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2013年5月27日 第2回 不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会

雇用均等・児童家庭局母子保健課

○日時

平成25年5月27日(月)17:00~19:00


○場所

中央合同庁舎5号館 厚生労働省専用第18・19・20会議室(17階)


○出席者

委員

吉村委員 (座長) 石原委員
今村委員 小崎委員
齊藤委員 鈴木委員
鶴田委員 平山委員
松本委員 見尾委員
村上委員 森委員
柳田委員

オブザーバー

文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課 知念専門官

事務局

定塚総務課長 桑島母子保健課長
小宅母子保健推進官 渡利課長補佐
内山課長補佐

○議題

1.開会
2.議事
(1)不妊に悩む方への特定治療支援事業の今後のあり方について
(2)その他
3.閉会

○議事


○渡利課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第2回「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」を開催いたします。

 委員の皆様方には、お忙しい中集まっていただき、まことにありがとうございます。

 本日は、前回欠席された今村委員が出席いただいておりますので、御紹介させていただきます。日本医師会常務理事の今村委員です。

○今村委員 日本医師会の常任理事、母子保健を担当させていただいております。よろしくお願いいたします。

○渡利課長補佐 また、島崎委員は、所用があり欠席です。鶴田委員はおくれてお見えになるとの連絡をいただいております。また、見尾委員におかれましては、30分前の1830分には退席される予定になっております。

 また、本日は、妊娠、不妊などに関する教育の現状について御説明いただくため、文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課の知念学校保健対策専門官に出席いただいています。

○知念専門官 よろしくお願いいたします。

○渡利課長補佐 カメラ撮影はここまでとさせていただきます。

 傍聴される皆様におかれましては、傍聴時の注意事項を遵守の上、よろしくお願いいたします。

 それでは、議事に移りたいと思います。座長、どうぞよろしくお願いいたします。

○吉村座長 それでは、議事に入りたいと思います。

 まず初めに、お手元にお配りしております資料につきまして事務局から御確認をお願いいたします。

○渡利課長補佐 お手元の資料でございますが、まず最初に議事次第がございます。

 続きまして、座席表になっております。

 それから、資料1、開催要綱。後ろに委員名簿が掲載されております。

 資料2でございますが、「当面の検討スケジュール(予定)」となっております。

 資料3ですが、「特定治療支援事業の現状」ということでまとめられております。

 資料4は、「特定治療支援事業実施医療機関アンケート(暫定集計)」でございます。

 資料5は、各自治体の周知・広報の取り組み状況でございます。

 資料6は、日本産科婦人科学会登録施設における年間体外受精実施数の状況でございます。

 資料7は、「諸外国における体外受精に対する経済的支援の状況」でございます。

 資料8は、前回の「第1回検討会の主な意見」でございます。

 資料9でございますが、「不妊治療に関する論点(案)」でございます。

 それから、見尾委員の提出されている資料、平山委員からの資料、齊藤委員からの資料、松本委員からの資料、島崎委員からの資料を提出いただいているほか、最後に文部科学省からも資料が出されております。

 また、お手元のドッチファイルは第1回検討会の資料一式になります。

 資料は以上でございますが、不足等ございましたら事務局にお申しつけください。

○吉村座長 よろしいでしょうか。

 それでは、きょうは3つのテーマがございます。まず初めに、見尾委員と平山委員からプレゼンテーションをしていただきます。その後、文科省のスポーツ・青少年局学校健康教育課からの妊娠、不妊等に関する指導の現状について御説明をいただきます。その後、残りの時間で、先回も議論いただきましたが、各委員の先生方からの御意見をいただきたい、テーマごとに御自由に御議論をいただきたいと思います。

 それでは、早速、見尾委員と平山委員のプレゼンテーションに移りたいと思います。質疑に関しましては、お二人の発表後にまとめて時間をとりたいと思いますので、まずは見尾委員、よろしくお願いします。

○見尾委員 見尾でございます。それでは、早速始めさせていただこうと思います。

 まずは、当院の生殖医療における治療成績について詳しく検討してみました。最初に申し上げておきたいのですけれども、我々の施設と申しますのは、日本で何より過疎な地域の限られた環境の中での治療ということで、例えば都会のようにA施設からB施設、C施設というふうに簡単に転院のできない厳しい状況の中での治療ということでして、そういう意味では、ある意味、理想的なテストケースだというふうに考えてもよいのではないかと思って詳しく解析をしてみました。

PP

 まず最初に確認をしていただきたいのですけれども、ここにも吉村先生を初め、生殖医療の専門家の先生がたくさんいらしているわけですけれども、生殖医療そのものというのは、必ずしも安全だと、大丈夫なのだということの確認はいまだとれておりません。こういう治療がスタートしてまだ30余年ということですので、安全性というものに関しては、あるいは、その世代を超えて生まれてくる赤ちゃんに何ら影響のない有効な方法であるということを証明するデータというのはまだ存在しておりませんで、そういう意味で言えば、体外培養が胚に及ぼす影響でありますとか、あるいは、きのう、おとといの卵子学会でもありましたけれども、体外で卵を、あるいは胚を培養することによって起こる可能性のあるエピジェネティックな変異というものに対しても我々は十分に注意をしないといけないということでありますので、我々としては、体外に持ち出すことに関してのこだわりを徹底して進めさせていただいております。

 これは、空調管理でありますとか、VOCというのは揮発性の有機物でございます。こういうものをできるだけ体外培養環境から排除するとか、照度を下げるとか、温度、pH、その他、ありとあらゆる胚に影響する物質というものをできるだけ胚から遠ざける、避けるということを考えていかないといけませんし、それから、胚の体外に置かれる時間をできるだけ短くするということも含めて、我々は採卵後2日以内の初期胚で単一胚移植を99%行っております。ですから、そういう意味で極めて統一されたデータとして御紹介できるのではないかと思っておりますし、それから、1回の採卵についてできるだけたくさんの卵をいただいて、その卵を有効に利用して患者さんの負担を軽くするということもとことん追求してやらせていただいていますので、そういうことをベースにして今からのデータをごらんいただきたいと思います。

PP

 まずは、治療周期の推移ですけれども、年次ごとにずっとふえておりまして、昨年1年間では1,500周期を超える治療をやらせていただいています。

PP

 しかし、平均的な治療回数を見てみますと、おおよそ1人の患者さんが、これは採卵、胚移植を含めてですけれども、2.5回内外ということですので、決してこの周期がふえているわけではございません。

PP

 1治療周期にかかる平均の費用でございますが、これは使う薬剤、その他が少しずつ多様化しておりますので、そういったことで、あるいは条件の厳しい方がどんどんふえてまいりますから、どうしても平均的な金額は大きくなりますけれども、去年1年間の平均で言いますと、お一人1回の治療当たり31万、32万弱ということになっております。

PP

 これは、年齢別の構成を見ました。2006年から昨年暮れまでのデータでありますけれども、大体30代前半が28%、30代後半が36%、40歳代前半が22%、30代後半から40歳前半あたりの方がどんどんふえてきていらっしゃるという印象でございます。

PP

 これが年次ごとの推移ですけれども、ごらんいただいておわかりいただけますように、34歳以下、下の2つ、ブルーと赤ですけれども、ここはほとんど変わっておりません。患者さんの周期はふえているということに関して言えば、これは35歳以上がふえている。典型的にこういう傾向になっております。ですから、ここのあたりに対して我々がどういうふうに考えていくかということだと思います。

PP

 これは、新規にART治療に入られた方の治療開始の年齢をあらわしておりますけれども、大体35歳から39歳、40歳から44歳、このあたりがふえているというのは前のスライドと一緒でございます。

PP

 通常よく見る治療成績というのは、どこのウエブを見ても、こんな数字が載っているのではないかと思いますが、これは、1年間に治療をされた方、あるいは治療をした周期に対して何例妊娠され、妊娠率が何%、そして、そのうち流産が何%、妊娠継続が何%という、これはざっくりとしたデータであります。どこの施設もほぼ同じような傾向になっていると思いますけれども、ピンクのカラムが妊娠率でありまして、右肩下がりになっておりますし、ブルーのカラムが流産率でありまして、これは右肩上がり、典型的な通常のパターンでございます。これでは実際の治療の効果というものを見ることはできないと今回考えまして、スライドは順番が入れかわっておりまして、次をめくっていただいて、次に患者個人単位の実績追跡調査結果ということで書いております。しかも、次のページに解析方法としては、2006年から2011年の間に2年間をかけて臨床妊娠まで到達した人を抽出したというふうに書いておりますので、これを今から御説明したいと思います。

 お戻りいただいて、ARTの実態についてのお話です。

PP

 今、スライドに映しておりますデータをごらんいただきたいのですけれども、これはちょっとややこしいのですが、後でまた詳しく御説明をいたしますけれども、我々のところで治療を追跡できた患者さんの数、そして臨床妊娠、あるいはドロップアウトされた方の経過ということを示しております。1から40まで、これは治療周期であります。我々のところでは40周期まで頑張られた方が、逆に言えば1名いらっしゃいまして、合計で治療周期としては1,240周期ということになります。

 1のところに患者数が175と書いています。これは、1回だけ治療をして、もうやめられた方が175です。2回まで治療して3回目に治療に入っていらっしゃらない、2回までの治療が終わっている方が210名いらっしゃるというふうに考えていただいて、結局、そうすると、こういった人たちが1回目から2回目にいくごとに母集団がどんどん減っていくということになります。それに累積した妊娠がその横に書いてございますので、これを後でグラフで御紹介したいと思いますが、いずれにいたしましても、右側に書いている1年以上、2年以上の不明の方というのは、治療を中止されている方でございます。そうすると、おおよそ12回の治療でやめられる方はほとんどやめていらっしゃる。しかし、12回以降でありましても、あるいは6回から以降でありましても、シャドーをかけておりますが、治療を続けていけば、これだけたくさんの方が妊娠されているということも言えるわけであります。ですから、治療回数を重ねていくことというのは、妊娠を期待する上では非常に大きな要因になるということをこの表でお示ししておりまして、これをもとに以下の解析をしております。

PP

 この数字をごらんいただきたいと思いますが、年齢別に治療を開始した患者さんの数、それから、胚移植を行った患者さんの数、そして妊娠が起こらなかった方の数、そして臨床妊娠、例えば29歳までの方ですと、136の妊娠を胚移植172で割った数字でございまして、79%、横も年齢別にこういうふうな数字になります。しかし、この中では胚移植が起こらなかったり、それから、中途で治療を中止されている方というのは、本来妊娠にはならないわけで、分母には入らない方の数でございます。そうすると、これを引いて、ちゃんと治療が行われた、例えば下に書いてありますけれども、治療回数が6回未満、治療期間が1年未満の方、1年以上不明の方はドロップアウトというふうに判断いたしますと、補正した妊娠率というのは90%を超えます。34歳までの方もそうです。40歳を超えた方でも半分の55.9%、45歳を超えても16.7%という、補正するとこういう数字になります。つまり、これは何をあらわしているかというと、治療をきちんと5回、6回、あるいは2年間でいうとマックス12回ですけれども、それだけのことをやれば9割以上の方は妊娠に到達できるということを示しています。ですから、途中でやめるということがなければ、これだけの高い妊娠の結果が期待できるということを今回のデータではっきりさせることができました。

