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2013年9月3日 食品製造におけるHACCPによる工程管理の普及のための検討会

医薬食品局食品安全部監視安全課

○日時

平成25年9月3日(火)13:00~15:00


○場所

全国町村会館2階ホールB


○議事

 

 

事務局  定刻になりましたので、「食品製造におけるHACCPによる工程管理の普及のための検討会」を開会いたします。

座長が選出されるまでの間、進行を務めさせていただきます食品安全部監視安全課の梅田でございます。よろしくお願いいたします。

まず、開催要領に基づきまして、開催の趣旨について御説明させていただきます。お配りしております資料の中に参考資料1がございます。そちらをご覧ください。

「食品製造におけるHACCPによる工程管理の普及のための検討会開催要領」、1といたしまして、その趣旨が書いてございます。食品製造における工程管理につきましては、これまで、食品の国際基準の策定等を行っておりますFAOWHO合同の食品規格委員会であるコーデックスにおいてガイドラインが示されておりますHACCPによる衛生管理を普及推進してまいりましたが、現状、海外においては、欧米をはじめ多くの国でHACCPによる衛生管理の普及が進展しているという状況があり、そういった海外の動向などを踏まえますと、国際的基準との整合化を図り、更なる食中毒の発生防止、食品衛生法違反食品の製造等の防止を図る必要があると考えております。

また、「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)におきまして、食品の大幅な輸出促進が求められる中、海外から求められる安全基準といたしましてHACCPが求められています。これに対応するためHACCPの普及が不可欠となっております。

こうした状況を踏まえまして、食品製造における衛生管理につきまして、HACCPによる工程管理を普及推進するための食品衛生上の施策等について検討いただくことを目的といたしまして、「食品製造におけるHACCPによる工程管理の普及のための検討会」を開催することとしたところでございます。

2番目、検討事項といたしまして、HACCPによる工程管理を普及推進させるための食品衛生上の施策等について検討するということでございまして、(2)にその具体的な内容について検討をするということが書いてございます。

3番目は、検討会の運営ということで規定されてございます。

続きまして、委員の御紹介をさせていただきます。参考資料1、「3.検討会の運営」の(1)にございますように、検討会の構成員は別紙のとおりとするということでございまして、参考資料の裏側、別紙1に構成員メンバーが記載されてございます。今回は、HACCPによる工程管理を普及推進させるための食品衛生上の施策等について御検討いただくということで、HACCPに関する学識経験者、消費者、食品流通の立場から、あるいは、これまでHACCPの普及または指導等に取り組まれてきました事業者団体、自治体の立場から、幅広く委員としてお集まりいただいております。あいうえお順に御紹介させていただきます。

国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部長の五十君靜信委員でございます。

○五十君委員  五十君です。よろしくお願いします。

事務局  続きまして、宮城県産業技術総合センター副所長兼食品バイオ技術部長の池戸重信委員でございます。

○池戸委員  池戸です。よろしくお願いします。

事務局  続きまして、日本生活協同組合連合会品質保証本部執行役員本部長の内堀伸健委員でございます。

○内堀委員  内堀です。よろしくお願いいたします。

事務局  一般財団法人食品産業センター技術環境部部長の川崎一平委員でございます。

○川崎委員  川崎です。よろしくお願いします。

事務局  財団法人消費科学センター理事でいらっしゃいます工藤操委員でございます。

○工藤委員  工藤でございます。よろしくお願いします。

事務局  公益社団法人日本食品衛生協会専務理事の高谷委員でございます。

○高谷委員  高谷でございます。よろしくお願いします。

事務局  東京都保健福祉局健康安全部食品監視課長の田崎委員でございます。

○田崎委員  田崎でございます。よろしくお願いいたします。

事務局  続きまして、株式会社イトーヨーカ堂QC室総括マネジャーの山田祥男委員でございます。

○山田委員  山田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

事務局  続きまして、東海大学海洋学部水産学科教授の山本茂貴委員でございます。

○山本委員  山本です。よろしくお願いいたします。

事務局  なお、本日は、オブザーバーといたしまして、農林水産省から食料産業局企画課食品企業行動室の横田室長に御出席いただいております。

○横田食料産業局企画課食品企業行動室長  横田です。よろしくお願いいたします。

事務局  続きまして、事務局の御紹介をさせていただきます。

 まず、食品安全部長の新村でございます。

○新村食品安全部長  よろしくお願いいたします。

事務局  続きまして、企画情報課長の國分でございます。

○國分企画情報課長  國分でございます。よろしくお願いいたします。

事務局  続きまして、監視安全課長の滝本でございます。

○滝本監視安全課長  滝本です。よろしくお願いいたします。

事務局  同じく監視安全課長補佐の鶴身でございます。

○鶴身監視安全課長補佐  鶴身です。よろしくお願いします。

事務局  続きまして、開会に当たりまして、新村食品安全部長から御挨拶を申し上げます。

○新村食品安全部長  それでは、御挨拶を申し上げます。

本日はお忙しい中、食品製造におけるHACCPによる工程管理の普及のための検討会にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また、日ごろより食品衛生行政に格別のお力添えを賜っておりますことを、この場をおかりしまして厚く御礼申し上げます。

さて、HACCPによる食品の衛生管理につきましては、1993年に、コーデックスにおいて、HACCPシステム及びその適用のためのガイドラインが初めて示され、これを受けて、我が国においては1995年に食品衛生法を改正し、総合衛生管理製造過程承認制度を導入いたしました。また、1998年には厚生労働省と農林水産省の共管法としてHACCP支援法が公布され、HACCPを導入する食品関係事業者への財政的な支援を行っております。本年6月にはHACCP支援法を改正し、HACCPの導入に必要な施設整備に加え、その前段階の衛生管理の基盤となる施設及び体制の整備も支援の対象とし、HACCPまで一気に取り組むことが難しい中小の事業者が、経営実態に応じて取り組みを進められるよう10年間の延長を行ったところです。

一方で国際的には、コーデックスにおきまして、2003年には、小規模や発展途上の企業におけるHACCPの導入を推進するため、HACCP適用に関して柔軟性をもって考えることが重要であることなどがガイドラインに明記されております。HACCPに基づく衛生管理は国際的な標準になっており、諸外国においてもHACCPの導入が広がっております。

また、我が国の再興戦略の一環として、農林水産物や食品の輸出促進がこの6月に閣議決定されておりまして、この中でも、国際的な標準でもあるHACCPによる衛生管理が重要な課題となっています。

近年、総合衛生管理製造過程承認やHACCP支援法などにおいて、施設数の増加が伸び悩んでいるという状況にあります。こういった中、国際的な食品の流通を考えれば、我が国においてもさらなる普及策を講じる必要があると考えております。

委員の皆様方におかれましては、それぞれの御専門の立場から、是非、忌憚のない御意見を賜りますようお願い申し上げます。

簡単でございますけれども、検討会開催に当たりまして、御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

事務局  続きまして、座長の選出をお願いいたします。

先ほどご覧いただいた参考資料1の開催要領、3の「検討会の運営」の規定に従い、座長は検討会構成員の互選により決めたいと存じます。

どなたか、御推薦はございませんでしょうか。

田崎委員、どうぞ。

○田崎委員 HACCPに関して長い経験と実績をお持ちで、更に深い見識をお持ちの山本委員を推薦させていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

事務局  山本委員という御推薦をいただきましたけれども、ほかにございませんでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

事務局  ほかにないようですので、山本委員に座長をお願いしたいと思います。

 それでは、山本先生、座長席へ移動をお願いします。

○山本座長  ただいま、座長の御指名を受けました東海大学の山本です。微力ではございますが、この会議を取りまとめていきたいと思いますので、皆様方の御審議、よろしくお願いいたします。

 それでは、早速、議事に入りたいと思います。

 まず初めに、事務局から、配付資料の確認をお願いいたします。

事務局  それでは、配付資料の確認をさせていただきます。

 お手元にお配りした資料といたしまして、「食品製造におけるHACCPによる工程管理の普及のための検討会」という資料が1点。参考資料が1~7までございます。

 参考資料1は、「食品製造におけるHACCPによる工程管理の普及のための検討会開催要領」でございます。

 参考資料2は、「コーデックスガイドライン、食品衛生の一般原則」でございます。

 参考資料3は、「総合衛生管理製造過程の承認制度に関する規定及び実施要領」になってございます。

 参考資料4は、「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」です。

 参考資料5は、「食品製造業におけるHACCPの導入状況について(農林水産省調べ)」になってございます。

 参考資料6は、「海外のHACCPの取組みについて」でございます。

 参考資料7は、「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法(HACCP支援法)の改正について」の資料になってございます。

