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2013年8月12日 第24回独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会議事録
○日時
平成25年8月12日(月)14:58~18:42
○場所
厚生労働省専用第12会議室
○出席者
永井部会長、内山部会長代理、祖父江委員、福井委員、藤川委員、斎藤委員、花井委員 |
○議事
(以下、議事録)
○永井部会長
それでは定刻より少し早いのですが、皆様おそろいですので、ただいまから第24回厚生労働省独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会を始めさせていただきます。委員の皆様方におかれましてはお暑い中、またお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。本日は三好委員、本田委員が御欠席とのことでございます。
議事につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○政策評価官
それでは、本日の議事について御説明申し上げます。お手元に配布されている議事次第にありますとおり、議事につきましては2点で、国立精神・神経医療研究センターと国立長寿医療研究センター両センターの平成24年度の個別評価について御審議いただきます。また、机上配布資料と右隅の所に書いてあります1枚紙ですが、両センターとも個別事項につきましては14項目ありまして、第1グループから第4グループまでの4つのグループに分けまして、法人から御説明いただき、その後質疑応答という形で評価いただければと考えております。以上でございます。
○永井部会長
ありがとうございます。では、国立精神・神経医療研究センターの個別評価をお願いいたします。最初に、樋口理事長から御挨拶と平成24年度における業務実績の概要の説明をお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
国立精神・神経医療研究センターの理事長を仰せつかっております樋口でございます。よろしくお願いいたします。本日、この猛暑、苛酷な暑さの中、私どもの評価のために委員の先生方に、お越しいただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。平成24年度の業務実績をこれから各セクションごとに報告させていただきますけれども、その前に私のほうから全体概要の説明をさせていただきます。
お手元の資料の1-1をお開きいただきたいと思います。委員の先生方の多くの方には、評価会議で何度もこのセンターの概要をお話させていただいておりますので重なるかもしれませんが、今回は新たに委員が何名か交代されたと伺っておりますので、ごく簡単にセンターの概要をお話しさせていただきたいと思います。
1ページのところです。まず、当センターの使命というのが上の枠組の中の2つ目に書いてあります。病院と研究所が一体となり精神疾患、神経疾患、筋疾患及び発達障害の克服を目指した研究開発を行い、その成果をもとに高度先駆的医療を提供するとともに、全国への普及を図るということが使命です。下の左側の枠の中が全体のセンターの概況で、平成22年4月1日に独法化されまして、現在の組織になっております。役職員数ですが、常勤の役員、理事が3名、そのほかに非常勤の理事が2名おり、常勤の職員は合計で708名です。
主な組織がそこに書いてありますけれども、私どもには研究所が2つありまして、神経研究所と精神保健研究所があります。それから、トランスレーショナルメディカルセンター(TMC)という組織がありまして、これは研究所と病院をつなぐインターフェースの役割、研究をいかにBench to Bedにもっていくかというところを中心に役割を果たしているのがTMCです。それから、脳病態統合イメージングセンター(IBIC)というのがありまして、これは脳の画像の研究をするイメージングを中心としたセンターです。もう1つ、認知行動療法センター(CBT)というのがあり、これは心理療法である認知行動療法を普及していくためのセンターとして立ち上げたものです。それに加えて、468床の病院があり、ここは精神・神経疾患、さらには一部でありますが一般科の病床、そして重心、さらには医療観察法の病棟を合わせて468床で構成されております。
運営状況ですが、平成24年度の実績がそこに記してあり、総収益140.6億、総収支率97.8%、経常収益が140.6億で経常収支率が97.9%となっております。1日平均入院患者数、外来患者数はおよそ、そこに記したような数です。また、外部資金の獲得額が約24億です。
右の括弧内に設置の根拠とセンターの行う業務に関して整理してありますが、これについては御覧いただきたいと思います。
2ページですが、緑で書かれているタイトルがセンターの行う事業、すなわち大臣から示された中期目標を基にして中期計画を立案し、それを厚労大臣の承認のもと行っていくのが独法の仕組みですが、大きく4つの柱を立てております。「研究・開発」「医療の提供」「人材育成、情報発信」「適切な業務運営のための組織・予算」ということです。まず、研究・開発としては臨床を志向した優れた研究・開発、特に臨床研究を重要と位置付けて研究・開発を行って、臨床にもっていくような研究を中核として行う。かつ、常にそれは戦略的かつ重点的な研究・開発であるということを位置付けています。
医療の提供に関しては今、科学的な根拠、エビデンスに基づいた医療の中で考えられる先駆的な高度な医療を提供するということが私たちに課せられた役割だと思っており、当然のことながら患者様との信頼関係を基に、そういった医療を進めていくということです。また、これは政策的なものとして医療観察法という特殊なところを担っておりますし、重症心身障害児(者)に関しても担っているところであります。これに関しては質を担保した医療の提供を行っていくことになります。
人材育成に関しては、やはり人材を育てることがこのセンターとしての重要な役割のひとつで、モデル的な研修であるとか講習を数多く担って進めております。また、全国的な医療機関を、我がセンターが中核となってネットワーク化して臨床研究、あるいは治験等を推進していくことを意識してやっているところです。また、いろいろな意味での情報提供が必要ということが言われており、これも私どもの重要な役割と考えております。
最後に、業務運営と組織・予算のところですが、効率的な業務運営体制のために弾力的に、できるだけいろいろなものを再編して再構築をしていっております。また、総人件費改革への取組、それから、何と言っても収支改善の実施と電子化の推進、これは重要課題です。また、法令遵守、能力の高い人材を持続的に確保するということを意識してやっているところです。
駆け足になりますが、次の3~5ページは平成24年度の業務実績です。今申し上げた4つの項目ごとに実績が記してありますが、後ほど各セクションごとに説明をさせていただきますので、ここは飛ばさせていただきます。
6ページが、前年度に業務実績評価をいただいて、こういった点を特にこれから進めるよう期待をしていただいた取組がどうなっているかを要約したものです。
左側が平成23年度の期待していただいたところを整理したもので、実際にそれに対してどれだけのことができたかというのが、右側のカラムに入っています。細かいことを申し上げませんが、研究・開発に関しては、TMCが実際に完成をして、これをもとに研究・開発を一層促進すること、企業との連携を十分今後発展させることを御指摘をいただきまして、これに関しては右側を御覧いただきますと、バイオリソースを収集保存してこれを利用していくための全体の枠組みを促進的に進めてまいりました。また、リサーチリソース・生体試料等を活用した研究に取り組み始めております。例えば、脳脊髄液中にあるオキシトシンを測定することによって得られた情報等は新しいものとして注目していただいております。また、筋ジストロフィーに関しては、日本新薬との間に共同開発契約が締結でき、正に、医師主導型治験がスタートしているところです。
2番目の病院における研究・開発ですが、パーキンソン病であるとか、多発性硬化症、精神疾患等の前向きコホートの研究体制作りを進展させるようにという御期待を頂きまして、これに関しては、パーキンソンについてはパーキンソン病臨床研究支援チーム(Teem JParis)という組織体制が出来上がりました。また、筋ジストロフィーに関しては、前からやってきておりますが、これをさらにネットワーク化していくという、臨床試験のネットワークを発足させました。そして、医師主導治験の進展としては、OCH、これは多発性硬化症を対象としたものですがそれに対してのFirst in Human試験を実施することができました。さらに、GINGRのグループの医師主導国際共同治験がスタートしております。
次に医療の提供に関しては高度先駆的な医療、患者の目線に立った良質かつ安心な医療ということで、ここに書かれたような項目について更に進展をさせることを期待していただいております。それに関しては右の所を見ていただきますと、高度先駆的医療提供の着実な件数の増加に関しては、例示しました光トポグラフィ検査実施件数が平成23年の270件から平成24年には416件へと増加しておりますし、ミトコンドリア病の遺伝子診断は、23年度109件であったものが24年度120件と飛躍的な数ではございませんが増加しております。また、その下の所ではモデル的チーム医療を実践するという専門疾病センター等を活用した取組が進展してきております。これは、後ほど説明があると思います。また、厚労省チーム医療普及推進事業における精神医療従事者への研修等々が進んでいるところです。
7ページで、人材の育成に関しては連携大学院等を通じて学位の取得が随分進んでまいりました。それから、研究者の海外の大学への派遣、特にこれは、単なる狭い意味での研究のためではなくて、大規模臨床研究を根づかせるためのそれを海外で学んでくるということで、平成24年度は新たにジョンズホプキンス大学に医師を派遣しております。
医療の均てん化、情報発信に関しては6つのナショセン共通で取り組むべきナショナルプロジェクトとして、身体疾患に伴ううつ病への対処の方法を共有してプロジェクトを進めていくところです。また、NCNP主催の市民公開シンポジウムを昨年は初めて開催いたしました。見える化というふうに私は呼んでおりますが、NCNPが何をやっている所なのかということを、一般の方にできるだけ分かるようにするためのいろいろな広報強化をしているところです。
国への政策提言としては、自殺大綱の見直しに関しての提言をしました。また、今一番ホットな話題として「脱法ドラッグ」の問題がありますが、これを薬物包括指定にもっていくために資料等々をバックアップできるようなことを精神保健研究所で行ってまいりました。
さらに、業務運営に関しては、経常収支改善が昨年94.2%と低くとどまったということで、これは次の年度の最大課題と私たちは位置付けまして、何とか努力してまいりました。残念ながら、まだ100%に到達しませんが、97.9%、特に病院での収支改善がかなり進んだというところは御報告できるところです。およそこういったところがポイントかと思います。私からの概要説明は以上で終わらせていただきます。
○永井部会長
ありがとうございました。これから個別評価を進めていきたいと思います。4つのグループに分けて、グループごとに評価を行います。最初に第1グループ、項目1~3、研究・開発に関する事項についての評価です。法人から10分で御説明、また15分で質疑応答をしたいと思います。それではよろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター理事(高坂)
神経研究所長の高坂と申します。私のほうから評価項目1、2、3について御説明いたします。時間が大変限られておりますので、資料の1-1と1-2がありまして、このまとめたものを使って、御説明していきたいと思います。最初に評価項目1と2については、臨床を志向した研究・開発の推進、評価項目2の病院における研究・開発の推進というのは、どちらも非常に密接に関係しておりますので、この評価項目1と2を併せて、まず御説明したいと思います。
資料1-2を開いてください。トランスレーショナル・メディカルセンターが書いてありますが、臨床を志向した、あるいは病院における研究・開発の推進といったことについては、当センターが平成21年度に設立したトランスレーショナル・メディカルセンターが任務を重く持っております。TMCというのは、研究所と病院を有機的につなぐための組織であって、そこでは主に人材育成をしたり、あるいは臨床研究を推進するための支援といったものをやるのがTMCの役割です。
当初、TMCを立ち上げたときには、私どもはほとんど併任部隊で、専任がほとんどいなかったということで、この評価委員会におきましても、早くここを充実させるようにという御指示がありまして、平成22年から順次専任化を図ってまいりました。色を付けておりますが、要するに一番左のほうですが、少し薄い緑色に付けたものが、昨年度、平成24年度に専任化をしたところです。これは昨年度、永井委員からも御指摘を頂いたように、次世代型シーケンサーを使った仕事をしているかということで、こういった仕事を専任とする室長を採用したということです。
TMCが平成24年度に重点的に取り組んだ事項として、2ページ目にまとめてあります。まず、第1番目としては、臨床研究に非常に重要な役割を果たすバイオリソースです。このバイオリソースの収集と保存と利用促進を一段としているということです。
3ページ目は、当センターが誇っているバイオリソースをまとめております。これは一般的なDNAであるとか、RNAはもちろんのことですが、当センターとしては非常に世界的に誇っておりますが、筋疾患、すなわち凍結筋といったリサーチリソースを持っております。これが昨年度までに1万3,000検体と非常に多数のサンプルを入手することができております。しかも、そういった筋肉から筋芽細胞を作って、培養細胞として保存する。約1,500検体が既に集まっております。
こういった筋バンク、筋疾患に対する研究のために集めているリソースだけではなくて、最近、私たちが非常に力を入れているのが、その右下に書いてある脳脊髄液です。脳の疾患のバイオマーカーを見つけるに当たっては、必ずしも血液では十分に判定することはできません。そのためには脳に密接な関係がある脳脊髄液を何としても集めたいということで、以前から計画しておりましたが、御存じのように、特に精神科領域におきまして、リコールを集めることは極めて難しいことだったのです。それが当センターの何人かの研究者の多大な努力によりまして、統合失調症であるとか、鬱病、特筆すべくは健常対象者といった方々からもリコールを集めることができて、昨年度までに統合失調症で151例、鬱病で128例の方のリコールを集めることができました。こういった非常に貴重なサンプルを基に研究・開発を進めておりまして、その事例を後ほど御紹介させていただきます。
もとの2ページ目を御覧ください。こういったリソースについては、現在、私どものセンターだけではないのですが、6ナショセンが集まって、共通したプラットホームを作る。すなわち6ナショセンのバイオバンクの連携事業といったものも併せて努力をしている最中です。
TMCが重点的に取り組んだ大きな第2番目としては、治験及び臨床研究の実施体制を整備し支援するということです。まず第1番目に、Remudy、これは主に筋疾患の患者様の登録システムを立ち上げて、Remudyというのは「Registry of Muscular Dystrophy」の略ですが、そういったものを以前から推進しております。昨年度末におきましては、登録していただいた患者さんの数が1,076名と非常に画期的な伸びを見せております。
もう1つは、今までは患者登録システムというのはRemudyだけでしたが、そういったプロトタイプをほかの疾患にも広げていきたいということで、昨年度はパーキンソン病を中心とした臨床研究の支援チーム、これも患者さんに登録をしていただくわけですが、そういったパーキンソン病にも輪が広がってきております。これはTeam JParisという名前を付けております。これはフランスのパリとは関係なく、「Paris」の「Par」はパーキンソンで、「is」は「investigation and support」という意味です。それを「JParis」と名付けたわけです。そういったもので、他の疾患にもこの枠が広がってきたということです。
更に重要な点は、先ほど筋疾患のレジストリをお話しましたが、その筋疾患登録システムを十分に活用できるような筋ジストロフィーの臨床試験のネットワークを我々は構築することができました。昨年度末までに28の医療機関に集まっていただいてネットワークを作って、臨床研究を促進するような共同体制が構築されたということです。ほかにも体制を整備しているのですが、このような体制整備をしたお蔭で、4ページ目を御覧ください。こういった体制作りによって、治験、臨床研究、これは早期探索的臨床試験を含んでおりますが、こういったものが非常に加速的に推進されております。これは実施件数も伸びておりますし、また以前から目標値100日間以内というFirst Patient Inまでの期間が、昨年度も67.8日ということです。
また、国際共同治験への参画というのも、上に書いてある症例の40%が共同でやっていると。こういった治験のみならず、4ポツ目、医師主導の治験といったものも順調に進めております。昨年度から引き続いて行っているのは、国際共同医師主導治験としては、コエンザイムQ10をやっておりますし、また早期探索的な試験としては、昨年度、いよいよ多発性硬化症でのOCHを用いた医師主導治験を開始することができております。これは既にステップ1が終了しております。
これはまだ準備状況ですが、先ほど総長がお話になったように、エクソン53スキップといったものが日本新薬と共同開発を結んだ上で、まさしく来月にも治験が始まろうという段階になっております。医師主導の場合において、多施設共同の準備を進めております。1つはアルベカシン、1つはHALを準備して、間もなくこれも開始される予定です。
5ページ、研究・開発に関しては、そこにいろいろ目玉商品を書いておりますが、こういったことから、私たちは自己評定としては「S」を付けさせていただいたということです。
3ポツ目、6ページ、ここは最も重要な点だと思います。担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進ということです。これは評価項目の3で、シートとしては29ページ~52ページを御説明させていただきます。原著論文の推移をそこに示しております。こうやって原著論文の数を示しますと、平成24年度は若干減っているように見受けられます。やはり、コンスタントに250編以上は出しており、質的には決して落ちていないと考えております。特に英文の総説先を見ますと、平成24年度におきましては25件から41件とかなり伸びているのが特筆すべき点かと思います。
こういった数は若干落ちておりますが、インパクトファクター、あるいはサイテーションといったものは、それぞれ初年度だけ比べてもそれほど目劣りはしていないし、平成25年度はまだ2か月半のデータですが、これ掛ける約5倍とすると約500以上のサイテーションができているということで、例年どおりのクオリティーは維持されていると考えております。
実際にどういった論文が出ているかというと、30ページからずっと評価シートのほうには載せておりますが、時間の関係上、代表的なものだけをざっと申し上げます。7ページ、これは精神・神経疾患の発生機序の解明です。これはRNAが直接リソソームの中に取り込まれて、分解される系といったものを新たに見つけて、これをオートファジーという名前に引っかけて、RNautophagyという名前を付けております。こういったRNAを取り込んで分解するという系が見つかってきましたので、こういったものの異常による神経疾患、あるいは筋疾患が今後研究の対象になってくるということで、大変期待をしております。