PP

 これも同じことですけれども、表の下に書いております条件を厳しくいたしまして、治療回数6回未満、1年以上の不明の症例をドロップアウトされた方だというふうに考えますと、このような高い数字になるということをお示しいたしております。これだけの高い数値が出るということは、従来の治療成績ということではなくて、厳密にいけばここまで期待ができるのだということを、きょうお示しできたのではないかと思います。

PP

 これは、後で追加で資料を依頼されてつくったものです。スライドを見ていただきたいのですけれども、要するに、妊娠までではなくて生産、赤ちゃんが生まれるまでの状態でデータを出してほしいという依頼を受けまして、急遽出したものでございます。

 ごらんいただきまして、29歳までの30歳以前の方ですと、おおよそ3年以内にほとんど全ての方が妊娠をされています。35歳から39歳、あるいは40歳から44歳の方でも、年数は6年、7年かかっておりますけれども、しかし、頑張って続けていけば妊娠のチャンスはどんどん高まっていき、赤ちゃんに出会えるのだということをこの表でお示ししております。

PP

 これは、生産率まで出しております。先ほどのように妊娠まででいきますと79%、これは補正がかかりませんので、という数字ですけれども、生産率でいいますと、29歳までで64%、30代前半で65%、39歳までで52%、40歳を超えても22%ということで、合計いたしますと、胚移植をお受けになった半分の方が赤ちゃんに出会えているということをお示しいたしております。

PP

 これは、生産数の年齢分布でありまして、35歳から39歳が我々のところでは一番多くなっておりまして、ただ、40歳を超えても1,240周期で74症例の方が40歳を超えても妊娠されているということになります。

PP

 これは、治療を開始した年齢と生産年齢の分布でありますけれども、29歳までで治療を開始されて、その年までに20代でお産みになった方が72人、30代前半で39人、そういう見方ですけれども、数年間で多くの方が赤ちゃんに出会っていらっしゃるということがわかると思います。

PP

 「ART治療の実態」という表があると思いますけれども、これがもともとの個人をずっと追跡した結果のまとめであります。1,240人の患者さんを治療させていただいて、胚移植が1,174、臨床妊娠が828、1年以内に治療継続をした人が70人、不明の方がこれだけいらっしゃいます。1年から2年で治療をやめられた方が83人、2年以上治療のない方が259人という、ドロップアウトされている方が非常に多いということがおわかりいただけると思います。

PP

 これも基本統計であります。お手元の資料にあります。ARTを開始した患者さんの数1,240が母集団であります。平均年齢34歳、2年間の治療回数が平均4回です。採卵は1.8回になっています。というふうなことで、実際に臨床妊娠に至った、胚移植に対して妊娠ということでいえば68%、生産を確認できた割合でいいますと52%、年間の合計治療費の平均は119万ということになります。

PP

 これがその2年間を累積した表でありまして、ブルーのカラムが1回目の治療に1,240人、2回目で1,026人というふうにどんどんドロップアウトしていく方がふえまして、治療周期がふえるごとに治療に入られる患者さんの数が減ってまいります。これは、最初の表をグラフ化したものであります。赤いラインが累積の妊娠数であります。大体全妊娠症例の97%が1年に6回、12回ぐらいの治療が2年間で行われるとすれば、ドロップアウトした方を外しますと97%ぐらいの方が妊娠されているということになります。

PP

 これは治療成績の最後ですけれども、先ほどのグラフの上に赤の妊娠の累積、そして、下のグリーンのラインはドロップアウトされた方の数であります。1回目の治療からもう7名ドロップアウトされておりまして、2回目で70、3回目で150、4回目で214と、どんどんドロップアウトされている方がふえます。ですから、先ほどから申し上げておりますように、少なくとも6回をめどに治療を続けていただければ9割以上の妊娠が期待できる。2年間12回ぐらいの治療をすれば、本当に多くの方が妊娠に到達できているということが我々のデータからは言えるということになろうかと思います。

PP

 ここまでがざっくり我々が追跡をした個人別の治療成績の結果です。

 そして、今度はJISARTの活動についても少し御紹介をさせていただきます。

PP

JISARTというのは、我が国の生殖補助医療専門施設の団体で、品質管理システム(ISO9001)を導入することで生殖医療の質的向上を目的とし、究極の目標は患者満足を高めることであるという設立趣旨でもって2003年3月に団体を設立いたしました。これは、今10年経過しているところであります。

 この組織は、正副の理事長、その下に理事会がございます。11名の理事がおります。理事会には外部に倫理委員会を委託しておりまして、ここにいろいろな倫理審査をお願いする機関を持っております。この倫理委員会がなぜ重要であったかというと、下に書いてありますが、JISARTの活動の中に非配偶者間の生殖医療を行うということも含まれておりましたので、この非配偶者間の生殖医療を公明正大に安全に有効に実施していくためには、どうしても倫理審査というものが重要でありまして、それを行う目的で倫理委員会というものを設置いたしております。外部から6名、内部委員が3名、そして特別委員が2名の11名で、今、倫理申請に対して倫理委員会を行っており、大変な労力をかけて倫理審査を行っていただいております。

 実際にJISARTの活動といたしましては、その下に書いてありますように大きく分けると3つございます。

 1つは、生殖技術認定委員会(RATC)によって施設の審査を行いまして、施設認定を行うということであります。質の高い医療を提供するためのJISARTの趣旨に沿った施設であることを認定するための審査であります。

 もう一つは職種部会。これは、各医師、看護師、胚培養士、事務、心理カウンセラーといった、チーム医療としての生殖医療を担うこういうスタッフの部門別の教育プログラムを組んでおりまして、スタッフの質的向上を目指しております。

 もう一つは、先ほど申しましたけれども、非配偶者間の治療を円滑に安全に生まれてくる赤ちゃんの幸せのためにきちんと対応することを目的に、その下に書いてありますような、生まれた赤ちゃん、あるいは当事者の方々のきちんとしたフォローアップをするためのフォローアップ部会というものが機能的に有効に活動できておりまして、ここにいらっしゃる平山先生らを中心に頑張っていただいております。

PP

 これは、実際の活動の内容でございます。施設審査に対しては、患者支援団体(Fine)の協力をいただいておりますし、それから、人材育成は、先ほど申しましたシンポジウム、教育プログラム、フォローアップ部会、相互研修というようなことです。

 それから、対外研究は、ここに書いておりますようなことをやっております。

 実際にJISARTの審査がどんなものかというのは、そこに説明をしておりますけれども、きょうの資料の後ろにつけております実施規定というものがこれだけ詳しく網羅する形でつくられておりまして、これに準じて、この必須項目を全てクリアできていなければJISARTの認定施設にならないという非常に厳しいハードルを設けてやらせていただいておりまして、今、スライドで見ていただいているのがそのチェックリストであります。左側は、この実施規定そのものの文章が書かれておりまして、その横に審査基準が書いてありまして、それが満たされているかどうかということを審査委員が判定するための欄が右側にあります。これを全てクリアすれば認定施設ということになります。

PP

 最後です。こういうことで、JISARTができるだけ質が高く、患者さんに安心と安全と満足を得ていただけるため、そして、日本の生殖医療の駆け込み寺となるべくJISARTの施設が、生まれてくるお子さんや御家族の幸せのために活動しようということで現在活動しているところでございます。

 以上です。時間を超過して済みませんでした。

○吉村座長 見尾先生、どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして平山先生、よろしくお願いします。

○平山委員 平山でございます。このたびは、生殖医療、あるいは不妊症治療におけるカウンセリングについてお話をさせていただく時間をいただきましたので、説明させていただきます。何分、15分という短い時間ですので、非常に上っ面なところしかお話はできないのですけれども、カウンセリングとはよくわからないなというのがほとんどの方だと思いますので、少しでも何かイメージづくりにお役立ていただければと思って資料を用意させていただきました。パワーポイントのレジュメを見ながら説明させていただきます。

 もともと生殖医療というのに必要な専門職としては、ドクター、その診療介助としての看護師さん、そして、もちろん受付・事務さんで成立していたわけです。ですけれども、その中で胚発生学の進歩や受精卵、精子、卵子というのをきちんと扱う専門家が必要だろうということでエンブリオロジストという人たちが入ってきた。そういう生殖医学が発達していく中で、治療の複雑化、選択肢の多様性ということが多くなってきて、今、森先生や村上先生がやっておられるようなコーディネーターという職種が必要とされるようになってきたということがございます。

 あとは、遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医の先生方も、最近では生殖遺伝に関する相談の増加ということでかかわる必要があるだろうとは言われていますが、まだまだそこは入ってきていない領域かなと思います。

 最後に入ってきたのが心理カウンセラーなのです。これは、きょうお話しすることですけれども、生殖医療が長期化している(これは今回の検討会の一つの大きなテーマですけれども)、治療の継続・終結の問題への援助の必要性、あるいは医療者とは異なる立場から生殖医療というものをとらえていく存在として心理カウンセラーというのは必要ではないかと思っています。ただ、心理カウンセラーというのは新参者としてこの生殖医療の中に入ってきたものですから、よくわからないというものだろうと思います。

 事実、心理カウンセラーというのは、まだ生殖医療の中では全国でも50名程度、多分、多く見積もっても100名いないだろうというふうに私は考えています。

 これは後で少しお話ししますが、厚労省の今回の資料にもついているアンケートとのギャップがあると考えております。そのことについてもお話ししたいと思います。

PP

 そもそも不妊当事者に対する心理的援助の歴史ですけれども、昔は、特に1950年代を中心に精神分析の考え方から不妊の治療としての心理支援といいますか、不妊は女性の無意識的な親になることへの拒絶であるみたいな、そういう解釈からそういう治療が行われたりした時代もあるわけですが、実際に生殖医療が進歩してきたところで生殖の仕組みが明らかになってきたわけです。そうなると、心因性不妊というものの考え方というのはほぼなくなって、治療がストレスになるものだ、それを何とか援助していこう、あるいは、治療中のみならず、治療前後、治療前の人たちに治療の負担をどう理解していただいた上で治療に向かっていただくか、あるいは、治療の後、妊娠できなかった方への支援をどうするか、あるいは、前回、鈴木委員が言ってくださったように、子供が生まれても不妊で苦しむ人というのは少なくない、そういう人たちへの援助というものをどうするかということで発展を続けているものです。

PP

 世界的には、不妊患者さんに対する心理的支援というのは、本来、医療スタッフが全員で行っていく「患者中心ケア」というものと、それから、訓練を受けた精神保健専門家、いわゆるカウンセラーや精神科医が行う「不妊カウンセリング」の両輪が必要であるというふうに考えられています。

 そういうカウンセリングを誰がやるかということに関して、アメリカやヨーロッパ、オーストラリアなどでは、生殖医学会の下位集団として専門家グループがもう形成されていて活発に活動しております。そういうところを中心として、世界の不妊カウンセリングにかかわる専門家がIICOというグループをつくって2003年から活動していて、私もそこに加盟しながら世界的な普及を目指しているところでございます。