 資料の不足等はございませんでしょうか。

○山本座長  よろしいでしょうか。

 それでは、資料について、事務局より説明をお願いいたします。

事務局  それでは、お手元の資料、パワーポイントのものになりますけれども、横長の資料に基づいて説明をさせていただきます。

 おめくりいただいて、まず、「HACCPとは」ということでHACCPの説明を記載しております。皆さん御承知のところではございますが、改めて御説明をさせていただきます。

 原材料の受入れから最終製品までの各工程ごとに、微生物、化学物質、異物など、潜在的な危害を予測、分析するということがまず挙げられます。その上で、危害の発生防止につながる特に重要な工程、重要管理点(CCP)を、継続的に監視・測定または記録をするという工程管理のシステムでございます。

 これまでの抜取検査と比べて、より効果的に問題のある製品の出荷を未然に防ぐことが可能となるとともに、原因の究明、問題があったときの遡及調査等が容易になることが挙げられております。簡単に言いますと、従来の最終製品での検査による管理ではなく、また、経験や勘や記憶による管理ではなく、それぞれの工程ごとに危害を分析して、科学的な根拠に基づいて管理を行う。さらに、必要な記録等を行うことによって対外的な説明もより効果的になりますし、問題が発生したときの遡及もより容易になるというものでございます。

 一番下にあるように、FAO/WHOの合同食品規格委員会(コーデックス委員会)によって、HACCP適用のガイドラインが示されています。

 3ページにまいりまして、そのガイドラインについての御説明でございます。「HACCPHazard Analysis and Clitical Control Point)システムとその適用のためのガイドライン」という名称になっております。括弧内にありますとおり、1993年(平成5年)に採択されています。その後、97年、2003年に改訂されております。

 コーデックス委員会について簡単に申しますと、1963年に設立された政府間の機関でございまして、国際的な基準、ガイドラインを策定することが目的にされています。消費者の健康の保護、食品貿易の公正な実施を目的としております。四角の中に位置づけを記載しております。HACCP適用のためのガイドラインは、「食品衛生の一般原則」というガイドラインの添付書類として採択されております。もちろん、食品の安全性を向上させる手段として推奨されていおります。

 我が国の話になりますけれども、食品衛生の一般原則、本体部分は、管理運営基準のガイドラインとして各自治体に通知しておりまして、それに基づいて条例で基準にしていただいているという現状になっております。

 次のページにまいりまして、その具体的な内容になります。枠の中にありますように、「HACCPシステムの7原則とその手順」がガイドラインの中に盛り込まれています。HACCPチームの編成、冷蔵保管なのか、常温保管なのか、加熱しているものか、していないものなのかなどの製品の特徴、製品の使用方法、どのような方を対象としているのか、高齢者の方を対象としているのか、広く一般の方なのか。4にまいりまして、製造工程を作成する。5にまいりまして、実際の現場で見比べて、それが正しいものかどうかの確認をする。

 そこから原則になりまして、それぞれの工程で危害分析をして、重要だと考えられる管理点について重要管理点として決定をする。

 原則3は、管理基準、重要管理点は、との水準で逸脱と見るか、判断するかというような管理基準の設定。4は、それをモニタリングする方法の決定になります。5は、逸脱したときの取るべき措置、6は、HACCPシステム自体が有効に機能しているかどうかの確認をする方法、7は、文章化と記録の保管ということが明記されております。

 5ページにまいりまして、2003年のガイドラインの改訂について説明をしています。2003年の改訂で、小規模であるとか、発展途上の企業におけるHACCPの導入を推進するために、下の枠の中にあるような文章が盛り込まれています。

 1つ目のマルとして、7原則はやはり重要であるが、柔軟性をもって考えることが非常に重要であるということが明記されています。

 2つ目は、専門的な知識を有していないケースが多々あるということで、専門的な助言を外部の機関から得るべきであるという内容が盛り込まれています。

 6ページにまいりまして、我が国の制度になります。先ほど話がありましたように、総合衛生管理製造過程の承認制度というものを導入しております。これは、平成7年(1995年)にHACCPによる衛生管理を食品衛生法に位置づけたものでございます。食品衛生法第13条になります。

 2つ目、営業者の任意の申請に応じて、厚生労働大臣が施設ごと、食品ごとに承認をするという制度になっています。

 3つ目、この承認制度を得ることによって、食品衛生法で別に定める製造基準がございますが、その一律の製造基準によらず、工程の各段階において、安全性に配慮したそれ以外の方法でも食品を製造することが可能という制度になっています。例えば食肉製品であれば、63度・30分の加熱が必要という製造基準があるわけですが、この承認を得ることによって、必ずしもその方法によらなくてもいいというような制度になっております。

 対象食品としては、食品衛生法に基づき製造・加工基準が定められた食品であって、政令で定める食品というものです。当然、一律の製造基準によらない方法でも可能としておりますので、対象食品は、製造・加工基準が定められた食品のうちということになっておりますけれども、下に記載のとおり、順次追加してきたところでございます。

 諸外国の状況は、後ほど御説明しますが、これまでの欧米での導入の状況を見ると、概ね対応され、対象品目として含まれている状況でございます。先程のコーデックスのガイドラインの採択が93年(平成5年)でしたが、我が国では平成7年という比較的早い段階で導入をしたという状況です。

 7ページにまいりまして、残念なことに平成12年、承認施設において食中毒事件が発生しております。患者数が1万3,000人を超える過去に例を見ない食中毒ということで、現在でも1事件当たり最も多い患者数になっているものと思われます。施設での原因究明の段階で、この施設における衛生管理の不備な点が明らかになっております。

 これらを踏まえて、平成15年に制度の見直しを行っております。一つは、更新制度の導入。最初に承認を取るだけではなく、定期的に更新をする制度を導入しております。

 2つ目は、食品衛生管理者の免除。総合衛生管理製造過程を取れば管理者を免除していたということがございますけれども、それを削除した。食品衛生管理者をきちんと置いて責任を明確にする観点であろうと考えられます。

 3つ目として、総合衛生管理製造過程承認制度の実施要領を改正しております。これは15年より早い段階、平成12年の段階になりますけれども、施設設備の設計図の原本の写しであるとか、突発的事故への対応等を規定しております。この平成12年の事故を受けまして、総合衛生管理製造過程の承認審査をより厳しいものにしていったという背景がございます。先ほどのコーデックスのガイドラインで言うと、2003年に柔軟な対応というガイドラインの改正になっておりますけれども、我が国の総合衛生管理製造過程は、より厳しい方向に当時の背景として進んでいる状況にあります。

 8ページです。現在の承認状況と推移でございます。グラフの上2つ、青い線が乳製品、その次が乳、左から増えているところが清涼飲料水、食肉製品、容器包装詰加圧加熱殺菌食品、魚肉練り製品という状況でございます。清涼飲料水は導入が少し後になりましたので、若干増え気味なところもございますが、近年を見ると、横ばいか、やや減少しているという状況にございます。更新制度の導入で、更新をしなくなっている企業があるのが一つの原因ではないかと考えられます。

 9ページは、厚生労働省としてのHACCP推進のための施策でございます。厚生労働省では、技術的な支援を中心にしてきた経緯がございますけれども、厚生労働科学研究等における研究において、危害の原因となる物質やその管理方法等について行った研究成果をホームページ等で提供したり、HACCPの標準モデル(ジェネリックモデル)の策定をしてきております。

 教育訓練といたしましては、事業者に助言を行う自治体の職員への研修の実施、関係団体が実施する講習会への講師の派遣、こういうものを行ってきております。それから、実際に導入しようとされる企業さんがいらっしゃる際、HACCP導入前後での技術的な助言、導入後の指導・検証などを、地方厚生局もしくは自治体職員に行っていただくことをお願いしているところです。

 リスクコミュニケーションといたしまして、HACCPと直接関係するものではございませんけれども、消費者への普及という観点で、工場見学を含めてリスクコミュニケーションの一環として実施してきております。