8ページ、予防・診断法の確立です。これは簡単に申し上げますと画像です。MRIの画像からいわゆる灰白質部分を取り出して、それを正常な患者さんの標準化したものと比べることによって、どこが萎縮しているかということを簡単に判定するソフトが開発できたと。これによって早期のアルツハイマー病においても、約90%が診断可能となったということです。
9ページ、先ほど総長がおっしゃったリコールを使ったバイオマーカーの探索です。この場合には、統合失調症の陰性症状と負の相関性をオキシトシンレベルが持っていることを御報告して、これが1つのバイオマーカーになり得ることを論文として出しております。
10ページ、これは新たな筋肥大の分子機構を明らかにすることができました。すなわち皆さんもよく御存じのように、運動すればするほど筋肉というのは隆々となるわけです。そのメカニズムを解明したと。これは簡単に言うと、nNOSという酵素からいわゆるperoxynitriteができて、それが筋小胞体のカルシウムチャネル、TRPV1です。これを活性化して、次々に酵素を活性化して、筋肥大に至るというカスケードをまず見つけたと。更に面白いことは、TRPV1を刺激するようないろいろな薬剤を投与すると、何と筋肉の萎縮を防ぐことができたということで、こういったものは将来筋ジスやがんのカヘキシーといったものの治療に発展していくだろうと、これは大変期待をしております。これは『ネーチャー・メディシン』に掲載をされている論文です。
11ページ、これは特許申請で目玉となるものをここに書いております。今まで筋疾患の場合に、我々はマーカーと言うと、クレアチンキナーゼ、CKというものを大変重要視していたのですが、クレアチンカイネースというものは、ただ単に我々が運動しただけでも上がってくる。そういった病気とは必ずしも関係ないところで上がってくるようなものなので、本当にその方が筋疾患であるのかどうか判定することを慎重にしなければならないということでしたが、今回は骨格筋特異的なmicroRNAを我々は同定することができた。血中でmicroRNAを検出することができた。それを見ると、これは筋疾患に特異的にマーカーが上がっていると。ただ単に運動をやり過ぎたというものでは、このマーカーは上がらないということで、バイオマーカーという意味で非常に価値の高いものを我々は見つけることができたと。これは今はライセンス化ができております。こういったように、短時間で大変申し訳ありませんが、研究・開発については非常に高いレベルの仕事を昨年度も継続して行うことができたということで、「S」評価を付けております。時間を超過して申し訳ありませんでした。以上です。
○永井部会長
ありがとうございました。それでは御質問、御意見を頂きたいと思います。「S」が想定外ということでお付けになっていらっしゃると思いますが、一番の目玉というのはどういうところでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(高坂)
1番の目玉というのは、先ほど申し上げましたように、TMCの活動です。これが今までは準備をすると言っていたのですが、実際の準備が実ってきたということです。特に、医師主導型治験というものが順調に動き始めたということは、大変センターにとっては大きなことだったというふうに考えております。
もう1点は、バイオリソースの収集ということでは、リコールといって、国際的にも難しいと言われていたものが、皆さんの努力によってリソースとしてのバンクが確立をされてきて、1つはそれに対して利用して臨床研究が少し進んできているのではないかと。そういったことを私は非常に高く評価しております。
○永井部会長
病院の研究体制としては、トランスレーショナル・リサーチとか、そういうことが含まれるのでしょうか。病院固有の臨床研究体制の整備というのはどの辺でしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(高坂)
それはあとで病院長からお話を頂けると思いますが、特に専門疾病センターという病院の中で用意しておりまして、そこで主に病院に関することについてはやっております。それは後ほど病院長から御説明をしていただけると思います。
○花井委員
大変たくさんの研究をされて、専門的で私たちも理解できないところが多いのですが、
1つ教えていただきたいと思います。前回もお尋ねしたと思いますが、研究所が2つあって、それぞれ中身が違って、方向性が違う研究所なので、そこの連携体制というか、今後どう考えているのかというのが1点です。
もう1つは、いわゆる共同研究が目標になっていて、資料1-3の7ページによると、平成24年度は累積して61件とかなので、これは神経研究所のほうがどちらかというと多いかなという気もするのですが、その辺の比率が分かれば教えてほしいのです。これは累積になっているので、平均すると研究期間は大体3年ぐらいで積み重ねなので、各年の開始した研究数が分かるほうがいいかなと思いますので、その資料がもしあれば教えていただきたいというのが3点目です。以上、教えていただけますでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(高坂)
両研究所の連携ということですが、ここには十分それが資料として反映されておりませんが、病院の中での共同研究というのを、確か資料のどこかに載せていたと思います。例えば、皆さんがよく御存じの薬物依存、脱法ハーブ等というのは、神経研究所の方々、特に培養細胞を使うということで、そういった実験で薬物依存と疾病第四部が共同でやるとか、個々の研究を見るとかなり連携をとってやっています。それを更に系統的に体制を作っていくということで、現在、総長の声がけで両研究所を再編しようかという動きを検討しているところです。
神経研と精研のどちらがどのぐらいの割合かということですが、いまサッと資料が出てこないので申し訳ありませんが、後ほど資料を提出させていただきたいと思います。
○花井委員
内容を見て整理すれば大体何か想像はつくのですが。あと研究数の開始年というのは分かりますか。これは平均3年ぐらいですか。資料の7ページにあるのは累積しているので、その年々が。
○国立精神・神経医療研究センター理事(高坂)
これも実は資料があります。平成23年度開始、平成24年度開始、平成25年度から開始というのがあるのですが、今、全体がごっちゃになってしまっているのです。これも資料は別途作っておりますので、後ほど提出させていただきたいと思います。
○花井委員
分かりました。ありがとうございました。
○祖父江委員
どうもありがとうございました。先生もおっしゃったのですが、TMCが実際に動き出してきているなという感じを持ちまして、本当に素晴らしいと思いました。
1つ、2つ、少し細かい問題になるかもしれませんが、先ほどバイオリソースのことをおっしゃったのですが、これももともと筋疾患で非常に歴史のある蓄積があって世界的だと思います。それから、髄液の話もされていたのですが、そのときにナショナルセンター全体で、横のつながりでバイオリソースを蓄積していくというお話を少しされたかと思うのですが、これが実際どのぐらい今動いていて、今後はどういう展開があり得るのか教えていただきたいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター理事(高坂)
ありがとうございます。この6ナショセンのバイオリソースのネットワーク作りというのは、2年ほど前から始めております。当初は個々のセンターが別々にやって、ある方がいなくなるとすぐ試料が霧散してしまうという状況というのは国にとって大変よろしくないということで、まずは各ナショセンにおけるバイオリソースの管理の一元化です。それから、どういった試料を持っているか、どういったものの払い出しができるのだろうかということを、国際医療研究センターに中央のバイオバンクを置いており、まずそこできちんとしたカタログデータベースを作っていこうではないかということを計画して、これは今月ホームページが動き始めた段階です。これからは恐らく個々のデータベースを見て、企業の方々はどんどんアクセスしてくると思いますので、それに対してこれからはますます共同研究という形で推進できるだろうと考えております。
もっと先のことを言いますと、これはオールジャパン体制に持っていかなければならないということで、例えば、BBJ(バイオバンク・ジャパン)であるとか、もう少し後になりましょうか、東北メディカル・メガバンクも併せて連携をとっていくことを今考えております。
○祖父江委員
これは企業も将来的には利用できるような形にしていきたいということですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(高坂)
もちろんです。ただしその場合には恐らく最初は共同研究というベースからスタートすることになるかと思います。アカデミアの方へはどんどん無償で出していくつもりです。
○祖父江委員
もう1点だけ、これも細かい問題ですが、毎回同じ問題を聞いているかもしれませんが、先ほどレジストリの筋とパーキンソンのお話をされましたが、これは治験を実施していく上では非常に重要だと思ったのです。特に筋疾患でもそうだと思いますし、神経変性疾患でもそうだと思うのですが、時間軸の前向きコホートといいますか、いつも同じようなことを聞いているのですが、これについては何か考えておられるかどうか。結構、これは……セラピーなどを考えているときに非常に重要な要素になると思うのですが、その辺はいかがですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(高坂)
そのとおりです。こちらの武田センター長が非常に言いたそうな顔をしているのでちょっと。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
大変恐れ入ります。TMCセンター長です。これはシートの50ページの左の上から2段目に、「精神・神経疾患等における罹患、転帰その他の状況等の実態及びその推移に関するデータを的確に把握する疫学研究等の実施を推進しているか」というコメントを最初からいただいております。委員から御指摘がありましたように希少性疾患から、神経疾患、精神疾患にどのように発展させるかという御指摘につながるものと考えております。
希少性疾患とパーキンソン病についてはスタートができたのですが、私どもが重視しているのは、より数の多い精神疾患に対して前向きコホートをどのように構築するかという問題です。幸い希少性疾患に対する患者登録制度の準備の中で、この登録制度をWeb化することができました。そういたしますと、更に患者数の多い疾患についても応用が可能であると考えております。
もう1つは、精神疾患について罹患、転帰その他の状況を把握するためには、近隣の病院とのネットワークを組むことが必要と考え、日本医師会の手を煩わせまして、準備が進んでおります。平成25年度の中では、そうしたことを実現したいと考えております。以上です。
○藤川委員
1番と2番を一緒に説明してくださって、それらが有機的に結合して成果が出ているということで、そのような御説明を頂いたと思っております。
ただし、1番と2番をどう評価するかは分けて評価しなければならないということがあり、センターが非常に活躍しておられるということはよく分かったのですが、病院におけるという観点で言えば、そこは医師を主導とした治験が進んだとか、その辺りを考えればよろしいのか分からなかったものですから、そちらの評価の観点において効果があった、成果があったというところを教えてください。
○国立精神・神経医療研究センター理事(高坂)
病院における研究の開発の推進というのは、やはり分けて考えることは難しいのです。そもそもセンターのミッションというのは、研究所と病院が一体となっていることを我々は常々に考えております。それは患者様を使った臨床研究が一番分かりやすいのですが、それだけでは実はないのです。臨床の先生が、例えば、研究所で仕事をする、あるいは論文を書かれる。これも立派な病院における研究になると思うのです。そういったものは今区別をしないで、大分、資料となって出てきておりますので分かりづらいかとは思いますが、これは私の個人的な意見ですが、評価項目自身を2つに分けるのが難しいような、いつもまとめてそういう気持ちでやっておりまして、一体化しているとむしろ捉えていただいたほうがよろしいのかもしれません。何でしたら、病院長の御説明を聞いていただいた後、戻ってもう一遍評価をしていただいても構わないと思います。申し訳ございません。
○福井委員
臨床研究の支援体制については、具体的にどういうメンバーといいますか、バックグラウンドを持っている人が支援しているのか教えていただけませんか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(高坂)
これもTMCセンター長のほうから回答させていただきます。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
お尋ねありがとうございます。支援をどのように進めているかということですが、まずメンバーとしては、PMDAとの間で人事交流をしております。その上で、臨床薬理、更には薬事の専門家の方に、私どものセンターに来ていただきまして、臨床研究・臨床試験の準備を進めております。そうしたメンバーの協力の下にプロトコール、あるいはSOPを準備して、具体的に今日お話がありました、例えば医師主導治験ないしは国際共同治験を実施している、あるいは、その準備が進んでいると理解することができると思います。以上です。
○福井委員
専任のスタッフは何人でしょうか。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
それにつきましてはCRCの数、その他で書かせていただいております。実際には、病院にある治験管理室と、今お話が出ているTMCに臨床研究支援部がありまして、CRCに関しても10名以上、更に臨床研究支援をする実質的なスタッフがそろっております。もし数について御必要でありましたら、また追加の資料として提出することができます。(実績評価シート、P8にデータ・マネージャー2名、臨床研究支援の専門職6名として記載あり)
○福井委員
統計、疫学、研究デザイン、そういう方面の専門の方もおられますか。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
資料1-2の1ページ目の「トランスレーショナル・メディカルセンター」にあるように、
今申し上げたPMDAとの支援スタッフ以外に、臨床疫学の専門家もおりますし、特に病院との兼任になりますが、データマネジメント室長といった職についても採用を頂いているところです。特に臨床疫学の専門家は極めて強力な方で、例えば、私どもが作っている患者登録制度を使った臨床研究に関する報告についても論文として出版される予定です。極めて強力なスタッフがそろってきていると理解しているところです。
○国立精神・神経医療研究センター理事(高坂)
もう1点補足します。製薬企業の方々が60歳で退官された後うちでお二人顧問として就任していただいております。この方が主にプロジェクトマネージャーといった機能を果たしていただいているということもあります。
○永井部会長
よろしいでしょうか。それでは次に、4~6、医療の提供に関する事項について10分でお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
では、次の、「医療の提供」を御説明します。この項目は3項目あります。第1項目は、高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供がどうかという点。第2項目が、患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供の点。第3項目は、医療政策、特に医療観察法病棟、重心の医療の提供が評価される項目です。この順番に御説明します。
資料1-2を使って御説明します。19ページ、これは、高度先進的な医療、標準化に資する医療の提供の項目です。まず、先ほど、高坂所長からありましたように、病院と研究所の高度先進医療、高度先駆的な医療はなかなか分けづらいものがありますが、高坂所長が既に説明された以外の点についての高度先駆的な医療の提供についてご報告します。ここにありますように、精神科において、大鬱、双極性障害とか、統合失調症、これらは通常臨床的に診断をされていますが、それをより客観化するという面で、光トポグラフィ検査を導入してきています。これは、平成24年度は平成22年度に比べて1.6倍の頻度を増やしてきて、その診断精度を上げてきています。
また、ミトコンドリア病の遺伝子診断ですが、これも次世代シーケンサーを用いて、全DNAの解析をして、これも各年度件数を上げてきています。昨年度は120件出来ています。それらに対しては、遺伝カウンセラーを通しての遺伝相談も行ってきています。
それから、変性疾患であるパーキンソンにおいては、薬剤の種類はかなり出ているのですが、エルドーパ製剤が治療の中心となります。しかし、しばしば副作用又は適当な治療ができないということがありますので、エルドーパの血中動態モニターを用いてより高度な治療を行っています。これは120件行っていて、2年前からは倍増した形です。以上が高度先駆的医療です。
標準的な医療の提供という点においては、当センターにおいては、専門疾病センターを作っています。これは12ページを見ていただきたいと思います。この専門疾病センターも、御存じと思いますが、当センター、病院においては、ここの1~6の疾患に関して、病院と研究所、それに病院の中のいろいろな診療科が横断的に取り組んで、高度な医療、そしてチーム医療を推進してきています。その6つを説明します。
パーキンソン病は13ページです。この疾患は、運動障害のみならず、いろいろな認知症、嚥下障害、不安、鬱という多様な症状を呈するものであり、各科が対応して、より連携した医療を提供するようにしています。
筋疾患センター、これは高坂所長から説明がありましたように、患者のレジストリー、臨床試験ネットワークを既に立ち上げ、そして、実際病棟におけるFirst in Humanの試験の準備を現在行ってきているところです。
15ページです。多発生硬化症のセンターです。これもいろいろな臨床と研究的な協働をしていますが、特に、OCHという、研究所で開発されたMSの新規薬剤の可能性のある薬を、現在、医師主導治験として行ってステップ1が終了したところです。
次に、16ページのてんかんセンターですが、精神科、小児神経、脳外科等、多くの科と検査部門も含めて総合的にてんかんの診断治療を行ってきています。患者数の増大、特に、外科的治療のなかでも3歳以下のてんかん治療においては世界的な数の症例を経験しています。
17ページです。地域精神科モデル医療です。これは、精神疾患の患者の社会復帰を手助けするという面で主な役割があります。右側の表にあるように、2,500件以上にわたる訪問件数の在宅支援を行ってきています。また、左側で分かるように、これは大変重要な点ですが、患者における多職種のサポートによって就労支援が成功しています。昨年は27例の就労支援が成功しています。昨年から睡眠障害センターが専門疾病センターに加わって、睡眠に関する治療を進めるようにしています。
次に、患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供に関して御説明します。同じ資料の20ページです。患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供、これは、多くの観点で推進することが求められていますが、特に、患者の自己決定を支援する、推進するにはどうするかという点においていくつかあります。主な点は、セカンドオピニオン外来というものを進めてきて、年々増えてきています。昨年は100件を超えていて、また、昨年から精神科のセカンドオピニオン外来を始めた点が、患者・家族の要望に応えている点としてあげられます。