PP

 これは細かく説明していく時間はないのですが、我が国の(不妊当事者にかかわる心理的な所の)現在の状況というのを簡単に挙げてみました。不妊カップルの皆さんにとって頼りになるのは治療施設なわけですけれども、なかなかそこで相談に乗ってもらえる体制はないのです。というのは、3分診療で医療者とのコミュニケーションがほとんどとれない。それから、後でお話ししますが、正確な情報提供というのがなかなか難しい状況にある。そして,何よりも不妊治療施設というのは妊娠するために特化された場所ですので、妊娠したい患者と妊娠させたい医療者が妊娠という目標に向かって邁進する場所なわけです。そういう中で、ちょっと悩んだり、迷ったり、立ちどまったりということが許されない場所であるという中で、自分にとっての不妊とは何なんだろう、子供を持つこととはどういうことなのだろうというのを考える余裕がなかなか持てないということがあります。

 そういう中で、国の事業としても不妊専門相談センターがあったり、私もかかわっていますが、患者支援団体がピアカウンセラーを養成したりということを頑張っているのですが、まだまだ余り知られていないというところで、不妊カップルは、残念ながら不確かなインターネットや口コミの情報に振り回されているという現状を、私は臨床でカウンセリングを行っていても、そこら辺はすごく感じます。そこを医療者とちゃんとコミュニケーションがとれればすぐ解決するような問題なのだけれども、実際にかかっている主治医よりもネットの情報を信頼してしまったり、そういうことというのはすごくよくあるのです。

PP

 少し大ざっぱな話になりますけれども、ここでカウンセリングという言葉を少し整理しておきたいと思います。生殖医療においてカウンセリングという言葉が今、非常に混乱した状況で使われているということです。医師が診察時に行う治療についての説明をカウンセリングと呼んでいる人もいまだにいますし、私たちがやっているカウンセラーが行う心理的な支援まで全てカウンセリングという言葉が使われていますので、患者さんにとっては何がカウンセリングなのかさっぱりわからないということです。特にこの領域においては心理職の参入というのはおくれていますので、医療者による情報提供を中心とした患者支援を不妊カウンセリングと呼ぶことがずっと歴史的に長かったのです。ですが、これは国際的に見た場合には、先ほどの患者中心ケアの範囲であるというふうに考えまして、本来の不妊カウンセリングはまだ普及しているとは言えないと思います。そういうところから、医療者も患者もカウンセリングに対する正しい理解がないものですから、(先ほどの厚労省の)アンケートでも、カウンセラーはいますよといっても、心理カウンセラーがいるわけではないという状況があるわけです。

PP

 もちろん、医療者による心理的支援というのはものすごく重要です。ここでも多分議論になることだと思いますが、不妊患者さんに正しい情報が与えられていないという現状がいまだにございます。そこは、施設の側からすれば説明する時間や人材がないということを言えるかもしれませんが、先ほど言ったように、ネットや口コミに振り回されている患者の状態もある。また、ここら辺はコーディネーターの先生方の領域だと思いますけれども、本当に自己決定、自己選択ということは大事なのだけれども、それができるような状況に全然置かれていない。いまだにパターナリズムに支配された医療が中心である。よく言われますけれども、「私を信じて治療を受ければ妊娠しますよ」と初診で言われて、それを信じて治療に邁進していくしかないというような状況があるわけです。

 ですから、患者さん自身もわからないからお任せするしかないという状況である。そういうところがやはり問題なわけで、そういうところにはコーディネーターさんによる支援の必要性があるわけです。そこは必要十分な情報提供による治療選択の援助が物すごく重要だと思います。

PP

 ただ、カウンセラーとしては、ただ、情報提供による支援だけでは十分ではないだろうと思います。それはなぜかというと、情報ということ自体が不妊症治療ではナショナルスタンダードはなくて、先ほど見尾先生がいろいろすばらしいデータを出してくださったのですが、では、ほかの権威とかカリスマと呼ばれるお医者さんが同じような意見を持っているかというと全然違ったりする。そうなると、患者さんは何を信じていいのかわからないのですね。そういうところでカウンセラーのところに来て「どうしたらいいのでしょう」とおっしゃるわけです。結局、施設ごとの治療方針が異なって、何が正しいかわからない。そして、もう一つ言うと、正確な情報を提供されても納得に至るとは限らないという状況があります。例えば高齢だからとか卵子の質が悪いから妊娠しないのですよというのは正しい情報ですけれども、では、何でそんなことが私に降りかかってしまったのでしょうかという、ある意味では実存的な問いに対しては情報では答えようがないわけです。このように、生殖医療というのはどこまで行っても曖昧さは残りますし、提供された情報をどう理解するかという支援も必要です。そして、患者が生殖医療を客観視できるための援助というものが必要ではないかなと、ここら辺に心理職が活躍できる場というのが出て来得るのではないかと私は考えております。

PP

 その例として、今回のテーマの一つでもあると思うのですけれども、不妊治療長期化の構図というのをカウンセラーの目から見るとこんな感じがするのです。もちろんこれが長期化のすべての要因ではないことをお断りします。妊娠というのは、いつ妊娠するか誰にも予測不可能なわけです。患者さんは、妊娠の可能性がゼロではないのだったら、先生が「もうやめなさい」と言うまでは続けたいと思う。そして、お医者さんは科学者として確率がゼロではない以上、妊娠可能性はないとは言わない、言えないわけです。ということで、どちらもがもう難しいよねということは了解しながらも治療の回数だけが延々と続いていく。先ほどの見尾先生のデータのように、それで妊娠する方は、それはそれでオーケーなのだけれども、残念ながら、妊娠の可能性は非常に低い高齢の方であったり、非常に卵巣機能の悪い方であっても、なかなか「無理です」ということは医療としては言えない以上、長期化が起こりやすい構造的な問題があるというふうに思っています。

PP

 時間が迫っておりますので簡単に行きたいと思いますけれども、生殖医療における心理カウンセラーの役割について説明いたします。今ずっとお話があったように、生殖医療というのは、やはり子供ができないことがつらいという患者さんに対して、子供をつくることで解決しようとしてきました。それは医療の目的で全然おかしいことではありません。しかし、残念ながら生殖医療というのは完璧な技術ではないわけで、完璧というのは何をもって言うかあれですけれども、なかなか妊娠できない患者、そもそも妊娠が困難な患者、あるいはそもそも生殖医療というか、ARTの対象ではない患者さんが今ARTを受けているという状況もあるわけです。そういうふうに妊娠イコール解決というふうにしてしまった場合に、解決が困難な例がふえている。あるいは、先ほど初めに申しましたが、子供はできても不妊の苦しみは続いている人たちというのも明らかになっている。妊娠が果たして解決なのだろうかという問題もある。

PP

 ということで、カウンセラーとしては妊娠・出産以外の解決というのを提示できるのではないかというふうに考えています。

PP

 それは、例えばですけれども、1つには、子供ができないから苦しいのではなくて、子供ができないことが、何々だから苦しいということの、この四角の中身にこだわる。いろいろなのですけれども、その患者さんごとに異なる不妊の意味、治療の意味というのを理解する、そして、それが患者さん御自身に腑に落ちるようになったときに初めて不妊治療を相対化して、自分にとっての治療とは何だったのだろうということが考えられるようになるのではないかと思っています。

PP

 つまり、カウンセラーというのは、少し患者さんの解決というものを妊娠だけではなくて拡張しようとすることができるかもしれないということで活動をしているわけです。そういうことによって、人生に治療が意味づけられる、そういう作業を通して意味のある終わり方というのもできていくのではないかと思っています。

PP

 ここはややこしいので読んでおいていただければいいのですけれども、ここですが、生殖医療における心理職の専門性、それは、すなわち存在意義と言えるかもしれませんけれども、やはり妊娠すればオーケーというふうに心理職の人間は余り考えないのです。ですので、子供を生み育てることに絶対的な価値を置かない人間が生殖医療の場にいるからこそ、安心して本当は疲れちゃったとか、もうやめてもいいのかしらとか、そういうことを考えられるのではないかと思っています。

 そういう意味では、生殖医療チームの中では特異な存在ではあります。ですけれども、そういう存在がいることが生殖医療のセーフティーネットにもなるのではないかと思っています。

PP

 そして、先ほどの見尾先生のJISARTの話がありましたけれども、妊娠さえすればよいという時代から安全な妊娠へという時代、そして、患者満足へという時代が変わってきました。そういう中で、やはり患者さんが自分にとっての不妊とか治療の意味を考える必要性というのが出てきている、あるいは、患者さんが治療に振り回されるのではなくて、ちゃんと患者さんは自分の治療を客体化して利用するという立場になることが必要である。そのためにこういう、implications counselingと専門的には言いますけれども、そういう意味を考えていくカウンセリングというのが必要ではないかと思っています。

PP

 最後に、ここで今までの厚労省の資料で出てきたいろいろな資格や心理的援助の担当者の考え方というか特徴を少し分けてまとめてみました。

 遺伝カウンセラーさんというのは、臨床遺伝専門医もそうですが、遺伝学的な情報提供による意思決定をしようとするが、残念ながらまだまだ人数は多くないので、治療施設に配置というのはまだ難しいだろうと思います。

 コーディネーターさんというのは、やはり治療施設にはいてほしい。患者と生殖医療をつなぐ存在だと思います。正確な医療知識を持った相談相手として、やはり存在は大事だと思います。

 心理カウンセラーというのは、治療施設に配置が望ましいけれども、問題点で書きましたように、配置コストの問題もあります。なかなか非採算部門ですので置くことは難しいのですけれども、でも、先ほど言った医療者とは少し違う立場から生殖医療をとらえることで患者さんに利益が出てくるのではないかと考えております。

 また、Fineさんや東京都の不妊専門相談もそうですけれども、ピアカウンセラーの方が社会資源として患者さんがいつでも利用できるような体制というのも整えるべきではないかと思っております。

 非常に雑駁ですけれども、以上で終わりたいと思います。

○吉村座長 先生、心理カウンセラーとは何をしようとしているのかというスライド、大事ですから、ちょっと説明してもらえますか。

○平山委員 ちょっとここは言葉がかたくて申しわけありません。やはり患者さんというふうに医療にとらわれない、医療を超えて、その方の人生を考えようとするのが心理カウンセラーの立場なのです。その人が不妊を抱える、不妊という状況を生きる人としてかかわろうとする、そして、治療期間だけではなくて、治療前から治療後も含めてライフサイクル、生涯発達的な視点といいますけれども、そういうことを考えながら援助していこうとする。そして、不妊であること、生殖医療を受けること、子供を生み育てることのその人にとっての意味を理解しようとする。

 カウンセリングは不妊を治すことはできません。ですけれども、その方の生活の質、あるいは人生の質というものを向上させていくお手伝いはできるのではないかと思っているので、そういうことをしようとしております。

○吉村座長 ありがとうございました。見尾委員と平山委員から、非常にわかりやすくお話をいただきました。

 それでは、全般的に御質問がありましたら、どうぞなさっていただきたいと思います。

 どうぞ。

○鈴木委員 見尾先生、データをありがとうございました。

 資料でいただいている6ページ目の「ART開始年齢別の現時点の治療実績」の見方が、ちょっと頭に入り切らなかったので、もう一度だけ。妊娠不可の意味、それから、胚移植不可の意味、中途治療放棄の意味です。

