ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 原爆症認定制度の在り方に関する検討会> 第21回原爆症認定制度の在り方に関する検討会議事録(2013年6月11日)
2013年6月11日 第21回原爆症認定制度の在り方に関する検討会議事録
健康局総務課
○日時
平成25年6月11日(火)14:00~16:00
○場所
厚生労働省6階共用第8会議室
○議題
1.開会
2.議事
(1)制度のより詳細な検討について
(2)その他
3.閉会
○議事
○榊原室長 開会に先立ちまして、傍聴者の方におかれましては、お手元にお配りしています「傍聴される皆様への留意事項」をお守りくださいますようお願い申し上げます。
これ以降の進行は、神野座長にお願いいたします。
○神野座長 それでは、ただいまから第21回を数えましたけれども、「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」を開催させていただきたいと存じます。
委員の皆様方には、大変お忙しいところ、また、何分にもうっとうしい季節になりましたが、御参集いただきまして、本当にありがとうございます。伏して御礼を申し上げる次第でございます。
私、体調を崩しておりまして、声が出なくなるかもしれません。お聞き苦しい点があるかもしれませんが、お許しいただければと思います。
それでは、議事に入ります前に、事務局から委員の出席状況の報告と資料の確認をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
○榊原室長 本日の出席状況でございますが、高橋滋委員、三藤委員から欠席との連絡をいただいております。
次に、お手元の資料について御確認をさせていただきます。
議事次第、資料一覧に続きまして、資料1「第20回検討会における主な発言」
資料2「議論のポイントと各方向性の整理表(集約版)」
資料3「原爆症対象疾病の考え方について」
資料4「原爆症認定制度に係る司法判断の状況について(改定版)」
資料5「判決における裁判所の判断について」
資料6「その他の論点」でございます。
資料に不足、落丁がございましたら、事務局までお願いいたします。大丈夫でしょうか。
それでは、カメラ撮りはここまでとさせていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
(報道関係者退室)
○神野座長 どうもありがとうございました。
前回の検討会では疾病に関する議論を頂戴いたしました。委員の皆様方からさまざまな御意見や御指摘を頂戴したところでございますが、本日は、前回頂戴いたしました御指摘などを踏まえながら、引き続き疾病をめぐる議論を深めてまいりたいと考えております。
本日は、前回の検討会でまだ議論が十分になされていなかったと思われる資料3「原爆症対象疾病の考え方について」、4以降で資料を準備させていただいておりますけれども、前回、田中委員から御依頼がございました裁判所の判断内容についての御報告、さらには、前回、経過措置のお話が委員の皆様からございましたので、「その他の論点」として、それぞれ資料を事務局のほうに作成をしていただいております。
こうした資料につきまして、事務局のほうからまず御説明いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○榊原室長 それでは、資料1「第20回検討会における主な発言」です。皆様、御確認いただければと思います。
同じ内容が資料2のほうに盛り込まれておりますので、こちらのほうで御説明申し上げたいと思います。
紙を開いていただきまして、赤字のところでございます。
1ページ目の下です。
○被爆者援護制度では、放射線の影響ということを前提にしながら、原爆症認定のレベルに達していなくても健康管理手当が支給される仕組みになっている。残留放射線の影響を見ていないという見方は、一面的に過ぎるのではないか。
1枚飛ばしていただきまして、3ページ目の右上のほうでございます。
○影響はあるとしても、客観的に残留放射線をベースにして制度をつくっていけるのか、今までの議論の中ではどうも難しいのではないか。
○疾病に基づいて司法が判断したのは、個別的に影響を与えている部分が様々にあるのではないか。それを普遍化の形で基準の中に持ち込めるのか疑問を感じている。
○(残留放射線の)影響が今、続いているかどうかの問題である。「影響がない」という「ない」の意味が、受けることもなかったというわけではなかろうと思う。
○わからない残留放射線の影響を放射線起因性ということで判断しようとすると、(対象から)外れていく人たちが出てくるのではないかという心配がある。
○原爆症認定制度の対象になる疾病というのは、出発点は放射線の影響と思う。科学的知見に基づいての放射線の影響性が認知されている疾病に限られてくるだろう。
○疫学で言われているメルクマールを基準にして、チェックポイントの説明があったが、そういう目で、今、対象にされている疾病が適当かどうかは、点検する必要がある。説明のあった視点で、新しい類型の疾病を広げていくことができれば、それにこしたことはない。
○この問題は、司法と行政の乖離で、違う考え方がいろいろ出てきていることから出発している。疾病の検討に当たってもいろいろな意見が出ていることから、どう説明していくべきかということを頭に置いて、ちゃんと納得性のあるものにしていくことに留意する必要がある。
下のほうでございます。
○放影研は「残留放射線がない」ということは一言も言っていないが、第19回検討会でそのような印象が与えられていた。
○残留放射能は考慮しましょうというのはみんなの共通認識だと思う。ただ、残留放射能を考慮することと、イコール手帳を持っている全ての人たちを認定しましょうということはやはり違うと思う。
○DS86について、 誘導放射能に関しても章を設けており、それまでの研究結果が網羅されており、その後も、広い地域にわたって放射性降下物がどこに降ったかということも含めて調査している。不正確さはあっても、誘導放射線に関しては、わかる範囲で線量推定をしましょうという形で、放影研の見解が出ていると理解している。
○放影研の調査結果に対しての批判について、(検討会は)疫学論争をやるべき場ではない。原爆症認定で残留放射線の影響度をどう見るかは、別の場をつくったとしても恐らく無理で、結局、残留放射線は無視できないが、さりとて確実にその影響度をはかる知見はないところから出発しなければいけない。
○(資料に)いろんな意味の科学的知見が出てきてしまい、何を科学的知見と言うのか。
○放射線影響に関する科学的知見というのは、国連科学委員会が定期的に出している報告書で集約されたものや、それをもとにしてICRPも独自に知見を集約してPublicationなどを出している。国連科学委員会やICRPも放射線影響、医学、物理の専門家として集まった一つのボランタリーの団体であり、そこが出しているものを科学的な知見として使っていきましょうと認識している。
続きまして、4ページ目に進んでいただきまして、下のほうです。
○今まで見てきたものを見直すことは大変。認定制度が変わったときの差が出てくるので、既得権は既得権として考えていいのではないか。ただし、対象疾病を拡大するときの客観性をどのように証明していくのかが大きな問題。
5ページに進んでいただきます。
○厚労省が裁判で主張された判断について、裁判で29回退けられたわけだが、どういう根拠でどういう理由で退けられたか、紹介してほしい。違いがわかるようなものを出してほしい。
○裁判は個別救済の性格なので、例えば糖尿病などは放射線の影響をどこまで肯定できるのか、素人の私でもかなりの問題を感じるので、疾病との関係で言えば、ある程度ギャップが残ることはやむを得ない。審査基準では距離とか時間とか線量ということを前提に認定すべきかどうかの判断をしており、全部判断基準に取り込むのは難しい。(裁判を)分析して確認することは無意味ではないが、ギャップを全部拾い上げた制度ということにはならないと思う。
6ページに進んでいただきます。
○(認定申請の)却下理由が非常に簡単で、申請した人たちに対してきちっとした説明として受け取られていなかったのではないか。もっときちっと丁寧にやりとりをしていくという配慮は今後とても大事になってくるのではないか。
という御意見でございます。
以上、資料2について御紹介申し上げました。
続きまして、資料3でございます。
これは前回出した資料でございますので、ごく簡潔に御説明申し上げます。
3ページ目に、相関性、再現性、整合性、特異性、要医療性などのメルクマールがあるのではないかということを示しておりまして、その後は、各疾病についての知見がるる書かれている。
11ページ目に「因果関係の難しさ」ということで、相関関係と因果関係の認定の難しさの資料が1枚ついた上で、最後に「論点」ということで、相関性、再現性、整合性、あるいは要医療性というのもいろいろ濃淡あるのではないかという資料でございます。
資料3は以上でございます。
続きまして、資料4「原爆症認定に係る司法判断の状況について」でございます。田中委員から御依頼のあったものでございます。
資料につきましては、まず最初のところが「集団訴訟外分における判決状況」ということでございます。裁判の各結果については、第5回の検討会でかなり詳細のものを出しております。その後の状況についてのフォローアップというのが最初の1枚でございます。
長崎地裁の民事部というところで心筋梗塞について争われた例で、国が勝訴している事例がその後、出ております。
また、広島地裁の民事部で慢性腎不全等について争われた事例で、国が勝訴しているものがございます。
また、大阪地裁で肺がん、これは入市の事実が争われた事例でございますが、国が敗訴しているものがございます。
また、大阪地裁の第2民事部で心筋梗塞について、これはしきい値がない確率的な影響と考えるのが合理的という判決が出ているものでございますが、これについて、直爆、入市それぞれで国が敗訴しているものがございます。
また、広島地裁民事3部で甲状腺機能低下症の直爆に関して、国が勝訴している事例が1つございます。
ページをめくっていただきまして、札幌地裁民事部で白内障について、国が勝訴しているものがございます。
それから3つが高裁に行っておりまして、1番のものが福岡高裁に行っておりまして、これについて国が勝訴している。
2番のものについては、広島高裁に行って、国が勝訴しているものがございます。
札幌地裁のものも札幌高裁にかかって、国が勝訴したという判決が出ております。
続きまして、5ページから7ページ「集団訴訟分における判決状況」ということでございます。前回、国が29回負けているという御発言がございました。今までの裁判は全部で35件ございます。このうち国の一部敗訴も含めて国が負けているものが29あるということでございます。それぞれ何人負けている、勝っているというものを表にしたものでございます。
これらは基本的には旧審査の方針に基づく処分に対する裁判でございますが、途中から新しい審査の方針が出てまいりましたので、どの段階で出たというのを一応わかりやすく入れさせていただくとともに、地裁、高裁、最高裁で色分けだけさせていただいております。
続きまして、8ページ、9ページでございます。これは年表でございますので、説明は省略させていただきたいと思います。
そして10ページ以下でございます。こちらは第5回の検討会にも出させていただいたものでございます。
2点変更させていただいております。
1点目は、それぞれの裁判の詳細の記載の中で、特に疾病の放射線起因性に係る判断のところを色分けさせていただいているということでございます。
見ていただきますと、例えば10ページですと、白内障、乳がん、あるいは脳出血とか肝炎等々について、以下、資料をざっと見ていただきたいと思いますが、それぞれ裁判所の認定しているところについて、赤で色分けさせていただいているということでございます。
もう一点修正がございまして、250番のところでございます。この資料を出しました後、1件だけ判決が出ておりまして、直爆4キロの子宮体がんについて、岡山高裁の判決が出ておりますので、それについて追加して記載をさせていただいているということでございます。