もう1つは、2番目の推進するポイントとして、チーム医療の充実・推進です。これに関しては、資料1-3の67ページです。チーム医療の推進、もちろん、先ほど述べましたように、専門疾病センターのチーム医療の1つの象徴であります。それ以外の点に関しては、医療観察法病棟における多職種チームの医療、これは、後ほど3項目の評価のときにもう少し詳しく報告します。
それ以外のチーム医療として、68ページです。栄養サポートチーム、褥瘡対策チーム、摂食・嚥下チーム、臨床検査・栄養管理チーム、という形に、医師、看護師、栄養士、薬剤師、検査技師等、多くの職種が集まって、神経難病、そして、重心の患者に対するチーム医療の向上を進めてきています。
元に戻って、1-2の資料の20ページです。良質な医療に関しては、地域連携は大変重要です。平成22年度から登録地域医療連携病院というのを増やしてきていまして、現在は290病院と連携しています。その結果が、紹介率の向上、また、逆紹介率の向上という形で現れてきています。
最後に、医療安全に関しては、残念ながら少し減らすことができなくて、アクシデントも45件という形で推移してきています。それに対する対応として、医療安全研修会を24回開き、職員1人当たりの研修回数は今まで1.3回で今まで非常に低かったのですが、それを2.6回に増やし、また、重要な研修会に関しては全員参加という形、即ち100%の参加を求めて、医療安全の普及を努めているところです。以上が、評価の2項目の点です。
3項目の、評価を頂きたいその他の医療政策に関しては、21ページです。主に医療観察法病棟の点と、重症心身障害児、者の医療の提供について御説明します。医療観察法病棟、これは、我が国で最初にできた、また最大の病床数66床を持っています。精神疾患であって重大な対象行為を行った方への医療を行っています。
もう1つは、我が病院においては、多職種協働の医療に加えて身体合併症の医療、これが求められています。それについて御説明します。1つは、多職種の協働、これは22ページです。ケアプログラムアプローチ(CPA)、これは医師、看護師、PSW、そして、保健師とか地域保健師、多くの多職種の人が集まって、患者の現状と今後の在り方ということを検討し退院にもっていく支援を行っています。これは、我がセンターが始めたモデル的なケアプログラムプランでして、CPAJと訳しています。100件以上を一応目的にしていましたが、既に昨年から200件以上を超えて行ってきています。
もう1つ、合併症医療です。医療観察法病棟における3分の2の患者は、合併症を持っています。多くの方は、手術とかを行っているのですが、昨年から、透析患者が入院されることになって、専門医のいない体制において透析をいかにするかで、病棟内での透析医療システムの在り方、又は、病棟外でのシステムの在り方を検討してきました。いくつかのモデルの可能性を検討して厚労省に今提案しているところです。
もう1つの医療政策の点は、重症心身障害児の医療です。重心においての専門的医療は、当院においては、総合内科、総合外科の医師が協働して重心の患者の医療を行っています。それに加えて他機関とか在宅の患者に入院していただき、レスパイト入院、ただ単なるレスパイトではなくて、入院を機に重症の病態の改善、また、人工呼吸器の調整等々をやっています。その数が262名でして、重症例はその中の30例、それに加えて人工呼吸器の管理、これはほかの所ではなかなかレスパイトで受け入れ難いのですが、18例という形で貢献しています。以上の3点が医療の提供という点での御報告です。
○永井部会長
ありがとうございました。すみません、レスパイトというのはどういう意味でしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
在宅のいろいろなケアをしている家族の方の、看護負担を短期入院で減らす意味があります。
○永井部会長
そういう、はい、分かりました。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
一般に人工呼吸器を装着された患者さん方はレスパイト入院というのは断られるのですが、そういう方々も積極的に当院としてはやってきています。
○永井部会長
ありがとうございます。いかがでしょうか。よろしいですか。
○福井委員
細かいことですが、先ほど医療安全の所で、いろいろなカンファランスをされているということでしたが、医療安全に関するアウトカムの数値も出しているのでしょうか。例えば院内感染だとか、カテーテル関連感染症がどれくらいの頻度なのか、減ってきているのか、そういう数値もモニターされているのですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
検討会ということで月に1回定期的にやっています。それ以外に研修会をいろいろ工夫してやっているのが現状です。
○福井委員
研修会自体は、全職員が年2回以上は出席しましょうと日本中でなっていますので、それは問題がないと思いますが、アウトカムとしての安全についての結果がどうなっているかを是非モニターしてください。
○花井委員
2つほど教えてください。高度先駆的医療の提供で幾つか御紹介いただいたのですが、素人なのでどれほど高度先駆的なのかが分かりにくいのです。このナショセンで、ここでしか受けられないというのはこの中にあるのかというのが1つと、若しくは、どれだけ貴重な全国に何箇所しかないとか、そういうのを教えていただけたらというのが1点です。もう1つは、患者の紹介率は上がってきて逆紹介率が若干下向いているような数字が出ているのですが、これは何か理由があるのでしょうか。この2点を教えてください。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
高度先駆的な医療、これは他施設でできないことはないのですが、これほど多くの数をやっている所は余りないと思います。光トポグラフィに関しては、メカニズムを研究しながら臨床に応用しているという点は当院のみではないかと思います。ミトコンドリアの場合も、全DNAの解析を詳しくすることも、これもなかなかできる施設が少ないものだと思っています。パーキンソンの血中濃度のこれを4時間を7ポイントに分けて血中濃度を見ながら、そしてそれの副作用を抑えるながら有効濃度を調整するということも、これもほとんどの病院ではかなり難しいサービスだと思っています。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
追加させてください。今の御質問の高度先駆的医療というのはどういうものかということですが、一応ここに書かれているのは、いわゆる高度先進医療と今まで呼ばれているもの、それは決してうちだけができることに限りません。その条件を持った医療機関がやるわけです。それは比較的限られた所でやっているわけですが、それを更に推進していくという意味でここに書いてあります。光トポグラフィについてもミトコンドリア病についても高度先進医療として認められているものです。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
逆紹介率は残念ながら少し昨年と比べては下がっていますが、ちょっとその解析はまだできていません。申し訳ありません。
○永井部会長
外来の待ち時間の工夫というのが書いてありますが、これはどういうことですか。予約枠の見直しをされましたか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
はい、見直しと、そして改善策を検討してしているところです。
○永井部会長
いや、去年お話したかどうか、1人一枠にしたほうがいいのではないかということだったのですが、それはされていないのですか。やはり30分枠とか60分枠でなされているのですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
30分枠で、今3人を呼んでいる状態です。
○永井部会長
やはり順番を付けて病院に来ていただくことが基本だと思います。10分枠で1人のほうがよいのではないかと皆さんにお伝えします。つまり、同じ時間に何人待っているかは患者さんは分からないので、早め早めに来るわけです。それで待たされることになります。例えば9時から9時半でしたら、9時スタート、9時10分、9時20分ぐらいに来ていただくということですね。是非それをお願いしたい。特に歯科はそういうことはしないわけです。歯科は30分に3人入れませんね、必ず1人。我々も同時に3人は診察しないわけですから、やはり時間をずらして来ていただくこと、それが待ち時間を減らすポイントだと思うのですが、なかなかこれができないようです。今、ナショナルセンターや特定機能病院の外来を半分以下にしなさいという指導が出ていますね、これは待たせるからなのです。果たして、外来が減ったときに特定機能病院は経営上成り立つかも心配しないといけないと思います。やはり、外来がたくさんいるから病棟が動くわけで、本当に入院だけでやっていけるかという懸念があります。そういう意味では、外来の診療の在り方の見直しを是非お願いしたいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
どうもありがとうございます。
○内山部会長代理
医療安全に関連して、インシデントレポートの数の推移、あるいはまた、その中のドクターの割合等々が分かりましたら教えていただけますか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
インシデント自体は、残念ながら増えています。昨年が1,600件です。
○内山部会長代理
いや、レポートが増えることは構わない、よろしいことだと思うのです。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
そして、今年は1,800件。特に、転倒・転落に関しては約4分の1ぐらいを占めているということです。その要因としては特に、今度新患率がかなり増えてきている点と、そして在院日数が精神科においては非常に減ってきています。昨年と比べて10日以上減っているということで。そういう点において、かなり精神科における転倒率が増加していて、今最大の検討課題であろうということで、今、アセスメントシートの充実だとか注意の喚起を行っているところです。
○内山部会長代理
ドクターからの報告は何パーセントぐらいですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
非常に低いです。0.32%で。ちょっと、これはいつも注意しているところです。
○内山部会長代理
分かりました。
○祖父江委員
どうもありがとうございました。非常に地道な取組をされているなと思いました。特に、6疾患に分けて専門疾病センターという形で法人化されてからされていますね。私はこれは非常に重要な取組だと思っています。特に、こういういろいろな疾患を扱うときに看板を何々センターと出すのは、外から見ると非常に分かりやすいと思っています。その中で、1つ、次の均てん化の所に関係するのかもしれませんが、全国的にも、例えば神経内科でセンター的に分かれてやっているのは余りないのです。例えば地域連携モデルとか、この疾患を扱っていくモデル的なコンセプトとか、そういうものが何かここから発進できるといいなと思っているのです。そういう事例が何かもしあったら教えていただけたらと思います。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
地域的な面での一番のモデルは、精神科地域モデル医療センターで、これがやはり一番進んできていると思います。今、精神科患者の退院促進、かつ地域における社会復帰で再入院を防ごうという点で、地域の病院と協働して行っています。また地域における我々の医療の奉仕という点では訪問件数などを増やしてきている点が重要ではないかと思っています。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
今、御指摘になったことは我々も大変重要だと思っています。恐らく、先生の今の御質問は、こういったうちで行っている、センターでやっている中身をできるだけ何らかの形でまとめ上げて、ほかの地域で利用できるようなものを作ったほうがいいのではないかという御提案だと思います。大変重要な、それこそ正に均てん化というか、私たちに課せられた1つの役割ですので、今進行中ですが、ある程度まとまりができてきたところで、それぞれがやはりそういう形で発信をするように是非努めたいと思います。
○永井部会長
よろしいでしょうか。
○斎藤委員
睡眠障害センターを新設なさったというのは素晴らしい試みだと思うのですが、これの経緯をもう少し御説明いただいてもよろしいですか。いつぐらいから構想が始まり、実際に動き出して平成24年11月の設立に至ったのか、その辺りを少し教えてください。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
睡眠センター、睡眠障害の研究というのが非常に当センターでは進んできています。そして、その臨床的ニーズも高まってきていまして、昨年の秋から実際に睡眠障害センターとしてスタートしています。その経緯としては理事長にご説明していただきたいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
では、少し補足させていただきます。睡眠の問題は、実は非常に大きな国民にとっての課題になっています。睡眠障害というものは、広くあちこちでいろいろな形でアピールはされていますが、なかなか1つにまとまった形で情報が提供されておりません。うちはもともと精神保健研究所の中に睡眠の研究部ができてもう20年という長い歴史をもっていますので、研究成果がかなりしっかり積み上げられています。その中から、研究者の側からも、これはやはり国民病とも言えるわけですし、睡眠の問題は単なる睡眠にとどまらず、例えば体の病気に伴って睡眠障害が起こりますし、それから、何かの心理的な問題があるとそれだけでも睡眠障害が起こってきますので、かなり中が多様なものに対してきちんとした対応をする必要があります。だから、ただ睡眠薬を投与すればよろしいというところにとどまらないような広いバックグラウンドをもった治療的な対応を、この睡眠障害センターの中できちんと築き上げていくべきだというのが、長年そういうものを積み重ねてきた結果から出てきたものと理解しています。
○斎藤委員
ありがとうございます。
○永井部会長
よろしいでしょうか。では次に参ります。項目7~9です。7.人材育成、8.医療の均てん化と情報の収集・発信、9.国への政策提言、その他我が国の医療政策の推進等、これらの項目について御説明をお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長
それでは私のほうから、今、ございました評価項目7、8、9につきまして資料に基づいて御説明をさせていただきたいと思います。資料1-2を中心に用いていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
23ページをお開きいただければと思います。7.人材育成の部分です。人材育成につきましては、将来、リーダーとして活躍できる人材の育成が1つの柱で、もう1つの柱として23ページに記載していますが、モデル的な研修や講習を実施する。この2つを進めてきているところです。23ページを御覧いただくと、様々なモデル的研修や講習を実施している姿を一覧でお見せしています。御覧いただくと、対前年度で開催回数、また外部の受講者数も相当数増えている実態になっています。量的な充実が図られているということがあります。また23ページの下にそれぞれマルの中に新と書いていますが、神経関係でいくと新たに遺伝カウンセリングセミナーということで、治療を進めていく上で非常に重要な遺伝のカウンセリングについて新たにセミナーを開始していますし、先ほど研究や医療のほうでお話がありましたが、チーム医療の普及は精神科医療にとって非常に重要なポイントです。その重要なポイントとして、3つの点について新たにチーム医療普及推進事業を開始しています。
このように量的、質的に飛躍があるということで、恐縮ですが、27ページを御覧いただければと思います。上の欄で人材育成の総合的な評定です。中期計画にある数値目標を上回る実績です。上の・がリーダーとして将来活躍できる人材の育成に相当する部分ですが、中期計画では年5回以上のものが13回という形で進められていますし、さらには、より研修が受けやすい形でe-learning登録者数の大幅な増も見られます。下はモデル的な研修の話ですが、先ほどお話したように量的、質的に充実が図られています。
戻って24ページを御覧いただければと思います。先ほど御質問がありましたが、医療の均てん化の取組の1つです。均てん化につきましては昨年度も御説明していますけれども、1つはネットワークです。これは重心や筋ジス、医療観察法、自殺の総合対策といったネットワークを通じて進めていくべきもの、さらに先ほどお話があった専門疾患医療センターの取組を通じて、取り組んでいくべきものがあろうかと思います。そういった中で24年度に新たにキックオフしたものとして、ここに示した6つのナショセンの共同プロジェクトがあります。これはどういうものかというと、身体疾患の患者さんへのメンタルケアモデルのモデル的医療を作って、それを広げていきましょうというものです。具体的には身体疾患を持つ鬱病の患者さんを主なターゲットとして、モデル的なケアを身体科医療のグループと精神科医療のグループが、チームで新しいモデルを開発していくという画期的な取組で、我が国ではまだ十分できていないものです。こういったことを通じて、治療成績や患者さんのQOLの向上が図られていくであろうということです。
これらの取組については、ボトムアップでやりにくい部分もあるので、重要な疾患を取り扱っている6つのナショセンが協力してモデルを作り、ある意味でトップダウンで関係学会や医療機関と連携して、広げていこうといった考え方に基づいています。具体的に24年度に何をやったのかというのは、「A.メンタルケアモデル開発と研修」と書いてありますが、こういった点を中心に進めてきています。24年度から開始して、おおむね3年間の中で普及できるモデルを作っていきたいと考えているところです。
次に25ページを御覧いただければと思います。こちらが情報発信の関係です。独法化して2年経っていますけれども、国立精神・神経医療研究センターのブランド化と、国民に広く知っていただく、認知度を上げることが必要であると考えています。そういった考えを踏まえ、市民を対象とする第1回公開シンポジウムを開催しています。
また、更なる広報活動、情報発信の強化ということで、26ページを御覧いただければと思います。広報体制の強化ということで総長の下に広報グループを位置付けています。そういった中で様々な広報活動を開始しています。You Tube等での配信などを書いていますが、積極的にメディアの関係者に接触し、理解していただくことを通じて発信を高めている。その効果としては下の所にありますが、報道記事の掲載が倍増とはいきませんが、かなり増えてきている。ホームページのアクセス数も、真ん中の所に医療従事者向けがありますが、平成23年度は20万件だったのが24年度は130万件と、飛躍的な伸びを示している状況があります。
27ページの下で医療の均てん化と情報の収集・発信です。総合的な評定ですが、中期計画にある数値目標を大幅に上回る実績で、医療従事者・患者向けのHPアクセス数は20万件の目標値に対して大きく上回っています。また医療の均てん化、情報発信の新たな取組についても、従来の取組を引き続き強化するとともに、新たな取組を開始している状況にあります。