○見尾委員 これは、胚移植不可は、もちろん採卵はしたけれども胚移植できない。それから、中途放棄というのは、要するに治療を途中でやめられている方です。

○鈴木委員 前の表で言うと、1年以上不明、2年以上不明という方のことですね。

○見尾委員 そうです。ですから、それと妊娠不可は、胚移植したけれども妊娠が起こっていない方です。つまり、これをごらんいただきますと、胚移植をしたのが29歳ですと172です。臨床妊娠が136です。ということは、残りの36人の方が胚移植をしたけれども妊娠が起こっていないということになります。

○鈴木委員 胚移植の結果の数字だという理解でいいわけですね。

○見尾委員 そうです。

○鈴木委員 そうすると、中途放棄の方、来なくなった方も含めて、最終的には胚移植当たりの妊娠率ぐらいを考えてよろしいのですか。

○見尾委員 ただ、実際に胚移植ができていない方は妊娠は起こりませんね。それから、原則的には中途でやめられた方も妊娠は絶対に起こらないわけです。そういう方は、胚移植をしていませんから妊娠の母集団には入らないですね。そうすると、補正すれば、そういう方を外して、実際に胚移植をした方の中でどれだけ妊娠できているかということでいえば9割いくということになります。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 あと、平山先生もありがとうございました。1つだけ伺いたいのですが、心理カウンセラーの役割というのは、今、最後に出たのもあるのですけれども、不妊治療をなさっている方には、長い方なんかは割と、かなりハードな心理的にひどい状態になっている方、率直に言うと、例えばひどい鬱になっている方、実際にはお薬が必要なぐらいの状態の方もいらっしゃるわけですけれども、そういうような患者さんの見分けというのでしょうか、精神科にも受診なさったほうがいいですよとか、そういったリファーも心理カウンセラーの役目の一つというふうに考えてよろしいのでしょうか。その辺はいかがでしょうか。

○平山委員 そのとおりです。残念ながら、生殖医療の現場では、精神科にかかっている患者さんも結構いらっしゃるのです。ですけれども、治療に通えるということであれば、実際は受けてしまうことのほうが多いのだと思うのですけれども、でも、本来は、おっしゃるように、精神科との連携をとってきちんと紹介をする。ただ、精神科医のほうも、なかなか妊娠したいという患者さんが精神科に来た場合に薬は出せないよねということで、何も治療をせずに戻されてくるみたいなことも現実には結構多いです。(精神科的な治療が必要な患者に受診を)勧めるのは必要です。カウンセラーの役割、あるいは医療者の役割でもあります。

○吉村座長 そのほかありますか。

 どうぞ。

○今村委員 見尾先生のデータを見て、非常にすばらしいなというふうに思いました。

 ちょっと教えてください。5ページの「年齢別のART治療成績」で45歳以上が非常に低くなっている。これに対して、また7ページの上の段で45歳以上の治療成績というのは、しっかりずっと継続的にドロップアウトせずにいけば45歳以上でも16.7%妊娠すると。この乖離というのは、結局何なのですか。

○見尾委員 結局、採卵をしました。でも、実際に胚移植ができませんでした。そうすると、その胚移植できていない方は妊娠のチャンスはないわけです。そういう方が妊娠できた方に対しての母集団に入るというのはおかしいわけですね。ですから、そこを外してしまいますと、例えば、先ほどの最初にお示しになったデータというのは、1年間に何人の症例、何周期を治療しました。その中で妊娠例が何例ありました。それを比をとればこういう低い数字になりますけれども、しかし、実際には、その中では胚移植を行われていない方とか、途中でドロップアウトしてしまった人とかが全部入った状態の母集団ですので、それは正しい形ではないと。

○今村委員 わかりました。とすると、私たちは5ページの上のデータというのはよく見るのです。このデータからして、私、第1回目は出ていなかったですけれども、いわゆる年齢制限が妥当であるという議論がよく出てくるのですね。とすると、先生のこのデータというのは、20%近い方がきちんと受ければ大丈夫というのは、そうそう捨てたものではないと。年齢制限というのは、やはり先生はしないほうがいいという見解ですか。

○見尾委員 やはり治療の効率は圧倒的に43歳以降は悪くなりますので、それなりの年齢制限というのはあってしかるべきだと思いますけれども、僕がきょう一番お話ししたいなと思ったのは、例えば、きょうは助成金検討の会ですので、助成金をお受けになるとしたら、施設もお受けになる患者さんも、ある程度6回なり12回という、12回は多いかもしれません、6回なら6回、それを2年間なら2年間でクリアするだけの治療を継続するということを約束していただいて治療をお受けになるというふうにすれば、これだけのきちんとした高い確率で妊娠のチャンスが得られるということも言えるのではないか。そこがすごく大事なのではないか、ドロップアウトしない。

○今村委員 先生のところを含めたJISARTの施設では、大体似たような成績なのですか。

○見尾委員 これは僕たちの施設のみの成績です。一般的には、ここまできちんと追えていないですね。1人の患者さんをずっと何回、どこまで治療しているかということを、多分全体の施設としては追えないと思います。

○今村委員 全てのARTの施設における先生のところのJISARTの組織率というのはどれぐらいなのですか。

○見尾委員 今、最初にお示ししたこういうデータしか出ておりません。

○今村委員 体外受精の施設が今、500ぐらいあるのですか。

○見尾委員 はい、592

○今村委員 入っておられる。

○見尾委員 25施設です。

○今村委員 そうですか。非常にレベルの高いところのデータという形になりますね。

○見尾委員 ある意味ではテストケースということになるのではないでしょうか。

○今村委員 わかりました。ありがとうございました。

○吉村座長 今の今村先生の確認ですけれども、要するに、今、ある1つの施設がたくさん体外受精を行っています。ですから、そこが3分の1、JISART25施設で日本の全国の3分の1、そのほかの五百何施設で全国の3分の1、こういうふうな理解でいただければ結構です。

○石原委員 見尾先生に1つ確認したいのですけれども、今、今村先生がおっしゃられた7ページの補正妊娠率というのは、これはあくまで妊娠率ですので流産するわけですね。16.7%と書いてありますけれども、実際は、この前のページを見ると100%流産なのですね。ですから、流産ということ自体が、それこそ妊娠が成立しなかった女性よりもさらに心理的なダメージが大きい場合もあり得るので、結局、幾ら治療をしても、妊娠はする場合がもちろんあるのだけれども、挙児にまではなかなか至らないというふうに読むべきなわけですね。

○見尾委員 そうです。厚労省のほうから生産率も出してくれということで、急遽、後でデータを出して追加しているのですけれども、それでいくと、おおよそ、そこに胚移植に対して生産の比率というのが出ていますけれども、妊娠された方の大体半分、40歳から44歳でいきますと23%ぐらいが生産の割合ですので、残りは流産されているということになります。そこはそこで、また別の意味で精神的なバックアップ、それなりのバックアップがぜひ必要だと思います。

○吉村座長 45歳以上は0%ですか。

○見尾委員 そうです。

○石原委員 4041424344のところがかなり違うのではないかと思うのですが、そのあたりはいかがですか。

○見尾委員 違うと思います。42歳と43歳は違うと思います。

○柳田委員 見尾先生にお尋ねします。2年間継続で治療することが重要であると。それは、やはり回数に置きかえることはできませんか。

○見尾委員 この累積治療継続回数ということでここに載せておりますのは、これは治療の回数、純粋に胚移植を行った回数ですので、これで見ていただいて、このデータを出したITの担当者は、1年はマックス12回、24回までいけばここまでということで、それも無理なら1年に6回、合計12回でどうだということでこの数字を出してくれていますので、回数でいくこともできます。

○柳田委員 そうしますと、回数で表現をすると何回ぐらいになりますか。

○見尾委員 これをごらんいただいて、逆にドロップアウトされている方は、6回ぐらいまででほとんどの方がドロップアウトされているのです。逆に、妊娠されている方は6回までが圧倒的に多いですけれども、6回以降もこれだけ、シャドーを入れていますけれども、12回まででもこれだけ妊娠されていますので、ですから、回数を重ねるということがすごく重要であることは間違いないと思います。

○吉村座長 そのほか。

 どうぞ。

○今村委員 思っている以上に生産の方が多いですね。きちんとやれば相当な確率で生産児を得ることができる。ちょっと前は、不妊の医療技術自体がかなり不確実で、ちょっと当てにならない技術だからみたいなあれがあって、そのためにこの医療技術というのが保険診療にならずに自由診療であるというふうな一つのファクターになっていたと思いますけれども、これだけきちんとした施設できっちりやればこれだけなるということになれば、相当確立された医療技術ということになると、これを自由診療ではなく保険診療の中で診ようというふうな意見というのは、先生方の中ではないですか。

○見尾委員 むしろ逆だと思います。ここまでやろうと思うと大変です。物すごい努力が要りますし、これを全ての実施施設に求めるのは多分無理ではないかなという、僕たちはそう思っています。途方もなくこだわったやり方をやらないとだめだと思いますし、知識と経験といろいろな意味で投資も必要でしょうし、ここまで持っていくのは非常に厳しいと思います。

○今村委員 わかりました。

○吉村座長 そのほか。

 どうぞ。

○鈴木委員 関連でもう一つだけ確認させてください。

 結局、胚移植当たりの妊娠率というか、例えば私たちの会に集まってくる悩みで、特にアラフォーの方ですと、そもそも卵がとれないという声が一番大きいわけです。結局、卵巣刺激を行っても卵がとれない方が実はかなりいるということでこのデータはいいですよね。

○見尾委員 そうですね。とれなければどうにもならないので。

○鈴木委員 とれない方も実はかなりいらっしゃる。それで、胚移植までできた方に関してのデータであるという理解で。

○見尾委員 そうです。それともう一つは、幾ら条件が悪くなって、年齢が高くなっていらしても、卵はゼロにはなりませんので、卵胞発育が用意されている周期には卵胞は育ちますので、その周期を待たないといけないということは、これはある一つの意味としてはあります。ですから、刺激すればその周期全てに卵胞が育つということではないということも我々と患者さんとの間で十分な意思の疎通がとれていないといけないということだと思います。

○吉村座長 鈴木さんのおっしゃることも私は非常によくわかります。患者サイドから見た妊娠率というのは、鈴木さんの言った妊娠率なのです。

○鈴木委員 どうしても数はチャレンジ当たりという感じで考えますので。

○吉村座長 非常によくわかります。ですから、医療者側は、胚移植をできなければ妊娠はできないわけですから、胚移植分の妊娠率にする。私は、この辺は常に考え方にギャップがあると。

 日本産科婦人科学会のデータは、要するに治療周期当たりのデータを出しています。要するに全年齢層で10%とかそういうデータになってくるということです。だから、この辺はデータを読むときに、注意しなくてはなりません。ただ、見尾先生の出されたデータは非常に丁寧なデータです。これを2年間全ての施設でやっていくということは極めて困難だと思いますので、その辺を御理解いただければよろしいかと思います。