以上が資料4でございます。
続きまして、資料5でございます。特に今の疾病についてどういう判断をしているかという観点から、最近の事例を中心に、国勝訴、国敗訴、それぞれのものを紹介させていただいているということでございます。
2ページ目でございます。福岡高裁では心筋梗塞について争われた事例でございます。
こちらは長崎地裁の判決を引用しているので、両方入る形となっております。
まず、3ページ目を見ていただきますと、
A HS 第8報という大規模調査は、40歳未満で の 被爆者 の 心筋梗塞 の 発生率 が 増加 していることの裏付けとなるものとはいえない。
続きまして、4ページ目でございます。
1.0 シーベルト 未満又は 0.5 シーベルト 未満 の 低線量被爆 においては、心筋梗塞を 含 む 心疾患 が 原爆放射線 と関連 性 を 有 することはいまだ 明 らかにされたということはできない。
高血圧 と放射線の 関係 については、AHS 第8報 において、2シーベルト 以上 の 被爆者 において、 高血圧発生率 が 放射線量 に 伴 い 上昇 したとされているものの、それ 以下 の 被曝線量 においては 有意 な 線量反応関係 を 認 めることができない。
7ページに飛んでいただきまして、こういったものを前提に、
原告 においては、 一定程度 の原爆放射線を被爆したとの 事実 は 推認 されるものの、 他方 で、その被曝線量は 健康障害 を 生 じさせる 程度 のものとまで 直 ちにはいえないほか、 高血圧症 などの心筋梗塞の 重要 な 危険因子 を 有 するという 容易 には 無視 し難い 事情 の 存存 を考慮すると、 本件申請疾病 については、 原爆放射線被爆がその発症 を 招来 した 関係 について、なお疑いを差し挟まざるを得ないというほかはない。
という判決です。
9ページのところです。
申請対象疾病 が被爆 放射線 により 影響 を 受 けうる 態様及 び 程度 は、その 疾病 ごとに 異 なるものであるところ、心筋梗塞は、しきい値を有するとされており、 高線量 の 放射線 との 関係 では 有意 な 関連性 があるが、 低線量 の 放射線 との 関係 では 必 ずしもこれを 認 めることができない。
次のページに進んでいただきます。
この 要件 を 満 たすだけで、放射線起因性があるものと 事実上推定 されるということはできない。
という判決を出しております。
これに対しまして、11ページは、大阪地裁で心筋梗塞について、国敗訴の事例でございます。
これにつきまして、資料の14ページの手前側、小さい数字で67と書いてあるところから御紹介申し上げます。
心筋梗塞については、 原爆放射線との関連性を肯定する疫学的知見 が 集積 しており、しかも、医療 分科会 が 策定 した 新審査 の方針において、 放射線起因位 が推認される疾病に「放射線起因性が 認 められる心筋梗塞が 掲 げられていることも 考慮 すると、心筋梗塞 と放射線との関連性 については、これを 一般的 に 肯定 することができる。
次の15ページに進んでいただきまして、69とあるところの上です。
平成 22 年 に 発表した論文は、0.5 グレイ 以下 の被曝線量では 心疾患 のリスク 上昇 との 関連 が明確でなかったとしているものの、 心疾患死亡 に 対 する 過剰相対 リスクについて、線形モデルが 最 も 適合 し、 低線量域 でも 過剰リスクが あることが示唆され、しきい線量の 最良 の予想は0グレイであった。論文は、その末尾において、これから長期の 期間 の 追加研究 が 低線量 のリスクについてより 正確 な 推測 を提供するであろうとしていることからしても、心疾患と 放射線被爆 との 関連性 について、しきい 値 が 存在 しないことを 想定 しているとみるのが 合理的 である。 心筋梗塞 は心疾患の 主要 な 類型 の 一 つであることからすれば、心筋梗塞は、しきい 値 のあるいわゆる 確定的影響 に 係 る 疾病ではなく、確率的影響 に 係 る 疾病 であると 考 えるのが 合理的と いうべきである。たとい0.5グレイ 以下 の被曝線量であっても、心筋梗塞との 関連性 は 直 ちに 否定 することができないというべきである。
といった上で、16ページに進んでいただきまして、71というところの上のほうです。
赤星論文において、「 放射線治療 に 伴 う 高線量被爆 により心筋梗塞が増加する 事 に異論を 唱 える 人 はいないと 考 えられる」とされているように、心筋梗塞と 放射線被爆 との 関連性 は、 少 なくとも 高線量被曝 においてはほぼ 争 いのないところである。
そして、先ほどの論文の別表、ウエブBというものです。
高血圧性心疾患に分類されているものの相当数が虚血性心疾患又は心筋梗塞である可能性がある。 心不全 とは 心臓 の 機能不全 を 意味 する概念であることから、心不全のカテゴリーには相当数の心筋梗塞が 含 まれていると 考 えるのが 自然である。
ウエブ表Bの心筋梗塞及び 虚血性心疾患に 係 るデータを 数値 どおりに 捉 えて、 心疾患 のうち 虚血性心疾患及 び 心筋梗塞 については 放射線 との関連性がないと 結論 することは 相当 ではないというべきである。
また、同じところの右側、72というところです。
LSS第 12 報、大規模調査ですが、これも心不全については、心筋梗塞 が 相当含 まれているとみることが 自然。心筋梗塞 と 放射線被曝との関連性を否定 するには 足 りないというべきである。
同じように、
A HS 第8 報が 二 次線量反応関係 としているからといって、 直 ちに 低線量域 において 関連性 がないと結論付けることはできないし、 二次線量反応関係 であるとしても、 全線量域 において 相対リスクが1 を 下回 っていない 以上、 しきい値があるということにはならないはずである。
こうしたことから、次の部分です。
0.5 グ レイ以下の低 線量と心筋梗塞 との 聞係 については、 現在 もなお明確な証拠はなく、赤星論文も 低線量と心疾患の関連性 を 明確 に 肯定 している 訳 ではないことは被告が 主張 するとおりである。しかし、 放射線 との 関連性を有 する疾病には、しきい 値 のある 確定的影響 に 係 る 疾病 か、しきい 値 のない確率 的影響に係る疾病 かのいずれかしかないところ、心筋梗塞については、統計 学的 に 有意 とまではいえないものの、これまでに 述 ベた 各種知見 を 総合 すれば、しきい値がない確率 的影響 に 係 る 疾病 と 考 える 方 が 合理的 であることは 前述 のとおりである。
次の18ページに進んでいただきまして、75というところです。
心筋梗塞と放射線との間には 有意 な関連を認めることができ、そこに一定のしきい 値は存在 しないと 考 えるのが 合理的 である。爆心 地 から 約 2.5 キロメートルの 地点 で 広島原爆 の 初期放射線 に被爆している。その後の状況に照らしても、 健康 に影響を 及ぼす程度 の放射線を 受 けていたと 認 められる。また、 肝機能障害、白内障 など 放射線との関連が疑われる疾病に次 々にかかっている。
新審査の 方針 によれば、放射線 起因性 が 認 められる心筋梗塞が認定対象とされている。
原告は「被爆地点、爆心地点より約 3.5 キロメートル 以内の者」に該当するということで、急性心筋梗塞は原爆放射線 に 起因 する、すなわち 放射線起因性があると認めるのが相当である。
というふうに判示をしているところでございます。
続きまして、19ページでございます。東京地裁、C型肝炎、肝硬変についての判示でございます。
21ページまで進んでいただきたいと思います。
C型肝炎及び肝硬変については、昭和38年 の 輸血 の際に、C型肝炎ウイルスに 感染 し、 平成 14 年 までの 39 年間 に肝炎、肝硬変へと 進展 したものと 推測 されるところ、 感染 から 診断 までの期間が長期であって、 通常 のC 型肝炎 の 経過 と 異 なるところはないことから 考 えると、本件全証拠を勘案しても、C型肝炎及び肝硬変が、 放射線 により 進展 が 促進 されるなど、 放射線 に 起因 するものとは 認 めがたい
という判示をしております。
これに対しまして、22ページ、大阪地裁の事例でございます。
24ページまで進んでいただきたいと思います。
健康調査対象中の者2,566名について、HBs抗原と 抗体 の 測定 を 行 ったところ、HBs 抗体 の抗体陽性率に差は 見 られなかったが、HBs抗原の陽性率は1グレイ 以上 の高線量群の方が対照群よりも有意に高い。また、 高線量被爆での免疫能 の 低下 を 示唆 するものではないかと 考 えられた。
また、別の寿命調査によるものです。
肝硬変による 死亡 が放射線量により 明 らかな増加を認め、この傾向は特に若年被爆者に見られる
という報告がされております。
また、もう少し下のところです。
成人健康調査第7報をベースにしまして、慢性肝炎及 び肝硬変の1グレイでの 推定相対リスクは1.14、寄与 リスクは8パーセントである。
となっております。
また、同じページの下です。
成人健康調査1万人分のデータを見て、慢性肝疾患及び肝硬変に有意な正 の 線量反応関係 を 認 め、1シーベルトあたりの相対リスクは1.15などとなっている。
また、厚労科研費に基づくものです。
B型肝炎ウイルス感染者における 慢性肝障害 については、 被爆者 において HBV 持続感染者 の 比率 は 多 く、 原爆放射線被爆 は HBV 感染後 のキャリア 化の確率 を 高 めた 可能性 がある。また、 肝障害発症 について 被爆者 において 肝障害 が 発現 しやすい 傾向 がみられるものの、 非被爆者 との 差 は 有意 とはいえなかった
という報告がございます。
これらを総括しまして、26ページでございます。
慢性肝障害と放射線 との間には 有意 な 関連 を 認 めることができるところ、爆心地から 1.2 キロメートルという 近距隣 で 被爆 している。また、 数週間 にわたり爆心地から2~3キロメートルにある 小屋 で 暮 らしている。あるいは 旧審査の方針 における 推定被曝線量 よりも 多 い 相当程度 の 外部被曝及 び 内部被曝 を 受 けていた 可能性 がある。あるいは 放射線 の 影響 が 大 きいとされる 若年時 に 被爆 している。新 審査 の 方針 によれば、「 放射線起因性が認められる慢性肝炎 ・ 肝硬変」 が 積極認定 の 対象疾患 とされているところ、 原告 は「 爆心地 より 約 3.5 キロメートル 以内 である 者」 に 該当 することを 考慮 すれば、 原告 の 慢性肝炎は、原爆放射線 に 起因 する
という判示をしております。
続きまして、28ページでございます。甲状腺機能低下症についての判断ということで、広島地裁のものでございます。
これにつきまして、29ページでございます。
原発性甲状腺機能低下症 の 診断 のガイドラインでは、検査所見として、遊離T4低値、TSH高値を示す場合に診断される。この検査結果によれば、原発性 甲状腺機能低下症の検査所見である 遊離T4低値、TSH高値を示しているとはいえず、甲状腺機能低下症に罹患している認めることはできない
という判示でございます。
これに対しまして、千葉地裁のものでございます。
33ページでございます。
I AEA とWHO は5 Gy 以上 の高線量被曝では 甲状腺機能低下 が 現 れることを 示唆 している。甲状腺刺激ホルモンは 増加 する。10- 20 年後 でさえ 機能低下 を 伴 う 甲状腺 の萎縮を 起 こすことがある。
下のほうです。
放影研 の 剖検症例中 155 例 に橋本病の 存在 が 確認 されたが、 発生率又 は 被爆時年齢 と 放射線 との 関係 は 認 めていない。
その下です。