次に評価項目9です。国への政策提言、その他我が国の医療政策の推進等ということで幾つか代表的なものを例示しています。1つが「政策提言-自殺総合対策大綱の見直しの提言」です。政府の自殺総合対策大綱はおおむね5年ごとに見直しということで、ちょうど昨年(平成24年)が見直しのタイミングでした。国立精神・神経医療研究センターが中心となり、関係する29学会の協力を得て、大綱見直しの提言を実際にまとめた上で行っています。結果として、昨年8月に閣議決定された自殺対策の大綱においては、その提言のうちの重要な部分がかなり採用されていることを御報告させていただきます。
29ページを御覧いただければと思います。これは先ほど総長からの御説明にもありましたが、非常に社会問題化した脱法ドラッグに対する対応です。従来、厚生労働省の規制では対象薬物を個別に規制するという考え方でした。ただ、これでいくと、どうしても「イタチごっこ」になってしまう。特に脱法ドラッグについて言うと、幾つかのところをちょっと変えるだけでまた新しいものになってしまう課題もあり、それに対しての対応ということで乱用される危険性の高い薬物について、基本構造を決めて包括的に規制する形で提案し、これについては厚生労働省令の中で包括の指定をすることで一定の成果を上げています。
30ページを御覧いただければと思います。こちらは政策の関係で、特に公衆衛生上の重大な危機への対応とも関係する部分かと思いますが、東日本大震災の発災以降、国立精神・神経医療研究センターでは情報提供をすぐに行うとともに、スタッフも現場に出て様々な活動を行っています。それを踏まえ、さらにそれを発展させる形で24年度には、前年にできた災害時こころの情報支援センターを中心に、情報発信でホームページを作成し、これに対するアクセスが100万件近くなったところです。また、震災対応の際のこころのケアについての情報システムを昨年度開発しています。
ただ、これは開発しただけで動かなくては意味がないということで、31ページの左側の写真を御覧いただければと思います。一応、出来上がった情報システムに全国の各自治体の御参加を得て、こころの情報支援センターとしてシステムの演習を行い、またフィードバックさせている。下に赤い字でDPATと書いていますが。これは災害派遣の精神医療チームです。こころのケアのために現場に出て行くチームで、こういったものについても厚生労働省が要綱を平成25年4月に出していますが、その具体的なDPATの内容の詰めについてはセンターが多大な貢献をしています。こういった活動を通じて公衆衛生上の重大なものに対する対応も進めてきています。
32ページを御覧いただくと、総合的な評定ということで3点ほど書いています。一番上が国際貢献等に関係する部分です。先ほどの説明では省略していますが、中期計画にある数値目標を上回る形で、これは海外からの研修生や研究者の受入れを確実に進めているものです。また国への重大な政策提言や震災等への対応を通じて、政策支援や政策提言を行ってきています。また、ここのところでは記載していませんが、平成25年から医療計画に精神疾患について記載する必要が出てきました。これに対して平成24年度には都道府県に対し、精神科についての医療計画を策定するための情報や技術的な支援を、当センターが中心になって積極的に行ってきたところです。
評価項目7、8、9について、私からの説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○永井部会長
ありがとうございます。いかがでしょうか。研修医あるいはシニアレジデントも受け入れていますか。
○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長
研修医、シニアレジデントも、それぞれ受け入れています。間違ったら教えていただければと思いますが、それぞれ30数名程度の形で受け入れていて、大変活躍していただいています。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
専門センターですので、主には後期研修です。初期研修に関しては他の医療機関との連携という形で受入れをやっているところです。後期研修に関しては50名ぐらいの総枠を持っていますので、3年間ですから、1学年で15、16名ぐらい受け入れています。
○祖父江委員
ありがとうございました。今の研修医の件で、後期研修を50名枠まで採られるというお話ですが、御存じのように専門医制度が動いていて専門医機構が独立することになっています。ある時期に専門医になるには、例えば神経内科でも今は内科の上に乗っていますので、内科のかなり広い範囲の疾患を経験せよということがうたわれてきているわけです。そうしますとスペシャリスト養成の点では、このナショナルセンターは非常にいいと思いますが、専門医という立場から言うと、どういうふうにお考えになっているか教えていただければと思います。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
これは精神と神経で、だいぶ事情が違います。
○祖父江委員
違いますね。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
精神に関して私どもの所は、ある意味で疾患が網羅されているところがあり、特に5年間で精神の場合は指定医を取るわけですが、指定医には必須の8疾患があります。その8疾患は全部揃っていますので、その点ではあまり問題はない。神経のほうはちょっと。
○祖父江委員
神経内科のほうが非常に問題になるのかなという感じが、ちょっとするのです。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
そうですね。やはり内科での研修期間がかなり長くなる可能性があるということ。そうすると専門医を取るのがかなり遅れてくるということで、私どもとしては神経疾患に関係した幾つかの特化した専門知識を学ばせたいという点においては、なかなか難しい点があります。限られた時間でもって、より専門性のある神経疾患のトレーニングを充実したいと思っています。
○祖父江委員
例えば神経疾患の中でも救急疾患とか、いろいろなバラエティを経験しろという方向にちょっとずつ来ているのですが、その辺でほかの病院と連携することはお考えでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
現在のところ当院では、その点での連携はあまり進んでいません。むしろ研究面での充実のほうに研究所との連携という形でやっています。
○福井委員
全然違うことですが、先生方の御努力もあって自殺者はようやく減りつつあると思います。かつて精神科で犯罪精神医学の講義があったことを覚えていますが、犯罪の問題を精神科の先生方がどのように扱っているかなかなか見えないように思います。センターでは犯罪精神医学的なことは研究対象になっているのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
もし補足があったら言ってください。先ほど申し上げましたように司法精神医学。
○福井委員
司法精神医学ですね。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
と思います。犯罪精神医学はそれが含まれますから。その中で特に医療観察法という法律ができましたので、要するに精神疾患が基になって重大な犯罪を犯したケースについては、医療の枠組みの中で対応するという法律です。重大犯罪全てが刑務所へ行くわけではありませんので、その医療の対象になる方々を治療するのが、この医療観察法病棟という病棟です。私どもの所に全国に先駆けて33床の病棟ができ、先ほど話が出ましたが、合併症を持つ、そういう犯罪を犯した精神障害者の方の治療を行うために更に33床できたという経緯があります。ですから、そこの中にいる医師、それとタイアップしている司法研究部には司法精神医学のスペシャリストが育ってきている状況です。
○内山部会長代理
身体合併症を持つ患者さんについて、透析のことは触れていましたけれども、高齢化してくると身体合併症を持った方も多くおられると思います。院内でどのように対応されているのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
先ほど申し上げたように、入院患者さんの3分の2は合併症を持っておられる。多くは内科的疾患ということで内服でかなり治療できますが、昨年の場合は3例ほど手術が必要な方がおられました。しかし、先ほど述べましたように我々が一番困った例は透析患者さんです。透析の専門医がいない現状において、総合内科、総合外科のスタッフの下で透析をやるということで、週に2~3回、近隣の専門医の力を借りながらやってきました。しかし、その間に合併症が起こって、この対応にかなり苦労しました。安全な医療が安定的にできるためにどうするか検討したのが、先ほどの3つの案です。医療観察法病棟が全国に28ありますけれども、透析は、どこでも必要とされる可能性がある。それに対して対応できるモデル作りが重要であろうという形で、今、提言をしているところです。
○永井部会長
外国ではどういう状況なのですか。身体疾患に対して精神・神経専門病院はどう対応するか。いろいろ有名な病院がありますよね。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
ございますね。英国などの例を見ていますと、同じキャンパスの中に医療観察法病棟というのがあって、一方、総合病院がきちんとあるのです。その敷地内にありますので身体的なケアが必要なケースは、常に行き来ができる関係になっている所が多いと思います。私どものような専門病院の中だけで自己完結するというのは、極めて難しい面を持っていると思います。
○斎藤委員
ホームページでビューが6倍以上になるというのは、画期的なジャンプだと思います。これは広報グループをお作りになったと書いてありますが、それだけで達成できたのでしょうか。どんな仕掛けをお作りになったのか教えていただければと思います。もう1つ、てんかん病であることをディスクローズしないで、ドライバーになっていて事故を起こした事件がありました。それに関しても何か政策提言で助言などなさったのであれば、それも教えてください。
○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長
ありがとうございます。まずホームページの件ですが、これは広報の部分だけでここまでいくわけでなく、30ページを御覧いただくと、ホームページのところで非常に増えているのが災害時こころの情報支援センターで、ここのところのアクセスが飛躍的に伸びたと。ここは、災害時のこころのケアに対する支援体制の在り方について、正に新しい仕組みを構築していく、そこの知的バックグラウンドの部分をセンターが担ったと。そこで自治体や医療機関は、どういう考え方で何を進めていったらいいか、随時、ホームページを通じて必要な情報を提供する体制を取ったことがあります。そういったこともあって医療関係者や行政関係者が、ここのところに注目してアクセスする。行政のほうはどうしても決まったことしか出せない部分がありますので、議論されている部分を上手にポイントを出していく。そういうプロセスを通じて情報の検索数が上がったということです。
それから、てんかんの部分については政策提言ではありませんが、メディアカンファレンスをやっています。この問題について、メディアの方々にきちっと正確に理解してもらい、そういった取組を通じてこの病気の特性やリスク、様々な立場のお考えがあることや医療的な内容についての情報提供を、この時期に開催しています。そういったことを通じてやっているということです。以上です。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
今のてんかんと運転の問題は非常に大きな社会問題になり、これは私どもも大変憂慮したところです。具体的には私どもの所にてんかんを専門にしている部長がいて、これに関する国の審議会のメンバーとして加わって発言してきています。なかなか難しいのは、コントロールされて発作が全くなくなっている方もいらっしゃるわけです。一方で、例えば薬を飲むこと自体が非常に不規則になってしまっているとか、発作がコントロールされていないのに運転をしてしまうとか、そういうところをどういうふうにきちんと仕分けするか。全て駄目というふうにして、ほとんど発作がない人を制約してしまうのはどうかという議論がありますし、そのあたりは審議会の中でかなり議論を積み重ねてきていますが、最終的には学会が何らかの指針を出して、実際に患者さんに分かっていただかなければいけない。その啓発の部分が非常に大きいということもありますので、そういう活動はさせていただいています。
○永井部会長
よろしいでしょうか。では最後に第4グループ、項目10~14、効率的な業務運営体制等、法令遵守、内部統制、予算・収支・資金計画、その他主務省令で定める業務運営に関する事項、これらについて御説明をお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
企画経営部長の野村でございます。よろしくお願いいたします。資料1-2、先ほどから皆さんに見ていただいている概要で進めさせていただきます。33ページで最初の効率的な業務運営体制、項目10のところです。1ガバナンスの強化等を目指した取組、2効率的な業務運営体制の構築、3総人件費改革の取組と、大きく3点の切り口で整理させていただきました。多くはほかの資料のほうに出ているのですが、ここでは2の特命事項を担う副院長について追加で御説明したいと思います。この複数制の特命副院長ですが、臨床研究推進委員会を病院に設置し、内科系、外科系の医師、コメディカルの集団を用いて、病院の中で臨床研究を進めていく。それは患者さん、被験者にとって安心で安全な臨床研究を進めていくということです。平成24年度はOCHのFirst in Humanの試験がありました。これに当たり万々が一の体制として救急体制を構築し、またその救急体制が本当に動くかどうかシミュレーションの訓練を実施しています。その訓練の中身ですが、いわゆる急性増悪で心停止するという、ある意味最悪のシナリオを設定し、その後、胸骨の圧迫から除細動、気管内挿管、そして人工呼吸器の装着まで、あらゆる職種で現実にこうなったら、いつ、誰に、どこに連絡するか、その手技は誰が行うかを含めて実習を行っています。このようなことが、医療者にとっても安心な臨床研究を進める背景になっていると考えています。このように院長からの特命事項に沿って、特命副院長が責任者として進める体制を取ったことが、業務運営体制の効率化になっているということで御紹介します。
その下に、研究所の今後のあり方に関する検討会の設置と記載されています。研究所のあり方検討会には外部の有識者を交じえて、平成23年度から検討を重ねています。平成24年度には23年度の提言を受け、センター内部の基本問題検討会で検討を重ねてきました。粗々の問題点なり骨格が出来上がった時点で、今、平成25年度の最終答申に向けて活発な議論を行っている状況です。
3の総人件費改革の取組ですが、左に増減事由を示しています。増減事由としては事務職員退職後不補充、技術職退職後不補充で1億5,000万円のマイナスにしました。その下の高度先駆的医療の推進等で約2億6,000万円の増となり、差引9,000万円の増となっています。右側に「医業収益の大幅な増加」と書いていますが、対23年度は6.7億円、対21年度は18.7億円と医業収益が増加しています。この辺は約2億4,000万円の投資を行い、結果として6億7,000万円の増収と考えています。
35~37ページが、評価項目11.効率化による収支改善、電子化の推進です。評価項目11については1~6で整理しました。1は平成24年度収支実績で太い黒枠で示しています。約3億円のマイナスでした。ただ、平成23年度に比して収支としては改善の方向に向かっている。全体像としてそのように捉えています。この内容について、先ほど収入が6億7,000万円増加したとお話していますが、セグメント別の医業事業としては平成23年度はマイナス3億円でした。それが平成24年度はプラス4,000万円ということで、医業事業としては黒字化がやっとできたと言いますか、そういった状況になっています。そもそもうちのセンター病院というのは一般の精神科を4個単位持っている。この精神科の4個単位というのは、診療報酬の点数で言えば一般診療科の半分以下が普通です。つまり、それだけのハンディキャップを持ちながら、やっと黒字化まできたというところでお考えいただければいいと思います。当然のごとく病院の収支が±0から黒字化に向かっていくことになりますから、今後とも全体の収支改善に努めてまいりたいと考えています。
2の一般管理費の縮減は大体同じようにいっていますし、3の材料費の縮減は、いわゆるトヨタ方式ではありませんが、消費イコール講入ということで在庫は全部外の業者持ちで行って縮減しています。材料比率自身は平成21年度比で0.3%ありますが、大体17%でなかなか動きません。国立病院機構の大きな全国レベル等のデータで共同購入も実施されていますが、17%以下にするのはなかなか難しい状況です。
4の医業未収金対策は、ここに挙げられた様々な努力の結果、回収ですので未収金を発生させないというのは、相手にどれだけ意識させるかということ。その意識をさせるのは窓口の方だけでなく、福祉、医療の皆さんがそういった情報を共有して、お支払いいただく機会を増やすことが改善につながります。
37ページの5に、先ほど申し上げた6億7,000万円増の主な取組が書かれています。6の電子化の推進では、下の・で情報セキュリティの強化です。ここでは自己点検実施、セキュリティソフトの確認、盗難防止(ファイヤーウォール)の強化といったことを行っています。
38ページが内部統制の適切な構築です。左の上部に内部監査組織ということで理事長以下、組織が出ています。コンプライアンスのところでもこういうことが書いてあり、当センターの監事の方、うちの監査室、外部の会計監査法人、そして右側のコラムにある実地監査の実施では、旅費、研究費、固定資産の管理等、幅広い項目について監査室と監事の方の協働で、こういったことが監査されました。外部の会計監査法人も当然のごとく監査しています。窓口収納については抜打ちで担当者ごとに、そういったものを知らせずに直接監査を行ったりしています。こういったものが、いい意味での緊張感を生んでいることになっているのかなと思います。左のコラムの契約申請委員会で事前チェックし、一般競争を基本に適正な契約業務をして、その後、契約監視委員会で点検を行っています。右は外部の監査法人も含めて、内部統制に係る各種取組を行っています。右下の臨床研究推進のための倫理問題等への体制強化ですが、昨今、いろいろ騒がれている利益相反の審査、規程の整備、各種倫理指針やCOIマネジメントの定期的な教育提供ということで、平成24年度にこういったことを当然のごとくやってきました。そして、ある一定の理解が深まったということで、年度を超えていますけれども、平成25年5月には全職員を対象とした自己申告書の提出をお願いし、内部の審査をしています。今後ともこういった利益相反の理解を得て、研究職や医療職の方々が安心して臨床研究が進められるような体制を構築していきたいと考えています。
次に39~40ページ、評価項目13.予算・収支・資金計画等です。39ページの寄附及び受託研究等の受入ですが、右のほうで下線を引いている共同研究については、特筆すべき増加額として約1,000万円相当だったものが1億円ということ。そういった意味では10倍で特筆ということです。中身ですが、大型が2件ありました。脳画像の技術開発で約3,000万円と、バイオマーカーの探索で共同研究というのも約3,000万円です。2件で6,000万円と非常に大きなものが確保されました。そういう大きなものが消えたら次はないのかというと、25年度も5,000万円程度は何とか確保できるだろうと思いますので、その目標に向かって頑張っている状況です。その下の短期借入金、重要財産の処分等の計画についてはありません。