 そのほか。

 どうぞ。

○齊藤委員 見尾先生に。ARTの適応として、加齢は適用ではないですね。多分、原因不明として高齢の方もやっているということになると思うのです。そのときに、原因不明を確定するために、それ以前の診断、治療、例えばタイミング何回とか、人工授精何回行ってから、ARTに入られているのかお教えいただければと思います。特に40歳以上の方はどういうふうなプロトコールで生殖補助医療に入られているのか、教えていただければと思います。

○見尾委員 基本的には、例えばタイミング、ステップアップという考え方が世間にはたくさんあるのですけれども、僕はステップアップという方法はとっておりませんで、御夫婦が何としても赤ちゃんを授かりたいという思いで、一番効率的な対応をとってほしいと。今すぐにでも、とにかくあした妊娠できる保証がないとしたら、今を最大限に最善を尽くしたいという思いを持っていらっしゃるとしたら、例えばルーチンのいろいろな検査をした上で年齢的な要素だけだと、あるいは、それ以外の問題がなかったとしても、もし御夫婦が十分に御理解をいただいて最善を尽くすということであれば、生殖補助医療を使ってもいいというふうにお互いの同意のもとでやらせていただいています。

 ですから、タイミング、それからAIHというステップアップという考え方でいけば、それだけの貴重な時間を、妊娠が起こらなかったときには無駄にしてしまうことになる。そうすると、それを後で振り返って後悔することがないようにということはインフォームドコンセントの中で十分にお話をして納得いただければ、できるだけ早い機会に生殖医療に入るようにしています。

○齊藤委員 スタンダードとして、先生のところの40歳以上だったら、何の治療をしなくても、体外受精を望めばすぐ体外受精に入っていくのですか。

○見尾委員 いらっしゃいます。それから、何周期かはタイミングをしてみるとかという方もいらっしゃいます。ただ、腹腔鏡をして腹腔内の所見を確認してというところまでは、年齢が高い方、40歳以上の方にはやっていません。

○齊藤委員 では、何割ぐらいがすぐ体外受精の治療に入られますか。

○見尾委員 正確な数字は出しておりませんけれども、およそ3分の1は直ちに入られるのではないでしょうか。

○齊藤委員 では、3分の2は何らかの治療してからとなるわけですね。

○見尾委員 ほかの原因があれば別ですけれども、そうでなければ何周期かタイミングをしてみて、そして、我々のほうからのいろいろなインフォメーションをお与えして、セミナーとかいろいろなところに参加していただいて、理屈をわかっていただいた上で、御夫婦の意思で決定された場合に入っていくということになります。

○吉村座長 そのほか。

 どうぞ。

○柳田委員 今の齊藤委員の御質問にちょっと関連するのですけれども、先生のクリニックで妊娠される方、生殖補助医療以外も含めて、全部の妊娠される方の中で生殖補助医療関連で妊娠される方というのは何%ぐらいいらっしゃるのですか。おおよそで結構です。

○見尾委員 30%ぐらいです。

○石原委員 平山先生に1点お伺いしたいのですけれども、今話題になっております、いわゆる加齢に伴う妊よう性の低下ということにつきまして、心理カウンセラーの立場としては、先ほど幾つかのことをおっしゃられましたけれども、どのように各年齢別にお話をされるのでしょうか。例えば、39歳の人と41歳の人と44歳の人とかだったら、どういうお話をなさいますでしょうか。

○平山委員 多分、心理カウンセラーとしては、年齢がこうだからこうというふうには言わないだろうと思います。というのは、その方にとって、年齢がどんなに高齢であっても、あるいは負担がどんなにかかっても、治療することに意味があるということを見出せれば、それをすることというのは、その人にとっては正しいことだろうという意味です。ただし、そのときに残念ながら、今の生殖医療のシステムというのは、そういう自分にかかっている負担であるとか、大変さであるとか、そういうものが見えにくくなってしまっている、あるいはリスクというものがわかりにくくなってしまっている。だから、そこはちゃんと理解されているかということの確認はします。その上で、ちゃんとその方の人生、あるいはそのカップルの人生にとって意味があることであれば治療することにノーとは言わないだろうという、つまり、カウンセラーは別にやめさせるためのものではないし、勧めるものでもないということです。

○見尾委員 齊藤先生の先ほどの話にも絡むのですけれども、今、平山先生もおっしゃいましたけれども、僕たちは基本的に、これは先生方はどう思われるかわかりませんが、僕たちは少なくとも赤ちゃんというのは御夫婦の夢の実現であるというふうに思っています。特に病気とか異常なのだという感覚ではなくて、御夫婦が赤ちゃんの夢をかなえたい、そのために最善尽くしたい、後悔のない対応をしたいということであれば、我々がどういうオプションがあるかということをお示しして、その中で御夫婦が選択をされれば、最初から生殖医療というのも僕はあっていいのではないか。それで後悔をされないのであれば、最善を尽くしてうまくいかなくても納得ができるという形に御夫婦がなっていただけるのであれば、それも正しい方法なのではないかという基本的な認識で進めております。

○吉村座長 カウンセリングにつきましては非常に難しいところがありまして、医療者側というのは、カウンセリングがうまくできないのです。これは我々が自覚をしなければいけないということです。新型の出生前診断を見ていますと、本当に医者はカウンセリングができないなということがよくわかります。遺伝カウンセリングと心理カウンセリングとは全く違うものでありまして、ピアカウンセリングという概念もこういったものに必ず入れていかなければいけません。施設の基準を決めるとき、もう一回考え直すということで、またそのときに御意見をいただきたいというふうに思います。

 それでは、次の議題に移りたいと思います。

 文科省のほうから、妊娠・不妊等に関する指導の現状について御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○知念専門官 文部科学省の知念でございます。どうぞよろしくお願いします。

 本日は、前回の検討会において委員の先生方のほうから、妊娠や不妊等に関する知識の普及啓発という観点で学校教育を活用できないかといった御意見をいただいたということで、現状の学校教育について、また、文科省の取り組みについて簡単に御説明させていただきます。

 当方から出しております提出資料をごらんになっていただきたいのですけれども、まず、「学校における妊娠・出産に関する指導の現状」ということで、特に本検討会のテーマであります妊娠・出産と年齢の関係性等について詳しく説明させていただきたいと思います。

 まず、学校において妊娠・出産に関する指導は、いわゆる性に関する指導ということで学習指導要領に基づき行っておりますが、目的としては、「児童生徒が性に関して正しく理解し、適切に行動を取れるようにすることを目的」ということで、保健体育のみならず、家庭科や特別活動を初めとして、学校教育活動全体を通じて指導することということで定められております。

 また、指導に当たっては、発達段階を踏まえること、学年全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮するとともに、特に集団で一律に指導する場合と個別に指導する場合の内容をあらかじめ区別しておくなどの計画性を持つことが大事であるということで指針を示しております。

 例えば、具体的に保健体育の学習指導要領において書かれておりますことは、小学生であれば体つきが変わったり、初経、精通などが起こったりすること、また、中学生であれば、内分泌の働きによって生殖にかかわる機能が成熟することや、成熟に伴う変化に対応した適切な行動が必要となることなどについて触れております。

 また、高校においては、生涯にわたって健康を保持増進するには、思春期や結婚生活等の生涯の各段階の健康課題に応じた自己の健康管理及び環境づくりがかかわっていることについて指導することになっております。特に妊娠・出産と年齢の関係性については、高等学校のほうで取り扱ってございます。受精、妊娠、出産と、それに伴う健康課題について、家族計画の意義や人工妊娠中絶の心身への影響などについても理解できるようにすることを目指しております。

 加えて、学習指導要領の改訂、こちらは10年に一度改訂が行われますが、その際には少子化でございますとか、今テーマになっております周産期の健康課題等を踏まえまして、結婚生活を健康に過ごすには自他の健康への責任感、良好な人間関係や、家族や周りの人からの支援、及び母子への健康診査の利用などの保健・医療サービスの活用が必要なことを理解できるようにすることが新たに示されております。

 後ほど御説明しますが、教科書の中では若年出産や高齢出産の危険性、不妊問題についても記載されてございます。

 また、文科省においては、子供たちを取り巻く教職員に対しての普及啓発活動としまして、指導講習会の実施でございますとか、研修会を開催する際の財政支援等を行っております。

 具体的にどのような形で教科書で教えているかというところでございます。別添1は学習指導要領の抜粋でございますので、後ほどごらんいただければと思います。

 まず、9ページをごらんください。高校の教科書の抜粋になります。

 こちらのほうは「結婚生活と健康」ということでございますが、「心身の発達と結婚生活」ということで、本文中の中ほどにございますが、「若年出産や高齢出産では、死産など、出産にともなう健康問題が起こる危険性が高くなります」ということを示しておりまして、また、高齢出産の言葉の説明としては、左端にございますように、「おおむね30代後半以降となると妊娠しにくくなったり、また妊娠しても流産となる危険性が高まったり」するといったようなことも書いております。

 また、図2に示してございますが、「年齢別にみた自然死産率」でございまして、若年層でも自然死産率は少し高くなりますが、高齢になればなるほどその傾向は高くなっていくということを図表を用いて示しております。

 こちらのほうは今年度からの新しい高校の保健体育の教科書になります。これまでの教科書では、この図2自体は示していたのですが、主には若年層での妊娠は危険性が高いといった説明だけだったのですが、今般の社会情勢等を踏まえて、新たに高齢出産のリスクということについても本文に記載されているという形になっております。

 また、続いて13ページになります。こちらは家族計画についての項目でございます。

 家族計画、避妊などについて説明しているところではございますが、ただ、こちらのほうでも4行目あたりに書いておりますが、「性交すれば妊娠する可能性があり、若い世代ほどその可能性は高くなります」として、その注釈として左端のほうに写真の下でございますが、「年齢が上がるにつれ、妊娠しにくくなり、自然死産の可能性も増える」といったことを説明しております。

 続いて14ページになりますが、こちらのほうはコラムとして不妊問題を扱っております。一番下のほうで四角囲みにしておりますが、生殖可能な年齢で、避妊をしていないにもかかわらず2年以上妊娠しない状態を「不妊」という。また、妊娠にも適齢期があり、女性の場合、年齢が高くなると月経不順やホルモンバランスの崩れなどにより、妊娠しづらくなると言われています。また、自然死産率も高まります。男性の造精機能も加齢によって劣化するという研究結果がありますということで、コラムを示しております。

 例えば、こちらのコラム的な扱いは、前回の教科書であれば晩婚化が進んでいます、合計特殊出生率も下がっていますといったことがコラムとして書かれてございましたが、この10年ぶりの改訂で新しく不妊問題ということで取り扱われるようになったということで、最近の課題ということではこのような形で教科書には取り扱われております。

 また、最後のページになりますが、別添3で示しております「性に関する協議会」の話がございますが、こちらは、子供たちに対してどう教えるかといったことはお話ししたような教科書の中で示しているようなものですが、いわゆる集団的な教育だけではなくて、個別の指導というものもございますので、学校の教職員の先生方にはより正確な知識を身につけておいていただきたいというところがございますので、近年の課題、性に関する課題についての協議会ということで開催しております。