被爆時年齢20 歳以下 を 対象 とした調査では、100 rad 被爆群と0rad 群 との間に、血清THS 及 びサイログロブリンは 差 がなかったと 報告 している。また、 広島 の 原爆 で 爆心地 から 1.5km 以内 の 直接被爆者6,112名と3 km 以遠 の 直接被爆者3,047名 の TSH 値 を 検討 した 結果としまして、被曝線量の増加 とともに 機能低下症 が高率となった。機能低下症の症例のマイクロゾーム 抗体陽性率 は、 1. 5km 以内群 においては、対照群に比して、 男女 ともいずれも 著明 に 低率 であった。
甲状腺機能低下症 の 発生頻度は、低線量群に有意 に高く、 10 歳代 ないし 30 歳代 に被爆した群に 高 く、 特 に 女性 に 多 かったと 報告した。また、長崎市西山地区住民における甲状腺機能 では、freeT4は 正常範囲内では あるが、対照群に比して有意に低下しており、この差は 被爆時年齢 20 歳以下 の 集団 で 顕著 であった。
その下、マーシャル 群島 の 住民についてでございます。
甲状腺機能低下症 の 発生率 の 上昇 が 認 められた。しかし、 上記調査 では、 被曝線量が古い線量基準に よって 行 われているため、 線量 の信憑性に 問題 があり、 精度 に 欠 ける 点 がある。
35ページに進んでいただきます。
長崎成人健康調査1,745名をもとに、甲状腺機能低下症 の 発生頻度 は、0rad 群 で2. 5 %、全体で4.5% と 有意 の 増加 があった。 被曝線量別 に 見 た 場合 、1ないし 49 rad 群 のみが0rad 群 に 比 して 有意 な 増加 を 認 めた。 原因別 に 分 けた 場合 では、 橋本病 によるものが 有意 な 増加 を 認 めた。 線量別 で 見 た 場合 も、1ないし49rad 群 のみに 有意差 を 認 めた。
という報告がございます。
続きまして、36ページでございます。これも長崎の成人健康調査の対象者2,856名をもとにしております。
抗体陽性特発性甲状腺機能低下症 については、 有病率 と 線量 との 関係 が 認 められた。ただ、がんと抗体 陽性特発性甲状腺機能低下症 を 除 いて、有意で 単調増加 な 線量反応関係 が 認 められた。
ということでございます。
続きまして、38ページまで進んでいただきまして、これも成人健康調査をベースにしたものでございます。
最近の長崎における 成人健康調査 での 甲状腺疾患 の 発生率調査 では、 自己免疫性甲状腺機能低下症 の凹 型 の 線量反応 を 示 したが、 甲状腺機能低下症について、比較的低い線量の外部放射線被爆 の 影響 は 不明瞭 である。
というのが出ております。
続いて、39ページでございます。これも成人健康調査をベースにしております。
甲状腺自己抗体陰性甲状腺機能低下症 は 線量 に 関連 していなかった。 自己免疫性甲状腺疾患 については、 甲状腺自己抗体陽性率 と 甲状腺自己抗体陽性甲状腺機能低下症 のいずれについても、 有意 な 放射線量反応関係 は 認 められなかった。この 結果 は、ハンフォード原子力発電所からのヨウ素1 31 に 若年時 に 被爆 した 人 々に 関 する最近の報告結果 及 び 被爆者 に 関 する 以前 の 疫学調査報告と一致している。
40ページでございます。これは文献レビューでございます。
医療用放射線 による 高線量の頭頚部被爆 は 甲状腺機能低下症 の 原因 となるが、 総量 のしきい 値 は 不明。放射線災害 では線量との 関係 を 検討 した 報告 は 少 ないが、現在のところ、 甲状腺自己抗体 に 関 しては 線量 との 有意 な 関係 を 認 めた 結果 とそうでない 結果 があり、 今後 の 長期的追跡調査 が 不可欠 である。 一方、自己免疫性甲状腺機能低下症 と甲状腺 機能低下症に関しては線量 との 関係 は 否定的 な結果がある。 原爆 に 関 しては、 自己免疫性甲状腺機能低下症 において 線量 との 有意な関係を認めた初期 の 結果 は、その 後 の 再調査 により 否定的であり、甲状腺自己抗体陽性率 と 甲状腺機能低下症では、甲状腺被曝量との関連性 はこの 15 年間 の 文献 では認められていない。
こうしたものを総合しまして、41ページでございます。
自己免疫性甲状腺機能低下症 については、前期の 森本、長瀧、横山 の 各報告、 その 後 の 研究 に関する 井上論文、長瀧論文、山田論文が放射線 との線量 反応関係 を 認 めており、 特 に0.7Gyの被爆量においてピークを 示 す結果となっている。
今 泉論文 は、甲状腺 自己抗体陽性率及 び 甲状腺自己抗体陽性 の 甲状腺機能低下症 について有意な線量反応 関係 が 認 められなかったことを 明 らかにし、それ 以前 に 甲状腺機能低下症 と原爆症との 関連性 があることをうかがわせる調査を 否定 している。 山下論文 は、 今泉論文 の 正確性 を 是認 し、 長瀧論文 を 否定 したものであると 結論 づけ られる。
42ページに進んでいただきます。
今泉論文 においても、 甲状腺機能低下症 の 放射線 との 関連性 を否定する 知見 をすべて 否定 するものではないというべきである。また、 山下論文 は、 上記 の 今泉論文 を 根拠 に 甲状腺機能低下症 について 甲状腺被曝線量 との 関連性 は 認 められていないとするものに 過 ぎない。
以上 から すれば、自己免疫性甲状腺機能低下症 と 原爆放射線 との 間には関連 があるとする 科学的知見 は、 現在 においても 否定 しきれるものではなく、 関連性 を 有 すると 解 するのが 相当 である。
自己免疫性 ではない 甲状腺機能低下症 については、 明確 に 原爆放射線 との 関連 を 認 めた 研究結果 は 現 れていないが、 長瀧論文中 には、マーシャル諸島の 核実験被曝 の 子 どもには、 10 年以内 に甲状腺 機能低下症 が 認 められ、その 多 くが 自己免疫型 ではなく、その 甲状腺 の被曝が 外部被曝よ りも 内部被曝 であるとされている。そして、その 内部被曝線量 は、 甲状腺機能低下症 にある 被爆者 における 原爆か らの 直接の外部被曝線量 よりも 高 いとされている。自己 免疫性 でない 甲状腺機能低下症 についても、 原爆放射線 との 関連性 があるものとして、 原爆症認定 における放射線起因性の認定判断を行うのが相当である。
44ページです。
甲状線機能低下症 については、 低線量 で 発症率 が 有意 に 高 いとの 知見 がある 他 、 男性 より女性の 方 が 発症率 が 高 く、また、 被爆時年齢 20 歳未満 のグループにリスクが 増加 するとの 知見 もあるところ。 原告 は、特に判定の妨げとなる積極的な 障害事由が見当 たらない。また、改 訂後 の 新審査の方針 では、「 原爆投下 より100時間以内に爆心地から2Km以内に入市した者」の「放射線 起因性 が 認 められる 甲状腺機能低下症」 についての 申請については、反対すべき事由 がない 限 り 放射線 との関連を積極的に 認定 するものとされていることなどを 総合的に考慮すると、放射線起因性があったというふうに認めている。
ということでございます。
以上が資料5でございます。
最後に資料6「その他の論点」ということで、A3のものも大分議論が出てまいりましたが、若干議論が余りされていないということで、資料を用意させていただいております。
(他の社会保障制度との調整)
●社会保障制度の整備状況や被爆者に対する援護の措置の拡大状況を踏まえた手当水準や既存制度との総合的な調整について。
(経過措置)
●手当のあり方を見直した場合、既存の受給者の取扱について。
以下、これまでの被爆者施策を拡充してきた歴史、あるいは社会保障制度が発展してきた歴史などの資料をつけておりますが、以前出したものでございますので、説明は省略させていただきます。
以上でございます。
○神野座長 どうもありがとうございました。
それでは、委員の皆様方から御意見や御質問を頂戴したいと思いますが、とりあえず効率的にやるためには、前回頂戴いたしました議論をまとめたもの、資料1及び2について、特に何か御意見があれば頂戴しておきたいと思いますが、よろしいですか。こんな議論が行われたということで、まとめさせていただいたものでございます。
それでは、よろしければ、きょうの議論のために事務局のほうで用意をしていただいております3以下の資料に基づいて、御議論を頂戴できればと思っております。どこからでも結構でございますし、また、できれば前回出していただいた経緯もございますので、3などの資料から御意見を頂戴できればと思います。いかがでございましょうか。
○荒井委員 資料4について質問です。
これは集団訴訟以外の分と集団訴訟の分についての判決状況を整理してくれているんですが、この対象になった案件が、審査の方針の旧版のもとで厚生労働省の却下処分が行われたのが争われた事件なのか、新しい審査の方針のもとでの却下処分の当否が争われた案件なのか、それはこの表では何か区別できますでしょうか。
○神野座長 これは事務局のほうからいいですか。
○榊原室長 この表上は区別できない形になっています。
○荒井委員 時系列で新しい審査の方針の検討が行われたというのがどこかの表にありまして、それから後の裁判の案件は全部、新しい審査の方針のもとでの処分の当否が争われたというわけではないのですね。
○榊原室長 違います。審査の方針が出た後になされたものは、当然新しい審査の方針に基づいていますが、1枚目に入っているやつが全て新しい審査の方針に基づくものではございません。
○神野座長 よろしいですか。
○荒井委員 はい。
○神野座長 いかがでございましょう。田中委員、どうぞ。
○田中委員 私がお願いした裁判所の判断について、詳しくいろいろ説明していただきましたけれども、例示されているのが、それぞれ一つずつなわけです。
私は何回も申し上げましたが、例えば心筋梗塞について言うと、政府側が負けたのと原告が勝ったのとでは数が圧倒的に違うわけです。ここに例示されているものは、今の積極的認定の疾病に入っているものだけですね。それ以外のものはどうされるかということも含めてお答えいただければと思います。
○神野座長 これは事務局にお願いしていいですか。
○榊原室長 どうするかは、まさに今後どういう議論をやっていくかというところだと思いますけれども、一応全体は見えるようにしたつもりでございますので、それももとに、前回は今の疾病についてどうするかということだったので、それだけが出ている状況でございますが、また、今後必要に応じて。
○田中委員 ここに書いていない疾病については幾つか例にできるかということです。
ここで挙げられているのは、既にもう認定の基準の中に入っている、積極認定に入っているものですね。
そうでない疾病も幾つか勝敗があった。勝敗というのは変ですけれども。
○榊原室長 裁判の判断のほうは全部入っております。
○田中委員 大きいほうはですね。
○榊原室長 大きいほうは全部入っています。
こちらの判決のほうは、要は、新しい審査の方針に基づいたものを中心にしまして、最近の事例を紹介している。それは前回、今の疾病についてとりあえず出してくださいということでしたので、今の疾病についてとりあえず出しているということでございます。
○田中委員 2番目のお願いは、それぞれ幾つの、例えば心筋梗塞は政府側が勝訴したのは1つぐらいしかないのです。あとは圧倒的に原告が勝訴している。ですから、理由は、こうやって2つ並べるとフィフティー・フィフティーのような感じを受けるのですけれども、実際中身はそうでないので、例えばどれくらいが政府が勝って、どれくらいが原告が勝っているかというのを数でちょっと説明いただければと思うのです。
○榊原室長 手元にはないのですが、整理してみます。
○田中委員 今、申しました心筋梗塞は、政府が勝訴したのは何件、原告側が勝訴しているのは何件、それから甲状腺機能低下症の場合は、政府が勝訴したのが何件、原告が勝訴したのが何件というふうに見せていただければいいかなと思っています。