40ページで、平成24年度の財務状況等ですが、貸借対照表以下、表を作っています。ここで着目していただきたいのが右下のコラムです。運営費交付金収益の内訳(46.2億円)が掲載されていますが、センターとしては、研究基盤経費の部分を前年度ベースで1億4,000万円ほど縮減し、次の臨床研究基盤経費のほうを増やしている。つまり運営費交付金の中身を、こういった臨床研究基盤経費のほうに移して強化しているところが今の現状です。
41ページで、評価項目14.人事、その他主務省令で定める業務運営に関する事項です。4点ほど掲載させていただきました。1人事システムの最適化、2良質な医療の効率的提供のための取組、3アクションプランの実行、4分かりやすい国民目線の情報開示ですが、4については先ほど情報発信のところでお話しています。2の良質な医療の効率的な提供のための取組については、医師確保から医療技術職員の確保までありますが、特に看護師の確保については、全国の医療機関で看護師の確保に苦労していることは御承知かと思います。当センターで今回、看護師確保の着眼点から行ったものに看護職員の満足度調査があります。今まで患者満足度調査は行っていますが、職員の満足度調査とまだリンクさせていませんので看護職員の満足度調査を行いました。現状、離職防止という観点から離職と満足度の内容の相関関係は見つかりませんでしたが、自由記載欄の中に、職員の声として管理職員の指導にばらつきがあることが窺えたので、そういったところを内部研修でしっかりと、統一的な考え方に基づく人材育成なり指導ができるように行っています。医療の質の向上のためには職員満足度の向上も必須と考えています。いいモチベーションを持った人を集めて、更に発展させていきたいということで、そういったこともやっていることを御紹介させていただきました。
43ページには、効率的な業務運営体制等について自己評定した結果とポイントについて記載しました。私から以上ですが、監事から追加はございませんか。
○国立精神・神経医療研究センター監事(長崎)
ありがとうございます。監事の長崎でございます。監事として監査をいたしました結果は、お手元の資料1-7の財務諸表等の中に監事監査報告書として掲載させていただき、適正である旨の意見を表明しています。これについて特に付け加えることはありません。しかし、機会をいただきましたので2つほど所感を述べさせていただきたいと思います。
1つは、先ほど来、説明のありました内部統制の整備・充実についてですが、昨今、これの整備・充実が官民ともに非常に強く求められているところです。しかしながら、ナショナルセンターはどこも共通している状況かと思いますが、当センターも定数の削減により事務の常勤職員が非常に減少してきています。これに伴い在職している方々に大きな負担がかかっている。この点は内部統制の整備・充実という点から考えますと、再検討の余地があるのではないかと考えています。
もう1点は、これも先ほど説明がありましたけれども、当センターの収支についてです。平成23年度と平成24年度を比較すると、4億7,100万円改善していますけれども、そのうちの3億3,700万円でしょうか、これは診療部門の収支改善によるものです。これについては関係された方々の大変な御努力があって、改善されたのではないかと高く評価されていいと思っています。このことを私のほうからも付け加えさせていただきたいと思います。以上です。
○永井部会長
ありがとうございました。それでは、御質問をお受けします。
○藤川委員
財務面のことで伺いたいのですが、今、説明いただきました35ページに平成22年度以降の決算額が出ています。収支を中期計画が終わった時点で100%に持っていくというのが目標だと思いますが、そうしますと、今、マイナスが続いていますので、あと2年で10億円近くを何とか回復しなければいけない。そこに向けてどのような方策を考えているのかという点をお聞きしたいです。2点目ですが、教育研修棟新築整備工事が遅れていると伺いました。そのあたりは何か問題があったのか、予定はどうなっているのかというあたりを教えていただきたいと思います。それから監事の監査において窓口収納の抜打ちもやったということですが、特に問題はなかったのかどうか、そのあたりを教えていただけたらと思います。3点、よろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
最初の5年の収支相償について、いかがということですが、おっしゃるとおり、今、マイナス10億円を超えているような状況です。ただ、先ほど申し上げたとおり、いわゆる医業事業というものについてはプラスになったと。実は病院というものは患者さんを相手にしていますので生き物です。季節あるいは内部的な感染症の発生といったもので病院の事業自身は揺れ動く。そういったものをある程度安定させるということ。前年度はマイナス3億円であったものが今回は4,000万円のプラス、つまり、やっと土台ができたような状況で、中期計画の中でも第2段階にきている。これをもってその次のところに行くために、我々としては最大限に努力していくとお答えするしかないところがあります。
2点目の教育研修棟ですが、案の定と申しますか多くの業者が東北のほうに行ってしまい、実は大きな工事で何が必要かというと、建築のメインとなる現場代理人なのです。その現場代理人というのは資格がありますし、ある一定期間、そういったことを経験した者でないと現場を取り仕切れないのです。その人材が多くいなくなった。いろいろなゼネコンにお願いして今の状況を確認したところ、多くのゼネコンが実はメキシコに行っていて日本にいないとか、あるいは既に東北へ行ってしまっているということで、いわゆる応札者がいなかったということでした。幸いにも何とか三度目の入札で応札業者が決まり、電気あるいは設備についてもそれぞれ決定し、来年の3月が一定の期間なのですが、それに向けてというところです。でも現実的には、その入札行為の遅れで3か月から4か月遅れていますので、来年の6月を目途に完成と考えています。3点目の窓口については、監事のほうからお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター監事(長崎)
私のほうから申し上げます。この窓口収納についての実地の監査ですが、私どもの監査は監事と監査室と共同で行っています。多くのことには私どもも一緒に立ち会っているのですか、この窓口収納についての抜打ち監査は、残念ながら私ども監事は立ち会ってはいません。ただ、監査室が独自でやられた事項はほかにも監査はあるのですが、その結果については報告を常に受けています。この窓口収納についても監査の結果、特に問題があったという報告は受けていませんので、問題はなかったと理解しています。
○永井部会長
病院の収入というのは別セグメントになっていないですか。病院の医業収益の経年的な変化というのは、どこに書いてあるのですか。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
セグメント別のものですよね。
○永井部会長
ええ、病院についてないでしょう。普通、どのセンターもみんなそれを出していただく。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
資料1-7の20ページに、セグメント別のものが出ています。こちらに診療事業ということで中段の点線の上で4,000万円の黒字というのが載っています。
○永井部会長
まず収入が幾らですか。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
その一番上です。事業費用として、その下、収益では約74億円。
○永井部会長
これは増えているのですか。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
はい。先ほど言ったように6億7,000万円。
○永井部会長
法人化後、どんな数字で推移しているのかも知りたいのです。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
個別ではまた整理させていただいて、単純に申しますと、先ほど言ったように対21年度では18億円で、毎年、毎年増しています。そして23年、24年の中では6.7億円ということで増えている。ですから21年度に比べると20億円増えている。それだけ増やしてきている。
○永井部会長
ずいぶん小さい規模で20億円増やすというのは、大変なことだと思いますが、どういう点を工夫されたのか。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
対象とする21年というのは、22年9月が新病院を立ち上げるときでしたので、そこでは多くの精神病床を、ある意味精神の部分を新病院の中での病床数にある程度減らしていかざるを得ない。ただ、当時のNCNPの病院は悪くても50億円はコンスタントに稼ぎ出す病院だったのです。その中から20億円上げたのは、コメディカルなり上位の施設基準の取得が第1です。それと病床利用率の向上、そして新病院では特室化が起こっていますので、特室だけでも年間7,000万円はコンスタントに計上されていくようになりました。
○福井委員
最後のところで、大ざっぱな数値を教えていただければと思います。看護師の離職率というのはどれくらいなのでしょうか。先ほど少し触れていたと思いますが、1年間に辞める看護師の割合です。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
一般は30%と言われていますけれども。
○福井委員
一般的には10数パーセントと思います。
○国立精神・神経医療研究センター
10%前後です。
○福井委員
やはり10%ぐらいはありますか。
○国立精神・神経医療研究センター
はい。
○福井委員
ドクターのうち、研究に全然携わっていないドクターはどれくらいいますか。診療だけに携わり、ほとんど研究に携わっていないドクターです。全員が研究に携わっているということでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
基本的に常勤の医師は、全て何らかの形で研究に関わることになっていて、レジデントは、個人的に関心を持って研究に関与している人はいますけれども、基本的にレジデントは診療に従事していると御理解いただければいいと思います。
○福井委員
毎年、英語の論文が何百編も出版されていますが、何人ぐらいの研究者で書いているのかと思った次第です。
○祖父江委員
ありがとうございました。最初の概論のところでもお話があったと思いますが、総人件費が抑制されて、かつ、交付金もだんだん減ってくる状況で医業収入や外部資金が増えているというお話でしたね。ミッションを拡大しようと思うと人に使わざるを得ない部分があると思います。例えば今の話と関係してくるのですが、この2億3,500万円は主に医療のほうに投資されて、リターンを4億円増したとおっしゃったけれども、研究のところの人員を本当はエキスパンドしていく必要があると思います。それをどういうふうに考えていますか。上位機構があって難しい面が本当にあると思いますが、何かお考えがあれば。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
御質問の趣旨でいきますと運営費交付金、いわゆる研究職の方はそこから財源を生み出さない方です。医業ではないので研究からは基本的に生み出さない。ですから、その方たちはセグメントで言うと研究になるわけです。研究というのは運営費交付金ですから、運営費交付金というのは一定規模で増えるものではありませんので、元の原資が増えない限り、それに基づく人はそれほど増やせるものではない。したがって先ほどの研究所のあり方検討委をしないと、臨床研究に特化した研究の体制であれ何であれ、どういう部分をどこに残していくのかをしない限りは、無限に原資があるわけではありませんから、そうすると病院については自分で稼ぐことができるなら、増員についてもある程度一定の理解が得られるということで、今、増やしています。そして、それに見合ったふうにしている。
○祖父江委員
その病院の収入を増やした分の中には、臨床研究という意味で研究者も含まれていると考えていいですか。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
ただ、それを原資に今は研究所のある一定の定員の部分を、こちらのTMCのほうにシフトしたりということで対応しているのが主体です。臨床研究で一部増やしたりしていますけれども、それは飽くまでも運営費交付金の枠ですね、先ほど言った6.4億円という臨床研究の枠を増やして、その枠の中で事業として例えばIBICといった所に強化していっている。でもその分、強化するということは基盤経費の研究費のほうを圧縮しますから、そちらのほうの人件費あるいは研究費を圧縮して、そちらにシフトしている。そういう苦労をしているということ。
○祖父江委員
なるほど。国立大学法人などでは医業成績で儲かったお金を研究というか、もちろんパーマネントでなく非常に短期ですけれども、そういうのにどんどん使ってミッションを拡大しようという動きをやっているのです。その辺はどうお考えか聞きたかったのですが、大体分かりました。
○内山部会長代理
確認ですが、35ページの平成24年度収支実績で23年度との比較が出ていますけれども、これは損益ベースですか、それともキャッシュベースですか。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
損益ベースです。
○内山部会長代理
キャッシュベースでの収支は、どうなりますか。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
キャッシュベースですと、流動資産で大体14億円ありますので、キャッシュでは絶えず持っているということですから、キャッシュで今、どうこうということはありません。
○藤川委員
最後、確認ですが、先ほど建設が遅れたことで、他の法人では補助金等が繰越期限を超えてしまうような建設の遅れが生じた所もあったということですが、そういう問題はないと理解してよろしいですか。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
はい、何とか滑り込みでできたと。
○藤川委員
分かりました。そうでないと自己資金でやらなければいけないことになる。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
ええ。いわゆる事故繰越しを2回できるのかというところが問題になりますから、今回はそれをクリアできたということで我々も安心しました。
○永井部会長
平均在院日数、稼働率、2泊3日以上の外泊数、その辺を押さえておられますか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(糸山)
平均在院日数は、先ほど言いましたように精神科の場合は40日を切りました。一般のほうが21日ぐらいです。稼働率は一般のほうが82~83%、精神科のほうが大体90%ぐらい、合わせて86%ぐらいです。
○永井部会長
それから2泊3日以上の外泊数、これは3,000円になってしまうようですね。そこがどうなっているか。あまり長期の外泊は1回退院していただいたほうがよいだろうと思います。それは把握されたほうがよいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター企画経営部長
傾向としては、あまりそういった傾向はないです。かなりの部分、障害者病棟についてもレスパイト的な、いわゆる重心だけでなくパーキンであっても、割と短期で半年に1回はチェックすることで、短期で回っている方たちは当然のごとく外泊ということはあまりありません。ただ、年末年始やゴールデンウィークといったところは当然のごとくあります。
○永井部会長
ありがとうございました。それでは5分ほど休憩します。
(法人及び所管課入替)
○永井部会長
それでは、国立長寿医療研究センターの個別評価に入ります。最初に大島理事長から御挨拶及び平成24年度の業務実績概要の御説明を簡単にお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター理事長
国立長寿医療研究センターの大島でございます。よろしくお願いいたします。3時からの会議で相当お疲れかと思いますが、よろしく評価のほどをお願いいたします。新しい評価委員の先生方もお見えですので、簡単に私どもセンターの概要を最初にお話させていただきます。2004年に6番目のナショナルセンターとして設立された最後のナショナルセンターです。もともとは、国立中部病院、元は結核療養所を母体にしたところからスタートしていて、愛知県の大府市、名古屋駅から快速で東海道線で豊橋のほうへ15分ほどの所にあります。業務実績概要資料の4ページを見ていただきますと、全体の概要について述べられていますが、組織の規模は常勤の職員が約500名。病床が321床で、1日平均入院患者数が256名。外来患者数が564名という規模です。
「私たちは高齢者の心と体の自立を促進し、健康長寿社会の構築に貢献します」というのが私どもの理念です。この理念の実現に向けて、具体的な役割、使命、責務とは何なのかということですが、平成19年の7月に政府から「国立高度専門医療センターの今後のあり方についての有識者会議報告書」が出されていて、これはちょうど独立行政法人になる直前ですが、そこの中に3つの役割が明記されています。そして、この報告書の中では臨床研究センターの機能、あるいは臨床研究重視型病院の構築をうたっていて、センターの政策医療を牽引するものと位置付けています。3つの役割の第1は、臨床研究の推進。第2は医療の均てん化。ここの中には在宅医療システムの構築に主導的役割を果たすことという極めて具体的な項目についてまで言及されています。そして、政策医療の総合的かつ、戦略的展開というのがナショナルセンターの3つ目の役割と明記されています。私どもは、この報告書に従って、長寿医療研究センターの役割を位置付けています。
超高齢化の急速な進展によって、高齢者医療がこれからどうあるべきかという議論が今、求められていますが、それにまつわる問題も噴出してきていることについては改めて説明するまでもないと思います。まず、第1の臨床研究の推進ですが、これはもの忘れセンターを作って3年目に入りますが、多少自慢になりますが、世界一の規模にあると誇っていいレベルまで来ています。データベース、あるいは患者数等についても非常に充実したものになってきています。また、在宅医療支援病棟、これは実験病棟ですが、これにつきましても、これからの在宅医療についてその有効性等の実証について、きちんとしたデータも出ています。また、認知症先進医療開発センターでは、新薬の創出に向けて、臨床レベルまで持ってくることのできる薬剤の候補が2剤挙がっていて、近いうちに臨床に持っていくことができる段階にまできています。また、歯科口腔先進医療開発センターでは、歯髄再生が厚労省の認可を得て、前臨床から臨床へ進んで、2例目が具体的に行われている段階です。また、老年学・社会科学研究センターでは、介護予防の大規模なRCT、これは世界的に見てもまだ例のない規模で行われていることが進んでいるところです。
第2の医療の均てん化ですが、主なものを挙げますと、昨年から在宅医療の全国展開を国が進めていますが、これの拠点事業の研修、あるいは評価について、私どもセンターが中心的役割を担っていること。認知症については、約3,000名の認知証サポート医の研修が終わっていて、認知症サポート医が地区に戻って、かかりつけ医の研修を含めますと、2万名以上の研修が終わっているところまできています。また、認知症については、認知症医療介護推進会議を関連団体に集まっていただきまして開催をし、これを母体にして、これから政策医療についてのいろいろな提言等を考えていきたいと進めているところです。
政策医療の総合的かつ、戦略的な展開についてですが、今、お話しましたことは全て政策医療に関連することであって、私どもの研究センターとしては、政策と直接に関連している問題から、国民の健康問題の改善に資するという方向性で考えているところです。