 下のほうの四角囲みにしておりますが、こちらの検討会でも委員をされておられる齊藤先生のほうに講師をお願いしまして、平成24年度は「妊娠・出産について」ということで、主に妊娠と加齢による変化であったり、不妊治療の現状等について御説明していただいて、まずは子供たちを取り巻く教職員の方々に正しい知識を持っていただこうということでこのような取り組みを行っているところでございます。

 簡単ではございますが、以上が文科省及び学校教育の取り組みになります。

○吉村座長 ありがとうございました。

 それでは、10年ぶりの改訂だそうでありますが、そうすると、また10年改訂されないのかなというふうに思いますと、これで内容はいいのかなという感じもありますが、どうでしょうか。

○見尾委員 確かに今まで記載のなかったものがこういうふうに少しずつではありながら記載がされているということは前進というふうに受けとめますけれども、実際に年齢が上がると妊娠しにくくなるとか、流産が起こりやすい、これは極めて漠然とした、それはなぜですかということが一切生徒たちに伝わらないということがありまして、結局、我々が一番気にしていることというのは、卵巣の卵子というものが有限である、あるいは、時間がたつことによって劣化する、結局、これが妊娠を妨げたり、流産の原因になったりするということですので、その根本的な生殖能力、あるいは女性の場合、特に卵に対しての時間的な時系列の変化というものを、ぜひこれはもう少し明確にうたっていただくことはできないものでしょうか。

 それともう一つは、最後のところにある「不妊問題」というコラムの中も、「不妊治療としては、薬で排卵を誘発する方法がもっとも一般的ですが、卵管形成などの手術」ということというのは、今の我々の生殖医療の現状から言うと、ある意味では非常に時代おくれ的な印象を持つのですけれども、このあたりはいかがなのでしょうか。

○知念専門官 学校教育でどのレベルまで教えるかというのは、最初に書いてございますように、その時々の発達段階を踏まえて教えるということが1つございます。

 先生おっしゃるような、卵子の詳細について教えることであるとかというのも、結局は全体の枠も決まっているような中で何を優先して今一番子供たちに教えないといけないのかという観点からまた考えなくてはいけないところでございますので、学習指導要領については申し上げたとおり、簡単に改訂するものではございませんので、こういったような情勢を踏まえて、また次回の改訂のときに何らか議論される可能性はあるかと思うのですけれども、今、私のほうから「では、加えます」というようなことはなかなか申し上げられないところになります。

 また、不妊問題のコラムの記載については、ここで申し上げたとおり、最新の教科書であって、それなりの専門家の先生方が、教科書会社がつくっているものなのですけれども、そこで検討されたものですので、時代おくれ云々に関しては、私のほうからはコメントは控えさせていただきます。

○吉村座長 なかなか答えにくいところもありますよね。

 どうぞ。

○石原委員 1点御質問したいのですが、きょうお示しいただきました教科書の項目というのは、「思春期と健康」から始まりまして、最後が「家族計画と人工妊娠中絶」なのですが、こういう流れ以外に、例えば今、高齢化社会が進行しておりますので、加齢というのも保健体育の分野においてとても重要な項目になってきていると思いますが、加齢という視点から生殖能力の低下などということは学習指導要領に記載はございませんのでしょうか。そのあたりが、別に記載があるのかどうかを伺いたいのですが。

○知念専門官 加齢につきましては、本日は性に関する指導の部分の抜粋だけ持ってきていたので載っていないのですが、加齢と健康といったところで保健体育の中でも教えてございます。ただ、それは、このような話のレベルの卵子の加齢とかというものではなくて、もっと老人医療でありますとか、介護でありますとか、そういった観点では教えておりますが。

○石原委員 あれから抜けてしまうのですね。

○知念専門官 はい。

○吉村座長 そのほかありますか。

 では、どうぞ。

○松本委員 私どもでは、ただいま教科書に不妊ですとか、そういったことを入れていただきたいという要望書をお出ししようとして準備をしております。今のお話ですと、指導要領が改訂されたばかりで次の10年間はもう改訂されないので出しても無駄という理解をしてよろしいのでしょうか。

○知念専門官 指導要領別添1に書いているのですが、高等学校のが出されたのが平成21年なのです。それが順次移行期間を設けて、今年度から全面実施になったというところで、教科書も今年度から新しい教科書になりましたので、今出されて、またかなり後に反映される可能性はあるのかもしれませんが。

○松本委員 可能性としては、後でも反映されるかもしれないという可能性はあるということですかね。

○知念専門官 まず、教科書のベースになるのがこちらの別添1の学習指導要領でございまして、その検討もまた次の平成31年あたりを目指して、あと数年後から検討が始まるところになると思いますので、今、具体的な検討というのはされている時期ではないです。

○松本委員 わかりました。ありがとうございます。

○齊藤委員 今回のこの改訂で前に比べるとすごく進歩があったなと私は思います。もちろん不十分なところもあると思いますが、以前の文部省に比べてはすごく進歩だと思っております。今回の改訂に間に合わなかった知識もあるわけですから、何か副読本みたいなもので不足部分を考慮していただければと思います。また、こういう知識を教えるときに、教員だけではなくて、例えば地域の産婦人科の医師を招いて、この内容についてお話ししていただくというシステムは、考えられるものなのでしょうか。

○知念専門官 1点目の副教材については、文科省のほうで小学校5年生と中学生、高校生の全生徒に対して配っているものがございまして、その中で現在、高校の啓発教材の中では、妊娠に関連しては妊娠のマーク、健康診断、母子保健の観点と、ダイエットと妊娠の関係といった形で現代的な課題という扱いで載せております。その啓発教材自体は特に10年に1回というわけではございませんので、近代的な課題について必要があらば順次改訂するということは可能でございます。

 また、その改訂をいつするのか等については未定ではあるのですが、あくまでも科学的なベースが厚生労働省において確立したものというのが大前提ではございますが、そういったものであるならば、文科省においても、特に高校生、確かに知識として一番一括してできるような場であるとは思っておりますので、そういった対応は可能性はあるというふうに思います。

 もう一つの産婦人科の先生方に御協力いただくといったようなことなのですが、文科省の委託事業になるのですが、性に関する指導の研修会というものを各自治体、県の教育委員会においてやる場合には文科省から財政的な支援をするといったような仕組みは今でもございます。ただ、恐らく多くの都道府県においては、性に関する指導自体が、不妊であるとか、年齢と妊娠の関係性というよりは、例えばエイズに関する教育でございますとか、やはり今、10代の子供たちにおいて問題になっている性感染症であるとか、人工妊娠中絶であるとか、そういったところ寄りの部分で幾つかの県においては実施しているところだと思うのですけれども、そういった仕組みはございますので、文科省の取り組み自体は、基本的には各県の教育委員会レベルの取り組みが多くございますので、各県それぞれにおいて連携するというのは可能だと思います。

○吉村座長 鈴木さん、ありますか。どうぞ。

○鈴木委員 体のこととしてこういうふうに保健体育という中身で伝えていくのはすごく大事だと思うのですけれども、私、実際に高校のときに座学でこんなことはちっとも教わらなかったなという記憶があるのと、どのくらいこれが本当に授業として成り立っているのかは疑問だなというふうに今思いました。

 もう一つ、こうした体の問題というだけではなくて、家族、この子づくりというか、体のことだけではなくて、結局、いつ結婚するかというような問題も当然絡んでくるわけですね。ここには性意識と性行動なんかも取り上げているのですけれども、そもそも自分の体に対するリテラシーというのでしょうか、それからもう一つ、今、このネット社会における情報に対するリテラシーなり、いわゆる医学情報なり、そういったもの全般に対するリテラシーを育てていくというのもすごく大事なことだというふうに思っているのです。むしろ、それは分野としては、いわゆる倫理社会のほうになるのかなという気もするのですけれども、そうしたことについては、どこかの別の課で伝えていくようなことはなされているのでしょうか。つまり、科学をどうとらえるかというようなことも、高校のレベルでしたらあってもいいかなと思いまして。

○知念専門官 部分的な回答になるのですが、例えば教科書に載っているようなのは、性に関する情報を正しく理解できるようにするためにということで記載がございます。具体的に8ページに載っておりますが、性に関しては雑誌とかビデオ、テレビなどからかなり情報が氾濫している現状があると。そういった中で、いかに自分や相手の人生に大きな影響を与える選択になりますので、そういった部分について責任ある行動がとれるかといったような部分は、今、性に関しては保健体育の中で教えております。

○吉村座長 今おっしゃったのは、生殖リテラシーというか、生殖というものは何ぞやということをもう少し教えるような場があってもいいではないかということなのです。これは欠けていますから、それはもう結構です。

 御質問は。

○森委員 ちょっと本筋から離れてしまうかもしれないのですが、関連することなので。

 文部科研で、18歳から44歳までの女性を対象に妊娠の気がかりということでウエブ調査を行いました。そうしましたところ、やはり妊よう性のこと以上に気がかりとして出てきたものは、生まれてくる子供に異常がないか、そういう子供を育てられるかどうかという不安だったのです。そういうことを考えると、先ほど栄養のこともいろいろ出てきましたし、体のこともありますが、いわゆるプレコンセプショナルケアというか、もっとそういう系統的な観点で生徒の教育も考えていただけるといいのかなと。遺伝的なことも含めて正しい理解というのが必要なのではないかと思いました。

○吉村座長 本当に私もそう思います。なかなかこういった教科書にリテラシーを入れ込むということが難しいですね。ですから、森先生とか鈴木委員がおっしゃったようなことというのは非常に大事なことだと思いますので、これからは副読本という形かもしれませんけれども、そういうような形で、どうぞまた文科省のほうにおっしゃっていただきたいと思います。

○鶴田委員 1点だけ。静岡県では、教育委員会と健康福祉部が意見交換をしています。前回の資料を提示して不妊症の説明をしたら、非常に良かったという評価でした。その意見交換会の中で出てきたのは、先ほど、子供の発達段階に応じた教育というのがありましたけれども、子供に対する教育と教官に対する教育があって、教官に対するテキストブックというか副読本(平成113月文部科学省作成:学校における性教育の考え方、進め方)は少し古いとの意見もあったので、両方の副読本についても検討していただいたらいいのかなというふうに思いました。

○吉村座長 ありがとうございました。

 私も、この指導要領を見ますと、本当にこれを読んで高校の先生がおわかりになるのかなという感じが非常にしました。ですから、今おっしゃったような御意見が非常に貴重なのではないかと思います。

 きょうはいろいろありがとうございました。また御参考にしていただいて、よろしくお願いします。

○知念専門官 ありがとうございます。

○吉村座長 それでは、時間がおくれてしまいましたけれども、次のテーマに移りたいと思います。

 前回と同様にテーマごとに自由に討論いただきたいと思いますけれども、あと30分しかないのですが、まず、事務局から関係資料の御説明をお願いしたいと思います。

○内山課長補佐 では、資料3をお開きください。時間も押しておりますので、ごく簡単に説明させていただきます。

 資料3の下ですが、「特定治療支援事業の現状」ということで、前回、予算額について御質問いただきましたので、予算額を入れております。1ページ目の下ですが、平成16年度の事業創設当初は約25億という予算でしたけれども、その後、予算が年々増えているという状況であります。