できたら、原告が圧倒的に勝訴しているのが多いですから、勝訴の判決の根拠の例示を2つぐらい出していただければいいかなと思ったりします。
○神野座長 今すぐに対応は無理ですか。
○榊原室長 ちょっと難しいと思います。
○神野座長 では、次回、これをお願いします。
○榊原室長 はい。
○神野座長 あと、いかがでございましょうか。高橋委員、どうぞ。
○高橋進委員 今、せっかく出たので、心筋梗塞でちょっとお伺いします。
資料3の9ページで心筋梗塞についての記述がありますが、田中委員は厚労省側の記述そのものには同意されないということでしょうか。
○田中委員 厚労省側は裁判でもこれを主張された。この主張で裁判で負けているわけです。それが乖離ということになっていて、乖離をどうするかというのがこの検討会の一つの課題でもあるわけですから、9ページに対して、裁判がどういう言い方、それではまずいよ、こういう認定の仕方をしなさいよと言っているかというのを例示していただきたいということを前回、私のほうからお願いしたのです。
それぞれ一つずつ出てきていますけれども、数が圧倒的に違いますので、今度それも示していただければというのが私のお願いです。
○高橋進委員 そうすると、資料3で幾つか疾病がありますけれども、今、心筋梗塞の例がございましたが、それ以外の記述で特に違和感があるところ、それからここに載っていないもので、載せるべきではないかという具体的な御主張はありますか。
○田中委員 ここで書いてありますのは、政府側、あるいは草間先生などもおっしゃっていると思うのですが、科学的知見というのがあります。それは放影研がDS86なども含めてずっと調査してきた結果がございます。それに基づいてこういう判断をすべきだというふうに出していらっしゃるのだと思うのです。
裁判は、それだけではだめだというふうに一貫して言っているわけです。だから、なぜだめと言っているかということが私たちにとっては重要なのです。
前から私が申し上げていたのは、放射線の認定は、個別被爆者の認定をしていくわけです。ところが、個別被爆者の線量というのは、今の場合ですと、特に近距離の直爆被曝の人と、その人たちの若干の誘導放射線の影響とか、そういうのでしか推定できないわけです。
ところが、裁判はそこだけにとどまっていないわけです。被爆者の被爆はいろいろあって、残留放射線、特に入市した人、遠距離での被爆者でも、症状を見ていけば原爆症と認定すべきでないかということも含めて判断をしているわけです。
だから、これだけでは原爆被爆者の原爆症認定はできないのではないか。これだけでやろうとしたら、新しい制度をつくるしかないのではないでしょうかというのが私の意見です。
○神野座長 高橋委員の御質問は、お答えが可能であればということで構いませんが、挙げられている疾病で、特に科学的知見と、今のおっしゃったことで言えば、これがだめだと裁判官が言っていることとの乖離が激しいところ、お気づきのことがあればということと、これに載っかっていない疾病でそういうことをお感じになる点があるかどうかということ。
それだけでいいですか。
○高橋進委員 そうです。
それを御質問申し上げた趣旨は、今おっしゃったように、被爆者の方がどのくらい被爆されておられるかということについての事実を争うものと、それから疾病そのものが放射線の影響によるものなのかどうかを争うものと2つに分けられると思うのです。
事実関係についての判断、例えば町に入った、入らない、あるいは入っていた時間が実は長かったとか、そういう事実を争うものは、事実関係を突き詰めることによって判断が分かれてくる可能性がありますが、一方で、線量に応じて病気が出てくるもの、あるいはそこに関係ないもの、疾病については知見を積み上げて、それで共通のベースをつくることが必要なのではないかというふうに思うのです。
ですから、どのくらい被爆したかということは別に置いておくとして、放射線と病気との関係については、例えば資料3のようなものをさらに精緻にしていってつくれば、それが共通のベースになっていくのではないかというふうに思うのです。
ですから、心筋梗塞について一番意見の相違が大きいということであれば、まず、具体的にそこはどういう違いがあるのかということをもうちょっと詰めればいいのかもしれません。あるいはそれ以外のところについても意見の隔たりがあれば、それは具体的にどこが違うのかということを詰めていったら、だんだん違いがさらにわかってきて溝を埋められるのではないか、そういうことなので御質問を申し上げたのです。
○神野座長 ありがとうございます。
可能であればということで構いません。
○田中委員 今の場合は、特に原爆の被爆者を対象にした放射線の影響についてのデータをたくさん持っているのは放影研なわけです。放影研が疫学調査をやっていく。国際的にもかなり信用されるということはあります。
いろんなことがまだ不確定な部分もありますので、ただいまの段階での考え方ということで出されていくことについては、それはそれで私どもも認めないわけにはいかない。
一方では、ICRPで防護のための基準というのが出されていますけれども、防護のための基準を認定に当てはめてくるのはおかしいのではないですかというのが一つです。
それから、ICRPの基準がいいかどうかというのも今、議論の対象になっております。だから、そのことに疑問を持ったままで私たちは対処したいなというふうに思っています。
○神野座長 高橋さんの質問は、具体的に少し提案というか、抽象度を低めるのかな。具体性を高めた段階でどういうことが何かあればということですね。
○高橋進委員 そうです。
○神野座長 そうすれば、少し生産的に議論が展開できるのではないかということなのですが、今、心筋梗塞については、一応事務局のほうでもつくってもらうことになっておりますけれども、ほかの疾病についても、例えば特にこの疾病はとかという相互の違和感があるものがあるでしょうか。相互の違和感というのは変だな。
○田中委員 これは総合的な判定の仕方になっていますね。だから、一つ一つについて、これはおかしいとかということをきょうはできないのですが、どう言ったらいいでしょうね。
白内障などは、しきい値があるというふうに言っています。でも、裁判でもそうでしたけれども、最近は、いわば確定的と言われていたものもしきい値がないという考え方が取り入れられてきているとか、そういうことがあります。
○高橋進委員 今、田中委員も具体的に詳しくは御存じないとおっしゃいましたが、ただ、例えば心筋梗塞でもいいし、白内障でもいいのですが、しきい値がある、ないということ自体が裁判と行政で違っているとか、それから裁判の中でも具体的に分かれているとかということがいろいろあると思うのですが、でも、要するに、この病気についてはしきい値が問題なのだというふうに問題点の所在がわかり、そこについて確定的な知見がないということになれば、例えばそれこそグレーゾーンの対象にするとかと言って、共通の基盤をつくっていけるような気はするのです。
○田中委員 ですから、それは司法、裁判所が判決の中でどういう言い方をしているかというのを列挙していけばわかることではあるのです。政府はこういう主張をしているけれども、それを適用するのは相当ではないのではないかとか、そういう言い方を裁判所はするようですが、そういう格好で退けているわけです。
裁判所の場合は一人一人の線量を余り考えていません。政府は一人一人の線量を考えてやると思うのです。だから、裁判は、疾病の中身についていろいろ判断をしていると私は理解しているのです。
○神野座長 そうすると、事務局のほうとしては、科学的知見というか、ここの基準に対して裁判所がどう言っているかということの資料は作成可能ですね。
どうぞ。
○草間委員 先ほど先生が言われたこれに関しては、まさに因果関係があるかどうかということを5つのファクターに分けて、田中先生が今、言われるように、現在の科学的知見をまとめていただいているのだろうと思います。
先ほど御議論になりました心筋梗塞について言いますと、資料5で見ていただきますと、1つは国が敗訴し、1つは国が勝訴しという形で、2つ事例を出していただいているわけですけれども、科学的な知見に基づいてやっても、裁判所の判断というのは、最初の事例と次の事例と違ってきているわけです。一方では放射線防護上、今までの知見から確定的影響であるというふうに言っているものに関しても、もう一方ではこれは確定的影響と言うべきではなくて、確率的影響と言うべきであるというような形の判断をされているわけです。
だから、これから役所が新しく資料を提示いただいても、司法と行政の乖離が埋まるかというと、必ずしもそう思いません。
○神野座長 埋まるということよりも、高橋委員がおっしゃっているのは、抽象的なレベルでなくて、少し具体的なレベルで対比を明らかにしたいということですね。
○高橋進委員 そうですね。結局、裁判所と行政の乖離があるのは間違いないし、裁判所の判断も必ずしも統一されていないというのもわかります。
そういう中で、私たちはこの委員会でグレーゾーンをつくるとか云々という議論をしてきたわけですから、現時点で一番いい判断をするためには、どこまでが固まっているところで、どこがいまだに争点なのかというのがわかれば、では、そこのところはグレーにしましょうということで、新しい支援の仕方なりをつくることができると思うのです。
○草間委員 私は、きょう出していただいた資料5については、一例を出していただいているのではないかなというふうに拝見させていただいているのです。
○高橋進委員 では、具体的で言うと、例えば心筋梗塞について、9ページは、しきい値はない。どちらでしたっけ。
○潮谷委員 心筋梗塞について、判決理由は、「しきい値を要するとされているが」というふうになっているみたいですね。
○高橋進委員 だから、心筋梗塞は、しきい値がある、ないというところが一つの大きな争点になっていると理解していいのですか。
○草間委員 そうですね。
○高橋進委員 心筋梗塞について、しきい値があるという例と、ないとしている例と両方の行政判断があるということを厚労省はきょうの資料で持ってきたわけですね。
ところが、田中委員は、そんなことを言ったって国が敗訴している例のほうが圧倒的に多いではないかとおっしゃっているわけですね。そうですね。
○田中委員 はい。
○高橋進委員 そうすると、心筋梗塞については意見の違いはあるけれども、司法側については、少なくとも判断はある程度固まっているということになるのかもしれない。そうすると、グレーゾーンではあっても、明らかに行政と司法の違いがどこにあるかというのがもうわかってくるわけです。そこが埋まらないということであれば、これはやはりグレーゾーンだろうということではないかな。そういうふうにして少しずつつぶしていけないのかなという気がする。
総論で議論している限り、いつになっても差は埋まらない気がする。
○神野座長 御主張はよくわかります。
荒井委員、どうぞ。
○荒井委員 きょう紹介のありました裁判例で認められた、認められないというのは、疾病の特定ということから言うと、甲状腺機能低下症にしろ、心筋梗塞にしろ、これは新しい審査の方針でも、線量を中心にして起因性が認められる場合には、病名としては取り込んでしまっているのです。私は、ギャップという意味ではそんなにないのではないかという理解でいるわけです。
冒頭で、新しい審査の方針のもとでの裁判例なのかどうかを確認させていただいたのは、私のこれまでのかかわった経験から言いますと、旧審査の方針のもとで却下処分があって、裁判になった。それも新しい審査の方針で厚生労働省の広げられた方針が世の中に提示された。それ以降になってきますと、私の印象としては、行政と司法のギャップというのはやや薄くなってきていると思うのです。
さらに言えば、新しい審査の方針のもとで却下処分があったものが裁判になった場合には、裁判所で国が負けるということが少なくなってきたということはある程度言えるという認識でいるのです。
そこが、きょうの資料でせっかく表をたくさんつくってくれたのですけれども、対象の案件が旧審査の方針のもとでの却下処分の事例なのか、新しい審査の方針のもとでの事例なのかが区別できないものですから、私の認識が確認しにくかったということが一つ。