加えて、このような活動が基本的に安定的にできるためには、病院経営がきちんとしていることが条件になりますが、今年につきましても病院経営の改善が顕著に見られています。昨年度は経営収支率が103.6%と初めて黒字化いたしましたが、今年度は経常収支が106.1%となって、更にアップしています。
全体を概観してみますと、手前味噌ではありますが独立行政法人化以降、全体的に急成長しているというのが、私どもの評価でして、1年目については準備段階でセンター内の空気も頑張れば頑張るほど頑張る者は損をするような雰囲気がないでもなかったのですが、この3年目に入って、今では、頑張れば必ず報われるという雰囲気がセンター内全体に漂ってきていると自負しているところです。今年は、自己評価で「S」を8、「A」を6と少し踏み込んだ自己評価を出させていただきましたが、それなりの自負のあるところですので、具体的には後で担当からその理由等について説明をしてもらいます。
最後に今後の課題ですが、まず、第1番目に病院の新築をどうしてもしたいということがあります。これは、前からお話していますように、現病院が45年もたっていて、非常に古くなっていること。これが現状の実際の要請にあっていない。物理的にも発展の余地がないことがあります。もう1つは、諸外国から当センターへの訪問が非常に増えているのですが、こんな言い方が適切かどうか分かりませんが、あの古い建物では世界一の高齢化を誇る日本が高齢化問題に本気で向かっているのかどうか、日本の本気度が疑われるという感じがありまして、何としても病院の新築は進めなければいけないと考えています。
本来の業務の点からの課題としては、これから特に大きな問題になってくる、高齢者医療とは一体何なのか。これをどうやって体系づけていくのかというのが第1です。そして、あるべき高齢者医療というのはどのように提供されるべきか。この問題についても明快な答えを出していきたいと思います。それをどのように国民が受益できるようにしていくのか、これが一番大きな目標であって、その先には日本モデルを世界にどのように発信していくのかということも私どもの使命であると考えています。以上です。
○永井部会長
ありがとうございました。それでは、これから評価に入ります。所要時間は説明10分、委員の評定等で15分、合計25分でグループごとに進めてまいります。最初に項目1~3、研究開発に関する事項についての評価を行います。それでは、説明をセンターからお願いします。
○国立長寿医療研究センター理事(鈴木)
それでは、評価項目の1から御説明をさせていただきます。研究所長の鈴木です。主に用いる資料は、資料2-1の平成24年度業務実績概要資料、ポンチ絵を使わせていただきます。9ページをお開きください。私のほうで、まず評価項目1、3を説明させていただいた後、評価項目2、4を病院長から説明させていただきます。
評価項目1、「臨床を志向した研究・開発の推進」ということです。この項目に関して、平成24年度の実績としては、研究所と病院、センター内の連携強化というものが含まれています。これは総長の説明にもありますが、7ページに戻ってください。実は昨年度、この丸の3つがあります。左の丸は、病院のもの忘れセンターです。真ん中のブルーは認知症先進医療開発センター。そして右側の黄色い丸は、老年学・社会科学研究センターを表していますが、この3つの組織がようやく完全にそろいまして、病院、認知症を中心とした研究所のセンター、社会科学研究センター、これらが合同して、その機能が充分発揮されたと自己評価させていただいています。
病院のもの忘れセンターに関しては、後に院長から御説明がありますが、認知症先進医療開発センター及び老年学・社会科学研究センターについて、特に認知症先進医療センターでは、ここに書かれていますが、創薬、あるいは新たな検査法というものに対して、かなり大きな進展がありました。また、老年学・社会科学研究センターでは、特に認知症に対する予防、あるいは介護状態を予防するということで、数多くのランダム化試験が実際に昨年度実行されまして、その多くが現在国際誌の標準的なジャーナルに数多く採録され、また、コクランレビューあるいはシステマティックレビューにかかるという成果を上げています。また、この真ん中には後ほど説明しますが、実際のデータ集積として、これは6NC合同ですが、バイオバンク事業が順調に開発されているということになります。
更に10ページをお開きください。これは評価項目1の中で、特に下のグラフですが、研究所・病院の共同研究件数、あるいは右側の企業との共同研究件数ですが、これらはいずれも平成21年度から見まして、ほぼ倍増しているという状況です。中でも11ページに書かれているような、アルツハイマー病の治療薬開発のシーズに向けて、作業が進んでいます。特に13ページをお開きいただきますと、これは島津製作所の、ノーベル賞をお取りになられた田中プロジェクトに現在参加しまして、アルツハイマーに関するバイオマーカーの先進的な手法による、バイオマーカーの探索を現在実施しているところです。
続いて評価項目の3に移らせていただきます。このポンチ絵の18ページからです。評価項目3はタイトルとして、「担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進」ということです。平成24年度実績としては、研究成果の発信として、そこに文言として書かれていますが、原著論文の発表数及び被引用件数が、対平成21年度に関して、相当数増えているということです。
個別の研究の中で、特に平成24年度について、私どもはここも「S」評価とさせていただきましたが、その中で特に顕著なものを御紹介させていただきたいと思います。19ページには認知症先進医療開発センターの中で、アルツハイマー病の先制治療薬の開発ということで、この開発センターができて3年目になりましたが、はっきりと顕著な成果がありまして、臨床試験の実施に向けて、実際の薬物が開発されていまして、何とかアルツハイマー病の先制治療に用いる、大きな基礎的、実用化に向けた研究が進んでいるということです。
次の20ページについて、これは先ほど総長からも説明がありましたが、歯髄再生臨床研究が進んでいまして、昨年度は厚生労働省から認可をいただいて、ヒト臨床に実際に着手しているところです。昨年度、この申請に許可をいただきまして、現在までに3例の実際の患者様を集めまして、これから歯髄再生の治験に入っていくところ、安全性試験に入っていく状態にまで進んできています。
それから21ページについては、これは私どものセンターがスタートして以来、15年にわたって行われています、NILS-LSAという老化に関する長期縦断研究が、第7次の調査まで終わりました。お一人の方を15年追いかけるということで、約2,400名のデータが完全にそろったわけですが、この中で例えば右のグラフにありますように、1日の平均歩数が、8年後にどのぐらい脳萎縮を予防するかというような、観察型研究の非常に大きなデータが、いくつか報告されるようになりました。
実際にこういった観察型データをもとにして、先ほど御紹介しました老年学・社会科学研究センターでは、介入研究を中心に平成24年度から実行されています。22ページ以降に、その一部を紹介させていただいています。24ページでは大手自動車メーカーと共同で先進的支援機器、すなわち歩行のアシスト機能を持つ、こういったコンピュータ制御の機器を用いて、要介護状態を予防し得るかどうかといったことに関するランダム化研究。23ページについては、これは平成24年度に既に一部完成していますが、アルツハイマーあるいは認知症の1つ前の段階であります軽度認知障害、MCIと呼ばれる方々を正確に診断・抽出しまして、その方々に対するマルチコンポーネントと言いましょうか、いくつかの脳を働かせるような要素を取り入れた運動のランダム化試験を行っていまして、これについてはBMCニューロロジーやPloS One等に現在公表され、また、コクランレビューにも引用されるようになっています。本年度は更に枠を広げまして、約7,000名の高齢者のスクリーニングと、約400名ぐらいのMCIの方々を、ランダム化試験によりまして、23ページの右側の上にあるような、様々な介入研究、すなわち太鼓を用いた音楽療法ですとか、あるいはマルチタスクを持ったエクササイズを、再度数を大きくしてトライしているところです。
24ページをお開きいただきますと、今度はそれをもとにして、実際に愛知県大府市、東浦町あるいは名古屋市緑区といった、私どもの研究所のそばにあります自治体との共同で、いろいろな介護予防のためのコミュニティの創出ということについても介入しています。
次に25ページ、これは東日本大震災以降の生活機能を落とす高齢者に対する予防対策として、現在もまだなお実際の被災地に張り付いて、生活不活発病の予防に対する研究を続けているということです。
最後に26ページは、先ほど申しましたNCGGのバイオバンクの一環として、私どもも進展がありますが、特に私どもではもの忘れセンターからの、アルツハイマー病に関する1,600例のバイオデータ、あるいは高齢者のノーマルな老化に関する長期縦断疫学調査の2,000例のノーマルデータ。これはまだ現在インフォームドコンセントを取り直して、順次集めていますが、こういう世界に類を見ない認知症、あるいは認知症のコントロールデータを、現在集積しているという状況です。
以上が評価項目の1と3です。2と4は院長の鳥羽から御説明申し上げます。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
病院長の鳥羽です。続けて評価項目2と4を説明させていただきます。評価項目2は病院における研究開発の推進で、14ページにありますように、数としては治験申請から150日間かかってきたものが97日であるということと、様々な認知症、在宅医療、転倒骨折、介護予防研究などの、研究のプロセスに関する講習などを活発に行って、その仕組みを作ったということと、透明・倫理性の確保などが行われました。
ここを「S」評価にした理由は、臨床研究機能の強化によって、臨床研究が病院の先進医療と相まって医療にいかされ、その医療が一部は政策医療、そして政策提言まで結びついたということで、「S」を付けさせていただいています。その例として17ページですが、認知症の医療政策の方向性、整合性、補完性ということで、病院のもの忘れセンターにおける医療研究におきましては、早期発見ケアチームにいかす早期発見ツールを検証して、ケアチームの班にモデル事業でいかされているところですし、不適切な精神神経薬剤や精神入院基準の整備では、代替の非薬物療法、ケアコンテンツといったものを提示し、また、精神病院に入れない場合には、総合病院や介護施設における教育コンテンツといったものの充実で、目覚ましい成果を得られたということです。
また、身体合併症対応強化では、従来からのディメンチアサポートチームの活動、そして医師のかかりつけ医対応力向上研修、認知症疾患医療センターの疫学研究で、このような機能評価を活発に行えたということがあります。評価項目2については以上です。
○永井部会長
例年御説明していますが、計画どおりいったのが「B」評価、計画を大幅に上回ったのが「A」評価、想定外の成果もあったというのが「S」評価ですので、ですから特に評価される方々は、その点をもう1回確認しておきたいと思いますが、想定外の所がどこかというのを、必ず「S」の場合には、我々はコメントに書かないといけないものですから。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
もう1回繰り返してよろしいでしょうか。
○永井部会長
想定外の所をお願いします。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
7ページをもう1回見ていただくと分かるのですが、ここで「S」評価の所に*を付けています。病院のもの忘れセンターでは、治験などにリハビリあるいはコンテンツの研究をしていまして、これらはパブリッシュして、あるいは研究発表して、十分にいい成績が出て「A」評価という考えもありますが、これが大きく取り上げられ、地域や国の政策の、ほとんどの中枢に取り入れられて、予想外の発展を見たということで、「S」評価とさせていただいています。以上です。
○永井部会長
いかがでしょうか。先ほど論文数のことが出ていたのですが、英文でどうなのかということですね。これはいつも出していただいている表ですと、英文ですと2012年、1月から12月ですが94で、少し印象が違います。それから引用回数等も、これはどういう計算なのか。やはり英文に絞って成果を上げたほうが、ナショナルセンターですので分かりやすいと思うのですが、いかがでしょうか。
○国立長寿医療研究センター理事(鈴木)
御指摘のとおりだと思っています。基本的には私どもも英文論文が主ですが、ただ、実は社会科学研究センターの場合には、国の施策ということに関わりますと、欧文誌だけではなく国内誌もかなり重視した部分はあります。ただ、これは飽くまでも老年学・社会科学研究センターという老年社会学に限って、しかも国の施策に直接提言ができるという、具体的な名称で言いますと、例えば公衆衛生学雑誌というのがありますが、これは相当国の施策にも、いくつかのヒントなり、あるいは御提言をすることができる国内誌です。
そういう意味で私ども、領域によっては国内誌も重視していますが、主要なものはもちろん、原著論文は全て英語ということで、基本的には考えています。
○祖父江委員
どうもありがとうございました。非常に活性化している感じがありまして、総長がおっしゃったように、ここへ来て非常にいい方向が出ているという感じを受けています。
少し細かいことになりますが、1つは、これはほかのナショナルセンターにもお聞きしたのですが、バイオバンクということに少しお触れになりました。これは6ナショナルセンターが合同して、今後やっていく。これは非常に素晴らしいと思ったのですが、拝見すると現在は長寿医療研究センターに、むしろ特化して作られている。今後どういう形を描いておられるかというのを、例えば東北のメディカル・メガバンクとか、近江のバンクがありますね。そういう所とのリンクをどう張るのかとか、その辺の構想がもしあれば、お聞きできるとありがたいと思います。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
バイオバンク長も務めていますので、私、鳥羽がお答えします。おっしゃるとおり現在はローカルバンクが主体で、一番多い検体は、もの忘れセンターの年間1,000例、2,500人の脳脊髄を含めた認知症のデータベースですが、あるいは整形外科のものと、それから健康診断と長期縦断の健常者のがあるというのが一番特徴で、これはほかのどのナショナルセンターでも、健常者のデータベースを共同利用、ほしがっています。
現在は内部利用の研究が10件と、がんセンターをはじめとする共同研究が2件進行しようとしているのと、先ほど言った田中プロジェクトでのバイオマーカーといった、外からの応募があります。
今後はやはり疾患ベースのものが主体ですので、自立を妨げる筋肉・骨疾患と、いわゆる認知症の疾患データベースが主体になるのと、同時に縦断研究である健常高齢者のバイオバンクといったものを、外のバイオバンクとの共同で利用できればと思っています。以上です。
○祖父江委員
どうもありがとうございます。もう1つ、少し細かいことですが、先ほど運動教室とか、いろいろなもので介入をして、非常にいい成果が出ているというお話をいただいたのですが、これは認知症を遅らせたり予防していくという観点で、非常に重要だと思うのですが、どの辺のデータが今出ているのかというのを教えていただけるとありがたいです。
○国立長寿医療研究センター理事(鈴木)
ありがとうございます。実は日本では国の施策として、介護予防事業の中に認知症予防という1つの項目が入っています。ただ、残念なことに我が国では、この認知症予防ということに対する科学的エビデンスが全くないという状況でした。これは厚生労働省からも、やはりきちんとしたエビデンスを作らないといけないということで、平成23年から開始しまして、これは完全なランダム化試験ですが、ターゲットとしているのはアルツハイマーという臨床診断の付いた方々ではありません。この方々は、かなり不可逆的な変化だろうということで、ただ、多くの国際的な報告から見て、その1つ前のmild cognitive impairment、軽度認知機能低下障害であれば、非常にリバーシブルであるということに着目しまして、MCIというのはその定義、あるいはスクリーニングというのは必ずしも簡単ではありませんが、幸い私ども国立長寿はその専門の病院ですので、まずMCIを正確に抽出するということから始まりました。
MCIの方々であれば、マルチコンポーネントあるいはマルチタスクを持ったエクササイズの介入をする。分かったことは、MCIの方であれば、様々な多くの知能検査、記憶検査、これが介入群によって、少なくとも低下はしない、一部は改善する。
それから、もう1つは脳画像から見て、介入群ではMRI画像で脳萎縮が抑制される。しかしコントロールの方々はMCIのレベル、特に健忘型のMCI、Amnestic MCIの方々は、萎縮が進行することが明確にされています。したがいまして、MCIのレベルを正確に抽出する。あるいはその方々を、例えば感度85%くらいで集めた上で、集団型でそういった運動介入を行うことによって、恐らく今の段階では、1年間で15%から20%ぐらいのリスクを減弱させるのではないかと。
ただ、これを正確な数字で求めるためには、今後の追跡研究が必要になってきます。現在この方々をコホートとして追跡している段階ですので、恐らく来年度、再来年度の新たな認知症発症について、介入群とコントロール群でどのぐらいのリスクリダクションがあるかということが分かるかと思っています。
それから、それによって半年あるいは1年間の認知症発症を遅らせた場合に、費用対効果がどのぐらいであるかということも、これから検証に移るところです。少なくともMCIの方々については、どうも予防が可能だろうというところまで分かってきたということです。
○永井部会長
ありがとうございました。次に第2グループの4~6の項目、医療の提供に関する事項について、10分で御説明をお願いします。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
それでは引き続き鳥羽が説明させていただきます。27ページの評価項目4を開けてください。高度先駆的な医療の提供として認知症、BPSD、虚弱、大腿骨頚部骨折、感覚機能、LEDなどを挙げております。標準化では在宅医療、介護負担、転倒予防ガイドライン、骨折の早期診断法、低侵襲手術、加齢黄斑変性、口腔ケアの標準化などを挙げております。ポンチ絵で説明させていただきます。
29ページを開けてください。これは先ほどから出ているもの忘れセンターにおける2,000例の包括的な解析結果です。ここから得られたものは、早期発見のツールが得られたこと、認知症の進行とともに介護負担となる症状を明確に得られて、ケアプランを国レベルで提言できたこと、同時にBPSD初期対応ガイドラインを発刊したことによって、センターだけではなくて、国の施策に十分反映できました。
次の30ページを開けてください。我が国で初めて転倒予防ガイドラインを作成しました。このガイドラインの骨子においては、東大、京大を初めとする5つの大学で研究が検証されると同時に、奈良県を初めとする自治体での利用が広がっているということで、予想外の効果があると考えております。
31ページですが、介護保険の中には運動、栄養、鬱、閉じ籠もり、認知機能など、特定高齢者の25項目の基本チェックリストがあります。このデータが国際的な虚弱基準とよく整合性があるということを、昨年度報告いたしました。これを特定健診のデータから見ますと、初めて世界レベルで各国との虚弱者の比較が可能になりました。日本はスイスと並んで、高齢者が世界で最も虚弱になりにくい国であることを初めて発表させていただきました。