17年度以降は統合補助金ということで、ほかの事業とあわせて予算を確保しておりますが、ここに書いております予算額のおおむね9割以上が特定治療支援事業に費やされているという状況であります。平成17年度が約36億だったのがどんどん増えまして、平成24年度では約105億になっております。平成25年度につきましては、採卵を伴わないものの単価を見直したことによって、約92億に予算が減っているという状況であります。

 次、お開きください。特定治療支援事業の指定医療機関の数です。全国で570施設あります。これを都道府県別に示しております。多いほうから、東京71、愛知40、大阪38となっておりますが、少ないところを見ますと、右のほうですが、佐賀県が1か所、岩手県が2か所といった状況になっております。

 次、資料4をごらんください。「実施医療機関アンケート」ということで、各自治体を通じて調査をしたものです。まだ現時点では570施設のうち304施設しか集まっていませんので、暫定集計ということで出させていただきました。次回、もう少し集計が進んだものを出したいと思っております。

 全体の状況でございますが、全体で304施設、病院が129、診療所が175となっております。

 次をお開きください。2ページは飛ばして3ページに行きます。産婦人科医の数でありますが、上のほうに小さく、厚生労働省基準として日本産科婦人科学会の専門認定医などといった要件を示しております。これが厚労省の基準です。

 それから、学会の基準としましては、厚労省の要件に加えまして、日本生殖医学会の認定生殖医療専門医であることが望ましいといった要件が出されております。

 3ページの下ですが、産婦人科医の数です。枠の中だけをご覧ください。専従の産科婦人科専門医がいない施設が、病院が45%、診療所が21%となっております。

 日本生殖医学会認定の生殖医療専門医がいない施設が、病院が46%、診療所が65%となっております。

 次です。4ページの上をごらんください。泌尿器科医の配置状況ですが、泌尿器科医が配置されていない施設が、病院が47%、診療所が85%となっております。

 4ページの下、看護師の数ですが、不妊治療に専従の看護師が配置されている施設が、病院が36%、診療所が67%といった状況です。

 5ページの上をご覧ください。専門看護師の数ですけれども、日本看護協会認定の不妊症看護認定看護師が配置されている施設は、病院が26%、診療所が10%、母性看護専門看護師が配置されている施設が、病院が8%、診療所が3%となっております。

 その下、胚培養士ですけれども、専従の胚培養士が配置されている施設は、病院が62%、診療所が79%となっております。

 6ページをご覧ください。6ページの上ですが、いわゆる不妊コーディネーターが配置されていない施設は、病院が57%、診療所が53%です。

 その下がいわゆる不妊カウンセラーです。不妊カウンセラーが配置されていない施設は、病院が47%、診療所が39%となっています。

 7ページの上をごらんください。こちらは記録についてです。厚生労働省の基準では、「不妊治療に係る記録については、保存期間を20年以上とするのが望ましい」と書かせていただいておりますけれども、保存期間が20年以上の施設が約52%といった状況です。治療成績のデータを集計している施設が96%、その集計結果を公表しているのが65%といった状況になっております。

 資料5をご覧ください。今度は自治体の普及啓発等々の取り組み状況であります。

 資料5の1ページの下ですが、こちらも一番上の枠の中に要点でまとめておりますので枠の中だけをご覧いただきたいのですが、まず、周知・広報については、広報誌やホームページによる周知は全ての自治体でやっているけれども、不妊専門相談センターや医療機関の待合室での周知を行っていない自治体が1割以上あったということでありまして、この辺の周知も徹底していただきたいと考えております。

 2ページをお開きください。不妊に関する正しい知識の周知・広報ということであります。これは、実施要綱で周知・広報をしてくださいというのを自治体にお願いしておりますけれども、実際、不妊に関する正しい知識を周知・広報している自治体は5割もないといった状況であります。

 2ページの下、申請者からの苦情ということでありますが、ほぼ半数の自治体で「制度を知らなかった」「もっと早く知りたかった」といった苦情を受けております。そういった意味でも、この特定治療支援事業の周知をしっかりやっていただく必要があると思っております。

 それから、3ページですが、医療機関の指定のときの自治体の審査でありますが、3ページの上、6割程度の自治体に新規指定時に専門家による現地調査を行っています。厚労省の要綱では、専門家に現地に行ってくださいとまではお願いしておりませんが、6割の自治体がやっていただいているといった状況であります。

 それから、3ページの下、再審査のときでありますが、約7割の自治体が再審査時に専門家による現地調査を行っているといった状況です。

 それから、前回、指定の取り消しを行った医療機関があるかどうかという御質問がありましたが、それに関係しまして、3ページの一番下ですが、「再審査により指定の取消を行った医療機関がある」自治体が5自治体ありました。それぞれ確認しますと、新規の指定のときには要件を満たしていたので指定したけれども、再審査のときに要件を満たさなくなったということで指定を辞退されたものなどであります。

 次、4ページをお開きください。申請から支給までの平均処理日数でありますが、これも自治体によってばらつきがありまして、14日以内の自治体が6.5%ある一方で、60日以上の自治体も2.8%ありました。15日から60日の間に9割の自治体が集中しているといった状況であります。

 資料6をご覧ください。資料6は、2010年の日本産科婦人科学会の医療機関別の年間の体外受精の実施数であります。右のほうが多いものですけれども、年間1,000件以上の医療機関が52施設ある一方で、一番左のほうですが、10件以下といった医療機関も61あるといった状況であります。

 次をお開きください。資料7ですけれども、こちらは母子保健課のほうで調査いたしました「諸外国における体外受精に対する経済的支援の状況」であります。上から4列目と5列目の欄をご覧いただきたいのですが、対象回数と対象年齢であります。横にざっと見ていただきますと、対象回数につきましては、2回、3回、4回といった、ここに掲げた国は全て2回から4回の中に入っているといった状況であります。その下、対象年齢でありますけれども、カナダのオンタリオ州が制限なしというのを除けば、それぞれの国で年齢制限を設けております。低いところでは39歳以下、上のほうでは44歳以下といった制限がございます。

 次をお開きください。資料8、第1回の検討会で委員の皆様からいただいた意見を簡単にまとめたものです。まず、1ページの上ですけれども、「妊娠や不妊等に関する普及啓発の内容、手段等」です。「患者は、卵子の減少、劣化等の知識を十分に持っていない。若い方に対して、こういった知識について周知することが必要」といった御意見がありました。それから、「職場における適切な知識の普及、妊娠等に対する理解とサポートなどが必要ではないか」、「男女ともに知識を持つべき」といった御指摘をいただきました。

 それから、次の「◎不妊専門相談センター」ですけれども、「自治体と民間の連携が不足している」とか、「相談窓口を見つけにくい場合がある」、「働いている方は利用しにくい」といった御指摘をいただいております。

 1ページの下のほう、「特定治療支援事業の助成対象範囲や給付水準」についてですが、「最近は身体的負担の少ない方法もあるため、助成期間を短縮するのであれば、1年当たりの回数については必ずしも制限を設ける必要はないのではないか」

 2ページをご覧ください。「妊娠できる方のほとんどは最初の2年くらいで妊娠すると考えられるため、そのあたりに手厚く助成を行うことが望ましいのではないか」、「5年も不妊治療を行う場合、身体的、心理的、経済的な負担が大きいため、助成期間は2年程度がよいのではないか」、「不妊の原因や背景によっては2年以上かかる方もいるので、そのような方々を拾い上げる仕組みも必要ではないか」といった御指摘をいただいております。

 次の「助成対象年齢等」についてですが、2つ目の○ですが、「特に妊よう率が下がるのは4243歳であるし、現在4243歳で助成期間が終わるため治療をやめる方が多いので、そこを一つの区切りとしてはいいのではないか」それから、「公的助成事業としてある程度の年齢制限を設けることは必要だと思うが、それが高齢の場合は絶対に治療してはいけないという空気になってしまうことは問題である」それから、次、「年齢制限を設けることはやむを得ないだろう。印象の問題だが、42歳くらいかなと思う」その次、「年齢制限はやむを得ないが、改正について周知が必要であり、また、支給総額が余りに減ってしまっては問題である。年齢制限については、患者のことを考えると4243歳くらいがいいのではないか」といった御指摘をいただいております。

 3番、実施医療機関の人員要件などですが、2つ目の○ですが、「医療機関の質は、おそらく治療周期数に比例しているので、助成対象となる施設のハードルを少し上げる必要があるのではないか」

 その次、「母性看護専門看護師等については、その数がまだ十分ではないが、ある程度の知識と経験を持った看護師を専任で置いたほうがいい」といった御意見。

 その次ですが、「看護師の質の向上が重要なので、年間の採卵件数500件以上の施設は認定看護師を置いた方がいい」といった御指摘。

 その次、「全施設にカウンセラーを配置するのは現実的ではないが、カウンセリングを受けられるような状況になるよう現実と折り合いをつける必要があるのではないか」といった御指摘をいただいています。

 それから、下から2つ目ですが、「生殖医療専門医は既に400名を超えているため、要件に加えるべき」

 最後ですが、「生殖医療専門医がいない県もあるので、要件はきめ細やかに決める必要がある」といった御意見です。

 資料9については、前回と大きく変わっておりませんので省略させていただきます。

 以上です。

○吉村座長 ありがとうございました。

 前回の御質問にも答える形で事務局から御説明をいただきました。

 それでは、前回の質問の中で、齊藤委員、提出の資料を御説明していただけますでしょうか。

○齊藤委員 前回のときに鶴田先生から質問を受けて、ある図がわかりにくいと言われました。それは出産した方を分母に持ってきたときに、34歳以下で治療を始めたグループと、35から39歳で生殖補助医療を始めたグループと、40歳以上で治療を始めたグループが何回目の治療でどの程度妊娠するかを、累積分娩率で示しました。それを今回は、治療を行った症例数を分母に持ってきました。そうすると、このグラフを見ていただきますと、34歳以下で始められた方では、45人いらっしゃるわけですが、そのうち31人が分娩されました。その分娩された方の治療回数で検討しますと、青で示されますが、1回目で分娩されているのは3割です。2回目で4割近くなって上がっています。それで、五、六回目ぐらいから累積分娩率はだんだん横になっていくという感じです。それから、35から39でこの治療を始めた方の治療回数の累積分娩率を見ますと、3回目の治療までは急速に上がりますが、4回目ぐらいから徐々に上がりが鈍くなってきます。でも、39歳以下の両群ではその後もこのように徐々に上がっていきます。40歳以上からこの治療を開始されますと、11回以上の治療で出産に至った人が1人いるのですが、それ以外の治療は3回目までに分娩されています。このように高齢で治療を開始すると、回数を重ねてもなかなか妊娠しないという結果です。生殖補助医療を始めた年齢別の累積分娩率がよりわかりやすくなったかなと思います。いかがでしょうか。

○鶴田委員 大変わかりやすい資料を作っていただきまして、ありがとうございます。これを見ると、年齢によって違うけれども、3から5回ぐらいが一つの区切りかなという感じはします。