疾病をどこまで広げることができるかという意味では、個別の裁判で拾われたものを全部拾うべきかどうかということになると、繰り返しの議論になりますが、裁判で拾われたからといって、それを全部拾うのは無理だろう。根っこのところが、原爆症認定というのは放射線とのつながりを認めるか、認めないかというところから出発するわけですから、ある程度学問的に認められている範囲に絞られてくるのではないか。
そういう意味では、新しい審査の方針のもとで、疾病名ということで言えば、かなり広まってしまっているというふうに思います。私の認識です。
さらに、起因性、つながりが科学的に説明できるようなもので拾えるものがあるかどうかということは、専門家の先生方を中心に検討して、ここで御披露いただければありがたい。こういう流れだろうと思うのです。
もう一つ、もとに戻って、きょうの資料4、5あたりを見ておりましたら、新しい審査の方針のもとで広げた放射性白内障、放射線起因性が認められる心筋梗塞、放射線起因性が認められる甲状腺機能低下症、放射線起因性が認められる慢性肝炎・肝硬変、この「起因性が認められる」というところがすこぶるわかりにくいのです。
新しい審査の方針の書き方としては、実は「放射線起因性が推認される」ということで、「以下の疾病については」とやって、しかも、後のほうでまた起因性が認められるこれこれの病気だとあります。
私があえて言いたいのは、資料5で大阪地裁とか千葉地裁の判決というのは、新しい審査の方針で起因性が認められるという枕言葉というのか、絞りがかかっていることをおわかりの上で判決したかどうかについて、ちょっと疑問を感ずるわけです。
責任の一半というのは、新しい審査の方針の整理の仕方がちょっと紛らわしい。追認されるということを一旦認めているようでありながら、後のほうで、また「起因性が認められる」というふうに二重にかぶっているのです。そこは非常にわかりにくい。これはぜひ整理をすべきだと思います。
○田中委員 それは、私どもが初めから二重の放射性起因性を取りなさいと言っているわけで、曖昧なのです。そのことについては、高橋先生がお休みのときにいろいろ議論したような気もするのですけれども、「放射性起因性」というのが入っている、まさにここに例示されているものがそうなのですが、新しい基準ができて、そういう言葉がつけ加えられた後でも、1.5キロ以遠の被爆者は誰も認定されていない。入市した人は1人も認定されていない。
唯一甲状腺機能低下症だけが2キロまで認められた例があるのですけれども、甲状腺機能低下症にしても、2キロ以遠は1人も認められていない。同様に入市は1人も認められていない。
これは、放射線の影響があるということだけでなくて、やはりしきい値、1.5キロ以遠では放射線は心筋梗塞を起こさせないということ、直爆の放射線から推定される考え方が生きているというふうに私は思うのです。それをなくさないと事は解決しないのではないですかというのを一貫して言ってきたつもりなのです。
○神野座長 どうぞ。
○荒井委員 問題の所在は共通しているのですけれども、その後の対応の仕方についてちょっと意見が違ってきてしまって、申しわけないのですが、私の意見としては、起因性が認められるということについて、いろいろ要素はあると思うのですけれども、これまでの専門家の方々の御意見が集約されるのは、やはり線量が中心になる判断だろうと思うのです。新しく認められた疾病名としての心筋梗塞とか甲状腺機能低下とか、白内障というのは、線量なども考慮して原爆症対象にできるかどうかということが振り分けられている。そこをもう少しはっきり打ち出したらどうなのでしょうか。
起因性が認められるというのは、何をもってはかるのか。確かに初期放射線だけでなくて、どういうふうに把握する方法があるかということは問題でありましょうけれども、やはり放射線起因性を認めることができるかどうかというのは、被曝線量が中心であるべきである。そのほかの要素というのもなくはないですよ。そこはまた田中先生と意見が違うかもしれませんが、総合認定の枠組みを残しておいて、さらに落ちるべきところは拾い上げなければいけないという枠組みというのは大切だろうと思うのです。
だけども、起因性を認定する一番骨格のところは、難しかろうと、何であろうと、放射線の被曝量を何とかして把握しようということ、そこが出発点であり、目標ではないのでしょうか。だから、それをもっとはっきりこの認定の基準の中で明示する方向で検討するべきではないかというのが私の意見なのです。
○神野座長 どうぞ。
○田中委員 私もそのことに異存はないのですけれども、では、残留放射線を被爆した人たちの放射線量はどう推定できるか、これが最大の課題だと私は思うのです。グレーゾーンなのです。まさにグレーなのです。入市したり、遠距離にいていろんな放射性降下物の影響を受けた人たちはどれくらいの線量を受けたかということがわかれば、荒井委員がおっしゃるように、その人に対する科学的知見をいろいろ運用できるのだと思うのです。それが今はできないのです。方法がないのです。
だから、それをどうするかというのをここで議論して、一定の枠みたいなものがつくれれば、それはそれで一つの考え方だと私は思わないでもないのですが、そういう議論が今まで全然できなくて、グレーゾーン、グレーゾーンという話だけで、まさに高橋先生が言っていましたグレーゾーンという一般的な話だけで進んできたというのがある。
○神野座長 どうぞ。
○荒井委員 今の問題点ですが、田中先生、把握できないものを基準に取り込むのは無理なのですよ。だから、線量をあらゆる方法でもって把握する努力はしなければいけないし、科学的な知見というものも日進月歩という面はあるとは思うのですが、今のところ、それは難しい。難しいものを原爆症認定の対象の枠組みに取り込んでいくというのは無理な話ではありませんか。そこで違ってくる。
○田中委員 私も今のままだったら無理だと思うのです。しかし、原爆被爆者については無理なこともしなくてはいけないという判断を政治的にされたのが新しい基準だと思うのです。100時間以内に入市した人のがんは認めるということは、100時間以内に入った人たちがどういう線量を浴びたかは問いませんという意味なのです。
3.5キロ以内でがんになった人。3.5キロというのは、今の初期放射線では測定できないわけです。DS86でもDS02でも推定できないわけです。それについて先生は御存じだと思うのです。
それにもかかわらず、3.5キロ以内で直爆した人のがんは認めましょうというのが新しい基準なのです。そういうのをつくったのです。医療分科会の委員の先生方がつくったのではなかったのですけれども、そういうのができたわけです。だから、それに準ずるようなものをつくらざるを得ないのではないかというのが私どもの考え方。
もしそれができないのだったら、私どもが主張しているこの認定方式はやめましょうということなのです。
○神野座長 どうぞ。
○長瀧委員 全然もとに戻っておかしいかもしれませんが、原爆症と健康管理手当というのがございます。少なくとも私が昔、委員をやっているころは、健康管理手当というのは、今のいわゆるグレーゾーン、わからない人については、どうしても科学的にわからないからそちらに入れましょう、そして明らかに放射線起因性があるという人を原爆症にしましょうという時代は確かにあったと思うのですけれども、今の議論をお聞きしていると、健康管理手当と原爆症の違いは、今、具体的にどういう表現をすればいいのでしょう。
○神野座長 どうぞ。
○榊原室長 基本的に高度の蓋然性があるかどうかというところで、ある方が医療特別手当、いわゆる原爆症に認定される。それ以外の方、否定し切れないという形で、もともとは2キロ以内の方が、今、広がった形にはなっておりますが、それが健康管理手当。制度上はそういう形になっております。
○長瀧委員 放射線の影響を高度の蓋然性をもって認められればということですね。
○榊原室長 はい。
○神野座長 基本的に変わっていないということでいいのですね。
○榊原室長 制度としては基本的には変わっていないということです。
○神野座長 どうぞ。
○田中委員 厚労省の説明では長瀧先生にもわからないと思うのです。手当と認定は別なのです。こういう認定の仕方をした人がどういう手当になるかという議論ではないのです。グレーゾーンなり何にしても、とにかく認定されてしまえば、今の制度は医療特別手当を全額支給しますという制度なのです。ここにはグレーも何もないのです。
だから、それでいいかどうかというのを別に議論しなくてはいけない。まず、認定にグレーゾーンがあるわけですから、認定のグレーゾーンをどうするかということで、手当を分離しないといけないというのを私はずっと言ってきたつもりなのです。
○神野座長 つまり、そこもちょっとわかりにくいところなのですが、長瀧委員。
○長瀧委員 まだもう少し勉強しなければいけないかもしれませんが、全部拾っていって、残留放射線の可能性まで全部放射線の起因性に入れていって原爆症になってしまったら、そうすると、健康管理手当と原爆症の違いはどこが違うのだろうという単純な疑問です。
○神野座長 どうぞ。
○田中委員 恐らく将来、私もそうなるかなと思って、言ってしまっていいかどうかわからないのですけれども、やはり原爆症というのがあって、原爆症を認定するということは、「原爆症」と言うのです。あることもありかなという感じはしないでもないですよ。だけど、それは放射線が関係している。私の場合は傷害も含めます。原爆症は傷害作用も含めるという法律ですから、傷害作用も含めますが、放射線がそこに関係しているというのが今の法律ですから、全て関係しているものは、原爆症なら原爆症という名称で認定するということになろうかと思います。
しかし、放射線が原因になるような病気というのは、今はさまざまあるわけです。医学がどんどん進歩してきて、年数がたってきて、いろんなものが放射線と関係してきているということがわかってきてしまえば、放射線が起因する病気というのはいろいろあるわけです。それを一緒くたにして「原爆症」と言ってしまって、一緒くたにしてどんと一つの手当というのは現実的ではないのではないかという気持ちがあるわけです。
だから、認定は認定でグレーも含めてきちっと決めて、そしていろんな認定されている疾病に対して、あるいは被爆者に対してどういう手当がふさわしいかという議論を次にすればいいと私は思っていますし、提言はそういう中身のことを書いているつもりなのです。
○神野座長 どうぞ。
○潮谷委員 今のお話を伺いますと、手当と認定は別だという田中委員のお話ですけれども、そうしますと、今の状態から言うと、認定に応じて例えば健康管理手当が出されたり、医療特別手当が出されたり、そういう形が出てきているわけですが、まずは認定、そして認定の中で手当というのは別領域のところで論議をしたほうがいい、こういうふうな御意見であるかどうか、ひとつ確かめさせていただきたいというのが1点。
それから残留放射線の問題で、100時間以内に入った人ということに対して、残留放射線の影響があるのではないかというような考え方に基づいてこの時間設定が出てきているという御主張でございますでしょうか。それが1点。
それからもう一つ、私自身は、残留放射線というのは、今までの論議を通して申し上げると、とてもきちっとした形で把握していくことの困難性があるという感じがしています。
そういったことからしますと、比較してはいけないかもしれませんが、例えば川辺川ダムをつくるというときに、国土交通省は森林の保水力に対して、ないという前提の中で制度設計の中に踏み込みました。一方、森林にかかわる学者の方々は、保水力はあるというようなことでいろんな意見を審議会の中に出されました。
当事者である熊本県という立場の中で私自身が申し上げたのは、森林保水力というのが現在の知見の中できちっと立証できない。しかし、それは進展していく中で立証できるということであるならば、そのときにもう一度知見に基づいて考えていくという形をとるという方法論があるのではないか。
だから、そういった意味からすると、残留放射線ということが、もし科学的な形の中で何らかの一つの科学的なものが出てくるという時代を迎えると、そのときはそのときで私たちは考えていくということであってもいいのではないか。そういう思いを抱いているところです。