32ページは、大腿骨頚部骨折についてです。骨折は寝たきりの第3位の原因で、一度骨折した方は反対側を6、7割転倒骨折いたします。そこで1度目の骨折の手術のときに、反対側にスクリューを入れる予防的な先進医療を開発して、現在のところ骨折はございません。この安全性などが確認されていきますと、寝たきりの手術、あるいは整形外科的な医療費の削減にも結び付く、相当有望な手術法として予想外の結果が得られたわけです。
33ページは、赤外線LEDでの歯科の滅菌装置についてです。これは従来の塩素などに比べて毒性が低いことと、小さな機械ですから、過疎地や災害にも利用できる、あるいは発展途上国への輸出という、医療の開発にも資するといったことで評価をいただいております。これらが評価4です。
評価項目5は、35ページからのことを説明させていただきます。「患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供」では、まず患者満足度調査を実施いたしました。国病機構やNHOの平均よりは高いのですけれども、35ページでお分かりいただけますように、アメニティは低く、病院の老朽化により、患者満足度は余り高くないということがあります。また、NCやNHOとしてはそれほどではないのですけれども、ほかの私立大学や一般病院に比べて、サービスが不十分であると実感しており、36ページのように接遇研修を行い、様々な部署で必要なもの、あるいは欠点というものを指摘し、調査していかしているという状況です。
37ページです。昨年4月からNCとして始めて、回復期リハビリテーション病棟を開設いたしました。これは主に在宅復帰をスムーズに行うためです。在宅復帰率は88%で、全国平均を上回っております。急性期の病院から在宅へ行く上で機能を回復し、スムーズなシームレスな機能病棟として、十分に活動できていると考えております。
評価項目6ではその他、医療政策の一環としてセンターで実施すべき医療の提供を説明させていただきます。38ページからです。認知症に関する医療及び包括的支援の提供では、成熟したワンストップサービスの認知症疾患医療センターが国内外で多くの反響を得て、特に中国やフランス、アメリカ、オーストラリアなどからこれらを勉強したいというのが多く来ております。また、家族教室の内容がもの忘れカフェにつながったり、精神病院からの早期退院に貢献したりしたことを挙げたいと思います。
これらをまとめたものが39ページです。もの忘れセンター及び認知症に関する研究医療の成果は、昨年から認知症医療介護推進会議を始めて、縦割りの多くの学会あるいは日本医師会など、三師会を含めて多くの団体が国民的課題に立ち上がって、組織が積極的に参加する機運を立ち上げることができました。40ページにありますように、報道が多数されただけではなくて、フランス、スイス、スペイン、カナダ、米国から、これらのセンター化が1つの新しい試みとして大きく評価されたことは予想外のことでした。
41ページです。認知症の精神科の病院の長期入院が問題になっていますけれども、認知症疾患医療センターともの忘れセンターにおける、周辺症状(BPSD)ガイドラインを用いた看護師スタッフ多職種教育によって、精神科単科病院に依頼する患者数が1年で半減いたしました。逆に精神科単科病院から当センターを経た場合、5割の患者さんが在宅復帰できており、教育システム及び多職種共同のセンターのシステム自体が、精神病院の長期入院の解決策といったもので、仕組みと看護教育を国に提言して、これらが採用される運びとなっていることは、非常に予想外のことだと思います。
42ページです。在宅療養を支援する支援病棟は、随分前から御報告しておりますけれども、在宅復帰率が高いだけではなくて、20万医療圏で20床、また空床確保、ベッド当たりの単価がどれだけあれば可能かといった、医療経済的なものも算出できたので、今度の医療費の改定のところで、政策提言を行っていきたいと考えております。
43ページは、非がんの我が国最初のEnd-of-Life Care Teamです。これは小さな試みで、本当にお金が儲からない仕組みになっておりますけれども、予想以上の反響があり、各地から共同の研修が広がっております。
44ページを御覧ください。総長からも御説明がありましたように、昨年度、在宅医療拠点105か所が開きました。そこで長寿では教育コンテンツを作成するとともに、91%96か所に実地指導訪問を行いました。これを「水戸黄門スタイル」と呼んでおります。9月と3月に2度、在宅医療連携拠点の質の評価を行いました。このような拠点指導とアドバイスによって、左下に点線であるようなくもの巣図の評価が、半年で画期的に有意になり、ほとんどの項目で拠点の機能が向上したということは誠に予想外のことで、こんなに短期間に向上するとは実は我々も全く予想しておりませんでした。なかなかうまくいったと考えております。
中でも45ページにありますように、医師会の先生方は在宅医療への関心が低うございましたが、初期と終了期で見ますと、医師会で複数回、積極的に参加する先生方の意識の変容が図られて、実際に下に示していますように、看取りも増えているといったことが得られています。ここまでが4、5、6です。
○永井部会長
では、御質問をお願いいたします。いかがでしょうか。
○斎藤委員
今、大変すばらしい成果を挙げていらっしゃるのを伺いましたが、伺っていますと今年というか、昨年度の成果というか、今までの御努力がそのまま出ているような印象を受けたのです。昨年度の成果ということになると、どれなのでしょうか。それとも全部が昨年度と考えてよろしいのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
在宅は昨年度だけの成果です。End-of-Life Care Teamの本格稼働も昨年度です。在宅医療の支援病棟というのは、ずっと継続したもので確立したものです。41ページの精神科単科病院からの退院支援で、精神科病院への転院が半減したのも昨年度のデータです。認知症医療介護推進会議を新しく開催したのも昨年度が第1回目です。
○福井委員
全てすばらしい発表ばかりのようですが、スタッフが494名で、病床が321床ですね。プリンシパルインベスティゲーターを中心とするリサーチチームは、どれぐらいあるのでしょうか。簡単に分かれば。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
病院のほうだけでよろしいですか。
○福井委員
病院と研究所とを合わせますと、どれぐらいですか。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
研究課題が50項目ありますので。
○福井委員
1つのチームが複数を扱うということでしょうか。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
原則として1つです。ただ主任にはなれませんが、共同研究者という形でなっていることもあります。
○祖父江委員
特に今の研究のアクティビティーとか、いろいろなミッションの拡大政策を、どんどん採っておられますよね。そうすると、人件費を総枠として抑えなければいけないとか、運営費交付金が抑えられるということがありますよね。医療費などで大きく黒になっている部分をどう使うかという問題が、恐らく後で出てくると思うのです。病院のスタッフをそういうもので雇うというのは、循環するからまだいいかもしれないのですけれども、研究者を人として増やすというのは、どういうようにお考えになってやっておられるのですか。つまり、どんどんミッションを増やしていくことになると、そういうところをどうやって増やしていったらいいかというところです。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
詳しくは所長のほうからですけれども、最初に来た頃は400数十名だったものが、今は非常勤を合わせて800名弱になっており、いわゆる非常勤研究員あるいはラボランチンといったものは、相当の数が増えていると考えております。
○国立長寿医療研究センター理事長
今の御指摘は、本当に頭の痛いところです。現在までにやっていることは今病院長が話したことと、スクラップアンドビルトを相当厳しくやっています。したがって、組織もどんどん改変しているというのが今の実態です。
○国立長寿医療研究センター理事(鈴木)
今、総長からも御説明したように、確かにスクラップアンドビルドは相当厳しくやっております。それから、先ほど永井部会長からも御指摘がございましたけれども、論文生産数の悪いもの、プロダクティビティーの悪いものは、はっきり言って御退場いただきます。本人も呼んで、ある一定のライン以下のものは申し訳ございませんけれども、お引取りくださいというところまで、正直言ってやっております。そのぐらいやらないと。こういう小さな組織ですので、一人一人の生産件数を高くしていくということを最大のミッションと考えております。
○祖父江委員
スクラップアンドビルドで、非常に重要な所にどんどん集中させるというのは、そのとおりだと思うのですけれども、それにしても全体のがたいが小さいですよね。ほかのナショナルセンターと比べても非常に小さいのです。病院のほうはともかく、研究のほうは非常に苦労されているのではないかと思ったのです。
○国立長寿医療研究センター理事(鈴木)
研究について、私どものミッションは何かというと、特にこれからは後期高齢者の健康を維持するための方策を国に提言し、そのエビデンスを作るということを最大の目標にしております。例えば認知症と筋骨格系のサルコペニアとか骨折とか、先ほど病院側から整形の資料が紹介されましたけれども、そういう所に特化しております。特化した上で毎年毎年、「これはすばらしい」と言われるような成果を出し続けるしかないと考えています。
○永井部会長
よろしいでしょうか。それでは、時間の関係で先へ進ませていただきます。第3グループ、人材育成に関する事項、医療の均てん化、情報収集・発信、国への政策提言、その他医療政策推進といった項目について、7~9までお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
7、8については鳥羽から、9については鈴木所長から説明させていただきます。評価項目7、人材育成に関する事項です。46ページを開けてください。リーダーとして活躍できる人材の育成として、学生向けの老年医学サマーセミナー、高齢者医療・在宅医療高度総合看護研修、若手研究者の研究発表会、サルコペニアと栄養の研修会というのを挙げております。モデル研修では高齢者・在宅医療・看護のモデル研修、認知症家族教師育成、在宅緩和ケア、薬剤師対象褥瘡臨床研修、口腔ケア研修などを実施しております。
47ページに「高齢者医療・在宅医療高度総合看護研修課程第2期」というのがあります。一昨年に第1期を開始して、そのときは残念ながら3名しか参加がございませんでした。2年目はカリキュラムを分割するなどして、実質95人、延べ135名の参加を得ることができて、急速に参加の増加が得られました。今年も100人を超える参加があり、このような高齢者医療・在宅医療高度総合看護研修課程の評判がいいということです。ちなみに高齢者医療、老年学の専門看護師というのは、現在はまだ50~60名しかおりません。認知症看護師も500名を切った段階で、この教育を広めるのは非常に喫緊の課題だと考えております。
48ページが医療の均てん化と情報の収集・発信の事項です。ここでは特に49ページの認知症サポート医養成のお話をしたいと思います。今年で8年目になりますが、2,680名の認知症のサポート医を、2日間の座学の伝達講習で毎年やっております。50ページを開けてください。このサポート医の能力といったものに、長らく大きな疑問が投げかけられておりましたので、昨年度、サポート医の第三者評価をやっていただきました。昨年度はかかりつけ医対応力向上研修修了医、このくもの巣図の青を評価していただきました。昨年度は新しく、サポート医の能力も評価していただき、このような図が完成いたしました。
このように外来の対応機能、鑑別診断機能、在宅医療、かかりつけ医、地域連携機能のいずれをもっても、有意にサポート医の先生の能力が高いことと、同時に返答のあった1,000人のサポート医の日常活動を分析しますと、下の棒グラフにありますように、90%以上が診療しておられるのは当然として、連携も8割を超え、教育研修も日頃6割やっています。すなわち、予想を超えるサポート医の活動実態が明らかになり、サポート医をより素早く養成するように要請されたところです。日本地図に赤くありますように、充足している所と足りない所があります。
51ページは昨年同様、認知症の家族教室についてです。左下にありますように、御家族の介護負担の軽減効果があります。これらは厚生労働省から認められ、このモデルのより簡易なものとして、認知症カフェといった政策が全国で展開されることになりました。
52ページを開けてください。認知症疾患医療センターの質の調査といったものが、今までなされませんでした。長期入院がどのくらいかというのを示したのが52ページです。一般病院においては72%が2か月以内に退院しますが、精神科主体の認知症疾患医療センターは31%で、大きな課題があることが分かります。しかしながら、53ページにありますように、平成17年当時の老人性認知症疾患センターと比較しますと、平成17年当時は5項目10点満点で、ブルーの0点をピークとする惨たんたる結果でした。これが平成24年には8点を最頻値として、相当いい所が出ています。もちろん2点以下の低い所もございますので、引き続きその地域に即した認知症疾患医療センターの質の評価をしていかなければなりません。しかし、このような第三者評価を行うナショセンとしての評価は、非常に高く評価されているところです。
54ページですが、初めて全国の胃瘻の導入の推計をいたしました。下にございますように、年間の胃瘻の導入が17~20万件、75%が認知症です。経口摂取に1割しか戻れず、胃瘻増設の主原因は誤嚥性肺炎で、在宅での人工栄養はほとんどが胃瘻です。高齢者救急病棟での疾患の内訳も同時に調査しておりますが、25%が誤嚥性肺炎で、このような救急病棟の入院患者の認知症の合併が全体の7割もあるということで、今後、この疫学調査をどのようにいかしていったらいいかが、大きな課題になっているということです。後は鈴木先生からお願いします。
○国立長寿医療研究センター理事(鈴木)
評価項目9、国への政策提言あるいは医療政策の推進等に関する事項について申し上げます。昨年度の実績としては国への政策提言、公衆衛生上の重大な危害への対応、国際貢献とあります。56ページを開けていただきたいと思います。これは国への政策提言、あるいは今後の高齢社会を見据えて、「国民への提言」と言ってもよろしいかと思います。「ASIAN AGING SUMMIT 2012」を開催しております。これは3日間にわたり東京の日経ホールで、私どもが総力を挙げて開催させていただきました。韓国、台湾、中国等から、実際に政策に携わっている方々をお招きしたほか、全部で5つのシンポジウム、2つのセッション、3つのワークショップを開きました。
56ページの右側にありますように、最後のシンポジウムでは2030年へのロードマップ、産官学政の役割ということで、様々な領域からオピニオンリーダーとして御活躍されている方々をお招きして、今後の日本の高齢社会の在り方、あるいはあるべき姿というものについて、非常に大きな取組をいたしました。現在、これは日経BPなどのWebからも情報発信をしており、特に約1,000名を超える企業などから、こういったアカデミアの発信に対して御参加いただいたということで、私どもも想定を超えてうまくいったのかなと考えております。
57ページです。私どもが与えられている長寿医療研究開発費の中で、これまで主任は全て当センターの研究者でしたけれども、今回のこの研発費に関しては、日本老年医学会の会長に主任研究員をお願いして、私どもセンターと日本老年医学会、そのほかに様々な多数の学会が総力を挙げて、高齢者の標準値、検査値の基準値、それから高齢者におけるイベントに対するリスクを持つ基準値の設定を、我が国で初めて着手し、現在その集大成を行っているところです。
58ページについては、海外との継続的な学術交流ということで挙げております。これも年々活発にやっております。昨年もInternational Symposium on Geriatrics and Gerontologyということで、サルコペニアとディメンシアに関する国際会議を開いております。以上が政策提言、あるいは国の医療に対する提言ということで御報告させていただきました。
○永井部会長
ありがとうございました。それでは、御質問をお願いいたします。
○藤井委員
AGING SUMMIT 2012というのは、「企業の」というようにちょっとおっしゃっていましたけれども、評価シートを拝見しても参加者がどのぐらいの規模だったのかとか、参加者の層とか、そういった細かなところが書いていないので、そこを教えていただきたいということと、省庁のこういったサミット的なところで、サミットの成果をどうやっていくか。論文化していらっしゃるところもあるのですけれども、そういうことは特になかったのかといったところを教えてください。
○国立長寿医療研究センター理事(鈴木)
今日はお手元に配布しておりませんけれども、ASIAN AGING SUMMIT 2012に対しては、非常に立派な冊子ができております。そこに全てのシンポジストや参加者が一覧となっております。全部で50人を超えるシンポジスト等が含まれております。私どものようなアカデミアの立場の者がやると、大抵研究者が多いのですけれども、むしろ研究者と言うよりは企業です。最低でも20社を超える企業からのシンポジストです。それもかなり大きな、日本で言うと野村ホールディングスとかアベンティスファーマとか、様々な領域からの企業が入っております。これらは論文化するものとは、ちょっと性質が違うのかなと思っております。こういった情報発信については、できるだけ私どものホームページ、センターのホームページとか、日経BPが共同で入って、多少事務局機能をやってもらったという経緯もありますので、そこからのWeb発信等で、日本の今後の在り方ということで情報発信しているところです。非常にきちんとした冊子はできております。
○福井委員
胃瘻のデータなどもありましたが、医療倫理の研究グループとか、ジェロントロジーというか、社会学とのボーダーの領域を扱う研究グループはあるのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター理事(鈴木)
老年学・社会科学研究センターの1つに、老年学社会科学研究部というのがございます。そこで現在扱っているのは、患者が医師から言われたことに関するリテラシーです。要するに、本当に理解できているかどうかです。いろいろな説明と同意を受けたときに、患者が判断しなければならないのですが、その判断の根拠となるところで、本当に十分な理解ができているかどうか、そういった医療を提供する側と受ける側のディスクレパンシーをできるだけ狭めるといった研究は、現在オンゴーイングで行っております。ただ倫理について、特に私どもの研究所レベルではなかなか難しいです。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
End-of-Lifeでの事前指示書とか、私の死ぬときの希望といった終末期のものに関しては、病院と研究者のほうで倫理的な研究をさせていただいているところです。
○祖父江委員
今のところで、拠点の質が非常に上がったというお話をいただいたのですが、いろいろな施策を均てん化して、全国に広げますよね。そのときに、例えば認知症なら認知症がどう変化したのかという情報は、どうやって評価するのですか。つまり、認知症に限ってもいいですけれども、国全体として何らかのインターベンションをやったことによって、国の認知症の形がどう変化してくるのかというその評価の仕方はございますか。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