 次のページにまいりまして、国内のその他の認証制度がございます。まず一つは、輸出食品の認証制度です。諸外国でHACCPを義務化している国に対しては、当然、我が国から輸出する際に相手国の基準に合っていることを求められます。例えばEU、アメリカ向けの水産食品、食肉などが挙げられますが、厚生労働省や都道府県において約130施設、また、業界団体においても認定がなされています。

 2番、都道府県等における取組みとして、都道府県においてHACCPの考え方に基づく認証制度も行われております。食品衛生法での自治体として保健所設置市までが単位に入りますので、全国140の自治体のうち90ということになっています。この中で主体的に行われているのが約38の自治体。残りは一緒に取り組んでいるということになっています。

 3番は、民間団体等による取組みとして、ISOなどの機関における認証の制度などがございます。

 次のページにまいりまして、食品製造業におけるHACCP導入の状況ということで、農林水産省で調べている調査です。23年度、中小規模層で導入率が27%という状況にございます。導入自体は、特にどこかで承認を得ているか、得ていないかにかかわらず、自社で導入をしていると回答のあった企業ということになります。

 それほど導入が進まなかった主な要因として、2つ挙げられています。一つは、景気低迷に続き事業者が設備投資を抑制していること。導入・維持・管理を行っていくための人材が不足しているということが、主な要因として考えられています。

 このアンケート調査の中で、あわせて、HACCPを導入してよかった点、課題ということも調査されています。効果としては、品質や安全性が向上した。2つ目として従業員の意識が向上した。会社のイメージ、信頼度がよくなった。4つ目として、輸出が可能になったということが効果として挙げられております。一方で課題としては、多額の資金が必要、運用コストがかかる、従業員研修の余裕がない、人材がいないというような課題も挙げられている状況でございます。

 次のページにまいりまして、海外の状況でございます。

 1番に、アメリカでございます。当初、HACCPが開発された、確立したという国でございますけれども、97年から、水産食品、食肉・食鳥肉、その加工品、ジュースについて、HACCPを義務づけをしている状況になります。2011年、食品安全強化法というものが成立しております。この中では、FDAへの施設の登録、危害分析に基づいた管理、記録の保存、そういったHACCPの概念に基づいた措置の計画や実行が義務づけられようとしています。現在、パブリックコメントの実施中だと聞いております。

EUのほうは2004年から、一次産品を除く全ての食品についてHACCPに基づく衛生管理が義務づけられております。その中でも、括弧書きにありますような水産食品や食肉関係等については、より詳細な要件が示されているという状況になっています。ただ、EUにおいては、中小企業や伝統的な食品については、より柔軟性をもって取り組むというようなことも示されております。

 次のページにまいりまして、カナダ、オーストラリアも早い段階で水産食品や食肉関係について義務づけが行われています。韓国でも一部の食品について義務づけが行われています。台湾も2003年から水産食品、食肉関係について、義務づけが行われているという状況でございます。

 次のページにまいりまして、日本再興戦略として6月に閣議決定され、農林水産物・食品の輸出額、1兆円を目指すということが決められております。輸出するに当たって海外の基準に対応するため、HACCPシステムの普及を図る必要があるということが明記されているところでございます。

15ページは、通称HACCP支援法と呼んでおりますけれども、食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法という法律が今年の6月に改正されています。もともと平成10年からスタートしていて、5年ごとの時限の法律になっておりまして、今年で3回目の改正というものです。内容は、HACCPを導入しようとする事業者に対して融資を行う制度です。中小企業の安全性の向上の取組みを後押しすることが一番の目的になっております。

 今年の改正において、下に挙げた3つの点が改正されています。

 1つは、高度化基盤整備も支援の対象にしています。HACCPだけではなく、一気にHACCPまで取り組むということではなく、その手前の一般的衛生管理に取り組む場合であっても、施設や体制の整備について支援の対象にするということが追加されています。

 2つ目として、10年間の期限の延長。

 3つ目として、国が定める基本方針には輸出促進に資することを明記するということが盛り込まれています。

 次のページにまいりまして、これまでのまとめ的なものになりますけれども、今、なぜHACCPの普及が必要かということでございます。HACCPはコーデックスのガイドラインでも定められておりまして、国際的な標準として世界に普及が進展している状況にあり、HACCPは食品の衛生管理のための国際標準であります。それを受けて、欧米をはじめ多くの国でHACCPの導入が進み、輸出要件として義務づけるなど貿易上も必須になりつつあります。

 我が国の現状として、HACCPの普及率は低いままにとどまっており、総合衛生管理製造過程の承認施設は減少傾向にあって、中小企業での導入率も27%です。これらの状況を踏まえ、より一層HACCPを普及する必要があると考えておりまして、1つ目として、支援法の改正により、段階的導入アプローチによって普及が進めやすくなった。2つ目として、食品の輸出促進を進めるために普及が必要であるということが挙げられると考えております。

17ページは、これまでの施策の問題点と論点(案)を記載しております。では、なぜ今まで普及が進んでこなかったのかという観点で、これまでの施策の問題点を厚生労働省として3つほど挙げております。

 一つは、総合衛生管理製造過程にこだわりすぎなのではないか。こだわる余りHACCPの段階的な導入という視点が欠けていたのではないか、という観点でございます。

 (1)として、HACCPといえば総合衛生管理製造過程という思い込み。承認制度でございますので、承認を得ること自体が目的化していたことはないか。(2)として、施設設備に多大な費用がかかる。もしくは、HACCPというものは高度なもので、非常に難しいものであるという誤解がないか。

 2つ目といたしまして、導入に当たってよりきめ細やかな支援が不足しているのではないか。HACCPの普及の担い手となるべき、知識や経験を有する業界団体の方や自治体職員が不足しているという状況はないか。専門的な知識や事業者へ普及させるためのノウハウも不足しているということはないか。

 3つ目として、食品事業者にHACCP導入によるメリットが感じられていないのではないか。安全性の確保という本来のメリットに対する理解が十分得られていないのではないか。一方で、経済的なメリットも少ないと思われているのではないか、ということを挙げております。

 論点(案)といたしまして、1つ目として、総合衛生管理製造過程にこだわらない、より段階的な導入。段階的というのはいろいろな意味があろうかと思います。横幅のものもあったり、奥行きのものもあったりするだろうと思いますけれども、より導入に向けた段階的なアプローチをどのように位置づけるべきか。

 2つ目といたしまして、きめ細かい支援の具体的な内容。HACCPHACCPと言われて長い年月がたっておりますけれども、自分の企業に導入しようとしたとき、よりその企業に合ったものを導入できる状況、支援できる状況、助言ができるという、より細かい支援をするにはどうしたらいいか。事業者がインセンティブが働くようなメリットをどのように伝えるべきか、という点が論点になろうかと考えております。

 次のページ以降は参考として添付させていただいております。

18ページは、食品製造業について、これは経済産業省の工業統計の数字でございます。平成22年は、食品製造業の事業所数は約5万2,000件という数になっております。こちらは、小売の販売をしている事業所は含まれない、基本的に卸売だけが計上されているということでございます。

 次のページは食品衛生法に基づく営業許可の数です。23年度の衛生行政報告例というものです。34業種、営業許可はございますが、その中で製造業だけピックアップして小計したところ、267,000という数になってきます。これは、町のパン屋さん、ケーキ屋さんのようなものも含まれてくるということで、先ほどの工業統計との数字の違いはその辺から出てきているのではないかと思われます。

 次のページにまいりまして、食中毒統計の施設別の数です。20ページが事件数です。緑の線が「不明」でございますけれども、一番多い事件数を示しているものはやはり飲食店でございます。その次、菱形のマークの青い線が「家庭」です。

 次のページは患者数です。患者数で一番多いのは飲食店、その次が仕出屋、その次が旅館・ホテルという順位になっています。必ずしも製造所が多い状況ではないというものでございます。

 説明は以上でございます。

○山本座長  ありがとうございました。

 詳しく説明していただきましたけれども、皆様方の質疑応答に入る前に、農林水産省から追加はございますか。

○農林水産省  それでは、一言御説明させていただきます。

 農林水産省も厚生労働省と一緒に、食品事業者へのHACCPの普及ということで、行政として力を入れているところでございます。特に業振興だとか、品質管理の徹底、高度化の推進、先ほどの御説明の中にもありましたけれども、輸出促進というのは今後の「攻めの農林水産業」の一つの柱になっております。そのために日本の食産業を海外展開させていく、あるいは、輸出によって活力を得ていくということが行政課題としても非常に重要なところでございます。