ぜひその3点について、お伺いします。
○神野座長 田中委員、よろしいですか。
○田中委員 わからないのだから認定してはいけないみたいな意見に聞こえるのですけれども。
○潮谷委員 そういうことではなくて、今、不正確なままで、認定する方法論として本当に制度の中にでき上がることができるのか、そういう疑問を持っているということです。
○田中委員 つくらないといけないのではないですか。でき上がるかどうかではなくて、私たちがつくるのだから、どういうものがつくれるかという議論をして、つくるしかないのではないかと思います。
○荒井委員 それは無理ですよ。
○田中委員 ですから、無理だから、今の認定制度は無理ですと言っているのです。できないものでやろうとされるから無理だと言っているのです。
○神野座長 私もちょっと理解できないので、現在の認定制度のもとで、認定と手当というのは別だと。これは不可分に結びついているというふうに我々は理解してしまうのですが、別々に議論しろという趣旨がいまいちのみ込めないので、まず第一に。
○田中委員 何回も申し上げてきたのですが、きょう配られています資料6の2ページを見ていただければわかると思うのですが、一番左に書いてあるのが認定の制度です。手帳を交付して認定制度をつくったのです。昭和35年に認定制度をつくったのです。だから、このときから認定はあったのです。ずっとあったのです。
しかし、手当というのは、この段階にはないのです。随分たって43年になって初めて特別手当というのができるのです。10年の間、手当なんてないのです。多少医療的なあれがありますけどね。
今の医療特別手当は、さらに時間がたって昭和56年です。ですから、認定制度ができてから20年たって今の医療特別手当というのができているわけです。全く別物なのです。
でも、受ける本人は1人ですから、認定されるということと手当をもらうということは同じになってしまっていて、今のような混乱したような議論になってしまうということ。
○荒井委員 田中委員、認定と給付とは別だ、別だということをもう何度もお聞きしていのですけれども、抽象的な認定などというのはないのですよ。何を認定するかということで、最初のこれで言えば、例えば原爆手帳の交付なら交付で、どういう人に原爆手帳を交付するかということの認定というのがあり、今、問題にしているのは、まさに特別手当のほうのいわゆる原爆症認定ということの認定なのです。だから、あらゆることの認定というのではないです。
それはどういう効果を持った要件を認定するかということと不可分に結びついているので、そこを逆にごっちゃにしては議論にならないではないですか。
○田中委員 いえ、ごっちゃにしていないのですよ。
認定した病気の医療費を全額国が持ちますよというのが認定なのです。
○荒井委員 それはそれで認定ですよ。
○田中委員 それがまず認定なのです。
その認定された病気を持っている被爆者をどうしようか。では、手当を出してあげましょうというのがその後をついてきているわけです。一体ではないのです。
○神野座長 ただ、全額手当を補償する。
○田中委員 それは今も生きているわけですよ。だから、私ががんで認定されるとしますね。私のがんの治療費は全部国が見てくれる。それ以外の病気は見てくれません。それは普通の被爆者と同じ。そういう制度が認定制度なのです。
手当は別です。それで、あなたには医療特別手当を差し上げますよということになっているというだけの話です。
荒井先生、そうではないですか。
○荒井委員 私は、それぞれの、どういう場合に何を給付するかということとのつながりでその要件にかなっているかどうかを認定するということを言っているのです。
ですから、今、問題にするのは、医療特別手当13万幾らという制度の対象として、いわゆる原爆症の疾病にかかっており、あるいは要医療性があるかどうか、まさに特定されたことをここでの「認定」という捉え方をしなければならないということを言っているのです。
○田中委員 今はそうなってしまっていますから、そうでいいのですけれども、だから、肝機能で認定したら、肝機能が何であれ放射線に関係しているのですから、肝機能は認定しなくてはいけなくなるわけですよ。放射線の影響する病気として認定しなくてはいけなくなるのです。今のままだったら医療特別手当を出さなくてはいけなくなってしまう。
本当はそうではないのです。肝機能障害の医療費は国が出すけれども、手当はまた別の考え方をしましょうと言って議論をすればいいのです。その議論をしないで、医療特別手当という高額なのを出すのだから、認定する枠を一生懸命狭めよう、狭めようという議論になってしまっているのです。私は、正しくない、科学的でないと思うのです。
放射能が関係する病気はみんな認定する。その上で、手当をどうするかという議論をすればいいということなのです。
○草間委員 今、医療特別手当を支給するかどうかということが認定なのですね。
○田中委員 いえいえ、違いますと私は言っている。
○草間委員 今まで医療特別手当の意味について、放射線起因性があるという形で疾病が認定されれば、手当が支給され、医療費に関しては現物支給という形で支給されるので、そういった中で手当の意味合いは何ですか、そこのところを明確にする必要があるのではないでしょうかというのを私も最初からずっと言ってきたつもりなのです。
それに関しては、手当の意味について幾つか出された中で、手当の意味合いに関してはとりあえず了解したつもりでいるのです。
要するに、手当と認定は別だというのはどういうふうに理解していいか、ちょっとわかりにくくなっています。
○神野座長 この制度の形成過程でもって認定と手当がそれぞれ別々に生まれてきたという趣旨はわかりますけれども、その後、現在の特別手当を軸にする、広い意味で認定制度と言っていいのかわかりませんが、それでいくと、差し当たってここでは特別手当に関係する認定を議論していると思うのですけれども、他のもの等を含めてちょっと切り離して議論するとおっしゃっている意味がいまいち。
どうぞ。
○佐々木委員 済みません、私の理解を申し上げさせていただきますと、原爆症認定というのは、まさに原爆に起因して疾病が起きたということを国レベルで認定をする、だから、国の責任で措置するということになっていますので、田中委員のおっしゃっているように、だから、全額国費で医療費を見ますと。そういうのが原点になっているのではないかという理解だと思います。
それで、同時に、国が責任を持つ疾病だからということで、医療特別手当という通常の手当とは違う手当もあわせて出しているということで、医療特別手当を出すために認定をしているということではないのではないかなと思います。やはり国が責任を持つ疾病として認定をする。したがって、医療も国費だし、医療特別手当が出る。
だから、今までの議論の中では、医療を国費で負担するということについては、ほかの方とは自己負担に大きな差がなく、医療特別手当が一般の手当と非常に差があるものですから、そこをどういうふうにするかというような議論の経緯があったので、そこが注目されていると思いますけれども、田中委員の言われている原点のところは、ある意味正しい部分ではないかなというふうには理解をしております。
○神野座長 申し上げたかったのは、その場合だとしても、先ほど私が言葉を選んで使ったつもりで、しかし、今、現実の制度では不可分に結びついている。それは事実なので、分けて、手当は手当、認定は認定として議論する生産的な意味がよくわからないということです。
○佐々木委員 そこを分けて議論すればいいかどうかというのは置いて、まさにそれがあるので、前々回まで議論があったように、可能な限り裁判の中で取り入れられるものをどういうふうにして認定の中に取り込んでいけるかということで、1、2、3とか分けて議論していただいて、それを2プラス3とかして、かなり議論が煮詰められてきました。
また、それにあわせて手当のほうも、場合によっては段階にしたらいいのではないかというところまで議論が来ていますので、ある意味、私としては、先ほど高橋委員からもありましたけれども、そういう具体的なところをどう取り入れられるのかというふうに議論を前に進めていただくほうがありがたいと思っております。
○神野座長 どうぞ。
○荒井委員 議論の進め方に関係してくるのですが、司法と行政とのギャップで、先ほど田中委員から、なぜどう違うのかということをさらに事務局のほうで分析が必要ではないかというお話があったと思うのですが、私は、個別の裁判の案件でなぜ国が負かされたのかという原因をこれ以上突き詰めていっても、ここでの制度設計にそれほど役には立たないというふうに思うのです。
それはなぜかというと、何回もこれまで議論になったと思いますが、司法と行政との役割の違いということから言いましたら、そこのギャップのある部分について、全てこちらのほうで行政の認定の基準に取り込んでくるということはそもそも無理ではないかということが、私の頭の中には大きくあるわけです。
そういう意味では、ギャップはギャップとしてある程度は残らざるを得ないだろう。しかし、冒頭で私がお尋ねしたように、時代が下がってくるにつれ、新しい審査の方針のもとでの処分が問題にされる裁判の中では、国の誤りということを言われる率が下がってきているということを考えれば、それほど司法と行政のギャップを重大視して、これでは放置できないと言うまでのことではないのではないか。もう少し今の新しい審査の方針のもとで動いている認定制度をよりよくする。具体的に言えば、いわゆる科学的な知見を持ってもう少し広げることができないか、あるいは今、対象にしている基準を例えば放射線起因性が認められる何々という、その枕言葉になっている起因性か認められるか、認められないかというのを、私の意見として言わせていただけば、線量を中心に考えて、そこを振り分けるような基準を明確にしていく。
さらに言えば、医療分科会での基準にすぎないものを、できれば法令のレベルまで持ち上げて客観化していく。そういういろんな方法でもって司法と行政のギャップを明確にし、より少なくしていく、今よりかなりよくなったというあたりまでを目標にして今後詰めていけばよろしいのではないかと思っているわけです。
事務局のほうに私から注文をさせていただくとすれば、新しい審査の方針のもとでそのギャップが小さくなっているのではないかという私の認識が合っているのかどうか、資料までつくっていただきたいという趣旨ではないのですが、私よりはもうちょっと正確に報告していただけるとありがたいということでございます。
○神野座長 私の議事運営がまずかったのかもしれませんが、私の理解では、高橋委員はそういう意味でおっしゃっているのではなくて、いずれにしても、田中委員などの立場から見て、ここに書かれている基準で違和感のあるものは何かということをまず知っておいて、具体的なフェーズで論点を明確にしておきたいという趣旨ですか。
○高橋進委員 そうでもあるのですが、今の荒井委員のおっしゃったことでも通じるというか、共通していると思うのです。
まさに起因性が認められる、病気としては起因性があるだろうということは一応常識になっている、知見としてある。ただ、そこにしきい値があるのかどうかという議論。要するに、それは科学的知見が進めば、しきい値があるか、ないかというのはいずれわかる。だけども、今はまだわからないということで、要するに、まだ判断できないということが一つあると思うのです。
もう一つは、しきい値がある、ないにかかわらず、要するに、どのくらい線量として浴びたのかということ自体、事実の認定ができない。まさに残留放射線は典型だと思うのですが、そこでいまだに争われているのか。
ここは2つに分けて考えてもいいのではないかというのが、私が最初に申し上げたことです。
ですから、そういう意味で、新基準ができたわけですから、その後の裁判で具体的にしきい値の有無だとか、そういうところで争われているのか、それとも放射線量についての事実認定のところで争われているのか、それぐらいは分けて分析すれば、ギャップが全部埋まらないのはもう承知していますが、ある程度ギャップを埋めていくことにつながるのではないか。