○齊藤委員 やはり効率を考えますと、治療が3から5回の時期に急速に上がっていきます。また、若い方ですと、その後も上昇率は低くなりますが、回数を重ねるとある程度上がっていきます。ただ、高年齢の方は、ある程度のところで、僕は3回だと思っているのですが、3回ぐらいでほとんど頭打ちになる傾向も見られると思います。

○吉村座長 よろしいでしょうか。

○鶴田委員 別の質問をよろしいですか。

○吉村座長 どうぞ。

○鶴田委員 私は、前回の会議で2つ意見と質問をしました。1つが今の資料についてで、もう一つは泌尿器科医の問題を指摘しました。資料4の診療所の泌尿器科医が15%は多いと感じました。資料6の「年間体外受精実施数の状況」というのを見ると、1,000件以上というのが52施設あって、資料4304施設から見ると17%ということになろうかと思うのですが、私は、こんなに泌尿器科の先生が病院・診療所におられると思わなかったものですから。もし今後、泌尿器科医の配置基準を決める場合は、取り扱い件数によって基準がある程度変わってもいいのかなという感じがします。それは、産業医の場合も、従業員数が何名以上で常勤で置くとか、50名以上は非常勤でもいいから置くとかそういう基準がありますので、その取り扱い件数に応じて、やはり多く取り扱うところはそれなりの基準をつくるとか、そういう考えがあってもいいのかなと思います。それは看護師さんについても、いろいろな専門職についてもそうだと思います。ただ、逆に、少ない地域でも配置基準を厳しくしたときに、例えば先ほど佐賀県では1施設しかないといったときに、佐賀県では受けられないという事態は避けるべきかなという気がしました。取り扱い件数による基準というのもあり得るのかなという感触を持ちました。意見です。

○吉村座長 御意見ありますか。

 泌尿器科のことについては、必ずしもARTを行っている施設が泌尿器科があるということではないという御理解でいただきたいと思います。大学病院などは、恐らく泌尿器科は必ずあるのですが、そういった施設はARTは余り行われていないという現状がありますので、これは泌尿器科の先生方とパラレルではないということだけは御理解いただきたい。その点につきましても、施設の基準のところでまた考えていきたいと思います。

○鶴田委員 今言ったのは、診療所の泌尿器科医が1人以上というのが15%なので、そんなに多いのかなという感触を持ったということです。

○吉村座長 それでは、松本委員のほうから、この前の御質問について御説明いただけますか。

○松本委員 私のほうでプレスリリースを資料として出させていただいておりますが、時間がないと思いますので簡単に要点だけお伝えさせてください。

 このアンケートは、転院する理由はということで560名から集めたアンケートです。患者が求めているものは一体何だろうということを探ったわけなのですが、私たちが患者として一番、体験から大事にしていることは、妊娠する、しない、できる、できないよりも、納得できる治療が受けられたかどうかということで、それが、その後の人生において非常に大きな影響を与えるものだと思っております。なぜならば、全員が妊娠できるわけではないからです。

 そうしましたときに、では、病院のどういったところを患者は大事にしているのかなということで、このプレスリリースをごらんいただければと思うのですが、4ページ目にQ3ということで、病院を選ぶ際に何を大事にしましたかというときには、やはり最初は評判だったり、口コミだったり、数字の妊娠率だったりということで選ぶことが多いようです。しかし、それでも転院することが非常に多いというデータが出ています。

 次に5ページ目の、どんなところに満足していますかというところをぜひごらんいただきたいのですが、(棒グラフの)色がピンクの部分は、人の介するところ、対応とかなのです。一番多いのが「看護師の対応」ということで54%、2番目が院内の清潔なところ、3番目が医師の対応、4番目は高度な治療で、5番目が受付や事務スタッフの方の対応ということで、やはり人の対応というところ、医療スタッフの対応を患者が非常に重視しているのだなということがここでおわかりいただけると思います。

 そして、1枚めくっていただきまして、転院の回数が9-1というところに出ていますが、2回、3回転院をしたという方が非常に多かったと思います。転院をしたことがある、あるいは検討中という方は77%、約8割の方が転院した、あるいは検討中というふうに答えていて、なかなか1件の病院で終わるということは少ないようです。

 そして、7ページ目をごらんいただきたいのですが、では、通ってからどれぐらいで転院を考えましたかという問いに、半年未満、半年から1年未満、合わせて半数以上が1年未満で転院しよう、あるいはしたという結果が出ました。

 そして、その理由なのですが、Q14番です。これは複数回答でしたから、「妊娠しなかったから」という理由を全員が選んでもよいようなところなのですが、実はそれを選んだ人は半数ぐらいなのです。つまり、半数の人は妊娠しなかったことが転院の理由ではないと答えたということになっています。それでも1番は「妊娠しなかったから」ですが、2番目は医師の対応になっています。3番目が「ここではやっていな治療を受けたかったから」、4番目が「他の病院の評判を聞いたから」など、ほかのところに転院した理由が出ております。

 その後のところの8ページ目をめくっていただいて、実際に今、治療を納得して受けていますかという問いに「はい」と答えた方が6割でした。6割の患者は納得して治療を受けることができているようです。しかし、残りの4割は「わからない」あるいは「いいえ」と答えたというデータが出ています。

 細かいことに関しましては、9ページ目にアンケートのコメントが載っていますので、お時間のあるときに読んでいただければ、患者がこんなことを考えているのだ、あるいは困っているのだというのがわかっていただきやすいかなと思いました。

 ありがとうございます。

○吉村座長 ありがとうございました。

 何か御質問ございますでしょうか。

 これは、このアンケートで不妊治療助成のことについて聞いたようなアンケートはないのですか。

○松本委員 これは転院のアンケートですので、ないのですけれども、前回の最初にお配りしたものの中で助成金が載っています。

 ありがとうございます。

○吉村座長 そのほかございますでしょうか。

 きょう、もっと議論をするつもりだったのですが、委員の先生方からの御発表が大変すばらしいものだったので、皆さんからいろいろ御質問が出まして、ちょっと時間がなくなってしまいました。きょう御欠席の島崎委員提出の資料がございますので、これを御説明いただけますでしょうか。

○内山課長補佐 委員の皆様に御提出いただいた資料の最後についているかと思います。右上に「島崎委員提出資料」と書いてあります。それをご覧ください。

 「特定治療支援事業の見直しに当たって」ということで御意見をいただいております。

 内容を読み上げます。

 「1、国民は一人ひとり人格的に自律した存在であり、自分にかかわる事がらについては、国家や他人から干渉を受けずに自らの意思で決定できる権利(自己決定権)を有しています。」

 「2、各人がある判断・選択を行うには正確な情報が必要です。」2行下ですが、「妊娠や出産、不妊等についていえば、高年齢での出産は若い方と比較してリスクが高くなること、高年齢になるほど妊娠・出産の可能性が低くなることなどにつき、国が正確な情報を国民にわかりやすく伝えることは非常に大切なことだと思います。」

 「3、体外受精などの費用を助成する特定治療支援事業については、公費を財源とした事業であり、そのことを踏まえた適切な運用を図るため、所要の見直しが求められることは理解できます。」

 裏でございますが、「4、ただし、妊娠や出産は極めて私的な領域であることから、基本的に国民一人ひとりの判断・選択が尊重されるべきであり、国が私人の自由な選択に介入することが許されないことはもとより、そのような印象を与えないように配慮する必要があります。たとえば、今回の特定治療支援事業の見直しに当たっては、助成対象に一定の年齢制限を設けることの是非も論点に上がっていますが、仮に年齢制限を設けるにしても、それは特定治療支援事業のあり方の枠内の問題であって、高年齢で出産することは許されないといった受け止め方がなされないよう丁寧な説明を行うことが必要だと思います。」

 「5、また、事業の見直しに当たっては、助成対象範囲の見直しだけではなく、不妊治療を受ける方々の視点に立って、支援の充実や不妊治療の質の維持・向上のための方策についても検討する必要があると考えます。」

 以上です。

○吉村座長 非常に重要な御指摘だと思います。オートノミーということは我々が考えていかなければいけないということだと思いますし、原則的に倫理の原則といいますと、他者危害を与えなければオートノミーは最大限に尊重されなければならないということもあります。それから、こういったことに関して国から干渉を受ける、要するに、そういうことがなく、みずからで決定できるように、こういったことを国民に対してわかりやすくこの委員会も示していく必要があるだろうというふうに思います。ただ、これには医学的な観点からの考察も必要であるということをわかっていただくことも大事です。この支援事業というのは、いつ切るか、いつ治療をやめるかということに対しても重要な決定を与えるということもありますので、委員の先生方はおわかりになっていると思いますが、その点を考慮して今後の意見を集約していきたいと思っています。

 この委員会もいろいろなことを言われておりますけれども、高齢出産をしてはいけないということを言っているわけでは決してないということです。40歳以上の人たちが妊娠するということを絶対にやめなさいということを言っているわけでもないということ、それは委員の先生方はよく御理解されていると思います。この点を考慮に入れながら、よりよき支援制度というのをつくっていきたいというふうに思っておりますので、今日は議論はできませんでしたけれども、もう少し十分な時間をとってまた議論もしたいと思います。

 では、事務局のほうから次回のことを連絡いただけますでしょうか。

○渡利課長補佐 次回の検討会の日程につきましては、追って連絡させていただきたいと考えております。よろしくお願いします。

○吉村座長 どうぞ。

○内山課長補佐 本日はありがとうございました。委員の皆様から御意見をいただく時間がとれませんでしたので、資料をごらんいただきまして、御意見等がございましたら事務局のほうにメールなり電話なりでいただければと思っております。よろしくお願いいたします。

○吉村座長 それと、きょう、見尾先生のデータがちょっと違っておりましたので、新しいデータのものを次回に用意していただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

○内山課長補佐 はい。

○吉村座長 では、最後にぜひともということで御意見の方。

 小崎先生、何かきょうの御感想をどうぞ。

○小崎委員 先ほど、教科書を拝見したのですが、以前と比べてとてもよくたくさんのことが記されているのですが、やはり先ほども委員の方がおっしゃっていましたが、生物の仕組みを含めて、遺伝の仕組み、それから、元気なお子さんが生まれることもあるし、いろいろな障害を持ったお子さんも生まれる、そういったことも含めて妊娠、出産、育児というところにぜひつなげていけるような教育というのを入れていただきたいなと思いました。

○吉村座長 ありがとうございます。

 小児科の先生の協力も必要です。小学校から、高校ではもう遅いというふうに私は認識しておりまして、生理が始まる前から教育していくことがすごい大事だと思いますし、ヨーロッパなどでは月経が始まると必ず産婦人科に行くという、マイ産婦人科を持つというような制度もヨーロッパでは普通に行われているわけですし、日本がそういった成熟した社会になっていくということをこの委員会からも発信していきたいと思います。委員の先生方の御協力をよろしくお願いいたします。

 きょうはありがとうございました。


(了)
<照会先>

雇用均等・児童家庭局母子保健課母子保健係

電話: 03-5253-1111(内7938)

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