 その中で、HACCPがなかなか中小企業に普及していないというところは課題と考えておりまして、今回のHACCP支援法においても、なるべく段階をもって取り組んでいけるように、HACCPの前段階の高度化基盤のところも含めて支援するということで、今、施行準備をしているところでございます。HACCP支援法もそうですし、人材育成とか、あるいは消費者への理解の普及、こういったことも農水省としてやっております。特に厚生労働省のほうは、現場でまさに普及されていく自治体の方々への人材育成とか、そういうところを中心にやっておられるかと思いますけれども、農水省としても、食品企業のまさに現場での人材育成とか、専門家を派遣して指導するとか、そういうところも力を入れて予算事業等々でやっているところです。

HACCP支援法のほうは、今後、厚生労働省とも協力しながら進めていきたいと思いますけれども、今回、衛生上の対応ということで取り組まれるということですので、農水省としても協力させていただきたいと思っていますし、一緒に推進をさせていただきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○山本座長  ありがとうございました。

 厚生労働省と農林水産省が両輪になってHACCPの普及を進めていくのは非常に大事なことだと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 それでは、ただいま御説明いただきました資料に関しまして、御質問がございましたら、先にいただければと思います。どなたか、ございますか。

 山田委員、どうぞ。

○山田委員  資料の16ページ、「HACCPに基づく衛生管理の普及率は低く、中小企業への普及率は27%である」というところですが、27%の分母はどういう数字になるのですか。中小企業ではそんなに普及していないような実感があるのですが。

事務局 11ページに27%の根拠がございます。根拠と申しますか、導入率の調査が農林水産省で行われています。約2,000を超える企業に対してのアンケート調査を行って、有効回答の中で、売上規模であるとか、導入の状況であるとか、そういったものを調査しております。その回答に基づく割合ということになります。HACCPも、承認を取っているものに限るものではなく、自らやっていますというところも数に入っているという状況です。

○山田委員  認証を取っているところではなくて、HACCPに取り組んでいるところが入っているわけですか。

事務局  そうです。

○山田委員  わかりました。ありがとうございます。

○山本座長  ほかにございますか。

○工藤委員  質問です。国がやっております総合衛生管理製造過程、これは横ばいから減少傾向という御説明がありましたけれども、そのほかのHACCP認証制度のうち、1、2、3、これはどういう状況ですか。

事務局 10ページに我が国の他の認証制度ということで記載しております。輸出の関係については、そういった企業が手を挙げればということになりますけれども、現実の数を見ると、横ばい、やや上り気味というところではないかと思います。

 自治体での承認の数は、すみません、こちらのほうで詳細に把握しておりませんので、もしよろしければ田崎委員に。

○田崎委員  自治体のほうにつきましては、90の自治体とございますが、この中でも制度上のバランスがいろいろ異なっておりまして、例えばHACCPの考えに基づく自治体もあり、あるいは、政策的な考え方から、届出による自主管理を認めている自治体もございます。ちなみに東京都は、一般的衛生管理が保たれているところに少し上乗せするような自主管理を認証する制度を作っております。自治体によって若干の差はあるというところでございます。

○山本座長  ほかに、この資料に関して御質問はございますか。

 特にないようでしたら、皆さんの御意見を少し伺っていきたいと思います。この資料の最後のほうで、これまでの施策の問題点、今後の論点とあります。この問題点に関して、それぞれのお立場でどういう考えでいるのかということとか、この問題点そのものが分析として妥当性があるかどうか、適切に行われているか。それから今後の論点として、この辺に関してどういうお考えがあるかということについて、順次お伺いしていきたいと思います。余り時間もありませんので、お1人最大5分程度でお願いしたいと思います。

 高谷委員からお願いします。

○高谷委員 17ページに論点案というのが出ていますが、総合衛生管理製造過程という国がやっている承認制度の話と、地方自治体のミニHACCPと称されるものの区分をどうするのかというのは大事な話だと思います。ただ、それは後々やるとして、一番大事なのは、今回、農林水産省も厚生労働省も踏み込んでHACCPという大上段に振りかぶるのではなく、その前段階の一般的衛生管理に重点を置いて、それをしっかりさせる。HACCPに行くよりも、まず、一般的衛生管理の土台がしっかりできていないとどうにもならないわけですから、そこをしっかりさせていただくのが大事かなと思います。

 総合衛生管理製造過程のようにガチガチになってしまうと、企業のほうはそれだけで二の足を踏んでしまうだろうと思います。まずは衛生管理をしっかりしてもらうことが大事なのではないか。それには、ガイドラインも出ている話ですし、それができるはずですけれども、そこができていないのではないか。それができないとHACCPが踏み込めていけないので、そこをしっかりしてもらうのが大事で、そうすると、必然的にHACCPもできるようになるのではないか。

 そのときに、システムの話ですから、ややもすると施設がないと何もできないとなってしまうと一番困るので、衛生管理をきちんとするには最低このような施設でなければいけないとか、こういう設備がなければいけないとか、そちらのほうから入っていかない、箱モノありきでいくと、だめなのではないかという気がしております。

○田崎委員  先ほどの論点整理の17ページと、自治体での取組みについてでございます。高谷委員からもお話がありましたけれども、実際に東京都を含めて各自治体で、一般的衛生管理を中心にとらまえて自主的衛生管理を進めている。そういった事業者に対して都として自主的衛生管理の認証を行っているところでございます。

 自治体の立場からいきますと、既存の制度のインフラを最大限に活用して、国、自治体が一体となってHACCPの普及を推進していくのがよいと考えております。恐らくほかの自治体もそうだと思いますけれども、いろいろなものが含まれてくると、事業者とか、消費者とか、かえって制度を複雑にしてしまいますので、今のインフラを活用していただくのが一番いいのではないかと考えます。

 また、自治体がHACCPの管理を行っていると判断した、自治体の認証を受けたところにつきましては、管理運営の基準とか、施設基準等、レベル感を統一するなりの配慮があるのといいのかなと思います。

 それから、先ほどのお話にも出ましたが、消費者、ユーザー、量販店、輸出国とか、の事業者の方の意識を向上させていく、普及啓発がすごく大切と思います。また、事業者側から見ればメリット感が足りないと継続性が保たれないというところもあります。私どもの認証制度とか、他の自治体における認証制度についても、継続性が失われているような状況も散見されます。その辺における事業者と消費者への普及啓発が重要と考えております。

○山本座長  ありがとうございました。

○山田委員  メリットということで言いますと、それこそうちのような企業が、「HACCPを導入していないと取引しない」とでも宣言すれば一気に普及が進むのではないかと思いますが、なかなかそういうわけにもいきません。私は、ほかの委員の皆さんのように、HACCPに対して高い見識や知識を持ち合わせているわけではないのですが、仕事柄、プライベートブランドをおつくりいただいている食品メーカーさんの工場を中心に500以上の工場を拝見させていただいています。この中にはHACCPを導入なさっている工場もあれば、導入なさっていなくても良い管理をしているところもあります。

 導入なさっているところでHACCPについてお聞きすると 、多くのところは、書類を書くことが目的になってしまって、現場で実際に行われている業務との関連性が少なくなっているのではと感じます。また、認証する側も、細かいところを要求しすぎて、そこまでやらなくても現実の製造には、デメリットはないのではないかと感じるところが多々あります。そういう意味で、もう少し緩くすると現場はやりやすくなるのではないかと感じています。

 以上です。

○山本座長  ありがとうございました。

 一般衛生管理をしっかり行うこととか、システムのほうを重視して箱モノを重視するのではないとか、自治体としても、一般的衛生管理、量販店、消費者のHACCPに対する認識、それから、導入に当たっての制約といいますか、何か形式張らないものが必要なのではないかというようなお話が出たように思います。

 続きまして、工藤委員。

○工藤委員  先ほど来、消費者という言葉が出ておりますので、私は消費者の立場ということで。私は、HACCPという言葉も、詳しくは知りませんが、こういう立場にいますから、こういうものかなというのは認識していますが、一般の消費者の方がどれほど理解しているかということは、これは難しいと思います。私どもは店頭で完成品をとるところが、最初の食品・製品との出会いでございますので、その段階で、パッケージ表示を含めてそこにいろいろな情報がありますので、背景のHACCPだけではなく、安全性に関して言えば、アレルギー表示、栄養表示、遺伝子組換え、そういったさまざまな表示がパッケージにございますので、そういうものを判断して選択しているというのが第一段階にあると思います。