そこで詰めていけば、どこが問題なのか、改めて浮き彫りになるような気がするのです。疾病の種類なのか、それともしきい値の有無なのか、それとも残留放射線の量の面なのかというのは、問題点を分解していけばわかる気がするのです。
○神野座長 石委員、お待たせしまして、申しわけありません。
○石委員 いかにもエコノミスト的な問題の整理だと思います。
今、グレーゾーンというのは、結局、どういう形で追及していくかというときに、裁判事例に頼って、何かないかなということですね。高橋さんが言ったように、2つ、3つの基準から裁判例を整理していくということをやってもいいと思うけれども、結果的にはこういう個々のケースから一般的、普遍的な部分というのは多分出てこないでしょう。出てこないけれども、高橋さんが言われたような方向での整理でやってみる価値はあるということだけれども、それに全面的に依存するのは多分無理ですよ。
これまでの議論をずっと見ていますと、方向性を1、2、3に一応整理して、1は抜本的改革で、2と3がとりあえず現実的な対応をしましょうというところまで来て、それについて、先ほど荒井さんが言われたような形で制度を踏まえて、一歩でも二歩でも少し制度設計を変えましょうというところまで来た。
そこできょうの話がまたがちゃがちゃになってしまったなという気がしているのですけれども、僕は、きょうみたいな議論も1回してみないと、それに対して何か宝の山があるように見えている目から見ると、放置してはまずいと思うのだね。
そこで、きょうはきょうとして、以下のことですが、裁判事例のほうで事務局がさらに突っ込んで、高橋流の基準によってある種のメルクマールが出てくるかどうか。あれば、それはチェックしていただいて、大いに参考として出してもらえばいいと思いますが、最後ここでやることは、きょうの資料6に出てくるような制度設計の中で、要するに、今、何段階かある特別手当とか手当というところの枠を広げるのか、プラスアルファするのか、あるいはその辺をどうするかというところは、この検討会として一つポイントなのです。
もう一つは、今、言ったそれに当てはめる認定のところに不満が多々あるから、それでグレーゾーンを解消しようというのでしょう。
ただ、グレーゾーンについては、何回も言うように無理で、結局、外形標準で大ざっぱにやるしかなのですよ。例えば2.5キロだとか、100時間だとか、何キロだということでやるしかないので、これがだめだったら、この種の話は多分できないですよ。そこをどう割り切るかです。ないものを、残留放射線をどう測定するか、何とか言ったって、今となってはできないのだから、制度設計としてはそれは割り切るしかないのです。だから、そういったしきい値というのか、あるいは今、言った外形的なさまざまな基準を整理して、これでいきましょうかというのは、それでいいと思うけれども、僕は、それについて決定的なものは出てこないと思うから、結局、今のやり方を是か非かで議論して、そこはそこで決めてということだと思います。
だから、少し制度に立脚した形で議論しないと、どうも議論がぐるぐる回っているだけで、何か徒労感に終わるという感じですね。
感想です。
○神野座長 草間委員、どうぞ。
○草間委員 もう少しきょうの資料5に相当するようなものを事務局に用意してほしいという要求もあるようですけれども、きょう見せていただいて、先ほども申しましたように、例えば心筋梗塞一つとっても、裁判によって、現在の科学的知見は、とりあえずしきい線量があるという形でUNSCEARもICRPも考えましょうという形にしているわけですが、裁判が勝ったほうの事例を見ますと、心筋梗塞については、しきい線量のない確率的影響として考えるべきであるというような判断をしているわけです。
甲状腺機能低下症についても同じですので、これは同じような事例を何回出していただいても全く同じなのだろうと思うのです。
今までの議論で、放射線起因性があるかどうかということは大前提としましょうということは、皆さんの合意を得られたところですので、これは議論の前提としなければいけない。その中で、がんに関しては、3.5キロという形で新しい基準が決められていて、直接放射線に関しては、DS02でも既に線量が確定しているわけでして、がんに関しては、3.5キロという形で新しい基準でやっているわけです。
私は、3.5キロというのは必ずしも科学的な基準だとは思わないですけれども、もう既に基準としてある、だから、これは認めましょうということです。
そのほかの疾患について、荒井先生が言うように、放射線起因性をどう認めるかということですけれども、それに関しては、分科会等で、それぞれの疾病にふれて新しい基準が挙げているわけです。例えば心筋梗塞が出てきたときに、分科会の先生方がそれぞれ科学的に判断してやっているのだと理解しています。
科学的な基準に従って分科会はやっていると思っておりますので、少なくとも現在の科学的知見に沿ってやっているのだろうと思います。
残留放射線に関しては、十分と言うと言い過ぎかもしれませんけれども、ここではかなり議論したと思います。かつての基準に比べまして、新しい基準では100時間以内に入市した人という形で、それまでの基準を少し緩めたわけです。誘導放射線の半減期等を考えたときには、多分100時間という形でいいだろうと分科会が判断したのだろうと思うのです。だから、それについて、いいか、悪いかの判断をもう一度分科会等でしていただくということ。
残留放射線については、これ以上わからないからグレーゾーン、グレーゾーンと言っても、これ以上新しい知見が出てくる可能性は小さいと思います。だから、現在使っている知見がいいか、悪いかというところを判断するという形で、本当に決めていかないと、同じことの堂々めぐりになってしまうと思うのです。
それで、田中先生にはぜひ御理解いただきたいと思うのですけれども、私どもは、決して認定の基準を狭めようとして議論しているのではなくて、科学的に判断したときにどこまでリーズナブルかという形でやっている。その前提はぜひ御理解いただきたいと思います。
被爆者も高齢化している中で、少なくとも国費を使っているわけですので、放射線起因性というところは守らなければいけない。その中でどこまで取り込めるかという形で議論しているつもりですので、決して狭めようとしてやっているのではないというのは御理解いただく必要があるのではないかなと思います。
以上です。
○神野座長 ありがとうございます。
坪井委員、どうぞ。
○坪井委員 白熱した討議が重ねられて本当に勉強になるわけですけれども、原爆症の認定でなくても、手帳の認定でも何でもいいですが、認定というのは、そんなに簡単にはっきりぱっと出るものではないですね。裁判で判決文が出る。その判決のときにも、私が読んだ範囲では、こちらの材料によって、この裁判長は重々しくやっと押してくれておる。プラスだ。この裁判長はすかーっとやっている。
そうすると、今の裁判の認定は、ある人は、心筋梗塞と言っても、いろいろなあれがあるわけです。おわかりだろうと思うのです。健康管理手当の11の病気でも、医者に言わせると、その中にまたあって、またあってとなるわけです。それをこうやって、これは大体心筋梗塞の部類に入るだろうというようにいくわけであって、私に言わせると、裁判官の、あるいは医学者のほうでもそうですが、広さが違うのです。そういうものでやる。
そんなにきっちりきっちりいくようなことだったら、ロボットをつくらぬとだめです。それは人間ではないと私は思っている。
したがって、そういうことで反対の結論が出ると、言葉では同じ「心筋梗塞」と言ったって、中身はいろいろですから、それを徹底的にやって、これはだめ、これはよろしいというように裁判官の全力を出してそうやっておるのだろうと思う。だから、私は、そこまでいったら、もうそれを認めざるを得ぬのです。
ただし、違っておる場合は、同じものをやったのではないと見るから、同じ心筋梗塞ではないと思うのです。だから、判決文の読み方は、ここで出てくる印象も行政側の印象が大分入っているかもわからぬですよ。だから、我々が行政にかわって読んでいくというのも大事なことだと思うのです。
そうなりますと、いろいろな問題でわからないことが多い。いろいろ未解明のものが多い。ある面では「グレーゾーン」という言葉であらわされるでしょうが、そういうものについて、いろいろな裁判からこういう討論をやっているわけですから、それを我々はもう少し大きな目で、簡単に言ったら、グレーゾーンも、あるいはわからない面があるのは被爆者のほうに持っていってもらいたい、被爆者を救う方向へ行ってもらいたいということです。
だから、グレーゾーンと皆さんは言っているけれども、我々のほうからみると、それはグレーゾーンではない。我々はもちろん感謝していますよ。いろいろな医療法から何からやってもらって、その感謝を忘れてはいけませんが、しかし、私がここで言いたいのは、私たちは国家補償による援護法というのが悲願ですから。ざーっと国が戦争を起こしたのだから、国が責任を持てと。是認論もあるし、アメリカの関係もあるでしょう。その関係なしにしても、そういうものを忘れてはおらぬ。そうならば、少しでも被爆者を救える方向へ皆さんの力をかりたいというのが私の気持ちなのです。
だから、国家補償でもうかる、もうかって、もうかってというようなことはありませんね。ただ、腹の中には、我々は何でこういう目に遭わなければならぬのかということはありますからね。
だから、被爆者の願いとしては、ちょっと言葉が悪かったのですけれども、大きな声を出しましたが、簡単に言ったら、次善の策というのでしょうか、少しでも少しでも被爆者に有利に動いてもらいたいと思うのです。
以上です。
○神野座長 どうもありがとうございました。
○田中委員 前回も私は反対をしましたけれども、どういう病気が放射線に関係しているかというのをかなりわかっていますでしょ。私はそれでいいと思っているのです。それ以上何をするかといったら、放射線量というのが出てきて、被爆者の線量というふうになっていくのです。それは絶対できないことだというふうに一貫して言っているのです。被爆者の被曝線量を推定するというのは、原爆の被爆者の場合にはもうできないことなのだということなのです。できないのだから、少なくとも科学的に放射線と関係があるという病気にかかった場合には、それはもう原爆症になったという判定をすべきではないかというのが私の考えなのです。
そうすると、ひどい病気、ひどくない病気があったり、生活に苦しい人、苦しくない人たちがあるわけだから、それを平等でいいかという話になると思うのです。そのときに手当をどうするかという考えになってくるのだと思います。
今の制度で、放射線に関係ある病気にかかった人、被爆者を全部認定するということになれば、その人たちのその医療費は全部国が持たなくてはいけませんからね。何万人という人がその対象になったときは、何万人のその病気の医療費を国が見なくてはいけないということになってしまいますから、それでいいでしょうかという気持ちが私にはあるのですよ。
そういうのがあるから、狭めよう、狭めようというのが働くのですよ。委員の先生方はそうだと思います。狭めようとするとき何が対象になるかといったら、被爆者の被曝線量になってしまうのです。この人はこの線量だから、これが適用できるとか、適用できないとかという話になっていくから、それはもう無理なのですと私は言っているのです。そうではないでしょうか。
だから、放射線がどういう病気に関係あるかというのは、これから委員の先生に聞かれても、今、世界的にわかって、いろんな報告が出ていますし、御意見もどんどん出ています。それ以上のことは何にも出ないのではないですか。
○神野座長 いずれにしても、委員の気持ちは、先ほど坪井委員がおっしゃったように、少しでも前に進めようというスタンスは変わらないと思っています。そこは共有できているというふうに理解しています。それでよろしいですね。
狭めよう、狭めようとしているわけではなく、少なくとも被爆者の救済に結論が出ない場合には、どうにか救うという方向でやろうとしているということですね。ただ、それを説得するというか、その基準としてきちっとものをつくりたいということだというふうに理解してよろしいですね。
○草間委員 そうです、そうです。
