で、そのままです。ただ、陰性という結果を返していますので、何で製造制限が続くのかという話は、幾つか聞いています。

○吉澤委員長 日野参考人、どうぞ。

○日野参考人 疫学調査を始めたときは、それは単なる調査というスタンスで始めました。そういうこともありますので、実際にリエントリーすることになると、システム的なきっちりとしたものを構築する必要があると思いますし、それがなくてもできないわけではないと思いますが、少し時間が必要だと思います。

○山口委員 今、認識のお話を聞かせていただきましたら、すぐにリエントリーをやるには、システムを組みかえないといけないとか、要するに時間的なものが必要で、逆にいえば、時間的なゆとりがあると考えていいと思うんですけれども、そういうゆとりの中で、リエントリーの期間とか、暫定的な調査期間を踏まえて、最終的に結論を出すということでもいいのかもしれないと思います。

○吉澤委員長 最初に設定した検体数までは、疫学調査を続ける。その後どういう方針でいくかは、得られたデータをもとにして議論して決めるという線でよろしいのでしょうか。

 岡田先生、どうぞ。

○岡田委員 そうすると、一過性に検査が止まる時期が生じてしまうんですか。

○吉澤委員長 疫学調査としての検査は止まることになると思いますが。

○岡田委員 調査という形ですね。

○吉澤委員長 調査という形での検査はそこで終わりますが、その後の安全対策としての検査は、継続するのか、止まるのかはデータに基づいて決めることになると思います。

○岡田委員 それが決まるまでは、調査が終わると、空白の時期が生じてくるんですね。

○吉澤委員長 受血者の安全を考えたときには、血液製剤の製造制限で、安全性は確保されていることなるわけですが、それだけでいいのかどうかということです。

 先ほどの濱口先生の御意見ですと、疫学調査が済んだ段階で、検査は一旦止まることになるわけでしょうか。

○濱口委員 疫学調査が済んだ段階で止めるという意味ではなくて、疫学調査のデータを見たところで、もう一度、対応を考えていくということです。今、ここで方向性を全部決めるのではなくて、そういったデータの積み重ねの中で、方向性を決めていってもいいと思っています。ですので、そこで切れることを想定しているわけではありません。

○吉澤委員長 具体的にいうと、5,000例を目安にした疫学調査が済むあたりで、もう一度、この会を開いて、その後の方策を決めるということでよろしいんでしょうね。

○濱口委員 はい。

○吉澤委員長 そういうことになるかと思います。

○岡田委員 わかりました。

○吉澤委員長 進行が悪くて済みません。

 いろいろ御意見をいただきありがとうございました。

 ここで、少し時間をいただき、NAT小委員会が開催されたということですが、NATガイドラインの改定案の議論がまとまったとのことですので、山口先生から報告をいただきます。

○山口委員 ありがとうございます。

 ごらんになってすぐだと思いますので、今、御意見はなかなか難しいかと思いますので、後で事務局にでも御意見をいただければと思います。

 簡単に説明させていただきます。

NATガイドラインを策定しまして、10年以上経っていると思うんですけれども、海外ではNATガイドラインの改正などが行われているにもかかわらず、日本では改正が行われていなかったということで、最新の技術も含めて改正を行うということで、研究班を組織しまして、その中で検討させていただきました。

 資料3が改正の案でございますけれども、案に至った前の意見が資料5にございます。資料5にありますように、専門家からの御意見をいただきまして、Qとその対応案という形で書かせていただいております。

 寄せられた意見に基づきまして、改正案を見え消しの形でつくったのが、資料4でございます。

 細かいところは申しませんけれども、例えばNATに関しましては、最新の技術でもあるし、プレックスなどの技術が非常に普及しておりますが、そういうマルチプレックスの技術についての対応、あるいは陽性が出たときに、陽性が出た検体に関するシーケンスをすることによって、今後の安全対策に役立てるべきだとか、あるいは自動化機器が、今、普及していますので、自動化機器を使う場合あるいはキット機器を使う場合における対応等について、書かせていただいております。

 以上でございます。

○吉澤委員長 ありがとうございました。

 それでは、この改定案につきましては、後日、御意見をお寄せいただきますように、お願いいたします。

  それでは、最後に本日のまとめをしておきたいと思います。

シャーガス病の安全対策につきましては、当初予定した5,000検体までを目安に現在進行中の疫学調査を継続。それが済むあたりで調査会を再度開いてその後の方策を議論して決めるということで了承されたと思います。

 それから、過去に献血された血液についての整理につきましては、献血者の同意の問題、陽性例が見つかった場合の受血者の遡及調査の問題などについて、具体案は決まってはおりませんが、可能な限り検査をして、確認をしておく。このことにつきましては、日赤が全部背負うのは、難しいことですから、感染症の専門の方、疫学の専門の方、倫理的なことも必要になると思いますので、その方面の方々の参加も得て研究チームを作り日赤に協力しながら、調査のストラテジー、エンドポイントを決めた上で実施に移していく。

 また、調査の過程で陽性の検体が見つかった場合には、公の管理体制の元に検査の標準物質としてオープンに使えるような形で保管するという方向で議論が進められ、了承されたと思います。

司会の不手際で、議論が行ったり来たりしまして、申しわけありませんでした。

 本日は以上終わらせて頂きます。長時間にわたりまして、御審議、御議論いただきまして、ありがとうございました。


(了)
<<照会先>>

医薬食品局血液対策課 上田(内線:2905)・野田(内線:2914)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(血液事業部会安全技術調査会)> 平成25年度第2回血液事業部会安全技術調査会(2013年9月20日)

ページの先頭へ戻る