 ですから、HACCPを製造業者の方が消費者への訴求としてするならば、今の段階ではとても遠いのではないか。理解、認知度ということも含めて、かなり乖離しているものがあるのではないかというのが正直なところです。消費者は、原則、店頭で取る製品は安全であると、それが大原則でございます。そこからスタートしておりますので、HACCPの導入率が低いというのもありますけれども、低いから、あるいは上がるから、安全性がどれくらい、またどのように向上するかということをまだ理解できておりませんので、もし、コミュニケーションを取るとするとしたら、その辺のところを消費者にもわかりやすいように説明していただく必要があるのではないかと思います。

○山本座長  ありがとうございました。

○川崎委員  食品産業センターの川崎です。

 事務局から御説明がありました、17ページのこれまでの施策の問題点と論点案は、概ねこういう感じかなと思っています。今後、本検討会でどういう論議をしていくことがいいかということを考えたときに、2点ほど申し上げたいと思います。

 一つは、問題としてとらえられていますHACCPの導入が、特に中小・零細の食品事業者で伸び悩んでいる。この背景、理由を突っ込んで論議して解析をしていくことが必要だろうと思います。その上で、実践的で有効な方策が何なのかということの論議につなげていくことが大切だと思います。

 少し古い話になりますけれども、平成20年度に農水省の補助事業の一環として、我々食品産業センターがやらせていただきました調査活動で、「HACCP導入への障害と導入促進に向けた提言」という事業をやってまとめたものがあります。時間の関係で詳しい内容は省きますけれども、3点ほど紹介しますと、1点目は食品関連事業者にとって、HACCPそのものの理解が不足している、あるいはノウハウが十分にとらえきれていない。

 一例ですけれども、先ほど山田委員もおっしゃられていましたが、HACCPというと、すぐ記録作成も含んだ文書化というところにどうしても焦点が行きがちだということ。それだけではないのですが、そこに非常に負担感があるということだと思います。その背景として、これは私個人の意見でありまして、この場でこういうことを申し上げると怒られるかもしれませんけれども、誤解を恐れず申し上げますと、食品関連事業者の皆さんはおしなべて忙しいです。いろいろな観点で時間に追われていますし、要員も十分に確保できる状況でもないという中で、日夜、自分たちの製品の衛生・安全確保のための活動をやっています。そこにさらに手間のかかるHACCPの導入というような感じが入ってしまうと、なかなか取り組めないというところがあるだろうと思います。

 そういう感じだけではなく、事実、これも私個人の感想が入っていますが、危害要因分析は、一定の専門的知識がないとなかなかできない。そういうところをどういうふうに自分たちに身近なものにしていくのかということが、なかなか見つからないので、ノウハウや知識が進まない。だから、なかなか取り組めないということが一つあると思います。

 2点目は、導入のためにお金がかかると考えられているということ。これはある程度は事実だと思いますけれども、施設設備を入れていかなければいけないとか、それだけではなく、記録のためとか、いろいろなことも含めて人手や工数が増えているわけですので、やはりお金がかかっていく。この辺に対して、正確な理解をどうしていくのかということがなかなか進まないので、難しいことになってきているのではないか。

 あわせて、導入あるいは運営に向けた従業員の教育が必須になりますので、ここにもやはりお金がかかる、時間もかかるということだと思います。その辺をどうしていくかということをきちんと理解をして、進めていく必要があるのではないかと思います。後で申し上げようと思ったのですが、HACCPの原則を満たしていくためには、それぞれの企業の実態をベースとした創意工夫の余地があるという、ここをまずしっかり事業者が理解をしていく。そこの取組みをどうするかということが重要になるのではないかというのが2点目です。

 3点目は、これも事務局の御説明の中にありましたけれども、HACCPの効果あるいは必要性に対する事業者の理解、認識、それから、その表裏の関係にあると思いますけれども、製品を買ってくださる消費者の皆さんが、HACCPを中心とした食品事業者の衛生・安全確保に係る取組みの実態を正確に知っていただくことが必要だと思います。

 そういうことが、平成20年度の補助事業でやった我々センターの調査結果に、課題とそれに向けた提言ということでまとめられています。ですから、各界でやられている、わかりやすいマニュアルづくり、ホームページでの解説、あるいは従業員の研修・セミナー、消費者の皆さんに理解を深めていただく研修・セミナー、こういうことを地道にやっていくことがやはり大事かなというふうに思います。

 加えて申し上げたいのは、それを超えた、もう一歩突っ込んだ取組み、施策がないとHACCPの普及はなかなか進まないのではないかと思います。そう考えてみたときに、導入を現場で事業者の方々と一緒になって指導をする、その指導者が必要なのではないかと思います。例えば、先ほどの話と裏返しですけれども、施設、設備導入が必要だとマニュアルには書いてあるけれども、本当に必要なのかどうか。それを何とかクリアできる方法はないのか、ということを一緒に考えていける指導者の方。あるいは、いろいろなマニュアルがありますけれども、本当にマニュアルどおりにやらないといけないのか、ほかにやり方がないのかということ。それから、危害分析、CCPの設定という、ある程度の専門知識がないとなかなか進まないことに対して、直接教えてくれなくてもいいのですが、どこをどうやって調べていけばその知識が見つかるのかと、そういうレベルでもいいと思いますが、そんな指導をしてくださる指導者をどう増やしていくか。これは、どういう立場で増やしていくかというのは論議は分かれるところだと思いますけれども、その辺がポイントになるのではないかと思っています。

 もう一つは、HACCPというと基本的に7原則・12手順ということがすぐ出てきます。これをきちんとやっていくのがベースだということは、私もそう思いますが、そこにつなげていくためにも、一般的衛生管理事項の充実・普及をまずきちんとやって、その上で段階的に。これも事務局がおっしゃったように、横幅、深さの段階と、いろいろ論議は分かれると思いますけれども、そこを段階的に進めていく施策を何とかこの検討会で編み出していく必要があるのではないかと思います。

 申し上げたいことのもう一点は、そう考えたときに、やはり本検討会のゴールのイメージをはっきりさせる必要があるのではないかと思います。それがないと今までいろいろなところで論議されていたことの域を出ないのではないか。全体的な方向性の提言としてこの検討会の意見をまとめるのか。あるいは、具体策の方向性、枠組みまで行くのか。そこから具体策の策定まで行くのか。どこまでやるのかということをはっきりさせて論議を進めていくことが重要ではないかと思います。

 最後に、もう一点だけ。HACCPの導入が進まないというと、食品関連事業者が衛生・安全確保の活動を疎かにしていると、何となくそういうふうに思われがちですけれども、決してそういうことではなくて、食品衛生・安全は食品関連事業者の経営マターそのものですので、本当に日夜、懸命に努力をしていることはあわせて御理解をいただきたいと思います。その上に立って、HACCPを進めていくためには、それを応援する、支援する施策が必要なのではないかということを申し上げたいと思います。

 であれば、なおさらですけれども、誤解を恐れず申し上げると、HACCPの導入率、認証率そのものを上げていくことが目標ではなく、消費者の皆さんへの安全な製品の提供に向けて、本質的にどういう取組みをやらなければいけないか。この辺をきちんと論議していくことが大事だということを、最後に申し上げたいと思います。

 ちょっと長くなりましたが、以上です。

○山本座長  どうもありがとうございました。

 今、お二人からいろいろと御意見をいただきましたけれども、消費者の立場としても、HACCPの理解、これがまだまだ進んでいないということ。食品産業センターの川崎委員からもそのような御意見があったということで、その辺が普及への一つのハードルになっているのではないかという気もいたします。これまでも研修を随分やられてきていますけれども、わかっている人はわかっていて、わかっていない人はそのままずっとHACCPと遠いところにいる状況にあるということで、もう少しHACCPを身近なものにしていく努力がこれからも必要なのではないかと思います。

 いろいろ議論の論点はありますけれども、ゴールのイメージといいますか、この検討会が最終的にはどの辺までの答申をしていけばいいのかという方向性も、今日ともう一回ぐらい、そういう議論をしていかないとまとまらないだろうと思います。それから、この検討会の一応の方向性としては、今年度中に何らかの形でお話を進めていければという、目標というか、そういう形でやっています。全部の結論を年度内に出すというわけではないですけれども、こういう方向性で施策を進めていくのがいいということにするのか、具体策まで踏み込めるかどうかはわかりませんが、その辺は私も事務局と相談しながら、それから、皆様方の意見を含めながら考えていきたいと思います。