もう一つ言わせていただくと、放射線の影響についてはよくわかっている。要するに、そういう意味では、少なくともしきい線量を含めて、人への影響として、例えば心筋梗塞だと、きょうの資料3にまとめられているのが、まさに国際的に認めている科学的なコンセンサスだというふうに考えてやっているということなのだろうと思うのです。
そのときに関係してくるのが被曝線量です。だから、心筋梗塞と言っても、心筋梗塞全てが放射線起因性というのではなくて、ある線量以上を受けた場合には、これは放射線起因性があるというふうに認めていいでしょうという形で考えている。
それに対して、がんについては、少なくともしきい線量のない直線関係というのを考えているので、現在、新しい基準では、とにかく3.5キロというのが一つ数値として示されましたので、これに関して、私もここの中でコンセンサスが得られていると思っているのですけれども、がんに関しても3.5キロ以遠は広げていかないようにしましょうというのは、多分コンセンサスが得られているのではないかと思います。
放射線起因性をもとにして、認定の範囲を狭めようというのではなくて、どこまで広げられるかを議論しているのです。そのときに放射線起因性というのが前提にあるというのは御理解いただかなければいけないと思います。
○石委員 前から言っていることをもう一回繰り返してもいけないと思いますけれども、狭めよう、広めようというのは、いろいろ価値判断があって、わからない話ですが、ただ、僕らみたいに、神野さんもそうですし、経済学者もそうだと思いますが、資源というのは限りあるのです。だから、それをどうやって日本人として公平に使うかという公平感もどうしても必要なわけです。
そういう形から言いますと、やはり財源問題というのは、広く見て、一旦認定したら全員に配ってしまって、ほかのほうに回るべき財源が全部こちらに来た場合に、恐らく国民的にはそれに同意してくれないですよ。
一つ問題は、放射線が起因する病気とおっしゃったけれども、ここに出てくる白内障だ、前立腺だ、心筋梗塞というのは、明らかに加齢現象なのです。したがって、これから高齢化社会ですから、どんどんこの患者がふえてくるわけです。こういう患者を全部放射線が起因する病気の中に入れた日は、社会保障費なんて幾らあったって足りないですよ。
だから、そこでしようがないという言い方はよくないかもしれませんけれども、線引きをしなければいけないのです。そのときに、より広く網をかけるような、今おっしゃった田中さん、坪井さんの感情もよくわかりますが、さはさりながら、無制限にはできませんから、何となくそこで土俵をつくって議論しなければいけないという点の一つのポイントは、国民的視点から見た公平、国家的見地から見た責任です。それを忘れるとこの制度設計は難しくなってしまって、また野方図になるという批判を浴びて立ち往生しますよ。
○神野座長 どうもありがとうございます。
どうぞ。
○田中委員 私も線引きだとか、財源をどれくらいでも使っていいのだということは一言も言いませんし、そう思ってもいませんよ。
だけれども、やはり肝機能障害は放射線による人とよらない人がいる。よるのは、これくらいの線量だというふうになっているとしたら、私が肝機能障害になったときに、あなたの線量はと言われるわけです。どうして私の線量を皆さんが判断できるのでしょうか。判断していただけないのだろうと思うのです。いろんな行動をいろんなふうに説明しても、自分が浴びた線量はそんなものではないというふうな気持ちが出てきます。
事ほどさように、被爆者一人一人の線量を推定できないから、肝機能は、このくらいの線量以上でないと放射線の影響ではないというふうに言うのは構わない、言ってもいい。それを1人の被爆者に適用するときには、その人の被曝線量がというふうになるから、それはもう成り立たないでしょうということなのです。
それでも、なおかつ物すごい予算を食うようになるのだとしたら、病気の治療の度合いで線引きもしていいのではないですか、段階を設けていいのではないでしょうかという提案を別にしているわけです。何でもいいというふうには言っていないのです。
○石委員 ただ、今となっては線量がわからないのは当たり前の話なのです。したがって、僕は何度も言うように、それはもうメルクマールをつくって、腰だめと言われようが、何しようが、ラフでもいいから外形として基準をつくらないとならないのですよ。それはある意味で自分にとると不公平な基準かもしれないけれども、3.5キロよりもっと広くとれと言う人もいるでしょう。狭めろと言う人もいるでしょう。しかし、それはそれでもう割り切るしかないのですよ。僕らは直接原爆の被害者ではないからその辺がわからなくて、田中さんに対して同情がないかもしれませんが、ある種の合意でこれまでできた物差しをもう一度確認するというのは必要だけれども、そこはもうしようがないですよ。私は割り切っています。
○神野座長 どうもありがとうございます。
そろそろ時間でございますので、一旦このテーマは切り上げさせていただければと思います。
この検討会が一つ一つ積み上げてきた経路で、これを少し先延ばしをしながら運営してきたというふうに思っておりますが、前回の検討会の最後で、疾病に関する専門的な知見というものについて知見を頂戴するわけですが、その場合に、それをどうやってまとめていくかというまとめ方について、長瀧座長代理と相談しながら一任をさせていただいたというふうに思っております。
私としては、可能な限りこの検討会の内部でまとめていきたいと思っておりまして、長瀧先生は座長代理でもあり、この分野の専門家としての第一人者でございますので、長瀧委員におまとめをいただければというふうに思ってお願いをいたしました。ちょっと御無理なお願いですけれども、お引き受けいただけそうなので、先生の作業の進展ぐあいにもよりますが、できれば次回あたりにでもそういうものを出していただければというふうに思っております。
という方向でまとめさせていただいてよろしいでしょうか。よろしいですか。
(「はい」と声あり)
○神野座長 では、ちょっと御無理を申し上げますけれども、長瀧委員、どうぞ。
○長瀧委員 これは皆様が本当に賛成してくださればということと、座長の御命令ということであれば、立場上、お引き受けいたしますが、そこは皆さんの御同意があった上でということです。
○神野座長 潮谷委員、どうぞ。
○潮谷委員 確認させていただきますけれども、今の提案は、長瀧先生に今までの論議を踏まえてたたき台的なものをつくっていただいて、そしてさらにここの中で論議をする、そういう前提でございますか。
○神野座長 ここで議論するのですが、今までの議論ではなくて、専門家の意見をまとめないと、こう言ってはあれですが、この分野に関して素人集団というか、さまざまな視点の専門家の方々にお集まりいただいているので、疾病に関する専門的な知見でこれまでもヒアリングや何かをしていますが、長瀧先生はここの議論の状況をよくわかっておられると思いますので、ここで議論をする参照基準というか、議論をしていく上での参考になる資料をおつくりいただくということです。
○潮谷委員 さらに確認させてください。
資料3「原爆症対象疾病の考え方について」というのが今回出されておりますけれども、状況によっては、こういったものにも踏み込んで方向性を先生にお願いする、そういうこともあり得るということでございましょうか。
○神野座長 方向性というよりも、長瀧先生のお考えですけれども、そこも含めてお任せしているのですが、没価値性というか、科学ですから、先生のお考えもあるので、どういうことになるかということは言えませんけれども、長瀧先生は、恐らくこういう方向性がにじみ出るようなまとめ方をされたとしても、別な意見としてはこういうこともあるというふうにまとめられるのではないかと思います。
あくまでもそれをたたき台、つまり、ここでどこまで決められるのかわからない、専門家ではないので踏み込むことがなかなか難しいので、抽象どまりになるかどうかわかりませんけれども、とりあえずここで議論を深めていく上での参考資料というふうに考えています。
○潮谷委員 長瀧先生には相当重い御負担をおかけするということを私たちも共有して、先生、どうぞよろしくという思いです。
以上です。
○神野座長 御無理を言って申しわけありませんが、お引き受けいただけるということなので、よろしいですか。
どうぞ。
○長瀧委員 チェルノブイリも原爆から始まったわけですけれども、チェルノブイリでも福島でも放射線の影響という問題に対処する場合の教訓があります。第1に被ばくに関する情報は全部の利害関係者に開示されるべきである。第2に開示された情報の中から専門家が被ばく線量に基づいて健康影響の推定をして提言する。それは専門家の科学的な提言であります。第3はすべてのステークホルダー、被曝者を含む利害関係者が集まって、その提言をもとにして対話を繰り返し対策を決めるということを大体自分としては頭の中に入れて行動しています。
その中の専門家の提言という部分をきょうお任せいただいたとして、それはその状況によって少し幅はございますけれども、草間先生からも何度もお話しがありますように、日本は原爆被爆国で、今まで被爆の科学を世界に発信してきたわけです。現在でも全て日本発の科学の知識が国際的なスタンダードになっている。これは本当に被爆者の方の尊い献身的な協力があって初めてできた人類の物すごい宝だと思います。それが今、世界中の科学の知識になっている。
我々は、それを基準として持っている。国連科学委員会であるとかICRPも、全て日本発のデータをもとにして考えていますので、われわれがこの委員会でその科学的知識を無視してしまったら、本当に協力して来られた被爆者の方々にも、今まで努力して発信してきた日本の関係者にも、それを信じてくださっている世界の方、国連科学委員会、ICRPの方々にも申しわけありませんので、日本が発信してきた科学に基づいて提言して、そこからスタートして、まさにこの委員会はステークホルダーの集まりで、放射線起因性をどこまでどう考えていくか。そういう意味では、そのたたき台をつくって持ってまいれるかと思います。
○神野座長 よろしいですか。
○田中委員 1つだけ要望をよろしいですか。
長瀧先生に大変御負担をかけることになるのですが、今のICRPに反論するヨーロッパのグループがいます。ヨーロッパのグループが何を言っているかというのもあわせてレビューをしていただければありがたいなというふうに思います。私どもはよくわからないところがありますので、お願いできればと思います。
○長瀧委員 私も特に委員会をつくりまして、国際的な基準に反対している論文その他が、最近、日本語になって店頭にたくさん出ておりまして、そういうものが本当に国際的なレベルから見てどうかということを調査もいたしましたし、現地に行ってそのもとも調べましたので、それも頭に入れた上でまとめさせていただきます。
○神野座長 それでは、よろしいですか。
御了解いただいたということにさせていただいて、ちょうど時間でございますので、今回の議論を終了させていただきたいと思っております。
次回は、今、長瀧先生にお任せした提言といいますか、資料等々が作成可能であれば、それをもとにしながらも議論を進めたいと思いますし、また、きょうの議論については、事務局のほうで整理していただいた上で、しかるべき必要な資料があれば、私のほうと相談しながらまた提供させていただいて、それもたたき台にさせていただければと思っております。
ということで、この辺で終わりにしたいと思いますが、事務局のほうから連絡していただく事項はございますか。
○榊原室長 次回の日程につきましては、日程を調整の上、追って御案内いたしますので、よろしくお願いいたします。
○神野座長 それでは、本日の検討会をこれにて終了させていただきます。
長時間にわたりましたことと、少し蒸し暑い中を熱心に御議論いただきましたことに感謝申し上げる次第でございます。
どうもありがとうございました。
※ 照会先
健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室
代表: 03-5253-1111
内線: 2317・2319
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