今、2つ進行しています。1つは認知症の人と家族の会の人で、医療を受けたときに困ったこと、嫌なことなどについての数十項目の調査が終わりました。うちの認知症疾患医療センターでも、それと全く同じ項目を現在調査しているところです。更に、本当は嫌なことや認知症に関して教育が行き届いていないために受けることについての調査を、総合病院やほかの病院でも、医師や看護師にしたいのですけれども、正直に答えてくれるかどうかも含めて、調査の方法自体、どうしたらいいか非常に悩んでいるところです。今のところ、できるのは当病院とその地域でできることから開始しています。
○花井委員
非常に重要な分野を研究されているので、本当に大変だと思います。大府でのモデルが割と功を奏しているとは言いつつも、今後どんどん高齢化していくと、看取り率がまだこの程度では追い着かなくなる可能性があります。どんどん逆戻りすれば、救急車の行く場所がないという可能性が、多分2025年ぐらいには起こってくるのでしょう。それに対しては均てん化で、在宅支援病院等々が更に在宅看取りや認知症の問題をケアできるような形になっていなければいけないのです。均てん化については現在、いろいろ取り組んで一応在宅拠点などでやって、医師会のほうも大分良くなってきたというのですけれども、これが例えば在宅支援病院とか診療所別の参加状況は、どういう感じになっているのですか。在宅拠点だけでやっているということですか。その辺の均てん化が進まないと、多分全国規模ではなかなか進んでいかないと思うのです。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
全くおっしゃるとおりです。在宅療養支援診療所はたくさんありますけれども、熱心な所は500くらいで、重点化されたところです。それだけではとてもカバーできないということで、診療をする医師会の方、中小病院や一般病院にバックアップベッドに加わってもらって、全体としてこのシステムの安定化を図ることが、大きな流れとして動いておりますので、これからは本当に先導した拠点だけではなく、この拠点が面展開をして、その地域の医師会、中小病院、総合病院に急速に広がっていくのが、今年拠点が200以上に増えて各都道府県に予算が下りて、予算も増えたゆえんだと思っております。ただ、それが本当にこのようなスピードでしっかりと進展していくかどうかは、ナショナルセンターとして長寿が引き続き機能評価をして、課題を抽出して指導していきたいと考えております。
○国立長寿医療研究センター理事長
全く御指摘のとおりです。恐らく、これは総力戦でいくしかないと思いますし、これからの政策展開の中で医療関係者、特に医師の行動変容がどういうように動いていくかということが死命を制するでしょう。そういう意味では日本医師会が本気になってこの問題に取り組み始めたというのは、非常に大きなことだと評価しています。
○花井委員
確かにナショセンだけの努力で病院参加を増やすのは大変だと思いますけれども、できれば中期計画の後半に向けて、ある程度年度ごとに少しずつ、目標を立ててやっていただけたらと思います。
○国立長寿医療研究センター企画戦略室長
ちょっと補足いたします。平成23年度、24年度在宅医療拠点については、病院や診療所を拠点として、その周りに点で在宅医療を広げていくという形で推進されてきました。この問題については拠点事業の成果を経て、私たちは厚生労働省医政局とずっとやっておりますけれども、これを面の事業に展開しようということで、各都道府県にある医療基金を使って、これからは市町村が面に広げていくという形で、平成25年度からは事業が展開することになっております。
平成24年度は106の在宅拠点でしたけれども、その何倍かの市町村が事業に手を挙げると言われておりますので、今後NCとしての私たちの仕事は、この拠点事業の成果を市町村の事業にどういうように伝えていくかというのが、大きなテーマだと思っています。それに向けた取組を今年度以降も進めていきたいと考えております。この問題だけではありませんが、政策として点から面へという形で大きく広がっている事業で、総長からも申し上げたように、それに医師会の行動変容も加わって大きな波、2025年をどのように生きるかということにつなげていければと考えております。
○祖父江委員
今の観点で1つ。在宅オレンジプランも含めてやっておられると思うのですが、平成29年ですよね。先ほど平成30年以後のプランをどうするかというお話があったのですけれども、今の話は、在宅をずっとやっていって、その次に来るものが何かという議論だったと思うのです。それはどうですか。今はまだ在宅医療を進めていくということですよね。平成29年まではオレンジプランでやっていくと。そうすると今のお話と同じように、その先に見えるものが政策提言としてどうお考えかというのが、もしあればお願いします。
○国立長寿医療研究センター理事長
在宅医療の先は何か。具体的な医療の提供の在り方の方向としては在宅、要するに病院中心から地域全体でどうカバーしていくかという方向性で、機能分化せざるを得ないだろうということです。それと、専門分化したものをどう総合化していくか、このバランスをどう取っていくかというのが、当面の大きな課題です。2025年までにその状況をきちんと構築しないと、恐らく大変なことが起こるだろうと予測しています。その間において、高齢者医療の在り方とは一体何かということを定着するだけの根拠を、きちんと示していく必要があるというのが我々の考えているところです。言葉を換えて言えば、専門医療は進むしかありませんから、高齢者医療の体系化をきちんとさせながら、どんどん進んでいく専門医療との連携の在り方をどうやって構築していくかです。そこに次のステップの姿が見えてくるのだろうと思っています。
○永井部会長
よろしいでしょうか。それでは最後に、第4グループの項目10~14で、効率的業務運営、法令遵守等内部統制、予算・収支計画・資金計画と、その他主務省令で定める業務運営に関する事項。以上5項目についてよろしくお願いします。
○国立長寿医療研究センター企画戦略室長
企画戦略室長の吉野です。項目が多いので、コンパクトに御説明申し上げます。まず、資料59ページの評価項目10です。効率的な業務運営体制で、必要な組識の見直しをきちんと行えているかということです。
平成24年度においては、研究、診療部門の強化として、先ほども話があった老年学・社会科学研究センターを設置しています。医学分野のナショナルセンターですが、私たちの領域を考えれば、どうしても社会老年学的なアプローチが必要であるということで、センターレベルの組織見直しをしたところです。
また、1つのこれからの大きなテーマである、ロコモティブシンドロームに対応する運動器外来を設置したところです。下になりますが、総人件費改革の取組です。先ほどからも御指摘いただいていますが、総人件費について厳しい規制がある中で、事務・技能職員については、着実に減っています。研究部門もそうですが、特に事務部門です。間接部門について、なかなか人が増やせないので、例えば企業との連携や研究費の管理、いろいろな研修をしようとしても、研修の運営あるいは情報の発信、こういった間接部門をいかに想定外の成果を上げられるような体制を築いていくかが、1つの課題になっています。ただ、全体としては組織の見直し等は着実に期待以上に進めているといった状況です。
評価項目11です。先に64ページです。私どものセンターの財務状況です。上段に医業収支があります。平成22年度に独法化したときには、医業収支はここには書いていないが、△の257、△2億5,700万という状況でした。平成23年度に大きく改善をして、収支差はそこにあるプラス3億7,600万円です。5億円あまりの改善をしたわけですが、更に平成24年度においては、収支差はプラス6億4,400万ということで改善をしています。収益増に当たりましては、右の所の入院患者、外来患者とも大きく増加をしたというのが最大の理由です。
もちろん、例えばプロセスとしては、回復期リハビリテーション病棟が看護師等の人材も得て開くことができたといったことで理由があるわけですが、そのための費用等ももちろんかかるわけですが、それを差し引いても大きな想定以上の収支差額が積み上がったということです。
医業外の収支については、研究収益の増やそれに伴う費用あるいは減価償却の増の差し引きで、収支差はやや開いているが、それを合計して全体としての収支差が出ています。これも資料にはないですが、平成22年度1年目は、△2億900万円でしたが、昨年度では、2億9,200万円のプラスを出し、今年度も同様に5億1,600万円の収支差が出たということで、黒字になった昨年度に比べても、約2億円の改善をしているといった状況です。そういったことを踏まえて、61ページにお戻りをいただければと思います。
平成24年度実績ですが、経常収支率は106%で、平成23年度は103.6でしたので、更に向上をしています。当期の未処分利益で、5億1,600万。これまでの累計で、5億9,800万円の利益剰余金を計上をしています。数値目標は、中期計画期間においてプラスということです。あと2年間気を引き締めてやらなければいけないと思います。様々な課題もありますので、どのような事業計画を立てればいいのか、残り少ない期間ではありますが、考えていく必要はあるかと思います。
一般管理費ですが、2億9,000万で平成21年度比36%の削減になっています。平成21年度比15%以上の削減が目標ですので、少し減りすぎてはいないかというのが逆に心配です。未収金比率は、0.07%ということで、医業収益は増えていますか、同じ率をキープしていまして数値目標を達成しているが、他の機関に比べれば、甘い数字であるということもありますので、もう一度気を引き締めて減らしていきたいと考えています。
次のページです。細かくは御報告しませんが、収入増の対策として、主として保険に関する上位基準の取得をするといった取組を行うとともに、診療科長会議等を通じて意識啓発を行っているといったことです。
63ページは財務状況があります。今の繰り返しになりますが、私どもの運営交付金は、全体の中の約36%を占めていて、今後この動向は特に研究や間接部門にとって大きな意味合いを持ってきているということで、他のNCと同じです。
65ページです。収支改善について、何を指摘したかといったところの具体例が書いてあります。お目通しいただければと思います。電気の契約の見直しとか、いろいろやってきているところです。
飛びまして67ページですが、内部統制関係です。平成24年度の新しいこと等を申し上げれば、内部統制部門の監査室の活動で、3つ目の・ですが、国病機構と一緒になりまして、内部監査を新たに実施したと。協力を頂いて実施したというのがあります。
次に69ぺージです。予算関係です。外部資金の獲得については、研究費の収益化は出来高払いという形でやっていまして、着実に研究が進んだということで、前年度に比べて5割近い増加をしています。また、企業・個人からの寄附金についても、若干の額ではありますが増加をしています。
負債ですが、新たな借入れは行っていませんので、長期借入金を償還して残高は減らしています。財産処分等は特にありません。剰余金については、先ほど御説明のとおり、5億円余をとりあえず計上していますが、中期計画の終了に向けて検討していく必要があるかと思っています。
71ページです。その他主務省令で定める業務運営に関する事項です。これも平成24年度に特徴的なことを申し上げますと、魅力的な職場環境の整備、院内保育所はどこもあるかと思いますが、私どもでは初めてとなりますが、夜間保育を実施をしています。まだ、週1回ということで、やや実験的なところもありますが、看護師さんをはじめ、勤務体制に対応できるようにということで、昨年8月から夜間保育を新設して、今年度から徐々に対応も慣れてきたので増やしていったという状況です。
医療職の離職防止対策として、夜間専門、外来専門など様々な形の勤務体系を設けて離職防止に心懸けているところです。
次の72ページです。ミッションの浸透等については、特段いつものように頑張っているところですが、NCGG活性化チームという活動が、1つの特色ではないかと思います。事務だけではなく、ドクター、看護師さんをはじめ、多職種からなる若手職員で構成して、様々な課題について自主的な取組をしています。今年度からは、もっとチームをたくさんに分けて、品質管理やそういった面についても新たに検討していこうということで活動が盛んになってきているといった状況です。
最後に75ページです。冒頭、総長の御挨拶の中でしたが、大変病棟の古さが目立っているということで、なかなかアメニティとしての患者満足度も低いとのことで、新病院の構想を今、進めているところです。こういった内部プロセスを経て、建築に向かって進んでいるという状況です。私からの説明は以上です。
○永井部会長
ありがとうございます。それでは御質問をお願いいたします。
○藤川委員
財務面で伺いたいのですが、初年度は厳しいものがあったが、2年目、3年目は順調ということで、気を抜いてはいけないとはおっしゃっておられましたが、あと2年間頑張ってやられれば中期計画に関しては、100%を達成も夢ではないという感触を得ています。
ただ、それは最後にもあるように、新病院構想というか、設備が古いということによる償却費負担などの軽さなど、そういったところもあるのかと思いまして、他のセンターが厳しいとおっしゃっているのは、新しく建てたものの償却負担が大きいなど、そういったところが非常に差があるわけで、その辺りを含めた構想についてもう少し教えていただけたらと思います。
○国立長寿医療研究センター企画戦略室長
当然こういった病院の施設ですから、建設を行うときには、若干の補助金も大変当てにしていますが、相当の補助金を当てにしていますが、主とした部分は借入金の償還という形でやっていく必要があると思います。
ここ数年間の決算については、私どもとして、支払いの余力があると、能力があると証明しているということかとは思いますが、医療機器については当然、更新等は掛けていますが、もちろん御指摘のように新しく病院がなれば、新しく購入するというのも増えると思いますので、より償還能力を確実なものにするために、もっと病院内の運営の効率化など、収入を上げるための各医療機関への浸透など、そういったことについては、これからも努力をしていかなければいけないと思っています。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
新病院に当たって、現在の患者数ベースで試算して、十分償還できるということですが、毎年50人ずつ外来患者数も増えていて、現在多い日は座る椅子もないような状態です。生理検査を医師はやりたいのですが、機械を置く場所がないなど、そういう状態ですので、新しい病院で一定のスペースができたとたんに、より健全な病院経営といったものも強化できると今考えています。
○永井部会長
病院の将来計画というのは考えているのですか。何年後にどのように建て替えていくと。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
これが先ほどの病院の将来計画に、一応3年、4年後を目処に新病院といったものを建てようと考えています。
○永井部会長
それは完全に新しいものなのか、少しずつ建てていくのか。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
全部新しく。
○永井部会長
全部全く。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
敷地があるものですから、主に認知症や虚弱などのセンターのミッションに即したものを重点的に配置した新病院というものを皆で構想しているところです。
○国立長寿医療研究センター理事長
高齢者医療が対象ですから、急性期医療と違って単価は上がらないのです。外来も入院も上がらないものですから、患者数を増やすしかないのです。N数を増やすことにより、収入を上げるという道しかないのですが、それは今着実に進んでいるということです。
○福井委員
先ほどの64ページで、入院延べ患者数が増えたというのは分かりましたが、病床稼働率と1日の外来患者数はどれくらいでしょうか。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
外来患者数は、現在600弱まで、最初に来たときが400くらいだったのが大分増えてきました。稼働率は、入院日数が25日だったのが、今16日台に下がってきているもので平均在院日数が。稼働率は逆に落ちています。85%ぐらい。
○内山部会長代理
患者数も増えていて皆さんのすばらしい御努力の結果だと思います。ささいなことですが、65ページの診療収益の増加の中で、特別室の利用率改善とありますが、資料を拝見すると率はほとんど変わらなくて、逆に若干下がっています。これは室料を上げたということでしょうか。2,300万ほど増収があるようですけれども。
○国立長寿医療研究センター企画戦略室長
室料を上げたにもかかわらず、あまり減らなかったというそれくらい。
○内山部会長代理
室料を具体的にどのぐらい上げたのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
よろしいでしょうか、非常に安い単価でして、最高のところが以前は1万円を切るような広い個室で、それを8,000円を1万2,000円くらいに上げたというところです。
○内山部会長代理
新しい病院になると大幅な増加が見込まれるかもしれないですね。
○国立長寿医療研究センター理事(鳥羽)
いえ、その辺の相場からいって、それ以上なかなか上げられないところがあります。
○内山部会長代理
あと、収入が上がったのに未収金が0.07で維持しているのはすばらしいと自画自賛されていましたが、他のナショナルセンターに比べると、率は一番高いようです。これからも努力されるということなのですが、是非、他のナショナルセンター並みに頑張っていただきたいと思います。やはりこれは高齢者医療に関係しているのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター企画戦略室長
自画自賛したというよりは更に下げなければいけないと申し上げたつもりなのですが、そこの特性による原因、あるいは発生原因の分析も含めて、多少甘い感じが、甘いというのは、取組意識として、あるいは十分でない部分もあるかもしれませんが、そこの分析から始めていきたいと思います。
○永井部会長
よろしいでしょうか、ありがとうございます。
○斎藤委員
すみません、是非発言をしたかったのですが、いつどこで申し上げたらいいか分からなかったので最後に申し上げたいと思います。今日、一番感動的なコメントを総長から伺いました。最初は、努力する人はばかを見るという雰囲気だったが、今は努力をすると報いがあるという風に変わったと。カルチャーを変えるというのはすばらしいことで感動しました。それは、昨年度の実績として評価できるのかどうかというのは委員に与えられた課題として難しいのですが、是非カルチャーを変えたリーダーシップに対して敬意を表したいと思い、お時間頂いてコメントしました。
○永井部会長
よろしいでしょうか、それではどうもありがとうございました。以上で全ての評価は終了です。事務局から今後の取扱い等、連絡事項についてお願いいたします。
○政策評価官室長補佐
事務局からですが、本日お配りしている資料の郵送を希望される場合は、事務局までお申し付けください。評定記入用紙をお持ち帰りになって評価いただく場合については、本日評定記入用紙の電子媒体もメールでお送りしますので、8月15日木曜日までに事務局に提出をお願いします。
続きまして、次回の開催予定ですが、次回は8月22日木曜日13時から、場所は本日と同じ厚生労働省専用第12会議室になります。議題は、国立生育医療研究センター、国立循環器病研究センター、国立がん研究センターの総合評価になります。以上です。
○永井部会長
それでは、どうも今日は長時間ありがとうございました。
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