 それでは、残りの方々の御意見を続けてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

○内堀委員  日本生協連の内堀と申します。

 私どもも工場を持っているわけではなく、プライベートブランド商品をつくっていただいている工場に点検に行くことをさせていただいていますので、そこでの状況なども少し紹介させていただきながら、述べたいと思います。

 日本生協連のブランド商品をつくっていただいている工場は、海外を含めて、全国に1,475工場あります。その中でHACCP、これは自己申告なので、本当に取っているかどうかというのは私たちが確認しているわけではないのですが、取引先メーカーさんからの自己申告で言うと、HACCPを取っていると言ってきているメーカーさんの数は197なので、割合としては16%ぐらいということです。ただ、ISO22000も同様に聞いていまして、168あるので、13.6%、ISO9001になると513あるので、41.6%。そういう意味で言うと、衛生管理的な部分の認証を受けているのはそんなに多くないのではないかという感じがします。

 では、なぜそうなのかということで、実際の工場点検をやっている担当者の意見なども聞いてきましたけれども、まず手順の1番目から引っかかると言うわけです。チームをつくれと。そんな人手がないということですね。

 2番目は、作業所と現場の作業との齟齬と言いますか、その辺を確認する作業が非常に手間がかかる。実際、私どものメーカーでちょっと大きな事故を起こしてしまったので、手順書と現場の作業をちゃんと一致させるようにしてくれということでやっていただいたら、1年ぐらいかかってようやくでき上がってくるという感じなので、やはりその辺が大きなネックになるのではないか。

 3番目にネックになるのが、危害分析の部分です。これは、文献とかがそろっていればいいですけれども、いろいろな製造条件がある中で、自分たちで確認しなければいけない部分もあって、そこで時間がかかるだろうということです。

 その辺の3つぐらい、ネックになるところがあるのではないかというのが、工場点検をやる人間の感じているところでありました。

 一方で、私たちのプライベートブランドをつくっていただく場合には、取引を始める前に全部確認させていただくことになるのですけれども、QC工程図というのを書いていただくわけです。製造工程の中で、工程の詳細な部分と、そこにどういうことがリスクとしてあって、どんなことが起こり得るからどういう対策を取るということを、1枚のシートに書き出していただきます。大体のメーカーさんは、それを書いてくださいと言えば書いていただける状況にあるので、別にHACCPの認証を取っていなくても、それぐらいのことはできている状況も一方であるのではないかという感じもします。

 ですから、我々も認証を取っていることを取引条件にしているわけではありませんけれども、実態としては同じぐらいのレベルを要求しているところがあって、実際、我々のお願いをしている製造現場でも、基本的には衛生管理ができているという状態になっているのではないかという感じも持っております。その辺は余り形式にこだわらないで、実態ができていればいいのではないかという感じもします。

17ページの論点のところは、これを事前に説明をいただいて、私も見ながら考えていたのですけれども、ちょっと気になったのは、「メリットをどのように伝えるべきか」と書いてありますが、メリットがないとやらないと思うのです。HACCPの認証を取っているところが16%という話をしましたが、ただ、水産業で対米輸出をしているメーカーであれば、121取引先のうち54はもう取っているわけです。メリットがあればやるわけですから、どのように伝えるべきかというよりは、メリットを与えるぐらいのことをやる。本当に普及させることをやるのであれば、それぐらいのことをやらないといけないのではないかという感じも持っています。

 ただ、それをやるのがいいのか、先ほど御発言にありましたけれども、認証率を上げることを目標にするのがいいのかどうかという議論もありますし、我々としては、実態として安全が守られていればいいということなので、取引条件にも入れていないというのはそういうことなのです。現状を見て、HACCPの認証を受けていなくてもそれなりの衛生管理をしているという状況があるのだったら、それをちゃんと認めてあげることにしてあげればいいのではないかという感じもします。

 全く別のことを言わせていただくと、この間起こっている、例えば商品回収をするような事故の原因分析をする中で共通した傾向として見えてきているのは、設備が古くて、それが影響して商品回収に至ってしまう事例が幾つか出てきたので、その辺はもしかしたら、食品産業の業界としても共通の部分になっているのではないかという感じもします。メーカーさん自身も設備が古いことは十分認識されているけれども、なかなか設備投資に回すお金がないということで、だましだまし使っているような状況もあります。そうなってくると、HACCPをやる前に前提条件が崩れてしまうこともあるかもしれないので、HACCPをやる前の対策ももしかしたら必要かもしれないという感じは、この間の商品事故などを見ながら思っているところです。これはこの委員会とは関係ないかもしれませんけれども、以上です。

○山本座長  実際の運用と書かれていることの違いというお話が出ましたけれども、そこが勘違いされているというか、そうあるべきを書くのではなくて、こうやっていますよということを書かなければいけない手順書なのに、なぜかお題目だけ書いてあるような手順書がいまだにある。そこがかなり問題なのではないかという気がしますので、その辺を今後どういうふうに考えていくか。HACCP普及のための教育研修といいますか、それの普及が必要なのかなと思います。

 それから、ちょっと質問させていただきます。施設が古いということは、メンテナンスに支障が出るような古さなのでしょうか。

○内堀委員  そうですね。壊れたら部品もないような状態でつくっているようなこともある、ということです。だから、それをだましだまし使っている。

○山本座長  それこそが、今後のHACCP支援法が支援できそうな部分だという気がいたします。ありがとうございました。

 それでは、池戸委員、よろしくお願いします。

○池戸委員  先ほどからいろいろな委員から出ている御意見と、私もほぼ同じなのですが、振り返ってみますと、我が国にHACCPが入り始めたのは、マル総が平成7年なので、もう1718年たったわけです。この検討会の目的が普及となっていますので、普及の実態という形で事務局から御説明があったと思いますし、山田委員からも御質問があったと思います。参考資料5というのがありまして、先ほどの導入率27%というのは、食品の販売金額規模別の1億~50億円の売上のところを平均すると27%、そういうことではないかと思うのです。50億円以上は7割、8割ぐらいです。1億円以下になるとグッと減っていくという実態です。

27%の内訳は、2つ種類に分かれると思います。要するに一つは第三者認証を受けているということです。例えばマル総もそうですし、自治体HACCPといいますか、地域HACCPといいますか、たしか地域HACCPが一番多くて14%ぐらいで、マル総で10%ぐらいだったと思います。もう一つは認証を受けずに自己宣言、自分のところでHACCPをやっていますというのが45%ぐらいあったかと思います。私はそれでいいと思っています。

 もっと言うと、普及率の数字目標をつくり、それを上げるとなると、一番効果的なのは義務化することだと思います。そうでなければ、バイイングパワーで取引先から要求することです。しかし、そういうのは本当の意味でのHACCPかというと、そうではない。EUも、93年のEU指令で全品目義務化を示したのですけれども、その年は、コーデックスのガイドラインが出たのが7月で、指令は前の月の6月に出しています。ということは、指令は7原則に沿っていなくて、負担になる「記録」のところが抜かれているわけです。要するに、義務化とは言っても誘導行政でやられてきている。

 日本の場合は、アメリカやほかの国のように特定の品目を義務化ということもなく、マル総の場合、任意で、かつ、品目も限定されているということですけれども、私は、そのやり方で誘導をいかにしていくかということが日本の国民性には合っているのではないかと思います。EUも義務化とはいえ、特に域内はそれほど厳しく規制はやっていないのではないか。域内の加盟国同士での食品の移動についてはノーチェックではないかと思います。ただし、域外、要するに日本などから輸出するときには厳しくするとか、そういう状況です。要するに言いたいのは、当事者がメリットなり意義を五感で感じてというような制度でないと、これはうまくいかないだろうと思います。

 もう一つは、導入しようとしたときに、NASAの宇宙食の開発という極めて高度なイメージということで、衛生管理に「高度」と言うと、程度があるのかという話になるのですが、私がよく言うのは、衛生管理は適正か不適正かという言い方はあっても、高度という言い方は余り言うべきではないのではないかと。先ほどから出ていますように、HACCPで言わなくても、既にHACCP的なことでやっている企業が結構あるのではないかと思います。

 ただ、今までと違うのは工程管理というところが重要であって、結果管理から工程管理。工程管理のメリットを、いかに実際にやられている方が実感として感じるか。記録が一番負担になっているかと思いますけれども、逆に言うと、記録をやることによってメリットがあるというところもあると思います。先ほど工藤委員が言われたように、表示のことで、例えばアレルゲンとか、原産地とか、そういう面での記録を取っておくことによって、後から対外的にも客観的にも証明できる、そういうメリットもあるだろうと思います。

 今まで18年で普及していて、特に中小が非常に少ないです。ですが、中小のほうがやりやすいメリットもあるのではないか。というのは、「導入して何のメリットがありましたか」というと、やはり対外的な信頼性が増す。企業内の品質向上、衛生管理の向上になったというのが一般的な答えですけれども、それであらわせないメリットというのは、例えば工程図でも何でもいいですが、それを検討する際に、社内の組織の人たちが自分の商品はどういうものかというのを、再度、原点に返って見つめ直す、そういう機会を得たということで、次の商品開発とか、部門間の連携が強固になって、そこが非常にメリットだったと言うことをよく聞きます。通常、余り顔を合わせない部門同士で検討する。それは、大企業よりも中小のほうが小回りが利き、風通しがよくてやりやすいですね。そういうメリットもある。

 もう一つ重要なのは、マル総の場合は製造過程という名前が入っているように、製造のところに限定されていますけれども、消費者から言わせると、どういう方向であれ、安全なものを提供しているのは当たり前だという、そういう視線があると思います。もっと言うと、一次産業から二次、三次と、消費者の家庭の中まで含めて、フードチェーン全体で安全性が保たれないと意味がない。そういう点では食衛法が、安全基本法ができた際に、3つの視点の中で一次産業の安全確保の規制と連携してという言い方をしている。まさにあのとおりで、あの後、農業分野もGAPの導入みたいなところが進んでいます。GAPHACCP同様、工程管理の一環ですね。もっと言うと、流通のところもそうですし、家庭も含めて、工程管理の重要性を同時に理解していただいて普及していくというやり方が、一番望ましいのではないか。それでないと、一部のところだけが努力しても意味がない。

GAPがいいか悪いかは別として、自己宣言によるGAPもかなりあって、これからはGAPも量から質の問題になってくると思いますけれども、量だけで見ると、2,000産地を目標としたのが、もう2,700ぐらい導入されている。そういう状況になると、例えば製造業者の原料搬入時のチェックのところは、GAPを導入してきちっとやられているところから買えば、そこのところの負担が減る。そういう連携も図れるかと思います。

 実はこれも、ブームと言うと語弊があると思いますけれども、当初、93年当時にHACCP制度が入るといったときに、国あるいはそれぞれの品目団体、そういったところがマニュアルづくりを一生懸命やられて、品目ごと、あるいは段階。段階というのは、製造だけではなくて流通や家庭内HACCPというのもありましたけれども、数えただけで作られたマニュアルが110以上ありました。もう一回言いますと、日本の場合は任意であって、自主的に判断してやるという制度の中でいかに普及させるかということですので、当事者がメリットを感じながら導入していくということであれば、やはりもう一回原点に返って、それぞれの品目を持っている業界団体の協力ももう一度得た上で普及促進を進められると、いいのではないかという感じでおります。

 ちなみに、うちの大学も学生相手にHACCPの考え方についての教育をやりますけれども、学生は現場を知りません。知らないけれども、一応この概念だけを頭に入れておけば、卒業後専門が違う業種に入っていっても非常に役に立ちます。そういう若い層の教育分野も含めた概念の普及というのが、極めて重要ではないかというふうに感じているところでございます。

 今、思いつく話だけをさせていただきました。以上です。

○山本座長  ありがとうございました。

 メリットをどういうふうにあらわすかというのは、なかなか難しいなというのが今までもありますけれども、実際見ていますと、衛生状況の向上というのが導入企業ではあるし、取り組もうとしているところについても、自分のところの製品がよくわかるようになったことによって、さらに衛生管理のポイントが見えてくる。それによって従業員自身の意識向上が図られてきているような気はしています。

 特に私は、東海大学に移ってから、水産関係のHACCPに絡んでやっていますと、やはり中小企業が多いです。そういうところが取り組むときには、意識の改革というのは大きくあるなというのが感じられました。また、若い方へのHACCPの教育は、現場を知らないだけに理解がなかなか難しいところがありますけれども、概念を覚えて、ポイントをしっかりつかむことによって、あらゆることに応用ができていくという御意見は非常に参考になったと思います。

 それでは、五十君委員、お願いします。

○五十君委員  個人的なことも含めまして、少し意見を言わせていただきたいと思います。

 先ほどからお話が出てきておりますメリットの問題ですが、導入してメリットがあるというのはなかなか難しいということについて考えたいと思います。これは、食品衛生の根本から考えないといけない問題で、メリットについてもう少し啓発が必要ではないかと思います。

 といいますのは、先ほど、消費者の方はラベルを見るというお話がありましたけれども、どこの馬の骨かわからない人がつくった製品をやる場合には、検査によって微生物のレベルや何かをチェックして、安全に提供するという方法が、どちらかというと今までは前面に出ておりました。ところが、学問的に言いますと、例えば試験によって微生物の状況が健全であるというのを証明するためには、サンプリングプランや科学的観点から、今回の生食肉の規格基準でn=25なんていう検体数が出てきて、これだけ検査してようやく検証できるということが食品衛生の世界の常識になっていまして、検査によってオーケーを出す方法は現実的にできないという状況になっているわけです。ただ、消費者、特に日本の消費者は、検査をやった食品だったら大丈夫という勘違いがまだあって、私としましては、ここのところからの啓発活動をきちっとやらなくてはいけないのではないかと思います。

 すなわち、食品を安全に提供するためには、検査によってオーケーを出すようなシステムではだめである。では、どういうのでやったら、それよりもはるかに正確に安全な食品を提供できるかと考えると、工程を管理していかないとだめなんだというところを、消費者、生産者に説明をして理解していただかないといけない。工程管理をやらないと無理なんだと。だからHACCPという工程管理に最終的には到達しなくてはいけないというのを、根本的に理解していただかないといけない。

 そこから、どのような筋道でとなると、いきなりHACCPまで行くというのは、先ほどいっぱい問題が出てきたように、非常に厳しいわけですから、一般衛生管理から工程管理を行っていくという、高谷委員の御意見はもっともだと思います。そのような形で、具体的な進行のさせ方については、この検討会でどういうふうに進めていったらいいかというのを話し合っていく必要があると思います。

 先ほど、参考資料5というのが出てきましたけれども、この後ろに「HACCP導入による効果」という非常に大事なことが書いてあります。品質・安全性の向上をHACCPを導入してみて、93%、ほとんどの人は感じるわけです。これは、HACCPを導入していなかったら恐らくこれほど高率に感じていなかったと思いますけれども、まさにこれがすべてではないかと思います。導入してみて初めて実感する部分があり、食品の品質というのはなかなかほかの方法では見られないのです。ですから、この辺りを啓発によって消費者の方も理解してくれば、HACCPマークを見て、品質がいいものだという認識ができる状況になっていくのが本来で、それが判断基準になるのではないかと感じております。メリットの考え方だと思いますけれども、食品衛生の面ではHACCP導入はメリットがあることであって、それが、経済的には非常に見えにくいところがあって、むしろマイナスのイメージになってしまっているのではないかという認識をしております。

 なぜ導入がうまくいかないかというのは、先ほどからいろいろ出ておりますので、具体的な導入に伴う問題点を抽出して、一つひとつ対応していく必要があると思います。当然、工程管理に行かざるを得ないところを、どういうふうに具体化していくかというところになるかと思います。経済的な援助というふうにすぐ考えがちで、経済的な援助はもちろん重要だと思いますが、もう一つは、技術的な援助もしないといけないと思います。というのは、現場でHACCPに関してちゃんとした知識がない状態で動かすと、先ほど出てきたように、文書をつくっていけばいいのではないかと、そういうふうになってしまうわけです。それが、一緒に技術的な援助もしてやれば、そうではないのだというのがわかってくるのではないかと個人的には思っておりまして、経済的援助に加えて、技術的な援助を並行してやっていかなくてはいけないところが重要だと思います。

 ちょっと長くなって申しわけないのですが、もう一点だけお話ししたいのは、きょうお配りいただいたパワーポイントの資料の12ページ、13ページに「海外のHACCP制度」という一覧がございます。これを見ると、アメリカ、EU、カナダ、オーストラリア、韓国、台湾、どこもHACCPを義務づけているわけです。これが国際スタンダードなわけです。これはなぜかと考えないといけないと思います。日本はどちらかというと、HACCPを早く取り入れて、むしろ国際スタンダードには逸脱した形の、厳しいものを入れてしまったという状況にあります。その辺りも考えなくてはいけないところがあって、国際スタンダードからの逸脱は、これからはよくないのではないかと思います。

 同じ資料の10ページで、国でやっているHACCPの認証制度を130施設ほど取っているというのを見て、ずっと下がっていきますと、これはISO関係だと思いますが、民間団体は763組織も取っています。恐らく民間で取ると、物すごくお金がかかるはずです。お金がかかったとしても、これが国際スタンダードだという安心感のあるHACCPのほうに皆さん流れているということは、この会で議論をしていかなくてはいけない部分で、余り独自性を出さない、国際スタンダードとどうやって合流していくかということも念頭に置いた議論をしないと、なかなか定着しないのではないかと思います。

 まだいろいろありますけれども、そのぐらいを、ひとまずきょうの意見として述べさせていただきました。

 以上です。

○山本座長  ありがとうございました。

 最後に、貴重な意見といいますか、検査だけではないというのは当然わかっていると思っていますけれども、それが消費者の一般常識になっていないところで、工程管理が重要だということが進んでいないのではないかということ。HACCP導入の義務化は世界的には進んできているのに、日本でなぜそれができてこないかというところの問題点。別にHACCPのやり方を緩めろとは思いませんけれども、どうしてそれができないのかということは、少し議論しなければいけない部分だろうと。教育のこともありますけれども、技術的援助という意味で、これはほかの方もおっしゃっていたと思いますが、アドバイザー的なものを誰がどういうふうにやっていけば普及に役立つのか。そういうことも考えていかなければいけない点ではないかと思います。

 皆さんから御意見をいただきましたけれども、この検討会としては、タイトルは「食品製造におけるHACCPによる工程管理の普及」ということです。これと、総合衛生管理製造過程があるわけですけれども、それ以外に、導入システムといいますか、そういうものを枠組みの中に取り込んでいく。そのイメージがもし事務局の中でありましたら、少し説明しておいていただければと思います。

事務局  いろいろと多数御意見をいただきまして、ありがとうございます。特に、一般的な衛生管理が重要で、そこを問題とする事件、事故が多いという点は御指摘のとおりだろうと思います。したがって、支援法もその段階からの支援をするというステップになっているという状況だろうと思います。

 ただ、従来のハード面の基準、施設基準、それに伴う営業許可、管理運営基準としての一般衛生管理を指導して義務づけてきているところもあって、どういう危害があるかということを事業者が理解しながら管理をすることも、一方では必要なのではないかという感じも受けております。ただ単に手を洗いましょう、台を掃除しましょうということだけではなく、なぜそれが必要なのかということを事業者に理解していただく。その上で、一般的衛生管理にも取り組んでいただくことが必要なのではないかという感じがしております。

 例えば、参考資料2にコーデックスのガイドラインがあります。先ほどの資料の中でも御紹介しましたけれども、一般原則の別添としてHACCPのガイドラインがついている。一般原則というのはいわゆる一般衛生管理であって、その一般衛生管理をする中で、特に危害を分析して重要な管理を決めるプロセスとして、別添としてついているということを踏まえると、現在の管理運営基準が参考資料4にございまして、コーデックスの一般原則を引用したものになりますけれど、国際基準との整合性という観点からも、この辺に一部、HACCPの考え方を導入することも、一つの方法として挙げられるのではないかというふうに考えているところであります。

 ただ、強制的にこれでなければだめだということではなくて、自由度を持った選択性のあるものにしていかなければ、義務化という観点、強制的な規制という観点で強いるのは、HACCPの本来の自主的な衛生管理の目的からして、やらされている感じでやってしまうというのは、本来の目的から外れてしまうのではないかという感じもいたします。

 あと、論点として御指摘のありましたように、より現場に即した指導というのは非常に重要で、それができる人材の育成も重要になっていくだろうと思っています。幾つかメリットとしても、表示の話とかいろいろいただいておりますので、その辺も踏まえた検討をしていきたいと思います。

○山本座長  ありがとうございました。

 これまでの管理運営基準が示されていて、それを守ってやってきたということになっているわけですけれども、そこにハザードとの結びつきが余り考えられていなかった。形としてやっていけばよろしいということばかりが先に立って、施設の基準にしても、形としてこれがあればいいということだけがあって、実際の活動とのギャップが大きかったのではないかということです。先ほど内堀委員からもありましたけれども、作業手順書の問題。これは本来、ハザードを理解した上でその手順書がつくられていれば、なぜやらなければいけないかはわかっているはずなので、その手順書どおりにできるはずです。もしくは、逆に今やっていることが書かれていなければおかしいわけです。もしハザードに対しておかしなことをやっているのであれば、それを変えた手順書につくりかえて理解できるはずですけれども、その辺がやはり問題だったのではないか。一般的衛生管理の重要な項目については、ハザードとの結びつきを考えながらそれを構築していくというのが非常に大事な考え方かなと思います。

 意見としていろいろ出ていますけれども、メリットをどう考えるか。中小企業へ普及させるということを重点的に考えていくとしたら、その場合の人材育成。それから、人材を育成するための技術的な援助、もしくは教育的な援助の体制、そこに国や自治体がどう関与していくか。また、企業との連携といいますか、企業の中での団体の話が池戸委員から出ていましたけれども、そういう団体の中での考え方、それを統一させていくような方向性。あとは、消費者の理解を深めるための活動。アレルギー表示をするには、そのアレルギーの原因物質がハザードとして認識して管理されていなければならないわけですけれども、その辺の表示のためにも必要な手順というのがあると思います。そういったことが今の問題点として挙がってきていますので、今後、それをさらに具体的にどう進めていくかということを、この会で議論をしていければというふうに思います。

 今まで出た意見、御自身の発言でさらに追加したいことや、議論のポイントとして私が挙げた5点ぐらいのところで追加の意見がございましたら、お願いいたしたいと思います。それ以外のところでも結構です。

 高谷委員、ありますか。

○高谷委員  ありません。きょうで結論を出すわけではないですね。

○山本座長  そうです。きょうは、皆さんが問題と思っておられることを挙げていただいているわけなので、それをまとめながら、一つひとつ、もう少し議論を深めていくという方向性があるのではないかと思います。

 それから、食品製造業となっていますけれども、それだけでよろしいのでしょうか。というのは、ほかにもまだ積み残している問題があるように思いますけれども、監視安全課長として何か御意見はありますか。製造業だけではなくて、例えばと畜場の問題であるとか、そういうところはここでも議論をするのでしょうか。

○滝本監視安全課長  もちろん、全体的にはそういったところもターゲットにしたいと思っておりますけれども、きょうは、さまざまな立場から、これまでいろいろ指摘をされてきたことも含めて御指摘をいただいたというふうに考えております。まだまだ議論が十分尽くされていない点もあるかと思いますけれども、きょういただいた御意見を事務局でも座長と相談させていただきながら、検討方法等についてもお示ししたいと考えております。

 それから、川崎委員からもございましたけれども、ゴールの方向性とか、そういったところも事務局なりに検討している部分もございますので、次回は、具体的な施策ですとか、技術的な支援の方法ですとか、普及のための方策といった具体論を、今までの反省も込めて、今後、こういう制度を考えていきたいということでお示ししながら、また、先生方からの意見を伺いたいというふうに考えているところでございます。

○山本座長  ありがとうございました。

 では、本日の御意見を事務局とまとめさせていただきまして、次回、改めて検討していきたいと考えております。

 ほかに事務局からございますか。

事務局  今後の予定でございます。開催要領の裏の開催案(年度内)にお示ししておりますが、今回を含めて年度内に4回の検討会を予定しております。次回、第2回の検討会については9月の下旬を予定してございますが、後日改めまして、日程調整の上、開催日を決定したいと思っております。

○山本座長  年度内に4回予定されているということですので、皆様方の日程を調整しながら進めていきたいと思います。どうぞ御協力をよろしくお願いいたします。

 それでは、本日の検討会はこれで終了いたします。長時間の御議論、どうもありがとうございました。

 

 

 


(了)

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